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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】神経系疾患の直接分化転換治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240912BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240912BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240912BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240912BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20240912BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240912BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20240912BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240912BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240912BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240912BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240912BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240912BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K45/00
C07K14/47 ZNA
C07K16/18
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
C12N15/12
C12N15/85 Z
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/09 100
A61P43/00 105
A61P25/16
A61P25/28
A61P9/10
A61P25/18
A61P25/14
A61P25/24
A61P21/00
A61P25/20
A61P25/08
A61P27/02
A61P27/06
A61P27/16
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/76
A61K9/127
A61K9/00
A61K35/12
A61K35/761
A61K35/763
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519557
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 CN2022123409
(87)【国際公開番号】W WO2023051802
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111158620.4
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523241531
【氏名又は名称】シャンハイ ジェネマジック バイオサイエンシズ カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100231902
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 李花
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ハイポー
(72)【発明者】
【氏名】フー シントー
(72)【発明者】
【氏名】スー チンリン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA95
4C076AA99
4C076CC01
4C076CC10
4C076FF68
4C084AA13
4C084MA11
4C084MA24
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA05
4C084ZA06
4C084ZA12
4C084ZA18
4C084ZA33
4C084ZA34
4C084ZA94
4C084ZB21
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA11
4C086MA24
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA06
4C086ZA12
4C086ZA18
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA94
4C086ZB21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA11
4C087MA24
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA05
4C087ZA06
4C087ZA12
4C087ZA18
4C087ZA33
4C087ZA34
4C087ZA94
4C087ZB21
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
非ニューロン細胞をニューロン細胞に分化転換するための標的とするRE1/NRSEエレメント、並びにニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患の予防及び/又は治療におけるRE1/NRSE遮断剤の使用を提供し、RE1/NRSEエレメントへのRESTの結合を低減すること、或いはRESTの量若しくは活性を低減することを含む、非ニューロン細胞におけるニューロン関連遺伝子の発現を調節するためにRE1/NRSEエレメントを遮断する方法も提供し、ニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患の予防及び/又は治療に使用できるRE1/NRSEエレメント遮断剤、特に内因性RE1/NRSE結合タンパク質の結合ドメイン及びその変異体を更に提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の体内で非ニューロン細胞を機能性ニューロンに分化転換する方法であって、
RE1/NRSEエレメントへのRESTの結合を低減する、或いはRESTの量若しくは活性を低減することができる活性物質を前記個体に投与することを含む、方法。
【請求項2】
必要とする個体の体内でニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患を予防及び/又は治療する方法であって、
前記疾患に影響を受ける部位の非ニューロン細胞を機能性ニューロンに分化転換するために、RE1/NRSEエレメントへのRESTの結合を低減する、或いはRESTの量若しくは活性を低減することができる治療有効量の活性物質を、前記個体における前記疾患に影響を受ける部位に投与することを含む、方法。
【請求項3】
前記機能性ニューロンは、ドーパミンニューロン、網膜神経節細胞、光受容細胞及び蝸牛らせん神経節細胞、GABAニューロン、5-HTニューロン、グルタミン酸作動性ニューロン、ChATニューロン、NEニューロン、運動ニューロン、脊髄ニューロン、脊髄運動ニューロン、脊髄感覚ニューロン、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞、錐体ニューロン、中間ニューロン、中型有棘ニューロン(MSN)、プルキンエ細胞、顆粒細胞、嗅覚ニューロン、糸球体周囲細胞又はそれらの任意の組み合わせを含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記機能性ニューロンは、NeuN遺伝子を発現する、
前記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記機能性ニューロンは、軸索を有する、
前記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記機能性ニューロンは、ドーパミンニューロン、網膜神経節細胞、光受容細胞又は蝸牛らせん神経節細胞を含む、
前記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ドーパミンニューロンは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、FoxA2、Nurr1、Pitx3、Vmat2及びDATからなる群より選ばれる1つ又は複数のマーカーを発現する、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ドーパミンニューロンは、NeuN、TH及びDATを発現する、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記網膜神経節細胞は、RBPMS、Pax6、Brn3a、Brn3b、Brn3c及びMap2からなる群より選ばれる1つ又は複数のマーカーを発現する、
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記光受容細胞は、Rhodopsin、mCAR、m-opsin及びS-opsinからなる群より選ばれる1つ又は複数のマーカーを発現する、
請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記蝸牛らせん神経節細胞は、NeuN、Prox1、Tuj-1及びMap2からなる群より選ばれる1つ又は複数のマーカーを発現する、
請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記非ニューロン細胞は、膠細胞、線維芽細胞、幹細胞、神経前駆体細胞又は神経幹細胞を含む、
前記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記膠細胞は、星状膠細胞、乏突起膠細胞、上衣細胞、シュワン細胞、NG2細胞、衛星細胞、ミュラー膠細胞、内耳神経膠細胞及びそれらの任意の組み合わせから選ばれる、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記膠細胞は、星状膠細胞、ミュラー膠細胞及び蝸牛神経膠細胞から選ばれる、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記膠細胞は、脳、脊髄、目又は耳に位置する、
請求項12~14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記膠細胞は、脳の線条体、黒質、中脳腹側被蓋野、延髄、視床下部、中脳背側又は大脳皮質に位置する、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記活性物質は、i)線条体における膠細胞、ii)大脳黒質における膠細胞、iii)網膜における膠細胞、iv)内耳における膠細胞、v)脊髄における膠細胞、vi)前頭皮質における膠細胞、vii)運動皮質における膠細胞、viii)視床下部における膠細胞、及びix)腹側被蓋野(VTA)における膠細胞といった、前記個体の体内の1つ又は複数の部位の膠細胞に局所投与される、
前記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記膠細胞は星状膠細胞を含み、且つ前記機能性ニューロンはドーパミンニューロン細胞を含む、
前記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記星状膠細胞は、線条体及び/又は黒質に位置する、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記膠細胞はミュラー膠細胞を含み、且つ前記機能性ニューロン細胞は網膜神経節細胞(RGC)及び/又は光受容細胞を含む、
請求項1~17の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ミュラー膠細胞は、網膜又は硝子体腔に位置する、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記膠細胞は蝸牛神経膠細胞を含み、且つ前記機能性ニューロン細胞は蝸牛らせん神経節細胞を含む、
請求項1~17の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記蝸牛神経膠細胞は、内耳に位置する、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記活性物質の投与後に達成される、前記膠細胞から機能性ニューロンへ分化転換する分化転換効率は、少なくとも1%、或いは少なくとも10%、20%、30%、40%又は50%である、
前記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記活性物質は、RE1/NRSEエレメントに結合してRE1/NRSEエレメントへのRESTの結合を遮断することができるRE1/NRSEエレメント遮断剤を含む、
前記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記RE1/NRSEエレメント遮断剤は、RE1への結合についてRESTと競合する小分子化合物、核酸、又は核酸類似体を含む、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記RE1/NRSEエレメント遮断剤は、RE1への結合についてRESTと競合するタンパク質又は前記タンパク質をコードする核酸を含む、
請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記RE1への結合についてRESTと競合するタンパク質は、REST変異体を含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記REST変異体は、RESTのDNA結合ドメインを含むが、RESTのN-末端及び/又はC-末端抑制ドメインを欠失する、
請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記REST変異体は、RESTの155~420番目のアミノ酸を含むが、RESTのN-末端及び/又はC-末端抑制ドメインを欠失する、
請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記REST変異体は、配列番号1、3、5若しくは9のアミノ酸配列、或いはそれと少なくとも70%、60%若しくは50%の同一性百分率を有する配列を有する、
請求項28~30の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記RE1/NRSEエレメント遮断剤は、請求項28~31の何れか1項に記載のREST変異体をコードする核酸を含み、前記の前記REST変異体をコードする核酸は、配列番号2、4、6若しくは10のヌクレオチド配列、或いはそれと少なくとも70%、60%若しくは50%の同一性百分率を有する配列を有する、
請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記の前記REST変異体をコードする核酸は、コドン最適化されるものであり、選択可能的に配列番号15のヌクレオチド配列、或いはそれと少なくとも70%、60%若しくは50%の同一性百分率を有する配列を有する、
請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記REST変異体は、前記RESTのDNA結合ドメインと融合される活性化ドメインを更に含む、
請求項28~31に記載の方法。
【請求項35】
前記活性化ドメインは、エピジェネティック修飾タンパク質又は遺伝子活性化調節エレメントを含み、選択可能的に、前記活性化ドメインは、VP64、P65-HSF1、VP16、RTA、Suntag、P300、CBP又はそれらの任意の組み合わせを含み、選択可能的に、前記活性化ドメインは、VP64又はP65-HSF1を含む、
請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記REST変異体は、1つ又は複数の核局在化シグナル配列と融合される、
請求項28~35の何れか1項に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つの前記核局在化シグナル配列は、前記REST変異体のN-末端と融合される、
請求項36に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも1つの前記核局在化シグナル配列は、前記REST変異体のC-末端と融合される、
請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1つの前記核局在化シグナル配列は、前記REST変異体のN-末端及びC-末端とそれぞれ融合される、
請求項36~38の何れか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記核局在化シグナル配列は、配列番号13、41~58からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含む、
請求項36~39の何れか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記個体は、ヒト又は動物である、
前記請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記動物は、非ヒト霊長類動物、ラット又はマウスである、
請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中(脳血管障害)、統合失調症、ハンチントン病、うつ病、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、Pick病、睡眠障害、癲癇、運動失調、RGC細胞死による視覚障害、緑内障、加齢に伴うRGC病変、視神経損傷、網膜虚血又は出血、Leber遺伝性視神経病変、損傷又は変性病変による光受容細胞変性又は死亡、黄斑変性、網膜色素変性、糖尿病関連失明、夜盲症、色盲、遺伝性失明、先天性黒内障、らせん神経節細胞死による難聴又は聴覚低下、及びそれらの任意の組み合わせから選ばれる、
請求項2に記載の方法。
【請求項44】
RESTのDNA結合ドメインを含むが、RESTのN-末端及び/又はC-末端抑制ドメインを欠失する、REST変異体。
【請求項45】
RESTの155~420番目のアミノ酸を含むが、RESTのN-末端及び/又はC-末端抑制ドメインを欠失する、
請求項44に記載のREST変異体。
【請求項46】
配列番号1、3、5若しくは9のアミノ酸配列、或いはそれと少なくとも70%、60%若しくは50%の同一性百分率を有する配列を有する、
請求項44又は45に記載のREST変異体。
【請求項47】
配列番号2、4、6若しくは10のヌクレオチド配列、或いはそれと少なくとも70%、60%若しくは50%の同一性百分率を有する配列によってコードされる、
請求項44~46の何れか1項に記載のREST変異体。
【請求項48】
前記RESTのDNA結合ドメインと融合される活性化ドメインを更に含む、
請求項44~47の何れか1項に記載のREST変異体。
【請求項49】
前記活性化ドメインは、エピジェネティック修飾タンパク質又は遺伝子活性化調節エレメントを含み、選択可能的に、前記活性化ドメインは、VP64、P65-HSF1、VP16、RTA、Suntag、P300、CBP又はそれらの任意の組み合わせを含み、選択可能的に、前記活性化ドメインは、VP64又はP65-HSF1を含む、
請求項48に記載のREST変異体。
【請求項50】
1つ又は複数の核局在化シグナル配列と融合される、
請求項44~49の何れか1項に記載のREST変異体。
【請求項51】
少なくとも1つの前記核局在化シグナル配列は、前記REST変異体のN-末端と融合される、
請求項50に記載のREST変異体。
【請求項52】
少なくとも1つの前記核局在化シグナル配列は、前記REST変異体のC-末端と融合される、
請求項50又は51に記載のREST変異体。
【請求項53】
少なくとも1つの前記核局在化シグナル配列は、前記REST変異体のN-末端及び-C末端とそれぞれ融合される、
請求項50~52の何れか1項に記載のREST変異体。
【請求項54】
前記核局在化シグナル配列は、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項50~53の何れか1項に記載のREST変異体。
【請求項55】
請求項44~54の何れか1項に記載のREST変異体をコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項56】
請求項55に記載のポリヌクレオチドを含み、及び選択可能的に前記ポリヌクレオチドと操作可能に連結されるプロモーターを更に含む、発現ベクター。
【請求項57】
前記プロモーターは、膠細胞特異的プロモーターである、
請求項56に記載の発現ベクター。
【請求項58】
前記膠細胞特異的プロモーターは、星状膠細胞特異的プロモーター又はミュラー膠細胞(MG)特異的プロモーターである、
請求項57に記載の発現ベクター。
【請求項59】
前記膠細胞特異的プロモーターは、GFAPプロモーター、ALDH1L1プロモーター、EAAT1/GLASTプロモーター、グルタミンシンテターゼプロモーター、S100βプロモーターEAAT2/GLT-1プロモーター及びRlbp1プロモーターから選ばれ、好ましくはGFAPプロモーターである、
請求項57又は58に記載の発現ベクター。
【請求項60】
前記膠細胞特異的プロモーターは、蝸牛神経膠細胞特異的プロモーターである、
請求項57~59の何れか1項に記載の発現ベクター。
【請求項61】
前記蝸牛神経膠細胞特異的プロモーターは、GFAPプロモーター、ALDH1L1プロモーター、EAAT1/GLASTプロモーター及びPlp1プロモーターからなる群より選ばれる、
請求項60に記載の発現ベクター。
【請求項62】
請求項44~54の何れか1項に記載のREST変異体又は請求項55に記載のポリヌクレオチド又は請求項56~60の何れか1項に記載の発現ベクターと、薬学的に許容されるベクターと、を含む、医薬組成物。
【請求項63】
前記ポリヌクレオチドを送達するための担体を更に含み、ここで、前記担体は、ウィルスベクター、リポソーム、ナノ粒子、エクソソーム又はウィルス様粒子を含む、
請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記ウィルスベクターは、組換えアデノ随伴ウィルスベクター(rAAV)、アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクター、アデノウィルスベクター、レンチウィルスベクター、レトロウィルスベクター、ポックスウィルスベクター、ヘルペスウィルスベクター、SV40ウィルスベクター、又はそれらの任意の組み合わせを含み、ここで、好ましくはAAV又はrAAVである、
請求項63に記載の医薬組成物。
【請求項65】
i)線条体における膠細胞、ii)大脳黒質における膠細胞、iii)網膜における膠細胞、iv)内耳における膠細胞、v)脊髄における膠細胞、vi)前頭皮質における膠細胞、vii)運動皮質における膠細胞、viii)視床下部における膠細胞、及びix)腹側被蓋野(VTA)における膠細胞といった、1つ又は複数の部位の膠細胞への局所投与に適する、
請求項62~64の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項66】
頭蓋内投与又は眼内投与に適する、
請求項62~65の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項67】
i)1つ又は複数のドーパミンニューロン関連因子、或いはii)ミュラー膠細胞において発見するための1つ又は複数の網膜神経節細胞関連因子、を更に含み、
1)ここで、前記1つ又は複数のドーパミンニューロン関連因子は、FoxA2、Lmx1a、Lmx1b、Nurr1、Pbx1a、Pitx3、Gata2、Gata3、FGF8、BMP、En1、En2、PET1、Paxファミリータンパク質(Pax3、Pax6など)、SHH、Wntファミリータンパク質、TGF-βファミリータンパク質、及びそれらの任意の組み合わせから選ばれ、
2)ここで、前記1つ又は複数の網膜神経節細胞関連因子は、β-catenin、Oct4、Sox2、Klf4、Crx、aCamKII、Brn3a、Brn3b、Brn3C、Math5、Otx2、Ngn2、Ngn1、AscL1、miRNA9、miRNA-124、Nr2e3、Nrl、及びそれらの任意の組み合わせから選ばれる、
請求項62~66の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項68】
請求項62~67の何れか1項に記載の医薬組成物を含む、キット又は試薬キット。
【請求項69】
DNA結合タンパク質が1つ又は複数のRESTの抑制ドメインに融合するものを含む、融合タンパク質。
【請求項70】
組成物であって、
a)DNA結合タンパク質と、b)1つ又は複数のRESTの抑制ドメインを含むタンパク質と、を含み、ここで、前記a)及びb)は、結合してタンパク質複合体を形成することができる、組成物。
【請求項71】
前記a)及びb)は、一対の自己組織化リガンドにそれぞれ連結され、前記自己組織化リガンドは、互いに結合することができる、
請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
前記一対の自己組織化リガンドは、i)互いに結合する2つのタンパク質ドメイン(例えば、抗原と抗体、或いは抗原と抗体における抗原結合断片)、及びii)RNA切断供与体と切断受容体からなる群より選ばれてもよい、
請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
前記1つ又は複数のRESTの抑制ドメインは、RESTのN-末端抑制領域及び/又はRESTのC-末端抑制領域を含む、
請求項69に記載の融合タンパク質又は請求項70に記載の組成物。
【請求項74】
前記1つ又は複数のRESTの抑制ドメインは、ヒトRESTタンパク質又は動物RESTタンパク質に由来する、
請求項69に記載の融合タンパク質又は請求項70に記載の組成物。
【請求項75】
前記RESTのN-末端抑制領域は、RESTの1~83番目のアミノ酸又はそれらにおける転写抑制活性を有する断片を含む、
請求項73に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項76】
前記RESTのN-末端抑制領域は、配列番号16に示される配列又はそれにおける転写抑制活性を有する断片を含む、
請求項73又は75に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項77】
前記RESTのC-末端抑制領域は、RESTの1008~1097番目のアミノ酸又はそれらにおける転写抑制活性を有する断片を含む、
請求項73に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項78】
前記RESTのC-末端抑制領域は、配列番号18に示される配列又はそれにおける転写抑制活性を有する断片を含む、
請求項73又は77に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項79】
前記転写抑制活性を有する断片は、RESTタンパク質上の少なくとも連続した20個のアミノ酸、連続した30個のアミノ酸、連続した40個のアミノ酸、又は連続した50個のアミノ酸の断片を含む、
請求項75~78の何れか1項に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項80】
前記DNA結合タンパク質は、配列によって誘導されるDNA結合タンパク質、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、又は転写因子のDNA結合部分から選ばれる、
請求項68~79の何れか1項に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項81】
前記配列によって誘導されるDNA結合タンパク質は、CRISPR-Casタンパク質又はその変異体である、
請求項80に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項82】
前記CRISPR-Casタンパク質変異体は、ヌクレアーゼ活性を有しない、
請求項81に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項83】
前記配列によって誘導されるDNA結合タンパク質は、Cas9タンパク質又はヌクレアーゼ活性を有しないCas9変異体である、
請求項80~82の何れか1項に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項84】
前記配列によって誘導されるDNA結合タンパク質は、Cas12タンパク質又はヌクレアーゼ活性を有しないCas12変異体である、
請求項80~82の何れか1項に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項85】
少なくとも1つの前記RESTのN-末端抑制領域は、前記DNA結合タンパク質のN-末端又はC-末端に連結される、
請求項73、75又は76の何れか1項に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項86】
少なくとも1つの前記RESTのC-末端抑制領域は、前記DNA結合タンパク質のN-末端又はC-末端に連結される、
請求項73、77又は78の何れか1項に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項87】
前記DNA結合タンパク質のN-末端又はC-末端に連結する少なくとも1つの直列連結された前記RESTのN-末端抑制領域を含む、
請求項73、75又は76の何れか1項に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項88】
前記DNA結合タンパク質のN-末端又はC-末端に連結する少なくとも1つの直列連結された前記RESTのC-末端抑制領域を含む、
請求項73、77又は78の何れか1項に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項89】
配列番号25~27に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項69~88の何れか1項に記載の融合タンパク質又は組成物。
【請求項90】
請求項69~89の何れか1項に記載の融合タンパク質又は組成物をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項91】
DNA結合タンパク質をコードする第1ポリヌクレオチド断片及び1つ又は複数のRESTの抑制ドメインを含むタンパク質をコードする第2ポリヌクレオチド断片を含む、
請求項90に記載のポリヌクレオチド。
【請求項92】
前記第1ポリヌクレオチド断片と第2ポリヌクレオチド断片とは、自己切断可能な第3ヌクレオチド断片を介して連結される、
請求項91に記載のポリヌクレオチド。
【請求項93】
細胞に、請求項69~89の何れか1項に記載の融合タンパク質又は組成物、或いは請求項90~92の何れか1項に記載のポリヌクレオチドを送達することを含み、ここで、前記DNA結合タンパク質は、目標遺伝子又はその調節配列に結合し、そして前記目標遺伝子の発現を抑制することができる、
細胞における目標遺伝子の発現を抑制する方法。
【請求項94】
個体に、請求項69~89の何れか1項に記載の融合タンパク質又は組成物、或いは請求項90~92の何れか1項に記載のポリヌクレオチドを送達することを含み、ここで、前記DNA結合タンパク質は、目標遺伝子又はその調節配列に結合し、そして前記目標遺伝子の発現を抑制することができる、
個体における目標遺伝子の発現を抑制する方法。
【請求項95】
前記DNA結合タンパク質は、配列によって誘導されるDNA結合タンパク質、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、又は転写因子のDNA結合部分から選ばれる、
請求項93又は94に記載の方法。
【請求項96】
前記配列によって誘導されるDNA結合タンパク質は、CRISPR-Casタンパク質又はその変異体である、
請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記CRISPR-Casタンパク質変異体は、ヌクレアーゼ活性を有しない、
請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記配列によって誘導されるDNA結合タンパク質は、Cas9タンパク質又はヌクレアーゼ活性を有しないCas9変異体である、
請求項95~97の何れか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記配列によって誘導されるDNA結合タンパク質は、Cas12タンパク質又はヌクレアーゼ活性を有しないCas12変異体である、
請求項95~97の何れか1項に記載の方法。
【請求項100】
前記方法は、前記細胞又は前記個体に、目標遺伝子又はその調節配列の標的領域に相補的な標的化配列と、前記DNA結合タンパク質に結合する配列と、を含むガイドRNAを送達することを更に含む、
請求項93~99の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の内容は、生物医薬分野に関する。より具体的には、本開示の内容は、非ニューロン細胞をニューロン細胞に分化転換するための標的とするRE1/NRSEエレメント、並びにニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患の予防及び/又は治療におけるRE1/NRSE遮断剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リプレッサーエレメント1/ニューロン制限サイレンサーエレメント(repressor element 1/neuron-restrictive silencer element、RE1/NRSE)は、長さが約21 bp(20~23 bpに亘っている)である特定のDNA配列であり、主にREST(ニューロン制限サイレンサー因子(neuron-restrictive silencer factor、NRSF)とも呼ばれるRE1サイレンシング転写因子(RE1-silencing transcription factor))に結合し、ニューロンの発育と成熟に関連する遺伝子の発現を調節する。RE1は、ニューロン成熟に関連する負の調節エレメントであり、NaV1.2及びSCG10のプロモーター5’末端に最初に見出され、これらの遺伝子の発現を調節する。非ニューロン細胞において、RE1部位は、ヒストンデアセチラーゼ及びメチラーゼなどからなるサイレンシング複合体に結合され、ニューロン関連遺伝子の発現を抑制する。しかし、マウス及びヒトにおいて、約1800以上のRE1エレメントが存在するため、従来技術で調節することが困難である。例えば、CRISPR媒介性遺伝子調節及びエピジェネティック修飾技術は、非常に高い精確性を有し、特定の遺伝子の発現を精確に調節することができるが、RE1によって調節される遺伝子の発現をこのような方法で調節することは困難である。
【0003】
パーキンソン病(PD)は、中脳黒質ドーパミンニューロンの喪失を特徴とする、ニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患である。現在、パーキンソン病に対する治療手段は、主にレボドパなどのドーパミン類似体に代表される小分子薬物である。近年発展してきた脳深部電極刺激などの外科的治療でも疾患の症状をある程度改善することができる。しかし、これらの方法は何れも病状の一部のみを緩和することができ、病状の進行を阻止することができず、ドーパミンニューロンの死亡を遅らせることもできない。一方では、分化転換治療の概念の提案は、ドーパミンニューロンの再生に希望をもたらす。膠細胞における幾つかの遺伝子の過剰発現又は膠細胞に対する遺伝子編集によって、膠細胞をドーパミンニューロンに分化転換して、喪失又は死亡したドーパミンニューロンを補充する。ミュラー膠細胞(Muller glia、MG)は、網膜組織における主な神経膠細胞である。網膜神経節細胞(retinal ganglion cell、RGC)は網膜の最内層に位置する神経細胞であり、その樹状突起は主に双極細胞とシナプス結合を確立し、その軸索は視神経乳頭まで延びて視神経を形成し、脳まで延びる。網膜神経節細胞(RGC)損傷又は変性病変は、永続的な失明を引き起こす主な原因である。RGCは網膜内の唯一の出力ニューロンであるため、RGC損傷又は変性病変は永続的な失明をもたらす。機能性RGCの再構成は、視力を回復するために失明患者を支援することができる現在唯一の方法であるが、RGC細胞の再生が非常に困難であるため、RGC細胞をどのように再生できるかを検討することは、数多くのRGC細胞死による失明患者に対して目が明く希望をもたらす。
【0004】
光受容細胞死は盲目を引き起こす最も主な原因であり、光受容細胞は桿体細胞及び錐体細胞に分類され、光受容細胞死の原因は、遺伝性盲目、後天性盲目及び老人性変性盲目を含む多くのものがある。網膜色素変性及び先天性黒内障などの一般的な遺伝性盲目は何れも、網膜における光受容細胞死に起因する。視覚システムにおいて、光受容細胞は光シグナルを神経電気シグナルに変換する唯一の細胞であり、光受容細胞と下流の双極細胞との間の連絡を確立し、神経電気シグナルを双極細胞に伝達し、双極細胞とRGC又はアマクリン細胞との間に連絡を更に確立し、下流への神経シグナルの伝達を継続する。光受容細胞死による盲目分野では、治療に使用できる薬物は現在のところ存在しない。遺伝子治療技術の発展に伴い、遺伝的要因による盲目に対する薬物の開発が進められているが、Spark社が開発したRPE65遺伝子機能の喪失を治療する遺伝子治療薬物など、光受容細胞死に至らない遺伝性盲目に対してのみ、この薬物を使用することができる。光受容細胞死が既に発生した盲目患者に対しては、治療できる薬物は現在のところ全く存在ない。この分野では、幹細胞療法及び再生療法に期待が寄せられている。
【0005】
内耳らせん神経節細胞死は神経性難聴を引き起こす最も主な原因である。内耳らせん神経節細胞は内耳らせん神経節に位置し、その一端が内耳毛細胞に連結し、他端が中枢神経系に連結し、聴覚シグナルを中枢神経系に伝達する唯一のチャネルである。内耳らせん神経節細胞は非常に特別なニューロンの一種であり、その遺伝子発現プロファイルが通常のニューロンと非常に大きく異なる。遺伝的又は非遺伝的を問わず、内耳らせん神経節細胞死による永続的な難聴に対して、治療に使用できる薬物は現在のところ全く存在ない。内耳らせん神経節の特別の構造のため、幹細胞移植技術も、現在進んでいない。一方では、他の期待されている技術はインサイチュ再生技術であるが、内耳らせん神経節細胞の特別性のため、内耳らせん神経節細胞の誘導は現在成功していない。トランスジェニックマウスにより内耳らせん神経節細胞が誘導される研究があるが、発育の過程で産生するものであり、一方では、内耳らせん神経節細胞死による難聴は成人者又は高齢者で多く発生し、成熟した内耳系では現在内耳らせん神経節細胞の産生が誘導されていない。
【0006】
従来の研究において、科学者らは、体外培養系において、異なる培地及び小分子を添加することにより、複数の遺伝子及び転写因子の発現を同時に配合し、多くの特別な種類のニューロンを誘導することに成功しているが、これらの体外実験を体内で適用することは困難である。体内の複雑な環境のため、体外でスクリーニングされた様々な因子が体内で体外実験のように機能できなくなるため、体外でスクリーニングされたニューロンの分化転換を誘導する多くの因子は、体内で膠細胞のニューロンへの分化転換を誘導することができない。現在、体内でのニューロンの誘導に成功できる因子は、主にAscL1、NgN2、NeuroD1及びPTBP1である。AscL1、NgN2及びNeuroD1は体内でニューロンの産生を誘導することができるが、普通のグルタミン酸作動性ニューロンのみを産生することができ、ドーパミンニューロン、5-ヒドロキシトリプタミン作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、網膜神経節細胞、光受容細胞及び蝸牛らせん神経節細胞などの特別な機能を有するニューロンの産生を誘導することができない。現在報告されている分化転換因子のうち、Ptbp1のみが体内で膠細胞の特別な種類のニューロンへの分化転換を誘導することができ、その種類はドーパミンニューロンである。AscL1+NeuroD1+Lmx1b+miR218の4つの因子を膠細胞に同時に過剰発現させることは、膠細胞によるドーパミンニューロンの産生を促進できることが報告されているが、その効率は非常に低く、且つ複数のAAVによる共感染に制限され、実際の薬物開発ではほぼ実現不可能である。これはまた、体内で特別な種類のニューロン再生を実現することは、極めて困難な研究であるが、特別な種類のニューロン再生は、非常に重要な意味を有することを示す。これらの特別な種類のニューロンは、ヒトが直面する疾患において最も主な細胞型であることが多い。上記のように、これらの細胞は多くの疾患に関連しており、現在、幹細胞移植技術にせよ、分化転換再生技術にせよ、突破が期待されている。従って、ドーパミンニューロン、網膜神経節細胞、光受容細胞又はその他の機能性神経を再生することができる方法の開発が、当分野において切望されている。
【発明の概要】
【0007】
一態様において、本願は、非ニューロン細胞におけるニューロン関連遺伝子の発現を調節するためにRE1/NRSEエレメントを遮断する方法であって、RE1/NRSEエレメントへのRESTの結合を低減すること、或いはRESTの量若しくは活性を低減することを含む方法を提供する。
【0008】
幾つかの実施形態において、例えば、遺伝子編集、低分子RNA干渉又はタンパク質加速分解の方法によってRESTの量を低減する。
【0009】
幾つかの実施形態において、例えば、遺伝子編集、アンチセンスオリゴヌクレオチド(Antisense Oligonucleotide,ASO)、低分子RNA干渉、miRNA技術、小分子化合物、又はタンパク質加速分解の方法によってRESTの量を低減する。
【0010】
幾つかの実施形態において、遺伝子編集によってRESTの抑制活性領域を除去し、或いはREST活性抑制剤によってRESTの活性を低減する。
【0011】
幾つかの実施形態において、RESTへのREST結合剤の結合によってRE1/NRSEエレメントへのRESTの結合を遮断し、上記REST結合剤は例えばREST抗体である。
【0012】
幾つかの実施形態において、RE1/NRSEエレメントへのRE1/NRSEエレメント遮断剤の結合によってRE1/NRSEエレメントへのRESTの結合を遮断する。
【0013】
幾つかの実施形態において、上記RE1/NRSEエレメント遮断剤は、RESTの競合結合タンパク質、短いペプチド又は遺伝子編集タンパク質若しくはそれをコードする核酸、或いは核酸及び核酸類似体、或いは小分子RE1/NRSEエレメント遮断剤である。
【0014】
幾つかの実施形態において、上記RE1/NRSEエレメント遮断剤は、REST変異体又はそれをコードする核酸である。
【0015】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、RESTのN末端及びC末端抑制ドメインを欠失するRESTのDNA結合ドメインであり、好ましくはRESTの155~420番目のアミノ酸である。
【0016】
幾つかの実施形態において、上記RESTのDNA結合ドメインは、活性化ドメインと融合される。
【0017】
幾つかの実施形態において、上記活性化ドメインは、エピジェネティック修飾タンパク質又は遺伝子活性化調節エレメントから選ばれ、例えばVP64、P65-HSF1、VP16、RTA、Suntag、P300、CBP又はそれらの組み合わせであり、好ましくはVP64又はP65-HSF1である。
【0018】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、配列番号1、3、5及び9のアミノ酸配列又は配列番号2、4、6及び10のヌクレオチド配列、或いはそれと少なくとも70%、60%、50%の同一性百分率を有する配列を有する。
【0019】
幾つかの実施形態において、上記非ニューロン細胞は、例えば膠細胞、線維芽細胞、幹細胞、神経前駆体細胞、神経幹細胞を含み、ここで、膠細胞は、星状膠細胞、乏突起膠細胞、上衣細胞、シュワン細胞、NG2細胞、衛星細胞、ミュラー膠細胞、内耳神経膠細胞又はそれらの組み合わせから選ばれ、好ましくは星状膠細胞、ミュラー膠細胞及び蝸牛神経膠細胞である。
【0020】
幾つかの実施形態において、上記膠細胞は、脳、脊髄、目又は耳に由来し、ここで、脳膠細胞は、線条体、黒質、中脳腹側被蓋野、脊髄、視床下部、中脳背側又は大脳皮質に由来し、好ましくは線条体及び黒質である。
【0021】
幾つかの実施形態において、上記非ニューロン細胞をニューロン細胞に分化転換するために、上記非ニューロン細胞におけるニューロン関連遺伝子の発現を調節し、ここで、上記ニューロン細胞は哺乳動物ニューロンであり、ここで、好ましくはドーパミンニューロン、GABAニューロン、5-HTニューロン、グルタミン酸作動性ニューロン、ChATニューロン、NEニューロン、運動ニューロン、脊髄ニューロン、脊髄運動ニューロン、脊髄感覚ニューロン、光受容細胞(桿体細胞及び錐体細胞)、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞(RGC)、蝸牛神経細胞(蝸牛らせん神経節細胞及び前庭ニューロン)、錐体ニューロン、中間ニューロン、中型有棘ニューロン(MSN)、プルキンエ細胞、顆粒細胞、嗅覚ニューロン、糸球体周囲細胞又はそれらの組み合わせであり、より好ましくはドーパミンニューロン、網膜神経節細胞、光受容細胞及び蝸牛らせん神経節細胞である。
【0022】
幾つかの実施形態において、上記非ニューロン細胞及び/又はニューロン細胞は、例えばヒト、非ヒト霊長類動物、ラット及びマウスに由来し、好ましくはヒトである。
【0023】
別の態様において、本願は、ニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患の予防及び/又は治療に使用される薬物を製造するためのRE1/NRSEエレメント遮断剤の使用であって、上記RE1/NRSEエレメント遮断剤がRE1/NRSEエレメントへのRE1/NRSE内因性結合因子の結合を低減し、ここで、上記RE1/NRSE内因性結合因子にRESTなどのジンクフィンガータンパク質が含まれる、使用を提供する。
【0024】
幾つかの実施形態において、上記RE1/NRSEエレメント遮断剤は、RE1/NRSEエレメントに結合してRE1/NRSEエレメントへのRE1/NRSE内因性結合因子の結合を遮断する。
【0025】
幾つかの実施形態において、上記RE1/NRSEエレメント遮断剤は、RESTの競合結合タンパク質、短いペプチド又は遺伝子編集タンパク質若しくはそれをコードする核酸、或いは核酸及び核酸類似体、或いは小分子RE1/NRSEエレメント遮断剤である。
【0026】
幾つかの実施形態において、上記RE1/NRSEエレメント遮断剤は、REST変異体又はそれをコードする核酸である。
【0027】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、RESTのN末端及びC末端抑制ドメインを欠失するRESTのDNA結合ドメインであり、好ましくはRESTの155~420番目のアミノ酸である。
【0028】
幾つかの実施形態において、上記RESTのDNA結合ドメインは、活性化ドメインと融合される。
【0029】
幾つかの実施形態において、上記活性化ドメインは、エピジェネティック修飾タンパク質又は遺伝子活性化調節エレメントから選ばれ、例えばVP64、P65-HSF1、VP16、RTA、Suntag、P300、CBP又はそれらの組み合わせであり、好ましくはVP64又はP65-HSF1である。
【0030】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、配列番号1、3、5及び9のアミノ酸配列又は配列番号2、4、6及び10のヌクレオチド配列、或いはそれと少なくとも70%、60%、50%の同一性百分率を有する配列を有する。
【0031】
幾つかの実施形態において、上記ニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中(脳血管障害)、統合失調症、ハンチントン病、うつ病、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、Pick病、睡眠障害、癲癇、運動失調、RGC細胞死による視覚障害、緑内障、加齢に伴うRGC病変、視神経損傷、網膜虚血又は出血、Leber遺伝性視神経病変、損傷又は変性病変による光受容細胞変性又は死亡、黄斑変性、網膜色素変性、糖尿病関連失明、夜盲症、色盲、遺伝性失明、先天性黒内障、らせん神経節細胞死による難聴又は聴覚低下、又はそれらの組み合わせから選ばれる。
【0032】
別の態様において、本願は、REST変異体又はそれをコードする核酸、或いは人工的に設計されたRESTのDNA結合ドメイン類似体である、RE1/NRSEエレメント遮断剤を提供する。
【0033】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、RESTのN末端及びC末端抑制ドメインを欠失するRESTのDNA結合ドメインであり、好ましくはRESTの155~420番目のアミノ酸である。
【0034】
幾つかの実施形態において、上記RESTのDNA結合ドメインは、活性化ドメインと融合される。
【0035】
幾つかの実施形態において、上記活性化ドメインは、エピジェネティック修飾タンパク質又は遺伝子活性化調節エレメントから選ばれ、例えばVP64、P65-HSF1、VP16、RTA、Suntag、P300、CBP又はそれらの組み合わせであり、好ましくはVP64又はP65-HSF1である。
【0036】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、配列番号1、3、5及び9のアミノ酸配列又は配列番号2、4、6及び10のヌクレオチド配列、或いはそれと少なくとも70%、60%、50%の同一性百分率を有する配列を有する。
【0037】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体又はRESTのDNA結合ドメインは、例えばヒト、非ヒト霊長類動物、ラット及びマウスに由来し、好ましくはヒトである。
【0038】
別の態様において、本願は、上記遮断剤を含む医薬組成物又はキット若しくは試薬キットを提供する。
【0039】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物又はキット若しくは試薬キットは、注射、頭蓋内投与、眼内投与、耳内投与、吸入、非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、表面投与又は経口投与のために製剤化される。
【0040】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物又はキット若しくは試薬キットは、上記RE1/NRSEエレメント遮断剤を送達するためのベクター又は担体であって、上記ベクター又は担体がウィルスベクター、リポソーム、ナノ粒子、エクソソーム、ウィルス様粒子であり、ここで、ウィルスベクターに組換えアデノ随伴ウィルスベクター(rAAV)、アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクター、アデノウィルスベクター、レンチウィルスベクター、レトロウィルスベクター、ポックスウィルスベクター、ヘルペスウィルスベクター、SV40ウィルスベクター、及びそれらの組み合わせが含まれ、ここで、好ましくはAAV及びrAAVである、ベクター又は担体を更に含む。
【0041】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物又はキット若しくは試薬キットは、REST変異体を発現するための発現ベクターであって、上記発現ベクターにはREST変異体をコードするヌクレオチド配列が含まれ、その発現を引き起こすプロモーターと操作可能に連結される、発現ベクターを含む。
【0042】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物又はキット若しくは試薬キットは、i)線条体における膠細胞、ii)大脳黒質における膠細胞、iii)網膜における膠細胞、iv)内耳における膠細胞、v)脊髄における膠細胞、vi)前頭皮質における膠細胞、vii)運動皮質における膠細胞、viii)視床下部における膠細胞、及びix)腹側被蓋野(VTA)における膠細胞の少なくとも1つへの局所投与に使用される。
【0043】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物又はキット若しくは試薬キットは、i)1つ又は複数のドーパミンニューロン関連因子、或いはii)ミュラー膠細胞において発見するための1つ又は複数の網膜神経節細胞関連因子、を更に含み、
1)ここで、上記1つ又は複数のドーパミンニューロン関連因子は、FoxA2、Lmx1a、Lmx1b、Nurr1、Pbx1a、Pitx3、Gata2、Gata3、FGF8、BMP、En1、En2、PET1、Paxファミリータンパク質(Pax3、Pax6など)、SHH、Wntファミリータンパク質及びTGF-βファミリータンパク質、又はそれらの組み合わせから選ばれ、
2)ここで、上記1つ又は複数の網膜神経節細胞関連因子は、β-catenin、Oct4、Sox2、Klf4、Crx、aCamKII、Brn3a、Brn3b、Brn3C、Math5、Otx2、Ngn2、Ngn1、AscL1、miRNA9、miRNA-124、Nr2e3及びNrlなどの因子から選ばれる。
【0044】
幾つかの実施形態において、上記プロモーターは、膠細胞特異的プロモーター又はミュラー膠細胞(MG)細胞特異的プロモーターであり、上記膠細胞特異的プロモーターは、GFAPプロモーター、ALDH1L1プロモーター、EAAT1/GLASTプロモーター、グルタミンシンテターゼプロモーター、S100βプロモーターEAAT2/GLT-1プロモーター及びRlbp1プロモーターから選ばれ、好ましくはGFAPプロモーターである。
