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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】触媒組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20240912BHJP
   C08F 4/615 20060101ALI20240912BHJP
   C08F 210/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F4/615
C08F210/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519641
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 CN2022122005
(87)【国際公開番号】W WO2023051575
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111158858.7
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111158844.5
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111156979.8
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523187158
【氏名又は名称】中石化(北京)化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】王偉
(72)【発明者】
【氏名】呉長江
(72)【発明者】
【氏名】郭天昊
(72)【発明者】
【氏名】曲樹璋
(72)【発明者】
【氏名】李娟
(72)【発明者】
【氏名】張韜毅
(72)【発明者】
【氏名】侯莉萍
(72)【発明者】
【氏名】盛建▲ファン▼
(72)【発明者】
【氏名】劉娜
(72)【発明者】
【氏名】鄭剛
(72)【発明者】
【氏名】張龍貴
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA02Q
4J100AD01Q
4J100AD03Q
4J100AR11P
4J100CA04
4J100DA01
4J100FA10
4J100FA28
4J128AA01
4J128AC01
4J128AC23
4J128AD06
4J128AD13
4J128BA00A
4J128BA02B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC15B
4J128BC25B
4J128CB25B
4J128EB02
4J128EB18
4J128EC02
4J128FA02
4J128GA01
4J128GA06
4J128GB01
(57)【要約】
本発明は、オレフィン重合の分野に関し、具体的には、触媒組成物及びその使用に関する。本発明の触媒組成物は、成分として、a)メタロセン化合物、b)助触媒成分、及びc)フェノールを含み、前記助触媒成分は、有機アルミニウム化合物とアルキルアルモキサンとの組み合わせ、又は有機アルミニウム化合物と有機ホウ素化合物との組み合わせである。本発明の触媒組成物は、エチレンとシクロオレフィン又はエノールとの共重合に用いると、ポリマーの分子量を向上させるだけではなく、コポリマー中のシクロオレフィン又はエノール構造単位の含有量を向上させることもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分として、
a)式(I)及び/又は式(II)で示される構造のメタロセン化合物と、
b)助触媒成分と、
c)式(III)で示される構造のフェノールと、を含む、ことを特徴とする触媒組成物。
【化1】

(式(I)及び式(II)において、
Cp及びCpは、それぞれ独立して、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたシクロペンタジエニル又は非置換のシクロペンタジエニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたインデニル又は非置換のインデニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたフルオレニル又は非置換のフルオレニルであり、
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、
及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ、アリールオキシ又はヒドロカルビルであり、
式(II)において、Qは、Cp及びCpに連結される原子又は基である。)
【化2】

(式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30のヒドロカルビルであり、かつ、R、R、R、R及びRがそれぞれ独立して、炭素数1~30のヒドロカルビルである場合、これらのいずれか2つは環化してもよい。)
【請求項2】
前記助触媒成分は、有機アルミニウム化合物とアルキルアルモキサンとの組み合わせ、又は有機アルミニウム化合物と有機ホウ素化合物との組み合わせであり、前記有機アルミニウム化合物は、一般式AlR(ここで、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数2~8のアルキルであり、R、R及びRは、同一であるか、又は異なる。)で示されるアルキルアルミニウムである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
式(I)及び式(II)において、
Cp及びCpは、それぞれ独立して、炭素数1~16のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたシクロペンタジエニル又は非置換のシクロペンタジエニル、炭素数1~16のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたインデニル又は非置換のインデニル、炭素数1~16のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたフルオレニル又は非置換のフルオレニルであり、
Mは、チタン又はジルコニウムであり、
及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子であり、
好ましくは、式(II)において、Qは-CHCH-であり、Cp及びCpはいずれもインデニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、
好ましくは、式(II)において、Qは-SiR-であり、Cp及びCpはいずれもインデニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビルであり、
好ましくは、式(II)において、Qは-SiR-であり、Cp及びCpは、いずれも2-メチル-4-フェニル-インデニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビルであり、
好ましくは、式(II)において、Qは-CR1011-であり、Cpはシクロペンタジエニルであり、Cpはフルオレニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R10及びR11はメチル又はフェニルであり、
好ましくは、式(II)において、Qは-CR1213-であり、Cpはシクロペンタジエニルであり、Cpは2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R12及びR13はメチル又はフェニルである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記メタロセン化合物は、ジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジインデニルジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(4,4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(4,4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4,4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-メトキシ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4,4’-メトキシ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-メチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4-メチル-4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(3,3’-トリフルオロメチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(3,3’-トリフルオロメチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(3,3’-トリフルオロメチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-フルオロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(4,4’-フルオロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4,4’-フルオロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-クロロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(4,4’-クロロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド又は(4,4’-クロロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、ジクロロ[rac-エチレンビス(インデニル)]ジルコニウム(IV)、rac-ジメチルシリルジインデニルジルコニウムジクロリド、rac-ジメチルシリルビス(2-メチル-インデニル)ジルコニウムジクロリド、及びrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドから選択される1種又は複数種であり、
好ましくは、前記メタロセン化合物は、ジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジインデニルジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジクロロ[rac-エチレンビス(インデニル)]ジルコニウム(IV)、rac-ジメチルシリルジインデニルジルコニウムジクロリド、及びrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-インデニル)ジルコニウムジクロリドのうちの1種又は複数種である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記アルキルアルモキサンは、式(IV)及び/又は式(V)で示される構造から選択される化合物であり、
好ましくは、前記アルキルアルモキサンは、メチルアルモキサンである、請求項1に記載の触媒組成物。
【化3】

(式(IV)及び式(V)において、Rは、炭素数1~15のアルキルから選択され、nは、4~30の整数を表し、
好ましくは、Rは、炭素数1~5のアルキルから選択され、nは10~30の整数を表す。)
【請求項6】
前記有機ホウ素化合物は、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N―ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及びトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのうちの1種又は複数種である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記有機アルミニウム化合物は、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-s‐ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリ-n-ペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、及びメチルジエチルアルミニウムのうちの1種又は複数種であり、
好ましくは、前記有機アルミニウム化合物は、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、及びトリ-n-オクチルアルミニウムのうちの1種又は複数種であり、
好ましくは、前記有機アルミニウム化合物はトリイソブチルアルミニウムである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項8】
式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~6のアルキル、炭素数7~10のアラルキルであり、
好ましくは、式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~4のアルキル、炭素数7~8のアラルキルであり、
好ましくは、式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~4のアルキル、炭素数7~8のアラルキルであり、かつ、R、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つは水素原子又はハロゲン原子ではなく、
好ましくは、前記フェノールは、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、4-クロロ-2-ベンジルフェノール、4-クロロ-2-イソプロピル-5-メチルフェノール、及び2,4-ジクロロ-1-ナフトールのうちの1種又は複数種である、請求項1~7のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記助触媒は、有機アルミニウム化合物とアルキルアルモキサンとの組み合わせであり、前記メタロセン化合物とアルミニウム換算のアルキルアルモキサンとのモル比は、1:(50~20000)、好ましくは1:(200~10000)、より好ましくは1:(500~3000)であり、前記メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比は1:(10~5000)、より好ましくは1:(10~3000)、より好ましくは1:(10~2000)、より好ましくは1:(10~1000)、より好ましくは1:(100~800)、より好ましくは1:(200~600)、より好ましくは1:(300~600)である、請求項1~7のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項10】
前記助触媒は、有機ホウ素化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせであり、前記メタロセン化合物と有機ホウ素化合物とのモル比は1:(1~5)、好ましくは1:(1~2)であり、前記メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比は1:(10~1000)、好ましくは1:(10~200)である、請求項1~7のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記メタロセン化合物と前記フェノールとのモル比は1:(1~1000)、好ましくは1:(10~500)である、請求項1~7のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記触媒組成物は担体を含有しない、請求項1~7のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項13】
触媒組成物を用いてエチレンとシクロオレフィンとを共重合反応させるステップを含み、前記触媒組成物は、成分として、
a)式(I)及び/又は式(II)で示される構造のメタロセン化合物と、
b)助触媒成分と、
c)式(III)で示される構造のフェノールと、を含む、ことを特徴とするエチレン-シクロオレフィンコポリマーの製造方法。
【化4】

(式(I)及び式(II)において、
Cp及びCpは、それぞれ独立して、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたシクロペンタジエニル又は非置換のシクロペンタジエニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたインデニル又は非置換のインデニル、炭素数1~16のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたフルオレニル又は非置換のフルオレニルであり、
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、
及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ、アリールオキシ又はヒドロカルビルであり、
式(II)において、Qは、Cp及びCpに連結される原子又は基である。)
【化5】

