(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂、その製造方法、及びポリアミド成形用組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 69/26 20060101AFI20240912BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20240912BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20240912BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240912BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08G69/26
C08L77/06
C08K5/00
C08K3/013
C08K7/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518357
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 CN2022118963
(87)【国際公開番号】W WO2023045819
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202111122742.8
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517438181
【氏名又は名称】珠海万通特種工程塑料有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】517393787
【氏名又は名称】金発科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100221512
【氏名又は名称】山中 誠司
(72)【発明者】
【氏名】閻昆
(72)【発明者】
【氏名】徐顕駿
(72)【発明者】
【氏名】姜蘇俊
(72)【発明者】
【氏名】曹民
(72)【発明者】
【氏名】麦傑鴻
(72)【発明者】
【氏名】楊匯▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】蒋智強
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB02
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4J001EE16D
4J001EE28C
4J001FA01
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4J001GB03
4J001GB04
4J001GB05
4J001GB06
4J001JB02
4J001JB06
4J001JB17
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4J002DA037
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4J002DE137
4J002DE147
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4J002FA042
4J002FA047
4J002FA087
4J002FD012
4J002FD017
4J002FD136
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂を開示する。フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂は、(A)2,5-フランジカルボン酸、(B)1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、(C)1,10-デカンジアミンを含む繰り返し単位から誘導され、二酸単位の合計モル%で、(A)は二酸単位の5~45mol%を占める。290~336℃の融点や低吸水性(同じアミド結合密度のポリアミドよりも低吸水率)、優れた寸法安定性の利点を持つバイオベースの2,5-フランジカルボン酸を使用することで、環境保護を向上させる。一方、シクロヘキサンは、芳香環に比べて剛性が高く、燃焼するとより多くの硬質炭素層を形成することができ、さらに、フランジカルボン酸系ポリアミドは、アミド結合密度が高く、難燃剤と併用することで優れた相乗作用を果たし、両者の相乗作用により優れた難燃効果を発揮する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)2,5-フランジカルボン酸、(B)1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、(C)1,10-デカンジアミンを含む繰り返し単位から誘導され、二酸単位の合計モル%で、(A)は二酸単位の5~45mol%を占める、ことを特徴とする
フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂。
【請求項2】
二酸単位の合計モル%で、(A)は二酸単位の5~25mol%を占める、ことを特徴とする請求項1に記載のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂。
【請求項3】
二酸単位の合計モル%で、(A)は二酸単位の5~15mol%を占める、ことを特徴とする請求項2に記載のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂。
【請求項4】
前記フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂の相対粘度が1.8~2.4である、ことを特徴とする請求項1に記載のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂。
【請求項5】
前記フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂の融点が290~336℃である、ことを特徴とする請求項1に記載のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂。
【請求項6】
前記フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂の吸水率が1.5%以下であり、前記フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂の横/縦方向の収縮率が0.2%/0.5%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂。
【請求項7】
圧力釜に反応原料を所定の割合で加えるステップと、次に、安息香酸物質の量がジアミンと二酸の総量の2~3%、次亜リン酸ナトリウムの重量が、脱イオン水以外の他の投入原料の重量の0.05~0.15%、脱イオン水の重量が投入原料の総重量の25~35%となるように、安息香酸、次亜リン酸ナトリウム、及び脱イオン水を加えるステップと、真空吸引して、高純度窒素として保護ガスを導入し、撹拌しながら2時間内に210~230℃に昇温し、反応混合物を210~230℃で0.5~2時間撹拌するステップと、その後、撹拌しながら反応物の温度を220~240℃に昇温し、220~240℃の一定温度及び2.1~2.3MPaの一定圧力で反応を1~3時間持続し、形成された水を除去して圧力を一定に保持し、反応完了後、材料を排出し、プレポリマーを70~90℃で真空乾燥し、予備重合生成物を得て、240~260℃、40~60Paの真空条件下で前記予備重合生成物を固相で8~12時間増粘し、フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂を得るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項8】
成分として、
請求項1~6のいずれか1項に記載のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂40~70重量部と、
ノンハロゲン難燃剤10~30重量部と、
補強材0~50重量部と、を含む、ことを特徴とするポリアミド成形用組成物。
【請求項9】
前記ノンハロゲン難燃剤は、ホスフィン系難燃剤、ホスフィネート系難燃剤、次亜ホスホン酸塩系難燃剤、ホスホナイト系難燃剤、亜ホスホン酸塩系難燃剤、ホスファイト系難燃剤、亜リン酸塩系難燃剤、ホスフィンオキシド系難燃剤、フォスフィネート系難燃剤、次亜リン酸塩系難燃剤、ホスホネート系難燃剤、ホスホン酸塩系難燃剤、ホスフェート系難燃剤、又はポリリン酸塩系難燃剤から選択される少なくとも1種であり、前記次亜リン酸塩系難燃剤は、次亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸カルシウム、ジメチル次亜リン酸アルミニウム、ジエチル次亜リン酸アルミニウム、又はメチルエチル次亜リン酸アルミニウムから選択される少なくとも1種であり、前記ホスフェート系難燃剤は、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)、フェノキシホスファゼン、レゾルシノール(リン酸ジフェニル)、リン酸トリフェニル、ポリリン酸メラミン又はシアヌル酸メラミンから選択される少なくとも1種であり、前記ポリリン酸塩系難燃剤は、ポリリン酸アンモニウム、メラミンリン酸塩、メラミンピロリン酸塩、又はメラミンシアヌル酸塩から選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項8に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項10】
