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特表2024-534578経カテーテル装置移植のためのシース、送達システム、および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】経カテーテル装置移植のためのシース、送達システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20240912BHJP
   A61F 2/24 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61M25/06 556
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518422
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 US2022044533
(87)【国際公開番号】W WO2023049343
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/248,091
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510015338
【氏名又は名称】シルク・ロード・メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SILK ROAD MEDICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100224627
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 稔
(72)【発明者】
【氏名】スティール,ブラッド
(72)【発明者】
【氏名】ウィーロン,ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097MM10
4C267AA05
4C267AA15
4C267AA28
4C267AA55
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB26
4C267BB63
4C267CC08
4C267HH08
(57)【要約】
シースの遠位端領域の方向を示すように構成されたマーカを有する経カテーテル大動脈弁治療などの治療を行うための動脈アクセスシース。関連するシステム、装置、および方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経カテーテル大動脈弁治療を実施するための動脈アクセスシースであって、
前記シースは、
近位開口部から遠位開口部まで延びた少なくとも1つの内腔を有する細長い本体と、
前記細長い本体の前記近位開口部に結合し、患者の外部に留まるように構成された近位ハブであって、前記近位ハブは、1つまたは複数の近位方向マーキングを備える、前記近位ハブと、
前記細長い本体の遠位端領域内に埋め込まれた放射線不透過性マーカバンドであって、前記放射線不透過性マーカバンドは、前記1つまたは複数の近位方向マーキングに周方向に対応する前記遠位端領域の外周周りに互いに離れた切り欠きを備える、前記放射線不透過性マーカバンドと
を備え、
前記切り欠きは、前記マーカバンドに放射線不透過性の空隙を形成して、少なくとも2つの放射線透過性の遠位方向マーキングを形成し、
前記少なくとも2つの遠位方向マーキングの重なりは、前記細長い本体の前記遠位端領域の周方向を示す、動脈アクセスシース。
【請求項2】
前記細長い本体は、左もしくは右の総頸動脈、または左もしくは右の鎖骨下動脈でのアクセス部位に導入されるように適合された長さを有する、請求項1に記載の動脈アクセスシース。
【請求項3】
前記遠位方向マーキングの形状は、前記少なくとも2つの遠位方向マーキングが少なくとも部分的に重なり合ったとき、第2の異なる形状を形成する、請求項1に記載の動脈アクセスシース。
【請求項4】
前記形状は、長方形、円形、三角形、菱形、矢印、半球、または正方形である、請求項3に記載の動脈アクセスシース。
【請求項5】
前記少なくとも2つの遠位方向マーキングは、遠位方向マーキングの少なくとも2つの群を備える、請求項1に記載の動脈アクセスシース。
【請求項6】
前記少なくとも2つの群は、互いに区別可能である、請求項5に記載の動脈アクセスシース。
【請求項7】
前記少なくとも2つの群は、マーカの形状により区別可能である、請求項6に記載の動脈アクセスシース。
【請求項8】
前記少なくとも2つの群は、マーカの数により区別可能である、請求項5に記載の動脈アクセスシース。
【請求項9】
前記放射線不透過性マーカバンドは、1つまたは複数の放射線不透過性材料が充填されたポリマーを有する、請求項1に記載の動脈アクセスシース。
【請求項10】
前記放射線不透過性材料は、タングステン、タンタル、硫酸バリウム、白金、ステンレス鋼、および金からなる群より選択される、請求項9に記載の動脈アクセスシース。
【請求項11】
前記遠位方向マーキングは、前記細長い本体の前記遠位端領域の側壁から離れて突出した放射線不透過性材料のボタンをさらに含む、請求項1に記載の動脈アクセスシース。
【請求項12】
前記近位方向マーキングは、前記ハブの近位側を向いた表面上にあり、ユーザが直接視認可能である、請求項1に記載の動脈アクセスシース。
【請求項13】
前記近位方向マーキングは、前記近位ハブ上の接着剤マーキング、塗装マーキング、成形マーキング、エッチングマーキング、エンボスマーキング、または印刷マーキングを備える、請求項1に記載の動脈アクセスシース。
【請求項14】
前記細長い本体は、外周周りに非対称性を有しており、前記近位方向マーキングは、前記非対称性に対応する、請求項1に記載の動脈アクセスシース。
【請求項15】
前記細長い本体は、断面において非円形である、請求項1に記載の動脈アクセスシース。
【請求項16】
大動脈弁を治療する方法であって、
前記方法は、
総頸動脈の壁に患者の頸部を貫通する貫通部を形成し、
前記貫通部を通して動脈アクセスシースを導入し、ここで、前記アクセスシースは、近位ハブに結合された細長い本体を備え、前記近位ハブは、患者の外部に留まるように構成されるとともに、1つまたは複数の近位方向マーキングを備えており、前記細長い本体の遠位端領域は、前記1つまたは複数の近位方向マーキングに周方向に対応するように前記遠位端領域の外周周りに互いに離れた切り欠きを有する放射線不透過性マーカバンドを備え、前記切り欠きは、前記マーカバンドに放射線不透過性の空隙を形成して、少なくとも2つの放射線透過性の遠位方向マーキングを形成しており、
前記少なくとも2つの遠位方向マーキングの重なり合う周方向位置に応じて、透視下で、標的解剖学的構造に対して、前記細長い本体の前記遠位端領域を位置合わせし、
前記少なくとも2つの遠位方向マーキングに対応する前記1つまたは複数の近位方向マーキングをガイドとして用いて、前記アクセスシースを通して人工弁を導入し、
前記人工弁を生来の大動脈弁の位置またはその近くに配置する
ことを備える、方法。
【請求項17】
経カテーテル大動脈弁治療を送達するための動脈アクセスシースであって、
前記シースは、
細長い本体と、
患者の外部に留まるように構成された近位ハブと
を備え、
前記細長い本体は、
それぞれ対応する近位開口部とそれぞれ対応する遠位開口部との間で互いに平行に延びた複数の内腔であって、前記遠位開口部は前記細長い本体の最遠位端に位置する、前記複数の内腔と、
近位開口部と出口ポートとの間で延びた塞栓保護装置内腔であって、前記出口ポートは、前記細長い本体の側壁を通って、前記細長い本体の前記最遠位端から近位側に距離を離して配置された、塞栓保護装置内腔と、
前記細長い本体の遠位端領域内に埋め込まれた第1放射線不透過性マーカバンドと、
前記出口ポートの近くの前記細長い本体の領域内に埋め込まれた第2放射線不透過性マーカバンドと
を備え、
前記近位ハブは、前記細長い本体のそれぞれ対応する前記近位開口部と、前記塞栓保護装置内腔の前記近位開口部に結合されている、動脈アクセスシース。
【請求項18】
前記複数の内腔は、12フレンチと24フレンチとの間、または4mmと8mmとの間の内径を有する介入装置内腔を備える、請求項17に記載の動脈アクセスシース。
【請求項19】
前記複数の内腔が、3フレンチと9フレンチとの間、または1mmと3mmとの間の内径を有する少なくとも2つの補助内腔を備える、請求項18に記載の動脈アクセスシース。
【請求項20】
前記複数の内腔を同時に洗浄するように構成され、前記近位ハブ上に設けられた洗浄弁をさらに備える、請求項17に記載の動脈アクセスシース。
【請求項21】
前記距離は、少なくとも約10mmから約30mmまでである、請求項17に記載の動脈アクセスシース。
【請求項22】
前記細長い本体は、最遠位端が下行大動脈内に位置決め可能であるように、左もしくは右の総頸動脈、または左もしくは右の鎖骨下動脈のアクセス部位に導入されるように適合された長さを有する、請求項17に記載の動脈アクセスシース。
【請求項23】
前記長さは、約10cmから約50cmまでの間である、請求項22に記載の動脈アクセスシース。
【請求項24】
前記近位ハブは、ユーザが直接視認可能である1つまたは複数の近位方向マーキングを備える、請求項17に記載の動脈アクセスシース。
【請求項25】
前記近位方向マーキングは、前記ハブの近位側を向いた表面上にある、請求項24に記載の動脈アクセスシース。
【請求項26】
前記第1放射線不透過性マーカバンドおよび前記第2放射線不透過性マーカバンドの少なくとも一方は、前記1つまたは複数の近位方向マーキングに周方向に対応するように前記遠位端領域の外周周りに互いに離間した切り欠きを備え、
前記切り欠きは、前記マーカバンドに放射線不透過性の空隙を形成して、少なくとも2つの放射線透過性の遠位方向マーキングを形成する、請求項24に記載の動脈アクセスシース。
【請求項27】
前記少なくとも2つの遠位方向マーキングの重なりは、前記細長い本体の前記遠位端領域の周方向を示す、請求項26に記載の動脈アクセスシース。
【請求項28】
複数の内腔および近位ハブを有する細長い本体を備える動脈アクセスシースを用いて血管を治療する方法であって、
前記方法は、
前記近位ハブが患者の外部からアクセスできるように、前記細長い本体を患者の血管壁の貫通部を通して挿入し、
第1装置を、第1近位開口部から、前記近位ハブを通して、前記複数の内腔の第1内腔に挿入し、前記第1内腔の遠位開口部から取り出し、
第2装置を、第2近位開口部から、前記近位ハブを通して、前記複数の内腔の第2内腔に挿入し、第2内腔から出口ポートから取り出す
ことを含み、
前記第1内腔および前記第2内腔は、異なる内径を有し、
前記第1内腔からの前記遠位開口部は、前記細長い本体の最遠位端に位置し、
前記第2内腔からの前記出口ポートは、前記細長い本体の側壁を通って、前記最遠位端から近位側に距離を開けて位置する、方法。
【請求項29】
前記細長い本体は、少なくとも、前記遠位開口部の近くの前記細長い本体の遠位端領域内に埋め込まれた第1放射線不透過性マーカバンドと、前記出口ポートの近くの前記細長い本体の領域内に埋め込まれた第2放射線不透過性マーカバンドとを更に備える、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第2放射線不透過性マーカを有する前記細長い本体の前記領域は、前記出口ポートの近位側に隣接して配置されるか、前記出口ポートの遠位側に隣接して配置されるか、または前記出口ポートを組み込む外周に沿って配置される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1装置は、血管内弁送達システムを備え、
前記第2装置は、塞栓保護装置を備える、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記近位ハブは、前記複数の内腔に関する情報を提供する複数の近位マーカを備える、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記情報は、内腔の大きさ、遠位開口部の位置、および内腔の用途のうちの少なくとも1つを含む、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の定めにより、2021年9月24日出願の仮特許出願第63/248091号に対する優先権の利益を主張する。仮出願の開示は、参照によりその全体が組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、人工心臓弁などの解剖学的構造に対して所望の方向に装置を正確に展開するための装置および方法に関する。
【0003】
