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特表2024-534568中空シリカゾル、その調製方法、塗料組成物および製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】中空シリカゾル、その調製方法、塗料組成物および製品
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/141 20060101AFI20240912BHJP
   C01B 33/145 20060101ALI20240912BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240912BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C01B33/141
C01B33/145
C09D7/61
C09D201/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518354
(86)(22)【出願日】2023-04-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 CN2023090053
(87)【国際公開番号】W WO2024001464
(87)【国際公開日】2024-01-04
(31)【優先権主張番号】202210773132.2
(32)【優先日】2022-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524106864
【氏名又は名称】ニンボー ディラト マテリアルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NINGBO DILATO MATERIALS CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No. 888, Zhongpu Road, Ningbo Petrochemical Economic Development Zone, Lupu Town, Zhenhai District, Ningbo, Zhejiang, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ ヨンリャン
(72)【発明者】
【氏名】チュー シャオミン
【テーマコード(参考)】
4G072
4J038
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA28
4G072BB05
4G072BB16
4G072CC01
4G072CC02
4G072DD06
4G072EE01
4G072EE06
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH30
4G072JJ14
4G072JJ23
4G072JJ38
4G072JJ47
4G072LL06
4G072LL11
4G072MM01
4G072MM02
4G072PP11
4G072PP14
4G072RR05
4G072RR12
4G072RR19
4G072TT01
4G072TT09
4G072UU09
4J038FA111
4J038HA446
4J038KA06
4J038KA21
4J038MA14
4J038NA19
4J038PA17
(57)【要約】
本願は、中空シリカゾル、その調製方法、塗料組成物および製品に関する。本願に係る中空シリカゾルは、中空シリカ粒子と分散媒とを含有し、中空シリカ粒子の、29Si核磁気共鳴分光法によって測定されるピークに対応するケミカルシフトが-78~-88ppmである共鳴ピーク面積Q1、ケミカルシフトが-88~-98ppmである共鳴ピーク面積Q2、ケミカルシフトが-98~-108ppmである共鳴ピーク面積Q3およびケミカルシフトが-108~-117ppmである共鳴ピーク面積Q4は、Q1/(Q1+Q2+Q3+Q4)が実質的に0、Q2/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.01~0.2、Q3/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.01~0.6、およびQ4/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.2~0.98であることを満たし、分散媒は水、有機溶媒または両者の組み合わせである。本願に係る中空シリカゾルは、粘度が低く、安定性に優れ、基材上に塗層を形成する場合に硬度が高く、耐摩耗性に優れ、基材との密着性が向上する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空シリカ粒子と分散媒とを含有し、
前記中空シリカ粒子は、29Si核磁気共鳴分光法によって測定されるピークに対応するケミカルシフトが-78~-88ppmである共鳴ピーク面積Q1、ケミカルシフトが-88~-98ppmである共鳴ピーク面積Q2、ケミカルシフトが-98~-108ppmである共鳴ピーク面積Q3、およびケミカルシフトが-108~-117ppmである共鳴ピーク面積Q4が以下の条件を満たし、
Q1/(Q1+Q2+Q3+Q4)が実質的に0、
Q2/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.01~0.2、
Q3/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.01~0.6、および
Q4/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.2~0.98、
前記分散媒は、水、有機溶媒または両者の組み合わせであることを特徴とする、中空シリカゾル。
【請求項2】
前記中空シリカ粒子は、シェル層の厚さが3~100nmであり、前記シェル層上の孔の孔径分布が0.5~4ナノメートルの範囲である、請求項1に記載の中空シリカゾル。
【請求項3】
前記中空シリカ粒子は、細孔容積が0.15~1cm/gであり、空孔率が10%~90%であり、屈折率が1.10~1.45である、請求項1または2に記載の中空シリカゾル。
【請求項4】
前記中空シリカ粒子は、比誘電率が1.6~2.2である、請求項1~3のいずれか1項に記載の中空シリカゾル。
【請求項5】
前記中空シリカ粒子は、動的光散乱法によって測定される粒子径が15~1000nmであり、多分散性指数が0.05~0.3である、請求項1~4のいずれか1項に記載の中空シリカゾル。
【請求項6】
ケイ素源、第1の溶媒、第1の触媒および活性化合物を混合し、0℃~150℃範囲内で反応させ、次に沸点300℃未満のものを除去して液体状のシリコーン中間生成物P1を得る中間生成物生成工程と、
前記シリコーン中間生成物P1を第2の溶媒に分散し、かつ第2の触媒を添加し、0℃~95℃の範囲内で反応させて中空シリカゾルを得る中空シリカ生成工程と、
30℃~300℃の範囲内で水熱処理を行う水熱処理工程と
を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【請求項7】
前記中間生成物生成工程において、前記ケイ素源は、下記式Iで示されるシランモノマーから選ばれる1種または2種以上である、または実験式が下記式IIで示されるポリアルコキシシロキサンオリゴマーである、請求項6に記載の中空シリカゾルの調製方法。
4-nSi(OR 式I
(式中、nは、1、2、3または4であり、
は、アルキル基、ビニルアルキル基、ビニル基、エポキシアルキル基、フェニル基、スチリルアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリロキシアルキル基、アミノアルキル基、ウレタン基、クロロアルキル基、メルカプトアルキル基、イソシアナトアルキル基、またはヒドロキシアルキル基であり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
SiO(OR4-2m 式II
(式中、0<m<2、mは、整数または非整数であり、
は炭素原子数1~6のアルキル基であり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項8】
前記中間生成物生成工程において、前記第1の溶媒は、水、または水を含有する有機溶媒であり、水と前記ケイ素源との重量比が0.001:1以上かつ0.5:1未満である、請求項6または7に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【請求項9】
前記中間生成物生成工程において、前記第1の触媒は、酸または塩基であり、前記第1の触媒と前記ケイ素源との重量比が(0.001~0.5):1である、請求項6~8のいずれか1項に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【請求項10】
前記中間生成物生成工程において、前記活性化合物は、少なくとも1つのOH基を含有し、かつ分子量が150を超え、下記式IIIによって算出される前記活性化合物のHLB値が5を超え、
前記活性化合物と前記ケイ素源との重量比は、(0.05~0.5):1であり、前記活性化合物は、1種または2種以上の混合物である、請求項6~9のいずれの1項に記載の中空シリカゾルの調製方法。
HLB=20×M/M 式III
(式中、Mは、前記活性化合物における親水部分の分子量であり、Mは、前記活性化合物の分子量である。)
【請求項11】
前記中空シリカ生成工程において、前記第2の溶媒は、水、水と親水性有機溶媒との混合物、または、水と疎水性有機溶媒との混合物であり、
前記第2の触媒は、酸または塩基であり、
前記第2の溶媒に対する前記シリコーン中間生成物P1の重量百分率は、1~60%であり、
前記第2の触媒と前記シリコーン中間生成物P1との重量比は、(0.05~2):1である、請求項6~10のいずれか1項に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【請求項12】
前記中空シリカゾルの溶媒を置換する溶媒置換工程をさらに含み、
前記溶媒置換工程において、遠心分離、加熱共沸または限外濾過処理によって前記中空シリカゾルにおける溶媒の全部または一部を置換する、請求項6~11のいずれか1項に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【請求項13】
中空シリカゾルに、下記式IVで示されるシランおよび/またはその部分加水分解物、ヘキサメチルジシロキサンおよびヘキサメチルジシラザンからなる群から選ばれる1種または複数種を添加して中空シリカ粒子の表面を修飾する表面修飾工程をさらに含み、
前記表面修飾工程は、前記中空シリカ生成工程の後および/または前記水熱処理工程の後に行われる、請求項6~11のいずれか1項に記載の中空シリカゾルの調製方法。
-Si-X4-p 式IV
(式中、pは、0、1、2または3であり、
は、アルキル基、ビニルアルキル基、エポキシアルキル基、スチリルアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリロキシアルキル基、アミノアルキル基、ウレタン基、クロロアルキル基、メルカプトアルキル基、イソシアナトアルキル基、または、ヒドロキシアルキル基から選ばれるものであり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rにおける水素原子の全部または一部は、フッ素原子に置換されていてもよく、
Xは、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ハロゲンまたは水素から選ばれるものであり、Xが複数ある場合、各Xは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項14】
