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特表2024-534561リチウムイオン電池アノードのプレリチウム化
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  • 特表-リチウムイオン電池アノードのプレリチウム化 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池アノードのプレリチウム化
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240912BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240912BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240912BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/36 B
H01M4/36 E
H01M10/058
H01M10/052
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518278
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 US2022044096
(87)【国際公開番号】W WO2023049102
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/246,937
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594066006
【氏名又は名称】アルベマール コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒンツェ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ワイ・エム
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,シャオガン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イカイ
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017DD05
5H017EE01
5H029AJ14
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL18
5H050AA19
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA03
5H050HA04
(57)【要約】
本発明は、リチウムイオン電池用のアノード材料をプレリチウム化するプロセスを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード材料をプレリチウム化するためのプロセスであって、前記プロセスは、プレリチウム化されたアノード材料を形成するために、電気化学セル内で、アノード材料と基板材料の基板表面とを接触させることを備え、前記基板表面はパターン化されたリチウムを含む、前記プロセス。
【請求項2】
前記アノード材料が、グラファイト、1つまたは複数のシリコン材料、またはグラファイトと1つまたは複数のシリコン材料との混合物である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記パターン化されたリチウムを含む基板表面が、
保護材料、リチウム含有箔、及び基板材料から層状シートを形成することであって、前記保護材料は前記リチウム含有箔の一方の面に接触しており、前記基板材料の基板表面は前記リチウム含有箔の他方の面に接触している、前記形成することと、
前記層状シートをパターニングデバイスに配置し、前記パターニングデバイスにより前記層状シートにパターニングを施し、成形された層状シートを形成し、前記成形された層状シートを前記パターニングデバイスから除去することと、
前記基板材料の前記基板表面から前記保護材料及び前記リチウム含有箔を除去して、パターン化されたリチウムを含む前記基板表面を含む基板材料を得ること、によって調製された、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記リチウム含有箔がリチウム金属箔である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記リチウム含有箔が約30μm~約200μmの厚さを有する、請求項3または4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記層状シートを前記形成することが、真空下または不活性雰囲気中で行われる、請求項3に記載のプロセス。
【請求項7】
