(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】工作機械、工具タレットおよびライブツール用の工具ホルダの工具ホルダインターフェース
(51)【国際特許分類】
B23B 29/24 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B23B29/24 D
B23B29/24 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517513
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2022073584
(87)【国際公開番号】W WO2023046400
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508122046
【氏名又は名称】ディー・エム・ジィ・モリ・ベルガモ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】DMG MORI BERGAMO S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パッセリーニ,ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】キアッパ,クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ミレージ,ルカ
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046NN02
3C046NN03
(57)【要約】
工具タレットは、工具ホルダTHを工具タレットに交換可能に取り付けるための少なくとも1つの接続スロットを有するタレット本体と、接続スロットに配置された伝達シャフトSとを備える。伝達シャフトSは、取り付けられた工具ホルダTHに駆動トルクを伝達するように構成される。伝達シャフトSは、駆動トルクを受容するためのトルク受容側部分S2と、取り付けられた工具ホルダTHに接続するための接続側部分S3とを有する。接続側部分S3は、駆動トルクを対応する工具ホルダ歯車装置TH3に伝達するための第1の歯車装置S4を有し、トルク受容側部分S2には、駆動ユニットのトルクを受容するための接触部が設けられる。伝達シャフトSの接続側部分(S3)には合わせ面が設けられ、合わせ面は、第1の歯車装置S4と対応する取り付けられた工具ホルダ歯車装置TH3との間の隙間を取り除くために、工具ホルダTHと相互作用するための、取り付けられた工具ホルダTHの面に接触するように配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械、特に旋盤の工具ホルダインターフェースであって、前記工具ホルダインターフェースが、機械加工作業用の工具、特にライブツールと共に工具ホルダ(TM)を取り付けるように構成され、前記工具ホルダインターフェースが、
工具ホルダ(TM)を前記工作機械の前記工具ホルダインターフェースに交換可能に取り付けるための少なくとも1つの接続スロット(IS)を有するインターフェース本体(IB)と、
前記接続スロット(IS)に配置された伝達シャフト(S)であって、前記伝達シャフト(S)が、取り付けられた前記工具ホルダ(TM)に駆動トルクを伝達するように構成される、伝達シャフト(S)とを備え、
前記伝達シャフト(S)が、前記駆動トルクを受容するためのトルク受容側部分(S2)と、取り付けられた前記工具ホルダ(TM)に接続するための接続側部分(S3)とを有し、
前記接続側部分(S3)には、取り付けられた前記工具ホルダ(TM)の対応する工具ホルダ歯車装置(TM3)に前記駆動トルクを伝達するための第1の歯車装置(S4)が設けられ、
前記トルク受容側部分(S2)には、前記工作機械の駆動ユニットの前記駆動トルクを受容するための接触部が設けられ、
前記伝達シャフト(S)の前記接続側部分(S3)には、少なくとも1つの合わせ面(M1)が設けられ、前記合わせ面(M1)は、前記第1の歯車装置(S4)と取り付けられた前記工具ホルダ(TM)の前記対応する工具ホルダ歯車装置(TM3)との間の隙間を取り除くために、前記工具ホルダ(TM)と相互作用するための、取り付けられた前記工具ホルダ(TM)の対応する外側接触面(M2)に接触するように配置される、工具ホルダインターフェース。
【請求項2】
前記工具ホルダインターフェースが、前記工作機械の工具タレットとして一体化されている、請求項1に記載の工具ホルダインターフェース。
【請求項3】
前記接続側部分(S3)において、前記伝達シャフト(S)が、前記工具ホルダ(TM)の工具ホルダシャフト(TM1)を軸方向に挿入するための前方開口部を有し、
前記合わせ面(M1)は、前記工具ホルダシャフト(TM1)を前記軸方向に沿って挿入するときに、前記第1の歯車装置(S4)と前記対応する工具ホルダ歯車装置(TM3)との間の隙間を取り除くように、前記工具ホルダ(TM)を回転させるための前記工具ホルダ(TM)の前記対応する外側接触面(M2)に接触するように軸方向に傾斜している、
先行する請求項のいずれかに記載の工具ホルダインターフェース。
【請求項4】
前記合わせ面(M1)は、前記合わせ面(M1)と前記伝達シャフト(S)の長手方向軸との間の角度が0~90度の間であるように、前記伝達シャフト(S)の軸方向に沿って傾斜し、
前記角度は、前記合わせ面(M1)と前記伝達シャフト(S)の前記軸方向との内角であることが好ましい、
先行する請求項のいずれかに記載の工具ホルダインターフェース。
【請求項5】
前記合わせ面(M1)が、前記伝達シャフト(S)の端面上のスロット(S11)または前歯の側面であり、
前記スロット(S11)または前記前歯が、好ましくは前記伝達シャフト(S)の円周で前記伝達シャフト(S)の外面まで延在するように配置される、
先行する請求項のいずれかに記載の工具ホルダインターフェース。
【請求項6】
前記伝達シャフト(S)の前記接続側部分(S3)が、前記工具ホルダシャフト(TM1)を受容するための開口部を外側端面に有し、
前記受容側部分(S2)が、前記接続側部分(S3)から離間しており、好ましくは前記伝達シャフト(S)の反対側に配置されている、
先行する請求項の少なくとも1項に記載の工具ホルダインターフェース。
【請求項7】
前記接続側部分(S3)が、前記工具ホルダシャフト(TM1)に接続するための前記開口部を有する前記伝達シャフト(S)の中空突起(S31)であり、
前記中空突起(S31)が、前面(S34)および内面(S33)を含み、前記内面(S33)に前記第1の歯車装置(S4)が設けられている、
先行する請求項の少なくとも1項に記載の工具ホルダインターフェース。
【請求項8】
前記トルク受容側部分(S2)において、少なくとも1つのピン(S14)が前記伝達シャフト(S)の孔内に配置され、前記ピン(S14)は、前記伝達シャフト(S)が回転しているときに前記工具タレットの伝達部の接触面に押し付けられるために、少なくとも部分的に遠心力によって径方向外側の方向に移動するように構成される、
先行する請求項の少なくとも1項に記載の工具ホルダインターフェース。
【請求項9】
前記ピン(S14)は、前記ピン(S14)を径方向外向きに押し付けるばねに接触し、前記ピン(S14)は、前記ピン(S14)の軸方向に沿った傾斜面を有し、
前記傾斜面は、前記工具タレットの前記伝達部の接触面と接触する面であることが好ましい、
先行する請求項の少なくとも1項に記載の工具ホルダインターフェース。
【請求項10】
前記伝達シャフト(S)が、軸方向に沿って移動可能に取り付けられ、前記トルク受容側部分(S2)のトルク受容面は、前記工作機械の前記駆動ユニットから前記駆動トルクを受容するために、前記伝達シャフト(S)が軸方向にシフトした状態で工具タレット部の対応する面と摩擦接触するように構成される、
先行する請求項の少なくとも1項に記載の工具ホルダインターフェース。
【請求項11】
前記伝達シャフト(S)が、支持部によって軸方向に移動可能に支持され、前記支持部が一対のフリーホイールであり、
前記一対のフリーホイールの各フリーホイールが、内側リングと、前記内側リングと同心の外側リングと、前記リング間の複数のラッチ本体とを有し、前記ラッチ本体は、第1の回転方向における前記内側リングおよび前記外側リング間の相対回転を解放し、前記回転を阻止するために他方の回転方向における形状嵌合または摩擦嵌合を提供する、
先行する請求項の少なくとも1項に記載の工具ホルダインターフェース。
【請求項12】
