(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】組織球症若しくは頭蓋咽頭腫の治療又は予防における使用のためのベンズイミダゾール誘導体
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4184 20060101AFI20240912BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20240912BHJP
A61K 31/422 20060101ALI20240912BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240912BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20240912BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240912BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K31/4184
A61K31/4439
A61K31/422
A61K31/506
A61K31/454
A61K31/5377
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521158
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2022077910
(87)【国際公開番号】W WO2023057613
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503161615
【氏名又は名称】ウニベルシテ クロード ベルナール リヨン 1
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】511171866
【氏名又は名称】オスピス シヴィル ドゥ リヨン
(71)【出願人】
【識別番号】504217063
【氏名又は名称】サントル レオン ベラール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ルク・オッテン
(72)【発明者】
【氏名】トゥフィ・レヌ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル・コスト-インヴェルニジ
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・ジロー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086BC42
4C086BC69
4C086BC73
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、組織球症若しくは頭蓋咽頭腫の治療又は予防における使用のためのベンズイミダゾール誘導体及びこのようなベンズイミダゾール誘導体を含む医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症の治療又は予防における使用のための、以下の式(I)
【化1】
の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、その立体異性体、又はその立体異性体の混合物(式中、
・X
1は、N又はCR
2を表し;
・X
2は、N又はCR
5を表し;
・R
1及びR
3は、互いに独立して、H、(C1~C6)アルキル、又はハロゲンを表し;
・R
2は、CN;1個若しくは複数のハロゲン原子で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル基;ハロ、(C1~C6)アルキル、OR21、及びNR22R23から選択される1個若しくは複数の基で任意選択で置換されているアリール若しくはヘテロアリール基;又はCONR11R12(式中、
R11は、H又は(C1~C6)アルキルを表し;
R12は、ハロ、(C1~C6)アルキル、アリール、OR24、及びNR25R26から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル、アリール、アリール-(C1~C6)アルキル、又は5-若しくは6員のヘテロアリール基を表し;
R21、R22、R23、R24、R25、及びR26は、互いに独立して、H又は(C1~C6)アルキルを表す)を表し;
・R
4及びR
6は、互いに独立して、H、ハロゲン、CN、NO
2、(C1~C6)アルキル、NR15COR16、NR17R18、又はOR19(式中、
R15及びR19は、互いに独立して、H又は(C1~C6)アルキルを表し;
R16は、(C1~C6)アルキルを表し;
R17及びR18は、H、(C1~C6)アルキル、アリール、又はヘテロアリール、例えばH又は(C1~C6)アルキルを表す)を表し;
・R
5は、NR13R14(式中、
R13は、H、R31、若しくはCOR32を表し;
R14は、H、R33、若しくはCOR34を表すか;
又はR13及びR14は、それらと結合する窒素原子と共に、(C1~C6)アルキル基で任意選択で置換されている複素環を形成し;
R31、R32、R33、及びR34は、互いに独立して、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR27、及びNR28R29から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル、アリール、アリール-(C1~C6)アルキル、又はヘテロアリール基を表し;
R27、R28、及びR29は、互いに独立して、H又は(C1~C6)アルキルを表す)を表し;
・R
7は、H又は(C1~C6)アルキルを表す)。
【請求項2】
以下の式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、又は(Ie)
【化2】
の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、その立体異性体、又はその立体異性体の混合物である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
R
1、R
3、R
4、R
6、及びR
7が、それぞれHを表す、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
X
1が、CR
2を表す、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
X
2が、CR
5を表す、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
R
2が、CONR11R12を表す、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
R11が、H又はCH
3、好ましくは、Hを表し、R12が、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR24、及びNR25R26から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されているアリール又は5-若しくは6員のヘテロアリール基を表し、ここで、前記アリールは、フェニルであり、前記5又は6員のヘテロアリール基は、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、又はトリアジニル;好ましくは、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、又はトリアジニル;より好ましくは、ピリジルである、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
R
2が、CNを表すか、又は
R
2が、1種又はいくつかのハロゲン原子で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル基、例えばCF
3を表すか、又は
R
2が、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR21、及びNR22R23から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されているアリール又はヘテロアリール基、好ましくは、ヘテロアリール基を表す、
請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
R13が、H若しくはR31を表し、R14が、H若しくはR33を表すか、又はR13及びR14が、それらと結合する窒素原子と共に、(C1~C6)アルキル基で任意選択で置換されている複素環を形成し、前記複素環が、好ましくは、飽和された5又は6員の複素環、例えばピロリジニル、モルホリニル、ピペリジニル、又はピペラジニルである、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
R13及びR14が、互いに独立して、H又は(C1~C6)アルキル、例えばH又はメチルを表す、請求項9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
R13が、Hを表し、R14が、COR34を表し、R34が、好ましくは、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR27、及びNR28R29から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されているアリール又はヘテロアリール基を表し;前記アリールが、好ましくは、フェニルであり、前記ヘテロアリールが、好ましくは、5又は6員のヘテロアリール、より具体的には、5員のヘテロアリール、例えばフリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、又はテトラゾリル;特に、フリル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、又はテトラゾリルである、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
- X
1が、CR
2を表し、好ましくは、X
2が、CR
5を表し、
- R
2が、CONR11R12を表し、
- R11が、Hを表し、
- R12が、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR24、及びNR25R26から選択される1種又は複数の基で任意選択で置換されている6員のヘテロアリール基であって、6員のヘテロアリール基は、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、又はトリアジニル;より好ましくは、ピリジルである、6員のヘテロアリール基を表し、
- R13及びR14が、互いに独立して、H又は(C1~C6)アルキル基、例えばH又はメチルを表す、
請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
以下の化合物:
【化3A】
【化3B】
及び薬学的に許容されるそれらの塩の中から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症の治療又は予防における使用のための、請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項15】
組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症の治療又は予防における使用のための、(1)請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物及び(2)請求項1に記載の化合物とは異なる少なくとも1種の他の有効成分を、同時使用、個別使用、若しくは逐次使用のための組合せ製剤としてか、又は医薬組成物として含む製品であって、
前記少なくとも1種の他の有効成分が、組織球症若しくは頭蓋咽頭腫の治療又は予防に有用であり、好ましくは、副腎皮質ステロイド、例えばプレドニゾン若しくはデキサメタゾン;マスタード剤、例えばシクロホスファミド若しくはメルファラン;BRAF阻害薬のようなMAPK阻害薬、例えばベムラフェニブ、ダブラフェニブ、若しくはコビメチニブ;サリドマイド;又は組合せ化学療法、例えばビンブラスチン-プレドニゾン若しくはMACOP-Bである、製品。
