(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】B細胞成熟抗原(BCMA)結合ドメイン組成物
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240912BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240912BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240912BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240912BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240912BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240912BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240912BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518820
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 US2022077070
(87)【国際公開番号】W WO2023049922
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510089100
【氏名又は名称】ゼンコア インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,グレゴリー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、新規BCMA結合ドメイン組成物、及びそのようなBCMA結合ドメインを含む抗BCMA抗体が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインの以下のセットから選択される可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインを含む抗BCMA抗原結合ドメインを含む組成物:
a)配列番号17のアミノ酸を有するvlCDR1、配列番号18のアミノ酸を有するvlCDR2、及び配列番号19のアミノ酸を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号13のアミノ酸を有するvhCDR1、配列番号14のアミノ酸を有するvhCDR2、及び配列番号15のアミノ酸を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;
b)配列番号27のアミノ酸を有するvlCDR1、配列番号28のアミノ酸を有するvlCDR2、及び配列番号29のアミノ酸を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号23のアミノ酸を有するvhCDR1、配列番号24のアミノ酸を有するvhCDR2、及び配列番号25のアミノ酸を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;
c)配列番号37のアミノ酸を有するvlCDR1、配列番号38のアミノ酸を有するvlCDR2、及び配列番号39のアミノ酸を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号33のアミノ酸を有するvhCDR1、配列番号34のアミノ酸を有するvhCDR2、及び配列番号35のアミノ酸を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;
d)配列番号47のアミノ酸を有するvlCDR1、配列番号48のアミノ酸を有するvlCDR2、及び配列番号49のアミノ酸を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号43のアミノ酸を有するvhCDR1、配列番号44のアミノ酸を有するvhCDR2、及び配列番号45のアミノ酸を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;
e)配列番号57のアミノ酸を有するvlCDR1、配列番号58のアミノ酸を有するvlCDR2、及び配列番号59のアミノ酸を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号53のアミノ酸を有するvhCDR1、配列番号54のアミノ酸を有するvhCDR2、及び配列番号55のアミノ酸を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;
f)配列番号67のアミノ酸を有するvlCDR1、配列番号68のアミノ酸を有するvlCDR2、及び配列番号69のアミノ酸を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号63のアミノ酸を有するvhCDR1、配列番号64のアミノ酸を有するvhCDR2、及び配列番号65のアミノ酸を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;並びに
g)配列番号77のアミノ酸を有するvlCDR1、配列番号78のアミノ酸を有するvlCDR2、及び配列番号79のアミノ酸を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号73のアミノ酸を有するvhCDR1、配列番号74のアミノ酸を有するvhCDR2、及び配列番号75のアミノ酸を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン。
【請求項2】
可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインの以下のセットから選択される可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインのセットを含む抗BCMA抗原結合ドメインを含む組成物:
a)配列番号16のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメインのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号12のアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインのvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;
b)配列番号26のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメインのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号22のアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインのvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;
c)配列番号36のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメインのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号32のアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインのvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;
d)配列番号46のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメインのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号42のアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインのvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;
e)配列番号56のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメインのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号52のアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインのvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;
f)配列番号66のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメインのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号62のアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインのvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;並びに
g)配列番号76のアミノ酸配列を有する可変軽鎖ドメインのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号72のアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインのvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン。
【請求項3】
可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインの以下のセットから選択される可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインのセットを含む抗BCMA抗原結合ドメインを含む組成物:
a)配列番号16のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメイン及び配列番号12のアミノ酸を有する可変重鎖ドメイン;
b)配列番号26のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメイン及び配列番号22のアミノ酸を有する可変重鎖ドメイン;
c)配列番号36のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメイン及び配列番号32のアミノ酸を有する可変重鎖ドメイン;
d)配列番号46のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメイン及び配列番号42のアミノ酸を有する可変重鎖ドメイン;
e)配列番号56のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメイン及び配列番号52のアミノ酸を有する可変重鎖ドメイン;
f)配列番号66のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメイン及び配列番号62のアミノ酸を有する可変重鎖ドメイン;並びに
g)配列番号76のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメイン及び配列番号72のアミノ酸を有する可変重鎖ドメイン。
【請求項4】
核酸組成物であって、それぞれ、
a)請求項1、2又は3に記載の可変重鎖ドメインをコードする第1の核酸;及び
b)請求項1、2又は3に記載の可変軽鎖ドメインをコードする第2の核酸
を含む、核酸組成物。
【請求項5】
発現ベクター組成物であって、
a)請求項4に記載の第1の核酸を含む第1の発現ベクター;及び
b)請求項4に記載の第2の核酸を含む第2の発現ベクター
を含む発現ベクター組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の発現ベクター組成物を含む宿主細胞。
【請求項7】
BCMA結合ドメインを作製する方法であって、前記BCMA結合ドメインが発現される条件下で請求項6に記載の宿主細胞を培養することと、前記BCMA結合ドメインを回収することとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本出願は、2021年9月27日に出願された米国仮出願第63/248,988号の優先権及び利益を主張し、その内容全体はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表)
本出願は、XMLフォーマットで電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2022年9月26日に作成されたXMLコピーは、067461-5292-WO.xmlという名称であり、サイズは177,871バイトである。
【背景技術】
【0003】
抗体に基づいた治療法は、種々の疾患を処置するのに成功裏に使用されてきた。
【0004】
B細胞成熟抗原(BCMA)は、B細胞活性化因子(BAFF)を認識するTNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。例えば、Laabi et al.,The EMBO Journal 11(11):3897-904(1992)を参照されたい。BCMAは、成熟Bリンパ球において優先的に発現され、B細胞発生及び自己免疫応答に重要な役割を果たすと考えられている。B細胞の発生において、BCMAは、増殖誘導リガンド(APRIL)に係合することによって、B細胞の成熟及び形質細胞への分化を調節する際に中心的役割を果たし、骨髄における形質細胞の生存にも必要である。例えば、Tai et al.,Immunotherapy7:1187-1199(2015)を参照されたい。
【0005】
BCMAは、白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫を含むがこれらに限定されない様々な血液がんに関与する。Moreaux et al.,Blood 103:2148-3157(2004);及びChiu et al.,Blood 109(2):729-739(2007)。多発性骨髄腫に関して、BCMAは、多発性骨髄腫細胞株及び悪性形質細胞上で発現され、BCMAの発現は、多発性骨髄腫の疾患進行中に増加する。Moreaux et al.,Blood 103:2148-3157(2004);Carpenter et al.,Clin Cancer Res 19:2048-2060(2013);及びYong et al.,Blood 122:4447(2013)を参照されたい。血液疾患、特にBCMAを標的とする血液疾患の処置のための新規治療薬が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書で提供されるのは、新規BCMA抗原結合ドメイン組成物、及びそのようなBCMA抗原結合ドメインを含む抗体である。本明細書で提供されるBCMA抗原結合ドメイン及び抗体は、例えば、BCMA関連疾患の処置において有用である。
【0007】
本明細書で提供されるのは、新規BCMA抗原結合ドメイン組成物、及びそのようなBCMA抗原結合ドメインを含む抗体である。本明細書で提供されるBCMA抗原結合ドメイン及び抗体は、例えば、BCMA関連疾患の処置において有用である。
【0008】
一態様では、可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインの以下のセットから選択される可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインのセットを含む抗BCMA抗原結合ドメインを含む組成物が本明細書で提供される:a)配列番号17のアミノ酸を有するvlCDR1、配列番号18のアミノ酸を有するvlCDR2、及び配列番号19のアミノ酸を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号13のアミノ酸を有するvhCDR1、配列番号14のアミノ酸を有するvhCDR2、及び配列番号15のアミノ酸を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;b)配列番号27のアミノ酸を有するvlCDR1、配列番号28のアミノ酸を有するvlCDR2、及び配列番号29のアミノ酸を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号23のアミノ酸を有するvhCDR1、配列番号24のアミノ酸を有するvhCDR2、及び配列番号25のアミノ酸を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;c)配列番号37のアミノ酸を有するvlCDR1、配列番号38のアミノ酸を有するvlCDR2、及び配列番号39のアミノ酸を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号33のアミノ酸を有するvhCDR1、配列番号34のアミノ酸を有するvhCDR2、及び配列番号35のアミノ酸を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;d)配列番号47のアミノ酸を有するvlCDR1、配列番号48のアミノ酸を有するvlCDR2、及び配列番号49のアミノ酸を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号43のアミノ酸を有するvhCDR1、配列番号44のアミノ酸を有するvhCDR2、及び配列番号45のアミノ酸を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;e)配列番号57のアミノ酸を有するvlCDR1、配列番号58のアミノ酸を有するvlCDR2、及び配列番号59のアミノ酸を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号53のアミノ酸を有するvhCDR1、配列番号54のアミノ酸を有するvhCDR2、及び配列番号55のアミノ酸を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;f)配列番号67のアミノ酸を有するvlCDR1、配列番号68のアミノ酸を有するvlCDR2、及び配列番号69のアミノ酸を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号63のアミノ酸を有するvhCDR1、配列番号64のアミノ酸を有するvhCDR2、及び配列番号65のアミノ酸を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;並びにg)配列番号77のアミノ酸を有するvlCDR1、配列番号78のアミノ酸を有するvlCDR2、及び配列番号79のアミノ酸を有するvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号73のアミノ酸を有するvhCDR1、配列番号74のアミノ酸を有するvhCDR2、及び配列番号75のアミノ酸を有するvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン。
【0009】
別の態様では、可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインの以下のセットから選択される可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインのセットを含む抗BCMA抗原結合ドメインを含む組成物が本明細書で提供される:a)配列番号16のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメインのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号12のアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインのvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;b)配列番号26のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメインのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号22のアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインのvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;c)配列番号36のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメインのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号32のアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインのvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;d)配列番号46のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメインのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号42のアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインのvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;e)配列番号56のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメインのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号52のアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインのvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;f)配列番号66のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメインのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号62のアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインのvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン;並びにg)配列番号76のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメインのvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む可変軽鎖ドメイン、並びに配列番号72のアミノ酸配列を有する可変重鎖ドメインのvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む可変重鎖ドメイン。
【0010】
