(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電気化学素子用分離膜及びそれを備える電気化学素子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20240912BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240912BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/443 B
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/489
H01M50/417
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518491
(86)(22)【出願日】2023-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 KR2023010889
(87)【国際公開番号】W WO2024025351
(87)【国際公開日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】10-2022-0093927
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0096535
(32)【優先日】2023-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】イン・ヒュク・ソン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・リュン・カ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ウォン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヒョン・キム
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE08
5H021EE21
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
本発明は、多孔性高分子基材及び前記多孔性高分子基材の少なくともいずれか一面に形成される多孔性コーティング層を含む電気化学素子用分離膜であって、前記多孔性コーティング層は、水系高分子バインダー、無機物粒子及び有機フィラーを含み、前記有機フィラーは、前記電気化学素子の使用温度範囲で接着力が生じるものである、電気化学素子用分離膜に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性高分子基材及び前記多孔性高分子基材の少なくともいずれか一面に形成される多孔性コーティング層を含む電気化学素子用分離膜であって、
前記多孔性コーティング層は、
水系高分子バインダー、無機物粒子及び有機フィラーを含み、
前記有機フィラーは、
前記電気化学素子の使用温度範囲で接着力が生じるものである、電気化学素子用分離膜。
【請求項2】
前記水系高分子バインダーは、
スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム、及びアクリレート含有高分子からなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項3】
前記無機物粒子は、
Li
3PO
4、Li
xTi
y(PO
4)
3(0<x<2、0<y<3)、Li
xAl
yTi
z(PO
4)
3(0<x<2、0<y<1、0<z<3)、Li
xLa
yTiO
3(0<x<2、0<y<3)、Li
xGe
yP
zS
w(0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、Li
xN
y(0<x<4、0<y<2)、Li
xSi
yS
z(0<x<3、0<y<2、0<z<4)、Li
xP
yS
z(0<x<3、0<y<3、0<z<7)、Li
7La
3Zr
2O
12、BaTiO
3、BaSO
4、Pb(Zr、Ti)O
3(PZT)、Pb
1-xLa
xZr
1-yTi
yO
3(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg
1/3Nb
2/3)O
3-PbTiO
3(PMN-PT)、HfO
2、Sb
2O
3、Sb
2O
4、Sb
2O
5、SrTiO
3、SnO
2、CeO
2、MgO、Mg(OH)
2、NiO、CaO、ZnO、Zn
2SnO
4、ZnSnO
3、ZnSn(OH)
6、ZrO
2、Y
2O
3、SiO
2、Al
2O
3、AlOOH、Al(OH)
3、SiC、TiO
2、H
3BO
3及びHBO
2からなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項4】
前記有機フィラーの平均粒径は、前記無機物粒子の平均粒径より小さいものである、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項5】
前記有機フィラーは、
平均粒径(D50)が50nm~500nmである、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項6】
