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特表2024-534664電気ヒーターの電気特性を計算する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電気ヒーターの電気特性を計算する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
H05B3/00 310C
H05B3/00 365K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519542
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 US2022045128
(87)【国際公開番号】W WO2023055863
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/250,655
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502137880
【氏名又は名称】ワトロー エレクトリック マニュファクチュアリング カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】イェンダー, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ブリートロウ, スタントン, エイチ.
【テーマコード(参考)】
3K058
【Fターム(参考)】
3K058AA42
3K058CA03
3K058CA04
3K058CB24
3K058CB32
(57)【要約】
抵抗加熱素子を含むヒーターの温度を制御する方法は、ヒーターに電気的に接続されているセンサー回路のアナログ・デジタル・コンバーター(ADC)回路からのデータに基づいて電圧カウントおよび電流カウントを測定することを含む。この方法は、シフトゲイン相関に基づいて複数のダイナミックゲインレベルの中からADCの1つ又は複数のダイナミックゲインレベルを選択することと、電圧カウント、電流カウント、及び1つ又は複数のダイナミックゲインレベルに基づいて抵抗加熱素子の抵抗値を求めることと、抵抗値に基づいてヒーターへの電力を制御することとを含む。
【選択図】1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗加熱素子を含むヒーターの温度を制御する方法であって、
ヒーターに電気的に接続されたセンサー回路のアナログ・デジタル・コンバーター(ADC)回路からのデータに基づいて電圧カウントおよび電流カウントを測定することと、
シフトゲイン相関に基づいて複数のダイナミックゲインレベルの中から前記ADCの1つ又は複数のダイナミックゲインレベルを選択することと、
前記電圧カウント、前記電流カウント、及び前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルに基づいて前記抵抗加熱素子の抵抗値を求めることと、
前記抵抗値に基づいて前記ヒーターへの電力を制御することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルは、電圧ダイナミックゲインレベル、電流ダイナミックゲインレベル、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電圧カウントと前記電圧ダイナミックゲインレベルとの比に基づいて電圧値を求めることと、
前記電流カウントと前記電流ダイナミックゲインレベルとの比に基づいて電流値を求めることと、
をさらに含み、
前記抵抗加熱素子の前記抵抗値が、前記電圧値と前記電流値とにさらに基づいている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記シフトゲイン相関に基づいて前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルを選択することがさらに、
前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電圧ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電圧カウントが電圧シフトダウン閾値よりも大きいか否かを判定することと、
前記電圧カウントが前記電圧シフトダウン閾値よりも大きいことに応じて、前記所定の電圧ダイナミックゲインレベルよりも小さい前記電圧ダイナミックゲインレベルを前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルとして選択することと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記シフトゲイン相関に基づいて前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルを選択することがさらに、
前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電圧ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電圧カウントが電圧シフトアップ閾値よりも小さいか否かを判定することと、
前記電圧カウントが前記電圧シフトアップ閾値よりも小さいことに応じて、前記所定の電圧ダイナミックゲインレベルよりも大きい前記電圧ダイナミックゲインレベルを前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルとして選択することと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記シフトゲイン相関に基づいて前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルを選択することがさらに、
前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電流ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電流カウントが電流シフトダウン閾値よりも大きいか否かを判定することと、
前記電流カウントが前記電流シフトダウン閾値よりも大きいことに応じて、前記所定の電流ダイナミックゲインレベルよりも小さい前記電流ダイナミックゲインレベルを前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルとして選択することと、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記シフトゲイン相関に基づいて前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルを選択することがさらに、
前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電流ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電流カウントが電流シフトアップ閾値よりも小さいか否かを判定することと、
