(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】GABA Aガンマ1 PAMとしてのベンゾジアゼピン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20240912BHJP
A61K 31/5513 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240912BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240912BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C07D487/04 151
C07D487/04 CSP
A61K31/5513
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/18
A61P25/20
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/24
A61P25/08
A61P25/04
A61P25/22
A61P15/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518183
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 EP2022076323
(87)【国際公開番号】W WO2023046817
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】チェチェーレ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】ゴッビ,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ハンロン,スティーブン・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス,マリア-クレメンシア
(72)【発明者】
【氏名】フム,ローラント
(72)【発明者】
【氏名】コブレット,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】オリバーレス・モラレス,アンドレス・ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】ランツ-シュミット,ヴァレリー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB11
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA81
(57)【要約】
本発明は、一般式(I)
(式中、R
1~R
5およびXは本明細書に記載のとおりである)
を有する新規な複素環式化合物およびその薬学的に許容され得る塩を提供する。該化合物を含む医薬組成物、該化合物の製造方法および該化合物を医薬として使用する方法、特に急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害を処置または予防するために該化合物を使用する方法がさらに提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、
Xは、C-R
6またはNであり;
R
1は、水素、ハロゲン、シアノ、C
1-C
6-アルキル、ハロ-C
1-C
6-アルキル、ヒドロキシ-C
1-C
6-アルキル、アミノ-C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-アルコキシ-C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-アルコキシ-C
2-C
6-アルケニル、C
1-C
6-アルコキシ、ハロ-C
1-C
6-アルコキシ、カルバモイル、C
1-C
6-アルキル-NH-C(O)-、(C
1-C
6-アルキル)
2N-C(O)-、およびC
3-C
10-シクロアルキル-NH-C(O)-から選択され;
R
2は、水素、C
1-C
6-アルキル、ハロ-C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-アルコキシ、およびハロ-C
1-C
6-アルコキシから選択され;
R
3およびR
6は、それぞれ独立して、水素、C
1-C
6-アルキル、ハロ-C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-アルコキシ、ハロ-C
1-C
6-アルコキシ、ハロゲンおよびシアノから選択され;
R
4は、クロロおよびブロモから選択され;
R
5は、水素、C
1-C
6-アルキル、ハロ-C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-アルコキシ、ハロ-C
1-C
6アルコキシ、ハロゲンおよびシアノから選択される)
の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
XがC-R
6である、請求項1に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項3】
R
1が、水素、ハロゲン、C
1-C
6-アルキル、ヒドロキシ-C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-アルコキシ-C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-アルコキシ-C
2-C
6-アルケニル、C
1-C
6-アルキル-NH-C(O)-、およびC
3-C
10-シクロアルキル-NH-C(O)-から選択される、請求項1または2に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項4】
R
1が、C
1-C
6-アルキルおよびC
1-C
6-アルキル-NH-C(O)-から選択される、請求項3に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項5】
R
1が、メチルおよびメチル-NH-C(O)-から選択される、請求項4に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項6】
R
2が、水素およびC
1-C
6-アルキルから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項7】
R
2がC
1-C
6-アルキルである、請求項6に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項8】
R
2がメチルである、請求項7に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項9】
R
3がハロゲンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項10】
R
3がフルオロである、請求項9に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項11】
R
4がクロロである、請求項1~10のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項12】
R
5が、ハロゲン、C
1-C
6-アルキルおよびハロ-C
1-C
6-アルキルから選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項13】
R
5がハロ-C
1-C
6-アルキルである、請求項12に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項14】
R
5がCF
3である、請求項13に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項15】
R
6が、水素およびハロゲンから選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項16】
R
6がハロゲンである、請求項15に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項17】
R
6がフルオロである、請求項16に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項18】
R
1が、水素、ハロゲン、C
1-C
6-アルキル、ヒドロキシ-C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-アルコキシ-C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-アルコキシ-C
2-C
6-アルケニル、C
1-C
6-アルキル-NH-C(O)-およびC
3-C
10-シクロアルキル-NH-C(O)-から選択され;
R
2が、水素およびC
1-C
6-アルキルから選択され;
R
3がハロゲンであり;
R
5が、ハロゲン、C
1-C
6-アルキルおよびハロ-C
1-C
6-アルキルから選択され;
R
6が、水素およびハロゲンから選択される、
請求項1に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項19】
R
1が、C
1-C
6-アルキルおよびC
1-C
6アルキル-NH-C(O)-から選択され;
R
2がC
1-C
6アルキルであり;
R
3およびR
6が、いずれもハロゲンであり;
R
4がクロロであり;
R
5が、ハロ-C
1-C
6-アルキルである、
請求項18に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項20】
R
1が、メチルおよびメチル-NH-C(O)-から選択され;
R
2がメチルであり;
R
3およびR
6が、いずれもフルオロであり;
R
4がクロロであり;
R
5がCF
3である、
請求項19に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項21】
前記式(I)の化合物が、
8,9-ジクロロ-7-(2-フルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
8,9-ジクロロ-7-(3-フルオロ-2-ピリジル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
2-ブロモ-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-ブロモ-9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5-ジメチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5,9-トリメチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5-ジメチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-エチル-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
9-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-9-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-エチル-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
2,9-ジブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-2,9-ジブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
8-ブロモ-9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-2,8-ジブロモ-9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-N,5-ジメチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボキサミド;
(5S)-8-クロロ-N-シクロプロピル-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボキサミド;および
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項22】
前記式(I)の化合物が、
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5-ジメチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;および
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-N,5-ジメチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボキサミド
から選択される、請求項21に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項23】
治療活性物質としての使用のための、請求項1~22のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項24】
請求項1~22のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩と、治療不活性担体とを含む、医薬組成物。
【請求項25】
対象の急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害を処置または予防するための方法であって、有効量の請求項1~22のいずれか一項に記載の式(I)の化合物もしくはその薬学的に許容され得る塩または請求項24に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法における、請求項1~22のいずれか一項に記載の式(I)の化合物もしくはその薬学的に許容され得る塩または請求項24に記載の医薬組成物の使用。
【請求項27】
請求項25に記載の方法における使用のための、請求項1~22のいずれか一項に記載の式(I)の化合物もしくはその薬学的に許容され得る塩または請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項28】
急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害の予防の処置のための医薬を製造するための、請求項1~22のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用。
【請求項29】
前記急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害が、自閉症スペクトラム障害(ASD)、アンジェルマン症候群、加齢性認知低下、レット症候群、プラダー・ウィリー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脆弱X障害、統合失調症に関連する陰性症状および/または認知症状、遅発性ジスキネジア、不安、社会不安障害(社会恐怖症)、パニック障害、広場恐怖症、全般性不安障害、秩序破壊的・衝動制御および素行症群、トゥレット症候群(TS)、強迫性障害(OCD)、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、睡眠障害、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病、アルツハイマー病(AD)、軽度認知障害(MCI)、認知症、神経変性疾患の行動・心理症状(BPS)、多発梗塞性認知症、激越、精神病、物質誘発性精神病性障害、攻撃性、摂食障害、うつ病、慢性アパシー、無快感症、慢性疲労、季節性情動障害、産後うつ病、眠気、性機能障害、双極性障害、てんかんおよび疼痛から選択される、請求項25に記載の方法、請求項26および28に記載の使用、ならびに請求項27に記載の使用のための化合物、その薬学的に許容され得る塩または医薬組成物。
【請求項30】
上記に記載されるとおりの発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物における治療または予防に有用な有機化合物、特にGABAAγ1受容体陽性アロステリックモジュレーター(PAM)としての活性を示し、したがってGABAAγ1受容体関連疾患または状態の処置または予防に有用な新規ベンゾジアゼピン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
主要な抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)の受容体は、主に2つのクラス、(1)リガンド結合型イオンチャネルスーパーファミリーのメンバーであるGABAA受容体、および(2)Gタンパク質結合型受容体ファミリーのメンバーであるGABAB受容体に分かれている。膜結合型ヘテロペンタメリックタンパク質ポリマーであるGABAA受容体複合体は、主にα、β、γのサブユニットから構成されている。GABAA受容体は、リガンド結合した塩化物チャネルであり、ヒトの脳における抑制性神経伝達の主要な媒介者である。
【0003】
GABAA受容体のサブユニットをコードする遺伝子は19個あり、最も一般的な化学量論では、2個のα、2個のβ、および1個のγサブユニットがペンタマーとして集合している。GABAAサブユニットの組み合わせは、機能的、回路的、行動的特異性をもたらす。γ1サブユニットを含有するGABAA受容体(GABAAγ1)は、大脳辺縁系におけるそれらの豊富な発現ならびに独特の生理学的および薬理学的特性のために特に興味深い。GABAAγ1サブユニット含有受容体は、γ2サブユニット含有受容体よりも豊富ではないが(脳内のGABAA受容体の全発現の約5~10%)、拡張扁桃体(終線の中心核、内側核、および床核)、外側中隔、視床下部および淡蒼球/黒質などの重要な脳領域における濃縮された脳mRNAおよびタンパク質分布を示す。これらの構造は、動機付けされた社会的および情動的行動を調節する皮質下辺縁回路の相互接続されたコアを形成する。異常な状態または疾患状態では、この回路が過剰に動員すると、摂食および社会的相互作用を阻害しながら、不安、覚醒、攻撃、恐怖および防御が促進される。
【0004】
社会的および感情的に関連する刺激を処理するための重要な領域である大脳辺縁皮質領域(拡張した扁桃体/視床下部領域と協調した機能的ネットワークを形成することが知られている)における活動亢進は、様々な精神障害、神経障害、神経発達障害、神経変性障害、気分障害、動機付け障害および代謝障害の共通の特徴である。そのような疾患状態では、γ1サブユニット含有GABAA受容体の特徴的な解剖学的分布を考慮すると、GABAAγ1陽性アロステリックモジュレーター(PAM)は、症候性または疾患修飾剤として有効な処置であり得る。
【0005】
複数の証拠から、脳内の主要な抑制性神経伝達物質であるGABA作動性シグナル伝達系の機能不全から生じる興奮性/抑制性(E/I)神経伝達の不均衡が、様々なCNS障害の病因の中核にあることが示唆されている。CNSにおけるGABAAγ1サブユニット含有受容体の分布および機能を考慮すると、それらは重要な脳回路内の阻害レベルを回復させるための非常に魅力的な標的であり、その結果、これらの条件におけるE/Iバランスを回復させるための非常に魅力的な標的である。
【0006】
本発明の文脈において特に興味深いCNS障害は、その中核症状および関連する併存症、例えば不安および過敏症、社会不安障害(社会恐怖症)および全般性不安障害を含む自閉症スペクトラム障害(ASD)である。ASDは複雑で不均一な神経発達障害であり、2つのコアドメインにおける障害:社会的交流およびコミュニケーションにおける障害、ならびに反復的または制限された行動、興味、または活動の存在を特徴とする(American Psychiatric Association 2013)。
【0007】
社会的欠損の中核症状およびASDの制限された/反復的な行動について承認された薬理学的処置は存在しないが、ASDの情動的および生理学的な併存症の大部分については不十分な治療選択肢しか利用できない。結果として、この障害は依然として満たされていない医学的必要性の高い領域である。現在承認されているASDの関連症状に対する処置は、ASD症状に伴う過敏性の処置に適応のある抗精神病薬(リスペリドン、アリピプラゾール)に限られている。新たなエビデンスは、脳内の主要な抑制性神経伝達物質であるGABA作動系がASDの病態生理に重要な役割を果たしていることを示唆している。
【0008】
陽電子放射断層撮影法(PET)と磁気共鳴分光法(MRS)を用いた遺伝学的研究と画像学的研究の両方とも、ASDにおけるGABA作動性シグナル伝達の変化を示唆している。GABAAγ1、GABRG1をコードする遺伝子は、α2、α4およびβ1 GABAA受容体サブユニットをコードする遺伝子のクラスター内の第4染色体(マウスの系統5)に位置する。GABRG1を破壊する染色体4p12の逆位を含む稀なCNVが自閉症の兄弟姉妹(Horikeら,2006)において、また同様に、ADHDの1つの症例のGABRG1喪失において認められている。4p12遺伝子クラスターにおける突然変異は、不安症、物質乱用および摂食障害のリスク増加に関連しており、GABRG1/4p12と情動機能障害との間の関連性を提供する。MRS研究では、ASDのGABAレベルの変化が見られ、特に最近の研究では、ASDを揺する子供のGABAの減少および体性感覚機能の変化が示されているものがある。これらの観察と一致して、ASDおよびTS患者の死後組織から抑制性介在ニューロンの数の減少が見出された。さらに、低下したGABA合成酵素であるグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)65および67が自閉症患者の頭頂皮質および小脳皮質において見出された。ヒトにおける強力な証拠により、GABAAγ1サブユニット含有拡張扁桃体/視床下部領域と協調した機能的ネットワークを形成することが知られている辺縁皮質領域のASDにおける特異的機能不全が指摘されている。これらの領域:皮質/外側扁桃体、島、PFC、および帯状は、社会的および感情的に関連する刺激を処理するための鍵であると認識されている。行動転帰を調整するこれらの領域との特定のパートナーシップを形成する皮質下核は、空間分解能の限界のために研究が困難であることが多いが、多くの証拠は、ASDにおけるこれらの皮質から皮質下への接続の過剰動員を指摘している。さらに、近年の高分解能研究により、拡張された扁桃体の活動/機能的な接続性と情動状態との間の明確な関連が示されている。新皮質と比較して実質的な分子および細胞の多様性を示すそのような非常に特異的な辺縁皮質下領域を標的とすることは、全体的な脳状態の広範な調節を回避しながら、ASDの影響を受ける社会的感情回路の安全かつ特異的な治療的調節のための正確なエントリポイントを作り出す。非選択的BZDによるGABAA受容体活性の増強は、ASDのマウスモデルにおいて行動障害を改善することが示されているが、GABAAα1γ2サブタイプによって媒介される鎮静のために治療マージンは非常に狭いことが観察された。これらの所見は、GABAAγ1受容体を介したGABA作動性伝達のリバランスが、非選択的ベンゾジアゼピンの副作用なしにASDの症状を改善し得るという考えを裏付けている。
【0009】
Leeら,Bioorg.Med.Chem.2008,16,9519-9523は、ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピンおよび関連化合物のGABAA受容体における軸方向のキラリティおよび親和性を論じている。
【0010】
本発明の化合物は、所与の濃度(例えば、EC20)のガンマアミノ酪酸(GABA)でGABA作動性電流(塩化物の流入)を増加させることによって、γ1含有GABAA受容体の機能を選択的に増強する選択的GABAAγ1受容体ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)である。本発明の化合物は、γ2含有サブタイプ(例えば、α1γ2、α2γ2、α3γ2およびα5γ2)と比較して、γ1含有サブタイプ(α5γ1、α2γ1、α1γ1)に対して高いPAM有効性および結合選択性を有している。したがって、本発明の化合物は、γ2含有GABAAサブタイプに対して選択的であり、γ1含有サブタイプに対して親和性が低いアルプラゾラム、トリアゾラム、エスタゾラムおよびミダゾラムなどの古典的なベンゾジアゼピン薬物から強く区別される。γ1サブタイプの脳分布に適合して、選択的GABAAAγ1 PAMは、非選択的GABAA調節因子(例えば、ベンゾジアゼピン)の副作用なしに、重要な脳領域(例えば、扁桃体延長部:分界条、外側中隔、視床下部および淡蒼球/黒質の中心核、内側核および床核)においてGABA作動性シグナル伝達を回復させるであろう。