【請求項16】
前記組織球症が、L、C、又はR群、好ましくは、L群からの組織球症である、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のための化合物、請求項14に記載の使用のための医薬組成物、又は請求項15に記載の使用のための製品。
【請求項17】
前記組織球症が、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)、エルドハイム-チェスター病(ECD)、エルドハイム-チェスター病とランゲルハンス細胞組織球症の混合形態(ECDとLCHの混合)、不定細胞組織球症(ICH)、黄色肉芽腫組織球症(XG)、又はローサイ-ドーフマン病(RDD)、好ましくは、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)であり、前記頭蓋咽頭腫が、乳頭状頭蓋咽頭腫(PCP)又はエナメル上皮腫型頭蓋咽頭腫(ACP)である、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のための化合物、請求項14に記載の使用のための医薬組成物、又は請求項15に記載の使用のための製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織球症若しくは頭蓋咽頭腫の治療又は予防における使用のためのベンズイミダゾール誘導体及びこのようなベンズイミダゾール誘導体を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
組織球症は、小児及び成人の種々の組織並びに器官におけるマクロファージ-、樹状細胞-、又は単球-由来細胞の蓄積を特徴とする稀な障害である。1987年に最初の分類がなされて以降、組織球性障害の細胞起源、分子病理学、及び臨床的特徴に関する多くの新規知見が確認されている。
【0003】
特に、2010年のランゲルハンス細胞組織球症(LCH)における反復変異の発見(Badalien-Veryら[01])後、組織像、表現型、分子改変、並びに臨床的及び画像的特徴に基づく組織球症の分類が、改訂され、該分類には以下の5つの疾患群が含まれる(Emileら[02]):
(1)とりわけ、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)、エルドハイム-チェスター病(ECD)、エルドハイム-チェスター病とランゲルハンス細胞組織球症の混合形態(ECDとLCHの混合)、及び不定細胞組織球症(ICH)を含む、ランゲルハンス関連組織球症に関連する「L」群;
(2)とりわけ、若年性黄色肉芽腫(JXG)のような黄色肉芽腫組織球症を含む、皮膚及び粘膜皮膚組織球症に関連する「C」群;
(3)とりわけ、原発性及び続発性の悪性組織球症を含む、悪性組織球症に関連する「M」群;
他の全ての群(L、C、R、及びH)の組織球症とは対照的に、体細胞変異が、高頻度の染色体異常及び多重変異の存在と共に観察される(Emileら[02])。MAPK経路遺伝子における変異に加えて、CDKN2A及びTP53遺伝子、並びに稀にNFκB経路遺伝子に、変異が認められる(Massothら[28])。
(4)ローサイ-ドーフマン病(RDD)及びその他の非皮膚、非ランゲルハンス細胞の組織球症に関連する「R」群;及び
(5)2つの亜群:原発性(公知のメンデル遺伝を伴う)及び続発性(反応性)に分類される血球貪食性リンパ組織球症(HLH)に関連する「H」群。
【0004】
数年前から、LCHは、炎症性骨髄新生物として定義されている(da Costaら[24]、Kobayashi及びTojo[03];Allenら[04];Rodriguez-Galindo及びAllen[05])。しかし、LCHは、大きなゲノム改変(da Costaら[24])、ゲノム不安定性(Chakrabortyら[22])、及びそれによるがんの特徴付けを可能にする手掛かりである腫瘍の進行(Hanahan及びWeinberg[06])を示さないため、LCHは、悪性新生物又はがんではない。
【0005】
近年、骨髄新生物性障害としてのLCHは、MAPK経路遺伝子における相互排他的な体細胞活性化変異であって、該病変の約85%で同定される体細胞活性化変異を伴う不適切な骨髄分化の結果として説明されている(Gulati及びAllen[07])。これらの遺伝子における変異は、L群(エルドハイム-チェスター病ECD)、C群(若年性黄色肉芽腫JXG)、及びR群(ローサイ-ドーフマン病)からの他の非悪性組織球性疾患においても認められる(Emileら[02];Gulati及びAllen[07];Wuら[08])。
【0006】
LCHにおける遺伝子変異を伴うMAPKの活性化は、組織球症病変で認められる病原性骨髄細胞の種々の前駆細胞で検出される(Rodriguez-Galindo及びAllen[05];Gulati及びAllen[07])。前駆細胞におけるMAPK経路の活性化は、骨髄分化の亢進、遊走の妨害、アポトーシスの阻害、及び炎症を招くが、組織球症病変で認められる病原性骨髄細胞における増殖の増加は観察されないと説明されており(Allenら[04])、このため、LCHは更にがんとは区別される(Hanahan及びWeinberg[06])。
【0007】
MAPK経路を活性化する遺伝子変異は、BRAFレベルにおいて生じることが多い(Michaloglouら[26];Pisapiaら[27])。しかし、異なる疾患におけるBRAF変異の役割は、i)これらの変異が、がん及び良性新生物の両方で認められ、ii)これらの変異が、一部の新生物の悪性状態とあまり関連しておらず、iii)これらの変異が、がんの種類及び/又は同時発生の変異に左右される正の予後値又は負の予後値を有する可能性があり、iv)これらの変異が、増殖、細胞老化、又はてんかんを誘導する可能性があり、v)これらの変異が、良性病変におけるERKの下流活性化とあまり相関していないため、可変的である。
【0008】
MAPK経路遺伝子における体細胞活性化変異によって駆動されるL群の疾患に関する病因の重要性は、LCH及びECDに対する治療であって、ほぼ普遍的な反応を有するが、残念ながら非治癒的な治療を提供するMAPK阻害薬によって支持される(Rodriguez-Galindo及びAllen[05];Gulati及びAllen[07];Cohen-Aubartら2017[39])。
【0009】
LCHで認められる重要な炎症を考慮して、感染及び炎症のような代替の発症メカニズムが提案されている(Berresら2015[29])。ウイルス関連の病因が模索されてきたが、いまだに証明されていない:多種類のウイルス(EBV及びヘルペスウイルス等)の度外視後、MCPyVが、LCHに関連する最新の公表されたウイルスである(Murakamiら2014[30])が、LCHの病因におけるその意義は不明瞭である(Berresら2015BJH[29];Murakamiら2015[31])。MCPyVは、RB1、TP53、NOTCH、及びPI3K-AKT-mTOR経路に改変が認められるメルケル細胞癌に関する主なリスクと見なされる共通のウイルスである(Stachyraら2021、IJMS[32])が、MAPKシグナル伝達が存在せず、リン酸化ERKもBRAF(V600E)遺伝子における活性化変異も伴わないことが、メルケル細胞癌において見出されており、LCHで確立されていることに反する(HoubenらJID2006[33])。加えて、LCHにおけるMCPyVの複製は、メルケル細胞癌における複製よりも30~500低いレベルで認められる(Murakamiら2014[30]、Stachyraら2021、IJMS[32])。更に、MCPyVのDNAは、LCHの肺形態では認められない(Jouenneら2020[34])。更に、炎症の役割は、インターロイキン-17の不確定な因果的役割(Berresら2015BJH[29])及びMAPK経路を標的とする治療法に対する極めて高い反応率(Rodriguez-Galindo及びAllen[05];Gulati及びAllen[07])とは際立って対照的であるECDのみにおけるIL-1経路遮断の可変的で不完全な効果についての報告(Cohen-Aubartら2016[35])と共に不確かなままである。したがって、L群の種々の疾患において生じるMAPK経路遺伝子における体細胞活性化変異は、現時点で唯一確立されたメカニズムであり、MCPyV又は炎症の重要性は、極めて疑わしく、依然として検証が必要である。更に、L群におけるMAPK経路と感染又は炎症の間の推定上の相互干渉は、完全に憶測の域を出ていない。
【0010】
頭蓋咽頭腫は、脳のトルコ鞍上部で生ずる稀な上皮性腫瘍である(Brastianosら[11];Roque及びOdia[12])。2種類の主な疾患サブタイプは、小児及び成人集団に認められるエナメル上皮腫型頭蓋咽頭腫(ACP)及び成人集団に最も認められる乳頭状頭蓋咽頭腫(PCP)である(Roque及びOdia[12];Gan[13])。ACP及びPCPの組織像が混合されている頭蓋咽頭腫は、より古い症例の5%~11%に記載されているが、「混合型頭蓋咽頭腫」は、世界保健機関分類に含まれていない(Gan[13])。しばしば、重度の病的状態が、腫瘍拡張及び治療的介入から生じる(Brastianosら[11])。永続的脳損傷(視神経、下垂体、視床下部、脳室系、及び脳幹)は、視力消失、内分泌異常、神経行動学的変化、及び頭痛を招く(Gan[13])。
【0011】
2014年に、ACP及びPCPサブタイプは、大多数のACP症例でのWNTシグナル伝達を活性化するベータ-カテニン遺伝子(CTNNB1)における体細胞変異の発見、及びPCP症例の大半でのMEK/MAPK経路を活性化するBRAF(V600E)遺伝子における反復変異の発見によって、更に区別された(Brastianosら[11];Gan[13])。CTNNB1及びBRAFにおける変異は、記載されている稀な症例を除いて、相互排他的である(Brastianosら[11];Larkinら[14])。他の遺伝子エクソンにおける変異の頻度は、これらの腫瘍の良性組織像と同様に低い。次に、ACP及びPCPそれぞれにおけるCTNNB1及びBRAFのクローン活性化変異は、これらの腫瘍の病因における重大事象であることが提案された(Brastianosら[11])。
【0012】
ここ数年において、ACP及びPCP腫瘍は、「悪性部位における良性腫瘍」として説明されている(Roque及びOdia[12])。頭蓋咽頭腫に関するこの説明は、良性組織像の特徴(Aylwinら[14];Raoら[16])、低い変異率(Brastianosら[11])、及び局所的に侵攻的な進展(Rostamiら[17];Brastianosら[18];Himesら[19])を反映している。ACP及びPCPは、ラトケ嚢胞の発生学的遺残組織を起源とする良性腫瘍と見なされている(Juratliら[20];Schlafferら[21])。
【0013】
ACP及びPCPの腫瘍は、組織球症と多くの特徴を共有している:
(1)両疾患群は、侵攻的な/重度の臨床的進展の可能性を有する良性腫瘍として分類される(Kobayashi及びTojo[03];Allenら[04];Rodriguez-Galindo及びAllen[05];Roque及びOdia[12];Rostamiら[17];Brastianosら[18];Himesら[19])。
(2)BRAF遺伝子(V600E)の活性化変異は、頭蓋咽頭腫及び組織球症の亜群、それぞれPCP(Brastianosら[11])及びLCH(Gulati及びAllen[05])において観察される最も高頻度の体細胞変異として見出される。
(3)BRAF及び他の遺伝子の活性化遺伝子変異は、頭蓋咽頭腫では相互排他的であり(Brastianosら[11])、組織球症ではMAPK経路の単一レベルにおいて通常見出される(Chakrabortyら[22])。
(4)他の遺伝子の体細胞変異は、頭蓋咽頭腫及び組織球症の両方で少ない(Brastianosら[11];Chakrabortyら[22])。
(5)脳の体細胞BRAF(V600E)変異は、PCPの駆動イベントとして見なされる(Brastianosら[11])が、BRAF(V600E)の体細胞変異は、LCHを有する患者の脳領域で観察され(Rodriguez-Galindo及びAllen[05])、神経変性病変の原因となる可能性がある(Rodriguez-Galindo及びAllen[05];Gulati及びAllen[07];Massら[23])。