前記電流カウントが前記電流シフトアップ閾値よりも小さいことに応じて、前記所定の電流ダイナミックゲインレベルよりも大きい前記電流ダイナミックゲインレベルを前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルとして選択すること、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒーターに電力が供給されていないときに、複数の電圧ヌルカウントおよび複数の電流ヌルカウントを求めることをさらに含み、前記抵抗値が、前記複数の電圧ヌルカウントおよび前記複数の電流ヌルカウントにさらに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の電圧ヌルカウントの各々が、前記複数のダイナミックゲインレベルのうちの1つに関連付けられており、
前記複数の電流ヌルカウントの各々が、前記複数のダイナミックゲインレベルのうちの1つに関連付けられている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記電圧カウントと、前記複数の電圧ヌルカウントのうちの所定の電圧ヌルカウントとの間の差に基づいて、電圧値を求めることと、
前記電流カウントと、前記複数の電流ヌルカウントのうちの所定の電流ヌルカウントとの間の差に基づいて、電流値を求めることと、
をさらに含み、
前記抵抗加熱素子の前記抵抗値が、前記電圧値および前記電流値にさらに基づいている、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
複数の電圧ドリフトカウントおよび複数の電流ドリフトカウントを求めることをさらに含み、前記抵抗値が、前記複数の電圧ドリフトカウントおよび前記複数の電流ドリフトカウントにさらに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
抵抗加熱素子を含むヒーターの温度を制御するためのシステムであって、
非一時的コンピュータ可読媒体に保存された命令を実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサを備え、
前記命令が、
ヒーターに電気的に接続されたセンサー回路のアナログ・デジタル・コンバーター(ADC)回路からデータを取得することと、
前記データに基づいて電圧カウントおよび電流カウントを測定することと、
シフトゲイン相関に基づいて、複数のダイナミックゲインレベルの中から前記ADCの電圧ダイナミックゲインレベルおよび電流ダイナミックゲインレベルを選択することと、
前記電圧カウント、前記電流カウント、前記電圧ダイナミックゲインレベル、および前記電流ダイナミックゲインレベルに基づいて、前記抵抗加熱素子の抵抗値を求めることと、
前記抵抗値に基づいて前記ヒーターへの電力を制御することと、
を含む、システム。
【請求項13】
前記命令はさらに、
前記電圧カウントと前記電圧ダイナミックゲインレベルとの比に基づいて電圧値を求めることと、
前記電流カウントと前記電流ダイナミックゲインレベルとの比に基づいて電流値を求めることと、
を含み、
前記抵抗加熱素子の前記抵抗値が、前記電圧値と前記電流値とにさらに基づいている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記シフトゲイン相関に基づいて前記電圧ダイナミックゲインレベルを選択するための前記命令が、
前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電圧ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電圧カウントが電圧シフトダウン閾値よりも大きいか否かを判定することと、
前記電圧カウントが前記電圧シフトダウン閾値よりも大きいことに応じて、前記所定の電圧ダイナミックゲインレベルよりも小さい前記電圧ダイナミックゲインレベルを選択することと、
をさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記シフトゲイン相関に基づいて前記電圧ダイナミックゲインレベルを選択するための前記命令が、
前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電圧ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電圧カウントが電圧シフトアップ閾値よりも小さいか否かを判定することと、
前記電圧カウントが前記電圧シフトアップ閾値よりも小さいことに応じて、前記所定の電圧ダイナミックゲインレベルよりも大きい前記電圧ダイナミックゲインレベルを選択することと、
をさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記シフトゲイン相関に基づいて前記電流ダイナミックゲインレベルを選択するための前記命令が、
前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電流ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電流カウントが電流シフトダウン閾値よりも大きいか否かを判定することと、
前記電流カウントが前記電流シフトダウン閾値よりも大きいことに応じて、前記所定の電流ダイナミックゲインレベルよりも小さい前記電流ダイナミックゲインレベルを選択することと、
をさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記シフトゲイン相関に基づいて前記電流ダイナミックゲインレベルを選択するための前記命令が、
前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電流ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電流カウントが電流シフトアップ閾値よりも小さいか否かを判定することと、
前記電流カウントが前記電流シフトアップ閾値よりも小さいことに応じて、前記所定の電流ダイナミックゲインレベルよりも大きい前記電流ダイナミックゲインレベルを選択することと、
をさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記命令が、前記ヒーターに電力が供給さていないときに、複数の電圧ヌルカウントおよび複数の電流ヌルカウントを求めることをさらに含み、前記抵抗値が、前記複数の電圧ヌルカウントおよび前記複数の電流ヌルカウントにさらに基づいている、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数の電圧ヌルカウントの各々が、前記複数のダイナミックゲインレベルのうちの1つに関連付けられ、
前記複数の電流ヌルカウントの各々が、前記複数のダイナミックゲインレベルのうちの1つに関連付けられている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記命令はさらに、
前記電圧カウントと、前記複数の電圧ヌルカウントのうちの所定の電圧ヌルカウントとの間の差に基づいて電圧値を求めることと、
