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特表2024-5347074員縮合環式化合物、並びにその調製方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】4員縮合環式化合物、並びにその調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/16 20060101AFI20240912BHJP
   C07D 498/06 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 31/395 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C07D498/16 CSP
C07D498/06
A61K31/395
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543428
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 CN2022122536
(87)【国際公開番号】W WO2023051681
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111161691.X
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518402015
【氏名又は名称】江▲蘇▼豪森▲薬▼▲業▼集▲団▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】王 霄
(72)【発明者】
【氏名】丁 小華
(72)【発明者】
【氏名】陳 国輝
(72)【発明者】
【氏名】孫 運棟
(72)【発明者】
【氏名】王 小雷
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB22
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086ZB27
(57)【要約】
本発明は、4員縮合環式化合物、並びに、その調製方法及び使用に関し、特に、4員縮合環式化合物、その調製方法、及び治療的有効量の該化合物を含有する医薬組成物、並びに、チロシンキナーゼ阻害剤として、特に、ABL1タンパク質、ABL2関連タンパク質及びキメラタンパク質BCR-ABL1からなる群から選択されるタンパク質のチロシンキナーゼ活性を阻害する薬剤の調製における、その使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩であって、
【化1】
式中、
環Aは、C3~6シクロアルキル、4~7員ヘテロシクリル、C6~10アリールまたは5~7員ヘテロアリールから選択され、
は、水素、重水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、シアノ、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6重水素化アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6ヒドロキシアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオまたはC1~6ハロアルコキシから選択され、
は、NまたはCRから選択され、
は、NRまたはC(Rから選択され、
は、NまたはCRから選択され、
は、それぞれ独立して、水素、C1~6アルキル、C1~6重水素化アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6ヒドロキシアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオまたはC1~6ハロアルコキシから選択され、
またはRは、それぞれ独立して、水素、C1~6アルキル、C1~6重水素化アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6ヒドロキシアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオ、C1~6ハロアルコキシ、C3~6シクロアルキル、4~7員ヘテロシクリル、C6~10アリールまたは5~7員ヘテロアリールから選択され、
nは、0、1、または2である、
前記化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
式中、
環Aは、C6~10アリールまたは5~6員ヘテロアリールであり、
は、C1~3アルキル、C1~3重水素化アルキル、C1~3ハロアルキル、C1~3ヒドロキシアルキル、C1~3アルコキシ、C13アルキルチオまたはC1~3ハロアルコキシから選択され、
は、NまたはCHから選択され、
は、NHまたはCHから選択され、
は、NまたはCHから選択され、
またはRは、それぞれ独立して、C1~3アルキル、C1~3重水素化アルキル、C1~3ハロアルキル、C1~3ヒドロキシアルキル、C1~3アルコキシ、C1~3アルキルチオまたはC1~3ハロアルコキシから選択される、
請求項1に記載の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
式(I)がさらに、一般式(II)または(II-a)に記載のとおりである、請求項1または2に記載の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩:
【化2】
【請求項4】
式中、
環Aは、フェニルまたはピリジルであり、
は、C1~3アルキル、C1~3ハロアルキル、C1~3アルコキシまたはC1~3ハロアルコキシから選択され、
は、Nであり、
は、NHであり、
は、Nであり、
またはRは、それぞれ独立して、水素、C1~3アルキルまたはC1~3ハロアルキルから選択される、
請求項3に記載の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
式中、
は、-CF、-CF、-CFCl、-OCF、-OCFまたは-OCFClから選択され、
またはRは、それぞれ独立して、-CH、-CHCH、-CF、-CFまたは-CFClから選択される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
前記化合物の具体的な構造が以下のとおりである、請求項1に記載の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩:
【化3】
【請求項7】
前記薬学的に許容される塩が、硫酸塩、塩酸塩、エチルスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、イセチオン酸塩または1,5-ナフタレンジスルホン酸塩から選択され、好ましくは、p-トルエンスルホン酸塩である、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
治療的有効量の請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩、及び1つ以上の薬学的に許容される担体または賦形剤を含有する、医薬組成物。
【請求項9】
ABL1及び/またはBCR-ABL1チロシンキナーゼ阻害剤の調製における、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩、及び請求項8に記載の医薬組成物の使用。
【請求項10】
白血病関連疾患の治療のための薬剤の調製における、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩、及び請求項8に記載の医薬組成物の使用であって、好ましくは、前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、または急性リンパ芽球性白血病から選択される、前記使用。
【請求項11】