中空シリカゾルに、下記式IVで示されるシランおよび/またはその部分加水分解物、ヘキサメチルジシロキサンおよびヘキサメチルジシラザンからなる群から選ばれる1種または複数種を添加して中空シリカ粒子表面を修飾する表面修飾工程をさらに含み、
前記表面修飾工程は、前記中空シリカ生成工程の後、および/または、前記水熱処理工程の後、および/または、前記溶媒置換工程の後に行われる、請求項12に記載の中空シリカゾルの調製方法。
-Si-X4-p 式IV
(式中、pは、0、1、2または3であり、
は、アルキル基、ビニルアルキル基、エポキシアルキル基、スチリルアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリロキシアルキル基、アミノアルキル基、ウレタン基、クロロアルキル基、メルカプトアルキル基、イソシアナトアルキル基またはヒドロキシアルキル基から選ばれ、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rにおける水素原子の全部または一部は、フッ素原子に置換されていてもよく、
Xは、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ハロゲンまたは水素から選ばれるものであり、Xが複数ある場合、各Xは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項15】
前記表面修飾工程の後、再び前記水熱処理工程または/および前記溶媒置換工程を行う、請求項14に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【請求項16】
中空シリカゾルおよび接着剤を含む塗料組成物であって、前記中空シリカゾルは、請求項1~5のいずれか1項に記載のゾル、または、請求項6~15のいずれか1項に記載の中空シリカゾルの調製方法によって調製されるものである、塗料組成物。
【請求項17】
基材の表面に塗層を有し、前記塗層は、1層または2層以上であり、前記塗層の少なくとも1層は、請求項16に記載の塗料組成物を硬化してなることを特徴とする、製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2022年7月1日に出願された発明の名称が「中空シリカゾル、その調製方法、塗料組成物および製品」である中国特許出願第202210773132.2号の優先権を主張するものであり、当該出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、中空シリカゾル、その調製方法、塗料組成物および製品に関する。
【背景技術】
【0003】
中空シリカ粒子は、高空孔率、低屈折率、低誘電率、生体非毒性などの特徴を有するため、軽量化、低屈折率材料、反射防止膜、半導体材料および活性分子の担持や徐放などの分野で広く使用されている。
【0004】
低屈折率材料、反射防止膜などの応用分野において、中空シリカ粒子は、サイズが一般的に数十から数百ナノメートルの間であるものが要求され、粒子サイズが大きすぎると光学的透明性が低下し、実用的でない。また、粒子自体の大きさに加えて、使用中の凝集を起こさず分散安定性が良好であることが要求され、安定した分散性を有するゲルは、後の使用を容易にし、粉末粒子の使用に伴う分散困難を回避できる。
【0005】
CN110128855Aには、シランモノマーの水中の加水分解および縮合を利用して両親媒性ポリアルコキシシロキサンを調製し、これの水性媒体中での自己組織化挙動を利用して中空シリカ粒子を調製する中空シリカ粒子の調製方法が本発明者により開示されている。本中空シリカ粒子は、分散性に優れ、サイズ制御が可能であり、反射防止分野で好適に用いられる。しかしながら、本中空粒子を用いて反射防止膜を作製する場合、塗層の硬度が低く、全光線透過率が悪く、反射率が高く、また、耐湿熱性が悪く、密着性が不十分で、耐摩耗性が悪いなどの問題がある。また、本中空シリカ粒子を用いて調製したゾルは、粘度が高く、安定性が悪く、保存に耐えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】CN110128855A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上述した従来技術に存在する問題点に鑑み、鋭意検討した結果、中空シリカゾルに含まれる中空シリカ粒子の表面欠陥が当該粒子を用いて得られる塗層の硬度を低下させ、耐摩耗性に劣ることを見出した。また、表面欠陥の原因において中空粒子は、内部の空洞が接着剤、溶媒などで充填されやすく、反射防止膜とするときの屈折率低下が目立たず、反射防止性が悪くなり、さらに耐湿熱性が悪くなるなどの問題もある。また、表面欠陥の存在は、粒子表面に水酸基が豊富に含まれていることを示し、ゾルとして保存する場合に不安定で、粘度が大きく、ゲル化しやすいなどの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、粘度が低く、安定性に優れ、基材上に塗層を形成する場合に硬度が高く、耐摩耗性に優れ、基材との密着性が向上する中空シリカゾルを提供することを目的とする。また、反射防止層としての透明な塗層を形成する場合には、屈折率が低く、反射防止性が向上し、耐湿熱性が向上する。
【0009】
また、本発明は、中空シリカゾルの調製方法を提供することを目的とし、この調製方法によって調製される中空シリカゾルは、粘度が低く、安定性が向上し、基材上に塗層を形成する場合に硬度や耐摩耗性が向上し、基材との密着力が向上する。また、透明な反射防止層を形成する場合には、屈折率が低下し、反射防止性が向上し、耐湿熱性が向上する。
【0010】
さらに、本発明は、本発明の中空シリカゾルまたは上述した本発明の中空シリカゾルの調製方法によって調製される中空シリカゾルと、接着剤とを含有する塗料組成物を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、基材の表面に本発明に係る塗料組成物を硬化してなる塗層を有する製品を提供することを目的とする。この塗層は、硬度が高く、耐摩耗性に優れ、基材との密着力が向上する。また、反射防止層としての透明な塗層を形成する場合には、屈折率が低く、反射防止性が向上し、耐湿熱性が向上する。
【0012】
本発明は、下記実施形態を提供する。
【0013】
[1]中空シリカ粒子と分散媒とを含有し、
前記中空シリカ粒子は、29Si核磁気共鳴分光法によって測定されるピークに対応するケミカルシフトが-78~-88ppmである共鳴ピーク面積Q1、ケミカルシフトが-88~-98ppmである共鳴ピーク面積Q2、ケミカルシフトが-98~-108ppmである共鳴ピーク面積Q3、および、ケミカルシフトが-108~-117ppmである共鳴ピーク面積Q4が以下の条件を満たし、
Q1/(Q1+Q2+Q3+Q4)が実質的に0、
Q2/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.01~0.2、
Q3/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.01~0.6、および
Q4/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.2~0.98、
前記分散媒は、水、有機溶媒または両者の組み合わせである、中空シリカゾル。
【0014】
[2]前記中空シリカ粒子は、シェル層の厚さが3~100nmであり、前記シェル層上の孔の孔径分布が0.5~4ナノメートル範囲である、[1]に記載の中空シリカゾル。
【0015】
[3]前記中空シリカ粒子は、細孔容積が0.15~1cm/gであり、空孔率が10%~90%であり、屈折率が1.10~1.45である、[1]または[2]に記載の中空シリカゾル。
【0016】
[4]前記中空シリカ粒子は、比誘電率が1.6~2.2である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の中空シリカゾル。
【0017】
[5]前記中空シリカ粒子は、動的光散乱法によって測定される粒子径が15~1000nmであり、多分散性指数が0.05~0.3である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の中空シリカゾル。
【0018】
[6]ケイ素源、第1の溶媒、第1の触媒および活性化合物を混合し、0~150℃範囲内で反応させ、そして沸点300℃未満のものを除去して液体状のシリコーン中間生成物P1を得る中間生成物生成工程と、
前記シリコーン中間生成物P1を第2の溶媒に分散し、かつ第2の触媒を添加し、0~95℃の範囲内で反応させて中空シリカゾルを得る中空シリカ生成工程と、
30~300℃範囲内で水熱処理を行う水熱処理工程と
を含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【0019】
[7]前記中間生成物生成工程において、前記ケイ素源は、下記式Iで示されるシランモノマーから選ばれる1種または2種以上であり、または、実験式が下記式IIで示されるポリアルコキシシロキサンオリゴマーである、[6]に記載の中空シリカゾルの調製方法。
4-nSi(OR 式I
(式中、nは、1、2、3または4であり、
は、アルキル基、ビニルアルキル基、ビニル基、エポキシアルキル基、フェニル基、スチリルアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリロキシアルキル基、アミノアルキル基、ウレタン基、クロロアルキル基、メルカプトアルキル基、イソシアナトアルキル基またはヒドロキシアルキル基であり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、
は炭素原子数1~6のアルキル基であり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
SiO(OR4-2m 式II
(式中、0<m<2、mは、整数または非整数であり、
は炭素原子数1~6のアルキル基であり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0020】
[8]前記中間生成物生成工程において、前記第1の溶媒は、水、または水を含有する有機溶媒であり、水と前記ケイ素源との重量比が0.001:1以上かつ0.5:1未満である、[6]または[7]に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【0021】
[9]前記中間生成物生成工程において、前記第1の触媒は、酸または塩基であり、前記第1の触媒と前記ケイ素源との重量比が(0.001~0.5):1である、[6]~[8]のいずれか1項に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【0022】
[10]前記中間生成物生成工程において、前記活性化合物は、少なくとも1つのOH基を含有し、かつ分子量が150を超え、かつ下記式IIIによって算出される前記活性化合物のHLB値が5を超え、
HLB=20×M/M 式III
(式中、Mは、前記活性化合物の親水部分の分子量であり、Mは、前記活性化合物の分子量である。)
前記活性化合物と前記ケイ素源との重量比が(0.05~0.5):1であり、前記活性化合物は、1種または2種以上の混合物である、[6]~[9]のいずれか1項に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【0023】
[11]前記中空シリカ生成工程において、前記第2の溶媒は、水、水と親水性有機溶媒との混合物、または水と疎水性有機溶媒との混合物であり、
前記第2の触媒は、酸または塩基であり、
前記第2の溶媒に対する前記シリコーン中間生成物P1の重量百分率は、1~60%であり、
前記第2の触媒と前記シリコーン中間生成物P1との重量比は、(0.05~2):1である、[6]~[10]のいずれか1項に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【0024】