(式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30のヒドロカルビルであり、かつ、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数1~30のヒドロカルビルである場合、これらのいずれか2つは環化してもよい。)
【請求項14】
触媒組成物を用いてエチレンとエノールとを共重合反応させるステップを含み、前記触媒組成物は、成分として、
a)式(I)及び/又は式(II)で示される構造のメタロセン化合物と、
b)助触媒成分と、
c)式(III)で示される構造のフェノールと、を含む、ことを特徴とするエチレン-エノールコポリマーの製造方法。
【化6】

(式(I)及び式(II)において、
Cp及びCpは、それぞれ独立して、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたシクロペンタジエニル又は非置換のシクロペンタジエニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたインデニル又は非置換のインデニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたフルオレニル又は非置換のフルオレニルであり、
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、
及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ、アリールオキシ又はヒドロカルビルであり、
式(II)において、Qは、Cp及びCpに連結される原子又は基である。)
【化7】

(式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30のヒドロカルビルであり、かつ、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数1~30のヒドロカルビルである場合、これらのいずれか2つは環化してもよい。)
【請求項15】
前記助触媒成分は、有機アルミニウム化合物と有機ホウ素化合物との組み合わせであり、
好ましくは、前記メタロセン化合物と有機ホウ素化合物とのモル比は1:(1~5)、好ましくは1:(1~2)であり、前記メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比は1:(10~1000)、好ましくは1:(10~200)である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記助触媒は、有機アルミニウム化合物とアルキルアルモキサンとの組み合わせであり、
好ましくは、前記メタロセン化合物とアルミニウム換算のアルキルアルモキサンとのモル比は、1:(50~20000)、好ましくは1:(200~10000)、より好ましくは1:(500~3000)であり、前記メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比は1:(10~5000)、より好ましくは1:(10~3000)、より好ましくは1:(10~2000)、より好ましくは1:(10~1000)、より好ましくは1:(100~800)、より好ましくは1:(200~600)、より好ましくは1:(300~600)である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
前記助触媒は、アルキルアルモキサンであり、前記メタロセン化合物とアルミニウム換算のアルキルアルモキサンとのモル比は、1:(50~20000)、好ましくは1:(200~10000)、より好ましくは1:(500~3000)である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項18】
式(I)及び式(II)において、
Cp及びCpは、それぞれ独立して、炭素数1~16のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたシクロペンタジエニル又は非置換のシクロペンタジエニル、炭素数1~16のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたインデニル又は非置換のインデニル、炭素数1~16のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたフルオレニル又は非置換のフルオレニルであり、
Mは、チタン又はジルコニウムであり、
及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子である、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記メタロセン化合物は、ジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジインデニルジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(4,4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(4,4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4,4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-メトキシ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4,4’-メトキシ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-メチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4-メチル-4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(3,3’-トリフルオロメチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(3,3’-トリフルオロメチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(3,3’-トリフルオロメチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-フルオロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(4,4’-フルオロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4,4’-フルオロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-クロロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(4,4’-クロロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド又は(4,4’-クロロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、ジクロロ[rac-エチレンビス(インデニル)]ジルコニウム(IV)、rac-ジメチルシリルジインデニルジルコニウムジクロリド、rac-ジメチルシリルビス(2-メチル-インデニル)ジルコニウムジクロリド、及びrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドから選択される1種又は複数種であり、
好ましくは、前記メタロセン化合物は、ジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジインデニルジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジクロロ[rac-エチレンビス(インデニル)]ジルコニウム(IV)、rac-ジメチルシリルジインデニルジルコニウムジクロリド、及びrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-インデニル)ジルコニウムジクロリドのうちの1種又は複数種である、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
式(II)において、Qは-CHCH-であり、Cp及びCpはいずれもインデニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、
好ましくは、式(II)において、Qは-SiR-であり、Cp及びCpはいずれもインデニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビルであり、
好ましくは、式(II)において、Qは-SiR-であり、Cp及びCpは、いずれも2-メチル-4-フェニル-インデニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビルであり、
好ましくは、式(II)において、Qは-CR1011-であり、Cpはシクロペンタジエニルであり、Cpはフルオレニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R10及びR11はメチル又はフェニルであり、
好ましくは、式(II)において、Qは-CR1213-であり、Cpはシクロペンタジエニルであり、Cpは2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R12及びR13はメチル又はフェニルである、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記有機ホウ素化合物は、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N―ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及びトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのうちの1種又は複数種である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記有機アルミニウム化合物は、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-s‐ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリ-n-ペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、及びメチルジエチルアルミニウムのうちの1種又は複数種であり、
好ましくは、前記有機アルミニウム化合物は、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、及びトリ-n-オクチルアルミニウムのうちの1種又は複数種であり、
好ましくは、前記有機アルミニウム化合物は、トリイソブチルアルミニウムである、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記アルキルアルモキサンは、式(IV)及び/又は式(V)で示される構造から選択される化合物であり、
好ましくは、前記アルキルアルモキサンはメチルアルモキサンである、請求項16又は17に記載の方法。
【化8】

(式(IV)及び式(V)において、Rは、炭素数1~15のアルキルから選択され、nは4~30の整数を表し、
好ましくは、Rは、炭素数1~5のアルキルから選択され、nは10~30の整数を表す。)
【請求項24】
式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~6のアルキル、炭素数7~10のアラルキルであり、
好ましくは、式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~4のアルキル、炭素数7~8のアラルキルであり、
好ましくは、前記フェノールは、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、4-クロロ-2-ベンジルフェノール、4-クロロ-2-イソプロピル-5-メチルフェノール、及び2,4-ジクロロ-1-ナフトールのうちの1種又は複数種である、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記メタロセン化合物と前記フェノールとのモル比は1:(1~1000)、好ましくは1:(10~500)である、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
エチレンとシクロオレフィンとの共重合反応において、前記重合反応系中のシクロオレフィンの濃度が、0.05~10モル/リットル、好ましくは0.1~5モル/リットルである、請求項13及び15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
エチレンとシクロオレフィンとの共重合反応において、前記シクロオレフィンは、炭素原子を5~20個含有するシクロオレフィンであり、
好ましくは、前記シクロオレフィンは、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ノルボルネン、及びテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エンのうちの1種又は複数種であり、
好ましくは、前記シクロオレフィンはノルボルネンである、請求項13及び15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
エチレンとエノールとの共重合反応において、前記重合反応系中のエノールの濃度が0.01~1モル/リットル、好ましくは0.1~1モル/リットルであり、
好ましくは、前記有機アルミニウム化合物とエノールとのモル比は1:(1~3)、好ましくは1:(1~1.5)である、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
エチレンとエノールとの共重合反応において、前記エノールの構造は式(VI)で示される、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【化9】

