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特表2024-534627ニットコンポーネントを備えた履物の物品およびその製造方法
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  • 特表-ニットコンポーネントを備えた履物の物品およびその製造方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ニットコンポーネントを備えた履物の物品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
A43B23/02 101Z
A43B23/02 101A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518871
(86)(22)【出願日】2022-10-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 US2022047505
(87)【国際公開番号】W WO2023069765
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/270,987
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/389,617
(32)【優先日】2022-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/970,951
(32)【優先日】2022-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/971,309
(32)【優先日】2022-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514144250
【氏名又は名称】ナイキ イノベイト シーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス ジェイ ベリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エス マクギルバート
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート ディー ラインハート
(72)【発明者】
【氏名】コリン ランクル
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BC03
4F050HA20
4F050JA02
4F050JA04
4F050JA08
4F050JA09
4F050JA12
4F050LA01
4F050LA10
(57)【要約】
従来の追加コンポーネントによる重量を低減しつつ、摩擦係数を増加させることにより、着用者の足の周りの封じ込めを高め、強度および耐久性を向上させ、タッチフィードバックを組み込む手段を有する、一体的に編まれたアッパーを備えた履物を提供する。ニットコンポーネントは、アッパーのスロート領域のような共通領域に向けてコースが収束するように半径方向に編まれ得る。加えて、可融性ヤーンは、ニットコンポーネントの閉じ込め領域の少なくとも外側向き面上に編まれて、閉じ込めラインに沿って追加のロックダウンを作り出すことができる。さらに、引張要素は、所望の閉じ込めラインに沿って強度およびロックダウンを提供するために、閉じ込め領域内に組み込むことができる。加えて、可融性ヤーンは、より大きな摩擦係数を有する領域を作り出すグリップヤーンであり得る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーであって、
前記アッパーの少なくとも前足領域および中足領域を形成し、外周を有するニットコンポーネントを含み、前記前足領域は、前記中足領域に一体的に編まれており、前記ニットコンポーネントは、外側向き面と、前記外側向き面と反対側の内側向き面と、を有し、前記前足領域および前記中足領域における前記ニットコンポーネントの各コースは、前記前足領域内のコースが前記中足領域内のコースに対して斜めに延びるように、前記外周から前記ニットコンポーネントの共通部分に向かう方向に延び、前記ニットコンポーネントは、前記外周から前記共通部分に向かって延びる封じ込め領域を有し、前記封じ込め領域は、前記ニットコンポーネントの1つまたは複数のインターループヤーンに少なくとも部分的に融着された第1材料を含み、前記第1材料は、熱可塑性エラストマーを含む、アッパー。
【請求項2】
前記第1材料は、前記ニットコンポーネントの前記外側向き面上に配置される、請求項1に記載のアッパー。
【請求項3】
前記閉じ込め領域は、前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有さない部分とは異なる摩擦係数を有する、請求項1または2に記載のアッパー。
【請求項4】
前記閉じ込め領域は、前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有さない部分よりも大きな摩擦係数を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項5】
前記熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリウレタン、またはスチレンエチレン/ブチレンスチレン(SEBS)である、請求項1~4のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項6】
前記共通部分はスロート領域である、請求項1~5のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項7】
前記ニットコンポーネントは前記アッパーの踵領域を形成し、前記踵領域内の各コースは前記共通部に向かう方向に延びる、請求項1~6のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項8】
前記閉じ込め領域は、隣接する複数のコースを含み、前記前足領域の外周から前記中足領域の共通部分まで延びる、請求項1~7のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項9】
前記閉じ込め領域は、前記アッパーの外側に位置する第1閉じ込め領域であり、前記アッパーは、前記アッパーの内側の前記前足領域の外周から前記アッパーの内側の前記中足領域の共通部分まで延びる第2閉じ込め領域をさらに含み、前記第1閉じ込め領域および前記第2閉じ込め領域の各々は、前記ニットコンポーネントの熱可塑性エラストマーを有さない部分よりも大きな摩擦係数を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項10】
前記アッパーの外側の踵領域の外周から前記アッパーの外側の中足領域の共通部分まで延びる第3閉じ込め領域と、前記アッパーの内側の踵領域の外周から内側の中足領域の共通部分まで延びる第4閉じ込め領域と、をさらに含み、前記第3閉じ込め領域および前記第4閉じ込め領域の各々は、前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有さない部分よりも大きな摩擦係数を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項11】
前記第1閉じ込め領域、前記第2閉じ込め領域、前記第3閉じ込め領域、および前記第4閉じ込め領域の各々は、外側向き面上の前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有さない部分によって互いに分離されている、請求項1~10のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項12】
前記ニットコンポーネントの外側向き面は、1つ又は複数のインターループヤーンに少なくとも部分的に融着された熱可塑性エラストマーを含むニットコンポーネントの外周に沿った1つまたは複数の領域を含み、前記外周に沿った1つまたは複数の領域は、前記第1閉じ込め領域と前記第3閉じ込め領域との間、前記第1閉じ込め領域と前記第2閉じ込め領域との間、および前記第2閉じ込め領域と前記第4閉じ込め領域との間に配置され、前記外周に沿った1つまたは複数の領域は、前記外周から延び、前記共通部分の下で終端する、請求項1~11のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項13】
・ 前記第1材料に少なくとも部分的に融着されたヤーンは、熱可塑性エラストマーを含まず、前記第1材料よりも高い溶融温度を有する第2材料を有するコアヤーンを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項14】
前記第1材料に少なくとも部分的に融着された1つまたは複数のヤーンは、前記第1材料を含むコーティングを有するコアを有するコーテッドヤーンを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項15】
前記第1材料に少なくとも部分的に融着された1つまたは複数のヤーンは、前記外周から前記共通部分に向かって延びる少なくとも1つの引張要素を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項16】
前記1つまたは複数のヤーンは、各々が前記第1材料よりも高い溶融温度を有するコアヤーンおよび第2ヤーンを含み、前記少なくとも1つの引張要素は、前記コアヤーンおよび前記第2ヤーンのループによって形成されるコースに沿ってはめ込まれたストランドを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項17】
前記少なくとも1つの引張要素は、前記閉じ込め領域内のコースに沿ってニットステッチとフロートステッチの繰り返しシーケンスを形成するストランドを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項18】
前記1つまたは複数のヤーンは、各々が前記第1材料よりも高い溶融温度を有する高強力ヤーンとコアヤーンとを含み、前記高強力ヤーンは少なくとも5グラム/デニールの靭性を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項19】
前記閉じ込め領域に隣接する前記ニットコンポーネントの外側向き面の部分は、前記第1材料を含まず、前記高強力ヤーンを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項20】
前記ニットコンポーネントの外面の少なくとも一部にわたって延びるポリマー層をさらに含み、前記ポリマー層は、前記第1材料よりも低い溶融温度を有するポリマー材料を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項21】
前記ポリマー層は、前記閉じ込め領域の少なくとも一部に亘って延び、前記閉じ込め領域の一部を露出する複数の開口を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載のアッパーを含み、前記アッパーは、ソール構造に固定されている、履物の物品。
【請求項23】
アッパーであって、
ニットコンポーネントの複数の楔形部分を画成する複数のインターループコースを有するニットコンポーネントを含み、前記複数の楔形部分の各々は、前記ニットコンポーネントの外周の一部、前記前記ニットコンポーネントの内周の一部、前記外周と前記内周との間に延びる第1ニットコース、前記外周と前記内周との間に延びる第2ニットコースによって画成される、アッパー。
【請求項24】
前記内周の前記楔形部分を画定する部分は、前記外周の前記楔形部分を画定する部分よりも短い長さを有する、請求項23に記載のアッパー。
【請求項25】
前記複数の楔形部分の各々は、前記第1ニットコースと前記第2ニットコースとの間に位置し、前記外周から前記内周まで延びる全長コースと、前記第1ニットコースと前記第2ニットコースとの間に位置し、前記外周から延び、前記内周の前で終端する部分長コースと、を含む、請求項23または請求項24に記載のアッパー。
【請求項26】
前記ニットコンポーネントの楔形部分の少なくともいくつかは、前記アッパーの前足領域を形成する、請求項23~25のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項27】
前記ニットコンポーネントの楔形部分の少なくともいくつかは、前記アッパーの中足領域を形成する、請求項23~26のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項28】
前記ニットコンポーネントの楔形部分の少なくともいくつかは、前記アッパーの踵領域を形成する、請求項23~27のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項29】
前記ニットコンポーネントは、前記ニットコンポーネントの1つ又は複数のインターループヤーンに少なくとも部分的に融着された第1材料を含む閉じ込め領域を含み、前記第1材料は、熱可塑性エラストマーを含む、請求項23~28のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項30】
前記第1材料は、前記アッパーの外側向き面上の前記ニットコンポーネントの1つ又は複数のインターループヤーンと少なくとも部分的に融着されている、請求項23~29のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項31】
前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有する部分は、前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有さない部分に対して異なる摩擦係数を有する、請求項23~30のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項32】
前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有する部分は、前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有さない部分に対して大きな摩擦係数を有する、請求項23~31のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項33】
前記閉じ込め領域は、前記第1材料に少なくとも部分的に融着された1つまたは複数のヤーンのうちの少なくとも1つを形成する少なくとも1つの引張要素を含む、請求項23~32のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項34】
前記閉じ込め領域は、前記アッパーの外側に延び、前記前足領域に少なくとも部分的に配置された第1閉じ込め領域であり、前記アッパーは、前記アッパーの内側に延び、前記前足領域に少なくとも部分的に配置された第2閉じ込め領域をさらに含む、請求項23~33のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項35】
前記閉じ込め領域は、前記アッパーの中央前足領域に位置する、請求項23~34のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項36】
前記閉じ込め領域はさらに、前記アッパーの前足領域の内側および前記前足領域の外側のうちの1つまたは複数に位置する、請求項23~35のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項37】
前記内側および前記外側のうちの1つまたは複数にある前記閉じ込め領域は、前記インターループヤーンのコースに沿って位置する1つまたは複数の引張要素を含む、請求項23~36のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項38】
前記1つまたは複数の引張要素の各々は、前記インターループヤーンのコースに沿ってニットステッチとフロートステッチの繰り返しシーケンスを形成するストランドを含む、請求項23~37のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項39】
前記1つまたは複数の引張要素は、前記アッパーの外周と内周との間に延びる、請求項23~38のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項40】
前記アッパーの前記前足領域の内側に位置する第1組の引張要素、前記アッパーの前記前足領域の外側に位置する第2組の引張要素、前記アッパーの前記踵領域の内側に位置する第3組の引張要素、および前記アッパーの前記踵領域の外側に位置する第4組の引張要素のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項23~39のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項41】
前記第1組の引張要素および前記第2組の引張要素は、熱可塑性エラストマーを含む第1材料を含む1つ又は複数のヤーンと互いに絡み合っている、請求項23~40のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項42】
前記第1、第2、第3および第4組の引張要素のうちの1つまたは複数は、前記外周と前記内周との間に延びる、請求項23~41のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項43】
前記第1材料は、前記第1閉じ込め領域、前記第2閉じ込め領域、および前記第1閉じ込め領域と前記第2閉じ込め領域との間の前記前足領域の一部において、1つ又は複数のインターループヤーンに少なくとも部分的に融着されている、請求項23~42のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項44】
前記第1材料は、熱可塑性エラストマーを含むコーティングを形成し、コアヤーンを取り囲む前記コーティングは、前記熱可塑性エラストマーを含まず、前記第1材料よりも高い溶融温度を有する第2材料を有する、請求項23~43のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項45】
前記熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリウレタン、またはスチレンエチレン/ブチレンスチレン(SEBS)である、請求項23~44のいずれか1項に記載のアッパー。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
履物の物品には、一般に、アッパー構造とソール構造の2つの主要な要素が含まれている。アッパーは、ソール構造に固定され、履物内に空洞を形成し、足を快適かつ確実に受け止める。アッパーは、ニットテキスタイルを含む複数の材料で形成され得る。運動選手がニットアッパー内で足を動かすと、足をソール構造から部分的に押し出す力が水虫の足にかかる可能性がある。動作中に足をソール構造上に保持することにより、パフォーマンスと快適性が向上する可能性がある。足を包み込むように、ポストニーディングプロセスを通じてニットアッパーにさまざまなコンポーネントを追加することができる。しかし、ポストニーディングにより追加されるそのようなコンポーネントは、アッパーの重量を増加させ、生産時間を増加させ、アッパーのリサイクル可能性を低下させる可能性がある。同様に、アッパーの耐久性および/または耐水性を高めるために、追加のコンポーネント(例えば、合成皮革テキスタイル、ラミネートフィルム層)をテキスタイルに追加して固定(例えば、接着、縫製)することができるが、これらのコンポーネントはアッパーの重量を増加させ、生産時間を増加させ、リサイクル性を低下させることもできるこれらの追加コンポーネントはまた、アッパーが着用者の足に適合し、ボディの体感フィードバックを提供する能力を低下させる可能性もあり、これは、特定のスポーツ活動の選手にとって特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0002】
本明細書に記載される履物の物品およびその製造方法は、添付の図面に関連して詳細に説明される。
図1A】本発明の様々な態様による履物の物品の側面斜視図を示す。
図1B】本発明の様々な態様による図1Aの履物の物品の内側側面図を示す。
図2】本発明の様々な態様による図1Aの履物の物品のニットコンポーネントを示す。
図3】本発明の様々な態様による半径方向に編まれたコンポーネントの概略図を示す。
図4】本発明の様々な態様による履物の物品の異なる図を示す。
図5】本発明の様々な態様による履物の物品のためのポリマー層を示す図である。
図6】本発明の様々な態様による図5のポリマー層を有する履物の物品の側面斜視図を示す。
図7】本発明の様々な態様による履物の物品のアッパーを製造する方法のブロックダウン図を示す。
図8】本発明の様々な態様による、図7の要素に従ったアッパーを製造するためのジグ上のニットコンポーネントを示す。
図9】本発明の様々な態様による、モックインレイ構造を有する履物の物品の一部の拡大図を示す。
図10】本発明の様々な態様による履物の物品の例示的なニットコンポーネントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0003】
この詳細な説明は、とりわけ、アッパーの軽量性を維持し、生産時間を短縮し、リサイクル可能性を向上させながら、封じ込めとサポートを提供する履物の物品用のニットコンポーネントに関する。少なくともいくつかの例では、アッパーは、アッパーの所望の閉じ込めラインに沿ってコースを配置することができるアッパーのスロート領域のような共通領域に向かってコースが収束するように、半径方向に延びるコースを有するニットコンポーネントから形成することができる。加えて、グリップヤーンのような可融性ヤーンは、アッパーの半径方向に延びる閉じ込め領域の少なくとも外側向き面に編み込まれて、閉じ込めラインに沿って追加のロックダウンまたは制限を作り出してもよい。加えて、本明細書のいくつかの例は、閉じ込め領域内に半径方向に延びる引張要素も含み、その結果、引張要素は、閉じ込めの所望のラインに沿って強度およびロックダウンを提供することができると同時に、組み込まれた可融性ヤーンによって生成される強度と組み合わせることができる。本開示の主題とは対照的に、履物が周囲に所望の量の封じ込めを提供できるように、追加のコーティングを編んだコンポーネントに縫製したり接着したりするなど、いくつかのポストニーディングプロセスを必要とする場合がある。着用者の足にフィットするか、耐水性や耐久性などの他の特性を備えている。のポストニーディングに追加されたこれらのコーティングは、アッパーの重量を増加させ、生産時間を増加させ、アッパーのリサイクル性を低下させる可能性がある。
【0004】
したがって、本開示の例は、所望の閉じ込めラインに沿って整列させることができる半径方向に延びるコースを有するニットコンポーネントから形成されたアッパーを含む。加えて、アッパーの半径方向に延びる閉じ込め領域の少なくとも外側向き面に、例えばグリップヤーンのような可融性ヤーンを編み込んでもよい。可融性ヤーンは、閉じ込めラインに沿って追加のロックダウンを生成するために融着領域を生成し、耐摩耗性、耐水性および耐摩耗性等を増大させるために使用され得る。さらに、本明細書に記載されているような可融性ヤーンがグリップヤーンである場合、閉じ込め領域は、融着可能なグリップ材料のないニットコンポーネントの部分よりも大きな摩擦係数を有することができ、これにより、アッパーを使用してボール(例えば、グローバルフットボール)を効果的に制御するための着用者の能力を増加させるための追加の利点を提供することができる。
【0005】
さらなる例は、例えばグリップヤーンのような可融性ヤーンで融着された閉じ込め領域内にあり得る、はめ込まれた引張要素などの引張要素を備えたニットコンポーネントが含まれる。引張要素は、アッパーに引張耐性およびロックダウン性を与えることができ、これは、引張要素と共に編み込まれた可融性材料によって強化され得る。いくつかの態様では、引張要素は、所望の閉じ込めラインに沿ってアッパーに沿った半径方向に延びるように、半径方向に編まれたアッパーに組み込まれ得る。
【0006】
本開示の追加の態様は、ニットコンポーネントの外側向き面上にポリマー層(例えば、スキン層)を適用することを含む。いくつかの態様では、ポリマー層は、可融性グリップ材料によって作り出されたタッチ特性(例えば、より大きな摩擦係数)を維持するために、可融性グリップ材料を含む外側向き面の部分を露出させる開口を含む。
【0007】
本開示の更なる態様は、はめ込まれた引張要素によってもたらされる強度および引張耐性を編みを通じてシミュレートできる方法で、編みを通じて引張要素を組み込むことを含む。例えば、引張要素は、コース全体にわたって繰り返されるニットシーケンスで形成され得、このニットシーケンスは、複数のウェール(例えば、針位置)にまたがる少なくとも1つのニットステッチおよびフロートステッチである。例えば、引張要素は、1つのコース内で、5ウェールにわたって延びる1つのニットステッチと1つのフロートステッチの繰り返しシーケンスを有してもよい。
【0008】
本明細書に記載されているように、本開示の特定の態様は、少なくとも部分的にニットテキスタイルから形成される履物の物品またはその態様に関する。例示的な例では、態様は、少なくとも部分的にニットコンポーネントから形成されたアッパーを対象とする。本明細書で使用されるように、「アッパー」という用語は、足の甲およびつま先領域上に延び、足の内側および外側に沿って、および足の踵領域を取り囲んで、着用者の足を閉じ込めするための空隙を形成する履物コンポーネントを意味する。アッパーの例示的な非限定的な例としては、バスケットボールシューズ、サイクルシューズ、クロストレーニングシューズ、グローバルフットボール(英国サッカー)シューズ、アメリカンフットボールシューズ、ボウリングシューズ、ゴルフシューズ、登山シューズ、スキーブーツまたはスノーボードブーツ、テニスシューズ、ランニングシューズ、およびウォーキングシューズに組み込まれたアッパーが挙げられる。さらに、他の態様では、ドレスシューズ、ローファー、サンダルなどの非運動靴に組み込むこともできる。したがって、履物の物品に関して本明細書に開示される概念は、多種多様な履物タイプに適用される。図面は、着用者の一方の足(例えば、左足)のみに使用される履物の物品を示すことができるが、当業者は、他方の足(例えば、右足)に使用される対応する履物の物品は、履物の物品の鏡像であることを認識するであろう。
【0009】
頂部、底部、前、側部、後部、上部、下部、外側、内側、右、左、内部、外部など、履物の物品またはその態様を説明する際に使用される位置用語は、履物または履物の足が足受け空間内にあり、着用者の足首または脚が足首開口部を通って伸びるように、着用者が直立して意図的に着用される履物の物品またはアッパーに関して使用される。例えば、アッパーの「上向き面」および/または「上面」とは、着用者が履物の物品を履いたときに、「上部」の解剖学的方向(すなわち、履物の頭部)を向く面である。同様に、方向に関する用語「下向き」および/または「下方」は、解剖学的方向「下部」(すなわち、地面に向かって、着用者の頭から離れる方向)を意味する。「前」または「前方」は「前部」(例えば、つま先の方)を意味し、「後」は「後部」(例えば、かかとの方)を意味する。「内側」は「体の正中線に向かう」ことを意味し、「外側」は「体の正中線から離れる」ことを意味する。「長手方向軸」とは、かかと領域と前足領域との間に延びる物品の中心線を指す。同様に、「長手方向長さ」とは、長手方向軸に沿った物品の長さを指し、「長手方向」とは、長手方向軸に沿った方向を指す。ただし、位置用語の使用は、解釈目的での人間の実際の存在に依存しないことは理解される。
【0010】
「ニットコンポーネント」という用語は、コースおよびウェールを画定する複数の噛み合ったループを形成するように(例えば編み機で)操作される少なくとも1本のヤーンから形成されるテキスタイルを指す。本明細書で使用される「コース」という用語は、同じ編みサイクル中に隣接する針によって作られる(ニットとして直立したテキスタイルにおける)ほぼ水平なニットループ行を指す。コースは、ニットステッチ、ミストステッチ、タックステッチ、トランスファーステッチ、リブステッチなどの1つまたは複数のステッチタイプを含んでもよく、これらの用語は編み物の技術分野で知られている。本明細書で使用する「ウェール」という用語は、主に噛み合ったまたはループ状のニットループの垂直な柱であり、通常、連続する(すべてではないが)コースまたは編みサイクルで同じ針によって製造される。
【0011】
本明細書で使用される「一体的に編まれた」という用語は、第1のエリアまたは領域の1つまたは複数のニットコースからのヤーンが別のエリアまたは領域の1つまたは複数のニットコースと絡み合っているニットコンポーネントを意味し得る。インターループは、単純なニットステッチ、タックステッチ、ホールドステッチ、フロートステッチまたはミスステッチなどによって行うことができる。このように、一体的に編み込まれた領域は縫い目レスに移行する。
【0012】
