(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-25
(54)【発明の名称】UV-A吸収を有するアミン相乗剤
(51)【国際特許分類】
C07C 225/22 20060101AFI20240917BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240917BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240917BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20240917BHJP
C07C 221/00 20060101ALI20240917BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240917BHJP
C08F 8/30 20060101ALI20240917BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
C07C225/22 CSP
C09D4/02
C09D7/63
C09D11/101
C07C221/00
C09K3/00 104Z
C08F8/30
C08F2/50
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024506614
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2022087572
(87)【国際公開番号】W WO2023118482
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507385165
【氏名又は名称】サン ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディエカー、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】メージング、フロリアン
【テーマコード(参考)】
4H006
4J011
4J038
4J039
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB48
4H006AB83
4H006AC21
4H006AC52
4H006BR30
4H006BU46
4J011QA22
4J011QA38
4J011QC06
4J011SA22
4J011SA24
4J011SA29
4J011SA61
4J011SA64
4J011TA03
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J011WA05
4J038FA071
4J038JA34
4J038KA02
4J038PA17
4J039AD21
4J039BC16
4J100BA12H
4J100BA31H
4J100BC43H
4J100CA31
4J100DA01
4J100HA37
4J100HA55
4J100HA61
4J100HC25
4J100HC45
4J100HC63
4J100HE17
4J100HG23
4J100JA15
(57)【要約】
本発明は、置換1,3-プロパンジオンの構造要素を含むアミン相乗剤、及び化学光による放射またはエネルギー硬化におけるそれらの使用に関する。本発明のアミン相乗剤は、食品パッケージ及び他のセンシティブなパッケージング用途などの、低マイグレーション及び/または低臭気が要求される材料の印刷及びコーティングに特に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iの1,3-プロパン-ジオンの構造を含むアミノケトン化合物であって、
【化1】
式中、-NR
1R
2置換基が、フェニル環上のC=O置換基に対して、オルト、メタ、またはパラ位のいずれか1つであり得、
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、H、C
1-C
12アルキル、C
1-C
12シクロアルキル、C
2-C
12ヘテロアルキル、C
2-C
12ヘテロシクロアルキル、C
3-C
12アリール、C
3-C
12ヘテロアリールからなる群から選択されるか、またはR
1及びR
2が、一緒になって複素環を形成し、
Qが:
i)メチルまたは直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、m=1である、あるいは
ii)単官能性、二官能性、または多官能性のアクリレートモノマー、オリゴマー、またはポリマーの残部であり、式中、Qが誘導されるアクリレートの官能価が、少なくともmであるが、それより高くてもよく、その結果、Q上にアクリレート官能価が残り、mが≧1の整数である、のいずれかであり、そして
Zが、C
3-C
18アリールまたは任意置換のC
3-C
12ヘテロアリールからなる群から選択され、式中、1位でプロパンジオンに結合しているZが、式Iのプロパンジオン部分の3位に結合している芳香族置換基と同じ置換基であり得る、前記アミノケトン化合物。
【請求項2】
前記-NR
1R
2置換基が、前記フェニル環の前記パラ位にある、請求項1に記載のアミノケトン化合物。
【請求項3】
R
1及びR
2が、分岐または非分岐C
1-C
12アルキルである、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項4】
R
1及びR
2が共にメチルである、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項5】
R
1及びR
2が、一緒になって、モルホリン、ピペリジン、またはピペラジンからなる群から選択される複素環を形成する、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項6】
R
1及びR
2が、一緒になってピペラジンを形成し、R
1及びR
2に共有結合した窒素原子以外の窒素原子が、H、アルキル、または任意選択でアルコキシル化された単官能性、二官能性、もしくは多官能性のアクリレートモノマー、オリゴマー、もしくはポリマーの残部のいずれかで置換され、マイケル付加を介して前記他の窒素原子に付加される、請求項5に記載のアミノケトン化合物。
【請求項7】
マイケル付加を介して第二級アミンに付加される前記任意選択でアルコキシル化された単官能性、二官能性、または多官能性アクリレートポリマーが、ポリエステルアクリレート及びグリシジルエーテルアクリレートからなる群から選択される、請求項6に記載のアミノケトン化合物。
【請求項8】
Zが、一置換、二置換、三置換、または多置換のフェニル、ビフェニル、または4-ジアルキルアミノフェニルから選択されるC
3-C
18アリールである、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項9】
Zが、フェニル、例えば一置換フェニルである、請求項1~7のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項10】
Zが、ジアルキルアミノからなる群から選択される置換基で置換された一置換フェニルであり、前記アミン上の前記アルキル基が、C
1-C
12アルキル、及びC
6-C
10アリールである、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項11】
Zが、ジメチルアミノ置換基で置換された一置換フェニルである、請求項8に記載のアミノケトン化合物。
【請求項12】
Zが、フェニル置換基で置換された一置換フェニルである、請求項8に記載のアミノケトン化合物。
【請求項13】
Qが、メチルまたは直鎖アルキル基である、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項14】
Qが、直鎖または分岐鎖C
1-C
20アルキルであり、m=1であり、例えば、C
1またはC
20アルキルであり、m=1である、請求項1~12のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項15】
Qがメチルである、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項16】
Qが、任意選択でアルコキシル化された単官能性、二官能性、または多官能性のアクリレートモノマー、オリゴマー、またはポリマーの残部である、請求項1~12のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項17】
前記任意選択でアルコキシル化された単官能性、二官能性、または多官能性のアクリレートモノマー、オリゴマー、またはポリマーが、ポリエステルアクリレート及びグリシジルエーテルアクリレートからなる群から選択される、請求項16に記載のアミノケトン化合物。
【請求項18】
Qが、ポリエチレングリコールジアクリレート、例えば、数平均分子量が1,500~3,000Daのポリエチレングリコールジアクリレートの残部である、請求項1~12のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項19】
先行請求項のいずれかに記載の化合物を、II型光開始剤と組み合わせて含む、インクまたはコーティング組成物。
【請求項20】
前記式Iの化合物と前記II型光開始剤が異なる、請求項19に記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項21】
1つ以上の単官能性、二官能性、またはより高次の官能性のアクリレートまたはメタクリレートをさらに含む、請求項19または20に記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項22】
前記II型光開始剤が、ケトン、例えば、芳香族ケトンを含む、請求項19~21のいずれかに記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項23】
前記ケトンが、ベンゾフェノン、4-フェニル-ベンゾフェノン、チオキサントン、及びそれらのブレンドからなる群から選択される芳香族ケトンである、請求項22に記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項24】
前記式Iの化合物が、約500~5,000Daの範囲内の重量平均分子量(M
w)を有する、請求項19~23のいずれか1項に記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項25】
a.存在する水及び溶媒を除く前記組成物の全含有量に対して50~99.9重量%、好ましくは70~98.9重量%の少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物、
b.存在する水及び溶媒を除く前記組成物の前記全含有量に対して0.1~50重量%、好ましくは1.1~30重量%、より好ましくは0.2~15重量%の少なくとも1種の式(I)の化合物、
c.任意選択で、‘269号に示されている0~20%のII型光開始剤、例えばチオキサントン、ベンゾフェノン、またはDBM系のII型光開始剤
を含む、請求項19~24のいずれか1項に記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項26】
前記組成物が、310~420nmの波長を有するUV光で硬化可能である、請求項19~25のいずれか1項に記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項27】
1種以上の着色剤をさらに含む、請求項19~26のいずれか1項に記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項28】
a)アミノ置換1,3-ジカルボニル化合物を提供し、
b)前記アミノ置換1,3-ジカルボニル化合物を、マイケル付加反応を介してアクリレートと反応させて、式Iのマイケル付加反応生成物を形成するステップを含む、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物の製造方法。
【請求項29】
ステップb)の化学量論が、前記式Iのマイケル付加反応生成物中に残存アクリレート官能性を提供するように選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ステップa)が、クライゼン縮合を介してケトンをエステルと反応させることを含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物の製造方法であって、式I中のQが、メチル基または直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、前記方法が:
a)アミノベンゾエートをアルキルフェノンと反応させて式Iの化合物を形成することを含み、前記アルキルフェノンがアセトフェノンではない、前記製造方法。
【請求項32】
前記アルキルフェノンが、プロピオフェノン(1-フェニル-1-プロパノン)、ブチロフェノン(1-フェニル-1-ブタノン)、1-フェニル-1-ペンタノン、1-フェニル-1-ヘキサノン、1-フェニル-1-ヘプタノン、及び1-フェニル-1-オクタノンからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記アミノベンゾエートが、第二級アミン置換基を含み、ステップa)の後に、前記方法が、
b)マイケル付加反応を介して前記式Iの化合物をアクリレートと反応させるステップをさらに含む、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記第二級アミン置換基がピペリジンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
先行請求項のいずれかに記載のインクまたはコーティング組成物の印刷方法。
【請求項36】
前記印刷方法が、インクジェット、フレキソ、及びオフセットからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
光開始重合におけるアミン相乗剤としての、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物の使用。
【請求項38】
光開始重合におけるアミン相乗剤及びII型光開始剤の両方としての、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物の使用。
【請求項39】
前記印刷/光開始重合が、310~420nmの波長を有するUV光による照射を含む、請求項35に記載の方法、または請求項36~38のいずれかに記載の使用。
【請求項40】
重合反応における酸素阻害のための、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権書類
本出願は、参照により本明細書に援用される、米国仮出願US63/293673の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
光開始剤
放射線硬化は、熱または揮発性有機化合物(VOC)の蒸発を必要とせずに瞬時に硬化する特徴があるため、環境に優しい技術である。この技術は現在、3D印刷及び医療用途などにおいて大きな関心を集めている。特に重要な点は、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルなどの不飽和種の重合を開始するために、紫外線、可視光、及び近赤外線を使用することである。不飽和材料を適切に選択することにより、驚くべき範囲の特性を備えたコーティング、インク、及び3Dオブジェクトを製造することができる。そのため、この技術は、ほんの数例を挙げると、木材及び金属のコーティング、グラフィックアート、エレクトロニクス及びオプトエレクトロニクス、ならびに医療機器及び製品の製造など、多くの用途で使用されている。
【0003】
