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2024-534505OHD由来有機炭素からのバイオポリマーの産生のための改変微生物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】OHD由来有機炭素からのバイオポリマーの産生のための改変微生物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20240912BHJP
   C12N 9/42 20060101ALI20240912BHJP
   C12P 5/00 20060101ALI20240912BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20240912BHJP
   C08J 11/22 20060101ALI20240912BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12N9/42
C12P5/00
C12P1/00 A
C08J11/22 ZAB
C12N15/55
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517443
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 US2022043646
(87)【国際公開番号】W WO2023043913
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/245,242
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524103645
【氏名又は名称】ボード オブ トラスティーズ オブ サザン イリノイ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(72)【発明者】
【氏名】ジャイアコディ、ラヒル エヌ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン、ケネス ビー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4F401
【Fターム(参考)】
4B064AB01
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA16
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD43
4B065CA55
4F401AA22
4F401AC10
4F401AD04
4F401BA06
4F401CA67
4F401CA76
4F401EA76
4F401FA01Z
4F401FA02Z
(57)【要約】
本開示は、全体として、プラスチック、バイオマス廃棄物、またはプラスチックおよびバイオマス廃棄物の共混合物をアップサイクルするための酵素組成物を産生する改変組み換え細菌細胞に関する。本開示は、プラスチック材料および/またはバイオマス廃棄物をアップサイクルするための、当該組み換え細菌細胞により産生される二重酵素組成物と、プラスチック、OHD-処理済み基質、および/または、バイオマス廃棄物をアップサイクルするための方法とにも関する。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの異種PETase様酵素および少なくとも1つの異種MHETase様酵素をコードし発現する異種DNAを含む組み換え細菌細胞であって、
前記PETase様酵素は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を分解してモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸(MHET)とするための酵素活性とインフレームで接続された分泌シグナルペプチドを有し、かつ、前記PETase様酵素は、配列番号5を有する葉堆肥クチナーゼ(Leaf-Compost Cutinase、LCC)酵素または配列番号5と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアントを含み、
前記MHETase様酵素は、MHETを分解してエチレングリコールおよびテレフタル酸とするための酵素活性とインフレームで接続された分泌シグナルペプチドを有し、かつ、前記MHETase様酵素は、配列番号6を有するポリペプチド、配列番号6と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、配列番号13を有するMle046酵素、配列番号13と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、配列番号14を有するMle046変異酵素、配列番号14と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、または、これらの任意の組み合わせを含む、
組み換え細菌細胞。
【請求項2】
前記組み換え細菌細胞は、Pseudomonas putidaまたはErwinia aphidicolaである、請求項1に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項3】
前記PETase様酵素および/または前記MHETase様酵素は、約30℃から約75℃の範囲の温度でおよび/または約6から約9の範囲のpHで、熱安定性かつ酵素的に活性である、請求項1または2に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項4】
前記PETase様酵素および/または前記MHETase様酵素は誘導性プロモーターから発現される、請求項1から3のいずれか1項に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項5】
前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素が一つのプラスミドによりコードされかつ単一プロモーターから共発現される、請求項1から4のいずれか1項に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項6】
前記組み換え細菌細胞は、そのゲノム中に、配列番号4を有するムコネートシクロイソメラーゼ酵素活性の発現をなくす変異であって、少なくとも1つの核酸またはそれ以上の欠失および/または挿入である変異を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項7】
前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素は、30℃で酵素的に活性であり、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を分解してエチレングリコールおよびテレフタル酸とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項8】
前記細菌細胞は、酸化的水熱溶解(oxidative hydrothermal dissolution、OHD)処理で前処理されたポリエチレンテレフタラート(PET)と共混合されたバイオマスを含む基質上で増殖可能である、請求項1から7のいずれか1項に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項9】
前記バイオマスは、緑茶廃棄物、紅茶廃棄物、使用済み緑茶、使用済み紅茶、コーンストーバー、および/または、コーヒーを入れるときの廃棄物を含み、および/または、
前記基質は、前記バイオマスおよび前記PETを、PET:バイオマスで1:99重量%から50:50重量%の重量比で含む、
請求項8に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項10】
プラスチック材料および/またはバイオマス廃棄物の生分解のための酵素組成物を製造するための方法であって、
請求項1から9のいずれか1項に記載の組み換え細菌細胞を液体培地で培養することてあって、前記組み換え細菌細胞は前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素を前記液体培地に分泌する、培養することと、
前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素を含む前記液体培地を集めることと、
を含む、方法。
【請求項11】
細菌培養液を遠心分離し、上清および沈殿物をつくることと、
前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素を含む前記上清を集めることと、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
PET(ポリエチレンテレフタラート)またはPBAT(ポリ(ブチレンアジペート-コ-テレフタラート))を含むプラスチック材料を分解するための方法であって、
前記プラスチック材料を、請求項1から9のいずれか1項に記載の組み換え細菌細胞と、および/または、前記組み換え細菌細胞により産生されたまたは産生可能な酵素組成物であって、少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む酵素組成物と、接触させること、
を含む、方法。
【請求項13】
前記プラスチック材料を前記組み換え細菌細胞と接触させることに先立ち、前記プラスチック材料をバイオマスと共混合し、100から374℃の範囲の温度、1500から3500psiの範囲の圧力、亜臨海水中、酸素の存在下での、酸化的水熱溶解(oxidative hydrothermal dissolution、OHD)により前記共混合物を処理すること、をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記バイオマスおよび前記PETはPET:バイオマスで1:99重量%から50:50重量%の重量比で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プラスチック材料は周囲温度かつ約6から約9の範囲のpHで接触させられる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
バイオマスをポリマー生成物を合成するための炭素含有基材に変換するための方法であって、100から374℃の範囲の温度、1500から3500psiの範囲の圧力、亜臨海水中、酸素の存在下での、水熱溶解(OHD)処理で、前記バイオマスを処理することと、OHD処理済みの前記バイオマスを、請求項1から9のいずれか1項に記載の組み換え細菌細胞と、または、前記組み換え細菌細胞により産生されたまたは産生可能な酵素組成物であって、少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む酵素組成物と、接触させることと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記バイオマスは、茶廃棄物、コーヒー廃棄物、および/または、コーンストーバーを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む二重酵素組成物であって、前記組成物は、請求項1から9のいずれか1項に記載の組み換え細菌細胞により産生および分泌される、または、前記組み換え細菌細胞により産生可能である、二重酵素組成物。
【請求項19】
少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む二重酵素組成物であって、
前記PETase様酵素は、配列番号5を有するポリペプチドの少なくとも28位から320位のアミノ酸および/または配列番号5の28位から320位のアミノ酸と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアントまたはこれらの任意の組み合わせを含み、
前記PETase様酵素は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を分解してモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸(MHET)とするための酵素活性を有し、
前記MHETase様酵素は、配列番号6を有するポリペプチドの少なくとも16位から613位のアミノ酸および/もしくは配列番号5の28位から320位のアミノ酸と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアントもしくはこれらの任意の組み合わせ、ならびに/または、配列番号13を含むMle046酵素および/もしくは配列番号13と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、ならびに/または、配列番号14を含む変異Mle046酵素もしくは配列番号14と少なくとも80%の全体的な同一性を有するその機能的バリアントを含み、
前記MHETase様酵素は、MHETを分解してテレフタル酸(TPA)およびエチレングリコール(EG)とするための酵素活性を有する、
二重酵素組成物。
【請求項20】
少なくとも1つの前記PETase様酵素および/または少なくとも1つの前記MHETase様酵素は、少なくとも1つのシグナルペプチドおよび/または少なくとも1つの精製タグとインフレームで接続されている、請求項19に記載の二重酵素組成物。
【請求項21】
前記PETase様酵素:前記MHETase様酵素のモル比が約1:99から約99:1の範囲である、請求項19または20に記載の二重酵素組成物。
【請求項22】
cis-cisムコネートを産生するための方法であって、テレフタル酸(TPA)を含む基質を組み換え細菌細胞に接触させることを含み、前記組み換え細菌細胞は、そのゲノム中に、配列番号4を有するムコネートシクロイソメラーゼ酵素活性の発現をなくす変異であって、少なくとも1つの核酸またはそれ以上の欠失および/または挿入である変異を含み、前記基質はバイオマス廃棄物および/またはプラスチック材料の分解により産生される、方法。
【請求項23】
前記分解は、酸化的水熱溶解(oxidative hydrothermal dissolution、OHD)処理および/または前記基質を請求項18または19に記載の二重酵素組成物と反応させることを含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年9月17日に出願された米国仮出願第63/245,242号に基づき優先権を主張し、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
(配列表の参照による援用)
1B74388.xmlという名前で、2022年9月14日に作成された、xml形式ファイルとして提出された配列表について、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0003】
(技術分野)
本開示は、全体として、プラスチック、バイオマス廃棄物、またはプラスチックおよびバイオマス廃棄物の共混合物をアップサイクルするための酵素組成物を産生する改変組み換え細菌細胞に関する。本開示は、プラスチック材料および/またはバイオマス廃棄物をアップサイクルするための、当該組み換え細菌細胞により産生される二重酵素組成物と、プラスチック、OHD-処理済み基質、および/または、バイオマス廃棄物をアップサイクルするための方法とにも関する。
【背景技術】
【0004】
プラスチックは、その多用途製、有利な材料特性、および、低製造コストのため、世界経済の複数の分野で重要な役割をはたしており、プラスチック産業は米国のみでもその収益が年間4000億ドル超を占める。多くのプラスチックは使い捨て用途向けに設計されており、そのため、プラスチックは米国のごみ処理場の固体廃棄物の>15%を占めるとともに、地上での、また、特に海洋での、主要な環境負荷となっている。実際、2050までには、プラスチックは質量基準で魚類よりも多く海洋に存在することになると予測されている。ポリエチレンテレフタラート(PET)は、カーペットおよび衣類などに用いられる合成繊維や、とりわけ、使い捨て飲料瓶での使用が年間2600万トンを超える世界で最も製造されているポリエステルである。さらに、PETについての現在のリサイクル技術は、通常、熱化学的または機械的手段による変換に注力するもので、その結果として得られるのは、類似してはいるものの減少していることも多い機械特性で、そのため、より低い価値の材料である。
【0005】
