(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】エチレン-α-オレフィンコポリマー、その製造方法、及び使用、並びに組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 210/02 20060101AFI20240912BHJP
C08F 4/655 20060101ALI20240912BHJP
C08F 4/64 20060101ALI20240912BHJP
C08F 4/6392 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08F210/02
C08F4/655
C08F4/64
C08F4/6392
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519643
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 CN2022122018
(87)【国際公開番号】W WO2023051580
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111156978.3
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523187158
【氏名又は名称】中石化(北京)化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】呉長江
(72)【発明者】
【氏名】李娟
(72)【発明者】
【氏名】侯莉萍
(72)【発明者】
【氏名】王偉
(72)【発明者】
【氏名】張韜毅
(72)【発明者】
【氏名】羅春霞
(72)【発明者】
【氏名】張龍貴
(72)【発明者】
【氏名】鄭俊鵬
(72)【発明者】
【氏名】鄭剛
(72)【発明者】
【氏名】杜文傑
(72)【発明者】
【氏名】盛建▲ファン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ガオ▼菲菲
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA01P
4J100AA02P
4J100AA07Q
4J100AA16Q
4J100AA17Q
4J100AA19Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
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4J128BA00A
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC25B
4J128CB25B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB07
4J128EC02
4J128FA02
4J128GA01
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA18
4J128GA26
(57)【要約】
本発明は、エチレンコポリマーの分野に関し、コモノマー分散指数の高いエチレン-共重合オレフィンコポリマー、その製造方法、及び使用、並びに、該エチレン-α-オレフィンコポリマーを含む組成物を開示する。前記エチレン-α-オレフィンコポリマーは、エチレン由来の構造単位70~95mol%と、α-オレフィン由来の構造単位5~30mol%と、を含み、前記α-オレフィンは、炭素数5~10のオレフィンであり、かつ、前記α-オレフィンの構造単位の分子鎖での分散指数RMDが102%よりも大きい。本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマーはコモノマー分散指数が高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
70~95mol%のエチレン由来の構造単位と、5~30mol%のα-オレフィン由来の構造単位と、を含有し、前記α-オレフィンは、炭素数5~10のオレフィンであり、前記α-オレフィンの構造単位の分子鎖での分散指数RMDが102%よりも大きい、ことを特徴とするエチレン-α-オレフィンコポリマー。
【請求項2】
80~95mol%のエチレン由来の構造単位と、5~20mol%のα-オレフィン由来の構造単位と、を含有し、
82~89mol%のエチレン由来の構造単位と、11~18mol%のα-オレフィン由来の構造単位と、を含有し、
好ましくは、83mol%よりも大きく89mol%以下のエチレン由来の構造単位と、11mol%以上17mol%未満のα-オレフィン由来の構造単位と、を含有し、
好ましくは、84~89mol%のエチレン由来の構造単位と、11~16mol%のα-オレフィン由来の構造単位と、を含有する、請求項1に記載のエチレン-α-オレフィンコポリマー。
【請求項3】
前記α-オレフィンの構造単位の分子鎖での分散指数RMDは、103%以上、好ましくは104%以上、より好ましくは104~108%である、請求項1に記載のエチレン-α-オレフィンコポリマー。
【請求項4】
分子量分布Mw/Mnは、1.5~3、好ましくは1.5~2.5、より好ましくは1.5~2.3である、請求項1~3のいずれか1項に記載のエチレン-α-オレフィンコポリマー。
【請求項5】
温度190℃、負荷2.16kgでのメルトインデックスMFRCは、1.0~50g/10min、好ましくは1~15g/10minであり、
好ましくは、半融解エンタルピー温度T
1/2は、5~80℃、好ましくは10~70℃、より好ましくは15~60℃である、請求項1~3のいずれか1項に記載のエチレン-α-オレフィンコポリマー。
【請求項6】
前記α-オレフィンは、炭素数5~8のオレフィン、好ましくは1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテンのうちの1種又は複数種、より好ましくは1-オクテンである、請求項1~3のいずれか1項に記載のエチレン-α-オレフィンコポリマー。
【請求項7】
オレフィンの溶液共重合の条件で、触媒、助触媒及びフェノールの存在下、エチレンとα-オレフィンとを共重合し、エチレン-α-オレフィンコポリマーを得るステップを含み、
前記触媒は、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド及び/又はジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含有し、前記助触媒は有機アルミニウム化合物であり、前記フェノールは2,4-ジハロ-1-ナフトールであり、