最も頻繁に使用される不飽和化合物は、(メタ)アクリレート、すなわちアクリレート及びメタクリレートであり、これらは硬化が早く、多くの異なる種類が市販されている。光(LEDが放出する光を含む)が重合プロセスを開始するためには、(メタ)アクリレートが組み込まれた配合物に、光を吸収し、それによって重合を開始する種を生成する材料が含まれている必要がある。そのような光吸収化合物は、光開始剤として知られている。最も頻繁に使用される光開始剤は、(Norrish)I型及びII型の光開始剤である。
【0004】
UV硬化プロセスの間、高濃度の光開始剤が使用されることが多く、これにより高濃度のラジカルが提供され、高速印刷が促進される。しかしながら、光開始剤のすべてが硬化プロセスにおいて「消費される」とは限らない。これは、硬化プロセスの後、相当量の未反応の光開始剤がポリマー生成物中に残留することを意味する。UV硬化性配合物に使用される一般的な低分子量光開始剤、例えば、ベンゾフェノン、イソプロピルチオキサントン(ITX)、ならびに4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートエチル(EDB)及び4-ジメチルアミノベンゾエート2-エチルヘキシル(EHA)などの第三級アミンは、有機溶媒によって容易に抽出されるため、この残留物は問題を引き起こし得る。結果として、これらの低分子量材料は、硬化したインクまたはコーティングの表面から接触材料に容易に転写され得る。接触材料には、紙、ボール紙、または脂肪分の多い食品などの吸収性材料、及び印刷された物体に触れる人の皮膚が含まれ得る。印刷された物体には、低分子量アクリレート及び光開始剤を含む組成物の付加製造(AM)によって印刷され、化学光を使用して硬化されるものが含まれる。
【0005】
上記を考慮すると、センシティブな用途に対する非マイグレーション性のポリマー種が必要である。
【0006】
マイグレーション性光開始剤
Arthur Green(Industrial Photoinitiators:A Technical Guide;CRC Pressを参照のこと)によって概説されるように、光開始剤のマイグレーションは、以下を含むいくつかの要因に依存する:
-使用する光開始剤の種類及びその光生成物
-印刷された物体と接触する材料の種類(例えば、パッケージングされる食品及びパッケージの種類)
-印刷面積とパッケージングされる物体の重量の比率
-ポリマーの架橋密度
-硬化プロセスの品質、UV線量など
-パッケージなどの保管中に印加され得る任意の熱または圧力。
【0007】
ベンゾフェノン、ITX、及びアミン相乗剤などの非ポリマー光開始剤、例えば、EDB及びEHAの大部分は、およそ350g/モル以下の分子量を有しており、これは、それらがUV硬化コーティングを通じてある程度のマイグレーションを示す可能性があることを意味している。
【0008】
Greenによれば、マイグレーションは他の要因、特にポリマーマトリックス自体によっても影響を受けるため、各光開始剤で利用可能な「マイグレーション指標」は存在しない。マイグレーションに対する制限は、ポリマー内の遊離開始剤分子の絡み合いであり、したがって架橋の程度がマイグレーションに影響を及ぼす。高度に架橋された硬質ポリマーでは、絡み合いによってこれらの小分子の抽出は低減され、一方で、柔らかく緩く結合したポリマーでは、開始剤はポリマー全体にわたってより自由に移動することができる。WO9221646A1(Eastman Kodak Company)に記載されているように、「コーティングのMEK耐摩擦性は、多くの場合、コーティング中の架橋の程度を決定するための最良の診断試験の1つである」。したがって、本明細書に示される硬化性コーティングを、MEK耐摩擦性によるそれらの耐溶媒性及び架橋密度について、市販のアミン相乗剤と比較して試験する。
【0009】
開始剤のマイグレーションは、その反応性と同様に、それが使用される媒体の性質にも依存する。ボール紙または紙シートの印刷は、通常、適切な取り扱いを目的として印刷ボードの「スタッキング」を伴う。これにより、印刷面が、スタックの重量によるある程度の圧力下で、かなりの時間にわたって、上部ボードの下面と接触した状態を維持することができる。ボードの下面もコーティングしてよく、コーティングに応じて、インクを部分的に吸収性のフィルムと接触させてもよい。スタッキングの結果、低分子量材料がインクの表面からその上にある印刷ボードの下側に転写される「セットオフ」として知られる現象が発生する。
【0010】
セットオフ条件下でのマイグレーションは、インクからボードを通って下面に、インク表面から上部ボードの下面に、及び気相転移によって発生し得る。これらの条件はすべて、分子量が高い、及び/または例えば共有結合によってポリマーに固定されている光開始剤によって効果的に制限され、例えばUV光条件下での分裂によって小分子を生成しない。
【0011】
これに関して、I型光開始剤は、光の吸収後に結合開裂を起こし、重合性種の二重結合を攻撃するラジカルを生成し、それによって重合を開始する。omnipol 910は、約325nmで吸光するアルキルアミノアセトフェノンである。omnipol 910は、高速低マイグレーション性インクに使用されることが多い。しかしながら、そのような分割(I型)PIは、アルキルアミノラジカルを放出する。このラジカルは非常に反応性が高く、主に硬化プロセスに関与するが、一次切断から放出された光化学反応生成物の一部は、抽出可能であり得る。
【0012】
I型光開始剤ポリマーを作ることによってマイグレーション可能な種の量を減らすことができ、そのような光開始剤のいくつかは市販されている。特に、Esacure KIP 150及びKIP 160シリーズのオリゴマーまたは二官能性ヒドロキシアセトフェノンは、非常に低臭気または/及び低マイグレーション性が必要な配合物によく使用される。しかしながら、そのような種は、UV活性化の際に上記の光生成物を依然として生成する。
【0013】
II型光開始剤は分裂せず、したがって、低分子量光生成物を含まないか、形成しないため、センシティブな用途により適している。さらに、ベンゾフェノンOmnipol BP、Genopol BP、及びSpeedcure 7005などのポリマーII型光開始剤も知られている。しかしながら、II型光開始剤は、ラジカル開始種になるために水素を供与する水素ドナーを必要とする。したがって、抽出物がまったくないか、または非常に微量である系を達成するためには、II型開始剤のような水素ドナーもまた、ポリマー性または反応性であることが必要である。
【0014】
II型光開始剤用の水素ドナー
活性水素原子は、窒素、硫黄、及び酸素などのヘテロ原子に対するα位の炭素原子に認められる。これらの種類の分子は、一般に、II型光開始剤の水素ドナーとして使用することができる。しかしながら、これらの種類の分子はすべて、電子的に励起されたII型光開始剤と相互作用してラジカルを生成することができるが、このプロセスは、これらの種のすべてに対して同様に効率的ではない。励起された光開始剤と効率的に反応することができる特定の化合物群は、アミノアルコール及びアミノ酸を含む第三級アミンとその誘導体である。したがって、第三級アミンは一般にII型光開始剤と共に使用され、放射線硬化に関して「アミン相乗剤」と呼ばれることが多い。第三級アミンからの水素抽出の結果として生成されるα-アミノアルキルラジカルは、(メタ)アクリレート二重結合に対して非常に反応性であり、したがって、重合を開始することができる。
【0015】
酸素阻害
アミン相乗剤の別の重要な機能は、「酸素阻害」である。例えば、(メタ)アクリレートに基づく配合物の単一波長または190~450nmの範囲(複数可)の異なる波長のUV光源によって開始されるUV硬化は、通常、空気中で行われ、これによってUV硬化性配合物への酸素の容易な進入が可能になる。光重合プロセス中に、ラジカル中間体は、分子酸素と反応し、重合プロセスから転用され、それによって硬化プロセスの効率が低下する場合がある。これは、「酸素阻害」として当業者に知られている。
【0016】
好適な第三級アミンを適切な量でUV硬化性配合物に添加する場合、生成されるα-アミノアルキルラジカルによって、配合物中に存在する酸素が迅速に取り除かれ、ペルオキシルラジカルが生成する。次いで、これらのペルオキシルラジカルは、さらなるα-アミノアルキルラジカルを生成し、その結果、連鎖反応が開始され、酸素が過酸化物系種として隔離され、それによって、所望の重合プロセスが阻害されることなく進行することが可能になる。この戦略が成功するためには、コーティング内の酸素の事前消費が、空気からコーティング内への酸素の進入速度よりも実質的に速い速度で進行するか、または少なくとも進行する可能性を有しているべきである。
【0017】
アミノアクリレート
アミノアクリレートは、標準的なアミンよりも臭気が少ないため、アミン相乗剤の市場に導入されている。アミノアクリレートは、ジエチルアミンまたはモルホリンなどの第二級アミンをマイケル付加反応によって(メタ)アクリレートと反応させることによって誘導することができる。原理的には、最終生成物に第三級アミンと(メタ)アクリレート基の両方が含まれるように、多官能性(メタ)アクリレートにアミンを付加することが可能である。そのような材料は、理論的には、反応してフォトポリマーコーティングの一部となり得るため、重合性相乗剤である。そのようなプロセスは、硬化コーティング内に存在するマイグレーション可能な種の量を低減する可能性を有する。
【0018】
第一級脂肪族アミンは、マイケル付加反応でアクリレートと反応して、形式的には2つのアクリレート基が1つのアミノ基に付加されて誘導される生成物を生じる。様々なアミノアクリレートが、反応物としての脂肪族アミンとのマイケル付加反応を用いて生成されている。そのようなアミノアクリレートを使用する上での欠点は、良好な相乗特性に必要とされる第三級アミン基のレベルを達成することができるように、UV硬化性配合物中でより高濃度で使用しなければならないことである。
【0019】
水溶性及び芳香族アミン相乗剤
水溶性は、アミノアクリレートを含む大部分の脂肪族アミン相乗剤の特性であり、このため、一部の用途ではそれらの使用が制限され得る。フォトリソプロセス(本明細書ではオフセット印刷プロセスと呼ぶ)の場合のように、硬化プロセス中に配合物が水と接触する場合、放射線硬化プロセスが行われる前に配合物からアミン相乗剤が浸出して硬化が無効になる場合がある。この理由から、芳香族アミン相乗剤は、通常、無視できる程度の水溶性を有するように設計され、そのような相乗剤は、オフセット印刷用途において好ましい。
【0020】
芳香族アミン相乗剤は、通常、280~310nm領域において強い吸収を有し、したがって、それらのUV吸収スペクトルは、同じ領域に強い吸収バンドを有するII型光開始剤として使用される芳香族ケトンと干渉し得る。芳香族アミン相乗剤と共に、通常使用される材料としては、例えば、オリゴマーベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン誘導体、またはAllnex companyのLEO10103などの自己硬化樹脂が挙げられる。
【0021】
これらの材料は、通常、280~310nm領域に強い吸収を有するため、それらは、通常、300nm超に強い吸収バンドを有する芳香族ケトン光開始剤と共に使用される。芳香族アミン相乗剤と共に使用される例示的な光開始剤としては、チオキサントン及び4-フェニルベンゾフェノンが挙げられる。
【0022】
オフセット印刷用途のための最も反応性の高い既知のアミン相乗剤の1つは、4-ジメチルアミノベンゾエートエチル(CAS:10287-53-3)及び4-N,N-ジメチルアミノベンゾエート2-エチルヘキシルなどのアミノベンゾエートのエステルである。これらのアミンは、市販の脂肪族アミン相乗剤と同様に、UV硬化性コーティング内に存在するマイグレーション可能な種の割合に寄与するという欠点を有する。REACH登録において企業が欧州化学品庁(ECHA)に提供した分類によると、4-ジメチルアミノベンゾエートエチルは生殖能力または胎児に損傷を与える可能性があり、水生生物に対して長期にわたる毒性を示す。したがって、そのようなアミン相乗剤は、すべての印刷用途で使用できるわけではなく、食品パッケージなどのセンシティブな用途に使用されるインクまたはコーティング配合物としては禁止されている。
【0023】
高分子量アミン相乗剤
4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸のポリアルキレンポリオールエステルは、マイグレーション可能な種の数がはるかに少ないことが示されており、これは、この化合物の分子量が高いことと、重合プロセスに関与することができ、それによって相乗剤を架橋ポリマーネットワークに共有結合させることができる、α-アルコキシ炭素中心ラジカル由来の活性化された水素原子の供給源として高分子ポリエーテル鎖が存在することの両方に起因すると考えられる。そのようなオリゴマーアミノベンゾエートは、低マイグレーション用途の代替法を提供するが、4-ジメチルアミノベンゾエートの構造要素を依然として含む。したがって、これらのオリゴマーアミノベンゾエートに残留量のアミノベンゾエートモノマーが含まれていないことを確認するには、製造プロセスにおける高品質の基準とコストのかかる精製工程が必要である。そのようなオリゴマーアミノベンゾエートの市販の例は、Genopol AB2(Rahn groupの製品)及びOmnipol ASA(IGM Resinsの製品)である。
【0024】
Omnipol 894(IGM Resinの製品)は、アミノベンゾエート化学に基づいておらず、オフセット印刷に適しているため、興味深い代替品である。しかしながら、Omnipol 894のUV吸収スペクトルは、約253nmでその最大吸収を有し、299nmでは小さなショルダーを有し、したがって、それは低波長(300nm未満)でのみ明確に吸収する。
【0025】
主にUV-A領域で発光するUV電球、またはオゾンを生成せずエネルギー消費量が低いUV-LEDを使用するUV業界の傾向により、マイグレーションとプロセス安全性の両方に関してUV技術をより安全にするための、UV-A硬化(320~400nm)に特に有用な光活性材料が常に模索されている。
【0026】
毒物学的な懸念によってEMK(Michler’sエチルケトン)の使用が制限される以前は、EMKは、350nm超の領域でも強い吸収を示すことから、増感剤と相乗剤の機能性を1つの分子内に組み合わせた有利なアミン相乗剤であった。
【0027】
先行技術文献
US9938232B2(Sun Chemical)は、ポリアルキレンポリオール架橋を有するアミン相乗剤を開示している。しかしながら、この化合物とEMKの構造上の密接な関係は、この化合物が同様の毒性学的懸念を有していると疑われることを意味しており、それがこの物質がまだ毒性学的登録に含まれていない理由であり得る。US9982150B2(Sun Chemical)は、光活性オリゴマーアミノケトンを開示している。しかしながら、これらのオリゴマーの欠点は、特定の用途における使用が最近禁止されたホルムアルデヒドを用いて、そのような樹脂が製造されている点である。
【0028】
US7446230B2は、光活性化可能な日焼け止めとしてのジベンゾイルメタン系化合物及びそれを含有する化粧品組成物に関する。WO2020249760は、アスタシンプロテイナーゼのヘテロ芳香族阻害剤の調製に関する。CN103806120は、蛍光特性を備えた電界紡糸ナノファイバーの調製方法に関する。
【0029】
アボベンゾンの酸性水素上のメチル基(ヨウ化メチルの使用による)または炭素鎖(デシル)の一付加物の合成及び評価は、Miranda et al.(Photochemistry and Photobiology,2009,85,178-184)によって、及びF.Wetz and I.Rico-Lattes et al.(J.Cosmet.Sci.56,2005,135-148)によって記載されている。いずれの論文も、化合物のUV吸収安定性に関する。アミンの添加によってエチレン性不飽和化合物の光重合を開始する能力は、開示されていない。
【0030】
様々な先行技術文献は、アセチルアセトン(フェニル基を有さない1,3-ジケトン)及びそれらのアクリレートとの付加物に関する。しかしながら、これらの化合物は、発色団が失われているため、インクで使用することができない。これらの化合物は酸素阻害によって強く阻害されるため、高速印刷機で一般的に使用可能なUV線量(100~150mJ/cm2)のレベルでは完全な表面硬化が得られない。さらに、アクリレートのアセチルアセトン付加物は二置換を示すことが多く、その結果、1,3-ジケトン官能価の両方の酸性水素が置換される。そのような化合物は、II型PIとは異なる機構(I型PIの分割)を示す。
