(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】一酸化窒素を送達するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 16/12 20060101AFI20240912BHJP
A61M 16/20 20060101ALI20240912BHJP
A61M 15/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61M16/12
A61M16/20 J
A61M15/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518737
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 US2022076981
(87)【国際公開番号】W WO2023049873
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519309175
【氏名又は名称】サード ポール,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Third Pole, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】マイルズ,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ハイツラー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ホール,グレゴリー,ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】パテル,スウェタ
(72)【発明者】
【氏名】ショルツ,ウルフギャング
(57)【要約】
薬物送達システムは、空気の吸気流がハウジングに入るときに通過する入口を有する遠位端と、ユーザとインタフェースするように構成された患者インタフェースが取り付けられた近位端と、ハウジングの遠位端から近位端まで延在する吸気流通路とを有する、ハウジングを備える。一酸化窒素(NO)供給源は、ハウジング内に配置され、患者インタフェースにNO含有ガスを送達するように構成されている。二次的薬物供給源は、ハウジング内に配置され、患者インタフェースに二次的薬物を送達するように構成されている。コントローラは、制御スキームを使用して、NO含有ガスの量及び送達される二次的薬物の量を制御するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達システムであって、
ハウジングであって、空気の吸気流が前記ハウジングに入るときに通過する入口を有する遠位端と、ユーザとインタフェースするように構成された患者インタフェースが取り付けられた近位端と、前記ハウジングの前記遠位端から前記ハウジングの前記近位端まで延在する吸気流通路とを有する、ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された一酸化窒素(NO)供給源であって、前記NO供給源は、前記患者インタフェースにNO含有ガスを送達するように構成されている、一酸化窒素(NO)供給源と、
前記ハウジング内に配置された二次的薬物供給源であって、前記二次的薬物供給源は、前記患者インタフェースに二次的薬物を送達するように構成されている、二次的薬物供給源と、
制御スキームを使用して、前記NO供給源から送達されるNO含有ガスの量及び前記二次的薬物供給源から送達される前記二次的薬物の量を制御するように構成されたコントローラであって、前記制御スキームは、前記NO含有ガス、前記二次的薬物、前記吸気流通路、及びユーザからの1つ以上の入力のうちの少なくとも1つに関する1つ以上の入力を有し、前記コントローラは、前記制御スキームへの前記1つ以上の入力に関する情報を収集するように構成された1つ以上のセンサと通信するように構成されている、コントローラと
を備え、
前記1つ以上の入力のうちの少なくとも1つは、前記吸気流に関連する吸気イベントの検出に関する、薬物送達システム。
【請求項2】
前記ユーザは、前記患者インタフェースを通してガスを吸い込み、前記NO含有ガスと前記二次的薬物とを同時に吸入する、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項3】
前記NO含有ガスは、前記二次的薬物の取り込みを増大させるように構成されている、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項4】
NO含有ガスの投与量は、1ppm~80ppmの範囲内である、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項5】
NO含有ガスの投与量は、1ppm~1000ppmの範囲内である、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項6】
前記二次的薬物を加熱して前記二次的薬物を気化させるように構成された気化チャンバを更に備える、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項7】
二次的薬物を噴霧するように構成された噴霧チャンバを更に備える、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項8】
前記二次的薬物供給源からの二次的薬物の流量を制御するための、圧力調整器及び弁の1つ以上を更に備え、前記二次的薬物供給源は、加圧された容器の形態である、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記二次的薬物供給源から送達される前記二次的薬物の量を制御するように構成されている、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項10】
前記コントローラは、独立した第1の送達スケジュール及び第2の送達スケジュールを使用して、前記NO含有ガス及び前記二次的薬物を送達するように構成されている、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項11】
前記NO供給源は、圧縮ガスシリンダを備える、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項12】
前記NO供給源は、電気NO発生器を備える、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項13】
前記NO含有ガスは、N2O4を加熱してNO2ガスを作り、還元剤を用いて前記NO2ガスをNOに還元することから発生させられる、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項14】
前記NO含有ガスからNO2を除去するように構成されたスクラバ、及び前記NO含有ガスから汚染物質を除去するように構成された粒子フィルタの少なくとも一方を更に備える、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項15】
前記NO含有ガスは、前記NO供給源から前記患者インタフェースに直接送達される、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項16】
前記NO含有ガスは、前記NO供給源から前記吸気流通路を介して前記患者インタフェースに送達される、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項17】
前記二次的薬物は、前記二次的薬物供給源から前記患者インタフェースに直接送達される、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項18】
前記二次的薬物は、前記二次的薬物供給源から前記吸気流通路を介して前記患者インタフェースに直接送達される、請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項19】
薬物送達システムであって、
ハウジングであって、空気の吸気流が前記ハウジングに入るときに通過する入口を有する遠位端と、吸気流通路と、ユーザとインタフェースするように構成された患者インタフェースが取り付けられた近位端とを有する、ハウジングと、
前記ハウジング中に配置され、一対又は複数対の電極を中に有するプラズマチャンバ中で、前記プラズマチャンバを通る前記空気の吸気流の少なくとも一部をイオン化することによってNO含有ガスを発生させるように構成された、電気一酸化窒素(NO)発生器と、
前記ハウジング中に配置され、二次的薬物を提供するように構成された、二次的薬物供給源と、
制御スキームを使用して、前記電気NO発生器から送達されるNO含有ガスの量及び前記二次的薬物供給源からの前記二次的薬物の量を制御するように構成されたコントローラであって、前記制御スキームは、前記NO含有ガス、前記二次的薬物、前記空気の吸気流、及びユーザからの1つ以上の入力のうちの少なくとも1つに関する1つ以上の入力を有し、前記コントローラは、前記制御スキームへの前記1つ以上の入力に関する情報を収集するように構成された1つ以上のセンサと通信するように構成されている、コントローラと
を備える、薬物送達システム。
【請求項20】
前記ユーザは、前記患者インタフェースを通してガスを吸い込み、前記NO含有ガスと前記二次的薬物とを同時に吸入する、請求項19に記載の薬物送達システム。
【請求項21】
前記NO含有ガスは、前記二次的薬物の取り込みを増大させるように構成されている、請求項19に記載の薬物送達システム。
【請求項22】
薬物送達システムであって、
ハウジングであって、空気の吸気流が前記ハウジングに入るときに通過する入口を有する遠位端と、ユーザとインタフェースするように構成された患者インタフェースが取り付けられた近位端と、前記ハウジングの前記遠位端から前記ハウジングの前記近位端まで延在する吸気流通路とを有する、ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された一酸化窒素(NO)供給源であって、前記NO供給源は、NO含有ガスを送達するように構成されている、一酸化窒素(NO)供給源と、
前記ハウジング内に配置された二次的薬物供給源であって、前記二次的薬物供給源は、二次的薬物を送達するように構成されている、二次的薬物供給源と、
制御スキームを使用して、前記NO供給源から送達されるNO含有ガスの量及び前記二次的薬物供給源から送達される前記二次的薬物の量を制御するように構成されたコントローラであって、前記制御スキームは、前記NO含有ガス、前記二次的薬物、前記吸気流通路、及びユーザからの1つ以上の入力のうちの少なくとも1つに関する1つ以上の入力を有し、前記コントローラは、前記制御スキームへの前記1つ以上の入力に関する情報を収集するように構成された1つ以上のセンサと通信するように構成されている、コントローラと
を備える、薬物送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一酸化窒素を送達する及び/又は発生させるシステム及び方法に関する。
【0002】
[関連出願]
本出願は、2022年1月28日付で出願された米国仮出願第63/304,245号、2021年10月29日付で出願された米国仮出願第63/263,319号、及び2021年9月23日付で出願された米国仮出願第63/247,687号、並びに2022年9月23日付で出願された米国実用特許出願第17/935,055号の利益及び優先権を主張する。これらの出願のそれぞれの内容は、引用することによってそれらの全体が本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
一酸化窒素は、患者の酸素供給を改善するために病院環境において日常的に使用される肺血管拡張剤である。この分子は、臨床環境の外のユーザにも同様の利益を提供する可能性を有する。病院外の用途の例は、感染症の処置、感染症の予防、高山病の処置、運動パフォーマンスの向上のためのものである。
【0004】
20年間の臨床使用の後、NOの安全性プロファイルは、酸化及びメトヘモグロビン血症という2つの主な問題でよく知られている。NOは、酸素と反応して、吸入されると有毒な化合物である二酸化窒素(NO2)を生成する。NO2は、様々なスクラブ技術を用いてガスストリームから除去され得る。高い投与量のNOは、「メトヘモグロビン血症」と呼ばれる状態に帰着し得て、この状態は、通常は酸素を運搬する血液中のヘモグロビン分子がNO分子によって占有される状態であり、ユーザの酸素を取り込む能力を低下させ、腎臓障害のリスクを引き起こす。NOの投与量を目標処置レベルに制限することは、あらゆるNO送達装置に重要な側面である。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、吸入器装置を使用する、吸気流への一酸化窒素送達のためのシステム、方法及び装置に関する。いくつかの実施の形態においては、本装置は単回使用で使い捨てであり、いくつかの実施の形態においては、本装置は再使用可能な構成要素を含んでもよい。いくつかの実施の形態においては、NOは、吸気流に直接送達され、いくつかの実施の形態においては、NOは、送達装置又は併用される治療装置を通して患者に送達される。いくつかの実施の形態においては、NO発生装置は、NOのみを送達することができ、又は同じ装置から追加的な薬物及び/又はガスを送達することができる。いくつかの実施の形態においては、2種以上の薬物、例えば、NO及び二次的な薬物が送達される。
【0006】
薬物送達システムが提供され、いくつかの実施の形態においては、空気の吸気流がハウジングに入るときに通過する入口を有する遠位端と、ユーザとインタフェースするように構成された患者インタフェースが取り付けられた近位端と、ハウジングの遠位端からハウジングの近位端まで延在する吸気流通路とを有する、ハウジングを備え得る。一酸化窒素(NO)供給源は、ハウジング内に配置され、NO供給源は、患者インタフェースにNO含有ガスを送達するように構成されている。二次的薬物供給源は、ハウジング内に配置され、二次的薬物供給源は、患者インタフェースに二次的薬物を送達するように構成されている。コントローラは、制御スキームを使用して、NO供給源から送達されるNO含有ガスの量及び二次的薬物供給源から送達される二次的薬物の量を制御するように構成され、制御スキームは、NO含有ガス、二次的薬物、吸気流通路、及びユーザからの1つ以上の入力のうちの少なくとも1つに関する1つ以上の入力を有する。コントローラは、制御スキームへの1つ以上の入力に関する情報を収集するように構成された1つ以上のセンサと通信するように構成されている。1つ以上の入力のうちの少なくとも1つは、吸気流に関連する吸気イベントの検出に関する。
【0007】
いくつかの実施の形態においては、ユーザは、患者インタフェースを通してガスを吸い込み、NO含有ガスと二次的薬物とを同時に吸入する。いくつかの実施の形態においては、NO含有ガスは、二次的薬物の取り込みを増大させるように構成されている。いくつかの実施の形態においては、NO含有ガスの投与量は、1ppm~80ppmの範囲内である。いくつかの実施の形態においては、NO含有ガスの投与量は、1ppm~1000ppmの範囲内である。
【0008】
いくつかの実施の形態においては、薬物送達システムは、二次的薬物を加熱して二次的薬物を気化させるように構成された気化チャンバを更に備える。いくつかの実施の形態においては、薬物送達システムは、二次的薬物を噴霧するように構成された噴霧チャンバを更に備える。いくつかの実施の形態においては、薬物送達システムは、二次的薬物供給源からの二次的薬物の流量を制御するための、圧力調整器及び弁の1つ以上を更に備え、二次的薬物供給源は、加圧された容器の形態である。
【0009】
いくつかの実施の形態においては、コントローラは、二次的薬物供給源から送達される二次的薬物の量を制御するように構成されている。いくつかの実施の形態においては、コントローラは、独立した第1の送達スケジュール及び第2の送達スケジュールを使用して、NO含有ガス及び二次的薬物を送達するように構成されている。
【0010】
いくつかの実施の形態においては、NO供給源は、圧縮ガスシリンダを備える。いくつかの実施の形態においては、NO供給源は、電気NO発生器を備える。いくつかの実施の形態においては、NO含有ガスは、N2O4を加熱してNO2ガスを作り、還元剤を用いてNO2ガスをNOに還元することから発生させられる。