エチレン及びα-オレフィンの使用量は、前記エチレン-α-オレフィンコポリマー中のエチレン由来の構造単位とα-オレフィン由来の構造単位とのモル比が(80~95):(5~20)となるようにし、前記α-オレフィンは炭素数5~10のオレフィンである、ことを特徴とするエチレン-α-オレフィンコポリマーの製造方法。
【請求項8】
エチレン及びα-オレフィンの使用量は、前記エチレン-α-オレフィンコポリマー中のエチレン由来の構造単位とα-オレフィン由来の構造単位とのモル比が(82~89):(11~18)、より好ましくは(84~89):(11~16)となるようにする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
活性金属換算の前記触媒の使用量は、前記エチレン1molに対して、0.01~10×10
-6molである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記有機アルミニウム化合物は、アルモキサン及び/又は式1で示されるヒドロカルビルアルミニウムであり、
好ましくは、前記有機アルミニウム化合物は、メチルアルモキサンであり、
好ましくは、アルミニウム換算の有機アルミニウム化合物と活性金属換算の触媒とのモル比が50~5000:1である、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【化1】
(式1中、R
1、R
2、及びR
3は、同一であるか、又は異なり、各々独立して、アルキル(シクロアルキルを含む)、アルコキシ、アリール、アルキルアリール、アラルキル、及び水素から選択され、かつ、R
1、R
2及びR
3は、同時に水素原子ではならない。)
【請求項11】
2,4-ジハロ-1-ナフトールと活性金属換算の触媒とのモル比が1~500:1であり、
好ましくは、前記2,4-ジハロ-1-ナフトールは、2,4-ジクロロ-1-ナフトール及び/又は2,4-ジブロモ-1-ナフトール、より好ましくは2,4-ジクロロ-1-ナフトールである、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法
【請求項12】
前記α-オレフィンは、炭素数5~8のオレフィン、より好ましくは1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテンのうちの1種又は複数種、さらに好ましくは1-オクテンである、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記オレフィンの溶液共重合条件は、共重合温度-40~200℃、好ましくは25~120℃、より好ましくは50~70℃、重合時のエチレン分圧0.05~5MPa、好ましくは0.1~2MPa、より好ましくは0.8~1.2MPaを含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
オレフィンの溶液共重合に使用される溶媒は、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びシクロヘキサンのうちの1種又は複数種である、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか1項に記載のエチレン-α-オレフィンコポリマー又は請求項8~14のいずれか1項に記載の方法により製造されたエチレン-α-オレフィンコポリマーと、溶媒と、を含有する、ことを特徴とするエチレン-α-オレフィンコポリマー組成物。
【請求項16】
前記溶媒は、エチレン-α-オレフィンコポリマーの製造に残留される製造用溶媒である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
封止フィルムの製造における、請求項1~6のいずれか1項に記載のエチレン-α-オレフィンコポリマーの使用。
【請求項18】
請求項1~6のいずれか1項に記載のエチレン-α-オレフィンコポリマー又は請求項15又は16に記載のエチレン-α-オレフィンコポリマー組成物の強化変性剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年09月30日に提出された、中国特許出願202111156978.3の利益を主張しており、当該出願の内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
[技術分野]
本発明は、エチレンコポリマーの分野に関し、具体的には、コモノマー分散指数の高いエチレン-共重合オレフィンコポリマー、その製造方法、及び使用、並びに、該エチレン-α-オレフィンコポリマーを含む組成物に関する。
【0003】
[背景技術]
ポリエチレンは、商業化に最も広く応用されている材料の1つである。配位重合技術を用いて製造されるエチレンポリマーとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリオレフィンプラスチックス/エラストマーなどが含まれる。この分野で公知の重合プロセスにはスラリー重合プロセス、気相重合プロセス、及び溶液重合プロセスがあり、使用する触媒は、チタン系Z-N触媒、クロム系触媒、及びメタロセン触媒などに分けられる。
【0004】
メタロセン触媒を用いて開発されたエチレンコポリマーはポリエチレンの高性能品種の1つであり、コモノマーは1-ブテンから高級α-オレフィン(1-ヘキセン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテン)に変わっている。コモノマーの増加に伴い、ポリエチレンの密度は徐々に低下し、高密度、中密度、低密度の直鎖状ポリエチレンからポリオレフィンプラスチック/エラストマーへと順次移行する。ラジカル重合によって得られる低密度ポリエチレンと異なり、このような低密度エチレンコポリマーエラストマーはコモノマーによって形成された短分岐鎖構造のみを含んでおり、これらの短分岐鎖のタイプ、含有量及び分布はコポリマーの機械的特性に直接影響する。コモノマーがポリマー主鎖上に均一に分布すると、コモノマーの効率が十分に発揮され、最小のコモノマー量でコポリマーの融点及び密度を最大に低下させることができる。したがって、どのように高いコモノマー含有量の共重合を実現すると同時に、コモノマーを更に有効かつ均一に分子鎖上に分布させるかは、触媒と重合プロセスの研究分野で非常に注目されている課題となり、高性能エチレン・α-オレフィンコポリマーを製造する上で重要な挑戦でもある。
【0005】
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
本発明の目的は、従来のエチレン-α-オレフィンコポリマーのコモノマーの分散度が不十分であるという従来技術に存在する課題を解決し、コモノマー分散指数の高いエチレン-α-オレフィンコポリマー、その製造方法、及び使用、並びに該エチレン-α-オレフィンコポリマーを含む組成物を提供することである。