前記有機フィラーのガラス転移温度は、前記水系高分子バインダーのガラス転移温度より高いものである、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項7】
前記電気化学素子の使用温度範囲は90℃~130℃であり、
前記有機フィラーのガラス転移温度は前記使用温度範囲内に含まれるものである、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項8】
前記有機フィラーは、
ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール及びポリエステルからなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項9】
前記多孔性コーティング層は、
前記無機物粒子と前記有機フィラーとを5:1~35:1の重量比率で含むものである、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項10】
前記多孔性コーティング層は、
前記有機フィラーの含有量が前記水系高分子バインダーの含有量より大きいものである、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項11】
前記多孔性コーティング層は、
前記多孔性コーティング層の全重量に対する前記水系高分子バインダーの含有量が1重量%~5重量%である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項12】
前記多孔性コーティング層は、
前記水系高分子バインダー、前記無機物粒子、前記有機フィラー及び分散媒を含むスラリーを前記多孔性高分子基材に塗布及び乾燥して形成されるものであり、前記スラリーは固形分の含有量が20重量%~50重量%である、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項13】
前記多孔性コーティング層は、
通気度が100s/100cc~150s/100ccである、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項14】
前記有機フィラーの濃度勾配が、前記多孔性コーティング層の断面にわたって形成されるものである、請求項1に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項15】
前記有機フィラーは、
前記多孔性コーティング層が前記多孔性高分子基材と対面する表面より、前記多孔性高分子基材の反対側でより多量に存在するものである、請求項14に記載の電気化学素子用分離膜。
【請求項16】
正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に配置される分離膜を含む電気化学素子であって、
前記分離膜は、請求項1~15のいずれか一項に記載の電気化学素子用分離膜である、電気化学素子。
【請求項17】
前記分離膜は、電解液に含浸された状態で、前記正極または前記負極に対する接着力が1gf/20mm~20gf/20mmである、請求項16に記載の電気化学素子。
【請求項18】
前記分離膜は、電解液に含浸された状態及び130℃~180℃でTD方向の収縮率が5%以下である、請求項16に記載の電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2022年7月28日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2022-0093927号の出願人の利益を主張し、その内容の全ては本発明に含まれる。
【0002】
本発明は、電気化学素子用分離膜とそれを備える電気化学素子に関し、電解液が含浸された状態及び高温で寸法安定性のある分離膜に関する。
【背景技術】
【0003】
電気化学素子は、電気化学反応を利用して化学的エネルギーを電気的エネルギーに転換するもので、近年ではエネルギー密度と電圧が高く、サイクル寿命が長く、様々な分野で使用可能なリチウム二次電池が広く使用されている。
【0004】
リチウム二次電池は、正極、負極、正極と負極との間に配置される分離膜から製造される電極組立体を含むことができ、前記電極組立体が電解液と共にケースに収納されて製造され得る。分離膜は、正極と負極との間に配置されて電極を絶縁させ、多孔性高分子基材の少なくとも一面に高分子バインダー及び無機物粒子を含む多孔性コーティング層を含むことができる。無機物粒子は、高分子バインダーによって他の無機物粒子と連結されてインタースティシャル・ボリュームを形成することができ、リチウムイオンは、前記インタースティシャル・ボリュームを通過して移動することができる。高分子バインダーは、無機物粒子を固定させることに加えて、多孔性コーティング層に接着力を付与することができ、多孔性コーティング層は、多孔性高分子基材及び電極とそれぞれ接着され得る。
【0005】
高分子バインダー及び無機物粒子を含む多孔性コーティング層は、多孔性高分子基材の熱収縮を防止することができ、前記多孔性コーティング層を含む分離膜は、電解液のないドライ(Dry)状態では優れた寸法安定性を示す。しかし、前記分離膜が電解液に含浸されたウェット(Wet)状態では、高分子バインダーが電解液によってスウェリングされたり、前記分離膜を含むリチウム二次電池の作動に応じて前記分離膜が約130℃以上の高温にさらされることで、前記高分子バインダーによる接着力が低下したりすることがある。このような高温のウェット(Wet)状態では、多孔性コーティング層の接着力が低くなることで、分離膜が大きく収縮する。特に電極組立体を捲き取って、前記電極組立体に張力がかかった状態でケースに挿入する円筒型電池は、電極と分離膜との接着力が相対的に少なく要求されるため、高分子バインダーの含有量が少なく、ウェット(Wet)状態の寸法安定性がより低くなるという問題点があった。
