(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】治療法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240912BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240912BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240912BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20240912BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240912BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20240912BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P37/06
A61P29/00
A61K35/545
A61K48/00
C12N5/0783 ZNA
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517444
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 AU2022051136
(87)【国際公開番号】W WO2023044530
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501249191
【氏名又は名称】モナッシュ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オーイ,ジョシュア・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】エッゲンハイゼン,ピーター・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】モラン,エリク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA06
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4C084ZB081
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4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB63
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA06
4C087NA14
4C087ZB08
4C087ZB11
(57)【要約】
本発明は、Ro60タンパク質、MPOタンパク質及びスミスタンパク質のうちの1つ以上に対する、異常な若しくは不適切な免疫応答により特徴付けられる、自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療するための方法、並びに組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法であって、
自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療を必要とする対象に、細胞表面において結合性タンパク質を発現する制御性T(Treg)細胞の集団を投与して、これにより、自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療するステップを含み、
前記結合性タンパク質が、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ)ドメインを含み、
前記Vαドメインが、配列番号13に示すアミノ酸配列、又は、配列番号13に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
前記Vβドメインが、配列番号16に示すアミノ酸配列、又は、配列番号16に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
前記自己免疫疾患又は炎症性疾患が、
・ Ro60タンパク質;
・ MPOタンパク質;
・ Ro60タンパク質及びMPOタンパク質;
・ スミスタンパク質及びRo60タンパク質;
・ スミスタンパク質及びMPOタンパク質又は
・ スミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質
に対する異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、方法。
【請求項2】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、スミスタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、Ro60タンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、スミスタンパク質に対する及びRo60タンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、MPOタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、Ro60タンパク質に対する及びMPOタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、スミスタンパク質に対する、Ro60タンパク質に対する及びMPOタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
スミスタンパク質に対する、Ro60タンパク質に対する及び/又はMPOタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答が、スミスタンパク質に対する、Ro60タンパク質に対する及び/又はMPOタンパク質に対する自己抗体の形成を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、シェーグレン症候群、全身性硬化症、炎症性筋炎、炎症性リウマチ、自己免疫性血管炎及び顕微鏡的多発血管炎からなる群から選択される1つ以上の自己免疫疾患又は炎症性疾患である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、SLE又はループス腎炎である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、シェーグレン症候群、好ましくは、原発性シェーグレン症候群である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、血管炎、好ましくは、顕微鏡的多発血管炎(MPA)である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
対象が、SLE及びシェーグレン症候群、又はSLE及びMPA、又はシェーグレン症候群及びMPA、又はSLE、シェーグレン症候群及びMPAの3つ全てのための治療を必要とする、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
対象における全身性エリテマトーデス(SLE)又はループス腎炎を治療する方法であって、
SLE又はループス腎炎の治療を必要とする対象に、細胞表面において結合性タンパク質を発現するTreg細胞の集団を投与して、これにより、SLE又はループス腎炎を治療するステップであって、
前記結合性タンパク質が、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ)ドメインを含み、
前記Vαドメインが、配列番号13に示すアミノ酸配列、又は、配列番号13に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
前記Vβドメインが、配列番号16に示すアミノ酸配列、又は、配列番号16に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
前記SLE又はループス腎炎は、
・ Ro60タンパク質又は
・ スミスタンパク質及びRo60タンパク質
に対する異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、方法。
【請求項15】
対象におけるシェーグレン症候群を治療する方法であって、
シェーグレン症候群の治療を必要とする対象に、細胞表面において結合性タンパク質を発現するTreg細胞の集団を投与するステップであって、これにより、対象におけるシェーグレン症候群を治療するステップを含み、
前記結合性タンパク質が、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ)ドメインを含み、
前記Vαドメインが、配列番号13に示すアミノ酸配列、又は、配列番号13に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
前記Vβドメインが、配列番号16に示すアミノ酸配列、又は、配列番号16に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含む、
方法。
【請求項16】
対象における自己免疫性血管炎、好ましくは、顕微鏡的多発血管炎(MPA)を治療する方法であって、
自己免疫性血管炎、好ましくは、顕微鏡的多発血管炎の治療を必要とする対象に、細胞表面において結合性タンパク質を発現するTreg細胞の集団を投与して、対象における自己免疫性血管炎、好ましくは、顕微鏡的多発血管炎を治療するステップであって、
前記結合性タンパク質が、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ)ドメインを含み、
前記Vαドメインが、配列番号13に示すアミノ酸配列、又は、配列番号13に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
前記Vβドメインが、配列番号16に示すアミノ酸配列、又は、配列番号16に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含む、
方法。
【請求項17】
対象におけるシェーグレン症候群及び/又はMPAを治療するステップもまた含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
対象におけるSLE、ループス腎炎及び/又はMPAを治療するステップもまた含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
対象におけるSLE、ループス腎炎及び/又はシェーグレン症候群を治療するステップもまた含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
シェーグレン症候群又はMPAが、対象におけるスミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質のうちの1つ以上に対する異常な免疫応答により特徴付けられる、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
異常な免疫応答が、対象におけるスミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質のうちの1つ以上に対する自己抗体の形成を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
結合性タンパク質が、
配列番号11に示すアミノ酸配列、又は、配列番号11に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR1を含むVαドメイン;及び
配列番号12に示すアミノ酸配列、又は、配列番号12に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR2を含むVαドメイン;及び
配列番号14に示すアミノ酸配列、又は、配列番号14に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR1を含むVβドメイン;及び
配列番号15に示すアミノ酸配列、又は、配列番号15に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%同一である配列を有するCDR2を含むVβドメイン
を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン、並びに、配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン、並びに、配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン、並びに、配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン、並びに、配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項27】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン、並びに、配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項28】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン、並びに、配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項29】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン、並びに、配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項30】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン、並びに、配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項31】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン、並びに、配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含み、
スミスタンパク質に対する、Ro60タンパク質に対する、及びMPOタンパク質に対する異常な又は不適切な免疫応答が、スミスタンパク質に対する、Ro60タンパク質に対する、及びMPOタンパク質に対する自己抗体の形成を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項32】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン、並びに、配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項33】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン、並びに、配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項34】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン、並びに、配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項35】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン並びに配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含み、
シェーグレン症候群が、対象における、スミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質のうちの1つ以上に対する異常な免疫応答により特徴付けられる、請求項15に記載の方法。
【請求項36】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン、並びに、配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含み、
MPAが、対象における、スミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質のうちの1つ以上に対する、異常な免疫応答により特徴付けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項37】
結合性タンパク質が、示されたCDR配列の外側に、1~10アミノ酸の挿入、欠失、置換、付加又はこれらの組合せを伴う、配列番号23に示すアミノ酸配列を含む、又はこれからなるTCRα鎖を含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
結合性タンパク質が、示されたCDR配列の外側に、1~10アミノ酸の挿入、欠失、置換、付加又はこれらの組合せを伴う、配列番号24に示すアミノ酸配列を含む、又はこれからなるTCRβ鎖を含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
結合性タンパク質が、配列番号23に示すアミノ酸配列を含む、又は配列番号23に示すアミノ酸配列からなるTCRα鎖及び配列番号24に示すアミノ酸配列を含む、又は配列番号24に示すアミノ酸配列からなるTCRβ鎖を含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
結合性タンパク質が、スミスタンパク質、Ro60タンパク質又はMPOタンパク質の断片と、HLA-DR3分子又はHLA-DR4分子との複合体に結合することが可能である、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
結合性タンパク質が、スミスタンパク質の断片と、HLA-DR3分子との複合体に結合することが可能であり、前記スミスタンパク質の断片が、SmD1タンパク質の残基78~92若しくはSmB/B’タンパク質の残基7~21(それぞれ、配列番号1及び3に示す)のアミノ酸配列、若しくは、前記アミノ酸と同等であるアミノ酸配列を含む、又はこれらからなる、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
結合性タンパク質が、Ro60タンパク質の断片と、HLA-DR3分子との複合体に結合することが可能であり、Ro60タンパク質の断片が、それぞれ、配列番号5及び6に示す、Ro60の残基225~239若しくは残基369~383のアミノ酸配列、若しくは、前記アミノ酸配列と同等であるアミノ酸配列を含む、又はこれらからなる、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
結合性タンパク質が、MPOタンパク質の断片と、HLA-DR4分子との複合体に結合することが可能であり、MPOタンパク質の断片が、それぞれ、配列番号8及び9に示す、MPOの残基453~467若しくは残基724~738のアミノ酸配列、若しくは、前記アミノ酸配列と同等であるアミノ酸配列を含む、又はこれらからなる、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
TCRα鎖及びTCRβ鎖が、さらなる鎖間ジスルフィド結合の形成を可能とするシステイン残基を含むように修飾されている、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
TCRα鎖上のThr48における残基又はこれと同等である残基、及びTCRβ鎖上のSer57における残基又はこれと同等である残基が、TCR定常領域の間のさらなるジスルフィド結合の創出を容易とするように、システインにより置換されている、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
Treg細胞の集団が、治療を必要とする対象に由来する、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
Treg細胞の集団が、幹細胞に由来し、任意選択的に、前記幹細胞が、人工多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞である、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
Treg細胞の集団が、請求項1~46のいずれか一項に規定された結合性タンパク質をコードする核酸が導入されたT細胞の混合集団に由来する、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
対象における自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療するための医薬の製造における、細胞表面において結合性タンパク質を発現する制御性T(Treg)細胞の集団の使用であって、
前記Treg細胞の表面における前記結合性タンパク質が、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ)ドメインを含み、
前記Vαドメインが、配列番号13に示すアミノ酸配列又は配列番号13に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
前記Vβドメインが、配列番号16に示すアミノ酸配列又は配列番号16に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
前記自己免疫疾患又は炎症性疾患が、
・ Ro60タンパク質;
・ MPOタンパク質;
・ Ro60タンパク質及びMPOタンパク質;
・ スミスタンパク質及びRo60タンパク質;
・ スミスタンパク質及びMPOタンパク質又は
・ スミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質
に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、使用。
【請求項50】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、スミスタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、Ro60タンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、請求項49に記載の使用。
【請求項52】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、スミスタンパク質に対する及びRo60タンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、請求項49に記載の使用。
【請求項53】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、MPOタンパク質に対する異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、請求項49に記載の使用。
【請求項54】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、Ro60タンパク質に対する及びMPOタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、請求項49に記載の使用。
【請求項55】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、スミスタンパク質に対する、Ro60タンパク質に対する、及びMPOタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、請求項49に記載の使用。
【請求項56】
スミスタンパク質に対する、Ro60タンパク質に対する、及び/又はMPOタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答が、スミスタンパク質に対する、Ro60タンパク質に対する及び/又はMPOタンパク質に対する、自己抗体の形成を含む、請求項49~55のいずれか一項に記載の使用。
【請求項57】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、シェーグレン症候群、全身性硬化症、炎症性筋炎、炎症性リウマチ、自己免疫性血管炎及び顕微鏡的多発血管炎からなる群から選択される1つ以上の自己免疫疾患又は炎症性疾患である、請求項49~56のいずれか一項に記載の使用。
【請求項58】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、SLE又はループス腎炎である、請求項57に記載の使用。
【請求項59】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、シェーグレン症候群、好ましくは、原発性シェーグレン症候群である、請求項57に記載の使用。
【請求項60】
自己免疫疾患又は炎症性疾患が、血管炎、好ましくは、顕微鏡的多発血管炎(MPA)である、請求項57に記載の使用。
【請求項61】
対象が、SLE及びシェーグレン症候群又はSLE及びMPA又はシェーグレン症候群及びMPA又はSLE、シェーグレン症候群及びMPAの3つ全てのための治療を必要とする、請求項57に記載の使用。
【請求項62】
対象における全身性エリテマトーデス(SLE)又はループス腎炎を治療するための医薬の製造における、細胞表面において結合性タンパク質を発現するTreg細胞の集団の使用であって、