【0045】
幾つかの実施形態において、膠細胞の分化転換効率は、少なくとも1%、或いは少なくとも10%、20%、30%、40%又は50%である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】内因性ジンクフィンガータンパク質及び抑制システムの設計の模式図である。(A)N-末端抑制ドメイン、RE1への結合を担当する中間のDNA結合構造、及びC-末端の転写抑制ドメインを含む、RESTタンパク質の構成図である。RZFD-V1は、ヒトRESTタンパク質のRE1 DNAへの結合を担当する中間の8個のジンクフィンガードメイン(RZFD、REST Zinc Figure domain)を含む、RZFDの第1の設計を表す。RZFD-V2及びRZFD-V3の2つの設計において、2種類の異なる活性化因子とそれぞれ融合したRZFDを、RZFD-V2及びRZFD-V3としてそれぞれ命名する。RZFD-V2は、RZFDのC-末端とVP64との融合により得られ、RZFD-V3は、RZFDのC-末端に1つのP65と1つのHSF1が融合された転写活性化ドメインからなる。RZFDmaxは、RZFDをコドン最適化し、哺乳動物におけるその発現量を増加させると同時に、RZFDの両端にBPNLS配列を付加し、その核内に入って機能を発揮する効率を向上させる。(B)膠細胞において、RESTがRE1に結合し、RE1によって調節されるニューロン関連遺伝子を発現できないようにRESTのC-末端及びN-末端が幾つかの転写抑制因子をそれぞれ動員する。(C)膠細胞にRZFD-V1を発現した後、RZFDがRE1に競合的に結合し、RE1へのRESTの結合を阻止することによって、RESTサイレンシング複合体を形成することができず、ニューロン関連遺伝子の発現を含むRE1によって調節される遺伝子を抑制することができないと考えられる。(D)RZFD-V2はRZFDドメインを介してRE1に競合的に結合し、RE1へのREST/NRSFの結合を阻止すると同時に、そのVP64ドメインは転写活性化因子を動員し、RE1によって調節されるニューロン関連遺伝子の発現を増強することができる。(E)膠細胞からニューロンへの分化転換過程において、RZFD-V3のRZFDドメイン結合がRE1に結合し、RE1へのRESTの結合を阻止し、RESTによるRE1調節遺伝子の抑制を解除すると同時に、P65-HSF1活性化ドメインが幾つかの転写活性化因子を動員し、RE1によって調節されるニューロン関連遺伝子の発現を更に促進する。(F)RESTのN-末端及びC-末端を利用して抑制システムを開発する設計の模式図であり、dCas9をRESTのN-末端及びC-末端にそれぞれ連結し、dCas9-Krabを陽性対照システムとする。(G及びH)dCas9-Krab又はdCas9-3xKrabがgRNAの作用下で標的遺伝子の発現を抑制する模式図である。(I~K)N-dCas9又は3xN-dCas9又は3xN-dCas9-3xCがgRNAの誘導下で標的遺伝子の発現を抑制する模式図であり、ここで、NはRESTのN-末端抑制ドメインを表し、CはRESTのC-末端抑制ドメインを表す。(L)各抑制システムでHEK293T細胞をトランスフェクトしてPtbp1遺伝子発現の効率を抑制し、dCas9-Krab、N-dCas9及び3xN-dCas9の抑制効率は何れも比較的低く、dCas9-3xKrab及び3xN-dCas9-3xCの抑制効率は比較的高い。
【0047】
図2】RZFD媒介性膠細胞からニューロンへの分化転換である。(A)AAVベクター設計の模式図であり、ベクター1はGFAPがmCherry発現を駆動するベクターの模式図であり、GFAPは膠細胞における特異的に発現するプロモーターであり、mCherryは膠細胞の標識に適用される赤色蛍光タンパク質である。ベクター2はヒトRZFD発現ベクターの模式図であり、星状膠細胞特異的プロモーターGFAPによってRZFDの発現が駆動される。(B)注射及び採取分析の模式図であり、AAV注射当日を0日目とし、注射後の2週間に膠細胞のニューロンへの分化転換の結果を採取分析し、注射後の1.5か月に膠細胞のニューロン及びドーパミンニューロンへの分化転換の結果を分析する。(C)AAVウィルス注射及び分化転換の模式図であり、マウスの線条体又は黒質にGFAP-mCherryを単独で注射し、或いはGFAP-mCherryとGFAP-RZFDとの混合AAVを注射し、GFAP-mCherryは膠細胞を赤色に標識し、GFAP-RZFDは膠細胞をニューロンに分化転換する。(D)野生型のC57マウス線条体にGFAP-mCherryを単独で注射した後、星状膠細胞を赤色に標識し、mCherryチャネルはGFAP-mCherry標識上の星状膠細胞を表し、DAPIは細胞核染色であり、NeuNはニューロン特異的マーカーであり、重ね合わせ図は、GFAP-mCherryが星状膠細胞を特異的に標識するが、ニューロンを標識しないことを示す。(E)マウス線条体にGFAP-mCherryとGFAP-RZFDとの混合AAVを注射した後の2週間に採取分析すると、膠細胞の大部分が変形し始め、且つ少量のmCherry陽性細胞がNeuNを発現し始めたが、THを発現する細胞がなく、ここで、NeuNはニューロン特異的マーカーであり、THはドーパミンニューロン特異的マーカーである。(F)マウス線条体にGFAP-mCherryとGFAP-RZFDとの混合AAVを注射した後の1.5か月後に採取分析すると、mCherry陽性細胞の大部分がニューロン特異的マーカーを発現し、且つ一部の細胞がドーパミン特異的マーカーTHを発現する。矢印は、mCherry及びTHを同時に発現するニューロンを示す。(G)マウス線条体にGFAP-mCherryとGFAP-RZFDmaxとの混合AAVを注射した後の約1.5か月後に採取分析すると、GFAP-mCherry+GFAP-RZFDmaxは、マウス線条体星状膠細胞のドーパミンニューロンへの分化転換を促進し、THはドーパミン特異的マーカーである。スケールは50 μmである。(H)RZFD及びRZFDmax分化転換によるドーパミンニューロン産生の数の統計であり、対照群にはTH陽性細胞がなく、RZFDmax分化転換によるドーパミンニューロン産生の数はRZFD群よりも明らかに多い(P=0.0212)。
【0048】
図3】RZFDは、6-OHDAによってモデリングされたDAT-Cre:Ai9マウスにおいて星状膠細胞をドーパミンニューロンに分化転換する。(A)AAV注射の模式図であり、GFAP-EGFPは、GFAPプロモーターの起動下で星状膠細胞を特異的に標識する標識AAVである。GFAP-EGFP及びGFAP-RZFDを混合してマウス線条体又は黒質に注射し、星状膠細胞のドーパミンニューロンへの分化転換を誘導する。(B)対照群AAV注射後の分析では、緑色蛍光シグナルはGFAP-EGFPが特異的に標識する星状膠細胞であり、依然として典型的な星状膠細胞形態を呈し、ドーパミンニューロンを特異的に標識するtdTomatoシグナルがないと共にTH陽性細胞もなく、黄色矢印はEGFP陽性の星状膠細胞を指す。(C)GFAP-EGFP及びGFAP-RZFDの混合注射群は、ほぼ全ての緑色蛍光標識細胞がニューロン形態を有し、且つ線条体にtdTomatoシグナルが現れ、また、tdTomatoシグナルとTHシグナルが共標識され、白色矢印はTH陽性のtdTomato赤色細胞を指す。スケールは50 μmである。(D)GFAP-EGFPを注射した対照群及びGFAP-EGFP+GFAP-RZFDを注射した治療群のマウスに対して、各群に8匹を超えるマウスで、ロータロッドテスト試験を行う。(E)シリンダーテスト試験では、各群に8匹を超えるマウスで、体の同じ側の前足が壁に接触する回数を統計する。(F及びG)薬物誘発性回転行動試験では、各群に8匹を超えるマウスで、1分間当たりの回転回数を統計し、そして同じ側の回転比を統計する。
【0049】
図4】RZFD-VP64又はRZFD-P65-HSF1媒介性膠細胞のニューロンへの分化転換である。(A)GFAP-RZFD-V2及びGFAP-RZFD-V3発現ベクターの設計の模式図である。RZFD-V2は、膠細胞特異的プロモーターGFAPによって駆動されて発現されるRZFDとVP64の融合タンパク質であり、RZFD-V3は、RZFD及びP65-HSF1活性化ドメインからなる。(B)GFAP-RZFD-V2とGFAP-mCherryとの混合AAVをマウスの線条体又は黒質に注射する模式図であり、注射後の1.5か月に採取分析する。(C)GFAP-RZFD-V2が線条体において膠細胞をニューロン又はドーパミンニューロンに分化転換する代表図であり、mCherryはGFAP-mCherryによって標識される細胞であり、THはドーパミンニューロン特異的マーカーであり、NeuNはニューロン特異的マーカーである。矢印は、mCherry及びTHを同時に発現するニューロンを示す。(D)DAT-Cre:Ai9マウスにGFAP-RZFD-V3を注射する模式図であり、GFAP-RZFD-V3をDAT-Cre:Ai9マウスの線条体又は黒質に注射し、1.5か月後に採取分析し、Dat-CreはDat内因性プロモーターの後にCreを挿入したものであり、Ai9はRosa26-CAG-LSL-tdTomato-WPREマウスであり、DAT-Cre:Ai9マウス大脳において成熟したドーパミンニューロンのみはtdTomato赤色蛍光シグナルに標識される。(E)線条体にGFAP-RZFD-V3注射した後の1.5か月に採取分析する結果の代表図であり、赤色蛍光シグナル(tdTomato)は、転換された成熟したドーパミンニューロンを表し、緑色シグナルはドーパミンニューロン特異的マーカーTH染色であり、白色シグナルはニューロン特異的マーカーNeuN染色であり、Merge図は、tdTomato赤色シグナルとTH染色緑色シグナルとが重なり合うことを示し、矢印はtdTomato及びTHを同時に発現するニューロンを示す。スケールは50 μmである。
【0050】
図5】網膜におけるGFAP-RZFDの過剰発現によって、ミュラー膠細胞を光受容細胞又は網膜神経節細胞に分化転換する。(A)GFAP-RZFDの過剰発現によってミュラー膠細胞を光受容細胞又は網膜神経節細胞に分化転換する実験のフローチャートである。ここでベクター1は、Ai9マウス網膜に注射されるGFAP-EGFP-2A-Creであり、マウスのミュラー膠細胞を特異的に標識するために使用され、標識された細胞はtdTomatoに標識される。(B)対照群ウィルスGFAP-EGFP-2A-CreをAi9マウス網膜に注射した後、赤色蛍光シグナルはミュラー膠細胞に特異的に発現される。(C)GFAP-RZFD+GFAP-EGFP-2A-Cre注射群では、白色矢印は分化転換される光受容細胞を指す。スケールは50 μmである。(D)GFAP-EGFP-2A-Cre対照群ウィルスを注射したマウスの視神経であり、視神経においてtdTomatoによって標識される軸索が観察されていない。(E)GFAP-RZFD+GFAP-EGFP-2A-Cre注射群のマウスの視神経であり、視神経において大量のtdTomatoにより標識される軸索が観察される。(F)NMDAによってモデリングされるAi9マウス網膜に対照群ウィルスGFAP-EGFP-2A-Creを注射した後に赤色蛍光シグナルはミュラー膠細胞に特異的に発現され、RGC特異的タンパク質マーカーRbpmsと共標識されず、黄色矢印はRbpms陽性のRGCを指す。(G)GFAP-RZFD注射群AAVの網膜において、tdTomato陽性細胞の一部が網膜神経節細胞層に位置し、且つRGC特異的タンパク質マーカーRbpmsと共標識されることが見出され、白色矢印はtdTomato及びRbpmsの二重陽性の細胞を指す。(H)光受容細胞特異的タンパク質マーカーRhodopsin染色であり、GFAP-RZFD注射群の網膜外顆粒層において、tdTomato陽性細胞の一部がRhodopsinと共標識されることが見出され、白色矢印は共標識される細胞を指す。(I)錐体細胞特異的タンパク質マーカーCone Arrestin(mCAR)染色であり、GFAP-RZFD注射群の網膜外顆粒層において、少量のtdTomato陽性細胞がmCARと共標識され、白色矢印は共標識される細胞を指す。スケールは50 μmである。(J)対照群及び試験群tdTomato陽性の光受容細胞の数を統計し、対照群はtdTomatoにより標識される光受容細胞がほとんどなく、GFAP-RZFD過剰発現群は分化転換されたtdTomato陽性光受容細胞が観察され、各群に3匹を超えるマウスである。(K)各群に3匹を超えるマウスで、GFAP-EGFP-2A-Cre対照群AAV及びGFAP-RZFD+GFAP-EGFP-2A-Cre群AAVを注射したマウスの視神経におけるtdTomato陽性軸索の数である。
【0051】
図6】miRNAの過剰発現によって、マウス星状膠細胞をニューロンに分化転換することができるが、ドーパミンニューロンを産生することができない。(A)miRNAの過剰発現によって星状膠細胞のニューロンへの変換が実現される模式図である。ベクター1はAAV-GFAP-mCherryであり、ベクター2(AAV-GFAP-miRNA)はGFAPによりmiRNAの過剰発現が駆動される。ベクター1の単独注射を対照群とし、ベクター1+2の混合注射を実験群とする。(B)図Aのベクター2に対応する。GFAPプロモーターによりmiR-124(miR-124-5p及びmiR-124-3pを含む)、miR-9(miR-9-5p及びmiR-9-3pを含む)又はmiR-9-miR-124を発現するAAV発現ベクターがそれぞれ駆動される模式図である。(C)マウス線条体にGFAP-mCherryを注射し、mCherryは膠細胞に特異的に発現され、且つ線条体にTH陽性細胞が存在しない。(D)マウス線条体に実験群AAVウィルス(GFAP-mCherry+GFAP-miR-124)を注射し、白色矢印は標識される細胞を指し、重ね合わせ図は赤色蛍光がNeuNと重なり合わないことを示し、スケールは50 μmである。(E)マウス線条体にGFAP-mCherry+GFAP-miR-9+miR-124を注射し、白色矢印は標識される細胞を指し、重ね合わせ図は赤色蛍光がNeuNと重なり合うことを示し、スケールは50 μmである。(F)マウス線条体にGFAP-mCherry+GFAP-miR-9+miR-124を注射し、THはドーパミンニューロン特異的マーカーであり、白色矢印は標識される細胞を指し、重ね合わせ図は赤色蛍光がTHシグナルと重なり合わないことを示し、スケールは50 μmである。
【0052】
図7】CasRxは、体外でCtdsp1のmRNA発現をノックダウンすることができる。体外のヒト293T及びマウスN2A細胞系におけるCasRxの発現及びCtdsp1 mRNAを標的とする1つのgRNAは、Ctdsp1のmRNAノックダウンを実現することができる。Ctdsp1は、Carboxy-terminal domain RNA polymerase II polypeptide A small phosphatase 1(Ctdsp1)と全称される。
【0053】
図8】Ctdsp1のノックダウンによって、マウス星状膠細胞をニューロンに分化転換することができるが、ドーパミンニューロンを産生することができない。(A)遺伝子のノックダウンによって星状膠細胞のニューロンへの変換が実現される模式図である。ベクター1(AAV-GFAP-mCherry)は星状膠細胞特異的プロモーターGFAPにより蛍光タンパク質mCherryの発現が駆動され、ベクター2(AAV-GFAP-CasRx)はGFAPによりRNA編集タンパク質CasRxの発現が駆動される。ベクター3(AAV-GFAP-CasRx-Ctdsp1)は、CasRx及びCtdsp1を標的とする1つのgRNAをコードする。C57BL/6マウス線条体又は黒質にAAV-GFAP-CasRx-Ctdsp1又はgRNAを含まない対照ベクターAAV-GFAP-CasRx及びAAV-GFAP-mCherryを注射する。AAV-GFAP-mCherry共注射は、星状膠細胞又は星状膠細胞から転換されるニューロンを特異的に標識するために使用される。注射後の1~2か月後に転換の発生を確認する。ベクター1+2を対照群とし、ベクター1+3を試験群とする。(B)マウス線条体に対照群AAV(GFAP-mCherry+GFAP-CasRx)を注射し、オレンジ色の矢印は標識される星状膠細胞を指し、NeuNはニューロン特異的マーカーであり、重ね合わせ図は赤色蛍光がNeuNと重なり合わないことを示し、スケールは50 μmである。(C)マウス線条体に実験群AAVウィルス(GFAP-mCherry+GFAP-CasRx-Ctdsp1)を注射した後に膠細胞がニューロンに分化転換する結果であり、白色矢印は赤色蛍光シグナルとNeuNが共標識される細胞を指し、スケールは50 μmである。
【0054】
図9】Ctdsp1のノックダウン又はmiRNAの過剰発現によって、網膜神経節細胞、光受容細胞又は蝸牛らせん神経節細胞を産生することができない。(A)ベクター設計の模式図であり、ベクター1(GFAP-EGFP-2A-Cre)は星状膠細胞特異的プロモーターGFAPによりミュラー膠細胞のCre特異的発現が駆動され、ベクター2(GFAP-CasRx)はGFAPによりRNA編集タンパク質のCasRx発現が駆動される。ベクター3(GFAP-CasRx-Ctdsp1)は、CasRx及びCtdsp1を標的とする1つのgRNAをコードする。(B)マウス網膜にGFAP-CasRx-Ctdsp1+GFAP-EGFP-2A-Cre又は対照ウィルスGFAP-CasRx+GFAP-EGFP-2A-Creを注射する。GFAP-EGFP-2A-Cre共注射は、ミュラー膠細胞を特異的に標識するために使用される。ベクター1+2を対照群とし、ベクター1+3を試験群とする。(C)網膜におけるmiRNAの過剰発現の模式図である。ベクター1はGFAP-EGFP-2A-Creであり、ベクター2(GFAP-miRNA)はGFAPによりmiRNAの過剰発現が駆動される。ベクター1の単独注射を対照群とし、ベクター1+2の混合注射を実験群とする。(D)図Cのベクター2に対応する。GFAPプロモーターによりmiR-124、miR-9又はmiR-9-miR-124を発現するAAV発現ベクターがそれぞれ駆動される模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本願は、RE1/NRSE調節に関連する組成物、内因性RE1/NRSE結合タンパク質RESTの異なるドメインに基づいて改変される生物活性分子及びその応用を提供する。特に、本願は、内因性RE1結合タンパク質RESTを改変することで、RESTタンパク質中の異なる領域を利用して遺伝子の発現を調節する機能に関する。
【0056】
リプレッサーエレメント1/ニューロン制限サイレンサーエレメント(repressor element 1/neuron-restrictive silencer element、RE1/NRSE)は、長さが約21 bp(20~23 bpに亘っている)である特定のDNA配列であり、多くの神経関連遺伝子のプロモーター領域に存在する。本願において、RE1/NRSEとRE1は互換的に使用されてもよい。RE1は、ニューロン成熟に関連する負の調節エレメントであり、NaV1.2及びSCG10のプロモーター5’末端に最初に見出され、これらの遺伝子の発現を調節する。非ニューロン細胞において、RE1部位は、ヒストンデアセチラーゼ及びメチラーゼなどからなるサイレンシング複合体に結合され、ニューロン関連遺伝子の発現を抑制する。マウス及びヒトにおいて、約1800以上のRE1エレメントが存在する。
【0057】
RE1は、主にREST(RE1サイレンシング転写因子(RE1-silencing transcription factor))に結合し、ニューロンの発育及び成熟に関連する遺伝子の発現を調節する。RESTは、ニューロン制限サイレンサー因子(neuron-restrictive silencer factor、NRSF)とも呼ばれ、RE1に内因的に結合するタンパク質である。ヒトのRESTタンパク質の全長配列は配列番号20に示される。
【0058】
ドメイン予測及びタンパク質構造モデリングによって、本願の発明者らは、ヒトRESTタンパク質の159~412番目に8個のジンクフィンガータンパク質ドメイン(Zinc Finger Domain、ZFD)が含まれ(図1A)、そのN-末端の1~83番目はそのN-末端抑制領域であり、主にSin3a及びSin3bなどのタンパク質に結合し、1008~1097番目はそのC-末端の抑制ドメイン及び1つのジンクフィンガードメインであり、主にRCOR1などのタンパク質に結合することを見出す。中間の84~158番目及び413~1007番目に明らかなタンパク質ドメインがなく、その機能は不明であり、RE1へのRESTの結合の調節に関与する可能性がある。RESTタンパク質中のジンクフィンガードメインは、RE1へのその結合に関連する可能性があり、更にRESTタンパク質中の転写抑制ドメイン(RESTタンパク質のN末端又はC末端に存在すると考えられる)のRE1への転写及び調節が可能となり、それによりRE1標的遺伝子の発現を抑制する。以前の研究は、RESTタンパク質の1~83及び1008~1097番目の欠失がRE1へのRESTの結合に影響を与えないが、正常な機能を果たすことができないことを示す。
【0059】
一態様において、本願は、RE1を調節することによって個体の体内で非ニューロン細胞を機能性ニューロン細胞に分化転換する方法を提供する。ある実施形態において、体内の関心部位(例えば疾患の影響を受ける部位)でRE1/NRSEエレメントへのRESTの結合を遮断することによって、関心部位で非ニューロン細胞の機能性ニューロンへの分化転換を実現することができる。
【0060】
以前の研究は、RE1が多くの神経関連遺伝子のプロモーター領域に存在することを示しているが、RE1の調節によって膠細胞のニューロンへの分化転換を実現することができるかは、依然として不明である。この研究では、内因性RE1結合タンパク質を遺伝子工学的に改変し、RE1に結合できる内因性タンパク質RESTのジンクフィンガードメイン(Zinc Finger Domain、ZFD)を利用してRE1を調節し、その関連遺伝子の発現への調節を実現する。以前の研究では、体外で培養した細胞においてRESTのジンクフィンガードメインの過剰発現又はREST発現のノックダウンによって、線維芽細胞をTuj-1及びMap2陽性ニューロンに分化転換するが、成熟したニューロンではない。且つ、これらの研究は、体外で培養した細胞において行われ、体外研究システムが実現される機能の大部分は、より複雑な体内で実現することが困難である。且つ、以前の研究では、分化転換して通常のニューロンを得るに過ぎず、ドーパミンニューロン、5-ヒドロキシトリプタミンニューロン、網膜神経節細胞及び光受容細胞などの特別な種類のニューロンを得ることができない。従って、体内でRE1の調節が膠細胞を特別な種類のニューロンに分化転換できるかを探求することは、非常に重要な科学的意味を有する。
【0061】
別の態様において、本願の発明者らは、RESTタンパク質のN-末端及びC-末端が複数のエピジェネティック調節エレメントを動員し、更にその作用する遺伝子を負に調節できることを見出す。DNA結合タンパク質をRESTタンパク質のN-末端及び/又はC-末端と組み合わせるか又は融合する場合、DNA結合タンパク質に結合される目標遺伝子領域での負の調節を実現することができる。
【0062】
分化転換の方法
一態様において、本願は、個体の体内で非ニューロン細胞を機能性ニューロンに分化転換する方法を提供する。
【0063】
別の態様において、本願は、必要とする個体の体内でニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患を予防及び/又は治療する方法であって、上記疾患に影響を受ける部位の非ニューロン細胞を機能性ニューロンに分化転換することを含む、方法を提供する。
【0064】
i)機能性ニューロン
本願において、「機能性ニューロン」という用語は、特定の機能を有するニューロン細胞、例えばドーパミンニューロン、網膜神経節細胞、光受容細胞などの特定の機能を有するニューロンを指す。幾つかの実施形態において、機能性ニューロンは、少なくとも1つのニューロンの形態学的特徴を有し、例えば軸索などのシナプスを有する。幾つかの実施形態において、機能性ニューロンは、少なくとも1つの成熟したニューロンのマーカーを発現し、例えばNeuN遺伝子発現の産物である。幾つかの実施形態において、機能性ニューロンは、電気生理学的特性を有する。
【0065】
機能性ニューロンは、異なる機能を有してもよい。幾つかの実施形態において、上記機能性ニューロンは、ドーパミンニューロン、網膜神経節細胞、光受容細胞及び蝸牛らせん神経節細胞、GABAニューロン、5-HTニューロン、グルタミン酸作動性ニューロン、ChATニューロン、NEニューロン、運動ニューロン、脊髄ニューロン、脊髄運動ニューロン、脊髄感覚ニューロン、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞、錐体ニューロン、中間ニューロン、中型有棘ニューロン(MSN)、プルキンエ細胞、顆粒細胞、嗅覚ニューロン、糸球体周囲細胞又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0066】
幾つかの実施形態において、上記機能性ニューロンは、NeuN遺伝子を発現する。NeuN遺伝子は、既知の成熟したニューロンの特異的マーカーである。非ニューロン細胞においてNeuN遺伝子発現の産物(例えばNeuNタンパク質)が検出される場合、非ニューロン細胞が機能性ニューロンに分化転換することを示唆する。
【0067】
幾つかの実施形態において、上記機能性ニューロンは、軸索を有する。ニューロンの軸索は、顕微鏡によって観察することができる。
【0068】
幾つかの実施形態において、上記機能性ニューロンは、ドーパミンニューロン、網膜神経節細胞、光受容細胞又は蝸牛らせん神経節細胞を含む。
【0069】
幾つかの実施形態において、上記機能性ニューロンは、ドーパミンニューロンを含む。本願において、ドーパミンニューロンとドーパミン作動性ニューロンは互換的に使用されてもよい。ドーパミン作動性ニューロン(dopaminergic neuron)は、ドーパミン(dopamine、DA)を神経伝達物質として含有すると共に放出するニューロンである。ドーパミン作動性ニューロンは、中枢神経系における主なドーパミン供給源である。ドーパミンは、カテコールアミン系神経伝達物質に属し、気分や報酬などの神経機能に影響を与えることができ、中枢神経系において重要な生物学的作用を発揮する。脳内のドーパミン作動性ニューロンは、主に中脳の黒質緻密領域(substantria nigra pars compacta、SNc)、腹側被蓋野(ventral tegmental area、VTA)、視床下部及び脳室周囲に集中する。ドーパミン作動性ニューロンは、人体の様々な疾患、最も典型的にはパーキンソン病に密接に関連することが多くの実験により実証されている。ドーパミン作動性ニューロンの漸進的な喪失は、パーキンソン病に関連する多くの運動症状を引き起こす。
【0070】
幾つかの実施形態において、上記ドーパミンニューロンは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、FoxA2、Nurr1、Pitx3、Vmat2及びDATからなる群より選ばれる1つ又は複数のマーカーを発現する。「マーカー」は、本願において、mRNA又はタンパク質などの遺伝子の発現産物を指してもよい。機能性ニューロン細胞においてこれらのマーカーの1つ又は複数の発現が検出される場合、当該機能性ニューロン細胞がドーパミンニューロンであることを示唆する。これらのマーカーの例示的な遺伝子配列及びタンパク質配列は何れも、当分野で周知であり、パブリックデータベース(例えば、米国国立衛生研究所の国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の遺伝子データベース及びタンパク質データベース)を通じてクエリすることができ、本願において表Aに列挙されている。チロシンヒドロキシラーゼ(TH)は、アミノ酸L-チロシンからジヒドロキシフェニルアラニン(ドーパ)への変換の触媒作用を担当する酵素であり、ドーパミン作動性ニューロンにおけるドーパミンの合成と代謝に関与する酵素である。ドーパミンニューロンの他のマーカーは、FoxA2、Nurr1、Vmat2及びDATなどを更に含む。幾つかの実施形態において、上記ドーパミンニューロンは、NeuN、TH及びDATを発現する。
【0071】
幾つかの実施形態において、上記機能性ニューロンは、網膜神経節細胞を含む。網膜神経節細胞は、網膜内表面(神経節細胞層)近傍に位置するニューロンであり、2種類の中間ニューロン(双極細胞及びアマクリン細胞)を介して光受容体から視覚情報を受け取る。その樹状突起は主に双極細胞とシナプス結合を確立し、その軸索は視神経乳頭まで延びて視神経を形成し、脳まで延びる。
【0072】
幾つかの実施形態において、上記網膜神経節細胞(RGC)は、RBPMS、Pax6、Brn3a、Brn3b、Brn3c及びMap2からなる群より選ばれる1つ又は複数のマーカーを発現する。RBPMSは、RGCの特異的マーカーである。機能性ニューロン細胞においてRBPMSの発現が検出される場合、当該機能性ニューロン細胞がRGCであることを示唆する。RBPMSの例示的な遺伝子配列及びタンパク質配列は、当分野で周知であり、パブリックデータベースを通じてクエリすることができ、本願において表Aに列挙されている。幾つかの実施形態において、上記網膜神経節細胞(RGC)は、NeuN及びRBPMSを発現する。
【0073】
幾つかの実施形態において、上記機能性ニューロンは、光受容細胞を含む。光受容細胞は、網膜に発現される特別な神経上皮細胞であり、光を受け、且つ光伝達機能を行う機能を有する。それは双極細胞及び神経節細胞の処理を経て、光シグナルを電気シグナルに変換すると共に脳に伝達することができる。光受容細胞は、桿体細胞及び錐体細胞を含む。
【0074】
幾つかの実施形態において、上記光受容細胞は、Rhodopsin、mCAR、m-opsin及びS-opsinからなる群より選ばれる1つ又は複数のマーカーを発現する。Rhodopsin、mCAR、m-opsin及びS-opsinは何れも、RGCの特異的マーカーである。機能性ニューロン細胞においてRhodopsin、mCAR、m-opsi及び/又はS-opsinの発現が検出される場合、当該機能性ニューロン細胞が光受容細胞であることを示唆する。Rhodopsin、mCAR、m-opsi及びS-opsinの例示的な遺伝子配列及びタンパク質配列は、当分野で周知であり、パブリックデータベースを通じてクエリすることができ、本願において表Aに列挙されている。幾つかの実施形態において、上記光受容細胞は、NeuN、Rhodopsin及び/又はmCARを発現する。
【0075】
幾つかの実施形態において、上記機能性ニューロンは、蝸牛らせん神経節細胞を含む。蝸牛らせん神経節細胞は、双極神経節細胞であり、聴覚伝達経路の第1段のニューロンであり、その周囲突起は毛細胞に連結し、中枢突起は聴神経の構成に関与する。らせん神経節細胞は、音響シグナルの伝達及びコードに重要な作用を有する。
【0076】
幾つかの実施形態において、上記蝸牛らせん神経節細胞は、NeuN、Prox1、Tuj-1及びMap2からなる群より選ばれる1つ又は複数のマーカーを発現する。機能性ニューロン細胞においてProx1及びMap2の発現が検出される場合、当該機能性ニューロン細胞が蝸牛らせん神経節細胞であることを示唆する。Prox1、Tuj-1、Map2の例示的な遺伝子配列及びタンパク質配列は、当分野で周知であり、パブリックデータベースを通じてクエリすることができ、本願において表Aに列挙されている。幾つかの実施形態において、上記蝸牛らせん神経節細胞は、NeuN、Prox1、Tuj-1及びMap2を発現する。
【表1】
【0077】
ii)非ニューロン細胞
幾つかの実施形態において、上記非ニューロン細胞は、膠細胞(例えば神経膠細胞)、線維芽細胞、幹細胞、神経前駆体細胞、又は神経幹細胞を含む。幾つかの実施形態において、上記非ニューロン細胞は、膠細胞(例えば神経膠細胞)を含む。
【0078】
幾つかの実施形態において、上記膠細胞は、星状膠細胞、乏突起膠細胞、上衣細胞、シュワン細胞、NG2細胞、衛星細胞、ミュラー膠細胞、内耳神経膠細胞及びそれらの任意の組み合わせから選ばれる。ミュラー膠細胞(Muller glia、MG)は、網膜組織における主な神経膠細胞である。
【0079】
幾つかの実施形態において、上記膠細胞は、脳、脊髄、目又は耳に位置する。幾つかの実施形態において、上記膠細胞は、脳の線条体、黒質、中脳腹側被蓋野、延髄、視床下部、中脳背側又は大脳皮質に位置する。
【0080】
幾つかの実施形態において、上記活性物質は、i)線条体における膠細胞、ii)大脳黒質における膠細胞、iii)網膜における膠細胞、iv)内耳における膠細胞、v)脊髄における膠細胞、vi)前頭皮質における膠細胞、vii)運動皮質における膠細胞、viii)視床下部における膠細胞、及びix)腹側被蓋野(VTA)における膠細胞といった、上記個体の体内の1つ又は複数の部位の膠細胞に局所投与される。
【0081】
如何なる理論にも束縛されることを望むものではないが、体内での膠細胞の微小環境は、本願に記載の活性物質によって誘導される分化転換作用の促進と、体内での上記膠細胞の機能性ニューロン細胞への分化転換の促進とに寄与すると考えられる。
【0082】
幾つかの実施形態において、上記膠細胞は、星状膠細胞、ミュラー膠細胞及び蝸牛神経膠細胞から選ばれる。
【0083】
幾つかの実施形態において、上記膠細胞は星状膠細胞を含み、且つ上記機能性ニューロンはドーパミンニューロン細胞を含む。幾つかの実施形態において、本願により提供される方法は、個体の体内で星状膠細胞をドーパミンニューロン細胞に分化転換する方法に関する。幾つかの実施形態において、上記星状膠細胞は、線条体及び/又は黒質に位置する。幾つかの実施形態において、上記方法は、本願により提供される活性物質を上記個体の線条体及び/又は黒質に投与することを含む。
【0084】
幾つかの実施形態において、上記膠細胞はミュラー膠細胞を含み、且つ上記機能性ニューロン細胞は網膜神経節細胞(RGC)及び/又は光受容細胞を含む。幾つかの実施形態において、本願により提供される方法は、個体の体内でミュラー膠細胞を網膜神経節細胞(RGC)及び/又は光受容細胞に分化転換する方法に関する。幾つかの実施形態において、上記ミュラー膠細胞は、網膜又は硝子体腔に位置する。幾つかの実施形態において、上記方法は、本願により提供される活性物質を上記個体の網膜下又は硝子体腔に投与することを含む。
【0085】
幾つかの実施形態において、上記膠細胞は蝸牛神経膠細胞を含み、且つ上記機能性ニューロン細胞は蝸牛らせん神経節細胞を含む。幾つかの実施形態において、本願により提供される方法は、個体の体内で蝸牛神経膠細胞を蝸牛らせん神経節細胞に分化転換する方法に関する。幾つかの実施形態において、上記蝸牛神経膠細胞は、内耳に位置する。幾つかの実施形態において、上記方法は、本願により提供される活性物質を上記個体の内耳に投与することを含む。
【0086】
幾つかの実施形態において、上記活性物質の投与後に達成される、上記膠細胞から機能性ニューロンへ分化転換する分化転換効率は、少なくとも1%、或いは少なくとも10%、20%、30%、40%又は50%である。分化転換効率は、当業者に公知の方法によって検出及び計算することができる。例えば、GFAP-mCherry、GFAP-tdTomato、GFAP-EGFPなどの蛍光タンパク質を利用して分化転換された開始細胞(例えば膠細胞)を標識し、その膠細胞が蛍光標識を有するAi9トランスジェニックマウスなどを使用してもよい。分化転換後の細胞も蛍光を有するため、開始標識細胞の数に対する分化転換後の細胞数の百分率を計算することによって、分化転換効率を計算することができる。或いは、投与部位におけるこの種類の細胞の数に対する分化転換後の細胞数の百分率を計算し、それにより、黒質において、黒質におけるドーパミンニューロンに対する新たに産生されたドーパミンニューロンの百分率など、分化転換効率を得ることもできる。
【0087】
iii)活性物質
幾つかの実施形態において、本願により提供される個体の体内で非ニューロン細胞を機能性ニューロンに分化転換する方法は、RE1/NRSEエレメントへのRESTの結合を低減する、或いはRESTの量若しくは活性を低減することができる活性物質を上記個体に投与することを含む。
【0088】
別の幾つかの実施形態において、本願により提供される必要とする個体の体内でニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患を予防及び/又は治療する方法は、上記疾患に影響を受ける部位の非ニューロン細胞を機能性ニューロンに分化転換するために、RE1/NRSEエレメントへのRESTの結合を低減する、或いはRESTの量若しくは活性を低減することができる治療有効量の活性物質を、上記個体における上記疾患に影響を受ける部位に投与することを含む。
【0089】
幾つかの実施形態において、上記活性物質は、RESTの量若しくは活性を低減することができる。RESTの量若しくは活性を低減することができる任意の活性物質を使用することができる。幾つかの実施形態において、例えば、遺伝子編集、低分子RNA干渉又はタンパク質加速分解の方法によってRESTの量を低減する。幾つかの実施形態において、例えば、遺伝子編集、アンチセンスオリゴヌクレオチド(Antisense Oligonucleotide、ASO)、低分子RNA干渉、miRNA技術、小分子化合物、又はタンパク質加速分解の方法によってRESTの量を低減する。幾つかの実施形態において、遺伝子編集によってRESTの抑制活性領域を除去し、或いはREST活性抑制剤によってRESTの活性を低減する。
【0090】
幾つかの実施形態において、上記活性物質は、RE1/NRSEエレメントへのRESTの結合を低減することができる。幾つかの実施形態において、RESTへのREST結合剤の結合によってRE1/NRSEエレメントへのRESTの結合を遮断し、上記REST結合剤は例えばREST抗体である。
【0091】
幾つかの実施形態において、上記活性物質は、RE1/NRSEエレメントに結合してRE1/NRSEエレメントへのRESTの結合を遮断することができるRE1/NRSEエレメント遮断剤を含む。
【0092】
幾つかの実施形態において、上記RE1/NRSEエレメント遮断剤は、RE1への結合についてRESTと競合する小分子化合物、核酸、又は核酸類似体を含む。
【0093】
幾つかの実施形態において、上記RE1/NRSEエレメント遮断剤は、RE1への結合についてRESTと競合するタンパク質又は上記タンパク質をコードする核酸を含む。
【0094】
幾つかの実施形態において、上記RE1への結合についてRESTと競合するタンパク質は、REST変異体を含む。本願において、「変異体」は、親配列と比較して、1つ又は複数のアミノ酸残基の置換(保存的置換を含むが、これに限定されない)、付加、欠失、挿入若しくは切断或いはそれらの任意の組み合わせを有する誘導体化配列を指す。ある実施形態において、REST変異体は、RESTタンパク質の断片、又はRESTタンパク質の断片と他のタンパク質との融合タンパク質を含んでもよい。
【0095】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体はRESTのDNA結合ドメインを含むが、RESTのN末端及び/又はC末端抑制ドメインを欠失する。天然のRESTタンパク質は、N-末端抑制ドメイン、DNAへの結合を担当する中間のDNA結合ドメイン、及びC-末端の転写抑制ドメインを含む。ヒトRESTタンパク質において、DNAへの結合、より具体的にはRE1/NRSEエレメントへの結合を担当する8個のジンクフィンガードメインを有する。RESTのDNA結合ドメインは、RESTタンパク質における8個のジンクフィンガードメイン又はDNAに結合できるその中の断片(例えば、8個未満のその中のジンクフィンガードメイン)であってもよい。
【0096】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、REST(特にヒトREST)の155~420番目のアミノ酸を含むが、RESTのN末端及び/又はC末端抑制ドメインを欠失する。幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、REST(特にヒトREST)の155~420番目のアミノ酸のRE1結合断片を含むが、RESTのN末端及び/又はC末端抑制ドメインを欠失する。本願において、「RE1結合断片」は、RE1エレメントに結合できるタンパク質断片を指す。
【0097】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、配列番号1、3、5若しくは9のアミノ酸配列、或いはそれと少なくとも70%、60%若しくは50%の同一性百分率を有する配列を有する。
【0098】
幾つかの実施形態において、上記RE1/NRSEエレメント遮断剤は、配列番号2、4、6若しくは10のヌクレオチド配列、或いはそれと少なくとも70%、60%若しくは50%の同一性百分率を有する配列を有する、上記REST変異体をコードする核酸を含む。
【0099】
アミノ酸配列(又は核酸配列)に関する「配列同一性百分率(%)」という用語は、配列をアラインメントし、且つ必要に応じてギャップを導入して最大数の同一アミノ酸(又は核酸)を実現した後、参照配列におけるアミノ酸(又は核酸)残基と同一である候補配列におけるアミノ酸(又は核酸)残基の百分率として定義される。言い換えれば、アミノ酸配列(又は核酸配列)の配列同一性百分率(%)は、それと比較する参照配列と同一であるアミノ酸残基(又は塩基)の数を、候補配列又は参照配列におけるアミノ酸残基(又は塩基)の総数(短い方に準ずる)で割ることによって計算することができる。アミノ酸残基の保存的置換は、同一の残基と見なされてもよく、見なされなくてもよい。アミノ酸(又は核酸)配列同一性百分率を決定するために行われるアラインメントは、例えば、BLASTN、BLASTp(米国国立バイオテクノロジー情報センター(U.S. National Center for Biotechnology Information、NCBI)のウェブサイトを参照、またAltschul S.F. et al.、『分子生物学雑誌』、215:403-410(1990)、Stephen F. et al.、『核酸研究(Nucleic Acids Res.)』、25:3389-3402(1997)を参照)、ClustalW2(欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute)のウェブサイトを参照、またHiggins D.G. et al.、『酵素学方法(Methods in Enzymology)』、266:383-402(1996)、Larkin M.A. et al.、『生物情報学(Bioinformatics)』(オックスフォード・イングランド(Oxford、England))、23(21):2947-8(2007)を参照)及びALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど、公的に入手可能なツールを使用して実現することができる。当業者は、上記ツールにより提供されるデフォルトパラメータを使用してもよく、或いは、必要に応じて、例えば適切なアルゴリズムを選択してアラインメントされるパラメータを自己定義してもよい。
【0100】
幾つかの実施形態において、上記の上記REST変異体をコードする核酸は、コドン最適化されるものであり、選択可能的に配列番号15のヌクレオチド配列、或いはそれと少なくとも70%、60%若しくは50%の同一性百分率を有する配列を有する。理論に制限されるものではないが、コドン最適化後のREST変異体の核酸配列は、ヒト細胞においてより高く発現できると考えられる。
【0101】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、上記RESTのDNA結合ドメインと融合される活性化ドメインを更に含む。本願において、「活性化ドメイン」は、目標遺伝子の調節配列と相互作用すると共に目標遺伝子の発現を活性化又は増加させることができるドメインを指す。
【0102】
幾つかの実施形態において、上記活性化ドメインは、エピジェネティック修飾タンパク質又は遺伝子活性化調節エレメントを含み、選択可能的に、上記活性化ドメインは、VP64、P65-HSF1、VP16、RTA、Suntag、P300、CBP又はそれらの任意の組み合わせを含み、選択可能的に、上記活性化ドメインは、VP64又はP65-HSF1を含む。
【0103】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、1つ又は複数の核局在化シグナル配列(即ちNLS)と融合される。如何なる理論にも束縛されることを望むものではないが、核局在化シグナル配列は、REST変異体の細胞核への進入を促進し、更に遺伝子の発現及び調節並びに細胞の分化転換作用をより良好に発揮すると考えられる。任意の適切な核局在化シグナル配列を使用してもよい。核局在化シグナル配列の例は、BPNLS(例えば、配列番号13に示されるアミノ酸配列)、アミノ酸配列PKKKRKV(配列番号41)を有するSV40ウィルス大T抗原のNLS、核細胞質タンパク質由来のNLS(例えば、配列KRPAATKKAGQAKKKKを有する核細胞質タンパク質二分NLS)(配列番号42)、アミノ酸配列PAAKRVKLD(配列番号43)又はRQRRNELKRSP(配列番号44)を有するc-myc NLS、配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(配列番号45)を有するhRNPA1M9NLS、入力タンパク質-αのIBBドメイン由来の配列RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV(配列番号46)、筋腫Tタンパク質の配列VSRKRPRP(配列番号47)及びPPKKARED(配列番号48)、ヒトp53の配列POPKKKPL(配列番号49)、マウスc-abl IVの配列SALIKKKKKMAP(配列番号50)、インフルエンザウィルスNS1の配列DRLRR(配列番号51)及びPKQKKRK(配列番号52)、肝炎ウィルスδ抗原の配列RKLKKKIKKL(配列番号53)、マウスMx1タンパク質の配列REKKKFLKRR(配列番号54)、ヒトポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼの配列KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK(配列番号55)、並びにステロイドホルモン受容体(ヒト)グルココルチコイドの配列RKCLQAGMNLEARKTKK(配列番号56)を含むが、これらに限定されない。NESの非限定的な例は、NES配列LYPERLRRILT(配列番号57)、PKKKRKV(配列番号58)を含む。
【0104】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの上記核局在化シグナル配列は、上記REST変異体のN末端と融合される。
【0105】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの上記核局在化シグナル配列は、上記REST変異体のC末端と融合される。
【0106】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの上記核局在化シグナル配列は、上記REST変異体のN末端及びC末端とそれぞれ融合される。
【0107】
幾つかの実施形態において、上記核局在化シグナル配列は、配列番号13及び41~58からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含む。
【0108】
本願の実施例において、発明者らは、タンパク質構造予測を利用し、遺伝子工学的改変技術と組み合わせて、RESTの内因性ジンクフィンガードメインに対して一連の分析及び改変を行う。まず、切断実験により、発明者らは、RESTの155~420番目のアミノ酸(RZFD:REST Zinc Finger Domainと呼ばれる8個のジンクフィンガードメインのみを含む)を過剰発現すると、RE1へのRESTの結合を遮断することができることを見出す。AAV媒介性遺伝子送達技術により、マウス線条体星状膠細胞におけるRZFDの過剰発現は、膠細胞を機能性ニューロンに分化転換することができる。RZFDを更に改変することによって、RZFDのN-末端又はC-末端にVP64を融合し、RZFD-VP64を形成し、そして、AAV媒介性インビボ膠細胞のニューロンへの分化転換の実現に成功する。RZFDにP65及びHSF1の転写活性化ドメインを更に融合し、RZFD-P65-HSF1を形成する。AAV媒介性インビボ分化転換技術を応用し、RZFD-P65-HSF1は線条体において膠細胞を機能性ニューロンに分化転換することもできることを見出す。
【0109】
以前の研究は、RESTの抑制が膠細胞をニューロンに分化転換することができる一方で、RESTがRE1と呼ばれるゲノムのDNA配列に結合することを示す。一方で、RE1は、CRISPR技術によって標的化されない配列であるが、この研究では、ヒト内因性ジンクフィンガー構造(RESTジンクフィンガードメイン(RZFD))を利用してRE1配列を巧妙に標的とし、それによりRE1へのRESTサイレンシング複合体の結合を遮断する。膠細胞などの非ニューロン細胞において、RZFD(RZFD-V1)を発現してRESTサイレンシング複合体によるニューロン関連遺伝子発現の抑制を解除する。更にRZFDにVP64(RZFD-V2)又はP65-HSF1(RZFD-V3)などの活性化ドメインを融合することによって、ニューロン関連遺伝子の発現を更に促進し、膠細胞のニューロンへの分化転換を促進する。本願の実施例において、免疫蛍光染色及びDAT-Cre:Ai9標識システムにより、RZFD-V1、RZFD-V2及びRZFD-V3は何れも、膠細胞をドーパミンニューロンに分化転換することができることも見出す。
【0110】
本願の実施例において、Ai9網膜の下腔にAAVを注射することによって、RZFD、RZFD-VP64及びRZFD-P65-HSF1は、ミュラー細胞を網膜神経節細胞に分化転換できることを見出し、且つ一部の光受容細胞が観察される。網膜神経節細胞は、視覚シグナルを脳に伝達する、視覚経路における唯一の細胞であり、その欠失又は死亡は、永続的な失明をもたらす。非ヒト霊長類動物における研究はマウスの結果と類似し、発明者らは、脳においてRZFD、RZFD-VP64及びRZFD-P65-HSF1が膠細胞をドーパミンニューロンに分化転換することができ、網膜においてRZFD、RZFD-VP64及びRZFD-P65-HSF1がミュラー細胞を網膜神経節細胞及び光受容細胞に分化転換することができることを見出す。
【0111】
iv)個体及び疾患の治療
幾つかの実施形態において、上記個体は、ヒト又は動物である。
【0112】
幾つかの実施形態において、上記動物は、非ヒト霊長類動物(例えばサル)、ラット又はマウスである。
【0113】
本願の内容において、ニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患は主に、ドーパミンニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患、及び視神経節又は光受容細胞の喪失又は死亡に関連する視覚障害を含む。幾つかの実施形態において、上記ニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中(脳血管障害)、統合失調症、ハンチントン病、うつ病、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、Pick病、睡眠障害、癲癇、運動失調、RGC細胞死による視覚障害、緑内障、加齢に伴うRGC病変、視神経損傷、網膜虚血又は出血、Leber遺伝性視神経病変、損傷又は変性病変による光受容細胞変性又は死亡、黄斑変性、網膜色素変性、糖尿病関連失明、夜盲症、色盲、遺伝性失明、先天性黒内障、らせん神経節細胞死による難聴又は聴覚低下、及びそれらの任意の組み合わせを含む。
【0114】
幾つかの実施形態において、本願は、必要とする個体の体内でニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患を予防及び/又は治療する方法であって、上記線条体及び/又は黒質の星状膠細胞をドーパミンニューロン細胞に分化転換するために、治療有効量の本願により提供される活性物質を、上記個体の線条体及び/又は黒質に投与することを含み、ここで、上記ニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患が、パーキンソン病、うつ病及びアルツハイマー病からなる群より選ばれる、方法を提供する。
【0115】
幾つかの実施形態において、本願は、必要とする個体の体内でニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患を予防及び/又は治療する方法であって、上記網膜又は硝子体腔のミュラー膠細胞を網膜神経節細胞(RGC)及び/又は光受容細胞に分化転換するために、治療有効量の本願により提供される活性物質を、上記個体の網膜下又は硝子体腔に投与することを含み、ここで、上記ニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患が、RGC細胞死による視覚障害、緑内障、加齢に伴うRGC病変、視神経損傷、網膜虚血又は出血、Leber遺伝性視神経病変、損傷又は変性病変による光受容細胞変性又は死亡、黄斑変性、網膜色素変性、糖尿病関連失明、夜盲症、色盲、遺伝性失明、及び先天性黒内障からなる群より選ばれる、方法を提供する。
【0116】
幾つかの実施形態において、本願は、必要とする個体の体内でニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患を予防及び/又は治療する方法であって、上記内耳の蝸牛神経膠細胞を蝸牛らせん神経節細胞に分化転換するために、治療有効量の本願により提供される活性物質を、上記個体の内耳に投与することを含み、ここで、上記ニューロン機能の喪失又は死亡に関連する疾患が、らせん神経節細胞死による難聴又は聴覚低下からなる群より選ばれる、方法を提供する。
【0117】
REST変異体
別の態様において、本願は、RESTのDNA結合ドメインを含むが、RESTのN末端及び/又はC末端抑制ドメインを欠失するREST変異体を提供する。本願において、RESTは、天然又は内因性REST分子を指し、任意の種のRESTを含む。
【0118】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、RESTの155~420番目のアミノ酸を含むが、RESTのN末端及び/又はC末端抑制ドメインを欠失する。幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、REST(特にヒトREST)の155~420番目のアミノ酸のRE1結合断片を含むが、RESTのN末端及び/又はC末端抑制ドメインを欠失する。