一態様では、ラジアルニットプロセスまたは逐次ニットプロセスは、ニットコンポーネントの内側および外側を同時にではなく連続して形成できるように実行することができる。例えば、内側および外側を同時に形成する代わりに、内側の全部(または実質的に全部、例えば、長さ5%以内)を形成し、次いで外側の全部(または実質的に全部、例えば、長さ5%以内)を形成することができる。あるいは、外側を最初に形成し、その後内側を形成することもできる。いくつかの態様では、第1側(内側または外側)の一部は最初に形成されてもよく、第2側(例えば、他の側面)は、第1側の残りの部分を編むことによってニットコンポーネントが完成する前に形成されてもよい。いくつかの態様では、逆シーケンスが使用されてもよい。このようにして、第1側(例えば、内側または外側)の少なくとも一部を形成する複数の隣接するコースを、第2側(例えば、内側または外側の他の側)の少なくとも一部を形成する複数の隣接するコースの前に編み込まれ得る。
【0013】
本明細書で使用される用語「半径方向に延びる」という用語は、ニットコンポーネントの共通部分から半径方向に広がる、ニットコースおよび/またはインレイドストランドセグメントなどの細長い構造の配向を指す。具体的には、ニットコースおよび/またはインレーストランドは、ニットコンポーネントの外周と共通部分との間に延在する場合、半径方向に延在していてもよい。このようにして、コースおよび/またはストランドセグメントは、外周から共通部分に向かって内側に半径方向に延びることができ、例えば、外周の外側縁から内側縁までニットコンポーネントの本体を通って連続的に延びることはない。ニットコンポーネントの構造は、編まれた後にフラットな構成で配置された場合、共通部分から半径方向に延びてもよいが、構造が半径方向に延びるか否かの判断は、ニットコンポーネントがアッパーまたはアッパーの一部の形状に折り畳まれた後の構造の共通部分への向きに基づいてもよいと考えられる。
【0014】
本明細書で使用される用語「共通部分」という用語は、複数の同様の構造(例えば、複数のコースまたは複数の象嵌ストランドセグメント)が延在するニットコンポーネントの領域を指す。したがって、コースまたはインレーストランドセグメントは、例えば共通の方向に沿って外周から異なる部分に延びるのではなく、外周から単一の共通部分に延びてもよい。共通部分は、外周から間隔を置いて配置され、様々な態様では、ニットコンポーネント内の比較的中心に位置し得る。このようにして、共通部分は、ニットコンポーネントの長手方向軸を取り囲む、および/またはニットコンポーネントの長手方向軸に直接隣接することができる。本明細書で開示されるいくつかの例では、共通部分は、スロート領域またはその一部を含むことができる。
【0015】
本明細書で使用されるように、「スロート領域」という用語は、通常、足首開口部と前足領域との間にほぼ延びるアッパーの頂部(上向き)の領域を意味する。スロート領域は、履物の物品の形状に形成される際にアッパーの外側と内側との間に形成される開口部を含んでもよく、いくつかの態様では、スロート領域は、スロート領域は、スロート領域の開口部を横切って延びる舌を含んでもよい。いくつかの態様では、スロート領域は、開口部を有しておらず、むしろ、内側と外側との間に延びるニットコンポーネントの連続一体的に編まれた領域、例えば、ある程度の伸縮性を含む弾性ヤーン、材料、および/または他のコンポーネントで形成され得る編み領域を含んでいる。
【0016】
本明細書で使用されるように、「周囲」という用語は、言及されるオブジェクトの境界を形成する領域を指す。例えば、ニットコンポーネントの周囲は、その構造の境界に沿って広がる領域である。「外周」は、履物の物品を形成すると、ソール構造に固定されるか、または外周の両端間に縫い目を形成するニットコンポーネントの外周を指し得る(その結果、履物の物品を履いたときに、履物が着用者の足の下に少なくとも部分的に延びる)。対照的に、「内周」は、履物の物品に形成されると、スロート領域の開口部および/または足首の開口部などの開口部を画定するニットコンポーネントの周囲の部分を指し得る。周囲(外周または内周)は、ニットコンポーネントの縁部、または縁部に隣接する周囲領域を指し得る。
【0017】
以下、図面を参照して異なる態様を説明するが、図面においては、同様の要素は一般に同様の番号で識別される。態様の様々な要素の関係および機能は、以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解され得る。しかし、態様は、図面に示されるもの、または以下に明示的に説明されるものに限定されない。また、図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、場合によっては、従来のアセンブリなど、本明細書に開示される態様の理解に不必要な詳細が省略されている可能性があることも理解されたい。加えて、本明細書には様々な数値測定値が提供されている。特に指摘がない限り、測定値に関して「約」または「実質的に」という用語は、指示された値の±10%以内を意味する。
【0018】
図1Aおよび図1Bは、それぞれ、本発明の態様による履物100の物品およびそのコンポーネントの側面斜視図および内側側面図を示す。履物の物品100は、ソール構造102とアッパー104とを含む。アッパー104は、ソール構造102に結合され、ソール構造102から延び、ソール構造102とアッパー104との間に足受容空洞が形成される。ソール構造102がアッパー104に結合する履物の物品100の領域は、バイトライン106と呼ばれることがある。アッパー104は、接着剤の使用、縫製など、任意の適切な技術を用いて、ソール構造102に固定して接合されてもよい。アッパー104は、着用者の足の周りに部分的にまたは完全に延びていてもよく、着用者の足の下に延びていてもよく、および/またはソールと一体化していてもよいと考えられる。ストローベルとも呼ばれる中敷きは、使用する場合と使用しない場合がある。中敷きは、テキスタイル、皮革、発泡体、および/または他の種類の材料を含む様々な材料を含むことができる。
【0019】
履物の物品100(および/またはそのコンポーネント)は、1つまたは複数の領域(「領域」または「部分」と呼ばれることもある)に分割することができる。例えば、履物の物品100(および/またはそのコンポーネント)は、前方から後方への方向において、前足領域108、中足領域110および踵領域112に分割され得る(および/または含む)。履物の物品100の前足領域108は、足指および足の中足骨と指節骨とを接続する関節を含む、足の前部に対応することができる。履物の物品100の中足領域110は、足の土踏まず領域に対応することができる。履物の物品100の踵領域112は、踵骨を含む足の後部に対応することができる。履物の物品100(および/またはそのコンポーネント)は、内側から外側に向かって外側114と内側116とに分割され、その両側は、前足領域108、中足領域110および踵領域112を通って延びる。より具体的には、外側114は、履物の物品100を履いたときの足の外側領域(すなわち、他方の足とは反対側の側)に対応し、内側114は、履物の物品100を履いたときの足の内側領域(すなわち、他方の足に面する側)に対応する。外側114と内側116は、長手方向軸118によって分離されている。これらの領域108、110、112および側面114、116は、履物の物品100の正確な領域を画定することを意図しているのではなく、本明細書に記載された様々な説明の理解を助けるために履物の物品100の一般的な領域を表すことを意図している。
【0020】
ソール構造102は、履物の物品100を履いたときに、通常、足と地面との間に延びる。ソール構造102は、アウトソール、ミッドソール、インソール、または中敷きなどの複数のコンポーネントを含むことができる。ソール構造102は、ゴム、エチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性エラストマー(例えば、ポリエーテルブロックアミド)等の種々の材料を用いて形成することができる。ソール構造102はまた、ヒールカウンタおよびトウキャップなどの様々な他の要素を含んでもよい。ソール構造102は、当業者には理解されるように、力を減衰し、安定性を高め、および/またはトラクションを提供するためのトレッドなどの他の様々な特徴を含んでもよい。例えば、ソール構造102は、サッカー(グローバルフットボール)ブーツに見られるように、図1Aおよび図1Bに示すようなクリートを含むことができる。しかし、本開示は、クリートのない履物にも適用され得ることを理解されたい。
【0021】
アッパー104は、足を受け入れてソール構造102に対して固定するための空隙を履物の物品100内に画定する。空隙へのアクセスは、少なくともかかと領域112に位置する足首開口部125によって提供される。アッパー104は、足首開口部125と前足領域108との間の中足領域110に配置されたスロート領域126を含む。スロート領域126は、着用者の足の上側を覆うように構成され、したがって、外側114と内側116との間のアッパー104の上側(または足の上の領域)の一部を形成する。履物の物品100はまた、足受容空洞を調節するためにスロート領域126に閉鎖システムを含むことができる。このようにして、閉鎖システムは、例えば、履物の物品100を着用者の足に固定し、および/または着用者の足から解放するために使用することができる。例示的な閉鎖システムには、靴ひも132(図1Aおよび1Bに示す)、ストラップ、バンド、ケーブル、コード、ラチェット機構、面ファスナー接続などが含まれる。
【0022】
アッパー104の少なくとも一部は、例えば横編み機での横ニットプロセスなどのニットプロセスによって形成された少なくとも1つのニットコンポーネント140を含むことができる。いくつかの態様では、アッパー104の全体または実質的に全体がニットコンポーネント140で形成されてもよい。図2は、図1Aおよび1Bに示すアッパー104に形成される前のニットコンポーネント140の別の図を示す。
【0023】
ニットコンポーネント140は、アッパー104の別々の領域に異なる特性を与える様々なタイプのヤーンを組み込んでもよい。すなわち、ニットコンポーネント140の一方の領域は、第1組の特性を付与する第1タイプのヤーンで形成され、ニットコンポーネント140の他方の領域は、第2組の特性を付与する第2タイプのヤーンで形成され得る。この構成により、ニットコンポーネント140の異なる領域に対して特定のヤーンを選択することにより、アッパー104全体の特性を変更することができる。特定のタイプのヤーンがニットコンポーネント140の領域に与える特性は、ヤーン内のさまざまなフィラメントおよび繊維を形成する材料に部分的に依存する。たとえば、綿は柔らかな手触り、自然な美しさ、そして生分解性をもたらす。ラスタンとストレッチポリエステルはそれぞれ大幅な伸縮性と回復性を提供し、ストレッチポリエステルはリサイクル性も備えている。レーヨンは高い光沢と吸湿性を提供する。ウールは断熱性と生分解性に加えて、高い吸湿性も備えている。ナイロンは耐久性、耐摩耗性に優れ、比較的強度の高い材料である。ポリエステルは疎水性材料であり、比較的高い耐久性も備えている。材料に加えて、ニットコンポーネント140用に選択されるヤーンの他の側面も、アッパー104の特性に影響を与える可能性がある。ニットコンポーネント140を形成するヤーンは、例えば、モノフィラメントヤーンであってもよく、マルチフィラメントヤーンであってもよい。したがって、別段の記載がない限り、本明細書で使用される用語「ヤーン」は、複数のフィラメントまたは繊維を必要としない。ヤーンはまた、それぞれが異なる材料で形成された別個のフィラメントを含んでもよい。加えて、ヤーンは、それぞれが2つ以上の異なる材料で形成されるフィラメント、例えば、コア鞘構成を有するフィラメントまたは異なる材料で形成される2つの半分を有する二成分ヤーンなどを含んでもよい。異なる撚りと圧着の程度、および異なるデニールも、アッパー104の特性に影響を与える可能性がある。したがって、ヤーン8を形成する材料とヤーンの他の側面の両方を選択して、アッパー104の別々の領域にさまざまな特性を付与することができる。本開示の様々な態様で使用されるヤーンの追加的な特性は、以下でさらに詳細に説明される。
【0024】
ニットコンポーネント140は、例えばよこ編みまたは別の適切なニットプロセスなどのニットプロセス中に、単一の一体的なワンピース要素として形成され得る。足裏部分および/または踵要素(ヒールカウンタまたは他の要素またはコンポーネントを含むが、これらに限定されない)などの追加要素は、例えば編み機上で行われるシングルニーディング工程において、アッパー104と一体的に一体構造として形成され得る。あるいは、このような1つまたは複数の追加要素をアッパー104とは別に形成し、その後、必要に応じて取り付け、固定、またはその他の方法で組み立ておよび/または一体化することもできる。アッパー104をニットコンポーネントで形成することは、アッパー104に、特定の程度の弾性、通気性、屈曲性、強度、吸湿性、重量、耐摩耗性、および/またはこれらの特性の組み合わせを含むがこれに限定されない有利な特性を提供することができる。さらに、一体的に編まれたニットコンポーネントからアッパー104を形成することにより、大幅な追加の製造ステップまたはプロセスを必要とせずに、アッパー104の様々な特徴および構造を形成することができ、それによって生産効率が向上する。
【0025】
図1Aおよび図1B、並びに図2を参照すると、ニットコンポーネント140は、半径方向に延びるコースを含むことができる。すなわち、ニットコンポーネント140は、ニットコンポーネント140の外周124(例えば、図2に示す)からニットコンポーネント140の共通部分まで延びるニットコース(ニットコンポーネント140がアッパー104内に形成され、ソール構造102に接続されたときに、バイトライン106を形成するか、またはバイトライン106に隣接することができる)を含むことができる。共通部分は、ニットコンポーネント140がアッパー104の形状を形成するか、または他の方法で構築されるときに、すべてのコースがこの領域に向かって延びるニットコンポーネント140の領域とすることができる。いくつかの態様では、共通部分は、外側114と内側116とを分離するアッパー104の長手方向軸に沿って配置される。いくつかの態様では、共通部分は縦軸に隣接している。例えば、共通部分は、内側116と外側114との間で長手方向軸に沿って延びるスロート領域126を含むことができる。図3に関してさらに説明したように、ニットコンポーネント140のようなニットコンポーネントの内側の半径方向に延びるコースは、ニットコンポーネントが着用者の足全体の周りに受容を提供することができるように、多数の異なる閉じ込めラインに整列されたコースを生成することができる。
【0026】
図3は、半径方向に延びるコースを有するニットコンポーネント340の概略図を示す。図3のニットコンポーネント340は、半径方向に延びるコースを実質的に描くことを意図しており、ニットコンポーネント340に関して開示された詳細は、別段の指示がない限り、本明細書に開示された他の任意のニットコンポーネント(ニットコンポーネント140、440、640、840、940および1040を含む)に適用することができる。ニットコンポーネント340は、半径方向に延びるコース、例えばコース342a~eを有し、これらのコースは、総称して「コース342」と呼ぶことができる。コース342は、簡略化された形状を有する編み込みループストランドとして描かれており、これらのループストランドは、必ずしも使用される縫い目のシーケンスを表しているわけではないことが理解されるべきである。例えば、コース342は、フロートステッチ、タックステッチ、転写ステッチなどの他のタイプのステッチを含んでもよい。同様に、コース342が延びることができる様々な方向の代表として、ニットコンポーネント340全体にはいくつかのコースのみが描かれているが、図3に描かれたコース342の間には、(本明細書に記載された他の多くの態様と同様に)ニットコンポーネント340の共通部分から半径方向に延びる追加のコースが、以下に説明される同様の方法で存在することが理解されるべきである。
【0027】
コース342は、外周324から共通の部分または領域に延びる。図3に示す例では、共通部分は、舌コンポーネント、舌コンポーネントのための開口部、および/または舌コンポーネントが貫通することができる空間を画定するニットコンポーネント340の内周334を含むことができるスロート領域326である。いくつかの態様では、スロート領域326は、外側314から内側316まで連続的に編まれ、舌コンポーネントのための開口または空間がない可能性がある。
【0028】
前足領域308、中足領域310および踵領域312の各々は、少なくともいくつかのコースが互いに平行でないように、例えばある角度をなして、異なる方向に延びる半径方向に延びるコースを含むことができる。例えば、前足領域308における少なくとも前足領域(例えば領域342c)は、中足領域310における中足領域(例えば領域342b)と平行でない方向に延びる。換言すれば、前足コース342cおよび中足コース342bを含む少なくともいくつかのコースは、互いに角度をなすことができ、角度は0度より大きく180度より小さい。
【0029】
逆に、ニットコンポーネント340が、図1Aおよび図1Bに示す履物の物品100のような履物の物品に履かれると、コース342は、異なる閉じ込めラインまたは角度を表すことができる異なる方向に延びることができる。閉じ込めラインは、ニットコンポーネントの共通部分に向かって延びるニットコースで表され、他方のニットコースは、反対方向から、第1ニットコースと同一または実質的に同一の角度で共通部分に向かって延びる。従来の方法で編まれたコンポーネントは、すべてまたは大部分のコースがアッパーを横切って水平に延びており、このような閉じ込みラインは同じ角度に制限され得る。対照的に、半径方向に編まれたニットコンポーネントの異なるコースは、着用者の足の長さの周りに効果的に360度延びて、追加の封じ込めラインを形成することができる。少なくともある程度の封じ込めは、単にニットコースの半径方向に延びる方向によるものである可能性がある。いくつかの態様では、より高い引張強度、より高い靭性および/またはより高い耐引張性を有するヤーンを、ある種の閉じ込みラインに沿ったコースに使用すること、ある種の閉じ込みラインに沿ったコースでの引張を減少させるためにフロートステッチのようなある種のニットステッチを利用すること、またはそれらの組み合わせによって、より大きな包含が達成される。本明細書に記載されたニットコンポーネント、例えばニットコンポーネント140の少なくともいくつかは、少なくともいくつかの態様では、1つまたは複数の閉じ込め領域を含むものとして記載されている。これらの閉じ込め領域は、特定のヤーンの種類、融着領域、および/または特定のニットステッチなどの、半径方向のニットコースの方向および整列だけによって提供され得るものを超えて閉じ込めを増大させる、1つまたは複数の特徴を含むニットコンポーネント内の領域を表すことができる。
【0030】
一例の態様では、ニットコンポーネント340は、第1対角線(第1軸321によって示される)に平行なコースと、ニットコンポーネント340の共通部分において第1対角線と交差する第2対角線(第2軸323によって示される)に平行なコースとを含む。第1軸321は、着用者の第1中足骨を覆うように構成されたニットコンポーネント340の一部から外側314上の踵領域312まで延びることができ、第2軸323は、着用者の第5の中足骨を覆うように構成されたニットコンポーネント340の一部から内側316上の踵領域312まで延びることができる。これらの軸321、323は、共通してx形を形成することができ、多くの種類の運動(運動方向の回転または変更、左右運動、前方運動および後方運動を含む)に対して、アッパー内での着用者の足の安定性を向上させることができる閉じ込みラインを表すことができる。このようにして、これらの軸321、323に沿って引張を制限するか、または他の方法で支持を提供するコースによって、履物(例えば、アッパー104)内に履物の足を包含することによって、履物の物品(例えば、履物の物品100)の特性を向上させることができる。
【0031】
半径方向に延びるコース342を有するニットコンポーネント340は、ニットコンポーネント340の外側および内側314、316を同時に形成するのではなく、順次形成するラジアルニットプロセスによって実現することができる。図3に示すように、編み機362(例えば、前針床361と後針床361とを有する)により、ニットコンポーネント340が、ニットコンポーネント340の内側316の踵領域312から踵領域312に向かってニット方向344に編まれた後、ニットコンポーネントの外側314が、ニット方向344に示すように、前足領域308から編まれ始め、外側314の踵領域312で終了する。このようにして、ニットコンポーネント340は、内側316(または内側316上の少なくとも複数のコース)を編み、内側316上のコースを編んだ後に前足領域308を編み、前足領域308を編んだ後に外側314(または外側314上の少なくとも複数のコース)を編むことによって形成することができる。
【0032】
他の態様では、同様であるが逆のニット方向を使用してニットコンポーネント340を形成することができる。例えば、ニットコンポーネント340は、外側314(または外側314上の少なくとも複数のコース)を編み、外側314上のコースを編んだ後に前足領域308を編み、前足領域308を編んだ後に内側316(または内側316上の少なくとも複数のコース)を編むことにより形成することができる。
【0033】
ニットコンポーネント340を製造するためのニットプロセスは、自動編み機を含むことができる編み機362上で実行することができる。図3の編み機362は、簡略化された表現として意図されている。一例の態様では、編み機362は、前針床および後針床を有する平Vベッド編み機のような平編み機であってもよい。ニットコンポーネント340は、単一の針床からの針によって形成されてもよいし、2つの針床からの針によって形成されてもよい。
【0034】
外側および内側314、316をこのシーケンスにしたがって形成するニットプロセスにおいて、外側314を形成するために使用される針の少なくともいくつかは、内側316を形成するためにも使用される。このようにして、外側および内側314、316の踵および/または中足部を同時に形成する従来のニットプロセスと比較して、ニットコンポーネント340を作り出すために、編み機362の編みベッド上のより少ない数の針が必要とされる可能性がある。加えて、各辺に繰返しフィーダを必要とするのではなく、同じフィーダを横方向および内側314、316のヤーン形成に使用することができる。このようにして、開示されているニットプロセスは、編み機362上のより多くの針および/またはフィーダを使用して、別のアッパー用の別のニットコンポーネントのような別の物品を編み込みながら、ニットコンポーネント340を編み込むようにすることができる。
【0035】
さらに、ニットコンポーネント340内の半径方向延長コースは、ニットコンポーネント340を楔形部分に分割することができる。例えば、前足領域308で見て、軸321と軸318との間の楔形部分は、半径方向に編まれたコースを有し、軸318と軸323との間の楔形部分は、追加の半径方向に編まれたコースを有することができる。いくつかの態様では、軸321と318との間の楔形部分を形成するコースは、軸318と323との間の楔形部分の前に編み込まれる。ニットコンポーネント340の残りの部分も同様に、様々な楔形部分に分割することができる。これらの楔形部分は、半径方向に延びる全長コースと、半径方向に延びる部分長コースとを編むことにより形成することができる。ニットコース342aなどの全長ニットコースは、ニットコンポーネント340の一方の縁部(例えば、外周324)からニットコンポーネント340の他方の縁部(例えば、スロート領域326内の内周334)まで延びることができる。部分長ニットコース、例えばコース342d、342eは、ニットコンポーネント340の2つの縁部の間に延びないことができる。部分長ニットコースの一端または両端は、ニットコンポーネント340の縁よりも前に終了することができる。しかし、部分長ニットコース、例えばコース342d、342eは、外周324から共通部分(例えば、スロート領域326)に向かう方向に延びるので、半径方向に延びると考えられる。全長ニットコースの間に分布する部分長ニットコースを形成することにより、ニットコンポーネント340に形状および寸法を形成することができ、同時にニットコースを半径方向に延在させることができる。
【0036】
一態様では、前足領域は、より高い曲率(例えば、より小さい曲率半径)を有する湾曲構造を形成するように構成された1組のウェッジを含む。例えば、前足領域のウェッジ群の各々は、中足領域のウェッジ群よりも小さい表面積を有することができる。追加的にまたは代替的に、前足領域におけるウェッジの総数を増加させることができる。このようにして、複数のウェッジを前足領域に組み込むことにより、アッパーのニットコンポーネントの湾曲構造が前足領域に生じる。
【0037】
このようにして、ニットコンポーネントは、内側から外側方向に編まれたときに、ニットコンポーネントの内側を形成するように第1組のウェッジが構成され、ニットコンポーネントのつま先領域を形成するように第2組のウェッジが構成され、ニットコンポーネントの外側を形成するように第3組のウェッジが構成されるようにウェッジの積み重ねを含むことができる。さらに、一態様では、第4組のウェッジが、ニットコンポーネントの踵領域を形成するように含まれてもよい。第1例を任意に含む第2例では、他の可能性を除いて、第2組のウェッジの数は、第1組のウェッジの数または第3組のウェッジの数よりも多い。
【0038】
図3に関して説明したように、一方の側面全体(例えば、内側316)は、他方の側面(例えば、外側314)を編む前に編むことができる。しかし、他の態様では、ニットコンポーネントのニットプロセスが開始される領域と停止される領域とは異なることができる。例えば、いくつかの例示的なニットコンポーネントは、アッパーを形成する前に、ニットコンポーネントの踵領域内の内側の部分が踵領域内の外側の部分と縫い目レスに一体的に編まれるような他の形状および構成を有することができる。このようにして、踵領域の中央縫い目ではなく、踵領域の内側または外側に縫い目を形成することができる。しかし、これらの構成では、ニットコンポーネントの外側と内側とが同時に編まれていないので、図3について説明したシーケンスの仕方を維持することができる。逆に、ニットコンポーネントの縫い目が内側に形成される場合には、最初に内側踵を編み、次に外側(例えば、外側踵、中足部および前足部)を編み、次に内側の残りの部分(例えば、内側前足部および中足部)を編むようにしてもよい。ニットコンポーネントの縫い目が外側に形成される場合には、最初に外側踵部を編み、次に内側(例えば、内側踵、中足、前足領域)を編み、次に外側の残りの部分(例えば、外側前足、中足領域)を編むようにしてもよい。
【0039】
図1A図1Bおよび図2に示す例示的なニットコンポーネント140に戻ると、ニットコンポーネント140は、図3のニットコンポーネント340に関して説明したような半径方向に延びるニットコースを含む。加えて、ニットコンポーネント140は、半径方向に延びる引張要素150を含む。ニットコンポーネント140のニットコースと同様に、引張要素150は、外周124から、舌、舌の開口部、および/またはニットコンポーネント140の内周134を含むことができる、図1Aおよび図1Bのスロート領域126のような共通の部分または領域まで延びている。
【0040】
ニットコースと同様に、引張要素150は、閉じ込めラインに沿って延びることができる。加えて、引張要素150は、材料組成および/または引張要素150の統合方法により、ニットコンポーネント140の下にあるニット構造に追加の強度および構造を提供することができる。このようにして、引張要素150は、履物の物品100の所望のまたは適合された特定の閉じ込めラインに対応するニットコンポーネント140の領域内に位置することができる。例示的なニットコンポーネント140では、引張要素150は、上方から見たときに全体がX字状の構成を有する引張要素150の組として配置される。例えば、図2は、アッパー104に形成される前のニットコンポーネント140を示しており、本明細書では閉じ込め領域(または閉じ込めベクトル)152a、152b、152cおよび152dと呼ぶことができる、グループのX字形の構成をより明確に示している。第1閉じ込め領域152aは、引張要素150と、外側124の一部から内側116上の踵領域112の共通部分、または内側116上の中足領域110のスロート領域126に少なくとも部分的に延びるニットコースとを含む。第2閉じ込め領域152bは、引張要素150と、外周124の一部から内側116の前足領域108内の共通部分または内側116の中足領域110内のスロート領域126に少なくとも部分的に延びるニットコースとを含む。第3閉じ込め領域152cは、引張要素150と、外側114上の踵領域112の少なくとも一部の外周124の一部から外側114上の共通部分または中足領域110のスロート領域126に延びるニットコースとを含む。第4閉じ込め領域152dは、外側114上の前足領域108の少なくとも一部の外周124の一部から外側114上の中足領域110の共通部分またはスロート領域126まで延びる引張要素150とニットコースとを含む。単一の閉じ込め領域(例えば、閉じ込め領域152a)内の隣接する引張要素150間の距離は、個別の閉じ込め領域内の引張要素150間の距離よりも少ないコース数で測定することができる。
【0041】