前記電流カウントと、前記複数の電流ヌルカウントのうちの所定の電流ヌルカウントとの間の差に基づいて電流値を決定することと、
をさらに含み、
前記抵抗加熱素子の前記抵抗値が、前記電圧値および前記電流値にさらに基づいている、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記命令が、複数の電圧ドリフトカウントおよび複数の電流ドリフトカウントを求めることをさらに含み、前記抵抗値が、前記複数の電圧ドリフトカウントおよび前記複数の電流ドリフトカウントにさらに基づいている、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年9月30日に出願された米国仮出願63/250,655の優先権および利益を主張する。上記出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、電気ヒーターの電気特性の計算に関する。
【背景技術】
【0003】
ここでの記載は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものであり、先行技術を構成するものではない。
【0004】
熱システムは一般に、抵抗加熱素子を有するヒーターと、温度設定値で熱を発生させるためにヒーターへの電力を制御する制御システムとを含む。一応用例では、半導体プロセスシステムは、ペデスタルヒーターを有する熱システムを含み、ペデスタルヒーターは、セラミック基板を有する加熱プレートと、1つ又は複数の加熱ゾーンを画定する1つ又は複数の抵抗加熱素子とを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ある用途では、ヒーターは「2線式」ヒーターとすることができ、この場合、抵抗加熱素子は、加熱素子に動作可能に接続されたリード線が4本ではなく2本であり、ヒーターとして機能するとともに、温度センサーとしても機能する。ヒーターを制御するように構成された制御システムは、抵抗加熱素子の抵抗値に基づいて抵抗加熱素子の温度を求める。具体的には、制御システムは、電圧測定値および/または電流測定値に基づいて抵抗値を計算し、計算された抵抗値に基づいて抵抗加熱素子の温度を求める。一般的に、電圧と電流の測定値は、様々な温度設定値において抵抗値を正確に求めるために較正され、計算された抵抗値に基づいて温度を求めるために抵抗値と温度の相関データが使用される。しかし、特定の電力範囲または温度範囲では、正確な抵抗測定値、及びそれに対応する温度測定値を得ることが困難な場合がある。
【0006】
この欄は、本開示の一般的な要約を提供するものであり、その全範囲または全特徴を包括的に開示するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、抵抗加熱素子を含むヒーターの温度を制御する方法を提供する。この方法は、ヒーターに電気的に接続されたセンサー回路のアナログ・デジタル・コンバーター(ADC)回路からのデータに基づいて電圧カウントおよび電流カウントを測定することを含む。この方法は、シフトゲイン相関に基づいて、複数のダイナミックゲインレベルの中から前記ADCの1つ又は複数のダイナミックゲインレベルを選択することと、前記電圧カウント、前記電流カウント、及び前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルに基づいて、前記抵抗加熱素子の抵抗値を求めることと、前記抵抗値に基づいて前記ヒーターへの電力を制御することと、を含む。
【0008】
以下には、上記段落のヒーターの温度を制御する方法の変形例が含まれ、これらは個々に実施することもできるし、任意の組み合わせで実施することもできる。
【0009】
一形態においては、前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルは、電圧ダイナミックゲインレベル、電流ダイナミックゲインレベル、又はそれらの組み合わせを含む。一形態においては、本方法はさらに、前記電圧カウントと前記電圧ダイナミックゲインレベルとの比に基づいて電圧値を求めることと、前記電流カウントと前記電流ダイナミックゲインレベルとの比に基づいて電流値を求めることと、をさらに含み、前記抵抗加熱素子の前記抵抗値が、前記電圧値と前記電流値とにさらに基づいている。一形態においては、前記シフトゲイン相関に基づいて前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルを選択することがさらに、前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電圧ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電圧カウントが電圧シフトダウン閾値よりも大きいか否かを判定することと、前記電圧カウントが前記電圧シフトダウン閾値よりも大きいことに応じて、前記所定の電圧ダイナミックゲインレベルよりも小さい前記電圧ダイナミックゲインレベルを前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルとして選択することと、を含む。一形態においては、前記シフトゲイン相関に基づいて前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルを選択することがさらに、前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電圧ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電圧カウントが電圧シフトアップ閾値よりも小さいか否かを判定することと、前記電圧カウントが前記電圧シフトアップ閾値よりも小さいことに応じて、前記所定の電圧ダイナミックゲインレベルよりも大きい前記電圧ダイナミックゲインレベルを前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルとして選択することと、を含む。
【0010】
一形態においては、前記シフトゲイン相関に基づいて前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルを選択することがさらに、前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電流ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電流カウントが電流シフトダウン閾値よりも大きいか否かを判定することと、前記電流カウントが前記電流シフトダウン閾値より大きいことに応じて、前記所定の電流ダイナミックゲインレベルよりも小さい前記電流ダイナミックゲインレベルを前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルとして選択することと、を含む。一形態においては、前記シフトゲイン相関に基づいて前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルを選択することがさらに、前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電流ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電流カウントが電流シフトアップ閾値よりも小さいか否かを判定することと、前記電流カウントが前記電流シフトアップ閾値よりも小さいことに応じて、前記所定の電流ダイナミックゲインレベルよりも大きい前記電流ダイナミックゲインレベルを前記1つ又は複数のダイナミックゲインレベルとして選択すること、を含む。
