(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】抗体の新規組み合わせ及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/768 20150101AFI20240912BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240912BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240912BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240912BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240912BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240912BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240912BHJP
A61K 38/19 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
A61K35/768
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K48/00
C07K16/28 ZNA
C12N7/01
C07K16/46
A61K38/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518167
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 EP2022076268
(87)【国際公開番号】W WO2023046777
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520031025
【氏名又は名称】バイオインベント インターナショナル アクティエボラーグ
(71)【出願人】
【識別番号】521091985
【氏名又は名称】トランジェヌ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン フレンデウス
(72)【発明者】
【氏名】マティルダ レーン
(72)【発明者】
【氏名】モニカ セムリッチ
(72)【発明者】
【氏名】リンダ モルテンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-バティスト マルシャン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
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4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、一般に、CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスと、PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子と、の組み合わせ、並びにがんの治療におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるがんの治療に使用するための、
-CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスと、
-PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子と、を含む組み合わせであって、
前記がんが、冷たい腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなる、組み合わせ。
【請求項2】
患者におけるがんを治療するための医薬の製造における、
-CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子をコードするヌクレオチド配列を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスと、
-PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子と、の使用であって、
前記がんが、冷たい腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなる、使用。
【請求項3】
患者におけるがんを治療するための方法であって、前記がんが、冷たい腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなり、前記方法が、前記患者に、
-CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスと、
-PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子と、を投与することを含む、方法。
【請求項4】
患者におけるがんを治療するための、PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子と組み合わせて使用するための、CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスであって、
前記がんが、冷たい腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなる、腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項5】
前記冷たい腫瘍が、前記第1及び第2の抗体分子によって治療される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項6】
CTLA-4に特異的に結合する前記抗体分子が、Fcγ受容体結合抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項7】
CTLA-4に特異的に結合する前記抗体分子が、Treg枯渇抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項8】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解性ポックスウイルスである、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項9】
前記ポックスウイルスが、Chordopoxvirinae亜科に属し、より好ましくは、ワクシニアウイルス、牛痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、エクトロメリアウイルス、及び粘液腫ウイルスからなる群から好ましく選択される、Orthopoxvirus属に属する、請求項8に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項10】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、チミジンキナーゼ(TK)及び/又はリボヌクレオチドレダクターゼ(RR)活性の両方に欠陥があり、かつ配列番号20及び配列番号21、又は配列番号53及び番号54をコードするヌクレオチド配列を含む、ワクシニアウイルスである、請求項9に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項11】
前記ワクシニアウイルスが、GM-CSFをコードするヌクレオチド配列を更に含み、ヒトGM-CSF(例えば、配列番号55若しくは配列番号56を有する)又はマウスGM-CSF(例えば、配列番号57若しくは配列番号58を有する)が特に好ましい、請求項9又は10に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項12】
前記ウイルスが、ウイルスJ2R遺伝子座に挿入された前記第1の抗体分子の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含み、かつ/又はウイルスI4L遺伝子座に挿入された前記第1の抗体分子の軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項13】
前記第1の抗体分子が、配列番号3、6、8、10、12、及び14からなる群から選択されるCDRのうちの1~6つを含む抗体分子からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項14】
前記第1の抗体分子が、CDR、VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3、VL-CDR1、及びVL-CDR3のうちの1~6個を含む抗体分子からなる群から選択され、
-VH-CDR1が、存在する場合、配列番号15、22、29、及び35からなる群から選択され、
-VH-CDR2が、存在する場合、配列番号16、23、30、及び36からなる群から選択され、
-VH-CDR3が、存在する場合、配列番号17、24、31、及び37からなる群から選択され、
-VL-CDR1が、存在する場合、配列番号10及び38からなる群から選択され、
-VL-CDR2が、存在する場合、配列番号18、25、32、及び39からなる群から選択され、
-VL-CDR3が、存在する場合、配列番号19、26、及び40からなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項15】
前記第1の抗体分子が、配列番号15、16、17、10、18、及び19を有する6個のCDR、又は配列番号22、23、24、10、25、及び26を有する前記6個のCDRを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項16】
前記第1の抗体分子が、配列番号20及び27からなる群から選択される可変重鎖、並びに/又は配列番号21及び28からなる群から選択される可変軽鎖を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項17】
前記第1の抗体分子が、重鎖定常領域配列番号43及び/又は軽鎖定常領域配列番号44を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項18】
前記第1の抗体分子が、イピリムマブ及びトレメリムマブからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項19】
前記第1の抗体分子が、請求項13~18のいずれか一項に定義される抗体分子とCTLA-4への結合について競合することができる抗体分子である、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項20】
前記第1の抗体分子が、フルサイズ抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab、Fv、scFv、Fab’、及び(Fab’)
2からなる群から選択される、請求項1~19のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項21】
前記第1の抗体分子が、ヒトIgG抗体、ヒト化IgG抗体、及びヒト起源のIgG抗体からなる群から選択される、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項22】
前記ウイルスが、請求項13~21のいずれか一項に定義される第1の抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項23】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号45~52からなる群から選択される配列を含むか、又はそれからなる、請求項22に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項24】
前記第2の抗体分子が、ヒト抗体分子、ヒト化抗体分子、及びヒト起源の抗体分子からなる群から選択される、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項25】
前記第2の抗体分子が、モノクローナル抗体分子又はモノクローナル起源の抗体分子である、請求項1~24のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項26】
前記第2の抗体分子が、フルサイズ抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、及びそれらの抗原結合フラグメントからなる群から選択される、請求項1~25のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項27】
前記第2の抗体分子が、ヒトIgG抗体、ヒト化IgG抗体分子、又はヒト起源のIgG抗体分子である、請求項1~26のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項28】
前記第2の抗体分子が、PD1に特異的に結合し、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、スパルタリズマブ、ドスタルリマブ、チスレリズマブ、JTX-4014、シンチリマブ(IBI308)、トリパリマブ(JS 001)、AMP-224、及びAMP-514(MEDI0680)からなる群から選択される、請求項1~27のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項29】
前記第2の抗体分子が、PD-L1に特異的に結合し、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、CS1001、KN035(エンバフォリマブ)、及びCK-301からなる群から選択される、請求項1~28のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項30】
前記冷たい腫瘍が、免疫砂漠腫瘍、及び/又は免疫排除腫瘍、及び/又は免疫浸潤が不十分な腫瘍である、請求項1~29のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項31】
前記冷たい腫瘍が、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、結腸直腸がん、肝細胞がん、肺がん、膀胱がん、腎臓がん、胃がん、子宮頸がん、メルケル細胞がん、卵巣がん、頭頸部がん、中皮腫、及び乳がんからなる群から選択される、請求項1~30のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項32】
前記がんが、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に対して耐性であるか、又はPD1に特異的に結合する抗体分子による治療に対して耐性であるか、又はPD-L1に特異的に結合する抗体分子による治療に対して耐性である、請求項1~31のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項33】
前記がんが、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子及びPD1に特異的に結合する抗体分子による治療に対して耐性であるか、又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子及びPD-L1に特異的に結合する抗体分子による治療に対して耐性であるか、又はPD-1に特異的に結合する抗体分子及びPD-L1に特異的に結合する抗体分子による治療に対して耐性であるか、又は、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子及びPD1に特異的に結合する抗体分子及びPD-L1に特異的に結合する抗体分子による治療に対して耐性である、請求項1~32のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項34】
前記患者が、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子、及び/又はPD-1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はPD-L1に特異的に結合する抗体分子により以前に治療されており、前記患者が、前記治療に対して耐性であることがわかっているか、又は前記治療後若しくは前記治療中に前記治療に対して耐性になった、請求項1~33のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項35】
添付の番号付けされた段落、特許請求の範囲、説明、実施例、及び図面を参照して、実質的に本明細書において特許請求される、使用のための組み合わせ、又は使用、又は方法、又は使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスと、(ii)PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子と、を含む、組み合わせであって、組み合わせが、患者における冷たい腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなるがんの治療に使用するためのものである、組み合わせに関する。本発明はまた、患者における冷たい腫瘍を含むか又は冷たい腫瘍からなるがんを治療するための医薬の製造における当該組み合わせの使用、及び当該組み合わせを投与することを含む、患者における冷たい腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなるがんを治療するための方法に関する。
【0002】
免疫チェックポイント遮断抗体による治療は、転移性黒色腫、非小細胞肺がん、及びミスマッチ修復欠損がんを含む進行性固形がんを有する患者の生存を変化させた(Hodi et al.,2010、Larkin et al.,2015、Topalian et al.,2012)。
【0003】
しかしながら、多くの患者が免疫チェックポイント遮断(immune checkpoint blockade、ICB)に応答しないか、又は耐性を獲得しないので、大きな満たされていない必要性が残っている(Sharma et al.,2017)。効力の欠如の理由は、腫瘍浸潤免疫細胞(tumor infiltrating immune、TIL)、中でも注目すべきはCD8+T細胞の欠如又は不十分な腫瘍浸潤免疫細胞を含むと考えられている(Chen and Mellman,2013、Gajewski et al.,2013)。固形がん腫瘍微小環境(tumor microenvironment、TME)における走化性及び炎症性シグナルの不足は、同様に、CAR-T細胞療法に対する耐性の根底にあると考えられている(Wagner et al.,2020)。
【0004】
したがって、炎症性免疫細胞の「免疫砂漠」又は「免疫排除」腫瘍への動員を誘導し、原発性及び転移腫瘍の退縮を伴う、頑強な全身性適応抗腫瘍免疫及びCD8+T細胞浸潤に変換する治療薬の特定が非常に望ましい。
【0005】
腫瘍内(intratumoral、i.t.)腫瘍溶解性ウイルス療法は、T細胞浸潤を誘導し、抗PD-1免疫療法を改善する(Ribas et al.,2017)。抗CTLA-4抗体及び抗PD-1抗体との併用療法は、単剤ICBと比較して効力を増強し、これはおそらく、全身性CD4+及びCD8+T細胞分化並びにTエフェクタ及び制御性T細胞の腫瘍局在化調節の相補的機構によるものである(Arce Vargas et al.,2018、Wei et al.,2019)。しかしながら、承認されたイピリムマブを含む、全身投与された抗CTLA-4に関する忍容性の問題は、臨床使用を制限している(Postow et al.,2015)。
【0006】
全身性抗CTLA-4抗体療法の効力及び忍容性は、関連しているようである。イピリムマブ用量の増加は、効力及び副作用の両方を増強した(Bertrand et al.,2015)。CTLA-4の中心的な免疫チェックポイント機能と一致して、副作用は重度であり、全身性自己免疫の性質のものであり得る(Tivol et al.,1995)。
【0007】
興味深いことに、CD8+及びCD4+エフェクタT細胞と比較して、CTLA-4を過剰発現する腫瘍内(「i.t.」)Treg細胞の枯渇は、イピリムマブ治療活性に寄与することが最近報告され、Treg枯渇増強抗CTLA-4変異型は、腫瘍担持FcγRヒト化マウスにおいて改善された治療活性を示した(Arce Vargas et al.,2018)。これらの知見は、Treg枯渇抗CTLA-4抗体による腫瘍局在化療法が、特に、検証された安全な免疫調節剤、例えば、PD-1/PD-L1軸の遮断薬又は腫瘍溶解性ウイルスと組み合わせた場合、現在利用可能な抗CTLA-4療法と比較して、副作用が低減された強力な治療活性を提供し得ることを示した(Marabelle et al.,2013a、Marabelle et al.,2013b)。
【0008】
その背景に対して、本発明者らは、本明細書において、完全長ヒト組換え抗CTLA-4抗体を組み込んだワクシニアウイルス(Vaccinia virus、VV)ベースの腫瘍溶解性ベクターを記載し、特徴付ける。本発明者らはまた、最近発見された完全長ヒト組換え抗CTLA-4抗体をコードする腫瘍溶解性ウイルスを記載する。このウイルスにコードされた新規ヒトIgG1 CTLA-4抗体(「4-E03」と命名)は、モノクローナル抗体(「monoclonal antibody、mAb」)及び優れたTreg枯渇活性に関連する標的についての機能優先スクリーニングを使用して識別された。ヒト腫瘍内関連CTLA-4発現を特徴とするヒト化マウスモデルにおいて、4-E03 IgG1は、臨床的に検証されたイピリムマブと比較して増強したTreg枯渇を実証した。対照的に、4-E03は、イピリムマブと比較して、CTLA-4:B7相互作用の遮断、及びエフェクタT細胞増殖のCTLA-4媒介性抑制の克服において、同様の効力を示す。本発明では、腫瘍選択的腫瘍溶解性ワクシニアベクターを操作して、この新規のTreg枯渇チェックポイント遮断抗CTLA-4抗体4-E03及びGM-CSF(VVGM-ahCTLA4、BT-001)をコードする。一致するTreg枯渇マウス代理抗体をコードするウイルスを追加的に生成し、ICBに対して感受性又は耐性の炎症性又は免疫排除腫瘍微小環境を表す同系免疫適格マウス腫瘍モデルにおける概念実証研究を可能にした。
【0009】
これは、抗CTLA-4抗体を発現する腫瘍溶解性ウイルスが、抗PD-1/PD-L1抗体と相乗作用して、「冷たい」腫瘍」(本明細書では「冷たい免疫腫瘍」とも呼ばれる)を拒絶するという予想外の発見をもたらした。冷たい腫瘍は、本明細書に開示される「冷たい腫瘍」マウスモデルにおける動物と同様に、全身性、静脈内、単剤、又は現在利用可能な抗CTLA-4及び/若しくは抗PD-1と組み合わせたICBに対して耐性であることが知られているので、これは驚くべきことであった。
【0010】
実施例及び本明細書において考察されるように、「冷たい」腫瘍は、T細胞浸潤が不十分である。驚くべきことに、本発明者らは、抗CTLA-4抗体及び抗PD-1/PD-L1抗体を発現する腫瘍溶解性ウイルスによる併用処理が、「冷たい」腫瘍へのT細胞の強い流入を誘導し、これが「熱い」腫瘍と同様に高密度にT細胞リッチになったことを見出した。
【0011】
本発明者らの驚くべき知見は、「冷たい」腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなるがんを治療するための更なる有益な治療アプローチを提供する。本明細書に記載されているように、本発明は、一般に、(i)CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスと、(ii)PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子と、を含む組み合わせであって、組み合わせが、患者における冷たい腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなるがんの治療に使用するためのものである、組み合わせに関する。
【0012】
第1の態様では、本発明は、患者におけるがんの治療に使用するための、
-CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスと、
-PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子と、を含む組み合わせを提供し、
がんが、冷たい腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなる。
【0013】
第2の態様では、本発明は、患者におけるがんを治療するための医薬の製造において、
-CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子をコードするヌクレオチド配列を発現することができる腫瘍溶解性ウイルス、及び
-PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子の使用を提供し、
がんが、冷たい腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなる。
【0014】
第3の態様では、本発明は、患者におけるがんを治療するための方法を提供し、がんが、冷たい腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなり、方法が、患者に、
-CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスと、
-PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子と、を投与することを含む。
【0015】
第4の態様では、本発明は、患者におけるがんを治療するための、PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子と組み合わせて使用するための、CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスを提供し、がんが、冷たい腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなる。
【0016】
上記で考察され、添付の実施例において実証されるように、本発明の上記の態様では、CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルス、並びにPD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体による治療は、患者におけるがんの冷たい腫瘍へのT細胞の流入を引き起こす。これは、患者のがんの冷たい腫瘍におけるT細胞の数及び/又は密度の増加をもたらし、その結果、腫瘍は、熱い腫瘍と同様に高密度にT細胞リッチになる。本発明の一実施形態では、患者のがんの冷たい腫瘍におけるT細胞の数及び/又は密度は、約5倍~25倍以上、例えば、約5倍、又は6倍、又は7倍、又は8倍、又は9倍、又は10倍、又は11倍、又は12倍、又は13倍、又は14倍、又は15倍、又は16倍、又は17倍、又は18倍、又は19倍、又は20倍、又は21倍、又は22倍、又は23倍、又は24倍、又は25倍以上増加する。
【0017】
したがって、更なる態様では、本発明は、患者のがんにおける冷たい腫瘍内のT細胞の数及び/若しくは密度を増加させ、かつ/又は患者のがんにおける冷たい腫瘍へのT細胞の流入を媒介する使用のための、
-CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスと、
-PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子と、
を含む組み合わせを提供する。そうすることによって、本発明は、患者のがんを治療することが理解されるであろう。本発明の一実施形態では、患者のがんの冷たい腫瘍におけるT細胞の数及び/又は密度は、約5倍~25倍以上、例えば、約5倍、又は6倍、又は7倍、又は8倍、又は9倍、又は10倍、又は11倍、又は12倍、又は13倍、又は14倍、又は15倍、又は16倍、又は17倍、又は18倍、又は19倍、又は20倍、又は21倍、又は22倍、又は23倍、又は24倍、又は25倍以上増加する。
【0018】
本明細書において考察されるように、本発明の腫瘍溶解性ウイルスは、CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる。CD152としても知られる細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA-4又はCTLA4)は、T細胞の活性化を遮断するB7/CD28ファミリーのメンバーである。CTLA-4は活性化T細胞で発現し、抑制シグナルをT細胞に伝達する。これはT細胞共刺激タンパク質CD28と相同であり、CTLA-4及びCD28の両方がCD80(B7-1とも表示)及びCD86(B7-2とも表示)に結合する。CTLA4は調節性T細胞(Treg)にも見られ、その抑制機能に寄与している。CTLA-4タンパク質には、細胞外Vドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質尾部が含有されている。
【0019】
CTLA-4に結合する抗体は、免疫エフェクタCD4+及びCD8+T細胞に、かつ免疫抑制調節性T(T regulatory、Treg)細胞の両方に作用する二重機構によってそれらの治療活性を発揮することが提案されている。エフェクタT細胞上で、CTLA-4とそのリガンドB7.1及びB7.2との相互作用を遮断するCTLA-4に対する抗体は、免疫応答を増強することができ、強力な抗腫瘍免疫を刺激することができることが示されている(Korman et al 2006,Checkpoint blockade in cancer immunotherapy,Adv Immunol.90:297-339)。
【0020】
より最近では、Fcエフェクタ機能及びTreg枯渇が、臨床的に関連する抗体であるイピリムマブ及びトレメリムマブを含む、抗CTLA-4抗体の治療活性に寄与し、相関することが示された(Arce Vargas,Furness et al.2018)。効力及び毒性(後者は重度であり、自己免疫性質のものであり得る)は、現在利用可能な全身性抗CTLA-4レジメンに関連していると考えられる。したがって、非常に有効であるが安全な抗CTLA-4ベースのICBを送達するためのアプローチが欠けている。本発明者らは最近、Treg枯渇抗CTLA-4抗体(i.t.ベクター化抗CTLA-4)をコードする腫瘍内送達された腫瘍溶解性ウイルスが広範な抗腫瘍活性を有することを実証した。本明細書において、本発明者らは、予想外にも、PD-1/PD-L1 ICBとの関連で、i.t.ベクター化抗CTLA-4が、全身性抗体媒介性ICBに対して耐性であった、免疫浸潤が不十分な「冷たい」腫瘍に対して効力を有することを実証する。更に、このアプローチに関連する腫瘍限定抗CTLA-4曝露のために、i.t.ベクター化抗CTLA-4は、承認された抗CTLA-4レジメンと比較して安全であり、忍容性が良いと示される。