ニットコンポーネント140内における引張要素150の位置(密度を含む)および配向は、履物の物品100の予想される活動に基づいて変化することができる。一般に、一方の側(例えば、外側114)の引張要素150によって提供される受容体は、他方の側(例えば、内側116)の受容体からアンカーとして機能するように改良され得る。このようにして、踵領域112に向かって内側116に延びる引張要素150の第1閉じ込め領域152aを、前足領域108に向かって外側114に延びる引張要素150の第4閉じ込め領域152dにアンカーすることができ、前足領域108に向かって内側116に延びる引張要素150の第2閉じ込め領域152bを、踵領域112に向かって外側114に延びる第3閉じ込め領域152cにアンカーすることができる。
【0042】
引張要素150の各々は、例えば、マルチフィラメントヤーン、フィラメント(例えば、モノフィラメントヤーン)、ヤーン、ロープ、ウェビング、ケーブル、またはチェーンの構成を有し得る。引張要素150は、引張要素150を有する領域においてニットコンポーネント140の強度を増大させる特性を有する材料を含むことができる。例えば、引張要素150は、5グラム/デニールよりも大きな靭性を有するヤーンなど、高い靭性を有するヤーンを含むことができる。いくつかの実施形態では、引張要素150の靭性は、ニットコンポーネント140の他のヤーンよりも大きいことがある。一実施例では、引張要素150は、Coats Group PLCによって製造された高靭性ポリエステルヤーン(例えば、Gral)から形成される。別の例では、引張要素150は、高靭性ナイロンヤーンから形成される。さらに、いくつかの例では、引張要素150は、ニットコンポーネント140の残りの部分よりも大きな引張耐性を示すことができ、ガラス、アラミド(例えば、パラ系アラミドおよびメタ系アラミド)、超高分子量ポリエチレン、および液晶ポリマーを含む、高引張強度用途のための種々のエンジニアリングフィラメントから形成することができる。
【0043】
引張要素150は、ニットコンポーネント140の編み構造に複数の方法で組み込むことができる。例えば、引張要素150はそれぞれ、ニットコンポーネント140の構造内に嵌め込まれてもよい。引張要素150が嵌め込まれるとき、引張要素150はそれぞれ、ループのない状態で、1つまたは複数の他のヤーンのニットループによって形成されるコースに沿って延びることができる。はめ込まれた引張要素150は、ニットコンポーネント140の編み構造にアンカーするために、引張要素150の各端部にループを含むことができるが、一般的には、他のストランドと交差することなく、コースを通って延びることができる。例えば、引張要素150は、ニットコンポーネントの他のヤーンによって形成されたループ間構造を通って延びるように、他のヤーンのループ後方と、コース内の他のヤーンのループ前方との間で交互に配置されてもよい。いくつかの態様では、ニットコンポーネント140は、ニットコンポーネントの2つの針床上の針の間で切り替わる少なくとも両端のヤーンから形成された両面ニットテキスタイル構造を含む。このような構成では、引張要素150は、2つの針床上に作り出されたループによって形成された表面間に一般的に延びるように、はめ込まれてもよい。他の例では、ニットコンポーネント140は、コース方向に延びる通路を形成するために、共通に延び、互いに重なり合う第1ニットコースおよび第2ニットコースを含み、引張要素150は、それぞれ通路を通って延びることができる。
【0044】
他の例では、引張要素150は、上記のようなダマシン構造をシミュレートするために、編みシーケンスを使用してニットコンポーネント140の編み構造に編まれてもよい。例えば、引張要素150がニットコンポーネント140の外周124から内周134に延びると、引張要素150のコースは、フロートステッチおよびニットステッチの繰り返しシーケンスで編まれ得る。図9を参照して、本明細書ではモックインレイと呼ばれるこのような編み技術のさらなる詳細について説明する。
【0045】
図1A~1Bおよび図2に示すように、少なくともいくつかの引張要素150は、ニットコンポーネント140に形成されたレース開口の周りにループを形成してもよく、レース132が引張されるときにニットコンポーネント140にかかる追加の張力に耐えるようにニットコンポーネント140を補強することができる。他の例では、引張要素150の少なくともいくつかは、ニットコンポーネント140から延びて、靴ひも132を受けるループを形成することができる。
【0046】
いくつかの例では、ニットコンポーネント140は、少なくとも部分的に可融性ヤーンから形成されていてもよい。例えば、ニットコンポーネント140は、少なくとも第2ヤーンと編まれた第1ヤーンから形成されてもよく、第1ヤーンは第1溶融温度を有し、第2ヤーンは、第1ヤーンの第1溶融温度よりも大きい第2温度を有し、第2温度は、第2ヤーンの分解温度または溶融温度のいずれか低い方である。このようにして、可融性ヤーンと呼ばれ得る第1ヤーンは、加熱時に少なくとも部分的に融着または軟化することができ、第2ヤーンは、その固体構造を維持することができる。可融性ヤーンは、一旦完全に融着、部分的に融着または軟化すると、可融性ヤーンの他の部分および/または第2ヤーンと融着することができる。ニットコンポーネント内の可融性ヤーンの活性化は、アッパー104のある特性をもたらすことができる。例えば、可融性ヤーンによって形成された融着領域は、選択された領域において向上した耐摩耗性および/または耐水性を提供することができ、ニットコンポーネント140の伸縮性を制限して、選択された領域において耐伸縮性および閉じ込みを付与することができる。ニットコンポーネント140における可融性ヤーンの例は、低融点材料から形成されたフィラメントの一部と高融点材料から形成されたフィラメントの一部とを有するマルチフィラメントヤーン、低融点材料から完全に形成されたマルチフィラメントヤーン、低融点材料と高融点材料から完全に形成された2成分ヤーン(コア/シース構造またはサイドバイサイド構造に配置された)、または低融点材料から完全に形成されたモノフィラメントヤーンのいずれかの構造を有していてもよい。
【0047】
具体例に関して以下にさらに説明するように、ニットコンポーネント140内の可融性ヤーンは、可融性ヤーン内の可融性材料(例えば、熱可塑性ポリマー材料)の溶融温度よりも高い温度に加熱されることによって活性化されることができ、融着した可融性材料は、ニットコンポーネント140内の1つまたは複数の他の編みヤーンまたはニットコンポーネント140内の構造物と結合され得る。例えば、可融性ヤーンは、コーテッドヤーン(例えば、コア-シース構造を有する)であってもよく、コーティングは第1材料(熱可塑性ポリマーを含むことができる)であり、コアを形成する第2材料(熱可塑性ポリマーを第1材料から排除することができる)の溶融温度よりも低い溶融温度を有する。本発明の一例の可融性ヤーンは、少なくともコアが実質的に固体構造を維持している間、コーティングを軟化、部分的に融着、または完全に融着することによって活性化することができる。可融性ヤーンがコーテッドヤーンである一例では、コーティングは、コーティングの部分がコーテッドヤーンのインターループコース内でコーテッドヤーンの隣接する他の部分(および他の任意のヤーンまたは引張要素)と融着するように軟化させることができる。別の実施例では、可融性ヤーンがコーテッドヤーンであり、コーティングの融着した第1材料がニットコンポーネント内の隣接する構造物の間で逆流して硬化するように、コーティングは部分的に融着することができる。このようにして、部分的に融着したコーティングは、コアヤーンおよびコーティングの残り(非融着)部分を含み、他のヤーンまたは引張要素に融着するコーテッドヤーンの隣接部分を一緒に融着させることができる。可融性ヤーンがコーテッドヤーンである別の例では、コーティングは完全に融着し、リフローし、硬化することができ、再硬化されたコーティングは、残りのコアの一部と他のヤーンまたは引張要素とを融着させる。別の例では、可融性ヤーンは、熱可塑性ポリマー材料から完全に製造されたモノフィラメントヤーンであり、熱可塑性ポリマー材料は、モノフィラメントヤーンの非融着部分を、モノフィラメントヤーンの他の非融着部分および/または可融性ヤーンと共に編まれた他のヤーンまたは引張要素に融着するように、または、可融性ヤーンと共に編まれた他のヤーンを融着するように、完全に融着して再硬化するように、加熱され得る。
【0048】
ニットコンポーネント140は、外側向き面142と、反対側の内側向き面とを有することができる。図1A図1Bおよび図2のニットコンポーネント140の図では見えないが、ニットコンポーネント140がアッパー104内に形成されたとき、ニットコンポーネント140の内側向き面は、外側向き面142から実質的に離れ、足に向かって開口部を受け入れるものとして理解されるべきである。いくつかの態様では、外側向き面142は、ニットコンポーネント140の第1ニットコースによって形成され、内側向き面は、第1ニットコースと一体的に編まれた第2ニットコースによって形成される。例えば、ニットコンポーネントは、外側向き面142が第1針床(例えば、前側の針床)上のヤーンによって形成され、内側向き面が第2針床(例えば、後側の針床)上のヤーンによって形成されるように、両面編み構造(例えば、両面編みジャカード構造)を有することができる。さらに、ニットコンポーネント140は、後述するように、ニットコンポーネント140の一部の領域で外側向き面を形成するために第1針床に編み込まれたヤーンが、ニットコンポーネント140の他の領域で内側向き面を形成するために第2針床に選択的に移動し、一部の領域で内側向き面を形成するために第2針床に編み込まれたヤーンが、他の領域で外側向き面142を形成するために第1針床に選択的に移動するように、ジャカード両面編み構造を有していてもよい。
【0049】
ニットコンポーネント140の少なくとも外側向き面142は、引張要素150を有する領域(例えば、閉じ込め領域152a~d)において可融性ヤーンで形成されている。可融性ヤーンは、引張要素150を含むコースを形成するために、外側向き面142上に編み込まれてもよい。したがって、一旦、可融性ヤーンが活性化されると(例えば、加熱により)、可融性ヤーンは、少なくとも部分的に融着して引張要素150に融着することができる。加えて、本開示の態様は、引張要素150の閉じ込め領域(例えば、152a~d)内で隣接する引張要素150の間に位置してそれらを分離するコースを形成するために、外側向き面142上に可融性ヤーンを編むことを含むことができる。可融性ヤーンの可融性材料は、完全にまたは部分的に融着したときに、以下にさらに説明するように、残りの編み構造間の空間を満たすように流動することができる。例えば、可融性ヤーンは、コアの周囲にシースを有するヤーンであってもよく、シースは、コアを形成する材料よりも溶融温度が低い材料で形成されている。この点で、可融性ヤーンのシースは、可融性ヤーンの残りのコアによって形成されるニットループ間の空間を少なくとも部分的に融着して充填することができる。追加的にまたは代替的に、可融性ヤーンの可融性材料は、他のヤーンまたは構造物、例えば引張要素150および/またはニットコンポーネント140を形成する第2ヤーンの間の空間を充填するために少なくとも部分的に融着することができる。閉じ込め領域152a~d内のコースに沿って可融性ヤーンを使用して融着領域を形成することは、引張要素150によって提供される閉じ込めまたはロックダウンを増加させるのに役立ち、追加のコースおよびポストニーディングプロセスの必要性を最小限にするかまたは排除しつつ、耐摩耗性および防水性の増加などの他の利点を提供する。追加コースの必要性を最小化または排除することは、アッパー104の軽量化を維持するのに役立つ。例えば、アッパー104の様々な態様は、ある態様では約50g以下の重量、ある態様では約40g以下の重量、またはある態様では約30g以下の重量を有することができる。
【0050】
ニットコンポーネント140の他の領域、例えば、引張要素150の閉じ込め領域152a~dの間に延びる領域では、ニットコンポーネント140の外側向き面142は、可融性ヤーンを含まない。逆に、これらの領域内の外側向き面142は、可融性ヤーンよりも高い融着または分解温度を有する第2ヤーンで形成されていてもよい。このようにして、加熱されたときに、外側向き面142上の融着領域を、ニットコンポーネント140の選択された部分のみに発生させることができる。
【0051】
可融性ヤーンは、熱可塑性ポリマー材料を含むことができる。可融性ヤーンの例示的な材料は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリウレタン、低融点ポリアミド(ナイロン)ヤーン(ナイロン-6、ナイロン-11、ナイロン-12など)、低融点ポリエステル、またはそれらの組み合わせを含むことができる。可融性ヤーンの溶融温度は、いくつかの態様では約115℃未満、いくつかの態様では約100℃未満、またはいくつかの態様では約100℃未満である。逆に、可融性ヤーンおよび/または引張要素150を形成する材料で編まれた第2ヤーンは、いくつかの態様で約150℃よりも大きく、いくつかの態様で約185℃よりも大きく、またはいくつかの態様で約185℃よりも大きく、またはいくつかの態様で約摂氏よりも大きい溶融温度または分解温度を有することができる。
【0052】
一例として、可融性ヤーンは、ニットコンポーネント140に編まれたときに、グリップヤーンが存在しない、またはグリップヤーンの濃度が低い領域に比べて、より大きな摩擦係数を有する領域を形成する「グリップ」特性をさらに含む。外側向き面142により大きな摩擦係数を有するニットコンポーネント140内の領域を形成することは、ニットコンポーネント140を有するアッパー104が、グローバルフットボールのようなボールをよりよく把持することができるので、履物の物品100の着用者がボールを制御するのを助けることができる。本明細書に記載されたニットコンポーネント140または本明細書に記載された他のニットコンポーネントの様々な部分における摩擦係数の差は、本明細書に記載されたテキスタイルボール摩擦係数試験を使用して決定することができる。
【0053】
本開示の例では、グリップを有する可融性ヤーン(ここではグリップヤーンと称する)は、コアの周囲に、第1ポリマー組成物を有するコーティングを有し、コアは、第1ポリマー組成物とは異なる第2材料組成物を有することができる。第1ポリマー組成物は、第2組成物には存在しない熱可塑性エラストマーを含むことができる。熱可塑性エラストマーは、熱可塑性コポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリエーテルブロックダウンアミドエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィン系共重合体エラストマー、熱可塑性スチレン共重合体エラストマー、熱可塑性アイオノマーエラストマー、またはこれらの任意の組み合わせの1種または2種以上を含むことができる。一態様では、第1ポリマー組成物は、熱可塑性弾性スチレン共重合体を含む。更なる態様では、熱可塑性弾性スチレン共重合体は、スチレンブタジエンスチレン(SBS)ブロックダウンコポリマー、スチレンエチレン/ブチレンスチレン(SEBS)樹脂、スチレンアクリロニトリル(SAN)樹脂、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。一態様では、ポリマー組成物は、熱可塑性弾性ポリエステルポリウレタン、熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、熱可塑性弾性ポリエステルポリウレタンは、芳香族ポリエステル、脂肪族組成物、またはそれらの組み合わせであってもよい。以下に具体的に記載されない他の熱可塑性ポリマー材料も、本明細書に記載されたグリップヤーンに使用することができることを理解されたい。一態様では、本明細書に記載のグリップヤーン用コーティングは、単一の熱可塑性エラストマーのみからなる繊維またはフィラメントからなる。他の態様では、コーティングは、2種以上の異なる熱可塑性エラストマーの混合物からなる。
【0054】
一態様では、熱可塑性エラストマーを含む第1ポリマー組成物は、約110℃より大きく約170℃より小さい溶融温度を有する。別の態様では、第1ポリマー組成物は、約110℃~約170℃、約115℃~約160℃、約120℃~約150℃、約125℃~約140℃、約110℃~約150℃、または約110℃~約125℃の溶融温度を有する熱可塑性エラストマーを含む。
【0055】
加えて、コアヤーンの第2材料組成物は、熱可塑性組成物または熱硬化性組成物であってもよい。コアヤーンは、コーティング工程中に第1高分子材料が押し出される温度で強度を維持する任意の材料であってもよい。コアヤーンは、天然繊維または再生繊維またはフィラメントであってもよく、合成繊維またはフィラメントであってもよく、短繊維ヤーン、マルチフィラメントヤーンまたはモノフィラメントヤーンの構造を有していてもよい。一態様では、コアヤーンは、綿、絹、羊毛、レーヨン、ナイロン、エラスタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、および/またはポリオレフィンから構成され得る。一方、コアヤーンはポリエチレンテレフタレート(PET)からなる。コアヤーンの第2材料組成物は、第1ポリマー組成物の第1溶融温度よりも少なくとも20℃高い、少なくとも50℃高い、少なくとも75℃高い、または少なくとも100℃高い第2融着または変形温度を有することができる。グリップヤーンの様々な例のさらなる詳細は、以下にさらに開示される。
【0056】
くつかの実施形態では、グリップヤーンを加熱して、コーティングを形成する熱可塑性エラストマーを部分的または完全に溶融する。コーティングが部分的にまたは完全に融着すると、コーティングは、残りのループ構造の間の空間(例えば、コーティングが部分的にのみ融着する残りのコーティングとコアのループ部分、コーティングが完全に融着する残りのコアのループ部分、および/または引張要素150のような他のストランドのループ部分)に流れ込むことができる。ニットコンポーネント140が冷却されると、グリップヤーンからのリフローコーティングは、可融性ヤーンに関して上記より一般的に述べたように、これらの異なる構造物を効果的に融着させる。残りの構造は、融着領域内にインターループヤーンを残すことができるので、ここではインターループヤーンの融着ネットワークと呼ぶことができる。リフローコーティングおよびいくつかの側面では、グリップヤーンの残留(融着されていないコーティング)は、融着領域に対してより大きな摩擦係数を提供することに寄与すると同時に、1つのコース内および/または隣接するコース内で一緒に融着されたループのために増加した閉じ込めを提供することもできる。いくつかの態様では、グリップヤーンは蒸気によって加熱されてもよい。いくつかの態様では、グリップヤーンは、金型内のニットコンポーネント140に熱と圧力を加える熱成形工程によって加熱されてもよい。これらの態様では、一旦冷却された残りの構造を、本明細書ではインターループヤーンの熱成形ネットワークと呼ぶことがある。
【0057】
本明細書の例示的な態様では、ニットコンポーネントは、1つまたは複数の領域にグリップヤーンを含むように形成される。このようなプロセスにおいて、グリップヤーンを含むニットコンポーネントに加えられる温度、圧力、湿度および後処理持続時間のうちの1つまたは複数を、所望の摩擦係数、所望の閉じ込めレベルおよび所望の通気レベルのうちの1つまたは複数に基づいて調整することができる。後処理は、編みの後にニットコンポーネントを処理することを含むことができる。一例では、後処理グリップヤーンは、グリップヤーンを少なくとも部分的に融着するグリップ材料を含むことができる。さらに、グリップヤーンの後処理は、グリップ材料を少なくとも部分的にリフローすることを含んでもよい。さらに、後処理グリップヤーンは、融着およびリフローの後にグリップ材料を硬化させることを含むことができる。一例では、ニットコンポーネントは、完全に同じ後処理条件を受けることができる。別の例では、ニットコンポーネントの1つまたは複数の領域を選択的に後処理することができる。例えば、ニットコンポーネントの外側向き面上にグリップヤーンが存在する1つまたは複数の閉じ込め領域は、これらのニップ領域に熱および/または圧力を加えることによって選択的に処理することができ、ニットコンポーネントの外側向き面上にグリップヤーンが存在しない残りの領域は、熱および/または圧力の印加を回避するために遮蔽されるか、または異なる量の熱および/または圧力を加えることができる。
【0058】
非限定的な例として、融着、リフロー、そして少なくとも部分的に再硬化などのグリップヤーンを処理するために、ニットコンポーネントが蒸気チャンバ内に配置される。そして、水蒸気および/または熱は、少なくともグリップ材料の溶融温度で、ニットコンポーネントを形成する残りのヤーンの溶融温度よりも低い温度で付与される。これにより、ヤーンのグリップ材料を必要な量だけ融着してリフローさせることができる。一実施例では、このプロセスは、摂氏150~153度、1~3バールで10~15秒間行われてもよい。次いで、加熱および蒸気処理が所望の完成レベルに到達した後、例えば、可融性材料が少なくとも部分的に融着し、リフローし、凝固を開始した後、ニットコンポーネントを冷却チャンバに移送し、ニットコンポーネントが摂氏20~25度に達するまで大気圧下で冷却することができる。
【0059】
異なる態様では、可融性ヤーンは、様々な程度に加熱、融着、および/またはリフローするなどの処理を行うことができる。いくつかの態様では、可融性材料(例えば、ヤーン)を含むニットコンポーネントの一部は、加熱、融着、および/またはリフローのように、全く加工されていなくてもよい。他の態様では、可融性材料(例えば、ヤーン)を含むニットコンポーネントの一部の領域は、加熱、融着、および/またはリフローのように加工されてもよく、他の領域は加工されていなくてもよい。さらに別の態様では、可融性材料(例えば、ヤーン)を含むニットコンポーネントの一部の領域は、可融性材料を含む他の領域よりも、例えば、より高い熱、より長い持続時間の蒸気、より長い持続時間の熱および/または蒸気にさらされ、または、可融性材料の融着、リフローおよび再硬化の量、および/またはそれによって引き起こされる相互に絡み合うヤーンの熱成形ネットワークの形成の程度など、異なる材料変化を生じるように加工され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、ニットコンポーネント140の後部の少なくとも外側向き面には、グリップヤーンが含まれていない。これにより、第1閉じ込め領域152aまたは第3閉じ込め領域152c内の外側向き面142には、グリップヤーンが含まれないようにすることができる。履物の物品100の前部がボールと接触する可能性が高いので、ニットコンポーネント140の前部、例えば第2閉じ込め領域152bおよび第4閉じ込め領域152dにおいて、外側向き面142にグリップヤーンを含む方が有利である。加えて、いくつかの態様では、グリップヤーンは、第2閉じ込め領域152bと第4閉じ込め領域152dとの間のニットコンポーネント140の中央前足領域109の外側向き面142に含まれていてもよい。いくつかの態様では、外側向き面142上にヤーンを把持する部分、例えば第2閉じ込め領域152bおよび第4閉じ込め領域152dは、内側向き面上に異なる可融性ヤーンを含む。一実施形態ではモノフィラメントの形態であるこのような可融性ヤーンは、グリップヤーンとは異なるポリマー組成を有することができ、少なくともいくつかの態様では、グリップヤーンによって形成される領域よりも低い摩擦係数を有する編み領域を形成する。さらに、いくつかの態様では、異なる材料組成を有するモノフィラメントヤーンが、そのような可融性ヤーンで内側向き面に編まれている。いくつかの態様では、このような可融性ヤーンは、編んだ後に完全にまたは少なくとも部分的に融着して、内側向き面に融着領域を形成することができ、これは、着用者の足に追加の耐摩耗性、防水性および構造的支持を提供することができる。
【0061】
いくつかの態様では、グリップヤーンは、ニットコンポーネント140の後部の内側または上方(外側向き面142または反対側の内側向き面)には全く含まれていない。逆に、いくつかの態様では、グリップヤーンよりも高い編み温度または分解温度を有する高強力ヤーンは、これらの後部部分においてニットコンポーネント140の外側向き面142および内側向き面を形成することができ、閉じ込め領域152a、152cは、高強力ヤーンが編みまたはインサートされた引張要素150をさらに含むことができる。
【0062】
任意の構成において、ニットコンポーネント140は、引張要素150の各閉じ込め領域152a、152b、152c、152d内の外側向き面142にグリップヤーンを含むが、閉じ込め領域152a~152d間に延びるニットコンポーネント140の領域の外側向き面142にはグリップヤーンを含まない。例えば、第2閉じ込め領域152bと第4閉じ込め領域152dとの間の中央前足領域109、第1閉じ込め領域152aと第2閉じ込め領域152bとの間の内側116の中足領域110、第3閉じ込め領域152cと第4閉じ込め領域152dとの間の外側114の中足領域110、第1閉じ込め領域152aに隣接する内側116の踵領域112、および第3閉じ込め領域152cに隣接する外側114の踵領域112において、グリップヤーンを外側向き面142から排除することができる。
【0063】
前述したように、グリップヤーンと1つ又は複数の追加ヤーンとがニットコンポーネント140内で同一のヤーンを形成するように、1つ又は複数の追加ヤーンをグリップヤーンと絡みあっていてもよい(インターループ)。様々な例では、グリップヤーンは、外側向き面142の少なくとも一部を形成するように編み込まれてもよく、一方、内側向き面の少なくとも一部を形成するようにグリップヤーンよりも高い融解または分解温度を有する高強力ヤーンは編み込まれてもよい。引張要素150を含むコースにおいて、引張要素150は、外側向き面142の少なくとも一部をグリップヤーンで形成するように編まれてもよく、または外側向き面142と内側向き面を形成するコースとの間にはめ込まれてもよい。いくつかの態様では、引張要素150は、第2ヤーンと異なる材料組成を有することができる高強力ヤーンであり、第2ヤーンも高強力ヤーンであることができるが、内側向き面に編まれた高強力ヤーンは、引張要素150と同じ材料組成を有することが予想される。
【0064】
ニットコンポーネント140は、第1および第2閉じ込め領域152a、152bの間の内側116と、第3および第4閉じ込め領域152c、152dの間の外側114の中足領域110の部分にグリップヤーンを含まなくてもよい。逆に、これらの部分は、第1針床および第2針床に編み込まれたモノフィラメントで形成されていてもよく、モノフィラメントは、グリップヤーンの溶融温度よりも高い融着または分解温度を有していてもよい。第1および第2針床に編み込まれたモノフィラメントは、同一の材料成分を有していてもよいし、異なる材料成分を有していてもよい。加えて、いくつかの態様では、中足領域110のこれらの部分内の第1針床と第2針床との間に高強力ヤーンが編み込まれる。第1モノフィラメントを有する第1針床での編みと、第2モノフィラメントを有する第2針床での編みとを断続的に切り替えることにより、両針床間で高強力ヤーンを編むことができる。
【0065】
図4A~4Dは、本開示の別の例による履物の物品400およびそのフィーチャーの様々な図を描いている。履物の物品400は、アッパー404に結合されたソール構造402を含む。ソール構造402は、履物の物品100のソール構造102と同じ特徴を有することができ、同様の方法でアッパー404に接続することができる。加えて、アッパー404は、以下に別段の記載がない限り、アッパー104と同じまたは同様の特徴を有することができる。
【0066】
アッパー404は、例えば、ニットコンポーネント440を含む。様々な例では、ニットコンポーネント440はアッパー404の全体または実質的に全体を形成し、様々なタイプのヤーンを組み合わせてアッパー404の別々の領域に異なる特性を与えることができる。ニットコンポーネント140に組み込まれるように説明されたどのような種類のヤーンもニットコンポーネント440に組み込まれてもよく、その具体例については後述する。ニットコンポーネント440は、ニットコンポーネント140について説明されたいずれかの工程によって形成することができ、同様に、アッパー404に異なる特性を提供するために、様々な構造が一体的に編まれた一体的な編み構造を有することができる。加えて、いくつかの態様では、ニットコンポーネント440は、ニットコンポーネント140、340と同様に半径方向に編まれ、ニットコンポーネント440は、ニットコンポーネント440の外周から(バイトライン406でまたは部分的に足の下で延びることができる)共通部分(例えば、ニットコンポーネント440の内周434に隣接することができるスロート領域426)まで延びる半径方向のニットコースを含む。
【0067】
