(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】18F標識フッ化シリル化合物の調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 51/04 20060101AFI20240912BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240912BHJP
A61K 31/695 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K51/04 200
A61P35/00
A61K31/695
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518309
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 GB2022052432
(87)【国際公開番号】W WO2023047138
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519249930
【氏名又は名称】ブルー アース ダイアグノスティックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ベジョー,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】オズボーン,ナイジェル
(72)【発明者】
【氏名】ブルツェル,アレキサンデル・ヨセフ
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C085HH03
4C085KA07
4C085KA29
4C085KB20
4C085KB56
4C085LL01
4C085LL18
4C086AA04
4C086DA44
4C086HA28
4C086NA20
4C086ZB26
4C086ZC78
(57)【要約】
本発明は、18F標識フッ化シリル化合物を含む溶液の調製方法に関する。本発明の方法によって得られる化合物および組成物は、陽電子放出断層撮影(PET)イメージング剤として有用である可能性がある。本発明の方法によって得られる化合物および組成物は、血管形成またはがんの診断または画像化に有用である可能性がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
18F標識フッ化シリル化合物を含む溶液を調製する方法であって、
a)
18F水溶液を陰イオン交換カートリッジに通すステップ、
b)[2.2.2]-クリプタンド、無機塩基、有機溶媒および水を含む溶液を用いて、前記カートリッジから前記
18Fを溶離するステップ、
c)溶離液を共沸乾燥するステップ、および
d)酢酸と
19Fフッ化シリル結合を有する化合物とを含む溶液を、前記共沸乾燥した溶離液に添加するステップ、
を含み、
前記
18F標識フッ化シリル化合物を含む前記溶液が、少なくとも100mMの濃度の酢酸をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記
18F標識フッ化シリル化合物を含む前記溶液が、0.3mM未満の濃度の非酢酸有機酸種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酢酸と
19Fフッ化シリル結合を有する化合物とを含む前記調製溶液が、非プロトン性溶媒を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記非プロトン性溶媒がDMSO、アセトニトリルもしくはDMF、またはそれらの任意の組合せである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記無機塩基が炭酸カリウムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒がアセトニトリルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
18F標識フッ化シリル化合物を含む前記溶液中の前記酢酸濃度が100~200mMである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
18F標識フッ化シリル化合物を含む前記溶液中の前記酢酸濃度が130~160mMである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記
18F標識フッ化シリル化合物が、式(1a)
【化1】
の化合物であるか、または前記
18F標識フッ化シリル化合物が、式(1b)
【化2】
の化合物であるか、または前記
18F標識フッ化シリル化合物が、式(1c)
【化3】
の化合物であり、
式中、各Xが、独立して、OHまたはO
-であり、
Mが、キレート化カチオンであるか、または存在しない、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記
18F標識フッ化シリル化合物が、式(3a)
【化4】
の化合物であるか、または、前記
18F標識フッ化シリル化合物が、式(3b)
【化5】