大動脈弁に欠陥のある患者は、心臓弁置換術の候補となることが多い。従来の治療法は、心臓弁を人工弁に置き換える手術である。この手術では、肉眼的開胸または胸骨正中切開、心肺バイパスと心停止、外科的アクセスと疾患心臓弁の切除、人工機械弁または組織弁による心臓弁の置換が行われる。この方法で移植された弁は、組織弁では10年から15年、機械弁ではさらに長い耐久性を持ち、歴史的にこれらの患者に良好な長期予後をもたらしてきた。しかし、心臓弁置換手術は、侵襲性が高く、回復に長い時間を要し、短期および長期の合併症を伴う。手術リスクの高い患者または手術不可能な患者には、この方法は選択できない場合がある。
【0004】
最近、心臓弁置換術に対する低侵襲アプローチが開発された。経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)または置換術(TAVR)として知られるこのアプローチは、カテーテルベースの送達システムに装着される折り畳み可能な人工弁の開発に依存している。このタイプの人工弁は、比較的小さな切開創または血管アクセス部位から患者に挿入でき、心停止することなく拍動している心臓に移植できる。この方法の利点は、外科的外傷が少なく、回復が早く、合併症の発生率が低いことである。手術リスクの高い患者または手術不可能な患者にとって、この方法は従来の手術に代わる良い選択肢となる。この技術の例としては、サピエン経カテーテル弁(エドワーズライフサイエンス(カリフォルニア州アーバイン))と、コアバルブシステム(メドトロニック(ミネソタ州ミネアポリス))がある。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6454799号には、この技術の例が記載されている。
【0005】
TAVIアプローチで挿入される弁には、主に2つの経路がある。1つ目は、経皮的または外科的に大腿動脈を切開して動脈切開を行い、大腿動脈を経由する血管アプローチ(経大腿アプローチと呼ばれる)である。送達システムに装着された弁は、大腿動脈に位置すると、逆行性(血流と逆方向)に下行大動脈を上り、大動脈弓を回り、上行大動脈を横切って、生来の大動脈弁の向かい側に位置するように前進する。経大腿大動脈弁送達システムは、通常90cm以上の長さがあり、大動脈弓の周囲を移動する能力を必要とする。大腿動脈の直径が比較的小さく、腸大腿解剖学的に動脈硬化性疾患が頻繁に存在するため、送達システムの最大直径は約24フレンチ(0.312インチ)に制限される。第2の経路は経心尖と呼ばれるもので、小開胸術によって心尖部から左心室にアクセスし、弁送達システムを大動脈弁の位置まで順行性(血流と同じ方向)に前進させる。この経路は、経大腿経路よりもはるかに短く直線的であるが、外科的穿刺とそれに続く心臓壁の閉鎖を伴う。
【0006】
鎖骨下動脈からのアクセスや、小開胸による上行大動脈の直接穿刺を含む他のアプローチが報告されている。鎖骨下アプローチ(経鎖骨アプローチ)は、経大腿動脈ルートが禁忌の場合に使用されるが、同側の総頸動脈を通る脳血管への流れを遮断する可能性がある。大動脈直接穿刺は、通常、血管疾患を含む解剖学的問題により、他のすべての経路を除外しなければならない場合に考慮される。大動脈壁の穿孔とその後の閉鎖は、大動脈解離または破裂を含む外科的リスクを伴う。
【0007】
大動脈弁に対する経大腿動脈アプローチは、経肩甲骨アプローチやその他の代替的なアプローチとは対照的に、医学界では一般的になじみの深いものである。大腿動脈から上行大動脈にアクセスするのは、介入心臓専門医にとって標準的な手順である。経大腿アプローチによるバルーン弁形成術が長年行われてきた。経肩甲骨アクセスまたは大動脈直接穿刺などの外科的アプローチは、あまりなじみがなく、外科的技術と血管内治療技術の両方を有する医師を必要とする。外科的アプローチの技術は、まだ発展途上であり、経大腿動脈的方法または経鎖骨動脈的方法と比較して利点があるかどうかはまだ確定していない。しかし、経大腿アプローチまたは経鎖骨アプローチにも問題がある。ひとつは、アクセスしたい血管が小さすぎたり、および/またはアテローム性動脈硬化症に冒されていたりすることが多く、そのため動脈をアクセスポイントとして使えないことである。第2の問題は、アクセスポイントから大動脈弁に至る経路は、通常、少なくとも90°の大回りを1回以上含み、曲率半径が0.5インチ以下と比較的狭いため、送達システムにある程度の柔軟性が要求されることである。この柔軟性の要求は、バルブと送達システムとの両方の設計パラメータを制限し、送達システムの必要な長さとともに、バルブを正確に位置決めするときの制御レベルを低下させる。
【0008】
TAVRでは、また、新しい弁を、病変のある生来の弁または過去に移植された弁のいずれかに、正確に設置する必要がある。生来の解剖学的構造に対する人工弁の長手方向および周方向の位置合わせは、手技を成功させるために非常に重要である。特に、冠動脈の血流を妨げないよう、正しい位置に装着することが必要である。臨床的には、移植された弁柱と弁尖の、生来の大動脈弁交連または移植された大動脈弁交連に対する位置合わせは、交連位置合わせと呼ばれている。長い血管内追跡長さ、特に経大腿アプローチでの長さ、追跡経路の著しい湾曲、追跡中の損傷または塞栓性粒子の放出による血管遮断のリスクは、現在のTAVR移植または送達システムの特別な課題であり、正確な弁設置能力を制限している。
【0009】
経大腿アプローチは、血管内追跡長が長く、腸骨と大動脈弓の湾曲が大きいため、限界がある。追跡中の血管の損傷および/または塞栓粒子の遊離など、血管が遮断されるリスクが高い。これらの限界は、TAVRシステムが正確な留置を行う能力に影響を与える。
【0010】
典型的なTAVR手技は、複数のアクセス部位を作ることを含む。TAVR装置は、通常、大口径の大腿骨アクセスシースを必要とするが、診断用カテーテルは、小口径の大腿骨アクセスから挿入される。小口径大腿静脈アクセスは、電気生理学的ペーシングリードの挿入に使用される。小口径橈骨動脈アクセスは塞栓保護装置の送達に使用されることがある。手技中に複数のアクセス部位を使用することは、TAVR手技の成功を制限し、例えば、複数のアクセス部位を閉鎖する必要性や、大腿動脈に送達されたTAVR送達システムが橈骨動脈に送達された塞栓保護装置に接触するなど、装置が不注意に他のデバイスに接触したり移動したりするリスクが増大するため、さらなる患者のリスクを伴う。
【発明の概要】
【0011】
一態様では、経カテーテル大動脈弁治療を実施するための動脈アクセスシースであって、近位開口部から遠位開口部まで延びた少なくとも1つの内腔を有する細長い本体と、細長い本体の近位開口部に結合し、患者の外部に留まるように構成された近位ハブであって、近位ハブは、1つまたは複数の近位方向マーキングを備える、近位ハブと、細長い本体の遠位端領域内に埋め込まれた放射線不透過性マーカバンドであって、放射線不透過性マーカバンドは、1つまたは複数の近位方向マーキングに周方向に対応する遠位端領域の外周周りに互いに離れた切り欠きを備える、放射線不透過性マーカバンドとを備える動脈アクセスシースが配置される。切り欠きは、マーカバンドに放射線不透過性の空隙を形成して、少なくとも2つの放射線透過性の遠位方向マーキングを形成する。少なくとも2つの遠位方向マーキングの重なりは、細長い本体の遠位端領域の周方向を示す。
【0012】
細長い本体は、左もしくは右の総頸動脈、または左もしくは右の鎖骨下動脈でのアクセス部位に導入されるように適合された長さを有してもよい。遠位方向マーキングの形状は、少なくとも2つの遠位方向マーキングが互いに少なくとも部分的に重なり合ったとき、第2の異なる形状を形成してもよい。形状は、長方形、円形、三角形、菱形、矢印、半球、または正方形であってもよい。少なくとも2つの遠位方向マーキングは、遠位方向マーキングの少なくとも2つの群を含んでもよい。少なくとも2つの群は、互いに区別可能であってもよい。少なくとも2つの群は、マーカの形状により区別可能であってもよい。少なくとも2つの群は、マーカの数により区別可能であってもよい。放射線不透過性マーカバンドは、1つまたは複数の放射線不透過性材料が充填されたポリマーを含んでもよい。放射線不透過性材料は、タングステン、タンタル、硫酸バリウム、白金、ステンレス鋼、および金であってもよい。遠位方向マーキングは、細長い本体の遠位端領域の側壁から離れて突出した放射線不透過性材料のボタンをさらに含んでもよい。近位方向マーキングは、ハブの近位側を向いた表面上にあってもよく、ユーザが直接視認可能であってもよい。近位方向マーキングは、近位ハブ上の接着剤マーキング、塗装マーキング、成形マーキング、エッチングマーキング、エンボスマーキング、または印刷マーキングを含んでもよい。細長い本体は、外周周りに非対称性を有していてもよく、近位方向マーキングは、非対称性に対応する。細長い本体は、断面において非円形であってもよい。
【0013】
相互に関係のある態様では、大動脈弁を治療する方法であって、総頸動脈の壁に患者の頸部を貫通する貫通部を形成し、貫通部を通して動脈アクセスシースを導入することを含む方法が提供される。アクセスシースは、近位ハブに結合された細長い本体を備え、近位ハブは、患者の外部に留まるように構成されるとともに、1つまたは複数の近位方向マーキングを備えている。細長い本体の遠位端領域は、1つまたは複数の近位方向マーキングに周方向に対応するように遠位端領域の外周周りに互いに離れた切り欠きを有する放射線不透過性マーカバンドを有する。切り欠きは、マーカバンドに放射線不透過性の空隙を形成して、少なくとも2つの放射線透過性の遠位方向マーキングを形成する。本方法は、少なくとも2つの遠位方向マーキングの重なり合う周方向位置に応じて、透視下で、標的解剖学的構造に対して、細長い本体の遠位端領域を位置合わせし、少なくとも2つの遠位方向マーキングに対応する1つまたは複数の近位方向マーキングをガイドとして用いて、アクセスシースを通して人工弁を導入し、人工弁を生来の大動脈弁の位置またはその近くに展開することを更に含む。
【0014】
相互に関係のある態様では、経カテーテル大動脈弁治療を送達するための動脈アクセスシースが提供される。シースは、それぞれ対応する近位開口部とそれぞれ対応する遠位開口部との間で互いに平行に延びた複数の内腔を有する細長い本体を含み、遠位開口部は、細長い本体の最遠位端に位置している。シースは、近位開口部と出口ポートとの間で延びた塞栓保護装置内腔であって、出口ポートは、細長い本体の側壁を通って、細長い本体の最遠位端から近位側に距離を離して配置された、塞栓保護装置内腔と、細長い本体の遠位端領域内に埋め込まれた第1放射線不透過性マーカバンドと、出口ポートの近くの細長い本体の領域内に埋め込まれた第2放射線不透過性マーカバンドとを含む。シースは、患者の外部に留まるように構成された近位ハブであって、細長い本体のそれぞれ対応する近位開口部と、塞栓保護装置内腔の近位開口部に結合されている、近位ハブを含む。
【0015】
複数の内腔は、12フレンチと24フレンチとの間、または4mmと8mmとの間の内径を有する介入装置内腔を含んでもよい。複数の内腔は、3フレンチと9フレンチとの間、または1mmと3mmとの間の内径を有する少なくとも2つの補助内腔を含んでもよい。シースは、複数の内腔を同時に洗浄するように構成され、近位ハブ上に設けられた洗浄弁をさらに含んでもよい。出口ポートが細長い本体の最遠位端の近位側に離れた距離は、少なくとも約10mmから約30mmまでであってもよい。細長い本体は、最遠位端が下行大動脈内に位置決め可能であるように、左もしくは右の総頸動脈、または左もしくは右の鎖骨下動脈のアクセス部位に導入されるように適合された長さを有してもよい。長さは、約10cmから約50cmまでの間であってもよい。近位ハブは、ユーザが直接視認可能である1つまたは複数の近位方向マーキングを含んでもよい。近位方向マーキングは、ハブの近位側を向いた表面上にあってもよい。第1放射線不透過性マーカバンドおよび第2放射線不透過性マーカバンドの少なくとも一方は、1つまたは複数の近位方向マーキングに周方向に対応するように遠位端領域の外周周りに互いに離間した切り欠きを含んでもよい。切り欠きは、マーカバンドに放射線不透過性の空隙を形成して、少なくとも2つの放射線透過性の遠位方向マーキングを形成してもよい。少なくとも2つの遠位方向マーキングの重なりは、細長い本体の遠位端領域の周方向を示してもよい。
【0016】
相互に関係のある態様では、複数の内腔および近位ハブを有する細長い本体を備える動脈アクセスシースを用いて血管を治療する方法が提供される。本方法は、近位ハブが患者の外部からアクセスできるように、細長い本体を患者の血管壁の貫通部を通して挿入し、第1装置を、第1近位開口部から、近位ハブを通して、複数の内腔の第1内腔に挿入し、第1内腔からの遠位開口部から取り出し、第2装置を、第2近位開口部から、近位ハブを通して、複数の内腔の第2内腔に挿入し、第2内腔から出口ポートから取り出すことを含む。第1内腔および第2内腔は、異なる内径を有している。第1内腔からの遠位開口部は、細長い本体の最遠位端に位置し、第2内腔からの出口ポートは、細長い本体の側壁を通って、最遠位端から近位側に距離を開けて位置している。
【0017】