【0119】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、配列番号1、3、5若しくは9のアミノ酸配列、或いはそれと少なくとも70%、60%若しくは50%の同一性百分率を有する配列を有する。
【0120】
幾つかの実施形態において、上記RE1/NRSEエレメント遮断剤は、配列番号2、4、6若しくは10のヌクレオチド配列、或いはそれと少なくとも70%、60%若しくは50%の同一性百分率を有する配列を有する上記REST変異体をコードする核酸を含む。
【0121】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、上記RESTのDNA結合ドメインと融合される活性化ドメインを更に含む。
【0122】
幾つかの実施形態において、上記活性化ドメインは、エピジェネティック修飾タンパク質又は遺伝子活性化調節エレメントを含み、選択可能的に、上記活性化ドメインは、VP64、P65-HSF1、VP16、RTA、Suntag、P300、CBP又はそれらの任意の組み合わせを含み、選択可能的に、上記活性化ドメインは、VP64又はP65-HSF1を含む。
【0123】
幾つかの実施形態において、上記REST変異体は、1つ又は複数の核局在化シグナル配列と融合される。
【0124】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの上記核局在化シグナル配列は、上記REST変異体のN末端と融合される。
【0125】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの上記核局在化シグナル配列は、上記REST変異体のC末端と融合される。
【0126】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの上記核局在化シグナル配列は、上記REST変異体のN末端及びC末端とそれぞれ融合される。
【0127】
幾つかの実施形態において、上記核局在化シグナル配列は、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む。
【0128】
REST変異体をコードするポリヌクレオチド
別の態様において、本願は、本願に記載のREST変異体をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0129】
別の態様において、本願は、REST変異体をコードするポリヌクレオチドを含み、及び選択可能的に上記ポリヌクレオチドと操作可能に連結されるプロモーターを更に含む、発現ベクターを提供する。
【0130】
幾つかの実施形態において、上記プロモーターは、膠細胞特異的プロモーターである。幾つかの実施形態において、上記膠細胞特異的プロモーターは、星状膠細胞特異的プロモーター又はミュラー膠細胞(MG)細胞特異的プロモーターである。
【0131】
幾つかの実施形態において、上記膠細胞特異的プロモーターは、GFAPプロモーター、ALDH1L1プロモーター、EAAT1/GLASTプロモーター、グルタミンシンテターゼプロモーター、S100βプロモーターEAAT2/GLT-1プロモーター及びRlbp1プロモーターから選ばれ、好ましくはGFAPプロモーターである。
【0132】
幾つかの実施形態において、上記膠細胞特異的プロモーターは、蝸牛神経膠細胞特異的プロモーターである。
【0133】
幾つかの実施形態において、上記蝸牛神経膠細胞特異的プロモーターは、GFAPプロモーター(例えば、配列番号39又は40を参照)、ALDH1L1プロモーター、EAAT1/GLASTプロモーター及びPlp1プロモーターから選ばれる。
【0134】
医薬組成物、キット、試薬キット
別の態様において、本願は、本願に記載のREST変異体、又は上記REST変異体をコードするポリヌクレオチド、又はREST変異体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターと、薬学的に許容されるベクターと、を含む、医薬組成物を提供する。
【0135】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、上記ポリヌクレオチドを送達するための担体を更に含み、ここで、上記担体は、ウィルスベクター、リポソーム、ナノ粒子、エクソソーム又はウィルス様粒子を含む。
【0136】
幾つかの実施形態において、上記ウィルスベクターは、組換えアデノ随伴ウィルスベクター(rAAV)、アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクター、アデノウィルスベクター、レンチウィルスベクター、レトロウィルスベクター、ポックスウィルスベクター、ヘルペスウィルスベクター、SV40ウィルスベクター、又はそれらの任意の組み合わせを含み、ここで、好ましくはAAV又はrAAVである。
【0137】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、i)線条体における膠細胞、ii)大脳黒質における膠細胞、iii)網膜における膠細胞、iv)内耳における膠細胞、v)脊髄における膠細胞、vi)前頭皮質における膠細胞、vii)運動皮質における膠細胞、viii)視床下部における膠細胞、及びix)腹側被蓋野(VTA)における膠細胞といった、1つ又は複数の部位の膠細胞への局所投与に適する。
【0138】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、頭蓋内投与又は眼内投与に適する。
【0139】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、i)1つ又は複数のドーパミンニューロン関連因子、或いはii)ミュラー膠細胞において発見するための1つ又は複数の網膜神経節細胞関連因子、を更に含み、
1)ここで、上記1つ又は複数のドーパミンニューロン関連因子は、FoxA2、Lmx1a、Lmx1b、Nurr1、Pbx1a、Pitx3、Gata2、Gata3、FGF8、BMP、En1、En2、PET1、Paxファミリータンパク質(Pax3、Pax6など)、SHH、Wntファミリータンパク質、TGF-βファミリータンパク質、及びそれらの任意の組み合わせから選ばれ、
2)ここで、上記1つ又は複数の網膜神経節細胞関連因子は、β-catenin、Oct4、Sox2、Klf4、Crx、aCamKII、Brn3a、Brn3b、Brn3C、Math5、Otx2、Ngn2、Ngn1、AscL1、miRNA9、miRNA-124、Nr2e3、Nrl、及びそれらの任意の組み合わせから選ばれる。
【0140】
別の態様において、本願は、本願により提供される医薬組成物を含む、キット又は試薬キットを提供する。
【0141】
融合タンパク質及びタンパク質複合体
別の態様において、本願は、DNA結合タンパク質が1つ又は複数のRESTの抑制ドメインに融合するものを含む、融合タンパク質を提供する。DNA結合タンパク質は、調節される目標DNAに結合できると共に、調節される目標DNAの転写活性を抑制するために、それと融合されるREST抑制ドメインが当該調節される目標DNAに対して負の調節作用を発揮することを可能にする。
【0142】
直接融合に加えて、DNA結合タンパク質と1つ又は複数のRESTの抑制ドメインとは、非共有結合の方式により結合又は複合して、タンパク質複合体を形成することもできる。
【0143】
従って、本願は、組成物であって、a)DNA結合タンパク質と、b)1つ又は複数のRESTの抑制ドメインを含むタンパク質と、を含み、ここで、上記a)及びb)が結合してタンパク質複合体を形成することができる、組成物を更に提供する。本願において、「タンパク質複合体」は、2つのタンパク質分子が非共有結合を介して結合して形成する複合体を指す。例えば、上記DNA結合タンパク質において、上記1つ又は複数のRESTの抑制ドメインを含むタンパク質に結合できる結合部分(例えば、抗体又はその抗原結合断片)を追加的に存在することができる。別の例において、1つ又は複数のRESTの抑制ドメインを含むタンパク質において、上記DNA結合タンパク質に結合できる結合部分(例えば、抗体又はその抗原結合断片)を追加的に存在することができる。当業者であれば、当該結合部分が、目標DNAへのDNA結合タンパク質の結合に影響を与えず、RE1への上記の1つ又は複数のRESTの抑制ドメインを含むタンパク質の結合にも影響を与えないことを理解できる。言い換えれば、形成されたタンパク質複合体は依然として、目標DNAに結合する機能の少なくとも一部及びRE1に結合する機能の少なくとも一部を有する。このような方法により、調節される目標DNAに結合することができる上記DNA結合タンパク質を含むと共に、調節される目標DNAの転写活性を抑制することができるRESTの抑制ドメインも含む、非共有結合的に結合するタンパク質複合体を得ることができる。
【0144】
ある実施形態において、本願により提供される組成物において、上記a)及びb)は、一対の自己組織化リガンドにそれぞれ連結され、上記自己組織化リガンドは、互いに結合することができる。本願において、「自己組織化リガンド」は、自発的に互いに結合できる2つのリガンドを指す。2つのリガンドが自発的に結合することができるため、一対の自己組織化リガンドとも呼ばれる。
【0145】
幾つかの実施形態において、上記一対の自己組織化リガンドは、i)互いに結合する2つのタンパク質ドメイン、及びii)RNA切断供与体と切断受容体からなる群より選ばれてもよい。互いに結合できる任意の2つのタンパク質ドメイン、例えば、抗原及び抗体、抗原及び抗体における抗原結合断片、受容体及びリガンド、或いは互いに結合する2つのタンパク質は何れも、本願に記載の自己組織化リガンドとして使用することができる。幾つかの実施形態において、上記一対の自己組織化リガンドは、KFBP及びFRB、又はPYL及びABIを含む。任意のRNA切断供与体及び切断受容体は何れも、本願に記載の自己組織化リガンドとして使用することができ、例えば、スプリットインテイン(Split Intein)を使用することができる。
【0146】
幾つかの実施形態において、上記一対の自己組織化リガンドにおける2つのリガンドは、a)DNA結合タンパク質及びb)1つ又は複数のRESTの抑制ドメインを含むタンパク質にそれぞれ連結される。例えば、RESTの抑制ドメインは抗原に連結できる一方で、CRISPR-Casタンパク質はそれと結合する抗体に連結でき、それにより抗原と抗体との間の相互作用を介して、本願に記載のタンパク質複合体を自己組織化する。
【0147】
i)RESTの抑制ドメイン
本願により提供される融合タンパク質及び組成物並びにタンパク質複合体において、何れも1つ又は複数のRESTの抑制ドメインを有する。本願において、「RESTの抑制ドメイン」は、RESTタンパク質において遺伝子の発現を抑制する機能を有するドメインを指す。如何なる理論にも束縛されることを望むものではないが、RESTタンパク質において、RESTタンパク質のN末端領域及びRESTタンパク質のC末端領域を含むが、これらに限定されない、異なるRESTの抑制ドメインが存在すると考えられる。本願において、上記「1つ又は複数のRESTの抑制ドメイン」は、1つ又は複数の同じRESTの抑制ドメイン、例えば同一の抑制ドメインの複数の反復を指してもよく、1つ又は複数の異なるRESTの抑制ドメインを指してもよい。
【0148】
幾つかの実施形態において、上記1つ又は複数のRESTの抑制ドメインは、RESTのN-末端抑制領域及び/又はRESTのC-末端抑制領域を含む。
【0149】
幾つかの実施形態において、上記1つ又は複数のRESTの抑制ドメインは、ヒトRESTタンパク質又は動物RESTタンパク質に由来する。幾つかの実施形態において、上記動物RESTタンパク質は、非ヒト霊長類動物のRESTタンパク質(例えばサル)、げっ歯類動物のRESTタンパク質(例えばマウス、ラット)、家禽(例えばニワトリ、アルヒ、ガチョウなど)、農場動物(例えばウシ、ヒツジ、ブタなど)を含んでもよい。
【0150】
幾つかの実施形態において、上記RESTのN-末端抑制領域は、RESTの1~83番目のアミノ酸又はそれらにおける転写抑制活性を有する断片を含む。本願において、「転写抑制活性」は、RESTの抑制ドメインがある目標遺伝子の転写調節配列と相互作用する場合、上記RESTの抑制ドメインが上記目標遺伝子の転写を低減又は減少できることを意味する。本願において、「転写抑制活性を有する断片」は、RESTのアミノ酸配列において、少なくとも一部の転写抑制活性を提供することができる断片を指す。
【0151】
幾つかの実施形態において、上記RESTのN-末端抑制領域は、配列番号16に示される配列又はそれにおける転写抑制活性を有する断片を含む。
【0152】
幾つかの実施形態において、上記RESTのC-末端抑制領域は、RESTの1008~1097番目のアミノ酸又はそれらにおける転写抑制活性を有する断片を含む。
【0153】
幾つかの実施形態において、上記RESTのC-末端抑制領域は、配列番号18に示される配列又はそれにおける転写抑制活性を有する断片を含む。
【0154】
幾つかの実施形態において、上記転写抑制活性を有する断片は、RESTタンパク質上の少なくとも連続した20個のアミノ酸、連続した30個のアミノ酸、連続した40個のアミノ酸、又は連続した50個のアミノ酸の断片を含む。
【0155】
ii)DNA結合タンパク質
本願により提供される融合タンパク質及び組成物並びにタンパク質複合体において、何れもDNA結合タンパク質を有する。幾つかの実施形態において、上記DNA結合タンパク質は、特定の標的DNA配列に標的化して結合することができる。幾つかの実施形態において、上記DNA結合タンパク質は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、CRISPR-Casタンパク質などの配列によって誘導されるDNA結合タンパク質、又は転写因子のDNA結合部分であってもよい。ZFN及びTALENは、タンパク質-DNAの相互作用により特異的DNA結合を実現し、CRISPR-Casタンパク質(例えばCas9、Cas12)は、標的DNA塩基とペアリングした短いガイドRNAにより誘導され、特異的DNA配列に標的化して結合する。幾つかの実施形態において、上記転写因子のDNA結合部分は、RESTに天然に存在するDNA結合ドメインではない。
【0156】
幾つかの実施形態において、上記DNA結合タンパク質は、配列によって誘導されるDNA結合タンパク質から選ばれる。「配列によって誘導されるDNA結合タンパク質」は、標的部分の誘導下で特定のヌクレオチド配列に結合できるDNA結合タンパク質を指す。配列によって誘導されるDNA結合タンパク質は、CRISPR-Casタンパク質を含むが、これに限定されない。
【0157】
幾つかの実施形態において、上記配列によって誘導されるDNA結合タンパク質は、CRISPR-Casタンパク質又はその変異体である。「CRISPR-Casタンパク質」は、細菌又は古細菌の適応免疫系に由来するヌクレアーゼである、クラスター化され、規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返しの関連タンパク質を指し、CRISPR-Casタンパク質は、標的化されたガイドRNA(gRNA)の誘導下で特定の核酸配列に標的化して結合すると共に、それを切断することができる。DNAのCRISPR-Casに結合できるタンパク質は、Cas9及びCas12を含むが、これらに限定されない。
【0158】
幾つかの実施形態において、上記CRISPR-Casタンパク質変異体は、ヌクレアーゼ活性を有しない。
【0159】
幾つかの実施形態において、上記配列によって誘導されるDNA結合タンパク質は、Cas9タンパク質又はヌクレアーゼ活性を有しないCas9変異体である。ヌクレアーゼ活性を有しないCas9変異体の例は、nCas9又はdCas9を含む。
【0160】
Cas9タンパク質は、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来のCas9(SpCas9)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のCas9(SaCas9)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)由来のCas9(StCas9)などを含むが、これらに限定されない、様々な細菌に由来することができる。幾つかの実施形態において、Cas9タンパク質は、ヌクレアーゼ活性を低減又は除去することができる1つ又は複数の変異を含むように、改変されてもよい。Cas9タンパク質における変異は、二本鎖DNAを切断する活性を失わせるか、或いは一本鎖DNAを切断する活性のみを有することができる。例えば、SpCas9を例にとると、10番目のAsp残基をAla残基に変換するか(即ちD10A変異体)、或いは840番目のHis残基をAla残基に変換する(H840A変異体)ことによって、nCas9とも呼ばれる、一本鎖DNAのみを切断できる変異体が得られる。また例えば、SpCas9を例にとると、D10A及びH840A二重変異を同時に導入して、Cas9がDNA二本鎖を切断する活性を失うようにすることもでき、このようなCas9変異体はdCas9とも呼ばれる。幾つかの実施形態において、上記dCas9は、配列番号21又は22に示されるアミノ酸配列を有する。
【0161】
幾つかの実施形態において、ここで、上記配列によって誘導されるDNA結合タンパク質は、Cas12タンパク質又はヌクレアーゼ活性を有しないCas12変異体である。
【0162】
Cas12タンパク質は、Cpf1とも呼ばれ、ラクノスピラ(Lachnospiraceae bacterium)のCpf1(LbCpf1)、アミノ酸球菌(Acidaminococcussp)のCpf1(AsCpf1)、フランシセラ(Francisella novicida)のCpf1(FnCpf1)などを含むが、これらに限定されない、様々な細菌に由来することができる。幾つかの実施形態において、Cas12タンパク質は、ヌクレアーゼ活性を低減又は除去することができる1つ又は複数の変異を含むように、改変されてもよい。
【0163】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの上記RESTタンパク質のN-末端抑制領域は、上記DNA結合タンパク質のN末端又はC末端に連結される。
【0164】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの上記RESTタンパク質のC-末端抑制領域は、上記DNA結合タンパク質のN末端又はC末端に連結される。
【0165】
幾つかの実施形態において、上記融合タンパク質は、上記DNA結合タンパク質のN末端又はC末端に連結する少なくとも1つの直列連結された上記RESTのN-末端抑制領域を含む。
【0166】
幾つかの実施形態において、上記融合タンパク質は、上記DNA結合タンパク質のN末端又はC末端に連結する少なくとも1つの直列連結された上記RESTのC-末端抑制領域を含む。
【0167】
幾つかの実施形態において、上記融合タンパク質は、配列番号25~27に示されるアミノ酸配列を含む。
【0168】
ポリヌクレオチド
別の態様において、本願は、本願に記載の融合タンパク質又は組成物又はタンパク質複合体をコードする、ポリヌクレオチドを提供する。
【0169】
ポリヌクレオチドであって、本願に記載のタンパク質複合体をコードする。
【0170】
幾つかの実施形態において、ここで、DNA結合タンパク質をコードする第1ポリヌクレオチド断片及び1つ又は複数のRESTの抑制ドメインを含むタンパク質をコードする第2ポリヌクレオチド断片を含む。
【0171】
幾つかの実施形態において、ここで、上記第1ポリヌクレオチド断片と第2ポリヌクレオチド断片とは、自己切断可能な第3ヌクレオチド断片を介して連結される。
【0172】
別の態様において、本願は、細胞における目標遺伝子の発現を抑制する方法であって、上記細胞に、本願に記載の融合タンパク質又は上記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを送達することを含み、ここで、上記DNA結合タンパク質は、上記目標遺伝子又はその調節配列に結合し、そして上記目標遺伝子の発現を抑制することができる、方法を提供する。
【0173】
別の態様において、本願は、個体における目標遺伝子の発現を抑制する方法であって、上記個体に、本願に記載の融合タンパク質又は上記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを送達することを含み、ここで、上記DNA結合タンパク質は、上記目標遺伝子又はその調節配列に結合し、そして上記目標遺伝子の発現を抑制することができる、方法を提供する。
【0174】
幾つかの実施形態において、上記DNA結合タンパク質は、CRISPR-Casタンパク質又はその変異体である。
【0175】
幾つかの実施形態において、上記CRISPR-Casタンパク質変異体は、ヌクレアーゼ活性を有しない。
【0176】
幾つかの実施形態において、上記配列によって誘導されるDNA結合タンパク質は、Cas9タンパク質又はヌクレアーゼ活性を有しないCas9変異体である。
【0177】
幾つかの実施形態において、上記方法は、上記細胞又は上記個体に、目標遺伝子又はその調節配列の標的領域に相補的な標的化配列と、上記DNA結合タンパク質に結合する配列と、を含むガイドRNAを送達することを更に含む。
【実施例
【0178】
一般的な方法
動物倫理:
この研究における動物の飼育及び使用は、中国科学院脳科学及び知能技術卓越革新中心生物医学研究倫理委員会の指導原則の指導下で行われた。
【0179】
プラスミド構築:
この研究におけるプラスミドは、何れも本実験室で自己構築し、AAV骨格ベクターは制限エンドヌクレアーゼで酵素切断すると共にアガロースゲル電気泳動を行い、骨格ベクターを回収した。挿入DNA断片は、細胞cDNAをテンプレートとしてPCRを行い、アガロースゲル電気泳動後に回収したPCR断片である。諾唯賛生物科技有限公司のClonExpress MultiS One Step Cloning Kit(Vazyme、C113-02)を利用して骨格ベクターと断片の連結を行った。連結後、DH5a大腸菌に転換すると共に、プレートに塗布した。翌日、モノクローナルを採取して同定し、陽性クローンのシークエンシングを行い、シークエンシングが完全に正しいクローンの拡大培養及びプラスミド抽出を行った。
【0180】
マウス脳のAAV注射:
この研究で使用したAAV血清型はAAV8であった。Reward定位注射システムを利用して定位注射を行った(C57BL/6又はDat-Cre:Ai9マウス、年齢は2か月を超える)。AAV-GFAP-RZFD-V1、AAV-GFAP-RZFD-V2及びAAV-GFAP-RZFD-V3の力価は5×1012 vg/mLを超えた(1回当たり1~3 μL注射する)。AAVを線条体(AP+0.8 mm、ML±1.6 mm及びDV-2.8 mm)又は黒質(AP-3.0 mm、ML±1.25 mm及びDV-4.5 mm)に注入した。
【0181】
マウス組織免疫蛍光染色:
注射後2週間及び注射後1.5~2か月に採取し、切片すると共に、免疫蛍光染色を行った。生理食塩水及び4%のPFAをマウスに灌流した後、脳を摘出すると共に、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)で一晩固定し、次に30%のスクロースで少なくとも12時間以上脱水し、組織は溶液の底部まで沈んだ。OCTによる包埋後、凍結切片を行い、切片の厚みは30 μm又は40 μmとした。免疫蛍光染色の前に、脳切片を0.1 Mのリン酸塩緩衝液(PBS)で5~10分間ずつ3回洗浄した。一次抗体を4℃で一晩インキュベートした後、PBSで10~15分間ずつ3~4回洗浄した。その後、抗体希釈液で希釈した二次抗体を更に加えて室温で2~3時間インキュベートし、インキュベーション終了後、更にPBSで10~15分間ずつ3~4回洗浄した。最後に、蛍光褪色防止用封入剤(Life Technology)で封入して保存した。
【0182】
抗体:
この研究で使用される一次抗体は、モルモット抗NeuN(1:500、ABN90、Millipore)、ウサギ抗TH(1:500、AB152、Millipore)、ラット抗DAT(1:100、MAB369、Millipore)、ウサギ抗RBPMS(Proteintech、Cat# 15187-1-AP)及びマウス抗Flag(1:2000、F3165、Sigma)を含む。この研究で使用される二次抗体は、Cy5-AffiniPure Donkey Anti-Guinea Pig IgG(H+L)(1:500、706-175-148、Jackson ImmunoResearch)、Alexa Fluora-488 AffiniPure Donkey Anti-Rabbit IgG(H+L)(1:500、711-545-152、Jackson ImmunoResearch)、Alexa Fluora-488 AffiniPure Donkey Anti-Mouse IgG(H+L)(1:500、715-545-150、Jackson ImmunoResearch)及びCy5 AffiniPure Donkey Anti-Rabbit IgG(H+L)(1:500、711-175-152、Jackson ImmunoResearch)であった。
【0183】
6-OHDA PDマウスモデル
本実験で使用されるマウスは、成体C57BL/6マウス(7~10週)であった。麻酔前0.5時間に25 mg/kgの塩酸デシプラミン(D3900、Sigma-Aldrich)を腹腔内注射した。麻酔後、マウスの右内側の前脳束に、前後位(A/P)=-1.2 mm、内外側(M/L)=-1.1 mm、背腹(D/V)=-5 mmで6-OHDA(H116、Sigma-Aldrich)又は生理食塩水を3μg注射した。手術後1時間に、マウスに4%のグルコース-生理食塩水を1 mL皮下注射した。
【0184】
アポモルフィンにより誘導される回転試験
試験前10分間に、マウスに0.5 mg/kgのアポモルフィン(A4393、Sigma-Aldrich)を腹腔内注射した。試験の際、マウスをそれぞれ不透明円筒体(直径30 cm)内に置き、その上方で20分間の行動をビデオカメラによって記録した。回転は、片方の後足を中心にすると共に、頭部の向きが変化しない全身の回転として定義された。注射側及び注射対向側の回転数を統計し、そして20分間以内の対向側の逆転数にデータを定量化した。
【0185】
シリンダーテスト
マウスを、ガラスビーカー(1000 mL)に慎重に入れ、その前方で10分間の行動をビデオカメラによって記録した。注射側及び注射対向側の前肢の壁との接触回数をそれぞれ計算し、そして合計の壁との接触回数に対する同じ側の壁との接触回数の比率にデータを定量化した。
【0186】
ロータロッドテスト
マウスを、最初に2日間訓練し、3日目に行動試験を行った。1日目に、ロッドは、マウスを4回転/分間の固定速度で300秒間ずつ4回訓練した。2日目に、マウスを4~40回転/分間の加速方式で4回訓練した。3日目に、4~40回転/分間の方式で行動試験を行い、4回試験した。マウスが脱落する前に、ロッドに滞留する時間を滞留期間として記録し、且つ3つの最長の滞留期間の平均を用いて分析した。
【0187】
NMDAモデリング:
RGCが損傷網膜で再生できるかどうかを研究するために、PBSで200 mMのNMDA溶液を調製し、次に硝子体内注射により、1.5 μLのNMDA溶液を4~8週齢のAi9マウス又は5~6週齢のC57BL/6マウスの眼内に注入した(VEP及び白黒シーン選好試験用)。NMDA注射の2~3週間後に、GFAP-GFP-Creを、GFAP-CasRx-REST又はGFAP-CasRxと共に網膜下注射により網膜に共送達した。損傷網膜の機能性レスキュー(VEP及び明暗ボックスのシャトル実験)を評価するために、年齢が5週から12か月であるマウス(C57BL/6)にNMDAを注射して網膜損傷を誘発し、そして注射の2~3週間後に、網膜下にGFAP-mCherry(0.1 μL)とPBS(0.9 μL)又はGFAP-RZFD-V1(0.9 μL)/GFAP-RZFD-V2(0.9 μL)/GFAP-RZFD-V3(0.9 μL)との混合物を注射した。
【0188】
網膜下のAAV注射
Olympus顕微鏡(Olympus、日本東京)下で、Hamiltonシリンジ(32G針)を用いて眼に高力価(>1×1013 vg/mL)のAAVを注射した。完全な網膜における再プログラミングを決定するために、網膜下注射(Ai9及びC57BL/6マウス、年齢が4週~12か月)により、合計1 μLのGFAP-GFP-Cre(0.1 μL)+pbs(0.9 μL)、又はGFAP-GFP-Cre(0.1 μL)及びGFAP-RZFD-V1(0.9 μL)/GFAP-RZFD-V2(0.9 μL)/GFAP-RZFD-V3(0.9 μL)を網膜下に注射した。
【0189】
網膜の採取及び切片:
AAV注射の1~3か月後に、眼、視神経及び脳組織を採取し、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)で2時間(眼及び視神経)又は24時間(脳)固定し、次に30%のスクロース溶液中で2時間(眼)又は24時間(脳)脱水し、視神経をPBSで直接洗浄した後、封入して観察した。次にOCTによる包埋を行い、眼と脳を30 μmの厚さに切片した。
【0190】
網膜免疫蛍光染色:
免疫蛍光染色に使用される一次抗体は、ウサギ抗RBPMS(1:500、15187-1-AP、Proteintech)、マウス抗Brn3a(1:100、MAB1585、Millipore)、ウサギ抗Sox9(1:500、AB5535、Millipore)、ウサギ抗Prox1(1:500、AB5475、Millipore)、ウサギ抗Pax6(1:500、901301、Biolegent)であった。二次抗体は、CyTM5 AffiniPure Donkeyマウス抗IgG(H+L)(1:500、715-175-150、Jackson ImmunoResearch)及びCy TM 5 AffiniPure Donkeyウサギ抗IgG(H+L)(1:500、711-175-152、Jackson ImmunoResearch)であった。一次抗体を4℃で一晩インキュベートし、次にPBSで10分間ずつ3回洗浄した。二次抗体を室温で2~3時間インキュベートし、更にPBSで10分間ずつ3回洗浄した。最後に、蛍光褪色防止用封入剤(Life technology)で封入し、そしてOlympus FV3000顕微鏡を用いて画像化した。
【0191】
統計分析:
s.e.m.によって誤差曲線が設定され、対応のない両側t検定又は一元配置分散分析によって統計学的有意性が計算された(p<0.05)。全ての実験は、統計学的方法を用いてサンプルの量を予め決めることなく、ランダムに作成された。データ分布は正常であったが、正式な検証はされていないと仮定した。データの収集及び分析はブラインド実験条件下では行われなかった。
【0192】
実施例1.RE1を標的とするツールの構築
RE1の調節を実現するために、本発明者らは、RESTがRE1に結合できるという特徴を利用して、RZFD(REST Zinc Finger Domain)(配列番号1)と呼ばれるその内因性ジンクフィンガータンパク質(ZF)のRE1結合ドメインを活用してRE1を調節した。ドメイン予測及びタンパク質構造モデリングにより、本発明者らは、ヒトRESTタンパク質の159~412番目が8個のジンクフィンガータンパク質ドメインを含むことを発見した(図1A)。RE1により制御される神経関連タンパク質の発現を更に調節するために、本発明者らは、RZFDのC末端に遺伝子発現調節因子VP64(配列番号7)又はP65-HSF1(配列番号11)を融合し、RZFD-VP64及びRZFD-P65-HSFに構築した(図1A)。VP64及びP65-HSFは、転写因子及びヒストンアセチル化などのタンパク質をRE1近傍に動員し、RE1近傍の染色体構造を調節し、それにより制御される遺伝子を発現させることができる。RZFDシステムを更に最適化するために、本発明者らは、RZFDをコドン最適化し(配列番号15)、哺乳動物細胞におけるRZFDの発現量を増加させると同時に、RZFDの両端にbpNLS配列をそれぞれ付加して、その核への進入効率を向上させ、このバージョンをRZFDmaxと命名した(図1A)。非ニューロン(例えば、膠細胞)において、REST複合体はRE1に結合し、複合体中のヒストンデアセチラーゼ及びメチラーゼの作用下で、RE1近傍のクロマチンが緻密状態に変換し、ニューロン関連遺伝子の発現がオフになった(図1B)。非ニューロン細胞(例えば、膠細胞)においてRZFD、RZFD-VP64又はRZFD-P65-HSF1を発現し、RZFD、RZFD-VP64又はRZFD-P65-HSF1はRE1に競合的に結合し、RE1へのRESTサイレンシング複合体の結合を阻止した(図1C、D及びE)RZFDのメカニズムは、RE1との競合的結合によるものであり、RZFD-VP64及びRZFD-P65-HSF1は、RE1に競合的に結合できるだけでなく、RE1近傍の染色体状態を更に変化させ、それにより調節される神経関連遺伝子の発現を促進することができる。
【0193】
実施例2.遺伝子発現抑制システムの構築
RESTタンパク質のN-末端(配列番号16)及びC-末端(配列番号18)は、REST標的遺伝子発現の調節を実現するために、様々なエピジェネティック調節エレメントを動員する作用を有する。N-末端及びC-末端が標的遺伝子の発現を抑制する能力を研究するために、本発明者らは、複数の異なる抑制システムを構築すると共に293T細胞におけるPtbp1の標的抑制の効率を試験した(図1F~K)。同時に、既知の遺伝子発現抑制ドメインKrab(配列番号28)の抑制効率と比較するために、本発明者らは、dCas9-Krab(配列番号23)及びdCas9-3xKrab(配列番号24)システムも構築した。dCas9-Krabが細胞に進入した後、標的遺伝子の発現を抑制する目的を達成するために、sgRNAの誘導下で内因性遺伝子発現調節ドメインに結合する。単一のN-末端抑制効率、複数のN-末端直列連結抑制効率の差異、並びにN-末端及びC-末端を同時に導入する抑制効率の差異を研究するために、本発明者らは、N-dCas9(配列番号25)、3xN-dCas9(配列番号26)及び3xN-dCas9-3xC(配列番号27)の幾つかの種類の抑制システムを構築し、Ptbp1を標的とするsgRNAの誘導下でPtbp1発現を抑制した(図1G~K)。各システムの抑制効率を試験するために、本発明者らは、異なるシステムを293T細胞にトランスフェクトし、そしてフローサイトメトリーによりトランスフェクト陽性細胞を選別し、そして各システムによるPtbp1の抑制効果を検出するために陽性細胞に対するRT-qPCRを行った。標的遺伝子に対するN-dCas9及びdCas9-Krabの抑制効率は近いが、抑制効率は何れも比較的低かった。3xN-dCas9の抑制効率も高くなかった。一方、dCas9-3xKrab及び3xN-dCas9-3xCの抑制効率は比較的高く、特に3xN-dCas9-3xCの抑制効率は、dCas9-3xKrabの抑制効率よりも高かった(図1L)。これらの結果は、RESTのN-末端及びC-末端を抑制システムに構築すると、内因性遺伝子の発現を効果的に抑制することができ、エピジェネティック調節ツール又は遺伝子発現抑制ツールとしてもよいことを示した。
【0194】
実施例3.RZFD及びRZFDmaxによる星状膠細胞のドーパミンニューロンへの分化転換
マウス体内で膠細胞のニューロン細胞への分化転換を実現するために、本発明者らは、AAV発現ベクターを構築した。星状膠細胞を特異的に標識するために、AAV発現ベクターにおいて、本発明者らは、星状膠細胞特異的プロモーターGFAPを利用して蛍光タンパク質mCherry発現(GFAP-mCherry)を駆動し、ヒトRZFDもGFAPプロモーターにより駆動され(GFAP-RZFD、その中のRZFDのアミノ酸配列は配列番号1、核酸配列は配列番号2)、星状膠細胞に特異的に発現された(図2A)。注射後の2週間以上の期間に膠細胞のニューロン又はドーパミンニューロンへの分化転換を誘導できるかどうかを検出するために、本発明者らは、AAV注射後の2週間又は1.5か月にそれぞれ採取し、そしてニューロン特異的マーカーNeuN及びドーパミンニューロン特異的マーカーチロシンヒドロキシラーゼ(Tyrosine hydroxylase、THと略称)染色を行った(図2B)。8週齢のC57マウスの線条体又は黒質に、実験群としてGFAP-mCherry+GFAP-RZFDを発現するAAVを注射し、或いは対照群としてGFAP-mCherryを発現するAAVを単独で注射した(図2C)。本発明者らの以前の研究は、注射後の1週間から注射後の3か月に、対照群ではニューロンが産生しないことを示した。以前の研究結果と一致し、対照群では、AAV注射の2週間後、ニューロンの産生が観察されなかった(図2D)。一方、実験群では、本発明者らは、注射後2週間に、一部の細胞が変形を開始し、且つ少量の膠細胞がニューロン特異的マーカーNeuNの発現を開始したことを観察できることを見出した(図2E)。これは、星状膠細胞におけるRZFDの発現が星状膠細胞のニューロンへの分化転換の潜在力を有することを示した。GFAP-mCherry+GFAP-RZFDを発現する混合AAVウィルスを注射した1.5か月後に分析すると、大量のmCherry+NeuN+二重陽性細胞が見られるが、対照群ではmCherry+NeuN+二重陽性細胞が見られず、これは、RZFDが星状膠細胞をニューロンに効率的に分化転換できることを示した。それと同時に、ドーパミンニューロンを検出する特異的マーカーTHを利用し、本発明者らは、一部のmCherry陽性細胞におけるTHの発現が増強すると共にニューロンを形成することを見出し、これは、RZFDが星状膠細胞をドーパミンニューロンに分化転換できることを示した(図2F)。RZFDmaxが星状膠細胞のニューロン及びドーパミンニューロンへの分化転換効率を更に向上できるかどうかを研究するために、マウス線条体にGFAP-mCherry+GFAP-RZFDmaxの混合AAVウィルスを注射し、そしてその分化転換効率を分析した。GFAP-mCherry+GFAP-RZFDmaxを注射したマウス線条体に、より多くのTH陽性ニューロンの数が見出された(図2G)。GFAP-RZFD群及びGFAP-RZFDmax群の統計分析により、GFAP-RZFDmax群が産生したTH陽性ニューロンの数がGFAP-RZFD群よりも明らかに多いことを見出した(図2H)。これらの結果は、GFAP-RZFD及びGFAP-RZFDmaxが何れも、星状膠細胞のニューロン及びドーパミンニューロンへの分化転換を誘導することができ、且つGFAP-RZFDmaxによる膠細胞のドーパミンニューロンへの分化転換の誘導効率がより高いことを示した。
【0195】
実施例4.RZFDによる星状膠細胞のドーパミンニューロンへの分化転換がパーキンソンマウスモデルの疾患症状を軽減する
パーキンソンマウス疾患モデルにおいて、GFAP-RZFDがパーキンソンマウスの疾患症状を緩和できるかどうかを更に調べるために、本発明者らは、まずDat-Cre:Ai9マウスMFBに6-OHDAを注射してモデリングした。次にモデリング後のマウス線条体(Striatum、STと略称)又は黒質(Nigra)に対照群及び試験群AAVを注射し、そして注射後1.5~3か月に分析を行った(図3A)。Dat-Cre:Ai9は、ドーパミンニューロンを特異的に標識することができ、ドーパミンニューロンのみがtdTomato陽性に標識された。一般に、マウス線条体に陽性細胞がなく、膠細胞がドーパミンニューロンに分化転換する場合、赤色に標識された。対照群では、本発明者らは、GFAP-EGFPを発現するAAVを注射し、EGFP緑色蛍光シグナルは星状膠細胞に特異的に発現され、これらの細胞は典型的な星状膠細胞形態を維持し、且つ赤色蛍光下で赤色シグナルを見出せず、TH陽性細胞も見出せず、これは、GFAP-EGFP対照群では分化転換により産生されたドーパミンニューロンがないことを示した(図3B)。一方、GFAP-EGFP+GFAP-RZFDを注射した実験群では、一部のEGFP陽性細胞がニューロン形態に分化され、且つ一部のtdTomato陽性細胞が大量に現れることが観察され、TH染色はこれらのtdTomato陽性細胞がTHと共局在化することを示した(図3C)。これは、Dat-Cre:Ai9マウスにおけるRZFDの過剰発現が膠細胞をドーパミンニューロンに分化転換できることを示した。これらの分化転換するニューロンがパーキンソンマウスモデルの疾患症状を緩和できるかどうかを更に試験するために、本発明者らは、マウスに対してロータロッドテスト試験、シリンダーテスト試験及び薬物誘発性回転行動試験を行った(図3D~G)。ロータロッドテストにおいて、対照群のマウスは約120 s程度維持できるが、治療群のマウスは180 s程度に達することができた(図3D)。シリンダー試験において、前足を使用するマウスのバランスについて治療群が対照群よりも明らかに優れた(図3E)。薬物誘発性回転行動試験において、対照群と比較して、治療群の回転行動が明らかに減少した(図3F及び3G)。これらの結果は、分化転換して得られたドーパミンニューロンがパーキンソンマウスモデルの疾患症状を明らかに緩和できることを示した。
【0196】
実施例5.RZFD-VP64及びRZFD-P65-HSF1による星状膠細胞のドーパミンニューロンへの分化転換
RE1ニューロン関連遺伝子の発現を調節することを更に研究するために、本発明者らは、RZFD-VP64(GFAP-RZFD-V2として表記され、配列番号5のアミノ酸配列、配列番号6の核酸配列)及びRZFD-P65-HSF1(GFAP-RZFD-V3と表記され、配列番号9のアミノ酸配列、配列番号10の核酸配列)のAAV発現ベクターを構築した(図4A)。膠細胞特異的プロモーターGFAPの駆動下で、RZFD-VP64及びRZFD-P65-HSF1を発現した。本発明者らは、C57マウスの線条体又は黒質にGFAP-mCherry+GFAP-RZFD-VP64の混合AAVを注射し、そして注射後の1.5か月に採取分析した(図4B)。本発明者らは、GFAP-RZFD-VP64注射群では赤色蛍光標識の細胞の大部分がニューロン特異的マーカーNeuNを発現すると同時に、また一部の細胞がドーパミンニューロン特異的マーカーTHを発現することを見出した(図4C)。本発明者らは、DAT-Cre:Ai9マウスの線条体又は黒質に類似のAAV注射を行い、GFAP-RZFD-P65-HSF1をマウスの線条体又は黒質に注射し、1.5か月後に採取分析した(図4D)。DAT-Cre:Ai9マウスでは、成熟したドーパミンニューロンのみが標識されるが、本発明者らの研究によれば、対照群マウスの線条体に赤色蛍光標識の細胞がないことを見出した。一方、GFAP-RZFD-P65-HSF1を注射したDAT-Cre:Ai9マウス線条体に赤色細胞が産生し、NeuN及びTH染色を経て、本発明者らは、赤色蛍光シグナルがあるこれらの細胞がニューロン特異的マーカーNeuNを発現すると同時に、ドーパミンニューロン特異的マーカーTHを更に発現することを見出した(図4E)。これは、膠細胞におけるRZFD-P65-HSF1の発現が星状膠細胞をドーパミンニューロンに分化転換できることを示した。
【0197】
実施例6.RZFDによるミュラー膠細胞の光受容細胞及び網膜神経節細胞への分化転換
マウス網膜におけるRZFDの作用を研究するために、本発明者らは、NLS-RZFD-V1(配列番号3)を発現するAAVをマウス網膜下に注射し、RZFDが網膜内のミュラー膠細胞を他の種類の細胞に分化転換できるかどうかを探索した。Ai9マウスにおいて、網膜下注射の方式により、GFAP-EGFP-2A-Creを発現するAAVをマウスの眼内に送達した。ここで、GFAP-EGFP-2A-Creは、ミュラー膠細胞を標識するために用いられ、GFAPプロモーターの作用下で、Creがミュラー膠細胞に特異的に発現され、Ai9マウスのLSL配列を解明し、それによりAi9マウスのミュラー膠細胞を標識する作用を達した(図5A)。本発明者らはまず、Ai9マウスに対してNMDAモデリングを行い、モデリング後にAAV注射を行った。対照群において、GFAP-EGFP-2A-Cre注射後、標識ミュラー膠細胞は明らかに変形せず、ミュラー膠細胞以外の他の細胞が標識されることも観察されなかった(図5B)。一方、NLS-RZFD-V1を発現するAAV注射群(即ち、GFAP-RZFD)では、外側顆粒細胞層にtdTomato陽性の光受容細胞が観察され、且つ多くのミュラー膠細胞の変形が観察された(図5C)。光受容細胞特異的タンパク質マーカーRhodopsin及びCone arrestinを利用して染色し、外側顆粒層に位置するtdTomato陽性細胞とRhodopsin又はCone arrestin(即ちMCAR)とが共標識されることを見出した(図5H及び5I)。これは、ミュラー膠細胞におけるRZFDの過剰発現がそれを光受容細胞に分化転換できることを示した。光受容細胞の数を統計すると、各視野における光受容細胞の平均の数が約8個であるが、対照群ではtdTomato陽性の光受容細胞がほぼ観察されなかったことを見出した(図5J)。RZFDの過剰発現がミュラー膠細胞を網膜神経節細胞に分化転換できるかどうかを検出するために、本発明者らは、注射後のマウス視神経を採取し、全組織封入スキャンにより、対照群ではtdTomato陽性の軸索がほぼない一方で、実験群では大量のtdTomato陽性軸索があることを見出した(図5D及び5E)。更に網膜に対してRbpms染色を行い、対照群ではtdTomato陽性細胞が全て内側顆粒細胞層に位置し、網膜神経節細胞層にtdTomato陽性細胞がない一方で、RZFD過剰発現群では、一部のtdTomato陽性細胞が網膜神経節細胞層に移行し、そして網膜神経節細胞特異的タンパク質マーカーRbpmsと共標識された(図5F及び5G)。視神経に対して統計分析を行ったところ、各視神経においてtdTomatoにより標識された軸索は50本を超えたことを見出した(図5K)。これは、ミュラー膠細胞におけるRZFDの過剰発現もミュラー膠細胞を網膜神経節細胞に分化転換できることを示した。以上のように、RZFDの過剰発現は、ミュラー膠細胞を網膜神経節細胞に分化転換できるだけでなく、光受容細胞に分化転換することもできる。
【0198】
実施例7.miR-9又はmiR-124の過剰発現による膠細胞のニューロンへの分化転換が不可能である
以前の研究は、Ptbp1のノックダウンが膠細胞をドーパミンニューロンに分化転換できることを示した。Ptbp1のノックダウンは、miR-124の発現量のアップレギュレーションをもたらす一方で、miR-124は、RESTの発現をダウンレギュレーションできると報告された。miR-124がRESTの発現を効果的に低減できるかどうかを研究するために、本発明者らは、miR-124の過剰発現がRESTタンパク質の発現を効果的に低減できるかどうかを検証するために、293T及びN2A細胞にmiR-124(配列番号31の核酸コード配列)を過剰発現した。
【0199】
本発明者らはAAVベクターを利用し、組織特異的プロモーターGFAPを使用してmiR-124 pri-miRNA(配列番号34に示される)の発現を起動し、pri-miRNA発現後、細胞内でpre-miRNA(配列番号33に示される)に加工され、最後に成熟したmiRNA(配列番号31及び配列番号32)に更に加工され、それによりmiR-124の組織特異的発現を実現した。実験結果によれば、miR-124の過剰発現がRESTの発現を効率的に低減できないことを見出した。
【0200】
更に研究するために、本発明者らは、膠細胞をニューロンに分化転換できるかどうかを検証するために、同じ方法により、膠細胞において類似するAAVベクターを利用して組織特異的プロモーターGFAPでmiR-124の過剰発現を起動した。注射後のマウスの脳切片に対して分析を行ったところ、miR-124の過剰発現が膠細胞をニューロンに分化転換できないことを見出した(図6A~D)。対照群では、赤色蛍光シグナルmCherryは膠細胞内に発現され、且つニューロン特異的マーカーNeuNと共標識されず、線条体にもTH陽性ニューロンがなかった(図6C)。従って、miR-124のアップレギュレーションのみにより、膠細胞のドーパミンニューロンへの分化転換を実現するのに不十分である。
【0201】
以前の研究は、Ptbp2がmiR-9の発現を調節することによって、体外で培養した線維芽細胞のニューロンへの分化転換を促進できることも示した。miR-9の過剰発現は、体外で分化されたニューロンの成熟を促進できる。miR-9の過剰発現が膠細胞のドーパミンニューロンへの分化転換を効果的に促進できるかどうかを研究するためである。本発明者らは、GFAP-miR-9過剰発現のAAVベクターを構築し、AAVによりそれをマウス線条体内に送達し、GFAPプロモーターの作用下で、miR-9 pri-miRNA(配列番号38に示される)は膠細胞内に特異的に発現され、miR-9 pri-miRNA発現後、細胞内でpre-miRNA(配列番号37に示される)に加工され、最後に成熟したmiRNA(配列番号35及び配列番号36)に更に加工され、それによりmiR-9の組織特異的発現を実現した。同時にGFAP-mCherryを利用して線条体内の星状膠細胞を標識した。
【0202】
切片染色分析により、miR-9の過剰発現によっても膠細胞のニューロンへの分化転換を促進できないことを見出した。miR-124と類似し、膠細胞の形態に変化があったが、miR-9又はmiR-124の過剰発現の両方とも星状膠細胞をニューロン又はドーパミンニューロンに分化転換できなかった。
【0203】
実施例8.miR-9及びmiR124の同時過剰発現による膠細胞のニューロンへの分化転換が可能である
体外での以前の研究は、miR-124及びmiR-9の同時過剰発現が幹細胞のニューロンへの分化を促進できることを示し、そうすると、miR-124及びmiR-9の同時過剰発現が膠細胞のニューロンへの分化転換を促進できるかどうかについて、本発明者らは、miR-9及びmiR124をGFAPプロモーターにより駆動すると共に、それをAAVにパッケージングし、マウス線条体に注射して研究を行った。本発明者らは、驚くべきことに、miR-9及びmiR124の同時過剰発現が膠細胞をニューロンに分化転換できることを見出した(図7E)。更にドーパミン特異的タンパク質マーカーTHを利用して染色を行い、miR-9及びmiR124の同時過剰発現が膠細胞をニューロンに分化転換できるが、膠細胞をドーパミンニューロンに分化転換できないことを見出した(図7F)。
【0204】
実施例9.CasRxを使用したCtdsp1の体外での特異的ノックダウン
以前の研究は、Ctdsp1(配列番号29のアミノ酸配列、配列番号30の核酸配列)の発現のノックダウンが、体外で培養した線維芽細胞のニューロンへの分化転換を促進できることを示した。以前の研究では、shRNAノックダウンの方法を使用した。CasRx媒介性RNA編集技術は、新世代のRNAノックダウン技術であり、その効率がより高く、且つ特異性がより強い。CasRx媒介性Ctdsp1ノックダウン効率を決定するために、まずCtdsp1を標的とするgRNAを設計し、gRNAを標的とする領域はCtdsp1遺伝子CDS配列の318~347番目であり、且つ培養したヒト293T及びマウスN2A細胞内でそれらの抑制効率を比較した。対照群細胞にトランスフェクトしたプラスミドは、CAG-CasRx-P2A-GFP及びU6-nontarget-CMV-mCherryであり、実験群にトランスフェクトしたプラスミドは、CAG-CasRx-P2A-GFP及びU6-gRNA(Ctdsp1)-CMV-mCherryであった。トランスフェクション後、フローサイトメトリーにより陽性細胞を選別し、そしてQPCR分析を行った。結果は、Ctdsp1 mRNAを標的とするgRNA及びCasRxの同時トランスフェクションが、ヒト293T及びマウスN2A細胞においてCtdsp1の発現を効率的にノックダウンできることを示した(図8)。
【0205】
実施例10.星状膠細胞におけるCtdsp1のノックダウンによる膠細胞のニューロンへの分化転換は可能であるが、ドーパミンニューロンの産生は不可能である
星状膠細胞におけるCtdsp1のノックダウンは膠細胞をニューロンに分化転換できるかどうかを体内で更に研究するために、本発明者らは、GFAP-CasRx-gRNA(Ctdsp1)を構築し、同時にgRNAを含まないAAVベクターGFAP-CasRxを対照として、そしてGFAP-mCherryで膠細胞を標識した(図9A)。AAVウィルス注射後の1~2か月に切断分析を行い、対照群において、GFAP-mCherry標識の星状膠細胞は、依然として典型的な膠細胞形態を維持し、且つニューロン特異的マーカーNeuNと共標識しなかった(図9B)。一方、ノックダウンCtdsp1群では、本発明者らは、一部の赤色蛍光シグナルで発現される細胞がNeuNを発現することを見出し、これは、Ctdsp1のノックダウンが星状膠細胞をニューロンに分化転換できることを示した(図9C)。体内の環境において、Ctdsp1はインビボ星状膠細胞のニューロンへ分化転換する標的として機能できることが初めて実証された。更にドーパミン特異的タンパク質マーカーTHを使用して染色を行い、Ctdsp1のノックダウンが体内で星状膠細胞をドーパミンニューロンに分化転換できないことを見出した。
【0206】
実施例11.網膜におけるCtdsp1のノックダウン又はmiR-9若しくはmiR-124の過剰発現による膠細胞の光受容細胞若しくは網膜神経節細胞への分化転換が不可能である
Ctdsp1のノックダウン又はmiR-9若しくはmiR-124の過剰発現が網膜内のミュラー膠細胞を網膜神経節細胞又は光受容細胞に分化転換できるかどうかを研究するために、本発明者らは、GFAP-gRNA(Ctdsp1)又はmiR-9若しくはmiR-124若しくはmiR-9+miR-124を、Ai9マウス網膜にそれぞれ注射すると同時に、GFAP-EGFP-2A-Creを注射してミュラー膠細胞を標識し、注射後の1~2か月に分析し、Ctdsp1のノックダウン又はmiR-9若しくはmiR-124若しくはmiR-9+miR-124の過剰発現が何れも、ミュラー膠細胞を網膜神経節細胞又は光受容細胞に分化転換できないことを見出した(図10)。これらの結果は、miR-9又はmiR-124の単独の過剰発現が膠細胞をニューロンに分化転換できないが、Ctdsp1のノックダウン又はmiR-9+miR-124の過剰発現が、脳で星状膠細胞を通常のニューロンに分化転換できるが、ドーパミンニューロン、光受容細胞及び網膜神経節細胞などの特異的種類のニューロンを産生できないことを示した。
【0207】
配列情報
ヒトRZFDアミノ酸配列(配列番号1)
KTKPFRCKPCQYEAESEEQFVHHIRVHSAKKFFVEESAEKQAKARESGSSTAEEGDFSKGPIRCDRCGYNTNRYDHYTAHLKHHTRAGDNERVYKCIICTYTTVSEYHWRKHLRNHFPRKVYTCGKCNYFSDRKNNYVQHVRTHTGERPYKCELCPYSSSQKTHLTRHMRTHSGEKPFKCDQCSYVASNQHEVTRHARQVHNGPKPLNCPHCDYKTADRSNFKKHVELHVNPRQFNCPVCDYAASKKCNLQYHFKSKHPTCPNKTM

