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特表2024-534714スペクトルイメージングのための方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-24
(54)【発明の名称】スペクトルイメージングのための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20240913BHJP
   G01J 3/36 20060101ALI20240913BHJP
   G01J 3/45 20060101ALI20240913BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20240913BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01J3/36
G01J3/45
G02B21/06
G01N33/53 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508624
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 IL2022050872
(87)【国際公開番号】W WO2023017520
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/260,071
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524053823
【氏名又は名称】ペンタオミックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PENTAOMIX LTD.
【住所又は居所原語表記】52 Carmel Street, Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリル ボアズ
【テーマコード(参考)】
2G020
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G020CB43
2G020CB54
2G020CC21
2G020CC22
2G020CC63
2G020CD03
2G020CD16
2G020CD24
2G020CD35
2G043EA01
2G043EA06
2G043HA01
2G043HA09
2G043HA15
2G043JA01
2G043LA03
2G043NA05
2H052AA04
2H052AA09
2H052AC14
2H052AF14
2H052AF25
(57)【要約】
サンプルをイメージングする方法は、それぞれが異なる中心波長を有する複数の光ビームによってサンプルを連続的に照射することを含む。本方法はまた、イメージャによってサンプルから画像データを連続的に取得することであって、画像データは、複数の光ビームに応答してサンプルから受け取った光信号を表す、取得することを含む。本方法はまた、イメージャに対してサンプルの視野をシフトさせることと、シフトさせた視野に対して連続照射及び画像データ取得を繰り返すことと、複数の光ビームのそれぞれに対して、複数の視野においてイメージャによって取得された画像データを用いて、サンプルのスペクトル画像を生成することとを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルをイメージングする方法であって、
それぞれが異なる中心波長を持つ複数の光ビームでサンプルを連続的に照射することと、
イメージャによって、前記複数の光ビームに応答して、前記サンプルから受け取った光信号を表す画像データを、前記サンプルから連続的に取得することと、
前記イメージャに対して前記サンプルの視野をシフトさせ、前記シフトされた視野に対して、連続的な前記照射と、前記画像データの取得とを繰り返すことと、
前記複数の光ビームのそれぞれに対して、複数の視野で、前記イメージャによって取得された画像データを使用して、前記サンプルのスペクトル画像を生成することと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記画像データを連続的に取得することは、前記視野が静止している間に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像データを連続的に取得することは、前記視野が変化している間に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルは、それぞれが異なる発光スペクトルを有する複数の蛍光体を含有し、前記光ビームの少なくとも1つのスペクトル帯域幅が、少なくとも2つの異なる蛍光体を励起するように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルは、それぞれが異なる発光スペクトルを有する複数の蛍光体を含有し、前記光ビームの少なくとも1つのスペクトル帯域幅が、少なくとも2つの異なる蛍光体を励起するように選択される、請求項2~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記照射することはピンホールを介して行われ、前記取得することは、前記光ビームの前記画像データへの寄与を低減させるように構成されたビームストップを介して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記照射することはピンホールを介して行われ、前記取得することは、前記光ビームの前記画像データへの寄与を低減させるように構成されたビームストップを介して行われる、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記照射することは、前記光ビームを反射して前記光信号を透過させるか、またはその逆を行うように、構成され、配置されたビームスプリッタを介して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記照射することは、前記光ビームを反射して前記光信号を透過させるか、またはその逆を行うように、構成され、配置されたビームスプリッタを介して行われる、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記光信号をコリメートすることであって、前記照射することは、前記コリメートを規定する光軸に対して周辺に配置された複数の光源によって行われる、前記コリメートすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記光信号をコリメートすることであって、前記照射することは、前記コリメートを規定する光軸に対して周辺に配置された複数の光源によって行われる、前記コリメートすることを含む、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記光信号の一部を、各光信号の局所スペクトルを測定するために、分光計に向けることと、前記測定されたスペクトルを前記スペクトル画像の局所スペクトルと比較することと、前記比較に関するレポートを生成することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記光信号の一部を、各光信号の局所スペクトルを測定するために、分光計に向けることと、前記測定されたスペクトルを前記スペクトル画像の局所スペクトルと比較することと、前記比較に関するレポートを生成することとを含む、請求項2~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
非スペクトル画像も生成するために、前記光信号の一部を追加のイメージャに向けることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
非スペクトル画像も生成するために、前記光信号の一部を追加のイメージャに向けることを含む、請求項2~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプル上にイメージング可能なパターンを投影することと、前記追加のイメージャによって前記パターンをイメージングすることと、前記パターンの前記画像に基づいて、デフォーカスパラメータを計算することとを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプル上にイメージング可能なパターンを投影することと、前記追加のイメージャによって前記パターンをイメージングすることと、前記パターンの前記画像に基づいて、デフォーカスパラメータを計算することとを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記投影することは、前記イメージング可能なパターンの異なる部分が、前記画像データが取得される対物レンズから異なる距離で、前記サンプル上に焦点を合わせられるように行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記投影することは、前記イメージング可能なパターンの異なる部分が、前記画像データが取得される対物レンズから異なる距離で、前記サンプル上に焦点を合わせられるように行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記投影することは、前記光信号を包含する波長範囲の外側の波長で行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記投影することは、前記光信号を包含する波長範囲の外側の波長で行われる、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記光信号を、光透過特性を変化させる性質を有する光学システムに通過させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記光信号を、光透過特性を変化させる性質を有する光学システムに通過させることを含む、請求項2~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記光学システムが、光透過特性を時間的に変化させる性質を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記光学システムが、光透過特性を時間的に変化させる性質を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記光学システムが、光透過特性を空間的及び時間的に変化させる性質を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記光学システムが、光透過特性を空間的及び時間的に変化させる性質を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記光学システムが、光透過特性を空間的に変化させる性質を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記光学システムが、光透過特性を空間的に変化させる性質を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記光透過特性を空間的に変化させることが、離散的に変化する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記光透過特性を空間的に変化させることが、離散的に変化する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記光透過特性を空間的に変化させることが、連続的に変化する、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記光透過特性を空間的に変化させることが、連続的に変化する、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記光学システムがサニャック干渉計を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記光学システムがサニャック干渉計を含む、請求項27~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記サニャック干渉計は、
一方のプリズムに入射端面を有し、他方のプリズムに出射端面を有する非対称モノリシック構造を形成する2つの取り付けられたプリズムと、
前記プリズム間の取り付け領域の一部と係合し、前記入射端面を通って入射する前記光信号を、前記出射端面を通って出射する2つの二次光信号に分割するように構成されたビームスプリッタと、を備え、
前記ビームスプリッタのサイズは、前記二次光信号の光路が、前記ビームスプリッタによって係合される位置と、前記ビームスプリッタによって係合されない位置との両方で、前記取り付け領域に確実に当たるように選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記サニャック干渉計は、
一方のプリズムに入射端面を有し、他方のプリズムに出射端面を有する非対称モノリシック構造を形成する2つの取り付けられたプリズムと、
前記プリズム間の取り付け領域の一部と係合し、前記入射端面を通って入射する前記光信号を、前記出射端面を通って出射する2つの二次光信号に分割するように構成されたビームスプリッタと、を備え、
前記ビームスプリッタのサイズは、前記二次光信号の光路が、前記ビームスプリッタによって係合される位置と、前記ビームスプリッタによって係合されない位置との両方で、前記取り付け領域に確実に当たるように選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記2つのプリズムは、同一であるが、互いにずらして取り付けられ、それによって前記非対称性を確保する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記2つのプリズムは、同一であるが、互いにずらして取り付けられ、それによって前記非対称性を確保する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記2つのプリズムが異なる形状を有し、それによって前記非対称性を保証する、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記2つのプリズムが異なる形状を有し、それによって前記非対称性を保証する、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記モノリシック構造が、前記取り付け領域に、前記光路のいずれかから離れて、前記ビームスプリッタから間隔を置いて配置されたスペーサを備える、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記モノリシック構造が、前記取り付け領域に、前記光路のいずれかから離れて、前記ビームスプリッタから間隔を置いて配置されたスペーサを備える、請求項37~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記スペーサが、前記ビームスプリッタと同じ材料及び厚さで作られている、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記スペーサが、前記ビームスプリッタと同じ材料及び厚さで作られている、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
異なるスペクトル特性を有する複数の染色剤で染色された病理学的スライドをイメージングする方法であって、
請求項1~40のいずれか一項に記載の方法を実行することと、
各染色剤の相対的寄与について前記スペクトル画像を分析することと、
前記相対的寄与に基づいて、前記染色剤の表示可能な密度マップを生成することと、を含む、前記方法。
【請求項47】
前記スペクトル画像を複数のセグメントに空間的にセグメント化することを含み、前記セグメントの少なくとも1つが単一の生物学的細胞に対応し、前記密度マップが前記単一の生物学的細胞のマップである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記細胞における各染色剤の平均密度を計算し、それによって前記細胞の発現プロファイルを提供することを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記発現プロファイルに従って前記細胞を分類することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
複数の細胞のそれぞれについて、前記平均密度及び前記分類の前記計算を繰り返すことを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
