(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ハプロ不全状態のための治療薬
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20240912BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240912BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240912BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20240912BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20240912BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61P25/08
A61K31/7105
A61K31/7125
A61K31/712
C12N15/113 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518376
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 US2022076859
(87)【国際公開番号】W WO2023049800
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516056971
【氏名又は名称】キュー-ステート バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Q-State Biosciences, Inc.
【住所又は居所原語表記】179 Sidney Street, Cambridge, Massachusetts 02139 United States
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デンプシー, グラハム ティー.
(72)【発明者】
【氏名】リワーク, ケイトリン
(72)【発明者】
【氏名】マッケイブ, マット
(72)【発明者】
【氏名】フィンク, ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ガーバー, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル, スディール
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA06
(57)【要約】
本発明は、ハプロ不全に関連する障害のための治療組成物に関する。本発明は、シンタキシン結合タンパク質1(STXBP1)の発現を促進することによって早期発症てんかん性脳症を処置するために有用な、アンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。本発明は、合成アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含む組成物を提供し、この合成アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、特定のmiRNAがSTXBP1タンパク質の産生に干渉することを防止するか、またはSTXBP1転写物の5’-UTRに結合してSTXBP1タンパク質の翻訳を増強する。この組成物がSTXBP1ハプロ不全を有する患者に送達された場合、このASOは、miRNAがSTXBP1タンパク質の合成をダウンレギュレートすることを防止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の核酸を含む組成物であって、前記核酸は、シンタキシン結合タンパク質1(STXBPl)の発現を促進し、前記核酸は、
配列番号1~3、7~13、15~18、および23~107のうちの1つに対する少なくとも50%の配列類似性;
配列番号19に対する少なくとも60%の配列類似性;
配列番号22に対する少なくとも70%の配列類似性;
配列番号6に対する少なくとも75%の配列類似性;
配列番号21に対する少なくとも80%の配列類似性;
配列番号14および20のうちの1つに対する少なくとも85%の配列類似性;または
配列番号4および5のうちの1つに対する少なくとも90%の配列類似性
を有する、
組成物。
【請求項2】
前記核酸が約5塩基と約50塩基との間の長さを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記核酸が、配列番号1~25のうちの1つの内部のセグメントに対する100%マッチを有する少なくとも約5個連続する塩基の領域を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記核酸が、リボース糖上に2’修飾を有するRNA塩基を少なくとも約50%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記核酸中の塩基間結合のうちの少なくとも約50%がホスホジエステル結合ではない、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記核酸中の少なくとも約12個連続する塩基が、配列番号1~25のうちの1つの中の対応する約12個連続する塩基に対する少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記核酸の塩基の過半数が2’-O-メトキシエチル修飾リボースを有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記核酸中の過半数の塩基間結合がホスホロチオエート結合である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記核酸中の塩基のすべてが2’-O-メトキシエチルリボース糖を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記核酸が配列番号1~25のうちの1つに対する少なくとも88%の配列類似性を有し、前記核酸中の塩基のすべてが2’-O-メトキシエチルリボース糖を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記核酸が配列番号1~25のうちの1つに対する少なくとも94%の配列類似性を有し、前記核酸中の塩基のすべてが2’-O-メトキシエチルリボース糖を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記核酸中の少なくとも約90%の塩基間結合がホスホロチオエート結合である、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
前記核酸が配列番号1~25のうちの1つに対する100%の配列類似性を有し、前記核酸中の塩基のすべてが2’-O-メトキシエチルリボース糖を含み、すべての場合のUおよびCが5位でメチル化されており、前記核酸中のすべての塩基間結合がホスホロチオエート結合である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
以下の特徴(a)~(l):
(a)前記核酸がmiR-423-3pの結合部位にハイブリダイズしてmiR-423-3pの結合を遮断し、前記核酸は、配列番号1、2、および3からなる群より選択される核酸に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;
(b)前記核酸がmiR-491-5pの結合部位にハイブリダイズしてmiR-491-5pの結合を遮断し、前記核酸は、配列番号4および5からなる群より選択される核酸に対する少なくとも90%の配列類似性を有する;
(c)前記核酸がmiR-338-3pの結合部位にハイブリダイズしてmiR-338-3pの結合を遮断し、前記核酸は配列番号6に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;
(d)前記核酸がmiR-l-3pの結合部位にハイブリダイズしてmiR-l-3pの結合を遮断し、前記核酸は、配列番号7、8、9、23、24、および25からなる群より選択される核酸に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;
(e)前記核酸がmiR-423-5pの結合部位にハイブリダイズしてmiR-423-5pの結合を遮断し、前記核酸は配列番号10に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;
(f)前記核酸がmiR-154-5pの結合部位にハイブリダイズしてmiR-154-5pの結合を遮断し、前記核酸は、配列番号11および12からなる群より選択される核酸に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;
(g)前記核酸がmiR-219a-5pの結合部位にハイブリダイズしてmiR-219a-5pの結合を遮断し、前記核酸は配列番号13に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;
(h)前記核酸がmiR-424-5pの結合部位にハイブリダイズしてmiR-424-5pの結合を遮断し、前記核酸は配列番号14に対する少なくとも85%の配列類似性を有する;
(i)前記核酸がmiR-30b-5pの結合部位にハイブリダイズしてmiR-30b-5pの結合を遮断し、前記核酸は配列番号15、16、および17からなる群より選択される核酸に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;
(j)前記核酸がmiR-141-3pの結合部位にハイブリダイズしてmiR-141-3pの結合を遮断し、前記核酸は、配列番号18および19からなる群より選択される核酸に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;
(k)前記核酸がmiR-218-5pの結合部位にハイブリダイズしてmiR-218-5pの結合を遮断し、前記核酸は、配列番号20に対する少なくとも85%の配列類似性または配列番号21に対する少なくとも80%の配列類似性を有する;ならびに
(l)前記核酸がmiR-143-3pの結合部位にハイブリダイズしてmiR-143-3pの結合を遮断し、前記核酸は配列番号22に対する少なくとも75%の配列類似性を有する
のうちの1つをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記核酸が配列番号1~25のうちの1つに対する100%の配列類似性を有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記核酸中の塩基の過半数が2’-O-メトキシエチルリボース糖を含み、かつ/または前記核酸中の過半数の塩基間結合がホスホロチオエート結合である、請求項14または請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記核酸中の塩基のすべてが2’-O-メトキシエチルリボース糖を含み、前記核酸中のすべての塩基間結合がホスホロチオエート結合である、請求項14または請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記核酸が配列番号26~49のうちの1つに対する少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記塩基間結合のすべてがホスホジエステルである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記核酸が配列番号50~73のうちの1つに対する少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記塩基間結合のすべてがホスホロチオエートである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
早期発症てんかん性脳症を処置する方法であって、
それを必要とする患者に請求項1に記載の組成物を送達する工程
を含む、方法。
【請求項23】
前記組成物が血液脳関門を越えて送達される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が髄腔内注射によって送達される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記送達する工程が、前記患者においてシンタキシン結合タンパク質STXBP1の増加した発現をもたらす、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
STXBP1遺伝子におけるヘテロ接合性機能欠失変異を同定することによって前記患者を選択する工程
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記核酸が配列番号74~107のうちの1つに対する少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
前記塩基間結合の過半数またはすべてがホスホジエステルである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記核酸中の塩基の過半数が2’-O-メトキシエチルリボース糖を含む、請求項27に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、ハプロ不全に関連する障害のための治療組成物に関する。
【0002】
(配列表)
本出願は、本出願とともに提出されたST.26フォーマットの電子配列表を含み、この電子配列表を参照によって援用する。2022年9月22日に作成したこの配列表は、「QSTA-044-01WO-Sequece-Listing.xml」と名付けられており、サイズは98キロバイトである。