ヒトRZFDコード配列(配列番号2)
aagaccaaaccctttcgctgtaagccatgccaatatgaagcagaatctgaagaacagtttgtgcatcacatcagagttcacagtgctaagaaattttttgtggaagagagtgcagagaagcaggcaaaagccagggaatctggctcttccactgcagaagagggagatttctccaagggccccattcgctgtgaccgctgcggctacaatactaatcgatatgatcactatacagcacacctgaaacaccacaccagagctggggataatgagcgagtctacaagtgtatcatttgcacatacacaacagtgagcgagtatcactggaggaaacatttaagaaaccattttccaaggaaagtatacacatgtggaaaatgcaactatttttcagacagaaaaaacaattatgttcagcatgttagaactcatacaggagaacgcccatataaatgtgaactttgtccttactcaagttctcagaagactcatctaactagacatatgcgtactcattcaggtgagaagccatttaaatgtgatcagtgcagttatgtggcctctaatcaacatgaagtaacccgccatgcaagacaggttcacaatgggcctaaacctcttaattgcccacactgtgattacaaaacagcagatagaagcaacttcaaaaaacatgtagagctacatgtgaacccacggcagttcaattgccctgtatgtgactatgcagcttccaagaagtgtaatctacagtatcacttcaaatctaagcatcctacttgtcctaataaaacaatg

