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特表2024-534513電池及びその製造方法並びに電力消費装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電池及びその製造方法並びに電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6557 20140101AFI20240912BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240912BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20240912BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240912BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240912BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M10/6557
H01M10/613
H01M10/651
H01M10/647
H01M10/625
H01M10/617
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517470
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 CN2022072026
(87)【国際公開番号】W WO2023133803
(87)【国際公開日】2023-07-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】柯▲劍▼煌
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼小波
(72)【発明者】
【氏名】李耀
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031EE01
5H031HH06
5H031HH08
5H031KK08
(57)【要約】
本願の実施例は、電池及びその製造方法並びに電力消費装置を提供する。電池は、第1の方向に沿って配列され、第1の方向において対向して設けられる2つの第1の側面、第2の方向において対向して設けられる2つの第2の側面、第3の方向において対向して設けられる頂面と底面、及び2つの電極端子を有する複数の電池セルであって、第1、第2及び第3の方向は、それぞれ2つずつ直交し、第1の側面の面積は、第2の側面の面積よりも大きい複数の電池セルと、電池セルを冷却するために冷却媒体が収容されており、冷却ユニット及び集積ユニットを含む冷却部材であって、冷却ユニットは、第1の方向において対向する第1の冷却壁及び第2の冷却壁より板状に形成され、隣接する2つの電池セルの間に設けられ、第1の冷却壁と第2の冷却壁の間に冷却媒体が流れる通路が形成されている冷却部材と、を含み、第1の冷却壁及び第2の冷却壁にそれぞれ脆弱部が設けられており、電池に異常が発生した場合、脆弱部は、冷却媒体を放出するように破裂することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿って配列され、前記第1の方向において対向して設けられる2つの第1の側面、第2の方向において対向して設けられる2つの第2の側面、第3の方向において対向して設けられる頂面と底面、及び2つの電極端子を有する複数の電池セルであって、前記第1の方向、前記第2の方向及び前記第3の方向は、それぞれ2つずつ直交し、前記第1の側面の面積は、前記第2の側面の面積よりも大きい複数の電池セルと、
前記電池セルを冷却するために冷却媒体が収容されており、冷却ユニット及び集積ユニットを含む冷却部材であって、前記冷却ユニットは、前記第1の方向において対向する第1の冷却壁及び第2の冷却壁より板状に形成され、隣接する2つの前記電池セルの間に設けられ、前記第1の冷却壁と前記第2の冷却壁の間に前記冷却媒体が流れる通路が形成されている冷却部材と、
を含み、
前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁にそれぞれ脆弱部が設けられており、前記電池に異常が発生した場合、前記脆弱部は、前記冷却媒体を放出するように破裂することができる電池。
【請求項2】
前記脆弱部は、薄肉部を含み、前記薄肉部の肉厚は、前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁の他の部分の肉厚よりも小さい請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁は、それぞれ内側壁面及び外側壁面を有し、前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁のそれぞれの前記内側壁面から肉厚を薄肉化して前記薄肉部を形成する請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記第1の冷却壁と前記第2の冷却壁の厚さは同じであり、0.2~1.5mmであり、
前記薄肉部の厚さは0.2mm以下である請求項2又は3に記載の電池。
【請求項5】
前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁にそれぞれ貫通孔が設けられており、
前記冷却ユニットは、少なくとも前記貫通孔を被覆する薄膜を更に含み、
前記脆弱部は、前記貫通孔及び前記薄膜により形成される請求項1に記載の電池。
【請求項6】
前記第1の冷却壁と前記第2の冷却壁の厚さは同じであり、0.2~1.5mmであり、
前記薄膜の厚さは0.1~0.3mmである請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁のそれぞれの前記外側壁面に前記外側壁面から内へ窪んだ線状壁面流路が設けられており、
前記第1の方向から見た平面視において、前記線状壁面流路は、前記脆弱部と部分的に重なる請求項1~6の何れか1項に記載の電池。
【請求項8】
前記線状壁面流路は、前記第1の方向から見た平面視において、格子状パターンを構成するか、又は前記脆弱部を中心として放射状パターンを呈する請求項7に記載の電池。
【請求項9】
前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁は、それぞれの前記外側壁面に前記外側壁面から内へ窪んだ壁面凹部を更に有し、前記壁面凹部は、前記電池セルの膨張空間を提供することができ、
前記第2の方向において、前記壁面凹部の縁から最も近い前記外側壁面の縁までの距離は、前記外側壁面の第2の方向における長さの3~20%(且つ>2mm)であり、前記第3の方向において、前記壁面凹部の縁から最も近い前記外側壁面の縁までの距離は、前記外側壁面の第3の方向における長さの3~20%であり、且つ>2mmであり、又は、前記壁面凹部の面積は、前記外側壁面の60~90%を占め、前記壁面凹部の深さは、肉厚の10~90%であり、
前記脆弱部は、前記壁面凹部に設けられる請求項1~6の何れか1項に記載の電池。
【請求項10】
前記脆弱部は1つであり、前記第3の方向において前記電池セルの前記頂面に近い請求項1~9の何れか1項に記載の電池。
【請求項11】
前記脆弱部は複数であり、前記第3の方向において前記電池セルの前記頂面に近い前記脆弱部の数は、他の位置の脆弱部の数よりも大きい請求項1~9の何れか1項に記載の電池。
【請求項12】
前記脆弱部の形状は、円形、三角形又は矩形である請求項1~11の何れか1項に記載の電池。
【請求項13】
前記冷却ユニットは複数であり、それぞれ任意の2つの隣接する前記電池セルの間に配置される請求項1~12の何れか1項に記載の電池。
【請求項14】
複数の前記電池セルは、同じ数の電池セルを含む複数の電池ユニットに分けられ、
前記冷却ユニットは複数であり、それぞれ任意の2つの隣接する前記電池ユニットの間に配置される請求項1~12の何れか1項に記載の電池。
【請求項15】
前記2つの電極端子は、前記電池セルの前記頂面に設けられるか、又はそれぞれ前記電池セルの前記2つの第2の側面に設けられ、
前記集積ユニットは1つであり、前記第1の方向に沿って複数の前記電池セルに跨って複数の前記電池セルの前記底面に設けられ、且つ前記冷却ユニットに連通する請求項1~14の何れか1項に記載の電池。
【請求項16】
前記2つの電極端子は、それぞれ前記電池セルの前記2つの第2の側面に設けられ、
前記集積ユニットは2つであり、それぞれ前記第1の方向に沿って複数の前記電池セルに跨って複数の前記電池セルの前記頂面及び前記底面に設けられ、且つそれぞれ前記冷却ユニットに連通する請求項1~14の何れか1項に記載の電池。
【請求項17】
更に前記冷却ユニットと前記電池セルの間に熱伝導層が設けられている請求項1~16の何れか1項に記載の電池、
【請求項18】
電気エネルギーを提供するための請求項1~17の何れか1項に記載の電池を含む電力消費装置。
【請求項19】
第1の方向に沿って配列され、前記第1の方向において対向して設けられる2つの第1の側面、第2の方向において対向して設けられる2つの第2の側面、第3の方向において対向して設けられる頂面と底面、及び2つの電極端子を有する複数の電池セルであって、前記第1の方向、前記第2の方向及び前記第3の方向は、それぞれ2つずつ直交し、前記第1の側面の面積は、前記第2の側面の面積よりも大きい複数の電池セルを提供するステップと、
