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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】生物学的処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/06 20230101AFI20240912BHJP
【FI】
C02F3/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519867
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 US2022044810
(87)【国際公開番号】W WO2023055705
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P202130908
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520030844
【氏名又は名称】ディーディーピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】524121100
【氏名又は名称】スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ネザーランズ ベースローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】ジラベルト オリオル ギジェム
(72)【発明者】
【氏名】ジョンス スティーヴン ディー
(72)【発明者】
【氏名】スラグ ジェイ マーカス
【テーマコード(参考)】
4D003
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003AB02
4D003BA02
4D003CA02
4D003DA01
4D003DA21
4D003EA15
4D003EA30
(57)【要約】
(a)容器と、(b)入口領域に供給水を供給するための入口導管と、(c)出口領域から処理水を除去するための出口導管と、(d)それぞれが入口領域と入口ダクト壁の多孔質表面セクションとの両方と流体連通する入口ダクトを備える入口分配装置と、(e)それぞれが出口領域と出口ダクト壁の多孔質表面セクションとの両方と流体連通する複数の出口ダクトを備える出口分配装置と、(f)入口ダクト壁及び出口ダクト壁の両方の多孔質表面セクションと流体連通する粒子を含む培地床であって、入口ダクトの長さと、入口ダクトと出口ダクトとの間の最小距離との比率が、15:1から2:1である、培地床とを備える、生物学的処理装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)容器と、
(b)前記容器の入口領域に供給水を供給するための入口導管と、
(c)前記容器の出口領域から処理水を除去するための出口導管と、
(d)前記容器内にある複数の入口ダクトであって、前記入口ダクトのそれぞれが第1の流路を囲む入口ダクト壁を備え、前記第1の流路が、前記入口領域と前記入口ダクト壁の多孔質表面セクションとの両方と流体連通する、複数の入口ダクトと、
(e)前記容器内にある複数の出口ダクトであって、前記出口ダクトのそれぞれが第2の流路を囲む出口ダクト壁を備え、前記第2の流路が、前記出口領域と前記出口ダクト壁の多孔質表面セクションとの両方と流体連通する、複数の出口ダクトと、
(f)前記容器内に配置された培地床であって、前記培地床が、前記入口ダクト壁及び前記出口ダクト壁の両方の前記多孔質表面セクションと流体連通する粒子を含む、培地床と
を備える、生物学的処理装置であって、
入口ダクトの長さと、入口ダクトと出口ダクトとの間の最小距離との比率が、15:1から2:1である、生物学的処理装置。
【請求項2】
前記培地床が、0.1mmより大きい最小寸法を有する粒子を含み、0.1mmより大きい最小寸法を有する前記粒子がまた、0.2mmから6mmの最小寸法の中央値を特徴とする、請求項1に記載の生物学的処理装置。
【請求項3】
前記出口導管が、少なくとも1つの超ろ過モジュールを備える超ろ過システムの上流にあり、前記超ろ過システムと流体連通し、前記超ろ過システムが、前記生物学的処理装置と前記少なくとも1つの超ろ過モジュールとの間に少なくとも1つのポンプを備え、前記少なくとも1つのポンプが、加圧された供給水を前記少なくとも1つの超ろ過モジュールに供給することができる、請求項1に記載の生物学的処理装置。