ワークピースを機械加工するための工作機械であって、前記工作機械が、先行する請求項の少なくとも1項に記載の工具ホルダインターフェースを備える、工作機械。
【請求項13】
工作機械、特に旋盤の工具タレット用の工具ホルダ(TM)であって、前記工具ホルダ(TM)が、機械加工作業のために前記工具タレットの工具ホルダインターフェースに工具を取り付けるように構成され、前記工具ホルダ(TM)が、
取り付けられたときに前記工具ホルダインターフェースの接続側部分(S3)に配置される工具ホルダシャフト(TM1)であって、前記工具ホルダシャフト(TM1)が駆動トルクを受容するように構成される、工具ホルダシャフト(TM1)と、
前記工具ホルダシャフト(TM1)に配置された軸方向に移動可能なリング(TM10)と、
前記リングを軸方向外向きに押し付けるための前記リング(TM10)の後端部の弾性要素であって、前記弾性要素が好ましくはばね(TM11)である、弾性要素とを備え、
前記工具ホルダシャフト(TM1)には、前記接続側部分(S3)の対応する第1の歯車装置(S4)から前記駆動トルクを受容するための工具ホルダ歯車装置(TM3)が設けられ、
前記工具ホルダの前部分には、外側接触面(M2)が設けられ、前記外側接触面(M2)は、前記工具ホルダ歯車装置(TM3)と前記第1の歯車装置(S4)との間の隙間を取り除くため、好ましくは、前記工具ホルダシャフト(TM1)と前記リング(TM10)との間の歯車装置の隙間を取り除くために、前記伝達シャフト(S)と相互作用するための、前記接続側部分の合わせ面(M1)に接触するように配置される、工具ホルダ(TM)。
【請求項14】
前記外側接触面(M2)が、前記伝達シャフト(S)と相互作用して前記第1の歯車装置(S4)と前記工具ホルダ歯車装置(TM3)との間の隙間を取り除くために、前記接続側部分(S3)の対応するスロット(S11)または前歯に接続するための、前記リング(TM10)の前歯(TM17)または前スロットの面である、請求項13に記載の工具ホルダ(TM)。
【請求項15】
前記リング(TM10)が、前記工具ホルダシャフト(TM1)の前記工具ホルダ歯車装置(TM3)を囲むように配置され、
前記リング(TM3)が、前記外側接触面(M2)が前記接続側部分の前記合わせ面(M1)に対して移動されるときに、前記工具ホルダシャフト(TM1)が前記工具ホルダを取り付けるための前記工具ホルダインターフェースの前記接続側部分の開口部内に移動されるときに、前記弾性要素に対して押し付けられるように構成される、請求項13または14の少なくとも1項に記載の工具ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、工作機械の最適化された工具ホルダインターフェース、特に、ライブツール用の工具ホルダを結合する工具タレットの工具ホルダ結合機構に関する。それに加えて、ライブツール用の最適化された工具ホルダおよび最適化された工具タレットトルク伝達が提案される。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第1952921号明細書は、工作機械、特にシングルスピンドル旋盤用の回転タレットを記載している。タレットディスクは、ディスクおよび機械加工工具を制御可能に回転駆動するための回転駆動手段に動作可能に結合される。自動加工工具ホルダ支持体の輪郭形成された端部と、駆動ギヤホイールの延長部に形成された凹部との間には、輪郭形成された端部を受け入れるためのインサート凹部を含む交換可能なインサートが配置され、インサートは、凹部の反対側に、幾何学的タイプの結合によって駆動ギヤホイール延長部の凹部に結合することができるインサートステムを含む。
【0003】
それに加えて、米国特許出願公開第2016/0229012号明細書は、複数の工具が取り付けられる下部工具台と、下部工具台に設けられ、回転工具が下部工具台に取り付けられたときに回転工具を回転させるモータと、下部工具台に装着され、工具を着脱可能に保持する工具ホルダとを備える工作機械を記載している。工具ホルダは、モータで生成された動力の伝達により、工具をクランプするクランプ状態と、工具をクランプ解除するクランプ解除状態との間で動作するクランプ機構部を有する。このような構成により、工具ホルダに保持された工具を工具台に自動的にクランプおよびクランプ解除するためのクランプ機構部が設けられている。
【0004】
精密なワークピース機械加工作業を行うためには、工具を動作させる際に最大の精度が要求される。したがって、1つの重要な態様は、駆動部(特に、ライブツール用の工具ホルダ駆動部)から、取り付けられたライブツールへの駆動力の伝達経路である。従来の工作機械は、駆動源(例えば、駆動モータ)から、機械加工作業のために取り付けられた工具に、駆動トルクを伝達および/または変換するための歯車装置を使用する。しかしながら、歯車装置を含むいくつかのトルク伝達経路は、噛み合うギヤホイールの交点に生じる隙間により、精度が低下する。それに加えて、駆動トルク源から取り付けられた工具への回転の伝達および/または変換中に、伝達遅延が生じる場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであり、より高精度な伝達を実現することができる工作機械の工具ホルダインターフェースおよび/または工具タレットを提供することを目的とする。それに加えて、より高い機械加工精度のためのトルク伝達の改善に適した、ライブツール用の最適化された工具ホルダを提供することが別の目的である。また、より高い機械加工精度を達成するために、工具ホルダと工作機械の工具ホルダインターフェースとの接続プロセスを改善するための方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
問題を解決するために、独立請求項の特徴が提案される。好ましい発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
工作機械の工具タレットは、工具タレットに工具ホルダを交換可能に取り付けるための少なくとも1つの接続スポットを有するタレット本体と、接続スポットに配置された伝達シャフト(すなわち、回転および軸方向移動/摺動シャフト)とを備え得る。伝達シャフトは、取り付けられた工具ホルダにスピンドルシャフトから駆動トルクを伝達するように構成され得る。伝達シャフトは、(間接的または好ましくは直接的に)スピンドルシャフトを形成する、または駆動モータ(好ましくは、工具タレットに一体化されたライブツールホルダ駆動部)などのトルク源から直接、駆動トルクを受容するためのトルク受容側部分と、工具タレットの工具ホルダインターフェースに直接取り付けられる工具ホルダに接続するための接続側部分とを有し得る。好ましくは、工具タレットは、1つの平面内で軸方向に移動可能であり、またB軸を中心に回転可能である。接続側部分は、機械加工作業のために工具を駆動するための駆動トルクを受容するための工具ホルダのトルク受容歯部と呼ばれ得る対応する工具ホルダ歯車装置に、受容した駆動トルクを伝達するための、第1の歯車装置または第1の歯部を有してもよい。トルク受容側部分は、駆動ユニットから(好ましくは直接)トルクを受容するための接触部(例えば、中空スピンドルシャフトの内面)を有し得、伝達シャフトの接続側部分に合わせ面が設けられてもよい。合わせ面は、第1の歯車装置と、取り付けられた工具ホルダの対応する歯車装置、すなわち工具ホルダのトルク受容歯部との間の隙間または空間を取り除くために、工具ホルダと相互作用するための、取り付けられた工具ホルダの面(対応する合わせ面)に接触するように配置され得る。この特定の構造を提供することにより、効率的に製造することができる効果的な設計で、噛み合う歯車装置間の隙間を取り除くことによって、機械加工作業のより高い精度を達成することができる。これにより、トルクもタイムラグなく伝達することができる。
【0008】
工具タレットの伝達シャフトは、軸方向に移動可能であってもよい。好ましくは、伝達シャフトの軸方向移動は、駆動トルクの係合または係合解除を可能にするために提供することができる。したがって、工具ホルダインターフェースに工具ホルダを接続する際に、より高い移動自由度および伝達シャフト移動のより高い精度を達成することができる。
【0009】
伝達シャフトは、伝達シャフトの軸方向に沿って工具ホルダシャフトを受容するための、接続側部分の外側端面に前方開口部を有する接続側部分を有してもよい。工具ホルダシャフトは、伝達シャフトと係合し、かつ工具ホルダを効率的に取り付けるために、開口部に挿入されてもよい。
【0010】