既存の製品より良好な機械特性を持つ繊維強化プラスチック(FRP)などの新規バイオポリマーを製造するためにムコネートなどのバイオマス由来の化学的成分が用いられ得る。生分解性ポリマーについて、微生物に基づく選択的分解戦略がバイオプラスチックモノマーの100%の再循環を保証するために実装され得るが、これらのモノマーは、熱/化学的または機械的にリサイクルされたPETとは異なり、未使用の材料と同じ特性を持つ新しいポリマーを製造するために用いられ得る。
【0006】
現在、飲料の製造では使用済みの茶および挽いたコーヒー豆を含む多量の生物学的廃棄物(茶のみで約500,000メートルトン)が生じる。これらの廃棄物は、通常、ごみ処理場に捨てられるか、または、リサイクル処理を介して、紙、家庭用品、および堆肥などの、複合材料を製造するために用いられる。酸化的水熱溶解(OHD)は、亜臨海水中の少量の分子状酸素との反応によるリグノセルロース系廃棄物を含む高分子固体有機材料から低分子量水溶性有機産物への効率的な変換のための新規変換戦略である。この処理は、簡潔であり、複雑かつ高価な触媒または水を除く溶媒の使用を要しない。
【0007】
しかし、プラスチックおよびバイオマス廃棄物をその後に新しいポリマー生成物へとアップサイクルできる化学的成分をはじめとする高価値生成物へと変換するために用いることができるより良好なアップサイクル法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、いくつかの実施形態では、溶解生成物として初期炭素の>90%の回収率で高分子有機固体をの完全溶解のための酵素組成物および方法を提供する。本処理は、ロバストで、使用済みの茶およびコーヒー廃棄物をはじめとする広範な基質に広く適用可能である。いくつかの実施形態では、緑茶または紅茶廃棄物は組み換え細菌細胞工場が効率的に利用できる溶解性有機モノマーに変換されてもよい。いくつかの実施形態では、基質は生分解性プラスチックの製造のためのβ-ケトアジペートなどの高価値化学的成分にアップサイクルされ得る。
【0009】
一態様では、本開示は、少なくとも1つの異種PETase様酵素および少なくとも1つの異種MHETase様酵素をコードし発現する異種DNAを含む組み換え細菌細胞であって、
PETase様酵素は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を分解してモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸(MHET)とするための酵素活性とインフレームで接続された分泌シグナルペプチドを有し、かつ、PETase様酵素は、配列番号5を有する葉堆肥クチナーゼ(Leaf-Compost Cutinase、LCC)酵素または配列番号5と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアントを含み、
MHETase様酵素は、MHETを分解してエチレングリコールおよびテレフタル酸とするための酵素活性とインフレームで接続された分泌シグナルペプチドを有し、かつ、MHETase様酵素は、配列番号6を有するポリペプチド、配列番号6と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、配列番号13を有するMle046酵素、配列番号13と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、配列番号14を有するMle046変異酵素、配列番号14と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、または、これらの任意の組み合わせを含む、
組み換え細菌細胞を提供する。
【0010】
好ましくは、組み換え細菌細胞は、Pseudomonas putidaまたはErwinia aphidicolaであってもよい。いくつかの好ましい実施形態では、PETase様酵素および/またはMHETase様酵素は、約30℃から約75℃の範囲の温度でおよび/または約6から約9の範囲のpHで、熱安定性かつ酵素的に活性であってもよい。いくつかの実施形態では、PETase様酵素および/またはMHETase様酵素は誘導性プロモーターから発現されてもよい。いくつかの実施形態では、PETase様酵素およびMHETase様酵素が一つのプラスミドによりコードされかつ単一プロモーターから共発現されてもよい。いくつかの実施形態では、組み換え細菌細胞は、そのゲノム中に、配列番号4を有するムコネートシクロイソメラーゼ酵素活性の発現をなくす変異であって、少なくとも1つの核酸またはそれ以上の欠失および/または挿入である変異を含んでもよい。いくつかの実施形態では、PETase様酵素およびMHETase様酵素は、30℃で酵素的に活性であり、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を分解してエチレングリコールおよびテレフタル酸とするものでもよい。いくつかの実施形態では、組み換え細菌細胞は、酸化的水熱溶解(OHD)処理で前処理されたポリエチレンテレフタラート(PET)と共混合されたバイオマスを含む基質上で増殖可能であってもよく、好ましくは、バイオマスは、緑茶廃棄物、紅茶廃棄物、使用済み緑茶、使用済み紅茶、コーンストーバー、および/または、コーヒーを入れるときの廃棄物を含み、および/または、基質は、バイオマスおよびPETを、PET:バイオマスで1:99重量%から50:50重量%の重量比で含む。
【0011】
別の態様では、本開示は、プラスチック材料および/または バイオマス廃棄物の生分解のための酵素組成物を製造するための方法であって、
本開示に基づく組み換え細菌細胞のいずれかを液体培地で培養することてあって、組み換え細菌細胞はPETase様酵素およびMHETase様酵素を液体培地に分泌する、培養することと、
PETase様酵素およびMHETase様酵素を含む液体培地を集めることと、
を含む、方法に関する。
【0012】
本方法のいくつかの好ましい実施形態では、本方法は、
細菌培養液を遠心分離し、上清および沈殿物をつくることと、
PETase様酵素およびMHETase様酵素を含む上清を集めることと、
をさらに含んでもよい。
【0013】
また別の態様では、本開示は、ポリエチレンテレフタラート(PET)またはポリ(ブチレンアジペート-コ-テレフタラート)(PBAT)を含むプラスチック材料を分解するための方法であって、プラスチック材料を、本開示に基づく組み換え細菌細胞と、および/または、組み換え細菌細胞により産生されたまたは産生可能な酵素組成物であって、少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む酵素組成物と、接触させること、を含む、方法に関する。
【0014】
本方法のいくつかの好ましい実施形態は、当該方法が、プラスチック材料を組み換え細菌細胞と接触させることに先立ち、プラスチック材料をバイオマスと共混合し、100から374℃の範囲の温度、1500から3500psiの範囲の圧力、亜臨海水中、酸素の存在下での、酸化的水熱溶解(OHD)により共混合物を処理すること、をさらに含むことを包含する。好ましくは、バイオマスおよびPETはPET:バイオマスで1:99重量%から50:50重量%の重量比で存在する。本方法のいくつかの好ましい実施形態では、プラスチック材料は周囲温度かつ約6から約9の範囲のpHで接触させられてもよい。
【0015】
また別の態様では、本開示は、バイオマスをポリマー生成物を合成するための炭素含有基材に変換するための方法であって、100から374℃の範囲の温度、1500から3500psiの範囲の圧力、亜臨海水中、酸素の存在下での、水熱溶解(OHD)処理で、バイオマスを処理すること、および、OHD処理済みのバイオマスを、本開示に基づく組み換え細菌細胞と、または、組み換え細菌細胞により産生されたまたは産生可能な酵素組成物であって、少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む酵素組成物と、接触させること、を含む、方法に関する。本方法のいくつかの好ましい実施形態では、バイオマスは、茶廃棄物、コーヒー廃棄物、および/または、コーンストーバーを含んでもよい。
【0016】
また別の態様では、本開示は、少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む二重酵素組成物であって、組成物は、本開示に基づく組み換え細菌細胞により産生可能である、または、組み換え細菌細胞により産生および分泌される、組成物に関する。好ましくは、本二重酵素組成物は、少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含み、PETase様酵素は、配列番号5を有するポリペプチドの少なくとも28位から320位のアミノ酸および/または配列番号5の28位から320位のアミノ酸と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアントまたはこれらの任意の組み合わせを含み、PETase様酵素は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を分解してモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸(MHET)とするための酵素活性を有し、MHETase様酵素は、配列番号6を有するポリペプチドの少なくとも16位から613位のアミノ酸および/もしくは配列番号5の28位から320位のアミノ酸と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアントもしくはこれらの任意の組み合わせ、ならびに/または、配列番号13を含むMle046酵素および/もしくは配列番号13と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、ならびに/または、配列番号14を含む変異Mle046酵素もしくは配列番号14と少なくとも80%の全体的な同一性を有するその機能的バリアントを含み、MHETase様酵素は、MHETを分解してテレフタル酸(TPA)およびエチレングリコール(EG)とするための酵素活性を有する、ものでもよい。本二重酵素組成物のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのPETase様酵素および/または少なくとも1つのMHETase様酵素は、少なくとも1つのシグナルペプチドおよび/または少なくとも1つの精製タグとインフレームで接続されていてもよい。好ましくは、PETase様酵素:MHETase様酵素のモル比が約1:99から約99:1の範囲であってもよい。
【0017】
さらなる態様では、本開示は、cis-cisムコネートを産生するための方法であって、テレフタル酸(TPA)を含む基質を組み換え細菌細胞に接触させることを含み、組み換え細菌細胞は、そのゲノム中に、配列番号4を有するムコネートシクロイソメラーゼ酵素活性の発現をなくす変異であって、少なくとも1つの核酸またはそれ以上の欠失および/または挿入である変異を含み、基質はバイオマス廃棄物および/またはプラスチック材料の分解により産生される、方法に関する。本方法のいくつかの好ましい実施形態は、分解が、酸化的水熱溶解(OHD)処理および/または基質を本開示に基づく二重酵素組成物と反応させることを含むものを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】有力なErwinia aphidicolaのLJJL01パスウェイがOHDプラスチック由来テレフタル酸(TPA)を可能とするように改変されていることを示す図である。緑色の遺伝子は異種遺伝子(Comamonas sp. E6)を示す。
図2】不均一なOHD生成物(芳香族、糖、酸)を濾過して単一生成物(すなわち、β-ケトアジペート)を得る(OHD芳香族からの収量が約90%)ための、開発された、OHDと改変単独培養の統合処理を示す図である。
図3】I. sakaiensisの分泌ペプチドを採用することによるE. aphidicola LJJL01 LJJL01での効率的なタンパク質分泌を示す一連の写真と図である。
図4】改変E. aphidicola LJJL01によるBHETの選択的分解を示すグラフと図である。
図5】P. putida KT2240におけるBHETの非特異的分解およびLCCの発現制限を示すグラフと図である。結果は平均±標準誤差で示す(n=3)。
図6】LCC酵素およびMHETase酵素による改変E. aphidicola LJJL01のBHET分解の相乗的な作用および選択性を示すグラフと図である。結果は平均±標準誤差で示す(n=3)。
図7】E. aphidicola LJJL01における真菌PU分解酵素の発現と分泌を示すグラフと図のセット。結果は平均±標準誤差で示す(n=3)。
図8】LCCおよびMHETaseのプラスミドマップを示す図である。
図9】E. aphidicola LJJL01デザインにおける真菌PU分解遺伝子の発現のプラスミドマップを示す図である。
図10】E. aphidicola LJJL01デザインにおける真菌PU分解遺伝子の発現の追加のプラスミドマップを示す図である。
図11】化学物質(ジオール/酸)の外部供給の化学触媒を用いない、開発された、PETのインサイチュ分解、および、元のプラスチックモノマー(すなわち、TPA)を回収するための統合されたOHDおよび改変微生物を示す図である。
図12】P. putida KT2440によるOHDプラスチックおよびコーンストーバー由来生成物の変換を示す一連のグラフである。
図13】OHDプラスチックからTPAを回収するためのPET分解酵素の採用を示す一連のグラフと図である。
図14】E. aphidicola LJJL01において改変可能な潜在的なPETアップサイクル経路を示す図である。
図15】PETの脱重合のための選択的に設計された微生物を示す図である。
図16】本図はLCCとMle046またはMle046変異体との相乗的な活性を報告する。pH7およびpH8で、EA-pBLT2、EA-LCC、EA-LCC-Mle046、および、EA-LCC-Mle046(変異体)について、72時間にわたる、TPA(菱形)、MHET(三角形)、およびBHET(四角形)の濃度(mM)がOD600とともに精密に図示された。
図17】pH7およびpH8で、EA-pBLT2、EA-LCC、EA-LCC-Mle046、および、EA-LCC-Mle046(変異体)により産生されたTPAおよびMHET(g/時間)を報告する。結果は、n=3での平均として対応する標準誤差とともに示す。異なる文字が付された棒は、統計的に有意であることを示す(p<0.05、一元配置分散分析後にテューキーの正直有意差事後検定を行った)。
図18】EA-pBLT2、EA-LCC、EA-LCC-Mle046、および、EA-LCC-Mle046(変異体)によるMHET分解を報告する。結果は、n=3での平均として対応する標準誤差とともに示す。異なる文字が付された棒は、統計的に有意であることを示す(p<0.05、一元配置分散分析後にテューキーの正直有意差事後検定を行った)。
図19】EA-pBLT2、EA-LCC、EA-LCC-Mle046、および、EA-LCC-Mle046(変異体)によるTPA産生を報告する。結果は、n=3での平均として対応する標準誤差とともに示す。異なる文字が付された棒は、統計的に有意であることを示す(p<0.05、一元配置分散分析後にテューキーの正直有意差事後検定を行った)。
図20】細菌細胞におけるLCCおよびMle046の共発現のためのpBLT-2-LCC-Mle046コンストラクトについてのプラスミドマップである。
図21】pBLT-2-LCC-変異Mle046コンストラクトの部分の制限酵素マップである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示では以下の略語が用いられる。
【0020】
『MW』は分子量を意味する。
【0021】
『PET』はポリエチレンテレフタラートを意味し、その化学構造は図4に示される。
【0022】
『PBAT』はポリ(ブチレンアジペート-コ-テレフタラート)を意味する。
【0023】
『BHET』はビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを意味し、その化学構造は図4に示される。
【0024】
『MHET』はモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸を意味し、その化学構造は図4に示される。
【0025】
『TPA』はテレフタル酸を意味し、これはベンゼン-1,4-ジカルボン酸とも呼ばれることがあり、その化学構造は図4に示される。
【0026】
『EG』はエチレングリコールを意味し、その化学構造は図4に示される。
【0027】
『OHD』は酸化的水熱溶解(oxidative hydrothermal dissolution)処理を意味する。
【0028】
