(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-25
(54)【発明の名称】抗AAV中和抗体の検出及び定量のための新規系。
(51)【国際特許分類】
A61K 35/12 20150101AFI20240917BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240917BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240917BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20240917BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240917BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240917BHJP
C07K 16/08 20060101ALN20240917BHJP
【FI】
A61K35/12
A61K35/76
G01N33/53 N
C12N15/864 100Z
C12N5/10
C12N15/11 Z
C07K16/08
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024516777
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022076161
(87)【国際公開番号】W WO2023046717
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519113192
【氏名又は名称】スワール ライフ サイエンス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トービー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】バレット、ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ラルマン、クリストフ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA46
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087MA02
4C087NA20
4C087ZC78
4H045AA11
4H045DA76
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、感度及び特異性が改善された、アデノ随伴ウイルス(AAV)又は組換えAAVベクターのいずれかに対する中和抗体の検出及び定量のための新規系に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断方法における2つの細胞株の使用であって、1つの細胞株は、
i)AAV ITR内に含まれる1つ又は複数のタグ配列を含み、タグ配列が互いに異なる、AAVゲノム又は導入遺伝子プロモーター構築物、
(ii)構成的プロモーター又は誘導性プロモーターに作動可能に連結された天然に存在するCap、ハイブリッドCap、又はキメラCapのいずれかをコードする、AAV血清型又は組換えAAVベクターのcap遺伝子、
(iii)天然プロモーター又は誘導性プロモーターに作動可能に連結されたAAV rep遺伝子、
(iv)それぞれ個々の天然プロモーターに作動可能に連結されたAAV E2A、E4及びVA遺伝子、
(v)誘導性プロモーターに作動可能に連結されているか、又はHEK293細胞の場合のように細胞内に内因的に存在するAAV E1A遺伝子、
を含む成分1と呼ばれ、
さらなる細胞株は、
成分1における細胞のAAVゲノム又は導入遺伝子プロモーター構築物内の(i)に記載の1つ又は複数のタグ配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を含む成分2と呼ばれる、
上記使用。
【請求項2】
構成的プロモーターが、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/プロモーター、SV40プロモーター、UBCプロモーター、PGKプロモーター、ヒトβ-アクチン(hACTB)、ヒト伸長因子-1α(hEF-1α)、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター及びサイトメガロウイルス初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーターから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
