IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国科学院上海薬物研究所の特許一覧 ▶ 中国科学院武漢病毒研究所の特許一覧 ▶ 先声▲薬▼▲業▼有限公司の特許一覧

特表2024-534628シアノ化合物、その製造方法及び使用
<>
  • 特表-シアノ化合物、その製造方法及び使用 図1
  • 特表-シアノ化合物、その製造方法及び使用 図2
  • 特表-シアノ化合物、その製造方法及び使用 図3
  • 特表-シアノ化合物、その製造方法及び使用 図4
  • 特表-シアノ化合物、その製造方法及び使用 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】シアノ化合物、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/10 20060101AFI20240912BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20240912BHJP
   C07D 491/113 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C07D495/10 CSP
A61P31/14
A61K31/407
A61K31/4439
C07D491/113
A61K31/427
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518875
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 CN2022122384
(87)【国際公開番号】W WO2023051657
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202210973184.4
(32)【優先日】2022-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111168232.4
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507388845
【氏名又は名称】中国科学院上海薬物研究所
(71)【出願人】
【識別番号】520266513
【氏名又は名称】中国科学院武漢病毒研究所
(71)【出願人】
【識別番号】522052107
【氏名又は名称】海南先声薬業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒋 翔鋭
(72)【発明者】
【氏名】許 葉春
(72)【発明者】
【氏名】張 磊▲可▼
(72)【発明者】
【氏名】蘇 海霞
(72)【発明者】
【氏名】張 秋萌
(72)【発明者】
【氏名】趙 文峰
(72)【発明者】
【氏名】尚 衛娟
(72)【発明者】
【氏名】沈 敬山
(72)【発明者】
【氏名】肖 庚富
(72)【発明者】
【氏名】蒋 華良
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC82
4C086CB27
4C086GA10
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC20
(57)【要約】
式Iで示す化合物、そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー及びその薬学的に許容される塩、ならびにコロナウイルス及び/又はピコルナウィルス感染に起因する関連疾患の予防又は治療におけるそれらの使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で示すシアノ化合物又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩。
【化1】
(ここで、
は、-COR及び-SOから選択され、
及びRは、それぞれ独立して、H、D、C~C10アルキル基、アダマンチル基及びC~Cシクロアルキル基から選択され、又は、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、3~8員の炭素環を形成し、
Xは、O、S、S(=O)及びS=Oから選択され、
Yは存在しないか、又はO、S、S(=O)及びS=Oから選択され、
は、H、C~C10アルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~C20アリール基、C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、C~C10アルコキシ基で置換されたC~C20アリール基、及びハロゲン化C~C20アリール基から選択され、
は、H、C~C10アルキル基及びC~Cシクロアルキル基から選択され、
又は、R及びRは互いに連結してC~Cアルキレン基を形成し、それによりXとYを連結し、
は、
【化2】
から選択され、
は、HとDから選択され、
は、H、C~C10アルキル基、C~C10アルコキシ基、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~C10アルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、-NR1314、C~C20アリール基、ハロゲン化C~C20アリール基、C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、ハロゲン化C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、5~20員ヘテロアリール基、及びハロゲン化5~20員ヘテロアリール基から選択され、
は、C~C10アルキル基、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~C10アルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、-NR1516、C~C20アリール基、ハロゲン化C~C20アリール基、C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、ハロゲン化C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、5~20員ヘテロアリール基及びハロゲン化5~20員ヘテロアリール基から選択され、
13及びR14は、それぞれ独立して、H、C~C10アルキル基から選択され、
15及びR16は、それぞれ独立して、H、C~C10アルキル基から選択される。)
【請求項2】
及びRは、それぞれ独立して、H、D、C~Cアルキル基、アダマンチル基及びC~Cシクロアルキル基から選択され、又は、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、3~8員の炭素環を形成し、又は、
及びRは、それぞれ独立して、H、イソプロピル基、tert-ブチル基、シクロペンチル基及びアダマンチル基から選択され、又は、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロプロピル基及びシクロペンチル基を形成し、又は、
及びRのうちの一方がHから選択され、他方がイソプロピル基、tert-ブチル基、シクロペンチル基及びアダマンチル基から選択され、又は、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロプロピル基及びシクロペンチル基を形成する、請求項1に記載のシアノ化合物、又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー又は薬学的に許容される塩。
【請求項3】
は、H、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~C10アリール基、C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、C~Cアルコキシ基で置換されたC~C10アリール基、及びハロゲン化C~C10アリール基から選択され、
は、H、C~Cアルキル基及びC~Cシクロアルキル基から選択され、
又は、R及びRは互いに連結してC~Cアルキレン基を形成し、それによりXとYを連結し、又は、R及びRは互いに連結してCHCH及びCHCHCHを形成し、それによりXとYを連結する、請求項1又は2に記載のシアノ化合物、又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー又は薬学的に許容される塩。
【請求項4】
は、H、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~Cアルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、-NR1314、C~C10アリール基、ハロゲン化C~C10アリール基、C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、ハロゲン化C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、5~10員ヘテロアリール基及びハロゲン化5~10員ヘテロアリール基から選択され、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、C~Cアルキル基から選択され、又は、
は、C~Cアルキル基、ハロゲン化C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、-NR1314、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、フェニル基、ハロゲン化フェニル基、C~Cアルキル基で置換されたフェニル基、ハロゲン化C~Cアルキル基で置換されたフェニル基及び5~6員ヘテロアリール基から選択され、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、C~Cアルキル基から選択され、又は、
は、CH、CF、CHCF、CFCF、メトキシ基、
【化3】
シクロプロピル基、
【化4】
フェニル基、
【化5】
及びピリジン-3-イルから選択され、
は、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~Cアルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、-NR1516、C~C10アリール基、ハロゲン化C~C10アリール基、C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、ハロゲン化C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、5~10員ヘテロアリール基及びハロゲン化5~10員ヘテロアリール基から選択され、R15及びR16は、それぞれ独立して、H、C~Cアルキル基から選択され、又は、
は、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、フェニル基、C~Cアルキル基で置換されたフェニル基、及びハロゲン化C~Cアルキル基で置換されたフェニル基から選択され、又は、
は、CH、シクロプロピル基、フェニル基、p-メチルフェニル基及びp-トリフルオロメチルフェニル基から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のシアノ化合物又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩。
【請求項5】
Xは、O、S、S(=O)及びS=Oから選択され、Yは存在しないか、又はO、S及びS=Oから選択され、Rは、C~Cアルキル基及びC~C10アリール基から選択され、RはHから選択され、又は、R及びRは互いに連結してC~Cアルキレン基を形成し、それによりXとYを連結し、又は、
X、Yはそれぞれ独立して、O、S及びS=Oから選択され、R及びRは互いに連結してCHCH及びCHCHCHを形成し、それによりXとYを連結し、又は、
X、Yはそれぞれ独立して、O、Sから選択され、R及びRは互いに連結してCHCHを形成し、それによりXとYを連結する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシアノ化合物又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩。
【請求項6】
一般式Iで示すシアノ化合物は、一般式IAで示すシアノ化合物から選択され、
【化6】
ここで、R、R、R、R、R、X及びYの定義は、請求項1~5のいずれか一項に記載の通りである、請求項1~5のいずれか一項に記載のシアノ化合物又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩。
【請求項7】
一般式Iで示すシアノ化合物は、下記一般式で示すシアノ化合物から選択され、
【化7】
ここで、R、R、R、Rの定義は、請求項1~5のいずれか一項に記載の通りである、請求項1~5のいずれか一項に記載のシアノ化合物又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩。
【請求項8】
一般式Iで示す化合物は、以下の化合物から選択される、請求項1に記載のシアノ化合物又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【請求項9】
一般式Iで示す化合物の製造方法であって、方法iと方法iiのうちの1つであり、
前記方法iでは、
【化12】
ia)式IIで示す化合物と式IIIで示す化合物から縮合反応により式IVで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップia)において、式IIで示す化合物を、-20℃~50℃の温度下で、溶媒において、縮合剤及び塩基の作用下で、式IIIで示す化合物と0.1~12h反応させることにより、式IVで示す化合物を取得し、
任意選択的に、前記溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、酢酸エチル及び1,4-ジオキサンのうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記縮合剤は、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシピリジンN-オキシド、プロピルホスホン酸無水物、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩、1,1’-カルボニルジイミダゾール及びO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩のうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリンであり、
ib)式IVで示す化合物を脱水することにより一般式Iで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップib)において、式IVで示す化合物を、-20℃~50℃の温度下で、無水溶媒において、脱水剤と1~24h反応させることにより、一般式Iで示す化合物を取得し、
任意選択的に、前記無水溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4-ジオキサン及びピリジンのうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記脱水剤は、無水トリフルオロ酢酸又はN-(トリエチルアンモニオスルホニル)カルバミン酸メチルであり、
前記方法iiでは、
【化13】