【0021】
本明細書において考察されるように、本発明はまた、PD-1に特異的に結合し、かつ/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗体分子は、PD-1に特異的に結合し、いくつかの実施形態では、第2の抗体分子は、PD-L1に特異的に結合し、いくつかの実施形態では、第2の抗体分子は、PD-1及びPD-L1の両方に特異的に結合する。
【0022】
CD279としても知られるプログラム細胞死タンパク質1(PD-1又はPD1)は、T細胞及びB細胞の表面上に見られ、T細胞活性を抑制する。PD-1は、2つのリガンドPD-L1及びPD-L2に結合する。CD274としても知られるプログラム死リガンド1(programmed death-ligand 1、PD-L1)は、その受容体PD-1に結合して、T細胞の増殖を低減する抑制シグナルを産生する。
【0023】
抗体は、免疫学及び分子生物学分野の当業者には公知である。通常は、抗体は、2つの重鎖(H)と、2つの軽鎖(L)と、を含む。本明細書では、ときには、この完全な抗体分子をフルサイズ抗体又は完全長抗体と称する。抗体の重鎖は、1つの可変領域(VH)及び3つの定常領域(CH1、CH2、CH3)を含み、抗体分子の軽鎖は、1つの可変領域(VL)及び1つの定常領域(CL)を含む。可変領域(時にFV領域と総称される)は、抗体の標的、又は抗原に結合する。各可変領域は、相補性決定領域(CDR)と称される3つのループを含み、これらのループが標的の結合に関与する。定常領域は、抗体の抗原への結合には直接関与しないが、様々なエフェクタ機能を呈する。それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、抗体又は免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMの5つの主要なクラスがあり、ヒトでは、これらのうちのいくつかは、更にサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4;IgA1及びIgA2に分割される。抗体の別の部分は、Fcドメイン(あるいはフラグメント結晶性ドメインとしても知られている)であり、抗体の重鎖の各々の2つの定常ドメインを含む。Fcドメインは、抗体とFc受容体との間の相互作用に関与する。
【0024】
Fc受容体は、多くの場合、免疫系の細胞の細胞表面上に見られる膜タンパク質である(すなわち、Fc受容体は、標的細胞膜、そうでなければ形質膜又は細胞質膜としても知られている膜上に見られる)。Fc受容体の役割は、Fcドメインを介して抗体に結合し、抗体を細胞内に取り込むことである。免疫系では、これは、抗体媒介性食作用、及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害をもたらし得る。
【0025】
Fc受容体のサブグループには、IgG抗体に特異的なFcγ受容体(Fc-γ受容体、FcγR)がある。Fcγ受容体には、活性型Fcγ受容体(活性化Fcγ受容体とも表される)、及び抑制性Fcγ受容体の2種類がある。活性型受容体及び抑制性受容体は、それぞれ、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)又は免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を介して、それらのシグナルを伝達する。ヒトにおいて、FcγRIIb(CD32b)は、抑制性Fcγ受容体であり、一方FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32a)、FcγRIIc(CD32c)、FcγRIIIa(CD16a)及びFcγRIVは、活性型Fcγ受容体である。FcγRIIIbは、好中球上で発現するGPI結合受容体であり、ITAMモチーフが欠如しているが、脂質ラフトをクロスリンクし、他の受容体と結合するその能力によって活性化ともみなされる。マウスにおいて、活性型受容体は、FcγRI、FcγRIII、及びFcγRIVである。
【0026】
抗体がFcγ受容体との相互作用を介して免疫細胞活性を調節することは、公知である。具体的には、抗体免疫複合体が免疫細胞の活性化をどのように調節するかは、活性型Fcγ受容体及び抑制性Fcγ受容体の相対的な関与によって決定される。異なる抗体アイソタイプは、異なる親和性で活性型Fcγ受容体及び抑制性Fcγ受容体に結合し、結果として異なるA:I比(活性化:抑制比)をもたらす(Nimmerjahn et al;Science.2005 Dec 2;310(5753):1510-2)。
【0027】
抑制性Fcγ受容体に結合することにより、抗体は、エフェクタ細胞機能を阻害、遮断、及び/又は下方制御することができる。
【0028】
抗体は、活性化Fcγ受容体に結合することにより、エフェクタ細胞の機能を活性化することができ、それによって抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cellular cytotoxicity、ADCC)、抗体依存性細胞貪食(antibody dependent cellular phagocytosis、ADCP)、サイトカイン放出、及び/又は抗体依存性エンドサイトーシス、並びに好中球の場合、NETosis(すなわち、NET(好中球細胞外トラップ)の活性化及び放出)などの機構を誘発する。活性型Fcγ受容体に結合する抗体も、CD40、MHCII、CD38、CD80、及び/又はCD86などのある特定の活性化マーカーの増加を引き起こし得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子は、Fcγ受容体結合抗体である。「Fcγ受容体結合抗体」とは、抗体分子がそのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合することができることを意味する。
【0030】
本明細書で用いる場合、抗体分子という用語は、完全長抗体又はフルサイズ抗体、並びに完全長抗体の機能的フラグメント及びこのような抗体分子の誘導体を包含する。
【0031】
フルサイズ抗体の機能的フラグメントは、対応するフルサイズ抗体と同じ抗原結合特徴を有し、対応するフルサイズ抗体と同じ可変ドメイン(すなわち、VH配列及びVL配列)及び/又は同じCDR配列のいずれかを含む。機能的フラグメントが、対応するフルサイズ抗体と同じ抗原結合特徴を有するということは、標的上のフルサイズ抗体と同じエピトープに結合することを意味する。そのような機能的フラグメントは、フルサイズ抗体のFv部分に対応し得る。代替的に、そのようなフラグメントは、Fc部分を含有しない、一価の抗原結合フラグメントであるFab’とも表されるFab、又はジスルフィド結合又はFab’、すなわち(Fab’)2の一価のバリアントによって一緒に結合された2つの抗原結合Fab部分を含有する二価の抗原結合フラグメントである(Fab’)2であり得る。そのようなフラグメントは、一本鎖可変フラグメント(single chain variable fragment、scFv)でもあり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第1の抗体分子及び/又は第2の抗体分子は、フルサイズ抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、及びそれらの抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fv、scFv、Fab’、及び(Fab’)2)からなる群から選択される。
【0033】
機能的フラグメントは、対応するフルサイズ抗体の6個のCDRの全てを常に含有するわけではない。3個以下のCDR領域(場合によっては、単一のCDRだけ又はその一部)を含有する分子は、そのCDRが由来する抗体の抗原結合活性を保持することができることが理解される。例えば、全VL鎖(3個のCDRを全て含む)がその基質に対して高い親和性を有することが、Gao et al.,1994,J.Biol.Chem.,269:32389-93に記載されている。
【0034】
2個のCDR領域を含有する分子については、例えば、Vaughan & Sollazzo 2001,Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening,4:417-430に記載されている。418頁(右欄-3 Our Strategy for Design)に、フレームワーク領域内に散在するH1及びH2 CDR超可変領域のみを含むミニボディについて記載されている。ミニボディは、標的に結合することが可能であると記載されている。Pessi et al.,1993,Nature,362:367-9及びBianchi et al.,1994,J.Mol.Biol.,236:649-59は、Vaughan&Sollazzoによって参照され、H1及びH2ミニボディ、並びにその特性についてより詳細に記載している。Qiu et al.,2007,Nature Biotechnology,25:921-9では、2個の結合されたCDRからなる分子が抗原に結合することが可能であることが実証されている。Quiocho 1993,Nature,362:293-4は、「ミニボディ」技術の概要を提供している。Ladner 2007,Nature Biotechnology,25:875-7は、2個のCDRを含有する分子は、抗原結合活性を保持することが可能であると見解を述べている。
【0035】
単一のCDR領域を含有する抗体分子については、例えば、Laune et al.,1997,JBC,272:30937-44に記載されており、CDRに由来する様々なヘキサペプチドが抗原結合活性を表すことが実証され、完全な単一のCDRの合成ペプチドが強力な結合活性を示すことに留意されたい。Monnet et al.,1999,JBC,274:3789-96では、様々な12量体ペプチド及び関連するフレームワーク領域は、抗原結合活性を有することが実証されており、CDR3様ペプチドは、単独で抗原に結合することが可能であると見解を述べている。Heap et al.,2005,J.Gen.Virol.,86:1791-1800では、「マイクロ抗体」(単一のCDRを含有する分子)は、抗原に結合することが可能であることが報告されており、抗HIV抗体からの環状ペプチドは、抗原結合活性及び機能を有することが示されている。Nicaise et al.,2004,Protein Science,13:1882-91では、単一のCDRは、そのリゾチーム抗原に対する抗原結合活性及び親和性を付与し得ることが示されている。
【0036】
したがって、5個、4個、3個、又はそれ以下のCDRを有する抗体分子は、それらが由来する完全長抗体の抗原結合特性を保持することが可能である。
【0037】
抗体分子は、完全長抗体の誘導体又はそのような抗体のフラグメントであってもよい。誘導体が、対応する完全サイズ抗体と同じ抗原結合特徴を有するということは、完全サイズ抗体と同じ標的上のエピトープに結合することを意味する。
【0038】
したがって、本明細書で使用する場合、「抗体分子」という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、組換えて生成された抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、可変フラグメント(Fv)、二価一本鎖可変フラグメント(di-scFv)及びジスルフィド連結可変フラグメントを含む一本鎖可変フラグメント(scFvフラグメント)、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖のホモ二量体、抗体軽鎖のホモ二量体、抗体重鎖のヘテロ二量体、抗体軽鎖のヘテロ二量体、そのようなホモ及びヘテロ二量体の抗原結合機能的フラグメントを含む、全てのタイプの抗体分子、並びにそれらの機能的フラグメント及びそれらの誘導体を含む。
【0039】
更に、本明細書で使用される場合、「抗体分子」という用語は、IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgD、及びIgEを含む、全てのクラスの抗体分子及び機能的フラグメントを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG1である。当業者は、マウスIgG2a及びヒトIgG1が、活性化Fcガンマ受容体と生産的に結合し、例えばADCP及びADCCによる、活性化Fcガンマ受容体を担持する免疫細胞(例えば、マクロファージ及びNK細胞)の活性化を通じて、標的細胞の欠失を活性化する能力を共有していることを認識している。このように、マウスIgG2aは、マウスでの欠失に好ましいアイソタイプである一方で、ヒトIgG1は、ヒトにおける欠失に好ましいアイソタイプである。逆に、TNFRスーパーファミリーのアゴニスト受容体、例えば、4-1BB、OX40、TNFRII、CD40の最適な共刺激は、抑制性FcγRIIBの抗体結合に依存することが知られている。マウスでは、抑制性Fcガンマ受容体(FcγRIIB)に優先的に結合し、活性化Fcガンマ受容体に弱くのみ結合するIgG1アイソタイプは、mAbを標的とするTNFRスーパーファミリーの共刺激活性に最適であることが知られている。ヒトでのマウスIgG1アイソタイプの直接的な同等物については記載されていないが、活性化ヒトFcガンマ受容体を上回る抑制性ヒトFcガンマ受容体への同様に向上した結合を示すように抗体を操作することができる。そのような操作されたTNFRスーパーファミリー標的化抗体はまた、ヒトの活性化Fcガンマ受容体及び抑制性Fcガンマ受容体を発現するように操作されたトランスジェニックマウスにおいて、インビボで、改善された共刺激活性を有する(Dahan et al,2016,Therapeutic Activity of Agonistic,Human Anti-CD40 Monoclonal Antibodies Requires Selective FcγR Engagement.Cancer Cell.29(6):820-31)。
【0041】
上記で概説したように、抗体分子の異なるタイプ及び形態が本発明に含まれ、免疫学当業者には既知であろう。治療目的で使用される抗体は、多くの場合、抗体分子の特性を改変する追加の構成成分を用いて改変されることが公知である。
【0042】
したがって、本発明の抗体分子又は本発明に従って使用される抗体分子(例えば、モノクローナル抗体分子、及び/又はポリクローナル抗体分子、及び/又は二重特異性抗体分子)は、検出可能な部分及び/又は細胞傷害性部分を含む、ということが含まれる。
【0043】
「検出可能部分」とは、以下を含む群からの1つ以上が含まれる:酵素、放射性原子、蛍光部分、化学発光部分、生物発光部分。検出可能な部分により、抗体分子をインビトロ、及び/又はインビボ、及び/又はエクスビボで視覚化することが可能になる。
【0044】
「細胞傷害性部分」とは、放射性部分、及び/又は酵素(例えば、酵素はカスパーゼである)、及び/又は毒素(例えば、毒素は細菌毒素又は毒液である)が含まれ、細胞毒性部分は、細胞溶解を誘導することが可能である。
【0045】
更に、抗体分子は、単離された形態、及び/又は精製された形態であってもよく、かつ/又はPEG化されてもよいことが含まれる。
【0046】
上で考察したように、抗体のCDRは、抗体標的に結合する。本明細書に記載の各CDRへのアミノ酸の割り当ては、Kabat EA et al.1991,「Sequences of Proteins of Immunological Interest」Fifth Edition,NIH Publication No.91-3242,pp xv-xviiによる定義に従う。
【0047】
当業者が認識するように、アミノ酸を各CDRに割り当てるための他の方法も存在する。例えば、International ImMunoGeneTics informationシステム(IMGT(R))(http://www.imgt.org/及びLefranc and Lefranc「The Immunoglobulin FactsBook」published by Academic Press,2001)。
【0048】
更なる実施形態では、本発明の、又は本発明に従って使用されるCTLA-4特異性抗体分子は、配列番号15、16、17、10、18、及び19、又は配列番号22、23、24、10、25、及び26を含む抗体分子などの、本明細書に記載の特定の抗体と競合することが可能である抗体分子である。
【0049】
「競合することが可能である」とは、競合抗体が、本明細書で定義される抗体分子の特定の標的への結合を少なくとも部分的に抑制又はそうでなければ干渉することが可能であることを意味する。
【0050】
例えば、そのような競合抗体分子は、本明細書に記載される抗体分子の結合を少なくとも約10%、例えば、少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%抑制することが可能であり得、かつ/又は本明細書に記載される抗体が特定の標的への結合を防止若しくは低減する能力を少なくとも約10%、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、若しくは少なくとも約100%抑制することが可能であり得る。
【0051】
競合結合は、酵素結合免疫吸着検定法(Enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)などの当業者に周知の方法によって決定され得る。
【0052】
ELISAアッセイを使用して、エピトープ改変抗体又は遮断抗体を評価することができる。競合抗体を識別するために好適な追加の方法は、参照により本明細書に組み込まれるAntibodies:A Laboratory Manual,Harlow&Laneに開示されている(例えば、567~569頁、574~576頁、583頁、及び590~612頁、1988,CSHL,NY,ISBN 0-87969-314-2を参照されたい)。
【0053】
抗体が定義された標的分子又は抗原に特異的に結合すること、かつ、これは、抗体が、標的ではない分子ではなく、その標的に優先的かつ選択的に結合することを意味することはよく知られている。
【0054】
本発明による第1及び第2の抗体(CTLA-4、PD1、PD-L1)の標的、又は本発明に従って使用される第1及び第2の抗体の標的は、細胞の表面で発現し、すなわち、それらは、細胞表面抗原であり、これらには、抗体に対するエピトープ(そうでなければ、この文脈において、細胞表面エピトープとして既知である)が含まれるであろう。細胞表面抗原及びエピトープは、免疫学又は細胞生物学における当業者によって容易に理解される用語である。
【0055】
「細胞表面抗原」とは、本明細書に記載の抗体分子が細胞膜の細胞外側に露出している細胞表面抗原又は少なくともそのエピトープを含む。
【0056】
タンパク質の結合を評価する方法は、生化学及び免疫学における当業者には既知である。当業者であれば、それらの方法を使用して、抗体の標的への結合及び/又は抗体のFcドメインのFc受容体への結合、並びにそれらの相互作用における相対的な強度、又は特異性、抑制、又は防止、又は低減を評価することができることを理解するであろう。タンパク質の結合を評価するために使用され得る方法の例は、例えば、イムノアッセイ、BIAcore、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay、RIA)、及び酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)がある(抗体特異性に関する考察については、Fundamental Immunology Second Edition,Raven Press,New York at pages 332-336(1989)を参照されたい)。
【0057】
したがって、本明細書において、「CTLA-4に特異的に結合する抗体分子」及び「抗CTLA-4抗体分子」の両方は、標的CTLA-4に特異的に結合するが、非標的に結合しない、又は標的よりも弱く(親和性が低いなど)非標的に結合する抗体分子を指す。
【0058】
したがって、本明細書において、「PD-1に特異的に結合する抗体分子」及び「抗PD-1抗体分子」の両方は、標的PD-1に特異的に結合するが、非標的に結合しない、又は標的よりも弱く(親和性が低いなど)非標的に結合する抗体分子を指す。
【0059】
したがって、本明細書において、「PD-L1に特異的に結合する抗体分子」及び「抗PD-L1抗体分子」の両方は、標的PD-L1に特異的に結合するが、非標的に結合しない、又は標的よりも弱く(親和性が低いなど)非標的に結合する抗体分子を指す。
【0060】
いくつかの実施形態では、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子(又は抗CTLA-4抗体分子)は、CTLA-4の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-1に特異的に結合する抗体分子(又は抗PD-1抗体分子)は、PD-1の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L1に特異的に結合する抗体分子(又は抗PD-L1抗体分子)は、PD-L1の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体分子を指す。
【0061】
また、抗体が標的CTLA-4又はPD-1若しくはPD-L1に、非標的よりも、少なくとも2倍強く、又は少なくとも5倍強く、又は少なくとも10倍強く、又は少なくとも20倍強く、又は少なくとも50倍強く、又は少なくとも100倍強く、又は少なくとも200倍強く、又は少なくとも500倍強く、又は少なくとも約1000倍強く、特異的に結合するという意味が含まれる。
【0062】
追加的に、抗体が少なくとも約10-1M、又は少なくとも約10-2M、又は少なくとも約10-3M、又は少なくとも約10-4M、又は少なくとも約10-5M、又は少なくとも約10-6M、又は少なくとも約10-7M、又は少なくとも約10-8M、又は少なくとも約10-9M、又は少なくとも約10-10M、又は少なくとも約10-11M、又は少なくとも約10-12M、又は少なくとも約10-13M、又は少なくとも約10-14M、又は少なくとも約10-15Mの解離定数(KD)で標的に結合する場合、抗体は、標的CTLA-4又はPD-1若しくはPD-L1に特異的に結合するという意味が含まれる。
【0063】
上述したように、本発明の腫瘍溶解性ウイルスは、CTLA-4に特異的に結合する抗体を発現する。
【0064】
いくつかの実施形態では、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子は、Fcγ受容体結合抗体である。
【0065】
いくつかの実施形態では、第1の抗体分子は、イピリムマブ及びトレメリムマブからなる群から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態では、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子(又は抗CTLA-4抗体分子)は、CD28と交差反応しない。いくつかの実施形態では、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子(又は抗CTLA-4抗体分子)は、CTLA-4のCD80及び/又はCD86への結合を遮断し、それにより、CTLA-4シグナル伝達を阻害する。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCTLA-4に特異的に結合する抗体分子(又は抗CTLA-4抗体分子)は、イピリムマブと比較して、CTLA-4陽性細胞に対する改善された枯渇効果を有する。
【0068】
抗体分子がCTLA-4陽性細胞に枯渇効果を有するということは、ヒトなどの対象に投与すると、そのような抗体がCTLA-4陽性細胞の表面に発現するCTLA-4に特異的に結合し、この結合がそのような細胞の枯渇をもたらすことを意味する。
【0069】
いくつかの実施形態では、CTLA-4陽性細胞は、CD4陽性(CD4+)細胞、すなわち、CD4を発現する細胞である。
【0070】
いくつかの実施形態では、CTLA-4陽性細胞は、CD4陽性及びFOXP3陽性の両方であり、すなわち、CD4及びFOXP3の両方を発現する。これらの細胞はTregである。CD8陽性T細胞もCTLA-4を発現するが、TregはCD8陽性T細胞よりも著しく高いレベルのCTLA-4を発現する。これにより、Tregは、発現の少ないCD8+細胞と比較して枯渇しやすくなる。
【0071】
状況によっては、CTLA-4は腫瘍微小環境の免疫細胞(腫瘍浸潤細胞、TILS)に優先的に発現する。
【0072】
したがって、腫瘍微小環境では、Tregは、CTLA-4の発現が最も高い細胞となり、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子(又は抗CTLA-4抗体分子)がTreg枯渇効果を有することとなる。
【0073】
したがって、いくつかの実施形態では、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子は、Treg枯渇抗体である。
【0074】
上記のように、本明細書に記載の抗CTLA-4抗体分子は、Treg枯渇抗体分子であり得、これは、ヒトなどの対象に投与すると、そのような抗体分子は、Tregの表面に発現するCTLA-4に特異的に結合し、この結合がTregの枯渇をもたらすことを意味する。
【0075】
抗体分子が、本明細書で言及されるTreg枯渇効果を有する抗体分子である(例えば、これは、イピリムマブと比較して改善された枯渇効果であり得る)かどうかを決定するために、インビトロ抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)アッセイ又はPBMC-NOG/SCIDモデルでのインビボ試験を使用することが可能である。
【0076】
CD16-158V対立遺伝子をGFPとともに発現するように安定的にトランスフェクトされたNK-92細胞株を使用して実行されるインビトロADCC試験であって、ADCC試験は、以下の連続した7つのステップを含む、インビトロADCC試験。
1)標的細胞としての、CTLA-4陽性細胞、CD4陽性細胞、又はTregを、健康なドナーの末梢血から単離するステップ。この単離は、Miltenyi Biotecの市販キットなどのCD4+T細胞単離キットを使用して行うことができる。
2)次に、標的細胞をCD3/CD28で、例えば、CD3/CD28 Dynabeads(登録商標)及びrhIL-2、例えば、50ng/mlのrhIL-2を使用して、例えば48時間刺激するステップ。刺激は37℃で行うことができる。
3)次に、標的細胞を、試験される抗体分子と、例えば、10μg/mlで、4℃で30分間プレインキュベートし、次にNK細胞と混合するステップ。
4)次に、標的細胞を、HEPESバッファー、ピルビン酸ナトリウム、及びFBS低IgGを含有するRPMI 1640+GlutaMAX培地で、適切な時間、例えば4時間インキュベートするステップ。RPMI 1640+GlutaMAX培地には、10mMのHEPESバッファー、1mMのピルビン酸ナトリウム、及び10%FBS低IgGを含有してもよく、エフェクタ:標的細胞比は、2:1であり得る。
5)溶解をフローサイトメトリーによって決定するステップ。
6)ステップ3で試験された抗体分子の代わりに使用されるイピリムマブを(対照として)用いて、ステップ1~5を繰り返すか、又は並行して実行するステップ。
7)試験した抗体分子の溶解結果を、イピリムマブの溶解結果と比較するステップ。イピリムマブと比較して試験された抗体分子の改善された溶解は、この試験された抗体分子が、使用された標的細胞に応じて、CTLA-4陽性細胞、CD4陽性細胞又はTregに対してそれぞれ改善された枯渇効果を有することを示している。
【0077】
いくつかの実施形態では、上記のステップ7)における改善された枯渇効果は、著しく改善された枯渇効果である。
【0078】
インビボ試験は、PBMCマウス及びNOG/SCIDマウスの併用に基づき、これは、本明細書ではPBMC-NOG/SCIDモデルと呼ばれる。PBMCマウス及びNOG/SCIDマウス両方とも公知のモデルである。PBMC-NOG/SCIDモデルにおけるインビボ試験は、次の9つの連続したステップを含む。
1)ヒトPBMC(末梢血単核細胞)を単離し、洗浄し、滅菌PBSに再懸濁するステップ。いくつかの実施形態では、PBMCは、75×106細胞/mlでPBSに再懸濁される。
2)NOGマウスに、ステップ1)からの細胞懸濁液の適切な量、例えば200μlを、i.v.(静脈内)注射するステップ。200μlを注射する場合、これは、15×106個の細胞/マウスに相当する。
3)注射後、適切な時期に例えば2週間、NOGマウスから脾臓を単離し、単一細胞懸濁液にするステップ。任意選択で、単一細胞懸濁液から少量の試料を採取して、CTLA-4の発現を確認するために、FACSによってヒトT細胞上のCTLA-4の発現を決定する。
4)ステップ3)の細胞懸濁液を滅菌PBSに再懸濁するステップ。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液は、50×106細胞/mlで滅菌PBSに再懸濁される。任意選択のCTLA-4発現決定がステップ3に含まれている場合、残りの細胞懸濁液はステップ4で再懸濁される。
5)SCIDマウスに、ステップ4からの懸濁液の適切な量、例えば200μlをi.p.(腹腔内)注射するステップ。200μlを注射する場合、これは、10×106個の細胞/マウスに相当する。
6)ステップ5)の注射後、適切な時間に例えば1時間、SCIDマウスを、試験される抗体分子、イピリムマブ又はアイソタイプ対照モノクローナル抗体のいずれかの適切な量、例えば10mg/kgで処理するステップ。
7)処理されたSCIDマウスの腹腔内液を、ステップ6)の処理後、適切な時間例えば24時間で収集するステップ。
8)ヒトT細胞サブセットを、CD45、CD4、CD8、CD25及び/又はCD127のマーカーを使用してFACSによって同定及び定量化するステップ。
9)試験された抗体分子で処理したマウスからのT細胞サブセットの同定及び定量化の結果を、イピリムマブで処理したマウスからのT細胞サブセットの同定及び定量化の結果、並びにアイソタイプ対照モノクローナル抗体で処理したマウスからのT細胞サブセットの同定及び定量化の結果と比較するステップ。イピリムマブで処理されたマウスの腹腔内液中のCTLA-4陽性細胞の数と比較して、試験された抗体分子で処理されたマウスの腹腔内液中のCTLA-4陽性細胞の数が少ないことは、この抗体分子がイピリムマブと比較してCTLA-4陽性細胞に対する改善した枯渇効果を有することを示している。イピリムマブで処理されたマウスからの腹腔内液中のCD4陽性細胞の数と比較して、試験された抗体分子で処理されたマウスの腹腔内液中のCD4陽性細胞の数が少ないことは、この抗体分子が、イピリムマブと比較してCD4陽性細胞に対する改善した枯渇効果を有することを実証している。イピリムマブで処理されたマウスの腹腔内液中のTregの数と比較して、試験された抗体分子で処理されたマウスの腹腔内液中のTregの数が少ないことは、この抗体分子がイピリムマブと比較してTregに対する改善した枯渇効果を有すること示している。