NLS-RZFD-V1アミノ酸配列(配列番号3)
MPKKKRKVGSGKTKPFRCKPCQYEAESEEQFVHHIRVHSAKKFFVEESAEKQAKARESGSSTAEEGDFSKGPIRCDRCGYNTNRYDHYTAHLKHHTRAGDNERVYKCIICTYTTVSEYHWRKHLRNHFPRKVYTCGKCNYFSDRKNNYVQHVRTHTGERPYKCELCPYSSSQKTHLTRHMRTHSGEKPFKCDQCSYVASNQHEVTRHARQVHNGPKPLNCPHCDYKTADRSNFKKHVELHVNPRQFNCPVCDYAASKKCNLQYHFKSKHPTCPNKTM

NLS-RZFD-V1ヌクレオチド酸配列(配列番号4)
atgCCTAAAAAGAAAAGAAAGGTGGGTTCTGGTaagaccaaaccctttcgctgtaagccatgccaatatgaagcagaatctgaagaacagtttgtgcatcacatcagagttcacagtgctaagaaattttttgtggaagagagtgcagagaagcaggcaaaagccagggaatctggctcttccactgcagaagagggagatttctccaagggccccattcgctgtgaccgctgcggctacaatactaatcgatatgatcactatacagcacacctgaaacaccacaccagagctggggataatgagcgagtctacaagtgtatcatttgcacatacacaacagtgagcgagtatcactggaggaaacatttaagaaaccattttccaaggaaagtatacacatgtggaaaatgcaactatttttcagacagaaaaaacaattatgttcagcatgttagaactcatacaggagaacgcccatataaatgtgaactttgtccttactcaagttctcagaagactcatctaactagacatatgcgtactcattcaggtgagaagccatttaaatgtgatcagtgcagttatgtggcctctaatcaacatgaagtaacccgccatgcaagacaggttcacaatgggcctaaacctcttaattgcccacactgtgattacaaaacagcagatagaagcaacttcaaaaaacatgtagagctacatgtgaacccacggcagttcaattgccctgtatgtgactatgcagcttccaagaagtgtaatctacagtatcacttcaaatctaagcatcctacttgtcctaataaaacaatg