【0006】
[課題を解決するための手段]
上記の目的を達成させるために、本発明の第1態様は、
70~95mol%のエチレン由来の構造単位と、5~30mol%のα-オレフィン由来の構造単位と、を含有し、前記α-オレフィンは、炭素数5~10のオレフィンであり、前記α-オレフィンの構造単位の分子鎖での分散指数RMDが102%よりも大きい、エチレン-α-オレフィンコポリマーを提供する。
【0007】
好ましくは、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーは、80~95mol%のエチレン由来の構造単位と、5~20mol%のα-オレフィン由来の構造単位と、を含有し、前記α-オレフィンは、炭素数5~10のオレフィンであり、前記α-オレフィンの構造単位の分子鎖での分散指数RMDが、103%よりも大きい。
【0008】
好ましくは、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーは、82~89mol%のエチレン由来の構造単位と、11~18mol%のα-オレフィン由来の構造単位と、を含有し、より好ましくは、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーは、84~89mol%のエチレン由来の構造単位と、11mol%以上17mol%未満のα-オレフィン由来の構造単位と、を含有し、さらに好ましくは、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーは、84~89mol%のエチレン由来の構造単位と、11~16mol%のα-オレフィン由来の構造単位と、を含有する。
【0009】
好ましくは、前記α-オレフィンの構造単位の分子鎖での分散指数RMDは、104%以上、より好ましくは104~108%である。
【0010】
好ましくは、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーの分子量分布Mw/Mnは、1.5~3、より好ましくは1.5~2.5、さらに好ましくは1.5~2.3である。
【0011】
好ましくは、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーの温度190℃、負荷2.16kgでのメルトインデックスMFRCは、1.0~50g/10min、より好ましくは1~15g/10minである。
【0012】
好ましくは、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーの半融解エンタルピー温度T1/2は、5~80℃、より好ましくは10~70℃、さらに好ましくは15~60℃である。
【0013】
好ましくは、前記α-オレフィンは、炭素数5~8のオレフィンである。
【0014】
好ましくは、前記α-オレフィンは、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテンのうちの1種又は複数種、より好ましくは1-オクテンである。
【0015】
本発明の第2態様では、オレフィンの溶液共重合の条件で、触媒、助触媒及びフェノールの存在下、エチレンとα-オレフィンとを共重合し、エチレン-α-オレフィンコポリマーを得るステップを含み、
前記触媒は、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド及び/又はジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含有し、前記助触媒は有機アルミニウム化合物であり、前記フェノールは2,4-ジハロ-1-ナフトールであり、
エチレン及びα-オレフィンの使用量は、前記エチレン-α-オレフィンコポリマー中のエチレン由来の構造単位とα-オレフィン由来の構造単位とのモル比が(80~95):(5~20)となるようにし、前記α-オレフィンは炭素数5~10のオレフィンである、エチレン-α-オレフィンコポリマーの製造方法を提供する。
【0016】
好ましくは、エチレン及びα-オレフィンの使用量は、前記エチレン-α-オレフィンコポリマー中のエチレン由来の構造単位とα-オレフィン由来の構造単位とのモル比が(82~89):(11~18)、より好ましくは(84~89):(11~16)となるようにする。
【0017】
好ましくは、活性金属換算の前記触媒の使用量は、前記エチレン1molに対して、0.01~10×10-6molである。
【0018】
好ましくは、前記有機アルミニウム化合物は、アルモキサン及び/又は式1で示されるヒドロカルビルアルミニウムである。
【化1】
(式1中、R
1、R
2、及びR
3は、同一であるか、又は異なり、各々独立して、アルキル(シクロアルキルを含む)、アルコキシ、アリール、アルキルアリール、アラルキル、及び水素から選択され、かつ、R
1、R
2、及びR
3は、同時に水素原子ではならない。)
【0019】
好ましくは、前記有機アルミニウム化合物は、好ましくはメチルアルモキサンである。
【0020】
好ましくは、アルミニウム換算の有機アルミニウム化合物と活性金属換算の触媒とのモル比が50~5000:1である。
【0021】
好ましくは、2,4-ジハロ-1-ナフトールと活性金属換算の触媒とのモル比が1~500:1である。
【0022】
好ましくは、前記2,4-ジハロ-1-ナフトールは、2,4-ジクロロ-1-ナフトール及び/又は2,4-ジブロモ-1-ナフトール、より好ましくは2,4-ジクロロ-1-ナフトールである。
【0023】
好ましくは、前記α-オレフィンは、炭素数5~8のオレフィンである。
【0024】
好ましくは、前記α-オレフィンは、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテンのうちの1種又は複数種、さらに好ましくは1-オクテンである。
【0025】
好ましくは、前記オレフィンの溶液共重合条件は、共重合温度-40~200℃、好ましくは25~120℃、より好ましくは50~70℃、重合時のエチレン分圧0.05~5MPa、好ましくは0.1~2MPa、より好ましくは0.8~1.2MPaを含む。
好ましくは、オレフィンの溶液共重合に使用される溶媒は、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びシクロヘキサンのうちの1種又は複数種である。
【0026】
本発明の第3態様によれば、本発明に記載のエチレン-α-オレフィンコポリマー又は本発明の製造方法により製造されるエチレン-α-オレフィンコポリマーと、溶媒と、を含有する、エチレン-α-オレフィンコポリマー組成物を提供する。
【0027】
好ましくは、前記溶媒は、エチレン-α-オレフィンコポリマーの製造に残留される製造用溶媒である。
【0028】