の化合物であるか、または前記
18F標識フッ化シリル化合物が、式(3c)
【化6】
の化合物であり、
式中、各Xが、独立して、OHまたはO
-であり、
Mが、キレート化された非放射性カチオンであるか、または存在しない、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
Mが、Sc、Cu、Ga、Y、In、Tb、Ho、Lu、Re、Pb、Bi、Ac、ErおよびThのカチオンから選択される、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
MがGa
3+である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記
18F標識フッ化シリル化合物が、式(5a)
【化7】
の化合物であり、
19Fフッ化シリル結合を有する前記化合物が、式(6a)
【化8】
の化合物である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記陰イオン交換カートリッジが、第4級メチルアンモニウム炭酸塩陰イオン交換カートリッジである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記陰イオン交換カートリッジが、
18F水溶液を添加する前に水で前処理される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
[2.2.2]-クリプタンド、無機塩基、有機溶媒および水を含む前記溶液が、2~10mg/mLの炭酸カリウムおよび15~53mg/mLの[2.2.2]-クリプタンドを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記溶離液がアセトニトリルと共沸乾燥される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ステップd)の酢酸と
19Fフッ化シリル結合を有する化合物とを含む前記溶液が、DMSO中の酢酸の160mM溶液を用いて調製される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
18F標識フッ化シリル化合物、100~200mMの濃度の酢酸を含み、0.3mM以上の濃度の非酢酸有機酸種を含まない液体組成物。
【請求項20】
前記
18F標識フッ化シリル化合物が、式(1a)、(1b)または(1c)
【化9】
の化合物であり、
式中、各Xが、独立して、OHまたはO
-であり、
Mが、キレート化カチオンであるか、または存在しない、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記
18F標識フッ化シリル化合物が、式(3a)、(3b)または(3c)
【化10】
の化合物であり、
式中、各Xが、独立して、OHまたはO
-であり、
Mが、キレート化カチオンであるか、または存在しない、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記
18F標識フッ化シリル化合物が、式(5a)
【化11】
の化合物である、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
血管新生/血管形成の診断または画像化における使用のための、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を含む方法によって調製される組成物。
【請求項24】
がんが前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌または腎細胞癌である、がん診断薬またはイメージング剤としての使用のための、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を含む方法によって調製される組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、18F標識フッ化シリル化合物を含む溶液の調製方法に関する。本発明の方法によって得られる化合物および組成物は、陽電子放出断層撮影(PET)イメージング剤として有用である可能性がある。本発明の方法によって得られる化合物および組成物は、血管形成またはがんの診断または画像化に有用である可能性がある。
【背景技術】
【0002】
前立腺がん
前立腺がん(PCa)は、過去数十年にわたり、男性において最も一般的な悪性疾患であり続け、罹患率が高く、生存率も低い。前立腺がんにおけるその過剰発現により、前立腺特異的膜抗原(PSMA)またはグルタミン酸カルボキシペプチダーゼII(GCP II)は、PCaの放射線内治療および画像化のための高感度放射性標識薬剤の開発のための優れた標的として適格であることが証明された。前立腺特異的膜抗原は細胞外ヒドロラーゼであり、その触媒中心は2つの亜鉛(II)イオンと架橋ヒドロキシド配位子を含む。これは転移性前立腺癌やホルモン抵抗性前立腺癌で高発現するが、その生理学的発現は腎臓、唾液腺、小腸、脳、および低い程度ではあるが健康な前立腺組織でも報告されている。腸では、PSMAはプテロイルポリ-γ-グルタミン酸をプテロイルグルタミン酸(葉酸)に変換することにより、葉酸の吸収を促進する。脳では、N-アセチル-L-アスパルチル-L-グルタミン酸(NAAG)をN-アセチル-L-アスパラギン酸とグルタミン酸に加水分解する。
