(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】細胞株識別と濃縮のためのトランスジェニックげっ歯類
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20240912BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240912BHJP
A01K 67/0275 20240101ALI20240912BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240912BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240912BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240912BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240912BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240912BHJP
C12N 5/0781 20100101ALN20240912BHJP
C12N 5/16 20060101ALN20240912BHJP
C12N 5/0735 20100101ALN20240912BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N5/10
A01K67/0275
C12Q1/04
C12P21/08
C07K16/00
A61K39/395 N
A61K39/395 Y
C12N15/63 Z ZNA
C12N5/0781
C12N5/16
C12N5/0735
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520084
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 US2022077363
(87)【国際公開番号】W WO2023056430
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524122705
【氏名又は名称】アブセレラ・バイオロジクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABCELLERA BIOLOGICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】シャン,ピン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ペッラカーニ,ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】ルシュマン,イェンス
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QX02
4B064AG27
4B064CA10
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4B065AA91X
4B065AA92X
4B065AB01
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4B065CA25
4B065CA46
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA33
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
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4C085CC23
4C085DD61
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、アフィニティタグ、膜貫通(TM)ドメイン、および蛍光レポータータンパク質をコードする膜貫通レポーターカセットを含む核酸コンストラクトを提供する。実施形態では、核酸コンストラクトが非ヒト哺乳動物の細胞のセーフハーバー部位または免疫グロブリン定常領域部位に挿入される。実施形態では、膜貫通レポーターカセットが細胞内で発現し、アフィニティタグを細胞表面に呈しており、蛍光レポータータンパク質は細胞膜内部に位置している。アフィニティタグおよび蛍光レポータータンパク質の存在は、核酸コンストラクトを発現する細胞の識別、ソーティング、および/または単離を可能にする。本開示は、本開示の方法を使用して生成した細胞および非ヒト生物の実施形態に沿って、細胞および非ヒト生物を核酸コンストラクトで改変する方法の実施形態も開示する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダー配列、LoxP-Stop-LoxPカセット、並びにアフィニティタグ、膜貫通(TM)ドメイン、および蛍光レポータータンパク質をコードする膜貫通レポーターカセットを含む核酸コンストラクト。
【請求項2】
一本鎖DNA、二本鎖DNA、プラスミド、またはウイルスベクターを含む、請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項3】
非ヒト哺乳動物のセーフハーバー部位内の第1の標的配列および第2の標的配列にそれぞれ相同である第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームをさらに含む、請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項4】
第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームがそれぞれ独立して、約15から約12000ヌクレオチドを含む、請求項3に記載の核酸コンストラクト。
【請求項5】
セーフハーバー部位が、マウスゲノムの6番染色体上のRosa26部位またはマウスゲノムの11番染色体上のHipp11部位を含む、請求項3または4に記載の核酸コンストラクト。
【請求項6】
リーダー配列の発現駆動プロモーターをさらに含む、請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項7】
プロモーターが、哺乳動物プロモーターを含む、請求項6に記載の核酸コンストラクト。
【請求項8】
プロモーターが、CAG、CMV、EF1a、SV40、PGK1、Ubc、またはヒトベータアクチンプロモーターを含む、請求項16に記載の核酸コンストラクト。
【請求項9】
リーダー配列が、分泌シグナルペプチドを含む、請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項10】
分泌シグナルペプチドが、IL-2リーダー配列MYRMQLLSCIALSLALVTNS(配列番号2)を含む、請求項9に記載の核酸コンストラクト。
【請求項11】
アフィニティタグが、StrepIIタグを含む、請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項12】
アフィニティタグが、StrepIIタグのタンデムリピートを含む、請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項13】
アフィニティタグが、リピート間にタグリンカーを有する約1から約18個のStrepIIタグのタンデムリピートを含む、請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項14】
アフィニティタグが、StrepIIタグの3個のタンデムリピートを含む、請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項15】
StrepIIタグが、8個のアミノ酸のペプチド配列WSHPQFEK(配列番号1)を含む、請求項19から22のいずれかに記載の核酸コンストラクト。
【請求項16】
膜貫通ドメインが疎水性αヘリックスを含む、請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項17】
蛍光レポータータンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む、請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項18】
(a)非ヒト哺乳動物細胞に請求項1から17のいずれかに記載の核酸コンストラクトを導入することと、
(b)非ヒト哺乳動物細胞にヌクレアーゼを導入することであって、ヌクレアーゼが非ヒト哺乳動物細胞のゲノム中のセーフハーバー部位で一本鎖切断または二本鎖切断を引き起こし、核酸コンストラクトが相同組換えにより前記セーフハーバー部位で前記非ヒト哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれることと、
を含む遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞の生成方法。
【請求項19】
ヌクレアーゼを導入することがヌクレアーゼをコードする発現コンストラクトを導入することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ヌクレアーゼを導入することがヌクレアーゼをコードするmRNAを導入することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、またはクラスター化され規則的間隔で配置された短い回文型の反復配列(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
gRNAが、認識部位を標的にするCRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性型CRISPR RNA(tracrRNA)を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
CRISPR-Casタンパク質がCas9を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
非ヒト哺乳動物細胞がげっ歯類細胞である、請求項18から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
げっ歯類細胞が、ラット細胞またはマウス細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
セーフハーバー部位が、マウスゲノムの6番染色体上のRosa26部位または11番染色体上のHipp11部位を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
非ヒト哺乳動物細胞が多能性細胞である、請求項18から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
多能性細胞が、非ヒト接合子または非ヒト胚性幹(ES)細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
多能性細胞が、マウス胚性幹(ES)細胞、ラット胚性幹(ES)細胞、マウス接合子、またはラット接合子である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
核酸コンストラクトがセーフハーバー部位で組み込まれた遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を単離することをさらに含む、請求項18から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
請求項18から30のいずれかに記載の方法により生成される、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項32】
胚盤胞に単離した細胞をインジェクションすること、およびセーフハーバー部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を生成することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法により生成される、遺伝子改変非ヒトトランスジェニック哺乳動物。
【請求項34】
哺乳動物がげっ歯類である、請求項33に記載の遺伝子改変非ヒトトランスジェニック哺乳動物。
【請求項35】
げっ歯類がラットまたはマウスである、請求項34に記載の遺伝子改変非ヒトトランスジェニック哺乳動物。
【請求項36】
セーフハーバー部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を、Cre組換え酵素を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物と交配させて、アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質を発現する細胞を有する非ヒト哺乳動物を取得することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
セーフハーバー部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物が、Rosa26部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むマウスであり、Cre組換え酵素を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物がマウスである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
セーフハーバー部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物が、Hipp11部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むマウスであり、Cre組換え酵素を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物がマウスである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
トランスジェニックマウスにおけるCre発現が組織特異的である、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
請求項37または38に記載の方法により生成される、アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質を発現する細胞を有する遺伝子改変非ヒト哺乳動物。
【請求項41】
セーフハーバー部位に組み込まれた請求項1から17のいずれかに記載の核酸コンストラクトを含むゲノムを含む遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項42】
セーフハーバー部位が、マウスゲノムの26番染色体上のRosa26部位またはマウスゲノムの11番染色体上のHipp11部位を含む、請求項41に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項43】
ハイブリドーマ、幹細胞、または不死化細胞である、請求項41または42に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項44】
アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質を発現する、請求項41から43のいずれかに記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項45】
アフィニティタグが、非ヒト哺乳動物細胞の細胞表面に発現する、請求項44に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項46】
アフィニティタグが、StrepIIタグを含む、請求項45に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項47】
蛍光レポータータンパク質が、非ヒト哺乳動物細胞の細胞質面に露出する、請求項44から46のいずれかに記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項48】
蛍光レポータータンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む、請求項47に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項49】
(a)請求項40に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物から細胞を取得することと、
(b)アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質の発現について遺伝子改変非ヒト哺乳動物から取得した細胞をスクリーニングすることと、
(c)前記融合タンパク質を発現する細胞を単離することと、
を含む、遺伝子改変非ヒト哺乳動物から取得した細胞を単離するための方法。
【請求項50】
細胞が蛍光活性化セルソーティング(FACS)または磁気活性化セルソーティング(MACS)によりスクリーニングされる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
アフィニティタグが、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞の細胞表面に発現する、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
アフィニティタグが、StrepIIタグを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
蛍光レポータータンパク質が、非ヒト哺乳動物細胞の細胞質面に露出する、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
蛍光レポータータンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
リンカー、リーダー配列、並びにアフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質をコードする膜貫通レポーターカセットを含む核酸コンストラクト。
【請求項56】
一本鎖DNA、二本鎖DNA、プラスミド、またはウイルスベクターを含む、請求項55に記載の核酸コンストラクト。
【請求項57】
第1の標的配列および第2の標的配列にそれぞれ相同である第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームをさらに含み、第1および第2の標的配列が免疫グロブリン定常領域部位に隣接している、請求項56に記載の核酸コンストラクト。
【請求項58】
第1の標的配列が免疫グロブリン定常領域部位の上流に存在し、第2の標的配列が免疫グロブリン定常領域部位の終止コドンの下流に存在する、請求項56に記載の核酸コンストラクト。
【請求項59】
免疫グロブリン定常領域部位が、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位である、請求項58に記載の核酸コンストラクト。
【請求項60】
免疫グロブリン軽鎖定常領域部位が、免疫グロブリンカッパ定常領域部位である、請求項59に記載の核酸コンストラクト。
【請求項61】
免疫グロブリン軽鎖定常領域部位が、免疫グロブリンラムダ定常領域部位である、請求項59に記載の核酸コンストラクト。
【請求項62】
免疫グロブリン定常領域部位が、免疫グロブリン重鎖定常領域部位である、請求項58に記載の核酸コンストラクト。
【請求項63】
免疫グロブリン重鎖定常領域部位が、ガンマ、デルタ、アルファ、ミュー、またはイプシロン免疫グロブリン重鎖定常領域部位である、請求項62に記載の核酸コンストラクト。
【請求項64】
第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームがそれぞれ独立して、約15から約12000ヌクレオチドを含む、請求項57から63のいずれかに記載の核酸コンストラクト。
【請求項65】
リンカーが、終止コドンおよび内部リボソーム進入部位(IRES)を含む、請求項55に記載の核酸コンストラクト。
【請求項66】
リンカーが、プロテアーゼ認識部位および自己切断ペプチドを含む、請求項55に記載の核酸コンストラクト。
【請求項67】
リンカーが、ペプチドリンカーを有するリーキー終止コドン(LSC)、プロテアーゼ認識部位、および自己切断ペプチドを含む、請求項55に記載の核酸コンストラクト。
【請求項68】
プロテアーゼ認識部位が、フーリンプロテアーゼ認識部位を含む、請求項66または67に記載の核酸コンストラクト。
【請求項69】
フーリンプロテアーゼ認識部位が、ペプチドArg-X-Arg-Argをコードする核酸配列を含み、Xが疎水性アミノ酸または親水性アミノ酸である、請求項68に記載の核酸コンストラクト。
【請求項70】
フーリンプロテアーゼ認識部位が、ペプチドX-Arg-X-Lys-Arg-XまたはX-Arg-X-Arg-Arg-Xをコードする核酸配列を含み、Xが疎水性アミノ酸または親水性アミノ酸である、請求項68に記載の核酸コンストラクト。
【請求項71】
疎水性アミノ酸が、Gly、Ala、Ile、Leu、Met、Val、Phe、Trp、またはTyrである、または親水性アミノ酸がリシンである、請求項69または70に記載の核酸コンストラクト。
【請求項72】
自己切断ペプチドが、2A自己切断ペプチドを含む、請求項66または67に記載の核酸コンストラクト。