【0079】
このインビボ試験では、いくつかの実施形態では、ステップ7でのTreg枯渇を調べることが最も興味深い。
【0080】
Treg枯渇はまた、当業者に知られているように、抗体依存性細胞貪食(ADCP)アッセイにおいて評価され得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、抗体分子は、Yervoy(イピリムマブ)と比較して、B7.1及びB7.2リガンドとのCTLA-4相互作用に対して同様の遮断効果を有する。これは、ELISAによって、又は抗CTLA-4抗体がStaphylococcusエンテロトキシンB(Staphylococcus Enterotoxin B、SEB)によるPBMCの刺激に応答してT細胞によりIL-2産生を増強する、より機能的なアッセイにおいて評価することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、ヒト抗体分子である。いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、ヒト化抗体分子である。いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、ヒト由来の抗体分子であり、これは、それが、その後修飾されたヒト抗体分子に由来することを意味する。いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、ヒトIgG1抗体である。
【0083】
いくつかの実施形態では、CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子は、ヒトIgG抗体、ヒト化IgG抗体、及びヒト起源のIgG抗体からなる群から選択される。
【0084】
いくつかの実施形態では、CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子は、フルサイズ抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、及びそれらの抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fv、scFv、Fab’、及び(Fab’)2)からなる群から選択される。
【0085】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体は、1つ若しくはいくつかの活性化Fc受容体への結合の改善を示し、かつ/又は1つ若しくはいくつかの活性化Fc受容体への結合の改善のために操作されたヒトIgG1抗体の形態の抗体であり、したがって、いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体は、Fc操作されたヒトIgG1抗体である。
【0086】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体は、マウス又はヒト化マウスIgG2a抗体である。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体は、ヒトCTLA-4と交差反応性であるマウス抗体である。
【0088】
いくつかの実施形態では、CTLA-4分子は、モノクローナル抗体又はヒト起源の抗体分子である。いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体は、ポリクローナル抗体である。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、以下の表1に示される、3つの選択的VH-CDR1配列のうちの1つ、3つの選択的VH-CDR2配列のうちの1つ、2つの選択的VH-CDR3配列のうちの1つ、2つのVL-CDR1配列のうちの1つ、2つのVL-CDR2配列のうちの1つ、及び/又は2つの選択的VL-CDR3配列のうちの1つを含む抗体分子である。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、配列番号3、6、8、10、12、及び14からなる群から選択されるCDRのうちの1~6個を含む抗体分子からなる群から選択される。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、配列番号3、6、8、10、12、及び14を有するCDRを含む抗体分子からなる群から選択される。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、CDR、VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3、VL-CDR1、及びVL-CDR3のうちの1~6個を含む抗体分子からなる群から選択され、
VH-CDR1は、存在する場合、配列番号15、22、29、及び35からなる群から選択され、
VH-CDR2は、存在する場合、配列番号16、23、30、及び36からなる群から選択され、
VH-CDR3は、存在する場合、配列番号17、24、31、及び37からなる群から選択され、
VL-CDR1は、存在する場合、配列番号10及び38からなる群から選択され、
VL-CDR2は、存在する場合、配列番号18、25、32、及び39からなる群から選択され、
VL-CDR3は、存在する場合、配列番号19、26、及び40からなる群から選択される。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、以下からなる群から選択される6個のCDRを含む抗体分子からなる群から選択される:
配列番号15、16、17、10、18、及び19、
配列番号22、23、24、10、25、及び26、
配列番号29、30、31、10、32、及び26、並びに
配列番号35、36、37、38、39、及び40。
【0094】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、配列番号15、16、17、10、18、及び19を有する6つのCDRを含む抗体分子である。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、配列番号22、23、24、10、25、及び26を有する6つのCDRを含む抗体分子である。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、配列番号20、27、33及び41からなる群から選択されるVHを含む抗体分子からなる群から選択される抗体分子である。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、配列番号21、28、34、及び42からなる群から選択されるVLを含む抗体分子からなる群から選択される抗体分子である。
【0098】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、配列番号20~21、27~28、33~34、及び41~42からなる群から選択されるVH及びVLを含む抗体分子からなる群から選択される抗体分子である。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、配列番号20の配列を有するVH、及び配列番号21の配列を有するVLを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、配列番号27の配列を有するVH、及び配列番号28の配列を有するVLを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、第1の抗体分子は、配列番号20及び27からなる群から選択される、可変重鎖を含む。いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、第1の抗体分子は、配列番号21及び28からなる群から選択される可変軽鎖を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、配列番号43の配列を有する重鎖定常領域(heavy chain constant region、CH)を含む。いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、配列番号44の配列を有する軽鎖定常領域(light chain constant region、CL)を含む。いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、配列番号43及び44の定常領域を含む。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗CTLA-4抗体分子はまた、以下の表3に示される定常領域の一方又は両方を含み得る。
【0108】
【0109】
いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体分子は、以下の表4に示されるヌクレオチド配列のうちの1つによってコードされる分子である。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
いくつかの実施形態では、抗体分子が、ヒトCTLA-4(hCTLA-4)及びカニクイザルCTLA-4(cmCTLA-4又はcyno CTLA-4)の両方に結合することが有利である。カニクイザル(crab-eating macaque)又はMacaca fascicularisとも呼ばれるカニクイザル(cynomolgus monkey)の細胞に発現するCTLA-4との交差反応性は、特に忍容性に焦点を当てた代理抗体を使用せずにサルにおける抗体分子の試験を可能にするため、有利である可能性がある。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗体分子がヒトCTLA-4(hCTLA-4)及びマウスCTLA-4(mCTLA-4)の両方に結合することが有利である。これは、代理抗体を使用する必要なしに、効果及び薬力学に特に焦点を合わせて、マウスにおける抗体分子の試験を可能にするため、これは有利である可能性がある。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗体分子は、3つ全てのhCTLA-4、cmCTLA-4及びmCTLA-4に結合する。
【0117】
いくつかの実施形態では、マウスの関連するインビボモデルにおいて抗体分子の機能的活性を試験するために、代理抗体を使用する必要がある。ヒトにおける抗体分子の効果とマウスにおける代理抗体のインビボ結果との間の比較可能性を確実にするために、ヒト抗体分子と同じインビトロ特性を有する機能的に同等の代理抗体を選択することが不可欠である。
【0118】
いくつかの実施形態では、CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子は、ヒトCD28に結合しない。
【0119】
本明細書で考察されるように、第2の抗体は、PD-1に特異的に結合し得る。いくつかの実施形態では、PD-1に特異的に結合する抗体分子は、以下の抗PD-1抗体の非限定的な例のうちの1つ以上から選択される:
●ペムブロリズマブ(現在使用が承認されている)、
●ニボルマブ(現在使用が承認されている)、
●セミプリマブ(現在使用が承認されている)、
●カムレリズマブ(現在使用が承認されている)、
●スパルタリズマブ(spartalizumab)(現在臨床開発中)、
●ドスタルリマブ(dostarlimab)(現在臨床開発中)、
●チスレリズマブ(tislelizumab)(現在臨床開発中)、
●JTX-4014(現在臨床開発中)、
●シンチリマブ(sintilimab)(IBI308)(現在臨床開発中)、
●トリパリマブ(toripalimab)(JS 001)(現在臨床開発中)、
●AMP-224(現在臨床開発中)、
●AMP-514(MEDI0680)(現在臨床開発中)。
【0120】
好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する抗体は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、又はカムレリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1に特異的に結合する抗体は、これらの抗体のうちの2つ以上の組み合わせである。好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する抗体は、ペムブロリズマブである。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体分子は、ヒト抗体分子である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体分子は、ヒト化抗体分子である。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体分子は、ヒト由来の抗体分子であり、これは、それが、その後修飾されたヒト抗体分子に由来することを意味する。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体分子は、ヒトIgG1抗体である。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、1つ若しくはいくつかの活性化Fc受容体への結合の改善を示し、かつ/又は1つ若しくはいくつかの活性化Fc受容体への結合の改善のために操作されたヒトIgG1抗体の形態の抗体であり、したがって、いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、Fc操作されたヒトIgG1抗体である。
【0125】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、マウス又はヒト化マウスIgG2a抗体である。
【0126】
いくつかの実施形態では、PD-1に特異的に結合する第2の抗体分子は、ヒト抗体分子、ヒト化抗体分子、及びヒト起源の抗体分子からなる群から選択される。
【0127】
いくつかの実施形態では、PD-1に特異的に結合する第2の抗体分子は、フルサイズ抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、及びそれらの抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fv、scFv、Fab’、及び(Fab’)2)からなる群から選択される。
【0128】
いくつかの実施形態では、PD-1に特異的に結合する第2の抗体分子は、ヒトIgG抗体、ヒト化IgG抗体、及びヒト起源のIgG抗体からなる群から選択される。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ヒトPD-1と交差反応性であるマウス抗体である。
【0130】
いくつかの実施形態では、PD-1分子は、モノクローナル抗体又はヒト起源の抗体分子である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ポリクローナル抗体である。
【0131】
いくつかの実施形態では、第2の抗体分子は、PD-L1に特異的に結合し得る。いくつかの実施形態では、PD-L1に特異的に結合する抗体分子は、以下の抗PD-L1抗体の非限定的な例のうちの1つ以上から選択される:
●アテゾリズマブ(現在使用が承認されている)、
●デュルバルマブ(現在使用が承認されている)、
●アベルマブ(現在使用が承認されている)、
●CS1001(現在臨床開発中)、
●KN035(エンバフォリマブ(envafolimab))(米国、中国、及び日本において現在臨床評価中の皮下製剤を伴うPD-L1抗体)、
●CK-301(現在、Checkpoint Therapeuticsによって臨床開発中)
【0132】
好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する抗体は、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、又はアベルマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1に特異的に結合する抗体は、これらの抗体のうちの2つ以上の組み合わせである。
【0133】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子は、ヒト抗体分子である。
【0134】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子は、ヒト化抗体分子である。
【0135】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子は、ヒト由来の抗体分子であり、これは、それが、その後修飾されたヒト抗体分子に由来することを意味する。
【0136】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体分子は、ヒトIgG1抗体である。
【0137】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、1つ若しくはいくつかの活性化Fc受容体への結合の改善を示し、かつ/又は1つ若しくはいくつかの活性化Fc受容体への結合の改善のために操作されたヒトIgG1抗体の形態の抗体であり、したがって、いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、Fc操作されたヒトIgG1抗体である。
【0138】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、マウス又はヒト化マウスIgG2a抗体である。
【0139】
いくつかの実施形態では、PD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子は、ヒト抗体分子、ヒト化抗体分子、及びヒト起源の抗体分子からなる群から選択される。
【0140】
いくつかの実施形態では、PD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子は、フルサイズ抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、及びそれらの抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fv、scFv、Fab’、及び(Fab’)2)からなる群から選択される。
【0141】
いくつかの実施形態では、PD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子は、ヒトIgG抗体、ヒト化IgG抗体、及びヒト起源のIgG抗体からなる群から選択される。
【0142】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1と交差反応性であるマウス抗体である。
【0143】
いくつかの実施形態では、PD-L1分子は、モノクローナル抗体又はヒト起源の抗体分子である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、ポリクローナル抗体である。
【0144】
本明細書に記載されるように、本発明は、CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスを含む。
【0145】
本明細書で使用される場合、「腫瘍溶解性」という用語は、分裂細胞(例えば、がん細胞などの増殖細胞)において選択的に複製する、ウイルスの能力を指し、非分裂(例えば、正常又は健康)細胞において複製を全く示さないか、又は最小限の複製を示しながら、インビトロ又はインビボでのいずれかで、当該分裂細胞の成長を遅らせ、かつ/又はそれを溶解する目的を伴う。
【0146】
「複製(Replication)」(又は「複製する(replicate)」及び「複製すること(replicating)」などの任意の形態の複製)は、核酸のレベルで、又は好ましくは感染性ウイルス粒子のレベルで起こり得るウイルスの重複(duplication)を意味する。このような腫瘍溶解性ウイルスは、現時点で同定されているウイルスの任意のメンバーから入手することができる。それは、自然に腫瘍溶解性であるか、又はDNA複製、核酸代謝、宿主向性、表面付着、病原性、溶解、及び拡散に関与するものなどの分裂細胞における腫瘍選択性及び/若しくは優先的複製を増加させるように、1つ以上のウイルス遺伝子を改変することによって操作され得る天然ウイルスであり得る(例えば、Wong et al.,2010,Viruses 2:78-106を参照されたい)。また、1つ以上のウイルス遺伝子をイベント又は組織特異的調節エレメント(例えば、プロモーター)の制御下に置くことを想定することもできる。
【0147】
例示的な腫瘍溶解性ウイルスとしては、限定されないが、レオウイルス、セネカバレーウイルス(Seneca Valley virus、SVV)、水疱性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus、VSV)、ニューカッスル病ウイルス(Newcastle disease virus、NDV)、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus、HSV)、モルビリウイルス、アデノウイルスポックスウイルス、レトロウイルス、麻疹ウイルス、フォーミーウイルス、アルファウイルス、レンチウイルス、インフルエンザウイルス、シンビスウイルス、粘液腫ウイルス、ラブドウイルス、ピコルナウイルス、コクサッキーウイルス、パルボウイルスなどが挙げられる。腫瘍溶解性ウイルスは、医薬及びウイルス学の当業者に既知である。
【0148】
いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、ヘルペスウイルスから得られる。Herpesviridaeは、全て共通の構造を共有するDNAウイルスの大きな科であり、脂質二重層膜に包まれた正二十面体キャプシド内にキャプシド形成されている、100~200個の遺伝子をコードする比較的大きな二本鎖の線形DNAゲノムで構成されている。腫瘍溶解性ヘルペスウイルスは様々な種類のHSVに由来する可能性があるが、HSV1及びHSV2が特に好ましい。ヘルペスウイルスは、腫瘍内でウイルス複製を制限するか、又は非分裂細胞内での細胞傷害性を低減するように、遺伝子改変することができる。例えば、チミジンキナーゼ(Martuza et al.,1991,Science 252:854-6)、リボヌクレオチドレダクターゼ(ribonucleotide reductase、RR)(Mineta et al.,1994,Cancer Res.54:3363-66)、又はウラシル-N-グリコシラーゼ(Pyles et al.,1994,J.Virol.68:4963-72)など、核酸代謝に関与する任意のウイルス遺伝子を不活性化することができる。別の態様は、ICP34.5遺伝子などの病原性因子をコードする遺伝子の機能に欠損があるウイルス変異体を含む(Chambers et al.,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:1411-5)。腫瘍溶解性ヘルペスウイルスの代表例としては、NV1020(例えば、Geevarghese et al.,2010,Hum.Gene Ther.21(9):1119-28)及びT-VEC(Harrington et al.,2015,Expert Rev.Anticancer Ther.15(12):1389-1403)が挙げられる。
【0149】
いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、アデノウイルスから得られる。腫瘍溶解性アデノウイルスを操作するための方法が当技術分野で利用可能である。有利な戦略には、ウイルスプロモーターを腫瘍選択的プロモーターに置き換えるか、又はE1アデノウイルス遺伝子産物を改変して、腫瘍細胞において変更されるp53又は網膜芽細胞腫(retinoblastoma、Rb)タンパク質とのそれらの結合機能を不活性化することが含まれる。自然な状況では、アデノウイルスE1B55kDa遺伝子は、別のアデノウイルス産物と協力してp53を不活性化し(p53はがん細胞で頻繁に調節不全になる)、アポトーシスを防止する。腫瘍溶解性アデノウイルスの代表的な例には、ONYX-015(例えば、Khuri et al.,2000,Nat.Med 6(8):879-85)及びOncorineとも呼ばれるH101(Xia et al.,2004,Ai Zheng 23(12):1666-70)が含まれる。
【0150】
いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ポックスウイルスである。本明細書で使用される場合、「ポックスウイルス」という用語は、Poxviridae科に属するウイルスを指し、Chordopoxviridae亜科、より好ましくはOrthopoxvirus属に属するポックスウイルスが特に好ましい。ワクシニアウイルス、牛痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、エクトロメリアウイルス、粘液腫ウイルスは、本発明に関連して特に適切である。そのようなポックスウイルスのゲノム配列は、当技術分野及び専門のデータベースで入手可能である(例えば、Genbank、それぞれ受入番号NC_006998、NC_003663、又はAF482758.2、NC_005309、NC_004105、NC_001132)。
【0151】
特定の好ましい実施形態では、そのような腫瘍溶解性ポックスウイルスは、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスである。ワクシニアウイルスは、ウイルスが宿主細胞機構から独立して複製することを可能にする多数のウイルス酵素及び因子をコードする200kbの二本鎖DNAゲノムを特徴とするポックスウイルス科のメンバーである。ワクシニアウイルス粒子の大部分は、細胞内にあり(細胞内成熟ビリオンの場合はIMV)、単一の脂質エンベロープを有し、溶解するまで感染細胞のサイトゾルに留まる。他の感染形態は、感染した細胞を溶解せずに発芽する二重エンベロープ粒子(細胞外エンベロープビリオンのEEV)である。ワクシニアウイルス株に由来する可能性があるが、エルストリー(Elstree)、ワイス(Wyeth)、コペンハーゲン(Copenhagen)、リスター(Lister)、ウエスタンリザーブ(Western Reserve)株が特に好ましい。本明細書で使用される遺伝子命名法は、特に明記しない限り、コペンハーゲンワクシニア株の命名法である。ただし、コペンハーゲンと他のワクシニア株との間の対応は、一般に文献で入手できる。
【0152】
好ましくは、そのような腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、1つ以上のウイルス遺伝子を変更することによって改変される。当該改変は、好ましくは、合成の欠如、又は未改変遺伝子によって通常の条件下で産生されるタンパク質の活性を保証することができない欠陥ウイルスタンパク質の合成をもたらす。例示的な改変は、DNA代謝、宿主毒性、IFN経路(例えば、Guse et al.,2011,Expert Opinion Ther.11(5):595-608)などに関与するウイルス遺伝子を変更することを目的とする文献に開示されている。ウイルス遺伝子座を変更するための改変は、ウイルス遺伝子又はその調節エレメント内の1つ以上のヌクレオチド(隣接しているかどうかにかかわらず)の欠失、変異及び/又は置換を包含する。改変は、従来の組換え技術を使用して当業者に知られているいくつかの方法によって行うことができる。
【0153】
より好ましくは、そのような腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、チミジンキナーゼをコードする遺伝子(遺伝子座J2R)を変更することによって改変される。チミジンキナーゼ(thymidine kinase、TK)酵素は、デオキシリボヌクレオチドの合成に関与している。TKは、正常細胞でのウイルス複製に必要であり、それはこれらの細胞が一般にヌクレオチド濃度が低いためであり、一方、高いヌクレオチド濃度を含有する分裂細胞では不要である。
【0154】
代替的に、又は組み合わせて、そのような腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、リボヌクレオチドレダクターゼ(ribonucleotide reductase、RR)をコードする少なくとも1つの遺伝子又は両方の遺伝子を変更することによって改変される。自然な状況では、この酵素はリボヌクレオチドのデオキシリボヌクレオチドへの還元を触媒し、これは、DNA生合成の重要なステップを表している。ウイルス酵素は、サブユニット構造が哺乳類の酵素と類似しており、I4L及びF4L遺伝子座によってそれぞれコードされるR1及びR2として設計された2つの異種サブユニットで構成されている。本発明の関連では、I4L遺伝子(R1大サブユニットをコードする)又はF4L遺伝子(R2小サブユニットをコードする)のいずれか又は両方が不活性化され得る(例えば、国際公開第2009/065546号及びFoloppe et al.,2008,Gene Ther.,15:1361-71に記載される)。J2R、I4L及びF4L遺伝子の配列、並びに様々なポックスウイルスのゲノムにおけるそれらの位置は、公開データベースで入手できる。
【0155】
したがって、いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、チミジンキナーゼ(TK)及び/又はリボヌクレオチドレダクターゼ(RR)活性に欠陥がある。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、チミジンキナーゼ(TK)及び/又はリボヌクレオチドレダクターゼ(RR)活性に欠陥があるワクシニアウイルスである。