一態様では、可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインの以下のセットから選択される可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインのセットを含む抗BCMA抗原結合ドメインを含む組成物が本明細書で提供される:a)配列番号16のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメイン及び配列番号12のアミノ酸を有する可変重鎖ドメイン;b)配列番号26のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメイン及び配列番号22のアミノ酸を有する可変重鎖ドメイン;c)配列番号36のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメイン及び配列番号32のアミノ酸を有する可変重鎖ドメイン;d)配列番号46のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメイン及び配列番号42のアミノ酸を有する可変重鎖ドメイン;e)配列番号56のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメイン及び配列番号52のアミノ酸を有する可変重鎖ドメイン;f)配列番号66のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメイン及び配列番号62のアミノ酸を有する可変重鎖ドメイン;並びにg)配列番号76のアミノ酸を有する可変軽鎖ドメイン及び配列番号72のアミノ酸を有する可変重鎖ドメイン。
【0011】
別の態様では、a)本明細書で提供されるBCMA ABD組成物のいずれかの可変重鎖ドメインをコードする第1の核酸;及びb)本明細書で提供されるBCMA ABD組成物のいずれかの可変軽鎖ドメインをコードする第2の核酸を含む核酸組成物が本明細書で提供される。
【0012】
別の態様では、a)第1の核酸を含む第1の発現ベクター;及びb)第2の核酸を含む第2の発現ベクターを含む発現ベクター組成物が本明細書で提供される。
【0013】
一態様では、本明細書で提供されるのは、発現ベクター組成物を含む宿主細胞である。更に別の態様では、本明細書で提供されるのは、BCMA結合ドメインを作製する方法であって、BCMA結合ドメインが発現される条件下で宿主細胞を培養することと、BCMA結合ドメインを回収することとを含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】A)ヒト、B)マウス、C)ラット及びD)カニクイザルのBCMAの配列を示す。下線の領域は細胞外ドメインである。
【
図2】ヒトBCMAの細胞外ドメインと、A)カニクイザルBCMA、B)マウスBCMA、及びC)ラットBCMAとの配列アラインメントを示す。
【
図3】本明細書に記載のBCMA結合ドメイン組成物の実施形態における使用される定常重鎖ドメインの配列を示す。
【
図4】本明細書に記載のBCMA結合ドメイン組成物における使用される同族軽鎖の定常ドメインを示す。
【
図5】例示的なファージ由来BCMA結合ドメインであるS1R4_10corrの可変重鎖及び可変軽鎖配列、並びにE233P/L234V/L235A/G236del/S267K除去バリアントを有するS1R4_10corr及びIgG1骨格に基づく抗BCMA mAbの配列であるXENP23357を示す。CDRは下線が付され、スラッシュは可変領域と定常ドメインとの境界を示す。本明細書に記載され、CDRを含有するあらゆる配列に当てはまるように、CDR位置の正確な同定は、表2に示されるように使用される番号付けに応じてわずかに異なる場合があり、よって、下線が付されたCDRだけでなく、他の番号付けシステムを使用したV
H及びV
Lドメイン内に含まれるCDRも、本明細書に含まれる。
【
図6】例示的なファージ由来BCMA結合ドメインであるS1R5_125の可変重鎖及び可変軽鎖配列、並びにE233P/L234V/L235A/G236del/S267K除去バリアントを有するS1R5_125r及びIgG1骨格に基づく抗BCMA mAbであるXENPXXXの配列を示す。CDRは下線が付され、スラッシュは可変領域と定常ドメインとの境界を示す。本明細書に記載され、CDRを含有するあらゆる配列に当てはまるように、CDR位置の正確な同定は、表2に示されるように使用される番号付けに応じてわずかに異なる場合があり、よって、下線が付されたCDRだけでなく、他の番号付けシステムを使用したV
H及びV
Lドメイン内に含まれるCDRも、本明細書に含まれる。
【
図7】XENP23357(S1R4_10corrに基づくBCMA mAb)のA)還元LabChipゲル、B)非還元LabChipゲル、及びC)分析用サイズ排除クロマトグラムを示す。
【
図8】BCMAに対する一価結合を有する1+1フォーマットのCD3 bsAbと関連して、ファージ由来BCMAクローンS1R5_125及びS1R4_10corrのヒト及びカニクイザルBCMAに対する解離定数(K
D)、会合速度(K
a)、及び解離速度(K
d)を示す。
【
図9】BCMAに対する一価及び二価結合をそれぞれ有する1+1及び2+1フォーマットのCD3 bsAbと関連して、ファージ由来BCMAクローンS1R5_125及びS1R4_10corrによる、A)ヒトBCMAでトランスフェクトされた300-19細胞、B)カニクイザルBCMAでトランスフェクトされた300-19細胞、及びC)親300-19細胞への結合を示す。
【
図10】それぞれBCMAに対する一価及び二価結合を有する1+1及び2+1フォーマットのCD3 bsAbとの関連において、A)ファージ由来BCMAクローンS1R4_10corr及びB)ファージ由来BCMAクローンS1R5_125によるリダイレクトT細胞細胞傷害性の誘導を示す。2+1フォーマットがより弱い親和性のCD3結合ドメインを利用することに留意されるべきである。
【
図11】例示的なヒト化ハイブリドーマ由来BCMA結合ドメインである1A1の可変重鎖及び可変軽鎖配列、並びにE233P/L234V/L235A/G236del/S267K除去バリアントを有する1A1及びIgG1骨格に基づく抗BCMA mAbであるXENP24495の配列を示す。CDRは下線が付され、スラッシュは可変領域と定常ドメインとの境界を示す。本明細書に記載され、CDRを含有するあらゆる配列に当てはまるように、CDR位置の正確な同定は、表2に示されるように使用される番号付けに応じてわずかに異なる場合があり、よって、下線が付されたCDRだけでなく、他の番号付けシステムを使用したV
H及びV
Lドメイン内に含まれるCDRも、本明細書に含まれる。
【
図12】例示的なヒト化ハイブリドーマ由来BCMA結合ドメインである1B4の可変重鎖及び可変軽鎖配列、並びにE233P/L234V/L235A/G236del/S267K除去バリアントを有する1B4及びIgG1骨格に基づく抗BCMA mAbであるXENP24503の配列を示す。CDRは下線が付され、スラッシュは可変領域と定常ドメインとの境界を示す。本明細書に記載され、CDRを含有するあらゆる配列に当てはまるように、CDR位置の正確な同定は、表2に示されるように使用される番号付けに応じてわずかに異なる場合があり、よって、下線が付されたCDRだけでなく、他の番号付けシステムを使用したV
H及びV
Lドメイン内に含まれるCDRも、本明細書に含まれる。
【
図13】例示的なヒト化ハイブリドーマ由来BCMA結合ドメインである1B3の可変重鎖及び可変軽鎖配列、並びにE233P/L234V/L235A/G236del/S267K除去バリアントを有する1B3及びIgG1骨格に基づく抗BCMA mAbであるXENP24617の配列を示す。CDRは下線が付され、スラッシュは可変領域と定常ドメインとの境界を示す。本明細書に記載され、CDRを含有するあらゆる配列に当てはまるように、CDR位置の正確な同定は、表2に示されるように使用される番号付けに応じてわずかに異なる場合があり、よって、下線が付されたCDRだけでなく、他の番号付けシステムを使用したV
H及びV
Lドメイン内に含まれるCDRも、本明細書に含まれる。
【
図14】例示的なヒト化ハイブリドーマ由来BCMA結合ドメインである5F2の可変重鎖及び可変軽鎖配列、並びにE233P/L234V/L235A/G236del/S267K除去バリアントを有する5F2及びIgG1骨格に基づく抗BCMA mAbであるXENP24621の配列を示す。CDRは下線が付され、スラッシュは可変領域と定常ドメインとの境界を示す。本明細書に記載され、CDRを含有するあらゆる配列に当てはまるように、CDR位置の正確な同定は、表2に示されるように使用される番号付けに応じてわずかに異なる場合があり、よって、下線が付されたCDRだけでなく、他の番号付けシステムを使用したV
H及びV
Lドメイン内に含まれるCDRも、本明細書に含まれる。
【
図15】例示的なヒト化ハイブリドーマ由来BCMA結合ドメインである6E3の可変重鎖及び可変軽鎖配列、並びにE233P/L234V/L235A/G236del/S267K除去バリアントを有する6E3及びIgG1骨格に基づく抗BCMA mAbであるXENP24625の配列を示す。CDRは下線が付され、スラッシュは可変領域と定常ドメインとの境界を示す。本明細書に記載され、CDRを含有するあらゆる配列に当てはまるように、CDR位置の正確な同定は、表2に示されるように使用される番号付けに応じてわずかに異なる場合があり、よって、下線が付されたCDRだけでなく、他の番号付けシステムを使用したV
H及びV
Lドメイン内に含まれるCDRも、本明細書に含まれる。
【
図16】XENP24495(1A1)、XENP24503(1B4)、XENP24617(1B3)、XENP24621(5F2)及びXENP24625(6E3)についてのA)還元LabChipゲル及びB)非還元LabChipゲルを示す。
【
図17】A)XENP24495(1A1)、B)XENP24503(1B4)、C)XENP24617(1B3)、D)XENP24621(5F2)、及びE)XENP24625(6E3)の分析サイズ排除クロマトグラムを示す。
【
図18】BCMAに対する一価結合を有する1+1フォーマットのCD3 bsAbと関連して、ヒト化ハイブリドーマ由来BCMAクローン1B4、1B3、5F2、6E3、及び1A1のヒト及びカニクイザルのBCMAの解離定数(K
D)、会合速度(K
a)及び解離速度(K
d)を示す。
【
図19】二価単一特異性mAbと関連して、ヒト化ハイブリドーマ由来BCMAクローンS1R4_10corr、1B4、1B3、5F2、6E3、及び1A1による、A)ヒトBCMAでトランスフェクトされた300-19細胞、B)カニクイザルBCMAでトランスフェクトされた300-19細胞、及びC)親300-19細胞への結合を示す。
【
図20】それぞれBCMAに対する一価及び二価結合を有する1+1及び2+1フォーマットのCD3 bsAbとの関連において、ヒト化ハイブリドーマ由来BCMAクローン1A1、1B4、1B3、5F2、及び6E3によるリダイレクトT細胞細胞傷害性の誘導を示す。2+1 bsAbがより低い親和性のCD3結合ドメインを利用することに留意されるべきである。
【
図21】BCMAに対する一価結合を有する1+1におけるCD3 bsAbとの関連において、ヒト化ハイブリドーマ由来BCMAクローン1A1、1B4、1B3、5F2、及び6E3の薬物動態を示す。
【
図22-1】本明細書で提供される抗BCMAヘテロ二量体抗体の例示的なフォーマットを示す。Aは、「1+1 Fab-scFv-Fc」フォーマットを示し、第1のFabアームが第1の抗原に結合し、第2のscFvアームが第2の抗原に結合する。1+1 Fab-scFv-Fcフォーマットは、第1のヘテロ二量体Fc骨格のN末端に(任意選択でリンカーを介して)共有結合した第1の重鎖可変領域(VH1)を含む第1の単量体と、第2の対応するヘテロ二量体Fc骨格のN末端に(任意選択でリンカーを介して)共有結合した単鎖Fvを含む第2の単量体と、軽鎖定常ドメインに共有結合した軽鎖可変領域を含む第3の単量体であって、軽鎖可変領域はVH1に相補的である、第3の単量体とを含む。Bは、第1のFabアーム及び第2のFab-scFvアームを有する「2+1 Fab
2-scFv-Fc」フォーマットを示し、Fabは第1の抗原に結合し、scFvは第2の抗原に結合する。2+1 Fab
2-scFv-Fcフォーマットは、第1のヘテロ二量体Fc骨格のN末端に(任意選択でリンカーを介して)共有結合した第1の重鎖可変領域(VH1)を含む第1の単量体と、第2の対応するヘテロ二量体Fc骨格のN末端に(任意選択でリンカーを介して)共有結合した単鎖Fvに(任意選択でリンカーを介して)共有結合したVH1を含む第2の単量体と、軽鎖定常ドメインに共有結合した軽鎖可変領域を含む第3の単量体であって、軽鎖可変領域はVH1に相補的である、第3の単量体とを含む。
【
図22-2】本明細書で提供される抗BCMAヘテロ二量体抗体の例示的なフォーマットを示す。Cは、「2+1 mAb-scFv」フォーマットを示し、第1のFcは第1の抗原に結合するN末端Fabアームを含み、第2のFcは第1の抗原に結合するN末端Fabアーム及び第2の抗原に結合するC末端scFvを含む。2+1 mAb-scFvフォーマットは、VH1-CH1-ヒンジ-CH2-CH3を含む第1の単量体と、VH1-CH1-ヒンジ-CH2-CH3-scFvを含む第2の単量体と、VL-CLを含む第3の単量体とを含む。VLは、第1及び第2のVH1と対になって、第1の抗原に対する結合特異性を有する結合ドメインを形成する。
【
図23A】本明細書で提供される抗BCMAヘテロ二量体抗体において使用することができるヘテロ二量体化バリアントのセット(スキューバリアント及びpIバリアントを含む)の有用な対を示す。
図23Fには、対応する「単量体2」バリアントが存在しないバリアントがある。そのようなバリアントは、抗BCMAヘテロ二量体抗体のいずれかの単量体で単独で使用され得るpIバリアントであるか、又は例えば、構成要素としてscFvを利用するフォーマットの非scFv側に含まれる可能性があり、適切な荷電scFvリンカーは、scFvを利用する第2の単量体で使用される可能性がある。好適な荷電リンカーは、
図26に示される。
【
図23B】本明細書で提供される抗BCMAヘテロ二量体抗体において使用することができるヘテロ二量体化バリアントのセット(スキューバリアント及びpIバリアントを含む)の有用な対を示す。
図23Fには、対応する「単量体2」バリアントが存在しないバリアントがある。そのようなバリアントは、抗BCMAヘテロ二量体抗体のいずれかの単量体で単独で使用され得るpIバリアントであるか、又は例えば、構成要素としてscFvを利用するフォーマットの非scFv側に含まれる可能性があり、適切な荷電scFvリンカーは、scFvを利用する第2の単量体で使用される可能性がある。好適な荷電リンカーは、
図26に示される。
【
図23C】本明細書で提供される抗BCMAヘテロ二量体抗体において使用することができるヘテロ二量体化バリアントのセット(スキューバリアント及びpIバリアントを含む)の有用な対を示す。
図23Fには、対応する「単量体2」バリアントが存在しないバリアントがある。そのようなバリアントは、抗BCMAヘテロ二量体抗体のいずれかの単量体で単独で使用され得るpIバリアントであるか、又は例えば、構成要素としてscFvを利用するフォーマットの非scFv側に含まれる可能性があり、適切な荷電scFvリンカーは、scFvを利用する第2の単量体で使用される可能性がある。好適な荷電リンカーは、
図26に示される。
【
図23D】本明細書で提供される抗BCMAヘテロ二量体抗体において使用することができるヘテロ二量体化バリアントのセット(スキューバリアント及びpIバリアントを含む)の有用な対を示す。
図23Fには、対応する「単量体2」バリアントが存在しないバリアントがある。そのようなバリアントは、抗BCMAヘテロ二量体抗体のいずれかの単量体で単独で使用され得るpIバリアントであるか、又は例えば、構成要素としてscFvを利用するフォーマットの非scFv側に含まれる可能性があり、適切な荷電scFvリンカーは、scFvを利用する第2の単量体で使用される可能性がある。好適な荷電リンカーは、
図26に示される。
【
図23E】本明細書で提供される抗BCMAヘテロ二量体抗体において使用することができるヘテロ二量体化バリアントのセット(スキューバリアント及びpIバリアントを含む)の有用な対を示す。
図23Fには、対応する「単量体2」バリアントが存在しないバリアントがある。そのようなバリアントは、抗BCMAヘテロ二量体抗体のいずれかの単量体で単独で使用され得るpIバリアントであるか、又は例えば、構成要素としてscFvを利用するフォーマットの非scFv側に含まれる可能性があり、適切な荷電scFvリンカーは、scFvを利用する第2の単量体で使用される可能性がある。好適な荷電リンカーは、
図26に示される。
【
図23F】本明細書で提供される抗BCMAヘテロ二量体抗体において使用することができるヘテロ二量体化バリアントのセット(スキューバリアント及びpIバリアントを含む)の有用な対を示す。
図23Fには、対応する「単量体2」バリアントが存在しないバリアントがある。そのようなバリアントは、抗BCMAヘテロ二量体抗体のいずれかの単量体で単独で使用され得るpIバリアントであるか、又は例えば、構成要素としてscFvを利用するフォーマットの非scFv側に含まれる可能性があり、適切な荷電scFvリンカーは、scFvを利用する第2の単量体で使用される可能性がある。好適な荷電リンカーは、
図26に示される。
【
図24】等配電子バリアント抗体の定常領域及びそれぞれ置換のリストを示す。pI_(-)は低pIバリアントを示し、pI_(+)は高pIバリアントを示す。これらのバリアントは、本明細書に概説されているヘテロ二量体化バリアントを含む他のバリアントと任意にかつ独立して組み合わせることができる。
【
図25】FcγR結合を除去する有用な除去バリアントを示す(「ノックアウト」又は「KO」バリアントとも称される)。いくつかの実施形態では、そのような除去バリアントは、本明細書に記載の対象抗体の両方の単量体のFcドメインに含まれる。他の実施形態では、除去バリアントは、1つのバリアントFcドメインのみに含まれる。
【
図26】本明細書に記載されているように、構成要素として、1つ以上のscFvを利用する対象のヘテロ二量体抗BCMAヘテロ二量体抗体のpIを増減させる際に使用された、いくつかの荷電scFvリンカーを示す。単一電荷を有する単一の先行技術scFvリンカーは、「Whitlow」と称される(Whitlow et al.,Protein Engineering 6(8)):989-995(1993))。989-995(1993))。このリンカーは、scFvにおける凝集を低減させ、タンパク質分解安定性を高めるために使用されたことに留意すべきである。そのような荷電scFvリンカーは、scFvを含む、本明細書に開示される対象抗体のフォーマットのいずれかで使用することができる(例えば、1+1 Fab-scFv-Fc及び2+1 Fab
2-scFv-Fcフォーマット)。
【
図27】いくつかの例示的なドメインリンカーを示す。いくつかの実施形態では、これらのリンカーは、単鎖FvをFc鎖に連結する用途を見出す。いくつかの実施形態では、これらのリンカーを任意の配向で組み合わせることができる。例えば、GGGGSリンカーは、N末端又はC末端で「下ハーフヒンジ」リンカーと組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、
図27に示されるドメインリンカーの2つ以上を組み合わせて、本明細書に記載のヘテロ二量体抗体で使用するためのより長いドメインリンカーを形成することができる。
【
図28】本発明の抗BCMAヘテロ二量体抗体抗BCMAヘテロ二量体抗体のヘテロ二量体Fcドメイン(すなわち、この実施形態におけるCH2-CH3)の特に有用な実施形態を示す。
【
図29】本明細書に記載のヘテロ二量体抗体で使用され得る様々なヘテロ二量体スキューバリアントアミノ酸置換を示す。
【
図30A】サイトカイン配列を含まない、ヒトIgG1に基づくいくつかの有用な抗BCMAヘテロ二量体抗体の骨格の配列を示す。ヘテロ二量体Fc骨格1は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格2は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364Kのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格3は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368E/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364Kのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格4は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にK360E/Q362E/T411Eのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にD401Kのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格5は、ヒトIgG1(356D/358Lアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格6は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアント及びグリコシル化を除去するN297Aのバリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格7は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアント及びグリコシル化を除去するN297Sバリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格8は、ヒトIgG4に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にFabアーム交換を除去するS228P(EU番号付けによる、KabatではS241P)バリアント(当技術分野で知られている)を含む。ヘテロ二量体Fc骨格9は、ヒトIgG2に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント、及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格10は、ヒトIgG2に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント、及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアント及び両方の鎖にS267K除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格11は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント、及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアント及びM428L/N434S Xtendバリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格12は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアント及びP217R/P229R/N276KのpIバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。
【