(6)胚起源の病原性細胞は、頭蓋咽頭腫(Juratliら[20];Schlafferら[21])及び組織球症(Rodriguez-Galindo及びAllen[05];Massら[23])の両方で生じる。
【0014】
LCHの治療は、手術、副腎皮質ステロイド、マスタード剤、サリドマイド、BRAF阻害薬のようなMAPK阻害薬(例えば、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、又はコビメチニブ)、又は組合せ化学療法(例えば、ビンブラスチン-プレドニゾン又はMACOP-B、MACOP-Bは、メトトレキサート、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標))、シクロホスファミド、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))、プレドニゾン、及びブレオマイシンの組合せ使用で構成される)のような従来の治療法を使用する。(Heisigら[25];Gulati及びAllen[07];Rodriguez-Galindo及びAllen[05];Donadieuら[09])。
【0015】
頭蓋咽頭腫の治療は、アジュバント又はサルベージ放射線療法を用いるか、又は用いない脳神経外科手術を使用する(Gan[13])。患者は、視床下部損傷を患うことが多く、ACP及びPCPサブタイプは、いずれも進行し、更に視床下部-下垂体損傷を再発する傾向がある(Gan[13])。BRAF変異V600Eを伴うPCPサブタイプを有する患者は、ベムラフェニブ、又はダブラフェニブ、又はトラメチニブを伴うダブラフェニブのような標的薬物療法を用いた治療を受ける。
【0016】
残念なことに、組織球症及び頭蓋咽頭腫の現行の薬物療法は、重度の疾患を有する患者に対する治癒効果がないことが多く、このため、これらの疾患のための新規の薬物療法、とりわけ、向上された有効性、より長く持続する有効性、より高い安全性、及び/又は治癒効果を有する新規の薬物療法の必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO2018/054989([010])
【発明の概要】
【0018】
本発明者らは、組織球症の病変に、タンパク質-タンパク質複合体ERK/MyD88の存在を初めて認め(実施例を参照)、これによって、このような疾患をERK/MyD88相互作用の阻害薬を用いて治療できる可能性が生じ、また上記に説明した通り、組織球症に極めて類似した疾患である頭蓋咽頭腫も同様である。
【0019】
このため、第1の態様によると、本発明は、組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症の治療又は予防における使用のための、以下の式(I):
【0020】
【0021】
の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、その立体異性体、又はその立体異性体の混合物(式中、
・X1は、N又はCR2を表し;
・X2は、N又はCR5を表し;
・R1及びR3は、互いに独立して、H、(C1~C6)アルキル、又はハロゲンを表し;
・R2は、CN;1個若しくは複数のハロゲン原子で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル基;ハロ、(C1~C6)アルキル、OR21、及びNR22R23から選択される1個若しくは複数の基で任意選択で置換されているアリール若しくはヘテロアリール基;又はCONR11R12(式中、
R11は、H又は(C1~C6)アルキルを表し;
R12は、ハロ、(C1~C6)アルキル、アリール、OR24、及びNR25R26から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル、アリール、アリール-(C1~C6)アルキル、又は5-若しくは6員のヘテロアリール基を表し;
R21、R22、R23、R24、R25、及びR26は、互いに独立して、H又は(C1~C6)アルキルを表す)を表し;
・R4及びR6は、互いに独立して、H、ハロゲン(例えばCl)、CN、NO2、(C1~C6)アルキル、NR15COR16、NR17R18、又はOR19(式中、
R15及びR19は、互いに独立して、H又は(C1~C6)アルキルを表し;
R16は、(C1~C6)アルキルを表し;
R17及びR18は、H、(C1~C6)アルキル、アリール、又はヘテロアリール、例えばH又は(C1~C6)アルキルを表す)を表し;
・R5は、NR13R14(式中、
R13は、H、R31、若しくはCOR32を表し;
R14は、H、R33、若しくはCOR34を表すか;
又はR13及びR14は、それらと結合する窒素原子と共に、(C1~C6)アルキル基で任意選択で置換されている複素環を形成し;
R31、R32、R33、及びR34は、互いに独立して、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR27、及びNR28R29から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル、アリール、アリール-(C1~C6)アルキル、又はヘテロアリール基を表し;
R27、R28、及びR29は、互いに独立して、H又は(C1~C6)アルキルを表す)を表し;
・R7は、H又は(C1~C6)アルキルを表す)
に関する。
【0022】
本発明は、組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症の治療又は予防のための、上記で定義された式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、その立体異性体、又はその立体異性体の混合物の使用にも関する。
【0023】
本発明は、組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症の治療又は予防における使用のための医薬品の製造のための、上記で定義された式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、その立体異性体、又はその立体異性体の混合物の使用にも関する。
【0024】
本発明は、組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症を治療するためか、又は予防するための方法であって、それを必要とする患者に、有効量の上記で定義された式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、その立体異性体、又はその立体異性体の混合物を投与することを含む方法にも関する。
【0025】
第2の態様によると、本発明は、組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症の治療又は予防における使用のための、少なくとも1種の上記で定義された式(I)の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、その立体異性体、又はその立体異性体の混合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0026】
本発明は、組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症の治療又は予防のための、上記で定義された医薬組成物の使用にも関する。
【0027】
本発明は、組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症の治療又は予防における使用のための医薬品の製造のための、上記で定義された医薬組成物の使用にも関する。
【0028】
本発明は、組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症を治療するためか、又は予防するための方法であって、それを必要とする患者に、有効量の上記で定義された医薬組成物を投与することを含む方法にも関する。
【0029】
第3の態様によると、本発明は、
組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症の治療又は予防における使用のための、
(1)少なくとも1種の上記で定義された式(I)の化合物及び(2)式(I)の前記化合物とは異なる少なくとも1種の他の有効成分を、同時使用、個別使用、若しくは逐次使用のための組合せ製剤としてか、又は医薬組成物として含む製品であって、
前記少なくとも1種の他の有効成分が、組織球症若しくは頭蓋咽頭腫の治療又は予防に有用である、製品に関する。
【0030】
定義
本発明で使用する場合、「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子を指す。
【0031】
本発明で使用する場合、「(C1~C6)アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の一価飽和炭化水素鎖を指し、以下に限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等を含む。
【0032】
本発明で使用する場合、「(C1~C6)ハロアルキル」という用語は、塩素及び/又はフッ素原子のような1個又は複数の上記で定義されたハロゲン原子によって置換されている上記で定義された(C1~C6)アルキル基を指す。それは、具体的には、トリフルオロメチル基でありうる。
【0033】
本発明で使用する場合、「(C1~C6)アルコキシ-(C1~C6)アルキル」という用語は、上記で定義された(C1~C6)アルキル基を介して分子に結合されている以下に定義される(C1~C6)アルコキシ基を指し、以下に限定されないが、CH3-O-(CH2)2-を含む。
【0034】
本発明で使用する場合、「アミノ(C1~C6)アルキル」という用語は、上記で定義された(C1~C6)アルキル基を介して分子に結合されている以下に定義されるアミノ基を指す。
【0035】
本発明で使用する場合、「(C1~C6)アルコキシ」という用語は、酸素原子を介して分子に結合されている上記で定義された(C1~C6)アルキル基を指し、以下に限定されないが、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ等を含む。
【0036】
本発明で使用する場合、「アミノ基」という用語は、NH2、NHAlk1、又はNAlk1Alk2基を指し、ここで、Alk1及びAlk2は、同一か、又は異なり、上記で定義された(C1~C6)-アルキル基を表す。例えば、それは、ジメチルアミノ基でありうる。
【0037】
本発明で使用する場合、「アリール」という用語は、好ましくは、6~10個の炭素原子を含み、例えば、フェニル又はナフチル基のような1個又は複数の縮合環を含む芳香族炭化水素基を指す。有利には、それは、フェニル基であろう。
【0038】
本発明で使用する場合、「アリール-(C1~C6)アルキル」という用語は、上記で定義された(C1~C6)アルキル基を介して分子に結合されている上記で定義されたアリール基を指す。具体的には、アリール-(C1~C6)アルキル基は、ベンジル基である。
【0039】
本発明で使用する場合、「(C1~C6)アルキルアリール」という用語は、上記で定義されたアリール基を介して分子に結合されている上記で定義された(C1~C6)アルキル基を指す。具体的には、(C1~C6)アルキルアリール基は、メチルフェニル、エチルフェニル、又はプロピルフェニル(例えば、イソプロピルフェニル)基である。
【0040】
本発明で使用する場合、「ハロアリール」という用語は、塩素及び/又はフッ素原子のような1個又は複数のハロゲン原子によって置換されている上記で定義されたアリール基を指す。具体的には、それは、クロロフェニル基(Cl-Ph-)でありうる。
【0041】
本発明で使用する場合、「(C1~C6)アルコキシアリール」という用語は、上記で定義されたアリール基を介して分子に結合されている上記で定義された(C1~C6)アルコキシ基を指す。具体的には、それは、メトキシフェニル基(CH3-O-ph-)でありうる。
【0042】
本発明で使用する場合、「アミノアリール」という用語は、上記で定義されたアリール基を介して分子に結合されている上記で定義されたアミノ基を指す。具体的には、それは、ジメチルアミノフェニル基((CH3)2N-Ph-)でありうる。
【0043】