【0011】
一形態においては、本方法はさらに、前記ヒーターに電力が供給されていないときに、複数の電圧ヌルカウントおよび複数の電流ヌルカウントを求めることをさらに含み、前記抵抗値が、前記複数の電圧ヌルカウントおよび前記複数の電流ヌルカウントにさらに基づいている。一形態においては、前記複数の電圧ヌルカウントの各々が、前記複数のダイナミックゲインレベルのうちの1つに関連付けられており、前記複数の電流ヌルカウントの各々が、前記複数のダイナミックゲインレベルのうちの1つに関連付けられている。一形態においては、本方法はさらに、前記電圧カウントと、前記複数の電圧ヌルカウントのうちの所定の電圧ヌルカウントとの間の差に基づいて、電圧値を求めることと、前記電流カウントと、前記複数の電流ヌルカウントのうちの所定の電流ヌルカウントとの間の差に基づいて、電流値を求めることと、をさらに含み、前記抵抗加熱素子の前記抵抗値が、前記電圧値および前記電流値にさらに基づいている。一形態においては、複数の電圧ドリフトカウントおよび複数の電流ドリフトカウントを求めることをさらに含み、前記抵抗値が、前記複数の電圧ドリフトカウントおよび前記複数の電流ドリフトカウントにさらに基づいている。
【0012】
本開示は、抵抗加熱素子を含むヒーターの温度を制御するためのシステムを提供する。本システムは、非一時的コンピュータ可読媒体に保存された命令を実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサを備える。この命令は、ヒーターに電気的に接続されたセンサー回路のアナログ・デジタル・コンバーター(ADC)回路からデータを取得することと、前記データに基づいて電圧カウントおよび電流カウントを測定することと、シフトゲイン相関に基づいて、複数のダイナミックゲインレベルの中から前記ADCの電圧ダイナミックゲインレベルおよび電流ダイナミックゲインレベルを選択すること、を含む。この命令は、前記電圧カウント、前記電流カウント、前記電圧ダイナミックゲインレベル、および前記電流ダイナミックゲインレベルに基づいて、前記抵抗加熱素子の抵抗値を求めることと、前記抵抗値に基づいて前記ヒーターへの電力を制御することと、を含む。
【0013】
以下には、上記段落のヒーターの温度制御システムの変形例が含まれ、これらは個々に実施することもできるし、任意の組み合わせで実施することもできる。
【0014】
一形態においては、前記命令はさらに、前記電圧カウントと前記電圧ダイナミックゲインレベルとの比に基づいて電圧値を求めることと、前記電流カウントと前記電流ダイナミックゲインレベルとの比に基づいて電流値を求めることと、を含み、前記抵抗加熱素子の前記抵抗値が、前記電圧値と前記電流値とにさらに基づいている。一形態においては、前記シフトゲイン相関に基づいて前記電圧ダイナミックゲインレベルを選択するための前記命令が、前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電圧ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電圧カウントが電圧シフトダウン閾値よりも大きいか否かを判定することと、前記電圧カウントが前記電圧シフトダウン閾値よりも大きいことに応じて、前記所定の電圧ダイナミックゲインレベルよりも小さい前記電圧ダイナミックゲインレベルを選択することと、をさらに含む。一形態においては、前記シフトゲイン相関に基づいて前記電圧ダイナミックゲインレベルを選択するための前記命令が、前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電圧ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電圧カウントが電圧シフトアップ閾値よりも小さいか否かを判定することと、前記電圧カウントが前記電圧シフトアップ閾値よりも小さいことに応じて、前記所定の電圧ダイナミックゲインレベルよりも大きい前記電圧ダイナミックゲインレベルを選択することと、をさらに含む。
【0015】
一形態においては、前記シフトゲイン相関に基づいて電流ダイナミックゲインレベルを選択するための前記命令が、前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電流ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電流カウントが電流シフトダウン閾値よりも大きいか否かを判定することと、前記電流カウントが前記電流シフトダウン閾値よりも大きいことに応じて、前記所定の電流ダイナミックゲインレベルよりも小さい前記電流ダイナミックゲインレベルを選択することと、をさらに含む。一形態においては、前記シフトゲイン相関に基づいて前記電流ダイナミックゲインレベルを選択するための前記命令が、前記ADCが前記複数のダイナミックゲインレベルの中から所定の電流ダイナミックゲインレベルを選択している間に、前記電流カウントが電流シフトアップ閾値よりも小さいか否かを判定することと、前記電流カウントが前記電流シフトアップ閾値よりも小さいことに応じて、前記所定の電流ダイナミックゲインレベルよりも大きい前記電流ダイナミックゲインレベルを選択することと、をさらに含む。
【0016】
一形態においては、前記命令が、前記ヒーターに電力が供給さていないときに、複数の電圧ヌルカウントおよび複数の電流ヌルカウントを求めることをさらに含み、前記抵抗値が、前記複数の電圧ヌルカウントおよび前記複数の電流ヌルカウントにさらに基づいている。一形態においては、前記複数の電圧ヌルカウントの各々が、前記複数のダイナミックゲインレベルのうちの1つに関連付けられ、前記複数の電流ヌルカウントの各々が、前記複数のダイナミックゲインレベルのうちの1つに関連付けられている。一形態においては、前記命令はさらに、前記電圧カウントと、前記複数の電圧ヌルカウントのうちの所定の電圧ヌルカウントとの間の差に基づいて電圧値を求めることと、前記電流カウントと、前記複数の電流ヌルカウントのうちの所定の電流ヌルカウントとの間の差に基づいて電流値を決定することと、をさらに含み、前記抵抗加熱素子の前記抵抗値が、前記電圧値および前記電流値にさらに基づいている。一形態においては、前記命令が、複数の電圧ドリフトカウントおよび複数の電流ドリフトカウントを求めることをさらに含み、前記抵抗値が、前記複数の電圧ドリフトカウントおよび前記複数の電流ドリフトカウントにさらに基づいている。
【0017】
さらなる適用可能な領域は、本明細書で提供される説明から明らかになるであろう。本明細書および特定の実施例は、説明のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
次に、本開示をよく理解できるようにするため、添付図面を参照しながら、例示としてその様々な形態について説明する。