[12]前記中空シリカゾルの溶媒を置換する溶媒置換工程をさらに含み、
前記溶媒置換工程において、遠心分離、加熱共沸または限外濾過処理によって前記中空シリカゾルにおける溶媒の全部または一部を置換する、[6]~[11]のいずれか1項に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【0025】

[13]中空シリカゾルに、下記式IVで示されるシランおよび/またはその部分加水分解物、ヘキサメチルジシロキサンおよびヘキサメチルジシラザンからなる群から選ばれる1種または複数種を添加して中空シリカ粒子表面を修飾する表面修飾工程をさらに含み、
-Si-X4-p 式IV
(式中、pは、0、1、2または3であり、
は、アルキル基、ビニルアルキル基、エポキシアルキル基、スチリルアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリロキシアルキル基、アミノアルキル基、ウレタン基、クロロアルキル基、メルカプトアルキル基、イソシアナトアルキル基、または、ヒドロキシアルキル基から選ばれるものであり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rにおける水素原子の全部または一部は、フッ素原子に置換されていてもよく、
Xは、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ハロゲンまたは水素から選ばれるものであり、Xが複数ある場合、各Xは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
前記表面修飾工程は、前記中空シリカ生成工程の後および/または前記水熱処理工程の後に行われる、[6]~[11]のいずれの1項に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【0026】
[14]中空シリカゾルに、下記式IVで示されるシランおよび/またはその部分加水分解物、ヘキサメチルジシロキサンおよびヘキサメチルジシラザンからなる群から選ばれる1種または複数種を添加して中空シリカ粒子表面を修飾する表面修飾工程をさらに含み、
-Si-X4-p 式IV
(式中、pは、0、1、2または3であり、
は、アルキル基、ビニルアルキル基、エポキシアルキル基、スチリルアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリロキシアルキル基、アミノアルキル基、ウレタン基、クロロアルキル基、メルカプトアルキル基、イソシアナトアルキル基、または、ヒドロキシアルキル基から選ばれるものであり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rにおける水素原子の全部または一部は、フッ素原子に置換されていてもよく、
Xは、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ハロゲンまたは水素から選ばれるものであり、Xが複数ある場合、各Xは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
前記表面修飾工程は、前記中空シリカ生成工程の後、および/または、前記水熱処理工程の後、および/または、前記溶媒置換工程の後に行われる、[12]に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【0027】
[15]前記表面修飾工程の後、再び前記水熱処理工程または/および前記溶媒置換工程を行う、[14]に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【0028】
[16]中空シリカゾルおよび接着剤を含む塗料組成物であって、前記中空シリカゾルが[1]~[5]のいずれの1項に記載のゾル、または、[6]~[15]のいずれの1項に記載の中空シリカゾルの調製方法によって調製されるものである、塗料組成物。
【0029】
[17]基材の表面に塗層を有し、前記塗層は、1層または2層以上であり、前記塗層の少なくとも1層は、[16]に記載の塗料組成物を硬化してなる、製品。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る中空シリカゾルによれば、その中に含まれる中空シリカ粒子のQ4(4つの-OSi-基が結合しているSi原子の比率)、Q3(3つの-OSi-基と1つのヒドロキシ基が結合しているSi原子の比率)、Q2(2つの-OSi-基と2つのヒドロキシ基が結合しているSi原子の比率)、Q1(1つの-OSi-基と3つのヒドロキシ基が結合しているSi原子の比率)を、Q1/(Q1+Q2+Q3+Q4)が実質的に0、Q2/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.01~0.2、Q3/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.01~0.6、およびQ4/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.2~0.98という条件を満たすことにより、中空シリカ粒子のシェル層は、細孔サイズが小さく、薄くて緻密である。そのため、本発明に係る中空シリカゾルは、粘度が低く、熱安定性および分散安定性に優れる。また、本発明に係る中空シリカゾルにおける中空粒子は、良好なシェル層構造を有し、塗層を形成する場合には、硬度が高く、耐摩耗性が良く、基材との密着力が強く、空洞の内部が他の物質で充填されるのを防ぐことができるため、塗層として形成される場合には、さらに低い屈折率を有する。また、形成される塗層を反射防止層として用いる場合、反射防止性が向上し、耐湿熱性が向上する。
【0031】
本発明に係る中空シリカゾルの調製方法によれば、中空シリカゾルを水熱処理することにより、中空シリカゾルにおける中空シリカ粒子の表面のヒドロキシ基をさらに縮合させ、シェル層の細孔サイズが小さく、薄くて緻密な中空シリカ粒子を含有する粘度の小さい中空シリカゾルを調製することができる。
【0032】
本発明に係る塗料組成物は、明らかな反射防止効果、優れた耐摩耗性、高硬度、および基材への強力な密着性を備えた塗膜を形成することができる。
【0033】
本発明に係る製品は、優れた反射防止効果、良好な硬度、耐摩耗性および基材との密着力、優れた耐湿熱性などの耐候性を備える。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施例1で得られた中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図2】実施例2で得られた中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図3】実施例3で得られた中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図4】比較例1で得られた中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図5】比較例2で得られた中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図6】比較例3で得られた中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[中空シリカゾル]
本発明に係る中空シリカゾルは、中空シリカ粒子と分散媒を含有し、
中空シリカ粒子の29Si核磁気共鳴分光法によって測定されるピークに対応するケミカルシフトが-78~-88ppmである共鳴ピーク面積Q1、ケミカルシフトが-88~-98ppmである共鳴ピーク面積Q2、ケミカルシフトが-98~-108ppmである共鳴ピーク面積Q3およびケミカルシフトが-108~-117ppmである共鳴ピーク面積Q4が以下の条件を満たす。
Q1/(Q1+Q2+Q3+Q4)が実質的に0、
Q2/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.01~0.2、
Q3/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.01~0.6、および
Q4/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.2~0.98。
【0036】
ここで、Q1に帰属するピークは、Si原子上に1つ-OSi-基と3つのヒドロキシ基が結合しているケイ素原子の構造に関連するピークであり、Q2に帰属するピークは、Si原子上に2つの-OSi-基と2つのヒドロキシ基が結合しているケイ素原子の構造に関連するピークであり、Q3に帰属するピークは、Si原子上に3つ-OSi-基と1つのヒドロキシ基が結合しているケイ素原子の構造に関連するピークであり、Q4に帰属するピークは、Si原子上に4つの-OSi-基が結合しているケイ素原子の構造に関連するピークである。
【0037】
「Q1/(Q1+Q2+Q3+Q4)が実質的に0である」とは、Si原子上に1つの-OSi-基と3つのヒドロキシ基が結合しているケイ素原子の構造に関連するピークを実質的に含有しないことを意味する。ただし、検出限界やノイズなどによる不可避的なピークにより、Q1/(Q1+Q2+Q3+Q4)が例えば0.0001以下となる場合も排除されず、この場合、Q1/(Q1+Q2+Q3+Q4)も実質的に0であると見なされる。
【0038】
Q2/(Q1+Q2+Q3+Q4)は、0.2以下である。中空シリカ表面のヒドロキシ基が後の溶媒置換および/または表面改質に必要なヒドロキシ基を持つこと、および、塗層形成後の密着力を満足できることから考慮すると、Q2/(Q1+Q2+Q3+Q4)は、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.05以上である。
【0039】
Q3/(Q1+Q2+Q3+Q4)は、0.6以下である。中空シリカ表面のヒドロキシ基が後の溶媒置換および/または表面改質に必要なヒドロキシ基を持つこと、および、塗層形成後の密着力を満足できることから考慮すると、Q3/(Q1+Q2+Q3+Q4)は、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.1以上であり、さらに好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.3以上であり、さらにより好ましくは0.4以上である。
【0040】
Q4/(Q1+Q2+Q3+Q4)が大きいほど、シェル構造がより完全になり、表面がより緻密になり、機械的強度が高くなる。中空粒子が十分な機械的特性を有し、壊れにくく、内部空洞が充填されにくく、塗層や製品を形成する際の反射防止性が良好であることを考慮すると、Q4/(Q1+Q2+Q3+Q4)は、0.2以上である。一方、表面が完全な疎水性のSi-O-Si構造ではなく、中空シリカゾルを安定させるのに十分な親水性を持つこと、沈降しにくく、他の溶媒系や塗料系に分散しやすいように表面を改質可能であり、また、得られる塗層や製品の密着力、耐摩耗性などを考慮すると、Q4/(Q1+Q2+Q3+Q4)は、好ましくは0.98以下であり、より好ましくは0.8以下であり、さらに好ましくは0.6以下である。
【0041】
本発明に係る中空シリカゾルは、中空シリカ粒子のQ1、Q2、Q3、Q4の比率を調整することにより、中空粒子表面に水および他の溶媒に分散しやすくするための十分なヒドロキシ基を有し、安定なシリカゾルを形成し、その後の表面官能化を行いやすくし、これにより、異なる系のシステムの塗料組成物に適用することができ、かつ中空粒子表面のヒドロキシ基が過剰とならず、表面構造が緻密で、機械的性質に優れ、中空シリカゾルの粘度が小さく、保存安定性に優れることを兼ね備えることができる。
【0042】