前記Treg細胞の表面における前記結合性タンパク質が、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ)ドメインを含み、
前記Vαドメインが、配列番号13に示すアミノ酸配列又はこれと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
前記Vβドメインが、配列番号16に示すアミノ酸配列又はこれと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
前記SLE又はループス腎炎が、
・ Ro60タンパク質又は
・ スミスタンパク質及びRo60タンパク質
に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、使用。
【請求項63】
対象におけるシェーグレン症候群を治療するための医薬の製造における、細胞表面において結合性タンパク質を発現するTreg細胞の集団の使用であって、
前記T細胞の表面における前記結合性タンパク質が、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ)ドメインを含み、
前記Vαドメインが、配列番号13に示すアミノ酸配列又はこれと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み;
前記Vβドメインが、配列番号16に示すアミノ酸配列又はこれと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含む、
使用。
【請求項64】
対象における自己免疫性血管炎、好ましくは、顕微鏡的多発血管炎(MPA)を治療するための医薬の製造における、細胞表面において結合性タンパク質を発現するTreg細胞の集団の使用であって、
前記Treg細胞の表面における前記結合性タンパク質が、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ)ドメインを含み、
前記Vαドメインが、配列番号13に示すアミノ酸配列又はこれと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み;
前記Vβドメインが、配列番号16に示すアミノ酸配列又はこれと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含む、
使用。
【請求項65】
医薬がまた、対象におけるシェーグレン症候群及び/又はMPAを治療するための医薬でもある、請求項62に記載の使用。
【請求項66】
医薬がまた、対象におけるSLE、ループス腎炎及び/又はMPAを治療するための医薬でもある、請求項63に記載の使用。
【請求項67】
医薬がまた、対象におけるSLE、ループス腎炎及び/又はシェーグレン症候群を治療するための医薬でもある、請求項64に記載の使用。
【請求項68】
シェーグレン症候群又はMPAが、対象における、スミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質のうちの1つ以上に対する、異常な免疫応答により特徴付けられる、請求項63~67のいずれか一項に記載の使用。
【請求項69】
異常な免疫応答が、対象における、スミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質のうちの1つ以上に対する自己抗体の形成を含む、請求項68に記載の使用。
【請求項70】
結合性タンパク質が、
配列番号11に示すアミノ酸配列、又は配列番号11に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%同一である配列を有するCDR1を含むVαドメイン;及び
配列番号12に示すアミノ酸配列、又は配列番号12に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%同一である配列を有するCDR2を含むVαドメイン;及び
配列番号14に示すアミノ酸配列、又は配列番号14に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%同一である配列を有するCDR1を含むVβドメイン;及び
配列番号15に示すアミノ酸配列、又は配列番号15に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%同一である配列を有するCDR2を含むVβドメイン
を含む、請求項49~69のいずれか一項に記載の使用。
【請求項71】
結合性タンパク質が、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン並びに配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含む、請求項49~70のいずれか一項に記載の使用。
【請求項72】
結合性タンパク質が、示されたCDR配列の外側に、1~10アミノ酸の挿入、欠失、置換、付加又はこれらの組合せを伴う、配列番号23に示すアミノ酸配列を含む、又はこれからなるTCRα鎖を含む、請求項49~71のいずれか一項に記載の使用。
【請求項73】
結合性タンパク質が、示されたCDR配列の外側に、1~10アミノ酸の挿入、欠失、置換、付加又はこれらの組合せを伴う、配列番号24に示すアミノ酸配列を含む、又はこれからなるTCRβ鎖を含む、請求項49~72のいずれか一項に記載の使用。
【請求項74】
結合性タンパク質が、配列番号23に示すアミノ酸配列を含む、又は配列番号23に示すアミノ酸配列からなるTCRα鎖、及び配列番号24に示すアミノ酸配列を含む、又は配列番号24に示すアミノ酸配列からなるTCRβ鎖を含む、請求項49~73のいずれか一項に記載の使用。
【請求項75】
結合性タンパク質が、スミスタンパク質、Ro60タンパク質又はMPOタンパク質の断片と、HLA-DR3分子との複合体に結合することが可能である、請求項49~74のいずれか一項に記載の使用。
【請求項76】
結合性タンパク質が、スミスタンパク質の断片と、HLA-DR3分子との複合体に結合することが可能であり、スミスタンパク質の断片が、SmD1タンパク質の残基78~92又はSmB/B’タンパク質の残基7~21(それぞれ、配列番号1及び3に示す)のアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列と同等であるアミノ酸配列を含む、又はこれらかなる、請求項49~75のいずれか一項に記載の使用。
【請求項77】
結合性タンパク質が、Ro60タンパク質の断片と、HLA-DR3分子との複合体に結合することが可能であり、Ro60タンパク質の断片が、それぞれ、配列番号5及び6に示す、Ro60の残基225~239又は残基369~383のアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列と同等であるアミノ酸配列を含む、又はこれらかなる、請求項49~76のいずれか一項に記載の使用。
【請求項78】
結合性タンパク質が、MPOタンパク質の断片と、HLA-DR4分子との複合体に結合することが可能であり、MPOタンパク質の断片が、それぞれ、配列番号8及び9に示す、MPOの残基453~467又は残基724~738のアミノ酸配列又は前記アミノ酸配列と同等であるアミノ酸配列を含む、又はこれらかなる、請求項49~77のいずれか一項に記載の使用。
【請求項79】
Treg細胞の集団が、治療を必要とする対象に由来する、請求項49~78のいずれか一項に記載の使用。
【請求項80】
Treg細胞の集団が、幹細胞に由来し、任意選択的に、前記幹細胞が、人工多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞である、請求項49~78のいずれか一項に記載の使用。
【請求項81】
Treg細胞の集団が、請求項1~45のいずれか一項に規定される結合性タンパク質をコードする核酸が導入されたT細胞の混合集団に由来する、請求項49~79のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫疾患又は炎症性疾患、特に、スミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質のうちの1つ以上に対する、不適切な又は異常な免疫応答により特徴付けられる自己免疫疾患の治療のための組成物、並びに方法に関する。
【0002】
本出願は、その内容の全体が、参照により本明細書に組み込まれた、豪州特許仮出願第2021903030号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
自己免疫疾患は、健常な細胞、組織及び臓器に対する、異常な免疫応答から生じる。ヒトにおいて、80を超える自己免疫疾患が認知されており、米国単独において、のべ2400万人を超える個体が、これらの疾患に罹患している。
【0004】
一部の症例において、個体は、1つを超える自己免疫疾患を有する場合があり、単一の「自己抗原」に対する自己抗体が、1つを超える状態と関連しうる。代替的に、個体は、明らかな共通自己抗原又は自己免疫の原因が存在しない、複数の自己免疫疾患を呈しうる。
【0005】
自己免疫疾患に対する重要な調査研究にもかかわらず、有効なターゲティング療法は欠如している。コルチコステロイド剤、メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン、他の免疫抑制剤(例えば、少数を挙げれば、シクロスポリン、レフルナミド、アザチオプリン)及び非ステロイド系抗炎症薬など、現行の治療は、障害と関連する特異的自己免疫を、正確に阻害するのではなく、免疫系の活性化を、非特異的に阻害する。
【0006】
多くの患者が、上記において列挙された標準医療に対して応答しないか、又は応答が部分的にとどまる一方、高用量のコルチコステロイド剤及び細胞傷害性療法の、長期にわたる使用は、骨髄抑制、日和見菌による感染症の増大、不可逆的卵巣不全、禿頭及び悪性腫瘍の危険性の増大など、深刻な副作用をもたらしうる。活動性自己免疫疾患及び免疫抑制性医薬によるその治療と同時に発生する感染性合併症は、自己免疫疾患を伴う患者における、最も一般的な死因のうちの1つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自己免疫疾患のための、新たな治療又は改善された治療、特に、疾患関連自己抗原をターゲティングする治療が必要とされている。
【0008】
本明細書における、任意の先行技術への言及は、この先行技術が、任意の法的権限における、共通の一般的知見の一部を形成する、又はこの先行技術が、当業者により、関連すると理解され、関連すると考えられること、かつ/若しくは先行技術の他の断片と組み合わされることが妥当に予測されうることの承認又は示唆ではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、本発明者らによる、複数の自己エピトープに結合することが可能であり、多様な自己免疫疾患を治療するために有用である無差別型自己エピトープ特異的T細胞受容体(TCR)についての、驚くべき発見に基づく。
【0010】
したがって、第1の態様において、本発明は、自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療する方法であって、
・ 自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療を必要とする対象に、細胞表面において結合性タンパク質を発現する制御性T(Treg)細胞の集団を投与して、これにより、自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療するステップを含み、
上記結合性タンパク質が、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ)ドメインを含み、
上記Vαドメインが、配列番号13に示すアミノ酸配列、又は、配列番号13に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
上記Vβドメインが、配列番号16に示すアミノ酸配列、又は、配列番号16に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
上記自己免疫疾患又は炎症性疾患が、
Ro60タンパク質;ミエロペルオキシダーゼ(MPO)タンパク質;Ro60タンパク質及びMPOタンパク質;スミスタンパク質及びRo60タンパク質;スミスタンパク質及びMPOタンパク質;又はスミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、
方法を提供する。
【0011】
本発明の第1の態様の、ある実施形態において、自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療するための医薬の製造における、上記において記載されたTreg細胞の集団の使用であって、好ましくは、自己免疫疾患又は炎症性疾患が、Ro60タンパク質;MPOタンパク質;Ro60タンパク質及びMPOタンパク質;スミスタンパク質及びRo60タンパク質;スミスタンパク質及びMPOタンパク質;又はスミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、使用もまた提供される。
【0012】
本発明の第1の態様の、さらなる実施形態において、自己免疫疾患又は炎症性疾患の治療における使用のための、上記において記載されたTreg細胞の集団であって、好ましくは、自己免疫疾患又は炎症性疾患が、Ro60タンパク質;MPOタンパク質;Ro60タンパク質及びMPOタンパク質;スミスタンパク質及びRo60タンパク質;スミスタンパク質及びMPOタンパク質;又はスミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、Treg細胞の集団が提供される。
【0013】
任意の実施形態において、自己免疫疾患又は炎症性疾患は、スミスタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられうる。
【0014】
任意の実施形態において、自己免疫疾患又は炎症性疾患は、Ro60タンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられうる。
【0015】
任意の実施形態において、自己免疫疾患又は炎症性疾患は、スミスタンパク質に対する及びRo60タンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられうる。
【0016】
任意の実施形態において、自己免疫疾患又は炎症性疾患は、MPOタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられうる。
【0017】
任意の実施形態において、自己免疫疾患又は炎症性疾患は、Ro60タンパク質に対する及びMPOタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられうる。
【0018】
任意の実施形態において、自己免疫疾患又は炎症性疾患は、スミスタンパク質に対する、Ro60タンパク質に対する及びMPOタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられうる。
【0019】
任意の実施形態において、スミスタンパク質に対する、Ro60タンパク質に対する及び/又はMPOタンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答は、スミスタンパク質に対する、Ro60タンパク質に対する及び/又はMPOタンパク質に対する、自己抗体の形成を含む。
【0020】
本明細書において、MPOタンパク質に対する自己抗体はまた、抗好中球細胞質抗体(ANCA)、とりわけ、抗MPO ANCAとも称される。
【0021】
任意の実施形態において、自己免疫疾患又は炎症性疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、シェーグレン症候群、全身性硬化症、炎症性筋炎、炎症性リウマチ、自己免疫性血管炎及び顕微鏡的多発血管炎からなる群から選択される1つ以上の自己免疫疾患又は炎症性疾患である。好ましくは、自己免疫疾患又は炎症性疾患は、SLE又はループス腎炎でありうる。代替的に、自己免疫疾患又は炎症性疾患は、シェーグレン症候群、好ましくは、原発性シェーグレン症候群でありうる。なおさらに、自己免疫疾患又は炎症性疾患は、顕微鏡的多発血管炎(MPA)でありうる。
【0022】
任意の実施形態において、治療を必要とする対象は、SLE及びシェーグレン症候群、又はSLE及びMPA、又はシェーグレン症候群及びMPA、又はSLE、シェーグレン症候群及びMPAの3つ全てのための治療を必要としうる。
【0023】
第2の態様において、対象における全身性エリテマトーデス(SLE)又はループス腎炎を治療する方法であって、
SLE又はループス腎炎の治療を必要とする対象に、細胞表面において結合性タンパク質を発現するTreg細胞の集団を投与して、これにより、SLE又はループス腎炎を治療するステップであって、
上記結合性タンパク質が、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ)ドメインを含み、
上記Vαドメインが、配列番号13に示すアミノ酸配列、又は、配列番号13に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
上記Vβドメインが、配列番号16に示すアミノ酸配列、又は、配列番号16に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
上記SLE又はループス腎炎は、
Ro60タンパク質;又はスミスタンパク質及びRo60タンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、
方法が提供される。好ましくは、方法はまた、対象におけるシェーグレン症候群及び/又はMPAを治療するステップも含む。
【0024】
本発明の第2の態様の、ある実施形態において、対象におけるSLE又はループス腎炎を治療するための医薬の製造における、上記において記載されたTreg細胞の集団の使用であって、好ましくは、SLE又はループス腎炎が、Ro60タンパク質;又はスミスタンパク質及びRo60タンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、使用もまた提供される。好ましくは、医薬はまた、対象におけるシェーグレン症候群及び/又はMPAを治療するための医薬でもある。
【0025】
本発明の第2の態様の、さらなる実施形態において、SLE又はループス腎炎の治療における使用のための、上記において記載されたTreg細胞の集団であって、好ましくは、SLE又はループス腎炎が、Ro60タンパク質;又はスミスタンパク質及びRo60タンパク質に対する、異常な又は不適切な免疫応答により特徴付けられる、Treg細胞の集団が提供される。好ましくは、使用はまた、対象におけるシェーグレン症候群及び/又はMPAを治療するステップも含む。
【0026】
さらなる第3の態様において、対象におけるシェーグレン症候群を治療する方法であって、
・ シェーグレン症候群の治療を必要とする対象に、細胞表面において結合性タンパク質を発現するTreg細胞の集団を投与するステップであって、これにより、対象におけるシェーグレン症候群を治療するステップを含み、
上記結合性タンパク質が、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ)ドメインを含み、
上記Vαドメインが、配列番号13に示すアミノ酸配列、又は、配列番号13に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み、
上記Vβドメインが、配列番号16に示すアミノ酸配列、又は、配列番号16に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含む、
方法が提供される。好ましくは、方法はまた、対象におけるSLE、ループス腎炎及び/又は自己免疫性血管炎(好ましくは、MPA)を治療するステップも含みうる。
【0027】
本発明の第3の態様の、ある実施形態において、対象におけるシェーグレン症候群を治療するための医薬の製造における、上記において記載されたTreg細胞の集団の使用もまた提供される。好ましくは、医薬はまた、対象におけるSLE、ループス腎炎及び/又はMPAを治療するための医薬でもある。
【0028】
本発明の第3の態様の、さらなる実施形態において、対象における、シェーグレン症候群の治療における使用のための、上記において記載されたTreg細胞の集団が提供される。好ましくは、使用はまた、対象におけるSLE、ループス腎炎及び/又はMPAを治療するステップも含む。
【0029】
第4の態様において、対象における自己免疫性血管炎を治療する方法であって、
・ 自己免疫性血管炎の治療を必要とする対象に、細胞表面において結合性タンパク質を発現するTreg細胞の集団を投与して、対象における自己免疫性血管炎を治療するステップであって、
上記結合性タンパク質が、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ)ドメインを含み、
上記Vαドメインが、配列番号13に示すアミノ酸配列、又は、配列番号13に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含み;
上記Vβドメインが、配列番号16に示すアミノ酸配列、又は、配列番号16に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR3を含む、
方法が提供される。好ましくは、血管炎は、顕微鏡的多発血管炎(MPA);多発血管炎性肉芽腫症(GPA)又は好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、最も好ましくは、MPAである。方法はまた、対象におけるSLE、ループス腎炎及び/又はシェーグレン症候群を治療するステップも含みうる。
【0030】
本発明の第4の態様の、ある実施形態において、対象における顕微鏡的多発血管炎(MPA)を治療するための医薬の製造における、上記において記載されたTreg細胞の集団の使用もまた提供される。好ましくは、医薬はまた、対象におけるSLE、ループス腎炎及び/又はシェーグレン症候群を治療するための医薬でもある。
【0031】
本発明の第4の態様の、さらなる実施形態において、対象における、MPAの治療における使用のための、上記において記載されたTreg細胞の集団が提供される。好ましくは、使用はまた、対象におけるSLE、ループス腎炎及び/又はシェーグレン症候群を治療するステップも含む。
【0032】
本発明の任意の態様において、シェーグレン症候群又はMPAは、対象における、スミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質のうちの1つ以上に対する、異常な免疫応答により特徴付けられる。
【0033】
本発明の任意の態様において、異常な免疫応答は、対象における、スミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質のうちの1つ以上に対する自己抗体の形成を含む。
【0034】
本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、結合性タンパク質は、好ましくは、
配列番号13に示すアミノ酸配列又は配列番号13の配列と比較して、1つ以下、2つ以下若しくは3つ以下、4つ以下、5つ以下のアミノ酸置換を有する配列を有するCDR3を含むVαドメイン;及び
配列番号16に示すアミノ酸配列又は配列番号16の配列と比較して、1つ以下、2つ以下若しくは3つ以下、4つ以下、5つ以下のアミノ酸置換を有する配列を有するCDR3を含むVβドメインを含む。
【0035】
本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、結合性タンパク質は、好ましくは、
配列番号11に示すアミノ酸配列、又は、配列番号11に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR1を含むVαドメイン;及び
配列番号12に示すアミノ酸配列、又は、配列番号12に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR2を含むVαドメイン;及び
配列番号14に示すアミノ酸配列、又は、配列番号14に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR1を含むVβドメイン;及び
配列番号15に示すアミノ酸配列、又は、配列番号15に示すアミノ酸配列に少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%同一である配列を有するCDR2を含むVβドメインを含む。
【0036】
本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、結合性タンパク質は、好ましくは、
配列番号11に示すアミノ酸配列又は配列番号11の配列と比較して、1つ以下、2つ以下若しくは3つ以下のアミノ酸置換を有する配列を有するCDR1を含むVαドメイン;
配列番号12に示すアミノ酸配列又は配列番号12の配列と比較して、1つ以下、2つ以下若しくは3つ以下のアミノ酸置換を有する配列を有するCDR2を含むVαドメイン;
配列番号14に示すアミノ酸配列又は配列番号14の配列と比較して、1つ以下、2つ以下若しくは3つ以下のアミノ酸置換を有する配列を有するCDR1を含むVβドメイン;及び/又は
配列番号15に示すアミノ酸配列又は配列番号15の配列と比較して、1つ以下、2つ以下若しくは3つ以下のアミノ酸置換を有する配列を有するCDR2を含むVβドメインを含む。