(式(VI)において、nは1~15の整数、好ましくは2~9の整数である。)
【請求項30】
前記重合反応系中の前記メタロセン化合物の濃度が1×10-9モル/リットル~1×10-3モル/リットル、好ましくは1×10-8モル/リットル~1×10-4モル/リットルである、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
重合反応の温度は0~200℃であり、重合反応の時間は1~300分間であり、
好ましくは、重合反応の温度は50~160℃であり、重合反応の時間は5~60分間である、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年09月30日に提出された中国特許出願202111158858.7の利益を主張しており、当該出願の内容は引用により本明細書に組み込まれており、
本願は、2021年09月30日に提出された中国特許出願202111158844.5の利益を主張しており、当該出願の内容は引用により本明細書に組み込まれており、
本願は、2021年09月30日に提出された中国特許出願202111156979.8の利益を主張しており、当該出願の内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
[技術分野]
本発明は、オレフィン重合の分野に関し、具体的には、触媒組成物及びその使用に関する。
【0003】
[背景技術]
オレフィン重合用メタロセン触媒は、ここ数十年、金属有機化学、触媒学、高分子化学や材料学の研究の焦点である。このような触媒を用いることにより、分子量分布及び化学組成分布が均一なオレフィンポリマーを得ることができるとともに、触媒構造を調整することにより、ポリマーの分子構造及び分子量を高度に制御することができるためである。メタロセンは強力な共重合能力を持っており、それは次の2つの側面に反映されている。一方で、同じ重合条件下では、メタロセンによって得られるコポリマーのコモノマー含有量は他の触媒のコモノマー含有量よりも高く、そのため共重合の効率が高くなり、他方で、他の触媒で重合できない一部のモノマーも、メタロセン触媒系のコモノマーとしても使用でき、これはその共重合の広域スペクトルである(ChemistrySelect, 2020, 5, 7581-7585)。メタロセン触媒は、共重合が効率的でスペクトルが広いため、触媒により多くの新しいコポリマーを製造することができ、これらのコポリマーは、他の触媒で得られるコポリマーと比較して、新しい組成と構造を持ち、新しい特性を有する可能性があり、それによってポリオレフィン材料の新分野への応用を実現する。
【0004】
例えば、エチレンとノルボルネンとのコポリマーは、シングルサイト触媒の特殊な重合生成物の1つである。このポリマーは、ノルボルネン含有量が高い場合に高いガラス転移温度を有し、その結果、良好な耐熱性、透明性、バリア特性など、従来のポリオレフィン材料よりも大幅に優れた一連の特性が得られる。ポリマー中のノルボルネン含有量が高い場合、ポリマー合成中に系内へのノルボルネン供給量を大きくする必要がある。ノルボルネンの量が多くなると、重合の連鎖移動反応が激しくなり、ポリマーの分子量が低下するとともに、ノルボルネンは、体積が大きいため立体障害が大きいので、配位や挿入が困難になり、活性が低下する。また、エチレンが活性水素を含むモノマー(エノールなど)と共重合される場合、活性水素とそれに連結された電子リッチな原子(エノールの酸素原子など)が活性中心に有毒な作用を与えるため、特定の物質(アルキルアルミニウムなど)を用いて活性水素を除去するとともに、電子リッチな原子上の孤立電子対を遮蔽する必要があるが、これらの物質(アルキルアルミニウムなど)は、通常、連鎖移動反応能力が強いため、このような重合は、通常、活性が低く、そのポリマーの分子量も通常より低くなる。したがって、コモノマーを増加させたエチレンコポリマーを得ながら、ポリマーの分子量を増大させ、さらには重合活性を向上させることは、このようなポリマーの経済性や実用性の向上にとって特に重要である。
【0005】
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
本発明の第1目的は、エチレン共重合に用いると、ポリマーの分子量を向上させ、コモノマー含有量を向上させるだけでなく、高重合活性を持つ触媒組成物を提供することである。
【0006】
[課題を解決するための手段]
本発明の発明者らは、鋭意検討をした結果、メタロセン化合物、特定の助触媒成分(アルキルアルミニウムとアルキルアルモキサンとの組み合わせ、又はアルキルアルミニウムと有機ホウ素化合物との組み合わせ)、及び特定のフェノールを使用することによって、ポリマーの分子量を向上させ、コモノマー含有量を向上させるだけでなく、高重合活性を持つことを見出し、それによって本発明を完成させることに至った。
【0007】
[課題を解決するための手段]
すなわち、本発明の第1態様は、成分として、
a)式(I)及び/又は式(II)で示される構造のメタロセン化合物と、
b)助触媒成分と、
c)式(III)で示される構造のフェノールと、を含む、触媒組成物を提供する。
【化1】

(式(I)及び式(II)において、
Cp及びCpは、それぞれ独立して、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたシクロペンタジエニル又は非置換のシクロペンタジエニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたインデニル又は非置換のインデニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたフルオレニル又は非置換のフルオレニルであり、
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、
及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ、アリールオキシ又はヒドロカルビルであり、
式(II)において、Qは、Cp及びCpに連結される原子又は基である。)
【化2】

(式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30のヒドロカルビルであり、かつ、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数1~30のヒドロカルビルである場合、これらのいずれか2つは環化してもよい。)
【0008】
本発明の第2態様によれば、ポリマーの分子量を向上させるだけではなく、コポリマー中のシクロオレフィンの含有量を向上させ、ポリマーのガラス転移温度を上昇することができるエチレン-シクロオレフィンコポリマーの製造方法を提供する。
【0009】
本発明の第2態様によるエチレン-シクロオレフィンコポリマーの製造方法は、触媒組成物を用いてエチレンとシクロオレフィンとを共重合反応させるステップを含み、前記触媒組成物は、成分として、
a)式(I)及び/又は式(II)で示される構造のメタロセン化合物と、
b)助触媒成分と、
c)式(III)で示される構造のフェノールと、を含む。
【化3】

(式(I)及び式(II)において、
Cp及びCpは、それぞれ独立して、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたシクロペンタジエニル又は非置換のシクロペンタジエニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたインデニル又は非置換のインデニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたフルオレニル又は非置換のフルオレニルであり、
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、
及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ、アリールオキシ又はヒドロカルビルであり、
式(II)において、Qは、Cp及びCpに連結される原子又は基である。)
【化4】

(式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30のヒドロカルビルであり、かつ、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数1~30のヒドロカルビルである場合、これらのいずれか2つは環化してもよい。)
【0010】
本発明の第3態様によれば、ポリマーの分子量を向上させるだけではなく、コポリマー中のエノール構造単位の含有量を向上させることができる、エチレン-エノールコポリマーの製造方法を提供する。
【0011】
本発明の第3態様によるエチレン-エノールコポリマーの製造方法は、触媒組成物を用いてエチレンとエノールとを共重合反応させるステップを含み、前記触媒組成物は、成分として、
a)式(I)及び/又は式(II)で示される構造のメタロセン化合物と、
b)助触媒成分と、
c)式(III)で示される構造のフェノールと、を含む。
【化5】

(式(I)及び式(II)において、
Cp及びCpは、それぞれ独立して、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたシクロペンタジエニル又は非置換のシクロペンタジエニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたインデニル又は非置換のインデニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたフルオレニル又は非置換のフルオレニルであり、
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、
及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ、アリールオキシ又はヒドロカルビルであり、
式(II)において、Qは、Cp及びCpに連結される原子又は基である。)
【化6】

(式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30のヒドロカルビルであり、かつ、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数1~30のヒドロカルビルである場合、これらのいずれか2つは環化してもよい。)
【0012】
本発明によれば、本発明の触媒組成物は、エチレンとシクロオレフィンとの共重合に用いると、分子量を向上させる上に、コポリマー中のシクロオレフィンの含有量を向上させ、ポリマーのガラス転移温度を上昇する。さらに、本発明の触媒組成物は、エチレンとシクロオレフィンとの共重合に用いると、有機アルミニウム化合物と有機ホウ素化合物との組み合わせを本発明のフェノールと組み合わせることによって、触媒の触媒活性を高めることもできる。
【0013】
同様に、本発明の触媒組成物は、エチレンとエノールとの共重合に用いると、分子量を向上させる上に、コポリマー中のエノール構造単位の含有量を向上させることができる。さらに、本発明の触媒組成物は、エチレンとエノールとの共重合に用いると、有機アルミニウム化合物とアルキルアルモキサンとの組み合わせを本発明のフェノールと組み合わせることによって、触媒の触媒活性を向上させることもできる。
【0014】
[発明を実施するための形態]
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と個々のポイント値の間、及び個々のポイント値の間は、互いに組み合わされて1つ又は複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されるものとみなされるべきである。
【0015】
本発明の第1態様では、成分として、
a)式(I)及び/又は式(II)で示される構造のメタロセン化合物と、
b)助触媒成分と、
c)式(III)で示される構造のフェノールと、を含む、触媒組成物を提供する。
【化7】

(式(I)及び式(II)において、
Cp及びCpは、それぞれ独立して、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたシクロペンタジエニル又は非置換のシクロペンタジエニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたインデニル又は非置換のインデニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたフルオレニル又は非置換のフルオレニルであり、
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、
及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ、アリールオキシ又はヒドロカルビルであり、
式(II)において、Qは、Cp及びCpに連結される原子又は基である。)
【化8】