iia)式Vで示す化合物と式IIIで示す化合物を縮合させることで、式VIで示す化合物を取得し、ここで、式Vで示す化合物中のPGはアミノ基の保護基であり、
好ましくは、前記ステップiia)おいて、式Vで示す化合物を、-20℃~50℃の温度下で、溶媒において、縮合剤及び塩基の作用下で、式IIIで示す化合物と0.1~12h反応させることにより、式VIで示す化合物を取得し、
任意選択的に、前記溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、酢酸エチル及び1,4-ジオキサンのうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記縮合剤は、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシピリジンN-オキシド、プロピルホスホン酸無水物、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩、1,1’-カルボニルジイミダゾール及びO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩のうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン及びN-メチルモルホリンであり、
任意選択的に、前記アミノ基の保護基PGは、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジル基及びp-メトキシベンジル基であり、
iib)式VIで示す化合物を脱保護して式VIIで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップiib)において、-20℃~50℃の温度下で、式VIで示す化合物を、トリフルオロ酢酸又は塩化水素の有機溶液又はPd/C/Hと反応させて、式VIIで示す化合物を取得し、
iic)式VIIで示す化合物から、アミノアシル化、スルホニル化又は縮合反応により式IVで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップiic)において、
-20℃~50℃の温度下で、式VIIで示す化合物を、塩基の添加下でアシルクロリド又は酸無水物とアミノアシル化反応させて、式IVで示す化合物を取得し、
-20℃~50℃の温度下で、式VIIで示す化合物を、スルホニルクロリド又はスルホン酸無水物と、塩基の条件下でスルホニル化反応させて、式IVで示す化合物を取得し、
-20℃~50℃の温度下で、式VIIで示す化合物を、カルボキシ化合物と、縮合剤及び塩基の条件下で縮合反応させて、式IVで示す化合物を取得し、
任意選択的に、前記塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン及びN-メチルモルホリンであり、
任意選択的に、前記縮合剤は、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシピリジンN-オキシド、プロピルホスホン酸無水物、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩、1,1’-カルボニルジイミダゾール及びO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩のうちの1種又は複数種の混合であり、
iid)式IVで示す化合物を脱水することにより一般式Iで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップiid)において、式IVで示す化合物を、-20℃~50℃の温度下で、無水溶媒において、脱水剤と1~24h反応させることにより、一般式Iで示す化合物を取得し、
任意選択的に、前記無水溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4-ジオキサン及びピリジンのうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記脱水剤は、無水トリフルオロ酢酸又はN-(トリエチルアンモニオスルホニル)カルバミン酸メチルであり、
ここで、R、R、R、R、R、R、R、X及びYの定義は、請求項1~8のいずれか一項に記載の通りである、一般式Iで示す化合物の製造方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載のシアノ化合物、又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される補助材料とを含み、任意選択的に、さらにリトナビル又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載のシアノ化合物、又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩と、リトナビル又はその薬学的に許容される塩とを含む医薬組み合わせ。
【請求項12】
薬物の製造における請求項1~8のいずれか一項に記載のシアノ化合物、そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー又はその薬学的に許容される塩、又は請求項10に記載の医薬組成物又は請求項11に記載の医薬組成物もしくは医薬組み合わせの使用であって、前記薬物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ活性を阻害するための薬物、コロナウイルス感染を予防及び/又は治療するための薬物、ピコルナウィルスの3CLプロテアーゼ活性を阻害するための薬物、及びピコルナウィルス感染を予防及び/又は治療するための薬物から選択され、任意選択的に、前記コロナウイルスは、SARS-CoV、MERS-CoV、H229E-CoV、HKU1-CoV、NL63-CoV、OC43-CoV及びSARS-CoV-2から選択される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2021年9月30日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202111168232.4であり、発明の名称が「シアノ化合物、その製造方法及び使用」である中国特許出願及び2022年の8月15日に中国国家知的財産局に提出された、出願番号が202210973184.4であり、発明の名称が「シアノ化合物、その製造方法及び使用」である中国特許出願の優先権を主張する。上記先願の完全な開示は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、薬物化学及び化学合成の分野に属し、具体的には、本発明は、シアノ化合物、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
コロナウイルスは、一本鎖プラス鎖RNAウイルスであり、コロナウイルスの一部は、幅広い範囲で伝播し、重篤な症状を引き起こすことができる。現在知られているヒトに感染し得るコロナウイルスは7種類あり、それぞれHCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、SARS-CoV、MERS-CoV及びSARS-CoV-2である。コロナウイルスの大多数の機能タンパク質は、ORF 1ab遺伝子によってコードされ、まず1つのポリタンパク質に翻訳され、さらに3CLプロテアーゼ及びPLプロテアーゼによって複数の活性タンパク質に切断されるため、3CLプロテアーゼ活性を阻害すると、ウイルスの複製を効果的に阻害することができる。異なるコロナウイルス3CLプロテアーゼは高度な構造相同性を有するため、3CLプロテアーゼ阻害剤は広域スペクトル抗コロナウイルス活性を有する。
【0004】
コロナウイルス以外に、3CLプロテアーゼは、ピコルナウィルスによってコードされるポリタンパク質の加水分解においても重要な役割を果たし、3CLプロテアーゼ阻害剤は、ピコルナウィルスの複製を効果的に阻害することができる。エンテロウイルス71は、ピコルナウィルスの一種であり、手足口病を引き起す一般的なウイルスの1つであり、髄膜炎、脳幹脳炎、心筋炎などの様々な疾患を引き起こす可能性もある。近年、エンテロウイルス71は、乳幼児の集団において複数も急激に発生し、臨床的にも効率的な治療薬がまだない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、コロナウイルス/エンテロウイルス71などのRNAウイルス/ピコルナウィルスを阻害可能な化合物は依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一般式(I)で示すシアノ化合物又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩である。
【化1】
(ここで、
は、-COR及び-SOから選択され、
及びRは、それぞれ独立して、H、D、C~C10アルキル基、アダマンチル基及びC~Cシクロアルキル基から選択され、又は、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、3~8員の炭素環を形成し、
Xは、O、S、S(=O)及びS=Oから選択され、
Yは存在しないか、又はO、S、S(=O)及びS=Oから選択され、
は、H、C~C10アルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~C20アリール基、C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、C~C10アルコキシ基で置換されたC~C20アリール基、及びハロゲン化C~C20アリール基から選択され、
は、H、C~C10アルキル基及びC~Cシクロアルキル基から選択され、
又は、R及びRは互いに連結してC~Cアルキレン基を形成し、それによりXとYを連結し、
は、
【化2】
から選択され、
は、HとDから選択され、
は、H、C~C10アルキル基、C~C10アルコキシ基、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~C10アルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、-NR1314、C~C20アリール基、ハロゲン化C~C20アリール基、C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、ハロゲン化C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、5~20員ヘテロアリール基、及びハロゲン化5~20員ヘテロアリール基から選択され、
は、C~C10アルキル基、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~C10アルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、-NR1516、C~C20アリール基、ハロゲン化C~C20アリール基、C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、ハロゲン化C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、5~20員ヘテロアリール基及びハロゲン化5~20員ヘテロアリール基から選択され、
13及びR14は、それぞれ独立して、H、C~C10アルキル基から選択され、
15及びR16は、それぞれ独立して、H、C~C10アルキル基から選択される。)
【0007】
本発明は、一般式Iで示す化合物の製造方法であって、方法iと方法iiのうちの1つであり、
前記方法iでは、
【化3】
ia)式IIで示す化合物と式IIIで示す化合物から縮合反応により式IVで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップia)において、式IIで示す化合物を、-20℃~50℃の温度下で、溶媒において、縮合剤及び塩基の作用下で、式IIIで示す化合物と0.1~12h反応させることにより、式IVで示す化合物を取得し、
任意選択的に、前記溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、酢酸エチル及び1,4-ジオキサンのうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記縮合剤は、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシピリジンN-オキシド、プロピルホスホン酸無水物、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩、1,1’-カルボニルジイミダゾール及びO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩のうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリンであり、
ib)式IVで示す化合物を脱水することにより一般式Iで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップib)において、式IVで示す化合物を、-20℃~50℃の温度下で、無水溶媒において、脱水剤と1~24h反応させることにより、一般式Iで示す化合物を取得し、
任意選択的に、前記無水溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4-ジオキサン及びピリジンのうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記脱水剤は、無水トリフルオロ酢酸又はN-(トリエチルアンモニオスルホニル)カルバミン酸メチルであり、
前記方法iiでは、
【化4】
iia)式Vで示す化合物と式IIIで示す化合物を縮合させることで、式VIで示す化合物を取得し、ここで、式Vで示す化合物中のPGはアミノ基の保護基であり、
好ましくは、前記ステップiia)おいて、式Vで示す化合物を、-20℃~50℃の温度下で、溶媒において、縮合剤及び塩基の作用下で、式IIIで示す化合物と0.1~12h反応させることにより、式VIで示す化合物を取得し、
任意選択的に、前記溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、酢酸エチル及び1,4-ジオキサンのうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記縮合剤は、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシピリジンN-オキシド、プロピルホスホン酸無水物、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩、1,1’-カルボニルジイミダゾール及びO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩のうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン及びN-メチルモルホリンであり、
任意選択的に、前記アミノ基の保護基PGは、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジル基及びp-メトキシベンジル基であり、
iib)式VIで示す化合物を脱保護して式VIIで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップiib)において、-20℃~50℃の温度下で、式VIで示す化合物を、トリフルオロ酢酸又は塩化水素の有機溶液又はPd/C/Hと反応させて、式VIIで示す化合物を取得し、