【請求項4】
複数のポンプが、前記生物学的処理装置と前記少なくとも1つの超ろ過モジュールとの間に配置され、前記複数のポンプのうちの少なくとも1つが、前記入口導管と前記出口導管との間により大きな差圧を誘導することによって、前記培地床を通る流量を増やすのに適する、請求項3に記載の生物学的処理装置。
【請求項5】
前記出口導管と前記少なくとも1つの超ろ過モジュールとの間にある処理水が、大気中の酸素と接触しないようにされる、請求項3に記載の生物学的処理装置。
【請求項6】
前記粒子が、少なくとも0.90の球形度及び0.2mmから2mmの中央粒径を有する、請求項1に記載の生物学的処理装置。
【請求項7】
前記培地床内の前記粒子を混合する気泡を供給するのに適した空気分配装置を更に備える、請求項1に記載の生物学的処理装置。
【請求項8】
廃液の排出のために前記容器に接続された廃液除去導管を更に備える、請求項1に記載の生物学的処理装置。
【請求項9】
前記容器内の液体の高さを指定範囲内に維持するための液位制御手段を更に備える、請求項1に記載の生物学的処理装置。
【請求項10】
前記出口導管と前記少なくとも1つの超ろ過モジュールとの間に粒子フィルタを更に備える、請求項4に記載の生物学的処理装置。
【請求項11】
前記出口導管と前記少なくとも1つの超ろ過モジュールとの間に配置された、リン酸塩を除去するのに適した樹脂を更に備える、請求項4に記載の生物学的処理装置。
【請求項12】
培地を収容する複数の平行容器と、前記複数の平行容器のうちの少なくとも1つを隔離するのに適したバルブとを更に備える、請求項4に記載の生物学的処理装置。
【請求項13】
並列に動作されるバイオコンタクタユニットを、そのうちの1つが時折清掃のために使用から交代で外される状態で更に備える、請求項4に記載の生物学的処理装置。
【請求項14】
前記粒子が、50から75%の充填密度を有する、請求項1に記載の生物学的処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月28日に出願された欧州特許出願第202130908号の優先権の利益を主張する国際出願であり、同欧州出願は参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【0002】
超ろ過(逆浸透又はナノろ過)などの精製プロセスを使用して水から不純物を除去することが多くの場合に望ましい。そのような精製プロセスでの1つの一般的な課題は、生物付着(細菌が装置内で増殖する現象)である。例えば、精製プロセスが水を膜に通すことを含む場合には、この膜上でバイオフィルムの成長が発生し得る。
【背景技術】
【0003】
生物学的処理システムは、超ろ過の前に、水の前処理に使用されてきた。これらのシステムは、典型的には、栄養素(例えば、有機炭素、硝酸塩、リン酸塩)及び酸素など、微生物増殖につながる水の成分を水から除去して、微生物増殖に適さない環境を超ろ過モジュールに形成する。例えば、米国特許第10301206B1号明細書は、逆浸透ユニットに入る前に、水が粒子層全体を通って流れるような構成の粒子層を備える生物学的処理装置を開示している。不純物を含む水を前処理する方法を改善することが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下は、本発明の説明である。
本発明は、生物学的処理装置に関する。本装置は、
(a)容器と、
(b)容器の入口領域に供給水を供給するための入口導管と、
(c)容器の出口領域から処理水を除去するための出口導管と、
(d)容器内にある複数の入口ダクトであって、上記入口ダクトのそれぞれが第1の流路を囲む入口ダクト壁を備え、上記第1の流路が、入口領域と入口ダクト壁の多孔質表面セクションとの両方と流体連通する、複数の入口ダクトと、
(e)容器内にある複数の出口ダクトであって、上記出口ダクトのそれぞれが第2の流路を囲む出口ダクト壁を備え、上記第2の流路が、出口領域と出口ダクト壁の多孔質表面セクションとの両方と流体連通する、複数の出口ダクトと、