【0031】
WO2015023371(Sun Chemical)は、UV硬化性コーティング及びインクにおける光開始剤として有用なオリゴマーアミノケトンに関する。しかしながら、開示された構造は、ホルムアルデヒドを用いた合成経路を必要とする。さらに、アミン官能性の供給源がすべての目録に含まれていない(例えば、REACHにリストされていない)ことから、WO2015023371において4-ジメチルアミノアセトフェノンが使用されており、したがって、そのような化合物は、特定の法域での使用許可が取得可能になる前に、その毒性を決定するために検査される必要があるであろう(その化合物が相応の毒性をなお有している限りにおいて)。
【0032】
一部の構造は、参照により本明細書に援用されるSun Chemicalの同時係属中のWO/2022/180269出願(以下では‘269号と呼称する)において参照されている。しかしながら、‘269号は、アミン相乗剤と組み合わせた光開始剤としてのDBM(ジベンゾイルメタン)化合物に関する。本発明において、新規アミン相乗剤を、‘269号に開示されている化合物または「古典的」II型光開始剤、例えばベンゾフェノン誘導体、チオキサントンなどと共に開示する。
【0033】
Sun Chemicalの‘269号では、芳香族1,3-ジカルボニル化合物とアクリレートのようなマイケル受容体とのマイケル付加によって形成される新規II型光開始剤が開示されている。一実施形態では、‘269号において、PEG600DA-DBM、PEG200DA-4Ph-DBMなどのオリゴマーもしくはポリマーのいずれかであるか、または反応性であり、任意選択でポリマーもしくはオリゴマーである生成物が開示されており、これは、形成されるポリマーネットワークに光開始剤を組み込むように反応する残存アクリレート官能性によって光開始剤の抽出が減少または防止されることを意味する。‘269号における一例は4Ph-DBM-PPTTAであり、これは4Ph-DBMと、PPTTAなどの二官能性またはより高次の官能性のアクリレートを、二官能性またはより高次の官能性のアクリレートのうち、少なくとも1つのアクリレート基が残存する比率で反応させることによって形成される。PPTTAを使用する場合、例えば、1モルのPPTTAを1モルのPh-DBMと反応させることができ、これは、完全な官能性の四官能性アクリレート前駆体が、光開始剤をポリマーネットワークに固定するための3つの残存アクリレート官能性を有することを意味する。この場合も、ポリマーベンゾフェノンと同様に、これらのII型光開始剤には水素ドナーが必要とされ得、低抽出物/低マイグレーション性が望まれる場合には、反応性もしくはポリマー、またはその両方である必要もある。
【0034】
したがって、構造は異なるが類似の原料から出発する代替アミン相乗剤は、非常に関連性が高く、利点を提供する。本発明の構造は、市場、特にセンシティブな用途向けのインク及びコーティングの市場への導入が容易になるように、低毒性を有する登録済みの材料から作製することができる。
【発明の概要】
【0035】
本発明は、一般式I:
【化1】
の1,3-プロパン-ジオンの構造を含むアミノケトン化合物を提供し、
式中、-NR
1R
2置換基は、フェニル環上のC=O置換基に対して、オルト、メタ、またはパラ位のいずれか1つであり得、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H、C
1-C
12アルキル、C
1-C
12シクロアルキル、C
2-C
12ヘテロアルキル、C
2-C
12ヘテロシクロアルキル、C
3-C
12アリール、C
3-C
12ヘテロアリールからなる群から選択されるか、またはR
1及びR
2は、一緒になって複素環を形成し、
Qは:
i)メチルまたは直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、m=1である、あるいは
ii)単官能性、二官能性、または多官能性のアクリレートモノマー、オリゴマー、またはポリマーの残部であり、式中、Qが誘導されるアクリレートの官能価は、少なくともmであるが、それより高くてもよく、その結果、Q上にアクリレート官能価が残り、mは≧1の整数である、のいずれかであり、そして
Zは、C
3-C
18アリールまたは任意置換のC
3-C
12ヘテロアリールからなる群から選択され、式中、1位でプロパンジオンに結合しているZは、式Iのプロパンジオン部分の3位に結合している芳香族置換基と同じ置換基であり得る。
【0036】
本発明はまた、本発明のアミノケトンを含むインクまたはコーティング組成物を提供する。本発明はさらに、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物の製造方法を提供し、この方法は、以下のステップ:a)アミノ置換1,3-ジカルボニル化合物を提供し、b)アミノ置換1,3-ジカルボニル化合物を、マイケル付加反応を介してアクリレートと反応させて、式Iのマイケル付加反応生成物を形成することを含む。本発明はさらに、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物の製造方法を提供し、式I中の[Q]は、メチル基または直鎖アルキル基であり、この方法は、a)アミノベンゾエートとアルキルフェノンを反応させて式Iの化合物を形成することを含み、アルキルフェノンはアセトフェノンではない。
【0037】
本発明はさらに、先行請求項のいずれかに記載のインクまたはコーティング組成物の印刷方法を提供する。さらに、本発明は、光開始重合におけるアミン相乗剤としての本発明のアミノケトン化合物の使用を提供する。さらに、本発明は、光開始重合におけるアミン相乗剤及びII型光開始剤の両方としての本発明のアミノケトン化合物の使用を提供する。最後に、本発明は、光硬化性配合物における酸素阻害のための本発明のアミノケトン化合物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
構造が定義された化合物(例えば、モノマー)の分子量は、その構造式から計算される。分子量分布を有するオリゴマー及びポリマーの分子量は、実施例で定義される方法を使用して、サイズ排除クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0039】
特に明記しない限り、すべての範囲は、それぞれの端点を含む。例えば、3~9の範囲は、端点3及び9を含む。しかしながら、端点が1つの値を「上回る」、及び/または別の値を「下回る」と定義される場合、その範囲は、それぞれの端点を含まない。
【0040】
特に明記しない限り、重量%(重量/重量)は、組成物中に存在する全成分に対する当該成分の質量を指す。
【0041】
慣例によれば、化合物上に自由原子価がある場合、これらの自由原子価は水素に結合して安定な化合物を生成することが理解されるであろう。
【0042】
用語「置換された」とは、特定の基または部分が1つ以上の置換基を有することを意味する。用語「非置換の」とは、特定の基が置換基を有さないことを意味する。用語「任意置換の」とは、特定の基が非置換であるか、または1つ以上の置換基によって置換されていることを意味する。用語「置換された」が構造系を説明するために使用される場合、置換は、系上の任意の原子価が許容される位置で起こることを意味する。
【0043】
用語「アルキル」とは、鎖中に1~20個、例えば1~12個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基を指す。アルキル基の例としては、メチル(Me、記号「/」で構造的に示される場合もある)、エチル(Et)、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル(tBu)、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、及び当業者及び本明細書に提供される教示に照らして、前述の例のいずれか1つと同等であると考えられる基が挙げられる。
【0044】
アルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれかであり得る。
【0045】
用語「アリール」は、任意の安定な芳香環を指す。異なるサイズのアリール環の範囲が定義される場合、その範囲は、前記範囲に包含される安定な環のみを指すことが理解されるであろう。
【0046】
アクリレートという用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方に及ぶことを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】マイケル付加合成実施例3:PEG200-DAへのBDAPPの付加由来の反応生成物の質量スペクトル。標的分子及び未反応のSR259は、HRMS中でナトリウム付加物として検出される。
【
図2】アミノベンゾエート系アミン相乗剤(Genopol AB)及びSun ChemicalのWO2015023371(C-974)由来のアミノケトン樹脂に加えて、本発明のアミン相乗剤についてのUV-可視吸収スペクトル。
【0048】
本発明
オリゴマーアミノベンゾエートエステルからケトンへの変換は、本発明のアミン相乗剤の設計上の特徴である。これは、アミノベンゾエートの代わりに芳香族アミノケトンが存在するため、UV-A領域(320~400nm)などのより高波長のUVを吸収し、その結果、II型光開始剤の吸収への干渉が少なくなるためである。さらに、ベンゾイル環上のアミノ置換基が存在することにより、ベンゾイル環上にアミノ置換基を含まない類似化合物、例えば、‘269号に開示されている光開始剤と比較して、本発明の化合物のUV吸収は、より高い波長にシフトする。
【0049】
さらに、形成される1,3-ジカルボニル化合物は、1分子中にアミン及びケトン官能性の両方を有する化合物である。したがって、本発明の化合物は、UV光を吸収して光励起を受けて励起状態を形成し、次いで分子間または分子内の電子移動及びプロトン引き抜きを受けてラジカル開始種を生成することができる。したがって、原理的には、開始のためにさらに追加のPI成分は必要とされない。しかしながら、例えばLED硬化における硬化を改善するか、または酸素阻害を防止するために、追加のアミン及び/または増感剤を含めることができる。
【0050】
コーティングまたは硬化性組成物の耐溶媒性は、アミノベンゾエート化学に基づく古典的なオリゴマーアミン相乗剤との直接比較で示されるように、本発明のアミン相乗剤を用いて劇的に増加する。
【0051】
本発明は、置換1,3-プロパンジオンの構造要素を含むアミン相乗剤、及び化学光による放射またはエネルギー硬化におけるそれらの使用に関する。本発明のアミン相乗剤は、食品パッケージ及び他のセンシティブなパッケージング用途などの、低マイグレーション及び/または低臭気が要求される材料の印刷及びコーティングに特に有用である。本発明の化合物はまた、放射線硬化性組成物が使用される他の用途、特に健康または嗅覚への懸念により相乗機能性を提供する古典的な小分子の使用が制限される場合、例えば、付加製造(3D印刷)、木質フローリングにおいて、及び歯科材料の放射線硬化において有用である。
【0052】
本発明のアミン相乗剤は、オリゴマーアミノベンゾエートなどの現在使用されているアミン相乗剤よりも改善されたUV吸収スペクトルを示す。本発明のアミン相乗剤を用いて配合された硬化性組成物は、アミノベンゾエートに基づくアミン相乗剤を含む同じ配合物よりもはるかに高い架橋密度を示し、その結果、MEK摩擦に対する耐溶媒性がはるかに高くなる。本発明の芳香族アミノケトンは、いかなる追加のPIも必要とせずに硬化性組成物の配合を可能にする。
【0053】
UV-A吸収を有する本発明のアミノケトンを開示し、これは、先行技術のアミン相乗剤を上回るいくつかの利点を提供する。特に:
-適切なマイケル付加アクセプターを選択することにより、例えば、(メタ)アクリレートの同一性、得られるアミン相乗剤の溶解度、親水性または親油性、及びマイグレーション傾向などを容易に選択することができる;
-アクリレートの代わりに、メチル基などの小さなアルキル基を式IのQに使用する場合、得られるアミン相乗剤のケト-エノール比が影響を受け、より高波長でのUV吸収が生じる;
-1,3-ジアリール-1,3-プロパンジオンを有するアミノ及びマイケル付加含有官能性の化学量論を変動させることによって、本発明のアミン相乗剤中の所望の程度の残存アクリレート官能性を選択することができる;
-オフセット印刷プロセスにおいて本発明のアミン相乗剤は許容され、したがってすべての印刷プロセス(例えば、インクジェット(デジタル)、フレキソ、オフセット)で使用することができる。
【0054】
本発明のアミノケトン
本発明は、一般式I:
【化2】
の1,3-プロパン-ジオンの構造要素を有するアミノケトンを提供し、
式中:
-NR
1R
2置換基は、フェニル環上のC=O置換基に対して、オルト、メタ、またはパラ位のいずれか1つであり得、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H、C
1-C
12アルキル、シクロアルキル、C
2-C
12ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、C
3-C
12アリールもしくはC
3-C
12ヘテロアリールからなる群から選択されるか、またはR
1及びR
2は、一緒になって複素環を形成し得、
Qは、
i)メチルまたは直鎖もしくは分岐鎖アルキルであり、m=1であり、あるいは
ii)任意選択でアルコキシル化された単官能性、二官能性、または多官能性のアクリレートモノマー、オリゴマー、またはポリマーの残部であり、式中、Qが誘導されるアクリレートの官能価は、少なくともmであるが、それより高くてもよく、その結果、Q上にアクリレート官能価が残り、mは≧1の整数であり、そして
Zは、C
3-C
18アリールまたは任意置換のC
3-C
12ヘテロアリールからなる群から選択され、式中、1位でプロパンジオンに結合している[Z]は、式Iのプロパンジオン部分の3位に結合している芳香族置換基と同じ置換基であり得る。
【0055】
-NR1R2置換基は、フェニル環のパラ位に存在することが好ましい。
【0056】
R1及びR2が非分岐C1-C6アルキルである場合のように、R1及びR2は、分岐または非分岐C1-C12アルキルであることが好ましく、R1及びR2は、両方ともメチルであることがより好ましい。
【0057】
R1及びR2は、一緒になって、モルホリン、ピペリジン、またはピペラジンからなる群から選択される複素環を形成してもよい。R1及びR2は、一緒になってピペラジンを形成してもよく、R1及びR2に共有結合した窒素原子以外の窒素原子は、H、アルキル、または任意選択でアルコキシル化された単官能性、二官能性、もしくは多官能性のアクリレートモノマー、オリゴマー、もしくはポリマー(ポリエステルアクリレート及びグリシジルエーテルアクリレートを含む)の残部のいずれかで置換され、マイケル付加反応を介して第二級アミンに付加される。
【0058】
Qは、ポリエステルアクリレート及びグリシジルエーテルアクリレートからなる群から選択される、任意選択でアルコキシル化された単官能性、二官能性、または多官能性のアクリレートモノマー、オリゴマー、またはポリマーの残部であってもよい。Qは、直鎖または分岐鎖C1-C20アルキルであり、m=1、例えば、C1またはC20アルキルであり、m=1であってもよい。Qはメチルであってもよい。
【0059】
Zは、フェニル、例えば、非置換のフェニルであることが好ましい。Zは、一置換、二置換、三置換、または多置換のフェニル、ビフェニル、及び4-ジアルキルアミノフェニルからなる群から選択されてもよい。Zは、一置換フェニル、例えば、ジアルキルアミノ置換基で置換された一置換フェニル、例えば、4-ジアルキルアミノフェニルであってもよく、アルキルは、C1-C12、例えばメチルである。Zは、C5-C10アリール置換基で置換された一置換フェニル、例えば、4-フェニル-フェニルであってもよい。
【0060】
Qが誘導されるアクリレートの同一性
[Q]を誘導することができる好適なマイケルアクセプター材料の例としては、アクリレート及びメタクリレート、例えばアクリレート及びメタクリレート、モノマー、オリゴマー、及びポリマーが挙げられる。