【0003】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)
前立腺特異的膜抗原(PSMA)はII型膜貫通糖タンパク質で、前立腺がん上皮細胞で過剰発現している。その名前とは裏腹に、PSMAは程度の差こそあれ、前立腺以外の様々ながんの新生血管にも発現している。PSMAの発現を示す最も一般的な非前立腺がんには、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、および腎細胞癌などがある。
【0004】
PSMAターゲティング分子の一般的に必要な構造は、P1’グルタミン酸部分に結合した亜鉛結合基(尿素、ホスフィネート、またはホスホルアミデートなど)を包含する結合ユニットを含み、これによりPSMAに対する高い親和性と特異性が保証され、通常はさらにエフェクター官能基に結合している。エフェクター部分はより柔軟であり、構造の変更に対してある程度寛容である。入り口トンネルには、リガンド結合に重要な他の2つの顕著な構造的特徴がある。一つ目はアルギニンパッチで、入り口漏斗の壁にある正に荷電した領域であり、PSMAのP1位で負に荷電した官能基が好まれることの機構的説明である。これが、リガンド足場内に負に荷電した残基が好んで組み込まれる理由であると思われる。PSMAリガンドにおける正電荷の効果に関する詳細な分析は、本発明者らの知る限り、今のところ行われていない。結合の際、アルギニン側鎖の協調的な再配置は、S1疎水性アクセサリーポケットの開口を引き起こす可能性があり、これはいくつかの尿素ベースの阻害剤のヨード-ベンジル基を収容し、PSMAに対する高い親和性に寄与することが示されている2番目の重要な構造である。
【0005】
Zhangらは、二座結合様式に使用できるPSMAの遠隔結合部位を発見した(Zhangら、Journal of the American Chemical Society 132、12711~12716(2010))。いわゆるアレーン結合部位は、Arg463、Arg511、およびTrp541の側鎖によって形作られる単純な構造モチーフであり、GCPIIの入り口蓋の一部である。アレーン結合部位に遠位の阻害剤部分が結合すると、アビディティ効果によりPSMAに対する阻害剤の親和性が大幅に増加する可能性がある。PSMA I&Tは、このようにPSMAと相互作用することを意図して開発されたが、結合様式の結晶構造解析は行われていない。Zhangらによると、必要な特徴はリンカーユニット(PSMA I&Tの場合はスベリン酸)であり、これによりGCPIIの入り口蓋が開いた構造になり、アレーン結合部位へのアクセスが可能になる。さらに、リンカーの構造組成が、腫瘍標的化および生物活性、ならびにイメージングコントラストおよび薬物動態に重要な影響を及ぼすことが示された(Liuら、Bioorganic & medicinal chemistry letters 21、7013~7016(2011))。この特性は、高い画像品質と効率的な標的内放射線治療の両方に不可欠である。
【0006】
現在、臨床現場では2つのカテゴリーのPSMA標的阻害剤が使用されている。一方は、PSMA I&Tや関連化合物などの放射性核種複錯体形成用のキレートユニットを持つトレーサーである。もう一方には、ターゲティングユニットおよびエフェクター分子を含む低分子がある。
【0007】
18F-rhPSMA-7および18F-rhPSMA-7.3
ラジオハイブリッドPSMAリガンド(rhPSMA)の概念は、2017年にミュンヘンのKlinikum rechts der Isarで初めて導入された(Wurzerら、J. Nucl. Med. 2020;61(5):735~42)。rhPSMAリガンドは、放射性核種、すなわち18F、68Ga、177Luまたはそれらの非放射性対応物で標識するための2つの結合部位を1分子内に提供する。構造式は、同位体交換反応における18F標識のためのフッ化ケイ素アクセプター(SiFA)、(放射性)金属錯体化のためのDOTA-GA-キレーター、および前立腺特異的膜抗原(PSMA)の酵素ポケットに結合するためのGlu-Urea-Glu-(EuE-)ベースの阻害基からなる(Wurzerら、J. Nucl. Med. 2020;61(5):735~42)。18F-rhPSMA-7の場合、DOTA-GA(2-(4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ペンタン二酸)キレーターは非放射性のnatGaを錯体化するが、SiFA-基の低温19Fは標識プロセス中に18Fに置換される。この18F標識PETトレーサーは、68Ga-PSMA-11に比べて合成が速く、半減期が長く、大規模生産、より低い陽電子範囲を可能にするため、前立腺がん患者の画像診断における使用への関心が高まっている(Eiberら、J. Nucl. Med. 2020;61(5):696~701;Ohら、J. Nucl. Med. 2020;61(5):702~9)。
【0008】