(f)容器内にある培地床であって、上記培地床が、容器内に配置された培地床に粒子を含み、上記培地床が、入口ダクト壁及び出口ダクト壁の両方の多孔質表面セクションと流体連通する粒子を含み、入口ダクトの長さと、入口ダクトと出口ダクトとの間の最小距離との比率が、15:1から2:1である、培地床と
を備える。
【0005】
以下は、図面の簡単な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1a】円筒形容器内にある本発明の一実施形態の上面図を示す。
図1b】円筒形容器内にある本発明の一実施形態の側面図を示す。
図2】本発明の一実施形態を示す。
図3】生物学的処理装置及び下流の構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下は、本発明の詳細な説明である。
【0008】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、文脈上明らかに他の意味を示すのでない限り、指定された定義を有する。
【0009】
「樹脂」は、本明細書で使用される場合、「ポリマー」と同義語である。すべての百分率は、別段の指定のない限り、重量による。ビニルモノマーは、フリーラジカル重合プロセスに関与可能な非芳香族炭素-炭素二重結合を有する。ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、置換スチレン、ジエン、エチレン、エチレン誘導体、及びこれらの混合物が挙げられる。単官能性ビニルモノマーは、1分子当たり正確に1個の重合性炭素-炭素二重結合を有する。多官能性ビニルモノマーは、1分子当たり2個以上の重合性炭素-炭素二重結合を有する。
【0010】
「アクリルモノマー」というカテゴリは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸の置換又は非置換アルキルエステル、及びアクリロニトリルから選択されるモノマーの群である。本明細書で使用される場合、「ビニル芳香族モノマー」は、1つ以上の芳香環を含むビニルモノマーである。
【0011】
ポリマーの重量を基準として、重合した単位の少なくとも90重量%(好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも99重量%)が1種以上のビニルモノマーの重合した単位であるポリマーは、ビニルポリマーである。ビニル芳香族ポリマーは、ポリマーの重量を基準として、重合した単位の50重量%以上(好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%)が1種以上のビニル芳香族モノマーの重合した単位であるポリマーである。
【0012】
ポリマーが、多官能性ビニルモノマーの重合した単位を含む場合には(すなわち、ポリマーが、少なくとも1%の多官能性ビニルモノマーの重合した単位を含む場合には)、樹脂は、本明細書では、架橋されていると見なされる。ビーズの場合には、ポリマーの重量は、このビーズの乾燥重量と見なされる。樹脂ビーズは、イオン交換に使用される典型的な官能基を含んでもよいし、官能基を持たない「吸着性」樹脂であってもよい。
【0013】
粒子が球形である程度は、物体の3つの主な直交軸であるa(最長)、b(中間)、及びc(最短)を使用して、Ψ=c/aのように定義される球形度Ψで特徴付けられる。
【0014】
「真円度」(R)は、物体のシルエットの角部及び縁部の平均曲率半径と、シルエット内に内接し得る最大の円の半径との比として定義される。球形度及び真円度は、H.Waddell,The Journal of Geology,vol.41,pp.310-331(1933)により詳細に説明されている。粒子の最小寸法は、粒子を横切り、重心を通る最小距離である。(例えば、この最小寸法は、球形粒子と細長い円筒との両方における直径に等しいが、より薄い円筒形の「パンケーキ」においては厚さに等しい)。
【0015】
不純物を含む供給水が培地床を通って流れる場合、バイオマスが表面に形成し得る。死細胞、生細胞、及び細胞外高分子物質(EPS)を含むバイオフィルムが形成されることもある。バイオフィルムは、成長し続けると、培地床を通って移動する流体の流れ抵抗を大きくし得る。同時に、培地床内のバイオフィルムが、供給水内の同化可能な栄養素を枯渇させ得る。
【0016】
