(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】質量軸の確認及び調整のための試薬製剤
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20240912BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N27/62 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517476
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2022076160
(87)【国際公開番号】W WO2023046716
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ラング,ロベルト
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041EA06
2G041GA09
2G041HA01
(57)【要約】
本発明は、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及び/又はギ酸と、(iii)メタノール及び/又は水とを含む組成物に関する。本発明は更に、質量分析(MS)装置を較正するための方法であって、(I)指定された組成物の質量スペクトルを決定することと、(II)工程(I)で決定された質量スペクトルに基づいてMS装置を較正することと、を含む方法に関する。本発明は更に、それに関連する装置、キット、使用及び方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及び/又はギ酸と、(iii)メタノール及び/又は水とを含む、組成物。
【請求項2】
(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミンと、(iii)メタノール及び/又は水とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(i)ヨウ化セシウムの濃度が、1μg/mL~100mg/mLであり、
(ii)エチルアミンの濃度が、存在する場合、0.1μg/mL~1mg/mLであり、ギ酸の濃度が、存在する場合、0.01%(v/v)~10%(v/v)であり、
(iii)メタノール、水、又はそれらの混合物の濃度が、100%までである、
請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ヨウ化セシウムの濃度が500μg/mLであり、エチルアミンの濃度が、存在する場合、10μg/mLであり、ギ酸の濃度が、存在する場合、1%(v/v)であり、及び/又はメタノールの濃度が25%(v/v)であり、水が100%まで添加される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、ヨウ化セシウムと、エチルアミンと、ギ酸と、メタノールと、水とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、0.1μg/mL~1000μg/mLの濃度のシクロスポリンAを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、0.1μg/mL~1000μg/mLの濃度の5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントインを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、0.1mM~1Mの濃度のギ酸アンモニウムを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、ポジティブモード及びネガティブモードMS用のユニバーサル較正液である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
質量分析(MS)装置を較正するための方法であって、
(I)請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物の質量スペクトルを決定することと、
(II)工程(I)で決定された前記質量スペクトルに基づいて前記MS装置を較正することと
を含む、方法。
【請求項11】
前記較正することが、質量軸を確認すること及び/又は質量軸を調整することである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記較正が、46、133、393、653、912、1172、1432、1692、及び/又は1952からなるリストからのポジティブイオンモード、並びに45、127、387、647、906、1166、1426、1686、及び/又は1946からなるリストからのネガティブイオンモードに対して選択されたm/z値から選択された少なくとも2つの較正点を確立することを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法を実行するように適合された実施形態の装置。
【請求項14】
(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及び/又はギ酸と、(iii)メタノール、水、又はそれらの混合物とを、ハウジング内に含む、キット。
【請求項15】
質量分析装置を較正するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法、請求項13に記載の装置、及び/又は請求項14に記載のキットの使用。
【請求項16】
質量分析用較正液を製造するための方法であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物を混合し、それにより質量分析用較正液を製造することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及び/又はギ酸と、(iii)メタノール及び/又は水とを含む組成物に関する。本発明は更に、質量分析(MS)装置を較正するための方法であって、(I)指定された組成物の質量スペクトルを決定することと、(II)工程(I)で決定された質量スペクトルに基づいてMS装置を較正することと、を含む方法に関する。本発明は更に、それに関連する装置、キット、使用及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析(MS)では、質量スペクトルを適切に取得するには、良好な感度及びピーク形状を確保し、質量分解能が試料の分析要件に適切であることを確保するための機器の調整が必要である。調整の後に質量較正、すなわち装置のm/zスケールの調整が行われ、これは典型的には、既知のm/z値にピークを生成する試料を測定し、必要に応じて期待値を反映するようにm/z軸を調整することによって実施される。さらに、通常、バックグラウンドスペクトルは、装置内に存在し得る汚染物質を確認するために試料を分析する前に測定される。
【0003】
したがって、較正は、正しい測定値が得られることを確実にするための分析的MS装置の動作の重要な部分である。MS装置測定、特にハイスループット設定では、通常、正確なイオン同定を確実にするために一定間隔で質量軸確認を実施し、必要に応じて又は日常的な操作の一部として質量軸調整を実施することが好ましい。
【0004】
MS装置の較正は、例えば、米国特許出願公開第2018/0047549号A1に記載されている。質量軸確認及び/又は調整組成物も当技術分野で知られている。例えば、国際公開第2012/135682号A2は、ポリエチレン化合物及びその混合物を提案しており、Zhou et al.(2012,Anal Chem 84:6016)では、ヨウ化セシウムが較正に使用された。さらに、市販の較正液が利用可能である。Sciex 6500(商標)は2つのPPG溶液を使用し、1つはポジティブイオンモード用、もう1つはネガティブイオンモード用であり、これらは制御された冷却条件下で貯蔵されなければならない。Agilent ESI-L Low Concentration Tuning Mixは、約50Daの較正体を欠いている。さらに、それはトリフルオロ酢酸アンモニウム塩を含み、これはネガティブモードでの強いイオン抑制が知られている。Pierce(商標)トリプル四重極較正液はトリフルオロ酢酸も含有する。Thermo Cascadion(商標)は、ポジティブイオンモードを3m/z点でカバーする3種からなるチロシン混合物を提供し、一旦開封すると、バイアルは機器上で30日間しか安定しない。
【0005】
したがって、当技術分野では、MS装置の較正のための改善された手段及び方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