特に、Q2/(Q1+Q2+Q3+Q4)、Q3/(Q1+Q2+Q3+Q4)が小さいほど、得られる中空粒子は、シェルがより緻密になり、機械的強度が高くなるが、Q2/(Q1+Q2+Q3+Q4)、Q3/(Q1+Q2+Q3+Q4)が小さすぎると、中空シリカ表面のヒドロキシ基が少なくなり過ぎて、後で塗層に使用される場合に必要とされる溶媒置換および/または表面改質のニーズを満たしにくい。その結果、ゾルの溶媒を所望の溶媒に置換することができず、または、表面改質によって所望の量の機能性官能基を付与することができず、さらに、その後の塗層を形成する際の密着性が不十分であるという問題をもたらす。したがって、中空シリカゾルのいくつかの実施形態では、(Q2+Q3)/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.2以上であることが好ましく、0.45以上であることがより好ましい。
【0043】
本発明に係る中空シリカゾルは、25℃、固形分20%での粘度が例えば5~200mPa・secであり、良好な保存安定性を有することを考慮すると、好ましくは5~100mPa・secであり、より好ましくは5~50mPa・secであり、さらに好ましくは5~20mPa・secである。
【0044】
本発明に係る中空シリカゾルのいくつかの実施形態では、Q1、Q2、Q3、Q4は、Q1/(Q1+Q2+Q3+Q4)が実質的に0であること、Q2/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.05~0.1であること、Q3/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.2~0.55であること、および、Q4/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.35~0.75であることを満たす。
【0045】
本発明に係る中空シリカゾルの別のいくつかの実施形態では、Q1、Q2、Q3、Q4は、Q1/(Q1+Q2+Q3+Q4)が実質的に0であること、Q2/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.05~0.2であること、Q3/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.35~0.6であること、および、Q4/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.3~0.65であることを満たす。
【0046】
Q1、Q2、Q3、Q4の測定方法は、後述の実施例に記載の測定方法と同じであるため、ここでは繰り返さない。
【0047】
中空シリカ粒子とは、シェル層がシリカを主成分とし、シェル層の内部が空洞である粒子を意味する。「シェル層がシリカを主成分とする」とは、中空粒子のシェル層における主成分がシリカであり、任意に少量の他の酸化物および/または有機基を含んでもよいことを意味する。
【0048】
本発明に係る中空シリカゾルの一実施形態では、中空シリカ粒子のシェル層の厚さは、好ましくは例えば3~100nmである。シェル層の厚さが3nm以上である場合、十分な強度を備え、より好ましくは4nm以上である。シェル層の厚さは、好ましくは例えば100nm以下であり、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下であり、これにより、好適な屈折率が得られやすく、より好ましくは6nm以下である。シェル層の厚さは、中空粒子の調製条件におけるケイ素源などの反応原料の使用量、反応温度などに応じて適宜に調整することができる。優れた屈折率を得る観点から、シェルの厚さは、より好ましくが4~10nmである。
【0049】
シェル層の厚さは、下記方法によって測定される。すなわち、透過型電子顕微鏡(TEM)で中空粒子を観察し、ランダムに100個の粒子を選び、個々の中空粒子のシェルの厚さを測定し、得られた厚さの平均値をシェル層の厚さとする。
【0050】
本発明に係る中空シリカゾルの一実施形態では、中空シリカ粒子のシェル層は、例えば直径分布が0.5~4ナノメートルである孔を有する。0.5ナノメートル以上の孔を有すると、高い細孔容積と空孔率および低い屈折率と比誘電率を得ることができる。中空粒子のシェルの細孔が10ナノメートル以下である場合、中空粒子は、良好な粒子強度を備え、塗料組成物として用いて塗膜を作製する場合、内部の細孔が充填されにくく、良好な耐摩耗性や反射防止性が得られる。屈折率、比誘電率の観点から、より好ましくは0.5~4ナノメートルである。
【0051】
本発明に係る中空シリカゾルの一実施形態では、中空シリカ粒子の細孔容積は、例えば0.15~1.0cm/gであってもよい。中空シリカ粒子の細孔容積が0.15cm/g以上であれば、粒子は低い屈折率を有することができる。中空シリカ粒子の細孔容積が1.0cm/g以下であれば、粒子は十分な強度を有することができる。
【0052】
細孔のサイズと細孔容積は、例えば、Quadrasorb evo比表面積および空孔率分析装置(Quantachrome Instruments、USA)を用いて77K条件下で、静的吸着により測定することができる。中空シリカ粒子のシェル上の孔のサイズと細孔容積は、等温吸着曲線とBarrett-Joyner-Halenda(BJH)モデルを使用して測定する。
【0053】
本発明に係る中空シリカゾルの一実施形態では、中空シリカ粒子の屈折率は、例えば1.10~1.45であってもよい。中空シリカ粒子の屈折率が1.10以上である場合、中空粒子は、良好な硬度と強度を有する。中空シリカ粒子の屈折率が1.45以下である場合、比較的に低い屈折率を有し、反射防止層において優れた性能を発揮する。
【0054】
本発明に係る中空シリカゾルの一実施形態では、中空シリカ粒子の比誘電率は、例えば1.6~2.2である。中空シリカ粒子の比誘電率が1.6以上である場合、粒子は、複合誘電体において十分な強度を有する。優れた誘電特性と低誘電損失の観点から、中空シリカ粒子の比誘電率は2.2以下であり、より好ましくは2.0以下である。
【0055】
本発明に係る中空シリカゾルの一実施形態では、中空シリカ粒子の粒子径は、例えば15~1000nmである。形成される光学塗層の透明性の観点から、より好ましくは20~500nmであり、さらに好ましくは20~100nmである。
【0056】
本発明に係る中空シリカゾルの一実施形態では、中空シリカ粒子の多分散性指数(PDI)は、例えば0.05~0.3である。多分散性指数は、中空シリカゾルの動的光散乱法(DLS)のテストデータから得られる。PDIが低いほど、中空粒子のサイズ分布は、より均一であり、より単分散になる傾向がある。PDIが0.3以下である場合、中空シリカ粒子は、均一なサイズ分布を有し、塗層として作製した後、塗層表面の粗さが低く、耐摩耗性がより優れている。
【0057】
好適なサイズを有する細孔およびシェル層の厚さを適切に設定することにより、十分な空孔率で、比較的に低い屈折率を有すること確保すると共に、他の物質は、中空粒子シェルの細孔から内部空洞に入ることができないため、中空粒子は、塗料組成物、塗層、および塗層を含む製品において、常に優れた反射防止性を有する。
【0058】
本発明に係る中空シリカゾルの一実施形態では、中空シリカ粒子の含有量は、好ましくは0.5質量%~70質量%の範囲である。塗層を形成する時の効率などの観点から、中空シリカゾルにおける中空シリカ粒子の含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。中空シリカゾルの保存安定性、好適な粘度の観点から、中空シリカゾルにおける中空シリカ粒子の含有量は、70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0059】
中空シリカゾルに含まれる分散媒は、水、有機溶媒または両者の組み合わせである。有機溶媒とは、炭素原子を含有し、流動可能な有機化合物を意味する。分散媒の機能は、分散媒によって提供される環境において、中空シリカ粒子が個々の粒子の状態で存在できるようにし、乾燥状態で発生する中空シリカ粒子の凝集による最終的な塗層および製品の光学透明性に影響を与えることを回避することである。有機溶媒として、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルメチルケトン、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどが挙げられるが、中空シリカゾルおよび中空シリカ粒子の性能に影響を与えない限り、特に制限はない。
【0060】
[中空シリカゾルの調製方法]
中空シリカゾルの調製方法は、
ケイ素源、第1の溶媒、第1の触媒および活性化合物を混合し、0~150℃範囲内で反応させ、次に沸点が300℃未満であるものを除去して液体状のシリコーン中間生成物P1を得る中間生成物生成工程と、
シリコーン中間生成物P1を第2の溶媒に分散し、かつ第2の触媒を添加し、0~95℃範囲内で反応させて中空シリカゾルを得る中空シリカ生成工程と、
必要に応じて洗浄した後、30~300℃範囲内で水熱処理を行う水熱処理工程とを含む。
【0061】
以下、順に前述した工程を説明する。
【0062】
[中間生成物生成工程]
中間生成物生成工程において、第1の触媒の接触作用下でケイ素源中のアルコキシ基を第1の溶媒の存在下で加水分解してヒドロキシ基(Si-OH)を生成し、生成されたヒドロキシ基(Si-OH)は、さらに縮合反応し、または活性化合物におけるヒドロキシ基と反応して高沸点の液体状シリコーン中間生成物と副生成物としての低沸点の物質(沸点300℃未満の物質)を生成し、低沸点の物質を除去して中間生成物を精製することにより、中間生成物は、分子量分布がより狭くなり、化学的性質がより均一となる。
【0063】
ケイ素源の組成は、特に限定されず、アルコキシ基を含有し、加水分解してヒドロキシ基(Si-OH)を生成し、さらに縮合して流動可能な中間生成物を生成できるものであればよい。
【0064】
好ましくは、ケイ素源は、下記式Iで示されるシランモノマーの1種または2種以上、または、実験式が下記式IIで示されるポリアルコキシシロキサンオリゴマーである。
4-nSi(OR 式I
(式中、nは、1、2、3または4であり、
は、アルキル基、ビニルアルキル基、ビニル基、エポキシアルキル基、フェニル基、スチリルアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリロキシアルキル基、アミノアルキル基、ウレタン基、クロロアルキル基、メルカプトアルキル基、イソシアナトアルキル基、または、ヒドロキシアルキル基であり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、
は炭素原子数1~6のアルキル基であり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
SiO(OR4-2m 式II
(式中、0<m<2、mは、整数または非整数であり、
は炭素原子数1~6のアルキル基であり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0065】
上記式において、Rで示されるアルキル基、ビニルアルキル基、ビニル基、エポキシアルキル基、フェニル基、スチリルアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリロキシアルキル基、アミノアルキル基、ウレタン基、クロロアルキル基、メルカプトアルキル基、イソシアナトアルキル基、または、ヒドロキシアルキル基における「アルキル基」としては、例えば、炭素原子数1~22のアルキル基が挙げられ、炭素原子数1~10のアルキル基であってもよく、さらに炭素原子数1~8のアルキル基であってもよい。
【0066】
「炭素原子数1~8のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基などが挙げられ、特に限定されない。
【0067】
実験式が上記式IIで示されるポリアルコキシシロキサンオリゴマーとしては、例えば、市販のケイ素40、ケイ素48、ケイ素51、ケイ素53、ケイ素63などが挙げられる。