図30B】サイトカイン配列を含まない、ヒトIgG1に基づくいくつかの有用な抗BCMAヘテロ二量体抗体の骨格の配列を示す。ヘテロ二量体Fc骨格1は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格2は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364Kのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格3は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368E/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364Kのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格4は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にK360E/Q362E/T411Eのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にD401Kのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格5は、ヒトIgG1(356D/358Lアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格6は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアント及びグリコシル化を除去するN297Aのバリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格7は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアント及びグリコシル化を除去するN297Sバリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格8は、ヒトIgG4に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にFabアーム交換を除去するS228P(EU番号付けによる、KabatではS241P)バリアント(当技術分野で知られている)を含む。ヘテロ二量体Fc骨格9は、ヒトIgG2に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント、及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格10は、ヒトIgG2に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント、及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアント及び両方の鎖にS267K除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格11は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント、及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアント及びM428L/N434S Xtendバリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格12は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアント及びP217R/P229R/N276KのpIバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。
【
図30C】サイトカイン配列を含まない、ヒトIgG1に基づくいくつかの有用な抗BCMAヘテロ二量体抗体の骨格の配列を示す。ヘテロ二量体Fc骨格1は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格2は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364Kのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格3は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368E/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364Kのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格4は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にK360E/Q362E/T411Eのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にD401Kのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格5は、ヒトIgG1(356D/358Lアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格6は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアント及びグリコシル化を除去するN297Aのバリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格7は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアント及びグリコシル化を除去するN297Sバリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格8は、ヒトIgG4に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にFabアーム交換を除去するS228P(EU番号付けによる、KabatではS241P)バリアント(当技術分野で知られている)を含む。ヘテロ二量体Fc骨格9は、ヒトIgG2に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント、及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格10は、ヒトIgG2に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント、及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアント及び両方の鎖にS267K除去バリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格11は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアント、及びQ295E/N384D/Q418E/N421DのpIバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアント及びM428L/N434S Xtendバリアントを含む。ヘテロ二量体Fc骨格12は、ヒトIgG1(356E/358Mアロタイプ)に基づき、第1のヘテロ二量体Fc鎖にL368D/K370Sのスキューバリアントを含み、第2のヘテロ二量体Fc鎖にS364K/E357Qのスキューバリアント及びP217R/P229R/N276KのpIバリアントを含み、両方の鎖にE233P/L234V/L235A/G236del/S267Kの除去バリアントを含む。 これらの骨格のそれぞれに含まれるのは、列挙された配列に対して(本明細書に定義されるように)90、95、98、及び99%同一である配列であり、かつ/又は(当業者には理解されるように、親ヒトIgG1(又は骨格に応じたIgG2若しくはIgG4)と比較していくつかのアミノ酸修飾を既に含む、図の「親」と比較して)1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の追加のアミノ酸置換を含む。すなわち、列挙された骨格は、この図の骨格内に含まれるスキューバリアント、pIバリアント及び除去バリアントに加えて、又はその代替として、追加のアミノ酸修飾(一般にアミノ酸置換)を含み得る。追加的に、本明細書に示される骨格は、C末端グリシン(K446_)及び/又はリジン(K447_)の欠失を含み得る。C末端のグリシン及び/又はリジンの欠失は、不均一性を低減するために、又はある特定の二重特異性フォーマットとの関連で、意図的に操作することができる。追加的に、C末端のグリシン及び/又はリジンの欠失は、例えば生産及び保存中に自然に発生し得る。
【
図31】2+1 mAb-scFvフォーマットで使用するためのヘテロ二量体抗BCMAヘテロ二量体抗体の例示的な配列を示す。ここに示されているフォーマットは、
図Xに示されるヘテロ二量体Fc骨格1に基づいているが、単量体1(-)にG446_及び単量体2(+)にG446_/K447_が更に含まれている。
図30に示される追加の骨格はいずれも、一方又は両方の鎖にK447_を含む又は含まない2+1 mAb-scFvフォーマットでの使用に適合され得ることに留意されたい。これらの配列は、M428L/N434Sバリアントを更に含み得ることに留意されたい。
【
図32】Fab結合ドメインを利用する抗BCMA抗体の実施形態では使用される「CH1+ヒンジ」の配列を示す。「CH1+ヒンジ」配列は、可変重鎖ドメイン(V
H)をFc骨格に連結するのに使用される。Fabが(+)側にある特定の実施形態では、「CH1(+)+ヒンジ」配列が使用され得る。Fabが(-)側にある特定の実施形態では、「CH1(-)+ヒンジ」配列が使用され得る。
【
図33】2+1 Fab
2-scFv-Fc中の抗BCMAヘテロ二量体抗体の実施形態では使用される「CH1+ハーフヒンジ」ドメインリンカーの配列を示す。2+1 Fab
2-scFv-Fcフォーマットでは、「CH1+ハーフヒンジ」配列は、可変重鎖ドメイン(V
H)を二重特異性抗体のFab-scFv-Fc側のscFvドメインに連結するのに使用される。「CH1+ハーフヒンジ」の代わりに、他のリンカーが使用されてもよいことに留意されたい。ここでの配列はIgG1配列に基づいているが、IgG2又はIgG4配列に基づいて等価物が構築され得ることにも留意されたい。
【
図34】抗BCMAヘテロ二量体抗体の実施形態では使用される「CH1」についての配列を示す。
【
図35】抗BCMAヘテロ二量体抗体の実施形態では使用される「ヒンジ」についての配列を示す。
【
図36】本明細書に示される抗体において使用される同族軽鎖の定常ドメインを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
I.概要
本明細書で提供されるのは、新規BCMA抗原結合ドメイン組成物、及びそのようなBCMA抗原結合ドメインを含む抗体である。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、本明細書で提供されるBCMA抗原結合ドメインのうちの少なくとも1つを含むヘテロ二量体及び二重特異性抗体である。例示的な実施形態では、BCMA抗体は、CD3結合ドメインを含まない。本明細書で提供されるBCMA抗原結合ドメイン及び抗体は、例えば、BCMA関連疾患の処置において有用である。
【0016】
II.定義
本出願をより完全に理解できるようにするため、いくつかの定義を以下に示す。そのような定義は、文法的同等物を包含することを意図する。
【0017】
本明細書における「B細胞成熟抗原」又は「BCMA」又は「腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17」又はTNFRSF17又はCD269とは、形質細胞の表面上で主に発現され、ヒトにおけるTNFRSF17遺伝子(例えば、Genebank受託番号NM_001192及びNP_001183(ヒト);及びNM_0011608及びNP_035738(マウス))によってコードされるTNF-受容体スーパーファミリーのシングルパスIII型膜貫通糖タンパク質が意味される。BCMAは、TNFリガンドスーパーファミリーのメンバーであるAPRIL(TNFSF13)及びBAFF(TNFSF13B)に結合する。BCMAは、免疫器官及び成熟B細胞(形質細胞)、並びに膠芽腫、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病及びホジキンリンパ腫などのがん細胞において発現される。Deshayes et al.,Oncogene 23(17):3005-3012(2004);Novak et al.,Blood 103(2):689-694(2004);Novak et al.,Blood 100(8):2973-2979(2002);Chiu et al.,Blood 109(2):729-739(2007)。例示的なBCMA配列を
図1に示す。
【0018】
本明細書で使用される「ADCC」又は「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」は、FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介反応を意味する。ADCCは、FcγRIIIaへの結合と相関し、FcγRIIIaへの結合の増加はADCC活性の増加をもたらす。
【0019】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、別段に特に記載しない限り、伝統的な免疫グロブリン(Ig)抗体を指す。
【0020】
従来の免疫グロブリン(Ig)抗体は、「Y」字型の四量体である。各四量体は、典型的には、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、各対は、1つの「軽鎖」単量体及び1つの「重鎖」単量体を有する。
【0021】
抗体重鎖は、典型的には、vhCDR1~3を含む可変重鎖(VH)ドメイン(「重鎖可変ドメイン」とも呼ばれる)と、CH2-CH3単量体を含むFcドメインとを含む。いくつかの実施形態では、抗体重鎖は、ヒンジ及びCH1ドメインを含む。従来の抗体重鎖は、N末端からC末端に向かって組織化された単量体:VH-CH1-ヒンジ-CH2-CH3である。CH1-ヒンジ-CH2-CH3は、重鎖「定常ドメイン」又は「定常領域」と総称され、5つの異なるカテゴリー又は「アイソタイプ」(IgA、IgD、IgG、IgE、及びIgM)が存在する。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含むがこれらに限定されないいくつかのサブクラスを有するIgGアイソタイプ定常ドメインを含む。免疫グロブリンのIgGサブクラスには、重鎖においていくつかの免疫グロブリンドメインがある。本明細書における「免疫グロブリン(Ig)ドメイン」は、明確に異なる三次構造を有する免疫グロブリンの領域を意味する。定常重鎖(CH)ドメイン及びヒンジドメインを含む重鎖ドメインが本発明における関心対象である。IgG抗体の関連において、IgGアイソタイプは、それぞれ3つのCH領域を有する。したがって、IgGの関連において、「CH」ドメインは、以下のとおりである:「CH1」は、KabatにおけるようにEUインデックスに従って118~215位を指す。「ヒンジ」は、Kabatにおけるように、EUインデックスによる216~230位を指す。「CH2」は、KabatにおけるようにEUインデックスに従って231~340位を指し、「CH3」は、KabatにおけるようにEUインデックスに従って341~447位を指す。表1に示されているように、重鎖ドメインの正確な番号付け及び配置は、異なる番号付けシステム間で異なり得る。本明細書に示され、以下に記載されるように、pIバリアントは、以下に考察されるヒンジ領域と同様に1つ以上のCH領域にあり得る。
【0023】
本明細書で使用される「Fc」又は「Fc領域」又は「Fcドメイン」とは、抗体の定常領域を含む、いくつかの場合では、第1の定常領域免疫グロブリンドメイン(例えば、CH1)の全て又はその一部を除外し、いくつかの場合では、任意にヒンジの全部又は一部を含む、ポリペプチドを意味する。IgGの場合、Fcドメインは免疫グロブリンドメインCH2及びCH3(Cγ2及びCγ3)、並びに任意選択的に、CH1(Cγ1)とCH2(Cγ2)との間のヒンジ領域の全て又は一部を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4からのものであり、IgG1ヒンジ-CH2-CH3及びIgG4ヒンジ-CH2-CH3は、多くの実施形態では特に使用される。Fc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、そのカルボキシル末端に残基E216、C226又はA231を含むと定義され、番号付けは、KabatのEUインデックスに従う。いくつかの実施形態では、以下により完全に記載されるように、例えば1つ以上のFcγR又はFcRnへの結合を変化させるために、Fc領域に対してアミノ酸修飾が行われる。
【0024】
本明細書における「重鎖定常領域」又は「定常重鎖ドメイン」は、可変重鎖ドメインを除く、抗体(又はそのフラグメント)のCH1-ヒンジ-CH2-CH3部分を意味し;ヒトIgG1のEU番号付けでは、これはアミノ酸118~447である。本明細書における「重鎖定常領域フラグメント」とは、N末端及びC末端のいずれか又は両方からのアミノ酸がより少ない重鎖定常領域を意味するが、別の重鎖定常領域と二量体を形成する能力を依然として保持する重鎖定常領域を意味する。
【0025】
本明細書において「ヒンジ」又は「ヒンジ領域」又は「抗体ヒンジ領域」又は「ヒンジドメイン」とは、抗体の第1の定常ドメインと第2の定常ドメインと間のアミノ酸を含む可動性ポリペプチドを意味する。構造的に、IgG CH1ドメインはEUの215位で終わり、IgG CH2ドメインは残基EUの231位で始まる。したがって、IgGについては、抗体ヒンジは、本明細書において、216位(IgG1中のE216)~230位(IgG1中のP230)を含むように定義され、番号付けは、KabatにおけるようにEUインデックスに従う。
【0026】
当業者には理解されるように、重鎖定常領域ドメイン(すなわちCH1、ヒンジ、CH2及びCH3ドメイン)の正確な番号付け及び配置は、異なる番号付けシステムで異なり得る。EU及びKabatによる重鎖定常領域の番号付けの有用な比較は以下のとおりであり、Edelman et al.,1969,Proc Natl Acad Sci USA 63:78-85、及びKabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda(参照によりその全体が組み込まれる)を参照されたい。他の番号付け規則が当技術分野で利用可能であり、当業者は、本明細書に記載されているものに基づいて、それらの他の番号付け規則システムにおける正確な番号付け及び配置を容易に決定することができる。
【0027】
【0028】
抗体軽鎖は、一般に、2つのドメイ:軽鎖CDRs vlCDR1~3を含む可変軽鎖ドメイン(VL)(「軽鎖可変ドメインとも呼ばれる)及び定常軽鎖領域又は軽鎖定常領域(CL又はCκと呼ばれることも多い)を含む。抗体軽鎖は通常、N末端からC末端に向かって組織化されている:VL-CL。
【0029】
本明細書において「抗原連結ドメイン」又は「ABD」は、抗体配列の一部として存在する場合、本明細書で考察されるような標的抗原(例えば、BCMA)に特異的に結合する6つの相補性決定領域(CDR)のセットを意味する。当技術分野で知られるように、これらのCDRは、一般に、可変重鎖CDRの第1のセット(vhCDR又はVHCDR)及び可変軽鎖CDRの第2のセット(vlCDR又はVLCDR)として存在し、それぞれが3個のCDR、すなわち、vhCDR1、vhCDR2、vhCDR3可変重鎖CDR、及びvlCDR1、vlCDR2及びvlCDR3可変軽鎖CDRを含む。CDRは、可変重鎖ドメイン(vhCDR1~3)と可変軽鎖ドメイン(vlCDR1~3)に存在する。可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインがFv領域を形成する。
【0030】
典型的には、「完全CDRセット」は、3個の可変軽鎖CDR及び3個の可変重鎖CDR、例えば、vlCDR1、vlCDR2、vlCDR3、vhCDR1、vhCDR2及びvhCDR3を含む。これらは、それぞれ、より大きな可変軽鎖又は可変重鎖ドメインの一部であり得る。更に、本明細書により詳細に概説されるように、可変重鎖及び可変軽鎖ドメインは、別々のポリペプチド鎖、すなわち、それぞれ重鎖及び軽鎖上にあり得る。
【0031】
当業者によって理解されるように、CDRの正確な番号付け及び配置は、異なる番号付けシステム間で異なり得る。しかしながら、可変重鎖配列及び/又は可変軽鎖配列の開示は、関連する(固有の)CDRの開示を含むことが理解されるべきである。したがって、各可変重鎖領域の開示は、vhCDR(例えば、vhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3)の開示であり、各可変軽鎖領域の開示は、vlCDR(例えば、vlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3)の開示である。CDR番号付けの有用な比較は以下のとおりであり、Lafranc et al.,Dev.Comp.Immunol.27(1):55-77(2003)を参照されたい。
【0032】
【0033】
本明細書全体を通して、Kabat番号付けシステムは概して、可変ドメイン内の残基(およそ、軽鎖可変領域の残基1~107及び重鎖可変領域の残基1~113)を参照するときに使用され、EU番号付けシステムは、Fc領域に対するものである(例えば、上述のKabat et al.(1991)を参照)。当業者は、本明細書に記載され、当技術分野で公知の他の番号付けシステムにおけるCDRの正確な番号付け及び配置を容易に決定することができる。
【0034】
CDRは、抗原結合の形成、又はより詳細には、抗体のエピトープ結合部位の形成に寄与する。「エピトープ」とは、パラトープとして知られている抗体分子の可変領域内の特異的抗原結合部位と相互作用する決定基を指す。エピトープは、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の群分けであり、通常、特異的構造特性、並びに特異的電荷特性を有する。単一抗原は、1つより多くのエピトープを有してもよい。
【0035】
エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(また、エピトープの免疫優性構成要素とも称される)及び結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特異的抗原結合ペプチドによって効果的に遮断されるアミノ酸残基などを含み得、言い換えれば、アミノ酸残基は、特異的抗原結合ペプチドのフットプリント内にある。
【0036】
エピトープは、立体配座又は直線状のいずれかであってもよい。立体配座エピトープは、直線状のポリペプチド鎖の異なるセグメントからの空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。直線状エピトープは、ポリペプチド鎖内の隣接アミノ酸残基によって産生されるものである。立体配座エピトープ及び非立体配座エピトープは、変性溶媒の存在下で前者への結合は失われるが、後者への結合は失われないという点で区別され得る。
【0037】