さらに、ニットコンポーネント140の例と同様に、ニットコンポーネント440は、上記のように外周424から共通部分まで延びる半径方向に延びる引張要素450を含むことができる。引張要素450の材料組成および/または引張要素450をニットコンポーネント440に一体化する方法により、これらの引張要素450は、ニットコンポーネント440の下地コース編み構造に追加の強度および構造を提供することができる。引張要素450のこのような材料および/または一体化は、ニットコンポーネント140の引張要素150に関して説明された任意の例であってもよい。加えて、引張要素450は、単一の閉じ込め領域内の隣接する引張要素450間の距離が、異なる閉じ込め領域内の引張要素450間の距離よりも小さくなるように、グループ化されて配置されてもよい(ここでは閉じ込め領域と呼ぶ)。ニットコンポーネント440の例は、引張要素を含む少なくとも2つの閉じ込め領域を含む。一例では、ニットコンポーネント440は、内側416上の踵領域412の少なくとも一部の外周424の一部から共通部分、または内側416上の中足領域410のスロート領域426まで延びる引張要素150を有する第1閉じ込め領域452a、または、第1閉じ込め領域452aを含む、4つの閉じ込め領域を含む、または、第1閉じ込め領域452aは、内側416上の踵領域412の少なくとも一部の外周424の一部から共通部分まで延びる第1閉じ込め領域452aは、内側416上の中足領域410のスロート領域426を含む、第2閉じ込め領域452bは、少なくとも部分的に外側424の一部から内側416の前足領域408内の共通部分へ、または内側416の中足領域410内のスロート領域426へ延びる引張要素450を有する、第3閉じ込め領域452cは、外側414上の踵領域412の少なくとも一部の外側周縁424の一部から外側414上の中足領域410の共通部分またはスロート領域426まで延びる引張要素450を有し、外側414上の前足領域408内の外側周縁424の一部から外側414上の中足領域410内の共通部分またはスロート領域426まで延びる引張要素450を有する第4閉じ込め領域452dを含む。第1、第2、第3および第4閉じ込め領域452a~dは、一般に、図4Cの履物の物品400のトップダウン図に示すように、アッパー404上にX字状の構成を形成することができる。
【0068】
加えて、いくつかの態様では、追加の引張要素450は、前足領域408内に位置することができる。これらの引張要素450は、前足領域408内の外周424から前足領域408内の共通部分またはスロート領域426まで延びることができる。図4A~4Cに示される例は、第2閉じ込め領域452bと第4閉じ込め領域452dとの間の前足領域408に延びる3つのこのような追加の引張要素450を含む。前足領域408内のこれらの引張要素450は、つま先領域内の着用者の足の前部に追加の閉じ込めを提供することができ、これは、敏捷性を必要とする活動や、突然または急速に停止する前方への動きを必要とする場合に特に有利である可能性がある。さらに、図4A~4Dに示されるニットコンポーネント440および本明細書で説明される他の態様を利用して、追加の引張要素を前足領域408に含めることができ、例えば、このような引張要素の密度がより大きく(例えば、ピッチがより小さく)、これらの追加の引張要素は、共通部分(例えば、スロート領域426)の周りに半径方向に延びている。他の態様では、同様に、閉じ込め領域452aと452bとの間の内側416および/または閉じ込め領域452cと452dとの間の外側414に複数の引張要素を含むことができ、これらの追加の引張要素は、これらの方向の追加の補強および/または閉じ込めのために、例えば共通部分の周りに直線的または半径方向に、外周424と内周434との間に延びる。
【0069】
さらなる例では、ニットコンポーネント440は、ニットコンポーネント140と同じまたは同様に、部分的に可融性ヤーンから形成される。例えば、可融性ヤーンは、ニットコンポーネント440の選択された領域の外側向き面442に結合されてもよく、ニットコンポーネント440の他の領域の外側向き面442から存在しなくてもよい。可融性ヤーンの溶融温度は、第2ヤーンの温度よりも低くてもよく、第2ヤーンの温度は、分解温度または溶融温度のいずれか低い方である。第2ヤーンは、可融性ヤーンと共に外側向き面上に編み込まれてもよく、または内側向き面を形成するように編み込まれてもよい。ニットコンポーネント440の外側向き面442が融着領域(外側向き面442上に可融性ヤーンで形成された領域に対応する)と非融着領域(外側向き面442上に可融性ヤーンを含まない領域に対応する)とを含むように、ニットコンポーネント440内の可融性ヤーンを加熱して活性化することができる。
【0070】
ニットコンポーネント140について説明された可融性ヤーンの例示的な材料および構造は、ニットコンポーネント440における可融性ヤーンについても同様に使用することができる。加えて、ニットコンポーネント440における可融性ヤーンの例は、ニットコンポーネント140に記載されたグリップヤーンであってもよく、グリップヤーンで形成されたニットコンポーネント440の部分は、グリップヤーンが存在しない、またはグリップヤーンの濃度が低いニットコンポーネント440の部分よりも摩擦係数が大きいものであってもよい。
【0071】
可融性ヤーン、または、いくつかの態様では、グリップヤーンは、閉じ込め領域452a~d内の外側向き面442上に編み込まれてもよい可融性ヤーンは、これらの閉じ込め領域452a~d内に引張要素450を含むコースを形成するように編まれてもよい。したがって、一旦、可融性ヤーンが活性化されると(例えば、加熱により)、可融性ヤーンは引張要素450に融着することができる。例えば、可融性ヤーンは、本明細書に記載されたように、熱可塑性エラストマーコーティングを有するコアを有するグリップヤーンであってもよく、加熱されると、グリップヤーンのコアは、熱可塑性エラストマーコーティングの融着によって引張要素450に融着される。加えて、本開示の態様は、閉じ込め領域(例えば、452a~dまたはそのいずれか)内に位置する隣接する引張要素450の間にコースを形成するために、外側向き面442上に可融性ヤーンを編むことを含むことができる。可融性ヤーンの可融性材料は、完全にまたは部分的に融着したときに、残りの編み構造の間の空間を満たすように流動可能である。閉じ込め領域452a~d内のコースに沿って可融性ヤーンを使用して融着領域を形成することは、引張要素450によって提供される閉じ込めまたはロックダウンを増加させるのに役立ち、追加のコースおよびポストニーディングプロセスの必要性を最小限にするかまたは排除しつつ、耐摩耗性および防水性の増加などの他の利点を提供する。追加コースの必要性を最小化または排除することは、アッパー104の軽量化を維持するのに役立つ。例えば、アッパー104の様々な態様は、ある態様では約50g以下の重量、ある態様では約40g以下の重量、およびある態様では約30g以下の重量を有することができる。加えて、本明細書で開示されているような可融性ヤーンがグリップヤーンである態様では、グリップヤーンのアッパー404を有する領域は、着用者がより良いボール制御を提供するために、例えばグローバルフットボールのようなボールをより良く感じて把持することを可能にすることができる。
【0072】
ニットコンポーネント440の一例は、可融性ヤーンを含むことができ、いくつかの態様では、閉じ込め領域452a~dを越えてニットコンポーネント440の他の部分にグリップヤーンを含むことができる。例えば、ニットコンポーネント440は、中足領域410内のアッパー404とソール構造402との間(例えば、内側416上の第1閉じ込め領域452aと第2閉じ込め領域452bとの間、および外側414上の第3閉じ込め領域452cと第4閉じ込め領域452dとの間)のバイトライン406に隣接する領域の外側向き面442にグリップヤーンを含むことができる。同様に、ニットコンポーネント440は、第2閉じ込め領域452bと第3閉じ込め領域452cとの間の前足領域408におけるバイトライン406に隣接する領域に、外側向き面442を形成するように編まれたグリップヤーンを含むことができる。閉じ込め領域452a~dの外側向き面442上の可融性ヤーンまたはグリップヤーンのこれらの追加領域は、アッパー404の一部のみを上方に延在させることができる。例えば、図4A図4Cに示されるように、封じ込め領域452aの外側向き面442上の可融性ヤーンまたはグリップヤーンは、バイトライン406から延在してもよいが、スロート領域426で内周434まで連続的に延在しない。このようにして、可融性ヤーンまたはグリップヤーンは、前足領域408において追加の引張要素450を有するコース内で編まれ得るが、可融性ヤーンまたはグリップヤーンが閉じ込め領域452a~d内で引張要素450の長さを延長することができるのと同じ方法で、可融性ヤーンまたはグリップヤーンがこれら追加の引張要素450の長さを延長しないようにする。
【0073】
ニットコンポーネント440のいくつかの例はまた、スロート領域426内の内周434に沿って外側向き面442上に編まれた可融性ヤーンまたはグリップヤーンを含むことができる。加えて、図4Dに示すように、踵領域412内の中央領域に沿って、可融性ヤーンまたはグリップヤーンを編むことができる。例えば、アッパー404は、外側414が踵領域412内の内側416に固定された踵縫い目を含み、可融性ヤーンまたはグリップヤーンが、縫い目に沿って、バイトライン406からニットコンポーネント440の足首開口部425まで外側向き面442に編み込まれてもよい。
【0074】
前述したように、グリップヤーンと1つ又は複数の追加ヤーンとがニットコンポーネント440内で同一のヤーンを形成するように、1つ又は複数の追加ヤーンをグリップヤーンと絡みあってもよい(インターループ)。様々な例では、グリップヤーンは、第1針床(例えば、前方の針床)上で編まれ、一方、グリップヤーンよりも融解または分解温度が高い高強力ヤーンは、第2針床(例えば、後方の針床)上で編まれ得る。引張要素450を有するコースでは、引張要素450は、ある態様では第1針床上にグリップヤーンで編み込まれ、他の態様では第1針床と第2針床との間にはめ込まれ得る。いくつかの態様では、第2針床で編まれた高強力ヤーンは、引張要素450とは異なる材料組成を有するが、第2針床で編まれた高強力ヤーンは、引張要素450と同じ材料組成を有することが予想される。外側向き面442にグリップヤーンが存在しないニットコンポーネント440の部分では、グリップヤーンはニットコンポーネント440の内側向き面に含まれる第2針床に編み込まれ、外側向き面442に含まれる第1針床に高強力ヤーンが編み込まれてもよい。
【0075】
本明細書に記載される履物のいくつかの態様は、編成後にニットコンポーネントの外側向き面の少なくとも一部に適用されるポリマー層を含み得る。図5は例示的なポリマー層500を示し、図6図5のポリマー層500を有する履物の物品600の例を示す。ポリマー層500は、例えば、ポリマーフィルム、ポリマーウェブ、ポリマー粉末、不織布を含む複数の構造を用いることができる。これらの構造のいずれにおいても、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルポリウレタンおよび/またはナイロンを含むポリマー層500には、複数のポリマー材料を使用することができる。ポリマー層500は熱硬化性ポリマー材料から形成されてもよいが、ポリマー層500の構造の多くは熱可塑性ポリマー材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン)から形成されており、ポリマー層500は加熱時に融着し、冷却時に固体状態に戻ることができる。これにより、熱可塑性高分子材料で形成された高分子コース500を、複数回のサイクルで融着、成形、冷却、再融着、再成形、再冷却することができる。熱可塑性ポリマー材料から形成されたポリマー層500は、以下にさらに説明するニットコンポーネントのようなテキスタイルにも溶着または熱接着することができる。
【0076】
図6は、アッパー604に固定されたソール構造602を含む履物の物品600に適用されるポリマー層500を示す。ポリマー層500は、ニットコンポーネント640の外側向き面642の少なくとも一部に隣接して配置され、ニットコンポーネント640に固定されてアッパー604の外側向き面の一部を形成する。ニットコンポーネント640は、任意のニットコンポーネント140、340、440、840、および1040を含む、本明細書に開示された任意のニットコンポーネントの形態とすることができる。ポリマー層500は、履物の物品600の前足領域608、中足領域610および踵領域612から連続的に、例えば、異なる態様で各領域の一部または全てをカバーすることができる。さらに、ポリマー層500は、アッパー604とソール構造602との間のバイトライン606からスロート領域626まで連続的に延びることができ、または異なる態様でその距離の一部を延びることができる。
【0077】
図5および図6に示すように、ポリマー層500は、ポリマー層500がアッパー604に適用されたときにニットコンポーネント640の下部を露出させるために、ポリマー層500を貫通して延びる開口510を含むことができる。このようにして、ポリマー層500が適用されるとき、開口510は、ニットコンポーネント640のある特性を利用することを可能にする。例えば、ニットコンポーネント140、440に関して説明されているように、ニットコンポーネント640の外側向き面642は、少なくとも部分的にグリップヤーンによって形成されてもよく、グリップヤーンによって形成された外側向き面642の領域は、グリップヤーンのない外側向き面642の領域よりも大きな摩擦係数を有してもよい。ポリマー層500内の開口510は、グリップヤーンのために摩擦係数の高い領域を露出させるように配置することができ、これにより、履物の物品600の着用者は、ニットコンポーネント640内のグリップヤーンを利用してボールをよりよく把持し、ボールの制御を向上させることができる。ポリマー層500内の開口510は、アッパー604の通気性および柔軟性を高めることもできる。
【0078】
他の態様では、ポリマー層(例えば、500に類似)は、アッパー部分を形成するニットコンポーネント分の異なる割合、例えば、ニットコンポーネント分の表面の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%を、例えば、ニットコンポーネント分全体にわたって、または各領域(例えば、前足、踵、内側および/または外側)にわたって覆うことができる。加えて、図51に示されたポリマー層500には、開口510が描かれているが、本明細書中のポリマー層を含むいずれの態様では、開口が存在してもよいが、グリップヤーンがポリマー層の周囲の領域に逆に露出するように、部分的または全体的に省略されてもよい。また、異なる態様では、ポリマー層は、例えば、熱処理されたグリップヤーンによって形成される領域の縁部と重なっていてもよい。
【0079】
図5を見ても、ポリマー層500の領域は、異なる分布の開口510を有することができる。例えば、図5および図6に示すように、穴510は、前足領域608および中足領域610の前側にのみ分布することができ、踵領域612および中足領域610の後側には存在しないことができる。言い換えれば、前足領域608に位置することができるニットコンポーネント640の第1領域は、ポリマー層500によってコーティングされた第1表面領域を有し、中足領域610および/または踵領域612に位置することができるニットコンポーネント640の第2領域は、ポリマー層500によってコーティングされた第1表面領域よりも大きい表面領域を有し得る。
【0080】
アッパー604の前方に穴510を集中させることにより、ボールと接触する可能性が最も高いグリップヤーン領域にアクセスすることができ、それ以外の領域では向上した耐摩耗性、防水性および安定性を維持することができる。ポリマー層500の更なる態様はグラフィックデザインを含むことができ、ポリマー層500の領域における可融性グリップ材料の露出から特に利益を受けない穴を省略することは、ポリマー層500上のグラフィックデザインをより多くの選択肢にすることができる。
【0081】
さらに、ポリマー層500内の開口510は、異なる大きさ(例えば、異なる直径)を有することができる。例えば、ポリマー層500は、アッパー604の前端618により近くに配置された開口510aのようなより大きな孔と、中足領域610および/またはスロート領域626により近くに配置された開口510bのようなより小さな孔とを含む。このようにして、ニットコンポーネント640のより大きな表面積を、前方足領域608および/またはアッパー604の前端618の近傍のポリマー層500の開口510を通して、ニットコンポーネント640のより後方の側面よりも露出させて、グリップヤーン編みを有する外側向き面642を露出させることができる。開口510の大きさをまたは代替的に変更することに加えて、ポリマー層500内の開口510の密度を異なる領域で変化させて、ニットコンポーネント640の一部の領域で他の領域よりも融解性の高いグリップ材料を露出させることができる。
【0082】
同様に、ポリマー層500の形状(例えば、ポリマー層500の周囲の形状)も、より大きな摩擦係数などの触感特性を提供するグリップヤーンで編まれた領域の露出が有利に生じ得る状況に基づいてもよい。例えば、アッパー604の1つまたは複数の領域において、ポリマー層500のいくつかの態様は、バイトライン606からスロート領域626まで連続して延びないことができる。図6のポリマー層500は、前足領域608においてバイトライン606から延びているが、スロート領域626の前端628までは完全には延びていない。代わりに、スロート領域626の前方または前方に位置するポリマー層500の部分は、部分的にのみバイトライン606から上部604まで延びている。いくつかの態様では、ポリマー層500は、バイトライン606からスロート領域626の前端628までの距離の約3分の1、バイトライン606から前端628までの距離の約半分、またはバイトライン606から前端628までの距離の約3分の2で終端することができる。ポリマー層500が前足領域608のバイトラインヤーン606からアッパー604の一部まで上方にのみ延びる点で、ニットコンポーネント640の追加表面積が露出しているので、グリップヤーンで編まれた領域を露出させることができ、触感特性を維持することができる。
【0083】
本開示の態様は、図6のアッパー604のようなポリマー層を有するアッパーを製造する方法を含むことができる。これは、ニットコンポーネント640を編むことを含むことができ、これは、ニットコンポーネント640を形成するために、少なくとも1つのニードルベッド上でグリップヤーンを編むことを含むことができ、グリップヤーンは、ニットコンポーネント640の外側向き面642の少なくとも一部を形成する。ニットコンポーネント640が編まれた後、少なくとも外側向き面642上のグリップヤーンは、ニットコンポーネント140、440に関して説明されているように、グリップヤーンが少なくとも部分的に融着し、グリップヤーンの非融着部分、第2ヤーンおよび/または引張要素と融着するように、加熱および/または圧力によって活性化され得る。一例では、通過蒸気処理中に加えられる熱源は、ニットコンポーネント640を、グリップヤーンの溶融温度よりも高く、ニットコンポーネント640内の第2ヤーンの融着または分解温度よりも低い温度に加熱することができる。グリップヤーンが少なくとも部分的に融着した後、ニットコンポーネント640は、グリップヤーンの融着した可融性材料が硬化するように冷却することができる。加えて、ニットコンポーネント640は、例えばニットコンポーネント640の開口を通って延びる間隔をあけたピンからニットコンポーネント640の加熱および冷却の間に、ニットコンポーネント640に張力を加えることを含むことができるジグに保持され得る。
【0084】
ポリマー層500は、ニットコンポーネント640内のグリップヤーンを活性化した後に、ニットコンポーネント640に固定することができる。このプロセスは、ニットコンポーネント640とポリマー層500とを圧縮して加熱して互いに接着する熱プレスの部分間で、ニットコンポーネント640をポリマー層500で覆うことによって行うことができる。履物の物品600の例では、ポリマー層500は、(1つまたは複数のポリマー材料から形成された)ポリマー組成物を有していてもよく、その溶融温度は、ニットコンポーネント640のグリップヤーン中の可融性材料の溶融温度よりも低い。加えて、ニットコンポーネント640を覆うポリマー層500を、ポリマー層500の溶融温度よりも高く、グリップヤーンの溶融温度よりも低い温度に加熱してもよい。このようにして、ポリマー層500がニットコンポーネント640に結合されたときに、ニットコンポーネント640内のグリップヤーンからの融着性ポリマー組成物が再活性化(例えば再融着)されることはない。ポリマー層500がニットコンポーネント640に結合された後、ポリマー層500およびニットコンポーネント640は、アッパー604の形状を形成し、ソール構造602に固定することができる。
【0085】
本開示の追加の態様は、アッパーおよび/またはアッパーのためのニットコンポーネントを製造する方法を含む。特に、いくつかの態様は、ストレートエッジを生成するために追加のコンポーネントを追加することなく、ニットコンポーネントのエッジ上の扇形を減少させる製造工程を含む。例えば、図7は、アッパー104、アッパー404、またはアッパー604を含むことができる履物の物品のアッパーを製造するための例示的な方法700を説明するフローチャートを示している。方法700で提供されるステップは単に例示的なものであり、方法700は、図示されていない追加のステップを含むことができる。図8は、方法700の間の一例のニットコンポーネント840を図示し、方法700のステップを図8を参照して例示することができる。
【0086】
ステップ710において、ニットコンポーネントは、編み機で編まれる。ステップ710は、自動編み機によって実行することができ、したがって、編み機と通信可能に結合された、または編み機に統合されたプロセッサまたはコンピュータを有する制御ユニットを使用して実行および/または制御することができる。例示的な態様では、ニットコンポーネントを編むための編み機は、Vベッドを形成するために互いに角度をなした2つの針床、前方および後方の針床を有するVベッドフラット編み機である。前針ベッドおよび後針ベッドは、共通平面を通って延びる複数の個別針をそれぞれ含むことができる。キャリッジは、針にヤーンを供給するために、標準フィーダおよび/またはコンビネーションフィーダなどのフィーダを前部針床および後部針床に沿って移動させることができる。一般に、標準フィーダとコンビネーションフィーダはどちらも編み、タック、および/またはフロートする針にヤーンを供給するが、コンビネーションフィーダは編み構造の中または編み構造の間に差し込むヤーンを供給することもある。本明細書ではフラットVベッド編機について説明するが、これは一例であり、他の編機を使用してニットコンポーネントまたはその一部を形成できることを理解されたい。
【0087】
さらに、ステップ710は、編機上でニットコンポーネントを半径方向に編むことを含んでもよい。ラジアルニットは、図1のニットコンポーネント340によって説明されるように行うことができる。
【0088】
3.加えて、ステップ710は、引張要素150および/または引張要素450に類似した引張要素をニットコンポーネントの編み構造に組み込むことを含むことができる。いくつかの例示的な態様では、引張要素は、編機のコンビネーションフィーダによってループなしで嵌め込まれ、編機の前ベッドおよび/または後ベッドに形成されたループの間に嵌め込まれる。他の例では、引張要素は、図9に関してさらに説明するように、コースに沿って引張要素を用いてループステッチとフロートステッチの繰り返しシーケンスを形成することによって組み込まれてもよい。加えて、ステップ710の実施形態は、ニットコンポーネント140、440、または640に関して説明された任意のヤーンタイプでニットコンポーネントを編むことを含み、ニットコンポーネント140、540、または640の任意の構成を有することができる。
【0089】
ステップ710で形成されたニットコンポーネントは、第1内周縁および第2内周縁を含むことができる。第1および第2内周縁は、スロート領域内にあり得る。例えば、第1内周縁は、スロート領域内のニットコンポーネントの内側縁とすることができ、第2内周縁は、スロート領域内のニットコンポーネントの外側縁とすることができる。このようにして、第1および第2内周縁を互いに略平行に延在させることができる。
【0090】
ステップ712で、第1および第2内周縁が一緒に固定される。例示的な態様では、第1および第2内周縁は、縫合によって一緒に固定される。例えば、図8は、第1内周縁832と第2内周縁834とが縫い合わせられて縫い目850を形成するジグ810上のニットコンポーネント840を示している。なお、ニットコンポーネント840はジグ810の上部に位置しているので、図8のニットコンポーネント840を通してのみジグ810の輪郭が見える。
【0091】
ステップ714において、ニットコンポーネントは、その周囲の一部に沿ってピンを用いてジグに固定される。ピンは、例えば、ニットコンポーネントの外周に沿って配置することができる。加えて、いくつかの態様では、ピンは、互いに固定されていない第4内周縁および第5の内周縁に沿って配置されてもよく、アッパーがニットコンポーネントから形成されると、ピンは、アッパーの足首開口部をまとめて形成してもよい。第1および第2内周縁832、834は、ジグに直接固定されていない。例えば、図8において、ニットコンポーネント840は、ニットコンポーネント840の外周824に沿って、第3内周縁836および第4内周縁838に沿って、ピン812を介してジグ810に固定されている。
【0092】
ステップ716において、ニットコンポーネントがジグに固定されると、ニットコンポーネント上で1つまたは複数のポストニーディングプロセスが実行され得る。例えば、ニットコンポーネント140、440および/または640に関して説明したように、ニットコンポーネントに編まれた可融性材料を少なくとも部分的に融着または軟化させるために、熱(例えば、蒸気)を加えることができる。追加的にまたは代替的に、別のポリマー層、例えば、ポリマー層500またはあるサイズの他の類似ポリマー層は、ニットコンポーネントがジグ上にあるときに、ニットコンポーネントに固定(例えば、熱的に結合)することができる。さらに、ニットコンポーネントは、ジグに固定されたままの状態で、熱的結合を硬化させるために冷却され得る。
【0093】
ステップ718では、ポストニーディングプロセスの後、ニットコンポーネントがジグに固定されると、第1および第2内周縁832、834が分離される。例えば、第1および第2内周縁832、834の間のステッチが除去されてもよい。ステップ718は、第1および第2内周縁832、834の間に形成された縫い目を切断するためにニットコンポーネントをダイカットすることによって行うことができ、いくつかの態様では、ニットコンポーネントにおいて靴ひものためのハトメを切断することもできる。このステップは、ニットコンポーネントがジグ上にある間に、またはニットコンポーネントがジグから取り外された後に実行することができる。
【0094】
さらに、方法700の態様は、靴型を使用して行うことができるアッパーの形状にニットコンポーネントを形成することも含むことができる。加えて、アッパーは、ストローベル、ミッドソール、および/またはアウトソールのような1つまたは複数のソール構造に固定することができる。
【0095】
方法700にしたがって編まれたコンポーネントからアッパーを形成することは、スロート領域に沿ったきれいで直線性を確保するのに役立つ。具体的には、ニットコンポーネントをジグに固定し、ポストニーディング熱処理を施す前に、第1および第2内周縁を、編み中に第1および第2内周縁に沿って自然に形成される可能性のある扇形または曲線を除去して、スロート領域内の第1および第2内周縁を縫合する。ニットコンポーネントを加熱する前に扇形が除去されていない場合、加熱工程は、可融性ヤーンを融着して冷却し、および/またはポリマー(表コース)を塗布することにより、エッジの扇形または曲線形状を維持することができる。スカラップは、ニットコンポーネントがジグにピン止めされるときに端から除去することができるが、スカラップを効果的に除去するには、通常、第1および第2内周縁に沿って多くのピンが必要となり、追加のピンの使用により製造時間が増加する。特に、第1および第2周縁は、第1および第2周縁を縫合する時間よりも、セクタを除去するのに十分な時間だけ固定される。
【0096】
本開示の更なる実施形態は、はめ込まれた引張要素をシミュレートする編み構造および編み方法に関する。特に、本明細書に記載の引張要素150、450のような引張要素は、引張要素自体がループ内で互いに絡み合うことなく、引張要素が他のヤーンで形成されたループの間に浮くように、および/または編み込まれるように、編み構造にインレイされてもよい。代替構造は、はめ込まれた引張要素によって提供され得る強度をシミュレートするように、引張要素を編み構造に編むことができる。
【0097】
本明細書で論じたニットコンポーネント、アッパー、および履物の物品のいくつかの態様では、ニットコンポーネントまたはその部分は、弾性特性を付与するためのフロート弾性ライナーのような弾性ライナーを含むことができる。一態様では、伸縮性ライナーは、ニットコンポーネントの内面に沿って位置決めおよび/またはフロートすることができる。
【0098】
さらに、本明細書で論じたニットコンポーネント、アッパー、および履物の物品のいくつかの態様では、グリップヤーンは、ニットコンポーネントの内面および/または外面の異なる領域、例えば、前足領域(例えば、つま先領域)に沿って、および/またはアッパーに沿って包含されうる。
【0099】
さらに、本明細書で論じたニットコンポーネント、アッパー、および履物の物品のいくつかの態様では、足先および/またはアッパーのような前足領域は、さらなる強化、耐久性および耐摩耗性および/または耐摩耗性を達成するために、限定されたまたは実質的に引張特性を有しないヤーンおよび/またはテキスタイル(例えば、ポリエステル、ナイロン)を含むことができる。これは、本明細書に記載された他の態様とともに使用することができる。
