(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】パウチ型電池ケース及びそれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/131 20210101AFI20240912BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M50/131
H01M50/119
H01M50/129
H01M50/121
H01M50/133
H01M50/105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517545
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 KR2022015158
(87)【国際公開番号】W WO2023059139
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0134413
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スン・ギュ・キム
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011KK01
5H011KK04
(57)【要約】
本願発明の実施形態によるパウチ型電池ケースは、金属材料を有するバリア層と、バリア層の内側に位置し、第1ポリマー材料を有するインナーポリマー層と、バリア層の外側に位置し、第2ポリマー材料を有するアウターポリマー層と、バリア層の一側に位置し、消火剤が充填された複数のカプセルを有する消火コーティング層と、消火コーティング層より内側に位置する保護層と、を含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を有するバリア層と、
前記バリア層の内側に位置し、第1ポリマー材料を有するインナーポリマー層と、
前記バリア層の外側に位置し、第2ポリマー材料を有するアウターポリマー層と、
前記バリア層の一側に位置し、消火剤が充填された複数のカプセルを有する消火コーティング層と、
前記消火コーティング層より内側に位置する保護層と、を含むパウチ型電池ケース。
【請求項2】
前記消火コーティング層は、前記バリア層の外側に位置し、
前記保護層は、前記消火コーティング層と前記バリア層との間に位置する、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項3】
前記消火コーティング層は、前記バリア層の内側に位置し、
前記保護層は、前記消火コーティング層と前記インナーポリマー層との間に位置する、請求項1又は2に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項4】
前記消火コーティング層の前記カプセルは、第1温度で破裂し、
前記保護層は、前記第1温度より高い第2温度で溶融する、請求項1又は2に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項5】
前記消火コーティング層の前記カプセルは、摂氏120度から130度で破裂し、
前記保護層は、150度から250度で溶融する、請求項1又は2に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項6】
前記保護層の厚さは、前記消火コーティング層の厚さより薄い、請求項1又は2に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項7】
前記保護層の厚さは、前記消火コーティング層の厚さの1/100以下である、請求項1又は2に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項8】
前記消火コーティング層の前記カプセルは、50μmから300μmの直径を有する、請求項1又は2に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項9】
前記消火コーティング層の前記カプセルに充填された消火剤は、フルオロケトンを含む、請求項1又は2に記載のパウチ型電池ケース。
【請求項10】
電極組立体と、
前記電極組立体が収容されるパウチ型電池ケースと、を含み、
前記パウチ型電池ケースの少なくとも一部は、
金属材料を有するバリア層と、
前記バリア層の内側に位置し、第1ポリマー材料を有するインナーポリマー層と、
前記バリア層の外側に位置し、第2ポリマー材料を有するアウターポリマー層と、
前記バリア層の一側に位置し、消火剤が充填された複数のカプセルを有する消火コーティング層と、
前記消火コーティング層より内側に位置する保護層と、を含む、二次電池。
【請求項11】