誘導性プロモーターが、Tet-on/Tet-offシステム、累積誘導性リプレッサーCymRシステム、フラボノイドフロレチン調節TtgRリプレッサーシステム、及びバニリン酸調節VanRリプレッサー/KRAPシステムから選択され、かつ(iii)、(iv)、(v)における誘導性プロモーターが互いに異なる、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
成分1における細胞が、ホタルルシフェラーゼ(FL)遺伝子の発現を調節するGal4上流活性化配列(UAS)に特異的に結合するGal4 DNA結合ドメインをコードするタグ配列を含む導入遺伝子プロモーター構築物を発現するか、或いは
AAVゲノムもしくは導入遺伝子構築物内のVanR配列、又はcGMP特異的受容体タンパク質(CRP)をコードするAAVゲノムもしくは導入遺伝子プロモーター構築物を発現する、
請求項の1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
AAVゲノム又は導入遺伝子構築物内に含まれるタグ配列が、トランス活性化因子VP16に融合したトランスサイレンサーVanRをコードする、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
成分2が、
キメラプロモーターであって、Gal4上流活性化配列(UAS)と、転写開始点TATAAもしくはその変異体を含む最小プロモーターとを含み、又はGal4 UASのタンデムリピート(縦列反復配列)、もしくは任意選択でその5倍のタンデムリピート(縦列反復配列)を含むキメラプロモーターに
作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含み、
成分1のAAVゲノム内のgal4タグ配列又は成分1の導入遺伝子構築物内のgal4タグ配列に特異的に応答する、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
成分2が、
キメラプロモーターであって、OTGオペレーター配列と最小プロモーターとを含み、又はそのタンデムリピート(縦列反復配列)、もしくはその4倍のタンデムリピート(縦列反復配列)を含むキメラプロモーターに
作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含み、
成分1のAAVゲノム内のCRP配列又は成分1の導入遺伝子プロモーター構築物内のCRP配列に特異的に応答し、
第1のレポータータンパク質として示されるレポーターレポーター(reporter reporter)が、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼもしくは欧州特許出願第21170068.7号に記載されている新規ルシフェラーゼ等のルシフェラーゼ、又は新規ルシフェラーゼもしくは例えば緑色蛍光タンパク質、増強緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、及び異なる励起/発光スペクトルを示すその変異体等の蛍光タンパク質を含む他のタンパク質である、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
成分2が、
VanOオペレーターモジュール、又はそのタンデムリピート(縦列反復配列)、又は八量体VanOオペレーターモジュール(Van08)、及びCMV最初期プロモーター等の最小プロモーターを含むキメラプロモーターに
作動可能に連結されたたレポーター遺伝子を含み、
成分1のAAVゲノム内のVanR配列又は成分1の導入遺伝子構築物内のVanR配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
成分2が、成分1内のAAVゲノム内に含まれる1つもしくは複数のタグ配列または又は成分1内の導入遺伝子構築物に含まれる1つもしくは複数のタグ配列に応答するレポーター遺伝子構築物で使用されるものとは異なるルシフェラーゼの構成的発現のための構築物をさらに含み、例えば、第2のルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているような新規ルシフェラーゼの構成的産生物である、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
成分1が、少なくとも5つの組換え標的部位を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
診断方法が、アデノ随伴ウイルス(AAV)もしくは組換えAAVベクターに対する中和抗体の検出及び定量、又は成分1及び成分2の両方を用いてAAVカプシド、AAVゲノム、導入遺伝子もしくは導入遺伝子産物のいずれかに対する免疫応答を検出し、かつ最適に監視するための患者試料のハイスループットスクリーニングにおける検出及び定量を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