iic)式VIIで示す化合物から、アミノアシル化、スルホニル化又は縮合反応により式IVで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップiic)において、
-20℃~50℃の温度下で、式VIIで示す化合物を、塩基の添加下でアシルクロリド又は酸無水物とアミノアシル化反応させて、式IVで示す化合物を取得し、
-20℃~50℃の温度下で、式VIIで示す化合物を、スルホニルクロリド又はスルホン酸無水物と、塩基の条件下でスルホニル化反応させて、式IVで示す化合物を取得し、
-20℃~50℃の温度下で、式VIIで示す化合物を、カルボキシ化合物と、縮合剤及び塩基の条件下で縮合反応させて、式IVで示す化合物を取得し、
任意選択的に、前記塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン及びN-メチルモルホリンであり、
任意選択的に、前記縮合剤は、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシピリジンN-オキシド、プロピルホスホン酸無水物、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩、1,1’-カルボニルジイミダゾール及びO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩のうちの1種又は複数種の混合であり、
iid)式IVで示す化合物を脱水することにより一般式Iで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップiid)において、式IVで示す化合物を、-20℃~50℃の温度下で、無水溶媒において、脱水剤と1~24h反応させることにより、一般式Iで示す化合物を取得し、
任意選択的に、前記無水溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4-ジオキサン及びピリジンのうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記脱水剤は、無水トリフルオロ酢酸又はN-(トリエチルアンモニオスルホニル)カルバミン酸メチルであり、
ここで、R、R、R、R、R、R、R、X及びYの定義は、上記に記載の通りである、一般式Iで示す化合物の製造方法である。
【0008】
本発明は、上記に記載のシアノ化合物、又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される補助材料とを含み、任意選択的に、さらにリトナビル又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物である。
【0009】
本発明は、上記に記載のシアノ化合物、又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩と、リトナビル又はその薬学的に許容される塩とを含む医薬組み合わせである。
【0010】
本発明は、薬物の製造における上記に記載のシアノ化合物、そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー又はその薬学的に許容される塩、又は上記に記載の医薬組成物又は上記に記載の医薬組成物もしくは医薬組み合わせの使用であって、前記薬物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ活性を阻害するための薬物、コロナウイルス感染を予防及び/又は治療するための薬物、ピコルナウィルスの3CLプロテアーゼ活性を阻害するための薬物、及びピコルナウィルス感染を予防及び/又は治療するための薬物から選択され、任意選択的に、前記コロナウイルスは、SARS-CoV、MERS-CoV、H229E-CoV、HKU1-CoV、NL63-CoV、OC43-CoV及びSARS-CoV-2から選択される、使用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】化合物2のSARS-CoV-2のWIV04株に対するインビトロ活性阻害率-濃度を示す図である。
図2】化合物2のSARS-CoV-2のB.1.351株に対するインビトロ活性阻害率-濃度を示す図である。
図3】実施例26のそれぞれ感染2日後(図A)と感染4日後(図B)における化合物2によるマウス肺部のウイルス力価に対する阻害効果を示す図である。
図4】実施例26におけるマウスの体重変化図である。
図5】実施例26における感染4日後のマウスの脳のウイルス力価に対する化合物2による阻害効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明者らは、3CLプロテアーゼの結晶構造に基づいて、コロナウイルス及び/又はピコルナウィルスの3CLプロテアーゼ活性を効果的に阻害することができ、インビトロで、エンテロウイルス71を含む複数種類のピコルナウィルスの3CLプロテアーゼ活性を効果的に阻害でき、細胞レベルでピコルナウィルスの複製を効果的に阻害でき、コロナウイルス及び/又はピコルナウィルスにより誘発される疾患の薬物の製造に使用できるシアノ化合物を合理的に設計した。発明者はこれに基き本開示を完成するに至った。
【0013】
本発明の第1の目的は、一般式Iで示すシアノ化合物、そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー及びその薬学的に許容される塩を提供することである。
【0014】
本発明の第2の目的は、このような化合物の製造方法を提供することである。
【0015】
本発明の第3の目的は、このような化合物を含む医薬組成物を提供することである。
【0016】
本発明の第4の目的は、3CLプロテアーゼ阻害剤の製造におけるこのような化合物の使用である。
【0017】
本発明の第5の目的は、コロナウイルス及び/又はピコルナウィルスにより誘発される疾患を予防又は治療する薬物の製造におけるこのような化合物の使用である。
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の技術的解決手段は以下のとおりである。
【0019】
一態様では、本発明は、一般式Iで示すシアノ化合物、そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー及びその薬学的に許容される塩を提供する。
【化5】
【0020】
別の態様では、本発明は、一般式Iの化合物の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の技術的解決手段は、少なくとも以下の技術的効果を有する。
【0022】
本発明の化合物は、3CLプロテアーゼ阻害活性を有し、コロナウイルス及びピコルナウィルスの遺伝子によって発現されるタンパク質複合体の加水分解を阻害し、さらにウイルスの複製及び進行を阻害し、コロナウイルス又はピコルナウィルス感染による疾患の予防及び治療に用いることができる。
【0023】
本発明は、一般式Iで示すシアノ化合物、そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー又は薬学的に許容される塩に関し、
【化6】
ここで、
は、-COR及び-SOから選択され、
及びRは、それぞれ独立して、H、D、C~C10アルキル基、アダマンチル基及びC~Cシクロアルキル基から選択され、又は、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、3~8員の炭素環を形成し、
Xは、O、S、S(=O)及びS=Oから選択され、
Yは存在しないか、又はO、S、S(=O)及びS=Oから選択され、
は、H、C~C10アルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~C20アリール基、C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、C~C10アルコキシ基で置換されたC~C20アリール基、及びハロゲン化C~C20アリール基から選択され、
は、H、C~C10アルキル基及びC~Cシクロアルキル基から選択され、
又は、R及びRは互いに連結してC-Cアルキレン基を形成し、それによりXとYを連結し、
は、
【化7】
から選択され、
は、HとDから選択され、
は、H、C~C10アルキル基、C~C10アルコキシ基、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~C10アルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、-NR1314、C~C20アリール基、ハロゲン化C~C20アリール基、C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、ハロゲン化C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、5~20員ヘテロアリール基、及びハロゲン化5~20員ヘテロアリール基から選択され、
は、C~C10アルキル基、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~C10アルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、-NR1516、C~C20アリール基、ハロゲン化C~C20アリール基、C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、ハロゲン化C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、5~20員ヘテロアリール基及びハロゲン化5~20員ヘテロアリール基から選択され、
13及びR14は、それぞれ独立して、H、C~C10アルキル基から選択され、
15及びR16は、それぞれ独立して、H、C~C10アルキル基から選択される。
【0024】
いくつかの実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、H、D、C~Cアルキル基、アダマンチル基及びC~Cシクロアルキル基から選択され、又は、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、3~8員の炭素環を形成する。
【0025】
いくつかの実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、H、イソプロピル基、tert-ブチル基、シクロペンチル基及びアダマンチル基から選択され、又は、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロプロピル基及びシクロペンチル基を形成する。
【0026】
いくつかの実施形態において、R及びRのうちの一方がHから選択され、他方がイソプロピル基、tert-ブチル基、シクロペンチル基及びアダマンチル基から選択され、又は、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロプロピル基及びシクロペンチル基を形成する。
【0027】
いくつかの実施形態において、Rは、H、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~C10アリール基、C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、C~Cアルコキシ基で置換されたC~C10アリール基、及びハロゲン化C~C10アリール基から選択され、
は、H、C~Cアルキル基及びC~Cシクロアルキル基から選択され、
又は、R及びRは互いに連結してC~Cアルキレン基を形成し、それによりXとYを連結する。
【0028】
いくつかの実施形態において、Xは、O、S、S(=O)及びS=Oから選択され、Yは存在しないか、又はO、S及びS=Oから選択され、Rは、C~Cアルキル基及びC~C10アリール基から選択され、RはHから選択され、又は、R及びRは互いに連結してC~Cアルキレン基を形成し、それによりXとYを連結する。
【0029】
いくつかの実施形態において、R及びRは互いに連結してCHCH及びCHCHCHを形成し、それによりXとYを連結する。
【0030】
いくつかの実施形態において、X、Yはそれぞれ独立して、O、S及びS=Oから選択され、R及びRは互いに連結してCHCH及びCHCHCHを形成し、それによりXとYを連結する。
【0031】
いくつかの実施形態において、X、Yはそれぞれ独立して、O、Sから選択され、R及びRは互いに連結してCHCHを形成し、それによりXとYを連結する。
【0032】
いくつかの実施形態において、X、YはいずれもSから選択され、又は、X、YはいずれもOから選択され、R及びRは互いに連結してCHCHを形成し、それによりXとYを連結する。
【0033】
いくつかの実施形態において、XはSから選択され、Yは存在せず、Rはフェニル基及びイソプロピル基から選択され、RはHから選択される。
【0034】
いくつかの実施形態において、R
【化8】
から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態において、RはHから選択される。
【0036】
いくつかの実施形態において、Rは、H、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~Cアルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、-NR1314、C~C10アリール基、ハロゲン化C~C10アリール基、C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、ハロゲン化C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、5~10員ヘテロアリール基及びハロゲン化5~10員ヘテロアリール基から選択される。
【0037】
いくつかの実施形態において、Rは、C~Cアルキル基、ハロゲン化C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、-NR1314、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、フェニル基、ハロゲン化フェニル基、C~Cアルキル基で置換されたフェニル基、ハロゲン化C~Cアルキル基で置換されたフェニル基、及び5~6員ヘテロアリール基から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態において、Rは、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~Cアルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、-NR1516、C~C10アリール基、ハロゲン化C~C10アリール基、C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、ハロゲン化C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、5~10員ヘテロアリール基、及びハロゲン化5~10員ヘテロアリール基から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態において、Rは、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、フェニル基、C~Cアルキル基で置換されたフェニル基、及びハロゲン化C~Cアルキル基で置換されたフェニル基から選択される。
【0040】
いくつかの実施形態において、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、C~Cアルキル基から選択される。
【0041】