前記パターニングデバイスがドットマトリクスパターンを提供する、請求項3~6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
前記保護材料がプラスチックフィルムである、請求項3~7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記プラスチックフィルムがポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムである、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記基板材料が金属箔である、請求項1~9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
前記基板材料が銅箔である、請求項1~9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
アノード材料をプレリチウム化するためのプロセスであって、前記プロセスが、
保護材料、リチウム含有箔、及び基板材料から層状シートを形成することであって、前記保護材料は前記リチウム含有箔の一方の面に接触しており、前記基板材料の基板表面は前記リチウム含有箔の他方の面に接触している、前記形成することと、
前記層状シートをパターニングデバイスに配置し、前記パターニングデバイスにより前記層状シートにパターニングを施し、前記パターニングデバイスから前記層状シートを除去することと、
前記基板材料の前記基板表面から前記保護材料及び前記リチウム含有箔を除去して、パ
ターン化されたリチウムを含む基板表面を含む前記基板材料を得ることと、
プレリチウム化されたアノード材料を形成するために、電気化学セル内で、アノード材料と基板材料の前記基板表面とを接触させることであって、前記基板表面はパターン化されたリチウムを含む、前記接触させること、とを備える、前記プロセス。
【請求項13】
前記リチウム含有箔がリチウム金属箔である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記リチウム含有箔が約30μm~約200μmの厚さを有する、請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記層状シートを前記形成することが、真空下または不活性雰囲気中で行われる、請求項12~14のいずれかに記載のプロセス。
【請求項16】
前記パターニングデバイスがドットマトリクスパターンを提供する、請求項12~15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項17】
前記保護材料がプラスチックフィルムである、請求項12~16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
前記プラスチックフィルムがポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記アノード材料が、グラファイト、1つまたは複数のシリコン材料、またはグラファイトと1つまたは複数のシリコン材料との混合物である、請求項13~18のいずれかに記載のプロセス。
【請求項20】
前記基板材料が金属箔である、請求項1~18のいずれかに記載のプロセス。
【請求項21】
前記基板材料が銅箔である、請求項1~18のいずれかに記載のプロセス。
【請求項22】
アノードの少なくとも一部が、請求項1~2または請求項13~21のいずれかに従って形成されたプレリチウム化されたアノード材料から形成されることを特徴とする、前記アノードを有するリチウム電池を組み立てるためのプロセス。
【請求項23】
アノードの少なくとも一部が、請求項1~2または請求項13~21のいずれかに従って形成されたプレリチウム化されたアノード材料から構成されることを特徴とする、前記アノードを有するリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用のアノード材料をプレリチウム化するための新しいプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、様々な家庭用電化製品に使用されており、電気自動車への採用も増えている。研究者及び開発者は、そのような用途向けのリチウムイオン電池の性能を向上させることに重点を置いている。一部のアノード材料の問題は、電池サイクル中、特に最初の充電/放電サイクル中のリチウムの損失であり、通常、リチウムの損失は不可逆的であり、リチウムの損失が比較的大きくなることもある。グラファイト、シリコン材料、及びグラファイトとシリコン材料の混合物は、リチウムイオン電池のアノード材料として、しばしば使用される。
【0003】