本発明の第4態様によれば、封止フィルムの製造における本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマーの使用を提供する。
【0029】
本発明の第5態様によれば、本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマー又は本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマー組成物の強化変性剤としての使用を提供する。
【0030】
[発明の効果]
上記の技術案によれば、本発明は、コモノマー分散指数の高いエチレン-α-オレフィンコポリマー、その製造方法、及び使用、並びに該エチレン-α-オレフィンコポリマーを含む組成物を提供することができる。
【0031】
本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマーは、コモノマー分散指数が高いため、従来のエチレン-α-オレフィンコポリマーと比べ、α-オレフィンコモノマーのモル百分率含有量が同じ場合、半融解エンタルピー温度がより低い。
【0032】
本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマーは、コモノマー分散指数が高いため、従来のエチレン-α-オレフィンコポリマーと比べ、同じ結晶化度及び融点温度では、α-オレフィンコモノマーがより少量であるので、コストダウンを図ることができる。
【0033】
[発明を実施するための形態]
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と個々のポイント値の間、及び個々のポイント値の間は、互いに組み合わされて1つ又は複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されるものとみなされるべきである。
【0034】
本発明の第1態様によれば、70~95mol%のエチレン由来の構造単位と、5~30mol%のα-オレフィン由来の構造単位と、を含有し、前記α-オレフィンは、炭素数5~10のオレフィンであり、かつ、前記α-オレフィンの構造単位の分子鎖での分散指数RMDが102%よりも大きい、エチレン-α-オレフィンコポリマーを提供する。
【0035】
本発明によるエチレン-α-オレフィンコポリマーでは、コモノマーの構造単位が分子鎖中に「スーパーランダム」な状態で分散している、すなわち、エチレンの構造単位が、共重合されたα-オレフィンの構造単位によって極めて均一かつ効率的に分散されていることを示しているので、より少量のコモノマーでポリマーの特定の融点及び密度を達成することができる。これは、ポリマーの原材料コストを効果的に削減できることを意味する。
【0036】
本発明において、いわゆる「スーパーランダム」分散状態とは、本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマーにおいて、コモノマーの構造単位が連結構造やブロック構造を形成せずに分離して配置されていること、すなわち、コモノマーの構造単位がポリマーの分子鎖上に非連続でランダムに分散して配置されていることをいう。本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマーでは、ポリマー分子鎖上でのコモノマーの分散の度合が理想的なランダム分布よりも高いことが分かる。
【0037】
本発明によれば、好ましくは、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーは、80~95mol%のエチレン由来の構造単位と、5~20mol%のα-オレフィン由来の構造単位と、を含有し、より好ましくは、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーは、82~89mol%のエチレン由来の構造単位と、11~18mol%のα-オレフィン由来の構造単位と、を含有し、さらに好ましくは、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーは、84~89mol%のエチレン由来の構造単位と、11~16mol%のα-オレフィン由来の構造単位と、を含有する。
【0038】
具体的には、前記エチレン-α-オレフィンコポリマー中のエチレン由来の構造単位の具体的な含有量は、例えば、80mol%、81mol%、82mol%、83mol%、84mol%、85mol%、86mol%、87mol%、88mol%、89mol%、90mol%、91mol%、92mol%、93mol%、94mol%、95mol%など、及び上記の値のいずれか2つによって形成される範囲であってもよい。
【0039】
具体的には、前記エチレン-α-オレフィンコポリマー中のα-オレフィン由来の構造単位の具体的な含有量は、例えば、5mol%、6mol%、7mol%、8mol%、9mol%、10mol%、11mol%、12mol%、13mol%、14mol%、15mol%、16mol%、17mol%、18mol%、19mol%、20mol%など、及び上記の値のいずれか2つによって形成される範囲であってもよい。
【0040】
本発明によれば、好ましくは、前記α-オレフィンの構造単位の分子鎖での分散指数RMDは、103%以上、より好ましくは、104%以上、より好ましくは、104~108%、さらに好ましくは、104~107%である。
【0041】
具体的には、前記α-オレフィンの構造単位の分子鎖での分散指数RMDは、例えば、103.1%、103.6%、103.7%、103.8%、103.9%、104%、104.1%、104.2%、104.3%、104.4%、104.5%、104.6%、104.7%、104.8%、104.9%、105%、105.1%、105.2%、105.3%、105.4%、105.5%、105.6%、105.7%、105.8%、105.9%、106%、106.1%、106.2%、106.3%、106.4%、106.5%、106.6%、106.7%、106.8%、106.9%、107%、107.1%、107.2%、107.3%、107.4%、107.5%、107.6%、107.7%、107.8%、107.9%、108%など、及び上記の値のいずれか2つによって形成される範囲であってもよい。
【0042】
本発明では、前記α-オレフィンの構造単位の分子鎖での分散指数RMDは、以下の式におり定義され、以下のように測定される。
【数1】
ここで、AMDは絶対コモノマー分散度を表し、BMDは完全ランダムコモノマー分散度又はベルヌーイ分散度を表す。
【0043】
絶対モノマー分散度AMDは以下のステップで測定される。絶対モノマー分散度は、平均分子中のコモノマークラスター数(N)を平均鎖上のモノマー単位数(X)で割った比として定義される。n