【0061】
Qが誘導される化合物として使用するためのアクリレート及びメタクリレートは、好ましくは、1,000~10,000Da、例えば、より好ましくは1,500~5,000Da、または1,500~3,000Da、例えば、約2,000Daの数平均分子量を有する。
【0062】
単官能性アクリレートモノマーは、残存アクリレート官能性を含まない式1の反応生成物を提供するマイケルアクセプター材料として使用することができる。そのような化合物は、それ自体は重合反応に関与することができず、したがって、硬化後にマイグレーションする傾向がより高い。このため、マイケル付加アクセプター材料として単官能性(メタ)アクリレートを用いることはあまり好ましくない。
【0063】
マイケルアクセプターとして使用することができる好適な単官能エチレン性不飽和モノマーの例としては、以下(及びその組合せ)のイソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソノニルアクリレート、オクチル/デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4-t.ブチルシクロヘキシルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンチルアクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、アルコキシル化ノニルフェノールアクリレート、クミルフェノキシエチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシル化メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールブチルエーテルアクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート、エトキシル化エチルヘキシルアクリレート、アルコキシル化フェノールアクリレート、エトキシル化フェノールアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート、プロポキシ化ノニルフェノールアシレート、ポリエチレングリコールo-フェニルフェニルエーテルアクリレート、エトキシル化p-クミルフェノールアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート、アルコキシル化ラウリルアクリレート、エトキシル化トリスチリルフェノールアクリレート、N-(アクリロイルオキシエチル)ヘキサヒドロフタルイミド、N-ブチル1,2(アクリロイルオキシ)エチルカルバメート、コハク酸水素アクリロイルオキシエチル、オクトキシポリエチレングリコールアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、アクリル酸2-メトキシエチル、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリル酸2-カルボキシエチル、4-ヒドロキシブチルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
同等のメタクリレート化合物も使用することができる。当業者であれば、メタクリレート化合物は、同等のアクリレート化合物よりも反応性が低いことを理解するであろう。
【0065】
多官能性マイケルアクセプター化合物を使用して、本発明で使用するための反応生成物を製造することができる。多官能性マイケルアクセプター化合物を使用する利点は、反応生成物が、反応生成物に共有結合した重合性エチレン性不飽和基を保持し得ることである。したがって、反応生成物はアミン相乗剤として作用し、かつ重合反応にも関与することができ、したがって硬化生成物中に存在するマイグレーション可能な種の量をさらに減少させる。
【0066】
好適な二官能性または三官能性または多官能性アクリレートの例としては、以下のもの(及びそれらの組合せ)、すなわち、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、2-メチル-1,3-プロパンジイルエトキシアクリレート、2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、エトキシル化2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、3メチル1,5-ペンタンジオールジアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10デカンジオールジアクリレート、エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシ化エチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリ(テトラメチレングリコール)ジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エトキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバリン酸ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2-ヒドロキシ-3-{4-[2-ヒドロキシ-3-(ビニルカルボニルオキシ)プロポキシ]ブトキシ}プロピルアクリレート(これは、好ましい実施形態であり、Sartomer/ArkemaグループからCN132として市販されている)、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールFジアクリレート、アクリル酸2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル、ジオキサングリコールジアクリレート、エトキシル化グリセロールトリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、アルコキシル化ペタエリスリトールトリアクリレート及びテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アルコキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、メラミンアクリレートオリゴマー、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシル化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、200~2,000Daの分子量を有する任意のポリエチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、200~2,000Daの分子量を有するポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、ならびにポリエポキシドをアクリル酸(エポキシアクリレート)と反応させることによって得られる、またはポリエステルポリオールをアクリル酸及び/または単量体アルキルアクリレート(ポリエステルアクリレート)と反応させることによって得られるアクリレート基含有オリゴマー及びポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
本発明で使用するためのマイケル付加アクセプター材料は、好ましくは、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,4-ブタンジオール-ジ-グリシジルエーテル-ジアクリレート、またはそれらの組合せからなる群から選択される。より好ましいのは、ポリエチレングリコールジアクリレート、例えば、1,000~10,000Da、例えば、1,500~5,000Da、または1,500~3,000Da、例えば約2,000Daの数平均分子量を有するポリエチレングリコールジアクリレートである。
【0068】
同等のメタクリレート化合物も使用することができる。当業者であれば、メタクリレート化合物は、同等のアクリレート化合物よりも反応性が低いことを理解するであろう。
【0069】
Q対mの比率
式中、Qは、単官能性、二官能性、または多官能性のアクリレートモノマー、オリゴマー、またはポリマーの残部分であり、Q対mの比率は変化させることができる。例えば、Qが誘導されるアクリレートの官能価がmより大きい場合、式Iの化合物中には残存アクリレート官能性が存在する。したがって、重合反応中に化合物をポリマーに組み込み、得られるマイグレーション可能な種の量を減少させることができる。例えば、Qが誘導されるアクリレートの官能価は、2~6、例えば2~4であってもよく、mは、1~4、例えば1~2であってもよく、ただし、mは、Qが誘導されるアクリレートの官能価よりも小さい。
【0070】
あるいは、Qが誘導されるアクリレートの官能価は、mの値に等しくてもよい。例えば、Qが誘導されるアクリレートの官能価及びmの値は、1~6、例えば1~4、または1~2であってもよく、Qが誘導されるアクリレートの官能価及びmの値は同じである。
【0071】
式Iの化合物中の窒素の重量%は、1%超、例えば、好ましくは2%超、より好ましくは3%超である。式Iの化合物中の窒素の重量%は、1~5%、例えば、好ましくは2~5%または3~5%であってもよい。
【0072】
本発明のアミノケトン化合物の製造方法
一般式Iのアミノケトンは、例えば、市販の材料から2段階のプロセスで得ることができる。第1のステップでは、ケトンとエステルとのクライゼン縮合により、式1のアミノケトンに対するアミノ置換1,3-ジカルボニル化合物前駆体を取得してもよい。第2のステップでは、1,3-ジカルボニル化合物をマイケルアクセプター、例えば(メタ)アクリレートと反応させて、式1のアミノケトンを取得してもよい。
【0073】
第1及び第2のステップは、本明細書において別々に記載されるが、塩基(すなわち、アミノ置換1,3-ジカルボニル化合物前駆体)の形成及び前記塩基とマイケルアクセプター材料との反応は、1つのポットにおいて、及び1つのステップにおいて、任意の中間体の精製もしくは単離、または中間の処理ステップを伴わずに、行うことができる。
【0074】
あるいは、Qが小さなアルキル置換基を表す式1の化合物に関して、そのような化合物を単一のステップで取得してもよい。
【0075】
式1のアミノケトンは、目録に記載されている物質、したがって既知の毒性特性を有する物質、例えば、アセトフェノン及びジメチルアミノベンゾエートエチルから製造することができる。したがって、出発物質を、その毒物学的特性に従って選択することができる。
【0076】
1.第1のステップ:1,3-ジカルボニル化合物の形成
第1のステップでは、ケトンを、クライゼン縮合を介してエステルと反応させる。
【0077】
一般式Iの化合物の前駆体を製造するための第1のステップに好適なケトンの例は、アセトフェノン、4-フェニル-アセトフェノン、4’-(メチルチオ)アセトフェノン、4’-(フェニルチオ)アセトフェノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン、例えば、1-[p-(ジメチルアミノ)フェニル]-1-エタノン、N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、例えば、1-[p-(ジエチルアミノ)フェニル]-1-エタノン、N,N-ジプロピルアミノアセトフェノン、N,N-ジブチルアミノアセトフェノン、4-ピペリジノアセトフェノン、4-モルホリノアセトフェノン、N-メチル-N-フェニルアミノアセトフェノン、アセチル-N-メチルカルバゾール、アセチル-N-エチルカルバゾール、アセチル-N-アルキルインドール、アセチル-N-アルキルデヒドロインドール、3-アセチル-N-エチル-カルバゾール、及びN-エチル-3-アクリルインドールである。好ましいケトンは、N,N-ジメチル-4-アミノアセトフェノン及びアセトフェノンである。
【0078】
次いで、式Iの化合物を合成するために使用する前駆体1,3-ジカルボニル化合物を製造するための好適なエステルの例としては、任意置換の安息香酸のアルキルエステル、例えば、メチル安息香酸エステル、エチル安息香酸エステル、アルキル(1-ピペラジニル)ベンゾエート、例えば、p-(1-ピペラジニル)ベンゾエートエチル、p-モルホリノベンゾエートエチル、p-モルホリノベンゾエートメチル、エチルジメチルアミノ安息香酸エステル、エチルヘキシルジメチルアミノ安息香酸エステル、4-ビフェニルカルボン酸エチルが挙げられる。好ましいエステルは、ジアルキルアミノベンゾエートエステル、特にp-(ジメチルアミノ)ベンゾエートエチル及びp-(ジメチルアミノ)ベンゾエート2-エチルヘキシルである。
【0079】
この反応によって形成される生成物の代表的な構造を以下に示す。構造は1,3-ジカルボニル-化合物として示されるが、それらはエノール形態でも記述され得ることに留意されたい。溶媒に応じて、エノールとジケトンの間に平衡が形成される。
【化3】
【0080】
中間体1,3-ジカルボニル化合物は、例えば、EP0114607B1(Haarmann & Reimer GmbH)及びEP1349823B1(Chemtura Corp)ならびにその引用文献に記載されているクライゼン縮合により得ることができる。4,4’-ジメチルアミノ-ジベンゾイルメタンの合成プロトコルは、European Journal of Inorganic Chemistry,2008,(9),1523-1529に記載されている。本発明の1,3-ジカルボニル化合物の製造のためのさらに改良されたプロセスでは、溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO)を使用する。DMSOを使用するプロセスは、US6,143,935(Eastman Chemical Company)に記載されている。引用された参考文献を含むこれらの文献は、参照により援用される。
【0081】
1a.第1のステップ(必要とされる唯一のステップ):Q=小さなアルキル置換基
Qが小さなアルキル置換基を表す式1の化合物は、単一のステップで得ることができる。プロピオフェノンは、好適なエステルとの反応後に、式Iの1,3-ジカルボニル化合物(QはCH3を表す)を直接生じるケトンの例である(以下のスキームを参照のこと)。
【0082】
構造が、高波長で吸収する交差共役系を形成することができるように、1,3-ジカルボニル化合物の2位の置換基Qは、非常に小さい、例えば、メチル基または直鎖アルキル基であるように選択され得る。Qは、C1-C4アルキル、好ましくはメチルまたはエチルであってもよい。
【0083】
そのような化合物は、例えば、以下の反応スキームに示すように、クライゼン縮合によって製造される。イソフタル酸とベンゾエートとの間の同様の反応は、塩基としてナトリウムアミドを、溶媒としてDMFを使用して、JP6241203B2に記載されている。両方の芳香環がメトキシ基で置換された同様の化合物の合成は、THF中の水素化ナトリウムを使用して、J.Phys Chem.C,2016,120,39,22539-22548(Fraser et al.)に開示されている。
【化4】
【0084】
p-(ジメチルアミノ)ベンゾエートエチルの代わりにp-(1-ピペラジニル)ベンゾエートエチルを使用する場合、ピペリジン置換基を含む類似の生成物が得られる(以下の反応スキーム中の左側の化合物を参照のこと)。そのようなアミン相乗剤は、直接使用することができ、またはマイケル付加反応を介して第二級アミンとして(メタ)アクリレートと反応させることができる(下記を参照のこと)。また、そのようなアミンを、多官能性アクリレートと反応させて、第三級アミン及びアクリレート基の両方を含む最終反応生成物を取得してもよい。
【化5】
【0085】
2.第2のステップ:ステップ1の1,3-ジカルボニル化合物の反応
ステップ1で形成されたアニオンへのアクリレート基含有物質などのマイケルアクセプター材料のその後の付加は容易に起こり、多くの場合、既に式Iの化合物が形成されている。
【0086】