(式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30のヒドロカルビルであり、かつ、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数1~30のヒドロカルビルである場合、これらのいずれか2つは環化してもよい。)
【0016】
本発明による触媒成分は、担体を含まない、非担体型触媒組成物である。
【0017】
本発明による触媒成分では、好ましくは、式(I)及び式(II)において、Cp及びCpは、それぞれ独立して、炭素数1~16のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたシクロペンタジエニル又は非置換のシクロペンタジエニル、炭素数1~16のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたインデニル又は非置換のインデニル、炭素数1~16のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたフルオレニル又は非置換のフルオレニルであり、Mは、チタン又はジルコニウムであり、X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子である。
【0018】
上記のヒドロカルビルとしては、より好ましくは炭素数1~10のアルキル又は炭素数6~12のアリール、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキルである。
【0019】
上記の炭素数1~10のアルキルは、炭素原子の総数が1~10のアルキルを指し、直鎖状アルキル、分岐状アルキル又はシクロアルキルを含み、例えば炭素原子の総数が1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の直鎖状アルキル、分岐状アルキル又はシクロアルキルであってもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、s-ブチル、イソブチル、ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ネオペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、イソペンチル、ヘキシルなどを挙げることができる。
【0020】
上記の炭素数6~12のアリールとして、例えば、フェニル、ベンゼンメチル、ベンゼンエチル、ジフェニルメチレン、ジフェニルエチレンなどが挙げられる。
【0021】
本発明の式(I)及び式(II)で示される化合物では、X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ、アリールオキシ又はヒドロカルビルである。
【0022】
上記のハロゲン原子として、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素が挙げられるが、好ましくはフッ素、塩素又は臭素、より好ましくは塩素又は臭素、特に好ましくは塩素である。
【0023】
上記のアルコキシとして、例えば、炭素数1~8のアルコキシであってもよく、より好ましくは炭素数1~6のアルコキシ、よりさらに好ましくは炭素数1~3のアルコキシである。
【0024】
炭素数1~8のアルコキシとして、例えば、メトキシ、エトキシ、プロキシ、イソプロキシ、ブトキシ、t-ブトキシ、s-ブトキシ、イソブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシロキシ、ヘプチロキシ、オクチロキシなどであってもよい。
【0025】
上記のアリールオキシとして、例えば、炭素数6~12のアリールオキシであってもよいが、具体的には、フェノキシ、メチルフェノキシ、エチルフェノキシ、ナフチルオキシなどが挙げられる。
【0026】
上記のヒドロカルビルとして、好ましくは炭素数1~20のヒドロカルビル(好ましくはアルキル)、より好ましくは炭素数1~12のヒドロカルビル(好ましくはアルキル)、さらに好ましくは炭素数1~6のヒドロカルビル(好ましくはアルキル)である。具体例として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、s-ブチル、イソブチル、ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ネオペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、イソペンチル、ヘキシル、フェニル、ベンゼンメチル、ベンゼンエチルなどが挙げられる。
【0027】
本発明の1つの好ましい実施形態では、式(II)において、Qは-(CH-(nは2~20の整数)であり、Cp及びCpはいずれもインデニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子である。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態では、Qは-CHCH-であり、Cp及びCpはいずれもインデニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子である。
【0029】
本発明の別の好ましい実施形態では、式(II)において、Qは-SiR-であり、Cp及びCpはいずれもインデニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビルである。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態では、式(II)において、Qは-SiR-であり、Cp及びCpは、いずれも2-メチル-4-フェニル-インデニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビルである。
【0031】
本発明の別の好ましい実施形態では、式(II)において、Qは-CR1011-であり、Cpはシクロペンタジエニルであり、Cpはフルオレニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R10及びR11はメチル又はフェニルである。
【0032】
本発明の別の好ましい実施形態では、式(II)において、Qは-CR1213-であり、Cpはシクロペンタジエニルであり、Cpは2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R12及びR13はメチル又はフェニルである。
【0033】
上記の炭素数1~20のヒドロカルビルとして、好ましくは炭素数1~10のアルキル又は炭素数6~12のアリール、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキルである。
【0034】
前記メタロセン化合物の具体例として、例えば、ジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジインデニルジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(4,4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(4,4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4,4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-メトキシ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4,4’-メトキシ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-メチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4-メチル-4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(3,3’-トリフルオロメチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(3,3’-トリフルオロメチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(3,3’-トリフルオロメチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-フルオロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(4,4’-フルオロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4,4’-フルオロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-クロロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(4,4’-クロロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド又は(4,4’-クロロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、ジクロロ[rac-エチレンビス(インデニル)]ジルコニウム(IV)、rac-ジメチルシリルジインデニルジルコニウムジクロリド、rac-ジメチルシリルビス(2-メチル-インデニル)ジルコニウムジクロリド、及びrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドのうちの1種又は複数種が挙げられる。これらの中でも、より好ましくはジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジインデニルジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジクロロ[rac-エチレンビス(インデニル)]ジルコニウム(IV)、rac-ジメチルシリルジインデニルジルコニウムジクロリド、及びrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-インデニル)ジルコニウムジクロリドのうちの1種又は複数種である。
【0035】
本発明による触媒組成物では、前記アルキルアルモキサンは、好ましくは式(IV)及び/又は式(V)で示される構造から選択される化合物である。
【化9】

(式(IV)及び式(V)において、Rは炭素数1~15のアルキルから選択され、nは4~30の整数を表し、より好ましくは、Rは炭素数1~5のアルキルから選択され、nは10~30の整数を表す。)
【0036】
上記のアルキルの具体例として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、s-ブチル、イソブチル、ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ネオペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、及びペンタデシルなどが挙げられる。
【0037】
上記のnとして、例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30などが挙げられる。
【0038】
前記アルキルアルモキサンの具体例として、例えば、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、プロピルアルモキサンなどが挙げられ、これらの中でも、好ましくはメチルアルモキサンである。
【0039】
本発明による触媒組成物では、前記有機ホウ素化合物は、本分野において助触媒として使用され得る各種の有機ホウ素化合物であってもよいが、例えば、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及びトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのうちの1種又は複数種が挙げられる。
【0040】
本発明による触媒組成物では、前記有機アルミニウム化合物は、一般式AlRで示されるアルキルアルミニウムであり、ここで、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数2~8のアルキルであり、R、R及びRは、同一であるか、又は異なる。
【0041】
上記の炭素数2~8のアルキルとして、例えば、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、s-ブチル、イソブチル、ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ネオペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられる。
【0042】
前記有機アルミニウム化合物の具体例として、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-s‐ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリ-n-ペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、及びメチルジエチルアルミニウムのうちの1種又は複数種が挙げられる。これらの中でも、好ましくはトリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、及びトリ-n-オクチルアルミニウムのうちの1種又は複数種が挙げられるが、より好ましくはトリイソブチルアルミニウムである。
【0043】
本発明では、本発明の触媒組成物は、エチレンとシクロオレフィンとの共重合に用いると、有機ホウ素化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせを本発明のフェノールと組み合わせることによって、触媒の触媒活性を向上させることもできる。さらに、本発明の触媒組成物は、エチレンとエノールとの共重合に用いると、アルキルアルモキサンと有機アルミニウム化合物との組み合わせを本発明のフェノールと組み合わせることによって、触媒の触媒活性を向上させることもできる。したがって、本発明では、前記助触媒成分は、特に好ましくは有機アルミニウム化合物とアルキルアルモキサンとの組み合わせ、又は有機アルミニウム化合物と有機ホウ素化合物との組み合わせであり、前記有機アルミニウム化合物は、上記の一般式AlRで示されるアルキルアルミニウムである。
【0044】
本発明による触媒組成物では、好ましくは、式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~6のアルキル、炭素数7~10のアラルキルであり、より好ましくは、式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~4のアルキル、炭素数7~8のアラルキルであり、さらに好ましくは、式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~4のアルキル、炭素数7~8のアラルキルであり、かつ、R、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つは水素原子又はハロゲン原子ではない。
【0045】
上記の炭素数1~6のアルキルとして、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、s-ブチル、イソブチル、ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ネオペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、イソペンチル、ヘキシルが挙げられる。
【0046】
上記の炭素数7~10のアラルキルとして、例えば、ベンゼンメチル、ベンゼンエチルなどが挙げられる。これらの中でも、好ましくはベンゼンメチルである。
【0047】
上記のハロゲン原子として、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素が挙げられるが、好ましくはフッ素、塩素又は臭素、より好ましくは塩素又は臭素、特に好ましくは塩素である。
【0048】
本発明では、前記フェノールの具体例として、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、4-クロロ-2-ベンジルフェノール、4-クロロ-2-イソプロピル-5-メチルフェノール、及び2,4-ジクロロ-1-ナフトールのうちの1種又は複数種が挙げられる。
【0049】
前記助触媒が有機アルミニウム化合物とアルキルアルモキサンとの組み合わせである場合、前記メタロセン化合物とアルミニウム換算のアルキルアルモキサンとのモル比は、1:(50~20000)、好ましくは1:(200~10000)、より好ましくは1:(500~3000)であり、前記メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比は1:(10~5000)、より好ましくは1:(10~3000)、より好ましくは1:(10~2000)、より好ましくは1:(10~1000)、より好ましくは1:(100~800)、より好ましくは1:(200~600)、より好ましくは1:(300~600)である。
【0050】
前記助触媒が有機ホウ素化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせである場合、前記メタロセン化合物と有機ホウ素化合物とのモル比は1:(1~5)、好ましくは1:(1~2)であり、前記メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比は1:(10~1000)、好ましくは1:(10~200)である。
【0051】
本発明による触媒組成物では、好ましくは、前記メタロセン化合物と前記フェノールとのモル比は1:(1~1000)、より好ましくは1:(10~500)、さらに好ましくは1:(20~200)、さらに好ましくは1:(50~150)、よりさらに好ましくは1:(100~150)である。
【0052】
本発明の第2態様によれば、触媒組成物を用いてエチレンとシクロオレフィンとを共重合反応させるステップを含み、前記触媒組成物は、成分として、
a)式(I)及び/又は式(II)で示される構造のメタロセン化合物と、
b)助触媒成分と、
c)式(III)で示される構造のフェノールと、を含む、エチレン-シクロオレフィンコポリマーの製造方法を提供する。
【化10】