【0100】
図9は、シミュレーションまたはエミュレートされたダマシン構造を有する引張要素950を有する例示的なニットコンポーネント940の一部の拡大図である。特に、引張要素950の各コースは、一連のニットステッチ952(例えば、ニットステッチループ)とフロートステッチ954とを含み、このシーケンスは、コースの長さに沿って繰り返される。例示的な態様では、シーケンスは、複数のウェールにまたがるニットステッチおよびフロートステッチを含む。フロートステッチが通って延びるウェールの数は、2つのニットステッチの間を引張要素に沿って浮いている針床の針の数に対応することができる。各フロートステッチのウェール数は、3~8の範囲内、4~7の範囲内、5~6の範囲内であってよい。一例では、引張要素の各フロートピンは、5ウェールを通って延びる。このようにして、1本の針に形成された1本のニットステッチと、5本の針を貫通して延びる1本のフロートニットステッチとの編みシーケンスを用いて、引張要素を編むことができる。
【0101】
線形に沿って多数のフロートピンを引張要素で結合することにより、引張要素を編み構造にはめ込むときに与えられる強度と耐引張性をシミュレートするのに役立ちます。しかし、ニットステッチ(ループ)で引張エレメントを編むことがある場合、引張エレメントをよりまっすぐな線またはよりきれいな線でコースに沿って伸ばすことができる。さらに、はめ込まれる代わりに、引張要素をニットステッチおよびフロートに結合することは、コンビネーションフィーダまたは編み機上の従来のフィーダを用いて行うことができる。このようにして、この編み技術は、ニットコンポーネント940を形成するためにどのような編み機を使用することができるか、および/または特定の編み機をどのように使用するかについて、より大きな柔軟性を提供する。
【0102】
いくつかの態様では、引張要素950の隣接するコースにおけるニットステッチの位置は、異なる針位置に現れるようにオフセットされてもよい。例えば、引張要素950aの工程中のニットステッチが針位置2、8、14に位置する場合、隣接する引張要素950bの工程中のニットステッチは3、9、15に位置することができる。
【0103】
単純化のために、図9には、シミュレートされたはめ込まれた構造に従う引張要素950のみが概略的に示されているが、ニットコンポーネント内のコースは、引張要素950によって編まれた追加のヤーンを含むことができることが理解されるべきである。例えば、引張要素950は、別のヤーンが異なるステッチシーケンスを用いて編まれた第1針床上で編まれてもよい。第2ヤーンの例は、本開示で説明された可融性ヤーン(グリップヤーンを含む)高強力ヤーン、モノフィラメントヤーン、またはこれらの特徴の組み合わせを有するヤーンを含むことができる。第1ヤーンは、ニットステッチ、またはニットステッチとタックステッチとの組み合わせを使用して編まれ得る。いくつかの態様では、第1ヤーンは、第1針床上の複数の連続した針の上でループを形成し、次いで、第2針床上の針の上でプリーツを形成し、第1針床上の針の上でループを形成し続ける。第1のヤーンの第2の針床へのタックステッチは、引張要素950の浮きを所定の位置に維持するのに役立ち得る。コースによっては、第1ヤーンを第2針床にタックせずに第1針床のみで編まれてもよい。
【0104】
いくつかの態様では、ニットコンポーネント940は、第2針床上で編まれた第2ヤーンからも形成される。この第2のヤーンは、ニットステッチおよび/またはタックステッチを使用して編むことができる。いくつかの態様では、第1ヤーンが第1針床に編み込まれている針位置で、第2ヤーンが第2針床に編み込まれ、第1ヤーンが第2針床に編み込まれると、第2ヤーンが第1針床に編み込まれる。第2ヤーンの例は、本開示で説明された可融性ヤーン(グリップヤーンを含む)、高強力ヤーン、モノフィラメントヤーン、またはこれらの特徴の組み合わせを有するヤーンを含むことができる。一実施形態では、第1ヤーンはグリップヤーンであり、第2ヤーンは、第1ヤーン上の可融性材料よりも少なくとも高い融着または分解温度を有する高強力ヤーンである。
【0105】
図9のニットコンポーネント940は、外周924から共通部分(例えば、スロート領域926)に至るコースに沿って引張要素950が半径方向に延びるように半径方向に編まれている。しかし、引張要素950の同じ編みシーケンスは、非半径方向に編まれたニットコンポーネント、例えば、引張要素のコースが、共通部分に収束することなく、互いに平行に(例えば、内側から外側への軸に沿って平行に)延びているニットコンポーネントに適用されてもよいことを理解されたい。
【0106】
図10は、本発明の様々な態様による、引張要素1050を有する別の例示的なニットコンポーネント1040を図示する。ニットコンポーネント1040は、履物の物品100または履物の物品400のような履物のアッパーを形成するために使用することができる。ニットコンポーネント1040は、引張要素1050に関して以下に示す以外に、ニットコンポーネント140、340、440、640、840および940を含む、本明細書で開示される他のニットコンポーネントと共に説明される任意の特徴を有することができる。
【0107】
ニットコンポーネント1040内の引張要素1050は、編組ケーブルなどのケーブル、またはニットコンポーネント1040を形成する他のストランドの断面よりも実質的に大きい直径を有する断面を有するストランドを用いて形成され得る。加えて、このような構造を有する引張要素1050は、ループを形成することなく、他のヤーンの互いにループされたループの間にはめ込まれるのではなく、編み(例えば、引張要素150を隣接するヤーンのループと相互にループすること)によって編み構造に組み込むことができる。例えば、引張要素1050は、図9の引張要素950の編みシーケンスにしたがって編むことができる。結果として、引張要素1050は、ニットコンポーネント1040がアッパーに形成されるときに、足を受け入れる空隙から遠ざかるように延びる隆起構造を形成することができる。ニットコンポーネント1040がアッパーに装着されたときに、隆起した引張要素1050がボール(例えば、グローバルフットボール)に接触すると、隆起した引張要素1050はより多くの回転を発生させることができる。いくつかの態様では、図5および図6に関連して説明されたポリマー層500の態様を含むことができるポリマー層(例えば、スキン)を、ニットコンポーネント1040に適用することができ、かつ、隆起した引張要素1050の少なくとも一部に適用することができる。
【0108】
グリップヤーンの他の特性例
上述のように、本明細書で開示されるニットコンポーネントは、別個に記載されたヤーン(上記ではグリップヤーンと称する)の選択的な結合、または他の材料(例えば、本明細書でグリップヤーンと称する繊維、フィラメントおよびヤーンに属さない第2ヤーンまたは引張要素)との組み合わせを含むことができる。特定の態様では、本明細書に記載のヤーンおよび/または繊維は、特定の機能を提供するために使用することができる。例えば、特定の態様では、本明細書に記載の繊維またはヤーンを溶融して、防水性または耐水性、封じ込め特性、特定のトラクション特性、「ボールタッチ」特性、そしてより高い摩擦係数を提供する。上記で開示したグリップヤーンの材質および特性に加えて、グリップヤーンの例には以下の特性が見出される。
【0109】
一態様では、本明細書に記載のグリップヤーンは、約0.6~約0.9kgの作用力、または約0.7~約0.9kgの作用力、または約0.8~約0.9kgの作用力、または0.9kgを超える作用力を有する破断強度を有する。
【0110】
本発明のグリップヤーンは、グリップ材を含むか、またはこれを主成分とするものである。挟持材は、1種または複数種の熱可塑性エラストマーを含むか、または実質的に構成されているので、弾性を有する熱可塑性材料である。いくつかの態様では、グリップ材料は115℃未満、110℃未満、または100℃未満の融解温度を有する。
【0111】
グリップ材料を含むかまたは主体とするグリップヤーンは、グリップ材料のコーティングを含むか、または1種または複数種のグリップ繊維を含み、個々のグリップ繊維はグリップ材料を含むか、またはグリップ材料コーティングとグリップ繊維とを含むものと理解される。グリップヤーンのグリップ繊維は、複数本の短いグリップ繊維を含むことができ、複数本の長いグリップフィラメントを含むことができ、単一の長いグリップフィラメント(すなわち、モノフィラメント)を含むことができ、または短いグリップ繊維と1つ又は複数の長いフィラメントとの組み合わせを含むことができる。同様に、グリップヤーンは、単一のグリップフィラメントを含むことができ、複数のグリップ繊維またはグリップフィラメントを含むことができ、または1つ又は複数のコアヤーンを含むことができる。グリップヤーンが1つまたは複数のコアヤーンを含む場合、1つまたは複数のコアヤーンの各々は、少なくとも部分的にグリップ材料で個別にコーティングされていてもよい。また、グリップヤーンが1つ又は複数のコアヤーンからなる場合には、1つ又は複数のコアヤーンが撚ヤーンを形成してもよく、撚ヤーンが少なくとも部分的にグリップ材料でコーティングされていてもよい。
【0112】
グリップヤーンが実質的にグリップ繊維からなる場合、グリップヤーン中に存在する繊維の95重量%以上がグリップ繊維である。他の態様では、グリップヤーンが2種以上の繊維を含む場合、2種以上の繊維のうちの少なくとも1種がグリップ繊維である。グリップヤーンが2種以上の繊維を含む場合、グリップヤーンは、グリップヤーン中に存在する繊維の10重量%以上、25重量%以上、50重量%以上、75重量%以上を構成することができる。
【0113】
一態様では、グリップヤーンは、グリップ材料でコーティングされたコアを含む。グリップヤーンコアはコア材料を含み、コア材料は異なるタイプのポリマーを含み、および/またはグリップ材料とは異なる特性を有する。コア材は、1種または複数種のポリマーを含む高分子材料であってもよいし、非高分子材料であってもよい。コア材がポリマーである場合、コア材中に存在するポリマーは、挟持材中に存在するポリマーとは異なる種類のポリマーであってもよい。例えば、コア材は、1つまたは複数のポリエステル単独重合体またはポリアミド単独重合体を含むことができ、グリップ材は、ポリエステル単独重合体またはポリアミド単独重合体を実質的に含まないことができる。コア材が熱可塑性材料である場合、コア材はグリップ材料よりも高い撓みまたは溶融温度を有することができる。コア材が非ポリマーまたは熱硬化性材料である場合、コア材は、グリップ材の溶融温度よりも高い劣化温度を有していてもよい。コア材料は、非弾性であってもよいし、弾性が小さい(例えば、伸び率が低い)ものであってもよい。
【0114】
一態様では、グリップヤーンのコアは、1つまたは複数の繊維を含む。この点で、グリップ材料は、コアを全体的にまたは部分的にコーティングすることができる。1つ又は複数のコア繊維は、複数本の短繊維、例えば単ヤーンに紡ヤーンされた複数本の短繊維、または複数本のヤーンを撚り合わせた複数本の短繊維に紡ヤーンされた複数本の短繊維であってもよい。1つ又は複数のコア繊維は、複数本の長繊維であってもよい。複数の長尺フィラメントを整列させたり、整列させて絡ませたりしてもよい。1つ又は複数のコア繊維は、単一の長尺モノフィラメントであってもよい。
【0115】
本発明の一態様によれば、グリップヤーンはコーテッドヤーンであり、コアヤーンは、コア材料としての第2ポリマー組成物を含み、コアヤーン上にコーティングが配置され、コーティングは、グリップ材料としての第1ポリマー組成物を含み、第1ポリマー組成物は、グリップ材料溶融温度を有する。一態様では、コア材料は熱可塑性プラスチックであり、第1ポリマー組成物の把持溶融温度よりも少なくとも20℃高い、少なくとも50℃高い、少なくとも75℃高い、または少なくとも100℃高い変形温度を有する。グリップ材料は、1つまたは複数の熱可塑性エラストマーを含むか、または本質的にそれらからなる。任意に、グリップ材料は、1つまたは複数の熱可塑性エラストマーに加えて、1つまたは複数の追加のポリマー、または1つまたは複数の追加の非ポリマー添加剤、またはその両方を含むことができる。グリップ材料の1つまたは複数の熱可塑性エラストマーは、1つまたは複数の熱可塑性ポリウレタン(TPU)エラストマー、1つまたは複数の熱可塑性スチレンエラストマー、またはその両方の組み合わせを含むことができる。1種または複数種の熱可塑性エラストマーは、2種以上の熱可塑性エラストマー、例えば、2種以上のTPUエラストマー、2種以上のスチレン系エラストマー、2種以上のTPUエラストマーとスチレン系エラストマーとの組み合わせ、または2種以上のスチレン系エラストマーとTPU系エラストマーとの組み合わせである。
【0116】
本明細書で使用されるように、ポリマー組成物(例えば、グリップ組成物またはコア組成物)は、ポリマー組成物中に存在する全てのポリマーからなるポリマー成分を含むものと理解される。ポリマー成分は、単一のポリマーで構成されていてもよいし、2種類以上のポリマーで構成されていてもよい。一態様では、ポリマー成分は、1つまたは複数の単一タイプのポリマーからなる。例えば、コア材のポリマー成分は、1種または複数種のポリエステル、1種または複数種のポリエーテル、1種または複数種のポリアミド、1種または複数種のポリウレタン、1種または複数種のポリオレフィンで構成することができる。コア材のポリマー成分は、1種または複数種のポリエステルから構成されていてもよい。コア材のポリマー成分は、ポリエチレンテレフタレート(PET)であってもよい。グリップ材料のポリマー成分は、1種または複数種のTPUエラストマー、または1種または複数種のスチレンエラストマーで構成されていてもよい。グリップ材料のポリマー成分は、1種または複数種のポリエステルであるポリウレタンエラストマーから構成されていてもよい。グリップ材料のポリマー成分は、1つまたは複数のスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)エラストマーで構成されていてもよい。
【0117】
コア繊維またはコアヤーンのコア材は、コア繊維またはコアヤーンにグリップ材料を塗布する温度で強度を保持するものであってもよい。挟持材でコーティングされたコア繊維および/またはコアヤーンを形成する繊維は、天然繊維、再生繊維またはフィラメント、合成繊維またはフィラメントであってもよい。一態様では、コア繊維またはコアヤーンは、熱可塑性ではなく、したがって分解温度を有するが融着または変形温度を有さない綿、絹、羊毛またはレーヨンのような天然または再生材料を含むか、または実質的にからなり得る。別の態様では、コア繊維またはコアヤーンのコア材料は、熱硬化性ポリウレタンまたは熱硬化性ポリウレアのような1つまたは複数の合成熱硬化性材料を含むか、または実質的に含んでおり、これらも分解温度を有するが、融着または変形温度を有しない。さらに別の態様では、コア繊維またはコアヤーンのコア材は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、それらの共重合体およびそれらの混合物のような1つまたは複数の合成熱可塑性プラスチックを含むか、または実質的にからなり得る。一態様では、コア材料は、1つまたは複数のポリエステル、または1つまたは複数のポリアミドを含むか、または本質的にそれらからなる。一例では、1つまたは複数のポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むか、または本質的にポリエチレンテレフタレート(PET)からなる。一態様では、コア材料は熱可塑性材料であり、200℃を超えるか、220℃を超えるか、240℃を超えるか、または約200℃~約300℃までの変形温度を有する。
【0118】
一態様では、コアヤーンは、約100デニール~約300デニール、または約100デニール~約250デニール、または約100デニール~約200デニール、または約100デニール~150デニール、または約150デニール~300デニール、または約200デニール~300デニール、または約250デニール~300デニールのヤーン密度を有する。一態様では、コアヤーンは、約60μm~200μm、約60μm~160μm、約60μm~120μm、約60μm~100μm、約100μm~200μm、または約140μm~200μmの厚さを有する。コアヤーンは、1種または複数種の天然繊維または再生繊維を含むか、または実質的にからなり得る。コアヤーンは、1種または複数種の合成ポリマーを含むコア材料を含むか、または実質的にからなり得る。1つまたは複数の合成ポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびそれらの組み合わせを含むことができる。1つまたは複数のポリウレタンは、ポリウレタンテレフタレート(PET)を含むか、または本質的にポリウレタンテレフタレート(PET)からなり得る。コアヤーンまたはコア材、またはその両方の分解または変形温度は、ジグ材の溶融温度よりも20℃以上、50℃以上、75℃以上、または100℃以上高くすることができる。コアヤーンまたはコアヤーン材料、またはその両方は、200℃を超える温度、220℃を超える温度、240℃を超える温度、または約200℃~約300℃の温度の間の分解または変形温度を有することができる。
【0119】
一態様では、コアヤーンは、約100デニール~約200デニール、約125デニール~約175デニール、または約150デニール~160デニールの厚さを有する。一態様では、コアヤーンは、約20%~約30%、約22%~約30%、約24%~約30%、約20%~約28%、または約20%~約26%の伸びを有する。一態様では、コアヤーンは、約1グラム/デニール~約10グラム/デニール、約3グラム/デニール~約10グラム/デニール、約5グラム/デニール~約10グラム/デニール、約1グラム/デニール~約7グラム/デニール、または約1グラム/デニール~約5グラム/デニールの靱性を有する。コアヤーンは、1種または複数種の天然繊維または再生繊維を含むか、または実質的にからなり得る。コアヤーンは、1種または複数種の合成ポリマーを含むコア材料を含むか、または実質的にからなり得る。1つまたは複数の合成ポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびそれらの組み合わせを含むことができる。1つまたは複数のポリウレタンは、テレフタル酸ポリウレタン(PET)を含むか、または実質的にからなり得る。コアヤーンまたはコア材、またはその両方の分解または変形温度は、ジグ材の溶融温度よりも20℃以上、50℃以上、75℃以上、または100℃以上高くすることができる。コアヤーンまたはコアヤーン材料、またはその両方は、200℃を超える温度、220℃を超える温度、240℃を超える温度、または約200℃~約300℃の温度の間の分解または変形温度を有することができる。
【0120】
一態様では、ジグヤーンは、コーティング(例えば、コーティング材料としての第1ポリマー組成物)をコアヤーンにループダイまたはボアを介して押し出して、コアヤーンの周りで軸方向に中心になるように製造することができる。コアヤーンに塗布されるコーティングの厚さは、ヤーンの用途に応じて変化させることができる。一態様では、グリップヤーンは、最大1.00mm、または最大約0.75mm、または最大約0.5mm、または最大約0.25mm、または最大約0.2mm、または最大約0.1mmの公称平均外径を有する。一方、コーティングは、約0.1mm~約1.00mm、または約0.1mm~約0.80mm、または約0.1mm~約0.60mmの公称平均外径を有する。一方、ヤーン上のコーティングは、約50μm~約200μm、または約50μm~約150μm、または約50μm~約125μmの平均半径方向コーティング厚さを有する。コアヤーンは、1種または複数種の天然繊維または再生繊維を含むか、または実質的にからなり得る。コアヤーンは、1種または複数種の合成ポリマーを含むコア材料を含むか、または実質的にからなり得る。1つまたは複数の合成ポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリオレフィン、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。1つまたは複数のポリウレタンは、テレフタル酸ポリウレタン(PET)を含むか、または実質的にからなり得る。コアヤーンまたはコア材、またはその両方の分解または変形温度は、ジグ材の溶融温度よりも20℃以上、50℃以上、75℃以上、または100℃以上高くすることができる。コアヤーンまたはコアヤーン材料、またはその両方は、200℃を超える温度、220℃を超える温度、240℃を超える温度、または約200℃~約300℃の温度の間の分解または変形温度を有することができる。
【0121】
一態様では、コアヤーンは、約100デニール~約200デニール、約125デニール~約175デニール、または約150デニール~160デニールの厚さを有し、コーティングは、約0.10mm~約0.50mm、または約0.10mm~約0.25mm、または約0.10mm~約0.20mmの公称平均外径を有する。一態様では、コアヤーンは、約100デニール~約200デニール、約125デニール~約175デニール、または約150デニール~約160デニールの厚さを有し、コーティングは、約0.10mm~約0.50mm、または約0.10mm~約0.25mm、または約0.10mm~約0.20mmの公称平均外径を有する。コアヤーンは、1種または複数種の天然繊維または再生繊維を含むか、または実質的にからなり得る。コアヤーンは、1種または複数種の合成ポリマーを含むコア材料を含むか、または実質的にからなり得る。1つまたは複数の合成ポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびそれらの組み合わせを含むことができる。1つまたは複数のポリウレタンは、テレフタル酸ポリウレタン(PET)を含むか、または実質的にからなり得る。コアヤーンまたはコア材、またはその両方の分解または変形温度は、ジグ材の溶融温度よりも20℃以上、50℃以上、75℃以上、または100℃以上高くすることができる。コアヤーンまたはコアヤーン材料、またはその両方は、200℃を超える温度、220℃を超える温度、240℃を超える温度、または約200℃~約300℃の温度の間の分解または変形温度を有することができる。
【0122】
更なる態様では、把持されたヤーンの正味の総直径は、約0.2~約0.6mm、または約0.3~約0.5mm、または約0.4~約0.6mmである。いくつかの態様では、鉱油またはシリコーン油を含むがこれに限定されない潤滑油が、約0.5~約2重量%、または約0.5~約1.5重量%、または約0.5~約1重量%でヤーン上に存在する。いくつかの態様では、テキスタイルを形成する前または間に、潤滑組成物が融着性グリップヤーンの表面に塗布される。いくつかの態様では、熱可塑性組成物と潤滑性組成物は、潤滑性組成物の存在下で熱可塑性組成物を還流して再硬化するときに混和する。還流および再硬化後、還流および硬化組成物は潤滑組成物を含むことができる。
【0123】
更なる態様では、グリップヤーンの正味総径が0.2~0.6mm、0.3~0.5mm、0.4~0.6mmである。
【0124】
いくつかの態様では、鉱油またはシリコーン油を含むがこれに限定されない潤滑油が、約0.5重量%~約2重量%、または約0.5重量%~約1.5重量%、または約0.5重量%~約1重量%でヤーン上に存在する。いくつかの態様では、テキスタイルを形成する前または間に、グリップヤーンの表面に潤滑組成物を適用する。いくつかの態様では、熱可塑性組成物と潤滑性組成物とは、潤滑性組成物の存在下で熱可塑性組成物をリフローおよび再硬化させる際に混和する。還流および再硬化後、リフローおよび硬化された組成物は、潤滑組成物を含むことができる。
【0125】
一態様では、コアヤーンは、約8%~約30%、約10%~約30%、約15%~約30%、約20%~約30%、約10%~約25%、または約10%~約20%の伸びを有する。一態様では、コアヤーンは、約1グラム/デニール~約10グラム/デニール、約2グラム/デニール~約8グラム/デニール、約4グラム/デニール~約8グラム/デニール、または約2グラム/デニール~約6グラム/デニールの靭性を有する。コアヤーンは、1種または複数種の天然繊維または再生繊維を含むか、または実質的にからなり得る。コアヤーンは、1種または複数種の合成ポリマーを含むコア材料を含むか、または実質的にからなり得る。1つまたは複数の合成ポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリオレフィン、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。1つまたは複数のポリウレタンは、テレフタル酸ポリウレタン(PET)を含むか、または実質的にからなり得る。コアヤーンまたはコア材、またはその両方の分解または変形温度は、ジグ材の溶融温度よりも20℃以上、50℃以上、75℃以上、または100℃以上高くすることができる。コアヤーンまたはコアヤーン材料、またはその両方は、200℃を超える温度、220℃を超える温度、240℃を超える温度、または約200℃~約300℃の温度の間の分解または変形温度を有することができる。
【0126】
一態様では、グリップ材料の溶融温度は、約100℃~約210℃、任意に約110℃~約195℃、約120℃~約180℃、または約120℃~約170℃である。一方、グリップ材料の溶融温度は、約120℃より大きく約170℃未満であり、任意に約130℃より大きく約160℃未満である。
【0127】
更なる態様では、グリップ材料の溶融温度が摂氏100度を超えると、物品が輸送中または貯蔵中などの比較的高い温度に一時的に遭遇した場合に、コーティング材料によって形成されたまたはコーティング材料が結合された物品の完全性が維持される。別の態様では、グリップ材料の溶融温度が摂氏100度よりも大きいかまたは摂氏120度よりも大きい場合、グリップ材料である第1ポリマー組成物によって形成され、または組み込まれた物品は、充填、表面領域、または快適なフィーチャ、および身体にフィットするフィーチャのために物品に組み込まれたより高い溶融温度(例えば、ポリエステル)の成分を融着または不用意に融着することなく、蒸解され得る。
【0128】
一態様では、グリップ材料の溶融温度が摂氏120度より高い場合、より高い変形温度または溶融温度を有する材料(例えば、第1または第2のポリマー組成物)を組み込んだ物品は、熱い舗装面、コート面、人工または天然のサッカー場、または同様の競技面、トラック、またはフィールドのグリップ材料の使用中に軟化および/または粘着性になる可能性が低い。一態様では、第1または第2ポリマー組成物の溶融温度が高く、その融着エンタルピーが大きいほど、第1または第2ポリマー組成物からなる履物または運動器具を含むまたは含む物品が、接触加熱オフセット、摩擦面加熱イベント、または環境加熱オフセットに耐える能力が大きくなる。一態様では、このような熱オフセットは、物品が熱い地面、コートまたは芝の表面に接触したとき、または物品が地面、靴、ボールなどの他の表面に接触したときの摩擦または磨耗による摩擦加熱によって生じることがある。
【0129】
別の態様では、グリップ材料の溶融温度が約210℃未満、200℃未満、190℃未満、180℃未満、175℃未満であるが、120℃以上、110℃以上、103℃以上である場合、グリップ材料でコーティングされたヤーンは、所望のデザイン的および美的特徴を短時間で付与するために、そこから編まれたテキスタイルの所定の領域を成形および/または熱成形するために融着することができる。
【0130】
一態様では、140℃未満のグリップ材料の溶融温度は、パッケージ染色ヤーン(例えば、履物または他の物品に組み込まれたパッケージ染色ポリエステルヤーン)からの染料の移行の危険性を防止または軽減する。更なる態様では、パッケージ染色されたヤーンまたは繊維からの染料の移行は、拡散が制限されたプロセスであり、例えば熱成形中に140度を超える温度に短時間曝されても、履物または他の物品の外観を広範囲に損傷したり、変色したり、または許容できないような外観にしたりすることがない。しかし、別の態様では、グリップ材料の溶融温度が摂氏約210度よりも大きい場合、熱損傷および染料移行が生じる可能性がある。
【0131】
一態様では、高い融着エンタルピーは、ポリマーまたはポリマー材料が完全に融着して良好に流動することを確実にするために、より長い加熱時間が必要であることを示している。別の態様では、低い融着エンタルピーは、十分な融着と良好な流れを確保するために、より少ない加熱時間を必要とする。
【0132】
更なる態様では、高い冷却発熱は、融着から固体への急速な遷移を示す。一方、再結晶温度が高いことは、ポリマーまたは高分子材料がより高い温度で硬化できることを示している。一方、高温凝固は熱成形に有利である。一態様では、摂氏95度を超える再結晶は、熱成形後の急速な凝固を促進し、サイクル時間を短縮し、冷却要件を低減し、組み立ておよび使用中のシュー部品の安定性を向上させる。
【0133】
一態様では、本明細書で開示されるグリップ材料の粘度は、グリップ材料を含む物品の特性および加工に影響を与える。更なる態様では、低いせん断速度(例えば、1カウント秒未満)での高い粘度は、流れ、変位、およびより固体に似た挙動に対する抵抗を示す。別の態様では、より高いせん断速度(例えば、10数秒より大きい)での低粘度は、高速押出を容易にする。一態様では、粘度の増加に伴い、コアヤーンまたはコーティングされたヤーンを含むテキスタイル領域をコーティングするために十分に流動および変形する能力が困難になる。別の態様では、高いせん断減肉指数を示す材料(例えば、粘度が10または100の秒速で1の秒速よりも低いもの)は押し出すことが困難であり、過度に高い速度で塗布または押し出すと融着して破壊される可能性がある。