【0019】
図1A】本開示の教示に従った電気特性計算機を有する熱システムのブロック図である。
【0020】
図1B図1Aの熱システムの制御システムのブロック図である。
【0021】
図2】本開示の教示に従った、ダイナミックゲインシフトなしで求められた抵抗曲線を示すグラフである。
【0022】
図3】本開示の教示に従った、ダイナミックゲインシフトを用いて求められた抵抗曲線を示すグラフである。
【0023】
図4】本開示の教示に従った、ダイナミックゲインシフトなしで求められた温度曲線を示すグラフである。
【0024】
図5】本開示の教示に従った、ダイナミックゲインシフトを用いて求められた温度曲線を示すグラフである。
【0025】
図6A】本開示の教示に従った、1つ又は複数のダイナミックゲインレベルのための例示的な較正ルーチンを示すフローチャートである。
【0026】
図6B】本開示の教示に従った別の例示的な較正ルーチンを示すフローチャートである。
【0027】
図6C】本開示の教示に従った例示的な電気抵抗値計算ルーチンを示すフローチャートである。
【0028】
図6D】本開示の教示に従った別の例示的な電気抵抗値計算ルーチンを示すフローチャートである。
【0029】
本明細書に記載された図面は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の説明は、本質的に単に例示的なものであり、本開示、適用、または使用を限定することを意図するものではない。図面全体を通して、対応する参照数字は、同様または対応する部分および特徴を示すことを理解されたい。
【0031】
図1Aおよび図1Bを参照すると、熱システム100は、マルチゾーンペデスタルヒーター102および制御システム104を含む。制御システム104は、コントローラ106と電力変換器システム108とを含む。一態様において、ヒーター102は、加熱プレート110と、加熱プレート110の底面に配置された支持シャフト112とを含む。加熱プレート110は、基板111と、基板111に埋め込まれるか又は基板111の表面に沿って配置された複数の抵抗加熱素子(図示せず)とを含む。一態様では、基板111はセラミック製またはアルミニウム製とすることができる。制御システム104は、抵抗加熱素子を独立して制御し、これらの抵抗加熱素子は、図1Aに破線で示されるように、複数の加熱ゾーン114を画定する。加熱ゾーンは、様々な様式で構成され得、本開示の範囲内にありながら、任意の数の加熱ゾーンを含み得ることが理解されるべきである。さらに、コントローラ106は、マルチゾーンヒーターに関連付けて記載されているが、ヒーター102は、1つ又は複数のゾーンを含み得、2つ以上のゾーンに限定されない。
【0032】
一形態では、ヒーター102は、抵抗加熱素子に4本ではなく2本のリード線が動作可能に接続され、抵抗加熱素子がヒーターとして機能するとともに温度センサーとしても機能する、「2線式」ヒーターである。このような2線式機能は、例えば、米国特許第7,196,295号明細書に開示されており、これは本出願と共通に譲渡され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。典型的には、2線式システムにおいては、抵抗加熱素子は、抵抗加熱素子の抵抗の変化に基づいて抵抗加熱素子の平均温度が求められるように、温度の変化に応じて抵抗が変化する材料によって画定される。一態様では、抵抗加熱素子の抵抗は、まず加熱素子を横断する電圧と加熱素子を流れる電流を測定し、次にオームの法則を使用して抵抗を求めることによって計算される。
【0033】
制御システム104は、ヒーター102の動作を制御し、より詳細には、各ゾーン114に供給される電力を独立して制御する。一形態では、制御システム104は、端子115を介してゾーン114に電気的に接続されて、電力を供給し且つ温度を感知する2つの端子に各ゾーン114が接続されるようにする。
【0034】
一態様では、制御システム104は、とりわけ、ディスプレイ、キーボード、マウス、スピーカ、タッチスクリーン等の1つ又は複数のユーザインターフェースを有するコンピューティング装置117に(例えば、無線及び/又は有線通信リンクを介して)通信可能に接続される。コンピューティング装置117を使用して、ユーザーは、温度設定値、電力設定値、および制御システム104によって記憶された試験またはプロセスを実行するコマンドなどの、入力またはコマンドを熱システム100に対して提供することができる。
【0035】
制御システム104は、インターロック120を介して、電力変換器システム108に入力電圧(例えば、240V、208V)を供給する電源118に電気的に接続されている。インターロック120は、電源118と電力変換器システム108との間に流れる電力を制御し、電源118からの電力を遮断する安全機構としてコントローラ106によって操作可能である。図1Aには図示されているが、制御システム104は、他の変形例ではインターロック120を含まなくてもよい。
【0036】
一態様において、電力変換器システム108は、入力電圧を調整して、ヒーター102に出力電圧(VOUT)を印加するように構成される。一形態では、電力変換器システム108は、所定のゾーン114(図では114-1~114-N)の抵抗加熱素子に調整可能な電力を印加するように構成された複数の電力変換器122(図1Bでは122-1~122-N)を含む。このような電力変換器システムの一例は、米国特許第10,690,705号公報に記載されており、これは本出願と共通に所有されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。この実施例では、各電力変換器システム108は、所与のゾーン114の1つ又は複数の加熱素子のために所望の出力電圧を生成するように制御装置によって操作可能な降圧変換器を含む。したがって、電力変換器システム108は、ヒーター102の各ゾーン114にカスタマイズ可能な大きさの電力(すなわち、所望の電力)を供給するように動作可能である。所望の電力を供給するために他の電力変換器システムが採用されてもよく、本開示は本明細書で提供される例に限定されないことが容易に理解されるべきである。
【0037】
(ヒーター102のような)2線式ヒーターの使用に伴って、制御システム104は、抵抗および温度を求めるために使用される抵抗加熱要素の電気特性(すなわち、電圧および/または電流)を測定するためのセンサー回路124(すなわち、図1Bの124-1~124-N)を含む。一形態では、各センサー回路124は、所与のゾーン114内の加熱要素を流れる電流および加熱要素に印加される電圧をそれぞれ測定するために、電流計126および電圧計128を含む。一形態では、電流計126と電圧計128は、加熱素子に印加される電力に関係なく電流と電圧を同時に測定する電力測定チップとして提供される。
【0038】