【0011】
上記を考慮すると、本明細書に記載の選択的GABAAγ1 PAMおよびそれらの薬学的に許容され得る塩およびエステルは、単独でまたは他の薬物と組み合わせて、自閉症スペクトラム障害(ASD)、アンジェルマン症候群、加齢性認知低下、レット症候群、プラダー・ウィリー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脆弱X障害、統合失調症に関連する陰性症状および/または認知症状、遅発性ジスキネジア、不安、社会不安障害(社会恐怖症)、パニック障害、広場恐怖症、全般性不安障害、秩序破壊的・衝動制御および素行症群、トゥレット症候群(TS)、強迫性障害(OCD)、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、睡眠障害、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病、アルツハイマー病(AD)、軽度認知障害(MCI)、認知症、神経変性疾患の行動・心理症状(BPS)、多発梗塞性認知症、激越、精神病、物質誘発性精神病性障害、攻撃性、摂食障害、うつ病、慢性アパシー、無快感症、慢性疲労、季節性情動障害、産後うつ病、眠気、性機能障害、双極性障害、てんかんおよび疼痛を含む急性神経疾患、慢性神経疾患および/または認知障害の処置または予防のための疾患修飾剤または対象療法剤として有用である。
【発明の概要】
【0012】
第1の態様では、本発明は、式(I)
【化1】
(式中、R
1~R
5およびxは本明細書で定義するとおりである)
の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0013】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の式(I)の化合物を製造する方法であって、本明細書に記載のスキーム1~5のいずれか1つに記載の方法である方法を提供する。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の方法に従って製造される場合の、本明細書に記載の式(I)の化合物を提供する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、治療活性物質としての使用のための、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩と、治療不活性担体とを含む、医薬組成物を提供する。
さらなる態様では、本発明は、対象の急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害を処置または予防するための方法における使用のための、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本発明の特定の態様、実施形態または実施例に関連して記載される特徴、整数、特色、化合物、化学的部分または基は、それらと両立しない場合を除き、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態または実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴の全て、および/またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの工程の全ては、そのような特徴および/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせ得る。本発明は、前述のいずれの実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規なものもしくは任意の新規な組み合わせ、またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの工程の任意の新規なものもしくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0018】
「アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子、例えば、1、2、3、4、5、または6個の炭素原子の、一価または多価の、例えば、一価または二価の、直鎖または分岐の飽和炭化水素基(「C1~C6-アルキル」)を指す。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~3個の炭素原子、例えば、1、2または3個の炭素原子を含む。アルキルのいくつかの非限定的な例としては、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル(イソプロピル)、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、および2,2-ジメチルプロピルが挙げられる。アルキルの特に好ましいが非限定的な例としては、メチルおよびエチルが挙げられる。
【0019】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を有する2~6個の炭素原子の一価の直鎖または分岐炭化水素基(「C2-C6-アルケニル」)を意味する。特定の実施形態において、アルケニルは、少なくとも1つの二重結合を有する2~4個の炭素原子を有する。アルケニルの例としては、エテニル、プロペニル、プロプ-2-エニル、イソプロペニル、n-ブテニルおよびイソ-ブテニルが挙げられる。具体的なアルケニル基はエテニルである。
【0020】
「アルコキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に結合した、上で定義されたアルキル基を指す。別途指定のない限り、アルコキシ基は、1~6個の炭素原子を含む(「C1-C6-アルコキシ」)。いくつかの好ましい実施形態では、アルコキシ基は、1~4個の炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、アルコキシ基は、1~3個の炭素原子を含む。アルコキシ基のいくつかの非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシおよびtert-ブトキシが挙げられる。アルコキシの特に好ましいが非限定的な例は、メトキシである。
【0021】
「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、またはヨード(I)を指す。好ましくは、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)またはブロモ(Br)を指す。「ハロゲン」または「ハロ」の特に好ましいが非限定的な例は、フルオロ(F)およびクロロ(Cl)である。
【0022】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、3~10個の環炭素原子の、飽和または部分不飽和の、単環式または二環式の炭化水素基を指す(「C3-C10-シクロアルキル」)。いくつかの好ましい実施形態では、シクロアルキル基は、3~8個の環炭素原子の飽和単環式炭化水素基である。「二環式シクロアルキル」とは、共通した2個の炭素原子を有する2つの飽和炭素環からなるシクロアルキル部分、すなわち、2つの環を分離する架橋が、単結合であるか、または1個もしくは2個の環原子の鎖であるかのいずれかであり、スピロ環部分、すなわち、2つの環が1個の共通の環原子を介して結合されているシクロアルキル部分を指す。好ましくは、シクロアルキル基は、3~6個の環炭素原子、例えば、3、4、5または6個の炭素原子の飽和単環式炭化水素基である。シクロアルキルのいくつかの非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびスピロ[2.3]ヘキサン-5-イルが挙げられる。
【0023】
「アミノアルキル」という用語は、アルキル基の水素原子の少なくとも1つがアミノ基で置き換えられているアルキル基を指す。好ましくは、「アミノアルキル」は、アルキル基の1、2または3個の水素原子がアミノ基により置き換えられているアルキル基を指す。アミノアルキルの好ましい、但し非限定的な例は、アミノメチルおよび1-アミノエチルである。
【0024】
「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を指す。
【0025】
「アミノ」という用語は、-NH2基を指す。
【0026】
「シアノ」という用語は、-CN(ニトリル)基を指す。
【0027】
「カルバモイル」という用語は、-C(O)NH2基を指す。
【0028】
「ハロアルキル」という用語は、アルキル基の少なくとも1個の水素原子が、ハロゲン原子、好ましくはフルオロによって置き換えられている、アルキル基を指す。好ましくは、「ハロアルキル」は、アルキル基の1、2または3個の水素原子が、ハロゲン原子、最も好ましくはフルオロによって置換されている、アルキル基を指す。ハロアルキルの非限定的な例は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、2-フルオロエチルおよび2,2-ジフルオロエチルである。ハロアルコキシの特に好ましいが非限定的な例は、トリフルオロメチルである。
【0029】
用語「アルコキシアルキル」とは、アルキル基の少なくとも1個の水素原子が、アルコキシ基によって置換されている、アルキル基を指す。好ましくは、「アルコキシアルキル」は、アルキル基の1、2または3個の水素原子がアルコキシ基によって置換されているアルキル基を指す。最も好ましくは、「アルコキシアルキル」は、アルキル基の1個の水素原子がアルコキシ基によって置換されているアルキル基を指す。アルコキシアルキルの好ましいが非限定的な例は、2-メトキシエチルである。
【0030】
「アルコキシアルケニル」という用語は、アルケニル基の水素原子の少なくとも1つがアルコキシ基によって置換されているアルケニル基を指す。好ましくは、「アルコキシアルケニル」は、アルケニル基の1、2または3個の水素原子がアルコキシ基によって置換されているアルケニル基を指す。最も好ましくは、「アルコキシアルケニル」は、アルケニル基の1個の水素原子がアルコキシ基によって置換されているアルケニル基を指す。アルコキシアルケニルの好ましいが非限定的な例は、2-エトキシビニルである。
【0031】
「ハロアルコキシ」という用語は、アルコキシ基の少なくとも1個の水素原子が、ハロゲン原子、好ましくはフルオロによって置き換えられている、アルコキシ基を指す。好ましくは、「ハロアルコキシ」とは、アルコキシ基の1、2または3個の水素原子が、ハロゲン原子、最も好ましくはフルオロによって置き換えられている、アルコキシ基を指す。ハロアルコキシの特に好ましいが非限定的な例は、フルオロメトキシ(FCH2O-)、ジフルオロメトキシ(F2CHO-)、およびトリフルオロメトキシ(F3CO-)である。
【0032】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、アルキル基の少なくとも1個の水素原子が、ヒドロキシ基によって置換されている、アルキル基を指す。好ましくは、「ヒドロキシアルキル」は、アルキル基の1、2または3個の水素原子、最も好ましくは1個の水素原子が、ヒドロキシ基によって置換されている、アルキル基を指す。ヒドロキシアルキルの好ましいが非限定的な例は、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル(例えば2-ヒドロキシエチル)、および3-ヒドロキシ-3-メチル-ブチルである。
【0033】
「薬学的に許容され得る塩」という用語は、生物学的にまたは別様に望ましくないものではない、遊離塩基または遊離酸の生物学的有効性および特性を保持する塩を指す。塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、特に塩酸、およびギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、N-アセチルシステイン等の有機酸と共に形成される。さらに、これらの塩は、無機塩基または有機塩基を遊離酸に添加することにより調製され得る。無機塩基に由来する塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウム塩等が挙げられるがこれらに限定されない。有機塩基から誘導され得る塩としては、第一級、第二級および第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、リジン、アルギニン、N-エチルピペリジン、ピペリジン、ポリイミン樹脂等の塩が挙げられるがこれらに限定されない。式(I)の化合物の特定の薬学的に許容され得る塩は、塩酸塩、フマル酸塩、ギ酸塩、乳酸塩(特にL-(+)-乳酸から誘導される)、酒石酸塩(特にL-(+)-酒石酸から誘導される)およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0034】
式(I)の化合物は、数個の不斉中心を含み得、光学的に純粋なエナンチオマー、例えばラセミ体などのエナンチオマーの混合物、光学的に純粋なジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の混合物、ジアステレオ異性のラセミ体またはジアステレオ異性のラセミ体の混合物として存在し得る。
【0035】
Cahn-Ingold-Prelog則により、不斉炭素原子は、「R」または「S」配置のものであり得る。
【0036】
「処置」という用語は、本明細書で使用される場合、以下を含む:(1)症状、障害または状況を抑制すること(例えば、維持処置の場合、その少なくとも1つの臨床的症状または無症状の疾患の発症または再発の停止、低減または遅延させること);および/または(2)状況を緩和すること(すなわち、症状、障害もしくは状況、またはその臨床的症状もしくは無症状のうちの少なくとも1つの退行を引き起こすこと)。処置されるべき患者に対する利益は、統計的に有意であるか、または少なくとも患者もしくは医師にとって認識可能であるかのいずれかである。しかしながら、疾患を処置するために患者に医薬が投与される場合、転帰は必ずしも有効な処置でなくともよいことが理解されるであろう。
【0037】
本明細書で使用される場合、「発症予防(prophylaxis)」または「予防(prevention)」という用語は、対象、特に状態、障害または状態に罹患しているかまたはその素因を有し得るが、状態、障害または状態の臨床的または不顕性の症状をまだ経験または示していないヒトにおいて発症する状態、障害または状態の臨床的症状の出現を予防または遅延させることを含む。
【0038】
本明細書で使用される場合、「対象」 という用語には、ヒトおよび非ヒトの両方が含まれ、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ウシ、ウマ、およびブタが含まれるが、これらに限定されない。特に好ましい実施形態では、「対象」という用語はヒトを指す。
【0039】
「保護基」(PG)という用語は、多官能性化合物の反応性部位を選択的に遮断し、他の保護されていない反応性部位で選択的に化学反応を行い得るようにする基を意味し、合成化学では従来の意味で用いられている。保護基は、適切なポイントで除去し得る。例示的な保護基は、アミノ保護基、カルボキシ保護基、またはヒドロキシ保護基である。具体的な保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基およびベンジル(Bn)基である。さらに具体的な保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基およびフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基である。より具体的な保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基である。
【0040】
略語のuMは、マイクロモルを意味し、記号μMと同等である。
【0041】
略語のuLはマイクロリットルを意味し、記号μLに相当する。
【0042】
略語のugは、マイクログラムを意味し、記号のμgと同等である。
【0043】
本発明の化合物
第1の態様では、本発明は、式(I)
【化2】
(式中、
Xは、C-R
6またはNであり;
R
1は、水素、ハロゲン、シアノ、C
1-C
6-アルキル、ハロ-C
1-C
6-アルキル、ヒドロキシ-C
1-C
6-アルキル、アミノ-C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-アルコキシ-C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-アルコキシ-C
2-C
6-アルケニル、C
1-C
6-アルコキシ、ハロ-C
1-C
6-アルコキシ、カルバモイル、C
1-C
6-アルキル-NH-C(O)-、(C
1-C
6-アルキル)
2N-C(O)-、およびC
3-C
10-シクロアルキル-NH-C(O)-から選択され;
R
2は、水素、C
1-C
6-アルキル、ハロ-C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-アルコキシ、およびハロ-C
1-C
6-アルコキシから選択され;
R
3およびR
6は、それぞれ独立して、水素、C
1-C
6-アルキル、ハロ-C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-アルコキシ、ハロ-C
1-C
6-アルコキシ、ハロゲンおよびシアノから選択され;
R
4は、クロロおよびブロモから選択され;
R
5は、水素、C
1-C
6-アルキル、ハロ-C
1-C
6-アルキル、C
1-C
6-アルコキシ、ハロ-C
1-C
6アルコキシ、ハロゲンおよびシアノから選択される)
の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0044】
特に好ましい実施形態では、本発明は、XがC-R6である、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0045】
一実施形態では、本発明は、R1が、水素、ハロゲン、C1-C6-アルキル、ヒドロキシ-C1-C6-アルキル、C1-C6-アルコキシ-C1-C6-アルキル、C1-C6-アルコキシ-C2-C6-アルケニル、C1-C6-アルキル-NH-C(O)-、およびC3-C10-シクロアルキル-NH-C(O)-から選択される、本明細書に記載の式(I)の化合物を提供する。
【0046】
好ましい実施形態では、本発明は、R1が、C1-C6-アルキルおよびC1-C6-アルキル-NH-C(O)-から選択される、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0047】
特に好ましい実施形態では、本発明は、R1が、メチルおよびメチル-NH-C(O)-から選択される、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0048】
一実施形態では、本発明は、R2が、水素およびC1-C6-アルキルから選択される、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0049】
好ましい実施形態では、本発明は、R2がC1-C6-アルキルである、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0050】
特に好ましい実施形態では、本発明は、R2がメチルである、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明は、R3がハロゲンである、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0052】
特に好ましい実施形態では、本発明は、R3がフルオロである、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0053】
特に好ましい実施形態では、本発明は、R4がクロロである、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0054】
一実施形態では、本発明は、R5が、ハロゲン、C1-C6-アルキルおよびハロ-C1-C6-アルキルから選択される、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0055】
好ましい実施形態では、本発明は、R5がハロ-C1-C6-アルキルである、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0056】
特に好ましい実施形態では、本発明は、R5がCF3である、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0057】
一実施形態では、本発明は、R6が水素およびハロゲンから選択される、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0058】
好ましい実施形態では、本発明は、R6がハロゲンである、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0059】
特に好ましい実施形態では、本発明は、R6がフルオロである、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0060】
一実施形態では、本発明は、
R1は、水素、ハロゲン、C1-C6-アルキル、ヒドロキシ-C1-C6-アルキル、C1-C6-アルコキシ-C1-C6-アルキル、C1-C6-アルコキシ-C2-C6-アルケニル、C1-C6-アルキル-NH-C(O)-およびC3-C10-シクロアルキル-NH-C(O)-から選択され;
R2は、水素およびC1-C6-アルキルから選択され;
R3はハロゲンであり;
R5は、ハロゲン、C1-C6-アルキルおよびハロ-C1-C6-アルキルから選択され;
R6は、水素およびハロゲンから選択される、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0061】
好ましい実施形態では、本発明は、
R1は、C1-C6-アルキルおよびC1-C6アルキル-NH-C(O)-から選択され;
R2はC1-C6アルキルであり;
R3およびR6は、いずれもハロゲンであり;
R4はクロロであり;
R5はハロ-C1-C6-アルキルである、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0062】
特に好ましい実施形態では、本発明は、
R1は、メチルおよびメチル-NH-C(O)-から選択され;
R2はメチルであり;
R3およびR6は、いずれもフルオロであり;
R4はクロロであり;
R5はCF3である、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0063】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供し、当該式(I)の化合物は、
8,9-ジクロロ-7-(2-フルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
8,9-ジクロロ-7-(3-フルオロ-2-ピリジル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
2-ブロモ-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-ブロモ-9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5-ジメチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5,9-トリメチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5-ジメチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-エチル-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
9-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-9-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-エチル-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