エピトープは、典型的には、固有の空間立体構造内に、少なくとも3個、より通常には、少なくとも5個、又は8~10個のアミノ酸を含む。同じエピトープを認識する抗体は、ある抗体の別の抗体の標的抗原への結合を遮断する能力、例えば、「ビニング」を示す単純な免疫アッセイにおいて検証され得る。以下に概説されるように、本発明は、列挙された抗原結合ドメイン及び本明細書の抗体を含むだけでなく、列挙された抗原結合ドメインによって結合されるエピトープとの結合について競合するものも含む。
【0038】
対象の抗体の6つのCDRには、可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインが寄与する。「Fab」フォーマットでは、6個のCDRのセットには、2個の異なるポリペプチド配列、可変重鎖ドメイン(vh又はVH;vhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3を含む)、及び可変軽鎖ドメイン(vl又はVL;vlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3を含む)が寄与し、vhドメインのC末端は重鎖のCH1ドメインのN末端に結合しており、vlドメインのC末端は定常軽鎖ドメインのN末端に結合している(したがって軽鎖を形成している)。
【0039】
本明細書で使用される「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、カッパ、ラムダ、及び重鎖免疫グロブリン遺伝子座をそれぞれ構成するVκ、Vλ、及び/又はVH遺伝子のいずれかによって実質的にコードされる1つ以上のIgドメインを含み、抗原特異性を付与するCDRを含む、免疫グロブリンの領域を意味する。したがって、「可変重鎖ドメイン」は「可変軽鎖ドメイン」と対になって抗原結合ドメイン(antigen binding domain、「ABD」)を形成する。加えて、各可変ドメインは、3つの超可変領域(「相補性決定領域」、「CDR」)(可変重鎖ドメインではvhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3、可変軽鎖ドメインではvlCDR1、vlCDR2、及びvlCDR3)と、4つのフレームワーク(FR)領域とを含み、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順序で配置される。
【0040】
本明細書で使用される「Fab」又は「Fab領域」とは、概して2つの異なるポリペプチド鎖の(例えば、一方の鎖のVH-CH1、他方の鎖のVL-CL)、VH、CH1、VL、及びCL免疫グロブリンドメインを含む抗体領域を意味する。Fabは、単独でこの領域、又は本発明の二重特異性抗体との関連でこの領域を指し得る。Fabの関連で、Fabは、CH1ドメイン及びCLドメインに加えてFv領域を含む。
【0041】
本明細書で使用される「Fv」又は「Fvフラグメント」又は「Fv領域」は、VLドメイン及びVHドメインを含む抗体領域を意味する。
【0042】
本明細書における「修飾」又は「バリアント」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入、及び/若しくは欠失、又はタンパク質と化学的に連結された部分に対する改変を意味する。例えば、修飾は、タンパク質に結合した、改変された炭水化物又はPEG構造であってもよい。本明細書における「アミノ酸修飾」とは、ポリペプチド配列中のアミノ酸の置換、挿入、及び/又は欠失を意味する。明確にするために、別段の記載がない限り、アミノ酸修飾は常に、DNAによってコードされるアミノ酸、例えば、DNA及びRNA中にコドンを有する20個のアミノ酸に対するものである。
【0043】
本明細書における「アミノ酸置換」又は「置換」とは、親ポリペプチド配列中の特定の位置のアミノ酸を異なるアミノ酸で置き換えることを意味する。特に、いくつかの実施形態では、置換は、特定の位置で天然に存在しない(生物内で天然に存在しないか、又はいずれの生物中にも存在しないかのいずれか)アミノ酸に対するものである。例えば、置換M428Lは、272位のメチオニンがチロシンで置き換えられているバリアントポリペプチド、この場合はFcバリアントを指す。明確にするために、核酸コード配列を変化させるが、開始アミノ酸を変化させないように操作されているタンパク質(例えば、宿主生物の発現レベルを増加させるためにCGG(アルギニンをコードする)をCGA(依然としてアルギニンをコードする)に交換すること)は、「アミノ酸置換」ではなく;すなわち、同じタンパク質をコードする新しい遺伝子の作出にもかかわらず、タンパク質が、その特定の開始位置に同じアミノ酸を有する場合、アミノ酸置換ではない。
【0044】
本明細書で使用される「バリアントタンパク質」又は「タンパク質バリアント」又は「バリアント」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾に基づいて親タンパク質のそれとは異なるタンパク質を意味する。タンパク質バリアントは、親タンパク質と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を有するが、バリアントタンパク質は、以下に記載されるようなアラインメントプログラムを使用して親タンパク質と整列しないほど多くはない。
【0045】
以下に記載されているように、いくつかの実施形態では、親ポリペプチド、例えばFc親ポリペプチドは、IgG1又はIgG2由来の重鎖定常ドメイン又はFc領域などのヒト野生型配列であるが、バリアントを有するヒト配列もまた、「親ポリペプチド」として機能することができ、例えば、米国特許出願公開第2006/0134105号のIgG1/2ハイブリッドを含めることができる。したがって、本明細書で使用される「抗体バリアント」又は「バリアント抗体」とは、少なくとも1個のアミノ酸修飾に基づいて親抗体とは異なる抗体を意味し、本明細書で使用される「IgGバリアント」又は「バリアントIgG」とは、少なくとも1個のアミノ酸修飾に基づいて親IgG(ここでも、多くの場合はヒトIgG配列に由来)とは異なる抗体を意味し、本明細書で使用される「免疫グロブリンバリアント」又は「バリアント免疫グロブリン」とは、少なくとも1個のアミノ酸修飾に基づいて親免疫グロブリン配列のそれとは異なる免疫グロブリン配列を意味する。本明細書で使用される「Fcバリアント」又は「バリアントFc」は、ヒトIgG1又はIgG2のFcドメインと比較して、Fcドメインにアミノ酸修飾を含むタンパク質を意味する。
【0046】
本明細書で使用される「Fcバリアント」又は「バリアントFc」とは、Fcドメインにアミノ酸修飾を含むタンパク質を意味する。修飾は、付加、欠失、又は置換であり得る。Fcバリアントは、それらを構成するアミノ酸修飾に従って定義される。したがって、例えば、N434S又は434Sは、親Fcポリペプチドに対して434位に置換セリンを有するFcバリアントであり、番号付けはEUインデックスによるものである。同様に、M428L/N434Sは、親Fcポリペプチドに対して置換M428L及びN434Sを有するFcバリアントを定義する。WTアミノ酸の同一性は特定されていなくてもよく、その場合、前述のバリアントは428L/434Sと称される。置換が提供される順序は任意であり、すなわち、例えば、428L/434Sは434S/428Lと同じFcバリアントであることなどが留意される。抗体又は誘導体及びそれらのフラグメント(例えば、Fcドメイン)に関連する本発明において議論される全ての位置について、特に明記しない限り、アミノ酸位置の番号付けはEUインデックスによるものである。「EUインデックス」又は「KabatのようなEUインデックス」若しくは「EU番号付け」スキームは、EU抗体の番号付けを指す(Edelman et al.,1969,Proc Natl Acad Sci USA63:78-85、これにより完全に参照により組み込まれる)。当業者は、本明細書に記載され、そして当技術分野で公知の他の番号付けシステムにおける対応する位置を容易に決定することができる。修飾は、付加、欠失、又は置換であり得る。
【0047】
一般に、バリアントFcドメインは、対応する親ヒトIgG Fcドメインに対して少なくとも約80、85、90、95、97、98又は99パーセントの同一性を有する(デフォルトパラメータを使用して、以下に考察される同一性アルゴリズムを使用する(一実施形態では当技術分野で既知のBLASTアルゴリズムを利用する))。更に、本明細書で考察されるように、本明細書に記載のバリアントFcドメインは、非変性ゲル電気泳動などの本明細書に記載の既知の技術を使用して測定される別のFcドメインと共に二量体を形成する能力を依然として保持する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、及びペプチドを含む、少なくとも2つの共有結合したアミノ酸を意味する。加えて、本発明の抗体を構成するポリペプチドには、1つ以上の側鎖又は末端の合成誘導体化、グリコシル化、PEG化、円順列、環化、他の分子へのリンカー、タンパク質又はタンパク質ドメインへの融合、及びペプチドタグ又は標識の付加が含まれ得る。
【0049】
本明細書で使用される「天然に存在しない修飾」とは、アイソタイプ性ではないアミノ酸修飾を意味する。例えば、公知のヒトIgGのうちのいずれも434位にセリンを含まないので、IgG1又はIgG2(又はそれらのハイブリッド)における置換434Sは、天然に生じない修飾であるとみなされる。
【0050】
本明細書で使用される「アミノ酸」及び「アミノ酸同一性」とは、DNA及びRNAによってコードされている20種の天然に存在するアミノ酸のうちの1つを意味する。
【0051】
本明細書で使用される「エフェクター機能」とは、抗体Fc領域とFc受容体又はリガンドとの相互作用から生じる生化学的事象を意味する。エフェクター機能には、ADCC、ADCP、及びCDCが含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される「Fcガンマ受容体」、「FcγR」、又は「FcガンマR」とは、IgG抗体Fc領域に結合し、かつFcγR遺伝子によってコードされるタンパク質ファミリーの任意のメンバーを意味する。ヒトでは、このファミリーには、アイソフォームであるFcγRIa、FcγRIb、及びFcγRICを含むFcγRI(CD64);アイソフォームであるFcγRIIa(アロタイプであるH131及びR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1及びFcγRIIb-2を含む)、並びにFcγRIIcを含む、FcγRII(CD32);並びにアイソフォームであるFcγRIIIa(アロタイプであるV158及びF158を含む)、並びにFcγRIIIb(アロタイプであるFcγRIIb-NA1及びFcγRIIb-NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)(参照により全体が組み込まれるJefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57-65)、並びに任意の発見されていないヒトFcγR又はFcγRアイソフォーム若しくはアロタイプが含まれるが、これらに限定されない。FcγRは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、及びサルを含むが、これらに限定されない任意の生物由来であり得る。マウスFcγRには、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)、及びFcγRIII-2(CD16-2)、並びに任意の発見されていないマウスFcγR又はFcγRアイソフォーム若しくはアロタイプが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用される「FcRn」又は「新生児Fc受容体」とは、IgG抗体のFc領域に結合し、少なくとも部分的にFcRn遺伝子によってコードされるタンパク質を意味する。FcRnは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、及びサルを含むが、これらに限定されない任意の生物由来であり得る。当技術分野において既知のように、機能的FcRnタンパク質は、しばしば重鎖及び軽鎖と称される2つのポリペプチドを含む。軽鎖はβ-2-ミクログロブリンであり、重鎖はFcRn遺伝子によってコードされている。本明細書において別段の記載がない限り、FcRn又はFcRnタンパク質は、FcRn重鎖とβ-2-ミクログロブリンとの複合体を指す。FcRn受容体への結合を増加させるために、場合によっては、血清半減期を増加させるために、様々なFcRnバリアントが使用される。「FcRnバリアント」とは、FcRn受容体への結合の増加に寄与するアミノ酸修飾であり、好適なFcRnバリアントを以下に示す。
【0054】
本明細書で使用される「親ポリペプチド」とは、バリアントを生成するように後に修飾される出発ポリペプチドを意味する。親ポリペプチドは、天然に存在するポリペプチド、又は天然に存在するポリペプチドのバリアント若しくは操作されたバージョンであってもよい。したがって、本明細書で使用される「親免疫グロブリン」とは、バリアントを生成するように修飾される非修飾免疫グロブリンポリペプチドを意味し、本明細書で使用される「親抗体」とは、バリアント抗体を生成するように修飾される非修飾抗体を意味する。「親抗体」には、以下に概説されるように、既知の市販の組換えで産生した抗体が含まれることに留意すべきである。これに関連して、「親Fcドメイン」とは、列挙されたバリアントに関連するものであり、したがって、「バリアントヒトIgG1 Fcドメイン」はヒトIgG1の親Fcドメインと比較され、「バリアントヒトIgG4 Fcドメイン」は親FcドメインヒトIgG4と比較されるといった具合である。
【0055】
本明細書で使用される「位置」とは、タンパク質の配列中の場所を意味する。位置は、順次に、又は確立されたフォーマット、例えば、抗体ドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3又はヒンジドメイン)の番号付けのためのEUインデックスに従って、番号付けされ得る。
【0056】
本明細書における「野生型」又は「WT」とは、対立遺伝子変異を含む、天然に見出されるアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を意味する。WTタンパク質は、意図的に修飾されていないアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を有する。
【0057】
本明細書には、ヒト抗体ドメインと配列同一性を有するいくつかの抗体ドメイン(例えばFcドメイン)が提供される。2つの類似した配列(例えば、抗体可変ドメイン)間の配列同一性は、Smith,T.F.&Waterman,M.S.(1981)「Comparison of Biosequences,」Adv.Appl.Math.2:482[local homology algorithm];Needleman,S.B.&Wunsch,CD.(1970)「A General Method Applicable To The Search For Similarities In The Amino Acid Sequence Of Two Proteins,」J.Mol.Biol.48:443[homology alignment algorithm],Pearson、W.R.&Lipman,D.J.(1988)「Improved Tools For Biological Sequence Comparison,」Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)85:2444[類似検索方法]、又はAltschul,S.F.et al,(1990)「Basic Local Alignment Search Tool,」J.Mol.Biol.215:403-10,the「BLAST」algorithm,see https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiを参照されたい)などのアルゴリズムによって測定することができる。前述のアルゴリズムのいずれかを使用する場合、デフォルトパラメータ(ウィンドウの長さ、ギャップペナルティなど)が使用される。一実施形態では、配列同一性は、デフォルトパラメータを使用して、BLASTアルゴリズムを使用して測定される。
【0058】
本発明の抗体は、一般に、単離されるか、又は組換えである。本明細書に開示される様々なポリペプチドを説明するために使用されるときの「単離された」とは、それが発現された細胞又は細胞培養物から同定、分離、及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製工程によって調製されるであろう。「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す。「組換え体」は、外来性宿主細胞において組換え核酸技術を使用して抗体が生成されることを意味し、それらも単離され得る。
【0059】
特定の抗原若しくはエピトープへの「特異的結合」、又は特定の抗原若しくはエピトープ「に特異的に結合する」若しくはそれ「に対して特異的である」は、本明細書に記載の又は当技術分野で公知のアッセイを使用して非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般に、結合活性を持たない同様の構造の分子である対照分子の結合と比較した分子の結合を決定することによって、測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似する対照分子との競合によって決定することができる。
【0060】
特定の抗原又はエピトープに対する特異的結合は、例えば、抗原又はエピトープに対して少なくとも約10-4M、少なくとも約10-5M、少なくとも約10-6M、少なくとも約10-7M、少なくとも約10-8M、少なくとも約10-9M、代替的に少なくとも約10-10M、少なくとも約10-11M、少なくとも約10-12M、又はそれ以上のKDを有する抗体によって示され得、KDとは特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指す。典型的には、抗原に特異的に結合する抗体は、抗原又はエピトープと比べて、対照分子に対して20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5,000倍、10,000倍、又はそれ以上の倍数のKDを有することになる。好適な対照分子は、実施例の節を含めて本明細書に記載されており、当技術分野で公知である。
【0061】
また、特定の抗原又はエピトープへの特異的結合は、例えば、抗原又はエピトープに対するKA又はKaが、対照と比べて、そのエピトープに対して少なくとも20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5,000倍、10,000倍、又はそれ以上の倍数の抗体によって示され得、KA又はKaは、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指す。結合親和性は一般的に、Biacore、SPR又はBLIアッセイを用いて測定される。
【0062】
III.BCMA結合ドメイン
一態様では、本明細書で提供されるのは、BCMAに結合するBCMA抗原結合ドメイン(ABD)、及びそのようなBCMA抗原結合ドメイン(例えば、本明細書で提供されるヘテロ二量体抗体)を含む抗体である。本明細書で提供されるBCMA ABDは、一般に、可変重鎖ドメイン(VH)及び可変軽鎖ドメイン(VL)を含む。例示的な実施形態では、BCMAは、ヒトBCMAに結合することが可能である(
図1を参照されたい)。
【0063】
当業者によって理解されるように、好適なBCMA結合ドメインは、下線が付されているか、又は、本明細書に記載され、表2に示されているように異なる番号付けスキームが使用される場合のいずれかに、
図5、6及び11~15並びに配列表に示されるような可変重鎖(VH)ドメイン及び可変軽鎖ドメイン(VL)配列内の他のアラインメントを使用して同定されるCDRとして、図に示されるような6つのCDRのセットを含むことができる。好適なBCMA ABDはまた、scFv又はFabとして使用される、これらの配列及び図に示されるようなVH及びVLの全体の配列をも含み得る。
【0064】
一実施形態では、BCMA抗原結合ドメインは、図を含む、本明細書に記載のBCMA結合ドメインのいずれかの6つのCDR(すなわち、vhCDR1~3及びvlCDR1~3)を含む。いくつかの実施形態では、BCMA ABDは、以下のBCMA ABD:S1R4_10corr[BCMA]_H1L1、S1R5_125[BCMA]_H1L1、1A1[BCMA]_H1L1、1B4[BCMA]_H1.1_L1、1B3[BCMA]_H1L1、5F2[BCMA]_H1L1、及び6E3[BCMA]_H1L1のうちの1つである(
図5、6、及び11~15)。
【0065】
BCMA ABDを形成する図に開示されている親CDRのセット(例えば、
図5、6及び11~15)に加えて、本明細書で提供されるのはBCMA ABD CDRの少なくとも1つの修飾を含むCDRを有するバリアントBCMA ABDである(例えば、
図5、6及び11~15)。一実施形態では、BCMA ABDは、図を含む、本明細書に記載されているBCMA ABDの6つのCDRと比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10アミノ酸修飾を有する6つのCDRのセットを含む。例示的な実施形態では、BCMA ABDは、以下のBCMA ABD:S1R4_10corr[BCMA]_H1L1、S1R5_125[BCMA]_H1L1、1A1[BCMA]_H1L1、1B4[BCMA]_H1.1_L1、1B3[BCMA]_H1L1、5F2[BCMA]_H1L1、及び6E3[BCMA]_H1L1のうちの1つの6つのCDRと比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10アミノ酸修飾を有する6つのCDRのセットを含む(
図5、6、及び11~15)。ある特定の実施形態では、BCMA ABDは、Biacore、表面プラズモン共鳴(SPR)及び/又はBLI(バイオレイヤー干渉法、例えば、Octetアッセイ)アッセイの少なくとも1つによって測定される場合、BCMA抗原に結合することができ、後者は多くの実施形態で特に使用される。特定の実施形態では、BCMA ABDは、ヒトBCMA抗原に結合することができる(
図1を参照されたい)。
【0066】
いくつかの実施形態では、BCMA ABDは、図を含む、本明細書に記載されているBCMA ABDの6つのCDRと少なくとも90、95、97、98又は99%同一である6つのCDRを含む。例示的な実施形態では、BCMA ABDは、以下のBCMA ABD:S1R4_10corr[BCMA]_H1L1、S1R5_125[BCMA]_H1L1、1A1[BCMA]_H1L1、1B4[BCMA]_H1.1_L1、1B3[BCMA]_H1L1、5F2[BCMA]_H1L1、及び6E3[BCMA]_H1L1のうちの1つの6つのCDRと少なくとも90、95、97、98又は99%同一である6つのCDRを含む(
図5、6、及び11~15)。ある特定の実施形態では、BCMA ABDは、Biacore、表面プラズモン共鳴(SPR)及び/又はBLI(バイオレイヤー干渉法、例えば、Octetアッセイ)アッセイの少なくとも1つによって測定される場合、BCMA抗原に結合することができ、後者は多くの実施形態で特に使用される。特定の実施形態では、BCMA ABDは、ヒトBCMA抗原に結合することができる(