前記パウチ型電池ケースのシール部には、前記消火コーティング層及び保護層が含まれない、請求項10に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月8日付けの韓国特許出願第10-2021-0134413号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容が本願明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本願発明は、パウチ型電池ケース及びそれを含む二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、二次電池とは、充電が不可能な一次電池とは異なり、充放電が可能な電池を意味し、携帯電話、ノートパソコン、カムコーダなどの電子機器や電気自動車などに広く用いられている。特に、リチウム二次電池は、ニッケル-カドミウム電池又はニッケル-水素電池よりも大きい容量を有し、単位重量当たりのエネルギー密度が高いため、その活用が急速に広まる傾向にある。
【0004】
二次電池は、電極組立体及び電極組立体を収容する電池ケースを含む。また、電極組立体は、分離膜を介して交互に積層された正極及び負極を含む。具体的には、正極は、正極活物質スラリーを正極集電体に塗布して製造され、負極は、負極活物質スラリーを負極集電体に塗布して製造される。
【0005】
一方、二次電池が高温にさらされる、内部短絡、外部短絡、過充電、過放電などのように正常に作動されない場合、有機電解質が分解されることによって発生する熱により分離膜が収縮し、正極と負極とが直接接触し、短絡(ショート、Short)が発生する可能性が高くなる。このような短絡により電池の内部で急激な電子の移動が発生すると、二次電池が爆発して火災が発生し、安全性に問題がある。特に、過充電、過放電、外部短絡などの電気的な誤作動の発生時には大きな電流が流れ、集電体の熱伝導率が低いため、集電体において活物質層よりも高い温度の熱が発生する。よって、このような熱が拡散すると、金属酸化物を含む正極活物質が分解及び再結晶化し、酸素を含む引火性ガスが発生することによって、より大きな爆発が引き起こされる。
【0006】
特に、二次電池は、複数の電池セルがモジュール(module)やパック(pack)に集約されて用いられることが一般的であるため、いずれか1つの電池セルで火災が発生すると大規模火災につながる危険性がある。よって、二次電池を消火するための技術開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明が解決しようとする課題の1つは、消火カプセルを用いて火災の拡散を防止できるパウチ型電池ケース及びそれを含む二次電池を提供することにある。
【0008】
本願発明が解決しようとする他の課題は、単純な内部温度の上昇によって消火カプセルが破裂することを防止できるパウチ型電池ケース及びそれを含む二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の実施形態に係るパウチ型電池ケースは、金属材料を有するバリア層と、バリア層の内側に位置し、第1ポリマー材料を有するインナーポリマー層と、バリア層の外側に位置し、第2ポリマー材料を有するアウターポリマー層と、バリア層の一側(片面)に位置し、消火剤が充填された複数のカプセルを有する消火コーティング層と、消火コーティング層より内側に位置する保護層と、を含んでもよい。
【0010】
消火コーティング層は、バリア層の外側に位置し、保護層は、消火コーティング層とバリア層との間に位置してもよい。
【0011】
消火コーティング層は、バリア層の内側に位置し、保護層は、消火コーティング層とインナーポリマー層との間に位置してもよい。
【0012】
消火コーティング層のカプセルは、第1温度で破裂し、保護層は、第1温度より高い第2温度で溶融してもよい。
【0013】
消火コーティング層のカプセルは、摂氏120度から130度で破裂し、保護層は、150度から250度で溶融してもよい。
【0014】
保護層の厚さは、消火コーティング層の厚さより薄くてもよい。
【0015】
保護層の厚さは、消火コーティング層の厚さの1/100以下であってもよい。
【0016】
消火コーティング層のカプセルは、50μmから300μmの直径を有してもよい。
【0017】
消火コーティング層のカプセルに充填された消火剤は、フルオロケトン(Fluoroketone)を含んでもよい。
【0018】
本願発明の実施形態による二次電池は、電極組立体及び電極組立体が収容されるパウチ型電池ケースを含んでもよい。パウチ型電池ケースの少なくとも一部は、金属材料を有するバリア層と、バリア層の内側に位置し、第1ポリマー材料を有するインナーポリマー層と、バリア層の外側に位置し、第2ポリマー材料を有するアウターポリマー層と、バリア層の一側に位置し、消火剤が充填された複数のカプセルを有する消火コーティング層と、消火コーティング層より内側に位置する保護層と、を含んでもよい。
【0019】
パウチ型電池ケースのシール部には、消火コーティング層及び保護層が含まれなくてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本願発明の好ましい実施形態によれば、消火コーティング層に備えられたカプセルに消火剤が充填されており、消火コーティング層が特定の温度に到達するとカプセルが破裂する。これにより、二次電池の内部又は外部で発生した火災が拡散又は転移することを防止することができる。
【0021】