本発明の生物学的処理装置10は、本明細書で「供給水」と呼ばれる不純物を含む水を処理することにより、下流での生物増殖の可能性を低減する。その1つの実施形態を図1a及び図1bに示す。図示の装置は、培地床14と、入口ダクト16と、出口ダクト18とを収容する容器12を備える。供給水は、培地床14を通過し、主に入口ダクト16の開口部から出口ダクト18の開口部に、培地床14を通って移動する。容器12を通過する供給水に関連する圧力降下及び流量が監視されてもよい。
【0017】
微生物が増殖するにつれて、培地床14を通る流れ抵抗が大きくなり、その結果、同じ圧力差での流量が減少する、又は所望の流量を達成するには、入口導管(20)と出口導管(22)との間の圧力差が上昇する。(流れ抵抗は、培地床14を横断する際の圧力降下に概ね比例し、測定流量に反比例する。より正確には、流れ抵抗は、単位距離当たりの圧力降下を流速で除したものと定義される。抵抗の測定値(R=ΔP/d/v)は流速に依存するため、本明細書では、1cm/秒の見掛けの平均流速での短い距離における流れ抵抗が定義され、これを動作条件ではなく培地の特性としている。)本発明の装置の通常の動作中、バイオマスの形成は、培地を横断する際の圧力降下の測定、バイオコンタクタの下流の絶対圧力の測定、又は流量の変化の測定によって監視されることが企図されている。バイオマスを定量する他の手段として、バイオマスによる溶存酸素若しくは亜リン酸消費量の測定、又はリン酸塩以外の他の栄養素(例えば、窒素、炭素)の消費量の測定、並びに生物同化可能な炭素及びBODの測定が挙げられる。
【0018】
好ましい実施形態では、培地床14は、0.1mmより大きい最小寸法を有する粒子を含む。より好ましくは、0.1mmより大きい最小寸法の粒子は、0.2mmから6mmの最小寸法の中央値を有する。好ましくは、0.1mmより大きい最小寸法を有する粒子は、バイオコンタクタの下流の絶対圧力の測定、又は流量の変化の測定による、少なくとも培地の最小寸法の中央値を有する。バイオマスを定量する他の手段として、バイオマスによる溶存酸素若しくは亜リン酸消費量の測定、又はリン酸塩以外の他の栄養素(例えば、窒素、炭素)の消費量の測定、並びに生物同化可能な炭素及びBODの測定が挙げられる。
【0019】
好ましい実施形態では、培地床14は、0.1mmより大きい最小寸法を有する粒子を含む。より好ましくは、0.1mmより大きい最小寸法の粒子は、0.2mmから6mmの最小寸法の中央値を有する。好ましくは、0.1mm超の最小寸法を有する粒子は、少なくとも0.95の最小寸法の中央値を有し、この段落に記載された最小寸法の中央値に関する制限にしたがって中央粒径を有する。球形でない粒子については、直径は同じ体積を有する粒子の直径である。
【0020】
好ましくは、培地粒子は、ガラス、金属、又はポリマーから作られる。好ましくは、培地粒子は樹脂ビーズである。樹脂ビーズは、イオン交換に使用される典型的な官能基(例えば、スルホン酸基、カルボン酸官能基、アミノ基、四級アミノ基)を含み得るが、好ましくは、官能基を持たない「吸着性」樹脂である。好ましくは、樹脂ビーズは、アクリルモノマーを重合したもの、ビニル芳香族モノマーを重合したもの、又はアクリルモノマーとビニル芳香族モノマーとの重合した組み合わせである。好ましくは、培地床14は、培地粒子の体積を総培地床体積で除して、すなわちバイオフィルムを除いて計算される50~75%の充填密度を有する。好ましくは、どの地点でも培地床14の高さは、培地床の算術平均高さから20%を超えて、好ましくは15%を超えて変化しない。
【0021】
入口導管20は、入口領域24に供給水を供給する。図1bの実施形態では、入口導管20は、容器12の上方にある栓であり、容器12に連続的又は周期的な供給水の流れを供給して、容器12内の供給水の水位を所望の範囲に維持する。同様の実施形態では、入口導管20は、その端部が容器12又は容器12内の構成要素に接続されないように、容器12内に浸漬され得る。或いは、図2に示すように、入口導管20は、好ましくは、容器12にあるポート又は複数の孔を有するパイプなどの入口領域24を画定する物理的構造に取り付けられ得る。好ましい幾何学的形状では、容器の水位は、粒子床の上方、且つ容器の壁の高さの下方に維持される。液位制御手段28としては、余水路、フロート弁を作動させること、又はコンピュータ制御の流量調整装置が挙げられる。
【0022】