【背景技術】
【0003】
(背景)
早期発症てんかん性脳症は、重篤なてんかん性活動に関連し最終的な認知・感覚・運動の機能の低下に関連する、知的障害および脳機能障害によって特徴付けられる、破壊的でしばしば致死的な状態である。そのような状態は発症、転帰、および重篤度が変化するだけではなく、そのてんかんは一般には難治性てんかんとして現れ、このことは、それらのてんかんが抗てんかん薬に反応しないことを意味する。したがって、難治性早期発症てんかんを有して生まれた乳児は、非常に悪い予後を有する。
【0004】
難治性早期発症てんかんの症状としては、重篤な言語障害、社会的相互作用を処理する困難性、微細運動の困難性、多動性、失調および振戦、ならびに自閉症の特徴が挙げられる。抗てんかん薬に反応しないてんかん患者には、限定的な選択肢しか存在しない。食事の変更または電気的ニューロモデュレーションによるいくつかの成功が報告されている。しかし、すべての症例が治療可能であるわけではなく、一部の人々は、この状態とともに生きるという難題に直面している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(概要)
本発明は、シンタキシン結合タンパク質1(STXBP1)の発現を促進することによって早期発症てんかん性脳症を処置するために有用な、アンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。一部の個体は、STXBP1をコードするSTXBP1遺伝子上にヘテロ接合性機能欠失変異を有して生まれ、これは、STXBP1のハプロ不全として知られる状態である。STXBP1のハプロ不全において、STXBP1遺伝子の完全に機能的なコピーは1つだけしか存在しない。神経発生の間に、すべてのSTXBP1タンパク質は、その遺伝子のその1つのコピーをプレmRNAへと転写し、そのプレmRNAをmRNAへとスプライシングし、そのmRNAをタンパク質へと翻訳することによって、産生されなければならない。本発明は、マイクロRNA(miRNA)が遺伝子調節においてある役割を果たし得てSTXBP1タンパク質の産生に干渉し得るという、ある洞察を利用する。詳細には、特定のmiRNAが、STXBP1 RNAに結合し得てタンパク質産生を防止し得る。本発明の実施形態は、合成アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含む組成物を提供し、この合成アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、特定のmiRNAがSTXBP1タンパク質の産生に干渉することを防止する。本発明はまた、STXBP1 mRNAの特徴が翻訳効率を妨害し得るという洞察を利用する。詳細には、STXBP1 mRNAの5’非翻訳領域(5’UTR)は安定なヘアピンを形成し得、このヘアピンは、翻訳機構の動員を阻害する。さらに、STXBP1 mRNAは、翻訳が開始し得る上流オープンリーディングフレーム(uORF)を含み得、これにより、その下流の主要オープンリーディングフレームでの開始を阻害する。本発明の一部の実施形態は、ASOを含む組成物を提供し、このASOは、ヘアピンを不安定化し、かつ/またはuORFをマスクすることによって、STXBP1タンパク質の翻訳を改善する。STXBP1ハプロ不全を有する患者に送達された場合、本発明のASOは、miRNAがSTXBP1タンパク質の合成をダウンレギュレートすることを防止し、かつ/またはヘアピンもしくはuORFが翻訳効率を妨害することを防止する。
【0006】
他の方法では処置されていないSTXBP1ハプロ不全が神経発生の間に発現されるタンパク質の欠乏をもたらし得る場合、本発明の組成物による処置は、非変異体アレルからの機能的STXBP1タンパク質の産生を増加させる。STXBP1タンパク質の増加は、ハプロ不全遺伝子型にも関わらず健常な表現型をもたらす。したがって、本発明の組成物は、早期発症てんかんもしくはその症状および関連状態を処置するため、またはそれらの発症を予防するために、有用である。処置は、なんらかの症状の検出の際、またはハプロ不全の(例えば、遺伝子スクリーニングによる)検出の際に、送達され得る。
【0007】
いかなる作用機構によっても拘束されないが、miRNAがプレmRNAまたはmRNAの内部の配列(例えば、mRNAの3’UTRまたは3’調節領域)に結合するという、可能性がある。この配列特異的結合は、翻訳抑制、RNA切断、mRNA脱アデニル化、またはmRNA脱キャップ化を誘導し得る。本発明の組成物において、ASOは、そのASOをSTXBP1 mRNAまたはmiRNAのいずれかに結合させ得てmiRNA媒介性翻訳抑制を防止もしくは阻害し得る、ヌクレオチド配列を含む。好ましくは、そのASOはSTXBP1 mRNAに結合し、そのASOはそのmiRNAがその通常の標的部位に結合することを立体的に遮断し得る。一態様において、本発明は、491プレmiRNA、424プレmiRNA、423プレmiRNA、338プレmiRNA、219プレmiRNA、218プレmiRNA、154プレmiRNA、143プレmiRNA、141プレmiRNA、30プレmiRNA、および1プレmiRNAに由来する、miRNAを遮断することを含む。本発明の特定のASOは、STXBP1 mRNAとmiRNA(例えば、miR-491-5p、miR-424-5p、miR-423-5p、miR-423-3p、miR-338-3p、miR-30b-5p、miR-219a-5p、miR-218-5p、miR-154-5p、miR-143-3p、miR-141-3p、およびmiR-l-3pのいずれかなど)との相互作用を特異的に遮断するように設計される。本発明の洞察は、そのASOが、そのmiRNAか、またはSTXBP1プレRNAもしくはSTXBP1 mRNA上のそのmiRNAの結合位置のかいずれかの、配列とも、その配列の逆相補体とも、完全な同一性を有する必要がないということである。
【0008】
一態様において、miRNAの効果は、そのmiRNA中の7ヌクレオチド~8ヌクレオチド(または5塩基もしくは6塩基程度の短さである可能性がある)のシード領域が、その標的中の同族配列とマッチする場合に明白である。一態様において、そのmiRNAとmRNA標的とのマッチングは1対1ではなく、1対多および/または多対1であり、これは、1つのmiRNAが複数のmRNAを調節し得、1つのmRNAが複数のmiRNAによって調節され得ることを意味する。本発明の標的は、miRNAの結合の遮断がSTXBP1タンパク質のアップレギュレーションおよびSTXBP1ハプロ不全の有効な処置を提供する、miRNAであり得る。短いシード領域だけがmiRNA効果のためには必要であり、標的化するためのmiRNAを選択することが難題であるという可能性があるので、正しいmiRNAまたはその逆相補体に対して限定的な配列同一性しか有しない一部のASOは、STXBP1ハプロ不全を処置することにおいて有用である。したがって、本開示は、発明され早期発症てんかんなどの状態またはその症状を処置することにおいて有用であることが発見された、方法および組成物を提供し、それらにおいて、その新規な有用性は、開示され本発明の組成物によって対処される特定のmiRNA標的に、少なくとも部分的には存在し得る。
【0009】
他の態様において、本開示の方法および組成物は、5’UTRヘアピンを不安定化するASOを提供すること、および/または潜在的ORF(例えば、uORF)をマスクすることによって、作動する。本発明の組成物は、少なくとも1種の核酸を含み得、その核酸は、シンタキシン結合タンパク質1(STXBP1)の発現を促進し、配列番号26~73のうちの1つに対する少なくとも50%の配列類似性を有する。好ましくは、その核酸は、そのリボース糖上に2’-O-メチルを有するが、配列番号26~配列番号73のうちの1つに対して実質的に同一な(例えば、少なくとも90%以上同一な)配列を有する。ホスホロチオエート結合が含まれ得るが、これらの態様のASOは、好ましくは、ほとんどまたは完全にホスホジエステル(PO)の結合を有し得る。これらの態様のASOは、STXBP1 mRNAの5’UTR中のヘアピンを不安定化すること、uORFをマスクすること、またはそれらの両方によって、作動し得る。詳細には、配列番号26~73に基づくASOは、STXBP1 mRNAの5’UTR中のヘアピンを不安定化することによって、機能し得る。配列番号27~31、45~47、51~55、および69~71に基づくASOは、STXBP1 mRNAの5’UTR中のヘアピンを不安定化すること、およびuORFをマスクすることによって、作動し得る。
【0010】
本発明の組成物は、少なくとも1種の核酸を含み得、その核酸は、シンタキシン結合タンパク質1(STXBP1)の発現を促進し、配列番号74~107のうちの1つに対する少なくとも50%の配列類似性を有する。好ましくは、その核酸は、配列番号74~配列番号107のうちの1つに対して実質的に同一な(例えば、少なくとも90%以上同一な)配列を有するが、その核酸中の塩基の過半数は2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)リボース糖を有し、かつ/またはその核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合を有するが、これらの態様のASOはホスホジエステル(PO)結合を有し得る。これらの態様のASOは、STXBP1 mRNAの3’調節領域を不安定化および/もしくはマスクすること、ならびに/またはuORFをマスクすることによって、作動し得る。詳細には、配列番号85~107に基づくASOは、STXBP1 mRNAの3’調節領域との相互作用によって、機能し得る。
【0011】
特定の態様において、本発明は、少なくとも1種の核酸を含む組成物を提供し、その核酸は、シンタキシン結合タンパク質1(STXBP1)の発現を促進し、配列番号1~3、7~13、15~18、および23~107のうちの1つに対する少なくとも25%の配列類似性;配列番号1~3、7~13、15~19、および23~107のうちの1つに対する少なくとも60%の配列類似性;配列番号1~3、7~13、15~19、および22~107のうちの1つに対する少なくとも70%の配列類似性;配列番号1~3、6~13、15~19、および22~107のうちの1つに対する少なくとも75%の配列類似性;配列番号1~3、6~13、15~19、および21~107のうちの1つに対する少なくとも80%の配列類似性;配列番号1~3、および6~107のうちの1つに対する少なくとも85%の配列類似性;ならびに/または配列番号1~107のうちの1つに対する少なくとも90%の配列類似性を有する。好ましくは、その核酸は、少なくとも約4~6塩基の連続するストレッチを含み、その連続するストレッチは、配列番号1~107のうちの1つの中の対応する連続する領域に対する少なくとも80%の配列類似性を(その連続するストレッチにおいて)有する。好ましくは、その連続するストレッチは、所定の配列中の対応するストレッチと100%マッチし、より好ましくは、その連続するマッチするストレッチは約4塩基長または約5塩基長または約6塩基長または約7塩基長または約8塩基長または約9塩基長である。その連続するストレッチは、好ましくは、シード領域に対応し、そのシード領域によって、関連するmiRNAがSTXBP1 RNA(例えば、プレmRNAまたはmRNA)に最初に結合する。実施形態において、その核酸は、約5塩基と約50塩基との間の長さを有し、その核酸は、配列番号1~25のうちの1つの内部のセグメントに対する100%マッチを有する少なくとも約5個連続する塩基の領域を有する。その核酸は、リボース糖上に2’修飾を有するRNA塩基を少なくとも約50%含み得る。その核酸中の塩基間結合のうちの少なくとも約50%は、ホスホジエステル(PO)結合ではない可能性がある。それらの結合のいくらかまたはすべては、POまたはホスホロチオエート(PS)であり得る。一部の実施形態において、その核酸中の少なくとも約12個連続する塩基は、配列番号1~25のうちの1つの中の対応する約12個連続する塩基に対する少なくとも90%の配列同一性を有する。好ましくは、その核酸の塩基の過半数は、2’-O-メトキシエチル修飾リボース、2’-OMe、またはそれらの組合せを有する。その核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート(PS)結合であり得る。特定の実施形態において、その核酸中の塩基のすべては2’-O-メトキシエチルリボース糖を含み、かつ/またはすべての結合はPSである。
【0012】
一部の実施形態において、その核酸は配列番号1~25のうちの1つに対する少なくとも90%の配列類似性を有し、その核酸中の塩基のすべては2’-O-メトキシエチルリボース糖を含む。その核酸は配列番号1~25のうちの1つに対する少なくとも94%の配列類似性を有し得、その核酸中の塩基のすべては2’-O-メトキシエチルリボース糖である。特定の実施形態において、その核酸中の少なくとも約90%の塩基間結合はホスホロチオエート結合である。その核酸は配列番号1~25のうちの1つに対する100%の配列類似性を有し得、その核酸中の塩基のすべては2’-O-メトキシエチルリボース糖であり得、その核酸中のすべての塩基間結合はホスホロチオエート結合であり得る。
【0013】