本発明で使用する場合、「ヘテロアリール基」という用語は、1個又はいくつか、とりわけ、1個又は2個、好ましくは、1個の縮合炭化水素環であって、その1個又はいくつか、とりわけ、1個、2個、3個、又は4個、有利には、1個又は2個の炭素原子それぞれが、硫黄原子、酸素原子、及び窒素原子から選択される、好ましくは、酸素原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子、具体的には、窒素原子で置き換えられている縮合炭化水素環を含む芳香族基を指す。それは、ベンゾチアゾリル、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリル、又はインドリル基でありうる。好ましくは、前記ヘテロアリールは、5又は6員のヘテロアリールである。
【0044】
本発明で使用する場合、「5又は6員のヘテロアリール」という用語は、5又は6員を有する1個の環を含む上記で定義されたヘテロアリールを指す。それは、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、又はトリアジニル基でありうる。好ましくは、前記ヘテロアリールは、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、又はテトラゾリル具体的には、フリル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル(1,3,5-オキサジアゾリル等)、トリアゾリル、又はテトラゾリルのような5員のヘテロアリールである。
【0045】
本発明で使用する場合、「(C1~C6)アルキルヘテロアリール」という用語は、上記で定義されたヘテロアリール基を介して分子に結合されている上記で定義された(C1~C6)アルキル基を指す。具体的には、それは、エチルピリジル基(C2H5-ピリジル-)でありうる。
【0046】
本発明で使用する場合、「ハロヘテロアリール」という用語は、塩素及び/又はフッ素原子のような上記で定義された1個又は複数のハロゲン原子によって置換されている上記で定義されたヘテロアリール基を指す。
【0047】
本発明で使用する場合、「(C1~C6)アルコキシヘテロアリール」という用語は、上記で定義されたヘテロアリール基を介して分子に結合されている上記で定義された(C1~C6)アルコキシ基を指す。具体的には、それは、メトキシピリジル基(CH3-O-ピリジル-)でありうる。
【0048】
本発明で使用する場合、「アミノヘテロアリール」という用語は、上記で定義されたヘテロアリール基を介して分子に結合されている上記で定義されたアミノ基を指す。
【0049】
本発明で使用する場合、「複素環」という用語は、飽和されたか、飽和されていないか、若しくは芳香族の、好ましくは、飽和された単環又は多環(縮合環、架橋環、又はスピロ環を含む)、好ましくは、各環に、好ましくは、5~10個、とりわけ、5個又は6個の原子を含む単環を指し、前記環の原子が、炭素原子と1個又は複数、有利には、1個、2個、3個、又は4個、より有利には、1個又は2個の窒素、酸素、又は硫黄原子のようなヘテロ原子からなり、残部は炭素原子である。複素環は、とりわけ、例えば、チエニル、フラニル、ピロリル、ピロリジニル、モルホリニル、ピペリジニル、又はピペラジニル、具体的には、ピロリジニル、モルホリニル、ピペリジニル、又はピペラジニルでありうる。好ましくは、前記複素環は、ピロリジニル、モルホリニル、ピペリジニル、又はピペラジニルのような飽和された5又は6員の複素環である。
【0050】
本発明で使用する場合、「薬学的に許容される」という表現は、医薬組成物/医薬品の調製に有用なもの、及び医薬的使用において、一般的に安全で毒性のないものを意味することを意図されている。
【0051】
本発明の枠組みにおいて、「薬学的に許容される塩」という表現は、上記で定義された通り薬学的に許容され、対応する化合物の薬理活性を有する化合物の塩を意味することを意図されている。
【0052】
薬学的に許容される塩には、
(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、及びリン酸等のような無機酸と形成されるか、又は酢酸、ベンゼンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2-ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、コハク酸、ジベンゾイル-L-酒石酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸、及びトリフルオロ酢酸等のような有機酸と形成される酸付加塩、並びに
(2)前記化合物中に存在する酸性プロトンが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアルミニウムイオンのような金属イオンによって置き換えられているか、有機又は無機塩基と組み合わされているかのいずれかである場合に形成される塩が含まれる。許容される有機塩基には、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミン等が含まれる。許容される無機塩基には、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウムが含まれる。
【0053】
本発明で使用する場合、「立体異性体」という用語は、立体配置的立体異性体を指し、また幾何異性体及び光学異性体を含む。
【0054】
幾何異性体は、E/Z異性体又はシス-トランス異性体とも呼ばれ、二重C=C結合上の置換基が異なる位置にあることから生じ、この位置は、Z又はE配置をとる可能性があり、シス又はトランス配置とも呼ばれる。
【0055】
光学異性体は、4個の異なる置換基(孤立電子対を潜在的に含む)を含み、置換基又は原子(炭素又は硫黄原子等)上の孤立電子対が空間において異なる位置にあることから生じる。したがって、この原子はキラル又は不斉中心に相当する。互いに鏡像ではない光学異性体は、したがって、「ジアステレオマー」と称され、重ね合わせることができない鏡像である光学異性体は、「エナンチオマー」と称される。
【0056】
具体的には、立体異性体は、光学異性体であり、より具体的には、エナンチオマーである。
【0057】
キラル化合物の2つのエナンチオマーの等モル混合物は、ラセミ体又はラセミ混合物と称される。
【0058】
本発明で使用する場合、「式(I)の化合物」という表現は、式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、又は(Ie)の化合物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明による化合物
本発明による化合物は、上記で定義されたX1、X2、R1、R3、R4、R6、及びR7を有する、以下の式(I):
【0060】
【0061】
の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、その立体異性体、又はその立体異性体の混合物
である。
【0062】
特定の実施形態によると、本発明による化合物は、以下の式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、又は(Ie)
【0063】
【0064】
の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、その立体異性体、又はその立体異性体の混合物
である。
【0065】
有利には、R1及びR3は、互いに独立して、H若しくはCH3のようなH又は(C1~C6)アルキル、好ましくは、Hを表す。
【0066】
特定の実施形態によると、R4及びR6は、互いに独立して、H、Clのようなハロゲン、CN、NO2、NHCOR16、NHR18、又はOR19を表す。具体的には、R4は、H、Clのようなハロゲン、CN、NO2、NHCOR16、NHR18、又はOR19を表し、R6は、H、OR19、又は(C1~C6)アルキルを表す。
【0067】
有利には、R4及びR6は、互いに独立して、H、OR19、又は(C1~C6)アルキル、具体的には、H若しくはCH3のようなH又は(C1~C6)アルキル、好ましくは、Hを表す。
【0068】
具体的には、R1、R3、R4、及びR6は、互いに独立して、H若しくはCH3のようなH又は(C1~C6)アルキル、好ましくは、Hを表す。
【0069】
有利には、R7は、H又はCH3、好ましくは、Hを表す。
【0070】
具体的には、R1、R3、R4、R6、及びR7は、互いに独立して、H若しくはCH3のようなH又は(C1~C6)アルキル、好ましくは、Hを表す。
【0071】
第1の実施形態によると、X1はNである。
【0072】
第2の実施形態によると、X1はCR2である。
【0073】
ある特定の実施形態によると、R2はCNであり、好ましくは、X1はCR2である。
【0074】
別の特定の実施形態によると、R2は、1個又は複数のFのようなハロゲン原子で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル基であり、好ましくは、X1はCR2である。R2は、より具体的には、CF3でありうる。
【0075】
別の特定の実施形態によると、R2は、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR21、及びNR22R23から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されているアリール又はヘテロアリール基であり、好ましくは、X1はCR2である。有利には、それは、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR21、及びNR22R23から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されているヘテロアリール基である。前記ヘテロアリール基は、好ましくは、6員のヘテロアリールのような5又は6員のヘテロアリールであり、例えば、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、又はトリアジニル、より具体的には、ピリミジニルである。R2は、具体的には、ピリミジニル基でありうる。
【0076】
別の特定の好ましい実施形態によると、R2はCONR11R12であり、好ましくは、X1はCR2であり、R11及びR12は上記で定義されており、具体的には:
- R11は、H若しくはCH3のようなH又は(C1~C6)アルキル、好ましくは、Hを表し、
- R12は、ハロ、(C1~C6)アルキル、アリール、OR24、及びNR25R26から、具体的には、(C1~C6)アルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ(C1~C6)アルキル、ハロアリール、ハロヘテロアリール、(C1~C6)アルキルアリール、(C1~C6)アルキルヘテロアリール、アリール-(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ-(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシアリール、(C1~C6)アルコキシヘテロアリール、アミノ(C1~C6)アルキル、アミノアリール、又はアミノヘテロアリールのようなハロ、(C1~C6)アルキル、OR24、及びNR25R26から;特に、(C1~C6)アルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロアリール、(C1~C6)アルキルアリール、(C1~C6)アルキルヘテロアリール、アリール-(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ-(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシアリール、(C1~C6)アルコキシヘテロアリール、又はアミノアリールから選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル、アリール、又は5-若しくは6員のヘテロアリール基を表し、前記ヘテロアリールは、5又は6員のヘテロアリールである。
【0077】