【0134】
特定の態様では、グリップヤーンは1グラム/デニールを超える靭性を示す。一態様では、グリップヤーンは約1グラム/デニール~約5グラム/デニールの靭性を示す。1つまたは複数の態様では、グリップヤーンは、約1.5グラム/デニール~約4.5グラム/デニールの靭性を示す。一態様では、グリップヤーンは、約2グラム/デニール~約4.5グラム/デニールの靭性を示す。
【0135】
ここで使用される「靭性」とは、繊維またはヤーンの特性を指し、以下に説明するそれぞれの試験方法およびサンプリング手順を使用して決定される。具体的には、ヤーンサンプルの靭性と伸びは、EN ISO 2062に詳述されている試験方法に従って、予荷重を5グラムに設定して測定される。伸びは、破断前に適用された最大引張力値で記録される。靱性は、試験片を破壊するのに必要な荷重と試験片の線密度の比として計算できる。
【0136】
特定の態様では、市販の編み機での使用に適したグリップヤーンを利用することが望ましい場合がある。50℃での独立したヤーンの収縮は、商業編み機で使用するのに適したヤーンを予測することができる特性の1つである。特定の態様では、20℃から70℃に加熱したときに、グリップヤーンは15%未満の自立収縮を示すことができる。様々な態様では、グリップヤーンは、摂氏20度から摂氏70度に加熱されたときに、約0%~約60%、約0%~約30%、または約0%~約15%の自立収縮を示すことができる。本明細書で使用される用語「自立収縮」とは、次のように説明されるヤーンの特性および対応する試験方法を意味する:
ヤーン収縮試験。ヤーンの自立収縮率は以下の方法で求めることができる。ヤーンサンプルは、下記のヤーンサンプリング手順に従って準備され、ほぼ室温(例えば摂氏20度)で最小限の張力で約30ミリメートルの長さに切断される。切断されたサンプルは、摂氏50度または摂氏70度のオーブンに90秒間置かれる。サンプルはオーブンから取り出され、測定される。収縮率は、サンプルのオーブン前後の測定値を用いて、オーブン前後の測定値をオーブン前後の測定値で除算した後、100を乗算して算出される。
【0137】
ヤーンサンプリング手順試験対象のヤーンは、試験前に室温(20℃~24℃)で24時間保管される。最初の3メートルの材料が捨てられていた。サンプルヤーンは、室温程度(例えば、摂氏20度)で、最小の張力で約30mmの長さに切断される。
【0138】
1つまたは複数の態様では、70℃におけるヤーンの自立収縮は、ヤーンの物理的構造が実質的に変化することなく、ある種の環境条件にさらされるヤーンの能力の有用な指標であり得る。特定の態様では、20℃から70℃に加熱したとき、グリップヤーンは約0%~約60%の自立収縮を示す。1つまたは複数の態様では、グリップヤーンは、20℃から70℃に加熱されたときに約0%~約30%の自立収縮を示す。一態様では、グリップヤーンは、摂氏20度から摂氏70度に加熱されたときに、約0%~約20%の自立収縮を示す。
【0139】
上記のように、特定の態様では、グリップ材料(例えば、第1ポリマー組成物)とコア材料(例えば、第2ポリマー組成物)とは異なる特性を有する場合がある。様々な態様では、これらの異なる特性は、本明細書に記載されたグリップ繊維およびヤーンが、熱成形工程の間に融着および流動し、次いで、熱成形工程の前のそれらの構造とは異なる構造(例えば、グリップヤーンからリフローされたグリップ材料として熱成形される)に冷却および硬化することを可能にするが、熱成形工程が未コーティング繊維またはヤーンの融着または変形温度よりも低い温度で行われる場合、未コーティング繊維またはヤーンは、この工程の間に変形または融着せず、その構造(例えば、繊維またはヤーンとして)を維持することができる。これらの態様では、熱成形中にグリップ繊維またはヤーンから形成されたリフローグリップ材料は、未変更の構造(例えば、ヤーンまたは繊維)に一体的に結合されてもよく、これは、履物の物品上の特定の点について、3次元構造および/または他の特性を提供することができる。
【0140】
本発明のグリップヤーン用グリップ材料は、1種または複数種の熱可塑性エラストマーを含有することを特徴とする。一態様では、「エラストマー」とは、ASTMD-412-98を用いて測定した25℃での破断伸びが400%を超えるものと定義されている。別の態様では、エラストマーは、10~35kg(kgf)、または約10~約25kg、または約10~約20kg、または約15~約35kg、または約20~約30kgの破壊強度を有するプラークとして形成される。別の態様では、引張破断強度または極限強度は、断面積について調整した場合、1平方センチメートル当たり70キログラム力を超えるか、または1平方センチメートル当たり80キログラム力を超える。一方、エラストマープラークは、450%から800%、または500から800%、または500から750%、または600から750%、または450から700%の破断ひずみを有する。別の態様では、エラストマープラークの100%ひずみ時の荷重は、1mm当たり3~8kg、1mm当たり約3~約7kg、1mm当たり約3.5~約6.5kg、1mm当たり約4~約5kgである。
【0141】
一方、エラストマープラークの靭性は、850Kg-mm~2200Kg-mm、または約850Kg-mm~約2000Kg-mm、または約900Kg-mm~約1750Kg-mm、または約1000Kg-mm~約1500Kg-mm、または約1500Kg-mm~約2000Kg-mmである。一態様では、エラストマープラークの剛性は、約35~約155、または約50~約150、または約50~約100、または約50~約75、または約60~約155、または約80~約150である。さらに別の態様では、エラストマープラークの引き裂き強度は、約35~約80、または約35~約75、または約40~約60、または約45~約50である。
【0142】
態様では、例示的な熱可塑性エラストマーは、ホモポリマーおよびコポリマーを含む。「ポリマー」という用語は、ホモポリマーおよびコポリマーを含む1つまたは複数のモノマーの種類を有する重合分子を意味する。「共重合体」という用語は、三元共重合体(3種類の単量体を有する共重合体)を含む、2種類以上の単量体を有する重合体を意味する。特定の態様では、熱可塑性エラストマーはランダム共重合体である。一方、熱可塑性エラストマーはブロックダウン共重合体である。例えば、熱可塑性エラストマーは、比較的硬い同一化学構造の重合体単位の繰り返しブロック(セグメント)(ハードセグメント)と、比較的軟らかい重合体セグメントの繰り返しブロック(ソフトセグメント)とを有するブロック共重合体であってもよい。様々な態様では、ハードセグメントとソフトセグメントの繰り返しを有するブロックコポリマーを含むブロックコポリマーにおいて、物理的架橋は、ブロック内、ブロック間、またはブロック内とブロック間の両方に存在することができる。ハードセグメントの具体例としては、イソシアネートセグメントやポリアミドセグメントが挙げられる。ソフトセグメントの具体例としては、ポリエーテルセグメントおよびポリエステルセグメントが挙げられる。本明細書で使用されるように、ポリマーセグメントは、イソシアネートセグメント、ポリアミドセグメント、ポリエーテルセグメント、ポリエステルセグメントなどの特定のタイプのポリマーセグメントであってもよい。フラグメントの化学構造は、記載された化学構造に由来することが理解されるべきである。例えば、イソシアネートセグメントは、イソシアネート官能基を含む重合単位である。特定の化学構造のポリマーフラグメントのブロックに言及する場合、ブロックは、最大10モルパーセントの他の化学構造のフラグメントを含むことができる。例えば、本明細書で使用されるように、ポリエーテルセグメントは、最大10モル%の非ポリエーテルセグメントを含むものとして理解される。
【0143】
一態様では、グリップ材料(例えば、第1ポリマー組成物)は、グリップ材料中に存在するすべてのポリマーからなるポリマー成分を含む。任意に、ポリマー成分は、2種以上のポリマーを含むことができる。
【0144】
2つ以上のポリマーが、同一の一般的なポリマー構造に属する化学構造を有する単一セグメントを共有している場合には、同一の「タイプ」のポリマー(例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン等)とみなすことができる。一態様では、共有される単一セグメントは、ポリエステルであってもよく、ポリアミドであってもよく、ポリオレフィンであってもよく、ポリウレタンであってもよく、ポリスチレンなどであってもよい。この態様によれば、ポリマー成分は、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレンなどとして記述することができる。2種以上のポリマーのいずれも、同一の一般的なポリマー構造に属する化学構造を有するセグメントを共有していない場合には、互いに異なると考えてもよい。
【0145】
別の態様では、2種以上のポリマーは、同じ化学構造を有するセグメントを含むので、化学構造を共有することができるが、各ポリマーは異なる数のセグメントを含むことができ、したがってポリマーの分子量は異なる、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)の形態であるか、ナイロン6、6の形態であるか、ポリエステル-ポリウレタン共重合体の形態であるか、またはスチレンエチレン/ブチレンスチレン(SEBS)共重合体の形態であるか等である。この態様によれば、ポリマー成分は、PET、ナイロン6、6、ポリエステル-ポリウレタン、SEBSコポリマーなどとして記述することができる。
【0146】
種々の態様では、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性コポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリエーテルブロックダウンアミドエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィン系共重合体エラストマー、熱可塑性スチレン共重合体エラストマー、熱可塑性アイオノマーエラストマー、またはこれらの任意の組み合わせのうちの1つまたは複数を含むことができる。一態様では、第1ポリマー組成物は、熱可塑性弾性スチレン共重合体を含む。更なる態様では、熱可塑性弾性スチレン共重合体は、スチレンブタジエンスチレン(SBS)ブロックダウンコポリマー、スチレンエチレン/ブチレンスチレン(SEBS)コポリマー、スチレンアクリロニトリル(SAN)コポリマー、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。一態様では、グリップ材料は、熱可塑性弾性ポリエステルポリウレタン、熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、熱可塑性弾性ポリエステルポリウレタンは、芳香族ポリエステル、脂肪族組成物、またはそれらの組み合わせであってもよい。本明細書に記載されたグリップ材料および/またはコア材料には、以下に具体的に記載されていない他の熱可塑性ポリマー材料も使用することができることを理解されたい。一態様では、約110℃より大きく、約170℃より小さい溶融温度を有する熱可塑性エラストマーを含むグリップ材料が提供される。別の態様では、熱可塑性エラストマーを含むグリップ材料は、約110℃~約170℃、約115℃~約160℃、約120℃~約150℃、約125℃~約140℃、約110℃~約150℃、または約110℃~約125℃の溶融温度を有する。
【0147】
上記熱可塑性エラストマーは、下記ASTMD3418-97にしたがって測定したときのガラス転移温度(Tg)が50度未満である。いくつかの態様では、熱可塑性エラストマーは、以下に記載されるASTMD3418-97にしたがって測定したときに、約-60℃~約50℃、約-25℃~約40℃、約-20℃~約30℃、約-20℃~約20℃、または約-10℃~約10℃のガラス転移温度(Tg)を有する。一態様では、熱可塑性エラストマーのガラス転移温度は、本明細書に開示されたグリップ材料が組み込まれた物品が履物の物品に組み込まれたときに、通常の着用中に熱可塑性材料がそのガラス転移温度より高くなるように選択される(すなわち、熱可塑性エラストマーは、より弾力性があり、より脆性の少ない状態にある)。
【0148】
一態様では、熱可塑性エラストマーは、(a)複数の第1セグメント、(b)複数の第二セグメント、また、必要に応じて、(c)複数の第3セグメントを含む。熱可塑性エラストマーがブロックダウン共重合体であることを特徴とする熱可塑性エラストマー。いくつかの態様では、熱可塑性エラストマーはセグメント化コポリマーである。更なる態様では、熱可塑性エラストマーはランダムコポリマーである。さらに別の態様では、熱可塑性エラストマーは縮合共重合体である。
【0149】
更なる態様では、熱可塑性エラストマーは、約50,000ダルトン~約1,000,000ダルトン、約50,000ダルトン~約500,000ダルトン、約75,000ダルトン~約300,000ダルトン、約100,000ダルトン~約200,000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0150】
更なる態様では、熱可塑性エラストマーは、第1セグメントと第2セグメントのそれぞれの重量に基づいて、第1セグメントと第2セグメントとの比が約1:1~約1:2である、または、第1および第2セグメントのそれぞれの重量に基づいて、約1:1~約1:1.5である。
【0151】
更なる態様では、熱可塑性エラストマーは、第1セグメントと第3セグメントのそれぞれの重量に基づいて、第1セグメントと第3セグメントの比が約1:1~約1:5であり、第1セグメントと第3セグメントのそれぞれの重量に基づいて、約1:1~約1:3であり、第1セグメントと第3セグメントのそれぞれの重量に基づいて約1:2~約1:2であり、第1セグメントと第3セグメントのそれぞれの重量に基づいて、約1:3~約1:3である。
【0152】
更なる態様では、熱可塑性エラストマーは、約250ダルトン~約6()()()ダルトンの数平均分子量を有する第1成分から誘導される第1セグメントを有する、約400ダルトン~約6000ダルトン、約350ダルトン~約5000ダルトン、あるいは約500ダルトン~約3000ダルトンになります。
【0153】
いくつかの態様では、熱可塑性エラストマーは相分離ドメインを含む。例えば、複数の第1セグメントは、第1セグメントを主に含む領域に位相分離され得る。また、化学構造の異なるセグメントに由来する複数の第2セグメントを、第2セグメントを主に含むドメインに相分離してもよい。いくつかの態様では、第1セグメントはハードセグメントを含み、第2セグメントはソフトセグメントを含むことができる。他の態様では、熱可塑性エラストマーは、複数の第1共重合ポリエステルユニットを含む相分離ドメインを含むことができる。
【0154】
一態様では、熱成形前に、グリップ材料またはグリップ材料の1つまたは複数の熱可塑性エラストマーまたはその両方が、約20℃~約-60℃までのガラス転移温度を有する。一態様では、グリップ材料またはグリップ材料の1つまたは複数の熱可塑性エラストマーまたは両方が、熱成形前に、ASTMD3389によって測定される約10mg~約40mgのテーパー耐摩耗性を有する。一態様では、熱成形前に、グリップ材料またはグリップ材料の1つまたは複数の熱可塑性エラストマー、またはその両方が、ASTMD2240によって測定されたデュロメータ硬度(ショアA)が約60~約90である。一態様では、グリップ材料またはグリップ材料の1つまたは複数の熱可塑性エラストマーまたは両方が、熱成形前に、ASTMD792によって測定される比重が約0.80g/cm^3~約1.30g/cmである。一態様では、熱成形前に、2.16kgの試験重量を使用して、160℃で約2g/10分~約50g/10分のメルトフロー指数をグリップ材料またはグリップ材料の1つまたは複数の熱可塑性エラストマーまたはその両方が有する。一態様では、熱成形前に、10キログラムの試験重量を使用した場合、190℃または200℃において、グリップ材料またはグリップ材料の1つまたは複数の熱可塑性エラストマーまたはその両方が約2g/10分を超える融着流量を有する。一態様では、熱成形前に、グリップ材料またはグリップ材料の1つまたは複数の熱可塑性エラストマーまたはその両方が、約1MPa~約500MPaの弾性率を有する。
【0155】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーの例
特定の態様では、ヤーンを把持するためのグリップ材料中の1種または複数種の熱可塑性エラストマーは、1種または複数種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)エラストマーを含むか、または実質的にからなり得る。熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ハードセグメントおよびソフトセグメントを含む熱可塑性ポリウレタン共重合体であってもよく、ソフトセグメントは、ハードセグメントブロックおよびソフトセグメントブロックを含む。ハードセグメントは、イソシアネートから誘導されたセグメントを含むか、またはそれらから構成されていてもよい。同一または代替的に、ソフトセグメントは、ポリエーテルセグメントまたはポリエステルセグメント、またはポリエーテルセグメントとポリエステルセグメントの組み合わせのようなポリオール由来のセグメントを含むか、またはそれらからなることができる。一態様では、1つまたは複数の熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントとを含む弾性熱可塑性ポリウレタン、例えばハードセグメントの繰り返しブロックとソフトセグメントの繰り返しブロックとを有する弾性熱可塑性ポリウレタンを含むか、または実質的にからなり得る。
【0156】
いくつかの態様では、1つまたは複数のイソシアネートを1つまたは複数のポリオールと重合させてウレタン結合(-N(CO)O-)を有するポリマー鎖を生成させることにより、1つまたは複数の熱可塑性ポリウレタンエラストマーを製造することができ、ここで、イソシアネートから誘導されるセグメントは、好ましくは各セグメントが2、3または4のイソシアネート基のような2つ以上のイソシアネート(-NCO)基を含む(ただし、例えば、単官能イソシアネートを鎖終端単位として含むこともできる)。加えて、イソシアネートから誘導されたセグメントは、2種以上のイソシアネート官能基を架橋する1種または複数種の鎖延長剤によって鎖延長されてもよい。
【0157】
「脂肪族」という用語は、非ドメインπ電子を有するループ共役環系を含まない飽和または不飽和有機分子を意味する。熱可塑性ポリウレタンエラストマーを製造するのに適した脂肪族ジイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ブテンジイソシアネート(BDI)、ジイソシアネートシクロヘキシルメタン(HMDI)、2、2、4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ジイソシアネートシクロヘキサン、ジイソシアネートトリシクロデカン、ノルボルナンジイソシアネート(NDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、4、4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ジイソシアネートシアノドデカン、リジンジイソシアネート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0158】
「芳香族」という用語は、非局在化したパイ電子を有する環状共役環系を指し、局在化したパイ電子を有する仮想の環系よりも高い安定性を示す。熱可塑性ポリウレタンエラストマーを製造するための適切な芳香族ジイソシアネートの例としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、トリメチロールプロパンとのTDI付加物(商標P)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、水素化キシレンジイソシアネート(HXDI)、ナフタレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、パラ-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、3,3’-ジメチルジフェニル1-4,4’-ジイソシアネート(DDDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート(DBDI)、4-クロロ-1,3-フェニレンジイソシアネート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの態様では、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは芳香族基を実質的に含まない。
【0159】
特定の態様では、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、HMDI、TDI、MDI、H12脂肪族、およびそれらの組み合わせを含むジイソシアネートから製造される。例えば、グリップ材料は、ジイソシアネート(HMDI、TDI、MDI、H12脂肪族化合物を含む)およびそれらの組み合わせから製造された1つまたは複数の熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含むことができる。
【0160】
特定の態様では、本開示によれば、架橋された熱可塑性ポリウレタンエラストマー(例えば、熱可塑性特性を保持する部分的に架橋されたポリウレタンエラストマー)または架橋可能な熱可塑性ポリウレタンエラストマーを使用することができる。多官能性イソシアネートを使用して、架橋または架橋可能なポリウレタンエラストマーを製造することが可能である。ポリウレタンエラストマーを製造するための好適なトリイソシアネートの例としては、トリメチルイルプロパン(TMP)へのTDI、HDIおよびIPDI付加物、ウレトジオン(すなわち、ダイポリイソシアネート)、ポリマーMDI、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0161】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーを鎖延長剤を用いて形成する際に用いる特定の鎖延長剤ポリオールは、例えば脂肪族、芳香族、ポリエーテルであってもよい。1つまたは複数の熱可塑性ポリウレタンエラストマーを製造するための適切な鎖延長剤ポリオールの例としては、エチレングリコール、エチレングリコールの低級オリゴマー(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびテトラエチレングリコール)、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、プロピレングリコールの低級オリゴマー(例えば、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、およびテトラプロピレングリコール)、1,4-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、1-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジヒドロキシアルキル化芳香族化合物(例えば、ヒドロキノンおよびレゾルシノールのビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、キシレン-α,α-ジオール、キシレン-α,α-ジオールのビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0162】
あるいは、いくつかの例では、1つまたは複数の熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、比較的高い親水性を有する熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含む。例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ポリエーテル基、ポリエステル基、ポリカーボネート基、脂肪族基または芳香族基を含むセグメントを含む熱可塑性ポリエーテルポリウレタンであってもよく、脂肪族基または芳香族基は、相対的に大きな親水性を有する1つまたは複数のペンダント基(すなわち、相対的に「親水性」の基)で置換されている。比較的「親水性」の基は、ヒドロキシル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリラクトン(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP))、アミノ、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、アンモニウム(例えば、第三級および第四級アンモニウム)、両性イオン(例えば、ポリ(カルボキシベタイン(pCB)などのベタインおよびホスファチジルコリンなどのホスホン酸アンモニウム)、およびそれらの組み合わせから選択される。これらの実施形態では、このような比較的親水性の基またはフラグメントは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー主鎖の一部を形成してもよく、または主鎖にペンダント基としてグラフトされてもよい。いくつかの例では、側親水基またはセグメントは、リンカーを介して脂肪族基または芳香族基に結合されていてもよい。
【0163】
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの少なくとも1つのセグメントは、ポリエーテルセグメント(すなわち、1つまたは複数のエーテル基を有するセグメント)を含む。好適なポリエーテルは、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTmO)、およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。ここで使用される「アルキル基」とは、炭素数1~30、例えば炭素数1~20、または炭素数1~10の直鎖状および分岐状の飽和炭化水素基を意味する。Cという用語は、アルキル基が「n」個の炭素原子を有することを意味する。例えば、Cアルキル基とは、炭素数4のアルキル基である。C1-7アルキル基とは、全てのサブユニット(例えば、炭素数1-6、2-7、1-5、3-6、1、2、3、4、5、6、7)の全範囲を含む炭素原子数が多いアルキル基である。アルキル基の非限定的な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基(2-メチルプロピル基)、t-ブチル基(1、1ジメチルエチル基)、3、3-ジメチルペンチル基、2-エチルヘキシル基が挙げられる。別段の記載がない限り、アルキル基は、無置換アルキル基または置換アルキル基であってもよい。
【0164】
いくつかの態様では、1つまたは複数の熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、1つまたは複数のポリエステルセグメントを含む。1つまたは複数のポリエステルセグメントは、1つまたは複数の二価アルコール(例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール)のポリエステル化、1,3-ブタンジオール、2-メチルペンタンジオール-1,5、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,2-ドデカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、およびそれらの組み合わせ)と1つまたは複数のジカルボン酸(例えば、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、スベリン酸、メチルアジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、チオジプロピオン酸およびシトラコン酸、ならびにそれらの組み合わせ)から誘導することができる。ポリエステルセグメントはまた、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)エチレングリコール、ポリ(プロピレンカーボネート)エチレングリコール、ポリ(テトラメチレンカーボネート)エチレングリコール、ポリ(ナナメチレンカーボネート)エチレングリコールなどのポリカーボネートプレポリマーから誘導され得る。好適なポリエステルは、例えば、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリ(1、4-ブチレンアジペート)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(テトラメチレンカーボネート)、ポリ(ナナメチレンカーボネート)、およびこれらの組み合わせを含むことができる。