異なる細胞クラスに分類された細胞の間の幾何学的関係に基づいて、前記病理学的スライドを分類することを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
サンプルをイメージングするためのシステムであって、
それぞれが異なる中心波長を有する複数の光ビームによってサンプルを連続的に照射するように構成された照射システムと、
前記サンプルから画像データを取得するように構成されたイメージャであって、前記画像データが、前記複数の光ビームに応答して、前記サンプルから受け取った光信号を表す、前記イメージャと、
前記イメージャに対して前記サンプルの視野をシフトさせるように構成されたステージと、
前記視野を段階的にシフトさせるように前記ステージを制御すること、ならびに前記照射システムが前記光ビームによって前記サンプルを連続的に照射し、前記イメージャが前記画像データを連続的に取得するように、前記照射システム及び前記イメージャを制御すること、を行うように構成されたコントローラと、
前記複数の光ビームのそれぞれに対して、複数の視野で、前記イメージャによって取得された画像データを使用して、前記サンプルのスペクトル画像を生成するように構成された画像プロセッサと、
を備える、前記システム。
【請求項53】
前記光ビームの立体角を低減させるように構成されたピンホールと、前記光ビームの前記画像データへの寄与を低減させるように構成されたビームストップとを備える、請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記光ビームを反射して前記光信号を透過させるか、またはその逆を行うように、構成され、配置されたビームスプリッタを備える、請求項52~53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項55】
前記光信号をコリメートするためのコリメートレンズを備え、前記照射システムが、前記コリメートレンズの光軸に対して周辺に配置された複数の光源を備える、請求項52~54のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項56】
各光信号の局所スペクトルを測定するための分光計を備え、前記画像プロセッサが、前記測定されたスペクトルを前記スペクトル画像の局所スペクトルと比較することと、前記比較に関するレポートを生成することと、を行うように構成される、請求項52~55のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項57】
前記光信号を使用して、前記サンプルの非スペクトル画像も生成するための追加のイメージャを備える、請求項52~56のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項58】
前記追加のイメージャによっても較正パターンがイメージングされるようにして、前記較正パターンを前記サンプル上に投影するためのプロジェクタを備え、前記画像プロセッサが、デフォーカスパラメータを計算するために、前記較正パターンの前記画像を処理するように構成される、請求項57に記載のシステム。
【請求項59】
前記プロジェクタは、前記光信号を包含する波長範囲の外側の波長で前記較正パターンを生成するように構成されている、請求項58に記載のシステム。
【請求項60】
前記サンプルと前記イメージャとの間の光路に配置され、光透過特性を変化させる性質を有する、光学システムを備える、請求項52~59のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項61】
前記光学システムが、光透過特性を時間的に変化させる性質を有する、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記光学システムが、光透過特性を空間的及び時間的に変化させる性質を有する、請求項60に記載のシステム。
【請求項63】
前記光学システムが、光透過特性を空間的に変化させる性質を有する、請求項60に記載のシステム。
【請求項64】
前記光透過特性を空間的に変化させることが、離散的に変化する、請求項63に記載のシステム。
【請求項65】
前記光透過特性を空間的に変化させることが、連続的に変化する、請求項63に記載のシステム。
【請求項66】
前記光学システムがサニャック干渉計を含む、請求項62~65のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項67】
前記サニャック干渉計は、
一方のプリズムに入射端面を有し、他方のプリズムに出射端面を有する非対称モノリシック構造を形成する2つの取り付けられたプリズムと、
前記プリズム間の取り付け領域の一部と係合し、前記入射端面を通って入射する前記光信号を、前記出射端面を通って出射する2つの二次光信号に分割するように構成されたビームスプリッタと、を備え、
前記ビームスプリッタのサイズは、前記二次光信号の光路が、前記ビームスプリッタによって係合される位置と、前記ビームスプリッタによって係合されない位置との両方で、前記取り付け領域に確実に当たるように選択される、請求項66に記載のシステム。
【請求項68】
前記2つのプリズムは、同一であるが、互いにずらして取り付けられ、それによって前記非対称性を確保する、請求項67に記載のシステム。
【請求項69】
前記2つのプリズムが異なる形状を有し、それによって前記非対称性を保証する、請求項67及び請求項68のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項70】
サニャック干渉計であって、
一方のプリズムに入射端面を有し、他方のプリズムに出射端面を有する非対称モノリシック構造を形成する2つの取り付けられたプリズムと、
前記プリズム間の取り付け領域の一部と係合し、前記入射端面を通って入射する光信号を、前記出射端面を通って出射する2つの二次光信号に分割するように構成されたビームスプリッタと、を備え、
前記ビームスプリッタのサイズは、前記二次光信号の光路が、前記ビームスプリッタによって係合される位置と、前記ビームスプリッタによって係合されない位置との両方で、前記取り付け領域に確実に当たるように選択される、前記サニャック干渉計。
【請求項71】
前記2つのプリズムは、同一であるが、互いにずらして取り付けられ、それによって前記非対称性を確保する、請求項70に記載のサニャック干渉計。
【請求項72】
前記2つのプリズムが異なる形状を有し、それによって前記非対称性を保証する、請求項70及び請求項71のいずれか一項に記載のサニャック干渉計。
【請求項73】
前記モノリシック構造が、前記取り付け領域に、前記光路のいずれかから離れて、前記ビームスプリッタから間隔を置いて配置されたスペーサを備える、請求項70~72のいずれか一項に記載のサニャック干渉計。
【請求項74】
前記スペーサが、前記ビームスプリッタと同じ材料及び厚さで作られている、請求項73に記載のサニャック干渉計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年8月9日に出願された米国仮特許出願第63/260,071号の優先権の利益を主張するものであり、この米国仮特許出願の内容を参照により全体として本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、イメージングに関し、より詳細には、スペクトルイメージングのための方法及びシステムに関するが、これに限定されない。
【0003】
現在利用可能なほとんどのがん治療は、患者の約20%にのみ有効であることが知られており、一方ほとんどの患者は治療に反応しない。事前に、どの患者が、いかなる薬に反応するかを特定することができないため、治療は主に試行錯誤に基づいており、いずれの患者に対しても数種の薬がテストされる可能性がある。この状況は、多くの場合、必要のない副作用及び資源の非効率的な使用に起因して、患者の死亡、生活の質の低下をもたらす。
【0004】
いくつかの薬については、コンパニオン診断が利用可能であり、治療に反応する可能性が他よりも高い患者を特定することを可能にする。これらのコンパニオン診断の多くは、特定のバイオマーカー、例えば、PD-1またはHER2の発現レベルに基づいている。これらのバイオマーカーは、典型的には、免疫組織化学的(IHC)方法を利用して、抗体を用いた特異的染色の後に、生検の組織学的検査において特定される。
【0005】
当技術分野では、スペクトルイメージングを用いる組織学的手法が知られている[Y.Garini and E.Tauber,Spectral Imaging:Methods,Design,and Applications in Biomedical Optical Imaging Technologies:Design and Applications,R.Liang編(Springer,Heidelberg,2013)]。スペクトルイメージングは、イメージャの画素ごとにスペクトルを測定する技術である。得られるデータセットは、2次元がイメージャ面に平行であり、第3の次元が波長である、3次元(3D)である。このようなデータセットは、I(x,y,λ)として表され得る「スペクトル画像」として知られており、ここで、x及びyはイメージャ面内の位置であり、λは波長であり、Iは各点及び波長における強度である。
【0006】
様々なスペクトルイメージング方法の中には、フーリエ変換(一般的には、フーリエ変換赤外のためのFTIRとして知られる)を使用する方法もあり、その方法は、視野(FoV)内の各画素のインターフェログラム(信号対位相遅延)を収集し、後に、フーリエ変換を用いることでインターフェログラムをスペクトル領域に変換することを含む。
【0007】
米国特許第5,539,517号は、FTIRベースのスペクトルイメージングシステムを開示している。このシステムは、可変スペクトルフィルタとして機能する干渉計を利用する。干渉計の2つのアーム間の位相遅延は、FoVの軸の1つに沿って変化している。この軸に沿って対象物を走査し、FoVの異なる部分で撮影された異なる画像にわたって対象物内の同じ点からのデータを収集することによって、対象物内の各点の完全インターフェログラムが得られる。その後、これらのインターフェログラムを、例えばFFTを用いてスペクトルに変換して、スペクトル画像を生成する。
【0008】
Shmilovich et. al,Scientific Reports,(2020) 10:3455は、スペクトル画像を得るための類似の走査方法(使用される可変スペクトルフィルタが、この方法では、くさび型液晶構成に基づくことを除いては類似の走査方法)を開示している。
【0009】
国際公開第WO2021/014455A1号は、個々のがん細胞を特定する目的で、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色されたサンプルのスペクトルイメージングを得るのに有用な一群の様々なスペクトルイメージング方法を開示している。
【0010】
米国特許第11,300,799B2号は、取り付けられた2つのプリズムと、その2つのプリズムの間の界面領域にあるビームスプリッタとを含む光学デバイスを開示している。このデバイスは、光源から放射されたビームが、検出器に到達する前に、2つの異なる光路に沿ってプリズム中を伝搬するマイケルソン型干渉計として働く。
【発明の概要】
【0011】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、サンプルをイメージングする方法が提供される。本方法は、それぞれが異なる中心波長を有する複数の光ビームによってサンプルを連続的に照射することを含む。本方法はまた、イメージャによってサンプルから画像データを連続的に取得することであって、画像データは、複数の光ビームに応答してサンプルから受け取った光信号を表す、取得することを含む。本方法はまた、イメージャに対してサンプルの視野をシフトさせることと、シフトさせた視野に対して連続照射及び画像データ取得を繰り返すことと、複数の光ビームのそれぞれに対して、複数の視野においてイメージャによって取得された画像データを用いて、サンプルのスペクトル画像を生成することとを含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、画像データの連続取得は、視野が静止している間に行われる。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、画像データの連続取得は、視野が変化している間に行われる。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、サンプルは、それぞれが異なる発光スペクトルを有する複数の蛍光体を含有し、光ビームの少なくとも1つのスペクトル帯域幅が、少なくとも2つの異なる蛍光体を励起するように選択される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、照射することはピンホールを介して行われ、取得することは、光ビームの画像データへの寄与を低減させるように構成されたビームストップを介して行われる。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、照射することは、光ビームを反射して光信号を透過させるか、またはその逆を行うように、構成され、配置されたビームスプリッタを介して行われる。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、光信号をコリメートすることであって、照射することは、コリメートを規定する光軸に対して周辺に配置された複数の光源によって行われる、コリメートすることを含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、光信号の一部を、各光信号の局所スペクトルを測定するために、分光計に向けることと、測定されたスペクトルをスペクトル画像の局所スペクトルと比較することと、比較に関するレポートを生成することとを含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、非スペクトル画像も生成するために、光信号の一部を追加のイメージャに向けることを含む。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、サンプル上にイメージング可能なパターンを投影することと、追加のイメージャによってパターンをイメージングすることと、パターンの画像に基づいて、デフォーカスパラメータを計算することとを含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、パターンは、イメージング可能なパターンの異なる部分が、画像データが取得される対物レンズから異なる距離で、サンプル上に焦点を合わせられるように投影される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、パターンは、光信号を包含する波長範囲外の波長で投影される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、光信号を、光透過特性を変化させる性質を有する光学システムに通過させることを含む。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、異なるスペクトル特性を有する複数の染色剤で染色された病理学的スライドをイメージングする方法が提供される。本方法は、上記の方法、及び任意選択で好ましくは以下でさらに詳述する方法を実行することと、各染色剤の相対的寄与についてスペクトル画像を分析することと、相対的寄与に基づいて、染色剤の表示可能な密度マップを生成することと、を含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、スペクトル画像を複数のセグメントに空間的にセグメント化することを含み、セグメントの少なくとも1つが、単一の生物学的細胞に対応し、密度マップが、単一の生物学的細胞のマップである。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、細胞における各染色剤の平均密度を計算し、それによって細胞の発現プロファイルを提供することを含む。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、発現プロファイルに従って細胞を分類することを含む。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、複数の細胞のそれぞれについて、平均密度及び分類の計算を繰り返すことを含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、異なる細胞クラスに分類された細胞間の幾何学的関係に基づいて病理学的スライドを分類することを含む。