いくつかの実施形態において、R15及びR16は、それぞれ独立して、H、C~Cアルキル基から選択される。
【0042】
いくつかの実施形態において、Rは、CH、CF、CHCF、CFCF、メトキシ基、
【化9】
シクロプロピル基、
【化10】
フェニル基、
【化11】
及びピリジン-3-イルから選択される。
【0043】
いくつかの実施形態において、Rは、CH、シクロプロピル基、フェニル基、p-メチルフェニル基及びp-トリフルオロメチルフェニル基から選択される。
【0044】
いくつかの実施形態において、一般式Iで示すシアノ化合物は、一般式IAで示すシアノ化合物から選択され、
【化12】
ここで、R、R、R、R、R、X及びYは、上記で定義されたとおりである。
【0045】
いくつかの実施形態において、一般式Iで示すシアノ化合物は一般式IBで示すシアノ化合物から選択され、
【化13】
ここで、各置換基の定義は上記のとおりである。
【0046】
いくつかの実施形態において、一般式Iで示すシアノ化合物は、以下の一般式で示すシアノ化合物から選択されるいずれか1つであり、
【化14】
ここで、R、R、R及びRは、上記で定義されたとおりである。
【0047】
いくつかの実施形態において、本発明の一般式Iで示す化合物は、以下の化合物から選択される。
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0048】
本発明は、一般式Iで示す化合物を製造する方法を提供し、前記方法は、以下の方法iと方法iiのうちの1つである。
【0049】
方法i:
【化19】
ia)式IIで示す化合物と式IIIで示す化合物から縮合反応により式IVで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップia)において、式IIで示す化合物を、-20℃~50℃の温度下で、溶媒において、縮合剤及び塩基の作用下で、式IIIで示す化合物と0.1~12h反応させることにより、式IVで示す化合物を取得し、
ここで、前記溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、酢酸エチル及び1,4-ジオキサンのうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記縮合剤は、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシピリジンN-オキシド、プロピルホスホン酸無水物、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩、1,1’-カルボニルジイミダゾール及びO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩のうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン及びN-メチルモルホリンであり、
ib)式IVで示す化合物を脱水することにより一般式Iで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップib)において、式IVで示す化合物を、-20℃~50℃の温度下で、無水溶媒において、脱水剤と1~24h反応させることにより、一般式Iで示す化合物を取得し、
ここで、前記無水溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4-ジオキサン及びピリジンのうちの1種又は複数種の混合であり、
前記脱水剤は、無水トリフルオロ酢酸、N-(トリエチルアンモニオスルホニル)カルバミン酸メチルであり、
方法ii:
【化20】
iia)式Vで示す化合物と式IIIで示す化合物を縮合させることで、式VIで示す化合物を取得し、ここで、式Vで示す化合物中のPGはアミノ基の保護基であり、
好ましくは、前記ステップiiaにおいて、式Vで示す化合物を、-20℃~50℃の温度下で、溶媒において、縮合剤及び塩基の作用下で、式IIIで示す化合物と0.1~12h反応させることにより、式VIで示す化合物を取得し、
ここで、前記溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、酢酸エチル及び1,4-ジオキサンのうちの1種又は複数種の混合であり、
前記縮合剤は、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシピリジンN-オキシド、プロピルホスホン酸無水物、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩、1,1’-カルボニルジイミダゾール及びO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩のうちの1種又は複数種の混合であり、
前記塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン及びN-メチルモルホリンであり、
前記アミノ基の保護基PGは、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジル基及びp-メトキシベンジル基であり、
iib)式VIで示す化合物を脱保護して式VIIで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップiib)において、-20℃~50℃の温度下で、式VIで示す化合物を、トリフルオロ酢酸又は塩化水素の有機溶液又はPd/C/Hと反応させて、式VIIで示す化合物を取得し、
iic)式VIIで示す化合物から、アミノアシル化、スルホニル化又は縮合反応により式IVで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップiic)において、
-20℃~50℃の温度下で、式VIIで示す化合物を、塩基の添加下でアシルクロリド又は酸無水物とアミノアシル化反応させて、式IVで示す化合物を取得し、又は、
-20℃~50℃の温度下で、式VIIで示す化合物を、スルホニルクロリド又はスルホン酸無水物と、塩基の条件下でスルホニル化反応させて、式IVで示す化合物を取得し、又は、
-20℃~50℃の温度下で、式VIIで示す化合物を、カルボキシ化合物と、縮合剤及び塩基の条件下で縮合反応させて、式IVで示す化合物を取得し、
任意選択的に、前記塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン及びN-メチルモルホリンであり、
任意選択的に、前記縮合剤は、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシピリジンN-オキシド、プロピルホスホン酸無水物、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩、1,1’-カルボニルジイミダゾール及びO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩のうちの1種又は複数種の混合であり、
iid)式IVで示す化合物を脱水することにより一般式Iで示す化合物を取得し、
好ましくは、前記ステップiid)において、式IVで示す化合物を、-20℃~50℃の温度下で、無水溶媒において、脱水剤と1~24h反応させることにより、一般式Iで示す化合物を取得し、
ここで、前記無水溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1,4-ジオキサン及びピリジンのうちの1種又は複数種の混合であり、
任意選択的に、前記脱水剤は、無水トリフルオロ酢酸、N-(トリエチルアンモニオスルホニル)カルバミン酸メチルであり、
ここで、各置換基の定義は上記のとおりである。
【0050】
本発明の別の態様は、一般式Iのシアノ化合物、そのラセミ体、エナンチオマー及びジアステレオマー、並びにそれらの薬学的に許容される塩のうちの1種又は複数種を含む医薬組成物をさらに提供する。前記医薬組成物は、1種又は複数種の薬学的に許容される補助材料、希釈剤、担体、賦形剤又はアジュバントをさらに含んでもよい。
【0051】
本発明の別の態様は、一般式Iのシアノ化合物、又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される補助材料とを含む医薬組成物をさらに提供し、任意選択的に、前記医薬組成物は、さらにリトナビル又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0052】
本発明の別の態様は、一般式Iのシアノ化合物、そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー又は薬学的に許容される塩と、リトナビル又はその薬学的に許容される塩と、を含む医薬組み合わせをさらに提供する。
【0053】
本発明の別の態様は、一般式Iのシアノ化合物又はその薬学的に許容される塩、リトナビル又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される補助材料を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0054】
実験により、本発明の化合物はコロナウイルス3CLプロテアーゼ及びピコルナウィルス3CLプロテアーゼに対する阻害活性を有することが証明された。
【0055】
したがって、本発明のさらに別の態様は、一般式Iのシアノ化合物、そのラセミ体、エナンチオマー及びジアステレオマー、並びにそれらの薬学的に許容される塩から選択される1種又は複数種、又は上記医薬組成物を含むコロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害剤及び/又はピコルナウィルス3CLプロテアーゼ阻害剤を提供する。
【0056】
本発明はさらに、コロナウイルス3CLプロテアーゼ活性を阻害するための薬物、コロナウイルス感染を予防及び/又は治療するための薬物、ピコルナウィルスの3CLプロテアーゼ活性を阻害するための薬物、及びピコルナウィルス感染を予防及び/又は治療するための薬物の製造における上記シアノ化合物、そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、その薬学的に許容される塩、又はそれらの混合物、又は上記医薬組成物の使用を提供する。
【0057】
本発明はさらに、本発明による一般式Iのシアノ化合物、そのラセミ体、エナンチオマー及びジアステレオマー、並びにそれらの薬学的に許容される塩から選択される1種又は複数種、又は本発明による医薬組成物を、処置が必要な対象に投与することを含む、3CLプロテアーゼを阻害する方法を提供する。
【0058】
本発明はさらに、疾患又は病症を予防及び/又は治療する方法であって、本発明による一般式Iのシアノ化合物、そのラセミ体、エナンチオマー及びジアステレオマー、並びにそれらの薬学的に許容される塩から選択される1種又は複数種、又は本発明による医薬組成物を、治療が必要な対象に投与すること含み、前記疾患又は病症は、3CLプロテアーゼ媒介性疾患又は病症、特にコロナウイルス感染及び/又はピコルナウィルス感染に関連する疾患又は病症である、方法を提供する。
【0059】
本発明はさらに、コロナウイルス及び/又はピコルナウィルス感染に起因する関連疾患を予防又は治療する薬物の製造における、上記一般式Iで示すシアノ化合物、そのラセミ体、エナンチオマー及びジアステレオマー、並びにそれらの薬学的に許容される塩のうちの1種又は複数種、又はその医薬組成物の使用を提供する。
【0060】
本発明はさらに、コロナウイルス及び/又はピコルナウィルス感染に起因する関連疾患を予防又は治療する方法であって、本発明の一般式Iで示すシアノ化合物、そのラセミ体、エナンチオマー及びジアステレオマー、並びにそれらの薬学的に許容される塩のうちの1種又は複数種を含む医薬製剤を治療有効量で患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0061】
いくつかの実施形態において、前記コロナウイルスは、SARS-CoV、MERS-CoV、H229E-CoV、HKU1-CoV、NL63-CoV、OC43-CoV又はSARS-CoV-2から選択される。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記コロナウイルス感染に起因する関連疾患は、気道感染、肺炎又はその合併症から選択される。
【0063】
[用語の定義及び説明]
「C~C10アルキル基」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素基を表す。前記アルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、1-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基又は1,2-ジメチルブチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。「C~Cアルキル基」は、1~6個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基などを含むが、これらに限定されない。
【0064】
「アルキレン基」とは、直鎖又は分岐鎖の二価の飽和炭化水素基を表すと理解してもよい。「C~Cアルキレン基」は、2~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の二価の飽和炭化水素基と理解してもよく、CHCH、CHCHCH、CHCHCHCH、CHCHCHCHCH又はCHCHCHCHCHCHなどを含むが、これらに限定されない。
【0065】
「C~Cシクロアルキル基」は、3~8個の環炭素原子を含有する環状アルキル基を表す。「C~Cシクロアルキル基」は、3~7個の環炭素原子を含有する環状アルキル基を表し、本開示のシクロアルキル基は、シクロプロピル基、メチルシクロプロピル基、エチルシクロプロピル基、ジメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、メチルシクロブチル基、エチルシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを含むが、これらに限定されない。
【0066】
「C~C10アルコキシ基」は、1~10個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖又は環状のアルコキシ基を表す。「C~Cアルコキシ基」は、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖又は環状のアルコキシ基を表し、本開示のアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などを含むが、これらに限定されない。
【0067】
「アリール基」という用語は、共役π電子系を有し、且つ全ての環原子が炭素である、単環式又は縮合多環式芳香族環式基を指す。アリール基は、6~20個の炭素原子、6~14個の炭素原子又は6~12個の炭素原子を有することがある。「C~C20アリール基」は、6~20個の炭素原子を有するアリール基と理解してもよい。特に、6個の炭素原子を有する環(「Cアリール基」)、例えば、フェニル基、又は、9個の炭素原子を有する環(「Cアリール基」)、例えば、インダニル基又はインデニル基、又は10個の炭素原子を有する環(「C10アリール基」)、例えば、テトラリニル基、ジヒドロナフチル基又はナフチル基、又は、13個の炭素原子を有する環(「C13アリール基」)、例えば、フルオレニル基、又は、14個の炭素原子を有する環(「C14アリール基」)、例えば、アントリル基である。「C~C10アリール基」は、6~10個の炭素原子を有するアリール基と理解してもよい。特に、6個の炭素原子を有する環(「Cアリール基」)、例えば、フェニル基、又は、9個の炭素原子を有する環(「Cアリール基」)、例えば、インダニル基又はインデニル基、又は10個の炭素原子を有する環(「C10アリール基」)、例えば、テトラリニル基、ジヒドロナフチル基又はナフチル基である。