不可逆的な最初のサイクルのリチウム損失は、固体電解質界面層(SEI)の形成におけるリチウムイオンの消費によって引き起こされ得る。この経路によるリチウムの損失を最小限に抑えるために、アノードは多くの場合、プレリチウム化されており、いくつかの技術が開発されている。プレリチウム化されたアノードは、リチウムイオンと炭素ベースまたはシリコンベースのアノード材料とのインターカレーションまたは合金化反応によって形成できる。「直接接触」法または「内部短絡」法と呼ばれる別のプレリチウム化方法は、電解質溶液の存在下でリチウム金属をアノードと直接接触させることを含み、電子を放出してリチウム金属をイオン化し、リチウム金属源としては、リチウム箔またはリチウム粉末がしばしば使用される。
【0004】
直接接触プレリチウム化法では、リチウム箔及びリチウム金属粉末の両方がリチウム源として欠点を有する。薄い(20μm以下)リチウム箔はアノード表面を均一に覆うことができるが、壊れやすく高価である。厚いリチウム箔(50μm以上)はアノードへの過負荷を防ぐために、ストリップに切断する必要があるが、これではアノード表面を均一に覆うことができない。リチウム金属粉末はアノード表面を均一に覆うことができるが、リチウム金属粉末の不動態化層を破壊するために必要な圧力の増加によりアノードが損傷する可能性があり、リチウム金属粉末の高表面積により、電解質との反応速度が高められ、それによって電気化学セルの温度が上昇する可能性がある。
【0005】
したがって、最初の充電/放電サイクル中のリチウムの不可逆的な損失を最小限に抑えるか排除する、リチウムイオン電池のアノードのプレリチウム化のための新しく改良された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、アノード材料のプレリチウム化のためのプロセスを提供する。本明細書に記載のプロセスの利点は、アノード材料上のリチウム担持の制御が可能になることである。本発明によって提供される別の利点は、厚いリチウム箔(50μm以上)を、そのような箔で通常生じる欠点を経験することなく使用できることである。
【0007】
本発明の一実施形態は、アノード材料をプレリチウム化するプロセスである。プロセスは、プレリチウム化されたアノード材料を形成するために、電気化学セル内で、アノード材料と基板材料の基板表面とを接触させることを備え、基板表面はパターン化されたリチウムを含む。
【0008】
本発明の別の実施形態は、パターン化されたリチウムを含む基板表面を調製するためのプロセスである。本プロセスは、
保護材料、リチウム含有箔、及び基板材料から層状シートを形成することであって、保護材料はリチウム含有箔の一方の面に接触しており、基板材料の基板表面はリチウム含有箔の他方の面に接触している、形成することと、
層状シートをパターニングデバイスに配置し、パターニングデバイスにより層状シートにパターニングを施し、パターニングデバイスから層状シートを除去することと、
基板材料の基板表面から保護材料及びリチウム含有箔を除去して、パターン化されたリチウムを含む基板表面を含む基板材料を得ることとを備える。
【0009】
本発明の他の実施形態は、アノード材料をプレリチウム化するプロセスを含み、このプロセスは、パターン化されたリチウムを含む基板表面を含む基板材料を調製することと、プレリチウム化されたアノード材料を形成するために、電気化学セル内で、アノード材料と基板材料の基板表面とを接触させることとを備え、基板表面はパターン化されたリチウムを含む。
【0010】
本発明のこれら及び他の実施形態ならびに特徴は、以下の説明、図面、及び添付の特許請求の範囲からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】保護層、リチウム含有箔、基板材料、及びそれらから形成された層状シートの図形表現である。
図2】同じダイを使用した2つの異なるパターニング圧力による銅箔上のLiの異なる高さを示す、共焦点顕微鏡による2枚の疑似シェーディング顕微鏡写真を示している。
図3A】その上にパターン化されたリチウムを有する銅箔基板の写真である。
図3B】アノード材料のプレリチウム化後の同じ銅箔基板の写真である。
【0012】
図面は、本発明の特定の態様の実施形態を示しており、本発明の範囲に制限を課すことを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
パターン化されたリチウムを含む基板表面を含む基板材料を調製するために、最初のステップは、一般に、保護材料、リチウム含有箔、及び基板材料から層状シートを形成することである。層状シートでは、リチウム含有箔の一方の面に保護材が接触し、リチウム含有箔の他方の面に基材が接触している。層状シートでは、リチウム含有箔は保護材と基材との間の中間層である。これは、保護層2、リチウム含有箔4、基板材料6、及びそれらから形成された層状シート8を示す図1に示されている。基板材料6は、基板材料のパターン化されたリチウムを含む基板表面を形成するために、リチウム含有箔4と接触する基板表面6aを有する。
【0014】