本発明の組成物は、以下の特徴(a)~(l)を有する核酸のうちの1種またはそれらの核酸の任意の組合せを含み得る:(a)その核酸はmiRNA(例えば、miR-423-3p)の結合部位にハイブリダイズしてそのmiRNA(例えば、miR-423-3p)の結合を遮断し、その核酸は、配列番号1、2、および3からなる群より選択される核酸に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;(b)その核酸はmiRNA(例えば、mirR-491-5p)の結合部位にハイブリダイズしてそのmiRNA(例えば、mirR-491-5p)の結合を遮断し、その核酸は、配列番号4および5からなる群より選択される核酸に対する少なくとも90%の配列類似性を有する;(c)その核酸はmiRNA(例えば、miR-338-3p)の結合部位にハイブリダイズしてそのmiRNA(例えば、miR-338-3p)の結合を遮断し、その核酸は配列番号6に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;(d)その核酸はmiRNA(例えば、miR-1-3p)の結合部位にハイブリダイズしてそのmiRNA(例えば、miR-1-3p)の結合を遮断し、その核酸は、配列番号7、8、9、23、24、および25からなる群より選択される核酸に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;(e)その核酸はmiRNA(例えば、miR-423-5p)の結合部位にハイブリダイズしてそのmiRNA(例えば、miR-423-5p)の結合を遮断し、その核酸は配列番号10に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;(f)その核酸はmiRNA(例えば、miR-154-5p)の結合部位にハイブリダイズしてそのmiRNA(例えば、miR-154-5p)の結合を遮断し、その核酸は、配列番号11および12からなる群より選択される核酸に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;(g)その核酸はmiRNA(例えば、miR-219a-5p)の結合部位にハイブリダイズしてそのmiRNA(例えば、miR-219a-5p)の結合を遮断し、その核酸は配列番号13に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;(h)その核酸はmiRNA(例えば、mirR-424-5p)の結合部位にハイブリダイズしてそのmiRNA(例えば、mirR-424-5p)の結合を遮断し、その核酸は配列番号14に対する少なくとも85%の配列類似性を有する;(i)その核酸はmiRNA(例えば、miR-30b-5p)の結合部位にハイブリダイズしてそのmiRNA(例えば、miR-30b-5p)の結合を遮断し、その核酸は、配列番号15、16、および17からなる群より選択される核酸に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;(j)その核酸はmiRNA(例えば、miR-141-3p)の結合部位にハイブリダイズしてそのmiRNA(例えば、miR-141-3p)の結合を遮断し、その核酸は、配列番号18および19からなる群より選択される核酸に対する少なくとも75%の配列類似性を有する;(k)その核酸はmiRNA(例えば、miR-218-5p)の結合部位にハイブリダイズしてそのmiRNA(例えば、miR-218-5p)の結合を遮断し、その核酸は配列番号20に対する少なくとも85%の配列類似性を有するかまたはその核酸は配列番号21に対する少なくとも80%の配列類似性を有する;ならびに(l)その核酸はmiRNA(例えば、miR-143-3p)の結合部位にハイブリダイズしてそのmiRNA(例えば、miR-143-3p)の結合を遮断し、その核酸は配列番号22に対する少なくとも75%の配列類似性を有する。この段落において、「75%」、「80%」、「85%」、および「90%」の任意の出現が、より好ましい実施形態を首尾よく記載するために、それに応じて、より高い値「85%」で、95%で、またはさらには「99%」で置き換えられ得る。
【0014】
特定の立体遮断性オリゴヌクレオチド(SBO)の実施形態において、その核酸は、配列番号1~25および74~84のうちの1つに対する100%の配列類似性を有し、例えば、その核酸中の塩基の過半数は2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)リボース糖を有し、かつ/またはその核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合を有する。その核酸は、修飾された糖(例えば、2’-MOEおよび/もしくは2’-O-メチル)の任意の組合せならびに/または塩基間結合の任意の組合せ(例えば、任意の組合せのPS/PO)をその骨格中に有し得る。必要に応じて、その核酸中の塩基のすべては2’-O-メトキシエチルリボース糖を含み、その核酸中のすべての塩基間結合はホスホロチオエート結合である。その窒素塩基はいずれもメチル化され得る(すなわち、5-メチルシトシン(mC)および/または5-メチルウリジン(mU)(これはTである))。
【0015】
他のUTR/ORFの実施形態において、その核酸は配列番号26~73のうちの1つに対する100%の配列類似性を有し、例えば、その核酸中の塩基の過半数は2’-O-メチルリボース糖を有し、かつ/またはその核酸中の過半数の塩基間結合はホスホジエステル結合を有する。その核酸は、修飾された糖(例えば、2’-MOEおよび/もしくは2’-OMe)の任意の組合せならびに/または塩基間結合の任意の組合せ(例えば、任意の組合せのPS/PO)をその骨格中に有し得る。必要に応じて、その核酸中の塩基のすべては2’-OMeリボース糖を含む。窒素塩基はメチル化され得る(すなわち、mC、mU(これはTである))。配列番号26~49について、その核酸中のすべての塩基間結合はホスホジエステル結合である。配列番号50~73について、その核酸中のすべての塩基間結合はホスホロチオエート結合である。
【0016】
3’調節領域を標的とする他の実施形態において、その核酸は配列番号85~107のうちの1つに対する100%の配列類似性を有し、例えば、その核酸中の塩基の過半数は2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)リボース糖を有し、かつ/またはその核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合を有する。その核酸は、修飾された糖(例えば、2’-MOEおよび/もしくは2’-O-メチル)の任意の組合せならびに/または塩基間結合の任意の組合せ(例えば、任意の組合せのPS/PO)をその骨格中に有し得る。必要に応じて、その核酸中の塩基のすべては2’-O-メトキシエチルリボース糖を含み、その核酸中のすべての塩基間結合はホスホロチオエート結合である。その窒素塩基はいずれもメチル化され得る(すなわち、5-メチルシトシン(mC)および/または5-メチルウリジン(mU)(これはTである))。
【0017】
関連する態様は、早期発症てんかん性脳症を処置する方法を提供する。方法は、それを必要とする患者に上記の組成物のうちの1つを送達する工程を含む。好ましくは、その組成物は血液脳関門を越えて送達される。その組成物は髄腔内注射によって送達され得る。その送達する工程は、その患者においてシンタキシン結合タンパク質1(STXBP1)の増加した発現をもたらす。方法は、STXBP1遺伝子におけるヘテロ接合性機能欠失変異を同定することによってその患者を選択する工程を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、21種のASOのスクリーニングからの結果を示す。
【0019】
【
図2】
図2は、線維芽細胞における特定のASOの用量反応を示す。
【0020】
【0021】
【
図4】
図4は、処理後7日のiPSC由来NGN2ニューロンにおける21種のSTXBP1 miRNA遮断性ASOのスクリーニングからの結果を示す。
【0022】
【
図5】
図5は特定のASOのスクリーニングからの結果を示す。
【0023】
【
図6】
図6は特定のASOのスクリーニングからの結果を示す。
【0024】
【0025】
【
図8】
図8はASOのスクリーニングからの結果を示す。
【0026】
【
図9】
図9は、SH-SY5Y神経芽細胞腫細胞(処理後48時間)に対する8種のSTXBP1 miRNA遮断性ASOのスクリーニングからの結果を示す。
【0027】
【
図10】
図10~
図11はウェスタンブロットゲルの画像を示し、これらは、ヒトiPSC由来NGN2ニューロンにおけるmiRNA遮断性ASOでのSTXBP1タンパク質のブーストの例示的スクリーニングの結果を提示する。
【
図11】
図10~
図11はウェスタンブロットゲルの画像を示し、これらは、ヒトiPSC由来NGN2ニューロンにおけるmiRNA遮断性ASOでのSTXBP1タンパク質のブーストの例示的スクリーニングの結果を提示する。
【0028】
【
図12】
図12~
図13は、培養中の2つの時点での、ヒトiPSC由来NGN2ニューロンにおけるいくつかの3’miRNA標的化ASOにわたるSTXBP1タンパク質のブーストについてのスクリーニングの概要を提示する。
【
図13】
図12~
図13は、培養中の2つの時点での、ヒトiPSC由来NGN2ニューロンにおけるいくつかの3’miRNA標的化ASOにわたるSTXBP1タンパク質のブーストについてのスクリーニングの概要を提示する。
【0029】
【
図14】
図14は、STXBP1 ASOのヒットがヒトiPSC由来NGN2ニューロンにおける用量反応でSTXBP1タンパク質を調節することを示す結果を提示する。
【0030】
【
図15】
図15は、ウェスタンブロット法でヒトiPSC由来ニューロンにおいてスクリーニングされた5’STXBP1 ASOの定量化を示し、これは、本発明のいくつかのASOについてのSTXBP1タンパク質のブーストを明らかにする。
【0031】
【
図16】
図16~
図17は、BRITE(商標)System(Q-State Biosciences,Inc.)を使用した全光型(all-optical)電気生理学的シナプス細胞表現型の同定を示す結果を提示する。
【
図17】
図16~
図17は、BRITE(商標)System(Q-State Biosciences,Inc.)を使用した全光型(all-optical)電気生理学的シナプス細胞表現型の同定を示す結果を提示する。
【0032】
【
図18】
図18は、レンチウイルス送達によるSTXBP1遺伝子の再導入によるシナプス表現型レスキューを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(詳細な説明)
本発明は、シンタキシン結合タンパク質1(STXBP1)の発現を促進することによって早期発症てんかん性脳症を処置するために有用な、アンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。一部の個体は、STXBP1をコードするSTXBP1遺伝子上にヘテロ接合性機能欠失変異を有して生まれ、これは、STXBP1のハプロ不全として知られる状態である。本発明は、マイクロRNA(miRNA)が、STXBP1タンパク質の産生に干渉する役割を遺伝子調節において果たし得るという、洞察を利用する。詳細には、特定のmiRNAがSTXBP1 RNAに結合し得てタンパク質産生を防止し得ると、考えられる。本発明は、合成アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含む組成物を提供し、この合成アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、特定のmiRNAがSTXBP1タンパク質の産生に干渉することを防止する。この組成物がSTXBP1ハプロ不全を有する患者に送達された場合、そのASOは、miRNAがSTXBP1タンパク質の合成をダウンレギュレートすることを防止する。
【0034】
本発明の組成物および方法は、少なくとも1種の核酸を好ましくは使用し、その核酸は、シンタキシン結合タンパク質1の発現を促進し、その核酸は、配列番号1~3、7~13、15~18、および23~107のうちの1つに対する少なくとも25%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号1~3、7~13、15~19、および23~107のうちの1つに対する少なくとも60%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号1~3、7~13、15~19、および22~107のうちの1つに対する少なくとも70%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号1~3、6~13、15~19、および22~107のうちの1つに対する少なくとも75%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号1~3、6~13、15~19、および21~107に対する少なくとも80%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号1~3、および6~107に対する少なくとも85%の配列同一性もしくは配列類似性;ならびに/または配列番号1~107のうちの1つに対する少なくとも90%の配列同一性もしくは配列類似性を有する。好ましい態様において、その核酸は、配列番号1~3、7~13、15~19、および23-25のうちの1つに対する少なくとも25%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号19に対する少なくとも60%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号22に対する少なくとも70%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号6に対する少なくとも75%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号21に対する少なくとも80%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号14および21のうちの1つに対する少なくとも85%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号4および5のうちの1つに対する少なくとも90%の配列同一性もしくは配列類似性を有する。好ましくは、その核酸は、少なくとも約6塩基の連続するストレッチを含み、この連続するストレッチは、配列番号1~25のうちの1つの中の対応する連続する領域に対する少なくとも80%の配列類似性を有する。好ましくは、その連続するストレッチは、所定の配列中の対応するストレッチと100%マッチし、より好ましくは、その連続するマッチするストレッチは約4塩基長または約5塩基長または約6塩基長または約7塩基長または約8塩基長または約9塩基長である。