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、サンプルをイメージングするシステムが提供される。本システムは、サンプルをイメージングするためのシステムであって、それぞれが異なる中心波長を有する複数の光ビームによってサンプルを連続的に照射するように構成された照射システムと、サンプルから画像データを取得するように構成されたイメージャであって、画像データが、複数の光ビームに応答して、サンプルから受け取った光信号を表す、イメージャと、イメージャに対してサンプルの視野をシフトさせるように構成されたステージと、視野を段階的にシフトさせるようにステージを制御すること、ならびに照射システムが光ビームによってサンプルを連続的に照射し、イメージャが画像データを連続的に取得するように、照射システム及びイメージャを制御すること、を行うように構成されたコントローラと、複数の光ビームのそれぞれに対して、複数の視野で、イメージャによって取得された画像データを使用して、サンプルのスペクトル画像を生成するように構成された画像プロセッサと、を備える。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本システムは、光ビームの立体角を低減させるように構成されたピンホールと、光ビームの画像データへの寄与を低減させるように構成されたビームストップとを備える。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本システムは、光ビームを反射して光信号を透過させるか、またはその逆を行うように、構成され、配置されたビームスプリッタを備える。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本システムは、光信号をコリメートするためのコリメートレンズを含み、照射システムは、コリメートレンズの光軸に対して周辺に配置された複数の光源を含む。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本システムは、各光信号の局所スペクトルを測定するための分光計を備え、画像プロセッサが、測定されたスペクトルをスペクトル画像の局所スペクトルと比較することと、比較に関するレポートを生成することと、を行うように構成される。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本システムは、光信号を用いてサンプルの非スペクトル画像も生成するための追加のイメージャを含む。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本システムは、追加のイメージャによっても較正パターンがイメージングされるようにして、較正パターンをサンプル上に投影するためのプロジェクタを備え、画像プロセッサが、デフォーカスパラメータを計算するために、較正パターンの画像を処理するように構成される。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、プロジェクタは、光信号を包含する波長範囲外の波長で較正パターンを生成するように構成される。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本システムは、サンプルとイメージャとの間の光路に配置され、光透過特性を変化させる性質を有する、光学システムを含む。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光学システムは、光透過特性を時間的に変化させる性質を有する。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光学システムは、光透過特性を空間的及び時間的に変化させる性質を有する。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光学システムは、光透過特性を空間的に変化させる性質を有する。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、透過特性を空間的に変化させることが、離散的に変化する。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、透過特性を空間的に変化させることが、連続的に変化する。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光学システムは、サニャック干渉計を含む。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、サニャック干渉計は、一方のプリズムに入射端面を有し、他方のプリズムに出射端面を有する非対称モノリシック構造を形成する2つの取り付けられたプリズムと、プリズム間の取り付け領域の一部と係合し、入射端面を通って入射する光信号を、出射端面を通って出射する2つの二次光信号に分割するように構成されたビームスプリッタと、を備え、ビームスプリッタのサイズは、二次光信号の光路が、ビームスプリッタによって係合される位置と、ビームスプリッタによって係合されない位置との両方で、取り付け領域に確実に当たるように選択される。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、サニャック干渉計が提供される。本サニャック干渉計は、一方のプリズムに入射端面を有し、他方のプリズムに出射端面を有する非対称モノリシック構造を形成する2つの取り付けられたプリズムと、プリズム間の取り付け領域の一部と係合し、入射端面を通って入射する光信号を、出射端面を通って出射する2つの二次光信号に分割するように構成されたビームスプリッタと、を備え、ビームスプリッタのサイズは、二次光信号の光路が、ビームスプリッタによって係合される位置と、ビームスプリッタによって係合されない位置との両方で、取り付け領域に確実に当たるように選択される。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、2つのプリズムは同一であるが、互いにずらして取り付けられ、それによって非対称性を確保する。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、2つのプリズムは、異なる形状を有し、それによって非対称性を確保する。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、モノリシック構造は、取り付け領域に、光路のいずれかから離れてビームスプリッタから間隔を置いて配置されたスペーサを含む。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、スペーサは、ビームスプリッタと同じ材料及び厚さで作られる。
【0051】
別段の定義のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本発明の実施形態の実践または試験には、本明細書に記載したものと類似または同等の方法及び材料を用いることができるが、例示的な方法及び/または材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び実施例は、一例にすぎず、必ずしも限定することを意図していない。
【0052】
本発明の実施形態の方法及び/またはシステムの実施は、選択されたタスクを手動で、自動的に、またはそれらの組み合わせで実行または完了することを含み得る。さらに、本発明の方法及び/またはシステムの実施形態の実際の計装及び設備によれば、いくつかの選択されたタスクは、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、またはそれらの組み合わせによって、オペレーティングシステムを使用して実施することができる。
【0053】
例えば、本発明の実施形態に従って選択されたタスクを行うためのハードウェアは、チップまたは回路として実装され得る。ソフトウェアとして、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実施することができる。本発明の例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法及び/またはシステムの例示的な実施形態による1つまたは複数のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実行される。任意選択で、データプロセッサは、命令及び/またはデータを格納するための揮発性メモリ、及び/または命令及び/またはデータを格納するための不揮発性ストレージ、例えば、磁気ハードディスク及び/またはリムーバブルメディアを含む。任意選択で、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ、及び/またはキーボードまたはマウスなどのユーザ入力デバイスも任意選択で提供される。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を、本明細書では、単なる例示として、添付の図面を参照しながら説明する。このとき図面を詳細にわたって具体的に参照するが、図示されている細部は例示として本発明の実施形態を説明的に考察することを目的としたものであることが強調される。この点に関して、図面を用いた説明は、本発明の実施形態がどのように実践され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明のいくつかの実施形態による、サンプルをイメージングするシステムの概略図である。
図2】本発明のいくつかの実施形態による、連続画像取得プロセスの概略図である。
図3】サニャック干渉計が使用される本発明の実施形態による、サンプルをイメージングするシステムの概略図である。
図4】サンプルを照射する光ビームの立体角を低減するためにピンホールが使用される本発明の実施形態による、サンプルをイメージングするシステムの概略図である。
図5】周辺照射システムがサンプルを照射するために使用される本発明の実施形態による、サンプルをイメージングするシステムの概略図である。
図6】本発明のいくつかの実施形態による例示的なサンプル分析プロトコルを示すフローチャート図である。
図7】システムが分光計及び/または追加のイメージャも含む本発明の実施形態による、サンプルをイメージングするシステムの概略図である。
図8】システムが、サンプル上に投影されるパターンを使用する本発明の実施形態による、サンプルをイメージングするシステムの概略図である。
図9】本発明の実施形態のシステムと共に使用することができるいくつかの蛍光体の正規化発光スペクトルを示すグラフである。
図10】本発明のいくつかの実施形態による、モノリシックサニャック干渉計を備える光学システムの概略図である。
図11】本発明のいくつかの実施形態による、図10に示されるモノリシックサニャック干渉計のより詳細を示す概略図である。
図12図10に示される光学システムのより詳細を示す概略図である。
図13】本発明のいくつかの実施形態による、モノリシックサニャック干渉計の出射端面を示す概略図である。
図14】A及びBは、本発明のいくつかの実施形態による、ビームスプリッタの角度が45.0333°である干渉計の構成において、モノリシックサニャック干渉計に対して実施された光線追跡シミュレーションの結果を示す。
図15】A及びBは、干渉計が、互いにずれた関係で取り付けられた2つのプリズムを含む、本発明の実施形態によるモノリシックサニャック干渉計の概略図である。ここで、図15Bは、図15Aの点線部分の拡大図である。
図16A】本発明のいくつかの実施形態による、モノリシックサニャック干渉計に入る前の光信号の異なる伝搬距離について行われた光線追跡シミュレーションの結果を示す。
図16B】本発明のいくつかの実施形態による、モノリシックサニャック干渉計に入る前の光信号の異なる伝搬距離について行われた光線追跡シミュレーションの結果を示す。
図16C】本発明のいくつかの実施形態による、モノリシックサニャック干渉計に入る前の光信号の異なる伝搬距離について行われた光線追跡シミュレーションの結果を示す。
図17】干渉計がスペーサを含む本発明の実施形態におけるモノリシックサニャック干渉計の概略図である。
図18】モノリシックマイケルソン干渉計の概略図である。
図19A】モノリシックマイケルソン干渉計について、製造誤差をシミュレートせずに行われた光線追跡シミュレーションの結果を示す。
図19B】モノリシックマイケルソン干渉計について、製造誤差をシミュレートして行われた光線追跡シミュレーションの結果を示す。
図19C】モノリシックサニャック干渉計について、製造誤差をシミュレートせずに行われた光線追跡シミュレーションの結果を示す。
図19D】モノリシックサニャック干渉計について、製造誤差をシミュレートして行われた光線追跡シミュレーションの結果を示す。
図20】本発明のいくつかの実施形態による、サンプルをイメージングするのに好適な方法のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、イメージングに関し、より詳細には、スペクトルイメージングのための方法及びシステムに関するが、これに限定されない。
【0057】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の記述で記載される、及び/または図面及び/または実施例に示される、構造の詳細及び構成要素及び/または方法の配列に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実践もしくは実行することが可能である。
【0058】
本発明者は、例えば、400~800nmの典型的な波長範囲内で分離され得る異なる発光スペクトルの数が、実際には約8に制限されているため、従来のスペクトルイメージング手法は、測定可能な異なる染色剤または蛍光色素の種類に制限があることを見出した。その結果として、本発明者は、測定の精度を損なうことなく、多数の異なる染色剤または蛍光色素を測定し、分析することを可能にする手法を考案した。この手法は、多くの異なる種類の細胞を含む病理学的スライドの分析においては特に有用である。
【0059】
ここで図面を参照すると、図20は、本発明の様々な例示的実施形態による、サンプルをイメージングするのに好適な方法のフローチャート図である。別段の定めがない限り、以下に説明される操作は、多くの組み合わせまたは実行順序で同時にまたは連続して実行できることを理解されたい。具体的には、フローチャート図の順序付けは限定的と見なされるべきではない。例えば、以下の説明にまたはフローチャート図に特定の順序で表示される2つ以上の操作は、異なる順序(例えば、逆順)で、または実質的に同時に実行することができる。さらに、以下で説明されるいくつかの操作は任意選択であり、実行されない場合がある。この方法の選択された操作を実行するのに好適なシステム320が、少なくとも図1図3図5図7、及び図8に示されている。
【0060】
画像化すべきサンプル101は、任意の種類であり得る。好ましくは、サンプルは、インビトロでのイメージングのため細胞及び/または組織を支持するスライドを含む。あるいは、サンプル101は、生組織であり得る。さらに代替的に、サンプルは、半導体ウェハ、及び印刷される対象物、例えば、プリント回路基板などの非生物学的なものであり得るが、これらに限定されない。
【0061】
より好ましくは、サンプル101は、顕微鏡スライドである。サンプル101は、任意選択で好ましくは透明に作られた支持基板100上に置かれ得る。本発明のいくつかの実施形態では、サンプル101は、組織学、任意選択で好ましくは免疫組織化学(IHC)に適したスライドである。
【0062】
サンプル101は好ましくは、少なくとも1つの染色剤で染色される。より好ましくは、必ずではないが、サンプルは、複数の染色剤、例えば、少なくとも5、または少なくとも10、または少なくとも15の異なる染色剤で染色される。染色は、当技術分野で公知の任意の染色手法を用いることができる。
【0063】
本明細書で使用する場合、用語「染色剤」は、蛍光性、発光性、及び/または発色性のいずれかの着色剤を指し、さらに着色をもたらすために使用される試薬または物質を指す。
【0064】
本発明の実施形態に適した代表的な染色剤の例としては、直接免疫組織化学的染色剤、二次免疫組織化学的染色剤、組織学的染色剤、免疫蛍光染色剤、DNA倍数性染色剤、核酸配列特異的プローブ、色素、酵素、非有機ナノ粒子及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書で使用する場合、「免疫組織化学的染色剤」という用語は、細胞学的マーカーまたは受容体(例えば、タンパク質受容体)マーカーに結合する一次抗体を使用して、検査される生物学的サンプルを直接的または間接的に(「サンドイッチ」試薬及び/または酵素反応を介して)染色する着色剤、反応、及び関連試薬を指す。免疫組織化学的染色剤は、多くの場合、科学文献において、免疫染色剤、免疫細胞染色剤、免疫組織病理学的染色剤などと呼ばれる。