前記電池セルを冷却するために冷却媒体が収容されており、冷却ユニット及び集積ユニットを含む冷却部材であって、前記冷却ユニットは、前記第1の方向において対向する第1の冷却壁及び第2の冷却壁より板状に形成され、前記第1の冷却壁と前記第2の冷却壁の間に前記冷却媒体が流れる通路が形成されている冷却部材を提供するステップと、
それぞれ前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁に、前記電池に異常が発生した場合に前記冷却媒体を放出するように破裂することができる脆弱部を作製する脆弱部作製ステップと、
前記冷却ユニットを隣接する2つの前記電池セルの間に配置するステップと、
を含む電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電池分野に関し、特に電池、電池の製造方法及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の進歩及び新エネルギー産業の発展につれて、熱的安全性の関連設計は、人々に益々注目されるようになり、特に電池にとって、そのエネルギー密度が人々のニーズにつれて益々高くなると、電池安全性の設計も大きな挑戦となっている。
【0003】
従来技術において、電池は、通常、複数の電池セルが積層された電池ユニットを含み、電池の1つ又は複数の電池セルに熱暴走が発生した後、如何に電池に大面積の熱伝播が発生しないように制御するかは、設計上の大きな重点となっている。従来の設計において、電池セルの間が互いに密着するため、そのうちの1つ/複数の電池セルに熱暴走が発生した後、電池セルの密着面は最大の熱伝達面となっている。電池セルの間に熱伝播が発生しないことを保証するために、一般的に、電池セルの密着面の間に断熱パッドを増設して熱伝播を遮断するように電池を設計する。しかし、電池セルのエネルギー密度の向上に伴い、電池セルに暴走が発生した後、その温度も益々高くなり、電池セル間の断熱空間に対する要求及び断熱能力に対する要求もそれに応じて益々高くなり、これは、電池のエネルギー密度の設計要求にとっても間違いなく大きな衝撃と挑戦であるため、新規な断熱方法の発見は急務となっている。
【発明の概要】
【0004】
上記問題に鑑み、本願は、通常使用時に電池内部の熱を良好に導出することができるだけでなく、電池に熱暴走が発生した場合に熱伝播を速やかに阻止し、電池の急速冷却を実現することもできる電池及びその製造方法並びに電力消費装置を提供することを目的とする。
【0005】
第1の態様において、本願の実施例は、第1の方向に沿って配列され、前記第1の方向において対向して設けられる2つの第1の側面、第2の方向において対向して設けられる2つの第2の側面、第3の方向において対向して設けられる頂面と底面、及び2つの電極端子を有する複数の電池セルであって、前記第1の方向、前記第2の方向及び前記第3の方向は、それぞれ2つずつ直交し、前記第1の側面の面積は、前記第2の側面の面積よりも大きい複数の電池セルと、前記電池セルを冷却するために冷却媒体が収容されており、冷却ユニット及び集積ユニットを含む冷却部材であって、前記冷却ユニットは、前記第1の方向において対向する第1の冷却壁及び第2の冷却壁より板状に形成され、隣接する2つの前記電池セルの間に設けられ、前記第1の冷却壁と前記第2の冷却壁の間に前記冷却媒体が流れる通路が形成されている冷却部材と、を含み、前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁にそれぞれ脆弱部が設けられており、前記電池に異常が発生した場合、前記脆弱部は、前記冷却媒体を放出するように破裂することができる電池を提供する。
【0006】
本願の実施例の技術的解決手段によれば、電池の使用中に、正常な使用状態で、電池セル間にある冷却ユニットを利用して電池の使用時に発生した熱をより速く導出することができるだけでなく、電池の温度を速やかに低下させ、製品の放熱能力を向上させることができ、急速充電性能を向上させることができる。また、電池に熱暴走などの異常が発生した場合、電池セル間に位置する、電池セルに十分に接触する冷却ユニットは、電池セルの密着面の熱伝達を大幅に低減することができ、それによって電池セル間の熱拡散/熱伝播のリスクを大幅に減らすことができる。更に、冷却ユニットの2つの冷却壁に設けられた脆弱部を利用し、電池に熱暴走などの異常が発生した場合、脆弱部を破裂させることにより、冷却ユニットを流れる冷却媒体を速やかに放出して電池セルの表面の各箇所に速やかに拡散させることができ、急速降温を実現することができ、電池に熱暴走が発生し、ひいては燃焼及び爆発が発生した緊急事態でも、迅速に対応して安全を確保することができ、電池の放熱性、安定性と安全性を兼ね備えることができる。
【0007】
幾つかの実施例において、前記脆弱部は、薄肉部を含み、前記薄肉部の肉厚は、前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁の他の部分の肉厚よりも小さい。それにより、電池に異常が発生した場合に当該薄肉部がより容易に打ち抜かれたり溶けたりすることができることを実現することができる。また、第1の冷却壁及び第2の冷却壁の肉厚に薄肉化処理を行うだけで、薄肉部を形成することができるため、複雑な製造プロセスを必要とせず、簡単な操作だけで脆弱部を実現することができる。
【0008】
幾つかの実施例において、前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁は、それぞれ内側壁面及び外側壁面を有し、前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁のそれぞれの前記内側壁面から肉厚を薄肉化して前記薄肉部を形成する。それにより、内側壁面から肉厚を薄肉化することにより、外側壁面の平坦性を破壊することなく、外側壁面をそれに隣接する電池ユニットに密着させることができる。従って、電池ユニットに異常が発生した場合、外側壁面の表面全体が電池セルに密着するため、電池に発生した熱が薄肉部に速やかに伝達されてそれを破裂させることができる。
【0009】
幾つかの実施例において、前記第1の冷却壁と前記第2の冷却壁の厚さは同じであり、0.2~1.5mmであり、前記薄肉部の厚さは0.2mm以下である。冷却媒体が正常に作動できるとともに電池を正常に使用できるという信頼性を確保した前提で、薄肉部の厚さを可能な限り一層薄くし、例えば、第1の冷却壁及び第2の冷却壁の厚さ(0.2~1.5mm)に比べ、薄肉部の厚さを0.2mm以下に薄くすることにより、電池に異常が発生した場合により容易に溶けたり打ち抜かれたりすることを保証することができる。
【0010】
幾つかの実施例において、前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁にそれぞれ貫通孔が設けられており、前記冷却ユニットは、少なくとも前記貫通孔を被覆する薄膜を更に含み、前記脆弱部は、前記貫通孔及び前記薄膜により形成される。第1の冷却壁及び第2の冷却壁に穿孔及び薄膜の被覆を行うことにより、複雑な製造プロセスを必要とせず、簡単な製造プロセスだけで脆弱部を実現することができる。また、貫通孔に薄膜を被覆することで脆弱部を形成し、被覆された薄膜は、薄肉化により形成された上記薄肉部よりも容易に破裂することができるため、電池の温度変化により速やかに応答することができる。
【0011】
幾つかの実施例において、前記第1の冷却壁と前記第2の冷却壁の厚さは同じであり、0.2~1.5mmであり、前記薄膜の厚さは0.1~0.3mmである。冷却媒体が正常に作動できるとともに電池を正常に使用できるという信頼性を確保した前提で、薄肉部の厚さを可能な限り一層薄くし、例えば、第1の冷却壁及び第2の冷却壁の厚さ(0.2~1.5mm)に比べ、薄膜mの厚さを0.1~0.3mmに薄くすることにより、電池に異常が発生した場合により容易に溶けたり打ち抜かれたりすることを保証することができる。また、第1の冷却壁及び第2の冷却壁を薄肉化する処理プロセスに比べ、第1の冷却壁及び第2の冷却壁に穿孔及び薄膜の被覆を行うことにより、実際の状況に応じて異なるタイプの電池及び異なる使用環境に応じて異なる厚さの薄膜mを選択することができ、適用性においてより柔軟になる。
【0012】
幾つかの実施例において、前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁のそれぞれの前記外側壁面に前記外側壁面から内へ窪んだ線状壁面流路が設けられており、前記第1の方向から見た平面視において、前記壁面流路は、前記脆弱部と部分的に重なる。線状壁面流路を設けることにより、電池に異常が発生した場合、破裂した脆弱部から噴き出された冷却媒体の流れをより促進することができ、放出された冷却媒体を電池セルの表面により速やかに拡散させることができる。
【0013】
幾つかの実施例において、前記線状壁面流路は、前記第1の方向から見た平面視において、格子状パターンを構成するか、又は前記脆弱部を中心として放射状パターンを呈する。格子状パターンを有するか、又は脆弱部を中心として放射状パターンを呈するように線状壁面流路を設計することにより、破裂した脆弱部から噴き出された冷却媒体の流れをより促進することができ、放出された冷却媒体を電池セルの表面により速やかに拡散させることができる。
【0014】
