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特表2024-534632リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池
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  • 特表-リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0568 20100101AFI20240912BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/0565
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518899
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 KR2023000454
(87)【国際公開番号】W WO2023146163
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2022-0011159
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0002051
(32)【優先日】2023-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スンウク・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ウンキョン・モク
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM12
5H029AM16
5H029HJ02
5H029HJ14
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050HA14
(57)【要約】
電解液に含まれる塩と溶媒の種類及び割合を調節してリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質を含むリチウム二次電池の熱的安定性を向上させることができるリチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池が開示される。前記リチウム二次電池用電解液は、第1リチウム塩及び第2リチウム塩を含むリチウム塩;及び溶媒;を含み、前記第1リチウム塩がリチウムヘキサフルオロホスフェートを含み、前記第2リチウム塩がリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドまたはリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドを含むことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リチウム塩及び第2リチウム塩を含むリチウム塩;及び溶媒;を含み、
前記第1リチウム塩がリチウムヘキサフルオロホスフェートを含み、前記第2リチウム塩がリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドまたはリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドを含む、リチウム二次電池用電解液。
【請求項2】
前記第1リチウム塩と前記第2リチウム塩のモル比が1:0.4~0.9である、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項3】
前記第1リチウム塩と前記第2リチウム塩とを含む全体リチウム塩の濃度が1.5Mないし4.0Mである、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項4】
前記第1リチウム塩がリチウムヘキサフルオロホスフェートのみを含み、前記第2リチウム塩がリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドまたはリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドのみを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項5】
前記溶媒がカーボネート系化合物を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項6】
前記溶媒が第1溶媒及び第2溶媒を含み、前記第1溶媒及び前記第2溶媒はそれぞれ互いに異なるカーボネート系化合物を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項7】
前記第1溶媒はエチレンカーボネートで、前記第2溶媒はジメチルカーボネートまたはエチルメチルカーボネートである、請求項6に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項8】
前記第1溶媒と前記第2溶媒との混合の割合は体積比として5:95ないし35:65である、請求項6に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項9】
前記第1溶媒と前記第2溶媒との混合の割合は体積比として10:90ないし30:70である、請求項6に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項10】
前記第1リチウム塩と前記第2リチウム塩とのモル比が1:0.4~0.8である、請求項9に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項11】
リチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質を含む正極;負極;前記正極と負極との間に介在される分離膜及び固体電解質の中でいずれか一つ以上;及び請求項1~10のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用電解液;を含む、リチウム二次電池。
【請求項12】
前記リチウム二次電池は170℃以上の温度条件下で変形せず、爆発しない、請求項11に記載のリチウム二次電池。
【請求項13】
前記固体電解質は正極または負極の一面に附着されて前記リチウム二次電池に含まれ、前記固体電解質が高分子系固体電解質、硫化物系固体電解質及び酸化物系固体電解質からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含む、請求項11に記載のリチウム二次電池。
【請求項14】