『OHD-基質』はOHD処理により前処理された基質を意味する。
【0029】
『LCC』は葉堆肥クチナーゼ(Leaf-Compost Cutinase)を意味する。
【0030】
『PETase様酵素』はBHETを分解してMHETとする酵素活性を有する酵素を意味する。
【0031】
『MHETase様酵素』はMHETを分解してTPAおよびEGとする酵素活性を有する酵素を意味する。
【0032】
本開示では、『微生物』という用語は、微小な生命体を意味し、細菌を指し得るものであり、当該細菌は、異種DNAを含む組み換え細菌および/または種々の遺伝的操作により作成された組み換え細菌を含み、当該遺伝子操作は、細菌遺伝子の過剰発現、ノックアウト、または、ノックダウンをもたらし得るものを含む。
【0033】
本開示では、『分泌タンパク質』という用語は、例えば図3に示すようにタンパク質が細胞質で合成された後に細菌細胞がその細胞質からその細胞質膜を通して好ましくは細菌壁を通して分泌するタンパク質を意味する。分泌タンパク質は少なくとも1つの分泌シグナルペプチドを含むが、これは、『シグナルペプチド』と呼ばれることがあり、分泌に必要とされ、例えば図3に示すように細菌分泌系により認識される。このシグナルペプチドは例えば図3に示すように細菌分泌系により切り離され得る。
【0034】
本開示では、『約』という用語は、値の±5%を意味する。例えば、『約100』は、95から105の範囲を意味し、『約200』は、190から210の範囲を意味する。
【0035】
本開示では、『周囲温度』という用語は、約10℃から約35℃の範囲の温度を意味する。
【0036】
本開示では、『異種DNA』は、宿主細胞種以外の供給源に由来するDNAを意味し、これらに限定されるわけではないものの、実験室で作成された合成DNA分子、および/または、他の微生物に由来する遺伝子をコードするDNA、および/または、プラスミドを含む。本明細書で用いられる、『異種DNA配列』、『外因性DNAセグメント』、または、『異種核酸』という用語は、それぞれ、特定の宿主細胞に対して外来性である供給源に由来する配列、または、同一供給源由来である場合にはその本来の形態から変更された配列を意味する。したがって、宿主細胞内の異種遺伝子は、特定の宿主細胞に対して内因性であるが例えばDNAシャッフリングの使用を介して変更された遺伝子を含む。また、これらの用語は、天然DNA配列の非天然な複数コピーも含む。したがって、これらの用語は、細胞に対して外来性すなわち異種であるDNAセグメント、または、細胞に対してホモロガスであるものの当該要素が通常みられない宿主細胞核酸内での位置にあるDNAセグメントを指す。外因性DNAセグメントは、外因性ポリペプチドを得るために発現させられる。『ホモロガス』DNA配列は、それが導入される宿主細胞と本来関連するDNA配列である。
【0037】
アップサイクルは、廃棄プラスチックまたはバイオマス材料から新しい生成物を作るための種々の処理を含む。アップサイクルは、廃棄物を減らすのみならず、廃棄物を有用な生成物へと変換する。本開示は、消費者使用済みのPET、生分解が一般的に困難な合成ポリマーをはじめとする廃棄バイオマスおよび/またはプラスチック材料をエネルギー効率良く環境安全的にアップサイクルするための生体触媒および方法を提供する。本明細書に記載の生体触媒および方法は、バイオマスおよび/またはプラスチック廃棄物を効率的に分解するのみならず、廃棄物を新しいポリマー材料を製造するための重要な市場価値を有する有機モノマーへと変換する。
【0038】
PETは鎖運動性を減らし基質酵素結合を防ぐその高い結晶化度のために加水分解が困難である。刊行された方法によれば、PETが高分子運動性を示すガラス転移点に到達させるためにPETは約72℃まで加熱されねばならない。これはPETがPHEの活性部位により快適に嵌まり切断されることを可能とする。これまでに、葉堆肥クチナーゼ(LCC)が、72℃、pH8.0で、10時間前処理された消費者使用済みPET(pc-PET)の約90%を分解するように改変されている。これにより、PET1g当たり3mgのLCCの酵素濃度で16.7gのTPA L-1-1が産生される。この酵素は、PETを分解してMHETとするが、LCCがMHETを分解してエチレングリコールおよびテレフタル酸(TPA)とする際の低い速度に律速される。それでも、TPAは、ずっと高いアップサイクル価値を有しており、また、ムコネートなどの他の商業的に価値のあるモノマーの製造のために用いることも可能である。
【0039】
一態様では、本開示は、バイオマス廃棄物、消費者使用済みプラスチック材料、好ましくは、PETおよび/またはPBATを含むプラスチック材料、または、これらの任意の組み合わせの効率的な分解のための二重酵素組成物(生体触媒)を提供する。二重酵素組成物は、少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含み、二重酵素組成物は、異種DNA由来の酵素を発現する組み換え細菌細胞により産生および分泌される。好ましい組み換え細菌は、これらに限定されるわけではないものの、Pseudomonas putidaまたはErwinia aphidicolaを含む。特に好ましい細菌は、ハラダおよび共同研究者がJ. Gen Appl Microbiol.,1997,12月;43(6):349-354で記述したような、グラム陰性、オキシダーゼ陰性、通性嫌気性、発酵性、かつ桿状の細菌であるErwinia aphidicolaである。
【0040】
発明者等は、2つの酵素の組み合わせが、プラスチック材料の、特にPET分解での中間化合物であるBHETなどのプラスチック材料の分解について相乗効果を有することを予想外にも発見した。また、PETをバイオマス廃棄物と共混合することによりPETの分解速度が改善し、これによりその脱重合反応を、より低温で、好ましくは、70℃未満で、より好ましくは周囲温度で、行うことが、少なくとも、PETおよびバイオマスの共混合物がOHD処理で前処理されるいくつかの実施形態では、可能となる。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態では、PETase様酵素は、これらに限定されるわけではないものの、配列番号5を有するポリペプチド、および/または、配列番号5と、少なくとも、80、81、82、83、84、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または、99%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、または、これらの任意の組み合わせを含む、から実質的になる、または、からなる葉堆肥クチナーゼ(LCC)酵素を含んでもよい。当該PETase様酵素はBHETを分解してMHETとするための酵素活性を有する。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態では、PETase様酵素は、これらに限定されるわけではないものの、配列番号5を有するポリペプチドの28位から320位のアミノ酸を含む、から実質的になる、または、からなるLCC機能的断片を含んでもよく、好ましくは、配列番号5を有するポリペプチドの1位から27位のアミノ酸を含まない。いくつかの好ましい実施形態では、PETase様酵素は、配列番号5の28位から320位のアミノ酸と、少なくとも、80、81、82、83、84、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または、99%の全体的な配列同一性を有する機能的バリアント、または、これらの任意の組み合わせを含んでもよい。当該PETase様酵素は、少なくともBHETを分解してMHETとするための酵素活性を有する。
【0043】
本開示に基づく二重酵素組成物(生体触媒)は、上述のPETase様酵素のいずれか、および、1種以上のMHETase様酵素を含んでもよい。いくつかの好ましい実施形態では、MHETase様酵素は、配列番号6を有するポリペプチド、および/または、配列番号6と、少なくとも、80、81、82、83、84、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または、99%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、または、これらの任意の組み合わせを含んでもいし、から実質的になってもよいし、または、からなってもよい。当該MHETase様酵素は、MHETを分解してTPAおよびEGとする酵素活性を有する。
【0044】
いくつかの好ましい実施形態では、MHETase様酵素は、これらに限定されるわけではないものの、配列番号6を有するポリペプチドの18位から613位のアミノ酸を含む、から実質的になる、または、からなるMHETase様機能的断片を含んでもよく、好ましくは、配列番号6を有するポリペプチドの1位から17位のアミノ酸を含まない。いくつかの好ましい実施形態では、MHETase様酵素は、配列番号6の18位から613位のアミノ酸と、少なくとも、80、81、82、83、84、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または、99%の全体的な配列同一性を有する機能的バリアント、または、これらの任意の組み合わせを含んでもよい。当該MHETase様酵素は、少なくともMHETを分解してTPAおよびEGとする酵素活性を有する。
【0045】
他の適したMHETase様酵素は、これらに限定されるわけではないものの、配列番号13、および/または、配列番号13と、少なくとも、80、81、82、83、84、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または、99%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、または、これらの任意の組み合わせを含む、から実質的になる、または、からなるMle046酵素を含む。当該MHETase様酵素は、MHETを分解してTPAおよびEGとする酵素活性を有する。
【0046】
他の適したMHETase様酵素は、さらに、これらに限定されるわけではないものの、配列番号14、および/または、配列番号14と、少なくとも、80、81、82、83、84、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または、99%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、または、これらの任意の組み合わせを含む、から実質的になる、または、からなる変異Mle046酵素を含む。当該MHETase様酵素は、少なくともMHETを分解してTPAおよびEGとする酵素活性を有する。
【0047】
Mle046は、メタゲノム研究を通じて同定された海生MHETase酵素であり、PET分解細菌Ideonella sakaiensisのMHETaseのホモログである。Mle046酵素は、MHETを効率的に分解してエチレングリコールおよびテレフタル酸とするが、10から60℃の温度範囲、6.5から9.0のpHレベルで、活性である。Mle046が注目される主な理由は、Mle046によるMHET分解のターンオーバー率(Kcat)がMHETase類よりもずっと高いためである。この酵素を律速するのは、Kと表される酵素基質親和性である。Mle046はより高いKを有するため、これにより類似のMHETase酵素と比べ40分の1近くまで触媒効率が減少する。予想外にも、以下で詳しく報告するように、配列番号14を有する変異Mle046(G117S)は、MHETからTPAを産生することについて改善された変換率を有している。有利なことに、本二重酵素組成物は、約6から約9を含む広範なpHにわたり周囲温度で高い基質変換率を有する。
【0048】
本開示に基づくPETase様および/またはMHET様酵素のいずれも、細胞からの、特に、細菌細胞からの、酵素分泌、および/または、必要であれば細胞培養培地からの精製を、簡単にするために、1つ以上の精製タグおよび/または1つ以上のシグナルペプチドをさらに含んでもよいことを理解されたい。精製タグの例は、これらに限定されるわけではないものの、好ましくは酵素のC末端に接続される、Hisタグまたはc-Mycタグを含む。シグナルペプチドの例は、これらに限定されるわけではないものの、好ましくは例えば図3に示すように酵素のN末端にインフレームで接続される、MNFPRASRLMQAAVLGGLMA(配列番号44)およびVSAAATAMQTTVTTMLLASVALAA(配列番号45)を含む。
【0049】
本開示では、『機能的バリアント』は、それが対応する酵素と同じ酵素反応を行い得るポリペプチドを意味する。いくつかの機能的バリアントは酵素機能に顕著な影響を与えない1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。例えば、1つの負電荷アミノ酸が別の負電荷アミノ酸に置換されてもよい。いくつかの別の例は、これらに限定されるわけではないものの、1つ以上のアミノ酸の欠失および/または挿入、特に、こうした変異が酵素触媒ドメインの外側でなされたもの、を含む。
【0050】
本開示に基づく二重酵素組成物(生体触媒)では、1種以上のPETase様酵素または1種以上のMHETase様酵素が任意のモル比で存在してもよい。好ましくは、PETase様酵素:MHETase様酵素のモル比は、約1:99から約99:1の範囲にあってもよい。
【0051】
本開示に基づく二重酵素組成物のひとつの技術的利点は、これらが、約10℃から約90℃、最も好ましくは、約30℃から約75℃を含む、広範な温度で、熱安定性かつ酵素的に活性である点である。本開示に基づく二重酵素組成物の別の技術的利点は、これらが、広範なpHで、好ましくは、約6.0から約9.0のpH範囲で、酵素的に活性であり続ける点である。PETを分解するための先行技術の酵素は、高温、例えば、少なくとも70℃、を要したが、本組成物は、例えば、約20℃から約35℃の、最も好ましくは、約25℃から約30℃の範囲内の、周囲温度などの、ずっと低い温度で、PETおよび/またはバイオマス廃棄物をアップサイクルすることに適している。
【0052】
本開示に基づく二重酵素組成物は、極めて他種の異なる異質からTPAおよびEGを産生するのに適している。適した基質は、これらに限定されるわけではないものの、バイオマス廃棄物、消費者使用済みプラスチック、特に、PETおよびPBAT、または、これらの任意の組み合わせを含む。
【0053】
本開示では、『バイオマス』という用語は、植物、菌類、微生物、または、動物由来廃棄物に由来する生物学的材料を指す。バイオマス廃棄物は、普通は、例えば、焼却、埋設、または他の廃棄法により、捨てられるバイオマスを指す。
【0054】
適したバイオマス基質の例は、これらに限定されるわけではないものの、藻類、イネ科植物、木材、木、低木、樹葉、樹針、茂み、農業バイオマス廃棄物(葉、作物の茎、根、果実および/または野菜の皮、コーンストーバー、籾殻、穀物の殻を含む)、飲料産業廃棄物(紅茶廃棄物、緑茶廃棄物、挽いたコーヒーを含む)、林業木材廃棄物(枝、木、茂みを含む)、建築・解体バイオマス廃棄物(おがくず、廃木材を含む)、消費者使用済みバイオマス廃棄物(紙、カードボード(cardboard)、使用済み茶葉、使用済みの挽いたコーヒー、剥かれた野菜または果物の皮、および、他の食料調理廃棄物を含む)を含む。バイオマス廃棄物の好ましい例は、これらに限定されるわけではないものの、緑茶廃棄物、紅茶廃棄物、使用済み茶葉、挽いたコーヒー、および/または、コーンストーバーを含む。
【0055】
本開示に基づく二重酵素組成物のための好ましい基質は、圧力下、高温で、反応器において、亜臨海水中、酸素の存在下での酸化的水熱溶解(OHD)処理により前処理されたものを含む。この前処理済み基質は、本開示では、OHD基質、例えば、OHDバイオマスおよび/またはOHDプラスチックと、呼称され得る。基質をOHD前処理するために、プラスチック材料を含むバイオマスおよび/またはPETがOHD処理に掛けられてもよく、このOHD処理は、約100℃から約374℃の範囲の、好ましくは、約200℃から約350℃の範囲の温度で行われてもよい。反応器内の圧力は、少なくとも水を液体に維持するよう規定されていてもよい。いくつかの実施形態では、圧力は1500から3500psiの範囲であってもよい。『亜臨海水』は、高温かつ高圧の水を意味する。OHD法の例は、本技術分野では、例えば、米国特許第10,023,512号明細書から既知であり、この内容の全体を本明細書で参照により援用する。
【0056】
好ましくは、本開示に基づく二重酵素組成物は、少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素をコードし発現する異種のDNA、例えば、プラスミドを含む組み換え細菌細胞で産生される。
【0057】