【0006】
したがって、多孔性コーティング層中の高分子バインダーの含有量は相対的に少なく保ちながら、高温及びウェット(Wet)状態の条件で寸法安定性を確保するための分離膜についての研究が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高温ウェット(Wet)状態で寸法変化率が低減した電気化学素子用分離膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、多孔性高分子基材及び前記多孔性高分子基材の少なくともいずれか一面に形成される多孔性コーティング層を含む電気化学素子用分離膜であって、前記多孔性コーティング層は、水系高分子バインダー、無機物粒子及び有機フィラーを含み、前記有機フィラーは、前記電気化学素子の使用温度範囲で接着力が生じるものである、電気化学素子用分離膜を提供する。
【0009】
前記水系高分子バインダーは、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム、及びアクリレート含有高分子からなる群から選択される一つ以上であり得る。
【0010】
前記無機物粒子は、Li3PO4、LixTiy(PO4)3(0<x<2、0<y<3)、LixAlyTiz(PO4)3(0<x<2、0<y<1、0<z<3)、LixLayTiO3(0<x<2、0<y<3)、LixGeyPzSw(0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、LixNy(0<x<4、0<y<2)、LixSiySz(0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LixPySz(0<x<3、0<y<3、0<z<7)、Li7La3Zr2O12、BaTiO3、BaSO4、Pb(Zr、Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)、HfO2、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、Mg(OH)2、NiO、CaO、ZnO、Zn2SnO4、ZnSnO3、ZnSn(OH)6、ZrO2、Y2O3、SiO2、Al2O3、AlOOH、Al(OH)3、SiC、TiO2、H3BO3及びHBO2からなる群から選択される一つ以上であり得る。
【0011】
前記有機フィラーの平均粒径は、前記無機物粒子の平均粒径より小さいものであり得る。
【0012】
前記有機フィラーは、平均粒径(D50)が50nm~500nmであり得る。
【0013】
前記有機フィラーのガラス転移温度は、前記水系高分子バインダーのガラス転移温度より高いものであり得る。
【0014】
前記電気化学素子の使用温度範囲は90℃~130℃であり、前記有機フィラーのガラス転移温度は前記使用温度範囲内に含まれ得る。
【0015】
前記有機フィラーは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール及びポリエステルからなる群から選択される一つ以上であり得る。
【0016】
前記多孔性コーティング層は、前記無機物粒子と前記有機フィラーとを5:1~35:1の重量比率で含むことができる。
【0017】
前記多孔性コーティング層は、前記有機フィラーの含有量が前記水系高分子バインダーの含有量より大きいものであり得る。
【0018】
前記多孔性コーティング層は、前記多孔性コーティング層の全重量に対する前記水系高分子バインダーの含有量が1重量%~5重量%であり得る。
【0019】
前記多孔性コーティング層は、前記水系高分子バインダー、前記無機物粒子、前記有機フィラー及び分散媒を含むスラリーを前記多孔性高分子基材に塗布及び乾燥して形成されるものであり、前記スラリーは固形分の含有量が20重量%~50重量%であり得る。
【0020】
前記多孔性コーティング層は、通気度が100s/100cc~150s/100ccであり得る。
【0021】
前記有機フィラーの濃度勾配が、前記多孔性コーティング層の断面にわたって形成され得る。
【0022】
前記有機フィラーは、前記多孔性コーティング層が前記多孔性高分子基材と対面する表面より、前記多孔性高分子基材の反対側でより多量に存在し得る。
【0023】
本発明の他の一側面は、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に配置される分離膜を含む電気化学素子を提供し、前記分離膜は、本発明の一側面に係る電気化学素子用分離膜であり得る。
【0024】
前記分離膜は、電解液に含浸された状態で、前記正極または前記負極に対する接着力が1gf/20mm~20gf/20mmであり得る。
【0025】
前記分離膜は、電解液に含浸された状態及び130℃~180℃でTD方向の収縮率が5%以下であり得る。
【0026】
前記電気化学素子はリチウム二次電池であり得る。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る電気化学素子用分離膜は、多孔性コーティング層に有機フィラーを含ませることで、電解液に含浸されたウェット(Wet)状態でも電極との優れた接着力を提供する。