前記固体電解質が高分子系固体電解質のみを含み、前記高分子系固体電解質がポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリアクリロニトリル(PAN)及びポリビニルピロリドン(PVP)からなる群から選択される1種以上の高分子;及びリチウム塩;を含む、請求項13に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2022年01月26日付韓国特許出願第10‐2022‐0011159号及び2023年01月06日付韓国特許出願第10‐2023‐0002051号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明はリチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池に係り、より詳細には、電解液に含まれる塩と溶媒の種類及び割合を調節してリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質を含むリチウム二次電池の熱的安定性を向上させることができるリチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車など電池を使用する電子器具の急速な普及に伴って、小さくて軽いながらも相対的に高容量の二次電池の需要が急速に増大されている。特に、リチウム二次電池は軽量で高エネルギー密度を持っていて、携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。これによって、リチウム二次電池の性能を向上させるための研究開発の努力が活発に行われている。このようなリチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入(intercalation)及び脱離(deintercalation)が可能な活物質からなる正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充電させた状態でリチウムイオンが正極及び負極で挿入/脱離される時の酸化と還元反応によって電気エネルギーが生産される。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMnO、LiMnなど)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePO)などが使われてきた。この中でもリチウムコバルト酸化物(LiCoO)は作動電圧が高くて容量特性に優れる長所があって広く使われていて、高電圧用正極活物質で適用されている。しかし、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)は脱リチウムによる結晶構造の不安定化によって熱的特性が非常に劣悪であり、高価であるため電気自動車などのような分野の動力源として大量使用するには限界がある。また、約200mAh/gの高い可逆容量を持って大容量電池を具現し易いリチウムニッケル酸化物(LiNiO)に対しても活発な研究開発がつながっているが、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)に比べて相対的に熱安定性が低下し、充電状態で外部からの圧力などによって内部短絡が生じれば正極活物質自体が分解されて電池の破裂及び発火をもたらす問題がある。
【0005】
よって、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)の優れる可逆容量は維持しながらも低い熱安定性を改善するための方法として、ニッケル(Ni)の一部をコバルト(Co)とマンガン(Mn)に置き換えたリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質(またはリチウムNCM系正極活物質、またはNCM系リチウム複合遷移金属酸化物、またはHigh Ni正極材)が開発された。このようなリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質を電池に適用する場合、高い容量の具現が可能という長所はある。
【0006】
しかし、以上で説明した通常のリチウム二次電池は、負極SEI(solid electrolyte interface)分解反応で始まる発熱反応及びニッケル(Ni)の含量が増加するほど不安定になる正極とカーボネート(Carbonate)系溶媒を含む電解液との間の反応によって熱暴走に至るようになり、これは電池の安定性に大きい脅威要因として作用するようになる。そして、特にリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質と黒鉛負極を一緒に使用するリチウムイオン電池(LIB)は相対的にもっと熱に脆弱という問題点を持っている。
【0007】
したがって、高い容量を具現可能なリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質を適用するリチウム二次電池の安全な使用のために、電池の熱的安定性を高める方案が切実に要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、電解液に含まれる塩と溶媒の種類及び割合を調節してリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質を含むリチウム二次電池の熱的安定性を向上させることができるリチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、第1リチウム塩及び第2リチウム塩を含むリチウム塩;及び溶媒;を含み、前記第1リチウム塩がリチウムヘキサフルオロホスフェートを含み、前記第2リチウム塩がリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドまたはリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドを含むことを特徴とするリチウム二次電池用電解液を提供する。
【0010】
また、本発明は、リチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質を含む正極;負極;前記正極と負極との間に介在される分離膜及び固体電解質の中でいずれか一つ以上;及び前記リチウム二次電池用電解液;を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるリチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池によると、電解液に含まれる塩と溶媒の種類及び割合を調節してリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質を含むリチウム二次電池の熱的安定性を向上させることができる長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例による電解液を含むリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果を示すグラフである。