選択的PSMAイメージングに使用される他の薬剤には、PSMA HBED-CC、PSMA-617、PSMA I&Tなどがあり、これらは主に68Ga(88.9% β+、Eβ+,max=1.89MeV、t1/2=68分)で標識されている。これらのうち、68Ga-PSMA-HBED-CC(68Ga-PSMA-11としても知られる)がPCaのPETイメージングに好ましい。
【0009】
18F標識
いくつかのグループが、PCa診断のための新規18F標識尿素ベースの阻害剤の開発に注力している。商業的に流通している68Ge/68Ga放射性核種発生装置(68Ge;t1/2=270.8d)から得られる放射性金属68Gaとは対照的に、放射性同位元素である18Fフッ化物(96.7% β+、Eβ+,max=634keV)は、その製造にオンサイトのサイクロトロンを必要とする。この制限にもかかわらず、18Fは半減期が長く(t1/2=109.8分)、陽電子エネルギーが低いため、ルーチン処理と画質の点で大きな利点がある。さらに、サイクロトロンでの大量生産の可能性があり、患者の処理能力の向上と生産コストの削減に有益である。18F標識尿素ベースのPSMA阻害剤18F-DCFPylは、原発性および転移性PCaの検出において有望な結果を示し(Roweら、Molecular Imaging and Biology、1~9(2016))、比較研究において68Ga-PSMA-HBED-CCより優れていることが示された(Dietleinら、Molecular Imaging and Biology 17、575~584(2015))。PSMA-617の構造に基づいて、18F標識アナログPSMA-1007が最近開発され、同等の腫瘍対臓器比を示した(Cardinaleら、Journal of nuclear medicine: official publication, Society of Nuclear Medicine 58、425~431(2017);Gieselら、European journal of nuclear medicine and molecular imaging 43、1929~1930(2016))。68Ga-PSMA-HBED-CCとの比較試験により、両トレーサーの診断精度は同等であり、18F-PSMA-1007の尿中クリアランスが減少し、前立腺のより良好な評価が可能であることが明らかになった(Gieselら、European journal of nuclear medicine and molecular imaging 44、678~688(2017))。
【0010】
18F標識を導入するための魅力的なアプローチは、フッ化ケイ素アクセプター(SIFA)の使用である。フッ化ケイ素アクセプターは、例えばLindnerら、Bioconjugate Chemistry 25、738~749(2014)に記載されている。ケイ素とフッ化物の結合を維持するために、フッ化ケイ素アクセプターを使用すると、ケイ素原子の周囲に立体的に要求される基が必要になる。その結果、フッ化ケイ素アクセプターは疎水性が高くなる。ターゲット分子、特にPSMAであるターゲット分子への結合に関して、フッ化ケイ素アクセプターによって提供される疎水性部分は、Zhangら、Journal of the American Chemical Society 132、12711~12716(2010)に記載されている疎水性ポケットと放射線診断用化合物または放射線治療用化合物の相互作用を確立する目的で利用される可能性がある。しかし、結合する前に、分子に導入されるより高い親油性は、適切なin vivo生体内分布、すなわち非標的組織における非特異的結合が低い放射性医薬品の開発に関して深刻な問題を提起する。
【0011】
WO2020/157177に記載されているような、18F標識フッ化シリル化合物を調製するための以前の方法は、pH調整のためにシュウ酸を使用することに依存している。このような方法で使用されるシュウ酸の量は、放射化学的収率にとって重要なパラメータであると認識されている(EJNMMI Radiopharm Chem. 2021;6(1):4)。シュウ酸を使用する方法では、製品組成物に残留物のシュウ酸が残留する。シュウ酸は現在、医薬品として使用される物質として認められておらず、有毒である可能性がある。さらに、シュウ酸の適切な試験法は現在、欧州薬局方には記載されていない。
【発明の概要】
【0012】
このように、シュウ酸を使用しない、許容可能な放射化学的収率を有する18F標識フッ化シリル化合物およびそのような化合物を含む組成物の調製方法が必要とされている。
発明
本発明は、18F標識フッ化シリル化合物を含む溶液を調製する方法に関する。本発明の方法は、フッ化シリル(SIFA)部分を含む化合物における19Fから18Fへの変換を含む。
【0013】
本発明は、18F標識フッ化シリル化合物を含む溶液を調製する方法であって、
a)18F水溶液を陰イオン交換カートリッジに通すステップ、
b)[2.2.2]-クリプタンド、無機塩基、有機溶媒および水を含む溶液を用いて、カートリッジから18Fを溶離するステップ、
c)溶離液を共沸乾燥するステップ、および
d)酢酸と19Fフッ化シリル結合を有する化合物とを含む溶液を、共沸乾燥した溶離液に添加するステップ、
を含み、