【0156】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、本明細書において定義される第1の抗体分子をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、上記の表2に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、上記の表2に示される配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、上記の表2に示される配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、上記の表2に示される配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、配列番号20及び番号21をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、配列番号27及び番号28をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、配列番号33及び番号34をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、配列番号41及び番号42をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、上記の表4に示される配列と少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、上記の表4に示される配列と少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、上記の表4に示される配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、上記の表4に示される配列と少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号45~52からなる群から選択される配列を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、配列番号45及び46を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、配列番号47及び48を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、配列番号49及び50を含む。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、配列番号51及び52を含む。
【0161】
一部の腫瘍溶解性ウイルスは、完全長ヒト抗体配列の統合に対応するのに十分な大きさのDNA挿入を受け入れる能力を有する。弱毒化ワクシニアウイルス及び単純ヘルペスウイルスは、治療用腫瘍溶解性ウイルスの例であり、ウイルスのゲノムは、完全長IgG抗体配列の統合を可能にするのに十分な大きさである(Chan and McFadden 2014,Bommareddy,Shettigar et al.2018)。完全長IgG抗体は、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスにうまく統合されており、ウイルス感受性宿主細胞、例えば、がん細胞の感染時に完全長IgG抗体の発現及び細胞外放出(産生)をもたらす(Kleinpeter,et al.2016)。アデノウイルスはまた、細胞感染時に機能的に産生及び分泌される完全長IgG抗体をコードするように操作することもできる(Marino,et al.2017)。
【0162】
好ましい実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス)であって、TK活性(J2R遺伝子座の変更から生じる)又はTK活性及びRR活性の両方(J2R遺伝子座並びにRRをコードするI4L及び/又はF4L遺伝子座のうちの少なくとも1つの両方の変更から生じる)に欠陥があり、かつ(a)配列番号20及び番号21をコードするヌクレオチド配列、又は(b)配列番号27及び番号28をコードするヌクレオチド配列、又は(c)配列番号33及び番号34をコードするヌクレオチド配列、又は(d)配列番号41及び番号42をコードするヌクレオチド配列を含む、ポックスウイルスである。
【0163】
いくつかの実施形態では、TK及びRR活性は、関連する遺伝子座(すなわち、J2R、I4L、及び/又はF4L遺伝子座)内に第1の抗体分子をコードするヌクレオチド配列を導入することによって破壊され得る。いくつかの好ましい実施形態では、ウイルスは、ウイルスJ2R遺伝子座に挿入された第1の抗体分子の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含み、かつ/又はウイルスI4L遺伝子座に挿入された第1の抗体分子の軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0164】
適切な場合、本明細書に記載の腫瘍溶解性ウイルスに挿入されたヌクレオチド配列が、発現、輸送及び生物学的活性を促進するための追加の調節エレメントを含むことが有利であり得る。例えば、シグナルペプチドは、プロデューサ細胞(例えば、感染細胞)の外側への分泌を促進するために含まれ得る。シグナルペプチドは通常、Metイニシエーターの直後にコードされたポリペプチドのN末端に挿入される。シグナルペプチドの選択は広く、当業者が利用できる。例えば、別の免疫グロブリン(例えば、重鎖IgG)に由来するシグナルペプチドを本発明の状況下で使用して、本明細書に記載の抗CTLA4抗体をプロデューサ細胞の外に分泌させることができる。説明のために、IgG由来ペプチドシグナルを備えた本明細書に記載の4-E03抗体の軽鎖及び重鎖を含む配列番号53及び配列番号54を参照することができる。
【0165】
特に好ましい腫瘍溶解性ウイルスは、ワクシニアウイルス(例えば、コペンハーゲン株)であって、TK及びRR活性(J2R遺伝子座及びI4L遺伝子座の両方の変化に起因する)の両方に欠陥があり、かつ配列番号20及び配列番号21又は配列番号53及び配列番号54をコードするヌクレオチド配列を含む、ワクシニアウイルスである。
【0166】
いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、免疫調節性ポリペプチド(すなわち、直接的又は間接的のいずれかで免疫応答を刺激することに関与するポリペプチド)をコードするヌクレオチド配列などの治療的な関心の追加のヌクレオチド配列を更に含むことができる。適切な免疫調節性ポリペプチドの代表的な例には、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte macrophage colony stimulating factor、GM-CSF)、特にヒト、非ヒト霊長類又はマウスGM-CSFが特異的に好ましいサイトカイン及びケモカインが含まれるが、これらに限定されない。
【0167】
したがって、いくつかの実施形態は、CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス)は、GM-CSF、好ましくはヒトGM-CSF(例えば、配列番号55若しくは配列番号56を有する)又はマウスGM-CSF(例えば、配列番号57若しくは配列番号58を有する)をコードするヌクレオチド配列を更に含む。
【0168】
追加のヌクレオチド配列は、当技術分野でアクセス可能な配列データ及び本明細書で提供される情報を使用して、標準的な分子生物学技術(例えば、PCR増幅、cDNAクローニング、化学合成)によって容易に得ることができる。特に好ましい腫瘍溶解性ウイルスは、ワクシニアウイルス(例えば、コペンハーゲン株)であって、TK及びRR活性(J2R遺伝子座及びI4L遺伝子座の両方の変化に起因する)の両方に欠陥があり、かつ配列番号20及び配列番号21又は配列番号53及び配列番号54をコードするヌクレオチド配列、並びにGM-CSFをコードするヌクレオチド配列を含み、ヒトGM-CSF(例えば、配列番号55又は配列番号56を有する)又はマウスGM-CSF(例えば、配列番号57又は配列番号58を有する)が特に好ましい、ワクシニアウイルスである。
【0169】
以下の表は、本明細書中で言及されるGM-CSFの配列を提供する。
【0170】
【0171】
更に、そのような腫瘍溶解性ウイルスに挿入されるヌクレオチド配列は、1つ以上のコドンを改変することによって、特定の宿主細胞又は対象において高レベルの発現を提供するために最適化することができる。コドン使用頻度の最適化に加えて、集中領域に存在するまれな非最適コドンのクラスター化を防止するため、及び/又は発現レベルに悪影響を与えると予想される「負の」配列要素を抑制又は改変するために、様々な改変も想定され得る。そのような負の配列エレメントは、非常に高い(80%超)若しくは非常に低い(30%未満)GC含量、ATリッチ若しくはGCリッチな配列ストレッチ、不安定な順方向若しくは逆方向反復配列、R A二次構造、及び/又は内部TATAボックス、カイ部位、リボソーム進入部位、及び/又はスプライシングドナー/アクセプター部位などの内部潜在性調節エレメントを有する領域を含むが、これらに限定されない。
【0172】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、宿主細胞又は対象におけるそれらの適切な発現のための適切な調節エレメントの制御下に置かれる。本明細書で使用される場合、「調節エレメント」という用語は、その複製、重複、転写、スプライシング、翻訳、安定性、及び/又は発現細胞内外の輸送を含む、所与の宿主細胞又は対象におけるコード化ヌクレオチド配列の発現を可能にし、寄与し、又は調節する任意のエレメントを指す。調節エレメントの選択は、ヌクレオチド配列自体、それが挿入されるウイルス、宿主細胞又は対象、所望の発現レベルなどのような因子に依存し得ることが当業者によって理解されるであろう。プロモーターは、特別に重要である。本発明の状況において、それは、多くの種類の宿主細胞で制御するか、又はある特定の宿主細胞に特異的であるか、又は特定の事象若しくは外因性因子(例えば、温度、栄養添加物、ホルモンなどによる)に応答してか、若しくはウイルスサイクルの段階(例えば、後期又は初期)に従って調節されるヌクレオチド配列の構成的指示発現であり得る。ウイルス媒介性発現に適応したプロモーターは当技術分野で知られている。
【0173】
腫瘍溶解性ポックスウイルスによる発現の代表的な例としては、ワクシニアp7.5K、pH5.R、p11K7.5、TK、p28、p11、pB2R、pA35R、K1L、及びpSE/Lプロモーター(Erbs et al.,2008,Cancer Gene Ther.15(1):18-28、Orubu et al.2012,PloS One 7:e40167)、初期/後期キメラプロモーター、及び合成プロモーター(Chakrabarti et al.,1997,Biotechniques 23:1094-7、Hammond et al,1997,J.Virol Methods 66:135-8、及びKumar and Boyle,1990,Virology 179:151-8)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、本明細書に記載の抗体の軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列は、それぞれ、同じ転写強度を有するプロモーターの制御下に置かれ、好ましくは、同じプロモーター(例えば、配列番号59に記載されているようなp7.5K又は配列番号60に記載されているようなpH5.R)の制御下に置かれて、両方の鎖に対して同様のレベルの発現を取得し、したがって、ヘテロ四量体タンパク質としての抗体の最適な組み立てを取得する(すなわち、過度の会合していない鎖を回避する)。追加のヌクレオチド配列(例えば、GM-CSFをコードする)は、異なるプロモーター(例えば、配列番号61に記載されているようなpSE/L)の下に置くことができる。
【0174】
以下の表は、上記のプロモーターの配列を提供する。
【0175】
【0176】
そのような腫瘍溶解性ウイルスのゲノムへのヌクレオチド配列(おそらく適切な調節エレメントを備えている)の挿入は、適切な制限酵素を使用するか、又は好ましくは相同組換えによる、従来の手段によって行われる。ヌクレオチド配列は、ウイルスゲノムの任意の位置に独立して挿入することができる。様々な挿入部位が、例えば、そのような腫瘍溶解性ウイルスのゲノムの非必須ウイルス遺伝子、遺伝子間領域、又は非コード部分を考慮することができる。J2R遺伝子座及び/又はI4L遺伝子座は、ポックスウイルスである腫瘍溶解性ウイルス(例えば、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス)に特に適している。ヌクレオチド配列のウイルスゲノムへの挿入後、挿入部位のウイルス遺伝子座は、少なくとも部分的に欠失し得る。一実施形態では、この欠失又は部分的欠失は、完全に又は部分的に欠失した遺伝子座によってコードされるウイルス遺伝子産物の抑制された発現をもたらし、当該ウイルス機能の欠損ウイルスをもたらし得る。特に好ましい腫瘍溶解性ウイルスは、J2R遺伝子座に挿入された重鎖をコードするカセット及びI4L遺伝子座に挿入された軽鎖をコードするカセットを含む、TK及び/又はRR欠損ワクシニアウイルスである。追加のGM-CSFをコードするヌクレオチド配列をコードするカセットは、ウイルスゲノムの別の位置、又はJ2R若しくはI4L遺伝子座に挿入することができ、I4L遺伝子座での挿入が好ましい。
【0177】
本発明はまた、本明細書に記載のそのような腫瘍溶解性ウイルス、特に腫瘍溶解性ポックスウイルスを適切な宿主細胞(プロデューサ細胞)において産生するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、そのような方法は、ウイルスゲノムと、挿入部位の上流及び下流にそれぞれ存在するウイルス配列の5’及び3’に隣接して挿入されるヌクレオチド配列(おそらく調節エレメントを有する)を含むトランスファープラスミドとの間の相同組換えの1つ以上のステップを含む。当該トランスファープラスミドは、日常的な技術によって(例えば、トランスフェクションによって)産生され、宿主細胞に導入され得る。ウイルスゲノムは、感染によって宿主細胞に導入され得る。各隣接ウイルス配列のサイズは、ヌクレオチド配列の各側で少なくとも100bpから最大で1500bpまで変化し得る(好ましくは200~550bp、より好ましくは250~500bp)。そのような腫瘍溶解性ウイルスの産生を可能にする相同組換えは、好ましくは、培養細胞株(例えば、HeLa、Vero)又は発育卵から得られたニワトリ胚性線維芽細胞(chicken embryonic fibroblast、CEF)細胞において行われる。
【0178】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列及びおそらく追加のヌクレオチド配列(例えば、GM-CSF)をコードする抗CTLA4を組み込んだ腫瘍溶解性ウイルスの識別は、選択及び/又は検出可能な遺伝子の使用によって容易にできる。
【0179】
好ましい実施形態では、トランスファープラスミドは、選択培地(例えば、ミコフェノール酸、キサンチン、及びヒポキサンチンの存在下)での成長を可能にするGPT遺伝子(グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする)、又はGFP、e-GFP、若しくはmCherryなどの検出可能な遺伝子産物をコードする検出可能な遺伝子が特に好ましい、選択マーカーを更に含む。更に、当該選択又は検出可能な遺伝子において二本鎖切断を提供することができるエンドヌクレアーゼの使用も考慮され得る。当該エンドヌクレアーゼは、タンパク質の形態にあり得るか、又は発現ベクターによって発現され得る。
【0180】
一旦生成されると、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、感染性粒子の産生及び回収を可能にするために、適切な条件下でトランスフェクト又は感染した宿主細胞を培養することを含む従来の技術を使用して、適切な宿主細胞内で増幅することができる。
【0181】
本発明はまた、本明細書に記載の腫瘍溶解性ウイルスを産生するための方法に関する。好ましくは当該方法は、a)プロデューサ細胞株を調製するステップと、b)調製したプロデューサ細胞株に腫瘍溶解性ウイルスをトランスフェクト又は感染させるステップと、c)トランスフェクト又は感染したプロデューサ細胞株を適切な条件下で培養して、ウイルスの産生を可能にするステップと、d)当該プロデューサ細胞株の培養物から産生されたウイルスを回収するステップと、任意選択で、e)当該回収されたウイルスを精製するステップと、を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、プロデューサ細胞は、哺乳類(例えば、ヒト又は非ヒト)細胞、例えば、HeLa細胞(例えば、ATCC-CRM-CCL-2(商標)又はATCC-CCL-2.2(商標))、HER96、PER-C6(Fallaux et al.,1998,Human Gene Ther.9:1909-17)、ハムスター細胞株、例えば、BHK-21(ATCC CCL-10)など、及び鳥類細胞、例えば、国際公開第2005/042728号、同第2006/108846号、同第2008/129058号、同第2010/130756号、同第2012/001075に記載されているものなど、並びに受精卵から得られたニワトリ胚から調製された初代ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)からなる群から選択される。プロデューサ細胞は、必要に応じて、血清及び/又は好適な成長因子を補充しても、しなくてもよい(例えば、動物又はヒト由来の産物を含まないことが好ましい化学的に定義された培地)、適切な培地で培養することが好ましい。適切な培地は、プロデューサ細胞に応じて当業者によって容易に選択され得る。そのような培地は市販されている。プロデューサ細胞は、感染前に、+30℃~+38℃(より好ましくは約+37℃)の温度で1~8日間培養することが好ましい。必要に応じて、細胞の総数を増やすために、1~8日の継代を数回行うことができる。
【0183】
ステップb)では、プロデューサ細胞の生産的な感染を可能にするために、適切な感染多重度(multiplicity of infection、MOI)を使用して、プロデューサ細胞を適切な条件下で腫瘍溶解性ウイルスに感染させる。説明のために、適切なMOIは10-3~20の範囲であり、特に好ましいMOIは、0.01~5、より好ましくは0.03~1を含む。感染ステップは、プロデューサ細胞の培養に使用される培地と同じであっても異なっていてもよい培地で実施される。
【0184】
次に、ステップc)では、感染したプロデューサ細胞を、子孫ウイルス粒子が産生されるまで、当業者に周知の適切な条件下で培養する。感染したプロデューサ細胞の培養はまた、好ましくは、プロデューサ細胞の培養及び/又は感染ステップに使用される培地/培地(複数)と同じ又は異なっていてもよい培地で、+32℃~+37℃の温度で1~5日間行われる。
【0185】
ステップd)では、ステップc)で生成されたウイルス粒子を、培養上清及び/又はプロデューサ細胞から収集する。プロデューサ細胞からの回収には、プロデューサ細胞膜の破壊を可能にしてウイルスの遊離を可能にするステップが必要な場合がある。プロデューサ細胞膜の破壊は、凍結/解凍、低張溶解、超音波処理、マイクロフルイダイゼーション、高剪断(高速とも呼ばれる)均質化又は高圧均質化を含むがこれらに限定されない、当業者に周知の様々な技術によって誘発することができる。
【0186】
回収された腫瘍溶解性ウイルスは、用量で分配され、本明細書に記載されるように使用される前に、少なくとも部分的に精製され得る。清澄化、酵素処理(例えば、エンドヌクレアーゼ、プロテアーゼなど)、クロマトグラフィー、及び濾過ステップを含む、膨大な数の精製ステップ及び方法が当技術分野で利用可能である。適切な方法は、当該技術分野において記載されている(例えば、国際公開第2007/147528号、国際公開第2008/138533号、同第2009/100521号、同第2010/130753号、同第2013/022764号)。
【0187】
一実施形態では、本発明はまた、本明細書に記載の第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスに感染した細胞を提供する。
【0188】
CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスと、PD-1及び/又はPD-1に特異的に結合する第2の抗体分子との組み合わせは、患者におけるがんの治療に使用するためのものであり、がんは、冷たい腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなる。
【0189】
対象は、哺乳類又は非哺乳類である場合を含む。好ましくは、ウマ、又はウシ、又はヒツジ、又はブタ、又はラクダ、又はイヌ、又はナコなどの哺乳類対象はヒトであるか、あるいは非哺乳類である。最も好ましくは、哺乳類対象はヒトである。
【0190】
患者は、彼らががんを有することを示唆する徴候又は症状を呈し得る。「呈する」とは、対象が、がん症状及び/若しくはがん診断マーカーを表すこと、並びに/又はがん症状及び/若しくはがん診断マーカーを測定、及び/又は評価、及び/又は定量化できることを含む。
【0191】
医薬当業者にとって、がん症状及びがん診断マーカーがどのようなものであるか、並びにがん症状の重症度に低減若しくは増加があるかどうか、又はがん診断マーカーに低減若しくは増加があるかどうかを測定及び/又は評価及び/又は定量化する方法、並びにそれらのがん症状及び/又はがん診断マーカーをどのように使用して、がんに関する予後診断を形成することができるかは、容易に明らかであろう。
【0192】
がん治療は、多くの場合、一連の治療として投与され、すなわち、治療剤は、ある期間にわたって投与される。一連の治療の時間的な長さは、他の理由の中でもとりわけ、投与される治療剤のタイプ、治療されるがんのタイプ、治療されるがんの重篤度、並びに対照の年齢及び健康状態を含む多数の要因に依存する。
【0193】
「治療中」とは、対象が現在一連の治療を受けていること、及び/又は治療剤を受けていること、及び/又は一連の治療剤を受けていることを含む。
【0194】
上述したように、CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスと、PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子との組み合わせは、具体的には、患者におけるがんの治療に使用するためのものであり、がんは、冷たい腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなる。
【0195】
したがって、いくつかの実施形態では、冷たい腫瘍は、第1及び第2の抗体分子によって治療される。
【0196】
当業者は、冷たい腫瘍が「治療」されたかどうかを決定することは、任意の他のタイプの腫瘍に使用される同じ種類の決定を含むことを理解するであろう。例えば、当業者は、CTスキャンを使用して測定することができる腫瘍縮小(注射された腫瘍及び注射されていない腫瘍の両方における)、及び/又は無増悪生存、及び/又は全生存などの徴候を探すであろう。他の場合では、これは、対象によって報告される症状の重症度の低減などの、より主観的な効果であり得る。治療抗体の投与に応答した対象における治療効果の測定は、当該分野で周知である。
【0197】
「冷たい腫瘍」とは、炎症性免疫細胞、最も顕著にはT細胞、特にCD8++T細胞による浸潤が不十分な腫瘍を指す。腫瘍免疫浸潤、特にCD8+T細胞浸潤は、異なる組織学的特徴及び解剖学的位置を有するがんにおけるより長い無病生存(disease-free survival、DFS)及び/又は全生存(overall survival、OS)と相関することが広く実証されているので、冷たい腫瘍は、臨床的に高度に関連している。これは、黒色腫、ほとんどの扁平上皮がん(squamous cell carcinomas、SCC)、肺大細胞がん、及びいくつかのタイプの腺がんを含む原発及び転移(Bruni et al.,2020)の両方の状況において実証されており(Galon et al.,2006、Fridman et al.,2012、Fridman et al.,2017、Hu et al.,2018)、ICBに対する反応性と相関し、それを予測する(Galon and Bruni,2019)と実証されている。
【0198】
例えば、最近、CD8+T細胞密度は、ヒト固形がん患者における黒色腫(Tumeh et al.2014)、腎細胞がん(McDermott,Huseni et al.2018)及びNSCLC(Thommen,Koelzer et al.2018)において、抗CTLA-4及びPD-1/PD-L1に対する抗体によるICBへの応答/進行と相関することが示された。同様に、前臨床マウス腫瘍モデルは、免疫浸潤に関して量的及び質的に異なり、B16/C57BL6モデルは、CD8+Tを含む免疫細胞浸潤に関して特に乏しいことが十分に理解されている(Mosely et al.2017)。更に、ヒト「冷たい腫瘍」と同様に、B16/C57BL6モデルは、抗CTLA-4及び/又は抗PD-1/L1による全身性ICBに対して特に耐性であり、全身性ICBに対する「冷たい腫瘍」耐性を克服するのを助ける療法を特定するのを助けるのに有用である。
【0199】
PD-L1の腫瘍細胞、免疫細胞、又は複合細胞レベルを定量化する臨床的に関連するアッセイが考案されており、抗PD-1/L1 ICB試薬、例えば、ペムブロリズマブによって治療する患者を識別するのを助けるために臨床において使用される(KEYTRUDA(登録商標)Section 2.1の処方情報を参照されたく、これは、療法に対する患者を選択する方法を記載する。https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2021/125514s096lbl.pdfで利用可能)。
【0200】
マルチカラー免疫蛍光に基づく最近のデータは、黒色腫において、浸潤縁CD8+T細胞密度を最良の完全予測パラメータとして、及び腫瘍CD8+T細胞密度を、PD-1遮断療法に対する応答/進行の2番目に良好な予測因子として特定した(Tumeh et al.,2014)。更に、主成分分析は、CD8浸潤、PD-1、及びPD-L1が治療転帰と著しく相関することを実証した。これらのデータは、CD8+T細胞密度が、冷たい腫瘍を有する患者を識別するための有用な方法であり得ることを裏付ける。最近、がん患者の腫瘍におけるCD3+ CD8+T細胞浸潤をインサイチュで定量化する「イムノスコア(Immunoscore)」と名付けられた免疫ベースのアッセイが開発された(Bruni et al.,2020、Galon et al.,2006、Lanzi et al.,2020)。
【0201】
イムノスコアは、免疫組織化学及びデジタル病理ベーススコアリングシステムであり、腫瘍及びその浸潤縁におけるCD3+及びCD8+T細胞の密度を評価する。簡潔に述べると、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍ブロックの2つの隣接するスライドを、自動染色装置において抗CD3抗体及び抗CD8抗体で染色する。次いで、スライドをスキャンし、デジタル画像を使用して、デジタル病理ソフトウェアを用いて目的の細胞の密度を定量化する。密度は、最終的に、低イムノスコア(I0)から高イムノスコア(I4)の範囲のイムノスコアに変換される。
【0202】
イムノスコアを「熱い及び冷たい腫瘍」の概念に連携させるアプローチが、Galon及びBruniによって提案されている(Galon et al.,2019、Angell et al.,2020)。このアプローチを使用して、腫瘍を、T細胞浸潤に基づいて4つのカテゴリーに分類した:熱い免疫腫瘍、変化し免疫抑制された免疫腫瘍、変化し排除された免疫腫瘍、及び冷たい腫瘍。
【0203】
これらの4つのタイプの腫瘍の特徴は、Galon et al.,2019のBox 1に詳述されており、これは、以下の特徴に従って腫瘍タイプを記載している。
1. 熱い免疫腫瘍(本明細書において熱い腫瘍とも称される)
-高度のT細胞及び細胞傷害性T細胞浸潤(高イムノスコア)
-チェックポイント活性化(プログラム細胞死タンパク質1(programmed cell death protein 1、PD-1)、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(cytotoxic T lymphocyte-associated antigen 4、CTLA-4)、T細胞免疫グロブリンムチン受容体3(T cell immunoglobulin mucin receptor 3、TIM-3)、及びリンパ球活性化遺伝子3(lymphocyte activation gene 3、LAG-3))、又はそうでなければ損なわれたT細胞機能(例えば、細胞外カリウム駆動T細胞抑制)
2. 変化し免疫抑制された免疫腫瘍
-存在しないわけではないが、不十分なT細胞及び細胞傷害性T細胞浸潤(中間イムノスコア)
-可溶性の抑制性メディエータ(トランスフォーミング成長因子-β(transforming growth factor-β、TGFβ)、インターロイキン10(interleukin 10、IL-10)、及び血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor、VEGF))の存在
-免疫抑制細胞(骨髄由来サプレッサー細胞及び調節性T細胞)の存在
-T細胞チェックポイント(PD-1、CTLA-4、TIM-3、及びLAG-3)の存在
3. 変化し排除された免疫腫瘍
-腫瘍床内にT細胞浸潤がない腫瘍境界(浸潤縁)でのT細胞の蓄積(中間イムノスコア)
-発がん経路の活性化
-腫瘍微小環境のエピジェネティック制御及び再プログラミング
-異常な腫瘍血管系及び/又は間質
-低酸素
4. 冷たい免疫腫瘍(本明細書では冷たい腫瘍とも呼ばれる)
-腫瘍内及び腫瘍端にT細胞が存在しない(低イムノスコア)
-失敗したT細胞プライミング(低い腫瘍突然変異負荷、不十分な抗原提示、及びT細胞死滅に対する固有の非感受性)。
【0204】
したがって、いくつかの実施形態では、患者は、上記で定義されるような、変化し免疫抑制された免疫腫瘍、変化し排除された免疫腫瘍、又は冷たい免疫腫瘍の定義に適合する腫瘍を有する場合、冷たい腫瘍を有するとみなされる。
【0205】
上記のタイプの腫瘍の各々は、T細胞チェックポイント阻害に対して異なるレベルの応答を有し、冷たい免疫腫瘍は、最も低いレベルの応答(応答なし)を有し、その後に、それぞれ、変化し排除された免疫腫瘍、及び変化し免疫抑制された免疫腫瘍(最適以下のレベルの応答を有する)が続くことが理解されるであろう。
【0206】
「冷たい腫瘍」、すなわち、免疫細胞(例えば、CD3+及びCD8+T細胞)による浸潤が不十分な腫瘍の本明細書で使用される定義は、古典的な冷たい免疫腫瘍、変化し排除された腫瘍、及び変化し免疫抑制された腫瘍の両方を包含するが、これは、これらのカテゴリーの全てが、T細胞浸潤が不十分な(変化した免疫)、又は存在しない(排除され、冷たい免疫)ことによって定義されるためである。これは、イムノスコアI、II、又はIIIを有するが、IVを有しない(後者はT細胞炎症性腫瘍である)がん患者と同等である。そのため、本発明は、イムノスコアI、II、及びIIIを有するが、IVを有しない患者に適用可能である。
【0207】
したがって、いくつかの実施形態では、腫瘍がI、又はII、又はIIIのイムノスコアを有する場合、患者は、冷たい腫瘍を有するとみなされる。
【0208】
当業者は、イムノスコア又はT細胞密度以外の他のアッセイ及び技術が、特に耐性のある「冷たいタイプ」のがんを識別するのに役立ち得ることを理解するであろう。
【0209】