幾つかの実施例において、前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁は、それぞれの前記第1の壁面に前記外側壁面から内へ窪んだ壁面凹部を更に有し、前記壁面凹部は、前記電池セルの膨張空間を提供することができ、前記第2の方向において、前記壁面凹部の縁から最も近い前記外側壁面の縁までの距離は、前記外側壁面の第2の方向における長さの3~20%(且つ>2mm)であり、前記第3の方向において、前記壁面凹部の縁から最も近い前記外側壁面の縁までの距離は、前記外側壁面の第3の方向における長さの3~20%(且つ>2mm)であり、又は、前記壁面凹部の面積は、前記外側壁面の(60~90%)を占め、前記壁面凹部の深さは、肉厚の10~90%であり、前記脆弱部は、前記壁面凹部に設けられる。それにより、第1の冷却壁及び第2の冷却壁のそれぞれの外側壁面に壁面凹部を設けることにより、冷却媒体の流れをより促進することができ、放出された冷却媒体を電池セルの表面により速やかに拡散させることができる。また、壁面凹部を利用して電池セルが膨張するための膨張空間を提供することもできる。また、電池に異常が発生した場合、電池セルが破裂した脆弱部を閉塞することによって冷却媒体がスムーズに放出できないことがないため、更に冷却媒体の放出にも役立ち、冷却媒体を電池セルの表面により良好に拡散させることができる。
【0015】
幾つかの実施例において、前記脆弱部は1つであり、前記第3の方向において前記電池セルの前記頂面に近い。それにより、冷却媒体の流れをより促進し、電池に異常が発生して脆弱部が破裂した場合、重力作用によって破裂した脆弱部から放出された冷却媒体を電池セルの表面に速やかに拡散させることができる。
【0016】
幾つかの実施例において、前記脆弱部は複数であり、前記第3の方向において前記電池セルの前記頂面に近い前記脆弱部の数は、他の位置の脆弱部の数よりも大きい。それにより、噴き出された冷却媒体が電池セルの大面積表面をより速く被覆し、電池をより速く冷却して降温させることを確保することができ、冷却媒体の流れをより促進することができ、放出された冷却媒体を電池セルの表面に速やかに拡散させることができる。
【0017】
幾つかの実施例において、前記脆弱部の形状は、円形、三角形又は矩形である。それにより、冷却媒体の流れをより促進することができ、電池に異常が発生して脆弱部が破裂した場合、破裂した脆弱部から放出された冷却媒体を電池セルの表面に速やかに拡散させることができる。
【0018】
幾つかの実施例において、前記冷却ユニットは複数であり、それぞれ任意の2つの隣接する前記電池セルの間に配置される。それにより、電池セルの数に応じて複数の冷却ユニットを配置することにより、任意の2つの隣接する電池セルの間のいずれにも冷却ユニットが設けられており、電池をより良好に放熱することができる。この時、電池に異常が発生した場合、電池のどの電池セルのどの面に異常が発生しても、冷却ユニットから応答を得ることができ、電池をより良好に放熱することができる。
【0019】
幾つかの実施例において、複数の前記電池セルは、同じ数の電池セルを含む複数の電池ユニットに分けられ、前記冷却ユニットは複数であり、それぞれ任意の2つの隣接する前記電池ユニットの間に配置される。それにより、コスト要因、組み立て効率及び急速充電と断熱の要求を考慮した上で、実際の状況に応じて複数の電池セルを有する電池ユニットの間に冷却ユニットを配置することができ、組み立て効率を高め、製造コストを削減することができる。
【0020】
幾つかの実施例において、前記2つの電極端子は、前記電池セルの前記頂面に設けられるか、又はそれぞれ前記電池セルの前記2つの第2の側面に設けられ、前記集積ユニットは1つであり、前記第1の方向に沿って複数の前記電池セルに跨って複数の前記電池セルの前記底面に設けられ、且つ前記冷却ユニットに連通する。それにより、電池全体の寸法及びグループ分け方法を考慮した上で、電極端子の設置位置に応じて、電池の底部に集積ユニットを設けることができ、電池10をより良好に放熱・冷却することができる。
【0021】
幾つかの実施例において、前記2つの電極端子は、それぞれ前記電池セルの前記2つの第2の側面に設けられ、前記集積ユニットは2つであり、それぞれ前記第1の方向に沿って複数の前記電池セルに跨って複数の前記電池セルの前記頂面及び前記底面に設けられ、且つそれぞれ前記冷却ユニットに連通する。それにより、電極端子が電池セルの両側に設けられる場合に対して、電池セルの間に冷却ユニットを設けるとともに、電池の底部に1つの集積ユニットを設けた上で、更に電池の頂部にもう1つの集積ユニットを設けることができ、2つの集積ユニットによって頂部及び底部から電池に放熱・冷却をより良好に行うことができる。
【0022】
幾つかの実施例において、更に前記冷却ユニットと前記電池セルの間に熱伝導層が設けられている。それにより、電池をより良好に放熱することができる。
【0023】
第2の態様において、本願の実施例は、本願の実施例の第1の態様により提供される電池を含む電力消費装置を更に提供する。
【0024】
第3の態様において、本願の実施例は、第1の方向に沿って配列され、前記第1の方向において対向して設けられる2つの第1の側面、第2の方向において対向して設けられる2つの第2の側面、第3の方向において対向して設けられる頂面と底面、及び2つの電極端子を有する複数の電池セルであって、前記第1の方向、前記第2の方向及び前記第3の方向は、それぞれ2つずつ直交し、前記第1の側面の面積は、前記第2の側面の面積よりも大きい複数の電池セルを提供するステップと、前記電池セルを冷却するために冷却媒体が収容されており、冷却ユニット及び集積ユニットを含む冷却部材であって、前記冷却ユニットは、前記第1の方向において対向する第1の冷却壁及び第2の冷却壁より板状に形成され、前記第1の冷却壁と前記第2の冷却壁の間に前記冷却媒体が流れる通路が形成されている冷却部材を提供するステップと、それぞれ前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁に脆弱部を作製する脆弱部作製ステップと、前記冷却ユニットを隣接する2つの前記電池セルの間に配置するステップと、を含む電池の製造方法を更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
ここで説明される図面は、本願を更に理解するためのものであり、本願の一部を構成し、本願の例示的な実施例及びその説明は、本願を解釈するために用いられるが、本願を不適切に限定するものではない。
図1】本願の一実施例の車両の構造模式図である。
図2】本願の一実施例の電池の基本構造を示す斜視図である。
図3】本願の一実施例の電池を第1の方向(X方向)から見た正面図である。
図4】本願の一実施例の電池を図3におけるA-A線に沿って切断した断面図である。
図5】本願の一実施例の電池セルの構造を示す斜視図である。
図6】本願の一実施例の冷却ユニットの構造を示す斜視図である。
図7】本願の一実施例の冷却ユニットを第1の方向(X方向)から見た正面図である。
図8】本願の一実施例の冷却ユニットを図7におけるA-A線に沿って切断した断面図である。
図9図8における円B部の局所拡大図である。
図10】本願の別の実施例の冷却ユニットの構造を示す斜視図である。
図11】本願の別の実施例の冷却ユニットの構造を示す分解図である。
図12】本願の別の実施例の冷却ユニットを第1の方向(X方向)から見た正面図である。
図13】本願の別の実施例の冷却ユニットを図12におけるA-A線に沿って切断した断面図である。
図14図13における円B部の局所拡大図である。
図15】本願の更なる実施例の冷却ユニットの構造を示す斜視図である。
図16】本願の更なる実施例の冷却ユニットを第1の方向(X方向)から見た正面図である。
図17】本願の更なる実施例の冷却ユニットを第2の方向(Y方向)から見た側面図である。
図18】本願の更なる実施例の冷却ユニットを図17におけるC-C線に沿って切断した断面図である。
図19】本願の更なる実施例の冷却ユニットを図16におけるA-A線に沿って切断した断面図である。
図20図19における円B部の局所拡大図である。
図21】本願の更に別の実施例の冷却ユニットの構造を示す斜視図である。
図22】本願の更に別の実施例の冷却ユニットを第1の方向(X方向)から見た正面図である。
図23】本願の更に別の実施例の冷却ユニットを第2の方向(Y方向)から見た側面図である。
図24】本願の更に別の実施例の冷却ユニットを図23におけるC-C線に沿って切断した断面図である。
図25】本願の更に別の実施例の冷却ユニットを図22におけるA-A線に沿って切断した断面図である。
図26図25における円B部の局所拡大図である。
図27】本願の他の変形例の冷却ユニットの構造を示す斜視図である。
図28】本願の他の変形例の冷却ユニットを第1の方向(X方向)から見た正面図である。
図29】本願の他の変形例の冷却ユニットを第2の方向(Y方向)から見た側面図である。
図30】本願の他の変形例の冷却ユニットを図29におけるC-C線に沿って切断した断面図である。
図31】本願の他の変形例の冷却ユニットを図28におけるA-A線に沿って切断した断面図である。
図32図31における円B部の局所拡大図である。
図33】本願の更に他の変形例の冷却ユニットの構造を示す斜視図である。
図34】本願の更に他の変形例の冷却ユニットを第1の方向(X方向)から見た正面図である。
図35】本願の更に他の変形例の冷却ユニットを第2の方向(Y方向)から見た側面図である。
図36】本願の更に他の変形例の冷却ユニットを図35におけるC-C線に沿って切断した断面図である。
図37】本願の更に他の変形例の冷却ユニットを図34におけるA-A線に沿って切断した断面図である。
図38図37における円B部の局所拡大図である。
図39】本願の更なる変形例の冷却ユニットの構造を示す斜視図である。
図40】本願の更なる変形例の冷却ユニットを第1の方向(X方向)から見た正面図である。
図41】本願の更なる変形例の冷却ユニットを第2の方向(Y方向)から見た側面図である。
図42】本願の更なる変形例の冷却ユニットを図41におけるC-C線に沿って切断した断面図である。