2,9-ジブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-2,9-ジブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
8-ブロモ-9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-2,8-ジブロモ-9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-N,5-ジメチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボキサミド;
(5S)-8-クロロ-N-シクロプロピル-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボキサミド;および
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オンから選択される。
【0064】
好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供し、当該式(I)の化合物は:
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5-ジメチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;および
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-N,5-ジメチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボキサミド
から選択される。
【0065】
特に好ましい実施形態では、本発明は、式(I)の化合物が(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5-ジメチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オンである、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0066】
特に好ましい実施形態では、本発明は、式(I)の化合物が(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-N,5-ジメチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボキサミドである、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0067】
一実施形態では、本発明は、
R3はハロゲンであり;
R6は、水素およびハロゲンから選択される、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0068】
好ましい実施形態では、本発明は、R3およびR6が、いずれもハロゲンである、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0069】
好ましい実施形態では、本発明は、R3およびR6が、いずれもフルオロである、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0070】
好ましい実施形態では、本発明は、
R4はクロロであり;
R5はハロ-C1-C6-アルキルである、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0071】
特に好ましい実施形態では、本発明は、
R4はクロロであり;
R5はCF3である、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0072】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の式(I)の化合物の薬学的に許容され得る塩、特に塩酸塩、フマル酸塩、乳酸塩(特にL-(+)-乳酸から誘導される)、酒石酸塩(特にL-(+)-酒石酸から誘導される)およびトリフルオロ酢酸塩から選択される薬学的に許容され得る塩を提供する。さらなる特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の式(I)の化合物を(すなわち、それぞれ「遊離塩基」または「遊離酸」として)提供する。
【0073】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、その中の1つ以上の原子を、異なる原子質量または質量数を有する原子で置換されることにより同位体標識される。このような同位体標識された(すなわち、放射性標識された)式(I)の化合物は、本開示の範囲内であると考えられる。式(I)の化合物に組み込み得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素、およびヨウ素の同位体、それぞれ、例えば2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123I、および125Iが挙げられるが、これらに限定されない。特定の同位体標識された式(I)の化合物、例えば、放射性同位体を組み込んでいるものは、薬物および/または基質の組織分布研究に有用である。放射性同位体トリチウム、すなわち、3Hおよび炭素-14、すなわち、14Cは、それらの組込みの容易さおよび即時検出手段を考慮すると、この目的に対して特に有用である。例えば、式(I)の化合物は、所与の同位体の1、2、5、10、25、50、75、90、95、または99%で濃縮し得る。
【0074】
より重い同位体、例えば重水素、すなわち2H等による置換を行うと代謝安定性がより高くなり、例えば、インビボ半減期が長くなるかまたは必要な投与量が少なくなることにより、ある特定の治療的利点が得ることが可能である。
【0075】
11C、18F、15Oおよび13N等の陽電子放出同位体による置換は、基質の受容体占有を検査するための陽電子放出断層撮影(PET)研究において有用であり得る。同位体標識された式(I)の化合物は、一般的に、当業者に公知の従来の技法により、または前に用いられた同位体標識されていない試薬の代わりに適切な同位体標識された試薬を使用して、以下に記述される実施例に記載されるものに類似する方法により調製され得る。
【0076】
製造方法
本明細書に記載の式(I)の化合物を製造するためのプロセスも本発明の対象である。
【0077】
本発明の式(I)の化合物の製造は、逐次的または収束的な合成経路で行実施し得る。本発明の化合物の合成を、以下のスキームに示す。得られた生成物の反応および精製を行うために必要な技能は、当業者に知られている。方法の以下の説明で使用される置換基およびインデックスは、反対のことが示されない限り、特許請求の範囲の前および中で本明細書に与えられる重要性を有する。より詳細には、式(I)の化合物は、以下に示す方法、実施例に示す方法、または類似の方法によって製造し得る。個々の反応工程のための適切な反応条件は、当業者に公知である。また、記載される反応に影響を及ぼす文献に記載される反応条件については、例えば:Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations,第3版,Richard C.Larock.John WileyおよびSons,New York,NY.2018)を参照されたい。溶媒の有無にかかわらず、反応を行うことは容易である。用いた溶媒の性質に関しては、それが反応または関与する試薬に悪影響を及ぼさず、かつそれが試薬を少なくともある程度溶解し得るならば、特に制限はない。記載された反応は広範囲の温度にわたって起こる可能性があり、正確な反応温度は本発明にとって重要ではない。-78℃から還流温度の間の温度範囲において記載の反応を実行することが便利である。反応に要する時間もまた、多くの要因、特に反応温度および試薬の性質に依存して、大きく変動し得る。しかしながら、0.5時間から数日の期間が、記載の中間体および化合物を得るために通常十分であろう。反応順序はスキームに示されるものに限定されないが、出発物質とそれらそれぞれの反応性に応じて、反応工程の順序は自由に変更し得る。出発物質は、市販されているか、または以下に示す方法に類似する方法、本明細書に引用された参考文献もしくは実施例に記載されている方法、または当技術分野で公知の方法によって調製し得る。
【0078】
式(I)の本化合物およびそれらの薬学的に許容され得る塩は、スキーム1に記載の方法によって調製し得る。
【化3】
スキーム1:ベンゾジアゼピン(I)の合成
【0079】
スキーム1によれば、式(I)のベンゾジアゼピン誘導体は、式(Ia)のピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オンから出発して2工程で調製し得る。N-ブロモスクシンイミドを使用した位置選択的求電子性臭素化の後、ボロン酸またはボロン酸エステルまたはカリウムトリフルオロボレートを使用したSuzuki-Miyaura反応によって、ヘテロアリールブロミド中間体(Ib)を最終ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オンに変換し得る。
【0080】
式(Ia)のピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オンの合成は、以下に記載される方法によって3工程で達成し得る(スキーム2)。構成要素のラクタム(II)は、Lawessonの試薬またはP
2S
5を使用して、対応するチオラクタム(III)に変換される。それらのアンモニアとの反応により、一般式(IV)のアミジンが得られ、これを、中性条件下、活性化アルキノエート(V)(例えば、エチルプロパ-2-イノエート)を用いて位置選択的熱環化を受けて、所望のピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(Ia)を形成し得る。
【化4】
スキーム2:R
1がHであり、他の全ての変数が上記および特許請求の範囲に記載のとおりである、ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(Ia)の合成
【0081】
式(II)の構成要素(A、C、D、H、N、Z)の合成をスキーム3で強調する。市販の2-アミノ-6-クロロ安息香酸または2-アミノ-6-ブロモ安息香酸を無水酢酸中で加熱して、それぞれ5-クロロ-2-メチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オンおよび5-ブロモ-2-メチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オンを形成し得る。式(VI)のグリニャール試薬または有機リチウム試薬(対応する臭化アリールからの金属化反応によってまたは速度論的脱プロトン化を介して調製)をベンゾオキサジン-4-オン(求電子剤)と制御された温度で反応させて、式(VII)のケトンを得ることが可能である。酸性条件下(HCl)でのN-アセトアミド加水分解の後、式(VII)の化合物を式(VIII)のアニリンに変換する。好都合には、この接合部において、R
5のハロゲンを、N-クロロスクシンイミド(NCS)、N-ブロモスクシンイミド(NBS)またはN-ヨードスクシンイミド(NIS)で処置することによって導入して、式(IX)の中間体を得ることが可能である。ピリジン中のエチル2-アミノ酢酸塩酸塩との最終熱環化反応により、おそらくイミン中間体(X)の形成を介して所望のベンゾジアゼピン(II)が得られる。
【化5】
スキーム3:R
2がHであり、他の全ての変数が上記および特許請求の範囲に記載のとおりである構成要素(A、C、D、H、N、Z)の合成
【0082】
R
2がアルキルまたは置換アルキルである本発明のさらなる実施形態では、代替プロセスが想定され、スキーム4に詳述される。
【化6】
スキーム4:R
2がHではなく、他の全ての変数が上記および特許請求の範囲に記載のとおりである構成要素(L、M、Q、V)の合成
【0083】
そのような場合、式(XI)の化合物は、塩化ホスホリル(POCl3)に曝露した状態でのアニリン(IX)とN-Boc保護L-アミノ酸との間のアミドカップリング反応によって、または当業者に公知の他の方法によって調製し得る。N-Boc保護基の除去は、鉱酸(例えばHCl)または有機酸(例えばトリフルオロ酢酸)を用いて実施して、式(XII)のアミンを得ることが可能である。酸性媒体(例えば、シリカまたは酢酸またはクエン酸)および熱(80~110℃)によって促進された最終的な分子内縮合反応により、式(II)の所望のベンゾジアゼピン構成要素(L、M、Q、V)が得られる。特に、スキーム1、2および4に記載の方法では、採用される具体的な反応条件に応じて、キラル中心でのラセミ化の程度が異なっている(20~100%)。結果として、鏡像体過剰率(ee)が97%を超える最終誘導体を得るためには、式(I)の最終誘導体のキラル精製(例えば、HPLCまたはSFCによって)が必要である。
【0084】
また、本発明の実施形態は、上で定義される式(I)のピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オンを調製する方法であって、溶媒、特に1,4-ジオキサン/水の混合物、および炭酸カリウムなどの塩基中、60℃の温度および溶媒またはその混合物の還流の間の温度における、式(Ib)の化合物とボロン酸またはボロン酸エステルまたはトリフルオロホウ酸カリウムとの反応を含む方法である(スキーム5)。
【化7】
スキーム5
【0085】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の式(I)の化合物を製造する方法であって、上記スキーム1~5のいずれか1つに記載の方法である、方法を提供する。
【0086】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の方法に従って製造された場合の、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0087】
本発明の化合物の使用
背景の節において説明し、実験の節において例示したように、式(I)の化合物およびそれらの薬学的に許容され得る塩は、GABAAγ1受容体に関連する疾患または合併症の処置または予防に有用な貴重な薬理学的特性を有する。
【0088】
一態様では、本発明は、治療活性物質として使用するための、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0089】
更なる態様では、本発明は、対象における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、癌、および/または精神障害を処置または予防するための方法であって、前記方法は、有効量の本明細書に記載の式(I)の化合物または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0090】
さらなる態様では、本発明は、対象の急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害を処置または予防するための方法における、本明細書に記載の式(I)の化合物もしくはその薬学的に許容され得る塩、または本明細書に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0091】
さらなる態様では、本発明は、対象の急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害を処置または予防するための方法における使用のための、本明細書に記載の式(I)の化合物もしくはその薬学的に許容され得る塩、または本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0092】
さらなる態様では、本発明は、急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害の予防または処置のための医薬を製造するための、本明細書に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の使用を提供する。
【0093】
一実施形態では、当該急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、アンジェルマン症候群、加齢性認知低下、レット症候群、プラダー・ウィリー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脆弱X障害、統合失調症に関連する陰性症状および/または認知症状、遅発性ジスキネジア、不安、社会不安障害(社会恐怖症)、パニック障害、広場恐怖症、全般性不安障害、秩序破壊的・衝動制御および素行症群、トゥレット症候群(TS)、強迫性障害(OCD)、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、睡眠障害、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病、アルツハイマー病(AD)、軽度認知障害(MCI)、認知症、神経変性疾患の行動・心理症状(BPS)、多発梗塞性認知症、激越、精神病、物質誘発性精神病性障害、攻撃性、摂食障害、うつ病、慢性アパシー、無快感症、慢性疲労、季節性情動障害、産後うつ病、眠気、性機能障害、双極性障害、てんかんおよび疼痛から選択される。
【0094】
一実施形態では、当該急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害は、アルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)、加齢性認知低下、統合失調症に関連する陰性および/または認知症状は、加齢性認知低下、統合失調症に関連する陰性および/または認知症状、双極性障害、自閉症スペクトラム障害(ASD)、アンジェルマン症候群、レット症候群、プラダー・ウィリー症候群、てんかん、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および脆弱X障害から選択される。
【0095】
好ましい実施形態では、当該急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、アンジェルマン症候群、アルツハイマー病、統合失調症および心的外傷後ストレス障害(PTSD)に関連する陰性および/または認知症状から選択される。
【0096】
好ましい実施形態では、当該急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、レット症候群、アンジェルマン症候群、心的外傷後ストレス障害および脆弱X障害から選択される。
【0097】
好ましい実施形態では、前当該急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、レット症候群、心的外傷後ストレス障害および脆弱X障害から選択される。
【0098】
特に好ましい実施形態では、当該急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害は自閉症スペクトラム障害(ASD)である。
【0099】
特に好ましい実施形態では、当該急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害はアンジェルマン症候群である。
【0100】
さらに特に好ましい実施形態では、当該急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害は、不安および易刺激性、社会不安障害(社会恐怖症)および全般性不安障害などの中核症状および関連する併存症を対象とする自閉症スペクトラム障害(ASD)である。
【0101】
さらに特に好ましい実施形態では、当該急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害は、社会不安障害(社会恐怖症)および全般性不安障害から選択される。
【0102】
医薬組成物および投与
一態様では、本発明は、式(I)の化合物または本明細書で定義されるそれらの薬学的に許容され得る塩と、1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。例示的な医薬組成物は、以下の実施例セクションに記載されている。
【0103】
さらなる態様では、本発明は、急性神経障害、慢性神経障害および/または認知障害の処置または予防のための式(I)の化合物または上記に定義されるそれらの薬学的に許容され得る塩と、1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0104】
式(I)の化合物およびその薬学的に許容され得る塩は、(例えば、医薬製剤の形態で)医薬として使用し得る。医薬製剤は、経口(例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬質ゼラチンカプセル剤および軟質ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤または懸濁剤の形態)、経鼻(例えば、点鼻スプレー剤の形態)、または直腸(例えば、坐剤の形態)等で、体内に投与し得る。しかし、投与は、非経口的に、例えば筋肉内または静脈内に(例えば注射液または輸液の形態で)実施し得る。
【0105】
式(I)の化合物およびその薬学的に許容され得る塩は、錠剤、コーティング錠、ドラジェ、および硬ゼラチンカプセルの製造のために、薬学的に不活性な無機または有機添加物を用いて処理し得る。ラクトース、コーンスターチまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩などを、例えば、錠剤、ドラジェおよび硬ゼラチンカプセルのためのそのような添加物として使用し得る。
【0106】
軟質ゼラチンカプセルのための適切な賦形剤は、例として、植物油、ワックス、油脂、半固形物および液体ポリオールなどである。
【0107】
溶液およびシロップの製造に適した添加物は、例えば、水、ポリオール、ショ糖、転化糖、グルコースなどである。
【0108】
注射液のための適切な添加物は、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などである。
坐薬のための適切な賦形剤は、例として、天然または硬化した油、ワックス、油脂、半固体または液体ポリオールなどである。
【0109】
さらに、薬学的調製物は、防腐剤、可溶化剤、粘度増加物質、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、着香剤、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、マスキング剤、または酸化防止剤を含み得る。それらはまた、さらに他の治療上価値のある物質を含有し得る。
【0110】
投与量は広範に変化させ得、当然、各特定の症例における個々の要件に適合させる。一般に、経口投与の場合、約0.1mg~20mg/kg体重、好ましくは約0.5mg~4mg/kg体重(例えば、約300mg/人)の毎日の投与量を、好ましくは1~3の個々の投与量に分けて、例えば同じ量で構成し得るのが適切であろう。しかしながら、示されている場合には、本明細書で与えられる上限を超え得ることは明らかである。
【実施例】
【0111】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、より完全に理解されるであろう。しかしながら、特許請求の範囲は、本実施例の範囲に限定されるものと解釈されるべきではない。
【0112】
調製例がエナンチオマーの混合物として得られる場合、純粋なエナンチオマーは、本明細書に記載の方法によって、または当業者に公知の方法、例えばキラルクロマトグラフィー(例えば、キラルSFC)もしくは結晶化等によって、分離し得る。
【0113】
特に記載のない場合、全ての反応例および中間体は、アルゴン雰囲気下で調製した。
【0114】
構成要素A
7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
【化8】
【0115】
a)5-クロロ-2-メチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン
2-アミノ-6-クロロ安息香酸(250g、1.46mol)の無水酢酸(1250mL)中溶液を140℃で2時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮した。得られた未精製の残渣を酢酸エチル(1000mL)に懸濁し、30分間撹拌し、フィルタにかけ、減圧下で乾燥させ、標記化合物(238g、84%)を灰色固体として得た。1H NMR(DMSO-d6,400 MHz):δ:7.80(app t,J=8.0 Hz,1H),7.62(d,J=8.0 Hz,1H),7.49(d,J=7.6 Hz,1H),2.36(s,3H).
