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特表2024-534715印刷物、その製造方法、及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-24
(54)【発明の名称】印刷物、その製造方法、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240913BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20240913BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H05K1/02 P
H05K9/00 R
B32B15/08 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508639
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2022025400
(87)【国際公開番号】W WO2023030688
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202111029060.2
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523396772
【氏名又は名称】ヘレウス エレクトロニクス ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】アン,ショウミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ロン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,エルウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ファンジョン
【テーマコード(参考)】
4F100
5E321
5E338
【Fターム(参考)】
4F100AB00A
4F100AB17C
4F100AB17D
4F100AB21C
4F100AB21D
4F100AB25C
4F100AB25D
4F100AD00A
4F100AG00A
4F100AK53A
4F100AR00E
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA44D
4F100DD05A
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4F100DE01D
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4F100EJ65D
4F100GB43
4F100JA11D
4F100JD08
4F100JG01C
4F100JG01D
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4F100JG05D
4F100JJ06E
4F100JM02D
5E321AA17
5E321AA21
5E321BB60
5E321GG05
5E321GG07
5E321GH03
5E338AA16
5E338AA18
5E338CC05
5E338EE13
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、印刷物に関し、印刷物は、a.基板と、b.基板上に配置されたプライマー層であって、有機誘電体材料を含むプライマー層と、c.プライマー層上に配置された金属導電層と、を備え、印刷物は、プライマー層と金属導電層との間にハイブリッド層を更に備え、ハイブリッド層は、プライマー層及び金属導電層からの材料を含む。また、本発明は更に、印刷物の製造方法及び印刷物を含む電子デバイスに関する。本発明の印刷物における金属導電層は、厚さの均一性に優れ、プライマー層と導電層との間の良好な接着を有し、本発明の印刷物は、優れたEMI遮蔽効果を有するので、印刷物は、5G用途などの高周波用途に使用することができる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物であって、
a.基板と、
b.前記基板上に配置されたプライマー層であって、有機誘電体材料を含むプライマー層と、
c.前記プライマー層上に配置された金属導電層と、を備え、
前記印刷物が、前記プライマー層と前記金属導電層との間にハイブリッド層を更に備え、前記ハイブリッド層が、前記プライマー層及び前記金属導電層からの材料を含む、印刷物。
【請求項2】
前記金属導電層からの前記材料が、前記ハイブリッド層において勾配分布を有する、請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記勾配が、含有量勾配、粒度勾配及び結晶サイズ勾配からなる群より選択される1つ以上である、請求項2に記載の印刷物。
【請求項4】
前記ハイブリッド層の厚さが、200~2000nm、好ましくは250~1500nm、より好ましくは300~1000nmである、請求項1から3のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項5】
前記金属導電層が、Ag、Cu、Pt、Au、及びSnから選択される金属、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項6】
金属導電層前駆体が、MODインクの形態で提供され、又は、金属粒子含有インク及び前記MODインクの両方の形態で提供され、ただし、前記プライマー層に直接隣接する前記金属導電層前駆体の部分が、前記MODインクの前記形態で提供される、請求項1から5のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項7】
前記金属導電層前駆体が、前記金属粒子含有インク及び前記MODインクの両方の形態で提供される場合、前記金属粒子含有インク中の金属が、前記MODインク中の金属と同じであるか又は異なり、前記金属粒子含有インク中の前記金属が前記MODインク中の前記金属と異なる場合、前記金属粒子含有インク中の前記金属と前記MODインク中の前記金属が、銀及びスズなどの合金を形成することができる、請求項5に記載の印刷物。
【請求項8】
前記基板が表面を有し、前記表面が、ポリマー、金属、セラミック、及びガラス、又はこれらの混合物(例えば、エポキシ成形化合物)から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項9】
前記基板が前記表面に溝を有し、前記溝が前記プライマー層で部分的に又は完全に充填されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項10】
前記印刷物が発熱デバイスを含み、前記発熱デバイス上の前記プライマー層の厚さが、他の領域の少なくとも一部の上の前記プライマー層の厚さよりも薄い、請求項1から9のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項11】
前記基板の前記表面の全表面又は選択された領域が前記プライマー層で覆われており、前記覆われた領域が、前記プライマー層、前記ハイブリッド層、及び前記金属導電層を備え、前記選択された領域が、複数のデバイスを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項12】
前記基板が、金属化を必要とする任意の要素、又はEMI遮蔽を必要とする要素である、請求項1から11のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項13】
前記基板の前記表面のうねり又は粗さが、前記プライマー層の表面のうねり又は粗さよりも大きい、請求項1から12のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項14】
FPCBなどのPCBAである、請求項1から13のいずれか一項に記載の印刷物。
【請求項15】
印刷物の製造方法であって、
1)基板を提供することと、
2)前記基板上にプライマー層前駆体を塗布することと、
3)第1のサイクルにおいて、前記プライマー層前駆体が完全に硬化していない間に、前記プライマー層前駆体上にMODインク副層を塗布することと、
4)ステップ2)及び3)から得られた層を共硬化させることと、
5)任意選択的に、1つ以上の後続のサイクルにおいて、1つ以上の他のインク副層を塗布して硬化させることと、
6)得られた生成物をアニーリングすることと、を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の印刷物の製造方法。
【請求項16】