【0028】
また、本発明は、高温ウェット(Wet)状態で寸法安定性に優れた電気化学素子用分離膜を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の各構成をより詳細に説明するが、これは一つの例示に過ぎず、本発明の権利範囲が次の内容によって制限されない。
【0030】
本明細書で使用される「含む」という用語は、本発明において有用な材料、組成物、装置、及び方法を列挙する際に使用され、その列挙された例に制限されるものではない。
【0031】
本明細書で使用される「約」、「実質的に」は、固有の製造及び物質許容誤差を勘案して、その数値や程度の範疇またはそれに近い意味で使用され、本発明の理解を助けるために提供された正確または絶対的な数値が言及された開示内容を侵害者が不当に利用することを防ぐために使用される。
【0032】
本明細書で使用される「電気化学素子」は、一次電池、二次電池、スーパーキャパシタなどを意味し得る。
【0033】
本明細書で使用される「粒径」は、他の特別な記載がない限り、粒径による粒子数の累積分布において50%に該当する粒径であるD50のことを意味する。
【0034】
本発明の一実施例は、多孔性高分子基材、及び前記多孔性基材の少なくともいずれか一面に形成される多孔性コーティング層を含む電気化学素子用分離膜を提供する。前記多孔性コーティング層は、水系高分子バインダー、無機物粒子及び有機フィラーを含み、前記有機フィラーは、前記電気化学素子の使用温度範囲で接着力が生じ得る。
【0035】
前記多孔性高分子基材は、正極及び負極を電気的に絶縁させて短絡を防止しながら、リチウムイオンは通過できる気孔を提供するものである。前記多孔性高分子基材は、有機溶媒である電気化学素子の電解液に対して耐性を有することができる。例えば、前記多孔性高分子基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブテンなどのポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、及びこれらの共重合体または混合物などの高分子樹脂を含むことができるが、これに限定されない。好ましくは、前記多孔性高分子基材は、ポリオレフィン系高分子を含むことで、多孔性コーティング層形成のためのスラリー塗布性に優れ、薄い厚さの分離膜製造に有利なものであり得る。
【0036】
前記多孔性高分子基材の厚さは1μm~100μmであり得る。具体的には、前記多孔性高分子基材の厚さは、10μm以上90μm以下、20μm以上80μm以下、30μm以上70μm以下、または40μm以上60μm以下であり得る。好ましくは1μm以上30μm以下であり得、より好ましくは15μm以上30μm以下、または8μm以上13μm以下であり得る。前述した範囲で多孔性高分子基材の厚さを調節することにより、正極と負極を電気的に絶縁させながら電気化学素子の体積を最小化して、電気化学素子に含まれる活物質の量を増加させることができる。
【0037】
前記多孔性高分子基材は、平均直径が0.01μm~10μmの気孔を含むことができる。具体的には、前記多孔性高分子基材の気孔の大きさは、1μm以上9μm以下、2μm以上8μm以下、3μm以上7μm以下、または4μm以上6μm以下であり得る。前述した範囲で多孔性高分子基材の気孔の大きさを調節することにより、無機物粒子と有機フィラー及び水系高分子バインダーを含むコーティングスラリーが均一にコーティングされ得、製造される分離膜全体の通気度とイオン伝導度を調節することができる。
【0038】
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面には、スラリーが塗布及び乾燥されて、後述する多孔性コーティング層を形成することができる。前記スラリーは、無機物粒子、高分子バインダー、分散媒などを含むことができる。前記スラリーの塗布前に電解液に対する含浸性を向上させるために、前記多孔性高分子基材にプラズマ処理やコロナ放電などの表面処理が施され得る。
【0039】
前記電気化学素子用分離膜は、前記多孔性高分子基材と前記多孔性高分子基材の少なくともいずれか一面に形成される多孔性コーティング層を含むことができる。前記多孔性コーティング層は、水系高分子バインダー、無機物粒子及び有機フィラーを含むことができる。前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に水系高分子バインダー、無機物粒子及び有機フィラーを含むスラリーを塗布及び乾燥して多孔性コーティング層を形成することができる。
【0040】
前記多孔性コーティング層は、前記多孔性高分子基材の機械的物性と絶縁性を向上させるための無機物粒子、及び電極と分離膜との間の接着力を向上させるための高分子バインダーを含むことができる。前記高分子バインダーは、隣接する無機物粒子を結合させ、前記結合を維持することができる。無機物粒子は、隣接する無機物粒子と結合して、無機物粒子間の空隙であるインタースティシャル・ボリュームを提供することができ、リチウムイオンが前記インタースティシャル・ボリュームを通って移動することができる。
【0041】