一形態では、コントローラ106は、1つ以上のマイクロプロセッサと、マイクロプロセッサによって実行されるコンピュータ可読命令を記憶するためのメモリとを含む。一態様において、コントローラ106は、コントローラ106が、入力電圧の100%、入力電圧の90%などの、ヒーター102に印加されるべき所望の電力を決定する1つ以上の制御プロセスを実行するように構成される。所望の電力は、ヒーターの電気特性(例えば、電圧、電流、および/または抵抗)、ヒーターの温度、ヒーターの動作状態(例えば、ソフトスタート、ランプアップ、定常状態、ランプダウンなど)、および/または所望の設定値(例えば、温度設定値、ランプアップ率設定値、ランプダウン率設定値、電力設定値など)などの様々な情報に基づいて決定され得るが、これらに限定されない。制御プロセスの例は、上述の米国特許第10,690,705号、および本出願と共通に所有されている米国特許第10,908,195号に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一態様において、コントローラ106は、ヒーター102の温度が温度設定値に制御される閉ループ温度制御を実行する。
【0039】
(ヒーター102のような)電気ヒーターは、動作中に動作電力(すなわち、電圧および/または電流)の全範囲を使用しない可能性があり、ヒーター102は、ヒーター102を所望の温度に維持しているときよりも、ランプアップ中または設定値変更中に多くの電力を使用する可能性がある。したがって、ヒーター102は、主に電力帯域の下端で動作するようにできる。電力帯域の下端では、抵抗測定値の精度が低下し、したがって、温度測定値の精度が低下し、それによって、電気ヒーターの制御が困難になる。したがって、コントローラ106は、コントローラ106によって実行される抵抗値判断の精度を向上させるように構成された電気特性計算器(ECC)130を含むことができる。具体的には、ECC130は、電圧カウントおよび電流カウント(すなわち、V-Iカウント)を読み取り、V-Iカウントに基づいてヒーター102の抵抗加熱素子の抵抗を求めるように構成される。ECC130に関する更に詳細な事項は、以下に提供される。
【0040】
一態様において、センサー回路124は、電圧(例えば、ADCの電力供給端子または検知端子におけるピーク電圧または二乗平均平方根(RMS)電圧)および電流(例えば、シャント抵抗を横断して測定されるピーク電流またはRMS電流)を測定するように構成されたアナログ・デジタル・コンバーター(ADC)を含む。電圧と電流は、以下「V-I」と総称されることがある。一形態では、ADCはカウントを生成し、このカウントは、ミリボルト(mV)入力信号レベルの整数表現であり、典型的には12、16、または24ビット値である。非限定的な例では、24ビット・デバイスであるADCは、0~16,777,215(±8,388,607)の範囲のカウント値を生成する。一般に、較正データを使用して、センサー回路124はV-Iカウントを実際の電圧測定値および電流測定値に変換する。実際の電圧測定値および電流測定値の代わりに、ECC130は電圧値と電流値の比に基づいて抵抗値(R)を求める。以下の関係式(1)に示すように、電圧値は、電圧カウント(VCounts)と電圧ダイナミックゲインレベル(VGain)の比に基づいており、電流値は、電流カウント(ICounts)と電流ダイナミックゲインレベル(IGain)の比に基づいている。
R=(VCounts/VGain))/(ICounts/IGain)) (1)
【0041】
したがって、求められた抵抗値は、センサー回路124の較正精度に依存しない単位なしの値である。ADCの電流ダイナミックゲインレベルおよびADCの電圧ダイナミックゲインレベルは、以下、「ダイナミックゲインレベル」と総称され、ADCのダイナミックゲインレベルに関する更に詳細な事項は、以下に提供されている。
【0042】
一形態では、ADCは、製品の全ての動作範囲(すなわち、電力範囲)が測定され得るような固定ゲインを有し得る。固定ゲインは、低電力レベルにおける抵抗測定の精度を低下させる可能性があり、そのため、ADCの全測定範囲は通常利用されないか、ほとんど利用されない。したがって、ECC130は、ヒーター102の抵抗加熱素子の抵抗値を求めるときに固定ゲインを無視して、ADCの1つ又は複数のダイナミックゲインレベルを選択するように構成されている。
【0043】
一形態では、ADCは、ADCの複数のダイナミック・ゲイン値の中から1つ又は複数のダイナミックゲインレベルを選択/調整するためのプログラマブル・ゲイン増幅器(PGA)を含む。一例として、PGAは、1、2、4、8、16などの、6つの選択可能な電圧ダイナミックゲインレベルと6つの選択可能な電流ダイナミックゲインレベルとを含み、PGAは、電圧ダイナミックゲインレベルと電流ダイナミックゲインレベルとを独立して調整/選択するように構成される。電圧ダイナミックゲインレベルと電流ダイナミックゲインレベルは、互いに独立しないように設定されてもよいことを理解されたい。ADCのゲインを動的に調整することによって、V-Iカウントおよび抵抗測定の忠実度が改善され、それによって、さらに詳細に後述されるように、ヒーター102の抵抗に基づいた制御ルーチンが改善される。
【0044】
ある形態では、ADCは、各ダイナミックゲインレベルをシフトアップ閾値およびシフトダウン閾値(以下、総称して「シフト閾値」と呼ぶ)と相関させるシフトゲイン相関に基づいて、ダイナミックゲインレベルを選択する。一形態では、シフト閾値は、ダイナミックゲインレベルを増加または減少させるための閾値カウントとして提供される。ADCは、ダイナミックゲインレベルのシフト後に実質的に重なりがなく、該シフト後に十分な余裕(すなわち、ヒステリシス)があるように、シフト閾値を選択する。
【0045】
一例として、電圧カウント(VCounts)が電圧シフトダウン閾値より大きいとき、ADCは電圧ダイナミックゲインレベル(VGain)を減少させる(例えば、VCountsが電圧シフトダウン閾値である16,000,000カウントより大きいとき、ADCはVGainを所定の電圧ダイナミックゲインレベルである4から2に減少させる)。別の例として、電圧カウント(VCounts)が電圧シフトアップ閾値より小さいとき、ADCは電圧ダイナミックゲインレベル(VGain)を増加させる(例えば、VCountsが電圧シフトアップ閾値である4,000,000カウントより小さいとき、ADCはVGainを所定の電圧ダイナミックゲインレベルである4から8に増加させる)。シフトダウン閾値およびシフトアップ閾値は単なる例であり、本明細書に記載されたこれらの例に限定されるべきではないことを理解されたい。
【0046】
さらなる例として、電流カウント(ICounts)が電流シフトダウン閾値より大きいとき、ADCは電流ダイナミックゲインレベル(IGain)を減少させる(例えば、ICountsが電流シフトダウン閾値である8,000,000カウントより大きいとき、ADCはIGainを所定の電流ダイナミックゲインレベルである4から2に減少させる)。さらに別の例として、電流カウント(ICounts)が電流シフトアップ閾値より小さいとき、ADCは電流ダイナミックゲインレベル(IGain)を増加させる(例えば、ICountsが電流シフトアップ閾値である2,000,000カウントより小さいとき、ADCはIGainを所定の電流ダイナミックゲインレベルである4から8に増加させる)。様々なダイナミックゲインレベルとシフト閾値の例が提供されているが、様々なダイナミックゲインレベルは様々なV-Iカウントとシフト閾値に関連付けられ、本明細書に記載された例に限定されないことが理解されるべきである。