本明細書に記載のプロセスを、以下の2つの反応スキームに示す(例示目的で示す)。以下に示す化合物は、アミノ置換ジベンゾイルメタン(DBM)と二官能性ポリエチレングリコールアクリレート、例えば、PEG600DA(Miwon社のM286として市販されている)またはPEG200DA(Arkema社のSR259として市販されている)との反応によって得られる。本明細書に記載されるように、反応は塩基(スキーム中には示さず)によって開始され、高温で行われる。
【0087】
【0088】
1,3-ジカルボニル化合物及び(メタ)アクリレートから得られるマイケル付加反応生成物の合成には、‘269号に記載の反応条件を用いてもよい。
【0089】
アミン置換基を有する1,3-ジカルボニル化合物(マイケル-ドナー材料として)と、マイケルアクセプター化合物、例えば(メタ)アクリレートとの反応は、好ましくは、塩基性触媒との反応による、1,3-ジカルボニル化合物またはその誘導体の安定化されたドナーアニオンの形成によって開始される。塩基性触媒は、化学量論量または準化学量論量で使用することができる。最も有用な塩基性触媒はアミンまたはアミドであり、好ましい触媒は第二級もしくは第三級アミンまたは非求核性塩基、例えば、アミド、アルコレート、例えば、カリウムもしくはナトリウムtert-ブトキシド、イソプロポキシド、メタノレート、またはエタノレートである。水素化ナトリウムも使用することができる。塩基を、ジベンゾイル種の約0.5~25重量%の触媒量で使用することが好ましい。
【0090】
通常、ルイス酸を使用すると、収率が低くなり、着色生成物がより多くなる。したがって、塩基、及び特にDBU及びDBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン)などの非求核性塩基が好ましい。
【0091】
合成に使用する温度は重要ではない。一般的には、合成を、0~180℃、例えば0~160℃、好ましくは60~145℃の温度で実施する。反応は、大気圧より低いか、等しいか、または高い圧力で実施する。好ましくは、反応を、大気圧及び60~140℃の温度で実施する。アクリレート基の予備重合を回避するために、120℃未満の温度が好ましい。
【0092】
好ましくは、(メタ)アクリレート基とジベンゾイルメタン種とのモル比が1:1~100:1、より好ましくは1:1~50:1で試薬を組み込む。1,3-ジカルボニル化合物とアクリレートとの間の化学量論は、残存アクリレート官能性を含むかまたは含まない式1の最終生成物を得るために、適切に選択してもよい。
【0093】
最終的に、式1の化合物は、アクリレートなどのエチレン性不飽和化合物を含む放射線硬化性組成物に組み込まれ得ることに留意されたい。したがって、余剰のアクリレートは、ほとんどの用途に悪影響を及ぼすことはない。対照的に、未反応のアミノ置換ジベンゾイルメタンまたはその誘導体が最終生成物に含まれることは、光開始に寄与せず、マイグレーションする可能性があり、PI種に利用可能な光を減少させる可能性さえあるため、望ましくない。
【0094】
アクリレートと1,3-ジカルボニル化合物との間でマイケル反応を行うための最良の様式は、通常、溶媒を含まず、80~140℃、好ましくは90~120℃の高温である。反応は、非求核性塩基、好ましくはDBU(1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン)を添加することによって最も良好に実施される。次いで、混合物を、IR分光法またはGPCなどの分析方法によって出発物質の完全な変換が観察されるまで、約100℃で撹拌する。
【0095】
【0096】
溶媒、好ましくは、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノンなどの有機溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの任意のアルコール、またはジメチルスルホキシド(DMSO)、塩化メチレン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの極性溶媒を任意選択で使用することができ、ただし、溶媒を除去する必要がないように、溶媒が存在しないことが好ましい。
【0097】
任意選択で、HQME(4-メトキシフェノール)またはN-PAL塩などの阻害剤/安定剤、例えば、Genorad 16安定剤(Rahn company、Switzerland)を1重量%未満の量で添加して、予備重合を防止する。
【0098】
反応の第2のステップの進行は、GPCなどの一般的な分析装置によって追跡することができ、出発物質よりも高分子量の新規ピークとして付加生成物の形成が示される。あるいは、例えば、810cm-1の波数でのアクリレートバンドの消失が示されるIR分光法によって、反応を追跡することができる。出発材料及びマイケルアクセプター材料のpH値に応じて、プロセスの第2のステップは、マイケルドナー材料が完全に消費される前に、1時間未満~最大で20時間かかり得る。好ましくは、反応混合物を1~10時間、より好ましくは1~5時間反応させる。
【0099】
‘269号に記載されるように、予想されるが望ましくない副生成物の形成は観察されなかった。特に、式1の構造の生成物に加えて、追加の副生成物が形成されると考えられ、1,3-ジカルボニル化合物の両方の酸性メチレン水素が置換されて、エノール形成不可能な化合物が得られる。しかしながら、実施したどの実験でも、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を使用した飛行時間型(TOF)質量分析法(MS)などの非常に高度な分析方法を使用して反応混合物を分析した場合でも、二置換ジベンゾイルメタンの生成は検出されなかった。本発明者らは、メチレン炭素のいずれかの側にアリール置換基が存在することにより、マイケルアクセプターによる置換が単一の置換基に制限されると仮定している。
【0100】
第3のステップ(任意選択):
このステップは、なぜこのプロセスに触媒量の塩基(または酸)のみが必要なのかを示している。このステップでは、形成される生成物がプロトン化され、塩の代わりに中性の生成物がプロセスの最終生成物として示される(式Iで表される)。ほとんどの場合、このステップは特別な条件または反応物を必要としない。しかしながら、ステップ1で使用した塩基の量及び種類に応じて、酢酸、アクリル酸、またはリン酸などのいくつかの無機酸または有機酸を添加することによって塩基を中和することが有利であり得る。硬化性組成物のpH値の調整は、レトロマイケル付加反応の防止の観点からも有利であり得る。
【0101】
式1の化合物の精製ステップ及び特性
式Iの最終生成物は、さらなる処理または精製を行わずに得られたまま使用することができる。しかしながら、所望であれば、化合物は、洗浄ステップなどの一般的な精製手順によって、またはクロマトグラフィー分離もしくは当技術分野で使用される他の精製方法によって精製することができる。溶媒が使用される場合、化合物は、例えばロータリーエバポレーターまたは薄膜エバポレーターでの蒸発などの通例の乾燥方法によって溶媒から分離される。得られる一般式Iの化合物は、通常、黄色または茶色の液体であり、好ましくは約500~5,000Da、より好ましくは約800~2,500Daの範囲内の重量平均分子量(Mw)を示し、好ましくは、最も一般的なアクリレートに対して可溶性または相溶性である(これは、それらが均一な溶液を形成することを意味する)。粘度を調整するために、式1の化合物を、専用の用途のために配合する前に、任意のエチレン性不飽和化合物と混合してもよい。
【0102】
アミン相乗剤及び光開始剤としての本発明のアミノケトン
上記の化合物は、II型光開始剤と組み合わせて水素ドナーとして使用され得る。光開始剤は、任意の種類のケトンであり得る。好ましいのは、本発明のアミノケトン相乗剤、及び任意選択で単官能性、二官能性、またはより高次の官能性のアクリレートまたはメタクリレートのいずれか1つまたは混合物と一緒になって硬化性組成物を形成する芳香族ケトンである。本発明で使用するための芳香族ケトンII型光開始剤には、ベンゾフェノン、4-フェニル-ベンゾフェノン、及びチオキサントンの構造要素を含むものが含まれる。
【0103】
好適なベンゾフェノンの例としては、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、及び4-メチルベンゾフェノン、メチル-2-ベンゾイルベンゾエート、4-ベンゾイル-4-メチルジフェニルスルフィド、4-ヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン-2-カルボキシ(テトラエトキシ)アクリレート、4-ヒドロキシベンゾフェノンラウレート、ならびに1-[-4-[ベンゾイルフェニルスルホ]フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オンが挙げられる。
【0104】
好適なチオキサントンの例としては、2-4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、及び1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンが挙げられる。
【0105】
本発明のアミノケトンは、II型光開始剤をさらに含むキットの一部を形成し得る。このキットは、本発明のアミノケトン及びII型光開始剤を、同じ組成物または別々の組成物のいずれかに含み得る。
【0106】
上述のように、本発明のアミノケトンは、例えば、UV-A領域(320~400nm)において、アミノベンゾエートよりも高波長でUVを吸収する。吸収におけるこのシフトにより、II型光開始剤の吸収との干渉が低減される。さらに、本発明のアミノケトン化合物は、1分子中にアミン官能性及びケトン官能性の両方を含み、したがって、開始のために追加のPI成分を必要としない場合がある。
【0107】
実施例に示すように、市販のII型光開始剤と組み合わせた式1の化合物は、様々な官能性のアクリレートモノマーの混合物を含む組成物の重合を効果的に開始して、良好な硬化を有する硬化生成物を提供した(実施例2及び12を参照のこと)。対照的に、市販のアミノベンゾエート相乗剤を同じII型光開始剤と組み合わせて含む比較例1及び11は、アクリレートモノマーの同じ混合物を硬化させて、有意に低いMEK耐摩擦性を有する硬化生成物を提供した。
【0108】
さらに、式Iの化合物は、‘269WOに開示されている光開始剤と組み合わせて使用すると、アクリレートモノマー混合物の重合を効果的に開始することができた(本発明の実施例4及び5を参照のこと)。対照的に、市販のアミノベンゾエート相乗剤を同じ‘269WOのII型光開始剤と組み合わせて含む比較例3及び5は、アクリレートモノマーの同じ混合物を硬化させて、有意に低いMEK耐摩擦性を有する硬化生成物を提供した。
【0109】
さらに、本発明者らは、式Iの化合物を追加の光開始剤の非存在下で使用しても、アクリレートモノマー混合物の重合を開始することができることを見出した(実施例7を参照のこと)。
【0110】
さらに、式Iの化合物を追加の市販のアミン相乗剤を含む組成物中で使用して、良好な硬化特性を有する硬化生成物を得ることができる(実施例9及び10を参照のこと)。
【0111】
式Iの化合物はまた、II型光開始剤としてポリマー型チオキサントンと組み合わせて使用した場合、UV-LED下で良好な硬化を示す(実施例12を参照のこと)。
【0112】
式1の化合物を含むインクまたはコーティング組成物
本発明は、1つ以上の式Iのアミノケトンを1つ以上のアクリレート、メタクリレート、またはそれらの混合物と組み合わせて含む、新規インクまたはコーティング組成物を提供する。
【0113】
本発明は、式Iのアミノケトンを含むUV硬化性コーティングまたはインク、例えば、以下を含む硬化性組成物を提供する:
a.存在する水及び溶媒を除く組成物の全含有量に対して50~99.9重量%、好ましくは70~98.9重量%の少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物、
b.存在する水及び溶媒を除く組成物の全含有量に対して0.1~50重量%、好ましくは1.1~30重量%、より好ましくは0.2~20重量%、例えば0.2~15重量%の少なくとも1種の式(I)の化合物、
c.任意選択で、‘269に開示されている0~20%のII型光開始剤、例えばチオキサントン、及び/またはベンゾフェノン及び/またはDBM系のII型光開始剤。
【0114】
本発明のUV硬化性コーティング及びインクは、310~420nmの波長を有するUV光で硬化性であり得る。
【0115】
量
得られる式Iの化合物は、存在する水及び溶媒を除いて1~50重量%、好ましくは5~25重量%、例えば5~15重量%の量で、インクまたはコーティングに組み込むことができる。
【0116】
得られる式Iの化合物は、Omnipol BP、Variplus APなどのベンゾフェノン、ポリマー型チオキサントン(例えば、Omnipol TX)などのチオキサントン、またはAllnex社のLEO10103などの自己硬化多官能性アクリレート樹脂を含む他のII型光開始剤と組み合わせてインクまたはコーティングに配合することができる。式Iの化合物は、‘269号に開示されているII型光開始剤、好ましくは残存(メタ)アクリレート官能性を含む‘269号のII型光開始剤も含むインクまたはコーティングに組み込むことができる。Omnipol ASAまたはGenopol AB2などの市販のアミノベンゾエート相乗剤の代わりに、本発明のアミン相乗剤を使用することにより、印刷物の架橋密度は、実施例の硬化性組成物によって示されるMEK耐性の増加によって示されるように、劇的に改善される。
【0117】
本発明のインク及びコーティングは、5~30重量%の式Iの化合物、例えば10~30重量%の式Iの化合物、15~25重量%、または15~20重量%の式Iの化合物を含み得る。
【0118】
本発明のインク及びコーティングは、第2の異なるアミン相乗剤に加えて、式Iの化合物の混合物を含み得る。第2のアミン相乗剤と組み合わせて使用する場合、第2のアミン相乗剤は、式Iの化合物に対して異なる波長で吸収することが好ましい。
【0119】
本発明のインク及びコーティングは、20~95重量%の1種以上のエチレン性不飽和モノマーを含み得る。好ましくは、本発明のインク及びコーティングは、存在する水及び溶媒を除いて50~95重量%の1種以上のモノマー、より好ましくは70~95重量%の1種以上のモノマーを含む。
【0120】
本発明のインク及びコーティング中に存在する場合、1種以上のII型光開始剤は、存在する水及び溶媒を除いてインクまたはコーティング組成物の1~15重量%、好ましくは1~5重量%の量で組み込まれ得る。
【0121】
好適なモノマー
好適な単官能性エチレン性不飽和モノマーの例としては、以下のもの(及びそれらの組合せ)が挙げられるが、それらに限定されず、エトキシ化という用語は、エチレンオキシドの使用による鎖延長化合物を指し、プロポキシ化は、プロピレンオキシドの使用による鎖延長化合物を指し、アルコキシル化は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのいずれかまたは両方を使用する鎖延長化合物を指す。同等のメタクリレート化合物も使用することができるが、当業者は、メタクリレート化合物がそれらの同等のアクリレート対応物よりも低い反応性を有することを理解するであろう:イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソノニルアクリレート、オクチル/デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4-t.ブチルシクロヘキシルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンチルアクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、アルコキシル化ノニルフェノールアクリレート、クミルフェノキシエチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシル化メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、ジエチルグリコールブチルエーテルアクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート、エトキシル化エチルヘキシルアクリレート、アルコキシル化フェノールアクリレート、エトキシル化フェノールアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート、プロポキシ化ノニルフェノールアシレート、ポリエチレングリコールo-フェニルフェニルエーテルアクリレート、エトキシル化p-クミルフェノールアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート、アルコキシル化ラウリルアクリレート、エトキシル化トリスチリルフェノールアクリレート、N-(アクリロイルオキシエチル)ヘキサヒドロフタルイミド、N-ブチル1,2(アクリロイルオキシ)エチルカルバメート、コハク酸水素アクリロイルオキシエチル、オクトキシポリエチレングリコールアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、アクリル酸2-メトキシエチル、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリル酸2-カルボキシエチル、4-ヒドロキシブチルアクリレート。