【0068】
「ヘテロアリール基」は、芳香性を有する環基であり、5~20個の環原子を含有し、そのうち1つ又は複数の環原子は、N、O又はSから選ばれるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。「5~20員ヘテロアリール基」は、5~20個の環原子を有し、特に5又は6又は9又は10又は13又は14個の環原子を有し、かつ、独立してN、O及びSから選択される1~7個のヘテロ原子を含むヘテロアリール基として理解してもよい。「5~10員ヘテロアリール基」は、5~10個の環原子を有し、特に5又は6又は9又は10個の環原子を有し、かつ、独立してN、O及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を含むヘテロアリール基として理解してもよい。「5~6員ヘテロアリール基」は、5又は6個の環原子を有し、かつ、独立してN、O及びSから選択される1~3個のヘテロ原子を含むヘテロアリール基として理解してもよい。本発明に係るヘテロアリール基は、チエニル基、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基又はチアジアゾリル基など及びこれらのベンゾ誘導体、例えばベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、インダゾリル基、インドリル基又はイソインドリル基などから選択され、又は、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基若しくはトリアジニル基など、及びそれらのベンゾ誘導体、例えば、キノリル基、キナゾリニル基、若しくはイソキノリル基などから選択され、又は、アゾシニル基、インドリジニル基、プリニル基など及びそれらのベンゾ誘導体から選択され、又は、シンノリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、プテニジニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基又はフェノキサジニル基などから選択される。
【0069】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選択される。
【0070】
「ハロゲン化」は、モノハロゲン化、ポリハロゲン化又はペルハロゲン化、すなわち、1つ、複数又は全ての水素原子がハロゲンで置換されていることを含む。
【0071】
「置換」とは、基上の1又は複数の水素原子が1又は複数の置換基で置換されることを意味する。
【0072】
「任意選択」又は「任意選択的に」という用語は、その後に記載する事項又は状況が発生する場合も発生しない場合もあるということを意味し、該記載には、上記事項又は状況が発生する場合と、上記事象又は状況が発生しない場合とが含まれる。
【0073】
「治療有効量」は、(i)特定の疾患、病態又は障害を治療し、(ii)特定の疾患、病態又は障害の1種又は複数種の症状を軽減、改善又は解消し、又は(iii)本明細書に記載の特定の疾患、病態又は障害の1種又は複数種の症状の発症を遅延させる本発明の化合物の使用量を意味する。「治療有効量」となる本発明化合物の量は、当該化合物、疾患状態及びその重篤性、投与形態及び治療される哺乳動物の年齢によって変わるが、当業者が常例のようにそれ自体の知識及び本開示の内容に基づいて決定することができる。
【0074】
「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容される酸又は塩基の塩であり、化合物と無機酸又は有機酸とで形成した塩、及び化合物と無機塩基又は有機塩基とで形成した塩を含む。
【0075】
「医薬組み合わせ」という用語は、2種以上の活性成分又はその薬学的に許容される塩を含む組み合わせである。本発明のいくつかの実施形態において、前記医薬組み合わせ中の活性成分又はその薬学的に許容される塩は、同時に投与されてもよく、本発明のいくつかの実施形態において、前記医薬組成物中の活性成分又はその薬学的に許容される塩は、個別に又は連続的に投与されてもよい。
【0076】
「医薬組成物」とは、本発明の1種又は複数種の化合物又はその塩と、薬学的に許容される補助材料との混合物を指す。医薬組成物の目的は、有機体に本発明の化合物を与えることを容易にすることである。
【0077】
「薬学的に許容される補助材料」とは、有機体に対して明らかな刺激作用がなく、かつ、該活性化合物の生物学的活性及び性能を損なうことがない補助材料を指す。適切な補助材料は、当業者に周知の、例えば、炭水化物、ワックス、水溶性及び/又は水で膨張可能なポリマー、親水性又は疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水等である。
【実施例
【0078】
以下、実施例により本開示をさらに説明する。以下の実施例において、原料は市販から購入可能であり、又は文献に記載されている方法/本分野で知られている有機合成方法で作製することができる。
【0079】
<実施例1>
化合物1-1の調製:
【化21】
【0080】
ステップ1:出発原料SMA(2.74g、11.85mmol)、35mlのジクロロメタン及び35mlのDMFを反応フラスコに入れ、0℃まで降温し、出発原料SMB(3.56g、11.86mmol)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリ(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP、6.29g、14.22mmol)及びN-メチルモルホリン(NMM、3.91ml、35.56mmol)を順次添加し、室温まで昇温して10h反応させ、反応終了後、適量のジクロロメタンを添加し、有機相を順に1N塩酸水溶液、飽和食塩水で洗浄し、洗浄終了後、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、有機相を乾燥まで濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより3.71gのINT-1を取得した。ESI-MS:433.2m/z[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d):δ:6.75(d,J=9.2Hz,1H),4.38(t,J=8.2Hz,1H),4.25(d,J=10.9Hz,1H),4.11(d,J=9.3Hz,1H),3.93(t,J=9.3Hz,1H),3.62(s,3H),3.40-3.31(m,4H),2.70(dd,J=13.1,7.9Hz,1H),2.37(dd,J=13.2,8.4Hz,1H),1.37(s,9H),0.94(s,9H)。
【0081】
ステップ2:INT-1(3.71g、8.58mmol)、37mlのTHF、37mlの精製水及び水酸化リチウム一水和物(0.72g、17.16mmol)を反応フラスコに加え、室温で2h反応させ、反応終了後、濃塩酸でpH=4に調整し、ろ過し、3.4gの化合物1-1を取得した。ESI-MS:419.2m/z[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d):δ:12.68(s,1H),6.71(d,J=9.4Hz,1H),4.38-4.19(m,2H),4.11(d,J=9.4Hz,1H),3.88(d,J=10.9Hz,1H),3.41-3.29(m,4H),2.69(dd,J=13.1,7.9Hz,1H),2.34(dd,J=13.2,8.9Hz,1H),1.38(s,9H),0.94(s,9H)。
【0082】
化合物1-2の製造:
【化22】
【0083】
アンモニア・メタノール溶液(700ml、7mol/L)、出発原料SMD(100g、0.349mol)を反応フラスコに入れ、撹拌して透明になるまで溶解させ、25±5℃で保温し、36h反応させ、反応終了後、反応液を約250mlの反応液が残るまで濃縮し、イソプロパノールを300ml添加し、反応液が約250ml残るまでさらに減圧濃縮し(3回繰り返し)、窒素置換し、10±5℃に降温し、500mlの塩化水素-イソプロパノール溶液(4mol/L)を反応釜に添加し、添加終了後、25±5℃に昇温し、25±5℃で保温して9h反応させた。反応終了後、反応液を約250mlの反応液が残るまで減圧濃縮し、300mlのイソプロパノールを添加して、反応液が約250ml残るまでさらに減圧濃縮し(2回繰り返し)、100mlのイソプロパノールを添加し、30±5min撹拌し、ろ過し、ろ過ケーキを50mlのイソプロパノールでリンスし、湿品を取得し、45±5℃で真空乾燥させ、66.7gの化合物1-2を取得した。収率:92%;H NMR(400MHz,DMSO-d):δ:8.45(d,J=5.1Hz,3H),8.25-8.04(m,1H),7.95(s,1H),7.67-7.49(m,1H),3.85-3.80(m,1H),3.19-3.13(m,2H),2.59-2.51(m,1H),2.32-2.27(m,1H),2.05-1.98(m,1H),1.82-1.66(m,2H);ESI-MS:172.1m/z[M+H]
【0084】
化合物1の製造:
【化23】
【0085】
化合物1-1(419mg、1mmol)を二つ口フラスコに入れ、窒素ガスの保護下で5mLのジクロロメタンを添加した後、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩(400mg、1.1mmol)を添加して室温で1h撹拌した。化合物1-2(1mmol)を1mLのジクロロメタンに溶解させて以上の系に入れた後、氷水浴でN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL、1mmol)を添加し、氷水浴を外し、系を室温で一晩撹拌した。後処理して、ジクロロメタンを50mL添加し、その後、1M塩酸水溶液で3回洗浄し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で3回洗浄し、飽和食塩水で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して回転乾燥して化合物1-3(白色固体、469mg、収率82%)を取得した。ESI-MS:m/z572.3[M+H]
【0086】
化合物1-3(114mg、0.2mmol)とバージェス試薬(1.5eq)を二つ口フラスコに入れて、窒素ガスを3回充填した後、分子篩で乾燥させたジクロロメタンを添加し、室温で一晩撹拌し、原料が基本的に完全に反応したことが薄層クロマトグラフィーによって示された。後処理して、カラムクロマトグラフィーにより化合物1(白色固体、52mg、収率47%)を取得した。ESI-MS:554.3m/z[M+H]
【0087】
<実施例2>
【化24】
【0088】
化合物1-3(572mg、1mmol)を3mLの4M塩化水素/1,4-ジオキサン溶液に溶解させ、又は2mLのジクロロメタンに溶解させた後、2mLのトリフルオロ酢酸を滴下添加し、環境温度で撹拌し、原料が基本的に完全に反応したことが薄層クロマトグラフィーによって示された後、溶媒を十分に回転乾燥した。得られた粗生成物を2mLのジクロロメタンに溶解させ、窒素ガスで保護し、トリエチルアミン(3mmol)を添加した後、系を氷水浴に置き、無水トリフルオロ酢酸(1.2mmol)を滴下添加し、原料が基本的に完全に反応したことが薄層クロマトグラフィーによって示された後、ジクロロメタンを50mL添加し、その後、1M塩酸水溶液で3回洗浄し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で3回洗浄し、飽和食塩水で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、カラムクロマトグラフィーにより化合物2-1(白色固体、265mg、収率46%)を取得した。ESI-MS:m/z568.3[M+H]
【0089】
化合物2-1(113mg、0.2mmol)とバージェス試薬(1.5eq)を二つ口フラスコに入れて、窒素ガスを3回充填した後、分子篩で乾燥させたジクロロメタンを添加し、室温で一晩撹拌し、原料が基本的に完全に反応したことが薄層クロマトグラフィーによって示された。後処理して、カラムクロマトグラフィーにより化合物2(白色固体、41mg、収率47%)を取得した。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ9.46(d,J=8.7Hz,1H),9.05(d,J=8.6Hz,1H),7.67(s,1H),4.97(ddd,J=11.0,8.5,5.0Hz,1H),4.53(d,J=8.7Hz,1H),4.34(dd,J=9.9,7.1Hz,1H),4.26-4.14(m,1H),3.92(d,J=10.9Hz,1H),3.50-3.34(m,4H),3.22-3.11(m,1H),3.06(td,J=9.3,7.1Hz,1H),2.68-2.58(m,1H),2.50-2.43(m,1H),2.31(dd,J=13.0,10.0Hz,1H),2.23-2.07(m,2H),1.71(tdd,J=14.9,10.3,7.4Hz,2H),0.99(s,9H).ESI-MS:550.3m/z[M+H]
【0090】
<実施例3>
【化25】
【0091】
無水トリフルオロ酢酸の代わりに無水酢酸を用いたことを除き、実施例2と同様の方法を使用し、化合物3(白色固体、45mg、収率45%)を取得した。ESI-MS:496.3m/z[M+H]
【0092】
<実施例4>
【化26】
【0093】
無水トリフルオロ酢酸の代わりにシクロプロパンカルボン酸無水物を用いたことを除き、実施例2と同様の方法を使用し、化合物4(白色固体、32mg、収率31%)を取得した。ESI-MS:522.3m/z[M+H]
【0094】
<実施例5>
【化27】
【0095】
1-1の代わりに5-1を用いたことを除き、実施例1と同様の方法を使用し、化合物5(白色固体、22mg、収率20%)を取得した。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ9.03(d,J=8.4Hz,1H),7.67(s,1H),7.41(dd,J=9.1,2.6Hz,1H),4.96(ddd,J=10.6,8.4,5.4Hz,1H),4.58-4.50(m,1H),4.34(dd,J=9.8,7.2Hz,1H),4.26-4.21(m,1H),3.89(d,J=11.0Hz,1H),3.45-3.33(m,4H),3.22-3.03(m,2H),2.64-2.57(m,1H),2.45(ddd,J=10.1,8.5,4.5Hz,1H),2.31(dd,J=12.9,9.8Hz,1H),2.20-2.10(m,2H),1.84-1.67(m,2H),1.39-1.31(m,2H),1.24(t,J=9.5Hz,2H),0.97(s,9H).ESI-MS:540.2m/z[M+H]
【0096】
<実施例6>
【化28】
【0097】
1-1の代わりに6-1を用いたことを除き、実施例1と同様の方法を使用し、化合物6(白色固体、38mg、収率37%)を取得した。ESI-MS:512.2m/z[M+H]
【0098】
<実施例7>
【化29】
【0099】
1-1の代わりに7-1を用いたことを除き、実施例1と同様の方法を使用し、化合物7(白色固体、49mg、収率44%)を取得した。ESI-MS:553.3m/z[M+H]
【0100】
<実施例8>
【化30】
【0101】
無水トリフルオロ酢酸の代わりに無水安息香酸を用いたことを除き、実施例2と同様の方法を使用し、化合物8(白色固体、44mg、収率39%)を取得した。ESI-MS:558.3m/z[M+H]