保護材料の目的は、リチウム含有箔がパターニングデバイスの表面に付着するのを防ぐことであり、保護材料は、パターニング条件下で破れない任意の好都合な材料であり得る。典型的には、保護材はポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムなどのプラスチックフィルムである。
【0015】
適切なリチウム含有箔には、リチウム金属箔、及びLiMg箔、LiAl箔、LiAg箔、LiSn箔、及びLiZn箔を含むリチウム合金箔が含まれる。多くの場合、リチウム金属箔が好まれる。
【0016】
リチウム含有箔は、典型的には約30μm~約200μm、より多くの場合には、約40μm~約150μmの範囲の厚さを有する。このパラメータは最適化されていないが、同じパターニング条件下では箔が厚いほど多量のリチウムが転写されることが認識されている。
【0017】
基板材料は、金属箔、及びポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムなどのプラスチックフィルムを含む任意の好都合な材料であり得る。金属箔は好ましい基板材料であり、一般にニッケルまたは銅などの金属から選択される。好ましい金属箔には、銅箔及びニッケル箔が含まれ、銅箔がより好ましい。
【0018】
リチウム含有箔は、水のない状態(例えば、約1.5%以下の湿度)で取り扱うことが推奨されており、好ましい。これは、真空、またはヘリウム、窒素、またはアルゴンなどの不活性雰囲気で実現できる。不活性雰囲気が好ましい。付随的な水の量が存在し得る。層状シートが形成されると、リチウム含有箔は本質的に保護材料層と基板材料層との間に包まれるため、水分を排水する必要はない。
【0019】
層状シートはパターニングデバイス内に配置され、デバイスのパターニング手順に従う。パターニングデバイスには、ダイプレス、自動スタンピングマシン、及びロールプレスがあり、パターンがローラーから層状シートに転写される。
【0020】
リチウムを基板材料に転写するために、様々なパターンを打ち抜くことができる。使用できるパターンの例としては、ドットマトリクス及び平行線などがある。一部のパターンの密度が異なり得る。例えば、ドットマトリクスパターンでは、単位面積あたりのドットの数は変更され得、平行線の場合、パターンの線幅及び/または線間の間隔は異なり得る。パターンのこうした変更は、通常、パターンの変動ごとに異なるパターニング要素(ダイまたはローラー)を使用する必要がある。パターンを変更することは、リチウム含有箔から基板材料に転写されるリチウムの量を変更する1つの方法である。
【0021】
ダイ及びプレスを使用する場合、ダイに圧力を印加するために使用されるプレスの種類は特に重要であると考えられていない。フロアプレスが使用できる。パターニングデバイスがフロアプレスのダイの場合、層状シートをダイに配置し、通常、約1000psi~約3000psi(約6.89MPa~約20.7MPa)の圧力を印加して型抜きし、好ましくは、圧力は約1500psi~約2500psi(約10.3MPa~約17.2MPa)である。このパラメータは最適化されていない。
【0022】
このプロセスにより、成形された層状シートが形成され、パターニングデバイスから除去される。パターニングプロセスは、パターニングデバイスからのパターンで、リチウム(及び合金が使用されている場合は他の金属(複数可)を箔から基板表面に転写する。
【0023】
本書を通じて、リチウム(及び合金の場合は他の金属)は基板材料の表面上に転写され、ただし、転写された金属原子の一部が基板材料の表面の下に存在し得るが、これまでの結果は、転写された金属(複数可)のほとんどが基板材料の表面に残っていることを示していることを理解されたい。転写された金属原子が表面下に浸透する場合、その程度は判明していない。
【0024】
保護層及びリチウム含有箔を除去すると、パターン化されたリチウムを含む基板表面を含む基板材料が得られる。基板材料をリチウム含有箔及び保護材料から一工程で除去することが可能であり得、保護材料及びリチウム含有箔は共に残り、これは、転写されたリチウムの一部が基板材料から除去されることになり得るため、推奨されない。好ましくは、保護層をリチウム含有箔から除去し、その後、リチウム含有箔を基板から除去する。パタ
ーンを選択する際に考慮すべき要素は、パターン化された基板材料からのリチウム含有箔の除去の容易さである。
【0025】
このパターニングプロセスによって得られる利点がある。基板材料に転写されるリチウムの量は、リチウム箔の厚さを変更することによって、及び/またはパターニングデバイスで使用される条件を変更することによって制御することができる。デバイスに供給される層状シートの組成を変えることなく、同じパターニングデバイスを異なる圧力などの異なる条件で使用して、異なる量のリチウムを基板材料に転写することができる。基板材料に転写されるリチウムの量を変える別の方法は、パターニング条件を変更せずに、異なる厚さのリチウム含有箔を含む層状シートをパターニングデバイスに供給することである。リチウム含有箔の厚さ及びパターニングデバイスの条件の両方を変更して、異なるパターニングダイ、ローラー、またはデバイスを使用する必要なく、より広範囲のリチウム量を転写することができる。
