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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240912BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240912BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/134
H01M4/1395
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518898
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 KR2022015006
(87)【国際公開番号】W WO2023059070
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0131946
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0127249
(32)【優先日】2022-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スン・ウォン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ウ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨ・ハン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ウク・イ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ス・ジュン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029CJ15
5H029DJ16
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ08
5H029HJ19
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB11
5H050FA17
5H050GA16
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA19
(57)【要約】
本発明は、負極活物質を含む負極と、正極活物質を含む正極と、前記負極と正極との間に介在されるセパレータと、電解質とを含み、前記負極活物質がシリコン粒子を含み、前記正極活物質は、[化学式1]で表される過リチウムマンガン系酸化物を含み、下記式(1)で表されるSi充電深度が30%~60%であり、下記式(2)で表されるSi放電深度が10%以上であるリチウム二次電池に関する。
式(1):Si充電深度(%)={(正極ローディング量+負極のプレリチウム化容量)/負極ローディング量}×100
式(2):Si放電深度(%)={(正極ローディング量+負極のプレリチウム化容量-放電ローディング量)/負極ローディング量}×100
前記式(1)および(2)中、正極ローディング量は、正極の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、負極ローディング量は、負極の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、負極のプレリチウム化容量は、プレリチウム化によって負極に挿入されたリチウム(Li)の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、前記放電ローディング量は、放電カット-オフ(cut-off)電圧で二次電池の放電容量を正極面積で除した値である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質を含む負極と、正極活物質を含む正極と、前記負極と前記正極との間に介在されるセパレータと、電解質とを含むリチウム二次電池であって、
前記負極活物質がシリコン粒子を含み、
前記正極活物質は、下記[化学式1]で表される過リチウムマンガン系酸化物を含み、
下記式(1)で表されるSi充電深度が30%~60%であり、下記式(2)で表されるSi放電深度が10%以上である、リチウム二次電池。
[化学式1]
LiNiCoMn
前記化学式1中、1<a、0≦b≦0.5、0≦c≦0.1、0.5≦d<1.0、0≦e≦0.2であり、Mは、Al、B、Co、W、Mg、V、Ti、Zn、Ga、In、Ru、Nb、Sn、SrおよびZrからなる群から選択される少なくとも一つ以上であり、
式(1):Si充電深度(%)={(正極ローディング量+負極のプレリチウム化容量)/負極ローディング量}×100
前記式(1)中、正極ローディング量は、正極の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、負極ローディング量は、負極の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、負極のプレリチウム化容量は、プレリチウム化によって負極に挿入されたリチウム(Li)の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)であり、
式(2):Si放電深度(%)={(正極ローディング量+負極のプレリチウム化容量-放電ローディング量)/負極ローディング量}×100
前記式(2)中、正極ローディング量は、正極の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、負極ローディング量は、負極の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、負極のプレリチウム化容量は、プレリチウム化によって負極に挿入されたリチウム(Li)の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、前記放電ローディング量は、放電カットオフ電圧で二次電池の放電容量を正極面積で除した値である。
【請求項2】
前記負極活物質は、シリコン粒子からなる、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記Si充電深度が40%~60%である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記Si放電深度が10%~30%である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記リチウム二次電池は、下記式(3)で表されるSi使用範囲が10%~50%である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
式(3):Si使用範囲(%)=Si充電深度-Si放電深度
【請求項6】
前記リチウム二次電池は、正極ローディング量に対する負極ローディング量の百分率であるN/P比が150%~300%である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記リチウム二次電池は、正極ローディング量に対する負極ローディング量の百分率であるN/P比が180%~300%である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記負極は、プレリチウム化した負極であり、下記式(4)で表されるプレリチウム化度が5%~50%である、請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