前記補強材は、繊維状フィラー、非繊維状フィラーから選択される少なくとも1種;前記繊維状フィラーは、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、竹繊維、麻繊維、セルロース繊維、又はアラミド繊維から選択される少なくとも1種であり、前記非繊維状フィラーは、アルミナ、カーボンブラック、クレー、リン酸ジルコニウム、カオリン、炭酸カルシウム、銅粉、珪藻土、黒鉛、雲母、珪石、二酸化チタン、ゼオライト、タルク、珪灰石、ガラスビーズ、又はガラス粉末から選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項8に記載のポリアミド成形用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料の技術分野に関し、特にフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂、その製造方法、及びポリアミド成形用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のポリアミドモノマーは、主に石油由来であり、現在、石油資源の過剰消費、二酸化炭素排出の急増、温室効果の深刻化といった問題に直面している。石油系モノマーの使用量を削減することは、二酸化炭素排出を抑制し、温室効果を防止し、環境汚染や資源制約の問題を解決し、持続可能な社会を構築することができる。バイオベースの耐高温性ポリアミドとは、主にバイオベースの脂肪族ジアミン又はバイオベースの芳香環二酸の重合によるポリアミドを指し、バイオベースのモノマーは、通常動植物から抽出され、グリーンで持続可能な発展を実現できる一方、耐高温性ポリアミド製品を多様化し、更に細分化された業界の需要を満たすことができる。
【0003】
市場の調査研究と分析の結果、バイオベースのモノマーであるデカンジアミン、ペンチレンジアミン、及びフランジカルボン酸は、実質的な進展を実現する可能性が最も高いバイオベースの高温耐性ポリアミドモノマー材料であると考えられている。デカンジアミンは、植物ヒマシ油由来で、中国国内ではすでに量産化が実現されているが、その販売価格は高く、市場競争力は弱い。ペンチレンジアミンは、グルタミン酸の発酵により得られ、中国国内では大量生産が実現されており、価格が低く、市場競争力が良好である。フランジカルボン酸は、現在知られており、近い将来工業化される可能性が最も高い唯一のバイオベースの芳香環二酸モノマーであり、現在、中国国内外でフランジカルボン酸の研究は試験研究開発段階にある。
【0004】
中国特許出願CN106536187Aには、バイオベースのモノマーである2,5-フランジカルボン酸を用いたフランに基づくポリアミドが開示されており、ジアミンは脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンなどであり、良好なガスバリア性の利点を有している。しかし、そのガスバリア性は主に短炭素鎖ジアミン(1,3-プロパンジアミン、)を重合してアミド結合密度を高めることにより達成される。しかし、このフランポリアミドは難燃性に劣る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、難燃性に優れ、融点が高く、吸水率が低く、バイオベースであるという利点を持つ、フランジカルボン酸系ポリアミドを提供することである。
本発明の別の目的は、上記のフランジカルボン酸系ポリアミドを含有する組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の技術案によって達成される。
【0007】
フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂であって、(A)2,5-フランジカルボン酸、(B)1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、(C)1,10-デカンジアミンを含む繰り返し単位から誘導され、二酸単位の合計モル%で、(A)は二酸単位の5~45mol%を占める。
【0008】
好ましくは、二酸単位の合計モル%で、(A)は二酸単位の5~25mol%を占める。
【0009】
より好ましくは、二酸単位の合計モル%で、(A)は二酸単位の5~15mol%を占める。
【0010】
好ましくは、二酸単位に占める(A)の含有量では、吸水率、収縮率はより低い。
【0011】
前記フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂の相対粘度が、1.8~2.4である。
【0012】
前記フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂の融点が290~336℃である。
【0013】
前記フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂の吸水率が1.5%以下である。
【0014】