成分1及び成分2の細胞が、野生型AAV血清型又は組換えAAVベクターに対する中和抗体を含有すると考えられる生物学的試料と共インキュベートされる、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
試験試料中の抗AAV中和抗体の活性を検出し、及び任意選択で定量する方法であって、
該方法が、
(i)抗AAV抗体を含有すると考えられる試験試料を、抗AAV抗体を含まない対照試料と一緒に提供し、及び任意選択で抗AAV中和抗体を含有することが知られている陽性対照試料も提供するステップと、
(ii)成分2の細胞におけるAAVタグ応答性第1レポータータンパク質の活性を測定する前に、(i)の試験試料を、請求項1から12のいずれか一項に記載の成分1のウイルス産生細胞と、請求項1から12のいずれか一項に記載の成分1におけるウイルス産生細胞と、成分2の細胞と、様々な温度、好ましくは約37℃で、好ましくは約6~約18時間以上の様々な時間接触させるステップと
を含む方法。
【請求項14】
成分2の細胞が、第1のタグレポータータンパク質とは異なる第2のレポータータンパク質を発現し、
該方法が、
(i)第2のレポータータンパク質の活性に対して正規化された又は正規化されていない第1の細胞試料の細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップ、
(ii)第2のレポータータンパク質の活性に対して正規化された又は正規化されていない第2の対照細胞試料の細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップ、
(iii)第1の対照細胞試料と第2の対照細胞試料とのレポーター活性の比を提供するステップであって、1より低い比(第1/第2)は、試料中のAAV血清型又は組換えAAVベクターに対する抗体の存在を示す、ステップと
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
AAVカプシド、AAVゲノム、導入遺伝子又は導入遺伝子産物のいずれかに対する免疫応答を検出し、及び最適に監視するための患者試料のハイスループットスクリーニングのための方法であって、
(i)スクリーニングされる患者試料からなる試験試料を提供するステップ、
(ii)該試験試料を、請求項1から12のいずれか一項に記載の成分1のチャレンジウイルス又はウイルス産生細胞と接触させるステップ、
(iii)細胞株中のAAVタグ応答性第1レポータータンパク質の活性を測定する前に、様々な温度、好ましくは約37℃で、様々な時間、好ましくは約6~約18時間以上、請求項1から12のいずれか一項に記載の成分1のチャレンジウイルス又はウイルス産生細胞、請求項1から12のいずれか一項に記載の成分2の細胞と共に、該試験試料をインキュベートするステップ
を含む方法。
【請求項16】
請求項1から12のいずれか一項に記載の成分2の細胞が、第1のタグレポータータンパク質とは異なる第2のレポータータンパク質をさらに含み、
該方法が、
(i)請求項1から12のいずれか一項に記載の成分2の細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップ、
(ii)請求項1から12のいずれか一項に記載の成分2の細胞の活性の間の比を提供するステップであって、該成分2は下流プロモーター配列に作動可能に連結された、成分1におけるAAV血清型又は組換えAAVベクター構築物のゲノム中に存在するタグ配列による細胞株の処理に応答する、異種シス作用性調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチドを含み、該プロモーターが、ルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているような新規ルシフェラーゼ等の第1のレポータータンパク質をコードするオープンリーディングフレームに作動可能に連結されている、上記ステップをさらに含み、
(iii)任意選択で、アッセイの正規化を提供するために、請求項1から12のいずれか一項に記載の成分2の細胞は、成分1内のAAVゲノム内に含まれるタグ配列又は成分1内の導入遺伝子構築物に含まれるタグ配列に応答するレポーター遺伝子構築物で使用されるものとは異なるルシフェラーゼの構成的発現のための構築物をさらに含み、例えば構成的産生物は、第2のルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているもの等の新規ルシフェラーゼである、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、アデノ随伴ウイルス(AAV)又は組換えAAVベクターに対する中和抗体の検出及び定量のための新規2成分系に関する。本発明は、(i)抗体が検出されるべきであり、ウイルスゲノム内又は導入遺伝子構築物内にタグ配列を含む、AAV血清型又は組換えAAVベクターの産生のためのパッキング細胞株、ならびに