有利には、R11は、H若しくはCH3のようなH又は(C1~C6)アルキル、好ましくは、Hを表し、R12は、ハロ、(C1~C6)アルキル、アリール、OR24、及びNR25R26から、具体的には、アリール、ヘテロアリール、ハロアリール、ハロヘテロアリール、(C1~C6)アルキルアリール、(C1~C6)アルキルヘテロアリール、(C1~C6)アルコキシアリール、(C1~C6)アルコキシヘテロアリール、アミノアリール、又はアミノヘテロアリールのようなハロ、(C1~C6)アルキル、OR24、及びNR25R26から;特に、アリール、ヘテロアリール、ハロアリール、(C1~C6)アルキルアリール、(C1~C6)アルキルヘテロアリール、アリール-(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルキルヘテロアリール、(C1~C6)アルコキシアリール、(C1~C6)アルコキシヘテロアリール、又はアミノアリールから選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されているアリール又は5-若しくは6員のヘテロアリール基を表し、前記ヘテロアリールは、5又は6員のヘテロアリールである。前記アリールは、フェニル基でありえ、前記5又は6員のヘテロアリール基は、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、又はトリアジニルでありうる。好ましくは、前記5又は6員のヘテロアリール基は、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、又はトリアジニルのような6員のヘテロアリール基、好ましくは、ピリジルである。
【0078】
有利には、R11は、H若しくはCH3のようなH又は(C1~C6)アルキル、好ましくは、Hを表し、R12は、ハロ、(C1~C6)アルキル、アリール、OR24、及びNR25R26から、具体的には、ヘテロアリール、ハロヘテロアリール、(C1~C6)アルキルヘテロアリール、(C1~C6)アルコキシヘテロアリール、又はアミノヘテロアリール;特に、ヘテロアリール、(C1~C6)アルキルヘテロアリール、又は(C1~C6)アルコキシヘテロアリールのようなハロ、(C1~C6)アルキル、OR24、及びNR25R26から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されている5又は6員のヘテロアリール基を表す。前記5又は6員のヘテロアリール基は、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、又はトリアジニルでありうる。好ましくは、前記5又は6員のヘテロアリール基は、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、又はトリアジニルのような6員のヘテロアリール基であり、好ましくは、ピリジルである。
【0079】
好ましくは、R11は、H若しくはCH3のようなH又は(C1~C6)アルキル、好ましくは、Hを表し、R12は、ピリジル、(C1~C6)アルコキシルピリジル基(例えば、メトキシピリジル又はエトキシピリジル)、又は(C1~C6アルキル)-ピリジル基(例えば、メチルピリジル又はエチルピリジル)を表す。
【0080】
第3の実施形態によると、X2はNである。
【0081】
第4の実施形態によると、X2はCR5であり、R5はNR13R14を表し、R13及びR14は上記で定義されており、具体的には:
- R13は、H若しくは(C1~C6)アルキルを表し、
- R14は、H、R33、若しくはCOR34を表し、R33及びR34は上記で定義されており、具体的には、R33は、ハロ、OR27、及びNR28R29から選択される1個若しくは複数の基で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル基を表し、R34は、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR27、及びNR28R29から選択される1個若しくは複数の基で任意選択で置換されているアリール若しくはヘテロアリール基を表すか、
- 又はR13及びR14は、それらと結合する窒素原子と共に、(C1~C6)アルキル基で任意選択で置換されている複素環を形成する。
【0082】
ある特定の好ましい実施形態によると、R13は、H若しくはR31、具体的には、H若しくは(C1~C6)アルキルを表し、R14は、H若しくはR33を表すか、又はR13及びR14は、それらと結合する窒素原子と共に、(C1~C6)アルキル基で任意選択で置換されている複素環、好ましくは飽和された複素環を形成する。具体的には、R13は、H又はR31、具体的には、H又は(C1~C6)アルキルを表し、R14は、H又はR33を表す。有利には、R31及びR33は、互いに独立して、ハロ、OR27、及びNR28R29から、具体的には、OR27及びNR28R29から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル基、好ましくは、(C1~C6)アルキル基を表す。好ましくは、R31は、(C1~C6)アルキル基を表し、R33は、ハロ、OR27、及びNR28R29から、具体的には、OR27及びNR28R29から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル基、好ましくは、(C1~C6)アルキル基を表す。前記複素環は、好ましくは、ピロリジニル、モルホリニル、ピペリジニル、又はピペラジニルのような飽和された5又は6員の複素環である。
【0083】
別の特定の好ましい実施形態によると、R13は、H又はR31、具体的には、H又は(C1~C6)アルキル、好ましくは、Hを表し、R14は、COR34を表し、R34は上記で定義されている。有利には、R34は、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR27、及びNR28R29から選択される1個若しくは複数の基で任意選択で置換されているアリール又はヘテロアリール基を表す。好ましくは、前記アリールは、フェニルであり、前記ヘテロアリールは、5又は6員のヘテロアリール、より具体的には、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、又はテトラゾリル;特に、フリル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル(1,3,5-オキサジアゾリル等)、トリアゾリル、又はテトラゾリルのような5員のヘテロアリールである。
【0084】
好ましくは、R13及びR14は、互いに独立して、H若しくはCH3のようなH又は(C1~C6)アルキルをそれぞれ表す。
【0085】
有利には、X1はCR2であり、且つ/又はX2はCR5であり、好ましくは、X1はCR2であり、X2はCR5であり、上述の実施形態のいずれか1つによると、R2及びR5は上記で定義されている。
【0086】
上記の実施形態のいずれか1つは、任意の他の上記の実施形態と組み合わされうることは理解される。例えば、R2に関連する特定の実施形態を、R5に関連する別の特定の実施形態と組み合わせることが想定されうる。
【0087】
第1の好ましい実施形態によると、X1はCR2であり、X2はCR5である(式中、
- R2は、CONR11R12であり、R11は、H若しくはCH3のようなH又は(C1~C6)アルキル、好ましくは、Hを表し、R12は、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR24、及びNR25R26から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されている5又は6員のヘテロアリール基を表し、
- R5は、NR13R14であり、R13は、H若しくはR31を表し、R14は、H若しくはR33を表すか、又はR13及びR14は、それらと結合する窒素原子と共に、(C1~C6)アルキル基で任意選択で置換されている複素環、好ましくは飽和された複素環を形成し、上述の実施形態のうちの1つによると、R31及びR33は上記で定義されている)。
【0088】
第2の好ましい実施形態によると、X1はCR2であり、X2はCR5である(式中、
- R2は、CONR11R12であり、R11は、H若しくはCH3のようなH又は(C1~C6)アルキル、好ましくは、Hを表し、R12は、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR24、及びNR25R26から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されている5又は6員のヘテロアリール基を表し、
- R5は、NR13R14であり、R13は、H若しくはR31を表し、R14は、H若しくはR33を表し、上述の実施形態のうちの1つによると、R31及びR33は上記で定義されている)。
【0089】
第3の好ましい実施形態によると、X1はCR2であり、X2はCR5である(式中、
- R2は、CONR11R12であり、R11は、H若しくはCH3のようなH又は(C1~C6)アルキル、好ましくは、Hを表し、R12は、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR24、及びNR25R26から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されている5又は6員のヘテロアリール基を表し、
- R5は、NR13R14であり、R13及びR14は、互いに独立して、H若しくはCH3のようなH又は(C1~C6)アルキルをそれぞれ表す)。
【0090】
第4の好ましい実施形態によると、X1はCR2であり、X2はCR5である(式中、
- R2は、CONR11R12であり、R11はHを表し、R12は、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR24、及びNR25R26から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されているピリジル基を表し、
- R5は、NR13R14であり、R13及びR14は、互いに独立して、H若しくはCH3のようなH又は(C1~C6)アルキルをそれぞれ表す)。
【0091】
上述の4つの好ましい実施形態において、R1、R3、R4、R6、及びR7は、有利には、Hをそれぞれ表す。
【0092】
上述の4つの好ましい実施形態において、5又は6員のヘテロアリール基は、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、又はトリアジニルでありうる。好ましくは、前記5又は6員のヘテロアリール基は、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、又はトリアジニルのような6員のヘテロアリール基であり、好ましくは、ピリジルである。
【0093】
上述の4つの好ましい実施形態において、前記複素環は、好ましくは、ピロリジニル、モルホリニル、ピペリジニル、又はピペラジニルのような飽和された5又は6員の複素環である。
【0094】
有利には、本発明による化合物は、以下の化合物:
【0095】
【0096】
【0097】
及び薬学的に許容されるそれらの塩の中から選択される。
【0098】
好ましくは、本発明による化合物は、化合物2、6、及び7並びに薬学的に許容されるそれらの塩の中から選択される。
【0099】
本発明による化合物は、WO2018/054989([010])に開示される通りに調製されうる。
【0100】
本発明による医薬組成物
本発明による医薬組成物は、上記で定義された少なくとも1種の本発明による化合物及び薬学的に許容される担体を含む。
【0101】
本発明の医薬組成物は、経腸(例えば、経口、舌下、頬側、直腸、膣内等)、非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、眼内、腹腔内、頭蓋内、髄腔内等)、又は局所(例えば、経皮)投与、好ましくは、静脈内、経口、舌下、皮下、又は局所投与が意図されうる。この有効成分は、動物、好ましくは、ヒトを含む哺乳動物に対する投与のための単位形態であって、従来の薬学的に許容される担体と混合された単位形態で投与されうる。
【0102】
経口投与のための前記医薬組成物は、固体又は液体(溶液又は懸濁液)形態でありうる。
【0103】