(式(I)及び式(II)において、
Cp及びCpは、それぞれ独立して、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたシクロペンタジエニル又は非置換のシクロペンタジエニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたインデニル又は非置換のインデニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたフルオレニル又は非置換のフルオレニルであり、
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、
及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ、アリールオキシ又はヒドロカルビルであり、
式(II)において、Qは、Cp及びCpに連結される原子又は基である。)
【化11】

(式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30のヒドロカルビルであり、かつ、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数1~30のヒドロカルビルである場合、これらのいずれか2つは環化してもよい。)
【0053】
本発明によるエチレン-シクロオレフィンコポリマーの製造方法では、好ましくは、式(I)及び式(II)において、Cp及びCpは、それぞれ独立して、炭素数1~16のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたシクロペンタジエニル又は非置換のシクロペンタジエニル、炭素数1~16のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたインデニル又は非置換のインデニル、炭素数1~16のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたフルオレニル又は非置換のフルオレニルであり、Mは、チタン又はジルコニウムであり、X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子である。
【0054】
上記のヒドロカルビルとして、より好ましくは炭素数1~10のアルキル又は炭素数6~12のアリール、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキルである。
【0055】
上記の炭素数1~10のアルキルは、炭素原子の総数が1~10のアルキルを表し、直鎖状アルキル、分岐状アルキル又はシクロアルキルを含み、例えば、炭素原子の総数が1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の直鎖状アルキル、分岐状アルキル又はシクロアルキルであってもよいが、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、s-ブチル、イソブチル、ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ネオペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、イソペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。
【0056】
上記の炭素数6~12のアリールとして、例えば、フェニル、ベンゼンメチル、ベンゼンエチル、ジフェニルメチレン、ジフェニルエチレンなどが挙げられる。
【0057】
本発明の式(I)及び式(II)で示される化合物では、X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ、アリールオキシ又はヒドロカルビルである。
【0058】
上記のハロゲン原子として、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素が挙げられるが、好ましくはフッ素、塩素又は臭素、より好ましくは塩素又は臭素、特に好ましくは塩素である。
【0059】
上記のアルコキシとして、例えば、炭素数1~8のアルコキシ、より好ましくは炭素数1~6のアルコキシ、よりさらに好ましくは炭素数1~3のアルコキシであってもよい。
【0060】
炭素数1~8のアルコキシとして、例えば、メトキシ、エトキシ、プロキシ、イソプロキシ、ブトキシ、t-ブトキシ、s-ブトキシ、イソブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシロキシ、ヘプチロキシ、オクチロキシなどが挙げられる。
【0061】
上記のアリールオキシとして、例えば、炭素数6~12のアリールオキシであってもよいが、具体的には、フェノキシ、メチルフェノキシ、エチルフェノキシ、ナフチルオキシなどが挙げられる。
【0062】
上記のヒドロカルビルとして、好ましくは炭素数1~20のヒドロカルビル(好ましくはアルキル)、より好ましくは炭素数1~12のヒドロカルビル(好ましくはアルキル)、さらに好ましくは炭素数1~6のヒドロカルビル(好ましくはアルキル)である。具体例として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、s-ブチル、イソブチル、ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ネオペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、イソペンチル、ヘキシル、フェニル、ベンゼンメチル、ベンゼンエチルなどが挙げられる。
【0063】
本発明の1つの好ましい実施形態では、式(II)において、Qは-(CH-(nは2~20の整数)であり、Cp及びCpはいずれもインデニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子である。
【0064】
本発明の別の好ましい実施形態では、Qは-CHCH-であり、Cp及びCpはいずれもインデニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子である。
【0065】
本発明の別の好ましい実施形態では、式(II)において、Qは-SiR-であり、Cp及びCpはいずれもインデニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビルである。
【0066】
本発明の別の好ましい実施形態では、式(II)において、Qは-SiR-であり、Cp及びCpは、いずれも2-メチル-4-フェニル-インデニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20のヒドロカルビルである。
【0067】
本発明の別の好ましい実施形態では、式(II)において、Qは-CR1011-であり、Cpはシクロペンタジエニルであり、Cpはフルオレニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R10及びR11はメチル又はフェニルである。
【0068】
本発明の別の好ましい実施形態では、式(II)において、Qは-CR1213-であり、Cpはシクロペンタジエニルであり、Cpは2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニルであり、Mはジルコニウムであり、X及びXは塩素原子であり、R12及びR13はメチル又はフェニルである。
【0069】
上記の炭素数1~20のヒドロカルビルとして、好ましくは炭素数1~10のアルキル又は炭素数6~12のアリール、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキルである。
【0070】
前記メタロセン化合物の具体例として、例えば、ジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジインデニルジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(4,4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(4,4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4,4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-メトキシ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4,4’-メトキシ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-メチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4-メチル-4’-t-ブチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(3,3’-トリフルオロメチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(3,3’-トリフルオロメチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(3,3’-トリフルオロメチル-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-フルオロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(4,4’-フルオロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、(4,4’-フルオロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、(4,4’-クロロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-チタンジクロリド、(4,4’-クロロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド又は(4,4’-クロロ-ジフェニルメチレン)-シクロペンタジエニル-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、ジクロロ[rac-エチレンビス(インデニル)]ジルコニウム(IV)、rac-ジメチルシリルジインデニルジルコニウムジクロリド、rac-ジメチルシリルビス(2-メチル-インデニル)ジルコニウムジクロリド、及びrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドのうちの1種又は複数種であってもよい。これらの中でも、より好ましくはジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジインデニルジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジクロロ[rac-エチレンビス(インデニル)]ジルコニウム(IV)、rac-ジメチルシリルジインデニルジルコニウムジクロリド、及びrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-4-インデニル)ジルコニウムジクロリドのうちの1種又は複数種である。
【0071】
本発明によるエチレン-シクロオレフィンコポリマーの製造方法では、好ましくは、前記助触媒成分はアルキルアルモキサン、有機ホウ素化合物、及び有機アルミニウム化合物のうちの1種又は複数種を含む。具体的には、前記助触媒成分は、アルキルアルモキサンであってもよく、アルキルアルモキサンと有機アルミニウム化合物との組み合わせであってもよく、有機アルミニウム化合物と有機ホウ素化合物との組み合わせであってもよい。
【0072】
本発明の触媒組成物は、エチレンとシクロオレフィンとの共重合に用いると、有機アルミニウム化合物と有機ホウ素化合物との組み合わせを本発明のフェノールと組み合わせることによって、触媒の触媒活性を向上させることもでき、したがって、前記助触媒成分は、好ましくは有機アルミニウム化合物と有機ホウ素化合物との組み合わせである。
【0073】
上記のアルキルアルモキサンとして、有機アルミニウム化合物及び有機ホウ素化合物は、本発明の第1態様に記載の通りであるので、ここでは詳しく説明しない。
【0074】
さらに、式(III)で示される構造のフェノールも、本発明の第1態様に記載の通りであるので、ここでは詳しく説明しない。
【0075】
本発明によるエチレン-シクロオレフィンコポリマーの製造方法では、前記助触媒がアルキルアルモキサンである場合、前記メタロセン化合物とアルミニウム換算のアルキルアルモキサンとのモル比は、1:(50~20000)、より好ましくは1:(200~10000)、より好ましくは1:(500~3000)である。
【0076】
本発明によるエチレン-シクロオレフィンコポリマーの製造方法では、前記助触媒が有機ホウ素化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせである場合、前記メタロセン化合物と有機ホウ素化合物とのモル比は1:(1~5)、好ましくは1:(1~2)であり、前記メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比は1:(10~1000)、好ましくは1:(10~200)である。
【0077】
本発明によるエチレン-シクロオレフィンコポリマーの製造方法では、前記助触媒がアルキルアルモキサンと有機アルミニウム化合物との組み合わせである場合、前記メタロセン化合物とアルミニウム換算のアルキルアルモキサンとのモル比は、1:(50~20000)、より好ましくは1:(200~10000)、より好ましくは1:(500~3000)であり、前記メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比は1:(10~5000)、より好ましくは1:(10~3000)、より好ましくは1:(10~2000)、より好ましくは1:(10~1000)、より好ましくは1:(100~800)、より好ましくは1:(200~600)、より好ましくは1:(300~600)である。
本発明によるエチレン-シクロオレフィンコポリマーの製造方法では、好ましくは、前記メタロセン化合物と前記フェノールとのモル比は1:(1~1000)、より好ましくは1:(10~500)、さらに好ましくは1:(20~200)、さらに好ましくは1:(50~150)、よりさらに好ましくは1:(100~150)である。
【0078】
本発明によるエチレン-シクロオレフィンコポリマーの製造方法では、エチレン及び前記シクロオレフィンの使用量は、本分野においてエチレン-シクロオレフィンコポリマーを合成するための通常の使用量であってもよく、例えば、前記重合反応系中のシクロオレフィンの濃度が、0.05~10モル/リットル、好ましくは0.1~5モル/リットルである。
【0079】
本発明によるエチレン-シクロオレフィンコポリマーの製造方法では、前記重合反応系中の前記メタロセン化合物は、本分野においてエチレン-シクロオレフィンコポリマーを合成するための通常の使用量である。好ましくは、前記重合反応系中の前記メタロセン化合物の濃度が1×10-9モル/リットル~1×10-3モル/リットル、より好ましくは1×10-8モル/リットル~1×10-4モル/リットルである。
【0080】
本発明によるエチレン-シクロオレフィンコポリマーの製造方法では、好ましくは、前記シクロオレフィンは、炭素原子を5~20個含有するシクロオレフィンであり、より好ましくは、前記シクロオレフィンは、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ノルボルネン、及びテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エンのうちの1種又は複数種であり、さらに好ましくは、前記シクロオレフィンはノルボルネンである。
【0081】
本発明によるエチレン-シクロオレフィンコポリマーの製造方法では、共重合反応の条件は、本分野においてエチレン-シクロオレフィンコポリマーを合成するための通常の条件である。好ましくは、共重合反応の温度は0~200℃、共重合反応の時間は1~300分間であり、より好ましくは、共重合反応の温度は50~160℃、共重合反応の時間は5~60分間である。また、前記エチレンの分圧は、0.1~10MPaであってもよく、好ましくは0.1~4.0MPaである。
【0082】
本発明の1つの好ましい実施形態では、前記助触媒成分がアルキルアルモキサンである場合、その製造方法は、十分に乾燥した重合装置を真空吸引し、窒素でパージし、この操作を複数回繰り返すステップと、シクロオレフィンを加え、その後、さらに真空吸引を行い、エチレンを導入し、反応溶媒、フェノール及びアルキルアルモキサンを順次加えた後、重合反応温度に昇温して、その後、メタロセン化合物を加えて重合反応を行い、重合反応完了後、エチレンを止めて、反応液に酸性エタノールを加え、撹拌して濾過し、ポリマーを得るステップと、を含む。
【0083】
本発明の別の好ましい実施形態では、前記助触媒成分が有機ホウ素化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせである場合、その製造方法は、十分に乾燥した重合装置を真空吸引し、窒素でパージし、この操作を複数回繰り返すステップと、シクロオレフィンを加え、その後、さらに真空吸引を行い、エチレンを導入し、反応溶媒、フェノール、及び有機アルミニウム化合物を順次加えた後、重合反応温度に昇温して、その後、メタロセン化合物及び有機ホウ素化合物を順次加えた後、重合反応を行い、重合反応完了後、エチレンを止めて、反応液に酸性エタノールを加え、撹拌して濾過し、ポリマーを得るステップと、を含む。
【0084】
本発明の第3態様によれば、触媒組成物を用いてエチレンとエノールとを共重合反応させるステップを含み、
前記触媒組成物は、成分として、
a)式(I)及び/又は式(II)で示される構造のメタロセン化合物と、
b)助触媒成分と、
c)式(III)で示される構造のフェノールと、を含む、エチレン-エノールコポリマーの製造方法を提供する。
【化12】