この問題は、独立請求項の特徴を有する組成物、方法、装置、キット、及び使用によって対処される。単独の方式又は任意の恣意的な組み合わせで実現され得る有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
したがって、本発明は、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及び/又はギ酸と、(iii)極性溶媒と、一実施形態ではメタノール及び/又は水と、を含む組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
概して、本明細書で使用される用語は、当業者に通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、別途指示がない限り、特別な又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。以下で使用される「有する(have)」、「含む(comprise)」、若しくは「含む(include)」という用語、又はそれらの任意の文法上の変形は、非排他的に使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって紹介される特徴の他に、この文脈において説明されるエンティティにさらなる特徴が存在しない状況、及び1つ以上のさらなる特徴が存在する状況の両方を指し得る。したがって、示された一組の構成要素を含む組成物は、特に示された一組の構成要素からなり得る。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」、及び「AはBを含む」という表現は、いずれも、B以外に他の要素がAに存在しない状況(すなわち、AがBのみで排他的に構成される状況)、及びB以外に要素C、要素C及びD、あるいはまたさらなる要素等、1つ以上のさらなる要素がエンティティAに存在する状況を指し得る。また、当業者によって理解されるように、一実施形態では、「を含む(comprising a)」及び「を含む(comprising an)」という表現は、「1つ以上を含む(comprising one or more)」を指し、すなわち「少なくとも1つを含む(comprising at least one)」と等価である。したがって、複数のうちの1つの項目に関する表現は、別段の指示がない限り、一実施形態では、少なくとも1つのそのような項目に関し、さらなる実施形態では、その複数、したがって、例えば、「スペクトル」を決定することは、少なくとも1つのスペクトルを識別することに関し、一実施形態では、多数のスペクトルを決定することに関する。
【0009】
さらに、以下で使用される場合、「好ましくは(preferably)、「より好ましくは(more preferably)」、「最も好ましくは(most preferably)」、「特に(particularly)」、「より特には(more particularly)、「具体的には(specifically)」、「より具体的には(more specifically)」という用語、又は同様の用語は、更なる可能性を制限することなく、任意の特徴と併せて使用される。したがって、これらの用語により導入される特徴は、任意の特徴であり、特許請求の範囲を、いかなる方法によっても制約することを意図されていない。本発明は、当業者が認識するように、代替の特徴を使用して実施されてもよい。同様に、「一実施形態では(in an embodiment)」又は同様の表現によって導入された特徴は、本発明のさらなる実施形態に関するいかなる制限もなく、本発明の範囲に関するいかなる制限もなく、及びそのように導入された特徴を他の任意又は非任意の特徴と組み合わせる可能性に関するいかなる制限もなく、任意の特徴であることが意図されている。
【0010】
一実施形態では、本明細書中下記で特定される方法は、in vitro法である。方法工程は、原則として、当業者によって適切であると考えられる任意の順序で行われてもよいが、一実施形態では、指定の順序で行われ、また、当該工程の1つ以上、一実施形態では全てが、自動化された機器によって支援又は実施されてもよい。さらに、本方法は、明示的に上述された工程以外の工程も含み得る。
【0011】
本明細書で使用される場合、「標準条件」という用語は、別途明記されない場合、IUPAC標準の常温及び圧力(SATP)条件、すなわち、一実施形態では、25℃の温度及び100kPaの絶対圧力に関し、また一実施形態では、標準条件は7のpHを含む。さらに、別段の指示がない限り、「約」という用語は、関連分野で一般に認められている技術的精度を有する指示値に関し、一実施形態では、指示値±20%に関し、更なる実施形態では±10%に関し、更なる実施形態では±5%に関する。さらに、「本質的に」という用語は、示された結果又は使用に影響を及ぼす偏差が存在しない、すなわち、潜在的な偏差が、示された結果を更なる実施形態では±20%、更なる実施形態では±10%、更なる実施形態では±5%を超えて偏差させないことを示す。したがって、「から本質的になる」とは、特定された構成要素を含むが、不純物として存在する材料、構成要素を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する不可避の材料、及び本発明の技術的効果を達成すること以外の目的のために添加される構成要素を除く他の構成要素を除外することを意味する。例えば、「から本質的になる」という語句を使用して定義される組成物は、任意の既知の許容される添加剤、添加物、希釈剤、担体等を包含する。一実施形態では、一組の構成要素から本質的になる組成物は、5重量%未満、更なる実施形態では3重量%未満、更なる実施形態では1重量%未満、更なる実施形態では0.1重量%未満の特定されていない構成要素(複数可)を含む。
【0012】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、示された化合物を含むありとあらゆる組成物に関する。一実施形態では、組成物は、示された化合物を含み、さらなる実施形態では、組成物は、示された化合物から本質的になり、さらなる実施形態では、組成物は、示された化合物からなる。一実施形態では、組成物は液体組成物であり、さらなる実施形態では、組成物は本明細書で上記に指定される標準条件下で液体である。一実施形態では、組成物は、エチルアミン及びギ酸を含み、さらなる実施形態では、極性溶媒は、一実施形態ではメタノール及び水を含む。したがって、一実施形態では、組成物は、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及び/又はギ酸と、(iii)メタノール及び/又は水とを含み、したがって、一実施形態では、組成物は、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミンと、(iii)メタノールとを含み、さらなる実施形態では、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミンと、(iii)水とを含み、さらなる実施形態では、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミンと、(iii)メタノール及び水とを含み、さらなる実施形態では、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)ギ酸と、(iii)メタノールとを含み、さらなる実施形態では、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)ギ酸と、(iii)水とを含み、さらなる実施形態では、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)ギ酸と、(iii)メタノール及び水とを含み、さらなる実施形態では、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及びギ酸と、(iii)メタノールとを含み、さらなる実施形態では、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及びギ酸と、(iii)水とを含み、さらなる実施形態では、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及びギ酸と、(iii)メタノール及び水とを含む。一実施形態では、組成物は、シクロスポリンA、5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン及び/又はギ酸アンモニウムをさらに含む。したがって、組成物は、前述の化合物組成物のいずれかを含み得、一実施形態では、前述の化合物組成物のいずれかからなり、シクロスポリンA、5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン、ギ酸アンモニウム、シクロスポリンA及び5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン、シクロスポリンA及びギ酸アンモニウム、5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン及びギ酸アンモニウム、又はシクロスポリンA、5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン及びギ酸アンモニウムをさらに含み得る。