1が孤立コモノマー単位の数を表し、n
2がコモノマー単位の隣接クラスタを表す(コポリマー中のx個の隣接コモノマー単位のn
xクラスタまで)場合、X及びNは以下のように定義される。
【数2】
【0044】
よって、絶対コモノマー分散度AMDは、以下のように定義される。
【数3】
【0045】
したがって、ポリマー分子内に孤立したコモノマー単位のみが存在する場合、AMDは100になる。逆に、すべてのコモノマー単位が集中している場合、AMDは0となる。
【0046】
理想的なランダム又はベルヌーイ分布BMDは、次の式で決定される。
【数4】
ここで、MCはポリマー中のコモノマーの濃度(モル%)である。したがって、ポリマーがエチレン95%と1-オクテン5%で構成されている場合、BMDは95となる。
【0047】
核磁気共鳴NMRにより絶対コモノマー分散度AMDを計算する方法を以下に示す。
【0048】
ポリマーについて核磁気共鳴スペクトル分析を行い、核磁気共鳴のピークは、テトラメチルシランに対する相対位置(ppm)によって決定され、特徴づけられる。高い動作温度を考慮して、実際の「キャリブレーション」はヘキサメチルシロキサンに対して行われる。エチレン単位をE、共重合単位をXとすると、現在の計算方法の多くは、コモノマーの絶対分散性をトライアド分布で決定する傾向がある。したがって、分岐鎖に接続された炭素原子は、EXE、EXX、及びXXXの3つのタイプのうちの1つでしかない。
【0049】
2つ以上のX単位からなる各クラスタが2つのEXX単位を提供するため、次の関係がある。
【数5】
【0050】
同様に、トライアドXXXはXXX内に1回、XXXX内に2回、XXXXX内に3回発見されるので、以下のようになる。
【数6】
【0051】
上記の3つの式を組み合わせると、次のことがわかった。
【数7】
【0052】
したがって、核磁気共鳴により決定される絶対モノマー分散度は次のようになる。
【数8】
【0053】
核磁気共鳴のピーク高さ又はピーク面積から、EXE、EXX、及びXXXを測定する。本発明の実施例において、XはOであり、1-オクテン共重合単位を表す。
【0054】
上記の式から相対モノマー分散度RMDを決定することができる。後述するが、測定されたコモノマーの相対及び絶対分散度は、上記の式により算出される。
【0055】
本発明によれば、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーの分子量分布Mw/Mnは、1.5~3であってもよいが、好ましくは1.5~2.5、より好ましくは1.5~2.3である。
【0056】
具体的には、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーの分子量分布Mw/Mnとしては、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0などが挙げられる。
【0057】
本発明によれば、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーの温度190℃、負荷2.16kgでのメルトインデックスMFRCは、1.0~50g/10minであってもよいが、好ましくは1~15g/10minである。
【0058】
具体的には、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーの温度190℃、負荷2.16kgでのメルトインデックスMFRCは、例えば、1.0g/10min、2.0g/10min、3.0g/10min、4.0g/10min、5.0g/10min、6.0g/10min、7.0g/10min、8.0g/10min、9.0g/10min、10.0g/10min、11.0g/10min、12.0g/10min、13.0g/10min、14.0g/10min、15.0g/10min、16.0g/10min、17.0g/10min、18.0g/10min、19.0g/10min、20.0g/10min、21.0g/10min、22.0g/10min、23.0g/10min、24.0g/10min、25.0g/10min、26.0g/10min、27.0g/10min、28.0g/10min、29.0g/10min、30.0g/10min、31.0g/10min、32.0g/10min、33.0g/10min、34.0g/10min、35.0g/10min、36.0g/10min、37.0g/10min、38.0g/10min、39.0g/10min、40.0g/10min、41.0g/10min、42.0g/10min、43.0g/10min、44.0g/10min、45.0g/10min、46.0g/10min、47.0g/10min、48.0g/10min、49.0g/10min、50.0g/10minなどであってもよい。
【0059】
本発明によれば、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーの半融解エンタルピー温度T1/2は、5~80℃であってもよいが、好ましくは10~70℃、より好ましくは15~60℃である。ここで定義されるT1/2とは、融解エンタルピーが全融解エンタルピーの半分である場合に対応する融解温度を指す。T1/2が高いほど、融点が高く、一方、T1/2が低いほど、融点が低い。
【0060】
具体的には、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーの半融解エンタルピー温度T1/2としては、例えば、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃などが挙げられる
【0061】
本発明では、前記α-オレフィンは、炭素数5~10のオレフィン、好ましくは、炭素数5~8のオレフィン、より好ましくは、炭素数6~8のオレフィンである。
【0062】
前記α-オレフィンとしては、例えば、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテンのうちの1種又は複数種が挙げられ、好ましくは、前記α-オレフィンは1-オクテンである。
【0063】
本発明の1つの好ましい実施形態では、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーは、エチレン/1-オクテンコポリマーであり、本発明のエチレン/1-オクテンコポリマーは、コモノマー分散指数が高いため、従来のエチレン/1-オクテンコポリマーと比べ、1-オクテンコモノマーのモル百分率含有量が同じ場合、半融解エンタルピー温度がより低く、例えば、2℃~8℃低下することができ、好ましくは3℃~6℃低下することができ、より好ましくは4℃~5℃低下することができる。
【0064】