18F標識フッ化シリル化合物を含む前記溶液は、少なくとも100mMの濃度の酢酸をさらに含む、方法を提供する。
【0014】
本発明の方法によって得られる化合物および組成物は、陽電子放出断層撮影(PET)イメージング剤として有用である可能性がある。本発明の方法によって得られる化合物および組成物は、血管形成またはがんの診断または画像化に有用である可能性がある。本発明の方法によって得られる化合物および組成物は、がんが前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌または腎細胞癌である、血管新生/血管形成またはがんの診断または画像化に有用である可能性がある。特に、本発明の方法によって得られる化合物および組成物は、前立腺がんの診断または画像化に有用である可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】異性化(関連化合物Aの生成)および収率に対する酢酸含量の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、18F標識フッ化シリル化合物を含む溶液を調製する方法に関する。本発明の方法は、フッ化シリル(SIFA)部分を含む化合物における19Fから18Fへの変換を含む。
【0017】
本発明は、18F標識フッ化シリル化合物を含む溶液を調製する方法であって、
a)18F水溶液を陰イオン交換カートリッジに通すステップ、
b)[2.2.2]-クリプタンド、無機塩基、有機溶媒および水を含む溶液を用いて、カートリッジから18Fを溶離するステップ、
c)溶離液を共沸乾燥するステップ、および
d)酢酸と19Fフッ化シリル結合を有する化合物とを含む溶液を、共沸乾燥した溶離液に添加するステップ
を含み、
18F標識フッ化シリル化合物を含む前記溶液は、少なくとも100mMの濃度の酢酸をさらに含む、方法を提供する。
【0018】
本明細書に記載の方法では、18F標識フッ化シリル化合物を含む調製溶液は、少なくとも100mMの濃度の酢酸を含み得る。18F標識フッ化シリル化合物を含む調製溶液は、少なくとも130mMの濃度の酢酸を含み得る。18F標識フッ化シリル化合物を含む調製溶液は、100~200mMの濃度の酢酸を含み得る。18F標識フッ化シリル化合物を含む調製溶液は、130~160mMの濃度の酢酸を含み得る。18F標識フッ化シリル化合物を含む溶液中の酢酸の濃度は、100~200mMであってもよい。18F標識フッ化シリル化合物を含む溶液中の酢酸の濃度は、130~160mMであってもよい。18F標識フッ化シリル化合物を含む調製溶液は、2:1~15:1のモル比の酢酸および炭酸塩を含み得る。
【0019】
本明細書に記載の方法では、18F標識フッ化シリル化合物を含む調製溶液はまた、酢酸に対して低濃度の非酢酸有機酸種を含み得る。18F標識フッ化シリル化合物は、1mM未満の濃度の非酢酸有機酸種を含み得る。18F標識フッ化シリル化合物は、0.5mM未満の濃度の非酢酸有機酸種を含み得る。18F標識フッ化シリル化合物は、0.3mM未満の濃度の非酢酸有機酸種を含み得る。18F標識フッ化シリル化合物は、0.1mM未満の濃度の非酢酸有機酸種を含み得る。非酢酸有機酸種は、酢酸以外の任意の有機酸、またはそれぞれの酸の脱プロトン化から生じる酢酸以外の任意の有機アニオンであってもよい。本明細書に記載の方法を用いて調製した溶液中に低濃度で存在し得る非酢酸有機酸種の例としては、例えば、メチレンブタン二酸から生じるメチレンブタン二酸塩が挙げられる。
【0020】
本明細書に記載の方法では、酢酸と19Fフッ化シリル結合を有する化合物とを含む調製溶液は、非プロトン性溶媒を含み得る。酢酸と19Fフッ化シリル結合を有する化合物とを含む調製溶液中に存在する非プロトン性溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリルもしくはジメチルホルムアミド(DMF)、またはそれらの任意の組合せであってもよい。非プロトン性溶媒はDMSOであってもよい。非プロトン性溶媒はアセトニトリルであってもよい。非プロトン溶媒はDMFであってもよい。
【0021】
本明細書に記載の方法では、ステップa)で使用される陰イオン交換カートリッジは、第4級メチルアンモニウム炭酸塩陰イオン交換カートリッジであってもよい。陰イオン交換カートリッジは、例えば、Sep-Pak(登録商標)Accell Plus QMA Carbonateカートリッジであってもよい。陰イオン交換カートリッジは、18F水溶液を添加する前に水で前処理してもよい。
【0022】
本明細書に記載の方法では、ステップb)において、[2.2.2]-クリプタンド、無機塩基、有機溶媒および水を含む溶液を用いて、18Fをカートリッジから溶離する。無機塩基は炭酸カリウムであってもよい。有機溶媒はアセトニトリルであってもよい。[2.2.2]-クリプタンドは、5~60mg/mLの濃度で溶液中に存在し得る。[2.2.2]-クリプタンドは、15~53mg/mLの濃度で溶液中に存在し得る。[2.2.2]-クリプタンドは、10~20mg/mLの濃度で溶液中に存在し得る。[2.2.2]-クリプタンドは、15mg/mLの濃度で溶液中に存在し得る。炭酸カリウムは、2~10mg/mLの濃度で溶液中に存在し得る。炭酸カリウムは、2mg/mLの濃度で溶液中に存在し得る。[2.2.2]-クリプタンド、無機塩基、有機溶媒および水を含む溶液は、2~10mg/mLの炭酸カリウムおよび15~53mg/mLの[2.2.2]-クリプタンドを含み得る。溶液中のアセトニトリル/水の比は、5/1~20/1(v/v)であってもよい。溶液中のアセトニトリル/水の比は、9/1(v/v)であってもよい。ステップb)では、18Fフッ化物はクリプタンドに結合し、それによって溶離液とともにカラムから除去される。
