IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イミックス バイオファーマ, インク.の特許一覧

<>
  • 特表-癌治療のためのナノ粒子 図1
  • 特表-癌治療のためのナノ粒子 図2
  • 特表-癌治療のためのナノ粒子 図3
  • 特表-癌治療のためのナノ粒子 図4
  • 特表-癌治療のためのナノ粒子 図5
  • 特表-癌治療のためのナノ粒子 図6
  • 特表-癌治療のためのナノ粒子 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】癌治療のためのナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/08 20060101AFI20240912BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K45/08
A61P35/00
A61K31/12
A61K31/704
A61K9/08
A61K47/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518790
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 US2022044948
(87)【国際公開番号】W WO2023049530
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】63/261,730
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524008270
【氏名又は名称】イミックス バイオファーマ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ ラックマン
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル モーリス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076CC27
4C076EE23E
4C076FF15
4C084AA19
4C084AA20
4C084MA17
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC202
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086NA05
4C086ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA37
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC20
(57)【要約】
本明細書に記載する発明は、ポリキナーゼ阻害剤及び/又は化学療法剤を含むナノ粒子及びミセル構築物、並びに癌を治療するためにそれらを使用する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む第1のミセル構築物;並びに
ポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物、を含む、医薬レジメン。
【請求項2】
前記第2のミセル構築物が化学療法剤を含まない、請求項1記載の医薬レジメン。
【請求項3】
前記ポリキナーゼ阻害剤が、クルクミノイド若しくはクルクミノイド類似体、それらの誘導体若しくは塩、又はそれらの組合わせから選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記クルクミノイド若しくはクルクミノイド類似体、それらの誘導体若しくは塩、又はそれらの組合わせが、式1の構造を有するクルクミン化合物:
【化1】
又は式2の構造を有するクルクミン化合物:
【化2】
である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記化学療法剤が、ドキソルビシン又はその薬学的同等物、類似体、誘導体及び/若しくは塩である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記第1及び第2のミセル構築物が、それぞれ両親媒性PEG2000-DSPEポリマーにより形成される、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記第1及び第2のミセル構築物が、それぞれ10 nm~20 nmである、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記第1及び第2のミセル構築物が、それぞれ20 nm~60 nmである、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記第1及び第2のミセル構築物が、それぞれ30 nm未満である、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
医薬として許容し得る担体をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
対象において肉腫を治療する方法であって、該対象に治療有効投薬量の請求項1記載のレジメンを施すことを含む、前記方法。
【請求項12】
前記対象がヒトである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記肉腫が、化学療法抵抗性形態の肉腫である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
ポリキナーゼ阻害剤を含む前記第2のミセル構築物の投与を、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む前記第1のミセル構築物の投与より前に行う、請求項11記載の方法。
【請求項15】
ポリキナーゼ阻害剤を含む前記第2のミセル構築物の投与を、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む前記第1のミセル構築物の投与の後に行う、請求項11記載の方法。
【請求項16】
ポリキナーゼ阻害剤を含む前記第2のミセル構築物を、1日1回投与する、請求項11記載の方法。
【請求項17】
ポリキナーゼ阻害剤を含む前記第2のミセル構築物を、1日2回投与する、請求項11記載の方法。
【請求項18】
ポリキナーゼ阻害剤を含む前記第2のミセル構築物を、1日3回投与する、請求項11記載の方法。
【請求項19】
請求項1記載のレジメンの完了後、最大14日間にわたりポリキナーゼ阻害剤を含む前記第2のミセル構築物を投与することをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項20】
請求項1記載のレジメンの完了後、15~28日間にわたりポリキナーゼ阻害剤を含む前記第2のミセル構築物を投与することをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項21】
請求項1記載のレジメンの完了後、28日以上にわたりポリキナーゼ阻害剤を含む前記第2のミセル構築物を投与することをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項22】
ポリキナーゼ阻害剤を含む前記第2のミセル構築物を、1日約20 mg/m2~約200 mg/m2の投薬量で投与する、請求項11記載の方法。
【請求項23】
腫瘍細胞の細胞増殖を阻害する方法であって、該腫瘍細胞に治療有効投薬量の請求項1記載のレジメンを施すことを含む、前記方法。
【請求項24】
ポリキナーゼ阻害剤を含む前記第2のミセル構築物の投与を、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む前記第1のミセル構築物の投与より前に行う、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ポリキナーゼ阻害剤を含む前記第2のミセル構築物の投与を、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む前記第1のミセル構築物の投与の後に行う、請求項23記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている2021年9月27日に出願された米国仮出願第63/261,730号を基礎とする優先権を主張する。
【0002】
(発明の技術分野)
本明細書で開示する発明は一般に、ポリキナーゼ阻害剤を含むナノ粒子及び組成物、並びに肉腫を治療するためにそれらを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
癌研究に何十億ドルも費やされているにもかかわらず、癌の完全かつ有効な治療は開発されていない。その原因の一部は、腫瘍細胞は細胞が増殖して様々な突然変異を得ることにより生じる、様々な細胞種から構成され得るためである。癌細胞の集団は施される任意の個別の治療又は化学療法薬に対し偶発的に抵抗性となる突然変異による多様性を容易に含み得るため、この多様性はひいては癌治療をこのようにも困難にするものの一端となる。ごく少数の抵抗性癌細胞は他の細胞と比較して強い選択上の優位性を与えられ、これらの抵抗性細胞は時間とともに頻度を増加させる。
【0004】
従って、薬物抵抗性腫瘍をより効果的に標的化し、かつ癌細胞の多様性を潜在的に迂回することが可能な癌治療を含む、さらなる癌治療の開発が、当該技術分野において要望されている。
【発明の概要】
【0005】
(発明の概要)
本発明のいくつかの実施態様は、医薬組成物及び癌を治療するための方法に関する。いくつかの実施態様において、癌は肉腫である。いくつかの実施態様において、組成物及び方法はミセル構築物並びにポリキナーゼ阻害剤及び/又は化学療法剤を含む。
【0006】
いくつかの実施態様において、組成物及び方法はポリキナーゼ阻害剤を含むミセル構築物を含む。いくつかの実施態様において、組成物及び方法はポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含むミセル構築物を含む。いくつかの実施態様において、組成物及び方法はポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む第1のミセル構築物、並びにポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物の両方を含む。いくつかの実施態様において、第2のミセル構築物は、化学療法剤を含まない(本明細書において時折「ポリキナーゼ阻害剤のみのミセル」と呼ぶ)。
【0007】
いくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む第1のミセル構築物、並びにポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物は、一緒に投与する。いくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む第1のミセル構築物、並びにポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物は、別個に投与する。例えば、いくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む第1のミセル構築物、並びにポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物は、順次投与する。いくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む第1のミセル構築物、並びにポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物は、異なる投薬レジメン及び/又は投薬スケジュールに従い投与する。例えば、いくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む第1のミセル構築物は、ポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物より前に投与する。いくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む第1のミセル構築物は、ポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物の後に投与する。
【0008】
いくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤は、クルクミノイド若しくはクルクミノイド類似体、それらの誘導体若しくは塩、又はそれらの組合わせから選択される。いくつかの実施態様において、クルクミノイド若しくはクルクミノイド類似体、それらの誘導体若しくは塩、又はそれらの組合わせは、式1の構造を有するクルクミン化合物:
【化1】
又は式2の構造を有するクルクミン化合物:
【化2】
である。
【0009】
いくつかの実施態様において、化学療法剤はドキソルビシン又はその薬学的同等物、類似体、誘導体及び/若しくは塩である。
【0010】
いくつかの実施態様において、第1及び第2のミセル構築物は、それぞれ両親媒性PEG2000-DSPEポリマーにより形成される。いくつかの実施態様において、第1及び第2のミセル構築物は、10 nm~20 nmである。いくつかの実施態様において、第1及び/又は第2のミセル構築物は、20 nm~60 nmである。いくつかの実施態様において、第1及び/又は第2のミセル構築物は、30 nm未満である。いくつかの実施態様において、第1及び/又は第2のミセル構築物は、約1 nm~約60 nm、又は約5 nm~約50 nm、又は約10 nm~約40 nmの平均サイズを有する。いくつかの実施態様において、第1及び/又は第2のミセル構築物は、約5 nm~約25 nm、又は約8 nm~約22 nm、又は約12 nm~約18 nmの平均サイズを有する。いくつかの実施態様において、第1及び/又は第2のミセル構築物は、約10 nm~約20 nm、又は約12 nm~約18 nm、又は約14 nm~約16 nmの平均サイズを有する。いくつかの実施態様において、第1及び/又は第2のミセル構築物は、約60 nm未満、又は約55 nm未満、又は約50 nm未満、又は約45 nm未満、又は約40 nm未満、又は約35 nm未満、又は約30 nm未満、又は約25 nm未満、又は約20 nm未満、又は約15 nm未満、又は約10 nm未満の平均径を有する。いくつかの実施態様において、第1及び/又は第2のミセル構築物は、約14 nm、又は約15 nm、又は約16 nmの平均径を有する。
【0011】
いくつかの実施態様において、第1及び/又は第2のミセル構築物は、医薬として許容し得る担体を含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施態様は、対象において癌を治療する方法に関する。いくつかの実施態様において、癌は肉腫である。いくつかの実施態様において、癌種は外科的に切除不能な肉腫である。いくつかの実施態様において、肉腫は化学療法抵抗性形態の肉腫である。いくつかの実施態様において、対象はヒトである。いくつかの実施態様において、方法は対象に治療有効投薬量の本明細書で開示する1以上のミセル構築物を投与することを含む。
【0013】
本明細書で開示する方法のいくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物の投与は、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む第1のミセル構築物の投与より前に行う。本明細書で開示する方法のいくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物の投与は、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む第1のミセル構築物の投与の後に行う。
【0014】
本明細書で開示する方法のいくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物は、1日1回投与する。本明細書で開示する方法のいくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物は、1日2回投与する。本明細書で開示する方法のいくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物は、1日3回投与する。
【0015】
いくつかの実施態様において、方法は請求項1記載のレジメンの完了後、最大14日間にわたりポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、方法は請求項1記載のレジメンの完了後、15~28日間にわたりポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、方法は請求項1記載のレジメンの完了後、28日以上にわたりポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物を投与することをさらに含む。
【0016】
本明細書で開示する方法のいくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤を含むミセル構築物は、約10 mg/m2/日~約40 mg/m2/日、又は約20 mg/m2/日~約200 mg/m2/日、又は約40 mg/m2/日~約200 mg/m2/日、又は約50 mg/m2/日~約175 mg/m2/日、又は約75 mg/m2/日~約150 mg/m2/日、又は約100 mg/m2/日~約150 mg/m2/日、又は約20 mg/m2/日~約100 mg/m2/日、又は約25 mg/m2/日~約75 mg/m2/日、又は約50 mg/m2/日~約150 mg/m2/日、又は約100 mg/m2/日~約200 mg/m2/日、又は週に約200 mg/m2~約1000 mg/m2の投薬量で投与する。
【0017】
本発明のいくつかの実施態様は、腫瘍細胞の細胞増殖を阻害する方法に関する。いくつかの実施態様において、方法は腫瘍細胞に治療有効用量の本明細書で開示する1以上のミセル構築物を投与することを含む。方法のいくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物の投与は、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む第1のミセル構築物の投与より前に行う。いくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物の投与は、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む第1のミセル構築物の投与の後に行う。
【0018】
本明細書で開示する方法のいくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物は、1日1回投与する。本明細書で開示する方法のいくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物は、1日2回投与する。本明細書で開示する方法のいくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物は、1日3回投与する。
【0019】
いくつかの実施態様において、方法は請求項1記載のレジメンの完了後、最大14日間にわたりポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、方法は請求項1記載のレジメンの完了後、15~28日間にわたりポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、方法は請求項1記載のレジメンの完了後、28日以上にわたりポリキナーゼ阻害剤を含む第2のミセル構築物を投与することをさらに含む。
【0020】
本明細書で開示する方法のいくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤を含むミセル構築物は、約10 mg/m2/日~約40 mg/m2/日、又は約20 mg/m2/日~約200 mg/m2/日、又は約40 mg/m2/日~約200 mg/m2/日、又は約50 mg/m2/日~約175 mg/m2/日、又は約75 mg/m2/日~約150 mg/m2/日、又は約100 mg/m2/日~約150 mg/m2/日、又は約20 mg/m2/日~約100 mg/m2/日、又は約25 mg/m2/日~約75 mg/m2/日、又は約50 mg/m2/日~約150 mg/m2/日、又は約100 mg/m2/日~約200 mg/m2/日、又は週に約200 mg/m2~約1000 mg/m2の投薬量で投与する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
(図面の簡単な説明)
図1図1A及び1BはSTS異種移植モデル(81日間)における腫瘍サイズへのクルクミン+ドキソルビシンミセルの効果を示すグラフである。図1Aでは、腫瘍サイズをmm3単位で示す。n=1の場合、SEMバーは示されていないことに留意されたい。クルクミン+ドキソルビシンミセルは第0日から第65日までSEMバーを有する。第0日から第18日では、クルクミン+ドキソルビシンミセルのバーは30 mm3未満である(小さすぎて視認できない)。図1Bは腫瘍サイズのベースラインからのパーセンテージ変化を示す。n=1の場合、SEMバーは示されていないことに留意されたい。クルクミン+ドキソルビシンミセルは第0日から第65日までSEMバーを有する。第0日から第18日では、クルクミン+ドキソルビシンミセルのSEMバーは20%未満である(小さすぎて視認できない)。
【0022】
図2】STS異種移植モデル(81日間)における生存率へのクルクミン+ドキソルビシンミセルの効果を示すグラフである。
【0023】
図3】STS異種移植モデルにおける腫瘍成長へのクルクミン+ドキソルビシンミセル+クルクミンのみのミセルの効果を示すグラフである。
【0024】