入口導管20は、容器12内のいくつかの入口ダクト16への供給水の分配を可能にする入口領域24に供給水を供給する。入口領域24は、容器12の内部若しくは外部に配置される、又は内部及び外部のそれぞれに部分的に配置されるが、入口領域24は、いくつかの入口ダクト16へのマニホールドとして機能するようにされ得る。いくつかの好ましい実施形態では、入口領域24は、入口導管20に接続され、個々の入口ダクト16に取り付けるのに適した別々の孔及び接続部を有する物理的なデバイス又はパイプによって作られる。他の好ましい実施形態では、入口領域24は、複数の入口ダクト16が露出される容器12の開放セクションであり得る。その一例が図1に示されており、複数の入口ダクト16が培地床14の上方に延びているため、供給水は入口導管20から入口ダクト16のそれぞれに小さい抵抗で流れることができる。所与の流量及び経路の幾何学的形状における圧力降下によって証明される入口領域24を通る流れ抵抗は、培地床14の粒子を収容する同様の形状のセクションを通る流れ抵抗よりもはるかに小さいことが重要である。好ましくは、動作中に入口領域24を通る平均流れ抵抗は、同様のサイズの経路及び距離の培地床14を通る流れ抵抗の10%未満、より好ましくは5%未満、又は更には1%未満である。他の実施形態では、入口領域24内の最も近い表面までの平均距離は、培地床14内の粒子直径の中央値より大きく、より好ましくは少なくとも1mm、更により好ましくは少なくとも10mmである。培地床14にある粒子は、入口ダクト(16)と出口ダクト(18)とを隔離する。粒子間の複数の流路が、入口ダクトと出口ダクトとの間の培地床14を通って存在する。
【0023】
入口ダクト16のそれぞれが、入口領域24と入口ダクト壁50の多孔質表面セクション58との両方と流体連通する第1の流路54を囲む入口ダクト壁50を備える。同様に、出口ダクト18のそれぞれが、出口領域26と出口ダクト壁の多孔質表面セクション60との両方と流体連通する第2の流路56を囲む出口ダクト壁52を備える。培地床内の粒子は、入口ダクト壁(50)及び出口ダクト壁(52)の両方の多孔質表面セクション(58、60)と流体連通する。培地を通る流れ抵抗は、入口ダクト又は出口ダクトを通る流れ抵抗よりもはるかに大きいため、複数の入口及び出口ダクト(16、18)を配置することにより、培地床14を通る多くの短い経路が実現する。培地を通る、入口ダクトと近くの出口ダクト18との間の主要な経路は、好ましくは、入口ダクト又は出口ダクト18のいずれかの長さよりも短い。好ましい実施形態では、入口ダクト16とその最も近くにある出口ダクト18との間の平均距離は、入口ダクト16の平均長さの50%未満である。より好ましくは、任意の入口ダクトとその最も近くにある出口ダクト18との間の距離は、入口ダクトの長さの50%未満である。
【0024】
好ましくは、生物処理システムは、複数の平行入口ダクト16と複数の平行出口ダクト18とを備える。最も好ましくは、入口ダクト16は、出口ダクト18にも平行である。この説明のために、平行入口及び出口ダクト(16、18)は、約10°以内で同じ方向に向けられると想定される。好ましい実施形態では、少なくとも1組の平行入口ダクト16又は平行出口ダクト18が垂直から10°以内に向けられ、その結果、それらのダクトの長さがそれらの高さに概ね対応する。
【0025】
入口ダクトの長さと、入口ダクトと出口ダクト18との間の最小距離との比率が、15:1から2:1であり、好ましくは、12:1から3:1、好ましくは、10:1から4:1である。好ましくは、入口ダクト16及び出口ダクト18は、実質的に垂直(例えば、垂直から15°以内、垂直から10°以内、垂直から5°以内)であり、この場合、入口ダクトと出口ダクト18との間の最小距離は水平に測定される。好ましくは、入口ダクト16の数と出口ダクト18の数との比率は、2:1から1:2、好ましくは1.5:1から1:1.5、好ましくは1.2:1から1:1.2である。好ましくは、入口ダクト16の数は5から500、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも10、好ましくは300以下、好ましくは200以下、好ましくは100以下、好ましくは50以下である。好ましくは、ダクト及び導管の総容積は、培地床14の体積の20%以下、好ましくは10%以下である。ダクト及び導管の好ましい構成材料としては、金属、ポリマー、及び無機充填材を伴うポリマー(例えば、ガラスファイバ(ファイバグラス)又はミネラル粒子)が挙げられ、好ましくはポリマー及び無機充填材を伴うポリマーである。好ましいポリマーとしては、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0026】