したがって、一実施形態では、組成物は、ヨウ化セシウム、エチルアミン、ギ酸、シクロスポリンA、5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン、ギ酸アンモニウム、メタノール及び水を含み、好ましくはそれらからなる。一実施形態では、組成物は、本明細書で指定される濃度の示された構成要素を含む。特に明記しない限り、最高濃度で存在する極性溶媒、一実施形態では水を100%まで添加する。したがって、一実施形態では、組成物は、最高濃度で存在する極性溶媒を除く全ての構成要素を予備混合し、最高濃度で存在する極性溶媒を最大100%充填することによって製造され得るため、一実施形態では、考慮されていない組成物中の任意の割合は、最も高い濃度で存在する極性溶媒、一実施形態では水である。当業者に理解されるように、「Xの濃度は100%まで」という用語は、組成物の他の化合物が所望の濃度を有するのに必要な体積を提供する量の化合物Xの添加に関する。一実施形態では、組成物の構成要素の純度は、独立して、少なくとも90%、一実施形態では少なくとも95%、さらなる実施形態では少なくとも98%、さらなる実施形態では少なくとも99%、少なくとも99.5%、さらなる実施形態では少なくとも99.9%から選択される。組成物のそれぞれの構成要素の典型的な不純物は当業者に知られている。一実施形態では、組成物は、少なくとも1ヶ月間、一実施形態では少なくとも2ヶ月間、さらなる実施形態では少なくとも6ヶ月間、さらなる実施形態では少なくとも12ヶ月間、さらなる実施形態では少なくとも18ヶ月間、標準条件下、一実施形態では35℃の温度、さらなる実施形態では50℃の温度、さらなる実施形態では蒸発を防止する条件下で安定である。一実施形態では、特にメタノールの濃度が15%(v/v)未満である場合、組成物は滅菌される。
【0013】
さらなる実施形態では、組成物は、(i)CsI及びメタノールを含み、並びに/又は(ii)CsI及び水を含む。したがって、本発明はまた、ヨウ化セシウム及び極性溶媒、一実施形態ではメタノール及び/又は水、一実施形態では本明細書の他の箇所で指定される特性を有する組成物に関する。また、本発明は、前述の組成物又はその使用を含む、本明細書の他の箇所で指定される装置、キット、方法及び使用に関する。前述の組成物は、特に、300~2000のm/z範囲の質量軸調整及び/又は質量軸確認が望まれる用途に使用され得る。
【0014】
一実施形態では、組成物は、較正組成物、一実施形態では質量分析(MS)較正組成物、さらなる実施形態ではMS較正液である。「較正」という用語は、本明細書では、当業者による典型的な使用と一致して広い意味で使用される。したがって、較正という用語は、特定の条件下で、測定標準を用いて得られた量の値と、較正された機器、すなわち狭義の較正の対応する量の値との間の関係を確立する動作を含む。しかしながら、較正は、測定値の検証であってもよい。較正という用語は、測定標準、すなわちその通常のより広い意味での較正で得られた前述の量の値と一致するように、較正された機器又はその出力を調整又は再調整する手段を更に含む。したがって、較正は、特に、一実施形態では、質量分析において、質量軸確認(MAC)及び/又は質量軸調整(MAA)であり得る。一実施形態では、組成物は、ポジティブイオンモード及びネガティブイオンモードMSのためのユニバーサル較正液である。一実施形態では、較正組成物が、少なくともエチルアミン、ギ酸、及びヨウ化セシウム、並びにメタノール及び水の少なくとも一方を含む場合、主シグナルのm/z値は、ポジティブイオンモードでは46、133、393、653、912、1172、1432、1692、及び/又は1952、一実施形態では46.066、132.905、392.715、652.524、912.334、1172.144、1431.953、1691.763、及び/又は1951.572、ネガティブイオンモードでは45、127、387、647、906、1166、1426、1686、及び/又は1946、一実施形態では44.998、126.905、386.714、646.524、906.333、1166.143、1425.953、1685.762、及び/又は1945.572である。一実施形態では、組成物は、シクロスポリンA、5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン、及びギ酸アンモニウムの少なくとも1つをさらに含み、得られた追加のイオンのm/z値は、ポジティブイオンモードでは601.921、1202.841、1219.841、1224.841、1334.751、及び269.0848、ネガティブイオンモードでは267.0848及び1200.841である。したがって、一実施形態では、較正は、ポジティブイオンモードで46~1952のm/z範囲での較正であり、及び/又はポジティブイオンモードで45~1946のm/z範囲での較正である。一実施形態では、組成物は、較正使用溶液、すなわちMS装置への直接注入に使用される溶液であり、そのような場合、一実施形態では、(i)ヨウ化セシウムの濃度は、0.1μg/mL~10mg/mLであり、(ii)存在する場合、エチルアミンは、0.01μg/mL~0.1mg/mLであり、ギ酸は、存在する場合、0.001%(v/v)~1%(v/v)であり、(iii)極性溶媒、一実施形態ではメタノール、水、又はそれらの混合物は100%までである。さらなる実施形態では、組成物は、10倍濃縮された較正ストック溶液、すなわち10倍希釈後のMS装置への注入に使用される溶液であり、そのような場合、一実施形態では、(i)ヨウ化セシウムの濃度は、1μg/mL~100mg/mLであり、(ii)存在する場合、エチルアミンは、0.1μg/mL~1mg/mLであり、ギ酸は、存在する場合、0.01%(v/v)~10%(v/v)であり、(iii)極性溶媒、一実施形態ではメタノール、水、又はそれらの混合物は100%までである。理解されるように、他のストック溶液、例えば2倍又は5倍濃縮ストック溶液を当業者によって誘導することができる。また理解されるように、「ストック溶液」という用語は、組成物が使用前に希釈されなければならないことを必ずしも意味しない。したがって、用途、特定の装置の感度、及び当業者によって考慮される他のパラメータに応じて、組成物は、希釈されていないか、又は希釈度が低い状態で使用されてもよく、例えば、10倍ストック溶液は、使用前に2倍又は5倍だけ希釈されてもよい。また、組成物は、より希釈されてもよく、例えば、10倍ストック溶液は、例えば、使用前に100倍希釈されてもよく、一実施形態では、化合物(複数可)の最終濃度は、そのような過剰希釈後であっても、少なくとも本明細書で以下に指定される通りである。ストック溶液が希釈される場合、ストック溶液は、一実施形態では、本明細書で以下に指定される極性溶媒で希釈される。したがって、ストック溶液は、特に、水、メタノール、アセトニトリル、又は前述のいずれかの任意の混合物、特にメタノールとアセトニトリルとの混合物、アセトニトリルと水、又は水とメタノールとの混合物で希釈され得る。さらなる実施形態では、組成物をメタノール又は水とメタノールの混合物で希釈する。以下の説明を考慮して、組成物中のヨウ化セシウム:エチルアミン(存在する場合):ギ酸(存在する場合)のモル比は、(1~20):(1~5):(1000~1500)の範囲内であり得、一実施形態では約9:約1:約1207、一実施形態では9:1:1207である。
【0015】
指定される組成物の文脈において本明細書で使用される場合、「安定」という用語は、少なくとも示された期間にわたって、較正、特に質量軸調整及び/又は質量分析(MS)における較正での使用に適切であり続ける組成物の特性に関する。したがって、一実施形態では、安定な組成物において、同じMS条件下で測定した場合、初期MSシグナルの少なくとも10%、さらなる実施形態では少なくとも25%、さらなる実施形態では少なくとも50%、さらなる実施形態では少なくとも75%、さらなる実施形態では少なくとも85%、さらなる実施形態では少なくとも90%が、50℃で18ヶ月後に依然として得られ得る。さらなる実施形態では、安定という用語は、全ての標的m/z、一実施形態では、本明細書で上記に指定される標的m/zについて、一実施形態では、本明細書で上記に指定される条件及び時間枠下での貯蔵後、ポジティブモード及びネガティブモードでQ1及びQ3において>2.5e5 cpsのシグナル強度を提供する組成物の特性に関する。
【0016】