【0011】
いくつかの実施の形態においては、薬物送達システムは、NO含有ガスからNO2を除去するように構成されたスクラバ、及びNO含有ガスから汚染物質を除去するように構成された粒子フィルタの少なくとも一方を更に備える。
【0012】
いくつかの実施の形態においては、NO含有ガスは、NO供給源から患者インタフェースに直接送達される。いくつかの実施の形態においては、NO含有ガスは、NO供給源から吸気流通路を介して患者インタフェースに送達される。いくつかの実施の形態においては、二次的薬物は、二次的薬物供給源から患者インタフェースに直接送達される。いくつかの実施の形態においては、二次的薬物は、二次的薬物供給源から吸気流通路を介して患者インタフェースに直接送達される。
【0013】
いくつかの実施の形態においては、空気の吸気流がハウジングに入るときに通過する入口を有する遠位端と、吸気流通路と、ユーザとインタフェースするように構成された患者インタフェースが取り付けられた近位端とを有する、ハウジングを備える薬物送達システムが提供される。電気一酸化窒素(NO)発生器は、ハウジング中に配置され、一対又は複数対の電極を中に有するプラズマチャンバ中で、プラズマチャンバを通る空気の吸気流の少なくとも一部をイオン化することによってNO含有ガスを発生させるように構成される。二次的薬物供給源は、ハウジング中に配置され、二次的薬物を提供するように構成される。コントローラは、制御スキームを使用して、電気NO発生器から送達されるNO含有ガスの量及び二次的薬物供給源からの二次的薬物の量を制御するように構成され、制御スキームは、NO含有ガス、二次的薬物、空気の吸気流、及びユーザからの1つ以上の入力のうちの少なくとも1つに関する1つ以上の入力を有する。コントローラは、制御スキームへの1つ以上の入力に関する情報を収集するように構成された1つ以上のセンサと通信するように構成されている。
【0014】
いくつかの実施の形態においては、ユーザは、患者インタフェースを通してガスを吸い込み、NO含有ガスと二次的薬物とを同時に吸入する。いくつかの実施の形態においては、NO含有ガスは、二次的薬物の取り込みを増大させるように構成されている。
【0015】
いくつかの実施の形態においては、空気の吸気流がハウジングに入るときに通過する入口を有する遠位端と、ユーザとインタフェースするように構成された患者インタフェースが取り付けられた近位端と、ハウジングの遠位端からハウジングの近位端まで延在する吸気流通路とを有する、ハウジングを備える薬物送達システムが提供される。一酸化窒素(NO)供給源は、ハウジング内に配置され、NO供給源は、NO含有ガスを送達するように構成されている。二次的薬物供給源は、ハウジング内に配置され、二次的薬物供給源は、二次的薬物を送達するように構成されている。コントローラは、制御スキームを使用して、NO供給源から送達されるNO含有ガスの量及び二次的薬物供給源から送達される二次的薬物の量を制御するように構成され、制御スキームは、NO含有ガス、二次的薬物、吸気流通路、及びユーザからの1つ以上の入力のうちの少なくとも1つに関する1つ以上の入力を有する。コントローラは、制御スキームへの1つ以上の入力に関する情報を収集するように構成された1つ以上のセンサと通信するように構成されている。
【0016】
本開示は、言及する複数の図面に関して、例示的な実施形態の非限定的な例として、以下の詳細な説明において更に説明される。図面において、同様の参照符号は、図面のいくつかの図を通して同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】完全に統合された電気NO吸入器のシステムブロック図の例示的な実施形態を示す図である。
【
図2】ピストルグリップ及びプロペラ流量計を有する電気NO吸入器の例示的な実施形態を示す図である。
【
図3】反応ガス流量、目標NO産生量及び必要とされるプラズマパラメータ間の関係を示す例示的なグラフである。
【
図4】必要とされるNO産生の量についてのプラズマパラメータを導出するためのアプローチを示す例示的なグラフである。
【
図5】交換可能なフィルタ/スクラバ/乾燥剤カートリッジを有する電気NO装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図6A】交換可能なガスコンディショニング及び電極カートリッジを有する電気NO装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図6B】電極、スクラバ、フィルタ及びメモリ装置を含む交換可能なカートリッジを有する電気NO装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図7】交換可能なガススクラバ、フィルタ及びマウスピースを有する電気NO装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図8】NO発生及びスクラブ装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図9】ピストルグリップNO吸入器装置の構成の例示的な実施形態を示す図である。
【
図10A】プラズマ渦を利用するプラズマNO発生装置の実施形態を示す図である。
【
図10B】プラズマ渦を生成するための例示的な電力回路を示す図である。
【
図11】圧縮ガスシリンダを利用するNO吸入器の例示的な実施形態を示す図である。
【
図12】中間チャンバを有する圧縮ガスシリンダを利用するNO吸入器の例示的な実施形態を示す図である。
【
図13】動的比例NO流量制御を有する圧縮NO吸入器の例示的な実施形態を示す図である。
【
図14】空気バイパスチャネルを有するNO吸入器の例示的な実施形態を示す図である。
【
図15】固定流量NO送達システムのNO流量制御の実施形態を示す図である。
【
図16】閉ループフィードバックを用いた吸気流量制御を有するNO吸入器の例示的な実施形態を示す図である。
【
図17】管理された吸気流量を用いた、吸気流量、投与及び濃度プロファイルを示す例示的なグラフである。
【
図18】抑制されていない吸気流を用いた、吸気流量、投与及び濃度プロファイルを示す例示的なグラフである。
【
図19】吸気の開始におけるパルス状のNO送達を示す例示的なグラフである。
【
図20】吸気検出から遅延させられたパルス状のNO送達を示す例示的なグラフである。
【
図21】圧縮シリンダから酸素/窒素ガスを供給するNO吸入器装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図22】圧縮シリンダからNOを供給するNO吸入器装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図23】スマート流量制御を有する圧縮ガスシリンダからNOを供給するNO吸入器装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図24】はさみ機構及び蛇腹を利用する吸気補助装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図25】手によって押しつぶされるリザーバを利用する吸気補助装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図26A】脇の下によって押しつぶされるリザーバを利用する吸気補助装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図26B】着座したユーザの体重によって加圧されるリザーバを利用する吸気補助装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図26C】起立したユーザの体重によって加圧されるリザーバを利用する吸気補助装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図27A】スプレーを用いたNO混合の例示的な実施形態を示す図である。
【
図27B】静的ミキサを用いたNO混合の例示的な実施形態を示す図である。
【
図27C】スクラバ及びフィルタを用いたNO混合の例示的な実施形態を示す図である。
【
図28】管理された流量を有する例示的な投与の表である。
【
図29】二次的薬物送達機能を有するNO発生器の例示的な実施形態を示す図である。
【
図30A】二次的薬物がNO含有ガスへと気化される二薬物送達装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図30B】薬物流路がマウスピースまで分離されたままとされる二薬物送達装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図31】二薬物送達装置のアーキテクチャブロック図の例示的な実施形態を示す図である。
【
図32】第2の薬物が光化学的プロセスを用いて放出される二薬物送達装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図33】2つの薬物チャネルを通る流れ制御を有する二薬物送達装置の例示的な実施形態を示す図である。
【
図34】呼吸の間の2種の薬物の例示的な連続投与を示す図である。
【
図35】呼吸パターンに対する例示的な二薬物投与プロファイルを示す図である。
【
図36A】NO発生及び二次的薬物の送達を有するNO吸入器の例示的な実施形態を示す図である。
【
図36B】吸入に先立ち混合を可能とするNO供給源及び二次的薬物供給源を有するNO吸入器の例示的な実施形態を示す図である。
【
図36C】装置内で二次的薬物からNOを分離する二次的薬物送達を有するNO吸入器の例示的な実施形態を示す図である。
【
図37】上流のNO発生を有する、組み合わせられたNO発生及び二次的薬物送達システムの例示的な実施形態を示す図である。
【
図38A】例示的な電気NO発生吸入器のNOパルス送達性能の実施形態を示す図である。
【
図38B】例示的な電気NO発生吸入器のNOパルス送達性能の実施形態を示す図である。
【
図39】NO発生マスクの例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記で明らかにされた図面は、ここに開示されている実施形態を記載しているが、この論述において言及されるように、他の実施形態も意図されている。この開示は、限定ではなく代表例として例示の実施形態を提示している。ここに開示されている実施形態の原理の範囲及び趣旨に含まれる非常に多くの他の変更及び実施形態を当業者は考案することができる。
【0019】
以下の説明は、例示的な実施形態のみを提供し、本開示の範囲も、適用範囲も、構成も限定することを意図していない。そうではなく、例示的な実施形態の以下の説明は1つ以上の例示的な実施形態を実施することを可能にする説明を当業者に提供する。ここに開示されている実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく要素の機能及び配置に様々な変更を行うことができることを理解されたい。
【0020】
以下の説明において、実施形態が完全に理解されるように具体的な詳細を与える。しかしながら、当業者であれば、これらの具体的な詳細なしに実施形態を実施してもよいということが理解されよう。例えば、ここに開示されている開示の実施形態のシステム、プロセス及び他の要素は、実施形態を不必要な詳細で不明瞭にしないために、ブロック図形式の構成要素として示す場合がある。他の事例では、実施形態を不明瞭にするのを回避するために、不必要な詳細なしに既知のプロセス、構造及び技法を示す場合がある。
【0021】
また、個々の実施形態を、フローチャート、フロー図、データフロー図、構造図又はブロック図として示すプロセスとして説明する場合もあることに留意されたい。フローチャートは、動作を逐次プロセスとして説明する場合があるが、それら動作の多くは、並行して又は同時に実施することができる。加えて、動作の順序は並び替えてもよい。プロセスは、その動作が完了したときに終了してもよいが、考察されず図に含まれない追加のステップを有することができる。さらに、任意の詳細に説明するプロセスにおける全ての動作が、全ての実施形態において行われなくてもよい。プロセスは、方法、関数、手続き、サブルーチン、サブプログラム等に対応してもよい。プロセスが関数に対応する場合、その終了は、呼出し元の関数又はメイン関数に当該関数を返すことに対応する。
【0022】
ここで、主題について添付図面を参照してより完全に説明する。添付図面は、本明細書の一部を形成するとともに、本開示の具体的な例としての態様及び実施形態を例示として示す。しかしながら、主題は、種々の異なる形態で具現化されてもよく、したがって、包含されるか又は請求される主題は、本明細書に示すいかなる例としての実施形態にも限定されないものとして解釈されるように意図されており、例としての実施形態は単に例示的であるように提供される。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されることは意図していない。
【0023】
概して、術語は、少なくとも一部には文脈における使用から理解されてよい。例えば、本明細書において用いる場合の「及び」、「又は」又は「及び/又は」等の用語は、少なくとも一部にはこうした用語が使用される文脈によって決まってもよい種々の意味を含んでもよい。通常、A、B又はC等、リストを関連付けるために用いる場合の「又は」は、ここでは包括的な意味で使用される「A、B及びC」とともに、ここでは排他的な意味で使用される「A、B又はC」を意味するように意図される。加えて、本明細書において用いる場合の「1つ以上の」という用語は、少なくとも一部には文脈に応じて、単数の意味では任意の特徴、構造若しくは特性を記載するために使用されてもよく、又は、複数の意味では特徴、構造若しくは特性の組合せを記載するために使用されてもよい。同様に、「1つの、或る(a、an)」又は「その(the)」等の用語もまた同様に、少なくとも一部には文脈に応じて、単数使用を伝えるように理解されてもよく、又は複数使用を伝えるように理解されてもよい。加えて、「~に基づいて」という用語は、必ずしも要素の排他的な組を伝えるように意図されないものとして解釈されてもよく、代わりに、この場合もまた少なくとも一部には文脈に応じて、必ずしも明示的に記載されていない追加の要素の存在を可能にしてもよい。
【0024】
本開示は、吸入器装置を使用して一酸化窒素(NO)を送達するシステム及び方法に関する。NO吸入器は、いくつかの個別の呼吸を投与するように設計され得る。NO吸入器は、搭載されたガスキャニスタからNOを供給してもよいし、又はそれ自体でNOを発生させてもよい。限定するものではないが、放電発生、マイクロ波発生、N2O4からの誘導、NOドナー分子、及び光化学的に発生させられたNOを含む、NOに対する様々なアプローチを利用することができる。本明細書で提示される着想は、NO発生及び圧縮ガス送達システムの両方に適用される。
【0025】
NO吸入器装置は、様々な環境において使用され得る。いくつかの実施形態においては、NO吸入器装置は、家庭環境において患者によって使用され得る。いくつかの実施形態においては、吸入器装置は、個々に包装され、O2飽和度を改善するために救急車による搬送の間に患者に対して使用されるように救急車に保管され得る。患者が病院に到着すると、吸入器は廃棄されてもよく、患者は病院に設置されたNO供給源に移されてもよい。
【0026】
一酸化窒素は、肺血管張力を低下させ、心拍出量を改善し、患者の酸素供給を増大させることができる、肺血管拡張剤である。一酸化窒素は、単独で送達されてもよいし、又は他の薬物と組み合わせて送達されてもよい。いくつかの用途においては、NOは、別の薬物の取り込み及び/又は効果を増強するために使用される。
【0027】
以下は、本装置に含められ得る様々な吸入器装置要素の例であり、限定するものではないが、NO2スクラブ、フィルタ、マウスピース、及び他の構成要素を含む使い捨て要素、1つ以上の流量センサ、ユーザへの送達の前にガスが加温されることを可能とする圧縮NO装置、NO発生/注入の下流の1つ以上の混合要素、除湿機能、VOC除去機能、内部を清潔に保ち呼気ガスが本装置に入ることを防止する一方向弁、吸気流量制御(臨界オリフィスを用いた受動的なもの、能動的弁制御を用いた能動的なもの)、処置コントローラ、及び/又は吸入された空気の質量流量測定を含み、以下に更に詳細に説明される。
【0028】