【0026】
図2には、異なる量の転写可能なリチウムの図が示されており、これは、銅箔(基板材料)上に転写された異なる高さのリチウムを示す、共焦点顕微鏡による2枚の疑似陰影顕微鏡写真である。図2において、Aの基板材料の基板表面6a上のリチウム10の高さは約10μmであり、Bの基板材料の基板表面6a上のリチウム10の高さは約35μmである。異なる高さは、基板材料の基板表面に転写されたリチウムの量が異なることを示している。
【0027】
転写されるリチウムパターンの高さを制御できるため、同じパターニングデバイス内の同じパターニング要素を用いて、異なる量のリチウムを基板に転写でき、より多くの量またはより少ない量のリチウムを転写するためにパターニング要素(例えば、ダイまたはローラー)を変更する必要がなくなる。いくつかの好ましい実施形態では、例えば、同じダイをより高い圧力で使用することによって、より多くの量のリチウムを転写することができる。他の実施形態では、ダイまたはローラーを、単位面積あたりにより多くのドットを有するドットマトリクスダイなど、より高密度のパターンを有するものに変更することによって、同じ圧力でより多くの量のリチウムを転写することができる。
【0028】
プレリチウム化プロセスでは、アノード材料と、基板材料の基板表面を電気化学セル内で接触させ、その基板表面がパターン化されたリチウムを含み、プレリチウム化されたアノード材料(及び少なくとも部分的に脱リチウム化された基板表面)を形成する。
【0029】
アノード材料は、グラファイト、1つまたは複数のシリコン材料、グラファイトと1つまたは複数のシリコン材料との混合物、様々な金属及び合金を含む、リチウム電池の形成に使用できる任意のアノード材料であり得、これらの合金はリチウム合金であり得る。特にリチウム電池のアノード材料は、多くの場合、グラファイト、またはグラファイトと1つまたは複数のシリコン材料との混合物である。
【0030】
パターン化されたリチウムを含む表面を含む基板材料は、上述のように調製することができる。基板材料及びその好ましいものは上述のとおりである。
【0031】
パターン化されたリチウムを含む基板表面(基板材料のパターン化された側)を、プレリチウム化されるアノード材料と接触させる。通常、材料は接触させた後、電気化学セル内に配置される。接触している材料は、アノード材料をプレリチウム化するのに十分な期間、電気化学セル内に留まり得る。プレリチウム化プロセスは、パターン化されたリチウムを含む基板材料の基板表面を少なくとも部分的に脱リチウム化する。実験室規模では、アノード材料をプレリチウム化するのに必要な時間の長さは約30分~約60分だった。
【0032】
電気化学セル用の液体媒体は、通常、リチウム電池で使用される溶液用の液体媒体を形成する、1つまたは複数の溶媒から構成され、これらの溶媒は、極性及び非プロトン性であり、電気化学的サイクルに対して安定しており、好ましくは低粘度である。これらの溶媒には、通常、非環状炭酸エステル、環状炭酸エステル、エーテル、硫黄含有化合物、及びホウ酸のエステルが含まれる。
【0033】
本発明の実施において電気化学セル用の液体媒体を形成できる溶媒には、エチレンカーボネート(1,3-ジオキソラン-2-オン)、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジオキソラン、ジメトキシエタン(グリム)、テトラヒドロフラン、エチレンサルファイト、1,3-プロピレングリコールホウ酸エステル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、及び前述のうちの任意の2つ以上の混合物が含まれる。
【0034】
好ましい溶媒には、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びそれらの混合物が含まれる。より好ましいのは、特に約20:80~約40:60、より好ましくは約25:75~約35:65のエチレンカーボネート:エチルメチルカーボネートの比率の容積比でのエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物である。
【0035】