合わせ面は、好ましくは、工具ホルダシャフトを軸方向に沿って挿入するときに、第1の歯車装置の隣接する歯と、対応する工具ホルダ歯車装置との間の隙間または空間(歯車装置隙間とも呼ばれる)を取り除くように、工具ホルダをシフトまたは回転させるための工具ホルダの対応する外側接触面に接触するように軸方向に傾斜していてもよい。
【0011】
好ましくは、接続側部分は、工具ホルダシャフトに接続するための伝達シャフトに一体化されたスリーブ取付具または取り付け孔(開口部とも呼ばれる)を有し得、スリーブは、接続前面およびスリーブ内面を含み、スリーブ内面に第1の歯車装置が設けられてもよい。
【0012】
接続側部分は、工具ホルダシャフトに接続するための開口部を有する伝達シャフトの中空突起であってもよい。中空突起は、前面および内面を含んでもよく、内面に第1の歯車装置が設けられてもよい。
【0013】
接続側部分の取付具は、第1の歯車装置と工具ホルダ歯車装置との間の隙間を取り除くために、工具ホルダと相互作用するための、取り付けられた工具ホルダの対応する前歯またはスロットに接続するための、少なくとも1つのスロットまたは前歯(好ましくはガイド歯)を有してもよい。この特定の構造を提供することにより、ワークピースの機械加工作業のより高い精度を達成することができる。
【0014】
好ましくは、スリーブのスロットは、伝達シャフトに沿って軸方向に延在してもよく、伝達シャフトの周方向側に配置されてもよい。それに加えて、接続側部分におけるスロット側面は、傾斜を有していてもよい。この特定の構造を提供することにより、ワークピースの機械加工作業のより高い精度を達成することができる。
【0015】
好ましくは、合わせ面は、合わせ面と伝達シャフトの長手方向軸との間の角度が0~90度の間、好ましくは10度超80度未満になるように伝達シャフトの軸方向に沿って傾斜しており、これは、歯車装置隙間を取り除くための最も高い有効性を有する結果を示した。角度は、合わせ面と伝達シャフトの軸方向との内側角度(または内角、または最小角度)であることが好ましい。
【0016】
好ましくは、合わせ面は、伝達シャフトの端面上のスロットまたは前歯の側面であってもよく、スロットまたは前歯は、伝達シャフトの円周で伝達シャフトの外面まで延在するように配置されてもよい。
【0017】
さらに好ましい発展形態では、接続側部分のスロット側面は、合わせ面として曲面を有してもよい。
【0018】
好ましくは、伝達シャフトの接続側部分は、工具ホルダシャフトを受容するための開口部を外側端面に有してもよく、受容側部分は、接続側部分から離間され、伝達シャフトの反対側に配置されてもよい。したがって、伝達シャフトを介したトルク伝達を円滑に行うために、接続側部分と受容側部分とを、伝達シャフトの端部側面である対向する両側に配置してもよい。
【0019】
伝達シャフトの第1の歯車装置は、駆動トルクを伝達するために工具ホルダ歯車装置の対応する面と噛み合うように構成されてもよい。
【0020】
好ましくは、トルク受容側部分には、少なくとも1つのピン(最も好ましくは2つのピン)が、伝達シャフトの孔または貫通孔内で軸方向に沿って移動可能に配置される。ピンは、好ましくは、伝達シャフトが回転しているときに工具タレットの取り付け部または伝達部のノッチの接触面に押し付けられるために、遠心力および/またはばね力によって少なくとも部分的に径方向外側の方向に移動するように構成される。伝達シャフトおよびそれぞれのギヤの回転を達成して、歯車装置隙間を好ましくはゼロに減少させ、したがって遅延のないトルク伝達を達成するために、ピンは、ノッチの内面の少なくとも傾斜面または側面に押し付けられる。
【0021】
少なくとも1つのピンが伝達シャフトの孔に配置されてもよく、伝達シャフトの回転中に工具タレットの伝達部の接触面に押し付けられるために、ピンが径方向外側の方向(係合状態)に移動するように構成されてもよい。好ましくは、ピンを接触面に対して外側に押し付ける力は、少なくとも部分的に、シャフトの回転による遠心力によって引き起こされ、したがって、力は回転速度の増加と共に増加する。
【0022】
好ましくは、ピンは、ピンの外面を径方向外向きに押し付けるために、ばね(好ましくは、ばねの反対側の端部に配置された2つの対向するピンに接続されたシャフトの中心に配置されたコイルばね)に接触する。ピンの軸方向に沿った傾斜面と傾斜面とを有するピンは、工具タレットの伝達部の接触面と接触する面であることが好ましい。好ましくは、ピンは、傾斜面を形成するテーパ状または面取りされた端部を有する円筒である。
【0023】
好ましくは、伝達シャフトは、軸方向に沿って移動可能に取り付けられ、トルク受容側部分のトルク受容面は、好ましくは、工作機械の駆動ユニットから駆動トルクを受容するために、伝達シャフトが軸方向にシフトした状態で工具タレット部の対応する面と摩擦接触し、シフトしていない状態で工具タレット部から独立して伝達シャフトの回転を可能にするように構成される。接続側面の伝達面は、駆動トルクを伝達するために工具ホルダ歯車装置の対応する面と摩擦接触してもよい。
【0024】
好ましくは、伝達シャフトは、軸方向に移動可能とするために、軸方向の移動を許容する支持部に支持される。支持部は、好ましくは一対のフリーホイールであり、一対のフリーホイールの各フリーホイールは、内側リングと、内側リングと同心の外側リングと、リング間の複数のラッチ本体(好ましくはボール形状であり得る)とを有し、ラッチ本体は、第1の回転方向における内側リングおよび外側リング間の相対回転を解放し、回転を阻止するために他方の回転方向における形状嵌合または摩擦嵌合を提供する。好ましくは、伝達シャフトは、フリーホイールの内側リングに支持され、工具タレット部は、外側リングに(好ましくは固定的に)接続される。
【0025】
伝達シャフトは、工具タレットのスピンドルシャフトであってもよい。伝達シャフトは、いくつかの別個の部品が単一のシャフトに組み合わされた多部品シャフトであってもよい。
【0026】
さらに、工作機械、特に旋盤の工具タレット用の工具ホルダは、機械加工作業のために工具タレットに工具を取り付けるように構成されてもよい。工具ホルダは、工具タレットの接続部に配置された工具ホルダシャフトを有し得、工具ホルダシャフトは、駆動トルクと、工具ホルダシャフトに接続された軸方向に移動可能なリングと、リングの後端部にある弾性要素とを受容するように構成され得る。接続側部分の対応する第1の歯車装置から駆動トルクを受容するために、工具ホルダシャフトに工具ホルダ歯車装置が位置づけられてもよい。工具ホルダシャフトの前部分は、合わせ面を有してもよく、合わせ面は、工具ホルダ歯車装置と第1の歯車装置との間の隙間を取り除くために、伝達シャフトと相互作用するための接続側部分の面に接触するように配置されてもよい。
【0027】
さらなる発展形態では、工作機械、特に旋盤の工具タレット用の工具ホルダは、機械加工作業のために工具タレットの工具ホルダインターフェースに工具を取り付けるように構成されてもよい。工具ホルダは、取り付けられたときに工具ホルダインターフェースの接続側部分に配置される工具ホルダシャフトであって、工具ホルダシャフトが駆動トルクを受容するように構成された、工具ホルダシャフトと、工具ホルダシャフトに配置された軸方向に移動可能なリングと、リングを軸方向外向きに押し付けるためのリングの後端部の弾性要素であって、弾性要素が好ましくはばねである、弾性要素とを備え得る。工具ホルダシャフトには、接続側部分の対応する第1の歯車装置から駆動トルクを受容するための工具ホルダ歯車装置が設けられてもよく、工具ホルダの前部分には、外側接触面が設けられてもよく、外側接触面は、工具ホルダ歯車装置と第1の歯車装置との間の隙間を取り除くため、好ましくは工具ホルダシャフトとリングとの間の歯車装置の隙間を取り除くために、伝達シャフトと相互作用するための接続側部分の合わせ面に接触するように配置されてもよい。
【0028】
工具ホルダのリングは、第1の歯車装置と工具ホルダ歯車装置との間の隙間を取り除くために、伝達シャフトと相互作用するための、対応する前スロットまたは接続側部分のスリーブの前歯に接続するための前歯または前スロットを有してもよい。この特定の構造を提供することにより、ワークピースの機械加工作業のより高い精度を達成することができる。
【0029】
好ましくは、外側接触面は、伝達シャフトと相互作用して第1の歯車装置と工具ホルダ歯車装置との間の隙間を取り除くために、接続側部分の対応するスロットまたは前歯に接続するための、リングの前歯または前スロットの面である。したがって、リングは、シャフトの接続側部分のスロットに接続するための前歯を有してもよく、またはその逆であってもよい。さらなる発展形態では、リングは、シャフトの対応するスロットに接続するための前歯と、シャフトの前歯に接続するためのスロットとの両方を有してもよい。
【0030】