【請求項73】
リーキー終止コドンが、TGACTAGを含む、請求項67に記載の核酸コンストラクト。
【請求項74】
ペプチドリンカーが、Leu-Glyを含む、請求項67に記載の核酸コンストラクト。
【請求項75】
リーダー配列が、分泌シグナルペプチドを含む、請求項55から74のいずれかに記載の核酸コンストラクト。
【請求項76】
分泌シグナルペプチドが、IL-2リーダー配列MYRMQLLSCIALSLALVTNS(配列番号2)を含む、請求項75に記載の核酸コンストラクト。
【請求項77】
アフィニティタグが、StrepIIタグを含む、請求項55から76のいずれかに記載の核酸コンストラクト。
【請求項78】
アフィニティタグが、StrepIIタグのタンデムリピートを含む、請求項77に記載の核酸コンストラクト。
【請求項79】
アフィニティタグが、リピート間にタグリンカーを有する約1から約18個のStrepIIタグのタンデムリピートを含む、請求項77に記載の核酸コンストラクト。
【請求項80】
アフィニティタグが、StrepIIタグの3個のタンデムリピートを含む、請求項77に記載の核酸コンストラクト。
【請求項81】
StrepIIタグが、8個のアミノ酸のペプチド配列Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys(配列番号XX)を含む、請求項77から80のいずれかに記載の核酸コンストラクト。
【請求項82】
膜貫通ドメインが疎水性αヘリックスを含む、請求項55から81のいずれかに記載の核酸コンストラクト。
【請求項83】
蛍光レポータータンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む、請求項55から82のいずれかに記載の核酸コンストラクト。
【請求項84】
(a)非ヒト哺乳動物細胞に請求項55から83のいずれかに記載の核酸コンストラクトを導入することと、
(b)非ヒト哺乳動物細胞にヌクレアーゼを導入することであって、ヌクレアーゼが非ヒト哺乳動物細胞のゲノム中の免疫グロブリン定常領域部位で一本鎖切断または二本鎖切断を引き起こし、核酸コンストラクトが相同組換えにより前記免疫グロブリン定常領域部位で前記非ヒト哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれることと、
を含む、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞の生成方法。
【請求項85】
免疫グロブリン定常領域部位が、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
免疫グロブリン軽鎖定常領域部位が、免疫グロブリンカッパ定常領域部位である、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
免疫グロブリン軽鎖定常領域部位が、免疫グロブリンラムダ定常領域部位である、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
免疫グロブリン定常領域部位が、免疫グロブリン重鎖定常領域部位である、請求項84に記載の方法。
【請求項89】
免疫グロブリン重鎖定常領域部位が、ガンマ、デルタ、アルファ、ミュー、またはイプシロン免疫グロブリン重鎖定常領域部位である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
ヌクレアーゼを導入することが、ヌクレアーゼをコードする発現コンストラクトを導入することを含む、請求項84から89のいずれかに記載の方法。
【請求項91】
ヌクレアーゼを導入することが、ヌクレアーゼをコードするmRNAを導入することを含む、請求項84から89のいずれかに記載の方法。
【請求項92】
ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、またはクラスター化され規則的間隔で配置された短い回文型の反復配列(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)を含む、請求項84から89のいずれかに記載の方法。
【請求項93】
gRNAが、認識部位を標的にするCRISPR(crRNA)およびトランス活性型CRISPR RNA(tracrRNA)を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
CRISPR-Casタンパク質がCas9を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
非ヒト哺乳動物細胞がげっ歯類細胞である、請求項84から94のいずれかに記載の方法。
【請求項96】
げっ歯類細胞がラット細胞またはマウス細胞である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
非ヒト哺乳動物細胞が多能性細胞である、請求項84から96のいずれかに記載の方法。
【請求項98】
多能性細胞が、非ヒト接合子または非ヒト胚性幹(ES)細胞である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
多能性細胞が、マウス胚性幹(ES)細胞、ラット胚性幹(ES)細胞、マウス接合子、またはラット接合子である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
核酸コンストラクトが免疫グロブリン定常領域部位で組み込まれた遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を単離することをさらに含む、請求項84から99のいずれかに記載の方法。
【請求項101】
請求項84から100のいずれかに記載の方法により生成された遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項102】
胚盤胞に単離した細胞をインジェクションすること、および免疫グロブリン定常領域部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を生成することをさらに含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
請求項101に記載の方法により生成される、遺伝子改変非ヒトトランスジェニック哺乳動物。
【請求項104】
免疫グロブリン定常領域部位に組み込まれた請求項55から83のいずれかに記載の核酸コンストラクトを含むゲノムを含む遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項105】
定常領域部位が軽鎖定常領域部位である、請求項104に記載の遺伝子改変非ヒト細胞。
【請求項106】
軽鎖定常領域部位がカッパ定常領域部位である、請求項105に記載の遺伝子改変非ヒト細胞。
【請求項107】
軽鎖定常領域部位がラムダ定常領域部位である、請求項105に記載の遺伝子改変非ヒト細胞。
【請求項108】
定常領域部位が重鎖定常領域部位である、請求項104に記載の遺伝子改変非ヒト細胞。
【請求項109】
免疫グロブリン重鎖定常領域部位が、ガンマ、デルタ、アルファ、ミュー、またはイプシロン免疫グロブリン重鎖定常領域部位である、請求項108に記載の遺伝子改変非ヒト細胞。
【請求項110】
免疫グロブリン発現細胞が免疫化哺乳動物から取得される、請求項104から109のいずれかに記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項111】
免疫グロブリン発現細胞である、請求項104から110のいずれかに記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項112】
遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞が免疫グロブリンカッパ軽鎖を発現する、請求項104に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物。
【請求項113】
免疫グロブリン発現細胞が未熟B細胞または未熟B細胞の子孫である、請求項104から112のいずれかに記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項114】
ハイブリドーマ、幹細胞、または不死化細胞である、請求項104から112のいずれかに記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項115】
アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質を発現する、請求項104から114のいずれかに記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項116】
アフィニティタグが、非ヒト哺乳動物細胞の細胞表面で発現する、請求項115に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項117】
アフィニティタグが、StrepIIタグを含む、請求項116に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項118】
蛍光レポータータンパク質が非ヒト哺乳動物細胞の細胞質面に露出する、請求項115から117のいずれかに記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項119】
蛍光レポータータンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む、請求項118に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項120】
融合タンパク質の発現が内在性免疫グロブリン転写制御因子により駆動される、請求項115に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項121】
内在性免疫グロブリン転写制御因子が、内在性免疫グロブリン軽鎖転写制御因子である、請求項120に記載の遺伝子改変非ヒト細胞。
【請求項122】
内在性免疫グロブリン軽鎖転写制御因子が、プロモーターおよびマウス軽鎖部位の他のシスエレメントを含む、請求項121に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項123】
内在性免疫グロブリン転写制御因子が、内在性免疫グロブリン重鎖転写制御因子である、請求項120に記載の遺伝子改変非ヒト細胞。
【請求項124】
内在性免疫グロブリン重鎖転写制御因子が、プロモーターおよびマウス重鎖部位の他のシスエレメントを含む、請求項123に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞。
【請求項125】
(a)請求項103に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物から細胞を取得することと、
(b)アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質の発現について遺伝子改変非ヒト哺乳動物から取得された細胞をスクリーニングすることと、
(c)前記融合タンパク質の発現に基づき免疫グロブリン発現細胞を識別することと、
を含む、遺伝子改変非ヒト哺乳動物から取得された免疫グロブリン発現細胞を識別するための方法。
【請求項126】
細胞が蛍光活性化セルソーティング(FACS)または磁気活性化セルソーティング(MACS)によりスクリーニングされる、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
アフィニティタグが、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞の細胞表面に発現する、請求項125に記載の方法。
【請求項128】
アフィニティタグが、StrepIIタグを含む、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
蛍光レポータータンパク質が、非ヒト哺乳動物細胞の細胞質面に露出する、請求項125に記載の方法。
【請求項130】
蛍光レポータータンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
遺伝子改変非ヒト哺乳動物が目的の抗原で免疫されている、請求項125から130のいずれかに記載の方法。
【請求項132】
免疫グロブリン発現細胞が免疫グロブリンカッパ軽鎖を発現する、請求項125から131のいずれかに記載の方法。
【請求項133】
前記融合タンパク質をコードする遺伝子が免疫グロブリン定常領域部位において細胞のゲノムに組み込まれている、請求項125から132のいずれかに記載の方法。
【請求項134】
免疫グロブリン定常領域部位が、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位である、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
免疫グロブリン軽鎖定常領域部位が、免疫グロブリンカッパ定常領域部位である、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
免疫グロブリン軽鎖定常領域部位が、免疫グロブリンラムダ定常領域部位である、請求項134に記載の方法。
【請求項137】
免疫グロブリン定常領域部位が、免疫グロブリン重鎖定常領域部位である、請求項133に記載の方法。
【請求項138】
免疫グロブリン重鎖定常領域部位が、ガンマ、デルタ、アルファ、ミュー、またはイプシロン免疫グロブリン重鎖定常領域部位である、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
免疫グロブリン発現細胞が未熟B細胞およびその子孫を含む、請求項125から138のいずれかに記載の方法。
【請求項140】
遺伝子改変非ヒト哺乳動物から取得された細胞から発現する免疫グロブリンを単離することをさらに含む、請求項125から138のいずれかに記載の方法。
【請求項141】
請求項140に記載の方法により取得された免疫グロブリン。
【請求項142】
(i)請求項141に記載の免疫グロブリンの可変領域をクローニングすることと、
(ii)(i)で取得された可変領域を含む治療用または診断用免疫グロブリンを生成することと、
を含む、治療用または診断用免疫グロブリンを生産する方法。
【請求項143】
(i)請求項103に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物から免疫グロブリン発現細胞を取得することと、
(ii)(i)で取得した免疫グロブリン発現細胞を不死化することと、
(iii)不死化した免疫グロブリン発現細胞またはモノクローナル抗体をコードする核酸配列により発現するモノクローナル抗体を単離することと、
を含む、モノクローナル抗体を生産する方法。
【請求項144】
(iv)単離したモノクローナル抗体の可変領域をクローニングすることと、
(v)クローン化した可変領域を含む治療用または診断用抗体を生産することと、
をさらに含む、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
請求項144に記載の方法により生産された治療用または診断用抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、核酸コンストラクト、トランスジェニックげっ歯類、げっ歯類細胞株、および特定の細胞タイプ、例えば、特定の発生段階にある細胞、特定のプロモーターを発現する細胞、または抗体などの特定のタンパク質を発現する細胞の識別と濃縮を可能にする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定のタンパク質を発現するように、または特定の発生段階にあるように改変された細胞を識別および濃縮することは、生物学的治療薬の開発における重要な課題である。特定の細胞集団を濃縮するための一般的なワークフローは、単一細胞懸濁液を作製し、その細胞混合物を表面マーカーを認識する抗体パネルで染色し、磁気またはフローベースのいずれかの方法を用いて細胞を分離することである。しかし、この手順は、細胞種特異的な細胞表面マーカーに関する現在の知識、およびそれらのマーカーを認識する抗体の特異性と利用可能性によって制限される。この手順では一般に、濃縮後の目的細胞の収率および純度が理想的ではなく、不要な汚染細胞の割合が高くなり、濃縮中に目的細胞が失われる結果となる。例えば、Ig発現細胞を識別する一般的な戦略は、既知の内因性系譜表面マーカーと抗体染色を組み合わせ、それらのマーカーを検出することに基づいている。
【0003】
マウスIg発現細胞を濃縮するためによく使用される抗体は、抗CD19抗体、抗CD138抗体、および抗Ig抗体である。しかし、B細胞分化の過程でこれら3つのマーカーの発現に差があり、細胞表面マーカーを使用してすべての集団を効率的に濃縮できるわけではない。例えば、CD19は汎B細胞マーカー(Igを発現しないB細胞前駆細胞を含む)と考えられているが、その発現は抗体分泌細胞で劇的に減少するため、その有用な集団を濃縮することはできない。CD138は形質細胞マーカーと考えられているが、Igを発現しない初期段階の前駆B細胞の一部にも発現している。それゆえ、このマーカーはこの望みではない集団を濃縮することになる。B細胞の発生過程において、プレB細胞が未熟B細胞に分化した後、細胞表面にIgを呈し始めるので、Igマーカーを用いてこの集団を捕捉できる。しかし、成熟B細胞が形質細胞に完全に分化すると、Igの表面発現は失われる。その結果、Ig発現細胞を濃縮するためにこれらのマーカーを磁気ベースの戦略(フローベースのソーティングに比べ、より良いスケールと時間効率を提供する)で使用する場合、結果として濃縮した細胞集団は、非Ig発現B細胞のコンタミを含むことが多く、非効率的な濃縮と抗体分泌細胞の損失となる。
【0004】
組織特異的プロモーターを発現する細胞株の単離および濃縮もまた、同様の理由で挑戦的なことである。組織特異性は主に転写因子によって決定され、組織特異的な方法でタンパク質を発現している細胞株を濃縮するために、細胞表面マーカーが利用できないこともあり、利用できるマーカーが有用な濃縮の提供に十分な特異性を持っていないこともある。
【発明の概要】
【0005】
実施形態では、本開示は、リーダー配列、LoxP-Stop-LoxPカセット、およびアフィニティタグ、膜貫通(TM)ドメイン、および蛍光レポータータンパク質をコードする膜貫通レポーターカセットを含む核酸コンストラクトを提供する。実施形態では、核酸コンストラクトは、一本鎖DNA、二本鎖DNA、プラスミド、またはウイルスベクターを含む。
【0006】
実施形態では、核酸コンストラクトは、非ヒト哺乳動物におけるセーフハーバー部位内の第1の標的配列および第2の標的配列にそれぞれ相同である第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームをさらに含む。実施形態では、第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームは、それぞれ独立して、約15ヌクレオチドから約12000ヌクレオチドを含む。
【0007】
核酸コンストラクトの実施形態では、セーフハーバー部位は、マウスゲノムの6番染色体上のRosa26部位またはマウスゲノムの11番染色体上のHipp11部位を含む。
【0008】
実施形態では、核酸コンストラクトはプロモーターをさらに含む。実施形態では、プロモーターは哺乳動物プロモーターを含む。実施形態では、プロモーターはCAG、CMV、EF1a、SV40、PGK1、Ubc、またはヒトベータアクチンプロモーターを含む。実施形態では、リーダー配列は分泌シグナルペプチドを含む。実施形態では、分泌シグナルペプチドは、IL-2リーダー配列MYRMQLLSCIALSLALVTNS(配列番号:2)を含む。
【0009】
核酸コンストラクトの実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグを含む。実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、リピート間にタグリンカーを有するStrepIIタグの約1から約18個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグの3個のタンデムリピートを含む。実施形態では、StrepIIタグは、WSHPQFEK(配列番号1)の8個のアミノ酸のペプチド配列を含む。実施形態では、膜貫通ドメインは疎水性αヘリックスを含む。
【0010】
核酸コンストラクトの実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む。
【0011】
実施形態では、本開示は、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を生成する方法を提供し、その方法は、(a)非ヒト哺乳動物細胞に本明細書に記載される核酸コンストラクトを導入することと、および(b)非ヒト哺乳動物細胞にヌクレアーゼを導入することであって、ヌクレアーゼが非ヒト哺乳動物細胞のゲノム中のセーフハーバー部位で一本鎖切断または二本鎖切断を引き起こし、核酸コンストラクトが相同組換えによりセーフハーバー部位で非ヒト哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれることを含む。
【0012】