図2】本発明の一実施例による電解液を含むリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果を示すグラフである。
図3】本発明の一実施例による電解液を含むリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果を示すグラフである。
図4】本発明の一実施例による電解液を含むリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果を示すグラフである。
図5】本発明の一実施例による電解液を含むリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果を示すグラフである。
図6】通常の電解液を含むリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果を示すグラフである。
図7】通常の電解液を含むリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果を示すグラフである。
図8】通常の電解液を含むリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0014】
本発明によるリチウム二次電池用電解液は、第1リチウム塩及び第2リチウム塩を含むリチウム塩;及び溶媒;を含み、前記第1リチウム塩がリチウムヘキサフルオロホスフェートを含み、前記第2リチウム塩がリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドまたはリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドを含むことを特徴とする。
【0015】
リチウム二次電池はリチウムイオンの挿入(intercalation)及び脱離(deintercalation)が可能な活物質からなる正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充電させた状態でリチウムイオンが正極及び負極で挿入/脱離される時の酸化と還元反応によって電気エネルギーが生産される。そして、熱的安定性を高めるためにニッケル(Ni)の一部をコバルト(Co)とマンガン(Mn)に置き換えたリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質(またはリチウムNCM系正極活物質、またはNCM系リチウム複合遷移金属酸化物、またはHigh Ni正極材)を電池に適用している。
【0016】
しかし、通常のリチウム二次電池は負極SEI(solid electrolyte interface)分解反応で始まる発熱反応及びニッケル(Ni)の含量が増加するほど不安定になる正極とカーボネート(Carbonate)系溶媒を含む電解液との間の反応によって熱暴走に至るようになって、これは電池の安定性に大きい脅威要因として作用するようになる。そして、特にリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質と黒鉛負極を一緒に使用するリチウムイオン電池(LIB)は相対的にもっと熱に脆弱という問題点を持っている。
【0017】
よって、本出願人は高い容量を具現可能なリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質を適用するリチウム二次電池の安全な使用のために、電池の熱的安定性を高めるリチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池を発明した。
【0018】
前記リチウム二次電池用電解液に含まれるリチウム塩はイオン伝導性を増加させるために使われるものであって、本発明は特定のリチウム塩(すなわち、第1リチウム塩及び第2リチウム塩)を組み合わせて電池の熱的安定性を向上させることに最も大きい特徴がある。すなわち、本発明によるリチウム二次電池用電解液に含まれるリチウム塩は第1リチウム塩及び第2リチウム塩を含む。そして、前記第1リチウム塩はリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)を含み、前記第2リチウム塩はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)またはリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI)を含む。すなわち、言い換えれば、本発明のリチウム二次電池用電解液に含まれるリチウム塩はリチウムヘキサフルオロホスフェート及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含むものであるか、リチウムヘキサフルオロホスフェート及びリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドを含むものである。
【0019】
一方、前記第1リチウム塩及び第2リチウム塩はそれぞれ当業界で使われる通常のリチウム塩まで含むことができる。すなわち、本発明のリチウム二次電池用電解液に含まれる第1リチウム塩と第2リチウム塩のそれぞれは、必要に応じてLiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiCFSO、LiCFCO、LiCBO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CSONLi、(CFSOCLi、クロロボランリチウム、炭素数4以下の低級脂肪族カルボン酸リチウム、4‐フェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群から選択される1種以上をさらに含むこともできる。
【0020】
しかし、本発明の目的を達成するためには、前記第1リチウム塩がリチウムヘキサフルオロホスフェートのみを含み、前記第2リチウム塩がリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドまたはリチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドのみを含むことが好ましい。
【0021】