前記高分子バインダーとしては、水系高分子バインダーを使用して、前記スラリー製造時に有機フィラー分散のための別途の溶媒を使用しなくてもよい。分散媒に前記高分子バインダー、前記無機物粒子及び前記有機フィラーを分散させてスラリーを製造することができ、前記スラリーを用いた1回のコーティングで多孔性コーティング層を形成することができる。例えば、前記水系高分子バインダーは、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム、及びアクリレート含有高分子からなる群から選択される一つ以上であり得る。好ましくは、前記水系高分子バインダーはアクリレート系高分子であり得る。
【0042】
前記無機物粒子は、前記多孔性コーティング層の厚さを均一に形成し、適用される電気化学素子の作動電圧範囲内で酸化還元反応が起こらないものであり得る。例えば、前記無機物粒子は、リチウムイオン伝達能力、圧電性(piezoelectricity)及び難燃性のうちの一つ以上の特性を有することができる。
【0043】
リチウムイオン伝達能力のある無機物粒子は、リチウム元素を含有するものの、リチウムを貯蔵することなくリチウムイオンを移動させる働きを有することを意味する。リチウムイオン伝達能力のある無機物粒子は、粒子構造内部に存在する一種の欠陥(defect)によってリチウムイオンを伝達及び移動させることができる。したがって、電気化学素子内のリチウムイオン伝導度が向上し、これによって電気化学素子の性能向上を図ることができる。
【0044】
例えば、リチウムイオン伝達能力のある無機物粒子は、Li3PO4、LixTiy(PO4)3(0<x<2、0<y<3)、LixAlyTiz(PO4)3(0<x<2、0<y<1、0<z<3)、LixLayTiO3(0<x<2、0<y<3)、LixGeyPzSw(0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、Li3Nのようなリチウムナイトライド(LixNy、0<x<4、0<y<2)、Li3PO4-Li2S-SiS2のようなSiS2系ガラス(LixSiySz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI-Li2S-P2S5のようなP2S5系ガラス(LixPySz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、Li7La3Zr2O12のようなLLZO系、及びこれらの混合物からなる群から選択された一つ以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0045】
圧電性を有する無機物粒子は、常圧では不導体であるが、一定の圧力が印加された場合、内部構造の変化によって電気が通じる物性を有する物質のことを意味する。前記無機物粒子は、誘電率定数が100以上の高誘電率特性を示すことができ、一定の圧力を印加して引張または圧縮されると電荷が発生して、一面は正に、反対側は負にそれぞれ帯電されることにより、両面間に電位差が発生する働きを有することができる。前記のような無機物粒子は、ローカルクラッシュ(Local crush)、ネイル(Nail)などの外部衝撃によって正極と負極の内部短絡が発生する場合、分離膜にコーティングされた無機物粒子によって正極と負極が直接接触しないだけでなく、無機物粒子の圧電性によって粒子内の電位差が発生し、それによって正極と負極との間の電子移動、すなわち微細な電流の流れが行われることにより、緩やかな電気化学素子の電圧減少及びそれによる安全性向上を図ることができる。
【0046】
例えば、圧電性のある無機物粒子は、BaTiO3、BaSO4、Pb(Zr、Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT)(0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)、HfO2(ハフニア)、及びこれらの混合物からなる群から選択された一つ以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0047】
難燃性を有する無機物粒子は、分離膜に難燃特性を付加したり、電気化学素子内部の温度が急激に上昇することを防止することができる。
【0048】
例えば、難燃性のある無機物粒子は、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、Mg(OH)2、NiO、CaO、ZnO、Zn2SnO4、ZnSnO3、ZnSn(OH)6、ZrO2、Y2O3、SiO2、Al2O3、AlOOH、Al(OH)3、SiC、TiO2、H3BO3、HBO2、及びこれらの混合物からなる群から選択された一つ以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0049】
前記無機物粒子の平均粒径(D50)は700nm~1500nmであり得、有機フィラーの平均粒径より大きいものであり得る。具体的には、前記無機物粒子の平均粒径は、800nm以上1400nm以下、900nm以上1300nm以下、または1000nm以上1200nm以下であり得る。前記無機物粒子の平均粒径が700nmより小さいと、無機物粒子間の結合のための高分子バインダーがさらに必要となるため、電気抵抗の観点から不利である。前記無機物粒子の平均粒径が1500nmを超過すると、コーティング層表面の均一性が低くなり、コーティング後に突出した粒子によってラミネーション時に分離膜と電極が損傷して短絡が発生することがある。前記無機物粒子の平均粒径が前記有機フィラーの平均粒径より小さいと、多孔性コーティング層の形成時に有機フィラーが前記多孔性コーティング層の表面まで移動し難くなるため、分離膜の電極接着力が低下して、高温及びウェット(Wet)状態で熱収縮が発生する。