したがって、別態様では、本開示は、少なくとも1つの異種PETase様酵素および少なくとも1つの異種MHET様酵素をコードし発現する異種DNAを含む組み換え細菌細胞に関する。好ましくは、当該細菌細胞は、Pseudomonas putidaまたはErwinia aphidicolaである。
【0058】
好ましくは、少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素が一つのプラスミドによりコードされるが、そのいくつかの例を図8、9、10、および、20のプラスミドマップに示す。いくつかの実施形態では、例えば図20に示すように、プラスミドは同じプロモーターから両方の酵素を発現してもよい。好ましくは、それぞれの酵素が少なくとも1つのシグナルペプチドをともなって産生されるため、2つの酵素のそれぞれが組み換え細菌細胞から分泌される。いくつかの好ましい実施形態では、組み換え細胞は、以下の異種DNA遺伝子、すなわち、LCC酵素およびMHETase酵素をコードする配列番号7、LCC酵素をコードする配列番号8、Mle046酵素をコードする配列番号11、変異Mle046酵素をコードする配列番号12、または、配列番号7、8、11、または12と、少なくとも、80、81、82、83、84、85、86、87、88、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または、99%の全体的な配列同一性を有するそのいずれかのバリアント、または、これらの任意の組み合わせの1つ以上を含んでもよい。
【0059】
本開示に基づく組み換え細菌細胞は、本開示に基づく少なくとも1つのPETase様酵素および本開示に基づく少なくとも1つのMHETase様酵素の組み合わせを発現し分泌してもよい。いくつかの実施形態では、組み換え細菌細胞は、少なくとも1つの異種PETase様酵素および少なくとも1つの異種MHETase様酵素をコードし発現する異種DNAを含んでもよく、PETase様酵素は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を分解してモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸(MHET)とするための酵素活性とインフレームで接続された分泌シグナルペプチドを有し、かつ、PETase様酵素は、配列番号5を有する葉堆肥クチナーゼ(Leaf-Compost Cutinase、LCC)酵素または配列番号5と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、または、これらの任意の組み合わせを含み、MHETase様酵素は、MHETを分解してエチレングリコールおよびテレフタル酸とするための酵素活性とインフレームで接続された分泌シグナルペプチドを有し、かつ、MHETase様酵素は、配列番号6を有するポリペプチド、配列番号6と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、配列番号13を有するMle046酵素、配列番号13と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、配列番号14を有するMle046変異酵素、配列番号14と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、または、これらの任意の組み合わせを含む。
【0060】
いくつかの好ましい実施形態では、本開示に基づく組み換え細菌細胞は、さらに、そのゲノム中に、配列番号4を有するムコネートシクロイソメラーゼ活性の発現をなくす変異であって、少なくとも1つの核酸またはそれ以上の欠失および/または挿入である変異を含む。この変異は組み換え細菌細胞内でのcis-cisムコネートの蓄積をもたらすが、これはプラスチック材料の製造において高価値のモノマーである。いくつかの好ましい実施形態では、変異は、配列番号4を有するムコネートシクロイソメラーゼをコードする、好ましくは配列番号3の核酸配列を有する、遺伝子を、ノックアウトすることにより得ることができる。特に好ましい変異導入法はゲノム編集法であり、その一例は実施例3に詳細に記載するようなCRISPR-Cas9系の遺伝子欠失である。
【0061】
本開示に基づく組み換え細菌細胞の技術的利点は、バイオマス廃棄物、PETプラスチック、または、これらの任意の混合物を含んでもよい、酸化的水熱溶解(OHD)処理基質を含む基質上で組み換え細菌細胞を増殖可能であることを含む。予想外にも、OHD前処理バイオマスおよび/またはOHD前処理PET基質の存在下で細菌細胞を育成するとOHD前処理バイオマスおよび/またはPETをTPAおよびEGへと効率的に変換されることが判明した。組み換え細菌細胞が欠失ムコネートシクロイソメラーゼ活性をさらに含む実施形態では、有利なことに、組み換え細菌細胞は、例えば図1に示すように、さらに効率的にTPAを細胞内に取り込んでTPAを処理してcis,cis-ムコネートとし得る。いくつかの実施形態では、基質は、PET:バイオマスで1:99重量%から50:50重量%の重量比の、バイオマスおよびPETのOHD前処理混合物を含んでもよい。
【0062】
また別の態様では、本開示は、プラスチック材料および/またはバイオマス廃棄物の生分解のための酵素組成物(生体触媒)を製造するための方法であって、液体培地で本開示に基づく少なくとも1つのPETase様酵素および本開示に基づく少なくとも1つのMHETase様酵素の組み合わせを産生し分泌する本開示に基づく組み換え細胞のいずれかを培養することであって、当該組み換え細菌細胞はPETase様酵素およびMHETase様酵素を液体培地に分泌する、培養することと、PETase様酵素およびMHETase様酵素を含む液体培地を集めることと、を含む、方法に関する。特筆すべきことに、当該細胞は、懸濁液で、ある期間、例えば、約10時間から約48時間、必要であれば、さらにより長期にわたり、増殖可能である。当該細胞は、細菌増殖に適した任意の温度で、例えば、約30℃から約37℃の範囲の温度で、好ましくは細胞への酸素のアクセスを改善するために攪拌しながら、増殖されてもよい。液体培地は、20mMのグルコース(Fisher Scientific)が添加された、33.9g/Lのリン酸二ナトリウム(無水)、15.0g/Lのリン酸一カリウム、2.5g/Lの塩化ナトリウム、5.0g/Lの塩化アンモニウム、4mMの硫酸マグネシウム、36μMの硫酸鉄(II)、200μM塩化カルシウムを含む、M9最小培地(Fisher Scientific)を含むM9最小培地を含んでもよい。細菌細胞を増殖させるために通常用いられる他の液体増殖培地を用いてもよい。懸濁液中での細菌増殖は、分光光度計により600nmでの細菌培養液の光学密度(O.D.)を定期的に測定することにより監視できる。
【0063】
いくつかの実施形態では、OHD前処理PETおよび/またはOHD前処理バイオマス廃棄物を含む基質が、液体増殖培地に直に加えられてもよい。例えば、こうした基質が1mMから10mMの合計濃度で液体増殖培地に加えられてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、当該細胞は、基質が加えられることなくある期間にわたり増殖するに任されてもよく、その後、液体増殖培地が基質と反応させられてもよい。さらに特筆すべきことに、酵素組成物を含む増殖培地を細胞から必ずしも分離せねばならないわけではない。ただし、いくつかの実施形態では、酵素組成物を含む増殖培地が任意の従来の方法で細胞から分離されてもよく、こうした方法は、これらに限定されるわけではないものの、遠心分離および/または濾過を含む。いくつかの実施形態では、酵素組成物を含む増殖培地は、酵素の精製のために通常用いられる任意の方法に掛けることでさらに処理されてもよく、こうした方法は、これらに限定されるわけではないものの、クロマトグラフィー、遠心分離、タンパク質沈殿、および/または、ゲル精製を含む。
【0065】
またさらなる態様では、本開示は、PETおよび/またはPBATを含むプラスチック材料を分解するための方法であって、当該材料を、本開示に基づく少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を発現し分泌する本開示に基づく組み換え細菌細胞と接触させることを含む方法に関する。この代わりに、プラスチック材料は、当該細胞により産生された少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む培養増殖培地と、または、本開示に基づく二重酵素組成物と、接触させられてもよい。この方法のいくつかの好ましい実施形態は周囲温度かつ約6から約9の範囲のpHで行われてもよい。反応は、ある期間にわたり、例えば、約10分から約48時間の任意の期間にわたり、または、必要に応じて、よりも短いまたは長い期間にわたり、行われてもよい。TPAおよびEGの変換率および産生が、例えば図12および13と関連付けて例として議論したように、監視されてもよい。酵素に対する基質の割合が必要に応じて調節されてもよい。いくつかの実施形態では、2種類の酵素のそれぞれについて基質1グラム当たり約0.5mgから約5mgが用いられてもよい。
【0066】
本方法のいくつかの好ましい実施形態では、プラスチック材料、好ましくは、PETまたはPBATを含むプラスチック材料を、組み換え細菌細胞、または、当該組み換え細菌細胞により産生されたまたは産生可能な二重酵素組成物に接触させることに先立ち、プラスチック材料がバイオマスと共混合されてもよい。好ましくは、共混合物またはプラスチック材料自体が、組み換え細菌細胞または二重酵素組成物と接触させられることに先立ち、220から330℃の範囲の温度、1500から3500psiの範囲の圧力、亜臨海水中、酸素の存在下での、酸化的水熱溶解(OHD)処理に掛けられる。予想外にも、プラスチック材料、特に、PET含有プラスチック材料を、バイオマスと共混合することが、PET分解の変換率を改善し、特に、PETの分解に通常必要とされるよりも、例えば、70℃よりも、低い温度で、分解反応を行うことを可能とし得ることが判明した。
【0067】
共混合物についてのいくつかの好ましい実施形態では、バイオマス、および、プラスチック材料、好ましくは、PETおよび/またはPBATは、PET:バイオマスで1:99重量%から50:50重量%の重量比で存在してもよい。
【0068】
予想外にも、本開示に基づく二重酵素組成物はPET分解について相乗的性質を有することが判明した。図11を参照するが、予想外にも、本方法は、化学触媒も、ジオールや酸などの腐食性化学物質の外部添加もなしでの、PETのインサイチュ分解を可能にする。OHD処理と組み換え細菌細胞による分解とを統合する本方法は、例えば図14に示すようなナイロンおよび他の材料をはじめとする新しいポリマー材料の製造において高価値である元のプラスチックモノマー(TPA)を回収する。
【0069】
本開示の一実施形態は、廃棄バイオマス原料を化学原料へと変換するための改変組み換え細胞である。改変微生物は、P. putida KT2440、E. aphidicola LJJL01、または、酵母(S. cerevisiae)をはじめとする任意の他の適した微生物でもよい。改変微生物は、ムコネートシクロイソメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの欠失を含んでもよい。ムコネートシクロイソメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3、または、それと少なくとも95%の同一性の配列、または、これらの全長相補配列、または、これらの機能的断片を含んでもよい。この代わりに、ムコネートシクロイソメラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号4、または、それと少なくとも95%の同一性の配列、または、これらの全長相補配列、または、これらの機能的断片を含んでもよい。
【0070】
廃棄バイオマス原料はOHD最終生成物ストリームを含んでもよい。OHD最終生成物ストリームは、緑茶、紅茶、コーヒー、コーンストーバー、石炭、OHD処理に適した任意の他のバイオマス材料、または、これらの混合物を含むOHD入力ストリームにOHD処理を行うことにより生成されてもよい。
【0071】
化学原料は、テレフタル酸、テレフタラート、1,2-ジヒドロキシ-3,5-シクロヘキサジエン-1,4-ジカルボキシレート、プロトカテクエート、カテコール、ムコネート,(z)-(e_-4-ホルミルメチリデン-2-ヒドロキシ-2-ペンタジオエート、6-ヒドロキシ-6H-ピラン-1,4-ジカルボキシレート、2-ピロン-4,6-ジカルボン酸、カフェイン、バニリン酸、フェルラ酸、クマル酸、および、シリンガ酸を含んでもよい。好ましくは、化学原料は、cis,cis-ムコネートをはじめとすムコネート、β-ケトアジペート、または、これら2種の混合物を含んでもよい。
【0072】
本開示の実施形態は、改変微生物によるプラスチックのOHDアップサイクルを含む。他維持の別の実施形態は、廃棄プラスチック原料の化学原料への変換のための改変微生物である。改変微生物(組み換え細菌細胞)は、P. putida KT2440、E. aphidicola LJJL01、または、任意の他の適した微生物であってもよい。
【0073】
改変微生物は、LCC酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性(異種)ポリヌクレオチドを含んでもよい。LCC酵素活性を有するポリペプチドは、配列番号5、または、それと少なくとも95%の同一性の配列、または、これらの全長相補配列、または、これらの機能的断片を含んでもよい。
【0074】
改変微生物は、MHET酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含んでもよい。MHET酵素活性を有するポリペプチドは、配列番号6、または、それと少なくとも95%の同一性の配列、または、これらの全長相補配列、または、これらの機能的断片を含んでもよい。
【0075】
改変微生物は、LCC酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドおよびMHET酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含んでもよい。LCC酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドおよびMHET酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドは、上記の通りであってもよい。この代わりに、LCC酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドおよびMHET酵素活性を有するポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドは、LCC酵素活性およびMHET酵素活性の両方を有する融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。
【0076】
廃棄プラスチック原料はOHD最終生成物ストリームを含んでもよい。OHD最終生成物ストリームは、PET、緑茶、紅茶、コーヒー、コーンストーバー、石炭、OHD処理に適した任意の他のバイオマス材料、または、これらの混合物を含むOHD入力ストリームにOHD処理を行うことにより生成されてもよい。
【0077】
化学原料は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、モノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸(MHET)、テレフタル酸(TPA)、EG、または、2種の混合物を含んでもよい。
【0078】
(配列および変異)
本明細書に記載のアミノ酸配列および核酸配列は種々の変異を含んでもよい。変異は、挿入、置換、および、欠失を含んでもよい。挿入は、(+)(アミノ酸/核酸配列の位置番号)(挿入されるアミノ酸/核酸塩基)という形式で記載される。例えば、:+287Aは、対応するアミノ酸配列の287位の後へのアラニン残基の挿入を意味するだろう。置換は、(置換対象のアミノ酸/核酸塩基)(アミノ酸/核酸配列の位置番号)(置換先のアミノ酸/核酸塩基)という形式で記載される。例えば、C1082Aは、対応する核酸配列の1082位でのシトシン塩基からアデニン塩基への置換を意味するだろう。欠失は、(欠失対象のアミノ酸/核酸塩基)(アミノ酸/核酸配列の位置番号)(-)という形式で記載される。例えば、C970-は、対応する核酸配列の970位に通常は位置するシトシン塩基の欠失を意味するだろう。
【0079】