本方法の実施形態では、ヌクレアーゼを導入することは、ヌクレアーゼをコードする発現コンストラクトを導入することを含む。実施形態では、ヌクレアーゼを導入することは、ヌクレアーゼをコードするmRNAを導入することを含む。実施形態では、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、またはクラスター化され規則的間隔で配置された短い回文型の反復配列(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)を含む。実施形態では、gRNAは、認識部位を標的にするCRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化型CRISPR RNA(tracrRNA)を含む。実施形態では、CRISPR-Casタンパク質はCas9を含む。
【0013】
本方法の実施形態では、非ヒト哺乳動物細胞はげっ歯類細胞である。実施形態では、げっ歯類細胞はラット細胞またはマウス細胞である。実施形態では、セーフハーバー部位は、マウスゲノムの6番染色体上のRosa26部位または11番染色体上のHipp11部位を含む。実施形態では、非ヒト哺乳動物細胞は多能性細胞である。実施形態では、多能性細胞は非ヒト接合子または非ヒト胚性幹(ES)細胞である。実施形態では、多能性細胞はマウス接合子細胞またはラット接合子細胞である。実施形態では、多能性細胞はマウス胚性幹(ES)細胞またはラット胚性幹(ES)細胞である。
【0014】
実施形態では、本方法は、核酸コンストラクトがセーフハーバー部位で組み込まれた遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を単離することをさらに含む。
【0015】
実施形態では、本開示は、本明細書に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を生成する方法によって生成された遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を提供する。
【0016】
本方法の実施形態では、本方法は、単離した細胞を胚盤胞にインジェクションし、セーフハーバー部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を生成することをさらに含む。実施形態では、本開示は、本方法により生成された遺伝子改変非ヒトトランスジェニック哺乳動物を提供する。実施形態では、哺乳動物はげっ歯類である。実施形態では、げっ歯類はラットまたはマウスである。
【0017】
実施形態では、本方法は、セーフハーバー部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を、Cre組換え酵素を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物と交配させて、アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質を発現する細胞を有する非ヒト哺乳動物を取得することをさらに含む。実施形態では、セーフハーバー部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、Rosa26部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むマウスであり、Cre組換え酵素を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物はマウスである。実施形態では、セーフハーバー部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、Hipp11部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むマウスであり、Cre組換え酵素を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物はマウスである。実施形態では、トランスジェニックマウスにおけるCre発現は組織特異的である。実施形態では、本開示は、アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および本方法により生成された蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質を発現する細胞を有する遺伝子改変非ヒト哺乳動物を提供する。
【0018】
実施形態では、本開示は、セーフハーバー部位に組み込まれた本明細書に記載の核酸コンストラクトを含むゲノムを含む遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を提供する。実施形態では、セーフハーバー部位は、マウスゲノムの26番染色体上のRosa26部位、またはマウスゲノムの11番染色体上のHipp11部位を含む。実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞は、ハイブリドーマまたは不死化細胞である。
【0019】
遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞の実施形態では、細胞はアフィニティタグ、膜貫通ドメイン、蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質を発現する。実施形態では、アフィニティタグは非ヒト哺乳動物細胞の細胞表面に発現する。実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグを含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、非ヒト哺乳動物細胞の細胞質面に露出している。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む。
【0020】
実施形態では、本開示は、遺伝子改変非ヒト哺乳動物から取得された細胞を単離するための方法を提供し、本方法は、(a)本明細書に記載される遺伝子改変非ヒト哺乳動物から細胞を取得することと、(b)アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質の発現について、遺伝子改変非ヒト哺乳動物から取得した細胞をスクリーニングすることと、および(c)融合タンパク質を発現する細胞を単離することを含む。
【0021】
細胞を単離する方法の実施形態では、細胞は蛍光活性化セルソーティング(FACS)または磁気活性化セルソーティング(MACS)によりソーティングされる。実施形態では、アフィニティタグは遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞の細胞表面に発現する。実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグを含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、非ヒト哺乳動物細胞の細胞質面に露出している。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む。
【0022】
実施形態では、本開示は、リンカー、リーダー配列、並びにアフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポーターをコードする膜貫通レポーターカセットを含む核酸コンストラクトをさらに提供する。
【0023】
実施形態では、核酸コンストラクトは、一本鎖DNA、二本鎖DNA、プラスミド、またはウイルスベクターを含む。実施形態では、核酸コンストラクトは、第1の標的配列および第2の標的配列にそれぞれ相同である第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームをさらに含む。実施形態では、第1の標的配列は免疫グロブリン定常領域部位の上流に存在し、第2の標的配列は免疫グロブリン定常領域部位の終止コドンの下流に存在する。実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は免疫グロブリン軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位は免疫グロブリンカッパ定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位は免疫グロブリンラムダ定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は免疫グロブリン重鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域部位は、ガンマ、デルタ、アルファ、ミュー、またはイプシロン免疫グロブリン重鎖定常領域部位である。
【0024】
核酸コンストラクトの実施形態では、第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームは、それぞれ独立して、約15ヌクレオチドから約12000ヌクレオチドを含む。実施形態では、リンカーは終止コドンおよび内部リボソーム進入部位(IRES)を含む。実施形態では、リンカーはプロテアーゼ認識部位および自己切断ペプチドを含む。実施形態では、リンカーは、ペプチドリンカー、プロテアーゼ認識部位、および自己切断ペプチドを有するリーキー終止コドン(LSC)を含む。実施形態では、プロテアーゼ認識部位はフーリンプロテアーゼ認識部位を含む。実施形態では、フーリンプロテアーゼ認識部位は、Arg-X-Arg-Argのペプチドをコードする核酸配列を含む。実施形態では、Xは疎水性アミノ酸である。実施形態では、Xは親水性アミノ酸である。実施形態では、Xはリシンである。実施形態では、フーリンプロテアーゼ認識部位は、X-Arg-X-Lys-Arg-XまたはX-Arg-X-Arg-Arg-Xのペプチドをコードする核酸配列を含む。実施形態では、Xは疎水性アミノ酸である。実施形態では、疎水性アミノ酸はGly、Ala、Ile、Leu、Met、Val、Phe、Trp、またはTyrである。実施形態では、Xは親水性アミノ酸である。実施形態では、親水性アミノ酸はリシンである。実施形態では、自己切断ペプチドは2A自己切断ペプチドを含む。実施形態では、リーキー終止コドンはTGACTAGを含む。実施形態では、ジペプチドリンカーはLeu-Glyを含む。
【0025】
核酸コンストラクトの実施形態では、リーダー配列は分泌シグナルペプチドを含む。実施形態では、分泌シグナルペプチドは、IL-2リーダー配列MYRMQLLSCIALSLALVTNS(配列番号2)を含む。
【0026】
核酸コンストラクトの実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグを含む。実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、リピート間にタグリンカーを有するStrepIIタグの約1から約18個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグの3個のタンデムリピートを含む。実施形態では、StrepIIタグは、WSHPQFEK(配列番号1)の8個のアミノ酸のペプチド配列を含む。実施形態では、膜貫通ドメインは疎水性αヘリックスを含む。
【0027】
核酸コンストラクトの実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む。
【0028】
実施形態では、本開示は、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を生成する方法を提供し、その方法は(a)本明細書に記載の核酸コンストラクトを非ヒト哺乳動物細胞に導入することと、および(b)ヌクレアーゼを非ヒト哺乳動物細胞に導入することであって、ヌクレアーゼが、非ヒト哺乳動物細胞のゲノム中の免疫グロブリン定常領域部位において一本鎖切断または二本鎖切断を引き起こし、核酸コンストラクトが、相同組換えにより免疫グロブリン定常領域部位において非ヒト哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれることを含む。実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は免疫グロブリン軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位はカッパ軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位はラムダ軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は免疫グロブリン重鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域部位は、ガンマ、デルタ、アルファ、ミュー、またはイプシロン免疫グロブリン定常領域部位である。
【0029】
本方法の実施形態では、ヌクレアーゼを導入することは、ヌクレアーゼをコードする発現コンストラクトを導入することを含む。実施形態では、ヌクレアーゼを導入することは、ヌクレアーゼをコードするmRNAを導入することを含む。実施形態では、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、またはクラスター化され規則的間隔で配置された短い回文型の反復配列(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)を含む。実施形態では、gRNAは、認識部位を標的にするCRISPR RNA(crRNA)および、トランス活性化型CRISPR RNA(tracrRNA)とを含む。実施形態では、CRISPR-Casタンパク質はCas9を含む。
【0030】
本方法の実施形態では、非ヒト哺乳動物細胞はげっ歯類細胞である。実施形態では、げっ歯類細胞はラット細胞またはマウス細胞である。実施形態では、非ヒト哺乳動物細胞は多能性細胞である。実施形態では、多能性細胞は非ヒト胚性幹(ES)細胞である。実施形態では、多能性細胞はマウス胚性幹(ES)細胞またはラット胚性幹(ES)細胞である。
【0031】
実施形態では、本方法は、核酸コンストラクトが免疫グロブリン定常領域部位で組み込まれた遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を単離することをさらに含む。実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は免疫グロブリン軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位はカッパ軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位はラムダ軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は免疫グロブリン重鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域部位は、ガンマ、デルタ、アルファ、ミュー、またはイプシロン免疫グロブリン定常領域部位である。
【0032】
実施形態では、本開示は、本明細書に開示される方法によって生成された遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を提供する。
【0033】
実施形態では、本方法はさらに、単離された細胞を胚盤胞にインジェクションし、免疫グロブリン定常領域部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を生成することを含む。実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は免疫グロブリン軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位はカッパ軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位はラムダ軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は免疫グロブリン重鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域部位は、ガンマ、デルタ、アルファ、ミュー、またはイプシロン免疫グロブリン定常領域部位である。実施形態では、本開示は、本方法によって生成された遺伝子改変非ヒトトランスジェニック哺乳動物を提供する。
【0034】
実施形態では、本開示は、免疫グロブリン定常領域部位に組み込まれた、本明細書に記載の核酸コンストラクトを含むゲノムを含む遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を提供する。実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞は、免疫グロブリン定常領域部位に組み込まれた本明細書に記載の核酸コンストラクトを含むゲノムを含む。実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は軽鎖定常領域部位である。実施形態では、軽鎖定常領域部位はカッパ定常領域部位である。実施形態では、軽鎖定常領域部位はラムダ定常領域部位である。実施形態では、定常領域部位は重鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン発現細胞は免疫化哺乳動物から取得される。実施形態では、細胞は免疫グロブリン発現細胞である。実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞は免疫グロブリンカッパ軽鎖を発現する。
【0035】
免疫グロブリン発現非ヒト哺乳動物細胞の実施形態では、細胞は未熟B細胞または未熟B細胞の子孫である。実施形態では、細胞はハイブリドーマ、幹細胞、または不死化細胞である。
【0036】
免疫グロブリン発現非ヒト哺乳動物細胞の実施形態では、細胞はアフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質を発現する。実施形態では、アフィニティタグは非ヒト哺乳動物細胞の細胞質面に発現する。実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグを含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、非ヒト哺乳動物細胞の細胞質面に露出している。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は赤色蛍光タンパク質(RFP)を含む。実施形態では、赤色蛍光タンパク質は、単量体チェリー(mCherry)またはタンデム二量体トマト(tdTomato)である。他の蛍光タンパク質も知られており、本明細書に記載のコンストラクトに使用できる。例えば、Liら(2018)"Overview of the reporter genes and reporter mouse models," Anim Models and Exp Med.1:29-35 (doi.org/10.1002/ame2.12008)を参照のこと。
【0037】
免疫グロブリン発現非ヒト哺乳動物細胞の実施形態では、融合タンパク質の発現は内因性免疫グロブリン転写制御因子によって駆動される。実施形態では、内因性免疫グロブリン転写調節因子は内因性免疫グロブリン軽鎖転写調節因子である。実施形態では、内因性免疫グロブリン軽鎖転写調節因子は、プロモーターおよびマウス軽鎖部位の他のシスエレメントを含む。実施形態では、内因性免疫グロブリンカッパ軽鎖転写制御因子は、プロモーターおよびマウス軽鎖部位における他のシスエレメントを含む。実施形態では、内因性免疫グロブリンラムダ軽鎖転写調節因子は、プロモーターおよびマウス軽鎖部位における他のシスエレメントを含む。実施形態では、内因性免疫グロブリン転写調節因子は内因性免疫グロブリン重鎖転写調節因子である。実施形態では、内因性免疫グロブリン重軽鎖転写調節因子は、プロモーターおよびマウス重鎖部位における他のシスエレメントを含む。
【0038】
実施形態では、本開示は、遺伝子改変非ヒト哺乳動物から取得された免疫グロブリン発現細胞を識別するための方法を提供し、本方法は(a)本明細書に記載される遺伝子改変非ヒト哺乳動物から細胞を取得することと、(b)アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質の発現について、遺伝子改変非ヒト哺乳動物から取得された細胞をスクリーニングすることと、および(c)融合タンパク質の発現に基づいて、免疫グロブリン発現細胞を識別することを含む。
【0039】
本方法の実施形態では、細胞は蛍光活性化セルソーティング(FACS)または磁気活性化セルソーティング(MACS)によりスクリーニングされる。実施形態では、アフィニティタグは遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞の細胞表面に発現する。実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグを含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、非ヒト哺乳動物細胞の細胞質面に露出している。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は赤色蛍光タンパク質(RFP)を含む。実施形態では、赤色蛍光タンパク質は、単量体チェリー(mCherry)またはタンデム二量体トマト(tdTomato)である。
【0040】
本方法の実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物は、目的の抗原で免疫されている。実施形態では、免疫グロブリン発現細胞は免疫グロブリン軽鎖を発現する。実施形態では、免疫グロブリン発現細胞は免疫グロブリンカッパ軽鎖を発現する。実施形態では、免疫グロブリン発現細胞は免疫グロブリンラムダ軽鎖を発現する。実施形態では、免疫グロブリン発現細胞は免疫グロブリン重鎖を発現する。実施形態では、免疫グロブリン発現細胞は未熟B細胞とその子孫を含む。