また、保護層は、消火コーティング層より内側に備えられ、電極組立体の発熱により消火コーティング層の温度が上昇することを遅らせることができる。これにより、電極組立体の充放電などのように、正常作動時に発生する熱によって消火コーティング層のカプセルが破裂することを防止することができる。
【0022】
その他にも、本願発明は本願発明の好ましい実施形態による構成から当業者が容易に予測できる効果を含む。
【0023】
本願明細書に添付される次の図面は、本願発明の好ましい実施形態を例示するものであり、後述する発明の詳細な説明と共に本願発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本願発明は、このような図面に記載された事項にのみ限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本願発明の一実施形態による二次電池の組立図である。
【
図2】本願発明の一実施形態による二次電池の断面図である。
【
図3】本願発明の一実施形態によるパウチ型電池ケースの断面図である。
【
図4】本願発明の他の実施形態によるパウチ型電池ケースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本願発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。しかし、本願発明は、様々な異なる形態で実現することができ、以下の実施形態に制限又は限定されるものではない。
【0026】
本願発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分又は本願発明の要旨を不明瞭にする可能性のある関連公知技術についての詳細な説明は省略し、本願明細書において各図面の構成要素に参照符号を付加するにあたり、本願明細書全体にわたって同一又は類似の構成要素には同一又は類似の参照符号を付す。
【0027】
なお、本願明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、普通又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定めることができるという原則に立脚して、本願発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈されるべきである。
【0028】
図1は本願発明の一実施形態による二次電池の組立図であり、
図2は本願発明の一実施形態による二次電池の断面図である。
【0029】
本願発明の一実施形態による二次電池1は、
図1に示すように、正極、分離膜、負極が積層されて形成される電極組立体10と、電極組立体10を収納するパウチ型電池ケース20(以下、「電池ケース」という)とを含んでもよい。
【0030】
電極組立体10は、正極及び負極の2種類の電極と、電極を互いに絶縁させるために電極間に介在する又はいずれか一方の電極の左側もしくは右側に配置される分離膜と、を備えた積層構造体であってもよい。積層構造体は、所定規格の正極と負極とが分離膜を介して積層される、または、ジェリーロール(Jelly Roll)状に巻き取られるなどに限定されるものではなく、様々な形態が可能である。2種類の電極、すなわち正極及び負極は、金属ホイル又は金属メッシュ状の電極集電体に活物質スラリーが塗布された構造であってもよい。正極の電極集電体は、アルミニウム材料を含んでもよく、負極の電極集電体は、銅材料を含んでもよい。活物質スラリーは、通常、粒状の活物質、補助導体、バインダー、可塑剤などを溶媒が添加された状態で撹拌して形成してもよく、溶媒は、後続工程で除去されてもよい。
【0031】
電極組立体10には、複数の電極タブ11が備えられてもよく、電極タブ11は、電極組立体10の外部に突出し、電極組立体10の内部と外部との間で電子が移動できる経路として作用するようにしてもよい。
【0032】
より詳細には、電極組立体10に含まれる各電極の電極集電体は、電極活物質が塗布されている部分と、電極活物質が塗布されていない末端部分、すなわち非塗布(non-coating)部とを含んでもよい。また、電極タブ11は、非塗布部を裁断して形成されてもよく、非塗布部に別の導電部材を超音波溶接などで接続して形成されてもよい。
【0033】
複数の電極タブ11は、正極に接続された正極タブ111と、負極に接続された負極タブ112と、を含んでもよい。正極タブ111及び負極タブ112は、電極組立体10の一側から同じ方向に並んで突出するようにしてもよいが、これに限定されるものではなく、それぞれ異なる方向に突出するようにしてもよい。
【0034】
電極組立体10の電極タブ11には、リード(Lead)12がスポット(Spot)溶接などで接続されてもよい。また、リード12の一部は、周囲が絶縁部14に囲まれてもよい。絶縁部14は、電池ケース20の上部ケース21と下部ケース22とが熱融着されるシール部24にのみ位置し、電池ケース20に接着されてもよい。また、電極組立体10から生成される電気がリード12を介して電池ケース20に流れることを防止し、電池ケース20のシールを維持するようにしてもよい。よって、絶縁部14は、電気を通しにくい非導電性を有する不導体材料を有してもよい。一般に、絶縁部14としては、リード12に貼り付けやすく、厚さが比較的薄い絶縁テープを用いるが、これに限定されるものではなく、リード12を絶縁できれば、様々な部材を用いることができる。