いくつかの実施形態では、冷たい腫瘍は、アネルギー化(又はアネルギー性)リンパ球を有する。これは、リンパ球が抗原に応答できないことを意味する。アネルギー性リンパ球を決定する方法は、当技術分野で周知である。
【0210】
いくつかの他の実施形態では、冷たい腫瘍は、低レベルのCD3陽性細胞を有する。例えば、冷たい腫瘍は、10%未満のCD3陽性細胞(腫瘍中の全細胞の百分率として)、すなわち、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満のCD3陽性細胞を有し得るか、又はCD3陽性細胞を有しない。CD3陽性細胞の百分率を測定する方法は、当技術分野において公知である。
【0211】
上述のように、本明細書に記載される冷たい腫瘍は、典型的には免疫系によってあまり標的化されない腫瘍である。いくつかの代替又は追加の実施形態では、そのような冷たい腫瘍は、以下のタイプに分類することもできる。
-免疫砂漠腫瘍、すなわち、腫瘍浸潤T細胞の欠如に起因する、腫瘍における免疫応答の完全な欠如が存在する。
-免疫排除腫瘍、すなわち、応答性T細胞は、産生されるが、腫瘍に浸透して、それに対する応答を開始することができず、T細胞は、腫瘍末梢に存在し得る。
-免疫浸潤が不十分な腫瘍、すなわち、腫瘍微小環境への免疫細胞(T細胞)の浸透レベルが低下している。
【0212】
本明細書で使用される「冷たい腫瘍」には、免疫砂漠腫瘍、免疫排除腫瘍、及び免疫浸潤が不十分な腫瘍のうちの全ても含まれる。これらの定義は、上記の冷たい腫瘍(変化し免疫抑制された腫瘍、変化し排除された腫瘍、又は冷たい免疫腫瘍として)の定義の代わりに、又はそれに加えて使用され得る。いくつかの実施形態では、変化し免疫抑制された免疫腫瘍は、免疫浸潤が不十分な腫瘍に対応する。いくつかの実施形態では、変化し排除された免疫腫瘍は、免疫排除腫瘍に対応する。いくつかの実施形態では、冷たい免疫腫瘍は、免疫砂漠腫瘍に対応する。
【0213】
「冷たい腫瘍を含むか、又は冷たい腫瘍からなる」とは、冷たい腫瘍及び冷たくない腫瘍から構成され得るがんを指す。例えば、これは、元のがん(冷たい腫瘍であり得る)が転移し、冷たい腫瘍ではない二次腫瘍を形成した場合に起こり得る。本明細書における患者は、複数の腫瘍を有してもよく、そのうちの1つのみが、本発明が有益であるための冷たい腫瘍の要件を満たす必要がある。他の実施形態では、患者は、冷たい腫瘍とみなされる単一の腫瘍を有し得る。
【0214】
これらの「冷たい腫瘍」サブタイプに分類され得るがんとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、結腸直腸がん、肝細胞がん、肺がん、膀胱がん、腎臓がん、胃がん、子宮頸がん、メルケル細胞がん、卵巣がん、頭頸部がん、中皮腫、又は乳がん。
【0215】
上述のがんのいずれもが周知されており、症状及びがん診断マーカーは、それらのがんを治療するのに使用される治療剤であるため、十分に説明されている。したがって、上記の種類のがんを治療するために用いられる症状、がん診断マーカー及び治療剤は、医薬当業者には既知であろう。
【0216】
大多数のがんの診断、予後診断、進行の臨床的定義は、ステージ分類として既知である、ある特定の分類による。それらのステージ分類システムは、いくつかの異なるがん診断マーカー及びがん症状を照合して、がんの診断、及び/又は予後診断、及び/又は進行の概要を提供するように機能する。ステージ分類システムを使用して、がんの診断、及び/又は予後診断、及び/又は進行を評価する方法、並びにそのためにどのがん診断マーカー及びがん症状を使用するべきかということは、腫瘍学当業者には既知であろう。
【0217】
「がんのステージ分類」とは、ステージ0、ステージI、ステージII、ステージIII、及びステージIVを含む、Raiステージ分類、並びに/又はステージA、ステージB、及びステージCを含むBinetステージ分類、並びに/又はステージI、ステージII、ステージIII、及びステージIVを含む、Ann Arbourステージ分類が含まれる。
【0218】
がんは、細胞の形態に異常を引き起こし得ることが既知である。これらの異常は、多くの場合、ある特定のがんで再生可能な方法で生じ、これは、形態におけるこれらの変化の検査(そうでなければ、組織学的検査としても既知である)は、がんの診断又は予後診断に使用することができることを意味する。細胞の形態を検査するために試料を視覚化し、視覚化用に試料を準備するための技法は、例えば、当技術分野で公知であり、例えば、光学顕微鏡法又は共焦点顕微鏡法である。
【0219】
「組織学的検査」とは、小さな成熟リンパ球の存在、及び/又は細胞質の境界が狭い小さな成熟リンパ球の存在、識別可能な核小体が欠如する密な核を有する小さな成熟リンパ球の存在、及び/又は細胞質の境界が狭く、識別可能な核小体が欠如する密な核を有する小さな成熟リンパ球の存在、及び/又は異型細胞、及び/若しくは切断細胞、及び/若しくは前リンパ球の存在が挙げられる。
【0220】
がんは、細胞のDNAの変異の結果であり、これによって細胞死を回避する細胞、又は制御不能な増殖に至り得ることは公知である。したがって、これらの変異を検査すること(細胞遺伝学的検査としても既知である)は、がんの診断及び/又は予後診断を評価するための有用なツールであり得る。この例は、慢性リンパ球性白血病の特徴である染色体上の位置13q14.1の欠失である。細胞における変異を試験するための技術は、当該分野で周知であり、例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(fluorescence in situ hybridization、FISH)がある。
【0221】
「細胞遺伝学的検査」とは、細胞内のDNA、具体的には染色体の検査を含む。細胞遺伝学的検査を使用して、難治性がん及び/又は再発したがんの存在に関連し得る、DNAの変化を識別することができる。そのようなものとしては、染色体13の長腕における欠失、及び/又は染色体位置13q14.1の欠失、及び/又は染色体12のトリソミー、及び/又は染色体12の長腕における欠失、及び/又は染色体11の長腕における欠失、及び/又は11qの欠失、及び/又は染色体6の長腕における欠失、及び/又は6qの欠失、及び/又は染色体17の短腕における欠失、及び/又は17pの欠失、及び/又はt(11:14)転座、及び/又は(q13:q32転座、及び/又は抗原遺伝子受容体再配列、及び/又はBCL2再配列、及び/又はBCL6再配列、及び/又はt(14:18)転座、及び/又はt(11:14)転座、及び/又は(q13:q32転座、及び/又は(3:v)転座、及び/又は(8:14)転座、及び/又は(8:v)転座、及び/又はt(11:14)及び(q13:q32)転座が挙げられる。
【0222】
がんを有する対象は、ある特定の身体的症状を呈することが知られており、これは多くの場合、がんが身体に負担をかけている結果である。これらの症状は、多くの場合、同じがんで再発するため、疾患の診断、及び/又は予後診断、及び/又は進行に特徴であり得る。医薬当業者であれば、どの身体症状がどのがんに関連しているか、並びにそれらの身体系の評価が疾患の診断、及び/又は予後診断、及び/又は進行とどのように相関し得るかを理解するであろう。「身体的症状」としては、肝腫大及び/又は脾腫が挙げられる。
【0223】
「冷たい」腫瘍を有する患者は、従来の免疫チェックポイント遮断療法(例えば、抗CTLA-4抗体又は抗PD-1抗体の投与)に応答する可能性が低い。したがって、いくつかの実施形態では、冷たい腫瘍を有する患者は、免疫チェックポイント遮断療法に対して耐性である。
【0224】
これらの観察を考慮すると、ICBに対する耐性は、重大な満たされていない医学的必要性を構成し、耐性を克服するのに役立ち得る薬物は、大きな治療的見込みを有する。したがって、本発明の利点は、CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスが、PD-1及び/又はPD-L1に特異的な抗体と組み合わせて、当該耐性を克服することができる相乗効果をもたらし、以前は免疫チェックポイント阻害剤を使用して治療することができなかった冷たい腫瘍を標的化することである。
【0225】
本発明はまた、CTLA-4に特異的に結合する第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスと、PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する第2の抗体分子との組み合わせを、薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤及び/又はアジュバントと組み合わせて含む薬学的組成物を包含する。そのような薬学的に受容可能な担体、希釈剤、及びアジュバントは、当該分野で公知である。
【0226】
本明細書に記載の抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルス、細胞及び/又は薬学的組成物は、抗酸化剤、及び/若しくはバッファー、及び/若しくは静菌剤、及び/若しくは、意図するレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有し得る水性及び/若しくは非水性滅菌注射溶液;並びに/又は懸濁剤及び/若しくは増粘剤を含み得る水性及び/若しくは非水性滅菌懸濁液を含み、非経口投与に好適であり得る。本明細書に記載の抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、細胞、及び/又は薬学的組成物は、単回用量又は複数回用量の容器、例えば、密封されたアンプル及びバイアル内に存在してもよく、使用直前の滅菌液体担体、例えば、注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(すなわち、凍結乾燥)状態で保存されてもよい。
【0227】
即時注射液及び懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末、及び/又は顆粒、及び/又は錠剤から調製され得る。
【0228】
ヒト患者への非経口投与では、抗PD-1及び/若しくは抗PD-L1抗体分子の1日投与量レベルは通常、患者の体重で1kg当たり1mg~20mg/kgであるか、又は場合によっては、最大100mg/kgが単回又は分割用量で投与されるであろう。いくつかの好ましい実施形態では、用量は、10mg/kgである。特別な状況下、例えば、長期投与と組み合わせて、より低い用量を使用してもよい。いずれにしても、医師は、任意の個々の患者に最も好適であろう実際の投与量を決定し、それは、特定の患者の年齢、体重、及び反応によって変動するであろう。上述の投与量は平均的な場合の例示である。当然ながら、より高いか又はより低い投与量範囲が妥当である個々の症例があり得、それらは、本発明の範囲内である。
【0229】
典型的には、抗体分子を含む本明細書に記載の薬学的組成物(又は医薬)は、約2mg/ml~150mg/ml又は約2mg/ml~200mg/mlの濃度で抗PD-1及び/又は抗PD-L1抗体分子を含有するであろう。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、10mg/ml又は25mg/mlの濃度で抗PD-1及び/又は抗PD-L1抗体分子を含有するであろう。
【0230】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体がペムブロリズマブである場合、抗体は、約25mg/mlの用量で使用される。いくつかの他の実施形態では、ペムブロリズマブは、3週間毎に200mg(iv)の用量で、又は6週間毎に400mg(iv)の用量で使用される。
【0231】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体がニボルマブである場合、抗体は、約10mg/mlの用量で使用される。いくつかの実施形態では、ニボルマブは、2週間毎に240mg(iv)の用量で、又は4週間毎に480mg(iv)の用量で使用される。いくつかの実施形態では、ニボルマブは、抗CTLA-4抗体イピリムマブと組み合わせて使用されてもよく、この場合、ニボルマブは、3週間毎に1mg/kgの用量で最大4回、又は2若しくは3週間毎に3mg/kgの用量で使用される。
【0232】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体がアテゾリズマブである場合、抗体は、約60mg/mlの用量で使用される。いくつかの他の実施形態では、アテゾリズマブは、2週間毎に840mg(iv)の用量で、又は3週間毎に1200mg(iv)の用量で、又は4週間毎に1680mg(iv)の用量で使用される。
【0233】
当業者は、本明細書に記載される抗PD-1又は抗PD-L1抗体のいずれも、それらの処方情報に記載される任意の用量又は投薬レジメンで使用され得ることを理解するであろう。
【0234】
典型的には、薬学的組成物(又は医薬)は、ウイルス及び定量的技術に依存して約103~1012vp(ウイルス粒子)、iu(感染単位)又はpfu(プラーク形成単位)の濃度で、本明細書に記載の腫瘍溶解性ウイルスを含有する。試料中に存在するpfuの量は、許容細胞(例えば、CEF又はVero細胞)の感染後のプラーク数を数えて、プラーク形成単位(plaque forming unit、pfu)の力価を取得することによって決定することができ、vpの量は、260nm吸光度を測定することによって決定することができ、iuの量は、例えば、抗ウイルス抗体を使用する、定量的免疫蛍光法によって決定することができる。一般的なガイダンスとして、腫瘍溶解性ポックスウイルスを含む薬学的組成物に好適である個々の用量は、約103~約1010pfu、有利には約103pfu~約109pfu、好ましくは約104pfu~約107pfu、より好ましくは約106pfu~約107pfuの範囲である。
【0235】
いくつかの実施形態では、対象がマウスである場合、腫瘍溶解性ウイルスの最適用量は、約106~107pfuである。いくつかの実施形態では、対象がヒトである場合、腫瘍溶解性ウイルスの最適用量は、約106~109pfuである。
【0236】
一般に、ヒトでは、本明細書に記載の抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルス、細胞、及び/又は薬学的組成物の経口又は非経口投与が好ましい経路であり、最も便利である。獣医学的使用のために、本明細書に記載の抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルス、細胞、及び/又は薬学的組成物は、通常の獣医学的診療に従って適宜許容される薬剤処方として投与され、獣医師は、ある特定の動物にとって最も適切であろう投与計画及び投与経路を決定するであろう。したがって、本発明は、(上述及び以下で更に説明する)様々な状態を治療するのに有効な、本発明の抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルス及び/又は細胞の量を含む薬学的製剤を提供する。
【0237】
好ましくは、本明細書に記載の抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルス、細胞、及び/又は薬学的組成物は、静脈内、腫瘍内、筋肉内、皮下から選択される経路による送達に適合される。投与は、単回注射又は複数回の反復注射の形態で行うことができる(例えば、同じ又は異なる用量で、同じ又は異なる経路で、同じ又は異なる投与部位で)。例示の目的のために、約104、5×104、105、5×105、106、5×106、107、5×107、108、5×108、109、5×109、又は1010pfuの腫瘍溶解性ポックスウイルス(例えば、本明細書に記載のTK及びRR欠損ワクシニアウイルス)を含む個々の用量が、腫瘍内投与に特に適している。
【0238】
本発明はまた、本発明のポリペプチド結合部分の薬学的に許容される酸又は塩基付加塩を含む、本明細書に記載の抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルス、細胞及び/又は薬学的組成物を含む。本発明で有用な前述の塩基化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩を調製するために使用される酸は、とりわけ、非毒性の酸付加塩、すなわち、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、重酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びパモエート、[すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3ナフトエート)]塩などの薬学的に許容可能なアニオンを含有する塩を形成するものである。また、薬学的に許容される塩基付加塩を使用して、本発明による薬剤の薬学的に許容される塩の形態を産生してもよい。本質的に酸性である本薬剤の薬学的に許容される塩基塩を調製するための試薬として使用され得る化学塩基は、そのような化合物と非毒性塩基塩を形成するものである。そのような非毒性塩基塩には、これらに限定されないが、とりわけ、アルカリ金属カチオン(例えば、カリウム及びナトリウム)及びアルカリ土類金属カチオン(例えば、カルシウム及びマグネシウム)、アンモニウム又は水溶性アミン付加塩、例えば、N-メチルグルカミン-(メグルミン)、及び低級アルカノールアンモニウム、並びに他の薬学的に許容される有機アミンの塩基塩などのそのような薬学的に許容されるカチオンに由来するものが含まれる。本明細書に記載の抗体分子、ヌクレオチド配列、プラスミド、ウイルス及び/又は細胞は、保存のために凍結乾燥され、使用前に適切な担体中で元にもどすことができる。任意の好適な凍結乾燥法(例えば、噴霧乾燥、ケーキ乾燥)、及び/又は再構成技法を用いてもよい。凍結乾燥及び再構成によって、抗体活性損失の程度の変動に至る場合があり(例えば、従来の免疫グロブリンでは、IgM抗体は、IgG抗体よりも活性損失が大きい傾向がある)、使用レベルを上方調節して補う必要があり得ることを当業者は理解するであろう。一実施形態では、凍結乾燥(フリーズドライ)ポリペプチド結合部分は、再水和されるとき、(凍結乾燥前の)その活性の約20%以下、又は約25%以下、又は約30%以下、又は約35%以下、又は約40%以下、又は約45%以下、又は約50%以下を損失する。
【0239】
いくつかの実施形態では、ウイルス組成物は、生理学的又はわずかに塩基性のpH(例えば、約pH7~約pH9であり、7~8.5の間、より具体的には8に近いpHが特に好ましい)で好適に緩衝される。適切な浸透圧を確保するために、ウイルス組成物に一価の塩を含めることも有益である可能性がある。当該一価塩は、特に、NaCl及びKClから選択することができ、好ましくは、当該一価塩は、好ましくは10~500mM(例えば、50mM)の濃度のNaClである。適切なウイルス組成物は、サッカロース50g/L、NaCl 50mM、トリス-HCl 10mM及びグルタミン酸ナトリウム10mM、pH8を含む。組成物はまた、低い保存温度で腫瘍溶解性ウイルスを保護するための凍結防止剤を含むように製剤化され得る。適切な凍結防止剤には、好ましくは0.5~20%(w/vとも称される、gによる重量/Lによる体積)の濃度でのスクロース(又はサッカロース)、トレハロース、マルトース、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、及びグリセロール並びにデキストラン若しくはポリビニルピロリドン(PVP)などの高分子量ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0240】
第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスを含む組成物、及び本明細書に記載される第2の抗体分子を含む組成物は、単一の組成物として同時に(すなわち、同時に)投与され得ることが理解されるであろう。
【0241】
代替的に、これらの組成物は、同様の時間又は異なる時点(例えば、1日又は1週間間隔)のいずれかで、別々に投与され得る。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、第2の抗体分子の前に投与され得る。他の例では、第2の抗体分子が、腫瘍溶解性ウイルスの前に投与され得る。そのような連続投与は、腫瘍溶解性ウイルス及び第2の抗体分子の時間的分離によって達成され得る。代替的に、又は第1の選択肢と組み合わせて、連続投与は、抗CTLA-4抗体を発現することができる腫瘍溶解性ウイルスを腫瘍内投与などの方法で投与し、その結果、それは、第2の抗体分子の前にがんに到達し、その後、第2の抗体分子を全身投与等の方法で投与し、その結果、それは、腫瘍溶解性ウイルスの後にがんに到達することによる、腫瘍溶解性ウイルス及び第2の抗体分子の空間的分離によっても達成され得る。
【0242】
本発明の腫瘍溶解性ウイルス及び第2の抗体分子は、上記のように、各成分の確立された治療レジメンに従って投与することができる。これは、各成分の投与が同時であってもよい、又は互いに対して異なる時間であってもよいことを意味する。
【0243】
いくつかの実施形態では、第1の抗体分子を発現することができる腫瘍溶解性ウイルス及び本明細書に記載の第2の抗体分子の投与は、繰り返されてもよい。例えば、投与は、2回、3回、4回、5回、又は治療効果があるのに必要な回数繰り返されてもよい。
【0244】
ここで、本発明のある特定の態様を具体化する好ましい非限定的な実施例が、以下の図及び実施例を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【
図1-1】新規のTreg枯渇αCTLA-4 mAbの生化学的及び機能的特徴付け。(A)抗体媒介性生存、及び(B)CT26腫瘍担持BALB/cマウスにおけるTIL調節。確立された腫瘍を有する動物は、示されたTreg関連特異性を有する抗体又は対照mIgG2a抗体の4回の注射(10mg/kg)を受けた(n=5~15)。
【
図1-2】新規のTreg枯渇αCTLA-4 mAbの生化学的及び機能的特徴付け。(C)CTLA-4特異的mAbは、インビトロ活性化CD4
+T細胞のADCCを誘導する。溶解した標的T細胞をFACSによって識別した。図は、スチューデントt検定による平均±SD(n=4~8)**p<0.01を示す。(D)抗CTLA-4(IgG1)mAbは、huPBMCマウスにおけるインビボでのTreg枯渇を媒介する。クローン4-E03は、イピリムマブと比較して、ヒトTreg細胞(上パネル)の枯渇の増強を示すが、CD8
+T細胞(下パネル)の枯渇の増強を示さない。各ドットは、1匹のマウスを表す。グラフは、2つの実験からの平均データを示す。一元配置分散分析による、*p<0.05。
【
図1-3】新規のTreg枯渇αCTLA-4 mAbの生化学的及び機能的特徴付け。(E)ELISAによるヒト、マウス、及びカニクイザルCTLA-4及びCD28への4-E03 hIgG1及びイピリムマブ結合。(F)インビトロ活性化CTLA-4発現ヒトT細胞への4-E03 IgG1結合は、rhCTLA-4-Fcタンパク質(黒線)で予め遮断され、(G)4-E03及び2-C06は、ELISAによってCTLA-4へのCD80及びCD86結合を遮断する。(H)インビトロでの機能的リガンド遮断。グラフは、αCTLA-4によるインビトロ活性化ヒトPBMCの処理後の上清中のIL-2を示す。代表的なドナーを示す(n=6)。
【
図1-4】新規のTreg枯渇αCTLA-4 mAbの生化学的及び機能的特徴付け。(I)フローサイトメトリーによる、mCTLA-4トランスフェクト細胞へのマウスαCTLA-4の用量依存的結合。(J)抗CTLA-4mAbは、ELISAにより組換えCTLA-4への(CD80及びCD86)結合するB7リガンドを遮断する。(K)Treg枯渇活性及びCD8
+T細胞/Treg比(n=4~8)、及び(L)CT26腫瘍を担持するBALB/cマウスにおけるαマウスCTLA-4抗体によって誘導された生存。
【
図2-1】Treg枯渇αCTLA-4及びGM-CSFを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの産生及び特徴付け。(A)αCTLA4抗体及びGM-CSFの重鎖(J2R遺伝子座での)及び軽鎖(I4L遺伝子座での)をコードするために使用されるワクシニアウイルスベクターの概略図。
【
図2-2】Treg枯渇αCTLA-4及びGM-CSFを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの産生及び特徴付け。(B)LoVo細胞における複製動態、及び(C)VV
GM-αhCTLA4(BT-001)のMIA PaCa-2細胞に対する腫瘍溶解活性。TG6002(組換えJ2R及びI4L欠失ワクシニアウイルス)を対照として添加した。(D)MIA PaCa-2 BT-001感染細胞培養物から精製された4-E03のクマシーブルー染色後の電気泳動プロファイル。レーン2及び5:組換え4-E03、レーン1及び4:MIA PaCa-2 BT-001感染細胞の培養培地から精製された4-E03。レーン1及び2:非還元条件、レーン3及び4:還元条件。
【
図2-3】Treg枯渇αCTLA-4及びGM-CSFを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの産生及び特徴付け。(E)VV
GM-αhCTLA4(BT-001)による感染48時間後の示されたヒト腫瘍細胞の4-E03及びヒトGM-CSFの発現レベル。
【
図2-4】Treg枯渇αCTLA-4及びGM-CSFを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの産生及び特徴付け。(F)TF-1増殖アッセイによって決定された、E)において産生されたGM-CSFの生物学的活性。組換えヒトGM-CSF(欧州薬局方参照標準から入手したモルグラモスチム(Molgramostim))を陽性対照として含めた。(G及びH)BT-001感染MIA PaCa-2細胞によって産生された4-E03の機能評価。
【
図2-5】Treg枯渇αCTLA-4及びGM-CSFを発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの産生及び特徴付け。(G)インビトロ:
図1Eのように固定化された組換えhCTLAタンパク質に結合することによる、及び(H)インビボ:(Treg枯渇)
図1Dと同様。
【
図3-1】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、腫瘍限定CTLA-4受容体飽和及びTreg枯渇に関連するインビボ抗腫瘍活性を有する。(A)CT26腫瘍担持マウスをVV
GM-αCTLA4(7.5×10
6、7.5×10
5、又は7.5×10
4pfu)、VV-αCTLA4(7.5×10
6pfu)、又は空の対照VV(7.5×10
6pfu)で処理した(n=20匹のマウス/群)。
【
図3-2】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、腫瘍限定CTLA-4受容体飽和及びTreg枯渇に関連するインビボ抗腫瘍活性を有する。(B)10
7pfuでのVV
GM-αCTLA4の3回のi.t.注射(0日目、2日目、及び4日目)の後、又はαCTLA-4 mAb 5-B07の単回i.p.3mg/kgの注射の後のCT26腫瘍担持マウスの腫瘍及び血清中のαCTLA-4の薬物動態(n=3匹のマウス/時点)。灰色の領域は、CTLA-4受容体飽和のEC
10~EC
90の範囲を示す(
図1J参照)。
【
図3-3】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、腫瘍限定CTLA-4受容体飽和及びTreg枯渇に関連するインビボ抗腫瘍活性を有する。(C)VV
GM-αCTLA4注射後10日目の腫瘍及び脾臓におけるFoxP3
+細胞の数をFACSによって分析した。グラフは、3つの独立した実験からプールされたデータを示す(n=13匹のマウス/群)。
【
図4-1a】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、炎症性及び冷たい腫瘍微小環境にわたって、同系腫瘍モデルにおいて広範な抗腫瘍活性を有する。(A)CT26、A20、若しくはEMT6腫瘍を担持するBALB/cマウス、又はMC38若しくはB16腫瘍を担持するC57BL/6マウスは、VV
GM-αCTLA4、又はαmCTLA-4 mAbを欠く対照ウイルス(VV空又はVV
GM)の3回のi.t.注射を受けた。処理は、腫瘍が約50~100mm
3の体積を有したとき、又は腫瘍細胞注射の4日後(B16のみ)に開始した。グラフは、個々のマウスの腫瘍成長及び対応する生存を示す(n=10)。
【
図4-1b】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、炎症性及び冷たい腫瘍微小環境にわたって、同系腫瘍モデルにおいて広範な抗腫瘍活性を有する。(A)CT26、A20、若しくはEMT6腫瘍を担持するBALB/cマウス、又はMC38若しくはB16腫瘍を担持するC57BL/6マウスは、VV
GM-αCTLA4、又はαmCTLA-4 mAbを欠く対照ウイルス(VV空又はVV
GM)の3回のi.t.注射を受けた。処理は、腫瘍が約50~100mm
3の体積を有したとき、又は腫瘍細胞注射の4日後(B16のみ)に開始した。グラフは、個々のマウスの腫瘍成長及び対応する生存を示す(n=10)。
【
図4-2a】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、炎症性及び冷たい腫瘍微小環境にわたって、同系腫瘍モデルにおいて広範な抗腫瘍活性を有する。(B)CT26腫瘍細胞をBALB/cマウスの右及び左側腹部に移植した。VV
GM-αCTLA4による右側腹部腫瘍へのi.t.注射(垂直点線、Aと同じ)は、腫瘍が約100mm
3の体積に達したときに開始した(n=9~10)。
【
図4-2b】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、炎症性及び冷たい腫瘍微小環境にわたって、同系腫瘍モデルにおいて広範な抗腫瘍活性を有する。(B)CT26腫瘍細胞をBALB/cマウスの右及び左側腹部に移植した。VV
GM-αCTLA4による右側腹部腫瘍へのi.t.注射(垂直点線、Aと同じ)は、腫瘍が約100mm
3の体積に達したときに開始した(n=9~10)。
【
図5-1】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、頑強な全身性CD8
+T細胞依存性抗腫瘍免疫を誘発する。(A)BALB/cマウスを、CT26腫瘍細胞によるs.c.チャレンジの前及び後に、CD8(短破線)又はCD4(長破線)枯渇抗体で処理した。腫瘍が約20~50mm
3の体積に達したとき、
図4Aのように処理を開始した。1群当たり10匹のマウスを用いた1つの代表的な実験(2つのうち)を示す。
【
図5-2】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、頑強な全身性CD8
+T細胞依存性抗腫瘍免疫を誘発する。(B~D)CT26腫瘍担持マウスを、VVでi.t.処理したか、又はαCTLA-4 mAbでi.p.処理した(3mg/kgでのクローン5-B07)。腫瘍細胞懸濁液及び脾細胞を、VV又はCT26(AH-1)特異的ペプチドによりエクスビボで再刺激し、IFN-γ