【0035】
STXBP1遺伝子は、ヒト9番染色体に位置し、シナプス前神経伝達物質放出のために必須のタンパク質(シンタキシン結合タンパク質1(STXBP1))をコードする。STXBP1遺伝子におけるヘテロ接合性機能欠失変異は、早期発症乳児てんかん性脳症IV型(EIEE4)(STXBP1脳症としても知られ、これは、重篤な発作および知的障害によって特徴付けられる障害である)をもたらす。STXBP1脳症は、3番目に多い遺伝的てんかん(米国において約2000人の既知患者)であり、推定発生率は1:30,000である。本発明は、ハプロ不全障害(例えば、STXBP1脳症)を矯正するためのアプローチとして、罹患していないアレルからの発現のASO媒介性ブーストを提供する。STXBP1脳症は、STXBP1遺伝子におけるヘテロ接合性機能欠失変異によって一般的には引き起こされ、既知の疾患機構を含む。STXBP1脳症患者は、典型的な抗てんかんレジメン(一般的に使用される抗てんかん薬はフェノバルビタール、バルプロ酸、およびビガバトリンである)では、不良な転帰を典型的には経験する。本発明は、この疾患の根本原因に対処して疾患修飾の可能性を有する処置において使用され得る組成物および方法を用いる、新規で異なるアプローチを提供する。罹患していないアレルからのSTXBP1発現のASO媒介性ブーストは、この疾患の遺伝子機構に直接的に対処する。
【0036】
本発明の組成物およびその効果は、Optopatchアッセイを用いて評価され得る。一般に、Optopatchは、光刺激(例えば、光に反応してニューロンが発火することを引き起こす、改変型藻類チャネルロドプシン)と神経活性の光レポーター(ニューロン膜電位に比例する光を放出してニューロン活性のシグナルを生じる、改変型アーキロドプシン)との下で神経活性化を提供する光遺伝学的構築物を含む、インビトロニューロンの使用を含む。そのインビトロニューロンは蛍光顕微鏡機器でアッセイされ得、そのインビトロニューロンはまた、例えば、染色(例えば、免疫細胞化学)、RNA-Seq、または他のそのようなアッセイによっても、(例えば、後に)評価され得る。任意の適切な光遺伝学的構築物、光遺伝学顕微鏡、または他のアッセイが使用され得る。例えば、適切な光遺伝学的構築物としては、米国特許第9,594,075号(参照によって援用される)に記載されるものが挙げられる。適切な光遺伝学顕微鏡としては、米国特許第10,288,863号(参照によって援用される)に記載されるものが挙げられる。本発明の組成物およびその効果は、STXBP1遺伝子中に変異(ヘテロ接合性機能欠失変異およびホモ接合性機能欠失変異の両方)を有するiPSC由来ニューロン細胞株を使用して、評価され得る。Optopatch表現型決定は、このような細胞株に対して実施される。
【0037】
本発明の組成物および方法を提供するために、ASOの配列は、以下などの種々の要因のバランスを保つことを含むプロセスによって選択され得る:1.標的転写物領域を決定して配列(可能なすべてのNマー)を作製する;2.実験的制約(アイソフォーム、相同性)に基づく除外;3.ヒトおよび非ヒト霊長類(アカゲザルおよびカニクイザル)における予測されるオフターゲットのmRNA、プレmRNA、miRNA、およびlncRNAのヒットに基づく除外;4.配列特徴(テトラG、テトラC、CpG、パリンドローム、GC含量、およびポリXストレッチ)に基づく除外/フィルタリング;5.熱力学的パラメータ(Tm、ヘアピンΔG、ASO二重鎖ΔG、ASO:標的ΔG)に基づいてフィルタリングする;ならびに7.熱力学的パラメータ、間隔、および実験の目標(全体的ΔG)に基づいて領域内部のASOを選択する。標的転写物領域を決定するために、文献、配列決定に基づくアッセイ、および遮断するmiRNA結合部位を同定するためのモデルに由来する基準が、適用され得る。この基準に合格する標的について、7ヌクレオチド~8ヌクレオチドの予測されるmiRNA結合部位が、シード配列と、種々の文脈情報を含むモデルとに基づいて、同定される。保存部位は、機能的である/関連性がある可能性がより高い。
【0038】
本発明の組成物で対処するための標的を同定することは、任意の適切な技術または技術の組合せを使用して実施され得る。好ましい実施形態は、本発明の標的を同定し本発明の配列を設計するためのツールとして、CLIP-Seq、TargetScan、およびmiRNAアトラスを使用した。
【0039】
架橋免疫沈降(CLIP)は、RNAの相互作用および修飾を分析するためにUV架橋および免疫沈降を使用し、架橋免疫沈降(CLIP)は、ゲノムワイドRNA相互作用マップを作成するために配列決定とともに使用され(CLIP-Seqと呼ばれる)、組織および細胞の培養物およびサンプルにおけるマイクロRNA-mRNA相互作用およびタンパク質-RNA相互作用のマップを解読することによるマイクロRNA標的の同定のために使用された。Thomson、2011、Experimental strategies for microRNA target identification、Nucleic Acids Res、39(16):6845~53(参照によって援用される)を参照のこと。
【0040】
TargetScanは、各miRNAのシード領域とマッチする保存された8マー、7マー、および6マーの部位の存在について探索することによってmiRNAの生物学的標的を予測する、デジタルツールである。Lewis、2005、Conserved Seed Pairing,Often Flanked by Adenosines,Indicates that Thousands of Human Genes are MicroRNA Targets.、Cell、120:15~20(参照によって援用される)を参照のこと。TargetScanは、保存部位、ほとんど保存されていない部位、および保存された3’対形成によって補償されるミスマッチを有するシード領域中の部位、ならびに中心部位を同定するために、使用され得る。Friedman、2009、Most mammalian mRNAs are conserved targets of MicroRNAs、Genome Res、19:92~105およびShin、2010、Expanding the microRNA targeting code:functional sites with centered pairing、Mol Cell、38(6):789~802(両方とも参照によって援用される)を参照のこと。TargetScanは、それらの部位の累積重み付きコンテクスト++スコア(cumulative weighted context++ score)を使用して算出された予測標的化効率に基づいて、予測をランク付けする。予測はまた、それらの保存された標的化の確率によって、ランク付けされ得る。TargetScanHumanは、UCSC全ゲノムアラインメントによって規定される、ヒト3’UTRおよびそのオルソログに対するマッチを考慮する。保存された標的化はまた、オープンリーディングフレーム(ORF)内部でも検出された。
【0041】
miRNAのアトラスが存在する。例えば、The Human miRNA Tissue Atlasは、62種の組織にわたる組織特異的マイクロRNA(miRNA)発現のカタログである。Ludwig、2016、Distribution of miRNA expression across human tissues、Nucleic Acids Res、44(8):3865~77(参照によって援用される)を参照のこと。別の例は、492種の短鎖RNA(sRNA)ライブラリーをディープシークエンシングし、396種のヒトRNAサンプルおよび47種のマウスRNAサンプルに由来するCap Analysis Gene Expression(CAGE)データとマッチングすることによって作成した、miRNAおよびそれらのプロモーターの統合的発現アトラスである。de Rie、2017、An integrated expression atlas of miRNAs and their promoters in human and mouse、Nat Biotech、35:872~878(参照によって援用される)を参照のこと。その2017年のアトラスについて、1,357種のヒトmiRNAおよび804種のマウスmiRNAのプロモーターが同定され、それらのプロモーターは、種間で強い配列保存を示した。一次miRNA発現レベルと成熟miRNA発現レベルは相関していることが見出され、このことは、その一次miRNA測定値を、合計1,829種のヒトおよび1,029種のマウスのCAGEライブラリーにおいて成熟miRNAレベルについての代用品として使用することを可能にした。そのようなツールは、初代哺乳動物細胞におけるmiRNA発現およびプロモーターのアトラスを提供して、miRNA発現パターンおよび転写制御領域の詳細な分析の基礎を確立する。そのようなmiRNAアトラスは、本発明の標的を同定するために使用され得る。
【0042】
本開示の核酸はCLIP-Seqデータから情報を抽出することによって選択され、本開示の核酸はまた、以下:miRNAシード結合領域を完全に遮断し、それにより立体遮断性オリゴヌクレオチド(SBO)として機能する;ヒトまたはモデル霊長類(例えば、カニクイザル)においてオフターゲットヒットを全く(または最小限しか)有しない;そのモデル霊長類において密接なマッチ(例えば、好ましくは、正確に20マーまたは19/20ヌクレオチドのいずれか)を有する;全体的ΔGを最小化すること、正確なカニクイザル(cyno)相同性を求めること、またはそのSBOの末端にミスマッチを配置することのバランスをとる、という要件のバランスを最適化し;そして問題になる配列モチーフ(例えば、高GC含量もしくはヘアピン)または熱力学的特性(例えば、極端なTm)を回避するためにも選択された。適用される基準は、遮断する標的miRNAを同定する。同定されたmiRNAとしては、miR-491-5p、miR-424-5p、miR-423-5p、miR-423-3p、miR-338-3p、miR-30b-5p、miR-219a-5p、miR-218-5p、miR-154-5p、miR-143-3p、miR-141-3p、およびmiR-1-3pが挙げられる。
【0043】
miR-491-5p標的は、腫瘍抑制因子としても機能すると理解される。そのmiRNAがSTXBP1の翻訳を抑制する能力を遮断することは、そのmiRNAの他の機能(例えば、腫瘍の抑制)において関連がある顕著な結果を何も有しない可能性がある。同様に、miR-424-5pは、STXBP1転写物に対するそのmiR-424-5pの効果に干渉することがそれ自体を機構的に妥当な経路として示唆するように細胞増殖を調節すると、報告されている。文献は、miR-423-5pおよびiR-423-3pが有用なバイオマーカーまたは診断指標であること、およびこれらが悪性神経膠腫に関連があり得ることを報告している。miR-338-3pは増殖、アポトーシス、およびニューロン成熟を調節すると疑われている。miR-30b-5pは脂質代謝および増殖に関連がある。miR-219a-5pは、EYA2の3’-UTRへの結合を介してEYA2発現を抑制すると理解されている。文献は、miR-218-5pが皮膚および毛包の発達において役割を果たすと、報告している。miR-154-5pは、Wnt11の3’UTRを直接的に標的とすることによって、Wnt/PCP経路を通じて脂肪由来間葉系幹細胞の骨形成分化を負に調節する。文献は、miR-143-3pが骨肉腫を阻害すると報告している。miR-141-3pは、増殖を抑制しアポトーシスを促進する。文献は、細胞質分裂のタンパク質調節因子1(protein regulator of cytokinesis 1)を標的とすることおよび腺癌腫瘍形成を阻害することをを含む、miR-l-3pの種々の役割を報告している。これらのmiRNAのこのような役割が文献において報告されており、このような役割が医学のオンラインライブラリーの使用を通じて理解され得ることを、当業者は認識する。これらのmiRNAの機能から、本発明の組成物の臨床的有用性を上回るさらなる有害作用は何も、STXBP1転写物内部のmiRNAのシード結合部位を遮断することからは生じない可能性があると考えられ得る。したがって、患者細胞中のSTXBP1転写物中のこれらの標的を標的とすることが機構的に妥当であること、およびこれらのmiRNAの当該分野で認識された役割がそのような治療戦略と適合することもまた、当業者は認識する。
【0044】
これらの標的を選択して、STXBP1 RNA中のこれらの標的の少なくともシード結合部位にハイブリダイズする核酸が、提供(例えば、合成)され得る。したがって、少なくとも5個連続する塩基のストレッチを有する核酸を本発明の組成物が含み、そのストレッチがSTXBP1 RNA中の5個連続する同族塩基の逆相補体であり、その5個連続する同族塩基にmiRNAが他の状況では結合する場合に、本発明の組成物は有用であることが、見出され得る。そのような核酸は、そのmiRNAのダウンレギュレート効果を阻害することによってSTXBP1タンパク質の合成をアップレギュレートするために有用な立体遮断性オリゴヌクレオチド(SBO)として、提供される。したがって、本発明は、本開示の標的miRNAがSTXBP1タンパク質合成に干渉することを遮断する、新規なSBOを提供する。本発明のSBOは、臨床的有用性を増進する特徴を好ましくは含む。本開示の配列は、全体的ΔGを最小化しながらモデル霊長類において相同性を有することのバランスを保つ。その配列は、好ましくは、SBOの末端にミスマッチを配置し、問題のある配列モチーフ(例えば、ヘアピン)または熱力学的特性を回避する。配列番号1~25および74~107に基づく本発明のSBOは、好ましくは、2’-O-メトキシエチル修飾リボース糖(「2’-MOE」)を含み、好ましくはホスホロチオエート(PS)塩基間結合もまた含む。必要に応じて、2’-O-メチルと2’-MOEとの任意の組合せが含まれ得、PS骨格とPO骨格との任意の組合せが含まれ得る。そのような特徴は、そのSBOを細胞中での加水分解または分解(酵素触媒性もしくは化学触媒性)に対して抵抗性にし得る。したがって、それらの特徴は、本発明の組成物についての臨床的に有用な長いインビボ半減期を増進し得る。
