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特表2024-534603組換えタンパク質を発現させるためのDNA構築物及び宿主細胞
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】組換えタンパク質を発現させるためのDNA構築物及び宿主細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240912BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240912BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240912BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240912BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12P21/08
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518677
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2022076591
(87)【国際公開番号】W WO2023046930
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】2130258-3
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】2130259-1
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】2130261-7
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】2130263-3
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】2130264-1
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】2130265-8
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522359512
【氏名又は名称】エックスブレイン バイオファーマ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミルザデー、キアヴァシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクストロム、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】イスマイル、ヌルジアン
(72)【発明者】
【氏名】サミュエルソン、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】バラシュキェヴィチ、マリウシュ
(72)【発明者】
【氏名】サリフ、タグリド
(72)【発明者】
【氏名】セーカー、キャスリーン
(72)【発明者】
【氏名】チュイ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】グディセ、サントシュ
(72)【発明者】
【氏名】エデブリンク、ペル
(72)【発明者】
【氏名】カドー、マリア
(72)【発明者】
【氏名】ステファンソン、カリン
(72)【発明者】
【氏名】ストランドバーグ、クリスティン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
(57)【要約】
【要約】
配列番号20及び21のヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つであって、ここで配列番号20及び21のヌクレオチド配列はTIR配列である、配列番号20及び21のヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つ;及び
シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;を備え、
配列番号20及び21のヌクレオチド配列は、前記シグナルペプチドをコードする配列のうちの少なくとも最初の9ヌクレオチドを含む、
組換えタンパク質を発現させるためのDNA構築物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号20及び21のヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つであって、ここで配列番号20及び21のヌクレオチド配列はTIR配列である、配列番号20及び21のヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つ;及び
シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;を備え、
ここで配列番号20及び21のヌクレオチド配列は、前記シグナルペプチドをコードする配列のうちの少なくとも最初の9ヌクレオチドを含む、
組換えタンパク質を発現させるためのDNA構築物。
【請求項2】
前記TIR配列は、mRNA転写におけるタンパク質翻訳開始部位として機能するRNAモチーフに転写される、請求項1に記載のDNA構築物。
【請求項3】
前記DNA構築物が配列番号20のヌクレオチド配列のTIRを含む場合、シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は配列番号18のヌクレオチド配列を含む、請求項1又は2に記載のDNA構築物。
【請求項4】
前記DNA構築物が配列番号21のヌクレオチド配列のTIRを含む場合、シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は配列番号19のヌクレオチド配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項5】
前記DNA構築物は配列番号20及び配列番号21の前記ヌクレオチド配列を含み、シグナルペプチドをコードする2つのヌクレオチド配列を含み、シグナルペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列は、配列番号18の前記ヌクレオチド配列を含み、シグナルペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列は、配列番号19の前記ヌクレオチド配列を含み、配列番号20の前記ヌクレオチド配列は、少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含み、配列番号18の前記ヌクレオチド配列の少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含み、配列番号21の前記ヌクレオチド配列は配列番号19の前記ヌクレオチド配列の少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項6】
前記組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物であって、前記組換えタンパク質は好ましくは抗体であり、前記抗体は最も好ましくはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体又は前記抗体のうちのいずれかのフラグメントである、請求項1~5のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項7】
シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、前記組換えタンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列に作用可能に連結される、請求項1~6のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項8】
前記組換えタンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列は;
抗体の軽鎖をコードする第1の核酸配列;及び
抗体の重鎖をコードする第2の核酸配列
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項9】
シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は:
抗体の前記軽鎖をコードする第1のヌクレオチド配列;及び/又は
抗体の前記重鎖をコードする第2のヌクレオチド配列
に作用可能に連結される、請求項8に記載のDNA構築物。
【請求項10】
シャイン・ダルガーノ配列を含むDNA構築物であって、好ましくは、前記シャイン・ダルガーノ配列はシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列のATG開始コドンより上流に位置し、より好ましくは、前記シャイン・ダルガーノ配列は抗体の前記軽鎖に作用可能に連結されたシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列の前記ATG開始コドンより上流に位置する、請求項1~9のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項11】
抗体の前記軽鎖をコードする前記第1のヌクレオチド配列は、配列番号3のアミノ酸配列をコードする、請求項9に記載のDNA構築物。
【請求項12】
抗体の前記重鎖をコードする前記第2のヌクレオチド配列は、配列番号4のアミノ酸配列をコードする、請求項9に記載のDNA構築物。
【請求項13】
抗体の前記軽鎖及び重鎖をそれぞれコードする前記第1のヌクレオチド配列及び前記第2のヌクレオチド配列は、配列番号3及び配列番号4の前記アミノ酸配列をそれぞれコードする、請求項9に記載のDNA構築物。
【請求項14】
抗体の前記軽鎖をコードする前記第1のヌクレオチド配列は、配列番号5のヌクレオチド配列を含む、請求項9に記載のDNA構築物。
【請求項15】
抗体の前記重鎖をコードする前記第2のヌクレオチド配列は、配列番号6のヌクレオチド配列を含む、請求項9に記載のDNA構築物。
【請求項16】
抗体の前記軽鎖及び重鎖をそれぞれコードする前記第1のヌクレオチド配列及び前記第2のヌクレオチド配列は、配列番号5及び配列番号6のヌクレオチド配列をそれぞれ含む、請求項9に記載のDNA構築物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のDNA構築物を含む発現ベクター。
【請求項18】
細菌細胞、より好ましくは大腸菌(E.coli)であり、最も好ましくはラムノース代謝を無効にする突然変異又は修飾を含む染色体を有する大腸菌である、請求項1~16のいずれか一項に記載のDNA構築物を含む、又は請求項17に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項19】
(i)RhaBを不活性化するrhaB遺伝子の前記ヌクレオチド配列における突然変異を含む染色体、又は(ii)RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列が欠失した染色体、のいずれかを含む、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項20】
好ましくはRhaBをコードする前記ヌクレオチド配列においてフレームシフト突然変異を含む染色体を有する大腸菌W3110である、請求項18又は19に記載の宿主細胞。
【請求項21】
a.RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列におけるフレームシフト突然変異;
b.degP欠失;
c.prc欠失;及び
d.sprW148R突然変異
を含む染色体を有する、請求項18~20のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項22】
大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148Rである、請求項18~21のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項23】
請求項1~16のいずれか一項に記載のDNA構築物によって発現されるRNA。
【請求項24】
請求項18~22のいずれか一項に記載の宿主細胞の使用を含む、組換えタンパク質を発現させる方法。
【請求項25】
前記宿主細胞から前記組換えタンパク質を回収する段階を更に含み;任意選択的に、前記回収された組換えタンパク質を、好ましくは1つ又は複数のクロマトグラフィ段階によって精製する1つ又は複数の段階を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項24又は25に記載の方法によって得られる組換えタンパク質。
【請求項27】
セルトリズマブは、(i)配列番号3の前記アミノ酸配列を含む軽鎖、及び(ii)配列番号4の前記アミノ酸配列を含む重鎖を有し、
前記DNA構築物は、セルトリズマブをコードするヌクレオチド配列を含み、前記DNA構築物は、セルトリズマブの前記軽鎖及び/又はセルトリズマブの前記重鎖をコードする前記ヌクレオチド配列に転写方向において作用可能に連結されたシグナルペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を更に含み、
前記DNA構築物は:
rhaBADプロモーター、
RhaR転写活性化因子、
RhaS転写活性化因子、
抗生物質耐性マーカー、
少なくとも1つのターミネーター、及び
複製起点
をコードするヌクレオチド配列を更に含む、宿主細胞内でセルトリズマブを発現させるためのDNA構築物。
【請求項28】
前記抗生物質耐性マーカーをコードする前記ヌクレオチド配列に作用可能に連結されたプロモーターをコードするヌクレオチド配列を更に含む、請求項27に記載のDNA構築物。
【請求項29】
前記少なくとも1つのターミネーターは2つのターミネーターを有し、好ましくは、前記ターミネーターはrrnB T1ターミネーター及びrrnB T2ターミネーターを含む、請求項28に記載のDNA構築物。
【請求項30】
前記複製起点はpMB1複製起点を含む、請求項29に記載のDNA構築物。
【請求項31】
前記抗生物質耐性マーカーはカナマイシン耐性マーカーであり、好ましくは配列番号12の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むカナマイシン耐性マーカーである;
前記抗生物質耐性マーカーをコードする前記ヌクレオチド配列に作用可能に連結された前記プロモーターは、AmpRプロモーター、好ましくは配列番号13の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むAmpRプロモーターである;
前記rrnB T1ターミネーターは、配列番号14のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む;
前記rrnB T2ターミネーターは、配列番号15の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む;及び/又は
前記pMB1複製起点は、配列番号16の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、
請求項30に記載のDNA構築物。
【請求項32】
前記抗生物質耐性マーカーは、配列番号12の前記ヌクレオチド配列を含むカナマイシン耐性マーカーである;
前記抗生物質耐性マーカーをコードする前記ヌクレオチド配列に作用可能に連結された前記プロモーターは、配列番号13の前記ヌクレオチド配列を含むAmpRプロモーターである;
前記rrnB T1ターミネーターは、配列番号14の前記ヌクレオチド配列を含む;
前記rrnB T2ターミネーターは、配列番号15の前記ヌクレオチド配列を含む;及び/又は
前記pMB1複製起点は配列番号16の前記ヌクレオチド配列を含む、
請求項31に記載のDNA構築物。
【請求項33】
前記rhaBADプロモーターは、配列番号8の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号8の前記ヌクレオチド配列を含む;
前記RhaR転写活性化因子は、配列番号9の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号9の前記ヌクレオチド配列を含む;
前記RhaS転写活性化因子は、配列番号11の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号11の前記ヌクレオチド配列を含む;
前記抗生物質耐性マーカーは、配列番号12の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号12の前記ヌクレオチド配列を含むカナマイシン耐性マーカーである;
前記AmpRプロモーターは、配列番号13の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号13の前記ヌクレオチド配列を含む;
前記rrnB T1ターミネーターは、配列番号14の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号14の前記ヌクレオチド配列を含む;
前記rrnB T2ターミネーターは、配列番号15の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号15の前記ヌクレオチド配列を含む;及び
前記pMB1複製起点は、配列番号16の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましく配列番号16の前記ヌクレオチド配列を含む、
請求項31又は32に記載のDNA構築物。
【請求項34】
前記組換えタンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列は、前記rhaBADプロモーターに作用可能に連結されている、請求項27~33のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項35】
セルトリズマブをコードする前記ヌクレオチド配列は、(i)配列番号5の前記配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むセルトリズマブの前記軽鎖をコードするヌクレオチド配列、及び/又は(ii)配列番号6の前記配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むセルトリズマブの前記重鎖をコードするヌクレオチド配列を有する、請求項27~34のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項36】
セルトリズマブをコードする前記ヌクレオチド配列は、(i)配列番号5の前記配列を含むセルトリズマブの前記軽鎖をコードするヌクレオチド配列、及び/又は(ii)配列番号6の前記配列を含むセルトリズマブの前記重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項27~34のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項37】
シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号5及び配列番号6のヌクレオチド配列のいずれか一方又は両方に転写方向に作用可能に連結される、請求項36に記載のDNA構築物。
【請求項38】
前記シグナルペプチドは、MalE、OmpA、PhoA、DsbA及びPelbからなる群から選択され、好ましくは、前記シグナルペプチドはPelBである、請求項27~37のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項39】
配列番号20及び21の前記ヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つを含むDNA構築物であって、配列番号20及び21のヌクレオチド配列はTIR配列であり、配列番号20及び21のヌクレオチド配列は、前記シグナルペプチドをコードする配列の少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含む、請求項27~38のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項40】
前記シグナルペプチドはPelBであり、前記軽鎖に前記転写方向に作用可能に連結された前記PelBシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号18の前記配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項27~39のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項41】
前記軽鎖に前記転写方向に作用可能に連結された前記PelBシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号18の前記配列を含む、請求項40に記載のDNA構築物。
【請求項42】
配列番号20のヌクレオチド配列のTIRを含むDNA構築物であって、配列番号20の前記ヌクレオチド配列は、前記PelBシグナルペプチドをコードする配列番号18の前記ヌクレオチド配列の少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含む、請求項40又は41に記載のDNA構築物。
【請求項43】
前記シグナルペプチドはPelBであり、前記重鎖に前記転写方向に作用可能に連結された前記PelBシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号19の前記配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項27~42のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項44】
前記重鎖に前記転写方向に作用可能に連結された前記PelBシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号19の配列を含む、請求項43に記載のDNA構築物。
【請求項45】
配列番号21のヌクレオチド配列のTIRを含むDNA構築物であって、配列番号21の前記ヌクレオチド配列は、前記PelBシグナルペプチドをコードする配列番号19の前記ヌクレオチド配列の少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含む、請求項43又は44に記載のDNA構築物。
【請求項46】
配列番号17の前記配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含み、好ましくは配列番号17の配列を含む、請求項27~45のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項47】
請求項27~46のいずれか一項に記載のDNA構築物を含む発現ベクター。
【請求項48】
細菌宿主細胞、好ましくは大腸菌(E.coli)、最も好ましくはラムノース代謝を無効にする突然変異又は修飾を含む染色体を有する大腸菌である、請求項27~46のいずれかに記載のDNA構築物、又は請求項47に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項49】
(i)RhaBを不活性化する前記rhaB遺伝子の前記ヌクレオチド配列における突然変異を含む染色体、又は(ii)RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列が欠失した染色体のいずれかを含む、請求項48に記載の宿主細胞。
【請求項50】
大腸菌W3110細胞であり、好ましくはRhaBをコードする前記ヌクレオチド配列においてフレームシフト突然変異を含む染色体を有する、請求項48又は49に記載の宿主細胞。
【請求項51】
a.RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列におけるフレームシフト突然変異;
b.degP欠失;
c.prc欠失;及び
d.sprW148R突然変異
を含む染色体を有する、請求項22~24のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項52】