(式(I)及び式(II)において、
Cp及びCpは、それぞれ独立して、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたシクロペンタジエニル又は非置換のシクロペンタジエニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたインデニル又は非置換のインデニル、炭素数1~20のヒドロカルビルによる単置換又は多置換が行われたフルオレニル又は非置換のフルオレニルであり、
Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、
及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ、アリールオキシ又はヒドロカルビルであり、
式(II)において、Qは、Cp及びCpに連結される原子又は基である。)
【化13】

(式(III)において、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1~30のヒドロカルビルであり、かつ、R、R、R、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数1~30のヒドロカルビルである場合、これらのいずれか2つは環化してもよい。)
【0085】
本発明によるエチレン-エノールコポリマーの製造方法では、式(I)及び式(II)は本発明の第1態様に記載の通りであるので、ここでは詳しく説明しない。
【0086】
本発明によるエチレン-エノールコポリマーの製造方法では、好ましくは、前記助触媒成分は、アルキルアルモキサン、有機ホウ素化合物、及び有機アルミニウム化合物のうちの1種又は複数種を含む。具体的には、前記助触媒成分は、アルキルアルモキサンであってもよいし、アルキルアルモキサンと有機アルミニウム化合物との組み合わせであってもよいし、有機アルミニウム化合物と有機ホウ素化合物との組み合わせであってもよい。
【0087】
本発明の触媒組成物は、エチレンとエノールとの共重合に用いると、有機アルミニウム化合物とアルキルアルモキサンとの組み合わせを、本発明のフェノールと組み合わせることによって、触媒の触媒活性を向上させることもでき、したがって、前記助触媒成分は、好ましくは有機アルミニウム化合物とアルキルアルモキサンとの組み合わせである。
【0088】
上記のアルキルアルモキサン、有機アルミニウム化合物、及び有機ホウ素化合物としては、本発明の第1態様に記載の通りであるので、ここでは詳しく説明しない。
【0089】
さらに、式(III)で示される構造のフェノールとしても、本発明の第1態様に記載の通りであるので、ここでは詳しく説明しない。
【0090】
本発明によるエチレン-エノールコポリマーの製造方法では、前記助触媒がアルキルアルモキサンである場合、前記助触媒は、アルキルアルモキサンであり、前記メタロセン化合物とアルミニウム換算のアルキルアルモキサンとのモル比は、1:(50~20000)、より好ましくは1:(200~10000)、より好ましくは1:(500~3000)である。
【0091】
前記助触媒がアルキルアルモキサンと有機アルミニウム化合物との組み合わせである場合、前記メタロセン化合物とアルミニウム換算のアルキルアルモキサンとのモル比は、1:(50~20000)、より好ましくは1:(200~10000)、より好ましくは1:(500~3000)であり、前記メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比は1:(10~5000)、より好ましくは1:(10~3000)、より好ましくは1:(10~2000)、より好ましくは1:(10~1000)、より好ましくは1:(100~800)、より好ましくは1:(200~600)、より好ましくは1:(300~600)である。
【0092】
前記助触媒が有機ホウ素化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせである場合、前記メタロセン化合物と有機ホウ素化合物とのモル比は1:(1~5)、好ましくは1:(1~2)であり、前記メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物とのモル比は1:(10~1000)、好ましくは1:(10~200)である。
【0093】
本発明によるエチレン-エノールコポリマーの製造方法では、好ましくは、前記メタロセン化合物と前記フェノールとのモル比は1:(1~1000)、より好ましくは1:(10~500)、さらに好ましくは1:(20~200)、さらに好ましくは1:(50~150)、よりさらに好ましくは1:(100~150)である。
【0094】
本発明によるエチレン-エノールコポリマーの製造方法では、エチレン及び前記エノールの使用量は、本分野においてエチレン-エノールコポリマーを合成するための通常の使用量であってもよく、例えば、前記重合反応系中のエノールの濃度は、0.01~1モル/リットル、好ましくは0.1~1モル/リットルであってもよい。
【0095】
本発明によるエチレン-エノールコポリマーの製造方法では、好ましくは、前記有機アルミニウム化合物は、一般式AlRで示されるアルキルアルミニウムであり、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数2~8のアルキルであり、R、R及びRは、同一であるか、又は異なる。
【0096】
上記の炭素数2~8のアルキルとして、例えば、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、s-ブチル、イソブチル、ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ネオペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられる。
【0097】
上記のアルキルアルミニウムの具体例として、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-s‐ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリ-n-ペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、及びメチルジエチルアルミニウムのうちの1種又は複数種が挙げられる。これらの中でも、好ましくはトリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、及びトリ-n-オクチルアルミニウムのうちの1種又は複数種である。
【0098】
さらに、好ましくは、前記有機アルミニウム化合物とエノールとのモル比は1:(1~3)、より好ましくは1:(1~1.5)である。
【0099】
さらに、前記有機アルミニウム化合物を添加する際には、前記有機アルミニウム化合物は、前記エノールと同時に、又はエノールの添加後に添加されるのが好ましい。
【0100】
本発明によるエチレン-エノールコポリマーの製造方法では、前記重合反応系中の前記メタロセン化合物は、本分野においてエチレン-エノールコポリマーを合成するための通常の使用量であってもよい。好ましくは、前記重合反応系中の前記メタロセン化合物の濃度は1×10-9モル/リットル~1×10-3モル/リットル、より好ましくは1×10-8モル/リットル~1×10-4モル/リットルであってもよい。
【0101】
本発明によるエチレン-エノールコポリマーの製造方法では、好ましくは、前記エノールの構造は、式(VI)で示される。
【化14】