【0037】
本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、結合性タンパク質は、配列番号11、12及び13に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVαドメイン、並びに、配列番号14、15及び16に示すアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2及びCDR3を有するVβドメインを含みうる。
【0038】
上記において記載された、本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、CDRは、IMGT法に従い決定される。
【0039】
本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、結合性タンパク質は、示されるCDR配列の外側に、少なくとも1アミノ酸、少なくとも2アミノ酸、少なくとも3アミノ酸、少なくとも4アミノ酸、少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸であり、かつ、約10アミノ酸以下である、挿入、欠失、置換、付加又はこれらの組合せを伴う、配列番号23に示すアミノ酸配列を含む、又はこれからなるTCRα鎖を含みうる。
【0040】
本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、結合性タンパク質は、示されるCDR配列の外側に、少なくとも1アミノ酸、少なくとも2アミノ酸、少なくとも3アミノ酸、少なくとも4アミノ酸、少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸であり、かつ、約10アミノ酸以下である、挿入、欠失、置換、付加又はこれらの組合せを伴う、配列番号24に示すアミノ酸配列を含む、又はこれからなるTCRβ鎖を含みうる。
【0041】
本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、結合性タンパク質は、配列番号23に示すアミノ酸配列を含む、又は配列番号23に示すアミノ酸配列からなるTCRα鎖及び配列番号24に示すアミノ酸配列を含む、又は配列番号24に示すアミノ酸配列からなるTCRβ鎖を含みうる。
【0042】
本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、スミスタンパク質は、SmB/B’、SmD又は本明細書において記載された他の任意のスミスタンパク質でありうる。したがって、任意の態様において、結合性タンパク質は、SmB/B’及び/又はSmDに結合することが可能である。一実施形態において、結合性タンパク質は、SmD1タンパク質の残基78~92若しくはSmB/B’タンパク質の残基7~21(それぞれ、配列番号1及び3に示す)のアミノ酸配列若しくはこれと同等であるアミノ酸配列を含む、又はこれらからなる、スミスタンパク質の断片に結合することが可能である。
【0043】
本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、結合性タンパク質は、スミスタンパク質、Ro60タンパク質又はMPOタンパク質の断片と、HLA-DR3分子及び/又はHLA-DR4.5分子との複合体に結合することが可能である。好ましくは、結合性タンパク質は、SmD1タンパク質の残基78~92若しくはSmB/B’タンパク質の残基7~21(それぞれ、配列番号1及び3に示す)のアミノ酸配列、若しくは、上記アミノ酸と同等であるアミノ酸配列を含む、又はこれらからなる、スミスタンパク質の断片に結合することが可能である。
【0044】
本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、結合性タンパク質は、Ro60タンパク質の断片と、HLA-DR3分子との複合体に結合することが可能であり、Ro60タンパク質の断片は、それぞれ、配列番号5及び6に示す、Ro60の残基225~239若しくは残基369~383のアミノ酸配列、若しくは、上記アミノ酸配列と同等であるアミノ酸配列を含む、又はこれらからなる。
【0045】
本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、結合性タンパク質は、MPOタンパク質の断片と、HLA-DR3分子及び/又はHLA-DR4.5分子との複合体に結合することが可能であり、MPOタンパク質の断片は、それぞれ、配列番号8及び9に示す、MPOの残基453~467若しくは残基724~738のアミノ酸配列、若しくは、上記アミノ酸配列と同等であるアミノ酸配列を含む、又はこれらからなる。
【0046】
本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、結合性タンパク質のTCRα鎖及びTCRβ鎖は、さらなる鎖間ジスルフィド結合の形成を可能とするシステイン残基を含むように修飾されている。好ましくは、TCRα鎖上のThr48における残基又はこれと同等な残基、及びTCRβ鎖上のSer57における残基又はこれと同等な残基は、TCRの定常領域の間における、さらなるジスルフィド結合の創出を容易とするように、システインにより置換される。
【0047】
本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、Treg細胞の集団は、治療を必要とする対象に由来する場合もあり、組織適合性ドナーに由来する場合もある。代替的に、Treg細胞の集団は、幹細胞に由来する場合があり、任意選択的に、この場合、上記幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞である。任意の態様において、Treg細胞の集団は、本明細書において規定された結合性タンパク質をコードする核酸が導入されたT細胞の混合集団に由来しうる。
【0048】
本発明の任意の方法、使用又は使用のための組成物において、Tregの集団は、
・ 通常型T細胞の、少なくとも1つの特性を呈するT細胞の集団を用意し、任意選択的に、T細胞の集団が、T細胞の混合集団であること;
・ 本発明の核酸又はベクターを、T細胞の集団へと導入し、核酸又はベクターが、本明細書において記載された結合性タンパク質をコードすること;
・ T細胞の表面における、結合性タンパク質の発現を可能とする条件をもたらすこと;
・ T細胞の集団の、制御性T細胞への転換を可能とする条件をもたらすこと;
これらにより、制御性T細胞の少なくとも1つの特性を呈するT細胞であって、タンパク質である、Sm/B’、SmD、Ro60又はMPOのうちの1つ以上に特異的であるT細胞の集団を、エクスビボにおいて調製すること
により得られうる。
【0049】
別の態様では、本発明は、本明細書において記載された自己免疫疾患の治療における使用のための制御性T細胞の集団を調製する方法であって、
・ 制御性T細胞の集団を用意するステップ;
・ 本明細書において記載されたTCRをコードする核酸又はベクターを、制御性T細胞の集団へと導入するステップ;
・ 制御性T細胞の表面における、TCRの発現を可能とする条件をもたらすステップ
を含み、
これにより、本明細書において記載された自己免疫疾患の治療における使用のための制御性T細胞の集団を調製する
方法を提供する。
【0050】
文脈が、そうでないことを必要としない限りにおいて、本明細書において使用された、「~を含む」という用語並びに「~を含むこと」、「~を含む」及び「含まれた」など、この用語の変化形は、さらなる添加物、成分、整数又はステップを除外することが意図されない。
【0051】
本発明のさらなる態様及び先行する段落に記載された態様についてのさらなる実施形態は、例を目的として、付属の図面を参照しながら与えられる、以下の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】無差別型self-TCRによる優勢な反応性。健常ヒトに由来するT細胞を、6つの異なる自己ペプチドによりパルスされた単球由来樹状細胞(DC)と共に共培養した。各グラフは、ペプチド1つ当たりの反応性クローンの数を示す。無差別型self-TCR配列だけが、全てのペプチド刺激にわたり、クローン拡大されることが見出されることに留意されたい。クローン拡大された、他のTCR配列に関して述べると、いずれのTCR配列も、他のペプチドと交差反応しない、例えば、SmD1:78-92と反応する、他のTCR配列は、SmB/B’:7-21、Ro60:225-239、Ro60:369-383、MPO:453-467又はMPO:724-738と反応しない。黒色バー=無差別型self-TCR配列。白色バー=他のTCR配列。
【
図2】シェーグレン症候群についての、新たなヒト化モデルにおける、疾患進行の停止における、Ro60-Tregの有効性を裏付ける実験プロトコール。
【
図3】抗原特異的TCRの活性化と関連する上方制御されたTreg遺伝子。TCRの活性化と関連して上方制御された遺伝子は、FOXP3、CTLA4、IL1R2、CCR10、TIGIT、IKZF2、ITGAM、LGALS1、LGALS3、PI16、IL2RAであった。Tregの活性化と関連して下方制御された遺伝子は、IL13、IFNG、IL7Rであった。これらのデータは、各エピトープが、無差別型self-TCRエンゲージメント及びTregの活性化を誘導しうることを裏付ける。黒ドット:上方制御された遺伝子;グレードット/影を付したドット:下方制御された遺伝子。
【
図4】ヒトTreg上における、無差別型self-TCRの発現。形質導入プロトコールは、ヒトTregの表面上における、無差別型self-TCRの発現の成功を可能とする。A=モックを形質導入されたヒトTreg;B=無差別型self-TCRを形質導入されたTreg。染色は、GFPの発現及びVβ14TCRの発現についての染色である。
【
図5】無差別型self-TCR Tregが、ペプチド-HLA デキストラマー(Dextramer)に結合する。無差別型self-TCRを形質導入されたTregは、SmD1:78-21/HLA-DRB1
*03:01 デキストラマー、Ro60:369-383/HLA-DRB1
*03:01 デキストラマー及びMPO:453-567/HLA-DRB1
*04:05 デキストラマーへの結合を呈する。黒四角=無差別型self-TCRを形質導入されたTreg。白四角=モックを形質導入されたTreg。
【
図6】無差別型self-TCR Tregが、ペプチド刺激の後に活性化される。SmD1:78-92、Ro60:369-383及びMPO:453-467による刺激は、無差別型self-TCRを形質導入されたTregの活性化を、ペプチド刺激なしと比較して誘導した。黒四角=無差別型self-TCRを形質導入されたTreg。白四角=モックを形質導入されたTreg。
【
図7】無差別型self-TCR Tregが、ペプチド特異的Tconv細胞の増殖を抑制する。無差別型self-TCRを形質導入されたTregは、3つの自己エピトープ全てにわたり、Tconv細胞の増殖の、より強力な抑制を裏付けた。黒四角=無差別型self-TCRを形質導入されたTreg。白四角=モックを形質導入されたTreg。
【
図8】無差別型self-TCRが、Smペプチドにエンゲージする。Bリンパ芽球様細胞株(B-LCL)を、Smエピトープによりパルスしたところ、免疫シナプスにおける、CD3及びファロイジンの平均値ピクセル強度が増大した。これらのデータは、無差別型self-TCRが、いずれのHLA-DRB1
*03:01拘束Smエピトープにもエンゲージしうることを指し示す。矢印は、免疫シナプス;BF=明視野;MPI=平均値ピクセル強度を指し示す。
【0053】
配列情報
【0054】
【発明を実施するための形態】
【0055】
本明細書において開示及び規定された本発明は、言及された、又は本文又は図面から明らかな、2つ以上の個々の特色の、全ての代替的組合せへと拡張することが理解される。これらの異なる組合せの全ては、本発明の多様な代替的態様を構成する。
【0056】
本発明のさらなる態様及び先行する段落に記載された態様についてのさらなる実施形態は、例を目的として、付属の図面を参照しながら与えられる、以下の記載から明らかとなる。
【0057】
ここにおいて、本発明のある特定の実施形態に対する、詳細な言及がなされる。本発明は、実施形態と共に記載されるが、その意図は、本発明を、これらの実施形態に限定することではないことが理解される。逆に、本発明は、特許請求の範囲により規定された本発明の範囲内に含まれうる、全ての代替法、改変及び均等物を対象とすることが意図される。
【0058】
本発明者らは、自己免疫疾患と関連する、多数の自己抗原、特に、スミスタンパク質、Ro60タンパク質及びミエロペルオキシダーゼ(MPO)タンパク質に結合することが可能である無差別型自己エピトープ性T細胞受容体(self-TCR)を同定した。
【0059】
スミスタンパク質、Ro60タンパク質及びMPOタンパク質に対する自己抗体は、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群及び自己免疫性血管炎、とりわけ、顕微鏡的多発血管炎及び好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(チャーグ・シュトラウス症候群)を含む、多様な自己免疫疾患と関連する。したがって、本発明は、多数の自己免疫疾患の治療における使用のための、単一のTCRに関する。
【0060】
本発明の特定の利点は、本発明が、自己免疫疾患を患う、広範にわたる個体群の治療における使用のための生成物であるが、それらの疾患と関連する特定の自己抗原に特異的である単一の生成物(例えば、無差別型TCRを発現するTreg細胞の集団)を提供することである。これは、患者群にわたり適用された既存の治療であって、非特異的であるため、それほど効果的でない可能性が高く、潜在的に、副作用の増大を結果としてもたらす治療と対照的である。本発明の手法は、1つを超える疾患集団内における、自己免疫疾患の発生源の特異的ターゲティングを可能とする。
【0061】
全般
本明細書を通して、そうでないことが詳細に言明されない限り又は文脈がそうでないことを必要としない限りにおいて、単一のステップ、組成物、ステップの群又は組成物の群への言及は、これらのステップ、組成物、ステップの群又は組成物の群のうちの、1つ及び複数(すなわち、1つ以上の)を包含するように理解されるものとする。したがって、本明細書において使用された、単数形の「ある(a)」、「ある(an)」及び「その」は、文脈が、明確にそうでないことを明確に指示しない限りにおいて、複数の側面を含む。例えば、「ある(a)」に対する言及は、単一並びに2つ以上を含み;「ある(an)」に対する言及は、単一並びに2つ以上を含み;「その」に対する言及は、単一並びに2つ以上を含むなどである。
【0062】
当業者は、本発明は、詳細に記載された変動及び改変以外の変動及び改変を受けることを理解する。本発明は、全てのこのような変動及び改変を含むことが理解されるものとする。本発明はまた、本明細書において言及された、又は指し示された、ステップ、特色、組成物及び化合物の全ても、個別に又は総称的に含み、前記ステップ又は前記特色の任意の組合せ、及び全ての組合せ、又はこれらのうちの任意の2つ以上も含む。
【0063】
当業者は、本明細書において記載された方法及び材料と、同様又は均等であり、本発明の実施において使用されうる、多くの方法及び材料を認識する。本発明は、いかなる形においても、記載された方法及び材料に限定されない。
【0064】
本明細書において言及された特許及び刊行物の全ては、参照によりそれらの全体において組み込まれる。
【0065】
本発明は、例示のためだけに意図された、本明細書において記載された詳細な例により、ある範囲内に限定されないものとする。機能的に同等な生成物、組成物及び方法は、明確に、本発明の範囲内にある。
【0066】
そうでないことが詳細に言明されない限り、本明細書における、本発明の任意の例又は実施形態は、改変すべき部分は改変して、本発明の、任意の他の例又は実施形態へと適用されることが理解されるものとする。
【0067】
そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書において使用される技術用語及び学術用語は、当業者(例えば、細胞培養法、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学及び生化学における当業者)により一般に理解される意味と同じ意味を有するように理解されるものとする。
【0068】
そうでないことが指し示されない限りにおいて、本開示において活用される、組換えタンパク質法、細胞培養法及び免疫学法は、当業者に周知の標準的手順である。このような技法については、J. Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley and Sons(1984);J.Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);T.A.Brown(編)、「Essential Molecular Biology:A Practical Approach」、1及び2巻、IRL Press(1991);D.M.Glover及びB.D.Hames(編)、「DNA Cloning:A Practical Approach」、1~4巻、IRL Press(1995及び1996)並びにF.M.Ausubelら(編)、「Current Protocols in Molecular Biology」、Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988;現在までの全ての改訂を含む);Ed Harlow及びDavid Lane(編)「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)並びにJ.E.Coliganら(編)、「Current Protocols in Immunology」、John Wiley & Sons(現在までの全ての改訂を含む)などの出典における文献全体を通して、記載及び説明されている。
【0069】
本明細書における、可変領域及びその部分、T細胞受容体及びその断片についての記載及び規定は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest、National Institutes of Health、Bethesda、Md.、1987及び1991;Borkら、J Mol.Biol.、242、309~320、1994;Chothia及びLesk、J.Mol Biol.、196:901~917、1987;Chothiaら、Nature、342、877~883、1989;Al-Lazikaniら、J Mol Biol、273、927~948、1997における議論;又はGiudicelliら、Nucleic Acids Res.、25:206~211、1997において論じられているIMGTシステムによりさらに明確化されうる。
【0070】
好ましい実施形態において、本明細書において規定されたCDRは、IMGT法に従い規定される。
【0071】
「及び/又は」という用語、例えば、「X及び/又はY」とは、「X及びY」又は「X又はY」を意味するように理解されるものとし、両方の意味又は一方の意味に対する明示的な裏付けを与えるように理解されるものとする。
【0072】
本明細書において使用された「~から導出された」という用語は、指定された整数が、必ずしも、この供給源に直接由来するわけではないが、特定の供給源から得られうることを指し示すように理解されるものとする。
【0073】
本明細書における、例えば、残基の範囲に対する言及は、包含的であるように理解される。例えば、「アミノ酸1~15を含む領域」に対する言及は、包含的に理解される、すなわち、領域は、指定された配列内の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14及び15と番号付けされたアミノ酸の配列を含む。
【0074】
「~から本質的になること」という用語は、特許請求の範囲を、指定された材料若しくはステップ又は特許請求される発明の基本特徴に、材料的に影響を及ぼさない、材料若しくはステップに限定する。例えば、タンパク質ドメイン、領域又はモジュール(例えば、結合性ドメイン、ヒンジ領域、リンカーモジュール)又はタンパク質(1つ以上のドメイン、領域又はモジュールを有しうる)は、ドメイン、領域、モジュール又はタンパク質のアミノ酸配列が、組合せにおいて、ドメイン、領域、モジュール又はタンパク質の長さのうちの20%以下(例えば、15%以下、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%)に寄与し、ドメイン(複数可)、領域(複数可)、モジュール(複数可)又はタンパク質の活性(例えば、結合性タンパク質の標的結合アフィニティー)に実質的に影響を及ぼさない(すなわち、活性の低減が40%以下、30%、25%、20%、15%、10%、5%又は1%であるなど、活性を、50%を超えて低減しない)、伸長、欠失、突然変異又はこれらの組合せ(例えば、アミノ末端若しくはカルボキシ末端又はドメイン間におけるアミノ酸)を含む場合に、特定のアミノ酸配列「から本質的になる」。
【0075】
本明細書において使用された、「核酸」又は「核酸分子」とは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、又はインビトロにおける翻訳により作出される断片及びライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用又はエクソヌクレアーゼ作用のうちのいずれかにより作出される断片のうちのいずれかを指す。ある特定の実施形態において、本開示の核酸は、PCRにより作製される。核酸は、天然に存在するヌクレオチドである単量体(デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドなど)から構成される場合もあり、天然に存在するヌクレオチドの類似体(例えば、天然に存在するヌクレオチドのα-光学異性形態)から構成される場合もあり、これらの両方の組合せから構成される場合もある。修飾ヌクレオチドは、糖部分又はピリミジン塩基部分若しくはプリン塩基部分の修飾又は置換を有しうる。核酸の単量体は、ホスホジエステル結合又はこのような連結の類似物により連結されうる。ホスホジエステル連結の類似物は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニリデート、ホスホルアミデートなどを含む。核酸分子は、一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もある。
【0076】
本明細書において使用された、「組換え」という用語は、人為的介入により遺伝子操作された(すなわち、外因性核酸分子若しくは異種核酸分子の導入により改変された)細胞、微生物、核酸分子若しくはベクターを指す、又は内因性核酸分子若しくは内因性遺伝子の発現が、制御される、脱調節される、又は構成的とされるように、変更された細胞若しくは微生物を指す。人為的に作出された遺伝子変更は、例えば、1つ以上のタンパク質若しくは酵素をコードする核酸分子(プロモーターなどの発現制御エレメントを含みうる)を導入する改変、又は他の核酸分子の付加、欠失、置換、又は細胞の遺伝物質に対する、他の機能的な破壊若しくは付加を含みうる。例示的な改変は、参照分子又は親分子に由来する異種ポリペプチド又は相同ポリペプチドのコード領域内又はその機能的断片内の改変を含む。
【0077】
結合性タンパク質
本明細書において使用された、「結合性タンパク質」とは、標的(例えば、スミスタンパク質又はこれの断片、スミスタンパク質断片:MHC複合体)と、特異的に、かつ、非共有結合的に、会合する、一体化する、又は組み合わされる能力を保有するタンパク質性分子又はその一部(例えば、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質)を指す。結合性タンパク質は、精製される場合もあり、実質的に精製される場合もあり、合成の場合もあり、組換えの場合もある。例示的な結合性タンパク質は、単鎖免疫グロブリン可変領域(例えば、scTCR、scFv)を含む。
【0078】
ある特定の実施形態において、本発明の結合性タンパク質のうちのいずれかは、それらのうちのいずれかが、キメラTCRの場合もあり、ヒト化TCRの場合もあり、ヒトTCRの場合もある、各T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体又はTCRの抗原結合断片である。さらなる実施形態において、TCRの抗原結合断片は、単鎖TCR(scTCR)又はキメラ抗原受容体(CAR)を含む。ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、TCRである。
【0079】