大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148Rである、請求項22~25のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項53】
請求項27~46のいずれか一項に記載のDNA構築物によって発現されるRNA。
【請求項54】
請求項48~52のいずれか一項に記載の宿主細胞の使用を含む、セルトリズマブを発現させる方法。
【請求項55】
前記宿主細胞から前記セルトリズマブを回収する段階を更に含み;任意選択的に、前記回収されたセルトリズマブを、好ましくは1つ又は複数のクロマトグラフィ段階によって精製する1つ又は複数の段階を更に含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
請求項54又は55に記載の方法によって得られるセルトリズマブ。
【請求項57】
請求項54又は55に記載の方法によって得られるセルトリズマブバイオシミラー。
【請求項58】
セルトリズマブバイオシミラー又はその誘導体であって、好ましくは、前記誘導体はポリエチレングリコール部分を含み、より好ましくは、前記誘導体は約40kDaのポリエチレングリコール部分を含む、薬剤としての使用のための請求項57に記載のセルトリズマブバイオシミラー又はその誘導体。
【請求項59】
クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎及び強直性脊椎炎の治療における使用のための、請求項58に記載のセルトリズマブバイオシミラー。
【請求項60】
前記PelBシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列を含み、前記PelBシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号18及び19の前記ヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つを含む、シグナルペプチドを発現させるためのDNA構築物。
【請求項61】
配列番号18及び19の前記ヌクレオチド配列の両方を含む、請求項60に記載のDNA構築物。
【請求項62】
配列番号18の前記ヌクレオチド配列を含む、請求項60に記載のDNA構築物。
【請求項63】
配列番号19の前記ヌクレオチド配列を含む、請求項60に記載のDNA構築物。
【請求項64】
請求項60~63のいずれか一項に記載のDNA構築物を含む発現ベクター。
【請求項65】
好ましくは細菌細胞、より好ましくは大腸菌(E.coli)であり、最も好ましくはラムノース代謝を無効にする突然変異又は修飾を含む染色体を有する大腸菌である、請求項60~63のいずれか一項に記載のDNA構築物、又は請求項64に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項66】
(i)RhaBを不活性化する前記rhaB遺伝子の前記ヌクレオチド配列における突然変異を含む染色体、又は(ii)RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列が欠失した染色体のいずれかを含む、請求項65に記載の宿主細胞。
【請求項67】
大腸菌W3110であり、好ましくはRhaBをコードする前記ヌクレオチド配列においてフレームシフト突然変異を含む染色体を有する、請求項65又は66に記載の宿主細胞。
【請求項68】
a.RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列におけるフレームシフト突然変異;
b.degP欠失;
c.prc欠失;及び
d.sprW148R突然変異
を含む染色体を有する、請求項65~67のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項69】
大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148Rである、請求項65~68のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項70】
請求項60~63のいずれか一項に記載のDNA構築物によって発現されるRNA。
【請求項71】
請求項65~69のいずれか一項に記載の宿主細胞の使用を含む、シグナルペプチドを発現させる方法。
【請求項72】
配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項71に記載の方法によって得られるPelBシグナルペプチド。
【請求項73】
アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有し、前記アミノ酸配列は:
d.セルトリズマブについての前記アミノ酸配列;
e.セルトリズマブの軽鎖アミノ酸配列のN末端に融合した配列番号7のアミノ酸配列の第1のシグナルペプチド;及び
f.セルトリズマブの重鎖アミノ酸配列のN末端に融合した配列番号7のアミノ酸配列の第2のシグナルペプチド
を含む、DNA構築物。
【請求項74】
前記第1のシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号18のヌクレオチド配列を含む、請求項73に記載のDNA構築物。
【請求項75】
前記第2のシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号19のヌクレオチド配列を含む、請求項73に記載のDNA構築物。
【請求項76】
請求項73~75のいずれか一項に記載のDNA構築物を含む発現ベクター。
【請求項77】
好ましくは細菌細胞、より好ましくは大腸菌(E.coli)であり、最も好ましくはラムノース代謝を無効にする突然変異又は修飾を含む染色体を有する大腸菌である、請求項73~75のいずれか一項に記載のDNA構築物、又は請求項76に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項78】
(i)RhaBを不活性化する前記rhaB遺伝子の前記ヌクレオチド配列における突然変異を含む染色体、又は(ii)RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列が欠失した染色体のいずれかを含む、請求項77に記載の宿主細胞。
【請求項79】
大腸菌W3110であり、好ましくはRhaBをコードする前記ヌクレオチド配列においてフレームシフト突然変異を含む染色体を有する、請求項77又は78に記載の宿主細胞。
【請求項80】
a.RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列におけるフレームシフト突然変異;
b.degP欠失;
c.prc欠失;及び
d.sprW148R突然変異
を含む染色体を有する、請求項77~79のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項81】
大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148Rである、請求項77~80のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項82】
請求項73~75のいずれか一項に記載のDNA構築物によって発現されるRNA。
【請求項83】
請求項77~81のいずれか一項に記載の宿主細胞の使用を含む、組換えタンパク質を発現させる方法。
【請求項84】
前記細菌宿主細胞から前記組換えタンパク質を回収する段階を更に含み;任意選択的に、前記回収された組換えタンパク質を、好ましくは1つ又は複数のクロマトグラフィ段階によって精製する1つ又は複数の段階を更に含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
請求項83又は84に記載の方法によって得られるセルトリズマブ。
【請求項86】
請求項83又は84による方法によって得られるセルトリズマブバイオシミラー。
【請求項87】
セルトリズマブバイオシミラー又はその誘導体であって、好ましくは、前記誘導体はポリエチレングリコール部分を含み、より好ましくは、前記誘導体は約40kDaのポリエチレングリコール部分を含む、薬剤としての使用のための、請求項86に記載のセルトリズマブバイオシミラー又はその誘導体。
【請求項88】
クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎及び強直性脊椎炎の治療における使用のための、請求項86又は87に記載のセルトリズマブバイオシミラー。
【請求項89】
a.ラムノース代謝を無効にする、RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列における突然変異;
b.(i)DegPプロテアーゼの発現及び/又は(ii)DegPプロテアーゼの活性を無効にする、前記degP遺伝子における突然変異;
c.Prcプロテアーゼの発現及び/又はPrcプロテアーゼの活性を無効にする、prc遺伝子における突然変異;及び
d.前記spr遺伝子における突然変異
を含む染色体を特徴とする、組換えタンパク質の発現のために好適な宿主細胞。
【請求項90】
突然変異は、フレームシフト、欠失、置換及び挿入からなる群から選択される、請求項89に記載の宿主細胞。
【請求項91】
ラムノース代謝を無効にする、RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列における前記突然変異は、RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列におけるフレームシフト突然変異である、請求項89又は90に記載の宿主細胞。
【請求項92】
前記degP遺伝子における前記突然変異はdegP欠失である、請求項89~91のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項93】
前記prc遺伝子における前記突然変異はprc欠失である、請求項89~92のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項94】
前記spr遺伝子における上記突然変異は、148位のトリプトファンがアルギニンに変化することをもたらす前記spr遺伝子における置換を特徴とするsprW148R突然変異である、請求項89~93のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項95】
a.ラムノース代謝を無効にする、RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列における突然変異は、RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列におけるフレームシフト突然変異である;
b.degP欠失;
c.prc欠失;及び
d.sprW148R突然変異
を含む、請求項89~94のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項96】
前記宿主細胞は、細菌細胞、より好ましくは大腸菌(E.coli)であり、最も好ましくは大腸菌W3110である、請求項89~95のいずれか一項に記載の宿主。
【請求項97】
大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148Rである、請求項89~96のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項98】
前記宿主細胞は組換えタンパク質をコードするDNA構築物を用いて形質転換され、前記組換えタンパク質は好ましくは抗体であり、前記抗体は最も好ましくはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体又は前記抗体のフラグメントである、請求項89~97のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項99】
組換えタンパク質をコードするDNA構築物を用いて、請求項89~98のいずれか一項に記載の宿主細胞を形質転換させる;
得られた形質転換された宿主細胞をラムノースに曝露し、それにより前記組換えタンパク質の発現を誘導する;及び
前記宿主細胞から前記組換えタンパク質を回収する
段階を有し、任意選択的に、前記回収された組換えタンパク質を、好ましくは1つ又は複数のクロマトグラフィ段階によって精製する1つ又は複数の段階を更に有する、組換えタンパク質を発現させる方法。
【請求項100】
前記組換えタンパク質は抗体であり、前記抗体は好ましくはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体又は前記抗体のフラグメントであり、より好ましくはFab'フラグメントであり、最も好ましくはセルトリズマブである、請求項99に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌宿主細胞内で組換えタンパク質を発現させるために好適なDNA構築物に関する。本発明は更に、DNA構築物を含むベクター及び細菌宿主細胞、並びに、上記細菌宿主細胞をラムノースに曝露すること、及び、それにより上記組換えタンパク質の発現を誘導することによって、上記組換えタンパク質を産生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラムノースの代謝には、L-ラムノースが透過酵素RhaTを介して細胞に取り込まれ、次にL-ラムノースイソメラーゼ(RhaA)によってL-ラムヌロースに異性化され、L-ラムヌロースが次にラムヌロキナーゼ(RhaB)によって更にリン酸化され、最終的にはラムヌロース-1-リン酸アルドラーゼ(RhaD)によって加水分解されてジヒドロキシアセトンリン酸及びL-ラクトアルデヒドをもたらすことを伴う[1]。rhaA、rhaB、及びrhaD遺伝子はrhaBADと称されるオペロンを形成し、rhaBADプロモーターの助けを得て転写される[1]。他の系と比較すると、ラムノース代謝経路は、以下で説明される通り、RhaS及びRhaRとして知られる2つの転写活性化因子が制御のために必要とされるという事実によって区別される[1]。
【0003】
rhaBADオペロンは、上述のrhaB、rhaA、及びrhaD遺伝子を、それらのそれぞれの転写開始部位を隔てる約240bpのDNAを有するrhaSRオペロンから分岐して転写する、正に制御された異化オペロンである[1]。rhaSRオペロンはRhaS及びRhaRをコードし、二量体RhaS及びRhaRタンパク質の各モノマーは2つのヘリックス-ターン-ヘリックス-モチーフを含み、DNAの2つの主要な溝に接触する。RhaRは、rhaSR転写開始部位に対して-32塩基から-82塩基にまたがるプロモーターDNAに結合することにより、rhaSRの転写を制御する[1]。rhaSR発現に続き、RhaSは転写開始部位に対して-32~-81塩基でrhaBADオペロンの上流のDNAに結合し、rhaBAD発現を増加させる[1]。更に、rhaSR-rhaBAD遺伝子間領域は、rhaBADオペロンの転写開始部位に対して-92.5位(CRP1)にてCRP結合部位を含み、rhaSRオペロンの転写開始部位に対して-92.5位(CRP2)、-115.5位(CRP3)、及び-116.5位(CRP4)にてCRP結合部位を含む[1]。環状AMP受容タンパク質(cyclic AMP receptor protein:CRP)は、大腸菌内の100を上回るプロモーターの発現を制御する。
【0004】
RhaS、RhaR及びrhaBADプロモーターをコードするDNA配列を含むDNA構築物が、当技術分野において知られている。US8138324は、RhaS、RhaR及びrhaBADプロモーターをコードするDNA配列を含むpTACO及びpLEMO由来のプラスミド(すなわち、DNA構築物)について開示している。しかしながら、US8138324は、無効化されたラムノース代謝を有する宿主細胞の使用については言及していない。
【0005】
RhaS、RhaR及びrhaBADプロモーターをコードするDNA配列を含むpRha由来のプラスミドに基づくDNA構築物はまた、例えばGiacaloneら[5]又はHjelmら[2]から、当技術分野において知られている。Giacaloneらは、例えばプラスミドpRha67A及びpRha109Aについて記載しており、一方でHjelmらはプラスミドpRha67Kについて開示している。
【0006】
RhaS、RhaR及びrhaBADプロモーターをコードするDNA配列を含むDNA構築物は当技術分野において知られているが、とりわけ組換えタンパク質、特にモノクローナル抗体又はそのフラグメントの工業規模での産生には依然として多くの課題がある。主な課題は以下の通りである。
(i)宿主細胞がストレスに晒されており、その結果、膜、タンパク質、及び核酸などの細胞高分子が損傷する;
(ii)宿主細胞の増殖不良;
(iii)産生された組換えタンパク質の活性不良;及び/又は
(iv)低収率で組換えタンパク質を得ること。
【0007】
それ故に、モノクローナル抗体又はそのフラグメントなどの組換えタンパク質の高収率での効率的な産生のために好適な、改良されたDNA構築物並びに宿主細胞及び方法が必要である。
【0008】
特に、TNF-アルファに対する親和性を有する抗腫瘍壊死因子(anti-tumor necrosis factor:TNF)モノクローナル抗体の(IgG 1アイソタイプからの)ヒト化Fab'フラグメントであるセルトリズマブの効率的な産生のための改良されたDNA構築物並びに宿主細胞が必要である。セルトリズマブと約40kDaのポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)の結合によりセルトリズマブペゴルが得られ、これはUCBによってCimzia(登録商標)として市販されている医薬品であり、これはクローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎、及び強直性脊椎炎の治療のために皮下注射により投与される。
【0009】
EP1287140及びUS7012135などの特許は、セルトリズマブの産生のためのDNA構築物を開示している。しかしながら、未進化の翻訳開始領域(translation initiation region:TIR)を含み、更に、PelBシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を欠いていると思われるこれらのDNA構築物は、高収率でセルトリズマブを産生するために最適ではない。
【0010】
典型的には、EP1287140及びUS7012135において開示されているものなどの組換え発現ベクターを生成する場合、TIRは、発現ベクターからの5'UTR(すなわち、ATG開始コドンの上流の非翻訳領域)をシグナルペプチドのコード配列と融合させることによって形成される。異なるシグナルペプチドが使用されるたびに、異なるTIRが生成される。そのようなTIRは、それらが本発明並びにUS10696963及びWO21158163において記載されている合成的に進化させたTIRではなくアドホックな遺伝子融合によって形成されたものであることから、未進化と称される。
【0011】
US6828121及びEP1341899などの特許は、様々なタイプの抗体及びヒト化Fab'フラグメントなどの抗体フラグメントを産生するための宿主細胞に関する。これらの宿主細胞によって産生され得る抗体の幾つかの具体例は、抗IgE、抗IgG、抗Her-2、抗CD11a、抗CD18、抗CD20、及び抗VEGFである。US6828121及びEP1341899において開示されている宿主細胞の例は、プロテアーゼDegP及びPrcをそれぞれコードする染色体degP及びprcを欠損し、突然変異spr遺伝子を保有する大腸菌株であり、突然変異spr遺伝子の産物は、148位のトリプトファンがアルギニンに変化することを特徴とする。しかしながら、US6828121及びEP1341899はいずれも、(a)ラムノースの代謝に関する宿主細胞の突然変異、及び(b)セルトリズマブなどの特定のFab'フラグメントの産生については言及していない。
【0012】
国際特許出願WO21158163は、組換えタンパク質の産生においてシグナルペプチドの性能を制御するために合成的に進化させたTIRを含むDNA構築物に関する。WO21158163は、合成的に進化させたTIRが未進化のTIRに対して技術的利点を有することを明確に示している。しかしながら、WO21158163は、セルトリズマブの最適な発現のために特別に開発された合成的に進化させたTIRについては言及していない。
【0013】
WO21158163は更に、Pelbシグナルペプチドの発現のためのヌクレオチド配列に関する。しかしながら、WO21158163は、セルトリズマブの最適な発現のために特別に開発されたヌクレオチド配列については言及していない。
【0014】
それ故に、セルトリズマブなどの組換えタンパク質の発現のために、DNA構築物、宿主細胞、TIR及びシグナルペプチドを最適化する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、DNA構築物の有利な技術的効果を提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、TIRの有利な技術的効果を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、宿主細胞の有利な技術的効果を提供することである。
【0018】
本発明の更なる目的は、シグナルペプチドヌクレオチド配列の有利な技術的効果を提供することである。
【0019】
本発明の更なる目的は、組換えタンパク質の効率的な産生のための有利な方法を提供することである。
【0020】
本発明の目的は、以下で開示される本発明の態様のうちのいずれか1つ又は複数によって達成されてきた。
【0021】
本発明の第1の態様は、宿主細胞内でセルトリズマブを発現させるために好適なDNA構築物に関し、セルトリズマブは、(i)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖、を備え、上記DNA構築物は、セルトリズマブをコードするヌクレオチド配列を有し、上記DNA構築物は、セルトリズマブの軽鎖及び/又はセルトリズマブの重鎖をコードするヌクレオチド配列に転写方向において作用可能に連結されたシグナルペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を更に含み、上記DNA構築物は、以下をコードするヌクレオチド配列を更に含む:
プロモーター、
RhaR転写活性化因子、
RhaS転写活性化因子、
抗生物質耐性マーカー、
少なくとも1つのターミネーター、及び
複製起点。
【0022】
好ましい実施形態において、DNA構築物は、以下を特徴とする:
プロモーター、
RhaR転写活性化因子、
RhaS転写活性化因子、
抗生物質耐性マーカー、
抗生物質耐性マーカーをコードするヌクレオチド配列に作用可能に連結されたプロモーター、
少なくとも1つのターミネーター、及び
複製起点。
【0023】
好ましい実施形態において、DNA構築物は、以下を特徴とする:
rhaBADプロモーター、
RhaR転写活性化因子、
RhaS転写活性化因子、
抗生物質耐性マーカー、
抗生物質耐性マーカーをコードするヌクレオチド配列に作用可能に連結されたプロモーター、
rrnB T1ターミネーター、
rrnB T2ターミネーター、及び
pMB1複製起点。
【0024】
好ましい実施形態において、DNA構築物は以下を特徴とする:
抗生物質耐性マーカーは、カナマイシン耐性マーカーであり、好ましくは、配列番号12のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むカナマイシン耐性マーカーである;
抗生物質耐性マーカーをコードするヌクレオチド配列に作用可能に連結されたプロモーターは、AmpRプロモーターであり、好ましくは、配列番号13のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むAmpRプロモーターである;
rrnB T1ターミネーターは、配列番号14のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む;
rrnB T2ターミネーターは、配列番号15のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む;及び/又は
pMB1複製起点は、配列番号16のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む。
【0025】
好ましい実施形態において、DNA構築物は以下を特徴とする:
抗生物質耐性マーカーが、配列番号12のヌクレオチド配列を含むカナマイシン耐性マーカーであること;
抗生物質耐性マーカーをコードするヌクレオチド配列に作用可能に連結されたプロモーターが、配列番号13のヌクレオチド配列を含むAmpRプロモーターであること;