図4】肉腫HT1080の異種移植モデルにおける追加のクルクミンのみのミセルの効果及び治療の持続期間を示すグラフである。
【0025】
図5】肉腫HT1080の異種移植モデルにおける追加のクルクミンのみのミセル及び投薬スケジュールの効果を示すグラフである。
【0026】
図6】同系マウス肉腫モデルにおけるポリキナーゼ阻害剤クルクミンミセルの1日の投薬回数の増加による効果を示すグラフである。
【0027】
図7】同系マウス肉腫モデルS180におけるポリキナーゼ阻害剤クルクミンミセルを用いた治療の持続期間を延長することによる効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細)
本明細書で開示する発明の実施態様は、キナーゼ阻害剤及び化学療法剤又は化学治療剤を共担持されたミセルを含む第1のナノ粒子組成物並びにミセル及びポリキナーゼ阻害剤を含む第2のナノ粒子組成物の組合わせを含む、新規医薬レジメンを提供する。本明細書に記載の例は、本明細書で開示する組成物及び方法が、癌細胞におけるより多量のアポトーシスの誘導を介して、これらの薬剤を個別に投与して得た個別の効果の和よりも優れた癌殺傷効果をもたらすことを実証する。実施例において提供するデータは、ドキソルビシン抵抗性肉腫異種移植並びに肉腫同系モデルにおいて、この治療構築物の効能を実証する。
【0029】
本明細書で開示する発明の実施態様は、このレジメンの抗腫瘍効能を主に決定するのは、ポリキナーゼ濃度及びその投与頻度であるという新規かつ意外な知見に関する。例えば、クルクミン+ドキソルビシンミセルは単独でDox抵抗性肉腫モデルにおいて強力な効能を示したが、Cur含有ミセル構築物をクルクミン+ドキソルビシンミセルに追加すると(Cur:Dox比の増加をもたらす)、一切の毒性を追加することなく効能及び生存率の驚くべき向上がさらに認められた。従って、Cur含有ナノ粒子が追加されたクルクミン+ドキソルビシンミセルは、典型的に他の薬物に抵抗性の治療困難な癌、例えば肉腫を有する患者にとって有効な治療選択肢となる。
【0030】
さらに、本明細書で開示する発明の実施態様は、クルクミノイド複合体及びドキソルビシンをカプセル化するナノ粒子について使用した、新たに発見された有効濃度範囲及び投与スケジュールに関する。さらなる情報は、そのそれぞれの全体が参照により完全に組み込まれている米国特許公開公報US 2020-0179282 A1及び国際特許出願PCT/US2022/036419に見出すことができる。
【0031】
本明細書で引用する全ての参考文献、刊行物及び特許はあたかもそれらが完全に記載されているかのように、その全体が参照により組み込まれている。別途定義されない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有する。Hornyakらの文献「ナノサイエンス及びナノテクノロジー入門(Introduction to Nanoscience and Nanotechnology)」、CRC Press (2008); Singletonらの文献、「微生物学及び分子生物学辞典(Dictionary of Microbiology and Molecular Biology)」第3版、J. Wiley & Sons (New York, NY 2001); Marchの文献、「最新有機化学反応、機構及び構造(Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure)」第7版、J. Wiley & Sons (New York, NY 2013);並びにSambrook及びRusselの文献、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, NY 2012)は、当業者に本明細書の開示において使用する多くの用語の一般的手引きを提供する。当業者であれば、本明細書に記載するものと類似し、又は同等であり、本発明の実施において使用することができる多くの方法及び材料を認識するであろう。実際、本明細書で開示する発明の実施態様は、決して記載された方法及び材料に限定されない。
【0032】
(ナノ粒子)
本明細書で開示する発明の実施態様のナノ粒子は、少なくとも1つの脂質二重層により封入された水性区画を含むリポソームとし得る。親水性頭部基を含む脂質を水に分散させると、それらは自発的にラメラと呼ばれる二重層膜を形成する。ラメラは脂質分子の2つの単層シートから構成され、それらの非極性(疎水性)表面は互いに向かい合い、それらの極性(親水性)表面は水性媒体の方を向く。
【0033】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するレジメンのナノ粒子は約1 nm~約100 nmのサイズを有する。いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子は約1 nm、又は約5 nm、又は約10 nm、又は約15 nm、又は約20 nm、又は約25 nm、又は約30 nm、又は約35 nm、又は約40 nm、又は約45 nm、又は約50 nm、又は約55 nm、又は約60 nm、又は約65 nm、又は約70 nm、又は約75 nm、又は約80 nm、又は約85 nm、又は約90 nm、又は約95 nm、又は約100 nmのサイズを有する。いくつかの実施態様において、本明細書で開示するレジメンのナノ粒子は、約50 nm未満、又は約45 nm未満、又は約40 nm未満、又は約35 nm未満、又は約30 nm未満、又は約25 nm未満、又は約20 nm未満、又は約18 nm未満、又は約16 nm未満、又は約15 nm未満、又は約14 nm未満、又は約12 nm未満、又は約10 nm未満の平均径を有する。
【0034】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するレジメンのナノ粒子は、約10 nm~60 nm、又は約20 nm~約50 nm、又は約25 nm~約40 nmである。いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子は約1 nm~50 nm、又は約5 nm~約40 nm、又は約10 nm~約30 nmである。いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子は約10 nm~約20 nm、又は約12 nm~約18 nm、又は約14 nm~約16 nmである。
【0035】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子は親水性外部区画及び疎水性内部区画を有する両親媒性ポリマーを含む、ミセル構築物である。これらの両親媒性ポリマーが水性環境に曝露されると、それらは自発的に集合して単一層の複合体となり、それらの非極性疎水性部分はナノ粒子の内部コアの方を向く。
【0036】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するミセル構築物は、約1 nm~約60 nm、又は約5 nm~約50 nm、又は約10 nm~約40 nmのサイズを有する。いくつかの実施態様において、本明細書で開示するミセル構築物は、約5 nm~約25 nm、又は約8 nm~約22 nm、又は約12 nm~約18 nmのサイズを有する。いくつかの実施態様において、本明細書で開示するミセル構築物は、約10 nm~約20 nm、又は約12 nm~約18 nm、又は約14 nm~約16 nmのサイズを有する。いくつかの実施態様において、本明細書で開示するミセル構築物は、約60 nm未満、又は約55 nm未満、又は約50 nm未満、又は約45 nm未満、又は約40 nm未満、又は約35 nm未満、又は約30 nm未満、又は約25 nm未満、又は約20 nm未満、又は約15 nm未満、又は約10 nmの平均径を有する。いくつかの実施態様において、本明細書で開示するミセル構築物は約14 nm、又は約15 nm、又は約16 nmの平均径を有する。
【0037】
(脂質)
いくつかの実施態様において、本明細書で提供するナノ粒子は、脂質を含む。好適な脂質には、脂肪、ろう、ステロイド、コレステロール、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、陽イオン性又は陰イオン性脂質、及び誘導体化脂質などがあり得る。
【0038】
好適なリン脂質には、これらに限定はされないが、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)及びホスファチジルイノシトール(PI)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン 4-(Nマレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシラート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-trans PE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(phosphatidyethanolamine)(SOPE)、1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホホエタノールアミン(phophoethanolamine)(transDOPE)及びカルジオリピンがある。
【0039】
いくつかの実施態様において、脂質には誘導体化脂質、例えばPEG化脂質がある。誘導体化脂質には、例えばDSPE-PEG2000、コレステロール-PEG2000、DSPE-ポリグリセロール又は当該技術分野で一般的に公知の他の誘導体がある。いくつかの実施態様において、脂質はDSPE-PEG2000である。いくつかの実施態様において、ミセル構築物は両親媒性PEG2000-DSPEポリマーにより形成される。
【0040】
(キナーゼ阻害剤)
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するミセル構築物は、疎水性キナーゼ阻害剤を含む。疎水性キナーゼ阻害剤は、ポリキナーゼ阻害剤とすることができる。いくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤は、クルクミノイド又はクルクミノイド類似体、その誘導体又は塩である。いくつかの実施態様において、阻害剤はEF24、EF31及びその全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,842,705号に開示された他の化合物とし得る。いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子は異なるキナーゼ阻害剤の組合わせを含む。キナーゼ阻害剤は、天然のもの又は合成のものとすることができる。いくつかの実施態様において、キナーゼ阻害剤はNF-kb阻害剤又はStat3阻害剤又はポリキナーゼ阻害剤である。
【0041】