【0068】
ケイ素源としては、上記式Iで示される構造を有するシランモノマーの1種または2種以上、または上記式IIで示されるポリアルコキシシロキサンオリゴマーの1種または2種以上を使用してもよく、さらにこの両者を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、ケイ素源は、テトラエチルシリケート、テトラメチルシリケート、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、ケイ素40、ケイ素48、ケイ素51から選ばれる少なくとも1種である。
【0069】
第1の溶媒は、好ましくは水または水と有機溶媒との混合溶媒であり、さらに好ましくは水と有機溶媒との混合溶媒であり、例えば含水メタノール、含水エタノール、含水イソプロパノール、含水ブタノール、含水エチレングリコール、含水エチレングリコールモノブチルエーテル、含水プロピレングリコール、含水プロピレングリコールメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種である。
【0070】
第1の溶媒に含まれる水とケイ素源との重量比は、好ましくは0.001:1以上かつ0.5:1未満である。中間生成物生成工程において、ケイ素源におけるアルコキシ基は、水との接触で加水分解が起こり、さらに縮合してSi-O-Si構造を含む中間生成物を形成する。重量比が0.001:1以上である場合、得られる中間生成物分子量は、十分に高く、活性化合物と反応した後の親水性が強くなりすぎず、界面活性を生じさせることができる。重量比が0.5:1未満である場合、ケイ素源におけるアルコキシ基は、まだ完全に反応されていない部分があり、後の活性化合物との反応が続くのに有利である。
【0071】
また、水とケイ素源との重量比は、最終生成物である中空シリカ粒子のシェル層の厚さに影響を与える要因の1つであり、中空シリカ粒子のシェル層の厚さは、水とケイ素源との重量比が大きくなるほど大きくなる。中空シリカ粒子のシェル層の厚さを十分に確保して中空シリカ粒子の強度を十分に得る観点から、水とケイ素源との重量比は、好ましくは0.01:1以上である。中空シリカ粒子のシェル層の厚さが厚すぎず、屈折率が低いという観点から、水とケイ素源との重量比は、好ましくは0.25:1以下である。
【0072】
第1の溶媒において、水以外の他の溶媒は、水とケイ素源を迅速かつ均一に混合させるために用いられる。その添加量は特に制限されないが、製造コストの節約の観点から、水とケイ素源とを均一に混合可能な使用量であることが好ましい。
【0073】
第1の触媒は、酸、塩基、または金属アルコキシド、金属カルボン酸塩である。このような酸として、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酸性陽イオン交換樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。このような塩基として、例えばアンモニア水、有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどがあるが、これらに限定されない。このような金属アルコキシド、例えばチタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような金属カルボン酸塩として、例えば酢酸錫、酢酸アルミニウム、酢酸ジルコニウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。反応制御性の観点から、第1の触媒は、好ましくは酸またはチタンアルコキシドである。チタンアルコキシドとして、例えばテトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタンなどが挙げられる。
【0074】
第1の触媒とケイ素源との重量比は、好ましくは0.001~0.5:1である。重量比を0.5:1以下に制御することは、反応速度が速すぎることによるゲル状固体の生成の防止に有利であり、重量比を0.001:1以上に制御することは、触媒効率を向上させ、好適な反応速率を得ることに有利である。
【0075】
活性化合物とは、シリコーン中間生成物の親水性を向上させる役割を果たす化合物を意味する。このような活性化合物として、例えば、少なくとも1つのOH基を有し、分子量が150を超え、かつ下記式IIIによって算出されるHLB値が5を超えるものが挙げられる。
HLB=20×M/M 式III
(式中、Mは活性化合物における親水部分の分子量であり、Mは活性化合物の分子量である。)
【0076】
活性化合物は、単体物質であっても2種以上の混合物であってもよい。活性化合物として、例えばポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。式IIIによって算出される活性化合物のHLB値が5未満である場合、活性化合物は、シリコーン中間生成物に適切な親水性を付与できず、後工程で中空シリカ粒子を得ることができない。
【0077】
活性化合物とケイ素源との重量比は、例えば(0.05~0.5):1であってもよい。質量比を0.05:1以上に制御することにより、得られるシリコーン中間生成物は、十分な親水性を有し、含水溶媒中で凝集しにくく、中空構造を有する粒子を形成することができる。質量比を0.5:1以下に制御することにより、得られるシリコーン中間体は、一部が疎水性を有するため、好適な界面活性を有し、後工程で中空粒子を形成することができる。
【0078】
中間生成物生成工程の反応温度は、0~150℃であり、好ましくは60~100℃である。反応時間は、例えば1~24時間であり、好ましくは5~15時間である。反応の完全性と反応効率の両立の観点から、より好ましくは8~10時間である。
【0079】
中間生成物生成工程の反応過程において、ケイ素源のアルコキシ基の加水分解・縮合反応により、シリコーン中間生成物P1を生成すると共に、沸点300℃未満の副生成物も一部生成する。このような沸点300℃未満の副生成物として、例えば、分子量が500未満の中間生成物、アルコキシ基が加水分解・縮合して生成する小分子アルコール系化合物などが挙げられる。
【0080】
沸点300℃未満の副生成物の除去は、中空シリカ粒子の調製に重要な影響を及ぼす。副生成物としてのアルコール系化合物を除去することにより、ケイ素源の加水分解・縮合およびヒドロキシ基を含有する活性化合物との縮合は、順方向に進行させ、より高分子量の中間生成物が得られ、最終的に中空シリカ粒子を形成することができる。分子量500未満の中間生成物を除去することにより、調製される中空シリカ粒子の粒子径がより均一になり、サイズの制御がより容易となる。
【0081】
低沸点の副生成物を除去する方法としては、例えば常圧蒸留、減圧蒸留、薄膜蒸発、または、回転蒸発から選ばれる1種またはこれらの組み合わせが挙げられる。低沸点副生成物の除去は、加水分解、縮合反応とともに行うことができ、反応中に液体の留出が観察された場合、副生成物が除去されていることを表明する。加熱反応終了後、第一反応副生成物の除去をさらに行って副生成物を十分に除去することができる。除去の過程において、液体の留出が観察されない、あるいは、収集ボトル内の液体の質量が一定の時間を経っても変化しない場合、副生成物が完全に除去されたと考えられ、残されるのは、シリコーン中間生成物P1である。
【0082】
[中空シリカ生成工程]
中空シリカ生成工程において、シリコーン中間生成物P1を第2の溶媒に分散し、第2の触媒を添加し、0~95℃の範囲内で反応させて中空シリカゾルを得る。
【0083】
第2の溶媒は、水、または水と親水性溶媒との組み合わせ、または水と疎水性溶媒との組み合わせである。このような親水性溶媒としては、例えばアルコール、ケトン、エーテルなど水と混和できる有機溶媒が挙げられる。このような疎水性溶媒としては、例えばアルカン、芳香族炭化水素、エステルなどの有機溶媒が挙げられる。
【0084】
シリコーン中間生成物P1を第2の溶媒に分散させる際に、シリコーン中間生成物P1は、第2溶媒とベシクル(vesicle)のような構造を形成する。ベシクルの内部および外部は共に含水溶媒であり、界面にシリコーン中間生成物P1が濃縮され、シリコーン中間生成物P1は、第2の触媒の作用により迅速に加水分解・縮合し、緻密なシリカシェル層を有する中空シリカ粒子を形成する。これにより単分散中空シリカ粒子を含有するゾルが得られる。
【0085】
一方、シリコーン中間生成物は、第2の触媒の作用により加水分解・縮合してシリカに変化すると同時に、小分子アルコールをも放出し、ベシクルのサイズがほぼ一定である場合、小分子アルコールの放出により、シリカシェルに十分に多くの細孔が導入される。
【0086】
第2の触媒の種類と使用量を調整することにより、細孔サイズ、細孔容積や中空粒子の屈折率を調整することができる。通常、触媒として酸を用いる場合に比べて、触媒として塩基を用いる方は、形成された細孔のサイズがより大きく、細孔容積がより高く、屈折率がより低くなる。
【0087】
第2の触媒は、例えば酸または塩基である。酸は、有機酸または無機酸であってもよい。無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸などが挙げられ、有機酸としては、蟻酸、酢酸、アクリル酸などが挙げられる。塩基は、無機塩基または有機塩基であってもよい。無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などが挙げられ、有機塩基としては、トリエチルアミンなどが挙げられる。また、塩の形態であるが酸性または塩基性を示す酸性塩、塩基性塩などの場合、第2の触媒として作用してシリコーン中間生成物を反応させて中空シリカ粒子を生成させることができれば、第2の触媒に属すると考えられる。第2の触媒は、第1の触媒と同じであっても異なっていてもよい。
【0088】
第2の触媒とシリコーン中間生成物との重量比は、例えば、(0.05~2):1であってもよい。
【0089】
中空シリカ粒子生成工程において、好適な分散液粘度および生成効率を得る観点から、第2の溶媒に対するシリコーン中間生成物P1の重量百分率は、好ましくは1~60%である。
【0090】
中空シリカ粒子生成工程により、分散性の良い中空シリカゾルが得られる。しかしながら、表面緻密化処理を経ていないため、過剰なヒドロキシ基および欠陥が存在する。このような一次中空シリカゾルは、固形分が高い場合、経時的に粘度が増大し、ゲル化され、その後の使用に影響を与える。また、シリカバルーンのシェルは、比較的軟らかく、表面欠陥が多く、後の塗料組成物や塗層製品として用いられる場合に耐摩耗性が悪く、中空構造が充填されやすく、反射防止性能や誘電性能などに影響を与えるおそれがある。
【0091】
[水熱処理工程]
水熱処理工程は、30℃~300℃温度で行われる。水熱処理により、中空シリカ粒子のシェル層は、より均一で緻密になり、表面張力のために粒子がより球形に近づき、かつ機械的強度が大きく向上する。水熱処理を経ていない中空シリカゾルに比べて、水熱処理工程を経た後の中空シリカゾルは、固形分が比較的に高い場合でも、依然として低粘度を維持し、熱安定性と保存安定性が向上する。また、中空シリカ粒子のシェル層はより緻密になり、表面欠陥が減少し、形成される塗層の硬度、耐摩擦性が向上する。また、反射防止塗料に用いられる場合、屈折率が比較的に高い樹脂が中空粒子の内部に入ることができないため、反射防止効果の高い塗膜が得られる。
【0092】
得られる中空シリカゾルが前述した本発明に係る中空シリカゾルのQ1、Q2、Q3、Q4の範囲を満たすように、水熱処理により中空シリカ粒子表面のヒドロキシ基などの基の比率を調整することで、得られる中空シリカゾルに含有される中空シリカ粒子は、欠陥が少なく、表面構造が緻密で、機械的性能に優れ、ゾル粘度が小さいなどの性能を可能にする。また、中空シリカ粒子を水および他の溶媒に分散しやすくするための十分なヒドロキシ基を表面に具備させ、安定なシリカゾルを形成し、その後の表面機能化処理を容易にすることを兼ね備え、異なる系の塗料組成物に適用することができる。