rrnB T1ターミネーターが、配列番号14のヌクレオチド配列を含むこと;
配列番号15のヌクレオチド配列を含むrrnB T2ターミネーター;及び/又は
pMB1複製起点が、配列番号16のヌクレオチド配列を含むこと。
【0026】
好ましい実施形態において、DNA構築物は以下を特徴とする:
rhaBADプロモーターは、配列番号8のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む;
RhaR転写活性化因子は、配列番号9のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む;
RhaS転写活性化因子は、配列番号11のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む;
抗生物質耐性マーカーは、配列番号12のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むカナマイシン耐性マーカーである;
AmpRプロモーターは、配列番号13のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む;
rrnB T1ターミネーターは、配列番号14のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む;
rrnB T2ターミネーターは、配列番号15のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む;及び
pMB1複製起点は、配列番号16のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む。
【0027】
好ましい実施形態において、DNA構築物は以下を特徴とする:
rhaBADプロモーターは、配列番号8のヌクレオチド配列を含む;
RhaR転写活性化因子は、配列番号9のヌクレオチド配列を含む;
RhaS転写活性化因子は、配列番号11のヌクレオチド配列を含む;
抗生物質耐性マーカーは、配列番号12のヌクレオチド配列を含むカナマイシン耐性マーカーである;
AmpRプロモーターは、配列番号13のヌクレオチド配列を含む;
rrnB T1ターミネーターは、配列番号14のヌクレオチド配列を含む;
rrnB T2ターミネーターは、配列番号15のヌクレオチド配列を含む;及び
pMB1複製起点は、配列番号16のヌクレオチド配列を含む。
【0028】
好ましい実施形態において、DNA構築物は、EcoRI、NdeI、NotI、XhoI、PspXI、PaeR71、BbsI、StyI、AvrII、BanI、Acc65I、KpnI、Eco53kI、SacI、BamHI、XbaI、SalI、AccI、PstI、SbfI、SphI及び/又はHindIIIなどの制限酵素によって切断可能な1つ又は複数の制限部位を含み得る。
【0029】
好ましい実施形態において、DNA構築物は、rhaBADプロモーターに作用可能に連結された上記組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列を更に含み、ここで上記組換えタンパク質は、モノクローナル抗体又はそのフラグメントであり、好ましくは、上記組換えタンパク質はセルトリズマブである。より好ましくは、上記組換えタンパク質は、(i)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び/又は(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖を有するセルトリズマブである。
【0030】
好ましい実施形態において、DNA構築物は、(i)配列番号5の配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むセルトリズマブの軽鎖をコードするヌクレオチド配列、及び/又は(ii)配列番号6の配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むセルトリズマブの重鎖をコードするヌクレオチド配列、を有するrhaBADプロモーターに作用可能に連結された組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み;好ましくは、上記ヌクレオチド配列は、(i)配列番号5の配列を含むセルトリズマブの軽鎖をコードするヌクレオチド配列、及び/又は(ii)配列番号6の配列を含むセルトリズマブの重鎖をコードするヌクレオチド配列、を備える組換えタンパク質をコードする。
【0031】
実施形態において、DNA構築物は、配列番号5及び配列番号6のヌクレオチド配列のうちのいずれか一方又は両方に転写方向において作用可能に連結されたシグナルペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むrhaBADプロモーターに作用可能に連結された組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列を更に含み、好ましくは、シグナルペプチドはPelB(ペクチン酸リアーゼB)シグナルペプチドである。
【0032】
セルトリズマブの軽鎖のヌクレオチド配列に転写方向に作用可能に連結されたPelBシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、本発明においてPelB1と称される。PelB1のヌクレオチド配列は、配列番号18の配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む。
【0033】
セルトリズマブの重鎖のヌクレオチド配列に転写方向に作用可能に連結されたPelBシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、本発明においてPelB2と称される。PelB2のヌクレオチド配列は、配列番号19の配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む。
【0034】
得られたPelBシグナルペプチドは、配列番号7[6]:MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMAのアミノ酸配列を含む。
【0035】
実施形態において、DNA構築物は、配列番号20のヌクレオチド配列を有するTIRを含み、配列番号20の上記配列は、PelB1のヌクレオチド配列の少なくとも最初の9ヌクレオチド、すなわち配列番号18の最初の9ヌクレオチドを含む。この特定のTIRは、本発明においてTIR-LCとも称される。
【0036】
実施形態において、DNA構築物は、配列番号21の配列を有するTIRを含み、配列番号21の上記配列は、PelB2のヌクレオチド配列の少なくとも最初の9ヌクレオチド、すなわち配列番号19の最初の9ヌクレオチドを含む。この特定のTIRは、本発明においてTIR-HCとも称される。
【0037】
好ましい実施形態において、DNA構築物は、配列番号17の配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含み、好ましくは配列番号17の配列を含む。
【0038】
本発明の第2の態様は、組換えタンパク質を発現させるためのDNA構築物に関し、ここでDNA構築物は、以下を備える:
配列番号No.20及び21のヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つ、ここで配列番号20及び21のヌクレオチド配列はTIR配列である;及び
シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;
ここで配列番号No.20及び21のヌクレオチド配列は、上記シグナルペプチドをコードする配列のうちの少なくとも最初の9ヌクレオチドを含む。
【0039】
実施形態において、DNA構築物は、配列番号20のヌクレオチド配列を有するTIRを含み、配列番号20の上記配列は、PelB1のヌクレオチド配列の少なくとも最初の9ヌクレオチド、すなわち配列番号18の最初の9ヌクレオチドを含む。この特定のTIRは、本発明においてTIR-LCとも称される。
【0040】
実施形態において、DNA構築物は、配列番号21の配列を有するTIRを含み、配列番号21の上記配列は、PelB2のヌクレオチド配列の少なくとも最初の9ヌクレオチド、すなわち配列番号19の最初の9ヌクレオチドを含む。この特定のTIRは、本発明においてTIR-HCとも称される。
【0041】
実施形態において、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、以下に作用可能に連結される:
抗体の軽鎖をコードする第1のヌクレオチド配列;及び/又は
抗体の重鎖をコードする第2のヌクレオチド配列。
【0042】
実施形態において、DNA構築物はシャイン・ダルガーノ配列を含む。シャイン・ダルガーノ配列は、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列のATG開始コドンより上流に位置する。実施形態において、上記シャイン・ダルガーノ配列は、抗体の軽鎖及び/又は重鎖に作用可能に連結されたシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列のATG開始コドンより上流に位置する。実施形態において、上記シャイン・ダルガーノ配列は、転写方向におけるヌクレオチド配列AGGAGGAA及び/又はGAGGAGAAを含む。好ましくは、AGGAGGAAは、抗体の軽鎖をコードするヌクレオチド配列の上流にある。好ましくは、GAGGAGAAは、抗体の重鎖をコードするヌクレオチド配列の上流にある。より好ましくは、AGGAGGAAは、TIR-LCの上流にある。より好ましくは、GAGGAGAAは、TIR-HCの上流にある。
【0043】
実施形態において、シグナルペプチド(例えば、PelB1)をコードする第1のヌクレオチド配列は、抗体の軽鎖をコードする第1のヌクレオチド配列に作用可能に連結される。
【0044】
実施形態において、シグナルペプチド(例えば、PelB2)をコードする第2のヌクレオチド配列は、抗体の重鎖をコードする第2のヌクレオチド配列に作用可能に連結される。
【0045】
実施形態において、抗体の軽鎖及び重鎖をそれぞれコードする第1及び第2のヌクレオチド配列は、配列番号No.3及び配列番号No.4のアミノ酸配列をそれぞれコードする。
【0046】
実施形態において、抗体の軽鎖及び重鎖をそれぞれコードする第1及び第2のヌクレオチド配列は、配列番号No.5及び配列番号No.6のヌクレオチド配列をそれぞれ含む。
【0047】
本発明の第3の態様は、シグナルペプチドを発現させるためのDNA構築物に関し、上記DNA構築物は、PelBシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、上記該PelBシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号No.18及び19の前記ヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つを含む。実施形態において、DNA構築物は、ヌクレオチド配列の配列番号No.18及び19の両方を含む。
【0048】
本発明の第4の態様は、アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有するDNA構築物に関し、アミノ酸配列は以下を含む:
a.セルトリズマブについてのアミノ酸配列
b.セルトリズマブの軽鎖アミノ酸配列のN末端に融合した配列番号No.7のアミノ酸配列の第1のシグナルペプチド;及び
c.セルトリズマブの重鎖アミノ酸配列のN末端に融合した配列番号No.7のアミノ酸配列の第2のシグナルペプチド。
【0049】
実施形態において、上記第1及び第2のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号No.18及び19のヌクレオチド配列を含む。
【0050】
本発明の第5の態様は、本発明の第1、第2、第3及び/又は第4の態様によるDNA構築物のいずれかを含む発現ベクターに関する。
【0051】
本発明の第6の態様は、以下を含む染色体を特徴とする宿主細胞に関する:
a.ラムノース代謝を無効にする、RhaBをコードするヌクレオチド配列における突然変異;
b.(i)DegPプロテアーゼの発現及び/又は(ii)DegPプロテアーゼの活性を無効にする、degP遺伝子における突然変異;
c.Prcプロテアーゼの発現及び/又はPrcプロテアーゼの活性を無効にする、prc遺伝子における突然変異;及び
d.spr遺伝子における突然変異。
【0052】
実施形態において、突然変異は、フレームシフト、欠失、置換及び挿入からなる群から選択される。
【0053】
実施形態において、ラムノース代謝を無効にする、RhaBをコードするヌクレオチド配列における上記突然変異は、RhaBをコードするヌクレオチド配列におけるフレームシフト突然変異である。
【0054】
実施形態において、degP遺伝子における上記突然変異は、degP欠失である。
【0055】
実施形態において、prc遺伝子における上記突然変異は、prc欠失である。
【0056】
実施形態において、spr遺伝子における上記突然変異は、148位のトリプトファンがアルギニンに変化することをもたらすspr遺伝子における置換を特徴とするsprW148R突然変異である。
【0057】
実施形態において、上記宿主細胞は、以下を含む染色体を特徴とする:
a.ラムノース代謝を無効にする、RhaBをコードするヌクレオチド配列における突然変異;
b.DegPプロテアーゼの発現を無効にする、degP遺伝子における突然変異;
c.Prcプロテアーゼの発現を無効にする、prc遺伝子における突然変異;及び
d.spr遺伝子における突然変異。
【0058】
実施形態において、上記宿主細胞は細菌細胞であり、より好ましくは大腸菌であり、最も好ましくは大腸菌W3110である。
【0059】
実施形態において、上記宿主細胞は、RhaBをコードするヌクレオチド配列においてフレームシフト突然変異を含む染色体を有する大腸菌W3110である。この特定の宿主細胞は、本発明において大腸菌W3110 rhaBfs並びにXB17と称される。
【0060】
実施形態において、上記宿主細胞は、degP欠失を含む染色体を更に有する大腸菌W3110 rhaBfsである。この特定の宿主細胞は、本発明において大腸菌W3110 rhaBfsΔDegP並びにXB83と称される。
【0061】
実施形態において、上記宿主細胞は、prc欠失を含む染色体を更に有する大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPである。この特定の宿主細胞は、本発明において大腸菌W3110 rhaBfsΔdegPΔprc並びにXB152と称される。
【0062】
実施形態において、上記宿主細胞は、sprW148R突然変異を含む染色体を更に有する大腸菌W3110 rhaBfsΔdegPΔprcである。この特定の宿主細胞は、本発明において大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148R並びにXB166と称される。
【0063】
本発明の第7の態様は、本発明の第1、第2、第3及び/又は第4の態様によるDNA構築物を含む、本発明の第6の態様による宿主細胞に関する。
【0064】
本発明の第8の態様は、本発明の第7の態様による宿主細胞をラムノースに曝露し、それにより上記組換えタンパク質の発現を誘導する段階を含む、組換えタンパク質を産生する方法に関する。好ましい実施形態において、本方法は、細菌宿主細胞から組換えタンパク質を回収する段階を更に含み;且つ任意選択的に、回収された組換えタンパク質を、好ましくは1つ又は複数のクロマトグラフィ段階によって精製する1つ又は複数の段階を更に含む。
【0065】
本発明の第9の態様は、本発明の第1、第2、第3及び/又は第4の態様によるDNA構築物を、本発明の第6の態様による宿主細胞に導入する段階を含む、組換えタンパク質を産生する方法に関する。
【0066】
実施形態において、本方法は、宿主細胞をラムノースに曝露し、それにより組換えタンパク質の発現を誘導する段階を更に含む。
【0067】
実施形態において、本方法は、宿主細胞から組換えタンパク質を回収する段階を更に含み;且つ任意選択的に、回収された組換えタンパク質を、好ましくは1つ又は複数のクロマトグラフィ段階によって精製する1つ又は複数の段階を更に含む。
【0068】
実施形態において、本方法は、精製された組換えタンパク質を、好ましくはポリエチレングリコール部分で、より好ましくは約40kDaのポリエチレングリコール部分で誘導体化する段階を更に含む。
【0069】
本発明の第10の態様は、本発明の第9の態様による方法によって得られる組換えタンパク質に関する。組換えタンパク質は、好ましくは抗体又はそのフラグメントであり、より好ましくはFab'フラグメント抗体であり、最も好ましくはセルトリズマブである。
【0070】
本発明の第11の態様は、本発明の第9の態様による方法によって得られるセルトリズマブバイオシミラーに関する。好ましくは、セルトリズマブバイオシミラーは、約40kDaのポリエチレングリコール部分などのポリエチレングリコール部分を含む。セルトリズマブバイオシミラーは、セルトリズマブバイオシミラーの分子構造を十分に保護するため、ここではプロダクト・バイ・プロセスとして開示される。バイオシミラーは参照製剤の高度な類似体であり、すなわち、セルトリズマブバイオシミラーは、参照製剤スポンサーによって産生されるセルトリズマブペゴル(Cimzia(登録商標))と高度に類似した分子構造及び生理活性を有する。更に、バイオシミラーは参照製剤との臨床的に意味のある差異を有せず、バイオシミラーに対して行われる臨床試験は薬物動態及び免疫原性を査定する。それにも関わらず、本発明によるセルトリズマブバイオシミラー及び参照製剤スポンサーのセルトリズマブペゴルの間の小さな構造的差異は、部分的に、本発明の第9の態様(並びに本発明の第8の態様)による方法に起因するであろう。
【0071】
本発明の第12の態様は、薬剤としての使用のための、好ましくはクローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎及び強直性脊椎炎の治療における使用のための、セルトリズマブバイオシミラー又はその誘導体に関する。上記誘導体は、好ましくは、約40kDaのポリエチレングリコール部分などのポリエチレングリコール部分を含む。本発明の実施形態は、セルトリズマブバイオシミラーを用いることにより疾患を治療する方法に関する。当該疾患は、クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎及び強直性脊椎炎であり得る。発明の第13の態様は、本発明の第1、第2、第3及び/又は第4の態様によるDNA構築物を、本発明の第6の態様による宿主細胞に導入する段階を含む、シグナルペプチドを産生する方法に関する。
【0072】
本発明の様々な態様(及びその実施形態)の上記で示された配列番号1~21のうちの1つ又は複数は、幾つかの実施形態において、それに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列によって置換され得る。本明細書において使用される場合、「配列同一性」という用語は、アミノ酸又はヌクレオチド配列に関して使用され、配列同一性は指定された配列の全長にわたる。従って、配列は、指定されたアミノ酸又はヌクレオチド配列と、配列において少なくとも90パーセント、少なくとも92パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも96パーセント、少なくとも97パーセント、少なくとも98パーセント、又は少なくとも99パーセント同一であり得る。従って、本発明のそのような配列は、本発明の配列に対する単一又は複数のヌクレオチド又はアミノ酸の改変(付加、置換、挿入又は欠失)を含む。アミノ酸レベルでの上記で定義された配列同一性を有する好ましい配列は、本発明の配列において、最大5個、例えば1、2、3、4又は5個、好ましくは1、2又は3個、より好ましくは1又は2個の改変されたアミノ酸のみを含む。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】KTXHISについてのプラスミドマップ
図2】KTXHISのマルチクローニング部位(multiple cloning site:MCS)のヌクレオチド配列
図3】KTXHIS-Cert-PelB1-LC-PelB2-HCのプラスミドマップ
図4】TIRライブラリ選択及びそこからの進化したTIRの単離の例
図5】培地画分のウェスタンブロット解析
図6】総画分のウェスタンブロット解析
図7】発現系XB62(未進化のTIRを有する発現ベクターD37を含むXB17宿主細胞)及びXB102(セルトリズマブ重鎖発現の制御のために合成的に進化させたTIRを有する発現ベクターE83を含むXB17宿主細胞)の間の収率及び力価の差異を検出するために実施されたNanoDrop(登録商標)及びAKTAクロマトグラフィ
【0074】
図8】ペリプラズム抽出及びその後のアフィニティHPLCを通じた、XB166宿主細胞において発現したE83ベクターに対するXB17宿主細胞において発現したE83発現ベクターの比較発現解析
図9】ペリプラズム抽出及びその後のアフィニティHPLCを通じた、XB166宿主細胞において発現したE111ベクターに対するXB166宿主細胞において発現したE83発現ベクターの比較発現解析
【発明を実施するための形態】
【0075】
本発明の特定の実施形態は、抗体の発現のためのDNA構築物に関し、ここで上記DNA構築物は、配列番号20の改良されたTIRを含む:
TTGCTCATGAAGTAT.
【0076】
別の特定の実施形態は、抗体の発現のためのDNA構築物に関し、ここで上記DNA構築物は、配列番号21の改良されたTIRを含む:
TGTTAAATGAAGTAT.
【0077】
配列番号20及び21のTIRは、同じDNA構築物中に含まれ得る。そのような実施形態の例は、配列番号20のTIRが抗体又はそのフラグメント(セルトリズマブなど)の軽鎖を発現するヌクレオチド配列の上流にあり、一方、配列番号21のTIRが抗体又はそのフラグメント(セルトリズマブなど)の重鎖を発現するヌクレオチド配列の上流にあることである。
【0078】
本発明の特定の実施形態は、抗体の鎖をコードするヌクレオチド配列に作用可能に連結されたPelBシグナルペプチドをコードする配列番号18の改良されたヌクレオチド配列に関する:
ATGAAGTATCTTCTGCCGACCGCAGCAGCGGGTCTGCTGCTGCTGGCAGCACAGCCTGCAATGGCA.
【0079】
別の特定の実施形態は、抗体の鎖をコードするヌクレオチド配列に作用可能に連結されたPelBシグナルペプチドをコードする配列番号19の改良されたヌクレオチド配列に関する:
ATGAAGTATCTGTTGCCGACTGCTGCAGCGGGACTGCTGCTGTTAGCGGCACAACCGGCGATGGCG.
【0080】
配列番号18及び19のPelBヌクレオチド配列は、同じDNA構築物中に含まれ得る。そのようなDNA構築物の例は、配列番号18のPelBヌクレオチド配列が抗体又はそのフラグメント(セルトリズマブなど)の軽鎖をコードするヌクレオチド配列に作用可能に連結され、一方、配列番号19のPelBヌクレオチド配列が抗体又はそのフラグメント(セルトリズマブなど)の重鎖をコードするヌクレオチド配列に作用可能に連結される場合である。
【0081】
更に他の特定の実施形態において、配列番号18~21の上記配列は、同じDNA構築物中に含まれ得る。そのような実施形態において、配列番号No.20及び21のTIRヌクレオチド配列は、配列番号18及び19のシグナルペプチドヌクレオチド配列の少なくとも最初の9ヌクレオチドを含むことになる。
【0082】
本発明の他の特定の実施形態は、セルトリズマブなどの組換えタンパク質のL-ラムノースrhaBADプロモーターベースの産生を制御することに関し得る。換言すれば、セルトリズマブは、以下により産生され得る:
a.セルトリズマブをコードするヌクレオチド配列を、当該ヌクレオチド配列がrhaBADプロモーターに作用可能に連結されるようDNA構築物にクローニングすること、及び
b.得られたヌクレオチド配列を、ラムノース代謝を無効にする突然変異又は修飾を含む染色体を有する細菌宿主細胞に導入すること。
【0083】
実施形態において、rhaBADプロモーターのヌクレオチド配列は、配列番号8の配列を含む(当該配列は図1及び3において「rhaBAD」と称される):
CACCACAATTCAGCAAATTGTGAACATCATCACGTTCATCTTTCCCTGGTTGCCAATGGCCCATTTTCTTGTCAGTAACGAGAAGGTCGCGAATCCAGGCGCTTTTTAGACTGGTCGTA.
