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特表2024-534663トランスアミナーゼ変異体及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】トランスアミナーゼ変異体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/10 20060101AFI20240912BHJP
   C12P 19/26 20060101ALI20240912BHJP
   C12N 11/087 20200101ALI20240912BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20240912BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20240912BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
C12N9/10 ZNA
C12P19/26
C12N11/087
C12N15/54
C12N15/63 Z
C12N15/31
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519501
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 CN2021127138
(87)【国際公開番号】W WO2023050516
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111146751.0
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516336828
【氏名又は名称】凱菜英医藥集團(天津)股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ASYMCHEM LABORATORIES (TIANJIN) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】洪 浩
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ,ゲイジ
(72)【発明者】
【氏名】肖 毅
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 娜
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヤーサ,ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】崔 瑜霞
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 佳▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】高 妍妍
(72)【発明者】
【氏名】傅 涵
【テーマコード(参考)】
4B033
4B064
【Fターム(参考)】
4B033NA01
4B033NA25
4B033NB03
4B033NB36
4B033NB62
4B033NC02
4B033NC03
4B033ND02
4B033ND12
4B033NF02
4B064AE01
4B064CA21
4B064CA34
4B064CA38
4B064CC24
4B064CD12
4B064DA01
4B064DA16
(57)【要約】
トランスアミナーゼ変異体及びその使用を提供する。ここで、トランスアミナーゼ変異体は、配列番号1で示される配列を基にアミノ酸突然変異が発生したものであり、アミノ酸突然変異はW60Y、Y168A、V379W、V379L、V379M、C418Q及びC418Wの単一部位突然変異又は組合せ突然変異であり、これらのトランスアミナーゼ変異体の活性、安定性、温度、pH及び有機溶媒に対する耐性が向上し、トランスアミナーゼの極端な環境に対する耐性が悪いという従来技術における問題を解決し、酵素工学の分野に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で示される配列を基にアミノ酸突然変異が発生したトランスアミナーゼ変異体であって、前記アミノ酸突然変異は、C418Q、C418W、W60Y、Y168A、V379W、V379L、V379M、W60Y+Y168A、W60Y+V379W、W60Y+V379L、W60Y+V379M、W60Y+C418Q、W60Y+C418W、Y168A+V379W、Y168A+V379L、Y168A+V379M、Y168A+C418Q、Y168A+C418W、V379W+C418Q、V379W+C418W、V379L+C418Q、V379L+C418W、V379M+C418Q、V379M+C418W、W60Y+Y168A+V379W、W60Y+Y168A+V379L、W60Y+Y168A+V379M、W60Y+Y168A+C418Q、W60Y+Y168A+C418W、W60Y+V379W+C418Q、W60Y+V379W+C418W、W60Y+V379L+C418Q、W60Y+V379L+C418W、W60Y+V379M+C418Q、W60Y+V379M+C418W、Y168A+V379W+C418Q、Y168A+V379W+C418W、Y168A+V379L+C418Q、Y168A+V379L+C418W、Y168A+V379M+C418Q、Y168A+V379M+C418W、W60Y+Y168A+V379W+C418Q、W60Y+Y168A+V379L+C418Q、W60Y+Y168A+V379M+C418Q、W60Y+Y168A+V379W+C418W、W60Y+Y168A+V379L+C418W又はW60Y+Y168A+V379M+C418Wであるか、又は、前記トランスアミナーゼ変異体のアミノ酸配列に突然変異が発生したアミノ酸配列における突然変異部位があり、且つ突然変異が発生したアミノ酸配列と85%以上の相同性を有するとともに、トランスアミナーゼ活性を有する、
ことを特徴とするトランスアミナーゼ変異体。
【請求項2】
前記トランスアミナーゼ変異体のアミノ酸配列は、突然変異が発生したアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の相同性を有するとともに、トランスアミナーゼ活性を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のトランスアミナーゼ変異体。
【請求項3】
前記トランスアミナーゼ変異体は、Chromobacterium violaceumに由来するものである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のトランスアミナーゼ変異体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のトランスアミナーゼ変異体をコードする、
ことを特徴とするDNA分子。
【請求項5】
請求項4に記載のDNA分子が連結されている、
ことを特徴とする組換プラスミド。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のトランスアミナーゼ変異体を含む、
ことを特徴とする固定化トランスアミナーゼ。
【請求項7】
前記固定化トランスアミナーゼは、前記トランスアミナーゼ変異体の架橋固定化酵素凝集体であり、
好ましくは、前記架橋固定化酵素凝集体は、グルタルアルデヒド架橋の固定化酵素凝集体であり、
好ましくは、前記架橋固定化酵素凝集体は、グルタルアルデヒドによって活性化されたPEIと架橋した固定化酵素凝集体であり、
より好ましくは、前記架橋固定化酵素凝集体は、補因子によって活性化されたPEIとグルタルアルデヒドを介して架橋された固定化酵素凝集体である、
ことを特徴とする請求項6に記載の固定化トランスアミナーゼ。
【請求項8】
前記固定化トランスアミナーゼは、前記トランスアミナーゼ変異体がキャリアに結合された固定化酵素であり、
好ましくは、前記キャリアが架橋ポリマー樹脂球であり、
好ましくは、前記樹脂球は、マクロポーラス型吸着樹脂球、アミノ基型樹脂球又はエポキシ型樹脂球を含み、
好ましくは、前記マクロポーラス型吸着樹脂球のマトリックスは、官能基を有さないポリスチレンであり、
より好ましくは、前記マクロポーラス型吸着樹脂は、NKA9、LXEP120、AB-8、ECR8806、XAD-7又はD3520を含み、