好ましくは、リングは、工具ホルダシャフトの工具ホルダ歯車装置を囲むように配置されてもよく、リングは、外側接触面が接続側部分の合わせ面に対して移動または押し付けられるときに、工具ホルダシャフトが工具ホルダを取り付けるための工具ホルダインターフェースの接続側部分の開口部内に移動されるときに、弾性要素に対して押し付けられるように構成されてもよい。
【0031】
タレットおよび工具ホルダの構造の態様によれば、ワークピースの機械加工作業の高精度化を図ることができる。
【0032】
当業者は、上述の態様の様々な適合、修正、および/または組み合わせを構成することができることを理解するであろう。したがって、本明細書に具体的に記載されている以外のさらなる態様が実施されてもよいことを理解されたい。当業者はまた、本開示を考慮して、本明細書に記載の異なる態様を組み合わせて本開示の他の態様を形成することができることを理解するであろう。
【0033】
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】工具タレットの駆動シャフトに結合された工具ホルダの概略斜視図を例示的に示す。
【
図2】工具タレットの駆動シャフトに結合された工具ホルダの断面図を例示的に示す。
【
図3a】
図1と同様の工具ホルダおよび伝達シャフトの対応する歯車装置の詳細図を例示的に示す。
【
図3b】リングおよびリングを有する工具ホルダ構造の詳細図を例示的に示す。
【
図4a】非結合状態の工具ホルダおよび伝達シャフトの断面図を例示的に示す。
【
図4b】非結合状態の工具ホルダおよび伝達シャフトの側面図を例示的に示す。
【
図5a】工具ホルダおよび伝達シャフトの断面図を例示的に示す。
【
図5b】結合状態の工具ホルダおよび伝達シャフトの側面図を例示的に示す。
【
図6】aは隙間がある工具ホルダとリングとの間の噛み合う歯車装置を、bは隙間がある工具ホルダと伝達シャフトとの間の噛み合う歯車装置を例示的に示す。
【
図7】実施形態は、非結合状態の工具ホルダおよび伝達シャフトの断面図を示す。
【
図8】実施形態は、非結合状態の工具ホルダおよび伝達シャフトの側面図を示す。
【
図9a】実施形態は、工具ホルダリングと工具ホルダとの間の噛み合う歯車装置を示す。
【
図9b】実施形態は、噛み合う面の間に隙間がない、工具ホルダと伝達シャフトとの間の噛み合う歯車装置を示す。
【
図10】実施形態は、結合状態の工具ホルダシャフトおよび伝達シャフトの断面図を示す。
【
図11】実施形態は、隙間のない構成を有する噛み合う歯車装置の詳細図を含む、結合状態の工具ホルダおよび伝達シャフトの側面図を示す。
【
図12a】一実施形態の非結合状態における工具ホルダ、リング、および伝達シャフトの間の概略的な接続を示す。
【
図12b】一実施形態の結合状態における工具ホルダ、リング、および伝達シャフトの間の概略的な接続を示す。
【
図13】一実施形態による、ピンが伝達シャフトの開口部に配置されている、工具ホルダおよび伝達シャフトの断面図である。
【
図14】一実施形態による、ピンが伝達シャフトの開口部に配置されている、工具ホルダおよび伝達シャフトの断面図である。
【
図15】別の実施形態による、工具タレットの内側に孔がある工具ホルダおよび伝達シャフトの側面図である。
【
図16】伝達シャフトの開口部に配置されたピンの断面図である。
【
図17】フリーホイールを有し、非係合状態になるようにシャフトが軸方向に変位している、別の実施形態の伝達シャフトの断面図である。
【
図18】駆動トルクを伝達するための摩擦接触を有する係合状態となるように軸方向に変位している、別の実施形態の伝達シャフトの断面図である。
【
図19】一実施形態のフリーホイールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
以下、添付の図面を参照して、好ましい態様および実施形態をより詳細に説明する。異なる図面および実施形態における同一または類似の特徴は、類似の参照番号によって参照される。様々な好ましい態様および好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明は、本発明の範囲を限定することを意味するものではないことを理解されたい。
【0036】
図1~
図6には、トルク伝達シャフト(すなわち、回転および軸方向移動シャフト)および工作機械の対応する工具ホルダの構成が示されている。回転運動およびトルクの伝達のために、それぞれの歯車装置が設けられている。
【0037】
既知のシステムでは、高精度の機械加工作業において、トルク伝達経路、すなわち、好ましくは工具タレットの内部駆動モータ(ライブツールホルダ駆動部)であり得るトルク発生源から、機械加工作業のための機械加工工具またはライブツールである最終トルク受容部にトルクが伝達される経路に生じる隙間およびラグに起因して、不正確さが生じるという問題が起こる。駆動モータが始動信号を受信すると、回転およびトルクの発生が開始され、運動およびトルクがトルク伝達経路に沿って伝達される。経路に沿った遅延および隙間に起因して、トルクの遅延および/または変化が生じ、ライブツールにおける所望のトルクおよび/または回転タイミングが実際のトルクおよび回転タイミングからずれる。このずれは、回転速度を変更するとき、または機械加工作業の開始時に特に関連する。したがって、このずれを低減するための効率的な解決策、したがって、最適化されたトルク伝達経路の効率的な作成を可能にするために、機械加工精度を大幅に高めることができ、同時に工具タレットおよび工具ホルダの製造時の製造コストも考慮される構造が提案される。
【0038】
図1には、工具ホルダTM(「取り付けられる工具ホルダ」TM)と工具タレットの伝達シャフトSとの間の接続部の概略斜視図が示されている。伝達シャフトは、ライブツールを駆動するように構成された工具タレットの一体型駆動部である駆動トルク発生源から、伝達シャフトに接続された工具ホルダに、駆動トルクを伝達するための工具タレットまたは工作機械の一体型部品である。工具タレットを考慮すると、それぞれの伝達シャフトは、好ましくは、それぞれの工具ホルダを取り付けるための接続インターフェースの各々で一体化される。工具タレットは、参照により本明細書に組み込まれる独国特許出願公開第102005021202号明細書にも記載されている。したがって、それぞれの工具ホルダを取り付けることができる伝達シャフトの受容側は、工具ホルダを取り付けるための工具ホルダインターフェースを形成すると同時に、トルク伝達を可能にする。
【0039】
取り付けられた工具ホルダTMは、接続軸AXと平行な方向である軸方向に沿って、伝達シャフトSに接続されている。したがって、互いに平行に配置された取り付けられた工具ホルダTMおよび伝達シャフトの両方には、伝達シャフトSから工具ホルダTMおよび取り付けられた工具へのトルク伝達を可能にするように、これらの部品を互いに接続するためのそれぞれの端辺が設けられている。シャフトから工具ホルダへのトルク伝達および回転運動の伝達を達成するために、互いに摺動して噛み合うことができる歯車装置が設けられる。歯車装置の摺動運動を可能にするために、内側および外側歯車装置の対応する歯の間に空間が設けられる。
【0040】
工具ホルダTMは、工具、特にライブツールを保持し、かつ工具タレットの伝達シャフトSから受容した駆動トルクを機械加工作業用の工具に伝達するために設けられる。工具ホルダ本体TM2は、軸方向に沿って延在する円形状体である。本例では、工具ホルダ本体TM2の外形は円形であるが、形状は正方形、多角形または楕円形であってもよく、工具ホルダTMの必要な形状に基づいて選択される。
【0041】
工具ホルダ(外側)本体TM2は、
図2に示されるように、径方向中空部TM5を有し、中空部は、工具ホルダ本体TM2の中心の貫通孔から径方向に延在するように設けられ、工具ホルダ本体TM2の内側に、その内部にばねを配置するための、またリングTM10の後端歯(リング後部接続突起TH12)用の移動空間を提供するための、チャンバを提供する。また、工具ホルダシャフトTM1の中空部として、より具体的には、中央部の工具ホルダシャフトTM1の外周面と工具ホルダ歯車装置TM3との間に、中空シャフト部TM6が設けられている。径方向中空部TM5は、工具ホルダ本体TM2の内側から径方向に延在し、弾性要素、特にばねTM11の位置に設けられる。それに加えて、工具ホルダ本体TM2の前端部には、リング後部接続突起TH12を介してリングTM10と接続するためのスロットが設けられる。
【0042】