(ii)タグ配列に特異的に応答するレポーター遺伝子プロモーター構築物を組み込んだレポーター遺伝子細胞株、ならびに試験試料中のカプシド、ウイルスゲノム、及び/又は導入遺伝子もしくは導入遺伝子産物に対する抗AAV中和抗体を検出及び最適に定量するためにそれを使用する方法を含む。本発明はさらに、最適な感度、信号強度、及び生物学的忠実度でAAVに対する免疫応答を検出し、最適に監視するためのハイスループットスクリーニングの方法に関する。より広い意味で、本発明はまた、診断におけるレポーター遺伝子細胞株と組み合わせたパッケージング細胞株の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、増加する数の遺伝性障害を治療するために使用され、大部分においてAAVベース遺伝子療法は十分に忍容されるが、AAVカプシド、AAVゲノム、導入遺伝子、又は導入遺伝子産物のいずれかに対する免疫応答は、導入遺伝子の発現のレベル低下又は完全な喪失、ひいては有効性の喪失に関連する(1)。組換えAAVベクターに対する中和抗体の開発は、通常幼児期に1つ又は複数のAAV血清型への以前の曝露、及び異なるAAV血清型にわたる抗AAV抗体の高度の交差反応性に関連することが多い(1,2)。
【0003】
AAVは一本鎖DNAウイルスであり、そのゲノムは、145bp逆方向末端反復(ITR)に隣接する3つの遺伝子rep、cap、及びaapからなり、その最初の125ヌクレオチドは、それ自体の上に折り畳まれてT字形ヘアピンループ二次構造を形成する回文配列である。ITRは、第2鎖合成のためのプライマーとして作用し、ウイルス複製又は導入遺伝子の発現のためにシスにおいて必要とされる(3)。rep遺伝子は、2つの異なるプロモーター、Rep78/68についてはp5及びRep52/40についてはp19を使用して単一のORFによってコードされ、選択的スプライシングによって産生される、4つの非構造タンパク質Rep78、Rep68、Rep52及びRep40をコードする。Rep78及びRep68タンパク質はITRに結合し、ゲノム複製に必要であり、Rep52及びRep40はウイルス複製中にウイルスゲノムをカプシドにパッケージングする役割を果たす。Repタンパク質はまた、部位特異的ゲノム統合において役割を果たす。cap遺伝子は、選択的開始コドン及び選択的スプライシングを使用してp40プロモーターの制御下で同じORFから転写された3つの構造タンパク質Vp1、Vp2、及びVp3をコードし、1:1:10の比でアセンブルされてウイルスカプシド(4)を形成する。Aap遺伝子は、Cap ORF内の代替的なリーディングフレームからのアセンブリ活性化タンパク質(AAP)をコードする。AAPは、AAVカプシドタンパク質を核小体に局在化させ、3つのCapタンパク質を60量体の正二十面体ウイルスカプシドにアセンブルする(3)。
【0004】
rep、cap及びaap遺伝子を欠く組換えAAVベクターは、約4.8kbのサイズに制限され、意図される用途に応じて構成的又は組織特異的であり得る適切なプロモーター、導入遺伝子、及びITR内に含まれるポリAテールからなる。AAVは複製欠損性であり、ウイルス複製又は導入遺伝子の発現に必要な初期ヘルパータンパク質を供給するためにヘルパーウイルス、通常はアデノウイルス5を必要とする。単純ヘルペスウイルス(HSV)、及びある程度はワクシニアウイルスは、初期ヘルパータンパク質(5,6)の供給のためにアデノウイルスの存在を代用することができる。しかし、効率的なAAVベクター産生に必要な初期遺伝子は、導入遺伝子プロモーター構築物ならびにrep、cap及びaap遺伝子をコードするプラスミドに加えて、ヘルパータンパク質を発現するプラスミドで適切なパッケージング細胞株をトランスフェクトすることによって供給することもできる(7)。
【0005】
カプシドは、最初に細胞表面上の炭水化物に結合することによって、血清型特異的ウイルス-細胞相互作用において重要な役割を果たす。したがって、AAV血清型2、3及び6はヘパリン硫酸プロテオグリカンに結合し、一方、AAV1、4、5及び6はシアル酸に結合し、AAV9はガラクトースに結合する(8)。次いで、ほとんどのAAV血清型は、細胞内在化に必要な新規AAV受容体(AAVR)の異なる部分と相互作用する(9)。トランスゴルジに局在するさらなる高度に保存されたGタンパク質共役受容体様タンパク質GPR108が、AAVR依存性であるがGPR108非依存性である高度に分岐したAAV5血清型を除いて、全てのAAV血清型の進入に必要とされることが最近特定された(10)。したがって、これまでに特定された全てのAAV血清型は、細胞形質導入のためにAAVRもしくはGPR108のいずれか又はAAVR及びGPR108の両方を必要とする(9,10)。
【0006】