図43】本願の更なる変形例の冷却ユニットを図40におけるA-A線に沿って切断した断面図である。
図44図43における円B部の局所拡大図である。
図45】本願の他の実施例の電池の基本構造を示す斜視図である。
図46】本願の他の実施例の電池を第1の方向(X方向)から見た正面図である。
図47】本願の他の実施例の電池の基本構造を示す斜視図である。
図48】本願の他の実施例の電池を第1の方向(X方向)から見た正面図である。
図49】本願の一実施例の電池の製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本願の技術的解決手段の実施例を詳しく説明する。以下の実施例は、単に本願の技術的解決手段をより明瞭に説明するためのものであるため、例に過ぎず、これによって本願の保護範囲を限定してはならない。
【0027】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本願の技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有し、本明細書で使用される用語は、単に具体的な実施例を説明するためのものであり、本願を限定することを意図するものではない。本願の明細書及び特許請求の範囲ならびに上記の図面の簡単な説明における「含む」と「有する」という用語及びそれらの任意の変形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。
【0028】
本願の実施例の説明において、「第1」、「第2」などの技術用語は、単に異なる対象を区別するために用いられ、相対的な重要性を指示又は示唆するか、或いは指示された技術的特徴の数、特定の順序又は主従関係を暗示するものとして理解すべきではない。本願の実施例の説明において、別途明確且つ具体的な限定がない限り、「複数」は、2つ以上を意味する。
【0029】
本明細書で「実施例」に言及した場合、実施例を参照しながら説明される特定の特徴、構造又は特性が本願の少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを意味する。本明細書の各位置に出てきたこの語句は、必ずしも全て同じ実施例を指すわけではなく、他の実施例と相互に排他的な独立した又は代替の実施例でもない。当業者に明示的・暗示的に理解されるように、本明細書に記載の実施例は他の実施例と組み合わせることができる。
【0030】
本明細書の実施例の説明において、「及び/又は」という用語は、単に関連対象を説明する関連関係であり、3つの関係が存在し得ることを示し、例えば、A及び/又はBは、「Aのみが存在する」、「AとBが同時に存在する」、「Bのみが存在する」という3つの場合を示すことができる。なお、本明細書における符号「/」は、一般的に前後の関連対象が「又は」の関係であることを示す。
【0031】
本願の実施例の説明において、「複数」という用語は、2つ以上(2つを含み)を指し、同様に、「複数のグループ」は、2つ以上のグループ(2つのグループを含む)を指し、「複数枚」は、2枚以上(2枚を含む)を指す。
【0032】
本願の実施例の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」などの技術用語で指示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係に基づくものであり、単に本願の実施例を説明したり説明を簡略化したりしやすくするためであり、指される装置又は素子が必ず特定の方位を有し、特定の方位で構成・操作されることを指示又は示唆するものではないため、本願の実施例を限定するものとして理解すべきではない。
【0033】
本願の実施例の説明において、別途明確な規定及び限定がない限り、「取り付ける」、「繋がる」、「接続」、「固定」などの技術用語は、広義に理解すべきであり、例えば、固定接続であってもよく、着脱可能な接続、又は一体的な接続であってもよく、機械的接続であってもよく、電気的接続であってもよく、直接接続であってもよく、中間媒体による間接接続であってもよく、2つの素子の内部の連通又は2つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて、本願の実施例における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0034】
本願の実施例において言及される電池は、より高い電圧と容量を提供するために複数の電池セルを含む単一の物理的モジュールを指す。電池は、互いに電気的に接続される複数の電池モジュール及び筐体を含むことができ、複数の電池モジュールは、筐体の空間内に配列される。筐体は、一般的に密閉型筐体である。
【0035】
電池モジュールは、複数の電池セル及びフレームを含むことができ、フレームは、複数の電池セルを囲んで一体的に固定して形成する。一般的に、フレームは、封止作用を果たすものではなく、複数の電池セルを固定する役割を果たす。
【0036】
電池セルは、電極組立体及び電解液を含み、電極組立体は、正極板、負極板及びセパレータを含む。電池セルは、主に金属イオンが正極板と負極板の間で移動することにより作動する。正極板は、正極集電体及び正極活物質層を含み、正極活物質層は、正極集電体の表面に塗布され、正極活物質層が塗布されていない集電体は、正極活物質層が塗布された集電体から突出し、正極活物質層が塗布されていない集電体を正極タブとする。リチウムイオン電池を例とし、正極集電体の材料は、アルミニウムであってもよく、正極活物質は、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、三元リチウム又はマンガン酸リチウムなどであってもよい。負極板は、負極集電体及び負極活物質層を含み、負極活物質層は、負極集電体の表面に塗布され、負極活物質層が塗布されていない集電体は、負極活物質層が塗布された集電体から突出し、負極活物質層が塗布されていない集電体を負極タブとする。負極集電体の材料は、銅であってもよく、負極活物質は、炭素又はシリコンなどであってもよい。溶断が発生することなく大電流を流すことを保証するために、正極タブの数は、複数であり、且つ積み重ねられ、負極タブの数は、複数であり、且つ積み重ねられる。セパレータの材質は、PP又はPEなどであってもよい。また、電極組立体は、巻回型構造であってもよく、積層型構造であってもよく、本願の実施例は、これらに限定されない。
【0037】
また、電池セルは、円柱体、扁平体、直方体又は他の形状などを呈してもよい。電池セルは、一般的にパッケージング手法に従って、円筒形電池セル、角形電池セル及びソフトパック電池セルという3種類に分けられる。
【0038】
電池技術の発展に際して、通常、エネルギー密度、サイクル寿命、放電容量、充放電倍率などの性能パラメータなどの様々な設計要因を同時に考慮する必要があり、更に電池の放熱性、安定性と安全性を考慮する必要もある。
【0039】
電気自動車などの電力消費装置において、それに使用される電池は、通常、数十ひいては数千もの電池セルで構成され、これらの電池セルは、積み重ねられて電池ユニットを形成する。発明者らは、電池に使用時に大量の熱が発生するため、それをタイムリーに放熱する必要があることを発見した。電池をタイムリーに放熱できなければ、電池の使用寿命を大幅に短縮し、また充電性能にも大きな影響を与え、更に電池の安定性を低下させてしまう。また、電池の1つ又は複数の電池セルは、不適切な使用によって熱暴走が発生する可能性もあり、電池に熱暴走が発生した場合、この熱暴走をタイムリーに制御できなければ、電池ユニットの間に熱伝播が発生して電池の温度が実際の使用温度を遥かに超えて電池を損傷する可能性があり、ひいては電池の燃焼及び電池の爆発の事故が起こる可能性もある。これ対して、通常、電池セルの密着面の間に断熱パッドを追加して熱伝播を遮断する。
【0040】
しかし、電池及び電池セルのエネルギー密度は、人々のニーズの高まりにつれて高くなりつつあり、電池セルに熱暴走が発生した後、その温度も高くなり、電池セルの間の断熱空間に対する要求及び断熱能力に対する要求もそれに応じて高くなりつつあるが、従来技術において、電池セルの密着面の間に断熱パッドを単純に追加する設計案は、現在の高エネルギー密度の電池セルに発生した熱暴走の状況に全く対応することができない。
【0041】
これに鑑み、本願は、第1の方向に沿って配列され、前記第1の方向において対向して設けられる2つの第1の側面、第2の方向において対向して設けられる2つの第2の側面、第3の方向において対向して設けられる頂面と底面、及び2つの電極端子を有する複数の電池セルであって、前記第1の方向、前記第2の方向及び前記第3の方向は、それぞれ2つずつ直交し、前記第1の側面の面積は、前記第2の側面の面積よりも大きい複数の電池セルと、前記電池セルを冷却するために冷却媒体が収容されており、冷却ユニット及び集積ユニットを含む冷却部材であって、前記冷却ユニットは、前記第1の方向において対向する第1の冷却壁及び第2の冷却壁より板状に形成され、隣接する2つの前記電池セルの間に設けられ、前記第1の冷却壁と前記第2の冷却壁の間に前記冷却媒体が流れる通路が形成されている冷却部材と、を含み、前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁にそれぞれ脆弱部が設けられており、前記電池に異常が発生した場合、前記脆弱部は、前記冷却媒体を放出するように破裂することができる電池を提供する。
【0042】
ここで、電池に発生する異常は、例えば、電池を過度に使用するか又は電池を不適切に使用するか又は極端な環境で電池を使用するか又は故障などの原因で電池の温度が耐えられる臨界温度を遥かに超える状況、ひいては電池の爆発や電池の燃焼などの熱暴走が発生する状況であってもよい。