【0041】
実施形態では、本方法は、遺伝子改変非ヒト哺乳動物から取得された細胞から発現された免疫グロブリンを単離することをさらに含む。実施形態では、本開示は、本方法によって取得された免疫グロブリンを提供する。
【0042】
実施形態では、本開示は、治療用または診断用免疫グロブリンを生産する方法を提供し、その方法は(i)本明細書に記載される免疫グロブリンの可変領域をクローニングすることおよび(ii)(i)で取得された可変領域を含む治療用または診断用免疫グロブリンを生成することを含む。
【0043】
実施形態では、本開示は、モノクローナル抗体を生産する方法を提供し、その方法は(i)本明細書に記載の遺伝子改変非ヒト哺乳動物から免疫グロブリン発現細胞を取得すること(ii)(i)で取得された免疫グロブリン発現細胞を不死化すること、および(iii)不死化された免疫グロブリン発現細胞により発現されるモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体をコードする核酸配列を単離することを含む。実施形態では、本方法は(iv)単離されたモノクローナル抗体の可変領域をクローニングすること、および(v)クローニングされた可変領域を含む治療用または診断用抗体を生産することをさらに含む。実施形態では、本開示は、本方法により生産される治療用抗体または診断用抗体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1A-C】本明細書に記載のコンディショナルレポーター核酸コンストラクトの一実施形態の構成と使用の模式図である。
図1Aに示すように、核酸コンストラクトはROSA26部位のセーフハーバー部位に挿入される。図では、CAGGSはCAGプロモーター、Lはリーダー配列を表し、LoxP-Stop-LoxPカセットは示すように配置され、STX3はStrep-IIタグの3個のタンデムリピート、TMは膜貫通ドメイン、GFPは緑色蛍光タンパク質レポーターを表す。
図1Bは、組織特異的レポーターマウス系統を形成するために、Creスイッチ系統とコンディショナルレポーター系統との間で行われた交差の模式図である。模式的に示すように、コンディショナルレポーター系統をスイッチ系統と交差させた後、Cre組換え酵素がレポーターの前の終止コドンを除去し、Cre発現細胞の核内でレポーターの発現をオンにする。その結果、これらの細胞は、細胞表面のアフィニティタグと細胞内の蛍光マーカーで恒久的に標識される。
図1Cは、
図1Bのスイッチレポーター株から単離された細胞が、本明細書に記載されているようにFACSまたはMACSを用いてどのように分離されるかを表す模式図である。
【0045】
【
図2】マウス/ラットIgK部位のターゲティング戦略の模式図である。ターゲティング後、標識カセットはIgK遺伝子の終止コドンで、およびIgK部位プロモーターの制御下でノックインされる(下図のLKはリンカー配列であることに留意、詳細は以下)。図中、黒色の長方形はその領域のVおよびJセグメントを、LKはリンカー配列を、Lはリーダー配列を、STX3はStrep-IIタグの3個のタンデムリピートを、TMは膜貫通ドメインを、GFPは緑色蛍光タンパク質レポーターを表す。
【0046】
【
図3】本明細書に記載されるように形成されたIgKレポーターマウスの実施形態の構成の模式図であり、本明細書に記載されるように、マウスから単離されたプール細胞がFACSまたはMACSを用いてどのように分離されるかの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本開示は、アフィニティタグ、膜貫通(TM)ドメイン、および蛍光レポータータンパク質をコードする膜貫通レポーターカセットを含む核酸コンストラクトの実施形態を提供する。実施形態では、核酸コンストラクトは、非ヒト哺乳動物の細胞内のセーフハーバー部位または免疫グロブリン定常領域部位に挿入される。実施形態では、膜貫通レポーターカセットが細胞内で発現すると、アフィニティタグは細胞表面に表示され、蛍光レポータータンパク質は細胞膜の内側に位置する。アフィニティタグおよび蛍光レポータータンパク質の存在により、核酸コンストラクトを発現する細胞の識別、ソーティング、および/または単離が可能になる。本開示はまた、開示された方法を用いて生産された細胞および非ヒト生物の実施形態とともに、核酸コンストラクトを用いて細胞および非ヒト生物を改変する方法の実施形態も提供する。
【0048】
A.定義
他に定義がない限り、本明細書で使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形、例えば「ひとつ(a)」または「ひとつ(an)」を含み、複数形、例えば「ひとつ以上(one or more)」や「少なくともひとつ(at least one)」を含み、用語「または(or)」は「および/または(and/or)」を意味しうる。「含む(including)」、「含む(includes)」、および「含まれる(included)」なる用語は、限定するものではない。本明細書で提供される範囲は、その種類を問わず、記述された特定の範囲内のすべての値、および特定の範囲の終点に関する値を含む。
【0049】
本明細書で使用される「約(about)」なる用語は、例えば、組成物中の成分の量、濃度、容積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、およびそれらの範囲を修飾するために使用される。「約(about)」なる用語は、例えば、化合物、組成物、濃縮物、または製剤の作製に使用される典型的な測定、および取り扱い手順で、これらの手順における偶発的な誤差で、方法を実施するために使用される製造機器、原料、または出発材料または成分の純度の違いで、およびその他の同様の考慮事項で発生しうる数値量の変動を意味する。「約(about)」なる用語は、特定の初期濃度または混合物を有する製剤の経年により異なる量、および特定の初期濃度または混合物を有する製剤の混合またはプロセスにより異なる量も含む。「約(about)」なる用語で修飾されている場合、添付の特許請求の範囲にはそのような等価物が含まれる。
【0050】
一般に、本明細書に記載されている細胞培養および組織培養、分子生物学、タンパク質化学およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学、およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法、およびその技術は、当該技術分野でよく知られ、一般的に使用されているものである。アミノ酸は、一般的に知られている3文字の記号か、IUPAC-IUB生化学命名法委員会が推奨する1文字の記号のいずれかで本明細書で呼ばれることがある。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられている1文字コードで呼ばれることがある。
【0051】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」または「タンパク質」なる用語は、ペプチド結合によって互いに結合した2つ以上のアミノ酸残基を有する分子を指すために互換的に使用できる。「ポリペプチド」なる用語は、抗体およびその他の非抗体タンパク質を意味しうる。非抗体タンパク質は、酵素、レセプター、細胞表面タンパク質のリガンド、分泌タンパク質、および融合タンパク質またはその断片などのタンパク質を含むが、これらに限定されるものではない。ポリペプチドは、タンパク質ベースの治療薬を含む、科学的または商業的に関心のあるものであってもよい。
【0052】
本明細書で使用する場合、「抗体」および「免疫グロブリン」なる用語は互換的に使用でき、抗原の抗原決定基の特徴と相補的な内部表面形状および電荷分布を有する三次元結合空間を有するポリペプチド鎖の折り畳みから形成される少なくとも1つの結合ドメインを含むポリペプチドまたはポリペプチド群を意味する。天然に存在する抗体は通常4量体で、2対のポリペプチド鎖を持ち、各対は1本の「軽鎖」と1本の「重鎖」を持つ。各軽鎖/重鎖対の可変領域は抗体結合部位を形成する。各軽鎖は1つの共有結合ジスルフィド結合で重鎖と結合しているが、ジスルフィド結合の数は免疫グロブリンのアイソタイプによって異なる。重鎖と軽鎖はそれぞれ、鎖内に規則的な間隔でジスルフィド結合を持つ。各重鎖の一端には可変領域(VH)があり、その後にいくつかの定常領域(CH)が続く。各軽鎖は、一端に可変領域(VL)、他端に定常領域(CL)を有し、軽鎖の定常領域は重鎖の第1の定常領域と並び、軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域と並ぶ。軽鎖は、軽鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいてラムダ鎖とカッパ鎖に分類される。重鎖は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて、ガンマ鎖、デルタ鎖、アルファ鎖、ミュー鎖、またはイプシロン鎖のいずれかに分類される。
【0053】
「抗原結合フラグメント」または「免疫学的に活性なフラグメント」なる用語は、少なくとも1つの抗原結合部位を含み、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体のフラグメントを意味する。免疫グロブリン分子は、いずれかのアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgYなど)、サブアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2など)、またはアロタイプ(例えば、Gm、例えば、G1m(f、z、a、またはx)、G2m(n)、G3m(g、b、またはc)、Am、Em、およびKm(1、2、または3))であり得る。サブタイプには、げっ歯類などの非ヒト哺乳動物に見られる、例えばIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG2c、およびIgG3などのサブクラスが含まれる。免疫グロブリンには、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの異なるエピトープ結合断片(例:二重特異性抗体)から形成される多重特異性抗体、CDRグラフト化抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、イントラボディ、および組換え生産抗体断片を含むその所望の抗原結合断片が含まれるが、これらに限定されない。組換え生産が可能な抗体断片の例としては、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片などの可変重鎖、および軽鎖ドメインを含む抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない。抗体断片には、上記に列挙した抗体のエピトープ結合断片または誘導体も含まれる。
【0054】
「組換え体(recombinant)」なる用語は、例えば核酸やタンパク質など、人工的または合成的に(すなわち、非天然的に)改変された、または人の介入によって生産された生物学的物質を意味する。「組換え抗体」なる用語は、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現された抗体ならびに、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体など、組換えDNAプロセスによって調製された抗体を意味する。実施形態では、組換え抗体は組換えヒト抗体であり、これにはヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニック動物から単離された抗体、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列を別のDNA配列にスプライシングすることによって調製された抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書で使用する「コード配列」または選択されたポリペプチドを「コードする」配列とは、適切な調節配列(または「コントロールエレメント」)の制御下に置かれると、例えばインビボで転写され(DNAの場合)、ポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸分子のことである。コード配列の境界は通常、5’(アミノ)末端の開始コドンと3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列には、ウイルス、原核生物、または真核生物のmRNAからのcDNA、ウイルスまたは原核生物のDNAからのゲノムDNA配列、さらには合成DNA配列が含まれるが、これらに限定されない。転写終結配列は、コード配列の3’に位置することもある。他の「制御エレメント」もコード配列と関連付けられることがある。ポリペプチドをコードするDNA配列は、選択された細胞が好むコドンを用いて、所望のポリペプチドコード配列のDNAコピーを表すことにより、選択された細胞での発現に最適化できる。
【0056】
本明細書で使用する「コードされる」とは、ポリペプチド配列をコードする核酸配列を意味し、ポリペプチド配列またはその一部は、核酸配列によってコードされるポリペプチドから少なくとも約3から約5アミノ酸、少なくとも約8から約10アミノ酸、または少なくとも約15から約20アミノ酸のアミノ酸配列を含む。また、配列によってコードされるポリペプチドと免疫学的に識別可能なポリペプチド配列も含む。
【0057】
本明細書で使用される「作動可能に連結された」とは、このように説明された構成要素が通常の機能を果たすように構成された要素の配置を意味する。したがって、コード配列(例えば、レポーター発現カセット)に作動可能に連結された所定のプロモーターは、適切な酵素が存在する場合、コード配列の発現をもたらすことができる。プロモーターまたは他の制御エレメントは、その発現を指示するように機能する限り、コード配列と連続している必要はない。例えば、プロモーター配列とコード配列の間に、まだ転写されていない介在配列が存在しても、プロモーター配列はコード配列と「作動可能に連結」しているとみなすことができる。
【0058】
本明細書で使用する「ベクター」とは、遺伝子配列を標的細胞に導入できるものである。典型的には、「ベクターコンストラクト」、「発現ベクター」、および「遺伝子導入ベクター」とは、目的の遺伝子の発現を誘導でき、遺伝子配列を標的細胞に導入できるあらゆる核酸コンストラクトを意味する。したがって、この用語は、クローニング、発現ビヒクル、および組み込み(integrating)ベクターを含む。
【0059】
本明細書で使用する「発現カセット」は、目的の遺伝子/コード配列の発現を誘導できるいずれかの核酸コンストラクトを含む。このようなカセットは、発現カセットを標的細胞に導入するために、「ベクター」、「ベクターコンストラクト」、「発現ベクター」、または「遺伝子導入ベクター」に構築されうる。したがって、この用語には、クローニングや発現ビヒクル、ウイルスベクターも含まれる。
【0060】
本明細書で使用する「タンデムリピート」とは、(核酸中の)1つ以上のヌクレオチドまたは(タンパク質中の)1つ以上のアミノ酸残基のリピートであり、リピートは配列中で互いに隣接して存在する。タンデムリピートは連続していてもよく(すなわち、リピートの間に他のヌクレオチドまたは残基がない)、またはタンデムリピートはリピートの間に1つ以上のヌクレオチドまたは残基によって隔てられていてもよい。
【0061】
本明細書で使用する「発現ベクター」なる用語は、好適な宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションするのに使用できる、いずれかの適当な組換え発現ベクターを意味する。本明細書で使用する「宿主細胞」なる用語は、組換え発現ベクターが導入された細胞を意味する。「宿主細胞」なる用語は、発現ベクターが導入された細胞(「親」細胞)だけでなく、そのような細胞の子孫も意味する。例えば、突然変異または環境の影響により、後代に改変が起こる可能性があるため、子孫細胞は親細胞と同一ではないかもしれないが、依然として「宿主細胞」なる用語の範囲に含まれる。
【0062】
本明細書で使用する「形質転換」なる用語は、外来DNAの取り込みによって生じる細胞の遺伝的変化を意味する。細胞の形質転換に好適な方法には、ウイルス感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクションなどがある。方法の選択は一般に、形質転換される細胞の種類と、形質転換が行われる状況(すなわち、インビトロ、エクスビボ、インビボ)に依存する。これらの方法に関する一般的な議論は、Ausubel, et al, Short Protocols in Molecular Biology, 3rd ed, Wiley & Sons, 1995に記載される。
【0063】
本明細書で使用する「不死化細胞」とは、通常は無限に増殖しないタイプの細胞であるが、細胞老化を回避する変異を持つことで、無限に細胞分裂を続けることができる細胞を意味する。実施形態では、不死化細胞株は腫瘍細胞株に由来する、または細胞が無限に増殖するように改変された細胞株に由来しうる。
【0064】
本明細書で使用する「ノックイン」とは、特定のゲノム位置に異種DNA配列を挿入する遺伝子工学的手法によって生成されたトランスジェニック細胞または動物を意味する。ある態様では、異種DNA配列は相同組換えによって挿入される。ある態様では、異種DNA配列はCRISPR/Cas9システムを用いて挿入される。ある態様では、異種DNA配列は「セーフハーバー部位」に挿入される。本明細書で使用する「セーフハーバー部位」とは、新しい遺伝要素が予測通りに機能し、宿主細胞や生物に危険をもたらすような宿主ゲノムの変化を引き起こさないように、新しい遺伝物質の組み込むを受け入れることができるゲノム中の部位のことである。「ノックイン」は、少なくとも1つの対立遺伝子に異種DNA配列を含む子孫が含む。実施形態では、この部位にレポーター遺伝子を付加することにより、細胞の系譜を追跡することが可能である。
【0065】
本明細書で使用する「異種」とは、細胞または動物内に天然には存在しない核酸、または細胞または動物に天然に存在するが改変または変異された核酸を意味する。
【0066】
本明細書で使用する「膜貫通ドメイン」(TMドメイン)とは、細胞の細胞膜を横断するタンパク質の一般的に疎水性の領域を意味する。実施形態では、TMドメインはコンストラクトの細胞外部分を細胞内部分に連結する。実施形態では、TMドメインは細胞外アフィニティタグと細胞内蛍光レポータータンパク質を連結している。TMドメインは、タンパク質の膜貫通領域、タンパク質の膜貫通フラグメント、人工的な疎水性配列、またはそれらの組み合わせを含み得る。実施形態では、膜貫通ドメインはI型膜貫通タンパク質である。実施形態では、TMドメインは1つ以上のα-ヘリックスを含む。実施形態では、TMドメインは1本以上のβ-ストランドを含む。実施形態では、膜貫通ドメインはIgG膜貫通ドメインを含む。実施形態では、膜貫通ドメインはヒトIgG膜貫通ドメインを含む。実施形態では、膜貫通ドメインはマウスIgG膜貫通ドメインを含む。
【0067】
実施形態では、膜貫通ドメインは哺乳動物の膜貫通ドメインを含む。実施形態では、膜貫通ドメインは、マウスタンパク質Tmem53、Lrtm1、またはNrg1の膜貫通ドメインを含む。本明細書では具体例を示すが、他の膜貫通ドメインも当業者には明らかであり、本明細書に記載のコンストラクトに関連して使用できる。例えば、Yu and Zhang (2013) "A simple method for predicting transmembrane proteins based on wavelet transform," Int.J. Biol.Sci.9(1):22-33を参照のこと。
【0068】
B.B細胞の発生
実施形態では、本明細書に記載の方法を用いて識別および/または単離された細胞はB細胞である。B細胞は骨髄の造血幹細胞(HSC)から発生し、抗原に依存しないいくつかの発生段階を経て、未熟B細胞が生成される。未熟B細胞は表面にIgMを発現している(膜IgM発現)。未熟B細胞は骨髄から脾臓に移動し、そこで成熟したナイーブB細胞(膜型IgMおよびIgDを発現する)に分化する。これらの成熟したナイーブB細胞の一部はメモリーB細胞に分化する。メモリーB細胞は寿命が長く、静止している細胞で、抗原に再曝露されると速やかに活性化し、増殖して、新たな感染と闘うための形質細胞に分化する。ナイーブB細胞またはメモリーB細胞が抗原によって活性化されると、増殖し、抗体分泌細胞へと分化する。
【0069】
その後、細胞が完全に成熟して形質細胞になると、分泌型Igを発現するが、Ig表面発現は失われる。マウスとラットでは、抗体発現細胞の約99%がIgカッパを軽鎖として使用している。
【0070】
造血幹細胞がB細胞系譜にコミットした後、B細胞前駆細胞は一連の分化イベントを介して成熟B細胞になる。
【0071】
C.相同組換えと部位特異的ヌクレアーゼ
本明細書に記載されるように、本開示は、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞および生物を生成する方法を提供し、その方法は、非ヒト哺乳動物細胞にヌクレアーゼを導入することを含み、そのヌクレアーゼは、改変される細胞のゲノムの位置において一本鎖切断または二本鎖切断を引き起こす。実施形態では、この一本鎖切断または二本鎖切断の修復により、核酸配列が改変される細胞のゲノムに組み込まれる。実施形態では、この組み込みは相同組換えを介して起こる。
【0072】