前記フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂の横/縦方向の収縮率が0.2%/0.5%以下である。
【0015】
マグネットカップリングスターラー、凝縮管、気相ポート、供給ポート、耐圧防爆ポートが装備された圧力釜に反応原料(ジアミン、二酸)を所定の割合で加え、次に、安息香酸物質の量がジアミンと二酸の総量の2~3%、次亜リン酸ナトリウムの重量が脱イオン水以外の他の投入原料の重量の0.05~0.15%、脱イオン水の重量が投入原料の総重量の25~35%となるように、安息香酸、次亜リン酸ナトリウム(触媒)、及び脱イオン水を加え、真空吸引して、高純度窒素として保護ガスを導入し、撹拌しながら2時間内に210~230℃に昇温し、反応混合物を210~230℃で0.5~2時間撹拌し、その後、撹拌しながら反応物の温度を220~240℃に昇温し、220~240℃の一定温度及び2.1~2.3MPaの一定圧力で反応を1~3時間持続し、形成された水を除去して圧力を一定に保持し、反応完了後、材料を排出し、プレポリマーを70~90℃で真空乾燥し、予備重合生成物を得て、240~260℃、40~60Paの真空条件下で前記予備重合生成物を固相で8~12時間増粘し、フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂を得る。
【0016】
ポリアミド成形用組成物であって、成分として、
本発明の上記フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂40~70重量部と、
ノンハロゲン難燃剤10~30重量部と、
補強材0~50重量部と、を含む。
【0017】
前記ノンハロゲン難燃剤は、ホスフィン系難燃剤、ホスフィネート系難燃剤、次亜ホスホン酸塩系難燃剤、ホスホナイト系難燃剤、亜ホスホン酸塩系難燃剤、ホスファイト系難燃剤、亜リン酸塩系難燃剤、ホスフィンオキシド系難燃剤、フォスフィネート系難燃剤、次亜リン酸塩系難燃剤、ホスホネート系難燃剤、ホスホン酸塩系難燃剤、ホスフェート系難燃剤、又はポリリン酸塩系難燃剤から選択される少なくとも1種であり、前記次亜リン酸塩系難燃剤は、次亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸カルシウム、ジメチル次亜リン酸アルミニウム、ジエチル次亜リン酸アルミニウム、又はメチルエチル次亜リン酸アルミニウムから選択される少なくとも1種であり、前記ホスフェート系難燃剤は、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)、フェノキシホスファゼン、レゾルシノール(リン酸ジフェニル)、リン酸トリフェニル、ポリリン酸メラミン、又はシアヌル酸メラミンから選択される少なくとも1種であり、前記ポリリン酸塩系難燃剤は、ポリリン酸アンモニウム、メラミンリン酸塩、メラミンピロリン酸塩、又はメラミンシアヌル酸塩から選択される少なくとも1種である。
【0018】
前記補強材は、繊維状フィラー、非繊維状フィラーから選択される少なくとも1種であり、前記繊維状フィラーは、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、竹繊維、麻繊維、セルロース繊維、アラミド繊維から選択される少なくとも1種であり、前記非繊維状フィラーは、アルミナ、カーボンブラック、クレー、リン酸ジルコニウム、カオリン、炭酸カルシウム、銅粉、珪藻土、黒鉛、雲母、珪石、二酸化チタン、ゼオライト、タルク、珪灰石、ガラスビーズ、ガラス粉末から選択される少なくとも1種である。
【0019】
本発明のポリアミド成形用組成物は、USB、TYPE-C、DDR等のSMT(表面実装技術)を必要とする各種電子コネクタデバイスの製造に使用できる。これらの電子デバイスは材料の融点、吸水率、寸法安定性に高い要求があり、電子・電気、自動車などの分野に広く使用されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、従来技術と比べて、以下の有益な効果を有する。
1. 本発明のフランジカルボン酸系ポリアミドでは、二酸単位がいずれも剛性の環を含み、芳香環に比べてシクロヘキサンの方の剛性が高く、燃焼するとより多くの硬質炭素層を形成することができ、さらに、本発明のポリアミド樹脂は、アミド結合密度が高く、難燃剤と併用することで優れた相乗作用を果たすため、難燃化効果が良好である。
2. 本発明では、フランジカルボン酸とシクロヘキサンジカルボン酸との割合を調整することにより、融点が290~336℃の範囲にあり、良好な耐熱性と加工性を有するフランジカルボン酸系ポリアミドを製造することができる。
3. 本発明のフランジカルボン酸系ポリアミドは、低吸水率、高寸法安定性という利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、具体的な実施例を参照して本発明を詳細に説明する。以下の実施例は、当業者が本発明をさらに理解することを容易にするが、いかなる形態でも本発明を限定するものではない。なお、当業者にとっては、本発明の概念から逸脱することなく、若干の変形および改良が加えられてもよい。これらはいずれも本発明の保護範囲に属する。