「T細胞受容体」(TCR)とは、MHC受容体に結合した抗原ペプチドに特異的に結合することが可能な、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー(可変結合性ドメイン、定常ドメイン、膜貫通領域及び短い細胞質テールを有する;例えば、Janewayら、「Immunobiology:The Immune System in Health and Disease」、3版、Current Biology Publications、4~33頁、1997を参照されたい)を指す。TCRは、細胞の表面上に見出される場合もあり、可溶性形態において見出される場合もあり、一般に、α(アルファ)鎖及びβ(ベータ)鎖(それぞれ、TCRα及びTCRβとしてもまた公知である)又はγ鎖及びδ鎖(それぞれ、TCRγ及びTCRδとしてもまた公知である)を有するヘテロ二量体から構成される。免疫グロブリンと同様に、TCR鎖の細胞外部分(例えば、α鎖、β鎖)は、N末端における可変ドメイン(例えば、α鎖可変ドメイン又はVα、β鎖可変ドメイン又はVβ;典型的に、Kabatによる番号付けに基づく、アミノ酸1~116;Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、US Dept.Health and Human Services、Public Health Service National Institutes of Health、1991、5版)及び細胞膜に隣接する、1つの定常ドメイン(例えば、α鎖定常ドメイン又はCα、典型的に、Kabatに基づく、アミノ酸117~259、β鎖定常ドメイン又はCβ、典型的に、Kabatに基づく、アミノ酸117~295)である、2つの免疫グロブリンドメインを含有する。これもまた、免疫グロブリンと同様に、可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)により隔てられた相補性決定領域(CDR)を含有する(例えば、Joresら、Proc.Nat’lAcad.Sci.U.S.A.、57:9138、1990;Chothiaら、EMBO J.、7:3745、1988を参照されたい;また、Lefrancら、Dev.Comp.Immunol.、27:55、2003も参照されたい)。ある特定の実施形態において、TCRは、T細胞(又はTリンパ球)の表面上に見出され、CD3複合体と会合する。本開示において使用されたTCRの供給源は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ又は他の哺乳動物など、多様な動物種に由来しうる。
【0080】
前述の実施形態のうちのいずれかにおいて、本開示は、アルファ鎖(α鎖)及びベータ鎖(β鎖)を含み、TCRが、スミスタンパク質、Ro60タンパク質又はMPOタンパク質の断片と、HLA-DR3又はHLA-DR4分子との複合体に結合し、高アフィニティー操作T細胞受容体(TCR)の使用を提示する。ある特定の実施形態において、Vベータ鎖は、TRBV3、TRBV4、TRBV5、TRBV6、TRBV7、TRBV11、TRBV19、TRBV20、TRBV24若しくはTRBV28の対立遺伝子を含む、又はこれに由来する。さらなる実施形態において、Vアルファ鎖は、TRAV1、TRAV2、TRAV3、TRAV4、TRAV8、TRAV9、TRAV12、TRAV14、TRAV17、TRAV21、TRAV23、TRAV25、TRAV26、TRAV27、TRAV29、TRAV38、TRAV39若しくはTRAV40の対立遺伝子を含む、又はこれに由来する。特定の実施形態において、本発明に従う使用のための結合性タンパク質は、(a)TRBV11の対立遺伝子(好ましくは、TRBV11-2)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV9の対立遺伝子(好ましくは、TRAV9-2)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(b)TRBV6の対立遺伝子(好ましくは、TRBV6-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV25の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(c)TRBV7の対立遺伝子(好ましくは、TRBV7-9)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV29の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(d)TRBV28の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV23の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(e)TRBV7の対立遺伝子(好ましくは、TRBV7-9)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV26の対立遺伝子(好ましくは、TRAV26-1)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(f)TRBV7の対立遺伝子(好ましくは、TRBV7-3)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV8の対立遺伝子(好ましくは、TRAV8-6)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(g)TRBV20の対立遺伝子(好ましくは、TRBV20-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV9の対立遺伝子(好ましくは、TRAV9-2)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(h)TRBV3の対立遺伝子(好ましくは、TRBV3-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV2の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(i)TRBV4の対立遺伝子(好ましくは、TRBV4-2)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV17の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(j)TRBV4の対立遺伝子(好ましくは、TRBV4-2)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV27の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(k)TRBV6の対立遺伝子(好ましくは、TRBV6-5)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV2の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖を含む。
【0081】
さらなる実施形態において、本発明に従う使用のための結合性タンパク質は、(a)TRBV20の対立遺伝子(好ましくは、TRBV20-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV38の対立遺伝子(好ましくは、TRAV38-1)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(b)TRBV6の対立遺伝子(好ましくは、TRBV6-4)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV1の対立遺伝子(好ましくは、TRAV1-2)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(c)TRBV6の対立遺伝子(好ましくは、TRBV6-4)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV4の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(d)TRBV4の対立遺伝子(好ましくは、TRBV4-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV17の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(e)TRBV5の対立遺伝子(好ましくは、TRBV5-4)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV21の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(f)TRBV28の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV27の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(g)TRBV24の対立遺伝子(好ましくは、TRBV24-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV1の対立遺伝子(好ましくは、TRAV1-1)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖を含む。
【0082】
任意の態様又は実施形態において、本発明に従う使用のための結合性タンパク質は、(a)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-7)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ47の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(b)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-3)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ54の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(c)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ48の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(d)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ44の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(e)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-5)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ38の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(f)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ22の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(g)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-7)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ11の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(h)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ8の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(i)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-3)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ45の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(j)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-3)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ49の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(k)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-2)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ7の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖を含む。
【0083】
任意の態様又は実施形態において、本発明に従う使用のための結合性タンパク質は、(a)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-4)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ48の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(b)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-5)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ48の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(c)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ48の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(d)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-7)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ48の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(e)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ88の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(f)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-2)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ12の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(g)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-2)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ3の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(h)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-3)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ9の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(i)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ28の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(j)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-2)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ41の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(k)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ9の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖を含む。
【0084】
前述の実施形態のうちのいずれかにおいて、本開示は、アルファ鎖(α鎖)及びベータ鎖(β鎖)を含み、TCRが、スミスタンパク質又はRo60タンパク質の断片と、HLA-DR3分子との複合体に結合し、好ましくは、HLA-DR3分子が、HLA-DRA*01:01分子及びHLA-DRB1*03:01分子である、高アフィニティー操作T細胞受容体(TCR)を提示する。ある特定の実施形態において、Vベータ鎖は、TRB2、TRBV4、TRBV5、TRB6、TRB7、TRBV9、TRB10、TRBV11、TRB12、TRBV20、TRBV24、TRB27若しくはTRBV29の対立遺伝子を含む、又はこれに由来する。さらなる実施形態において、Vアルファ鎖は、TRAV1、TRAV2、TRAV8、TRAV9、TRAV10、TRAV12、TRAV20、TRAV26、TRAV30若しくはTRAV36の対立遺伝子を含む、又はこれに由来する。
【0085】
特定の実施形態において、本発明に従う使用のための結合性タンパク質は、(a)TRBV5の対立遺伝子(好ましくは、TRBV5-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV20の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(b)TRBV29の対立遺伝子(好ましくは、TRBV29-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV12の対立遺伝子(好ましくは、TRAV12-1)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(c)TRBV4の対立遺伝子(好ましくは、TRBV4-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV26の対立遺伝子(好ましくは、TRAV26-2)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(d)TRBV4の対立遺伝子(好ましくは、TRBV4-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV30の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(e)TRBV4の対立遺伝子(好ましくは、TRBV4-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV36の対立遺伝子(好ましくは、TRAV36DV7)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(f)TRBV24の対立遺伝子(好ましくは、TRBV24-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV12の対立遺伝子(好ましくは、TRAV12-1)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(g)TRBV11の対立遺伝子(好ましくは、TRBV11-2)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV12の対立遺伝子(好ましくは、TRAV12-3)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(h)TRBV20の対立遺伝子(好ましくは、TRBV20-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV9の対立遺伝子(好ましくは、TRAV9-2)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(i)TRBV9の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV9の対立遺伝子(好ましくは、TRAV9-2)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(j)TRBV20の対立遺伝子(好ましくは、TRBV20-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV12の対立遺伝子(好ましくは、TRAV12-1)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖を含む。
【0086】
さらなる実施形態において、本発明に従う使用のための結合性タンパク質は、(a)TRBV27の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV12の対立遺伝子(好ましくは、TRAV12-1)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(b)TRBV6の対立遺伝子(好ましくは、TRBV6-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV1の対立遺伝子(好ましくは、TRAV1-2)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(c)TRBV7の対立遺伝子(好ましくは、TRBV7-9)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV12の対立遺伝子(好ましくは、TRAV12-2)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(d)TRBV2の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV8の対立遺伝子(TRAV8-3)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(e)TRBV8の対立遺伝子(好ましくは、TRBV8-3)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV5の対立遺伝子(好ましくは、TRAV5-1)を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(f)TRBV7の対立遺伝子(好ましくは、TRBV7-9)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV10の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(g)TRBV7の対立遺伝子(好ましくは、TRBV7-9)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV19の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(h)TRBV10の対立遺伝子(好ましくは、TRBV10-3)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV2の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(i)TRBV12の対立遺伝子(好ましくは、TRBV12-4)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAV20の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖を含む。
【0087】
ある特定の実施形態において、Vベータ鎖は、TRBJ1若しくはTRBJ2の対立遺伝子を含む、又はこれに由来する。さらなる実施形態において、Vアルファ鎖は、TRAJ3、TRAJ6、TRAJ9、TRAJ13、TRAJ17、TRAJ23、TRAJ27、TRAJ28、TRAJ31、TRAJ33、TRAJ37、TRAJ42、TRAJ45、TRAJ47、TRAJ48、TRAV49若しくはTRAV54の対立遺伝子を含む、又はこれに由来する。
【0088】
特定の実施形態において、本発明に従う使用のための結合性タンパク質は、(a)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ6の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(b)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-5)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ45の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(c)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-2)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ54の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(d)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ28の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(e)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ49の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(f)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-2)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ48の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(g)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-2)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ17の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(h)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-7)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ27の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(i)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ37の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(j)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ3の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖を含む。