いくつかの実施態様において、キナーゼ阻害剤はポリフェノールキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施態様において、ポリフェノールキナーゼ阻害剤は、ポリフェノールであるクルクミノイド複合体(PCC)である。クルクミノイドはポリフェノール色素であり、クルクミン、デメトキシクルクミン及びビスデメトキシクルクミンを含む。いくつかの実施態様において、キナーゼ阻害剤はクルクミン、又はクルクミンの誘導体、又はクルクミン類似体、又はクルクミンの代謝産物である。いくつかの実施態様において、キナーゼ阻害剤はクルクミンの合成類似体である。
【0042】
本明細書で使用するクルクミンは、ジフェルロイルメタン又は(E,E)-1,7-ビス(4 ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオンとしても公知である。クルクミンは、天然の供給源、ショウガ科の成員である多年生ハーブのウコン(Curcuma longa L.)に由来し得る。
【0043】
クルクミンはエタノール、アルカリ、ケトン、酢酸及びクロロホルムに可溶性である。クルクミンは水中では不溶性である。従って、クルクミンは親油性であり、一般的に脂質、例えば本明細書で開示する発明の実施態様のコロイド性薬物送達システムにおいて使用される脂質の多くと容易に会合する。いくつかの実施態様において、クルクミンは金属キレートとして製剤化する。
【0044】
本明細書で使用するクルクミン類似体は、そのクルクミンとの構造的類似性のためにクルクミンと同様の効果を示す化合物である。クルクミン類似体は、これらに限定はされないが、Ar-ツメロン(tumerone)、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、ナトリウムクルクミナート、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス (2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシナフチルクルクミン)及び1,1-ビス (フェニル)-1,3,8,10 ウンデカテトラエン-5,7-ジオン(シンナミルクルクミン)などがある。また、クルクミン類似体には、クルクミンの異性体、例えばクルクミンの(Z,E)及び(Z,Z)異性体がある。
【0045】
いくつかの実施態様において、クルクミンの代謝産物も使用することができる。公知のクルクミンの代謝産物には、テトラヒドロクルクミン及びヘキサヒドロクルクミンのグルコロニド(glucoronides)並びにジヒドロフェルラ酸がある。いくつかの実施態様において、クルクミン類似体又は代謝産物は、金属キレート、特に銅キレートとして製剤化する。本明細書で開示する発明の実施態様における使用に適切なクルクミンの他の適切な誘導体、クルクミン類似体及びクルクミンの代謝産物は、当業者には明らかであろう。
【0046】
いくつかの実施態様において、クルクミンは、Ar-ツメロン(tumerone)、メチルクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、ナトリウムクルクミナート、ジベンゾイルメタン、アセチルクルクミン、フェルロイルメタン、テトラヒドロクルクミン、1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(クルクミン1)、1,7-ビス(ピペロニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(ピペロニルクルクミン)、1,7-ビス (2-ヒドロキシナフチル)-1,6-ヘプタジエン-2,5-ジオン(2-ヒドロキシナフチルクルクミン)及び1,1-ビス (フェニル)-1,3,8,10 ウンデカテトラエン-5,7-ジオンからなる群から選択する。
【0047】
いくつかの実施態様において、キナーゼ阻害剤は式1の構造を有する化合物:
【化3】
又は式2の構造を有する化合物:
【化4】
である。
【0048】
(化学療法剤)
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子は、任意に1以上の化学療法剤又は化学治療剤を含む。例示的化学療法剤には、これらに限定はされないが、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、デカルバジン、メルファラン、イホスファミド、テモゾロミド)、免疫細胞抗体(例えば、アレムツザマブ(alemtuzamab)、ゲムツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ)、代謝拮抗薬(例えば、葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体及びアデノシンデアミナーゼ阻害剤(例えば、フルダラビン)を含む)、mTOR阻害剤、TNFRグルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)アゴニスト、プロテアソーム阻害剤(例えば、アクラシノマイシンA、グリオトキシン又はボルテゾミブ)及び免疫モジュレーター、例えばサリドマイド又はサリドマイド誘導体(例えば、レナリドミド)がある。いくつかの実施態様において、化学療法剤はアポトーシス誘導剤である。いくつかの実施態様において、化学療法剤はPEG-PEドキソルビシン複合体である。いくつかの実施態様において、ミセル構築物は両親媒性PEG2000-DSPEポリマーにより形成される。
【0049】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子は、ポリキナーゼ阻害剤及びドキソルビシンを共担持されたミセル構築物である。
【0050】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子は、ドキソルビシンを共担持されたクルクミノイド複合体のミセル構築物である。
【0051】
(治療組成物)
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のナノ粒子又はミセル構築物を含む治療組成物を提供する。治療組成物は、例えば医薬として許容し得る担体、及び任意に、これらに限定はされないが、安定化剤、保存料及び増量剤などを含む他の所望の成分をさらに含み得る。いくつかの実施態様において、担体(複数可)は、製剤(formula)の他の成分と適合性があり、そのレシピエントにとって有害でないという意味で、許容し得る。例えばリン酸緩衝生理食塩水などの適切な担体の選択は、当業者であれば十分に知悉している。同様に、当業者であれば組成物に含めるのに適切な安定化剤及び保存料などを容易に選択することができる。
【0052】
当該技術分野で公知の任意の投与経路、例えば皮下、腹腔内、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、胸骨内、腫瘍内、注入、経口、筋肉内及び鼻腔内などを、ナノ粒子の投与に利用することができる。いくつかの実施態様において、本明細書で開示する治療組成物はi.v.投与による送達に好適である。
【0053】
(組成物の作製方法)
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のナノ粒子及び/又はミセル構築物を生産する方法を提供する。いくつかの実施態様において、方法はリン脂質、ポリフェノールキナーゼ阻害剤(例えば、クルクミノイド)又は他の疎水性キナーゼ阻害剤を、有機溶媒と混合して、混合物を可溶化することを含む。化学療法剤を使用する場合、薬剤を混合物中に含める。
【0054】
いくつかの実施態様において、混合後、溶媒を公開された方法により蒸発させ、混合物をPBS中で水に戻す。物理化学的特性、例えば粒子サイズ、表面電荷、カプセル化効率及び含有量は、公開された方法に従い決定することができる。さらなる情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれているSarisozenらの文献、European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 108 (2016) 54‐67に見出すことができる。
【0055】
(組成物の使用方法)
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するレジメン及び/又はナノ粒子及び/又はミセル構築物の使用方法を提供する。いくつかの実施態様において、使用方法は対象における癌の治療に関する。
【0056】
「癌」という用語は、異常細胞の急速かつ制御の利かない増殖を特徴とする疾患を指す。癌細胞は、局所的に、又は血流及びリンパ系を通じて体の他の部分に散在し得る。本発明で使用する癌の例には、これらに限定はされないが、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、星細胞腫、脳脊髄腫、脳幹神経膠腫、中枢神経系非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胚芽腫、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、原発不明の癌、中枢神経系の癌、子宮頸癌、小児癌、脊索腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、乳管内上皮内癌(DCIS)、胚芽腫、子宮内膜癌、上衣芽細胞腫、上衣腫、食道癌、感覚神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞性腫瘍、性腺外胚細胞性腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、骨の線維性組織球腫、胆嚢癌、胃癌(Gastric Cancer)、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質性腫瘍(GIST)、胚細胞性腫瘍、卵巣胚細胞性腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、神経膠腫、ヘアリー細胞白血病、頭頸部(鼻咽頭)癌、心臓癌、肝細胞癌、組織球増殖症、ランゲルハンス細胞癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼球内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎癌、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、喉頭癌、白血病、口唇及び口腔癌、肝癌、非浸潤性小葉癌(LCIS)、肺癌、リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、マクログロブリン血症、男性乳癌、髄芽腫、髄上皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、原発不明の転移性扁平上皮頸部癌、NUT遺伝子の関与する正中線上の癌、口腔癌(Mouth Cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性疾患、鼻腔癌、副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌(Oral