前記印刷物が発熱デバイスを含み、前記発熱デバイス上の前記プライマー層の厚さが、他の領域の少なくとも一部の上の前記プライマー層の厚さよりも薄い、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記プライマー層前駆体、前記MODインク副層、及び前記他のインク副層が、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ディスペンシング、スロットコーティング、又は印刷によって、好ましくはスクリーン印刷又はインクジェット印刷によって、より好ましくはインクジェット印刷によって塗布される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記プライマー層前駆体及び/又は前記MODインク副層及び/又は前記他のインク副層が、コンフォーマル又はパターン化された方法で塗布される、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記他のインク副層が、MODインク副層又は金属粒子含有インク副層である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金属粒子含有インク中の金属が、前記MODインク中の金属と同じであるか又は異なり、前記金属粒子含有インク中の前記金属が前記MODインク中の前記金属と異なる場合、前記金属粒子含有インク中の前記金属及び前記MODインク中の前記金属が、銀及びスズなどの合金を形成することができる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
方法であって、前記基板が、表面に溝を有する基板であり、前記方法が、
1)前記表面に溝を有する基板を提供するステップと、
2)前記溝にプライマー層前駆体を塗布して、前記溝を部分的に又は完全に充填するステップと、任意選択で、前記プライマー層前駆体を前記基板の前記表面の他の部分に塗布するステップと、
3)第1のサイクルにおいて、前記プライマー層前駆体が完全に硬化していない間に、前記プライマー層前駆体上にMODインク副層を塗布するステップと、
4)ステップ2)及び3)から得られた層を共硬化させるステップと、
5)任意選択的に、1つ以上の後続のサイクルにおいて、1つ以上の他のインク副層を塗布して硬化させるステップと、
6)得られた生成物をアニーリングするステップと、を含む、請求項15から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から13のいずれか一項に記載の印刷物を備える、電子デバイス。
【請求項23】
PCBA(例えば、FPCB)、EMI遮蔽要素、アンテナ、静電容量式タッチセンサ、導線、5G装置などの高周波装置、セラミックフィルタ要素、又はドローンである、請求項22に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物に関する。また、本発明は更に、印刷物の製造方法及び印刷物を含む電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁干渉(EMI)は、電子デバイス内に電流パルスを発生させ、それによって電子デバイスの通常動作に影響を及ぼす可能性がある。したがって、EMI遮蔽がしばしば必要とされる。電子製品の小型化及び高速コンピューティング電子部品に対する需要の増加に伴い、EMIに対する保護もますます重要になっている。加えて、電子デバイスの熱伝導率も重要である。
【0003】
消費者向け電子デバイス用のプリント回路基板アセンブリ(PCBA)及びフレキシブルプリント回路基板(FPCB)のEMI遮蔽及び熱伝導のための従来の方法は、内部に熱伝導性界面材料(TIM)を有する遮蔽缶である。その主な欠点は、5G周波数範囲におけるEMI遮蔽性能が低いこと、熱伝導率が低いこと、折り畳み可能なデバイス用のFPCBの場合、曲げ性能とEMI性能との間の良好なバランスを達成することは不可能であり、小型デバイスの場合、遮蔽缶の空間/厚さは過度に大きいことである。更に、裏面とEMI遮蔽のための金属層との間の接着が不十分である。
【0004】
電磁適合性部品(EMC)上の銀膜を例として使用すると、接着は、主に機械的接触又は電気的吸収によって決定され、したがって、EMCの熱膨張係数(CTE)、EMCの硬度、EMCの粗さ、及び銀堆積プロセスは、全て重要な要因である。従来技術では、まず表面処理が行われ、適切な粗さを得るためにEMC表面が研磨され、次いで導電性インクでコーティングされる。その欠点は、機械的接触又は電気的吸収によって引き起こされる接着が、上述したような多くの要因に依存し、信頼性試験において低い信頼性をもたらすこと、様々な電子部品にはほとんど適さないこと、いくつかの方法は、様々な電子部品において広く使用することができるが、表面トポグラフィの変更(すなわち、研磨)を必要とし、これはユーザによって許容されず、大規模工業生産には適さないこと、接着剤を含有する導電性インクは、硬化又は焼結された後、導電性が低いことである。
【0005】
例えば、米国特許出願公開第2013/0286609号明細書は、コンフォーマル電磁干渉遮蔽を形成するための方法を開示しており、この方法は、絶縁層を接着するためにプリント回路基板の一部を処理することと、処理された部分上に絶縁層を塗布することと、塗布された絶縁層及び導電層と接着するための周辺部のうちの少なくとも1つを処理することと、処理された絶縁層及び周辺部のうちの少なくとも1つの上に導電層を配置することであって、導電層は、インクジェット印刷又は物理蒸着(PVD)によって形成される、導電層を配置することと、を含む。
【0006】
韓国特許第101823134号明細書は、遮蔽カバーを形成するためのインク、このインクを使用する3D印刷法による遮蔽カバーの製造方法、及びこの方法によって製造される遮蔽カバーを開示しており、このインクは、10~30重量部のエポキシアクリレート、10~30重量部の塩素化ポリエステルアクリレート、30~50重量部の銀メッキ銅粒子、及び25~30重量部の銀メッキガラス粒子を含む。
【0007】
中国特許出願公開第101036424号明細書は、液体電子写真印刷を使用したプリント回路基板の製造方法を開示しており、この方法は、媒体上に導電性インクトレースの第1の層を印刷することと、少なくとも1つの印刷トレース上に誘電体インクの少なくとも1つの領域を印刷することと、基板上の第1の層上に導電性トレースの第2の層を印刷することであって、誘電体インクが、第2の層の少なくとも一部を第1の層から絶縁する、第2の層を印刷することと、を含む。この方法は、基板上に導電性トレースを形成するために使用され、電磁干渉遮蔽層を含まず、更に、使用されるインクは、銅、金、銀、及び白金から選択される金属ナノ粒子を含む。
【0008】
米国特許第8283577(B2)号は印刷物を開示し、印刷物は、基板と、基板上に配置されたプライマー層と、プライマー層上に所定のパターンで形成された機能性インク層と、を含み、機能性インク層が所定のパターンで形成されているパターン形成部におけるプライマー層の厚さは、機能性インク層が所定のパターンで形成されていない非パターン形成部におけるプライマー層の厚さよりも厚い。しかしながら、この特許は、グラビア印刷方法のみに関する。本発明によれば、基板上に形成されたプライマー層において、機能性インク層が所定のパターンで形成されているパターン形成部におけるプライマー層の厚さが、機能性インク層が所定のパターンで形成されていない非パターン形成部におけるプライマー層の厚さよりも厚い。このため、例えば、本発明の印刷物をグラビア印刷方法を使用して製造する場合、プライマー層は、窪みを充填するように提供される。このような構造のプライマー層は、印刷物の製造プロセスにおいて、スクレープコーティング後の機能性インクの上部に、スクレープブレード又はワイピングローラを使用してグラビア部分に窪みを充填することにより形成される。その結果、プライマー層と機能性インクとが空隙なく接着した印刷物が形成され、機能性インクの転写不足による断線、形状不良、及び低接着性などの問題が生じない。この特許は、転写プロセス中に、プライマーの上方への移動により、プライマー層と機能性インク層との間に混合ゾーンが形成され、それによってそれらの間の接着が改善されると述べている。しかしながら、この特許において、機能性インク層により形成された導電層と基板との接着性に改善の余地がある。また、この特許ではグラビア印刷が用いられており、グラビア印刷に必要な凸部(すなわち、機能性インク層が所定のパターンで形成されているパターン形成部のプライマー層の厚さが、機能性インク層が所定のパターンで形成されていない非パターン形成部のプライマー層の厚さよりも厚い)を形成するためには、使用される印刷インクが高固形分かつ高粘度であることが求められる。これは、高い平坦性、高い厚さ均一性、及び高い導電性を必要とする用途には適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服する印刷物を提供することであり、印刷物は、
a.基板と、
b.基板上に配置されたプライマー層であって、有機誘電体材料を含むプライマー層と、
c.プライマー層上に配置された金属導電層と、を備え、
印刷物は、プライマー層と金属導電層との間にハイブリッド層を更に備え、ハイブリッド層は、プライマー層及び金属導電層からの材料を含む。
【0010】
本発明の別の目的は、上記印刷物の製造方法を提供することであり、方法は、
1)基板を提供することと、
2)基板上にプライマー層前駆体を塗布することと、