相同組換え(HR):相同組換えは、生物のゲノム内の特定の部位に標的遺伝子を挿入することを可能にする(遺伝子ターゲティング)。標的にするゲノム配列に一致するテンプレートを含むDNAコンストラクトを作製することにより、細胞内のHRプロセスがコンストラクトを所望の位置に挿入することを可能にする。本方法を胚性幹細胞に用いることで、標的遺伝子をノックアウト、すなわちゲノムから除去した、またはノックイン、すなわちゲノムに追加した、トランスジェニックマウスが開発された。
【0073】
二本鎖切断後のHRを利用した遺伝子ノックイン方法は、当該技術分野で記載されており、例えば、米国特許第5,474,896;5,792,632;5,866,361;5,948,678;5,948,678, 5,962,327;6,395,959;6,238,924;および5,830,729号に記載されており、それぞれが参照により本明細書に援用される。相同組換えの例示的な方法論は、米国特許第6,689,610;6,204,061;5,631,153;5,627,059;5,487,992;および5,464,764号に記載されており、それぞれが参照により本明細書に援用される。
【0074】
実施形態では、一本鎖切断または二本鎖切断は部位特異的ヌクレアーゼを用いて導入される。そのようなヌクレアーゼは当該技術分野で公知であり、そのようなヌクレアーゼの例は本明細書で提供される。
【0075】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ:ジンクフィンガーヌクレアーゼはDNA結合ドメインを持っており、DNA配列を正確にターゲティングできる。各ジンクフィンガーは所望のDNA配列の一部を認識でき、それゆえ特定の配列に結合するようにモジュール式に組み立てることができる。結合ドメインは、DNAの二本鎖切断を引き起こす制限酵素の切断を誘導する。
【0076】
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN):転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)もDNA結合ドメインとDNAを切断するヌクレアーゼを含む。DNA結合領域には、それぞれ目的の標的DNA配列の1塩基対を認識するアミノ酸リピートが含まれる。ヌクレアーゼはDNAに二本鎖切断を引き起こす。
【0077】
CRISPR/Cas:クラスター化され規則的間隔で配置された短い回文型の反復配列(CRISPR)/CRISPR関連タンパク質(Cas)は、Casタンパク質と複合体化したガイドRNAを含むゲノム編集法である。ガイドRNAは、ジンクフィンガーやTALENが必要とするコンストラクトの組み立てとは対照的に、単純な相補的塩基対形成によって所望のDNA配列と一致するように設計できる。結合したCasはDNAに二本鎖切断を引き起こす。実施形態では、Casタンパク質はCas9を含む。実施形態では、Casタンパク質は、Cas9、Cas12、Cas12a、Cas13、Cas14、またはCasΦを含む。実施形態では、Casタンパク質は、Cas3、Cas8、Cas10、Cas11、Cas12、Cas12a、Cas13、Cas14、またはCasΦを含む。
【0078】
D.Cre組換え酵素
Cre(Cre組換え酵素)は、フリッパーゼ(Flp)やD6特異的組換え酵素(Dre)を含むチロシン部位特異的組換え酵素(T-SSR)の一つである。バクテリオファージP1のcre(環化組換え酵素)遺伝子から産生される38kDaのDNA組換え酵素として発見された。これはloxP(locus of x-over, P1)と呼ばれる特定のDNA断片配列を認識し、2つのloxP部位間のDNA配列の部位特異的欠失を媒介する。loxP部位は34bpの配列で、2つの13bpの逆方向リピートおよび回文リピート、および8bpのコア配列を含む。
【0079】
本明細書でさらに述べるように、リーダー配列と導入遺伝子をコードするレポーター配列の間に、loxP隣接「停止」配列(転写終結エレメント)を適切に挿入すると、遺伝子の発現が遮断される。コンディショナルレポーター系統をスイッチ系統と交配した後、Cre組換え酵素がレポーターの前の停止エレメントを除去し、Cre発現細胞の核内でレポーターの発現をオンにする。その結果、これらの細胞は、細胞表面のアフィニティタグと細胞内の蛍光マーカーで恒久的に標識される。このプロセスを
図1Bに模式的に示す。
【0080】
Creが組織特異的プロモーターの制御下にあるマウス系統は何千も開発されている。つまり、Creはマウスの特定の組織でのみ発現している。本明細書でさらに述べるように、異なるスイッチ系統に交配することで、目的の異なる細胞をレポータータンパク質で標識し、ラージスケールの磁気ベースの方法またはフローベースの方法で単離できる。
【0081】
E.げっ歯類の免疫グロブリン
ヒトと同様、マウスとラットには5つの抗体アイソタイプ(IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM)がある。それぞれのアイソタイプは異なる重鎖を持つ。アイソタイプはクラスと呼ばれることもある。ナイーブB細胞はIgMおよびIgDを産生する。B細胞が成熟する過程で、アイソタイプスイッチングにより、成熟B細胞はIgG、IgA、またはIgEのアイソタイプおよびサブクラスのいずれかを産生する。アイソタイプによってインビボでの半減期は異なり、12時間から8日間の範囲である。
【0082】
IgA、IgD、およびIgGの重鎖は、3つの免疫グロブリン(Ig)ドメインを持つ定常領域を持っている。他のタイプの重鎖は、免疫グロブリンドメインの数が異なる場合がある。IgEおよびIgMの重鎖は、4つの免疫グロブリンドメインを持つ定常領域を持っている。上記のアイソタイプの各重鎖は、転写時の選択的スプライシングイベントにより、C末端領域に膜結合型と分泌型を有する。膜結合型mRNAは、C末端にさらに2つのエキソンを含む。したがって、膜結合型重鎖のタンパク質は、膜貫通ドメインと細胞質C末端尾部を持つ、より長いタンパク質となる。すべてのアイソタイプの重鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを持つ可変領域を持つ。
【0083】
各軽鎖(カッパまたはラムダのいずれか)は、1つの定常免疫グロブリンドメインと1つの可変免疫グロブリンドメインを持つ。ラットとマウスでは、カッパとラムダの軽鎖使用率はおよそ99対1であり、抗体発現細胞の約99%がカッパ軽鎖を発現していることを意味する。マウス免疫グロブリンカッパ(カッパ)軽鎖多遺伝子ファミリーは、定常領域部位(Cカッパ)、4つの接合領域遺伝子、および約95のカッパ可変(Vカッパ)領域ファミリーを含む。
【0084】
F.トランスジェニック動物
「トランスジェニック動物」とは、外来性の核酸配列が染色体外エレメントとして細胞の一部に存在するか、生殖細胞系列のDNA(すなわち、細胞のほとんどまたはすべてのゲノム配列)に安定的に組み込まれた非ヒト動物、通常は哺乳動物である。本明細書の実施形態では、トランスジェニック動物は、当該技術分野で周知の方法にしたがって、例えば宿主動物の胚または胚性幹細胞を遺伝子操作することにより、そのようなトランスジェニック動物の生殖細胞系列に導入された外因性核酸を含む。本明細書の実施形態では、トランスジェニック動物は、本明細書に記載の核酸レポーターコンストラクトより多くを含む。実施形態では、トランスジェニック動物は、トランスジェニック動物によって産生される産物、例えば、酵素または免疫グロブリンなどのタンパク質、またはDNAまたはRNAなどの核酸をコードする1つ以上の付加的な核酸を含む。具体的な態様では、本明細書の方法は、本明細書に記載のレポーターコンストラクトをコードする核酸とともに部分的に導入されたヒト免疫グロブリン領域を含むトランスジェニック動物の生成を提供する。
【0085】
実施形態では、トランスジェニック動物はげっ歯類、例えばマウスまたはラットである。実施形態では、トランスジェニックげっ歯類は、創薬目的で部分的または完全なヒト抗体を作製するために、ヒト免疫グロブリン配列と内因性マウス免疫グロブリン領域を含む。このようなマウスの例としては、例えば、米国特許第7,145,056号; 7,064,244号;7,041,871号;6,673,986号;6,596,541号;6,570,061号;6,162,963号;6,130,364号;6,091,001号;6,023,010号;5,593,598号;5,877,397号;5,874,299号;5,814,318号;5,789,650号;5,661,016号;5,612,205号;および5,591,669号に記載されものを含み、これらは参照により本明細書に援用される。実施形態では、トランスジェニックげっ歯類は、ゲノムが、欠失し、改変免疫グロブリン部位可変領域と置換された内因性マウス免疫グロブリン部位可変領域全体を含むトランスジェニックマウスである。このようなマウスの例としては、例えば、米国特許第10,881,084号および米国特許出願公開第2020/0190218に記載されているものを含む。実施形態では、トランスジェニックマウスはヒトまたは部分的にヒトの抗体を発現するように改変される。他の実施形態では、トランスジェニックマウスはイヌ、ウマ、またはウシの抗体を発現するように改変される。米国特許出願公開第10,793,829号、2020/0308307号および2021/0000087号、および国際公開第2021/003152号を参照のこと。
【0086】
G.セルソーティング方法
蛍光活性化セルソーティング(FACS)は、フローサイトメトリーの特殊なタイプである。本方法は、不均一な細胞の混合物を、各細胞の特異的な光散乱と蛍光特性に基づいて、一度に1細胞ずつ、2つ以上の容器にソーティングできる。FACSは、この技術のために設計されたセルソーティング装置を用いて行われる。FACSは、個々の細胞からの蛍光シグナルを迅速、客観的、および定量的に記録し、特に関心のある細胞を物理的に分離する。
【0087】
実施形態では、FACSは一般に以下のように行われる。ソーティングされる細胞の懸濁液は、狭く急速に流れる液体の流れの中心に巻き込まれる。流れは、直径に対して細胞間の間隔が大きくなるように配置される。振動メカニズムによって、細胞の流れは個々の液滴に分解される。システムは、液滴1つにつき複数の細胞が存在する確率が低くなるように調整される。流れが液滴に分かれる直前に、流れは蛍光測定ステーションを通過し、そこで各細胞の蛍光特性が測定される。帯電リングは、ストリームが液滴に分かれるちょうどその地点に設置される。直前の蛍光強度測定に基づいてリングに電荷がかけられ、液滴が流れから離れるときに反対の電荷が液滴に捕捉される。帯電した液滴は、静電偏向システムを通って落下し、その帯電に基づいて液滴を容器に方向転換させる。いくつかのシステムでは、電荷は流れに直接印加され、分離する液滴は流れと同じ符号の電荷を保持する。その後、液滴が途切れた後、ストリームはニュートラルに戻り、次の液滴が測定およびソーティングされる。
【0088】
磁気活性化セルソーティング(MACS;Miltenyi Biotech)は、細胞表面のマーカーによって細胞を分離する方法である。実施形態では、MACSシステムは超常磁性ナノ粒子およびカラムを使用する。超常磁性ナノ粒子は100nmオーダーのナノ粒子である。ナノ粒子は標的にする細胞にタグを付け、カラム内に捕捉する。カラムは永久磁石の間に置かれ、磁性粒子と細胞の複合体がそこを通過するとき、タグ付けされた細胞が捕捉されるようになっている。磁性ナノ粒子は、その表面に特定のマーカーを結合させる試薬でコーティングされている。マーカーを発現する細胞は磁性ナノ粒子に付着する。ビーズと細胞をインキュベートした後、溶液を強磁場中のカラムに移す。ナノ粒子に付着した細胞(マーカーを発現している)はカラムに留まり、他の細胞(マーカーを発現していない)はカラムを通過する。
【0089】
実施形態では、細胞は細胞表面に発現したアフィニティタグを用いてソーティングされる。この目的のためのアフィニティタグは本明細書に記載される。これらの実施形態では、当該技術分野で公知の方法を用いて、アフィニティタグに結合するアフィニティ精製カラムまたは樹脂を用いて細胞をソーティングできる。非限定的な例として、細胞がその表面にStrepIIタグを発現している場合、StrepIIタグに結合する樹脂、例えばStrep-Tactin(登録商標)Sepharose(登録商標)(IBA Lifesciences)を用いて細胞を捕捉することができ、したがってソーティングできる。
【0090】
H.コンディショナルレポーター核酸コンストラクト
実施形態では、本明細書で提供されるのは、リーダー配列、LoxP-Stop-LoxPカセット、およびアフィニティタグ、膜貫通(TM)ドメイン、および蛍光レポータータンパク質をコードする膜貫通レポーターカセットを含む核酸コンストラクトである。この核酸コンストラクトの実施形態を、本明細書では「コンディショナルレポーター核酸コンストラクト」と呼ぶことがある。
【0091】
前記コンストラクトの実施形態では、リーダー配列はLoxP-Stop-LoxPカセットの上流に存在する。実施形態では、リーダー配列はLoxP-Stop-LoxPカセットの下流に存在する。
【0092】
実施形態では、LoxP-Stop-LoxPカセットは停止エレメント、例えば、翻訳または転写を終結させるいずれかのタイプの配列を含む。実施形態では、停止エレメントは1つ以上のSV40ポリアデニル化配列を含む。
【0093】
実施形態では、LoxP-Stop-LoxPカセットは、転写の終結を引き起こす配列に隣接する2つのLoxP部位を含む。実施形態では、LoxP-Stop-LoxPカセットは、転写の終結を引き起こすLoxP隣接ポリアデニル化配列を含む。実施形態では、ポリアデニル化シグナルはSV40、hGH、BGH、またはrbGlobポリアデニル化シグナルである。実施形態では、LoxP-Stop-LoxPカセットはポリアデニル化配列のLoxP隣接トリプルリピートを含む。実施形態では、LoxP-Stop-LoxPカセットはポリアデニル化配列のLoxP-flankedダブルリピートを含む。実施形態では、LoxP-Stop-LoxPカセットはLoxP隣接シングルポリアデニル化配列を含む。
【0094】
実施形態では、LoxP-Stop-LoxPカセットはSV40ポリアデニル化配列のLoxP隣接トリプルリピートを含む。実施形態では、LoxP-Stop-LoxPカセットはSV40ポリアデニル化配列のLoxP隣接ダブルリピートを含む。実施形態では、LoxP-Stop-LoxPカセットはLoxP隣接シングルSV40ポリアデニル化配列を含む。
【0095】
実施形態では、停止エレメントは、翻訳の終結を引き起こす1つ以上の終止コドンを含む。実施形態では、LoxP-Stop-LoxPカセットはLoxP隣接終止コドンを含む。実施形態では、終止コドンはTAG、TAA、またはTGAである。
【0096】
実施形態では、核酸コンストラクトは、一本鎖DNA、二本鎖DNA、プラスミド、またはウイルスベクターを含む。実施形態では、核酸コンストラクトは直鎖DNAである。実施形態では、核酸コンストラクトは環状DNAである。
【0097】
実施形態では、核酸コンストラクトは、非ヒト哺乳動物のゲノム中の第1の標的配列および第2の標的配列に相同である第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームをさらに含む。相同領域は、本明細書に記載され当該技術分野で公知の方法を用いて、核酸コンストラクトを非ヒト哺乳動物のゲノムに組み込むことを可能にする。実施形態では、核酸コンストラクトは、非ヒト哺乳動物におけるセーフハーバー部位内の第1の標的配列および第2の標的配列にそれぞれ相同である第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームをさらに含む。
【0098】
実施形態では、第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームは、それぞれ独立して、約15ヌクレオチドから約12000ヌクレオチドを含む。実施形態では、第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームは、それぞれ独立して、約30ヌクレオチドから約11000ヌクレオチドを含む。実施形態では、第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームは、それぞれ独立して、約50ヌクレオチドから約10000ヌクレオチドを含む。実施形態では、第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームは、それぞれ独立して、約100ヌクレオチドから約7500ヌクレオチドを含む。実施形態では、第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームは、それぞれ独立して、約200ヌクレオチドから約5000ヌクレオチドを含む。実施形態では、第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームは、それぞれ独立して、約300ヌクレオチドから約2500ヌクレオチドを含む。
【0099】
実施形態では、セーフハーバー部位は、新たな遺伝要素が予測通りに機能し、宿主細胞または生物に危険をもたらす宿主ゲノムの変化を引き起こさないように、新しい遺伝物質の組み込みを受け入れることができるゲノム中のいずれかの部位である。実施形態では、セーフハーバー部位はマウスセーフハーバー部位である。実施形態では、セーフハーバー部位はラットセーフハーバー部位である。実施形態では、セーフハーバー部位は、マウスゲノムの6番染色体上のRosa26部位を含む。実施形態では、セーフハーバー部位はマウスゲノムの11番染色体上のHipp11部位を含む。
【0100】
実施形態では、核酸コンストラクトは内因性プロモーターを用いて発現する。実施形態では、核酸コンストラクトは、セーフハーバー部位に位置する内因性プロモーターを用いて発現する。
【0101】
実施形態では、核酸コンストラクトはプロモーターをさらに含む。実施形態では、プロモーターは哺乳動物構成的プロモーターである。実施形態では、プロモーターはヒトプロモーターである。実施形態では、プロモーターはマウスプロモーターである。実施形態では、プロモーターはラットプロモーターである。実施形態では、プロモーターはウイルスプロモーターである。実施形態では、プロモーターはCAGプロモーターを含む。実施形態では、プロモーターはCAG、CMV、EF1a、SV40、PGK1、Ubc、またはヒトベータアクチンプロモーターを含む。
【0102】
実施形態では、リーダー配列は分泌シグナルペプチドを含む。実施形態では、分泌シグナルペプチドはIL-2リーダー配列である。実施形態では、分泌シグナルペプチドは、ヒトOSM、VSV-GマウスIgカッパ、ヒトIgG2H、BM40、セクリコンン(Secrecon)、ヒトIgKVIII、CD33、tPA、ヒトキモトリプシノーゲン、ヒトトリプシノーゲン-2、ヒトIL-12、またはヒト血清アルブミンシグナルペプチドである。実施形態では、分泌シグナルペプチドは、IL-2リーダー配列MYRMQLLSCIALSLALVTNS(配列番号2)を含む。当業者であれば、シグナルペプチドは当該技術分野で公知のアルゴリズム、例えばSignalP-5.0 (www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)やSecretomeP 2.0 (www.cbs.dtu.dk/services/SecretomeP/)を用いて予測できることを理解するであろう。
【0103】
核酸コンストラクトのアフィニティタグは、コンストラクトによって発現されたタンパク質を後で単離または精製するために使用できる。実施形態では、アフィニティタグは、StrepII、ヘキサヒスタジン、FLAG、HA、Myc、VA、GST、β-GAL、MBP、またはVSV-Gタグを含む。実施形態では、アフィニティタグは約1から約18個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約2から約15個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは約3から約10個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグはタグの3個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、または約18個のタグのタンデムリピートを含む。
【0104】
実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグを含む。実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約1から約18個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約2から約15のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約3から約10個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグの3個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、または約18個のタンデムリピートを含む。実施形態では、タンデムリピートはリピート間にタグリンカーを有する。実施形態では、リンカーはジペプチドまたはトリペプチドである。実施形態では、タグリンカーはジペプチドSer-Alaである。
【0105】
実施形態では、StrepIIタグは、WSHPQFEK(配列番号1)の8個のアミノ酸のペプチド配列を含む。実施形態では、アフィニティタグは、WSHPQFEKSAWSHPQFEKSAWSHPQFEK(配列番号3)を含む。
【0106】