【0089】
特定の実施形態において、本発明に従う使用のための結合性タンパク質は、(a)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-2)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ9の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(b)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-7)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ33の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(c)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ49の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(d)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-6)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ13の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(e)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ23の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(f)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ47の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(g)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-7)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ42の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(h)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-1)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ47の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(i)TRBJ2の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ2-5)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ31の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖;(j)TRBJ1の対立遺伝子(好ましくは、TRBJ1-4)を含む、又はこれに由来するVベータ鎖及びTRAJ47の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖を含む。
【0090】
任意の態様又は実施形態において、本発明の結合性タンパク質は、TRBD1若しくはTRBD2の対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVベータ鎖を含む。
【0091】
任意の態様又は実施形態において、本発明の結合性タンパク質は、TRC1若しくはTRBC2の対立遺伝子を含む、若しくはこれに由来するVベータ鎖及びTRACの対立遺伝子を含む、又はこれに由来するVアルファ鎖を含む。
【0092】
本発明の任意の態様において、結合性タンパク質は、Vαドメインを含むVα鎖及びVβドメインを含むVβ鎖を含む。好ましくは、Vα鎖及びVβ鎖は、さらなる鎖間ジスルフィド結合の形成を可能とするシステイン残基を含むように修飾される。Vα鎖及びVβ鎖の各々へと導入されたシステインは、細胞内において発現された場合に、内因性TCR Vα鎖及び内因性TCR Vβ鎖を発現させる、Vα鎖とVβ鎖との優先的対合を可能とする。好ましくは、TCRα鎖上のThr48における残基又はこれと同等な残基、及びTCRβ鎖上のSer57における残基又はこれと同等な残基は、TCRの定常領域の間における、さらなるジスルフィド結合の創出を容易とするように、システインにより置換される。この修飾は、導入されたTCRの優先的対合を可能とし、内因性TCRとの誤対合を低減する。これは、制御性T細胞が、外因性TCRを発現するように改変される養子細胞療法に、特に有益である。
【0093】
例を目的として述べると、組換えにより作製された可溶性TCRを分離及び精製するために有用な方法は、組換え可溶性TCRを培養培地へと分泌する、適切な宿主細胞/ベクター系から上清を得て、次いで、市販のフィルターを使用して培地を濃縮するステップを含みうる。濃縮の後、濃縮物は、アフィニティーマトリックス又はイオン交換樹脂など、単一の適切な精製マトリックス又は一連の適切なマトリックスへと適用されうる。組換えポリペプチドをさらに精製するのに、1つ以上の逆相HPLCステップが利用されうる。これらの精製法はまた、免疫原を、その天然環境から分離する場合にも利用されうる。本明細書において記載される単離/組換え可溶性TCRのうちの1つ以上の、大スケールにおける作製のための方法は、適切な培養条件を維持するようにモニタリング及び制御される、バッチ式細胞培養法を含む。可溶性TCRの精製は、本明細書において記載され、当技術分野において公知である方法に従い実施されうる。
【0094】
本明細書において記載される、SmB/B’特異的結合性タンパク質又はSmB/B’特異的結合性ドメイン(例えば、配列番号11~24及びこれらの変異体)は、T細胞活性についてアッセイするための、当技術分野において許容された多数の方法であって、T細胞の結合、活性化又は誘導の決定を含み、また、抗原特異的であるT細胞応答の決定も含む方法のうちのいずれかに従い、機能的に特徴付けられうる。例は、T細胞の増殖、T細胞によるサイトカインの放出、抗原特異的T細胞の刺激、T細胞のMHC拘束性刺激、CTL活性(例えば、プレロードされた標的細胞からのCrの放出を検出することによる)、T細胞表現型マーカー発現の変化及びT細胞機能についての他の尺度の決定を含む。これらのアッセイ及び同様のアッセイを実施するための手順は、例えば、Lefkovits(「Immunology Methods Manual:Comprehensive Sourcebook of Techniques」、1998)において見出されうる。また、「Current Protocols in Immunology」;Weir、「Handbook of Experimental Immunology」、Blackwell Scientific、Boston、MA(1986);Mishell及びShigii(編)、「Selected Methods in Cellular Immunology」、Freeman Publishing、San Francisco、CA(1979);Green及びReed、Science、281:1309(1998)並びにこれらの中で引用されている参考文献も参照されたい。
【0095】
Sm(スミス)タンパク質及び類縁の核内リボ核タンパク質(nRNP)は、SLEにおける自己抗体のための標的である。これらの抗原は、低分子RNAを含有するペプチドから構成された、スプライセオソームと呼ばれた、細胞内の細胞小器官内に存在する。抗Sm抗体は、SLEを伴う患者のうちの15~30%において存在するが、SLEに高度に特異的である。Smタンパク質の多くは、SLEを伴う、若齢の黒人女性において、高頻度(60%)により生じる。健常個体又は他の疾患を伴う患者において、Smタンパク質は、ほぼ全く生じない。抗Sm抗体は、自己免疫性肝疾患において検出された、抗平滑筋抗体と混同されるべきではない。
【0096】
Sm抗原及び核内リボ核タンパク質(RNP)抗原は、核内低分子RNA(U-RNA)及びタンパク質から構成された、粒子状複合体である。この複合体はまた、生理食塩液中において可溶性であるので、ENA(extractable nuclear antigens)とも称されている。全身性エリテマトーデス及び混合性結合組織疾患において、これらの抗原に対する自己抗体が生じる。複合体内に存在するタンパク質の中に、タンパク質である、「SmB/B’」及び「SmD」がある。
【0097】
本明細書において使用された、SmB/B’とは、ヒトにおいて、SNRPB遺伝子によりコードされるタンパク質である、「核内低分子リボヌクレオタンパク質関連タンパク質B及びB’」と称するリボヌクレオタンパク質を指す。SmB/B’はまた、別称:COD、SNRPB1、snRNP-B、CCMS並びに低分子核内リボ核タンパク質ポリペプチドB及びB1によっても言及されうる。
【0098】
SNRPB遺伝子によりコードされたタンパク質は、低分子リボ核タンパク質粒子(snRNP)U1、U2、U4/U6及びU5の間において共通に見出された、いくつかの核内タンパク質のうちの1つである。これらのsnRNPは、プレmRNAのスプライシングに関与し、コードされたタンパク質もまた、プレmRNAのスプライシング又はsnRNPの構造において、役割を果たしうる。この遺伝子について、異なるアイソフォーム(B及びB’)をコードする、2つの転写物変異体が見出されている。
【0099】
Sm複合体の9つのコアタンパク質の全てが、抗Sm自己免疫応答の標的であるが、最も高頻度において、Bポリペプチド及びDポリペプチドがこの標的である。
【0100】
本明細書において使用された、「Ro60」とは、RNA結合性タンパク質である、60kDaのSS-A/Roリボヌクレオタンパク質を指す。60kDaの自己抗原であるRoは、2つの全身性リウマチ性疾患である全身性エリテマトーデス及びシェーグレン症候群を患う患者における免疫応答の主要な標的である。ループス患者において、抗Ro抗体は、光過敏性皮膚病変並びに抗Ro抗体を伴う母体が、光過敏性皮膚病変及び心伝導障害である、第3度心ブロックを伴う小児を出産する症候群である、新生児性ループスと関連する。脊椎動物細胞内において、Roタンパク質は、Y RNAとして公知である、機能が未詳の低分子RNAに結合する。Roの細胞内における機能は、長期にわたり謎であったが、近年における研究は、Roが、2つの顕著に異なる過程:低分子RNAの品質管理及び紫外線照射への曝露の後における細胞生存の増強に関与すると示唆している。極めて興味深いことに、Roタンパク質を欠くマウスが、患者における全身性エリテマトーデスと一部の特徴を共有する自己免疫症候群を発症することは、Roの正常機能が、この自己免疫疾患の予防のために重要でありうることを示唆する。
【0101】
本明細書において使用された、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)は、ヒトにおいて、第17染色体上におけるMPO遺伝子によりコードされる酵素であるペルオキシダーゼである。MPOは、好中性顆粒球内において最も豊富に発現し、次亜塩素酸を含む次亜ハロゲン酸をもたらす。MPOは、好中球のアズール顆粒内に貯蔵され、分解時に、細胞外腔へと放出されるリソソームタンパク質である。MPOに対する抗体は、多様な種類の血管炎、最も顕著には、臨床的に、かつ、病理学的に認知された、3つの形態:多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)及び好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)に関与する。
【0102】
養子細胞療法を含む投与のための細胞
本発明は、細胞、特に、本明細書において記載されたTCRを発現するTreg細胞を投与するステップを含む治療法を提供する。Treg細胞は、T細胞の集団により施される場合もあり、細胞の混合集団により施される場合もある。
【0103】
ある特定の実施形態において、本明細書において記載された結合性タンパク質をコードする核酸分子は、養子移入療法における使用のための宿主細胞(例えば、Treg細胞)にトランスフェクトする/これへと形質導入するのに使用される。本文献の別の箇所において、前記結合性タンパク質をコードする核酸について記載されている。
【0104】
本発明は、SmB/B’、SmD、Ro60及びMPOのうちの1つ以上に対する異常な免疫応答により特徴付けられる自己免疫疾患の治療における使用のための制御性T細胞の集団を調製する方法であって、
・ 制御性T細胞の集団を用意するステップ;
・ 本明細書において記載されたTCRをコードする核酸又はベクターを、制御性T細胞の集団へと導入するステップ;
・ 制御性T細胞の表面における、TCRの発現を可能とする条件をもたらすステップ
を含み、
これにより、SmB/B’、SmD、Ro60及びMPOのうちの1つ以上に対する異常な免疫応答により特徴付けられる自己免疫疾患の治療における使用のための制御性T細胞の集団を調製する
方法を提供する。
【0105】
本発明はまた、対象におけるSmB/B’、SmD、Ro60及びMPOのうちの1つ以上に対する異常な免疫応答により特徴付けられる自己免疫疾患を治療するための方法であって、
対象に、細胞表面においてT細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα又はVアルファ)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ又はVベータ)ドメインを含む結合性タンパク質であって、本明細書において記載された通りである結合性タンパク質を発現する、有効量の制御性T細胞を投与するステップ
を含み、
これにより、対象におけるSmB/B’、SmD、Ro60及びMPOのうちの1つ以上に対する異常な免疫応答により特徴付けられる自己免疫疾患を治療する
方法も提供する。
【0106】
さらに、本発明は、SmB/B’、SmD、Ro60及びMPOに特異的であり、かつ、制御性T細胞の少なくとも1つの特性を呈するT細胞の集団を、エクスビボにおいて調製する方法であって、
・ 制御性T細胞の少なくとも1つの特性を呈するT細胞の集団を用意するステップ;
・ 本明細書において記載された核酸又はベクターを、T細胞の集団へと導入するステップであって、核酸又はベクターが、本明細書において記載された結合性タンパク質をコードする、ステップ;
・ T細胞の表面における、結合性タンパク質の発現を可能とする条件をもたらすステップ
を含み、
これにより、SmB/B’、SmD、Ro60及びMPOに特異的であり、かつ、制御性T細胞の少なくとも1つの特性を呈するT細胞の集団を、エクスビボにおいて調製する
方法に関する。好ましくは、制御性T細胞の、少なくとも1つの特性を呈するT細胞は、SLEを有する対象に由来する生物学的試料に由来する。
【0107】
本発明の方法又は使用において使用された、制御性T細胞の少なくとも1つの特性を呈するT細胞は、健常対象から選択されうる。T細胞は、組織適合性ドナーから分離されうる。
【0108】
T細胞は、体細胞から再プログラム化される場合もあり、iPSC又は他の幹細胞から分化する場合もある。
【0109】
別の態様では、本発明は、対象における、SmB/B’、SmD、Ro60又はMPOタンパク質に対する、異常な、望ましくない、又は他の形において不適切な免疫応答と関連する状態を治療又は予防する方法であって、
・ 制御性T細胞の少なくとも1つの特性を呈するT細胞の集団を用意するステップ;
・ 本明細書において記載された結合性タンパク質をコードする核酸又はベクターを、T細胞の集団へと導入するステップ;
・ T細胞の表面における、結合性タンパク質の発現を可能とする条件をもたらすステップ;
・ それらの表面において結合性タンパク質を発現するT細胞を投与するステップ
を含み、
これにより、対象における状態を治療又は予防する
方法を提供する。
【0110】
代替的実施形態において、本発明は、タンパク質である、SmB/B’、SmD、Ro60及びMPOに特異的であり、かつ、制御性T細胞の少なくとも1つの特性を呈するT細胞の集団を、エクスビボにおいて調製する方法であって、
・ 通常型T細胞の、少なくとも1つの特性を呈するT細胞の集団を用意するステップであって、任意選択的に、T細胞の集団が、T細胞の混合集団である、ステップ;
・ 核酸又はベクターを、T細胞の集団へと導入するステップであって、核酸又はベクターが、本明細書において記載された結合性タンパク質をコードする、ステップ;
・ T細胞の表面における、結合性タンパク質の発現を可能とする条件をもたらすステップ;
・ T細胞の集団の、制御性T細胞への転換を可能とする条件をもたらすステップ
を含み、
これにより、制御性T細胞の少なくとも1つの特性を呈し、かつ、タンパク質である、SmB/B’、SmD、Ro60及びMPOに特異的であるT細胞の集団を、エクスビボにおいて調製する
方法を提供する。
【0111】
任意の実施形態において、通常型T細胞又は混合T細胞集団の、制御性T細胞への転換を可能とするための条件は、通常型T細胞若しくは混合T細胞集団を、1つ以上の薬剤と接触させること又は通常型T細胞の、制御性T細胞への転換に適する、1つ以上の因子の発現を増大させることを含みうる。1つ以上の薬剤又は因子は、TGF-β、Foxp3又はこれらの発現を増大させるための薬剤を含みうる。
【0112】
ある特定の実施形態において、SmB/B’、SmD、Ro60及びMPOに由来し、表1において列挙された、本明細書において記載された1つ以上のペプチドは、ペプチドに対する特異性を有するT細胞(例えば、Treg細胞)を作出するために、T細胞の集団を活性化させ、かつ/又はこれらを拡大するのに使用されうる。例えば、本発明は、本明細書において記載された自己免疫疾患の治療における使用のための制御性T細胞の集団を調製する方法であって、
i)制御性T細胞の集団を、本明細書の表1において列挙されたペプチドである、SmD、SmB/B’、Ro60又はMPOから選択される、第1のペプチドの存在下、第1のペプチドにより活性化される亜集団の拡大を可能とする条件下において、これに十分な時間にわたり培養するステップ;
ii)i)において得られた制御性T細胞の亜集団を、本明細書の表1において列挙されたペプチドである、SmD、SmB/B’、Ro60又はMPOから選択される、第2のペプチドの存在下、第1のペプチド及び第2のペプチドにより活性化される亜集団の拡大を可能とする条件下において、これに十分な時間にわたり培養するステップ
を含み、
これにより、本明細書において記載された自己免疫疾患の治療における使用のための制御性T細胞の集団を調製する
方法を提供する。任意選択的に、方法は、第1のペプチド及び第2のペプチドにより活性化された、制御性T細胞の亜集団を、本明細書の表1において列挙された、ペプチドである、SmD、SmB/B’、Ro60又はMPOから選択される、第3のペプチド又は第4のペプチドの存在下において培養し、これにより、4つのペプチド全てにより活性化されるTregの亜集団を得ることを含むステップをさらに含む。第1のペプチドと、第2のペプチドとは、異なる、例えば、異なるタンパク質に由来する(そして、方法が、第3のペプチド又は第4のペプチドを含む場合、これらは、第1のペプチド及び第2のペプチドが由来するタンパク質と異なるタンパク質に由来する。)。
【0113】
一実施形態において、第1のペプチドは、Ro60タンパク質に由来し(例えば、ペプチドは、配列番号5、6若しくは7に示すアミノ酸配列を含みうる、又はこれからなりうる)、第2のペプチドは、スミスタンパク質に由来する(例えば、ペプチドは、配列番号1、2、3若しくは4に示すアミノ酸配列を含みうる、又はこれからなりうる)。任意選択的に、第3のペプチドは、MPOタンパク質に由来する(例えば、ペプチドは、配列番号8、9若しくは10に示すアミノ酸配列を含みうる、又はこれからなりうる)、又は第2のペプチドが、SmD1に由来する(例えば、ペプチドは、配列番号1若しくは2に示すアミノ酸配列を含みうる、又はこれからなりうる)場合、第3のペプチドは、SmB/B’に由来しうる(例えば、ペプチドは、配列番号3若しくは4に示すアミノ酸配列を含みうる、又はこれからなりうる)。
【0114】
一実施形態において、第1のペプチドは、Ro60タンパク質に由来し(例えば、ペプチドは、配列番号5、6若しくは7に示すアミノ酸配列を含みうる、又はこれからなりうる)、第2のペプチドは、MPOタンパク質に由来する(例えば、ペプチドは、配列番号8、9若しくは10に示すアミノ酸配列を含みうる、又はこれからなりうる)。任意選択的に、第3のペプチドは、スミスタンパク質である(例えば、ペプチドは、配列番号1、2、3若しくは4に示すアミノ酸配列を含みうる、又はこれからなりうる)。
【0115】
一実施形態において、第1のペプチドは、スミスタンパク質に由来し(例えば、ペプチドは、配列番号1、2、3若しくは4に示すアミノ酸配列を含みうる、又はこれからなりうる)、第2のペプチドは、MPOタンパク質に由来する(例えば、ペプチドは、配列番号8、9若しくは10に示すアミノ酸配列を含みうる、又はこれからなりうる)。任意選択的に、第3のペプチドは、Ro60タンパク質に由来する(例えば、ペプチドは、配列番号5、6若しくは7に示すアミノ酸配列を含みうる、又はこれからなりうる)、又は第1のペプチドが、SmD1に由来する(例えば、ペプチドは、配列番号1若しくは2に示すアミノ酸配列を含みうる、又はこれからなりうる)場合、第3のペプチドは、SmB/B’に由来しうる(例えば、ペプチドは、配列番号3若しくは4に示すアミノ酸配列を含みうる、又はこれからなりうる)。
【0116】
TCRシーケンシングの進歩については、記載されており(例えば、Robinsら、Blood、114:4099、2009;Robinsら、Sci.Translat.Med.、2:47~64、2010;Robinsら(9月10日)、J.Imm.Meth.、Epub速報版、2011;Warrenら、Genome Res.、2、1:790、2011)、本開示に従う実施形態の実施の過程において利用されうる。同様に、T細胞に所望の核酸をトランスフェクトする方法/所望の核酸をT細胞へと形質導入する方法については、所望の抗原特異性を有するT細胞を使用する養子移入手順(例えば、Schmittら、Hum.Gen.、20:1240、2009;Dossettら、Mol.Ther.、77:742、2009;Tillら、Blood、772:2261、2008;Wangら、Hum.Gene Ther.、75:712、2007;Kuballら、Blood、709:2331、2007;US2011/0243972;US2011/0189141;Leenら、Ann.Rev.Immunol.、25:243、2007)と同様に、記載されており(例えば、米国特許出願公開第2004/0087025号)、したがって、これらの方法の、本明細書において開示された実施形態への適応が、本発明の結合性タンパク質を対象とする教示を含む、本明細書における教示に基づき想定される。
【0117】
制御性T(Treg)細胞を含む細胞集団は、末梢血、胸腺、リンパ節、脾臓及び骨髄など、Treg細胞が存在する、任意の供給源に由来しうる。
【0118】
Treg細胞を含む細胞集団はまた、混合T細胞集団又は通常型T細胞の集団にも由来しうる。本明細書において記載された通り、混合集団又は通常型T細胞は、T細胞内のSm抗原特異性をエンリッチするように、本発明のペプチドと接触されうる。代替的に、本発明の結合性タンパク質をコードする核酸が、混合集団又は通常型T細胞へと形質導入される場合もある。次いで、T細胞は、Treg細胞の作出のための、当業者に公知の標準的技法を使用して、Treg細胞へと転換されうる。ある特定の実施形態において、混合T細胞集団又は通常型T細胞は、TGF-ベータ、Foxp3の発現の増大を可能とする条件下において培養される。これは、抗CD3/抗CD28抗体を伴う細胞の培養、高用量のIL-2、TGF-ベータ及びラパマイシンによる、CDK8/19の阻害を含む。さらなる実施形態において、転換又はエンリッチされたTreg細胞集団は、安定化される(例えば、細胞を、ビタミンC又はTregを安定化させるための他の薬剤と接触させることにより)。
【0119】
注入のために使用されたTreg細胞(又は、実際に、Tregを作出するのに使用された、Tconv若しくは混合T細胞集団)は、同種ドナー、好ましくは、HLAマッチドナーから分離される場合もあり、スミスタンパク質に対する、異常な、望ましくない、又は他の形において不適切な免疫応答と関連する状態を伴うと診断された対象から分離される場合もある。好ましくは、状態は、SLEである。