ダクトの形状は重要ではないが、好ましくは、その断面は、円形、正方形、又は長方形である。(図1aでは、ダクトは円筒形に描かれているが、図2ではダクトの形状は指定されていない。)本発明の好ましい実施形態では、ダクトは板状の外観を持つような幅狭の長方形の断面を有し、例えば、ダクトの厚さは、2番目に小さい寸法の25%以下、好ましくは20%以下、好ましくは15%以下、好ましくは10%以下である。好ましくは、幅狭の長方形の断面を有するダクトは、ダクトの最大の辺が垂直から10%以内、好ましくは5%以内となるように配置され、すなわち、ダクトの辺と培地床14の上面との角度が、90°のこれらのパーセンテージ以内になるように配置される。好ましくは、幅狭の長方形の断面を有するダクトでは、ダクトの数は、3から50、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも7、好ましくは40以下、好ましくは30以下である。ダクトは多孔質である。つまり、ダクトは、(入口ダクト16の場合)ダクトから培地粒子内へと水が通過することができるようにする、又は(出口ダクトの場合)培地から水が入ることができるようにする開口部を有する。開口部のサイズは重要ではないが、好ましくは、開口部は、培地床14内の粒子の99%より小さい最小寸法を有し、好ましくは、培地床14内の粒子の99.9%より小さい最小寸法を有する。好ましい実施形態では、ダクトの多孔質領域は、直径0.1mmの粒子の通過を妨げる開口部を有する。
【0027】
出口領域26は、複数の出口ダクト18を出口導管22に接続するためのマニホールドとして機能する。出口領域26は、入口領域24と同様に、容器12の内部若しくは外部に配置される、又は内部及び外部のそれぞれに部分的に配置され得る。いくつかの好ましい実施形態では、出口領域26は、出口導管22に接続され、個々の出口ダクト18に取り付けるのに適した別々の孔及び接続部を有する物理的なデバイス又はパイプによって作られる。他の好ましい実施形態では、出口領域26は、複数の出口ダクト18が露出される容器12の開放セクションであり得、開放セクションは出口導管22に接続される。入口領域24と同様に、所与の流量及び経路の幾何学的形状における圧力降下によって証明される出口領域26を通る流れ抵抗は、培地床14の粒子を収容する同様の形状のセクションを通る流れ抵抗よりもはるかに小さいことが重要である。好ましくは、動作中に出口領域26を通る平均流れ抵抗は、同様のサイズの経路及び距離の培地床14を通る流れ抵抗の10%未満、より好ましくは5%未満、更には1%未満である。他の実施形態では、出口領域26内の最も近い表面までの(容積)平均距離は、培地床14内の粒子直径の中央値より大きく、より好ましくは少なくとも1mm、更により好ましくは少なくとも10mmである。
【0028】
好ましくは、生物学的処理装置10の出口導管22は、少なくとも1つの超ろ過モジュール32を備える超ろ過システム31の上流にあり、これと流体連通する。「流体連通」という用語は、本明細書では、ある機器から別の機器へ連続的に接続された経路が存在することとして定義され、経路全体が常に流体で満たされている必要はない。例えば、ポンプによって隔てられた2つのアイテムは、ポンプを通る経路の一部が時々流体で満たされていなくても、流体連通であり得る。生物学的処理装置10は、栄養素(例えば、有機炭素、硝酸塩、リン酸塩)及び酸素など、微生物増殖につながる水の成分を除去し、それによって超ろ過膜上での微生物の増殖を低減する。好ましくは、超ろ過システム31は、生物学的処理装置10と超ろ過モジュール(複数可)32との間に、少なくとも1つのポンプ、好ましくは高圧ポンプ34を備える。好ましくは、この構成で使用される高圧ポンプは、加圧された供給水を超ろ過モジュールに供給することができる。
【0029】