好ましくは、前記アミノ基型樹脂球は、アミノ官能基を有する架橋ポリマー樹脂球であり、
より好ましくは、前記アミノ基型樹脂球の官能基は、長さがC1~C4又はC5~C10のアミノ官能基であり、
より好ましくは、前記アミノ基型樹脂球の官能基は、C2又はC6長さの炭素鎖アームを有するアミノ官能基であり、
より好ましくは、前記アミノ基型樹脂球は、ポリメタクリレート樹脂球、ポリスチレン樹脂球又はメタクリル酸エステルとスチレンとの共重合体の樹脂球であり、
より好ましくは、前記アミノ基型樹脂球は、LifetechTMECR8309、LifetechTMECR8409、SepliteLX1000HA又はSepliteLXEPHAを含み、
好ましくは、前記エポキシ型樹脂球は、エポキシ官能基を有するポリマー樹脂球であり、
より好ましくは、前記エポキシ型樹脂球はC2~C8長さの炭素鎖アームを有するエポキシ官能基であり、
より好ましくは、前記エポキシ型樹脂球は、エポキシ官能基を有するポリメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂又はメタクリル酸エステルとスチレンとの共重合体の樹脂球であり、
より好ましくは、前記エポキシ型樹脂球はSepliteLXHFA001又はLifetechTMECR8285を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の固定化トランスアミナーゼ。
【請求項9】
前記固定化トランスアミナーゼは、前記トランスアミナーゼ変異体と金属親和性吸着型キャリアとが親和吸着した親和キャリア固定化酵素であり、
好ましくは、前記キャリアがポリメタクリル酸マトリックスの樹脂球であり、
より好ましくは、前記樹脂球がNTA又はIDAを金属イオンとキレートするリガンドとし、
より好ましくは、前記樹脂球は、末端に金属イオンリガンドがキレートされ、
さらに好ましくは、前記金属イオンリガンドはNi2+、Co2+、Cu2+又はFe3+を含み、
さらに好ましくは、前記樹脂球はIMAC-Ni又はMIDA-Niを含み、
さらに好ましくは、前記樹脂球はBio-Rad ProfinityTMIMAC Resin、Purolite ChromaliteTMMIDA/M/Ni、Purolite ChromaliteTMMIDA/M/Co、Purolite ChromaliteTMMIDA/M/Cu又はPurolite ChromaliteTMMIDA/M/Feを含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の固定化トランスアミナーゼ。
【請求項10】
トランスアミナーゼを用いてケトン系化合物及びアミノ基供与体に対してアミノ基転移触媒反応を行うステップを含むトランスアミナーゼでキラルアミンを生産する方法であって、前記トランスアミナーゼは、請求項1~3のいずれか1項に記載のトランスアミナーゼ変異体又は請求項6~9のいずれか1項に記載の固定化トランスアミナーゼである、
ことを特徴とするトランスアミナーゼでキラルアミンを生産する方法。
【請求項11】
バッチ反応又は連続反応であり、
好ましくは、前記バッチ反応又は前記連続反応は、水相又は有機相中で行われる反応であり、
好ましくは、前記水相中で反応する条件は、全系体積の70%以下の、水と相互溶解する有機溶媒を水溶液に加えて溶解補助剤として触媒反応を行うことであり、さらに、有機溶媒は、メタノール、エタノール又はジメチルスルホキシドであり、
好ましくは、前記有機相中で反応する条件は、水と相互溶解しない水飽和有機溶媒中で触媒反応を行うこと、さらに、水飽和のメチル‐ターシャリ‐ブチルエーテル溶液又は水飽和酢酸イソプロピル溶液中で触媒反応を行うことであり、
好ましくは、前記固定化トランスアミナーゼは、請求項6~9のいずれか1項に記載の固定化トランスアミナーゼであり、前記固定化トランスアミナーゼは、管路に充填されて充填層連続反応を行い、
好ましくは、前記固定化酵素の連続使用時間は、400時間以上であり、
好ましくは、前記固定化酵素の空時収量は3.6~7.2mol/L/日である、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ケトン系化合物は
【化1】
であり、ここで、R及びRは、それぞれ独立してC1~C8アルキル基、C5~C10シクロアルキル基又はC6~C10アリール基であり、又は、R及びRは、カルボニル基上の炭素と共にC5~C10複素環基又はC5~C10炭素環式基を形成し、前記C5~C10複素環基中のヘテロ原子は、それぞれ独立して窒素、酸素及び硫黄からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記C6~C10アリール基中のアリール基、C5~C10炭素環式基中の炭素環式基又はC5~C10複素環基中の複素環基は、それぞれ独立して置換されていないか、又はハロゲン、アルコキシ基又はアルキル基のうちの少なくとも1つによって置換され、
好ましくは、前記R及び前記Rは、それぞれ独立してC5~C10ヘテロシクロアルカンであり、前記C5~C10ヘテロシクロアルカン中のヘテロ原子は、それぞれ独立して窒素、酸素及び硫黄からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記C5~C10ヘテロシクロアルカンの炭素環式基は、置換されていないか、又はハロゲン、アルコキシ基又はアルキル基のうちの少なくとも1つによって置換され、
好ましくは、前記ケトン系化合物は
【化2】
であり、ここで、アミノ基転移反応の生成物は
【化3】
である、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
トランスアミナーゼ変異体を固定化するステップを含み、ここで、前記トランスアミナーゼ変異体は、請求項1~3のいずれか1項に記載のトランスアミナーゼ変異体である、
ことを特徴とする固定化トランスアミナーゼの生産方法。
【請求項14】
トランスアミナーゼ変異体を固定化するステップは、前記トランスアミナーゼ変異体を架橋固定して固定化酵素凝集体を形成することを含み、
好ましくは、前記トランスアミナーゼ変異体を架橋固定して固定化酵素凝集体を形成することは、
沈殿剤で沈殿させた酵素をグルタルアルデヒドと架橋して、前記固定化酵素凝集体を形成するか、又は
沈殿剤で沈殿させた酵素をグルタルアルデヒドによって活性化されたPEIと架橋して、前記固定化酵素凝集体を形成するか、又は
前記トランスアミナーゼ変異体と、補因子によって活性化されたPEIとをグルタルアルデヒドを介して架橋して、前記固定化酵素凝集体を形成することを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の生産方法。
【請求項15】
トランスアミナーゼ変異体を固定化するステップは、前記トランスアミナーゼ変異体とキャリアとを連結して、固定化酵素を形成することを含み、
好ましくは、前記キャリアが架橋ポリマー樹脂球であり、
好ましくは、前記樹脂球は、マクロポーラス型吸着樹脂球、アミノ基型樹脂球又はエポキシ型樹脂球を含み、
好ましくは、前記マクロポーラス型吸着樹脂球のマトリックスは、官能基を有さないポリスチレンであり、
より好ましくは、前記マクロポーラス型吸着樹脂球はNKA9、LXEP120、AB-8、ECR8806、XAD-7又はD3520を含み、
好ましくは、前記アミノ基型樹脂球は、アミノ官能基を有する架橋ポリマー樹脂球であり、
より好ましくは、前記アミノ基型樹脂球の官能基は、C2又はC6長さの炭素鎖アームを有するアミノ官能基であり、
より好ましくは、前記アミノ基型樹脂球は、ポリメタクリレート、ポリスチレン樹脂又はメタクリル酸エステルとスチレンとの共重合体の樹脂球を含み、
より好ましくは、前記アミノ基型樹脂球は、LifetechTMECR8309、LifetechTMECR8409、SepliteLX1000HA又はSepliteLXEPHAを含み、
より好ましくは、前記エポキシ型樹脂球は、エポキシ官能基を有するポリマー樹脂球であり、
より好ましくは、前記エポキシ型樹脂球は、C2~C8長さアームのエポキシ官能基を有し、
より好ましくは、前記エポキシ型樹脂球は、エポキシ官能基を有するポリメタクリレート、ポリスチレン樹脂又はメタクリル酸エステルとスチレンとの共重合体の樹脂を含み、
より好ましくは、前記エポキシ型樹脂球はSepliteLXHFA001又はLifetechTMECR8285を含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の生産方法。
【請求項16】