また、本出願人は、前記第1リチウム塩と第2リチウム塩のモル比も電池の熱的安定性に寄与することを確認した。このような前記第1リチウム塩と第2リチウム塩のモル比は1:0.4~0.9、好ましくは1:0.4~0.8、より好ましくは1:0.4~0.7であることが好ましく、約1:0.7であることが最も好ましい。もし、前記第1リチウム塩と第2リチウム塩のモル比が1:0.4~0.9の範囲を脱すれば、電池の熱的安定性に寄与する度合いが微々たるものであるか、電池の熱的安定性の向上にこれ以上利点がないことがある。
【0022】
また、本出願人は、前記第1リチウム塩と第2リチウム塩を含む全体リチウム塩の濃度も電池の熱的安定性に寄与することを確認した。このような第1リチウム塩と第2リチウム塩を含む全体リチウム塩の濃度は1.5Mないし4.0M、好ましくは1.5Mないし2.0Mであってもよい。もし、前記全体リチウム塩の濃度が1.5M未満であるか4.0Mを超過する場合には、電池の熱的安定性に寄与する度合いが微々たるものであるか、電池の熱的安定性向上にこれ以上利点がないことがある。また、前記リチウム塩の濃度が1.5M未満であれば電池駆動に適したイオン伝導度の確保が難しいことがあって、4.0Mを超過する場合には電解質の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が低下したり、リチウム塩自体の分解反応が増加して電池性能が低下されることがある。一方、前記第1リチウム塩の好ましい濃度は0.5Mないし1.3Mであってもよく、前記第2リチウム塩の好ましい濃度は0.7Mないし1.5Mであってもよい。
【0023】
次に、本発明のリチウム二次電池用電解液に含まれる溶媒について説明する。前記リチウム二次電池用電解液に含まれる溶媒も電池の熱的安定性に寄与するものとして、基本的にカーボネート系化合物を含む。具体的に、前記リチウム二次電池用電解液に含まれる溶媒は第1溶媒及び第2溶媒を含む。よって、前記第1溶媒及び第2溶媒のそれぞれは基本的にカーボネート系化合物を含む。このようなカーボネート系化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート及びこれらの中で2種以上を含む混合物などを例示することができる。
【0024】
前記第1溶媒及び第2溶媒はそれぞれカーボネート系化合物を含み、互いに独立的に他のカーボネート系化合物を含むことが好ましい。そして、前記第1溶媒はエチレンカーボネート(ethylene carbonate)で、前記第2溶媒はジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)またはエチルメチルカーボネート(ethyl methyl carbonate)であることがもっと好ましい。すなわち、言い換えれば、本発明のリチウム二次電池用電解液に含まれる溶媒はエチレンカーボネート及びジメチルカーボネートを含むものであるか、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを含むものが最も好ましい実施形態である。
【0025】
また、本出願人は、前記第1溶媒と第2溶媒の混合の割合も電池の熱的安定性に寄与することを確認した。このような前記第1溶媒と第2溶媒の混合の割合は体積比として5:95ないし35:65であってもよく、体積比として10:90ないし30:70が好ましいことがあって、体積比として10:90に近接したり10:90であることがもっと好ましいことがある。もし、前記第1溶媒と第2溶媒の混合比が前記範囲を脱すれば、電池の熱的安定性に寄与する度合いが微々たるものであるか、または電池の熱的安定性向上にこれ以上利点がないことがある。前記第1溶媒及び第2溶媒の混合の割合の範囲を通じて確認できるように、本発明は電解液に含まれる溶媒の中で第2溶媒が第1溶媒に比べて高い含量比で含まれることにも特徴がある。
【0026】
一方、本発明のリチウム二次電池用電解液に含まれる溶媒は、必要に応じてエステル、エーテルまたはケトンを単独または2種以上さらに含むことができる。これらの例としては、γ‐ブチロラクトン、n‐メチルアセテート、n‐エチルアセテート、n‐プロピルアセテート、リン酸トリエステル、ジブチルエーテル、N‐メチル‐2‐ピロリジノン、1,2‐ジメトキシエタン、2‐メチルテトラハイドロフランのようなテトラハイドロフラン誘導体、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン及びその誘導体、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒などを挙げることができる。しかし、本発明の目的を達成するためには、これらを除いて前記第1溶媒と第2溶媒のみを含むことが好ましい。
【0027】
そして、本発明のリチウム二次電池用電解液には、充放電特性及び難燃性などの改善を目的として、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、グライム系化合物、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されることもできる。必要に応じては、不燃性を与えるために電解液に四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませることもでき、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含ませることもできる。
【0028】
次に、本発明によるリチウム二次電池について説明する。
【0029】
前記リチウム二次電池は、リチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質を含む正極;負極;前記正極と負極との間に介在される分離膜及び固体電解質の中でいずれか一つ以上;及び前記リチウム二次電池用電解液;を含む。この中で、リチウム二次電池用電解液は以上で説明したことと同一であるため、これについた説明は省略する。そして、本発明のリチウム二次電池は、170℃以上の高温下でも熱的に安定したことを特徴とする。すなわち、言い換えれば、本発明のリチウム二次電池は、170℃以上の温度条件下で変形せず、爆発しないことを特徴とする。
【0030】
前記正極はリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質(または、リチウムNCM系正極活物質、またはNCM系リチウム複合遷移金属酸化物、またはHigh Ni正極材)を含むものとして、これを電池に適用する場合高い容量を具現可能である。そして、前記リチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質は、表面に金属酸化物がコーティングされたものであってもよい。
【0031】