3)第1のサイクルにおいて、プライマー層前駆体が完全に硬化していない間に、プライマー層前駆体上にMODインク副層を塗布することと、
4)ステップ2)及び3)から得られた層を共硬化させることと、
5)任意選択的に、1つ以上の後続のサイクルにおいて、1つ以上の他のインク副層を塗布し、インク副層を硬化させることと、
6)得られた生成物をアニーリングすることと、を含む。
【0011】
本発明の更に別の目的は、上記印刷物を含む電子デバイスを提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
印刷物
本発明の一態様において、本発明は、印刷物を提供し、印刷物は、
a.基板と、
b.基板上に配置されたプライマー層であって、有機誘電体材料を含むプライマー層と、
c.プライマー層上に配置された金属導電層と、を備え、
印刷物は、プライマー層と金属導電層との間にハイブリッド層を更に備え、ハイブリッド層は、プライマー層及び金属導電層からの材料を含む。
【0013】
基板
本発明の基板は、金属化を必要とする任意の基板、特に、セラミックフィルタ要素などの高い表面導電性を必要とする要素、及びPCB(例えば、FPCB)、EMI遮蔽要素、アンテナ、容量式タッチセンサ、導電線、チップなどを含むがこれらに限定されないEMI遮蔽を必要とする他の要素であり得る。
【0014】
特に、本発明において使用可能な基板は表面を有し、その表面は、ポリマー、金属、セラミック、ガラス、及びそれらの混合物(例えば、樹脂成形化合物、特にエポキシ成形化合物、特にガラス繊維充填エポキシ樹脂)から選択される少なくとも1つの材料を含む。特に、基板は表面に溝を有する。
【0015】
プライマー層
本発明の印刷物は、基板上に配置されたプライマー層を含み、プライマー層は有機誘電体材料を含む。特に、有機誘電体材料はポリマー樹脂であってもよい。
【0016】
プライマー層を形成するためのプライマー層前駆体は、電子素子の表面上に良好な接着をもたらすことができる任意のコーティング組成物であってもよく、
炭素系コーティング組成物、
ケイ素系コーティング組成物、
炭素-ケイ素混合コーティング組成物などでもよいが、これらに限定されない。
【0017】
使用可能な炭素系コーティング組成物は、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などを含んでもよい。使用可能なシリコーン系コーティング組成物は、膜形成成分としてポリシロキサン樹脂を含んでもよい。使用可能な炭素-ケイ素混合コーティング組成物は、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、及びポリエステル樹脂から選択される炭素系膜形成成分、並びにポリシロキサン膜形成成分を含み得る。
【0018】
使用されるコーティング組成物は、光重合開始剤を含んでいてもよく、例えば、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系などの化合物を使用することができる。
【0019】
使用されるコーティング組成物は、適切な添加剤を更に含んでもよい。添加剤としては、熱安定剤、ラジカル捕捉剤、可塑剤、界面活性剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤などを使用してもよい。
【0020】
コーティング組成物は、適切な方法を使用することによって、例えば、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ディスペンシング、スロットコーティング、又は印刷によって、好ましくはスクリーン印刷又はインクジェット印刷によって、より好ましくはインクジェット印刷によって、基板に塗布され得る。
【0021】
コーティング組成物は、複数回のパス、例えば、1~20回のパスで塗布されてもよい。プライマー層の厚さは特に限定されず、ミリメートルスケールまでであってもよい。プライマー層の厚さは、基板表面の粗さに応じて調整され得る。一般的に言えば、表面が粗いほど、より厚いプライマー層が必要とされる。プライマー層の厚さは、通常50~5000nm、好ましくは500~1000nmであってもよい。
【0022】
印刷物は、チップ、パワーデバイスなどの発熱デバイスを含んでもよく、発熱デバイス上のプライマー層の厚さは、少なくとも一部の他の領域上のプライマー層の厚さよりも薄く、好ましくは、発熱デバイス上のプライマー層の厚さは、全ての他の領域上のプライマー層の厚さよりも薄い。特に、加熱デバイス上のプライマー層の厚さは、50~5000nm、好ましくは100~500nmであってもよい。他の領域は、受動デバイスを含む領域であってもよい。
【0023】
一実施形態では、プライマー層前駆体は、基板(例えば、PCB)の表面の法線に対して特定の角度(例えば、1~90°、好ましくは10~70°、より好ましくは20~50°、特に45°)で1つ以上のインクジェット印刷装置を使用して同時に印刷されてもよく、その結果、プライマー層前駆体は、基板の表面上の溝を少なくとも部分的に充填することができ、それによって基板表面のうねり又は粗さを低減し、それによって基板の表面を平坦化し、それによってPCBA用途における部品間のアスペクト比を低減し、影領域を低減し、後続の導電層の被覆率を増加させ、更に粗さを有する表面を平坦化し、それによってより良好な厚さ及び遮蔽均一性を達成することができる。
【0024】
コーティング組成物は、コンフォーマル又はパターン化された方法で塗布されてもよい。コーティング組成物がパターン化された形態で塗布される場合、コーティング組成物は基板の選択された領域上に塗布されるが、他の領域はコーティング組成物が塗布されないままである。
【0025】
金属導電層
本発明の金属導電層は、金属を含んでもよく、又は金属からなってもよい。導電層は、優れた導電性及び熱伝導率を有し、EMI遮蔽及び放熱の効果を達成する。
【0026】
金属導電層は、Ag、Cu、Pt、Au、及びSnから選択される金属、又はそれらの組み合わせを含む。金属導電層の厚さは、0.5~1μm、好ましくは0.6~0.8μmであってもよい。基板の表面のうねり又は粗さは、金属導電層の表面のうねり又は粗さよりも大きい。
【0027】
金属導電層前駆体は、MOD(金属-有機堆積)インクの形態で提供されてもよく、又は、金属粒子含有インク及びMODインクの形態で提供されてもよく、ただし、プライマー層に直接隣接する金属導電層前駆体の一部がMODインクの形態で提供される。
【0028】
金属粒子含有インクは、導電性金属粒子、特に金属ナノ粒子を含み得る。金属ナノ粒子は、粒子の最大サイズが約1~約100nm、好ましくは10~80nmであるという条件で、様々な形状及びサイズを有し得る。金属ナノ粒子は、インクを形成するために適切なポリマー及び溶媒に組み込まれてもよい。ポリマーは、アクリルポリマー、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、並びに天然ゴム及び樹脂など、インクを製造するのに適したいくつかの材料のいずれかであってもよい。溶媒は、水、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、アジピン酸ジエチル、エチレングリコールブチルエーテルアセテートなどから選択されるいずれか1つ以上であってもよい。インクは、分散剤、レベリング剤、消泡剤などの他の添加剤を更に含んでもよい。インク中のナノ金属粒子の量は、一般に約1重量%~約50重量%、より好ましくは約5重量%~約20重量%である。金属粒子含有インクは、複数回のパス、例えば、1~20回のパスで塗布されてもよい。
【0029】
MODインクは、従来技術において知られている。
【0030】
MODインクの1つの利点は、他のインク(例えば、ナノ粒子インク)と比較して、より均一で、より平坦で、より高密度の膜を形成することができることである。ナノ金属粒子含有インクから得られる層は、一般に非常に疎であり、すなわち高い多孔性を有するが、MODインクを使用することによって得られる層は、はるかに低い多孔性を有する。ナノ粒子インクとは異なり、MODインクは、混合物(懸濁液)ではなく溶液であり、経時的に沈降せず、塗布中に生じる問題が少ない(例えば、ノズルを詰まらせる可能性が低い)。MODインクの粘度は、噴射特性を調整し、アニーリング温度を調整するために容易に調整することができる。加えて、MODインクは環境に優しく、ナノ粒子を含まず、より容易に入手可能であり、最終的にナノ粒子インクよりも安価であり得る。
【0031】
本発明で使用されるMODインクは、次の成分、a)少なくとも1つの金属前駆体と、b)溶媒と、を含む。
【0032】
MODインク中の金属は、Ag、Cu、Pt、Au、及び/又はSnを含むが、これらに限定されない。
【0033】
金属前駆体は、80~500℃、例えば80~500℃、又は150~500℃、又は180~350℃、又は150~300℃、又は180~270℃などの分解温度を有する。
【0034】
金属前駆体は、以下の成分を含み、好ましくは、
a)少なくとも1つの金属カチオン、
b)カルボキシレートラジカル、カルバメートラジカル、ニトレートラジカル、ハロゲン化物イオン、及びオキシムから選択される少なくとも1つのアニオンからなる。