【0066】
本明細書で使用される「組織学的染色剤」という用語は、タンパク質のタイプ(酸性、塩基性)、DNA、RNA、脂質、成分、核成分、膜成分などの細胞成分と関連して細胞及び組織を染色するために使用される任意の着色剤、反応及び/または関連試薬を指す。組織学的染色剤は、多くの場合、対比染色用染料、細胞学的染色剤、病理組織学的染色剤などと呼ばれる。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語DNA倍数性染色剤は、限定されないが、DNAまたはヒストンなどの染色体成分に化学量論的に結合する染色剤を指す。抗ヒストン抗体などの抗体が関与する場合、そのような染色剤は、DNA免疫倍数性染色剤としても知られている。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、サンプル101が既に染色された後にサンプル101を受け取り、本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、染色前にサンプル101を受け取る。後者の実施形態では、以下に説明するイメージング方法300の前に、サンプル101を染色する操作が行われる。染色は、自動染色システムまたは手動で、当技術分野で公知の任意の手法によって行うことができる。染色は、任意選択で好ましくは、複数の染色剤を用いて、単一の染色プロセスまたは2つ以上の染色プロセスにおいて同時に実行される。例えば、染色は、当技術分野で公知の複数の異なる蛍光染色剤を用いてサンプルを染色する第1の染色プロセスと、染色されたサンプルを、限定されないが、H&E染色剤、過ヨウ素酸シッフ染色剤、及びロマノフスキー染色剤などの1つまたは複数の非蛍光染色剤でさらに染色する第2の染色プロセスとを含むことができる。2つ以上の染色プロセスを用いる場合、それらを任意の実行順序で実行することができる。
【0069】
この方法は300で開始し、任意選択で好ましくは301に進み、ここでサンプル101は、それぞれが異なる中心波長を有する複数の光ビームによって照射される。光ビームは、以下に更に詳細に説明するように、照射システム10によって生成することができ、任意選択的に、光方向転換要素11及び20によって、照射システム10からサンプル101に向け直すことができる。システム10からの光ビームは、好ましくは、サンプルのイメージングされる側に向けられる。
【0070】
光ビームの中心波長は、好ましくは可視範囲(例えば、約400nm~約700nm)であるが、赤外線または紫外線の使用も企図される。各光ビームの帯域幅は、30nm未満、または20nm未満、例えば、15nm以下であることが好ましい。
【0071】
サンプル101は、それぞれが異なる発光スペクトルを有する複数の蛍光体で染色することができる。いくつかの実施形態では、光ビームの少なくとも1つのスペクトル帯域幅は、少なくとも2つの異なる蛍光体を励起するように任意選択的に選択される。いくつかの実施形態では、2つ以上の蛍光体は、異なる励起スペクトルを有する。いくつかの実施形態では、2つ以上の蛍光体は、異なる励起スペクトルを有するが、(例えば、10nmもしくは10nm以内の、または互いに)類似した発光スペクトルを有する。
【0072】
301で使用することができる典型的な中心波長は、限定することなく、約400nm~約410nm、例えば、約405nm、及び/または約475nm~約500nm、例えば、例えば、約488nm、及び/または約525nm~約540nm、例えば、約532nm、及び/または約625nm~約640nm、例えば、約633nmを含む。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態では、サンプル101は、より広い帯域幅、例えば、本明細書で明視野(BF)と呼ばれる、少なくとも100nmの帯域幅を有する光ビームによっても照射される。このような光ビームは、追加の光源80によって生成され得る。例えば、明視野は、波長範囲400~700nmにわたる複数の波長を有する多色(例えば、白色)光であり得る。光源80からの光ビームは、好ましくは、イメージングされる側とは反対側のサンプルの側に向けられる(透過モード)。
【0074】
また、照射システム10の光源の1つ以上が、明視野モードまたは暗視野モードのいずれかで、反射モードでのイメージングを容易にするために選択された光ビームを生成する実施形態もまた企図される。
【0075】
照射301は、n個の期間のシーケンスの各期間の間に、サンプル101が異なるスペクトル特性を有する光によって照射されるという意味で連続である。n期間のシーケンスは、本発明の様々な例示的実施形態において繰り返し実行される照射サイクルを規定し得る。最も単純な場合には、各期間中に、サンプル101は、単一の中心波長を有する光ビーム、例えば、単一の単色光源によって生成された光ビームによって照射される。このような連続照射プロセスの代表的な例は、図2の上部に概略的に示されており、複数の期間Δt、Δt、等を有する時間軸を示している。代表的な例では、これは限定と見なされるべきではなく、期間のシーケンスは、4つの期間(上記の形式論ではn=4)を含む結果、第1の期間Δtの間に(例えば、照射システム10の第1の光源10aを使用して)第1の光ビームが生成され、第2の期間Δtの間に(例えば、照射システム10の第1の光源10bを使用して)第2の光ビームが生成され、第3の期間Δtの間に(例えば、照射システム10の第1の第3の光源10cを使用して)第3の光ビームが生成され、第4の期間Δtの間に(例えば、追加の光源80を使用して)明視野ビームが生成される。図2の例示では、4つの期間Δt~Δtは、照射サイクルIを形成する。連続照射は、例えば図2に示すように周期的に繰り返すことができる。
【0076】
しかしながら、サンプル101を照射する光ビームのスペクトル特性が照射サイクル内の各期間で異なる場合、所与の期間の間に2つ以上の光源を使用することができることを理解されたい。代表的かつ非限定的な例として、5つの期間を含む照射サイクルを考える。ここで、第1の期間中に、サンプル101は、光源10aからの光ビームによって照射され、第2の期間中に、サンプル101は、光源10a及び10bを共に活性化することによって生成される光ビームによって照射され、第3の期間、第4の期間、及び第5の期間のそれぞれの間中に、サンプル101は、光源10b、10c、及び80のうちの異なる1つの光源によって生成される光ビームによって照射される。
【0077】
方法は302に進み、そこでは画像データがイメージャ70によってサンプルから連続的に取得される。操作301及び302は、任意選択で好ましくは同時に実行される。302で取得された画像データは、光ビームに応答してサンプル101から受け取った光信号を表す。例えば、サンプルが蛍光体で染色される場合、光ビームは蛍光体を刺激し、光信号は対応する蛍光発光である。イメージャ70は、好ましくは、光ビーム間で切り替えを行いながら、サンプルの視野をイメージャに対してシフトさせることなく、光ビームのそれぞれによる照射に続いて画像データを取得する。イメージャに対するサンプルの視野が、図2の下部に示されている。図示のように、視野は、サイクル全体にわたって静的なままである。例えば、フレーム201は、照射サイクルIを形成する4つの連続する時間周期Δt~Δtの全ての間の視野を表す。
【0078】
代替的に、イメージャ70は、視野が照射サイクル内の持続時間に対して十分にゆっくりと変化する間に、画像データを取得することができる。これらの実施形態では、各サイクル内の期間は十分に短い。例えば、各サイクル内の期間は、視野が1画素サイズの量だけシフトされる時間よりも短くすることができる。
【0079】
303では、イメージャに対するサンプルの視野は、任意選択で好ましくはシフトされる。303からは、方法は301にループして戻り、シフトされた視野に対して301及び302の実行を繰り返す。ループバックは、好ましくは一度より多く実行される。再び図2を参照すると、フレーム202は照射サイクルII(期間Δt~Δt)の間の視野を表し、フレーム203は照射サイクルIII(期間Δt~Δt12)の間の視野を表し、フレーム204は照射サイクルIV(期間Δt13~Δt16)の間の視野を表す。図2は、各サイクルにおいて4つの期間を有する4つのサイクルを示すが、本方法は、任意の数のサイクル、及びサイクル当たり任意の数の期間を採用することができることを理解されたい。
【0080】
303でのシフトは、好ましくは1画素より大きい量、例えば2~200画素、より好ましくは10~200画素である。
【0081】
サイクル当たりの照射の数をNで、サイクルの数をMで表すと、操作301~303を通じてイメージャ70によって取得されるデータセットは、タイムインターレース方式で取得されるN・M個の画像を含み、第1の光ビームに対して取得される画像のセットは、第2の光ビームに対して取得される画像のセットとインターレースされる、などである。大まかに言って、例えば、第1の光ビームによってのみサンプルを照射して、M個の異なる視野で画像を取得し、次いで、第2の光ビームによってのみサンプルを照射して、同じM個の異なる視野で画像を再度取得する、などによって、同じN・M画像を、インターレースせずに取得することができる。しかしながら、全体の測定時間を短縮し、所与の視野で取得された全ての画像間の正確な重なりを保証するので、タイムインターレース方式での取得が有利であることが、本発明者らによって見出された。
【0082】
イメージャ70によるデータ取得は、304でのスペクトル画像の生成を可能にするために、イメージャ70内の各画素について十分に長いデータベクトル(たとえば、6以上の強度値、または10以上の強度値、または20以上の強度値、または30以上の強度値を有するデータベクトル)を収集するのに十分なデータを提供する方法で実行される。これは、任意選択で好ましくは、サンプルからの光信号を、光透過特性を変動させるという性質を持っている光学システム50に通すことによって保証される。光透過特性は、好ましくはスペクトル帯域を含むが、代替的にまたは追加的に、偏光及び/または強度であってもよい。光透過特性の変動は、時間的または空間的であり得る。
【0083】
変動が一時的である場合、光学システム50は、好ましくは、各照射サイクルに対して異なる光学的透過特性(または光学的透過特性の異なるセット)を有する。これにより、イメージャ70は、各画素が光信号の異なる波長成分の光強度を表す値のセットを有する画像データを収集することが可能になる。時間的変動の場合に光学システム50として使用するのに適した光学システムの代表的な例は、限定されないが、異なる透過特性を有する光学フィルタ間を機械的に切り替えるフィルタホイール、印加される電圧の関数としてその光学透過特性を変化させる液晶システム、及び音響光学可変フィルタを含む。変動が一時的である実施形態では、操作302は、好ましくは、イメージャ70に提供される視野がイメージングされるサンプル101の視野よりも小さい場合にのみ実行される。イメージャ70に提供される視野がサンプル101を全体として含む場合、またはイメージャ70に提供される視野がサンプル101内の関心領域を含む場合には、操作302を飛ばすことができる。
【0084】
変動が空間的である場合、光学システム50は、光学システム50の表面上の位置の関数として、または光信号の各光線の光学システム50への入射角の関数として変動する光透過特性(または光透過特性の異なるセット)を有することが好ましく。これらの実施形態では、光学システム50は、例えば、干渉計、好ましくはサニャック干渉計であり得、各画素におけるデータベクトルは、干渉計によって生成されるインターフェログラムである。光学システム50がサニャック干渉計を含む実施形態におけるシステム320の代表的な例示が、図3に提供される。
【0085】
光学システム50が干渉計であり得る実施形態では、サンプル101からの光信号は、干渉計のアームに沿って伝搬し、最終的に干渉計の出口で互いに干渉する2つの二次光信号に分割される。干渉計のアームは、各アームに沿って異なる光路長が存在するように構成され、2つの二次光信号の干渉パターンは、光路長差及びサンプルからの光信号の波長に依存する。干渉計は、光信号の干渉計への入射角に依存する可変スペクトル透過関数を効果的に提供する。例えば、サンプルにわたって単色で均一な光信号の場合、視野にわたる異なる点が異なる角度で干渉計に入るので、スペクトル透過関数は、視野にわたるコサイン関数である。一般に、空間干渉パターンは、光信号のフーリエ変換に関連する。
【0086】
干渉計を出ると、再結合された二次光信号は、イメージャ70によってイメージングされ、その結果、再結合された信号内の各光線は、その異なる検出要素に到達する。これにより、干渉計で作られた干渉パターンによって変調されるサンプルの画像が提供される。したがって、サンプル内の任意の点からの信号に対して干渉計によって与えられるスペクトル透過率は、視野内のその位置に依存する。画像データは複数の視野にわたって取得されるので、光信号の複数の波長成分の強度は、例えば高速フーリエ変換(FFT)を用いて、干渉計の特性透過関数を入射角の関数として考慮して、サンプル内の各点について測定することができる。
【0087】
干渉計を使用し、フーリエ変換によってスペクトルを得る利点は、低信号という状況でその信号対雑音が優れていることであり、これは、殆ど全ての放射光信号が測定プロセスに使用され、フィルタ除去されないという事実の結果である。この効果は、フェルゲットのマルチプレックスアドバンテージとして知られており、蛍光が低強度信号という性質を持っているので、蛍光との関連で特に有利である。
【0088】
したがって、304で提供されるスペクトル画像は、複数の画素にわたって配置されたデータを含み、各画素は、光信号の波長成分のセットにそれぞれ対応する複数の強度値のセットを記憶し、したがって、その画素における光信号の局所スペクトルを表す。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態では、方法は305に進み、そこでスペクトル画像が分析されて、サンプル中の各染色剤の相対的寄与が決定される。これは、例えば、サンプルを染色するために使用された染色剤の特徴的な発光スペクトルに基づいて、各画素におけるスペクトルをビニングすることによって行うことができる。次いで、方法は306に進むことができ、そこで相対的寄与に基づいて、染色剤の表示可能な密度マップが生成される。密度マップは、ディスプレイ装置に表示されるか、または遠隔位置で表示するため遠隔位置に送られる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態では、方法は307に進み、そこで密度マップは複数のセグメントに空間的にセグメント化され、セグメントの少なくとも1つ、より好ましくは複数のセグメントの少なくとも一部のそれぞれは、単一の生物学的細胞に対応する。セグメント化は、サンプル101中の染色剤の一部に関連するデータに基づいて行われ得る。具体的には、セグメント化は、スペクトル画像の各画素に記憶されるスペクトルの所定の部分に対応する密度マップの部分に基づいて行うことができる。本発明のいくつかの実施形態では、セグメント化は、サンプル101中の単一の染色剤に関連するデータに基づいて行われる。例えば、セグメント化は、サンプル101が明視野光源80を用いて照射されている間にイメージングされた非蛍光性染色剤(例えば、H&E染色剤)に対応する画像データに基づいて行われ、サンプル101が照射システム10の光源の1つを用いて照射されている間にイメージングされた染色剤に対応する画像データには行われない。
【0091】
操作305が実行される実施形態では、本方法は、好ましくは、単一の生物学的細胞の少なくとも1つの密度マップを生成する。本発明のいくつかの実施形態では、方法は308に進み、そこで細胞の発現プロファイルを提供するために、細胞内の各染色剤の平均密度が計算される。好ましくは、プロファイルは、1つより多い細胞について、より好ましくはサンプル中の細胞の少なくとも大部分について計算される。
【0092】