「ヨウ化セシウム」という用語は、当業者によって理解され、CsIのCAS番号は7789-17-5であり、モル質量は259.809g/molである。一実施形態では、組成物中のヨウ化セシウムの濃度は、0.1μg/mL~100mg/mLであり、さらなる実施形態では、組成物中のヨウ化セシウムの濃度は、1μg/mL~10mg/mL、さらなる実施形態では5μg/mL~5mg/mL、さらなる実施形態では10μg/mL~1mg/mLである。一実施形態では、組成物中のヨウ化セシウムの濃度は、約500μg/mLであり、一実施形態では、10倍濃縮ストック溶液中で500μg/mLであり、及び/又は約50μg/mLであり、一実施形態では、使用溶液中で50μg/mLである。したがって、組成物中のヨウ化セシウムの濃度は、0.38μM~0.38Mであり得、一実施形態では、10倍濃縮ストック溶液中約1.9mM及び/又は使用溶液中約0.19mMである。
【0017】
「エチルアミン」という用語はまた、45.085g/molのモル質量を有するエタンアミン、CAS番号75-04-7に関連すると当業者によって理解される。一実施形態では、組成物中のエチルアミンの濃度は、0.01μg/mL~1mg/mLであり、さらなる実施形態では、組成物中のエチルアミンの濃度は、0.05μg/mL~0.5mg/mL、さらなる実施形態では0.2μg/mL~0.1mg/mL、さらなる実施形態では0.5μg/mL~25μg/mLである。一実施形態では、組成物中のエチルアミンの濃度は、約10μg/mLであり、一実施形態では、10倍濃縮ストック溶液中で10μg/mLであり、及び/又は約1μg/mLであり、一実施形態では、使用溶液中で1μg/mLである。したがって、組成物中のエチルアミンの濃度は、0.22μM~22mMであり得、一実施形態では、10倍濃縮ストック溶液中約0.22mM及び/又は使用溶液中約0.022mMである。
【0018】
「ギ酸」は、メタン酸とも呼ばれ、46.025g/molのモル質量及びCAS NO.64-18-6を有する。一実施形態では、組成物中のギ酸の濃度は0.001%(v/v)~10%(v/v)であり、さらなる実施形態では、組成物中のギ酸の濃度は、0.005%(v/v)~7.5%(v/v)、さらなる実施形態では0.01%(v/v)~5%(v/v)、さらなる実施形態では0.05%(v/v)~2%(v/v)である。一実施形態では、組成物中のギ酸の濃度は、10倍濃縮ストック溶液中で約1%(v/v)、一実施形態では1%(v/v)であり、及び/又は使用溶液中で約0.1%(v/v)、一実施形態では0.1%(v/v)である。したがって、組成物中のギ酸の濃度は、0.27mM~2.7Mであり得、一実施形態では、10倍濃縮ストック溶液中で約0.27M及び/又は使用溶液中で約27mMである。
【0019】
「メタノール」という用語は、当業者によって理解され、CAS番号は67-56-1であり、モル質量は32.04g/molである。メタノールの濃度は、原則として100%までであり得、すなわち、組成物の他の化合物を原則として提供し、メタノールは最大100%まで添加され得る。しかしながら、メタノールはまた、組成物に存在しなくてもよく、そのような場合、一実施形態では、水が100%まで添加される。したがって、一実施形態では、組成物中のメタノールの濃度は、組成物を100%まで充填するために使用される極性溶媒中で0%(v/v)~100%(v/v)である。一実施形態では、組成物中のメタノールの濃度は、10%(v/v)~50%(v/v)、さらなる実施形態では15%(v/v)~40%(v/v)である。一実施形態では、組成物中のメタノールの濃度は約30%(v/v)であり、さらなる実施形態では30%(v/v)である。さらなる実施形態では、組成物中のメタノールの濃度は約25%(v/v)であり得、さらなる実施形態では25%(v/v)であり得る。
【0020】
水のCAS番号は7732-18-5であり、そのモル質量は18.015g/molである。一実施形態では、水は蒸留水であり、さらなる実施形態では再蒸留水であり、さらなる実施形態ではp.a.水である。
【0021】
「シクロスポリンA」という用語は、1202.61g/molのモル質量を有する、(3S,6S,9S,12R,15S,18S,21S,24S,30S,33S)-30-エチル-33-[(1R,2R,4E)-1-ヒドロキシ-2-メチル-4-ヘキセン-1-イル]-6,9,18,24-テトライソブチル-3,21-ジイソプロピル-1,4,7,10,12,15,19,25,28-ノナメチル-1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31-ウンデカアザシクロトリアコンタン-2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデコン、CAS番号59865-13-3に関することが当業者に知られている。一実施形態では、組成物中のシクロスポリンAの濃度は、0.01μg/mL~1000μg/mLであり、さらなる実施形態では、組成物中のシクロスポリンAの濃度は、0.1μg/mL~1000μg/mL、さらなる実施形態では0.5μg/mL~500μg/mL、さらなる実施形態では1μg/mL~50μg/mL、さらなる実施形態では5μg/mL~25μg/mLである。一実施形態では、組成物中のシクロスポリンAの濃度は、約10μg/mLであり、一実施形態では、10倍濃縮ストック溶液中で10μg/mLであり、及び/又は約1μg/mLであり、一実施形態では、使用溶液中で1μg/mLである。したがって、組成物中のシクロスポリンAの濃度は、10倍濃縮ストック溶液中で約8.3μM及び/又は使用溶液中で約0.83μMであり得る。
【0022】
「5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン」という用語は、268.27g/molのモル質量を有する5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニル-2,4-イミダゾリジンジオン、CAS番号2784-27-2に関することが当業者に知られている。一実施形態では、組成物中の5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントインの濃度は、0.01μg/mL~1000μg/mL、さらなる実施形態では0.5μg/mL~500μg/mL、さらなる実施形態では1μg/mL~50μg/mL、さらなる実施形態では5μg/mL~25μg/mLである。一実施形態では、組成物中の5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントインの濃度は、約10μg/mLであり、さらなる実施形態では、10倍濃縮ストック溶液中で10μg/mLであり、及び/又は使用溶液中で約1μg/mLであり、一実施形態では1μg/mLである。したがって、組成物中の5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントインの濃度は、10倍濃縮ストック溶液中で約37μM及び/又は使用溶液中で約3.7μMであり得る。
【0023】
「ギ酸アンモニウム」という用語は当業者に知られている。化合物のCAS番号は540-69-2であり、モル質量は63.06g/molである。一実施形態では、組成物中のギ酸アンモニウムの濃度は0.01mM~1Mである。さらなる実施形態では、組成物中のギ酸アンモニウムの濃度は、0.05mM~500mM、さらなる実施形態では0.1mM~50mM、さらなる実施形態では0.25mM~10mMである。一実施形態では、組成物中のギ酸アンモニウムの濃度は、10倍濃縮ストック溶液中で約5mM、一実施形態では5mMであり、及び/又は使用溶液中で約0.5mM、一実施形態では0.5mMである。
【0024】
「極性溶媒」という用語は、当業者によって理解される。好ましくは、この用語は、少なくとも1.5D、好ましくは少なくとも1.7Dの双極子モーメントを有する溶媒又は溶媒の混合物に関する。好ましくは、極性溶媒は、メタノール、水、エタノール、アセトニトリル、n-プロパノール、イソプロパノール、又は前述の極性溶媒の少なくとも2つの任意の組み合わせの混合物である。より好ましくは、極性溶媒は、メタノール、水、又はそれらの混合物である。メタノールと水の特に想定される混合物は、本明細書の他の箇所に明記されている。
【0025】
有利には、本発明の基礎となる研究において、本明細書に記載の組成物は、ポジティブイオンモード及びネガティブイオンモードでの使用に適した汎用較正液として有用であり、広範囲のm/z値にわたって較正する選択肢を提供し、全範囲にわたって適切な数の較正点を提供することが見出された。さらに、溶液は、少なくとも1年間、高温、すなわち典型的なMS装置で優勢であり得る条件でも安定である。
【0026】
上記の定義は、必要な変更を加えて以下に適用される。以下の更なる追加の定義及び説明もまた、本明細書に記載される全ての実施形態に準用される。
【0027】
本発明はさらに、質量分析(MS)装置を較正するための方法であって、