式(4):
プレリチウム化度(%)={プレリチウム化によって負極に挿入されたLiの単位面積当たりの容量/Siの単位面積当たりの容量}×100
【請求項9】
前記プレリチウム化度が5%~30%である、請求項8に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記過リチウムマンガン系酸化物は、下記[化学式2]で表される、請求項1に記載のリチウム二次電池。
[化学式2]
XLiMnO・(1-X)Li[Ni1-y-z-wMnCo]O
前記[化学式2]中、
Mは、Al、B、Co、W、Mg、V、Ti、Zn、Ga、In、Ru、Nb、Sn、SrおよびZrからなる群から選択される少なくとも一つ以上であり、0.2≦X≦0.5、0.4≦y<1、0≦z≦0.1、0≦w≦0.2である。
【請求項11】
前記正極活物質は、D50が2μm~10μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項12】
前記正極活物質は、BET比表面積が1m/g~10m/gである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項13】
前記正極は、初期不可逆容量が5%~70%である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項14】
前記正極は、電極密度が2.5g/cc~3.8g/ccである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項15】
前記リチウム二次電池は、80%寿命到達回数が400回以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月5日付けの韓国特許出願第10-2021-0131946号および2022年10月5日付けの韓国特許出願第10-2022-0127249号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池に関し、より具体的には、負極活物質としてシリコン(Si)粒子を適用したリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、電気自動車のエネルギー源として、リチウム二次電池が脚光を浴びている。電気自動車の普及が拡大するにつれて、1回充電時に走行距離がより長く、急速充電時間を短縮することができるリチウム二次電池に対するニーズが増加している。
【0004】
リチウム二次電池は、一般的に、リチウムを含有している遷移金属酸化物からなる正極活物質を含む正極と、リチウムイオンを貯蔵することができる負極活物質を含む負極との間にセパレータを介在して電極組立体を形成し、前記電極組立体を電池ケースに挿入した後、リチウムイオンを伝達する媒体になる非水電解質を注入し、その後密封する方法により製造される。前記非水電解質は、一般的に、リチウム塩と、前記リチウム塩を溶解することができる有機溶媒で構成される。従来、リチウム二次電池の負極活物質として、天然黒鉛や人造黒鉛といった炭素系素材が主に用いられていた。しかし、このように炭素系負極活物質は、容量が小さく、リチウムとの反応速度が遅いため、これを適用した二次電池では、高容量および急速充電性能の実現に限界がある。
【0005】
そのため、炭素系素材に比べて理論容量が10倍以上大きいシリコン系負極活物質を適用したリチウム二次電池の開発が試みられている。シリコン系負極活物質の場合、炭素系素材に比べて、理論容量が高く、リチウムとの反応速度が速くて、容量特性および急速充電性能を向上させることができるという利点があるが、充電過程で体積が急激に膨張し、負極の損傷および導電経路の断絶が発生することがあり、そのため、電池性能が急激に劣化する問題がある。
【0006】
したがって、シリコン系負極活物質を適用し、且つ優れた寿命特性を有するリチウム二次電池の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するためのものであり、負極活物質としてシリコン(Si)粒子を適用することで、高い容量特性を実現し、且つ寿命特性に優れたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面において、本発明は、負極活物質を含む負極と、正極活物質を含む正極と、前記負極と前記正極との間に介在されるセパレータと、電解質とを含むリチウム二次電池であって、前記負極活物質がシリコン粒子を含み、前記正極活物質は、下記[化学式1]で表される過リチウムマンガン系酸化物を含み、下記式(1)で表されるSi充電深度が30%~60%であり、下記式(2)で表されるSi放電深度が10%以上であるリチウム二次電池を提供する。
[化学式1]
LiNiCoMn
前記化学式1中、1<a、0≦b≦0.5、0≦c≦0.1、0.5≦d<1.0、0≦e≦0.2であり、Mは、Al、B、Co、W、Mg、V、Ti、Zn、Ga、In、Ru、Nb、Sn、SrおよびZrからなる群から選択される少なくとも一つ以上である。
式(1):Si充電深度(%)={(正極ローディング量+負極のプレリチウム化容量)/負極ローディング量}×100
前記式(1)中、正極ローディング量は、正極の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、負極ローディング量は、負極の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、負極のプレリチウム化容量は、プレリチウム化によって負極に挿入されたリチウム(Li)の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)である。
式(2):Si放電深度(%)={(正極ローディング量+負極のプレリチウム化容量-放電ローディング量)/負極ローディング量}×100
前記式(2)中、正極ローディング量は、正極の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、負極ローディング量は、負極の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、負極のプレリチウム化容量は、プレリチウム化によって負極に挿入されたリチウム(Li)の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、前記放電ローディング量は、放電カットオフ(cut-off)電圧で二次電池の放電容量を正極面積で除した値である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるリチウム二次電池は、Si充電深度およびSi放電深度が特定の範囲を満たすように設計されることで、負極活物質としてSi粒子を使用するにもかかわらず優れた寿命特性を示す。一方、Si粒子は、炭素系負極活物質および/またはSiOx系負極活物質に比べて、リチウムとの反応性および容量特性に優れることから、これを適用した本発明のリチウム二次電池は、優れた容量特性および急速充電性能を実現することができる。すなわち、本発明によるリチウム二次電池は、容量特性、寿命特性および急速充電性能がいずれも優れる。
【0010】