次いで、方法は、任意選択で好ましくは、309に進むことができ、そこで、計算された発現プロファイル(複数可)に従って細胞(複数可)が分類される。これは、各細胞のプロファイルを発現プロファイルのデータベースと比較することによって、またはサンプルの細胞の間でプロファイルを比較することによって行われ得る。任意選択的に、分類は、細胞の識別、例えば、細胞ががん細胞であるか免疫系細胞であるかを識別することを含む。そのような識別は、計算されたプロファイルと、データベースに記憶され得る以前に識別された細胞クラスまたは細胞タイプのプロファイルとの間の類似性に基づいて行われ得る。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態では、方法は310に進み、そこで、異なる細胞クラスに分類された細胞間の幾何学的関係に基づいてサンプルが分類される。例えば、幾何学的関係に基づいて、サンプルは、がん性または良性として分類され得、任意選択的に、がんのグレードに従って分類され得る。
【0094】
方法は311で終了する。
【0095】
本実施形態の方法及びシステムのさらなる詳細な説明を提供する前に、本明細書で詳細に上述したように、それによって提供される利点及び潜在的な用途に注目する。
【0096】
多くの従来のシステムでは、スライド当たり単一のバイオマーカーのみが染色される。場合によっては、連続するスライドを異なるIHCバイオマーカーで染色することによって複数のバイオマーカーが分析されるが、この方法では、異なるスライドが異なる細胞を示すので、バイオマーカーの共局在性が失われ、個々の細胞の完全な発現プロファイルを得ることは困難である。本実施形態の手法は、同じスライド上で多くの染色剤の使用を可能にし、この結果として、個々の細胞の発現プロファイルを決定するための有用なツールを提供する。これは、詳細な細胞分類及び腫瘍微小環境の特徴付けを可能にする。
【0097】
他の従来の手法は、異なって染色されたバイオマーカーの発現を決定するために、フローサイトメトリーを使用する。しかしながら、本実施形態の手法とは異なり、ほとんどのフローサイトメトリーシステムは、複数のバイオマーカーのデータを同じ細胞に結び付けることができない。いくつかの高価なフローサイトメトリーシステムは、同じ細胞上の複数のバイオマーカーの測定を可能にするが、本実施形態の手法とは異なり、これらのフローサイトメトリーシステムは、細胞が測定のために組織から放出されなければならず、腫瘍及び/またはがんを特徴付けるために有用であり得る空間情報を失うので、固形腫瘍用には向かない。
【0098】
他の従来の手法は、光学システムではなく質量分析(例えば、飛行時間型質量分析TOF-MS)を使用し、それによって、集束ビームがスライドの表面にわたってポイントごとに走査され、スライドの表面からイオンを放出し、質量分析測定を可能にする。これらの手法は、多数のバイオマーカーを特定することができるが、それらは、サンプルのポイントごとの走査を必要とするので、本実施形態の手法よりもはるかに遅い。さらに、本実施形態の手法とは異なり、質量分析手法は高価で操作が複雑である。
【0099】
したがって、本実施形態の手法は、空間分解能及び幾何学的状況の観点から光学顕微鏡法の利点と、バイオマーカー分離能力の観点からフローサイトメトリー及び質量分析などの非イメージング手法の利点との両方を享受する。
【0100】
以下は、本発明のいくつかの実施形態によるシステム320のより詳細な説明である。
【0101】
システム320は、視野シフトを提供する機構以外の任意の可動部分を欠いていることが好ましい。
【0102】
図1を参照すると、システム320は、好ましくは、イメージャ70に対してサンプル101の視野をシフトさせるように構成された機械的ステージ110を備える。図1は、イメージャ70が静止し、サンプル101が移動可能である好ましい実施形態を示すが、システム320の光学セットアップがステージ110上に配置され、サンプル101が静止している構成も企図されており、サンプル101がより大きな対象物(例えば、生体)の一部である場合に有用である。典型的には、ステージ110は、サンプルの表面に平行な2つの横軸XYに沿って移動可能である。必要に応じて、必ずではないが、ステージ110はまた、例えば、集束の目的で、サンプルの表面に垂直に、Z軸に沿って移動するように構成される。本発明のいくつかの実施形態では、ステージ110は、1つの横軸、例えば、X軸に沿ってのみ移動可能であり、本発明のいくつかの実施形態では、ステージ110は、例えば、1つの横軸、例えば、X軸と、垂直のZ軸とに沿って移動可能であるが、他の横軸、例えば、Y軸に沿って移動可能ではない。ステージ110の動きは、モータ及びギア機構(図示せず)を用いることができ、好ましくはコントローラ200によって制御される。
【0103】
システム320の光学セットアップは、上述の照射システム10を備えており、これは、任意選択で好ましくは、2つ以上の光源を含み、それぞれは、上記でさらに詳述したように、異なる中心波長を有する光ビームを提供する。図1には、3つの光源10a、10b、及び10cが示されているが、本発明のいくつかの実施形態によれば、任意の数の光源を使用することができる。光源のそれぞれは、所望の中心波長及び十分に狭い帯域幅(例えば、30nm未満、または20nm未満、例えば、15nm以下)で光を生成するように選択された発光ダイオード(LED)またはレーザ光源であり得る。光源10a、10b、及び10cのそれぞれの中心波長及び帯域幅は、任意選択的に、好ましくは、それぞれ13a、13b、及び13cで概して示されるスペクトル選択フィルタによって選択することができる。本発明のいくつかの実施形態では、照射システム10の光源の1つ以上は、明視野モードまたは暗視野モードのいずれかで反射モードでのイメージングを容易にするために選択された光ビームを生成する。
【0104】
システム320の光学セットアップは、好ましくは、システム10からの光ビームが、そのイメージング側(本例では上側)から、任意選択で好ましくは対物レンズ30を通して、サンプル101を照射するように配置される。図1に示される構成では、光源10a、10b、10cからの光ビームは、例えば、ダイクロイックビームスプリッタ11a、11b及び/またはミラー11cの配置を含み得る光方向転換システム11を使用して、1つの光軸(本例では-X軸)に沿って伝搬するように方向転換される。しかしながら、この構成は、いくつかの実施形態では、光方向転換システム11を使用せずに光を方向付けることができるため、必ずしもそのようである必要はない。例えば、システム10は、図5に示すような周辺照射システムとすることができ、または図8に示すような光ファイバ17の導波路を用いて照射を提供することができる。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態では、光源10からの照射は集光レンズ12を透過する。光源10からの照射は、マルチバンドビームスプリッタ20を使用してサンプル101に向けて再方向付けすることができ、このマルチバンドビームスプリッタは、システム10からの異なる光ビームの中心波長の周りの狭い波長帯域のみを任意選択で好ましくは選択的に反射し、一方、他の波長の光を透過させる。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態では、システム320はまた、さらに詳細に上述したように、イメージング側とは反対側からサンプル101を照射するように配置された明視野光源80も備える。好ましくは、光源80からの明視野は、集光レンズ81を通して伝達され、サンプル101に向けて(例えば下から)ミラー82によって向け直される。
【0107】
照射システム10及び光源80はまた、任意選択で好ましくは、コントローラ200によって制御される。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態では、システム320はまた、サンプル101から反射された可能性がある励起波長をフィルタリング除去するためのスペクトルフィルタまたはフィルタのセット35を含む。フィルタ35の透過曲線は、フィルタ35のスペクトル窓が、励起光のより良好な排除を提供するために、任意選択で好ましくはビームスプリッタ20の透過曲線よりもわずかに広い(例えば、5%、10%、または15%広い)ことを除いて、ビームスプリッタ20によって提供される透過曲線と同じまたは同様であり得る。
【0109】
光ビームのいずれかによる照射に応答して、サンプル101によって出力された光信号は、イメージャ70上に投影される。イメージャ70は、任意選択で好ましくは、CCDまたはCMOSイメージャ等であるが、これらに限定されない、画素化したイメージャである。光信号は、好ましくは、対物レンズ30、像平面42を有するチューブレンズ40、及び光学システム50のうちの1つ以上を通して、イメージャ70上に投影される。任意選択的に、ミラー41が、チューブレンズ40と光学システム50との間に配置され、例えば、チューブレンズ40と像平面42との間に配置される。
【0110】
イメージャ70は、任意選択で好ましくは、コントローラ200がイメージャ70から画像データを受け取ることを可能にするために、1つまたは複数のデータ・チャネル72を介してコントローラ200と通信する。コントローラ200は、画像処理能力を有するコンピュータ制御のコントローラであることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、コントローラ200は、データをローカルに記憶するデータベース210、及び/またはクラウドストレージ設備と通信する。データベース210及び/またはクラウドストレージ設備は、以前に識別された細胞発現プロファイル、組織分類及び/または識別等を格納することができる。
【0111】
上述のように、光学システム50は、可変光透過特性を有する。図1は、光学システム50が、空間的に変化する光透過特性を有する構成を示し、この場合、光信号は、レンズ61によって光学システム50に入る前に、かつレンズ62によって光学システム50から出た後に、コリメートされる。光学システム50が、時間的に変化する光透過特性を有する実施形態では、光学システムは、チューブレンズ40の像平面42に任意選択で好ましくは、配置される。
【0112】
図3は、光学システム50がサニャック干渉計を備える、本発明の実施形態によるシステム320の概略図である。干渉計50は、1つの平面における干渉計50への入射角の関数として光路長差が変化するようにアラインされる。干渉計50は、一般に、ビームスプリッタ503、及び2つのミラー501、502で形成されており、干渉計50に入る光信号が、ミラー501及び502の反射により、干渉計50内で反対方向にループする2つの二次光信号に分割されるように配置されている。2つの二次光信号のそれぞれは、サニャックループを完成させて、ビームスプリッタ503で他の二次信号と干渉する。
【0113】
像平面42で形成されるサンプル101の像は、像の各点が異なる角度でビームスプリッタ503上に投影され、したがって、2つのサニャック間の異なる経路長差を受け、その結果、サンプル101の像の異なる点に対して異なるスペクトル透過関数が生じるように、入射レンズ61によって干渉計50内に投影される。単色光源の場合、この配置は、明るい領域と暗い領域の線で作られる干渉パターン(フリンジとしても知られる)を提供し、この干渉パターンは、余弦関数によって記述される。
【0114】
干渉計50を出ると、像平面42におけるサンプル101の像の各点は、干渉計の出口レンズ62によってイメージャ70上の異なる位置に像を作り、したがって、干渉計50によって生成された干渉パターンによって重ね合わされたサンプル101の画像を提供する。したがって、サンプル101の任意の点からの信号に対して干渉計50によって与えられるスペクトル透過率は、視野内のその位置に依存する。この構成により、サンプル101の任意の点からの光信号のスペクトルを測定することが可能になる。そのような測定のための代表的な手順は、(a)視野にわたってサンプル101を走査することと、(b)サンプル101のそれぞれの点についてイメージャ70の各ピクセルによって生成されたデータを、視野内の位置の関数として(または等価的に入射角の関数として)収集して、各画素にデータベクトルを提供することと、(c)入射角の関数としての干渉計の透過を考慮して、例えば、高速フーリエ変換(FFT)によって、データベクトルに逆フーリエ変換を適用することによって、サンプル101の各点のスペクトルを計算することとを含む。フーリエ変換は、任意選択で好ましくは、当技術分野で公知のように、アポダイゼーション、ゼロ充填及びスペクトル平滑化のための前処理及び/または後処理を伴ってもよい。
【0115】
したがって、システム320は、照射システム10によって生成された光ビームのそれぞれに対してサンプル101の全ての点からのスペクトルを測定することを可能にする。サンプル101の少なくとも一部(例えば、スライドの一部またはスライド全体)の全ての点からスペクトルを収集することにより、スペクトル画像を作成する。
【0116】
本明細書でさらに詳細に上述したように、異なるスペクトル特性を有する複数の光ビームが照射サイクルにおいて連続的に使用される場合、コントローラ200によって、イメージャ70と同期して個々の光ビームを作動させるように照射システム10を制御する。再び図2を参照すると、本発明の好ましい実施形態において、励起蛍光である光源は、最初に10aから始めて、10b及び10cと続いて稼働され、最後に透過光源80も稼働される。次に、イメージャ70によるフレームの全てのキャプチャの間に、単一の光源が作動するように、照射サイクルが繰り返される。各サイクル(全ての異なる光源を使う)は、図2のフレーム201、202、203、204に概略的に示されるように、イメージャ70に対するサンプル101の異なる視野で撮影される。
【0117】
ステージ110の移動は、各フレームにおいて対象物が異なる位置にあり、露光中でも対象物が移動している(画像内のスミアの許容可能なレベルに寄与している)ように、連続的であってもよく、または段階的であってもよい。後者の選択肢(一方の位置から他方の位置へのステッピング)は、この場合、照射サイクル内の各光ビームに対して生成されるデータが、同じ視野に対応するので、好ましい。ステージ110が進められるステップは、ナイキスト最小サンプリング則に従って、最短波長に対するフリンジ幅よりも小さいことが好ましい。発明者は、このような基準を用いることにより、運動中のイメージャ70の活性化が、スペクトルの品質を著しく劣化させないことを見出した。本発明のいくつかの実施形態では、以下のパラメータ、すなわち、ステージ110の運動方向とイメージャ70のグリッドの軸の1つとの間の角度、ステージ110の運動と画像の位置との間の比、及びステージ110の速度のうちの1つ以上を較正するために、較正手順が使用される。
【0118】
したがって、全ての照射サイクル及び対応する画像取得の終わりに、収集された画像データは、それぞれがイメージャ70の1つの画素に対応する複数のデータベクトルを含み、各データベクトルは、視野におけるシフト及び照射のスペクトル特性間の切り替えの両方を考慮に入れる複数の値を含む。理想的には、各データベクトルは、N・M個のデータ値を含むことができ、ここで、N及びMは、述べたように、それぞれ、1サイクル当たりの照射の数(光源の数または光源の組み合わせ)及びサイクルの数である。しかしながら、N・Mよりも短いデータベクトルもまた同様に適切であることが分かる。N・M個のデータ値を含むデータベクトルを生成する代わりに、各画素に対して、長さMのN個のデータベクトルを代替的に生成することができ、したがって、N個のスペクトル画像、光源に対する1つのスペクトル画像、または光源の組み合わせを生成することを可能にすることが理解される。
【0119】
システム320の利点は、サンプル101を視野にわたって1回だけ走査することができ、画像データが複数の異なる光源について並行して収集されることである。例えば、画像データは、蛍光を生じさせる複数の励起光源10a、10b、10cと、明視野光源80からの透過信号とについて、並行して収集され得る。照射システム10の光源の1つ以上が、明視野モードまたは暗視野モードのいずれかで、反射モードでのイメージングを容易にするために選択された光ビームを生成し得る。
【0120】
単一の単色光源がシステム320によって使用される場合、異なるバイオマーカー(例えば、抗体)と共に複数の蛍光体で染色されたサンプルは、複数のバイオマーカーの密度を同時に提供するために、イメージングされ、分析され得る。例えば、約405nmの励起波長を有する蛍光体の典型的なセットは、蛍光体のBrilliant Violetセットに基づく。図9に、BV421、BV480、BV510、BV605、BV650、BV711、BV750、及びBV786の発光スペクトルを示す代表例を示す。図示されるように、全ての蛍光体の発光スペクトル間の差は、混合を取り除くのに十分に大きい。システム320は、いくつかの異なる励起波長(それぞれがシステム10の光源の1つ以上によって提供される)の使用を促進するので、それぞれが異なる波長によって励起可能な複数の蛍光体で染色されたサンプルを、イメージングすることができ、したがって、同じスライド上の同じスキャンで、複数(少なくとも6または少なくとも8または少なくとも12または少なくとも16)の蛍光体を分離することを可能にする。例えば、システム320は、約405nm、約488nm、約532nm及び約640nmからなる群から選択される中心波長の少なくとも2つ、または少なくとも3つ、またはそれぞれを提供する光源を用いることができる。