【0043】
この技術的解決手段によれば、電池に集積ユニット及び板状の冷却ユニットを含む冷却部材を設け、電池セルを冷却するための冷却媒体を当該冷却部材に収容するとともに、板状の冷却ユニットを隣接する2つの電池セルの間に設けることにより、正常な使用状態で、電池セル間にある冷却ユニットを利用して電池の使用時に発生した熱をより速く導出することができ、電池の温度を速やかに低下させ、製品の放熱能力を向上させることができ、急速充電性能を向上させることができる。また、冷却ユニットは、2つの冷却壁によって板状に形成され、隣接する2つの電池セルの間に設けられて電池セルに貼合し、電池セルに十分に接触することができ、電池に熱暴走などの異常が発生した場合、電池セル間に位置する、電池セルに十分に接触する冷却ユニットは、電池セルの密着面の熱伝達を大幅に低減することができ、それによって電池セル間の熱拡散/熱伝播のリスクを大幅に減らすことができる。また、冷却ユニットの2つの冷却壁に脆弱部が更に設けられており、電池に熱暴走などの異常が発生した場合、当該脆弱部は、冷却壁の他の部位よりも破裂しやすく、それを破裂させることにより、冷却ユニットを流れる冷却媒体を速やかに放出して電池セルの表面の各箇所に速やかに拡散させることができ、急速降温を実現することができ、電池に熱暴走が発生し、ひいては燃焼及び爆発が発生した場合でも、迅速に対応して安全を確保することができ、電池の放熱性、安定性と安全性を兼ね備えることができる。
【0044】
本願の幾つかの実施例は、電気エネルギーを提供するための電池を含む装置を提供する。選択的に、装置は、車両、船又は宇宙航空機などであってもよい。
【0045】
本願の実施例に記載の技術的解決手段は、いずれも携帯電話、携帯型機器、ノートパソコン、電気自転車、電気玩具、電動工具、電気自動車、船や宇宙航空機などの様々な装置に適用され、例えば、宇宙航空機は、飛行機、ロケット、スペースシャトルや宇宙船などを含む。
【0046】
本願の実施例に記載の技術的解決手段は、上記に記載の装置に適用されるだけでなく、更に電池を使用する全ての装置にも適用することができるが、説明を簡潔にするために、下記の実施例は、いずれも電気自動車を例として説明することを理解すべきである。
【0047】
例えば、図1に示すように、本願の一実施例の車両1の構造模式図であり、車両1は、ガソリン自動車、ガス自動車又は新エネルギー自動車であってもよく、新エネルギー自動車は、二次電池式電気自動車、ハイブリッド電気自動車又は航続距離延長型電気自動車などであってもよい。車両1の内部には、モータ20、コントローラ30及び電池10を設けることができ、コントローラ30は、電池10がモータ20に給電するように制御するために用いられる。例えば、車両1の底部又は前部又は尾部に電池10を設けることができる。電池10は、車両1に給電するために用いることができ、例えば、電池10は、車両1の動作電源として、車両1の回路システムに用い、例えば、車両1の起動、ナビゲーション及び運転時の作動電力のニーズに用いることができる。本願の別の実施例において、電池10は、車両1の動作電源として用いることができるだけでなく、車両1の駆動電源として、燃料油又は天然ガスの代わりに、又はその一部の代わりに車両1に駆動動力を提供することもできる。
【0048】
電力使用時の異なるニーズを満たすために、電池は、複数の電池セルを含むことができ、複数の電池セルの間は、直列接続又は並列接続又は直並列接続することができ、直並列接続は、直列接続と並列接続の混合を指す。電池は、電池パックと呼ばれてもよい。選択的に、複数の電池セルがまず直列接続又は並列接続又は直並列接続されて電池モジュールを構成してから、複数の電池モジュールが直列接続又は並列接続又は直並列接続されて電池を構成することができる。つまり、複数の電池セルは、電池を直接構成してもよく、まず電池モジュールを構成してから、電池モジュールより電池を構成してもよい。
【0049】
また、電池は、筐体及びエンドプレートを更に含むことができ、電池ユニット(電池モジュール)及びエンドプレートは、いずれも筐体内に設けられ、エンドプレートを電池ユニット(電池モジュール)と筐体の筐体内壁の間に設けることができる。以下の説明では、理解しやすくするために、筐体などの本願の主旨との関連性が小さい他の部材を省略している。
【0050】
具体的には、図2に示すように、本願は、複数の電池セル100及び冷却部材200を含む電池10を提供する。複数の電池セル100は、第1の方向X(電池10の厚さ方向)に沿って配列され、各電池セル100は、第1の方向Xにおいて対向して設けられる2つの第1の側面101、第2の方向Y(電池10の長さ方向)において対向して設けられる2つの第2の側面102、第3の方向Z(電池10の高さ方向)において対向して設けられる頂面103と底面104、及び2つの電極端子Eを有する。第1の方向X、第2の方向Y及び第3の方向Zは、それぞれ2つずつ直交し、第1の側面101の面積は、第2の側面102の面積よりも大きい。また、図2図6に示すように、冷却部材200は、冷却ユニット201及び集積ユニット202を含み、冷却部材200に電池セル100(電池10)を冷却するための冷却媒体が収容されている。冷却ユニット201は、第1の方向Xにおいて対向する第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012より板状に形成され、隣接する2つの電池セル100の間に設けられる。第1の冷却壁2011と第2の冷却壁2012の間に冷却媒体が流れる通路が形成されている。また、図2図8に示すように、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012にそれぞれ脆弱部2013が設けられており、電池10に異常が発生した場合、脆弱部2013は、冷却媒体を放出するように破裂することができる。図2において、理解しやすくするために、最も右側に1つの冷却ユニット201を単独で示しているが、実際の組み立て済みの電池10において、冷却ユニット201は、隣接する2つの電池セル100の間に位置し(例えば、図4)、図2は、単に説明しやすくするために最も右側に1つの冷却ユニット201を単独で示している概略図である。
【0051】
本願の幾つかの実施例において、例えば、図5に示すように、本願の電池セル100の具体的な一実施例の斜視図であり、電池セル100は、略直方体を呈し、第1の側面101は、電池セル100のうち面積が最も大きい面であり、2つの電極端子Eはいずれも電池セル100の頂面103に設けられる。ここで、2つの電極端子Eがいずれも電池セル100の頂面103に設けられることは、単なる一例であり、後述する図45図48に示すように、2つの電極端子Eをそれぞれ電池セル100の第2の側面102に設けてもよい。なお、説明しやすくするために、ここで、電池セル100の長さをLとし、厚さをWとし、高さをHとし、即ち、第1の方向Xは、電池セル100の厚さ方向(W方向)でもあり、第2の方向Yは、電池セル100の長さ方向(L方向)でもあり、第3の方向Zは、電池セル100の高さ方向(H方向)でもあり、第1の方向X、第2の方向Y及び第3の方向Zは、それぞれ2つずつ直交する。
【0052】
また、図4に示すように、本願の電池10の組み立て構造の具体的な実施例の断面図であり、具体的には、図3におけるA-A線に沿った断面図であり、第1の方向Xにおいて対向する第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012より板状に形成された冷却ユニット201は、隣接する2つの電池セル100の間に位置する。冷却ユニット201の第1の冷却壁2011は、隣接する2つの電池セル100のうちの一方の電池セル100の第1の側面101に貼合し、冷却ユニット201の第2の冷却壁2012は、隣接する2つの電池セル100のうちの他方の電池セル100の第1の側面101に貼合する。
【0053】
板状の冷却ユニット201を隣接する2つの電池セル100の間に設けることにより、冷却ユニット201の第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012をそれぞれ隣接する電池セル100の第1の側面101に貼合させ、正常な使用状態で、電池セル100の間にある冷却ユニット201を利用して電池10の使用時に発生した熱をより速く導出することができ、電池10の温度を速やかに低下させ、製品の放熱能力を向上させることができ、急速充電性能を向上させることができる。
【0054】
また、冷却ユニット201は、2つの冷却壁(第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012)より板状に形成され、且つ隣接する2つの電池セル100の間に設けられることにより、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012をそれぞれ隣接する電池セル100の第1の側面101に貼合させ、冷却ユニット201を電池セル100に十分に接触させることができ、電池10に熱暴走などの異常が発生した場合、電池セル100の間に位置する、電池セル100に十分に接触する冷却ユニット201は、電池セル100の密着面の熱伝達を大幅に低減することができ、それによって電池セル100の間の熱拡散/熱伝播のリスクを大幅に減らすことができる。
【0055】