工具ホルダシャフトTM1は、工具ホルダ本体TM2の内側貫通孔内に配置されたシリンダであり、貫通孔内で摺動可能に案内されて、軸方向に沿った工具ホルダシャフトTM1の軸方向移動を可能にする。工具ホルダシャフトTM1の軸方向移動は、工具ホルダを工具タレットに接続するための工具タレットの工具ホルダインターフェースの対応する開口部に、工具ホルダが侵入することを可能にする。工具ホルダシャフトTM1の一部は、工具ホルダ本体TH2の貫通孔の内側に常に位置しており、効率的な支持を提供する。工具ホルダ歯車装置TM3は、工具タレットの伝達シャフトSの接続側部分S3の方向において、工具ホルダシャフトTM2の前端部外面に設けられている。それに加えて、工具ホルダ歯車装置TM3は、伝達シャフトSの開口部の内周に設けられた歯車装置S4に摺動可能な工具ホルダシャフトTM2の外周に設けられた歯車装置である。工具ホルダ歯車装置TM3が設けられている端部に対向する端部は、工具ホルダシャフトTM1の後端部とも呼ばれ得、この端部は、工具(図示せず)、特にライブツールに接続されるように構成することができる。
【0043】
工具ホルダシャフトTM1の外側面には、中空シャフト部TM6またはシャフト中空木立が設けられ、ばねおよびリングTM10の軸方向移動を改善することができる径方向の自由空間を達成する。シャフト中空木立TM6と径方向中空部(または工具ホルダ本体の径方向空洞)TM5とは、互いに対向するように位置決めされる。この配置は、結果として生じる空間に弾性要素、特にばねTM10を位置決めするために使用される。
【0044】
リングTM10は、工具ホルダシャフトTM1の前端部外側、かつ工具ホルダ歯車装置TM3上に、軸方向に摺動可能に設けられている。リングTM10は、工具ホルダシャフトTM1、特に工具ホルダシャフト歯車装置TM3と接続するための中心に配置された軸方向貫通孔を有する、軸方向に延在する円筒形ブッシュの形状を有する。リングTM10は、工具ホルダ本体TM2の前方開口部の内側面(径方向内側を向く)に軸方向移動可能に支持されている。工具ホルダ本体TM2の内側面は、リングTM10の外周面(リング外面TM17)と接触し、円周上には、後歯またはリング後部接続突起TM12の軸方向移動を可能にするための歯スロットが設けられている。歯スロットの側面は、軸AX周りのリングTM10の回転を阻止するように後歯を阻止する。回転を可能にするために、後歯を歯スロットから軸方向に移動させることができる。リング後部接続突起TM12は、径方向に延在するリングTM10の外端側面に設けられ、リングTM10の内周側に配置されたリング歯車装置(リング歯車装置TM13)の反対側に配置される。リング後部接続突起TM12は、キー溝構成で、工具ホルダ本体TM2の径方向中空部TM5と結合するように設計される。リングTH10の前端面の平面は、好ましくは、接続軸AXに垂直であり、リング歯車装置TH13は、リングTH10の内側、すなわち内側歯車装置に設けられる。
【0045】
ばねTM11は、リングTM10の接続端側とは反対側のリングTM10の後端部に位置している。ばねTM11は、工具ホルダ本体TM2の径方向中空部TM5内に配置される。工具ホルダシャフトTM1を伝達シャフトSの対応する開口部に挿入するときのリングTM10の軸方向移動により、工具タレットの伝達シャフトSと工具ホルダとの結合中に、リングTM10のリング後面TM15によって、径方向中空部TM5の径方向側面にばねTH10を押し付けることができる。これにより、伝達シャフトの開口部にtooホルダシャフトを挿入する工程において、リングTM10の前端部が接続側部分S3の端部領域の伝達シャフトの接触面に接触することで、リングが工具ホルダ本体TM2に向けて軸方向に押され、ばねTM11が圧縮される。これにより、リング歯車装置TM13は、工具ホルダ歯車装置TM3に沿ってシャフト中空部TM6まで摺動する。
【0046】
図2に示す接続部の他方の側には、工具タレットのモータ(図示せず)から工具ホルダシャフトTM1に駆動トルクを伝達するように設計された伝達シャフトSが設けられている。工具タレットに工具ホルダインターフェースを形成するために、伝達シャフトSの前端部には、取り付けられる工具ホルダに面する接続側部分S3が設けられている。伝達シャフトSの前端部は、好ましくはトルク受容部分が設けられる伝達シャフトSの後端部よりも、工具ホルダシャフトTM1との接続側により近く配置される。接続側部分S3は、シャフトの端部に一体化された前端開口部を有するスリーブ形状の突起を有し(以下ではスリーブS31と略記する)、スリーブS31は、接続軸AXに沿って軸方向に配置された円筒状の接続部分である。前端開口部は、接続側部分S3に沿って軸方向に延在し、第1の歯車装置S4が、
図3aに示すように、工具ホルダシャフトTM1の工具ホルダ歯車装置TM3と噛み合い接続するためのスリーブS31のスリーブ内面S33に設けられる。シャフトの開口部の内周面に第1の歯車装置が配置されているため、歯車装置は、内部歯車装置とも呼ばれ得る。
【0047】
さらに、伝達シャフトSの端側部分には、追加の伝達要素を介して、または一体型モータから直接、工具タレットまたは工作機械の工具モータ(ライブツールホルダ駆動部)からの駆動トルクを受容するためのトルク受容側部分S2が設けられている。例えば、トルク受容側部分S2には、駆動トルクを受容するためのトルク受容歯車装置S21が設けられる。
【0048】
それに加えて、伝達シャフトSの後端部分RSは、伝達シャフトSの接続側部分S3とは反対側の後端部に位置する部分である。有利な展開では、トルク受容側部分S2は、後端部分RSと同じである。後端部分RSは、接続側部分S3の直径よりも大きい直径を有する。
【0049】
さらに、後端部分RSは、伝達シャフトSの後部外側面に設けられた4つの後端溝RS1を有する。伝達シャフトSの後端部には、後方シャフト開口部RS3が設けられている。伝達シャフト後方開口部RS3は、軸方向に延在し、いくつかの後端部内側溝RS6を備える。伝達シャフトSの後方シャフト開口部RS3の内側面には、径の異なる第1の内側対向面RS4と第2の内側対向面RS5とが設けられている。
【0050】
工具ホルダTMと伝達シャフトSとの間の結合手順中に、伝達シャフトSはまた、接続軸AXに沿って、例えば工具ホルダシャフトTM1に向かって、軸方向に移動することができる。これにより、工具ホルダシャフトTM1の外側面の工具ホルダ歯車装置TM3は、伝達シャフトSの第1の歯車装置S4、すなわち内側歯車装置に摺動して噛み合う。さらに、スリーブS31の前端部には、リングTM10のリング接続面TM14(
図3b参照)に押し付けられる接続前面S34(
図3aおよび
図4a参照)が設けられている。スリーブの外側前縁には、接続を改善するために、面取りされた外側スリーブ面S32が設けられている。リングTM10は、リング接続面TM14を介して接続軸AXに沿って所定距離まで押し下げられる。押し付けられたリングTH10を接続軸AXに沿って移動させながら、リング後面TM15をばねTM10に押し付ける。
【0051】
伝達シャフトSと工具ホルダシャフトTM1との間の結合部分の拡大図が、
図3aに示されている。工具ホルダTMは、工具ホルダ本体TM2と、リングTM10と、工具ホルダ歯車装置TM3を有する工具ホルダシャフトTM1とを備える。工具ホルダ歯車装置の外周側の前端部には、歯車装置の縁部の面取り部である工具ホルダ歯車装置面取り部TM16が設けられている。面取り部TM16は、工具ホルダシャフト(より詳細には工具ホルダ歯車装置TM3)と第1の歯車装置S4との間の最適化された接続および係合運動のために設けられ、第1の歯車装置S4も、係合プロセスをさらに改善するための面取り縁部S35を有する。提案された面取り端部は、ギヤの損傷を回避することを可能にし、工具ホルダを取り付ける取り付け工程を効率的に改善する。
【0052】
さらに、接続側部分S3が
図3aに示されている。接続側部分S3は、スリーブS31と略記する、シャフトの端部に一体化された前端開口部を有するスリーブ形状の突起を含み、これは工具ホルダ歯車装置TM1と結合され、かつ工具ホルダ歯車装置TM3と噛み合うように設計される。第1の歯車装置S4は、スリーブ内面S33に設けられている。第1の歯車装置S4の前端部は、結合動作中に歯車装置への潜在的な損傷を回避するために、第1の歯車装置面取り縁部S35を形成するように面取りされる。それに加えて、結合動作中に、軸方向に対して垂直に配置された面である接続側前面S34は、リング接続面TM14に押し付けられ、リングが工具ホルダ本体TM2内に内向きに押し込まれる。これらの面の両方には突起やスロットが設けられていないことが好ましく、固体接触のために互いに平行かつ接続軸AXに垂直に配置された平面である。
【0053】
リングTM10の詳細な構造を