【0122】
本発明の硬化性組成物は、多官能性(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよい。好適な二官能性または三官能性または多官能性エチレン性不飽和モノマーの例としては、以下のもの(及びそれらの組合せ)が挙げられるが、それらに限定されず、エトキシ化という用語は、エチレンオキシドの使用による鎖延長化合物を指し、プロポキシ化は、プロピレンオキシドの使用による鎖延長化合物を指し、アルコキシル化は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのいずれかまたは両方を使用する鎖延長化合物を指す。同等のメタクリレート化合物も使用することができるが、当業者は、メタクリレート化合物がそれらの同等のアクリレート対応物よりも低い反応性を有することを理解するであろう:1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、2-メチル-1,3-プロパンジイルエトキシアクリレート、2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、エトキシル化2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、3メチル1,5-ペンタンジオールジアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10デカンジオールジアクリレート、エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシ化エチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリ(テトラメチレングリコール)ジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エトキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバリン酸ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2-ヒドロキシ-3-{4-[2-ヒドロキシ-3-(ビニルカルボニルオキシ)プロポキシ]ブトキシ}プロピルアクリレート(これは、好ましい実施形態であり、SartomerからCN132として市販されている)、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールFジアクリレート、アクリル酸2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル、ジオキサングリコールジアクリレート、エトキシル化グリセロールトリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、メラミンアクリレートオリゴマー、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシル化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、200~2000の分子量を有する任意のポリエチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、200~2000の分子量を有するポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート。
【0123】
これらの配合物に部分的に使用することができる他の官能性モノマークラスとしては、N-ビニルカプロラクタムなどの環状ラクタム、N-ビニルオキサゾリジノン及びN-ビニルピロリドン、ならびにアクリロイルモルホリンなどの第二級または第三級アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-t.ブチルアクリルアミド、N-ヘキシルアクリルアミド、N-シクロヘキシルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、N-t.オクチルアクリルアミド、N-ドデシルアクリルアミド、N-ベンジルアクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-プロピルアクリルアミド、N,N-ジブチルアクリルアミド、N,N-ジヘキシルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノヘキシルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノヘキシルアクリルアミド、及びN,N’-メチレンビスアクリルアミドが挙げられる。
【0124】
本発明のアミノケトン化合物が、Qの一部を形成する残存アクリレート官能性に加えて、1分子中にアミン官能性とケトン官能性の両方を含む場合、本発明のアミノケトン化合物は、自己硬化性組成物に組み込まれ得る。
【0125】
着色剤
UV硬化性コーティングまたはインクは、着色剤をさらに含んでもよい。本発明のエネルギー硬化性インクまたはコーティングは、その中に分散された染料または顔料の形態の1つ以上の着色剤を含有してもよい。本発明での使用に適した顔料には、従来の有機または無機顔料が含まれる。代表的な顔料は、例えば、Pigment Yellow 1、Pigment Yellow 3、Pigment Yellow 12、Pigment Yellow 13、Pigment Yellow 14、Pigment Yellow 17、Pigment Yellow 63、Pigment Yellow 65、Pigment Yellow 73、Pigment Yellow 74、Pigment Yellow 75、Pigment Yellow 83、Pigment Yellow 97、Pigment Yellow 98、Pigment Yellow 106、Pigment Yellow 111、Pigment Yellow 114、Pigment Yellow 121、Pigment Yellow 126、Pigment Yellow 127、Pigment Yellow 136、Pigment Yellow 138、Pigment Yellow 139、Pigment Yellow 174、Pigment Yellow 176、Pigment Yellow 188、Pigment Yellow 194、Pigment Orange 5、Pigment Orange 13、Pigment Orange 16、Pigment Orange 34、Pigment Orange 36、Pigment Orange 61、Pigment Orange 62、Pigment Orange 64、Pigment Red 2、Pigment Red 9、Pigment Red 14、Pigment Red 17、Pigment Red 22、Pigment Red 23、Pigment Red 37、Pigment Red 38、Pigment Red 41、Pigment Red 42、Pigment Red 48:2、Pigment Red 53:1、Pigment Red 57:1、Pigment Red 81:1、Pigment Red 112、Pigment Red 122、Pigment Red 170、Pigment Red 184、Pigment Red 210、Pigment Red 238、Pigment Red 266、Pigment Blue 15、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 61、Pigment Green 7、Pigment Green 36、Pigment Violet 1、Pigment Violet 19、Pigment Violet 23、Pigment Black 7の群から選択され得る。
【0126】
硬化メカニズム
本発明の放射線硬化性組成物は、例えば、高電圧水銀灯、中電圧水銀灯、キセノン電球、カーボンアークランプ、メタルハライド電球、UV-LEDランプまたは太陽光によって提供されるUV光などの化学線光源によってUV硬化することができる。適用される照射波長は、約200nm~500nmが好ましく、約250nm~400nmがより好ましい。UV線量は、好ましくは約30~3000mJ/cm2の範囲内、より好ましくは約50~500mJ/cm2の範囲内である。本発明のインクまたはコーティング組成物は、500mJ/cm2未満、例えば400mJ/cm2未満、300mJ/cm2未満、250mJ/cm2未満、200mJ/cm2未満、150mJ/cm2未満または100mJ/cm2未満のUV線量で硬化することができる。例えば、本発明のインクまたはコーティング組成物は、100~500mJ/cm2、例えば、好ましくは100~400mJ/cm2、またはより好ましくは150~300mJ/cm2、例えば150~250または150~200mJ/cm2のUV線量を供給するUV-LED光源で硬化することができる。また、電球は、放射線硬化性組成物の吸収スペクトルに応じて適宜選択することができる。さらに、本発明の硬化性組成物は、不活性条件下で硬化させることができる。本発明のインク及びコーティング組成物は、窒素などの不活性雰囲気下で硬化させることができる。
【0127】
EITのPower Puck IIによるUV線量測定:すべての硬化実験において、UVA、UVB、UVC、及びUVV線量(mJ/cm2)を、EIT Inc.,Sterling,VA 20164,USAの校正済みUV Power Puck IIを使用して測定した。実験は以下のように行った:UV線量測定の前に硬化ユニットの(LED-)UVランプ強度及びベルト速度を調整した。次いで、硬化部のベルト上にパワーパックを載せてUV線量を測定した。測定されたUVA(及びUVA2)線量、UVB線量、UVC線量、及びUVV線量を合計して、最終UV線量を得る。得られた値(測定された線量の和)を実施例に示す。
【0128】
コーティング及びインクにおける硬化性組成物の使用:
本発明の放射線硬化性組成物の高い反応性のために、本発明の放射線硬化性組成物は、放射線硬化性印刷インク及びコーティング、例えばUV-フレキソインク、UV-インクジェットインク、UV-グラビアインク、またはUVオフセットインクに特に適している。顔料及び染料は通常、重合のためのラジカルを形成するために必要とされる光を吸収するため、高反応性放射線硬化性組成物が特にインクに好ましい。インクは、通常、乾燥顔料をその中に粉砕することによって、または顔料プレスケーキをその中にフラッシングすることによって作製される。低マイグレーション性インクの場合、ミルビーズ由来の摩耗材料がインクを汚染する可能性があるため、乾式粉砕が好ましい。インクの典型的な製造手順では、必要量の乾燥顔料を、一般式1の化合物のアクリレート溶液と、相乗剤と共にミキサーで15~30分間混合して、すべての顔料を濡らす。次いで、分散した顔料を、所望の粉砕仕様が満たされるまで3本ロールミルで粉砕する。次いで、モノマー、オリゴマー、及び添加剤(複数可)、例えばワックス、タルクなどを含有するレットダウン(letdown)ビヒクルをこのミルベースに添加し、所望の粒径及び色強度が達成されるまで、3本ロールミルに1回または2回通過させる。
【0129】
基材
本発明はまた、本発明のインクまたはコーティングを含む印刷基材を提供する。印刷される基材は、紙、プラスチック、金属、及び複合材料などの任意の一般的な基材材料から構成されてもよい。基材は、出版物に一般的に使用される印刷ストックであってもよく、またはシート、容器(例えばボトルもしくは缶)などの形態のパッケージング材料であってもよい。ほとんどの場合、パッケージング材料は、ポリエチレンもしくはポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、またはアルミニウム箔、金属化ポリエステル、もしくは金属容器などの金属である。
【0130】
本発明の放射線硬化性組成物は、マイグレーションする傾向があるかまたは健康リスクを引き起こす疑いがある低分子量(例えば500ダルトン未満)の分子が好ましくは存在しないような用途に特に適している。そのような用途は、例えば、特に小さな光開始剤分子が望ましくない(食品)パッケージング物品のコーティングである。エネルギー硬化性組成物がパッケージング材料に適用され、完全に硬化すると、それは食品、飲料、化粧品、生物学的材料または標本、医薬品などの任意の種類の液体または固体材料を含有するために使用され得る。
【0131】
以上、本発明をその好ましい実施形態を含めて詳細に説明した。しかしながら、本開示を考慮すると、本発明は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多数の修正、置換、部品の再配置及び/または改良が可能であることは当業者には明らかであろう。
【0132】
本発明を、説明の一部を形成する以下の番号付き段落によってさらに説明する。
【0133】
1.一般式I
【化8】
の1,3-プロパン-ジオンの構造を含むアミノケトン化合物であって、
式中、-NR
1R
2置換基が、フェニル環上のC=O置換基に対して、オルト、メタ、またはパラ位のいずれかであり得、好ましくはパラ位であり、
R1及びR2が、それぞれ独立して、H、分岐または非分岐のC1-C12アルキルもしくはシクロアルキル、またはC2-C12ヘテロアルキルもしくはヘテロシクロアルキル、C3-C12アリール、またはC3-C12ヘテロアリールからなる群から選択され、R1及びR2が、一緒になって環または複素環、例えば、モルホリン、ピペリジン、またはピペラジンを形成することができ、第2の窒素が、Hまたはアルキルであり得、
Qが、直鎖または分岐鎖C-1またはC-20アルキルであり、m=1であり、またはポリエステルアクリレート及びグリシジルエーテルアクリレートを含む任意選択でアルコキシル化された単官能性、二官能性、または多官能性のアクリレートモノマー、オリゴマー、またはポリマーの残部であり、式中、Qが誘導されるアクリレートの官能価が、少なくともmであるが、それより高くてもよく、その結果、Q上にアクリレート官能性が残り、mは≧1の整数であり、
Zが、一置換、二置換、三置換、または多置換のフェニル、ビフェニル、4-ジアルキルアミノフェニル、または任意置換のC3-C12ヘテロアリールを含むC3-C18アリールからなる群から選択され、1位でプロパンジオンに結合するZが、式Iのプロパンジオン部分の3位に結合した芳香族置換基と同じ置換基であり得る、前記アミノケトン化合物。
【0134】
2.段落1に記載の化合物を、II型光開始剤と組み合わせて含む、インクまたはコーティング組成物。
【0135】
3.1つ以上の単官能性、二官能性、またはより高次の官能性のアクリレートまたはメタクリレートをさらに含む、段落2に記載の組成物。
【0136】
4.前記II型光開始剤が、ケトンまたは芳香族ケトンを含む、段落2に記載の組成物。
【0137】
5.前記ケトンが、ベンゾフェノン、4-フェニル-ベンゾフェノン、チオキサントン、及びそれらのブレンドからなる群から選択される芳香族ケトンである、段落4に記載の組成物。
【0138】
6.