(I)本明細書で上記に指定される組成物の質量スペクトルを決定することと、
(II)工程(I)で決定された質量スペクトルに基づいてMS装置を較正することと
を含む、方法に関する。
【0028】
較正という用語は、本明細書において上記に明示されている。一実施形態では、較正することは、質量軸確認及び/又は質量軸調整を実施することである。本明細書で上記に指定されるように、一実施形態では、較正は、ポジティブイオンモードで46~1952のm/z範囲での較正であり、及び/又はネガティブイオンモードで45~1946のm/z範囲での較正であり、具体的な較正点は本明細書において上述される。一実施形態では、組成物から生成された非同一イオンは、質量軸確認対質量軸調整に使用され、すなわち、一実施形態では、質量軸調整は第1の組のイオンで実施され、質量軸確認は第2の組のイオンで実施され、当該第1の組のイオンは当該第2の組のイオンと同一ではない。一実施形態では、第1の組のイオンに含まれるイオンは、第2の組のイオンに含まれず、逆もまた同様である。一実施形態では、シクロスポリンA及び/又は5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントインから生成されたイオンは、任意に、質量軸確認に使用され、さらなる実施形態では、質量軸調整に使用されない。
【0029】
一実施形態では、較正することは、質量軸確認(MAC)を実施することであり、すなわち質量軸が正しく調整されていることを検証することである。当該質量軸確認は、一実施形態では、本明細書で指定される組成物の質量スペクトルを決定することと、少なくとも2つ、一実施形態では少なくとも3つ、さらなる実施形態では少なくとも5つ、さらなる実施形態では、上記のシグナルに示されるm/z比の全てが予め指定された許容範囲内で得られることを検証することとを含む。m/z比が当該予め指定された範囲内で得られた場合、本方法は、質量軸確認に成功したことを示し得て一実施形態では、続いて本方法を終了する。m/z比の少なくとも1つが当該予め指定された範囲内で得られない場合、本方法は、質量軸確認が失敗したことを示し得て、終了し得るが、そのような場合、本方法は、本明細書で以下に指定される質量軸調整の工程を続けて実施し得る。
【0030】
一実施形態では、較正することは、質量軸調整(MAA)を実施することであり、すなわち、上に示されるm/z比の少なくとも1つ、一実施形態では少なくとも2つ、一実施形態では少なくとも3つ、さらなる実施形態では少なくとも5つ、さらなる実施形態では全てのm/z比について測定されたm/z値が予め指定された許容範囲内で得られるように、MS装置の少なくとも1つのパラメータを調整又は再調整することである。前述の質量軸調整を達成するために調整可能なパラメータは、当業者に知られており、例えば無線周波数デジタル-アナログ変換器(RF DAC)及び/又は直流(DC)係数設定を含むハードウェアパラメータ、例えば機器調整、並びに例えばm/z軸調整等のソフトウェアパラメータを含む。
【0031】
「MS装置」と略される「質量分析装置」という用語は、当業者によって理解される。一実施形態では、この用語は、質量分析(MS)を実施するように構成された装置に関し、したがって、装置は、一実施形態では、少なくとも1つのMSユニットを備える。本明細書で使用される場合、「質量分析ユニット」という用語は、一実施形態では、分析物又はそのフラグメントの質量電荷比に基づいて少なくとも1つの分析物を検出するように構成された質量分析装置に関する。一実施形態では、MSユニットは単一のMSユニットであり、一実施形態ではタンデム質量分析(MS/MS)ユニットであり、さらなる実施形態ではトリプル四重極MS(QqQ-MS)であり、さらなる実施形態では多重反応モニタリング(MRM)モードである。MS装置がトリプル四重極MSである場合、一実施形態では、第2の質量分析器は指定された方法によって較正される。MS装置は、分子イオンを生成し、分子イオンを気相に移動させるように構成された少なくとも1つのイオン化源を更に含み得る。イオン化方法及び適切なイオン化ユニットは当技術分野で知られており、特に電子イオン化(EI)、化学イオン化(CI)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧イオン化(APCI)、大気圧光イオン化(APPI)、及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)が挙げられる。
【0032】
一実施形態では、MS装置は、クロマトグラフィMS装置、特にガスクロマトグラフィーMS(GC-MS)装置又は液体クロマトグラフィMS(LC-MS)装置であり、これらは当業者によって理解される用語である。したがって、一実施形態では、装置は、クロマトグラフィー(例えば、LC又はGC)と質量分析(MS)との組み合わせを実施するように構成される。したがって、装置は、一実施形態では、少なくとも1つのLC及び/又はGCユニットと、少なくとも1つのMSユニットとを備え、LC及び/又はGCユニット(複数可)とMSユニットとは、少なくとも1つのインターフェースを介して結合される。本明細書で使用される場合、「液体クロマトグラフィ(LC)ユニット」という用語は、一実施形態では、質量分析装置を用いて1つ以上の分析物を検出するための実施形態では、液体クロマトグラフィを介して試料の1つ以上の対象となる分析物を試料の他の構成要素から分離するように構成された分析モジュールに関する。LCは、当業者によって適切と考えられる任意の分離原理に基づいてもよい。一実施形態では、LCは、逆相クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィー、又はキラルクロマトグラフィーである。さらなる実施形態では、LCは、逆相クロマトグラフィである。LC装置は、少なくとも1つのLCカラムを備え得る。例えば、LC装置は、シングルカラム型のLC装置であってもよく、複数のLCカラムを有するマルチカラム型のLC装置であってもよい。LCカラムは、対象となる分析物(複数可)を分離及び/又は溶出及び/又は移送するために移動相が圧送される固定相を有し得る。LCユニットは、少なくとも1つの高速液体クロマトグラフィ(HPLC)ユニット及び/又は少なくとも1つのマイクロ液体クロマトグラフィ(μLC)装置であり得るか、又はそれを備え得る。「ガスクロマトグラフィー」という用語は、当業者によって理解され、一実施形態では、LCと同じ分離原理が適用可能であるが、移動相はGC中のガスである。
【0033】
「質量スペクトルを決定する」という用語は、当業者によって理解される。一実施形態では、この用語は、MS検出器によって試料から得られた1つ以上のシグナルの半定量的又は定量的尺度と、当該シグナルを引き起こすイオンのm/z値との相関プロットを決定することに関する。質量スペクトルのグラフ表示は、例えば、重心グラフ及び/又は連続グラフとして提供されてもよい。一実施形態では、質量スペクトルは、少なくとも1つのピークについてのパラメータm/zピーク位置、m/zピーク分解能、m/zピークシグナル強度、及びm/zピーク形状によって記述される。
【0034】
本発明はまた、本明細書で上記に指定される組成物を含む装置に関する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「装置」という用語は、一実施形態では、較正を行うことを可能にする、互いに動作可能に連結された少なくとも前述の手段を含む手段のシステムに関する。較正のための典型的な手段は当業者に知られており、本発明の方法に関連して上に開示されているため、装置は、本明細書で指定される少なくとも1つの方法を実施するように適合され得る。したがって、装置は、一実施形態では、実行されると、装置に本明細書で指定された少なくとも1つの方法又はその1つ以上の工程、一実施形態では、MS装置を較正するための方法を実施させる、任意に、例えば装置に含まれるデータキャリア又はメモリユニットに有形に埋め込まれた実行可能コードを備える。装置の手段を動作様式でどのように連結するかは、装置に含まれる手段のタイプに依存する。一実施形態では、手段は単一の装置に含まれる。したがって、当該装置は、(i)組成物に含まれる化合物を測定するための分析ユニット、及び(ii)組成物を保存するための保存ユニットを含み得る。一実施形態では、貯蔵ユニット及び分析ユニットは、分析ユニットへの組成物の移送を可能にするために、流体コネクタ、例えば配管によって接続される。さらなる任意のユニットは、例えば、メモリユニット、データキャリアユニット、データインターフェースユニット、出力ユニット等であってもよい。当業者は、さらなる困難を伴わずに適切な手段を提供及び連結する方法を理解するであろう。結果は、技術者による解釈を必要とする生データの出力として与えられてもよい。しかしながら、一実施形態では、装置の出力は処理される、すなわち評価される生データであり、その解釈は技術者を必要としない。一実施形態では、装置は、本明細書で上記に指定されるMS装置、特にMS/MS装置である。