【0121】
データ収集は、連続走査モードまたはステップアンドメジャーモードのいずれかで行うことができる。連続走査モードでは、サンプル101は連続的に移動しているため、異なる光源を作動させた場合の画像は異なる。しかしながら、このことは、サンプル101内の各点に対するデータが(異なるフレーム間の視野の重なりのために)複数回収集されるので、システムの性能を制限しないことが見出された。連続走査モードでは、各サイクル内の期間は、任意選択で好ましくはスメアリングを最小限に抑えるのに十分に短い。例えば、各サイクル内の期間は、ステージ110がサンプル平面上の画素サイズに等しい距離をカバーするのにかかる時間よりも短くすることができる。数値例として、ステージ110が1mm/秒の速度で移動し、画素サイズが1ミクロンの場合を考える。この場合、各照射サイクル内の期間は約1msである。各照射サイクル内の期間は、代替的に、上記の期間の任意の乗数未満、例えば、期間の0.5倍、0.25倍、2倍、4倍であり得る。したがって、このモードは、測定速度の観点からより好ましく、空間分解能及びスペクトル分解能の観点からはあまり好ましくない。
【0122】
ステップアンドメジャー動作モードでは、ステージ110は、各照射サイクル後の位置の間で割り込み、異なる光源を使用して全ての画像が撮影されるまで静止したままである。このモードは、より長い露光を可能にし、場合によっては、単一フレーム時間より長い照射パルスを使用することさえも可能にし、したがって、空間分解能及びスペクトル分解能の観点からより好ましく、測定速度の観点からはあまり好ましくない。
【0123】
光学システム50が時間の関数としてその透過特性を変化させる場合、それは、回転フィルタセット、電圧制御液晶要素、またはフィルタ特性を時間的に切り替えることを可能にする任意の他の技術として具現化され得る。この走査方法によれば、スペクトル透過特性の完全なセットが各視野で使用される。次いで、得られた画像を使用して、視野内の各点に対するデータベクトルを計算することができる。さらに、1つの照射条件下で画像の完全なセットを撮影することに加えて、プロセス全体は、任意選択で好ましくは、異なる照射条件を用いてサイクルで繰り返される。スペクトル透過特性間の切り替え及び光源間の切り替えは、いずれの順序でも行うことができる。例えば、光学システム50のスペクトル透過特性の間の切り替えが光源間の切り替えよりも遅い場合、システム320は、光学システム50の全てのスペクトル透過特性が使用されるまで、光学システム50の最初のスペクトル透過特性、例えば、連続するフレームにおいて、全ての異なる光源を使用して画像を収集し、次に、光学システム50のスペクトル透過特性を変更し、再び、異なる光源のそれぞれを使用して画像を収集するなどができる。逆に、光学システム50のスペクトル透過特性の間の切り替えが光源間の切り替えよりも速い場合、システム320は、1つの光源を使用して光学システム50の全ての可能なスペクトル透過特性に関するデータを収集し、次いで、別の光源を使用して光学システム50の全ての可能なスペクトル透過特性に関するデータを収集することなどができる。
【0124】
光学システム50、及び全ての光源の全てのスペクトル透過特性についての全データが1つの視野で収集されると、システム320は、視野をシフトし、全サンプルが走査されるまで新しい視野に対するプロセスを繰り返す。
【0125】
本発明者は、データベクトルが数十のデータ値を有する場合、十分に正確なスペクトルを得ることができることを見出した。したがって、同じ光源で撮影された連続する画像フレーム間の視野のシフト(例えば、図2に示す非限定的な例では、フレームΔt及びΔt)は、空間及びスペクトル分解能を損なうことなく、数画素の量とすることができる。例えば、システムのスペクトル範囲が約400nm~約800nmであり、必要なスペクトル分解能が約10nmである場合、データベクトルに対して約40個のデータ値を有することが十分であり、またはデータベクトルが対称である場合には約80個のデータ値を有することが十分である。したがって、視野にわたって約960画素を有するイメージャの場合、同じ照射源画像で撮影された連続する画像フレーム間の視野のシフトは、約12画素の量とすることができる。
【0126】
図4は、サンプルを照射する光ビームの立体角を低減するためにピンホールが使用される本発明の実施形態による、システム320の概略図である。これらの実施形態の利点は、取得された画像データに対する励起光の寄与を低減できることである。図4に示すように、ピンホール14は、集光レンズ12の後の照射経路に、典型的には集光レンズ12の焦点面の近くに挿入される。ピンホール14は、レンズ123によって対物レンズ30の後方焦点面31上にイメージングされることによって、照射の立体角を低減する。
【0127】
サンプル101からの信号は、3つの主要な成分を有し、これらの成分は、典型的にはランバートであり、広い立体角を有するサンプルからの蛍光、照射と同じ立体角を有するサンプルからの反射、及びサンプルの平面に対する法線から角度が増加するにつれて減少するサンプルからの散乱を含む。画像データ内に不要な背景を生成する2つの後者の成分をさらに排除するために、追加のビームストップ43が戻り経路に配置される。好ましくは、ビームストップ43は、チューブレンズ40を通して対物レンズの後方焦点面31の像面に配置される。したがって、サンプル101から法線方向に近い角度で出た光ビームは、ビームストップ43の面内で光軸に近い円板に閉じ込められ、ビームストップ43によって遮断される。ビームストップ43の直径は、任意選択で好ましくは、照射の立体角を超えて、例えば、照射コーンの角度の2倍に等しい、または代替的に、ビームストップ43の平面におけるシステムの開口の全直径の半分を遮断し、したがって、反射信号及び散乱信号のかなりの部分、ならびに蛍光信号の小さな部分のみを除去するように選択される。
【0128】
図5は、システム10が周辺照射システムである、本発明の実施形態によるシステム320の概略図である。この実施形態では、光源のアレイ、例えばLEDのアレイは、それらが対物レンズ30の開口の外側でサンプル101を照射するように、配置されている。例えば、図5に示すように、光源は、集束光学システムを用いてまたは用いずに、対物レンズ30の光軸に対して周辺に配置することができる。共に動作する複数の同様の光源、例えば同じ発光スペクトルを有するLEDが、照射の均一性を改善するために、本配置の複数の周辺位置に配置され得る。光源の配置は、例えば10’に示すように、概ね平面であり得るか、または10’’に示すように非平面形状を形成し得る。図5において、R、G、B及びVは、異なる中心波長で照射する異なるLEDタイプを示す。正弦波照射、暗視野モード、全内部反射モード、高傾斜ビーム、またはHiLo照射のような他の照射方法も、システム320によって使用することができる。
【0129】
図7は、本発明の実施形態によるシステム320の概略図であり、システムは、分光計90、及び/または追加のイメージャ71(任意選択で好ましくはレビュー及び較正チャネルとして使用されてもよい)も含む。図示の実施形態では、照射システム10からの光ビームは、レンズ12によって照射ピンホール15上に結像され、次いで、この照射ピンホールがレンズ123及び対物レンズ30によってサンプル101の表面上に結像され、サンプル101の特定の部分を照射する。ピンホール15は、ピンホール14(図7には示さず、図4参照)とは異なる機能を有することに留意されたい。ピンホール15がサンプル101上に結像される間、ピンホール14は、対物レンズ30の後方焦点面31上に結像される。好ましくは、ピンホール15は、分光計90を使用して較正プロトコルを実行する前にシステム320に導入され、画像データを取得する前にシステム320から除去されてスペクトル画像を生成する。
【0130】
照明に応答する光信号の一部(例えば、蛍光、透過、反射)は、ビームスプリッタ44によって、任意選択で好ましくはレンズ46の像平面に配置され、光信号を空間的に狭める収集ピンホール45に方向転換される。典型的には、サンプル101の表面上の収集ピンホール45の像は、照明ピンホール15の像よりも小さいため、実際にサンプリングされる領域を小さくする。例えば、サンプル101の表面における収集ピンホール45の像の大きさは、単細胞または核の大きさであり、あるいは、それより小さくてもよい。光信号は、ピンホール45を通過し、次いで、レンズ48によって分光計90(好ましくは非結像分光計)の入口に結像される。あるいは、分光計90は、光ファイバ入口を含むことができ、その場合、ファイバの端部(図示せず)は、ピンホール45として機能するか、またはピンホール45の直後に取り付けることが可能である。分光計90を含む光チャネルは、典型的には、イメージャ70の空間分解能よりも低い空間分解能を有し、したがって、分光計90によって得られるスペクトルは、イメージャ70の複数の画素にわたる平均に対応することに留意されたい。
【0131】
システム320内に分光計90、を有することの利点は、分光計90によって得られた測定値と、光学システム50を用いてイメージャ70によって得られた測定値との間の差及び類似性に対する性能指数を提供することにより、システム320によって生成されたスペクトル画像の精度を評価するために分光計90を使用できることである。この評価は、入力としてイメージャ70及び光学システム50によって測定されたスペクトルを受け取り、分光計90を用いて同じ位置で測定されたスペクトルに近い補正されたスペクトルを返す補正関数を構築するために用いることができる。補正関数は、システム320によって測定された他のデータを補正するためにも使用され得る。本実施形態に適した較正プロトコルの代表的な例は、以下の実施例のセクションで提供される(実施例2参照)。
【0132】
システム320は、任意選択で好ましくは、追加のイメージャ71を利用する追加のイメージングチャネルを含み得る。イメージャ71は、チューブレンズ40の像平面に位置決めすることができる。この構成において、ミラー41(例えば、図1参照)は、光信号の一部をイメージャ71にも向け直すために、チューブレンズ40の像平面の前に配置されたビームスプリッタ47に置き換えられる。この追加のイメージングチャネルは、サンプル101の非スペクトル画像(例えば、1画素あたり3つの強度値を有するRGB画像、または1画素あたり1つの強度値を有するグレースケール画像)を得るために使用され得る。好ましくは、イメージャ71は、例えば透過モードにおいて、明視野光源80と併せて利用される。これは、サンプル101が透過モードでイメージング可能な染色剤(例えば、H&Eなど)で染色される場合に、特に有用である。
【0133】
図8は、システム320が、サンプル上に投影されるパターンを使用する本発明の実施形態による、システム320の概略図である。図示の実施形態では、プロジェクタシステム88が、イメージャ70及び/または71上に生成された画像の焦点を測定し補正するために使用される。プロジェクタシステム88は、追加の光源84と、レンズ86と、パターン化要素83と、ビームスプリッタ85とを含む。システム88は、レンズ86の像平面87が、ビームスプリッタ85による方向転換の後にレンズ12の像平面と一致するように配置することができ、その結果、像平面87に配置された対象物がサンプル平面上に鋭い影を作り出す。パターン化要素83は、例えば、限定されないが、ガラス基板上のクロムマスクなど、透過材料と非透過材料との交互の線から作られた粗い線状グリッドを含むことができ、パターン化要素83のパターンがサンプル101上に投影されると、それがイメージャ71によってイメージングされ得るような線幅及び頻度でカバーされる。例えば、パターン化要素83は、イメージャの視野を横切る約10~約100本の線を含むことができる。パターン化要素83は、レンズ86の光軸に対して斜めの角度φで、像平面87に配置される。典型的なφの値は、90°を除いて、約80°~約100°である。斜角は、像平面87にある、または像平面に近い、パターン化要素83の小さな部分のみがサンプル平面に集束され、一方、パターンの他の部分は次第にデフォーカスされることを保証する。
【0134】
サンプル101は、通常、均一な厚さを有しないので、パターン化要素83の傾斜は、サンプルの任意の所与の高さにおいて、焦点が合った投影パターンの一部が存在することを保証する。画像内のその部分の位置は、焦点を改善することができる補正の量及び方向の両方に関する情報を提供する。
【0135】
使用時には、イメージャ71は、サンプル101上の要素83のパターンの投影をイメージングする。投影パターンの異なる部分のデフォーカスパラメータを決定するために、画像が分析される。例えば、分析は、グリッド線の方向に沿って強度を平均化し、線を横切る強度のベクトルを得ることを含み、これにより、ノイズに対する信号が改善され、基礎となるパターンの影響が除去される。この分析はまた、投影されたグリッドの画像上の各線または線群にデフォーカスパラメータを割り当てること、及び最良の焦点が得られる画像内の領域を識別することを含むことができる。最良焦点が達成される領域と公称最良焦点領域との間の距離は、デフォーカスの直接的な尺度であり得、コントローラ200は、例えば、ステージ110をZ軸に沿って移動させることによって、この差を最小化するように動作し得る。これは、システム320の動作の間に、任意選択で好ましくは連続的にまたは繰り返し実行される。スペクトル画像の画像データの取得に対する外乱を低減するために、集束チャネルは、任意選択で好ましくは、測定スペクトル範囲を超えるスペクトルの一部、例えば赤外線で動作される。集束測定は、ステージ110の運動中に、または測定停止間に、行うことができる。
【0136】
図3に示すサニャック干渉計は十分な結果を得ることができるが、本発明者は、従来のサニャック干渉計を改善できることを見出した。従来のサニャック干渉計の3つの主な光学要素(2つのミラー501及び502、及びビームスプリッタ503)は、典型的には、3つの独立した光学要素として実装される。本発明者は、この配置が、特に環境温度の変化及び輸送中に、これらの光学要素の互いに対する位置合わせ不良に敏感であり得ることを見出した。したがって、本発明者は、従来の干渉計と比較して、振動、衝撃及び温度変動に対してより安定で強固なモノリシックサニャック干渉計を考案した。
【0137】
図10図13図15A図15B及び図17は、システム50がモノリシックサニャック干渉計を含む本発明の実施形態における光学システム50の概略図である。図示の実施形態では、光学システム50は、2つの取り付けられたプリズム51、52、を含み、プリズム51に入射端面510、及びプリズム52に出射端面520を有する非対称モノリシック構造を共に形成する。光学システム50は、プリズム51とプリズム52との間の取り付け領域514の一部に係合するビームスプリッタ512も備える。典型的には、光信号(例えば、像平面42で結像される光信号)は、レンズ61によってコリメートされ、入射端面510を通ってモノリシック構造に入射する。光信号は、モノリシック構造体内で、サニャックループを実行し、出射端面520を通って出る2つの二次光信号に分けられる。二次光信号は、次に、レンズ62によって集束され、イメージャ70によって検出される。
【0138】
ビームスプリッタ512は、入射端面510を通って入射する光信号を、出射端面520を通って出射する2つの二次光信号に分割するように構成されている。図11及び図12を参照する。2つの二次光信号は、モノリシック構造内でサニャックループを実行し、端面520において間隔を置いて配置された点I及びJを通って出射する。ビームスプリッタ512のサイズは、二次光信号の光路が、ビームスプリッタ512によって係合される位置516、及びビームスプリッタ520によって係合されない位置518の両方で、取付領域514に確実に当たるように選択されることが好ましい。
【0139】
モノリシック構造の非対称性は、1つ以上の方法で確保できる。本発明のいくつかの実施形態では、図10図13に示され、2つのプリズムが異なる形状を有する。例えば、取付領域514と端面510及び520との間の角α1、α2は、それぞれ、異なり得る。α1とα2との間の差の絶対値を2dで表すと、dθ=|α1-α2|/2となり、本発明者は、許容可能なOPD範囲が、差1分≦dθ≦20分の範囲内でdθの値を選択することにより、許容可能なOPD範囲が得られることを発見した。代替的または追加的に、取付領域514の反対側であり、プリズム51及び52の隣接する端面の間でそれぞれ画定される角度β1、β2は、異なっていてもよい。図15A図15B及び図17に示す別の実施形態では、プリズム51及び52は同一であるが、互いにずれた関係で取り付けられており、入射端面510とプリズム52に取り付けられたプリズム51の端面との間に形成される頂点A1は、出射端面520とプリズム51に取り付けられるプリズム52の端面との間に形成される頂点A2に対してずらされている。ずれの量(図17のA1とA2との間の距離)は、数百マイクロメートル(例えば、約200μm~約500μm例えば、約400μm)であることが好ましい。