図3bに示す。少なくとも1つの突起、リング後部接続突起TM12が、リングTM10の後端のリング外面TM17に配置され、径方向に延在し、リングTM10の内周側に配置されたリング歯車装置(リング歯車装置TM13)の反対側に配置されている。リング後部接続突起TM12は、工具ホルダ本体TM2の径方向中空部TM5と結合するように設計される。それに加えて、リング後部接続突起TM12は、リング外面TM17から径方向外向きに延在する矩形状であり得る。リング歯車装置TM13は、リングの長手方向軸に面し、したがって内側に面するリング内面に設けられる。リング歯車装置TM13は、径方向外向きの方向を向くように配置された工具ホルダ歯車装置TM3と噛み合うのに適している。リングTM10は、工具ホルダ歯車装置TM3上を摺動可能に移動可能であり、工具ホルダ本体TM2の開口部内に摺動することができる。
【0054】
図4aおよび
図4bは、結合部品の側面図および断面側面図において、非結合位置にある工具ホルダTMおよび伝達シャフトSを示す。結合プロセスでは、まず、工具ホルダ歯車装置面取り部TM16を、伝達シャフトSの接続側前面S34に向かう方向に軸方向に(軸AXに沿って)移動させる。したがって、工具ホルダ歯車装置面取り部TM16は、伝達シャフトの開口部に入り、少なくとも部分的に面取り縁部S35に接触し、それにより、工具ホルダ歯車装置面取り部TM16の領域内の工具ホルダ歯車装置TM3の歯は、第1の歯車装置S4の隣接する歯の間の間隙(または合間)に摺動する。これにより、工具ホルダシャフトTM1は、接続側部分S3において伝達シャフトの開口部内に摺動し、換言すれば、スリーブS31の開口部内に摺動する。スリーブS31の開口部に工具ホルダシャフトTM1が入り込み、歯車装置(S4,TM3)同士が噛み合うように軸方向に摺動すると、工具ホルダシャフトTM1と伝達シャフトSとの重なり部分が増える。工具ホルダシャフトTM1の所定部分が開口部に挿入された後、リング移動点が生じる。したがって、結合プロセスの次の工程では、リング移動工程が生じる。この工程は、接続側前面S34とリング接続面TM14との間の接触によって開始される。
【0055】
リング移動工程では、伝達シャフトS(より詳細には接続側前面S34)がリングTM10を工具ホルダ本体TM2の開口部内に後方へ押し込む。これにより、歯車装置(S4,TM3)が互いに軸方向に摺動して完全に重なり合って噛み合うまで、ばねTM11が、後部リング端面TM15によって、径方向中空部TM5の内側面に向けて押し付けられる。リングの最終位置において、リング移動工程が終了すると、ばねTM11は収縮し、リング後部接続突起が阻止突起から押し出されて移動自在となり、径方向中空部TM5に配置され、工具ホルダシャフトTM1の回転を許容する。
【0056】
図5aおよび
図5bでは、工具ホルダTMおよび伝達シャフトSは、結合部の側面図および断面側面図において結合位置(連動位置とも呼ばれる)に示されている。結合位置では、工具ホルダシャフトTM1の外側面上の工具ホルダ歯車装置TM3は、伝達シャフトSの第1の歯車装置S4(または内部歯車装置)と完全に噛み合っている。さらに、スリーブの前端部に設けられた接続側前面S34が、リング接続面TM14に押し付けられる。リングTM10は、伝達シャフトSの接続前面S34によって接続軸AXに沿って後方へ、軸方向のリング後部接続突起TM12が径方向中空部TM5に完全に入り込んで工具ホルダ本体TM2に対して回転可能な所定距離まで押される。リング後面TM15は、ばねTM11に押し付けられる。連動位置では、伝達シャフトSと共に工具ホルダシャフトTM1が回転する。同時に、リングTM10も工具ホルダシャフトTM1と共に回転する。しかしながら、工具ホルダ本体TM2は、リング後部接続突起TM12が径方向中空部TM5に完全に入り込んだ状態では、回転部、すなわち工具ホルダシャフト、リングおよび伝達シャフトと共に回転しないように配置されてもよい。
【0057】
図6は、噛み合う歯車装置の2つの断面図を示す。
図6の左側には、工具ホルダ歯車装置TM3とリングTM10の歯車装置、すなわちリング歯車装置TM13との噛み合う歯車装置が示されている。
図6の右側には、第1の歯車装置S4と工具ホルダ歯車装置TM3との噛み合いが示されている。
図6の図は、結合状態にある歯車装置接続部分の接続軸AXに垂直な平面の断面図である。
図6から分かるように、工具ホルダ歯車装置TM3と第1の歯車装置S4とは噛み合っており、歯の隣接する面間には、側面間の隙間G(または歯の隙間)が存在する。このため、工具ホルダ歯車装置TM3とリング歯車装置TM13との噛み合うギヤにも隙間が存在する。隙間Gは、連動位置を達成し、かつ工具ホルダインターフェースからの工具ホルダの取り外しを可能にするように、シャフトの軸方向に沿って歯車装置を互いに円滑に摺動させることを可能にする。しかしながら、隙間Gは、工作機械の機械加工精度を低下させる。
【0058】
好ましい発展形態では、
図7および
図8に示すように、最適化された工具ホルダおよび伝達シャフトを提供することができる。本発明の一実施形態の断面図が
図7および
図8に示されており、(取り付けられる)工具ホルダTMは、
図1~
図6に関連して説明した構成に加えて、歯車装置隙間Gの少なくとも1つ、好ましくは両方を取り除くために、結合プロセス中に工具ホルダシャフト歯車装置の回転(好ましくは、リングTM10および/または伝達シャフトに対して工具ホルダシャフトを回転させるために、伝達シャフトの開口部内への工具ホルダの軸方向移動に起因する、少なくともトルクを生成することによる)を達成するための係合要素を有する。
【0059】
特に、リングTM10は、前側接続面TM14に、1つ以上の前歯TM21とも称される1つ以上の突起を有する。前歯TM21は、周方向側に配置され、リングTM10の中心から離れてリング接続面TM14から軸方向AXに延在する。前歯TM21の外周面は、リング外面TM17に対して平面状(同じ高さ)である。前歯は、上面視で(径方向に垂直な平面上であり、平面は好ましくは前歯TM21の外周面と直交する)、台形状であることが好ましい。前歯の2つの側面(前歯側面TM22)は、前側接続面TM14から離れて軸方向AXに延在し、好ましくは軸AXに垂直に配置された前歯上面である第3の面によって互いに接続される。これらの側面の一方は、第3の面に対して矩形に配置され、他方の側面は、第3の面に対して90度とは異なる角度で配置され、前歯TM21の傾斜側面を形成する。この特定の配置は、
図11に示す詳細にも示されている。前歯TM21は、結合プロセス中に前スロットS11に挿入されるように構成されている。
【0060】
しかしながら、前歯TM21は、結合中に前歯を受容するためのスロットの前歯側面または対応する側面のいずれかとして傾斜面(好ましくは、合わせ面M2またはM1)がある限り、異なる形状を有することができる。上面視における前歯TM21の形状は、三角形状であってもよいし、多角形状であってもよいし、または好ましくは曲面状であってもよい。結合プロセス中、傾斜面(合わせ面M2)は、対向部、すなわち伝達シャフトの対応する面(合わせ面M1)に接触し、それによってリングTM10および工具ホルダシャフトを伝達シャフトに対して回転させる力を生成し、それによってリング、工具ホルダシャフト、および伝達シャフトの対応する歯車装置の歯が互いに接続し、それによってそれらの間の隙間を取り除く。換言すれば、合わせ面は、軸方向接続プロセス中に径方向の力を作り出すことができるように、これらの面の接触平面が軸方向AXと平行ではないように配置される。
【0061】
前歯がリングTM10に一体化され、前スロットS11が伝達シャフトSに一体化されていることを考慮して説明しているが、他の方法、すなわち、前歯が伝達シャフトSの接続側に一体化され、リングが1つまたは複数の歯を受容するための対応する1つまたは複数の前スロットを有することも可能であり得る。
【0062】
図7~
図8に示す伝達シャフトSは、分離状態で示されており、2つ以上の前スロットS11を有する伝達シャフトSの接続側部分S3の接続側前面S34を有する。前スロットS11は、前スロットS11の合わせ面が工具ホルダTMの前歯TM21の対応する合わせ面と接続できる限り、三角形、台形、多角形または曲面状などの異なる形状を有してもよい。
【0063】
伝達シャフトSと工具ホルダTMとの結合プロセス中、接続側前面S34は、リング接続面TM14に押し付けられる。前歯TM21と前スロットS11との噛み合い接続時には、スロットS11の合わせ面M1(または傾斜側面)が、前歯TM21の合わせ面M2(前歯TM21の傾斜側面)に沿って摺動する。その場合、そのような摺動運動は、第1の歯車装置S4および工具ホルダ歯車装置TH3に伝達されるわずかな追加の回転をもたらし、対応するギヤの噛み合い部分を互いにより近くに押し付けることを可能にする。