いくつかの実施形態においては、NO吸入器装置は、吸入補助のための特徴を含んでもよい。その例は、限定するものではないが、吸気流圧を発生させるために呼吸筋以外の筋肉を使用するユーザ補助吸入(例えば吸入のためのガスを押し出すためにピストルグリップ又は他のトリガを押しつぶすか又は他の方法で作動させる)、吸気流圧を発生させるためにユーザの体重を使用するユーザ補助吸入、及び吸入流量制限を低減させるためのバイパスチャネルを含む。
【0029】
吸入器装置からの1種以上の薬物の送達のための例示的なトリガ条件は、多因子トリガ、投与するために装置の使い捨て部分が挿入されているという要件、及び投与するためにユーザが存在しているという要件(例えばユーザの口を検出するIRセンサ)が含まれる。
【0030】
以下は、以降に更に詳細に説明される投与送達例である:例えば臨界オリフィスを使用して又は能動的流量制限制御を使用して、NO供給/発生器によって投与することができるレベルにまで吸気流量を制限すること、吸気流量が閾値流量に到達したときにNO送達を開始すること、吸気流量が閾値流量を下回ったときにNO送達を終了すること、吸気検出後に遅延されたNOパルスを送達すること、吸気流量に比例したNO送達/発生、吸気の最終的なガス体積が空気でシステムをパージするように吸気の終了前にNO送達を終了すること、追加的な薬物(複数の場合もある)の制御及び送達、並びに呼吸の様々な部分(例えば開始時/中間/終了時)にNOを送達すること。
【0031】
投与制御の例は、限定するものではないが、ユーザが許容される投与速度を超えている場合に装置が投与をロックアウトする機能、及び次の投与の時間となったときに装置がユーザにリマインドする機能を含む。
【0032】
例示的なシステム特徴は、限定するものではないが、ユーザの臨床状態、呼気分析、併用療法の増強された性能に少なくとも部分的に基づいて投与レベル、パルスのプロファイル及びパルスのタイミングをカスタマイズすること、及びユーザインタフェースを有することを含み、これらはいずれも以下で更に詳細に説明される。
【0033】
電気NO発生
図1は、内蔵のNO発生器を有する吸入器10の例示的な実施形態を示す。本装置は、流体の侵入、微粒子の侵入、静電ショック及び/又は衝撃から内部の構成要素を保護する筐体12を含む。筐体12はまた、装置内の高電圧からユーザを保護する。ユーザは、筐体12の近位端12pに配置されたマウスピース14を該ユーザの口に挿入し、マウスピース14の周りを唇で封止して吸入し、装置を通して室内の空気を吸い込む。空気は、空気入口を通って筐体12の遠位端12dに入り、任意選択の粒子フィルタ16を通過する。ほとんどの実施形態は、プラズマチャンバを汚染から保護し、そこで起こり得る様々な化学反応を最小化するために、空気入口とプラズマチャンバ18との間に少なくとも1つの粒子フィルタを有する。ここで提示される各粒子フィルタの位置は任意であるが、或る特定の利点を有する。第1の粒子フィルタは、一方向弁を保護して、弁が適正に封止し続けることを確実にする。
【0034】
いくつかの実施形態においては、微粒子と、使用時に乾燥剤及びスクラバ材料の消耗を加速し得る環境湿度とから、内部を保護するために、NO発生セクションの前及び/又は後において、任意選択の一方向弁20、22(例えばフラッパ弁、ダックビル弁、逆止弁)が使用されてもよい。任意選択の第1の逆止弁を通過した後、空気は、水分量の一部又は全部を除去する任意選択の乾燥剤段階24を通過する。水の除去は、電極の腐食を減少させ、NO発生の精度及び再現性を改善し、空気プラズマから生成され得る様々な化合物を最小化し得る。この用途のための乾燥剤材料の例は、限定するものではないが、シリカ及び分子篩を含む。
【0035】
いくつかの実施形態においては、装置のプレスクラブ段階26もまた任意選択である。この段階が使用される場合、乾燥剤段階の後に依然として残り得る流入空気からのVOCを除去する(分子篩材料が使用される場合、水に加えていくつかのVOCを除去し得る)。VOCに加えて、プレスクラバ段階は、空気中の大気中CO2を除去することもできる(例えばソーダ石灰が使用される場合)。乾燥剤段階は、乾燥剤材料の移動を防止するために、1つ以上の粒子フィルタの側面に配置されるものとすることもできる。同様に、スクラブ段階は、同じ目的のために、任意選択の粒子フィルタ28、30の側面に配置されるものとすることもできる。プレスクラバ段階は、VOC及び窒素酸化物を除去するために活性炭を使用することもできる。
【0036】
ガス通路のプレコンディショニング部分を通過した後、反応ガスはプラズマチャンバ18に入り、そこで空気内のN2及びO2がイオン化されて、空気のバランスの中でNO及びNO2を形成する。いくつかの実施形態においては、イオン化は、2つ以上の電極間を通過するDCアークを介する。いくつかの実施形態においては、イオン化は、2つ以上の電極間を通過するACアークを介する。いくつかの実施形態においては、イオン化は、マイクロ波放射によって形成されるプラズマを介する。いくつかの実施形態においては、イオン化は集束レーザを介する。
【0037】
ほとんどの電気的発生NOシステムが、電磁放射を封じ込め抑え込むためにファラデーケージ(図示せず)を必要とすることは、注目に値する。NOが使い捨てカートリッジ内で発生させられるいくつかの実施形態においては、カートリッジは導電性コーティング中に包まれてシールドとして機能してもよい。これに加えて、システム内に電磁放射を封じ込めるために、金属スクリーン及び/又はガスのための曲がりくねった導電性通路が使用されてもよい。
【0038】
プラズマチャンバ18内でNO及びNO2を発生させた後、ここでは「産生ガス」と呼ばれるガスは、電極粒子を捕捉し、プラズマチャンバ18の中へのスクラバ材料の移動を防止する、任意選択のフィルタ32を通過してもよい。次いで、産生ガスは、スクラバ34を通過する。スクラバ34は、シート及び/又は粒子及び/又はオープンセルフォーム及び/又はコーティングの形態のNO2スクラブ材料(例えばソーダ石灰、TEMPO、金属有機フレームワーク(MOF))で構成されてもよい。いくつかの実施形態においては、最後の粒子フィルタ36は、ガス流からスクラバ粒子及び残存する電極粒子を除去する。いくつかの実施形態においては、粒子を捕捉するために、粒子トラップ又は空気圧通路の鋭い湾曲が利用される。いくつかの実施形態においては、本装置の内壁は、粒子を捕捉する粘着性材料で少なくとも部分的に覆われている。
【0039】
ユーザへの送達に先立ち、産生ガスは、流量制限を提供するオリフィス38を通って流れる。この流量制限は、圧力差分(delta-pressure)センサ40がユーザへの流量を測定することを可能とする。いくつかの実施形態においては、流量測定は、ユーザの吸気を検出すること、吸気の継続時間を決定すること、吸気流量が最小閾値を上回るときを決定すること、流量情報を体積測定に統合することのうちの1つ以上のために使用される。いくつかの実施形態においては、吸気を検出するために、産生ガスの圧力が測定される。流量センサから収集された情報は、吸気ガスに添加されるNOの量をリアルタイムで変化させるための、NO流量/産生コントローラへの入力として機能し得る。限定するものではないが、圧力差分、熱線流速計、回転式流量要素上の光学センサ、又は回転式流量要素上の発生器を含む、様々なタイプの流量センサが使用され得る。いくつかの実施形態においては、流量及び/又は圧力測定は、NOが吸気に添加される閾値を吸気流量が超えたときを決定するために利用される。流量の閾値は、偽陽性(吸気がないときの投与)の可能性を低減し、吸気イベントの終了時にNO/NO2を装置から取り除くための残留流量があることを確実にする。
【0040】
本装置は、例えばマウスピース14を用いて、ユーザとインタフェースする。いくつかの実施形態においては、マウスピースは、筐体の一体部分である。いくつかの実施形態においては、マウスピースは、洗浄及び/又は交換のために取り外し可能である。いくつかの実施形態においては、本装置は、マスク又は鼻カニューレのいずれかを用いてユーザとインタフェースする。
【0041】
図2は、NO発生を伴うNO吸入器50の別の例示的な実施形態を示す。
図2に示される実施形態においては、筐体52への流入空気は、回転式流量計56等の流量センサを通過することに先立ち、フィルタ54によってフィルタリングされる。図示されるように、プロペラ58が低摩擦で旋回する。筐体52内の光学センサ60は、プロペラのブレードの動きを検出するか、又はプロペラの表面上の光学コードの位置の変化を記録することができる。いくつかの実施形態においては、流量センサは、発電器を回転させるプロペラ、光学エンコーダを有するピンホイール、ファン若しくはタービン、熱線、流量制限部の両端の圧力差分、又は他のガス流量測定の手段である。いくつかの実施形態においては、ガス流を検出するために、ガス流路内での圧力のみが測定される。圧力情報は、本装置の流量/圧力関係が特徴付けられている場合に、二値流量情報(yes/no)又は定量的流量測定値を検出するために利用されてもよい。いくつかの実施形態においては、コントローラが圧力を測定し、ルックアップテーブルにおいて圧力値を調べて流量を決定する。いくつかの実施形態においては、空気密度を決定するために、周囲圧力又は無流量圧力、温度、及び湿度レベルもまた、コントローラによって測定される。空気流チャネル内の空気密度及び圧力は、コントローラによって2次元ルックアップテーブル又は方程式において利用されて、対応する空気の質量流量を決定する。
【0042】
測定又は推定された吸気質量流量に基づいて、コントローラは、吸気流ストリームに添加されるべきNOの量を決定する。添加されるべきNOの量は、与えられるべきNOの規定量、又はユーザ設定に基づいてユーザによって要求される量に基づくものであってもよい。いくつかの実施形態においては、リアルタイムで、コントローラは、瞬時吸気流量と所望の吸入NO濃度(例えばppm.slpm、ulpm NO、又は同等の単位)との積として、NOの目標吸入産生レベルを算出する。吸入されたNOの全てがNO供給源/発生器から来るとすると、NO供給源/発生器からのNO産生は、吸入されたNO産生レベルと一致するはずである。例えば、瞬時吸気流量が10lpmであり、目標吸入濃度が400ppm NOである場合、必要とされる瞬時NO産生レベルは4000ppm.lpmである。コントローラは、
図3に示されるもののようなチャートに基づいて、利用可能な反応ガス流量で目標産生レベルを発生させるためのプラズマチャンバ設定(例えば放電周波数、放電デューティサイクル、放電電流等)を調べる。
【0043】
図3は、反応ガス流量、目標NO産生量、及び必要とされるプラズマパラメータ(複数の場合もある)、この場合においてはデューティサイクルの間の関係を示す例示的なグラフを示す。吸気流量の1つ以上の測定値に対して、コントローラは、必要とされる対応するNO産生レベルを読み取り、次いでY軸上の適切なデューティサイクルを読み取る。いくつかの実施形態においては、コントローラは、目標デューティサイクルをより正確に導出するために、2本の曲線間を内挿する。
【0044】
図4は、必要とされる量のNO産生のためのプラズマパラメータを導出するためのアプローチを示す別の例示的なグラフを示す。コントローラは、吸入ガス流量及び目標吸入NO濃度に基づいて、必要とされる産生レベルを決定する。コントローラは、プラズマチャンバを通る現在の流量に基づいて、必要とされるプラズマパラメータ(複数の場合もある)、この場合においては放電周波数を決定する。この同じ情報は、ルックアップテーブル又は1つ以上の数学的方程式において捕捉されてもよい。
【0045】
コントローラは、周囲圧力、周囲温度、周囲湿度、スクラバタイプ、スクラバの使用時間、電極の使用時間、及び他の変数に基づいて、プラズマパラメータに対して追加的な調整を行うことができる。
【0046】
図2に示されるように、フィルタリングされた反応ガスは、プラズマチャンバ62を通過してNOを形成する。次いで、産生ガスは、任意選択のフィルタ64、スクラバ66、及びフィルタ68によって、フィルタリング、スクラブ、及び2度目のフィルタリングを受けた後に、マウスピース70を通ってユーザへと移動する。本装置はバッテリ駆動であり、充電のための外部接続部(例えばUSB)を含む。電子部品は、ハードウェアのみであってもよいし、又はファームウェアを動作させるマイクロプロセッサによって制御されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態においては、
図1及び
図2に示されるもの等の装置全体が使い捨てである。使い捨てのバージョンは、最小限の材料を用いた安価な組み立てのために設計される。いくつかの実施形態においては、バッテリは再充電可能であり、他の場合においては、再充電可能ではない。使い捨てNO発生器の耐用寿命を決定する構成要素は、バッテリ寿命、スクラバ寿命、電極寿命及び/又はフィルタ寿命であり得る。いくつかの例においては、本装置は寿命の最後に機能を停止し、交換用装置の使用を開始することをユーザに要求する。
【0048】
図5は、装置の一部が使い捨てであり、一部が再使用可能である、吸入器装置100の例示的な実施形態を示す。図示されている実施形態においては、使い捨て部分102は、再使用可能部分104の上部に接続され、組み立ての間にプラズマチャンバ106上をスライドする。使い捨て部分102は、時間経過と共に消耗し又は目詰まりし得る要素を含む。使い捨て部分102は、フィルタ108、フィルタ110、フィルタ112、フィルタ114、フィルタ116、プレスクラバ118、スクラバ120、乾燥剤122、任意選択の一方向弁123、一方向弁124、及びマウスピース126のうちの1つ以上の要素を含んでもよい。図示されている実施形態においては、プラズマチャンバ106及びその中の電極発生器は、再使用可能な構成要素の一部である。使い捨て部分が再使用可能部分に接続されると、気密接続が確立され、それにより、ユーザが吸い込む空気が装置の入口からのみ入ることを確実にする。いくつかの実施形態においては、プラズマチャンバは、電極(例えばグライディングアーク電極、平行対向電極、対向電極等)を含む。いくつかの実施形態においては、プラズマチャンバは、マイクロ波キャビティからなる。
【0049】
いくつかの実施形態においては、プラズマチャンバは、再使用可能な構成要素の一部である。いくつかの実施形態においては、プラズマチャンバは、使い捨て構成要素の一部である。プラズマ発生要素(例えば電極、アンテナ、スタブ等)は、本装置の使い捨て部分又は再使用可能部分のいずれかの一部であってもよい。いくつかの実施形態においては、第1の発生要素は使い捨て部分の一部であり、第2の発生要素はシステムの再使用可能部分の一部である。再使用可能部分の位置は、部分的には、発生要素の寿命、コスト、及び包装効率に依存する。例えば、DCプラズマシステムにおいては、いくつかの実施形態においては、急速に摩耗する方の電極が使い捨て部分の一部であり、他方の電極が再使用可能部分の一部である。
【0050】
電極ベースのシステムにおいては、使い捨て部分の中に電極を配設することは、より一貫した装置性能を可能にし、より安価で、より寿命の短い電極材料(例えばタングステン、ステンレス鋼、銅)を使用する能力を可能にし得る。
【0051】
設計に依存して、使い捨てのプラズマ発生要素に電圧を送達するために、1つ以上の高電圧電気接続が使用される。他の設計は、中心電極及びリング形状の電極があるプラズマ渦設計を利用する。いくつかの実施形態においては、ブラシが使用される。いくつかの実施形態においては、ボール-ばね接続が使用される。いくつかの実施形態においては、ポゴピンが使用される。
【0052】
図6Aは、2つ以上の電極142を有するプラズマチャンバを含む使い捨て構成要素を有する、吸入器装置140の実施形態を示す。以上に説明された実施形態と同様に、使い捨て部分はまた、フィルタ148、フィルタ150、フィルタ152、フィルタ154、フィルタ156、プレスクラバ158、スクラバ160、乾燥剤162、一方向弁163、一方向弁164、及びマウスピース166のうちの1つ以上の要素を含んでもよい。本装置の再使用可能部分は、電極と、又は高電圧コネクタ144等の対応する電気コネクタと、電気的に接触する。
【0053】
図6Bは、交換可能な電極及びスクラバカートリッジ172を有する吸入器装置170の電気NO発生器の実施形態を示す。カートリッジ172は、筐体174の遠位端に挿入される。完全に挿入されると、電気的接続が電極176及びメモリ装置を認識する。本装置の電子部品は、メモリ装置の接続が確立されると、カートリッジがあり、カートリッジが完全に挿入されていることを検出できる。この設計においては、電極は、使い捨てカートリッジの長さに沿って、電気コネクタとは異なる位置にある。このことは、電気コネクタを装置内の奥深くに位置させて、ユーザのアクセス、及び高電圧コネクタからユーザへの起こり得るクリープを防止するためのものである。いくつかの実施形態においては、使い捨て部分の外側表面は、高電圧電気コネクタからユーザへの電気的な沿面距離を長くする溝、起伏及び/又は他の特徴を有する。