【0045】
5’末端および3’末端のうちの少なくとも一方または両方での(好ましくは全体にわたる)修飾(例えば、2’-O-メトキシエチル)がヌクレアーゼ分解に対する増加した抵抗性を提供するだけではなく、それらの修飾は、毒性を減少し得、相補的RNAへの結合について増加した親和性を提供し得る。Vickers、2001、Fully modified 2’ MOE oligonucleotides redirect polyadenylation、Nucleic Acids Res、29(6):1293~9(参照によって援用される)を参照のこと。標準的RNA塩基と比較して、2’-MOE塩基は、ヌクレアーゼ分解に対する増加した抵抗性、減少した毒性、および相補的RNAへ結合についての増加した親和性を提供する。
【0046】
ヌクレアーゼ抵抗性を増加するために、本発明の組成物は、そのオリゴに対するホスホロチオエート(PS)修飾を好ましくは含む。ホスホロチオエートにおいて、硫黄原子がそのオリゴのリン酸骨格中の非架橋酸素の代わりになる。PSオリゴは安定性を提供し得る。ホスホロチオエート結合はまた血清タンパク質への結合を促進し、これは、そのASOのバイオアベイラビリティを増加し、生産的細胞取込みを促進する。
【0047】
表1は、本開示の組成物中の核酸において使用され得る塩基の配列を提供する。
(表1)
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【0048】
表1は、「注記」の列を含み、この列では、各エントリーが、コンマで分けられた3つの部分(機構、糖修飾、および塩基間結合)を有する。1番目の部分はm、5、または5*を示す。各注記の2番目の部分はMOEまたはOMeのいずれかを示す。各注記の3番目の部分はPSまたはPOを示す。1番目の部分において、「m」はmiRNAの結合を遮断することにより作動するASOを示し、「5」は5’UTRを不安定化するASOを示し、アステリスク(「*」)はuORFをマスクすると疑われるASOを示す。2番目の部分において、「MOE」はその糖が実質的または全体的に2’-O-メトキシエチルリボースであることが好ましいASOを示し、「OMe」はその糖が実質的または全体的に2’-O-メチルリボースであることが好ましいASOを示す。表1において、配列番号1~25および74~107はDNA様の特徴(Tの使用により示される)を使用し、配列番号26~73はRNA様の特徴(Uの使用により示される)を使用する。その使用法は、合成オリゴヌクレオチドを注文する場合に利用可能な特定の産業上の基準と一致し、その基準により、特定の供給業者は、2’-MOEを含むことを特定する場合にはTを使用し、2’-O-Meを含む場合にはUを使用する。各注記の3番目の部分において、「PS」はその塩基間結合が実質的または全体的にホスホロチオエート結合であることが好ましいASOを示し、一方、「PO」はその塩基間結合が実質的または全体的にホスホジエステル結合であることが好ましいASOを示す。配列番号26~73について、その窒素塩基のいずれもがmCおよび/またはmUであり得る。好ましくは、mUは2’-MOE塩基のために使用される。「実質的に」とは、記載された特性の少なくとも85%を有することを含む。例えば、20塩基オリゴについて、その19個の結合のうち、それらすべてがPSであり得るか、またはそれらが実質的にすべてPS(例えば、18個のPSおよび1個のPO)であり得、その分子が本質的に同様に機能することを、分子生物学の当業者は認識する。
【0049】
表1において列挙された配列は、ベースライン参照物と扱われ得、本発明の組成物中の核酸(例えば、立体遮断性オリゴヌクレオチドまたはSBO)は、列挙された配列のうちの1つと比較して記載され得る。例えば、ミスマッチが許容されることが見出され得、これは、STXBP1転写物が配列番号1~107のうちの1つの逆相補体を含む場合でさえ、本発明の核酸は、それが配列番号1~107のうちの1つに対する100%未満のマッチである場合でさえ十分に機能することを意味する。結果は、ミスマッチがそのSBOの末端付近で最も許容されること、およびmiRNAシード配列の結合領域を遮断するために最も重要であり、そのシードは約7塩基長~約8塩基長であり得、または5塩基長もしくは6塩基長程度の短さでさえあり得ることもまた、示唆する。表1中の配列は16塩基長~20塩基長である。重要であり得ることは、本発明の核酸が、配列番号1~107のうちの1つの中の対応する塩基ストレッチに対して100%マッチである、5個もしくは6個もしくは7個もしくは8個もしくは9個連続する塩基のシード領域を有すること、ならびに本発明の核酸がまた、配列番号1~3、7~13、15~18、および23~107のうちの1つに対する少なくとも50%の配列類似性;配列番号1~3、7~13、15~19、および23~107のうちの1つに対する少なくとも60%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号1~3、7~13、15~19、および22~107のうちの1つに対する少なくとも70%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号1~3、6~13、15~19、および22~107のうちの1つに対する少なくとも75%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号1~3、6~13、15~19、および21~107に対する少なくとも80%の配列同一性もしくは配列類似性;配列番号1~3、および6~107のうちの1つに対する少なくとも85%の配列同一性もしくは配列類似性;ならびに/または配列番号1~107のうちの1つに対する少なくとも90%の配列同一性もしくは配列類似性を有することである。
【0050】
表1において使用された特定の特徴は、DNA命名法を使用して(例えば、文字A、T、C、およびGを使用して)配列内に提示されており、リボース糖組成または塩基間結合に関しては言及しないこともまた、留意される。本発明の核酸は、RNA塩基(例えば、Tが示されている窒素塩基の代わりにウラシル)を含む場合、かつまた、または代替的に修飾リボース糖(例えば、2’-MOE)を含む場合に最も有用であることが、見出され得る。実際、列挙された配列中の文字Tは本発明の核酸中で核酸塩基チミンもしくはウラシルとして存在し得ること、および/またはそれらの塩基はSBOと混合され得るかもしくは混じり合った状態であり得ることさえも、見出され得る。一部の実施形態において、本発明の核酸は2’-MOE「メチル化」U(5-メチルウリジン)(これは本質的には2’-MOE-Tである)を含む。
【0051】
詳細には、2’-MOE塩基は5-メチルシトシンおよび5-メチルウリジンを使用し得る。5-メチルシトシンを使用して非メチル化CpGを回避することが、好ましいものであり得る。非メチル化CpGを回避することは炎症の可能性を減少または回避することが、見出され得る。さらに、5-メチルシトシン2’-MOE塩基は、臨床的に検証された化学を用いて整列されることが見出され得、5-メチルシトシン2’-MOE塩基はそのような理由で必要に応じて好ましいものであり得る。その5-メチル-U(T)塩基は、製造および市販を容易にするために、2’-MOE化学とともに使用され得る。2’-OMe化学を使用する配列について、製造および/または市販の容易さは、5-メチルCおよび/または5-メチル-U(T)を使用しないことを支持し得る。
【0052】
特定の実施形態において、文字Tによって表される塩基の過半数またはすべては核酸塩基ウラシルを有する。好ましい実施形態において、文字Tによって表される塩基の過半数またはすべては2’-MOE-Tを有する。それらの結合のいずれか、ほとんど、またはすべては、ホスホロチオエートであり得る。好ましい実施形態は、配列番号1~25、50~107についてすべてホスホロチオエート結合を使用する。好ましい実施形態は、配列番号26~49についてホスホジエステルを使用する。
【0053】
実際、1つの第一の実施形態は、STXBP1発現を促進するためのASOとして使用するための核酸を含む組成物を提供する。その核酸は、配列番号1~107のうちの1つに対する少なくとも88%マッチ(すなわち、2個以下のミスマッチ)を有する塩基配列を有する。その窒素塩基のすべてはA、T、U、C、またはGであり、必要に応じてmCを用いる。それらの糖のすべては配列番号1~25および74~107について2’-MOEであり、それらの結合のすべては配列番号1~25および50~107についてPSである。糖は配列番号26~73について2’-OMeである。これらの第一の実施形態は、製造の容易さのために魅力的である。そのようなASOは、標準的なベンチトップ型RNA合成システムで合成され得、かつ/または商業的供給業者から注文され得る。
【0054】
より一般に記載される場合、好ましくは、その核酸中の少なくとも約6個~約12個連続する塩基は、(標的に安定的に結合するために)配列番号1~107のうちの1つの中の対応する12個連続する塩基に対する少なくとも90%の配列同一性を有する。好ましくは、その核酸中の少なくとも約6個~約12個連続する塩基は、(例えば、関連するmiRNAのシード領域を遮断するために)配列番号1~25のうちの1つの中の対応する12個連続する塩基に対する少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0055】
好ましくは、その核酸の塩基の過半数は(配列番号1~25および74~107において)2’-O-メトキシエチル修飾リボースを有し、その核酸中の過半数の塩基間結合は(配列番号1~25および50~107において)ホスホロチオエート結合であり、窒素塩基はA、T、U、C、G、またはmCである。上記で示唆されたとおり、表1中の配列番号1~25および74~84は、特定のmiRNAがSTXBP1転写物をダウンレギュレートするのを遮断するように特異的に設計されており、配列番号26~73は5’UTRヘアピンを不安定化するように設計されており、配列番号85~107は3’調節領域を標的とするように設計されている。
【0056】
miR-423-3pの実施形態において、その核酸は、miR-423-3pの結合部位にハイブリダイズしてSTXBP1転写物へのmiR-423-3pの結合を遮断する。例えば、その核酸は、配列番号1、2、および3のうちの1つに対する少なくとも50%または75%または83%または90%または95%または100%の配列類似性を有し得る。好ましくは、その核酸中の少なくとも約6個~約12個連続する塩基は、(関連するmiRNAのシード領域を遮断するために)示された配列中の連続する塩基の対応するセグメントに対する少なくとも90%または100%の配列同一性を有し、好ましくは:その核酸の塩基の過半数は2’-O-メトキシエチル修飾リボースを有し、その核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合であり、かつ/またはどの窒素塩基もRNA化学である(例えば、文字Tは5-メチルウラシルを示す)。好ましくは文字Cは5’-メチルシトシンを表す可能性がある。その核酸は、示された配列に対する少なくとも88%マッチ(すなわち、2個以下のミスマッチ)を有する塩基配列を有し得る。それらの糖のすべては2’-MOEであり得、それらの結合のすべてはPSであり得る。
【0057】
miR-491-5pの実施形態において、その核酸は、miR-491-5pの結合部位にハイブリダイズしてSTXBP1転写物へのmiR-491-5pの結合を遮断する。例えば、その核酸は、配列番号4および5のうちの1つに対する少なくとも90%または95%または100%の配列類似性を有し得る。好ましくは、その核酸中の少なくとも約6個~約12個連続する塩基は、(関連するmiRNAのシード領域を遮断するために)示された配列中の連続する塩基の対応するセグメントに対する少なくとも90%または100%の配列同一性を有し、好ましくは:その核酸の塩基の過半数は2’メトキシエチル修飾リボースを有し、その核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合であり、かつ/またはどの窒素塩基もTについて5-メチルウラシル(T)を使用し、Cについて5-メチルシトシンを使用する。その核酸は、示された配列に対する少なくとも90%マッチ(すなわち、2個以下のミスマッチ)を有する塩基配列を有し得る。それらの糖のすべては2’-MOEであり得、それらの結合のすべてはPSであり得る。
【0058】
miR-338-3pの実施形態において、その核酸は、miR-338-3pの結合部位にハイブリダイズしてSTXBP1転写物へのmiR-338-3pの結合を遮断する。例えば、その核酸は、配列番号6に対する少なくとも75%または85%または90%または95%または100%の配列類似性を有し得る。好ましくは、その核酸中の少なくとも約6個~約12個連続する塩基は、(関連するmiRNAのシード領域を遮断するために)示された配列中の連続する塩基の対応するセグメントに対する少なくとも90%または100%の配列同一性を有し、好ましくは:その核酸の塩基の過半数は2’-O-メトキシエチル修飾リボースを有し、その核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合であり、かつ/あるいはどの窒素塩基もTについて5-メチルウラシル(T)を使用しCについて5-メチルシトシンを使用する。その核酸は、示された配列に対する少なくとも90%マッチ(すなわち、2個以下のミスマッチ)を有する塩基配列を有し得る。それらの糖のすべては2’-MOEであり得、それらの結合のすべてはPSであり得る。