【0093】
水熱工程の水熱温度は、30℃~300℃である。水熱温度が30℃以上である場合、シリカバルーンのシェルを効果的に緻密化させることができ、塗料および塗層として用いられる場合、塗膜性、反射防止性および塗層の強度を効果的に向上することができる。水熱温度が300℃を超える場合、中空粒子表面は、それ以上緻密化することができず、形成される塗料と塗層の性能をさらに向上させることもできず、同時に中空粒子が凝集してゾルから析出し、更なる使用に支障をきたす恐れがある。形成される塗層の耐水性、耐候性および耐摩擦性の観点から、水熱処理温度は、好ましくは100℃~200℃である。
【0094】
水熱処理工程の前に、状況に応じて、中空シリカゾルに存在し得るシリカ以外の他の物質やイオンを除去するために、任意に限外濾過、遠心分離、イオン交換樹脂などの周知の洗浄工程を行ってもよい。洗浄工程により、中空シリカゾルは、純度がより高くなり、より優れた安定性を有するようになる。
【0095】
本発明に係る中空シリカゾルの調製方法は、高温焼成、溶媒エッチング、あるいは酸やアルカリによる溶解などの従来の手段により内部テンプレートを除去する工程を行う必要がなく、単分散性に優れ、二次凝集のない中空粒子分散液を得ることができる。
【0096】
また、本発明に係る中空シリカゾルの調製方法によれば、水熱処理工程により、機械的強度が高く、シェル層が均一で緻密な中空シリカ粒子を調製することができる。本粒子を塗料組成物や塗層に用いた場合、塗層に優れた耐水性、耐摩耗性、耐候性および反射防止性を付与することができる。
【0097】
以上のように得られる中空シリカゾルは、接着剤と組み合わせて塗料組成物として形成することができ、反射防止塗層を形成するために広く使用されている。または、形成される塗層の性能ニーズに応じて、塗料組成物に様々な添加剤を添加してもよい。さらに、中空シリカゾルを乾燥して中空シリカ粒子の粉体として保存してもよい。
【0098】
また、本発明に係る中空シリカゾルの調製方法によれば、金属イオンを導入することなく、優れた低誘電特性を有する。
【0099】
中空シリカゾルの調製方法によって得られる中空シリカゾルに含まれる中空粒子のシェル層は、被覆および徐放のために使用可能な細孔チャンネルを含有する。
【0100】
選択的に、本発明に係る中空シリカゾルの調製方法は、さらに以下の工程を含んでもよい。
【0101】
溶媒置換工程
溶媒置換工程においては、限外濾過膜、ロータリーエバポレーター、遠心機などの設備を使用し、得られる中空シリカゾルにおける元の溶媒の全部または一部を有機溶媒に置換して中空シリカの有機ゾルを得る。上記の「一部」は、例えば20%以上、40%以上、60%以上、80%以上、90%以上、または99%以上であってもよい。
【0102】
置換に用いられる溶媒は、1種または2種以上の混合溶媒であってもよい。溶媒置換工程を経た中空シリカゾルは、ほとんどの塗料系に適用でき、得られる塗料組成物は、優れた分散性能を有し、得られる塗層および製品中では凝集を生じることなく、塗層に良好な光学的透明性を付与し、塗層の白化を回避する。
【0103】
例えば、置換前の中空シリカゾルの溶媒が水である場合、その中の水をメタノールに置換して中空シリカのメタノールゾルを得ることができる。
【0104】
他の実施形態では、例えば、置換前の中空シリカゾルの溶媒がメタノールである場合、メタノールの一部をアセトンに置換して中空シリカのメタノール/アセトンゾルを得ることができる。
【0105】
表面修飾工程
中空シリカゾルに下記式IVで示されるシランおよび/またはその部分加水分解物、ヘキサメチルジシロキサン、および、ヘキサメチルジシラザンからなる群から選ばれる1種または2種以上を添加して中空シリカ粒子表面を修飾する。
-Si-X4-p 式IV
(式中、pは、0、1、2または3であり、
は、アルキル基、ビニルアルキル基、エポキシアルキル基、スチリルアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリロキシアルキル基、アミノアルキル基、ウレタン基、クロロアルキル基、メルカプトアルキル基、イソシアナトアルキル基、または、ヒドロキシアルキル基から選ばれるものであり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rにおける水素原子の全部または一部は、フッ素原子に置換されていてもよく、
Xは、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ハロゲンまたは水素から選ばれるものであり、Xが複数ある場合、各Xは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0106】
で示される「アルキル基、ビニルアルキル基、ビニル基、エポキシアルキル基、フェニル基、スチリルアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリロキシアルキル基、アミノアルキル基、ウレタン基、クロロアルキル基、メルカプトアルキル基、イソシアナトアルキル基またはヒドロキシアルキル基」における「アルキル基」としては、例えば、炭素原子数1~22のアルキル基が挙げられ、炭素原子数1~10のアルキル基であってもよく、さらに炭素原子数1~8のアルキル基であってもよい。
【0107】
「炭素原子数1~8のアルキル基」としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基などが挙げられ、特に限定されない。
【0108】
中空シリカゾルに、式IVで示されるシランおよび/またはその部分加水分解物、ヘキサメチルジシロキサンおよびヘキサメチルジシラザンからなる群から選ばれる1種または2種以上を添加して中空シリカ粒子表面を修飾することにより、中空シリカ粒子表面に有機基を修飾することができ、中空シリカは特定の有機溶媒中でより優れた分散安定性を示す。これによって塗料中の接着剤との親和力を一層高め、塗層硬化の過程で接着剤との相互作用がより強いものになるため、より優れた密着力、硬度および耐摩耗性を塗層に付与することができる。
【0109】
式IV中、Rにおける水素原子の一部または全部をフッ素原子に置換することにより、中空シリカ粒子の屈折率をさらに低下させることができる。また、中空粒子の表面がより疎水化されるため、塗料組成物に用いた場合に、優れた耐指紋性、滑り性、耐汚れ性を塗層に付与することができ、さらに優れた耐摩耗性を提供することができる。
【0110】
表面修飾工程は、中空シリカ生成工程の後、および/または、水熱処理工程の後、および/または、溶媒置換工程の後のいずれかの段階で行われてもよい。
【0111】
水熱処理工程、溶媒置換工程および表面改質工程の順番は、中空シリカゾルの安定性および塗料組成物中での分散を損わない限り、ランダムに選択してもよく、任意の1種または2種以上の工程を繰り返してもよい。
【0112】
また、選択的に、本発明に係る中空シリカゾルの調製方法において、中空シリカ生成工程、水熱処理工程、溶媒置換工程、表面改質工程のうちのいずれかの工程の後、乾燥または焼成して中空シリカ粉体を得ることができる。
【0113】
本発明に係る中空シリカゾルの調製方法は、ハードテンプレートやソフトテンプレートを一切用いず、シリコ―ン中間生成物の水中での自己組織化挙動を利用して中空シリカ粒子の水分散液を生成する。その後、テンプレートを高温焼成、溶媒エッチング、酸やアルカリによる溶解などで除去する必要がなく、中空粒子の凝集が回避される。水熱処理により、中空粒子表面をより緻密化し、シェル層をより均一にし、機械的強度をより高め、耐候性をより高め、溶媒置換により、異なる分散系の中空シリコーンのゾルが得られ、表面改質により、中空粒子の有機溶媒中での分散安定性と有機樹脂との親和性をさらに高め、優れた光学性能、機械的性能、耐候性を塗料組成物および塗層に付与する。
【0114】
さらに、本発明に係る中空シリカゾルの調製方法は、屈折率に優れ、反射防止膜に使用できることに加え、金属イオンが導入されていないため、より優れた低誘電特性を有する。また、シェル上の細孔構造により、中空シリカ粒子は、活性分子の担持や徐放に用いられることが可能である。
【0115】
[塗料組成物]
本発明に係る塗料組成物は、本発明に係る中空シリカゾル、接着剤および必要に応じて用いられる溶媒および助剤を含む。
【0116】
接着剤としては、例えば金属アルコキシド、金属塩、シロキサン、シリケートおよびそれらの混合物のような、加水分解・縮合反応によって対応する無機酸化物を形成できる当業者に周知の前駆体化合物を含める無機接着剤が挙げられる。また、例えば、(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、およびアクリレート、メタクリレートのラジカル硬化性不飽和ポリエステルまたはポリウレタンなどの、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマーおよびこれらに由来する様々なオリゴマーを含む、当業者に周知の様々なポリマー、並びに、熱固化または放射線(例えば、UV、電子線)で固化できるモノマーおよびオリゴマーを含む有機接着剤も挙げられる。
【0117】
溶媒としては、例えば水、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系、窒素含有化合物、硫黄含有化合物などが挙げられる。アルコール系として、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。ケトン系としては、例えばアセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。エーテル系としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどが挙げられる。エーテル系としては、例えば酢酸エチル、酢酸メチルなどが挙げられる。窒素含有化合物としては、例えばN,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。硫黄含有化合物としては、例えばジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0118】
本発明に係る塗料組成物には、本発明の効果を損なわない限り、本発明に係る中空粒子以外の他の中空粒子や中実粒子が含まれてもよい。
【0119】
また、本発明に係る塗料組成物には、さらに、例えば熱開始剤、光開始剤、帯電防止剤、レベリング剤、湿潤剤、消泡剤、顔料、染料、紫外線遮蔽剤、赤外線遮蔽剤、酸化防止剤、指紋防止剤などの他の助剤が含まれてもよい。
【0120】
本発明に係る塗料組成物において、中空シリカ粒子と接着剤との重量比は、例えば0.1:1~5:1であってもよく、好ましくは0.5:1~3:1であり、より好ましくは0.8:1~2:1である。中空粒子/接着剤の比率が低すぎると、塗層の反射防止性が不十分なものになりやすく、高すぎると、それ以上引き続き反射防止性を向上させることができず、塗層の機械的性能や耐候性が低下しやすくなる。
【0121】
本発明に係る塗料組成物は、低屈折率かつ高粒子強度の本発明に係る中空粒子を含むため、反射防止効果に優れ、耐摩耗性および硬度の高い塗膜を形成することができる。
【0122】
[製品]
本発明に係る製品は、基材と基材表面の塗層からなる。塗層は、1層または2層以上であり、塗層の少なくとも1層は、本発明に係る塗料組成物を硬化してなる。
【0123】
塗層は、基材に本発明に係る塗料組成物を塗布して乾燥させることによって形成することができる。また、塗層をさらに加熱または焼成または放射線照射してもよい。
【0124】
基材として、例えばガラス、透明ポリマー、金属などが挙げられるが、特に限定されない。
【0125】
塗布方法として、例えばバーコート、ナイフコート、スピンコート、ディップコート、ロールコート、フローコート、スプレーコート、スリットコート、マイクログラビアコートなどが挙げられるが、特に限定されない。
【0126】