【0102】
<実施例9>
【化31】
【0103】
無水トリフルオロ酢酸の代わりに3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリドを用いたことを除き、実施例2と同様の方法を使用し、化合物9(白色固体、39mg、収率28%)を取得した。ESI-MS:694.2m/z[M+H]
【0104】
<実施例10>
【化32】
【0105】
無水トリフルオロ酢酸の代わりに3,5-ジメチルベンゾイルクロリドを用いたことを除き、実施例2と同様の方法を使用し、化合物10(白色固体、31mg、収率26%)を取得した。ESI-MS:586.2m/z[M+H]
【0106】
<実施例11>
【化33】
【0107】
無水トリフルオロ酢酸の代わりに3,3,3-トリフルオロプロピオン酸無水物を用いたことを除き、実施例2と同様の方法を使用し、化合物11(白色固体、28mg、収率25%)を取得した。ESI-MS:564.2m/z[M+H]
【0108】
<実施例12>
【化34】
【0109】
無水トリフルオロ酢酸の代わりに3-ピリジンカルボン酸クロリドを用いたことを除き、実施例2と同様の方法を使用し、化合物12(白色固体、39mg、収率35%)を取得した。ESI-MS:559.2m/z[M+H]
【0110】
<実施例13>
【化35】
【0111】
無水トリフルオロ酢酸の代わりにペンタフルオロプロパノイルクロリドを用いたことを除き、実施例2と同様の方法を使用し、化合物13(白色固体、41mg、収率34%)を取得した。ESI-MS:600.2m/z[M+H]
【0112】
<実施例14>
【化36】
【0113】
1-1の代わりに14-1を用いたことを除き、実施例1と同様の方法を使用し、化合物14(白色固体、32mg、収率29%)を取得した。ESI-MS:550.2m/z[M+H]
【0114】
<実施例15>
【化37】
【0115】
無水トリフルオロ酢酸の代わりにメタンスルホン酸無水物を用いたことを除き、実施例2と同様の方法を使用し、無水トリフルオロ酢酸の代わりにメタンスルホン酸無水物を用いて、化合物15(白色固体、38mg、収率36%)を取得した。H NMR(400MHz,Methanol-d)δ5.06(dd,J=11.5,4.5Hz,1H),4.46(dd,J=10.3,7.1Hz,1H),4.27(dd,J=11.0,1.6Hz,1H),4.02-3.89(m,2H),3.45(qt,J=8.6,4.7Hz,4H),3.30-3.23(m,1H),2.92(s,3H),2.78(tdd,J=10.3,8.5,4.0Hz,1H),2.68(ddd,J=13.0,7.2,1.6Hz,1H),2.51(dd,J=13.0,10.3Hz,1H),2.45-2.27(m,2H),1.94-1.77(m,2H),1.05(s,9H).ESI-MS:532.2m/z[M+H]
【0116】
<実施例16>
【化38】
【0117】
無水トリフルオロ酢酸の代わりにシクロプロパンスルホニルクロリドを用いたことを除き、実施例2と同様の方法を使用し、無水トリフルオロ酢酸の代わりにシクロプロパンスルホニルクロリドを用いて、化合物16(白色固体、29mg、収率26%)を取得した。H NMR(400MHz,Methanol-d)δ5.06(dd,J=11.5,4.5Hz,1H),4.44(dd,J=10.3,7.0Hz,1H),4.28(dd,J=11.0,1.6Hz,1H),4.00-3.94(m,2H),3.52-3.38(m,4H),3.31-3.21(m,1H),2.79(tdd,J=10.4,8.5,4.1Hz,1H),2.72-2.65(m,1H),2.57(ddd,J=7.9,6.2,3.9Hz,1H),2.51(dd,J=13.0,10.4Hz,1H),2.43-2.29(m,2H),1.92-1.74(m,2H),1.34-1.29(m,1H),1.14(qt,J=6.4,3.8Hz,1H),1.06(s,9H),1.01(ddt,J=7.9,5.8,2.7Hz,2H),0.97-0.87(m,1H).ESI-MS:558.2m/z[M+H]
【0118】
<実施例17>
【化39】
【0119】
無水トリフルオロ酢酸の代わりにベンゼンスルホニルクロリドを用いたことを除き、実施例2と同様の方法を使用し、化合物17(白色固体、35mg、収率29%)を取得した。ESI-MS:594.2m/z[M+H]
【0120】
<実施例18>
【化40】
【0121】
1-1の代わりに18-1を用いたことを除き、実施例1と同様の方法を使用し、化合物18(白色固体、44mg、収率42%)を取得した。ESI-MS:518.2m/z[M+H]
【0122】
<実施例19>
【化41】
【0123】
1-1の代わりに19-1を用いたことを除き、実施例1と同様の方法を使用し、化合物19(白色固体、41mg、収率36%)を取得した。ESI-MS:568.2m/z[M+H]
【0124】
<実施例20>
【化42】
【0125】
1-1の代わりに20-1を用いたことを除き、実施例1と同様の方法を使用し、化合物20(白色固体、45mg、収率35%)を取得した。ESI-MS:648.2m/z[M+H]
【0126】
<実施例21>
【化43】
【0127】
1-1の代わりに21-1を用いたことを除き、実施例1と同様の方法を使用し、化合物21(白色固体、34mg、収率31%)を取得した。ESI-MS:640.2m/z[M+H]
【0128】
<実施例22>
【化44】
【0129】
1-1の代わりに22-1を用いて、1-2の代わりに22-1を用いたことを除き、実施例1と同様の方法を使用し、化合物22(白色固体、22mg、収率18%)を取得した。ESI-MS:614.2m/z[M+H]
【0130】
<実施例23>
【化45】
【0131】
化合物23-1(497mg、1mmol)を二つ口フラスコに入れ、窒素ガスの保護下で5mLのジクロロメタンを添加した後、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩(400mg、1.1mmol)を添加して室温で1h撹拌した。化合物1-2(又はそれに対応する塩、1mmol)を1mLのジクロロメタンに溶解させて以上の系に入れた後、氷水浴でN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL、1mmol)を添加し、氷水浴を外し、系を室温で一晩撹拌した。後処理して、ジクロロメタンを50mL添加し、その後、1M塩酸水溶液で3回洗浄し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で3回洗浄し、飽和食塩水で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過して回転乾燥して化合物23-2(白色固体、421mg、収率65%)を取得した。ESI-MS:m/z650.3[M+H]
【0132】
化合物23-2(325mg,0.5mmol)を1.5の4M塩化水素/1,4-ジオキサン溶液に溶解させ、又は1mLのジクロロメタンに溶解させた後、1mLのトリフルオロ酢酸を滴下添加し、環境温度で撹拌し、原料が基本的に完全に反応したことが薄層クロマトグラフィーによって示された後、溶媒を十分に回転乾燥した。得られた粗生成物を2mLのジクロロメタンに溶解させ、窒素ガスで保護し、トリエチルアミン(1.5mmol)を添加した後、系を氷水浴に置き、無水トリフルオロ酢酸(0.6mmol)を滴下添加し、原料が基本的に完全に反応したことが薄層クロマトグラフィーによって示された後、ジクロロメタンを25mL添加し、その後、1M塩酸水溶液で3回洗浄し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で3回洗浄し、飽和食塩水で有機相を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、カラムクロマトグラフィーにより化合物23-3(白色固体、167mg、収率52%)を取得した。ESI-MS:m/z646.3[M+H]
【0133】
化合物23-3(130mg、0.2mmol)とバージェス試薬(1.5eq)を二つ口フラスコに入れて、窒素ガスを3回充填した後、分子篩で乾燥させたジクロロメタンを添加し、室温で一晩撹拌し、原料が基本的に完全に反応したことが薄層クロマトグラフィーによって示された。後処理して、カラムクロマトグラフィーにより化合物23(白色固体、37mg、収率29%)を取得した。ESI-MS:628.2m/z[M+H]
【0134】
<実施例24:SARS-CoV-2の3CLproに対する化合物の阻害活性の測定>
SARS-CoV-2 3CLpro酵素活性に対する化合物の阻害活性を蛍光共鳴エネルギー移動法により測定して評価した。酵素反応系全体の体積は120μLであり、プロテアーゼの最終濃度は30nMであり、基質の最終濃度は20μMであった。反応系の緩衝液は、50mMのTris pH7.3、1mMのEDTAを含む。96ウェルプレートにSARS-CoV-2 3CLproプロテアーゼ及び異なる濃度の化合物を入れて、30℃で10minインキュベートし、基質を添加して迅速にマイクロプレートリーダーに入れてデータを読み取る。励起光及び放射光はそれぞれ320nM、405nMであった。測定時間は3.5minであり、蛍光値を35s毎に読み取った。最終結果のうちから前の2minに読み取った値からフィッティングして反応速度を取得し、対照群(DMSO)と比較して、阻害率を計算した。GraphPad Prism 8というソフトウェアでフィッティングしてIC50値及び阻害率曲線を取得した。
【0135】
実験結果は表1に示すとおり通りである。結果は、本発明の化合物がSARS-CoV-2 3CLproに対して強力な阻害作用を有することを示している。IC50値の範囲として、Aは<0.1μM、Bは0.1-1μM、Cは1-10μMと意味する。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】
<実施例24-2:SARS-CoV-2オミクロン株変異型3CLプロテアーゼに対する化合物2の阻害活性の試験>
試験原理:酵素と基質との反応によって蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を発生させるという方法を応用して、本発明化合物によるオミクロン株変異型3CLプロテアーゼ(P132H)活性の阻害効果を研究した。
【0141】
実験材料は以下の表に示すとおりである。
【0142】
【表5】
【0143】
[実験機器及び装置]
【0144】
【表6】
【0145】
実験ステップ:
20mMのTris-HCl、1mMのEDTA、0.01%のBSA、1mMのDTT及び100mMのNaClを含む反応緩衝液を調製する。Echo分注システムを用いて、測定対象化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)で異なる濃度に希釈し、384ウェルプレートに移した。変異型3CLプロテアーゼを反応緩衝液で希釈し、10μL/ウェルの量で384ウェルプレートに入れ、1000rpmで1min遠心分離し、その後室温で30分間インキュベートした。その後、基質を10μL/ウェル入れて、1000rpmで30s遠心分離して酵素反応を開始させた。反応系において、酵素の最終濃度は50nMであり、基質の最終濃度は20μMであり、化合物の濃度範囲は10000nMから0.51nMであった。次に、Flexstation 3マイクロプレートリーダーでKinetic Reduction Vmaxモードを選択し、75秒ごとに490nmの波長の蛍光値を連続的に合計35回読み取り、反応速度値(V)を取得し、阻害率を計算し、XLfitソフトウェアを用いて4パラメータフィッティングを行って半数阻害濃度(IC50)を取得する。阻害率の計算方法は以下の通りである。
【0146】
【数1】
ここで、Vmaxは、酵素及び基質のみを含むウェルの反応速度値であり、Vminは、基質のみを含むウェルの反応速度値であり、VCompoundは、測定対象化合物、酵素及び基質を含むウェルの反応速度値である。
【0147】
実験結果:SARS-CoV-2オミクロン株中の、P132H変異を有する3CLプロテアーゼに対して、化合物2は有意な阻害活性を維持した(3回の独立実験によるIC50は0.022±0.00090μMであった)。
【0148】
【表7】
【0149】
<実施例24-3:異なるコロナウイルスから由来する3CLプロテアーゼに対する化合物2の阻害活性の実験>
実験目的:ヒトに感染可能な他の6種類のコロナウイルスから由来する3CLプロテアーゼ活性に対する化合物2の阻害効果を研究する。6種類のウイルスはそれぞれ、SARS-CoV、MERS-CoV、OC43-CoV、H229E-CoV、NL63-CoV及びHKU1-CoVであった。
【0150】
実験材料:
3CLプロテアーゼコロナウイルスのゲノム配列により組換え全長コロナウイルス3CLプロテアーゼを自製し、使用されたSARS-CoV、MERS-CoV、H229E-CoV、HKU1-CoV、NL63-CoV及びOC43-CoVゲノムのGenBank番号は、それぞれAAP13442.1、MT387202.1、AF304460.1、AY597011.2、AY567487.2及びAY903459.1であり、6種類のコロナウイルス3CLプロテアーゼのタンパク質発現に必要なDNA配列は、南京ジェンスクリプト・バイオテクノロジー社から購入した。
【0151】
3CLプロテアーゼの基質は、南京ジェンスクリプト・バイオテクノロジー社から購入した。
【0152】
キモトリプシン基質は、GLBiochem社から購入した。
【0153】
その他の試薬は以下の表に示すとおりである。
【0154】
【表8】
【0155】
実験ステップ:
反応緩衝液(50mMのTris及び1mMのEDTAを含有する)を調製した。測定対象化合物をDMSOで100mMの母液になるように溶解し、さらに反応緩衝液で2倍段階希釈を行い、合計11個の濃度を作製した。96ウェルプレートに3CLプロテアーゼ及び異なる濃度の化合物を入れて、室温で10分間インキュベートし、基質を添加して迅速にマイクロプレートリーダーに入れてデータを読み取る。酵素反応系全体の体積は120μLであり、SARS-CoV、MERS-CoV、H229E-CoV、HKU1-CoV、NL63-CoV及びOC43-CoVプロテアーゼの最終濃度はそれぞれ30nM、80nM、30nM、20nM、30nM及び10nMであり、基質の最終濃度は10μMであった。データを読み取るときに励起光及び放射光の波長はそれぞれ340nm、490nmであった。試験時間は10分間であり、1分間おきに蛍光値を読み取り、最終結果のうちから前の5分間に読み取った値に対してフィッティングして反応速度を取得し、以下の計算式で阻害率を計算した。
【0156】
【数2】
【0157】
実験結果:その結果、表3に示すように、他の6種類のコロナウイルス由来の3CLプロテアーゼに対して、化合物2が良好な阻害効果を示し、化合物2が広域スペクトル抗コロナウイルス活性を有することが示された。
【0158】
【表9】
【0159】
<実施例25-1:化合物2のSARS-CoV-2 WIV04、B.1.351株に対する細胞レベルの阻害作用>
試験ではVero E6細胞を使用し、48ウェルプレートにVero E6細胞(50000細胞/ウェル)を入れて、勾配濃度の化合物を含有する培地を100μL/ウェルで添加し、1時間後にSARS-CoV-2を添加し、感染多重度(MOI)は0.01であった。1時間共インキュベートした後、上清を吸い取って、洗浄して、勾配濃度の化合物を含有する培地を200μL/ウェルで添加し、37℃で24時間培養した。24時間後、細胞上清を収集し、上清ウイルスRNAを抽出し、リアルタイム蛍光定量PCRの方法で上清ウイルスコピー数を測定し、ウイルスコピー数に基づいて化合物の阻害率を算出し、prism 6.0を用いて化合物のEC50を計算した。