NLS-RZFD-V2アミノ酸配列(配列番号5)
MPKKKRKVGSGKTKPFRCKPCQYEAESEEQFVHHIRVHSAKKFFVEESAEKQAKARESGSSTAEEGDFSKGPIRCDRCGYNTNRYDHYTAHLKHHTRAGDNERVYKCIICTYTTVSEYHWRKHLRNHFPRKVYTCGKCNYFSDRKNNYVQHVRTHTGERPYKCELCPYSSSQKTHLTRHMRTHSGEKPFKCDQCSYVASNQHEVTRHARQVHNGPKPLNCPHCDYKTADRSNFKKHVELHVNPRQFNCPVCDYAASKKCNLQYHFKSKHPTCPNKTMGSGGGGSGGGGSRADALDDFDLDMLGSDALDDFDLDMLGSDALDDFDLDMLGSDALDDFDLDMLYID

NLS-RZFD-V2ヌクレオチド配列(配列番号6)
atgCCTAAAAAGAAAAGAAAGGTGGGTTCTGGTaagaccaaaccctttcgctgtaagccatgccaatatgaagcagaatctgaagaacagtttgtgcatcacatcagagttcacagtgctaagaaattttttgtggaagagagtgcagagaagcaggcaaaagccagggaatctggctcttccactgcagaagagggagatttctccaagggccccattcgctgtgaccgctgcggctacaatactaatcgatatgatcactatacagcacacctgaaacaccacaccagagctggggataatgagcgagtctacaagtgtatcatttgcacatacacaacagtgagcgagtatcactggaggaaacatttaagaaaccattttccaaggaaagtatacacatgtggaaaatgcaactatttttcagacagaaaaaacaattatgttcagcatgttagaactcatacaggagaacgcccatataaatgtgaactttgtccttactcaagttctcagaagactcatctaactagacatatgcgtactcattcaggtgagaagccatttaaatgtgatcagtgcagttatgtggcctctaatcaacatgaagtaacccgccatgcaagacaggttcacaatgggcctaaacctcttaattgcccacactgtgattacaaaacagcagatagaagcaacttcaaaaaacatgtagagctacatgtgaacccacggcagttcaattgccctgtatgtgactatgcagcttccaagaagtgtaatctacagtatcacttcaaatctaagcatcctacttgtcctaataaaacaatgGGTAGTGGCGGTGGTGGTTCAGGAGGCGGCGGAAGCCGCGCCGACGCGCTGGACGATTTCGATCTCGACATGCTGGGTTCTGATGCCCTCGATGACTTTGACCTGGATATGTTGGGAAGCGACGCATTGGATGACTTTGATCTGGACATGCTCGGCTCCGATGCTCTGGACGATTTCGATCTCGATATGTTATATATCGAT