【0023】
[2.2.2]-クリプタンド(K222)は、式N(CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2)3N(以下に構造を示す)の周知のキレート剤であり、カリウム(K+)などのアルカリ金属カチオンに対して高い親和性を有する。
【0024】
【0025】
本明細書に記載の方法では、ステップc)の共沸乾燥は、水と共沸混合物を形成する別の液体を添加することによって溶離液から水を除去するプロセスを含む。これにより、有機溶媒を完全に除去することなく水を除去することができる。水の共沸除去を補助するために、設備、例えば、Dean-Stark装置、蒸留トラップ、または小規模で使用するための同等の機器を使用することができる。
【0026】
本明細書に記載の方法では、ステップd)の酢酸と19Fフッ化シリル結合を有する化合物とを含む溶液は、DMSO中の酢酸の100~200mM溶液を用いて調製されてもよい。ステップd)の酢酸と19Fフッ化シリル結合を有する化合物とを含む溶液は、DMSO中の酢酸の160mM溶液を用いて調製されてもよい。
【0027】
本明細書に記載の方法に従って調製される18F標識フッ化シリル化合物および酢酸を含む溶液は、放射線診断薬またはイメージング剤として投与する前に精製される。前記精製は、疎水性樹脂を含有する固相抽出カートリッジに溶液を通すことを含み得る。疎水性樹脂を含む固相抽出カートリッジは、Sep-Pak(登録商標)Plus Short tC18カートリッジであってもよい。カートリッジは、EtOH、続いてH2Oで前処理されてもよい。18F標識フッ化シリル化合物および酢酸を含む溶液をクエン酸緩衝液(pH5)で希釈し、カートリッジに通した後、クエン酸緩衝液を通すことができる。生成物は、EtOH/水混合物を用いてカートリッジから溶離されてもよい。
【0028】
18F標識フッ化シリル化合物を含む溶液を調製する方法であって、
a)18F水溶液を陰イオン交換カートリッジに通すステップ、
b)[2.2.2]-クリプタンド、炭酸カリウム、アセトニトリルおよび水を含む溶液を用いて、カートリッジから18Fを溶離するステップ、
c)溶離液を共沸乾燥するステップ、および
d)酢酸と19Fフッ化シリル結合を有する化合物とを含む溶液を、共沸乾燥した溶離液に添加するステップ、
を含み、
18F標識フッ化シリル化合物を含む前記溶液は、100~200mMの濃度の酢酸をさらに含む、方法が提供される。
【0029】
18F標識フッ化シリル化合物を含む溶液を調製する方法であって、
a)18F水溶液を陰イオン交換カートリッジに通すステップ、
b)[2.2.2]-クリプタンド、無機塩基、有機溶媒および水を含む溶液を用いて、カートリッジから18Fを溶離するステップ、
c)溶離液を共沸乾燥するステップ、
d)酢酸と19Fフッ化シリル結合を有する化合物とを含む溶液を、共沸乾燥した溶離液に添加するステップ、および
e)18F標識フッ化シリル化合物と酢酸を少なくとも100mMの濃度で含む得られた溶液をクエン酸緩衝液で希釈し、疎水性樹脂を含む固相抽出カートリッジに通すステップ
を含む、方法が提供される。
【0030】
本明細書に記載の方法では、アルカリ性[
18F]フッ化物/K222を酸性前駆体溶液に添加する代わりに、酸性化
19Fフッ化シリル前駆体溶液をアルカリ性[
18F]フッ化物/K222に「逆添加」する必要がある。
図1に示すように、炭酸塩の存在下で
19Fフッ化シリル前駆体と
18F標識フッ化シリル化合物の異性化を防ぐには、より多量の酸が必要である。したがって、使用する酸の量と性質は、本発明の重要な側面である。溶液の「逆添加」を伴う共沸乾燥プロセスを使用するには、塩基性条件下での異性化を最小化するために酢酸含量の最適化が必要であった。
【0031】
本発明はまた、本明細書に記載の方法に従って調製された組成物を提供する。したがって、本発明は、18F標識フッ化シリル化合物、100~200mMの濃度の酢酸を含み、0.3mM以上の濃度の非酢酸有機酸種を含まない液体組成物を提供する。本発明は、18F標識フッ化シリル化合物、130~160mMの濃度の酢酸を含み、0.3mM以上の濃度の非酢酸有機酸種を含まない液体組成物を提供する。
【0032】
本発明は、下記の式(IIIa)、(1a)、(1b)、(1c)、(3a)、(3b)、(3c)または(5a)の18F標識フッ化シリル化合物、100~200mMの濃度の酢酸を含み、0.3mM以上の濃度の非酢酸有機酸種を含まない液体組成物を提供する。本発明は、下記の式(IIIa)、(1a)、(1b)、(1c)、(3a)、(3b)、(3c)または(5a)の18F標識フッ化シリル化合物、130~160mMの濃度の酢酸を含み、0.3mM以上の濃度の非酢酸有機酸種を含まない液体組成物を提供する。