【0116】
b)N-[3-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンソイル)フェニル]アセトアミド
5-クロロ-2-メチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン(100g、511.2mmol)および2-ブロモ-1,3-ジフルオロベンゼン(118.4g、613.5mmol)のテトラヒドロフラン(1000mL)中溶液に、窒素下-70℃でi-PrMgCl・LiCl(1.3m、500mL、650mmol)を滴下した。混合物を1時間以内に室温まで温め、飽和塩化アンモニウム水溶液(1500mL)でクエンチし、酢酸エチル(2×1500mL)で抽出した。有機相を食塩水(2000mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を酢酸エチル(150mL)に懸濁した。得られた懸濁液を室温で20分間撹拌し、フィルタにかけ、減圧下で乾燥させと、標記化合物(113g、71%)を灰白色固体として得た。1H NMR(DMSO-d6,400 MHz):δ:9.85(s,1H),7.65-7.45(m,1H),7.40(t,J=7.2 Hz,1H),7.38-7.34(m,2H),7.16(t,J=8.8 Hz,2H),1.85(s,3H).
【0117】
c)(2-アミノ-6-クロロ-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノン
N-[3-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)フェニル]アセトアミド(113g、364.9mmol)のエタノール(250mL)中溶液に、塩酸水溶液(12m、200mL)を添加した。反応混合物を100℃で1時間撹拌し、次いで、酢酸エチル(1100mL)で希釈した。有機相を水(1100mL)、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(1100mL)および食塩水(1100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。石油エーテル(120mL)を未精製の生成物に添加し、懸濁液を室温で20分間撹拌した。固体をフィルタにかけ、乾燥させると、標記化合物(88g、90%)を黄色固体として得た。1H NMR(DMSO-d6,400 MHz):δ:7.62-7.56(m,1H),7.21-7.15(m,3H),6.83(d,J=7.6 Hz,1H),6.74(s,2H),6.58(d,J=7.6 Hz,1H).
【0118】
d)(6-アミノ-3-ブロモ-2-クロロ-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノン
(2-アミノ-6-クロロ-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノン(88.0g、328.8mmol)のジクロロメタン(225mL)およびN,N-ジメチルホルムアミド(225mL)中溶液に、1-ブロモピロリジン-2,5-ジオン(64.4g、362mmol)を0℃で添加した。反応混合物を30℃で1時間撹拌した。混合物をジクロロメタン(600mL)で希釈し、水(500mL)および食塩水(4×500mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル、1:0~2:1)によって精製した。固体を石油エーテル(200mL)に懸濁し、室温で20分間撹拌した。懸濁液をフィルタにかけ、固体を減圧下で乾燥させ、標記化合物(96.0g、84%)を黄色固体として得た。MS:345.9([{79Br,35Cl}M+H]+),347.8([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0119】
e)7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
(6-アミノ-3-ブロモ-2-クロロ-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノン(25.0g、72.1mmol)のピリジン(625mL)中溶液に2-アミノ酢酸エチル塩酸塩(70.5g、505mmol)を添加した。反応混合物を135℃で36時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮してピリジンを除去した。残渣を酢酸エチル(2000mL)で希釈し、HCl(1m、3×1500mL)、水(2000mL)および食塩水(2×1000mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、フィルタにかけ、減圧濃縮した。未精製の生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル10:1~2:1)によって精製し、標記化合物(10.1g、12%)を灰白色固体として得た。MS:385.0([{79Br,35Cl}M+H]+),ESI pos.
【0120】
構成要素C
6,7-ジクロロ-5-(2-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
【化9】
a)N-[3-クロロ-2-(2-フルオロベンソイル)フェニル]アセトアミド
5-クロロ-2-メチル-3、1-ベンゾオキサジン-4-オン(20.0g、102.3mmol)および1-ブロモ-2-フルオロベンゼン(17.89g、102.3mmol)のテトラヒドロフラン(600mL)中溶液に、-70℃でテトラヒドロフラン(2.5m、49.1mL、123mmol)中のn-BuLiを滴下した。反応混合物を-60℃で1時間撹拌し、次いで、塩化アンモニウム水溶液(200mL)でクエンチした。水層をテトラヒドロフラン(2×250mL)および酢酸エチル(2×250mL)で抽出した。合わせた有機相を食塩水(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル20:1~3:1)による精製によって、標記化合物(21g、70%)を白色固体として得た。MS:292.3([M+H]
+),ESI pos.
【0121】
b)(2-アミノ-6-クロロ-フェニル)-(2-フルオロフェニル)メタノン
構成要素Acの実験と同様に、N-[3-クロロ-2-(2-フルオロベンゾイル)フェニル]アセトアミドを標記化合物(10g、58%)に変換し、これを黄色固体として得た。MS:250.1([M+H]+),ESI pos.
【0122】
c)(6-アミノ-2,3-ジクロロ-フェニル)-(2-フルオロフェニル)メタノン
構成要素Adの実験と同様に、1-ブロモピロリジン-2,5-ジオンに代え、1-クロロピロリジン-2,5-ジオンを使用して、(2-アミノ-6-クロロ-フェニル)-(2-フルオロフェニル)メタノンを標記化合物(234mg、53%)に変換し、これを橙黄色固体として得た。MS:284.0([{35Cl,35Cl}M+H]+),ESI pos.
【0123】
d)6,7-ジクロロ-5-(2-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
構成要素Aeの実験と同様に、(6-アミノ-2,3-ジクロロ-フェニル)-(2-フルオロフェニル)メタノンを標記化合物(193mg、74%)に変換し、これを灰色固体として得た。MS:323.2([{35Cl,35Cl}M+H]+),ESI pos.
【0124】
構成要素D
6,7-ジクロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
【化10】
【0125】
a)(6-アミノ-2,3-ジクロロ-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノン
構成要素Adの実験と同様に、1-ブロモピロリジン-2,5-ジオンに代え、1-クロロピロリジン-2,5-ジオンを使用して、(2-アミノ-6-クロロ-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノンを標記化合物(3.44g、47%)に変換し、これを黄色固体として得られた。MS:302.0([{35Cl,35Cl}M+H]+),ESI pos.
【0126】
b)6,7-ジクロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
構成要素Aeの実験と同様に、(6-アミノ-2,3-ジクロロ-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノンを標記化合物(2.6g、53%)に変換し、これを黄色固体として得たMS:341.0([{35Cl,35Cl}M+H]+),ESI pos.
【0127】
構成要素H
6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-ヨード-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
【化11】
【0128】
a)(6-アミノ-2-クロロ-3-ヨード-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノン
構成要素Adの実験と同様に、1-ブロモピロリジン-2,5-ジオンに代え、1-ヨードピロリジン-2,5-ジオンを使用して、(2-アミノ-6-クロロ-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノンを標記化合物(7.1g、85%)に変換し、これを黄色固体として得られた。MS:393.8([M+H]+),ESI pos.
【0129】
b)6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-ヨード-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
構成要素Aeの実験と同様に、(6-アミノ-2-クロロ-3-ヨード-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノンを標記化合物(2.7g、68%)に変換し、これを黄色固体として得た。MS:432.8([M+H]+),ESI pos.
【0130】
構成要素L
(3S)-7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
【化12】
a)tert-ブチルN-[(1S)-2-[4-ブロモ-3-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)アニリノ]-1-メチル-2-オキソエチル]カルバメート
(6-アミノ-3-ブロモ-2-クロロ-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノン(1.0g、2.45mmol)および(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)プロパン酸(0.696g、3.68mmol)のピリジン(12.0mL)中溶液に、塩化ホスホリル(0.489g、3.19mmol)を-5℃でゆっくり添加した。反応混合物を-5℃で1時間撹拌した後、水(75mL)にゆっくり注ぎ、酢酸エチル(3×75mL)で抽出した。合わせた有機層を食塩水(40mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘプタン/酢酸エチル、10:0~4:1)によって精製し、標記化合物(1.41g、95%)を白色の泡状物として得た。MS:418.7([{
81Br,
35Clまたは
79Br,
37Cl}M-C
4H
8-CO
2+H]
+),540.7([{
81Br,
35Clまたは
79Br,
37Cl}M+Na]
+),ESI pos.
【0131】
b)(2S)-2-アミノ-N-[4-ブロモ-3-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)フェニル]プロパンアミド
tert-ブチルN-[(1S)-2-[4-ブロモ-3-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)アニリノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]カルバメート(0.534g、1.03mmol)のジクロロメタン(4.0mL)中溶液に塩酸(1,4-ジオキサン中4.0m、2.58mL、10.3mmol)をゆっくり添加した。反応混合物を25℃で3時間撹拌した。飽和重炭酸ナトリウム水溶液をpHが8を超えるまでゆっくり添加し、次いで、混合物をジクロロメタン(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を食塩水(20mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、減圧濃縮し、標記化合物(0.424g、98%)を淡黄色の油状物として得、これをさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0132】
c)(3S)-7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
(2S)-2-アミノ-N-[4-ブロモ-3-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)フェニル]プロパンアミド(960mg、2.30mmol)のトルエン(9.19mL)中溶液に、シリカ(138mg、2.30mmol)を添加した。反応混合物を90℃で15時間撹拌し、次いで、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル3:1)によって精製し、標記化合物(920mg、95%)を黄色固体として得た。MS:399.1([{79Br,35Cl}M+H]+),401.1([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0133】
構成要素M
(3S)-6,7-ジクロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
【化13】
【0134】
a)tert-ブチルN-[(1S)-2-[3,4-ジクロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)アニリノ]-1-メチル-2-オキソエチル]カルバメート
構成要素Laの実験と同様に、(6-アミノ-2,3-ジクロロ-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノンを標記化合物(5.0g、64%)に変換し、これを黄色の泡状物として得た。未精製の生成物をさらに特徴づけすることなくそのまま次の工程で使用した。
【0135】
b)(2S)-2-アミノ-N-[3,4-ジクロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)フェニル]プロパンアミド
構成要素Lbの実験と同様に、tert-ブチルN-[(1S)-2-[3,4-ジクロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)アニリノ]-1-メチル-2-オキソ-エチル]カルバメートを標記化合物(3.6g、91%)に変換し、これを黄色の油状物として得た。MS:373.0([{35Cl,35Cl}M+H]+),ESI pos.
【0136】
c)(3S)-6,7-ジクロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
構成要素Lcの実験と同様に、(2S)-2-アミノ-N-[3,4-ジクロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)フェニル]プロパンアミドを標記化合物(3.20g、93%)に変換し、これを黄色の泡状物として得た。MS:355.0([{35Cl,35Cl}M+H]+),ESI pos.
【0137】
構成要素N
6,7-ジクロロ-5-(3-フルオロ-2-ピリジル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
【化14】
【0138】
a)N-[3-クロロ-2-(3-フルオロピリジン-2-カルボニル)フェニル]アセトアミド
2-ブロモ-3-フルオロピリジン(18.0g、102mmol)のメチルtert-ブチルエーテル(720mL)中溶液に、n-BuLi(テトラヒドロフラン中2.5m、36.8mL、92.02mmol)を-60℃でゆっくり添加した。混合物を1時間撹拌し、次いで、5-クロロ-2-メチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン(10.0g、51.1mmol)のテトラヒドロフラン(600mL)中溶液を滴下した。混合物を-60℃で1時間撹拌し、その後飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL)の添加によってクエンチした。混合物を水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。有機層を食塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール50:1~20:1)による精製によって、標記化合物(5.20g、23.2%)を淡黄色固体として得た。MS:293.1([M+H]+),ESI pos.
【0139】
b)N-[3,4-ジクロロ-2-(3-フルオロピリジン-2-カルボニル)フェニル]アセトアミド
構成要素Adの実験と同様に、1-ブロモピロリジン-2,5-ジオンに代え、1-クロロピロリジン-2,5-ジオンを使用してN-[3-クロロ-2-(3-フルオロピリジン-2-カルボニル)フェニル]アセトアミドを標記化合物(36g、84%)に変換し、これを白色固体として得た。MS:327.0([{35Cl,35Cl}M+H]+),ESI pos.