【0165】
様々な態様では、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、1つまたは複数のポリカーボネートセグメントを含む。1以上のポリカーボネートセグメントは、1以上の二価アルコール(例えば、エチレングリコール、1、3-プロパンジオール、1、2-プロパンジオール、1、4-ブタンジオール、1、3-ブタンジオール、2-メチルペンタンジオール1-1、5、ジエチレングリコール、1、5-ペンタンジオール、1、5-ヘキサンジオール、1、2-ドデカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、およびそれらの組み合わせ)とエチレンカーボネートとの反応から誘導され得る。
【0166】
本明細書に記載のように、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、例えば、ポリマー上のポリウレタン基またはウレタン基間の非極性または極性相互作用によって物理的に架橋され得る。これらの態様では、ソフトセグメントはハードセグメントに共有結合することができる。いくつかの態様では、物理的に架橋されたハードセグメントおよびソフトセグメントを有する熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、親水性熱可塑性ポリウレタンエラストマー(すなわち、本明細書で開示される親水性基を含む熱可塑性ポリウレタンエラストマー)であってもよい。
【0167】
一方、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、熱成形前に、以下の特性を有する芳香族ポリエステル熱可塑性エラストマーポリウレタンまたは脂肪族ポリエステル熱可塑性エラストマーポリウレタンである。(1)ガラス転移温度が約20℃から約-60℃であること。(2)ASTM D3389によって測定されるテーバー耐摩耗性が、約10ミリグラム~約40ミリグラムであること、(3)ASTM D2240によって測定されるデュロメータ硬度(ショアA)が約60~約90であること、(4)ASTM D792によって測定される比重が約0.80g/cm~約1.30g/cmであること、(5)メルトフローインデックスが、2.16キログラムの試験重量を使用し、摂氏160度で約2グラム/10分~約50グラム/10分であること、(6)10キログラムの試験分銅を使用した場合、メルトフローレートが摂氏190度または摂氏200度で約2グラム/10分を超えること、(7)弾性率が約1メガパスカルから約500メガパスカルであること。
【0168】
本使用に適した市販の熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、TG-500、TG-2000、SP-80A-150、SP-93A-100、SP-60D60(Lubrizol、Countryside、IL)、「ESTANE」(例えば、58238、T470A;Lubrizol、Countryside、IL)、および「ELASTOLLAN」(例えば、9339、1370A;BASF)などの商品名「TECOPHILIC」を含むが、これらに限定されない。
【0169】
熱可塑性スチレン共重合エラストマーの例
特定の態様では、1つまたは複数の熱可塑性エラストマーは、1つまたは複数の熱可塑性スチレン共重合体を含む1つまたは複数の熱可塑性エラストマーポリマーを含むか、または実質的にからなり得る。これらの共重合体の例としては、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックダウンコポリマー、スチレンエチレン/ブチレンスチレン(SEBS)コポリマー、ポリアセタール(POM)コポリマー、スチレン-アクリロニトリル(SAN)コポリマー、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。市販の熱可塑性弾性スチレン共重合体の例は、スチレンエチレン/ブチレンスチレン(SEBS)樹脂であるモノペンタジエンIN5074、SP066070およびSP16975(Teknor Apex、Pawtucket、RI、USA)を含む。いくつかの態様では、1つまたは複数の熱可塑性エラストマーのブレンド、合金および混合物は、融着相溶性であるか、または混和性を達成するために添加剤、油またはグラフト化された化学的部分と相溶性であることができる。
【0170】
別の態様では、1つまたは複数の熱可塑性弾性スチレン共重合体は、第1ポリスチレンブロックダウン、ポリブタジエンブロックダウンおよび第2ポリスチレンブロックダウンを含むSBSブロックダウンコポリマーを含むか、または実質的にからなり得る。
【0171】
別の態様では、1つまたは複数の熱可塑性エラストマーは、SEBSブロックコポリマーを含むか、またはそれから本質的になることができ、SEBSブロックコポリマーは、第1のポリスチレンブロック、ポリオレフィンブロックを含み、ポリオレフィンブロックは、交互のポリエチレンブロックおよびポリブチレンブロックを含む。
【0172】
一態様では、SEBSコポリマーまたは複数のコポリマーは、約0.88グラム/立方センチメートル~約0.92グラム/立方センチメートルの密度を有する。更なる態様では、SEBSコポリマー、または複数のコポリマーは、架橋ゴム、架橋ポリウレタン、および熱可塑性ポリウレタン材料よりも15~25パーセントも密度が低くなり得る。グリップ材料のポリマー成分が1つまたは複数のSEBSコポリマーを含むか、または実質的に構成されている点において、グリップ材料の密度は、TPUエラストマーのような他の熱可塑性エラストマーを使用する場合よりも低く、密度の低いグリップ材料は、同じ体積の材料を使用する場合に、同様の特性を達成しながら、重量の節約および単価の節約を提供する。
【0173】
「1つの」化合物への言及は、化合物の単一分子に限定されるのではなく、化合物の1つまたは複数の分子を指す。さらに、1つまたは複数の分子は、化合物の範疇に属する限り、同一であってもよいし、同一でなくてもよい。したがって、例えば、「ポリアミド」は、ポリアミドを含む1つまたは複数のポリマー分子と解釈され、ポリマー分子は、同一であっても、同一でなくてもよい(例えば、異なる分子量および/または異性体)。
【0174】
用語「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」要素は、交換して使用することができ、単一の要素および複数の要素を含む同一の意味を持ち、要素の末尾の接尾辞「(複数可)」によって表されることもある。例えば、「少なくとも1つのポリアミド」、「1つまたは複数のポリアミド」および「ポリアミド」は、交換して使用することができ、同一の意味を有する。
【0175】
別段の画定がない限り、ここに記載されている温度は標準気圧(1気圧)で決定されます。
【0176】
特性分析および特性評価手順
本明細書に記載される様々な特性および特性の評価は、以下に記載される様々な試験手順によって行われる。
【0177】
サンプル摩擦係数
テキスタイルまたはプラークサンプルの静的または動的な摩擦係数(COF)は、ASTM D1894の試験方法を使用して測定できる。この方法では、サンプルを適当な大きさにカットしてそりに載せ、100gのウエイトボードをそりの上に載せる。試験中、重量を加えたそりは試験対象の材料の試験面を越えて引っ張られる。例えば、静的および動的湿式および乾式COFは、コンクリートの表面を横切るようにそりを引くことによって、サンプルおよびコンクリートのCOFを決定することができる。垂直力(100g+そりの重量)を記録し、そりを試験面上に引き寄せるのに必要な力を測定することにより、試験面に対するサンプルの摩擦係数を取得する。そして、2つの力の比から摩擦係数(COF)を算出する。乾燥COFは、乾燥したサンプルを乾燥した試験表面に対して試験することによって決定され、湿潤COFは、水で湿らせたサンプルを室温の水に10分間浸して、室温の水で湿らせた試験表面に対して試験することによって決定される。
【0178】
テキスタイルボール摩擦係数試験以下に説明するコンポーネントサンプリング手順またはテキスタイルサンプリング手順を使用して作成されたサンプルの「MERLIN」サッカー(NIKE Inc.,Beaverton,またはUSA)パネルからのサンプルに対する静的および動的摩擦係数(COF)は、サンプルの摩擦係数について説明した試験方法ASTM D1894の修正版を使用して決定することができる。この方法では、サンプルを所定のサイズに切断してアクリル基板に取り付け、ボール材料を所定のサイズに切断してスレッドに取り付ける。ボール材料がスレッドに取り付けられると、スレッドの接触面積は3.9インチ×1インチとなり、重量は約0.402キログラムになる。試験中、サンプルとボール材料は、ボール材料の外向き表面が履物の物品の外向き表面を形成するサンプルの表面に接触するように配置され、そりはサンプル上で引っ張られる。乾燥サンプルと乾燥ボール材料は、静的または動的乾燥COFを決定するために使用される。静的または動的湿潤COFを決定するには、サンプルとボール材料の両方を試験直前に室温の水に10分間浸する。1回の測定を少なくとも3回繰り返し、実行結果を平均化する。
【0179】
溶融温度およびガラス転移温度試験
市販の示差走査熱量計(「DSC」)を使用して、下記のサンプル採取手順にしたがって製造したサンプルの融解温度および/またはガラス転移温度をASTM D3418-97にしたがって測定する。簡単に説明すると、10~60ミリグラムのサンプルをアルミニウムDSCパンに入れ、クリンパプレスで蓋を密閉する。DSCは、100℃~225℃を20℃/分の加熱速度で走査し、225℃で2分間保持した後、25℃まで20℃/分の冷却速度で冷却するように構成されている。次に、標準的な手法を用いて、このスキャンから生成されたDSC曲線を解析し、ガラス転移温度と溶融温度を決定する。融着エンタルピーは、融着吸熱を積算し、サンプルの質量で正規化することにより算出される。冷却時の結晶化エンタルピーは、冷却吸熱を積算し、サンプル質量で正規化することにより算出される。
【0180】
変形温度試験。ASTMTmD1525-09プラスチックビカット軟化温度標準試験方法に詳述されている試験方法にしたがって、好ましくは、下記の材料サンプリング手順またはコンポーネントサンプリング手順にしたがって製造された試験片のビカット軟化温度を、荷重Aおよび速度Aを用いて決定する。簡単に言うと、ビカット軟化温度は、特定の荷重下で平端針がサンプルを深さ1mmまで貫通する温度である。温度は、材料を高温用途で使用する際に予想される軟化点を反映している。これは、1平方ミリメートル2の円形または正方形の断面を持つ平端針で深さ1ミリメートルまで試験片を貫通したときの温度とみなされる。ビカットA試験では10ニュートン(N)の荷重が使用されるが、ビカットB試験では50ニュートンの荷重が使用される。試験は、先端から少なくとも1mmの距離で穿刺針がその表面に留まるように、試験器に試験片を入れることを含む。ビカットAまたはビカットB試験の要求に応じて、試験片に荷重を加える。次に試験片を23℃の油浴に入れる。針が1ミリメートル貫通するまで、浴を1時間あたり50℃または120℃の速度で上昇させる。試験片の厚さは3~6.5mm、幅および長さは少なくとも10mmでなければならない。最小の厚さになるように、3つまでのコースを積み重ねることができる。
【0181】
メルトフローインデックス試験
メルトフローインデックスは、ASTM D1238-13「押出プラストメータによる熱可塑性樹脂のメルトフローレートに関する標準試験方法」に詳述されている試験方法に従って、以下に記載する材料サンプリング手順に従って製造したサンプルについて、そこに記載されている手順Aを使用して測定される。簡単に言うと、メルトフローインデックスは、熱可塑性プラスチックが所定の温度と荷重で孔を通過する押出速度を測定する。試験方法では、材料に対して所定の温度に加熱されたメルトフロー装置のバレルに約7gの材料を投入する。材料に指定された重量をプランジャーに加え、溶融した材料をダイから押し出す。時限押出物を収集し、重量を測定する。メルトフローインデックス値を、与えられた適用荷重と適用温度に対してg/10分で計算する。ASTM D1238-13に記載されているように、メルトフローインデックスは、160℃で2.16kgの重量を使用して決定することができ、200℃で10kgの重量を使用して決定することができる。
【0182】
溶融ポリマー粘度試験
この試験は、以下に説明するプラークまたはフィルムのサンプリング手順に従って製造した2ミリメートルのプラークまたはフィルムを使用して実施される。円形のダイを使用して、プラークまたはフィルムから50ミリメートルの試験片を切り出す。試験片はARES-G2(変位制御)レオメータ上の直径50mmのアルミ平行板に取り付けられている。天板を下降させ、試験片を所定の垂直力荷重の下で両ディスク表面に接触させ、ステージを摂氏210度に加熱する。サンプルは溶融するまで、定義された分単位の滞留時間にわたって平衡化され、振動せん断周波数掃引が低いひずみ振幅で適用されて、速度依存のデータが収集される。与えられたせん断周波数で振動運動を発生させるのに必要な印加せん断応力の比は、測定粘度値を生成する。せん断速度に関連する粘度データは、0.1μm秒から1000μm秒まで収集することができる。
【0183】
プラーク弾性率試験
下記のパッチまたはフィルムサンプリング手順にしたがって製造されたサンプルの弾性率は、ASTMD412-98加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムおよび熱可塑性エラストマーの標準試験方法である張力に詳述されている試験方法にしたがって測定され、以下の変更が加えられている。サンプルサイズはASTM D412-98型Cで、使用したサンプルの厚さは2.0mmプラスマイナス0.5mmである。使用されるグリップタイプは、金属鋸歯状グリップ面を備えた空気圧グリップである。使用されるグリップ距離は75ミリメートルである。使用される荷重速度は500ミリメートル/分である。弾性率(初期)は、初期線形領域における応力(MPa)対ひずみの傾きをとることによって計算される。この試験は、破断強度、破断までのひずみ、100%ひずみでの荷重、靱性、剛性、引き裂き強度などの他の引張特性を測定するために使用することもできる。
【0184】
ヤーンのデニール数と厚みの試験
デニールを決定するために、下記のヤーンサンプリング手順にしたがってヤーンサンプルを作成する。ヤーンサンプルの既知の長さおよびそれに対応する重量を測定する。これはヤーン9000メートル当たりのグラム数に換算される。コーティングされたヤーンの厚さを決定するには、まずヤーンをカミソリで切断し、顕微鏡で観察し、コアヤーンの直径に対するコーティングの厚さをスケールで決定する。
【0185】
ヤーンの弾性率、強力、伸びの試験
上記のヤーンサンプリング手順にしたがって製造されたサンプルについてヤーンの弾性率を測定し、EN ISO 2062(テキスタイル-パッケージからのヤーン)‐一定の伸び(CRE)試験機を用いた単端破断力および破断伸びの測定に詳述されている試験方法にしたがって試験を実施する。試験方法は以下のように変更されている。長さ600ミリメートルの試験片を5個用意した。使用される装置は、インストロン万能試験システムである。Instronの空気圧コードとスレッドグリップ、または類似の空気圧グリップが取り付けられており、グリップ距離は250ミリメートルである。Instron空気圧コードおよびねじ付きジグを使用する場合、ジグ距離は145+1mm、仕様長は250+2mmに設定する。プリロードは5gに設定され、使用するロードレートは250mm/分である。弾性率(初期)は、初期線形領域の歪みに対する応力(MPa)の傾きをとることによって計算される。最大張力値を記録する。ヤーンサンプルの靭性と伸びは、EN ISO 2062に詳述されている試験方法に基づいて測定され、予圧は5gに設定されている。破断前に加えられた最大張力値での伸びを記録する。いくつかの態様では、靭性は、試験片を破壊するために必要な荷重と試験片の線密度との比として計算される。
【0186】
比重試験比重(SG)は、ASTMD792に詳述されている体積変位を用いた試験方法により決定した。例えば、プラークサンプリング手順またはコンポーネントサンプリング手順を使用して採取したサンプルのSG測定は、デジタル天秤またはデンシコムテスター(Qualitest、Plantation、Florida、USA)を使用して行われる。各サンプルを計量(g)し、蒸留水浴に浸漬する(22℃+2℃)。エラーを避けるため、例えばサンプルを水に浸す前にサンプルをイソプロピルアルコールで拭くか、サンプルを浸した後にブラシを使用するなどして、サンプルの表面の気泡を除去する。蒸留水中のサンプルの重量を記録する。比重の計算式は次のとおりである。
【0187】
【数1】
ュロメータ硬さ試験
サンプルの材料硬度は、ASTMD-2240デュロメータ硬さに詳述されている試験方法にしたがって、ショアAスケールを使用して決定することができる。
【0188】
ヤーン収縮試験
ヤーンの自立収縮率は、以下の方法により決定することができる。下記のヤーンサンプリング手順にしたがってヤーンサンプルを作成し、約室温(例えば、摂氏20度)で約30mmの長さに最小張力で切断する。切断したサンプルを摂氏50度または70度のオーブンに90秒間入れる。サンプルをオーブンから取り出して、測定する。収縮率は、サンプルのオーブン前後の測定値を用いて、オーブン前後の測定値をオーブン前後の測定値で除算した後、100を乗算して算出される。
【0189】
ストール摩耗試験
アッパーの擦り傷を模擬した耐摩耗性を含む耐摩耗性は、下記のコンポーネントサンプリング手順、プラークまたはフィルムサンプリング手順、またはテキスタイルサンプリング手順にしたがって作成されたサンプルを用いて、ストール摩耗試験を用いて測定することができる。ストール摩耗試験の最小サンプル数は3であった。本明細書で使用したサンプルは、手作業で直径112mmの円形に切断またはダイカットされている。ストール摩耗試験はASTM D3886に詳しく記載されており、Atlas汎用摩耗試験機で実施することができる。ストール摩耗試験では、研磨媒体が固定され、設置された試験サンプル上を移動し、サンプルの視覚的外観をモニターする。ストール摩耗試験は、通常の使用状況での摩耗をシミュレートするために圧力下で実施される。
【0190】
DIN摩耗試験
下記のコンポーネントサンプリング手順、プラークまたはフィルムサンプリング手順、またはテキスタイルサンプリング手順にしたがってサンプルを製造し、直径16±0.2mm、最小厚さ6mmの円筒状サンプルで、ASTM標準ドリルを使用して摩耗量を試験する。ASTM D 5963-97aの方法Bを使用して、Gotech GT-7012-D摩耗試験機で摩耗損失を測定する。試験は摂氏22度、摩耗経路40メートルで実行される。試験に用いる標準ゴム#1の密度は、1.336g(g/cm)である。摩耗量が小さいほど耐摩耗性に優れる。
【0191】
水分浸透試験
サンプルの水分浸透は、以下に説明するコンポーネントサンプリング手順、プラークまたはフィルムのサンプリング手順、またはテキスタイルサンプリング手順に従って製造されたサンプルを使用して、次のように測定される。表面が水平面に対して45度の角度をなす支持台上に試験対象の試験片を載置する。支持台は、直径152mmの試験片ホルダ内輪を含む。試験前に、少なくとも2時間は実験室環境で試験片を平衡させることができる。試験片は直径220ミリメートルの円形にカットされている。皮革や硬い合成皮革などの厚手または硬い材料は、サンプルの外縁に3つの切り込みがある。試験片は手作業で切断することも、ダイカットすることもできる。比較的軟質な材料の試験片は同じ寸法に切断され、試験片には長さ方向がマーキングされている。裏紙は、白またはオフホワイトのペーパータオル、コーヒーフィルター、または同様の薄い吸収性の紙から作成される。裏紙も直径220ミリの円にカットされている。裏紙は試験片ごとに1枚用意され、裏紙は再利用される。裏紙と試験片をサンプル固定具に配置し、次にスプレー試験装置に配置する。サンプルの長さ方向は水流方向と平行でなければならない。漏斗をノズルと試験片の間に6インチ(152.4mm)の高さに調整する。ノズルは試験片の中心より上にある必要がある。漏斗に250±2mlの蒸留水を加え、試験片に噴霧する。噴霧終了後10秒以内に上面の撥水性を評価する。上面を評価した後、サンプルジグを支持台から取り外し、裏紙を評価してサンプルに水が浸透しているかどうかを判定する。目視評価後に水分浸透状況を報告し、濡れ具合に応じてサンプルを「合格」または「不合格」と評価した。上面の付着または濡れが観察されない場合、上面のわずかなランダムな付着または濡れが観察された場合、またはスプレー点で上面の濡れが観察された場合、サンプルは合格とみなされる。噴霧点を超えてさらに濡れたり、裏面を含めて濡れたりする場合は、サンプルが水浸透試験に不合格であることを示す。
【0192】
テキスタイルボール衝撃試験
テキスタイルの試験サンプルは、以下に説明するコンポーネントサンプリング手順またはテキスタイルサンプリング手順に従って製造された。テキスタイルの10インチ×8インチの試験サンプルを、周囲10インチの金属円筒の外面に取り付ける。試験サンプルとシリンダーはロボットのスイングアームに取り付けられ、スイングアームは時速80マイルの速度でスイングされ、静止したボールの赤道に衝突する。使用したボールは標準サイズのナイキのサッカー「メルリン」で、0.80バールまで膨らませた。ハイスピードビデオカメラを使用して、インパクト直後のボールの位置を記録する。高速カメラで記録した画像の空間位置と、マルチフレーム画像でのボールの回転を利用し、衝突直後のボールの速度と回転率をソフトウエアを用いて算出する。1回の測定を少なくとも3回繰り返し、実行結果を平均化する。
【0193】
アッパーボール衝撃試験
メンズサイズ10.5のフットボールブーツ全体、またはメンズサイズ10.5のフットボールブーツのアッパーをロボットのスイングアームに取り付け、ボールがブーツのつま先の内側、靴紐上または靴紐の近くに当たるように配置する(ブーツにひも構造が含まれている場合)。ロボットのシンギングアームが時速80マイルの速度で振られると、アッパーがボールの赤道に衝撃を与える。使用されるボールは、0.80バールに膨張させた規定サイズのナイキ「マーリン」フットボールである。ハイスピードビデオカメラを使用して、インパクト直後のボールの位置を記録する。高速カメラで記録した画像の空間位置と、マルチフレーム画像でのボールの回転を利用し、衝突直後のボールの速度と回転率をソフトウエアを用いて算出する。1回の測定を少なくとも3回繰り返し、実行結果を平均化する。
【0194】
サンプリング手順
上記の試験を使用して、以下のサンプリング手順によって製造されたサンプルを使用して、本明細書に開示された材料およびそれから形成される物品の様々な特性を特徴付けることができる。
【0195】
材料サンプリング手順材料サンプリング手順は、ポリマー組成物またはポリマーの純粋なサンプルを得るために、または場合によってはポリマー組成物またはポリマーの材料サンプルを形成するために使用することができる。材料は、フレーク、顆粒、粉末、ペレットなどの媒体の形態で提供される。高分子材料またはポリマーのソースが整然とした形で得られない場合、サンプルは、複合要素または固有構造のような、高分子材料またはポリマーを含むコンポーネントまたは要素から切断されて、材料のサンプルを分離することができる。
【0196】
プラークまたはフィルムのサンプリング手順
ポリマー組成物またはポリマーのサンプルを製造する。次いで、ポリマーまたはポリマー組成物の一部を、試験装置に適合するサイズのフィルムまたはプラークに成形する。例えば、ロス屈曲試験機を使用する場合、プラークまたはフィルムサンプルは、使用するロス屈曲試験機の内側に収まるサイズにされ、ポリマー組成物またはポリマーを型内で熱成形することにより、サンプルの寸法は、約15センチメートル(cm)×2.5センチメートル(cm)であり、約1ミリメートル(mm)~約4ミリメートル(mm)の厚さを有する。ポリマーのプラークサンプルの場合、ポリマーを溶融し、溶融ポリマーを型に充填し、ポリマーを型の形状に再凝固させ、凝固した成型サンプルを型から取り出すことによってサンプルを製造することができる。あるいは、ポリマーサンプルを融着した後、一定の大きさに切断されたフィルムに押し出すことができる。ポリマー組成物のサンプルは、ポリマー組成物の成分を混合し、ポリマー組成物の熱可塑性成分を融着し、融着したポリマー組成物を型に投入し、型の形状でポリマー組成物を再硬化させ、硬化した成形サンプルを型から取り出すことにより作製することができる。また、ポリマー組成物の成分を混合融着してポリマー材料のサンプルを製造し、融着したポリマー組成物を押し出して一定の大きさに切断したフィルムにすることもできる。ポリマーまたはポリマー組成物のフィルムサンプルの場合、フィルムは、実質的に一定のフィルム厚さ(平均フィルム厚さの±10%以内)を有するウェブまたはシートに押し出され、次いで冷却されてウェブまたはシートが硬化される。次いで、得られたウェブまたはシートから表面積4平方センチメートルのサンプルを切り出す。あるいは、フィルム材料の供給源がそのままの形で入手できない場合、履物生物の基材、または共押出シートまたはウェブの裏当て基材からフィルムを切り出し、それによってフィルムを分離することができる。いずれの場合も、得られた分離膜から表面積4平方センチメートルのサンプルを切り出す。
【0197】
コンポーネントサンプリング手順
このプログラムは、履物の物品のコンポーネント、履物の物品、衣類製品のコンポーネント、アパレル物品のコンポーネント、運動器具物品のコンポーネント、または運動器具の物品から、ポリマー組成物またはテキスタイルのサンプル、またはテキスタイルの一部、例えば熱成形ネットワークを含む材料サンプルを得るために使用することができる。非湿潤状態(例えば摂氏25度、相対湿度20%)の材料を含むサンプルを、ブレードを用いて物品またはコンポーネントから切断する。材料が1つまたは複数の追加材料に接着されている場合、プログラムは、追加材料を試験対象の材料から分離することを含むことができる。例えば、ソール構造の地面に面する表面上で材料を試験するために、対向する表面は、試験対象の材料に付着した任意の接着剤、ヤーン、繊維、発泡体等を除去するために、皮を剥ぎ、研磨し、削り、またはその他の方法で洗浄することができる。得られたサンプルは、材料を含み、材料に結合された任意の追加材料を含むことができる。
【0198】
サンプルは、例えば履物の物品の場合、地面に面する表面の前足領域、中足領域、または踵領域において、物品または部品上に存在する材料に対して実質的に一定の材料厚さ(平均材料厚さのプラス10%またはマイナス10%以内)を提供する物品または部品に沿った位置で収集される。上記の多くの試験シナリオでは、表面積が4平方センチメートル(cm2)のサンプルが使用されている。試験装置に適したサイズおよび形状(例えば、ドッグボーン状サンプル)にサンプルを切断する。材料が4平方センチメートルの表面積を有するセグメントのいずれかにある物品またはコンポーネントに存在しない場合、および/または材料の厚さが4平方センチメートルの表面積を有するセグメントについて実質的に一定でない場合には、より小さい断面表面積を有するサンプルサイズをとることができ、それに応じて領域固有の測定値を調整することができる。
【0199】
ヤーンサンプリング手順
試験対象のヤーンは、試験前に室温(20℃~24℃)で24時間保管される。最初の3メートルの材料が捨てられていた。約室温(例えば、摂氏20度)で、サンプルヤーンを最小張力で約30mmの長さに切断する。
【0200】
テキスタイルサンプリング手順
試験対象のテキスタイルは、試験前に室温(20℃~24℃)で24時間保管される。約室温(例えば、摂氏20度)で、テキスタイルサンプルを最小の張力で、使用される試験方法で画定された寸法に切断する。
【0201】
項の例
第1項:アッパーは、ニットコンポーネントと、ニットコンポーネントの複数の楔形部分を画定する複数のインターループコースとを有し、複数の楔形部分の各々は、ニットコンポーネントの外周の一部と、ニットコンポーネントの内周の一部と、外周から内周に延びる第1ニットコースと、外周から内周に延びる第2ニットコースとによって画定される。
第2項:楔形部分を画定する内周の部分は、楔形部分を画定する外周縁の部分よりも短い長さを有する、項1に記載のアッパー。
第3項:楔形部分の各々は、第1ニットコースと第2ニットコースとの間に位置し、外周から内周まで延びる全長コースを含み、第1ニットコースと第2ニットコースとの間に位置し、外周から延び、内周の前で終端する部分長コースを含む、項1~2のいずれか1項に記載のアッパー。
第4項:ニットコンポーネントの楔形部分の少なくともいくつかは、アッパーの前足領域を形成する、項1~3のいずれか1項に記載のアッパー。
第5項:ニットコンポーネントの楔形部分の少なくともいくつかは、アッパーの中足領域を形成している、項1~4のいずれか1項に記載のアッパー。
第6項:ニットコンポーネントの楔形部分の少なくともいくつかは、アッパーの踵領域を形成する、項1~3のいずれか1項に記載のアッパー。
第7項:ニットコンポーネントは、ニットコンポーネントの1つ又は複数のインターループヤーンに少なくとも部分的に融着された第1材料を含む閉じ込め領域を含み、第1材料は、熱可塑性エラストマーを含む、項1~6のいずれか1項に記載のアッパー。
第8項:第1材料は、アッパーの外側向き面上のニットコンポーネントの1つ又は複数のインターループヤーンと少なくとも部分的に融着されている、項7に記載のアッパー。