また、本発明のように、正極活物質として、岩塩型構造のLiMnO相と層状構造のLiMO相(ここで、Mは、Ni、Co、Mn)が混在している過リチウムマンガン系酸化物を使用する場合、負極補償のための犠牲正極材の使用や、プレリチウム化のための別の工程なしに、活性化工程を4.6V以上の高電圧で行うことで、LiMO相から発生する過量のリチウムでSi負極のプレリチウム化を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0012】
本発明において、「一次粒子」は、走査電子顕微鏡を用いて、5000倍~20000倍の視野で観察した時に、外観上、粒界が存在しない粒子単位を意味する。「一次粒子の平均粒径」は、走査電子顕微鏡イメージから観察される一次粒子の粒径を測定した後に計算されたこれらの算術平均値を意味する。
【0013】
本発明において、「二次粒子」は、複数個の一次粒子が凝集して形成された粒子である。
【0014】
本発明において、「平均粒径D50」は、測定対象粒子粉末(例えば、正極活物質粉末、負極活物質粉末など)の体積累積粒度分布の50%基準での粒子径を意味する。前記平均粒径D50は、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定されることができる。例えば、測定しようとする粒子の粉末を分散媒の中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に導入して、約28kHzの超音波を出力60Wで照射してから、体積累積粒度分布グラフを得た後、体積累積量の50%に該当する粒子径を求めることで測定されることができる。
【0015】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0016】
Siは、黒鉛のような炭素系負極活物質だけでなく、SiOx、SiCのようなシリコン系負極活物質と比較しても、優れた容量特性およびリチウム反応性を有する。したがって、Siを負極活物質として適用する場合、改善したエネルギー密度および急速充電性能を得ることができる。しかし、Siは、充放電時に体積の変化が著しく、充放電時に負極の劣化が急速に発生するため、Siを負極活物質として適用する場合、満足できるほどの寿命特性を実現することが困難であった。本発明者らは、負極活物質としてSiを適用したリチウム二次電池の寿命特性を改善するために鋭意研究を重ねた結果、Si充電深度およびSi放電深度が特定の範囲を満たすように電池を設計する場合、負極活物質としてSiを使用するとともに優れた寿命特性を実現することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
具体的には、本発明によるリチウム二次電池は、負極活物質を含む負極と、正極活物質を含む正極と、前記負極と前記正極との間に介在されるセパレータと、電解質とを含むリチウム二次電池であって、前記負極活物質がシリコン粒子を含み、前記正極活物質は、下記[化学式1]で表される過リチウムマンガン系酸化物を含み、下記式(1)で表されるSi充電深度が30%~60%であり、下記式(2)で表されるSi放電深度が10%以上である。好ましくは、前記負極活物質は、他種の負極活物質を含まず、シリコンのみからなることができる。
[化学式1]
LiNiCoMn
前記化学式1中、1<a、0≦b≦0.5、0≦c≦0.1、0.5≦d<1.0、0≦e≦0.2であり、Mは、Al、B、Co、W、Mg、V、Ti、Zn、Ga、In、Ru、Nb、Sn、SrおよびZrからなる群から選択される少なくとも一つ以上である。
式(1):Si充電深度(%)={(正極ローディング量+負極のプレリチウム化容量)/負極ローディング量}×100
前記式(1)中、正極ローディング量は、正極の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、負極ローディング量は、負極の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、負極のプレリチウム化容量は、プレリチウム化によって負極に挿入されたリチウム(Li)の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)である。ここで、前記正極ローディング量は、二次電池を2.25V~4.45Vの電圧範囲で充放電した時に測定される正極の単位面積当たりの容量値を意味する。
式(2):Si放電深度(%)={(正極ローディング量+負極のプレリチウム化容量-放電ローディング量)/負極ローディング量}×100
前記式(2)中、正極ローディング量は、正極の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、負極ローディング量は、負極の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、負極のプレリチウム化容量は、プレリチウム化によって負極に挿入されたリチウム(Li)の単位面積当たりの容量(単位:mAh/cm)、前記放電ローディング量は、放電カットオフ電圧で二次電池の放電容量を正極面積で除した値である。
【0018】
前記Si充電深度は、完全充電状態(すなわち、SOC=100)でのSiとLiの結合程度を示す値であり、本発明者らの研究によると、Si充電深度が60%を超えるか、30%未満である場合、寿命特性が急激に低下することが示されている。具体的には、Si充電深度が60%を超える場合、Siの体積膨張が急激に発生し、そのため、エネルギー密度および寿命特性の低下が発生し、Si充電深度が30%未満である場合には、反応不均一性がひどくなって寿命特性が低下することが示されている。好ましくは、前記Si充電深度は、40%~60%、さらに好ましくは45%~60%であることができる。
【0019】
前記Si充電深度は、正極ローディング量、負極ローディング量および/または負極のプレリチウム化度を制御して調節することができ、前記正極ローディング量および/または負極ローディング量は、使用される活物質の種類および含量、活物質層の空隙率、および/または活物質層の厚さなどを考慮して設定されることができる。
【0020】
一方、前記Si放電深度は、放電カットオフ(cut-off)電圧で負極に残存するリチウムの容量を示す。本発明者らの研究によると、Si充電深度が30~60%を満たしても、Si放電深度が10%未満である場合には、寿命特性が急激に低下することが示されている。好ましくは、前記Si放電深度は、10%~30%、より好ましくは10%~25%、さらに好ましくは15%~25%、さらに好ましくは17%~25%であることができる。
【0021】
前記Si放電深度は、正極容量に対する負極容量の比(N/P比、N/P ratio)、電池の駆動電圧範囲(充/放電カット-オフ電圧)および負極のプレリチウム化度から複合的に影響を受け、これらの因子を適切に制御することで、Si放電深度を調節することができる。
【0022】
一方、本発明のリチウム二次電池は、Si使用範囲が10~50%、好ましくは20~40%、さらに好ましくは30%~40%程度になるように設計されることができる。Si使用範囲は、下記式(3)に示されているように、Si充電深度とSi放電深度との差を意味し、Si使用範囲が大きいと、エネルギー密度は増加するが、寿命特性が著しく低下し、Si使用範囲が小さすぎると、エネルギー密度が減少する。
【0023】
式(3):Si使用範囲(%)=Si充電深度-Si放電深度
【0024】