+及びTNF-α
+CD8
+T細胞、又はMHCクラスI標識多量体陽性CD8
+T細胞の百分率をFACSによって定量化した。(B)は、AH-1ペプチド陽性(上パネル)又はサイトカイン陽性(下パネル)脾細胞のフローサイトメトリードットプロットを示す。
【
図5-3】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、頑強な全身性CD8
+T細胞依存性抗腫瘍免疫を誘発する。(B~D)CT26腫瘍担持マウスを、VVでi.t.処理したか、又はαCTLA-4 mAbでi.p.処理した(3mg/kgでのクローン5-B07)。腫瘍細胞懸濁液及び脾細胞を、VV又はCT26(AH-1)特異的ペプチドによりエクスビボで再刺激し、IFN-γ
+及びTNF-α
+CD8
+T細胞、又はMHCクラスI標識多量体陽性CD8
+T細胞の百分率をFACSによって定量化した。示された臓器における(C)抗原特異的及び(D)IFN-γ
+/TNF-α
+CD8
+T細胞の定量化。各ドットは、1匹のマウスを表す。(n=3~6つの実験)一元配置分散分析による、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005、****p<0.001。
【
図5-4】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、頑強な全身性CD8
+T細胞依存性抗腫瘍免疫を誘発する。(B~D)CT26腫瘍担持マウスを、VVでi.t.処理したか、又はαCTLA-4 mAbでi.p.処理した(3mg/kgでのクローン5-B07)。腫瘍細胞懸濁液及び脾細胞を、VV又はCT26(AH-1)特異的ペプチドによりエクスビボで再刺激し、IFN-γ
+及びTNF-α
+CD8
+T細胞、又はMHCクラスI標識多量体陽性CD8
+T細胞の百分率をFACSによって定量化した。示された臓器における(C)抗原特異的及び(D)IFN-γ
+/TNF-α
+CD8
+T細胞の定量化。各ドットは、1匹のマウスを表す。(n=3~6つの実験)一元配置分散分析による、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005、****p<0.001。
【
図6-1】腫瘍内で誘導されたCD8
+T細胞抗腫瘍免疫は、FcγR依存性及びcDC1依存性である。(A)CT26腫瘍担持WTマウス及びFcer1g
-/-BALB/cマウスは、
図4Aのように、VV
GM-αCTLA4又はPBSのi.t.注射を受けた。グラフは、腫瘍体積(左及び中央パネル)及びマウス生存(右パネル)を示す。垂直線は、処理の終了を示す。(n=10匹のマウス/群)
【
図6-2】腫瘍内で誘導されたCD8
+T細胞抗腫瘍免疫は、FcγR依存性及びcDC1依存性である。(B)VV
GM-αCTLA4対VV空で処理されたCT26腫瘍における、上方制御又は下方制御のいずれかをされた352個の差次的に発現された遺伝子のセットにおいて濃縮されたGOターム。最も低い調整されたp値を有する20個の濃縮されたタームが示されている。
【
図6-3】腫瘍内で誘導されたCD8
+T細胞抗腫瘍免疫は、FcγR依存性及びcDC1依存性である。(C)
図6bからの5つの最も濃縮されたGOタームに関連する差次的に発現された遺伝子のネットワーク図。上方制御された遺伝子のみが、これらの5つの濃縮されたGOタームと関連することが見出された。
【
図6-4】腫瘍内で誘導されたCD8
+T細胞抗腫瘍免疫は、FcγR依存性及びcDC1依存性である。(D)MC38腫瘍担持WTマウス及びBatf3
-/-BALB/cマウスは、
図4A及び
図6Aのように、VV
GM-αCTLA4又はPBSのi.t.注射を受けた。グラフは、腫瘍体積(左及び中央パネル)及びマウス生存(右パネル)を示す。垂直線は、処理の終了を示す。(n=8~10匹のマウス/群)。
【
図7-1】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、末梢エフェクタCD8
+T細胞を拡大させ、Treg及び疲弊CD8
+T細胞を低減させる。CT26「双子」腫瘍担持BALB/cマウスを、VV
GM-αCTLA4又はPBSでi.t.処理した(右側腹部腫瘍のみ)。脾臓の注射された腫瘍及び対側腫瘍を処理後10日目に収集し、T細胞集団を識別するために設計された高次元パネルで染色した。(A)i.t.VV
GM-αCTLA4は、注射された、及び注射されていない腫瘍(上パネル)において、活性化CD4
+Treg細胞(FoxP3
+Klrg1
+、「T1」)を低減させ、疲弊CD8
+T細胞(PD1
+TIM3
+、「T2」)を低減させ、かつ活性化エフェクタCD8
+T細胞(Klrg1
+、「T3」)を拡大させ、並びに脾臓(S1、下パネル)において、活性化CD8
+T細胞を拡大させた。
【
図7-2】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、末梢エフェクタCD8
+T細胞を拡大させ、Treg及び疲弊CD8
+T細胞を低減させる。CT26「双子」腫瘍担持BALB/cマウスを、VV
GM-αCTLA4又はPBSでi.t.処理した(右側腹部腫瘍のみ)。脾臓の注射された腫瘍及び対側腫瘍を処理後10日目に収集し、T細胞集団を識別するために設計された高次元パネルで染色した。(B)Aに示されるデータの定量化を示す。5匹のマウス/群を用いた1つの代表的な実験(3つのうち)。
【
図7-3】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、末梢エフェクタCD8
+T細胞を拡大させ、Treg及び疲弊CD8
+T細胞を低減させる。CT26「双子」腫瘍担持BALB/cマウスを、VV
GM-αCTLA4又はPBSでi.t.処理した(右側腹部腫瘍のみ)。脾臓の注射された腫瘍及び対側腫瘍を処理後10日目に収集し、T細胞集団を識別するために設計された高次元パネルで染色した。(C)フローサイトメトリープロットは、選択されたi.t.T細胞クラスターの特徴的なマーカーを示す。
【
図8-1】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、「冷たい」ICB耐性腫瘍を拒絶するためにαPD-1と相乗作用する。(A及びB)1つの大きい腫瘍(5×10
5個の細胞、処理された腫瘍)及び1つの小さい腫瘍(1×10
5個の細胞、対側部)の2つのB16腫瘍を保有するC57BL/6マウスは、VV
GM-αCTLA4の3回のi.t.注射(垂直点線)及びi.p.αPD-1(29F.1A12、10mg/kg、週2回、3週間、灰色領域)を受けた。(A)生存(n=10~20)、ログランク検定による*p<0.05。
【
図8-2】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、「冷たい」ICB耐性腫瘍を拒絶するためにαPD-1と相乗作用する。(A及びB)1つの大きい腫瘍(5×10
5個の細胞、処理された腫瘍)及び1つの小さい腫瘍(1×10
5個の細胞、対側部)の2つのB16腫瘍を保有するC57BL/6マウスは、VV
GM-αCTLA4の3回のi.t.注射(垂直点線)及びi.p.αPD-1(29F.1A12、10mg/kg、週2回、3週間、灰色領域)を受けた。(B)腫瘍内注射された腫瘍及び対側腫瘍の腫瘍成長曲線。
【
図8-3】腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、「冷たい」ICB耐性腫瘍を拒絶するためにαPD-1と相乗作用する。(C)A20腫瘍担持BALB/cマウスを、腫瘍が約135mm
3の体積に達したとき、VV
GM-αCTLA4 i.t.(1×10
5pfuの最適以下の用量で)、αPD-1 i.p.(RMP1-14、10mg/kgの総量)、又は両方の組み合わせで3回処理した。グラフは、動物の生存を示す(n=10)。
【
図9-1】CTLA4特異的mAbの特徴付け。(A)新たに切除した卵巣腫瘍、腹水、及び血液の試料を健康なPBMCと比較した。CTLA-4発現を、フローサイトメトリーによってCD4
+CD25
+CD127
-Treg細胞、CD4
+非Treg細胞、及びCD8
+エフェクタT細胞について評価し、PBMC移動の2週間後にNOG脾臓から単離したヒトT細胞上での発現と比較した。データは、個々の患者/ドナーを表し、健康なPBMCではn=11、腹水ではn=20、腫瘍ではn=9、及び患者の血液ではn=5である。(B)ヒトPBMCをNOGマウスに静脈内注射した。移植の2~3週間後、脾臓を切除し、細胞懸濁液をSCIDレシピエントにi.p.注射し、続いて10mg/kgの4-E03 hIgG1、4-E03 hIgG1 N297Q、又はアイソタイプ対照で処理した。i.p.洗浄によって細胞を収集し、処理の24時間後に定量化した。細胞枯渇%をアイソタイプ対照に対して正規化した。各ドットは、1匹のマウスを表す。
【
図9-2】CTLA4特異的mAbの特徴付け。(C)4-E03及びイピリムマブの可溶性ヒトCTLA-4への結合動態を、Biacore分析によって評価した。固定化抗ヒトFcによってmAbをチップ上に捕捉し、異なる濃度のCTLA-4タンパク質を各サイクルで注射した。4-E03及びイピリムマブのK
D値は、それぞれ0.6nM及び2.7nMであった。
【
図9-3】CTLA4特異的mAbの特徴付け。(D)フローサイトメトリーによる、CTLA-4を内因的に発現するヒトT細胞への抗CTLA-4 mAbの用量依存的結合。
【
図9-4】CTLA4特異的mAbの特徴付け。(E)滴定用量のマウス代理抗体5-B07 mIgG2a(10μg/mlから、3倍希釈ステップで)の結合を、ELISAによって、マウスCTLA-4及びCD28に対して試験した。(F)1×10
6個のCT26細胞をBALB/cマウスに皮下注射した(n=7)。腫瘍が約100mm
3のサイズに達したとき、0、4、及び7日目に、マウスは、200μg(10mg/kg)の5-B07 mIgG2a、5-B07 mIgG1 N297A、又はアイソタイプ対照抗体を受けた。8日目に、腫瘍を取り出し、TILをFACSによって分析した。示されるデータは、1群当たりn=7匹のマウスを用いた1つの代表的な実験の平均値(+SD)である。
【
図10-1】腫瘍及び血液中のウイルス及び導入遺伝子の薬物動態。(A及びB)
図3Bに記載の腫瘍試料を使用して、LoVo異種移植腫瘍における(A)マウスGM-CSFの腫瘍内濃度、及び(B)ウイルス負荷C~E)薬物動態を測定した。LoVo細胞をSwissヌードマウスの右側腹部に移植した。腫瘍体積が約120mm
3に達したとき(D0と定義される)、マウスを、10
5pfuのVV
GM-hCTLA4(BT-001)若しくはVV i.t.、又は3mg/kgの4-E03モノクローナル抗体i.p.のいずれかの単回注射によって処理した。3匹のマウスの血液及び腫瘍を、示された各時点で収集した。(C)4-E03、(D)GM-CSF、及び(E)ウイルスの濃度を、それぞれELISA及びVero細胞での滴定によって決定した。線は、各時点の値の中央値を結んでいる。
【
図10-2】腫瘍及び血液中のウイルス及び導入遺伝子の薬物動態。(A及びB)
図3Bに記載の腫瘍試料を使用して、LoVo異種移植腫瘍における(A)マウスGM-CSFの腫瘍内濃度、及び(B)ウイルス負荷C~E)薬物動態を測定した。LoVo細胞をSwissヌードマウスの右側腹部に移植した。腫瘍体積が約120mm
3に達したとき(D0と定義される)、マウスを、10
5pfuのVV
GM-hCTLA4(BT-001)若しくはVV i.t.、又は3mg/kgの4-E03モノクローナル抗体i.p.のいずれかの単回注射によって処理した。3匹のマウスの血液及び腫瘍を、示された各時点で収集した。(C)4-E03、(D)GM-CSF、及び(E)ウイルスの濃度を、それぞれELISA及びVero細胞での滴定によって決定した。線は、各時点の値の中央値を結んでいる。
【
図10-3】腫瘍及び血液中のウイルス及び導入遺伝子の薬物動態。(A及びB)
図3Bに記載の腫瘍試料を使用して、LoVo異種移植腫瘍における(A)マウスGM-CSFの腫瘍内濃度、及び(B)ウイルス負荷C~E)薬物動態を測定した。LoVo細胞をSwissヌードマウスの右側腹部に移植した。腫瘍体積が約120mm
3に達したとき(D0と定義される)、マウスを、10
5pfuのVV
GM-hCTLA4(BT-001)若しくはVV i.t.、又は3mg/kgの4-E03モノクローナル抗体i.p.のいずれかの単回注射によって処理した。3匹のマウスの血液及び腫瘍を、示された各時点で収集した。(C)4-E03、(D)GM-CSF、及び(E)ウイルスの濃度を、それぞれELISA及びVero細胞での滴定によって決定した。線は、各時点の値の中央値を結んでいる。
【
図11-1】i.t.VV
GM-αCTLA4による処理は、処理された腫瘍及び未処理の腫瘍において持続性の抗腫瘍応答を誘導する。(A)CT26腫瘍細胞をBALB/cマウスの右及び左側腹部に移植した。右側腹部腫瘍へのVV
GM-αCTLA4によるi.t.注射(×3、2日間隔)は、腫瘍が約100mm
3の体積に達したときに開始した。処理した腫瘍及び対側腫瘍におけるウイルス濃度を、処理の1日後に評価した。(n=群当たり3匹のマウス、マウス1-3(M1~3)、N.D.=検出されず)B~C)CT26腫瘍担持マウスを、A)のように、示された用量のVV
GM-αCTLA4で処理した。代替的に、10
7又は10
5pfuのVV
GM-αCTLA4をi.v.投与した。個々の腫瘍成長曲線(B)及び生存曲線(C)を示す。(D)再チャレンジされた腫瘍成長の抑制。CT26細胞をBALB/cマウスにs.c.移植した。VV
GM-αCTLA4又は空対照VVによるi.t.処理をA)のようにスケジュールした。
図4Bの図の説明文に示されるように、最後のVV注射の100日後に、生存マウスをCT26又はRenca細胞によりs.c.で再チャレンジした。
【
図11-2】i.t.VV
GM-αCTLA4による処理は、処理された腫瘍及び未処理の腫瘍において持続性の抗腫瘍応答を誘導する。(A)CT26腫瘍細胞をBALB/cマウスの右及び左側腹部に移植した。右側腹部腫瘍へのVV
GM-αCTLA4によるi.t.注射(×3、2日間隔)は、腫瘍が約100mm
3の体積に達したときに開始した。処理した腫瘍及び対側腫瘍におけるウイルス濃度を、処理の1日後に評価した。(n=群当たり3匹のマウス、マウス1-3(M1~3)、N.D.=検出されず)B~C)CT26腫瘍担持マウスを、A)のように、示された用量のVV
GM-αCTLA4で処理した。代替的に、10
7又は10
5pfuのVV
GM-αCTLA4をi.v.投与した。個々の腫瘍成長曲線(B)及び生存曲線(C)を示す。(D)再チャレンジされた腫瘍成長の抑制。CT26細胞をBALB/cマウスにs.c.移植した。VV
GM-αCTLA4又は空対照VVによるi.t.処理をA)のようにスケジュールした。
図4Bの図の説明文に示されるように、最後のVV注射の100日後に、生存マウスをCT26又はRenca細胞によりs.c.で再チャレンジした。
【
図11-3】i.t.VV
GM-αCTLA4による処理は、処理された腫瘍及び未処理の腫瘍において持続性の抗腫瘍応答を誘導する。(A)CT26腫瘍細胞をBALB/cマウスの右及び左側腹部に移植した。右側腹部腫瘍へのVV
GM-αCTLA4によるi.t.注射(×3、2日間隔)は、腫瘍が約100mm
3の体積に達したときに開始した。処理した腫瘍及び対側腫瘍におけるウイルス濃度を、処理の1日後に評価した。(n=群当たり3匹のマウス、マウス1-3(M1~3)、N.D.=検出されず)B~C)CT26腫瘍担持マウスを、A)のように、示された用量のVV
GM-αCTLA4で処理した。代替的に、10
7又は10
5pfuのVV
GM-αCTLA4をi.v.投与した。個々の腫瘍成長曲線(B)及び生存曲線(C)を示す。(D)再チャレンジされた腫瘍成長の抑制。CT26細胞をBALB/cマウスにs.c.移植した。VV
GM-αCTLA4又は空対照VVによるi.t.処理をA)のようにスケジュールした。
図4Bの図の説明文に示されるように、最後のVV注射の100日後に、生存マウスをCT26又はRenca細胞によりs.c.で再チャレンジした。
【
図12】腫瘍内で誘導されたCD8T細胞免疫は、FcγR依存性である。WT及びFcer1g-/-BALB/cマウスを、1×10
6個のCT26細胞によりs.c.でチャレンジした。腫瘍が約100mm
3に達したとき、マウスは、0、2、及び5日目に、VV
GM-αCTLA4又はPBS対照の3回のi.t.注射を受けた(10
7pfuの最終用量)。8日目に、腫瘍及び脾臓を単離し、FoxP3
+CD4
+細胞をFACSによって分析した。
【
図13-1】i.t.VV
GM-αCTLA4による処理は、CD8
+T細胞に依存する。(A)10匹のBALB/cマウスの群を、マウスを1×10
6個のCT26細胞によりs.c.でチャレンジする3日前に、1mgのCD8枯渇抗体又はCD4枯渇抗体(又は対応するアイソタイプ対照抗体)で処理したか、又はしなかった。更に4日後(処理開始に対して-3日目)に、200μgの枯渇抗体をi.p.投与した。次いで、マウスを、0、2、及び4日目に、1×10
7pfuのVV
GM-αCTLA4でi.t.処理した。人道的エンドポイントまでの生存百分率を示す。データは、2つの独立した実験を表す。
【
図13-2】i.t.VV
GM-αCTLA4による処理は、CD8
+T細胞に依存する。(B)CT26腫瘍担持マウスを、VVでi.t.処理するか、又は抗CTLA-4 mAb(3mg/kgでのクローン5-B07)でi.p.処理した。腫瘍細胞懸濁液をVV又はCT26(AH-1)特異的ペプチドによりエクスビボで再刺激し、4時間培養し、IFN-γ
+及びTNF-α
+CD8
+T細胞の数をフローサイトメトリーによって定量化した。各ドットは、1匹のマウスを表す。代表的な実験(n=3~6)、一元配置ANOVAによる、**p<0.01、***p<0.005、****p<0.001。
【
図13-3】i.t.VV
GM-αCTLA4による処理は、CD8
+T細胞に依存する。(C)及び(D)教師なしクラスタリングによって識別された(C)12個の腫瘍内、(D)10個の脾臓CD3+サブ集団の中央値マーカー発現を示すヒートマップ。
【
図13-4】i.t.VV
GM-αCTLA4による処理は、CD8
+T細胞に依存する。(C)及び(D)教師なしクラスタリングによって識別された(C)12個の腫瘍内、(D)10個の脾臓CD3+サブ集団の中央値マーカー発現を示すヒートマップ。
【
図14-1】B16腫瘍は、抗CTLA-4、加えて抗PD-1による全身処理に対して不応性である。B16腫瘍担持C57BL/6マウスを、4、7、11日目に、10mg/kgの抗PD-1、又は抗PD-1と抗CTLA-4との組み合わせ(10mg/kg)でi.p.処理した。(A)データは、示されるように細胞接種後の日における腫瘍体積mm
3として表され、各ラインは、個々のマウスを表す。(B)下のパネルは、示された処理後のB16を担持するマウスの人道的エンドポイントまでの生存百分率を示す。
【
図14-2】B16腫瘍は、抗CTLA-4、加えて抗PD-1による全身処理に対して不応性である。B16腫瘍担持C57BL/6マウスを、4、7、11日目に、10mg/kgの抗PD-1、又は抗PD-1と抗CTLA-4との組み合わせ(10mg/kg)でi.p.処理した。(C)B16腫瘍担持C57BL/6マウスは、
図8に記載されるように、VV
GM-αCTLA4の3回のi.t.注射及び/又はi.p.抗PD-1を受けた。最後の処理の6日後、腫瘍を収集し、腫瘍浸潤T細胞の数をフローサイトメトリーによって分析した。各ドットは、1匹のマウスを表す。(n=3つの実験)。一元配置分散分析による、*p<0.05。高度にT細胞炎症性CT26腫瘍微小環境におけるT細胞浸潤のレベルを参照のために示す(細胞接種後約20日目のCT26腫瘍において決定された)。
【実施例】
【0246】
材料及び方法
細胞株
ヒト胚性腎細胞株293T、マウス黒色腫B16-F10、マウス結腸がんCT26、マウスB細胞リンパ腫A20、マウス乳腺EMT6、及びマウスルイス肺がん細胞株(LL/2)をAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入し、Crown BioからのヒトCTLA-4(293T-CTLA4)で安定にトランスフェクトした。細胞を、10%FCS、10mMのHEPES、及び1mMのピルビン酸ナトリウムを補充したRPMI+グルタマックス(CT26)又はDMEM+グルタマックス(MC38、B16-F10)中で培養した。EMT6細胞を、15%FCS、10mMのHEPES、及び1mMのピルビン酸ナトリウムを補充したWaymouth培地中で維持した。hFcγRIIIA-158Vを発現するNK-92細胞株を、GFP(ATCCから購入)とともに、補充α-MEM培地中で培養した(Binyamin et al.,2008)。初代細胞をR10培地(2mMのグルタミン、1mMのピルビン酸、100IU/mlのペニシリン、及びストレプトマイシン、並びに10%FBS、Life TechnologiesによるGIBCO)を含有するRPMI 1640)中で培養した。ヒト結腸直腸腺がん細胞株LoVo(ATCC)、膵臓腫瘍細胞株MIA PaCa-2(ATCC)、及びヒト胃がん細胞株Hs-746 T(ATCC)を、10%FBSを補充し、40mg/Lのゲンタマイシンを含有するDMEM(Gibco)中で成長させた。ヒト卵巣腫瘍細胞株SK-OV-3(ATCC)及びヒト結腸直腸がん細胞株HCT 116(ATCC)を、10%FBSを補充し、40mg/Lのゲンタマイシンを含有するMc Coy’s 5A培地(ATCC)中で成長させた。ヒト赤芽球細胞株TF-1(ATCC)を、10%FBSを補充し、40mg/Lのゲンタミシン+2ng/mLのGM-CSFを含有するRPMI 1640(Sigma)中で成長させた。
【0247】
マウス
マウスは、地方の無菌施設で維持した。全ての実験について、若い成体マウスを性別及び年齢適合させ、実験群に無作為に割り当てた。全ての手順は、許可番号17196/2018又は2934/2020の下、BioInventにおいて、又は導入遺伝子APAFIS Nr21622プロジェクト2019072414343465において実験動物に関する地方倫理委員会(Malmo/Lunds djurforsoksetiska namnd)によって承認され、地方倫理ガイドラインに従って実施された。C57BL/6及びBALB/cマウスは、Taconic、Janvier、又はCharles Riverから入手した。使用した遺伝子変更株は、Taconicから購入したC.129P2(B6)-Fcer1gtm1Rav(BALB/cバックグラウンド及びBALB/cAnNTac WT対照に対するFcer1g-KO)、及びJackson Laboratoriesから購入したB6.129S(C)-Batf3tm1Kmm/J(Hildner et al.,2008)C57BL/6Jバックグラウンド及びC57BL/6J WT対照に対するBatf3-KO)であった。
【0248】
ヒト(臨床)試料及び倫理
倫理承認は、Skane大学病院の倫理委員会によって得られた。インフォームドコンセントは、ヘルシンキ宣言に従って提供した。患者試料は、スウェーデン、LundのSkanes大学病院の産婦人科及び腫瘍科を通じて入手した。単離した単一細胞懸濁液として腹水を評価した。
【0249】
ヒト組織の処理
手術を受ける患者から得た卵巣腫瘍試料を小片に切断し、37℃で20分間、DNase I(Sigma)及びリベラーゼ(商標)(Roche Diagnostics)を含むR10で培養した。残りの組織は、機械的に解離し、細胞懸濁液と一緒に70μmのセルストレーナーを通した。一致する末梢血試料を得、800×gで20分間、Leucosepチューブ(Greiner)で遠心分離することによって、Ficoll-Paque PLUS(Cytiva)を使用し末梢血単核細胞を分離した。ヒトバフィーコートは、Halmstad(Sweden)の病院の血液センターから入手し、標準的なプロトコルに従って処理した。
【0250】
抗体依存性細胞傷害
GFPとともにCD16-158V対立遺伝子を発現するように安定にトランスフェクトされたNK-92細胞株を使用して、ADCCアッセイを実施した。CD4+T細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を使用して、健康なドナーの末梢血からCD4+標的T細胞を単離した。細胞を、CTLA-4を上方制御するためのCD3/CD28ダイナビーズ(Life Technologies、Thermo Fisher)及び50ng/mlの組換えhIL-2(R&D Systems)を用いて37℃で72時間刺激した。標的細胞を0.1~10μg/mlのmAbと、4℃で30分間プレインキュベートし、その後NK細胞と混合した。細胞を2:1のエフェクタ:標的細胞比で4時間インキュベートした。溶解は、フローサイトメトリーによって決定した。簡潔に述べると、インキュベーションの最後に、細胞懸濁液を、Fixable Viability Dye eFluor780(eBioscience)とともに、VioGreenコンジュゲートされた抗CD4(M-T466、Miltenyi Biotec)により、4℃の暗所で30分間染色し、次いで細胞をFACSによって分析した。
【0251】
インビトロでの機能的遮断
SEB PBMCアッセイでは、健康なドナーからの全PBMCを96ウェルプレート(1×105個の細胞/ウェル)に播種し、20~0.625μg/mlの範囲の抗-CTLA-4 IgGの存在下で、1μg/mlのStaphylococcusエンテロトキシンB(SEB、Sigma Aldrich)で刺激した。3日後、上清を採取し、IL-2をMSD(Meso Scale Discovery、Rockville、USA)により製造業者の指示に従って定量化した。
【0252】
インビトロ結合アッセイ
CTLA-4発現トランスフェクト細胞を、4℃で示された濃度の抗CTLA-4 mAbと20分間インキュベートした後、洗浄し、APC標識ヤギ抗ヒト二次抗体(Jackson ImmunoResearch)で染色した。空ベクターでトランスフェクトした細胞への結合は観察されなかった(示さず)。
【0253】
初代細胞へのIgG結合を、単離されたインビトロ活性化CD4+T細胞上で分析した。簡潔に述べると、ヒト末梢CD4+T細胞を、MACS CD4T細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を使用する陰性選択によって全PBMCから精製した。CD4+T細胞を、R10培地中のCD3/CD28 dynabeads(Life Technologies)、加えて50ng/ml組換えhIL-2(R&D Systems)で3日間、インビトロで活性化させて、CTLA-4発現を上方制御した。インビトロ活性化ヒトCD4+T細胞を、抗CD4とともに、示された濃度の抗CTLA-4 mAbとインキュベートした。結合した抗CTLA-4 mAbを、APC標識ヤギ抗ヒトIgGで検出した。競合結合アッセイでは、2μg/mlのAlexa 647標識抗CTLA-4mAbを組換えヒト又はカニクイザルCTLA-4-Fcタンパク質(50μg/ml、R&D Systems)と混合した後、CTLA-4発現細胞とインキュベーションした。結合したIgG結合は、FACSによって検出された。
【0254】
VV産生及び精製
組換えウイルスは、J2R及びI4L遺伝子座でGFP又はmCherryをコードする出発親コペンハーゲンワクシニアウイルス及び2つのトランスファープラスミドを使用して、ニワトリ胚線維芽細胞(chicken embryo fibroblast、CEF)における2回の連続相同組換えによって産生した。トランスファープラスミドは、p7.5プロモーター下の、J2R組換えアームに隣接したmAbの重鎖、又はp7.5プロモーター下のmAb、それに加えて、若しくはそうではなく、pSE/Lプロモーターの、I4L組換えアームに隣接したマウス若しくはヒトGM-CSFの軽鎖のいずれかをコードした(
図2A参照)。組換えウイルスを、非蛍光プラークの増幅/単離のいくつかのサイクルによって単離した。次いで、組換えウイルスをCEF上で産生し、細胞溶解後に5μm濾過によって精製し、続いて0.2μm接線流濾過を使用して精製/濃縮した。最後に、ウイルスを、透析濾過によって、サッカロース50g/L、NaCl 50mM、トリス10mM、グルタミン酸ナトリウム10mM、pH8で製剤化し、等分し、使用するまで-80℃で保存した。
【0255】
この公開に使用された全てのウイルスは、TK-RRコペンハーゲン株由来であった。
VV:非アーム化ワクシニアウイルス又はTG6002(FCU1キメラ酵素をコードするワクシニアウイルス、ベンチマーク組換えVV)
VVGM:マウスGM-CSFをコードするワクシニアウイルス
VVGM-αCTLA4:マウスGM-CSF及び5-B07(抗マウスCTLA-4、マウスIgG2a)をコードするワクシニアウイルス
VV-αCTLA4:5-B07をコードするワクシニアウイルス
VVGM-αhCTLA4(BT-001):ヒトGM-CSF及び4-E03(抗ヒトCTLA-4、ヒトIgG1)をコードするワクシニアウイルス。
【0256】
インビトロでのウイルス複製、腫瘍溶解活性、及び導入遺伝子発現
BT-001の複製は、10-3の感染多重度(multiplicity of infection、MOI)(すなわち、1000個の細胞に対して1つのウイルス)で、LoVo細胞をBT-001に感染させてから24、48、及び72時間後の総ウイルス力価を測定することによって評価した。ウイルス力価を、Vero細胞でのプラークアッセイによって決定した。
【0257】
MIA PaCa-2細胞とBT-001とを図の説明文に示されるMOIで5日間インキュベートした後、細胞計数器(Vi-Cell)を使用して細胞の生存を定量化することによって、BT-001の腫瘍溶解活性を評価した。BT-001の複製及び腫瘍溶解活性の両方を、現在臨床評価中のコペンハーゲンTK-RR-ワクシニアウイルスTG6002のそれらを用いてベンチマークした(Foloppe et al.,2019)。
【0258】
導入遺伝子発現を、いくつかのヒト腫瘍細胞株LoVo、HCT 116(結腸がん)、MIA PaCa-2(膵臓がん)、SK-OV3(卵巣がん)、及びHs176T(胃がん)の、MOI0.05でのBT-001による感染後に評価した。培養上清を感染48時間後に収集し、遠心分離し、0.2μmで濾過した後、ELISAによって4-E03及びhGM-CSF濃度を測定した。
【0259】
抗体精製
約4.7×107個のMIA PaCa-2細胞/フラスコを含有する15個のF175フラスコを、ウシ血清を含まないDMEM中のBT-001によりMOI0.01で感染させた。感染の72時間後、細胞上清を採取し、プールし、遠心分離し、0.2μmで濾過した後、EDTA(最終2mM)及びTris pH7.5(最終20mM)を添加した。プール上清を、予めPBSで平衡化した1mLのprotA Hitrapカラム(GE healthcare、ref 17-5079-01)に4℃で装填した。結合した抗体を100mMのグリシンHCl pH2.8によって溶出し、PBSに対して透析した。精製された4-E03を、還元又は非還元条件下でSDS-PAGE(NuPage Bis-Trisゲル 4~12% Thermo NP0323)に装填し、ゲルをInstantBlue(Expedeon、ISB1L)クマシーブルーで染色した。この精製された抗体(すなわち、4-E03 MIA PaCa-2)を、CTLA-4結合及びインビボTreg枯渇活性について更に評価した。