【0035】
リード12は、正極タブ111に一端が接続され、正極タブ111が突出した方向に延びる正極リード121と、負極タブ112に一端が接続され、負極タブ112が突出した方向に延びる負極リード122と、を含んでもよい。また、正極リード121及び負極リード122の端部は、電池ケース20の外部に突出し、電極組立体10の内部で生成された電気を外部に供給するようにしてもよい。すなわち、電池ケース20の外部に突出したリード12の端部は、外部端子に電気的に接続されてもよい。
【0036】
正極リード121及び負極リード122は、その材料が異なってもよい。より詳細には、正極リード121は、正極集電体と同じアルミニウム(Al)材料であってもよく、負極リード122は、負極集電体と同じ銅(Cu)材料又はニッケル(Ni)がコーティングされた銅材料であってもよい。
【0037】
一方、電池ケース20は、軟性の材料で製造されたパウチであり、リード12の端部が露出するように電極組立体10を収容してシールされてもよい。電池ケース20は、上部ケース21及び下部ケース22を含んでもよい。下部ケース22には、カップ部23が形成されて電極組立体10を収容できる収容空間231が設けられ、上部ケース21は、電極組立体10が電池ケース20の外部に離脱しないように収容空間231を上部からカバーしてもよい。ここで、上部ケース21にも、収容空間231が設けられたカップ部23が形成され、電極組立体10を上部から収容してもよい。ただし、これに限定されるものではなく、カップ部23が下部ケース22にのみ形成されるなど、様々に形成可能である。また、上部ケース21と下部ケース22とは、一側が互いに連結されて製造されてもよいが、これに限定されるものではなく、分離されて別に製造されるなど、様々な形態で製造可能である。
【0038】
電極組立体10の電極タブ11にリード12が接続され、リード12の一部分に絶縁部14が配置され、下部ケース22のカップ部23に設けられた収容空間231に電極組立体10を収容し、上部ケース21が電極組立体10を上部からカバーするようにしてもよい。そして、収容空間231の内部に電解液を注入し、上部ケース21及び下部ケース22の縁部に形成されたシール部24をシールするようにしてもよい。電解液は、二次電池1が充放電する際に電極の電気化学的反応によって生成されるリチウムイオンを移動させるためのものであり、リチウム塩と高純度の有機溶媒類の混合物である非水有機電解液(non-aqueous organic electrolyte)又は高分子電解質(polymer electrolyte)を用いたポリマーを含んでもよい。このような方法により、二次電池1を製造することができる。
【0039】
図3は本願発明の一実施形態によるパウチ型電池ケースの断面図である。
【0040】
本願発明の一実施形態による電池ケース20は、前述したように、電極組立体10を収容することができ、電極組立体10で火災が発生するまたは外部から火災が燃え移った場合にこれを迅速に消火することができる。
【0041】
より詳細には、電池ケース20は、バリア層201と、インナーポリマー層202と、アウターポリマー層203と、消火コーティング層204と、保護層205とを含んでもよい。電池ケース20は、接着層206をさらに含んでもよい。
【0042】
電池ケース20は、パウチフィルムにカップ部23をドローイング(Drawing)および成形(Molding)によって製造されてもよい。すなわち、電池ケース20の基材であるパウチフィルムは、バリア層201と、インナーポリマー層202と、アウターポリマー層203と、消火コーティング層204と、保護層205とを含むラミネートシートであってもよい。
【0043】
バリア層201は、電池ケース20の機械的強度を確保し、二次電池1の外部のガスや水分などの出入りを遮断し、電解液の漏れを防止する。バリア層201は、金属材料を含み、アルミニウム薄膜(Al Foil)が用いられることが好ましい。アルミニウムは、所定レベル以上の機械的強度を確保できるとともに、重量が軽く、電極組立体10と電解液による電気化学的性質の補完や放熱性などを確保できるからである。
【0044】
ただし、これに限定されるものではなく、バリア層201は、様々な材料を含むことができる。例えば、バリア層201は、鉄(Fe)、炭素(C)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)からなる群より選択される1つ以上の材料を含むことができる。
【0045】
インナーポリマー層202は、第1ポリマー材料を含んでもよく、また、バリア層201の内側に位置してもよい。ここで、内側とは、バリア層201を基準に電極組立体10に近い側を意味するものであってもよい。インナーポリマー層202は、電極組立体10と直接接触するので、絶縁性を有する必要があり、電解液とも接触するので、耐食性を有する必要がある。また、インナーポリマー層202は、二次電池1の内部を完全に密閉して内部と外部との間の物質の移動を遮断しなければならないため、高いシール性を有する必要がある。すなわち、インナーポリマー層202同士が接着されたシール部24(