【0059】
miR-1-3pの実施形態において、その核酸は、miR-1-3pの結合部位にハイブリダイズしてSTXBP1転写物へのmiR-1-3pの結合を遮断する。例えば、その核酸は、配列番号7、8、9、23、24、および25のうちの1つに対する少なくとも50%または75%または85%または90%または95%または100%の配列類似性を有し得る。好ましくは、その核酸中の少なくとも約6個~約12個連続する塩基は、(関連するmiRNAのシード領域を遮断するために)示された配列中の連続する塩基の対応するセグメントに対する少なくとも90%または100%の配列同一性を有し、好ましくは:その核酸の塩基の過半数は2’-O-メトキシエチル修飾リボースを有し、その核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合であり、かつ/またはどの窒素塩基もTについて5-メチルウラシル(T)を使用し、Cについて5-メチルシトシンを使用する。その核酸は、示された配列に対する少なくとも90%マッチ(すなわち、2個以下のミスマッチ)を有する塩基配列を有し得る。それらの糖のすべては2’-MOEおよび/または2’OMeであり得、それらの結合のすべてはPSおよび/またはPOであり得る。
【0060】
miR-423-5pの実施形態において、その核酸は、miR-423-5pの結合部位にハイブリダイズしてSTXBP1転写物へのmiR-423-5pの結合を遮断する。例えば、その核酸は、配列番号10に対する少なくとも50%または75%または85%または90%または95%または100%の配列類似性を有し得る。好ましくは、その核酸中の少なくとも約6個~約12個連続する塩基は、(関連するmiRNAのシード領域を遮断するために)示された配列中の連続する塩基の対応するセグメントに対する少なくとも90%または100%の配列同一性を有し、好ましくは:その核酸の塩基の過半数は2’-O-メトキシエチル修飾リボースを有し、その核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合であり、かつ/またはどの窒素塩基もTについて5-メチルウラシル(T)を使用し、Cについて5-メチルシトシンを使用する。その核酸は、示された配列に対する少なくとも90%マッチ(すなわち、2個以下のミスマッチ)を有する塩基配列を有し得る。それらの糖のすべては2’-MOEであり得、それらの結合のすべてはPSであり得る。
【0061】
miR-154-5pの実施形態において、その核酸は、miR-154-5pの結合部位にハイブリダイズしてSTXBP1転写物へのmiR-154-5pの結合を遮断する。例えば、その核酸は、配列番号11および12のうちの1つに対する少なくとも50%または75%または85%または90%または95%または100%の配列類似性を有し得る。好ましくは、その核酸中の少なくとも約6個~約12個連続する塩基は、(関連するmiRNAのシード領域を遮断するために)示された配列中の連続する塩基の対応するセグメントに対する少なくとも90%または100%の配列同一性を有し、好ましくは:その核酸の塩基の過半数は2’-O-メトキシエチル修飾リボースを有し、その核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合であり、かつ/またはどの窒素塩基もTについて5-メチルウラシル(T)を使用し、Cについて5-メチルシトシンを使用する。その核酸は、示された配列に対する少なくとも90%マッチ(すなわち、2個以下のミスマッチ)を有する塩基配列を有し得る。それらの糖のすべては2’-MOEであり得、それらの結合のすべてはPSであり得る。
【0062】
miR-219a-5pの実施形態において、その核酸は、miR-219a-5pの結合部位にハイブリダイズしてSTXBP1転写物へのmiR-219a-5pの結合を遮断する。例えば、その核酸は、配列番号13に対する少なくとも50%または75%または85%または90%または95%または100%の配列類似性を有し得る。好ましくは、その核酸中の少なくとも約6個~約12個連続する塩基は、(関連するmiRNAのシード領域を遮断するために)示された配列中の連続する塩基の対応するセグメントに対する少なくとも90%または100%の配列同一性を有し、好ましくは:その核酸の塩基の過半数は2’-O-メトキシエチル修飾リボースを有し、その核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合であり、かつ/またはどの窒素塩基もTについて5-メチルウラシル(T)を使用し、Cについて5-メチルシトシンを使用する。その核酸は、示された配列に対する少なくとも90%マッチ(すなわち、2個以下のミスマッチ)を有する塩基配列を有し得る。それらの糖のすべては2’-MOEであり得、それらの結合のすべてはPSであり得る。
【0063】
miR-424-5pの実施形態において、その核酸は、miR-424-5pの結合部位にハイブリダイズしてSTXBP1転写物へのmiR-424-5pの結合を遮断する。例えば、その核酸は、配列番号14に対する少なくとも85%または90%または95%または100%の配列類似性を有し得る。好ましくは、その核酸中の少なくとも約6個~約12個連続する塩基は、(関連するmiRNAのシード領域を遮断するために)示された配列中の連続する塩基の対応するセグメントに対する少なくとも90%または100%の配列同一性を有し、好ましくは:その核酸の塩基の過半数は2’-O-メトキシエチル修飾リボースを有し、その核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合であり、かつ/またはどの窒素塩基もTについて5-メチルウラシル(T)を使用し、Cについて5-メチルシトシンを使用する。その核酸は、示された配列に対する少なくとも90%マッチ(すなわち、2個以下のミスマッチ)を有する塩基配列を有し得る。それらの糖のすべては2’-MOEであり得、それらの結合のすべてはPSであり得る。
【0064】
miR-30b-5pの実施形態において、その核酸は、miR-30b-5pの結合部位にハイブリダイズしてSTXBP1転写物へのmiR-30b-5pの結合を遮断する。例えば、その核酸は、配列番号15、16、および17のうちの1つに対する少なくとも50%または75%または85%または90%または95%または100%の配列類似性を有し得る。好ましくは、その核酸中の少なくとも約6個~約12個連続する塩基は、(関連するmiRNAのシード領域を遮断するために)示された配列中の連続する塩基の対応するセグメントに対する少なくとも90%または100%の配列同一性を有し、好ましくは:その核酸の塩基の過半数は2’-O-メトキシエチル修飾リボースを有し、その核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合であり、かつ/またはどの窒素塩基もTについて5-メチルウラシル(T)を使用し、Cについて5-メチルシトシンを使用する。その核酸は、示された配列に対する少なくとも90%マッチ(すなわち、2個以下のミスマッチ)を有する塩基配列を有し得る。それらの糖のすべては2’-MOEであり得、それらの結合のすべてはPSであり得る。
【0065】
miR-141-3pの実施形態において、その核酸は、miR-141-3pの結合部位にハイブリダイズしてSTXBP1転写物へのmiR-141-3pの結合を遮断する。例えば、その核酸は、配列番号18に対する少なくとも50%または75%または85%または90%または95%または100%の配列類似性あるいは配列番号19に対する少なくとも60%または75%または85%または90%または95%または100%の配列類似性を有し得る。好ましくは、その核酸中の少なくとも約6個~約12個連続する塩基は、(関連するmiRNAのシード領域を遮断するために)示された配列中の連続する塩基の対応するセグメントに対する少なくとも90%または100%の配列同一性を有し、好ましくは:その核酸の塩基の過半数は2’-O-メトキシエチル修飾リボースを有し、その核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合であり、かつ/またはどの窒素塩基もTについて5-メチルウラシル(T)を使用し、Cについて5-メチルシトシンを使用する。その核酸は、示された配列に対する少なくとも90%マッチ(すなわち、2個以下のミスマッチ)を有する塩基配列を有し得る。それらの糖のすべては2’-MOEであり得、それらの結合のすべてはPSであり得る。
【0066】
miR-218-5pの実施形態において、その核酸は、miR-218-5pの結合部位にハイブリダイズしてSTXBP1転写物へのmiR-218-5pの結合を遮断する。例えば、その核酸は、配列番号20に対する少なくとも85%または90%または95%または100%の配列類似性あるいは配列番号21に対する少なくとも80%または85%または90%または95%または100%の配列類似性を有し得る。好ましくは、その核酸中の少なくとも約6個~約12個連続する塩基は、(関連するmiRNAのシード領域を遮断するために)示された配列中の連続する塩基の対応するセグメントに対する少なくとも90%または100%の配列同一性を有し、好ましくは:その核酸の塩基の過半数は2’-O-メトキシエチル修飾リボースを有し、その核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合であり、かつ/またはどの窒素塩基もTについて5-メチルウラシル(T)を使用し、Cについて5-メチルシトシンを使用する。その核酸は、示された配列に対する少なくとも88%マッチ(すなわち、2個以下のミスマッチ)を有する塩基配列を有し得る。それらの糖のすべては2’-MOEであり得、それらの結合のすべてはPSであり得る。
【0067】
miR-143-3pの実施形態において、その核酸は、miR-143-3pの結合部位にハイブリダイズしてSTXBP1転写物へのmiR-143-3pの結合を遮断する。例えば、その核酸は、配列番号22に対する少なくとも70%または75%または83%または90%または95%または100%の配列類似性を有し得る。好ましくは、その核酸中の少なくとも約6個~約12個連続する塩基は、(関連するmiRNAのシード領域を遮断するために)示された配列中の連続する塩基の対応するセグメントに対する少なくとも90%または100%の配列同一性を有し、好ましくは:その核酸の塩基の過半数は2’-O-メトキシエチル修飾リボースを有し、その核酸中の過半数の塩基間結合はホスホロチオエート結合であり、かつ/またはどの窒素塩基もTについて5-メチルウラシル(T)を使用し、Cについて5-メチルシトシンを使用する。その核酸は、示された配列に対する少なくとも88%マッチ(すなわち、2個以下のミスマッチ)を有する塩基配列を有し得る。それらの糖のすべては2’-MOEであり得、それらの結合のすべてはPSであり得る。
【0068】
オリゴヌクレオチドは、実験室で固相化学合成によって一般的に作製され、その後、精製および単離が行われる。そのオリゴヌクレオチドの配列に言及する場合、共有結合されたヌクレオチドもしくは共有結合されたヌクレオシドの核酸塩基部分の配列もしくは順序、またはその核酸塩基部分の修飾に対して言及がなされる。本発明のオリゴヌクレオチドは人工的であり得(すなわち、化学合成され得)、典型的には精製または単離され得る。本発明のオリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオチド(例えば、2’糖修飾ヌクレオシド)を含み得る。
【0069】
その修飾ヌクレオチドは、デオキシヌクレオチド、3’-末端デオキシチミン(dT)ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックトヌクレオチド、アンロックトヌクレオチド(unlocked nucleotide)、立体配座的に制限されたヌクレオチド、拘束エチルヌクレオチド(constrained ethyl nucleotide)、脱塩基ヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、2’-O-アリル修飾ヌクレオチド、2’-C-アルキル修飾ヌクレオチド、2’-ヒドロキシル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-O-アルキル修飾ヌクレオチド、モルフォリノヌクレオチド、ホスホルアミダート、非天然塩基含有ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトール修飾ヌクレオチド、シクロヘキセニル修飾ヌクレオチド、ホスホロチオエート基含有ヌクレオチド、メチルホスホネート基含有ヌクレオチド、5’-ホスフェート含有ヌクレオチド、5’-ホスフェート模倣物含有ヌクレオチド、グリコール修飾ヌクレオチド、および2’-O-(N-メチルアセトアミド)修飾ヌクレオチド、ならびにそれらの組合せからなる群より独立的に選択され得る。
【0070】
そのASOの窒素塩基は、天然に存在する核酸塩基(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、チミジン、ウラシル、キサンチンおよびヒポキサンチン)、ならびに天然に存在しない改変体(例えば、置換プリンまたは置換ピリミジン(例えば、イソシトシン、プソイドイソシトシン、5-メチルシトシン、5-チアゾロ(thiozolo)シトシン、5-プロピニルシトシン、5-プロピニルウラシル、5-ブロモウラシル 5-チアゾロウラシル、2-チオウラシル、2’チオチミン、イノシン、ジアミノプリン、6-アミノプリン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリンおよび2-クロロ-6-アミノプリンから選択される、核酸塩基))であり得る。
【0071】