(式(VI)において、nは、1~15の整数、好ましくは2~9の整数である。)
【0102】
上記の式(VI)で示される構造のエノールとして、具体的には、nがそれぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14及び15であるときに示される化合物が挙げられる。
【0103】
本発明によるエチレン-エノールコポリマーの製造方法では、共重合反応の条件は、本分野においてエチレン-エノールコポリマーを合成するための通常の条件であってもよい。好ましくは、共重合反応の温度は0~200℃、共重合反応の時間は1~300分間であり、より好ましくは、共重合反応の温度は50~160℃、共重合反応の時間は5~60分間である。また、前記エチレンの分圧は、0.1~10MPaであってもよく、好ましくは0.1~4.0MPaである。
【0104】
本発明によれば、本発明の触媒組成物は、エチレンとシクロオレフィンとの共重合に用いると、分子量を向上させる上に、コポリマー中のシクロオレフィンの含有量を向上させ、ポリマーのガラス転移温度を上昇することができる。さらに、本発明の触媒組成物は、エチレンとシクロオレフィンとの共重合に用いると、有機アルミニウム化合物と有機ホウ素化合物との組み合わせを本発明のフェノールと組み合わせることによって、触媒の触媒活性を向上させることもできる。
【0105】
また、本発明の触媒組成物は、エチレンとエノールとの共重合に用いると、分子量を向上させる上に、コポリマー中のエノール構造単位の含有量を向上させることができる。さらに、本発明の触媒組成物は、エチレンとエノールとの共重合に用いると、有機アルミニウム化合物とアルキルアルモキサンとの組み合わせを本発明のフェノールと組み合わせることによって、触媒の触媒活性を向上させることもできる。
【0106】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0107】
以下の実施例と比較例で採用される原料は、特別な限定がなければ、いずれも従来技術で開示されたものであり、例えば直接購入して取得することができ、又は従来技術で開示された製造方法によって製造することができる。
ポリマーのテスト方法
【0108】
重均分子量及び分子量分布のテスト
1)英国Polymer Laboratories社のPL-GPC 220型番GPCを用いてサンプルの分子量と分子量分布を測定し、カラムは3本直列Plgel 10 μmMIXED-Bカラムとした。溶媒と移動相はすべて1,2,4-トリクロロベンゼン(酸化防止剤2,6-ジブチルp-クレゾール0.025wt%を含む)であり、カラム温度は150℃であり、流速は1.0ml/minであり、サンプル濃度は1mg/mlであり、IR5赤外線濃度検出器が配置されており、ユニバーサルキャリブレーションには、狭い分布のポリスチレン標準サンプルが使用された。
【0109】
2)ガラス転移温度
ガラス転移温度はTA 100示差走査熱量計(DSC)を用いて測定し、走査温度-25℃~200℃、昇温・降温速度10℃/minとした。熱履歴を除去して二次昇温曲線を得、正規化積分処理を行った。
【0110】
3)コモノマー含有量のテスト
Bruker社製のAVANCE III 400MHz型核磁気共鳴スペクトロメーターを用いてサンプルのコモノマー含有量を検討した。溶媒として重水素化オルトジクロロベンゼンを用い、10mm PASEX 13C-1H/D Z-GRDプローブにより、濃度10質量%のサンプルを130℃で均一に溶解し、テスト温度125℃、回転数20ヘルツ、90°パルス、スペクトル幅120ppm、サンプリング時間5秒、遅延時間10秒で、6000回走査した。13C-NMRスペクトルに基づいて、文献に記載された方法(例えば、Macromolecules 2000, 33, 8931-8944(エチレン-ノルボルネン共重合体の計算に使用); Macromolecular Chemistry and Physics, 2013, 214, 2245-2249(エチレン-エノール共重合体の計算に使用))でコモノマーの含有量を計算した。
【0111】
4)熱解析テスト
TA 100示差走査熱量計を用い、走査温度-25℃~200℃、昇温・降温速度10℃/minとした。熱履歴を除去して二次昇温溶融曲線を得た。
比較例及び実施例で使用されるフェノールは以下に示される。
フェノール1:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール
フェノール2:2,6-ジ-t-ブチルフェノール
フェノール3:2,4-ジ-t-ブチルフェノール
フェノール4:4-クロロ-2-ベンジルフェノール
フェノール5:4-クロロ-2-イソプロピル-5-メチルフェノール
フェノール6:2,4-ジクロロ-1-ナフトール
【0112】
以下の実施例は、本発明の触媒組成物をエチレンとシクロオレフィンとの共重合に用いることを説明する。
比較例1
【0113】
十分に乾燥した重合フラスコに、ノルボルネン4.71gを加えて、真空吸引し、窒素でパージし、この操作を3回繰り返した。真空吸引し、電磁弁で制御して1atmエチレンを導入し、トルエン26mL、メチルアルモキサントルエン溶液3mL(メチルアルモキサン5.0mmol含有)を加えて、70℃に昇温して、触媒溶液1mL(ジフェニルメチル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド5μmol含有)を加えて、計時し始めた。反応中、エチレンの消費により重合フラスコ内のエチレン圧力を低下させ、電磁弁が自動的に開いてエチレンを補充し、圧力を1atmに維持した。20分間後、エチレンを止めて、反応液をビーカーに注入し、酸性エタノールを加えて、6時間以上撹拌して、濾過してポリマーを得た。重合及び特徴評価データを表1に示す。
比較例2
【0114】
十分に乾燥した重合フラスコに、ノルボルネン4.71gを加えて、真空吸引し、窒素でパージし、この操作を3回繰り返した。真空吸引し、電磁弁で制御して1atmエチレンを導入し、トルエン27mL、トリイソブチルアルミニウムトルエン溶液1mL(トリイソブチルアルミニウム1.0mmol含有)を加えて、70℃に昇温して、触媒溶液1mL(ジフェニルメチル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド5μmol含有)を加えて、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液1mL(トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート6μmol含有)を加えて、計時し始めた。反応中、エチレンの消費により重合フラスコ内のエチレン圧力を低下させ、電磁弁が自動的に開いてエチレンを補充し、圧力を1atmに維持した。20分間後、エチレンを止めて、反応液をビーカーに注入し、酸性エタノールを加えて、6時間以上撹拌して、濾過してポリマーを得た。重合及び特徴評価データを表2に示す。
実施例1~9
【0115】
十分に乾燥した重合フラスコに、ノルボルネン4.71gを加えて、真空吸引し、窒素でパージし、この操作を3回繰り返した。真空吸引し、電磁弁で制御して1atmエチレンを導入し、トルエン25mL、フェノール溶液(各実施例におけるフェノールの使用量を表1に示す)1mL、メチルアルモキサントルエン溶液3mL(メチルアルモキサン5.0mmol含有)を加えて、70℃に昇温して、触媒溶液1mL(ジフェニルメチル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド5μmol含有)を加えて、計時し始めた。反応中、エチレンの消費により重合フラスコ内のエチレン圧力を低下させ、電磁弁が自動的に開いてエチレンを補充し、圧力を1atmに維持した。20分間後、エチレンを止めて、反応液をビーカーに注入し、酸性エタノールを加えて、6時間以上撹拌して、濾過してポリマーを得た。フェノールと触媒(メタロセン換算)とのモル比、重合データ、及び特徴評価データを表1に示す。
実施例10~14
【0116】
十分に乾燥した重合フラスコに、ノルボルネン4.71gを加えて、真空吸引し、窒素でパージし、この操作を3回繰り返した。真空吸引し、電磁弁で制御して1atmエチレンを導入し、トルエン26mL、フェノール溶液1mL(各実施例におけるフェノールの使用量を表1に示す)、トリイソブチルアルミニウムトルエン溶液1mL(トリイソブチルアルミニウム1.0mmol含有)を加えて、70℃に昇温して、触媒溶液1mL(ジフェニルメチル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド5μmol含有)を加えて、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液1mL(トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート6μmol)含有を加えて、計時し始めた。反応中、エチレンの消費により重合フラスコ内のエチレン圧力を低下させ、電磁弁が自動的に開いてエチレンを補充し、圧力を1atmに維持した。20分間後、エチレンを止めて、反応液をビーカーに注入し、酸性エタノールを加えて、6時間以上撹拌して、濾過してポリマーを得た。フェノールと触媒(メタロセン換算)とのモル比、重合データ及び特徴評価結果を表2に示す。