本願の幾つかの実施例において、冷却部材200は、冷却システムとして外部の水冷機(図示せず)に接続され、水冷機によって冷却部材200を加圧することで、冷却媒体が冷却部材200の一端から冷却ユニット201及び集積ユニット202に流れ込み、且つ電池セル100の間を介して冷却部材200の他端から流出することができ、このように冷却媒体の循環を実現する。冷却媒体を利用して電池セル100を加速冷却することにより、電池セル100の温度の均一性を保証することができ、電池セル100の過電流放熱を強化し、急速充電性能を向上させることができ、また、電池セル100に異常が発生した場合、電池セル100の間の電池セル100の密着方向に沿う熱伝達を遅らせ、異常が発生した電池セル100を加速放熱し、隣接する電池セル100の熱伝播のリスクを低減することもできる。
【0056】
また、図2図9に示すように、脆弱部2013は、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012に設けられ、電池10に異常が発生した場合、脆弱部2013は、冷却媒体を放出するように破裂することができる。
【0057】
ここで、以上のように、電池10に発生する異常は、例えば、電池を過度に使用するか又は電池を不適切に使用するか又は極端な環境で電池を使用するか又は故障などの原因で電池の温度が耐えられる臨界温度を遥かに超える状況、ひいては電池の爆発や電池の燃焼などの熱暴走が発生する状況であってもよい。この場合、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012にそれぞれ脆弱部2013を設けることにより、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012の脆弱部2013が設けられた部位の物理的強度を第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012の他の部位の物理的強度よりも小さくし、当該脆弱部2013を第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012の局所脆弱点とする。この場合、電池10を正常に使用する場合、電池10に発生した熱が当該脆弱部2013(局所脆弱点)を破壊することはないが、電池10に熱暴走などの上記異常状況が発生した場合、電池10から発した大量の熱が当該脆弱部2013(局所脆弱点)を破壊し(例えば、熱溶融又は熱溶け)、当該脆弱部2013を破裂させ、冷却ユニット201内を流れる冷却媒体は、絶えずこの破裂した脆弱部2013から噴き出されるか又は水冷機の加圧駆動によりこの破裂した脆弱部2013から噴き出され、且つそれに隣接する熱暴走が発生した電池セル100の表面及び電池10における異常が発生した他の各部位に吹き付けられる。この場合、冷却媒体が高温界面に遭遇した後に速やかに相変化するため、破裂した脆弱部2013から噴き出された冷却媒体が大量の熱を持ち去り、電池10の急速降温効果を実現する。
【0058】
また、幾つかの実施例において、冷却部材200は、冷却システムとして更に電池警報システム(図示せず)と連動する。具体的には、警報システムにより電池10の内部に熱暴走などの危険状況が発生したことを識別した場合、水冷機の出力電力を制御することにより、その出力電力を大きくし、冷却部材200内の冷却媒体の循環効率を高めることができ、それにより、製品の放熱速度を向上させると同時に、脆弱部2013が冷却媒体の流速の増加による冷却壁間の背圧の上昇によって打ち抜かれ、脆弱部2013の破裂を実現し、冷却部材200内の冷却媒体を脆弱部2013から噴き出し、製品の急速降温を実現することができる。
【0059】
以上から分かるように、本願の上記技術的解決手段において、電池の使用中に、正常な使用状態で、電池セル間にある冷却ユニットを利用して電池の使用時に発生した熱をより速く導出することができるだけでなく、電池の温度を速やかに低下させ、製品の放熱能力を向上させることができ、急速充電性能を向上させることができる。また、電池に熱暴走などの異常が発生した場合、電池セル間に位置する、電池セルに十分に接触する冷却ユニットは、電池セルの密着面の熱伝達を大幅に低減することができ、それによって電池セル間の熱拡散/熱伝播のリスクを大幅に減らすことができる。更に、冷却ユニットの2つの冷却壁に設けられた脆弱部を利用し、電池に熱暴走などの異常が発生した場合、脆弱部を破裂させることにより、冷却ユニットを流れる冷却媒体を速やかに放出して電池セルの表面の各箇所に速やかに拡散させることができ、急速降温を実現することができ、電池に熱暴走が発生し、ひいては燃焼及び爆発が発生した緊急事態でも、迅速に対応して安全を確保することができ、電池の放熱性、安定性と安全性を兼ね備えることができる。
【0060】
本願の幾つかの実施例において、図9に示すように、脆弱部2013は、薄肉部pを含んでもよく、当該薄肉部pの肉厚は、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012の他の部分の肉厚よりも小さい。
【0061】
薄肉部pを形成する方法として、例えば、冷却媒体が正常に作動できるとともに電池を正常に使用できるという信頼性を確保した前提で、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012を局所的に薄肉化する(例えば、脆弱部2013を薄肉化する)ことにより、電池に異常が発生した場合に当該薄肉部pがより容易に打ち抜かれたり溶けたりすることができることを実現することができる。また、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012の肉厚に薄肉化処理を行うだけで、薄肉部pを形成することができるため、複雑な製造プロセスを必要とせず、簡単な操作だけで脆弱部2013を実現することができる。
【0062】
本願の幾つかの実施例において、図9に示すように、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012は、それぞれ内側壁面a及び外側壁面bを有し、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012のそれぞれの内側壁面aから肉厚を薄肉化して薄肉部pを形成する。
【0063】
内側壁面aから肉厚を薄肉化することにより、外側壁面bの平坦性を破壊することなく、外側壁面bをそれに隣接する電池ユニット100に密着させることができる。従って、電池ユニット100に異常が発生した場合、外側壁面bの表面全体が電池セル100に密着するため、電池に発生した熱が薄肉部pに速やかに伝達されてそれを破裂させることができる。
【0064】
本願の幾つかの実施例において、第1の冷却壁2011と第2の冷却壁2012の厚さは同じであり、0.2~1.5mmであり、薄肉部pの厚さは0.2mm以下である。冷却媒体が正常に作動できるとともに電池を正常に使用できるという信頼性を確保した前提で、薄肉部pの厚さを可能な限り一層薄くし、例えば、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012の厚さ(0.2~1.5mm)に比べ、薄肉部pの厚さを0.2mm以下に薄くすることにより、電池に異常が発生した場合により容易に溶けたり打ち抜かれたりすることを保証することができる。
【0065】
また、具体例として、電池セルの間の限られた隙間を考慮し、放熱効果を高めるために、好ましくは、冷却ユニットは、2枚の薄いアルミニウム板を溶接により組み合わせてなってよく、2枚のアルミニウム板の間に液状の冷却媒体が流通可能な流路が設けられている。流路の厚さは0.5~5mmであることが好ましく、流路の厚さは2mmであることがより好ましい。また、冷却ユニットに用いられる冷却媒体は、エチレングリコール-水型、エタノール-水型、グリセリン-水型などの良好な耐凍性と高い比熱容量を有する水冷液であることが好ましい。しかし、本願は、これらに限定されず、上記内容は、説明しやすい例に過ぎず、本願は、これに基づいて種々の変更を加えることができる。
【0066】
本願の幾つかの実施例において、図10図14に示すように、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012にそれぞれ貫通孔Cが設けられており、冷却ユニット201は、少なくとも貫通孔Cを被覆する薄膜mを更に含み、脆弱部2013は、貫通孔C及び薄膜mにより形成される。
【0067】
第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012に穿孔及び薄膜の被覆を行うことにより、複雑な製造プロセスを必要とせず、簡単な製造プロセスだけで脆弱部2013を実現することができる。また、貫通孔Cに薄膜mを被覆することで脆弱部2013を形成し、被覆された薄膜mは、薄肉化により形成された上記薄肉部pよりも容易に破裂することができるため、電池の温度変化により速やかに応答することができる。
【0068】
この実施例の好ましい形態として、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012にそれぞれ1~5mmの貫通孔Cが設けられており、且つ第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012の表面がPP(polypropylene plastics、日本語名称「ポリプロピレンプラスチック」)/PFA(Perfluoroalkoxy alkane、日本語名称「パーフルオロアルコキシアルカン」)/PI(Polyimide plastics、日本語名称「ポリイミドプラスチック」)などの材質のプラスチック膜である薄膜mで被覆されており、このプラスチック膜の厚さは0.1~0.3mmである。また、更に好ましくは、プラスチック膜と第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012の密着面に裏打ちゴムが付いている。