図1を参照されたい)。
【0067】
別の例示的な実施形態では、BCMA ABDは、図を含む、本明細書に記載のBCMA ABDのうちのいずれか1つの可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ドメインを含む。例示的な実施形態では、BCMA ABDは、以下のBCMA ABD:S1R4_10corr[BCMA]_H1L1、S1R5_125[BCMA]_H1L1、1A1[BCMA]_H1L1、1B4[BCMA]_H1.1_L1、1B3[BCMA]_H1L1、5F2[BCMA]_H1L1、及び6E3[BCMA]_H1L1のうちの1つである(
図5、6、及び11~15)。
【0068】
本明細書に開示される親BCMA可変重鎖及び可変軽鎖ドメインに加えて、本明細書で提供されるのは、本明細書に開示されるBCMA ABD VH及びVLドメインのバリアントである可変重鎖ドメイン及び/又は可変軽鎖ドメインを含むBCMA ABDである。一実施形態では、バリアントのVHドメイン及び/又はVLドメインは、図を含む、本明細書に記載のBCMA ABDのVH及び/又はVLドメインからの1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸変化を有する。いくつかの実施形態では、バリアントのVHドメイン及び/又はVLドメインは、フレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、FR3、又はFR4)に、図を含む、本明細書に記載のBCMA ABDのVH及び/又はVLドメインからの1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸変化を有する。例示的な実施形態では、バリアントVHドメイン及び/又はVLドメインは、以下のBCMA ABD:S1R4_10corr[BCMA]_H1L1、S1R5_125[BCMA]_H1L1、1A1[BCMA]_H1L1、1B4[BCMA]_H1.1_L1、1B3[BCMA]_H1L1、5F2[BCMA]_H1L1、及び6E3[BCMA]_H1L1のうちの1つのVH及び/又はVLドメインからの1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸変化を有する(
図5、6、及び11~15)。例示的な実施形態では、バリアントVHドメイン及び/又はVLドメインは、以下のBCMA ABD:S1R4_10corr[BCMA]_H1L1、S1R5_125[BCMA]_H1L1、1A1[BCMA]_H1L1、1B4[BCMA]_H1.1_L1、1B3[BCMA]_H1L1、5F2[BCMA]_H1L1、及び6E3[BCMA]_H1L1のうちの1つのVH及び/又はVLドメインのフレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、FR3、又はFR4)において1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸変化を有する(
図5、6、及び11~15)。ある特定の実施形態では、BCMA ABDは、Biacore、表面プラズモン共鳴(SPR)及び/又はBLI(バイオレイヤー干渉法、例えば、Octetアッセイ)アッセイの少なくとも1つによって測定される場合、BCMAに結合することができ、後者は多くの実施形態で特に使用される。特定の実施形態では、BCMA ABDは、ヒトBCMA抗原に結合することができる(
図1を参照されたい)。
【0069】
一実施形態では、バリアントのVH及び/又はVLドメインは、図を含む、本明細書に記載されているBCMA ABDのVH及び/又はVLと少なくとも90、95、97、98又は99%同一である。例示的な実施形態では、バリアントVH及び/又はVLドメインは、以下のBCMA ABD:S1R4_10corr[BCMA]_H1L1、S1R5_125[BCMA]_H1L1、1A1[BCMA]_H1L1、1B4[BCMA]_H1.1_L1、1B3[BCMA]_H1L1、5F2[BCMA]_H1L1、及び6E3[BCMA]_H1L1のうちの1つのVH及び/又はVLと少なくとも90、95、97、98又は99%同一である(
図5、6、及び11~15)。ある特定の実施形態では、BCMA ABD、Biacore、表面プラズモン共鳴(SPR)及び/又はBLI(バイオレイヤー干渉法、例えば、Octetアッセイ)アッセイの少なくとも1つによって測定される場合、BCMAに結合することができ、後者は多くの実施形態で特に使用される。特定の実施形態では、BCMA ABDは、ヒトBCMA抗原に結合することができる(
図1を参照されたい)。
【0070】
IV.抗体
一態様では、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載のBCMA抗原結合ドメインのいずれかを含む抗BCMA抗体である。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、本明細書に記載のBCMA ABDのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個を含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、単一特異性二価抗体である。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、本明細書に記載の少なくとも1つのBCMA ABDを含む多重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、少なくとも2、3、4、又は5つの異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体はCD3抗原に結合しない。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書で提供されるBCMA ABDを含む二重特異性抗体である。ある特定の実施形態では、抗体は、「1+1 Fab-scFv-Fc」又は「2+1 Fab2-scFv-Fc」二重特異性フォーマット抗体であり、本明細書で提供されるBCMA結合ドメインのうちの少なくとも1つを含む。
【0071】
本明細書で提供される抗体は、異なる抗体ドメインを含む。本明細書に記載され、当該技術分野において既知であるように、本明細書に記載の抗体は、重鎖及び軽鎖内に異なるドメインを含み、これもまた重複し得る。これらのドメインは、Fcドメイン、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ヒンジドメイン、重鎖定常ドメイン(CH1-ヒンジ-Fcドメイン又はCH1-ヒンジ-CH2-CH3)、可変重鎖ドメイン、可変軽鎖ドメイン、軽鎖定常ドメイン、Fabドメイン、及びscFvドメインを含むが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書に示されるように、好適なリンカー(ドメインリンカー又はscFvリンカーのいずれかとして使用)にはいくつかあり、列挙されたドメイン(例えば、scFv、Fab、Fcドメインなど)に共有結合(組換え技術により生成される従来型ペプチド結合を含む)するために使用することができる。対象の抗体のドメインを互いに結合させるための例示的なリンカーを
図7に示す。いくつかの実施形態では、リンカーペプチドは、主に、以下のアミノ酸残基、すなわちGly、Ser、Ala、又はThrを含み得る。リンカーペプチドは、それらが所望の活性を保持するように互いに対して正しい立体配座をとるような方法で2つの分子を結合させるのに十分な長さを有するべきである。一実施形態では、リンカーは、約1~50アミノ酸長、好ましくは約1~30アミノ酸長である。一実施形態では、1~20アミノ酸長のリンカーが使用されてもよく、いくつかの実施形態では、約5~約10個のアミノ酸が使用される。有用なリンカーとしては、例えば、nが、少なくとも1つの整数(一般に、3~4)である(GS)n、(GSGGS)n、(GGGGS)n、及び(GGGS)nを含む、グリシン-セリンポリマー、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、並びに他の可動性リンカーが挙げられる。代替的に、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーを含むがこれらに限定されない様々な非タンパク質性ポリマーが、リンカーとして使用され得る。
【0073】
他のリンカー配列は、CL/CH1ドメインの全ての残基ではないが、CL/CH1ドメインの意の長さの任意の配列、例えば、CL/CH1ドメインの最初の5~12個のアミノ酸残基を含み得る。リンカーは、免疫グロブリン軽鎖、例えば、Cκ又はCλに由来し得る。リンカーは、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4、Cα1、Cα2、Cδ、Cε、及びCμを含む、任意のアイソタイプの免疫グロブリン重鎖に由来し得る。リンカー配列はまた、Ig様タンパク質(例えば、TCR、FcR、KIR)、ヒンジ領域由来配列、及び他のタンパク質からの他の天然配列などの他のタンパク質に由来し得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、リンカーは、本明細書に概説される任意の2つのドメインを共に連結するために使用される「ドメインリンカー」である。例えば、2+1 Fab2-scFv-Fcフォーマットにおいて、FabのCH1ドメインのC末端をscFvのN末端に結合するドメインリンカーがあってよく、別の任意のドメインリンカーはscFvのC末端をCH2ドメインに結合させる(ただし、多くの実施形態では、このドメインリンカーとしてヒンジが使用される)。任意の好適なリンカーを使用することができるが、多くの実施形態は、例えば、nが少なくとも1(一般に3~4~5)の整数である、(GS)n、(GSGGS)n、(GGGGS)n、及び(GGGS)nを含むドメインリンカーとしてグリシン-セリンポリマー、並びに各ドメインがその生物学的機能を保持できるように十分な長さ及び可撓性を有する2つのドメインの組換え結合を可能にする任意のペプチド配列を利用する。場合によっては、以下に概説される「撚り度」に注意を払って、scFvリンカーのいくつかの実施形態において使用されるように、荷電ドメインリンカーを使用することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、リンカーは、本明細書で考察されるVH及びVLドメインを共有結合するために使用される「scFvリンカー」である。多くの場合には、scFvリンカーは、荷電scFvリンカーであり、そのいくつかは
図6に示されている。したがって、第1の単量体と第2の単量体との間のpIの分離を促進するための荷電scFvリンカーが本明細書で提供される。すなわち、正又は負のいずれかの荷電scFvリンカー(又は異なる単量体上にscFvを使用する足場の場合は両方)を組み込むことによって、これは、Fcドメインを更に変化させることなく、荷電リンカーを含む単量体のpIを変えることを可能にする。これらの荷電リンカーは、標準的なリンカーを含む任意のscFv中に置換することができる。また、当業者によって理解されるように、pIの所望の変化に従って、荷電scFvリンカーが正しい「鎖」又は単量体上に使用される。例えば、本明細書中で論じられるように、1+1 Fab-scFv-Fcフォーマットヘテロ二量体抗体を作製するために、所望の抗原結合ドメインのそれぞれについてのFv領域の元のpIが計算され、そしてscFvを作製するために1つが選択され、pIに応じて、正又は負のリンカーのいずれかが選択される。
【0076】
荷電ドメインリンカーも同様に、本発明の単量体のpI分離を増加させるために使用することができ、したがって、
図6に含まれるものは、リンカーが利用される、本明細書の任意の実施形態で使用することができる。
【0077】
提供されるBCMA抗原結合ドメインは、例えば、標準的な免疫グロブリン、並びに本明細書で提供される「1+1 Fab-scFv-Fc」及び「2+1 Fab2-scFv-Fc」フォーマットを含む任意の有用な抗体フォーマットに含まれ得る(例えば、
図22を参照されたい)。他の有用な抗体フォーマットには、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20180127501(A1)号、特に抗体フォーマットに関係する関連部分(例えば
図2を参照されたい)に開示されているように、「mAb-Fv」、「mAb-scFv」、「セントラル-Fv」、「ワンアームscFv-mAb」、「scFv-mAb」、「デュアルscFv」、及び「トライデント」フォーマットの抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
いくつかの実施形態では、対象の抗体は、本明細書で提供されるBCMA ABDのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、1つのBCMA ABDを含む。他の実施形態では、抗体は、2つのBCMA ABDを含む。例示的な実施形態では、BCMA ABDは、以下のBCMA ABD:S1R4_10corr[BCMA]_H1L1、S1R5_125[BCMA]_H1L1、1A1[BCMA]_H1L1、1B4[BCMA]_H1.1_L1、1B3[BCMA]_H1L1、5F2[BCMA]_H1L1、及び6E3[BCMA]_H1L1のうちの1つの可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインを含む(
図5、6、及び11~15)。
【0079】
例示的な実施形態では、抗体は、本明細書で提供されるBCMAABDのいずれかを含む、1つ又は2つのBCMA ABDを含む二重特異性抗体である。そのようなBCMA ABDを含む二重特異性抗体には、例えば、「1+1 Fab-scFv-Fc」、「2+1 Fab
2-scFv-Fc」二重特異性フォーマット抗体が含まれる(
図22)。例示的な実施形態では、BCMA ABDは、以下のBCMA ABD:S1R4_10corr[BCMA]_H1L1、S1R5_125[BCMA]_H1L1、1A1[BCMA]_H1L1、1B4[BCMA]_H1.1_L1、1B3[BCMA]_H1L1、5F2[BCMA]_H1L1、及び6E3[BCMA]_H1L1のうちの1つである(
図5、6、及び11~15)。例示的な実施形態では、二重特異性抗体はCD3に結合しない。
【0080】
A.ヘテロ二量体抗体
例示的な実施形態では、本明細書で提供される抗BCMA抗体は、本明細書に記載のBCMA抗原結合ドメインのうちの1つを含むヘテロ二量体性二重特異性抗体である。例示的な実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、2つのバリアントFcドメイン配列を含む。そのようなバリアントFcドメインは、ヘテロ二量体抗体の自己組織化及び/又は精製を容易にするためのアミノ酸修飾を含む。ある特定の態様では、ヘテロ二量体抗体はCD3に結合しない。
【0081】
抗体技術における継続的な問題は、2つの異なる抗原に同時に結合する「二重特異性」抗体であって、一般に、異なる抗原を近接させ、新しい機能と新しい治療法をもたらすことができる、「二重特異性」抗体に対する要望である。一般に、これらの抗体は、各重鎖及び軽鎖の遺伝子を宿主細胞に含めることによって作製される。これにより、一般に、2つのホモ二量体(A-A及びB-B(軽鎖ヘテロ二量体の問題は含まない))だけでなく、所望のヘテロ二量体(A-B)が形成される。しかしながら、二重特異性抗体形成における主な障壁は、ホモ二量体形成を上回るように所望のヘテロ二量体形成に偏らせること及び/又はホモ二量体から離してヘテロ二量体抗体を精製することが困難であるということである。
【0082】
対象のヘテロ二量体抗体を生成するために使用することができる多くの機構が存在する。加えて、当業者には理解されるように、これらの異なる機構を組み合わせて高いヘテロ二量体化を確実にすることができる。ヘテロ二量体の産生及び精製を容易にするアミノ酸修飾は、一般的に「ヘテロ二量体化バリアント」と総称される。以下で考察されるように、ヘテロ二量体化バリアントは、「スキュー」バリアント(例えば、下記の「ノブとホール」及び下記の「電荷対」バリアント)並びに「pIバリアント」を含み、それによってホモ二量体から離れてヘテロ二量体の精製を可能にする。その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,605,084号に一般的に記載されるように、また、具体的には、ヘテロ二量体化バリアントの議論について以下のように、ヘテロ二量体化に有用な機構としては、同第9,605,084号に記載される「ノブとホール」(「KIH」)、同第9,605,084号に記載される「静電ステアリング」又は「電荷対」、同第9,605,084号に記載されるpIバリアント、並びに同第9,605,084号及び以下に概説される一般的な更なるFcバリアントが挙げられる。
【0083】
対象のヘテロ二量体抗体(例えば、二重特異性抗体)の形成及び精製に有用なヘテロ二量体化バリアントについて、以下で更に詳細に議論する。
【0084】
1.スキューバリアント
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、Fcヘテロ二量体の形成を支持する、第1のFcドメイン(A)及び/又は第2のFcドメイン(B)における1以上のアミノ酸修飾であるスキューバリアントを含む(第1のFcドメイン及び第2のFcドメインを含むFcダイマー;(A~B)Fcホモ二量体(第1のFcドメインのうち2つ又は第2のFcドメインのうち2つを含む、Fc二量体;A~A又はB~B)。好適なスキューバリアントは、全体的に、特に、スキューバリアントの開示について、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0355608号の
図29、並びに
図23及び29に含まれる。
【0085】
スキューバリアントのある特定のタイプは、一般に、当技術分野では「ノブアンドホール」と呼ばれ、USSN61/596,846、Ridgway et al.,Protein Engineering 9(7):617(1996);Atwell et al.,J.Mol.Biol.1997 270:26;米国特許第8,216,805号(これらは全て、参照によりその全体が、具体的には「ノブアンドホール」突然変異の開示のために本明細書に組み込まれる)に記載されているように、ヘテロ二量体形成を有利にし、ホモ二量体形成を不利にする立体的影響を作り出すアミノ酸操作を指す。これは、本明細書において、「立体バリアント」と称されることもある。これらの図は、「ノブアンドホール」に依拠するいくつかの「単量体A-単量体B」対を特定する。加えて、Merchant et al.,Nature Biotech.16:677(1998)に記載されているように、これらの「ノブアンドホール」変異をジスルフィド結合と組み合わせ、Fcヘテロ二量体の形成を更に有利にすることができる。
【0086】
ヘテロ二量体の生成に使用される別の方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Gunasekaran et al.,J.Biol.Chem.285(25):19637(2010)に記載されているように、「静電ステアリング」と称されることもある。これは、本明細書において、「電荷対」と称されることもある。この実施形態では、静電学を使用して、ヘテロ二量体化に向けて形成をスキューさせる。当業者によって理解されるように、これらは、pI、すなわち精製にも影響を及ぼす可能性があり、したがって場合によってはpIバリアントとみなすこともできる。しかしながら、これらはヘテロ二量体化を強制するために生成され、精製手段として使用されなかったので、それらは「スキューバリアント」として分類される。これらには、D221R/P228R/K409Rと対になったD221E/P228E/L368E(例えば、これらは「単量体の対応セット」である)及びC220R/E224R/P228R/K409Rと対になったC220E/P228E/368Eが含まれるがこれらに限定されない。
【0087】
いくつかの実施形態では、スキューバリアントは、有利かつ同時に、「ノブとホール」機構及び「静電ステアリング」機構の両方に基づくヘテロ二量体化を促進する。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、そのようなヘテロ二量体化スキューバリアントの1つ以上のセットを含む。これらのバリアントは、「セット」の「対」になる。すなわち、一方のセットの対が第1の単量体に組み込まれ、他方のセットの対が第2の単量体に組み込まれる。これらのセットは、必ずしも「ノブとホール」バリアントとして挙動するわけではなく、一方の単量体の残基と他方の単量体の残基との間の一対一の対応を有することを留意すべきである。すなわち、セットのこれらの対は、その代わりに、ヘテロ二量体の形成を促進し、ホモ二量体の形成を促進しない2つの単量体間の界面を形成する可能性があり、生物学的条件下で自発的に形成するヘテロ二量体の割合は、予想される50%(25%ホモ二量体A/A:50%ヘテロ二量体A/B:25%ホモ二量体B/B)ではなく、90%を超える。例示的な実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、S364K/E357Q:L368D/K370S、L368D/K370S:S364K、L368E/K370S:S364K、T411T/E360E/Q362E:D401K、L368D/K370S:S364K/E357L、K370S:S364K/E357Q、又はT366S/L368A/Y407V:T366W(任意選択で、架橋ジスルフィド、T366S/L368A/Y407V/Y349C:T366W/S354C又はT366S/L368A/Y407V/S354C:T366W/Y349Cを含む)「スキュー」バリアントアミノ酸置換セットを含む。例示的な実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、「S364K/E357Q:L368D/K370S」アミノ酸置換セット(EU番号付け)を含む。命名法に関して、「S364K/E357Q:L368D/K370S」の対は、単量体の1つが、アミノ酸置換S364K及びE357Qを含むFcドメインを含み、他方の単量体が、アミノ酸置換L368D及びK370Sを含むFcドメインを含むことを意味する。上述のように、これらの対の「撚り度」は、開始時のpIに依存する。
【0088】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるスキューバリアントは、他のスキューバリアント(例えば、米国特許出願公開第2012/0149876号の
図37、特に、スキューバリアントの開示について、参照により本明細書に組み込まれるものを参照されたい)、pIバリアント、アイソタイプバリアント、FcRnバリアント、除去バリアントなどを含むがこれらに限定されない、任意の他の修飾と共に、ヘテロ二量体抗体の第1及び第2のFcドメインの一方又は両方に、任意選択で、かつ独立して組み込まれ得る。更に、個々の修飾はまた、独立して、かつ任意選択的に、ヘテロ二量体抗体を対象に含めるか、又は対象から除外することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説されるスキューバリアントは、任意のpIバリアント(又はFcバリアント、FcRnバリアントなどの他のバリアント)を一方又は両方の重鎖単量体に任意にかつ独立して組み込むことができ、本発明のタンパク質に独立してかつ任意に含むか又は除外することができる。