【0260】
酵素結合免疫吸着アッセイ
GMCSF.ヒト及びマウスGM-CSF濃度を、Quantikine(登録商標)ELISA GM-CSFイムノアッセイ(R&D Systems)を使用して決定した。
【0261】
ヒトGM-CSF機能性を、TF-1増殖アッセイを使用して評価した。既知濃度のhGM-CSF(標準又はBT-001感染細胞由来)の存在下でのTF-1細胞の細胞増殖を、生存細胞のデヒドロゲナーゼによるMTSのホルマザンへの酵素的変換(490nmでの吸光度により測定)を用いる比色分析によって測定した。490nmでの吸収をGM-CSFの濃度に対してプロットし、曲線を組換えGM-CSF(すなわち、モルグラモスチム)で得られたものと比較した。
【0262】
CTLA4/CD28タンパク質への結合。抗体結合ELISAのために、精製されたヒトCTLA4-Fc、ヒトCD28-Fc(R&D Systems)、及びマウスCTLA4-Fc(Sino Biologicals)をアッセイプレートに1pmol/ウェルでコーティングし、同時に、マウスCD28-His(R&D Systems)を5pmol/ウェルでコーティングした。異なる抗体を10μg/mlで添加し、室温で1時間結合させた。結合したn-Coder(登録商標)mIgG2A又はhIgG1抗体を、抗マウス/抗ヒトH+L-HRP(Jackson Immunoresearch)又は抗マウス/ヒトラムダ軽鎖抗体HRP(Bethyl)のいずれかを使用して検出した。発色基質(TMB T0440)又は発光基質(Pierce 37070)を使用し、Tecan Ultraを用いてプレート読み取りを行った。
【0263】
CD80/CD86相互作用の遮断。リガンド遮断ELISAのために、精製されたヒトCTLA4-Fc(R&D Systems)を、2pmol/ウェル(CD80について)又は1pmol/ウェル(CD86について)でアッセイプレートにコーティングした。抗体を0.4pM~67nMの範囲の濃度で添加し、1時間結合させた。Hisタグ付きリガンドを、ELISAによるパイロット実験において最適化された通り(データ示さず)、それぞれ200nM及び100nMで添加した(rhCD80及びrhCD86、R&D Systems)。プレートを更に15分間インキュベートした。洗浄後、結合したリガンドをHRP標識抗His抗体(R&D Systems)で検出した。Super Signal ELISA Pico(Thermo Scientific)を基質として使用し、Tecan Ultra Microplate readerを使用してプレートを分析した。代替的に、マウスCTLA4-Fc(Sino Biological)を1pmol/ウェルでアッセイプレートにコーティングした。抗体を、10μg/ml(67nM)の開始濃度で、2倍希釈段階により添加し、1時間結合させた。Hisタグ付きリガンド、CD80及びCD86(Sino Biological)を50nMで添加し、プレートを更に30分間インキュベートした。検出及び読み取りを上記のように実施した。
【0264】
マウス実験
インビボ腫瘍実験。培養した腫瘍細胞を、左側腹部のみ又は両方の側腹部に皮下注射した(CT26 1×106個の細胞、MC38 5×105個の細胞、A20 5×106個の細胞、EMT6 1×106個の細胞、B16-F10 0.5~5×105個の細胞)。特に明記しない限り、マウスを107pfuのVVGM-αCTLA4又は対照VVにより、1日おきに3回、i.t.処理した。腫瘍成長実験のために、処理された腫瘍及び遠位腫瘍の腫瘍サイズを、キャリパーを用いて週2回測定し、腫瘍体積(mm3)を、式:(幅2×長さ×0.52)に従って計算した。腫瘍全体の負担(処理した腫瘍と対側腫瘍を合わせたもの)が2000mm3の体積に達したときに(実験エンドポイント)、動物を安楽死させた。機能的実験のために、組織を収集し、図の説明文に示した時点で処理した。マウス腫瘍を、DNase I(Sigma)及びLiberase(商標)(Roche Diagnostics)を含むR10中において37℃で15分間消化させた。次いで、細胞を70μmのセルストレーナーに通し、アッセイに直接使用した。DC表現型決定のために、生存白血球を、密度勾配遠心分離(Cedarlineカタログ番号CL5035)後に濃縮した。
【0265】
初代ヒト異種移植片モデル。PBMC-NOG/SCIDマウスは、NOGマウス(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Sug/JicTac(Taconic))を、200μlのPBS中の、Ficoll-Paque PLUSを用いて単離した1~2×107個のPBMCで静脈内注射した。注射の約2週間後、SCIDマウス(C.B-Igh-1b/IcrTac-Prkdcscid(Taconic))に、再構成NOGマウスからの10×106個の脾細胞を腹腔内注射した。1時間後、マウスを10mg/kgのmAbで処理した。マウスのintraperitoneal fluidを24時間後に収集した。ヒトT細胞サブセットは、以下のマーカー:CD45、CD4、CD8、CD25、CD127(全てBD Biosciences製)を使用するFACSによって識別及び定量化した。
【0266】
腫瘍及び血液中の導入遺伝子及びウイルスの薬物動態。前述のCT26腫瘍モデルでは、VVGM-αCTLA4又はVV-αCTLA4を上記と同じ条件で投与した(すなわち、0、2、及び4日目での107pfuのi.t.注射3回)。3匹のマウス/時点の腫瘍及び血液を、1、4(3回目の注射前)、8、及び10日目に収集した。ウイルスの濃度を、Vero細胞でのウイルス力価測定によって、全血中、及びPBS中でホモジナイズした腫瘍において測定した。5-B07及びmGM-CSFの両方の濃度を、血清及び腫瘍ホモジネートにおいてELISAによって測定した。異種移植ヒト腫瘍モデルにおいて、LoVo細胞をSwissヌードマウスの左側腹部に皮下注射した。腫瘍体積が約120mm3に達した約2週間後、マウスを無作為化し、2群に分けた(15匹のマウス/群)。第1群には、105pfuのVVGM-αhCTLA4(BT-001)を1回i.t.注射し、第2の群には、3mg/kgの4-E03を腹腔内注射した。3匹のマウス/時点の腫瘍及び血液/血清を、ウイルス注射後1、3、6、10、及び20日目に収集した。4-E03及びhGM-CSFの両方のウイルス力価及び濃度を、前段落に記載したように測定した。
【0267】
抗原特異的T細胞応答
抗原特異的T細胞応答を、脾臓、処理した腫瘍、及び対側腫瘍において分析した。簡潔に述べると、1×106個の単離された細胞を、2μg/mlの腫瘍(AH-1、SPSYVYHQF)特異的ペプチド又はウイルス(S9L8、SPGAAGYDL)特異的ペプチド(BioNordika)で再刺激した(Huang et al.,1996、Russell and Tscharke,2014)。腫瘍細胞を、ブレフェルジンA(Sigma)の存在下で4時間パルスした。単離した脾細胞を48時間再刺激し、最後の4時間はブレフェルジンAの存在下で再刺激した。次いで、サイトカイン産生CD8+T細胞を、CD45、TCR-β、CD8、TNF-α、IFN-γ、及びCD25について、FACS染色によって識別した。並行して、腫瘍及びウイルス特異的CD8+T細胞を、MHCクラスI多量体(ペンタマーH-2Ld-SPGAAGYDL-R-PE(S9L8)ProImmune、ペンタマーH-2Ld-TPHPARIGL-R-PE(対照)ProImmune、デキストラマーH-2Ld-SPSYVYHQF-APC(AH-1)Immudex、デキストラマーH-2Ld-TPHPARIGL-APC(対照)Immudex)を用いて識別した。
【0268】
フローサイトメトリー
死細胞を、Fixable Viability Dye eFluor(商標)780、Fixable Viability Stain 440 UV、又はヨウ化プロピジウムを使用して日常的に識別し、ダブレットとともに分析から除外した。細胞内染色は、FoxP3 Staining Buffer Set(Thermo Fisher Scientific)を使用して行った。BD FACS Verse又はFortessa IIのいずれかで試料取得を行い、FlowJo 10.7.2を用いてデータを分析した。腫瘍及び脾臓CD3+T細胞のUMAPを生成するために、FlowAIツール(v.2.2)を使用してデータをクリーニングし、次いで、試料を処理群及び臓器によりバーコード化し、連結した。FlowJoプラグインUMAP(v3.1)を、デフォルト設定(距離関数:ユークリッド、最近傍:15、及び最小距離:0.5)を使用して、全ての補正パラメータ、並びに前方散乱(forward scatter、FSC)及び側方散乱(side scatter、SSC)測定値を含めて、得られたフローサイトメトリー標準(flow cytometry standard、FCS)ファイルに対して実行した。クラスター識別のために、FlowJoプラグインxシフト(v1.3)を、デフォルト設定(最近傍K=82)を使用し、以下のパラメータ:CD4、CD62L、CD25、ICOS、FoxP3、Klrg1、CD44、CTLA-4、PD-1、TIM-3、T-bet、GzmB、Ki-67を含めて、得られたUMAPに対して実行した。FlowJoから得られたスケーリングされたチャネル値を使用して、前述のパラメータについての1つのクラスター当たりの平均発現を計算した。平均発現ヒートマップを、1つのクラスター当たりのパラメータ平均を用いて生成し、0~1の間でスケーリングした。
【0269】
抗体
フローサイトメトリー用モノクローナル抗体:抗ヒトCD4-VioGreen(M-T466)Miltenyi Biotec カタログ番号130-113-259、抗ヒトCD25-BV421(クローンM-A251)BD Biosciences カタログ番号562442、抗ヒトCD127-FITC(クローンHIL-7R-M21)BD Biosciences カタログ番号561697、抗ヒトCD8-APC(クローンRPA-T8)BD Biosciences カタログ番号555369、抗ヒトCTLA-4-PE(クローンBNI3)BD Biosciences カタログ番号555853、マウスIgG2a、kアイソタイプ対照-PE BD Biosciences カタログ番号555574、抗マウスCD45.2-PerCP-Cy5.5(クローン104)BD Biosciences カタログ番号552950、抗マウスCD45.2-BUV737(クローン104)BD Biosciences カタログ番号612779、抗マウスCD25-BV421(クローン7D4)BD Biosciences カタログ番号564571、抗マウスCD8-BV786(クローン53-6.7)BD Biosciences カタログ番号563332、抗マウスCD4-BV510(クローンRM4-5)BD Biosciences カタログ番号563106、抗マウスTCRb-Alexa Fluor 488(クローンH57-597)BioLegend カタログ番号109215、抗マウスPD-1-BB700(クローンRMP1-30)BD Biosciences カタログ番号748242、抗マウスCTLA-4-PECF594(クローンUC10-4F10-11)BD Biosciences カタログ番号564332、抗マウスCTLA-4-APC(クローンUC10-4B9)BioLegend カタログ番号106310、抗マウスKlrg1-APC(クローン2F1)BD Biosciences カタログ番号561620、抗マウスCD62L-BUV395(クローンMEL-14)BD Biosciences カタログ番号740218、抗マウスTIM3-PE(クローン5D12)BD Biosciences カタログ番号566346、抗マウスICOS-BV605(クローン7E.17G9)BD Biosciences カタログ番号745254、抗マウスCD44-APC-Cy7(クローンIM7)BD Biosciences カタログ番号560568、抗マウスKi67-Alexa Fluor 700(クローンB56)BD Biosciences カタログ番号561277、抗ヒトグランザイムB-R718(クローンGB11)BD Biosciences カタログ番号566964、抗マウスTbet-BV711(クローンO4-46)BD Biosciences カタログ番号563320、抗マウスFoxP3-PeCy7(クローンFJK-16s)Thermo Fisher Scientific カタログ番号17-5773-82、抗マウスIFNg-PeCy7(クローンXMG1.2)BioLegend カタログ番号505826、抗マウスTNFa-Alexa Fluor 700(クローンMP6-XT22)BD Biosciences カタログ番号558000、ペンタマーH-2Ld-SPGAAGYDL-R-PE(S9L8)ProImmune、ペンタマーH-2Ld-TPHPARIGL-R-PE(対照)ProImmune、デキストラマーH-2Ld-SPSYVYHQF-APC(AH-1)Immudex、デキストラマーH-2Ld-TPHPARIGL-APC(対照)Immudex。
【0270】
二次抗体:ヤギ抗マウスIgG(H+L)ペルオキシダーゼJackson ImmunoResearch カタログ番号115-035-003、ヤギ抗ヒトIgG(H+L)ペルオキシダーゼJackson ImmunoResearch カタログ番号109-035-003、ヤギ抗ヒトIgG、Fcフラグメント特異的APC Jackson ImmunoResearch カタログ番号109-136-098、ヤギ抗ヒトIgG-APC Jackson ImmunoResearch カタログ番号109-136-088、ヤギ抗ヒトカッパ軽鎖HRP Bethyl カタログ番号A80-115P、ヤギ抗マウスラムダ軽鎖HRP Bethyl カタログ番号A90-121P、ヤギ抗マウスIgG-APC Jackson ImmunoResearch カタログ番号115-136-146、抗His MAb、(クローンAD1.1.10)R&D Systems カタログ番号MAB050、抗His-HRP(クローンAD1.1.10)R&D Systems カタログ番号MAB050H。
【0271】
インビボ実験に使用した市販の抗体:抗マウスCD8(クローン53.6.72)BioXCell カタログ番号BP0004-1、抗マウスCD4(クローンGK1.5)BioXCell カタログ番号BE0003-1、抗マウスPD1(クローン29F.1A12)BioXCell カタログ番号BE0273、抗トリニトロフェノールrIgG2aアイソタイプ対照(クローン2A3)BioXCell カタログ番号BE0089、抗マウスCTLA-4(クローン9H10)BioXCell カタログ番号BE0131、抗マウスPD1(クローンRMP1-14)BioXCell カタログ番号BE0146。
【0272】
n-CoDeRファージディスプレイライブラリから単離された、社内で産生された抗マウス及び抗ヒト抗体。抗マウスCTLA-4(クローン5-B07)及び抗ヒトCTLA-4(クローン4-E03)が本明細書に記載されている。
【0273】
RNA配列
実験手順。CT26腫瘍細胞を、1群当たり10匹のBALB/cマウスに移植した。移植の約1週間後、腫瘍体積が20~50mm3に到達したとき(0日目として定義される)、マウスを、処理されなかったか、又はD0及びD2において、50μL中の107pfu i.t.によって、非アーム化ワクシニアウイルス(VV空)若しくはVVGM-αCTLA4のいずれかを用いて2回処理した。4日目に腫瘍を採取し、Qiagen kitRNeasyプラスミニキットを用いてRNAを抽出した。その後の品質評価の日まで、試料を-80℃で保存した。Agilent RNA 6000 Nano Kit、Agilent 2100 Bioanalyzer System、2100 Expert Softwareを使用して、精製されたRNAの品質を評価して、RNAフラグメントの少なくとも25%がその後の3’mRNA配列決定に必要とされる200ntより長い(DV200>25%)ことを確実にした。鎖特異的ライブラリを調製し、両末端をIntegraGen(France)によって配列決定し(ペアエンド配列決定)、100nt長のリードの対を得た。
【0274】
データ分析。対のリードを、カスタムバイオインフォマティクスパイプラインによって処理した。簡潔に述べると、固有分子識別子(unique molecular identifier、UMI)配列をリード1から抽出し、捕捉されたRNAフラグメントの3’末端の配列をリード2から抽出した。品質ベースのトリミング及び品質管理の後、リード2を、STAR(Dobin et al.,2013)を用いて、Mus musculus完全ゲノム(mm10アセンブリ)、加えて人工染色体外としてのVVGM-αCTLA4ゲノムを含有するカスタムゲノムに対してマッピングした。次いで、一組のツールであるUMIツール(Smith et al.,2017)からのプログラムdedupを方法「ユニーク」とともに使用して、リードを重複排除した。最後に、重複排除されたリードを、HTSeqカウントを使用して定量化した(Anders et al.,2015)。次いで、1つの試料当たりのリードカウントデータを、DESeq2(Love et al.,2014)を使用して正規化し、遺伝子は、2つの条件間の倍数変化が2を超え、調整されたp値が0.1未満である場合、差次的に発現されたとみなさした(多重検定のためのBenjamini-Hochberg補正)。遺伝子オントロジー(Gene Ontology、GO)濃縮分析を、R package clusterProfilerからの機能enrichGO(Yu et al.,2012)を用いて、上方制御又は下方制御された、上記で定義されたように差次的に発現された遺伝子のセットを使用して行った。
【0275】
腫瘍Treg関連受容体に特異的なTreg枯渇抗体の単離
腫瘍Treg細胞関連受容体に特異的な抗体を、本質的に以前に記載された腫瘍担持マウスからのCD4+T細胞枯渇ナイーブ細胞及びCD11b+細胞に対する、腫瘍関連Treg細胞(CT26、4T1、B16、及びLewis肺腫瘍担持マウスから単離された)の差次的バイオパニングに、インビトロCDRシャッフルn-Coder(登録商標)ライブラリを供することによって単離した(Veitonmaki et al.,2013)。
【0276】
CTLA-4 mAb産生
ヒト/マウスCTLA-4に対する抗体フラグメントを、n-Coder(登録商標)scFvファージディスプレイライブラリから単離した。特異的CTLA-4抗体の濃縮は、ストレプトアビジンダイナビーズ又はポリスチレンボール上に装填されたビオチン化h/mCTLA-4-Hisタンパク質(Sino Biological)を使用した3回の連続パニングによって達成した。第3の選択ラウンドはまた、h/mCTLA-4の細胞外及び膜貫通領域又は無関係な非標的タンパク質をコードするcDNA(Sino Biological)で一過的にトランスフェクトされた懸濁適合HEK293-EBNA細胞を含んだ。ビオチン化非標的タンパク質を用いた各選択の前に予備選択を行った。結合ファージは、トリプシン消化によって各選択ラウンド後に溶出し、標準的な手順を使用してプレート上で増幅した。選択3からのファージミドをscFv産生フォーマットに変換し、可溶性(組換えタンパク質)及び細胞結合抗原(一過性トランスフェクト細胞)への特異的結合を評価する、後続のスクリーニングアッセイにおいて使用した。市販の抗体を、フローサイトメトリー、蛍光マイクロアレイ技術(fluorescence microarray technology、FMAT)、及びELISAによって、組換え及び表面結合ヒト(Yervoy、Bristol Myers Squibb;抗ヒトAPC、Jackson)、及び抗マウスCTLA-4(BioLegend)CTLA-4の評価のために使用した。対応するアイソタイプ対照を、全ての実験において陰性対照として含めた。scFvの一次スクリーニングのために、h/mCTLA-4トランスフェクト細胞をFMATプレートに播種した。E.coli発現scFvを添加し、続いて脱グリコシル化マウス抗His抗体(R&D Systems)及び抗マウスAPC(Jackson)を添加した。染色された細胞を、8200検出システム(Applied Biosystems)を用いて検出した。一次スクリーニングからの陽性クローンを再発現させ、トランスフェクト細胞及び組換えタンパク質への結合についてELISAで再試験した。ELISAのために、E.coli発現scFvを、h/mCTLA-4又は非標的タンパク質でコーティングしたプレートに添加した。結合したscFvを、抗FLAG-AP(Sigma Aldrich)、続いて基質添加(CDP-star、Life Technologies)、及び発光読み取り(Tecan Ultra)を使用して検出した。
【0277】
合計で42個及び31個のユニーククローンを、それぞれhIgG1及びmIgG2aバリアントに変換した。VH及びVLをPCR増幅し、それぞれ抗体の重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含有する発現ベクターに挿入し、懸濁適合HEK 293EBNA細胞(ATCC)にトランスフェクトした。トランスフェクションの6日後に培養培地を採取し、標準的な手順に従って、AKTA Purifierシステムに接続された、MabSelect(GE Healthcare)を充填したカラムを使用して抗体を精製した。抗体を低pH緩衝液で溶出し、次いで、最終滅菌濾過の前に、Spectra/Por Dialysis Membrane 4(Spectrum Laboratories Inc)を使用して適切な製剤緩衝液に透析した。
【0278】
抗体純度は、CE-SDS(LabChip XII、Perkin Elmer、Massachusetts、USA)及びSE-HPLC(Ultimate 3000、Thermo Fisher Scientific)によって評価した。European Pharmacopoeia 2.6.14、現行版、細菌内毒素、「方法D.発色速度論的方法」に適合させたChromogenic LAL-Endochrome-Kキット(Charles River)を用いて決定したところ、全ての調製物は、エンドトキシンが低かった(<0.1EU/mgタンパク質)。
【0279】
次いで、精製されたIgGを、トランスフェクトされたHEK細胞、及び初代細胞、並びに組換えタンパク質への結合について、ELISA及びBiacoreの両方において評価した。
【0280】
表面プラズモン共鳴
組換えタンパク質への結合も、Biacore 3000を使用して、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance、SPR)技術で試験した。抗ヒトFc(GE Healthcare)を捕捉抗体として、330nMの濃度でCM5センサーチップ(GE Healthcare)上に固定化した。4-E03及びイピリムマブの最適濃度を、組換えタンパク質とともに、予備試験で評価して、良好な曲線フィッティングを得て、物質移動を制限した。抗体(この特定の実験では5nM)を10μl/分で1分間添加し、続いて滴定濃度(4-E03については1.6~50nM及びイピリムマブについては1.6~200nM)のヒトCTLA-4タンパク質(Sino Biological)を30μl/分で3分間添加した。各サイクルの間に、10mMのグリシン、pH1.5で表面を再生した。
【0281】
細胞トランスフェクション
ヒト及びマウス(Sino Biological)CTLA-4をコードするcDNAを、Lipofectamine 2000(Life Technologies)を使用して、懸濁適合293FT細胞(Life Technologies)にトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、FreeStyle(商標)293発現培地(Life Technologies)において、37℃、5%CO2、120rpmで48時間培養した。フローサイトメトリーを用いて、標的発現を分析した。
【0282】
データ利用可能性
この論文で報告されたRNAseqデータに割り当てられた受託番号は、GEO:GSE176052である。
【0283】
定量化及び統計分析
全ての統計分析は、GraphPad Prism 9.0(GraphPad Software Inc、La Jolla、CA)を使用して行った。スチューデントt検定又は一元配置ANOVAを用いて、p値を計算した。人道的エンドポイントまでの生存を、ログランク検定による有意性についての分析を用いるカプラン-マイヤー法を使用してプロットした。p<0.05のとき、有意性を認めた。
【0284】
結果
Treg枯渇抗CTLA-4抗体の識別及び特徴付け
免疫チェックポイント遮断及び抗CTLA-4抗体療法は、臨床的に検証されたアプローチであるが、抗CTLA-4抗体効力の根底にある機構は、完全に特徴付けられていない。外来抗原発現細胞及び腫瘍細胞の効果的なT細胞媒介性認識及び除去を可能にしながら、自己抗原に対する寛容を維持する際のCTLA-4の中心的役割は、十分に確立されている(Leach et al.,1996、Tivol et al.,1995、Waterhouse et al.,1995)。データの蓄積は、抗CTLA-4抗体が、T細胞が腫瘍抗原を認識し、腫瘍を拒絶する閾値を低下させるように作用することの他に、FcγR発現エフェクタ細胞との抗体相互作用後の腫瘍内Treg細胞の枯渇を介して治療活性を発揮し得ることを示唆している(Peggs et al.,2009、Simpson et al.,2013)(Ingram et al.,2018)。これと一致して、最近のデータは、イピリムマブを含む抗CTLA-4抗体の効力におけるFcγR及びTreg枯渇の役割を示した(Arce Vargas et al.,2018)。
【0285】
標的に依存しないF.I.R.S.T(商標)発見プラットフォーム(Veitonmaki et al.,2013)を使用して、本発明者らは、T細胞炎症性CT26マウス腫瘍モデルにおいて、Treg細胞を枯渇させ、生存を改善することができる一連の抗体及びそれらの関連する標的を識別した(データは示さず、
図1A及び
図B)。これらの中でもCTLA-4及び抗CTLA-4抗体が識別され、抗CTLA-4 mIgG2a mAbは、腫瘍内Treg細胞を枯渇させ、同系CT26腫瘍を担持する動物の処理時に生存を与えた(
図1A)。ヒトCTLA-4特異的IgG1抗体の集中的スクリーニングにより、CTLA-4発現ヒトT細胞の同様のインビトロ枯渇活性を有するいくつかのクローンが識別された(
図1C)。1つのクローン(4-E03)は、複数のドナーにわたってスクリーニングされた場合、他のクローンと比較して、その一貫してより強いCTLA-4
+T細胞枯渇効力に基づいて際立っていた(
図1C)。このクローンの明らかにより強い枯渇活性のインビボ関連性を調査するために、本発明者らは、ヒトPBMCがNOD SCID IL-2Rガンマ-/-(NOD SCID IL-2R gamma、NSG)マウスに移植されるモデルに目を向けた。移植片対宿主型の相互作用のために、ヒトTreg及びCD8+T細胞は、強く活性化され、ヒト腫瘍において観察されるものと比較して、同様の共刺激性及び共抑制性発現を示す(Buchan et al.,2018)(
図9A)。NOG-hPBMC CD4
+CD25
+CD127
低Treg及びCD8
+T細胞の分析は、実際に、9人の卵巣がん患者から得られたT細胞で観察されたものと同様のCTLA-4発現レベルを明らかにした(
図9A)。更に、NOG-hPBMCマウスに10mg/kgのイピリムマブ又は追加の抗CTLA-4抗体クローン(2-C06及び2-F09)を投与すると、ヒトCD4
+CD25
+CD127
低Treg細胞の同様のインビボ枯渇活性が実証された(
図1D)。しかしながら、4-E03は、ヒトTreg細胞の著しくより大きな枯渇を誘発した。重要なことに、Treg細胞と比較して、腫瘍内及びNOG-hPBMC CD8NOG-hPBMC CD8
+T細胞上のCTLA-4のより低い発現と一致して(
図9A)、4-E03は、ヒト活性化CD8
+T細胞の枯渇を示さなかった(
図1D)。4-E03抗体調製物の生化学的特徴付け、特にHPLC-SEC分析は、95%超の単量体IgGを示し(データは示さず)、4-E03増強Treg枯渇が抗体の凝集から生じたことを除外した。本発明者ら及び他の観察と一致して、抗CTLA-4 mAb Treg枯渇は、抗体Fc:FcγR相互作用に依存することが示された。4-E03のFcγR結合障害バリアント(IgG1N297Q)は、WT FcγR堪能IgG1と比較して、Treg枯渇の重度の障害を示した(
図9B)。
【0286】
これらの知見は、4-E03がCTLA-4上の機能的に異なるエピトープに結合することを示した。したがって、本発明者らは、イピリムマブ及び他の抗CTLA-4抗体と比較した4-E03の結合及びリガンド遮断活性を特徴付けた。全ての抗体は、ヒトCTLA-4の細胞外ドメインに対して高い特異性を示し、ELISAによって、その密接に関連するヒトホモログCD28への観察可能な結合はなかった(
図1E)。4-E03及びイピリムマブは、同様の有効性及び効力でhCTLA-4と結合したが(
図1E及び
図9C)、4-E03のみが、マウスCTLA-4と弱いが明らかな交差反応性を示した(
図1E)。これらの知見は、2つの抗体が異なるエピトープに結合することと一致する。
【0287】
インビトロ活性化ヒトCD4
+T細胞上で内因的に発現したCTLA-4への結合(
図9D及び
図1F)、B7:CTLA-4相互作用の遮断(
図1G)、又はB7:CTLA-4媒介性T細胞抑制の抑制(
図1H)を評価する、4-E03及びイピリムマブの更なる比較分析は、他の点ではほぼ同一の効力及び有効性を明らかにした。結論として、結果は、4-E03が、機能的に異なるCTLA-4エピトープに結合することを示し、これは、より強いTreg枯渇に関連するが、B7:CTLA-4の同等の遮断は、イピリムマブによって標的とされるエピトープに対するTエフェクタ細胞抑制を誘導した。
【0288】
4-E03は、マウスCTLA-4と弱くしか交差反応しなかったので(
図1E)、本発明者らは、次に、免疫能力のあるマウス腫瘍モデルにおけるインビボ概念実証研究のための適切な代理を識別するためのスクリーニングに焦点を当てた。ヒト設定における4-E03と比較して、マウスCTLA-4トランスフェクトCHO細胞(
図1I)及びマウスCTLA-4タンパク質(
図9E)への高度に特異的な結合、B7:CTLA-4相互作用の遮断(
図1J)、並びに腫瘍内マウスTregの同様の強い枯渇(
図1K)を示した1つのクローン(5-B07)が識別された。更に、抗mCTLA-4(5-B07)は、抗腫瘍活性を付与し、CT26腫瘍担持BALB/cマウスの生存を改善した(
図1L)。ヒト細胞上の抗hCTLA-4(4-E03)で観察されたように、マウスTregの抗mCTLA-4(5-B07)枯渇は、Fc:FcγR相互作用に依存することが見出された。5-B07のFc:FcγR結合堪能であるが、Fc:FcγR結合障害ではないバリアントは、腫瘍内Tregを枯渇させた(