【0064】
したがって、スリーブの開口部内に摺動する工具ホルダの軸方向接続運動中に径方向の力を達成するように合わせ面を配置することによって、噛み合う歯車装置の隙間を減少させるか、またはゼロに設定することさえできる。
図9aおよび
図9bにはそれぞれの構成が示されており、
図9bでは、伝達シャフトの回転方向に応じて歯の接触側で隣接する歯の間の隙間をゼロに減少させることができるように、第1の歯車装置の歯が工具ホルダ歯車装置の歯に向かって移動される。換言すれば、第1の歯車装置S4から工具ホルダ歯車装置TM3にトルクが伝達されるため、回転方向から見て前側面と考えられる、第1の歯車装置S4の歯の側面(回転方向における歯の前進する側面)は、通行料金ホルダ歯車装置TM3の対応する歯の対応する側面(したがって工具ホルダ歯車装置TM3の歯の後側面)に接触する。
図9bから明らかなように、
図9bの第1の歯車装置が反時計回り方向に回転しているとき、後側面(回転方向における歯の後続側面)は、他方の歯の対応する面から離れている。これにより、第1の歯車装置S4から工具ホルダ歯車装置TM3に向かって、歯のそれぞれの前側面から後側面に回転力が伝達される。
【0065】
図10および
図11には、結合位置にある工具ホルダTMおよび伝達シャフトSが、側面図および断面側面図で示されている。見て分かるように、前歯TM21は前スロットS11に挿入される。それに加えて、
図11には、前歯の合わせ面の配置の変形例の詳細が示されている。
【0066】
結合プロセスでは、歯車装置(S4,TM3)が互いに軸方向に摺動して完全に重なり合って噛み合うまで、ばねTM11が、後部リング端面TM15によって、径方向中空部TM5の内側面に向けて押し付けられる。摺動運動との軸方向接続中に歯も対応するスロット内に摺動するため、合わせ面M1およびM2は互いに接触し、リングTM10および/または工具ホルダシャフトTM1および/または第1の歯車装置S4を回転させて、歯車装置の関連する隙間を取り除く。リングの最終位置において、リング移動工程が終了すると、ばねTM11は収縮し、リング後部接続突起が阻止突起から押し出されて移動自在となり、径方向中空部TM5に配置され、工具ホルダシャフトTM1の回転を許容する。
【0067】
図11には、前スロットS11に挿入された前歯TM21の詳細が示されている。点線で囲まれた上部詳細図では、前歯TM21の合わせ面M2または傾斜面は、工具ホルダ前歯側面TM22の1つである歯の左側に設けられている。図示の実施形態では、前スロットS11の内側面は両方とも、軸AXに沿って軸方向に対して傾斜している。好ましくは、前歯の他方の側面、すなわち前歯TM21の傾斜側面に対向する側は、上の詳細図に示すように、リング接続面TM14に対して垂直に延在する側面である。下部詳細図では、傾斜面または合わせ面M2は、図の右側である反対側に配置される。これにより、シャフトの回転方向によっては、噛み合う歯車装置の隙間Gを取り除くように、伝達シャフトSと一致する方向に回転するようにリングTM10を押すことができる。さらに好ましい発展形態では、前歯TM21の両方の側面が傾斜し、両側のスロットの側面に接触することを可能にする。
【0068】
工具ホルダTHおよびリングTH11を伝達シャフトSに結合する概略図が、
図12aおよび
図12bに示されている。
図12aには非結合状態が示されており、
図12bには結合状態が示されている。
【0069】
図12aでは、伝達シャフトSの接続側部分S3における第1の歯車装置S4が、工具ホルダシャフトTM1の工具ホルダ歯車装置TM3から離れて示されている。具体的には、第1の歯車装置側面S41は、対応する工具ホルダ歯車装置側面TM31から離れている。同時に、スロットS11の伝達シャフトSの接続側に配置された合わせ面である伝達シャフト合わせ面M1も、工具ホルダに配置された合わせ面である対応するリング合わせ面M2から離れている。
図12aに示す好ましい実施形態では、両方の合わせ面は傾斜しており、好ましくは軸方向AXに対して同じ傾斜を有する。
【0070】
前歯TM21は、
図12aのリング合わせ面M2でもある前歯側面TM22を有する。前歯TM21の根元では、歯は、伝達シャフトSの接続側前面S34とは反対側のリング接続面TM14に装着されている。それに加えて、リング歯車装置TM13は、工具ホルダシャフトTM1の対応する歯車装置と噛み合っており、これらの歯車装置の間には隙間があり得る。ばねTM11は、リングTM10が外向き位置に配置されるように、
図12aの延在位置にある。
【0071】
結合状態では、
図12bに示すように、ばねTM11は圧縮される。これにより、リングTM10は内向きに押し付けられ、合わせ面M1,M2は互いに接触する。より具体的には、接続側部分S3は、リングTM10を工具ホルダ本体TM2の開口部内に内向きに押し込む。傾斜面、すなわち合わせ面M1およびM2により、第1の歯車装置S4の歯は、
図12bの右方向に移動する。換言すれば、合わせ面M1およびM2(結果として少なくとも部分的に径方向の力が生じるように互いにより近くに軸方向に押される結合工程にある)が互いに沿って摺動することによって生じる、軸AXを中心とした伝達シャフトのわずかな回転運動により、第1の歯車装置S4の歯面は、工具ホルダ歯車装置TM3の歯面に接触または押し付けられ(
図12bの矢印を参照)、これらの歯車装置間の隙間は減少またはゼロにさえなる。同時に、好ましくは、リング歯車装置TM13と工具ホルダシャフトの対応する歯車装置との間の隙間も、大幅に減少するか、またはゼロになる。
【0072】
図13~
図16には、説明した工具ホルダインターフェースおよび工具ホルダのさらなる態様が示されている。歯車装置間の隙間をなくすために、工具ホルダシャフトと伝達シャフトとの間の伝達だけでなく、タレットやミリングユニットから伝達シャフトSへの伝達も考慮され得る。
図13および
図14は、伝達シャフトSの開口部に挿入される工具ホルダTMの断面図を示し、第1の歯車装置に対向してピンS14の配置が設けられている。
【0073】
図13に示すように、伝達シャフトSは、駆動ユニットから伝達シャフトSにトルクを伝達するために、伝達部として作用し得るケーシングS13によって囲まれている。したがって、伝達シャフトは、伝達シャフトSのトルク受容側部分において
図16に示すように、駆動ユニット側歯車装置S6と噛み合っている第2の歯車装置S5を有する。伝達シャフトSを囲み、トルク伝達のために伝達シャフトに接続するシャフトはまた、スピンドルシャフトSSであってもよい。シャフトの領域には、伝達シャフトの回転軸、すなわち軸AXに垂直に配置された2つの貫通孔S15がある。好ましくは2つの孔があるが、1つの孔でも十分であり得る。
図13および
図14に示す配置から明らかなように、伝達シャフトは軸方向に移動可能であり、すなわち軸AXに沿って移動可能である。
【0074】
貫通孔S15では、それぞれのピンS14は、それぞれの貫通孔の方向に沿って、ケーシングS13(スピンドルシャフトSS)の周囲の内面S7との接触面まで移動可能に配置されている(
図16参照)。より詳細には、1つの貫通孔S15には、互いに対向して配置され、好ましくは互いから離れていて、ばねを有する第1のピンおよび第2のピンが設けられ、第2のばねS51はその間にある。第2のばねS51は、ピンを径方向外向きの方向に、好ましくは周囲の内面S7に押し付けるように配置される。ピンS14を貫通孔から外向きに押す押圧力は、伝達シャフトが軸AXの周りを回転し、したがってピンS14に遠心力を及ぼす場合に増加させることができる。
【0075】
噛み合う歯車装置S5,S6の隙間を取り除くために、ピンは、ピンの軸方向に対して傾斜した(または貫通孔の軸方向に対して傾斜した)少なくとも1つの傾斜面を有する。したがって、ピンは、少なくともその先端部分においてテーパ形状を有する。これにより、シャフトの回転とそれに伴う遠心力によって、噛み合うギヤS5,S6間の隙間がゼロとなる。ピンの傾斜面は、好ましくは同様に傾斜している周囲の内面S7の対応する内面に接触する合わせ面M3とも呼ばれ得る。好ましくは、合わせ面M3および周囲の内面S7の対応する内面は、同じ角度で傾斜している。好ましい一実施形態では、ピンは、円形の基部面と、基部面から先端面に直交して延在する中間面とを有する円筒形状を有する。中間面は、基部面から先端に向かって延在する直線状の側と、直線部および傾斜部を有する側とを有し、直線部分はピンの基部面により近い。傾斜面(合わせ面)は、ピンの中間面の傾斜部に相当する。
【0076】
図17および