a.存在する水及び溶媒を除く前記組成物の全含有量に対して50~99.9重量%、好ましくは70~98.9重量%の少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物、
b.存在する水及び溶媒を除く前記組成物の前記全含有量に対して0.1~50重量%、好ましくは1.1~30重量%、より好ましくは0.2~15重量%の少なくとも1種の式(I)の化合物、
c.任意選択で、‘269号に示されている0~20%のII型光開始剤、例えばチオキサントン、ベンゾフェノン、またはDBM系のII型光開始剤
を含む、段落2~5のいずれか1項以上に記載の組成物。
【0139】
7.前記組成物が、310~420nmの波長を有するUV光で硬化可能である、段落2~6のいずれか1項以上に記載の組成物。
【0140】
8.1種以上の着色剤をさらに含む、段落2~7のいずれか1項以上に記載の組成物。
【0141】
以上、本発明をその好ましい実施形態を含めて詳細に説明した。しかしながら、当業者であれば、本開示を考慮すれば、本発明の範囲及び趣旨の範囲内で本発明に修正及び/または改良を加えることができることが理解されよう。
【0142】
式1の化合物を製造するために使用するすべての出発物質は、化学的目録に列挙され得、これは、それらの毒物学的特性が公知であることを意味する。例えば、PEG200-ジアクリレートなどのアクリレートと反応してオリゴマーアミン相乗剤を形成する1,3-ジカルボニル-中間体を形成する、4-ジメチルアミノベンゾエートエチル及びアセトフェノンは、既知の毒物学的特性を有する。
【実施例】
【0143】
本発明をさらに例示する以下の非限定的な実施例によって本発明をさらに説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定することを意図するものでも、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきものでもない。
試験方法
分子量:
a)非ポリマーまたは非オリゴマー化合物(すなわち、定義されたモノマー種)の分子量は、化合物の分子構造によって定義され、計算される。通常、これは、モノマーの供給業者の技術データシートによって提供されるか、または欧州化学品庁(ECHA)のWebページ上で見出すことができる。
b)オリゴマー種及びポリマー種は、通常、鎖長の分布、したがって分子量の分布を含む。したがって、オリゴマー種及びポリマー種(ならびに個々の分子量が500Da超の種の混合物として存在する成分(したがって分布を有する成分-例えば植物油))の分子量は、103及び104オングストロームの2つのGPC Ultrastyragelカラム(5μm混合、300mm×19mm、Waters Millipore Corporation,Milford,MA,USA)及び移動相としてのTHFを備えたHewlett-Packard 1050シリーズHPLCシステムで実施するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。分子量を、ポリスチレン標準と比較することによって計算する。当業者は、この分子量の定義が、一般的には分子量分布を有するポリマー材料に適用されることを理解するであろう。特に明記しない限り、オリゴマー及びポリマーについて本明細書で報告する分子量は、重量平均分子量である。
【0144】
マイケル付加反応を用いて式Iの化合物を形成するための出発物質の1つとして用いる1,3-ジカルボニル-化合物の合成:
ジベンゾイルメタン合成実施例1:アセトフェノンと4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートエチル(EDB)との反応により、4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートエチルアセトフェノン(EDBAP)、すなわち4-(ジメチルアミノ)-ジベンゾイルメタンを形成する。
【化9】
メカニカルスターラー、蒸留物を回収するフラスコを備えたLiebig bridge(冷却器)、温度計、及び滴下漏斗を備えた2Lの4口ガラスフラスコ中で、EDB(195.0g、1.0mol)をキシレン(1.3L)中に60℃で溶解する。カリウムtert-ブタノレート(200g、1.8mol)を少しずつゆっくりと添加し、混合物を110℃に加熱する。次いで、キシレンに溶解したアセトフェノン(133.4g、1.1mol)の溶液(溶液の体積250mL)を調製し、滴下漏斗に注ぐ。このアセトフェノンの溶液をEDBの溶液に滴下する。添加が完了した後、混合物を3時間、約125~130℃で撹拌する。約300mLの蒸留物を回収する。混合物を約70℃に冷却した後、緩やかな減圧(100ミリバールから開始し、20ミリバールに低下させる)を適用して、残留キシレンを留去する(約500L)。この反応混合物を、室温まで冷却する。ペースト状の反応混合物を、撹拌子及び冷水(1L)を備えた3Lガラスビーカーに少しずつ注ぐ。完全に添加した後、30重量%の硫酸を添加することによって、混合物をpH7~8に酸性化する。
【0145】
沈殿物を濾過し、冷水で洗浄する。生成物を真空中で70℃にて乾燥させ、暗黄色の固体として取得し、これを沸騰エタノールから再沈殿させ、濾過し、再び乾燥させた。
【0146】
黄色固体:114.8g(0.43mol)収率:43%
UV吸収(アセトニトリル):lmax=310nm、401nm
H-NMR (400MHz, CDCl3): 3.05-3.08 (NCH3)2);6.64 - 6.72 (CHaromat.);6.77 (CHenol);7.45 - 7.50 (Haromat.);7.91-7.97 (Haromat.)
HRMS-TOF (ESI+): m/z 計算値: [C17H17NO2+Na+]: 290.1151 実測値: 290.1150
【0147】
溶媒としてDMSOを用いたEDBAPの合成のための代替合成プロトコル:
アセトフェノン(10.0g、0.083mol、1.0当量)及びエチル-4-ジメチルアミノベンゾエート(17.7g、0.092mol、1.1当量)を、50℃でDMSO(50mL)中に希釈した。透明な溶液が得られた時点で、ナトリウムメトキシド(8.97g、0.166mol、2.0当量)を添加し、反応混合物を50℃で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、EtOAc(150mL)及び水(200mL)を加えた。有機相を分離し、溶媒を真空下で除去した。粗生成物をEtOHからの再結晶により精製した。EDBAPを黄色の粉末として得た(10.0g、0.037mol、45%)。
GPC: Mn 134g/mol, Mw 136g/mol, PDI 1.01。
【0148】
ジベンゾイルメタン合成実施例2:ビス-ジメチルアミノ置換DBM(BDAPP)の調製:
【化10】
4’-ジメチルアミノアセトフェノン(30.0g、0.184mol、1.0当量)を60℃でキシレン(150mL)に溶解する。カリウムtert-ブタノレート(22.6g、0.201mol、1.1当量)をゆっくりと添加し、混合物を120℃に加熱する。次いで、キシレン(150mL)中の4-ジメチルアミノベンゾエートエチル(39.0g、0.201mol、1.1当量)の溶液をゆっくりと添加し、混合物を120℃で5時間撹拌する。混合物を室温まで冷却し、水(150mL)を加える。生成物1,3-ビス[p-(ジメチルアミノ)フェニル]-1,3-プロパンジオンが直ちに沈殿し、これを濾過する。生成物を水及びトルエンで洗浄し、乾燥させ、黄色の固体として取得する(22.2g、0.072mol、39%)。
UV吸収スペクトル:アセトニトリル濃度2.5ppm:l
max=424nm(消光:0.794)(ショルダー:344nm、250nm)-この溶媒では明らかにエノール型が優勢である。
HRMS-TOF (ESI+): m/z 計算値: [C
19H
22N
2O
2+Na
+]: 333.1571 実測値: 333.1564
NMRシグナルは構造に従う。NMRではまた、CDCl
3中で約80%がエノール型であり、20%がケト型であることが示される。
13C-NMR (400MHz;CDCl
3): 39.9;40.0;50.5;89.8;110.6;111.0;122.9;124.6;128.7;131.2;152.8;153.5;183.9;192.4 ppm
【0149】
ジベンゾイルメタン合成実施例3:4Ph-DBM-NMe
2(3-(4-ビフェニリル)-1-[p-(ジメチルアミノ)フェニル]-1,3-プロパンジオン)の調製
【化11】
4-アセチルビフェニル(10.0g、0.051mol、1.0当量)及びEDB(11.8g、0.061mol、1.2当量)を50℃でDMSO(50mL)に溶解する。透明な溶液が得られた時点で、ナトリウムメタノレート(5.51g、0.102mol、2.0当量;NaOMe)を一度に添加する。赤色の溶液が直ちに形成される。溶液を50℃で2時間、次いで80℃で2時間撹拌する。室温まで冷却した後、酢酸エチル(150mL;EtOAc)及び水(100mL)を加え、有機成分を抽出する。有機相を水(100mL)で洗浄し、溶媒を蒸発させる。生成物が黄色の固体として得られる(9.40g、0.027mol、53%)。
【0150】
UV-VIS(5.0ppm;アセトニトリル):lmax=410nm(消光:0.532);(282及び315nmに小さなショルダー部)
H-NMR (400MHz, CDCl3)3.05+3.07 (6H, N-(CH3)2);4.57 (0.15H);6.73 (m;2H;Haromat);6.82 (1H;enol-H-g);7.4 - 8.1 (Haromat) 4.57ppmのシグナルは、この分子がエノール型優勢であることを示す)
13C-NMR (CDCl3): 40.0 (C-a);91.7 (C-g);111 (C-c);122.7 (Ce);127.1 (C-k & C-n);127.2 (C-j);127.6 (C-p);128.9 (C-o);129.3 (C-d);134.6 (C-i);140.0 (C-m);144.3 (C-l);153.2 (C-b);181.7 (C-h);186.7 (C-f) ppm
【0151】
マイケル付加反応による式Iのアミノケトンの形成
上記のように合成した1,3-ジカルボニル化合物を、例えばアクリレートと反応させて、式Iの最終的なアミン相乗剤を形成する。
【0152】
マイケル付加合成実施例1:PEG200DAへのEDBAPの付加
EDBAP(20g)及びポリエチレン-グリコール-200-ジアクリレート(20g;SR259、Sartomer(Arkema Group)の製品)を丸底フラスコに加え、混合物を120℃に加熱する。混合物が黄色スラリーになった時点で、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン(0.5g、DBU、3.28mmol、4.7mol%)を添加する。DBUの添加後、スラリーは、徐々に褐色/黄色の溶液に変わる。褐色溶液が得られた時点で、混合物を110℃に冷却する。約1時間後にEDBAPの完全変換が得られ、反応生成物が褐色の油状物として得られる(36.0g、95%)。EDBAPとPEG200DAのモル比は、PEG200DAが主に2当量のEDBAPと反応して、残存アクリレート官能性を含まない主要生成物を生じるように選択される。PEG200DAは、約1.6のアクリレート官能価を有する。
【0153】
未消費のEDBAPの量は、GPCによれば1%未満である。
GPC: Mn 1030g/mol, Mw 1300g/mol, PDI 1.26。
UV吸収:342nm 吸光係数=14000L・mol・cm-1(244に小さなピーク、288nmにショルダー部)。主生成物中のNの重量%は約3%である。
【0154】
マイケル付加合成実施例2:残存アクリレート官能性を有するPEG600DAへのEDBAPの付加
EDBAP(7.5g)及びポリエチレングリコール-600-ジアクリレート(30g;M286、Miwon社の製品)を丸底フラスコに加え、混合物を120℃に加熱する。混合物が黄色スラリーになった時点で、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン(02.5g、DBU、1.6mmol)を添加する。DBUの添加後、スラリーは、徐々に褐色/黄色の溶液に変わる。褐色溶液が得られた時点で、混合物を110℃に冷却する。約1時間後にEDBAPの完全変換が得られ、反応生成物が褐色の油状物として得られる(95%)。
未消費のEDBAPの量は、NMRによれば1%未満である。EDBAPとPEG600DAのモル比は、PEG600DAが主に1当量のEDBAPと反応して、アクリレート官能性を含む主要反応生成物を生じるように選択される。
UV吸収(アセトニトリル);lmax=342nm;ショルダー部243nm。主要生成物中のNの重量%は約1.4%である。
【0155】
マイケル付加合成実施例3:PEG200-DAへのBDAPPの付加
1,3-ビス[p-(ジメチルアミノ)フェニル]-1,3-プロパンジオン(10.0g、32.2mmol、1.0当量)、PEG200DA(20.0g;SR259)及びDBU(0.5g、3.30mmol、10mol%)を丸底フラスコに加え、混合物を100℃で3.5時間撹拌する。次いで、追加のDBU(0.5g、3.30mmol、10mol%)を加え、混合物を100℃に2.5時間加熱する。生成物が、橙色/褐色の油状物として得られる(28.0g、93%)。BDAPPとPEG200DAのモル比は、PEG200DAが主に1当量のBDAPPと反応して、アクリレート官能性を含む主要反応生成物を生じるように選択される。
分析的特徴決定:
GPC: Mn 800g/mol, Mw 1000g/mol, PDI 1.25。主要反応生成物中のNの重量%は約4.3%である。
未消費の1,3-ビス[p-(ジメチルアミノ)フェニル]-1,3-プロパンジオンの量は、GPCによれば1%未満である。
【0156】
図1は、反応生成物の質量スペクトルである。標的分子及び未反応のSR259は、HRMSにおいてナトリウム付加物として検出される。
【0157】
UV吸収スペクトル;アセトニトリル:λmax=343nm。
【0158】
マイケル付加合成実施例4:PPTTAへのEDBAPの付加
【化12】
磁気撹拌子、冷却器、温度計、及びガス入口を備えた100MLの褐色丸底フラスコに、EDBAP(10.0g)、PPTTA(Laromer PPTTA;21.4g、理論値60.8mmol)及びDBU(0.15g)を加える。0.1gのHQMEを添加し、撹拌混合物中に空気を吹き込む。混合物を100~最大120℃に2時間加熱する。2時間後、追加のDBU(0.1g、合計0.25g、1.6mmol DBU)を添加し、混合物を最高温度100℃まで4時間加熱する。生成物が、最終貯蔵容器中に約60℃で注がれる高粘度の褐色がかった液体として得られる。PPTTA上の残存アクリレート官能性の他に、それはまた、いくつかの未反応PPTTAを含有する。
【0159】
分析的特徴決定:
IR:強い特徴的な吸収:1721.6;1594.3;1406.9;1293.1;1269.0;1104.8;1062;983.6;944.5(sh);808.9cm-1
UV:244;343nmにおける強い吸収バンド
GPC: Mn/Mw 1175/1452g・mol-1
主要反応生成物中のNの重量%は約1.2%である。
【0160】
マイケル付加合成実施例5:4Ph-DBM-NMe
2-PEG200DA(FM-4-041)
【化13】
4Ph-DBM-NMe
2(9.00g、0.0262mol、1.0当量)をPEG200DA(SR259、15.0g)に添加し、混合物を120℃に加熱する。1時間後、DBU(0.5g、3.28mmol、12.5mol%)を加え、透明な溶液が直ちに形成される。混合物を100℃に冷却し、2時間撹拌する。生成物が褐色の油状物として得られる(21.9g、89%)。4Ph-DBM-NMe