【0035】
2つ以上の金属前駆体の組み合わせを使用してもよい。2つ以上の金属前駆体は、同じ金属カチオンを有するが、同じ若しくは異なる種類のアニオンを有し、又は、異なる金属カチオンを有するが、同じ種類のアニオンを有する。この組み合わせとしては、例えば、カルボン酸銀とカルボン酸スズとの組み合わせ、2つの異なるカルボン酸銀の組み合わせ、及びカルボン酸銀とカルバミン酸銀との組み合わせなどが挙げられる。
【0036】
カルボン酸塩は、1つ以上の金属カチオン及び1つ以上のカルボキシレートアニオンからなる塩である。カルボキシレートアニオンのカルボン酸部分は、直鎖状でも分岐状でもよく、又は環状構造単位を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。更に好ましい種類のカルボン酸塩は、モノカルボン酸塩及びジカルボン酸塩、又は環状カルボン酸塩である。一実施形態では、1~20個の炭素原子を有するカルボン酸塩などの直鎖飽和カルボン酸塩が好ましい。このような直鎖カルボン酸塩は、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、カプリル酸塩、ノナン酸塩、デカン酸塩、ウンデカン酸塩、ドデカン酸塩、ミリスチン酸塩、ヘキサデカン酸塩、又はオクタデカン酸塩から選択され得る。別の実施形態では、1~20個の炭素原子を有する飽和イソカルボキシレート及び飽和ネオカルボキシレートが使用されてもよい。一実施形態では、5つ以上の炭素原子を有する飽和ネオカルボキシレート、例えば、ネオペンタノエート塩、ネオヘキサノエート塩、ネオヘプタノエート塩、ネオオクトエート塩、ネオノナノエート塩、ネオデカノエート塩、及びネオドデカノエート塩が好ましい。
【0037】
ハロゲン化物イオンは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオンから選択される。
【0038】
MODインク中の金属含有量は、典型的には熱重量分析(TGA)アッセイによって測定されるMODインクの総重量に基づいて、金属に従って計算して約1重量%~約60重量%、例えば、約1重量%~約50重量%、又は約10重量%~約40重量%である。
【0039】
MODインク組成物は、溶媒を更に含む。MODインクは、いずれの場合もMODインクの総重量に基づいて、約0.1重量%~約90重量%、好ましくは約20重量%~約90重量%の溶媒を含む。
【0040】
溶媒として、ジオールエーテル、テルペン、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、アルデヒド、又はこれらの組み合わせから選択される溶媒を使用してもよい。
【0041】
ジオールエーテルは、少なくとも1つのジオール単位を有する有機物質である。ジオールエーテルとしては、エチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエーテル、トリエチレングリコールエーテル、テトラエチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテルなどを挙げてもよい。市販されている例は、DOWANOL PNP(プロピレングリコールn-プロピルエーテル)及びDOWANOL PNB(プロピレングリコールn-ブチルエーテル)、DOWANOL DPNB(ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル)及びDOWANOL DPNP(ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル)である。
【0042】
テルペンは、天然に存在する不飽和炭化水素であり、これは天然物質から分離することができ、その構造は1つ以上のイソプレン単位まで追跡することができる。いくつかのテルペンはまた、工業的に及び人工的に入手可能である。テルペンは、好ましくは非環状テルペン又は環状テルペンである。環状テルペンの中でも、単環状テルペンが好ましい。好ましくは、テルペンは、オレンジテルペン、リモネン、及びピネン、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0043】
脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、及びアルデヒドなどの他の好適な溶媒は、当該技術分野において周知である。
【0044】
MODインク組成物は、任意選択で、接着促進剤、粘度助剤、及び他の添加剤などの1つ以上の他の成分を含んでもよい。
【0045】
一実施形態において、MODインクは接着促進剤を含んでもよく、好ましくは、接着促進剤は、MODインクの総重量に基づいて、約0.1重量%~約5重量%の範囲の量で存在してもよい。
【0046】
一実施形態では、MODインクは、インクの総重量に基づいて、約5重量%~約30重量%、より好ましくは約10重量%~約20重量%の重量割合で1つ以上の粘度助剤を含んでもよい。
【0047】
ロジン樹脂又はその誘導体は、バルサム樹脂、シアン酸エステルなどのようなインク用の適切な粘度助剤である。
【0048】
一実施形態では、MODインクは、いずれの場合もインク組成物の総重量に基づいて、約0.05重量%~約3重量%、より好ましくは約0.05重量%~約1重量%の割合で他の添加剤を含んでもよい。インク添加剤として適切である当業者に公知の全ての化学物質は、分散剤、レベリング剤、消泡剤などの他の添加剤として使用され得る。ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン含有添加剤が特に好ましい。
【0049】
一実施形態において、MODインク中の金属粒子の含有量は、MODインクの総重量に基づいて、1重量%未満、又は0.5重量%未満、又は0.2重量%未満である。最も好ましくは、本発明の組成物は実質的に金属粒子を含まない。
【0050】
MODインクは、20℃の温度及び1013hPaの周囲圧力で測定して、約0.1~約100mPa・s、例えば約5~約30mPa・sの粘度を有するインクなど、塗布に好適な粘度を有してもよい。
【0051】
MODインク中の成分は、当業者に公知であり、適切であると考えられるあらゆる方法で混合され得る。混合は、混合プロセスを容易にするためにわずかに高い温度で行われ得る。典型的には、混合中の温度は40℃を超えない。インクは、室温又は冷蔵庫で保存し得る。
【0052】
金属粒子含有インク及びMODインクは、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ディスペンシング、スロットコーティング、又は印刷によって、好ましくはスクリーン印刷又はインクジェット印刷によって、より好ましくはインクジェット印刷によって、プライマー層前駆体上に塗布され得る。MODインクは、複数回のパス、例えば1~20回のパスで塗布してもよい。
【0053】
本発明の金属導電層は、コンフォーマル又はパターン化された方法で塗布されてもよい。
【0054】
導電層前駆体が、金属粒子含有インク及びMODインクの両方の形態で提供される場合、金属粒子含有インク中の金属は、MODインク中の金属と同じであっても異なっていてもよい。金属粒子含有インク中の金属がMODインク中の金属と異なる場合、好ましくは、金属粒子含有インク中の金属及びMODインク中の金属は、銀及びスズなどの合金を形成することができる。
【0055】
ハイブリッド層
金属導電層前駆体は、MODインクの形態で提供されてもよく、又は金属粒子含有インク及びMODインクの両方の形態で提供されてもよい。金属導電層前駆体が金属粒子含有インク及びMODインクの両方の形態で提供される場合、プライマー層に直接隣接する金属導電層前駆体の部分は、MODインクの形態で提供される。本発明の印刷物の形成中、プライマー層前駆体が最初に基板上に塗布され、プライマー層前駆体が完全に硬化していない間にMODインクが塗布され(「ウェット・オン・ウェット」)、次いで、同じ硬化プロセスにおいてプライマー層前駆体と共に硬化される。このようにして、金属導電層とプライマー層との間にハイブリッド層が形成され、ハイブリッド層は、プライマー層及び金属導電層からの材料を含む。このようなハイブリッド層が形成されるメカニズムは、未硬化のMODインクと不完全硬化層前駆体との界面近傍における相互浸透/侵入によるものと本発明者らは考えている。ハイブリッド層の形成メカニズムに関する上記の決定の目的は、読者が本発明のハイブリッド層の構造を理解するのを助けることであり、本出願の保護の範囲に対する限定として解釈されるべきではないことは注目に値する。
【0056】
ハイブリッド層の厚さは、200~2000nm、好ましくは250~1500nm、より好ましくは300~1000nmであってもよい。ハイブリッド層において、金属導電層からの材料は、ハイブリッド層において勾配分布を有する。この文脈において、「勾配分布」とは、ハイブリッド層中の金属導電層からの材料の分布に勾配があることを意味する。例えば、「勾配分布」は、金属含有量に、又は結晶粒度及び寸法に関するものであり得る。例えば、プライマー層から導電層への方向において、金属導電層からの材料、特に金属の含有量が徐々に増加し、及び/又は金属導電層からの材料、特に金属の粒度が徐々に増加し、金属導電層において完全な層が形成されるまで徐々に融合し、及び/又は金属粒子サイズが徐々に増加する。