Cancer)、口腔癌(Oral Cavity Cancer)、口唇癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、乳頭腫、傍神経節腫、副鼻腔癌、鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、クロム親和性細胞腫、中程度分化型松果体間質性腫瘍、松果体芽細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍、胸膜肺芽細胞腫、乳癌、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎淡明細胞型細胞癌、腎盂癌、尿管癌、移行細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮細胞癌、原発不明の扁平上皮頸部癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、胃癌(Stomach Cancer)、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、咽頭癌、胸腺腫、胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行細胞癌、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、原発不明の妊娠性絨毛性腫瘍、小児のまれな癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及びウィルムス腫瘍などがある。いくつかの実施態様において、癌は肉腫である。
【0057】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するレジメンは、ミセル構築物、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含む第1のナノ粒子、並びにミセル構築物及びポリキナーゼ阻害剤を含み、化学療法剤を含まない、第2のナノ粒子を含む。いくつかの実施態様において、レジメンの使用方法は治療有効量の第1のナノ粒子を投与すること及び治療有効量の第2のナノ粒子を投与することを含む。
【0058】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、本明細書において互換的に使用され、特定の生物学的結果を達成するのに有効な、本明細書に記載の化合物、製剤、物質又は組成物の量を指す。
【0059】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示する方法は、対象へのナノ粒子又はミセル構築物を含む組成物の投与を含む。いくつかの実施態様において、投与は静脈内、経口、吸入、鼻腔内、直腸及び局所などであり得る。
【0060】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示する方法は、ミセル構築物及びポリキナーゼ阻害剤を含み、化学療法剤を含まないナノ粒子の投与を、ミセル構築物、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含むナノ粒子を投与する数分から8~12時間前に行うことを含む。いくつかの実施態様において、レジメンは、ミセル構築物及びポリキナーゼ阻害剤を含み化学療法剤を含まないナノ粒子の投与を、ミセル構築物、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含むナノ粒子の投与から最大8時間後に行うことを含む。
【0061】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示する方法は、本明細書で開示する第1及び/又は第2のナノ粒子組成物を、1日1回、1日2回、1日3回、又は約2時間、若しくは3時間、若しくは4時間、若しくは5時間、若しくは6時間、若しくは7時間、若しくは8時間、若しくは12時間、若しくは24時間ごとに、投薬することを含む。いくつかの実施態様において、レジメンの治療期間は、約5日~約28日である。例えば、治療期間は5日、10日、又は2週間につき5日、又は3週間につき5日、又は4週間につき5日、又はそれより長い期間とすることができる。
【0062】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示する方法は、さらなる及び/又はより高用量のミセル構築物及びポリキナーゼ阻害剤を含み、化学療法剤を含まないナノ粒子、例えば約22 mg/kg/用量~約30 mg/kg/用量、又は約30 mg/kg/用量~約50 mg/kg/用量、又は約50 mg/kg/用量~約100 mg/kg/用量のポリキナーゼ阻害剤を含み、化学療法剤を含まないナノ粒子を投与することをさらに含む。
【0063】
いくつかの実施態様において、ミセル構築物及びポリキナーゼ阻害剤を含み、化学療法剤を含まないナノ粒子は、1日1回投与する。いくつかの実施態様において、ミセル構築物及びポリキナーゼ阻害剤を含み、化学療法剤を含まないナノ粒子は、1日2回投与する。いくつかの実施態様において、ミセル構築物及びポリキナーゼ阻害剤を含み、化学療法剤を含まないナノ粒子は、1日3回投与する。
【0064】
いくつかの実施態様において、レジメンは、ミセル構築物、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含むナノ粒子の最終投薬の完了後最大14(14)日間にわたり、ミセル構築物及びポリキナーゼ阻害剤を含み、化学療法剤を含まないナノ粒子を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、レジメンは、ミセル構築物、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含むナノ粒子の最終投薬の完了後15(15)~28(28)日間にわたり、ミセル構築物及びポリキナーゼ阻害剤を含み、化学療法剤を含まないナノ粒子を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、レジメンは、ミセル構築物、ポリキナーゼ阻害剤及び化学療法剤を含むナノ粒子の最終投薬の完了後28(28)日以上にわたり、ミセル構築物及びポリキナーゼ阻害剤を含み、化学療法剤を含まないナノ粒子を投与することをさらに含む。
【0065】
いくつかの実施態様において、ポリキナーゼ阻害剤は、クルクミノイド若しくはクルクミノイド類似体、それらの誘導体若しくは塩、又はそれらの組合わせから選択される。いくつかの実施態様において、クルクミノイドはクルクミン化合物である。いくつかの実施態様において、化学療法剤はドキソルビシン又はその薬学的同等物、類似体、誘導体及び/若しくは塩である。いくつかの実施態様において、ミセル構築物は両親媒性PEG2000-DSPEポリマーにより形成される。いくつかの実施態様において、ミセル構築物は約10 nm~約20 nm、又は約12 nm~約18 nm、又は約14 nm~約16 nmである。
【0066】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示するナノ粒子又はミセル構築物はドキソルビシン及び/又はクルクミンを含み、ヒトにおける投薬は以下のように静脈内(IV)に実施される。いくつかの実施態様において、ドキソルビシンは約0.5 mg/m2/日~15 mg/m2/日、又は約1 mg/m2/日~12.5 mg/m2/日、又は約2 mg/m2/日~12 mg/m2/日、又は約2.5 mg/m2/日~10 mg/m2/日で投与される。例えば、いくつかの実施態様において、ドキソルビシンは約1 mg/m2/日、又は約1.5 mg/m2/日、又は約2 mg/m2/日、又は約2.5 mg/m2/日、又は約3 mg/m2/日、又は約3.5 mg/m2/日、又は約4 mg/m2/日、又は約4.5 mg/m2/日、又は約5 mg/m2/日、又は約6 mg/m2/日、又は約7 mg/m2/日、又は約8 mg/m2/日、又は約9 mg/m2/日、又は約10 mg/m2/日、又は約11 mg/m2/日、又は約12 mg/m2/日、又は約13 mg/m2/日、又は約14 mg/m2/日、又は約15 mg/m2/日以上で投与する。
【0067】
いくつかの実施態様において、ドキソルビシンは約5 mg/m2/週、又は約6 mg/m2/週、又は約7 mg/m2/週、又は約8 mg/m2/週、又は約9 mg/m2/週、又は約10 mg/m2/週、又は約12 mg/m2/週、又は約15 mg/m2/週、又は約20 mg/m2/週、又は約25 mg/m2/週、又は約30 mg/m2/週、又は約40 mg/m2/週、又は約50 mg/m2/週、又は約60 mg/m2/週、又は約70 mg/m2/週で投与する。
【0068】
いくつかの実施態様において、ドキソルビシンは毎週約5 mg/m2、又は毎週約6 mg/m2、又は毎週約7 mg/m2、又は毎週約8 mg/m2、又は毎週約9 mg/m2、又は毎週約10 mg/m2、又は毎週約11 mg/m2、又は毎週約12 mg/m2、又は毎週約13 mg/m2、又は毎週約14 mg/m2、又は毎週約15 mg/m2以上で投与する。
【0069】
いくつかの実施態様において、クルクミンは約10 mg/m2/日~約40 mg/m2/日、又は約20 mg/m2/日~約200 mg/m2/日、又は約40 mg/m2/日~約200 mg/m2/日、又は約50 mg/m2/日~約175 mg/m2/日、又は約75 mg/m2/日~約150 mg/m2/日、又は約100 mg/m2/日~約150 mg/m2/日、又は約20 mg/m2/日~約100 mg/m2/日、又は約25 mg/m2/日~約75 mg/m2/日、又は約50 mg/m2/日~約150 mg/m2/日、又は約100 mg/m2/日~約200 mg/m2/日、又は週に約200 mg/m2~約1000 mg/m2で投与する。
【0070】
例えば、いくつかの実施態様において、クルクミンは約10 mg/m2/日、又は約15 mg/m2/日、又は約20 mg/m2/日、又は約25 mg/m2/日、又は約30 mg/m2/日、又は約35 mg/m2/日、又は約40 mg/m2/日、又は約50 mg/m2/日、又は約60 mg/m2/日、又は約70 mg/m2/日、又は約80 mg/m2/日、又は約90 mg/m2/日、又は約100 mg/m2/日、又は約125 mg/m2/日、又は約150 mg/m2/日、又は約175 mg/m2/日、又は約200 mg/m2/日以上で投与する。
【0071】