【0033】
本明細書に記載の方法では、「18F標識フッ化シリル化合物」または「19Fフッ化シリル結合を有する化合物」におけるフッ化シリルとは、SiとFとの間に共有結合を有する任意の部分を指す。フッ化シリル(SIFA)部分は、式(10a)
【0034】
【0035】
で表される構造を有し得、
式中、qは0~3である。
フッ化シリル(SIFA)部分は、式(10b)
【0036】
【0037】
で表される構造を有し得る。
本明細書において構造的に表される化合物および部分において、Fは、19Fおよび18Fの両方を包含すると理解される。
【0038】
本明細書に記載の方法では、18/19F標識フッ化シリル化合物は、式(IIIa)
【0039】
【0040】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩であってもよく、式中、
mは2~6の整数であり、
nは、2~6の整数であり、
bは、0~4の整数であり、
cは、0~4の整数であり、
R1Lは、CH2、NHまたはOであり、
R3LはCH2、NHまたはOであり、
R2Lは、CまたはP(OH)であり、
X1は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素架橋、およびアミン結合から選択され、
L1は、オリゴアミド、オリゴエーテル、オリゴチオエーテル、オリゴエステル、オリゴチオエステル、オリゴウレア、オリゴ(エーテル-アミド)、オリゴ(チオエーテル-アミド)、オリゴ(エステル-アミド)、オリゴ(チオエステル-アミド)、オリゴ(ウレア-アミド)、オリゴ(エーテル-チオエーテル)、オリゴ(エーテル-エステル)、オリゴ(エーテル-チオエステル)、オリゴ(エーテル-ウレア)、オリゴ(チオエーテル-エステル)、オリゴ(チオエーテル-チオエステル)、オリゴ(チオエーテル-ウレア)、オリゴ(エステル-チオエステル)、オリゴ(エステル-ウレア)、およびオリゴ(チオエステル-ウレア)から選択される構造を有する2価の連結基であり、L1は、-OH、-OCH3、-COOH、-COOCH3、-NH2、および-NHC(NH)NH2から独立して選択される1つまたは複数の置換基と任意選択で置換され、
X4は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素架橋、アミン結合、式
【0041】
【0042】
の連結基から選択され、式中、
【0043】
【0044】
で示されるアミド結合は、キレート基、および式
【0045】
【0046】
の連結基で形成され、
式中、カルボニル末端の
【0047】
【0048】
で示される結合は、キレート基で形成され、
RCHは、キレート化放射性または非放射性カチオンを任意選択で含むキレート基である。
【0049】
本明細書に記載の方法では、18F標識フッ化シリル化合物は、式(1a)
【0050】
【0051】
の化合物であってもよく、
19Fフッ化シリル結合を有する化合物は、式(2a)
【0052】
【0053】
の化合物であってもよく、
式中、各Xは、独立して、OHまたはO-であり、
Mは、キレート化カチオンであるか、または存在しない。
【0054】
本明細書に記載の方法では、18F標識フッ化シリル化合物は、式(1b)
【0055】
【0056】
の化合物であってもよく、
19Fフッ化シリル結合を有する化合物は、式(2b)
【0057】
【0058】
の化合物であってもよく、
式中、各Xは、独立して、OHまたはO-であり、
Mは、キレート化カチオンであるか、または存在しない。
【0059】
本明細書に記載の方法では、18F標識フッ化シリル化合物は、式(1c)
【0060】
【0061】
の化合物であってもよく、19Fフッ化シリル結合を有する化合物は、式(2c)
【0062】
【0063】
の化合物であってもよく、
式中、各Xは、独立して、OHまたはO-であり、
Mは、キレート化カチオンであるか、または存在しない。
【0064】
本明細書に記載の方法では、18F標識フッ化シリル化合物は、式(3a)
【0065】
【0066】
の化合物であってもよく、19Fフッ化シリル結合を有する化合物は、式(4a)
【0067】
【0068】
の化合物であってもよく、
式中、各Xは、独立して、OHまたはO-であり、
Mは、キレート化された非放射性カチオンであるか、または存在しない。
【0069】
本明細書に記載の方法では、18F標識フッ化シリル化合物は、式(3b)
【0070】
【0071】
の化合物であってもよく、19Fフッ化シリル結合を有する化合物は、式(4b)
【0072】
【0073】
の化合物であってもよく、
式中、各Xは、独立して、OHまたはO-であり、
Mは、キレート化された非放射性カチオンであるか、または存在しない。
【0074】
本明細書に記載の方法では、18F標識フッ化シリル化合物は、式(3c)
【0075】
【0076】
の化合物であってもよく、19Fフッ化シリル結合を有する化合物は、式(4c)
【0077】
【0078】
の化合物であってもよく、
式中、各Xは、独立して、OHまたはO-であり、
Mは、キレート化された非放射性カチオンであるか、または存在しない。
【0079】