細長い本体は、少なくとも、遠位開口部の近くの細長い本体の遠位端領域内に埋め込まれた第1放射線不透過性マーカバンドと、出口ポートの近くの細長い本体の領域内に埋め込まれた第2放射線不透過性マーカバンドとを含んでもよい。第2放射線不透過性マーカを有する細長い本体の領域は、出口ポートの近位側に隣接して配置されてもよく、出口ポートの遠位側に隣接して配置されてもよく、または出口ポートを組み込む外周に沿って配置されてもよい。第1装置は、血管内弁送達システムを含んでもよく、第2装置は、塞栓保護装置を含んでもよい。近位ハブは、複数の内腔に関する情報を提供する複数の近位マーカを含んでもよい。情報は、内腔の大きさ、遠位開口部の位置、および内腔の用途のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0018】
いくつかの変形例では、以下の1つまたは複数を、上記の方法、装置、デバイス、およびシステムにおいて、任意の実現可能な組み合わせで選択的に含めることができる。詳細は添付の図面および以下の説明に記載されている。その他の特徴や利点は、説明や図面から明らかであろう。
【0019】
以下、これらおよびその他の態様について、以下の図面を参照しながら詳細に説明する。一般的に言って、図は例示的なものであり、絶対的または比較的に縮尺通りではなく、例示を意図したものである。特徴や要素の相対的な配置は、明瞭な説明のために変更されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、アクセスシースの一実施態様の側面図を示す。
図2A図2Aは、図1のアクセスシースの遠位端領域を示す。
図2B図2Bは、図1のアクセスシースの近位端面図である。
図3A図3Aは、一連の近位方向マーキングを有するアクセスシースの近位端図である。
図3B図3Bは、放射線不透過性マーカバンド上のマーキングの配置を示す、異なる回転段階での図3Aのアクセスシースの遠位端領域を示す。
図3C図3Cは、放射線不透過性マーカバンド上のマーキングの配置を示す、異なる回転段階での図3Aのアクセスシースの遠位端領域を示す。
図3D図3Dは、放射線不透過性マーカバンド上のマーキングの配置を示す、異なる回転段階での図3Aのアクセスシースの遠位端領域を示す。
図4A図4Aは、放射線不透過性マーカバンド上のマーキングの別の配置を示す、異なる回転段階でのアクセスシースの遠位端領域を示す。
図4B図4Bは、放射線不透過性マーカバンド上のマーキングの別の配置を示す、異なる回転段階でのアクセスシースの遠位端領域を示す。
図4C図4Cは、放射線不透過性マーカバンド上のマーキングの別の配置を示す、異なる回転段階でのアクセスシースの遠位端領域を示す。
図5A図5Aは、放射線不透過性マーカバンド上のマーキングの別の配置を示す、異なる回転段階でのアクセスシースの遠位端領域を示す。
図5B図5Bは、放射線不透過性マーカバンド上のマーキングの別の配置を示す、異なる回転段階でのアクセスシースの遠位端領域を示す。
図5C図5Cは、放射線不透過性マーカバンド上のマーキングの別の配置を示す、異なる回転段階でのアクセスシースの遠位端領域を示す。
図6A図6Aは、様々な非円形形状を有するシースの細長い本体の断面図である。
図6B図6Bは、様々な非円形形状を有するシースの細長い本体の断面図である。
図6C図6Cは、様々な非円形形状を有するシースの細長い本体の断面図である。
図7A図7Aは、経頸動脈人工大動脈弁と送達システムとの実施例を示す。
図7B図7Bは、経頸動脈人工大動脈弁と送達システムとの別の実施例を示す。
図7C図7Cは、遠位方向マーキングを有するアクセスシースと遠位方向マーキングを有するバルブ送達システムの周方向の位置合わせを示す。
図8A図8Aは、大動脈弁の三尖線に対する図5Aのアクセスシースの周方向の位置合わせの様々な段階を示す。
図8B図8Bは、大動脈弁の三尖線に対する図5Aのアクセスシースの周方向の位置合わせの様々な段階を示す。
図8C図8Cは、大動脈弁の三尖線に対する図5Aのアクセスシースの周方向の位置合わせの様々な段階を示す。
図8D図8Dは、大動脈弁の三尖線に対する図5Aのアクセスシースの周方向の位置合わせの様々な段階を示す。
図9A図9Aは、アクセスシースの側面図である。
図9B図9Bは、図9Aのアクセスシースの近位端面図を示す。
図9C図9Cは、図9Aのアクセスシースの近位端領域の斜視図を示す。
図10A図10Aは、図9Aのアクセスシースの遠位端領域の斜視図を示す。
図10B図10Bは、図9Aのアクセスシースの遠位端面図を示す。
図10C図10Cは、左総頸動脈を介して挿入された図9Aのアクセスシースを示しており、遠位端領域は大動脈内にあり、側方出口は右頸動脈に向けられている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書に記載のシステムは、心臓または大動脈への人工大動脈弁などの装置の移植のために、生来の大動脈弁への、総頸動脈を介した経頸動脈アクセス、または鎖骨下動脈を介した鎖骨下アクセス、または大腿動脈を介した経大腿アクセスなどの動脈アクセスを可能にする。本システムは、例えば、解剖学的構造および/または展開される様々な構成要素に固有の内腔に対するシステムの円周方向、軸方向、および/または径方向の位置合わせを提供することによって、疾患弁の経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の医師の効率、制御、および展開精度を最大化する。
【0022】
本明細書で使用される「周方向の」位置合わせまたは位置とは、一般にシステムの長手方向軸の周りの位置合わせまたは位置をいう。例えば、アクセスシース110は、内腔への近位開口部と内腔からの遠位開口部との間で内腔を通って延びる長手方向軸を有することがある。アクセスシース110の遠位端領域の周方向の位置合わせとは、チューブの周方向における長手方向軸周りのアクセスシース110の遠位端領域の相対的な回転を指す。周方向の位置合わせは、例えば、回転方向の位置合わせと互換的に使用されてもよい。本明細書で使用される「軸方向の」位置合わせまたは位置とは、一般的にシステムの長手方向軸に沿った位置合わせまたは位置をいう。アクセスシース110の遠位端領域の軸方向の位置合わせとは、血管を通る、またはシステムの長手方向軸に沿った、あるいは長手方向軸におけるシース110の相対的な伸長をいう。長手方向に調整されたアクセスシース110は、長手方向軸に沿った軸方向に、一般に、アクセスシース110が挿入される解剖学的構造に対してさらに遠位または近位に移動される。軸方向位置合わせは、縦方向位置合わせと互換的に使用されてもよい。本明細書で使用される「径方向」位置合わせまたは位置とは、システムの長手方向軸に対して角度をなす位置合わせまたは位置をいう。アクセスシース110の遠位端領域の径方向の位置合わせとは、遠位端領域の長手方向軸に対する相対的な傾きおよび特定の透視図からの相対的な傾きをいう。
【0023】
特定のアクセス部位(例えば、総頸動脈)を経由して挿入されるシースを示す特定の図があるが、同様のシースまたはシース/シャントシステムは、鎖骨下アクセスまたは経大腿アクセス用に設計されてもよい。シース110は心臓弁の送達の文脈で説明されるが、アクセスシース110とシース110の内腔120を通して挿入されるツールとの間の方向の記載は、冠状動脈、腎動脈、肝動脈、胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤などの治療を含む他の種類の治療に有用である。
【0024】
大動脈弁への経大腿動脈、経頸動脈、または鎖骨下動脈アクセスは、経皮的穿刺または動脈を直接切開することによって行うことができる。特に総頸動脈のような大きな動脈切開では経皮的血管閉塞が困難であるため、切開が有利である場合がある。必要であれば、動脈切開部位にプレステッチを配置し、手技終了時の閉塞を容易にすることもできる。ダイレーターおよびガイドワイヤーが付随するアクセスシースは、アクセス動脈に適合するような大きさで提供される。頸動脈アクセスの場合、アクセスシースは、大動脈弓に向かって下方の動脈に挿入される。例えば、近位動脈および/または大動脈の疾患状態、ならびに頸動脈または胸骨動脈の大動脈への進入角度を含む因子に基づいて、左または右の総頸動脈または鎖骨下動脈のいずれかがアクセス部位として選択され得る。頸動脈はアクセス部位の遠位で閉塞する可能性がある。直接的な外科的な切開および動脈切開によりアクセスする場合は、血管クランプ、血管ループ、またはルンメル止血帯を用いて閉塞が行われ得る。代替的には、アクセスシース自体が、例えば閉塞バルーンなど、動脈を閉塞するように適合させた閉塞要素を含み、手技中に塞栓微粒子がアクセス部位の遠位の頸動脈に侵入することを防いでもよい。
【0025】
図1は、内腔120を有する細長い本体115から形成された動脈アクセスシース110の実施態様の側面図を示す。シース110は単一の内腔120を有するように示されているが、以下に詳述する図9A-9Cおよび図10A-10Cに関して後述するように、シース110は複数の内腔を組み込むことができる。シース110が単一の内腔を有すると説明されている場合、同じ特徴が複数の内腔120を有するシース110内に組み込まれてもよい。
【0026】
細長い本体115は、止血と器具の挿入を可能にするために、非外傷性遠位先端122と、近位ハブ124とを有する薄肉ポリマーチューブであり得る。細長い本体115の遠位端領域は、透視下でシース110の遠位端領域の周方向の位置合わせを示すための複数の方向マーキング125を有する放射線不透過性のマーカバンド123を組み込むことができる。使用中に患者の外部に留まることが意図される近位ハブ124などのシース110の近位端領域は、さらに、1つまたは複数の方向マーキング127を組み込むことができる。近位方位マーキング127は、シース110の遠位端領域の周方向および長手方向の位置合わせに関してユーザに検出可能なガイダンスを提供する方法で、遠位方位マーキング125と周方向に調整または位置合わせできる。シース110上の方向マーキング125,127は、例えば植え込み型心臓弁および送達システムなどのシース110と共に使用される介入器具または送達システムと周方向に調整または位置合わせさせることができ、これにより器具の周方向の位置が使用中により容易かつ明確に理解される。
【0027】
図2Aは、複数の方向マーキング125を有する放射線不透過性マーカバンド123を含むアクセスシース110の遠位端領域の詳細な斜視図を示す。マーキング125は、マーキング125が遠位端領域の周方向に関する情報を提供するように、互いに区別され得る複数の群で細長い本体115の壁の外周周りに配置され得る。図2Bは、アクセスシース110の近位端ハブ124と、複数の方向マーキング127との近位側の端面図を示す。遠位マーキング125と同様に、近位マーキング127は、ツールの外周上、例えばハブ124の近位側に向いた表面上に配置され得る。近位マーキング127は、シース110の遠位端領域の周方向に関する情報を提供するために、シース110の遠位端領域において遠位マーキング125と協調する複数の群で配置され得る。したがって、遠位端領域が、単一の円(または正方形、長方形、三角形、菱形、矢印、半球、または他の形状)のような単一の識別可能な形状を含む第1マーキング群125を含む場合、近位ハブ124上の第1マーキング群127も同様である。シースの遠位端領域にどのようなマーキングの配置が設けられていても、近位ハブ124のマーキング127も同様である。一例として、図2A-2Bは、単一の識別可能な形状または数のマーキング(例えば、単一の円、正方形、長方形、三角形、菱形、矢印、半球、または他の形状)を含むことができ、細長い本体の壁の外周周りの明確な位置に配置できる第1遠位マーキング群125aおよび第1近位マーキング群127aを示す。第2遠位マーキング群125bおよび第2近位マーキング群127bは、外周周りに距離を置いて配置された2つの識別可能な形状またはマーキング(例えば、2つの円、正方形、長方形、三角形、菱形、矢印、半球、または他の形状)を含み得る。第3マーキング群125cおよび第3近位マーキング群127cは、3つの識別可能な形状またはマーキング(例えば、3つの円)を含むことができ、外周周りにさらに距離を置いて配置される。第4マーキング群125dおよび第4近位マーキング群127dは、別の数の識別可能な形状またはマーキング(例えば、4つの円)を含むことができ、外周周りにさらに距離を置いて配置され得る。
【0028】