トランスアミナーゼ変異体を固定化するステップは、前記トランスアミナーゼ変異体とキャリアとを親和吸着して親和固定化酵素を形成することを含み、
好ましくは、前記トランスアミナーゼ変異体と前記キャリアとを共培養し、前記親和固定化酵素を得ることを含み、
好ましくは、前記トランスアミナーゼ変異体は、複数のHis-タグを有し、
好ましくは、前記キャリアがポリメタクリル酸マトリックスの樹脂球であり、
より好ましくは、前記樹脂球はNTA又はIDAリガンドを含み、
より好ましくは、前記樹脂球は、末端に金属イオンリガンドがキレートされ、
さらに好ましくは、前記金属イオンリガンドはNi2+、Co2+、Cu2+又はFe3+を含み、
さらに好ましくは、前記キャリアはIMAC-Ni又はMIDA-Niを含み、
さらに好ましくは、前記キャリアはBio-Rad ProfinityTMIMAC Resin、Purolite ChromaliteTMMIDA/M/Ni、Purolite ChromaliteTMMIDA/M/Co、Purolite ChromaliteTMMIDA/M/Cu又はPurolite ChromaliteTMMIDA/M/Feを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素工学の分野に関し、具体的には、トランスアミナーゼ変異体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
キラルアミンは、多くのキラル薬物を合成するための重要な中間体であり、アミノ基を含有する光学的な純薬物の主要成分でもある。神経系薬物、血管薬物、抗高血圧性薬物、抗感染薬物及びワクチン等は、いずれもキラルアミンを中間体とする。トランスアミナーゼは、ケトン系化合物を原料として、立体選択的なアミノ基転移により、キラルアミンを効率よく生産することができる。しかし、遊離酵素での酵素触媒方法は増幅生産用途において、酵素活性が低く且つ酵素の使用量が多いことによる発酵コストが増加すること、反応系中の有機溶媒の影響を受けて変性・失活しやすく、後処理で回収した生成物の乳化現象が厳しく、廃ガスと廃水と廃棄物の発生量が多いこと等の、多くの問題がある。また、アミン製品を分離する過程において、酵素を変性・失活させて沈殿を形成した後に除去して捨てるしかなく、再利用できない。
【0003】
固定化酵素の研究は、1910年に始まり、1960年代に本格的に研究され、1970年代になると、既に世界中で普遍的に行われていた。酵素の固定化(Immobilization of enzymes)は、固体材料で酵素を一定の領域内に束縛又は制限しても、依然としてその特有の触媒反応を行い、且つ回収・再利用が可能である技術の一種である。固定化酵素は、遊離酵素に比べ、その高効率で特異的且つ温和な酵素触媒反応特性を維持しながら、遊離酵素の欠点を克服し、保存安定性が高く、分離・回収が容易で、複数回繰り返して使用でき、操作が連続的で制御可能で、プロセスが簡便であるなどの一連の利点を現す。固定化酵素は、化学、生物学及び生物工学、医学及び生命科学等の学科分野における研究で異常に活発であり、急速に開発され広く使用されているだけでなく、資源及びエネルギーを節約し、且つ汚染を低減又は防止するエコロジー効果を有するため、持続可能な発展戦略の要件にも適する。そのため、固定化酵素は、すでに近代酵素工学の分野の主要研究内容の1つとなっている。固定化酵素は、その高い安定性により、工業生産において幅広い見通しを持っている。
【0004】
固定化酵素を使用してバッチ撹拌反応を行うことにより、酵素の繰り返し使用を実現するとともに、後処理の乳化現象を極めて大きく緩和して、廃ガスと廃水と廃棄物の発生を低減することができる。しかし、バッチ撹拌反応は、固定化酵素の回収操作を必要とし、断続的な材料供給は生産能力に影響を与え、撹拌によって発生したせん断力により酵素が失活しやすく、且つ撹拌動力の消費が大きい。固定化酵素連続流動酵素反応は、固定化酵素を管路型反応器に充填し、ポンプを用いて基質を適当な流速で反応器の入口から注入し、出口で製品を受け取る。連続流動反応機器は、簡単で、エネルギー消費が少なく、労力を節約し、生産能力が高いため、固定化酵素の増幅応用により適している。
【0005】
既存の基質ケトン(アミノ基受容体)のほとんどは水溶性がよくないため、純水相中で連続的に反応することができない。連続的な反応を実現するためには、高い温度を必要とするか、又は十分な有機溶解補助剤を加えて基質を溶解させる必要があるが、極端な温度、pH及び有機溶媒等により、トランスアミナーゼが非常に容易に失活する。そのため、高温、有機溶媒等の極端な環境で安定性が悪いことにより使用が制限されるという問題を改善するために、トランスアミナーゼを改良する必要がある。
【0006】
前の段階では、トランスアミナーゼを改変して、45℃高温や50%高濃度の有機溶媒に耐えることができる変異体を得(CN108384767 B)、キャリアフリー固定化(CLEA)、アミノ基キャリア共有固定化等の技術により、トランスアミナーゼ変異体の固定化に成功し、繰り返し使用回数は18回にも達した。充填層反応器の連続反応を実現するために、高濃度の溶解補助剤、即ち≧35%(v/v)のメタノール溶液を使用して基質を完全に溶解した。この高濃度の有機溶媒条件で、キャリア固定化酵素により、トランスアミナーゼ酵素反応の連続化に成功し、保持時間は600minで、240h連続的に実行しても、形質転換率は低下しなかった。しかし、工業的応用において、600minの保持時間は依然として低い。生産力を向上させるために、固定化酵素の活性及び安定性を一層向上させる必要がある。タンパク質工学技術は、分子構造の観点から酵素分子を指向改変して、性能が向上した(例えば活性、耐性、基質スペクトル等が向上した)変異体を得ることができる。酵素の固定化技術は、一般的に、酵素の保存安定性、使用安定性、及び温度、pH、有機溶媒等に対する耐性を向上させることができる。最も重要なのは、固定化後の酵素を回収して繰り返して使用することができるため、酵素の浪費を減少することである。通常の場合、酵素は、固定化された後、特に共有結合方式で固定化された後、酵素活性が低下し、即ち酵素活性回収<100%であり、固定化酵素の酵素活性回収を向上させるための最も直接で効果的な方法は、先に遊離酵素を指向改変することであり、これにより、酵素の極端な条件に対する耐性を向上させ、共有固定化過程における酵素の活性損失を低下させ、固定化酵素の使用寿命を一層向上させることができる。
【0007】
キャリア固定化酵素は、酵素がキャリアの多孔質構造に固定されているため、反応中に酵素と基質との接触が制限され、物質移動抵抗が大きく、反応効率が低い。キャリアフリー固定化酵素、即ち架橋酵素は、酵素と基質との接触面積及び効率を向上させることにより、反応効率を向上させる。当該物質移動抵抗が小さい架橋酵素が連続反応に適用されると、生産力を極めて大きく向上させる。しかし、架橋酵素は、固体キャリアの支持がないため、強度が弱く、管路に充填される場合、反応溶液を流した後に非常に大きいカラム圧力が発生することにより、連続流動反応ができなくなる。そのため、硬度が高く、機械的強度がよい架橋酵素の開発は、固定化酵素の生産力を高めるもう1つの方向である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主な目的は、従来技術のトランスアミナーゼの極端な環境における耐性を一層向上させるための、トランスアミナーゼ変異体及びその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、上記の目的を実現するために、トランスアミナーゼ変異体を提供し、トランスアミナーゼ変異体は、配列番号1で示される配列を基にアミノ酸突然変異が発生したものであり、アミノ酸突然変異は、C418Q、C418W、W60Y、Y168A、V379W、V379L、V379M、W60Y+Y168A、W60Y+V379W、W60Y+V379L、W60Y+V379M、W60Y+C418Q、W60Y+C418W、Y168A+V379W、Y168A+V379L、Y168A+V379M、Y168A+C418Q、Y168A+C418W、V379W+C418Q、V379W+C418W、V379L+C418Q、V379L+C418W、V379M+C418Q、V379M+C418W、W60Y+Y168A+V379W、W60Y+Y168A+V379L、W60Y+Y168A+V379M、W60Y+Y168A+C418Q、W60Y+Y168A+C418W、W60Y+V379W+C418Q、W60Y+V379W+C418W、W60Y+V379L+C418Q、W60Y+V379L+C418W、W60Y+V379M+C418Q、W60Y+V379M+C418W、Y168A+V379W+C418Q、Y168A+V379W+C418W、Y168A+V379L+C418Q、Y168A+V379L+C418W、Y168A+V379M+C418Q、Y168A+V379M+C418W、W60Y+Y168A+V379W+C418Q、W60Y+Y168A+V379L+C418Q、W60Y+Y168A+V379M+C418Q、W60Y+Y168A+V379W+C418W、W60Y+Y168A+V379L+C418W又はW60Y+Y168A+V379M+C418Wであるか、又は、トランスアミナーゼ変異体のアミノ酸配列に突然変異が発生したアミノ酸配列における突然変異部位があり、且つ突然変異が発生したアミノ酸配列との相同性が85%以上であるとともに、トランスアミナーゼ活性を有する。