AAV感染はヒト又は他の哺乳動物におけるいかなる疾患にも関連しないが、AAV媒介遺伝子療法の有効性は、しばしばAAVへの以前の曝露及び異なる血清型間の高度の交差反応性に関連する抗AAV抗体の開発によって制限され、導入遺伝子の発現レベルの低下又は完全な喪失、ひいては有効性の喪失をもたらす。細胞株のインビトロ形質導入の前に試験試料とインキュベートされるレポーターAAVベクターの使用に基づく細胞ベースアッセイ、いわゆる形質導入阻害アッセイは、しばしば高度の感染多重度(MOI)を必要とし、低感度をもたらし、非特異的効果を受け、せいぜい、抗体応答が決定される実際のAAV血清型又は組換えAAVベクターに対する免疫応答の代理である。したがって、AAV感染及び組換えAAVベクターによる治療の両方に対する中和抗体応答の検出及び定量化のための感度及び特異性が増加した改善された方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は上述の先行技術に照らしてなされ、本発明の目的は、感度及び特異性が改善された、アデノ随伴ウイルス(AAV)又は組換えAAVベクターのいずれかに対する中和抗体の検出及び定量のための新規系を提供することである。
【0008】
上記の技術的効果を得て、それに関連してはるかに改善された方法及び細胞株を提供するために、本発明は、とりわけ細胞株に関する。この細胞株は、パッケージング細胞株として示される場合があり、また第1の成分又は成分1と称される場合もあり、全て本明細書において互換的に使用される。パッケージング細胞株は、1つ又は複数の異なるタグ配列を含み得る。
【0009】
さらに、別の態様において、本発明は、パッケージング細胞株の1つ又は複数のタグ配列に特異的に応答するレポーター遺伝子プロモーター構築物を組み込んだレポーター遺伝子細胞株に関する。レポーター遺伝子細胞株は、第2の成分とみなされ得るか、又は成分2と称される場合があり、全て本明細書において互換的に使用される。
【0010】
本発明の一態様において、成分1及び成分2は、協調して機能してもよく、又は互いに組み合わせて使用されてもよい。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、試験試料中の抗AAV中和抗体を検出及び最適に定量するために成分1及び成分2を使用する方法に関する。具体的には、本発明は、AAV感染及び組換えAAVベクターによる治療の両方に対する中和抗体応答の検出及び定量化のための感度及び特異性の改善のための、成分1及び成分2の使用に関する。
【0012】
別の態様において、本発明は、ウイルスゲノム又は導入遺伝子構築物内のタグ配列を含む、抗体応答が決定されるAAV血清型又は組換えAAVベクターを産生するためのパッキング細胞株(成分1)と、成分1のタグ配列に特異的に応答するレポーター遺伝子プロモーター構築物を組み込んだレポーター遺伝子細胞株(成分2)とを含む2成分系、及び試験試料中の抗AAV中和抗体を検出し、最適に定量するためにこれを使用する方法に関する。本発明はさらに、最適な感度、信号強度、及び生物学的忠実度でAAVに対する免疫応答を検出し、監視するためのハイスループットスクリーニングの方法に関する。
【0013】
本発明のタグ配列に関して、本明細書に開示される細胞株は、1つ又は複数のタグ配列を含み得る。いくつかのタグ配列が存在する場合、タグ配列は同一であっても、又は異なっていてもよい。別の態様において、いくつかのタグ配列が存在する場合、タグ配列のグループは同一であり得るが、残りのタグ配列は異なり得る。
【0014】
一態様において、タグ配列は、例えばAAVゲノム内に含まれるタグ配列であり得、あるいは、例えば導入遺伝子プロモーター構築物はGal4 DNA結合ドメインであるか、又はAAVゲノム内に含まれるタグ配列もしくはcGMP特異的受容体タンパク質(CRP)をコードする導入遺伝子プロモーター構築物であるか、又は例えばAAVゲノム内に含まれるタグ配列もしくはトランス活性化因子VP16に融合したトランスサイレンサーVanRをコードする導入遺伝子構築物であり得る。
【0015】
上記から明らかなように、成分1が成分2と組み合わされて使用される態様において、レポーター遺伝子プロモーター構築物を組み込んだレポーター遺伝子細胞株は、パッケージング細胞株の1つ以上のタグ配列に特異的に応答し、その結果、レポーター遺伝子プロモーター構築物は、成分1中の同じ又は異なるタグ配列のそれぞれに応答する。
【0016】
成分1:パッケージング細胞株。
一態様において、本発明は、AAV血清型又は組換えAAVベクターの発現に必要な構成成分が一過性トランスフェクションによって供給されるか、又は好ましくは選択された細胞株のゲノムに部分的もしくは完全に統合されているパッキング細胞株に関する。選択された細胞株は、宿主細胞株と称され得る。
【0017】
宿主細胞株の選択は、生物学的試料の分析ならびにrep遺伝子及びE4orf6の制御された発現後のAAV Repタンパク質の毒性に耐える細胞の能力のいずれかについてのその安全性プロファイルによって決定される(11)。そのような細胞株には、限定されないが、ヒト肺腺癌細胞株A549(ATCCカタログ番号CCL-185)又はヒト胎児腎細胞株HEK293T(ATCCカタログ番号ACS-4500)が含まれる。
【0018】