【0140】
c)(6-アミノ-2,3-ジクロロ-フェニル)-(3-フルオロ-2-ピリジル)メタノン
N-[3,4-ジクロロ-2-(3-フルオロピリジン-2-カルボニル)フェニル]アセトアミド(4.00g、12.2mmol)の塩酸(メタノール中4.0m、61mL、244mmol)中の懸濁液を40℃で24時間撹拌した。室温まで冷却した後、飽和重炭酸ナトリウム水溶液をpH8~9まで滴下した。混合物を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。合わせた有機層を食塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル、20:1~3:1)による精製によって、標記化合物(2.95g、85%)を橙色固体として得た。MS:285.0([{35Cl,35Cl}M+H]+),ESI pos.
【0141】
d)6,7-ジクロロ-5-(3-フルオロ-2-ピリジル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
構成要素Aeの実験と同様に、(6-アミノ-2,3-ジクロロ-フェニル)-(3-フルオロ-2-ピリジル)メタノンを標記化合物(3.76g、28%)に変換し、これを白色固体として得た。MS:323.7([{35Cl,35Cl}M+H]+),ESI pos.
【0142】
構成要素Q
(3S)-6-ブロモ-7-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
【化15】
【0143】
a)5-ブロモ-2-メチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン
2-アミノ-6-ブロモ-安息香酸(9.00g、41.7mmol)の無水酢酸(118mL)中溶液を120℃で3.5時間撹拌した。反応混合物を-78℃で冷却し、2時間攪拌した。得られた固体をフィルタにかけ、TBMEで洗浄し、減圧下で乾燥させ、標記化合物(8.55g、85%)を淡褐色固体として得た。1H NMR(CDCl3,300 MHz):δ:7.74(dd,J=7.8,1.3 Hz,1H),7.56(dd,J=8.0,7.8 Hz,1H),7.48(dd,J=8.0,1.3 Hz,1H),2.45(s,3H).この材料は、さらなる特性評価を行わずに次の工程でそのまま使用した。
【0144】
b)N-[3-ブロモ-2-(2,6-ジフルオロベンソイル)フェニル]アセトアミド
-70℃で2-ブロモ-1,3-ジフルオロベンゼン(7.56g、39.2mmol)の無水テトラヒドロフラン(64mL)中溶液に、ヘキサン中のn-BuLi(1.6m、24.5mL、39.2mmol)を滴下した。反応混合物を-78℃で1時間撹拌し、次いで、5-ブロモ-2-メチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン(8.55g、35.6mmol)のテトラヒドロフラン(128mL)中氷冷溶液に滴加した。反応混合物を0℃で1.5時間撹拌した。反応混合物を氷冷飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)に注いだ。水層をTBMEで抽出した。合わせた有機相を食塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル中0~100%酢酸エチル)によって精製し、標記化合物(7.72g、61%)を淡黄色固体として得た。MS:354.1([{79Br,35Cl}M+H]+),356.1([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0145】
c)N-[3-ブロモ-4-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)フェニル]アセトアミド
構成要素Adの実験と同様に、1-ブロモピロリジン-2,5-ジオンに代え、1-クロロピロリジン-2,5-ジオンを使用し、N-(3-ブロモ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)フェニル)アセトアミドを標記化合物(10.1g、70%)に変換し、これを淡黄色固体として得た。MS:388.0([{79Br,35Cl}M+H]+),390.1([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0146】
d)(6-アミノ-2-ブロモ-3-クロロ-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノン
構成要素Acの実験と同様に、N-[3-ブロモ-4-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)フェニル]アセトアミドを標記化合物(8.2g、92%)に変換し、これを黄色固体として得た。MS:346.0([{79Br,35Cl}M+H]+),348.0([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0147】
e)tert-ブチルN-[(1S)-2-[3-ブロモ-4-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)アニリノ]-1-メチル-2-オキソエチル]カルバメート
構成要素Laの実験と同様に、(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)プロパン酸を使用し、(6-アミノ-2-ブロモ-3-クロロ-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノンを標記化合物(8.64g、69%)に変換し、これを黄色固体として得た。MS:515.2([{79Br,35Cl}M-H]-),517.1([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M-H]-),ESI neg.
【0148】
f)(2S)-2-アミノ-N-[3-ブロモ-4-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)フェニル]プロパンアミド
構成要素Lbの実験と同様に、tert-ブチルN-[(1S)-2-[3-ブロモ-4-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)アニリノ]-1-メチル-2-オキソエチル]カルバメートを標記化合物(6.27g、90%)に変換し、これを淡褐色の油状物として得た。MS:417.1([{79Br,35Cl}M+H]+),419.0([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0149】
g)(3S)-6-ブロモ-7-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
構成要素Lcの実験と同様に、(2S)-2-アミノ-N-[3-ブロモ-4-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)フェニル]プロパンアミドを標記化合物(3.98g、68%)に変換し、これを黄色固体として得た。MS:399.1([{79Br,35Cl}M+H]+),401.0([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0150】
構成要素V
(3S)-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-トリフルオロメチル-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
【化16】
【0151】
a)tert-ブチルN-[(1S)-2-[3-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)-4-ヨード-アニリノ]-1-メチル-2-オキソエチル]カルバメート
構成要素Laの実験と同様に、(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)プロパン酸を使用し、(6-アミノ-2-クロロ-3-ヨード-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノンを標記化合物(5.8g、81%)に変換し、これを黄色固体として得た。MS:465.0([M-C4H8-CO2+H]+),509.0([M-C4H8+H]+),ESI pos.
【0152】
b)(2S)-2-アミノ-N-[3-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)-4-ヨード-フェニル]プロパンアミド
構成要素Lbの実験と同様に、tert-ブチルN-[(1S)-2-[3-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)-4-ヨード-アニリノ]-1-メチル-2-オキソエチル]カルバメートを標記化合物(4.7g、99%)に変換し、これを黄色固体として得た。未精製の生成物をさらに特徴づけすることなくそのまま次の工程で使用した。
【0153】
c)(3S)-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-ヨード-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
構成要素Lcの実験と同様に、(2S)-2-アミノ-N-[3-クロロ-2-(2,6-ジフルオロベンゾイル)-4-ヨード-フェニル]プロパンアミドを標記化合物(3.8g、94%)に変換し、これを黄色固体として得た。MS:446.8([M+H]+),ESI pos.
【0154】
d)(3S)-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-7-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
(3S)-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-ヨード-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(14.0g、31.35mmol)、メチル2,2-ジフルオロ-2-(フルオロスルホニル)アセテート(18.07g、94.04mmol)およびヨウ化銅(I)(11.94g、62.69mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(140mL)およびヘキサメチルリン酸トリアミド(70mL)中混合物を窒素下70℃で16時間撹拌した。反応混合物を氷水(150mL)に注ぎ、水層を酢酸エチル(4×150mL)で抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣を分取HPLC(Phenomenex luna C18、0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水/アセトニトリル)およびキラルSFC(Daicel Chiralcel OJ、0.1%アンモニア水を含有するエタノール)によって精製して、標記化合物(4.2g、33%)を黄色固体として得た。MS:389.1([{35Cl}M+H]+),ESI pos.1H NMR(CDCl3,400 MHz)δ:8.71(s,1H),7.81(d,J=8.6 Hz,1H),7.34(tt,J=6.3,8.4 Hz,1H),7.18(d,J=8.5 Hz,1H),7.08-6.58(m,2H),3.97(q,J=6.4 Hz,1H),1.79(d,J=6.4 Hz,3H).
【0155】
構成要素Z
6-ブロモ-7-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
【化17】
【0156】
6-ブロモ-7-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
(6-アミノ-2-ブロモ-3-クロロ-フェニル)-(2,6-ジフルオロフェニル)メタノン(100mg、0.289mmol)のピリジン(1.8mL)中溶液に硫酸マグネシウム水和物(399mg、2.89mmol)を添加した。混合物を90℃に加温し、エチル2-アミノアセテート塩酸塩(282mg、2.02mmol)を添加した。反応混合物を110℃で3時間撹拌した。さらなるエチル2-アミノアセテート塩酸塩(282mg、2.02mmol)を90℃で添加し、110℃で撹拌を継続した。これを十分に変換が起こるまで繰り返した。
【0157】
反応混合物を室温に冷却し、ピリジンの大部分を減圧したで除去した。残渣を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機相をHCl水溶液(1.0m)および食塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、フィルタにかけ、減圧濃縮した。未精製の生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル1:0~1:1)によって精製し、標記化合物(12mg、11%)を得、これを黄色固体として得た。MS:385.1([{79Br,35Cl}M+H]+),387.1([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0158】
実施例1
8,9-ジクロロ-7-(2-フルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化18】
【0159】
a)6,7-ジクロロ-5-(2-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン
6,7-ジクロロ-5-(2-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(構成要素C、3.22g、9.96mmol)のジグリム(40mL)中溶液に、五硫化リン(3.32g、14.9mmol)および重炭酸ナトリウム(2.51g、29.9mmol)を添加した。混合物を、LC-MSによって判断して完全に変換するまで80℃で撹拌した。混合物を氷に注ぎ、0.5時間撹拌し、次いで、酢酸エチルで抽出した。有機層を1.0mのNaHCO3水溶液および食塩水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘプタン中0~25%酢酸エチル)によって精製し、標記化合物(2.62g、78%)を橙色固体として得た。MS:339.0([{35Cl,35Cl}M+H]+),341.0([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0160】
b)6,7-ジクロロ-5-(2-フルオロフェニル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン
アンモニア水(25重量%、5.7ml、75mmol)のメタノール(1.7mL)中溶液に、6,7-ジクロロ-5-(2-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン(339mg、1.0mmol)のテトラヒドロフラン(4.5mL)中溶液を添加した。混合物を22°Cで3日間撹拌した後、全ての揮発性物質を減圧下で除去した。得られた沈殿物を熱1,4-ジオキサンに再溶解し、次いで、室温に冷却した。得られた固体をフィルタにかけ、高真空下で乾燥させ、標記化合物(105mg、33%)を白色固体として得た。MS:322.1([{35Cl,35Cl}M+H]+),324.1([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0161】
c)8,9-ジクロロ-7-(2-フルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
6,7-ジクロロ-5-(2-フルオロフェニル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン(50mg、0.16mmol)のエタノール(2mL)中懸濁液に、プロピオル酸エチル(33mg、0.34mmol)を添加した。反応混合物を60℃に18時間加熱した後、室温に冷却した。混合物を減圧濃縮し、次いで、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、ジクロロメタン中2~10%メタノール)、続いて分取HPLC(YMC-Triart C18、5μm、100×30mm、水中0.1%ギ酸/アセトニトリル)によって精製し、標記化合物(17mg、29%)を白色固体として得た。MS:374.0([{35Cl,35Cl}M+H]+),376.0([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0162】
実施例2
8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化19】
【0163】
a)6,7-ジクロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン
実施例1aの実験と同様に、6,7-ジクロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(構成要素D、1.43g、4.19mmol)を標記化合物(1.43g、96%)に変換し、水からの沈殿後に淡褐色固体として得た。MS:357.1([{35Cl,35Cl}M+H]+),359.1([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.未精製の生成物をさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0164】
b)6,7-ジクロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン
実施例1bの実験と同様に、6,7-ジクロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン(1.40g、3.92mmol)を標記化合物(1.25g、94%)に変換し、これを橙色固体として得た。MS:340.2([{35Cl,35Cl}M+H]+),342.2([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.この未精製の物質をさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0165】
c)8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例1cの実験と同様に、6,7-ジクロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン(50mg、0.15mmol)を標記化合物(23mg、40%)に変換し、これを灰白色固体として得た。MS:392.1([{35Cl,35Cl}M+H]+),394.1([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0166】
実施例3
8,9-ジクロロ-7-(3-フルオロ-2-ピリジル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化20】
【0167】
a)6,7-ジクロロ-5-(3-フルオロ-2-ピリジル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン
6,7-ジクロロ-5-(3-フルオロ-2-ピリジル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(構成要素N、3.55g、11.0mmol)のトルエンおよびテトラヒドロフラン(80mL)の1:1混合物中の溶液に、ローソン試薬(4.65g、11.5mmol)を添加した。TLC(石油エーテル/酢酸エチル1:1)によって判断して完全に変換されるまで、混合物を90℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、次いで、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、ジクロロメタン/酢酸エチル5:1)によって精製し、続いて酢酸エチル中で研和した。固体をフィルタにかけ、高真空下で乾燥させて、標記化合物(2.56g、69%)を淡黄色固体として得た。MS:340.0([{35Cl,35Cl}M+H]+),341.9([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0168】
b)6,7-ジクロロ-5-(3-フルオロ-2-ピリジル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン
実施例1bの実験と同様に、6,7-ジクロロ-5-(3-フルオロ-2-ピリジル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン(0.30g、0.88mmol)を標記化合物(0.38g、定量的)に変換し、これを黄色固体として得た。MS:322.9([{35Cl,35Cl}M+H]+),325.0([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.この未精製の物質をさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0169】
c)8,9-ジクロロ-7-(3-フルオロ-2-ピリジル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例1cの実験と同様に、6,7-ジクロロ-5-(3-フルオロ-2-ピリジル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン(0.38g、0.88mmol)を標記化合物(148mg、45%)に変換し、これを、分取HPLC(Waters XBridge5μm、150×25mm、水/アセトニトリル中NH4OH)による精製後に白色固体として得た。MS:375.0([{35Cl,35Cl}M+H]+),377.0([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0170】
実施例4
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化21】
【0171】
a)(3S)-6,7-ジクロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン
(3S)-6、7-ジクロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(構成要素M、5.0g、14.1mmol)およびローソン試薬(5.69g、14.1mmol)のトルエン(100mL)中溶液を、TLC(石油エーテル/酢酸エチル2:1)によって判断して完全に変換するまで110℃に加熱した。反応混合物を室温に冷却し、次いで、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル20:1~5:1)によって精製し、標記化合物(6.2g、定量的)を黄色固体として得た。この物質をさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0172】
b)(3S)-6,7-ジクロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン
アンモニア水(33重量%、60mL、16.7mmol)のメタノール(12mL)中溶液に、(3S)-6,7-ジクロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン(6.2g、14mmol)のテトラヒドロフラン(60mL)中溶液を添加した。混合物を室温で12時間撹拌した後、全ての揮発性物質を減圧下で除去した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、ジクロロメタン/メタノール120:1~30:1)によって精製し、標記化合物(4.5g、90%)を黄色固体として得た。この物質をさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0173】
c)(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
(3S)-6,7-ジクロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン(4.00g、11.3mmol)のエタノール(57mL)中懸濁液に、プロピオル酸エチル(5.72mL、56.5mmol)を添加した。混合物を60℃に12時間加熱した後、室温に冷却した。混合物を減圧濃縮し、次いで、フラッシュカラムクロマトグラフィー(Welch Ultimate XB-C18、20~40μm、120Å、水中0.25%ギ酸/アセトニトリル)によって精製し、ラセミ体の標記化合物(2.95g、64%)を黄色固体として得た。SFC(Chiralcel OD、10μm、250×30mm、メタノール中0.1% NH4OH、溶出:70g/mLでCO2中5~40%)によるキラル分離によって、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(1.44g、31%)を白色固体として得た。MS:406.0([{35Cl,35Cl}M+H]+),408.0([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0174】
実施例5
2-ブロモ-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化22】
【0175】
2-ブロモ-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例2、30mg、0.077mmol)のジクロロメタン(0.6mL)中溶液に、N-ブロモスクシンイミド(15mg、0.084mmol)を添加した。混合物を22℃で16時間撹拌した後、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘプタン中30~100%酢酸エチル)によって精製し、標記化合物(8.7mg、24%)を灰白色固体として得た。MS:470.0([{79Br,35Cl,35Cl}M+H]+),472.0([{79Br,35Cl,37Clまたは81Br,35Cl,35Cl}M+H]+),474.0([{81Br,35Cl,37Clまたは79Br,37Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0176】
実施例6
(5S)-8-ブロモ-9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化23】
【0177】
a)(3S)-6-ブロモ-7-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン
実施例3aの実験と同様に、(3S)-6-ブロモ-7-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(構成要素Q、3.30g、8.26mmol)を標記化合物(2.72g、79%)に変換し、これを黄色固体として得た。MS:415.0([{79Br,35Cl}M+H]+),417.0([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0178】
b)(3S)-6-ブロモ-7-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン
実施例1bの実験と同様に、(3S)-6-ブロモ-7-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン(400mg、0.962mmol)を標記化合物(311mg、81%)に変換し、これを橙色固体として得た。MS:398.0([{79Br,35Cl}M+H]+),400.0([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.未精製の物質を更に精製することなく以下の工程で使用した。
【0179】
c)(5S)-8-ブロモ-9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例1cの実験と同様に、(3S)-6-ブロモ-7-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン(311mg、0.780mmol)を(-)-標記化合物(73mg、21%)に変換し、これを分取キラルHPLC(Chiralpak AD、20μm、500×50mm、エタノール中0.01m NH4OAc、溶出:ヘプタン中40%)後にエナンチオピュアな形態で白色固体として得た。MS:450.0([{79Br,35Cl}M+H]+),452.0([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0180】