式(II)の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩を調製するための方法であって、
【化4】
式中、化合物1及び化合物2は、置換を受けて化合物3を調製し、化合物5は、ホウ酸化合物4の作用下で調製され、化合物5を酸性条件下で環式化合物6に調整し、これを化合物7との縮合に供して化合物(II)、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩を調製し、
Xは、ハロゲンから選択され、
環A、R~R及びM~Mは、請求項3に定義されたとおりであるか、
または、
【化5】
化合物1-aは、化合物2で置換されて化合物3-aが調製され、これが3-bと反応して化合物5-aが調製され、化合物6-aは、ホウ酸化合物4の作用下で化合物5-aから調製され、化合物6-a及び化合物7が縮合して化合物(II)が調製され、
任意に、化合物(II)を、酸と反応させて塩化合物を調製し、
、X及びXは、それぞれ独立してハロゲンから選択され、
環A、R~R及びM~Mの定義は、一般式(II)で定義したとおりであり、好ましくは、Mは、Nであり、
前記酸は、好ましくは、p-トルエンスルホン酸である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学生物学の分野に属し、具体的には、4員縮合環式化合物、並びにその調製方法及び使用に関する。本発明はさらに、がん及び他の関連疾患の治療における薬学的に許容されるその塩及びその薬学的組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ABL1タンパク質のチロシンキナーゼ活性は、通常厳密に制御されており、ここではSH3ドメインのN末端キャッピング領域が重要な役割を果たしている。制御機構の1つは、N末端キャッピンググリシン2残基のミリストイル化に関与しており、これは次にSH1触媒ドメインのミリスチン酸結合部位と相互作用する。慢性骨髄性白血病(CML)のマーカーは、造血幹細胞のt(9,22)染色体の相互転座によって形成されるフィラデルフィア染色体(Ph)である。この染色体は、N末端キャップを欠き、構成的に活性なチロシンキナーゼドメインを有するキメラBCR-ABL1タンパク質をコードする、BCR-ABL1発がん遺伝子を保有している。BCR-ABL1タンパク質のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)はCML患者の標準治療法であり、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブは、新たにCMLと診断された患者の治療として承認されている。
【0003】
しかし、一部の患者は、SHIドメインの変異により阻害剤の結合が損なわれる薬剤耐性クローンを発生する。ニロチニブ及びダサチニブは両方とも、BCR-ABL1の多くのイマチニブ耐性変異型に対して有効性を保持しているが、スレオニン315残基がイソロイシンに置換される変異(T315I)は、3つの薬剤すべてに対して非感受性であり、CML患者に治療耐性が生じる原因となり得る。したがって、T315IなどのBCR-ABL1変異の阻害は、依然として医学的ニーズを満たしていない。CMLに加えて、BCR-ABL1融合タンパク質は、一定の割合で急性リンパ芽球性白血病の原因ともなる。ABLキナーゼ活性を標的とする薬剤も、この適応症に使用することができる。したがって、臨床的にはさらに多くのBCR-ABL1阻害剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、式(I)で表される化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩を提供することであり、
【化1】
式中、
環Aは、C3~6シクロアルキル、4~7員ヘテロシクリル、C6~10アリールまたは5~7員ヘテロアリールから選択され、
は、水素、重水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、シアノ、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6重水素化アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6ヒドロキシアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオまたはC1~6ハロアルコキシから選択され、
は、NまたはCRから選択され、
は、NRまたはC(Rから選択され、
は、NまたはCRから選択され、
は、それぞれ独立して、水素、C1~6アルキル、C1~6重水素化アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6ヒドロキシアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオまたはC1~6ハロアルコキシから選択され、
またはRは、それぞれ独立して、水素、C1~6アルキル、C1~6重水素化アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6ヒドロキシアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオ、C1~6ハロアルコキシ、C3~6シクロアルキル、4~7員ヘテロシクリル、C6~10アリールまたは5~7員ヘテロアリールから選択され、
nは、0、1、または2である。
【0005】
本発明の好ましい実施形態では、式(I)で表される化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩が提供され、式中、
環Aは、C6~10アリールまたは5~6員ヘテロアリールであり、
は、C1~3アルキル、C1~3重水素化アルキル、C1~3ハロアルキル、C1~3ヒドロキシアルキル、C1~3アルコキシ、C13アルキルチオまたはC1~3ハロアルコキシから選択され、
は、NまたはCHから選択され、
は、NHまたはCHから選択され、
は、NまたはCHから選択され、
またはRは、それぞれ独立して、C1~3アルキル、C1~3重水素化アルキル、C1~3ハロアルキル、C1~3ヒドロキシアルキル、C1~3アルコキシ、C1~3アルキルチオまたはC1~3ハロアルコキシから選択される。
【0006】
本発明の好ましい実施形態では、式(I)で表される化合物はさらに、一般式(II)で説明される通りである。
【化2】
【0007】
本発明の好ましい実施形態では、式(I)で表される化合物はさらに、一般式(II-a)で説明される通りである。
【化3】
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、式(I)で表される化合物はさらに、一般式(II-b)で説明される通りである。
【化4】
【0009】
本発明のより好ましい実施形態では、環Aは、フェニルまたはピリジルであり、
は、C1~3アルキル、C1~3ハロアルキル、C1~3アルコキシまたはC1~3ハロアルコキシから選択され、
は、Nであり、
は、NHであり、
は、Nであり、
またはRは、それぞれ独立して、水素、C1~3アルキルまたはC1~3ハロアルキルから選択される。
【0010】
本発明のさらに好ましい実施形態では、Rは、-CF、-CF、-CFCl、-OCF、-OCFまたは-OCFClから選択され、
またはRは、それぞれ独立して、-CH、-CF、-CFまたは-CFClから選択される。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施形態では、以下の特定の化合物が含まれる:
【化5】
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、薬学的に許容される塩は、硫酸塩、塩酸塩、エチルスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ヒドロキシエチルスルホン酸塩または1,5-ナフタレンジスルホン酸塩から選択され、より好ましくはp-トルエンスルホン酸塩である。
【0013】