【0050】
前記有機フィラーは多孔性コーティング層に含まれて、電極に対する接着力を提供することができる。本発明では、電解液によって接着力が低下する可能性のある高分子バインダーに比べて、前記有機フィラーを過量に含むことで、高温及びウェット(Wet)状態でも電極に対する優れた接着力を確保することができる。
【0051】
前記有機フィラーのガラス転移温度は、前記水系高分子バインダーのガラス転移温度より高いものを使用して、電気化学素子の使用温度範囲である90℃~130℃及び130℃以上の高温条件でも接着力を維持することができる。好ましくは、前記有機フィラーのガラス転移温度は、電気化学素子の使用温度範囲内に含まれるものであり得る。例えば、前記有機フィラーは、ガラス転移温度が80℃~180℃であるものを使用することができ、前記水系高分子バインダーは、ガラス転移温度が-20℃~80℃であるものを使用することができる。
【0052】
前記有機フィラーは、有機溶媒である電解液に対して耐性を有し、前記分離膜が前記電解液によって含浸されても溶解されたりスウェリングされたりしないものであり得る。例えば、前記有機フィラーは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール及びポリエステルからなる群から選択される一つ以上であり得る。好ましくは、前記有機フィラーは、ポリウレタン、エチレンビニルアルコールまたはポリエステルであり得る。
【0053】
前記有機フィラーは、平均粒径(D50)が50nm~500nmのパウダー形態で使用され得る。具体的には、前記有機フィラーは、平均粒径が100nm以上450nm以下、150nm以上400nm以下、または200nm以上350nm以下であり得る。好ましくは、前記有機フィラーは、平均粒径が300nm以上500nm以下であり得る。前記範囲内で、前記有機フィラーの平均粒径は、前記無機物粒子の平均粒径より小さいため、前記無機物粒子の間に移動して多孔性コーティング層の表面に分布することができ、前記多孔性コーティング層の表面で稠密に分布して前記分離膜が電解液に含浸されたウェット(Wet)状態でも電極に対する接着を維持することができる。有機フィラーの平均粒径が前記範囲を超過すると、有機フィラーの分散性が低くなって、固形分が均一に分散されたスラリーを得ることができない。
【0054】
前記多孔性コーティング層は、前記無機物粒子と前記有機フィラーとを5:1~35:1の重量比率で含むことができる。好ましくは、前記多孔性コーティング層は、前記無機物粒子と前記有機フィラーとを5:1~32:1の重量比率で含むことができる。前記比率に比べて前記無機物粒子が過量に含まれると、前記分離膜が電解液に含浸されて、電極に対する接着を維持することができなくなる。前記比率に比べて前記有機フィラーが過量に含まれると、前記分離膜の通気度が低下し、電気抵抗が増加する。
【0055】
前記多孔性コーティング層は、前記無機物粒子と前記有機フィラーを前記水系高分子バインダーに比べて過量に含むことができる。具体的には、前記多孔性コーティング層は、前記無機物粒子の含有量が前記有機フィラーの含有量より大きいものであり得る。前記多孔性コーティング層は、前記無機物粒子の含有量が前記水系高分子バインダーの含有量より大きいものであり得る。より具体的には、前記多孔性コーティング層は、前記有機フィラーの含有量が前記水系高分子バインダーの含有量より大きいものであり得る。前記多孔性コーティング層は、前記多孔性コーティング層の全重量に対して前記水系高分子バインダーを1重量%~5重量%含むことができる。前記水系高分子バインダーの含有量が1重量%未満であると、無機物粒子間の結合を通じたインタースティシャル・ボリュームが形成されず、リチウムイオン伝達が難しくなって電気抵抗が増加する。前記水系高分子バインダーの含有量が5重量%を超過すると、前記分離膜が電解液に含浸されて、前記高分子バインダーの接着力が低下して、多孔性コーティング層と多孔性高分子基材が剥離したり、分離膜と電極が剥離することがある。
【0056】
前記多孔性コーティング層は、水系高分子バインダー、無機物粒子、有機フィラー及び分散媒を含むスラリーを前記多孔性高分子基材に塗布及び乾燥して製造され得る。前記スラリーは、前記スラリーの全重量に対して固形分を20重量%~50重量%で含むことができ、前記範囲で前記多孔性コーティング層は、通気度が100s/100cc~150s/100ccであり得る。
【0057】
前記スラリーを前記多孔性高分子基材に塗布し、乾燥する過程で、有機フィラーの濃度勾配が前記多孔性コーティング層の断面にわたって形成され得る。平均粒径の小さい有機フィラーは、分散媒の乾燥過程で無機物粒子の間に移動することができ、前記多孔性コーティング層が前記多孔性高分子基材と対面する表面より、前記多孔性高分子基材の反対側でより多量に存在し得る。好ましくは、前記有機フィラーは、前記多孔性高分子基材の反対側に位置する多孔性コーティング層の表面で最も多い量で存在し得る。前記多孔性コーティング層の表面に存在する有機フィラーは、前記分離膜が電解液に含浸された状態でも電極に対する接着力を提供することができる。
【0058】