【0120】
T細胞はまた、人工多能性幹細胞(iPSC)又は胚性幹細胞、好ましくは、胚性幹細胞系の分化からも作出されうる。当業者は、iPSCを含む幹細胞から、Treg細胞を作出するための標準的技法に精通している。これらの技法の例については、Hagueら(2012)、J.Immunol.、189:2338~36;及びHagueら、(2019)JCI Insight、4:pii 126471において記載されている。
【0121】
さらになお、混合T細胞集団の文脈において、当業者は、CD4+ CD25+ T細胞(Treg細胞)であるT細胞の亜集団を分離するための標準的技法に精通している。例えば、CD4+ CD25+ T細胞(Treg細胞)は、陰性免疫選択及び陽性免疫選択並びに細胞分取により、対象に由来する生物学的試料から得られうる。
【0122】
本発明の任意の方法において、核酸又はベクターの存在下において培養されたTreg細胞は、細胞が得られた、同じ対象へと移入されうる。言い換えると、本発明の方法において使用された細胞は、自家細胞でありうる、すなわち、医学的状態が治療又は予防される対象から得られうる。代替的に、細胞は、別の対象へと、同種移入される場合もある。好ましくは、細胞は、対象における医学的状態を治療又は予防する方法における対象に対して、自家細胞である。
【0123】
本明細書において使用された、「エクスビボ」又は「エクスビボ療法」という用語は、細胞が、患者又は適切な同種ドナーなど、適切な代替的供給源から得られ、改変細胞が、改変細胞によりもたらされる治療的利益により改善される疾患を治療するのに使用されうるように、改変された治療を指す。治療は、改変細胞の、患者への投与又は再導入を含む。エクスビボ療法の利益は、患者を、治療に由来する、所望されない副作用へと曝露せずに、患者に、治療の利益をもたらす能力である。
【0124】
「投与された」という用語は、治療有効用量の、それぞれの細胞を含む前述の組成物の、個体への投与を意味する。「治療有効量」とは、それが投与された目的の効果をもたらす用量を意味する。正確な用量は、治療の目的に依存し、公知の技法を使用して、当業者により確認可能である。当技術分野において公知であり、上記において記載された通り、局所送達と対比した全身送達、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食餌、投与回数、薬物の相互作用及び状態の重症度についての補正が必要な場合があり、規定の実験を伴い、当業者により確認可能である。
【0125】
「エンリッチされた」又は「精製された」細胞集団とは、特定の細胞の、他の細胞に対する比、例えば、対象の体内において見出された細胞と比較した比又は本発明のペプチド、核酸若しくはベクターへの曝露の前における比と比較した比の増大である。一部の実施形態の、エンリッチ又は精製された細胞集団内において、特定の細胞は、全細胞集団のうちの、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%又は99%を含む。細胞集団は、1つ以上の細胞表面マーカー及び/又は特性により規定されうる。
【0126】
本明細書において記載された結合性タンパク質を発現するTreg細胞は、例えば、注入(injection、infusion)、沈着、植込み、経口摂取若しくは局所投与又はこれらの任意の組合せを含む、任意の方法により、対象へと投与されうる。注入(injection)は、例えば、静脈内注入、筋内注入、皮内注入、皮下注入又は腹腔内注入、好ましくは、静脈内注入でありうる。単回投与又は複数回投与は、不要な実験を伴わずに、当業者により決定されうる通り、状態、その重症度及び対象の全般的な健康状態に応じて、所与の時間にわたり投与されうる。注入(injection)は、複数の位置において施されうる。
【0127】
Treg細胞の投与は、単独の場合もあり、他の治療剤と組み合わされる場合もある。各用量は、CD8+ Treg細胞約10×103個、細胞20×103個、細胞50×103個、細胞100×103個、細胞200×103個、細胞500×103個、細胞1×106個、細胞2×106個、細胞20×106個、細胞50×106個、細胞100×106個、細胞200×106個、細胞500×106個、細胞1×109個、細胞2×109個、細胞5×109個、細胞10×109個などを含みうる。投与頻度は、例えば、毎週1回、毎週2回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、毎月1回、2カ月ごとに1回、3カ月ごとに1回、4カ月ごとに1回、5カ月ごとに1回、6カ月ごとに1回などでありうる。投与が行われる総日数は、1日間、2日間又は3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20日間などでありうる。施される任意の投与は、同じ日における、2回以上の注入を伴いうることが理解される。投与のために、投与されるTreg細胞のうちの、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%は、Treg細胞の、少なくとも1つの特性を呈する。
【0128】
本明細書において記載されたTregは、自己抗原、特に、SmD、SmB/B’、Ro60又はMPOタンパク質に対する、異常な免疫応答を抑制するために有用である。Treg又は混合Tregの集団は、SmD、SmB/B’、Ro60又はMPOタンパク質のうちの1つ以上に対する、異常な免疫応答により特徴付けられる自己免疫疾患を治療するための、任意の許容されたプロトコールに加えて投与される場合もあり、これらの代わりに投与される場合もある。
【0129】
ある特定の症例において、免疫抑制剤の投与は、Tregの投与の後において減量される。免疫抑制剤の用量は、Treg又は混合Tregの集団の投与の後において、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少されうる。一部の例において、免疫抑制剤の用量は、Treg又は混合Tregの集団による治療の後において、約50%減量される。別の例において、免疫抑制剤の投与は、Treg又は混合Tregの集団の投与の後において停止される。
【0130】
本明細書において記載されたTregは、他の公知の薬剤及び療法と組み合わせて使用されうる。本明細書において使用された、「組合せ」投与とは、対象の障害(例えば、疾患又は状態)への罹患の経過中に、2つ(以上)の異なる治療が、対象へと送達されることを意味する、例えば、2つ以上の治療は、対象が、障害を伴うと診断された後において、かつ、障害が治癒若しくは消失する、又は治療が他の理由のために停止される前において送達される。一部の実施形態において、投与に関して重複が存在するように、1つの治療の送達がなおもなされつつある時点において、第2の治療の送達が始まる。本明細書において、これは、場合によって、「同時的」送達又は「共時的」送達と称される。他の実施形態において、1つの治療の送達は、他の治療の送達が始まる前に終了する。いずれの場合についても、一部の実施形態において、治療は、組合せ投与のためにより有効である。例えば、第2の治療は、より有効である、例えば、より少量の第2の治療により、同等の効果が見られる、若しくは第2の治療が、第1の治療の非存在下において投与された場合に見られるより、大きな程度において症状を軽減する、又は第1の治療に関しても、類似の状況が見られる。一部の実施形態において、送達は、症状の軽減又は障害と関連する他のパラメータが、他の治療の非存在下において送達された1つの治療により観察される場合より増大するような送達である。2つの治療の効果は、部分的相加効果の場合もあり、完全な相加効果の場合もあり、相加効果より大きい場合もある。送達は、送達された第1の治療の効果が、第2の治療が送達された時点において、なおも検出可能であるような送達であり得る。本明細書において記載されたTregと、少なくとも1つのさらなる治療剤とは、同じ組成物又は個別の組成物により、同時に投与される場合もあり、又は逐次的に投与される場合もある。逐次的投与のために、Tregが、第1に投与され、さらなる薬剤が、第2に投与される場合もある。代替的に、投与の順序が逆の順序にされ、さらなる薬剤が、第1に投与され、Tregが、第2に投与される場合もある。Treg及び/又は他の治療剤、治療手順若しくは治療モダリティーは、障害の活動時に投与される場合もあり、疾患の寛解時に投与される場合もあり、疾患活動の低下時に投与される場合もある。Treg細胞療法は、別の治療の前に投与される場合もあり、治療と共時的に投与される場合もあり、治療後に投与される場合もあり、障害の寛解時に投与される場合もある。
【0131】
組み合わせて投与された場合、本明細書において記載されたTreg及びさらなる薬剤(例えば、第2の薬剤若しくは第3の薬剤)又はこれらの全ては、個別に、例えば、単剤療法として使用された各薬剤の量又は投与量より高量又は高用量において投与される場合もあり、これらより低量又は低用量において投与される場合もあり、これらと同量又は同投与量において投与される場合もある。ある特定の実施形態において、投与されたTreg、さらなる薬剤(例えば、第2の薬剤若しくは第3の薬剤)又はこれらの全ての量若しくは投与量は、個別に使用された各薬剤の量又は投与量より低量又は低用量(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%若しくは少なくとも50%低量又は低用量)である。他の実施形態において、所望の効果(例えば、がんの治療)を結果としてもたらす、Treg、さらなる薬剤(例えば、第2の薬剤若しくは第3の薬剤)又はこれらの全ての量若しくは投与量は、同じ治療効果を達成するのに、個別に必要とされた各薬剤の量又は投与量より低量又は低用量(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%若しくは少なくとも50%低量又は低用量)である。
【0132】
例えば、さらなる治療剤(複数可)は、自己免疫疾患(SLE、シェーグレン症候群、APA及び本明細書において記載された他の疾患)の治療のために一般に施される、1つ以上の免疫抑制剤を含みうる。免疫抑制剤(複数可)は、急性拒絶を予防するように、移植の直後に施される薬剤(例えば、メチルプレドニゾロン、アトガム、サイモグロブリン、バシリキシマブ若しくはアレムツズマブ)又は維持のために使用される免疫抑制剤(複数可)(例えば、プレドニゾン、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン若しくはタクロリムス)、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、シロリムス若しくはエベロリムス)でありうる。臓器移植の後において施される、他の免疫抑制剤は、CTLA-4融合タンパク質(例えば、ベラタセプト又はアバタセプト)、コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、又はプレドニゾロン)、細胞傷害性免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、クロランブシル、シクロホスファミド、メルカプトプリン、又はメトトレキサート)、免疫抑制性抗体(例えば、抗胸腺細胞グロブリン、バシリキシマブ、又はインフリキシマブ)、シロリムス誘導体(例えば、エベロリムス又はシロリムス)及び抗増殖薬剤(例えば、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸ナトリウム又はアザチオプリン)を含む。本明細書において記載された、本発明の使用に適する、さらなる免疫抑制剤は、当業者に公知であり、本発明は、この点において限定的ではない。
【0133】
自己免疫障害の治療又は予防のための、本明細書において記載された、有効量の治療剤(例えば、ドナーのアロ抗原又は自己抗原に特異的なTreg又は混合Tregの集団)は、標準的方法により、対象へと投与されうる。例えば、薬剤は、例えば、静脈内経路、腹腔内経路、筋内経路、皮内経路、皮下経路、経皮注射、経口経路、経皮(局所)経路、経動脈経路、腫瘍内経路、リンパ節内経路、髄内経路又は経粘膜経路を含む、多数の異なる経路のうちのいずれかにより投与されうる。
【0134】
一部の実施形態において、薬剤(例えば、Treg又は自己抗原に特異的なTregを含む混合Tregの集団)は、罹患組織へと、直接投与されうる(例えば、注射又は注入により)。一実施形態において、本明細書において記載された組成物は、体腔又は体液(例えば、腹水(ascites)、胸水、腹水(peritoneal fluid)若しくは脳脊髄液)へと投与される。例えば、治療剤(例えば、ドナーのアロ抗原若しくは自己抗原に特異的なTreg又は混合Tregの集団)は、注射又は注入、例えば、筋内注射若しくは筋内注入、皮下注射若しくは皮下注入、腹腔内注射若しくは腹腔内注入又は静脈内注射若しくは静脈内注入により投与されうる。所与の任意の症例における投与に最も適する経路は、投与される特定の薬剤、患者、治療される特定の疾患又は状態、医薬の製剤法、投与法(例えば、投与回数及び投与経路)、患者の年齢、体重、性別、治療される疾患の重症度、患者の食餌及び患者の排泄率に依存する。薬剤(例えば、ドナーのアロ抗原若しくは自己抗原に特異的なTreg又は混合Tregの集団)は、選び出された部位への送達のために、カプセル化される場合もあり、例えば、粘性形態において、注射される場合もある。薬剤は、薬剤を、選び出された部位へと送達することが可能なマトリックスにより施されうる。マトリックスは、薬剤の徐放をもたらし、細胞浸潤に適正な提示及び適切な環境をもたらす。マトリックスは、他のインプラント医療適用のために、現在使用されている材料から形成されうる。マトリックス材料の選出しは、生体適合性、生体分解性、力学的特性及び美容上の外見、並びに界面特性のうちのいずれか1つ以上に基づく。1つの例は、コラーゲンマトリックスである。
【0135】
治療剤(例えば、ドナーのアロ抗原若しくは自己抗原に特異的なTreg又は混合Tregの集団)は、対象、例えば、ヒトへの投与に適する医薬組成物へと組み込まれうる。このような組成物は、典型的に、薬剤と、薬学的に許容される担体とを含む。本明細書において使用された、「薬学的に許容される担体」という用語は、医薬の投与に適合性である担体など、任意の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、並びに全てのこれらを含むことが意図される。
【0136】
薬学的活性物質のための、このような媒体及び薬剤の使用は、公知である。そのような媒体は、任意の常套的な媒体及び薬剤が、活性化合物と不適合である場合を除き、本明細書において記載された使用において使用されうる。補充活性化合物もまた、組成物へと組み込まれうる。
【0137】
本明細書において使用された、「単位剤形」という用語とは、適切な1回の投与のための投与量を指す。例として述べると、単位剤形は、送達デバイス内、例えば、シリンジ内又は静注バッグ内に留置された治療剤の量でありうる。例えば、単位剤形は、単回投与において投与される。別の例において、1つを超える単位剤形が、同時に投与される場合もある。
【0138】
一部の実施形態において、Treg又は混合Tregの集団は、単剤療法として投与される、すなわち、状態のための別の治療は、対象へと、共時的に投与されない。Treg又は混合Tregの集団の組成物は、患者へと、1回投与されうる。必要な場合、Treg細胞組成物はまた、複数回にわたり投与される場合もある。Treg又は混合Tregの集団は、免疫療法において一般に公知である注入法(例えば、Rosenbergら、New England Journal of Medicine.、319:1676(1988)を参照されたい。)を使用することにより投与されうる。
【0139】
患者へと投与される、上記の治療の投与量は、治療される状態及び治療のレシピエントの正確な性格により変動する。ヒト投与のための投与量のスケーリングは、当技術分野において許容された慣行に従い実施されうる。
【0140】
一部の実施形態において、単一の治療レジメンが必要とされる。他の実施形態において、1回以上の後続の投与用量又は治療レジメンの投与が実施されうる。例えば、隔週において3カ月間にわたる治療の後、治療は、毎月1回、6カ月間又は1年間以上にわたり繰り返される。一部の実施形態において、初期治療の後、さらなる治療は実施されない。
【0141】
本明細書において記載された組成物の投与量は、医師により決定され、必要に応じて、観察された治療効果に適するように調整されうる。治療の持続期間及び頻度に関して、いつ、治療が治療利益をもたらしつつあるのかを決定し、さらなる細胞を投与するのか、治療を中断するのか、治療を再開するのか、治療レジメンに対して、他の変更を行うのかを決定するために、熟練した医師は、対象をモニタリングすることが典型的である。投与量は、サイトカイン放出症候群など、有害な副作用を引き起こすほど大きな投与量とすべきではない。一般に、投与量は、患者の年齢、状態及び性別と共に変動し、当業者により決定されうる。投与量はまた、万一、合併症が生じた場合に、個々の医師によっても調整されうる。
【0142】
核酸及びベクター
別の態様において、本発明は、本明細書において記載された結合性タンパク質又はこれらの相同体若しくは類似体をコードする配列をコードする、又はこれと相補的である、1つ以上の核酸分子を含む核酸分子、構築物又は組成物の使用を提供する。核酸分子は、本明細書において記載された結合性タンパク質を作製するのに使用される場合もあり、本明細書において記載された疾患又は状態を治療する細胞療法のために使用される場合もある。
【0143】
「構築物」という用語は、組換え核酸分子を含有する、任意のポリヌクレオチドを指す。構築物は、ベクター内に存在する場合(例えば、細菌性ベクター、ウイルスベクター)もあり、ゲノムへと組み込まれる場合もある。「ベクター」とは、別の核酸を運ぶことが可能な核酸分子である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、RNAベクター、又は染色体核酸、非染色体核酸、半合成核酸若しくは合成核酸を含みうる、直鎖状若しくは環状のDNA分子若しくはRNA分子でありうる。例示的なベクターは、自己複製が可能なベクター(エピソームベクター)又はそれらが連結された核酸分子の発現が可能なベクター(発現ベクター)である。
【0144】
ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹ウイルス及びセンダイウイルス)などのマイナス鎖RNAウイルス、ピコルナウイルス及びアルファウイルスなどのプラス鎖RNAウイルス、並びにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、1型単純ヘルペスウイルス及び2型単純ヘルペスウイルス、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)を含む、二本鎖DNAウイルス並びにポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス及びカナリア痘ウイルス)を含む。他のウイルスは、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス及び肝炎ウイルスを含む。レトロウイルスの例は、トリ白血病肉腫ウイルス、哺乳動物C型レトロウイルス、哺乳動物B型レトロウイルス、哺乳動物D型レトロウイルス、HTLV-BLV群レトロウイルス、レンチウイルス、スプマウイルスを含む(Coffin,J.M.、「Retroviridae:The viruses and their replication」、「Fundamental Virology」、3版、B.N.Fieldsら編、Lippincott-Raven Publishers、Philadelphia、1996)。
【0145】
本明細書において使用された、「レンチウイルスベクター」とは、組込型の場合もあり、非組込型の場合もあり、パッケージング容量が比較的大きな場合もあり、ある範囲にわたる、異なる細胞型へと形質導入しうる、遺伝子送達のための、HIVベースのレンチウイルスベクターを意味する。レンチウイルスベクターは、通例、3つ以上のプラスミド(パッケージングプラスミド、エンベローププラスミド及びトランスファープラスミド)の、産生細胞への一過性のトランスフェクションの後に作出される。HIVと同様に、レンチウイルスベクターも、ウイルス表面の糖タンパク質の、細胞表面上の受容体との相互作用を介して標的細胞に侵入する。侵入すると、ウイルスRNAは、逆転写を経るが、これは、ウイルス逆転写酵素複合体により媒介される。逆転写の産物は、二本鎖直鎖状のウイルスDNAであり、これは、感染細胞のDNAへのウイルスの組込みのための基質である。
【0146】
任意の態様において、本発明の方法に従う使用のためのベクターは、以下:
・ EF1α(アルファ)プロモーター;
・ 2Aリボソームスキッピング配列;
・ ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE);
・ (TCR)α鎖可変(Vα又はVα)ドメインの前に、TCRβ鎖可変(Vβ又はVベータ)ドメインを翻訳するような配置;又は
・ (TCR)α鎖可変(Vα又はVα)鎖の前に、TCRβ鎖可変(Vβ又はVベータ)鎖を翻訳するような配置
のうちの任意の1つ以上又は全てを含みうる。
【0147】
好ましくは、ベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0148】
「作動可能に連結された」という用語は、一方の機能が、他方の影響を受けるような、単一の核酸断片上における、2つ以上の核酸分子の会合を指す。例えば、プロモーターは、このコード配列の発現に影響を及ぼすことが可能である場合に、コード配列と作動可能に連結されている(すなわち、コード配列はプロモーターの転写制御下にある)。「連結されていない」とは、会合した遺伝子エレメントが、互いと緊密に関連せず、一方の機能が、他方に影響を及ぼさないことを意味する。
【0149】
本明細書において使用された、「発現ベクター」は、適切な宿主における核酸分子の発現をもたらすことが可能な、適切な制御配列に、作動可能に連結された核酸分子を含有する核酸構築物を指す。このような制御配列は、転写をもたらすプロモーター、このような転写を制御する、任意選択的なオペレーター配列、適切なmRNAのリボソーム結合性部位をコードする配列並びに転写及び翻訳の終結を制御する配列を含む。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、ウイルス又は、単に、潜在的なゲノムインサートでありうる。適切な宿主を形質転換したら、ベクターは、宿主ゲノムと独立に、複製され、機能する場合もあり、場合によって、ゲノム自体へと組み込まれる場合もある。本明細書において、「プラスミド」、「発現プラスミド」、「ウイルス」及び「ベクター」は、互換的に使用されることが多い。
【0150】
本明細書において使用された、「発現」という用語は、ポリペプチドが、遺伝子など、核酸分子のコード配列に基づき産生される過程を指す。過程は、転写、転写後制御、転写後修飾、翻訳、翻訳後制御、翻訳後修飾又はこれらの任意の組合せを含みうる。
【0151】
核酸分子を、細胞へと挿入する文脈における、「導入された」という用語は、「トランスフェクション」又は「形質転換」若しくは「形質導入」を意味し、核酸分子の、真核細胞又は原核細胞への組込みに対する言及を含み、この場合、核酸分子は、細胞のゲノム(例えば、染色体DNA、プラスミドDNA、プラスチドDNA又はミトコンドリアDNA)へと組み込まれる場合もあり、自律性レプリコンへと転換される場合もあり、一過性に発現される(例えば、トランスフェクトされたmRNA)場合もある。
【0152】
本明細書において使用された、「異種」核酸分子、「異種」構築物若しくは「異種」配列又は「外因性」核酸分子、「外因性」構築物若しくは「外因性」配列とは、宿主細胞に対して天然ではない核酸分子若しくは核酸分子の部分を指すが、宿主細胞に由来する核酸分子若しくは核酸分子の部分と相同でありうる。異種核酸分子、異種構築物若しくは異種配列又は外因性核酸分子、外因性構築物若しくは外因性配列の供給源は、異なる属又は種に由来しうる。ある特定の実施形態において、異種核酸分子又は外因性核酸分子は、例えば、コンジュゲーション、形質転換、トランスフェクション、電気穿孔などにより、宿主細胞又は宿主ゲノムへと付加される(すなわち、内因性又は天然ではない)が、この場合、付加された分子は、宿主ゲノムへと組み込まれる場合もあり、染色体外遺伝物質として(例えば、プラスミド又は他の形態の自己複製型ベクターとして)存在する場合もあり、複数のコピーにおいて存在しうる。加えて、「異種」とは、宿主細胞が、相同なタンパク質又は活性をコードする場合であってもなお、宿主細胞へと導入された外因性核酸分子によりコードされる、非天然の酵素、タンパク質又は他の活性を指す。
【0153】
本明細書において記載された通り、1つを超える異種核酸分子又は外因性核酸分子は、宿主細胞へと、別個の核酸分子として導入される場合もあり、個別に制御される複数の遺伝子として導入される場合もあり、ポリシストロニックの核酸分子として導入される場合もあり、融合タンパク質をコードする単一の核酸分子として導入される場合もあり、これらの任意の組合せとして導入される場合もある。例えば、本明細書において開示された通り、宿主細胞は、本明細書において記載されたペプチドに特異的な、所望のTCR(例えば、TCRα及びTCRβ)をコードする、2つ以上の異種核酸分子又は外因性核酸分子を発現するように改変されうる。2つ以上の外因性核酸分子が、宿主細胞へと導入される場合、2つ以上の外因性核酸分子は、単一の核酸分子(例えば、単一のベクター上の)として導入される場合もあり、別個のベクター上に導入される場合もあり、単一の部位又は複数の部位において、宿主染色体へと組み込まれる場合もあり、これらの任意の組合せの場合もある。言及された異種核酸分子又は異種タンパク質の活性の数とは、コード核酸分子の数又はタンパク質活性の数を指すものであり、宿主細胞へと導入された、別個の核酸分子の数を指すものではない。