別の態様では、本発明は、式(III)で表されるトルエンスルホン酸塩化合物を提供し、
【化6】
式中、
環Aは、C3~6シクロアルキル、4~7員ヘテロシクリル、C6~10アリールまたは5~7員ヘテロアリールから選択され、
は、水素、重水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、シアノ、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6重水素化アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6ヒドロキシアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオまたはC1~6ハロアルコキシから選択され、
は、NまたはCRから選択され、
は、NRまたはC(Rから選択され、
は、NまたはCRから選択され、
は、それぞれ独立して、水素、C1~6アルキル、C1~6重水素化アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6ヒドロキシアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオまたはC1~6ハロアルコキシから選択され、
またはRは、それぞれ独立して、水素、C1~6アルキル、C1~6重水素化アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6ヒドロキシアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオ、C1~6ハロアルコキシ、C3~6シクロアルキル、4~7員ヘテロシクリル、C6~10アリールまたは5~7員ヘテロアリールから選択され、
nは、0、1、または2である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、環Aは、C6~10アリールまたは5~6員ヘテロアリールであり、
は、C1~3アルキル、C1~3重水素化アルキル、C1~3ハロアルキル、C1~3ヒドロキシアルキル、C1~3アルコキシ、C13アルキルチオまたはC1~3ハロアルコキシから選択され、
は、NまたはCHから選択され、
は、NHまたはCHから選択され、
は、NまたはCHから選択され、
またはRは、それぞれ独立して、C1~3アルキル、C1~3重水素化アルキル、C1~3ハロアルキル、C1~3ヒドロキシアルキル、C1~3アルコキシ、C1~3アルキルチオまたはC1~3ハロアルコキシから選択される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、式(III)はさらに、一般式(IV)または(IV-a)で説明される通りである:
【化7】
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、環Aは、フェニルまたはピリジルであり、
は、C1~3アルキル、C1~3ハロアルキル、C1~3アルコキシまたはC1~3ハロアルコキシから選択され、
は、Nであり、
は、NHであり、
は、Nであり、
またはRは、それぞれ独立して、水素、C1~3アルキルまたはC1~3ハロアルキルから選択される。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、Rは、-CF、-CF、-CFCl、-OCF、-OCFまたは-OCFClから選択され、
またはRは、それぞれ独立して、-CH、-CHCH、-CF、-CFまたは-CFClから選択される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、p-トルエンスルホン酸塩は、以下の化合物から選択される:
【化8-1】
【化8-2】
【0019】
本発明のさらなる目的は、式(II)で表される化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩を調製する方法を提供することであり、
【化9】
式中、化合物1及び化合物2は、置換を受けて化合物3を調製し、化合物5は、ホウ酸化合物4の作用下で調製され、化合物5を酸性条件下で環式化合物6に調整し、これを化合物7との縮合に供して化合物(II)、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩を調製し、
任意に、化合物(II)を、酸と反応させて塩化合物を調製し、
Xは、ハロゲンから選択され、
環A、R~R及びM~Mの定義は、一般式(II)で定義したとおりであり、
酸は、好ましくは、p-トルエンスルホン酸である。
【0020】
本発明のさらなる目的は、式(II)で表される化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩を調製する方法を提供することであり、
【化10】
化合物1-aは、化合物2で置換されて化合物3-aが調製され、これが3-bと反応して化合物5-aが調製され、化合物6-aは、ホウ酸化合物4の作用下で化合物5-aから調製され、化合物6-a及び化合物7が縮合して化合物(II)が調製され、
任意に、化合物(II)を、酸と反応させて塩化合物を調製し、
、X及びXは、それぞれ独立してハロゲンから選択され、
環A、R~R及びM~Mの定義は、一般式(II)で定義したとおりであり、好ましくは、Mは、Nであり、
酸は、好ましくは、p-トルエンスルホン酸である。
【0021】
本出願のさらなる目的は、治療的有効量の式(I)の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩、及び1つ以上の薬学的に許容される担体または賦形剤を含有する医薬組成物を提供することである。
【0022】
本発明はさらに、エーベルソンタンパク質(ABL1)、エーベルソン関連タンパク質(ABL2)及びキメラタンパク質BCR-ABL1から選択されるタンパク質のチロシンキナーゼ酵素活性を阻害するための薬剤の調製における、式(I)の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩、及び医薬組成物の使用を提供する。
【0023】
本発明はさらに、白血病関連疾患の薬剤の調製における、式(I)の化合物、その立体異性体またはその薬学的に許容される塩、及びその医薬組成物の使用を提供する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、白血病は、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、または急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。
【0025】
本発明のより好ましい実施形態では、CMLは、イマチニブ、ニロチニブ及びダサチニブなどの1つ以上の標準治療による治療に抵抗性であり、AMLは、骨髄異形成症候群(MDS)または骨髄増殖性疾患(MPN)の後に発症する続発性AMLである。
【0026】
(発明の詳細な説明)
本明細書及び特許請求の範囲において使用される用語は、別段断りがない限り、以下の意味を有する。
【0027】