選択された細胞株(宿主細胞株)は、適切なプロモーターの制御下で、選択された導入遺伝子でトランスフェクトされる。プロモーターは、原則として、当技術分野で公知の任意の適切なプロモーターであり得る。一態様において、プロモーターは誘導性プロモーターであり得る。別の態様では、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター等の構成的プロモーター、又は導入遺伝子の所望の組織特異的発現に応じて選択される導入遺伝子の発現を調節する適切な組織特異的プロモーター、及びAAV2のITR内に含まれるSV40由来のもの等の好適なポリアデニル化部位又は代替的なポリアデニル化部位のいずれかであり得る(
図1に示す)。重要なことに、成分1の細胞株は、選択された特定の組換えAAVベクターを監視するためにITR内にタグ配列を含む。
【0019】
宿主細胞はさらに、CMV最小プロモーター等の構成的プロモーターの制御下でcap遺伝子で同時トランスフェクトされ得る(
図1に示される通り)。別個のプラスミド上でのcap遺伝子及びrep遺伝子の発現がAAVベクター産生を増加させることが報告されているため(12)、宿主細胞は、2つの独立したプラスミド上でcap遺伝子及びrep遺伝子で同時トランスフェクトされ得る。
【0020】
E1ならびにE1A及びE1B ORFをコードする遺伝子は、HEK293T細胞とは対照的にA549細胞では発現しない。したがって、A549細胞をE1A遺伝子でトランスフェクトし、好適な誘導性プロモーターの制御下で発現させて、E1aタンパク質がRep、E2及びE4遺伝子を活性化して細胞毒性をもたらすのを防止した。したがって、例1では、rep及びE1遺伝子は、FK506結合タンパク質(FKBP)に融合されたDNA結合ドメインZFHD1の12倍のタンデムリピート(縦列反復配列)からなるラパマイシン誘導性プロモーターの制御下で発現される。FKBP-ラパマイシン関連タンパク質(FRAP)は、ラパマイシンの添加がFKBPとFRAPとの間のヘテロ二量体の形成を誘導して、E1初期タンパク質をコードする遺伝子の厳密に制御された発現をもたらすように、HSV-1由来のVP16トランス活性化因子に融合される。
【0021】
Rep78/68の制御された発現はまた、AAVベクター産生のレベルを増加させることが示されている(12)。E4 orf6単独によるHEK293細胞のトランスフェクションは、アデノウイルスを用いない組換えAAVベクターの産生に十分であることが報告されているが(13)、初期タンパク質E2A、E4、及びVA RNAは、組換えAAVの効率的な産生に必要であることが報告されている(14)。したがって、一態様において、パッケージング細胞株は、E2A、E4及びVA RNAを発現する発現ベクターで同時トランスフェクトされ得る。
【0022】
成分2:レポーター細胞株。
一態様において、本発明はまた、ウイルス調製物、又は中和抗体が定量されるAAV血清型もしくは組換えAAVベクターのゲノム内でタグ配列を発現するウイルスを産生するパッケージング細胞株とレポーター細胞との接触が、レポーター細胞によって発現されるレポーター遺伝子の活性化をもたらすように、AAVゲノム又は導入遺伝子構築物内に含まれるタグ配列(成分1の選択された特定の組換えAAVベクターを監視するためのITR内のタグ配列)に特異的に応答する開発されたレポーター遺伝子細胞株に関する。感度を高めるために、レポーター遺伝子細胞株は、細胞表面AAV受容体単独(9)もしくはエンドソームAAV受容体単独(10)のいずれか、又は細胞表面受容体及びエンドソームAAV受容体の両方で安定にトランスフェクトされ得ることが理解される。例1では、パッケージング細胞株は、レポーター細胞におけるホタルルシフェラーゼ(FL)遺伝子の発現を調節するGal4上流活性化配列(UAS)に特異的に結合するGal4 DNA結合ドメインをコードするタグ配列を含む導入遺伝子プロモーター構築物を発現する。具体的には、例1では、AAV-2応答性レポーター細胞株は、HEK293宿主細胞におけるFLレポーター遺伝子構築物の発現を調節するGal4 UASの5倍の縦列反復配列を含む(
図2)。好ましい実施形態において、AAV応答性レポーター細胞株は、AAV誘導性ホタルルシフェラーゼ活性の正規化を可能にするために、
図3に示すSV40最小プロモーター等の構成的プロモーターの制御下で、
図3に示すウミシイタケルシフェラーゼレポーター遺伝子等の第2のレポーター遺伝子も含み得る。ウミシイタケルシフェラーゼ(RL)正規化遺伝子は、AAV応答性ホタルルシフェラーゼ及び/又はウミシイタケルシフェラーゼ正規化遺伝子を活性化する能力に基づいて、異なる種類のヒト血清を定義することを可能にする(表1)。したがって、正常個体からの2つのヒト血清HS0及びHS4の見かけの中和効果は、細胞毒性によるAAV活性の非特異的阻害を反映するヒトIV-IgGによるFL活性単独の活性化とは対照的に、2つの血清HS0及びHS4によるAAV応答性FLレポーター遺伝子及びウミシイタケルシフェラーゼ正規化遺伝子の両方の活性化に基づいて、ヒトIV-IgGのプールの実際の中和活性から区別することができる(