【0090】
2.ヘテロ二量体のpI(等電点)バリアント
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、ホモ二量体タンパク質からのヘテロ二量体抗体の分離を有利に可能にする精製バリアントを含む。
【0091】
ヘテロ二量体抗体の精製を容易にし得るいくつかの基本的な機構が存在する。例えば、各単量体が異なるpIを有するように抗体重鎖単量体A及びBの一方又は両方を修飾することにより、単量体A-A及びB-Bタンパク質からのヘテロ二量体A-B抗体の等電点精製が可能になる。あるいは、「1+1 Fab-scFv-Fc」フォーマット及び「2+1 Fab2-scFv-Fc」フォーマットなどの一部の足場フォーマットでも、サイズに基づいて分離を可能にする。上記のように、スキューバリアントを使用してホモ二量体上にヘテロ二量体の形成を「スキュー」することもまた可能である。したがって、ヘテロ二量体化スキューバリアントとpIバリアントとの組み合わせは、本明細書で提供されるヘテロ二量体抗体において特定の用途を見出す。
【0092】
更に、以下でより完全に概説されるように、ヘテロ二量体抗体のフォーマットに応じて、単量体の定常領域及び/若しくはFcドメイン内に含まれるpIバリアント、並びに/又はドメインリンカーを使用することができる。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、Fc、FcRn及びKOバリアントなどの、pI変化を作り出すこともできる代替機能のための追加の修飾を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される対象のヘテロ二量体抗体は、単量体のpIを変更する1つ以上の修飾を有する少なくとも1つの単量体(すなわち、「pIバリアント」)を含む。一般に、当業者によって理解されるように、pIバリアントには2つの一般的なカテゴリー、すなわち、タンパク質のpIを増加させるもの(塩基性変化)とタンパク質のpIを減少させるもの(酸性変化)がある。本明細書に記載されるように、これらのバリアントの全ての組み合わせがなされ得、一方の単量体は野生型、又は野生型と顕著に異なるpIを示さないバリアントであり得、他方がより塩基性又はより酸性のいずれかであり得る。代替的に、各単量体は、1つがより塩基性に、1つがより酸性へと変化する。
【0094】
ヘテロ二量体抗体のフォーマットに応じて、pIバリアントは単量体の定常ドメイン及び/又はFcドメイン内に含まれるか、又は荷電リンカー、ドメインリンカー若しくはscFvリンカーのいずれかが使用され得る。すなわち、「1+1 Fab-scFv-Fc」などのscFvを利用する抗体フォーマットには、精製目的のために更にpIブーストを与える荷電scFvリンカー(正又は負のいずれか)を含むことができる。当業者には理解されるように、本明細書は、単量体の一方又は両方にあるpIバリアント、及び/又は荷電ドメインリンカーも提供するが、いくつかの1+1 Fab-scFv-Fc及び2+1 Fab2-scFv-Fcフォーマットは、荷電scFvリンカーのみで有用であり、追加のpI調整はない。加えて、代替の機能性のための追加のアミノ酸操作もまた、Fc、FcRn、及びKOバリアントなどのpI変化を付与し得る。
【0095】
ヘテロ二量体タンパク質の精製を可能にする分離機構としてpIを利用する対象のヘテロ二量体抗体では、アミノ酸バリアントが単量体ポリペプチドの一方又は両方に導入される。すなわち、単量体の1つ(単純化のため本明細書では、「単量体A」として称される)のpIは、単量体Bから離れるように操作させることができ、又は単量体AのpIを増加させ、単量体BのpIを減少させつつ、単量体AとBの両方の変化を変化させることができる。下記により完全に概説されるように、いずれか又は両方の単量体のpI変化は、荷電残基を除去又は付加することによって(例えば、中性アミノ酸を正又は負に荷電したアミノ酸残基で置換する、例えば、グリシンからグルタミン酸)、正又は負から反対の電荷への荷電残基の変更によって(アスパラギン酸からリジンへ)、又は荷電残基の中性残基への変更によって(例えば、電荷の消失、リジンからセリンへ)、実施することができる。リジンからセリンへ)行うことができる。
【0096】
したがって、いくつかの実施形態では、対象のヘテロ二量体抗体は、二量体タンパク質の単量体の両方ではないにしても少なくとも1つの等電点(pI)を、アミノ酸置換(「pIバリアント」又は「pI置換」)を単量体の一方又は両方に組み込むことによって変更する、定常領域におけるアミノ酸修飾を含む。本明細書に示されるように、2つのホモ二量体からのヘテロ二量体の分離は、2つの単量体のpIが0.1pH単位だけわずかに異なる場合に達成することができ、0.2、0.3、0.4、及び0.5以上異なるものが全て本発明において使用される。
【0097】
当業者には理解されるように、良好な分離を得るために各単量体又は両方の単量体に含まれるべきpIバリアントの数は、構成要素の出発pI、例えば、1+1 Fab-scFv-Fc、及び2+1 Fab2-scFv-Fcフォーマットにおいて、関心対象のscFv(1+1 Fab-scFv-Fc、2+1 Fab2-scFv-Fc)及びFabの出発pIに部分的に依存するであろう。すなわち、どの単量体を操作するか、又はどの「方向」(例えば、より正又はより負)かを決定するために、2つの標的抗原のFv配列が計算され、そしてそこから決定がなされる。当技術分野において既知のように、異なるFvは、本発明において利用される異なる出発pIを有するであろう。一般に、本明細書に概説されるように、pIは、少なくとも約0.1logの各単量体の総pI差をもたらすように操作され、本明細書に概説されるように0.2~0.5が好ましい。
【0098】
重鎖の定常領域を使用することによって、ヘテロ二量体を達成するためにpIバリアントが使用される場合、抗体を含む二重特異性タンパク質を設計し、精製するためのよりモジュール方式のアプローチが提供される。したがって、いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化バリアント(スキュー及びpIヘテロ二量体化バリアントを含む)は可変領域に含まれず、そのため各個々の抗体を操作しなければならない。加えて、いくつかの実施形態では、pIバリアントから生じる免疫原性の可能性は、顕著な免疫原性を導入することなくpIが変化するように、異なるIgGアイソタイプからのpIバリアントを移入することによって顕著に低減する。したがって、解決されるべき更なる問題は、高ヒト配列含有量を有する低pI定常ドメインの解明、例えば、任意の特定位置における非ヒト残基の最小化又は回避である。アイソタイプ置換に代えて、又はこれに加え、pIバリアントから生じる免疫原性の可能性は、等配電子置換(例えば、AsnからAsp及びGlnからGlu)を利用することによって、大幅に低下する。
【0099】
以下に議論するように、このpI操作で起こり得る副次的な利益はまた、血清半減期の延長及びFcRn連結の増加である。すなわち、米国特許出願公開第2012/0028304号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、抗体定常ドメイン(抗体及びFc融合体に見られるものを含む)のpIを低下させると、インビボでより長い血清保持をもたらし得る。血清半減期を延長するためのこれらのpIバリアントはまた、精製のためのpI変化を促進する。
【0100】
加えて、pIバリアントが、ホモ二量体が存在する場合に、排除、最小化、及び区別するいずれかの能力が顕著であるので、二重特異性抗体の分析及び品質管理プロセスに更なる利益を与えることに留意されるべきである。同様に、ヘテロ二量体抗体産生の再現性を確実に試験する能力は重要である。
【0101】
一般に、特に使用される実施形態は、スキューバリアントを含むバリアントのセットに依存し、これは、2つの単量体間でpI差異を増加させるpIバリアントと組み合わせて、ホモ二量体化形成より優先してヘテロ二量体化形成を促し、ホモ二量体を除去してヘテロ二量体の精製を容易にする。
【0102】
pIバリアントの例示的な組合せは、
図24及び25、並びに米国特許出願公開第2016/0355608号の
図30に示されており、これらの全ては、全体的に、特に、pIバリアントの開示について、参照により本明細書に組み込まれる。
【0103】
一実施形態では、pIバリアントの好ましい組合せは、208D/295E/384D/418E/421Dバリアント(ヒトIgG1と比較する場合、N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D)を含む1つの単量体(負のFab側)と、(GKPGS)
4を含む正に荷電したscFvリンカーを含む第2の単量体(正のscFv側)とを有する。しかしながら、当業者によって理解されるように、第1の単量体は、位置208を含むCH1ドメインを含む。したがって、CH1ドメインを含まない構築物(例えば、ドメインの1つにCH1ドメインを利用しない抗体の場合)において、好ましい負のpIバリアントFcセットは、295E/384D/418E/421Dバリアント(ヒトIgG1対しての場合、Q295E/N384D/Q418E/N421D)を含む。本明細書で提供されるヘテロ二量体抗体において使用することができる更なるpIバリアントは、
図23及び24に示されている。
【0104】
いくつかの実施形態では、修飾は、EU番号付けに基づき、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229及び230位を含む、Fcドメインのヒンジで生じる。したがって、pI変異、特に置換は、216~230位の1つ以上で行うことができ、用途を見出す1、2、3、4又は5個の変異を有する。同様に、全ての可能な組み合わせが、単独で、又は他のドメイン中の他のpIバリアントと共に企図されている。
【0105】
ヒンジドメインのpIを低下させるのに使用される具体的な置換は、221位の欠失、222位の非天然バリン又はトレオニン、223位の欠失、224位の非天然グルタミン酸、225位の欠失、235位の欠失、及び236位の欠失又は非天然アラニンを含むが、これらに限定されない。場合によっては、ヒンジドメインにおいてはpI置換のみが行われ、他の例では、これらの置換は他のドメイン内の他のpIバリアントに任意の組み合わせで加えられる。
【0106】
いくつかの実施形態では、EU番号付けに基づき、233、234、235、236、274、296、300、309、320、322、326、327、334及び339位を含むCH2領域内に変異を生じさせることができる。233~236における変化は、IgG2骨格におけるエフェクター機能を(327Aと共に)増加させるためになされ得ることに留意されたい。ここでも、これら14個の位置の全ての可能な組合せを作ることができる。例えば、本明細書で提供される抗BCMA抗体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10のCH2のpI置換を有するバリアントFcドメインを含み得る。
【0107】
CH2ドメインのpIを低下させるのに使用される具体的な置換は、274位の非天然グルタミン又はグルタミン酸、296位の非天然フェニルアラニン、300位の非天然フェニルアラニン、309位の非天然バリン、320位の非天然グルタミン酸、322位の非天然グルタミン酸、326位の非天然グルタミン酸、327位の非天然グリシン、334位の天然グルタミン酸、339位の非天然トレオニン、及びCH2内及び他のドメインとの全ての可能な組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0108】
この実施形態では、修飾は、CH3領域の355、359、362、384、389、392、397、418、419、444及び447位(EU番号付け)から独立して、かつ任意選択的に選択され得る。CH3ドメインのpIを低下させるのに使用される具体的な置換としては、355位の非天然グルタミン又はグルタミン酸、384位の非天然セリン、392位の非天然アスパラギン又はグルタミン酸、397位の非天然メチオニン、419位の非天然グルタミン酸、359位の非天然グルタミン酸、362位の非天然グルタミン酸、389位の非天然グルタミン酸、418位の非天然グルタミン酸、444位の非天然グルタミン酸、及び447位の欠失又は非天然アスパラギン酸が含まれるがこれらに限定されない。
【0109】
3.アイソタイプバリアント
加えて、主題のヘテロ二量体抗体の多くの実施形態は、あるIgGアイソタイプから別のIgGアイソタイプへの特定の位置でのpIアミノ酸の「移入」に依存し、したがって、バリアントに望ましくない免疫原性が導入される可能性を低減又は排除する。これらのいくつかは、米国特許出願公開第2014/0370013号の
図21に示され、参照により本明細書に組み込まれる。すなわち、IgG1は、高いエフェクター機能を含む様々な理由から治療用抗体の一般的なアイソタイプである。しかしながら、IgG1の重定常領域は、IgG2のそれよりも高いpIを有する(8.10対7.31)。特定の位置でIgG2残基をIgG1骨格に導入することによって、得られる単量体のpIは低下(又は上昇)し、加えて、より長い血清半減期を示す。例えば、IgG1は137位にグリシン(pI5.97)を有し、IgG2はグルタミン酸(pI3.22)を有し、グルタミン酸を移入することは、得られるタンパク質のpIに影響を及ぼす。以下に記載されるように、いくつかのアミノ酸置換は一般に、バリアント抗体のpIに顕著な影響を与えるために必要とされる。しかしながら、以下に考察されるようにIgG2分子中の変化でさえも血清半減期の増加を可能にすることに留意すべきである。
【0110】
他の実施形態では、非アイソタイプのアミノ酸変化を行って、(例えば、高pIのアミノ酸から低pIのアミノ酸へと変化させることによって)得られるタンパク質の全体的な荷電状態を低減させるか、又は以下で更に詳細に記載されている安定性などのための構造の調整を可能にするかのいずれかである。
【0111】
加えて、重鎖定常ドメイン及び軽鎖定常ドメインの両方をpI操作することによって、ヘテロ二量体の各単量体における顕著な変化を見ることができる。本明細書で考察されるように、2個の単量体のpIが少なくとも0.5だけ異なることは、イオン交換クロマトグラフィー若しくは等電点電気泳動、又は等電点に感受性の他の方法による分離を可能にし得る。
【0112】
4.pIを計算する
本明細書で提供される抗体の各単量体のpIは、バリアント重鎖定常ドメインのpI及び全単量体のpIに依存し、バリアント重鎖定常ドメイン及び融合パートナーを含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、pIの変化は、米国特許出願公開第2014/0370013号の
図19のチャートを使用して、バリアント重鎖定常ドメインに基づいて計算される。
【0113】
本明細書で考察されるように、どの単量体を操作するかは概して、Fv領域及び足場領域の固有のpIによって決定される。代替的に、各単量体のpIを比較することができる。
【0114】
5.より良好なin vivo結合のFcRnも付与するpIバリアント
pIバリアントが単量体のpIを減少させる場合、pIバリアントはインビボでの血清保持を改善するという更なる利点を有することができる。
【0115】
まだ検討中ではあるが、エンドソーム内のpH6でFcRnに結合するとFcが隔離されるため、Fc領域はインビボでより長い半減期を有すると考えられている(Ghetie and Ward,1997 Immunol Today.18(12):592-598、参照により全体が組み込まれる)。次いで、エンドソーム区画は、Fcを細胞表面にリサイクルする。区画が細胞外空間に開くと、約7.4のより高いpHが、血中に戻るFcの放出を誘導する。マウスでは、Dall’Acquaらは、pH6及びpH7.4でFcRn結合が増加したFc変異体は実際に低減した血清濃度及び野生型Fcと同じ半減期を有することが示された(Dall’Acqua et al.2002,J.Immunol.169:5171-5180、参照により全体が組み込まれる)。pH7.4でのFcRnに対するFcの親和性の増加は、血中に戻るFcの放出を妨げると考えられる。したがって、インビボでのFcの半減期を増加させるFc変異は、理想的には、より高いpHでのFcの放出をなお可能にしながら、より低いpHでのFcRn結合を増加させる。アミノ酸ヒスチジンは、6.0~7.4のpH範囲でその荷電状態を変化させる。したがって、Fc/FcRn複合体中の重要な位置にHis残基を見出すことは驚くべきことではない。
【0116】
最近、より低い等電点を有する可変領域を有する抗体は、より長い血清半減期も有する可能性があることが示唆されている(Igawa et al.,2010 PEDS.23(5):385-392、参照により全体が組み込まれる)。しかし、この機構はまだよくわかっていない。更に、可変領域は抗体ごとに異なる。本明細書に記載されるように、pIが低下し半減期が延長された定常領域バリアントは、抗体の薬物動態特性を改善するためのよりモジュール方式のアプローチを提供するであろう。
【0117】
B.追加の機能性のための追加のFcバリアント
上記に概説されているヘテロ二量体化バリアントに加えて、限定されないが、以下に概説されているように、1個以上のFcγR受容体との結合を変化させること、FcRnへの変化された結合を含む、様々な理由から行われ得るいくつかの有用なFcアミノ酸修飾がある。
【0118】
したがって、本明細書で提供される抗体(ヘテロ二量体、並びにホモ二量体)は、本明細書で概説されるヘテロ二量体化バリアント(例えば、pIバリアント及び立体バリアント)を伴うか、又は伴わない、そのようなアミノ酸修飾を含み得る。バリアントの各セットは、独立して、かつ任意選択的に、任意の特定のヘテロ二量体タンパク質を含み得るか、又はそれから除外し得る。
【0119】
1.FcγRバリアント
したがって、FcγR受容体のうちの1つ以上への結合を改変するために行われ得る、いくつかの有用なFc置換が存在する。ある特定の実施形態では、対象の抗体は、1つ以上のFcγR受容体(すなわち、「FcγRバリアント」)への結合を変更する修飾を含む。結合の増加並びに結合の減少をもたらす置換が有用であり得る。例えば、FcγRIIIaへの結合の増加は、概して、ADCC(antibody dependent cell-mediated cytotoxicity、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害;FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介反応)を増加させることが知られている。同様に、いくつかの状況下では、FcγRIIb(阻害性受容体)との結合の減少も有益であり得る。対象の抗体で使用されるアミノ酸置換には、米国特許第8,188,321号(特に、
図41)及び同第8,084,582号、並びに米国特許出願公開第2006/0235208号及び同第2007/0148170号に列挙されるものが挙げられ、これらは全て、参照によりその全体が、特にそこに開示されているFcγ受容体結合に影響するバリアントについて明示的に本明細書に組み込まれる。使用される特定のバリアントには、EU番号付けに従って、236A、239D、239E、332E、332D、239D/332E、267D、267E、328F、267E/328F、236A/332E、239D/332E/330Y、239D、332E/330L、243A、243L、264A、264V及び299Tが含まれるがこれらに限定されない。そのような修飾は、対象抗体の一方又は両方のFcドメインに含まれ得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、主題の抗体は、血清半減期を増加させる1つ以上のFc修飾を含む。FcRn受容体への結合の増加及び血清半減期の増加に使用されるFc置換は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるUSSN12/341,769に具体的に開示されているように、434S、434A、428L、308F、259I、428L/434S、259I/308F、436I/428L、436I又はV/434S、436V/428L、及び259I/308F/428Lを含むがこれらに限定されない。そのような修飾は、対象抗体の一方又は両方のFcドメインに含まれ得る。例示的な実施形態では、抗体は、428L/434S修飾(EU番号付け)を含む。
【0121】
2.除去バリアント
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、Fcγ受容体(例えば、FcγR1、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaなど)のうちの1つ以上又は全てへのFcドメインの通常の結合を低減又は除去して追加の作用機序を回避する1つ以上の修飾を含む。そのような修飾は、「FcγR除去バリアント」又は「Fcノックアウト(FcKO又はKO)」バリアントと呼ばれる。これらの実施形態では、いくつかの治療用途のために、追加の作用機序を回避するために、1つ以上又は全てのFcγ受容体(例えば、FcγR1、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaなど)へのFcドメインの正常な結合を低減又は除去することが望ましい。すなわち、例えば、多くの実施形態では、特にBCMAに一価的に結合する二重特異性抗体の使用において、ADCC活性を排除又は顕著に低下させるためにFcγRIIIa結合を除去することが概して望ましい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の主題の抗体のうち、Fcドメインの少なくとも1つは、1つ以上のFcγ受容体除去バリアントを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の主題の抗体のうち、Fcドメインの両方が、1つ以上のFcγ受容体除去バリアントを含む。これらの除去バリアントはそれぞれ、独立して、かつ任意選択的に含むか、又は除外することができ、好ましい態様は、G236R/L328R、E233P/L234V/L235A/G236del/S239K、E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、E233P/L234V/L235A/G236del/S239K/A327G、E233P/L234V/L235A/G236del/S267K/A327G及びE233P/L234V/L235A/G236del(EU番号付け)からなる群から選択される除去バリアントを利用する。本明細書で言及される除去バリアントは、FcγR結合を除去するが、一般的にはFcRn結合を除去しないことに留意すべきである。本明細書で提供されるヘテロ二量体抗体に含まれ得る更なる除去バリアントが
図24及び25に示されている。
【0122】
当技術分野で既知であるように、ヒトIgG1のFcドメインはFcγ受容体への結合が最も高く、したがってヘテロ二量体抗体の骨格の定常ドメイン(又はFcドメイン)がIgG1である場合、除去バリアントを使用することができる。代替的に、又はIgG1バックグラウンドの除去バリアントに加えて、グリコシル化位置297での(一般にA又はSへの)変異は、例えば、FcγRIIIaへの結合を有意に除去することができる。ヒトIgG2及びIgG4は、Fcγ受容体への結合が自然に低下しているため、これらの骨格は、除去バリアントの有無にかかわらず使用できる。