【0140】
本明細書の実施形態のいずれかにおいても、取り付け面における個々のプリズム51及び52の角度の合計は、(図10図13図15A図15B及び図17におけるα1+α2)は任意選択で約90°である。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態では、モノリシック構造は、取付領域514にスペーサ522(図17)を含み、スペーサ522は、モノリシック構造内の二次光信号の光路のいずれかからも離れて、ビームスプリッタ512から間隔を置いて配置される。これらの実施形態の利点は、プリズム51及び52の取り付けられた端面を、互いに平行になるように容易に位置合わせできることである。好ましい実施形態では、スペーサ522は、ビームスプリッタ512と同じ材料及び厚さで作られ、したがって、プリズム51及び52の取り付けられた端面間の距離が、ビームスプリッタ512の領域内とスペーサ522の領域内とで同じであることが保証される。
【0142】
次に、図11を特に参照すると、2つのプリズム51及び52がADで指定された端面上に取り付けられている。取り付けは、システムの意図されたスペクトル範囲において透明であり、プリズムの屈折率と同様の屈折率を有する光学接着剤によって行うことができる。プリズム51及び52の形状は、端面510から入射する光信号の方向と、端面520から出射する光信号の方向との間の角度が約90°となるように選択されることが好ましい。モノリシック構造は、いくつかの実施形態では、ペンタプリズムの形状を有し得る。
【0143】
プリズム51及び52は、同一の光学材料、例えば、ガラス、石英、または可視範囲で透過する他の材料、あるいはIR透過材料またはUV透過材料で作ることができる好ましくは、入射端面510、及び出射端面520は、反射防止コーティングによってコーティングされる。好ましくは、反射コーティングは、二次光信号が内部反射される端面(本例では、端面EF及びCB)に適用される。ビームスプリッタ512は、プリズム51及び52の一方の取付端面の一部の上のコーティングとして具体化することが可能である。ビームスプリッタ材料によって被覆される取付端面の部分をAGと呼ぶ。
【0144】
ビームスプリッタ512が取付領域514の一部のみと係合する構成により、二次光信号は、反射端面ミラーFE及びBCで反射した後、プリズム51及び52の間を自由に通過することができる。Gの最適な位置は、好ましくは、入射端面510における光信号の幅及びその角度広がりに基づいて選択される。長さAGの典型的な値は、端面510の長さの約55%~約115%、より好ましくは端面510の長さの約70%~約100%である。ビームスプリッタ512のサイズの最適化に関するさらなる詳細が、以下の実施例のセクションに提供される(実施例4参照)。
【0145】
角度α1及びα2の典型的な値は約45°、角度β1及びβ2の典型的な値は約112.5°、角度γ1及びγ2の典型的な値は約22.5°である。
【0146】
本実施の形態のモノリシック構造の動作原理は、図12及び図13を参照すると良く理解することができる。図12には、端面510を通って入射し、点Hでビームスプリッタ512に当たる光信号の代表的な光線が示されている。次に説明するように、光線は2つの二次光線に分割され、時計回りの経路と反時計回りの経路とに沿って伝搬する。時計回りの経路は、プリズム51内のビームスプリッタ512からの反射、反射端面FEからの反射、領域518を通ってプリズム52への伝搬、反射端面BCからの反射、プリズム52内のビームスプリッタ512からの反射によって始まり、出射ファセット520の点Iに向かう。時計回りの経路は、二次光線がビームスプリッタ512によって2回反射されるので、本明細書では反射経路とも呼ばれる。反時計回りの経路は、プリズム51からプリズム52へのビームスプリッタ512を介した透過、反射端面BCからの反射、領域518を介したプリズム51への伝搬、反射端面FEからの反射、プリズム51からプリズム52へのビームスプリッタ512を介した出射端面520の点Jへの透過によって始まる。反時計回りの経路は、二次光線がビームスプリッタ512によって2回透過されるので、本明細書では透過経路とも呼ばれる。
【0147】
経路は、入射端面510への入射角θに依存し、出射端面520における出射点I、Jも同様である。本発明者らは、コンピュータシミュレーションにより、広範囲の条件に対して、両方の光線が互いに平行であるが、距離dX=J-Iが変化することに伴って端面520から出射することを見出した。発明者らは、dXはプリズムの形状(例えば、角度α1、α2、β1、β2の値)に依存するが、入射角θに依存しないことを見出した。
【0148】
プリズム52を出る2つの光線は、レンズ62によってイメージャ70上に集束される。それらは互いに平行であるので、それらはイメージャ70の同じ画素に到達して、干渉計内ではなくイメージャで干渉が生じる。
【0149】
図13を参照すると、光線の間の相対位相は、光線が点Hで分割された時点からイメージャ70上で干渉する時点までに蓄積された光路差(OPD)に依存する。OPDに対する2つの寄与がある。第1の寄与は、点Hから各光線が端面520上の点I及びJに到達するまでの累積長さの差であり、第2の寄与は、端面520と、2つの二次光線が光線の伝搬方向に垂直な同じ波面に到達する位置との間の累積長さの差である。第2の寄与は図13に示され、Inを通って出る光線上の出射点Jnの投影はKで示され、セグメントKn-InはOPD1として示される。基本的なレンズ光学システムによれば、イメージャへの経路の残りは同一である。発明者は、HからI及びJまでの累積長さが類似しているので、OPDへの主な寄与が短いセグメントOPD1であることをコンピュータシミュレーションによって見出した。したがって、OPDは、およそ
【数1】
となる。発明者は、広い範囲の条件の下で、出射光線の方向θexit,nが入射角θに等しいかまたはほぼ等しいこと、したがって
【数2】
であることを見出した。dXは通常θに依存しないため、光路差OPDと入射角の正弦との間には線形依存性があり、θの値が十分に小さい場合、光路差OPDと入射角との間には線形依存性がある。
【0150】
発明者は、プリズムが同じ材料で作られ、入射面のサイズが50mm程度である場合、OPDへの非線形寄与は可視光の波長よりもはるかに小さいため、干渉パターンに影響を与えないという、典型的な条件を見出した。したがって、関連する角度範囲内のほぼ均一な照射の条件下では、均一な間隔の干渉縞がイメージャ70の表面上に形成される。
【0151】
本実施形態のモノリシック構造は、米国特許第11,300,799B2号に記載のマイケルソン型干渉計に勝る多くの利点を享受する。第1の利点は、マイケルソン型干渉計の特許では、2つのプリズム間のシフトに対して高い感度が存在することである。このことは、十分な性能を得るには数マイクロメートルの製造精度を必要とするので、製造が困難になる。マイケルソン型干渉計のもう1つの問題は、シフトが2つのプリズム間のサイズ差に適合しなければならず、そのため、プリズム間のサイズ差の許容誤差も補償しなければならないことである。その結果、マイケルソン型干渉計の製造は、結果として生じる縞の検査下でのプリズムの組み立てを含まなければならず、数ミクロン以内の精度が要求される。本実施形態のモノリシック構造は、数十マイクロメートルのシフトを許容し、これは標準的な組立ジグを使用して達成することができる公差であり、検査下での組み立てを必要としない。
【0152】
さらに、799特許のマイケルソン型干渉計内の光路は、5つの反射面を含む複雑な光路である。本実施形態のモノリシック構造内の光路は、3つの反射面のみを含み、反射端面の角度公差の影響をあまり受けない。したがって、マイケルソン型干渉計は、反射回数が増えるにつれて収差が非常に増加しやすい。
【0153】
別の利点は、本実施形態のモノリシック構造において、入射光線と出射光線とが互いに対して概ね垂直であることである。これは、入射角と出射角との間に約45°の傾きがあり、全体の光学セットアップにおいてデバイスがコンパクトにならないマイケルソン型干渉計よりも有利である。
【0154】
本明細書で使用する場合、用語「約」は±10%を指す。
【0155】
「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの同根語は、「限定ではないが、~を含む(including but not limited to)」を意味する。
【0156】
「~からなる(consisting of)」という用語は、「を含み(備え)、~に限定される」ことを意味する。
【0157】
用語「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は、組成物、方法または構造体が、追加の成分、ステップ及び/または部品を含むことができることを意味するが、追加の成分、ステップ及び/または部品が、特許請求された組成物、方法または構造体の基本的かつ新規な特性を実質的に変えない場合に限る。
【0158】
本明細書で使用する場合、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、「ある、1つの(a)」、「ある、1つの(an)」及び「この、その(the)」という単数形には、複数の指示対象が含まれる。例えば、「化合物(a compound)」または「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」という用語は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0159】
本願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜上及び簡潔にするためのものであり、本発明の範囲に対して変更できない制限として解釈するべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、その範囲内の個々の数値だけでなく、全ての可能な部分的範囲を具体的に開示していると見なすべきである。例えば、1~6等の範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分的範囲、及びその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5、及び6を、具体的に開示していると見なすべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0160】
本明細書で数値範囲が示されるときはいつでも、それは、示された範囲内の任意の引用された数字(分数または整数)を含むことを意味する。第1の表示番号と第2の表示番号との「間の範囲(ranging/ranges between)」という句、及び第1の表示番号「から」第2の表示番号「まで(to)」の「範囲(ranging/ranges from)」という句は、本明細書では互換的に使用され、第1の表示番号及び第2の表示番号と、それらの間の分数及び整数の数字のすべてを含むことを意味する。
【0161】
明確にするために別個の実施形態の文脈において説明される本発明のある特徴を、単一の実施形態において組み合わせで設けることもできることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において説明される本発明の様々な特徴を、別々に、または任意の好適なサブコンビネーションで、または本発明の任意の他の説明された実施形態において好適なものとして設けることもできる。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは機能しない場合を除いて、それらの実施形態の本質的な特徴と見なすべきではない。
【0162】
上記で説明され、以下の特許請求の範囲で特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例で実験的裏付けを見出す。
【実施例
【0163】
ここで、以下の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明とともに、本発のいくつかの実施形態を非限定様式で例示する。
【0164】
実施例1
代表的なプロトコル
以下は、システム320を使用して実行し得る例示されたプロトコルである。
【0165】
(a)スライドを複数の免疫組織化学的染色剤で染色する。各染色剤は、特定のタンパク質に特異的な抗体、あるいは特定のDNAまたはRNA配列に結合する抗体、あるいは異なる生物学的組織切片に結合する抗体(例えば、FISH)抗体を含む。異なる抗体に接続された蛍光レポータは、例えばフローサイトメトリーで行われるように、スペクトルの分離を可能にするために、それらの異なるスペクトル特性の性質によって十分に分離可能であるべきであることに留意されたい。任意選択的に、同じスライド上でヘマトキシリン、エオシンなどの吸収染色剤でさらに染色する。
【0166】
(b)システム320を使用してサンプルを走査して、各光源に対するサンプルのスペクトル画像を得る。
【0167】
(c)画像の各点に対する一連のスペクトルを計算し、各スペクトルは、光源の1つ(または組み合わせ)を用いた照射に対応する。
【0168】
(d)オプションのローカルフィルタリング。固定ウィンドウでの平均化、平滑化関数による畳み込み、中央値または最近傍値などの局所フィルタリングを使用して、横方向(XY)及び/またはスペクトル次元のノイズを除去する。
【0169】
(e)対象物内の各点で測定したスペクトルのスペクトル分析により、使用した各バイオマーカーの密度を求める。この分析は、この分析では、スペクトル分離アルゴリズムを利用できるだけでなく、異なる励起光源や画像分析アルゴリズムを使用した異なる測定値間の相互参照も利用できる。
【0170】
このプロトコルの出力は、サンプルの全領域にわたる各バイオマーカーの密度マップを提供することができる。
【0171】
実施例2
代表的な較正プロトコル
以下は、システム320が分光計を含む実施形態において、システム320を使用して実行できる例示的なプロトコルである。
【0172】
(a)任意選択的に、較正サンプルを基板100上に置く。
【0173】
(b)上でさらに詳述したように、システム320を使用してサンプルを走査してスペクトル画像を取得する。
【0174】
(c)レビューのために関心のある箇所を(手動または自動で)特定する。
【0175】
(d)第1の関心点が視野内にあり、サンプル空間内の収集ピンホール45の像によって画定される収集領域の中心と互換性のある位置にあるように、ステージ110を移動する。
【0176】
(e)分光計90を使用してスペクトル(または異なる光源を使用して複数のスペクトル)を収集する。
【0177】
(f)ステージ110を次の関心点に移動させ、すべての関心点が測定されるまで(d)と(e)とを繰り返す。
【0178】
(g)走査モードを使用して得られたスペクトルと、(d)~(f)で分光計によって収集されたスペクトルとの間の類似性を比較し、スペクトル測定の精度を評価するために、差異と類似性の性能指数を提供する。
【0179】
(h)任意選択で、走査中にシステム320によって測定されたスペクトルを入力として受け取り、選択されたメリット関数に従って、分光計を使用して同じ場所で測定されたであろうスペクトルにより近い補正されたスペクトルを返す補正関数を構築する。
【0180】
(i)任意選択で、追加の分析の前に、走査中にシステム320によって測定されたすべてのデータに対して(h)で構築された補正関数を利用する。
【0181】
実施例3
代表的なサンプル分析プロトコル
図6は、本発明のいくつかの実施形態による例示的なサンプル分析プロトコルを示すフローチャートである。
【0182】