膜貫通レポーターカセットによってコードされる膜貫通ドメインは、核酸コンストラクトを発現する細胞の表面にアフィニティタグを提示することを可能にする。実施形態では、膜貫通ドメインは疎水性αヘリックスを含む。実施形態では、膜貫通ドメインはIgG膜貫通ドメインを含む。実施形態では、膜貫通ドメインはヒトIgG1膜貫通ドメインを含む。実施形態では、膜貫通ドメインはマウスIgG膜貫通ドメインを含む。実施形態では、膜貫通ドメインは、マウスIgG1、IgG2a、IgG2b、またはIgG2c膜貫通ドメインを含む。実施形態では、膜貫通ドメインは、マウスタンパク質Tmem53、Lrtm1、またはNrg1の膜貫通ドメインを含む。
【0107】
蛍光レポータータンパク質は、核酸コンストラクトを発現している細胞の検出を可能にする。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、またはオレンジ色蛍光タンパク質を含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は赤色蛍光タンパク質(RFP)を含む。実施形態では、赤色蛍光タンパク質は、単量体チェリー(mCherry)またはタンデム二量体トマト(tdTomato)である。
【0108】
実施形態では、核酸コンストラクトは、
図1Aに模式的に示される核酸コンストラクトであり、ここで、CAGGSはCAGプロモーターを表し、Lはリーダーを表し、示されるように配置されたLoxP-Stop-LoxPカセットを表し、STX3はStrep-IIタグの3個のタンデムリピートを表し、TMは膜貫通ドメインを表し、およびGFPは緑色蛍光タンパク質レポーターを表す。
【0109】
I.コンディショナルレポーター改変細胞および生物の生成方法
実施形態では、本明細書で提供されるのは、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を生成する方法であり、その方法は以下を含む:
(a)本明細書に記載のコンディショナルレポーター核酸コンストラクトを非ヒト哺乳動物細胞に導入すること;および
(b)非ヒト哺乳動物細胞にヌクレアーゼを導入し、前記ヌクレアーゼが前記非ヒト哺乳動物細胞のゲノムのセーフハーバー部位で一本鎖切断または二本鎖切断を引き起こし、核酸コンストラクトが相同組換えにより前記非ヒト哺乳動物細胞の前記セーフハーバー部位のゲノムに組み込まれること。
【0110】
実施形態では、ヌクレアーゼは二本鎖切断を引き起こす。実施形態では、ヌクレアーゼは一本鎖切断(例えば、ニック)を引き起こす。
【0111】
ヌクレアーゼは、当該技術分野で公知の方法を用いて細胞内に導入できる。実施形態では、ヌクレアーゼを導入することは、ヌクレアーゼをコードする発現コンストラクトを導入することを含む。実施形態では、発現コンストラクトの導入はインジェクションまたはエレクトロポレーションによって行われる。実施形態では、ヌクレアーゼを導入することは、ヌクレアーゼをコードするプラスミドを導入することを含む。実施形態では、ヌクレアーゼを導入することは、ヌクレアーゼをコードするウイルスベクターを導入することを含む。実施形態では、ヌクレアーゼを導入することは、ヌクレアーゼをコードするmRNAを導入することを含む。実施形態では、mRNAは1つ以上の修飾塩基を含む。実施形態では、mRNAは脂質ナノ粒子に被包されている。実施形態では、プラスミド、ウイルスベクター、またはmRNAの導入は、インジェクションまたはエレクトロポレーションを介して行われる。実施形態では、ヌクレアーゼを導入することはヌクレアーゼタンパク質を細胞に直接導入することを含む。実施形態では、ヌクレアーゼタンパク質の細胞への直接導入は、インジェクションまたはエレクトロポレーションを介して行われる。
【0112】
実施形態では、ヌクレアーゼは本明細書に記載のヌクレアーゼである。実施形態では、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、またはクラスター化され規則的間隔で配置された短い回文型の反復配列(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)を含む。実施形態では、gRNAは、認識部位を標的にするCRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化型CRISPR RNA(tracrRNA)を含む。実施形態では、CRISPR-Casタンパク質はCas9を含む。実施形態では、Casタンパク質は、Cas9、Cas12 Cas12a、Cas13、Cas14、またはCasΦを含む。実施形態では、CRISPR-Casタンパク質は、Cas3、Cas8、Cas10、Cas11、Cas12、Cas12a、Cas13、Cas14、またはCasΦを含む。
【0113】
実施形態では、非ヒト哺乳動物細胞は、科学研究に使用される哺乳動物由来である。実施形態では、非ヒト哺乳動物細胞はげっ歯類細胞である。実施形態では、げっ歯類細胞はラット細胞またはマウス細胞である。
【0114】
実施形態では、セーフハーバー部位は、新しい遺伝要素が予測可能に機能し、宿主細胞または生物に危険をもたらす宿主ゲノムの変化を引き起こさないように、新しい遺伝物質の組み込みを受け入れることができるゲノム中のいずれかの部位である。実施形態では、セーフハーバー部位はマウスセーフハーバー部位である。実施形態では、セーフハーバー部位はラットのセーフハーバー部位である。実施形態では、セーフハーバー部位は6番染色体上のRosa26部位を含む。実施形態では、セーフハーバー部位はマウスゲノムの11番染色体上のHipp11部位を含む。
【0115】
実施形態では、非ヒト哺乳動物細胞は多能性細胞である。実施形態では、多能性細胞は非ヒト接合子である。実施形態では、多能性細胞はマウス接合子である。実施形態では、多能性細胞はラット接合子である。実施形態では、多能性細胞は非ヒト胚性幹(ES)細胞である。実施形態では、多能性細胞はマウス胚性幹(ES)細胞またはラット胚性幹(ES)細胞である。
【0116】
実施形態では、接合子に本明細書に記載の核酸コンストラクトをインジェクションする。実施形態では、核酸コンストラクトは接合子の前核にインジェクションされる。実施形態では、マイクロインジェクション接合子は、擬似妊娠中の雌げっ歯類の卵管に移植される。実施形態では、擬似妊娠雌げっ歯類はマウスである。実施形態では、擬似妊娠雌げっ歯類はラットである。実施形態では、移植された接合子は胎児に成長し、出生して遺伝子改変非ヒト哺乳動物を提供する。実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物はマウスである。実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物はラットである。
【0117】
実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を生成する方法は、核酸コンストラクトがセーフハーバー部位で組み込まれた遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を単離することをさらに含む。
【0118】
実施形態では、上記の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞の生成方法により生成された遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞も本明細書で提供される。実施形態では、非ヒト哺乳動物はげっ歯類である。実施形態では、非ヒト哺乳動物はマウスまたはラットである。
【0119】
遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を生成する方法の実施形態では、本方法は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物を生成する工程をさらに含む。実施形態では、本方法はさらに、単離された細胞を胚盤胞にインジェクションし、セーフハーバー部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を生成することを含む。
【0120】
実施形態では、本開示は、本方法により生成された遺伝子改変非ヒトトランスジェニック哺乳動物を提供する。実施形態では、トランスジェニック哺乳動物はげっ歯類である。実施形態では、げっ歯類はラットまたはマウスである。
【0121】
トランスジェニック非ヒト哺乳動物を生成するための方法の実施形態では、本方法は、アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質を発現する細胞を有する非ヒト哺乳動物を取得するために、セーフハーバー部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を、Cre組換え酵素を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物と交配させることをさらに含む。
【0122】
本方法の実施形態では、セーフハーバー部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、Rosa26部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むマウスであり、Cre組換え酵素を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物はマウスである。
【0123】
本方法の実施形態では、セーフハーバー部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、Hipp11部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むマウスであり、Cre組換え酵素を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物はマウスである。
【0124】
実施形態では、Cre組換え酵素を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、組織特異的プロモーターの制御下でCre組換え酵素を発現する。実施形態では、Cre組換え酵素を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、細胞発生中の特定の時期にのみ活性化されるプロモーターの制御下でCre組換え酵素を発現する。
【0125】
実施形態では、トランスジェニック非ヒト哺乳動物はCreスイッチ系統マウスであり、例えば、Mouse Genome Informaticsデータベース: www.informatics.jax.org/home/recombinaseで見つけられるCreスイッチ系統である。実施形態では、Creスイッチ系統マウスはBlimp1-CreERT2マウス系統である。非限定的な例として、このBlimp1-CreERT2は、Blimp1転写因子を発現する形質芽細胞や形質細胞を標識するために、上述の遺伝子改変非ヒトトランスジェニック哺乳動物との交配に用いることができる。実施形態では、Creスイッチ系統マウスは、JchaincreERT2マウス系統である。実施形態では、JchaincreERT2マウスは、すべての免疫グロブリンアイソタイプを含む形質細胞をより特異的に標識するために、本明細書に記載の遺伝子改変非ヒトトランスジェニック哺乳動物と交配できる。実施形態では、Creスイッチ系統マウスはXbp1マウス系統である。実施形態では、Creスイッチ系統マウスはIrf4マウス系統である。
【0126】
実施形態では、トランスジェニックマウスにおけるCre発現は組織特異的である。実施形態では、トランスジェニックマウスにおけるCre発現は、細胞の発生状態に対し特異的である。
【0127】
実施形態では、セーフハーバー部位に組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を、Cre組換え酵素を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物と交配させて、アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質を発現する細胞を有する非ヒト哺乳動物を取得することを含む、トランスジェニック非ヒト哺乳動物を生成する方法は、
図1Bの模式図によって表されるように行われる。本方法で生成したトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、
図1Bに示すように機能する。組織特異的プロモーターが活性化していない細胞では、停止配列がコンストラクトに残っているため、導入遺伝子はサイレントである。組織特異的プロモーターが発現すると、発現したCreが停止配列を切除し、導入遺伝子が発現する。
【0128】
実施形態では、本明細書で提供されるのは、上述の方法によって生成されたアフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質を発現する細胞を有する遺伝子改変非ヒト哺乳動物である。
【0129】
J.コンディショナルレポーター改変細胞
実施形態では、本明細書で提供されるのは、セーフハーバー部位に組み込まれた本明細書に記載のコンディショナルレポーター核酸コンストラクトを含むゲノムを含む遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞である。前記細胞の実施形態では、セーフハーバー部位は、マウスゲノムの26番染色体上のRosa26部位を含む。前記細胞の実施形態では、セーフハーバー部位はマウスゲノムの11番染色体上のHipp11部位を含む。
【0130】
実施形態では、細胞はハイブリドーマである。実施形態では、細胞は幹細胞である。実施形態では、幹細胞は胚性幹細胞である。実施形態では、幹細胞は成体幹細胞である。実施形態では、幹細胞は人工多能性幹細胞である。実施形態では、幹細胞は周産期幹細胞である。実施形態では、細胞は不死化細胞である。
【0131】
実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞は、アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質を発現する。実施形態では、アフィニティタグは非ヒト哺乳動物細胞の細胞表面に発現する。非ヒト哺乳動物細胞の細胞表面に発現可能なアフィニティタグの例を本明細書に記載する。
【0132】
実施形態では、アフィニティタグは、StrepII、ヘキサヒスタジン、FLAG、HA、Myc、VA、GST、β-GAL、MBP、またはVSV-Gタグを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約1から約18個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約2から約15個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約3から約10個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、タグの3個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、または約18個のタグのタンデムリピートを含む。
【0133】
実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約1から約18個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約2から約15のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約3から約10のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの3個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、または約18個のタンデムリピートを含む。実施形態では、タンデムリピートは、リピート間にタグリンカーを有する。実施形態では、リンカーは、ジペプチドまたはトリペプチドである。実施形態では、タグリンカーは、ジペプチドSer-Alaである。
【0134】
実施形態では、StrepIIタグは、WSHPQFEK(配列番号1)の8個のアミノ酸のペプチド配列を含む。実施形態では、アフィニティタグは、WSHPQFEKSAWSHPQFEKSAWSHPQFEK(配列番号3)を含む。
【0135】
実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、非ヒト哺乳動物細胞の細胞質面に露出している。
【0136】
実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、またはオレンジ色蛍光タンパク質を含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は赤色蛍光タンパク質(RFP)を含む。実施形態では、赤色蛍光タンパク質は、単量体チェリー(mCherry)またはタンデム二量体トマト(tdTomato)である。
【0137】
K.コンディショナルレポーター改変細胞の単離方法
実施形態では、本明細書で提供されるのは、遺伝子改変非ヒト哺乳動物から取得された細胞を単離する方法であり、その方法は以下を含む:
(a)本明細書に記載の遺伝子改変コンディショナルレポーター非ヒト哺乳動物から細胞を取得すること;
(b)アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質の発現について、遺伝子改変非ヒト哺乳動物から取得された細胞をスクリーニングすること;および
(c)融合タンパク質を発現する細胞を単離すること。
【0138】
細胞を単離する方法の実施形態では、細胞は蛍光活性化セルソーティング(FACS)または磁気活性化セルソーティング(MACS)によりソーティングされる。実施形態では、細胞を単離する方法において、細胞は蛍光活性化セルソーティング(FACS)によりスクリーニングされる。実施形態では、細胞を単離する方法において、細胞は磁気活性化セルソーティング(MACS)によりソーティングされる。FACSとMACSの両方の技術は当該技術分野で公知であり、本明細書の他の箇所に記載されている。実施形態では、FACSまたはMACSのいずれかを用いた細胞の分離を
図1Cに模式的に示す。細胞を単離する方法の実施形態では、本明細書に記載されるように、細胞の表面に発現させたアフィニティタグを用いて細胞を分離する。アフィニティタグを用いて細胞を分離する実施形態では、当該技術分野で公知の方法を用いて、アフィニティタグを結合するアフィニティカラムまたはアフィニティ樹脂を用いて細胞を分離する。
【0139】
実施形態では、アフィニティタグは遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞の細胞表面に発現する。
【0140】
実施形態では、アフィニティタグは、StrepII、ヘキサヒスタジン、FLAG、HA、Myc、VA、GST、β-GAL、MBP、またはVSV-Gタグを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約1から約18個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約2から約15個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約3から約10個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、タグの3個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、または約18個のタグのタンデムリピートを含む。
【0141】
実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約1から約18個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約2から約15個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約3から約10個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの3個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、または約18個のタンデムリピートを含む。実施形態では、タンデムリピートは、リピート間にタグリンカーを有する。実施形態では、リンカーは、ジペプチドまたはトリペプチドである。実施形態では、タグリンカーは、ジペプチドSer-Alaである。
【0142】
実施形態では、StrepIIタグは、WSHPQFEK(配列番号1)の8個のアミノ酸のペプチド配列を含む。実施形態では、アフィニティタグは、WSHPQFEKSAWSHPQFEKSAWSHPQFEK(配列番号3)を含む。
【0143】
実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、非ヒト哺乳動物細胞の細胞質面に露出する。
【0144】
実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、またはオレンジ色蛍光タンパク質を含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は赤色蛍光タンパク質(RFP)を含む。実施形態では、赤色蛍光タンパク質は、単量体チェリー(mCherry)またはタンデム二量体トマト(tdTomato)である。
【0145】
L.免疫グロブリンレポーター核酸コンストラクト