本明細書に記載のアミノ酸配列および核酸配列は種々の配列位置に変異を含んでもよい。配列位置は便宜的に様々な方法で記載されてもよい。より具体的には、配列位置は、配列の先頭から正の位置番号として記載されてもよいし、配列の末尾から負の番号として記載されてもよい。配列位置は、配列長を比較して配列長を足すか引くかすることにより、正の表記と負の表記との間で容易に変換され得る。例えば、配列の最初から2つめの位置でのシトシンからアデニンへの変異をともなう10核酸塩基を含むプロモーターは、C2Aと表記されてもよい。この代わりに、この変異は、C(-9)A、-9C/A、または、負の一番号を示す類似の方法で、記載されてもよい。
【0080】
以下の定義および方法は、本発明をより良好に定義し、当業者による本発明の実施を助けるために提供される。別段の記載のない限り、用語は関連分野の当業者による慣例的な用法に基づいて解釈されるべきである。
【0081】
『アレル』という用語は、染色体上のある座位での遺伝子配列の2つ以上の代替形態の1つを指す。
【0082】
『キメラ』という用語は、2つ以上の異なるポリヌクレオチド分子の部分の融合の産物を指す。『キメラプロモーター』は、既知のプロモーターまたは他のポリヌクレオチド分子の操作を経て作られたプロモーターを指すと解釈される。こうしたキメラプロモーターは、例えば第1プロモーター由来の異種エンハンサー領域をその独自の部分または全長の調節エレメントを有する第2プロモーターへと融合させることにより、1つ以上のプロモーターまたは調節エレメントからの遺伝子発現をもたらすまたは調節することができるエンハンサー領域を組み合わせることができる。したがって、動作可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現を調節するための本明細書に記載の方法に基づくキメラプロモーターの、設計、構築、および、使用は、本開示に包含される。
【0083】
多数の方法で新規キメラプロモーターが設計または改変できる。例えば、キメラプロモーターは、第1プロモーター由来のエンハンサー領域を第2プロモーターへと融合させることにより作られてもよい。結果としてできたキメラプロモーターは、第1または第2プロモーターに対して新規の発現特性を有し得る。新規キメラプロモーターは、第1プロモーター由来のエンハンサー領域が、第2プロモーターと、5’末端、3’末端、または、任意の内側の位置で、融合されるように、構築されることも可能である。
【0084】
『コンストラクト』は、1つ以上の核酸分子が動作可能に連結されている核酸分子を含む、ゲノムの組み込みまたは自律複製が可能である、任意の供給源に由来する、プラスミド、コスミド、ウイルス、自律複製核酸分子、ファージ、または、直線状もしくは環状の一本鎖もしくは二本差DNAもしくはRNA核酸分子などの、任意の組み換え核酸分子と一般的には解釈される。
【0085】
本開示のコンストラクトは、3’転写終結核酸分子に動作可能に連結された転写可能核酸分子に動作可能に連結されたプロモーターを含み得る。さらに、コンストラクトは、これらに限定されるわけではないものの、例えば3’非翻訳領域(3’UTR)由来の、追加の調節核酸分子を含みうる。コンストラクトは、これらに限定されるわけではないものの、翻訳開始に重要や役割を果たし得るものであり発現コンストラクトの遺伝要素でもあり得るmRNA核酸分子の5’非翻訳領域(5’UTR)を含み得る。これらの追加の上流および下流の調節核酸分子は、プロモーターコンストラクトに存在する他のエレメントに関してネイティブであるまたは異種である供給源に由来してもよい。
【0086】
『発現ベクター』、『ベクター』、『発現コンストラクト』、『ベクターコンストラクト』、『プラスミド』、または、『組み換えDNAコンストラクト』は、例えば宿主細胞において、特定の核酸の転写または翻訳を可能とする一連の特定の核酸エレメントを有する、組み換え手法または直接的化学合成をはじめとする人為的介入により生成された核酸を指すと通常は解釈される。発現ベクターは、プラスミド、ウイルス、または、核酸断片の、一部であり得る。典型的には、発現ベクターは、プロモーターに動作可能に連結された転写対象核酸を含み得る。
【0087】
『遺伝子型』という用語は、生物の特定のアレル構成を意味する。
【0088】
『高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件』は、6×SSCバッファ(すなわち、0.9M塩化ナトリウムおよび0.09Mクエン酸ナトリウム)における65℃でのハイブリダイゼーションとして定義される。こうした条件を前提として、所定のセットの配列がハイブリダイズするか否かについて2つの配列の間でDNA二本鎖の融点(T)を計算することにより決定できる。特定の二本鎖が6×SSCの塩条件で65℃未満の融点を有する場合、2つの配列はハイブリダイズしない。一方、融点が6×SSCの塩条件で65℃超である場合、配列はハイブリダイズする。一般的に、任意のハイブリダイズしたDNA:DNA配列の融点は、T=81.5℃+16.6(log10[Na])+0.41(G/C含量の割合)-0.63(ホルムアミド%)-(600/l)という式を用いて求めることができる。さらに、DNA:DNAハイブリッドのTは、ヌクレオチド同一性が1%減少する毎に1~1.5℃だけ減少する[SambrookとRussel、2006]。
【0089】
『遺伝子移入された』という用語は、遺伝子座を参照して用いられる場合、新しい遺伝的背景に導入された遺伝子座を指す。したがって、遺伝子座の遺伝子移入は、植物育成方法を経ておよび/または分子遺伝学的方法により達成できる。こうした分子遺伝学的方法は、これらに限定されるわけではないものの、相同組み換え、非相同組み換え、部位特異的組み換えに備えた種々の植物形質転換技術および/または方法、および/または、遺伝子座置換または遺伝子座変換に備えたゲノム修飾を含む。
【0090】
『連鎖』という用語は、核酸マーカーおよび/またはゲノム領域の文脈で用いられる場合、マーカーおよび/またはゲノム領域が同じ連鎖群または染色体上に位置することを意味する。
【0091】
『マーカー』は、生物を区別するために用いることができる検出可能な特徴を意味する。こうした特徴の例は、これらに限定されるわけではないものの、遺伝子マーカー、生化学的マーカー、代謝物、形態学的特徴、および、農学的特徴を含む。
【0092】
『マーカー遺伝子』は、その発現を何らかの方法でスクリーニングまたはスコア化できる任意の転写可能核酸分子を指す。
【0093】
本開示に役立ついくつかの遺伝子マーカーは、『顕性』または『共顕性』マーカーを含む。『共顕性』マーカーは、2つ以上のアレル(二倍体個体毎に2つ)の存在を明かす。『顕性』マーカーは、単一アレルのみの存在を明かす。顕性マーカー表現型(例えば、DNAのバンド)の存在は、ホモ接合またはヘテロ接合条件のいずれかで1つのアレルが存在することの徴候である。顕性マーカー表現型の不存在(例えば、DNAバンドの不存在)は、『ある他の』未決定のアレルが存在するという証拠にすぎない。個体が主にホモ接合であり座位が主に二形成である集団の場合、顕性および共顕性マーカーは同じ価値であり得る。集団がよりヘテロ接合で複対立になるにつれて、共顕性マーカーは顕性マーカーよりも遺伝子型についてより情報価値が高くなることが多い。
【0094】
『動作可能に連結された』または『機能的に連結された』は、好ましくは、一方の機能が他方に影響されるような単一核酸断片上の核酸配列同士の結びつきを意味する。例えば、調節DNA配列は、当該調節DNA配列がコードDNAの発現に影響する(すなわち、コード配列または機能的RNAがプロモーターの転写制御下にある)ように2つの配列が位置している場合、RNAまたはポリペプチドをコードするDNA配列と『動作可能に連結された』または『機能的に連結された』ものと言える。コード配列はセンスまたはアンチセンスの無機で調節配列と動作可能に連結され得る。2つの核酸分子は、単一の連続した核酸分子の一部であってもよいし、隣接していてもよい。例えば、プロモーターは、当該プロモーターが細胞での目標遺伝子の転写を調節または媒介する場合、目標遺伝子に動作可能に連結される。
【0095】
『表現型』という用語は、遺伝子発現により影響され得る細胞または生物の検出可能な特徴を意味する。
【0096】
『集団』という用語は、共通親起源をともにする生物の遺伝的に不均一な集合を意味する。
【0097】
『プロモーター』は、遺伝学的には、核酸の転写を指示する核酸制御配列と解釈される。誘導性プロモーターは、遺伝学的には、特定の刺激に反応して動作可能に連結された遺伝子の転写を媒介するプロモーターと解釈される。プロモーターは、ポリメラーゼII型プロモーターの場合のTATAエレメントなどの必須核酸配列を転写開始点付近に含み得る。プロモーターは、任意で、転写開始点から数千塩基対程度に位置し得る遠位エンハンサーまたはリプレッサーのエレメントを含み得る。
【0098】
『量的形質遺伝子座』(Quantitative trait locus、QTL)は、表現型の発現度に影響するアレルをコードする染色体位置である。
【0099】
本明細書で用いられる『転写可能核酸分子』は、RNA分子へと転写される能力を有する任意の核酸分子を指す。翻訳されてタンパク質産物として発現する機能的なmRNAへと転写可能核酸分子が転写されるように細胞内にコンストラクトを導入するための方法は既知である。コンストラクトは、目標である特定RNA分子の翻訳を阻害するために、アンチセンスRNA分子を発現する能力を有するように構成されてもよい。本開示の実施のために、コンストラクトおよび宿主細胞を調製および使用するための従来の組成物および方法は当業者にとって周知である[SambrookとRussel、2006;Ausubel等;SambrookとRussel、2001;ElhaiとWolk]。
【0100】
『転写開始点』または『開始点』は、転写配列の一部であるヌクレオチドを囲む位置であり、+1位とも定義される。この点に対して、遺伝子の全ての他の配列およびその制御領域が番号付けされ得る。下流の配列(すなわち、3’方向におけるさらなるタンパク質をコードする配列)は正数で表記でき、(5’方向における制御領域の大部分である)上流の配列は負数で表記できる。
【0101】
『形質転換』という用語は、遺伝的に安定な遺伝質を結果として生じさせる宿主細胞のゲノムへの核酸断片の導入を指す。形質転換核酸断片を含む宿主細胞は、『遺伝子導入』細胞と呼ばれ、遺伝子導入細胞を含む生物は、『遺伝子導入生物』と呼ばれる。
【0102】
『形質転換』、『遺伝子導入』、および、『組み換え』は、異種核酸分子が導入されている植物などの宿主細胞または生物を指す。核酸分子は、本技術分野で一般的に知られているようにゲノムへと安定的に組み込まれ得る。PCRの既知の方法は、これらに限定されるわけではないものの、ペアードプライマー、ネステッドプライマー、単一の特異的プライマー、縮重プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクター特異的プライマー、部分ミスマッチプライマーなどを含む。『非形質転換』という用語は、形質転換処理を経ていない通常の細胞を指す。
【0103】
『野生型』は、いかなる既知の変異も有しない天然でみられる、ウイルスもしくは生物、または、それらの構成成分のいずれかを指す。
【0104】
いくつかの実施形態では、本開示のある実施形態を記載しおよび権利保護を請求するために用いられる、成分、分子量などの性質、反応条件などの量を表す数は、『約』という用語で時には修飾されたものとして解釈されるべきである。いくつかの実施形態では、『約』という用語は、値を求めるために採用される装置または方法についての平均の標準偏差を含む値を示すために用いられる。いくつかの実施形態では、明細書および添付の特許請求の範囲で規定される数値パラメーターは、特定の実施形態で得ようとする所望の性質に依存して変動し得る概数である。いくつかの実施形態では、数値パラメーターは、報告された有効数字の数を鑑み通常の丸め手法を適用して解釈されるべきである。本開示のいくつかの実施形態の広い範囲を規定する数値範囲およびパラメーターが概数であるにもかかわらず、特定の実施例に規定される数値は実施できる限り正確に報告される。本開示のいくつかの実施形態で提示される数値は、それらのそれぞれの試験手段でみられる標準偏差に必然的に由来するある程度の誤差を含んでもよい。本明細書での値の範囲の記載は、当該範囲内に収まる別個の各値を個々に参照する簡潔な方法としての役割をはたすことを意図するにすぎない。本明細書に別段の記載のない限り、個々の値のそれぞれが、本明細書で個別に記載されているかのごとく、本明細書に援用される。
【0105】
ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列同一性百分率(%)は、2つの配列をアライメントときの基準配列と比較して候補配列でのヌクレオチドまたはアミノ酸残基と同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸の百分率と解釈される。百分率での同一性を求めるために、配列同士がアライメントされ、必要であれば、最大の百分率での配列同一性を実現するためにギャップが導入される。百分率での同一性を求めるための配列アライメント手順は当業者にとって周知である。BLAST、BLAST2、ALIGN2、または、Megalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの、公表されているコンピューターソフトウェアが配列をアライメントするために用いられることが多い。当業者であれば、比較する配列の全長にわたる最大アライメントを実現するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定できる。配列同士がアライメントされるとき、所与の配列Bへの、所与の配列Bとの、または、所与の配列Bに対する、所与の配列Aの、百分率での配列同一性(これは、代わりに、所与の配列Bへ、所与の配列Bと、または、所与の配列Bに対して、百分率でのある配列同一性を有するまたは含む所与の配列Aとも表現できる)は、百分率での配列同一性=X/Y×100(ただし、Xは、配列アライメントプログラムのまたはアルゴリズムのAおよびBのアライメントにより同一一致として点数化される残基の数、Yは、Bにおける残基の合計数)として計算できる。配列Aの長さが配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの百分率での配列同一性は、Aに対するBの百分率での配列同一性と等しくない。
【0106】
いくつかの実施形態では、特定の実施形態を記載する文脈で(特に、後述の請求項のいくつかの文脈で)用いられる単数の表記は、特記のない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈できる。請求項で『含む』という語またはその他の開放的表現とともに用いられる場合、特記のない限り、単数の表記は『1つ以上』を示す。
【0107】
いくつかの実施形態では、請求項をはじめ、本明細書で用いられる、『または』、『もしくは』という用語は、選択肢のみを指すことが明示的に示されるか選択肢が相互に排他的であるかでない限り、『および/または』を意味して用いられる。
【0108】
『含む』、『有する』、および、『含む』という用語は、開放的な連結動詞である。任意の形態または時制のこれらの動詞の1つ以上(『含む』、『含んでいる』、『有する』、『有している』、『含む』、または、『含んでいる』)も、開放的である。例えば、1つ以上の工程を『含む』、『有する』、または、『含む』いずれの方法も、これらの1つ以上の工程のみを持つことに限定されず、他の列記されていない工程も包含し得る。同様に、1つ以上の特徴を『含む』、『有する』、または、『含む』いずれの組成物も、これらの1つ以上の特徴のみを持つことに限定されず、他の列記されていない特徴も包含し得る。
【0109】
本明細書の記載の全ての方法は、本明細書に別段の記載があるか別段に文脈と明白に矛盾するかでない限り、任意の適切な順番で行うことができる。本明細書のいくつかの実施形態についてもうけられたあらゆる例示または例示的表現(例えば、『など』)の使用は、本開示をより明らかにすることのみを意図するものであり、特許請求の範囲に別段に記載した本開示の権利範囲に制限を設けるものではない。本明細書のいかなる表現も、本開示の実施に必須な、特許請求の範囲に未記載の要素と解釈されるべきではない。
【0110】
本明細書に開示されている本開示の選択的要素または実施形態の集合分けは、制限と解釈されるべきではない。各集合要素は、個別に、または、集合の他の要素もしくは本明細書でみられる他の要素と組み合わせて、参照され権利を請求するものであり得る。ある集合の1つ以上の要素が、便宜性または特許性を理由に、集合に加入され、または、集合から削除され得る。こうした加入または削除が起きた場合、本明細書は修正されたとおりの集合を含むものとみなされるので、添付の特許請求の範囲で用いられる全てのマーカッシュグループの記載要件を充足する。