本発明の別の好ましい実施形態では、前記エチレン-α-オレフィンコポリマーは、エチレン/1-オクテンコポリマーであり、本発明のエチレン/1-オクテンコポリマーは、コモノマー分散指数が高いため、従来のエチレン/1-オクテンコポリマーと比べ、同じ結晶化度及び融点温度では、1-オクテンコモノマーがより少量であり、コモノマーは、0.3~1.2mol%低下することができ、好ましくは0.5~1.0mol%低下することができ、より好ましくは0.6~0.8mol%低下することができる。
【0065】
本発明の第2態様によれば、オレフィンの溶液共重合の条件で、触媒、助触媒及びフェノールの存在下、エチレンとα-オレフィンとを共重合し、エチレン-α-オレフィンコポリマーを得るステップを含み、
前記触媒は、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド及び/又はジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含有し、前記助触媒は有機アルミニウム化合物であり、前記フェノールは2,4-ジハロ-1-ナフトールであり、
エチレン及びα-オレフィンの使用量は、前記エチレン-α-オレフィンコポリマー中のエチレン由来の構造単位とα-オレフィン由来の構造単位とのモル比が(80~95):(5~20)となるようにし、前記α-オレフィンは炭素数5~10のオレフィンである、本発明の前記エチレン-α-オレフィンコポリマーの製造方法を提供する。
【0066】
本発明の製造方法によれば、好ましくは、エチレン及びα-オレフィンの使用量は、前記エチレン-α-オレフィンコポリマー中のエチレン由来の構造単位とα-オレフィン由来の構造単位とのモル比が(82~89):(11~18)となるようにし、より好ましくは、エチレン及びα-オレフィンの使用量は、前記エチレン-α-オレフィンコポリマー中のエチレン由来の構造単位とα-オレフィン由来の構造単位とのモル比が(84~89):(11~16)となるようにする。
【0067】
本発明の製造方法によれば、前記触媒の使用量は、エチレンの使用量に応じて決定されてもよく、好ましくは、活性金属換算の前記触媒の使用量は、前記エチレン1molに対して、0.01~10×10-6mol、より好ましくは、0.1~5×10-6molである。
【0068】
本発明の製造方法によれば、前記有機アルミニウム化合物は、アルモキサン及び/又はヒドロカルビルアルミニウムであってもよい。
【0069】
一実施形態では、前記有機アルミニウム化合物は、アルモキサン、好ましくはメチルアルモキサン(MAO)である。
【0070】
別の実施形態では、前記有機アルミニウム化合物は、式1で示されるヒドロカルビルアルミニウムである。
【化2】
(式1中、R
1、R
2、及びR
3は、同一であるか、又は異なり、各々独立して、アルキル(シクロアルキルを含む)、アルコキシ、アリール、アルキルアリール、アラルキル、及び水素から選択され、R
1、R
2、及びR
3は、同時に水素原子ではならない。)
【0071】
前記アルキルアルミニウム化合物の具体例としては、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニルn-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリルn-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジルn-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、エチルジアルミニウムヒドリド、ブチルジアルミニウムヒドリド、イソブチルジアルミニウムヒドリド、オクチルジアルミニウムヒドリド、ペンチルジアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジプロピルアルミニウムエトキシド、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ-p-トリルアルミニウム、エチルジベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチルp-トリルアルミニウム及びジエチルベンジルアルミニウムが含まれてもよいが、これらに限定されない。
【0072】
好ましい例では、式1中、R1、R2、及びR3は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又はイソブチルである。より好ましくは、式1中、R1、R2、及びR3は、いずれもイソブチルである。
【0073】
本発明の製造方法によれば、前記有機アルミニウム化合物は、好ましくはメチルアルモキサンである。
【0074】
本発明の製造方法によれば、好ましくは、以アルミニウム換算の有機アルミニウム化合物と活性金属換算の触媒とのモル比は、50~5000:1、より好ましくは200~3000:1、よりさらに好ましくは500~2000:1である。
【0075】
本発明の製造方法によれば、2,4-ジハロ-1-ナフトールと活性金属換算の触媒とのモル比は、1~500:1、より好ましくは5~300:1、よりさらに好ましくは10~200:1、よりさらに好ましくは50~150:1である。
【0076】
上記の2,4-ジハロ-1-ナフトールとしては、例えば、2,4-ジクロロ-1-ナフトール及び/又は2,4-ジブロモ-1-ナフトールが挙げられるが、好ましくは2,4-ジクロロ-1-ナフトールである。
【0077】
本発明の製造方法によれば、前記α-オレフィンは、炭素数5~10のα-オレフィン、好ましくは、炭素数5~8のオレフィン、より好ましくは、炭素数6~8のオレフィンである。
【0078】
前記α-オレフィンとして、例えば、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテンのうちの1種又は複数種が挙げられるが、好ましくは、前記α-オレフィンは、1-オクテンである。
【0079】
本発明の製造方法によれば、前記オレフィンの溶液共重合条件は、共重合温度-40~200℃、好ましくは25~120℃、より好ましくは50~70℃、重合時のエチレン分圧0.05~5MPa、好ましくは0.1~2MPa、より好ましくは0.8~1.2MPaを含んでもよい。本発明の重合プロセスは、バッチ式又は連続式で行うことができる。
【0080】