いくつかの実施態様において、クルクミンは約70 mg/m2/週、又は約80 mg/m2/週、又は約90 mg/m2/週、又は約100 mg/m2/週、又は約125 mg/m2/週、又は約150 mg/m2/週、又は約175 mg/m2/週、又は約200 mg/m2/週、又は約300 mg/m2/週、又は約400 mg/m2/週、又は約500 mg/m2/週、又は約600 mg/m2/週、又は約700 mg/m2/週、又は約800 mg/m2/週、又は約900 mg/m2/週、又は約1000 mg/m2/週、又は約1100 mg/m2/週、又は約1200 mg/m2/週、又は約1300 mg/m2/週、又は約1400 mg/m2/週以上、又は約1500 mg/m2/週以上、又は約1600 mg/m2/週以上、又は約1700 mg/m2/週以上、又は約1800 mg/m2/週以上、又は約1900 mg/m2/週以上、又は約1200 mg/m2/週以上、又は約2100 mg/m2/週以上で投与する。
【0072】
マウスにおいて、投薬範囲は以下のようにすることができる:ドキソルビシンは約1.5 mg/kg/日~2.5 mg/kg/日、又は毎週8 mg/kgで投与することができ;かつクルクミンは11 mg/kg/日~32 mg/kg/日×5用量、又は32~140 mg/kg/日、又は72 mg/kg/週~220 mg/kg/週で投与することができる。
【実施例
【0073】
(実施例)
(実施例1)
(Dox抵抗性軟部組織肉腫のマウス異種移植モデル)
クルクミン+ドキソルビシンミセルをSTSドキソルビシン抵抗性異種移植マウスモデル(SW872-DXR)において評価した。脱分化型脂肪肉腫細胞株(SW872)は前臨床研究(Doddの文献、2010、Stratfordの文献、2012)において詳細に研究された最も初期のSTSモデル系の1つである。
【0074】
SW872-DXRモデルは市販の細胞株SW872から誘導した。ドキソルビシンに対する抵抗性は、2D培養において「親」細胞株SW872についてのドキソルビシンのIC50濃度から始め、2週間ごとに漸増濃度のドキソルビシンを加えることにより開始した。この細胞株の抵抗性を3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム(MTS)アッセイにより立証した。このモデルにおけるドキソルビシンのIC50は+/- 200 nMから>1 μMへと増加した。
【0075】
SW872異種移植モデルは腫瘍検体(およそ3 mm3)を6~8週齢雌Hsd:無胸腺ヌード-Foxn1nuヌードマウスの右脇腹に皮下(SC)移植して高度に増殖性の腫瘍を発生させることにより作製した。SC腫瘍の成長はベルニエキャリパーを用いた2週間に1回の腫瘍径の測定により追跡し、腫瘍体積(TV)は式:
TV (mm3) = d2×D/2
(式中、「d」及び「D」はそれぞれ最短径及び最長径とした)
に従い計算した。
【0076】
マウス(n=8)を以下の処置群に分けた:PBS緩衝液のみで処置した対照(83 μl/用量、n=1);空のポリエチレングリコール-ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)ミセル(83 μl/用量、n=2);ドキソルビシンのみのミセル(2.5 mg/kg用量×用量、n=4)、クルクミンのみのミセル(11 mg/kg用量×5用量、n=4);クルクミン+ドキソルビシンミセル(2.5 mg/kg/ドキソルビシン用量×5用量、n=4)及びクルクミンのみのミセル(21.7 mg/kgクルクミン用量)とそれに続くクルクミン+ドキソルビシンミセル(2.5 mg/kg/ドキソルビシン用量×5用量、n=4)。
静脈内(IV)注射は5日間にわたり1日1回実施した(第1、2、3、4、5日;全部で5回の注射)。投薬は腫瘍がおよそ150~250 mm3のサイズに達したときに開始した。
【0077】
1サイクル後の反応の持続期間を探索するためのインビボ実験を計画した。動物を1週間に3回計量し、腫瘍体積を定量した。さらに、動物を疼痛の徴候について毎日モニタリングした。細胞処置間の腫瘍体積の相関関係を、スピアマンの順位検定により調べる。
【0078】
クルクミン+ドキソルビシンミセルの用量は、5日間にわたり毎日IV投与される2.5 mg/kg/日のDox及び11 mg/kg/日~32 mg/kg/日のCurとした。毎週の投薬スケジュールも探索し、ここでクルクミン+ドキソルビシンミセルのDoxの用量を毎週IVで8 mg/kgとした。
【0079】
5日間にわたる1日1回のクルクミン+ドキソルビシンミセルの投与により、PBSで処置したマウス及び空のミセルで処置したマウスと比較して腫瘍サイズが低下した(図1Aはmm3単位で表す腫瘍サイズを示し;図1Bは腫瘍サイズのベースラインからのパーセンテージ変化を示す)。PBS対照においては腫瘍の縮小は観察されなかった。
【0080】
さらに、クルクミン+ドキソルビシンミセル処置マウスにおいては、PBS処置したマウス及び空のミセルで処置したマウスと比較して生存時間の延長が達成された(図2)。
【0081】
全体的に、クルクミン+ドキソルビシンミセルのIV投与は、STS異種移植マウスモデルにおける腫瘍サイズの低下及び生存上の利益を示した。従って、関連する疾患の動物モデル(ヒトSTS異種移植マウスモデル)からのインビボ有効性データは、稀な小児疾患である横紋筋肉腫(RMS)の治療のためのクルクミン+ドキソルビシンミセルの使用を支持する。
【0082】
同じSTSの異種移植モデルにおいて、クルクミンのみのミセルのクルクミン+ドキソルビシンミセルとの組合わせの投与は、生存率の延長(図3B)に転換されるさらなる腫瘍成長の抑制を示し(図3A)、処置動物における体重減少の欠如により示されるように、何らの毒性も追加されなかった。
【0083】
この実験群において、クルクミンのみのミセルは21.7 mg/kg/用量の用量での急速注入によりIVで投与し、続いて数分後にクルクミン+ドキソルビシンミセルをIVで投与した。全ての処置動物に上記用量で5(5)回の注射を施し(1日1回)、クルクミンのみのミセルは必ずクルクミン+ドキソルビシンミセルより先に投与した。1サイクルのクルクミンのみのミセル+クルクミン+ドキソルビシンミセルの組合わせの5(5)回の注射を本研究において投与した。
【0084】
投与スケジュールは、さらにより高用量のクルクミンのみのミセル、例えば22~30 mg/kg/用量、30~50 mg/kg/用量、及び50~100 mg/kg/用量のクルクミンのみのミセルを含み得る。投与のスケジュールは、クルクミン+ドキソルビシンミセルに数分から最大8~12時間先行するクルクミンのみのミセルを含み得る。クルクミンのみのミセルはクルクミン+ドキソルビシンミセルから最大8(8)時間後に投与され得る。
【0085】
(実施例2)
(肉腫HT1080の異種移植モデルにおける追加のクルクミンのみのミセルの効果及び治療の持続期間)
クルクミンのみのミセルをクルクミン+ドキソルビシン共担持ミセルに続いて追加することの効果、並びに3(3)日間の処置対4(4)日間の処置対5(5)日間の処置の比較を、十分に特徴づけられた異種移植HT1080モデルにおいて研究した。HT1080は十分に特徴づけられた線維肉腫モデルである。Dodd RD, Mito JK, Kirsch DG.の文献、「軟部組織肉腫の動物モデル(Animal models of soft-tissue sarcoma.)」Dis Model Mech. 2010 Sep-Oct; 3(9-10):557-66。
【0086】
簡潔に説明すると、HT1080細胞はATCCから取得した。HT1080モデルは5x106個の細胞を6~8週齢Nu/Nuマウスの左脇腹に皮下(SC)移植して高度に増殖性の腫瘍を発生させることにより作製した。SC腫瘍の成長はベルニエキャリパーを用いた週に2回の腫瘍径の測定により追跡し、腫瘍体積(TV)は式:
TV (mm3) = d2×D/2
(式中、「d」及び「D」はそれぞれ最短径及び最長径とした)
に従い計算した。
全ての処置は腹腔内(IP)注射により施した。
【0087】
マウスを以下の処置群に分けた:
・3D IMX-110群―クルクミン+ドキソルビシンミセル(3日間にわたる1日1回の2.5 mg/kg/ドキソルビシン用量)(n=4)。
・5D IMX-110群―クルクミン+ドキソルビシンミセル(5日間にわたる1日1回の2.5 mg/kg/ドキソルビシン用量)(n=4)。
・5D IMX-1100-low群―1日1回×5用量のクルクミン+ドキソルビシンミセル(5日間にわたる1日1回の2.5 mg/kg/ドキソルビシン用量)とそれに続くクルクミンのみのミセル(20 mg/kgクルクミン/用量)(n=4)。
・5D IMX-1100-med群―1日1回×5用量のクルクミン+ドキソルビシンミセル(5日間にわたり1日1回の2.5 mg/kg/ドキソルビシン用量)とそれに続くクルクミンのみのミセル(20 mg/kgクルクミン/用量)と、その直後に続いて1時間後に投与するもう1つの用量のクルクミンのみのミセル(20 mg/kgクルクミン/用量)(n=4)。
・1D-6 IMX-109群―クルクミン+ドキソルビシンミセル(1回投与する2.5 mg/kg/ドキソルビシン用量)とそれに続くクルクミンのみのミセル(20 mg/kgクルクミン/用量)とその直後に続いて1時間空けて投与する別の5(5)回の用量のクルクミンのみのミセル(20 mg/kgクルクミン/用量)(n=4)。
【0088】
投薬は腫瘍がおよそ150~250 mm3のサイズに達したときに開始した。処置群間の腫瘍成長阻害の差を探索するためのインビボ実験を計画した。具体的には、クルクミン+ドキソルビシンミセルに加えた追加のクルクミンのみのミセルの効果並びに1(1)日の投薬対3(3)日間の処置対5(5)日間の処置の差を研究した。動物を週に2(2)回計量し、腫瘍体積を定量した。さらに、動物を疼痛の徴候について毎日モニタリングした。
【0089】
この研究の結果は、最大64(64)日間の観察にわたる5(5)日間の処置の3(3)日間の処置に対する、より顕著に優れた腫瘍成長阻害を示した。さらに、追加のクルクミンのみのミセルの毎日の用量を投与された実験群(5D IMX-1100-low及び5D IMX-1100-med)は、クルクミン+ドキソルビシン群5D IMX-110よりも効果的な腫瘍成長阻害を示した(図4)。注目すべきことに、クルクミン+ドキソルビシンミセルとそれに続く同日のクルクミンのみのミセルの6(6)回の用量による1(1)日の投薬を受けた群は、他の群と比較して最も弱い腫瘍成長阻害を示した。
【0090】
投与スケジュールは、さらにより高用量のクルクミンのみのミセル、例えば22~30 mg/kg/用量、30~50 mg/kg/用量、及び50~100 mg/kg/用量のクルクミンのみのミセルを含み得る。投与のスケジュールは、クルクミン+ドキソルビシンミセルに数分から最大8~12時間先行する、又はそれに後続するクルクミンのみのミセルを含み得る。
【0091】
(実施例3)
(肉腫HT1080の異種移植モデルにおける追加のクルクミンのみのミセル及び投薬スケジュールの効果)
クルクミンのみのミセルをクルクミン+ドキソルビシン共担持ミセルに続いて追加することの効果、並びに4(4)日間の毎日の処置対5(5)日間の毎日の処置対連続する2(2)週間にかけての月曜日、水曜日、及び金曜日に投与される6(6)回の用量の比較を、マウス異種移植HT1080モデルにおいて研究した。
【0092】
HT1080モデルは5x106個の細胞を6~8週齢CRL Nu/Jマウスの左脇腹に皮下(SC)移植して高度に増殖性の腫瘍を発生させることにより作製した。SC腫瘍の成長はベルニエキャリパーを用いた週に2回の腫瘍径の測定により追跡し、腫瘍体積(TV)は式:
TV (mm3) = d2×D/2
(式中、「d」及び「D」はそれぞれ最短径及び最長径とした)
に従い計算した。
【0093】
全ての処置は腹腔内(IP)注射により施した。
【0094】
マウスを以下の処置群に分けた:
・PBS対照群(n=5)
・4D-IMX-110群―クルクミン+ドキソルビシンミセル(4日間にわたる1日1回の1.5 mg/kg/ドキソルビシン用量)(n=8)。
・4D-IMX-1100-low群―1日1回×4用量のクルクミン+ドキソルビシンミセル(4日間にわたる1日1回の1.5 mg/kg/ドキソルビシン用量)とそれに続くクルクミンのみのミセル([20] mg/kgクルクミン/用量)(n=8)。
・4D-IMX-1100-high群―クルクミン+ドキソルビシンミセル(4日間にわたり1日1回の1.5 mg/kg/ドキソルビシン用量)とそれに続くクルクミンのみのミセル([20] mg/kgクルクミン/用量)とその直後に続いて1時間空けて投与する別の2(2)回の用量のクルクミンのみのミセル([20] mg/kgクルクミン/用量)(1日当たり合計3回のクルクミンのみのミセルの用量)(n=8)。
・5D-IMX-110群―クルクミン+ドキソルビシンミセル(5日間にわたり1日1回投与する1.5 mg/kg/ドキソルビシン用量)(n=4)。
・5D-IMX-1100-low群―1日1回×5日間のクルクミン+ドキソルビシンミセル(5日間にわたり1日1回投与する1.5 mg/kg/ドキソルビシン用量)とそれに続くクルクミンのみのミセル([20] mg/kgクルクミン/用量)(n=8)。
・5D-IMX-1100-high群―クルクミン+ドキソルビシンミセル(5日間にわたり1日1回投与する1.5 mg/kg/ドキソルビシン用量)とそれに続くクルクミンのみのミセル([20] mg/kgクルクミン/用量)とその直後の1時間空けて投与する2(2)回の追加の用量(合計3回のクルクミンのみの用量/日×5日間)(n=8)。
・6D-2W-MWF-1100群―合計で6日の投薬となる連続する2週間のうちの月曜日、水曜日、及び金曜日に投与されるクルクミン+ドキソルビシンミセル(1.5 mg/kg/ドキソルビシン用量)とそれに続く3(3)回のクルクミンのみのミセルの注射(20 mg/kgクルクミン/用量)。
【0095】
投薬は腫瘍がおよそ150~250 mm3のサイズに達したときに開始した。
【0096】
処置群間の腫瘍成長阻害の差を探索するためのインビボ実験を計画した。具体的には、クルクミン+ドキソルビシンミセルに追加する追加のクルクミンのみのミセルの効果、並びに4(4)日間の投薬対5(5)日間対連続する2週間のうちの月曜日、水曜日、及び金曜日に投与される6(6)回の用量の相違を研究した。動物を1週間に2(2)回計量し、腫瘍体積を定量した。さらに、動物を疼痛の徴候について毎日モニタリングした。
【0097】
本研究の結果から、投薬後第21(21)日までの5(5)日間の処置対4(4)日間対連続する2週間のうちの月曜日、水曜日、及び金曜日に投与される6(6)回の用量による、より顕著に優れた腫瘍成長阻害が示された。さらに、追加のクルクミンのみのミセルの用量を投与された実験群(5日間及び4日間の両方の処置群)は、クルクミン+ドキソルビシン群よりも効果的な腫瘍成長阻害を示した(図5)。注目すべきことに、2(2)週間にわたる6(6)回の用量を投与された群は、腫瘍抑制の改善を示さなかった。
【0098】
(実施例4)
(同系マウス肉腫モデルにおけるポリキナーゼ阻害剤クルクミンミセルの1日の投薬回数の増加の効果)
共担持されたドキソルビシン+クルクミンミセルの後に投与するクルクミンミセルの1日の投薬回数を1日1回から1日2回~1日3回まで増加させることの効果を同系肉腫マウスモデルS180において研究した。肉腫マウスモデルS180は十分に特徴づけられた同系マウス肉腫モデルである。Alfaro G, Lomeli C, Ocadiz R, Ortega V, Barrera R, Ramirez M, Nava Gの文献、「マウスの異なる近交系において増殖することができるマウス起源の細胞株S180の免疫学的及び遺伝学的特性評価(Immunologic and genetic characterization of S180, a cell line of murine origin capable of growing in different inbred strains of mice.)」Vet Immunol Immunopathol. 1992 Jan 31;30(4):385。
【0099】
1日1回(QD)、1日2回(BID)、又は1日3回(TID)の追加のクルクミンのみのミセルを投与された実験群間での腫瘍成長阻害の関連する相違を観察するため、本研究ではクルクミン+ドキソルビシンミセルにおいて最大値を下回る用量のドキソルビシン(1.5 mg/kg)を使用した。
【0100】
簡潔に説明すると、S180細胞はATCCから取得した。S180モデルは5x106個の細胞を6~8週齢Balb/Cマウスの左脇腹に皮下(SC)移植して高度に増殖性の腫瘍を発生させることにより作製した。SC腫瘍の成長はベルニエキャリパーを用いた週に2回の腫瘍径の測定により追跡し、腫瘍体積(TV)は式:
TV (mm3) = d2×D/2
(式中、「d」及び「D」はそれぞれ最短径及び最長径とした)
に従い計算した。
【0101】
マウスを以下の処置群に分けた:
・対照群―PBS緩衝液のみにより処置(83 μl/用量、n=8);
・QD群―7日間にわたり1日1回投与される、クルクミン+ドキソルビシンミセル(1.5 mg/kg/ドキソルビシン用量×5用量)とそれに続くクルクミンのみのミセル(20 mg/kgクルクミン用量)(n=4);
・BID群―7日間にわたり1日2回投与される、クルクミン+ドキソルビシンミセル(1.5 mg/kg/ドキソルビシン用量×5用量)とそれに続くクルクミンのみのミセル(20 mg/kgクルクミン用量)(n=4);
・TID群―7日間にわたり1日3(3)回投与される、クルクミン+ドキソルビシンミセル(1.5 mg/kg/ドキソルビシン用量×5用量)とそれに続くクルクミンのみのミセル(20 mg/kgクルクミン用量)(n=4)。
【0102】
全ての用量は腹腔内(IP)注射により投与した。投薬は腫瘍がおよそ150~250 mm3のサイズに達したときに開始した。1サイクル後の腫瘍成長阻害及び反応の持続期間を探索するためのインビボ実験を計画した。動物を1週間に2回計量し、腫瘍体積を定量した。さらに、動物を疼痛の徴候について毎日モニタリングした。
【0103】
本研究の結果から、クルクミンミセルの追加の1日用量により、腫瘍成長阻害が増大することが示された。腫瘍抑制は最大24日間の観察中TID群においてBID群におけるよりも大きかった(図6)。
【0104】
さらに、TID群内の腫瘍サイズにおいて観察されたバラツキに統計的に有意な低下が存在し、BID及びQD群内の動物間ではずっと大きなバラツキがあった。このことは、1日当たりのクルクミノイドミセルの投薬の回数を増加させることにより、より均一かつ一貫した腫瘍成長抑制がもたらされたことを示唆している。
【0105】
投与スケジュールは、より高用量のクルクミンのみのミセル、例えば22~30 mg/kg/用量、30~50 mg/kg/用量及び50~100 mg/kg/用量のクルクミンのみのミセルをさらに含み得る。投与のスケジュールは、クルクミン+ドキソルビシンミセルに数分から最大8~12時間先行する、又はそれに後続するクルクミンのみのミセルを含み得る。
【0106】
(実施例5)
(同系マウス肉腫モデルS180におけるポリキナーゼ阻害剤クルクミンミセルによる治療持続期間の延長効果)
14(14)日間の1日当たり3(3)回の用量のクルクミンミセルによる治療経過の延長効果を同系肉腫マウスモデルS180において研究した。ここでも、クルクミンのみのミセルを用いた治療スケジュールの延長(14日間)による寄与を受ける腫瘍成長阻害の相違を観察するため、本研究ではクルクミン+ドキソルビシンミセルにおいて最大値を下回る用量のドキソルビシン(1.5 mg/kg)を使用した。
【0107】
簡潔に説明すると、S180細胞はATCCから取得した。S180モデルは5x106個の細胞を6~8週齢Balb/Cマウスの左脇腹に皮下(SC)移植して増殖性の腫瘍を発生させることにより作製した。SC腫瘍の成長はベルニエキャリパーを用いた週に2回の腫瘍径の測定により追跡し、腫瘍体積(TV)は式:
TV (mm3) = d2×D/2
(式中、「d」及び「D」はそれぞれ最短径及び最長径とした)
に従い計算した。
【0108】
投薬は腫瘍がおよそ150~250 mm3のサイズに達したときに開始した。マウスを最初の5(5)日間にわたり1時間空けて投与するクルクミン+ドキソルビシンミセル(IMX-110-DOX/CUR)(5日間にわたる1.5 mg/kg/ドキソルビシン用量)+3(3)回の用量のクルクミンのみのミセルIMX-110-CUR(20 mg/kgクルクミン用量)で処置し、それに続いて1時間空けて投与する3(3)回の1日用量のIMX-110-CUR(20 mg/kgクルクミン用量)により9(9)日間の処置を行った(n=4)。
【0109】
全ての用量は腹腔内(IP)注射により投与した。1サイクル後の腫瘍成長阻害及び反応の持続期間を探索するためのインビボ実験を計画した。動物を1週間に2回計量し、腫瘍体積を定量した。さらに、動物を疼痛の徴候について毎日モニタリングした。
【0110】
注目すべきことに、本研究の結果から、50%の動物(4頭のうち2頭)は処置に対する完全奏効を有し、腫瘍は第15日までに測定可能な閾値以下に縮小したことが示された。この効果は37(37)日間の観察にわたり持続し、クルクミン+ドキソルビシンミセルの組合わせ処置とそれに続くクルクミンのみのミセルによる14日間の延長処置スケジュールの効果が強調された(図7)。
【0111】
投与スケジュールは、さらにより高用量のクルクミンのみのミセル、例えば22~30 mg/kg/用量、30~50 mg/kg/用量、及び50~100 mg/kg/用量のクルクミンのみのミセルを含み得る。投与のスケジュールは、クルクミン+ドキソルビシンミセルに数分から最大8~12時間先行する、又はそれに後続するクルクミンのみのミセルを含み得、治療の持続期間は28日間に延長した。
【0112】
(実施例6)
(進行中の第1b/2a相臨床試験からの軟部組織肉腫におけるクルクミン+ドキソルビシンミセルのヒトデータ)
クルクミン+ドキソルビシンミセルを進行性固形腫瘍の進行中の第1b/2a相臨床試験において研究中である(Clinicaltrials.gov参照番号: NCT03382340)。
【0113】
4名の進行性軟部組織肉腫を有する患者を登録し、クルクミン+ドキソルビシンミセルを投薬した。データを以下に詳細に示す。
【0114】