【0084】
DNA構築物は、RhaR転写活性化因子をコードするヌクレオチド配列を含み得る。本発明の実施形態において、RhaR転写活性化因子のヌクレオチド配列は、配列番号9の配列を含む(当該配列は、図1及び図3において「rhaR」と称される):
ATGGCTTTCTGCAATAACGCGAATCTTCTCAACGTATTTGTACGCCATATTGCGAATAATCAACTTCGTTCTCTGGCCGAGGTAGCCACGGTGGCGCATCAGTTAAAACTTCTCAAAGATGATTTTTTTGCCAGCGACCAGCAGGCAGTCGCTGTGGCTGACCGTTATCCGCAAGATGTCTTTGCTGAACATACACATGATTTTTGTGAGCTGGTGATTGTCTGGCGCGGTAATGGCCTGCATGTACTCAACGATCGCCCTTATCGCATTACCCGTGGCGATCTCTTTTACATTCATGCTGATGATAAACACTCCTACGCTTCCGTTAACGATCTGGTTTTGCAGAATATTATTTATTGCCCGGAGCGTCTGAAGCTGAATCTTGACTGGCAGGGGGCGATTCCGGGATTTAACGCCAGCGCAGGGCAACCACACTGGCGCTTAGGTAGCATGGGGATGGCGCAGGCGCGGCAGGTTATTGGTCAGCTTGAGCATGAAAGTAGTCAGCATGTGCCGTTTGCTAACGAAATGGCTGAGTTGCTGTTCGGGCAGTTGGTGATGTTGCTGAATCGCCATCGTTACACCAGTGATTCGTTGCCGCCAACATCCAGCGAAACGTTGCTGGATAAGCTGATTACCCGGCTGGCGGCTAGCCTGAAAAGTCCCTTTGCGCTGGATAAATTTTGTGATGAGGCATCGTGCAGTGAGCGCGTTTTGCGTCAGCAATTTCGCCAGCAGACTGGAATGACCATCAATCAATATCTGCGACAGGTCAGAGTGTGTCATGCGCAATATCTTCTCCAGCATAGCCGCCTGTTAATCAGTGATATTTCGACCGAATGTGGCTTTGAAGATAGTAACTATTTTTCGGTGGTGTTTACCCGGGAAACCGGGATGACGCCCAGCCAGTGGCGTCATCTCAATTCGCAGAAAGAT.
【0085】
DNA構築物は、終止コドンが欠落しているためにRhaRとインフレームであるRhaR転写活性化因子の伸長部分をコードするヌクレオチド配列を更に含み得る。本発明の実施形態において、RhaR転写活性化因子の伸長部分のヌクレオチド配列は、配列番号10の配列を含む(当該配列は、図1及び図3において「伸長されたrhaR」と称される):
AGACGAAAGGGCCTCGTGATACGCCTATTTTTATAG.
【0086】
DNA構築物は、RhaS転写活性化因子をコードするヌクレオチド配列を含み得る。本発明の実施形態において、RhaS転写活性化因子のヌクレオチド配列は、配列番号11の配列を含む(当該配列は、図1及び図3において「rhaS」と称される):
ATGACCGTATTACATAGTGTGGATTTTTTTCCGTCTGGTAACGCGTCCGTGGCGATAGAACCCCGGCTCCCGCAGGCGGATTTTCCTGAACATCATCATGATTTTCATGAAATTGTGATTGTCGAACATGGCACGGGTATTCATGTGTTTAATGGGCAGCCCTATACCATCACCGGTGGCACGGTCTGTTTCGTACGCGATCATGATCGGCATCTGTATGAACATACCGATAATCTGTGTCTGACCAATGTGCTGTATCGCTCGCCGGATCGATTTCAGTTTCTCGCCGGGCTGAATCAGTTGCTGCCACAAGAGCTGGATGGGCAGTATCCGTCTCACTGGCGCGTTAACCACAGCGTATTGCAGCAGGTGCGACAGCTGGTTGCACAGATGGAACAGCAGGAAGGGGAAAATGATTTACCCTCGACCGCCAGTCGCGAGATCTTGTTTATGCAATTACTGCTCTTGCTGCGTAAAAGCAGTTTGCAGGAGAACCTGGAAAACAGCGCATCACGTCTCAACTTGCTTCTGGCCTGGCTGGAGGACCATTTTGCCGATGAGGTGAATTGGGATGCCGTGGCGGATCAATTTTCTCTTTCACTGCGTACGCTACATCGGCAGCTTAAGCAGCAAACGGGACTGACGCCTCAGCGATACCTGAACCGCCTGCGACTGATGAAAGCCCGACATCTGCTACGCCACAGCGAGGCCAGCGTTACTGACATCGCCTATCGCTGTGGATTCAGCGACAGTAACCACTTTTCGACGCTTTTTCGCCGAGAGTTTAACTGGTCACCGCGTGATATTCGCCAGGGACGGGATGGCTTTCTGCAATAA.
【0087】
DNA構築物は、「抗生物質耐性マーカー」又は「選択マーカー」をコードするヌクレオチド配列を含み得る。そのようなマーカーは、その産物が抗生物質(例えば、クロラムフェニコール、アンピシリン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、カナマイシン、ネオマイシン)に対する耐性、又は選択培地(例えば、ura(ウラシル)、leu(ロイシン)、trp(トリプトファン)、his(ヒスチジン))上で増殖する能力を与える遺伝子を含むDNAのフラグメントである。通常、プラスミドは細菌細胞にプラスミドを維持させるための抗生物質耐性マーカーを含む。本発明の実施形態において、DNA構築物はカナマイシン耐性マーカーのヌクレオチド配列を含み得る。本発明の特定の実施形態において、カナマイシン耐性を与えるためのヌクレオチド配列は、配列番号12の配列を含む(当該配列は、図1及び図3において「KanR」と称される):
ATGAGCCATATTCAACGGGAAACGTCTTGCTCTAGGCCGCGATTAAATTCCAACATGGATGCTGATTTATATGGGTATAAATGGGCTCGCGATAATGTCGGGCAATCAGGTGCGACAATCTATCGATTGTATGGGAAGCCCGATGCGCCAGAGTTGTTTCTGAAACATGGCAAAGGTAGCGTTGCCAATGATGTTACAGATGAGATGGTCAGACTAAACTGGCTGACGGAATTTATGCCTCTTCCGACCATCAAGCATTTTATCCGTACTCCTGATGATGCATGGTTACTCACCACTGCGATCCCCGGGAAAACAGCATTCCAGGTATTAGAAGAATATCCTGATTCAGGTGAAAATATTGTTGATGCGCTGGCAGTGTTCCTGCGCCGGTTGCATTCGATTCCTGTTTGTAATTGTCCTTTTAACAGCGATCGCGTATTTCGTCTCGCTCAGGCGCAATCACGAATGAATAACGGTTTGGTTGATGCGAGTGATTTTGATGACGAGCGTAATGGCTGGCCTGTTGAACAAGTCTGGAAAGAAATGCATAAACTTTTGCCATTCTCACCGGATTCAGTCGTCACTCATGGTGATTTCTCACTTGATAACCTTATTTTTGACGAGGGGAAATTAATAGGTTGTATTGATGTTGGACGAGTCGGAATCGCAGACCGATACCAGGATCTTGCCATCCTATGGAACTGCCTCGGTGAGTTTTCTCCTTCATTACAGAAACGGCTTTTTCAAAAATATGGTATTGATAATCCTGATATGAATAAATTGCAGTTTCATTTGATGCTCGATGAGTTTTTCTAA.
【0088】
DNA構築物は、抗生物質耐性マーカーをコードする核酸配列に作用可能に連結されたプロモーターをコードするヌクレオチド配列を含み得る。そのようなプロモーターは、先の段落で論述された抗生物質耐性マーカーの発現を増加させ得る。本発明の実施形態において、アンピシリン耐性についてのプロモーターは、アンピシリン耐性マーカーの発現を促進することができるのみならず、カナマイシン耐性マーカーの発現を促進することもできるAmpRプロモーターである。本発明の特定の実施形態において、AmpRプロモーターの核酸配列は、配列番号13の配列を含む(当該配列は、図1及び図3において「AmpRプロモーター」と称される):
CGCGGAACCCCTATTTGTTTATTTTTCTAAATACATTCAAATATGTATCCGCTCATGAGACAATAACCCTGATAAATGCTTCAATAATATTGAAAAAGGAAGAGT.
【0089】
DNA構築物は、rrnB T1ターミネーター及びrrnB T2ターミネーターの両方をコードするヌクレオチド配列を含み得る。rrnB T1及びT2ターミネーターは両方とも、単離された形態において効率的な転写ターミネーターであるが、共に使用された場合、rrnB T1及びT2ターミネーターは、より効率的に転写を終結させ得る。
【0090】
実施形態において、rrnB T1ターミネーターのヌクレオチド配列は、配列番号14の配列を含む:
CAAATAAAACGAAAGGCTCAGTCGAAAGACTGGGCCTTTCGTTTTATCTGTTGTTTGTCGGTGAACGCTCTCCTGAGTAGGACAAAT.
【0091】
実施形態において、rrnB T2ターミネーターのヌクレオチド配列は、配列番号15の配列を含む:
AGAAGGCCATCCTGACGGATGGCCTTTT.
【0092】
DNA構築物は、DNA複製が開始される特定のヌクレオチド配列である複製起点を更に含み得る。DNA複製は、この点から双方向又は一方向に進行し得る。一般的に使用される幾つかの複製起点は、ColE1、pMB1、pSC101、R6K、pBR322、R6K、p15A、及びpUCである。本発明の実施形態において、複製起点はpMB1又はその誘導体である。本発明の特定の実施形態において、pMB1の核酸配列は、配列番号16の配列を含む:
TTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGGACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAA.
【0093】
実施形態において、DNA構築物は、以下のうちの1つ又は複数をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターである:
- rhaBADプロモーター、
- RhaR転写活性化因子、
- RhaS転写活性化因子、
- 抗生物質耐性マーカー、
- 抗生物質耐性マーカーをコードする核酸に作用可能に連結されたプロモーター、
- 少なくとも1つのターミネーター、及び
- 複製起点。
【0094】
実施形態において、発現ベクターは、以下をコードするヌクレオチド配列を含む:
- rhaBADプロモーター、
- RhaR転写活性化因子、
- RhaS転写活性化因子、
- 抗生物質耐性マーカー、
- 抗生物質耐性マーカーをコードする核酸配列に作用可能に連結されたプロモーター、
- rrnB T1ターミネーター、
- rrnB T2ターミネーター、及び
- 複製起点。
【0095】
実施形態において、発現ベクターは、以下をコードするヌクレオチド配列を含む:
- rhaBADプロモーター、
- RhaR転写活性化因子、
- RhaS転写活性化因子、
- カナマイシン耐性マーカー、
- AmpRプロモーター、
- rrnB T1ターミネーター、
- rrnB T2ターミネーター、及び
- pMB1複製起点。
【0096】
実施形態において、発現ベクターは、以下をコードするヌクレオチド配列を含む:
- 配列番号8のヌクレオチド配列を含むrhaBADプロモーター、
- 配列番号9のヌクレオチド配列を含むRhaR転写活性化因子、
- 配列番号11のヌクレオチド配列を含むRhaS転写活性化因子、
- 配列番号12のヌクレオチド配列を含むカナマイシン耐性マーカー、
- 配列番号13のヌクレオチド配列を含むAmpRプロモーター、
- 配列番号14のヌクレオチド配列を含むrrnB T1ターミネーター、
- 配列番号15のヌクレオチド配列を含むrrnB T2ターミネーター、及び
- 配列番号16のヌクレオチド配列を含むpMB1複製起点。
【0097】
上記のDNA構築物にクローニングされることになる組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、モノクローナル抗体又はそのフラグメント、好ましくはセルトリズマブをコードする核酸を含み得る。セルトリズマブをコードする核酸は、セルトリズマブの軽鎖及び重鎖をコードする核酸を含む。
【0098】
実施形態において、セルトリズマブの軽鎖をコードするヌクレオチド配列は、配列番号5の配列を含む:
gatattcagatgactcagagcccaagttcgctgagcgcttctgttggcgatcgtgtgaccattacatgcaaagcctcacagaacgttggtaccaatgtcgcctggtatcagcagaaacctggaaaagcgcccaaagcgctcatctactcagcgagcttcctgtattcaggcgtgccgtatcgctttagcggctctggttccggtacagactttaccctcacgatttcgtccttacaaccggaagatttcgccacgtactattgccagcaatacaacatctatccgctgacctttggacaaggcaccaaagtggagatcaaacgcactgttgctgcaccgagtgtgttcatctttccaccgtctgatgagcagctgaagtctggtacagcaagtgttgtgtgtctgctgaacaacttctatccgcgtgaagctaaagtacagtggaaagtcgacaatgccttgcaatccgggaatagccaggaaagcgtgactgaacaggacagcaaggattcgacctacagtctgagcagtaccttaaccttgtcgaaagcggattacgagaaacacaaggtctatgcctgtgaagtcacgcaTCAAGGCCTGTCATCGCCTGTTACTAAATCATTTAATAGAGGAGAATGTTAA.
本発明の実施形態において、セルトリズマブの重鎖をコードするヌクレオチド配列は、配列番号6の配列を含む:
gaagtgcagcttgtggagtctggaggtggcttagtccagccaggtggttccctgcgcttgtcctgtgcagcgagcgggtatgtAttcacagattatggcatgaactgggttcggcaagcaccaggcaaaggcctcgaatggatggggtggatcaacacgtatattggggaaccgatttatgcggatagcgtcaaaggtcgcttcacgttcagtctggataccagcaaatcaaccgcgtatctccagatgaatagcctccgtgctgaagatactgccgtgtactactgtgcgcgtggttatcgcagttatgcgatggattactggggccaaggcaccttagtcaccgttagttctgcctccaccaaaggcccatcagtgtttccgctggccccttcgtctaaatcgacgagtggtggcacagccgcactgggatgcctggtcaaagactactttcccgaacctgtaaccgtaagctggaatagtggtgctttgacctcaggcgtgcatacgtttccggctgtcctgcagtcatccggtctgtactcgctttcgagcgttgttactgtaccctctagctccctgggcacccagacgtacatctgcaatgtgaaccataagccgtcgaacaccaaagtggacaagaaagttgagccgaaaagctgcgacaaaacgcacacatgtgccgccTAA.
実施形態において、セルトリズマブの軽鎖及び重鎖をコードする核酸は、セルトリズマブの重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列のいずれか一方又は両方に作用可能に連結されたシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を更に含む。シグナルペプチドは、好ましくは、MalE、OmpA、PhoA、DsbA及びPelbからなる群から選択される。シグナルペプチドをコードする核酸配列は、好ましくは、PelBシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列である。
【0099】
実施形態において、セルトリズマブの軽鎖をコードするヌクレオチド配列に作用可能に連結されたPelBシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号18の配列を含み、本発明においてはPelBシグナル配列1(図3を参照)とも称され、PelB1と略記される:
ATGAAGTATCTtCTGCCGACCGCAGCAGCGGGTCTGCTGCTGCTGGCAGCACAGCCTGCAATGGCA.
【0100】
本発明の実施形態において、セルトリズマブの重鎖をコードするヌクレオチド配列に作用可能に連結されたPelBシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号19の配列を含み、本発明においてはPelBシグナル配列2(図3を参照)とも称され、PelB2と略記される:
ATGAAGTATCTGTTGCCGACTGCTGCAGCGGGACTGCTGCTGTTAGCGGCACAACCGGCGATGGCG.
【0101】
実施形態において、DNA構築物は配列番号20の改良されたTIRを含む:
TTGCTCATGAAGTAT.
【0102】
実施形態において、DNA構築物は、配列番号21の改良されたTIRを含む:
TGTTAAATGAAGTAT.