実施形態では、本明細書で提供されるのは、リンカー、リーダー配列、並びにアフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポーターをコードする膜貫通レポーターカセットを含む核酸コンストラクトである。この核酸コンストラクトの実施形態を、本明細書では「免疫グロブリンレポーター核酸コンストラクト」と呼ぶことがある。
【0146】
実施形態では、核酸コンストラクトは、一本鎖DNA、二本鎖DNA、プラスミド、またはウイルスベクターを含む。実施形態では、核酸コンストラクトは直鎖DNAである。実施形態では、核酸コンストラクトは環状DNAである。
【0147】
実施形態では、核酸コンストラクトは、非ヒト哺乳動物のゲノム中の第1の標的配列および第2の標的配列に相同である第1のホモロジーアーム、および第2のホモロジーアームをさらに含む。相同領域は、本明細書に記載され当該技術分野で公知の方法を用いて、核酸コンストラクトを非ヒト哺乳動物のゲノムに組み込むことを可能にする。実施形態では、核酸コンストラクトは、非ヒト哺乳動物における免疫グロブリン部位、例えば免疫グロブリン可変領域部位または免疫グロブリン定常領域部位、またはその中間の部位内の第1の標的配列および第2の標的配列にそれぞれ相同である第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームをさらに含む。実施形態では、核酸コンストラクトは、非ヒト哺乳動物における免疫グロブリン定常領域部位内の第1の標的配列および第2の標的配列にそれぞれ相同である第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームをさらに含む。
【0148】
実施形態では、第1の標的配列および第2の標的配列にそれぞれ相同である第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームであって、第1の標的配列および第2の標的配列は免疫グロブリン定常領域部位に隣接する。実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は免疫グロブリン軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位はカッパ軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位はラムダ軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は免疫グロブリン重鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域部位は、ガンマ、デルタ、アルファ、ミュー、またはイプシロン免疫グロブリン定常領域部位である。
【0149】
実施形態では、第1の標的配列は免疫グロブリン定常領域部位の上流に存在し、第2の標的配列は免疫グロブリン定常領域部位の終止コドンの下流に存在する。実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は免疫グロブリン軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位は免疫グロブリンカッパ定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位は免疫グロブリンラムダ定常領域部位である。
【0150】
実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は免疫グロブリン重鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域部位は、ガンマ、デルタ、アルファ、ミュー、またはイプシロン免疫グロブリン定常領域部位である。
【0151】
実施形態では、第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームは、それぞれ独立して、約15ヌクレオチドから約12000ヌクレオチドを含む。実施形態では、第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームは、それぞれ独立して、約30ヌクレオチドから約11000ヌクレオチドを含む。実施形態では、第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームは、それぞれ独立して、約50ヌクレオチドから約10000ヌクレオチドを含む。実施形態では、第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームは、それぞれ独立して、約100ヌクレオチドから約7500ヌクレオチドを含む。実施形態では、第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームは、それぞれ独立して、約200ヌクレオチドから約5000ヌクレオチドを含む。実施形態では、第1のホモロジーアームおよび第2のホモロジーアームは、それぞれ独立して、約300ヌクレオチドから約2500ヌクレオチドを含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、リンカーは、終止コドンと内部リボソーム進入部位(IRES)を含む。実施形態では、リンカーは、プロテアーゼ認識部位および自己切断ペプチドを含む。実施形態では、リンカーは、ペプチドリンカー、プロテアーゼ認識部位、および自己切断ペプチドを有するリーキー終止コドン(LSC)を含む。
【0153】
プロテアーゼ認識部位の実施形態を本明細書に記載する。実施形態では、プロテアーゼ認識部位は、フーリンプロテアーゼ認識部位を含む。実施形態では、フーリンプロテアーゼ認識部位は、Arg-X-Arg-Argのペプチドをコードする核酸配列を含む。実施形態では、Xは疎水性アミノ酸である。実施形態では、Xは親水性アミノ酸である。実施形態では、Xはリシンである。実施形態では、正統的には、フーリンプロテアーゼ認識部位は、ペプチドX-Arg-X-Lys-Arg-XまたはX-Arg-X-Arg-Arg-Xをコードする核酸配列を含む。実施形態では、Xは疎水性アミノ酸である。実施形態では、疎水性アミノ酸は、Gly、Ala、Ile、Leu、Met、Val、Phe、Trp、またはTyrを含む。実施形態では、Xは親水性アミノ酸である。実施形態では、親水性アミノ酸はリシンである。実施形態では、フーリンプロテアーゼ認識部位は、ペプチドArg-Lys-Arg-Argをコードする核酸配列を含む。実施形態では、フーリンプロテアーゼ認識部位は、ペプチドArg-Arg-Arg-Argをコードする核酸配列を含む。実施形態では、フーリンプロテアーゼ認識部位は、ペプチドArg-Arg-Lys-Argをコードする核酸配列を含む。実施形態では、フーリンプロテアーゼ認識部位は、ペプチドArg-Lys-Lys-Argをコードする核酸配列を含む。実施形態では、フーリンプロテアーゼ部位の直前のLys残基が欠失している。実施形態では、フーリンプロテアーゼ認識部位は、Fangら、Molecular Therapy 15(6):1153-1159(2007)に記載されているようなフーリンプロテアーゼ認識部位であり、これは参照により本明細書に援用される。
【0154】
実施形態では、プロテアーゼはエンドプロテアーゼである。実施形態では、プロテアーゼは哺乳動物のエンドプロテアーゼである。実施形態では、プロテアーゼは核酸コンストラクトを含む細胞で内因的に発現するエンドプロテアーゼである。実施形態では、プロテアーゼ認識部位は、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、サーモリシン、ペプシン、グルタミルエンドペプチダーゼ、またはネプリライシン認識部位を含む。
【0155】
自己切断ペプチドの実施形態が本明細書に記載されている。実施形態では、自己切断ペプチドは2A自己切断ペプチドを含む。実施形態では、自己切断ペプチドは、T2A(EGRGSLLTCGDVEENPGP;配列番号:4)、P2A(ATNFSLLKQAGDVEENPGP;配列番号:5)、E2A(QCTNYALLKLAGDVESNPGP;配列番号:6)、またはF2A(VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP;配列番号:7)自己切断ペプチドを含む。
【0156】
リーキー終止コドンの実施形態が本明細書に記載されている。実施形態では、リーキー終止コドンをコードする配列はTGACTAGを含む。実施形態では、リーキー終止コドンをコードする配列はTGACGGを含む。実施形態では、リーキー終止コドンをコードする配列はTAGCAATTAを含む。実施形態では、リーキー終止コドンをコードする配列はTAGCAATCAを含む。実施形態では、リーキー終止コドンをコードする配列はTGACTAを含む。
【0157】
リンカーがリーキー終止コドンを含む実施形態では、リーキー終止コドンは、コドンのある程度のリードスルーを可能にし、膜貫通レポーターカセットを発現させる。実施形態では、リーキーコドンのリードスルー転写は約5%の割合で発生する。実施形態では、リーキーコドンのリードスルー転写は約1%から約10%の割合で発生する。実施形態では、リードスルー転写が発生しない場合、免疫グロブリンは内在性のフォーマットで発現され、膜貫通レポーターカセットは発現されない。
【0158】
実施形態では、リンカーはペプチドリンカーであり、例えば長さ2から24残基のアミノ酸鎖である。実施形態では、ペプチドリンカーはジペプチドリンカーである。実施形態では、リンカーはトリペプチドリンカーである。実施形態では、リンカーは4アミノ酸の長さである。実施形態では、リンカーはLeu-Glyを含む。実施形態では、リンカーはGly-Ser-Glyを含む。実施形態では、リンカーはLeu-Gly-Ser-Glyを含む。実施形態では、リンカーは約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10個のアミノ酸残基を含む。実施形態では、ペプチドリンカーは4から24アミノ酸残基を含む。実施形態では、ペプチドリンカーは5から20アミノ酸残基を含む。実施形態では、ペプチドリンカーは7から15のアミノ酸残基を含む。
【0159】
実施形態では、リーダー配列は分泌シグナルペプチドをさらに含む。実施形態では、分泌シグナルペプチドはIL-2リーダー配列である。実施形態では、分泌シグナルペプチドは、ヒトOSM、VSV-GマウスIgカッパ、ヒトIgG2H、BM40、セクレコン(Secrecon)、ヒトIgKVIII、CD33、tPA、ヒトキモトリプシノーゲン、ヒトトリプシノーゲン-2、ヒトIL-2、またはヒト血清アルブミンシグナルペプチドである。実施形態では、分泌シグナルペプチドは、IL-2リーダー配列MYRMQLLSCIALSLALVTNS(配列番号2)を含む。当業者であれば、シグナルペプチドは当該技術分野で公知のアルゴリズム、例えばSignalP-5.0(www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)およびSecretomeP 2.0(www.cbs.dtu.dk/services/SecretomeP/)を用いて予測できることを理解するであろう。
【0160】
核酸コンストラクトのアフィニティタグは、コンストラクトによって発現されたタンパク質を後で単離または精製するために使用できる。実施形態では、アフィニティタグは、StrepII、ヘキサヒスタジン、FLAG、HA、Myc、VA、GST、β-GAL、MBP、またはVSV-Gタグを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約1から約18個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約2から約15個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約3から約10個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、タグの3個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、または約18個のタグのタンデムリピートを含む。
【0161】
実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約1から約18個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約2から約15個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約3から約10個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの3個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、または約18個のタンデムリピートを含む。実施形態では、タンデムリピートはリピート間にタグリンカーを有する。実施形態では、タグリンカーはジペプチドまたはトリペプチドである。実施形態では、タグリンカーはジペプチドSer-Alaである。実施形態では、タグリンカーは、(G4S)2リンカー(GGGGSGGGGS;配列番号8)を含む。実施形態では、タグリンカーは、(G4S)2リンカー(GGGGSGGGGS;配列番号8)である。
【0162】
実施形態では、StrepIIタグは、WSHPQFEK(配列番号1)の8個のアミノ酸のペプチド配列を含む。実施形態では、アフィニティタグは、WSHPQFEKSAWSHPQFEKSAWSHPQFEK(配列番号3)を含む。
【0163】
膜貫通レポーターカセットによってコードされる膜貫通ドメインは、核酸コンストラクトを発現する細胞の表面にアフィニティタグを提示することを可能にする。実施形態では、膜貫通ドメインは疎水性αヘリックスを含む。実施形態では、膜貫通ドメインはIgG膜貫通ドメインである。実施形態では、膜貫通ドメインはヒトIgG1膜貫通ドメインである。実施形態では、膜貫通ドメインはマウスIgG膜貫通ドメインを含む。実施形態では、膜貫通ドメインは、マウスIgG1、IgG2a、IgG2b、またはIgG2c膜貫通ドメインを含む。実施形態では、膜貫通ドメインはマウスタンパク質Tmem53、Lrtm1、またはNrg1の膜貫通ドメインである。
【0164】
蛍光レポータータンパク質は、核酸コンストラクトを発現している細胞の検出を可能にする。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、またはオレンジ色蛍光タンパク質を含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は赤色蛍光タンパク質(RFP)を含む。実施形態では、赤色蛍光タンパク質は、単量体チェリー(mCherry)またはタンデム二量体トマト(tdTomato)である。
【0165】
実施形態では、核酸コンストラクトは、軽鎖カッパ定常領域に組み込まれた特定の実施形態について
図2に模式的に示される核酸コンストラクトであり、ここで、黒い長方形はその領域のVおよびJセグメントを、LKはリンカー配列を、Lはリーダー配列を、STX3はStrep-IIタグの3個のタンデムリピートを、TMは膜貫通ドメインを、GFPは緑色蛍光タンパク質レポーターを表す。他の実施形態(図で示していない)では、核酸コンストラクトは軽鎖ラムダ定常領域または重鎖定常領域に組み込まれる。
【0166】
M.免疫グロブリンレポーター改変細胞および生物の生成方法
実施形態では、本明細書で提供されるのは、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を生成する方法であり、その方法は以下を含む:
(a)本明細書に記載の免疫グロブリンレポーター核酸コンストラクトを非ヒト哺乳動物細胞に導入すること;および
(b)非ヒト哺乳動物細胞にヌクレアーゼを導入し、前記ヌクレアーゼが前記非ヒト哺乳動物細胞のゲノム中の免疫グロブリン定常領域部位において一本鎖切断または二本鎖切断を引き起こし、前記核酸コンストラクトが相同組換えにより前記非ヒト哺乳動物細胞のゲノム中の免疫グロブリン定常領域部位に組み込まれること。
【0167】
実施形態では、ヌクレアーゼは二本鎖切断を引き起こす。実施形態では、ヌクレアーゼは一本鎖切断(例えば、ニック)を引き起こす。
【0168】
ヌクレアーゼは、当該技術分野で公知の方法を用いて細胞内に導入できる。実施形態では、ヌクレアーゼを導入することは、ヌクレアーゼをコードする発現コンストラクトを導入することを含む。実施形態では、発現コンストラクトの導入はインジェクションまたはエレクトロポレーションによって行われる。実施形態では、ヌクレアーゼを導入することは、ヌクレアーゼをコードするプラスミドを導入することを含む。実施形態では、ヌクレアーゼを導入することは、ヌクレアーゼをコードするウイルスベクターを導入することを含む。実施形態では、ヌクレアーゼを導入することは、ヌクレアーゼをコードするmRNAを導入することを含む。実施形態では、mRNAは1つ以上の修飾塩基を含む。実施形態では、mRNAは脂質ナノ粒子に被包されている。実施形態では、プラスミド、ウイルスベクターまたはmRNAの導入は、インジェクションまたはエレクトロポレーションを介して行われる。実施形態では、ヌクレアーゼを導入することはヌクレアーゼタンパク質を細胞に直接導入することを含む。実施形態では、ヌクレアーゼタンパク質の細胞への直接導入は、インジェクションまたはエレクトロポレーションを介して行われる。
【0169】
実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位は、免疫グロブリンカッパ定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位は、免疫グロブリンラムダ定常領域部位である。ある態様では、免疫グロブリン定常領域部位は、免疫グロブリン重鎖定常領域部位である。
【0170】
実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は、免疫グロブリン重鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域部位は、ガンマ、デルタ、アルファ、ミュー、またはイプシロン免疫グロブリン定常領域部位である。
【0171】
実施形態では、ヌクレアーゼは本明細書に記載のヌクレアーゼである。実施形態では、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、またはクラスター化され規則的間隔で配置された短い回文型の反復配列(CRISPR)関連(Cas)タンパク質およびガイドRNA(gRNA)を含む。実施形態では、gRNAは、認識部位を標的にするCRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化型CRISPR RNA(tracrRNA)とを含む。実施形態では、CRISPR-Casタンパク質はCas9を含む。実施形態では、Casタンパク質は、Cas9、Cas12、Cas12a、Cas13、Cas14、またはCasΦを含む。実施形態では、CRISPR-Casタンパク質は、Cas3、Cas8、Cas10、Cas11、Cas12、Cas12a、Cas13、Cas14、またはCasΦを含む。
【0172】
実施形態では、非ヒト哺乳動物細胞は、科学研究に使用される哺乳動物由来である。実施形態では、非ヒト哺乳動物細胞はげっ歯類細胞である。実施形態では、げっ歯類細胞はラット細胞またはマウス細胞である。
【0173】
実施形態では、非ヒト哺乳動物細胞は多能性細胞である。実施形態では、多能性細胞は非ヒト接合子である。実施形態では、多能性細胞はマウス接合子である。実施形態では、多能性細胞はラット接合子である。実施形態では、多能性細胞は非ヒト胚性幹(ES)細胞である。実施形態では、多能性細胞はマウス胚性幹(ES)細胞またはラット胚性幹(ES)細胞である。
【0174】
実施形態では、接合子に本明細書に記載の核酸コンストラクトをインジェクションする。実施形態では、核酸コンストラクトは接合子の前核にインジェクションされる。実施形態では、マイクロインジェクション接合子は、擬似妊娠中の雌げっ歯類の卵管に移植される。実施形態では、擬似妊娠雌げっ歯類はマウスである。実施形態では、擬似妊娠雌げっ歯類はラットである。実施形態では、移植された接合子は胎児に成長し、出生して遺伝子改変非ヒト哺乳動物を提供する。実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物はマウスである。実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物はラットである。
【0175】
実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を生成する方法は、核酸コンストラクトが免疫グロブリン定常領域部位で組み込まれた遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を単離することをさらに含む。
【0176】
実施形態では、上記の遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞の生成方法により生成された遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞も本明細書で提供される。実施形態では、非ヒト哺乳動物はげっ歯類である。
【0177】
遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞を生成する方法の実施形態では、本方法は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物を生成する工程をさらに含む。実施形態では、本方法はさらに、遺伝子編集材料を接合子にまたは改変された単離細胞を胚盤胞にインジェクションして、免疫グロブリン定常領域部位で組み込まれた核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を生成することを含む。