「アルキル」という用語は、飽和脂肪族炭化水素基を指し、これは、1~20個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の基であり、好ましくは、1~8個の炭素原子を含むアルキル、より好ましくは、1~6個の炭素原子のアルキル、最も好ましくは、1~3個の炭素原子のアルキルである。非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、n-ヘキシル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチル、n-ヘプチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、n-オクチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、n-ノニル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、n-デシル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル、及びそれらの様々な分岐異性体等が挙げられる。より好ましいものは、1~6個の炭素原子を含む低級アルキルであり、非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、n-ヘキシル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチル等が挙げられる。アルキルは、置換されていても置換されていなくてもよく、置換される場合、置換基は、可能な任意の結合点で置換され得る。置換基は、好ましくは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、メルカプト、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロアルキルチオ、オキソ、カルボキシルまたはカルボキシレートから独立して選択される1つ以上の基である。本発明においては、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、ハロアルキル、重水素化アルキル、アルコキシ置換アルキル、及びヒドロキシル置換アルキルが好ましい。
【0028】
「シクロアルキル」という用語は、飽和または部分不飽和の単環式または多環式の環式炭化水素置換基を指す。シクロアルキル環は、3~20個の炭素原子、好ましくは、3~12個の炭素原子、より好ましくは、3~8個の炭素原子、最も好ましくは、3~6個の炭素原子を含む。単環式シクロアルキルの非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプタトリエニル、シクロオクチル等が挙げられ、多環式シクロアルキルとしては、スピロ、縮合及び架橋シクロアルキル、好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル及びシクロヘプチルが挙げられる。
【0029】
「スピロシクロアルキル」という用語は、単環が単一の炭素原子(スピロ原子と呼ばれる)を共有する5~20員の多環式基を指し、その炭素原子には1つ以上の二重結合が含まれる場合があるが、どの環も完全に共役したπ電子系を持たない。好ましくは、それは6~14員であり、より好ましくは、7~10員である。スピロシクロアルキルは、環間で共有されるスピロ原子の数に応じて、モノスピロシクロアルキル、ビスピロシクロアルキルまたはポリスピロシクロアルキルに分けられ、好ましくは、モノスピロシクロアルキル及びビスピロシクロアルキルである。より好ましくは、3員/6員、3員/5員、4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/5員または5員/6員モノスピロシクロアルキルである。スピロシクロアルキルの非限定的な例としては以下が挙げられる:
【化11】
【0030】
また、モノスピロシクロアルキル及びヘテロシクロアルキルがスピロ原子を共有するスピロシクロアルキルも含まれ、非限定的な例としては以下が挙げられる:
【化12】
【0031】
「縮合シクロアルキル」という用語は、5~20員の全炭素多環式基を指し、系内の各環は、系内の他の環と隣接する一対の炭素原子を共有しており、1つ以上の環が、1つ以上の二重結合を含み得るが、どの環も完全に共役したπ電子系を持っていない。好ましくは、それは6~14員であり、より好ましくは、7~10員である。構成環の数に応じて、二環式、三環式、四環式または多環式縮合シクロアルキルに分けることができ、好ましくは、二環式または三環式、より好ましくは、5員/5員または5員/6員の二環式アルキルである。縮合シクロアルキルの非限定的な例としては以下が挙げられる:
【化13】
【0032】
「架橋シクロアルキル」という用語は、5~20員の全炭素多環式基を指し、任意の2つの環が、直接結合していない2つの炭素原子を共有しており、1つ以上の二重結合を含み得るが、どの環も完全に共役したπ電子系を持っていない。好ましくは、それは6~14員であり、より好ましくは、7~10員である。構成環の数に応じて、二環式、三環式、四環式または多環式架橋シクロアルキルに分けることができ、好ましくは二環式、三環式または四環式、より好ましくは、二環式または三環式である。架橋シクロアルキルの非限定的な例としては以下が挙げられる:
【化14】
【0033】
「ヘテロシクリル」という用語は、3~20個の環式原子を含む飽和または部分的に不飽和の単環式または多環式炭化水素置換基を指し、1つ以上の環式原子が、窒素、酸素、C(O)またはS(O)(mは0~2の整数)から選択されるヘテロ原子であるが、-O-O-、-O-S-、または-S-S-の環式部分を除き、残りの環式原子は炭素である。好ましくは、3~12個の環原子を含み、そのうち1~4個はヘテロ原子であり、より好ましくは、3~8個の環原子を含み、最も好ましくは、3~8個の環原子を含み、さらに好ましくは、1~3個の窒素原子を含む3~8員ヘテロシクリルであり、任意に、1~2個の酸素原子、硫黄原子、またはオキソ基で置換されている。窒素含有単環式ヘテロシクリル、窒素含有スピロヘテロシクリル、または窒素含有縮合ヘテロシクリルが含まれる。
【0034】
単環式ヘテロシクリルの非限定的な例としては、オキセタニル、アゼチジニル、チエタニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピロリル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ホモピペラジニル、アゼパニル、1,4-ジアゼパニル、ピラニル、またはテトラヒドロチオピラニルジオキシド等;好ましくは、オキセタニル、アゼチジニル、チエタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロチオピラニルジオキシド、ピロリジニル、モルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ヘキサヒドロピラジニル、ヘキサヒドロピリミジニル、アゼパニル、1,4-ジアゼパニル及びピペラジニル;及び、より好ましくは、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニル、オキセタニルまたはアゼチジニルが挙げられる。多環式ヘテロシクリルには、スピロ、縮合及び架橋ヘテロシクリルが含まれ、関与するスピロ、縮合及び架橋ヘテロシクリルは、任意に、単結合を介して他の基に接続されるか、または環上の任意の2つ以上の原子を介して他のシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールにさらに接続される。
【0035】
「スピロヘテロシクリル」という用語は、単環が1つの原子(スピロ原子と呼ばれる)を共有する5~20員多環式ヘテロ環基を指し、環原子の1つ以上が、窒素、酸素、またはS(O)(mは0~2の整数)から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は、炭素である。1つ以上の二重結合を含み得るが、どの環も完全に共役したπ電子系を持っていない。好ましくは、それは5~12員であり、より好ましくは、7~10員である。スピロヘテロシクリルは、環間で共有されるスピロ原子の数に応じて、モノスピロヘテロシクリル、ビスピロヘテロシクリルまたはポリスピロヘテロシクリルに分けられ、好ましくは、モノスピロヘテロシクリル及びビスピロヘテロシクリルである。より好ましくは、3員/5員、3員/6員、4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/5員または5員/6員モノスピロヘテロシクリルである。スピロヘテロシクリルの非限定的な例としては以下が挙げられる:
【化15】
【0036】