図2参照)は、優れた熱接着強度を有する必要がある。
【0046】
インナーポリマー層202に含まれる第1ポリマー材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、アクリル系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、アラミド、ナイロン、ポリエステル、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアリレート、テフロン(登録商標)、ガラス繊維からなる群より選択される1つ以上の物質であってもよい。インナーポリマー層202は、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。ポリプロピレン(PP)は、引張強度、剛性、表面硬度、耐摩耗性、耐熱性などの機械的物性および耐食性などの化学的物性に優れており、主にインナーポリマー層202の製造に用いられる。
【0047】
アウターポリマー層203は、第2ポリマー材料を有し、バリア層201の外側に位置し、外部との摩擦及び衝突から二次電池1を保護するとともに電極組立体10を外部から電気的に絶縁する。ここで、外側とは、バリア層201を基準に電極組立体10の反対側を意味するものであってもよい。
【0048】
このようなアウターポリマー層203に含まれる第2ポリマー材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、アクリル系高分子、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、アラミド、ナイロン、ポリエステル、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアリレート、テフロン(登録商標)、ガラス繊維からなる群より選択される1つ以上の材料であってもよい。アウターポリマー層203は、耐摩耗性及び耐熱性を有するナイロン(Nylon)樹脂又はポリエチレンテレフタレート(PET)を含むことが好ましい。
【0049】
また、インナーポリマー層202及びアウターポリマー層203はそれぞれ、1つの材料からなる単層構造(single layer structure)を有してもよく、2つ以上の材料がそれぞれ層をなして形成された複合層構造(composite layer structure)を有してもよい。
【0050】
一方、本願における実施形態の場合、消火コーティング層204は、バリア層201の外側に位置してもよい。より詳細には、消火コーティング層204は、アウターポリマー層203の内面にコーティングされてもよい。
【0051】
消火コーティング層204は、消火剤が充填された複数のカプセル204aを有してもよい。より詳細には、複数のカプセル204aは、消火コーティング層204の内部に備えられてもよい。
【0052】
アウターポリマー層203の内面に容易にコーティングすることができるように、消火コーティング層204にはバインダーが含有されてもよい。消火コーティング層204は、複数のカプセル204aが混合された液体状態(liquid state)でアウターポリマー層203の内面にコーティングされた後、硬化してもよい。
【0053】
アウターポリマー層203の内面は、アウターポリマー層203の両面のうち、二次電池1の内部、すなわち電極組立体10を向く面を意味してもよい。当業者であれば、アウターポリマー層203以外の他の層においても「内面」が同じ意味で用いられることを容易に理解できるであろう。
【0054】
各カプセル204aには、消火剤が充填されてもよい。高熱によりカプセル204aが破裂した際、消火剤は、電極組立体10の内部及び外部で発生した火災の拡散を防止することができる。
【0055】
消火剤として用いられる物質は、限定されず、当業者が適切な物質を選択することができる。一例として、消火剤は、フルオロケトン(Fluoroketone)であってもよく、より詳細には、CF3CF2C(=O)CF(CF3)2の化学構造を有するフルオロケトンであってもよい。他の例として、消火剤は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸アンモニウムからなる群より選択される1つ以上の物質であってもよい。
【0056】
カプセル204aは、予め設定された第1温度に到達すると破裂するように構成されてもよく、このためにカプセルの材料は適宜選択可能である。例えば、第1温度は、摂氏120度から130度であってもよく、その場合、カプセル204aをなす材料の融点は、摂氏120度から130度であってもよい。よって、二次電池1の内部又は外部で発生した火災により消火コーティング層204が第1温度に到達すると、カプセル204aが破裂して消火剤が外部に流出し、火災の拡散を妨げることができる。
【0057】