マーキングまたはマーキング群125,127が互いに区別可能である限り、外周周りの様々なマーキングまたはマーキング群125,127が考慮される。同様に、円、正方形、長方形、三角形、菱形、矢印、半球、または他の形状を含む、マーキング125の特定の群内の様々な形状または形状の数が考慮される。例えば、図3Aは、近位ハブ124上の別の一連の識別可能なマーキング127を示しており、各「群」は、特定の識別可能な形状を有する単一のマーカである。シース110の「前方」は第1形状マーカ127a(例えば、菱形)によって識別でき、その第1マーカ127aに対するシース110の「側方」は第2形状マーカ127b,127cによって識別することができる。遠位マーキング125は、近位マーキング127の形状、大きさ、数に正確に一致する必要はない。例えば、図3B-3Dは、回転の異なる段階の図3Aのシースの遠位端領域を示している。3つの近位マーキング127を有するにもかかわらず、放射線不透過性マーカバンド123の外周周りに互いに離れた2つのマーキング125a,125bのみが示されている。第1マーキング125aは、第2マーキング125bの形状とは異なる矢印または他の種類の非対称形状であり得る。図3Bは、互いに重ならないように位置合わせされた第1および第2マーキング125a,125bを示し、図3Cは、部分的に位置合わせされており、部分的に重なっている第1および第2マーキング125a,125bを示している。図3Dは、矩形の矢印形状が完全に重なり合い、対称的なX字形状を形成するように、互いに完全に位置合わせされた第1および第2マーキング125a,125bを示している。非対称なマーキング125a,125bが完全に重なり合い位置合わせされているときの配置は、その位置合わせにより、カテーテルの「前方」が長手方向軸の周りの空間においてどこにあるかというさらなるメッセージをユーザに提供する。近位ハブ124のマーキング127aのうちの1つは、この所望の側面を示すことができる。カテーテルの特定の側面または「前方」がどこであるかを知ることは、以下に詳述するように、カテーテルを通して非対称ツールまたは装置を展開するときにユーザにとって重要である。
【0029】
本明細書で使用する「完全に重なり合う」とは、一対のマーキング125が放射線透視検査で選択される視野に対して実質的に互いに位置合わせされる、カテーテルの長手方向軸周りのアクセスシース110の遠位端領域の周方向の回転、および長手方向軸に対するカテーテルの径方向の角度のことをいう。例えば、一対のマーキング125a,125bが放射線不透過性バンド123に矩形の開口部または切り欠きとして形成されている場合において、マーキング125a,125bが完全に重なっているとき、一方のマーキング125aの矩形の四辺すべてが、他方のマーキング125bの矩形の四辺すべてと実質的に位置合わせされるため、従来の三尖図または右/左尖重ね合わせ図で見たときに、透視下では(例えば、放射線不透過性の遠位端領域における放射線不透過性の欠如または隙間として)単一の矩形形状のみが見える。血管造影の投影は、大動脈弁輪の仮想平面に対して垂直であることが多い。伝統的な三尖図では、3つの尖がすべて視認でき、一般に左前斜位頭側(LAO-CRA)図に対応する。右/左尖重ね合わせ図では、右冠状動脈尖(RCC)と左冠状動脈尖(LCC)とは、マルチスライスCT(MSCT)または血管造影法を用いて互いの上部に重ね合わされ、一般に右前斜位尾側(RAO-CAU)図に対応し、非冠状動脈尖(NCC)は分離されたままとなる。これにより、二尖図、尖重ね合わせ図が形成される。尖重ね合わせ図は、NCCレベルでの展開深度、ワイヤの位置と張力とを評価できるという点で有利である。加えて、右/左尖重ね合わせ図は、これら3つ交連のうちの1つが右冠状動脈尖と左冠状動脈尖との間に位置することから、術者が生来の弁交連の空間的な向きを明確に予測することを可能にする。非放射線不透過性のマーキングを重ね合わせることで、シースを生来の交連に正確に位置合わせすることができる。アクセスシース110と送達システムは、この図では実質的に垂直に見える。
【0030】
図4A-4Cは、重なり合う配置によって、周方向の位置に関する情報をユーザに提供する、放射線不透過性マーカバンド123上のマーキング125の別の配置を示している。マーカバンド123は、バンド123の外周周りに互いに離間した一対のマーキング125a,125bを含むことができる。マーカバンド123はさらに、アクセスシース110の「前面」を識別するために、他の2つのマーキングとは異なるマーキング125cを組み込むことができる。第3マーキング125cは、シースの側壁から突出した放射線不透過性材料の小さな突起またはボタンであり、放射線透視で視認可能である。図4Aは、互いに位置合わせされていない第1および第2マーキング125a,125bを示し、図4Bは、部分的に位置合わせされ、部分的に重なり合っている第1および第2マーキング125a,125bを示している。図4Cは、もはや2つのマーキングとしてではなく、完全な周方向に位置合わせされたことを示す単一のマーキングとして見えるように、互いに完全に位置合わせされた第1および第2マーキング125a,125bを示している。第3マーキング124cは、カテーテルの「前方」に配置され、視認可能である。
【0031】
図5A-5Cは、重なり合う配置によって、周方向の位置に関する情報をユーザに提供する、放射線不透過性マーカバンド123上のマーキング125の別の配置を示している。マーカバンド123は、形状および大きさが互いに類似するが、カテーテルの外周周りに離間する第1の一対のマーキング125a,125bを含むことができる。マーカバンド123は、形状および/または大きさが互いに類似するが、カテーテルの外周周りに離間した第2の一対のマーキング125c,125dを含むことができる。しかしながら、第2の一対のマーキング125c,125dは、一対のマーキングが位置合わせされたときにカテーテルの「前方」が識別されるように、形状および/または大きさにおいて第1の一対のマーキング125a,125bとは異なることができる。図5Aは、互いに位置合わせされていないすべてのマーキングを示している。図5Bは、部分的に位置合わせされ、部分的に重なり合っているマーキングを示している。図5Cは、互いに位置合わせされた第1の一対のマーキング125a,125bと、互いに位置合わせされた第2の一対のマーキング125c,125dを示している。第5マーキング125eは、上述したように、アクセスシースの「前方」を識別するために、他の2対のマーキングとは異なってもよい。
【0032】
配置または構成にかかわらず、遠位方向マーキング125および近位方向マーキング127は、透視下でアクセスシース110の遠位端領域の周方向の位置合わせに関する情報を提供し、シース110のハブまたはハブの近傍で視認可能な近位方向マーキング127によってガイドされるように、ユーザにとって明白な方法で連係される。この連係は、シースを通して介入装置を送達するときに、当該装置が「利き手」を有する場合や、特定の方向に従った移植および/または送達を伴う何らかの非対称性を持つ場合に有用である。
【0033】
シース110は、適切な周方向に従って血管系内で正確な位置決めを必要とする様々な装置のいずれかを展開するために使用でき、当該装置は、人工弁、血流の少ない領域もしくは多い領域を形成する非対称な編組もしくはコイルを有する異種多孔性ステント、柵状、もしくは枝分かれした装置、動脈瘤、瘻孔、または破裂した血管から血流を迂回させるように構成され、健常組織への流れを可能にする領域を有するフローダイバータ、非対称な編組または微分格子密度を組み込んだ血管閉塞装置などを含む。
【0034】
放射線不透過性マーカバンド123は、タングステン、タンタルもしくは硫酸バリウム、白金、ステンレス鋼、または金を含む1つまたは複数の放射線不透過性材料が充填されたカテーテルのポリマーから形成され得る。遠位方向マーキング125は、放射線不透過性マーカバンド123にこれらの放射性不透過性材料の欠落を形成する切り欠きとして形成されることができ、バンド123に対して放射線透視下で固有なコントラストを有するものとして検出可能である。マーキング125が放射線不透過性材料の欠落として形成されることには、2つの重要な利点がある。1つは、比較的大きな放射線不透過性のマーカバンド123が血管造影下で容易に視認できること(位置と遠位端)であり、これは血管を通して装置を安全に追跡するために重要である。もう1つは、放射線不透過性材料に切り欠きをレーザー切断または機械加工することで、装置の製造中にマーキング間の正確な空間方向が可能になることである(複数の方向マーカ/コンポーネントを制御されたパターンでポリマーシャフトに付着させるのとは対照的である)。マーキング125は、細長いスロット、切り欠き、ハッチマーク、穴、チャネル、または放射線不透過性材料を欠くシース110のポリマー材料中の他の領域として現れる、バンド123の放射線透過性に1つまたは複数の間隙を形成する切り欠きとしてバンド123に形成することができる。したがって、マーキング125は、放射線不透過性材料を含まない完全な重合体であるため、放射線不透過性帯123の残りの部分とは異なり、放射線透視検査では、他の暗いバンドの中の明瞭な光の領域として現れる。いくつかの実施態様では、マーキングまたは一対のマーキング125は、放射線不透過性バンド123内の細長い矩形の形状を有する放射線透過性スロットとして形成される。他の実施態様では、マーキングまたは一対のマーキング125は、放射線不透過性バンド123内の円形の形状を有する放射線透過性開口部として形成される。さらに他の実施態様では、マーキングまたは一対のマーキング125は、バンド123内に形成され、互いに重なり合うと、異なる特異形状(X形状)を有する新たなマーキングが形成されて見える互いに異なる形状(上向き矢印および下向き矢印)を有する放射線透過性の切り欠きとして形成される。マーキング125によって形成される明瞭な領域は、幾何学的形状や自由形状を含む様々な形状のいずれかを有し得る。代替的または付加的に、遠位方向マーキング125は、マーカバンド123の材料とは異なる材料とすることができ、これにより、バンド123に対して蛍光透視下で固有のコントラストを有する固有のマークとして現れる。当該異なる材料も放射線不透過性であり得るが、マーキングがバンド123の残りの部分ほど暗く見えないように、バンド123の残りの部分よりも薄くすることができる。したがって、マーキング125は、バンド123の放射線不透過性とは異なる放射線不透過性を有することができ、その違いは透視下で識別可能である。
【0035】
近位マーキング127は、患者の外部にあるシース110の領域に配置されており、処置中に肉眼で視認できるため、放射線不透過性である必要はない。近位マーキング127は、処置中にユーザが容易に視認できるように、シース110の患者の外側の領域、例えば近位ハブ124に、粘着シールによるマーキング、塗装されたマーキング、成形されたマーキング、エッチングされたマーキング、エンボス加工されたマーキング、印刷されたマーキング、またはその他の方法で、貼付を含む様々な公知の方法のいずれかに従って適用されてもよい。
【0036】
シース110の細長い本体115は、断面が円形であってもよいし、断面が非円形であってもよい。シース110の細長い本体115の断面が非円形であると、シースを他の部品にキーにより固定できる。キーによる嵌合は、遠位および近位マーカ125,127の周方向の位置合わせと連係できる。図6A-6Cは、シース110の細長い本体115の様々な非円形断面を示している。いくつかの実施態様では、シース110の内側および外側の寸法は非円形であるが、他の実施態様では、シース110の内側または外側の寸法のみが非円形である。言い換えれば、シース110の外径は円形である一方で、シース110の内径は非円形であってもよく、その逆であってもよい。断面は、シース110の断面形状全体であろうと、内腔120の断面形状だけであろうと、平坦な多角形形状または、特定の向きだけを有する自由形状を含んでもよい。断面形状は、楕円形、D字形、三角形、矩形、または他の非円形であってもよい。シース110は、追加的または代替的に、レール形状を組み込んでもよい(図6A参照)。外周周りに非対称性を含む細長い本体115は、非対称性に対応する近位方向マーキングを組み込んでもよい。
【0037】
アクセスシースのキー付き断面は、展開される移植可能な装置に対して断面が周方向に位置合わせされるように、血管内送達システムの同様のキー付き断面を受けるように設計されてもよい。例えば、内腔120を通して展開されるTAVR送達システムは、移植可能な心臓弁(図7A-7B参照)に周方向に位置合わせするために、内腔120の断面形状に対応する形状またはキーとなる外寸を有してもよい。送達システムは、バルブがアクセスシース110上の近位マーキング127に対して位置合わせされ、シース110の内径と送達システムの外径との対応する形状が一致して、シース110の遠位端領域で所望の方向を達成するように挿入され得る。
【0038】
マーカ125,127と、シース本体115の非円形断面とは、送達されるバルブの正確かつ適切な向きを提供する再現可能な位置決めを提供することができる。
【0039】
いくつかの実施態様では、ハブ124には、非円形または多角形などの全体形状が組み込まれるか、またはアクセスシース110の遠位端領域上の遠位方向マーキング125に視覚的および/または物理的に位置合わせされ得る特定の方向に沿ったバンプアウトまたはレールなどの記載された形状が組み込まれる。したがって、ハブ124は、近位方位マーキング127自体を組み込む必要はなく、むしろ、近位方位マーキング127が提供する情報と同じ種類の情報を提供する形状をとることができる。このような形状のハブ124は、また、ハブ124を通して挿入される1つまたは複数の装置と、装置の周方向が既知で予測可能であるように、キーによる位置合わせを提供することができる。