図18は、伝達シャフトSが、第2のピストンP2と相互作用する第1のピストンP1によって軸方向に摺動可能である配置を示す。トルクは、摩擦接触面を介して伝達される。図示の配置は、スピンドルシャフト、すなわち外周シャフトと、軸方向に移動可能な伝達シャフトとの間の結合状態における伝達隙間を減少させることができる。好ましくは、歯車装置S5,S6の代わりに、接触面での摩擦を利用したトルク伝達が設けられる。さらなる発展形態では、歯車装置S5、S6および摩擦接触面の両方の組み合わせも可能であり得る。伝達シャフトのトルク受容側の隙間のない伝達、すなわち貫通孔およびピンの配置または摩擦面と併せて、前歯TM21および対応する前スロットS11の構成を組み合わせることにより、スピンドルシャフトから工具ホルダシャフトへのトルクの非常に効果的な伝達を達成することができる。
【0077】
図17は、伝達シャフトが工具ホルダに結合されていないときの状態を示す。したがって、工具ホルダTMと伝達シャフトS、より詳細にはスリーブとの間には距離がある。第1のピストンP1は、軸AXに沿って軸方向に移動可能である。結合工程のために、伝達シャフトSは、前歯TM21が前スロットS11と係合することができるように工具ホルダTMまで下方に押される。伝達シャフトSをスピンドルシャフトSSに押し付けるために、軸方向に移動可能な2つのピストンP1、P2が設けられている。それぞれの接触は、テーパ面TS1、TS2(摩擦接触面)で達成される。これにより、第1のテーパ面TS1は伝達シャフトSの面であり、第2のテーパ面はスピンドルシャフトSSの面である。これらの面は、摩擦によるトルク伝達を可能にするように互いに接触することができる。摩擦接触および摩擦によるトルク伝達により、伝達シャフトSとスピンドルシャフトSSとの間の隙間も回避することができる。
【0078】
結合状態を
図18に示す。中間ばねPSは、テーパ面に接触すると同時に、所望の力に達すると収縮する。
図18に見られるように、伝達シャフトSの軸方向位置は、
図17の非結合状態と比較して延在状態である。したがって、伝達シャフトのスリーブは、スピンドルシャフトから離れるように軸方向に延在して、工具ホルダTMと係合する。
【0079】
図19には、伝達シャフトに関連して使用することもできるフリーホイールを使用する隙間のないトルク伝達の一例が示されている。より具体的には、内側シャフトの軸方向移動を可能にする一対のフリーホイールを設けてもよく、フリーホイールは、軸AXを中心とした一方または両方の回転方向へのシャフトの回転移動を阻止するように配置され得る。
【0080】
図示の配置は、スピンドルシャフト、すなわち外周シャフトと、軸方向に移動可能な伝達シャフトとの間の隙間を減少させることができる。好ましくは、歯車装置S5,S6の代わりに、フリーホイールを用いたトルク伝達が設けられる。さらなる発展形態では、歯車装置S5、S6およびフリーホイールの両方の組み合わせも可能であり得る。当然ながら、本出願に適するであろう、すなわち、隙間を生じさせることなく回転を阻止し、同時に、フリーホイールが配置される内側シャフトの軸方向移動を可能にする、多くの異なる構成のフリーホイール機構が存在する。換言すれば、内側シャフトは、好ましくはいかなる回転隙間もなく、外側シャフトの回転と共に(すなわち、依存して)回転し、同時に、外側シャフトとは独立して摺動運動で軸方向に移動することができる。
【0081】
具体的には、1方向フリーホイールは、典型的には、ロック方向(または駆動動作方向)およびフリーホイーリング方向(またはフリーホイーリング動作方向)を有する。例えば、1方向フリーホイールが時計回りのロック方向を有する場合、反時計回りのフリーホイーリング方向を有し、逆もまた同様である。一方、2方向(または双方向)フリーホイールは、被駆動要素が実質的にトルク伝達されずにほぼ等しい回転速度で回転するときに、駆動シャフト(例えば、棒材B/ワークピース)を被駆動要素(例えば、回転案内ブッシュまたは特に回転案内ブッシュコレット)から係合解除し、被駆動要素がトルク伝達されながらほぼ等しい回転速度で回転するときに、駆動シャフトを被駆動要素と係合する、伝達の機構である。2つの1方向フリーホイールを反対のロック方向の向きに設けることによって、単純な2方向(または双方向)フリーホイール組立体を提供することができる。
【0082】
図19に示すように、フリーホイールは、回転する外側部品、すなわちスピンドルシャフトSSに固定された、外部リングW2を有する。それに加えて、1方向の回転を許容し、逆方向の回転を阻止するフリーホイール機構が設けられている。それに加えて、内側リングが配置される内側シャフトの軸方向移動は許容され得る。そのようなフリーホイールは、例えば欧州特許出願公開第3513906号明細書および欧州特許出願公開第3513905号明細書にも記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図19に示す例では、フリーホイール機構は、ボールW1と、ボールW1を部分的に囲み、ボールW1に力を加えるために2点でボールに接触するL字形の切り抜き部分とを含む。内部部品の部分、すなわち内側リングW3は、星形の形状を形成し、星形の内部部品の2つの隣接する歯の間には、毎回別個のボールW1が提供される。隣接する2つの歯の間の中間部分の(ボールとの接触面である)傾斜した基部面により、内側リングが反時計回り方向に回転するときにボールW1が外部リングW2に押し付けられ、したがって回転が阻止される。一方、
図19では、時計回り方向の回転が可能であり得る。反対の阻止方向を有するこれらのフリーホイールの2つが伝達シャフト上に配置される場合、シャフトの回転を阻止することができると同時に、例えば伝達シャフトの結合プロセスのために、軸方向移動(軸方向の摺動)を可能にすることができる。
【0083】
上述の例示的な実施形態により、タレットユニットおよび工作機械、特に旋盤の機械加工オプションを強化し、コンパクトな機械コンセプトを提供し、より柔軟で正確な、効率的かつ信頼性の高い機械加工作業を可能にし、および/または工作機械の精度および/または安定性を改善するための有益な態様および特徴が提案される。
【0084】
特定の例示的な実施形態を説明し、添付の図面に示したが、上記のセクションに記載されたものに加えて、様々な他の変更、組み合わせ、省略、修正および置換が可能であるため、そのような実施形態は、本発明の範囲を単に例示するものであり、限定するものではなく、本発明の実施形態は、示され、説明された特定の構造および配置に限定されないことを理解されたい。
【0085】
当業者は、本発明の開示の範囲から逸脱することなく、上述の実施形態の様々な適合、修正、および/または組み合わせを構成することができることを理解するであろう。当業者はまた、本開示を考慮して、本明細書に記載の本発明の異なる実施形態を組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成することができることを理解するであろう。したがって、本発明は、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施されてもよいことを理解されたい。
【符号の説明】
【0086】
参照符号
TM 工具ホルダ
TM1 工具ホルダシャフト
TM2 工具ホルダ本体
TM3 工具ホルダ歯車装置
TM5 径方向中空部
TM6 シャフト中空部
TM10 リング
TM11 ばね
TM12 リング後部接続突起
TM13 リング歯車装置
TM14 リング接続面
TM15 後部リング端面
TM16 工具ホルダ歯車装置面取り部
TM17 リング外面
TM21 前歯
TM22 前歯側面
TM31 工具ホルダ歯車装置側面
AX 接続軸
S 伝達シャフト
S11 前スロット
S12 前スロット摺動面
S13 ケーシング
S14 ピン
S2 トルク受容側部分
S21 トルク受容側歯車装置
S3 接続側部分/スリーブ
S31 スリーブ外面
S32 面取りされた外側スリーブ面
S33 スリーブ内面
S34 接続側前面
S35 面取り縁部
S4 第1の歯車装置
S41 第1の歯車装置側面
S5 第2の歯車装置
S51 第2のばね
S6 駆動ユニット側歯車装置
SS スピンドルシャフト
RS 後端部分
RS1 後端溝
RS2 後端移行部
RS3 伝達シャフト後方開口部
RS4 第1の円形アーク孔
RS5 第2の円形アーク孔
RS6 後端内側溝
G 隙間
P ピストン間のピン
P1 第1のピストン
P2 第2のピストン
PS 中間ばね
TS1 第1のテーパ面
TS2 第2のテーパ面
M1 第1の合わせ面
M2 第2の合わせ面
M3 第3の合わせ面
【国際調査報告】