一方、本発明によるリチウム二次電池は、正極ローディング量に対する負極ローディング量の百分率であるN/P比が、150%~300%、好ましくは180%~300%、さらに好ましくは190%~300%であることができる。正極ローディング量に対する負極ローディング量の百分率であるN/P比が前記範囲未満である場合には、Si充電深度が増加して寿命低下が発生し得、前記範囲を超える場合には、電極表面部のSi反応不均一が著しくなり、かえって寿命の低下が発生し得る。
【0025】
前記のような条件を満たすように設計された本発明によるリチウム二次電池は、Si粒子を使用して、優れたエネルギー密度および急速充電性能を実現することができ、寿命特性にも優れる。具体的には、本発明によるリチウム二次電池は、80%寿命到達回数が、400回以上、好ましくは450回以上、より好ましくは500回以上であることができる。
【0026】
次に、本発明によるリチウム二次電池の各構成要素について具体的に説明する。
【0027】
〔負極〕
本発明による負極は、負極活物質としてシリコン(Si)を含むことができ、好ましくは、負極活物質としてシリコン(Si)100%を使用することができる。本発明で使用されるシリコンは、他の金属または酸素などと結合しない純粋なシリコン(Pure Si)であることができる。具体的には、本発明による負極は、負極集電体および前記負極集電体の少なくとも一面に形成された負極活物質層を含み、前記負極活物質層が、負極活物質として、シリコン(Si)を含むことができる。Siは、黒鉛のような炭素系負極活物質だけでなく、SiOx、SiCのようなシリコン系負極活物質と比較しても優れた容量特性およびリチウム反応性を有する。したがって、Siを負極活物質として適用する場合、改善したエネルギー密度および急速充電性能を得ることができる。
【0028】
前記シリコンの平均粒径(D50)は、1μm~10μmであることができ、具体的には2μm~8μmであることができ、より具体的には3μm~7μmであることができる。前記平均粒径が5μm未満である場合、粒子の比表面積が過剰に増加して、負極スラリーの粘度が過剰に上昇する。そのため、負極スラリーを構成する粒子がスムーズに分散されない。また、シリコン粒子のサイズが小さすぎる場合、負極スラリー内で導電材とバインダーからなる複合体によってシリコン粒子、導電材の接触面積が減少するため、導電ネットワークが断絶する可能性が高くなって容量維持率が低下する。一方、前記平均粒径が10μm超である場合、大きすぎるシリコン粒子が存在するようになり、負極の表面が滑らかでなくなり、そのため、充放電時に電流密度不均一が発生する。また、シリコン粒子が大きすぎる場合、負極スラリーの相安定性が不安定になるため、工程性が低下する。これに伴い、電池の容量維持率が低下する。
【0029】
一方、前記シリコンのBET比表面積は、好ましくは0.01m/g~150.0m/g、さらに好ましくは0.1m/g~100.0m/g、特に好ましくは0.2m/g~80.0m/g、最も好ましくは0.2m/g~18.0m/gである。BET表面積は、窒素を使用して、DIN 66131に準じて測定されることができる。
【0030】
また、前記シリコンは、結晶または非晶質状で存在することができ、好ましくは多孔性ではない。前記シリコン粒子は、球状または破片状粒子であることができるが、これに限定されるものではなく、繊維構造を有するか、珪素含有フィルムまたはコーティングの形態で存在することもできる。
【0031】
常に、シリコンは、負極活物質層の全重量に対して、50重量%以上、60重量%以上、好ましくは65重量%以上、より好ましくは70重量%以上の量で含まれることができ、99重量%以下、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下の量で含まれることができる。
【0032】
一方、本発明による負極は、必要に応じて、前記シリコン以外のその他の負極活物質をさらに含むことができる。前記その他の負極活物質は、SiOx(ここで、0<x<2)、炭素系負極活物質などであることができる。ここで、前記炭素系負極活物質は、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素、ソフトカーボン(soft carbon)、ハードカーボン(hard carbon)などであることができるが、これに限定されるものではない。
【0033】
前記その他の負極活物質は、負極活物質層の全重量に対して、50重量%以下、好ましくは45重量%以下、より好ましくは30重量%以下の量で含まれることができる。
【0034】
一方、前記負極活物質層は、必要に応じて、導電材およびバインダーをさらに含むことができる。
【0035】
前記導電材としては、例えば、球状または鱗片状黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、負極活物質層の全重量に対して0.1重量%~40重量%、1重量%~30重量%または5重量%~30重量%の量で含まれることができる。
【0036】
好ましくは、本発明による負極活物質層は、2種以上の導電材を含むことができ、この場合、前記導電材は、点状導電材と板状導電材を含むことができる。
【0037】
前記点状導電材は、負極に導電性を向上させるために使用されることができ、化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものが好ましい。具体的には、前記導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、導電性繊維、フルオロカーボン、アルミニウム粉末、ニッケル粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化チタンおよびポリフェニレン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つであることができ、好ましくは、高い導電性を実現し、分散性に優れる面で、カーボンブラックを含むことができる。
【0038】
前記点状導電材は、BET比表面積が、40m/g以上70m/g以下であることができ、好ましくは45m/g以上65m/g以下、さらに好ましくは50m/g以上60m/g以下であることができる。
【0039】
前記点状導電材は、官能基含量(揮発分、Volatile matter)が、0.01%以上0.05%以下、好ましくは0.01%以上0.04%以下、さらに好ましくは0.01%以上0.03%以下を満たすことができる。
【0040】
前記官能基含量の調節は、点状導電材の熱処理の程度に応じて調節することができる。すなわち、点状導電材の作製において、官能基の含量が高いことは、異物が多いことを意味し、官能基の含量が少ないことは、熱処理加工をより多く施したことを意味し得、本出願による点状導電材は、官能基含量を前記範囲で満たすために、点状導電材に対して所定の部分熱処理を施して前記官能基含量の範囲を満たすことを特徴とする。
【0041】
前記点状導電材の粒径は、10nm~100nmであることができ、好ましくは20nm~90nm、さらに好ましくは20nm~60nmであることができる。
【0042】
前記板状導電材は、負極内でシリコン粒子間の面接触を増加させて導電性を改善し、且つ体積の膨張による導電性経路の断絶を抑制する役割を果たすことができ、面状導電材またはバルク(bulk)状導電材として表現されることができる。
【0043】
前記板状導電材は、板状黒鉛、グラフェン、グラフェンオキシド、および黒鉛フレークからなる群から選択される少なくともいずれか一つを含むことができ、好ましくは、板状黒鉛であることができる。
【0044】