【0154】
本明細書において使用された、「内因性」又は「天然」という用語は、宿主細胞内に通常存在する、遺伝子、タンパク質又は活性を指す。さらに、親の遺伝子、タンパク質又は活性と比較して、突然変異した、過剰発現された、シャフリングされた、重複した、若しくは他の形において変更された遺伝子、タンパク質又は活性もやはり、この特定の宿主細胞に内因性又は天然であると考えられる。例えば、第1の遺伝子に由来する内因性制御配列(例えば、プロモーター、翻訳抑制配列)は、第2の天然の遺伝子又は核酸分子の発現を変更又は調節するのに使用される場合があり、この場合、第2の天然の遺伝子又は核酸分子の発現又は調節は、親細胞内の正常な発現又は調節と異なる。
【0155】
「相同」又は「相同体」という用語は、宿主細胞、宿主種若しくは宿主株において見出される、又はこれらに由来する、分子又は活性を指す。例えば、異種核酸分子又は外因性核酸分子は、天然の宿主細胞遺伝子と相同な場合があり、任意選択的に、発現レベルが変更されている場合もあり、配列が異なる場合もあり、活性が変更されている場合もあり、これらの任意の組合せである場合もある。
【0156】
宿主細胞は、リン酸カルシウム若しくは塩化カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション又は電気穿孔など、常套的な技法を使用して、本発明の核酸を発現するように形質転換されうる。宿主細胞を形質転換するために適する方法は、Sambruckら(1989)及び他の実験教科書において見出されうる。本発明の核酸配列はまた、標準的技法を使用して、化学合成される場合もある。
【0157】
本明細書において使用された、「宿主」という用語は、目的のポリペプチド(例えば、アフィニティーが高い又は増強されたTCR)を産生するように、異種核酸分子又は外因性核酸分子による遺伝子改変のためにターゲティングされた細胞(例えば、Treg細胞)又は微生物を指す。ある特定の実施形態において、宿主細胞は、任意選択的に、異種タンパク質若しくは外因性タンパク質の生合成と関連する、又は関連しない、所望の特性(例えば、検出用マーカーの組入れ;内因性TCRの欠失、変更又は切断;共刺激因子の発現の増大)を付与する、他の遺伝子改変を、既に保有する場合もあり、これらを含むように改変される場合もある。一部の実施形態において、宿主細胞は、本明細書において記載された結合性タンパク質を発現するように遺伝子改変される。
【0158】
治療の条件
本発明は、多様な自己免疫疾患、特に、タンパク質である、SmB/B’、SmD、Ro60及びMPOのうちの1つ以上に対する、異常な免疫応答(自己抗体の形成など)により特徴付けられる自己免疫疾患を治療するための方法に関する。方法は、典型的に、治療を必要とする個体において、Treg細胞の集団を施すステップを伴い、この場合、Treg細胞が、本明細書において記載された結合性タンパク質であるTCRを発現する。
【0159】
「治療有効量」という語句は、一般に、(i)特定の疾患、状態若しくは障害を治療する、(ii)特定の疾患、状態若しくは障害の1つ以上の症状を、緩和する、改善する、若しくは消失させる又は(iii)本明細書において記載された、特定の疾患、状態若しくは障害の1つ以上の症状の発生を遅延させる、本発明の結合性タンパク質又はペプチドを発現する細胞の量を指す。
【0160】
本明細書において使用された、「~を予防すること」又は「予防」は、少なくとも、疾患若しくは障害に罹患する可能性又は危険性(又はこれに対する感受性)の低減(すなわち、疾患へと曝露されている場合もあり、これに対する素因がある場合もあるが、未だ疾患の症状を経ていない、又はこれを提示していない個体において、疾患の臨床症状のうちの少なくとも1つを発症させないこと)を指すことが意図される。本明細書において、このような患者を同定するための生物学的パラメータ及び生理学的パラメータは提示されており、また、医師にも周知である。
【0161】
特に好ましい実施形態において、本発明の方法は、本明細書において記載された疾患若しくは状態を予防する、若しくはこれらの重症度を低減する、又はこれらの進行若しくは再燃若しくは症状を阻害若しくは最小化することでありうる。このように、本発明の方法は、治療としての有用性のほか、予防としての有用性も有する。
【0162】
対象の「治療」又は「~を治療すること」という用語は、疾患若しくは状態、疾患若しくは状態の症状又は疾患若しくは状態の危険性(又はこれらに対する感受性)の、遅延、緩徐化、安定化、治癒(curing、healing)、緩和、軽減、変更、修復、増悪の軽減、改善(ameliorating、improving)又は働きかけの目的を含む。「~を治療すること」という用語とは、緩和;寛解;増悪速度の鈍化;状態の重症度の低下;症状の安定化、減少若しくは状態を個体により忍容可能とすること;変性速度若しくは衰弱速度の緩徐化;変性終点の消耗性を低下させること;又は対象の身体的福利若しくは精神的福利を改善することなど、任意の客観的又は主観的パラメータを含む、本明細書に記載された自己免疫疾患(例えば、SLE、シェーグレン症候群、血管炎、顕微鏡的多発血管炎又は硬化症)の治療又は改善の成功についての任意の徴候を指す。
【0163】
本明細書において記載された方法はまた、治療を必要とする対象とする自己免疫疾患のための、既存の標準治療処置/標準治療法と組み合わせても使用されうることが理解される。当業者は、ステロイド、抗マラリア剤(ヒドロキシクロロキン、クロロキン)、免疫抑制剤(アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、タクロリムス、ボクロスポリン、シクロスポリン)、キナーゼ阻害剤(バリシチニブ、トファシチニブ、ウパダシチニブ)及び生物製剤(ベリムマブ、リツキシマブ、アニフロルマブ、ウステキヌマブ、オビヌツズマブ)の使用を含むがこれらに限定されない治療を必要とする、自己免疫疾患の治療のための、既存の標準治療法に精通している。本発明は、既存の標準治療法の、本発明の特異的方法との組合せを含む。
【0164】
本明細書における「対象」は、好ましくは、ヒト対象である。本発明は、ヒトにおいて適用されるが、本発明はまた、獣医科的目的のためにも有用である。本発明は、ウシ、ヒツジ、ウマ及び家禽などの家畜又は農場動物;ネコ及びイヌなどの愛玩動物;並びに動物園動物に有用である。「対象」及び「個体」という用語は、本発明に従う治療を必要とする個体であることが理解される。
【0165】
全身性エリテマトーデス
本発明は、特に、タンパク質である、SmB/B’、SmD若しくはRo60のうちの1つ以上又はMPOタンパク質に対する、異常な免疫応答と関連する場合における、全身性エリテマトーデスを治療するための方法を含む。
【0166】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、多系統自己免疫疾患である。世界中における、少なくとも500万人が、SLEを有し、診断された人々のうちの90%は、女性であり、多くは15~44歳の間にSLEを発症する。オーストラリアにおいて、SLEは、1000人中約1人において診断され、オーストラリア原住民及びアジア系オーストラリア人においてより高頻度かつ重度である。SLE患者は、脳、腎臓、心臓、肺、関節、皮膚及び他の臓器において、3を上回る標準化死亡率により例示された、平均寿命の顕著な短縮を結果としてもたらす、慢性の免疫媒介型炎症性損傷を患っている。英国コホートにおいて、患者のうちの14%である、追跡期間中に死亡した患者の平均死亡年齢は、わずか52歳であった。臨床経過は、不可逆的臓器損傷の増加及びこれによる死亡と関連する、挿間的再燃により特徴付けられることが多い。
【0167】
ループスの他の形態は、円板状ループス、薬物誘導性ループス及び新生児ループスを含む。これらのうち、全身性エリテマトーデス(また、SLEとしても公知である)は、最も一般的かつ重篤な形態である。ループスについての、より完全な類別は、以下種類:急性皮膚エリテマトーデス、亜急性皮膚エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス(慢性皮膚)、小児円板状エリテマトーデス、汎発型円板状エリテマトーデス、局所型円板状エリテマトーデス、凍瘡状エリテマトーデス(ハッチンソン病)、エリテマトーデス-扁平苔癬重複症候群、エリテマトーデス性脂肪織炎(深在性エリテマトーデス)、腫脹性エリテマトーデス、疣贅状エリテマトーデス(肥厚性エリテマトーデス)、皮膚ループスムチン沈着症、補体欠損症候群、薬物誘導性エリテマトーデス、新生児エリテマトーデス、全身性エリテマトーデスを含む。
【0168】
皮膚エリテマトーデス(CLE)は、SLE症例の大部分においてみられ、日光へと曝露された皮膚において観察されることが多く、様々な重度の皮膚紅斑及び、場合によって、外観を損なう皮膚紅斑として現れる。ループスはまた、また、不完全エリテマトーデスとしても公知である、純粋な皮膚形態としても顕在化しうる。SLEの発症及びその間欠的再燃のパターンをもたらす、全ての因子が公知であるわけではないが、太陽光への曝露が、全身性疾患の増悪のほか、皮膚疾患の増悪においても重要であることは明らかである。
【0169】
ループスを伴うと診断された患者に共通の症状のうち、ほぼ全ての患者は、関節痛及び/又は関節腫脹(すなわち、関節炎)を有する。高頻度の罹患関節は、指、手掌、手首及び膝の関節である。他の一般的な症状は、胸膜炎性胸部疼痛、口腔内潰瘍及び鼻腔内潰瘍、疲労感、他の原因を伴わない発熱、全般的な不快感、不安感又は病感(倦怠感)、脱毛、太陽光への過敏性、SLE罹患者のうちの約半数における皮膚紅斑(「蝶形」紅斑)を含み、また、瘢痕性「円板状」病変及びリンパ節の腫脹も含む。当業者は、腎炎、CNS病変、血液病変、消化器病変及び血管炎を含むがこれらに限定されない、ループスの他の多様な重要症状に精通している。
【0170】
本明細書において使用された、CLE又はSLEを伴う個体における、光感受性又は光感受性の異常は、太陽光に対する、異例の反応から生じる皮膚紅斑を含む。日光への曝露は、皮膚紅斑の発症を越えて、ループスとの共存者に、関節痛、衰弱、疲労感及び発熱などの症状を伴う、疾患活動の増大を経させる場合がある。ループス罹患者のうちの3分の2は、太陽光からの紫外線若しくは蛍光灯など、人工の室内光からの紫外線又はこれらの両方に対する感受性を増大させている。
【0171】
シェーグレン症候群
本発明は、特に、タンパク質である、SmB/B’、SmD若しくはRo60のうちの1つ以上又はMPOタンパク質に対する、異常な免疫応答と関連する場合における、シェーグレン症候群を治療するための方法を含む。
【0172】
シェーグレン症候群は、母集団のうちの0.5%~1%の間が罹患すると推定される自己免疫障害であり、特に、原発性シェーグレン症候群(pSS)は、このような自己免疫障害であり、シェーグレン症候群の患者10例中9例は、女性である。pSSを伴う女性の大部分は、疲労感、関節痛並びに眼及び/又は口の乾きを症状とする、軽度~中程度の疾患により特徴付けられる。疾患は、ドライアイ及び口渇を引き起こす、その後における唾液腺及び涙腺の炎症、損傷及び機能喪失を伴う、唾液腺及び涙腺に対するリンパ球浸潤により特徴付けられる。肺、腎臓及び肝臓を含む、主要な臓器系の病変は、pSSの共通の全身症状である。生化学レベルにおいて、pSSは、免疫グロブリンレベルの上昇及びSSA/Ro及びSSB/Laなどのリボヌクレオタンパク質複合体に対する抗核抗体の産生と関連する。
【0173】
疲労感は、シェーグレン症候群の、最も一般的な腺外症状のうちの1つであり、永続的な全身疲労により規定される。pSS患者のうち、推定70%が、深甚な疲労感を患い、これは、生活の質に対して、負の影響を及ぼすことが報告されている。血清学的に、これらの患者のうちの約80%は、低分子非コードRNA分子を含有する自己抗原に結合する抗Ro/SSA自己抗体を有する。疲労感は、強度、持続期間及び日常的機能に対する影響の点において特徴付けられうる。とりわけ、一次治療状況において、疲労感は、うつ病と強く関連する。したがって、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患を伴う患者における疲労感を改善する手段が必要とされている。
【0174】
本明細書において使用された、「原発性シェーグレン症候群(pSS)」、「シェーグレン症候群」、「シェーグレン病」及び「シェーグレン」という用語は、互換的に使用されうる。
【0175】
任意の実施形態において、シェーグレン症候群の治療は、治療を必要とする対象における疲労感の軽減又は減少を含みうる。多様なPRO(patient reported outcome)尺度が、慢性疾患を伴う対象における疲労感の測定において、使用及び検証されている。当技術分野において、このようなPROは公知であり、本明細書において記載された、Treg細胞の集団による治療の有効性について評価するのに使用されうる。原発性シェーグレン症候群を伴う患者の症状について評価するために、European League Against Rheumatism(EULAR)Sjogren’s Syndrome(SS) Patient Reported Index(ESSPRI)が開発された(Serorら、Ann.Rheum.Dis.、2011、70:968~972)。ESSPRIは、原発性シェーグレン症候群の全ての重要な症状及び機能障害をもたらす症状:乾き、四肢疼痛並びに疲労感を測定するための世界的スコアとして開発された。ESSPRIは、内容の妥当性を失わずに、症状の各々を測定するのに十分であることが示されており、スコアは、計算が容易である。ESSPRIとは、原発性シェーグレン症候群を伴う患者の症状について評価する、患者実施型の問診票である。問診票は、以下の症状:(1)乾き、(2)四肢疼痛及び(3)疲労感の各々について、1つずつの、3つのスケールを含む。ESSPRIの各構成要素は、0~10にわたる単一の数値スケールにより測定され、グローバルESSPRIスコアは、3つのスケールの平均値:(乾き+四肢疼痛+疲労感)/3である。ESSPRIスコアの、少なくとも1ポイントの減少が、臨床的に有意味である。
【0176】
Chronic Illness Therapy Fatigue scale(FACIT-Fatigue)による機能評価は、過去一週間にわたる、それらの通常の日常的活動における、個体の疲労感レベルについて評価するのに使用される。FACIT-Fatigue問診票及びScoring & Interpretation Materialsは、FACIT.org(Elmhurst、Ill.、USA)から入手可能である。FACIT-Fatigue問診票は、一連の総合尺度及び標的尺度を提供する。FACIT-Fatigueスケールは、高度の内的妥当性、高度の検査-再検査間信頼度、様々な慢性健康状態を伴う患者における変化に対する信頼度及び感度、使用の容易さ並びに様々な状況における使用を含む、多くの利益を有する(K.F.Tennant、Try This:best Practices、Nursing Care to Older Adults、30号、2012;Chandranら、Ann.Rheum.Dis.、2007、66:936~939)。FACIT-Fatigueは、元来、がんを伴う患者における疲労感を測定するのに開発された13項目の問診票であり、現在、シェーグレン病を伴う患者において、疲労感を測定するのに使用されている。患者は、0~4(0=全く感じない、1=若干、2=ある程度感じる、3=かなり強く感じる、4=極めて強く感じる)に評定された、13の質問に回答するように求められる。疲労感スケールは、可能な最高のスコアを52とする、13項目を有する。疲労感スケールの高スコアは、低レベルの疲労感に対応し、生活の質の向上を指し示す。FACIT-Fatigueスコアを計算するために、否定的な表現の質問に対する応答スコアは、反転され、次いで、13項目についての応答が足し合わされる。応答を伴う11項目は、それらのスコアが反転され(応答が欠測していない場合、項目のスコア=4-応答とする。)、2項目(項目7~8)は、それらの応答を不変とする。全ての項目は、高スコアが、より低い疲労感に対応するように足し合わされる。個々の質問が省略された場合、スコアは、スケール内の他の回答の平均を使用して按分される。FACIT-Fatigue=13×[合計(反転項目)+合計(項目7~8)]/回答された項目の数である。
【0177】
ProF(profile of fatigue)は、原発性シェーグレン症候群と関連する疲労感の特徴付けにおいて有効な評価ツールを確立するために開発された。ProFは、原発性シェーグレン症候群を伴う患者における疲労感及び全体的な不快感の重症度を測定するための、信頼できる、妥当な尺度であることが示されている。ProFとは、身体的疲労感についての1つのドメイン及び精神的疲労感についての1つのドメインである、2つのドメインへと分けられた、16項目にわたる自己記入式の問診票である。身体的疲労感についてのドメインは、4つの側面へと分けられた、12の項目:(a)休息を要する(4項目)、(b)始動不良(3項目)、(c)スタミナの低下(3項目)及び(d)筋肉低下(2項目)を含む。精神的疲労感についてのドメインは、2つの側面へと分けられた、4つの項目:(a)集中力の低下(2項目)及び(b)記憶力の低下(2項目)を含む。患者は、過去2週間の間の、それらの最悪の状態において、患者がどのように感じたのかに基づき、各項目を、0~7のスケール(0=「全く問題なし」~7=「想定しうる最悪の状態」)により評定する。各側面についてのスコアは、各側面内の項目のスコアを足し合わせ、合計を、各側面内の項目の数により除することにより得られうる。各ドメイン(例えば、身体ドメイン、精神ドメイン)についてのスコアは、各ドメイン内の側面のスコアを足し合わせ、合計を、各ドメイン内の側面の数により除することにより得られうる。高スコアは、疲労感の増大を指し示す(Bowmanら、Rheumatology、2004、43:758~764;Strombeckら、Scand.J.Rheumatol. 2005、34:455~459;Segalら、Arthritis Rheum. 2008年12月15日、59(12):1780~1787)。
【0178】
一部の実施形態において、患者の状態は、1つ以上の患者報告型指数(例えば、ESSPRI、PROF、FACIT)を介して、患者における疲労感を、治療前の患者における疲労感のレベルと比較して、又は同様に罹患した非治療患者又は対照患者における疲労感のレベルと比べて測定することにより査定される。
【0179】
例えば、治療を必要とするヒト対象は、選択又は同定される(例えば、American College of Rheumatology criteria for SLEを満たす患者又はAmerican-European Consensus Sjogren’s Classification Criteriaを満たす患者)。対象は、例えば、疲労感など、SLE又はシェーグレン症候群の原因又は症状の軽減を必要としうる。対象の同定は、臨床状況においてなされる場合もあり、別の場所、例えば、対象自身による、自己検査キットの使用を介して、対象の自宅においてなされる場合もある。患者の状態は、ベースライン(1日目)及び初回投与に続くある期間の後において、例えば、8日目、15日目、29日目、43日目、57日目、71日目、85日目、99日目又は研究の終了時において、例えば、ESSPRI指数、PROF及び/又はFACIT-Fatigueスケールにより査定される。妥当な他の基準もまた、測定されうる。投与の回数及び強度は、対象の必要に従い調整される。治療の後において、以下の転帰:(1)ESSPRI指数の、治療前におけるESSPRI指数と比べた改善又は同様に罹患したが治療されていない対象/対照対象と比べた改善、(2)PROFの、治療前におけるPROFと比べた改善又は同様に罹患したが治療されていない対象/対照対象と比べた改善、(3)FACIT-Fatigueスケールの、治療前におけるFACIT-Fatigueスケールと比べた改善又は同様に罹患したが治療されていない対象/対照対象と比べた改善のうちの1つ以上の改善が認められる。一部の実施形態において、ESSPRI指数の改善は、臨床的に有意味な改善である。臨床的に有意味なESSPRI指数の改善は、ESSPRIスコアの、少なくとも1ポイントの減少である。
【0180】
当技術分野で公知である、多様な神経心理学的アッセイもまた、シェーグレン症候群関連認知機能の改善についての評価を含む、本明細書において開示された治療法の有効性について評価するために使用されうる。例えば、DSST(digit symbol substitution test)は、多くのドメインの影響を受ける認知機能不全を測定するための、妥当であり、かつ、高感度である検査を提供する。DSSTは、認知機能不全の存在並びにシェーグレン症候群を伴う患者を含む臨床集団の範囲にわたる認知機能の変化のいずれに対しても、高感度である。この神経心理学的検査は、実行機能関連インプットについての、広く使用され、高度に検証され、極めて高感度である検査リードアウトである。
【0181】
DSSTは、一枚の用紙上においてなされる、時間制限付きの筆記による認知検査である。検査は、用紙上部の凡例に従い、患者が、記号を、数とマッチさせることを必要とする。患者は、記号を、数列の下方の空間へと転記し、許容時間(例えば、90又は120秒間)内における、正しい記号の数が計算される。検査は、課題を実施する正確さ及び速度についてのデータを提供する。患者のDSST成績は、日常の仕事をこなす能力など、実生活における機能的転帰及び精神科的状態の範囲にある、機能的な無力状態からの回復と相関する。DSST検査は、患者における注意力及び/又は集中力について評価するのに使用されうる。
【0182】
DSSTは、認知の実行範囲を測定し、時間経過にわたり認知機能をモニタリングするための、実践的であり、かつ、有効な方法を提供する、多因子検査である。DSSTにおいて成績良好であるために、患者は、完全な運動速度、走査又は筆記能力若しくは描画能力(すなわち、基本的な機転)を含む、注意機能及び視知覚機能を有さなければならない。DSSTは、認知機能障害を検出するための高感度をもたらし、簡潔さ、信頼性、変化に対する感度並びに言語、文化及び教育の、検査成績に対する影響が最小限であることを含む、多くの利益を有する(Jaeger,J.、Journal of Clinical Psycopharmacology、38(5)、513~518、2018年10月)。
【0183】
全身性硬化症
本発明は、特に、タンパク質である、SmB/B’、SmD若しくはRo60のうちの1つ以上又はMPOタンパク質に対する、異常な免疫応答と関連する場合における、全身性硬化症を治療するための方法を含む。
【0184】
全身性硬化症(Ssc;強皮症としてもまた公知である)は、皮膚及び/又は内臓の進行性線維症を結果としてもたらしうる、非遺伝性、非感染性、多臓器系の自己免疫疾患である。状態は、過剰なコラーゲン沈着により特徴付けられる。CREST症候群(限局性強皮症ともまた称される)として公知の状態の一形態は、以下の特徴:石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、手指硬化及び毛細血管拡張症を結果としてもたらしうる。
【0185】
SScは、皮膚線維症を結果としてもたらす、真皮内における細胞外マトリックスの過剰な沈着により誘発される、多種多様な症状を有する。後期において、SScは、胃、肺又は腎臓など、他の内臓に影響を及ぼす、進行性の組織線維症により特徴付けられる。したがって、強皮症は、例えば、肺線維症、腎線維症、心臓、胃又は血管の線維症もまた含む疾患の特徴である。炎症、自己免疫障害又は血管損傷は、線維芽細胞を活性化させることが示唆される。線維増殖は、I型コラーゲンに支配された、過剰な細胞外マトリックス産生を伴う結果として、進行性の組織線維症もたらし、これは、末端臓器不全を引き起こし、末期SScを伴う患者において、高罹患率及び高死亡率をもたらしうる。
【0186】
本発明は、全身性硬化症(SSc)、びまん性全身性硬化症(dSSc)、限局性全身性硬化症(lSSc)、重複型全身性硬化症、未分化型全身性硬化症、ssSSc(systemic sclerosis sine scleroderma)、皮膚線維症、強皮症、腎性線維化性皮膚症(NFD)及び/又はケロイド形成の治療を想定する。
【0187】
一部の実施形態において、強皮症のための治療を必要とする個体は、炎症、線維症、血管症及び/又は自己免疫について評価される。一部の実施形態において、個体は、以下のうちの少なくとも1つ:皮膚の肥厚、中手指節(MCP)関節に近位における皮膚肥厚、手指の皮膚肥厚、手指腫脹、手指硬化、手指先端部における病変、指先端部における潰瘍、圧痕性瘢痕、毛細血管拡張症、爪廓部毛細血管の異常、石灰沈着症、食道拡張、強皮症腎クリーゼ、間質性肺疾患、肺動脈性高血圧症及び/又は間質性肺疾患、レイノー現象、関連抗体(例えば、抗セントロメア抗体、抗Scl-70抗体/抗トポイソメラーゼ抗体、抗フィブラリン自己抗体、抗III型RNAポリメラーゼ自己抗体、抗Th/To、PM-Scl、抗Ro、抗Ul-リボヌクレオタンパク質など)及び皮膚内のコラーゲンmRNAレベルについて評価される。一部の実施形態において、強皮症は、皮膚に限局される。一部の実施形態において、強皮症は、皮膚以外の、少なくとも1つの臓器に関与する。一部の実施形態において、強皮症は、全身性硬化症と称される。一部の実施形態において、強皮症は、CREST症候群である。
【0188】
一部の実施形態において、状態は、血漿試料を使用して評価される。一部の実施形態において、状態は、血液試料を使用して評価される。一部の実施形態において、状態は、皮膚生検試料を使用して評価される。一部の実施形態において、状態は、線維性バイオマーカーを使用して評価される。一部の実施形態において、状態は、状態特異的自己抗体の検出を使用して評価される。