実施例7
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5-ジメチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化24】
【0181】
a)(5S)-2-ブロモ-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例5の実験と同様に、(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例4、580mg、1.43mmol)を標記化合物(300mg、43%)に変換し、これを黄色固体として得た。この物質をさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0182】
b)(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5-ジメチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
1,4-ジオキサン/水(11mL)の10:1混合物中の(5S)-2-ブロモ-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(260mg、0.536mmol)、炭酸カリウム(222mg、1.61mmol)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリド・CH2Cl2(44mg,0.050mmol)およびメチルボロン酸(160mg、2.68mmol)の混合物を、別の方法で排気し、窒素での逆充填によって脱気した。反応混合物を窒素下60℃で16時間撹拌した後、減圧下で初期体積の約1/10まで濃縮した。残渣をジクロロメタンで希釈し、水および食塩水で洗浄した。有機層を分離し、乾燥させ(Na2SO4)、フィルタにかけ、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル3:1~ジクロロメタン/メタノール20:1)、続いて分取HPLC(PhenomenexSynergiC18、10μm、150×25mm、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)によって精製し、ラセミ体の標記化合物(40mg、18%)を白色固体として得た。SFC(Cellucoat、3μm、50×4.6mm、メタノール中0.05% DEA;勾配溶出:CO2中5%~40%、35℃で3mL/分)によるキラル分離によって、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(11.8mg、5%)を白色固体として得た。MS:420.1([{35Cl,35Cl}M+H]+),422.1([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0183】
実施例8
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5,9-トリメチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化25】
【0184】
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5,9-トリメチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
トルエンおよび水(30mL)の5:1混合物中の(5S)-2-ブロモ-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例7a、2.50g、5.15mmol)、炭酸セシウム(5.04g、15.5mmol)、メチルボロン酸(925mg、15.5mmol)および(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’、4’、6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)[2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート(436mg、0.520mmol)の混合物を窒素下にて80℃で16時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、次いで、celiteプラグを通して直接フィルタにかけた。濾過ケーキを酢酸エチル(50mL)ですすぎ、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル1:1~1:2)、続いて分取HPLC(Phenomenex Luna C18、15μm、150×40mm、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)によって精製した。標記化合物を含有する画分を合わせ、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、次いで、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、食塩水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、減圧濃縮して、ラセミ体の標記化合物(350mg、17%)を白色固体として得た。SFC(Daicel Chiralcel OD、10μm、250×30mm、エタノール中0.1%のNH4OH、CO2)中50%)によるキラル分離によって、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(130mg、5%)を白色固体として得た。MS:400.1([{35Cl}M+H]+),402.0([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0185】
実施例9
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5-ジメチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化26】
【0186】
a)(5S)-2-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例5の実験と同様に、(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例10、4.80g、10.9mmol)を標記化合物(5.6g、99%)に変換し、これを黄色固体として得た。この物質をさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0187】
b)(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5-ジメチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
トルエンおよび水の5:1混合物(30mL)中の(5S)-2-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(2.50g、4.82mmol)、炭酸セシウム(4.71g、14.5mmol)、メチルボロン酸(1.44g、24.1mmol)およびメチルボロン酸(925mg、15.5mmol)および(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’、4’、6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)[2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート(408mg、0.480mmol)の混合物を窒素下にて40℃で24時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、次いで、celiteプラグを通して直接フィルタにかけた。濾過ケーキを酢酸エチル(50mL)ですすぎ、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル1:1~1:2)、続いて分取HPLC(Waters Xbridge C18、10μm、150×50mm、水中の0.01m NH4HCO3/アセトニトリル)によって精製し、ラセミ体の標記化合物(900mg、41%)を白色固体として得た。SFC(Daicel Chiralpak AD、10μm、250×30mm、イソプロパノール中0.1% NH4OH、CO2中30%)によるキラル分離(600mgのラセミ体を使用)によって、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(312mg、21%)を白色固体として得た。MS:454.3([{35Cl}M+H]+),456.3([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0188】
実施例10
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化27】
【0189】
a)(3S)-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-7-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン
実施例4aの実験と同様に、(3S)-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-7-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(構成要素V、500mg、1.29mmol)を標記化合物(490mg、93%)に変換し、これを黄色固体として得た。この物質をさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0190】
b)(3S)-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-7-(トリフルオロメチル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン
テトラヒドロフランおよびメタノール(4.8mL)の5:1混合物中の(3S)-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-7-(トリフルオロメチル)-1、3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン(400mg、0.988mmol)およびアンモニア水(33重量%、1mL)の混合物を35℃で16時間撹拌した。全ての揮発性物質を減圧下で除去し、残渣を水の添加によって研和した。得られた固体を濾過によって回収し、高真空下で乾燥させて、標記化合物(400mg、定量的)を淡黄色固体として得た。この物質をさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0191】
c)(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
(3S)-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-7-(トリフルオロメチル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン(300mg、0.741mmol)のエタノール(3.2mL)中溶液に、プロピオル酸エチル(0.24mL、2.3mmol)を添加した。反応混合物を60℃に16時間加熱した後、室温に冷却した。混合物を減圧濃縮し、次いで、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、ジクロロメタン/メタノール50:1)によって精製し、ラセミ体の標記化合物(300mg、92%)を灰白色固体として得た。SFC(Daicel Chiralpak AD、10μm、250×30mm、エタノール、CO2中50%)によるキラル分離(70mgのラセミ体を使用)によって、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(32.3mg、42%)を白色固体として得た。MS:440.0([{35Cl}M+H]+),442.0([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0192】
実施例11
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-エチル-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化28】
【0193】
a)(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-2-ビニル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
トルエンおよび水(6mL)の5:1混合物中の炭酸セシウム(190mg、0.580mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(20mg、0.03mmol)、(5S)-2-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例9a、100mg、0.190mmol)およびビニルトリフルオロホウ酸カリウム(130mg、0.970mmol)の混合物を窒素下にて80℃で16時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、次いで、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル10:1~3:1)、続いて分取HPLC(Phenomenex Luna C18、10μm、150×25mm、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)によって精製し、標記化合物(68mg、75%)を白色固体として得た。MS:466.2([{35Cl}M+H]+),468.1([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0194】
b)(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-エチル-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-2-ビニル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(78mg、0.17mmol)、10重量%のPd/C(80mg)および臭化亜鉛(110mg、0.490mmol)の酢酸エチル(3mL)およびメタノール(1mL)中の混合物を、水素下、25℃で2時間撹拌した。反応混合物をceliteプラグを通して直接フィルタにかけた。濾過ケーキを酢酸エチル(10mL)ですすぎ、濾液を減圧濃縮した。残渣を分取HPLC(Phenomenex Gemini-NX C18、3μm、75×30mm、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)によって精製して、ラセミ体の標記化合物(30mg、38%)を得た。SFC(Daicel Chiralcel OJ、10μm、250×30mm、イソ-プロパノール中0.1% NH4OH、CO2中30%)によるキラル分離によって、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(11mg、37%)を白色固体として得た。MS:468.0([{35Cl}M+H]+),469.9([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0195】
実施例12
9-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化29】
【0196】
a)7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン
実施例4aの実験と同様に、7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(構成要素A、180mg、0.364mmol、純度78%)を標記化合物(140mg、定量的)に変換し、これを黄色固体として得た。MS:401.0([{79Br,35Cl}M+H]+),403.0([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0197】
b)7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン
実施例10bの実験と同様に、7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン(140mg、0.310mmol、純度88%)を標記化合物(155mg、定量的)に変換し、これを橙色固体として得た。MS:384.0([{79Br,35Cl}M+H]+),386.0([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.この未精製の物質をさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0198】
c)9-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例4cの実験と同様に、7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン(155mg、0.360mmol、純度83%)を標記化合物(12mg、8%)に変換し、これを、分取HPLC(Phenomenex Synergi C18、10μm、150×20mm、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)による精製後に白色固体として得た。MS:436.0([{79Br,35Cl}M+H]+),438.0([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0199】
実施例13
(5S)-9-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化30】
【0200】
a)(3S)-7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン
実施例4aの実験と同様に、(3S)-7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(構成要素L、385mg、0.960mmol)を標記化合物(342mg、85%)に変換し、これを黄色固体として得た。MS:414.8([{79Br,35Cl}M+H]+),416.8([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0201】
b)(3S)-7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン
実施例10bの実験と同様に、(3S)-7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン(342mg、0.820mmol)を標記化合物(380mg、定量的)に変換し、これを黄色固体として得た。MS:398.0([{79Br,35Cl}M+H]+),400.0([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.この物質をさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0202】
c)(5S)-9-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例4cの実験と同様に、(3S)-7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン(380mg、0.950mmol)をラセミ体の標記化合物に変換し、これを、分取HPLC(Phenomenex Synergi C18、10μm、150×25mm、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)による精製後に淡黄色固体(260mg、61%)として得た。SFC(Daicel Chiralcel OJ、10μm、250×30mm、メタノール中0.1% NH4OH、CO2中30%)によるキラル分離(60mgのラセミ体を使用)によって、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(17mg、28%)を白色固体として得た。MS:449.9([{79Br,35Cl}M+H]+),451.9([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0203】
実施例14
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-エチル-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化31】
【0204】
a)(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-2-ビニル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
トルエンおよび水(12mL)の5:1混合物中の酢酸カリウム(243.0mg、2.48mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(90mg、0.12mmol)、(5S)-2-ブロモ-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例7a、600mg、1.24mmol)およびカリウムビニルトリフルオロボレート(180mg、1.34mmol)の混合物を窒素下にて80℃で16時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、次いで、水(20mL)で希釈した。得られた懸濁液を酢酸エチル(2×40mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル10:1~0:1)によって精製し、標記化合物(387mg、72%)を淡黄色固体として得た。MS:432.1([{35Cl,35Cl}M+H]+),434.1([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0205】
b)(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-エチル-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例11bの実験と同様に、(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-2-ビニル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(105mg、0.243mmol)をラセミ体の標記化合物(65mg、65%)に変換し、これを分取HPLC(Phenomenex Synergi C18、10μm、150×25mm、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)による精製後に白色固体として得た。SFC(Daicel Chiralpak AD、10μm、250×30mm、イソプロパノール中0.1% NH4OH、CO2中45%)によるキラル分離によって、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(13mg、12%)を白色固体として得た。MS:434.1([{35Cl,35Cl}M+H]+),436.1([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0206】
実施例15
2,9-ジブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン;
【化32】
【0207】
2,9-ジブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
9-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例12、348mg、0.800mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(5mL)中溶液に、N-ブロモスクシンイミド(165mg、0.930mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(2mL)中溶液を添加した。反応混合物を50℃で2時間撹拌した後、室温に冷却した。混合物を水(20mL)で希釈し、酢酸エチル(2×30mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、フィルタにかけ、減圧濃縮した。残渣を分取HPLC(Phenomenex Luna C18、15μm、150×40mm、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)によって精製し、標記化合物(50mg、11%)を黄色固体として得た。MS:513.9([{79Br,79Br,35Cl}M+H]+),515.9([{79Br,79Br,37Clまたは79Br,81Br,35Cl}M+H]+),517.9([{79Br,81Br,37Clまたは81Br,81Br,35Cl}M+H]+),ESI pos.
【0208】
実施例16
(5S)-2,9-ジブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化33】
【0209】
(5S)-2,9-ジブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例15の実験と同様に、(5S)-9-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例13、195mg、0.433mmol)を、ラセミ体の標記化合物(83mg、36%)に変換し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル5:1~1:3)後に淡黄色固体として得た。SFC(Daicel Chiralcel OD、10μm、250×30mm、メタノール中0.1% NH4OH、CO2中50%)によるキラル分離(100mgのラセミ体を使用)によって、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(40mg、10%)を灰白色固体として得た。MS:528.1([{79Br,79Br,35Cl}M+H]+),530.1([{79Br,79Br,37Clまたは79Br,81Br,35Cl}M+H]+),532.1([{79Br,81Br,37Clまたは81Br,81Br,35Cl}M+H]+),ESI pos.
【0210】
実施例17
8-ブロモ-9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化34】
【0211】
a)6-ブロモ-7-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン
6-ブロモ-7-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(構成要素Z、240mg、0.400mmol、純度64%)のトルエン(5mL)中溶液に、ローソン試薬(212mg、0.525mmol)を添加した。TLC(石油エーテル/酢酸エチル2:1)で判断して完全に変換されるまで、混合物を100℃に5時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、次いで、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル1:0~3:1)によって精製し、標記化合物(231mg、定量的)を黄色固体として得た。MS:400.9([{79Br,35Cl}M+H]+),402.9([{79Br,37Clまたは81Br,35Cl}M+H]+),ESI pos.