前記板状導電材の平均粒径(D50)は、2μm~7μmであることができ、具体的には3μm~6μmであることができ、より具体的には4μm~5μmであることができる。前記範囲を満たす場合、十分な粒子径により、負極スラリーの過剰な粘度上昇を引き起こさないとともに、分散が容易である。したがって、同じ装置と時間を使って分散させる時に、分散効果に優れる。
【0045】
前記板状導電材は、BET比表面積が、1m/g以上500m/g以下であることができ、好ましくは5m/g以上300m/g以下であることができる。
【0046】
次に、前記バインダーとしては、例えば、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(Polyacrylic acid)、ポリアクリルアミド(Polyacrylamide)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM rubber)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記バインダーは、負極活物質層の全重量に対して、1重量%~20重量%、2重量%~20重量%、または2重量%~10重量%含まれることができる。
【0047】
一方、前記負極は、負極活物質層が単一層または2以上の層で構成された多層構造であることができる。負極活物質層が2以上の層で構成された多層構造の場合、各層は、負極活物質、バインダーおよび/または導電材の種類および/または含量が互いに異なることができる。
【0048】
例えば、本発明による負極は、2層構造であることができ、集電体と隣接した層(以下、下部層とする)と前記下部層上に形成される上部層の負極活物質の種類が互いに異なることができる。具体的には、2層構造の負極において、下部層の負極活物質がシリコンであり、上部層の負極活物質としてSiOx(ここで、0<x<2)であることができる。
【0049】
一方、前記負極活物質層は、空隙率が20%~70%または20%~50%であることができる。負極活物質層の空隙率が小さすぎると、電解液含浸性が低下してリチウム移動性が低下し得、空隙率が大きすぎると、エネルギー密度が低下し得る。
【0050】
一方、本発明において、前記負極は、プレリチウム化した負極であることができる。
【0051】
例えば、前記負極のプレリチウム化は、負極活物質層上にリチウム金属を圧着または蒸着する方法、電気化学的方法により負極活物質層にリチウムを挿入する方法、正極に含まれた犠牲正極材や正極活物質に含まれた過剰リチウムを活性化工程により負極に挿入する方法、または電気化学的方法やリチウム金属を圧着または蒸着する方法で正極に過剰リチウムを付与し、活性化工程により正極に付与された過剰リチウムを負極に挿入する方法などで行われることができ、前記方法のうち2以上の方法を組み合わせて実施することができる。
【0052】
より具体的には、本発明においてプレリチウム化した負極は、セルを組み立てた後、4.6V以上の高電圧で活性化工程を行って正極活物質のLiMnO相が活性化して発生したリチウムを負極に挿入する方法で行われることができる。前記方法で負極プレリチウム化を行う場合、プレリチウム化のための別の工程を行わなくても良く、犠牲正極材などの使用を最小化することができ、正極の容量を増加させることができる。
【0053】
前記のように、プレリチウム化した負極を使用する場合、プレリチウム化していない負極に比べて、相対的に低いカット-オフ(cut-off)電圧まで放電させても、寿命特性の劣化が少ないことから、リチウム二次電池の駆動電圧の範囲を相対的に広い範囲に設定することができ、使用可能SOC(Usable SOC)を増加させることができる。
【0054】
好ましくは、本発明の負極は、下記式(4)で表されるプレリチウム化度が、5~50%、好ましくは5~30%、より好ましくは10~20%であることができる。
【0055】
式(4):
プレリチウム化度(%)={プレリチウム化によって負極に挿入されたLiの単位面積当たりの容量/Siの単位面積当たりの容量}×100
【0056】
負極のプレリチウム化度が前記範囲を満たす時に、容量および寿命特性がいずれも優れたリチウム二次電池を実現することができる。具体的には、負極のプレリチウム化度が小さすぎると、寿命特性の確保のために放電深度の調節が必要であり、この場合、エネルギー密度を十分に確保し難い可能性がある。また、負極のプレリチウム化度が大きすぎると、電極内のシリコン粒子の劣化が加速し、容量特性が低下し得る。
【0057】
〔正極〕
本発明による正極は、正極活物質として、化学式1で表される過リチウムマンガン系酸化物を含む。具体的には、本発明の正極は、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一面に形成された正極活物質層とを含み、前記正極活物質層が下記化学式1で表される過リチウムマンガン系酸化物を含む正極活物質を含むことができる。
【0058】
[化学式1]
LiNiCoMn
【0059】
前記化学式1中、Mは、Al、B、Co、W、Mg、V、Ti、Zn、Ga、In、Ru、Nb、Sn、SrおよびZrからなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができる。
【0060】
一方、aは、過リチウムマンガン系酸化物内のLiのモル比であり、1<a、1.1≦a≦1.5、または1.1≦a≦1.3であることができる。aが前記範囲を満たす時に、Si負極活物質の不可逆容量を十分に補償することができ、高容量特性を実現することができる。
【0061】
前記bは、過リチウムマンガン系酸化物内のNiのモル比であり、0≦b≦0.5、0.1≦b≦0.4または0.2≦b≦0.4であることができる。
【0062】
前記cは、過リチウムマンガン系酸化物内のCoのモル比であり、0≦c≦0.1、0≦c≦0.08、または0≦c≦0.05であることができる。cが0.1を超える場合、高容量の確保が難しく、酸素-酸化還元反応の増加によってガスの発生および正極活物質の劣化が激しくなって寿命特性が低下し得る。
【0063】
前記dは、過リチウムマンガン系酸化物内のMnのモル比であり、0.5≦d<1.0、0.50≦d≦0.80、または0.50≦d≦0.70であることができる。dが0.5未満である場合、岩塩相の比率が過剰に少なくなって、負極不可逆補償および容量改善の効果があまりない。
【0064】
前記eは、過リチウムマンガン系酸化物内のドーピング元素Mのモル比であり、0≦e≦0.2、0≦e≦0.1または0≦e≦0.05であることができる。ドーピング元素の含量が多すぎると、活物質容量に悪影響を及ぼし得る。
【0065】
リチウムを過剰に含む過リチウムマンガン系酸化物の場合、層相(LiM’O)と岩塩相(LiMnO)が混在した構造を有し、前記岩塩相は、4.6V以上の高電圧で活性化して過量のイオンを発生させる。したがって、本発明のように、正極活物質として過リチウムマンガン系酸化物を使用すると、別の補償物質やプレリチウム化工程を行うことなく、活性化工程を4.6V以上の高電圧で行うことで岩塩相が活性化して発生させる過量のリチウムイオンが負極に挿入されて、負極の不可逆容量が補償されるプレリチウム化効果を得ることができる。
【0066】
一方、前記[化学式1]で表される過リチウムマンガン系酸化物において、Li以外の金属元素全体のモル数に対するLiのモル数の比(Li/Me)は、1.2~1.5、1.25~1.5、または1.25~1.4であることができる。Li/Me比が前記範囲を満たす時に、レート特性および容量特性に優れる。Li/Me比が高すぎると、電気伝導度が低下し、岩塩相(LiMnO)が増加して、劣化速度が速くなり得、低すぎると、エネルギー密度の向上効果があまりない。