「縮合ヘテロシクリル」という用語は、5~20員の多環式ヘテロ環基を指し、系内の各環は系内の他の環と隣接する一対の原子を共有しており、1つ以上の環が、1つ以上の二重結合を含み得るが、どの環も完全に共役したπ電子系を持たず、1つ以上の環原子が、窒素、酸素、またはS(O)(mは0~2の整数)から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は、炭素である。好ましくは、それは6~14員であり、より好ましくは、7~10員である。構成環の数に応じて、二環式、三環式、四環式または多環式縮合ヘテロシクリルに分けることができ、好ましくは、二環式または三環式、より好ましくは、5員/5員または5員/6員の二環式縮合ヘテロシクリルである。縮合ヘテロシクリルの非限定的な例としては以下が挙げられる:
【化16】
【0037】
「架橋ヘテロシクリル」という用語は、5~14員の多環式ヘテロ環基を指し、任意の2つの環は、直接接続されていない2つの原子を共有しており、1つ以上の二重結合を含み得るが、どの環も完全に共役したπ電子系を持たず、1つ以上の環原子が、窒素、酸素、またはS(O)(mは0~2の整数)から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は、炭素である。好ましくは、それは6~14員であり、より好ましくは、6~10員である。構成環の数に応じて、二環式、三環式、四環式または多環式架橋ヘテロシクリルに分けることができ、好ましくは二環式、三環式または四環式、より好ましくは、二環式または三環式である。架橋ヘテロシクリルの非限定的な例としては以下が挙げられる:
【化17】
【0038】
ヘテロシクリル環は、アリール、ヘテロアリール、またはシクロアルキル環に縮合していてもよく、親構造に接続している環はヘテロシクリルであり、その非限定的な例には、以下が挙げられる:
【化18】
【0039】
ヘテロシクリルは、任意に、置換されていても、置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、好ましくは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、メルカプト、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロアルキルチオ、オキソ、カルボキシルまたはカルボキシレートから独立して選択される1つ以上の基である。
【0040】
「アリール」という用語は、フェニル及びナフチルなど、共役したπ電子系を有する、6員~14員、好ましくは、6員~10員全炭素単環式または縮合多環式(すなわち、隣接する一対の炭素原子を共有する環)基である。より好ましくは、フェニルである。アリール環は、ベンゾ-3~8員シクロアルキル、ベンゾ-3~8員ヘテロアルキル、好ましくは、ベンゾ-3~6員シクロアルキル、ベンゾ-3~6員ヘテロアルキルを含む、ヘテロアリール、ヘテロシクリルまたはシクロアルキル環に縮合することができ、ヘテロシクリルは、1~3個の窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を含むか、または、ベンゼン環を含む3員窒素含有縮合環も含む、ヘテロ環基であり、親構造に接続している環は、アリール環である。
【0041】
アリールは、置換されていても非置換であってもよい。置換されている場合、置換基は、好ましくは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、メルカプト、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロアルキルチオ、カルボキシルまたはカルボキシレートから独立して選択される1つ以上の基である。
【0042】
「ヘテロアリール」という用語は、1~4個のヘテロ原子及び5~14個の環原子を含むヘテロ芳香族系を指し、ヘテロ原子は、酸素、硫黄及び窒素から選択される。ヘテロアリールは、好ましくは、5~10員、より好ましくは、5員または6員であり、例えばイミダゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、ピロリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、チアジアゾリル、ピラジニル等であり、好ましくは、トリアゾリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、ピリミジニルまたはチアゾリル、より好ましくは、ピラゾリル及びオキサゾリルである。ヘテロアリール環は、アリール、ヘテロシクリル、またはシクロアルキル環に縮合していてもよく、親構造に接続している環は、ヘテロアリール環であり、その非限定的な例には、以下が挙げられる:
【化19】
【0043】
「アルコキシ」という用語は、-O-(アルキル)及び-O-(非置換シクロアルキル)を指し、アルキルは上で定義したとおりである。アルコキシの非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシが挙げられる。アルコキシは、任意に、置換されていても、置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は、好ましくは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、メルカプト、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロアルキルチオ、カルボキシルまたはカルボキシレートから独立して選択される1つ以上の基である。
【0044】
「ハロアルキル」という用語は、1つ以上のハロゲンで置換されたアルキルを指し、アルキルは、上で定義したとおりである。
【0045】
「ハロアルコキシ」という用語は、1つ以上のハロゲンで置換されたアルコキシを指し、アルコキシは、上で定義したとおりである。
【0046】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、ヒドロキシルで置換されたアルキルを指し、アルキルは、上で定義したとおりである。
【0047】
「アルキルチオ」という用語は、-S-(アルキル)及び-S-(非置換シクロアルキル)を指し、アルキルは、上で定義したとおりである。アルキルチオの非限定的な例としては、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、シクロプロピルチオ、シクロブチルチオ、シクロペンチルチオ、及びシクロヘキシルチオが挙げられる。アルキルチオは、任意に、置換されていても、置換されていなくてもよく、置換されている場合、置換基は、好ましくは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、メルカプト、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロアルキルチオ、カルボキシルまたはカルボキシレートから独立して選択される1つ以上の基である。
【0048】
「アルケニル」とは、アルキレン基としても知られるアルケニルを指し、2~20個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖基であり、好ましくは、2~8個の炭素原子を含むアルケニル、より好ましくは、2~6個の炭素原子を含むアルケニル、最も好ましくは、2~4個の炭素原子を含むアルケニルである。アルケニルは、さらに他の関連する基、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、メルカプト、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロアルキルチオ、カルボキシルまたはカルボキシレートで置換されていてもよい。
【0049】
「アルキニル」という用語は、2~20個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の基を指し、好ましくは、2~8個の炭素原子を含むアルキニル、より好ましくは、2~6個の炭素原子を含むアルキニル、最も好ましくは、2~4個の炭素原子を含むアルキニルである。アルキニルは、さらに他の関連する基、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、メルカプト、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロアルキルチオ、カルボキシルまたはカルボキシレートで置換されていてもよい。