【0212】
b)6-ブロモ-7-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン
アンモニア水(33重量%、0.5mL、8.5mmol)のメタノール(1mL)中溶液に、6-ブロモ-7-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン(231mg、0.400mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)中溶液を添加した。混合物を60℃で16時間撹拌した後、全ての揮発性物質を減圧下で除去した。黄色固体として得られた未精製の標記化合物(248mg、定量的)をさらに精製することなく以下の工程に使用した。MS:383.9([{79Br,35Cl}M+H]+),385.9([{79Br,35Clまたは81Br,35Cl}M+H]+),ESI pos.
【0213】
c)8-ブロモ-9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例4cの実験と同様に、6-ブロモ-7-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン(248mg、0.400mmol)を標記化合物(48mg、27%)に変換し、これを分取HPLC(Phenomenex Luna C18、10μm、150×25mm、水中0.225%ギ酸/アセトニトリル)による精製後に白色固体として得た。MS:436.1([{79Br,35Cl}M+H]+),438.1([{81Br,35Clまたは79Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0214】
実施例18
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化35】
【0215】
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
ラセミ混合物8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-2-[(E)-2-エトキシビニル]-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例20a、70mg、0.14mmol)をキラルSFC(Daicel Chiralcel IC、10μm、250×30mm、イソプロパノール中0.1% NH4OH、CO2中50%)によって分離して、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(19mg、27%)を灰白色固体として得た。MS:510.3([{35Cl}M+H]+),512.3([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0216】
実施例19
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化36】
【0217】
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
ラセミ混合物8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例21a、70mg、0.15mmol)をキラルSFC(Daicel Chiralcel AD、10μm、250×30mm、エタノール中0.1% NH4OH、CO2中40%)によって分離して、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(18mg、26%)を淡黄色固体として得た。MS:476.0([{35Cl}M+H]+),478.0([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0218】
実施例20
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化37】
【0219】
a)8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
1,4-ジオキサンおよび水(30mL)の5:1混合物中の炭酸セシウム(950mg、2.92mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(70mg、0.10mmol)、(5S)-2-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例9a、500mg、965mmol)および2-[(E)-2-エトキシビニル]-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(961mg、4.85mmol)の混合物を窒素下80℃で16時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、次いで、水(20mL)の添加によってクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、フィルタにかけ、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル、1:0~1:2)、続いて分取HPLC(Phenomenex Luna C18、15μm、150×40mm、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)によって精製し、標記化合物(236mg、48%)を灰白色固体として得た。MS:510.3([{35Cl}M+H]+),512.3([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0220】
b)(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例11bの実験と同様に、8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(166mg、0.325mmol)を、分取HPLC(Phenomenex Luna C18、3μm、75×30mm、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)による精製後にラセミ体の標記化合物(78mg、47%)に変換した。SFC(Daicel Chiralcel OD、10μm、250×30mm、エタノール中0.1% NH4OH、CO2中30%およびDaicel Chiralcel OJ、10μm、250×30mm、イソプロパノール中0.1% NH4OH、CO2)中25%)によるキラル分離によって、エナンチオピュアな(-)標記化合物(10mg、13%)を淡黄色固体として得た。MS:512.3([{35Cl}M+H]+),514.3([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0221】
実施例21
(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化38】
【0222】
a)8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例20aの実験と同様に、炭酸セシウムに代え、酢酸カリウムを使用し、2-ブロモ-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例7a、500mg、1.03mmol)を標記化合物(203mg、40%)に変換し、これを淡黄色固体として得た。MS:476.3([{35Cl,35Cl}M+H]+),478.3([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0223】
b)(5S)-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例20bの実験と同様に、8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(133mg、0.280mmol)を、分取HPLC(Phenomenex Synergi C18、10μm、150×25mm、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)による精製後にラセミ体の標記化合物(92mg、90%)に変換した。SFC(Daicel Chiralcel OJ、10μm、250×30mm、エタノール中0.1% NH4OH、CO2中40%)およびDaicel Chiralcel OJ、10μm、250×30mm、イソプロパノール中0.1% NH4OH、CO2)中30%)によるキラル分離によって、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(17mg、18%)を白色固体として得た。MS:478.2([{35Cl,35Cl}M+H]+),480.2([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0224】
実施例22
8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化39】
【0225】
8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例21aの実験と同様に、2-ブロモ-8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例5、200mg、0.425mmol)を標記化合物(48mg、24%)に変換し、これを淡黄色固体として得た。MS:461.8([{35Cl,35Cl}M+H]+),463.8([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0226】
実施例23
(5S)-2,8-ジブロモ-9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化40】
【0227】
(5S)-2,8-ジブロモ-9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
((5S)-8-ブロモ-9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例6、250mg、0.555mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(4.0mL)中溶液に、N-ブロモスクシンイミド(116mg、0.650mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(1.0mL)中溶液を添加した。反応混合物を50℃で2時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、次いで、水(10mL)の添加によってクエンチした。生成物を酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、フィルタにかけ、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル、1:0~1:2)によって精製し、ラセミ体の標記化合物(69mg、23%)を淡黄色固体として得た。SFC(Daicel Chiralcel OJ、10μm、250×30mm、メタノール中0.1% NH4OH、CO2中50%)によるキラル分離によって、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(32mg、11%)を淡黄色固体として得た。MS:528.1([{79Br,79Br,35Cl}M+H]+),530.1([{79Br,79Br,37Clまたは79Br,81Br,35Cl}M+H]+),532.1([{81Br,81Br,35Clまたは79Br,81Br,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0228】
実施例24
8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化41】
【0229】
a)8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-2,5-ジヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例21bの実験と同様に、8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例22、28mg、0.061mmol)を標記化合物(25mg、89%)に変換し、黄色固体として得た。MS:466.2([{35Cl,35Cl}M+H]+),468.2([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0230】
b)8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
8,9-ジクロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-2,5-ジヒドロ-1H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(27mg、0.058mmol)のジクロロメタン(10mL)中溶液に、二酸化マンガン(36.0mg、0.41mmol)を添加した。反応混合物を50℃で1時間撹拌した後、celiteプラグを通して直接フィルタにかけた。濾過ケーキをジクロロメタン(20mL)ですすぎ、濾液を減圧濃縮した。残渣を分取HPLC(Phenomenex Synergi C18、10μm、150×25mm、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)によって精製して、標記化合物(7mg、26%)を淡黄色固体として得た。MS:464.2([{35Cl,35Cl}M+H]+),466.2([{35Cl,37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0231】
実施例25
8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化42】
【0232】
a)6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-ヨード-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(構成要素H、203mg、0.469mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)中溶液に、ヨード銅(iodocopper、178mg、0.938mmol)、メチル2,2-ジフルオロ-2-フルオロスルホニル-アセテート(225mg、1.17mmol)および(1R,2R)-N,N-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン(133mg、0.938mmol)を添加した。反応混合物を70℃に16時間加熱した後、酢酸エチル(30mL)で希釈した。得られた懸濁液をceliteプラグを通して直接フィルタにかけた。濾過ケーキを酢酸エチル(20mL)ですすぎ、濾液を水(20mL)および食塩水(20mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、減圧濃縮した。未精製の生成物を分取HPLC(Phenomenex Synergi C18、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)によって精製して、標記化合物(120mg、69%)を暗赤色油状物として得た。MS:375.0([M+H]+),ESI pos.
【0233】
b)6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン
実験4aと同様に、6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(1.80g、4.80mmol)を淡黄色固体として標記化合物(1.50g、80%)に変換した。MS:391.0([{35Cl}M+H]+),393.0([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0234】
c)6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-(トリフルオロメチル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン
実験4bと同様に、6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-(トリフルオロメチル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン(600mg、1.54mmol)を標記化合物(500mg、87%)に変換し、これを白色固体として得た。MS:374.0([{35Cl}M+H]+),376.1([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0235】
d)8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実験1cと同様に、6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-(トリフルオロメチル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン(600mg、1.61mmol)を標記化合物(420mg、61%)に変換し、これを淡黄色固体として得た。MS:426.0([{35Cl}M+H]+),428.0([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0236】
e)2-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実験5と同様に、8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(520mg、1.22mmol)を標記化合物(195mg、32%)に変換し、これを研和および石油エーテルからの濾過後に白色固体として得た。MS:503.8([{79Br,35Cl}M+H]+),505.8([{79Br,37Clまたは81Br,35Cl} M+H]+),ESI pos.
【0237】
f)8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例20aの実験と同様に、2-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(195mg、386mmol)を標記化合物(5.1mg、3%)に変換し、これを分取HPLC(Phenomenex Synergi C18、10μm、150×25mm、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)による精製後に白色固体として得た。MS:496.1([{35Cl}M+H]+),498.1([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0238】
実施例26
8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化43】
【0239】
8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2-エトキシエチル)-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例11bの実験と同様に、8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-[(E)-2-エトキシビニル]-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オンを標記化合物(4.5mg、6%)に変換し、これを分取HPLC(Phenomenex Gemini-NX C18、3μm、75×30mm、水中0.225%ギ酸/アセトニトリル)、続いて分取TLC(DCM/メタノール/酢酸エチル20:1:4)による精製後に白色固体として得た。MS:498.1([{35Cl}M+H]+),500.1([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0240】
実施例27
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-N,5-ジメチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボキサミド
【化44】
【0241】
a)メチル8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボキシレート
2-ブロモ-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン(実施例9a、1.56g、3.01mmol)のメタノールおよびN,N-ジメチルホルムアミド(70mL)の1:1混合物の溶液に、酢酸パラジウム(II)(405mg、1.80mmol)および1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(1.00g、1.80mmol)を添加した。混合物をCO雰囲気下にて70℃に16時間加熱した。混合物を別のバッチ(1.64g、3.16mmol)と合わせ、焼結漏斗でフィルタにかけ、次いで、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル1:1およびジクロロメタン/メタノール50:1~20:1)、続いて分取HPLC(Phenomenex Luna C18、15μm、250×70mm、水中0.225%ギ酸/アセトニトリル)によって精製した。標記化合物を含む画分を合わせ、酢酸エチルで抽出した。有機相を食塩水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、フィルタにかけ、減圧濃縮して、標記化合物(2.50g、81%)を赤色固体として得た。MS:498.0([{35Cl}M+H]+),500.0([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0242】
b)8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボン酸
メチル8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボキシレート(2.5g、5.02mmol)およびヨウ化リチウム(1.45g、10.8mmol)の酢酸エチル(20mL)中溶液を70℃で6時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、次いで、減圧濃縮した。残渣を飽和NaHCO3水溶液(30mL)で希釈し、酢酸エチル(2×30mL)で抽出した。水層を分離し、次いで、1.0m HCl水溶液でpH4.0に慎重に酸性化した後、ジクロロメタン(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層(CH2Cl2)を乾燥させ(MgSO4)、フィルタにかけ、減圧濃縮して、標記化合物(1.10g、45%)を赤色固体として得た。MS:484.2([{35Cl}M+H]+),486.2([{37Cl}M+H]+),ESI pos.この物質をさらに精製することなく次の工程で使用した。
【0243】
c)(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-N,5-ジメチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボキサミド
メチルアミン塩酸塩(17.4mg、0.260mmol)および1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(147mg、0.390mmol)の無水N,N-ジメチルホルムアミド(2mL)中混合物を20℃で撹拌した。30分後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.13mL、0.77mmol)および8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボン酸(150mg、0.310mmol)を添加した。反応混合物を20℃で1時間撹拌し、次いで、分取HPLC(Phenomenex Gemini-NX C18、3μm、75×30mm、水中0.225%ギ酸/アセトニトリル)によって直接精製して、ラセミ体の標記化合物(54 mg、35%)を得た。SFC(DaicelChiralcelOJ-H、5μm、250×30mm、イソプロパノール中0.1% NH4OH、2中30%)によるキラル分離によって、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(11mg、7%)を白色固体として得た。MS:497.2([{35Cl}M+H]+),499.2([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0244】
実施例28
(5S)-8-クロロ-N-シクロプロピル-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボキサミド
【化45】
【0245】
(5S)-8-クロロ-N-シクロプロピル-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボキサミド
実施例27cの実験と同様に、メチルアミン塩酸塩に代え、シクロプロピルアミンを使用して、8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-3-オキソ-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-2-カルボン酸を、ラセミ体の標記化合物(40mg、25%)に変換し、これを分取HPLC(Phenomenex Gemini-NX C18、3μm、75×30mm、水中0.225%ギ酸/アセトニトリル)、続いて第2の分取HPLC(Phenomenex Synergi C18、10μm、150×25mm、水中0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル)および最終分取TLC(酢酸エチル)による精製後に得た。SFC(Daicel Chiralcel OJ、10μm、250×30mm、メタノール中0.1% NH4OH、CO2中30%)によるキラル分離によって、エナンチオピュアな(-)-標記化合物(6mg、4%)を白色固体として得た。MS:523.2([{35Cl}M+H]+),525.2([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0246】
実施例29
(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(ヒドロキシメチル)-5-メチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化46】
【0247】
合計1.8LのFrankia asymbiotica CCOS 1990を、270℃で180rpm(半径5cm)で撹拌しながら、20%体積のMedium84(脱イオン水1L当たり;Bacto Malt Extract 10.0g、Yeast Extract 4.0g、D-(+)-グルコース一水和物4.0g、pH7.0に調整)を充填したバッフルガラス三角フラスコ中で48時間培養した。9mlのDMSOに溶解した81mgの(5S)-8-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-2,5-ジメチル-9-(トリフルオロメチル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オンを添加し、フラスコを上記のようにさらに192時間インキュベートした。180gのNaClをプールされた反応培養液に添加し、次いで、これを等体積の酢酸エチルで2回抽出した。プールした有機相を無水Na2SO4で乾燥させた。乾燥させた有機相を減圧下で蒸発させ、残渣を、50mLの10%v/vアセトニトリル水溶液に再懸濁した。溶液を10gのC18カートリッジにアプライし、これを水中アセトニトリルの段階勾配で溶出した。アセトニトリルの蒸発後、生成物含有画分をプールし、凍結乾燥した。最終精製は分取SFCによるものであり、凍結乾燥後にエナンチオピュアな(-)-標記化合物(6.7mg、98%)を白色粉末として得た。MS 470.1([M+H]+),ESI pos.
【0248】
基準化合物
RE-A
9-クロロ-7-(2-フルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
【化47】
【0249】
a)7-クロロ-5-(2-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオン
7-クロロ-5-(2-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(デスアルキルフルラゼパム、CAS番号2886-65-9、3.00g、10.4mmol)のトルエン(30mL)中溶液に、ローソン試薬(2.10g、5.19mmol)を添加した。混合物を、LC-MSによって判断したときに完全に変換するまで撹拌しながら還流した。混合物に水(30mL)を添加し、続いて2時間撹拌した。反応混合物をフィルタにかけ、減圧濃縮し、残渣をトルエン(25mL)および水(25mL)で分配した。相が分離した。水層をトルエン(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧濃縮した。固体分画を合わせ、標記化合物(3.62g、定量的)を灰白色固体として得た。MS:304.0([{35Cl}M+H]+),306.0([{37Cl}M+H]+),ESI pos.未精製の生成物をさらに精製することなく次の工程でそのまま使用した。
【0250】
b)7-クロロ-5-(2-フルオロフェニル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミン
実施例1bの実験と同様に、7-クロロ-5-(2-フルオロフェニル)-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-チオンを標記化合物(410mg、87%)に変換し、これを淡黄色固体として得た。MS:288.0([{35Cl}M+H]+),290.0([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0251】
c)9-クロロ-7-(2-フルオロフェニル)-5H-ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オン
実施例1cの実験と同様に、7-クロロ-5-(2-フルオロフェニル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-アミンを標記化合物(31mg、18%)に変換し、これを灰白色固体として得た。MS:340.1([{35Cl}M+H]+),342.1([{37Cl}M+H]+),ESI pos.