【0067】
一方、前記過リチウムマンガン系酸化物の組成は、下記[化学式2]で表されることもできる。
【0068】
[化学式2]
XLiMnO・(1-X)Li[Ni1-y-z-wMnCo]O
【0069】
前記[化学式2]中、Mは、金属イオンAl、B、Co、W、Mg、V、Ti、Zn、Ga、In、Ru、Nb、Sn、SrおよびZrからなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができる。
【0070】
前記Xは、過リチウムマンガン系酸化物内のLiMnO相の比率を意味し、0.2≦X≦0.5、0.25≦X≦0.5、または0.25≦X≦0.4であることができる。過リチウムマンガン系酸化物内のLiMnO相の比率が前記範囲を満たす時に、SiOx負極活物質の不可逆容量を十分に補償することができ、高容量特性を実現することができる。
【0071】
前記yは、LiM’O層相でのMnのモル比であり、0.4≦y<1、0.4≦y≦0.8、または0.4≦y≦0.7であることができる。
【0072】
前記zは、LiM’O層相でのCoのモル比であり、0≦z≦0.1、0≦z≦0.08または0≦z≦0.05であることができる。zが0.1を超える場合、ガスの発生および正極活物質の劣化が激しくなって寿命特性が低下し得る。
【0073】
前記wは、LiM’O層相でのドーピング元素Mのモル比であり、0≦w≦0.2、0≦w≦0.1または0≦w≦0.05であることができる。
【0074】
一方、本発明による正極活物質は、必要に応じて、前記過リチウムマンガン系酸化物の表面にコーティング層をさらに含むことができる。正極活物質がコーティング層を含む場合、コーティング層により、過リチウムマンガン系酸化物と電解質との接触が抑制されて電解液副反応が減少し、これにより、寿命特性が改善する効果を得ることができる。
【0075】
前記コーティング層は、コーティング元素Mを含むことができ、前記コーティング元素Mは、例えば、Al、B、Co、W、Mg、V、Ti、Zn、Ga、In、Ru、Nb、Sn、SrおよびZrからなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができ、好ましくは、Al、Co、Nb、Wおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができ、さらに好ましくは、Al、Coおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができる。前記コーティング元素Mは、2種以上含まれることができ、例えば、AlおよびCoを含むことができる。
【0076】
前記コーティング元素は、コーティング層内で酸化物形態、すなわち、MOz(1≦z≦4)として存在することができる。
【0077】
前記コーティング層は、乾式コーティング、湿式コーティング、化学気相蒸着(CVD)、物理気相蒸着(PVD)、原子層堆積(ALD)などの方式により形成することができる。中でも、コーティング層の面積を広く形成することができる点で、原子層堆積法により形成されることが好ましい。
【0078】
前記コーティング層の形成面積は、前記過リチウムマンガン系酸化物粒子の全表面積に対して、10%~100%、好ましくは30%~100%、さらに好ましくは50%~100%であることができる。コーティング層の形成面積が前記範囲を満たす時に、寿命特性の改善効果に優れる。
【0079】
一方、本発明による正極活物質は、複数個の一次粒子が凝集した二次粒子形態であることができ、前記二次粒子の平均粒径D50が、2μm~10μm、好ましくは2μm~8μm、より好ましくは4μm~8μmであることができる。正極活物質のD50が前記範囲を満たす時に、優れた電極密度を実現することができ、容量およびレート特性の低下を最小化することができる。
【0080】
また、前記正極活物質は、BET比表面積が1m/g~10m/g、3~8m/gまたは4~6m/gであることができる。正極活物質BET比表面積が低すぎると、電解質との反応面積が不足で十分な容量の実現が難しく、比表面積が高すぎると、水分吸湿が速く、電解質との副反応が加速化し、寿命特性の確保が難しい。
【0081】
また、本発明による正極は、初期不可逆容量が5%~70%、5%~50%、または5%~30%程度であることが好ましい。正極の初期不可逆容量は、前記正極とリチウム金属対極で半電池を製造した後、前記半電池を4.6V以上高電圧で活性化した時の高電圧充電容量と前記半電池を2.5V~4.4Vの電圧範囲で充放電した時の放電容量の比率であり、0.1C基準で測定された値である。
【0082】
正極の初期不可逆容量が前記範囲を満たす時に、犠牲正極材のような別の補償物質を使用しなくても、Si負極活物質の不可逆容量を十分に補償することができる。
【0083】
一方、前記過リチウムマンガン系酸化物は、遷移金属前駆体とリチウム原料物質を混合した後、焼成して製造されることができる。
【0084】
前記リチウム原料物質としては、例えば、リチウム含有炭酸塩(例えば、炭酸リチウムなど)、水和物(例えば、水酸化リチウム水和物(LiOH・HO)など)、水酸化物(例えば、水酸化リチウムなど)、硝酸塩(例えば、硝酸リチウム(LiNO)など)、塩化物(例えば、塩化リチウム(LiCl)など)などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。
【0085】
一方、前記遷移金属前駆体は、水酸化物、酸化物または炭酸塩形態であることができる。炭酸塩形態の前駆体を使用する場合、相対的に比表面積が高い正極活物質を製造することができる点でより好ましい。
【0086】
前記遷移金属前駆体は、共沈工程により製造されることができる。例えば、前記遷移金属前駆体は、各遷移金属含有原料物質を溶媒に溶解させて金属溶液を製造した後、前記金属溶液、アンモニウムカチオン錯体形成剤および塩基性化合物を混合した後、共沈反応を行う方法により製造されることができる。また、必要に応じて、前記共沈反応時に、酸化剤あるいは酸素気体をさらに投入することができる。
【0087】
ここで、前記遷移金属含有原料物質は、各遷移金属の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物などであることができる。具体的には、前記遷移金属含有原料物質は、NiO、NiCO・2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、Mn、MnO、Mn、MnCO、Mn(NO、MnSO・HO、酢酸マンガン、マンガンハロゲン化物などであることができる。
【0088】
前記アンモニウムカチオン錯体形成剤は、NHOH、(NHSO、NHNO、NHCl、CHCOONH、およびNHCOからなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができる。
【0089】
前記塩基性化合物は、NaOH、NaCO、KOH、およびCa(OH)からなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができる。使用される塩基性化合物の種類によって前駆体の形態が変わることができる。例えば、塩基性化合物としてNaOHを使用する場合、水酸化物形態の前駆体を得ることができ、塩基性化合物としてNaCOを使用する場合、炭酸塩形態の前駆体を得ることができる。また、塩基性化合物と酸化剤をともに使用する場合、酸化物形態の前駆体を得ることができる。