【0057】
ハイブリッド層の存在は、金属導電層とプライマー層とのインターロック接続を確実にし、したがって、ハイブリッド層の存在は、金属層単独と比較して、接着/剥離耐性を著しく改善する。したがって、このようにして金属化層が製造されるとき、インク接着性に対する要件は比較的低く、これは、金属化層プロセスを設計するときに人々の設計空間を拡大する。言い換えれば、同じ金属化層に対して、この技術的解決策は、新しいインクを開発する時間及び資本コストを低減することができる。
【0058】
完全に硬化していないプライマー層前駆体に「ウェット・オン・ウェット」方式で金属ナノ粒子含有インクを塗布する従来技術の方法と比較して、本発明の「ウェット・オン・ウェット」方式で完全に硬化していないプライマー層前駆体にMODインクを塗布する方法は、以下の予想外の有利な技術的効果を有する。
【0059】
(1)MODインクが液状であり、流動性が良好であるため、MOD化合物がプライマー層前駆体に深く侵入し、より厚いハイブリッド層が形成され、接着性が向上できる。これに対して、従来技術の金属ナノ粒子含有インクを使用した場合には、インクの粘度が高く、ナノ粒子の流動性が悪いため、プライマー層前駆体への金属ナノ粒子の移行は実質的に起こり得ないが、主にプライマー層中の樹脂成分と金属ナノ粒子含有インク中の樹脂成分とが混合するため、形成されるハイブリッド層の厚さが非常に薄く、接着性の向上効果は非常に限られている。
【0060】
(2)従来技術の金属ナノ粒子含有インクを使用する場合、その後の操作において高温焼結が必要であり、通常、非常に時間がかかり、高コストにつながる。一方、MODインクが使用される場合、高温焼結は必要とされず、これは時間及び資本コストを節約する。
【0061】
(3)従来技術の金属ナノ粒子含有インクを使用する場合、高温焼結後の金属粒子間の接触が悪い。特にエレクトロニクスの分野において、電子製品の高温耐性の性能限界を考慮するために、より低い焼結温度及びより短い焼結時間が採用される場合、金属ナノ粒子含有インクの焼結後の金属粒子間の接触は非常に悪い。これに対して、MODインクを使用すると、得られた金属粒子間の接触は、高温プロセスがなくても非常に良好であり、したがって導電性が改善される。
【0062】
(4)通常、平面EMI遮蔽層の場合、より良好な遮蔽効果を得るために、金属層にスルーホール/マイクロギャップがないことが一般的に要求される。更に、電子製品の体積、重量、及びコストの制御の観点から、金属層の厚さは、一般に、薄いことが要求される。線形EMIの場合、金属線は、一般に、抵抗率及び回路基板面積に対する要件に基づいて、高くかつ薄いことが要求される。従来技術における金属ナノ粒子含有インクは、高い粘度を有し、線形EMI構造を製造するのに適している。しかしながら、平面EMI構造の製造中に、より良好な遮蔽効果を得るために、多くの場合、より厚い金属層を製造する必要があり、これは、EMI遮蔽層のコスト及び重量の増加につながる。反対に、MODインクが使用される場合、そのより低い粘度並びにより良好な均一性及び流動性に起因して、薄い厚さを有する均一で緻密な金属層を形成することができ、したがって、良好な遮蔽効果を有する平面EMI、例えば、5G用途におけるEMIを形成するのに適しており、特に、モバイルスマート装置、飛行車両、ウェアラブル装置などの重量に敏感な装置に適している。
【0063】
(5)一般に、完全に硬化していないスラリー状のプライマー層前駆体に、液状のMODインクを塗布すると、表面張力の作用により液面が破壊され、連続的な液膜を形成することができないと考えられている。しかしながら、驚くべきことに、完全に硬化していないプライマー層前駆体上に「ウェット・オン・ウェット」方式でインクジェット印刷を使用してMODインクを塗布すると、連続的な液膜が形成されることが見出された。これは、既存の技術的なバイアスを克服する。
【0064】
その他の層
熱界面材料層及び保護層などの他の層が、本発明の印刷物上に塗布されてもよい。
【0065】
保護層は、本発明の印刷物を物理的摩耗、水分の影響、並びに酸化及び配位反応から保護することができる。適切な保護層材料は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂などである。
【0066】
他の層は、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ディスペンシング、スロットコーティング、又は印刷によって、好ましくはスクリーン印刷又はインクジェット印刷によって、より好ましくはインクジェット印刷によって塗布されてもよい。
【0067】
他の層は、コンフォーマル又はパターン化された方法で塗布されてもよい。保護層が選択的に印刷される場合、所望の良好な熱伝導チャネルを得ることができ、同時に、良好な保護効果を得ることができる。
【0068】
本発明の印刷物の製造方法
第2の態様において、本発明は、印刷物の製造方法に関し、方法は、
1)基板を提供することと、
2)基板上にプライマー層前駆体を塗布することと、
3)第1のサイクルにおいて、プライマー層前駆体が完全に硬化していない間に、プライマー層前駆体上にMODインク副層を塗布することと、
4)ステップ2)及び3)から得られた層を共硬化させることと、
5)任意選択的に、1つ以上の後続のサイクルにおいて、1つ以上の他のインク副層を塗布し、インク副層を硬化させることと、
6)得られた生成物をアニーリングすることと、を含む。
【0069】
金属導電層前駆体(すなわちインク)は、金属粒子又は少なくとも1つのMOD化合物、好ましくは少なくとも1つのMOD化合物を含む。
【0070】
プライマー層前駆体及び金属導電層前駆体は、コンフォーマル又はパターン化された方法で塗布されてもよく、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ディスペンシング、スロットコーティング、又は印刷、好ましくはスクリーン印刷又はインクジェット印刷、より好ましくはインクジェット印刷などの好適な方法を使用して塗布されてもよい。
【0071】
インクジェット印刷は、材料の無駄を減らし、マスクもエッチングステップも必要としない積層造形プロセスである。更に、インクジェット印刷は、より大きなチップ(例えば、300mmチップ)を処理することができ、これにより、そのようなチップのための高価な金属堆積装置の必要性を低減し、ひいては製造コストを低減する。
【0072】
インクジェット印刷は、パターン化された方法で行われてもよい。インクジェット印刷は、圧電インクジェットプリンタなどの任意の種類のインクジェットプリンタを使用して行われ得る。インクジェット印刷によって塗布される層の数は、所望の層厚を得るために1つ以上の層、好ましくは1~10層であり得る。印刷の解像度及び層数を調整することにより、インクジェット印刷の層厚を調整してもよい。インクジェット印刷のDPI範囲X/Yは、300~3000であり得る。プライマー層前駆体をインクジェット印刷によって塗布する場合、塗布の終了後、プライマー層前駆体を1~15分間、好ましくは1~5分間レベリングして、プライマー層前駆体を基板上により良好に広げることができる。
【0073】
一実施形態では、プライマー層前駆体は、基板(例えば、PCB)の表面の法線に対して特定の角度(例えば、1~90°、好ましくは10~70°、より好ましくは20~50°、特に45°)で1つ以上のインクジェット印刷装置を使用して同時に印刷されてもよく、その結果、プライマー層前駆体は、基板の表面上の溝を少なくとも部分的に充填することができ、それによって基板表面のうねり又は粗さを低減し、それによって基板の表面を平坦化し、それによってPCBA用途における部品間のアスペクト比を低減し、影領域を低減し、後続の導電層の被覆率を増加させ、更に粗さを有する表面を平坦化し、それによってより良好な厚さ及び遮蔽均一性を達成することができる。
【0074】
上述したように、金属導電層前駆体は、MODインクの形態で提供されてもよい。又は、金属粒子含有インク及びMODインクの両方の形態で提供されてもよい。金属導電層前駆体が金属粒子含有インク及びMODインクの両方の形態で提供される場合、プライマー層に直接隣接する金属導電層前駆体の部分は、MODインクの形態で提供される。MODインクは、プライマー層前駆体が完全に硬化されていない間に塗布される、すなわち、「ウェット・オン・ウェット」法である。「ウェット・オン・ウェット」法によって、MODインク中の金属前駆体がプライマー層に侵入し、金属導電層とプライマー層との間に勾配領域を形成し、それによって、金属導電層とプライマー層とのインターロック接続を確実にし、これは、平坦なプライマー層上の導電層の接続よりも信頼性が高い。
【0075】
第1のサイクルでは、MODインク副層が、「ウェット・オン・ウェット」方式でプライマー層前駆体上に塗布される。MODインク副層及びプライマー層前駆体が共硬化され、任意選択で、1つ以上の後続のサイクルにおいて、1つ以上の他のインク副層が、MODインク副層上に塗布され、硬化される。