2及びPEG200DAのモル比は、各PEG200DAが主に2当量の4Ph-DBM-NMe
2と反応して、アクリレート官能性を含まない主要な反応生成物を生じるように選択される。
GPC: M
n 870g/mol, M
w 1140g/mol, PDI 1.3。主要生成物中のNの重量%は約2.7%である。
【0161】
本発明のアミン相乗剤を用いることによって達成される改善されたより良好な耐溶媒性を示す硬化性混合物の調製及び硬化。
【0162】
市販のオリゴマーアミノベンゾエート(Genopol AB2)と比較した、上記のように調製したアミン相乗剤を用いた被験コーティングの調製及び評価。
【0163】
室温で成分を撹拌及び混合することによって、様々な被験コーティングを調製した。組成物に使用する各成分の量を、以下の表に示す。Bykチャート上に約6μmの湿潤膜厚でコーティングを塗布し、従来のUV光(H電球、35%のランプ強度、60m/分のベルト速度、3パス)下で大気中にて硬化させた。パス当たりのUV線量:UVA:11.1mJ/cm2、UVB:8.3mJ/cm2、UVC:3.4mJ/cm2、UVV:10.6mJ/cm2(EIT社の校正済みPower Puck IIで測定した)。
【0164】
UV硬化は、表面の状態に関して次のように評価した。
1=未硬化(湿潤)
2=わずかに硬化した(脂っぽい)
3=硬化ほぼ完了(わずかに粘着性)
4=硬化(非粘着性)、表面硬化不完全(わずかにべたつく表面層)
5=硬化(非粘着性)、表面硬化完了(表面層にべたつきなし)
【0165】
実施例1及び3(比較例)ならびに2及び4(本発明)
【表1】
表1は、コーティング膜が耐えるMEK二重摩擦の数によって示されるように、Genopol AB2などの現在商業的に使用されているアミノベンゾエートエステル化合物と比較して、本発明のアミン相乗剤を含む硬化性組成物の硬化応答性/架橋密度が向上していることを示している。本発明のアミン相乗剤を使用することによって、配合物中のII型光開始剤としてオリゴマーベンゾフェノン(Omnipol BP)を使用する場合に、コーティングを損傷することなく硬化が耐える二重摩擦の量で表される耐溶媒性が3から80超まで増強される。‘269号に開示されているPEG200DA-DBMをオリゴマーベンゾフェノンの代わりに使用する場合でも、結果はほぼ同じである。
【0166】
表2において、4-フェニル-DBM-PPTTA(‘269号に開示されている)をII型光開始剤として使用する。この場合も、本発明のアミン相乗剤を使用する場合、耐溶媒性は劇的に向上し、これは架橋が向上することを示す。
【0167】
【0168】
【表3】
表3は、PEG200DA-4PhDBMNMe2が、それ自体で光開始剤であり、II型光開始剤の添加を必ずしも必要としないことを示す。PEG200DA-DBMを添加しても、膜の硬化は改善されない。
【0169】
【表4】
表4は、本発明の化合物が、同じ分子中にアミン相乗剤及びII型光開始剤の機能性を提供することを明白に示している。PEG200DA-4PhDBMNM2は、硬化性組成物において唯一の光開始剤として作用する。さらに、N
2雰囲気下で硬化を実施する効果も認められる。
【0170】
表5:増感剤(Omnipol TX)及びアミン相乗剤を含有する以下の表に示す硬化性組成物のドローダウンは、UV-LED硬化によって硬化され得る。第2の硬化性組成物では、市販のGenopol AB2がPEG200DA-EDBAPに置き換えられており、これにより、UV-LED(本実施例では395nm)がより低波長(例えば、365nmでのUV-LED)であっても硬化が改善され、365nmにおいてPEG200DA-EDBAPのより強い吸収があることから、本発明のアミン相乗剤のプラスの効果は、さらにより顕著であるはずである。
【表5】
【0171】
図2では、3つの異なるアミン相乗剤のUV-吸収スペクトルを示す。明らかに、EDBAP-PEG200DAは、アミノベンゾエートに基づく市販のGenopol ABよりもはるかに高波長にシフトされる。WO2015023371(C-974、Sun Chemical)に例示されているアミノケトン樹脂でさえ、より低波長で吸収する。多くのベンゾフェノンが約300nm以下で吸収するため、本発明のアミン相乗剤は、アミノベンゾエート系アミン相乗剤よりも優れた硬化特性を示す。しかしながら、385nmよりも高波長で作用させるためには、ベンゾフェノンを用いる代わりに、例えばチオキサントンまたはクマリンによって増感することが好ましい。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iの1,3-プロパン-ジオンの構造を含むアミノケトン化合物であって、
【化1】
式中、-NR
1R
2置換基が、フェニル環上のC=O置換基に対して、オルト、メタ、またはパラ位のいずれか1つにあり得、
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、H、分岐または非分岐C
1-C
12アルキル、分岐または非分岐C
1-C
12シクロアルキル、分岐または非分岐C
2-C
12ヘテロアルキル、分岐または非分岐C
2-C
12ヘテロシクロアルキル、C
3-C
12アリール、C
3-C
12ヘテロアリールからなる群から選択されるか、またはR
1及びR
2が、一緒になって複素環を形成し、
Qが:
i)メチルまたは直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、m=1である、あるいは
ii)単官能性、二官能性、または多官能性のアクリレートモノマー、オリゴマー、またはポリマーの残部であり、式中、Qが誘導されるアクリレートの官能価が、少なくともmであるが、それより高くてもよく、その結果、Q上にアクリレート官能価が残り、mが≧1の整数である、のいずれかであり、そして
Zが、C
3-C
18アリールまたは任意置換のC
3-C
12ヘテロアリールからなる群から選択され、式中、1位でプロパンジオンに結合しているZが、式Iのプロパンジオン部分の3位に結合している芳香族置換基と同じ置換基であり得る、前記アミノケトン化合物。
【請求項2】
前記-NR
1R
2置換基が、前記フェニル環の前記パラ位にある、請求項1に記載のアミノケトン化合物。
【請求項3】
R
1及びR
2が、分岐鎖または非分岐鎖のC
1-C
12アルキルである、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項4】
R
1及びR
2が共にメチルである、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項5】
R
1及びR
2が、一緒になって、モルホリン、ピペリジン、またはピペラジンからなる群から選択される複素環を形成する、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項6】
R
1及びR
2が、一緒になってピペラジンを形成し、R
1及びR
2に共有結合した窒素原子以外の窒素原子が、H、アルキル、または任意選択でアルコキシル化された単官能性、二官能性、もしくは多官能性のアクリレートモノマー、オリゴマー、もしくはポリマーの残部のいずれかで置換され、マイケル付加を介して第二級アミンに付加される、請求項5に記載のアミノケトン化合物。
【請求項7】
マイケル付加を介して前記第二級アミンに付加される前記任意選択でアルコキシル化された単官能性、二官能性、または多官能性アクリレートポリマーが、ポリエステルアクリレート及びグリシジルエーテルアクリレートからなる群から選択される、請求項6に記載のアミノケトン化合物。
【請求項8】
Zが、一置換、二置換、三置換、または多置換のフェニル、ビフェニル、または4-ジアルキルアミノフェニルから選択されるC
3-C
18アリールである、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項9】
Zが一置換フェニルである、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項10】
Zが、ジアルキルアミノからなる群から選択される置換基で置換された一置換フェニルであり、前記アミン上の前記アルキル基が、C
1-C
12アルキル、及びC
6-C
10アリールである、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項11】
Zが、ジメチルアミノ置換基で置換された一置換フェニルである、請求項8に記載のアミノケトン化合物。
【請求項12】
Zが、フェニル置換基で置換された一置換フェニルである、請求項8に記載のアミノケトン化合物。
【請求項13】
Qが、メチルまたは直鎖アルキル基である、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項14】
Qが、直鎖または分岐鎖C
1-C
20アルキルであり、m=1であり、例えば、C
1またはC
20アルキルであり、m=1である、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項15】
Qがメチルである、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項16】
Qが、任意選択でアルコキシル化された単官能性、二官能性、または多官能性のアクリレートモノマー、オリゴマー、またはポリマーの残部である、請求項1~12のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項17】
前記任意選択でアルコキシル化された単官能性、二官能性、または多官能性のアクリレートモノマー、オリゴマー、またはポリマーが、ポリエステルアクリレート及びグリシジルエーテルアクリレートからなる群から選択される、請求項16に記載のアミノケトン化合物。
【請求項18】
Qが、ポリエチレングリコールジアクリレート、例えば、数平均分子量が1,500~3,000Daのポリエチレングリコールジアクリレートの残部である、請求項1~12のいずれかに記載のアミノケトン化合物。
【請求項19】
先行請求項のいずれかに記載の化合物を、II型光開始剤と組み合わせて含む、インクまたはコーティング組成物。
【請求項20】
前記式Iの化合物と前記II型光開始剤が異なる、請求項19に記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項21】
1つ以上の単官能性、二官能性、またはより高次の官能性のアクリレートまたはメタクリレートをさらに含む、請求項19または20に記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項22】
前記II型光開始剤が、ケトン、例えば、芳香族ケトンを含む、請求項19~21のいずれかに記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項23】
前記ケトンが、ベンゾフェノン、4-フェニル-ベンゾフェノン、チオキサントン、及びそれらのブレンドからなる群から選択される芳香族ケトンである、請求項22に記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項24】
前記式Iの化合物が、約500~5,000Daの範囲内の重量平均分子量(M
w)を有する、請求項19~23のいずれか1項に記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項25】
a.存在する水及び溶媒を除く前記組成物の全含有量に対して50~99.9重量%、好ましくは70~98.9重量%の少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物、
b.存在する水及び溶媒を除く前記組成物の前記全含有量に対して0.1~50重量%、好ましくは1.1~30重量%、より好ましくは0.2~15重量%の少なくとも1種の式(I)の化合物、
c.任意選択で、‘269号に示されている0~20%のII型光開始剤、例えばチオキサントン、ベンゾフェノン、またはDBM系のII型光開始剤
を含む、請求項19~24のいずれか1項に記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項26】
前記組成物が、310~420nmの波長を有するUV光で硬化可能である、請求項19~25のいずれか1項に記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項27】
1種以上の着色剤をさらに含む、請求項19~26のいずれか1項に記載のインクまたはコーティング組成物。
【請求項28】
a)アミノ置換1,3-ジカルボニル化合物を提供し、
b)前記アミノ置換1,3-ジカルボニル化合物を、マイケル付加反応を介してアクリレートと反応させて、式Iのマイケル付加反応生成物を形成するステップを含む、請求項1~18のいずれかに記載のアミノケトン化合物の製造方法。
【請求項29】
ステップb)の化学量論が、前記式Iのマイケル付加反応生成物中に残存するアクリレート官能基を提供するように選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ステップa)が、クライゼン縮合を介してケトンをエステルと反応させることを含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物の製造方法であって、式I中のQが、メチル基または直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、前記方法が:
a)アミノベンゾエートをアルキルフェノンと反応させて式Iの化合物を形成することを含み、前記アルキルフェノンがアセトフェノンではない、前記製造方法。
【請求項32】
前記アルキルフェノンが、プロピオフェノン(1-フェニル-1-プロパノン)、ブチロフェノン(1-フェニル-1-ブタノン)、1-フェニル-1-ペンタノン、1-フェニル-1-ヘキサノン、1-フェニル-1-ヘプタノン、及び1-フェニル-1-オクタノンからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記アミノベンゾエートが、第二級アミン置換基を含み、ステップa)の後に、前記方法が、
b)マイケル付加反応を介して前記式Iの化合物をアクリレートと反応させるステップをさらに含む、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記第二級アミン置換基がピペリジンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
先行請求項のいずれかに記載のインクまたはコーティング組成物の印刷方法。
【請求項36】
前記印刷方法が、インクジェット、フレキソ、及びオフセットからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
光開始重合におけるアミン相乗剤としての、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物の使用。
【請求項38】
光開始重合におけるアミン相乗剤及びII型光開始剤の両方としての、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物の使用。
【請求項39】
前記印刷/光開始重合が、310~420nmの波長を有するUV光による照射を含む、請求項35に記載の方法、または請求項36~38のいずれかに記載の使用。
【請求項40】
光開始重合における酸素阻害のための、先行請求項のいずれかに記載のアミノケトン化合物の使用。
【請求項41】
前記光硬化性配合物が(メタ)アクリレートを含む、請求項40に記載の使用。
【国際調査報告】