固体組成物は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒等の形態でありうる。錠剤において、その有効成分は、圧縮される前に、ゼラチン、デンプン、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アラビアゴム等のような医薬用ビヒクルと混合されうる。更に、前記錠剤は、とりわけ、スクロース若しくは他の適当な材料を用いてコーティングされる場合や、又はそれらが持続的活性若しくは遅効性活性を有するように処理される場合がある。粉末又は顆粒において、その有効成分は、分散剤、湿潤剤、若しくは懸濁化剤、及び風味矯正剤若しくは甘味剤と混合されうるか、又は造粒されうる。カプセルにおいて、その有効成分は、前述のような粉末若しくは顆粒の形態又は下述のような液体組成物の形態で、軟カプセル又は硬カプセル中に充填されうる。
【0104】
液体組成物(ゲルを含む)は、水のような溶媒中に、その有効成分を、甘味剤、呈味増強剤、又は適当な着色剤と共に含有しうる。この液体組成物は、水、ジュース、ミルク等のような液体に、上述の粉末若しくは顆粒を懸濁するか、又は溶解することによっても得られうる。これは、例えば、シロップ剤又はエリキシル剤でありうる。
【0105】
舌下(舌の下)又は頬側(歯茎と頬の間)投与のための前記医薬組成物は、固体又は液体(溶液又は懸濁液)形態でありうる。
【0106】
固体組成物は、経口投与のために、とりわけ、上記で定義された錠剤、ゼラチンカプセル、粉末、又は顆粒の形態でありうる。これは、フィルムの形態でもありうる。
【0107】
液体組成物は、経口投与のために、前記で定義された通りでありうる。これは、噴霧剤又は滴剤の形態で投与されうる。
【0108】
直腸若しくは膣内投与のための坐剤又は卵形剤(ovules)は、直腸温度又は膣内温度で融解する結合剤、例えば、ココアバター又はポリエチレングリコールを用いて調製されうる。
【0109】
非経口投与のための前記組成物は、分散剤、湿潤剤、又は懸濁化剤を含有してもよい水性懸濁液又は水溶液の形態でありうる。前記組成物は、有利には、無菌である。これは、等張液(具体的には、血液と比較して)の形態でありうる。
【0110】
本発明による化合物は、医薬組成物中、1日に0.01mg~1000mgの範囲の用量であって、1日に1回のみ又は1日の間に数回、例えば、1日に同等の用量で2回投与される用量で使用されうる。毎日の投与される用量は、有利には、1mgから500mgの間、より有利には、10mgから200mgの間で含まれる。しかし、当業者により指摘されうるこれらの範囲外の用量を使用することは必要でありうる。
【0111】
特定の実施形態によると、本発明による医薬組成物は、本発明による化合物とは異なる少なくとも1種の他の有効成分を更に含む。
【0112】
前記少なくとも1種の他の有効成分は、副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン又はデキサメタゾン)、マスタード剤(例えば、シクロホスファミド又はメルファラン)、BRAF阻害薬のようなMAPK阻害薬(例えば、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、又はコビメチニブ)、サリドマイド、又はビンブラスチン-プレドニゾン若しくはMACOP-Bのような組合せ化学療法のように、組織球症若しくは頭蓋咽頭腫の治療又は予防に、好ましくは有用である。
【0113】
本発明による製品
本発明による製品は、
(1)上記で定義された少なくとも1種の本発明による化合物、及び
(2)式(I)の前記化合物とは異なる少なくとも1種の他の有効成分
を含む。
【0114】
前記製品は、
- 同時使用、個別使用、又は逐次使用のための組合せ製剤、すなわち、2種の有効成分(1)及び(2)は、それを必要とするヒトに、同時にか、個別にか、又は逐次的に投与される2つの異なる医薬組成物中に含有されるか、
- 又は1つの医薬組成物、すなわち、2種の有効成分(1)及び(2)は、同じ医薬組成物中に含有されるか
のいずれかである。
組織球症若しくは頭蓋咽頭腫の治療又は予防。
【0115】
前記少なくとも1種の他の有効成分(2)は、副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン又はデキサメタゾン)、マスタード剤(例えば、シクロホスファミド又はメルファラン)、BRAF阻害薬のようなMAPK阻害薬(例えば、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、又はコビメチニブ)、サリドマイド、又はビンブラスチン-プレドニゾン若しくはMACOP-Bのような組合せ化学療法のように、組織球症若しくは頭蓋咽頭腫の治療又は予防に、好ましくは有用である。
【0116】
医薬適用
本発明による化合物、本発明による医薬組成物、及び本発明による製品は、組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症の治療又は予防に使用される。
【0117】
好ましい実施形態によると、組織球症は、非悪性組織球症であり、好ましくは、組織球症のL、C、及びR群並びにH群の第2形態に共有される特徴である良性の組織学的特徴を有し、リンパ球及び/又はナチュラルキラー細胞毒性における機能不全を伴わない。好ましくは、前記組織球症は、L、C、及びR群から、具体的には、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)、エルドハイム-チェスター病(ECD)、エルドハイム-チェスター病とランゲルハンス細胞組織球症の混合形態(ECDとLCHの混合)、不定細胞組織球症(ICH)(全てL群から)、若年性黄色肉芽腫(JXG)のような黄色肉芽腫組織球症(XG)(C群から)、及びローサイ-ドーフマン病(R群から)から選択される。前記組織球症は、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)、不定細胞組織球症(ICH)(全てL群から)、若年性黄色肉芽腫(JXG)のような黄色肉芽腫組織球症(XG)(C群から)、及びローサイ-ドーフマン病(R群から)から選択されてもよい。より好ましくは、前記組織球症は、L群からのものであり、好ましくは、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)、エルドハイム-チェスター病(ECD)、エルドハイム-チェスター病とランゲルハンス細胞組織球症の混合形態(ECDとLCHの混合)、及び不定細胞組織球症(ICH)から選択されるか、又はランゲルハンス細胞組織球症(LCH)及び不定細胞組織球症(ICH)から選択され、最も好ましくは、前記組織球症は、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)である。
【0118】
前記組織球症(一般的なものか、又は先行する段落で定義された任意の亜群)は、RAS-MAPK経路に、1つ又は複数の活性化変異を含有してもよいか、又は含有しない。具体的には、前記組織球症(一般的なものか、又は先行する段落で定義された任意の亜群)は、KRAS、NRAS、BRAF、ARAF、CRAF、MEK、及びERKから選択される遺伝子に、1つ又は複数の活性化変異を含有してもよいか、又は含有しない。とりわけ、前記組織球症(一般的なものか、又は先行する段落で定義された任意の亜群)は、BRAF V600E変異を含有してもよいか、又は含有しない。
【0119】
RAS-MAPK経路の任意の遺伝子における「活性化変異」によって、RAS-MAPK経路の構成的活性化を生じ、これによる構成的なERKリン酸化を招く、対象とする遺伝子における変異が言及される。RAS-MAPK経路の活性化変異は、当該分野で公知である。以下のTable 1(表1)は、このような活性化変異の非限定的な例を示す。
【0120】
【0121】
ある実施形態において、本発明による化合物、本発明による医薬組成物、及び本発明による製品は、BRAF V600E変異エルドハイム-チェスター病(ECD)又はエルドハイム-チェスター病とランゲルハンス細胞組織球症の混合形態(ECDとLCHの混合)を除く任意の組織球症(好ましくは、非悪性)の治療又は予防に使用される。
【0122】
別の実施形態において、本発明による化合物、本発明による医薬組成物、及び本発明による製品は、BRAF V600E変異組織球症を除く任意の組織球症(好ましくは、非悪性)の治療又は予防に使用される。
【0123】
別の実施形態において、本発明による化合物、本発明による医薬組成物、及び本発明による製品は、上記Table 1(表1)の活性化変異のうちの1つを含有しない任意の組織球症(好ましくは、非悪性)の治療又は予防に使用される。
【0124】
好ましい実施形態によると、頭蓋咽頭腫は、乳頭状頭蓋咽頭腫(PCP)又はエナメル上皮腫型頭蓋咽頭腫(ACP)である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【
図1】MyD88及びERK1/2抗体を用いて染色されたランゲルハンス細胞組織球症を有する患者からの組織切片を表す図である。ERK1/2-MyD88相互作用を表すいくつかの斑点が、白い矢印で識別されている。
【
図2】MutuDC1940細胞の所定期間(時間で)中における、コンフルエントの状態(パーセント)に対するビヒクル(DMSO)と比較した8μMにおける本発明による化合物6又はベムラフェニブ(BRAF阻害薬)の効果を示す図である。
【
図3】MutuDC1940細胞の所定時間(時間)中における、死細胞の数(13mm
2あたり)に対するビヒクル(DMSO)と比較した8μMにおける本発明による化合物6又はベムラフェニブ(BRAF阻害薬)の効果を示す図である。
【
図4】MutuDC1940細胞の16時間又は24時間処理後のCXCL2(pg/mL)の産生に対するビヒクル(DMSO)と比較した8μMにおける本発明による化合物6の効果を示す図である。
【
図5】MutuDC1940細胞の所定時間(時間)中における、コンフルエントの状態(パーセント)に対するビヒクル(DMSO)と比較した8μMにおける本発明による化合物2、6、7、及び17の効果を示す図である。
【
図6】MutuDC1940細胞の所定時間(時間)中における、死細胞の数(13mm
2あたり)に対するビヒクル(DMSO)と比較した8μMにおける本発明による化合物2、6、7、及び17の効果を示す図である。
【
図7】MutuDC1940細胞の所定時間(時間)中における、コンフルエントの状態(パーセント)に対するビヒクル(DMSO)と比較した0.8μMにおけるベムラフェニブ(BRAF阻害薬)の効果を示す図である。
【
図8】MutuDC1940細胞の所定時間(時間)中における、死細胞の数(13mm
2あたり)に対するビヒクル(DMSO)と比較した0.8μMにおけるベムラフェニブ(BRAF阻害薬)の効果を示す図である。
【
図9】MutuDC1940細胞の所定時間(時間)中における、コンフルエントの状態(パーセント)に対するビヒクル(DMSO)と比較した10nMにおけるトラメチニブ(MEK阻害薬)の効果を示す図である。
【
図10】MutuDC1940細胞の所定時間(時間)中における、死細胞の数(13mm
2あたり)に対するビヒクル(DMSO)と比較した10nMにおけるトラメチニブ(MEK阻害薬)の効果を示す図である。
【
図11】MutuDC1940細胞の所定時間(時間)中における、コンフルエントの状態(パーセント)に対するビヒクル(DMSO)と比較した1μMにおけるウリキセルチニブ(ERK阻害薬)の効果を示す図である。
【
図12】MutuDC1940細胞の所定時間(時間)中における、死細胞の数(13mm
2あたり)に対するビヒクル(DMSO)と比較した1μMにおけるウリキセルチニブ(ERK阻害薬)の効果を示す図である。
【実施例】
【0126】
(実施例1)
1.材料及び方法
近接ライゲーションアッセイ:
ランゲルハンス細胞組織球症を有する患者からの組織切片を脱パラフィンし、3%H2O2溶液中のスライドをインキュベートすることによってペルオキシダーゼ活性を遮断した。沸騰したクエン酸緩衝液pH6中での抗原賦活化後に、製造業者の使用説明書に従って、近接ライゲーションアッセイキット(Sigma社)を使用し、MyD88とERK1/2のタンパク質相互作用を検出した。MyD88抗体(Invitrogen社)及びERK1/2(Cell Signaling社)を、抗体希釈緩衝液中1/750の希釈にて使用した。褐色の斑点は、ERK1/2-MyD88相互作用を表す。
【0127】
増殖及び細胞死アッセイ:
1.5×104細胞(MutuDC1940)を、96ウェルプレートに播種した。翌日、細胞を、ヨウ化プロピジウム(Sigma社)0.3μg/mLの存在下、8μMの化合物6若しくはベムラフェニブ又はビヒクル(DMSO)で処理し、細胞死を検出した。製造業者の使用説明書に従って、Incucyte(登録商標)(Essen Biosciences社)を用いて、増殖及び細胞死を48時間に渡り定量化した。