【0040】
ハブ124は、トゥーイ・ボースト方式での接続のためのシリコンスリット弁またはルアーアタッチメントを組み込むことができる。動脈アクセスシース110のハブ124は、造影剤または生理食塩水洗浄を送達するため、吸引のためのYアームを含んでもよく、および/またはシャント112に流体的に接続されてもよく、シャントは、血液が動脈アクセスシース110から静脈還流部位または回収リザーバなどの還流部位に流れるためのシャント内腔または経路を提供する。この点で、動脈の少なくとも一部に逆行性または逆流性の血流状態が確立されることがある。Yアームは、(膨張内腔が存在する場合は)膨張内腔を介してシースの遠位端領域に閉塞バルーンを膨張させるためのものであり、止血弁は、シースに血管内弁送達システムを導入するためのものである。
【0041】
シース110は、様々な大きさを有する広範な装置に適応するように変化する作業長さ(すなわち、使用中に動脈に挿入可能なシースの部分)を有してもよい。作業長さは、約10cm~50cmであってもよい。シース110が単一の内腔120を包含する実施態様では、シースの内腔は、18フレンチから22フレンチ(0.236インチから0.288インチ)システムなどの血管内弁送達システムの挿入に適応するのに十分な大きさの内径を有してもよい。シース110が複数の内腔を包含する他の実施態様では、内腔の大きさは、以下でより詳細に記載されるように変化し得る。シースの大きさは、4フレンチから24フレンチまでと小さいことがある。ある実施態様では、送達システムは、約0.182インチと小さい内径を有する。
【0042】
ある実施態様では、アクセスシステムは、片方または両方の頸動脈のための塞栓保護を提供するために、1つまたは複数の塞栓保護要素を備えてもよい。例えば、片方または両方の頸動脈のための塞栓保護を提供するために、アクセスシステムは、フィルターを含んでもよい。この実施態様の変形例では、フィルターは対側の頸動脈、上腕動脈、または鎖骨下動脈を介して展開され、動脈口を横切って大動脈弓に配置される。シースのアクセス部位が左総頸動脈の場合、フィルターは胸骨動脈(腕頭動脈としても知られる)の動脈口を横切って配置されてもよい。シースのアクセス部位が右総頸動脈の場合、フィルターは左総頸動脈の動脈口を横切って配置されてもよい。この実施態様の変形例では、フィルターは、胸骨動脈と左総頸動脈の両方を横切って、または3本の頭頸部血管(胸骨動脈、左総頸動脈、左鎖骨下動脈)すべてを横切って展開される。フィルター要素は、アクセスシース110に内蔵されてもよい。あるいは、フィルター要素は、アクセスシース110に適合する別個の要素であってもよい。例えば、フィルター要素は、アクセスシースとスライド可能に接続される同軸要素、またはアクセスシースと並べて配置される要素であってもよい。フィルター要素は、潰れた状態で動脈に挿入できるが、その後、標的部位で拡張して、動脈または複数の動脈の開口部を横切ってフィルター要素を配置するように、伸縮可能なフレームを有してもよい。シースによって提供される塞栓保護は、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8545552号および米国特許第10925709号、または国際公開第2021/087480号に記載されているシステムのいずれかを含むことができる。
【0043】
人工弁と送達カテーテルとを含む血管内弁送達システムは、アクセスシース110を通して前進されてもよい。送達システムは、ねじり制御が可能であり、アクセスシースと同様の上述した遠位および近位マーキングを組み込んでもよい。アクセスシース110に関して上述した遠位方向および近位方向マーキングの様々な構成は、本明細書では血管内弁送達システムに関しても考慮される。送達システムの連係された遠位および近位マーキングは、送達システムを基準とする、および装置が送達されるアクセスシースを基準とする、移植可能な装置の周方向に関する情報をユーザに提供する。これにより、ユーザは、透視ガイダンスを用いて、シースを患者内の所望の位置に周方向に位置決めし、ガイドされた経路に沿って血管内弁送達システムを挿入し、既知の周方向位置で移植可能な装置を送達することができる。
【0044】
本明細書で説明するアクセスシース110を通して送達されるように構成された例示的な弁および送達システムを図7Aに示す。図7Aは、血管内弁送達システム200の遠位端に取り付けられたバルーン拡張可能な人工大動脈弁205の一実施態様を示している。送達システムは、内側シャフト210の遠位端領域に設けられた遠位テーパー先端220および拡張可能バルーン215を有してもよい。一実施態様では、システムは、また、例えば、装置の長軸に沿ってスライド可能であり、送達中にバルーン上でのバルブの位置を維持するプッシャースリーブ230などの外側スリーブを有している。近位制御アセンブリは、近位ハンドル240上のスライドボタン270などの、プッシャースリーブ230を引き込むための機構を含む。図7Aでは、バルブ205がプッシャースリーブ230の干渉を受けることなく拡張できるように、プッシャースリーブ230がバルブ205および近位バルーン215から引き込まれた状態で示されている。コネクタ250により、バルーン215のバルーン膨張用内腔に膨張装置を接続することができる。近位回転止血弁260により、弁送達システム200がガイドワイヤー上を前進して定位置に到達するときに、ガイドワイヤー(図示せず)の周囲をシールするとともに、システムを洗浄することができる。
【0045】
送達カテーテルは、30cm、40cm、60cm、70cm、80cm、最大約110cmの長さを有することがある。一実施態様では、送達カテーテルは、経頸動脈アクセス用に設計された作業長さを有しており、約30cmから約50cmの作業長さを有する。一実施態様では、送達カテーテルは、経大腿アクセス用に設計された作業長さを有しており、約110cmである。経頸動脈アクセス部位からのルートは、経大腿アプローチまたは鎖骨下アプローチに比べ、非常に短く直線的である。その結果、頸動脈に配置されたアクセスシースを介した展開のための送達システムは、経大腿アクセスシースを介した展開のための送達システムよりも短くすることができ、近位部分を非常に硬くすることができ、これらの両方は、より大きなプッシュおよびトルク制御を可能にし、その結果、人工弁の位置決めおよび展開の制御を向上することができる。遠位部分は、柔軟性が向上しており、上行大動脈の周囲と大動脈弁輪での位置への正確な追跡を可能にすることができる。送達システムの材料は、この剛性の増加を提供するために、現在の送達システムと比較して、強化された、より高いデュロメータの、および/またはより厚い壁の材料を含んでもよい。
【0046】
一実施態様では、弁送達システム200の作業長さは、経頸動脈アクセス部位から大動脈弁輪への弁の送達を可能にするように構成されている。具体的には、バルブ送達システム200の作業長さは45cmと60cmとの間である。送達システムシャフトは、右頸動脈または左頸動脈アクセス部位からの送達用に構成することもできる。具体的には、シャフトは、硬い近位部分280と、より柔軟な遠位部分290とを有する。一実施態様では、遠位部分290は、硬い近位部分280より2倍から4倍柔軟である。一実施態様では、柔軟な遠位部分290は、弁送達システム200の全作業長さの4分の1から3分の1の間である。具体的には、柔軟な遠位部分290は、10cmから20cmの範囲であることがある。代替的な実施態様では、弁送達システム200は、柔軟な遠位部分290の柔軟性と硬い近位部分280の柔軟性との間の1つまたは複数の柔軟な長さの移行部分を有する。
【0047】
経頸動脈送達用に構成された弁および送達システム300の別の実施態様を図7Bに示す。自己拡張型人工大動脈弁305は、血管内弁送達システム300の遠位端に取り付けられている。送達システムは、内側シャフト310の遠位端に遠位テーパー先端320を有する。弁305は、内側シャフト310上に配置され、装置の長手方向軸に沿ってスライド可能な引き込み可能なスリーブ330に収納されている。近位制御アセンブリは、スライドボタン370などの引き込み可能なスリーブ330を引き込むための機構を含む。一実施態様では、バルブ305およびスリーブ330は、第1の位置が不正確である場合にバルブ305を再位置決めできるように、スリーブ330が遠位方向に再び前進してバルブ305と接し、バルブ305を折り畳むことができるように設計されている。近位回転止血弁360は、弁送達システムがガイドワイヤー上を前進して定位置に到達するときに、ガイドワイヤー(図示せず)の周囲をシールするとともに、システムを洗浄することができる。
【0048】
先の実施形態と同様に、弁送達システム300の作業長さは、経頸動脈アクセス部位から大動脈弁輪への弁305の送達を可能にするように構成されている。具体的には、バルブ送達システム300の作業長さは、45cmと60cmとの間である。送達システムシャフトは、また、右または左の頸動脈アクセス部位からの送達用に構成されている。具体的には、シャフトは、硬い近位部分380と、より柔軟な遠位部分390とを有する。一実施形態では、遠位部分は、硬い近位部分の2倍から4倍柔軟である。一実施形態では、柔軟な遠位部分は、バルブ送達システムの全作業長さの4分の1から3分の1の間である。具体的には、柔軟な遠位部分は、10cmから20cmの範囲である。代替的な実施形態では、弁送達システムは、柔軟な遠位部分の柔軟性と柔軟な近位部分の柔軟性との間の1つまたは複数の柔軟な長さの移行部分を有する。
【0049】
TAVRは、病変のある生来の弁または過去に移植された弁のいずれかに、弁を正確に設置することを必要とする。手技を成功させるためには、新しい弁の長手方向と周方向との位置合わせが重要である。位置合わせは、冠動脈への血流を妨げず、正しい位置に設置するために非常に重要である。臨床的には、生来のまたは移植された大動脈弁交連に対する弁柱および弁尖の周方向の位置合わせも、手技を成功させるために必要である。方向マーキング125,127、および/または近位ハブのキー配置、および/またはシースの記載された機能は、解剖学的構造に対するシースの適切な位置合わせに関するガイダンスを提供する。送達システム200(または300)は、送達システム200に対して位置決めされたバルブ205(またはバルブ305)の向きに関する視覚的ガイダンスを提供する1つまたは複数の対応する近位向きマーキングと同様に、1つまたは複数の遠位方向マーキング225を組み込むことができる。遠位および近位方向マーキングは、アクセスシース110に関して上述した方向マーキング125,127と同じ性質および機能を有することができる。図7Cは、遠位端領域に設けられた塞栓保護フィルター211を有するアクセスシース110と、アクセスシース110を通って延びる弁送達システム200との実施態様を示している。アクセスシース110の遠位端領域は、X字形状を形成する互いに位置合わせされた遠位マーキング125a/125bと、シース110の遠位端領域の側面から突出した第3遠位マーキング125cとを有するように示されている。送達システム200は、遠位端領域に取り付けられ、ガイドワイヤー119上を前進するバルブ205を有するように示されている。送達システム200の遠位端領域は、X字形状を形成する対応する遠位方向マーキング225a/225bと、第3遠位マーキング125cがシース110から突出する側面と同じ送達システム200の遠位端領域の側面から突出する第3遠位マーキング225cとを含むことができ、標的解剖学的構造内での展開のための長手方向軸周りの適切な位置合わせを示す。
【0050】
図8A~8Dは、右/左尖重ね合わせ図を代表する透視下で見たときの、非冠状動脈尖(NCC)、右冠状動脈尖(RC)、および左冠状動脈尖(LC)を含む大動脈弁の3つの尖ライン805に対するアクセスシース110の周方向の位置合わせの様々な段階を示す。図8Aは、上行大動脈AA内に配置されたシース110の遠位端を示す。放射線不透過性バンド123の遠位方位マーキング125は位置合わせされていない。遠位方向マーク125の構成は、図5A-5Cに示した、2つの位置合わせスリットと、2つの前方円と、「前方」を示す5つ目のマーキングを有するものと同様である。図8Bは、アクセスシース110が細長い本体の長手方向軸を中心に回転し、遠位方向マーキング125が部分的に位置合わせされていることを示している。図8Cは、アクセスシース110が細長い本体の長手方向軸を中心にさらに回転し、遠位方向マーキング125が互いに完全に位置合わせされていることを示している。図8Dは、位置合わせされたアクセスシース110を介したバルブの送達を示している。アクセスシースの遠位方向マーキング125は、患者の特定の方向を示すことができる。2つのマーキング125は、重なり合って、シース110の遠位端に1つのマークを形成でき、その結果、別のマーキング125が患者の特定の部分を向く(例えば、患者の前方を向く)ため、移植可能な装置の挿入時に、装置が標的部位(図8Dの場合は大動脈弁)に対して適切に方向付けられる。移植可能な装置は、移植物の交連が、透視下で確認された遠位方向マーキングと連係する近位方向マーキング127と位置合わせされるように、シースを通して挿入されることができる。遠位方向マーキング125は、蛍光透視下で解剖学的構造に対して適切に方向付けることができ、患者の外部で視認可能で遠位方向マーキング125と直接連係された近位配向マーキング127は、シース110のハブ124内への移植送達システムの適切な挿入をガイドするために使用できる。移植用送達システムは、さらに、システム挿入時の適切な位置合わせを確実に達成するための1つまたは複数の特徴を組み込むことができる。