前記リチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質は、市販品を購入して使用したり、当該技術分野でよく知られた製造方法で製造して使用することができる。一例として、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質及びマンガン含有原料物質を含む遷移金属溶液にアンモニウム陽イオン含有錯体形成剤と塩基性化合物を添加して共沈反応させてニッケル‐コバルト‐マンガン前駆体を製造した後、前記ニッケル‐コバルト‐マンガン前駆体とリチウム原料物質を混合して980℃以上の温度で過焼成させてリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質を製造することができる。
【0032】
前記ニッケル含有原料物質は、例えば、ニッケル含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などであってもよく、具体的には、Ni(OH)、NiO、NiOOH、NiCO・2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、脂肪酸ニッケル塩、ニッケルハロゲン化物またはこれらの組み合わせであってもよいが、これに限定されるものではない。前記コバルト含有原料物質は、例えば、コバルト含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などであってもよく、具体的にはCo(OH)、CoOOH、Co(OCOCH・4HO、Co(NO・6HO、CoSO、Co(SO・7HOまたはこれらの組み合わせであってもよいが、これに限定されるものではない。前記マンガン含有原料物質は、例えば、マンガン含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物またはこれらの組み合わせであってもよく、具体的にはMn、MnO、Mn位のようなマンガン酸化物;MnCO、Mn(NO、MnSO、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン塩、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン塩のようなマンガン塩;オキシ水酸化マンガン、塩化マンガンまたはこれらの組み合わせであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0033】
前記遷移金属溶液は前記ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質及びマンガン含有原料物質を溶媒、具体的には水、または水と均一に混合されることができる有機溶媒(例えば、アルコールなど)の混合溶媒に添加して製造されたものや、ニッケル含有原料物質の水溶液、コバルト含有原料物質の水溶液及びマンガン含有原料物質を混合して製造されたものであってもよい。前記アンモニウム陽イオン含有錯体形成剤は、例えばNHOH、(NHSO、NHNO、NHCl、CHCOONH、NHCOまたはこれらの組み合わせであってもよいが、これに限定されるものではない。一方、前記アンモニウム陽イオン含有錯体形成剤は水溶液の形態で使われることもでき、この時溶媒としては水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的に、アルコールなど)と水の混合物が使われることができる。
【0034】
前記塩基性化合物は、例えばNaOH、KOHまたはCa(OH)などのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、これらの水化物またはこれらの組み合わせであってもよい。前記塩基性化合物も水溶液の形態で使われることもでき、この時溶媒としては水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的に、アルコールなど)と水の混合物が使われることができる。前記塩基性化合物は反応溶液のpHを調節するために添加されるもので、金属溶液のpHが11ないし13になるように添加されることができる。
【0035】
一方、前記共沈反応は窒素またはアルゴンなどの非活性雰囲気下で、40ないし70℃の温度で遂行されることができる。前記のような工程によってニッケル‐コバルト‐マンガン水酸化物の粒子が生成され、反応溶液内に沈澱される。沈澱されたニッケル‐コバルト‐マンガン水酸化物粒子を通常の方法によって分離させ、乾燥させてニッケル‐コバルト‐マンガン前駆体を得ることができる。前記ニッケル‐コバルト‐マンガン前駆体は1次粒子が凝集して形成された2次粒子であってもよく、前記ニッケル‐コバルト‐マンガン前駆体2次粒子の平均粒径(D50)が4ないし8μmであってもよく、好ましくは4ないし7.5μm、より好ましくは4ないし7μmであってもよい。
【0036】
前記リチウム原料物質としては、リチウム含有硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ハロゲン化物、水酸化物またはオキシ水酸化物などが使われることができ、水に溶解されるものである限り、特に限定されない。具体的に、前記リチウムソースはLiCO、LiNO、LiNO、LiOH、LiOH・HO、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CHCOOLi、LiO、LiSO、CHCOOLiまたはLiなどであってもよく、これらの中でいずれか一つまたは2つ以上の混合物が使われることができる。前記ニッケル‐コバルト‐マンガン前駆体の全体金属元素(M)に対するリチウム(Li)のモル比(Li/M)が1ないし1.5、好ましくは1ないし1.1になるように前記リチウム原料物質を混合することができる。
【0037】
前記リチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質の含量は前記正極100重量部に対して50ないし95重量部、好ましくは60ないし90重量部であってもよい。前記リチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質の含量が正極総重量100重量部に対して50重量部未満であれば正極活物質による電池の電気化学的特性が低下されることがあって、95重量部を超過すればバインダー及び導電材のような追加的な構成成分が少量含まれることができて効率的な電池の製造が難しいことがある。
【0038】