【0103】
実施形態において、DNA構築物は、配列番号No.20及び21のヌクレオチド配列のTIRを含み、これらのTIRヌクレオチド配列は、配列番号18及び19のシグナルペプチドヌクレオチド配列の少なくとも最初の9ヌクレオチドをそれぞれ含むことになる。
【0104】
本発明の特定の実施形態において、DNA構築物は、本発明においてKTXHIS-Cert-PelB1-LC-PelB2-HCとも称される配列番号17のヌクレオチド配列を含む。このDNA構築物は、好ましくは発現ベクターである。
【0105】
組換えタンパク質を産生するために使用されることになる細菌宿主細胞は、ラムノース代謝を無効にする突然変異又は修飾を有する染色体を含む。細菌宿主細胞は、大腸菌細胞であり得る。好ましい実施形態において、細菌宿主細胞は大腸菌K-12細胞であり、より好ましくは、細菌宿主細胞は大腸菌W3110細胞である。ラムノース代謝の無効化は、RhaBを不活性化する、RhaBをコードするヌクレオチド配列における突然変異によって達成される。或いは、ラムノース代謝の無効化は、RhaBをコードするヌクレオチド配列が欠失した染色体を有する細菌宿主細胞を用いることにより達成され;これは例えば、RhaBをコードするヌクレオチド配列を欠失させることによって達成され得る。好ましくは、細菌宿主細胞の染色体はRhaTをコードする核酸配列を含み、すなわち、RhaT遺伝子はインタクトである。
【0106】
本発明の特定の実施形態において、細菌宿主細胞は、大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148Rである。
【0107】
本発明の特定の実施形態において、細菌宿主細胞である大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148Rは、KTXHIS-Cert-PelB1-LC-PelB2-HC発現ベクターを含み、セルトリズマブバイオシミラーの産生において使用され得るセルトリズマブを発現させる方法において使用される。
【0108】
バイオシミラーは参照製剤の高度な類似体であり、すなわち、セルトリズマブバイオシミラーは、参照製剤スポンサー(すなわち、オリジネーター)によって産生されるセルトリズマブペゴル(Cimzia(登録商標))と高度に類似した分子構造及び機能(すなわち、生理活性)を有する。更に、バイオシミラーは参照製剤との臨床的に意味のある差異を有せず、バイオシミラーに対して行われる臨床試験は薬物動態及び免疫原性を査定する。最も重要なことに、バイオシミラーは、(https://www.fda.gov/media/108905/downloadにおいて示されている通り)(a)医療機関の承認基準を満たし、(b)医療機関の認可を受けた施設において製造され、且つ(c)継続的な安全性を確保するために市販後調査の一環として追跡されている。
【0109】
本発明は、以下の非限定的な例のセクションにおける例1~9で開示されているように例示され得る。
【0110】
XB166宿主細胞及びKTXHIS-Cert-PelB1-LC-PelB2-HC発現ベクター、並びにそれらの併用に関するこれらの例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、例示としてのみ与えられていることを理解されたい。上記で開示された本発明の実施形態及び以下の例から、当業者は本発明の本質的な特性を確認することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更及び修正を行い、それを様々なタイプの治療用抗体及び免疫グロブリンに適合させることができる。従って、本明細書において示され、記載されたものに加えて、本発明の様々な修正が上述の記載から当業者にとって明らかになるであろう。そのような修正はまた、添付した特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。そのような修正の例は、上記で示された配列番号1~21のうちの1つ又は複数が、それに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列によって置換され得ることである。
【0111】
例1は、本発明において大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148Rとも称されるXB166宿主細胞の構築に関する。
【0112】
例2は、KTXHIS-Cert-PelB1-LC-PelB2-HC発現ベクターの構築に関する。
【0113】
例3は、例2において開示された発現ベクターによって発現されるセルトリズマブの軽鎖及び重鎖に関する。
【0114】
例4は、本発明に従って産生されたセルトリズマブがバクテリオファージを含まないことを示す。
【0115】
例5は、TIRライブラリ選択及び進化したTIRの単離に関する。
【0116】
例6は、培地画分発現のウェスタンブロット解析に関し、その結果は、セルトリズマブ重鎖発現の制御のために合成的に進化させたTIRを含むE83発現ベクターにより、最高レベルのセルトリズマブがもたらされたことを示す。
【0117】
例7は、総画分発現のウェスタンブロット解析に関し、その結果は、セルトリズマブ重鎖発現の制御のために合成的に進化させたTIRを含むE83発現ベクターにより、最高レベルのセルトリズマブがもたらされたことを示す。
【0118】
例8は、発現系XB62(未進化のTIR、及び、セルトリズマブの軽鎖及び重鎖についてのヌクレオチド配列の各々の上流にあるPelBシグナルペプチドについての野生型ヌクレオチド配列を有するD37発現ベクターを含むXB17宿主細胞)及びXB102(セルトリズマブ重鎖発現の制御のために合成的に操作されたTIRを有する発現ベクターE83を含むXB17宿主細胞)の間の収率及び力価の差異を検出するために実施されたNanoDrop(登録商標)及びAKTAクロマトグラフィに関し、その結果は、(セルトリズマブ重鎖発現の制御のための)合成的に操作されたTIRを含む発現ベクターE83を有する発現系XB102により、セルトリズマブの最高の収率及び力価がもたらされることを示す。
【0119】
例9は、宿主細胞XB17及びXB166におけるセルトリズマブ発現の比較に関し、その結果は、E111(KTXHIS-Cert-Pelb1-LC-Pelb2-HC)と組み合わせたXB166宿主細胞(大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148R)の使用により、セルトリズマブの最高相対収率がもたらされることを示す。
【0120】
例1-菌株の開発
XB166宿主細胞は、抗体及び抗体フラグメントなどの組換えタンパク質の産生のために遺伝子的に操作された大腸菌W3310誘導体である。更に、XB166宿主細胞は、対象の組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列をKTXHISプラスミドにクローニングし、ラムノース誘導性プロモーターの制御下で発現させるラムノース誘導系のための菌株として設計された。
【0121】
XB166宿主細胞は、イェール大学(米国ニューヘブン)大腸菌遺伝子ストックセンター(E.coli Genetic Stock Center:CGSC)から取得された、カタログ番号4474、遺伝子型F-、λ-、IN(rrnD-rrnE)1、rph-1の親大腸菌株W3110から開発された。
【0122】
XB166は、rhaB遺伝子を不活性化することによるラムノース依存性プロモーターからの効率的な誘導のためにカスタマイズされた[7]。更に、以下のサブセクションで詳細に記載されている通り、抗体フラグメントの産生に有用な3つのゲノム修飾[8]が導入された。
【0123】
要約すると、XB166宿主細胞を開発するための方法は、以下に列挙される修飾を伴い、これは以下のサブセクションにおいて詳細に論述される:
a)RhaBフレームシフト突然変異;
b)degP欠失;
c)prc欠失;及び
d)sprW148R突然変異。
【0124】
段階(a)-RhaBフレームシフト突然変異体の構築。
【0125】
親大腸菌株W3110は、rhaBの染色体コピーにおいてフレームシフトを有する誘導体を生成し、それが炭素源としてラムノースを利用できないようにすべく操作された。この目的のために、遺伝子置換プラスミドpMAK705-rhaBfs[9]を用いて細胞を遺伝子的に操作した。
【0126】
操作された菌株の表現型を検査して、ラムノースがもはや炭素源として利用できないことを実証した。更に、rhaBフレームシフトを含む染色体フラグメントをPCR増幅し、PCR産物の塩基配列を決定して、2塩基の正しい挿入を確認した(以下で開示される配列番号No.22の下線付きのCG塩基を参照):
tgtggcagcaactgattcagcccggcgagaaactgaaatcgatccggcgagcgatacagcacattggtcagacacagattatcggtatgttcatacagatgccgatcatgatcgcgtacgaaacagaccgtgccaccggtgatggtatagggctgcccattaaacacatgaatacccgtgccatgttcgacaatcacaatttcatgaaaatcatgatgatgttcaggaaaatccgcctgcgggagccggggttctatcgccacggacgcgttaccagacggaaaaaaatccacactatgtaatacggtcatactggcctcctgatgtcgtcaacacggcgaaatagtaatcacgaggtcaggttcttaccttaaattttcgacggaaaaccacgtaaaaaacgtcgatttttcaagatacagcgtgaattttcaggaaatgcggtgagcatcacatcaccacaattcagcaaattgtgaacatcatcacgttcatctttccctggttgccaatggcccattttcctgtcagtaacgagaaggtcgcgaattcaggcgctttttagactggtcgtaatgaaattcagcaggatcacattatgacctttcgcaattgtgtcgccgtcgatctcggcgcatccagtgggcgcgtgatgctggcgcgttacgagcgtgaatgccgcagcctgacgctgcgcgaaatccatcgttttaacaatgggctgcatagtcagaacggctatgtcacctgggatgtggatagcctGgaaagtgccattcgccttggattaaacaaggtgtgcgaggaagggattcgtatcg[CG(下線)]atagcattgggattgatacctggggcgtggactttgtgctgctcgaccaacagggtcagcgtgtgggcctgcccgttgcttatcgcgatagccgcaccaatggcctaatggcgcaggcacaacaacaactcggcaaacgcgatatttatcaacgtagcggcatccagtttctgcccttcaatacgctttatcagttgcgtgcgctgacggagcaacaacctgaacttattccacacattgctcacgctctgctgatgccggattacttcagttatcgcctgaccggcaagatgaactgggaatataccaacgccacgaccacgcaactggtcaatatcaatagcgacgactgggacgagtcgctactggcgtggagcggggccaacaaagcctggtttggtcgcccgacgcatccgggtaatgtcataggtcactggatttgcccgcagggtaatgagattccagtggtcgccgttgccagccatgataccgccagcgcggttatcgcctcgccgttaaacggctcacgtgctgcttatctctcttctggcacctggtcattgatgggcttcgaaagccagacgccatttaccaatgacacggcactggcagccaacatcaccaatgaaggcggggcggaaggtcgctatcgggtgctgaaaaatattatgggcttatggctgcttcagcgagtgcttcaggagcagcaaatcaacgatcttccggcgcttatctccgcgacacaggcacttccggcttgccgcttcattatcaatcccaatgacgatcgct.
単一のコロニーを摘出し、LBベジトン内で増殖させ、グリセロールストックを調製した。得られた大腸菌株W3110 rhaBfsはXB17と呼ばれ、以下の遺伝子修飾のための出発菌株として作用した。
【0127】
段階(b)-degP欠失
XB17(大腸菌W3110 rhaBfs)菌株は、ペリプラズムにおける軽鎖のタンパク質分解の減少に起因して、組換え抗体フラグメントの高レベル蓄積を可能にする「三重突然変異」宿主菌株を作成するために、3つの重要な修飾(degP prc spr)を備えるように更に操作された[8]。
【0128】
この目的のために、ペリプラズムセリンエンドプロテアーゼDegPをコードする遺伝子のゲノムコピーを、degP上流領域に相同なフラグメントがdegP下流領域に相同なフラグメントと融合する遺伝子置換プラスミドpMAK705-sacB-DegPを用いてノックアウトした。極性効果を回避するために、最後の7degPコドンのみならずdegP開始コドンも保存するように遺伝子置換カセットを設計した。この遺伝子置換プラスミドはまた、温度感受性の複製起点の隣に対抗選択のためのsacB遺伝子を保持しており、それにより、菌株構築後のプラスミドキュアリング[10]を容易にしている。
【0129】
染色体のdegP遺伝子の欠失は、degP「傷」領域のPCR増幅及びPCR産物の塩基配列決定によって確認された(下線付きコドンはdegP開始コドンであり、太字のコドンはdegP遺伝子の最後の7コドンである、以下の配列番号23を参照):
atataaaaatgtcgctgtaaaacatgtgtttagccatccagatgtcgagcggcttgaattgcagggctatcgggtcattagcggattattagagatttatcgtcctttattaagcctgtcgttatcagactttactgaactggtagaaaaagaacgggtgaaacgtttccctattgaatcgcgcttattccacaaactctcgacgcgccatcggctggcctatgtcgaggctgtcagtaaattaccgtcagattctcctgagtttccgctatgggaatattattaccgttgccgcctgctgcaggattatatcagcggtatgaccgacctctatgcgtgggatgaataccgacgtctgatggccgtagaacaataaccaggcttttgtaaagacgaacaataaatttttaccttttgcagaaactttagttcggaacttcaggctataaaacgaatctgaagaacacagcaattttgcgttatctgttaatcgagactgaaatac[ATG(下線)][atctacctgttaatgcagTAA(太字)]tctccctcaaccccttcctgaaaacgggaaggggttctccttacaatctgtgaacttcaccacaactccatacatcttcatcatcctttaggcatttgcacaatgccgtacgttacgtacttccttatgctaagccgtgcataacggaggacttatggctggctggcatcttgataccaaaatggcgcaggatatcgtggcacgtaccatgcgcatcatcgataccaatatcaacgtaatggatgcccgtgggcgaattatcggcagcggcgatcgtgagcgtattggtgaattgcacgaaggtgcattgctggtactttcacagggacgagtcgtcgatatcgatgacgcggtagcacgtcatctgcacggtgtgcggcaggggattaatctaccgttacggctggaaggtgaaattgtcggcgtaattggcctgacaggtgaaccagagaatctgcgtaaatatggcgaactggtctgcatgacggc.
操作された菌株の単一のコロニーを摘出し、LBベジトン内で増殖させ、グリセロールストックを調製した。得られた大腸菌株W3110rhaBfsΔDegPはXB83と呼ばれ、以下の遺伝子修飾のための出発菌株として作用した。
【0130】
段階(c)-prc欠失
大腸菌W3110rhaBfsΔDegP(XB83)を出発菌株として、上記degP欠失と同様に遺伝子置換プラスミドpMAK705-sacB-prcを用い、prc遺伝子をノックアウトした。染色体のprc遺伝子の欠失は、prc傷領域のPCR増幅及びPCR産物の塩基配列決定によって確認された(下線付きコドンはprc開始コドンであり、太字のコドンはprc遺伝子の最後の7コドンである、以下の配列番号24を参照):
tttacggtgttaaacccggcgcaacgcgtgtcgatcttgacggcaacccatgcggtgagctggacgagcaacatgtagagcatgctcgcaagcagcttgaagaagcgaaagcgcgtgttcaggcacagcgtgctgaacagcaagcgaaaaaacgcgaagctgccgcaactgctggtgagaaagaagacgcaccgcgccgcgaacgcaagccacgtccgactacgccacgccgcaaagaaggcgctgaacgtaaacctcgtgcgcaaaagccggtagagaaagcgccaaaaacagtaaaagcacctcgcgaagaacagcacaccccggtttctgacatttcagctctgactgtcggacaagccctgaaggtgaaagcgggtcaaaacgcgatggatgccaccgtattagaaatcaccaaagacggcgtccgcgtccagctgaattcgggtatgtctttgattgtgcgcgcagaacacctggtgttctgaaacggaggccgggccaggc[ATG(下線)][caacccgctcccgtcaagTAA(太字)]tatcaatcaggcacaagaaattgtgcctgattttttaacagcgacaagatgccgtaaatcagatgctacaaaatgtaaagttgtgtctttctggtgacttacgcactatccagacttgaaaatagtcgcgtaacccatacgatgtgggtatcgcatattgcgttttgttaaactgaggtaaaaagaaaattatgatgcgaatcgcgctcttcctgctaacgaacctggccgtaatggtcgttttcgggctggtactgagcctgacagggatacagtcgagcagcgttcaggggctgatgatcatggccttgctgttcggttttggtggttccttcgtttcgcttctgatgtccaaatggatggcattacgatctgttggcggggaagtgatcgagcaaccgcgtaacgaaagggaacgttggctggtcaatactgtagcaacccaggctcgtcaggcggggatcgctatgccgcaagtggctatctacc.
操作された菌株の単一のコロニーを摘出し、LBベジトン内で増殖させ、グリセロールストックを調製した。得られた大腸菌株W3110 rhaBfsΔdegPΔprcはここでXB152と呼ばれ、最終遺伝子操作段階のための出発菌株として作用した。
【0131】
段階(d)-sprW148R発現宿主を操作する最終段階は、spr遺伝子のアミノ酸置換をもたらすsprW148R突然変異の導入によって三重突然変異遺伝子型を補完することに費やされた。degP及びprcの欠失により、抗体フラグメントの軽鎖のタンパク質分解が減少した菌株がもたらされると予想される一方で、spr突然変異によってより多量の組換えタンパク質が産生されると記載されている[8]。
【0132】
大腸菌W3110rhaBfsΔDegPΔprc(XB152)を出発菌株として用い、突然変異体sprフラグメントを含む遺伝子置換プラスミドpMAK705-sacB-sprW148Rを用いて、spr遺伝子のゲノムコピーを操作した[10]。sprW148R突然変異を含む染色体フラグメントをPCR増幅し、PCR産物の塩基配列を決定して、ゲノムspr遺伝子が突然変異対立遺伝子によって正しく置換されていることを確認した(下記配列番号25を参照;TからAへの突然変異は太字で強調表示されている):
aacaaacaacatggtcaaatctcaaccgattttgagatatatcttgcgcgggattcccgcgattgcagtagcggttctgctttctgcatgtagtgcaaataacaccgcaaagaatatgcatcctgagacacgtgcagtgggtagtgaaacatcatcactgcaagcttctcaggatgaatttgaaaacctggttcgtaatgtcgacgtaaaatcgcgaattatggatcagtatgctgactggaaaggcgtacgttatcgtctgggcggcagcactaaaaaaggtatcgattgttctggtttcgtacagcgtacattccgtgagcaatttggcttagaacttccgcgttcgacttacgaacagcaggaaatgggtaaatctgtttcccgcagtaatttgcgtacgggtgatttagttctgttccgtgccggttcaacgggacgccatgtcggtatttatatcggcaacaatcagtttgtccatgcttccaccagcagtggtgttattatttccagcatgaatgaaccgtac[A(太字)]ggaagaagcgttacaacgaagcacgccgggttctcagccgcagctaataaaccgtttggatgcaatcccttggctatcctgacgagttaactgaaagcactgcttaggcagtgcttttttgttttcattcatcagagaaaatgatgtttccgcgtcttgatccaggctatagtccggtcattgttatcttttaaatgttgtcgtaatttcaggaaattaacggaatcatgttcatacgcgctcccaattttggacgtaagctcctgcttacctgcattgttgcaggcgtaatgattgcgatactggtgagttgccttcagtttttagtggcctggcataagcacgaagtcaaatacgacacactgattaccgacgtacaaaagtatctcgatacctattttgccgacctgaaatccactactgaccggctccagccgctgaccttagatacctgccagcaagctaaccccgaactgaccgcccgcgcagcgtttagcatgaatgtccgaacgtttgtgctggtgaaagataaaa.