【0051】
本明細書に記載したアクセスシースおよび送達システムの特徴は、TAVRだけでなく、例えば冠動脈、腎動脈、肝動脈、胸部大動脈瘤、および腹部大動脈瘤の治療において、装置展開の移植および方向の正確さが望まれる様々な他の介入方法論にも有用である。本明細書に記載された方法はTAVRの文脈で説明されているが、本明細書に記載されたシースは、様々な方法のいずれにも使用できることを理解されたい。
【0052】
一実施態様では、アクセスシース110は、まず、経皮的穿刺または頸動脈の直接的な外科的切開および穿刺のいずれかを介して、血管系に挿入される。アクセスシース110は、先端が動脈口に向かって真下に向くように貫通部から導入できる。大動脈弁への経頸動脈的アプローチは、LCCAを介してまたはRCCA介して達成されてもよい。
【0053】
アクセスシース110の遠位端領域は、右/左尖重ね合わせ図(図8A参照)に位置合わせされることができる。シース110は、透視下で見ながら、遠位方位マーキング125が解剖学的構造に対する適切な方向を示すまで、長手方向軸の周りに回転させることができる。例えば、遠位方向マーキング125の少なくともいくつかは重なり合うことができ、別の遠位方向マーキング125は、患者の特定の方向または解剖学的構造を示すことができる(図8B-8C参照)。
【0054】
アクセスシースが位置決めされ、任意に塞栓保護手段が閉塞、吸引、および/またはフィルター要素を介して展開されると、大動脈弁へのアクセスは、シース110に挿入され、上行大動脈の下方に向き、生来の大動脈弁を横切るガイドワイヤー119(例えば、0.035インチまたは0.038インチガイドワイヤー)を介して得られる。弁移植の前に、適切な大きさの拡張バルーン、例えば弁形成術用バルーンを用いて、生来の大動脈弁の予備拡張を行うことができる。ガイドワイヤー119は、弁を横切ってバルーンを配置するために使用され、バルーンは膨張、収縮し、ガイドワイヤーが所定の位置にある間に取り外される。
【0055】
血管内人工弁205および送達システム200は、次に、アクセスシース110を通してガイドワイヤー119上に挿入される。弁205および送達システム200は、交連がシース110の近位方向マーキング127に向くように導入されることができ、マーキング127は、シース110の遠位方向マーキング125に直接対応する。送達システム200上に位置決めされた弁205は、アクセスシース110を通して生来の大動脈弁の部位まで入れられることができる。人工弁205は、必要に応じて、所望の位置合わせが達成されるまで、長軸に沿って長手方向に、および/または、長軸を中心として周方向に調整されることができる。その後、人工弁205は、生来の大動脈弁の位置またはその近くで展開される(図8D参照)。頸動脈からのアプローチは、シース110と人工器具の周方向の制御を向上させ、位置合わせの精度を向上させることができる。
【0056】
移植ステップの終了時、移植された人工弁205の機能は、超音波検査、透視下での造影剤注入、またはその他の画像診断手段によって評価できる。送達システム200の設計によっては、人工弁205は、最終的な展開の前に、最適な弁機能と位置を達成するために必要に応じて調整されてもよい。その後、送達システム200とガイドワイヤー119は、アクセスシース110から除去される。送達システム200とガイドワイヤー119を除去した後、塞栓保護要素が除去される。シース先端、閉塞要素、および/またはフィルター要素に捕らえられた塞栓片を捕捉するために、この間も吸引が続けられてもよい。閉塞要素、フィルター、閉塞バルーン、吸引などを含む様々な形態の塞栓保護装置を展開することができる。
【0057】
その後、アクセスシース110が除去され、アクセス部位が閉じられる。アクセスが外科的切開の直接穿刺である場合、血管は、以下に詳述するように、予め配置された縫合糸を結ぶか、手作業で縫合するか、外科的血管閉鎖装置を用いて閉鎖される。アクセスが経皮的であった場合、アクセス部位の止血を達成するために経皮的閉鎖方法および装置を採用してもよい。一実施態様では、貫通部を通して動脈アクセスシースを導入する前に、貫通部の部位に閉鎖装置が適用される。閉鎖装置の種類は様々である。
【0058】
上述のアクセス部位は、左または右の総頸動脈である。他のアクセス部位、例えば、左右の鎖骨下動脈または左右の上腕動脈も可能である。これらの動脈は、大動脈弁までのより長い、および/または、より曲がりくねった経路を必要とする場合があるが、頸動脈アクセスに比べて、他の利点、例えば、患者の頭部から離れて作業することができること、頸動脈内膜剥離術もしくは他の頸部手術、または放射線照射の既往など、頸部解剖学的に好ましくない部位を避けることができること、アクセス部位の合併症の場合のリスクが少ないことなどが挙げられる。さらに、頸動脈疾患または細い頸動脈は、総頸動脈アクセスを妨げる場合がある。これらのアクセス部位のいずれにおいても、TAVI中に頭頸部血管を閉塞、吸引、および/またはフィルタリングすることで、手技のスピードと正確性が増し、塞栓性合併症の発生率が低下することができる。
【0059】
アクセスシース110は、まず、経皮的穿刺、または大腿動脈の直接的な外科的切開および穿刺のいずれかを介して血管系に挿入され、下行大動脈に入れられ、弓部を横切って、上行大動脈に入れられてもよい。アクセスシース110は、選択した尖重ね合わせ図(例えば、三尖、R/L)を用いて、上述したように透視下で位置合わせされ得る。TAVR装置は、3時方向や12時方向など、慣行に従って方向付けられたハンドル上の洗浄ポートを用いてシース110に挿入できる。TAVR装置は、シース110を通して大動脈弁まで入れられてもよい。TAVR送達装置のハンドルは、弁を展開する前に、TAVRデバイスが下行大動脈に回収されることがあるが、適切な周方向の位置合わせが達成されるまでトルクがかけられてもよい。
【0060】
図9Aは、複数の内腔を有する動脈アクセスシース110の別の実施態様の側面図である。図1図8Dに関して上述したアクセスシース110の特徴は、図9A-9Cから図10A-10Cに示すアクセスシース110に適用される。例えば、図9A-9Cから図10A-10Cのアクセスシース110は、図9A-9Cから図10A-10Cに関して以下で繰り返すことも繰り返さないこともあるが、詳細に上述したように、透視下で解剖学的構造に対するシース110の適切な方向を識別するために有用な上述した複数の方向マーキングを組み込んでもよい。
【0061】
図9A-9Cのシースの細長い本体115は、複数の内腔のそれぞれを介した止血と装置の挿入を可能にするために、非外傷性遠位先端122と、近位ハブ124とを有する薄肉ポリマーチューブであってもよい。一実施態様では、細長い本体115は、少なくとも2つの内腔120,130を含むことができる。別の実施態様では、細長い本体115は、少なくとも3つの内腔120,130,140を含むことができる。さらに別の実施態様では、細長い本体115は、4つの内腔120,130,140,150を含むことができる。近位ハブ124は、各内腔にシリコン製スリット弁または他の種類などの止血装置を組み込むことができる。
【0062】
第1内腔120は、例えばTAVR装置などの介入装置を受け入れるのに十分な内径を有してもよい。第1内腔120は、最大の内腔であってもよく、約12フレンチ(4mm)から約24フレンチ(8mm)までの間、または約18フレンチ(6mm)であってもよい。第2および第3内腔130,140は、第1内腔120に比べて小さく、例えば、約3フレンチ(1mm)から最大約9フレンチ(3mm)まで間であってもよい。より小さい第2および第3内腔130,140は、診断用もしくはピッグテールカテーテルまたは他の装置の送達、造影剤、治療薬、吸引、および/または圧力測定のために使用されてもよい。
【0063】
いくつかの実施態様では、シース110は、追加的に、シース110の最遠位端ではなく、細長い本体115の側壁を通って出るように設計された、追加内腔150を含むことができる。内腔150は、長さの少なくとも一部分に沿って実質的に直線状であってもよく、内腔150内への近位開口部156から、長手方向軸に沿って、内腔120と平行に、シース110の遠位端領域に向かって延びている。内腔150は、遠位端領域付近で曲がって、出口ポート151で側壁の外に出ることができる。内腔150の出口ポート151は、保護のための標的血管(例えば、対側頸動脈)に入れるために大動脈弓内への送達を可能にするために、シース110の最遠位端122から少なくとも約10mmから最大約30mm離れた位置に配置されてもよい。内腔150の内径は、第1内腔120よりも小さく、例えば約5フレンチであってもよい。内腔150からの出口ポート151は、内腔150を通る塞栓保護装置の送達を容易にするために使用されてもよい。
【0064】
TAVRと組み合わせて使用される塞栓保護装置は、通常、対側頸動脈、上腕動脈、または鎖骨下動脈に進められ、および/または、動脈口を横切って大動脈弓に位置決めされる。例えば、シースのアクセス部位が左総頸動脈である場合、フィルターは、内腔150を通って進められ、出口ポート151から出されてもよく、胸骨動脈(腕頭動脈としても知られる)の動脈口を横切って位置決めされてもよい。シースのアクセス部位が右総頸動脈の場合、フィルターは、左総頸動脈の動脈口を横切って位置決めされてもよい。この実施態様の変形例では、フィルターは、胸骨動脈と左総頸動脈の両方に横切って、または3本の頭頸部血管(胸骨動脈、左総頸動脈、および左鎖骨下動脈)の全てに横切って展開される。フィルター要素は、拡張可能なフレームを含んでもよく、その結果、フィルター要素が潰れた状態で内腔150に挿入され、その後標的部位で拡張して、動脈または複数の動脈の開口部を横切ってフィルター要素を位置決めしてもよい。
【0065】
内腔の長さと内径は、適切な装置適合性のために変更されてもよい。第1内腔120の内径は、血管内弁送達システムまたは他の介入システムの挿入に適応するために十分な大きさであってもよい。上述したように、シース110は、様々な大きさを有する広範な装置に適合するように変化する作業長さ(すなわち、使用中に動脈に挿入可能なシースの部分)を有してもよい。作業長さは、約10cmから50cmであってもよい。シース110の作業長さは、アクセス部位によって異なってもよい。下行大動脈にアクセスする目的で総頸動脈に挿入されるように適合されたシースの場合、細長いシース本体115の長さは、10cmから約50cmの範囲であってもよく、通常は約20cmである。大腿動脈を介して下行大動脈に挿入されるように適合されたシースの場合、細長いシース本体115の長さは、30~100cmの範囲であってもよく、通常は80cmである。シース外径は、様々な内腔と壁厚との組み合わせであってもよく、TAVR内腔が18フレンチ、補助内腔が3フレンチから6フレンチの場合、約24フレンチであってもよい。
【0066】
細長い本体115の遠位端領域は、透視下でシースの位置を示すために、1つまたは複数の放射線不透過性マーカバンド123を組み込むことができる。上述したように、放射線不透過性マーカ123は、タングステン、タンタルもしくは硫酸バリウム、白金、ステンレス鋼、または金を含む1つまたは複数の放射線不透過性材料を充填したカテーテルのポリマーから形成されてもよい。実施態様において、細長い本体115の最遠位先端は、第1マーカ123を含んでもよく、細長い本体115の別の領域は、第1マーカ123とは大きさ、形状、および/または色が異なる第2マーカ123を含んでもよい。例えば、第1マーカは、シース110の遠位端の近くに、透視下で識別可能なように互いに距離を開けて配置された2つの放射線不透過性バンド123a,123bを含んでもよい(図10A-10C参照)第2マーカは、第1マーカバンド123a,123bから近位側に距離を開けて配置された単一の放射線不透過性バンド123cを含んでもよい。単一の放射線不透過性バンド123cは、第3内腔150からの出口ポート151の近傍に配置されて、内腔150を通る装置の展開のために適切な位置にポートを位置決めするのを助けてもよい。第2マーカ123bは、出口ポート151のすぐ近位側、出口ポート151のすぐ遠位側、または出口ポート151を取り込む外周に沿って配置されてもよい。マーカ123a,123b,123cは、シース110の全周を囲む中実のバンド形状ある必要はない。いくつかの実施態様において、遠位マーカ123a,123bは2つの放射線不透過性バンドを組み込むことができるのに対して、出口ポートマーカ123cは、出口ポート151の位置における明瞭なマーク、例えば、その位置におけるシース110の全周とは対照的にポート151自体を取り囲むマークであってもよい。