本発明の実施で適切なリチウム含有塩には、過塩素酸リチウム、硝酸リチウム、チオシアン酸リチウム、アルミン酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、テトラフルオロアルミン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、ビス(オキソラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、アルキル基が1~6つの炭素原子を有するアルキル炭酸リチウム、メチルスルホン酸リチウム、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム、ペンタフルオロエチルスルホン酸リチウム、ペンタフルオロフェニルスルホン酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、リチウム(エチルスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及び前述のうちの任意の2つ以上の混合物が含まれる。好ましいリチウム含有塩には、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、ジ(フルオロ)(オキソラト)ホウ酸リチウム、及びビス(オキソラト)ホウ酸リチウムが含まれる。
【0036】
電気化学セル用の溶液中のリチウム含有塩の通常の濃度は、約0.1M~約2.5M、好ましくは約0.5M~約2M、より好ましくは約0.75M~約1.75M、さらにより好ましくは約0.95M~約1.5Mの範囲である。複数のリチウム含有塩がリチウム含有電解質を形成する場合、濃度は、電解質溶液中に存在するすべてのリチウム含有塩の総濃度を指す。
【0037】
プレリチウム化ステップ後、接触した材料が電気化学セルから除去され、基板材料がプレリチウム化されたアノード材料から分離される。
【0038】
図3Aは、パターン化された銅箔(パターン化されたリチウムを含む基板表面6aを有する基板材料6)を示し、リチウムが点状に、より薄い色合いの領域10に見えており、図3Bでは、プレリチウム化ステップ後の同じ銅箔(基板表面6aを有する基板材料6)が示されているが、リチウム(より薄い色合いの領域)は観察されない。
【0039】
本発明の別の実施形態は、アノードの少なくとも一部が上述のように作製されたプレリチウム化されたアノード材料から形成されることを特徴とする、アノードを有するリチウ
ム電池を組み立てるためのプロセスである。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態は、アノードの少なくとも一部が上述のように作製されたプレリチウム化されたアノード材料から構成されることを特徴とする、アノードを有するリチウム電池である。
【0041】
本発明に従って調製されたプレリチウム化されたアノード材料から形成されたリチウムイオン電池の初期クーロン効率は、基板材料に転写されるリチウムの量を増加させるために上述のようにパターニングプロセスを変更することによってアノード材料中のリチウムの担持を増加させることによってさらに強化できる。
【実施例
【0042】
以下の実施例は、例示の目的のために提示されるものであり、本発明の範囲に制限を課すことを意図するものではない。
【0043】
実施例1
リチウム含有箔による基板のパターニングでは、すべての実験において、保護層はポリエチレンまたはポリプロピレンフィルムであり、リチウム金属箔の厚さは約127μmであり、基板は銅箔であった。銅箔の上にリチウム金属箔を置き、そのリチウム金属箔の上にポリエチレンまたはポリプロピレンフィルムを置いて層状シートを形成した。層状シートの調製は、湿度約1%の雰囲気中で実行した。
【0044】
この実施例の実行では、ドットマトリクスダイの1つは、直径0.20mm、ドット間の間隔0.69mm、約2.25ドット/cmの先端を有していた。もう一方のドットマトリクスダイは、直径0.20mm、ドット間の間隔0.97mm、約4.5ドット/cmの先端を有していた。各ダイ(カナダ、オンタリオ州、Anchor Danlyのダンリー ダイ セット)を25トンのフロアプレスに取り付けた。層状シートを、ダイが保護層の上にあるように配向してダイセット内に配置し、リチウム金属箔を銅箔に押し込んだ。次いで、圧力を印加した。4.5ドット/cmのダイを使用した実行では、印加された圧力は2000psi(13.8MPa)だった。
【0045】
圧力を解除した後、層状シートをダイから除去し、リチウム金属箔から保護層を剥離し、次いで、銅箔からリチウム金属箔を剥離した。銅箔の目視検査によって、ダイのパターンが銅箔に転写されていることが分かる(図3A参照)。銅箔を走査型電子顕微鏡で観察することにより、銅箔上のパターンの高さを測定することができ、これを表1に報告する。
【表1】
【0046】
実施例2
プレリチウム化は、コインセルで実行された。アノードは直径16mmであり、アノード材料の表面を確実に完全に覆うために、リチウムパターン化された銅箔は直径16mmよりわずかに大きかった。電解質は、エチレンカーボネート:ジエチレンカーボネートの比率が30:70(重量)の1.2M LiPFであり、200μLの容量が使用された。コイン型電池ケースを持って(つまんで)わずかな圧力を印加し、電池を30分間または60分間放置した。
【0047】