操作された菌株の単一のコロニーを摘出し、LBベジトン内で増殖させ、グリセロールストックを調製した。得られた大腸菌株W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148RはXB166と呼ばれる。
【0133】
XB166の有利な技術的効果は、例8及び図8において詳細に示され、論述される。
【0134】
例2-KTXHIS-Cert-PelB1-LC-PelB2-HC
作製されたセルトリズマブの最初の構築物は、シグナルペプチドOmpA-LC、PelB-HC(遺伝子合成)を用いたものであり、EcoRI及びHindIII部位を介してKTXHISプラスミドにクローニングされた。この最初の構築物から、次に、大腸菌内でのPCRフラグメントの相同組換えを使用して、シグナルペプチドを交換した。発明者は、KTXHISベクターでPelBLC、PelBHCの幾つかのバージョンを作製したが、得られるPelBのアミノ酸配列が同じであっても、コドンは異なっていた。率直に言えば、発明者において、キアヴァッシュ(Kiavash)がどれを開始プラスミドとして使用したかは定かではない。
【0135】
セルトリズマブの発現のためのマザー構築物は、シグナルペプチドOmpA(軽鎖をコードするヌクレオチド配列の上流)及びPelB(重鎖をコードするヌクレオチド配列の上流)を用いて作製され、EcoRI及びHindIII部位(配列番号2を参照)を介してKTXHISプラスミド(配列番号1を参照)にクローニングされた。このマザー構築物から、既存のシグナルペプチドヌクレオチド配列を次に配列番号18及び19のシグナルペプチドヌクレオチド配列と入れ替え、大腸菌内でPCRフラグメントの相同組換えを用いることにより、発現ベクターD37を産出した。(以下の例5~10において説明される通り)セルトリズマブの軽鎖及び重鎖の発現を制御する両TIRの合成構築後、配列番号17を含む発現ベクターを生成した。
【0136】
発現プラスミドKTXHISについては、欧州特許出願EP20201096.3において以前に記載されている。得られたヌクレオチド配列は配列番号17のヌクレオチド配列を含み、本発明においてKTXHIS-Cert-PelB1-LC-PelB2-HCと称される。KTXHIS-Cert-PelB1-LC-PelB2-HCのプラスミドマップが図3において示される:
GGCTGTTTTGGCGGATGAGAGAAGATTTTCAGCCTGATACAGATTAAATCAGAACGCAGAAGCGGTCTGATAAAACAGAATTTGCCTGGCGGCAGTAGCGCGGTGGTCCCACCTGACCCCATGCCGAACTCAGAAGTGAAACGCCGTAGCGCCGATGGTAGTGTGGGGTCTCCCCATGCGAGAGTAGGGAACTGCCAGGCATCAAATAAAACGAAAGGCTCAGTCGAAAGACTGGGCCTTTCGTTTTATCTGTTGTTTGTCGGTGAACGCTCTCCTGAGTAGGACAAATCCGCCGGGAGCGGATTTGAACGTTGCGAAGCAACGGCCCGGAGGGTGGCGGGCAGGACGCCCGCCATAAACTGCCAGGCATCAAATTAAGCAGAAGGCCATCCTGACGGATGGCCTTTTTGCGTTTCTACAAACTCTTTTGTTTATTTTTCTAAATACATTCAAATATGTATCCGCTCATGAGACTAGGCTTCCGCGCCCTCATCCGAAAGGGCGTATTCATATATGCGGTGTtAAATACCGCACAGATGCGTAAGGAGAAAATACCGCATCAGGCGCTCTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAATACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGGACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAACTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAATTAAAAATGAAGTTTTAAATCAATCTAAAGTATATATGAGTAAACTTGGTCTGACAGTTAGAAAAACTCATCGAGCATCAAATGAAACTGCAATTTATTCATATCAGGATTATCAATACCATATTTTTGAAAAAGCCGTTTCTGTAATGAAGGAGAAAACTCACCGAGGCAGTTCCATAGGATGGCAAGATCCTGGTATCGGTCTGCGATTCCGACTCGTCCAACATCAATACAACCTATTAATTTCCCCTCGTCAAAAATAAGGTTATCAAGTGAGAAATCACCATGAGTGACGACTGAATCCGGTGAGAATGGCAAAAGTTTATGCATTTCTTTCCAGACTTGTTCAACAGGCCAGCCATTACGCTCGTCATCAAAATCACTCGCATCAACCAAACCGTTATTCATTCGTGATTGCGCCTGAGCGAGACGAAATACGCGATCGCTGTTAAAAGGACAATTACAAACAGGAATCGAATGCAACCGGCGCAGGAACACTGCCAGCGCATCAACAATATTTTCACCTGAATCAGGATATTCTTCTAATACCTGGAATGCTGTTTTCCCGGGGATCGCAGTGGTGAGTAACCATGCATCATCAGGAGTACGGATAAAATGCTTGATGGTCGGAAGAGGCATAAATTCCGTCAGCCAGTTTAGTCTGACCATCTCATCTGTAACATCATTGGCAACGCTACCTTTGCCATGTTTCAGAAACAACTCTGGCGCATCGGGCTTCCCATACAATCGATAGATTGTCGCACCTGATTGCCCGACATTATCGCGAGCCCATTTATACCCATATAAATCAGCATCCATGTTGGAATTTAATCGCGGCCTAGAGCAAGACGTTTCCCGTTGAATATGGCTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACGTCTAAGAAACCATTATTATCATGACATTAACCTATAAAAATAGGCGTATCACGAGGCCCTTTCGTCTATCTTTCTGCGAATTGAGATGACGCCACTGGCTGGGCGTCATCCCGGTTTCCCGGGTAAACACCACCGAAAAATAGTTACTATCTTCAAAGCCACATTCGGTCGAAATATCACTGATTAACAGGCGGCTATGCTGGAGAAGATATTGCGCATGACACACTCTGACCTGTCGCAGATATTGATTGATGGTCATTCCAGTCTGCTGGCGAAATTGCTGACGCAAAACGCGCTCACTGCACGATGCCTCATCACAAAATTTATCCAGCGCAAAGGGACTTTTCAGGCTAGCCGCCAGCCGGGTAATCAGCTTATCCAGCAACGTTTCGCTGGATGTTGGCGGCAACGAATCACTGGTGTAACGATGGCGATTCAGCAACATCACCAACTGCCCGAACAGCAACTCAGCCATTTCGTTAGCAAACGGCACATGCTGACTACTTTCATGCTCAAGCTGACCAATAACCTGCCGCGCCTGCGCCATCCCCATGCTACCTAAGCGCCAGTGTGGTTGCCCTGCGCTGGCGTTAAATCCCGGAATCGCCCCCTGCCAGTCAAGATTCAGCTTCAGACGCTCCGGGCAATAAATAATATTCTGCAAAACCAGATCGTTAACGGAAGCGTAGGAGTGTTTATCATCAGCATGAATGTAAAAGAGATCGCCACGGGTAATGCGATAAGGGCGATCGTTGAGTACATGCAGGCCATTACCGCGCCAGACAATCACCAGCTCACAAAAATCATGTGTATGTTCAGCAAAGACATCTTGCGGATAACGGTCAGCCACAGCGACTGCCTGCTGGTCGCTGGCAAAAAAATCATCTTTGAGAAGTTTTAACTGATGCGCCACCGTGGCTACCTCGGCCAGAGAACGAAGTTGATTATTCGCAATATGGCGTACAAATACGTTGAGAAGATTCGCGTTATTGCAGAAAGCCATCCCGTCCCTGGCGAATATCACGCGGTGACCAGTTAAACTCTCGGCGAAAAAGCGTCGAAAAGTGGTTACTGTCGCTGAATCCACAGCGATAGGCGATGTCAGTAACGCTGGCCTCGCTGTGGCGTAGCAGATGTCGGGCTTTCATCAGTCGCAGGCGGTTCAGGTATCGCTGAGGCGTCAGTCCCGTTTGCTGCTTAAGCTGCCGATGTAGCGTACGCAGTGAAAGAGAAAATTGATCCGCCACGGCATCCCAATTCACCTCATCGGCAAAATGGTCCTCCAGCCAGGCCAGAAGCAAGTTGAGACGTGATGCGCTGTTTTCCAGGTTCTCCTGCAAACTGCTTTTACGCAGCAAGAGCAGTAATTGCATAAACAAGATCTCGCGACTGGCGGTCGAGGGTAAATCATTTTCCCCTTCCTGCTGTTCCATCTGTGCAACCAGCTGTCGCACCTGCTGCAATACGCTGTGGTTAACGCGCCAGTGAGACGGATACTGCCCATCCAGCTCTTGTGGCAGCAACTGATTCAGCCCGGCGAGAAACTGAAATCGATCCGGCGAGCGATACAGCACATTGGTCAGACACAGATTATCGGTATGTTCATACAGATGCCGATCATGATCGCGTACGAAACAGACCGTGCCACCGGTGATGGTATAGGGCTGCCCATTAAACACATGAATACCCGTGCCATGTTCGACAATCACAATTTCATGAAAATCATGATGATGTTCAGGAAAATCCGCCTGCGGGAGCCGGGGTTCTATCGCCACGGACGCGTTACCAGACGGAAAAAAATCCACACTATGTAATACGGTCATACTGGCCTCCTGATGTCGTCAACACGGCGAAATAGTAATCACGAGGTCAGGTTCTTACCTTAAATTTTCGACGGAAAACCACGTAAAAAACGTCGATTTTTCAAGATACAGCGTGAATTTTCAGGAAATGCGGTGAGCATCACATCACCACAATTCAGCAAATTGTGAACATCATCACGTTCATCTTTCCCTGGTTGCCAATGGCCCATTTTCTTGTCAGTAACGAGAAGGTCGCGAATCCAGGCGCTTTTTAGACTGGTCGTAATGAAATTCAGGAGGAAtTgctcATGAAGTATCTtCTGCCGACCGCAGCAGCGGGTCTGCTGCTGCTGGCAGCACAGCCTGCAATGGCAgatattcagatgactcagagcccaagttcgctgagcgcttctgttggcgatcgtgtgaccattacatgcaaagcctcacagaacgttggtaccaatgtcgcctggtatcagcagaaacctggaaaagcgcccaaagcgctcatctactcagcgagcttcctgtattcaggcgtgccgtatcgctttagcggctctggttccggtacagactttaccctcacgatttcgtccttacaaccggaagatttcgccacgtactattgccagcaatacaacatctatccgctgacctttggacaaggcaccaaagtggagatcaaacgcactgttgctgcaccgagtgtgttcatctttccaccgtctgatgagcagctgaagtctggtacagcaagtgttgtgtgtctgctgaacaacttctatccgcgtgaagctaaagtacagtggaaagtcgacaatgccttgcaatccgggaatagccaggaaagc
gtgactgaacaggacagcaaggattcgacctacagtctgagcagtaccttaaccttgtcgaaagcggattacgagaaacacaaggtctatgcctgtgaagtcacgcaTCAAGGCCTGTCATCGCCTGTTACTAAATCATTTAATAGAGGAGAATGTTAAATGAAGTATCTGTTGCCGACTGCTGCAGCGGGACTGCTGCTGTTAGCGGCACAACCGGCGATGGCGgaagtgcagcttgtggagtctggaggtggcttagtccagccaggtggttccctgcgcttgtcctgtgcagcgagcgggtatgtAttcacagattatggcatgaactgggttcggcaagcaccaggcaaaggcctcgaatggatggggtggatcaacacgtatattggggaaccgatttatgcggatagcgtcaaaggtcgcttcacgttcagtctggataccagcaaatcaaccgcgtatctccagatgaatagcctccgtgctgaagatactgccgtgtactactgtgcgcgtggttatcgcagttatgcgatggattactggggccaaggcaccttagtcaccgttagttctgcctccaccaaaggcccatcagtgtttccgctggccccttcgtctaaatcgacgagtggtggcacagccgcactgggatgcctggtcaaagactactttcccgaacctgtaaccgtaagctggaatagtggtgctttgacctcaggcgtgcatacgtttccggctgtcctgcagtcatccggtctgtactcgctttcgagcgttgttactgtaccctctagctccctgggcacccagacgtacatctgcaatgtgaaccataagccgtcgaacaccaaagtggacaagaaagttgagccgaaaagctgcgacaaaacgcacacatgtgccgccTAATAAaagctt.
【0137】
例3-組換えタンパク質-セルトリズマブ
発現ベクターKTXHIS-Cert-PelB1-LC-PelB2-HCによって発現されるセルトリズマブの軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号3の配列を含む:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQNVGTNVAWYQQKPGKAPKALIYSASFLYSGVPYRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNIYPLTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC.
発現ベクターKTXHIS-cert-PelB1-LC-PelB2-HCによって発現されるセルトリズマブの重鎖のアミノ酸配列は、配列番号4の配列を含む:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYVFTDYGMNWVRQAPGKGLEWMGWINTYIGEPIYADSVKGRFTFSLDTSKSTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARGYRSYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCAA.