培地を通る多くの短い処理経路を有することにより、小さい圧力降下での動作が可能になる。好ましくは、生物学的処理装置10は、本装置を通る流れが重力のみによって可能になるように構成される。好ましくは、生物学的処理装置は、加圧された供給水源又は圧力容器を使用しない。好ましくは、重力の力は、容器壁にかかる外向きの力の少なくとも80%をもたらす。好ましい実施形態では、下流の低圧ポンプ36からの吸引が、入口導管20と出口導管22との間に更なる圧力差(1気圧未満の圧力差)をもたらし得る。好ましくは、入口導管20と出口導管22との間の圧力差は2気圧未満であり、より好ましくは1気圧未満である。好ましくは、下流の低圧ポンプ36は、培地床14を横断する圧力差の少なくとも3分の1を形成する。
【0030】
下流のポンプ低圧36は、本装置の出口導管22から流れを引き込むため、又は出口導管22からの流れを加圧するために使用されてもよいが、好ましくは、いかなるポンプも、入口分配器、培地床14、及び出口分配器を通して水を強制的に流すために入口で使用されない。好ましくは、入口導管20は、出口導管22より高い垂直位置にある。好ましくは、入口導管20は、容器の上部20%(すなわち、容器の高さの少なくとも80%である、容器12の底部からの垂直距離)、好ましくは上部10%以内又は上方に位置する。好ましくは、出口導管22は、容器12の下部10%、好ましくは下部5%以内又は下方にある。好ましくは、本装置は、容器12における液位を所望の範囲内に維持する液位制御手段を備える。好ましい液位制御手段28は、取水バルブに連結された液位センサと、取水バルブに連結された、本装置を横断する圧力降下を測定する圧力センサとを含む。
【0031】
好ましくは、出口導管と下流にある超ろ過モジュール32との間の経路は、これ自体が生物増殖の限定試薬となり得る酸素の導入を防ぐために密閉される。培地床を収容する容器は、好ましくは、過度の加圧(例えば、1barを超えて大気圧を超えるもの)に適さず、いくつかの実施形態では開放タンクであり得る。しかしながら、容器はまた、空気から密閉されてもよい。例えば、図2に示す蓋は、加圧動作を可能にすることなく、空気交換を妨げ得る。水位線まで、また水位線より下方に延びる蓋30が、空気の動きを制限し、同様に水中への酸素の交換を制限し得る。
【0032】
好ましくは、本装置は、培地床14にある粒子をあちこちに移動させ、培地床14内の微生物増殖を除去するために、培地床14を通してガスを分配するための手段38を備える。好ましくは、ガスは、空気、酸素欠乏空気、窒素、又は希ガスであり、好ましくは、空気、酸素欠乏空気、又は窒素である。好ましくは、ガスを分配するための手段38は、ガスを導入するために容器の底部付近に、複数のパイプ及び開口部を有する分配器(例えば、フラクタル分配器、又は容器における流れを分配するために使用される他の既知の分配器)又は複数のポートを備える。好ましい実施形態では、本装置は、微生物の増殖を除去するために、化学薬剤を単独で、又はガスと共に導入するための手段を備える。好ましい化学薬剤としては、漂白剤及びアルカリ(NaOH、KOH)が挙げられる。好ましくは、化学薬剤を導入するための手段は、上述の、ガスを分配するための手段と同じであるが、この手段は、使用される薬剤と適合性がなければならない。適合性は、様々な構成材料の化学的適合性チャートから容易に決定され得る。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態では、本装置は、ダクト又はダクトに隣接する部分の培地床14に対する機械的運動によって、ダクトの表面から過剰な微生物増殖を除去することができるように構成される。例えば、円筒形ダクトを回転させること、又は長方形ダクトを並進させることを、個別に又は一緒に行うことにより、ダクトを培地床14に対して上昇させたり回転させたりしてもよい。また、特に断面が幅狭の長方形の断面を有するダクト(プレート)の場合、ダクトの表面から微生物の増殖及び付着した粒子を掻き取るために、ブレードを使用することもできる。好ましくは、培地床14に対するこの機械的運動が、特に入口ダクト16の外面から、粒子及びバイオフィルムを除去するために使用される。好ましい実施形態では、容器12は、廃液の排出のために容器に接続された廃液除去導管48を更に備える。
【0034】