【0111】
本出願で引用した、刊行物、特許出願、および、他の参考文献のすべてが、個々の刊行物、特許出願、および、他の参考文献のそれぞれが具体的かつ個々に全ての面でその全体について参照により援用されると示されたとした場合と同じ程度で、全ての面でそれらの全体について参照により援用される。本明細書での参考文献の引用は、それらが本開示に対する先行技術であることを自白するものと解釈されるべきではない。
【0112】
本開示を詳細に記載してきたが、本明細書に開示および権利請求される組成物および方法の全てが本開示を鑑み過度の試行錯誤なく作成および実行可能であることは明らかである。本開示の組成物および方法は好ましい実施形態に関して記載されているが、本発明の概念、趣旨、および、範囲から逸脱することなく、組成物および方法へ、ならびに、本明細書に記載の方法の工程または工程の順番に、変化が適用されてもよいことは、当業者にとって明らかである。より具体的には、化学的かつ生理学的に関連したある剤が、同じまたは同様の結果を達成しつつ、本明細書に記載の剤に置換されてもよいことは明らかである。こうした当業者にとって明らかな類似置換および変形の全てが、添付の特許請求の範囲に定義されるような本発明の趣旨、範囲、および、概念内にあるとみなされる。さらに、本開示の全ての例示は非限定的な例示として提示されたものであることを理解されたい。
【0113】
(実施例)
以下の非限定的な実施例は本開示をさらに詳細に説明するために設けられる。後述の実施例に開示された技術が発明者等が本開示の実施において良好に機能することをみつけた手法を代表するものであり、その実施の態様の例を構成するものと解釈できることは、当業者にとって明らかなはずである。しかし、当業者にとって、本開示を鑑み、開示された特定の実施形態において多くの変更が可能であり、本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく同じまたは同様の結果が依然として得られることは明らかである。
【0114】
(実施例1:プラスミド構築)
全てのPCR反応は、Integrated DNA technologiesにより合成されたプライマーにより、Q5(登録商標)Hot Start High-Fidelity 2×Master Mix (New England Biolabs)を用いて、行われた(構築に用いられたプライマーを表1に示す)。Hifi DNAアセンブリはNEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assembly Master Mixにより、Q5変異導入はNEB Q5(登録商標)Site-Directed Mutagenesis Kitにより、また、Infusion クローニングはTakara In-Fusion(登録商標)HD EcoDry Cloning kitにより、製造者の説明書に従い、行われた。全ての構築されたプラスミドは、製造者の説明書に従い、NEB 5-alpha F’I E. coliコンピテント細胞に形質転換された。形質転換体は、抗菌マーカーとして50μg/mLのカナマイシンを含有するLBアガープレートを用いて選抜され、プレートは37℃で一晩インキュベートされた。正しいプラスミドコンストラクトを確認するためにコロニーPCRが行われ、配列確認はMCLAB DNA Sequencingにより行われた。
表1:本実験でのプラスミド構築に用いられたプライマー
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0115】
(実施例2:BHET加水分解産物の分析)
振盪フラスコ実験が、20mMのグルコース(Fisher Scientific)および5mMのビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)(Fisher Scientific)が添加された、33.9g/Lのリン酸二ナトリウム(無水)、15.0g/Lのリン酸一カリウム、2.5g/Lの塩化ナトリウム、5.0g/Lの塩化アンモニウム、4mMの硫酸マグネシウム、36μMの硫酸鉄(II)、200μM塩化カルシウムを含む、M9最小培地(Fisher Scientific)を用いて行われた。抗生物質を添加したLB培地での菌株を一晩培養したものが回収され、M9培地で洗われた。250mLフラスコに25mLの新鮮な培養液が1.0のOD600初期値で調製され、振盪フラスコが225rpmで振盪しながら30℃でインキュベートされた。全ての振盪フラスコ実験は3回反復して行われた。BHETおよびテレフタル酸(TPA)のろ過標準溶液の濃度は、Eclipse Plus C18 column(4.6×100mm, 3.5μm)(Agilent、米国)を用いたAgilent 1100 systemによる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定された。アセトニトリル(C)および0.5%ギ酸(D)が移動相として0.5ml/分の流速および4000.00psiの最大圧力で用いられたが、本方法のパラメーターを表2に示す。化合物はダイオードアレイ検出器(diode array detector、DAD)および蛍光検出器(fluorescence detector、FLD)により検出された。装置の制御、データ分析、および、データ処理の全てが、Agilent OpenLAB control Panel softwareにより行われた。化合物は標準の保持時間に対する保持時間に基づき同定され、濃度は前記ソフトにより各サンプルについて生成された検量線に基づき計算された。HPLC分析は、0、6、12、24、36、および、48時間の間隔で行われた。培養物の増殖率は分光光度計(GENESYS 30、Thermo Scientific、米国)により各時点でのOD600値を測定することにより求められた。
表2:20分のランについてのHPLC溶媒勾配
【表2】
【0116】
(実施例3:Erwinia aphidicola LJJL-01におけるCRISPR-Cas9に基づく遺伝子欠失)
Erwinia aphidicola LJJL01遺伝子欠失は、CRISPR-Cas9ゲノム編集システムを用いて行われた。本実験で用いられた全てのエレクトロコンピテントコンピテント細胞は、0.3Mのスクロースを用いて調製された。抗生物質を含む5mLのLBを一晩培養したものが、0.1のOD600値を有する翌日の新鮮なLB培養液を作るために用いられた。λレッドプラスミド(当研修室で改変)およびpX2-Cas9プラスミド(Addgene:カタログ番号85811)を含む菌株が、10mMのアラビノースとともにインキュベートされ、培養液は0.4のOD600値に到達するまで増殖された。コンピテント細胞はFranden等(2018)に記載のように調製された。5μLのプラスミドが冷やされた電気穿孔キュベット内の50μLのエレクトロコンピテント細胞に形質転換され、Eppendorf Electroporator 2510を用いて1600Vで電気穿孔された。500マイクロリットルのSOCIAL培地が、3時間にわたり225rpmで震盪しつつ30℃で回復させるために用いられた。形質転換チューブは14000rpmで1分間遠心分離され、細胞沈殿物は適切な抗生物質を含む1mLのLBブロスに溶解された。200μLの混合物が適切な抗生物質を含むLBアガー選抜プレートに加えられ、30℃で一晩インキュベートされた。
【0117】
(実施例4:E. aphidicola LJJL01(2752379084)におけるムコネートシクロイソメラーゼ遺伝子の欠失)
上述のCRISPR-Cas9に基づく方法を採用して当該遺伝子を欠失させた。『TCTGGCGCAGTTGATATGTA』のスペーサー配列を持つgRNA(テトラサイクリン耐性を有する)がQ5変異導入を用いて構築されたが、SS9 gRNAプラスミドが鋳型として用いられた(Addgeneカタログ番号71656)。当該遺伝子を欠失させるための配列確認済みgRNAおよび修復DNA(FASTAファイルに添付)が構築に用いられた。遺伝子ノックアウトコロニーは10mg/mLのテトラサイクリン含有LBプレート上で同定された。欠失済みコロニーは、oLJLJ038:ACGAATTCGAGCTCGGTACCCGGGGATCCTATATGTGCCGGACGCCG(配列番号47)とoLJLJ041:CGGCCAGTGCCAAGCTTGCATGCCTGCAGGTTGGCAGGCCGATGCCAAG(配列番号48)のプライマーによる、診断的コロニーPCRにより確認された。CRISPR-Cas9ゲノム編集に用いられたプラスミドは抗生物質を含まないLB培地上で菌株を継代することによりキュアリング処理され、ムコネートシクロイソメラーゼを欠失しているクリーンな(プラスミドを含まない)E. aphidicola LJJL01のグリセロールストックが調製され、-80℃の冷凍庫に保管された。
【0118】
gRNAプラスミド配列は後述の配列表の配列番号1に示す。修復DNAは後述の配列表の配列番号2に示す。
【0119】
P. putida KT2440におけるpcaIJ遺伝子の欠失:当該遺伝子はSacBに基づく遺伝子欠失法[Jha等、2018]を介してpK18mobsacBに基づくプラスミドを用いて欠失された。
【0120】
(実施例5:廃棄茶、コーヒー、コーンストーバー、および、PETのOHD処理)
市販の緑茶および紅茶の葉またはコーヒー200グラムが店舗(IG、カーボンデール、イリノイ州、米国)から購入された。その後、葉が水で完全に洗浄された後に、乾燥葉またはコーヒー5グラムに対して1.0リットルの沸騰水が出てくる水が透明になるまで注がれ、得られた固形の廃棄茶またはコーヒーは摺り下ろし処理に掛けられた。1.0%の乾燥固形分で水中で葉を摺り下ろすことにより2リットルのスラリーが調製された。コーンストーバー、または、コーンストーバーとプラスチックとの混合条件については、農場から得られたコーンストーバー(カーボンデール、イリノイ州)が上述のような摺り下ろし処理に掛けられた。GoodFellow(米国)から入手のポリエチレンテレフタラート粉末(結晶化度合>45%)が95%(w/w)のコーンストーバーと混合され、コーンストーバー-プラスチックOHDミックスが得られた。OHD実験は、260℃、2000psi、0.3:1.0の酸素:炭素の質量比、反応器内滞留時間22秒で、行われた。3回の反復が行われ、それぞれ約900mLが集められ、生成物はMillipore ATTPポリフィルターを用いて0.8ミクロンまで濾過された後にまとめられた。全てのサンプルは同じ条件の組み合わせの元で作られ、マスバランスクロージャは行われなかった。変換率はおよそ80-90%であり、未変換固形分は濾過して除かれた。木炭も固形炭素も産生されなかった。微生物試験のために、OHDのpHはNaOHを添加することにより7.0に調節され、培地を滅菌するためにサンプルは0.2ミクロンフィルターで濾過された。
【0121】
(実施例6:OHD生成物の同定と定量)
OHDに含まれる個々の化合物の同定と定量は、Anderson博士の研究室で開発された一連の方法と、100%のマスクロージャを実現するための熱化学的廃棄水特性分析に適合された分析方法とに基づき行われた。簡単に説明すると、コーンストーバーOHDの有機生成物が、生のリカーから酢酸エチルにより抽出され、酸性酸素官能基のメチル化のための水酸化テトラメチルアンモニウムを用いたインサイツ誘導体化により分析された(Sanders、2017)。OHD生成物のGC-MS分析は5975C inert XL MS detector and a 7683B series injectorが取り付けられたAgilent Technologies 7890A GC systemで行われた。GCシステムは、60 m Zebron ZB-1701 column(内径0.25mm、フィルム厚0.25μm)を含む。分析は定流モードで1ml/分に制御されたHeキャリアガス流を用いて行われ、GCオーブンは、初期温度40℃で4時間保持、4℃/分で280℃まで昇温し15分保持という、温度にプログラムされた。MSおよび移送ラインはそれぞれ150℃および250℃にプログラムされる。MSは全スペクトルを記録するためにm/z10から400の範囲を走査した。データ分析はAgilent softwareを用いて行われた。同定は、Wiley and National Institute of Standards and Technology(NIST)のマススペクトルライブラリとのスペクトルの比較、文献データ、標準との比較、および、解釈に基づいて行われた。本方法が成功裏に用いられ、茎の残渣のOHDから約35の有機化合物が同定および定量された。全ての分析は3回の反復実験で行われ、全ての定量標準曲線は基準濃度の5つ以上の点で≧0.995のR値に維持された。個々の分析等級標準が検量線を構築するために用いられ、選択内部標準がクロマトグラフィーおよび検出器応答のシフトを調節するために加えられる。
【0122】
(実施例7:微生物によるOHD基質の増殖率および変換の監視)
96ウェルプレートおよび50mL浸透フラスコの増殖率を評価するために、上述のように調製され1%(v/v)FPF含有M9培地に再懸濁された細胞がOD600が0.2となるまで播種され、1%(v/v)のFPF(pH7)が添加された50mLの改変M9培地を含む50mLのバッフル付きフラスコを用いて実験が行われた。培養液は、225rpmで浸透しながら30℃でインキュベートされた。2mLのサンプルが定期的に集められ、HPLC分析と、Beckman DU640 spectrophotometer(Beckman Coulter、ブレア、カリフォルニア州)またはMPlex plate reader(TECAN、米国)を用いたOD600増殖率の測定に掛けられた。上述のHPLC法(第2章)が微生物変換中のOHD内の化合物を検出するために採用された。我々はβ-ケトアジペート生成物をJhaとその共同研究者等により以前に開発されたバイオセンサ[Jha等、2018]により監視した。
【0123】
(実施例8:微生物OHDでの増殖率の監視)
微生物OHDを増殖培地として用いることの潜在能力を評価するために、我々はP. putida KT2440およびE. aphidicola LJJL01の細菌細胞を1LのLB培地上、30℃、225rpm、一晩の条件で増殖させた。細胞は、遠心分離(10分、4000rmp)で集められ、実施例5に記載のOHD処理に掛けられた。次に、我々は異なる濃度の微生物OHDを用いて、補充M9培地の存在/非存在下でP. putida KT2440およびE. aphidicola LJJL01の増殖を試験した。96ウェルプレートに200ミリリットルの培地が、菌株(OD600=1)を播種され、増殖率を監視するためにMplex plate reader(TECAN、米国)を用いながら、最大の振盪、30℃で、インキュベートされた。
【0124】
(実施例9:OHDからムコネートを産生するための改変E. aphidicola LJJL01)
cis,cis-ムコネートの生物学的産生が改変微生物を経た精製糖またはリグニン由来芳香族化合物をともない実証された。本質的には、CatA/B欠失はムコネートの蓄積を可能とする[Johnson等、2019;Bentley等、2020]。また、異種遺伝子の導入によりムコネートを産生するために微生物系が改変されてきた[Leavitt等、2017]。
【0125】
本実施例は、OHD基質(未精製不均一化合物)からムコネートを産生するためのE. aphidicola LJJL01の利用を初めて報告するものである。有力な遺伝子2752379084(配列所与、P. putidaのムコネートシクロイソメラーゼであるCatAと僅か56の類似性[FASTA配列を参照])。我々はノックアウトを行い、芳香族分子からcis,cis-ムコネートを産生するための菌株を開発した(図1)。カテコールからのcis-cisムコネートの産生が実証された。OHDプラスチック&バイオマスからのムコネートの産生の有力な経路を記す(図1)。
【0126】
E. aphidicola LJJL01がほとんどの有毒化学物質に対して高い耐性を示すことを考えると、改変生物は、OHD基質または芳香族化合物からのムコネートなどの高価値バイオ製品の開発または根本的な枠組みのひとつとして機能する。
【0127】
図2は、不均一なOHD生成物(芳香族、糖、酸)を濾過して単一生成物(すなわち、β-ケトアジペート)を得る(OHD芳香族からの収量が約90%)ための、開発された、OHDと改変単独培養の統合処理を示す。
【0128】
(実施例10:プラスチックを選択的に分解するための改変微生物)
プラスチックを分解して元のモノマーとするために微生物が改変されてきた。しかし、基質、中間生成物、および、生成物毒性のため、こうした努力は妨げられる。さらに、プラスチック分解酵素の分泌の制限や分解の選択性が効率的な細胞工場の開発の重要なハードルである[Jayakody&Dissanayake、2021]。