重合特徴評価データを以下の表1~2に示す(表1~2における重合活性単位:キログラム-ポリマー/モル-触媒/h)。
【0117】
【表1】
【0118】
比較例1と実施例1~9との比較により、本発明の製造方法では、本発明におけるフェノールを含む触媒組成物を用いて得られたポリマーは、分子量がフェノールを含まない触媒組成物を用いて得られたポリマーの分子量よりも大きく、ポリオレフィン製品の調整範囲を広げ、ポリオレフィン製品の品質を向上させ、種類を増加させ、さらに、コポリマー中のシクロオレフィンの含有量を向上させ、ポリマーのガラス転移温度を上昇できることが分かった。
【表2】
【0119】
比較例2と実施例10~13との比較よりも、本発明の製造方法では、有機ホウ素化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせを用い、さらに、本発明のフェノールを用いることによって、コポリマー中のシクロオレフィンの含有量を向上させ、ポリマーのガラス転移温度を上昇することができるだけではなく、触媒の触媒活性を向上させることもできることが分かった。
【0120】
以上より、本発明の触媒組成物をエチレンとシクロオレフィンとの共重合に用いると、特定のフェノールを含む触媒組成物を用いて共重合反応を行って得られたポリマーは、分子量が、フェノールを用いない触媒組成物を用いて得られたポリマーの分子量よりも大きく、ポリオレフィン製品の調整範囲を広げ、ポリオレフィン製品の品質を向上させ、その種類を増加させることが分かった。さらに、本発明の触媒組成物をエチレンとシクロオレフィンとの共重合に用いると、特定のフェノールを含む触媒組成物を用いて共重合反応を行うことによって、コポリマー中のシクロオレフィンの含有量を向上させ、ポリマーのガラス転移温度を上昇することができる。
【0121】
さらに、本発明の触媒組成物をエチレンとシクロオレフィンとの共重合に用いると、有機ホウ素化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせを本発明のフェノールと組み合わせることによって、触媒の触媒活性を向上させることもできる。
以下の実施例は、本発明の触媒組成物をエチレンとエノールとの共重合に用いることを説明する。
比較例1
【0122】
十分に乾燥した重合フラスコに、真空吸引し、窒素でパージし、この操作を3回繰り返した。真空吸引し、電磁弁で制御して1atmエチレンを導入し、トルエン23.7mL、4-ペンテン-1-オール0.3mL、トリイソブチルアルミニウムトルエン溶液4mL(トリイソブチルアルミニウム4.0mmol含有)を加えて、70℃に昇温して、触媒溶液1mL(ジフェニルメチル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド5μmol含有)を加えて、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液1mL(トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート6μmol含有)を加えて、計時し始めた。反応中、エチレンの消費により重合フラスコ内のエチレン圧力を低下させ、電磁弁が自動的に開いてエチレンを補充し、圧力を1atmに維持した。20分間後、エチレンを止めて、反応液をビーカーに注入し、酸性エタノールを加えて、6時間以上撹拌して、濾過してポリマーを得た。重合結果及び特徴評価データを表3に示す。
比較例2
【0123】
十分に乾燥した重合フラスコに、真空吸引し、窒素でパージし、この操作を3回繰り返した。真空吸引し、電磁弁で制御して1atmエチレンを導入し、トルエン22.7mL、4-ペンテン-1-オール0.3mL、トリイソブチルアルミニウムトルエン溶液3mL(トリイソブチルアルミニウム3.0mmol含有)、メチルアルモキサントルエン溶液3mL(メチルアルモキサン5.0mmol含有)を加えて、70℃に昇温して、触媒溶液1mL(ジフェニルメチル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド5μmol含有)を加えて、計時し始めた。反応中、エチレンの消費により重合フラスコ内のエチレン圧力を低下させ、電磁弁が自動的に開いてエチレンを補充し、圧力を1atmに維持した。20分間後、エチレンを止めて、反応液をビーカーに注入し、酸性エタノールを加えて、6時間以上撹拌して、濾過してポリマーを得た。重合結果及び特徴評価データを表3に示す。
実施例1~8
【0124】
十分に乾燥した重合フラスコに、真空吸引し、窒素でパージし、この操作を3回繰り返した。真空吸引し、電磁弁で制御して1atmエチレンを導入し、トルエン22.7mL、フェノール溶液1mL、4-ペンテン-1-オール0.3mL、トリイソブチルアルミニウムトルエン溶液4mL(トリイソブチルアルミニウム4.0mmol含有)を加えて、70℃に昇温して、触媒溶液1mL(ジフェニルメチル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド5μmol含有)を加えて、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液1mL(トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート6μmol含有)を加えて、計時し始めた。反応中、エチレンの消費により重合フラスコ内のエチレン圧力を低下させ、電磁弁が自動的に開いてエチレンを補充し、圧力を1atmに維持した。20分間後、エチレンを止めて、反応液をビーカーに注入し、酸性エタノールを加えて、6時間以上撹拌して、濾過してポリマーを得た。重合結果及び特徴評価データを表4に示す。
実施例9~14
【0125】
十分に乾燥した重合フラスコに、真空吸引し、窒素でパージし、この操作を3回繰り返した。真空吸引し、電磁弁で制御して1atmエチレンを導入し、トルエン21.7mL、フェノール溶液1mL、4-ペンテン-1-オール0.3mL、トリイソブチルアルミニウムトルエン溶液3mL(トリイソブチルアルミニウム3.0mmol含有)、メチルアルモキサントルエン溶液3mL(メチルアルモキサン5.0mmol含有)を加えて、70℃に昇温して、触媒溶液1mL(ジフェニルメチル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド5μmol含有)を加えて、計時し始めた。反応中、エチレンの消費により重合フラスコ内のエチレン圧力を低下させ、電磁弁が自動的に開いてエチレンを補充し、圧力を1atmに維持した。20分間後、エチレンを止めて、反応液をビーカーに注入し、酸性エタノールを加えて、6時間以上撹拌して、濾過してポリマーを得た。重合結果及び特徴評価データを表1に示す。
【0126】
重合データ及び特徴評価データを以下の表3~4に示す(表3~4における重合活性単位:キログラム-ポリマー/モル-触媒/h)。
【表3】
【0127】
比較例1と実施例1~8との比較より、本発明の製造方法では、本発明のフェノールを含む触媒組成物を使用することによって、分子量を向上させるだけではなく、コポリマー中のエノール構造単位の含有量を向上できることが分かった。
【表4】
【0128】
比較例2と実施例9~14との比較よりも、本発明の製造方法では、アルキルアルモキサンと有機アルミニウム化合物との組み合わせを用い、さらに、本発明のフェノールを用いることによって、コポリマー中のエノールの含有量を向上させ、ポリマー分子量を向上させ、さらに、触媒の触媒活性を向上させることもできることが分かった。
【0129】
以上より、本発明の触媒組成物をエチレンとエノールとの共重合に用いると、特定のフェノールを含む触媒組成物を用いて共重合反応を行って得られたポリマーは、分子量が、フェノールを用いない触媒組成物を用いて得られたポリマーの分子量よりも大きく、ポリオレフィン製品の調整範囲を広げ、ポリオレフィン製品の品質を向上させ、その種類を増加させることが分かった。さらに、本発明の触媒組成物をエチレンとエノールとの共重合に用いると、特定のフェノールを含む触媒組成物を用いて共重合反応を行うことによって、コポリマー中のエノールの含有量を向上させることができる。
【0130】
さらに、本発明の触媒組成物は、エチレンとエノールとの共重合に用いると、アルキルアルモキサンと有機アルミニウム化合物との組み合わせを本発明のフェノールと組み合わせることによって、触媒の触媒活性を向上させることもできる。
【国際調査報告】