【0123】
C.ヘテロ二量体及びFcバリアントの組み合わせ
当業者によって理解されるように、列挙されたヘテロ二量体化バリアント(スキューバリアント及び/又はpIバリアントを含む)は全て、それらの「撚り度」又は「単量体分割」を保持する限り、任意選択的に、かつ独立して組み合わせることができる。加えて、これらのバリアントの全ては、ヘテロ二量体化フォーマットのいずれにも組み合わせることができる。
【0124】
pIバリアントの場合、特に使用される実施形態が図に示されている一方、精製を促進するために2つの単量体間のpIの差異を変えるという基本的な規則に従って、他の組み合わせを生成できる。
【0125】
加えて、ヘテロ二量体化バリアント、スキュー、及びpIはいずれも、本明細書で概説されるように、Fc除去バリアント、Fcバリアント、FcRnバリアントと、独立して、かつ任意選択的に組み合わされる。
【0126】
ヘテロ二量体1+1 Fab-scFv-Fc及び2+1 Fab
2-scFv-Fcフォーマット抗体のいくつかの実施形態に含まれるバリアントの例示的な組合せが
図28に含まれる。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、
図28に示されるように、バリアントの組合せを含む。ある特定の実施形態では、抗体は、ヘテロ二量体1+1 Fab-scFv-Fc、又は2+1 Fab
2-scFv-Fcフォーマット抗体である。例示的な実施形態では、抗体は、本明細書で提供されるBCMA ABDの少なくとも1つを含み、CD3に結合しない。
【0127】
D.有用な抗体フォーマット
当業者には理解され、以下でより詳細に説明するように、概して
図22に示されるように、本明細書で提供される二重特異性ヘテロ二量体抗体は、いくつかの異なる構成をとることができる。
【0128】
当業者によって理解されるように、本発明のヘテロ二量体フォーマットは、異なる価数を有し得ると共に、二重特異性であり得る。すなわち、本発明のヘテロ二量体抗体は、二価及び二重特異性、又は三価及び二重特異性であり得、第1の抗原は2つの結合ドメインによって結合され、第2の抗原は第2の結合ドメインによって結合される。
【0129】
本発明は、少なくとも1つのBCMA抗原結合ドメインを利用する。当業者によって理解されるように、図のいずれか(特に
図5、6、及び11~15を参照されたい)に示されるような抗CDR、可変軽鎖及び可変重鎖ドメイン、Fab並びにscFvの任意のコレクションを使用することができる。
1.1+1 Fab-scFv-Fcフォーマット(「ボトルオープナー」)
【0130】
本明細書で提供される対象の二重特異性抗体において特に使用される1つのヘテロ二量体抗体フォーマットは、
図22Aに示されているような「1+1 Fab-scFv-Fc」又は「ボトルオープナー」フォーマットである。1+1 Fab-scFv-Fcフォーマット抗体は、「通常の」重鎖(VH1-CH1-ヒンジ-CH2-CH3)である第1の単量体を含み、VH1は第1の可変重鎖ドメインであり、CH2-CH3は第1のFcドメインである。1+1 Fab-scFv-Fcはまた、第1の可変軽鎖ドメインVL1及び定常軽鎖ドメインCLを含む軽鎖を含む。軽鎖は、第1の単量体のVH1-CH1と相互作用して、Fabである第1の抗原結合ドメインを形成する。抗体の第2の単量体は、単鎖Fv(以下に定義される「scFv」)である第2の結合ドメイン及び第2のFcドメインを含む。scFvは、第2の可変重鎖ドメイン(VH2)及び第2の可変軽鎖ドメイン(VL2)を含み、VH2は、荷電可能なscFvリンカーを使用してVL2に結合される(例えば、
図26を参照されたい)。scFvは、ドメインリンカーを使用して第2のFcドメインに結合される(例えば、
図27を参照されたい)。2つの単量体は、以下により詳細に記載されるように、ヘテロ二量体抗体の形成を促進する定常領域(例えば、Fcドメイン、CH1ドメイン及び/又はヒンジ領域)におけるアミノ酸バリアント(例えば、上述したヘテロ二量体化バリアント)の使用により一緒にされる。この構造は、ボトルオープナーと視覚的に大まかに似ているため、本明細書では「ボトルオープナー」(フォーマットと称されることがある。いくつかの実施形態では、1+1 Fab-scFv-Fcフォーマット抗体は、二価抗体である。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体はCD3に結合しない。
【0131】
いくつかの実施形態では、第1の単量体は、N末端からC末端に、VH1-CH1-ヒンジ-CH2-CH3を含む。ある特定の実施形態では、第2の単量体は、N末端からC末端に、VH2-scFvリンカー-VL2-リンカー-CH2-CH3を含み、VH2-scFvリンカー-VL2は、scFvである。他の実施形態では、第2の単量体は、N末端からC末端に、VL2-scFvリンカー-VL2-リンカー-CH2-CH3を含み、ここで、VL2-scFvリンカー-VH2はscFvである。
【0132】
現在の「1+1 Fab-scFv-Fc」フォーマットにはいくつかの明確な利点が存在する。当技術分野で既知であるように、2つのscFv構築物に依拠する抗体類似体は、しばしば、安定性及び凝集の問題を有し、これは、本発明では「通常の」重鎖及び軽鎖対合を加えることによって軽減することができる。加えて、2つの重鎖及び2つの軽鎖に依存するフォーマットとは対照的に、重鎖と軽鎖の誤った対合(例えば、重鎖1と軽鎖2の対合など)の問題はない。
【0133】
1+1 Fab-scFv-Fcフォーマット抗体のいくつかの実施形態では、第1又は第2の抗原結合ドメインのうちの1つは、BCMA抗原結合ドメインである。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、本明細書に記載のBCMA ABDのいずれか1つである。ある特定の実施形態では、第2の結合ドメインは、本明細書に記載のBCMA ABDのうちのいずれか1つである。いくつかの実施形態では、1+1 Fab-scFv-Fcフォーマット抗体は、CD3結合ドメインを含まない。本明細書で提供されるBCMA ABDのいずれか1つは、以下のBCMA ABD:S1R4_10corr[BCMA]_H1L1、S1R5_125[BCMA]_H1L1、1A1[BCMA]_H1L1、1B4[BCMA]_H1.1_L1、1B3[BCMA]_H1L1、5F2[BCMA]_H1L1、及び6E3[BCMA]_H1L1(
図5、6、及び11~15)のうちの1つ又はそのバリアントを含む、1+1 Fab-scFv-Fcフォーマット抗体に含まれ得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、1+1 Fab-scFv-Fcフォーマット抗体の第1及び第2のFcドメインは、本明細書に開示されるヘテロ二量体化スキューバリアント(例えば、
図23及び29を参照されたい)を含むバリアントFcドメインである。特に有用なヘテロ二量体化スキューバリアントとしては、S364K/E357Q:L368D/K370S、L368D/K370S:S364K、L368E/K370S:S364K、T411T/E360E/Q362E:D401K、L368D/K370S:S364K/E357L、K370S:S364K/E357Q、T366S/L368A/Y407V:T366W及びT366S/L368A/Y407V/Y349C:T366W/S354Cを含み、番号付けは、EU番号付けに従う。例示的な実施形態では、第1又は第2のバリアントFcドメインのうちの一方はヘテロ二量体化スキューバリアントL368D/K370Sを含み、第1又は第2のバリアントFcドメインの他方はヘテロ二量体化スキューバリアントS364K/E357Qを含み、番号付けはEU番号付けに従う。例示的な実施形態では、第1のバリアントFcドメインはヘテロ二量体化スキューバリアントL368D/K370Sを含み、第2のバリアントFcドメインはヘテロ二量体化スキューバリアントS364K/E357Qを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0135】
いくつかの実施形態では、バリアントFcドメインは、本明細書に開示される除去バリアントを含む(例えば、
図25を参照されたい)。いくつかの実施形態では、第1及び第2のバリアントFcドメインのそれぞれが、除去バリアントE233P/L234V/L235A/G236_/S267Kを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0136】
いくつかの実施形態では、第1の単量体の定常ドメイン(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)は、本明細書に開示されるpIバリアントを含む(例えば、
図24を参照されたい)。例示的な実施形態では、第1の単量体の定常ドメイン(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)は、pIバリアントN208D/Q295E/N384D/Q418E/N421Dを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0137】
例示的な実施形態では、第1の単量体のCH1-ヒンジ-CH2-CH3は、アミノ酸バリアントL368D/K370S/N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D/E233P/L234V/L235A/G236del/S267Kを含み、第2のFcドメインは、アミノ酸バリアントS364K/E357Q/E233P/L234V/L235A/G236del/S267Kを含み、番号付けは、EU番号付けに従う。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1+1 Fab-scFv-Fcフォーマット抗体のscFvは、荷電scFvリンカーを含む(例えば、
図27を参照されたい)。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1+1 Fab-scFv-Fcフォーマット抗体は、FcRnバリアントM428L/N434Sを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0139】
例示的な実施形態では、第1のバリアントFcドメインは、ヘテロ二量体化スキューバリアントL368D/K370Sを含み、第2のバリアントFcドメインは、ヘテロ二量体化スキューバリアントS364K/E357Qを含み、第1及び第2のバリアントFcドメインはそれぞれ、除去バリアントE233P/L234V/L235A/G236_/S267Kを含み、第1の単量体の定常ドメイン(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)は、pIバリアントN208D/Q295E/N384D/Q418E/N421Dを含み、番号付けは、EU番号付けに従う。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1+1 Fab-scFv-Fcフォーマット抗体のscFvは、(GKPGS)4荷電scFvリンカーを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される1+1 Fab-scFv-Fcフォーマット抗体は、FcRnバリアントM428L/N434Sを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0140】
2.2+1 Fab
2-scFv-Fcフォーマット(セントラル-scFvフォーマット)
本明細書で提供される対象の二重特異性抗体において特に使用される1つのヘテロ二量体抗体フォーマットは、
図22Bに示される2+1 Fab
2-scFv-Fcフォーマット(「セントラル-scFvフォーマット」とも呼ばれる)である。この抗体フォーマットには、2つのFab部分、及び単量体のうちの1つのVH-CH1領域とCH2-CH3領域との間に挿入されたscFvの3つの抗原結合ドメインが含まれる。このフォーマットのいくつかの実施形態では、Fab部分はそれぞれ、BCMAに結合する。いくつかの実施形態では、「余分な」scFvドメインは、BCMAに結合する。いくつかの実施形態では、2+1 Fab
2-scFv-Fcフォーマット抗体は、三価抗体である。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体はCD3に結合しない。
【0141】
2+1 Fab
2-scFv-Fcフォーマットのいくつかの実施形態では、第1の単量体は、標準的重鎖(すなわち、VH1-CH1-ヒンジ-CH2-CH3)を含み、VH1は第1の可変重鎖ドメインであり、CH2-CH3は第1のFcドメインである。第2の単量体は、別の第1の可変重鎖ドメイン(VH1)、CH1ドメイン(及び任意選択的なヒンジ)、第2のFcドメイン、並びにscFv可変軽鎖ドメイン(VL2)、scFvリンカー及びscFv可変重鎖ドメイン(VH2)を含むscFvを含む。scFvは、任意選択的なドメインリンカーを使用して、第2の単量体のCH1ドメインのC末端と第2のFcドメインのN末端の間に共有結合している(VH1-CH1-[任意選択的なリンカー]-VH2-scFvリンカー-VH2-[任意選択的なリンカー]-CH2-CH3、又はscFvに対して反対方向の、VH1-CH1-[任意選択的なリンカー]-VL2-scFvリンカー-VH2-[任意選択的なリンカー]-CH2-CH3)。任意のリンカーは、例えば、
図27に含まれるドメインリンカーを含む任意の好適なペプチドリンカーであり得る。この実施形態は更に、可変軽鎖ドメイン(VL1)及び定常軽鎖ドメイン(CL)を含む共通軽鎖を利用する。共通軽鎖は、第1及び第2の単量体のVH1-CH1と会合して、2つの同一のFabを形成する。
【0142】
いくつかの実施形態では、同一のFabはそれぞれ、BCMAに結合する。いくつかの実施形態では、scFvはBCMAに結合する。いくつかの実施形態では、2+1 Fab
2-scFv-Fcフォーマット抗体では、Fab又はscFvはいずれもCD3に結合しない。本明細書で提供されるBCMA ABDのうちのいずれか1つは、以下のBCMA ABD:S1R4_10corr[BCMA]_H1L1、S1R5_125[BCMA]_H1L1、1A1[BCMA]_H1L1、1B4[BCMA]_H1.1_L1、1B3[BCMA]_H1L1、5F2[BCMA]_H1L1、及び6E3[BCMA]_H1L1(
図5、6、及び11~15)のうちの1つ又はそのバリアントを含む、2+1 Fab
2-scFv-Fcフォーマット抗体に含まれ得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、第1の単量体は、N末端からC末端に、VH1-CH1-ヒンジ-CH2-CH3を含む。ある特定の実施形態では、第2の単量体は、N末端からC末端に、VH1-CH1-第1のドメインリンカー-VH2-scFvリンカー-VL2-第2のドメインリンカー-CH2-CH3を含み、VH2-scFvリンカー-VL2はscFvである。他の実施形態では、第2の単量体は、N末端からC末端に、VH1-CH1-第1のリンカー-VL2-scFvリンカー-VL2-第2のリンカー-CH2-CH3を含み、VL2-scFvリンカー-VL2はscFvである。
【0144】
本明細書における実施形態の多くに関して、これらの構築物には、本明細書で所望され、説明されるように、スキューバリアント、pIバリアント、除去バリアント、追加のFcバリアントなどが含まれ得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、2+1 Fab
2-scFv-Fcフォーマット抗体の第1及び第2のFcドメインは、ヘテロ二量体化スキューバリアント(例えば、
図23及び29に示されているアミノ酸置換のセット)を含むバリアントFcドメインである。特に有用なヘテロ二量体化スキューバリアントとしては、S364K/E357Q:L368D/K370S、L368D/K370S:S364K、L368E/K370S:S364K、T411T/E360E/Q362E:D401K、L368D/K370S:S364K/E357L、K370S:S364K/E357Q、T366S/L368A/Y407V:T366W及びT366S/L368A/Y407V/Y349C:T366W/S354C(EU番号付け))が挙げられる。例示的な実施形態では、第1又は第2のバリアントFcドメインのうちの一方はヘテロ二量体化スキューバリアントL368D/K370Sを含み、第1又は第2のバリアントFcドメインの他方はヘテロ二量体化スキューバリアントS364K/E357Qを含み、番号付けはEU番号付けに従う。例示的な実施形態では、第1のバリアントFcドメインはヘテロ二量体化スキューバリアントL368D/K370Sを含み、第2のバリアントFcドメインはヘテロ二量体化スキューバリアントS364K/E357Qを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0146】
いくつかの実施形態では、バリアントFcドメインは、除去バリアント(
図25に示されているものを含む)を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2のバリアントFcドメインのそれぞれが、除去バリアントE233P/L234V/L235A/G236_/S267Kを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0147】
いくつかの実施形態では、第1の単量体の定常ドメイン(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)は、pIバリアント(
図24に示されているものを含む)を含む。例示的な実施形態では、第1の単量体の定常ドメイン(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)は、pIバリアントN208D/Q295E/N384D/Q418E/N421Dを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0148】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される2+1 Fab
2-scFv-Fcフォーマット抗体のscFvは、荷電scFvリンカー(
図26に示されているものを含む)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される2+1 Fab
2-scFv-Fcフォーマット抗体は、FcRnバリアントM428L/N434Sを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0149】
例示的な実施形態では、第1のバリアントFcドメインは、ヘテロ二量体化スキューバリアントL368D/K370Sを含み、第2のバリアントFcドメインは、ヘテロ二量体化スキューバリアントS364K/E357Qを含み、第1及び第2のバリアントFcドメインはそれぞれ、除去バリアントE233P/L234V/L235A/G236_/S267Kを含み、第1の単量体の定常ドメイン(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)は、pIバリアントN208D/Q295E/N384D/Q418E/N421Dを含み、番号付けは、EU番号付けに従う。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される2+1 Fab2-scFv-Fcフォーマット抗体のscFvは、(GKPGS)4荷電scFvリンカーを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される2+1 Fab2-scFv-Fcフォーマット抗体は、FcRnバリアントM428L/N434Sを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0150】
いくつかの実施形態では、第1の単量体のCH1-ヒンジ-CH2-CH3は、アミノ酸バリアントL368D/K370S/N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D/E233P/L234V/L235A/G236del/S267Kを含み、第2のFcドメインは、アミノ酸バリアントS364K/E357Q/E233P/L234V/L235A/G236del/S267Kを含み、番号付けは、EU番号付けに従う。
【0151】
3.2+1 mAb-scFvフォーマット
本明細書で提供される対象の二重特異性抗体において特に使用される1つのヘテロ二量体抗体フォーマットは、
図22Cに示される2+1 mAb-scFvフォーマットである。この抗体フォーマットは3つの抗原結合ドメイン:2つのFab部分及び単量体の1つのC末端に結合しているscFvを含む。このフォーマットのいくつかの実施形態では、Fab部分はそれぞれ、BCMA(例えば、ヒトBCMA)に結合する。一部の実施形態では、「余分な」scFvドメインは、BCMA(例えば、ヒトBCMA)に結合する。
【0152】
これらの実施形態では、第1の鎖又は単量体は、N末端からC末端に向かって、VH1-CH1-ヒンジ-CH2-CH3を含み、第2の単量体は、N末端からC末端に向かって、VH1-CH1-ヒンジ-CH2-CH3-ドメインリンカー-scFvドメインを含み、scFvドメインは、第2のVH(VH2)、第2のVL(VL2)及びscFvリンカーを含む。本明細書の全てのscFvドメインに関して、scFvドメインは、N末端からC末端に向かって、VH2-scFvリンカー-VL2又はVL2-scFvリンカー-VH2のいずれかの配向であり得る。したがって、第2の単量体は、N末端からC末端に、VH1-CH1-ヒンジ-CH2-CH3-ドメインリンカー-VH2-scFvリンカー-VL2又はVH1-CH1-ヒンジ-CH2-CH3-ドメインリンカー-VL2-scFvリンカー-VH2を含み得る。この組成物は、軽鎖VL1-CLも含む。これらの実施形態では、VH1-VL1はそれぞれ第1のABDを形成し、VH2-VL2は第2のABDを形成する。いくつかの実施形態では、第1のABD及び/又は第2のABDはヒトBCMAに結合する。
【0153】
いくつかの実施形態では、2+1 mAb-scFvフォーマット抗体の第1及び第2のFcドメインは、ヘテロ二量体化スキューバリアント(例えば、
図23及び29に示されているアミノ酸置換のセット)を含むバリアントFcドメインである。特に有用なヘテロ二量体化スキューバリアントとしては、S364K/E357Q:L368D/K370S、L368D/K370S:S364K、L368E/K370S:S364K、T411T/E360E/Q362E:D401K、L368D/K370S:S364K/E357L、K370S:S364K/E357Q、T366S/L368A/Y407V:T366W及びT366S/L368A/Y407V/Y349C:T366W/S354C(EU番号付け))が挙げられる。例示的な実施形態では、第1又は第2のバリアントFcドメインのうちの一方はヘテロ二量体化スキューバリアントL368D/K370Sを含み、第1又は第2のバリアントFcドメインの他方はヘテロ二量体化スキューバリアントS364K/E357Qを含み、番号付けはEU番号付けに従う。例示的な実施形態では、第1のバリアントFcドメインはヘテロ二量体化スキューバリアントL368D/K370Sを含み、第2のバリアントFcドメインはヘテロ二量体化スキューバリアントS364K/E357Qを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0154】