【0129】
フランスの企業であるCarboisは、高温(80℃)でプラスチックを分解する、効率的な酵素である、葉枝堆肥クチナーゼ(LCC)を作成した[Tournier等、2020]。
【0130】
以前のチームは、I. sakainesis分泌ペプチドを用いてPETaseおよびMHETaseをスクリーニングすることによりPETを選択的に分解するP. putida KT2440を開発した。
【0131】
我々はPETの選択的な分解についてP. putidaに対してE. aphidicola LJJL01がより良好なプラットフォーム生物であることを実証した。例えば、BHETは30℃でコドン最適化改変LCC酵素(配列参照)およびMHETase酵素を発現することにより100%選択的に分解できる(図3-6)。
【0132】
我々はI. sakaiensisに由来する分泌シグナルペプチドを用いてプラスチック分解酵素を分泌するE. aphidicola LJJL01を初めて開発した(図3および7)。我々は、酵素を効率的に分泌することと、効率的に分解することとを、同時に実現した(図4)。
【0133】
我々はBHETを分解するLCCとMHETaseとの相乗効果を発見した(図6)。
【0134】
我々はPETおよび他のプラスチックを効率的に分解する全細胞生体触媒(E. aphidicola LJJL01)を開発した。
【0135】
PET分解酵素に加えて、我々はE. aphidicola LJJL01において真菌由来ポリウレタン分解酵素を発現させ分泌させることに成功した(図7)。
【0136】
LCCおよびMHETaseのプラスミドマップを図8に示し、対応するpBLT-2:Ptac-LCC_MHETaseプラスミド遺伝子配列を配列番号7に示す。
【0137】
新規の合成LCC発現カセット配列を配列番号8に示す。
【0138】
E. aphidicola LJJL01デザインでの真菌PU分解遺伝子の発現のプラスミドマップを図9に示し、対応するACE-540972プラスミド遺伝子配列を配列番号9に示す。
【0139】
E. aphidicola LJJL01デザインでの真菌PU分解遺伝子の発現の追加のプラスミドマップを図10に示し、対応するLAP_117292プラスミド遺伝子配列を配列番号10に示す。
【0140】
図11は、化学物質(ジオール/酸)の外部供給の化学触媒を用いない、開発された、PETのインサイチュ分解、および、元のプラスチックモノマー(すなわち、TPA)を回収するための統合されたOHDおよび改変微生物を示す。
【0141】
(実施例11:PETをリサイクルまたはアップサイクルするためのハイブリッドOHD微生物処理)
PETの高結晶化度を考えると、市販のPETから直接的にモノマーを回収するために完全に生物学的な処理を実装することは困難である。モノマーを回収するために熱分解処理(高温で高価な処理)および解体処理(高価な触媒/強すぎる溶媒)が開発されてきた[Bhaskar等、2004;Shojaei等、2020;Walker等,2020]。また、数々の研究者がこうしたモノマーを利用しプラスチックのアップサイクルを可能とする微生物を開発した[Tiso等、2020;Kenny等、2008]。
【0142】
我々は高結晶質PET(>45%)をバイオマスと混合することにより可溶化するためのOHD処理を開発した。したがって、この新規の処理は現実世界の廃棄物(ミックス廃棄ストリーム)に適用できる。
【0143】
我々はP. putidaおよびE. aphidicola LJJL01の両方がPETコーンストーバーOHD基質上で増殖できることを実証した。また、PET分解酵素を内部に持つ改変されたE. aphidicola LJJL01またはP. putida KT2440を用いる場合、それらはOHD内のBHETおよびMHETをTPAに選択的に変換できる(図12および13)(PETの、OHD微生物ハイブリッド再循環戦略を可能とする)。回収されたTPAは種々の化学物質にアップサイクルでき、実際、ムコネートおよびPDCにアップサイクルできる(図14)。いくつかの他のアップサイクル経路がE. aphidicola LJJL01において開発できる。
【0144】
図15はPETの脱重合のための選択的に設計された微生物を示す。
【0145】
(実施例12:菌株構築)
インビボ実験のために、HiFi DNAアセンブリ法を用いてpBLT2-LCC-Mle046プラスミド(図20、配列番号11)が構築された。このプラスミドはその後にヒートショック法を用いてE. coli DH5α-Iq菌株に形質転換された。コロニーは50μg/mLのカナマイシンを添加されたLBアガープレートを用いて選抜された。コロニーは、コロニーPCRによりスクリーニングされ、ゲル電気泳動を用いて可視化された。プラスミドはその後抽出され、配列が確認された。後述の表に示すプライマーを用いて131位のグリシンがセリンに置き換えられたpBLT2-LCC-Mle046(変異体)(図21、配列番号12および配列番号13)を作るためにQ5変異導入が行われた。形質転換体は50μg/mLのカナマイシンを添加されたLBアガープレートを用いて選抜され、配列が確認された。正しいプラスミドが電気穿孔法を用いてE. aphidicola LJJL01に形質転換され、選抜はLB-カナマイシンプレートで行われた。
表3:オリゴ(重複-黒、青-PCR特異的)-5’-3’
【表3】
【0146】
(実施例13:浸透フラスコ実験)
BHET分解を定量するための震盪フラスコ実験は、10g/Lのグルコース、塩、1mMのビス(2-ヒドロキシエチルテレフタラート(BHET)、50μg/mLのカナマイシン、および、1μMのIPTGが添加されたpH8の2X M9最小培地を用いて行われた。本試験に用いられた菌株は、E. aphidicola-pBLT2、E. aphidicola-pBLT2-LCC、E. aphidicola-pBLT2-LCC-Mle046、および、E. aphidicola-pBLT2-LCC-Mle046(変異体)であった。抗生物質を添加したLB培地での菌株を一晩培養したものが回収され、M9培地で洗われた。250mLフラスコに25mLの新鮮な培養液が1.0のOD600初期値で調製され、振盪フラスコが225rpmで振盪しながら30℃でインキュベートされた。全ての振盪フラスコ実験は2回反復して行われた。変換は、PDA検出器に接続されたShimadzu LC-2050C 3Dを用いてHPLC分析により監視された。イソクラティック溶離プログラムが移動相としての0.5%ギ酸(水中)およびアセトニトリル(80:20)とともに用いられた。合計ラン時間は10分であった。化合物は標準の保持時間に対する保持時間に基づき同定された。定量は2XM9で調製された標準溶液を用いて各分析物について生成されたマトリクスマッチ検量線に基づき行われた。クロマトグラムは、LabSolutions DB softwareを用いて分析された。HPLC分析は、0、24、48、および、72時間の間隔で行われた。培養物の増殖率はTECAN Sunrise plate reader - Infinite M Flexにより求められた。
【0147】
震盪フラスコの結果は、反復データの平均値として、平均値の標準誤差(SEM)とともに、表される。多重比較は一元配置分散分析(ANOVA)とその後のテューキーの正直有意差事後検定を用いて行われた(https://astatsa.com/OneWay_Anova_with_TukeyHSD/)。
【0148】
精製されたMle046変異体は記録するほどの高濃度ではなかった。そのため、インビトロアッセイは完遂されず、Mle046(変異体)の生化学的性質を知ることはできなかった。
【0149】
(実施例13:結果と考察、BHET分解におけるMle046およびその変異体とLCCとの相乗効果のインビボ調査)
図16では、EA-LCC-Mle046はEA-LCCまたは他の対照と比べてBHETに対して相乗効果を示す。実際、TPAはMle046またはその変異体の存在下でのみ検出された。とりわけ、EA-LCC-Mle046(変異体)はEA-LCC-Mle046と比べてBHETから2倍のMHET(72時間後で約0.5mM対0.25mM)をもたらすが、TPAの収率は改善されたかった。この結果は新たに開発された変異体がPETase活性を有することを示唆している。LCCおよびMle046の活性の両方がpH8で至適であることを考えると、pH8でインキュベートされた菌株はpH7に比べてより高いBHETの変換率を示す。注目すべきことに、宿主菌株であるE. aphidicola LJJL01はpH7およびpH8の両方で良好に増殖できるので、それによりpH8でのこの効率的なBHETの変換を可能とする。我々はインビトロ試験を用いて選択的プラスチック分解における二重酵素系(I. sakaiensis由来のPETaseおよびMHETase)の相乗的活性を実証した。我々の知る限り、これは周囲温度でのインビボ試験によるBHET分解におけるLCCおよびMle046の相乗的活性を実証する最初の報告である。注目すべきことに、Mrigwaniおよび共同研究者が60℃でのLCCと熱安定性のThermus thermophilusのカルボキシルエステラーゼとの相乗効果を実証している
【0150】
図17では、pH7でのサンプルはpH8でのサンプルに対してpHの差により約33%だけTPAの変換率が増加することを示す。
【0151】
(実施例14:MHET分解におけるMle046およびその変異体とLCCとの相乗効果の調査)
図18では、MHET分解における酵素の効率が示される。4種類のバリアントの間で統計的有意差(0.05>p)は存在しない。図19では、TPA酸性における酵素の効率が実証されるが、ここで、EA-LCC-Mle046(野生型)が他の3種類のバリアントよりもずっと良好な変換収率を有し統計的有意差(0.05>p)を示すことは明らかである。
【0152】
(実施例15:実施例12-14の考察)
我々は、PETの選択的分解についてのLCCとのMle046の相乗的活性、および、触媒領域を変異させることにより(すなわち、PETase活性を導入することにより)Mle046の基質特異性を調節する手法の設計を明らかにした。今後、X結晶解析を介したより多くの酵素特性解析、生化学的性質を決定するためのインビトロアッセイ、および、分子動力学試験は、この酵素を改善するより良好な変異を見つけ、我らの世界をより良くするために役立つ循環的PET経済に向けて努力することを可能とする。
【0153】
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【0154】
[付記]
[付記1]
少なくとも1つの異種PETase様酵素および少なくとも1つの異種MHETase様酵素をコードし発現する異種DNAを含む組み換え細菌細胞であって、
前記PETase様酵素は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を分解してモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸(MHET)とするための酵素活性とインフレームで接続された分泌シグナルペプチドを有し、かつ、前記PETase様酵素は、配列番号5を有する葉堆肥クチナーゼ(Leaf-Compost Cutinase、LCC)酵素または配列番号5と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアントを含み、
前記MHETase様酵素は、MHETを分解してエチレングリコールおよびテレフタル酸とするための酵素活性とインフレームで接続された分泌シグナルペプチドを有し、かつ、前記MHETase様酵素は、配列番号6を有するポリペプチド、配列番号6と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、配列番号13を有するMle046酵素、配列番号13と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、配列番号14を有するMle046変異酵素、配列番号14と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、または、これらの任意の組み合わせを含む、
組み換え細菌細胞。
【0155】
[付記2]
前記組み換え細菌細胞は、Pseudomonas putidaまたはErwinia aphidicolaである、付記1に記載の組み換え細菌細胞。
【0156】
[付記3]
前記PETase様酵素および/または前記MHETase様酵素は、約30℃から約75℃の範囲の温度でおよび/または約6から約9の範囲のpHで、熱安定性かつ酵素的に活性である、付記1または2に記載の組み換え細菌細胞。
【0157】
[付記4]
前記PETase様酵素および/または前記MHETase様酵素は誘導性プロモーターから発現される、付記1から3のいずれか1つに記載の組み換え細菌細胞。
【0158】
[付記5]
前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素が一つのプラスミドによりコードされかつ単一プロモーターから共発現される、付記1から4のいずれか1つに記載の組み換え細菌細胞。
【0159】
[付記6]
前記組み換え細菌細胞は、そのゲノム中に、配列番号4を有するムコネートシクロイソメラーゼ酵素活性の発現をなくす変異であって、少なくとも1つの核酸またはそれ以上の欠失および/または挿入である変異を含む、付記1から5のいずれか1つに記載の組み換え細菌細胞。
【0160】
[付記7]
前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素は、30℃で酵素的に活性であり、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を分解してエチレングリコールおよびテレフタル酸とする、付記1から6のいずれか1つに記載の組み換え細菌細胞。
【0161】
[付記8]
前記細菌細胞は、酸化的水熱溶解(oxidative hydrothermal dissolution、OHD)処理で前処理されたポリエチレンテレフタラート(PET)と共混合されたバイオマスを含む基質上で増殖可能である、付記1から7のいずれか1つに記載の組み換え細菌細胞。
【0162】
[付記9]
前記バイオマスは、緑茶廃棄物、紅茶廃棄物、使用済み緑茶、使用済み紅茶、コーンストーバー、および/または、コーヒーを入れるときの廃棄物を含み、および/または、
前記基質は、前記バイオマスおよび前記PETを、PET:バイオマスで1:99重量%から50:50重量%の重量比で含む、
付記8に記載の組み換え細菌細胞。
【0163】
[付記10]
プラスチック材料および/またはバイオマス廃棄物の生分解のための酵素組成物を製造するための方法であって、
付記1から9のいずれか1つに記載の組み換え細菌細胞を液体培地で培養することてあって、前記組み換え細菌細胞は前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素を前記液体培地に分泌する、培養することと、
前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素を含む前記液体培地を集めることと、
を含む、方法。
【0164】
[付記11]
細菌培養液を遠心分離し、上清および沈殿物をつくることと、
前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素を含む前記上清を集めることと、
をさらに含む、付記10に記載の方法。
【0165】
[付記12]
PET(ポリエチレンテレフタラート)またはPBAT(ポリ(ブチレンアジペート-コ-テレフタラート))を含むプラスチック材料を分解するための方法であって、
前記プラスチック材料を、付記1から9のいずれか1つに記載の組み換え細菌細胞と、および/または、前記組み換え細菌細胞により産生されたまたは産生可能な酵素組成物であって、少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む酵素組成物と、接触させること、
を含む、方法。
【0166】
[付記13]
前記プラスチック材料を前記組み換え細菌細胞と接触させることに先立ち、前記プラスチック材料をバイオマスと共混合し、100から374℃の範囲の温度、1500から3500psiの範囲の圧力、亜臨海水中、酸素の存在下での、酸化的水熱溶解(oxidative hydrothermal dissolution、OHD)により前記共混合物を処理すること、をさらに含む、付記12に記載の方法。
【0167】
[付記14]
前記バイオマスおよび前記PETはPET:バイオマスで1:99重量%から50:50重量%の重量比で存在する、付記13に記載の方法。