本発明の製造方法によれば、本発明の重合プロセスは溶液重合プロセスであり、ここで使用する溶媒は重合反応条件下で液体であり、触媒系と反応せず、重合反応に関与せず、反応により得られたポリマーと反応しない、すなわち不活性であることが当業者には明らかに理解される。このような溶媒は、配位重合の分野の当業者には自明であり、容易に選択することができる。しかしながら、本発明に関しては、非極性炭化水素系溶媒を使用することができ、この非極性炭化水素系溶媒の非限定的な例としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの1種又は複数種の飽和脂肪族炭化水素又は脂環式炭化水素、又は上記の溶媒の2種以上の任意の組み合わせであり、好ましくは、ヘキサン、オクタン、又はヘプタン、より好ましくはヘキサンを本発明の重合プロセスにおける溶媒として使用する。本発明の重合プロセスに関しては、非極性炭化水素系溶媒の使用量は従来のものであり、ポリマーの分散性及び系の放熱状態によって決定され、例えば、モノマー濃度が5~30wt%、好ましくは8~10wt%の範囲内になるように溶媒の使用量を制御することができる。
【0081】
本発明の重合プロセスで得られるコポリマーは、一般的には非常に高い平均分子量を有しており、分子量は、当業者には周知の方法を用いて調整することができる。特に、コポリマーの分子量は、分子量調整剤としてジエチル亜鉛や水素ガス等の分子連鎖移動剤、好ましくは水素ガスを用いることにより制御することができる。コポリマーの分子量は、微量の水素ガスで広範囲に調整することができ、水素ガスの添加量は、モノマー混合ガスの全体積に対して0.01~10体積%、より好ましくは0.02~5体積%である。
【0082】
本発明の製造方法では、重合反応の終了後に停止剤を用いて重合反応を停止させることができる。このステップで使用される停止剤は、当業者にとって従来のものである。一般的に使用可能な停止剤としては、脱イオン水、アルコール、酸などが挙げられる。ここで、停止剤としては酸性エタノール又は酸性メタノールを用いることが好ましい。
【0083】
本発明の第3態様によれば、本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマー又は本発明の前記方法により製造されるエチレン-α-オレフィンコポリマーと、溶媒と、を含有する、エチレン-α-オレフィンコポリマー組成物を提供する。
【0084】
本発明の組成物によれば、好ましくは、前記溶媒は、エチレン-α-オレフィンコポリマーの製造に残留される製造用溶媒である。前記製造溶媒は、例えば、上記の製造方法で挙げられる溶媒である。
【0085】
本発明の1つの好ましい実施形態では、前記組成物は、本発明の製造方法により製造される、溶媒を除去していない又は一部の溶媒を除去した生成物であり、直接強化変性剤として機能し得る。
【0086】
本発明の第4態様によれば、封止フィルムの製造における本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマーの使用を提供する。
【0087】
本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマーは、結晶化度が低く、透明性に優れるため、特に封止フィルムの製造に好適である。
【0088】
本発明の第5態様によれば、本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマー又は本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマー組成物の強化変性剤としての使用を提供する。
【0089】
本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマーは、ガラス転移温度が低く、低温靱性に優れるため、特に強化変性剤としての使用に好適である。
【0090】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0091】
以下の実施例及び比較例では、テスト方法は以下のとおりである。
【0092】
(1)重量平均分子量及び分子量分布のテスト
英国Polymer Laboratories社のPL-GPC 220型番GPCを用いてサンプルの分子量と分子量分布を測定し、カラムは3本直列Plgel 10 μmMIXED-Bカラムとした。溶媒と移動相はすべて1,2,4-トリクロロベンゼン(酸化防止剤2,6-ジブチルp-クレゾール0.025%を含む)であり、カラム温度は150℃であり、流速は1.0ml/minであり、サンプル濃度は1mg/mlであり、IR5赤外線濃度検出器が配置されており、ユニバーサルキャリブレーションには、狭い分布のポリスチレン標準サンプルが使用された。
(2)組成分布のテスト
英国Polymer Laboratories社のPL-GPC 220型番GPCを用いてサンプルの分子量と分子量分布を測定し、カラムは3本直列Plgel 10 μmMIXED-Bカラムとした。溶媒と移動相はすべて1,2,4-トリクロロベンゼン(酸化防止剤2,6-ジブチルp‐クレゾール0.025%を含む)であり、カラム温度は150℃であり、流速は1.0ml/minであり、サンプル濃度は2mg/mlであり、ユニバーサルキャリブレーションには、狭い分布のポリスチレン標準サンプルが使用された。
(3)コモノマー含有量及び分散度のテスト
Bruker社製のAVANCE III 400MHz型核磁気共鳴スペクトロメーターを用いてサンプルのコモノマー含有量を検討した。溶媒として重水素化オルトジクロロベンゼンを用い、10mm PASEX 13C-1H/D Z-GRDプローブにより、濃度10質量%のサンプルを130℃で均一に溶解し、テスト温度125℃、回転数20ヘルツ、90°パルス、スペクトル幅120ppm、サンプリング時間5秒、遅延時間10秒で、6000回走査した。13C-NMRスペクトルに基づいて、文献に記載された方法(例えばMacromolecules 2000, 33, 8931-8944; Macromolecules 2001, 34, 5770-5777)でコモノマーの含有量を計算した。
コモノマー分散度AMDの具体的なテスト方法は上記の説明書に記載されている。
(4)熱解析テスト
TA 100示差走査熱量計を用い、走査温度-80℃~200℃、昇温・降温速度10℃/minとした。熱履歴を除去して二次昇温溶融曲線を得、正規化積分処理を行った。ここで、T1/2は溶融エンタルピーが全溶融エンタルピーの半分である場合に対応する溶融温度を表すと定義する。T1/2が高いほど、融点が高く、一方、T1/2が低いほど融点が低いことを意味する。
比較例1~3:市販エチレン/1-オクテンコポリマーサンプルは、それぞれ銘柄DOW engage8150、engage8137、及びengage8842である。
実施例1
【0093】