更に、得られたPelBシグナルペプチドは、配列番号3[6]:MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMAのアミノ酸配列を含む。
例4-細胞バンキング
XB166をKTXHIS-Cert-Pelb1-LC-Pelb2-HCを用いて形質転換した。
【0138】
単一のコロニーを摘出し、定義されたバイオリアクター規定培地(Defined Bioreactor Medium:DBM)内で一晩増殖させることにより、RCBを調製した。翌日、20%(最終濃度)のグリセロールを無菌的に添加し、培養物を分注して、-80℃で保管した。
【0139】
RCBの製造において使用される全ての材料は、非動物及び非ヒト由来である。
【0140】
例5-TIRライブラリ選択及び進化したTIRの単離
US10696963及びMirzadehら2015年[11]において開示され、本例において簡潔に記載されている方法を利用することによって宿主細胞のリボソームとより適合性の高いTIRを選択するために合成進化を使用した(類似のTIRの合成的進化については、併せてWO21158163を参照)。TIRライブラリは、ATG開始コドンのすぐ上流の6ヌクレオチドが完全にランダム化され、ATG開始コドンのすぐ下流の6ヌクレオチドが同義コドンの変更のみを用いてランダム化されることを意図した設計によって作成された。各TIRライブラリは理論上、異なるTIRを有する18,000を超える発現プラスミドを含む。この実験において、次にβ-ラクタマーゼに融合された発現カセットPelBss-セルトリズマブ-LC-PelBss-セルトリズマブ-HC(「ss」はシグナル配列の略称である)を含む発現プラスミドを、記載されたTIRライブラリ生成に供した。別個の実験において、各セルトリズマブ鎖について、TIRライブラリを細菌に形質転換し、固定量のラムノース及び漸増濃度のアンピシリンを含むLB寒天プレートにプレーティングした(図4)。高濃度のアンピシリンに耐性を示した、又は未進化の発現カセットプレート(図4における下部のパネル/列)からの対応するコロニーに比べて視覚的により大きかったTIRライブラリープレート(図4における上部パネル/列)からのコロニーを単離し、TIRの塩基配列を決定した。次に、同定されたTIR(すなわち、合成的に進化させたTIR)を、より大きな発酵スケールでのセルトリズマブ発現に対するそれらの効果を査定するために、β-ラクタマーゼを欠いたプラスミドにバックエンジニアリングした。
【0141】
上記の合成進化法を用いることにより得られたTIRの具体例は、本発明においてTIR-LCと称され、配列番号20を有し、このTIR-LCはセルトリズマブの軽鎖の発現を制御する。配列番号20のTIR-LCは、例10において論述されたE111発現ベクターに含まれるTIRである。
【0142】
例6-DASbox(登録商標)発酵槽(すなわち、DASbox(登録商標)Mini Bioreactor Systems)での20時間の誘導発現後における培地画分のウェスタンブロット解析。
【0143】
セルトリズマブを、以下を用いることにより発現させた:
i.セルトリズマブの重鎖のヌクレオチド配列の上流にある(配列番号19の)野生型PelBシグナルペプチドヌクレオチド配列のコドン最適化バージョンを含む、D36と称される発現ベクター、及び
ii.発現ベクターE81、E82及びE83であって、当該E81、E82及びE83発現ベクターは、セルトリズマブ重鎖発現の制御に関与するTIR(すなわち、セルトリズマブ重鎖のヌクレオチド配列の上流のTIR)の合成的に操作された修飾をそれぞれ含むという点においてD36ベクターとは異なる、発現ベクターE81、E82及びE83。
【0144】
E83発現ベクターに含まれる(セルトリズマブ重鎖発現の制御のための)合成的に操作されたTIRは、配列番号21のヌクレオチド配列を有する。E81及びE82(及び、研究、開発、及び検査された他の発現ベクター)の重鎖の上流のTIRのヌクレオチド配列は、本発明において示されていない。重鎖ヌクレオチド配列の上流のTIRの合成操作の目的は、セルトリズマブの発現に対するヌクレオチド置換の効果を検査することであった。
【0145】
100μl容積の各セルトリズマブ含有サンプルを14000Xgで5分間にわたり遠心沈殿させ、その後上清を分離し、合計100μlになるまでHOを注ぎ足した。次に、当該サンプルを95℃で5分間にわたり煮沸する前に、それに100μlの2xサンプルバッファを添加し、その後、各ウェルに等量の容積をロードして、12%のSDS-PAGEによって分離した。タンパク質レベルは、セルトリズマブに対する抗血清を用いた免疫ブロット法によって可視化された。結果は、左から右に、D36、E81、E82及びE83発現ベクターを示す図5に示されている通りである。
【0146】
図5におけるウェスタンブロットで示されている通り、E83発現ベクターは培地画分において最高レベルのセルトリズマブ(図においてフラグメント抗体Fab'として示されている)をもたらした。また、サンプル中にはFab'二量体及び遊離軽鎖(light chain:LC)及び重鎖(heavy chain:HC)が存在した。
【0147】
例7-DASbox(登録商標)発酵槽における20時間にわたる誘導発現後の総(培地及び細胞)画分のウェスタンブロット解析
セルトリズマブは、D36、E81、E82、E83発現ベクターを用いることにより発現された。
【0148】
次に、5μl容積の各サンプルを95℃で5分間にわたり煮沸する前に、それを100μlの2xサンプルバッファに添加し、各ウェルに等量の容積をロードして、12%のSDS-PAGEによって分離した。タンパク質レベルは、セルトリズマブに対する抗血清を用いた免疫ブロット法によって可視化された。結果は、左から右に、D36、E81、E82及びE83発現ベクターを示す図6に示されている通りである。
【0149】
図6におけるウェスタンブロットに示されている通り、E83発現ベクター(セルトリズマブ重鎖発現の制御のために合成的に進化させたTIRを含む)は、図においてフラグメント抗体Fab'として示されている通り、最高レベルのセルトリズマブをもたらした。
【0150】
例8-NanoDrop(登録商標)及びAKTAクロマトグラフィ
セルトリズマブは、XB17宿主細胞(大腸菌W3110 rhaBfs)を用いることにより、(i)未進化のTIR、及び、セルトリズマブの軽鎖及び重鎖についてのヌクレオチド配列の各々の上流にPelBシグナルペプチドについての野生型ヌクレオチド配列を有するD37発現ベクター、及び(ii)セルトリズマブ重鎖発現の制御のために合成的に操作されたTIRを含む発現ベクターE83、を用いることにより発現された。
【0151】
DASbox(登録商標)発酵槽における20時間にわたる発現の後、発現系XB102及びXB62からの凍結清澄化ライセートを用いてセルトリズマブ精製動作を実施した。上記清澄化ライセートを、(1)約800~900バール(888atm)で3継代にわたる均質化、(2)遠心分離、及び(3)0.45PES(ポリエーテルスルホン)フィルタを用いた上清の濾過、によって調製した。より具体的には、各精製動作について、9.5mLの清澄化ライセートをAKTAクロマトグラフィ系に連結されたCaptureSelect(登録商標)CH1-XLカラム(CH1ドメインについての選択性を有するアフィニティー樹脂)にロードし、アセンブルされたセルトリズマブの大部分を含む28mLの溶出相を各動作から収集した。
【0152】
収集した溶出プール内のタンパク質濃度を、280nmの波長で、消衰係数を1.6として設定したNanoDrop(登録商標)微容量UV-VIS分光光度計を用いることにより測定した(その結果については、図7の「Nanodrop」というタイトルの列を参照)。次に、溶出プール内のタンパク質の総量は、28mLの溶出に測定された濃度を乗じることにより計算され得る。次に、収集した溶出プール内のタンパク質の総量をカラムにロードされた容積サンプルで割り、清澄化ライセート中の標的タンパク質の収率を計算し、これを2つのバッチ間で比較した。
【0153】
加えて、消衰係数を1.6として設定した(AKTA系の)Unicorn内部評価ソフトウェアを用いることにより、溶出相及びストライプ相全体を通じたタンパク質の量を計算することによっても、2度の動作を評価した(その結果については、図7の「AKTA」というタイトルの列を参照)。カラム上での精製に先立つ清澄化中に失われる採取物中の細胞塊の容積に起因して、力価値は収率値の2/3である。
【0154】
図7において要約されたNanoDrop(登録商標)及びAKTA解析の両方からの結果は、(セルトリズマブ重鎖発現の制御のために)合成的に操作されたTIRを含む発現ベクターE83を有する発現系XB102が、(セルトリズマブ重鎖発現の制御のために合成的に操作されたTIRを欠く発現ベクターD37と比較した場合に)セルトリズマブの最高の収率及び力価をもたらすことを明確に示している。
【0155】
例9-宿主細胞XB17及びXB166におけるセルトリズマブ発現の比較
(セルトリズマブ重鎖発現の制御のために合成的に操作されたTIRを含む)E83発現ベクターを以下の宿主細胞内で用いた場合のセルトリズマブ発現レベルを解析した:
- XB17(大腸菌W3110 rhaBfs)、及び
- XB166(E.coli W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148R)。
【0156】
DASbox(登録商標)発酵槽内での20時間にわたる誘導発現の後に、1mlのサンプルを、13500rpmで20分間にわたり4℃で遠心分離した。ペレット及び培地画分を分離し、ペレットを0.5mlの100mMトリスHCl/10mM EDTA、pH7.4で再懸濁した。次に、再懸濁液を完全にボルテックスした後、60℃で16時間にわたりインキュベートした。次に、ペレットサンプルを、13500rpmで20分間にわたり4℃で遠心分離することにより清澄化した後、上清(抽出したペリプラズムサンプル)を収集し、DNase(最終濃度0.02mg/ml)で処理した。サンプルを低タンパク質結合シリンジフィルタ(0.2μm、Spartan13、GE Healthcare)で濾過した。ペリプラズム抽出後、サンプルを14000Xgで5分間にわたり遠心分離し、その後、20μlの上清をアフィニティカラム(CH1-XL)-HPLCを用いて直接解析した。タンパク質濃度を、既知の濃度を有する精製されたセルトリズマブを用いた標準曲線と比較した。
【0157】
図8において示されている結果は、XB166宿主細胞の使用が、宿主細胞XB17における発現と比較した場合、セルトリズマブのより高い相対収率をもたらすことを示している。
【0158】
例10-E83及びE111発現ベクターを用いることによる宿主細胞XB166におけるセルトリズマブ発現の比較
E83発現ベクターの上記の有利な効果(例6~9を参照)に起因して、(例5に記載の一般的な方法に従い)E83発現ベクターを鋳型として使用し、軽鎖TIRを合成的に進化させた。得られた最高技術を有するベクターは、配列番号20を有する軽鎖の上流にある合成的に進化させたTIR(TIR-LC)を含んでいた。上記ベクターは、本発明においてE111と称される。
【0159】
換言すれば、E111発現ベクターは、以下を含む:
- セルトリズマブの軽鎖の発現を制御するための配列番号20の合成的に進化させたTIR(TIR-LC);及び
- セルトリズマブの重鎖の発現を制御するための配列番号21の合成的に操作されたTIR(TIR-HC)。この例は例9と類似しているが、セルトリズマブ発現の差異を代わりに以下の間で比較した点において異なる:
- (セルトリズマブの重鎖のみを制御するための配列番号No.21の合成的に操作されたTIRを有する)E83発現ベクターを含むXB166宿主細胞、ここで宿主細胞及びベクターの組み合わせは、図9においてXB174と称される;及び
- セルトリズマブの軽鎖及び重鎖の発現をそれぞれ制御するための配列番号20及び配列番号No.21の合成的に構築されたTIRを有する発現ベクターE111を含むXB166宿主細胞。
【0160】
図9において示されている結果は、発現ベクターE111の使用が、E83と比較した場合、セルトリズマブのより高い相対収率をもたらすことを示している。換言すれば、E111発現ベクターは、以下を含む:
- 重鎖を制御するために合成的に操作されたTIR;及び
- 軽鎖発現を制御するために合成的に進化させたTIRを有しないE83と比較した場合にセルトリズマブのより高い収率をもたらす、軽鎖を制御するために合成的に進化させたTIR。
【0161】
参考文献
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【0162】
[項目1]
配列番号No.20及び21のヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つ、ここで配列番号20及び21のヌクレオチド配列はTIR配列である;及び
シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;
ここで配列番号No.20及び21のヌクレオチド配列は、前記シグナルペプチドをコードする配列のうちの少なくとも最初の9ヌクレオチドを含む
を備える、組換えタンパク質を発現させるためのDNA構築物。
[項目2]
前記TIR配列は、mRNA転写におけるタンパク質翻訳開始部位として機能するRNAモチーフに転写される、項目1に記載のDNA構築物。
[項目3]
前記DNA構築物が配列番号No.20のヌクレオチド配列のTIRを含む場合、シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は配列番号No.18のヌクレオチド配列を含む、項目1又は2に記載のDNA構築物。
[項目4]
前記DNA構築物が配列番号No.21のヌクレオチド配列のTIRを含む場合、シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は配列番号No.19のヌクレオチド配列を含む、項目1~3のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目5]
前記DNA構築物は配列番号No.20及び配列番号No.21の前記ヌクレオチド配列を含み、シグナルペプチドをコードする2つのヌクレオチド配列を含み、シグナルペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列は、配列番号No.18の前記ヌクレオチド配列を含み、シグナルペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列は、配列番号No.19の前記ヌクレオチド配列を含み、配列番号No.20の前記ヌクレオチド配列は、少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含み、配列番号No.18の前記ヌクレオチド配列の少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含み、配列番号No.21の前記ヌクレオチド配列は配列番号No.19の前記ヌクレオチド配列の少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含む、項目1~4のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目6]
前記組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物であって、前記組換えタンパク質は好ましくは抗体であり、前記抗体は最も好ましくはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体又は前記抗体のうちのいずれかのフラグメントである、項目1~5のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目7]
シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、前記組換えタンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列に作用可能に連結される、項目1~6のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目8]
前記組換えタンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列は;
抗体の軽鎖をコードする第1の核酸配列;及び
抗体の重鎖をコードする第2の核酸配列
を含む、項目1~7のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目9]
シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は:
抗体の前記軽鎖をコードする第1のヌクレオチド配列;及び/又は
抗体の前記重鎖をコードする第2のヌクレオチド配列
に作用可能に連結される、項目8に記載のDNA構築物。
[項目10]
シャイン・ダルガーノ配列を含むDNA構築物であって、好ましくは、前記シャイン・ダルガーノ配列はシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列のATG開始コドンより上流に位置し、より好ましくは、前記シャイン・ダルガーノ配列は抗体の前記軽鎖に作用可能に連結されたシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列の前記ATG開始コドンより上流に位置する、項目1~9のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目11]
抗体の前記軽鎖をコードする前記第1のヌクレオチド配列は、配列番号No.3のアミノ酸配列をコードする、項目8~10のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目12]
抗体の前記重鎖をコードする前記第2のヌクレオチド配列は、配列番号No.4のアミノ酸配列をコードする、項目8~11のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目13]
抗体の前記軽鎖及び重鎖をそれぞれコードする前記第1及び第2のヌクレオチド配列は、配列番号No.3及び配列番号No.4の前記アミノ酸配列をそれぞれコードする、項目8~12のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目14]
抗体の前記軽鎖をコードする前記第1のヌクレオチド配列は、配列番号No.5のヌクレオチド配列を含む、項目8~13のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目15]
抗体の前記重鎖をコードする前記第2のヌクレオチド配列は、配列番号No.6のヌクレオチド配列を含む、項目8~14のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目16]
抗体の前記軽鎖及び重鎖をそれぞれコードする前記第1及び第2のヌクレオチド配列は、配列番号No.5及び配列番号No.6のヌクレオチド配列をそれぞれ含む、項目8~15のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目17]
項目1~16のいずれか一項に記載のDNA構築物を含む発現ベクター。
[項目18]
細菌細胞、より好ましくは大腸菌(E.coli)であり、最も好ましくはラムノース代謝を無効にする突然変異又は修飾を含む染色体を有する大腸菌である、項目1~16のいずれか一項に記載のDNA構築物を含む、又は項目17に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
[項目19]
(i)RhaBを不活性化するrhaB遺伝子の前記ヌクレオチド配列における突然変異を含む染色体、又は(ii)RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列が欠失した染色体、のいずれかを含む、項目18に記載の宿主細胞。
[項目20]
好ましくはRhaBをコードする前記ヌクレオチド配列においてフレームシフト突然変異を含む染色体を有する大腸菌W3110である、項目18又は19に記載の宿主細胞。
[項目21]
a.RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列におけるフレームシフト突然変異;
b.degP欠失;
c.prc欠失;及び
d.sprW148R突然変異
を含む染色体を有する、項目18~20のいずれか一項に記載の宿主細胞。
[項目22]
大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148Rである、項目18~21のいずれか一項に記載の宿主細胞。
[項目23]
項目1~16のいずれか一項に記載のDNA構築物によって発現されるRNA。
[項目24]
項目18~22のいずれか一項に記載の宿主細胞の使用を含む、組換えタンパク質を発現させる方法。
[項目25]
前記宿主細胞から前記組換えタンパク質を回収する段階を更に含み;任意選択的に、前記回収された組換えタンパク質を、好ましくは1つ又は複数のクロマトグラフィ段階によって精製する1つ又は複数の段階を更に含む、項目24に記載の方法。
[項目26]
項目24又は25に記載の方法によって得られる組換えタンパク質。
[項目27]
セルトリズマブは、(i)配列番号3の前記アミノ酸配列を含む軽鎖、及び(ii)配列番号4の前記アミノ酸配列を含む重鎖を有し、
前記DNA構築物は、セルトリズマブをコードするヌクレオチド配列を含み、前記DNA構築物は、セルトリズマブの前記軽鎖及び/又はセルトリズマブの前記重鎖をコードする前記ヌクレオチド配列に転写方向において作用可能に連結されたシグナルペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を更に含み、
前記DNA構築物は:
rhaBADプロモーター、
RhaR転写活性化因子、
RhaS転写活性化因子、
抗生物質耐性マーカー、
少なくとも1つのターミネーター、及び
複製起点
をコードするヌクレオチド配列を更に含む、宿主細胞内でセルトリズマブを発現させるためのDNA構築物。
[項目28]
前記抗生物質耐性マーカーをコードする前記ヌクレオチド配列に作用可能に連結されたプロモーターをコードするヌクレオチド配列を更に含む、項目27に記載のDNA構築物。
[項目29]
前記少なくとも1つのターミネーターは2つのターミネーターを有し、好ましくは、前記ターミネーターはrrnB T1ターミネーター及びrrnB T2ターミネーターを含む、項目28に記載のDNA構築物。
[項目30]
前記複製起点はpMB1複製起点を含む、項目29に記載のDNA構築物。
[項目31]
前記抗生物質耐性マーカーはカナマイシン耐性マーカーであり、好ましくは配列番号12の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むカナマイシン耐性マーカーである;
前記抗生物質耐性マーカーをコードする前記ヌクレオチド配列に作用可能に連結された前記プロモーターは、AmpRプロモーター、好ましくは配列番号13の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むAmpRプロモーターである;
前記rrnB T1ターミネーターは、配列番号14のヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む;
前記rrnB T2ターミネーターは、配列番号15の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む;及び/又は
前記pMB1複製起点は、配列番号16の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、
項目30に記載のDNA構築物。
[項目32]
前記抗生物質耐性マーカーは、配列番号12の前記ヌクレオチド配列を含むカナマイシン耐性マーカーである;
前記抗生物質耐性マーカーをコードする前記ヌクレオチド配列に作用可能に連結された前記プロモーターは、配列番号13の前記ヌクレオチド配列を含むAmpRプロモーターである;
前記rrnB T1ターミネーターは、配列番号14の前記ヌクレオチド配列を含む;
前記rrnB T2ターミネーターは、配列番号15の前記ヌクレオチド配列を含む;及び/又は
前記pMB1複製起点は配列番号16の前記ヌクレオチド配列を含む、
項目31に記載のDNA構築物。
[項目33]
前記rhaBADプロモーターは、配列番号8の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号8の前記ヌクレオチド配列を含む;
前記RhaR転写活性化因子は、配列番号9の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号9の前記ヌクレオチド配列を含む;
前記RhaS転写活性化因子は、配列番号11の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号11の前記ヌクレオチド配列を含む;
前記抗生物質耐性マーカーは、配列番号12の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号12の前記ヌクレオチド配列を含むカナマイシン耐性マーカーである;
前記AmpRプロモーターは、配列番号13の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号13の前記ヌクレオチド配列を含む;
前記rrnB T1ターミネーターは、配列番号14の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号14の前記ヌクレオチド配列を含む;
前記rrnB T2ターミネーターは、配列番号15の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましくは配列番号15の前記ヌクレオチド配列を含む;及び
前記pMB1複製起点は、配列番号16の前記ヌクレオチド配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、好ましく配列番号16の前記ヌクレオチド配列を含む、
項目31又は32に記載のDNA構築物。