【0076】
他のインク副層は、MODインク副層又は金属粒子含有インク副層であってもよく、金属粒子含有インク中の金属は、MODインク中の金属と同じであるか、又は異なる。金属粒子含有インク中の金属がMODインク中の金属と異なる場合、金属粒子含有インク中の金属とMODインク中の金属とは、銀及びスズなどの合金を形成することができる。
【0077】
上述の「後続のサイクル」では、MODインク又は金属粒子含有インクのパスで塗布されてもよい。具体的な塗布条件は、速度要件、コスト、厚さ要件などの多くの要因に従って決定することができる。例えば、MODインクは、全てのサイクルを通して塗布されてもよい。別の例として、MODインクは第1のサイクルで塗布され、金属粒子含有インクは後続のサイクルで塗布される。別の例として、MODインクは第1の3サイクルで塗布され、金属粒子含有インクは後続のサイクルで塗布される。更に別の例として、1、3、及び5サイクル目にMODインクを塗布し、2、4、及び6サイクル目に金属粒子含有インクを塗布する。
【0078】
各サイクルにおいて、塗布されたMODインク層又は金属粒子含有インクは、100~400nm、より好ましくは200~300nmの厚さを有することができる。場合によっては、過度に厚いインク層を一度に塗布することは、結果として得られる金属導電層の均一性、堅牢性、及び剥離耐性に関する問題を引き起こす可能性があるが、MODインク及び/又は金属粒子含有インクを複数回のパスで塗布することによって、良好な均一性、堅牢性、及び剥離耐性を有する金属導電層が得られるように、層厚を良好に制御することができる。サイクル数は、1~20、好ましくは2~10、より好ましくは3~8、例えば3~5であってもよい。
【0079】
MODインク及び/又は金属粒子含有インクを複数サイクルで塗布する場合には、1パス目のMODインクを塗布した後、1パス目のMODインクをプライマー層前駆体と共に硬化させ、各パスのMODインク又は金属粒子含有インクを塗布した後、1パス目のMODインク又は金属粒子含有インクを硬化させる。
【0080】
硬化は、加熱及び/又は電磁放射によって行われてもよい。本発明の一実施形態では、加熱及び電磁放射は、同時に行われてもよく、又は加熱後に電磁放射を行ってもよく、又は電磁放射後に加熱を行ってもよい。電磁放射線硬化としては、例えば、UV、IR、及び電子ビーム硬化などが挙げられ、好ましくはUV硬化である。
【0081】
硬化を加熱により行う場合、硬化はオーブン中で行うことができる。加熱温度は、約50~約250℃、好ましくは約80~約200℃、より好ましくは約150~約200℃であってもよく、加熱時間は、約1~約60分、好ましくは約5~約40分であってもよい。
【0082】
硬化が電磁放射によって行われる場合、約100nm~約1mm、好ましくは約100nm~約2000nm、より好ましくは約100nm~約800nmの波長を有する電磁放射線が使用されてもよい。放射線強度は、約100W/cm~約1000W/cm、好ましくは約100W/cm~約500W/cm、より好ましくは約100W/cm~約400W/cmであってもよい。放射速度は、約0.01mm/秒~約1000mm/秒、好ましくは約0.1mm/秒~約500mm/秒、より好ましくは約0.1mm/秒~約50mm/秒であってもよい。放射は、1~100回のパス、好ましくは1~50回のパス行われてもよい。
【0083】
本発明の方法は、ステップ6)、すなわち、ステップ4)又は5)で得られた生成物をアニーリングすることを更に含んでもよい。
【0084】
アニーリング温度は、金属の融点に関連し、より高い融点を有する金属については、より高いアニーリング温度が使用されてもよい。アニーリング温度は、約100℃~約600℃、好ましくは約150℃~約500℃であってもよい。アニーリング時間は、金属の融点にも関連し、より高い融点を有する金属については、より長いアニーリング時間が使用されてもよい。アニーリング時間は、約1~約60分、好ましくは約5~約40分、より好ましくは約5~約30分であってもよい。
【0085】
使用されるインク中の金属が容易に酸化されない場合、アニーリングは空気中で行われてもよい。確かに、アニーリングは不活性雰囲気中で行われてもよい。不活性雰囲気の例としては、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
アニーリングは、任意の適切な装置、例えば管状炉で行われてもよい。
【0087】
本発明の方法は、ステップ1)の前に、基板に対して表面前処理を行うステップなどの他のステップを更に含んでもよい。
【0088】
表面前処理方法としては、UV、オゾン、プラズマ、コロナなどが挙げられる。
【0089】
プラズマ処理は、真空プラズマ処理及び空調プラズマ処理を含んでもよい。プラズマ処理の時間は、約1~約60分、好ましくは約1~約10分であってもよい。
【0090】
表面前処理により、基板表面の清浄度を向上させ、基板表面を活性化させることができる。出願人らは、驚くべきことに、表面エネルギーが少なくとも40mN/mである場合に、続いて塗布されるプライマー層前駆体、特にエポキシプライマー組成物の良好な濡れ性を確保することができることを見出した。表面エネルギーは、極性及び非極性液体を使用して接触角を測定することによって得られる。
【0091】
洗浄処理後、基板は、例えば25℃~90℃、好ましくは30℃~45℃の温度に加熱されてもよい。このようにして、続いて塗布されるプライマー層前駆体の基板上でのより良好な広がりを確実にすることができる。
【0092】
プライマー層前駆体は、洗浄された表面が粒子状物質を吸収し、表面エネルギーが経時的に減少するのを防止するために、洗浄処理後5分以内に塗布することが好ましい。
【0093】
したがって、好ましい実施形態では、本発明は、印刷物の製造方法に関し、方法は、
1)基板を提供することと、
2)基板に対して表面前処理を行うことと、
3)前処理された基板上にプライマー層前駆体を塗布することと、
4)第1のサイクルにおいて、プライマー層前駆体が完全に硬化していない間に、プライマー層前駆体上にMODインク副層を塗布することと、
5)ステップ3)及び4)から得られた層を共硬化させることと、
6)任意選択的に、1つ以上の後続のサイクルにおいて、1つ以上の他のインク副層を塗布し、インク副層を硬化させることと、
7)得られた生成物をアニーリングすることと、を含む。
【0094】
本発明の一実施形態において、本発明は、印刷物の製造方法に関し、方法は、
1)表面に溝を有する基板を提供するステップと、
2)プライマー層前駆体を溝に塗布し、溝を部分的に又は完全に充填するステップと、任意選択で、プライマー層前駆体を基板表面の他の部分に塗布するステップと、
3)第1のサイクルにおいて、プライマー層前駆体が完全に硬化していない間に、プライマー層前駆体上にMODインク副層を塗布するステップと、
4)ステップ2)及び3)から得られた層を共硬化させるステップと、
5)任意選択的に、1つ以上の後続のサイクルにおいて、1つ以上の他のインク副層を塗布し、インク副層を硬化させるステップと、
6)得られた生成物をアニーリングするステップと、を含む。
【0095】
導電層を有する基板上には、熱界面材料層及び保護層などの他の層が更に提供されてもよい。
【0096】
プライマー層前駆体及び金属導電層前駆体(すなわち、インク)は、パターン化された又はコンフォーマルな方法で、好ましくはパターン化された形態で塗布されてもよく、すなわち、基板の選択された領域をプライマー層前駆体で覆い、他の領域はプライマー層前駆体で覆われないままであり、覆われた領域及び覆われていない領域上に金属導電層前駆体を少なくとも部分的に塗布し、ハイブリッド層がプライマー層と金属導電層との間に形成され、プライマー層を含まない領域が任意選択で熱界面材料に取り付けられ、選択された領域は複数のデバイスを含む。
【0097】
本発明の方法は、PCBA(例えば、FPCB)、EMI遮蔽要素、アンテナ、静電容量式タッチセンサ、導線、5G装置などの高周波装置、セラミックフィルタ要素、又はドローンなどを得るために利用することができる。
【0098】
電子デバイス
別の態様において、本発明は、上記印刷物を含む電子デバイスに関する。
【0099】
本発明の印刷物又は本発明の方法によって得られる印刷物は、非常に良好なEMI遮蔽性能及び高い熱伝導率を有するので、様々な電子デバイスにおける使用に適している。
【0100】
電子デバイスは、PCBA(例えば、FPCB)、EMI遮蔽要素、アンテナ、静電容量式タッチセンサ、導線、5G装置などの高周波装置、セラミックフィルタ要素、又はドローンなどであってもよい。
【0101】
本発明の利点
本発明の利点は、以下の1つ以上の組み合わせにある。
【0102】
1)本発明の好ましい実施形態では、インクジェット印刷方法がプライマー層前駆体を堆積するために使用され、これは基板の表面を平坦化するのに役立ち、PCBA用途における部品間のアスペクト比を低減し、影領域を低減し、後続の導電層の被覆率を改善して、より良好な厚さ及び遮蔽均一性を達成することができる。
【0103】