【0178】
実施形態では、本開示は、本方法により生成された遺伝子改変非ヒトトランスジェニック哺乳動物を提供する。実施形態では、トランスジェニック哺乳動物はげっ歯類である。実施形態では、げっ歯類はラットまたはマウスである。
【0179】
N.免疫グロブリンレポーター改変細胞
実施形態では、本明細書で提供されるのは、免疫グロブリン定常領域部位に組み込まれた、本明細書に記載の免疫グロブリンレポーター核酸コンストラクトを含むゲノムを含む遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞である。
【0180】
前記細胞の実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位は、免疫グロブリンカッパ定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常領域部位は、免疫グロブリンラムダ定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は、免疫グロブリン重鎖定常領域部位である。
【0181】
前記細胞の実施形態では、免疫グロブリン定常領域部位は、免疫グロブリン重鎖定常領域部位である。実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域部位は、ガンマ、デルタ、アルファ、ミュー、またはイプシロン免疫グロブリン定常領域部位である。
【0182】
実施形態では、免疫グロブリン発現細胞は免疫化哺乳動物から取得される。実施形態では、免疫化哺乳動物はげっ歯類である。実施形態では、免疫化哺乳動物はマウスまたはラットである。
【0183】
実施形態では、前記細胞は免疫グロブリン発現細胞である。実施形態では、免疫グロブリン発現細胞は未熟B細胞または未熟B細胞の子孫である。実施形態では、前記細胞はハイブリドーマ、幹細胞、または不死化細胞である。実施形態では、幹細胞は胚性幹細胞である。実施形態では、幹細胞は成体幹細胞である。実施形態では、幹細胞は人工多能性幹細胞である。実施形態では、幹細胞は周産期幹細胞(perinatal stem cell)である。
【0184】
実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞は、免疫グロブリンカッパ軽鎖を発現する。実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞は、免疫グロブリンラムダ軽鎖を発現する。実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞は、免疫グロブリン重鎖を発現する。
【0185】
実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞は、アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質を発現する。実施形態では、アフィニティタグは、非ヒト哺乳動物細胞の細胞表面に発現する。非ヒト哺乳動物細胞の細胞表面に発現可能なアフィニティタグの例を本明細書に記載する。
【0186】
実施形態では、アフィニティタグは、StrepII、ヘキサヒスタジン、FLAG、HA、Myc、VA、GST、β-GAL、MBP、またはVSV-Gタグを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約1から約18個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約2から約15個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約3から約10個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグはタグの3個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、または約18個のタグのタンデムリピートを含む。
【0187】
実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約1から約18個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約2から約15個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約3から約10個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの3個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、または約18個のタンデムリピートを含む。実施形態では、タンデムリピートはリピート間にタグリンカーを有する。実施形態では、タグリンカーはジペプチドまたはトリペプチドである。実施形態では、タグリンカーはジペプチドSer-Alaである。
【0188】
実施形態では、StrepIIタグは、WSHPQFEK(配列番号1)の8個のアミノ酸のペプチド配列を含む。実施形態では、アフィニティタグは、WSHPQFEKSAWSHPQFEKSAWSHPQFEK(配列番号3)を含む。
【0189】
実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、非ヒト哺乳動物細胞の細胞質面に露出する。
【0190】
実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、またはオレンジ色蛍光タンパク質を含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は赤色蛍光タンパク質(RFP)を含む。実施形態では、赤色蛍光タンパク質は、単量体チェリー(mCherry)またはタンデム二量体トマト(tdTomato)である。
【0191】
前記細胞の実施形態では、融合タンパク質の発現は内因性の免疫グロブリン転写制御因子により駆動される。実施形態では、内因性免疫グロブリン転写調節因子は内因性免疫グロブリン軽鎖転写調節因子である。実施形態では、内因性免疫グロブリン軽鎖転写調節因子は、プロモーターおよびマウス軽鎖部位内の他のシスエレメントを含む。実施形態では、内因性免疫グロブリン転写調節因子は、内因性免疫グロブリン重鎖転写調節因子である。実施形態では、内因性免疫グロブリン重鎖転写調節因子は、プロモーターおよびマウス重鎖部位における他のシスエレメントを含む。
【0192】
O.免疫グロブリンレポーター改変細胞の識別方法
実施形態では、本明細書で提供されるのは、遺伝子改変免疫グロブリンレポーター非ヒト哺乳動物から取得された免疫グロブリン発現細胞を識別する方法であり、その方法は以下を含む:
(a)本明細書に記載の遺伝子改変免疫グロブリンレポーター非ヒト哺乳動物から細胞を取得すること;
(b)アフィニティタグ、膜貫通ドメイン、および蛍光レポータータンパク質を含む融合タンパク質の発現について、遺伝子改変非ヒト哺乳動物から取得された細胞をスクリーニングすること;および
(c)融合タンパク質の発現に基づいて免疫グロブリン発現細胞を識別すること。
【0193】
実施形態では、細胞を単離する方法において、細胞は蛍光活性化セルソーティング(FACS)または磁気活性化セルソーティング(MACS)によりソーティングされる。実施形態では、細胞を単離する方法において、細胞は蛍光活性化セルソーティング(FACS)によりスクリーニングされる。実施形態では、細胞を単離する方法において、細胞は磁気活性化セルソーティング(MACS)によりソーティングされる。FACSとMACSの両方の技術は当該技術分野で知られており、本明細書の他の箇所に記載されている。実施形態では、免疫グロブリンレポーターを改変したげっ歯類から細胞を取得し、細胞をプールし、FACSまたはMACSのいずれかを用いて細胞を分離するプロセスの一例を
図3に模式的に示す。細胞を単離する方法の実施形態では、本明細書に記載されるように、細胞の表面に発現させたアフィニティタグを用いて細胞を分離する。アフィニティタグを用いて細胞を分離する実施形態では、当該技術分野で公知の方法を用いて、アフィニティタグを結合するアフィニティカラムまたはアフィニティ樹脂を用いて細胞を分離する。
【0194】
実施形態では、アフィニティタグは、遺伝子改変非ヒト哺乳動物細胞の細胞表面に発現する。
【0195】
実施形態では、アフィニティタグは、StrepII、ヘキサヒスタジン、FLAG、HA、Myc、VA、GST、β-GAL、MBP、またはVSV-Gタグを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約1から約18個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約2から約15個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約3から約10個のタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、タグの3個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17または約18個のタグのタンデムリピートを含む。
【0196】
実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグのタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約1から約18個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約2から約15個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約3から約10個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグはStrepIIタグの3個のタンデムリピートを含む。実施形態では、アフィニティタグは、StrepIIタグの約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、または約18個のタンデムリピートを含む。実施形態では、タンデムリピートはリピート間にタグリンカーを有する。実施形態では、タグリンカーはジペプチドまたはトリペプチドである。実施形態では、タグリンカーはジペプチドSer-Alaである。
【0197】
実施形態では、StrepIIタグは、WSHPQFEK(配列番号1)の8個のアミノ酸のペプチド配列を含む。実施形態では、アフィニティタグは、WSHPQFEKSAWSHPQFEKSAWSHPQFEK(配列番号3)を含む。
【0198】
実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、非ヒト哺乳動物細胞の細胞質面に露出する。
【0199】
実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、またはオレンジ色蛍光タンパク質を含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP)、または強化型シアン蛍光タンパク質(ECFP)を含む。実施形態では、蛍光レポータータンパク質は赤色蛍光タンパク質(RFP)を含む。実施形態では、赤色蛍光タンパク質は、単量体チェリー(mCherry)またはタンデム二量体トマト(tdTomato)である。
【0200】
本方法の実施形態では、遺伝子改変非ヒト哺乳動物は、目的の抗原で免疫されている。実施形態では、免疫グロブリン発現細胞は、免疫グロブリンカッパ軽鎖を発現する。実施形態では、免疫グロブリン発現細胞は、免疫グロブリンラムダ軽鎖を発現する。実施形態では、免疫グロブリン発現細胞は、免疫グロブリン重鎖を発現する。実施形態では、免疫グロブリン発現細胞は未熟B細胞とその子孫を含む。
【0201】
実施形態では、本方法は、遺伝子改変非ヒト哺乳動物から取得された細胞から発現された免疫グロブリンを単離することをさらに含む。実施形態では、本明細書で提供されるのは、本方法によって取得された免疫グロブリンである。
【0202】
実施形態では、本明細書で提供されるのは、治療用または診断用免疫グロブリンを生産する方法であり、その方法は以下を含む:
(i)本明細書に開示される免疫グロブリンの可変領域をクローニングすること;および
(ii)(i)で取得した可変領域を含む治療用または診断用免疫グロブリンを生成すること。
【0203】
実施形態では、モノクローナル抗体を生産する方法も本明細書に提供され、本方法は以下のことを含む:
(i)本明細書で開示する遺伝子改変非ヒト哺乳動物から免疫グロブリン発現細胞を取得すること;
(ii)(i)で取得した免疫グロブリン発現細胞を不死化すること;および
(iii)不死化した免疫グロブリン発現細胞またはモノクローナル抗体をコードする核酸配列により発現されるモノクローナル抗体を単離すること。
実施形態では、本方法はさらに以下のことを含む:
(iv)単離されたモノクローナル抗体の可変領域をクローニングすること;および
(v)クローニングされた可変領域を含む治療用抗体または診断用抗体を作製すること。
【0204】
実施形態では、本明細書で提供されるのは、上記の方法により生産される治療用または診断用抗体である。
【0205】
P.参照による援用
特許、特許出願、論文、教科書などを含む本明細書で引用したすべての文献、およびその中で引用した文献は、未掲載である限り、その全体が参照により本明細書に援用される。
【実施例】
【0206】
実施例1.免疫グロブリン標識カセットおよびターゲティングベクターの構築
工程1:膜貫通標識カセットは、構成配列をライゲーションして連続したカセットを形成することにより組み立てられる。この実施例では、標識カセットは、
図2に模式的に示すように、リンカー、リーダー配列、タグリンカー付きStrep-IIタグの3個のリピート(WSHPQFEKSAWSHPQFEKSAWSHPQFEK(配列番号3))、膜貫通ドメイン、および緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする配列を含む。
【0207】
3つの異なるリンカーオプションがある。
オプション1:LSL-フーリン-2A。このリンカーは、リーキー終止コドン、Leu-Glyリンカー配列、フーリンプロテアーゼ認識および切断部位、および2A自己切断ペプチドを含む。この設計の利点は、内在性フォーマット内のIgKの大部分を維持できることである。リーキー終止コドンは転写の5%しかリードスルーさせないので、StrepIIタグ-GFPの発現レベルはIgK全体の5%しかない。したがって、このデザインでは、StrepIIタグ-GFPの発現レベルが低すぎて、場合によってはFACS/MACSを使ってそのような細胞を効率的に濃縮できない可能性がある。
オプション2:フーリン-2A。このリンカーはフーリンプロテアーゼ認識および切断部位、および2A自己切断ペプチドを含む。このリンカーの利点は、StrepIIタグ-GFPの高発現を確実にすることであるが、このレベルの発現は、場合によっては細胞に毒性を示す可能性がある。
オプション3:終止コドン-IRES(内部リボソーム進入部位)。このリンカーは、終止コドンに続くIRESを含み、これによりレポーター遺伝子は免疫グロブリンとは別のタンパク質として転写される。IRESは、上記2つの戦略の中間のStrepIIタグ-GFP発現レベルを提供する。
【0208】
工程2:工程1からのコンストラクトを、げっ歯類Igカッパ(IgK)ゲノム領域の終止コドンを標的にする相同な隣接領域を持つターゲティングベクターにライゲーションする。ノックインに使用できるベクターには、pUC18、pUC19、pBluescriptII KS+がある。このベクターは、
図2に模式的に示すように、IgKの終止コドンにStrepIIタグ-GFP標識カセットをノックインする。
【0209】
あるいは、標識カセットの両側に200-500bpの相同性を規定する領域を持つ合成一本鎖DNAを合成し、合成ターゲティングカセットを形成することもできる。この合成ターゲティングカセットコンストラクトは、CRISPRターゲティングシステムを使って直接組み込むことができる。
【0210】
実施例2.StrepIIタグとGFP発現量のインビトロ評価
下流のアプリケーションに適合するStrepIIタグ-GFPの発現レベルを確保するために、げっ歯類のB細胞株を用いてターゲティングベクターによるインビトロ実験を行い、IgKの発現レベルとともにStrepIIタグとGFPの発現レベルを評価する。IgK発現レベルが最も高く、下流への応用に適切なStrepIIタグとGFPレベルを与えるベクターを、さらなる研究のために選択する。分泌された抗体を、オクテットなどの生化学的測定によって定量する。細胞表面に表示された抗体は、フロー分析によって検出される。簡単に説明すると、細胞を蛍光標識抗免疫グロブリン抗体とともに4℃で30分間インキュベートし、その蛍光シグナルをフローサイトメーターで測定する。IgK部位における標識カセットの発現がIgKの機能を妨げないことを確実にするために、理想的なリンカー配列を同定するために、げっ歯類のB細胞株を用いたインビトロ試験を行う。
【0211】
実施例3.IgKレポーターげっ歯類系統の生成
マウス胚性幹細胞をターゲティングベクターで形質転換し、相同組換えによってIgK終止コドンに標識カセットを挿入できるようにする。このIgK終止コドンでのターゲティングノックインの効率を高めるために、CRISPR/Cas9システムが使用される。ゲノム中のIgK終止コドン周辺の隣接領域を標的にするsgRNA成分を設計および合成し、次いでCas9酵素と会合することによりRNP複合体を形成し、相同組換え修復(HDR)テンプレートと一緒に一本鎖DNAまたはベクターとして受精卵または胚性幹細胞にインジェクションする。相同組換えによって、標識カセットを含むドナー断片を、Cas9によって引き起こされる標的二本鎖切断の後にその部位に組み込む。組換えに成功した胚性幹細胞(サザンブロット分析とPCRによって決定される)を胚盤胞にマイクロインジェクションし、トランスジェニックマウスを生成する。
【0212】
トランスジェニックマウスからmAb発現細胞を取得して、標識効率を評価する。簡単に説明すると、抗体発現細胞は、FACSによる従来のフローマーカーを用いて単離する。細胞を蛍光標識抗免疫グロブリン抗体とともに4℃で30分間インキュベートする。蛍光シグナルはフローサイトメーターを用いて測定する。
【0213】
実施例4.コンディショナルレポーター標識カセットとターゲッティングベクターの構築
工程1:膜貫通標識カセット導入遺伝子は、構成配列をライゲーションして連続カセットを形成することにより組み立てられる。
図1Aに模式的に示すように、標識カセットには、CAGプロモーター、リーダー配列、LoxP-Stop-LoxPカセット、StrepIIタグの3個のタンデムリピート、膜貫通ドメイン、緑色蛍光タンパク質(GFP)が含まれる。
【0214】
工程2:工程1からのコンストラクトを、ROSA26ゲノム領域のイントロン1を標的にする相同隣接領域を持つターゲティングベクターにライゲーションする。スプライスアクセプター(SA)配列とDNAカセットが、ROSA26遺伝子の第1イントロン内のXba1制限酵素部位に挿入される。このベクターは、
図1Aに模式的に示すように、セーフハーバーROSA26部位にStrepIIタグ-GFP標識カセットをノックインする。
【0215】
あるいは、標識カセットの両側に200-500bpの相同性を規定する領域を持つ合成一本鎖DNAを合成し、合成ターゲティングカセットを形成することもできる。この合成ターゲティングカセットコンストラクトは、CRISPRターゲティングシステムを用いてROSA26のイントロン1に直接組み込むことができる。
【0216】
実施例5.コンディショナルレポーターげっ歯類系統の生成
マウス胚性幹細胞をトランスジーンターゲティングベクターで形質転換し、相同組換えによってROSA26のイントロン1に標識カセットを挿入できるようにする。別の方法として、CRISPR/Cas9システムはROSA26のイントロン1に標的を定めたノックインである。ゲノム中のROSA26のイントロン1を標的にするsgRNAを設計および合成し、次いでCas9酵素で組み立てRNP複合体を形成し、受精卵または胚性幹細胞に一本鎖DNAまたはベクターとして相同組換え修復(HDR)テンプレートと共インジェクションまたはエレクトロポレーションする。相同組換えによって、標識カセットを含むドナー断片は、Cas9によって引き起こされる標的二本鎖切断の後にその部位に組み込まれる。組換えに成功した胚性幹細胞(サザンブロット分析とPCRによって決定される)を胚盤胞にマイクロインジェクションし、トランスジェニックマウスを生成する。
【0217】
組み込まれた導入遺伝子を含むマウスを、Creスイッチ系統マウス(目的の組織特異的プロモーターの制御下にCreを持つマウス系統)と交配する。ある実験では、Creスイッチ系統マウスはBlimp1-CreERT2マウス系統であり、形質芽細胞および形質細胞で発現するBlimp1プロモーターの制御下でCreを発現する。別の実施形態では、スイッチ系統マウスはJchaincreERT2マウスである。
【0218】
実施例6.接合子からのレポーターげっ歯類系統の生成
実施例1または3に記載のベクターをマウスの接合子に直接インジェクションする。このベクターは、接合子(マウスの受精卵)の前核にマイクロインジェクションされる。得られた胚を偽妊娠雌の卵管に移植し、発育させることができる。胚はマウスの卵管に排出され、傷口は傷口クリップで閉じる。マウスを18から21日目に、生きた子の出産について試験する。新たに生まれたマウスは、上記の方法を用いて膜貫通標識コンストラクトの発現を解析する。
【0219】
【配列表】
【国際調査報告】