前記多孔性コーティング層の厚さは0.5μm~5μmであり得る。具体的には、前記多孔性コーティング層の厚さは、1μm以上4.5μm以下、1.5μm以上3μm以下、または2μm以上2.5μm以下であり得る。好ましくは、前記多孔性コーティング層の厚さは、2μm以上5μm以下であり得る。前述した範囲で多孔性コーティング層の厚さを調節することにより、多孔性高分子基材の収縮を最小化し、多孔性高分子基材に対する安定した接着を具現することができる。
【0059】
前記多孔性コーティング層は、無機物粒子の分散性をさらに向上させるために分散剤をさらに含むことができる。前記分散剤は、スラリー製造時に高分子バインダー内で無機物粒子に均一な分散状態を維持させる働きをする。例えば、前記分散剤は、油溶性ポリアミン、油溶性アミン化合物、脂肪酸類、脂肪アルコール類、ソルビタン脂肪酸エステル、タンニン酸、ピロガロール酸のうちから選択されたいずれか一つ以上を挙げることができる。前記スラリーが分散剤を含む場合、前記多孔性コーティング層は分散剤を5重量%以下で含むことができる。
【0060】
前記分離膜は、電解液に含浸された状態、または電解液に含浸され130℃~180℃の温度条件で、電極に対する接着力であるウェット(Wet)接着力が1gf/20mm~20gf/20mmであり得る。好ましくは、ウェット(Wet)接着力は5gf/20mm~20gf/20mmであり得る。前記範囲内で、前記分離膜はTD方向(幅方向)の収縮率が5%以下に現れ得る。ウェット(Wet)接着力が1gf/20mm未満であると、前記分離膜を含む電極組立体の剛性(stiffness)が低くなって、電気化学素子の製造時に組立の問題や分離膜の収縮による折り曲げの問題が発生し、20gf/20mmを超過すると、分離膜に対する電解質の含浸が妨げられて、分離膜の表面にリチウムデンドライトが析出することがある。
【0061】
本発明の他の一実施例は、正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置される分離膜及び電解液を含む電気化学素子であって、前記分離膜は、前述した一実施例に係る電気化学素子用分離膜である電気化学素子を提供する。
【0062】
前記正極及び前記負極は、それぞれの集電体の少なくとも一面に活物質が塗布及び乾燥されたものであり得る。前記活物質は、リチウム二次電池など電気化学素子に使用できるものであれば制限されない。
【0063】
例えば、正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2);化学式Li1+xMn2-xO4(ここで、xは0~0.33である)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiFe3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1である)、またはLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンに置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0064】
例えば、負極活物質は、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;錫系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、及びBi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料などを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0065】
前記集電体は、電気化学素子に化学的変化を引き起こすことなく導電性を有する材料が使用され得る。例えば、正極用集電体は、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、ステンレススチール;アルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどであり得るが、これに限定されるものではない。例えば、負極用集電体は、銅、ニッケル、チタン、焼成炭素、ステンレススチール;銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどであり得るが、これに限定されるものではない。前記集電体は、金属薄板、フィルム、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体など様々な形態であり得る。
【0066】
前記電解液は、リチウム塩を含有する非水系電解液であり得、リチウム塩と非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などを含むことができる。
【0067】
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、ピロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用され得る。
【0068】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合剤などが使用され得る。
【0069】
前記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3NLiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用され得る。
【0070】
前記リチウム塩は、前記非水系電解質に溶解されやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどが使用され得る。