【0054】
カートリッジ172及び/又はマウスピース178は、限定するものではないが、戻り止め、ねじ山、バヨネット嵌合、干渉を伴うテーパ、ラッチ、及び摩擦を含むいくつもの方法で、吸入器筐体174内に保持されてもよい。いくつかの実施形態においては、Oリング及び/又はリップシールが、取り外し可能な構成要素間の界面において利用されて、NOの損失及び/又は制御されていない位置からの空気の供給(ユーザが空気を吸い込むときにシステムの中に漏れる)を防止する。
【0055】
図7は、NO吸入器装置200の別の例示的な実施形態を示す。本装置の再使用可能部分は、筐体210内に収容された入口フィルタ202、流量センサ、プラズマセンサ、出口フィルタ204、電子部品206、及びバッテリ208を含んでもよい。プラズマチャンバ212の前後のフィルタは、沿面距離を短縮し発生させられたNOを汚染し得る微粒子から、チャンバを保護する。筐体は、人間工学のためにピストルグリップを有するような形状とされている。使い捨て構成要素は、フィルタ212、スクラバ214、第2のフィルタ216、及びハウジングと一緒に保持されたマウスピース218を含む。使い捨て構成要素は、再使用可能な構成要素の近位端に挿入される。いくつかの実施形態においては、再使用可能な構成要素は、使い捨て構成要素の有無を検出することができ、使い捨て部分が存在する場合にのみ処置を許可することができる。
【0056】
使い捨て構成要素の存在は、電気的、光学的、磁気的、又は物理的(例えば挿入時に使い捨て構成要素によって押されるボタン)を含む、いくつもの方法で検出され得る。いくつかの実施形態においては、使い捨て構成要素は、再使用可能な構成要素によって検出されるRFIDチップを含む。いくつかの実施形態においては、使い捨て構成要素内のメモリチップが、再使用可能な構成要素と電気的に接触する。いくつかの実施形態においては、使い捨て装置上のバーコードが、再使用可能な構成要素によって光学的に読み取られる。いくつかの実施形態においては、使い捨て構成要素の挿入及び/又はラッチの力が、再使用可能な構成要素によって検出され、使い捨て部分の挿入として解釈される。
【0057】
いくつかの実施形態においては、吸入器装置は、スクラバ交換を必要とする前にスクラバを通って進むNOの量を制限してもよい。いくつかの実施形態においては、本装置内のコントローラは、NO産生の継続時間及び産生レベルに基づいて発生させられたNOの量を追跡する。いくつかの実施形態においては、本装置はまた、スクラバが挿入されていた時間及びスクラバの使用期限に基づいて、スクラバの交換を促してもよい。いくつかの実施形態においては、本装置はまた、使用前にスクラバの有効性及び使用期限を確認してもよい。
【0058】
図8は、NO発生装置222、スクラバ224、及び任意選択のフィルタ226を含む、吸入器装置の形態のスタンドアロン型のNO送達システム220の実施形態を示す。ガスストリーム中の最後のフィルタの有無は、ガスストリーム中の微粒子の可能性、並びに微粒子の潜在的な量、微粒子のサイズ分布、微粒子の毒性、及び微粒子による患者に対する全体的なリスクに少なくとも部分的に基づく、設計上の決定であり得る。本システムは、マウスピース228を通してNOを送達するように示されているが、同じシステムが、フェイスマスク又は鼻マスクを用いてユーザとインタフェースしてもよい。いくつかの用途においては、本システムが特定の臨床的適応に対して十分なNOをガス流に投与する間に、ユーザは5秒間~10秒間にわたって本装置を通してゆっくりと吸入する。本システムは、増悪、高山病、パニック発作、又は他の短期間の呼吸障害を引き起こす状態の間の救急療法として使用され得る。いくつかの実施形態においては、本システムは完全に使い捨てである。いくつかの実施形態においては、本システムは、再充電可能であるか又は交換バッテリを受容する再使用可能な構成要素を有する。いくつかの実施形態においては、スクラブ要素(複数の場合もある)及び/又はフィルタ(複数の場合もある)は使い捨てである。
【0059】
図9は、ピストルグリップを有するNO送達装置230の別の実施形態を示す。空気は、ハンドル筐体232の底部を通って本装置に入り、VOC及び微粒子フィルタリングのための粒子フィルタ及びスクラバ234を通って流れる。ハンドルを通って上方に進んだ後、空気通路はユーザの方に向きを変え、NOゾーン236を通過する。NOの供給源に応じて、NOゾーンは、高電圧電極、マイクロ波アンテナ、光化学によりNOを放出する固体材料、及び他の方法を含んでもよい。NOの発生/放出は、ハンドル中のNO発生器によって制御される。NO+空気は、ユーザに送達される前に、取り外し可能なマウスピース242中のスクラバ238及び微粒子フィルタ240等の、ガスコンディショニング要素を通過する。ハンドル上の作動スイッチ244は、本装置を作動させるためにユーザによって押下される。
【0060】
以上に説明されたように、プラズマチャンバは、様々な方法で、様々なタイプの電極を使用して、NOを発生させることができる。
図10Aは、磁場中の電流に対するローレンツ力によって引き起こされるプラズマ渦を利用する、プラズマNO発生装置250の実施形態を示す。この設計においては、電極の同心セットは、磁気リング252及び中心電極254からなる。中心電極は正極であり、リングは接地されている。電流は、環状空間において絶縁破壊が起こったときに形成されるプラズマを通して伝導される。電流の方向はベクトル「i」によって示されている。磁石の上側表面はN極である(磁場「B」が紙面から出るように示されている)。プラズマにかかる力は、「右手の法則」を使用してローレンツ力
【数1】
で与えられ、ベクトル「f」の方向である。その結果は、リングの周りの時計回りに回転するプラズマ放電である。印加される電圧の極性が反転されると、アークは環状空間の周りを反対方向(反時計回り)に進むこととなる。
【0061】
反応ガスがプラズマ渦を通過させられると、強い熱及びエネルギーによるN2分子及びO2分子の解離によって、NOが発生させられる。アークは1秒当たり何周もリングの周りに進み、ガス流の全断面を処理する。この効果は、産生ガス内のガス分布、及び装置全体の電力効率を改善し得る。いくつかの実施形態においては、アークは、処理の継続時間の間、リングの周りを連続的に進む。いくつかの実施形態においては、アークはパルス状であり、リングの周りのランダムな点において破壊され、コントローラが放電を停止させることで停止する。アークがリングの周りを進む速度は、電流レベル(i)、磁場強度(B)及びリング直径(r)に関係し、半径が大きいほど周回に多くの時間を必要とする。
【0062】
図10Bは、プラズマ渦を生成するための例示的な電力回路を示す。方形波発生器260の出力が変圧器によって増幅され、高電圧変圧器262の一次側を通過する。変圧器の二次側は中心電極及び磁石に電気的に接続されている。NO発生を伴う用途においては、処置コントローラが機能発生器として機能し、放電パルスの周波数、デューティサイクル、電圧、及び電流のうちの1つ以上を変化させて、NO産生を変化させる。いくつかの実施形態においては、リングは永久磁石である。いくつかの実施形態においては、リングは電磁石である。いくつかの実施形態においては、リングは、電極の腐食を減少させるために高融点材料(例えばイリジウム、タングステン、白金)でメッキされる。
【0063】
タンクベースのNO送達
いくつかの実施形態においては、NOは、NOのリザーバから供給される。
図11は、圧縮ガスカートリッジ又はNOキャニスタ272からNOを供給するNO吸入器装置270の実施形態を示す。カートリッジは、純粋なNO及び/又は他のガス(例えば窒素)中に希釈されたNOで充填されてもよい。
【0064】
図11は、吸気流路274を含む。ピストルグリップハンドルは、投与送達コントローラ278にユーザ入力を記録する電気ボタンスイッチ276を含む。投与送達コントローラ278は、内部バッテリ280によって給電され、加圧NOシリンダ及び吸入ガス流路と流体連通する弁282を制御する。いくつかの実施形態においては、NO流路の直径は、NOガスの流れを制限するほど十分に小さい。いくつかの実施形態においては、吸気流(図示せず)へのNOの流量を管理するために、別個の臨界オリフィス構成要素が含まれる。いくつかの実施形態においては、流量制御弁(図示せず)に先立ち、NOの圧力をシリンダ圧力からより作業しやすい圧力に下げる圧力調整器が含まれる。この実施形態におけるシリンダは、ピストルグリップの底部に挿入され、必要に応じて交換されてもよい。シリンダは、摩擦及び/又はねじ山を使用することを含む様々な方法のうちの1つで本装置内に保持される。
【0065】
様々なレベルの投与制御を、圧縮ガス送達システムに加えることができる。いくつかの実施形態においては、送達の継続時間の制限なく、ユーザが押しボタンを押下してNOを放出する。いくつかの実施形態においては、ユーザがNOの流れを開始し、装置コントローラがNOの発生/送達を或る治療量に制限する。いくつかの実施形態においては、NO送達は、吸気流路において流量又は圧力の変化が検出されたときに、吸入器装置によって自動的に開始される。いくつかの実施形態においては、NOの放出に先立ち、2つのパラメータが感知されなければならない(例えばマウスピースにおけるクランプ力及び吸気流チャネル内の流量)。いくつかの実施形態においては、本装置がユーザの口に挿入されたときにユーザの口からの熱を検出するように方向付けられた赤外線(IR)センサによって、ユーザが検出される。このようなアプローチは、本装置がユーザの口の中にないときにNOパルスを放出する可能性を低減させる。
【0066】
いくつかの実施形態においては、送達システムは、呼吸毎に送達されるNOの量を制限するように構成されてもよい。このことは、固定量ベース(例えば10mlのNO)及び/又は固定濃度ベース(例えば測定された吸気流量の10%の割合に等しいNO流量)で行われてもよい。いくつかの実施形態においては、NO送達は、装置コントローラ(例えばマイクロプロセッサ)によって能動的に制御される。いくつかの実施形態においては、本装置からの投与制御は、電子ハードウェア又は機械的構成要素によって管理される。いくつかの実施形態においては、NO吸入器送達装置は、或る時間に送達され得るNOの量を制限する。例えば、NO吸入器は、ユーザが吸入器を使用して、処方された又は制限されたものよりも速い速度でNOを受けようとした場合、投与を拒否してもよい。より具体的には、1時間当たり5回の呼吸に対して800ppmのNOの10mlの投与を許容するように装置がプログラムされている場合、ユーザが1時間の時間枠内に6回目の投与を要求すると、本装置は処置を拒否することとなる。この種の制限は、送達されているガスの安全限界に基づくものとすることができるが、シリンダの使用を延長するための経済性に基づくものとすることもできる。いくつかの実施形態においては、ユーザは、NO投与速度(例えば6mg/時)を処方され、NO吸入器装置は、目標投与速度を維持するように、定期的にNOの呼吸を吸入するようにユーザに促す。例えば、ユーザが、肺感染症を処置するために、1時間当たり160ppmのNOの10回の呼吸を処方されている。本装置は、6分毎にユーザにNOの投与を受けるように促す。ユーザが応答しない場合、本装置は、ブザーを使用すること、アラームの音量を上げること、振動モータを使用すること、無線リンクを介して臨床医に警告すること、ユーザの携帯電話に電話をかけること、及び他の方法のうちの1つ以上によって、問題をエスカレーションすることができる。
【0067】
ユーザが次のスケジューリングされた送達に先立ちNOの投与を送達しようと試みた場合には、NO送達及び/又は発生装置のいくつかの実施形態は、時間になる前のNO送達を防止する。
【0068】
理想気体の法則によって規定されるように、高圧シリンダから放出される場合、ガスは極めて低温になり得ることは、留意されるべきである。
図12に示されているNO吸入器装置290の1つの実施形態においては、NOの送達は2段階で行われ得る。ボタン292が押下されると、コントローラ296が、下流の弁298を使用して中間チャンバ294からユーザへのNO送達を制御し、高圧シリンダ297からのNOが、上流の弁300を使用して中間チャンバ294に放出され、ここでガスの圧力が低下させられ、放出されたガスの温度が周囲温度に近づき得る。この中間チャンバは、NO及び任意の不活性希釈ガスのみを含み、投与送達間のNOの酸化を防止する。いくつかの実施形態(図示せず)においては、シリンダからの圧力を中間チャンバ内の圧力まで低下させるために、圧力調整器が利用される。このことは、ガス圧力が2つのステップで低下させられることを可能にし、より細かい圧力制御を可能とする。いくつかの実施形態においては、シリンダガスは、ガスを加温する加温マニホールドを通過するか又は加温ブロック上を通る。加温段階は、シリンダから出る純粋なガス、混合吸気ガス、又はその両方に適用されてもよい。
【0069】
加温は、ユーザの体温又は周囲条件を利用した、受動的なものであってもよい。いくつかの実施形態においては、本装置におけるバッテリ電力が、抵抗加熱を用いてマニホールドを加温するために利用される。送達に先立ちガスを加温することは、患者の快適性を改善し、患者の組織に対する熱損傷の可能性を防止し得る。
【0070】
いくつかの実施形態においては、イベントの例示的なシーケンスは以下の通りである:投与ボタンが押下され、下流の中間チャンバ弁が開かれてNOを空気ストリームに放出し、空気中の酸素が中間チャンバに入ることを防止するために中間チャンバ圧力が大気圧に達する前に下流の弁が閉じられ、上流の弁が開かれて中間チャンバを再充填し、有限時間後に又は中間チャンバ中の圧力が目標値に達した後に上流の弁が閉じられる。
【0071】
いくつかの実施形態においては、高圧縮シリンダからのNOガスの流れを遅くするために、計量弁又はオリフィスが使用される。弁の制御は、
図12に示されるように、コントローラ(例えばソフトウェア又は電子的なハードウェア)によって行われてもよいし、又は完全に機械的に行われてもよい。
【0072】
図13は、圧縮ガスシリンダ又はNOキャニスタ312からNOを供給するNO吸入器装置310の実施形態を示す。吸入は、吸気ガス流314を通してガスを吸い込む。空気の流量は、投与コントローラ318に接続された流量センサ316によって測定される。熱線流速計が図示されているが、他の流量測定方法が使用されてもよい(例えばオリフィスの両端の圧力差分)。高圧のNOは、圧力を低下させられ、投与コントローラによって制御される流量コントローラ320を通過する。いくつかの実施形態においては、NOの流量は、混合吸気ガス内での一定の濃度を達成するために、吸入空気流量に比例するように制御される。吸気流路内の臨界オリフィス322が、空気流(及び複合流)を、NO供給が正確に投与することができるレベルに制限する。
【0073】
吸気流量制御
いくつかの実施形態においては、吸気流量は、
図13及び
図14に示されるように、臨界オリフィスによって制限される。このことは、NO発生器が、NO産生の制限にかかわらず、正確なNOレベルで吸気流を投与することを可能とする。いくつかの例においては、NO供給源は、固定流量のNOしか送達できず、本装置は、正確な投与を確実にするために、吸気流量が目標範囲内にあるときに、吸気流にNOを放出する。例えば、単純なNO供給源は、圧力調整器を通してガスを放出する圧縮NO/N2シリンダからなる。流量は、固定オリフィスを通過することによって管理され、二値弁(binary valve)を作動させることによって制御される。いくつかの実施形態(図示せず)においては、オリフィスは可変であり(例えば比例弁、絞り弁等)、流量の限界を変化させるようコントローラによって制御される。この例示的なシステムは、シリンダ中に1000ppmのNOを含み、1slpmの固定速度でガスを流す。
図15は、本システムがどのように機能し得るかを示す例示的なグラフを示す。吸気流量350は、ゼロから始まり、増大する。コントローラによって測定される吸気流量が最小投与流量の閾値を超えると、コントローラが二値弁を開いて、固定流量でNOを放出する。吸気流量が吸気流量限界に到達していないため、短時間の過剰投与吸気流量(この例においては10%)がある。過剰投与される吸気流の量は、最小投与閾値を変化させることによって調節することができる。過剰投与が許容可能でない場合、本システムは、NOガス流を開始することに先立ち、吸気流量が吸気流量限界に到達するまで待機する。最小投与流量を利用するこのアプローチは、システムが、吸入NO濃度を許容範囲内に保ちつつ、ガスの吸入される体積の大部分を投与することを可能にする。NO投与が、