好ましくは、本装置は、細菌及び栄養素を除去するために、複数の同様に構成された平行容器12(一致する培地床14、入口及び出口ダクト(16、18)、入口及び出口領域(24、26)、並びに入口及び出口導管(20、22)を有するもの)を更に備える。複数の平行容器12のそれぞれからの出口導管22は、同じ超ろ過システム31に処理済み供給水を供給し得る。隔離弁40によって、洗浄のために複数の平行容器12のサブセットをそれ以外から隔離することができる。好ましくは、本装置は、容器12’のうちの少なくとも1つを任意の時点で使用中止とし、過剰な微生物増殖を除去するための洗浄プロセスを受けるものとし、その際、残りの容器12は作動中とし、所望の水処理速度を扱うのに十分であることを可能にするのに十分な複数の容器12を備える。
【0035】
いくつかの実施形態では、粒子フィルタ46が、出口導管と上記少なくとも1つの超ろ過モジュールとの間に配置される。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態では、生物学的処理のための培地を収容する複数の平行容器12からの出力は、リン酸塩除去樹脂42、例えば沈殿した酸化鉄を含む樹脂ビーズを封入した下流の容器に送られ得る。この後続の容器は、好ましくは、生物学的処理のための培地を備える容器12の後、且つ超ろ過モジュール32の前に配置される。リン酸塩除去樹脂のための容器は、加圧可能であってもよく、例えば2bar超の動作に適するものであってもよい。
【0037】
生物学的処理装置10は、容器12ごとに、入口導管20、入口領域24、入口ダクト16、培地床14、出口ダクト、出口領域26、及び出口導管22のそれぞれを順次通過する複数の流路44が容器12を通ることができるように構成される。容器12を通る複数の流路44は、同時に、より低い流速及びより短い流路を可能にして、容器12を通って移動する化学種の滞留時間が同程度になるようにして、下流の超ろ過システム31で付着しやすい最も同化しやすい物質の除去を提供する。同時に、入口及び出口ダクト(16、18)を除き、培地を通る通過する供給流体と比較して、同じ圧力降下でより大量の供給流体が処理され得る。好ましい実施形態では、樹脂を収容するすべての容器12の断面積の合計は、生物学的処理後の第1段階において、超ろ過モジュール32を収容するすべてのハウジング(圧力容器)の断面積の合計より小さい。
【0038】
本発明は、更に、本明細書で説明される生物学的処理装置10を使用する水処理方法であって、好ましくは、本装置について本明細書で説明される好ましい制限の1つ以上を有する水処理方法に関する。好ましくは、入口導管20を通って本装置に入った供給水は加圧されず、本装置が配置されている場所の通常の大気圧の5%以内である。好ましくは、入口導管(20)と出口導管(22)との間の圧力差は、0.25bar~2bar、より好ましくは0.5bar~1.5barである。好ましくは、容器12における平均滞留時間は1分未満、好ましくは1秒から30秒、好ましくは少なくとも2秒、好ましくは少なくとも3秒、好ましくは20秒以下、好ましくは15秒以下である。好ましくは、生物学的処理装置10は、周囲温度、好ましくはその10℃以内、好ましくはその20℃以内であるが、好ましくは5℃以上で動作される。好ましくは、本装置を横断する流れ抵抗(入口導管(20)と出口導管(22)との間の圧力差を流量で除したもの)が、初期値(初回始動時、又は前回の洗浄工程後のいずれか)から少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%増加したときに、過剰な微生物増殖が生物学的処理装置10から除去される。この流れ抵抗測定の目的のため、圧力差が、入口導管(20)と出口導管(22)との間において0.5barに決定され得る。例えば、システムが一定流量で動作される場合、抵抗は、入口導管(20)と出口導管(22)との間の培地を横断する観測される圧力降下に比例する。好ましくは、入口導管(20)と出口導管(22)との間の圧力差が事前に定義された値を超えた後、本装置は薬品で洗浄され得る。
【0039】
好ましくは、上記のように、分配器又はポートを使用して培地床14にガスを通すことによって、過剰な微生物増殖が除去される。
【0040】
本方法の好ましい実施形態では、上記のような化学薬剤が容器12に添加されて、過剰な微生物増殖を除去する。好ましくは、より積極的な洗浄では、化学薬剤は少なくとも40℃、より好ましくは50℃に加熱される。他の実施形態では、洗浄に続いて生体細胞の植菌が生物学的処理装置10に提供される。
図1a
図1b
図2
図3
【国際調査報告】