【0050】
「ヒドロキシル」は、-OH基を指す。
【0051】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を指す。
【0052】
「アミノ」は、-NHを示す。
【0053】
「シアノ」は、-CNを指す。
【0054】
「Xは、A、B、またはCから選択される」、「Xは、A、B、及びCから選択される」、「Xは、A、B、またはCである」、及び「Xは、A、B、及びCである」は、異なる表現で同じことを意味しており、それは、Xは、A、B、及びCのいずれか1つ以上であるということである。
【0055】
本発明に記載の水素原子は、その同位体重水素で置き換えることができ、本発明に関与する例示的な化合物中の任意の水素原子も重水素原子で置き換えることができる。
【0056】
「任意の」または「任意に」とは、続いて記載される事象または状況が発生する場合があるが必ずしも発生せず、その記載が、事象または状況が発生する場合と発生しない場合とを含むことを意味する。例えば、「アルキルで任意に置換されるヘテロ環基」とは、アルキルが存在してもよいが、存在する必要はないことを意味し、ヘテロ環基がアルキルで置換されている場合とヘテロ環基がアルキルで置換されていない場合を含めて記載される。
【0057】
「置換される」とは、基中の1つ以上の水素原子、好ましくは、最大5個、より好ましくは、1~3個の水素原子が、対応する数の置換基で独立して置換されることを意味する。言うまでもなく、置換基は可能な化学位置にのみ存在し、当業者は過度の努力をせずに(実験的または理論的に)可能な置換または不可能な置換を決定することができる。例えば、遊離水素を有するアミノまたはヒドロキシルは、不飽和結合(オレフィン結合など)で炭素原子に結合すると不安定になる可能性がある。任意の置換基としては、重水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、シアノ、オキソ、チオ、アルキル、アルケニル、アルキニル、重水素化アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロアルコキシ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールのうちの1つ以上が挙げられ、好ましくは、重水素、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、シアノ、オキソ、チオ、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6重水素化アルキル、C1~6ハロアルキル、C1~6ヒドロキシアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキルチオ、C1~6ハロアルコキシ、C3~12シクロアルキル、3~12員ヘテロシクリル、C6~14アリール及び5~14員ヘテロアリールである。
【0058】
「医薬組成物」とは、本明細書に記載される1つ以上の化合物またはその生理学的/薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグと、他の化学成分、及び生理学的/薬学的に許容される担体及び賦形剤などの他の成分との混合物を意味する。医薬組成物の目的は、生体への投与を容易にし、活性成分の吸収を促進して生物活性を発揮することである。
【0059】
「薬学的に許容される塩」とは、哺乳動物に使用した場合に安全かつ有効であり、望ましい生物学的活性を有する本発明の化合物の塩を指す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
実施例を参照して本発明を以下にさらに説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0061】
実施例1(3R)-N-(4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)-2-(ジフルオロメチル)-3-メチル-3,4,5a,6-テトラヒドロ-5-オキサ-1,2a,6,8-テトラアザベンゾ[4,5]シクロオクチル[1,2,3-cd]インデン-11-カルボキサミドp-トルエンスルホン酸塩
【化20】
方法1:
ステップ1:メチル7-ブロモ-2-(ジフルオロメチル)-1H-ジフルオロメチル-ベンゾ[d]イミダゾール-5-カルボキシレートの合成
【化21】
100mLの反応フラスコに、20gのメチル3,4-ジアミノ-5-ブロモ安息香酸、60mLのジフルオロ酢酸を加え、10~30分間撹拌し、3回の窒素置換に供した。温度を70℃に加熱し、反応物を18~20時間撹拌した。反応終了後、100mLの酢酸エチルを加え、重炭酸ナトリウム水溶液で有機相をpH=7に調整し、混合物を5~10分間撹拌した。有機相を収集し、水相を廃棄した。有機相を、50mLの塩化ナトリウム溶液を添加して洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。系を濾過し、濃縮乾固し、カラムクロマトグラフィーに供し、22.3gの生成物を、収率90%で得た。
【0062】
ステップ2:メチル(R)-7-ブロモ-2-(ジフルオロメチル)-1-[1-ヒドロキシプロパ-2-イル]-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-カルボキシレートの合成
【化22】
500mLの反応フラスコに、20gのメチル7-ブロモ-2-(ジフルオロメチル)-1H-ジフルオロメチル-ベンゾ[d]イミダゾール-5-カルボキシレート、4.8gのセチルトリメチルアンモニウムブロミド、18.1gの炭酸カリウム、及び200mLのアセトニトリルを加え、室温で撹拌しながら9.3g/50mLの(S)-2-クロロ-1-プロパノール/アセトニトリル溶液を滴加した。滴加終了後、混合物を加熱して還流させ8時間反応させた。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、氷水に注いで固体を沈殿させ、カラムクロマトグラフィーで精製して、16.3gの生成物を、収率60%で得た。
【0063】
ステップ3:メチル(R)-2-(ジフルオロメチル)-1-[1-ヒドロキシプロパ-2-イル]-7-(ピリミジン-5-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-カルボキシレートの合成
【化23】
250mLの三口フラスコに、15gのメチル(R)-7-ブロモ-2-(ジフルオロメチル)-1-[1-ヒドロキシプロパ-2-イル]-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-カルボキシレート、16.2gの酢酸カリウム、7.9gのフッ化カリウム、105mLの1,4-ジオキサン、及び15mLの水を加え、系を3回窒素置換に供した。2.4gのPd(PPhを加え、窒素置換を3回行い、系を80℃に加熱し、テトラヒドロフラン中の5-ピリミジンボロン酸の溶液(6.1g/15mL)を滴加した。滴加終了後、反応物をさらに5時間撹拌し、TLCモニタリングにより原料が完全に反応したことが示された後、系を室温まで冷却した。250mLの水、120mLの酢酸エチル、及び3gのN-アセチルシステインを反応系に加え、系を0.5時間撹拌した後、3Lの飽和重炭酸ナトリウム溶液を加えた。系を相分離させ、水相を120mLの酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、5Lの飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、濃縮乾固し、カラムクロマトグラフィーで精製して、10.3gの生成物を、収率69%で得た。
【0064】