第1の肉腫患者(#004-001)は再発したステージIVの高グレードの癌肉腫(グレード4、未分化型)を有する66歳の女性であった。登録前、彼女の疾患はカルボプラチン及びパクリタキセルによる治療後に進行し、拡大性肺転移として現れた。クルクミン+ドキソルビシンミセル試験への登録時、彼女の標的腫瘍病変の径の和は109 mmであった。最初の2(2)サイクルのクルクミン+ドキソルビシンミセルの後、彼女の8週目のCTスキャンは疾患が安定なままであることを示し、標的病変の和は2(2)ヶ月目の時点で118 mmであった。彼女はその後、追加の2(2)サイクルのクルクミン+ドキソルビシンミセルを受けた。16週目のCTスキャンは腫瘍の進行を示し、標的病変の和は137 mmとなった。彼女は4ヶ月目の時点で試験から離脱した。患者は何の薬物関連重度有害事象も経験しなかった。この患者について観察された臨床利益は2(2)ヶ月にわたる無増悪生存期間及び病勢安定であった。
【0115】
第2の肉腫患者(#004-002)は、2012年に低分化型グレード3の組織学所見を示すステージIVの平滑筋肉腫と診断され、その腫瘍が2016年に再発した77歳の男性であった。2012年の最初の診断時、彼はイホスファミド、ゲムシタビン、ドキソルビシン及びドセタキセルによる治療を受けた。彼の腫瘍は2016年に再発し、彼はその後ヨンデリス、オプジーボ、アパチニブ、及び再度のオプジーボを投与された。これらの治療にもかかわらず、複数の肺転移及び脾臓塊はサイズを増加させ、彼はクルクミン+ドキソルビシンミセル試験に登録された。登録時、彼の標的腫瘍病変の径の和は87 mmであった。最初の2(2)サイクルのクルクミン+ドキソルビシンミセルの後、彼の8週目のCTスキャンは標的腫瘍サイズが17%低下して72 mmとなり、2ヶ月目の時点でRECIST 1.1基準による病勢安定となったことを示した。続いて患者はさらに2(2)サイクルのクルクミン+ドキソルビシンミセルを受け、彼の16週目のCTスキャンは病勢安定を示し、4ヶ月目の時点で彼の標的腫瘍病変の径の和は、92 mmとなった。しかしながら、全体的な健康状態が不良であったため、患者はさらなる治療を継続しないことを選択した。患者は何の薬物関連重度有害事象も経験しなかった。この患者について観察された臨床利益は4(4)ヶ月にわたる無増悪生存期間及び病勢安定であった。
【0116】
第3の肉腫患者(#004-003)は、低分化型グレード3の組織学所見を示すステージIVの平滑筋肉腫を有する59歳の男性であった。2017年の彼の診断後、クルクミン+ドキソルビシンミセル試験に登録する前に、患者はゲムシタビン、ドセタキセル、イホスファミド、ダカルバジン、ドキソルビシン、オラルツマブ(Olarutumab)、ヨンデリス、ニボルマブ、再度のヨンデリス、再度のニボルマブ、及びTVECを投与された。クルクミン+ドキソルビシンミセル試験への登録時、彼の標的腫瘍病変の径の和は、312 mmであった。最初の2(2)サイクルのクルクミン+ドキソルビシンミセルの後、8週目のCTスキャンは、病勢安定を示し、2ヶ月目の時点で標的病変の和は306 mmまで低下した。4(4)サイクルのクルクミン+ドキソルビシンミセルの後の16週目のCTスキャンは、再度病勢安定を示し、4ヶ月目の時点で標的病変の和は313 mmであった。6(6)サイクルのクルクミン+ドキソルビシンミセルの後の24週目のCTスキャンは、再度病勢安定を示し、6ヶ月目の時点で標的病変の和は257 mmまで低下し、これはベースラインからの18%の低下であった。この時点で、この患者は累積用量733 mg/m2のドキソルビシンを投与されており、さらなるモニタリングのための試験から離脱した。患者は何の薬物関連重度有害事象も経験しなかった。この患者について観察された臨床利益は6(6)ヶ月にわたる無増悪生存期間及び病勢安定であった。
【0117】
第4の肉腫を有する患者(#004-005)は、ヨンデリス、オプジーボ、及びイピルモマブ(Ipilumomab)の後に進行し、拡大性肺及び肺外胸腔内転移を有するステージIVの低分化型グレード3の肉腫を有する27歳の女性であった。クルクミン+ドキソルビシンミセル試験への登録時、彼女の標的腫瘍病変の径の和は94 mmであった。最初の2(2)サイクルのクルクミン+ドキソルビシンミセルの後、8週目のCTスキャンは病勢安定を示し、2ヶ月目の時点で標的病変の和は94 mmであった。4(4)サイクルのクルクミン+ドキソルビシンミセルの後の16週目のCTスキャンは再度病勢安定を示し、4ヶ月目の時点で標的病変の和は85 mmまで減少した。6(6)サイクルのクルクミン+ドキソルビシンミセルの後の24周目のCTスキャンは、6ヶ月目の時点で標的病変の和が111 mmであった(対ベースラインで18%増加)ことを示した。RECIST 1.1基準による進行の20%閾値には達しなかったにもかかわらず、患者は臨床進行を有するものとみなされ、試験から離脱した。患者は何の薬物関連重度有害事象も経験しなかった。この患者について観察された臨床利益は4(4)ヶ月にわたる無増悪生存期間及び病勢安定であった。
【0118】
要約すると、クルクミン+ドキソルビシンミセルをその第1/2a相試験において、先行する3(3)以上の治療ラインの後進行した再発性/難治性軟部組織肉腫を有する4(4)名の患者に投与した。患者の誰一人として最初の2(2)サイクルの後に進行せず、2(2)ヶ月目の時点で4(4)名の全てが疾患抑制を示した。注目すべきことに、患者#004-003は、登録時には最も大きな腫瘍負荷量を有していたにもかかわらず、6ヶ月の無増悪生存期間を経験した。さらに、患者#004-002及び#004-005は4ヶ月の無増悪生存期間を経験した。薬物関連SAEを経験した患者はいなかった。
【0119】
上記の様々な方法及び技術は、本願を実施するためのいくつかの方法を提供する。もちろん、本明細書に記載の任意の特定の実施態様により、記載された全ての目的又は利点が達成されるとは必ずしもいえないことを理解すべきである。従って例えば、当業者であれば本明細書で教示され、又は示唆された他の目的又は利点を必ずしも達成せずに、本明細書で教示する1つの利点又は利点の群を達成し、又は最適化するようにして本方法を実施することができることを認識されよう。様々な代替物が本明細書で言及されている。いくつかの実施態様は具体的にある特徴、別の特徴又はいくつかの特徴を含む一方、他の実施態様は具体的にある特徴、別の特徴又はいくつかの特徴を除外しており、さらに他の実施態様はある特徴、別の特徴又はいくつかの他の特徴を含むことにより特定の特徴を緩和することを理解すべきである。
【0120】
さらに、当業者であれば異なる実施態様から様々な特徴の適用可能性を認識されよう。同様に、先に論じた様々な要件、特徴及び工程並びにそのような要件、特徴又は工程の各々の他の公知の均等物は、当該技術分野の当業者により様々な組合わせで利用して、本明細書に記載の原則に従う方法を実施することができる。様々な要件、特徴及び工程のうち、いくつかは具体的に含まれ、他のものは具体的に多様な実施態様において除外される。
【0121】
本願はある実施態様及び実施例の状況で開示されたものの、当業者であれば、本願の実施態様は具体的に開示された実施態様を超えて他の代替の実施態様及び/又は使用並びにそれらの改変及び均等物まで拡張することを理解されよう。
【0122】
いくつかの実施態様において、本開示のある実施態様を記載し、特許を請求するために使用する、成分の量、例えば分子量及び反応条件などの特性を表す任意の数は、用語「約」によりいくつかの例において改変されるものとして理解すべきである。従っていくつかの実施態様において、明文の明細書及び任意の含まれる特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、特定の実施態様により取得することが模索される所望の特性に依存して変化し得る近似である。いくつかの実施態様において、数値パラメータは報告された有効数字の数を考慮して、通常の切り捨て技術を適用することにより解釈すべきである。本願のいくつかの実施態様の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータが近似であるにもかかわらず、特定の実施例に記載の数値は通常実施可能なほど厳密に報告されている。
【0123】
いくつかの実施態様において、用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「該(the)」並びに本願の特定の実施態様を記載する状況において(特にある請求項の状況において)使用する類似の指示語は、単数及び複数の両方に及ぶものと解釈する。本明細書における値の範囲の記載は、単に範囲内にある各々の離れた値を個別に指す簡略化した方法としての役割を果たすことを意図するに過ぎない。そうでないことが本明細書で示されない限り、各個別の値は、それが本明細書に個別に記載されているかのように、本明細書に組み込まれている。本明細書に記載の全ての方法は、そうでないことが本明細書中に示されておらず、又はそうでなくとも状況により明らかに否定されない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書中のある実施態様に関して提供される任意且つ全ての例又は例示的用語(例えば、「例えば」)の使用は、単に本願をより十分に説明することを意図するものであり、そうでなければ特許が請求される本願の範囲に限定を与えるものではない。本明細書中の用語は、本願の実施に必須である任意の特許請求の範囲に記載されていない要件を示すものとして解釈されるべきではない。
【0124】
好ましい実施態様への変形は、先行する明細書を読んだ当業者には明らかとなろう。当業者はそのような変形を適切に利用することができ、本願は本明細書に具体的に記載されたものとは異なる形で実施することができることが企図される。従って、本願の多くの実施態様は、適用可能な法により認められたように、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載の主題事項の全ての改変及び均等物を含む。さらに、その全ての可能な変形中の上記要件の任意の組合わせは、そうでないことが本明細書に示されておらず、又はそうでなくとも状況により明らかに否定されない限り、本願に包含される。
【0125】
本明細書で引用する全ての特許、特許出願、特許出願の公開公報並びに他の材料、例えば論文、書籍、明細書、刊行物、文書及び/又は物などは、それらと関連するあらゆる手続包袋履歴、これらのうち任意の、本文書と矛盾し、若しくは対立するもの、又はこれらのうち任意の、現在又は将来本文書と関連付けられる請求項の最も広い範囲について限定的な効果を有し得るものを除き、全ての目的のためにその全体がこの参照によりここで本明細書に組み込まれている。例として、組み込まれた材料のいずれかに関連付けられる記述、定義及び/又は用語の使用並びに本文書と関連付けられるそれらの間に任意の矛盾又は対立が存在する場合、本文書中の記述、定義及び/又は用語の使用が優先されるものとする。
【0126】
最後に、本明細書で開示する本願の実施態様は、本願の実施態様の原則を説明するものであることを理解すべきである。利用可能な他の改変は、本願の範囲内にあり得る。従って、限定するものではないが例として、本願の実施態様の代替の構成は、本明細書中の教示に従い利用することができる。従って、本願の実施態様は、厳密に示され、記載されているものに限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】