30分間または60分間が終了した時点で、セルを分解した。コイン電池のパターン化された銅箔を検査したところ、すべての場合において、目視検査によりリチウム金属が存在しないことが示された。図3は、ドットマトリクスパターンでリチウムがパターン化されたこの実施例で使用される銅箔の1つ(A)、及びプレリチウム化ステップ後の同じ銅箔(B)を示す。プレリチウム化ステップ後の銅箔上にリチウムが存在しないことは、リチウムがアノード材料に転写されてことを示す。
【0048】
実施例3
実施例2からのプレリチウム化されたアノード材料の一部を電池の形成に使用して、Li箔から転写されたリチウムの量を評価した。ハーフセル電池は、プレリチウム化されたグラファイトまたはLiパターン化されたCu箔、ポリプロピレンセパレータ(Celgard、LLC)、及び対電極としてのつや消しLi金属箔から形成された。両方のハーフセル電池の電解質は、エチレンカーボネート:ジエチレンカーボネート=30:70(重量)の比率の1.2M LiPFであり、200μLの容量が使用された。15μAの電流での定電流充電が各電池セルに印加された。Liパターン化されたCu箔を含む電池セルは、0.3mAh/cmの脱リチウム化容量を有し、プレリチウム化されたグラファイトを含む電池セルは、3Vから0.4Vへの開放回路電圧降下及び10mAh/ggraphiteの容量を有した。
【0049】
実施例4
完全な電池セルは、アノード材料に基づき、プレリチウム化ステップで存在するリチウムを無視して、負極:正極(N/P)比率1:1のカソードとしてリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM622)を使用したプレリチウム化されたグラファイトから形成された。電解質は、エチレンカーボネート:ジエチレンカーボネート:30:70(重量)中の1.2M LiPFであった。電池は、1回の電気化学サイクルのCCCV充電を受けた。結果を表2にまとめる。プレリチウム化されたアノードを含む電池で観察された初期クーロン効率の増加は、プレリチウム化が最初の充電/放電サイクルで通常観察される不可逆的なリチウム損失を補償していることを示している。
【表2】
【0050】
本明細書または特許請求の範囲のいずれかの場所で化学名または化学式によって言及される成分は、単数形で言及されるか複数形で言及されるかにかかわらず、化学名または化学型によって言及される別の物質(例えば、別の成分、溶媒など)と接触する前に存在するものとして特定される。得られた混合物または溶液でどのような化学変化、変換、及び
/または反応(もしあれば)が起こるかは問題ではない。なぜなら、そのような変化、変換、及び/または反応は、本開示に従って要求される条件下で特定の成分を一緒にすることの自然な結果であるからである。したがって、成分は、所望の操作を行うことに関連して、または所望の組成物を形成することにおいて一緒にされる成分として特定される。また、たとえ本明細書の特許請求の範囲が、現在形(「含む」、「である」など)で物質、構成要素、及び/または成分に言及する場合があるとしても、その言及は、本開示に従って1種以上の他の物質、構成要素及び/または成分と最初に接触、ブレンドまたは混合される直前に存在していた物質、構成要素または成分を指す。したがって、物質、構成要素、または成分が、本開示に従って化学者の通常の技術で行われる場合、接触、ブレンド、または混合操作の過程での化学反応または化学変化によって元の同一性を失った可能性があるという事実は、実際上問題ではない。
【0051】
本発明は、本明細書に列挙される材料及び/または手順を含んでもよいし、それらからなってもよいし、または本質的にそれらからなってもよい。
【0052】
本明細書で使用される場合、本発明の組成物中のまたは本発明のプロセスで使用される成分の量を修飾する「約」という用語は、例えば、現実世界で濃縮物または使用溶液を製造するために使用される典型的な測定手順及び液体取り扱い手順、これらの手順における不注意による誤り、組成物の製造または方法の実施に使用される成分の製造、供給源、または純度の相違によって起こり得る数値量の変動を指す。約という用語はまた、特定の初期混合物から得られる組成物の異なる平衡条件に起因して異なる量も包含する。「約」という用語で修飾されているか否かにかかわらず、特許請求の範囲にはその量と等価なものが含まれる。
【0053】
明示的に別段の指示がある場合を除き、本明細書で使用される冠詞「a」または「an」は、説明または特許請求の範囲を、その冠詞が指す単一の要素に限定することを意図するものではなく、また限定するものとして解釈されるべきではない。むしろ、本明細書で使用される場合、冠詞「a」または「an」とは、本文に明示的に別段の指示がない限り、1つまたは複数のそのような要素を網羅することを意図している。
【0054】
本発明は、その実施においてかなりの変動の影響を受けやすい。したがって、前述の説明は、本発明を上記に提示された特定の例示に限定することを意図するものではなく、また限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】