カプセル204aは、マイクロカプセルであってもよく、また、50μmから300μmの直径を有してもよい。さらに、電池ケース20全体の厚さが過度に増加することを防止するために、消火コーティング層204の厚さは、約1mm前後に形成されてもよい。これに関連して、カプセル204aの直径が50μmより小さいと、カプセル204aの製造が困難であり、消火剤の量が減少して消火効果が劣るという問題が生じ得る。また、カプセル204aの直径が300μmより大きいと、消火コーティング層204のコーティングが困難になる、または、消火コーティング層204の厚さが過度に増加するという問題が生じ得る。
【0058】
保護層205は、消火コーティング層204より内側に位置してもよい。より詳細には、保護層205は、消火コーティング層204とバリア層201との間に位置してもよい。
【0059】
保護層205は、二次電池1の内部で発生した熱により消火コーティング層204のカプセル204aが破裂することを遅らせることができる。より詳細には、充電及び放電時、電池ケース20に収容された電極組立体10(
図2参照)において熱が発生することがあり、保護層205は、電極組立体10の正常作動時に発生する熱により消火コーティング層204のカプセル204aが破裂することを防止することができる。
【0060】
よって、保護層205は、予め設定された第2温度に到達すると溶融するように構成されてもよく、第2温度は、カプセル204aが破裂する第1温度より高くてもよい。このため、保護層205の材料は適宜選択可能である。
【0061】
例えば、第2温度は、摂氏150度から250度であってもよく、その場合、保護層205をなす材料の融点は、摂氏150度から250度であってもよい。また、前述したように、カプセル204aが破裂する第1温度は、摂氏120度から130度であってもよい。
【0062】
よって、二次電池1の単純な内部温度の上昇により保護層205が第1温度に到達しても、消火コーティング層204のカプセル204aは破裂しない。
【0063】
それに対して、二次電池1の外部で火災が発生した場合、消火コーティング層204は、第1温度に早く到達してカプセル204aが破裂し、消火剤が活性化され、火災が電極組立体10に転移することを防止することができる。
【0064】
また、二次電池1の内部、すなわち電極組立体10で火災が発生した場合、保護層205が第2温度に到達して溶融し、消火コーティング層204のカプセル204aが破裂して消火剤が活性化される。よって、火災が二次電池1の外部に転移することを防止することができる。
【0065】
保護層205は、バリア層201及びインナーポリマー層202より高い断熱性を有してもよい。
【0066】
保護層205の厚さは、消火コーティング層204の厚さより薄くてもよい。より詳細には、保護層205の厚さは、消火コーティング層204の厚さの1/100以下であってもよい。例えば、消火コーティング層204の厚さは、約1mm前後であり、保護層205の厚さは、10μm以下であってもよい。保護層205の厚さが10μmより大きいと、電池ケース20の厚さが過度に増加し、二次電池1のエネルギー密度が低くなるという問題が生じ得る。
【0067】
保護層205は、消火コーティング層204の内面にプリント(print)された絶縁性の溶液(insulating solution)を紫外線硬化(UV-cuiring)して形成してもよい。例えば、保護層205は、PET(Polyethylene Terephthalate)溶液をプリント及び硬化して形成してもよい。ただし、保護層205の製造工程及び材料は、これに限定されるものではなく、必要に応じて異なるものであってもよい。
【0068】
接着層206は、一対備えられてもよい。一対の接着層206のうち、一方の接着層206は、バリア層201と保護層205とを接着し、他方の接着層206は、バリア層201とインナーポリマー層202とを接着するようにしてもよい。より詳細には、一方の接着層206は、バリア層201の外面と保護層205の内面との間に位置し、他方の接着層206は、バリア層201の内面とインナーポリマー層202の外面との間に位置するようにしてもよい。ただし、これに限定されるものではなく、電池ケース20が1つの接着層206のみを含むことも可能であることは言うまでもない。
【0069】
接着層206は、接着剤を硬化して形成してもよいが、これに限定されるものではない。
【0070】
消火コーティング層204及び保護層205は、電池ケース20の少なくとも一部、より詳細にはカップ部23の少なくとも一部に含まれてもよい。また、消火コーティング層204及び保護層205は、シール部24(
図2参照)には含まれなくてもよい。これは、消火コーティング層204及び保護層205が電極組立体10で発生した火災を消火する、または、二次電池1の外部で発生した火災が電極組立体10に転移することを防止するための構成であるからである。よって、シール部24に消火コーティング層204及び保護層205が含まれなくても、消火機能には問題がなく、むしろ消火コーティング層204及び保護層205を製造するための原料を節約することができ、製造コストを低減することができる。
【0071】
ただし、電池ケース20の製造を容易にするために、電池ケース20全体に消火コーティング層204及び保護層205が含まれることも可能であることは言うまでもない。
【0072】
以下、本願における実施形態による電池ケース20の製造方法について簡単に説明する。