ステップ4:メチル(3R)-2-(ジフルオロメチル)-3-メチル-3,4,5a,6-テトラヒドロ-5-オキサ-1,2a,6,8-テトラアザベンゾ[4,5]シクロオクチル[1,2,3-cd]インデン-11-カルボキシレートの合成
【化24】
250mLの反応フラスコに、10gのメチル(R)-2-(ジフルオロメチル)-1-[1-ヒドロキシプロピル-2-イル]-7-(ピリミジン-5-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-カルボキシレート、2.6gのメタンスルホン酸、及び150mLの塩化メチレンを加え、室温で1時間撹拌し、濾過し、乾燥させて、11.5gの生成物を、収率91%で得た。
【0065】
ステップ5:(3R)-N-(4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)-2-(ジフルオロメチル)-3-メチル-3,4,5a,6-テトラヒドロ-5-オキサ-1,2a,6,8-テトラアザベンゾ[4,5]シクロオクチル[1,2,3-cd]インデン-11-カルボキサミドの合成
【化25】
250mLの反応フラスコに、10gの化合物1-8、5.8gの4-(クロロジフルオロメトキシ)アニリン、及び100mLのテトラヒドロフランを加え、44mLのリチウムビストリメチルシリルアミド(THF中1.0M)を5~10℃で滴加した。滴加が完了した後、反応物を室温で15時間撹拌した。反応混合物に100mLの飽和塩化アンモニウム水溶液を滴加して反応をクエンチし、200mLの酢酸エチルを加えて抽出し、有機相を濃縮乾固した。濃縮物に100mLの酢酸エチルを加え、濃縮物を50℃に加熱し、0.5時間撹拌し、50mLのn-ヘプタンをゆっくり滴加した。系をさらに0.5時間撹拌し、次いで20~30℃に冷却し、3時間撹拌し、濾過し、真空下で乾燥させて、9.1gのオフホワイトの固体を、収率82%で得た。
【0066】
ステップ6:(3R)-N-(4-(クロロジフルオロメトキシ)フェニル)-2-(ジフルオロメチル)-3-メチル-3,4,5a,6-テトラヒドロ-5-オキサ-1,2a,6,8-テトラアザベンゾ[4,5]シクロオクチル[1,2,3-cd]インデン-11-カルボキサミド4-メチルベンゼンスルホン酸塩の合成
【化26】
9gの化合物1-10を秤量し、90mLのアセトニトリルを加え、混合物を50℃に加熱し、30分間加熱撹拌した。エタノール中のp-トルエンスルホン酸の溶液(4g/20mL)を加え、次いで、系をインキュベートして22~24時間反応させた。混合物を濾過し、濾過ケーキを50℃で24時間真空乾燥して、10.1gの生成物を、収率84%で得た。
【0067】
HNMR(400Hz,DMSO-d)δ10.51(s,1H),8.68(s,1H),8.35(s,1H),8.58-8.59(d,J=1.6Hz,1H),7.92-7.95(d,J=9.2Hz,2H),7.84-7.85(d,J=1.6Hz,1H),7.58-7.62(m,1H),7.56(t,J=52.0Hz,1H),7.48-7.50(d,J=7.6Hz,2H),7.36-7.38(d,J=9.2Hz,2H),7.11-7.13(d,J=7.6Hz,2H),6.93(br,1H),5.05(s,1H),4.34-4.39(m,1H),3.47-3.60(m,2H),2.29(s,3H),1.36-1.38(d,J=7.2Hz,3H)。
【0068】
MS(ESI,m/z):524.2[M-CS+H]
【0069】
方法2:
【化27】
500mLの反応フラスコに、20gのメチル4-アミノ-3-ブロモ-5-ニトロ安息香酸(化合物1)、5.30gのセチルトリメチルアンモニウムブロミド、20.07gの炭酸カリウム、及び200mLのアセトニトリルを加えた。10.3g/50mLの(S)-2-クロロ-1-プロパノール/アセトニトリル溶液を、室温で撹拌しながら滴加した。滴加終了後、混合物を加熱して還流させ8時間反応させた。反応終了後、反応混合物を濃縮乾固し、残渣に酢酸エチル及び水を加え、混合物を抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。系を濾過し、濾液をカラムクロマトグラフィーで精製して、13.32gの化合物3を、収率55%で得た。
【0070】
100mLの反応フラスコに、10gのメチル(R)-3-ブロモ-4-[(1-ヒドロキシイソプロパン-2-イル)アミノ]-5-ニトロ安息香酸(化合物3)及び38mLのジフルオロ酢酸を加え、16.76gの鉄粉を室温で加え、混合物を40~50℃に加熱して3時間反応させた。反応系を冷却し、酢酸エチルをそこに加えた。反応物系を濾過した。濾液を水及び飽和塩化ナトリウムでそれぞれ1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を濃縮し、次の反応工程に直接入れた。
【0071】
250mLの三口フラスコに、15gのメチル(R)-7-ブロモ-2-(ジフルオロメチル)-1-[1-ヒドロキシプロパ-2-イル]-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-カルボキシレート(化合物4)、16.2gの酢酸カリウム、7.9gのフッ化カリウム、105mLの1,4-ジオキサン、及び15mLの水を加え、系を3回窒素置換に供した。2.4gのPd(PPhを加え、窒素置換を3回行い、系を80℃に加熱し、テトラヒドロフラン中の5-ピリミジンボロン酸の溶液(6.1g/15mL)を滴加した。滴加終了後、反応物をさらに5時間撹拌し、TLCモニタリングにより原料が完全に反応したことが示された後、系を室温まで冷却した。250mLの水、120mLの酢酸エチル、及び3gのN-アセチルシステインを反応系に加え、系を0.5時間撹拌した後、3Lの飽和重炭酸ナトリウム溶液を加えた。系を相分離させ、水相を120mLの酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、5Lの飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、濃縮乾固し、カラムクロマトグラフィーで精製して、10.3gの化合物6を、収率69%で得た。
【0072】
250mLの反応フラスコに、10gの化合物6、5.8gの4-(クロロジフルオロメトキシ)アニリン、及び100mLのテトラヒドロフランを加え、44mLのリチウムビストリメチルシリルアミド(THF中1.0M)を5~10℃で滴加した。滴加が完了した後、系を室温で15時間撹拌し、反応させた。反応混合物に100mLの飽和塩化アンモニウム水溶液を滴加して反応をクエンチし、200mLの酢酸エチルを加えて抽出し、有機相を濃縮乾固した。濃縮物に100mLの酢酸エチルを加え、濃縮物を50℃に加熱し、0.5時間撹拌し、50mLのn-ヘプタンをゆっくり滴加した。系をさらに0.5時間撹拌し、次いで20~30℃に冷却し、3時間撹拌し、濾過し、真空下で乾燥させて、9.1gのオフホワイトの固体を、収率82%で得た。
【0073】
HNMR(400Hz,アセトン-d)δ10.13(s,1H),9.51(s,1H),9.37(s,1H),9.09-9.10(d,J=2.4Hz,1H),7.90-7.92(m,3H),7.7.81(s,1H),7.74(t,J=52.4Hz,1H),7.27-7.29(d,J=8.4Hz,2H),6.04(s,1H),4.66-4.67(m,1H),3.98-4.04(m,1H),3.73-3.77(m,1H),1.56-1.58(d,J=6.8Hz,3H)。
【0074】
他の例の調製については、実施例1を参照のこと。
【表1】
【0075】
生物学的試験の評価
試験実施例を参照して本発明を以下にさらに記載し説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定することを企図していない。
【0076】
I.ABL1WTキナーゼに対する本発明の化合物の阻害活性に関する研究
1.試験目的
ABL1WTキナーゼに対する本発明の化合物のインビトロ阻害活性を評価する。
【0077】
2.試験方法