【0160】
試験結果は、化合物2がSARS-CoV-2 WIV04株を阻害する半数効果濃度EC50は0.57+/-0.04μMであり、SARS-CoV-2 B.1.351株を阻害するEC50は0.73+/-0.06μMであり、EC50曲線が図1及び図2に示すとおりである。
【0161】
<実施例25-2:化合物2のSARS-CoV-2 Vero E6原株(WIV04)、デルタ株(B.1.617.2)、オミクロン株(B.1.1.529)に対する細胞レベルの阻害作用>
実験目的:本試験は、Vero E6細胞において、リアルタイム蛍光定量PCR法により、培養上清中のウイルスコピー数を検出する方法により、SARS-CoV-2原株(WIV04株)、デルタ株(B.1.617.2)及びオミクロン株(B.1.1.529)の細胞中複製に対する化合物2の阻害作用を検討した。Vero E6細胞は外排出輸送タンパク質P-gpを高発現させるため、0.5μMのP-gp阻害剤CP-100356を添加して化合物と共インキュベートした。
【0162】
実験材料:
Vero E6はATCC(品番CRL-1586)から購入され、SARS-CoV-2原株(SARS-CoV-2-WIV04株)、Delta株(B.1.617.2)、Omicron株(B.1.1.529)ウイルスは、中国科学院武漢ウイルス研究所微生物菌(毒)種保存センターから供給された。
【0163】
その他の試薬は以下の表に示すとおりである。
【0164】
【表10】
【0165】
実験器具:
バイオハザードセフティキャビネット(AC2-3S1、ESCO社、シンガポール)
二酸化炭素インキュベーター(Thermo Scientific HERAcell 150i、Thermo Scientific社、米国)
純水装置(滲源SYS 超純水装置,成都)
StepOne Plus Real-time PCR system(4376600、ABI、米国)
TC20TM全自動セルカウンター(1450102、BIO-RAD、米国)
T100TM Thermal Cycler(1861096、BIO-RAD、米国)
遠心分離機(Micro21/21Rサーモフィッシャーサイエンティフィック社、Thermo Scientific、米国)
【0166】
実験ステップ:
トリプシンでVero E6細胞を消化し、培地(90%DMEM、10%ウシ胎仔血清)に入れ、48ウェルプレートに播種し、1ウェルあたり50000細胞で一晩培養した。測定対象化合物をDMSOに溶解させて40mM母液を取得し、さらに0.5μMのPgp阻害剤を含む培地で段階希釈し、試験に必要な濃度を取得し、実験における測定対象化合物の最終濃度の範囲は1μM~0.004μMであった。細胞上清を除去し、希釈した化合物(0.5μMのPgp阻害剤を含む)を各ウェルに添加し、1時間インキュベートし、バイオセーフティーレベル3(BSL-3)の実験室でSARS-CoV-2の異なる株を入れ、感染多重度(MOI)が0.01又は0.001であり、1時間インキュベートした後、上清を除去し、PBSで洗浄し、希釈した化合物(0.5μMのPgp阻害剤を含む)を200μL/ウェルで添加し、感染した24時間又は72時間後に上清を収集した。上清ウイルスRNAを抽出し、リアルタイム蛍光定量PCRの方法で上清ウイルスコピー数を測定し、ウイルスコピー数に基づいて化合物の阻害率を算出し、GraphPad Prism 8を用いて化合物のIC50を計算した。
【0167】
細胞毒性試験において、Vero E6細胞を消化して培地(90%DMEM、10%ウシ胎児血清)に置き、96ウェルプレートに播種し、1ウェルあたり20000細胞で一晩培養した。測定対象化合物をDMSOに溶解させて40mM母液を取得し、さらに培地又は0.5μMのPgp阻害剤を含む培地で段階希釈し、試験に必要な濃度を取得し、実験における測定対象化合物の最終濃度の範囲は500μM~1.95μMであった。96ウェルプレート中の細胞上清を除去し、測定対象化合物(単剤又はPgp阻害剤を0.5μM含む)の培地を100μL/ウェルで添加し、24時間インキュベートした後、CCK8アッセイキットを用いて細胞生存率を測定し、阻害率及び半数細胞毒性濃度(CC50)を算出した。
【0168】
試験結果:表4に示すように、P-gp阻害剤CP-100356と併用した後、化合物2は、Vero E6細胞におけるデルタ株の複製を用量依存的に阻害することができ、IC50は0.040μMであった。原株においても化合物2とP-gp阻害剤の併用は高い阻害作用を果たし、IC50は0.027μMであった。また、化合物2の共同P-gp阻害剤は、Vero E6細胞におけるオミクロン株の複製を顕著に阻害でき、IC50は0.12μMである。化合物2単剤も、P-gp阻害剤の併用も、VeroE6細胞に対して明らかな細胞毒性がなく、CC50>500μMであった。
【0169】
【表11】
【0170】
<実施例26:hACE 2-K 18トランスジェニックマウスにおけるSARS-CoV-2デルタ株に対する化合物2の生体内抗ウイルス作用>
実験目的:本研究は、ヒトアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を安定的に発現するK18トランスジェニックマウス(K18-hACE 2)におけるSARS-CoV-2デルタ株に対する化合物2の抗ウイルス活性を評価した。
【0171】
実験材料:
7~8週齢のK18-hACE2トランスジェニックマウスは、江蘇集萃薬康生物医薬有限公司から購入した。SARS-CoV-2 Delta株ウイルスは、中国科学院武漢ウイルス研究所微生物菌(毒)種保存センターから供給された。
【0172】
リトナビルは、上海迪賽諾化学製薬有限公司から購入した。
【0173】
Vero E6細胞はATCCから購入した(品番CRL-1586)。
【0174】
その他の試薬は、以下の表に示すとおりである。
【0175】
【表12】
【0176】
実験器具:
バイオハザードセフティキャビネット(AC2-3S1、ESCO社、シンガポール)
二酸化炭素インキュベーター(Thermo Scientific HERAcell 150i、Thermo Scientific、米国)
純水装置(滲源SYS 超純水装置、成都)
StepOne Plus Real-time PCR system(4376600、ABI、米国)
TC20TM全自動セルカウンター(1450102、BIO-RAD、米国)
T100TMThermal Cycler(1861096、BIO-RAD、米国)
遠心分離機(Micro21/21Rサーモフィッシャーサイエンティフィック社、Thermo Scientific、米国)
組織グラインダー(JXFSTPRP-CL、上海浄信社、中国)
【0177】
実験ステップ:点鼻によりK18-hACE2トランスジェニックマウスにSARS-CoV-2デルタ株に感染させ、感染当日は0日目とする。感染から2時間後、胃内投与により、それぞれ溶媒、50mg/kg又は200mg/kgの化合物2(チトクロムP450阻害剤のリトナビルを50mg/kgで併用)、BIDで2日間(0日目は1回、1日目は2回、2日目は1回)又は4日間(0日目は1回、1回目、2回目及び3日目はそれぞれ2回)投与した。マウスの体重変化を記録し、終点で肺組織と脳組織を収集した。そのうち、左肺をホルムアルデヒドで固定し、その後に包埋、スライス及びH&E染色を行って組織病理学的検査に用いた。右肺と脳組織をそれぞれ2部に分け、1部は粉砕後にホモジネートを得てRNAを抽出し逆転写を行い、リアルタイム蛍光定量PCRによりウイルスコピー数を測定した。もう1部は粉砕後にホモジネートを用いてプラーク法によりウイルス力価を測定した。プラーク試験の方法は以下のとおりである。Vero E6細胞を、1ウェルあたり12000細胞で24ウェルプレートに接種し、一晩培養した。組織ホモジネート原液をDMEM培地で10倍段階希釈して使用に備えた。細胞上清を除去し、希釈した組織ホモジネートを添加して1時間インキュベートした後、上清を除去し、1%のメチルセルロースナトリウムと2%のFBSを含有する培地を添加し、4日間培養した。その後、培地を除去し、パラホルムアルデヒドで固定した後、1%(w/v)のクリスタルバイオレットで染色し、各ウェル内のプラーク数を統計した。
【0178】
試験結果:表5に示すように、感染2日後、モデル群(ウイルス平均コピー数が9.19±0.30log10 copies/g)に比べて、リトナビルを併用することで、化合物2の50mg/kgと200mg/kgの投与量では、いずれも肺部のウイルス量を著しく減少させ、平均コピー数がそれぞれ7.66±0.27log10 copies/gと6.79±0.30log10 copies/gであり、そのうち、200mg/kgの投与量でのウイルスコピー数は2.4log10 copies/gだけ低減した。感染4日後、ウイルスコピー数に対する化合物2の持続的阻害作用が認められた。ウイルス力価の面について、図3に示すように、化合物2に顕著な阻害作用が認められ、感染2日後、200mg/kg投与量ではウイルス複製が完全に阻害され、ウイルス力価は検出できず、50mg/kgでは、モデル群と比較してウイルス力価3log10 PFU/g超ほど低下し、感染4日後、化合物2はウイルス力価への持続的な阻害効果を示した。体重について、図4に示すように、感染4日後、モデル群のマウスの体重は約10%減少し、化合物2投与群の体重には明らかな低減がなく、継続投与による化合物2の明らかな毒性が認められなかった。我々は、マウスの脳内のウイルス量をさらに測定したが、感染2日後、各群に明らかな感染はなかった。感染4日後、モデル群と比較して、化合物2は、50mg/kg及び200mg/kgの投与量のいずれにおいても、マウスの脳のウイルスコピー数を顕著に低下させることができ、特に200mg/kgの投与量では脳のウイルスコピー数が感染のない正常群に相当する。我々は、感染4日後の脳のウイルス力価をさらに測定した結果、図5に示すように、モデル群と比較して、化合物2は、2つの投与量でウイルス力価が検出できず、化合物2の強力な阻害作用が示された。また、肺の組織病理学的分析から明らかなように、モデル群に比べて、化合物2は、200mg/kgの投与量では、肺損傷を顕著に改善し、肺胞の虚脱又は膨張の程度及び肺胞膜の厚くなる程度を低減することを含む。
【0179】
【表13】
【0180】
<実施例27:キナーゼに対する化合物2の選択性>
実験目的:キナーゼに対する化合物2の選択性を研究するために、413種類のキナーゼに対する化合物2の阻害活性をKinaseProfile実験プラットフォームで測定した。
【0181】
実験材料:
Full Human Panel[10uM ATP]KinaseProfilerは、Eurofins社によって提供されたテスト製品であり、品番は、50-005KP10であり、この製品は413種のキナーゼを含む。
【0182】
実験ステップ:
Eurofins標準のKinasedProfiler分析方法を用いて、関連標準に準じた操作プロセスで、選択した各キナーゼに対して化合物測定を行った。タンパク質キナーゼは放射法により検出し、脂質キナーゼはHTRF法により検出した。実験ではATP濃度は10μMであった。各キナーゼの詳細な情報は、Eurofinsのウェブサイト上で取得することができ、ネットワークアドレスは以下の通りである。https://www.eurofinsdiscoveryservices.com/catalogmanagement/viewItem/Full-Human-Panel-10-uM-ATP-KinaseProfiler/50-005KP10。
【0183】
実験結果:413種類のキナーゼに対して、化合物2は、10μMの濃度で阻害率がいずれも30%未満であり、顕著な阻害作用がなく、化合物2に優れた選択性を有することが示された。
【0184】
<実施例28:安全性標的に対する化合物2の選択性>
実験目的:Safetyscan実験プラットフォームで、47個の安全性関連標的に対する化合物2の影響を測定した。
【0185】
実験材料:
Safety 47 Panel Dose Response SAFETYscanは、Eurofins社によって提供されたテスト製品であり、品番は、87-1003DRである。この製品は、47個の安全性標的に関する78個の試験を含む。
【0186】
実験ステップ:
47個の安全性標的に関する78個の試験が用いる実験方法は、cAMPアッセイ、カルシウムフラックスアッセイ、ホルモン核内受容体アッセイ、キナーゼ結合アッセイ、酵素活性アッセイ、神経伝達物質トランスポーターアッセイ、イオンチャネルアッセイ及びトランスポーターアッセイを含む。各アッセイの具体的な方法は、eurofinsのウェブサイトから取得することができ、ネットワークアドレスは、https://www.eurofinsdiscoveryservices.com/catalogmanagement/viewItem/Safety47-Panel-Dose-Response-SAFETYscan-DiscoverX/87-1003DRである。
【0187】
実験結果:47個の安全な関連標的に対して、化合物2は、100μM濃度で顕著な阻害又は活性化作用がなく(EC50はいずれも100μMより大きい)、化合物2が優れた選択性を有することが示された。
【0188】
<実施例29:化合物2のヒト血漿タンパク質結合試験>
実験材料:
ヒト血漿は、BioIVT社から購入し、EDTA K2で抗凝固し、-80℃で保存した。96ウェルの平衡透析プレートは、HTDialysis LLC社から購入した。平衡透析膜は、Gales Ferry社から購入した。
【0189】
実験ステップ:
濃度14.2g/Lのリン酸水素二ナトリウムと8.77g/Lの塩化ナトリウムの塩基溶液を超純水で調製し、この塩基溶液を4℃で7日間保存できる。濃度12.0g/Lのリン酸二水素ナトリウムと8.77g/Lの塩化ナトリウムの酸性溶液を超純水で調製し、この酸性溶液を4℃で7日間保存できる。塩基性溶液を酸性溶液でpH 7.4に滴定し、該緩衝液は4℃で7日間保存することができる。実験当日に緩衝液のpH値を測定し、7.4±0.1の範囲を超えると、そのpH値を調整する。
【0190】
透析膜を超純水に60分間浸漬して2枚に分離した後、20%エタノールで20分間浸漬し、最後に透析用緩衝液で20分間浸漬した。
【0191】
凍結した血漿を速やかに室温で解凍した。
【0192】
血漿を4℃、3,220gの遠心力で10分間遠心分離して凝塊を除去し、上澄みを新しい遠心管に収集した。血漿のpH値を測定及び記録した。
【0193】
10mMの測定対象のDMSOストック液を調製した。98μLのDMSOで2μLのストック液(10mM)を希釈して作動液(200μM)を取得した。3μLの作動液を、597μLのヒト血漿を添加し、最終濃度は1μM(0.5%DMSO)であった。旋回撹拌して十分に均一化する。
【0194】
透析膜の片側に120μLの薬剤含有血漿サンプルを添加し、他側に等体積の透析液(リン酸塩緩衝液)を添加した。実験は並行群間比較試験である。透析プレートを封止し、インキュベート装置に入れ、37℃、5%COで、約100rpmの回転数で6時間インキュベートした。インキュベート終了後、ブロッキング膜を剥がし、各ウェルの緩衝液及び血漿側から50μL吸い取って新しいプレートの異なるウェルに移した。
【0195】
リン酸塩緩衝液サンプルに50μLのブランク血漿を添加し、血漿サンプルに等体積のブランクリン酸塩緩衝液を添加した。300μLの室温用クエンチャー(内部標準アセトニトリル(IS、500nMラベタロール、100nMアルプラゾラム及び2μMケトプロフェン)を含有する)添加してタンパク質を沈殿させた。5分間旋回撹拌した。4℃で、3220gで30分間遠心分離した。100μLの上清液を新しいプレートに移す。測定対象物のLC/MS応答信号及びピーク形状に基づいて、100μL又は200μLの水で上清液を希釈した。均一に混合し、液質を用いて検体分析を行った。