【0067】
シース110は、図1A-8Dに関して上述したように、透視下でのシース110の遠位端領域の周方向の位置合わせを示すために、複数の遠位方向マーキング125を組み込むことができる。
【0068】
使用中に患者の外部に留まることが意図される近位ハブ124などのシース110の近位端領域は、追加的に、1つまたは複数の視認可能なマーキング127を組み込むことができる(図9A参照)。近位マーキング127は、患者の外部にあるシース110の領域に配置されており、処置中に肉眼で視認可能であるため、放射線不透過性である必要はない。近位マーキング127は、粘着ステッカー、塗装、成形、エッチング、エンボス加工、またはその他の方法を含む様々な既知の方法のいずれかに従って、近位ハブ124などの患者の外部にあるシース110の領域に、処置中にユーザが容易に見えるように適用されてもよい。
【0069】
近位マーキング127は、図1A-8Dに関して説明したように、遠位端領域の周方向と同様に、異なる内腔に関してユーザに検出可能なガイダンスを提供することができる。1A-8D。近位マーキング127は、異なる記号、色、および/またはテキストを用いて、内腔の大きさ、遠位開口部の位置、および/または内腔の意図された目的(例えば、TAVR対塞栓保護装置)に関する情報を提供することができる。一例として、側壁を貫通して位置決めされた出口ポート151を有する内腔150は、その内腔150への近位開口部156の隣に位置決めされた側面を指す矢印などを用いて、出口ポート151が配置されたシース110の側面を示すマーキング127により識別することができる。これにより、例えば、ルーメン150を通して挿入された塞栓保護フィルターが、尾側を向くか、または弓から離れた枝血管の近くに位置するカテーテルの領域から展開されるように、出口ポート151が大動脈弓内に適切に配置されるように、ユーザがアクセスシース110を確実に回転させることに役立てることができる。図10Cは、下行大動脈(DAo)と上行大動脈(AAo)との間の大動脈弓内に遠位端を有する左総頸動脈LCCAを介して挿入されたアクセスシースを示す。側方出口は右頸動脈(RCCA)を向いている。別の例として、内腔への近位開口部を含む内腔の少なくとも一領域は、内腔の大きさを示すために固有の色に着色されてもよい(例えば、緑色は、介入装置の送達のための最大の内腔の大きさを示し、黄色は、造影または診断カテーテルの送達のためのより小さな内腔の大きさを示し、赤色は、側方ポートを有する内腔を示すことがある)。内腔120の近位端領域および/または内腔120への近位開口部126は、第1色であってもよく、近位端領域および/または補助内腔130,140への近位開口部136,146は、第1色とは異なる第2色であってもよい。内腔150の近位端領域および/または内腔150への近位開口部156は、内腔150が、シース110の遠位端領域の側壁を貫通し、塞栓保護装置の展開のために意図された遠位出口ポート151を有していることを示すために、第1色および第2色のいずれとも異なる第3色であってもよい。色は、テキストまたは記号と組み合わせられてもよい。本明細書では、ユーザが容易に識別できる方法でシース110の様々な内腔を容易に識別するために、近位マーキング127の様々な組み合わせのいずれもが考慮される。
【0070】
ハブ124は、トゥーイ・ボースト方式での接続のためのシリコンスリット弁またはルアーアタッチメントを組み込むことができる。各内腔120,130,140,150は、専用の止血装置を組み込むことができる。シース110は、ユーザがすべての内腔を生理食塩水、治療薬、および/または造影剤で同時に洗浄したり、圧力を記録したりできるように、洗浄ポート113および/または洗浄ポートルアーアタッチメントを組み込むことができる。動脈アクセスシース110のハブ124は、造影剤または生理食塩水洗浄を送達するため、吸引のためのYアームを含んでもよく、および/またはシャントに流体的に接続されてもよく、シャントは、血液が動脈アクセスシース110から静脈還流部位または回収リザーバなどの還流部位に流れるためのシャント内腔または経路を提供する。この点で、動脈の少なくとも一部に逆行性または逆流性の血流状態が確立されることがある。Yアームは、(膨張内腔が存在する場合は)膨張内腔を介してシースの遠位端領域に閉塞バルーンを膨張させるためのものであり、止血弁は、シースに血管内弁送達システムを導入するためのものである。
【0071】
本明細書で説明されるシースのいずれも、それを通して動脈に吸引を行うことができる。この点で、アクセスシース110は、Yアームを介して吸引源に接続されてもよく、そうしなければ残りの頭頸部血管に入るか、下流に移動して末梢血管に留まる可能性のある塞栓破片を捕捉することができる。吸引源は、能動的、例えば、心筋吸引源、ポンプ、注射器であってもよい。別の方法として、例えば、Yアームをシャント112(図1参照)に流体接続し、シャント112を大気圧または負圧の収集リザーバ、または患者の静脈還流部位などの低圧源に接続することにより、受動的な流れ状態を確立してもよい。受動流量は、例えば、シャント内の流路の制限を制御することによって調節されてもよい。
【0072】
本明細書で説明されるシース110はいずれも、よじれることなく動脈の屈曲部を通過または移動できるように構成することができる。例えば、アクセスシース110が、鎖骨の上方であって頸動脈分岐部の下方で、経頸動脈アプローチを通して逆行性に総頸動脈(左または右のいずれか)に導入される場合、細長いシース本体115は、よじれまたは座屈に抵抗するフープ強度を保持しつつ柔軟であることが望ましい。このことは、動脈へのシース挿入量が制限される手技、および/または頸動脈の深い患者および/または頸の短い患者の経頸動脈アクセスのように挿入角度が急な手技において特に重要である。このような場合、シースの剛性のために、シース本体の先端が動脈の後壁に向かう傾向がある。このため、シース本体自体の挿入、またはガイドワイヤーなどのシースを通して動脈に挿入される装置による傷害の危険性がある。シース本体115は、動脈内に挿入されるときに、よじれることなく屈曲可能であるように構成することが望ましい。動脈アクセスシース110は、45度以下の屈曲部を通過されることができ、この屈曲部は、動脈を通って測定された動脈切開部の5cm、10cm、または15cm以内に位置する。シース110は、先端で約20°の角度のある曲げの有無にかかわらず、概ね直線状である。先端の角度のある曲げは、移動と送達を助けることができる。
【0073】
動脈に進入するシース本体115などの本明細書に記載される動脈アクセスシース110のいずれかの作動部分は、2層またはそれ以上の層で構成されてもよい。内層は、内腔を装置が進むための滑らかな表面を提供することがきるようにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、HDPE、またはFEP(フッ素化エチレンプロピレン)などの低摩擦ポリマーで構成されてもよい。外側ジャケット材料は、内層に機械的統合性を与えることができ、Pebax、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン、ナイロンなどの材料から構成されてもよい。内側と外側の表面は、材料(PTFE、HDPE)、コーティング(シリコン、親水性コーティング)、および/または表面改質の選択によって潤滑性を有してもよい。内層と外側ジャケットの間に補強を提供することができる第3層が組み込まれてもよい。補強層は、装置が血管系の屈曲部を通過するときに、シース本体の内腔が平らになったり、よじれたりすることを防ぐことができる。補強層は、また、吸引やまたは逆流と同様に、装置アクセス用の妨げのない内腔を提供することができる。一実施形態では、シース本体115は、周方向に補強されている。補強層は、ステンレス鋼、ニチノール、ニチノールブレイズ、ヘリカルリボン、ヘリカルワイヤ、カットステンレス鋼などの金属製、またはPEEKなどの硬質ポリマー製であってもよい。補強層は、コイルおよび/またはブレイズのような構造体、または柔軟性を有するようにレーザーカットもしくは機械加工されたチューブであってもよい。別の実施形態では、補強層は、ニチノールハイポチューブまたは切断硬質ポリマーなどの切断ハイポチューブであってもよい。細長い本体115の補強は、シース110が近位ハブ124から遠位先端122まで1:1に近い動きをするように、長手方向およびねじり剛性を向上させるように構成されてもよい。
【0074】
シースの保持は、一度正しく位置決めされるとシースを患者に固定できる、例えば、アクセスシース110の近位端領域上のアイレットまたは他の特徴によって達成されてもよい。
【0075】
最初のアクセスは、アクセス針、アクセスガイドワイヤー、微小穿刺カニューレを含む微小穿刺キットを用いて達成されてもよい。アクセス針、アクセスガイドワイヤー、および微小穿刺カニューレは、本明細書の他の箇所で説明するように、頸動脈穿刺を介して頸動脈または別の血管に導入されるように適合されてもよい。頸動脈の穿刺は、例えば経皮的に、あるいは外科的な切開によって行われてもよい。血管へのアクセスが確立すると、アクセスシース110が挿入されてもよい。シースガイドワイヤーは、修正セルジンガー手技または微小穿刺手技を用いて挿入されてもよい。
【0076】
アクセスシース110は、シースガイドワイヤー(例えば、014,018,035)上への初期挿入のために構成された滑らかな先端シース拡張器の支援を受けて挿入されてもよい。シース遠位先端122は、アクセスシース110がシース拡張器と組み立てられてシース組立体を形成するときに、シース組立体が最小限の抵抗で動脈穿刺を通してシースガイドワイヤー上に円滑に挿入されるように構成されてもよい。シース110の少なくとも一部の領域に潤滑性または親水性コーティングを施すことで、血管内への挿入時の摩擦を軽減することができる。遠位コーティングは、穿刺部位におけるシースの安全性または挿入中に操作者がシースをしっかりと把持する能力を損なうことなく、コーティングが挿入を容易にするように、細長い本体115の遠位端領域に限定されてもよい。
【0077】
細長い本体115は、その長さにわたって柔軟性を変化させることができる。例えば、外側ジャケットは、様々な部分でデュロメータおよび/または材料が変化してもよい。代替的には、補強構造または材料は、シース本体の長さにわたって変化してもよい。一実施形態では、シース本体115の最遠位部には、シース本体の残りの部分よりも柔軟な部分がある。例えば、最遠位部分の曲げ剛性は、シース本体115の残りの部分の曲げ剛性の3分の1から10分の1である。CCAアクセス部位用に構成されたシースの場合、柔軟な最遠位部は、シース本体115のかなりの部分を構成しており、比率として表すことができる。一実施形態では、シース本体115の全長に対する柔軟な最遠位部分の長さの比率は、シース本体115全体の長さの少なくとも10分の1、多くとも2分の1である。
【0078】
本明細書で説明されたアクセスシースおよび送達システムの特徴は、TAVRだけでなく、例えば冠動脈、腎動脈、肝動脈、胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤の治療など、様々な他の介入方法論にも有用である。本明細書に説明された方法はTAVRの文脈で説明されているが、本明細書に説明されたシースは、様々な方法のいずれにも使用することができることを理解されたい。シース110は、人工弁、血流の少ないまたは多い領域を形成する非対称な編組またはコイルを有する異種多孔性ステント、柵状もしくは枝分かれした装置、動脈瘤、瘻孔、または破裂した血管から血流を迂回させるように構成され、健常組織への流れを可能にする領域を有するフローダイバータ、非対称な編組または微分格子密度を組み込んだ血管保護装置などを含む様々な装置のいずれかを第1内腔120を通して展開するために使用することができる。シース110は、流体(例えば、造影剤、治療薬など)、診断用カテーテル、ピッグテールカテーテル、電気生理学的ペーシングリード、圧力測定装置、小口径カテーテル、マイクロカテーテルなどを含む装置の1つまたは複数を送達し、1つまたは複数の補助内腔130,140を通して吸引を行うために使用されてもよい。シース110は、側方ポート151を有する内腔150を通して塞栓保護装置を展開するために使用されてもよい。
【0079】