【0022】
本発明に使用される原材料の由来は以下の通りである。
2,5-フランジカルボン酸:純度98%、中国科学院寧波材料所より購入
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸:純度98%、Sigma-Aldrich社より購入
1,6-アジピン酸:純度98%、Sigma-Aldrich社より購入
テレフタル酸:純度98%、Sigma-Aldrich社より購入
1,10-デカンジアミン:純度98%、無錫殷達尼龍有限公司より購入
1,5-ペンチレンジアミン:純度98%、上海凱賽化工有限公司より購入
1,6-ヘキサメチレンジアミン:純度98%、Sigma-Aldrich社より購入
安息香酸:分析用純粋、Sigma-Aldrich社より購入
次亜リン酸ナトリウム:分析用純粋、Sigma-Aldrich社より購入
ノンハロゲン難燃剤A:ジエチルホスフィン酸アルミニウム、OP1230、リン含有量質量23~24%、Clariant社より購入
ノンハロゲン難燃剤B:メラミンシアヌル酸塩、MELAPUR200-70、窒素質量42~44%、リン含有量質量12~14%、BASF社より購入
補強材:ガラス繊維、ECS11-4.5-560A、平均直径11ミクロン、中国巨石より購入
【0023】
実施例と比較例のポリアミド樹脂は、以下の同様な方法によって得られる。マグネットカップリングスターラー、凝縮管、気相ポート、供給ポート、耐圧防爆ポートが装備された圧力釜に反応原料(ジアミン、二酸)を表に記載の割合で加え、次に、安息香酸物質の量がジアミンと二酸の総重量の2%、次亜リン酸ナトリウムの重量が脱イオン水以外の他の投入原料の重量の0.08%、脱イオン水の重量が投入原料の総重量の25%となるように、安息香酸、次亜リン酸ナトリウム(触媒)、及び脱イオン水を加え、真空吸引して、高純度窒素として保護ガスを導入し、撹拌しながら2時間内に230℃に昇温し、反応混合物を220℃で0.5~2時間撹拌し、その後、撹拌しながら反応物の温度を240℃に昇温し、240℃の一定温度及び2.3MPaの一定圧力で反応を1~3時間持続し、形成された水を除去して圧力を一定に保持し、反応完了後、材料を排出し、プレポリマーを70~90℃で真空乾燥し、予備重合生成物を得て、260℃、50Paの真空条件下で前記予備重合生成物を固相で8~12時間増粘し、フランジカルボン酸系ポリアミド(フランジカルボン酸を含まないポリアミド)を得る。
【0024】
試験方法:
【0025】
(1)ポリアミド樹脂の相対粘度の試験方法:ポリアミドの粘度の測定方法はGB12006.1-89を参照する。具体的な試験方法:濃度0.25g/dlのポリアミドの相対粘度ηrを25±0.01℃の98%濃硫酸中で測定する。
【0026】
(2)ポリアミドの融点試験方法:ASTM D3418-2003,Standard Test Method for Transition Temperatures of Polymers By Differential Scanning Calorimetryを参照する。具体的な試験方法:Perkin Elmer Dimond DSC分析器を用いてサンプルの融点を試験する。窒素雰囲気、流速50mL/minである。試験では、まず、350℃まで20℃/minで昇温し、350℃で2min保温して、樹脂の熱履歴を除去した後、50℃まで20℃/minで冷却し、50℃で2min保持し、さらに350℃まで20℃/minで昇温し、このときの吸熱ピーク温度を融点Tmとした。
【0027】
(3)ポリアミドの吸水率:サンプルを20mm×20mm×2mmのサンプルに射出成形し、その重量をa0とする。その後、95℃の水に置いて240h後、重量をa1とする。ただし、吸水率=(a1-a0)/a0*100%である。
【0028】
(4)ポリアミドの収縮率:サンプルを20mm×10mm×2mmのサンプルプレートに射出成形し、その後、それを95℃の水に置いて240h後、ISO 294-4-2018標準に従って吸水後の収縮率を測定する。
【0029】
(5)難燃性:UL94 V-0試験標準を参照して、標準棒形試験片の寸法は、長さ125±5mm、幅13.0±0.5mm、厚さ0.8mmである。5本の試験片を23±2℃、50±5%で最低48時間処理する。ブンゼンバーナーの炎を試験片の下端の中心に合わせ、ブンゼンバーナー管の頂面中心と試験片の下端面との距離を10±1mmに保ち、この距離を10±0.5Sに保つ。必要に応じて試験片の長さ位置の変化に応じてブンゼンバーナーを移動することができる。試験片に炎を10±0.5S施した直後に、ブンゼンバーナーを約300mm/sの速度で試験片から少なくとも150mm離れたところに退避させた。同時に計時装置を用いて試験片の有炎燃焼時間T1(単位はs)を測定する。試験片の有炎燃焼停止後、ブンゼンバーナーが試験片から150mm退避していなくても、直ちにブンゼンバーナーの口部から試験片の下端面までの距離を10±1mmに保ち、再度炎を10±0.5S施し、必要な時にブンゼンバーナーを外して滴下物を除去し、炎を施した後、直ちにブンゼンバーナーを試験片から少なくとも150mm離れ、同時に計時装置を起動して試験片の有炎時間T2と無炎燃焼時間T3を測定し、T2及びT3を記録する。もし5本のスプラインはすべてT1+T2+T3<10sで、滴下して下の綿を引火することがなければ、V-0条件を満たすと考えられる。