【0010】
さらに、トランスアミナーゼ変異体のアミノ酸配列は、突然変異が発生したアミノ酸配列との相同性が90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上であるとともに、トランスアミナーゼ活性を有する。
【0011】
さらに、当該トランスアミナーゼ変異体は、Chromobacterium violaceumに由来するものである。
【0012】
本願の第2態様によれば、上記トランスアミナーゼ変異体をコードするDNA分子を提供する。
【0013】
本願の第3態様によれば、上記DNA分子が連結されている組換プラスミドを提供する。
【0014】
本願の第4態様によれば、上記トランスアミナーゼ変異体を含む固定化トランスアミナーゼを提供する。
【0015】
さらに、固定化トランスアミナーゼは、トランスアミナーゼ変異体の架橋固定化酵素凝集体を含み、好ましくは、架橋固定化酵素凝集体は、グルタルアルデヒド架橋の固定化酵素凝集体であり、好ましくは、架橋固定化酵素凝集体は、グルタルアルデヒドによって活性化されたPEIに架橋される固定化酵素凝集体であり、より好ましくは、架橋固定化酵素凝集体は、補因子によって活性化されたPEIとグルタルアルデヒドを介して架橋された固定化酵素凝集体である。
【0016】
さらに、固定化トランスアミナーゼは、トランスアミナーゼ変異体がキャリアに結合した固定化酵素を含み、好ましくは、キャリアが架橋ポリマー樹脂球であり、好ましくは、樹脂球は、マクロポーラス型吸着樹脂球、アミノ基型樹脂球又はエポキシ型樹脂球を含むが、これらに限定されず、好ましくは、マクロポーラス型吸着樹脂球のマトリックスは、官能基を有さないポリスチレンであり、より好ましくは、マクロポーラス型吸着樹脂は、NKA9、LXEP120、AB-8、ECR8806、XAD-7(アンバーライト)又はD3520を含むが、これらに限定されず、好ましくは、アミノ基型樹脂球は、アミノ官能基を有する架橋ポリマー樹脂球であり、より好ましくは、アミノ基型樹脂球の官能基は、長さがC1~C4又はC5~C10のアミノ官能基であり、より好ましくは、アミノ基型樹脂球の官能基は、C2又はC6長さの炭素鎖アームを有するアミノ官能基であり、より好ましくは、アミノ基型樹脂球は、ポリメタクリレート樹脂球、ポリスチレン樹脂球又はメタクリル酸エステルとスチレンとの共重合体の樹脂球であり、より好ましくは、アミノ基型樹脂球は、LifetechTMECR8309、LifetechTMECR8409、Seplite(登録商標。以下同じ)LX1000HA又はSepliteLXEPHAを含むが、これらに限定されず、好ましくは、エポキシ型樹脂球は、エポキシ官能基を有するポリマー樹脂球であり、より好ましくは、エポキシ型樹脂球はC2~C8長さの炭素鎖アームを有するエポキシ官能基であり、より好ましくは、エポキシ型樹脂球は、エポキシ官能基を有するポリメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂又はメタクリル酸エステルとスチレンとの共重合体の樹脂球を含むが、これらに限定されず、より好ましくは、エポキシ型樹脂球は、SepliteLXHFA001又はLifetechTMECR8285を含むが、これらに限定されない。
【0017】
さらに、固定化トランスアミナーゼは、トランスアミナーゼ変異体が金属親和性吸着型キャリアと親和吸着した親和キャリア固定化酵素を含み、好ましくは、キャリアがポリメタクリル酸マトリックスの樹脂球であり、より好ましくは、樹脂球がNTA又はIDAを金属イオンとキレートするリガンドとし、より好ましくは、樹脂球は、末端に金属イオンリガンドがキレートされ、さらに好ましくは、金属イオンリガンドは、Ni2+、Co2+、Cu2+又はFe3+を含むが、これらに限定されず、さらに好ましくは、樹脂球は、IMAC-Ni又はMIDA-Niを含むが、これらに限定されず、さらに好ましくは、樹脂は、Bio-Rad ProfinityTMIMAC Resin、Purolite ChromaliteTMMIDA/M/Ni、Purolite ChromaliteTMMIDA/M/Co、Purolite ChromaliteTMMIDA/M/Cu又はPurolite ChromaliteTMMIDA/M/Feを含むが、これらに限定されない。
【0018】
本願の第5態様によれば、上記トランスアミナーゼ変異体又は固定化トランスアミナーゼであるトランスアミナーゼを用いてケトン系化合物及びアミノ基供与体に対してアミノ基転移触媒反応を行うステップを含むトランスアミナーゼでキラルアミンを生産する方法を提供する。
【0019】
さらに、当該方法は、バッチ反応又は連続反応であり、好ましくは、バッチ反応又は連続反応は、水相又は有機相中で行われる反応であり、好ましくは、水相中で反応する条件は、全系体積の70%以下の、水と相互溶解する有機溶媒を溶解補助剤として水溶液に加えて触媒反応を行うことであり、さらに、有機溶媒は、メタノール、エタノール又はジメチルスルホキシドであり、好ましくは、有機相中で反応する条件は、水と相互溶解しない水飽和有機溶媒中で触媒反応を行うこと、さらに、水飽和のメチル‐ターシャリ‐ブチルエーテル溶液又は水飽和酢酸イソプロピル溶液中で触媒反応を行うことであり、好ましくは、固定化トランスアミナーゼは上記固定化トランスアミナーゼであり、固定化トランスアミナーゼを管路に充填することにより充填層連続反応が実現され、好ましくは、固定化酵素の連続使用時間は、400時間以上であり、好ましくは、固定化酵素の空時収量は3.6~7.2mol/L/日である。
【0020】
さらに、上記ケトン系化合物は、
【化1】
であり、ここで、R及びRは、それぞれ独立してC1~C8アルキル基、C5~C10シクロアルキル基又はC6~C10アリール基であり、又は、R及びRは、カルボニル基上の炭素と共にC5~C10複素環基又はC5~C10炭素環式基を形成し、C5~C10複素環基中のヘテロ原子は、それぞれ独立して窒素、酸素及び硫黄からなる群より選択される少なくとも1種であり、C6~C10アリール基中のアリール基、C5~C10炭素環式基中の炭素環式基又はC5~C10複素環基中の複素環基は、それぞれ独立して置換されていないか、又はハロゲン、アルコキシ基又はアルキル基のうちの少なくとも1つによって置換され、好ましくは、R及びRは、それぞれ独立してC5~C10ヘテロシクロアルカンであり、C5~C10ヘテロシクロアルカン中のヘテロ原子は、それぞれ独立して窒素、酸素及び硫黄からなる群より選択される少なくとも1種であり、C5~C10ヘテロシクロアルカンの炭素環式基は、置換されていないか、又はハロゲン、アルコキシ基又はアルキル基のうちの少なくとも1つによって置換され、好ましくは、ケトン系化合物は、
【化2】
であってもよく、ここで、アミノ基転移反応の生成物は、
【化3】
である。
【0021】
本願の第6態様によれば、固定化トランスアミナーゼの生産方法を提供し、当該生産方法は、上記トランスアミナーゼ変異体であるトランスアミナーゼ変異体を固定化するステップを含む。
【0022】
さらに、当該生産方法においてトランスアミナーゼ変異体を固定化するステップは、トランスアミナーゼ変異体を架橋固定して固定化酵素凝集体を形成することを含み、好ましくは、トランスアミナーゼ変異体を架橋固定して固定化酵素凝集体を形成することは、沈殿剤で沈殿させた酵素をグルタルアルデヒドと架橋して、固定化酵素凝集体を形成するか、又は沈殿剤で沈殿させた酵素をグルタルアルデヒドによって活性化されたPEIと架橋して、固定化酵素凝集体を形成するか、又はトランスアミナーゼ変異体と、補因子によって活性化されたPEIとをグルタルアルデヒドを介して架橋して、固定化酵素凝集体を形成することを含む。
【0023】