図15に示される呼吸の早い段階で送達されていたとすると、1slpmのNOが吸入ガスのより大きな割合を占めることになるため、過剰投与のレベルはより高くなったであろう。
【0074】
臨界オリフィスは、受動的かつ静的なものとすることもできるし、又は能動的に制御されるものとすることもできる。いくつかの実施形態においては、NO送達装置は、吸入ガス流量制限部を能動的に制御して、システムを通る吸入ガスの、より一貫した質量流量を維持してもよい。
図16は、測定された吸気質量流量に応答して吸気ガス通路の流量制限部を能動的に変化させる、能動的に制御される弁又は吸気流量コントローラ362を空気入口に有する、NO吸入器装置360を示す。ユーザが強く吸うと、コントローラは、より小さな有効オリフィスサイズに弁を調節する。ユーザが柔らかく吸うと、コントローラは、目標吸気流量を維持するために、より大きな有効オリフィスサイズに弁を調節する。図示された実施形態においては、コントローラ366は、流量センサ364を使用して測定された吸気流量に基づいて、吸気流量コントローラを調節する。いくつかの実施形態(図示せず)においては、吸気圧は、流量コントローラと患者との間で測定され、コントローラは、本装置の事前の特徴付けに基づいて、目標流量に関連する特定の吸気圧を維持するように、吸気流量コントローラを調節してもよい。
【0075】
投与レベル及び投与制御
吸入器装置によって送達されるガス濃度は、低濃度(例えば0.5ppm)から圧縮ガスシリンダの最大濃度(例えば800ppm又は2000ppm)までの範囲となり得る。いくつかの実施形態においては、NOは、1時間毎に1回、500ccの呼吸で200ppmを送達する速度で、吸気流に送達される。いくつかの実施形態においては、目標数のNO分子が呼吸に送達される(例えば呼吸当たり0.7mg)。いくつかの実施形態においては、目標数のmgのNOが単位時間当たりに送達され(例えば6mg/時)、ここでNO装置は、処方された投与速度及び時間経過と共に投与される呼吸の量に基づいて、各呼吸に送達されるNOの量を変化させる。いくつかの実施形態においては、NO装置は、特定の投与スケジュールを維持するように、NOパルスの継続時間、流量及び濃度のうちの1つ以上を変化させる。NOの電気的発生を伴う実施形態においては、NOパルス濃度は、プラズマパラメータ(例えば周波数、継続時間、電流、反応ガス流量のうちの1つ以上)を変化させることによって変化させられる。吸入器装置を通して送達されるNOの濃度はNO送達の目的に依存し得ることは、理解されるであろう。例えば、NO投与は、感染症を処置するために、又は血管を拡張するために、使用され得る。NO濃度の範囲は様々なものとすることができ、例えば1ppm~80ppm、1ppm~400ppm、又は1ppm~1000pmの間とすることができる。
【0076】
特定の投与スケジュールが処方される場合、この情報は、NO吸入器装置コントローラにプログラムされてもよい。例えば、ユーザが1時間毎に3回のNOの呼吸を行うこととされている場合、NO吸入器は、例えばアラームを鳴らすこと、1つ以上の照明を点灯させること、及び/又は振動させることによって、次の投与の時間であることをユーザに警告してもよい。ユーザが連続して3回の呼吸を行うことが期待される場合、NO吸入器は、呼吸をカウントし、ユーザが投与された呼吸の間を長く空けすぎた場合、又は一連の呼吸のうちの1回を忘れたと思われる場合に、アラームをトリガしてもよい。例えば、ユーザが連続して3回の呼吸を吸入することとされ、3回の呼吸のうち2回しか吸入していない場合、本装置はリマインダアラームを鳴らして、もう1回のNOの呼吸を吸入する必要があることをユーザに通知することとなる。各臨床用途は、特定の投与レベル及び目標曝露時間を有することとなる。例えば、細菌を死滅させることは、NO濃度が最小閾値を最低限の時間の間超えることを必要とする。ユーザが、十分な曝露時間に帰着するように本装置を管理しない場合(例えば3回の呼吸の代わりに2回の呼吸)、本装置は、いくつかの例においては、ユーザが3回の呼吸のシーケンス全体を再び繰り返すことを要求することができる。
【0077】
いくつかの実施形態においては、NO含有ガスは、
図17に示されるように、吸気流量が目標レベルにあるときに一定の流量で送達される。
図17は、時間経過に伴う吸気流量380の例示的なグラフを示し、吸気流量がゼロから管理限界までどのように増大するかを示す。吸気流量がその流量の許容範囲内(例えば±10%)である間、NOが送達される。
【0078】
図18に示された例示的なグラフにおいては、吸気流量390が閾値を超えているときにはいつでも、NOがユーザに送達される。このことは、呼吸の継続時間にわたる投与を確実にし、吸気イベントの終了時にNO装置を空気でパージするために十分なガス流量があることを確実にする。流量が吸気閾値未満に減少した後も吸気は継続するため、装置内に残留するNOは、吸気が終了する前に装置から除去される。このことは、使用と使用との間の装置内でのNO2の形成を軽減する。呼吸内のNO濃度は、
図18に示されるように、呼吸の間に変化する。このことは、NO流量は一定であるが、吸気流量が変化することによる。より高い吸気流量は、より低いNOの吸入濃度に帰着する。このアプローチは、目標量のNO分子(例えばmg/時の投与)を送達する用途に対しては許容可能であり得るが、最小吸入濃度を必要とする用途(例えば感染症処置)においては十分な濃度を達成しないこととなり得る。
【0079】
図19は、吸気イベントの間のNOのパルスの発生/送達を示す、時間経過に伴う吸気流量400の例示的なグラフを示す。いくつかの実施形態においては、NOパルスは、吸気が検出されるとすぐに発生させられ/送達される。いくつかの実施形態においては、NOパルスは、吸気の間の別の時点(例えば最大吸気流量、吸気流量が遅くなり始める変曲点)において送達される。
【0080】
いくつかの実施形態においては、パルスは、吸気が検出されてから設定された時間(例えば0.25秒)後に送達される。
図20は、
図19に示されるものと同じパルスの送達が、吸気イベント内でのより後の、吸気イベント内の高流量の期間と一致することを示す例示的なグラフを示し、このパルスは、より低い吸入濃度及びより大きな吸入ガス投与の体積と相関し、それによって肺のより大きな部分に到達する。
図20におけるシステムコントローラは、吸気流量が閾値を超えたときに呼吸を検出し、そのときに遅延カウンタが開始する。NOパルス送達タイミングを決定する他のアプローチが使用されてもよい。NO吸入器はNOをユーザに直接送達するが、プラズマチャンバからユーザまでの通過時間があることは、留意されるべきである。いくつかの実施形態においては、パルスのタイミングを決定する際に、この通過時間が考慮に入れられる。例えば、吸気イベントに0.5秒のNOパルスを送達することが望ましく、吸気を検出するためにおよそ50ミリ秒かかり、NOがユーザの口に到達するために更に25ミリ秒の通過時間がかかる場合、NO送達装置は、遅延を考慮してNOを目標時間に到達させるために、NOの発生/送達を425ミリ秒(500ミリ秒-50ミリ秒-25ミリ秒)遅延させる。
【0081】
流れ支援
空気の吸入に困難性を有するユーザもいる。こうした一部のユーザに、装置を通して吸気することを要求することは、ユーザの吸気努力に流れの抵抗を加えることとなり得る。いくつかの実施形態においては、吸入器装置は、ユーザの吸気努力を補うためにユーザへとガスを推進する(すなわち陽圧換気)手段を含む。吸入補助構成要素は、吸入器から分離していてもよいし、又は吸入器に一体化されていてもよい。いくつかの実施形態においては、吸入器は、ユーザに向けて空気を押し出すための電動ポンプ(例えばモータ及び送風機、ファン、ダイヤフラムポンプ)を含む。
【0082】
いくつかの実施形態においては、NO含有ガスをユーザに押し出すために、圧縮ガスのシリンダの圧力が利用される。いくつかの実施形態においては、ユーザに向かって空気を推進するために、空気で充填された圧縮ガスシリンダが利用される。いくつかの実施形態においては、NOは、放出された空気中で電気的に発生させられる。このことは、医療的に純粋な空気を提供して、入口スクラバ及び/又は湿度制御の必要性をなくし、高純度のNOを産生し得る。
図21は、吸入される空気が装置内の圧縮ガスシリンダ412から供給される、NO吸入器装置410の実施形態を示す。圧縮ガスシリンダからの流れは、ユーザが手動弁414を操作することによって制御されてもよいし、又はユーザによって作動させられたスイッチ418を検出して能動的にガス弁を開く装置内の処置コントローラ416によって制御されてもよい。図示された実施形態においては、圧縮ガスは、それぞれ流量及び流量プロファイルを制御する弁及びノズル420を通って流れる。いくつかの実施形態においては、圧縮ガスは、酸素/窒素混合物からなる。いくつかの実施形態においては、窒素に対する酸素の比は、50/50である。典型的な大気レベルである21%よりも高いレベルの酸素は、NO発生の効率を向上させ、ユーザに追加的な酸素を提供することができる。
【0083】
いくつかの実施形態においては、
図21に示されているNO送達装置は、基地局において再充電することができる。基地局は、装置のバッテリを充電するために電気的接触を行い、及び/又は圧縮ガスシリンダへと空気を圧縮する。
【0084】
図22は、筐体434中に配置された圧縮ガス容器432からNOを供給するNO吸入器装置430の実施形態を示す。いくつかの実施形態においては、圧縮ガス容器は純粋なNOで充填されている。(図示されるような)いくつかの実施形態においては、圧縮ガス容器は、NOと不活性ガス(例えばN2又はヘリウム)との組み合わせで充填される。本装置を展開するために、ユーザはマウスピース436を口に挿入し、吸入する。ユーザが吸入するとき、ユーザはガス弁440を開くボタン又は起動スイッチ438を押下し、ガス弁440はNO含有ガスを空気ストリーム中に放出する。空気入口における粒子フィルタが、ガスストリームからあらゆる環境微粒子を除去する。いくつかの実施形態においては、NOガス容器の圧力は、弁の前の圧力調整器を用いて低下させられて、弁における圧力を低下させ、容器から出る流量を減少させる。高濃度の一酸化窒素容器は、所与の投与に対して、より少ない流量しか必要としない。このことは有利となり得て、容器内の圧力の変化が各パルスで小さくなり、吸気流中の過度に低温の一酸化窒素ガスを防止する。
【0085】
図23は、スマートガス送達を有するNO吸入器装置450の実施形態を示す。ユーザが吸入するとき、ユーザは起動スイッチ452を押下し、これが処置コントローラ454によって認識される。コントローラは、流量センサ456(例えば図示された熱線センサ)を用いて、吸入ガスの流量を測定する。取り外し可能なガスシリンダ458中の高圧NOガスは、圧力調整器460によって減圧される。圧力調整器の下流の圧力センサ462は、利用可能なNOガス圧力をコントローラに通知する。NOガス圧力が閾値を下回った場合、コントローラはガスシリンダを交換するようユーザに促してもよい。コントローラはまた、NOガスを吸気ガスストリーム中に放出する弁464を制御する。いくつかの実施形態においては、弁は、一貫したレベルまで開いてNOが流れることを許容する二値弁である。いくつかの実施形態においては、二値弁は、平均して目標NO流量を提供するようにパルス幅変調される。いくつかの実施形態においては、弁は、可変流量のNOが吸気流に導入されることを可能とする比例弁である。いくつかの実施形態においては、NOは、比例的に吸気流に導入される。いくつかの実施形態においては、NOは、気道及び/又は肺の特定の領域を処置するために、吸気の特定の部分(例えば開始時、中間、終了時)に投与するように放出される。周囲条件センサ466は、周囲圧力、温度及び湿度のうちの1つ以上を測定するためにコントローラによって使用される。いくつかの実施形態においては、コントローラは、放出するべきNOの量を決定するためのアルゴリズム又はルックアップテーブルへの入力として、これらの測定値を使用する。本システムは、バッテリによって給電される。いくつかの実施形態においては、バッテリは内蔵されており、本装置は使い捨てである。いくつかの実施形態においては、バッテリは交換可能である。他の実施形態においては、バッテリは再充電可能である。
【0086】
いくつかの実施形態においては、ユーザは、筋力及び/又は体重を使用して、NOを有する十分な空気を押し込むのを支援することができる。
図24は、ユーザがグリップを握ってリザーバ472を圧縮し、吸気においてユーザの横隔膜を補助する、NO吸入器装置470の実施形態を示す。空気は、一方向弁474等の逆止弁を通って、リザーバ472(例えば蛇腹)に入る。ユーザがグリップを握ると、はさみ機構476が蛇腹を圧縮し、吸入器478を通してユーザに空気を強制的に送る。いくつかの実施形態においては、はさみ機構は、機構を初期位置に戻すことを補助するばね(例えば図示されるような引張ばね、又は圧縮ばね)を含む。
【0087】
図25は、吸入補助設計を有するNO装置吸入器480の別の実施形態を示す。空気は、一方向弁482を通ってリザーバ484に入る。この実施形態においては、リザーバは硬質のバルーンであるが、他のタイプの自己充填リザーバが使用されてもよい。ユーザがバルーンを押しつぶすと、バルーン内の空気が第2の一方向弁486及び吸入器装置488を通ってユーザへと押し出される。第2の一方向弁は、吸入器装置を通してユーザから空気を引き離すのではなく、環境からの新鮮な空気でバルーンが再充填されることを確実にする。
【0088】
図26Aは、或る体積の空気を圧縮するために脇の下の筋肉を利用する、装置の実施形態を示す。同様の筋肉的アプローチが、空気リザーバを膝の間、膝の後ろ、又は力を加える身体の任意の部分の間に置くことによって達成されてもよい。
【0089】
図26Bは、ユーザがリザーバの上に座り、ユーザの体重が圧力を作り出して肺を満たすのを支援する、装置の実施形態を示す。
図26Cは、リザーバ上にユーザの足を置き、ユーザの体重をかけてリザーバ内の空気を加圧する、装置の実施形態を示す。いくつかの実施形態においては、
図26B及び
図26Cに示されるように、ユーザの身体の質量が静圧ヘッドを作り出す。この圧力により導出された流れは、ユーザが呼吸を開始するときに吸入器装置によって制御されてもよい。いくつかの実施形態においては、ユーザは、ユーザへのガス流を開始させる吸入器装置上の空気圧ボタン又は電気ボタンを押下する。ボタン押下は、加圧空気供給源からの弁を直接開く(空気圧弁)か、又は間接的に開く(電気回路がボタン押下を認識し新鮮な空気の弁を電気的に開く)。いくつかの実施形態においては、空気リザーバのサイズは、複数回の呼吸のために加圧空気を送達するのに十分なものである。
【0090】
ユーザが筋力及び/又は体重を使用して送達ガスにおける圧力を生み出すこれらの概念は、加圧によってガスのユーザ吸入が増強され得る他の用途にも適用される。例えば、噴霧された薬物流、気化された薬物流、エアロゾル薬物送達、乾燥粉末薬物送達、及びソフトミスト薬物送達である。いくつかの実施形態においては、ユーザが目標圧力を超える圧力を発生させた場合に、送達されるガスにおいて一定の圧力が維持されることを可能にするために、圧力調整器が利用される。いくつかの実施形態においては、特定の吸気ガス流量をNO吸入器に導入するために、質量流量コントローラが利用される。質量流量コントローラは、別個の装置とすることもできるし、圧力発生装置の一部とすることもできるし、又は吸入器の一部とすることもできる。
【0091】
陽圧が安全限界を超えると、肺外傷が生じ得ることは、留意されるべきである。いくつかの実施形態においては、陽圧装置は、肺組織を損傷させることからユーザを保護するための圧力開放弁を含む。いくつかの実施形態においては、安全限界は、10cmH2O~40cmH2Oである。いくつかの実施形態においては、この安全限界は、ユーザ及び/又は処方臨床医によって調節されてもよい。
【0092】
ガス混合
図11は、NOが流れの中心において空気ストリームに導入される装置の実施形態を示す。このことは、NOがユーザに入るときに流れの中心に残ることに帰着し得る。いくつかの実施形態は、NOを吸気と混合して、より均質な混合物にするために、様々な混合技術を利用する。このことは、肺内での投与を均一にすることができる。
図27Aは、NO流が空気ストリームと平行に導入され、NOを空気流全体に分散させるスプレーノズル502(例えばシャワーヘッド)を通って出る、吸入器装置500の実施形態を示す。