前記正極は正極活物質以外にバインダー及び導電材などをさらに含む。前記バインダーは正極活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合に助力する成分として、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン‐ポリヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF/HFP)、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレン、ポリエチレンオキサイド、アルキル化ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレン、ポリメチル(メト)アクリレート、ポリエチル(メト)アクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、スチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、スチレン‐ブチレンゴム、フッ素ゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上を使うことができるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0039】
前記バインダーは正極総重量100重量部に対して1ないし50重量部、好ましくは3ないし15重量部の含量で使われることができる。前記バインダーの含量が正極総重量100重量部に対して1重量部未満であれば正極活物質及び集電体との接着力が不十分になることがある。また、前記バインダーの含量が正極総重量100重量部に対して50重量部を超過すれば接着力は向上されるが、その分正極活物質の含量が減少して電池容量が低くなることがある。
【0040】
前記正極に含まれる導電材はリチウム二次電池の内部環境で副反応を引き起こさずに当該電池に化学的変化を引き起こすことなく優れる電気伝導性を持つものであれば特に制限されないし、代表的には、黒鉛または導電性炭素を使用することができ、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック;結晶構造がグラフェンやグラファイトである炭素系物質;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム粉末、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性酸化物;及びポリフェニレン誘導体などの導電性高分子;を単独で、または2種以上混合して使用することができるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0041】
前記導電材は正極総重量100重量部に対して0.5ないし50重量部、好ましくは1ないし30重量部の含量で使われることができる。前記導電材の含量が正極総重量100重量部に対して0.5重量部未満で少なすぎると電気伝導性の向上効果を期待しにくいか、または電池の電気化学的特性が低下されることがある。また、前記導電材の含量が正極総重量100重量部に対して50重量部を超過して多すぎると相対的に正極活物質の量が少なくなって容量及びエネルギー密度が低下されることがある。正極に導電材を含ませる方法はさほど制限されず、正極活物質へのコーティングなど当分野に公知された通常の方法を利用することができる。また、必要に応じて正極材に導電性の第2被覆層が付加されることによって前記のような導電材の添加に代わることもできる。
【0042】
また、本発明の正極にはその膨脹を抑制する成分として充填剤が選択的に添加されることができる。このような充填剤は当該電池に化学的変化を引き起こさずに電極の膨脹を抑制することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオリフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質;などを使うことができる。
【0043】
前記正極活物質、バインダー及び導電材などを分散媒(溶媒)に分散、混合させてスラリーを作って、これを正極集電体上に塗布した後乾燥及び圧延することで本発明のリチウム二次電池に含まれる正極を製造することができる。前記分散媒としてはNMP(N‐methyl‐2‐pyrrolidone)、DMF(Dimethyl formamide)、DMSO(Dimethyl sulfoxide)、エタノール、イソプロパノール、水及びこれらの混合物を使うことができるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0044】
前記正極集電体としては、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ステンレススチール(STS)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、カーボン(C)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ITO(In doped SnO)、FTO(F doped SnO)、及びこれらの合金と、アルミニウム(Al)またはステンレススチールの表面にカーボン(C)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)または銀(Ag)を表面処理したものなどを使うことができるが、必ずこれに限定されるものではない。正極集電体の形態はホイル、フィルム、シート、打ち抜かれたもの、多孔質体、発泡体などの形態であってもよい。
【0045】
前記負極は該当の技術分野に知られた通常的な方法によって製造することができる。例えば、負極活物質、導電材、バインダー、必要に応じて充填剤などを分散媒(溶媒)に分散、混合させてスラリーを作って、これを負極集電体上に塗布した後乾燥及び圧延して負極を製造することができる。前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物が使われることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Sb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などリチウムと合金化可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi‐C複合体またはSn‐C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などを挙げることができ、これらの中でいずれか一つまたは2つ以上の混合物が使われることができる。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使われることもできる。また、炭素材料は低結晶性炭素及び高結晶性炭素などがいずれも使われることができる。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的で、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球形または繊維型の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso‐carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0046】