【0128】
CXCL2定量アッセイ:
0.5×106細胞(MutuDC1940)を、6-ウェルプレートに播種した。翌日、細胞を、8μMの化合物6又はDMSOを用いて、16又は24時間処理した。各条件で三回実施した。上清を回収し、製造業者の使用説明書(Invitrogen社)に従って、ELISAによって、マウスCXCL2を測定した。
【0129】
2.結果
近接ライゲーションアッセイから得られた結果は、
図1に示されている。図の斑点(そのいくつかは、
図1上の白い矢印で識別される)は、ランゲルハンス細胞組織球症を有する患者からの組織切片におけるERK1/2-MyD88相互作用を表し、このようなERK1/2-MyD88相互作用が、ヒト組織球症に存在することを明示している。
【0130】
増殖アッセイから得られた結果は、
図2に示されている。
図2は、組織球症のマウスモデルであるMutuDC1940細胞であって、8μMの本発明による化合物6若しくはベムラフェニブ(MAPK/BRAF阻害薬)又はビヒクル(DMSO)を用いて処理されたMutuDC1940細胞の培養時間中に観察されるコンフルエントの状態、すなわち、前記細胞によって覆われた培養皿の表面の割合を示す。
図2は、本発明による化合物6及びベムラフェニブは、共に前記細胞の増殖を阻害することを示す。
【0131】
細胞死アッセイから得られ結果は、
図3に示されている。
図3は、組織球症のマウスモデルであるMutuDC1940細胞であって、8μMの本発明による化合物6若しくはベムラフェニブ(MAPK/BRAF阻害薬)又はビヒクル(DMSO)を用いて処理されたMutuDC1940細胞の培養時間中に観察される死細胞の数を示す。
図3は、化合物6が前記細胞の死を誘発し、ベムラフェニブの場合では誘発されないことを示す。このことは、既知のBRAF(MAPK)阻害薬であるベムラフェニブ(非治癒的治療として知られている)とは対照的に本明細書に記載される本発明による化合物6及びその誘導体が、組織球症の治癒的治療をもたらす可能性があるか、又は少なくとも組織球症のより長く継続される治療をもたらす可能性があることを示唆する。
【0132】
CXCL2定量アッセイの結果は、
図4に示されており、本発明による化合物6が、組織球症のマウスモデルであるMutuDC1940細胞におけるサイトカイン産生を誘発することを示す。この結果は、ヒト組織球症に対するこのマウス細胞株の関連性を明確にしている。
【0133】
(実施例2)
増殖及び細胞死に関する本発明による追加の化合物の効果
実施例1におけるような細胞増殖(コンフルエントの状態%によって評価される)及び細胞死(13mm2あたりの死細胞の数によって評価される)に関する同じ実験を、式(I)の追加のERK/MyD88阻害薬:化合物2、7、及び17を用いて再度実施した。
【0134】
結果は、
図5(コンフルエントの状態%)及び
図6(13mm
2あたりの死細胞の数)に示されており、式(I)の他の化合物も、増殖を阻害するたけでなく、前記組織球症の細胞の死も誘発することを明確にしている。
【0135】
このことは、これらの化合物が、組織球症の治癒的治療をもたらす可能性があるか、又は少なくとも組織球症のより長く継続される治療をもたらす可能性があることを示唆する。
【0136】
(実施例3)
増殖及び細胞死に関する他のMAPK阻害薬の効果
実施例1におけるような細胞増殖(コンフルエントの状態%によって評価される)及び細胞死(13mm2あたりの死細胞の数によって評価される)に関する同じ実験を、ベムラフェニブ(BRAF阻害薬)のIC50に相当する、より低い濃度を用いて再度実施した。
【0137】
MAPK経路の他の阻害薬であるトラメチニブ(MEK阻害薬)及びウリキセルチニブ(ERK阻害薬)を、それぞれ10nM及び1μMのIC50濃度で使用した。
【0138】
結果は、
図7~
図12に示され、BRAF阻害薬であるベムラフェニブ(
図7~
図8参照)と同様に、MEK阻害薬であるトラメチニブ(
図9~
図10参照)又はERK阻害薬であるウリキセルチニブ(
図11~
図12参照)は、本発明による化合物とは対照的に、増殖のみ阻害し、細胞死への効果を持たないことを示している。
(参考文献)
[01] Badalien-Very et al. "Recurrent BRAF mutations in Langerhans cell histiocytosis" Blood 2010, 116(11), 1919-1923;
[02] Emilie et al. "Revised classification of histiocytoses and neoplasms of the macrophage-dendritic cell lineages" Blood 2016, 127(22), 2672-2681;
[03] Kobayashi and Tojo "Langerhans cell histiocytosis in adults: Advances in pathophysiology and treatment" Cancer Science 2018, 109, 3707-3713;
[04] Allen et al. "Langerhans-Cell Histiocytosis" N. Engl. J. Med. 2018, 379(9), 856-868;
[05] Rodriguez-Galindo and Allen "Langerhans cell histiocytosis" Blood 2020, 135(16), 1319-1331;
[06] Hanahan and Weinberg "Hallmarks of Cancer: The Next Generation" Cell 2011, 144, 646-674;
[07] Gulati and Allen "Langerhans cell histiocytosis: Version 2021" Hematological Oncology 2021, 39(S1), 15-23;
[08] Wu et al. "NRAS Mutations May Be Involved in the Pathogenesis of Cutaneous Rosai Dorfman Disease: A Pilot Study" Biology 2021, 10, 396, 1-15;
[09] Donadieu et al. "Vemurafenib for Refractory Multisystem Langerhans Cell Histiocytosis in Children: An International Observational Study" J. Clin. Oncol. 2019, 37(31), 2857-2866;
[10] WO2018/054989;
[11] Brastianos et al. "Exome sequencing identifies BRAF mutations in papillary craniopharyngiomas" Nat Genet.2014, 46(2), 161-165;
[12] Roque and Odia "BRAF-V600E mutant papillary craniopharyngioma dramatically responds to combination BRAF and MEK inhibitors" CNS Oncol. 2017, 6(2), 95-99;
[13] Gan "Management of Craniopharyngiomas in the Era of Molecular Oncological Therapies: Not a Panacea" Journal of the Endocrine Society 2021, 5(7), 1-2;
[14] Larkin et al. "BRAF VE mutations are characteristic for papillary craniopharyngioma and may coexist with CTNNB1-mutated adamantinomatous craniopharyngioma" Acta Neuropathol 2014, 127, 927-929;
[15] Aylwin et al. "Pronounced response of papillary craniopharyngioma to treatment with vemurafenib, a BRAF inhibitor" Pituitary 2016, 19, 544-546.
[16] Rao et al. "Newly diagnosed papillary craniopharyngioma with BRAF V600E mutation treated with single-agent selective BRAF inhibitor dabrafenib: a case report" Oncotarget 2019, 10(57), 6038-6042;
[17] Rostami et al. "Recurrent papillary craniopharyngioma with BRAFV600E mutation treated with neoadjuvant-targeted therapy" Acta Neurochir 2017, 2217-2221;
[18] Brastianos et al. "Dramatic Response of BRAF V600E Mutant Papillary Craniopharyngioma to Targeted Therapy" JNCI J. Natl Cancer Inst 2016, 108(2), 1-5;
[19] Himes et al. "Recurrent papillary craniopharyngioma with BRAF V600E mutation treated with dabrafenib: case report" J Neurosurg 2018, 1-5;
[20] Juratli et al. "Targeted treatment of papillory craniopharyngiomas harboring BRAF V600E mutations" Cancer 2019, 125(17), 2910-2914;
[21] Schlaffer et al. "Rathke’s Cleft Cyst as Origin of a Pediatric Papillary Craniopharyngioma" Frontiers in Genetics 2018, 9(49), 1-6;
[22] Chakraborty et al. "Mutually exclusive recurrent somatic mutations in MAP2K1 and BRAF support a central role for ERK activation in LCH pathogenesis" Blood 2014, 124(19), 3007-3015;
[23] Mass et al. "A somatic mutation in erythro-myeloid progenitors causes neurodegenerative disease" Nature 2017, 549(7672), 389-393;
[24] da Costa et al. "No genomic aberrations in Langerhans cell histiocytosis as assessed by diverse molecular technologies" Genes Chromosomes Cancer 2009, 48(3), 239-249;
[25] Heisig et al. "Vemurafenib in Langerhans cell histiocytosis: report of a pediatric patient and review of the literature" Oncotarget 2018, 9(31), 22236-22240;
[26] Michaloglou et al. "BRAFE600 in benign and malignant human tumours" Oncogene 2008, 27, 877-895;
[27] Pisapia et al. "BRAF: A Two-Faced Janus" Cells 2020, 9(12), 2549.