【0036】
本発明はまた、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及び/又はギ酸と、(iii)メタノール、水、又はそれらの混合物とを、ハウジング内に含む、キットに関する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「キット」という用語は、一緒に包装されていても、そうでなくてもよい前述の化合物、手段又は試薬の集合体を指す。キットの構成要素は、別個のバイアル(すなわち、別個の部品のキットとして)に含まれていてもよく、又は単一のバイアルに、例えば本明細書で上記に指定される組成物として提供されてもよい。キットのハウジングは、一実施形態では、キットの化合物の移行、特に一般的な移行を可能にするため、ハウジングは、特に、指定された全ての構成要素を含む輸送可能な容器であってもよい。さらに、本発明のキットは、本明細書において上記で言及される方法を実施するために使用され得ることが理解されるべきである。一実施形態では、上記の方法を実施するために、全ての構成要素がすぐに使用できる方法で提供されることが想定される。さらに、キットは、一実施形態では、当該方法を実施するための説明書を含む。説明書は、紙又は電子形式のユーザマニュアルによって提供され得る。例えば、マニュアルは、キットを使用して上記の方法を実施するときに得られた結果を解釈するための説明書を含み得る。
【0038】
一実施形態では、キットは、(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及びギ酸と、(iii)メタノール、水、又はそれらの混合物、又は(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及びギ酸と、(iii)水及びメタノールの混合物とを含む。更なる実施形態では、キットは、シクロスポリンA、5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン、及びギ酸アンモニウムからなるリストから選択される少なくとも1つ、一実施形態では少なくとも2つ、さらなる実施形態では3つ全ての化合物をさらに含む。一実施形態では、キットは、固体としてヨウ化セシウム及び予備混合液体としてエチルアミン、ギ酸、メタノール及び/又は水を含む。一実施形態では、キットは、(i)メタノール中のCsI及び/又は(ii)水中のCsIを含む。さらなる実施形態では、キットの構成要素は、少なくとも本明細書で上記に指定される濃度を有する溶液としてキットに含まれる。さらなる実施形態では、キットは、希釈剤として本明細書で上記に指定される極性溶媒をさらに含み、さらなる実施形態ではメタノールを含む。
【0039】
本発明はまた、質量分析装置を較正するための、本明細書で指定される組成物、本明細書で指定される方法、本明細書で指定される装置、及び/又は本明細書で指定されるキットの使用に関する。
【0040】
さらに、本発明は、本明細書で上記に指定される化合物を混合し、それにより、質量分析用較正液を製造することを含む、質量分析較正液を製造するための方法に関する。
【0041】
質量分析用較正液を製造するための方法は、一実施形態では、指定された化合物を必要な濃度又は必要な量で提供すること、固体構成要素を溶解すること、較正液の体積を調整すること、較正液を濾過及び/若しくは滅菌すること、又は当業者によって適切であると考えられる任意の他の1つ以上の工程等のさらなる工程を含み得る。
【0042】
本発明は、プログラムがコンピュータ又はコンピュータネットワーク上、一実施形態では、MS装置上で実行されると、本明細書に添付された実施形態のうちの1つ以上において本発明による方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムを更に開示及び提案する。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データキャリアに記憶され得る。したがって、具体的には、上記の方法工程の1つ、2つ以上、又はさらには全ては、コンピュータ又はコンピュータネットワーク、或る実施形態ではMS装置、一実施形態ではコンピュータプログラムを使用することによって制御及び/又は実施され得る。したがって、MS装置を較正する方法は、MS装置の(サブ)ルーチンとして実行され得ることが想定される。当該実行は、手動でトリガされてもよく、例えば予め定義された数の分析の後若しくは分析プロトコルの変更時に自動的にトリガされてもよく、又はその全体が自動的に実施されてもよい。したがって、装置及び/又はコンピュータプログラムは、組成物の分析時に予想されるm/z値のデータベースをさらに含み得る。
【0043】
本発明は、プログラムがコンピュータ又はコンピュータネットワーク上、一実施形態ではMS装置上で実行されると、本明細書に含まれる1つ以上の実施形態では、本発明による方法を実行するために、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品をさらに開示及び提案する。具体的には、プログラムコード手段は、コンピュータ可読データキャリアに記憶され得る。
【0044】
さらに、本発明は、例えばコンピュータ又はコンピュータネットワーク、一実施形態ではMS装置の作業メモリ又は主メモリ等、コンピュータ又はコンピュータネットワークへとロードされた後に、本明細書に開示される実施形態のうちの1つ以上による方法を実行し得るデータ構造を記憶したデータキャリアを開示及び提案する。
【0045】
本発明は、プログラムがコンピュータ又はコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に開示された実施形態のうちの1つ以上による方法を実行するために、機械可読キャリア上に記憶されたプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品をさらに提案及び開示する。本明細書で使用される場合、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙のフォーマット等の任意のフォーマットで、又はコンピュータ可読データキャリア上に存在する。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワーク上で配信されてもよい。
【0046】
最後に、本発明は、本明細書に開示された実施形態のうちの1つ以上による方法を実行するためのコンピュータシステム又はコンピュータネットワーク、一実施形態ではMS装置によって読み取り可能な命令を含む変調データシグナルを提案及び開示する。
【0047】
一実施形態では、本発明のコンピュータ実装態様を参照すると、本明細書に開示される実施形態の1つ以上による方法のうちの1つ以上の方法工程又は全ての方法工程は、コンピュータ又はコンピュータネットワークを使用することによって実行され得る。したがって、一般に、データの提供及び/又は操作を含む方法工程のいずれも、コンピュータ又はコンピュータネットワーク、一実施形態ではMS装置を使用することによって実行されてよい。一般に、これらの方法工程は、典型的には試料の提供及び/又は実際の測定を実施する特定の態様等の手作業を必要とする方法工程を除いて、任意の方法工程を含み得る。
【0048】
具体的には、本発明は、以下をさらに開示する:
- 少なくとも1つのプロセッサを備えており、プロセッサは、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成されているコンピュータ又はコンピュータネットワーク、
- コンピュータ上で実行されているときに本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成されたコンピュータロード可能データ構造、
- プログラムがコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つによる方法を実行するように適合されたコンピュータプログラム、
- コンピュータプログラムがコンピュータ上又はコンピュータネットワーク上で実行されているときに本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するためのプログラム手段を備えるコンピュータプログラム、
- 先行の実施形態に記載のプログラム手段をコンピュータにとって読み取り可能な記憶媒体上に格納して備えているコンピュータプログラム、
- データ構造が記憶媒体に記憶され、データ構造がコンピュータ又はコンピュータネットワークのメイン及び/又はワーキング記憶部にロードされた後、本明細書に記載された実施形態のうちの1つによる方法を実行するように適合された、記憶媒体、