【0069】
本願の幾つかの実施例において、第1の冷却壁2011と第2の冷却壁2012の厚さは同じであり、0.2~1.5mmであり、薄膜mの厚さは0.1~0.3mmである。
【0070】
冷却媒体が正常に作動できるとともに電池を正常に使用できるという信頼性を確保した前提で、薄膜mの厚さを可能な限り一層薄くし、例えば、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012の厚さ(0.2~1.5mm)に比べ、薄膜mの厚さを0.1~0.3mmに薄くすることにより、電池に異常が発生した場合により容易に溶けたり打ち抜かれたりすることを保証することができる。また、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012を薄肉化する処理プロセスに比べ、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012に穿孔及び薄膜の被覆を行うことにより、実際の状況に応じて異なるタイプの電池及び異なる使用環境に応じて異なる厚さの薄膜mを選択することができ、適用性においてより柔軟になる。
【0071】
本願の幾つかの実施例において、図15図32に示すように、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012のそれぞれの外側壁面bに外側壁面bから内へ窪んだ線状壁面流路Tが設けられており、第1の方向Xから見た平面視において、線状壁面流路Tは、脆弱部2013と部分的に重なる。
【0072】
線状壁面流路Tを設けることにより、電池に異常が発生した場合、破裂した脆弱部2013から噴き出された冷却媒体の流れをより促進することができ、放出された冷却媒体を電池セル100の表面により速やかに拡散させることができる。
【0073】
本願の幾つかの実施例において、図15図21図27に示すように、線状壁面流路Tは、第1の方向Xから見た平面視において、格子状パターンを構成するか、又は脆弱部2013を中心として放射状パターンを呈する。
【0074】
格子状パターンを有するか、又は脆弱部2013を中心として放射状パターンを呈するように線状壁面流路Tを設計することにより、破裂した脆弱部2013から噴き出された冷却媒体の流れをより促進することができ、放出された冷却媒体を電池セル100の表面により速やかに拡散させることができる。
【0075】
理解すべきこととして、図15図20には、線状壁面流路Tが格子状パターンを呈し、且つ脆弱部2013の数が1つである例が示され、図21図26には、線状壁面流路Tが格子状パターンを呈し、且つ脆弱部2013の数が複数(例示的に4つ図示されている)である例が示され、図27図32には、線状壁面流路Tが脆弱部2013を中心として放射状パターンを呈し、且つ脆弱部2013の数が1つである例が示されているが、図示される例は、単なる例に過ぎず、本願は、これらに限定されず、必要に応じて線状壁面流路Tのパターン及び脆弱部2013の数を設計して変更することができる。
【0076】
具体例として、好ましくは、線状壁面流路の幅は0.5~5mmであり、より好ましくは2mmであるが、この数値は一例に過ぎず、本願は、これに限定されない。
【0077】
本願の幾つかの実施例において、図33図44に示すように、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012は、それぞれの外側壁面bに外側壁面bから内へ窪んだ壁面凹部Dを更に有し、壁面凹部Dは、電池セル100の膨張空間を提供することができる。第2の方向Yにおいて、壁面凹部Dの縁から最も近い外側壁面bの縁までの距離は、第1の壁面2011の第2の方向Yにおける長さの3~20%であり、且つ>2mmであり、第3の方向Zにおいて、壁面凹部Dの縁から最も近い外側壁面bの縁までの距離は、外側壁面bの第3の方向Zにおける長さの3~20%であり、且つ>2mmであり、又は、壁面凹部Dの面積は、外側壁面bの総面積の60~90%を占め、壁面凹部Dの深さ(第1の方向Xにおける距離)は、肉厚の10~90%であり、脆弱部2013は、壁面凹部Dに設けられる。
【0078】
ここで、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012のそれぞれの外側壁面bに壁面凹部Dを設けることにより、冷却媒体の流れをより促進することができ、放出された冷却媒体を電池ユニット100の表面により速やかに拡散させることができる。
【0079】
また、電池の使用中に、電池セル100が不可避的に膨張変形し、電池セル10全体の体積が大きくなるため、電池セル100を収容する筐体に押圧して変形させ、ひいては電池セル100と筐体の間の押圧により電池セル100が破損し、電池セル10の組み立て及び耐用年数に影響を与える可能性もある。ここで、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012のそれぞれの外側壁面bに内へ窪んだ壁面凹部Dを設けることにより、壁面凹部Dを利用して電池セル100が膨張するための膨張空間を提供することができる。
【0080】
また、上記実施例に記載のように、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012に脆弱部2013を設けるだけで、電池に異常が発生した場合、脆弱部2013が冷却媒体を放出するように破裂することができる。しかし、冷却ユニット201が隣接する2つの電池セル100の間に配置されるため、電池セル100の第1の側面101と冷却ユニット201の脆弱部2013が設けられた部分との密着によって脆弱部2013の塞ぎが引き起こされる場合があり、この時、電池10に異常が発生した場合、脆弱部2013が破裂しても、破裂した脆弱部2013は、電池セル100の第1の側面101によって塞がれるため冷却媒体をスムーズに放出することができない。ここで、第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012のそれぞれの外側壁面bに内へ窪んだ壁面凹部Dを設けるとともに、脆弱部2013を壁面凹部Dに設けることにより、冷却ユニット201が隣接する2つの電池セル100の間に配置されている状態で、電池セル100の第1の側面101は、冷却ユニット201の脆弱部2013が設けられた壁面凹部Dのこの部分と直接貼合せず、即ち、電池セル100の第1の側面101と脆弱部2013は、第1の方向Xに間隔が隔てられ、それにより、電池10に異常が発生した場合、電池セル100の第1の側面101が破裂した脆弱部2013を塞ぐことによって冷却媒体をスムーズに放出できないという状況が発生することはない。従って、このような設計は、冷却媒体の放出に役立ち、冷却媒体を電池セル100の表面により良好に拡散させることができる。
【0081】
本願の幾つかの実施例において、図8図11図20図32図38などに示すように、脆弱部2013の数は1つであり、当該脆弱部2013は、第3の方向Zにおいて電池セル100の頂面103に近い。
【0082】
第3の方向Zにおける電池セル100に近い頂面103に脆弱部2013を設けることにより、脆弱部2013をより上方に配置することができ、冷却媒体の流れをより促進し、電池10に異常が発生して脆弱部2013が破裂した場合、重力作用によって破裂した脆弱部2013から放出された冷却媒体を電池セル100の表面に速やかに拡散させることができる。
【0083】
また、本願の幾つかの実施例において、1つの脆弱部2013のみがある場合、好ましくは、脆弱部2013は、第2の方向Yにおいて最も近い第1の壁面2011の両側の縁までの距離が等しく(即ち、第1の壁面2011の第2の方向Yの1/2位置(真ん中)にある)、且つ第3の方向Zにおいて第1の壁面2011の頂面103に近い縁までの距離が、第1の壁面2011の第3の方向Zにおける長さの1/4位置以上(例えば、図8図18図30図36など)であり、それにより破裂した脆弱部2013から流出した冷却媒体が重力作用によって電池セルの表面(第1の側面101)の殆どの領域(電池セルの大面積表面の領域の殆ど)を速やかに流れることができることをより好適に確保することができる。
【0084】
本願の幾つかの実施例において、図24図42などに示すように、脆弱部2013は複数であり、複数の脆弱部2013は、第3の方向Zにおいて電池セル100の頂面103に近い脆弱部2013の数が他の位置の脆弱部2013の数よりも大きくなるように配置される。
【0085】
そのうちの一具体例として、図24に示すように、冷却ユニット201の第1の冷却壁2011及び第2の冷却壁2012にそれぞれ4つの脆弱部2013が設けられており、そのうちの3つの脆弱部2013は、第3の方向Zにおいて電池セル100の頂面103に近く、且つ等しい間隔が隔てられ(例えば、それぞれ電池セル100の長さ方向(第2の方向Y)の1/4位置、2/4位置、3/4位置にある)、1つの脆弱部2013は、高さ方向(第3の方向Z)において上記3つの脆弱部2013の下方に位置する。また、好ましくは、下方に位置するこの1つの脆弱部2013は、第1の方向Xから見た平面視において第1の冷却壁2011(第2の冷却壁2012)の中心に配置される。
【0086】