第9項:第1材料を有するニットコンポーネントの部分は、ニットコンポーネントの第1材料を有さない部分に対して異なる摩擦係数を有する、項7~8のいずれか1項に記載のアッパー。
第10項:ニットコンポーネントの第1材料を有する部分は、ニットコンポーネントの第1材料を有さない部分に対して大きな摩擦係数を有する、項9に記載のアッパー。
第11項:閉じ込め領域は、第1材料に少なくとも部分的に融着された1つまたは複数のヤーンのうちの少なくとも1つを形成する少なくとも1つの引張要素を含む、項7~10のいずれか1項に記載のアッパー。
第12項:閉じ込め領域は、アッパーの外側に延び、前足領域に少なくとも部分的に配置された第1閉じ込め領域であり、アッパーは、アッパーの内側に延び、前足領域に少なくとも部分的に配置された第2閉じ込め領域をさらに含む、項7~11のいずれか1項に記載のアッパー。
第13項:第1材料は、第1閉じ込め領域、第2閉じ込め領域、および第1閉じ込め領域と第2閉じ込め領域との間の前足領域の一部における1つ又は複数のインターループヤーンに少なくとも部分的に融着されている、項12に記載のアッパー。
第14項:第1材料は、熱可塑性エラストマーを含むコーティングを形成し、コアヤーンを取り囲むコーティングは、熱可塑性エラストマーを含まず、第1材料よりも高い溶融温度を有する第2材料を有する、項7~13のいずれか1項に記載のアッパー。
第15項:熱可塑性エラストマーは熱可塑性ポリウレタンである、項7~14のいずれか1項に記載のアッパー。
第16項:熱可塑性エラストマーはスチレン/ブチレンスチレン(SEBS)である、項7~14のいずれか1項に記載のアッパー。
第17項:アッパーであって、アッパーの少なくとも前足領域および中足領域を形成し、外周を有するニットコンポーネントを含み、前足領域は、中足領域に一体的に編まれており、ニットコンポーネントは、外側向き面と、外側向き面と反対側の内側向き面と、を有し、前足領域および中足領域におけるニットコンポーネントの各コースは、前足領域内のコースが中足領域内のコースに対して斜めに延びるように、外周からニットコンポーネントの共通部分に向かう方向に延び、ニットコンポーネントは、外周から共通部分に向かって延びる封じ込め領域を有し、封じ込め領域は、ニットコンポーネントの1つまたは複数の絡合ヤーンに少なくとも部分的に融着された第1材料を含み、第1材料は、熱可塑性エラストマーを含む。
第18項第1材料は、ニットコンポーネントの外側向き面上に配置される、項17に記載のアッパー。
第19項:閉じ込め領域は、ニットコンポーネントの第1材料を有さない部分とは異なる摩擦係数を有する、項17~18のいずれか1項に記載のアッパー。
第20項:閉じ込め領域は、ニットコンポーネントの第1材料を有さない部分よりも大きな摩擦係数を有する、項17~19のいずれか1項に記載のアッパー。
第21項:熱可塑性エラストマーは熱可塑性ポリウレタンである、項17~20のいずれか1項に記載のアッパー。
第22項:熱可塑性エラストマーは、スチレンエチレン/ブチレンスチレン(SEBS)である、項17~20のいずれか1項に記載のアッパー。
第23項:共通部分はスロート領域である、項17~22のいずれか1項に記載のアッパー。
第24項:ニットコンポーネントはアッパーの踵部領域を形成し、踵部領域内の各コースは共通部に向かう方向に延びる、項17~23のいずれか1項に記載のアッパー。
第25項:閉じ込め領域は、隣接する複数のコースを含み、前足領域の外周から中足領域の共通部分まで延びる、項17~24のいずれか1項に記載のアッパー。
第26項:閉じ込め領域は、アッパーの外側に位置する第1閉じ込め領域であり、アッパーは、アッパーの内側の前足領域の外周からアッパーの内側の中足領域の共通部分まで延びる第2閉じ込め領域をさらに含み、第1閉じ込め領域および第2閉じ込め領域の各々は、ニットコンポーネントの熱可塑性エラストマーを有さない部分よりも大きな摩擦係数を有する、項17~25のいずれか1項に記載のアッパー。
第27項:アッパーの外側の踵部領域の外周からアッパーの外側の中足領域の共通部分まで延びる第3閉じ込め領域と、アッパーの内側の踵部領域の外周から内側の中足領域の共通部分まで延びる第4閉じ込め領域と、をさらに含み、第3閉じ込め領域および第4閉じ込め領域の各々は、ニットコンポーネントの第1材料を有さない部分よりも大きな摩擦係数を有する、項26に記載のアッパー。
第28項:第1閉じ込め領域、第2閉じ込め領域、第3閉じ込め領域、および第4閉じ込め領域の各々は、外側向き面上のニットコンポーネントの第1材料を有さない部分によって互いに分離されている、項27に記載のアッパー。
第29項:ニットコンポーネントの外側向き面は、1つ又は複数の交絡ヤーンに少なくとも部分的に融着された熱可塑性エラストマーを含むニットコンポーネントの外周に沿った1つまたは複数の領域を含み、外周に沿った1つまたは複数の領域は、第1閉じ込め領域と第3閉じ込め領域との間、第1閉じ込め領域と第2閉じ込め領域との間、および第2閉じ込め領域と第4閉じ込め領域との間に位置し、外周に沿った1つまたは複数の領域は、外周から延び、共通部分の下で終端する、項27に記載のアッパー。
第30項:第1材料に少なくとも部分的に融着されたヤーンは、熱可塑性エラストマーを含まず、第1材料よりも高い溶融温度を有する第2材料を有するコアヤーンを含む、項17~29のいずれか1項に記載のアッパー。
第31項:第1材料に少なくとも部分的に融着された1つまたは複数のヤーンは、第1材料を含むコーティングを有するコアを有するコーテッドヤーンを含む、項17~29のいずれか1項に記載のアッパー。
第32項:第1材料に少なくとも部分的に融着された1つまたは複数のヤーンは、外周から共通部分に向かって延びる少なくとも1つの引張要素を含む、項17~31のいずれか1項に記載のアッパー。
第33項:1つまたは複数のヤーンは、各々が第1材料よりも高い溶融温度を有するコアヤーンおよび第2ヤーンを含み、少なくとも1つの引張要素は、コアヤーンおよび第2ヤーンのループによって形成されるコースに沿ってはめ込まれたストランドを含む、項32に記載のアッパー。
第34項:少なくとも1つの引張要素は、閉じ込め領域内のコースに沿ってニットステッチとフロートステッチの繰り返しシーケンスを形成するストランドを含む、項33に記載のアッパー。
第35項:1つまたは複数のヤーンは、各々が第1材料よりも高い溶融温度を有する高強力ヤーンとコアヤーンとを含み、高強力ヤーンは少なくとも5グラム/デニールの靭性を有する、項17~34のいずれか1項に記載のアッパー。
第36項:閉じ込め領域に隣接するニットコンポーネントの外側向き面の部分は、第1材料を含まず、高強力ヤーンを含む、項35に記載のアッパー。
第37項:アッパーの重量が30g以下である、項17~36のいずれか1項に記載のアッパー。
第38項:ニットコンポーネントの外面の少なくとも一部にわたって延びるポリマー層をさらに含み、ポリマー層は、第1材料よりも低い溶融温度を有するポリマー材料を含む、項17~37のいずれか1項に記載のアッパー。
第39項:ポリマー層は、閉じ込め領域の少なくとも一部に亘って延び、閉じ込め領域の一部を露出する複数の開口を含む、項38に記載のアッパー。
第40項:項17~39のいずれか1項に記載のアッパーを含み、アッパーはソール構造に固定されている、履物の物品。
第41項:アッパーであって、アッパーの少なくとも前足領域および中足領域を形成し、外周を有するニットコンポーネントを含み、前足領域は、中足領域に一体的に編まれており、前足領域および中足領域におけるニットコンポーネントの各コースは、前足領域内のコースが中足領域内のコースに対して斜めに延びるように、外周からニットコンポーネントの共通部分に向かう方向に延び、ニットコンポーネントは、各々が外周から共通部分に向かって延びるコースを有する第1領域および第2領域を有し、第1領域は、第1溶融温度を有する第1材料を有する第1ヤーンを含み、第2領域は、第1溶融温度よりも高い第2溶融温度を有する第2材料を含み、第1材料は第2領域に存在しない、アッパー。
第42項:共通部分はスロート領域である、項41に記載のアッパー。
第43項:第1ヤーンは、第1材料で形成されたコーティングを有するコアを含み、コーティングは、第1領域において少なくとも部分的に融着された表面を形成する、項41~42のいずれか1項に記載のアッパー。
第44項:第1領域は、第2領域よりも大きな摩擦係数を有する、項41~43のいずれか1項に記載のアッパー。
第45項:第1材料は熱可塑性エラストマーを含む、項41~44のいずれか1項に記載のアッパー。
第46項:熱可塑性エラストマーは熱可塑性ポリウレタンである、項45に記載のアッパー。
第47項:熱可塑性エラストマーはスチレンエチレン/ブチレンスチレン(SEBS)である、項45に記載のアッパー。
第47項:第1領域は、アッパーの外側において前足領域から中足領域まで延びる、項41~47のいずれか1項に記載のアッパー。
第49項:内側において前足領域から中足領域まで延びる第3領域をさらに含み、第3領域は第1ヤーンを含み、第1領域と第3領域は第2領域によって分離されている、項48に記載のアッパー。
第50項:第1領域および第3領域の各々は、外周から共通部分に向かって延びる少なくとも1つの引張要素を含む、項49に記載のアッパー。
第51項:少なくとも1つの引張要素は、インターループヤーンに沿ってはめ込まれたされたストランドを含む、項50に記載のアッパー。
第52項:少なくとも1つの引張要素は、インターループヤーンのコースに沿ってニットステッチとフロートステッチの繰り返しシーケンスを形成するストランドを含む、項50に記載のアッパー。
第53項:アッパーは、外側に位置し、踵領域から中足領域まで延びる第4領域と、内側に位置し、踵領域から中足領域まで延びる第5領域とをさらに含み、第4領域および第5領域の各々は第1ヤーンを含む、項49~52のいずれか1項に記載のアッパー。
第54項:項41~53のいずれか1項に記載のアッパーを含み、アッパーはソール構造に固定されている、履物の物品。
第55項:アッパーであって、外側向き面と内側向き面とを含むニットコンポーネントであって、ニットコンポーネントの外側向き面の第1領域は、ニットコンポーネントの外側向き面の第2領域に存在しない第1材料を含み、第1領域は、第2領域よりも大きな摩擦係数を有するニットコンポーネントと、ニットコンポーネントの外側向き面の一部の上に延び、開口を含み、第1領域内の第1材料の一部が少なくともいくつかの開口を通して露出されている、ポリマー層と、を含む、アッパー。
第56項:第1領域は、コアヤーンで形成された熱成形インターループヤーンネットワークと、熱成形インターループヤーンネットワーク内に融着された第1材料を含むコーティングとを含む、項55に記載のアッパー。
第57項:第1材料は熱可塑性エラストマーを含む、項55~56のいずれか1項に記載のアッパー。
第58項:ポリマー層は、第1材料よりも低い溶融温度を有する第2材料を含む、項55~57のいずれか1項に記載のアッパー。
第59項:ポリマー層は、アッパーの前足領域、中足領域および踵領域の上に延びる、項55~58のいずれか1項に記載のアッパー。
第60項:ポリマー層は、前足部領域よりも踵領域のより大きな部分にわたって延びる、項59に記載のアッパー。
第61項:ポリマー層は、前足部領域よりも中足部領域のより大きな部分にわたって延びる、項55~60のいずれか1項に記載のアッパー。
第62項:ポリマー層は、アッパーがソール構造と出会うバイトラインから前足部領域に延び、アッパーのスロート領域の前端の前で終端する、項55~61のいずれか1項に記載のアッパー。
第63項:ポリマー層の開口は、少なくとも前足領域に位置する、項55~62のいずれか1項に記載のアッパー。
第64項:ポリマー層の開口は少なくとも中足領域に位置する、項55~63のいずれか1項に記載のアッパー。
第65項:開口は踵領域から除外される、項55~64のいずれか1項に記載のアッパー。
第66項:ポリマー層の開口は、異なる大きさの開口を含む、項55~65のいずれか1項に記載のアッパー。
第67項:ポリマー層は、アッパーの前足領域内の開口を含み、開口はアッパーの中足領域内のポリマー層内の開口よりも大きい、項66に記載のアッパー。
第68項:開口部の密度はポリマー層内で変化する、項55~67のいずれか1項に記載のアッパー。
第69項:第1の領域はポリマー層によって覆われる第1の割合の表面積を有し、第2の領域はポリマー層によって覆われる第2の割合の表面積を有し、第2の割合は第1の割合よりも大きい、項55~68のいずれか1項に記載のアッパー。
第70項:ポリマー層はグラフィックデザインを含む、項55~69のいずれか1項に記載のアッパー。
第71項:項55~70のいずれか1項に記載のアッパーを含み、アッパーはソール構造に固定されている、履物の物品。
第72項:アッパーであって、少なくともアッパーの中足領域およびスロート領域を形成するニットコンポーネントを含み、ニットコンポーネントは、外周からスロート領域まで連続的に延びる第1ニットコースを含み、第1ニットコースは、第1ヤーンと、引張要素と、を含み、引張要素は、1つまたは複数のニットステッチおよび複数のウェールを延びるフロートステッチのシーケンスで編まれ、シーケンスは、外周とスロート領域との間で何度も繰り返され、複数のウェールのウェール量は、シーケンス内のニットステッチの数よりも大きい、アッパー。
第73項:引張要素は、第1ヤーンと比較して、より大きな直径、より大きな引張強度、またはより強い靭性のうちの少なくとも1つを有する、項72に記載のアッパー。
第74項:ニットコンポーネントは、それぞれがシーケンスを形成する引張要素のグループを含む、項72~73のいずれか1項に記載のアッパー。
第75項:各グループ内の引張要素のコースは、フロートステッチのないコースによって互いに分離されている、項74に記載のアッパー。
第76項:第1ヤーンおよび第2ヤーンは、ニットコンポーネントの外向き面内に含まれる、項72~75のうちのいずれか1項に記載のアッパー。
第77項:第1ニットコースは、ニットコンポーネントの内向き面を形成する第3ヤーンで編まれている、第76項に記載のアッパー。
第78項:第1ニットコース内の引張要素の少なくとも一部は、第1ヤーンのポリマー材料と少なくとも部分的に融着されている、項72~77のいずれか1項に記載のアッパー。
第79項:ニットコンポーネントは、アッパーの前足領域をさらに形成し、前足領域および中足領域のニットコンポーネントの各コースは、前足領域内のコースが中足領域内のコースに対して斜めに延びるように、外周からニットコンポーネントのスロート領域に向かう方向に延びる、項72~78のいずれか1項に記載のアッパー。
第80項:項75~79のいずれか1項に記載のアッパーを含み、アッパーはソール構造に固定されている、履物の物品。
第81項:アッパーであって、アッパーの少なくとも前足領域および中足領域を形成し、外周を有するニットコンポーネントを含み、前足領域は、中足領域に一体的に編まれており、前足領域および中足領域におけるニットコンポーネントの各コースは、前足領域におけるコースが中足領域におけるコースに対して角度をなすように、外周からニットコンポーネントの共通部分に向かう方向に延び、ニットコンポーネントは、1つまたは複数のインターループヤーンに少なくとも部分的に融着された第1材料を含み、第1材料は熱可塑性エラストマーを含む。
第82項:ニットコンポーネントは、外側向き面と、外側向き面とは反対側の内側向き面とを有し、ニットコンポーネントは、外側向き面上の閉じ込め領域を含み、閉じ込め領域は、アッパーの残りの領域とは異なる摩擦係数を有する、項81に記載のアッパー。
第83項:1つまたは複数のインターループヤーンは、コアの周囲に部分的に融着されたコーティングを有する部分的に融着されたコーテッドヤーンを含み、第1材料は部分的に融着されたコーティングを形成する、項82に記載のアッパー。
第84項:1つまたは複数のインターループヤーンは、部分的に融着されたコーテッドヤーンで編まれた引張要素を含む閉じ込め領域を含む、項83に記載のアッパー。
第85項:ニットコンポーネントは、引張要素のない少なくとも1つの閉じ込め領域を含み、引張要素のある閉じ込め領域は、ニットコンポーネントの外側向き面において、引張要素のない閉じ込め領域とは異なる摩擦係数を有する、項84に記載のアッパー。
本明細書で使用されるように、2つ以上の要素に関する「および/または」の記述は、1つの要素または要素の組合せのみを指すものとして解釈されるべきである。例えば、「要素A、要素Bおよび/または要素C」は、要素Aのみ、要素Bのみ、要素Cのみ、要素Aと要素B、要素Aと要素C、要素Bと要素C、または要素A、B、Cを含んでもよい。また、「要素Aまたは要素Bの少なくとも一方」は、要素Aの少なくとも一方、要素Bの少なくとも一方、または要素Aの少なくとも一方および要素Bの少なくとも一方を含んでもよい。また、「要素Aおよび要素Bの少なくとも一方」は、要素Aの少なくとも一方、要素Bの少なくとも一方、または要素Aの少なくとも一方および要素Bの少なくとも一方を含んでもよい。
この詳細な説明は、法定要件を満たすために提供されている。しかし、本明細書に記載された本発明の範囲を限定することは意図されていない。対照的に、請求項に係る主題は、本開示に記載されたものと類似しているかまたは同等であり、他の現在または将来の技術に関連して、異なるステップ、異なるステップの組み合わせ、異なる要素、および/または異なる要素の組み合わせを含むように、異なる態様で実施されてもよい。ここでの例はすべての点で説明的なものであり、限定的なものではない。その意味で、本明細書の範囲を逸脱することなく、当業者にとって代替例または実施形態は明らかになる。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-03-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーであって、
前記アッパーの少なくとも前足領域および中足領域を形成し、外周を有するニットコンポーネントを含み、前記前足領域は、前記中足領域に一体的に編まれており、前記ニットコンポーネントは、外側向き面と、前記外側向き面と反対側の内側向き面と、を有し、前記前足領域および前記中足領域における前記ニットコンポーネントの各コースは、前記前足領域内のコースが前記中足領域内のコースに対して斜めに延びるように、前記外周から前記ニットコンポーネントの共通部分に向かう方向に延び、前記ニットコンポーネントは、前記外周から前記共通部分に向かって延びる封じ込め領域を有し、前記封じ込め領域は、前記ニットコンポーネントの1つまたは複数のインターループヤーンに少なくとも部分的に融着された第1材料を含み、前記第1材料は、熱可塑性エラストマーを含む、アッパー。
【請求項2】
前記第1材料は、前記ニットコンポーネントの前記外側向き面上に配置される、請求項1に記載のアッパー。
【請求項3】
前記閉じ込め領域は、前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有さない部分とは異なる摩擦係数を有する、請求項に記載のアッパー。
【請求項4】
前記閉じ込め領域は、前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有さない部分よりも大きな摩擦係数を有する、請求項に記載のアッパー。
【請求項5】
前記熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリウレタン、またはスチレンエチレン/ブチレンスチレン(SEBS)である、請求項に記載のアッパー。
【請求項6】
前記共通部分はスロート領域である、請求項に記載のアッパー。
【請求項7】
前記ニットコンポーネントは前記アッパーの踵領域を形成し、前記踵領域内の各コースは前記共通部に向かう方向に延びる、請求項に記載のアッパー。
【請求項8】
前記閉じ込め領域は、隣接する複数のコースを含み、前記前足領域の外周から前記中足領域の共通部分まで延びる、請求項に記載のアッパー。
【請求項9】
前記閉じ込め領域は、前記アッパーの外側に位置する第1閉じ込め領域であり、前記アッパーは、前記アッパーの内側の前記前足領域の外周から前記アッパーの内側の前記中足領域の共通部分まで延びる第2閉じ込め領域をさらに含み、前記第1閉じ込め領域および前記第2閉じ込め領域の各々は、前記ニットコンポーネントの熱可塑性エラストマーを有さない部分よりも大きな摩擦係数を有する、請求項に記載のアッパー。
【請求項10】
前記アッパーの外側の踵領域の外周から前記アッパーの外側の中足領域の共通部分まで延びる第3閉じ込め領域と、前記アッパーの内側の踵領域の外周から内側の中足領域の共通部分まで延びる第4閉じ込め領域と、をさらに含み、前記第3閉じ込め領域および前記第4閉じ込め領域の各々は、前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有さない部分よりも大きな摩擦係数を有する、請求項に記載のアッパー。
【請求項11】
前記第1閉じ込め領域、前記第2閉じ込め領域、前記第3閉じ込め領域、および前記第4閉じ込め領域の各々は、外側向き面上の前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有さない部分によって互いに分離されている、請求項9又は10に記載のアッパー。
【請求項12】
前記ニットコンポーネントの外側向き面は、1つ又は複数のインターループヤーンに少なくとも部分的に融着された熱可塑性エラストマーを含むニットコンポーネントの外周に沿った1つまたは複数の領域を含み、前記外周に沿った1つまたは複数の領域は、前記第1閉じ込め領域と前記第3閉じ込め領域との間、前記第1閉じ込め領域と前記第2閉じ込め領域との間、および前記第2閉じ込め領域と前記第4閉じ込め領域との間に配置され、前記外周に沿った1つまたは複数の領域は、前記外周から延び、前記共通部分の下で終端する、請求項9又は10に記載のアッパー。
【請求項13】
前記第1材料に少なくとも部分的に融着されたヤーンは、熱可塑性エラストマーを含まず、前記第1材料よりも高い溶融温度を有する第2材料を有するコアヤーンを含む、請求項に記載のアッパー。
【請求項14】
前記第1材料に少なくとも部分的に融着された1つまたは複数のヤーンは、前記第1材料を含むコーティングを有するコアを有するコーテッドヤーンを含む、請求項に記載のアッパー。
【請求項15】
前記第1材料に少なくとも部分的に融着された1つまたは複数のヤーンは、前記外周から前記共通部分に向かって延びる少なくとも1つの引張要素を含む、請求項に記載のアッパー。
【請求項16】
前記1つまたは複数のヤーンは、各々が前記第1材料よりも高い溶融温度を有するコアヤーンおよび第2ヤーンを含み、前記少なくとも1つの引張要素は、前記コアヤーンおよび前記第2ヤーンのループによって形成されるコースに沿ってはめ込まれたストランドを含む、請求項に記載のアッパー。
【請求項17】
前記少なくとも1つの引張要素は、前記閉じ込め領域内のコースに沿ってニットステッチとフロートステッチの繰り返しシーケンスを形成するストランドを含む、請求項に記載のアッパー。
【請求項18】
前記1つまたは複数のヤーンは、各々が前記第1材料よりも高い溶融温度を有する高強力ヤーンとコアヤーンとを含み、前記高強力ヤーンは少なくとも5グラム/デニールの靭性を有する、請求項に記載のアッパー。
【請求項19】
前記閉じ込め領域に隣接する前記ニットコンポーネントの外側向き面の部分は、前記第1材料を含まず、前記高強力ヤーンを含む、請求項18に記載のアッパー。
【請求項20】
前記ニットコンポーネントの外面の少なくとも一部にわたって延びるポリマー層をさらに含み、前記ポリマー層は、前記第1材料よりも低い溶融温度を有するポリマー材料を含む、請求項に記載のアッパー。
【請求項21】
前記ポリマー層は、前記閉じ込め領域の少なくとも一部に亘って延び、前記閉じ込め領域の一部を露出する複数の開口を含む、請求項20に記載のアッパー。
【請求項22】
請求項に記載のアッパーを含み、前記アッパーは、ソール構造に固定されている、履物の物品。
【請求項23】
アッパーであって、
ニットコンポーネントの複数の楔形部分を画成する複数のインターループコースを有するニットコンポーネントを含み、前記複数の楔形部分の各々は、前記ニットコンポーネントの外周の一部、前記ニットコンポーネントの内周の一部、前記外周と前記内周との間に延びる第1ニットコース、前記外周と前記内周との間に延びる第2ニットコースによって画成される、アッパー。
【請求項24】
前記内周の前記楔形部分を画定する部分は、前記外周の前記楔形部分を画定する部分よりも短い長さを有する、請求項23に記載のアッパー。
【請求項25】
前記複数の楔形部分の各々は、前記第1ニットコースと前記第2ニットコースとの間に位置し、前記外周から前記内周まで延びる全長コースと、前記第1ニットコースと前記第2ニットコースとの間に位置し、前記外周から延び、前記内周の前で終端する部分長コースと、を含む、請求項23に記載のアッパー。
【請求項26】
前記ニットコンポーネントの楔形部分の少なくともいくつかは、前記アッパーの前足領域を形成する、請求項23に記載のアッパー。
【請求項27】
前記ニットコンポーネントの楔形部分の少なくともいくつかは、前記アッパーの中足領域を形成する、請求項23に記載のアッパー。
【請求項28】
前記ニットコンポーネントの楔形部分の少なくともいくつかは、前記アッパーの踵領域を形成する、請求項23に記載のアッパー。
【請求項29】
前記ニットコンポーネントは、前記ニットコンポーネントの1つ又は複数のインターループヤーンに少なくとも部分的に融着された第1材料を含む閉じ込め領域を含み、前記第1材料は、熱可塑性エラストマーを含む、請求項23に記載のアッパー。
【請求項30】
前記第1材料は、前記アッパーの外側向き面上の前記ニットコンポーネントの1つ又は複数のインターループヤーンと少なくとも部分的に融着されている、請求項29に記載のアッパー。
【請求項31】
前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有する部分は、前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有さない部分に対して異なる摩擦係数を有する、請求項29に記載のアッパー。
【請求項32】
前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有する部分は、前記ニットコンポーネントの前記第1材料を有さない部分に対して大きな摩擦係数を有する、請求項29に記載のアッパー。
【請求項33】
前記閉じ込め領域は、前記第1材料に少なくとも部分的に融着された1つまたは複数のヤーンのうちの少なくとも1つを形成する少なくとも1つの引張要素を含む、請求項29に記載のアッパー。
【請求項34】
前記閉じ込め領域は、前記アッパーの外側に延び、前記前足領域に少なくとも部分的に配置された第1閉じ込め領域であり、前記アッパーは、前記アッパーの内側に延び、前記前足領域に少なくとも部分的に配置された第2閉じ込め領域をさらに含む、請求項26に記載のアッパー。
【請求項35】
前記閉じ込め領域は、前記アッパーの中央前足領域に位置する、請求項23に記載のアッパー。
【請求項36】
前記閉じ込め領域はさらに、前記アッパーの前足領域の内側および前記前足領域の外側のうちの1つまたは複数に位置する、請求項23に記載のアッパー。
【請求項37】
前記内側および前記外側のうちの1つまたは複数にある前記閉じ込め領域は、前記インターループヤーンのコースに沿って位置する1つまたは複数の引張要素を含む、請求項29に記載のアッパー。
【請求項38】
前記1つまたは複数の引張要素の各々は、前記インターループヤーンのコースに沿ってニットステッチとフロートステッチの繰り返しシーケンスを形成するストランドを含む、請求項29に記載のアッパー。
【請求項39】
前記1つまたは複数の引張要素は、前記アッパーの外周と内周との間に延びる、請求項29に記載のアッパー。
【請求項40】
前記アッパーの前記前足領域の内側に位置する第1組の引張要素、前記アッパーの前記前足領域の外側に位置する第2組の引張要素、前記アッパーの前記踵領域の内側に位置する第3組の引張要素、および前記アッパーの前記踵領域の外側に位置する第4組の引張要素のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項26~28のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項41】
前記第1組の引張要素および前記第2組の引張要素は、熱可塑性エラストマーを含む第1材料を含む1つ又は複数のヤーンと互いに絡み合っている、請求項40に記載のアッパー。
【請求項42】
前記第1、第2、第3および第4組の引張要素のうちの1つまたは複数は、前記外周と前記内周との間に延びる、請求項23に記載のアッパー。
【請求項43】
前記第1材料は、前記第1閉じ込め領域、前記第2閉じ込め領域、および前記第1閉じ込め領域と前記第2閉じ込め領域との間の前記前足領域の一部において、1つ又は複数のインターループヤーンに少なくとも部分的に融着されている、請求項26~29のいずれか1項に記載のアッパー。
【請求項44】
前記第1材料は、熱可塑性エラストマーを含むコーティングを形成し、コアヤーンを取り囲む前記コーティングは、前記熱可塑性エラストマーを含まず、前記第1材料よりも高い溶融温度を有する第2材料を有する、請求項29に記載のアッパー。
【請求項45】
前記熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリウレタン、またはスチレンエチレン/ブチレンスチレン(SEBS)である、請求項44に記載のアッパー。
【国際調査報告】