2)ハイブリッド層の存在は、プライマー層と導電層との間の接着性を改善し、実施するのが容易であり、それによって、本発明を、良好な接着性を必要とする様々な導電性コーティングに適したものにし、プロセスは実施するのがより簡単であり、同じ装置が金属導電層の塗布を行うことができ、接着性が他の要因の影響を受けにくく、より高い信頼性を達成し、金属導電層の材料を、それらのCTE係数が類似するように選択することによって、高温衝撃環境及び低温衝撃環境における装置の動作耐久性をより改善することが可能になる。
【0104】
3)本発明の方法は、実施が容易であり、大規模工業生産に容易にスケールアップすることができる。
【0105】
4)本発明の印刷物のEMI遮蔽効果は良好であり、印刷物を5G用途などの高周波用途に使用することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1図1は、本発明の方法の一実施形態のフロー図を示す。
図2図2は、本発明の印刷物の構造の概略図を示す。
【実施例
【0107】
以下の実施例の目的は、本発明を更に説明することであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0108】
試験方法
シート抵抗率
本発明の方法によって得られる層のシート抵抗率を測定するために、Ossila(英国、シェフィールド)製の4点プローブを使用する。
【0109】
剥離試験
接着性は、剥離試験によって特徴付けられる。剥離試験規格はASTM D3359-09である。
【0110】
実施例1
1)PCBA(BYD、CS2402-02)の表面を、空調プラズマ(移動速度20mm/s)で3分間洗浄した。
【0111】
2)PCBAを40℃のオーブンに3分間入れた。次いで、プラズマ洗浄後5分以内に、プリントヘッドモデルRICOH MH5421Fを備えたHeraeusインクジェットプリンタを使用して、エポキシコーティング組成物(KIWOMASK IJ 7326 Vp)のインクジェット印刷を、合計3回のパスで、それぞれ200nmの厚さで実施した。プライマー塗布後、2分間レベリングを行った。
【0112】
3)プリントヘッドモデルRICOH MH5421Fを備えたHeraeusインクジェットプリンタを使用して、MOD銀インクのインクジェット印刷を1200*1600のDPIで合計3回のパスで実行し、各パスは200nmの厚さを有し、MOD銀インクは、15重量%のネオデカン酸銀及び85重量%のリモネン(DL-リモネン、CAS番号138-86-3、Merck KGaAカタログ番号814546から入手可能)から構成されていた。
【0113】
4)Heraeus UV硬化装置Heraeus Semray 4103を使用して、プライマー層及び銀インク層を5分間硬化させた。(波長:395nm、速度:1mm/s、1パス、放射強度:250W/cm)。
【0114】
5)プリントヘッドモデルRICOH MH5421Fを備えたHeraeusインクジェットプリンタを使用して、MOD銀インクのインクジェット印刷を1200*1600のDPIで合計3回のパスで実行し、各パスは150nmの厚さを有し、MOD銀インクは、ステップ3)と同じであった。
【0115】
6)Heraeus UV硬化装置Heraeus Semray 4103を使用して、MOD銀インクを5分間硬化させた。(波長:395nm、速度:1mm/s、1パス、放射強度:250W/cm)。
【0116】
7)SG-XL1200アニーリング装置(Ansheng Electric Furnace)を使用して、150℃で20分間アニーリングを行った。
【0117】
比較例1
ステップ3)のMODインク組成物を塗布するステップを省略したが、ステップ4)の硬化を依然として実施したことを除いて、実施例1のステップを繰り返した。
【0118】
得られたPCBAの接着性及びシート抵抗率を測定し、結果を表1に示す。
【表1】
【0119】
表1から分かるように、プライマー層と導電層との間にハイブリッド層を形成することによって、EMI遮蔽要素の接着性が大幅に改善され、シート抵抗率も改善された。
【0120】
実施例1におけるプラスチックパッケージの表面の断面に対してFIB調査を実施し、結果は、導電層がより少ない多孔性を有する緻密な構造を有し、ハイブリッド層がプライマー層と金属導電層との間に形成され、その厚さが910nmであることを示した。Agは、ハイブリッド層において勾配分布を有し、すなわち、プライマー層から導電層への方向において、Ag含有量は徐々に増加し、Ag粒子は、導電層において完全な導電層が形成されるまで、徐々にサイズが増大し、融合した。ハイブリッド層の存在は、シート抵抗率を確保し、遮蔽層の接着性を効果的に改善した。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-02-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物であって、
a.基板と、
b.前記基板上に配置されたプライマー層であって、有機誘電体材料を含むプライマー層と、
c.前記プライマー層上に配置された金属導電層と、を備え、
前記印刷物が、前記プライマー層と前記金属導電層との間にハイブリッド層を更に備え、前記ハイブリッド層が、前記プライマー層及び前記金属導電層からの材料を含む、印刷物。
【請求項2】
前記金属導電層からの前記材料が、前記ハイブリッド層において勾配分布を有する、請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記勾配が、含有量勾配、粒度勾配及び結晶サイズ勾配からなる群より選択される1つ以上である、請求項2に記載の印刷物。
【請求項4】
前記ハイブリッド層の厚さが、200~2000nm、好ましくは250~1500nm、より好ましくは300~1000nmである、請求項1又は2に記載の印刷物。
【請求項5】
前記金属導電層が、Ag、Cu、Pt、Au、及びSnから選択される金属、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1又は2に記載の印刷物。
【請求項6】
金属導電層前駆体が、MODインクの形態で提供され、又は、金属粒子含有インク及び前記MODインクの両方の形態で提供され、ただし、前記プライマー層に直接隣接する前記金属導電層前駆体の部分が、前記MODインクの前記形態で提供される、請求項1又は2に記載の印刷物。
【請求項7】
前記金属導電層前駆体が、前記金属粒子含有インク及び前記MODインクの両方の形態で提供される場合、前記金属粒子含有インク中の金属が、前記MODインク中の金属と同じであるか又は異なり、前記金属粒子含有インク中の前記金属が前記MODインク中の前記金属と異なる場合、前記金属粒子含有インク中の前記金属と前記MODインク中の前記金属が、銀及びスズなどの合金を形成することができる、請求項5に記載の印刷物。
【請求項8】
前記基板が表面を有し、前記表面が、ポリマー、金属、セラミック、及びガラス、又はこれらの混合物(例えば、エポキシ成形化合物)から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1に記載の印刷物。
【請求項9】
前記基板が前記表面に溝を有し、前記溝が前記プライマー層で部分的に又は完全に充填されている、請求項1又は8に記載の印刷物。
【請求項10】
前記印刷物が発熱デバイスを含み、前記発熱デバイス上の前記プライマー層の厚さが、他の領域の少なくとも一部の上の前記プライマー層の厚さよりも薄い、請求項1に記載の印刷物。
【請求項11】
前記基板の前記表面の全表面又は選択された領域が前記プライマー層で覆われており、前記覆われた領域が、前記プライマー層、前記ハイブリッド層、及び前記金属導電層を備え、前記選択された領域が、複数のデバイスを含む、請求項1又は8に記載の印刷物。
【請求項12】
前記基板が、金属化を必要とする任意の要素、又はEMI遮蔽を必要とする要素である、請求項1に記載の印刷物。
【請求項13】
前記基板の前記表面のうねり又は粗さが、前記プライマー層の表面のうねり又は粗さよりも大きい、請求項1又は8に記載の印刷物。
【請求項14】
FPCBなどのPCBAである、請求項1又は2に記載の印刷物。
【請求項15】
印刷物の製造方法であって、
1)基板を提供することと、
2)前記基板上にプライマー層前駆体を塗布することと、
3)第1のサイクルにおいて、前記プライマー層前駆体が完全に硬化していない間に、前記プライマー層前駆体上にMODインク副層を塗布することと、
4)ステップ2)及び3)から得られた層を共硬化させることと、
5)任意選択的に、1つ以上の後続のサイクルにおいて、1つ以上の他のインク副層を塗布して硬化させることと、
6)得られた生成物をアニーリングすることと、を含む、請求項1又は2に記載の印刷物の製造方法。
【請求項16】