【0090】
一方、前記遷移金属前駆体とリチウム原料物質は、全体の遷移金属(Ni+Co+Mn):Liのモル比が、1:1.05~1:2、好ましくは1:1.1~1:1.8、さらに好ましくは1:1.25~1:1.8になるようにする量で混合されることができる。
【0091】
一方、前記焼成は、600℃~1000℃または700℃~950℃の温度で行われることができ、焼成時間は、5時間~30時間または5時間~20時間であることができる。また、焼成雰囲気は、大気雰囲気または酸素雰囲気であることができ、例えば、酸素を20体積%~100体積%で含む雰囲気であることができる。
【0092】
一方、前記正極活物質層は、正極活物質の他に、導電材およびバインダーをさらに含むことができる。
【0093】
前記導電材としては、例えば、球状または鱗片状黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、正極活物質層の全重量に対して、0.1重量%~20重量%、1重量%~20重量%または1重量%~10重量%の量で含まれることができる。
【0094】
また、前記バインダーとしては、例えば、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM rubber)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記バインダーは、負極活物質層の全重量に対して、1重量%~20重量%、2重量%~20重量%、または2重量%~10重量%含まれることができる。
【0095】
一方、本発明による正極は、電極密度が、2.5g/cc~3.8g/cc、2.5g/cc~3.5g/ccまたは3.0g/cc~3.3g/cc程度であることができる。正極の電極密度が前記範囲を満たす時に、高いエネルギー密度を実現することができる。
〔セパレータ〕
本発明のリチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗であるとともに、電解液の含湿能力に優れるものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されてもよく、選択的に、単層または多層構造として使用されることができる。
【0096】
〔電解質〕
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0097】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0098】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されることができる。
【0099】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記リチウム塩のアニオンとしては、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCNおよび(CFCFSOからなる群から選択される少なくとも一つ以上であることができ、前記リチウム塩としては、LiPF、LiN(FSO、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが使用されることができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1~5.0Mの範囲内で使用することが好ましい。
【0100】
また、前記電解質には、電池の寿命特性の向上、容量減少の抑制、ガス発生の抑制などを目的として、添加剤が含まれることができる。前記添加剤としては、当該技術分野において使用される様々な添加剤、例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、エチレンサルフェート(ESa)、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO)、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiDFOB)、リチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート(LiDFBP)、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート(LiTFOP)、リチウムメチルサルフェート(LiMS)、リチウムエチルサルフェート(LiES)、プロパンスルトン(PS)、プロペンスルトン(PRS)、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(AND)、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル(HTCN)、1,4-ジシアノ-2-ブテン(DCB)、フルオロベンゼン(FB)、エチルジ(プロ-2-イ-1-ニル)ホスフェート(EDP)、5-メチル-5プロパルギルオキシルカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン(MPOD)、下記化学式Aで表される化合物(例えば、シアノエチルポリビニルアルコール、PVA-CN)、下記化学式Bで表される化合物(例えば、ヘプタフルオロブチルシアノエチルポリビニルアルコール、PF-PVA-CN)、下記化学式Cで表される化合物(例えば、プロパルギル1H-イミダゾール-1-カルボキシレート、PAC)、および/または下記化学式Dで表される化合物(例えば、Cなどのアリールイミダゾール)などが使用されることができる。
【0101】
【化1】
【0102】
前記化学式A中、mおよびnは、それぞれ独立して、1~100の整数である。
【0103】
【化2】
【0104】
【化3】
【0105】
前記化学式C中、R16は、炭素数1~3の直鎖状または非直鎖状のアルキレン基であり、R17~R19は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~3のアルキル基および-CNからなる群から選択される少なくとも一つであり、Dは、CH、またはNである。
【0106】
【化4】
【0107】
前記化学式D中、
、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素;または炭素数1~5のアルキル基、シアノ基(CN)、アリル基、プロパルギル基、アミン基、ホスフェート基、エーテル基、ベンゼン基、シクロヘキシル基、シリル基、イソシアネート基(-NCO)、フルオロ基(-F)を含むことができる。
【0108】
好ましくは、前記添加剤としては、脱酸素剤(Oxygen scavenger)として作用する化合物が使用されることができる。トリストリ(メチルシリル)ホスファイト(TMSPi)、トリストリメチルホスファイト(TMPi)、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファイト(TTFP)といったホスファイト(Phosphite)系構造の物質(化学式E参照);トリストリ(メチルシリル)ホスフェート(TMSPa);ポリリン酸トリメチルシリルエステル(PPSE);トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(TPFPB);クマリン-3-カルボニトリル(CMCN)、7-エチニルクマリン(ECM)、3-アセチルクマリン(AcCM)、3-[(トリメチルシリル)クマリン(TMSCM)などのクマリン(Coumarin)構造を含む化合物(化学式F参照);3-[(トリメチルシリル)オキシル]-2H-1-ベンゾピラン-2-オン(TMSOCM)、3-(2-プロピン-1-ニルオキシル)-2H-1-ベンゾピラン-2-オン(POCM)、2-プロピ-1-ニル-2-ヨード-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボキシレート(OBCM)などが脱酸素剤として作用する化合物として使用されることができる。