フローは、任意選択で好ましくは、上記でさらに詳述した染色及び走査から始まり、各光源のスペクトル画像をもたらす。データ収集は複数回の走査反復で実行できることに留意されたい。例えば、最初の反復ではいくつかのバイオマーカーを使用し、各バイオマーカーを異なる(蛍光)レポータで色分けし、その後、(蛍光)レポータの一部またはすべてを除去する洗浄操作を行うことができる。その後、例えば2回目の染色操作を使用するか、サンプルに既に結合している他の抗体に同じまたは異なるレポータを結合させることによって、新しいセットのバイオマーカーを活性化することができる。次いで、同じサンプル上に追加のバイオマーカーをマッピングするために、走査の第2の反復を実行できる。反復プロセスの別の例は、蛍光レポータを適用して測定する少なくとも1つの操作と、吸収染色(例えばヘマトキシリン&エオシン、H&E)をサンプルに適用して、明視野(BF)モードで測定する別の操作とを含む。蛍光バイオマーカーがサンプルに適用された後にBF測定が行われる場合、H&E染色の前にBF中のサンプルを測定すると、2つの測定モード間のクロストークを排除するために、染色後に画像から後で、背景画像を除去することができる場合がある。蛍光染色前にH&E染色サンプルを蛍光モードで測定すると、初期の染色(吸収染色など)から、または未染色組織内の蛍光分子によって引き起こされる自己蛍光から後の染色(例えば蛍光染色剤)へのクロストークを低減する参照画像が提供される可能性がある。
【0183】
データ収集に続いて、単一値分解(SVD)などのスペクトル分解法を使用して、スペクトル画像から、各バイオマーカーの密度マップを抽出して分析を続ける。あるいは、走査に続いて、サンプルの各点からのデータベクトルを直接分析することができる。この場合、データベクトルはスペクトル領域に変換されない。代わりに、このシステムには、サンプルに適用された異なる染色に対応する一連の予想データベクトル(例えば、インターフェログラム)が含まれており、各バイオマーカーの密度の抽出は、各点で測定された生データベクトルを、期待データベクトルの組み合わせとしてフィッティングすることによって、データベクトル空間内で行われる。任意の点における測定されたベクトルに対する期待される各生データベクトルの寄与を抽出することは、他の方法を使用して、例えば、これに限定されないがニューラルネットワークなどの機械学習の使用によって行うこともできる。
【0184】
次に、画像は、任意選択で好ましくは、古典的なセグメント化手法または機械学習を使用して、核、細胞質、膜などの個々の細胞または細胞部分にセグメント化される。次に、バイオマーカー値が、各セグメントにわたって平均化され、各細胞または細胞の一部のバイオマーカープロファイルを作成する。セグメント化プロセスからの追加の任意選択の出力は、各細胞の形態学的特徴のセットである。セグメント化ステージへの入力は、任意選択的に複数の密度マップを含み得るので、一部のバイオマーカーの密度マップでは形態が他のものよりも顕著である可能性があるため、この段階で抽出できる情報は多い。したがって、形態学的パラメータは、例えば、各バイオマーカーに対する不均一性、及び任意の密度マップで独立して観察されるようなテクスチャを特定する追加のパラメータを含み得る。
【0185】
明視野画像から分析されるバイオマーカーの1つは、任意選択で好ましくは、がん細胞と正常細胞との間の予備的分類を可能にするヘマトキシリンであり得る。労働集約的な手動のタグ付けを使用するのではなく、個々のがん細胞を自動的に識別する能力により、本実施形態のシステムは、効果的な教師なし機械学習を実行することが可能になり、分類のプロセス及び追加の分析タスクが、より迅速かつ効果的になる。
【0186】
類似したプロファイルを有する細胞のグループを特定するか、またはサンプル内のプロファイルをデータベース内の既知のプロファイルと比較することにより、強化されたバイオマーカープロファイル(任意選択で形態学的パラメータを含む)に基づいて、より高度な分類を行うことができる。類似のバイオマーカープロファイルを有するが、データベース内の既知の細胞クラスのいずれとも相関しない、特定された細胞グループは、ユーザに特定を促すことができ、それらの共通特性を後で参照できるようにデータベースに保存することができる。他の症例で見つかったバイオマーカープロファイルクラスと、それらの潜在的な識別情報のクラウドストレージとを利用して、患者のプライバシーを侵害することなく、医療現場間で知識を共有できるようにすることもできまる。細胞分類は、例えば、これら2つのバイオマーカーの密度から作成できる再構成されたH&E画像の上に重ね合わせて、ユーザに視覚的に表示できる。細胞クラスは、任意選択で好ましくは、細胞の領域の偽色を使用して表示され、細胞の各クラスに塗りつぶしの色と周囲(膜)の色との固有のセットを割り当てる。
【0187】
細胞クラスが識別されると、異なる細胞クラス間の相互作用を測定することができる。例えば、識別されたがん細胞の密度が、より高い、より大きな領域は、腫瘍組織として識別され得、一方他の大きな領域は正常組織として識別され得る。その後、腫瘍組織と正常組織との間で、さまざまな細胞タイプの相対密度を比較することができる。異なる種類の細胞間の平均距離またはそれらの低解像度密度マップのおける相関関係を測定することもでき、一緒に見つかる傾向にある細胞のタイプ(がん細胞や免疫系細胞など)を特定できる。
【0188】
サンプルの上記の特性を含むデータセットを作成し、腫瘍の特性と腫瘍内の異なる細胞型間の相互作用とを一般的に要約した腫瘍のフィンガープリントとして定義することができる。
【0189】
任意選択で、プロトコルは、腫瘍のフィンガープリントパラメータと、所定の治療に対するさまざまな患者の反応との間の相関関係を探索する。遡及的または前向き臨床研究により、腫瘍フィンガープリント特徴を特定することを可能にするデータを提供することができ、それに基づいて、特定の治療が成功する可能性を予測することができる。予測は、任意選択で好ましくは、限定されないが、機械学習などの人工知能手法に基づくことができる。
【0190】
実施例4
コンピュータシミュレーション
以下に、モノリシック干渉計について本発明のいくつかの実施形態に従って実行されるコンピュータシミュレーションの説明を示す。
【0191】
非同一プリズム
非同一プリズムの場合についてシミュレーションを行った。1組のシミュレーションでは、以下の角度を用いた。すなわち、β1=β2=112.5°、α1=45+dθ及びα2=45-dθ、または逆に、α1=45-dθ及びα2=45+dθ、である。
【0192】
図14A及び図14Bは、ビームスプリッタの角度が45.0333°である干渉計の構成において、モノリシックサニャック干渉計に対して実施された光線追跡シミュレーションの結果を示す。シミュレーションは、約10分角であるdθが約10μmの合計OPDを提供できることを示しており、これは約50mmの入射面に対して平面の半分で約20の干渉縞をサポートする。
【0193】
干渉計の主要パラメータに必要な許容誤差を設定するために、感度解析を行った。各許容係数が、シミュレーション範囲-0.05~+0.05ラジアン(約+/-3度)のどの入射角においても、OPDに0.5μm以上の影響を与えないことを要求する。
【0194】
いくつかの要因がランダムに追加されると仮定すると、製造された個々の干渉計に対する累積効果は、公称OPDが約10μmであるのに対し、約1μmになると予想される。
【0195】
以下の結果は、OPDに約0.5μmの変化を引き起こす公称値からの偏差に関するシミュレーションによって得た。
β1=15秒角(0.25秒角)
β2=15秒角(0.25秒角)
【0196】
同様に、15秒角のα1の許容値は、β1によって補償されず、上部反射鏡EFの表面が傾く原因になると仮定すると、同じ影響を引き起こすことが判明した。この場合、入射面への追加の影響は無視できる。
【0197】
シミュレーションでは、取り付け面に沿った1つのプリズムの相対的なずれによってOPDが変化することも確認され、20μmシフトするとOPDが0.5μm変化した。
【0198】
個々の干渉計の間の差異は、システム製造中に較正することができ、主にシステムのスペクトル較正に影響を与える。干渉計はモノリシックであるので、出荷後または温度変化後に再較正は必要とされない。
【0199】
ずれた関係にある同一プリズム
同一プリズムの場合についてシミュレーションを行った。1組のシミュレーションでは、以下のパラメータα1=α2=45°、及び400μmのずれdSを使用した(図15A及び図15B)。シミュレーションによると、400μmのオフセットにより、-/+0.05ラジアンの入射角に対して+/-10μmのOPDが生成される。
【0200】
この構成は、同一のプリズムの作製が容易であり、0.4mmのずれの制御が比較的容易であるため、製造精度の点で有利である。感度は上記でシミュレーションした通りのままであるので、ユニット間の一貫した結果を得るには、シフトは400+/-20μmである必要がある。さらに、シミュレーションは、すべてのプリズム角度に対する約15秒角の許容誤差が、約10%以内の同様のOPDを提示することを示している。さらに、単一ブロックの一部として両方のプリズムを製造することで生じる対称的許容差は、互いに打ち消し合い、OPDに影響を及ぼさないことが判明し、したがって製造性が向上する。
【0201】
このシミュレーションでは、OPDがずれdSに線形的に依存することも示している。一方、OPDは干渉計のスケールに依存しないため、2倍大きな干渉計でも、同じずれdSと同じ入力角とに対して、同じOPDを生成することができる。両方のプリズムで屈折率が同一である限り、屈折率はOPDに影響しない。約50mmの入射端面サイズでOPDを大きく変化させないプリズム間の屈折率の許容差は、約5*10-4であり、約1*10-3以下である。差が大きくなると、OPDが大幅に異なり、入力角度に対するOPDの非線形依存性が生じ、出力CW光線とCCW光線とが異なる角度で干渉計を出る可能性がある。この許容差は、干渉計のスケールに反比例するため、2倍大きい干渉計の場合、許容できる差は半分になる。2つのプリズムが光学グレード材料の同じブロックから製造される場合、この実施形態は容易に満たされる。
【0202】
ビームスプリッタの推奨サイズ
ビームスプリッタの最適なサイズは、干渉計への入力光線角度の範囲と入力光線位置の範囲との両方を含むシミュレーションを実行することによって決定した。入射ビーム幅が干渉計のサイズより大幅に小さく、角度範囲が小さいスパース構成の場合、ビームスプリッタのサイズは、広範囲の値から問題なく選択できる。よりコンパクトな構成では、ビームの断面及び/または角度広がりが入射端面のサイズに比べて小さくない場合、ビームスプリッタの長さは、入射端面の長さの約80%であることが好ましい。
【0203】
例えば、図16Aに示すように、入射面の高さの30%付近(AF=50mmの場合、AからAFに沿って15mm)で干渉計に入射し、AFの20%の幅(この構成では10mm)を有し、+/-0.05ラジアンの角度広がりを有するビームについて、高さの約56%に点Gを特定することができ、この点Gは、ビームスプリッタを通過することを意図したすべての光線がその点より下の面ADに当たり、ビームスプリッタを通過することを意図していないすべての光線がそれより上に行くように光線を分離する。したがって、ビームスプリッタの端部である点Gは、直角の頂点Aから56%*sqrt(2)*length(AF)の距離にあることができ。
【0204】
角度範囲を+/-0.075に増加させても(図16B)、または光源を30mm離して取り除いても(図16C)、点Gの最適な位置は大きく変化しない。
【0205】
マイケルソン型干渉計との比較
シミュレーションは、図18に光線追跡シミュレーションと共に示されるマイケルソン型モノリシック干渉計と、本実施形態のサニャックモノリシック干渉計(例えば、図17を参照)との間の比較研究として実施した。
【0206】
マイケルソン型モノリシック干渉計のシミュレーション結果を図19A及び図19Bに示す。ここで、図19Aは、公称ケースの入射角の関数としてOPDを示し、図19Bは、2つのプリズム間の位置(スライド)に10μmの誤差がある角度の関数としてのOPDを示す。図19AのOPD範囲は21.6726μmであり、図19BのOPD範囲は18.8257μmである。図19Bに示すように、OPD=0はもはや利用可能ではなく、これは欠点である。
【0207】
本実施形態のサニャックモノリシック干渉計のシミュレーション結果を、図19C及び図19Dに示す。ここで、図19Cは、公称ケース(ずれdSが400μm)の入射角の関数としてOPDを示し、図19Dは、ずれ(dS=420μm)における位置誤差が20μmであるOPDの角度関数を示す。図19CのOPD範囲は24.5928μmであり、図19BのOPD範囲は23.4217μmである。図示するように、製造上の不正確さの結果、範囲内の差異は5%以内であり、OPD=0が利用可能である。結果として生じる変化はOCD=0に対して対称的であるが、これは必須ではないことに留意されたい。OPD=0が中心からシフトする状況が、最大絶対OPDを拡張するため、場合によっては有益となる場合があるためである。そのような状況は、入力ビームに対して干渉計全体を回転させ、入力角度の範囲を非対称にすることによって実現できる。
【0208】
実施例5
モノリシックサニャック干渉計の解析的考察
図15A及び図15Bに示すように、2つのプリズム間に所与のスライディングシフトdSがあり、ビームスプリッタ面に沿ってOPDが干渉計を通る。
【0209】
スライドシフトdSにより、反射面はsだけ通常の動きをする。これはs=dS*sin(π/4-φ)=dS*sin(π/8)であることがわかる。ここで、φは反射面の角度で、通常は約π/8ラジアン、π/4ラジアンはビームスプリッタの角度である(すべての角度は正のx方向に対して測定される)。
【0210】
したがって、角度αで表面から反射する光線は、b=s*sin(2α)だけシフトされる。入射端面から角度θで入射した光線から分割された二次光線は、反射時計回りの経路を伝搬する場合は角度φ+θで、透過反時計回りの経路を伝搬する場合は角度φ-θで、プリズムの内部反射面で反射する。ミラーのシフトの効果は、2つの経路に逆効果を生じさせる。
【0211】
したがって、出射面におけるビーム位置の総差Δbは、以下の和になる。
【0212】
Δb=s*sin(2(φ+θ))+s*sin(2(φ-θ))
これはリーディングオーダーに近似できる。
【数3】
したがって、リーディングオーダーでは、Δbは入射角θに依存しない。通常、角度は約0.05以下と非常に小さいため、次の次数の補正は無視できる。
【0213】
2つの二次光線間のOPDは、OPD=Δb*sin(θ)である。上の式をsとΔbに代入すると、次のようになる。
【0214】
OPD=2*dS*sin(π/8)*sin(π/4)*sin(θ)
したがって、θの値が小さい場合、OPDはθ及びdSに対して線形になる。
【0215】
典型的な値、例えばdS=400μm及びθ=0.05ラジアンの場合、OPD=10.8μmが得られ、これは例4のシミュレーションと互換性がある。
【0216】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明したが、多くの代替案、修正及び変形が当業者には明らかであろうことは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲に含まれるそのような全ての代替案、修正及び変形を包含することが意図されている。
【0217】
本明細書に記述されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、参照により本明細書に組み込まれることが示されているときに、これが明確かつ個別に注記されているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれることが出願人(出願人ら)の意図である。さらに、本願におけるいずれかの参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈するべきではない。セクションの見出しが使用されている場合、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。さらに、本願のいずれかの優先権書類(複数可)は、本明細書により、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0218】
参考文献
[1]Keren et al.,2018,Cell 174,1373-1387.
[2]Michaela Aichler and Axel Walch,Laboratory Investigation(2015)95,422-431
[3]Y.Garini and E.Tauber,Spectral Imaging:Methods,Design,and Applications in Biomedical Optical Imaging Technologies:Design and Applications,R.Liang編(Springer,Heidelberg,2013)
[4]米国特許第5,539,517号
[5]Shmilovich et.al,Scientific Reports,(2020)10:3455
[6]WO2021/014455 A1
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【国際調査報告】