上述した本発明に係る製品は、本発明に係る塗料組成物からなる塗層を有するため、反射防止效果が良く、かつ耐摩耗性が良く、硬度が高い。
【実施例
【0127】
本発明をより詳しく説明するため、好ましい実施例を組み合わせて本発明をさらに説明する。当業者であれば、以下に具体的に説明される内容は、制限的ではなく例示的なものであり、本発明の保護範囲を制限するものではないと理解できる。
【0128】
本発明において、調製方法は、特別な指定が限り、通常の方法であり、使用される原料は、特別な指定が限り、公開された商業的経路から入手できるものであり、%は重量%を意味し、温度は摂氏(℃)である。
【0129】
各実施例に係る符号の具体的な意味および測定条件は、以下の通りである。
【0130】
固形分:固形分測定装置Precisa XM60によって測定され、150℃で一定の量になるまで焼成したときの固形分を示す。
【0131】
粘度:温度を25℃に設定し、中空シルカゾルの固形分を20%に固定し、回転粘度計によって測定される。
【0132】
平均粒子径:対応するTEM写真からランダムに100個の粒子を選択し、各粒子の粒子径を測定し、測定された粒子径の平均値を粒子の平均粒子径とする。
【0133】
シェル層の厚さ:対応するTEM写真からランダムに100個の粒子を選択し、各粒子のシェルの厚さを測定し、測定されたシェル層の厚さの平均値をシェル層厚さとする。
【0134】
Q1、Q2、Q3、Q4割合の測定:中空シリカゾルを乾燥させて粉末にした後、核磁気共鳴装置(Bruker AVIII HD500 spectrometer)を用いて29Si NMRスペクトルを測定し、次にケミカルシフトが-78~-88ppmである共鳴ピーク面積Q1、ケミカルシフトが-88~-98ppmである共鳴ピーク面積Q2、ケミカルシフトが-98~-108ppmである共鳴ピーク面積Q3、および、ケミカルシフトが-108~-117ppmである共鳴ピーク面積Q4をそれぞれ積分し、Q1、Q2、Q3、Q4の値を算出する。
【0135】
多分散性の測定:動的光散乱計(Malven、 Zetasizer Nano、 ZS90-2027)を採用して分散液を測定し、粒子径分布曲線および多分散性結果を得る。
【0136】
孔のサイズ分布、細孔容積および空孔率:Quadrasorb evo比表面積および空孔率解析装置(Quantachrome Instruments、 USA)を用いて77K条件下でN吸着試験により静的吸着BETを測定する。等温吸着曲線およびBarrett-Joyner-Halenda(BJH)モデルを用いて孔のサイズ分布、細孔容積、空孔率を測定し、かつ下記屈折率計算式に従って屈折率RIを算出する。
【0137】
【数1】
(ここで、1.5は、シリカの屈折率を示し、1.0は、空気の屈折率を示し、Vは、空孔率である。)
【0138】
比誘電率:比誘電率eは、静電場で以下のように測定される。すなわち、標準大気圧下、まず、2枚の極板間が真空になったときのコンデンサの容量Cを測定し、そして、コンデンサの極板間の距離が一定で2枚の極板の間に誘電体を添加した後の容量Cを測定し、下式によって比誘電率eを算出する。
=C/C
【0139】
実施例1
テトラエトキシシラン208g、水20g、塩酸(濃度37%)5g、ポリエチレングリコール(分子量500)30gを均一に混合し、撹拌しながら85℃まで昇温し、8時間反応させた後、引き続き135℃まで昇温し、液体が抽出されなくなるまで真空に引いて一定の粘度を有する透明なシリコーン中間生成物156gを得た。
【0140】
得られたシリコーン中間生成物156gと水500gとを混合した後、撹拌を開始し、同時にアンモニア水(質量濃度25%)20gを素早く加え、引き続き撹拌しながら24時間反応させて固形分9.2%の中空シリカゾルを得た。
【0141】
中空シリカゾルを限外濾過膜で洗浄した後、200℃で12時間水熱処理して中空シリカゾル1を得た。
【0142】
得られた中空シリカゾル1における中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図1に示し、その平均粒子径を測定して55ナノメートルであり、シェル層の厚さは、5.5ナノメートルであった。
【0143】
動的光散乱法(DLS)によるサイズ、PDI、Q1~Q4の割合、孔径分布、細孔容積、誘電率などの結果を表1に示した。
【0144】
実施例2
ケイ素48(Gelest Int.、実験式:SiO1.12(OCHCH1.76)120g、エタノール60g、水2.5g、アンモニア水(濃度25%)1.0g、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量500)25gを均一に混合し、撹拌しながら65℃まで昇温し、8時間反応させた後、引き続き135℃まで昇温し、液体が抽出されなくなるまで真空に引いて一定の粘度を有する透明なシリコーン中間生成物150gを得た。
【0145】
得られたシリコーン中間生成物150gと水1000gを混合した後、撹拌を開始し、同時にアンモニア水(質量濃度25%)50gを素早く加え、引き続き撹拌しながら24時間反応させて固形分4.8%の中空シリカゾルを得た。
【0146】
中空シリカゾルを限外濾過膜で洗浄した後、150℃で24時間水熱処理して中空シリカゾル2を得た。
【0147】
得られた中空シリカゾル2における中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図2に示し、その平均粒子径を測定して70ナノメートルであり、シェル層の厚さは、6.5ナノメートルであった。
【0148】
動的光散乱法(DLS)によるサイズ、PDI、Q1~Q4の割合、孔径分布、細孔容積、誘電率などの結果を表1に示した。
【0149】
実施例3
テトラメトキシシラン145g、メチルトリエトキシシラン5g、イソプロパノール75g、水25g、硝酸(濃度63%)5g、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量500)40gを均一に混合し、撹拌しながら85℃まで昇温し、8時間反応させた後、引き続き135℃まで昇温し、液体が抽出されなくなるまで真空に引いて一定の粘度を有する透明なシリコーン中間生成物160gを得た。
【0150】
得られたシリコーン中間生成物160gと水500gを混合した後、撹拌を開始し、同時にアンモニア水(質量濃度25%)20gを素早く加え、引き続き撹拌しながら24時間反応させて固形分8.6%の中空シリカゾルを得た。
【0151】
中空シリカゾルを限外濾過膜で洗浄した後、120℃で12時間水熱処理して中空シリカゾル3を得た。
【0152】
得られた中空シリカゾル3における中空シリカ粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図3に示し、その平均粒子径を測定して40ナノメートルであり、シェル層の厚さは、4.5ナノメートルであった。
【0153】
動的光散乱法(DLS)によるサイズ、PDI、Q1~Q4の割合、孔径分布、細孔容積、誘電率などの結果を表1に示した。
【0154】
比較例1
実施例1における水熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして中空シリカゾル4を得た。
【0155】
得られた中空シリカ粒子4の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図4に示した。動的光散乱法(DLS)によるサイズ、PDI、Q1~Q4の割合、孔径分布、細孔容積、誘電率などの結果を表1に示した。
【0156】
比較例2
実施例2における水熱処理を行わなかった以外は、実施例2と同様にして中空シリカゾル5を得た。
【0157】
得られた中空シリカ粒子5の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図5に示した。
動的光散乱法(DLS)によるサイズ、PDI、Q1~Q4の割合、孔径分布、細孔容積、誘電率などの結果を表1に示した。
【0158】
比較例3
実施例3における水熱処理を行わなかった以外は、実施例3と同様にして中空シリカゾル6を得た。
【0159】
得られた中空シリカ粒子6の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図6に示した。動的光散乱法(DLS)によるサイズ、PDI、Q1~Q4の割合、孔径分布、細孔容積、誘電率などの結果を表1に示した。
【0160】
実施例4
実施例1で調製した中空シリカゾル1の溶媒を、限外濾過膜を用いてイソプロパノールに置換し、濃縮して固形分20%の中空シリカイソプロパノールゾル7を得た。
【0161】
中空シリカイソプロパノールゾル7を50g取り、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン2g、水0.2gを加え、80℃まで加熱して12時間反応させた後、オルトギ酸トリメチル2gを添加して反応させて固形分20.5%の中空シリカ改質イソプロパノールゾル8を得た。
【0162】
実施例5
実施例2で調製した中空シリカゾル2の溶媒を、限外濾過膜を用いてイソプロパノールに置換し、濃縮して固形分20%の中空シリカイソプロパノールゾル9を得た。
【0163】
中空シリカイソプロパノールゾル9を50g取り、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン2g、水0.2gを加え、80℃まで加熱して12時間反応させた後、オルトギ酸トリメチル2gを添加して反応させて固形分20.5%の中空シリカ改質イソプロパノールゾル10を得た。
【0164】
実施例6
実施例3で調製した中空シリカゾル3の溶媒を、限外濾過膜を用いてイソプロパノールに置換し、濃縮して固形分20%の中空シリカイソプロパノールゾル11を得た。
【0165】
中空シリカイソプロパノールゾル11を50g取り、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン2g、水0.2gを加え、80℃まで加熱して12時間反応させた後、オルトギ酸トリメチル2gを添加して反応させて固形分20.5%の中空シリカ改質イソプロパノールゾル12を得た。
【0166】
比較例4
実施例4における中空シリカゾル1の代わりに、比較例1で得られた中空シリカゾル4を使用し、そのほかは、実施例4と同様にして固形分20.5%の中空シリカ改質イソプロパノールゾル13を得た。
【0167】
比較例5
実施例5における中空シリカゾル2の代わりに、比較例2で得られた中空シリカゾル5を使用し、そのほかは、実施例5と同様にして固形分20.5%の中空シリカ改質イソプロパノールゾル14を得た。
【0168】
比較例6
実施例6における中空シリカゾル3の代わりに、比較例3で得られた中空シリカゾル6を使用し、そのほかは、実施例6と同様にして固形分20.5%の中空シリカ改質イソプロパノールゾル15を得た。
【0169】
調製例1~12
反射防止塗料組成物および反射防止塗層調製例:
実施例1~6、比較例1~6で調製した各ゾルを、それぞれメチルイソブチルケトン(MIBK)で固形分10%になるまで希釈した。固形分10%のゾル10gを取り、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)1g、光開始剤(Irgacure-184)0.05g、MIBK38.95gを加え、均一に混合して固形分4%の塗料組成物50gを得た。
【0170】
#3ワイヤーバー(3ミクロン)で塗料組成物をPETフィルム(儀化東レ、Lumirror PY2、厚さ100ミクロン)に塗り、80℃のオーブンで2分間乾燥し、UV硬化(エネルギー800~1500mJ/cm)を行って厚さ100nmの反射防止膜を有するPET製品を得た。この反射率、ヘイズ値、耐湿熱性、鉛筆硬度、密着力、耐摩耗性を測定し、その結果を表2に示した。
【0171】
反射率:分光光度計(株式会社島津製作所製UV-3150)により、300~800nm波長範囲、入射角5度で分光反射率を測定した。380~760nm範囲の反射率の平均値を平均反射率とした。