図27Bは、空気/NO混合物を静的混合要素512に通して、より均質なガス混合物を生成する、吸入器装置510の実施形態を示す。他の実施形態は、2つのガスストリーム(図示せず)を混合するために動的混合器(例えば回転ファン)を利用することを含む。
図27Cは、混合と共に吸入ガスストリームを清浄化するためにスクラバ522及びフィルタ524を利用する吸入器装置520の実施形態を示す。
【0093】
バイパス流
NOの投与を受けるためにユーザによって必要とされる労力の量を低減させる別の手段は、
図14に示されるように、バイパスチャネルを有することである。
図14は、空気がバイパスチャネル332に入りNO流と合流する、NO吸入器装置300の実施形態を示す。NOチャネルとバイパスチャネルとの間の流れのバランスは、受動的に管理されてもよいし、又は能動的に管理されてもよい。図示される実施形態においては、受動的オリフィス334、336が各通路に配設されて、それぞれを通る流れを制限する。いくつかの実施形態においては、各通路を通る流量が測定され、1つ以上のオリフィスが、バイパスチャネルからのNO含有ガスと空気との目標混合比を達成するように調節される。いくつかの実施形態においては、バイパスチャネルは、空気以外のガス(例えば酸素)のために利用される。一例においては、75%のバイパスガス流に対し25%のNO経路流の目標比が目標とされる。NO吸入器コントローラは、バイパス及びNOガス流の流量測定値を使用して、実際の流量の比を評価し、1つ以上の流量制限部及び/又は流量コントローラを調整して、閉ループの態様で目標に向けて比を変動させる。
【0094】
呼気分析
NO吸入器のいくつかの実施形態においては、本装置はまた、ユーザの呼気を分析するために使用されてもよい。流量センサ及び/又は圧力センサを使用して、吸入器は呼気ガス流についての情報を収集することが可能である。いくつかの実施形態においては、吸入器は、流量情報を収集し、それを統合して吐き出された空気の量を決定する。いくつかの実施形態においては、この情報は、肺活量を決定するために利用される。いくつかの用途においては、肺活量の測定値は、胸腔内の腫瘍サイズの指標を提供する。いくつかの実施形態においては、1回以上の呼吸の算出された体積は、1回以上の後続する呼吸の1回換気量を予測するために利用される。1つの実施形態においては、ピーク吸気流量のタイミングは、吸気イベントの中間点としてマークされる。このタイミング点は、呼吸の前半又は後半に薬物を送達するためのガイドとして利用することができる。いくつかの実施形態においては、吸入器は、ユーザが発生させることができる圧力を測定する。いくつかの実施形態においては、吸入器は、圧力データ及び/又は流量データを処理して、測定された信号のわずかな変動に基づいて心拍数及び肺高血圧の程度を決定する。いくつかの実施形態においては、本装置は、患者の呼吸パターン(例えば呼吸期間、流量範囲、1回換気量、吸気流量プロファイル)を特徴付け、予測の目的のためにその情報を使用する。例えば、患者の典型的な1回換気量は、一連の呼吸から平均1回換気量を算出することによって決定されてもよい。本装置はこのとき、後続する呼吸が同様の1回換気量を有することとなると仮定してもよい。所与の1回換気量に対して、より速い流量で充填される呼吸は、より遅い流量の呼吸よりも、継続時間が短くなる。いくつかの実施形態においては、送達装置は、初期流量に基づいて呼吸の中間点のタイミング又は呼吸の継続時間を予測し、目標とされるべき呼吸の部分(例えば前半、後半)に対応するNOパルスを発生させることによって応答する。
【0095】
流量管理
吸入空気を伴うNOの正確な濃度は、既知の流量を必要とする。いくつかの実施形態においては、吸入器は、吸入ガスストリーム流量を測定し、比例する量のNOを導入する。他の実施形態においては、吸入器は、ガス流がより明確になるように、ユーザへのガス流を管理する。いくつかの実施形態においては、吸入ガス流が吸入器装置の最大投与速度を超えることを防止するために、臨界流量制限部(例えばオリフィス、メッシュ、又は有孔シート)が使用される。そうでなければ、高流量の吸入ガスが、投与不足となる。いくつかの実施形態においては、吸入器は、正確な投与を容易化するために、ユーザが吸入する際に空気の既知の質量流量を維持するように、吸入ガス流内の流量制御を動的に変化させる(例えば可変抵抗を使用する)。いくつかの実施形態においては、装置コントローラは、吸気イベント中に流量制御を調整するように弁を操作して、目標範囲内の流量を達成する。いくつかの実施形態においては、NO装置は、吸気流量が規定の範囲内にあるときはいつでも、一定の産生量(例えば1000ppm.lpm)を提供する。このアプローチは、特定の産生レベルにおいて電力効率について本システムが最適化されることを可能とする。
【0096】
いくつかの実施形態においては、吸入器は、ユーザが目標範囲内の吸気流量を達成することができるように、ユーザフィードバックを提供する。いくつかの実施形態においては、吸入器は、2つ以上の点灯インジケータのアレイを含む。例えば、流量が高すぎることを示すために1つの照明又はランプが使用され、流量が低すぎることを示すために1つのランプが使用されてもよい。いくつかの用途においては、流量が適正であることを示すために、第3のランプが利用される。より細かい分解能のフィードバックのために、追加的なランプが利用されてもよい。いくつかの実施形態においては、吸入器は、流量を示す音を発するためにスピーカを利用する。一例においては、ユーザが吸入する際に、吸入器によって発せられる音の周波数が、目標吸入流量に対応する最大周波数まで増大する。ユーザが目標流量を超えると、音の周波数は減少し始め、最適流量を超過されたことを示す。いくつかの実施形態においては、発せられる音は、吸入流量が遅すぎるときにはパルス状であり、許容可能な流量が達成されると連続的になる。
【0097】
吸入流量を管理するシステムについては、どの範囲の吸入流量がユーザにとって許容可能となり得るかには限界がある。健康な人であっても、10秒~20秒の期間にわたって吸入することは不快に感じるであろう。したがって、吸気が制限され得る流量の範囲は有限であり、典型的には1lpm~40lpmの範囲である。所与の吸入体積に対して、より遅い流量(流速)は、より長い時間にわたってユーザの肺を満たし、吸入の間のNO産生レベル(ppm.lpm)をより低くすることを可能にする。
図28は、吸入流量が反応ガス流量に等しい(すなわち吸入流量の全体がプラズマチャンバを通過する)、電気NO発生器についての例示的な吸入体積及びNO産生レベルの表を示す。
図28は、目標濃度を達成するために、より速い吸気流量が、より高いNO産生レベルを必要とする様子を示している。吸気流量を制限することによって、NO発生器及び/又はNO送達装置は、目標を達成するのに十分なNOを送達することができる。
【0098】
いくつかの実施形態においては、シリンダベースのNOについては、NOは、典型的には窒素のような、不活性搬送ガスでパッケージングされてもよい。一連の呼吸に対するNO投与を含む処置(例えば人工呼吸器処置)は、NOガス混合物による大気酸素レベルの希釈のため、補足の酸素を必要とし得る。例えば、800ppmのシリンダでの80ppm(シリンダ濃度の10%)での投与は、吸入空気を窒素及びNOで10%希釈することとなり、それにより人工呼吸器用途においてはO2レベルを21%から19%に低減させる。より低い酸素濃度で一連の呼吸を行うことは、ユーザにおける低酸素血症に帰着し得るが、数分以上毎に離散的な単一の呼吸を行うことは、ユーザの酸素供給にはほとんど影響がない。いくつかの実施形態においては、ユーザは、酸素を含まない希釈されていないシリンダガスの呼吸を定期的に吸入する。いくつかの実施形態においては、吸入体積は、大気空気と圧縮ガス供給源からのガスとの混合物である。
【0099】
併用療法
いくつかの実施形態においては、NO吸入器は、他の吸入療法と組み合わせて、又は他の吸入療法と連続した投与で、利用される。吸入されたNOは、気道及び血管樹における平滑筋を弛緩させることによって気道及び肺血管系を拡張し、気道及び血管抵抗を低下させ、それによって気流及び肺血流を増大させる。これらの効果は、酸素の取り込みを向上させ、気道及び肺の血管内における同時に与えられる吸入療法も向上させる。
【0100】
いくつかの吸入薬剤は、肺血管系内での低い分布を有し、そのため、吸入NOと同時に与えることが、気道、肺組織、又は肺血管系であっても標的組織へのかかる薬物の浸透を促進させることができる。NOは、他の薬剤(複数の場合もある)と同時に送達されてもよいが、他の薬剤に先立ち又は他の薬剤の後に送達されてもよい。吸入されたNOの効果は30秒~60秒程度で体内で消失するものであり、そのため、その時間枠内での追加的な薬剤の吸入が利益を有することが期待され、タイミングが近いほど顕著な効果をもたらすことができる。
【0101】
薬物と組み合わせて送達されるNOの一例は、タバコからのニコチン送達である。タバコの煙には数百ppmのNOが存在し、ニコチンの取り込みを加速する効果を有する。市販の気化装置は、NOを含まないニコチンを送達する。いくつかの実施形態においては、NOはニコチンと組み合わせて送達されてもよい。このことは、タバコの煙に関連する危険な微粒子及びタールを伴わずに、タバコと同様の投与及び効果を達成するために行われる。
【0102】
いくつかの実施形態においては、NO発生器及び/又はNO送達特徴部は、別の吸入薬剤装置に一体化される。1つの実施形態は、噴霧器/NO送達装置の組み合わせからなる。別の実施形態は、ガス混合器とNO発生器との組み合わせからなる。別の実施形態は、NO発生器及び薬物熱気化器からなる。これらの例のそれぞれにおいては、ユーザは、エアロゾル、粉末、又はガスの形態で吸入された薬剤を受容することとなる。これらの物質の取り込みを促進するための、様々な戦略が存在する。いくつかの実施形態においては、ユーザはまず、NO含有ガスの1回以上の呼吸を吸入して、気道及び肺血管系を拡張し、肺を通る空気流及び血流を増大させる。この後に、吸入された物質の後続する一連の1回以上の呼吸が続く。このアプローチは、「交互処置」と呼ばれる。いくつかの実施形態においては、ユーザは、NOの独立した吸入と、他の物質の独立した吸入とを繰り返す。いくつかの実施形態においては、このことは2つの装置間を切り換えることによって達成されてもよいが、ユーザにとって複雑で負担となり得る。いくつかの実施形態においては、単一の装置が、NOと代替物質との交互の呼吸を提供する。このことは、ユーザが単一の装置を通した呼吸に集中するだけでよいため、療法を大幅に簡素化する。1つの例においては、NOを伴って2回の呼吸が投与され、噴霧された薬物を投与される単一の呼吸が後続し、次いで再びNOが送達される。このことは、複数回の呼吸の連続の間繰り返されてもよい。
【0103】
単一の装置に療法を組み合わせることはまた、装置を大幅に簡素化する。2つの薬物送達方法は、バッテリ、ユーザインタフェース、マイクロコントローラ/プロセッサ、呼吸検出機構、電源、充電回路、患者センサ、使い捨てカートリッジ、ユーザディスプレイ、警報システム、及び筐体のうちの1つ以上を含む様々なシステム構成要素を共有してもよい。
【0104】
NOと別の薬物との組み合わせの送達のために、様々なアーキテクチャ及び装置が使用され得る。いくつかの実施形態においては、一体化された装置が、2つの別個の流路を含み、一方は二次的薬物供給源(例えば噴霧器)を有し、もう一方はNO供給源を有してもよい。
図29は、NOと二次的薬物とのための別個の流路を有する吸入器装置530の実施形態を示す。周囲空気等の反応ガスは、本システムに入り、NO発生器532、スクラバ534、及びフィルタ536を通過して、マウスピース538に到達する。二次的薬物はキャニスタ540に貯蔵され、アクチュエータ542(例えば振動メッシュ噴霧器、スプレーノズル、流量コントローラ、粉末薬物導入器等)によって空気ストリームに導入される。ユーザが吸入する際、ユーザは、同時の薬物の送達のために両方のガス流ストリームを通してガスを吸い込む。図示されているように、スクラバと二次的薬物キャニスタとは、別個の構成要素である。いくつかの実施形態においては、これらは単一の使い捨てアセンブリに組み合わせられる。この種のシステムは、吸入器を通して送達される他の薬物(例えばアルブテロール)との組み合わせ療法に使用されて、送達される薬物の取り込み/効率を向上させることができる。気道平滑筋を含む末端気道を拡張することによって、及び対象となる薬物を取り込むのに利用可能な末端肺動脈中の血液体積を増大させることによって、末端気道から末端肺動脈への、更には肺胞壁を横切る、薬物輸送が増大する。いくつかの実施形態においては、このアプローチのためのNO投与量は、1ppm~40ppmの範囲内である。
【0105】
図30Aは、薬物組み合わせ送達装置の形態の吸入器装置550の別の実施形態を示す。この実施形態においては、二次的薬物は、加熱器552を使用して加熱されて蒸気となり、ユーザの吸気流に引き入れられ得る。ユーザによって吸入された空気の一部又は全部は、NO発生器554及びスクラバ556を通過した後に、二次的薬物の気化チャンバ558を通過してユーザに達する。NO発生器及び加熱要素の独立した制御は、組み合わせ薬物送達装置が、呼吸内又は呼吸間の独立した送達スケジュールに従って2種の薬物を送達することを可能とする。いくつかの実施形態においては、吸入NOレベルは最大20ppm又は40ppmである。いくつかの実施形態においては、吸入NOレベルは最大100ppmである。いくつかの実施形態においては、吸入レベルは最大1000ppmであり、タバコからの吸入NOレベルを模倣する。いくつかの実施形態においては、NO発生器及びスクラバ(図示せず)から粒子を除去するためにフィルタが利用される。いくつかの実施形態においては、スクラバ、フィルタ及び二次的薬物は、別々に包装され廃棄される。いくつかの実施形態においては、本システムの1つ以上の使い捨て要素が一緒に包装される。いくつかの実施形態においては、本システム全体が使い捨てである。
図30Bは、NO含有ガスと気化された二次的薬物とがマウスピースに入るまで分離されたままに保たれる、吸入器装置560の同様の実施形態を示す。この実施形態においては、ユーザに入る前に混合ガスを均質化するために、静的混合器562がマウスピース中で利用される。
【0106】
図31は、二薬物送達装置についての制御アーキテクチャのブロック図の例示的な実施形態を示す。
図31は、単一のコントローラ/マイクロプロセッサ570を示しているが、タスクを2つ以上のコントローラに分散させることもできる。いくつかの実施形態においては、安全性/冗長性のために、2つ以上のコントローラがある。いくつかの実施形態においては、コントローラは、ユーザから目標処置条件572及び安全限界574を受信する。いくつかの例においては、ユーザは薬物の服用者であり、他の例においては、ユーザは臨床医である。いくつかの実施形態においては、コントローラは、薬物供給源から目標投与量及び投与プロファイルを読み取る(例えば薬物又は薬物供給材料を含むキャニスタ上のメモリ装置から読み取る)。コントローラはまた、1つ以上のセンサを通して、周囲条件576(例えば圧力、温度、湿度)を監視する。周囲条件は、いくつかの例においては、吸入質量流量を決定するための空気密度を導出するために利用される。他の例においては、吸入空気の水分量(直接測定されてもよいし又は相対湿度測定値から導出されてもよいパラメータ)が、システム内での凝縮の可能性(例えばガスの圧縮又は圧力容器から放出される低温ガスの導入による)を把握するために利用される。コントローラは、吸気流量578を測定するために1つ以上のセンサを利用する。いくつかの実施形態においては、コントローラはまた、1つ以上の内部センサ580を使用して、NO発生アルゴリズムへの入力として、プラズマチャンバ内の圧力を測定する。コントローラを含むシステムの様々な部分は、バッテリ582等の内部電源又は外部電源のいずれかからの電力を利用する。いくつかの実施形態においては、コントローラはまた、吸気流量制御584を用いて吸気流量を調整するために、吸気ガス流路内の流れ抵抗を操作する。コントローラは、NO供給源586及び二次的薬物供給源588を制御し、これらの機能からもフィードバックを受信することができる。例えば、加圧ガスを送達する1つの実施形態においては、コントローラは、ガスを放出する弁を制御し、圧力センサを用いてガスの供給源の圧力を測定する。
【0107】