さらに、当該生産方法においてトランスアミナーゼ変異体を固定化するステップは、トランスアミナーゼ変異体とキャリアとを連結して、固定化酵素を形成することを含み、好ましくは、キャリアが架橋ポリマー樹脂球であり、好ましくは、樹脂球は、マクロポーラス型吸着樹脂球、アミノ基型樹脂球又はエポキシ型樹脂球を含み、好ましくは、マクロポーラス型吸着樹脂球のマトリックスは、官能基を有さないポリスチレンであり、より好ましくは、マクロポーラス型吸着樹脂球は、NKA9、LXEP120、AB-8、ECR8806、XAD-7又はD3520を含むが、これらに限定されず、好ましくは、アミノ基型樹脂球は、アミノ官能基を有する架橋ポリマー樹脂球であり、より好ましくは、アミノ基型樹脂球の官能基は、C2又はC6長さの炭素鎖アームを有するアミノ官能基であり、より好ましくは、アミノ基型樹脂球は、ポリメタクリレート、ポリスチレン樹脂又はメタクリル酸エステルとスチレンとの共重合体の樹脂球を含み、より好ましくは、アミノ基型樹脂球は、LifetechTMECR8309、LifetechTMECR8409、SepliteLX1000HA又はSepliteLXEPHAを含み、より好ましくは、エポキシ型樹脂球は、エポキシ官能基を有するポリマー樹脂球であり、より好ましくは、エポキシ型樹脂球は、C2~C8長さアームのエポキシ官能基を有し、より好ましくは、エポキシ型樹脂球は、エポキシ官能基を有するポリメタクリレート、ポリスチレン樹脂又はメタクリル酸エステルとスチレンとの共重合体の樹脂を含み、より好ましくは、エポキシ型樹脂球は、SepliteLXHFA001又はLifetechTMECR8285を含む。
【0024】
さらに、当該生産方法においてトランスアミナーゼ変異体を固定化するステップは、トランスアミナーゼ変異体とキャリアとを親和吸着によって親和固定化酵素に形成することを含み、好ましくは、トランスアミナーゼ変異体とキャリアとを共培養して、親和固定化酵素を得、好ましくは、トランスアミナーゼ変異体は複数のHis-タグを有し、好ましくは、キャリアがポリメタクリル酸マトリックスの樹脂球であり、より好ましくは、樹脂球は、NTA又はIDAリガンドを含み、より好ましくは、樹脂球は、末端に金属イオンリガンドがキレートされ、さらに好ましくは、金属イオンリガンドはNi2+、Co2+、Cu2+又はFe3+を含み、さらに好ましくは、キャリアはIMAC-Ni又はMIDA-Niを含み、さらに好ましくは、キャリアは、Bio-Rad ProfinityTMIMAC Resin、Purolite ChromaliteTMMIDA/M/Ni、Purolite ChromaliteTMMIDA/M/Co、Purolite ChromaliteTMMIDA/M/Cu又はPurolite ChromaliteTMMIDA/M/Feを含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明の技術的解決手段を適用して、指向進化・スクリーニングによって得られた、活性、安定性、温度、pH及び有機溶媒に対する耐性が向上した変異体により、生産における酵素使用量が低下しただけでなく、各種類の固定化酵素に製造する可能性も大きく向上した。上記指向進化後のトランスアミナーゼを固定化(自己架橋又はキャリアと共有結合)することにより、固定化トランスアミナーゼの水相反応及び有機相反応への適用が実現され、酵素と反応系との分離を容易にし、反応後処理過程における酵素タンパク質の残留による乳化現象を低減するとともに、固定化トランスアミナーゼ変異体は、様々な極端環境に耐え得ることができ、活性の損失が小さく、繰り返し使用回数が多く、空時収量が高く、工業化の連続的なアミノ基転移反応に適する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
なお、本願における実施例及び実施例の特徴は、矛盾しない限り、互いに組み合わせることができ、以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0027】
名詞解釈:
固定化酵素とは、一定の空間範囲内で、その触媒作用を繰り返して連続的に使用できる酵素をいう。通常、酵素触媒反応は、水溶液中で行われるが、固定化酵素は、水溶性酵素を、水に溶解しないが、依然として酵素活性を有する状態になるように物理方法又は化学方法で処理したものである。酵素は、固定化された後、安定性が増すのが一般的で、反応系からの分離が容易で、制御が容易で、複数回の使用が可能で、輸送や保存が容易であるため、自動化生産に有利であるが、活性が低下して、使用範囲が小さくなる。
【0028】
部位特異的突然変異(site-directed mutagenesis又はsite-specific mutagenesis)とは、ターゲットDNA断片の指定された部位に特定の塩基対を導入する方法をいう。遺伝子の特定部位のヌクレオチド配列を変更することにより、コードされるアミノ酸配列を変更し、ある(一部の)アミノ酸残基のタンパク質の構造及び機能に対する影響の研究によく使用される。酵素の合理的設計において、部位特異的突然変異方法を用いて触媒活性、基質の特異性及び/又は安定性が向上した突然変異酵素をスクリーニングすることができる。
【0029】
飽和突然変異は、ターゲットタンパク質のコード遺伝子を改変することにより、標的部位のアミノ酸がそれぞれ他の19種のアミノ酸によって置換された変異体を短時間内で取得する方法である。この方法は、タンパク質を指向改変する強力なツールであるだけでなく、タンパク質の構造-機能関係を研究する重要な手段でもある。飽和突然変異は、単一部位突然変異よりも理想的な進化体を得ることができる場合がしばしばある。部位特異的突然変異方法で解決できないこれらの問題は、飽和突然変異方法が得意とする独特な点である。
【0030】
活力回収とは、固定化酵素の総活力と、固定化のための酵素の総活力との比をいう。酵素を固定化する際に、キャリアに結合されていない一部の酵素が常に存在し、酵素の活力回収の測定により、固定化の効果を決定でき、一般的な状況で活力回収は1未満である。
【0031】
空時収量(space-time yield、STY)とは、単位体積又は単位面積の機器が単位時間内に得るターゲット生成物の数量(又は投入される原料量)をいう。
【0032】
以下、実験を参照して、本願の技術的解決手段及び技術効果について説明する。
【0033】
一、酵素活性及び温度、pH、有機試薬耐性が向上した変異体のスクリーニング
本解決手段は、TA-Cv-1(R416T+T7C+S47C+R405E+K90G+A95P+K304D+Q380L+I297L、CN108384767B、配列番号1で示されるような配列)をテンプレートとして、指向進化の方法により、TA-Cv-1の活力、温度や有機溶媒に対する耐性を一層向上させ、固定化後に触媒反応によりよく適用するようにした。
【0034】
配列番号1の配列は、次のようである。
【化4】
【0035】
TA-Cv-1をテンプレートとし、部位特異的突然変異プライマーを設計して、8つの部位に対して部位特異的突然変異(F22M、M56A、M56G、M56G、W60Y、F89V、Y168A、I262L、V423L、V423I、V379W、418W)を行った。タンパク質構造の分析により、部位V379及びC418は、酵素安定性を向上させる重要な部位であり、この2つの部位に対して飽和突然変異を行うことに重点を置き、飽和突然変異プライマーの配列を表1に示した。
【表1】
【0036】
プラスミドPCR全体により完全な線状断片を取得し、上記PCR生成物をDpn Iにより消化して出発遺伝子の親テンプレートを除去した後、大腸菌BL21(DE3)に形質転換して、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB培養皿に塗り、37℃で一晩培養した。部位特異的突然変異では、遺伝子シークエンシングを用いて突然変異部位を決定し、飽和突然変異では、ハイスループットでスクリーニングしてから遺伝子シークエンシングによって突然変異部位を決定し、部位特異的突然変異手段を利用して、pET-22b(+)を発現キャリアとして、ターゲット遺伝子を持つ突然変異プラスミドを取得した。突然変異プラスミドを大腸菌細胞内に形質転換し、トランスアミナーゼが発現するように誘導する最適条件は、25℃、0.1mMのIPTGで一晩誘導することである。超音波で細胞を破砕する方法で粗酵素を取得した。
【0037】