その核酸塩基部分は、各々の対応する核酸塩基についての文字コード(例えば、A、T、G、CまたはU)によって示され得、各文字は同等の機能の修飾核酸塩基を必要に応じて含み得る。例えば、例示されたオリゴヌクレオチドにおいて、その核酸塩基部分はA、T、G、C、および5-メチルシトシンから選択される。必要に応じて、5-メチルシトシンLNAヌクレオシドが使用され得る。
【0072】
本開示のオリゴヌクレオチドは、STXBP1の発現をアップレギュレート可能である。
【0073】
本開示のオリゴヌクレオチドは、修飾糖部分(すなわち、DNAおよびRNAにおいて見出されるリボース糖部分と比較した場合のその糖部分の修飾)を有する1つ以上のヌクレオシドを含み得る。そのリボース糖部分の修飾を有する多数のヌクレオシドが、オリゴヌクレオチドの特定の特性(例えば、親和性および/またはヌクレアーゼ抵抗性)を改善することを主に目的として、作製された。そのような修飾としては、そのリボース環構造が例えばヘキソース環での置換によって修飾されたもの(HNA)、または二環式環(これは典型的にはそのリボース環上のC2炭素とC4炭素との間に架橋を有する)での置換によって修飾されたもの(LNA)、または連結されていないリボース環(これはそのC2炭素とC3炭素との間に結合を典型的には欠く)での置換によって修飾されたもの(例えば、UNA)が挙げられる。修飾ヌクレオシドとしてはまた、その糖部分が非糖部分で置換されたヌクレオシド(例えば、ペプチド核酸(PNA)またはモルフォリノ核酸の場合)が挙げられる。
【0074】
糖修飾としてはまた、そのリボース環上の置換基を水素以外の基へ、またはDNAヌクレオシドおよびRNAヌクレオシドにおいて天然で見出される2’-OH基へと変更することによって行われる修飾が挙げられる。置換基は、例えば、2’位、3’位、4’位または5’位に導入され得る。
【0075】
そのオリゴヌクレオチドは、1つ以上のロックト核酸(LNA)塩基を含み得る。LNAは、ヌクレオシドのリボース糖環のC2’とC4’とを連結するビラジカル(biradical)(「2’-4’架橋」とも呼ばれる)を含む2’-修飾ヌクレオシドを含み得、このビラジカルはそのリボース環の立体配座を制限またはロックする。これらのヌクレオシドはまた、文献では架橋核酸または二環式核酸(BNA)とも呼ばれる。そのリボースの立体配座のロックは、そのLNAが相補的RNA分子または相補的DNA分子のためのオリゴヌクレオチドに組み込まれた場合に、ハイブリダイゼーションの増加した親和性(二重鎖安定性)に関連する。このことは、そのオリゴヌクレオチド/相補体二重鎖の融解温度を測定することによって、慣用的に決定され得る。非限定的で例示的なLNAヌクレオシドが、WO99/014226、WO00/66604、WO98/039352、WO2004/046160、WO00/047599、WO2007/134181、WO2010/077578、WO2010/036698、WO2007/090071、WO2009/006478、WO2011/156202、WO2008/154401、WO2009/067647、およびWO2008/150729(すべてが参照により援用される)において開示されている。
【0076】
本開示のオリゴヌクレオチドの薬学的に受容可能な塩としては、遊離塩基または遊離酸の生物学的有効性および特性を保持する塩(これらは生物学的にも他の点でも望ましくないものではない)が挙げられる。それらの塩は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、特に塩酸)、および有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、スルホン酸、またはサリチル酸)を用いて形成される。さらに、それらの塩は、遊離酸への無機塩基または有機塩基の添加から調製され得る。無機塩基由来の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が挙げられるが、これらに限定はされない。有機塩基由来の塩としては、一級アミンの塩、二級アミンの塩、および三級アミンの塩、置換アミン(天然に存在する置換アミンが挙げられる)、環状アミンの塩および塩基性イオン交換樹脂の塩、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、リジン、アルギニン、N-エチルピペリジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0077】
ASOは、2’置換ヌクレオシド(例えば、2’-O-アルキル-RNA単位、2’-O-メチル-RNA、2’-アミノ-DNA単位、2’-フルオロ-DNA単位、2’-アルコキシ-RNA、2’-MOE単位、アラビノ核酸(ANA)単位、2’-フルオロ-ANA単位、またはそれらの組合せからなる群より独立的に選択される、2’置換ヌクレオシド)を含み得る。
【0078】
1つ以上の非ヌクレオチド部分へのそのオリゴヌクレオチドの結合体化は、例えば、そのオリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、細胞取込みまたは安定性に影響を与えることによって、そのオリゴヌクレオチドの薬理を改善し得る。一部の実施形態において、その結合体部分は、そのオリゴヌクレオチドの細胞分布、バイオアベイラビリティ、代謝、排泄、透過性、および/もしくは細胞取込みを改善することによって、そのオリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改変または増強し得る。詳細には、その結合体は、そのオリゴヌクレオチドを特定の器官、組織または細胞型に対して標的化させ得、それにより、その器官、組織または細胞型におけるそのオリゴヌクレオチドの有効性を増強し得る。その結合体はまた、非標的細胞型、非標的組織、または非標的器官におけるそのオリゴヌクレオチドの活性(例えば、オフターゲット活性、または非標的細胞型、非標的組織、もしくは非標的器官における活性)を減少するようにも役立ち得る。
【0079】
ある実施形態において、その非ヌクレオチド部分(結合体部分)は、炭水化物、細胞表面レセプターリガンド、原薬、ホルモン、親油性物質、ポリマー、タンパク質、ペプチド、毒素(例えば、細菌毒素)、ビタミン、ウイルスタンパク質(例えば、カプシド)またはそれらの組合せからなる群より選択される。一部の実施形態において、本発明のASOは、抗体に結合体化される。例えば、抗体はASOに結合体化されて、そのASOの送達を増進または促進させ得る。
【0080】
本開示の組成物は、上記の核酸またはその塩のいずれかと、薬学的に受容可能な希釈剤、キャリア、塩および/または佐剤とを含む、医薬組成物中で提供され得る。薬学的に受容可能な希釈剤としてはACSF(人工脳脊髄液)が挙げられ、薬学的に受容可能な塩としてはナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられるがこれらに限定はされない。一部の実施形態において、その薬学的に受容可能な希釈剤は、滅菌リン酸緩衝食塩水または滅菌炭酸ナトリウム緩衝液である。一部の好ましい実施形態において、臨床適用のための希釈剤としては、Elliotts B溶液および/またはACSF(人工脳脊髄液)が挙げられる。
【0081】
一部の実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、薬学的に受容可能な希釈剤中の(例えば、食塩水、PBS、または炭酸ナトリウム緩衝液に溶解した)溶液の形態である。そのオリゴヌクレオチドは、その溶液中に予め処方された状態であり得、または一部の実施形態では、投与前に薬学的に受容可能な希釈剤中に溶解され得る乾燥粉末(例えば、凍結乾燥粉末)の形態であり得る。適切には、例えば、そのオリゴヌクレオチドは、0.1mg/mL~100mg/mL(例えば、1mg/mL~10mg/mL)の濃度で溶解され得る。
【0082】
本発明は早期発症てんかん性脳症を処置する方法を提供し、この方法は、それを必要とする患者に本開示の組成物のいずれかを送達することによる。送達される組成物は、本開示の核酸のうちの1種または本開示の核酸の任意の組合せを含み得る。「1種の核酸」と述べることは、単一の分子を意味せず、むしろ、例えば、その分子の多数の化学的に同一なコピーを含む組成物を意味する。それら核酸のうちの2種以上を組み合わせてかまたは別の時点で同じ患者に送達することが、好ましいものであり得る。好ましくは、その組成物は血液脳関門を越えて送達される。その核酸は、血液脳関門を越えることを増進するベクター(例えば、このような目的に役立つ特定のウイルスベクター(例えば、アデノ随伴ウイルスベクター)が挙げられる)を使用して、送達され得る。その核酸は、粒子(例えば、ウイルスベクター、小胞、または脂質ナノ粒子など)でパッケージングされ得る。その送達粒子は、次に、送達を増進するリガンド(例えば、血液脳関門を越えるレセプター媒介性トランスサイトーシスを増進することが既知である抗体など)で装飾され得る。概説について、Stanimirovic、2018、Emerging technologies for delivery of biotherapeutics and gene therapy across the blood-brain barrier、BioDrugs、32(6):547~559(参照によって援用される)を参照のこと。その組成物は、例えば、全身注入または髄腔内注射によって、送達され得る。その核酸は、その患者におけるSTXBP1の発現を増加させるために送達される。方法は、その患者がSTXBP1遺伝子におけるヘテロ接合性機能欠失変異を保有することを同定することによってその患者を選択する工程を含み得る。
【実施例】
【0083】
(実施例)
(実施例1:STXBP1 ASOプログラム)
miRNAの実施形態において、25種のmiRNA遮断性ASOを本明細書に記載したとおりに設計した。それらはすべて、2’-MOE化学およびPS骨格を有する、20マーのASOであった。それらは配列番号1~25によって表される。
【0084】
UTRの実施形態において、48種の5’UTRヘアピン遮断性ASOを設計して作製した。それらは、16マー~20マーの範囲の種々の長さを有した。すべての塩基は2’-O-メチルである。24種のASOはPO結合を有する。24種のASOはPS結合を有する。最初のスクリーニングを200nM、100nM、および/または50nMで行った。
【0085】
PO骨格を有するPO UTR ASOが配列番号26~49によって表される。
【0086】
PS骨格を有するPS UTR ASOが配列番号50~73によって表される。
【0087】
スクリーニングを線維芽細胞、iPSC由来NGN2ニューロン、および/またはSH-SY5Y神経芽細胞腫細胞において実行した。少なくとも3つのプロトコルを使用した:(i)線維芽細胞およびNGN2ニューロン実験;(ii)SH-SY5Y神経芽細胞腫実験、ならびに(iii)NGN2ニューロン/膠細胞共培養実験。(i)線維芽細胞およびNGN2ニューロン実験について、細胞をDIV0(インビトロ培養0日)にプレーティングした。DIV03に、ASO処理(Tx)。DIV10(7日間のASO処理)に、収集。DIV13に、収集(10日間のASO処理であった)。(ii)SH-SY5Y神経芽細胞腫実験において、DIV01にTx;DIV03に48時間での収集、およびDIV05に96時間での収集。(iii)NGN2ニューロン/膠細胞共培養実験について、DIV20に処理、DIV24にASO処理後4日での収集、およびDIV30にASO処理後10日での収集。
【0088】
本実施例全体を通して、および対応する図において、ASOの番号は表1におけるコード番号によって与える。したがって、例えば、
図1において言及するASO-018はまた表1中のコードq18でもあり、配列番号9によって表される。または、同様に、ASO-034はまたコードq34でもあり、配列番号25によって表される。
【0089】
図1は、対照線維芽細胞(処理後7日)に対する21種のSTXBP1 miRNA遮断性ASOのスクリーニングからの結果を示す。棒の上に描かれた円は、用量反応試験のために選択したASOを示す。ヒト線維芽細胞を1ウェルあたり8k個でプレーティングし、合計10日間培養した。RNAi Maxを使用して、STXBP1 ASOを3日目に200nMにて線維芽細胞にトランスフェクトした。細胞を10日目に処理後7日で収集し、qPCRを使用してSTXBP1転写物発現を評価した。各棒は、単一の生物学的反復からの2つの技術的反復を示す。STXBP1発現をアクチンに対して正規化する。
【0090】
実験パラメータ:qPCR;細胞型:対照線維芽細胞(DIV10);トランスフェクション:RNAi Max 0.5μL;処理:200nMのASO;qPCR:ASO処理の7日後;標的遺伝子:STXBP1(Hs00162430_ml);ならびに対照遺伝子:hActin(Hs999999903_ml)。
【0091】
図2は、線維芽細胞における5種のSTXBP1 miRNA遮断性ASOの用量反応を示す。ヒト線維芽細胞を1ウェルあたり8k個でプレーティングし、合計10日間培養した。RNAi Maxを使用して、STXBP1 ASOを3日目に25nM、50nM、100nM、200nM、または400nMのいずれかで線維芽細胞にトランスフェクトした。細胞を10日目に処理後7日で収集し、qPCRを使用してSTXBP1転写物発現を評価した。各棒は、単一の生物学的反復からの2つの技術的反復を示す。STXBP1発現をアクチンに対して正規化する。
【0092】
重要な結果は、STXBP1発現レベルが本発明の組成物での処理に対して用量依存的反応を示すことである。
【0093】
実験パラメータ:qPCR;細胞型:対照線維芽細胞(DIV10);トランスフェクション:RNAi Max 0.5μL;処理:400nM、200nM、l00nM、50nM および25nMのASO(DIV3);qPCR:ASO処理の7日後;標的遺伝子:STXBP1(Hs00162430_ml);対照遺伝子:hActin(Hs999999903_ml)。
【0094】