【0071】
前記電気化学素子は、正極、負極、分離膜及び電解液をケースやパウチに挿入し密封して製造することができる。例えば、前記電気化学素子は、円筒型、角型、コイン型、パウチ型のリチウム二次電池であり得る。好ましくは、前記電気化学素子は、円筒型またはパウチ型のリチウム二次電池であり得る。
【0072】
前記リチウム二次電池は、単位セルとしてパック、またはモジュール化されてコンピュータ、携帯電話、パワーツール(power tool)などの小型デバイスと、電池的モータによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどの中大型デバイスに使用され得る。
【0073】
以下では、具体的な実施例及び実験例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。下記の実施例及び実験例は本発明を例示するためのものであって、本発明が下記の実施例及び実験例によって限定されるものではない。
【0074】
実施例1
〔スラリーの準備〕
常温(25℃)で無機物粒子として平均粒径が1000nmのアルミナ35.1g、有機フィラーとして平均粒径500nmのポリウレタンエマルジョン3.2g(ベースコリア(Basekorea)、固形分35%)、高分子バインダーとしてTgが-20℃であり平均粒径が150nmのアクリレート系バインダー(東洋化学(Toyo chemical)、固形分40%)1.8gを準備した。水とエチルアルコールを95:5の重量比率で混合して水系分散媒68.5gを製造し、アルミナ、ポリウレタンエマルジョン及びアクリレート系バインダーを投入し、ペイントシェーカー(paintshaker)を用いて120分間分散させて、無機物粒子、有機フィラー及び水系高分子バインダーが95:3:2の重量比率で混合されたスラリーを製造した。
【0075】
〔多孔性高分子基材の準備〕
多孔性高分子基材としては、大きさ30cm×20cm、厚さ9μmのポリエチレンフィルム(PE、JGP)を使用した。
【0076】
〔分離膜の製造〕
ポリエチレンフィルムの両面にナイフコーター(knife coater)を用いて前記スラリーをコーティングし、オーブンで60℃で20分間乾燥する過程を2回繰り返して、各コーティングの厚さが3μmの多孔性コーティング層を形成して、全体の厚さが約15μmの分離膜を製造した。
【0077】
実施例2
スラリーの製造時に、アルミナ29.5g、ポリウレタンエマルジョン16.8g(固形分35%)、アクリレート系バインダー3.7g(固形分40%)を使用して、無機物粒子、有機フィラー及び水系高分子バインダーが80:16:4の重量比率で混合されたものを使用したことを除き、実施例1と同一の方法で分離膜を製造した。
【0078】
比較例1
スラリーの製造時に、アルミナ30g、アクリレート系バインダー3.5g(固形分40%)を使用して、無機物粒子及び水系高分子バインダーが95:5の重量比率で混合されたものを使用したことを除き、実施例1と同一の方法で分離膜を製造した。
【0079】
比較例2
スラリーの製造時に、アルミナ25.8g、ポリウレタンエマルジョン14.7g(固形分35%)、アクリレート系バインダー14.7g(固形分40%)を使用して、有機フィラー、無機物粒子及び水系高分子バインダーが70:14:16の重量比率で混合されたものを使用したことを除き、実施例1と同一の方法で分離膜を製造した。
【0080】
実験例1.分離膜の通気度(Gurley)確認
通気度測定装置は、旭精工(Asahi Seiko)社のEG01-55-1MRモデルを使用した。
【0081】
実施例1~2と比較例1~2で製造された分離膜を通気度測定装置の中空形態の上下のチップに固定し、前記上下のチップに印加される設定差圧を通じて100ccの空気が分離膜基材を通過するのにかかる時間を測定して通気度を求め、その結果を下記表1に記載した。
【0082】
実験例2.分離膜のウェット(Wet)接着力確認
実施例及び比較例で製造した分離膜の電極に対するウェット(Wet)接着力を確認した。
【0083】
正極としては、大きさ5cm×5cm、厚さ10μmのアルミニウム集電体の両面に正極活物質を含むスラリーを200g/m2で塗布し、乾燥して製造したものを使用した。
【0084】
負極としては、大きさ5cm×5cm、厚さ6μmの銅集電体の両面に負極活物質を含むスラリーを100g/m2で塗布し、乾燥して製造したものを使用した。
【0085】
前記正極及び前記負極の間に5cm×5cmの大きさの分離膜を配置した後、円筒型電池のワインディングテンション(winding tension)条件と類似するように設定した100℃、7kgf/cm2の圧力で加圧し、7cm×10cmの大きさのアルミニウムパウチに挿入した。前記パウチに電解液(EC:EMCの重量比3:7)1gを注入し、パウチを密封した。前記密封したパウチをオーブンで130℃で、30分間保持した後、パウチを分解して分離膜と電極との接着力(ウェット(Wet)接着力)を測定した。
【0086】
前記分離膜と電極との接着力は、インストロン(Instron)社のUTM装置を使用して、180°ピール(peel)テストを200mm/min条件で測定し、下記表1に記載した。
【0087】
実験例3.分離膜の寸法安定性確認
前記実験例2でピール(peel)テストを行った分離膜を回収して、TD方向の収縮率を測定し、下記表1に記載した。
【0088】
【国際調査報告】