十分に乾燥させた250mL重合装置を真空吸引し、窒素でパージし、この操作を3回繰り返した。その後、さらに真空吸引を行い、電磁弁で制御して、1標準気圧のエチレンを充填し、室温で反応溶媒としてのトルエン25mL、2,4-ジクロロ-1-ナフトール溶液(2,4-ジクロロ-1-ナフトール0.5mmol含有)1mL、1-オクテン0.8mLを加え、次に、メチルアルモキサン(MAO)溶液(メチルアルモキサン5.0mmol含有)3mLを加え、50℃に昇温して、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド5.0umol含有)1mLを加えて、計時し始めた。20分間後、エチレンを止めて、反応液に酸性エタノールを加え、6時間撹拌して、得たポリマーをろ過し、24小時真空干燥させ、重量を計量したところ、ポリマー1.47gが得られた。そのテスト結果を表1に示す。
実施例2
【0094】
十分に乾燥させた250mL重合装置を真空吸引し、窒素でパージし、この操作を3回繰り返した。その後、さらに真空吸引を行い、電磁弁で制御して、1標準気圧のエチレンを充填し、室温で反応溶媒としてのトルエン25mL、2,4-ジクロロ-1-ナフトール溶液(2,4-ジクロロ-1-ナフトール0.5mmol含有)1mL、1-オクテン0.9mLを加え、次に、メチルアルモキサン(MAO)溶液(メチルアルモキサン5.0mmol含有)3mLを加え、70℃に昇温して、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド5.0umol含有)1mLを加えて、計時し始めた。20分間後、エチレンを止めて、反応液に酸性エタノールを加え、6時間撹拌して、得たポリマーをろ過し、24小時真空干燥させ、重量を計量したところ、ポリマー1.58gが得られた。そのテスト結果を表1に示す。
実施例3
【0095】
十分に乾燥させた250mL重合装置を真空吸引し、窒素でパージし、この操作を3回繰り返した。その後、さらに真空吸引を行い、電磁弁で制御して、1標準気圧のエチレンを充填し、室温で反応溶媒としてのトルエン25mL、2,4-ジクロロ-1-ナフトール溶液(2,4-ジクロロ-1-ナフトール0.5mmol含有)1mL、1-オクテン1.0mLを加え、次に、メチルアルモキサン(MAO)溶液(メチルアルモキサン5.0mmol含有)3mLを加え、55℃に昇温して、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド5.0umol含有)1mLを加え、計時し始めた。20分間後、エチレンを止めて、反応液に酸性エタノールを加え、6時間撹拌して、得たポリマーをろ過し、24小時真空干燥させ、重量を計量したところ、ポリマー1.51gが得られた。そのテスト結果を表1に示す。
実施例4
【0096】
十分に乾燥させた250mL重合装置を真空吸引し、窒素でパージし、この操作を3回繰り返した。その後、さらに真空吸引を行い、電磁弁で制御して、1標準気圧のエチレンを充填し、室温で反応溶媒としてのトルエン25mL、2,4-ジクロロ-1-ナフトール溶液(2,4-ジクロロ-1-ナフトール0.5mmol含有)1mL、1-オクテン1.1mLを加え、次に、メチルアルモキサン(MAO)溶液(メチルアルモキサン5.0mmol含有)3mLを加え、70℃に昇温して、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド5.0umol含有)1mLを加え、計時し始めた。20分間後、エチレンを止めて、反応液に酸性エタノールを加え、6時間撹拌して、得たポリマーをろ過し、24小時真空干燥させ、重量を計量したところ、ポリマー1.61gが得られた。そのテスト結果を表1に示す。
実施例5
【0097】
十分に乾燥させた250mL重合装置を真空吸引し、窒素でパージし、この操作を3回繰り返した。その後、さらに真空吸引を行い、電磁弁で制御して、1標準気圧のエチレンを充填し、室温で反応溶媒としてのトルエン25mL、2,4-ジクロロ-1-ナフトール溶液(2,4-ジクロロ-1-ナフトール0.5mmol含有)1mL、1-オクテン1.3mLを加え、次に、メチルアルモキサン(MAO)溶液(メチルアルモキサン5.0mmol含有)3mLを加え、70℃に昇温して、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド5.0umol含有)1mLを加え、計時し始めた。20分間後、エチレンを止めて、反応液に酸性エタノールを加え、6時間撹拌して、得たポリマーをろ過し、24小時真空干燥させ、重量を計量したところ、ポリマー1.65gが得られた。そのテスト結果を表1に示す。
実施例6
【0098】
十分に乾燥させた250mL重合装置を真空吸引し、窒素でパージし、この操作を3回繰り返した。その後、さらに真空吸引を行い、電磁弁で制御して、1標準気圧のエチレンを充填し、室温で反応溶媒としてのトルエン25mL、2,4-ジクロロ-1-ナフトール溶液(2,4-ジクロロ-1-ナフトール0.5mmol含有)1mL、1-ヘキセン1.3mLを加え、次に、メチルアルモキサン(MAO)溶液(メチルアルモキサン5.0mmol含有)3mLを加え、70℃に昇温して、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド5.0umol含有)1mLを加え、計時し始めた。20分間後、エチレンを止めて、反応液に酸性エタノールを加え、6時間撹拌して、得たポリマーをろ過し、24小時真空干燥させ、重量を計量したところ、ポリマー1.65gが得られた。そのテスト結果を表1に示す。
比較例4
【0099】
2,4-ジクロロ-1-ナフトール溶液を添加しない以外、実施例3の方法によって、ポリマーを得た。得られたポリマーでは、コモノマーの含有量は15.3mol%であり、RMDは99.4%であり、ポリマー分子量は5.0×104であり、ポリマー分子量分布は2.5である。
【0100】
【0101】
実施例1~6と比較例1~3を比較すると、本発明のエチレン-α-オレフィンコポリマーは、コモノマー分散指数が高いことが分かった。実施例3と比較例1を比較すると、実施例3と比較例1では、コモノマーの含有量はほぼ同じであるが、実施例3のエチレン-α-オレフィンコポリマーの方が半溶融エンタルピー温度が低いことが分かった。
【0102】
実施例1~3と比較例1を比較すると、本発明のコポリマーは、コモノマー含有量がより低く、RMDがより高いことが分かった。さらに、実施例4と比較例3を比較すると、本発明のコポリマーは、コモノマー含有量がより低く、RMDがより高いことが分かった。
【0103】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術構想の範囲内では、本発明の技術案について、各技術的特徴を他の適切な方法で組み合わせることを含め、複数の簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形及び組み合わせは同様に本発明の開示された内容と見なすべきであり、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【国際調査報告】