【0047】
一形態では、ECC130は、ADCが電流ダイナミックゲインレベルと電圧ダイナミックゲインレベルのうちの少なくとも1つを減少または増加させることに応じて、安定化遅延を用いるように構成される。一形態では、安定化遅延は、ADCのセトリング時間(すなわち、最終カウント値に収束するための時間量)に基づくか、または任意に決められる。一例として、ECC130が電流(または電圧)ダイナミックゲインレベルを調整するとき、ECC130は安定化遅延が経過するまでV-Iカウントの取得を開始しない。別の例として、ECC130が電流(または電圧)ダイナミックゲインレベルを調整するとき、ECC130は安定化遅延期間が経過する前に得られたV-Iカウントを破棄する。ダイナミックゲインレベルを調整する際に安定化遅延を採用することで、ECC130はV-Iカウントの精度をさらに向上させることができる。安定化遅延は、形態によっては採用されないこともあることを理解されたい。
【0048】
一態様では、ECC130は、複数の電圧ヌルカウントおよび複数の電流ヌルカウント(以下「ヌルカウント(Null Count)」と総称する)に基づいてV-Iカウントを調整するように構成される。より詳細には、ECC130は、電圧及び電流がゼロである(すなわち、ヒーター102に電力が供給されていない)場合に、V-Iカウントを求めるためのカウント補償判定を実行するように構成される。一例として、各ダイナミックゲインレベルについて、電力がオフの状態で、カウント補償判定は、それぞれのダイナミックゲインレベルについてのヌルカウント(すなわち、各電流ダイナミックゲインレベルについての電流ヌルカウントおよび各電圧ダイナミックゲインレベルについての電圧ヌルカウント)として、ADCからV-Iカウントを読み出して記憶する。ECC130は、以下の関係式(2)~(4)に示すように、ヌルカウントを使用して動作中の測定カウントを補正し、抵抗値(R)を測定するように構成される。
Comp-counts = VCounts - VNull-counts (2)
Comp-counts = ICounts - INull-counts (3)
R = (VComp-counts/VGain)/(IComp-counts/IGain) (4)
【0049】
関係式(2)において、「VNull-counts」は、採用されている所定の電圧ダイナミックゲインレベルのカウント補償判定中に求められた電圧ヌルカウントであり、「VComp-counts」は、補償された電圧カウント(すなわち、電圧カウントと対応する電圧ヌルカウントとの差)である。関係式(3)において、「INull-counts」は、採用されている電流ダイナミックゲインレベルのカウント補償判定中に求められた電流ヌルカウントであり、「IComp-counts」は、補償された電流カウント(すなわち、電流カウントと対応する電流ヌルカウントとの差)である。関係式(4)に示すように、ECC130は、補償された電圧値と採用されている対応する電圧ダイナミックゲインレベルとの比に基づいて電圧値を求め、補償された電流値と採用されている対応する電流ダイナミックゲインレベルとの比に基づいて電流値を求めて、その電圧値と電流値に基づいて抵抗値を求める。
【0050】
一態様では、ECC130は、複数の電圧ドリフトカウントおよび複数の電流ドリフトカウント(以下、「ドリフトカウント」と総称する)に基づいて抵抗値を求めるように構成される。ドリフトカウントは、例えば、センサー回路124(例えば、コントローラ106の電力測定チップ)、電力変換器122、および制御システム104の他の構成要素に関連した性能劣化および/または経年劣化に起因する、所与の温度において誘発された電圧カウント誤差および/または電流カウント誤差を表している。一例として、ヒーター温度設定値に基づいてヒーター102の抵抗加熱素子の温度を上昇させるために電力を印加し、それによって例えばセンサー回路124の温度が50℃(すなわち、100電圧カウント/1℃)だけ上昇したときに、測定された電圧カウントは実際の電圧カウントよりも5,000カウント少なく(または大きく)なる可能性がある。別の例として、ヒーター温度設定値に基づいてヒーター102の抵抗加熱素子の温度を上昇させるために電力を印加し、それによって例えばセンサー回路124の温度が50℃(すなわち、200電流カウント/1℃)だけ上昇したときに、測定された電流カウントは実際の電流カウントよりも10,000カウント大きく(または小さく)なる可能性がある。このように、ECC130は、各電流ダイナミックゲインレベルに対してドリフト電流カウント補償判定を実行し、各電圧ダイナミックゲインレベルに対してドリフト電圧カウント補償判定を実行して、ドリフトカウントを求めるように構成される。
【0051】
電流ドリフトカウントを求めるために、ECC130は、ADCによって求められた補償電流カウント(または電流カウント)と、電力測定チップ、電圧分配器、電流シャント、または摂氏/華氏あたりの既知の(または経験的に定義された)カウント値を有する他の測定構成要素、に近接した(すなわち、隣接したおよび/または近傍の)別個の基準温度センサー(図示せず)によって出力されたセンサーデータに対応する期待電流カウントとの間の差を求めるようにされており、ここで基準温度センサーは、測定構成要素に近接した、または測定構成要素自体の温度を示すデータを生成するように構成されている。電圧ドリフトカウントを求めるために、ECC130は、ADCによって求められた補償電圧カウント(または電圧カウント)と、測定構成要素に近接した、または測定構成要素自体の温度を示すデータを生成するように構成されている別の基準センサーによって出力されたセンサーデータに対応する期待電圧カウントとの間の差を求めるようにされている。いくつかの形態では、ECC130は、補償された電圧カウントおよび/または電流カウントの精度をさらに向上させるために、ドリフトカウントを定期的に更新する。形態によっては、ドリフトカウントが採用されなくてもよいことを理解されたい。
【0052】
図2~5は、本開示のECC130によって実行される方法の特徴を示すグラフである。より詳細には、図2及び図3は、V-Iカウント、及びダイナミックゲインシフトなしとダイナミックゲインシフトありでそれぞれ抵抗値が計算されている抵抗曲線を例示するグラフである。図2に示されるように、VCountsとICountsは、それぞれ約1,000,000と約2,000,000に制限されており、計算された抵抗値(すなわち、負荷抵抗値(Load Resistance))は、フィルター処理した抵抗値(Filtered Resistance)と重なるが、依然として変動している。ダイナミックゲインシフトあり(図3)では、VCountsとICountsはそれぞれ約6,000,000と5,000,000に拡大されている。VCountsとICountsの忠実度を上げることで、計算された抵抗値はより滑らかになり、フィルター処理した抵抗値により近づいている。固定ゲインでは、PGAの全測定範囲は利用されない。したがって、ECC130は、VCountsとICountsのゲインを相互に独立して調整するダイナミックゲインシフトを含むようにさらに構成される。
【0053】