キャピラリー電気泳動を使用して基質ペプチドのリン酸化変換率を検出し、キナーゼ(ABL1-WT)を阻害する試験化合物のIC50値を決定した。本試験で試験された化合物の最大濃度は1000nM、3倍希釈であり、合計12の濃度(1000~0.0056nM)であった。最初に、酵素反応系(酵素ABL1-WTの濃度は1.3nM、基質FLPeptide2の濃度は1.5μM、反応因子は10mM MgClであった)を調製した。室温で30分間インキュベートした後、5μLの4×ATP溶液を加えて酵素反応を開始させた。室温で90分間反応させた後、停止緩衝液(0.5M EDTA含有)を加えて反応を停止させた。サンプルを、EZリーダーを使用して分析した(分析条件:圧力-1.5PSI、最大電圧電流-2250V、最小電圧電流-500V、分離時間40秒、及びシステム遅延100.0秒)。
【0078】
3.データ処理
EZ Readerで読み取った変換率から、以下の式に従って残存活性を算出した。
【数1】
IC50を、XLfitを用いて計算し、IC50を、フィッティング式として式201により計算した。
【0079】
4.試験結果
【表2】
インビトロ酵素試験は、本発明の化合物が、ABL1WTキナーゼに対して良好な阻害活性を呈することを示している。
【0080】
II.異なるBCR-ABL1融合変異を過剰発現するBaF3細胞株の増殖に対する阻害活性に関する研究
1.試験目的
一次B細胞をインビトロで培養したマウスのBa/F3 BCR-ABL1-T315I、Ba/F3 BCR-ABL1-E255K、Ba/F3 BCR-ABL1-E255V、及びBa/F3 BCR-ABL1-G250E変異モデルの増殖に対する本発明の化合物の阻害活性を評価する。
【0081】
2.細胞株
【表3】
【0082】
3.試験方法
CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayを、腫瘍細胞の増殖及び成長に対する薬物の阻害効果を検出するために使用した。一晩培養した対数増殖期の細胞を直接採取し、吹き込み、混合して計数し、さまざまな細胞密度要件に従って細胞密度を調整し、細胞を細胞懸濁液に調製し、96ウェルプレートに播種した。異なる濃度の薬物を加え、各濃度に対して3つの複製ウェルを設定し、対応するビヒクル対照を設定した。Ba/F3 BCR-ABL1-T315I細胞及びBa/F3 BCR-ABL1-E255K細胞における最大試験濃度は、10000nMであり、3.16倍の勾配希釈、合計9つの濃度(10000~1.0058nM)であった。他の細胞で検出された化合物の最大濃度は500nM、3.16倍の勾配希釈、合計9つの濃度(500~0.0503nM)であった。化合物が添加された細胞を、37℃及び5%のCOでさらに72時間培養した。培養プレート及びその内容物を室温に平衡化し、CellTiter-Glo(登録商標)試薬を加え、内容物をシェーカー上で5分間混合して細胞溶解を誘導し、培養プレートを暗所で室温でさらに20分間インキュベートし、発光をマイクロプレートリーダーで読み取った。
【0083】
4.試験結果
【表4】
本発明の化合物は、Ba/F3 BCR-ABL1-T315I、E255K、E255V、及びG250E変異細胞の増殖を有意に阻害することができる。
【0084】
III.BCR-ABL1融合変異を有する腫瘍細胞株の増殖に対する阻害活性に関する研究
1.試験目的
インビトロで培養したヒト赤白血病細胞K562、ヒト末梢血好塩基性白血病細胞Ku812、並びにヒト慢性骨髄性白血病細胞KCL22-s及びKCL22-rの増殖に対する本発明の化合物の阻害活性を評価する。
【0085】
2.細胞株
【表5】
【0086】
3.試験方法
CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayを、腫瘍細胞の増殖及び成長に対する薬物の阻害効果を検出するために使用した。一晩培養した対数増殖期の細胞を直接採取し、吹き込み、混合して計数し、さまざまな細胞密度要件に従って細胞密度を調整し、細胞を細胞懸濁液に調製し、96ウェルプレートに播種した。異なる濃度の薬物を加え、各濃度に対して3つの複製ウェルを設定し、対応する溶媒対照を設定した。検出された化合物の最大濃度は500nM、3倍の勾配希釈、合計9つの濃度(500~0.076nM)であった。化合物が添加された細胞を、37℃及び5%のCOでさらに72時間培養した。培養プレート及びその内容物を室温に平衡化し、CellTiter-Glo(登録商標)試薬を加え、内容物をシェーカー上で3分間混合して細胞溶解を誘導し、培養プレートを暗所で室温でさらに10分間インキュベートし、化学発光シグナル値をマイクロプレートリーダー(BioTek SynergyH1)で決定した。
【0087】
4.試験結果
【表6】
試験結果は、本発明の化合物が、BCR-ABL1融合変異を有する腫瘍細胞の増殖を有意に阻害できることを示している。
【0088】
IV.ヒト慢性骨髄性白血病細胞株KCL22-s異種移植腫瘍モデルにおける薬効に関する研究
1 実験目的:
BALB/cヌードマウス皮下異種移植腫瘍モデルにおけるヒト慢性骨髄性白血病細胞株KCL22-sに対する試験化合物の有効性を評価する。
【0089】
2 実験操作とデータ処理:
2.1 動物
BALB/cヌードマウス、8~10週。
2.2 細胞培養液及び細胞懸濁液の調製
a、KCL22-s細胞株を細胞バンクから取り出し、RPMI-1640培地(RPMI-1640+10%FBS+1%P/S)で細胞を蘇生させた。蘇生させた細胞を、細胞培養フラスコ(フラスコ壁に細胞の種類、日付、培養者名などを記入)に入れ、次いで、CO2インキュベーターに置き(インキュベーター温度は37℃、CO2濃度は5%であった)、インキュベートした。
b、細胞を継代した。継代後、細胞をCO2インキュベーター内で引き続き培養した。このプロセスは、細胞数がインビボでの薬効要件を満たすまで繰り返した。
c、培養細胞を収集し、全自動セルカウンターで計数した。計数結果に従って細胞をPBSに再懸濁して細胞懸濁液(5×107/mLの密度)を作製し、後で使用するためにアイスボックスに置いた。
2.3 細胞接種
a、接種前に、ヌードマウスにマウス及びラット用の使い捨て耳タグでラベル付けした。
b、接種の際、細胞懸濁液を均一に混合し、1mLシリンジで、0.1~1mLの細胞懸濁液を採取し、気泡を取り除いた後、後で使用するためにシリンジをアイスパック上に置いた。
c、ヌードマウスを左手で固定し、ヌードマウスの背中の右側の右肩付近(接種部位)を75%アルコールで消毒し、30秒後に接種を開始した。
d、実験用ヌードマウスに順番に接種した(各マウスに対して0.1mLの細胞懸濁液を接種)。
2.4 腫瘍担持マウスの腫瘍測定、グループ分け及び投与
a、腫瘍の成長に基づいて、接種後15日目に腫瘍を測定し、腫瘍サイズを計算した。
腫瘍体積の計算:腫瘍体積(mm3)=長さ(mm)×幅(mm)×幅(mm)/2
b、腫瘍担持マウスの体重と腫瘍サイズに基づいて、ランダムグループ分け法を使用してマウスをグループ分けした。
c.グループ分けの結果に基づいて、試験薬の投与を開始した(投与経路:経口投与;用量:1.5、3、7.5mg/kg;投与量:10mL/kg;投与頻度:1~2回/日;投与サイクル:15日;溶媒:0.5%HPMC K4M)。
d、試験薬の投与開始後、週に2回、腫瘍の計測及び重量を測定した。
e、動物を実験後に安楽死させた。
f、データはExcel及びその他のソフトウェアを使用して処理した。化合物腫瘍阻害率TGI(%)の計算:腫瘍退縮が認められない場合、TGI(%)=[1-(治療群における投与終了時の平均腫瘍体積-その治療群における投与開始時の平均腫瘍体積)/(溶媒対照群における治療終了時の平均腫瘍体積-溶媒対照群における治療開始時の平均腫瘍体積)]×100%。腫瘍退縮が存在する場合、TGI(%)=[1-(特定治療群における投与終了時の平均腫瘍体積-その治療群における投与開始時の平均腫瘍体積)/その治療群における投与開始時の平均腫瘍体積]×100%。
【0090】
3 実験結果:
【表7】
本発明の化合物は、ヒト慢性骨髄性白血病細胞株KCL22-s異種移植腫瘍モデルに対して有意な腫瘍阻害効果を有する。
【国際調査報告】