50~60℃、pH10、50%~70%DMSO又は40%MeOHの極端な環境で、突然変異株が発現した酵素液を1h処理した後、基質1(N-Boc-3-ピペリドン)又は基質2(N-Cbz-3-ピロリドン)を加え、引き続きこの条件で16h反応させた後、形質転換率を検出し、この方式で温度、pH及び有機溶媒に対する耐性が向上した変異体をスクリーニングした。突然変異部位のW60Y、Y168A、V379W、V379L、V379M、C418Q、C418Wにおける変異体の、50℃、pH10、50%DMSOの環境に対する耐性は、親よりも1.05~1.2倍向上し、60℃、pH10、60%DMSO環境に対する耐性は、親よりも1.3倍~2.5倍向上し、60℃、pH10、70%DMSOの環境に対する耐性は、親よりも3.3倍~4.2倍向上し、60℃、pH10、40%MeOHの環境に対する耐性は、親よりも2.7倍~4倍向上した。
【化5】
【0038】
本研究では、安定性及び耐性がよりよい酵素に一層進化させるために、トランスアミナーゼの安定性及び耐性に対して肯定的な効果を有するこれらの部位に対して複数部位の組合せ突然変異を行い、指向スクリーニング方法により安定性及び耐性が一層向上した複数部位変異体を取得する。組合せ突然変異を行う突然変異部位の例は、W60Y+Y168A、W60Y+V379W、W60Y+V379L、W60Y+V379M、W60Y+C418Q、W60Y+C418W、Y168A+V379W、Y168A+V379L、Y168A+V379M、Y168A+C418Q、Y168A+C418W、V379W+C418Q、V379W+C418W、V379L+C418Q、V379L+C418W、V379M+C418Q、V379M+C418W、W60Y+Y168A+V379W、W60Y+Y168A+V379L、W60Y+Y168A+V379M、W60Y+Y168A+C418Q、W60Y+Y168A+C418W、W60Y+V379W+C418Q、W60Y+V379W+C418W、W60Y+V379L+C418Q、W60Y+V379L+C418W、W60Y+V379M+C418Q、W60Y+V379M+C418W、Y168A+V379W+C418Q、Y168A+V379W+C418W、Y168A+V379L+C418Q、Y168A+V379L+C418W、Y168A+V379M+C418Q、Y168A+V379M+C418W、W60Y+Y168A+V379W+C418Q、W60Y+Y168A+V379L+C418Q、W60Y+Y168A+V379M+C418Q、W60Y+Y168A+V379W+C418W、W60Y+Y168A+V379L+C418W又はW60Y+Y168A+V379M+C418Wである。
【0039】
本願の変異体は、さらに、上記突然変異部位を有し、且つ突然変異が発生したアミノ酸配列と85%以上(好ましくは90%以上、又は95%以上、又は99%以上、又は99.95%以上、又はさらに99.99%以上)の相同性を有する変異体であってもよく、同時にトランスアミナーゼ活性を有する。より好ましくは、これらの変異体は、いずれもChromobacterium violaceumに由来し、且つトランスアミナーゼ活性を有するものである。
【0040】
突然変異プラスミドを大腸菌細胞内に形質転換し、25℃、0.1mMのIPTGで一晩誘導するのが、トランスアミナーゼの発現を誘導する最適条件である。超音波で細胞を破砕する方法により粗酵素を取得した。
【0041】
70℃、pH10、45%MeOHを含有する環境などのより極端な条件で、酵素液を1h処理した後、基質1を加え、引き続きこの条件で、16hを反応させ、形質転換率を検出した。組合せ突然変異は、この条件で処理された後、活性が親よりも2~6倍向上した。
【0042】
二、トランスアミナーゼの架橋酵素凝集体(CLEAs)の調製
架橋法により固定化されたトランスアミナーゼは、(親TA-Cv-1、及び当該親を基に得られた変異体C418Q+V379L、C418Q+V379M)から選択され、酵素液を調製する緩衝液に0.4~1mg/mLのPLPを含有し、酵素液のpHは7.0~8.0であった。酵素タンパク質沈殿を調製するために使用された沈殿剤はエタノール、硫酸アンモニウム、アセトニトリルであった。酵素タンパク質の架橋凝集体を調製し、使用される架橋剤は25%グルタルアルデヒド溶液又はポリエチレンイミンで処理した後のグルタルアルデヒド(CN111235140B)であり、グルタルアルデヒドの最終濃度は、100mM~500mMであった。調製した架橋酵素凝集体は、ろ過して得た水含有架橋酵素を直接使用して水相で触媒反応を行うか、又は水含有架橋酵素を凍結乾燥して乾燥粉末を得てから適用することができ、凍結乾燥粉末は、有機溶媒相中の反応にも適用できる。
【0043】
架橋酵素凝集体の活力回収は80%以上に達し得る。架橋酵素凝集体を1回使用した後、遠心分離又はろ過等の方式により回収してから使用することができ、活力損失<5%の範囲内で繰り返し使用回数を統計し、変異体の架橋酵素凝集体を水相反応に適用する場合、9~30回繰り返して使用することができ、活性損失<5%であり、100%有機相溶媒中で反応させる場合、19~35回繰り返して使用することができる。
【0044】
当該トランスアミナーゼの架橋酵素凝集体は、従来技術に比べ、活性、安定性及び機械的強度がある程度向上し、充填層の連続反応、特にキャリアフリー固定化に使用できる。
【0045】
三、トランスアミナーゼの固定化方法及び活性
1.トランスアミナーゼの吸着固定化方法
本研究の吸着固定化方法に使用される樹脂キャリアは、マクロポーラス型吸着樹脂キャリアである。本研究の吸着固定化方法に使用されるキャリア情報を表2に列挙した。
【表2】
【0046】
本研究の共有結合法によって固定化されたトランスアミナーゼは、(変異体W60Y、C418Q、C418Q+V379L、C418Q+V379M)から選択され、吸着固定化され、酵素液とキャリアとを直接混合し、20℃、80rpmの低速で一晩撹拌し、ろ過して沈殿を収集し、沈殿を緩衝液で洗った。
【0047】
2.トランスアミナーゼの共有固定化方法
本研究の共有固定化方法に使用される樹脂キャリアは、アミノ基型キャリア及びエポキシ型キャリアを含む。本研究の共有固定化方法に使用されるキャリア情報を表3に列挙した。
【表3】
【0048】
上記アミノ基型キャリアは、ピューロライト(Purolite)のLifetechTMECR8309、LifetechTMECR8409、藍暁科技(SUNRESIN NEW MATERIALS CO.,LTD)のSepliteLX1000HA又はSepliteLXEPHAを含むが、これらに限定されず、エポキシ型キャリアは、藍暁科技のSepliteLXHFA001又はピューロライトのLifetechTMECR8285を含むが、これらに限定されない。
【0049】
本研究では、トランスアミナーゼを、エポキシ官能基を有する樹脂と直接共有結合を介して結合させ、グルタルアルデヒドによって活性化された、短鎖又は長鎖アミノ官能基を有する樹脂と共有結合を介して結合させた。
【0050】
本研究の共有結合法により固定化されたトランスアミナーゼは、(親TA-Cv-1、変異体W60Y、C418Q、C418Q+V379L、C418Q+V379M)から選択され、酵素液の調製に使用される緩衝液に0.4~1mg/mLのPLPを含有し、緩衝液のpHは7.0~8.0であり、緩衝塩はPB緩衝液、NaHPO-NaHPO、Tris-Cl又はホウ酸-水酸化ナトリウムであった。
【0051】
アミノ基型キャリアに共有固定化し、まず、キャリアをグルタルアルデヒドで活性化させてから、酵素液を加え、20℃で一晩培養し、ろ過して沈殿を収集し、沈殿を緩衝液で洗った。
【0052】
エポキシ型キャリアに共有固定化し、酵素液とキャリアとを直接混合し、20℃で一晩培養し、その後20h静置し、ろ過して沈殿を収集し、沈殿を緩衝液で洗った。
【0053】
3.トランスアミナーゼの親和固定化方法
本研究の親和固定化方法に使用されるキャリアは、ポリマーフィルムで修飾されるとともに、末端に金属イオンがキレートされている樹脂である。キレートされる金属イオンは、Ni2+、Co2+、Fe3+を含むが、これらに限定されない。本研究の親和固定化方法に使用されるキャリア情報を表4に列挙した。
【表4】
【0054】
上記IMAC-Niキャリアは、バイオ・ラッド(Bio-Rad)のProfinityTMIMAC Resin(https://www.bio-rad.com/zh-cn/product/profinity-imac-resin?ID=e54ab03c-d281-4e6b-aa0d-193b7737626d)を含むが、これらに限定されず、MIDA-Niキャリアは、ピューロライトのChromaliteTMMIDA/M/Ni、MIDA/M/Co、MIDA/M/Cu、MIDA/M/Fe(https://www.purolite.com/ls-product/spectrachrom-kit)を含むが、これらに限定されない。