[28] Massoth et al., "Histiocytic and Dendritic Cell Sarcomas of Hematopoietic Origin Share Targetable Genomic Alterations Distinct from Follicular Dendritic Cell Sarcoma", The Oncologist 2021, 26(7), e1263-e1272.
[29] Berres et al., "Progress in understanding the pathogenesis of Langerhans cellhistiocytosis: back to Histiocytosis X?". British Journal of Haematology, 2015, 169(1), 3-13.
[30] Murakami et al. "Merkel cell polyomavirus DNA sequences in peripheral blood and tissues from patients with Langerhans cell histiocytosis": Hum. Pathol. 2014 Jan;45(1):119-26.
[31] Murakami et al. "Interleukin-1 loop model for pathogenesis of Langerhans cell histiocytosis" Cell Communication and Signaling 2015, 1-15
[32] Stachyra et al. "Merkel Cell Carcinoma from Molecular Pathology to Novel Therapies". Int. J. Mol. Sci. 2021, 22(12), 6305.
[33] Houben et al. "Absence of Classical MAP Kinase Pathway Signalling in Merkel Cell Carcinoma". J. Invest. Dermatol. 2006, 126(5), 1135-1142.
[34] Jouenne et al. "Lack of evidence for the involvement of Merkel cell polyomavirus in pulmonary Langerhans cell histiocytosis". ERJ Open R. 2020, 6(2), 00230-2019.
[35] Cohen-Aubart et al. "Variability in the efficacy of the IL1 receptor antagonist anakinra for treating Erdheim-Chester disease". Blood 2016, Volume 127(11), Pages 1509-1512.
[36] Diamond et al., "Detection of an NRAS mutation in Erdheim-Chester disease", Blood 2013, 122(6), 1089-1091.
[37] Diamond et al., "Diverse and Targetable Kinase Alterations Drive Histiocytic Neoplasms". Cancer Discov 2016, 6(2), 154-165.
[38] Satoh et al. "B-RAF mutant alleles associated with Langerhans cell histiocytosis, a granulomatous pediatric disease" [published correction appears in PLoS One. 2012; 7(6)]. PLoS One. 2012;7(4), e33891.
[39] Cohen-Aubart et al. "Targeted therapies in 54 patients with Erdheim-Chester disease, including follow-up after interruption (the LOVE study). Blood. 2017; 130(11), 1377-1380.
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症の治療又は予防における使用のための
医薬組成物であって、以下の式(I)
【化1】
の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、その立体異性体、又はその立体異性体の混合物(式中、
・X
1は、N又はCR
2を表し;
・X
2は、N又はCR
5を表し;
・R
1及びR
3は、互いに独立して、H、(C1~C6)アルキル、又はハロゲンを表し;
・R
2は、CN;1個若しくは複数のハロゲン原子で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル基;ハロ、(C1~C6)アルキル、OR21、及びNR22R23から選択される1個若しくは複数の基で任意選択で置換されているアリール若しくはヘテロアリール基;又はCONR11R12(式中、
R11は、H又は(C1~C6)アルキルを表し;
R12は、ハロ、(C1~C6)アルキル、アリール、OR24、及びNR25R26から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル、アリール、アリール-(C1~C6)アルキル、又は5-若しくは6員のヘテロアリール基を表し;
R21、R22、R23、R24、R25、及びR26は、互いに独立して、H又は(C1~C6)アルキルを表す)を表し;
・R
4及びR
6は、互いに独立して、H、ハロゲン、CN、NO
2、(C1~C6)アルキル、NR15COR16、NR17R18、又はOR19(式中、
R15及びR19は、互いに独立して、H又は(C1~C6)アルキルを表し;
R16は、(C1~C6)アルキルを表し;
R17及びR18は、H、(C1~C6)アルキル、アリール、又はヘテロアリール、例えばH又は(C1~C6)アルキルを表す)を表し;
・R
5は、NR13R14(式中、
R13は、H、R31、若しくはCOR32を表し;
R14は、H、R33、若しくはCOR34を表すか;
又はR13及びR14は、それらと結合する窒素原子と共に、(C1~C6)アルキル基で任意選択で置換されている複素環を形成し;
R31、R32、R33、及びR34は、互いに独立して、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR27、及びNR28R29から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル、アリール、アリール-(C1~C6)アルキル、又はヘテロアリール基を表し;
R27、R28、及びR29は、互いに独立して、H又は(C1~C6)アルキルを表す)を表し;
・R
7は、H又は(C1~C6)アルキルを表す)
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
以下の式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、又は(Ie)
【化2】
の化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、その立体異性体、又はその立体異性体の混合
物を含む、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
R
1、R
3、R
4、R
6、及びR
7が、それぞれHを表す、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
X
1が、CR
2を表す、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
X
2が、CR
5を表す、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項6】
R
2が、CONR11R12を表す、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
R11が、H又はCH
3、好ましくは、Hを表し、R12が、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR24、及びNR25R26から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されているアリール又は5-若しくは6員のヘテロアリール基を表し、ここで、前記アリールは、フェニルであり、前記5又は6員のヘテロアリール基は、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、又はトリアジニル;好ましくは、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、又はトリアジニル;より好ましくは、ピリジルである、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項8】
R
2が、CNを表すか、又は
R
2が、1種又はいくつかのハロゲン原子で任意選択で置換されている(C1~C6)アルキル基、例えばCF
3を表すか、又は
R
2が、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR21、及びNR22R23から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されているアリール又はヘテロアリール基、好ましくは、ヘテロアリール基を表す、
請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項9】
R13が、H若しくはR31を表し、R14が、H若しくはR33を表すか、又はR13及びR14が、それらと結合する窒素原子と共に、(C1~C6)アルキル基で任意選択で置換されている複素環を形成し、前記複素環が、好ましくは、飽和された5又は6員の複素環、例えばピロリジニル、モルホリニル、ピペリジニル、又はピペラジニルである、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項10】
R13及びR14が、互いに独立して、H又は(C1~C6)アルキル、例えばH又はメチルを表す、請求項9に記載の
医薬組成物。
【請求項11】
R13が、Hを表し、R14が、COR34を表し、R34が、好ましくは、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR27、及びNR28R29から選択される1個又は複数の基で任意選択で置換されているアリール又はヘテロアリール基を表し;前記アリールが、好ましくは、フェニルであり、前記ヘテロアリールが、好ましくは、5又は6員のヘテロアリール、より具体的には、5員のヘテロアリール、例えばフリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、又はテトラゾリル;特に、フリル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、又はテトラゾリルである、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項12】
- X
1が、CR
2を表し、好ましくは、X
2が、CR
5を表し、
- R
2が、CONR11R12を表し、
- R11が、Hを表し、
- R12が、ハロ、(C1~C6)アルキル、OR24、及びNR25R26から選択される1種又は複数の基で任意選択で置換されている6員のヘテロアリール基であって、6員のヘテロアリール基は、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、又はトリアジニル;より好ましくは、ピリジルである、6員のヘテロアリール基を表し、
- R13及びR14が、互いに独立して、H又は(C1~C6)アルキル基、例えばH又はメチルを表す、
請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項13】
以下の化合物:
【化3A】
【化3B】
及び薬学的に許容されるそれらの塩の中から選択される
化合物を含む、請求項
1に記載の
医薬組成物。
【請求項14】
組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症の治療又は予防における使用のための、請求項
1に
規定される少なくとも1種の化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項15】
組織球症又は頭蓋咽頭腫、好ましくは、組織球症の治療又は予防における使用のための、(1)請求項
1に
規定される少なくとも1種の化合物及び(2)請求項1に
規定される化合物とは異なる少なくとも1種の他の有効成分を、同時使用、個別使用、若しくは逐次使用のための組合せ製剤としてか、又は医薬組成物として含む製品であって、
前記少なくとも1種の他の有効成分が、組織球症若しくは頭蓋咽頭腫の治療又は予防に有用であり、好ましくは、副腎皮質ステロイド、例えばプレドニゾン若しくはデキサメタゾン;マスタード剤、例えばシクロホスファミド若しくはメルファラン;BRAF阻害薬のようなMAPK阻害薬、例えばベムラフェニブ、ダブラフェニブ、若しくはコビメチニブ;サリドマイド;又は組合せ化学療法、例えばビンブラスチン-プレドニゾン若しくはMACOP-Bである、製品。
【請求項16】
前記組織球症が、L、C、又はR群、好ましくは、L群からの組織球症である、請求項1から
14のいずれか一項に記載
の医薬組成
物又は請求項15に記載
の製品。
【請求項17】
前記組織球症が、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)、エルドハイム-チェスター病(ECD)、エルドハイム-チェスター病とランゲルハンス細胞組織球症の混合形態(ECDとLCHの混合)、不定細胞組織球症(ICH)、黄色肉芽腫組織球症(XG)、又はローサイ-ドーフマン病(RDD)、好ましくは、ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)であり、前記頭蓋咽頭腫が、乳頭状頭蓋咽頭腫(PCP)又はエナメル上皮腫型頭蓋咽頭腫(ACP)である、請求項1から
14のいずれか一項に記載
の医薬組成
物又は請求項15に記載
の製品。
【国際調査報告】