【0030】
【0031】
実施例1~6より分かるように、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量が高いほど、融点は高く、吸水率及び収縮率は低い。
【0032】
【0033】
比較例1/2のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂は、融点が分解温度を超えるため、使用価値がない。
【0034】
比較例3より分かるように、2,5-フランジカルボン酸の含有量が高いほど、吸水率、収縮率越は高く、融点は低く、使用価値は低い。
【0035】
比較例6より分かるように、シクロヘキサン二酸をアジピン酸に変更する場合、アミド結合密度が低下していても、吸水率は上昇し、収縮率は悪くなり、また、融点は低すぎる。
【0036】
比較例7より分かるように、シクロヘキサン二酸を類似の構造のテレフタル酸に変更する場合も、吸水率は高すぎ、または、収縮率は劣る。
【0037】
比較例8より分かるように、フランジカルボン酸/シクロヘキサン二酸/ペンチレンジアミンセグメント系のポリアミドは、収縮率が劣る。
【0038】
【0039】
実施例7~12より分かるように、本発明のフランジカルボン酸系ポリアミド組成物は、良好な難燃性を有する。
【0040】
【0041】
比較例9~11より分かるように、融点が高すぎたり低すぎたりする場合、変性及び加工成形ができなくなる。
【0042】
比較例12、13、15、及び16より分かるように、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸又は1,5-ペンチレンジアミンを他の二酸/ジアミンに変更する場合、フランジカルボン酸系ポリアミド組成物又は他のポリアミド組成物は、難燃性が悪く、また、横方向及び縦方向の収縮率が高い。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)2,5-フランジカルボン酸、(B)1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、(C)1,10-デカンジアミンを含む繰り返し単位から誘導され、二酸単位の合計モル%で、(A)は二酸単位の5~45mol%を占める、ことを特徴とする
フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂。
【請求項2】
二酸単位の合計モル%で、(A)は二酸単位の5~25mol%を占める、ことを特徴とする請求項1に記載のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂。
【請求項3】
二酸単位の合計モル%で、(A)は二酸単位の5~15mol%を占める、ことを特徴とする請求項2に記載のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂。
【請求項4】
前記フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂の相対粘度が1.8~2.4である、ことを特徴とする請求項1に記載のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂。
【請求項5】
前記フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂の融点が290~336℃である、ことを特徴とする請求項1に記載のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂。
【請求項6】
前記フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂の吸水率が1.5%以下であり、前記フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂の横/縦方向の収縮率が0.2%/0.5%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂。
【請求項7】