また、前記負極に使われるバインダー及び導電材は、上の正極で説明した内容と同一である。前記負極集電体としては、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ステンレススチール(STS)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、カーボン(C)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ITO(In doped SnO)、FTO(F doped SnO)、及びこれらの合金と、銅(Cu)またはステンレススチールの表面にカーボン(C)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)または銀(Ag)を表面処理したものなどを使うことができるが、必ずこれに限定されるものではない。負極集電体の形態はホイル、フィルム、シート、打ち抜かれたもの、多孔質体、発泡体などの形態であってもよい。
【0047】
前記分離膜は正極と負極との間に介在されてこれらの間の短絡を防いでリチウムイオンの移動通路を提供する役目をする。前記分離膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなオレフィン系ポリマー、ガラス繊維などをシート、多重膜、微細多孔性フィルム、織布及び不織布などの形態で使うことができるが、必ずこれに限定されるものではない。ただ、多孔性のポリエチレンまたは多孔性のガラス繊維不織布(glass filter)を分離膜で適用することが好ましいことがあって、多孔性のガラスフィルター(ガラス繊維不織布)を分離膜で適用することがより好ましいことがある。前記分離膜は高いイオン透過率と機械的強度を持つ絶縁性の薄膜であってもよく、分離膜の気孔の直径は一般に0.01ないし10μm、厚さは一般に5ないし300μmの範囲であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0048】
一方、前記リチウム二次電池において、正極及び負極の間には層状構造の膜として位置する固体電解質が位置することができる。よって、この場合には前記固体電解質が分離膜の役目(すなわち、負極と正極を電気的に絶縁すると同時にリチウムイオンを通過させる役目)を兼ねることもできる。この時、前記固体電解質は正極または負極の一面に附着されて前記リチウム二次電池に含まれることができる。すなわち、本発明のリチウム二次電池は、必要に応じて液体電解質と固体電解質を併用する半(Semi)固体電池であってもよい。同時に、この場合には別途分離膜がさらに含まれることもできる(すなわち、前記正極と負極との間には分離膜及び固体電解質の中でいずれか一つ以上が介在されることができる)。そして、前記固体電解質は高分子系固体電解質、硫化物系固体電解質及び酸化物系固体電解質の中で選択されるいずれか一つ以上を含むものであってもよく、高分子系固体電解質のみを含むことが好ましい。
【0049】
ここで、高分子系固体電解質について説明すると、前記高分子系固体電解質は高分子及びリチウム塩を含む。そして、前記高分子でポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリアクリロニトリル(PAN)及びポリビニルピロリドン(PVP)からなる群から選択される1種以上などを例示することができるが、これに制限されるものではない。また、前記リチウム塩としてLiNO、LiOH、LiSCN、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiCFSO、LiPF、LiCFCO、LiCBO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、(CSONLi、(SOF)NLi、(CFSOCLi、クロロボランリチウム、炭素数4以下の低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群から選択される1種以上を例示することができるが、これに制限されるものではない。前記高分子系固体電解質に含まれる高分子及びリチウム塩の重量比は、例えばモル比で1:0.5ないし1:3であってもよい。
【0050】
一方、本発明のリチウム二次電池は当分野の通常的な方法によって製造されることができる。例えば、正極と負極との間に多孔性の分離膜を入れて、電解液を投入することで製造することができる。本発明によるリチウム二次電池は小型デバイスの電源で使われる電池セルに適用されることは勿論、中大型デバイスの電源である電池モジュールの単位電池で特に適合に使われることができる。このような側面で、本発明はまた2個以上がリチウム二次電池が電気的に連結(直列または並列)されて含まれた電池モジュールを提供する。前記電池モジュールに含まれるリチウム二次電池の数量は、電池モジュールの用途及び容量などを考慮して多様に調節されることができることは勿論である。
【0051】
さらに、本発明は当分野の通常的な技術にしたがって前記電池モジュールを電気的に連結した電池パックを提供する。前記電池モジュール及び電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、及びプラグインハイブリッド電気車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;電気トラック;電気商用車;また電力保存用システムの中でいずれか一つ以上の中大型デバイス電源として利用可能であるが、必ずこれに限定されるものではない。
【0052】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、これは本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明なことであり、このような変更及び修正が添付の特許請求範囲に属することも当然である。
【0053】
[実施例1]リチウム二次電池の製造
電解液の製造
先ず、エチレンカーボネート(第1溶媒)とジメチルカーボネート(第2溶媒)を30:70の体積比(v/v)で混合した有機溶媒に、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF、第1リチウム塩)とリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI、第2リチウム塩)を0.7:0.3のモル比で溶解させてリチウム二次電池用電解液を製造した。