【0196】
全ての計算はMicrosoft Excelで行った。被検物質の緩衝液側及び血漿側のピーク面積を確定した。被検物質及び対照薬の血漿タンパク質結合率の計算式は以下のとおりである。
【0197】
【数3】
【0198】
サンプルピーク面積と内部標準ピーク面積との比の緩衝液側は、化合物の遊離濃度を表し、サンプルピーク面積と内部標準ピーク面積の比の血漿側は、化合物の遊離濃度と結合濃度との和を表し、サンプルピーク面積と内部標準ピーク面積の比の初期血漿サンプルは、サンプルのインキュベートを開始した時の化合物の総濃度を表す。
【0199】
試験結果:
表6に示す。1μMの化合物2を、37℃で6時間インキュベートし、平均遊離率は46.63%、結合率は53.37%、回収率は88.02%であった。
【0200】
【表14】
【0201】
<実施例30:化合物2の単回胃内投与の組織分布試験>
実験材料:
Balb/cマウス(上海旻敞生物科技有限公司から購入)、合計60匹、雌雄各30匹、体重は18~25gである。
【0202】
実験ステップ:
Balb/cマウスに化合物2を100mg/kgの投与量、10mL/kgの投与体積で単回胃内投与した。
【0203】
投与前、投与後5min、0.25h、1.0h、2.0h、3.0h、5.0h、7.0h及び10h(各時点では6匹のマウス、雌雄各3匹)以上の時点で眼窩静脈叢から0.2ml採血し、EDTA-K 2試験管に入れ、11000rpmで5min遠心分離し、血漿を分離し、-70℃の冷蔵庫で凍結させ、0.25h、1.0h、3.0h及び7.0hの時点で全血を採血した後、直ちに解剖して肺組織を採取し、冷生理食塩水で組織の表面に残された血液及び内容物を冷洗浄し、吸引乾燥した後にラベルを貼付し、-70℃で保存して測定に備えた。LC/MS-MS法により血漿と肺組織中の化合物2の含有量を測定し、血漿中の含有量に対する肺組織中の含有量の比率を算出した。
【0204】
試験結果:
Balb/cマウスに化合物2を単回胃内投与した後、肺組織曝露と血漿曝露との比率が0.62であり、化合物2の肺組織曝露が高い。
【0205】
<実施例31:化合物2の胃内投与によるカニクイザルの心血管系への影響に関する安全性薬理試験>
カニクイザルの2周間反復投与毒性研究において、化合物2による心血管系への影響を同時に調査した。
【0206】
実験材料:
カニクイザル32匹、雌雄各16匹、投与時の年齢は2.5~5歳である。
【0207】
動物供給源:雲南英茂生物科技有限公司、広西雄森霊長類実験動物養殖開発有限公司、中科霊瑞(湛江)生物技術有限公司。
【0208】
インテリジェント非侵襲性血圧計BP-98Eで、すべての意識のある動物の収縮期血圧(SBP)、弛緩期血圧(DBP)及び平均動脈圧(MBP)を測定し、Provantis/v10.2.3.1という電子データ収集システム(PV-02)を使用した。
【0209】
実験ステップ:32匹のカニクイザル(第1群及び第4群は5匹/性別/群、第2群及び第3群は3匹/性別/群、合計4群)を無作為に群分けし、経鼻投与により、化合物2(40、160及び600mg/kg/日)又は、対照製剤(98.9%の溶媒製剤+1.1%のMTBE、0mg/kg/日)を、1日に2回、合計14日間投与し、投与終了後14日間の回復期間を設けた。すべての動物をこの研究の対象とし、薬物の投与がECGパラメータ(心拍数、PR間隔、QRS持続時間、QT間隔、QTcFを含む)、投与前、投与期間及び回復期間中の血圧に対する影響を評価した。
【0210】
試験結果:この試験の条件で、カニクイザルに化合物2を(40、160、600mg/kg/day)14日間、1日に2回経鼻胃内投与した結果、被験品に関連する心血管系の変化が認められず、被験品に関連する不整脈が認められず、試験全過程にわたって、被験品に関するECGパラメータ又は血圧の変化が認められなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で示すシアノ化合物又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩。
【化1】
(ここで、
は、-COR及び-SOから選択され、
及びRは、それぞれ独立して、H、D、C~C10アルキル基、アダマンチル基及びC~Cシクロアルキル基から選択され、又は、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、3~8員の炭素環を形成し、
Xは、O、S、S(=O)及びS=Oから選択され、
Yは存在しないか、又はO、S、S(=O)及びS=Oから選択され、
は、H、C~C10アルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~C20アリール基、C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、C~C10アルコキシ基で置換されたC~C20アリール基、及びハロゲン化C~C20アリール基から選択され、
は、H、C~C10アルキル基及びC~Cシクロアルキル基から選択され、
又は、R及びRは互いに連結してC~Cアルキレン基を形成し、それによりXとYを連結し、
は、
【化2】
から選択され、
は、HとDから選択され、
は、H、C~C10アルキル基、C~C10アルコキシ基、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~C10アルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、-NR1314、C~C20アリール基、ハロゲン化C~C20アリール基、C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、ハロゲン化C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、5~20員ヘテロアリール基、及びハロゲン化5~20員ヘテロアリール基から選択され、
は、C~C10アルキル基、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~C10アルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、-NR1516、C~C20アリール基、ハロゲン化C~C20アリール基、C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、ハロゲン化C~C10アルキル基で置換されたC~C20アリール基、5~20員ヘテロアリール基及びハロゲン化5~20員ヘテロアリール基から選択され、
13及びR14は、それぞれ独立して、H、C~C10アルキル基から選択され、
15及びR16は、それぞれ独立して、H、C~C10アルキル基から選択される。)
【請求項2】
及びRは、それぞれ独立して、H、D、C~Cアルキル基、アダマンチル基及びC~Cシクロアルキル基から選択され、又は、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、3~8員の炭素環を形成し、又は、
及びRは、それぞれ独立して、H、イソプロピル基、tert-ブチル基、シクロペンチル基及びアダマンチル基から選択され、又は、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロプロピル基及びシクロペンチル基を形成し、又は、
及びRのうちの一方がHから選択され、他方がイソプロピル基、tert-ブチル基、シクロペンチル基及びアダマンチル基から選択され、又は、R及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロプロピル基及びシクロペンチル基を形成する、請求項1に記載のシアノ化合物、又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー又は薬学的に許容される塩。
【請求項3】
は、H、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、C~C10アリール基、C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、C~Cアルコキシ基で置換されたC~C10アリール基、及びハロゲン化C~C10アリール基から選択され、
は、H、C~Cアルキル基及びC~Cシクロアルキル基から選択され、
又は、R及びRは互いに連結してC~Cアルキレン基を形成し、それによりXとYを連結し、又は、R及びRは互いに連結してCHCH及びCHCHCHを形成し、それによりXとYを連結する、請求項1に記載のシアノ化合物、又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー又は薬学的に許容される塩。
【請求項4】
は、H、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~Cアルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、-NR1314、C~C10アリール基、ハロゲン化C~C10アリール基、C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、ハロゲン化C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、5~10員ヘテロアリール基及びハロゲン化5~10員ヘテロアリール基から選択され、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、C~Cアルキル基から選択され、又は、
は、C~Cアルキル基、ハロゲン化C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、-NR1314、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、フェニル基、ハロゲン化フェニル基、C~Cアルキル基で置換されたフェニル基、ハロゲン化C~Cアルキル基で置換されたフェニル基及び5~6員ヘテロアリール基から選択され、R13及びR14は、それぞれ独立して、H、C~Cアルキル基から選択され、又は、
は、CH、CF、CHCF、CFCF、メトキシ基、
【化3】
シクロプロピル基、
【化4】
フェニル基、
【化5】
及びピリジン-3-イルから選択され、
は、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、ハロゲン化C~Cアルキル基、ハロゲン化C~Cシクロアルキル基、-NR1516、C~C10アリール基、ハロゲン化C~C10アリール基、C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、ハロゲン化C~Cアルキル基で置換されたC~C10アリール基、5~10員ヘテロアリール基及びハロゲン化5~10員ヘテロアリール基から選択され、R15及びR16は、それぞれ独立して、H、C~Cアルキル基から選択され、又は、
は、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基、フェニル基、C~Cアルキル基で置換されたフェニル基、及びハロゲン化C~Cアルキル基で置換されたフェニル基から選択され、又は、
は、CH、シクロプロピル基、フェニル基、p-メチルフェニル基及びp-トリフルオロメチルフェニル基から選択される、請求項1に記載のシアノ化合物又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩。
【請求項5】
Xは、O、S、S(=O)及びS=Oから選択され、Yは存在しないか、又はO、S及びS=Oから選択され、Rは、C~Cアルキル基及びC~C10アリール基から選択され、RはHから選択され、又は、R及びRは互いに連結してC~Cアルキレン基を形成し、それによりXとYを連結し、又は、
X、Yはそれぞれ独立して、O、S及びS=Oから選択され、R及びRは互いに連結してCHCH及びCHCHCHを形成し、それによりXとYを連結し、又は、
X、Yはそれぞれ独立して、O、Sから選択され、R及びRは互いに連結してCHCHを形成し、それによりXとYを連結する、請求項1に記載のシアノ化合物又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩。
【請求項6】
一般式Iで示すシアノ化合物は、一般式IAで示すシアノ化合物から選択され、
【化6】
ここで、R、R、R、R、R、X及びYの定義は、請求項1に記載の通りである、請求項1に記載のシアノ化合物又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩。
【請求項7】
一般式Iで示すシアノ化合物は、下記一般式で示すシアノ化合物から選択され、
【化7】
ここで、R、R、R、Rの定義は、請求項1に記載の通りである、請求項1に記載のシアノ化合物又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩。
【請求項8】
一般式Iで示す化合物は、以下の化合物から選択される、請求項1に記載のシアノ化合物又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【請求項9】
一般式Iで示す化合物の製造方法であって、方法iと方法iiのうちの1つであり、
前記方法iでは、
【化12】
ia)式IIで示す化合物と式IIIで示す化合物から縮合反応により式IVで示す化合物を取得し
ib)式IVで示す化合物を脱水することにより一般式Iで示す化合物を取得し
前記方法iiでは、
【化13】
iia)式Vで示す化合物と式IIIで示す化合物を縮合させることで、式VIで示す化合物を取得し、ここで、式Vで示す化合物中のPGはアミノ基の保護基であり
iib)式VIで示す化合物を脱保護して式VIIで示す化合物を取得し
iic)式VIIで示す化合物から、アミノアシル化、スルホニル化又は縮合反応により式IVで示す化合物を取得し
iid)式IVで示す化合物を脱水することにより一般式Iで示す化合物を取得し
ここで、R、R、R、R、R、R、R、X及びYの定義は、請求項1~8のいずれか一項に記載の通りである、一般式Iで示す化合物の製造方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載のシアノ化合物、又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される補助材料とを含み、任意選択的に、さらにリトナビル又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載のシアノ化合物、又はそのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又は薬学的に許容される塩と、リトナビル又はその薬学的に許容される塩とを含む医薬組み合わせ。
【請求項12】
薬物の製造における請求項1~8のいずれか一項に記載のシアノ化合物、そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー又はその薬学的に許容される塩の使用であって、前記薬物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ活性を阻害するための薬物、コロナウイルス感染を予防及び/又は治療するための薬物、ピコルナウィルスの3CLプロテアーゼ活性を阻害するための薬物、及びピコルナウィルス感染を予防及び/又は治療するための薬物から選択される、使用。
【請求項13】
前記コロナウイルスは、SARS-CoV、MERS-CoV、H229E-CoV、HKU1-CoV、NL63-CoV、OC43-CoV及びSARS-CoV-2から選択される、請求項12に記載の使用。
【国際調査報告】