複数の脆弱部2013を設けることにより、噴き出された冷却媒体で電池セルの大面積表面をより速く被覆し、電池をより速く冷却して降温させることを確保することができる。また、複数の脆弱部2013を設け、且つ第3の方向Zにおいて電池セル100の頂面103に近い脆弱部2013の数を他の位置の数よりも大きくすることにより、冷却媒体の流れをより促進することができ、放出された冷却媒体を電池セルの表面に速やかに拡散させることができる。なお、放熱の難易度を考慮すれば、第3の方向Zにおいて電池セル100の頂面103により近い位置に脆弱部を設けることが好ましく、電池の放熱が最も困難な位置(電池の大面積表面の中心)に脆弱部を設けることが2番目に好ましく、冷却媒体が速やかに流れることができない位置(電池セルの隅など)に脆弱部を設けることが3番目に好ましい。
【0087】
図示される具体的な構造は、説明しやすくするために挙げられた具体例に過ぎず、脆弱部2013の数及び各脆弱部2013の位置関係は、上記の各図に示される内容に限定されず、実際のニーズに応じて、脆弱部2013の数及び各脆弱部2013の位置関係に対して様々な設計と変更を行うことができることを理解すべきである。
【0088】
本願の幾つかの実施例において、脆弱部2013の形状は、円形(図18などに示す)、三角形又は矩形である。
【0089】
このように脆弱部2013の具体的な形状を設けることにより、冷却媒体の流れをより促進することができ、電池10に異常が発生して脆弱部2013が破裂した場合、破裂した脆弱部2013から放出された冷却媒体を電池セル100の表面に速やかに拡散させることができる。
【0090】
図示される脆弱部2013の具体的な形状は、説明しやすくするために挙げられた具体例に過ぎず、脆弱部2013の形状は、上記の各図に示される内容に限定されず、実際のニーズに応じて、脆弱部2013の形状に対して様々な設計と変更を行うことができる。
【0091】
本願の幾つかの実施例において、冷却ユニット201は複数であり、それぞれ任意の2つの隣接する電池セル100の間に配置される。
【0092】
以上に記載のように、電池10に含まれる電池セル100は一般的に複数であり、複数の電池セル100は、第1の方向X(電池10の厚さ方向)に沿って配列される。ここで、電池セル100の数に応じて複数の冷却ユニット201を配置することにより、任意の2つの隣接する電池セル100の間のいずれにも冷却ユニット201が設けられており、電池をより良好に放熱することができる。この時、電池10に異常が発生した場合、電池10のどの電池セル100のどの面に異常が発生しても、冷却ユニット201から応答を得ることができ、電池10をより良好に放熱することができる。
【0093】
本願の幾つかの実施例において、図2及び図45などに示すように、複数の電池セル100は、同じ数の電池セル100を含む複数の電池ユニットUに分けられ、冷却ユニット201は複数であり、それぞれ任意の2つの隣接する電池ユニットUの間に配置される。
【0094】
そのうちの一具体例として、図2及び図45を参照し、6つの電池セル100は、それぞれ2つの電池セル100を含む3つの電池ユニットU(各電池ユニットUは、2つの電池セル100を含む)に分けられ、冷却ユニット201は、それぞれ任意の2つの隣接する電池ユニットUの間に配置される。
【0095】
実際の使用において、電池は、使用環境及びエネルギー密度の違いにより、2つずつの電池セル100の間のいずれにも冷却ユニット201を設ける必要がなく、また、コスト要因、組み立て効率及び急速充電と断熱の要求を考慮した上で、複数の電池セル100を同じ数の電池セル100を含む複数の電池ユニットUに分け、且つ任意の2つの隣接する電池ユニットUの間にそれぞれ1つの冷却ユニット201を配置することにより、実際の状況に応じて複数の電池セル100を有する電池ユニットUの間に冷却ユニット201を配置することができ、組み立て効率を高め、製造コストを削減することができる。
【0096】
図示される電池ユニットUの数、電池ユニットUにおける電池セル100の数は、説明しやすくするために挙げられた具体例に過ぎず、、電池ユニットUの数及び各電池ユニットUにおける電池セル100の数は、上記の各図に示される内容に限定されず、実際のニーズに応じて、電池ユニットUの数及び各電池ユニットUにおける電池セル100の数に対して様々な設計と変更を行うことができることを理解すべきである。
【0097】
本願の幾つかの実施例において、図2及び図45などに示すように、2つの電極端子Eは、電池セル100の頂面103に設けられるか、又はそれぞれ電池セル100の2つの第2の側面102に設けられ、集積ユニット202は1つであり、第1の方向Xに沿って複数の電池セル100に跨って複数の電池セル100の底面104に設けられ、且つ冷却ユニット201に連通する。
【0098】
電池全体の寸法及びグループ分け方法を考慮した上で、冷却部材200の集積ユニット202を電池10の底部に設計することを考慮することができる。具体例において、図2に示すように、2つの電極端子Eは、いずれも電池セル100の頂面103に設けられ、電池セル100の間に冷却ユニット201を設けるとともに、電池10の底部に集積ユニット202を設けることにより、電池10をより良好に放熱・冷却することができる。別の具体例において、図45に示すように、2つの電極端子Eは、それぞれ電池セル100の2つの第2の側面102に設けられ、電池セル100の間に冷却ユニット201を設けるとともに、電池10の底部に集積ユニット202を設けることにより、電池10をより良好に放熱・冷却することができる。本願は、これに限定されず、集積ユニット202を電池10のいずれか1つの非ポスト面に設けることを考慮することもできることを理解すべきである。
【0099】
本願の幾つかの実施例において、図47に示すように、2つの電極端子Eは、それぞれ電池セル100の2つの第2の側面102に設けられ、集積ユニット202は2つであり、それぞれ第1の方向Xに沿って複数の電池セル100に跨って複数の電池セル100の頂面103及び底面104に設けられ、且つそれぞれ冷却ユニット201に連通する。
【0100】
実際の使用において、電池の使用環境及びエネルギー密度の違いにより、電池の電極端子の設置位置も異なり、電極端子Eが電池セル100の両側(第2の側面102)に設けられる場合に対して、電池セル100の間に冷却ユニット201を設けるとともに、電池10の底部(電池セル100の底面104)に1つの集積ユニット202を設けた上で、更に電池10の頂部(電池セル100の頂面103)にもう1つの集積ユニット202を設けることができ、2つの集積ユニット202によって頂部及び底部から電池10をより良好に放熱・冷却することができる。
【0101】
本願の幾つかの実施例において、更に冷却ユニット201と電池セル100の間に熱伝導層が設けられてもよい。
【0102】
冷却部材の放熱効果を向上させるために、冷却ユニット201と電池セル100の間に熱伝導層をワンステップで設けることにより、電池10をより良好に放熱することができる。幾つかの実施例において、熱伝導層は、優れた熱伝導性を有する熱伝導接着剤又は熱伝導パッドで構成されてもよいが、本願は、これに限定されず、実際のニーズに応じて、熱伝導層の具体的な材料に設計と変更を行うこともできる。
【0103】
また、本願の一実施例は、電気エネルギーを提供するための上記各実施例における電池10を含むことができる装置を更に提供する。選択的に、当該装置は、車両、船又は宇宙航空機などであってもよい。
【0104】
以下、図49を参照しながら本願の実施例の電池の製造方法を説明し、詳細に説明されていない部分は、上記各実施例を参照することができる。
【0105】
図49は、本願の実施例の電池10の製造方法の模式的ブロック図を示す。本願の実施例の電池の製造方法によれば、以下のステップS1~S4を含む。
【0106】
S1において、第1の方向に沿って配列され、前記第1の方向において対向して設けられる2つの第1の側面、第2の方向において対向して設けられる2つの第2の側面、第3の方向において対向して設けられる頂面と底面、及び2つの電極端子を有する複数の電池セルであって、前記第1の方向、前記第2の方向及び前記第3の方向は、それぞれ2つずつ直交し、前記第1の側面の面積は、前記第2の側面の面積よりも大きい複数の電池セルを提供する。
【0107】
S2において、前記電池セルを冷却するために冷却媒体が収容されており、冷却ユニット及び集積ユニットを含む冷却部材であって、前記冷却ユニットは、前記第1の方向において対向する第1の冷却壁及び第2の冷却壁より板状に形成され、前記第1の冷却壁と前記第2の冷却壁の間に前記冷却媒体が流れる通路が形成されている冷却部材を提供する。
【0108】
S3において、脆弱部を作製し、つまり、それぞれ前記第1の冷却壁及び前記第2の冷却壁に、前記電池に異常が発生した場合に前記冷却媒体を放出するように破裂することができる脆弱部を作製する。
【0109】
S4において、前記冷却ユニットを隣接する2つの前記電池セルの間に配置する。
【0110】
本願により提供される電池の製造方法は、上記ステップS1、S2、S3、S4の順序に従うことに限定されず、例えば、ステップS2、S1、S3、S4の順序に従うか、又はステップS2、S3、S1、S4の順序に従うなどであってもよいことを理解できるであろう。
【0111】
最後に、本願は、上記実施例に限定されないことを説明しておきたい。上記実施例は、例示的なものに過ぎず、本願の技術的解決手段の範囲で技術思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を奏する実施例は、いずれも本願の技術範囲内に含まれる。また、本願の趣旨から逸脱することなく、実施例に当業者が想到できる各種の変形を加え、実施例の一部の構成要素を組み合わせて構築された他の形態も本願の範囲内に含まれる。
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【国際調査報告】