【0054】
正極製造
先ず、50℃で設定された回分式バッチ(batch)型40L反応器でNiSO、CoSO、MnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が80:10:10のモル比になるようにする量で水(water)の中で混合して2.4Mの濃度の前駆体形成溶液を準備した。共沈反応器(容量40L)に脱イオン水13リットルを入れた後、窒素ガスを反応器に25リットル/分の速度でパージングして水中の溶存酸素を取り除いて反応器内を非酸化雰囲気に造成した。以後、25%濃度のNaOH水溶液83gを投入した後、50℃温度で700rpmの速度で撹拌してpH11.5を維持させた。以後、前記前駆体形成溶液を1.9L/hrの速度でそれぞれ投入し、NaOH水溶液及びNHOH水溶液を一緒に投入しながら48時間共沈反応させて、ニッケル‐コバルト‐マンガン含有水酸化物(Ni0.5Co0.3Mn0.2(OH))の粒子を形成した。前記水酸化物粒子を分離して洗浄した後、120℃のオーブンで乾燥してニッケル‐コバルト‐マンガン前駆体(D50=4.8μm)を製造した。続いて、前記製造されたニッケル‐コバルト‐マンガン前駆体及びリチウムソースLiOHをLi/M(Ni、Co、Mn)のモル比が1.02になるようにヘンセルミキサー(20L)に投入し、中心部300rpmで20分間ミキシング(mixing)した。混合された粉末を330mm×330mm大きさのアルミナ坩堝に入れて、酸素雰囲気下の1,010~1,030℃で15時間焼成してリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質を製造した。
【0055】
次いで、前記製造されたリチウムニッケルコバルトマンガン系正極活物質、導電材としてカーボンブラック及びバインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を96.5:1.5:2の重量比で混合し、NMP溶媒に分散させてスラリーを製造した後、これをブレードタイプのコーティング機械であるマティスコーター(Labdryer/coater type LTE、Werner Mathis AG社)で25μm厚さのアルミニウムホイル(Al foil)に均一な厚さでコーティングし、120℃の真空オーブンで13時間乾燥してリチウム二次電池用正極を製造した。
【0056】
リチウム二次電池の製造
黒鉛を活物質で含む負極と前記製造された正極を対面するように位置させた後、その間に多孔性のポリエチレン分離膜を介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体をケース内部に位置させた後ケース内部に電解液を注入して、ハーフセル(half cell)形態のリチウム二次電池を製造した。
【0057】
[実施例2~5、比較例1~3]リチウム二次電池の製造
前記製造された実施例1のリチウム二次電池で電解液の組成を下記表1のように変更したことを除いて、前記実施例1と同様に行って実施例2ないし5及び比較例1ないし3のそれぞれに該当するリチウム二次電池を製造した。
【0058】
【表1】
【0059】
[実験例1]リチウム二次電池の熱的安定性評価
前記実施例1ないし5及び比較例1ないし3で製造されたリチウム二次電池のそれぞれを約100~200℃の温度条件の環境に放置し、前記温度範囲内のそれぞれの温度ごとに30分ずつ待機時間(waiting time)を付与及び維持して熱的安定性実験を進行し(この時、温度上昇速度は10℃/min)、その結果を下記表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
図1ないし5は本発明の一実施例による電解液を含むリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果を示すグラフで、図6ないし8は通常の電解液を含むリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果を示すグラフである。
【0062】
具体的に、図1は前記実施例1で製造されたリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果に該当し、図2は前記実施例2で製造されたリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果に該当し、図3は前記実施例3で製造されたリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果に該当し、図4は前記実施例4で製造されたリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果に該当し、図5は前記実施例5で製造されたリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果に該当する。そして、図6は前記比較例1で製造されたリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果に該当し、図7は前記比較例2で製造されたリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果に該当し、図8は前記比較例3で製造されたリチウム二次電池の熱的安定性の実験結果に該当する。
【0063】
前記のように実施例1ないし5及び比較例1ないし3で製造されたリチウム二次電池のそれぞれに対して熱的安定性実験を行った結果、前記表2、そして図6に示されたように、電解液にリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)のみをリチウム塩で含ませた比較例1のリチウム二次電池は熱的に安定した温度が最高160℃に過ぎなかった。また、前記表2、そして図7及び8に示されたように、第1リチウム塩と第2リチウム塩が同一含量で使われた比較例2のリチウム二次電池は熱的に安定した温度が最高163℃に過ぎず、第2リチウム塩が第1リチウム塩より過量で使われた比較例3のリチウム二次電池も熱的に安定した温度が最高162℃に過ぎなかった。
【0064】
一方、電解液に2種の特定のリチウム塩(LiPF及びLiFSI、LiPF及びLiTFSI)を含ませると同時に第2リチウム塩を第1リチウム塩より少量で含ませた実施例1ないし5のリチウム二次電池は熱的に安定した温度が最低170℃であって、180℃を超過する温度でまで熱的安定性に優れる場合(実施例3に該当)も確認された。これを通じて、2種のリチウム塩を特定の含量比として2種の特定の溶媒とともに電解液に含ませれば、電池の熱的安定性が向上されることを確認することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】