圧力釜に反応原料を所定の割合で加えるステップと、次に、安息香酸物質の量がジアミンと二酸の総量の2~3%、次亜リン酸ナトリウムの重量が、脱イオン水以外の他の投入原料の重量の0.05~0.15%、脱イオン水の重量が投入原料の総重量の25~35%となるように、安息香酸、次亜リン酸ナトリウム、及び脱イオン水を加えるステップと、真空吸引して、高純度窒素として保護ガスを導入し、撹拌しながら2時間内に210~230℃に昇温し、反応混合物を210~230℃で0.5~2時間撹拌するステップと、その後、撹拌しながら反応物の温度を220~240℃に昇温し、220~240℃の一定温度及び2.1~2.3MPaの一定圧力で反応を1~3時間持続し、形成された水を除去して圧力を一定に保持し、反応完了後、材料を排出し、プレポリマーを70~90℃で真空乾燥し、予備重合生成物を得て、240~260℃、40~60Paの真空条件下で前記予備重合生成物を固相で8~12時間増粘し、フランジカルボン酸系ポリアミド樹脂を得るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項8】
成分として、
請求項1~6のいずれか1項に記載のフランジカルボン酸系ポリアミド樹脂40~70重量部と、
ノンハロゲン難燃剤10~30重量部と、
補強材0~50重量部と、を含む、ことを特徴とするポリアミド成形用組成物。
【請求項9】
前記ノンハロゲン難燃剤は、ホスフィン系難燃剤、ホスフィネート系難燃剤、次亜ホスホン酸塩系難燃剤、ホスホナイト系難燃剤、亜ホスホン酸塩系難燃剤、ホスファイト系難燃剤、亜リン酸塩系難燃剤、ホスフィンオキシド系難燃剤、フォスフィネート系難燃剤、次亜リン酸塩系難燃剤、ホスホネート系難燃剤、ホスホン酸塩系難燃剤、ホスフェート系難燃剤
、ポリリン酸塩系難燃剤
又はホスフィン酸塩系難燃剤から選択される少なくとも1種であり、前記次亜リン酸塩系難燃剤は、次亜リン酸アルミニウム、
又は次亜リン酸カルシウム
から選択される少なくとも1種であり、
前記ホスフィン酸塩系難燃剤は、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、
ジエチルホスフィン酸アルミニウム、又は
メチルエチルホスフィン酸アルミニウムから選択される少なくとも1種であり、前記ホスフェート系難燃剤は、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)、フェノキシホスファゼン、レゾルシノール(リン酸ジフェニル)、リン酸トリフェニル、
リン酸メラミン、又はシアヌル酸メラミンから選択される少なくとも1種であり、前記ポリリン酸塩系難燃剤は、ポリリン酸アンモニウム、
メラミンポリリン酸塩、メラミンピロリン酸塩、又はメラミンシアヌル酸塩から選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項8に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項10】
前記補強材は、繊維状フィラー、非繊維状フィラーから選択される少なくとも1種;前記繊維状フィラーは、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、竹繊維、麻繊維、セルロース繊維、又はアラミド繊維から選択される少なくとも1種であり、前記非繊維状フィラーは、アルミナ、カーボンブラック、クレー、リン酸ジルコニウム、カオリン、炭酸カルシウム、銅粉、珪藻土、黒鉛、雲母、珪石、二酸化チタン、ゼオライト、タルク、珪灰石、ガラスビーズ、又はガラス粉末から選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項8に記載のポリアミド成形用組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
前記ノンハロゲン難燃剤は、ホスフィン系難燃剤、ホスフィネート系難燃剤、次亜ホスホン酸塩系難燃剤、ホスホナイト系難燃剤、亜ホスホン酸塩系難燃剤、ホスファイト系難燃剤、亜リン酸塩系難燃剤、ホスフィンオキシド系難燃剤、フォスフィネート系難燃剤、次亜リン酸塩系難燃剤、ホスホネート系難燃剤、ホスホン酸塩系難燃剤、ホスフェート系難燃剤、ポリリン酸塩系難燃剤又はホスフィン酸塩系難燃剤から選択される少なくとも1種であり、前記次亜リン酸塩系難燃剤は、次亜リン酸アルミニウム、又は次亜リン酸カルシウムから選択される少なくとも1種であり、ホスフィン酸塩系難燃剤は、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、又はメチルエチルホスフィン酸アルミニウムから選択される少なくとも1種であり、前記ホスフェート系難燃剤は、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)、フェノキシホスファゼン、レゾルシノール(リン酸ジフェニル)、リン酸トリフェニル、リン酸メラミン又はシアヌル酸メラミンから選択される少なくとも1種であり、前記ポリリン酸塩系難燃剤は、ポリリン酸アンモニウム、メラミンポリリン酸塩、メラミンピロリン酸塩、又はメラミンシアヌル酸塩から選択される少なくとも1種である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
実施例9~16より分かるように、本発明のフランジカルボン酸系ポリアミド組成物は、良好な難燃性を有する。
【国際調査報告】