上記の式(1a)~(4c)の化合物では、Mは、Sc、Cu、Ga、Y、In、Tb、Ho、Lu、Re、Pb、Bi、Ac、ErおよびThのカチオンから選択されてもよい。Mは、Ga3+であってもよい。
【0080】
本明細書に記載の方法では、18F標識フッ化シリル化合物は、式(5a)
【0081】
【0082】
の化合物であってもよく、19Fフッ化シリル結合を有する化合物は、式(6a)
【0083】
【0084】
の化合物であってもよい。
本発明の方法に従って調製される組成物は、上記の式(IIIa)、(1a)、(1b)、(1c)、(3a)、(3b)、(3c)または(5a)の18F標識化合物のいずれか1つを含み得る。
【0085】
本発明の方法によって得られる化合物および組成物は、陽電子放出断層撮影(PET)イメージング剤として有用である可能性がある。本発明の方法によって得られる化合物および組成物は、血管形成またはがんの診断または画像化に有用である可能性がある。本発明の方法によって得られる化合物および組成物は、がんが前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌または腎細胞癌である場合、血管新生/血管形成またはがんの診断または画像化に有用である可能性がある。特に、本発明の方法によって得られる化合物および組成物は、前立腺がんの診断または画像化に有用である可能性がある。
【実施例】
【0086】
rhPMSA-7、rhPMSA-10および2C013
19F化合物19F-rhPSMA-7.1、19F-rhPSMA-7.2、19F-rhPSMA-7.3、19F-rhPSMA-7.4、19F-rhPSMA-10.1、19F-rhPSMA-10.2および19F-2C013(以下に示す)の合成プロトコールは、WO2019/020831、WO2020/157177、WO2020/157184およびEP21157154.2に提供されている。
rhPMSA-7.1
【0087】
【0088】
rhPMSA-7.2
【0089】
【0090】
rhPMSA-7.3
【0091】
【0092】
rhPMSA-7.4
【0093】
【0094】
rhPMSA-10.1
【0095】
【0096】
rhPMSA-10.2
【0097】
【0098】
2C013
【0099】
【0100】
rhPSMA-7.3の18F-フッ素化
18F-水溶液を、5mLの水で前処理した第4級メチルアンモニウム炭酸塩陰イオン交換カートリッジ(Sep-Pak Accell Plus QMA Carbonate)に通した。18F-をアセトニトリル/水(9/1v/v)中の15mg/mLクリプタンド222および2.0mg/mL炭酸カリウム溶液で溶離した。次に、得られた[18F]フッ化物、クリプタンドおよび炭酸カリウム溶液を約100℃で加熱して共沸乾燥した。放射性標識の前に、DMSO中の酢酸の160mM溶液を用いて0.27μmolのrhPSMA-7.3を溶解した。得られたrhPSMA-7.3溶液を共沸乾燥した[18F]フッ化物に加え、反応混合物を室温で5分間インキュベートした。精製には、5mLのEtOH、次いで10mLのH2Oで前処理した疎水性樹脂(Sep-Pak Plus Short tC18カートリッジ)を含む固相抽出カートリッジを使用した。標識混合物を5mLのクエン酸緩衝液(pH5)で希釈し、カートリッジに通した後、24mLのクエン酸緩衝液を通した。18F-rhPSMA-7.3は、EtOHと水の1:1混合液(v/v)3mLで溶離した。
【0101】
以前のプロセスでは、シュウ酸を使用し、アルカリ性[18F]フッ化物/K222のオンカートリッジ乾燥によるシュウ酸含量が、rhPSMA-7.3および類似のシリコン-フッ素アクセプターによる放射性核種の取り込みに与える影響を評価した(Kostikov, A. P.ら、Bioconjugate Chem. 2012、23、106~114)。90μmolの水酸化カリウムに対して約30μmolのシュウ酸(酸塩基モル比約0.6:1)を用いると、18F-放射性標識が最大となった(Wurzer, A.ら、EJNMMI radiopharm. chem. 6、4(2021))。
【0102】
シュウ酸は限られた量で使用されているが、有毒である可能性がある。したがって、シュウ酸を非経口投与用の一般的な賦形剤である酢酸に置き換えるためのさらなる開発が行われた。そこで、シュウ酸(ジカルボン酸、30μmol)を2モル当量の酢酸(モノカルボン酸、60μmol)に置き換えると、Scintomics GRP合成モジュールを用いて18F-rhPSMA-7.3が順調に得られることが示された。
【0103】
[
18F]フッ化物の共沸乾燥を伴うプロセスの実施には、逆添加、すなわち、酸性前駆体溶液にアルカリ性[
18F]フッ化物/K222を添加する代わりに、アルカリ性[
18F]フッ化物/K222に酸性化前駆体溶液を添加する必要がある。
図1に示すように、炭酸塩の存在下で
18F-rhPSMA-7.3または
19F-rhPSMA-7.3が以下に示す関連化合物Aに異性化するのを防ぐためには、より多量の酸が必要であった。放射性標識変換の減少も酸含量の増加とともに観察された。各プロセスで最適化された酢酸量を表1に示す。
【0104】
【0105】
【国際調査報告】