VP64アミノ酸配列(配列番号7)
RADALDDFDLDMLGSDALDDFDLDMLGSDALDDFDLDMLGSDALDDFDLDMLYID

VP64ヌクレオチド配列(配列番号8)
CGCGCCGACGCGCTGGACGATTTCGATCTCGACATGCTGGGTTCTGATGCCCTCGATGACTTTGACCTGGATATGTTGGGAAGCGACGCATTGGATGACTTTGATCTGGACATGCTCGGCTCCGATGCTCTGGACGATTTCGATCTCGATATGTTATATATCGAT

NLS-RZFD-V3アミノ酸配列(配列番号9)
MPKKKRKVGSGKTKPFRCKPCQYEAESEEQFVHHIRVHSAKKFFVEESAEKQAKARESGSSTAEEGDFSKGPIRCDRCGYNTNRYDHYTAHLKHHTRAGDNERVYKCIICTYTTVSEYHWRKHLRNHFPRKVYTCGKCNYFSDRKNNYVQHVRTHTGERPYKCELCPYSSSQKTHLTRHMRTHSGEKPFKCDQCSYVASNQHEVTRHARQVHNGPKPLNCPHCDYKTADRSNFKKHVELHVNPRQFNCPVCDYAASKKCNLQYHFKSKHPTCPNKTMGSGGGGSGGGGSRADALDDFDLDMLGSDALDDFDLDMLGSDALDDFDLDMLGSDALDDFDLDMLYIDDYKLGSGGGGSGGGGSPSGQISNQALALAPSSAPVLAQTMVPSSAMVPLAQPPAPAPVLTPGPPQSLSAPVPKSTQAGEGTLSEALLHLQFDADEDLGALLGNSTDPGVFTDLASVDNSEFQQLLNQGVSMSHSTAEPMLMEYPEAITRLVTGSQRPPDPAPTPLGTSGLPNGLSGDEDFSSIADMDFSALLSQISSSGQGGGGSGFSVDTSALLDLFSPSVTVPDMSLPDLDSSLASIQELLSPQEPPRPPEAENSSPDSGKQLVHYTAQPLFLLDPGSVDTGSNDLPVLFELGEGSYFSEGDGFAEDPTISLLTGSEPPKAKDPTVSPKKKRKV

NLS-RZFD-V3ヌクレオチド配列(配列番号10)
atgCCTAAAAAGAAAAGAAAGGTGGGTTCTGGTaagaccaaaccctttcgctgtaagccatgccaatatgaagcagaatctgaagaacagtttgtgcatcacatcagagttcacagtgctaagaaattttttgtggaagagagtgcagagaagcaggcaaaagccagggaatctggctcttccactgcagaagagggagatttctccaagggccccattcgctgtgaccgctgcggctacaatactaatcgatatgatcactatacagcacacctgaaacaccacaccagagctggggataatgagcgagtctacaagtgtatcatttgcacatacacaacagtgagcgagtatcactggaggaaacatttaagaaaccattttccaaggaaagtatacacatgtggaaaatgcaactatttttcagacagaaaaaacaattatgttcagcatgttagaactcatacaggagaacgcccatataaatgtgaactttgtccttactcaagttctcagaagactcatctaactagacatatgcgtactcattcaggtgagaagccatttaaatgtgatcagtgcagttatgtggcctctaatcaacatgaagtaacccgccatgcaagacaggttcacaatgggcctaaacctcttaattgcccacactgtgattacaaaacagcagatagaagcaacttcaaaaaacatgtagagctacatgtgaacccacggcagttcaattgccctgtatgtgactatgcagcttccaagaagtgtaatctacagtatcacttcaaatctaagcatcctacttgtcctaataaaacaatgGGTAGTGGCGGTGGTGGTTCAGGAGGCGGCGGAAGCCGCGCCGACGCGCTGGACGATTTCGATCTCGACATGCTGGGTTCTGATGCCCTCGATGACTTTGACCTGGATATGTTGGGAAGCGACGCATTGGATGACTTTGATCTGGACATGCTCGGCTCCGATGCTCTGGACGATTTCGATCTCGATATGTTATATATCGATGATTACAAGCTTGGTAGTGGCGGTGGTGGTTCAGGAGGCGGCGGAAGCCCTTCAGGGCAGATCAGCAACCAGGCCCTGGCTCTGGCCCCTAGCTCCGCTCCAGTGCTGGCCCAGACTATGGTGCCCTCTAGTGCTATGGTGCCTCTGGCCCAGCCACCTGCTCCAGCCCCTGTGCTGACCCCAGGACCACCCCAGTCACTGAGCGCTCCAGTGCCCAAGTCTACACAGGCCGGCGAGGGGACTCTGAGTGAAGCTCTGCTGCACCTGCAGTTCGACGCTGATGAGGACCTGGGAGCTCTGCTGGGGAACAGCACCGATCCCGGAGTGTTCACAGATCTGGCCTCCGTGGACAACTCTGAGTTTCAGCAGCTGCTGAATCAGGGCGTGTCCATGTCTCATAGTACAGCCGAACCAATGCTGATGGAGTACCCCGAAGCCATTACCCGGCTGGTGACCGGCAGCCAGCGGCCCCCCGACCCCGCTCCAACTCCCCTGGGAACCAGCGGCCTGCCTAATGGGCTGTCCGGAGATGAAGACTTCTCAAGCATCGCTGATATGGACTTTAGTGCCCTGCTGTCACAGATTTCCTCTAGTGGGCAGGGAGGAGGTGGAAGCGGCTTCAGCGTGGACACCAGTGCCCTGCTGGACCTGTTCAGCCCCTCGGTGACCGTGCCCGACATGAGCCTGCCTGACCTTGACAGCAGCCTGGCCAGTATCCAAGAGCTCCTGTCTCCCCAGGAGCCCCCCAGGCCTCCCGAGGCAGAGAACAGCAGCCCGGATTCAGGGAAGCAGCTGGTGCACTACACAGCGCAGCCGCTGTTCCTGCTGGACCCCGGCTCCGTGGACACCGGGAGCAACGACCTGCCGGTGCTGTTTGAGCTGGGAGAGGGCTCCTACTTCTCCGAAGGGGACGGCTTCGCCGAGGACCCCACCATCTCCCTGCTGACAGGCTCGGAGCCTCCCAAAGCCAAGGACCCCACTGTCTCCCCCAAGAAGAAGCGCAAGGTG

P65-HSF1アミノ酸配列(配列番号11)
PSGQISNQALALAPSSAPVLAQTMVPSSAMVPLAQPPAPAPVLTPGPPQSLSAPVPKSTQAGEGTLSEALLHLQFDADEDLGALLGNSTDPGVFTDLASVDNSEFQQLLNQGVSMSHSTAEPMLMEYPEAITRLVTGSQRPPDPAPTPLGTSGLPNGLSGDEDFSSIADMDFSALLSQISSSGQGGGGSGFSVDTSALLDLFSPSVTVPDMSLPDLDSSLASIQELLSPQEPPRPPEAENSSPDSGKQLVHYTAQPLFLLDPGSVDTGSNDLPVLFELGEGSYFSEGDGFAEDPTISLLTGSEPPKAKDPTVS

P65-HSF1ヌクレオチド配列(配列番号12)
CCTTCAGGGCAGATCAGCAACCAGGCCCTGGCTCTGGCCCCTAGCTCCGCTCCAGTGCTGGCCCAGACTATGGTGCCCTCTAGTGCTATGGTGCCTCTGGCCCAGCCACCTGCTCCAGCCCCTGTGCTGACCCCAGGACCACCCCAGTCACTGAGCGCTCCAGTGCCCAAGTCTACACAGGCCGGCGAGGGGACTCTGAGTGAAGCTCTGCTGCACCTGCAGTTCGACGCTGATGAGGACCTGGGAGCTCTGCTGGGGAACAGCACCGATCCCGGAGTGTTCACAGATCTGGCCTCCGTGGACAACTCTGAGTTTCAGCAGCTGCTGAATCAGGGCGTGTCCATGTCTCATAGTACAGCCGAACCAATGCTGATGGAGTACCCCGAAGCCATTACCCGGCTGGTGACCGGCAGCCAGCGGCCCCCCGACCCCGCTCCAACTCCCCTGGGAACCAGCGGCCTGCCTAATGGGCTGTCCGGAGATGAAGACTTCTCAAGCATCGCTGATATGGACTTTAGTGCCCTGCTGTCACAGATTTCCTCTAGTGGGCAGGGAGGAGGTGGAAGCGGCTTCAGCGTGGACACCAGTGCCCTGCTGGACCTGTTCAGCCCCTCGGTGACCGTGCCCGACATGAGCCTGCCTGACCTTGACAGCAGCCTGGCCAGTATCCAAGAGCTCCTGTCTCCCCAGGAGCCCCCCAGGCCTCCCGAGGCAGAGAACAGCAGCCCGGATTCAGGGAAGCAGCTGGTGCACTACACAGCGCAGCCGCTGTTCCTGCTGGACCCCGGCTCCGTGGACACCGGGAGCAACGACCTGCCGGTGCTGTTTGAGCTGGGAGAGGGCTCCTACTTCTCCGAAGGGGACGGCTTCGCCGAGGACCCCACCATCTCCCTGCTGACAGGCTCGGAGCCTCCCAAAGCCAAGGACCCCACTGTCTCC

BPNLSアミノ酸配列(配列番号13)
KRTADGSEFESPKKKRKV

BPNLSヌクレオチド配列(配列番号14)
AAACGGACAGCCGATGGCAGCGAGTTCGAGAGCCCCAAGAAGAAGAGAAAGGTG

コドン最適化RZFD(配列番号15)
AAGACCAAGCCCTTCAGGTGTAAACCCTGCCAGTACGAGGCCGAGTCTGAGGAACAGTTTGTCCACCACATCAGAGTGCACAGCGCTAAGAAATTCTTCGTTGAGGAATCTGCCGAGAAGCAGGCCAAGGCCCGGGAAAGCGGCTCCAGTACAGCCGAAGAGGGCGACTTCAGCAAGGGCCCTATCCGGTGCGACAGATGTGGCTATAATACCAACAGATACGACCACTACACAGCGCACCTGAAGCACCACACCCGGGCCGGCGACAACGAGAGAGTGTACAAGTGCATCATCTGCACCTACACCACAGTGTCCGAGTACCACTGGCGGAAACATCTCAGAAACCACTTTCCAAGAAAGGTGTACACCTGCGGCAAGTGCAACTACTTCAGCGACCGGAAGAACAACTACGTGCAGCACGTGCGGACACACACCGGCGAGAGACCTTATAAGTGTGAACTGTGCCCTTACAGCAGCAGCCAGAAAACTCACCTGACCCGCCACATGAGAACCCATAGCGGAGAAAAGCCATTTAAGTGCGACCAGTGCAGCTACGTGGCCAGCAATCAACACGAGGTGACCAGACACGCCAGACAGGTGCACAACGGCCCTAAGCCTCTGAACTGTCCCCACTGCGACTACAAAACCGCCGATCGGAGCAACTTCAAGAAACACGTGGAACTGCACGTGAATCCTAGACAGTTCAACTGCCCCGTGTGCGATTACGCCGCCTCCAAGAAGTGTAACCTGCAATACCACTTCAAGAGCAAGCATCCTACATGCCCTAACAAGACCATG

ヒトREST N-末端アミノ酸配列(配列番号16)
MATQVMGQSSGGGGLFTSSGNIGMALPNDMYDLHDLSKAELAAPQLIMLANVALTGEVNGSCCDYLVGEERQMAELMPVGDNNFSDSEEGEGLEESADIKGEPHGLENMELR

ヒトREST N-末端ヌクレオチド配列(配列番号17)
atggccacccaggtaatggggcagtcttctggaggaggagggctgtttaccagcagtggcaacattggaatggccctgcctaacgacatgtatgacttgcatgacctttccaaagctgaactggccgcacctcagcttattatgctggcaaatgtggccttaactggggaagtaaatggcagctgctgtgattacctggtcggtgaagaaagacagatggcagaactgatgccggttggggataacaacttttcagatagtgaagaaggagaaggacttgaagagtctgctgatataaaaggtgaacctcatggactggaaaacatggaactgaga

ヒトREST C-末端アミノ酸配列(配列番号18)
MDEGIHSHEGSDLSDNMSEGSDDSGLHGARPVPQESSRKNAKEALAVKAAKGDFVCIFCDRSFRKGKDYSKHLNRHLVNVYYLEEAAQGQE

ヒトREST C-末端ヌクレオチド配列(配列番号19)
ATGgatgaaggcatccacagccatgaaggaagtgacctaagtgacaacatgtcagagggtagtgatgattctggattgcatggggctcggccagttccacaagaatctagcagaaaaaatgcaaaggaagccttggcagtcaaagcggctaagggagattttgtttgtatcttctgtgatcgttctttcagaaagggaaaagattacagcaaacacctcaatcgccatttggttaatgtgtactatcttgaagaagcagctcaagggcaggag

ヒトREST全長アミノ酸配列(配列番号20)
MATQVMGQSSGGGGLFTSSGNIGMALPNDMYDLHDLSKAELAAPQLIMLANVALTGEVNGSCCDYLVGEERQMAELMPVGDNNFSDSEEGEGLEESADIKGEPHGLENMELRSLELSVVEPQPVFEASGAPDIYSSNKDLPPETPGAEDKGKSSKTKPFRCKPCQYEAESEEQFVHHIRVHSAKKFFVEESAEKQAKARESGSSTAEEGDFSKGPIRCDRCGYNTNRYDHYTAHLKHHTRAGDNERVYKCIICTYTTVSEYHWRKHLRNHFPRKVYTCGKCNYFSDRKNNYVQHVRTHTGERPYKCELCPYSSSQKTHLTRHMRTHSGEKPFKCDQCSYVASNQHEVTRHARQVHNGPKPLNCPHCDYKTADRSNFKKHVELHVNPRQFNCPVCDYAASKKCNLQYHFKSKHPTCPNKTMDVSKVKLKKTKKREADLPDNITNEKTEIEQTKIKGDVAGKKNEKSVKAEKRDVSKEKKPSNNVSVIQVTTRTRKSVTEVKEMDVHTGSNSEKFSKTKKSKRKLEVDSHSLHGPVNDEESSTKKKKKVESKSKNNSQEVPKGDSKVEENKKQNTCMKKSTKKKTLKNKSSKKSSKPPQKEPVEKGSAQMDPPQMGPAPTEAVQKGPVQVEPPPPMEHAQMEGAQIRPAPDEPVQMEVVQEGPAQKELLPPVEPAQMVGAQIVLAHMELPPPMETAQTEVAQMGPAPMEPAQMEVAQVESAPMQVVQKEPVQMELSPPMEVVQKEPVQIELSPPMEVVQKEPVKIELSPPIEVVQKEPVQMELSPPMGVVQKEPAQREPPPPREPPLHMEPISKKPPLRKDKKEKSNMQSERARKEQVLIEVGLVPVKDSWLLKESVSTEDLSPPSPPLPKENLREEASGDQKLLNTGEGNKEAPLQKVGAEEADESLPGLAANINESTHISSSGQNLNTPEGETLNGKHQTDSIVCEMKMDTDQNTRENLTGINSTVEEPVSPMLPPSAVEEREAVSKTALASPPATMAANESQEIDEDEGIHSHEGSDLSDNMSEGSDDSGLHGARPVPQESSRKNAKEALAVKAAKGDFVCIFCDRSFRKGKDYSKHLNRHLVNVYYLEEAAQGQE*

dCas9アミノ酸配列(配列番号21)
MAKRNYILGLAIGITSVGYGIIDYETRDVIDAGVRLFKEANVENNEGRRSKRGARRLKRRRRHRIQRVKKLLFDYNLLTDHSELSGINPYEARVKGLSQKLSEEEFSAALLHLAKRRGVHNVNEVEEDTGNELSTKEQISRNSKALEEKYVAELQLERLKKDGEVRGSINRFKTSDYVKEAKQLLKVQKAYHQLDQSFIDTYIDLLETRRTYYEGPGEGSPFGWKDIKEWYEMLMGHCTYFPEELRSVKYAYNADLYNALNDLNNLVITRDENEKLEYYEKFQIIENVFKQKKKPTLKQIAKEILVNEEDIKGYRVTSTGKPEFTNLKVYHDIKDITARKEIIENAELLDQIAKILTIYQSSEDIQEELTNLNSELTQEEIEQISNLKGYTGTHNLSLKAINLILDELWHTNDNQIAIFNRLKLVPKKVDLSQQKEIPTTLVDDFILSPVVKRSFIQSIKVINAIIKKYGLPNDIIIELAREKNSKDAQKMINEMQKRNRQTNERIEEIIRTTGKENAKYLIEKIKLHDMQEGKCLYSLEAIPLEDLLNNPFNYEVDHIIPRSVSFDNSFNNKVLVKQEEASKKGNRTPFQYLSSSDSKISYETFKKHILNLAKGKGRISKTKKEYLLEERDINRFSVQKDFINRNLVDTRYATRGLMNLLRSYFRVNNLDVKVKSINGGFTSFLRRKWKFKKERNKGYKHHAEDALIIANADFIFKEWKKLDKAKKVMENQMFEEKQAESMPEIETEQEYKEIFITPHQIKHIKDFKDYKYSHRVDKKPNRKLINDTLYSTRKDDKGNTLIVNNLNGLYDKDNDKLKKLINKSPEKLLMYHHDPQTYQKLKLIMEQYGDEKNPLYKYYEETGNYLTKYSKKDNGPVIKKIKYYGNKLNAHLDITDDYPNSRNKVVKLSLKPYRFDVYLDNGVYKFVTVKNLDVIKKENYYEVNSKCYEEAKKLKKISNQAEFIASFYKNDLIKINGELYRVIGVNNDLLNRIEVNMIDITYREYLENMNDKRPPHIIKTIASKTQSIKKYSTDILGNLYEVKSKKHPQIIKKG

dspCas9アミノ酸配列(配列番号22)
MDKKYSIGLAIGTNSVGWAVITDEYKVPSKKFKVLGNTDRHSIKKNLIGALLFDSGETAEATRLKRTARRRYTRRKNRICYLQEIFSNEMAKVDDSFFHRLEESFLVEEDKKHERHPIFGNIVDEVAYHEKYPTIYHLRKKLVDSTDKADLRLIYLALAHMIKFRGHFLIEGDLNPDNSDVDKLFIQLVQTYNQLFEENPINASGVDAKAILSARLSKSRRLENLIAQLPGEKKNGLFGNLIALSLGLTPNFKSNFDLAEDAKLQLSKDTYDDDLDNLLAQIGDQYADLFLAAKNLSDAILLSDILRVNTEITKAPLSASMIKRYDEHHQDLTLLKALVRQQLPEKYKEIFFDQSKNGYAGYIDGGASQEEFYKFIKPILEKMDGTEELLVKLNREDLLRKQRTFDNGSIPHQIHLGELHAILRRQEDFYPFLKDNREKIEKILTFRIPYYVGPLARGNSRFAWMTRKSEETITPWNFEEVVDKGASAQSFIERMTNFDKNLPNEKVLPKHSLLYEYFTVYNELTKVKYVTEGMRKPAFLSGEQKKAIVDLLFKTNRKVTVKQLKEDYFKKIECFDSVEISGVEDRFNASLGTYHDLLKIIKDKDFLDNEENEDILEDIVLTLTLFEDREMIEERLKTYAHLFDDKVMKQLKRRRYTGWGRLSRKLINGIRDKQSGKTILDFLKSDGFANRNFMQLIHDDSLTFKEDIQKAQVSGQGDSLHEHIANLAGSPAIKKGILQTVKVVDELVKVMGRHKPENIVIEMARENQTTQKGQKNSRERMKRIEEGIKELGSQILKEHPVENTQLQNEKLYLYYLQNGRDMYVDQELDINRLSDYDVDAIVPQSFLKDDSIDNKVLTRSDKNRGKSDNVPSEEVVKKMKNYWRQLLNAKLITQRKFDNLTKAERGGLSELDKAGFIKRQLVETRQITKHVAQILDSRMNTKYDENDKLIREVKVITLKSKLVSDFRKDFQFYKVREINNYHHAHDAYLNAVVGTALIKKYPKLESEFVYGDYKVYDVRKMIAKSEQEIGKATAKYFFYSNIMNFFKTEITLANGEIRKRPLIETNGETGEIVWDKGRDFATVRKVLSMPQVNIVKKTEVQTGGFSKESILPKRNSDKLIARKKDWDPKKYGGFDSPTVAYSVLVVAKVEKGKSKKLKSVKELLGITIMERSSFEKNPIDFLEAKGYKEVKKDLIIKLPKYSLFELENGRKRMLASAGELQKGNELALPSKYVNFLYLASHYEKLKGSPEDNEQKQLFVEQHKHYLDEIIEQISEFSKRVILADANLDKVLSAYNKHRDKPIREQAENIIHLFTLTNLGAPAAFKYFDTTIDRKRYTSTKEVLDATLIHQSITGLYETRIDLSQLGGD

dCas9-Krabアミノ酸配列(配列番号23)
MKRTADGSEFESPKKKRKVMDKKYSIGLAIGTNSVGWAVITDEYKVPSKKFKVLGNTDRHSIKKNLIGALLFDSGETAEATRLKRTARRRYTRRKNRICYLQEIFSNEMAKVDDSFFHRLEESFLVEEDKKHERHPIFGNIVDEVAYHEKYPTIYHLRKKLVDSTDKADLRLIYLALAHMIKFRGHFLIEGDLNPDNSDVDKLFIQLVQTYNQLFEENPINASGVDAKAILSARLSKSRRLENLIAQLPGEKKNGLFGNLIALSLGLTPNFKSNFDLAEDAKLQLSKDTYDDDLDNLLAQIGDQYADLFLAAKNLSDAILLSDILRVNTEITKAPLSASMIKRYDEHHQDLTLLKALVRQQLPEKYKEIFFDQSKNGYAGYIDGGASQEEFYKFIKPILEKMDGTEELLVKLNREDLLRKQRTFDNGSIPHQIHLGELHAILRRQEDFYPFLKDNREKIEKILTFRIPYYVGPLARGNSRFAWMTRKSEETITPWNFEEVVDKGASAQSFIERMTNFDKNLPNEKVLPKHSLLYEYFTVYNELTKVKYVTEGMRKPAFLSGEQKKAIVDLLFKTNRKVTVKQLKEDYFKKIECFDSVEISGVEDRFNASLGTYHDLLKIIKDKDFLDNEENEDILEDIVLTLTLFEDREMIEERLKTYAHLFDDKVMKQLKRRRYTGWGRLSRKLINGIRDKQSGKTILDFLKSDGFANRNFMQLIHDDSLTFKEDIQKAQVSGQGDSLHEHIANLAGSPAIKKGILQTVKVVDELVKVMGRHKPENIVIEMARENQTTQKGQKNSRERMKRIEEGIKELGSQILKEHPVENTQLQNEKLYLYYLQNGRDMYVDQELDINRLSDYDVDAIVPQSFLKDDSIDNKVLTRSDKNRGKSDNVPSEEVVKKMKNYWRQLLNAKLITQRKFDNLTKAERGGLSELDKAGFIKRQLVETRQITKHVAQILDSRMNTKYDENDKLIREVKVITLKSKLVSDFRKDFQFYKVREINNYHHAHDAYLNAVVGTALIKKYPKLESEFVYGDYKVYDVRKMIAKSEQEIGKATAKYFFYSNIMNFFKTEITLANGEIRKRPLIETNGETGEIVWDKGRDFATVRKVLSMPQVNIVKKTEVQTGGFSKESILPKRNSDKLIARKKDWDPKKYGGFDSPTVAYSVLVVAKVEKGKSKKLKSVKELLGITIMERSSFEKNPIDFLEAKGYKEVKKDLIIKLPKYSLFELENGRKRMLASAGELQKGNELALPSKYVNFLYLASHYEKLKGSPEDNEQKQLFVEQHKHYLDEIIEQISEFSKRVILADANLDKVLSAYNKHRDKPIREQAENIIHLFTLTNLGAPAAFKYFDTTIDRKRYTSTKEVLDATLIHQSITGLYETRIDLSQLGGDAKRTADGSEFESPKKKRKVAAADYKDDMGRVTFEDVTVNFTQGEWQRLNPEQRNLYRDVMLENYSNLVSVGQGETTKPDVILRLEQGKEPWLEEEEVLGSGRAEKNGDIGGQIWKPKDVKESLADYKDDDDK

dCas9-3xKrabアミノ酸配列(配列番号24)
MPKKKRKVGIHGVPAAKRNYILGLAIGITSVGYGIIDYETRDVIDAGVRLFKEANVENNEGRRSKRGARRLKRRRRHRIQRVKKLLFDYNLLTDHSELSGINPYEARVKGLSQKLSEEEFSAALLHLAKRRGVHNVNEVEEDTGNELSTKEQISRNSKALEEKYVAELQLERLKKDGEVRGSINRFKTSDYVKEAKQLLKVQKAYHQLDQSFIDTYIDLLETRRTYYEGPGEGSPFGWKDIKEWYEMLMGHCTYFPEELRSVKYAYNADLYNALNDLNNLVITRDENEKLEYYEKFQIIENVFKQKKKPTLKQIAKEILVNEEDIKGYRVTSTGKPEFTNLKVYHDIKDITARKEIIENAELLDQIAKILTIYQSSEDIQEELTNLNSELTQEEIEQISNLKGYTGTHNLSLKAINLILDELWHTNDNQIAIFNRLKLVPKKVDLSQQKEIPTTLVDDFILSPVVKRSFIQSIKVINAIIKKYGLPNDIIIELAREKNSKDAQKMINEMQKRNRQTNERIEEIIRTTGKENAKYLIEKIKLHDMQEGKCLYSLEAIPLEDLLNNPFNYEVDHIIPRSVSFDNSFNNKVLVKQEEASKKGNRTPFQYLSSSDSKISYETFKKHILNLAKGKGRISKTKKEYLLEERDINRFSVQKDFINRNLVDTRYATRGLMNLLRSYFRVNNLDVKVKSINGGFTSFLRRKWKFKKERNKGYKHHAEDALIIANADFIFKEWKKLDKAKKVMENQMFEEKQAESMPEIETEQEYKEIFITPHQIKHIKDFKDYKYSHRVDKKPNRKLINDTLYSTRKDDKGNTLIVNNLNGLYDKDNDKLKKLINKSPEKLLMYHHDPQTYQKLKLIMEQYGDEKNPLYKYYEETGNYLTKYSKKDNGPVIKKIKYYGNKLNAHLDITDDYPNSRNKVVKLSLKPYRFDVYLDNGVYKFVTVKNLDVIKKENYYEVNSKCYEEAKKLKKISNQAEFIASFYKNDLIKINGELYRVIGVNNDLLNRIEVNMIDITYREYLENMNDKRPPHIIKTIASKTQSIKKYSTDILGNLYEVKSKKHPQIIKKGKRPAATKKAGQAKKKKGSGSGGGGSGGGGSMGRVTFEDVTVNFTQGEWQRLNPEQRNLYRDVMLENYSNLVSVGQGETTKPDVILRLEQGKEPWLEEEEVLGSGRAEKNGDIGGQIWKPKDVKESLGGGGSMGRVTFEDVTVNFTQGEWQRLNPEQRNLYRDVMLENYSNLVSVGQGETTKPDVILRLEQGKEPWLEEEEVLGSGRAEKNGDIGGQIWKPKDVKESLGGGGSMGRVTFEDVTVNFTQGEWQRLNPEQRNLYRDVMLENYSNLVSVGQGETTKPDVILRLEQGKEPWLEEEEVLGSGRAEKNGDIGGQIWKPKDVKESLAAADYKDDDDK*