抵抗値の精度を向上させることにより、制御は温度の精度を向上させる。具体的には、図4および図5は、それぞれ、ダイナミックゲインシフトなしでの温度およびPID努力曲線(PID effort curve)(すなわち、図4のフィラメント温度1(FilamentTemp1)、フィラメント温度2(FilamentTemp2))、ならびにダイナミックゲインシフトありでの温度およびPID努力曲線(すなわち、図5のフィラメント温度1(FilamentTemp1)、フィラメント温度2(FilamentTemp2))を示す。ダイナミックゲインシフトを適用する場合、フィラメント温度曲線は、より滑らかであり、基準センサ(すなわち、TcRefSensor1)によって検出される温度により近くなり、それによって、ヒーター102に関連する抵抗または温度に基づく制御ルーチンが改善される。
【0054】
図6A~6Bを参照すると、制御システム104によって実行される例示的な較正ルーチンが提供されている。図6Aは、ヒーター102に電力が印加される前のコールドスタート時に組み込むことができる較正ルーチン200を示す。202において、ECC130は、より詳細に上述したように、ヌルカウントを求めて記憶する。例えば、ECC130は、ヒーター102に電力が供給されていないときに、およびいくつかの変形例では、利用可能な各ダイナミックゲインレベルに対して、VCountsおよびICountsを測定する。図6Bは、所与の温度におけるセンサー回路124の誘導された電圧カウント誤差および/または電流カウント誤差を考慮するためにECC130によって実行される較正ルーチン210を示す。212において、制御システム104は、ADCの各ダイナミックゲインレベルに対して、既知の電力量をヒーター102の抵抗加熱素子に供給する。214において、ECC130は、より詳細に上述したように、期待されるV-Iカウントと求めたV-Iカウントとの間の差に基づいてドリフトカウントを求めて記憶する。
【0055】
図6Cを参照すると、ヒーター102の抵抗加熱素子の抵抗値を求めるための、定常状態制御またはランプダウン制御などの他の制御プログラムの一部として実施され得る例示的な抵抗値計算ルーチン240が示されている。242において、ECC130はVCountsとICountsを読み取る。244において、ECC130は、シフトゲイン相関に基づいてダイナミックゲインレベルを選択し、246において、ECC130は、VCounts、ICounts、およびVCountsとICountsに関連付けられたダイナミックゲインレベルに基づいて、抵抗値を求める。コントローラ106は、求められた抵抗値を採用して、採用されている主制御プログラムに従ってヒーター102を制御する(例えば、ヒーター102に印加される電力を制御する)。
【0056】
図6Dを参照すると、ヒーター102の抵抗加熱素子の抵抗値を求めるための、定常状態制御またはランプダウン制御などの他の制御プログラムの一部として実施され得る例示的な抵抗値計算ルーチン250が示されている。252において、ECC130はVCountsとICountsを読み取る。254において、ECC130は、シフトゲイン相関に基づいてダイナミックゲインレベルを選択し、256において、ECC130は、VCounts、ICounts、VCountsとICountsに関連付けられたダイナミックゲインレベル、およびヌルカウント(例えば、図6Aに図示された較正ルーチン210によって求められたヌルカウント)とドリフトカウント(例えば、図6Bに図示された較正ルーチン220によって求められたヌルカウント)とのうちの少なくとも一方に基づいて、抵抗値を求める。コントローラ106は、求められた抵抗値を採用して、採用されている主制御プログラムに従ってヒーター102を制御する(例えば、ヒーター102に印加される電力を制御する)。
【0057】
ルーチンは、様々な適切な方法で提供され得、図6A~6Dのルーチンに限定されるべきではないことが容易に理解されるべきである。例えば、ルーチンは、熱システムに固有のオフセットを考慮するための較正スケーリングルーチンを含み得る。
【0058】
一形態では、ECC130は、ヒーター102の様々な動作電力のV-Iカウントに基づいて抵抗値を求めるように構成される。別の形態では、ECC130は、(ヒーター102としての)電気ヒーターへの電力が特定の閾値(例えば、5%の入力電力)未満である場合には、V-Iカウントに基づいて抵抗値を計算し、電力が特定の閾値より大きい場合には、ECC130は、較正された電圧値および電流値をセンサー回路124から読み出し、較正された値を採用して、抵抗値を求めるように構成される。
【0059】
本明細書において別段の記載がない限り、機械的/熱的特性、組成割合、寸法および/または公差、またはその他の特性を示す数値はすべて、本開示の範囲を説明する際に「約」または「およそ」という語によって修飾されたものとして理解されるものとする。この修飾は、工業的慣行、材料、製造、組立の公差、および試験能力を含む様々な理由から望まれる。
【0060】
本明細書において、A、B、Cのうち少なくとも1つという表現は、非排他的論理和を用いた論理的(A OR B OR C)を意味するものと解釈されるべきであり、「Aのうち少なくとも1つ、Bのうち少なくとも1つ、Cのうち少なくとも1つ」を意味するものと解釈されるべきではない。
【0061】
本願において、「コントローラ」という用語は、「回路」という用語に置き換えることができる。「コントローラ」という用語は、以下のものを指すか、その一部であるか、または含むことができる:特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル、アナログ、またはアナログ/デジタルの混在したディスクリート回路、デジタル、アナログ、またはアナログ/デジタルの混在した集積回路、組合せ論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コードを実行するプロセッサ回路(共有、専用、またはグループ)、プロセッサ回路によって実行されるコードを記憶するメモリ回路(共有、専用、またはグループ)、記載された機能を提供する他の適切なハードウェアコンポーネント、またはシステムオンチップなど、上記の一部またはすべての組み合わせ。
【0062】
コードという用語は、ソフトウェア、ファームウェア、および/またはマイクロコードを含み、プログラム、ルーチン、ファンクション、クラス、データ構造、および/またはオブジェクトを指す場合がある。メモリ回路という用語は、コンピュータ読み取り可能媒体という用語のサブセットである。本明細書で使用される場合、コンピュータ読み取り可能媒体という用語は、(搬送波上などの)媒体を伝搬する一過性の電気信号または電磁信号を包含するものではなく、したがって、コンピュータ読み取り可能媒体という用語は、有形で非一過性のものと考えられる。
【0063】
本開示の説明は、本質的に単なる例示であり、したがって、本開示の本質から逸脱しない変形は、本開示の範囲内にあることが意図される。このような変形は、本開示の精神および範囲から逸脱するものとはみなされない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
【国際調査報告】