いくつかの実施形態では、バリアントFcドメインは、除去バリアント(
図25に示されるものを含む)を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2のバリアントFcドメインのそれぞれが、除去バリアントE233P/L234V/L235A/G236_/S267Kを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0155】
いくつかの実施形態では、第1の単量体の定常ドメイン(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)は、pIバリアント(
図24に示されているものを含む)を含む。例示的な実施形態では、第1の単量体の定常ドメイン(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)は、pIバリアントN208D/Q295E/N384D/Q418E/N421Dを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0156】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される2+1 mAb-scFvフォーマット抗体のscFvは、荷電scFvリンカー(
図26に示されているものを含む)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される2+1 mAb-scFvフォーマット抗体は、FcRnバリアントM428L/N434Sを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0157】
例示的な実施形態では、第1のバリアントFcドメインは、ヘテロ二量体化スキューバリアントL368D/K370Sを含み、第2のバリアントFcドメインは、ヘテロ二量体化スキューバリアントS364K/E357Qを含み、第1及び第2のバリアントFcドメインはそれぞれ、除去バリアントE233P/L234V/L235A/G236_/S267Kを含み、第1の単量体の定常ドメイン(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)は、pIバリアントN208D/Q295E/N384D/Q418E/N421Dを含み、番号付けは、EU番号付けに従う。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される2+1 mAb-scFvフォーマット抗体のscFvは、(GKPGS)4荷電scFvリンカーを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される2+1 mAb-scFvフォーマットの抗体は、FcRnバリアントM428L/N434Sを含み、番号付けはEU番号付けに従う。
【0158】
いくつかの実施形態では、2+1 mAb-scFvフォーマット抗体の第2の単量体のscFvは、BCMAに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の単量体並びに軽鎖のVL1はそれぞれ、BCMAに結合する結合ドメインを形成する。本明細書で提供されるBCMA結合ドメインのいずれかを含む任意の好適なCD28結合ドメインは、対象の2+1 mAb-scFvフォーマット抗体に含まれ得る。いくつかの実施形態では、BCMA結合ドメインは、以下のBCMA ABD:S1R4_10corr[BCMA]_H1L1、S1R5_125[BCMA]_H1L1、1A1[BCMA]_H1L1、1B4[BCMA]_H1.1_L1、1B3[BCMA]_H1L1、5F2[BCMA]_H1L1、及び6E3[BCMA]_H1L1(
図5、6、及び11~15)のうちの1つ又はそのバリアントである。
【0159】
4.単一特異性モノクローナル抗体
当業者によって理解されるように、本明細書に概説される新規のFv配列はまた、単一特異性抗体(例えば、「従来のモノクローナル抗体」)又は非ヘテロ二重特異性フォーマットの両方で使用することができる。したがって、本発明は、図からの6つのCDR並びに/又はVH及びVL配列を含み、一般にIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4定常領域を有する、単一特異性抗体を提供し、IgG1、IgG2及びIgG4(S228Pアミノ酸置換を含むIgG4定常領域を含む)はいくつかの実施形態で特に使用される。すなわち、本明細書で「H_L」の名称を有する任意の配列は、ヒトIgG1抗体の定常領域に連結することができる。いくつかの実施形態では、単一特異性抗体は、N末端からC末端に、VH-CH1-ヒンジ-CH2-CH3を有する単量体;及びVL-CLを含む軽鎖を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、単一特異性抗体は、抗BCMA単一特異性抗体である。ある特定の実施形態では、単一特異性抗BCMA抗体は、以下のBCMA ABD:S1R4_10corr[BCMA]_H1L1、S1R5_125[BCMA]_H1L1、1A1[BCMA]_H1L1、1B4[BCMA]_H1.1_L1、1B3[BCMA]_H1L1、5F2[BCMA]_H1L1、及び6E3[BCMA]_H1L1(
図5、6、及び11~15)のいずれか又はそれらのバリアントの6つのCDRを含む。
【0161】
V.組換え方法及び組成物
別の態様では、本明細書で提供されるのは、本明細書で提供されるBCMA抗原結合ドメイン及び抗BCMA抗体をコードする核酸組成物である。
【0162】
当業者によって理解されるように、核酸組成物はヘテロ二量体タンパク質のフォーマット及び足場に依存する。よって、例えば、1+1 Fab-scFv-Fc又は2+1 Fab2-scFv-Fcフォーマットなど、フォーマットが3つのアミノ酸配列を必要とする場合、3つのポリヌクレオチドを発現のために1つ以上の発現ベクターに組み込むことができる。例示的な実施形態では、各ポリヌクレオチドは、異なる発現ベクターに組み込まれる。
【0163】
当技術分野で知られているように、本明細書に開示される結合ドメイン及び抗体の構成要素をコードする核酸は、本発明のヘテロ二量体抗体を産生するために使用される宿主細胞に応じて、当技術分野で知られているように、発現ベクターに組み込むことができる。一般に、核酸は任意の数の調節エレメント(プロモーター、複製起点、選択可能なマーカー、リボソーム結合部位、インデューサーなど)に作動可能に連結される。発現ベクターは、染色体外ベクター又は組み込みベクターであり得る。
【0164】
次いで、本発明のポリヌクレオチド及び/又は発現ベクターを、多くの実施形態において使用される、哺乳動物、細菌、酵母、昆虫及び/又は真菌細胞を含む当技術分野において周知の任意の数の異なる種類の宿主細胞に哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)で形質転換する。
【0165】
いくつかの実施形態では、各単量体をコードするポリヌクレオチドは、それぞれ一般に異なる又は同じプロモーター制御下で単一の発現ベクター内に含まれる。本発明において特に使用される実施形態では、これらのポリヌクレオチドの各々は異なる発現ベクターに含まれる。本明細書及び参照により本明細書に組み込まれるUS62/025,931に示されるように、ヘテロ二量体形成を推進するために異なるベクター比を使用することができる。すなわち、驚くべきことに、(ヘテロ二量体抗体を含む3つのポリペプチドを有する本明細書の実施形態の多くの場合には)タンパク質は、第1の単量体:第2の単量体:軽鎖を1:1:2の比率で含むが、これらは最高の結果が得られる比率ではない。
【0166】
本明細書に記載の抗体及びABDは、当該技術分野において周知のように、発現ベクターを含む宿主細胞を培養することによって作製される。一旦産生されると、イオン交換クロマトグラフィー工程を含む従来の抗体精製工程が実施される。本明細書で考察されるように、2個の単量体のpIが少なくとも0.5だけ異なることは、イオン交換クロマトグラフィー若しくは等電点電気泳動、又は等電点に感受性の他の方法による分離を可能にし得る。すなわち、各単量体異なるpIを有し、かつヘテロ二量体も異なるpIを有するようになるように各単量体の等電点(pI)を変化させるpI置換を含むことによって、「1+1 Fab-scFv-Fc」ヘテロ二量体の等電点精製(例えば、陰イオン交換カラム、陽イオン交換カラム)を促進する。これらの置換はまた、精製後、混入したデュアルscFv-Fc及びmAbホモ二量体の決定及びモニタリングにも役立つ(例えば、IEFゲル、cIEF、及び分析用IEXカラム)。
【0167】
VI.抗BCMA抗体の生物学的及び生化学的機能性
一般に、本明細書に記載の二重特異性抗BCMA抗体は、BCMA関連疾患、障害、又は状態(例えば、BCMA関連がん)を有する患者に投与され、かつ有効性が、本明細書に記載されるいくつかの方法で評価される。このため、がん量、腫瘍のサイズ、転移の存在又は程度の評価などの、有効性の標準的なアッセイが実行され得るが、免疫腫瘍学的治療もまた免疫状態評価に基づいて評価され得る。これは、インビトロアッセイ及びインビボアッセイの両方を含むいくつかの方法で行うことができる。
【0168】
VII.インビボ投与のための抗体組成物
本発明に従って使用される抗体の製剤は、所望の純度を有する抗体を、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態である、任意選択的な薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤と混合することによって、保存用に調製される(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.[1980])。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、用いられる投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤、防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメソニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール)、低分子量(約10未満の残基)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸、単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含む他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなどの糖類、ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、及び/又は例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0169】
VIII.治療的使用
別の態様では、本明細書で提供されるのは、BCMA関連疾患、障害、又は状態(例えば、BCMA関連がん)の処置のための方法である。
【0170】
本明細書で提供される抗体を、ボーラスとしての静脈内投与、静脈内プッシュ又は一定期間にわたる静脈内注入などの公知の方法に従って、対象に投与される。好ましい実施形態では、本明細書で提供される抗BCMA抗体は、静脈内注入によって投与される。
【0171】
本発明の方法では、治療は、疾患、障害又は状態に関して肯定的な治療応答を提供するために使用される。任意の所与の疾患、障害又は状態における肯定的な治療応答は、その疾患又は状態に特有の標準化された応答基準によって決定することができる。
【0172】
これらの肯定的な治療応答に加えて、治療を受けている対象は、疾患に関連する症状の改善の有益な効果を経験し得る。
【0173】
本発明による処置は、使用される抗BCMA抗体の「治療有効量」を含む。「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために、必要な投薬量及び期間で有効な量を指す。
【0174】
治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する薬剤の能力などの因子によって異なり得る。治療有効量はまた、抗体又は抗体部分のいずれの毒性又は有害な効果よりも治療上有益な効果が勝る量である。
【0175】
投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調節される。例えば、単回のボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、又は治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例して増減させてもよい。非経口組成物は、投与の容易性及び投薬量の均一性のために、単位剤形で処方され得る。本明細書で使用される単位剤形は、治療対象のための単一投薬量として好適な物理的に別個の単位を指す。各単位は、必要とされる薬学的担体に関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含有する。
【0176】
本明細書に記載の抗BCMA抗体の効率的な投薬量及び投薬レジメンは、治療される疾患又は状態に依存し、当業者によって決定され得る。
【0177】
全ての引用文献は、本明細書にそれらの全体が参照により明示的に組み込まれる。
【0178】
本発明の特定の実施形態を説明の目的で上述のように記載してきたが、添付の特許請求の範囲に記載の本発明から逸脱することなく、詳細の多数の変更が行われ得ることが当業者によって理解されるであろう。
【実施例】
【0179】
本発明を説明するために実施例を以下に提供する。これらの実施例は、本発明を任意の特定の用途又は動作理論に限定することを意味するものではない。本発明で考察される全ての定常領域位置について、番号付けは、Kabat(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda、参照により全体が組み込まれる)の場合のようなEUインデックスに従う。抗体の技術分野の当業者は、この規則が免疫グロブリン配列の特異的領域における非連続的な番号付けからなり、免疫グロブリンファミリーにおける保存された位置への正規化基準を可能にすることを理解するであろう。したがって、EUインデックスによって定義される任意の所与の免疫グロブリンの位置は、必ずしもその連続配列に対応しないであろう。
【0180】
一般的及び具体的な科学技術は、米国特許出願公開第2015/0307629号、同第2014/0288275号、及び国際公開第2014/145806号に概説されており、それらは全て、特にその中に概説されている技術について、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。
【0181】
実施例1:新規ファージ由来BCMA結合ドメイン
新規BCMA結合ドメインについて、社内のde novoファージライブラリーをパニングした。ファージ由来クローンS1R4_10corr及びS1R5_125の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ドメインのアミノ酸配列を、それぞれ
図5及び6に示す。
【0182】
1A:製造
ファージ由来クローンを二価の単一特異性mAbとしてフォーマットし、その配列を
図5及び6に示す。選択したクローンの可変重鎖及び可変軽鎖ドメインを含有するプラスミドをギブソンアセンブリによって構築し、IgG1定常領域(E233P/L234V/L235A/G236del/S67K除去バリアントを含む-配列番号9、
図3を参照されたい)及びカッパ軽鎖定常領域(配列番号10、
図4を参照されたい)のコード配列を含有するpTT5発現ベクターにサブクローニングした。発現のためにDNAをHEK293Eにトランスフェクトし、得られた二価mAbをプロテインAクロマトグラフィーを使用して上清から精製した。XENP23357を産生し、135.2mg/Lの収率で精製し、LabChipを使用するCEFによって電気泳動に、凝集体については分析的サイズ排除クロマトグラフィーによって分析し、そのデータを
図7に示す。
【0183】
ファージ由来クローンはまた、CD3二重特異性抗体(bsAb)としてフォーマットされ、PCT/US2015/062772に概して記載されるように産生され、以下に記載されるように結合及び活性について更に特徴付けた。
【0184】
1B:BCMA結合親和性
この実験では、CD3に対する一価結合及びBCMAに対する一価結合を有する1+1フォーマットのCD3 bsAbを使用した。Octetを使用して一価KD値を得た。HIS1Kセンサーを使用し、hisタグ付きヒト又はcyno BCMAを捕捉し、センサーを様々な濃度で各bsAbに浸漬した。得られた解離定数を
図8に示す。
【0185】
1C:細胞結合
次に、BCMA
+細胞への結合を調査した。この実験では、CD3に対する一価結合及びBCMAに対する一価結合を有する1+1フォーマットのCD3 bsAb、並びにCD3に対する一価結合及びBCMAに対する二価結合を有する2+1フォーマットのCD3 bsAbを使用した。300-19細胞を培養し、トランスフェクトし、cyno BCMA又はヒトBCMAのいずれかを発現させた。親300-19細胞を、cyno BCMA又はヒトBCMAのいずれかを発現するトランスフェクトされた300-19細胞と共に、1ウェル当たり200Kでプレートに播種した。次いで、3つ全ての細胞型を、図に示される濃度範囲でbsAbと混合し、氷上で1時間インキュベートした。次に、試料を氷上で更に1時間、1ug/mlのPE抗ヒトIgG Fcγ(Jackson ImmunoResearch)で染色した。試料をPBSで洗浄し、1%のPFAを含むPBS中で固定した後、FACS Canto 2サイトメーターで分析した。データは、
図9に示される。
【0186】
1D:in vitro活性
最後に、RPMI8226(BCMA
+)細胞の死滅を調査した。上記のように、1+1フォーマット及び2+1フォーマットのCD3 bsAbを使用した。更に、RSVxCD3 bsAbを対照として使用した。CytoTox-ONE(商標)Homogeneous Membrane Integrity Assay(Promega、Madison、Wis.)を使用して、リダイレクトT細胞細胞傷害性(RTCC)を決定し、製造業者の指示に従って乳酸脱水素酵素レベルを測定し、Wallac Victor2 Microplate Reader(PerkinElmer、Waltham、Mass.)上でデータを取得した。
図10に示されるデータは、ファージ由来抗BCMAクローンS1R4_10corr又はS1R1_125に基づくCD3 bsAbのそれぞれが、用量依存的に細胞死滅を誘導することができたことを示す。
【0187】
実施例2:新規ハイブリドーマ由来BCMA結合ドメイン
更なる新規のBCMA結合ドメインを、ラットハイブリドーマ技術によって生成し、ストリング含有量最適化を使用してヒト化した(例えば、米国特許第7,657,380号を参照されたい)。ヒト化ハイブリドーマ由来のクローン1A1、1B4、1B3、4F2、及び6E3の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ドメインのアミノ酸配列を
図11~15に示す。
【0188】
2A:産生
ハイブリドーマ由来のクローンを二価単一特異性mAbとしてフォーマットし、その配列を
図11~15に示す。選択したクローンの可変重鎖及び可変軽鎖ドメインを含有するプラスミドをギブソンアセンブリによって構築し、IgG1定常領域(E233P/L234V/L235A/G236del/S67K除去バリアントを含む-配列番号9、
図3を参照されたい)及びカッパ軽鎖定常領域(配列番号10、
図4を参照されたい)のコード配列を含有するpTT5発現ベクターにサブクローニングした。発現のためにDNAをHEK293Eにトランスフェクトし、得られた二価mAbをプロテインAクロマトグラフィーを使用して上清から精製した。XENP24495(1A1)、XENP24503(1B4)、XENP24617(1B3)、XENP24621(5F2)、及びXENP24625(6E3)を、それぞれ、66.49mg/L、124.37mg/L、45.04mg/L、58.58mg/L、及び76.43mg/Lの収率で産生及び精製した。精製されたmAbを、LabChipを使用するCEFによって電気泳動的に、凝集体については分析的サイズ排除クロマトグラフィーによって分析し、そのデータを
図16~17に示す。
【0189】
ハイブリドーマ由来のクローンはまた、CD3二重特異性抗体(bsAb)としてフォーマットされ、PCT/US2015/062772に概して記載されるように産生され、以下に記載されるように結合及び活性について更に特徴付けた。
【0190】
2B:BCMA結合親和性
この実験では、CD3に対する一価結合及びBCMAに対する一価結合を有する1+1フォーマットのCD3 bsAbを使用した。Octetを使用して一価KD値を得た。HIS1Kセンサーを使用し、hisタグ付きヒト又はcyno BCMAを捕捉し、センサーを様々な濃度で各bsAbに浸漬した。得られた解離定数(KD)を
図18に示す。
【0191】
2C:細胞結合
次に、BCMA
+細胞への結合を調査した。この実験では、二価BCMA mAbを使用した。300-19細胞を培養し、トランスフェクトし、cyno BCMA又はヒトBCMAのいずれかを発現させた。親300-19細胞を、cyno BCMA又はヒトBCMAのいずれかを発現するトランスフェクトされた300-19細胞と共に、1ウェル当たり200Kでプレートに播種した。次いで、3つ全ての細胞型を、図に示される濃度範囲でmAbと混合し、氷上で1時間インキュベートした。次に、試料を氷上で更に1時間、1ug/mlのPE抗ヒトIgG Fcγ(Jackson ImmunoResearch)で染色した。試料をPBSで洗浄し、1%のPFAを含むPBS中で固定した後、FACS Canto 2サイトメーターで分析した。データは、
図19に示される。
【0192】
2D:in vitro活性
RPMI8226(BCMA
+)細胞の死滅を調査した。上記のように、1+1フォーマット及び2+1フォーマットのCD3 bsAbを使用した。更に、RSVxCD3 bsAbを対照として使用した。CytoTox-ONE(商標)Homogeneous Membrane Integrity Assay(Promega、Madison、Wis.)を使用して、リダイレクトT細胞細胞傷害性(RTCC)を決定し、製造業者の指示に従って乳酸脱水素酵素レベルを測定し、Wallac Victor2 Microplate Reader(PerkinElmer、Waltham、Mass.)上でデータを取得した。
図20に示されるデータは、ハイブリドーマ由来抗BCMAクローンのそれぞれに基づく各CD3 bsAbが、RSV結合ドメインを有する対照bsAbとは対照的に、用量依存的に細胞死滅を誘導することができたことを示す。
【0193】
2E:薬物動態
最後に、分子の安定性を調査するために、1+1フォーマットのCD3 bsAbとの関連で、ハイブリドーマ由来の結合ドメインの薬物動態を調べた。調査した各bsAbについて、5匹のマウスに0日目に2mg/kgで投与した。1時間後、50μlの全血を各マウスから採取した。この血液採取を1、3、7、10及び14日目に繰り返した。半減期を決定するために、マウス血清をELISAによってアッセイし、Envisionプレートリーダーを使用して分析し、そのデータを
図21に示す。
【配列表】
【国際調査報告】