- コンピュータ又はコンピュータネットワーク上でプログラムコード手段が実行された場合に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つによる方法を実行するために、プログラムコード手段が記憶媒体上に記憶され得る、又は記憶される、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品。
【0049】
本発明の知見を要約すると、以下の実施形態が特に想定される。
【0050】
実施形態1:(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及び/又はギ酸と、(iii)極性溶媒と、一実施形態ではメタノール及び/又は水と、を含む組成物。
【0051】
実施形態2:
(i)ヨウ化セシウムの濃度が、0.1μg/mL~100mg/mLであり、
(ii)エチルアミンの濃度が、存在する場合、0.01μg/mL~1mg/mLであり、ギ酸の濃度が、存在する場合、0.001%(v/v)~10%(v/v)であり、
(iii)極性溶媒、一実施形態では、メタノール、水、又はそれらの混合物の濃度が、100%までである、実施形態1に記載の組成物。
【0052】
実施形態3:ヨウ化セシウムの濃度が約50μg/mLであり、一実施形態では50μg/mLであり、又は約500μg/mLであり、一実施形態では500μg/mLである、実施形態1又は2に記載の組成物。
【0053】
実施形態4:エチルアミンの濃度が、存在する場合、約1μg/mLであり、一実施形態では、1μg/mL又は約10μg/mLであり、一実施形態では、10μg/mLである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0054】
実施形態5:ギ酸の濃度が、存在する場合、約0.1%(v/v)であり、一実施形態では、0.1%(v/v)、又は約1%(v/v)であり、一実施形態では、1%(v/v)である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組成物。
【0055】
実施形態6:メタノールの濃度が、存在する場合、15%(v/v)~90%(v/v)であり、水の濃度が100%である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の組成物。
【0056】
実施形態7:前記組成物が、エチルアミン及びギ酸を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【0057】
実施形態8:前記組成物が、0.01μg/mL~1000μg/mLの濃度のシクロスポリンAを更に含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の組成物。
【0058】
実施形態9:前記組成物が、0.01μg/mL~1000μg/mLの濃度の5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントインを更に含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0059】
実施形態10:前記組成物が、0.01mM~1Mの濃度のギ酸アンモニウムを更に含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組成物。
【0060】
実施形態11:前記組成物が、標準条件下で、少なくとも1ヶ月間、一実施形態では少なくとも6ヶ月間、さらなる実施形態では少なくとも12ヶ月間、さらなる実施形態では少なくとも18ヶ月間安定である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物。
【0061】
実施形態12:前記組成物が、50℃の温度で、少なくとも1ヶ月間、一実施形態では少なくとも6ヶ月間、さらなる実施形態では少なくとも12ヶ月間、さらなる実施形態では少なくとも18ヶ月間安定である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物。
【0062】
実施形態13:組成物の構成要素の純度が、独立して、少なくとも90%、一実施形態では少なくとも95%、さらなる実施形態では少なくとも98%、さらなる実施形態では少なくとも99%、少なくとも99.5%、さらなる実施形態では少なくとも99.9%から選択される、実施形態1~12のいずれか1つに記載の組成物。
【0063】
実施形態14:前記組成物が、質量分析(MS)較正液である、実施形態1~13のいずれか1つに記載の組成物。
【0064】
実施形態15:前記組成物が、ポジティブモード及びネガティブモードMS用のユニバーサル較正液である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の組成物。
【0065】
実施形態16:質量分析(MS)装置を較正するための方法であって、
(I)実施形態1~15のいずれか1つに記載の組成物の質量スペクトルを決定することと、
(II)工程(I)で決定された前記質量スペクトルに基づいて前記MS装置を較正することと
を含む、方法。
【0066】
実施形態17:前記較正することが、質量軸を確認すること及び/又は質量軸を調整することである、実施形態16に記載の方法。
【0067】
実施形態18:前記MS装置が、タンデムMS装置である、実施形態16又は17に記載の方法。
【0068】
実施形態19:前記較正が、50Da~2000Daのm/z範囲での較正である、実施形態16~18のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
実施形態20:前記較正が、46、133、393、653、912、1172、1432、1692、及び/又は1952からなるリストからのポジティブイオンモード、並びに45、127、387、647、906、1166、1426、1686、及び/又は1946からなるリストからのネガティブイオンモードに対して選択されたm/z値から選択された少なくとも2つの較正点を確立することを含む、実施形態16~19のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
実施形態21:実施形態1~15のいずれか1つに記載の組成物を含む、装置。
【0071】
実施形態22:前記装置が、質量分析(MS)装置である、実施形態21に記載の装置。
【0072】
実施形態23:前記装置が、タンデム質量分析(MS/MS)装置である、実施形態21又は22に記載の装置。
【0073】
実施形態24:前記装置が、実施形態16~20のいずれか1つに記載の方法を実施するように適合されている、実施形態21~23のいずれか1つに記載の装置。
【0074】
実施形態25:前記装置が、一実施形態では、実行されると、前記装置に実施形態16~20のいずれか1つに記載の方法を実施させる、有形に埋め込まれた実行可能コード含む、実施形態21~24に記載の装置。
【0075】
実施形態26:(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及び/又はギ酸と、(iii)メタノール、水、又はこれらの混合物とを、ハウジング内に含む、キット。
【0076】
実施形態27:(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及びギ酸と、(iii)メタノール、水、又はこれらの混合物と、を含む、実施形態26に記載のキット。
【0077】
実施形態28:(i)ヨウ化セシウムと、(ii)エチルアミン及びギ酸と、(iii)水及びメタノールの混合物と、を含む、実施形態26又は27に記載のキット。
【0078】
実施形態29:前記キットが、シクロスポリンA、5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン、及びギ酸アンモニウムからなるリストから選択される少なくとも1つ、一実施形態では少なくとも2つ、さらなる実施形態では3つ全ての化合物をさらに含む、実施形態26~28のいずれか一項に記載のキット。
【0079】
実施形態30:前記キットが、固体としてヨウ化セシウムと、予備混合液体としてエチルアミン、ギ酸、メタノール及び/又は水とを含む、実施形態26~29のいずれか1つに記載のキット。
【0080】
実施形態31:前記キットの構成要素が、少なくとも実施形態2~10のいずれか1つに指定される濃度を有する溶液として前記キットに含まれる、実施形態26~30のいずれか1つに記載のキット。
【0081】
実施形態32:質量分析装置を較正するための、実施形態1~15のいずれか1つに記載の組成物、実施形態16~20のいずれか1つに記載の方法、実施形態21~25のいずれか1つに記載の装置、及び/又は実施形態26~31のいずれか1つに記載のキットの使用。
【0082】
実施形態33:質量分析用較正液を製造するための方法であって、実施形態1~15のいずれか1つに記載の化合物を混合し、それにより質量分析用較正液を製造することを含む、方法。
【0083】
実施形態34:組成物であって、