NO発生器/気化装置の組み合わせのいくつかの実施形態においては、気化される薬物の熱を上昇させるために、プラズマチャンバからの熱が少なくとも部分的に利用される。いくつかの実施形態においては、プラズマチャンバと気化チャンバとは壁を共有し、プラズマチャンバからの熱が、この壁を通して、気化されるべき薬物に伝導される。気化されるべき薬物の温度は、温度センサ(例えばIRセンサ、熱電対、サーミスタ等)を用いて測定される。薬物の気化のための目標温度を達成するために、加熱装置(例えば抵抗加熱器、熱電等)を通して、補足的な熱エネルギーが加えられてもよい。
【0108】
図32は、二次的薬物が光化学プロセスを使用して放出される、吸入器装置590の実施形態を示す。二次的薬物を含むチャンバ594の上方にある光源592は、吸気ストリーム中に放出される二次的薬物の量を変化させるように調整される。吸気ストリームは、ユーザが周囲の空気をNO発生器及びシステムを通して吸うことにより発生させられる。いくつかの実施形態においては、NOは、光化学プロセス(図示せず)から発生させられる。光化学プロセスは、光出力を調整して薬物放出を制御する処置コントローラによって制御される。本装置は、典型的には、曝露の継続時間、光強度、材料温度、ガス圧力、光化学材料の使用時間、及び他の因子のうちの1つ以上の関数である、薬物放出プロファイルを用いてプログラムされる。いくつかの実施形態においては、薬物供給源の下流のセンサが、発生させられた薬物の量を測定するために利用され、薬物放出の閉ループ制御を可能とする。いくつかの実施形態においては、光源は、パルス幅変調された信号を使用して制御される。いくつかの実施形態においては、光源は、電圧及び/又は電流の供給を変調させることによって制御される。
【0109】
光化学放出プロセスのいくつかの実施形態においては、光に曝露される光化学物質の面積が制御され、光強度は変化しない。いくつかの実施形態においては、光を表面に透過させる窓が、制御された速度で感光材料の表面にわたって移動し、制御された量の薬物を放出する。いくつかの実施形態においては、特定の位置からNOを放出するために、光化学材料の表面上の可変位置に、レーザが向けられる。いくつかの実施形態においては、レーザは、直交(XY)座標フレーム中で移動する。いくつかの実施形態においては、レーザは、薬物放出材料の表面上を螺旋状(極座標フレーム)に移動する。いくつかの実施形態においては、感光材料のシートが巻かれた状態からほどかれ、レーザ/光源が(ドットマトリックスプリンタのヘッドのように)X方向にのみ移動して、制御された量の薬物を供給源材料から放出する。他の実施形態においては、薬物放出を調整するために、光反応材料上の光強度及び光位置の両方が、コントローラによって変化させられる。制御されたNO薬物放出に対する同様のアプローチは、温度に基づいて放出する材料に対して、レーザの代わりに加熱されたヘッドを用いて達成することができる。
【0110】
独立した薬物送達制御
ユーザが吸入する際、本装置のいくつかの実施形態は、NO流路又は二次的吸入薬物ガス流路のいずれかを通る吸気流を許容する。このことは、NOと他の吸入薬物(複数の場合もある)との間の反応の可能性を最小化し得る。
図33は、装置コントローラによって制御される三方弁602等の弁を入口に含む、二薬物NO送達装置600の実施形態を示す。弁は、NO供給源604からのNO若しくはキャニスタ606からの二次的薬物のいずれか、又はその両方の流れを許容するように配置される。いくつかの実施形態においては、弁(又は弁の組み合わせ)は、両方の薬物チャネルを通る同時の流れ、又は薬物パルスの重複を許容するように構成されてもよい。
【0111】
いくつかの実施形態においては、本システムは、
図34の例示的なグラフに示されるように、単一の呼吸内にNO及び1つ以上の追加的な薬物を連続して送達する。第1の薬物送達610は、吸気が検出されたとき又はユーザが送達を開始したときのいずれかに開始される。いくつかの実施形態においては、第1の薬物送達は、設定された時間の後に終了する。いくつかの実施形態においては、第1の薬物送達は、特定の量の吸気ガスが投与された後に終了する。いくつかの実施形態においては、第1の薬物送達は、目標分子数の第1の薬物が送達された後に終了する。いくつかの実施形態においては、第1の薬物送達は、吸気における検出されたイベント(例えばピーク吸気流量又は最小吸気圧)の後に終了する。第2の薬物送達612は、第1の薬物送達が完了した後に開始されてもよい。いくつかの実施形態においては、第2の薬物の開始は、特定の時間だけ遅延させられてもよい。いくつかの実施形態においては、図示されていないが、第1の薬物が、呼吸の終了時に再び投与されてもよい。提案された吸入器の設計は、第1の薬物、第2の薬物及び/又は任意の追加的な薬物の送達の任意の順序及び量をサポートし得ることが、明らかであろう。さらに、2種以上の薬物の同時送達(すなわち重複する薬物送達プロファイル)も適宜、実行される。いくつかの実施形態においては、NOは、患者の気道及び/又は肺内の平滑筋を弛緩させるために、最初に1回以上の呼吸に送達され、1種以上の追加的な薬物の送達が後続する。
【0112】
いくつかの実施形態においては、複数の薬物の制御された送達は、2つ以上の独立したコントローラによって管理される。いくつかの実施形態においては、単一のコントローラが、全ての薬物についてのタイミング及び薬物送達を管理する。センサ情報を共有し薬物送達を連係させるために情報を共有する複数のコントローラを用いた、他の組み合わせも可能である。いくつかの用途においては、本装置は、一方の薬物を他方の薬物なしで送達してもよい。
【0113】
いくつかの実施形態においては、本装置は、規定のパターンに従って、NO、空気、及び1つ以上の他の薬物を送達する。NOは急速に代謝されるが、薬物間を切り換えるときに、肺気道をパージし薬物間の相互作用を更に低減させるために、薬剤を有さない1回以上の呼吸が処置パターンに挿入されてもよい。
図35は、複数回の呼吸にまたがるパターンを示す例示的なグラフを示す。最初に検出された呼吸に薬物1が投与され、薬物が投与されない2回の呼吸が後続し、薬物2が後続し、薬物が投与されない呼吸が後続し、次いでこのパターンが繰り返される。このアプローチは、薬物1の効果が現れるまでに時間がかかる場合、及び/又は薬物1と薬物2とが化学的に適合しない場合に、有効となり得る。このパターンは、1回の呼吸内で生じてもよいし、又は複数回の呼吸にまたがって生じてもよい。薬物送達のパターンは、一方の又は両方の薬物について効果を発揮するのに必要とされる時間、各薬物の目標投与量(例えばmg/時)、パルス状に送達するための各薬物の最小/最大有効量、薬物間の相互作用の可能性、投与のための目標とされる呼吸/解剖学的構造の部分、1つ以上の薬物が消失するまでの時間、患者の呼吸パターン(速度、1回換気量、吸気/呼気比等)、並びに他の生理学的な処置及び薬物関連の因子のうちの1つ以上を考慮して、装置コントローラによって自動的に導出されてもよい。
【0114】
ウィーニング
いくつかの実施形態においては、吸入器装置は、1つ以上の薬物の送達される投与量を時間経過と共に減少させる、ウィーニング特徴部を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、各呼吸で送達される薬物の量が減少させられる(例えば、より低い濃度、より短いパルス)。いくつかの実施形態においては、本装置は、投与と投与との間の時間を長くするために、ユーザをより長い期間ロックアウトする。
【0115】
複数の薬物送達のためのアーキテクチャ
いくつかの実施形態においては、NOは別の吸入薬物と同時に送達される。いくつかの実施形態においては、他の吸入薬物は、室温で気体である(例えば酸素、ヘリウム、亜酸化窒素)。いくつかの実施形態においては、他の吸入薬物は、室温で液体である(例えばアルブテロール、界面活性剤等)。いくつかの実施形態においては、他の吸入薬物は、室温で固体である(例えば粉末インスリン)。いくつかの実施形態においては、NOは、
図36Aに示される吸入器装置620の実施形態に示されているように、追加的な吸入薬物供給源と直列に吸入ガスストリームに導入される(すなわち両方の薬物が共通の流路に導入される)。
図36Aは、第2の薬物の後にNOが導入されることを示す。このアプローチは、図に示されるように、キャニスタから供給されるNO、及び/又は別個の空気供給源から発生させられる電気的NOに対して、良好に機能する。
図36Aに示されるNO供給源への空気経路、並びに任意のフィルタ及びスクラバは、キャニスタから供給されるNOには必要とされない。いくつかの実施形態においては、第2の薬物の後の吸気流へのNOの導入は、NOの通過時間を短くすることができ(NO2レベルを最小化し)、第2の薬物のNOへの曝露時間を短縮する。いくつかの実施形態においては、最後のフィルタ(図示せず)が、使用に入る前に、組み合わせられたガスストリームをフィルタリングする。
【0116】
いくつかの実施形態においては、NO及び追加的な吸入薬物は、
図36Bに示されるように、吸入器装置630の実施形態内で合流する2つの別個の吸気流路に送達される。マウスピース内のフィルタが、ユーザへの送達に先立ち、合流した流れをフィルタリングする。いくつかの実施形態においては、
図36Cに示される吸入器装置640の実施形態に示されるように、2つの別個の流路は、流れがユーザ内で合流するように、独立して(別個の管腔)マウスピースから出る。
【0117】
図37に示されるような吸入器装置650のいくつかの実施形態においては、NOが主吸気ストリーム中で生成される。この場合、第2の薬物をプラズマチャンバに通すことは、第2の薬物を変性させてプラズマチャンバを汚染し得るため、第2の薬物をプラズマチャンバに通すことを避けるために、NO発生の後に第2の薬物が導入されてもよい。同様に、第2の薬物とスクラバ材料との間の相互作用を防止するために、第2の薬物は典型的には、スクラバ構成要素の後に導入される。
【0118】
バッテリ充電
NO吸入器装置は、外部電源から再充電されてもよい。いくつかの実施形態においては、吸入器装置は、外部電気接続(例えばUSB、車のシガレットライタ等)を含む。いくつかの実施形態においては、NO吸入器は、外部電源から誘導的に充電される。いくつかの実施形態においては、充電スタンドがNO吸入器と共に使用される。充電スタンドは、電気的又は無線(誘導的)であっても充電接続の確立を容易化する。いくつかの実施形態においては、充電インタフェースはUSBである。他の実施形態においては、充電パッドは、吸入器装置の表面上にあり、本装置が充電器に収められたときに充電スタンドとの接触を認識する。いくつかの実施形態においては、充電接続部は、液体及び微粒子の侵入を防ぐために、ブーツ又は他の部品によって覆われている。
【0119】
データ
いくつかの実施形態においては、NO吸入器装置は、使用データを収集し記憶する。データは、有線手段又は無線手段のいずれかを使用して、NO吸入器装置にアップロードすること及びNO吸入器装置からダウンロードすることができる。いくつかの実施形態においては、充電接続は、本装置へと及び本装置からデータを転送するために使用される。収集されるユーザデータの例は、限定するものではないが、吸気流量プロファイル(時間及び流量)、及び呼吸体積を含む。収集される処置データの例は、投与頻度、平均投与レベル、送達された累積薬物、及び使用イベントの日時を含む。収集される装置データの例は、任意のアラームについてのタイプ及びタイムスタンプ、バッテリレベル、並びに使用された使い捨て部分のシリアル番号を含む。
【0120】
使い捨て部分の設計
使い捨て要素は、主装置中の構成要素よりも速い速度で消耗する構成要素を収容する。いくつかの実施形態においては、交換可能な構成要素は、以下のうちの1つ以上を含む:(1)反応ガスフィルタ、例えば電極へのアクセスを防止するための及び初期微粒子ブロック(例えば20ミクロン)のための単純な入口フィルタ、(2)放電プラズマチャンバ、マイクロ波キャビティ又はNOのボトル/容器等、使い捨ての場合により安価でより寿命の短い材料で作ることができる、NO供給源(例えば放電電極はステンレス鋼、鋼、及びタングステンから構成され得る)、(3)NO2減少材料(例えばソーダ石灰、TEMPO、金属有機骨格(MOF)、アスコルビン酸)、(4)HEPAフィルタ(例えば0.22ミクロン)等の、電極及び/又はスクラバ微粒子のための産生ガス粒子フィルタ、(5)使用状況の追跡、投与のために使用される目標1回換気量を含むことができる投与レベル、薬物濃度(例えば薬物キャニスター中のもの)、及び、限定するものではないが、使用期限情報、残りのパフ数、使用期限時間、ロット番号を含む動作寿命情報、及びスクラバが本装置に挿入されているか否かについての二値情報のうちの、少なくともいくつかを含む、少なくとも1つのメモリ装置(例えばEEPROM、RFID)、(6)ガス(例えばNOのプラズマ発生前の周囲空気)から水分を除去するための乾燥剤材料(いくつかの実施形態においては、40%に及ぶ製造誤差が湿度の影響に起因し得るため、このことは投与量制御を改善するために行われ、いくつかの実施形態においては、設計に依存して、上昇させられた圧力又は低下させられた温度に伴って生じ得る本装置内の結露を防止するために水分が除去される)、並びに(7)本装置を通る流れが一方向であることを確実にすることができ、呼気ガスが本装置に入ることを防止し、また、本装置が使用されていないときに、湿度の高い周囲空気及び呼気ガスから使い捨て部分を保護する、1つ以上の一方向弁(例えばフラッパ弁、ボールインソケット弁、ダックビル弁、リード弁)。
【0121】
再使用可能な構成要素の設計
本システムの再使用可能な部分は、バッテリ(例えば再充電可能なバッテリ、アルカリバッテリ等)、最大流量を調整するための臨界オリフィス、投与量調節部(ノブ、スライダ、数値入力部等)、及びユーザインタフェースのうちの1つ以上の構成要素を含んでもよい。ユーザインタフェースは、使い捨て部分データ、現在の投与量設定、次の投与までの時間、n日間の投与の履歴、投与の間に達成された流量、及び/又は投与レベル履歴に基づく、次の投与をいつ行うかについてのインジケータの少なくともいくつかを含んでもよい。
【0122】
流量センサ(例えば圧力差分センサ、熱線等)もまた、システムの再使用可能部分の一部であってもよい。いくつかの実施形態においては、流量センサは、最大流量がいつ達成されたかを決定するために使用される。いくつかの実施形態においては、流量センサは、本装置を通るガスの流れの方向(吸気対呼気)を決定するために使用される。いくつかの実施形態においては、流量センサは、コントローラが適切なNO流量を決定するための、吸気流量を測定するために使用される。いくつかの実施形態においては、流量センサは、NOガス流量を測定するために利用される。このことは、適切な機能を確認するために、又は流量制御機構への入力として、行われてもよい。
【0123】
本システムの再使用可能部分の一部となり得る別の構成要素は、NOを産生し、使い捨て構成要素を管理し、インジケータを管理し、センサを読み取り、バッテリを管理し、及び/又は情報を記憶する(メモリ)ための電子部品であり得る。いくつかの実施形態においては、インジケータは、照明、振動モータ、ブザー、及びスピーカのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態においては、電子部品は、ハードウェアのみである。いくつかの実施形態においては、電子部品は、ソフトウェア制御されたマイクロプロセッサ又はFPGAを含む。いくつかの実施形態においては、コントローラは、装置の使用状況及び服薬順守のログ記録を追跡する。
【0124】
マウスピース
いくつかの実施形態においては、マウスピースは、ハウジングに一体化されている。いくつかの実施形態においては、マウスピースは、摩耗したとき又は汚れたときにユーザが交換することを可能にするため、取り外すことができる。いくつかの実施形態においては、マウスピースは、頻繁な交換を確実にするために、本システムの使い捨て部分に一体化される。マウスピースは、NOガス通路とユーザとの間のコネクタとして機能する。マウスピースは、ユーザがマウスピースの周りを容易に封止することができ、マウスピースを通してガス流量を引き出せるようなサイズとされる。
【0125】
再使用可能な装置の特徴