【0189】
一部の実施形態において、状態は、MRSS(modified Rodnan skin score)を使用して評価される。一部の実施形態において、各身体部位についてのMRSSスコアは、以下の通り:0=皮膚病変なし;1=軽度の肥厚;2=中程度の肥厚及び3=重度の肥厚である。一部の実施形態において、身体部位におけるMRSSは、少なくとも2である。一部の実施形態において、個体は、中程度の皮膚の肥厚を有する。一部の実施形態において、皮膚の厚さは、17の異なる身体部位において測定される。一部の実施形態において、個体は、少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50又は51の全身MRSSスコアを有する。
【0190】
一部の実施形態において、状態は、触診を使用して評価される。一部の実施形態において、状態は、17の異なる身体領域における触診を使用して評価される。一部の実施形態において、身体領域は、以下:手指、手掌、前腕部、腕部、足部、脚部及び大腿部(両側)並びに顔面、胸部及び腹部(単独)のうちの少なくとも1つを含む。
【0191】
一部の実施形態において、状態は、LoSCAT(localized Scleroderma cutaneous assessment tool)を使用して評価される。一部の実施形態において、LoSCATは、18の皮膚解剖学的部位について評価する。
【0192】
一部の実施形態において、LoSCATは、疾患活動性(mLoSSI)パラメータ及び損傷(LoSDI)パラメータを捕捉する。一部の実施形態において、LoSCATは、疾患の不活動期において、疾患である限局性強皮症から生じる皮膚病変について検討する。一部の実施形態において、各部位についてのスコアは、各パラメータについて、最重度のスコアに基づく。一部の実施形態において、皮膚の変化は、対象間のばらつきを最小化するように、反対側又は同側の皮膚領域と比較される。
【0193】
一部の実施形態において、Leroy/Medsger基準が使用される。一部の実施形態において、1988年版Leroy/Medsger基準が使用される。一部の実施形態において、2001年版Leroy/Medsger基準が使用される。一部の実施形態において、状態は、American College of Rheumatology(ACR)基準を使用して評価される。一部の実施形態において、状態は、European League Against Rheumatism(EULAR)基準を使用して評価される。一部の実施形態において、2013年版ACR/EULAR診断的基準が使用される。一部の実施形態において、個体は、2013年版ACR/EULAR診断的基準を使用して、少なくとも9の総スコアを有する場合に、全身性硬化症を伴うと診断される。
【0194】
一部の実施形態において、治療は、本明細書において記載されたスコアの変化を使用して評価される。一部の実施形態において、治療は、本明細書において記載された測定値のパーセント変化を使用して評価される。一部の実施形態において、治療は、治療の後における、皮膚病変についての、遠隔型サーモグラフィープロファイルの変化を使用して評価される。一部の実施形態において、治療は、治療の後における、標的皮膚病変についての超音波プロファイルの変化を使用して評価される。
【0195】
一部の実施形態において、状態は、肺についてのコンピューター断層撮影(CT)走査を使用して評価される。一部の実施形態において、状態は、腎機能を測定することにより評価される。一部の実施形態において、状態は、血中クレアチニンレベルを測定することにより評価される。一部の実施形態において、状態は、肺機能検査を使用して評価される。一部の実施形態において、状態は、肺活量の尺度である、努力肺活量(FVC)を使用して評価される。一部の実施形態において、状態は、肺胞内における酸素交換の尺度である、拡散能(DLCO)を使用して評価される。
【0196】
一部の実施形態において、状態は、DLQI(Dermatology Life Quality Index)を使用して評価される。一部の実施形態において、状態は、HAQ-DI(Health Assessment Questionnaire-Disability Index)を使用して評価される。一部の実施形態において、状態は、PGA(physician global assessment)を使用して評価される。
【0197】
炎症性筋炎
本発明は、特に、タンパク質である、SmB/B’、SmD若しくはRo60のうちの1つ以上又はMPOタンパク質に対する、異常な免疫応答と関連する場合における、炎症性筋炎を治療するための方法を含む。
【0198】
炎症性筋炎とは、筋肉の炎症により特徴付けられる、全身性自己免疫疾患である。本明細書において記載された通りに治療されうる炎症性筋炎状態の例は、限定せずに述べると、多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎及び若年性筋炎を含む。
【0199】
任意の適切な方法は、対象が、炎症性筋炎状態を有するのかどうかを決定するのに使用されうる。例えば、対象(例えば、ヒト)は、標準的診断法を使用して、炎症性筋炎状態を有する対象として同定されうる。場合によって、対象が、炎症性筋炎状態を有するのかどうかを決定するように、組織生検が、回収され、解析されうる。
【0200】
本発明の方法に従う治療の後に、炎症性筋炎状態の重症度が低減されるのかどうかを決定するのに、任意の適切な方法が使用されうる。例えば、炎症性筋炎状態の重症度は、目視、診断法又は患者問診により評価されうる。
【0201】
顕微鏡的多発血管炎を含む、自己免疫性血管炎 本発明は、特に、MPOタンパク質、又はタンパク質である、SmB/B’、SmD若しくはRo60のうちの1つ以上に対する、異常な免疫応答と関連する場合における、顕微鏡的多発血管炎を含む、自己免疫性血管炎を治療するための方法を含む。
【0202】
自己免疫性血管炎とは、血管(動脈、静脈及び毛細血管)の炎症及び狭窄を引き起こす自己免疫疾患である。重度の症例において、状態は、臓器損傷又は死を引き起こしうる。血管炎の種類は、罹患血管のサイズに従い群分けされる。大半の種類の血管炎は、稀少であり、大血管(リウマチ性多発筋痛症、高安動脈炎、側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎))、中血管(バージャー病、皮膚血管炎、川崎病、結節性多発動脈炎)、小血管(ベーチェット症候群、チャーグ-ストラウス症候群、皮膚血管炎、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、ゴルフ血管炎、寒冷グロブリン血症)を含む。血管炎の症状は、数年間にわたり、1回又は数回生じうる。疾患は、全ての年齢、人種及び性別の人々に影響を及ぼす。
【0203】
血管炎の徴候及び症状は、変動し、軽度~致死性の範囲にわたりうる。血管炎の徴候及び症状は、血管炎の種類、罹患臓器及び状態がどのくらい重度であるのかに依存する。一部の人々は、徴候及び症状がほとんどないのに対し、他の人々は、極めて重篤となりうる。ある場合において、症状は、数カ月間の間に、緩徐に発症するのに対し、他の場合において、徴候及び症状は、数日間又は数週間の間に、急速に始まる。
【0204】
一般的な症状は、発熱、食欲不振、体重の減少、疲労感、全身の痛み及び疼痛を含む。血管炎は、多様な臓器系及び体組織に影響を及ぼし、皮膚(紫斑若しくは紅斑又は突起;小斑点のクラスター、しみ、あざ又は蕁麻疹;掻痒)、関節(1つ以上の関節における痛み又は関節炎)、肺(息切れ;喀血)、消化管(口内痛;胃痛;重度の症例において、腸の衰弱又は破断を引き起こしうる、腸への血流の遮断)、洞、鼻、咽頭及び耳(洞感染又は慢性中耳感染;鼻腔痛;場合によって、難聴)、眼(眼の充血、眼のかゆみ、眼の痛み;光過敏性;かすみ目;稀に、失明)、脳(頭痛;思考の乱れ;精神機能の変化;筋力低下及び麻痺などの脳卒中様症状)、神経(しびれ、身体の多様な部分におけるうずき及び衰弱;手掌及び足部における感覚又は筋力の喪失;腕部及び脚部における電撃痛)を含む範囲の徴候及び症状を引き起こしうる。重度の症例において、血管炎は、おそらく、動脈瘤をもたらす、血管内の閉塞を引き起こしうる。
【0205】
顕微鏡的多発血管炎とは、小内径血管に関与する壊死性血管炎であり、血管炎と関連する全身症状に加えて、肺腎症候群の一因となる、糸球体及び肺の毛細血管の損傷の一因となりうる。
【0206】
抗好中球細胞質抗体(ANCA)とは、好中性顆粒球及び単球の細胞質内の抗原に対して形成される自己抗体である。これらは、多数の自己免疫障害、特に、全身性血管炎及びANCA関連血管炎(AAV)と関連する。ANCAは、免疫蛍光法(IF)により視覚化された場合、4つのパターン:細胞質ANCA(c-ANCA)、C-ANCA(非定型)、核周囲ANCA(p-ANCA)及びx-ANCAとしてもまた公知である、非定型ANCA(a-ANCA)へと分けられる。c-ANCAは、中心部に小葉間の強調を伴う、細胞質内の顆粒状蛍光を示す。C-ANCA(非定型)は、通例一様であり、小葉間の強調を有さない細胞質染色を示す。p-ANCAは、3つの亜型である、古典的p-ANCA、核内への拡張を伴わないp-ANCA及び顆粒球特異的抗核抗体(GS-ANA)を有する。古典的p-ANCAは、核内への拡張を伴う核周囲染色を示し、核内への拡張を伴わないp-ANCAは、核内への拡張を伴わない核周囲染色を有し、GS-ANAは、顆粒球上だけにおける核内染色を示し、a-ANCAは、細胞質染色及び核周囲染色の両方の組合せを示すことが多い。
【0207】
p-ANCA抗原は、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)を含む。現在のところ、ANCA陽性血管炎の診断は、それが、皮膚生検であれ、腎生検であれ、神経筋生検などであれ、生検にさらに基づく。ANCAは、全身性血管炎についての診断の、重要な一助を構成する。こうして、抗ミエロペルオキシダーゼ(MPO)ANCAは、顕微鏡的多発血管炎を患う患者のうちの60~75%及びチャーグ-ストラウス症候群を患う患者のうちの38%において存在する。
【0208】
本発明の好ましい実施形態において、自己免疫性血管炎の治療は、抗MPO ANCAを有する患者の治療を含む。抗MPO ANCA陽性血管炎の例は、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(チャーグ・シュトラウス症候群)を含み、稀少な症例において、多発血管炎を伴う肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)を含む。
【実施例】
【0209】
実施例1:無差別型TCRの同定
本発明者らは、健常個体に由来するT細胞を、3つの公知の異なる自己抗原に由来する、6つの異なる自己ペプチド(スミス自己抗原2つ;Ro60自己抗原2つ及びMPO自己抗原2つ)と共に共培養した。6つの培養物全てにおいて、反応性が最も大きなT細胞クローン(すなわち、TCR)は、同じであることが見出された。より詳細において、以下の通りである:
【0210】
方法 約50mlの全血液は、静脈穿刺を介して、EDTA-coated Vacutainer tubes(BD Biosciences)へと得た。単核細胞(MNC)は、製造元のプロトコールに従い、密度遠心分離を、50mlのSepMate tubes(StemCell Technologies)でLymphoprepと共に使用して分離した。次いで、EasySep Human Monocyte Isolation Kit(StemCell Technologies)を使用して、MNCに対して、単球の分離を実施した。
【0211】
分離された単球は、増殖染料であるCellTrace Far Red(Life Technologies)により染色し、カウントし、ImmunoCult DC Differentiation Medium(StemCell Technologies)中、1ml当たりの細胞106個において再懸濁させた。細胞は、96ウェルポリスチレン製平底プレート(In-Vitro Technologies)中、ウェル1つ当たりの細胞105個において播種した。培地の交換は、培養の3日目に実施し、樹状細胞成熟用サプリメント(Stemcell Technologies)は、製造元の指示書に従い、培養の5日目に添加した。
【0212】
単球培養の7日目に、HLA-DR3及びHLA-DR4.5の両方を発現する、同じ健常個体から、静脈穿刺を介して、別の50mlの全血液を得た。CD4+ T細胞は、RosetteSep Human CD4+ T Cell Enrichment Kit(Stemcell Technologies)を使用して分離した。結果として得られるCD4+ T細胞を、CellTrace Violet(ThermoFisher Scientific)により標識化し、温熱補充RPMI培地(10%ヒト男性AB型血清、2%のペニシリン/ストレプトマイシン、4mMのL-グルタミン及び50μMの2-メルカプトエタノール)中に再懸濁させ、樹状細胞1に対するCD4+ T細胞の比を1とする樹状細胞を含有するウェルへと移した。
【0213】
共培養物に、100μg/mlのペプチド及び80単位/mlのIL-2(StemCell Technologies)を補充した。
【0214】
使用されたペプチドは、
SmD1:78-92、SmB/B’:7-21(HLA-DR3(DRA1*01:01+DRB1*03:01)に拘束された)、Ro60:225-239、Ro60:369-383(HLA-DR3(DRA1*01:01+DRB1*03:01)に拘束された);MPO:453-467及びMPO:724-738(HLA-DR4.5(DRA1*01:01+DRB1*04:05)に拘束された)
であった。被験ペプチドの配列は、本明細書の表1に提示する。
【0215】
培養の6日目に、細胞を採取し、BUV496標識化抗ヒトCD4(BD Biosciences)、APC-H7標識化抗ヒトCD8(BD Biosciences)、BV711標識化抗ヒトCD69(BD Biosciences)、AF488標識化抗ヒトHLA-DR(Biolegend)及びヨウ化プロピジウム(Sigma)により表面染色した。
【0216】
染色後、20μmのフィルターを通して、細胞を、滅菌ポリプロピレン製チューブ内の氷冷滅菌MACS緩衝液へと濾過し、次いで、BD Biosciences製のFACS Aria細胞分取器を使用して、CD4+ CTVlo細胞を分取した。次いで、分取された細胞を、単一細胞TCR10×シーケンシングに送った。
【0217】
健常個体の全HLA型:HLA-A*11:01/33:03;HLA-B*58:01;HLA-C*03:02;HLA-DRB1*03:01/04:05;HLA-DRB3*02:02;HLA-DRB4*01:03;HLA-DPB1*04:01/05:01;HLA-DPA1*01:03/02:02;DQB1*02:01/04:01;DQA1*03:03/05:01である。
【0218】
培養は、異なるペプチド(すなわち、Smペプチド、Ro60ペプチド及びMPOペプチド)について、異なる日に行った。
【0219】
結果
単一細胞TCRシーケンシングは、同じTreg由来TCR(本明細書の表1に規定されたTCRと同じTCR)が、全ての対象において、ドミナントのクローン型であることを明らかにした(
図1を参照されたい。)。結果は、単一のTCRが、6つの異なる自己ペプチド-MHCコンフォメーションを認識し、優勢に拡大することを指し示す。
【0220】
実施例2
TCRの無差別性を裏付けるために、TCRを、Jurkat T細胞系へと形質導入し、抗原提示細胞としての、DR3/DR4.5を発現するB-LCLの存在下において、Smペプチド、Ro60ペプチド及びMPOペプチドにより、個別に刺激した。陽性応答は、形質導入されたJurkat T細胞上において、T細胞活性化マーカーであるCD69、上清中のIL-2の産生及び/又は増殖の上方制御を測定することにより決定する。
【0221】
抗Ro60特異的炎症促進性応答の抑制における、実施例1において同定されたTCRの有効性を決定するために、増殖アッセイを使用して、炎症促進性Ro60特異的通常型T細胞(Tconv)の拡大に対する、TCRを発現するTregの効果を測定する。結果は、Ro60-Tregの存在下において、Ro60特異的Tconvに対するTregの数が、顕著に増大することを示すことが予測される。この結果は、Ro60-Tregが、Ro60特異的Tconv細胞の拡大を強力に抑制することを意味する。
【0222】
次に、サイトカインの産生が測定され、結果は、Ro60-Tregの存在下において、抗炎症性応答、すなわち、高IL-10、低IFN-g及びIL-17Aがドミナントである(健常個体と同様に)のに対し、Tregを伴わない、又はpTregだけを伴う場合、炎症促進性応答がドミナントである、すなわち、低IL-10、高IFN-γ及びIL-17Aである(自己免疫疾患患者において予測される通り)ことを示すことが予測される。これらのデータは、Ro60-Tregが、異常な免疫応答をリセットし、ターゲティングされた自己エピトープに対する寛容を回復させることを裏付ける。
【0223】
実施例3:HLA-DR3拘束Ro60-Tregは、シェーグレン症候群の進行を停止させる
疾患進行の停止における、Ro60-Tregの有効性を裏付けるために、本発明者らは、公表されている類似のモデル(Young NAら、Clin Immunol. 2015年1月156(1):1~8)に基づき、シェーグレン症候群についての、新たなヒト化モデルを考案する。
【0224】
このモデルにおいて、抗Ro60抗体を伴う患者に由来するPBMCの、免疫障害NSG-MHC
nullマウスへの養子移入は、涙腺及び唾液腺において、ヒトT細胞の浸潤、及び正常組織の構造的完全性の喪失により組織学的に測定された組織損傷をもたらす。疾患の発症時に、マウスに、Tregを施さない、ポリクローナルTreg(pTreg)又はRo60-Tregを施す。
図2は、実験プロトコールについての概略を提示する。
【0225】
Tregを施されなかったマウス、又はpTregを施されたマウスは、涙腺及び唾液腺の破壊へと進行する涙腺炎及び唾液腺炎を発症するが、Ro60-Tregにより処理されたマウスは、最小限の疾患だけを提示する。
【0226】
このモデルにおいて見られた疾患が、抗Ro60免疫応答により媒介されたことを裏付けるために、シェーグレン症候群患者から分離された単球由来DCを、Ro60ペプチドによりパルスし、PBMC移入の7日後に、マウスへと注射する。このようにして、抗Ro60特異的T細胞は、優先的に拡大され、抗Ro60T細胞媒介性疾患を加速化させる。
【0227】
実施例4:抗原特異的TCRの活性化と関連するTreg遺伝子の上方制御
方法:HLA-DRB1*03:01/DRB1*04:05健常ドナーに由来するCD4+ T細胞を、以下の個別の自己エピトープ:SmD1:78-92、SmB/B’:7-21、Ro60:369-383、MPO:453-467、MPO:724-738の存在下において、単球由来樹状細胞(DC)と共に共培養した。増殖T細胞は、単一細胞シーケンシング解析(10× Genomics)にかけた。無差別型self-TCRのクローン的拡大が、TCRの活性化と連関するのかどうかを決定するために、本発明者らは、単一細胞トランスリプトームデータを解析して、遺伝子発現プロファイルを、他のT細胞と比較し、TCRの活性化と関連する遺伝子を同定した。加えて、同定された無差別型self-TCRは、Tregに由来するため、本発明者らはまた、Tregの活性化と関連する遺伝子も同定した。
【0228】
結果:
図3に示される通り、TCRの活性化と関連して上方制御された遺伝子は、FOXP3、CTLA4、IL1R2、CCR10、TIGIT、IKZF2、ITGAM、LGALS1、LGALS3、PI16、IL2RAであった。Tregの活性化と関連して下方制御された遺伝子は、IL13、IFNG、IL7Rであった。
【0229】
結論:これらのデータは、各エピトープが、無差別型self-TCRエンゲージメント及びTregの活性化を誘導しうることを裏付ける。
【0230】
実施例5:ヒトTreg上における、無差別型self-TCRの発現
方法:無差別型self-TCRを、ヒトTregに付加することの、有利な免疫抑制効果について研究するために、本発明者らは、ヒトTregの表面上における無差別型self-TCRの発現を可能とする、レンチウイルス形質導入工程を開発した。まず、無差別型self-TCRのTCR配列を、レンチウイルスベクターへとクローニングし、レンチウイルスストックを得た。次いで、磁気分離及び流動分取により、ヒトTregを、PBMCから分離し、抗CD2、抗CD3、抗CD28及びIL-2の存在下において拡大し、次いで、MOIを30として、レンチウイルスを形質導入した。形質導入効率は、フローサイトメトリーにより測定した。GFPの発現は、形質導入効率を反映し、Vβ14の発現は、細胞の表面上に、無差別型self-TCRを発現するTregの百分率を反映する。
【0231】
結果:
図4に示される通り、Treg形質導入プロトコールの形質導入効率は、30.8%であった。形質導入されたGFP+ Tregのうち、32.3%は、Vβ14について陽性であった。非形質導入GFP-細胞において、内因性のVβ14発現は、3.84%であった。
【0232】
結論:本発明者らは、ヒトTregの表面上において、本発明の無差別型self-TCRを発現させることが可能であることを裏付けた。
【0233】
実施例6:無差別型self-TCR Tregは、ペプチド-HLA デキストラマーに結合する
方法:Treg上の無差別型self-TCRが、Sm自己抗原、Ro自己抗原及びMPO自己抗原に結合しうることを裏付けるために、本発明者らは、以下のペプチド-HLA デキストラマー-SmD1:78-21/HLA-DRB1*03:01、Ro60:369-383/HLA-DRB1*03:01及びMPO:453-567/HLA-DRB1*04:05を作出し、次いで、フローサイトメトリーにより、結合を測定した。
【0234】
結果:
図5に示される通り、無差別型self-TCRを形質導入されたTregは、SmD1:78-21/HLA-DRB1
*03:01 デキストラマー、Ro60:369-383/HLA-DRB1
*03:01 デキストラマー及びMPO:453-567/HLA-DRB1
*04:05 デキストラマーへの結合を呈する。
【0235】
結論:無差別型self-TCRを形質導入されたTregは、Sm自己抗原、Ro60自己抗原及びMPO自己抗原に無差別に結合することが可能である。
【0236】
実施例7:無差別型self-TCR Tregは、ペプチド刺激の後に活性化される
方法:無差別型self-TCR Tregが、ペプチドにより刺激されると活性化されることを裏付けるために、無差別型self-TCRを形質導入されたTregを、B-LCLを発現するHLA-DRB1*03:01/HLA-DRB1*04:05及びSmD1:78-92、Ro60:369-383又はMPO:453-467と共に共培養し、次いで、早期T細胞活性化マーカーであるCD69及びTreg特異的活性化マーカーであるGARPを、フローサイトメトリーにより測定した。CD69又はGARPの上方制御を、モックを形質導入されたTregと比較した。
【0237】
結果:
図6に示される通り、SmD1:78-92、Ro60:369-383及びMPO:453-467による刺激は、無差別型self-TCRを形質導入されたTregの活性化を、ペプチド刺激なしと比較して誘導した。
【0238】
結論:無差別型self-TCRを形質導入されたTregは、Sm自己抗原、Ro60自己抗原及びMPO自己抗原により刺激されると活性化される。
【0239】
実施例8:無差別型self-TCRは、Smペプチドにエンゲージする
方法:無差別型self-TCRが、Smペプチド-HLA複合体にエンゲージしうることを裏付けるために、本発明者らは、イメージングフローサイトメトリーを使用して、J76 T細胞を発現する無差別型self-TCRと、B-LCLを抗原提示細胞として発現するHLA-DRB1*03:01との間の免疫シナプスを視覚化した。BLCLを、ペプチドを伴わずに、SmD1:78-92又はSmB/B’:7-21により、無血清RPMI中、37℃において、2時間にわたりパルスした。次いで、無血清RPMI中の比を、1:1として、パルスされたB-LCLを、無差別型self-TCRを形質導入されたJ76細胞と混合し、37℃において、2時間にわたりインキュベートした。次いで、細胞を固定し、透過化緩衝液中に、抗HLA-DR BV421(クローンG46-6;BD)、抗CD3e PE(クローンOKT3;Invitrogen)及びファロイジンAF647(Invitrogen)を含有する抗体/ファロイジンカクテルにより染色した。細胞を、Amnis Imagestream X Mark II imaging flow cytometer(Luminex)上の収集に続く、Ideas Software ver.6.2(Luminex)を使用して、B-LCL-J76ダブレットの免疫シナプスの蛍光を同定及び定量する解析の直前に添加された、PBS/ヨウ化プロピジウム中に再懸濁させた。免疫シナプスにおける、CD3又はファロイジンの平均値ピクセル強度の増大は、TCRへの結合及び活性化を表す。
【0240】
結果:
図8に示される通り、B-LCLを、Smエピトープによりパルスしたところ、免疫シナプスにおける、CD3及びファロイジンの平均値ピクセル強度が増大した。
【0241】
結論:無差別型self-TCRは、いずれのHLA-DRB1*03:01拘束Smエピトープにもエンゲージしうる。
【0242】
本明細書において開示及び規定された本発明は、言及された、又は本文若しくは図面から明らかな、2つ以上の個々の特色の、全ての代替的組合せへと拡張されることが理解される。これらの異なる組合せの全ては、本発明の多様な代替的態様を構成する。
【配列表】
【国際調査報告】