- 約500μg/mL、一実施形態では500μg/mLの濃度のヨウ化セシウムと、
- 約10μg/mL、一実施形態では10μg/mLの濃度のエチルアミンと、
- 約1%(v/v)、一実施形態では1%(v/v)の濃度のギ酸と、
- 水中30%メタノールと
を含み、
一実施形態では、前記組成物が、10倍濃縮ストック溶液である、組成物。
【0084】
実施形態35:
- 約10μg/mL、一実施形態では10μg/mLの濃度のシクロスポリンA、
- 約10μg/mL、一実施形態では10μg/mLの濃度の5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン、及び
- 約5mM、一実施形態では5mMの濃度のギ酸アンモニウム
からなる群から選択される少なくとも1つ、一実施形態では少なくとも2つ、さらなる実施形態では全てのさらなる化合物をさらに含む、実施形態34に記載の組成物。
【0085】
実施形態36:組成物であって、
- 約50μg/mL、一実施形態では50μg/mLの濃度のヨウ化セシウムと、
- 約1μg/mL、一実施形態では1μg/mLの濃度のエチルアミンと、
- 約0.1%(v/v)、一実施形態では0.1%(v/v)の濃度のギ酸と、
- 極性溶媒、一実施形態では水中30%メタノールと
を含み、
一実施形態では、前記組成物が、10倍濃縮使用溶液である、組成物。
【0086】
実施形態37:
- 約1μg/mL、一実施形態では1μg/mLの濃度のシクロスポリンA、
- 約1μg/mL、一実施形態では1μg/mLの濃度の5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン、及び
- 約0.5mM、一実施形態では0.5mMの濃度のギ酸アンモニウム
からなる群から選択される少なくとも1つ、一実施形態では少なくとも2つ、さらなる実施形態では全てのさらなる化合物をさらに含む、実施形態36に記載の組成物。
【0087】
実施形態38:組成物であって、
- 約500μg/mL、一実施形態では500μg/mLの濃度のヨウ化セシウムと、
- 約10μg/mL、一実施形態では10μg/mLの濃度のエチルアミンと、
- 約1%(v/v)、一実施形態では1%(v/v)の濃度のギ酸と、
- 約10μg/mL、一実施形態では10μg/mLの濃度のシクロスポリンAと、
- 約10μg/mL、一実施形態では10μg/mLの濃度の5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントインと、
- 約5mM、一実施形態では5mMの濃度のギ酸アンモニウムと、
- 水中30%メタノールと
を含み、
一実施形態では、前記組成物が、10倍濃縮ストック溶液である、組成物。
【0088】
実施形態39:組成物であって、
- 約50μg/mL、一実施形態では50μg/mLの濃度のヨウ化セシウムと、
- 約1μg/mL、一実施形態では1μg/mLの濃度のエチルアミンと、
- 約0.1%(v/v)、一実施形態では0.1%(v/v)の濃度のギ酸と、
- 約1μg/mL、一実施形態では1μg/mLの濃度のシクロスポリンAと、
- 約1μg/mL、一実施形態では1μg/mLの濃度の5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントインと、
- 約0.5mM、一実施形態では0.5mMの濃度のギ酸アンモニウムと、
- 極性溶媒、一実施形態では水中30%メタノールと
を含み、
一実施形態では、前記組成物が、10倍濃縮使用溶液である、組成物。
【0089】
実施形態40.ヨウ化セシウム及び極性溶媒を含む、組成物。
【0090】
実施形態41.実施形態1~15のいずれか1つに記載の組成物の少なくとも1つの特徴を有する、実施形態40に記載の組成物。
【0091】
実施形態42.実施形態40又は41に記載の組成物を含むか、又はそれを使用する、実施形態16~20及び33のいずれか1つに記載の方法、実施形態21~25のいずれか1つに記載の装置、実施形態26~31のいずれか1つに記載のキット、及び/又は実施形態32に記載の使用。
【0092】
本明細書において言及された全ての参考文献は、それらの全開示内容及び本明細書において具体的に言及された開示内容に関して、ここに参照によって援用される。
【実施例】
【0093】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものにすぎない。それらは、いかなる場合であっても、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0094】
実施例1:較正液の調製
以下の成分からなる10×ストック溶液を調製した:
エチルアミン(10μg/mL)
ギ酸(1%(v/v))
ヨウ化セシウム(500μg/mL)
水中メタノール(30%(v/v)100%まで
【0095】
製造元(製造業者、製品番号)を下記表1に示す。5L及び0.5Lの10×ストック溶液を製造するために使用される例示的な量を表2に示す。さらなるパラメータを表3に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0096】
以下を追加的に含む、さらなる10倍ストック溶液を調製した:
シクロスポリンA(10μg/mL);
5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン(10μg/mL)
ギ酸アンモニウム(5mM)
【0097】
実施例2:キャリブレーターイオンの同定
実施例1の組成物をメタノール(それぞれの組成物10%及びメタノール90%(v/v))で10倍希釈し、単一シリンダポンプによってESI源に30μL/分で注入し、ポジティブイオンモード及びネガティブイオンモードでESI-MS-MS装置で測定した。同定されたイオンは以下の通りであった:
ポジティブイオンモードにおいて:46.066、132.905、392.715、652.524、912.334、1172.144、1431.953、1691.763、及び/又は1951.572。
ネガティブイオンモードにおいて:44.998、126.905、386.714、646.524、906.333、1166.143、1425.953、1685.762、及び/又は1945.572。
【0098】
シクロスポリンA、5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン及びギ酸アンモニウムの存在下で、以下の追加のイオンを同定した:
ポジティブイオンモードにおいて:601.921、1202.841、1219.841、1224.841、1334.751、及び269.0848。
ネガティブイオンモードにおいて:267.0848及び1200.841。
【0099】
したがって、非常に低いm/z範囲(約50Da)は、それぞれポジティブイオンモード及びネガティブイオンモードでカバーされる。また、CsIは、クラスタ形成によってポジティブイオン及びネガティブイオンにおいて約100~2000Daのm/z範囲をカバーする。この組み合わせは、非常に広いm/z範囲(50~2000Da)のMAC/MAAを可能にし、測定のより高い信頼性をもたらす。さらに、CsIは、200~300Daごとにm/z較正点を提供し、質量軸精度を向上させる。CsIクラスタは断片化することができ、したがって、より低いCsI濃度を可能にするプロダクトイオンスキャンにおけるMAC/MAAに使用することができる。CsIクラスタのフラグメントをシステムモニタリングに使用することもできる。
【0100】
シクロスポリンA及び5-(4-ヒドロキシフェニル)-5-フェニルヒダントイン等のさらなる成分は、システムモニタリングの可能性を提供する。さらに、このような化合物は、プロダクトイオンスキャンモードで断片化することができる。得られたフラグメントは、Q3のMAC/MAAに使用することができ、したがって試薬の複雑さをさらに低減することができる。したがって、前述のさらなる成分は、特に、ガス流、ESI電圧、及びMS/MSイオン経路に沿った電圧等のESI-MS/MSパラメータを監視するために使用され得る。特に、前述の化合物は、37℃又は50℃等の高温であっても少なくとも18ヶ月間安定であるというさらなる利点を有し、それらは、組成物の他の構成要素から得られるシグナルを妨害せず、それらは双極性である、すなわちネガティブイオンモード及びポジティブイオンモードでイオン化することができ、それらは適切な装置上で断片化することができ、特にNaイオン、Csイオン及び/又はアンモニウムイオンと付加物を形成する傾向を有する。
【0101】
実施例3:安定性
実施例1の溶液を室温、35℃又は50℃で最大18ヶ月間保存すると、シグナル強度の減少は初期シグナルと比較して60%未満であった。
【0102】
引用文献
米国特許出願公開第2018/0047549号A1
国際公開第2012/135682号A2
Zhou et al.(2012,Anal Chem 84:6016)
【国際調査報告】