前記印刷物が発熱デバイスを含み、前記発熱デバイス上の前記プライマー層の厚さが、他の領域の少なくとも一部の上の前記プライマー層の厚さよりも薄い、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記プライマー層前駆体、前記MODインク副層、及び前記他のインク副層が、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ディスペンシング、スロットコーティング、又は印刷によって、好ましくはスクリーン印刷又はインクジェット印刷によって、より好ましくはインクジェット印刷によって塗布される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記プライマー層前駆体及び/又は前記MODインク副層及び/又は前記他のインク副層が、コンフォーマル又はパターン化された方法で塗布される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記他のインク副層が、MODインク副層又は金属粒子含有インク副層である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金属粒子含有インク中の金属が、前記MODインク中の金属と同じであるか又は異なり、前記金属粒子含有インク中の前記金属が前記MODインク中の前記金属と異なる場合、前記金属粒子含有インク中の前記金属及び前記MODインク中の前記金属が、銀及びスズなどの合金を形成することができる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
方法であって、前記基板が、表面に溝を有する基板であり、前記方法が、
1)前記表面に溝を有する基板を提供するステップと、
2)前記溝にプライマー層前駆体を塗布して、前記溝を部分的に又は完全に充填するステップと、任意選択で、前記プライマー層前駆体を前記基板の前記表面の他の部分に塗布するステップと、
3)第1のサイクルにおいて、前記プライマー層前駆体が完全に硬化していない間に、前記プライマー層前駆体上にMODインク副層を塗布するステップと、
4)ステップ2)及び3)から得られた層を共硬化させるステップと、
5)任意選択的に、1つ以上の後続のサイクルにおいて、1つ以上の他のインク副層を塗布して硬化させるステップと、
6)得られた生成物をアニーリングするステップと、を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の印刷物を備える、電子デバイス。
【請求項23】
PCBA(例えば、FPCB)、EMI遮蔽要素、アンテナ、静電容量式タッチセンサ、導線、5G装置などの高周波装置、セラミックフィルタ要素、又はドローンである、請求項22に記載の電子デバイス。

【手続補正書】
【提出日】2024-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物であって、
a.基板と、
b.前記基板上に配置されたプライマー層であって、有機誘電体材料を含むプライマー層と、
c.前記プライマー層上に配置された金属導電層と、を備え、
前記印刷物が、前記プライマー層と前記金属導電層との間にハイブリッド層を更に備え、前記ハイブリッド層が、前記プライマー層及び前記金属導電層からの材料を含む、印刷物。
【請求項2】
前記金属導電層からの前記材料が、前記ハイブリッド層において勾配分布を有する、請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記勾配が、含有量勾配、粒度勾配及び結晶サイズ勾配からなる群より選択される1つ以上である、請求項2に記載の印刷物。
【請求項4】
前記ハイブリッド層の厚さが、200~2000nm、好ましくは250~1500nm、より好ましくは300~1000nmである、請求項1又は2に記載の印刷物。
【請求項5】
前記金属導電層が、Ag、Cu、Pt、Au、及びSnから選択される金属、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1又は2に記載の印刷物。
【請求項6】
金属導電層前駆体が、MODインクの形態で提供され、又は、金属粒子含有インク及び前記MODインクの両方の形態で提供され、ただし、前記プライマー層に直接隣接する前記金属導電層前駆体の部分が、前記MODインクの前記形態で提供される、請求項1又は2に記載の印刷物。
【請求項7】
前記金属導電層前駆体が、前記金属粒子含有インク及び前記MODインクの両方の形態で提供される場合、前記金属粒子含有インク中の金属が、前記MODインク中の金属と同じであるか又は異なり、前記金属粒子含有インク中の前記金属が前記MODインク中の前記金属と異なる場合、前記金属粒子含有インク中の前記金属と前記MODインク中の前記金属が、銀及びスズなどの合金を形成することができる、請求項5に記載の印刷物。
【請求項8】
前記基板が表面を有し、前記表面が、ポリマー、金属、セラミック、及びガラス、又はこれらの混合物(例えば、エポキシ成形化合物)から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1に記載の印刷物。
【請求項9】
前記基板が前記表面に溝を有し、前記溝が前記プライマー層で部分的に又は完全に充填されている、請求項1又は8に記載の印刷物。
【請求項10】
前記印刷物が発熱デバイスを含み、前記発熱デバイス上の前記プライマー層の厚さが、他の領域の少なくとも一部の上の前記プライマー層の厚さよりも薄い、請求項1に記載の印刷物。
【請求項11】
前記基板の前記表面の全表面又は選択された領域が前記プライマー層で覆われており、前記覆われた領域が、前記プライマー層、前記ハイブリッド層、及び前記金属導電層を備え、前記選択された領域が、複数のデバイスを含む、請求項1又は8に記載の印刷物。
【請求項12】
前記基板が、金属化を必要とする任意の要素、又はEMI遮蔽を必要とする要素である、請求項1に記載の印刷物。
【請求項13】
前記基板の前記表面のうねり又は粗さが、前記プライマー層の表面のうねり又は粗さよりも大きい、請求項1又は8に記載の印刷物。
【請求項14】
FPCBなどのPCBAである、請求項1又は2に記載の印刷物。
【請求項15】
印刷物の製造方法であって、
1)基板を提供することと、
2)前記基板上にプライマー層前駆体を塗布することと、
3)第1のサイクルにおいて、前記プライマー層前駆体が完全に硬化していない間に、前記プライマー層前駆体上にMODインク副層を塗布することと、
4)ステップ2)及び3)から得られた層を共硬化させることと、
5)任意選択的に、1つ以上の後続のサイクルにおいて、1つ以上の他のインク副層を塗布して硬化させることと、
6)得られた生成物をアニーリングすることと、を含む、請求項1又は2に記載の印刷物の製造方法。
【請求項16】
前記印刷物が発熱デバイスを含み、前記発熱デバイス上の前記プライマー層の厚さが、他の領域の少なくとも一部の上の前記プライマー層の厚さよりも薄い、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記プライマー層前駆体、前記MODインク副層、及び前記他のインク副層が、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ディスペンシング、スロットコーティング、又は印刷によって、好ましくはスクリーン印刷又はインクジェット印刷によって、より好ましくはインクジェット印刷によって塗布される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記プライマー層前駆体及び/又は前記MODインク副層及び/又は前記他のインク副層が、コンフォーマル又はパターン化された方法で塗布される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記他のインク副層が、MODインク副層又は金属粒子含有インク副層である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金属粒子含有インク中の金属が、前記MODインク中の金属と同じであるか又は異なり、前記金属粒子含有インク中の前記金属が前記MODインク中の前記金属と異なる場合、前記金属粒子含有インク中の前記金属及び前記MODインク中の前記金属が、銀及びスズなどの合金を形成することができる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
方法であって、前記基板が、表面に溝を有する基板であり、前記方法が、
1)前記表面に溝を有する基板を提供するステップと、
2)前記溝にプライマー層前駆体を塗布して、前記溝を部分的に又は完全に充填するステップと、任意選択で、前記プライマー層前駆体を前記基板の前記表面の他の部分に塗布するステップと、
3)第1のサイクルにおいて、前記プライマー層前駆体が完全に硬化していない間に、前記プライマー層前駆体上にMODインク副層を塗布するステップと、
4)ステップ2)及び3)から得られた層を共硬化させるステップと、
5)任意選択的に、1つ以上の後続のサイクルにおいて、1つ以上の他のインク副層を塗布して硬化させるステップと、
6)得られた生成物をアニーリングするステップと、を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の印刷物を備える、電子デバイス。
【請求項23】
PCBA(例えば、FPCB)、EMI遮蔽要素、アンテナ、静電容量式タッチセンサ、導線、5G装置などの高周波装置、セラミックフィルタ要素、又はドローンである、請求項22に記載の電子デバイス。
【国際調査報告】