【0109】
【化5】
【0110】
【化6】
【0111】
前記化学式EおよびF中、R1~R6は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数2~20のアルケニル基および置換または非置換の炭素数2~20のアルキニル基、シアノ基、フルオロ基(F)、エーテル基(C-O-C)、カルボキシル基(O-C=O)、トリメチルシリル基(-TMS)、イソシアネート基(-NCO)、および/またはイソチオシアネート基(-NCS)を含むことができる。
【0112】
以下、具体的な実施例により、本発明をより具体的に説明する。
【0113】
製造例1
<正極の製造>
正極活物質:導電材:PVDFバインダーを96:1:3の重量比でN-メチルピロリドンの中で混合して正極スラリーを製造した。ここで、正極活物質としてはAl 1500ppmがコーティングされたLi1.143[Ni0.35Mn0.650.857を使用し、導電材としてはカーボンナノチューブを使用した。
【0114】
アルミニウム集電体シート上に前記正極スラリーを塗布し、乾燥した後、圧延して、ローディング量が3.50mAh/cmである正極を製造した。
【0115】
<負極の製造>
負極活物質:導電材:アクリル系バインダーを70:20.3:9.7の重量比で水の中で混合して負極スラリーを製造した。ここで、前記負極活物質としては平均粒径5μmのSi粒子(Waker社製)を使用し、導電材としてはカーボンブラック:黒鉛:CNTを9.8:10:0.52の重量比で混合して使用した。
【0116】
銅集電体シート上に前記負極スラリーを塗布し、乾燥した後、圧延して、ローディング量が7.36mAh/cmである負極を製造した。
【0117】
<リチウム二次電池の製造>
前記のように製造された正極と負極との間にセパレータを介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体を電池ケースに挿入した後、電解液を注入してリチウム二次電池Aを製造した。
【0118】
製造例2および3
正極および負極のローディング量を下記[表1]に記載した通り変化させた以外は、製造例1と同じ方法でリチウム二次電池BおよびCを製造した。
【0119】
製造例4
<正極の製造>
正極活物質:導電材:PVDFバインダーを96:1:3の重量比でN-メチルピロリドンの中で混合して正極スラリーを製造した。ここで、正極活物質としてはAl 1500ppmがコーティングされたLi1.143[Ni0.35Mn0.650.857を使用し、導電材としてはカーボンナノチューブを使用した。
【0120】
アルミニウム集電体シート上に前記正極スラリーを塗布し、乾燥した後、圧延して、ローディング量が3.03mAh/cmである正極を製造した。
【0121】
<負極の製造>
負極活物質:導電材:アクリル系バインダーを70:20.3:9.7の重量比で水の中で混合して負極スラリーを製造した。ここで、前記負極活物質としては平均粒径5μmのSi粒子(Elkem社製)を使用し、導電材としてはカーボンブラック:黒鉛:CNTを9.8:10:0.52の重量比で混合して使用した。
【0122】
銅集電体シート上に前記負極スラリーを塗布し、乾燥した後、圧延して、ローディング量が11.90mAh/cmである負極を製造した。
【0123】
<リチウム二次電池の製造>
前記のように製造された正極と負極との間にセパレータを介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体を電池ケースに挿入した後、電解液を注入してリチウム二次電池Dを製造した。
【0124】
製造例5~7
正極および負極のローディング量を下記[表1]に記載した通り変化させた以外は、製造例4と同じ方法でリチウム二次電池E~Gを製造した。
【0125】
製造例8
<正極の製造>
正極活物質:導電材:PVDFバインダーを96:1:3の重量比でN-メチルピロリドンの中で混合して正極スラリーを製造した。ここで、正極活物質としてはAl 1500ppmがコーティングされたLi1.143[Ni0.35Mn0.650.857を使用し、導電材としてはカーボンナノチューブを使用した。
【0126】
アルミニウム集電体シート上に前記正極スラリーを塗布し、乾燥した後、圧延して、ローディング量が3.03mAh/cmである正極を製造した。
【0127】
<負極の製造>
負極活物質:導電材:アクリル系バインダーを70:20.3:9.7の重量比で水の中で混合して負極スラリーを製造した。ここで、前記負極活物質としては平均粒径5μmのSi粒子(Elkem社製)を使用し、導電材としてはカーボンブラック:黒鉛:CNTを9.8:10:0.52の重量比で混合して使用した。
【0128】
銅集電体シート上に前記負極スラリーを塗布し、乾燥した後、圧延して、ローディング量が7.75mAh/cmである負極を製造した。
【0129】
<リチウム二次電池の製造>
前記のように製造された正極と負極との間にセパレータを介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体を電池ケースに挿入した後、電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。
【0130】
その後、前記リチウム二次電池を4.65Vまで充電して正極活物質のLiMnO相を活性化し、負極をプレリチウム化してリチウム二次電池Hを製造し、ここで、負極のプレリチウム化度は5.4%の水準であった。
【0131】
製造例9~11
正極のローディング量を下記[表1]に記載した通り変化させた以外は、製造例8と同じ方法でリチウム二次電池I~Kを製造した。ここで、前記リチウム二次電池のI~Kの負極プレリチウム化度は、下記表1に記載した通りである。
【0132】
前記のように製造されたリチウム二次電池A~KのN/P比、Si充電深度およびプレリチウム化度は、下記表1に示されている通りである。
【0133】
【表1】
【0134】
実施例および比較例
リチウム二次電池A~Kを充/放電させながら容量維持率が80%に逹する時までのサイクル回数(80%寿命到達回数)およびセルエネルギー密度を測定した。ここで、前記充/放電は、25℃、1C/0.5C、CCCVモードで行い、充電カット-オフ電圧は、4.4V、放電カット-オフ電圧は、Si放電深度が下記[表2]に記載の値を有するように設定した。測定結果は、下記[表2]に示した。また、各リチウム二次電池の充/放電電圧の範囲で使用可能SOCを表2に示した。
【0135】
【表2】
【0136】
前記表1に示されているように、Si充電深度が30%~60%以下であり、Si放電深度が10%~20%を満たす実施例1~実施例8のリチウム二次電池の場合、Siを負極活物質として使用するにもかかわらず、80%寿命到達回数が450回以上と高く示されている。これに対し、Si充電深度やSi放電深度のうち一つが本発明の範囲から逸脱する比較例1~比較例12の場合、優れたセルエネルギー密度を示すものの、80%寿命到達回数が著しく減少することを確認することができる。
【国際調査報告】