【0168】
[付記15]
前記プラスチック材料は周囲温度かつ約6から約9の範囲のpHで接触させられる、付記13または14に記載の方法。
【0169】
[付記16]
バイオマスをポリマー生成物を合成するための炭素含有基材に変換するための方法であって、100から374℃の範囲の温度、1500から3500psiの範囲の圧力、亜臨海水中、酸素の存在下での、水熱溶解(OHD)処理で、前記バイオマスを処理することと、OHD処理済みの前記バイオマスを、付記1から9のいずれか1つに記載の組み換え細菌細胞と、または、前記組み換え細菌細胞により産生されたまたは産生可能な酵素組成物であって、少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む酵素組成物と、接触させることと、
を含む、方法。
【0170】
[付記17]
前記バイオマスは、茶廃棄物、コーヒー廃棄物、および/または、コーンストーバーを含む、付記16に記載の方法。
【0171】
[付記18]
少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む二重酵素組成物であって、前記組成物は、付記1から9のいずれか1つに記載の組み換え細菌細胞により産生および分泌される、または、前記組み換え細菌細胞により産生可能である、二重酵素組成物。
【0172】
[付記19]
少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む二重酵素組成物であって、
前記PETase様酵素は、配列番号5を有するポリペプチドの少なくとも28位から320位のアミノ酸および/または配列番号5の28位から320位のアミノ酸と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアントまたはこれらの任意の組み合わせを含み、
前記PETase様酵素は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を分解してモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸(MHET)とするための酵素活性を有し、
前記MHETase様酵素は、配列番号6を有するポリペプチドの少なくとも16位から613位のアミノ酸および/もしくは配列番号5の28位から320位のアミノ酸と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアントもしくはこれらの任意の組み合わせ、ならびに/または、配列番号13を含むMle046酵素および/もしくは配列番号13と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、ならびに/または、配列番号14を含む変異Mle046酵素もしくは配列番号14と少なくとも80%の全体的な同一性を有するその機能的バリアントを含み、
前記MHETase様酵素は、MHETを分解してテレフタル酸(TPA)およびエチレングリコール(EG)とするための酵素活性を有する、
二重酵素組成物。
【0173】
[付記20]
少なくとも1つの前記PETase様酵素および/または少なくとも1つの前記MHETase様酵素は、少なくとも1つのシグナルペプチドおよび/または少なくとも1つの精製タグとインフレームで接続されている、付記19に記載の二重酵素組成物。
【0174】
[付記21]
前記PETase様酵素:前記MHETase様酵素のモル比が約1:99から約99:1の範囲である、付記19または20に記載の二重酵素組成物。
【0175】
[付記22]
cis-cisムコネートを産生するための方法であって、テレフタル酸(TPA)を含む基質を組み換え細菌細胞に接触させることを含み、前記組み換え細菌細胞は、そのゲノム中に、配列番号4を有するムコネートシクロイソメラーゼ酵素活性の発現をなくす変異であって、少なくとも1つの核酸またはそれ以上の欠失および/または挿入である変異を含み、前記基質はバイオマス廃棄物および/またはプラスチック材料の分解により産生される、方法。
【0176】
[付記23]
前記分解は、酸化的水熱溶解(oxidative hydrothermal dissolution、OHD)処理および/または前記基質を付記18または19に記載の二重酵素組成物と反応させることを含む、付記22に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【配列表】
2024534505000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの異種PETase様酵素および少なくとも1つの異種MHETase様酵素をコードし発現する異種DNAを含む組み換え細菌細胞であって、
前記PETase様酵素は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を分解してモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸(MHET)とするための酵素活性とインフレームで接続された分泌シグナルペプチドを有し、かつ、前記PETase様酵素は、配列番号5を有する葉堆肥クチナーゼ(Leaf-Compost Cutinase、LCC)酵素または配列番号5と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアントを含み、
前記MHETase様酵素は、MHETを分解してエチレングリコールおよびテレフタル酸とするための酵素活性とインフレームで接続された分泌シグナルペプチドを有し、かつ、前記MHETase様酵素は、配列番号6を有するポリペプチド、配列番号6と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、配列番号13を有するMle046酵素、配列番号13と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、配列番号14を有するMle046変異酵素、配列番号14と少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、または、これらの任意の組み合わせを含む、
組み換え細菌細胞。
【請求項2】
前記組み換え細菌細胞は、Pseudomonas putidaまたはErwinia aphidicolaである、請求項1に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項3】
前記PETase様酵素および/または前記MHETase様酵素は、約30℃から約75℃の範囲の温度でおよび/または約6から約9の範囲のpHで、熱安定性かつ酵素的に活性である、請求項に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項4】
前記PETase様酵素および/または前記MHETase様酵素は誘導性プロモーターから発現される、請求項に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項5】
前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素が一つのプラスミドによりコードされかつ単一プロモーターから共発現される、請求項に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項6】
前記組み換え細菌細胞は、そのゲノム中に、配列番号4を有するムコネートシクロイソメラーゼ酵素活性の発現をなくす変異であって、少なくとも1つの核酸またはそれ以上の欠失および/または挿入である変異を含む、請求項に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項7】
前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素は、30℃で酵素的に活性であり、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を分解してエチレングリコールおよびテレフタル酸とする、請求項に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項8】
前記細菌細胞は、酸化的水熱溶解(oxidative hydrothermal dissolution、OHD)処理で前処理されたポリエチレンテレフタラート(PET)と共混合されたバイオマスを含む基質上で増殖可能である、請求項に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項9】
前記バイオマスは、緑茶廃棄物、紅茶廃棄物、使用済み緑茶、使用済み紅茶、コーンストーバー、および/または、コーヒーを入れるときの廃棄物を含み、および/または、
前記基質は、前記バイオマスおよび前記PETを、PET:バイオマスで1:99重量%から50:50重量%の重量比で含む、
請求項8に記載の組み換え細菌細胞。
【請求項10】
プラスチック材料および/またはバイオマス廃棄物の生分解のための酵素組成物を製造するための方法であって、
請求項に記載の組み換え細菌細胞を液体培地で培養することてあって、前記組み換え細菌細胞は前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素を前記液体培地に分泌する、培養することと、
前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素を含む前記液体培地を集めることと、
を含む、方法。
【請求項11】
細菌培養液を遠心分離し、上清および沈殿物をつくることと、
前記PETase様酵素および前記MHETase様酵素を含む前記上清を集めることと、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
PET(ポリエチレンテレフタラート)またはPBAT(ポリ(ブチレンアジペート-コ-テレフタラート))を含むプラスチック材料を分解するための方法であって、
前記プラスチック材料を、請求項に記載の組み換え細菌細胞と、および/または、前記組み換え細菌細胞により産生されたまたは産生可能な酵素組成物であって、少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む酵素組成物と、接触させること、
を含む、方法。
【請求項13】
前記プラスチック材料を前記組み換え細菌細胞と接触させることに先立ち、前記プラスチック材料をバイオマスと共混合し、100から374℃の範囲の温度、1500から3500psiの範囲の圧力、亜臨海水中、酸素の存在下での、酸化的水熱溶解(oxidative hydrothermal dissolution、OHD)により前記共混合物を処理すること、をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記バイオマスおよび前記PETはPET:バイオマスで1:99重量%から50:50重量%の重量比で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プラスチック材料は周囲温度かつ約6から約9の範囲のpHで接触させられる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
バイオマスをポリマー生成物を合成するための炭素含有基材に変換するための方法であって、100から374℃の範囲の温度、1500から3500psiの範囲の圧力、亜臨海水中、酸素の存在下での、水熱溶解(OHD)処理で、前記バイオマスを処理することと、OHD処理済みの前記バイオマスを、請求項に記載の組み換え細菌細胞と、または、前記組み換え細菌細胞により産生されたまたは産生可能な酵素組成物であって、少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む酵素組成物と、接触させることと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記バイオマスは、茶廃棄物、コーヒー廃棄物、および/または、コーンストーバーを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む二重酵素組成物であって、前記組成物は、請求項に記載の組み換え細菌細胞により産生および分泌される、または、前記組み換え細菌細胞により産生可能である、二重酵素組成物。
【請求項19】
少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む二重酵素組成物であって、
前記PETase様酵素は、配列番号5を有するポリペプチドの少なくとも28位から320位のアミノ酸および/または配列番号5の28位から320位のアミノ酸と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアントまたはこれらの任意の組み合わせを含み、
前記PETase様酵素は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を分解してモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸(MHET)とするための酵素活性を有し、
前記MHETase様酵素は、配列番号6を有するポリペプチドの少なくとも16位から613位のアミノ酸および/もしくは配列番号5の28位から320位のアミノ酸と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアントもしくはこれらの任意の組み合わせ、ならびに/または、配列番号13を含むMle046酵素および/もしくは配列番号13と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、ならびに/または、配列番号14を含む変異Mle046酵素もしくは配列番号14と少なくとも80%の全体的な同一性を有するその機能的バリアントを含み、
前記MHETase様酵素は、MHETを分解してテレフタル酸(TPA)およびエチレングリコール(EG)とするための酵素活性を有する、
二重酵素組成物。
【請求項20】
少なくとも1つの前記PETase様酵素および/または少なくとも1つの前記MHETase様酵素は、少なくとも1つのシグナルペプチドおよび/または少なくとも1つの精製タグとインフレームで接続されている、請求項19に記載の二重酵素組成物。
【請求項21】
前記PETase様酵素:前記MHETase様酵素のモル比が約1:99から約99:1の範囲である、請求項19に記載の二重酵素組成物。
【請求項22】
cis-cisムコネートを産生するための方法であって、テレフタル酸(TPA)を含む基質を組み換え細菌細胞に接触させることを含み、前記組み換え細菌細胞は、そのゲノム中に、配列番号4を有するムコネートシクロイソメラーゼ酵素活性の発現をなくす変異であって、少なくとも1つの核酸またはそれ以上の欠失および/または挿入である変異を含み、前記基質はバイオマス廃棄物および/またはプラスチック材料の分解により産生される、方法。
【請求項23】
前記分解は、酸化的水熱溶解(oxidative hydrothermal dissolution、OHD)処理および/または前記基質を、少なくとも1つのPETase様酵素および少なくとも1つのMHETase様酵素を含む二重酵素組成物と反応させることを含
前記PETase様酵素は、配列番号5を有するポリペプチドの少なくとも28位から320位のアミノ酸および/または配列番号5の28位から320位のアミノ酸と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアントまたはこれらの任意の組み合わせを含み、
前記PETase様酵素は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を分解してモノ-(2-ヒドロキシエチル)テレフタル酸(MHET)とするための酵素活性を有し、
前記MHETase様酵素は、配列番号6を有するポリペプチドの少なくとも16位から613位のアミノ酸および/もしくは配列番号5の28位から320位のアミノ酸と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアントもしくはこれらの任意の組み合わせ、ならびに/または、配列番号13を含むMle046酵素および/もしくは配列番号13と少なくとも80%の全体的な配列同一性を有するその機能的バリアント、ならびに/または、配列番号14を含む変異Mle046酵素もしくは配列番号14と少なくとも80%の全体的な同一性を有するその機能的バリアントを含み、
前記MHETase様酵素は、MHETを分解してテレフタル酸(TPA)およびエチレングリコール(EG)とするための酵素活性を有する、
請求項22に記載の方法。
【国際調査報告】