図9F)。
【0289】
同様の顕著なTreg枯渇活性は、CTLA-4に対するそれらの同様の高い特異性及びCTLA-4:B7ファミリー相互作用の遮断活性と並んで、好適なMoA適合代理としての抗hCTLA-4(4-E03)及び抗mCTLA-4(5-B07)の治療可能性を示した。
【0290】
腫瘍選択的CTLA-4遮断及びTreg枯渇のための、抗体をコードする腫瘍溶解性ウイルスの操作
抗CTLA-4抗体療法の頻繁な副作用は、T細胞ホメオスタシス及び自己に対する寛容を維持するための中央チェックポイントとして作用するCTLA-4の十分に確立された役割と一致する(Tivol et al.,1995、Waterhouse et al.,1995)。しかし、Quezadaらによる最近の研究は、腫瘍内Treg枯渇がイピリムマブ臨床活性に著しく寄与し得ること(Arce Vargas et al.,2018)、及び腫瘍内送達されたTreg枯渇抗体がマウス腫瘍モデルにおいて実質的な抗がん活性をもたらし得ること(Fransen et al.,2013、Marabelle et al.,2013b)を示した。それぞれ中央及び末梢区画において作用する抗CTLA-4のこの二重活性は、抗CTLA-4療法を腫瘍に局在化することが、抗CTLA-4効力を毒性から切り離すための魅力的な戦略であり得ることを示唆する。
【0291】
本発明者らは、Treg枯渇抗CTLA-4を発現するように操作された腫瘍内送達された腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus、OV)が、有効であるが安全な腫瘍局在化抗CTLA-4療法を達成するための特に魅力的な手段を表すと仮定した。OVは、腫瘍細胞の感染時に、局所抗体の産生及びCTLA-4受容体の遮断、並びにTMEにおけるTreg枯渇を可能にすることの他に、直接的及び間接的な抗がん活性の両方を発揮すると考えられており、がん免疫療法に対して承認されている(Bommareddy et al.,2018)。
【0292】
したがって、本発明者らは、世界的な天然痘ワクチン接種プログラムにおいて観察された臨床的に証明された安全性及び強力な免疫調節効果、並びに免疫砂漠及び免疫排除がんのマウス実験モデルにおける細胞溶解性及び炎症性細胞浸潤誘導特性(Fend et al.,2017Kleinpeter et al.,2016、Liu et al.,2017、Marchand et al.,2018)を有する、弱毒化コペンハーゲン株(Foloppe et al.,2019)に由来するワクシニアウイルスベクターを、完全長抗hCTLA-4又は抗mCTLA-4 IgG抗体配列を用いて操作した。GM-CSF(VV
GM-αCTLA4)を追加的にコードするバリアントベクター(
図2A)、骨髄造血及び先天性免疫細胞走化性の成長因子誘導因子及びエンハンサーも産生し、治療効力について評価した。
【0293】
遺伝子再構築後、組換え抗CTLA-4をコードするウイルスは、腫瘍細胞株に感染し、複製し(
図2B)、溶解する(
図2C)ことが確認された。操作された腫瘍溶解性ウイルスに感染した腫瘍細胞株は、組換え産生されたタンパク質と比較して、CTLA-4受容体への等効力結合(
図2G)及びGM-CSF依存性TF-1細胞増殖の支持(
図2F)を有する、完全長IgG抗体及びGM-CSF導入遺伝子(
図2D及び
図2E)を産生することが更に示された。BT-001感染MIA-PaCa-2腫瘍細胞によって産生された4-E03もまた、ヒトTreg細胞をインビボで枯渇させることが示された(
図2H)。
【0294】
腫瘍内VV
GM-αCTLA4は、腫瘍選択的CTLA-4受容体飽和及びTreg枯渇に関連する抗腫瘍活性を有する
VV
GM-αCTLA4抗腫瘍活性は、T細胞によって高度に浸潤され、全身性抗CTLA-4抗体治療に対して感受性であることが知られているCT26 BALB/cモデルにおいて最初に評価された(Grosso and Jure-Kunkel,2013)。7.5×10
4、7.5×10
5、又は7.5×10
6pfuのVV
GM-αCTLA4によるCT26腫瘍担持動物への3回の腫瘍内注射は、用量依存的抗腫瘍効果を実証し、これは、10
6~10
7pfuでピークに達し、10匹中6~7匹の動物が治癒した(
図3A)。抗CTLA-4抗体及び/又はGM-CSF導入遺伝子を欠く対照ウイルスによる処理により、抗CTLA-4抗体に対する偏性依存(0/10匹のマウスが生存)、及び治療効力についてGM-CSFのわずかな抗CTLA-4増強効果(7/10対5/10匹のマウスが生存)が実証された。したがって、確立された用量依存的な、抗CTLA-4抗体依存的な、かつGM-CSF増強性の効果に基づいて、本発明者らは、1x10
7pfuの腫瘍内送達される用量を使用して、二重導入遺伝子をコードするOV(VV
GM-αCTLA4)に対する治療及び機構的評価及び特徴付けを調査した。
【0295】
本発明者らは、次に、導入遺伝子をコードするワクシニアOVの腫瘍内投与後に、抗CTLA-4(
図3B)、GM-CSF(
図10A)、及びウイルス粒子(
図10B)の腫瘍濃度及び全身濃度を評価した。10
7VV
GM-αCTLA4感染性粒子の、同系マウス腫瘍担持免疫適格マウスへの腫瘍内注射は、血液ではなく、腫瘍のCTLA-4発現細胞の持続的飽和に関連する腫瘍内抗体曝露をもたらした(
図3B~
図1I)。同様に、VV
GM-αhCTLA4の、ヒト腫瘍異種移植片担持免疫欠損マウスへのi.t.投与は、血液と比較して、腫瘍において数桁高い抗体濃度を生じた(
図10C~
図10E)。全身区画ではなく腫瘍内で受容体飽和濃度を達成した(
図3B)腫瘍内投与と一致して、VV
GM-αCTLA4は、CT26腫瘍担持BALB/cマウスの脾臓において、腫瘍内Treg細胞のほぼ完全な枯渇をもたらしたが、Treg数に影響を及ぼさなかった(
図3C)。
【0296】
まとめると、結果は、抗CTLA-4をコードするワクシニアウイルスの腫瘍内投与が、インビボでの腫瘍限定CTLA-4受容体飽和及びTreg枯渇を成功裡に達成することを実証し、その腫瘍選択的な抗CTLA-4の治療的性質を支持し、多様ながん実験モデルにおけるインビボ効力及び忍容性の試験を促した。
【0297】
VV
GM-αCTLA4は、広範な抗腫瘍活性を有する
本発明者らは、高度にT細胞炎症性(CT26)腫瘍微小環境から免疫排除(B16)腫瘍微小環境を表す、異なる遺伝的マウスバックグラウンド(CT26 BALB/c結腸、EMT6 BALB/c乳房、MC38 C57BL/6結腸、及びB16 C57BL/6黒色腫、
図4A)上の異なる起源の血液がん(A20)及び固形がんに及ぶ免疫適格マウスがんモデルの範囲におけるi.t.VV
GM-αCTLA4の抗腫瘍活性の評価に進んだ。モデルは、抗CTLA-4又は抗PD-1を有するICBに対して感受性又は耐性のものを含んだ。
【0298】
驚くべきことに、多様な免疫炎症型の腫瘍微小環境を特徴とする確立された同系腫瘍を保有するC57BL/6又はBALB/cマウスへのVV
GM-αCTLA4のi.t.投与は、動物の大部分(A20=10/10、EMT6=8/10、MC38=8/10、及びCT26=10/10匹の生存マウス)を治癒させた(
図4A)。同様に印象的なことに、免疫砂漠型のTME並びに抗PD-1及び抗CTLA-4の両方に対する耐性を特徴とするB16 C57BL/6モデルにおいて、i.t.VV
GM-αCTLA4は、腫瘍成長を著しく遅延させ、3/10匹の動物を治癒させた。これらの結果は、多様な炎症性及び免疫排除型のTMEを有する患者を含む多様ながん型におけるVV
GM-αCTLA4の広範な治療可能性を示した。
【0299】
VVGM-αCTLA4による腫瘍内処理は、長期持続性全身性抗腫瘍免疫を誘導する
前臨床及び臨床研究により、腫瘍局在化がん免疫療法の治療可能性が実証されている。単独(Andtbacka et al.,2015)で、又はICBと組み合わせた(Chesney et al.,2018、Ribas et al.,2017)腫瘍内腫瘍溶解性ウイルス療法は、黒色腫がん患者において持続的な応答を誘導する。機構的に、i.t.オンコウイルス療法は、注入された腫瘍への炎症性細胞浸潤を誘導又は増強し、腫瘍抗原提示の増加、流入領域リンパ節への遊走、及びプライミング後の遠隔(非注射)腫瘍病変へのCD8+T細胞輸送をもたらして、全身性抗腫瘍「アブスコパル」効果を発揮することが提案されている(Ngwa et al.,2018)。がん患者は、転移した腫瘍、検出不可能な腫瘍、又は注射不可能な腫瘍を特徴とする広範な疾患を示し得るので、診療所において、全身性適応抗腫瘍記憶応答のそのような誘導は、重要となるであろう。
【0300】
本発明者らは、多方面からのアプローチを使用して、i.t.VVGM-αCTLA4がアブスコパル効果及び全身性抗腫瘍免疫を誘導するかどうかを評価した。第1に、腫瘍細胞を各動物の左右の側腹部に皮下移植するが、一方の腫瘍のみにOVを注射し、他方を未治療のままにする「双子腫瘍モデル」を使用して、アブスコパル効果を評価し、注射していない腫瘍における腫瘍成長の減少として示すことができる。
【0301】
CT26腫瘍担持マウスにおける最大限に効果的なVV
GM-αCTLA4用量の腫瘍内注射は、注射された腫瘍の完全な拒絶(9/9)及び注射されていない腫瘍のほぼ完全な拒絶(7/9)をもたらし、強いアブスコパル効果を示した
図4B)。i.t.OV投与の真のアブスコパル性質は、2倍確認された。第一に、注射された腫瘍から注射されていない腫瘍へのウイルス粒子拡散の潜在的な治療効果を除外するために、非注射腫瘍を分析し、ウイルス粒子について陰性であることを確認した(
図11A)。
【0302】
第二に、双子腫瘍モデルを使用して、本発明者らは、局所(i.t.)又は全身(i.v.)投与されたVV
GM-αCTLA4の最大限に効果的な用量(10
7pfu)及び準最適用量(10
5pfu)の抗腫瘍活性を比較した。真のアブスコパル効果と一致して、i.t.投与は、両方の試験用量でi.v.投与と比較して生存の増強を付与した(
図11C)。実際に、10
5pfuのi.t.投与は、非注射腫瘍の拒絶において、100倍多いi.v.注射用量と比較して少なくとも同程度に効果的であった(
図11B及び
図11C)。最後に、適応抗原特異的免疫応答に特徴的な免疫学的記憶を誘導するi.t.OV投与と一致して、治癒した動物は、同じ腫瘍(CT26)での再チャレンジに対して防御されたが、無関係な腫瘍(Renca)では防御されなかった(
図11D)。
【0303】
VV
GM-αCTLA4は、頑強な全身性CD8
+T細胞依存性抗腫瘍免疫を引き起こす
本発明者らは、CD4
+T細胞枯渇又はCD8
+T細胞枯渇CT26腫瘍担持マウスと比較して、免疫が損なわれていないVV
GM-αCTLA4治療活性を評価することによって全身性抗腫瘍免疫応答の性質を調査した(
図5A及び
図13A)。驚くべきことに、CD8
+T細胞枯渇はVV
GM-αCTLA4を完全に排除した。CD4<8172>+</8172>T細胞枯渇により、VV
GM-αCTLA4効果は低減したが、除去されなかった。これらのデータは、VV
GM-αCTLA4抗腫瘍活性が、CD8
+T細胞に決定的に依存することを実証した。実証されたアブスコパル効果及び再チャレンジに対する腫瘍特異的防御の他に、結果は、腫瘍内送達されたVV
GM-αCTLA4が、頑強な全身性CD8
+T細胞抗腫瘍免疫を誘導したことを強く示唆した。
【0304】
したがって、本発明者らは次に、i.t.VV
GM-αCTLA4が、腫瘍及び末梢において腫瘍特異的及びウイルス特異的CD8
+T細胞を誘導又は拡大指せるかどうかを評価した。CT26腫瘍担持BALB/cマウスを、VV
GM-αCTLA4で腫瘍内処理するか、又は臨床的に利用可能な抗CTLA-4レジメンを模倣するために、抗mCTLA-4 mAb 5-B07(3mg/kg)で全身(i.p.)処理した。腫瘍及び中心区画(脾臓)におけるCT26腫瘍特異的及びワクシニア特異的CD8
+T細胞を、2つのアプローチによって定量化した:CT26腫瘍抗原(AH-1)特異的及びワクシニアウイルス特異的多量体を使用した、採取された脾臓における腫瘍特異的CD8+T細胞の直接定量、並びに脾細胞のエクスビボ刺激後のIFN-γ
+TNF-α
+CD8
+T細胞(
図5B)、又はそれぞれCT26由来腫瘍ペプチドAH-1及びワクシニア由来ペプチドS9L8によるTILの評価。GM-CSFのみをコードするPBS又はVVによる処理を対照として含めた。予想通り、頑強な全身性CD8
+T細胞依存性抗腫瘍免疫を誘導する腫瘍内VV
GM-αCTLA4と一致して、i.t.VV
GM-αCTLA4は、脾細胞のエクスビボ刺激又はデキストラマー染色によって評価したところ、注射された腫瘍及び末梢(非注射腫瘍及び脾臓)区画の両方において腫瘍特異的CD8
+T細胞を誘導した(
図5B~
図5D及び
図13B)。印象的には、i.t.VV
GM-αCTLA4は、全身性抗CTLA-4と比較して、腫瘍特異的CD8
+T細胞をより効果的に拡大させた。PBS又はウイルス欠損αCTLA-4による対照処理は、いずれの読み出しによっても腫瘍特異的CD8
+T細胞を誘導しなかった。興味深いことに、VV
GM-αCTLA4によるi.t.処理はまた、少数ではあるがワクシニア特異的CD8
+T細胞を誘導した。
【0305】
まとめると、これらのデータは、腫瘍内VVGM-αCTLA4は、頑強な全身性CD8+T細胞依存性抗腫瘍免疫を誘導した。
【0306】
腫瘍内で誘導されたCD8+T細胞抗腫瘍免疫は、FcγR依存性であり、Treg枯渇と相関する
広範な抗腫瘍活性、腫瘍及び末梢における腫瘍特異的CD8+T細胞の強い拡大、並びにTreg細胞の腫瘍限定枯渇は、i.t.VVGM-αCTLA4による非常に有効かつ安全な処理を支持した。
【0307】
抗腫瘍免疫の根底にある抗体媒介性Treg枯渇の役割を更に評価及び確認するために、本発明者らは、CT26腫瘍担持WT及び共通ガンマ鎖欠損(Fcer1g
-/-)BALB/cマウスにおけるi.t.VV
GM-αCTLA4の抗腫瘍効果を比較した。Fcer1g
-/-マウスは、機能的活性型Fcガンマ受容体及び抗CTLA-4抗体インビボTreg枯渇を欠き、関連する抗がん活性は、活性化FcγR依存性であることが以前に示されている(Arce Vargas et al.,2018、Simpson et al.,2013)。決定的にi.t.VV
GM-αCTLA4抗腫瘍免疫の根底にある抗CTLA-4誘導性Treg枯渇と一致して、WT(10/10)は、それらのがんから完全に保護され、治癒したが、FcγR欠損動物(3/10)はそうではなかった(
図6A)。FcγR欠損動物において観察された、限定されているが著しい抗腫瘍活性は、ウイルスベクター(
図4A)及びCTLA-4:B7遮断は、それ自体、Treg枯渇の非存在下では(
図9F及び
図12A)、腫瘍成長を遅延させたが、限られた生存優位性のみに寄与したという、本発明者ら及び他の観察と一致した。
【0308】
抗体被覆標的細胞の免疫エフェクタ媒介性ADCC及びADCPをもたらすことの他に、FcγRは、腫瘍抗原交差提示を促進することが示されており(DiLillo and Ravetch,2015)、通常排除されるMHCII限定細胞外腫瘍抗原を包含するように、CD8
+T細胞抗腫瘍応答を拡大及び増強する。本発明者らの、i.t.VV
GM-αCTLA4抗腫瘍免疫は、FcγR依存性であり、腫瘍特異的CD8
+T細胞のより頑強な拡大を誘導し、追加的にウイルス特異的CD8
+T細胞を誘導したという知見は、それが腫瘍抗原交差提示も促進し得ることを示した。この概念は、ウイルス骨格(VV)注射された及び未処理のCT26腫瘍担持マウスと比較した、VV
GM-αCTLA4注射されたマウスから採取した腫瘍の差次的遺伝子発現分析によって補強された(
図6B及び
図6C)。Batfのそれ自体を上方制御することの他に、差次的遺伝子分析は、抗原交差提示cDC1樹状細胞に関連するI型IFN応答及びCD8αマーカーの上方制御を実証した。追加のシグネチャーは、VV
GM-αCTLA4抗腫瘍免疫の誘発及び作動の根底にある、上記で特徴付けられたCD8
+T細胞依存性の(かつ潜在的にNK細胞媒介性グランザイム依存性の)腫瘍細胞溶解を支持した。
【0309】
VV
GM-αCTLA4誘導性抗腫瘍免疫における抗原交差提示の役割を評価するために、本発明者らは、転写因子Batf3を欠くマウス(Batf3
-/-マウス)を使用した。Batf3
-/-マウスは、CD8α
+樹状細胞を欠き、結果として、欠陥のある抗原交差提示、並びに感染中のウイルスに対する、及びがんのマウス実験モデルにおける腫瘍抗原に対するCD8
+T細胞応答の重度の障害を示す(Hildner et al.,2008)。更に、cDC1及び抗原交差提示は、αCTLA-4を含む、免疫チェックポイント遮断薬の治療活性を媒介することが知られている(Gubin et al.,2014)。したがって、本発明者らは、MC38腫瘍を移植されたBatf3
+/+及びBatf3
-/-C57BL/6マウスにおけるi.t.VV
GM-αCTLA4の抗腫瘍活性を比較した。驚くべきことに、Batf3欠損は、9/9匹のWTマウス生存と比較して、0/8匹のBatf3
-/-によって実証されるように、i.t.VV
GM-αCTLA4抗腫瘍免疫を無効にした(
図6D)。
【0310】
まとめると、これらの結果は、VVGM-αCTLA4が、FcγR依存性及びcDC1依存性抗腫瘍活性の両方を有し、主要な機構として腫瘍内で誘導されたTreg枯渇及び腫瘍抗原交差提示、並びに支持機構として腫瘍内CTLA-4:B7遮断及び腫瘍溶解を識別し、基礎的なi.t.VVGM-αCTLA4は、CD8+T細胞抗腫瘍免疫を誘導した。
【0311】
腫瘍内抗CTLA-4-VVは、末梢エフェクタCD8
+T細胞を拡大させ、Treg及び疲弊CD8
+T細胞を低減させる
本発明者らは、どのようにi.t.VV
GM-αCTLA4が、注射された腫瘍及び隣接する腫瘍、並びに末梢におけるTIL応答を調節するかを定性的に特徴付けることを進めた。マルチカラーフローサイトメトリー、並びに機能的に異なる抗腫瘍及び腫瘍促進性TILサブセットを識別するように設計された高次元抗体パネルを使用して、処理群にわたる12個のT細胞クラスターを識別した(
図7及び
図13C)。際立って、i.t.VV
GM-αCTLA4は、モック処理された動物と比較して、注射された腫瘍において、疲弊した(PD-1
+ TIM-3
+)CD8
+T細胞を排除し、疲弊していないKlrg1
+エフェクタCD8
+T細胞を強く拡大させた(
図7)。同時に、上記の知見と一致して、i.t.VV
GM-αCTLA4は、は、高レベルのCTLA-4を発現し、特に抑制性であることが知られているKlrg1
+Tregを含むCTLA-4
+腫瘍内Tregを効果的に枯渇させた(Nakagawa et al.,2016)(
図7)。
【0312】
抗体をコードするウイルスを注射されなかった隣接遠位腫瘍の評価は、同様であるが、i.t.VV
GM-αCTLA4によるTILのあまり顕著でない調節を明らかにした。更に、αCTLA4をコードする腫瘍溶解性ウイルスの腫瘍内投与は、末梢において腫瘍特異的CD8
+T細胞を拡大させた(
図5B~
図5D)という本発明者らの観察と一致して、i.t.VV
GM-αCTLA4は、脾臓において活性化グランザイムB
+(Klrg1
+)CD8
+T細胞サブセットを誘導した(
図7A)。最後に、腫瘍限定Treg枯渇を達成する、抗体をコードするウイルスと一致して、腫瘍床において枯渇したTreg集団は、i.t.VV
GM-αCTLA4によって脾臓において大きく変化しなかった(
図7A)。
【0313】
腫瘍内抗CTLA-4-VVを抗PD-1と組み合わせて、「冷たい」遠位腫瘍を拒絶する
本発明者の観察は、VVGM-αCTLA4が、主に抗CTLA-4 mAb依存性腫瘍抗原交差提示及びTreg枯渇を含む機構によって、注射された腫瘍において局所的に作用して、全身性適応抗腫瘍免疫及び頑強な末梢腫瘍特異的CD8+T細胞拡大を「発火」させた。これらの知見は、VVGM-αCTLA4が、CD8+T細胞の腫瘍への動員を助ける治療剤と相乗作用する可能性があることを示した。抗PD-1は、主にT細胞疲弊の逆転によって(Hui et al.,2017、Wei et al.,2018)、場合によっては幹様記憶CD8+T細胞を腫瘍に動員することによって(Galletti et al.,2020、Simon et al.,2020)作用すると考えられている。抗PD-1が、異なる起源の複数の固形がんにおいて生存を改善できることが実証されているにもかかわらず、抗PD-1は、免疫浸潤が不十分な「冷たい腫瘍」を有する患者における転帰を改善せず(Galon and Bruni,2019)、これは、おそらく、今日のがん療法における最大の満たされていない医学的必要性を表す。
【0314】
したがって、それらの明らかに異なり、潜在的に相補的な作用機序に基づいて、本発明者らは、次に、モデル系としてB16 C57BL/6を使用して、ICB耐性、免疫浸潤が不十分ながん、及び低免疫原性の「冷たい」がんに焦点を当てて、抗PD-1及びVV
GM-αCTLA4の相乗作用を調べた。以前のデータは、B16腫瘍が、抗PD-1(10mg/kg)、抗CTLA-4(10mg/kg)、又はそれらの組み合わせの臨床的に関連する全身投与を含み、ICB療法に対して不応性であることを実証した(
図14)。
【0315】
触知可能な大きな腫瘍に抗体をコードするウイルスが注射されるが、小さい又は検出不可能な転移病変には注射できない臨床状況を模倣するために、本発明者らは、動物が1つの「大きな」腫瘍及び1つの「小さな」腫瘍を有し、大きな腫瘍のみにVV
GM-αCTLA4をi.t.注射した、双子腫瘍B16/C57BL6モデルを確立した。抗PD-1に対する耐性は、10mg/kgの最大限に効果的な用量による全身処理後の腫瘍成長抑制又は生存利益の欠如によって確認された(
図8A)。
【0316】
以前に観察されたように、VV
GM-αCTLA4による単剤処理は、原発性注射腫瘍の腫瘍成長を著しく低減させた(
図4及び
図8B)。しかしながら、i.t.VV
GM-αCTLA4は、注射されていない腫瘍の成長のわずかな遅延を誘導しただけであり(
図8B)、これは、動物の生存にはつながらなかった(
図8A)。驚くべきことに、その後、単剤又は抗PD-1と抗CTLA-4との併用処理とは対照的に、i.t.VV
GM-αCTLA4及び全身性抗PD-1による併用処理は、注射された及び注射されていない腫瘍成長を著しく抑制し、担持する動物の約20%が、この「冷たい」がんのICB処理耐性モデルにおいて治癒した(
図8A)。
【0317】
更に、冷たい、ICB耐性腫瘍を、炎症性、ICB応答性の表現型に変換することができるVV
GM-αCTLA4と一致して、VV
GM-αCTLA4による併用処理(しかし、抗PD-1単独ではない)は、B16腫瘍へのT細胞の強い流入を誘導し、これは、炎症性CT26腫瘍と比較して同様に密にT細胞リッチになった(
図14C)。
【0318】
これらは、組み合わせたi.t.VV
GM-αCTLA4及び全身性抗PD-1の相乗効果が、同系A20腫瘍を移植したBALB/cマウスにおいて確認されたことを示した。このモデルは、抗PD-1に対して半応答性であることが示され、動物の約20%が、完全処理i.p.投薬(10mg/kg)によって治癒した(
図8C)。i.t.VV
GM-αCTLA4による最適な治療投薬は、完全に保護的であり(10/10匹の動物が治癒した、
図4)、最適用量の1/100での最適以下の処理は、著しくない腫瘍成長抑制を示し、生存優位性はなかった。治療用i.p.抗PD-1及び治療量以下のi.t.VV
GM-αCTLA4を組み合わせたところ、動物の大部分(7/10)が治癒した(
図8C)。
【0319】
考察
本発明者らは、オンコウイルス的にコードされたTreg枯渇(Treg-depleting)αCTLA-4が、承認された全身性αCTLA-4レジメンと比較して、より強力かつ広範な抗腫瘍活性を有するが、その曝露の腫瘍限定性質を通して、安全であり、忍容性が良好であることが示されている。I.t.VVGM-αCTLA4は、全身性組換えαCTLA-4と比較して、腫瘍特異的CD8+T細胞のより強い拡大を誘導し、全身性αCTLA-4及びαPD-1による臨床的に関連する投与に耐性のある、免疫浸潤が不十分な「冷たい」同系マウス腫瘍モデルにおいて抗腫瘍活性を有した。注目すべきことに、本発明者らの観察は、注射された腫瘍における「免疫点火」効果に厳密に由来するオンコウイルスαCTLA-4によって誘導された強力な全身性抗腫瘍免疫、i.t.VVGM-αCTLA4は、遠位の注射されていない腫瘍へのウイルス拡散又は抗体曝露と関連しなかったが、むしろ腫瘍限定CTLA-4受容体飽和及びTreg枯渇を達成したことを示唆した。
【0320】
これらの観察は、i.t.VVGM-αCTLA4の予想される臨床的効力及び忍容性の両方に重要な意味を有する。効力の観点から、本発明者らは、オンコウイルス的にコードされたαCTLA-4が、利用可能な(イピリムマブ)、及びTreg枯渇最適化された(Arce Vargas,Furness et al.2018)又は「マスクされた」(Gutierrez,Long et al.2020)全身性αCTLA-4抗体レジメンと比較して、並びに非Treg枯渇最適化αCTLA-4をコードする以前に記載された腫瘍溶解性ウイルスアプローチ(Aroldi,Sacco et al.2020)と比較して、より大きな治療利益を提供し得ることを実証した。機構レベルでは、VVGM-αCTLA4誘導性FcγR依存性Treg枯渇及びcDC1+抗原交差提示は、観察された頑強なCD8+T細胞増殖及び冷たい腫瘍を拒絶するためのαPD-1による相乗作用の療法の根底にある。内因性抗腫瘍免疫応答の誘導を媒介すること(Hildner,et al.2008)及び全身性チェックポイント遮断療法の効力(Gubin,Zhang et al.2014、Salmon,Idoyaga et al.2016、Garris、Arlauckas et al.2018)の他に、cDC1は、腫瘍内CD8+TILの増殖応答を促進し、TCF1+幹様前駆体のプールを拡大し、αPD-1療法中のTIM3+端末エフェクタの産生を誘導する(Mao,et al.2021)。
【0321】
同様に、共刺激性受容体又は共抑制性受容体、例えば、IL-2R及びCTLA-4に対するmAbを用いて達成されたTreg枯渇は、CD8+エフェクタ機能を促進し、αPD-1と相乗作用し得る(Wei,et al.2019、Solomon,et al.2020)。Tregを低減させ、抗腫瘍CD8+T細胞を拡大させる「二重活性」免疫調節抗体の開発に関して、蓄積されたデータは、標的生物学、エフェクタCD8+T細胞増強特性及びTreg枯渇特性の微調整の両方、並びに送達レジメンの重要性を実証する。例えば、最近、Tregを枯渇させるが、重要な(IL-2媒介性)成長生存シグナル伝達のCD8+エフェクタT細胞を飢餓させない、IL-2Rに対するFcγR適格非リガンド遮断抗体は、リガンド遮断抗体αIL-2R抗体と比較して、がん療法において優れた治療可能性を有することが実証された(Solomon,et al.2020)。
【0322】
同様に、しかし異なって、本発明者らは、4-1BBに対する抗体が、抗体アイソタイプスイッチング(FcγR結合を変化させる)によってTregを枯渇させるか又はエフェクタT細胞拡大を促進するように作製され得るが、両方の機構を利用することは、連続投与又はヒンジ操作を必要とすることを最近報告した(Buchan et al.,2018)。腫瘍溶解性ウイルス感染に関連して本明細書に記載されるように、注射された腫瘍に対するTreg枯渇増強機能遮断抗CTLA-4の空間的制限は、単独で又は相乗作用するチェックポイント遮断療法、例えば、抗PD-1/L1と組み合わせて使用される場合、免疫調節抗CTLA-4抗体の最大治療活性を利用するための特に有望なアプローチであるように思われる。
【0323】
いくつかの観察は、腫瘍局在化療法のための抗CTLA-4におけるTreg枯渇の最適化を裏付ける。第一に、独立した研究により、抗CTLA-4の治療効力がTreg枯渇に依存し、Treg枯渇と相関することが確立されている(Arce Vargas et al.,2018、Simpson et al.,2013)。Treg枯渇抗CTLA-4クローンの治療活性に関する本明細書で提示されたデータは、FcγR欠損(非枯渇)対応物と比較して、FcγR能を有する(Treg枯渇)抗体Fcフォーマット及び宿主において強い治癒効果を示し、この概念を裏付ける。第二に、イピリムマブで治療された黒色腫患者の臨床転帰は、FcγR結合及びTreg枯渇と相関することが最近報告されたが、本発明者らのT細胞ヒト化マウスモデルからのデータは、イピリムマブが、腫瘍内に関連するレベルのCTLA-4を発現するヒトTreg細胞に対して、本明細書におけるベクター化された抗CTLA-4抗体4-E03と比較して、限定された枯渇活性を有することを示唆する。更に、イピリムマブの臨床的に許容される用量(適応及びレジメンに応じて1mg/kg~3mg/kg)は、亜飽和CTLA-4受容体占有率及び最大以下の効果(Ribas et al.,2005)(Bertrand et al.,2015)とのみ関連するが、本発明者らのデータは、腫瘍溶解性ベクター化及びi.t.投与が、Treg枯渇増強抗CTLA-4を用いても、明らかに安全な様式で治療上最適な曝露(持続的なCTLA-4受容体飽和)を生じさせることができることを実証する。最後に、Treg枯渇増強及びチェックポイント遮断「二重活性」αCTLA-4抗体の本発明者らのベクター化を支持して、抗体媒介性CTLA-4遮断は、最近、腫瘍特異的CD8+T細胞応答の改善におけるFcγR依存性枯渇と相乗作用することが示された。CTLA-4の抗体遮断は、腫瘍内Tregを機能的に不安定化させ、糖分解の変化及びB7リガンドに対する競合を含むプロセスを介して、B7:CD28共刺激及び抗腫瘍性CD8+Tエフェクタ機能を促進した(Zappasodi,et al.2021)。
【0324】
完全な治療投薬が腫瘍限定抗CTLA-4曝露を達成したという事実は、持続的な全身性Treg枯渇に関連する重度の毒性、例えば、FoxP3-DTRマウスモデルにおいて観察されたもの(Kim et al.,2007)が現れそうにないことを示す。同様に、抗CTLA-4チェックポイント遮断効果は、腫瘍抗原特異性を有するTILに限定されるので、全身性抗CTLA-4に関連する不都合な自己反応性は、最小限であるはずである。対照的であるが、CTLA-4の十分に実証された中心的免疫チェックポイントの性質と一致して(Chambers et al.,1996、Leach et al.,1996)、全身投与に関連する抗CTLA-4副作用、すなわち、体全体の抗体曝露は、重度の自己免疫の性質のものであり得、致命的な結果を有し得る(Tivol et al.,1995、Waterhouse et al.,1995)。
【0325】
したがって、総合すると、抗CTLA-4の効力及び忍容性は、これまで、抗CTLA-4ベースのレジメンの完全な治療用量の使用を妨げることに関連し、用量依存的であると考えられてきたが、これらの知見は、ベクター化されたTreg枯渇αCTLA-4の空間的制限が、これらの現在の制限を克服することができ、効力を忍容性から切り離すことを強く示唆している。
【0326】
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【配列表】
【国際調査報告】