図3は、線維芽細胞におけるASO-018、および修飾配列を用いてASO-018から誘導した3種の追加のASOの用量反応を示す。ヒト線維芽細胞を1ウェルあたり5k個でプレーティングし、合計10日間培養した。RNAi Maxを使用して、STXBP1 ASOを3日目に12.5nM、25nM、50nM、100nM、または200nMのいずれかで線維芽細胞にトランスフェクトした。細胞を10日目に処理後7日で収集し、qPCRを使用してSTXBP1転写物発現を評価した。各棒は、単一の生物学的反復からの2つの技術的反復を示す。STXBP1発現をGAPDHに対して正規化する。
【0095】
重要な結果は、STXBP1発現レベルが本発明の組成物での処理に対して用量依存的反応を示すことである。
【0096】
実験パラメータ:qPCR;細胞型:ヒト線維芽細胞(DIV10);トランスフェクション:LipoRNAiMax 0.5μL;処理:200nM、l00nM、50nM、25nM、および12.5nMのASO(DIV3);qPCR:ASO処理の7日後;標的遺伝子:STXBP1(Hs00162430_ml);ならびに対照遺伝子:GAPDH(Hs02758991_gl)。
【0097】
図4は、iPSC由来NGN2ニューロン(処理後7日)に対する21種のSTXBP1 miRNA遮断性ASOのスクリーニングからの結果を示す。ヒトiPSC由来NGN2興奮性ニューロンを1ウェルあたり80k個でプレーティングし、合計10日間培養した。STXBP1 ASOを3日目に単一濃度200nMでニューロンにトランスフェクトした。細胞を10日目に処理後7日で収集し、qPCRを使用してSTXBP1転写物発現を評価した。各棒は、単一の生物学的反復からの2つの技術的反復を示す。STXBP1発現をアクチンに対して正規化する。
【0098】
コードq11およびq15~q31を有するASO(これらは配列番号2および6~22である)が、STXBP1発現に対して最も強い効果を示す。
【0099】
実験パラメータ:qPCR;細胞型:NGN2ニューロン(DIV10);トランスフェクション:Endoporter PEG 0.6μL;処理:200nMのASO;qPCR:ASO処理の7日後;標的遺伝子:STXBP1(Hs00162430_ml);ならびに対照遺伝子:hActin(Hs999999903_ml)。
【0100】
図5~8は、処理後48時間のSH-SY5Y神経芽細胞腫細胞における8種の例示的なSTXBP1 miRNA遮断性ASOをスクリーニングしたことについての結果を示す。SH-SY5Y神経芽細胞腫細胞を1ウェルあたり45k個でプレーティングし、合計3日間培養した。RNAi Maxを使用して、STXBP1 ASOを1日目に単一濃度100nMで細胞にトランスフェクトした。細胞を3日目に処理後48時間で収集し、ウェスタンブロットを使用してSTXBP1発現を評価した。TUJ1をタンパク質ローディングについてのマーカーとして使用した。その後、STXBP1タンパク質レベルをサンプル内でTUJ1に対して正規化し、
図9に示すとおり定量化した。「.1」および「.2」は、同じ生物学的反復からの技術的反復を示す。
【0101】
図5は、SH-SY5Y神経芽細胞腫細胞(処理後48時間)に対する2種のSTXBP1 miRNA遮断性ASO(q20およびq23)のスクリーニングからの結果を示す。
【0102】
図6は、SH-SY5Y神経芽細胞腫細胞(処理後48時間)に対する2種のSTXBP1 miRNA遮断性ASO(q13およびq18)のスクリーニングからの結果を示す。
【0103】
図7は、SH-SY5Y神経芽細胞腫細胞(処理後48時間)に対する2種のSTXBP1 miRNA遮断性ASO(q24およびq4)のスクリーニングからの結果を示す。
【0104】
図8は、SH-SY5Y神経芽細胞腫細胞(処理後48時間)に対するSTXBP1 miRNA遮断性ASO(q8)のスクリーニングからの結果を示す。
【0105】
実験パラメータ:SH-SY5Y神経芽細胞腫細胞を用いてq20、q23、q13、q18、q24、q4、およびq8をスクリーニングすることについて:細胞型:SH-SY5Y細胞(DIV3);トランスフェクション:RNAi Max(0.5μL)(DIV1);処理:l00nMのASO;タンパク質収集:ASO処理の48時間後;一次標的抗体:ウサギ(Rb)抗Munc18-1(細胞シグナル伝達);ならびに対照標的抗体:マウス(Ms)抗βIIIチューブリン(TUJ1)。
【0106】
図9は、SH-SY5Y神経芽細胞腫細胞(処理後48時間)に対する8種のSTXBP1 miRNA遮断性ASOのスクリーニングからの結果を示す。SH-SY5Y神経芽細胞腫細胞を1ウェルあたり45k個でプレーティングし、合計3日間培養した。RNAi Maxを使用して、STXBP1 ASOを1日目に単一濃度100nMで細胞にトランスフェクトした。細胞を3日目に処理後48時間で収集し、ウェスタンブロットを使用してSTXBP1発現を評価した-ウェスタンブロットを
図5~8に提示する。TUJ1をタンパク質ローディングについてのマーカーとして使用した。その後、STXBP1タンパク質レベルをサンプル内でTUJ1に対して正規化して、相対的タンパク質発現を得た。その後、各条件についての相対的STXBP1タンパク質発現を細胞条件に対して正規化して、相対的正規化発現を得た。
【0107】
実験パラメータ:細胞型:SH-SY5Y細胞(DIV3);トランスフェクション:RNAi Max(0.5μL)(DIV1);処理:l00nMのASO;タンパク質収集:ASO処理の48時間後;一次標的抗体:Rb抗Munc18-1(細胞シグナル伝達);ならびに対照標的抗体:Ms抗βIIIチューブリン(TUJ1)。
【0108】
図10~
図11はゲルの画像を示し、これらは、ヒトiPSC由来NGN2ニューロンにおけるmiRNA遮断性ASOでのSTXBP1タンパク質のブーストの例示的スクリーニングの結果を提示する。ヒトiPSC由来NGN2興奮性ニューロンを1ウェル当たり20と50kとの間の密度でプレーティングし、合計10日間培養した。STXBP1 ASOを4日目に単一濃度l00nMでニューロンにトランスフェクトした。細胞を10日目に処理後6日で収集し、ウェスタンブロットを使用してSTXBP1発現を評価した。GAPDHをタンパク質ローディングについての対照マーカー/タンパク質として使用した。「-01」、「-02」、「03」などは生物学的反復を示す。
【0109】
図10はウェスタンブロットゲルの画像を示し、これは、ヒトiPSC由来NGN2ニューロンにおける4種のSTXBP1 miRNA遮断性ASOの処理後6日でのスクリーニングについての結果を提示する。試験したASOは、ASO-19(これは配列番号10の配列を含む)、ASO-029(これは配列番号20の配列を含む)、およびASO-013(これは配列番号4の配列を含む)を含んだ。
【0110】
図11はウェスタンブロットゲルの画像を示し、これは、ヒトiPSC由来NGN2ニューロンにおける6種のSTXBP1 miRNA遮断性ASOの処理後6日でのスクリーニングについての結果を提示する。試験したASOは、ASO-18(これは配列番号9の配列を含む)を含んだ。
【0111】
図12~
図13は、培養中の2つの時点での、ヒトiPSC由来NGN2ニューロンにおけるいくつかの3’miRNA標的化ASOにわたるSTXBP1タンパク質のブーストについてのスクリーニングの概要を提示する。ヒトiPSC由来NGN2興奮性ニューロンを1ウェル当たり20と50kとの間の密度でプレーティングし、合計30日間(
図12)または10日間(
図13)培養した。STXBP1 ASOを20日目(
図12)または4日目(
図13)のいずれかに単一濃度100nMもしくは200nMでニューロンにトランスフェクトした。細胞を処理後10日(
図12)または処理後6日(
図13)のいずれかで収集し、ウェスタンブロットを使用してSTXBP1発現を評価した。GAPDHをタンパク質ローディングについての対照マーカー/タンパク質として使用した。例示のウェスタンブロットを
図10~
図11に提示する。GAPDHをタンパク質ローディングについてのマーカーとして使用した。STXBP1タンパク質レベルをサンプル内でGAPDHに対して正規化して、相対的タンパク質発現を得た。その後、各条件についての相対的STXBP1タンパク質発現をビヒクル条件に対して正規化して、相対的正規化発現を得た。ASOごとの各ドットは、独立した生物学的反復を示す。
【0112】
図14は、STXBP1 ASOのヒットがヒトiPSC由来NGN2ニューロンにおける用量反応でSTXBP1タンパク質を調節することを示す結果を提示する。ヒトiPSC由来NGN2興奮性ニューロンを1ウェル当たり20と50kとの間の密度でプレーティングし、合計10日間培養した。STXBP1 ASOを4日目に50nM、100nM、または200nMの濃度でニューロンにトランスフェクトした。細胞を処理後6日で収集し、ウェスタンブロットを使用してSTXBP1発現を評価した。GAPDHをタンパク質ローディングについての対照マーカー/タンパク質として使用した。STXBP1タンパク質レベルをサンプル内でGAPDHに対して正規化して、相対的タンパク質発現を得た。その後、各条件についての相対的STXBP1タンパク質発現をビヒクル条件に対して正規化して、相対的正規化発現を得た。単一濃度スクリーニングからのヒットASOにボックスで印を付けている。
【0113】
図15は、ウェスタンブロット法でヒトiPSC由来ニューロンにおいてスクリーニングした5’STXBP1 ASOの定量化を示し、これは、本発明のいくつかのASOについてのSTXBP1タンパク質のブーストを明らかにする。ヒトiPSC由来NGN2興奮性ニューロンを1ウェル当たり20と50kとの間の密度でプレーティングし、合計30日間培養した。STXBP1 ASOを20日目に100nMの濃度でニューロンにトランスフェクトした。細胞を処理後10日で収集し、ウェスタンブロットを使用してSTXBP1発現を評価した。GAPDHをタンパク質ローディングについての対照マーカー/タンパク質として使用した。STXBP1タンパク質レベルをサンプル内でGAPDHに対して正規化して、相対的タンパク質発現を得た。その後、各条件についての相対的STXBP1タンパク質発現をビヒクル条件(最も右の棒)に対して正規化して、相対的正規化発現を得た。すべてのラウンドは、およそDIV20にASO(l00nM)で処理しおよそDIV30にASO後10日で収集した、iPSC由来NGN2ニューロンに由来する。ビヒクルについての概要データは49個のウェスタンブロットゲルにわたってのものであり、それらのゲルにわたって138個のビヒクルサンプルを含む。
【0114】
図16~
図17は、BRITE(商標)System(Q-State Biosciences,Inc.)を使用した全光型(all-optical)電気生理学的シナプス細胞表現型の同定を示す結果を提示する。
【0115】
アイソジェニックiPSC由来ニューロンを、STXBP1遺伝子を標的とするCRISPR編集を使用して作製した。CRISPR編集したiPSCクローンを選択し、ウェスタンブロットを使用してスクリーニングして、これらの細胞株由来のニューロンを遺伝子型決定した。野生型(WT)、ヘテロ接合性(Het)ノックアウト、ホモ接合性ノックアウト(KO)を同定した(
図16)。
【0116】
ヒトiPSC由来NGN2興奮性ニューロンを、誘発されたシナプス伝達の機能的光遺伝学的記録のために96ウェルプレートにプレーティングし、用量依存的STXBP1関連細胞表現型を、
図17において示すとおり、野生型対照(STXBP1+/+)と比較してヘテロ接合性(Het)ノックアウト(STXBP1+/-)細胞株、およびホモ接合性ノックアウト(STXBP1-/-、KO)細胞株において同定した。ニューロンを20日目に測定した。STXBP1に対するsiRNAで処理した初代マウス皮質ニューロンは、類似する誘発されたシナプス細胞表現型を示し、このことは、ヒトCRISPR細胞株の機能的表現型を確認した。
【0117】
図18は、レンチウイルス送達によるSTXBP1遺伝子の再導入によるシナプス表現型レスキューを示す。
図16~
図17からのシナプス表現型のSTXBP1依存性を調べるために、レンチウイルス構築物を設計した。すべてHSynプロモーターの制御下にある全長STXBP1、未成熟終止コドン含有STXBP1、および蛍光タグ(EGFP)を、この実験のために作製した。STXBP1-/-ニューロンは野生型(STXBP1+/+)ニューロンと比較してシナプス伝達の完全な喪失を示し(左上)、これは、以前のデータおよび
図16~
図17に提示したデータを繰り返した。STXBP1-/-ニューロンをSTXBP1レンチウイルスで処理すると、これは、これらの細胞においてシナプス伝達の欠損をレスキューした。変異体STXBP1の送達は何の効果も有しなかった。レンチウイルスを17日目に送達した。ニューロンを45日目に測定し、画像化後にタンパク質および転写物の発現のために収集した。STXBP1レンチウイルス処理したKO細胞はSTXBP1タンパク質の発現を示し、これは、欠損タンパク質がレンチウイルス送達によってこれらの細胞において首尾よく再確立されたことを確認する。未処理細胞でも、EGFPで処理した細胞でも、変異体STXBP1で処理した細胞でも、何のタンパク質も認められなかった(右下)。すべての条件でqPCRによってSTXBP1転写物を検出したが、ナンセンス媒介性減衰の欠如と一致して、正常なSTXBP1レンチウイルスで処理したKO細胞は、他の条件と比較してSTXBP1転写物のアップレギュレーションを示す。
(実施例2.STXBP1 ASO-3’調節領域タイリング(tiling)プログラム)
【0118】
実施例1において開発し試験したASOについての肯定的な結果に基づいて、タイリング(tiling)アプローチを実行して、STXBP1の3’調節領域を経験的に見出し、それを本発明のASOで標的化した。この戦略を使用して、STXBP1 miRNA部位を標的とするASO(配列番号73~84)または3’調節領域を標的とするASO(配列番号85~107)の両方を、見出した。
【配列表】
【国際調査報告】