[項目34]
前記組換えタンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列は、前記rhaBADプロモーターに作用可能に連結されている、項目27~33のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目35]
セルトリズマブをコードする前記ヌクレオチド配列は、(i)配列番号5の前記配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むセルトリズマブの前記軽鎖をコードするヌクレオチド配列、及び/又は(ii)配列番号6の前記配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むセルトリズマブの前記重鎖をコードするヌクレオチド配列を有する、項目27~34のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目36]
セルトリズマブをコードする前記ヌクレオチド配列は、(i)配列番号5の前記配列を含むセルトリズマブの前記軽鎖をコードするヌクレオチド配列、及び/又は(ii)配列番号6の前記配列を含むセルトリズマブの前記重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、項目27~34のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目37]
シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号5及び配列番号6のヌクレオチド配列のいずれか一方又は両方に転写方向に作用可能に連結される、項目36に記載のDNA構築物。
[項目38]
前記シグナルペプチドは、MalE、OmpA、PhoA、DsbA及びPelbからなる群から選択され、好ましくは、前記シグナルペプチドはPelBである、項目27~37のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目39]
配列番号No.20及び21の前記ヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つを含むDNA構築物であって、配列番号20及び21のヌクレオチド配列はTIR配列であり、配列番号No.20及び21のヌクレオチド配列は、前記シグナルペプチドをコードする配列の少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含む、項目27~38のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目40]
前記シグナルペプチドはPelBであり、前記軽鎖に前記転写方向に作用可能に連結された前記PelBシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号18の前記配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、項目27~39のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目41]
前記軽鎖に前記転写方向に作用可能に連結された前記PelBシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号18の前記配列を含む、項目40に記載のDNA構築物。
[項目42]
配列番号No.20のヌクレオチド配列のTIRを含むDNA構築物であって、配列番号No.20の前記ヌクレオチド配列は、前記PelBシグナルペプチドをコードする配列番号18の前記ヌクレオチド配列の少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含む、項目40又は41に記載のDNA構築物。
[項目43]
前記シグナルペプチドはPelBであり、前記重鎖に前記転写方向に作用可能に連結された前記PelBシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号19の前記配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、項目27~42のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目44]
前記重鎖に前記転写方向に作用可能に連結された前記PelBシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号19の配列を含む、項目43に記載のDNA構築物。
[項目45]
配列番号No.21のヌクレオチド配列のTIRを含むDNA構築物であって、配列番号No.21の前記ヌクレオチド配列は、前記PelBシグナルペプチドをコードする配列番号19の前記ヌクレオチド配列の少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含む、項目43又は44に記載のDNA構築物。
[項目46]
配列番号17の前記配列又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含み、好ましくは配列番号17の配列を含む、項目27~45のいずれか一項に記載のDNA構築物。
[項目47]
項目27~46のいずれか一項に記載のDNA構築物を含む発現ベクター。
[項目48]
細菌宿主細胞、好ましくは大腸菌(E.coli)、最も好ましくはラムノース代謝を無効にする突然変異又は修飾を含む染色体を有する大腸菌である、項目27~46のいずれかに記載のDNA構築物、又は項目47に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
[項目49]
(i)RhaBを不活性化する前記rhaB遺伝子の前記ヌクレオチド配列における突然変異を含む染色体、又は(ii)RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列が欠失した染色体のいずれかを含む、項目48に記載の宿主細胞。
[項目50]
大腸菌W3110細胞であり、好ましくはRhaBをコードする前記ヌクレオチド配列においてフレームシフト突然変異を含む染色体を有する、項目48又は49に記載の宿主細胞。
[項目51]
a.RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列におけるフレームシフト突然変異;
b.degP欠失;
c.prc欠失;及び
d.sprW148R突然変異
を含む染色体を有する、項目22~24のいずれか一項に記載の宿主細胞。
[項目52]
大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148Rである、項目22~25のいずれか一項に記載の宿主細胞。
[項目53]
項目27~46のいずれか一項に記載のDNA構築物によって発現されるRNA。
[項目54]
項目48~52のいずれか一項に記載の宿主細胞の使用を含む、セルトリズマブを発現させる方法。
[項目55]
前記宿主細胞から前記セルトリズマブを回収する段階を更に含み;任意選択的に、前記回収されたセルトリズマブを、好ましくは1つ又は複数のクロマトグラフィ段階によって精製する1つ又は複数の段階を更に含む、項目54に記載の方法。
[項目56]
項目54又は55に記載の方法によって得られるセルトリズマブ。
[項目57]
項目54又は55に記載の方法によって得られるセルトリズマブバイオシミラー。
[項目58]
セルトリズマブバイオシミラー又はその誘導体であって、好ましくは、前記誘導体はポリエチレングリコール部分を含み、より好ましくは、前記誘導体は約40kDaのポリエチレングリコール部分を含む、薬剤としての使用のための項目57に記載のセルトリズマブバイオシミラー又はその誘導体。
[項目59]
クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎及び強直性脊椎炎の治療における使用のための、項目58に記載のセルトリズマブバイオシミラー。
[項目60]
前記PelBシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列を含み、前記PelBシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号No.18及び19の前記ヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つを含む、シグナルペプチドを発現させるためのDNA構築物。
[項目61]
配列番号No.18及び19の前記ヌクレオチド配列の両方を含む、項目60に記載のDNA構築物。
[項目62]
配列番号No.18の前記ヌクレオチド配列を含む、項目60に記載のDNA構築物。
[項目63]
配列番号No.19の前記ヌクレオチド配列を含む、項目60に記載のDNA構築物。
[項目64]
項目60~63のいずれか一項に記載のDNA構築物を含む発現ベクター。
[項目65]
好ましくは細菌細胞、より好ましくは大腸菌(E.coli)であり、最も好ましくはラムノース代謝を無効にする突然変異又は修飾を含む染色体を有する大腸菌である、項目60~63のいずれか一項に記載のDNA構築物、又は項目64に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
[項目66]
(i)RhaBを不活性化する前記rhaB遺伝子の前記ヌクレオチド配列における突然変異を含む染色体、又は(ii)RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列が欠失した染色体のいずれかを含む、項目65に記載の宿主細胞。
[項目67]
大腸菌W3110であり、好ましくはRhaBをコードする前記ヌクレオチド配列においてフレームシフト突然変異を含む染色体を有する、項目65又は66に記載の宿主細胞。
[項目68]
a.RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列におけるフレームシフト突然変異;
b.degP欠失;
c.prc欠失;及び
d.sprW148R突然変異
を含む染色体を有する、項目65~67のいずれか一項に記載の宿主細胞。
[項目69]
大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148Rである、項目65~68のいずれか一項に記載の宿主細胞。
[項目70]
項目60~63のいずれか一項に記載のDNA構築物によって発現されるRNA。
[項目71]
項目65~69のいずれか一項に記載の宿主細胞の使用を含む、シグナルペプチドを発現させる方法。
[項目72]
配列番号No.7のアミノ酸配列を含む、項目71に記載の方法によって得られるPelBシグナルペプチド。
[項目73]
アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有し、前記アミノ酸配列は:
d.セルトリズマブについての前記アミノ酸配列;
e.セルトリズマブの軽鎖アミノ酸配列のN末端に融合した配列番号No.7のアミノ酸配列の第1のシグナルペプチド;及び
f.セルトリズマブの重鎖アミノ酸配列のN末端に融合した配列番号No.7のアミノ酸配列の第2のシグナルペプチド
を含む、DNA構築物。
[項目74]
前記第1のシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号No.18のヌクレオチド配列を含む、項目73に記載のDNA構築物。
[項目75]
前記第2のシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、配列番号No.19のヌクレオチド配列を含む、項目73に記載のDNA構築物。
[項目76]
項目73~75のいずれか一項に記載のDNA構築物を含む発現ベクター。
[項目77]
好ましくは細菌細胞、より好ましくは大腸菌(E.coli)であり、最も好ましくはラムノース代謝を無効にする突然変異又は修飾を含む染色体を有する大腸菌である、項目73~75のいずれか一項に記載のDNA構築物、又は項目76に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
[項目78]
(i)RhaBを不活性化する前記rhaB遺伝子の前記ヌクレオチド配列における突然変異を含む染色体、又は(ii)RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列が欠失した染色体のいずれかを含む、項目77に記載の宿主細胞。
[項目79]
大腸菌W3110であり、好ましくはRhaBをコードする前記ヌクレオチド配列においてフレームシフト突然変異を含む染色体を有する、項目77又は78に記載の宿主細胞。
[項目80]
a.RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列におけるフレームシフト突然変異;
b.degP欠失;
c.prc欠失;及び
d.sprW148R突然変異
を含む染色体を有する、項目77~79のいずれか一項に記載の宿主細胞。
[項目81]
大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148Rである、項目77~80のいずれか一項に記載の宿主細胞。
[項目82]
項目73~75のいずれか一項に記載のDNA構築物によって発現されるRNA。
[項目83]
項目77~81のいずれか一項に記載の宿主細胞の使用を含む、組換えタンパク質を発現させる方法。
[項目84]
前記細菌宿主細胞から前記組換えタンパク質を回収する段階を更に含み;任意選択的に、前記回収された組換えタンパク質を、好ましくは1つ又は複数のクロマトグラフィ段階によって精製する1つ又は複数の段階を更に含む、項目83に記載の方法。
[項目85]
項目83又は84に記載の方法によって得られるセルトリズマブ。
[項目86]
項目83又は84による方法によって得られるセルトリズマブバイオシミラー。
[項目87]
セルトリズマブバイオシミラー又はその誘導体であって、好ましくは、前記誘導体はポリエチレングリコール部分を含み、より好ましくは、前記誘導体は約40kDaのポリエチレングリコール部分を含む、薬剤としての使用のための、項目86に記載のセルトリズマブバイオシミラー又はその誘導体。
[項目88]
クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎及び強直性脊椎炎の治療における使用のための、項目86又は87に記載のセルトリズマブバイオシミラー。
[項目89]
a.ラムノース代謝を無効にする、RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列における突然変異;
b.(i)DegPプロテアーゼの発現及び/又は(ii)DegPプロテアーゼの活性を無効にする、前記degP遺伝子における突然変異;
c.Prcプロテアーゼの発現及び/又はPrcプロテアーゼの活性を無効にする、prc遺伝子における突然変異;及び
d.前記spr遺伝子における突然変異
を含む染色体を特徴とする、組換えタンパク質の発現のために好適な宿主細胞。
[項目90]
突然変異は、フレームシフト、欠失、置換及び挿入からなる群から選択される、項目89に記載の宿主細胞。
[項目91]
ラムノース代謝を無効にする、RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列における前記突然変異は、RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列におけるフレームシフト突然変異である、項目89又は90に記載の宿主細胞。
[項目92]
前記degP遺伝子における前記突然変異はdegP欠失である、項目89~91のいずれか一項に記載の宿主細胞。
[項目93]
前記prc遺伝子における前記突然変異はprc欠失である、項目89~92のいずれか一項に記載の宿主細胞。
[項目94]
前記spr遺伝子における上記突然変異は、148位のトリプトファンがアルギニンに変化することをもたらす前記spr遺伝子における置換を特徴とするsprW148R突然変異である、項目89~93のいずれか一項に記載の宿主細胞。
[項目95]
a.ラムノース代謝を無効にする、RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列における突然変異は、RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列におけるフレームシフト突然変異である;
b.degP欠失;
c.prc欠失;及び
d.sprW148R突然変異
を含む、項目89~94のいずれか一項に記載の宿主細胞。
[項目96]
前記宿主細胞は、細菌細胞、より好ましくは大腸菌(E.coli)であり、最も好ましくは大腸菌W3110である、項目89~95のいずれか一項に記載の宿主。
[項目97]
大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148Rである、項目89~96のいずれか一項に記載の宿主細胞。
[項目98]
前記宿主細胞は組換えタンパク質をコードするDNA構築物を用いて形質転換され、前記組換えタンパク質は好ましくは抗体であり、前記抗体は最も好ましくはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体又は前記抗体のフラグメントである、項目89~97のいずれか一項に記載の宿主細胞。
[項目99]
組換えタンパク質をコードするDNA構築物を用いて、項目89~98のいずれか一項に記載の宿主細胞を形質転換させる;
得られた形質転換された宿主細胞をラムノースに曝露し、それにより前記組換えタンパク質の発現を誘導する;及び
前記宿主細胞から前記組換えタンパク質を回収する
段階を有し、任意選択的に、前記回収された組換えタンパク質を、好ましくは1つ又は複数のクロマトグラフィ段階によって精製する1つ又は複数の段階を更に有する、組換えタンパク質を発現させる方法。
[項目100]
前記組換えタンパク質は抗体であり、前記抗体は好ましくはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体又は前記抗体のフラグメントであり、より好ましくはFab'フラグメントであり、最も好ましくはセルトリズマブである、項目99に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2024534603000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号20及び21のヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つであって、ここで配列番号20及び21のヌクレオチド配列はTIR配列である、配列番号20及び21のヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つ;及び
シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;を備え、
ここで配列番号20及び21のヌクレオチド配列は、前記シグナルペプチドをコードする配列のうちの少なくとも最初の9ヌクレオチドを含む、
組換えタンパク質を発現させるためのDNA構築物。
【請求項2】
前記TIR配列は、mRNA転写におけるタンパク質翻訳開始部位として機能するRNAモチーフに転写される、請求項1に記載のDNA構築物。
【請求項3】
前記DNA構築物が配列番号20のヌクレオチド配列のTIRを含む場合、シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は配列番号18のヌクレオチド配列を含む、請求項に記載のDNA構築物。
【請求項4】
前記DNA構築物が配列番号21のヌクレオチド配列のTIRを含む場合、シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は配列番号19のヌクレオチド配列を含む、請求項に記載のDNA構築物。
【請求項5】
前記DNA構築物は配列番号20及び配列番号21の前記ヌクレオチド配列を含み、シグナルペプチドをコードする2つのヌクレオチド配列を含み、シグナルペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列は、配列番号18の前記ヌクレオチド配列を含み、シグナルペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列は、配列番号19の前記ヌクレオチド配列を含み、配列番号20の前記ヌクレオチド配列は、少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含み、配列番号18の前記ヌクレオチド配列の少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含み、配列番号21の前記ヌクレオチド配列は配列番号19の前記ヌクレオチド配列の少なくとも前記最初の9ヌクレオチドを含む、請求項に記載のDNA構築物。
【請求項6】
前記組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むDNA構築物であって、前記組換えタンパク質は好ましくは抗体であり、前記抗体は最も好ましくはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体又は前記抗体のうちのいずれかのフラグメントである、請求項に記載のDNA構築物。
【請求項7】
シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、前記組換えタンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列に作用可能に連結される、請求項に記載のDNA構築物。
【請求項8】
前記組換えタンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列は;
抗体の軽鎖をコードする第1の核酸配列;及び
抗体の重鎖をコードする第2の核酸配列
を含む、請求項に記載のDNA構築物。
【請求項9】
シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は:
抗体の前記軽鎖をコードする第1のヌクレオチド配列;及び/又は
抗体の前記重鎖をコードする第2のヌクレオチド配列
に作用可能に連結される、請求項8に記載のDNA構築物。
【請求項10】
シャイン・ダルガーノ配列を含むDNA構築物であって、好ましくは、前記シャイン・ダルガーノ配列はシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列のATG開始コドンより上流に位置し、より好ましくは、前記シャイン・ダルガーノ配列は抗体の軽鎖に作用可能に連結されたシグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列の前記ATG開始コドンより上流に位置する、請求項に記載のDNA構築物。
【請求項11】
抗体の前記軽鎖をコードする前記第1のヌクレオチド配列は、配列番号3のアミノ酸配列をコードする、請求項9に記載のDNA構築物。
【請求項12】
抗体の前記重鎖をコードする前記第2のヌクレオチド配列は、配列番号4のアミノ酸配列をコードする、請求項9に記載のDNA構築物。
【請求項13】
抗体の前記軽鎖及び重鎖をそれぞれコードする前記第1のヌクレオチド配列及び前記第2のヌクレオチド配列は、配列番号3及び配列番号4のアミノ酸配列をそれぞれコードする、請求項9に記載のDNA構築物。
【請求項14】
抗体の前記軽鎖をコードする前記第1のヌクレオチド配列は、配列番号5のヌクレオチド配列を含む、請求項9に記載のDNA構築物。
【請求項15】
抗体の前記重鎖をコードする前記第2のヌクレオチド配列は、配列番号6のヌクレオチド配列を含む、請求項9に記載のDNA構築物。
【請求項16】
抗体の前記軽鎖及び重鎖をそれぞれコードする前記第1のヌクレオチド配列及び前記第2のヌクレオチド配列は、配列番号5及び配列番号6のヌクレオチド配列をそれぞれ含む、請求項9に記載のDNA構築物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のDNA構築物を含む発現ベクター。
【請求項18】
細菌細胞、より好ましくは大腸菌(E.coli)であり、最も好ましくはラムノース代謝を無効にする突然変異又は修飾を含む染色体を有する大腸菌である、請求項1~16のいずれか一項に記載のDNA構築物を含む、又は請求項17に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項19】
(i)RhaBを不活性化するrhaB遺伝子の前記ヌクレオチド配列における突然変異を含む染色体、又は(ii)RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列が欠失した染色体、のいずれかを含む、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項20】
好ましくはRhaBをコードする前記ヌクレオチド配列においてフレームシフト突然変異を含む染色体を有する大腸菌W3110である、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項21】
a.RhaBをコードする前記ヌクレオチド配列におけるフレームシフト突然変異;
b.degP欠失;
c.prc欠失;及び
d.sprW148R突然変異
を含む染色体を有する、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項22】
大腸菌W3110 rhaBfsΔDegPΔprc sprW148Rである、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項23】
請求項に記載のDNA構築物によって発現されるRNA。
【請求項24】
請求項18に記載の宿主細胞の使用を含む、組換えタンパク質を発現させる方法。
【請求項25】
前記宿主細胞から前記組換えタンパク質を回収する段階を更に含み;任意選択的に、前記回収された組換えタンパク質を、好ましくは1つ又は複数のクロマトグラフィ段階によって精製する1つ又は複数の段階を更に含む、請求項24に記載の方法。
【国際調査報告】