【0073】
電池ケース20の製造方法は、カプセル204aが備えられた消火コーティング層204をアウターポリマー層203の内面にコーティングするステップと、消火コーティング層204の内面に絶縁性の溶液をプリント及び硬化して保護層205を形成するステップとを含んでもよい。これにより、アウターポリマー層203、消火コーティング層204及び保護層205が積層された複合層を用意することができる。
【0074】
電池ケース20の製造方法は、バリア層201の外面に複合層の保護層205を接着し、バリア層201の内面にインナーポリマー層202を接着するステップをさらに含んでもよい。ここで、バリア層201と保護層205との間、及びバリア層201とインナーポリマー層202との間には、接着剤が塗布され接着層206が形成されてもよい。
【0075】
これにより、電池ケース20の基材であるパウチフィルムを用意することができ、パウチフィルムにカップ部23(
図1参照)を成形して電池ケース20を製造することができる。
【0076】
図4は本願発明の他の実施形態による電池ケースの断面図である。
【0077】
以下、前述した実施形態と重複する内容は省略し、相違点を中心に説明する。
【0078】
本願の実施形態による電池ケース20’は、消火コーティング層204がバリア層201の内側に位置してもよい。より詳細には、消火コーティング層204は、バリア層201の内面にコーティングされてもよい。
【0079】
バリア層201の内面に容易にコーティングするために、消火コーティング層204にはバインダーが含有されてもよい。消火コーティング層204は、複数のカプセル204aが混合された液体状態でバリア層201の内面にコーティングされた後、硬化してもよい。よって、バリア層201と消火コーティング層204との間には、接着層が備えられなくてもよい。
【0080】
保護層205は、消火コーティング層204より内側に位置してもよい。より詳細には、保護層205は、消火コーティング層204とインナーポリマー層202との間に位置してもよい。
【0081】
一方、接着層206は、一対備えられてもよい。一対の接着層206のうち、一方の接着層206は、バリア層201とアウターポリマー層203とを接着し、他方の接着層206は、保護層205とインナーポリマー層202とを接着するようにしてもよい。より詳細には、一方の接着層206は、バリア層201の外面とアウターポリマー層203の内面との間に位置し、他方の接着層206は、保護層205の内面とインナーポリマー層202の外面との間に位置するようにしてもよい。ただし、これに限定されるものではなく、電池ケース20が1つの接着層206のみを含むことも可能であることは言うまでもない。
【0082】
以下、本願の実施形態による電池ケース20’の製造方法について簡単に説明する。
【0083】
電池ケース20’の製造方法は、カプセル204aが備えられた消火コーティング層204をバリア層201の内面にコーティングするステップと、消火コーティング層204の内面に絶縁性の溶液をプリント及び硬化して保護層205を形成するステップとを含んでもよい。これにより、バリア層201、消火コーティング層204及び保護層205が積層された複合層を用意することができる。
【0084】
電池ケース20’の製造方法は、インナーポリマー層202の外面に複合層の保護層205を接着し、複合層のバリア層201の外面にアウターポリマー層203を接着するステップをさらに含んでもよい。ここで、インナーポリマー層202と保護層205との間、及びバリア層201とアウターポリマー層203との間には、接着剤が塗布されて接着層206が形成されてもよい。
【0085】
これにより、電池ケース20’の基材であるパウチフィルムを用意することができ、パウチフィルムにカップ部23(
図1参照)を成形して電池ケース20’を製造することができる。
【0086】
以上の説明は、本願発明の技術思想を例示的に説明したものにすぎず、本願発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば本願発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正及び変形が可能であろう。
【0087】
よって、本願発明に開示された実施形態は、本願発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、そのような実施形態により本願発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。
【0088】
本願発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲により解釈されるべきであり、これと均等な範囲内にある全ての技術思想は本願発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0089】
1 二次電池
10 電極組立体
20 パウチ型電池ケース
23 カップ部
24 シール部
201 バリア層
202 インナーポリマー層
203 アウターポリマー層
204 消火コーティング層
204a カプセル
205 保護層
206 接着層
【国際調査報告】