【0252】
アッセイ手順
γ1含有GABAAサブタイプのための膜調製および結合アッセイ
GABAAγ1サブユニット含有受容体における化合物の親和性を、組成α5β2γ1、α2β2γ1、α1β2γ1のヒト(一過性トランスフェクト)受容体を発現するHEK293F細胞(ThermoFisher R79007)からの膜への[3H]RO7239181(67.3Ci/mmol;Roche)結合に対する競合によって測定した。α2サブユニット含有受容体のより良好なタンパク質発現のために、ヒトGABAAα2サブユニットの28アミノ酸長シグナルペプチド(Met1~Ala28)をヒトGABAAα5サブユニットの31アミノ酸長シグナルペプチド(Met1~Ser31)で置換した。
【0253】
種々のサブタイプのGABAA受容体を発現するHEK293F細胞から収集したペレットを、マンニトール緩衝液pH7.2~7.4(1リットルあたりマンニトール0.29M、トリエチルアミン10mM、酢酸10 mM、EDTA 1mM+プロテアーゼ阻害剤(20 tablets Complete、Roche Diagnosticsカタログ番号05 056 489 001))に再懸濁し、2回洗浄し、次いで、同じ緩衝液に1:10~1:15の希釈で再懸濁した。Parr容器#4637中、435psiで15分間懸濁液を撹拌することによって細胞破壊を行い、次いで懸濁液を1000×gで15分間、4℃で遠心分離した(Beckman Avanti J-HC;ロータJS-4.2)。上清(S1)を2lのSchottフラスコに移し、ペレット(P1)をマンニトールバッファーで175mlまで再懸濁した。再懸濁したペレットを250ml Corning遠心ビーカーに移し、1500×gで10分間、4℃で遠心分離した(Beckman Avanti J-HC;ロータJS-4.2)。次いで、上清(S1)を2lのSchottフラスコに移し、ペレットを廃棄した。上清(S1)を500mlのBeckmanポリプロピレン遠心ビーカー内、15’000×gで4℃で30分間遠心分離した(Beckman Avanti J-20 XP;ロータJLA-10.500)。ペレット(P2)をマンニトール緩衝液に1:1で再懸濁し、-80℃で凍結した。上清(S2)を100mlのBeckmanポリプロピレン遠心管(Beckman Avanti J-20 XP;rotor JA-18)中で、48000xgで50分間、4°Cで遠心分離した。上清(S3)を廃棄し、ペレット(P3)を1:1マンニトールバッファーで再懸濁した。P2およびP3タンパク質濃度を、標準としてウシ血清アルブミンを用いるBIORAD Standardアッセイ法を用いて決定し、NANO-Drop1000で測定した。膜懸濁液をアリコート(500μl/チューブ)にし、必要になるまで-80℃で保存した。
【0254】
膜ホモジネートを再懸濁し、pH7.4のリン酸カリウム10mM、KCl 100mM結合緩衝液中でポリトロン化し(Polytron PT1200E Kinematica AG)、以前の実験で決定した最終アッセイ濃度にした。
【0255】
放射性リガンド結合アッセイを、100μLの細胞膜、1.5nM(α5β2γ1)または20~30nM(α1β2γ1、α2β2γ1)の濃度の[3H]RO7239181、および[0.3~10000]×10-9Mの範囲の試験化合物を含有する200μLの体積(96ウェルプレート)で行った。非特異的結合は、10×10-6(α5β2γ1)および30×10-6MのRO7239181によって定義され、典型的には全結合の5%未満(α5β2γ1)および20%未満(α1β2γ1、α2β2γ1)を表した。アッセイを4℃で1時間平衡までインキュベートし、次いで、膜を、Filtermate 196ハーベスター(Packard BioScience)を用いてユニフィルタ(0.3%ポリエチレンイミン中で20~50分間プレインキュベーションしたGF/Cフィルタが結合した96ウェル白色マイクロプレート)上でフィルタにかけ、冷リン酸カリウム10mM pH 7.4、KCl 100mM結合緩衝液で4回洗浄した。乾燥後、液体シンチレーション計数により、フィルタに保持された放射能を検出した。Ki値は、Excel-Fit(Microsoft)を用いて計算し、2回の測定の平均値である。
【0256】
添付の実施例の化合物を上記アッセイで試験し、好ましい化合物が、100nM以下のGABAAγ1サブユニット含有受容体(例えば、α5β2γ1、α2β2γ1、α1β2γ1)からの[3H]RO7239181の置換に対するKi値を有することが分かった。50未満のKi(nM)を有する化合物が最も好ましい。ヒト(h)受容体を発現するHEK293細胞に対する結合親和性を測定する上記のアッセイによって得られた代表的な試験結果を表1に示す。
【0257】
[
3H]RO7239181、6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-メチル-1-(トリトリチオメチル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オンの調製
【化48】
【0258】
a)6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
マイクロ波管に、7-ブロモ-6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-1、3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(ビルディングブロックA(下記参照)、450mg、1.17mmol)、トリメチルボロキシン(205mg、228μL、1.63mmol)、炭酸カリウム(242mg、1.75mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(67.4mg、58.4μmol)を装入した。脱気した1,4-ジオキサン(8.1mL)およびH2O(2.7ml)を添加し、次いで、バイアルに蓋をした。懸濁液をマイクロ波中130℃で30分間反応させて完全に変換した。混合物を蒸発させ、飽和NaHCO3(20mL)で処理し、EtOAc(2x20mL)で抽出した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、フィルタにかけ、溶媒を蒸発させた。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、40g、CH2Cl2/ヘプタン中EtOAc10%~40%~70%)によって精製し、標記化合物(344mg、92%)を淡黄色固体として得た。MS(ESI):321.1([M+H]+).
【0259】
b)6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-メチル-1-(トリトリチオ(tritritio)メチル)-3H-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン
[3H]メチルノシレート(1.85 GBq、50mCi、0.61μmol)のTHF(200μL)中溶液に、THF(200μL)に溶解したN-デスメチル前駆物質6-クロロ-5-(2,6-ジフルオロフェニル)-7-メチル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(0.43mg、1.34μmol)および10当量のナトリウムtertブチレート(THF中0.5m、13.4μmol)を添加した。室温で4時間撹拌した後、反応混合物をH2Oで処置し、蒸発させ、未精製の生成物をHPLC(X-Terra Prep RP-18、10×150mm、MeCN/H2O(5%のMeCNを含有)40:60、4ml/分、230nm)によって精製した。固相抽出(Sep-Pak Plus C18)によって純粋なトリチウム標識化合物を単離し、エタノール溶液としてカートリッジから溶出し、質量分析(MS)によって決定した場合、放射性化学純度99%超および特異的活性2.49TBq/mmol(67.3 Ci/mmol)の標的化合物1.6GBq(43.2 mCi)を得た。標識化合物の同一性は、HPLC(非標識基準標準を同時注入することによって)およびMSによって確認した。
MS:m/z=335 [M(H)+H]+(16%),337 [M(3H)+H]+(0%),339 [M(3H2)+H]+(16%),341 [M(3H3)+H]+(68%).
【0260】
γ2含有GABAAサブタイプのための膜調製および結合アッセイ
GABAAγ2サブユニット含有受容体における化合物の親和性を、組成α1β3γ2のヒト(一過性トランスフェクトした)受容体を発現するHEK293F細胞への[3H]フルマゼニル(81.1Ci/mmol;Roche)結合についての競合によって測定した。
【0261】
種々のGABAAγ2受容体サブタイプを発現するHEK293F細胞から収集したペレットをマンニトール緩衝液pH7.2-7.4に再懸濁し、GABAAγ1サブユニット含有受容体を発現する細胞について上記のように処理した。
【0262】
放射性リガンド結合アッセイを、100μLの細胞膜、1nM濃度の[3H]フルマゼニルおよび[0.1・10-3-10]×10-6Mの範囲の試験化合物を含有する200μLの体積(96ウェルプレート)で行った。非特異的結合は10-5Mのジアゼパムによって定義され、典型的には全結合の5%未満であった。アッセイは、4℃で1時間平衡にインキュベートし、パッカードハーベスターを使用してフィルタにかけ、氷冷洗浄緩衝液(50mMトリス、pH7.5)で洗浄することにより、GF/Cユニフィルタ(Packard)上に収穫した。乾燥後、液体シンチレーション計数により、フィルタに保持された放射能を検出した。Ki値は、Excel-Fit(Microsoft)を用いて計算し、2回の測定の平均値である。
【0263】
添付の実施例の化合物を上記アッセイで試験し、好ましい化合物は、100nM以上のヒトGABA
A受容体のα1β3γ2サブタイプからの[
3H]フルマゼニルの置換について大きなK
i値を有することがわかった。300を超えるK
iα1β3γ2(nM)を有する化合物が最も好ましい。好ましい実施形態では、本発明の化合物は、γ2サブユニット含有GABA
A受容体と比較して、γ1サブユニット含有GABA
A受容体に選択的に結合する。特に、本発明の化合物は、10倍を超える「K
iα1β3γ2(nM)/K
iα2β2γ1(nM)」として定義されるγ2/γ1選択比、または1を超える「Log[K
iα1β3γ2(nM)/K
iα2β2γ1(nM)]」として定義されるLogSelを有する。ヒト(h)受容体を発現するHEK293細胞に対する結合親和性を測定する上記のアッセイによって得られた代表的な試験結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0264】
GABAA受容体の機能発現;
アフリカツメガエル卵母細胞の調製
成熟段階V-VIのアフリカツメガエルの卵母細胞を、GABAA受容体サブユニットをコードするクローン化されたmRNAの発現に使用した。RNAマイクロインジェクションの準備ができた卵母細胞をドイツ、カシュトロップ・ラウクセルのEcocyteから購入し、実験まで20℃の改変バース培地(組成:NaCl 88mM、KCl 1mM、NaHCO3 2.4mM、HEPES 10mM、MgSO4 0.82mM、CaNO3 0.33mM、CaCl2 0.33mM、pH=7.5)に保存した。
【0265】
アフリカツメガエル卵母細胞マイクロインジェクション
卵母細胞を、Roboinject自動装置(MultiChannelSystems、ドイツ国ロイトリンゲン)を使用するマイクロインジェクションのために96ウェルプレートに蒔いた。所望のGABAA受容体サブタイプのサブユニットのRNA転写物を含有する約50nLの水溶液を各卵母細胞に注射した。RNA濃度は20~200pg/μL/サブユニットの間の範囲であり、パイロット実験で調整して、GABAA受容体ベンゾジアゼピン(BZD)結合部位における参照ベンゾジアゼピンポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)であるフルニトラゼパム、トリアゾラムおよびミダゾラムの適切なサイズおよび最大効果のGABA応答を得た。卵母細胞を実験まで20℃の改変バース培地(組成:NaCl 88mM、KCl 1mM、NaHCO3 4mM、HEPES 10mM、MgSO4 0.82mM、CaNO3 0.33mM、CaCl2 0.33mM、pH=7.5)に保存した。
【0266】
電気生理学
mRNAの微量注射後3~5日目に、Roboocyte機器(MultiChannelSystems、ドイツ国ロイトリンゲン)を使用して電気生理学的実験を行った。実験の間、卵母細胞は常に(mMで)NaCl 90、KCl 1、HEPES 5、MgCl2 1、CaCl2 1(pH7.4)を含む溶液でスーパーフュージョンされた。卵母細胞を、KCl 1M+K-酢酸1.5Mを含む溶液で満たし、-80mVに電圧クランプした2つのガラス微小電極(抵抗:0.5~0.8MΩ)でインピンジした。記録は、ロボサイト二電極電圧クランプシステム(Multichannelsystem)を用いて室温で行った。1.5分GABAの最初の平衡化期間の後、最大電流応答(EC20)の約20%を喚起する濃度で1.5分間添加した。2.5分GABAの別の休息間隔が再び追加された後、同様の振幅と形状の応答を誘発された。この2回目のGABA適用の開始の0.5分後、GABAが依然として存在している間に、そのKiα2β2γ1の約30倍に相当する濃度の試験化合物を添加した。電流トレースは、GABAアプリケーションの間およびその前後に10Hzのデジタル化速度で記録された。
【0267】
各化合物および濃度は、少なくとも3個の卵母細胞で試験した。異なる化合物濃度に対して異なる卵母細胞を使用した。参照PAM、フルニトラゼパム、トリアゾラムおよびミダゾラムは、α2β2γ1 GABAA受容体サブタイプ発現卵母細胞におけるGABA誘導電流をおよそ60%増強した。
【0268】
データ分析
分析のために、第1および第2のGABA応答のデジタル化された電流トレースを重ね合わせ、必要に応じて、等しく最大振幅に再スケーリングした。試験化合物実験の時間間隔中の2つの応答間の比率をポイントごとに計算した。得られた「比率トレース」の極値を、「GABA EC20の%変調」(100*(倍増-1))として表される化合物の有効性(「倍増」)として採用した。
【0269】
【0270】
基準化合物
以下に列挙するベンゾジアゼピン基準化合物(古典的な市販のベンゾジアゼピン)および基準ピリミド[1,2-a][1,4]ベンゾジアゼピン-3-オンを、GABA
A受容体α1β2γ1およびα2β2γ1サブタイプ、ならびにGABA
A受容体α1β3γ2サブタイプに対するそれらの親和性について試験した。結果を表3に示す。
【化49】
【表3】
【0271】
参考例RE-Aの調製について上述のとおりである。
【0272】
本発明の化合物を含む医薬組成物の調製
式(I)の化合物を含む錠剤を以下のように製造する。
【表4】
【0273】
製造手順
1.成分1、2、3および4を混合し、精製水で造粒する。
2.顆粒を50℃で乾燥させる。
3.顆粒を適切な粉砕装置に通す。
4.成分5を添加し、3分間混合し、適切なプレス機で圧縮する。
【0274】
式(I)の化合物を含むカプセルを以下のように製造する。
【表5】
【0275】
製造手順
1.材料1、2、3を適当なミキサーで30分間混合する。
2.材料4および5を加えて3分間混合する。
3.適切なカプセルに充填する。
【0276】
式Iの化合物、乳糖およびコーンスターチを、まずミキサーで混合し、次に粉砕機で混合する。混合物をミキサーに戻し、そこにタルクを加えてまんべんなく混合する。混合物は、機械によって適切なカプセル、例えば硬質ゼラチンカプセルに充填される。
【0277】
式(I)の化合物を含む注射剤を以下のように製造する。
【表6】
【国際調査報告】