一実施態様では、複数の内腔を有するアクセスシース110は、まず、経皮的穿刺または頸動脈の直接的な外科的切開および穿刺のいずれかを介して、血管系に挿入される。アクセスシース110は、先端が大動脈の動脈口に向かって真下になるように貫通部を通して導入でき、任意には、内腔150が塞栓保護装置の標的に向くように方向付けられてもよい。大動脈弁への経頸動脈的アプローチは、LCCA経を介してまたはRCCAを介して達成されてもよい。図10Cは、LCCAによるアプローチを示している。アクセスシースが位置決めされ、任意に塞栓保護手段が閉塞、吸引、および/またはフィルター要素を介してルーメン150を通して展開されると、大動脈弁へのアクセスは、第1内腔120を通してシース110に挿入され、上行大動脈の下方に向けられ、生来の大動脈弁または過去に移植された生体人工物を横切るガイドワイヤー(例えば、0.035インチまたは0.038インチガイドワイヤー)を介して得られる。診断用カテーテル(例えば、ピッグテールカテーテル)は、造影剤の直接注入と透視による可視化を可能にするように、内腔130から挿入され、大動脈弁の上方に送られてもよい。内腔140は、大動脈弁の上方に追加の補助装置を送達し、吸引を行い、および/または造影剤を注入するために、手技中いつでも使用できる。弁移植の前に、適切な大きさの拡張バルーン、例えば弁形成術用バルーンを用いて、生来の大動脈弁の予備拡張が行われてもよい。ガイドワイヤーは、バルーンを弁全体に配置し、バルーンを膨らませ、収縮させ、ガイドワイヤーを固定したままバルーンを取り外すために使用されてもよい。次に、血管内人工弁および送達システムは、ガイドワイヤー上にアクセスシース110の内腔120を通して挿入される。送達システム上に位置決めされた弁は、アクセスシース110を通して、生来の大動脈弁の部位まで入れられてもよい。人工弁は、必要であれば、所望の位置合わせが達成されるまで、長軸に沿って長手方向に、および/または長軸を中心として周方向に調整されてもよい。その後、人工弁は、本来の大動脈弁の位置、またはその近くで展開される。頸動脈からのアプローチは、シース110と人工器具の周方向の制御を向上させ、位置合わせの精度を向上させることができる。
【0080】
移植ステップの終了時、移植された人工弁の機能は、超音波検査、透視下での造影剤注入、またはその他の画像診断手段によって評価できる。送達システムの設計によっては、人工弁は、最終的な展開の前に、最適な弁機能と位置を達成するために必要に応じて調整されてもよい。その後、送達システムとガイドワイヤーは、アクセスシース110から除去される。その後、診断用カテーテルは、アクセスシース110から除去される。送達システムとガイドワイヤーとを除去した後、塞栓保護要素が内腔150から除去されるシース先端部、閉塞要素、および/またはフィルター要素に捕らえられた塞栓片を捕捉するために、この間も内腔140を通じて吸引が続けられてもよい。閉塞要素、フィルター、閉塞バルーン、吸引など、さまざまな形態の塞栓保護装置を展開することができる。
【0081】
その後、アクセスシース110が除去され、アクセス部位を閉じられる。アクセスが外科的切開の直接穿刺である場合、血管は、以下に詳述するように、予め配置された縫合糸を結ぶか、手作業で縫合するか、外科的血管閉鎖装置を用いて閉鎖される。アクセスが経皮的であった場合、アクセス部位の止血を達成するために経皮的閉鎖方法および装置を採用してもよい。一実施態様では、貫通部を通して動脈アクセスシースを導入する前に、貫通部の部位に閉鎖装置が適用される。閉鎖装置の種類は様々である。
【0082】
上述のアクセス部位は、左または右の総頸動脈である。他のアクセス部位、例えば、左右の鎖骨下動脈または左右の上腕動脈も可能である。例えば、左右の鎖骨下動脈、左右の上腕動脈、経大腿アプローチなどである。これらの動脈は、大動脈弁までのより長い、および/または、より曲がりくねった経路を必要とする場合があるが、頸動脈アクセスに比べて、他の利点、例えば、患者の頭部から離れて作業することができること、頸動脈内膜剥離術もしくは他の頸部手術、または放射線照射の既往など、頸部解剖学的に好ましくない部位を避けることができること、アクセス部位の合併症の場合のリスクが少ないことなどが挙げられる。さらに、頸動脈疾患または細い頸動脈は、総頸動脈アクセスを妨げる場合がある。これらのアクセス部位のいずれにおいても、TAVI中に頭頸部血管を閉塞、吸引、および/またはフィルタリングすることで、手技のスピードと正確性が増し、塞栓性合併症の発生率が低下することができる。
【0083】
本明細書に記載された方法のいずれかにおいて、頸動脈へのアクセスが外科的切開を介したものであった場合、アクセス部位は標準的な血管外科技術を用いて閉鎖されてもよい。パース糸縫合は、シース挿入前に行い、シース除去後にアクセス部位を縛るために使用されてもよい。アクセス部位が経皮的アクセスであった場合、多種多様な血管閉鎖要素が使用されてもよい。一実施態様では、血管閉鎖要素は、アンカー部分と、自己閉鎖部分などの閉鎖部分とを含む機械的要素である。アンカー部分は、フック、ピン、ステープル、クリップ、タイン、縫合糸などで構成されてもよく、貫通部が完全に開いているときに自己閉鎖要素を固定するために、貫通部について総頸動脈の外面に係合される。自己閉鎖要素は、また、シースの除去時に、動脈壁の組織を一緒に引き寄せて閉鎖を提供するために、アンカー部分を閉じるバネ状または他の自己閉鎖部分を含んでもよい。通常、閉鎖は十分であるため、貫通部を閉鎖または密閉するためにそれ以上の措置を講じる必要はない。しかし、選択的に、シースが引き出された後に、自己閉鎖要素の補助的なシールを提供することが望ましい場合もある。例えば、自己閉鎖要素および/または要素の領域における気管組織は、生体吸収性ポリマー、コラーゲンプラグ、接着剤、シーラント、凝血因子、または他の凝血促進剤などの止血材料で処理されてもよい。代替的には、組織または自己閉鎖要素は、電気メス、縫合、クリッピング、ステープリングなどの他のシーリングプロトコルを用いてシールされてもよい。別の方法では、自己閉鎖要素は、クリップ、接着剤、バンド、またはその他の手段で血管の外壁に取り付けられる自己シーリング膜またはガスケット材であり得る。自己シーリング膜は、通常は血圧により閉じている、スリットや十字の切れ込みなどの内側開口部を有することがある。これらの自己閉鎖要素はいずれも、開腹手術で設置するように設計することも、経皮的に展開することもできる。
【0084】
別の実施態様では、血管閉鎖要素は、縫合糸ベースの血管閉鎖装置である。縫合糸ベースの血管閉鎖装置は、シース除去後に縫合糸端が結ばれると、縫合糸が血管アクセス部位を止血するように、血管アクセス部位を横切って1つまたは複数の縫合糸を配置することができる。縫合は、動脈切開を通じて処置用シースを挿入する前か、動脈切開からシースを除去した後に行うことができる。この装置は、縫合糸を留置した後、処置用シースを留置する前およびその間に、動脈切開部の一時的な止血を維持でき、また、処置用シースを引き抜いた後、縫合糸を結ぶ前に、一時的な止血を維持することもできる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「SYSTEMS AND METHODS FOR TREATING A CAROTID ARTERY」と題された米国特許第8858490号には、例示的な閉鎖装置が記載されており、また、本明細書に開示された装置、システム、および方法に関連し、それらと組み合わせることができる様々な他の装置、システム、および方法が記載されている。
【0085】
複数の態様において、図を参照しながら説明される。しかし、特定の態様は、これらの具体的な詳細の1つまたは複数を用いずに、もしくは他の既知の方法および構成と組み合わせて実施されてもよい。本明細書では、実施態様を十分に理解できるように、具体的な構成、寸法、工程など、数多くの具体的な詳細が記載されている。他の例では、周知の工程または製造技術は、不必要に説明を曖昧にしないために、特に詳しく説明していない。本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施態様」、「一態様」、「一実施態様」、「実施態様」などへの言及は、記載された特定の特徴、構造、構成、または特性が、少なくとも1つの実施形態、態様、または実施態様に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じて様々に配置された「一実施形態」、「実施形態」、「一態様」、「態様」、「一実施態様」、「実施態様」などの表現は、必ずしも同一の実施形態、態様、または実施態様に言及するものではない。さらに、特定の特徴、構造、構成、または特性は、1つまたは複数の実施態様において、任意の適切な方法で組み合わせられてもよい。
【0086】
本明細書全体を通して相対的な用語が使用されているが、これは相対的な位置、または方向もしくは方位を示すものであり、限定を意図するものではない。例えば、「遠位」は基準点から遠ざかる第1の方向を示すことがある。同様に、「近位」は、第1の方向とは反対の第2の方向の位置を示すことがある。「前方(front)」、「側方(side)」、および「後方(back)」、並びに「前方(anterior)」、「後方(posterior)」、「尾側(caudal)」、「頭側(sephalad)」などの用語の使用は、相対的な参照フレームを確立するために使用されるものであり、様々な実施態様において本明細書に記載される装置のいずれかの使用または向きを制限することを意図するものではない。
【0087】
「約(about)」という用語は、当業者であれば規定値と合理的に類似していると考える、規定値を含む値の範囲を意味する。実施形態では、「約」は、当該分野で一般的に許容される測定法を用いた標準偏差の範囲内であることを意味する。実施形態では、「約」は、規定値の±10%までの範囲を意味する。実施形態では、「約」は規定値を含む。
【0088】
本明細書には多くの具体的事項が記載されているが、これらは、特許請求の範囲または特許請求され得る範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、むしろ特定の実施形態に特有の特徴を説明するものとして解釈されるべきである。別個の実施形態の文脈で本明細書に記載されている特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で説明されている様々な特徴も、複数の実施形態で別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで実施することができる。さらに、特徴が、特定の組み合わせで作用するものとして上述され、当初はそのようにクレームされる場合があるが、クレームされた組み合わせからの1つまたは複数の特徴は、場合によっては組み合わせから除外されることがあり、クレームされた組み合わせは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形例に関してもよい。同様に、操作は特定の順序で図面に描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような操作を図示された特定の順序で、または順次実行すること、あるいは図示されたすべての操作を実行することを要求するものとして理解されるべきではない。開示されているのは、ほんの一部の例、実施形態、態様、および実施態様に過ぎない。開示された内容に基づいて、説明された実施例、実施態様、およびその他の実施態様の変形、修正、拡張を行うことができる。
【0089】
上記の説明および特許請求の範囲において、「の少なくとも1つ」または「の1つまたは複数」などの表現が、要素または特徴の接続詞的リストに続いて現れることがある。用語「および/または」は、2つ以上の要素または特徴のリストに現れることがある。このような表現は、それが使用される文脈によって暗黙的または明示的に矛盾しない限り、列挙された要素または特徴のいずれかを個々に、または列挙された要素または特徴のいずれかを他の列挙された要素または特徴のいずれかを組み合わせて意味することを意図している。例えば、「AおよびBの少なくとも1つ」、「AおよびBの1つまたは複数」、および「Aおよび/またはB」という表現はそれぞれ、「A単独、B単独、またはAおよびBを合わせて」という意味を意図している。同様の解釈は、3つ以上の項目を含むリストについても意図されている。例えば、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの1つまたは複数」、および「A、B、および/またはC」という表現は、それぞれ、「A単独、B単独、C単独、AおよびBを合わせて、AおよびCを合わせて、BおよびCを合わせて、またはA、B、およびCを合わせて」という意味を意図している。
【0090】
上記および特許請求の範囲における「に基づく」という用語の使用は、引用されていない特徴または要素も許容されるように、「少なくとも部分的に基づく」という意味を意図している。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
【国際調査報告】