N-dCas9アミノ酸配列(配列番号25)
MPKKKRKVGIHGVPAAKRNYILGLAIGITSVGYGIIDYETRDVIDAGVRLFKEANVENNEGRRSKRGARRLKRRRRHRIQRVKKLLFDYNLLTDHSELSGINPYEARVKGLSQKLSEEEFSAALLHLAKRRGVHNVNEVEEDTGNELSTKEQISRNSKALEEKYVAELQLERLKKDGEVRGSINRFKTSDYVKEAKQLLKVQKAYHQLDQSFIDTYIDLLETRRTYYEGPGEGSPFGWKDIKEWYEMLMGHCTYFPEELRSVKYAYNADLYNALNDLNNLVITRDENEKLEYYEKFQIIENVFKQKKKPTLKQIAKEILVNEEDIKGYRVTSTGKPEFTNLKVYHDIKDITARKEIIENAELLDQIAKILTIYQSSEDIQEELTNLNSELTQEEIEQISNLKGYTGTHNLSLKAINLILDELWHTNDNQIAIFNRLKLVPKKVDLSQQKEIPTTLVDDFILSPVVKRSFIQSIKVINAIIKKYGLPNDIIIELAREKNSKDAQKMINEMQKRNRQTNERIEEIIRTTGKENAKYLIEKIKLHDMQEGKCLYSLEAIPLEDLLNNPFNYEVDHIIPRSVSFDNSFNNKVLVKQEEASKKGNRTPFQYLSSSDSKISYETFKKHILNLAKGKGRISKTKKEYLLEERDINRFSVQKDFINRNLVDTRYATRGLMNLLRSYFRVNNLDVKVKSINGGFTSFLRRKWKFKKERNKGYKHHAEDALIIANADFIFKEWKKLDKAKKVMENQMFEEKQAESMPEIETEQEYKEIFITPHQIKHIKDFKDYKYSHRVDKKPNRKLINDTLYSTRKDDKGNTLIVNNLNGLYDKDNDKLKKLINKSPEKLLMYHHDPQTYQKLKLIMEQYGDEKNPLYKYYEETGNYLTKYSKKDNGPVIKKIKYYGNKLNAHLDITDDYPNSRNKVVKLSLKPYRFDVYLDNGVYKFVTVKNLDVIKKENYYEVNSKCYEEAKKLKKISNQAEFIASFYKNDLIKINGELYRVIGVNNDLLNRIEVNMIDITYREYLENMNDKRPPHIIKTIASKTQSIKKYSTDILGNLYEVKSKKHPQIIKKGKRPAATKKAGQAKKKKGSMATQVMGQSSGGGGLFTSSGNIGMALPNDMYDLHDLSKAELAAPQLIMLANVALTGEVNGSCCDYLVGEERQMAELMPVGDNNFSDSEEGEGLEESADIKGEPHGLENMELRGGGGSMATQVMGQSSGGGGLFTSSGNIGMALPNDMYDLHDLSKAELAAPQLIMLANVALTGEVNGSCCDYLVGEERQMAELMPVGDNNFSDSEEGEGLEESADIKGEPHGLENMELRGGGGSMATQVMGQSSGGGGLFTSSGNIGMALPNDMYDLHDLSKAELAAPQLIMLANVALTGEVNGSCCDYLVGEERQMAELMPVGDNNFSDSEEGEGLEESADIKGEPHGLENMELRGSGGGGSGGGGSAAADYKDDDDK*

3xN-dCas9アミノ酸配列(配列番号26)
MPKKKRKVGIHGVPAKKKKGSMATQVMGQSSGGGGLFTSSGNIGMALPNDMYDLHDLSKAELAAPQLIMLANVALTGEVNGSCCDYLVGEERQMAELMPVGDNNFSDSEEGEGLEESADIKGEPHGLENMELRGGGGSMATQVMGQSSGGGGLFTSSGNIGMALPNDMYDLHDLSKAELAAPQLIMLANVALTGEVNGSCCDYLVGEERQMAELMPVGDNNFSDSEEGEGLEESADIKGEPHGLENMELRGGGGSMATQVMGQSSGGGGLFTSSGNIGMALPNDMYDLHDLSKAELAAPQLIMLANVALTGEVNGSCCDYLVGEERQMAELMPVGDNNFSDSEEGEGLEESADIKGEPHGLENMELRGSGGGGSGGGGSAKRNYILGLAIGITSVGYGIIDYETRDVIDAGVRLFKEANVENNEGRRSKRGARRLKRRRRHRIQRVKKLLFDYNLLTDHSELSGINPYEARVKGLSQKLSEEEFSAALLHLAKRRGVHNVNEVEEDTGNELSTKEQISRNSKALEEKYVAELQLERLKKDGEVRGSINRFKTSDYVKEAKQLLKVQKAYHQLDQSFIDTYIDLLETRRTYYEGPGEGSPFGWKDIKEWYEMLMGHCTYFPEELRSVKYAYNADLYNALNDLNNLVITRDENEKLEYYEKFQIIENVFKQKKKPTLKQIAKEILVNEEDIKGYRVTSTGKPEFTNLKVYHDIKDITARKEIIENAELLDQIAKILTIYQSSEDIQEELTNLNSELTQEEIEQISNLKGYTGTHNLSLKAINLILDELWHTNDNQIAIFNRLKLVPKKVDLSQQKEIPTTLVDDFILSPVVKRSFIQSIKVINAIIKKYGLPNDIIIELAREKNSKDAQKMINEMQKRNRQTNERIEEIIRTTGKENAKYLIEKIKLHDMQEGKCLYSLEAIPLEDLLNNPFNYEVDHIIPRSVSFDNSFNNKVLVKQEEASKKGNRTPFQYLSSSDSKISYETFKKHILNLAKGKGRISKTKKEYLLEERDINRFSVQKDFINRNLVDTRYATRGLMNLLRSYFRVNNLDVKVKSINGGFTSFLRRKWKFKKERNKGYKHHAEDALIIANADFIFKEWKKLDKAKKVMENQMFEEKQAESMPEIETEQEYKEIFITPHQIKHIKDFKDYKYSHRVDKKPNRKLINDTLYSTRKDDKGNTLIVNNLNGLYDKDNDKLKKLINKSPEKLLMYHHDPQTYQKLKLIMEQYGDEKNPLYKYYEETGNYLTKYSKKDNGPVIKKIKYYGNKLNAHLDITDDYPNSRNKVVKLSLKPYRFDVYLDNGVYKFVTVKNLDVIKKENYYEVNSKCYEEAKKLKKISNQAEFIASFYKNDLIKINGELYRVIGVNNDLLNRIEVNMIDITYREYLENMNDKRPPHIIKTIASKTQSIKKYSTDILGNLYEVKSKKHPQIIKKGKRPAATKKAGQAKKKKGSAAADYKDDDDK*

3xN-dCas9-3xCアミノ酸配列(配列番号27)
MPKKKRKVGIHGVPAKKKKGSMATQVMGQSSGGGGLFTSSGNIGMALPNDMYDLHDLSKAELAAPQLIMLANVALTGEVNGSCCDYLVGEERQMAELMPVGDNNFSDSEEGEGLEESADIKGEPHGLENMELRGGGGSMATQVMGQSSGGGGLFTSSGNIGMALPNDMYDLHDLSKAELAAPQLIMLANVALTGEVNGSCCDYLVGEERQMAELMPVGDNNFSDSEEGEGLEESADIKGEPHGLENMELRGGGGSMATQVMGQSSGGGGLFTSSGNIGMALPNDMYDLHDLSKAELAAPQLIMLANVALTGEVNGSCCDYLVGEERQMAELMPVGDNNFSDSEEGEGLEESADIKGEPHGLENMELRGSGGGGSGGGGSAKRNYILGLAIGITSVGYGIIDYETRDVIDAGVRLFKEANVENNEGRRSKRGARRLKRRRRHRIQRVKKLLFDYNLLTDHSELSGINPYEARVKGLSQKLSEEEFSAALLHLAKRRGVHNVNEVEEDTGNELSTKEQISRNSKALEEKYVAELQLERLKKDGEVRGSINRFKTSDYVKEAKQLLKVQKAYHQLDQSFIDTYIDLLETRRTYYEGPGEGSPFGWKDIKEWYEMLMGHCTYFPEELRSVKYAYNADLYNALNDLNNLVITRDENEKLEYYEKFQIIENVFKQKKKPTLKQIAKEILVNEEDIKGYRVTSTGKPEFTNLKVYHDIKDITARKEIIENAELLDQIAKILTIYQSSEDIQEELTNLNSELTQEEIEQISNLKGYTGTHNLSLKAINLILDELWHTNDNQIAIFNRLKLVPKKVDLSQQKEIPTTLVDDFILSPVVKRSFIQSIKVINAIIKKYGLPNDIIIELAREKNSKDAQKMINEMQKRNRQTNERIEEIIRTTGKENAKYLIEKIKLHDMQEGKCLYSLEAIPLEDLLNNPFNYEVDHIIPRSVSFDNSFNNKVLVKQEEASKKGNRTPFQYLSSSDSKISYETFKKHILNLAKGKGRISKTKKEYLLEERDINRFSVQKDFINRNLVDTRYATRGLMNLLRSYFRVNNLDVKVKSINGGFTSFLRRKWKFKKERNKGYKHHAEDALIIANADFIFKEWKKLDKAKKVMENQMFEEKQAESMPEIETEQEYKEIFITPHQIKHIKDFKDYKYSHRVDKKPNRKLINDTLYSTRKDDKGNTLIVNNLNGLYDKDNDKLKKLINKSPEKLLMYHHDPQTYQKLKLIMEQYGDEKNPLYKYYEETGNYLTKYSKKDNGPVIKKIKYYGNKLNAHLDITDDYPNSRNKVVKLSLKPYRFDVYLDNGVYKFVTVKNLDVIKKENYYEVNSKCYEEAKKLKKISNQAEFIASFYKNDLIKINGELYRVIGVNNDLLNRIEVNMIDITYREYLENMNDKRPPHIIKTIASKTQSIKKYSTDILGNLYEVKSKKHPQIIKKGKRPAATKKAGQAKKKKGSAGSGGGGSGGGGSMDEGIHSHEGSDLSDNMSEGSDDSGLHGARPVPQESSRKNAKEALAVKAAKGDFVCIFCDRSFRKGKDYSKHLNRHLVNVYYLEEAAQGQEGGGGSMDEGIHSHEGSDLSDNMSEGSDDSGLHGARPVPQESSRKNAKEALAVKAAKGDFVCIFCDRSFRKGKDYSKHLNRHLVNVYYLEEAAQGQEGGGGSMDEGIHSHEGSDLSDNMSEGSDDSGLHGARPVPQESSRKNAKEALAVKAAKGDFVCIFCDRSFRKGKDYSKHLNRHLVNVYYLEEAAQGQEAAADYKDDDDK*

Krabアミノ酸配列(配列番号28)
MGRVTFEDVTVNFTQGEWQRLNPEQRNLYRDVMLENYSNLVSVGQGETTKPDVILRLEQGKEPWLEEEEVLGSGRAEKNGDIGGQIWKPKDVKESL

Ctdsp1アミノ酸配列(配列番号29)
MDSSAVITQISKEEARGPLRGKGDQKSAASQKPRSRGILHSLFCCVCRDDGEALPAHSGAPLLVEENGAIPKQTPVQYLLPEAKAQDSDKICVVIDLDETLVHSSFKPVNNADFIIPVEIDGVVHQVYVLKRPHVDEFLQRMGELFECVLFTASLAKYADPVADLLDKWGAFRARLFRESCVFHRGNYVKDLSRLGRDLRRVLILDNSPASYVFHPDNAVPVASWFDNMSDTELHDLLPFFEQLSRVDDVYSVLRQPRPGS*

Ctdsp1核酸配列(配列番号30)
Atggacagctcggccgtcattactcagatcagcaaggaggaggctcggggcccgctgcggggcaaaggtgaccagaagtcagcagcttcccagaagccccgaagccggggcatcctccactcactcttctgctgtgtctgccgggatgatggggaggccctgcctgctcacagcggggcgcccctgcttgtggaggagaatggcgccatccctaagcagaccccagtccaatacctgctccctgaggccaaggcccaggactcagacaagatctgcgtggtcatcgacctggacgagaccctggtgcacagctccttcaagccagtgaacaacgcggacttcatcatccctgtggagattgatggggtggtccaccaggtctacgtgttgaagcgtcctcacgtggatgagttcctgcagcgaatgggcgagctctttgaatgtgtgctgttcactgctagcctcgccaagtacgcagacccagtagctgacctgctggacaaatggggggccttccgggcccggctgtttcgagagtcctgcgtcttccaccgggggaactacgtgaaggacctgagccggttgggtcgagacctgcggcgggtgctcatcctggacaattcacctgcctcctatgtcttccatccagacaatgctgtaccggtggcctcgtggtttgacaacatgagtgacacagagctccacgacctcctccccttcttcgagcaactcagccgtgtggacgacgtgtactcagtgctcaggcagccacggccagggagctag

ヒトmiRNA-124コード配列(配列番号31)
5’-cgtgttcacagcggaccttgat-3’

ヒトmiRNA-124*コード配列(配列番号32)
5’-taaggcacgcggtgaatgccaa-3’

ヒトmiRNA-124 Pre-miRNA全長(配列番号33)
atcaagattagaggctctgctctccgtgttcacagcggaccttgatttaatgtcatacaattaaggcacgcggtgaatgccaagagcggagcctacggctgcacttgaa

ヒトmiRNA-124 Pri-miRNAを発現する配列(配列番号34)
Gggtaattaacttggatccacgccgtcatttgaaaactagatttataggcttatgtatgtttttaggcgtgtgctgtaaatggcatggagatatatgcatatgtatacgcaggcacacgcaccgtctacacttccacggaacagactaattaacagcggctctggcagatgtgtcagagatgagcagagacaggagctgggcttatgagttatgactctaggggtagagactcagagcggagagagggggatgggcagggagagaagagtggtaatcgcagtgggtcttatactttccggatcaagattagaggctctgctctccgtgttcacagcggaccttgatttaatgtcatacaattaaggcacgcggtgaatgccaagagcggagcctacggctgcacttgaaggacaccaaagcatctcagggtcagaaaggggaaaaagcaattgcagggaatttagggggtagtaaaaggaacccatctcttgccgcataaatgccccccacccccacccaggactgattctggaagcaacctagtgttcgaaagggaaaggctcctacttttccattacagccgcggaaatccgcaggcaaatctccgaggagaattttagggaagcttcattgacagctgtctggagagcagtagttcccgcctgtgcaaatattccagagagttaaatcatttagaaagcactagtt

ヒトmiRNA-9コード配列
5’- tctttggttatctagctgtatga-3’ (SEQ ID NO:35)

ヒトmiRNA-9*コード配列
5’- ataaagctagataaccgaaagt-3’ (SEQ ID NO:36)

ヒトmiRNA-9 Per-miRNA全長(配列番号37)
Ggaggcccgtttctctctttggttatctagctgtatgagtgccacagagccgtcataaagctagataaccgaaagtagaaatgattctca

ヒトmiRNA-9 Pri-miRNAを発現する配列(配列番号38)
Agcgctccgcgcgggtgccctacgtgagccccgggacgccgtcgaggcaggccggcagcgccggtgccaggacgcacggaacggggagcaggggagaaatgcgccgggagggcgagggaggaagggaactgggcgggggctgcgggcctaggtggcgggagtcagcgtgtgcgtgtgtctgtccatcccctctggctctccgcgtgcgccccaggatccgggcacggcgtccgctcaggctcccgcgctcggcaggcagcagcacgtggagcccacggcgcggcagcggcactggctaagggaggcccgtttctctctttggttatctagctgtatgagtgccacagagccgtcataaagctagataaccgaaagtagaaatgattctcacaacttctgcgtgcgagcgcccgccccaccgaccgccccggcccggcccgcaagagccagaggagccgagaggagcccagcgccggcccagcggactccagctcgacggagcggccgcgccccgaccaggtacctgacctcggctctctctctggggacacttgcagtgccagctttcccccagtcctcctctttcctggtcccccacccctatcccccagcgccggagcaggaaccccaaagtggagcgggccggggagagggagggggttggggttgcagaggggtcgctggaagggg

長GFAPプロモーター(配列番号39)
TAATCCCACCTCCCTCTCTGTGCTGGGACTCACAGAGGGAGACCTCAGGAGGCAGTCTGTCCATCACATGTCCAAATGCAGAGCATACCCTGGGCTGGGCGCAGTGGCGCACAACTGTAATTCCAGCACTTTGGGAGGCTGATGTGGAAGGATCACTTGAGCCCAGAAGTTCTAGACCAGCCTGGGCAACATGGCAAGACCCTATCTCTACAAAAAAAGTTAAAAAATCAGCCACGTGTGGTGACACACACCTGTAGTCCCAGCTATTCAGGAGGCTGAGGTGAGGGGATCACTTAAGGCTGGGAGGTTGAGGCTGCAGTGAGTCGTGGTTGCGCCACTGCACTCCAGCCTGGGCAACAGTGAGACCCTGTCTCAAAAGACAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAGAACATATCCTGGTGTGGAGTAGGGGACGCTGCTCTGACAGAGGCTCGGGGGCCTGAGCTGGCTCTGTGAGCTGGGGAGGAGGCAGACAGCCAGGCCTTGTCTGCAAGCAGACCTGGCAGCATTGGGCTGGCCGCCCCCCAGGGCCTCCTCTTCATGCCCAGTGAATGACTCACCTTGGCACAGACACAATGTTCGGGGTGGGCACAGTGCCTGCTTCCCGCCGCACCCCAGCCCCCCTCAAATGCCTTCCGAGAAGCCCATTGAGCAGGGGGCTTGCATTGCACCCCAGCCTGACAGCCTGGCATCTTGGGATAAAAGCAGCACAGCCCCCTAGGGGCTGCCCTTGCTGTGTGGCGCCACCGGCGGTGGAGAACAAGGCTCTATTCAGCCTGTGCCCAGGAAAGGGGATCAGGGGATGCCCAGGCATGGACAGTGGGTGGCAGGGGGGGAGAGGAGGGCTGTCTGCTTCCCAGAAGTCCAAGGACACAAATGGGTGAGGGGACTGGGCAGGGTTCTGACCCTGTGGGACCAGAGTGGAGGGCGTAGATGGACCTGAAGTCTCCAGGGACAACAGGGCCCAGGTCTCAGGCTCCTAGTTGGGCCCAGTGGCTCCAGCGTTTCCAAACCCATCCATCCCCAGAGGTTCTTCCCATCTCTCCAGGCTGATGTGTGGGAACTCGAGGAAATAAATCTCCAGTGGGAGACGGAGGGGTGGCCAGGGAAACGGGGCGCTGCAGGAATAAAGACGAGCCAGCACAGCCAGCTCATGTGTAACGGCTTTGTGGAGCTGTCAAGGCCTGGTCTCTGGGAGAGAGGCACAGGGAGGCCAGACAAGGAAGGGGTGACCTGGAGGGACAGATCCAGGGGCTAAAGTCCTGATAAGGCAAGAGAGTGCCGGCCCCCTCTTGCCCTATCAGGACCTCCACTGCCACATAGAGGCCATGATTGACCCTTAGACAAAGGGCTGGTGTCCAATCCCAGCCCCCAGCCCCAGAACTCCAGGGAATGAATGGGCAGAGAGCAGGAATGTGGGACATCTGTGTTCAAGGGAAGGACTCCAGGAGTCTGCTGGGAATGAGGCCTAGTAGGAAATGAGGTGGCCCTTGAGGGTACAGAACAGGTTCATTCTTCGCCAAATTCCCAGCACCTTGCAGGCACTTACAGCTGAGTGAGATAATGCCTGGGTTATGAAATCAAAAAGTTGGAAAGCAGGTCAGAGGTCATCTGGTACAGCCCTTCCTTCCCTTTTTTTTTTTTTTTTTTGTGAGACAAGGTCTCTCTCTGTTGCCCAGGCTGGAGTGGCGCAAACACAGCTCACTGCAGCCTCAACCTACTGGGCTCAAGCAATCCTCCAGCCTCAGCCTCCCAAAGTGCTGGGATTACAAGCATGAGCCACCCCACTCAGCCCTTTCCTTCCTTTTTAATTGATGCATAATAATTGTAAGTATTCATCATGGTCCAACCAACCCTTTCTTGACCCACCTTCCTAGAGAGAGGGTCCTCTTGCTTCAGCGGTCAGGGCCCCAGACCCATGGTCTGGCTCCAGGTACCACCTGCCTCATGCAGGAGTTGGCGTGCCCAGGAAGCTCTGCCTCTGGGCACAGTGACCTCAGTGGGGTGAGGGGAGCTCTCCCCATAGCTGGGCTGCGGCCCAACCCCACCCCCTCAGGCTATGCCAGGGGGTGTTGCCAGGGGCACCCGGGCATCGCCAGTCTAGCCCACTCCTTCATAAAGCCCTCGCATCCCAGGAGCGAGCAGAGCCAGAGCAGGTTGGAGAGGAGACGCATCACCTCCGCTGCTCGCGG

短GFAPプロモーター(配列番号40)
AACATATCCTGGTGTGGAGTAGGGGACGCTGCTCTGACAGAGGCTCGGGGGCCTGAGCTGGCTCTGTGAGCTGGGGAGGAGGCAGACAGCCAGGCCTTGTCTGCAAGCAGACCTGGCAGCATTGGGCTGGCCGCCCCCCAGGGCCTCCTCTTCATGCCCAGTGAATGACTCACCTTGGCACAGACACAATGTTCGGGGTGGGCACAGTGCCTGCTTCCCGCCGCACCCCAGCCCCCCTCAAATGCCTTCCGAGAAGCCCATTGAGCAGGGGGCTTGCATTGCACCCCAGCCTGACAGCCTGGCATCTTGGGATAAAAGCAGCACAGCCCCCTAGGGGCTGCCCTTGCTGTGTGGCGCCACCGGCGGTGGAGAACAAGGCTCTATTCAGCCTGTGCCCAGGAAAGGGGATCAGGGGATGCCCAGGCATGGACAGTGGGTGGCAGGGGGGGAGAGGAGGGCTGTCTGCTTCCCAGAAGTCCAAGGACACAAATGGGTGAGGGGAGAGCTCTCCCCATAGCTGGGCTGCGGCCCAaccccaccccctcaggctatgccagggggtgttgccaggggcacccgggcatcgccagtctagcccactccttcataaagccctcgcatcccaggagcgagcagagccagagcaggttggagaggagacgcatcacctccgctgctcgc
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2024534667000001.xml
【国際調査報告】