【0055】
本研究の親和結合法によって固定化されたトランスアミナーゼは、(親TA-Cv-1、変異体W60Y、C418Q、C418Q+V379L、C418Q+V379M)から選択される。キャリアに、0.4mg/mLのPLPを含有するリン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.0)を5mL加えるとともに、酵素を0.1g加え、20℃、80rpmの低速で40~60min撹拌した。上清を捨て、沈殿を緩衝液で3~4回洗浄した。
【0056】
調製された固定化酵素を、窒素ガスで乾燥、真空乾燥、冷凍乾燥等の方式で乾燥処理することができる。
【0057】
4.固定化トランスアミナーゼの活性
本研究は、トランスアミナーゼを共有結合又は親和吸着の方式で上記キャリアに固定化し、短鎖アミノ基型キャリアに固定化すると、活力回収は50%~95%であり、長鎖アミノ基型キャリアに固定化すると、活力回収は90%~100%であり、エポキシ型キャリアに固定化すると、活力回収は80%~100%であった。親和キャリアに固定化すると、活力回収は90%~100%であった。吸着キャリアに固定化して、有機相反応で活力を検証すると、活力回収>100%であった。
【0058】
固定化酵素は、ろ過又は注射器での液体吸引等の方式により回収され、繰り返して使用でき、活力損失<5%の範囲内で繰り返し使用回数を統計し、短鎖アミノ基型キャリアに固定化すると、一部の酵素は18回繰り返して使用でき、長鎖アミノ基型キャリアに固定化すると、一部の変異体に対する酵素を25回まで繰り返して使用でき、エポキシ型キャリアに固定化すると、一部の酵素を20回繰り返して使用できる。親和キャリアに固定化すると、7~20回繰り返して使用でき、100%の有機溶媒中で触媒機能を果たすことができ、10~20回繰り返して使用し、活性損失<5%であった。吸着キャリアに固定化すると、100%の有機溶媒中で反応するとき、9~20回繰り返して使用できる。
【0059】
以下、具体的な実施例を参照して本願の有益な効果についてさらに説明する。
【0060】
(実施例1)
変異体の50℃、pH10、50%のDMSOに対する耐性検出
粗酵素を50℃、pH10、DMSOの濃度が50%である環境で1h処理し、その後10mLの反応瓶に基質2を0.1g加え、4eq塩酸イソプロピルアミン及び0.6~1mgのPLP(ピリドキサール-5’-リン酸)を加えてから、上記処理後の酵素を4mg加え、50℃、pH10、DMSOの濃度が50%である環境で16h恒温撹拌した。HPLCによって系の形質転換率を検出し、変異体の反応データを表5に示した。
【表5】
【0061】
(実施例2)
変異体の60℃、pH10、60%のDMSOに対する耐性検出
粗酵素を60℃、pH10、60%のDMSO濃度の環境で1h処理し、その後10mLの反応瓶に基質2を0.1g加え、4eq塩酸イソプロピルアミン及び0.6mgのPLP(ピリドキサール-5’-リン酸)を加えてから、上記処理後の酵素を5mg加え、引き続き60℃、pH10、60%MeOH濃度の環境で16h恒温撹拌した。HPLCによって系の形質転換率を検出し、変異体の反応データを表6に示した。
【表6】
【0062】
(実施例3)
変異体の60℃、pH10、70%のDMSOに対する耐性検出
粗酵素を60℃、pH10、70%DMSO濃度の環境で1h処理し、その後10mLの反応瓶に基質2を0.1g加え、4eq塩酸イソプロピルアミン及び0.6~1mgのPLP(ピリドキサール-5’-リン酸)を加えてから、上記処理後の酵素を10mg加え、続いて60℃、pH10、70%のDMSO濃度の環境で16h恒温撹拌した。HPLCによって系の形質転換率を検出し、変異体の反応データを表7に示した。
【表7】
【0063】
(実施例4)
変異体の60℃、pH10、40%メタノールに対する耐性検出
粗酵素を60℃、pH10、40%MeOH濃度の環境で1h処理し、その後10mLの反応瓶に基質1を0.1g加え、4eq塩酸イソプロピルアミン及び0.6~1mgのPLP(ピリドキサール-5’-リン酸)を加えてから、上記処理後の酵素を10mg加え、引き続き60℃、pH10、40%MeOH濃度の環境で16h恒温撹拌した。HPLCによって系の形質転換率を検出し、変異体の反応データを表8に示した。
【表8】
【0064】
(実施例5)
変異体の70℃、pH10、45%メタノールに対する耐性検出
粗酵素を70℃、pH10、45%MeOH濃度の環境で1h処理し、その後10mLの反応瓶に基質1を0.1g加え、4eq塩酸イソプロピルアミン及び0.6~1mgのPLP(ピリドキサール-5’-リン酸)を加えてから、上記処理後の酵素を10mg加え、引き続き70℃、pH10、45%MeOH濃度の環境で16h恒温撹拌した。HPLCによって系の形質転換率を検出し、変異体の反応データを表9に示した。
【表9】
【0065】
(実施例6)
架橋固定化
0.1gの酵素粉末を2mLのリン酸緩衝液(0.1MのPB、pH7.0~8.0、0.4~1mg/mLのPLP(ピリドキサール-5’-リン酸)を含有)で溶解し、氷水浴で撹拌しながらエタノールを10mL、又はアセトニトリルを7mL、又はPEG6000固体(最終濃度が20~60%)又は硫酸アンモニウム(最終濃度が40~70%)をゆっくり加えて沈殿剤とし、添加が終了すると、40~60min撹拌してから、25%のグルタルアルデヒド溶液(最終濃度が100~500mM)を加え、氷水浴で30~40min撹拌した後、遠心分離するか又はろ過し、沈殿をリン酸緩衝液で3回洗浄した後、4℃で保存し、水相反応に直接適用できる。又は、架橋酵素凝集体を凍結乾燥し、凍結乾燥して得た架橋酵素凝集体の凍結乾燥粉末は水相及び有機相反応に適用できる。
【0066】
(実施例7)
グルタルアルデヒドによって活性化されたPEI架橋固定化酵素凝集体の調製(GA:Glutaraldehyde、PEI:Polyethylene imine、GP:GA activated PEI、グルタルアルデヒドによって活性化されたPEI)
活性化されたPEI溶液の調製(GP):100mLの水溶液にグルタルアルデヒドを2g及びPEI(3-70KDa)を4g加え、pH8.0で3h撹拌した。
【0067】
固定化:10mLの酵素(酵素タンパク質の含有量は100~200mg/mLであり、対応して1~5mg/mLの補因子を含有する)を丸底フラスコに入れ、5~10℃に冷却した後、10min混合した。硫酸アンモニウム(40%~70%)、エタノール(50%~90%)又はPEG(20%~60%)等の沈殿剤をゆっくり加え、30~60min混合して、沈殿酵素を得た。沈殿酵素に活性化されたPEI溶液を15mL滴下して、10~30min混合し、1~2h静置した後に遠心分離した。不溶性の沈殿物を収集して、30メッシュの篩にかけた。0.1MのPB(pH7.5)で洗浄した。
【0068】
(実施例8)
補因子によって活性化されたPEI架橋固定化酵素凝集体の調製
補因子によって活性化されたPEI溶液の調製:PEI(Mw=3-70KDa)を水でPEIの最終濃度が1g/mL~2g/mLになるまで希釈し、pH値は7.0~11.0であった。酵素のニーズに応じて、PEI溶液に1~5mg/mLの補因子PLPを加え、室温で30~60min混合した。
【0069】
固定化:4~10℃で、5mLの酵素液(酵素タンパク質の含有量は30~80mg/mLであり、対応して補因子も含有する)に補因子によって活性化されたPEI溶液を7.5mL滴下し、30~60min混合した後、架橋剤グルタルアルデヒド又はPEGで修飾したグルタルアルデヒドを加えて、グルタルアルデヒドの最終濃度が0.2~1g/mLになるようにした。30~60min混合した後、遠心分離して、不溶性の沈殿物を収集し、その後30メッシュの篩にかけた。続いて0.1MのPB(pH7.0~8.0)で洗浄した。
【0070】
(実施例9)
架橋酵素凝集体の水相反応での活性検証
10mLの反応瓶に、4eq塩酸イソプロピルアミン及び0.5mgのPLP(ピリドキサール-5’-リン酸)を加え、反応液の最終体積が1mLになるまで0.1MのPB7.0を追加してから、酵素を3mg又は3mgの酵素で調製した架橋酵素凝集体ウェット酵素又は架橋酵素凝集体を加え、45℃で16h撹拌した。HPLCによって系の形質転換率を検出し、反応データを表10に示した。
【表10】
【0071】
(実施例10)
架橋酵素の有機相反応での活性検証