【0172】
ヘイズ値:ヘイズメーター(Hazemeter)で全光線透過率およびヘイズ値を測定した。
【0173】
耐湿熱性:恒温恒湿槽の温度を85℃、湿度を85%、試験時間を1000時間とし、PET製品の全光線透過率減衰率を測定することにより耐湿熱性を評価し、耐湿熱性を以下の3つのレベルに分類した。
◎:減衰率0.5%未満
〇:減衰率0.5~1.0%
●:減衰率1%を超える
【0174】
鉛筆硬度:得られた塗層の鉛筆硬度を、日本JIS K 5600に準拠して鉛筆引っかき試験機を用いて測定した。得られた塗層に鉛筆を45度の角度で上方から750gの荷重で5cm程度こすり、5回のうち4回以上傷のない鉛筆硬度で表した。
【0175】
密着力:PET塗膜の表面にナイフで100個の升目を刻み、その上にセロファンテープを貼った後、テープを剥がし、残存している升目の数を観察することで密着力を評価し、残った升目の数を以下の3つのレベルに分類した。
◎:90~100
〇:80~89
●:80未満
【0176】
耐摩耗性:2cm×2cmの砥石に#0000スチールウールを装着し、500g/cmの荷重をかけて100回往復摩擦し、擦り傷の状況を目視により観察し、評価基準は以下の通りである。
5級:擦り傷なし
4級:1本以上10本未満の擦り傷が発生した
3級:10本以上30未満の擦り傷が発生した
2級:30条以上の擦り傷が発生した
1級:全面にわたって擦り傷や剥離が発生した
【0177】
【表1】
【0178】
【表2】
【0179】
表1に示すように、比較例1~3に比べて、実施例1~3は、ゾル粘度が大幅に低下するとともに、シェル表面がより緻密化し、細孔の孔径が小さくなり、中空粒子の壁の厚さが薄くなった。これに対応する屈折率および比誘電率は、いずれも低下し、優れた低屈折率と低比誘電率を呈している。
【0180】
表2に示すように、水熱処理を経ていない中空粒子と比較した結果、水熱処理工程を経た中空粒子は、反射防止塗料組成物に使用される場合、PET基材に塗布した後の透過率、反射率、耐湿熱性、鉛筆硬度、密着力、耐摩耗性の向上が顕著であった。
【0181】
また、調製例1~3と調製例7~9を比較すると、表面改質を経ていない中空粒子に比べて、表面改質された中空粒子は、反射防止塗料組成物に使用される場合、PET基材に塗布した後の透過率、反射率、ヘイズ値、耐湿熱性、鉛筆硬度、密着力、耐摩耗性がいずれも向上し、特にヘイズ値、耐摩耗性の向上が顕著であった。
【0182】
したがって、本発明に係る技術案は、優れた反射防止性および優れた機械的特性、耐候性を兼ね備えている。
【0183】
当業者は、本明細書を考慮して開示された本発明を実施すれば、本発明の他の実施形態を容易に想到する。本発明は、本発明の一般原理に従い、本発明の開示されていない該技術分野における技術常識または慣用手段を含む、本発明の任意の変形、使用または適宜な変更を包含することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空シリカ粒子と分散媒とを含有し、
前記中空シリカ粒子は、29Si核磁気共鳴分光法によって測定されるピークに対応するケミカルシフトが-78~-88ppmである共鳴ピーク面積Q1、ケミカルシフトが-88~-98ppmである共鳴ピーク面積Q2、ケミカルシフトが-98~-108ppmである共鳴ピーク面積Q3、およびケミカルシフトが-108~-117ppmである共鳴ピーク面積Q4が以下の条件を満たし、
Q1/(Q1+Q2+Q3+Q4)が実質的に0、
Q2/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.01~0.2、
Q3/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.01~0.6、および
Q4/(Q1+Q2+Q3+Q4)が0.2~0.98、
前記分散媒は、水、有機溶媒または両者の組み合わせであることを特徴とする、中空シリカゾル。
【請求項2】
前記中空シリカ粒子は、シェル層の厚さが3~100nmであり、前記シェル層上の孔の孔径分布が0.5~4ナノメートルの範囲である、請求項1に記載の中空シリカゾル。
【請求項3】
前記中空シリカ粒子は、細孔容積が0.15~1cm/gであり、空孔率が10%~90%であり、屈折率が1.10~1.45である、請求項1または2に記載の中空シリカゾル。
【請求項4】
前記中空シリカ粒子は、比誘電率が1.6~2.2である、請求項1または2に記載の中空シリカゾル。
【請求項5】
前記中空シリカ粒子は、動的光散乱法によって測定される粒子径が15~1000nmであり、多分散性指数が0.05~0.3である、請求項1または2に記載の中空シリカゾル。
【請求項6】
ケイ素源、第1の溶媒、第1の触媒および活性化合物を混合し、0℃~150℃範囲内で反応させ、次に沸点300℃未満のものを除去して液体状のシリコーン中間生成物P1を得る中間生成物生成工程と、
前記シリコーン中間生成物P1を第2の溶媒に分散し、かつ第2の触媒を添加し、0℃~95℃の範囲内で反応させて中空シリカゾルを得る中空シリカ生成工程と、
30℃~300℃の範囲内で水熱処理を行う水熱処理工程と
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【請求項7】
前記中間生成物生成工程において、前記ケイ素源は、下記式Iで示されるシランモノマーから選ばれる1種または2種以上である、または実験式が下記式IIで示されるポリアルコキシシロキサンオリゴマーである、請求項6に記載の中空シリカゾルの調製方法。
4-nSi(OR 式I
(式中、nは、1、2、3または4であり、
は、アルキル基、ビニルアルキル基、ビニル基、エポキシアルキル基、フェニル基、スチリルアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリロキシアルキル基、アミノアルキル基、ウレタン基、クロロアルキル基、メルカプトアルキル基、イソシアナトアルキル基、またはヒドロキシアルキル基であり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、
は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
SiO(OR4-2m 式II
(式中、0<m<2、mは、整数または非整数であり、
は炭素原子数1~6のアルキル基であり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項8】
前記中間生成物生成工程において、前記第1の溶媒は、水、または水を含有する有機溶媒であり、水と前記ケイ素源との重量比が0.001:1以上かつ0.5:1未満である、請求項6または7に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【請求項9】
前記中間生成物生成工程において、前記第1の触媒は、酸または塩基であり、前記第1の触媒と前記ケイ素源との重量比が(0.001~0.5):1である、請求項6に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【請求項10】
前記中間生成物生成工程において、前記活性化合物は、少なくとも1つのOH基を含有し、かつ分子量が150を超え、下記式IIIによって算出される前記活性化合物のHLB値が5を超え、
前記活性化合物と前記ケイ素源との重量比は、(0.05~0.5):1であり、前記活性化合物は、1種または2種以上の混合物である、請求項6に記載の中空シリカゾルの調製方法。
HLB=20×M/M 式III
(式中、Mは、前記活性化合物における親水部分の分子量であり、Mは、前記活性化合物の分子量である。)
【請求項11】
前記中空シリカ生成工程において、前記第2の溶媒は、水、水と親水性有機溶媒との混合物、または、水と疎水性有機溶媒との混合物であり、
前記第2の触媒は、酸または塩基であり、
前記第2の溶媒に対する前記シリコーン中間生成物P1の重量百分率は、1~60%であり、
前記第2の触媒と前記シリコーン中間生成物P1との重量比は、(0.05~2):1である、請求項6に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【請求項12】
前記中空シリカゾルの溶媒を置換する溶媒置換工程をさらに含み、
前記溶媒置換工程において、遠心分離、加熱共沸または限外濾過処理によって前記中空シリカゾルにおける溶媒の全部または一部を置換する、請求項6に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【請求項13】
中空シリカゾルに、下記式IVで示されるシランおよび/またはその部分加水分解物、ヘキサメチルジシロキサンおよびヘキサメチルジシラザンからなる群から選ばれる1種または複数種を添加して中空シリカ粒子の表面を修飾する表面修飾工程をさらに含み、
前記表面修飾工程は、前記中空シリカ生成工程の後および/または前記水熱処理工程の後に行われる、請求項6に記載の中空シリカゾルの調製方法。
-Si-X4-p 式IV
(式中、pは、0、1、2または3であり、
は、アルキル基、ビニルアルキル基、エポキシアルキル基、スチリルアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリロキシアルキル基、アミノアルキル基、ウレタン基、クロロアルキル基、メルカプトアルキル基、イソシアナトアルキル基、または、ヒドロキシアルキル基から選ばれるものであり、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rにおける水素原子の全部または一部は、フッ素原子に置換されていてもよく、
Xは、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ハロゲンまたは水素から選ばれるものであり、Xが複数ある場合、各Xは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項14】
中空シリカゾルに、下記式IVで示されるシランおよび/またはその部分加水分解物、ヘキサメチルジシロキサンおよびヘキサメチルジシラザンからなる群から選ばれる1種または複数種を添加して中空シリカ粒子表面を修飾する表面修飾工程をさらに含み、
前記表面修飾工程は、前記中空シリカ生成工程の後、および/または、前記水熱処理工程の後、および/または、前記溶媒置換工程の後に行われる、請求項12に記載の中空シリカゾルの調製方法。
-Si-X4-p 式IV
(式中、pは、0、1、2または3であり、
は、アルキル基、ビニルアルキル基、エポキシアルキル基、スチリルアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリロキシアルキル基、アミノアルキル基、ウレタン基、クロロアルキル基、メルカプトアルキル基、イソシアナトアルキル基またはヒドロキシアルキル基から選ばれ、Rが複数ある場合、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rにおける水素原子の全部または一部は、フッ素原子に置換されていてもよく、
Xは、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ハロゲンまたは水素から選ばれるものであり、Xが複数ある場合、各Xは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項15】
前記表面修飾工程の後、再び前記水熱処理工程または/および前記溶媒置換工程を行う、請求項14に記載の中空シリカゾルの調製方法。
【請求項16】
中空シリカゾルおよび接着剤を含む塗料組成物であって、前記中空シリカゾルは、請求項1に記載のゾルである、塗料組成物。
【請求項17】
基材の表面に塗層を有し、前記塗層は、1層または2層以上であり、前記塗層の少なくとも1層は、請求項16に記載の塗料組成物を硬化してなることを特徴とする、製品。
【国際調査報告】