いくつかの実施形態においては、再使用可能な本体は、投与量設定を表示するディスプレイと、ユーザが情報を入力することを可能とするボタンとを含む、ユーザインタフェースを含んでもよい。ボタンは、ハードウェアボタンとすることもできるし、又はタッチスクリーン上のソフトウェアボタンとすることもできる。いくつかの実施形態においては、吸入器装置のユーザインタフェースは、外部装置上で動作するアプリ中に提供される。いくつかの実施形態においては、吸入器のユーザインタフェースは、携帯電話上のアプリからなる。情報は、携帯電話のアプリに入力され、携帯電話アプリを通して閲覧され、携帯電話は、設定及び他の情報をNO装置に無線で通信する。いくつかの実施形態においては、ユーザは、装置使用のためのパスワード、時刻、所望の投与スケジュール、医師の電話番号、肺容量、吸入流量閾値、使い捨て部分のタイプ、電極のタイプ、及び他の情報のうちの1つ以上を入力する。
【0126】
例示的な使用のステップ
以下は、NO吸入器装置を使用するためにとられ得る例示的なステップである:
(1)ユーザが、使い捨てマウスピースを挿入する。
(2)装置から使い捨て部分への通信(定期的に又は挿入時に)。
a.使用済みか否かを決定する:使い捨て部分が交換される必要があると、ユーザに警告する。
b.使用期限切れか否かを決定する:使い捨て部分が交換される必要があると、ユーザに警告する。
c.最大投与回数が到達されたか否かを決定する:使い捨て部分が交換される必要があると、ユーザに警告する。
d.投与量設定を読み取る。
e.挿入時に使い捨て部分の使用状態を装置が設定する。
i.使用済みフラグ。
ii.使用期限切れタイマを開始する。
f.いくつかの実施形態においては、バッテリが完全に放電し、システムがコールドスタートする場合、すでに挿入されている使い捨て部分が廃棄されることを必要とする。
(3)ユーザは、肺を空にするために、大気中に完全に息を吐く。
a.このことは、いくつかの実施形態においては、肺の中の拡散に基づく混合に依存することなく、より均一な投与を肺全体にシステムが提供することを可能とするために行われる。
(4)ユーザが本装置からNOガスを吸入する。
a.いくつかの実施形態においては、本装置は、流量センサ又は流量の代用としての圧力測定値によって示される、本装置を通る流量に比例して、NOを発生させる。別の実施形態においては、流量が、流量制限部(例えば臨界オリフィス)によって決定付けられ、流量インジケータによって示される、管理された流量に到達すると、本装置は、適切なNO濃度にまで流量を投与する。
b.流量が特定の閾値流量レベルを下回ると、残留NOが残っておらず全てのNO2が取り除かれていることを確実にするために、投与を停止する。
(5)装置は、例えばインクリメント使用カウントを含む、使い捨て部分の情報を設定する。
【0127】
安全特徴部
いくつかの実施形態においては、NO吸入器は、典型的な吸入器又は噴霧器のように使用される。いくつかの実施形態においては、NO投与のレベルは、医師によって処方される。他の実施形態においては、NO送達はユーザによって制御されるが、過少投与及び過剰投与のリスクを制御するための安全上の理由から、いくつかの実施形態においては制限される。
【0128】
いくつかの実施形態においては、本装置は、一定の期間、後続する使用を防止する。いくつかの実施形態においては、本システムは、本装置が充電されている間の使用を防止してもよい。いくつかの実施形態は、或る特定の量の使用(例えばn回の処置、又はnモルのNOガス送達)の後に、使い捨て構成要素の交換を促す。例えば、10分毎に200ppmを呼吸に送達するように装置が処方されてもよい。ユーザが200ppmのNOの最初の呼吸を吸入したときに、処置が開始される。本装置は、ユーザが次のNOの投与を受けることを許可する前に、一定時間、例えば10分間待機する。いくつかの実施形態においては、NO2スクラバ材料を含む構成要素は、使用のレベルとは独立して、設定された時間の後に交換される。いくつかの実施形態においては、スクラバ材料が空気と接触しており、大気中の二酸化炭素への曝露により消耗することとなるため、交換が行われる。
【0129】
いくつかの実施形態においては、本装置は、次の呼吸を吸入すべき時間になると、ユーザに警告する。通知は、可聴音、視覚的インジケータ(例えば光、ユーザインタフェースメッセージ)、振動、電話の呼出、テキストメッセージ、又はユーザの注意を引くための他の手段の形態であってもよい。いくつかの実施形態においては、警告は外部装置(例えば携帯電話)を通して送達される。
【0130】
いくつかの実施形態においては、ユーザへの投与は、ユーザが安全な量よりも多いNOを受けるために複数の装置を所有し使用することを防止するために、クラウド中に記憶される。NO送達装置は、最後のNO投与から十分な時間が経過していることを確実にするために、ユーザを処置することに先立ち、クラウド中のデータベースをチェックする。
【0131】
いくつかの実施形態においては、適正なユーザが本装置を利用していることを確認するために、指紋認識装置が利用される。
【0132】
いくつかの実施形態においては、マウスピースが装着されていない場合には、本装置は薬物送達を停止させる。このことは、いくつかの実施形態においては、NO発生に関与する高電圧及び/又は化学物質からユーザを保護する。
【0133】
いくつかの実施形態においては、吸入器は、本装置を能動的に又は受動的に停止させる、落下検出構成要素を含む。いくつかの実施形態においては、落下検出センサは、高加速度イベントが発生したことを装置コントローラに通知する。いくつかのNO装置は、ユーザをリスクから保護するために、落下の検出の後、更なる使用を意図的に無効にする。落下した装置のイベントに存在し得るリスクの例は、高電圧への曝露、吸入された微粒子への曝露(例えば破損したフィルタ)、及び変更された投与量に帰着するガス漏れを含む。
【0134】
いくつかの実施形態においては、取り扱いの間又は輸送の間(例えば本装置がポケットの中にあるとき)の予定外の薬物放出を防止するために、薬物放出を作動させるためには2つのボタンが押下されなくてはならない。
【0135】
いくつかの実施形態においては、スクラバ材料が消耗したか又は期限切れになると、本装置は停止させられる。スクラバの消耗は、スクラバを通過したモル単位のNOの量、スクラバを用いて投与された呼吸の回数、スクラバのサイズ、スクラバのタイプ、及びスクラバが使用された時間のうちの1つ以上に基づくものであってもよい。いくつかの実施形態においては、期限切れは、製造日又はスクラバが最初に使用された日に相対的に基づく。
【0136】
ユーザインタフェース
NO吸入器装置は、ユーザインタフェースを含んでもよい。いくつかの実施形態においては、ユーザインタフェースは、現在の投与量設定、残りのガス供給量、バッテリ充電レベル、投与することができる残りの呼吸、投与された呼吸の割合、投与された呼吸のカウント、アラーム音レベル、アラームのミュートのうちの1つ以上に関する情報を提示する。いくつかの実施形態においては、ユーザインタフェースは、外部装置(例えば携帯電話、タブレットコンピュータ等)上に位置する。ユーザインタフェースはまた、ユーザ及び/又は臨床医によって調節され得る設定を含んでもよい。いくつかの実施形態においては、調節可能な処置パラメータは、NO投与量、吸入体積、二次的薬物投与量、呼吸に対する投与パターン、目標NO濃度、呼吸当たりの目標NO分子、単位時間当たりの目標NO分子、或る時間に投与する呼吸の最大数、NOパルス遅延(例えば呼吸検出イベントからの時間)を含む。
【0137】
用途
感染予防/処置
いくつかの実施形態においては、ユーザは、肺感染症を処置及び/又は治療及び/又は予防するために、NOを処方される。例示的な適応症は、ウイルス感染症(例えばCOVID、SARS)、細菌感染症(例えば肺炎)、及び真菌感染症を含む。いくつかの実施形態においては、医師は、1日当たり或る特定の回数、或る特定の回数の呼吸で与えられるべき特定の投与量を処方する。特定の感染症を処置するために臨床的に必要な濃度は、感染症のタイプ及び程度によって異なる。現在の文献は、いくつかの感染症に対しては200ppm~1000ppmのNOの濃度が必要となり得ると示唆している。臨床的に必要な濃度にかかわらず、NO送達装置は、必要とされる量のNOを送達するために適切なサイズとされてもよい。
【0138】
図38A及び
図38Bは、2つの流量、すなわち3slpm(
図38A)及び5slpm(
図38B)について、NO発生及び送達装置から送達されるNOを示す例示的なグラフを示す。
図38Aにおけるプロットは、750ppm.lpm(250ppm×3lpm)のNO発生を示している。
図38Bにおけるプロットは、別の装置がより高い流量における、600ppm.lpm(120ppm×5lpm)を発生させることを示している。NO2レベルは5ppm以下であり、これはOSHAによる空気に対する許容暴露限界(PEL)に適合している。より低いNO2レベルは、より高いガス流量(より少ない通過時間)、より高いNO/NO2比、及び追加的なスクラブ(より大きなスクラバ)によって達成することができる。
【0139】
喘息の処置
いくつかの実施形態においては、ユーザは、必要に応じて喘息の処置のためにNO吸入器装置を利用する。ユーザが喘息の状態又は喘息の状態の前兆を経験したとき、その状態を軽減するためにNO処置が与えられる。
【0140】
鼻腔の処置
いくつかの実施形態においては、吸入器は、患者の鼻とインタフェースする(例えばプロング、部分マスク)。NOガスは、感染症を処置するために患者の鼻腔に導入される。いくつかの実施形態においては、患者は鼻を通して吸入する。いくつかの実施形態においては、患者は、より高い濃度でNOガスが鼻腔内に存在することとなるように、息を止める。
【0141】
図39は、NO発生マスク660の実施形態を示す。マスクは、1つ以上の弾性バンドを用いて患者の頭部に保持されてもよい。患者は、NO発生装置662(例えば放電、マイクロ波、N2O4、光化学等)を通して、周囲の空気を吸い込む。吸入されたガスは、口及び鼻の1つ以上を通って入る。患者は、口及び鼻の1つ以上から吐き出す。吐き出されたガスは、一方向弁664(例えばフラッパ弁、ボール弁、逆止弁、ダックビル弁)を通り、NO2スクラバ668及びフィルタ670を通って出て大気中に放出される。NO発生器の出口における逆止弁672は、吐き出されたガスがNO発生器を通って出ないことを確実にする。図示された実施形態においては、NO発生器は自己完結型であり、NO供給源、吸気流感知、周囲ガス測定、コントローラ、及び吸気流に対して所望の投与量のNOを発生させるのに必要とされる電源(例えばバッテリ)を含む。
【0142】
NO発生マスクは、様々な処置を提供するようにプログラムされ得る。いくつかの実施形態においては、NO発生マスクは、副鼻腔、口、気道及び/又は肺の目標領域内の血管拡張を維持するために利用される。NOの生理学的半減期が数十秒であることを考慮すると、NO発生装置は、全ての用途において呼吸毎に投与することが必要とされるわけではない。いくつかの実施形態においては、NO発生マスクは、感染症を処置するために、患者内の殺菌濃度、殺真菌濃度又は殺ウイルス濃度を維持するように、呼吸毎に高濃度のNO(例えば400ppm)を送達するようにプログラムされる。
【0143】
吸入薬物の増強
NO吸入器装置は、NOによる血管拡張、及び肺血管系を通る増大させられた血流により、より効果的な薬物取り込みを促進するために、吸入薬物送達を有する装置と結合させられてもよい。この方法は、送達される薬物のレベルを高め、薬物の有効性を改善し、送達の間の薬物の浪費を低減させ得る。比較的安価な薬物であるNOの、より高価な薬物との併用は、必要とされる高価な薬物のレベルが低減させられる場合、処置の総費用を削減し得る。
【0144】
性能の増強
いくつかの実施形態においては、NO吸入器装置は、酸素取り込みを改善するためにユーザによって必要に応じて利用される。例示的な用途は、限定するものではないが、高度調節/順応、スポーツ及びフィットネスのためのO2負荷、激しい運動の間に息を整えることのサポート、登山、航空、及び有酸素パフォーマンスの増強を含む。いくつかの実施形態においては、本装置は、各投与で単一のNOパルスプロファイルを送達する。いくつかの実施形態においては、NO装置は、過剰投与を防止するために、時間経過と共に送達されるNOの量を制限する。
【0145】
救急用吸入器
いくつかの実施形態においては、NO吸入器は、ILD及びCOPDのような線維症及び/又は閉塞性疾患の悪化に由来する急性増悪の間に、低酸素症を緩和しPVRを低減させるための救急用装置として使用される。いくつかの実施形態においては、NO装置は、心筋梗塞(MI)を患う救急車中の患者の心拍出量を改善するために使用される。全身性血管拡張剤の滴定及び点滴は救急車中で開始することができないため、このことは重要である。
【0146】
いくつかの実施形態においては、NO吸入器は、単回使用で使い捨てとなるように設計されている。例えば、これらの装置は、緊急事態に使用され、応急処置キット、救急車、及び緊急治療室に保管される。本装置は完全に自己完結型であり、バッテリ、入口ガス調整器、プラズマチャンバ、NO2スクラバ、フィルタ、筐体、及びプロセッサを含む。いくつかの実施形態においては、本装置は、再充電される必要なく棚の上で長時間持続し得るバッテリ(例えばリチウム、リチウムイオン、アルカリ)を含む。いくつかの実施形態においては、バッテリの化学的性質は再充電可能であるが、他の実施形態は使い捨てのバッテリの化学的性質を利用する。
【0147】
例示的な使用シナリオにおいては、救急車又は軍用輸送機に乗っている患者が低酸素状態である。介護者は、単回使用のNO発生装置をその包装から取り出し、スイッチをトグルすることによって本装置をオンにする。いくつかの実施形態においては、本装置は、自動的に一定流量のNOを作り始める。他の実施形態は、患者の吸気肢又は他の装置からの呼吸信号を検出し、患者の吸入の間にパルス状のNOを送達するように設計されている。いくつかの実施形態は、NOの連続的なストリーム(例えば5lpmの20ppmのNO)を送達するが、他の装置は、吸入の間にのみNOのパルスを送達する。
【0148】
いくつかの使用シナリオ、特に意識のある患者の使用シナリオにおいては、患者は、NOが送達され得るように、本装置を通して吸入するように求められる。他のシナリオにおいては、NO装置は、患者が吸入するために、鼻カニューレ又はマスクにNOを送達する。意識のない患者に対しては、連続的に又は吸入イベントと共に断続的にNOを送達するために、NO装置が人工呼吸器回路又は手動蘇生器(バッグとしても知られる)に取り付けられてもよい。
【0149】
本装置は、NOがもはや必要とされなくなるまで、又はバッテリ及び/又はスクラバが消耗するまで(例えば1時間後)、使用される。その後、本装置は、患者の接触があったか否かに依存して、通常の廃棄物のストリーム又はバイオハザード廃棄物のストリームのいずれかへと廃棄される。1つの実施形態においては、使い捨てNO装置は、シャットオフする前に、患者に最大40ppmのNOを連続して30分間提供する。
【0150】
いくつかの実施形態においては、単回使用装置は、使用まで充電器上に維持される。
【0151】
いくつかの実施形態においては、単回使用NO装置は、使用寿命の終了が近づいていることをユーザに警告する。このことは、患者に継続的なNO療法を提供するために、現在の装置の消耗に先立ち、後続する単回使用装置をユーザが準備することを可能とする。
【0152】
包装
いくつかの実施形態においては、NO吸入器装置は、単独で包装される。これら装置は、衝撃からこれら装置を保護する態様で包装される。これら装置はまた、大気中のCO2、環境VOC、及び乾燥空気による早期の消耗を防止するために、スクラブ材料を空気から保護する態様(例えば封止された膜又は袋)で包装される。乾燥空気は、或る種のスクラバ材料(例えばソーダ石灰)を、もはや十分に機能しなくなる点まで乾燥させ得る。周囲の湿気を除去するための乾燥剤、及びNO2を除去するためのソーダ石灰を含む実施形態においては、乾燥剤がソーダ石灰を乾燥させることを防止するために、乾燥剤とソーダ石灰とは、膜、キャップ、又は他の手段を介して、包装中で分離される。いくつかの実施形態においては、包装、封止構成要素、膜、又はキャップの取り外しが、NO吸入器にオンにする信号を提供する。いくつかの実施形態においては、膜の取り外しが、バッテリの接続を確立し、装置の電源がオンにされることを可能とする。
【0153】
2種以上の薬物を含むいくつかの実施形態においては、NO吸入器装置と二次的薬物とは、一緒に包装することもできるし、又は別々に包装することもできる。
【0154】
本明細書で引用された全ての特許、特許出願、及び公開された参考文献は、その全体が本明細書の一部をなすものとする。以上に開示された及び他の特徴及び機能のいくつか又はその代替物は、多くの他の異なるシステム又は用途に望ましく組み合わせることができることは、理解されるであろう。引き続いて、様々な代替、変更、変形、又は改良を、当業者が行うことができる。
【国際調査報告】