10mLの反応瓶に、水飽和メチル‐ターシャリ‐ブチルエーテルを1mL加えてから、基質1を100mg及び4eqイソプロピルアミンを加え、その後、100mgの酵素粉末で調製した架橋酵素凝集体の凍結乾燥粉末を加え、30℃で16h撹拌した。HPLCによって系の形質転換率を検出し、反応データを表11に示した。
【表11】
【0072】
(実施例11)
トランスアミナーゼの吸着固定化方法
キャリアに0.4mg/mLのPLPを含有するPB緩衝液(100mM、pH7.0)を4mL加えるとともに、酵素を0.1g加え、20℃、80rpmの低速で一晩撹拌した。上清を捨て、沈殿を緩衝液で3~4回洗浄し、上清を捨て、沈殿を窒素ガスで乾燥させるか、又は冷凍乾燥法で乾燥させ、4℃で保存した。
【0073】
(実施例12)
トランスアミナーゼを吸着固定化する酵素の有機相反応での活性検証
10mLの反応瓶に、水飽和メチル‐ターシャリ‐ブチルエーテルを1mL加えてから、基質1を100mg及び4eqイソプロピルアミンを加え、その後、50mgの酵素で調製した固定化トランスアミナーゼを加え、30℃で16h撹拌した。HPLCによって系の形質転換率を検出し、反応データを表12に示した。
【表12】
【0074】
架橋酵素及びキャリア共有固定化酵素に比べ、吸着固定化酵素の活力回収が高く、有機相で反応し、活性及び安定性がより高い。
【0075】
(実施例13)
アミノ基型キャリアに固定化されたトランスアミナーゼ
キャリアの活性化:1gのキャリアを20mMのイオン強度が低い緩衝液で1~2回洗浄し、上清液を捨て、2%のグルタルアルデヒド(20mMのイオン強度が低い緩衝液で試薬グレードの25%グルタルアルデヒドを希釈して調製)4mLを加え、20℃、80rpmで1h活性化させ、20mMの緩衝液で1~2回洗浄して、上清を捨てた。
【0076】
固定化:活性化済みのキャリアに0.4mg/mLのPLPを含有するPB緩衝液(20mM、pH7.0)を4mL加えるとともに、酵素を0.1~0.2g加え、20℃、80rpmの低速で一晩撹拌した。上清を捨て、沈殿を緩衝液で3~4回洗浄し、上清を捨て、沈殿を窒素ガスで乾燥させるか、又は冷凍乾燥法で乾燥させ、4℃で保存した。
【0077】
(実施例14)
エポキシ型キャリアに固定化されたトランスアミナーゼ
1gのキャリアを100mMのPB緩衝液で1~2回洗浄し、上清液を捨て、Buffer(100mMのPB、pH7.0、1MのNaClを含有)を4mL加えるとともに、酵素を0.1g~0.2g加え、20℃、80rpmの低速で一晩(18~20h)撹拌してから、4℃で20h静置した。上清を捨て、沈殿をBufferで3~4回洗浄し、窒素ガスで乾燥させ、4℃で保存した。
【0078】
(実施例15)
共有固定化トランスアミナーゼの水相反応活性の検証
10mLの反応瓶に、DMSO(DMSOの最終濃度は50%)を0.5mL加え、0.1gの基質1を溶解して、4eq塩酸イソプロピルアミン及び1.0mgのPLP(ピリドキサール-5’-リン酸)を加え、0.1MのPB7.0を反応液の最終体積が1mLになるまで追加してから、酵素を3mg又は3mgの酵素で調製した固定化トランスアミナーゼを加え、45℃で16h撹拌した。HPLCによって系の形質転換率を検出し、反応データを表13に示した。
【表13】
【0079】
(実施例16)
共有固定化トランスアミナーゼを35%~45%メタノール水溶液中で反応させる活性の検証
10mLの反応瓶に、メタノールを0.35~0.45mL加え、基質1を0.1g溶解し、4eq塩酸イソプロピルアミン及び1.0mgのPLP(ピリドキサール-5’-リン酸)を加え、0.1MのPB7.0を反応液の最終体積が1mLになるまで追加してから、酵素を10mg又は10mgの酵素で調製した固定化トランスアミナーゼを加え、30℃で16h撹拌した。HPLCによって系の形質転換率を検出し、反応データを表14に示した。
【表14】
【0080】
(実施例17)
共有固定化トランスアミナーゼの有機相反応活性の検証
10mLの反応瓶に、水飽和酢酸イソプロピルを1mL加えてから、基質1を100mg及び4eqイソプロピルアミンを加え、その後、100mgの酵素で調製した固定化トランスアミナーゼを加え、30℃で16h撹拌した。HPLCによって系の形質転換率を検出し、反応データを表15に示した。
【表15】
【0081】
(実施例18)
親和キャリア固定化
キャリアに0.4mg/mLのPLPを含有するPB緩衝液(50mM、pH7.0)5mL加えるとともに、酵素を0.1g加え、20℃、80rpmの低速で一晩撹拌した。上清を捨て、沈殿を緩衝液で3~4回洗浄し、上清を捨て、沈殿を窒素ガスで乾燥させるか、又は冷凍乾燥法で乾燥させ、4℃で保存した。
【0082】
(実施例19)
親和固定化酵素の水相反応活性の検証
10mLの反応瓶に、DMSO(DMSOの最終濃度は60%である)を0.6mL加え、基質1を0.1g溶解して、4eq塩酸イソプロピルアミン及び1.0mgのPLP(ピリドキサール-5’-リン酸)を加え、0.1MのPB7.0を反応液の最終体積が1mLになるまで追加してから、酵素を10mg又は10mgの酵素で調製した固定化トランスアミナーゼを加え、30℃で16h撹拌した。HPLCによって系の形質転換率を検出し、反応データを表16に示した。
【表16】
【0083】
(実施例20)
親和固定化トランスアミナーゼの有機相反応活性の検証
10mLの反応瓶に、水飽和メチル‐ターシャリ‐ブチルエーテルを1mL加えてから、基質1を100mg及び4eqイソプロピルアミンを加え、その後、100mgの酵素で調製した固定化トランスアミナーゼを加え、30℃で16h撹拌した。HPLCによって系の形質転換率を検出し、反応データを表17に示した。
【表17】
【0084】
(実施例21)
固定化酵素トランスアミナーゼ充填層連続反応
382gの変異体C418Q+V379MがLX1000HAキャリアに固定化された固定化酵素を反応器に充填し、カラム体積(CV)は750mLであり、プランジャーポンプで2CVの緩衝液(0.1MのPB7.0、5mg/mLのPLPを含有、2Mの塩酸イソプロピルアミン)を充填層に注入した。調製した反応液(0.5Mの基質1、2Mの塩酸イソプロピルアミン、5mg/mLのPLP、40%MeOH)をプランジャーポンプで充填層に注入し、37℃の水浴に約200min保持し、形質転換率>98%であり、STY(空時収量)は、3.6mol/L/dayに達した。400h連続して操作し、形質転換率は低下しなかった。
【0085】
(実施例22)
グルタルアルデヒドによって活性化されたPEI架橋固定化酵素充填層連続反応
76gの変異体C418Q+V379MがLX1000HAキャリアに固定化された固定化酵素を反応器に充填し、カラム体積(CV)は150mLであり、プランジャーポンプで2CVの緩衝液(0.1MのPB7.0、5mg/mLのPLPを含有、2Mの塩酸イソプロピルアミン)を充填層に注入した。調製した反応液(0.5Mの基質1、2Mの塩酸イソプロピルアミン、5mg/mLのPLP、40%MeOH)をプランジャーポンプで充填層に注入し、37℃の水浴で約100min保持し、形質転換率>98%であり、STY(空時収量)は7.3mol/L/dayに達した。400h連続して操作し、形質転換率が低下しなかった。
【0086】
以上の説明から分かるように、本発明の上記実施例により下記のような技術効果が実現された。指向進化・スクリーニングによって得られた、活性、安定性、温度、pH及び有機溶媒に対する耐性が向上した変異体により、生産における酵素使用量が低下しただけでなく、各種類の固定化酵素に調製する可能性も大幅に向上した。そして、本願は、上記指向進化後のトランスアミナーゼを固定化(自己架橋又はキャリアとの共有結合)することにより、固定化トランスアミナーゼの水相反応及び有機相反応への適用が実現され、酵素と反応系との分離を容易にし、反応後処理過程における酵素タンパク質の残留による乳化現象を低減するとともに、固定化トランスアミナーゼ変異体は、様々な極端環境に耐え得ることができ、活性の損失が小さく、繰り返し使用回数が多く、それにより、基質1及び基質2の連続的なアミノ基転移反応が実現された。
【0087】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとって、本発明は様々な修正及び変更が可能である。本発明の精神と原則内で行われた任意の修正、等価置換、改良等は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【配列表】
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【国際調査報告】