図18~20)。
【0023】
好ましい実施形態において、レポーター細胞株(成分2)は、AAV2 capタンパク質又はAAV5 capタンパク質のいずれかをコードするcap遺伝子を含有するパッケージング細胞(成分1)と共にインキュベートした場合に、GAL4-UAS調節ホタルルシフェラーゼ発現を有意に増加させる最初期エンハンサータンパク質E4orf6(
図7及び
図8)で一過性又は安定にトランスフェクトされる。
【0024】
パッケージング細胞株とレポーター細胞との相互作用
一態様において、本発明は、2つの細胞株が互いに相互作用するように組み合わせた成分1及び成分2に関する(
図4~
図6)。したがって、一態様において、本発明は、
(a)本発明によるパッケージング細胞によって産生されたウイルスを、+4、20、もしくは37℃の温度のいずれか1つ、又は例えば約+4℃~約37℃の範囲内の任意の温度を含む又は包含する様々な温度で様々な時間試験される試料と接触させた後、ウイルス調製物及び試料をレポーター細胞と約37℃で様々な時間、好ましくは約18時間以上インキュベーションし、その後市販の基質Bright-Glo(Promega、ウィスコンシン州マディソン)等の好適な基質、又はマイクロタイタープレートの単一ウェル内のFL活性及びRL活性の逐次定量を可能にする、任意の手段による検出を可能にする任意の他の好適な基質もしくは市販の基質Dual-Glo(Promega、ウィスコンシン州マディソン)等の好適な基質を使用してFLレポーター遺伝子活性を定量するステップ;
(b)ウイルス産生パッケージング細胞を、試験される試料と、+4、20もしくは37℃のいずれか1つの温度、又は例えば約+4℃~約37℃の範囲内の任意の温度のいずれか1つを含む又は包含する様々な温度で様々な時間接触させた後、パッケージング細胞株及び試料をレポーター細胞と37℃で様々な時間、好ましくは約6時間~約18時間以上インキュベーションし、その後例えば市販の基質Bright-Glo(Promega、ウィスコンシン州マディソン)等の好適な基質を使用してFLレポーター遺伝子活性のみを、又はDual-Gloもしくは任意の手段による検出を可能にする任意の他の好適な基質を使用してFL&RL活性を定量するステップ、
(c)ウイルス産生パッケージング細胞株を試験される試料及びレポーター細胞と接触させ、約37℃で様々な時間、好ましくは約18時間以上直接インキュベートした後、例えば市販の基質Bright-Glo(Promega、ウィスコンシン州マディソン)等の好適な基質、もしくは任意の手段による検出を可能にする任意の他の好適な基質を使用してFLレポーター遺伝子活性を、又はDual-Gloもしくは任意の手段による検出を可能にする任意の他の好適な基質を使用してFL&RL活性を定量するステップ、
(d)ウイルス産生パッケージング細胞株をレポーター細胞と一緒に適切な細胞濃度で好適な低温保護培地中で凍結させ、細胞を解凍し、パッケージング細胞/レポーター遺伝子細胞を試験される試料と接触させ、試料、パッケージング細胞-レポーター細胞を約37℃で様々な時間、好ましくは約18時間以上インキュベートした後、市販の基質Bright-Glo(Promega、ウィスコンシン州マディソン)等の好適な基質、もしくは任意の手段による検出を可能にする任意の他の好適な基質を使用してFLレポーター遺伝子活性を、又はDual-Gloもしくは任意の手段による検出を可能にする任意の他の好適な基質を使用してFL&RL活性を定量するステップ、
(e)好ましい実施形態において、ウイルス産生パッケージング細胞株及びレポーター細胞を別個に適切な細胞濃度で好適な低温保護培地中で凍結させ、細胞を解凍し、ウイルス産生パッケージング細胞株を試験される試料と接触させ、ウイルス産生パッケージング細胞及び試料をレポーター細胞と約37℃で様々な時間、好ましくは約6時間~約18時間以上インキュベートした後、市販の基質Bright-Glo(Promega、ウィスコンシン州マディソン)等の好適な基質、もしくは任意の手段による検出を可能にする任意の他の好適な基質を使用してFLレポーター遺伝子活性を、又はDual-Gloもしくは任意の手段による検出を可能にする任意の他の好適な基質を使用してFL&RL活性を定量するステップを含む方法に関する。凍結解凍使用ウイルス産生パッケージング細胞の使用は、中和抗体が検出されるべき特定のAAV血清型又は組換えAAVベクターを最終使用者が生成する必要性をなくし、ウイルス産生パッケージング細胞株を試験される試料と接触させることは、チャレンジウイルスを抽出及び精製する必要性をなくす。
【0025】
無細胞AAVチャレンジウイルス/組換えAAVベクター又はAAVウイルス/AAV組換えベクター産生パッケージング細胞は、レポーター遺伝子細胞株と相互作用し、ウイルス取り込み、内在化、及びFLレポーター遺伝子のAAV血清型特異的活性化をもたらす。無細胞チャレンジウイルス又はAAV産生パッケージング細胞とレポーター細胞との最初の相互作用は、おそらく、ウイルスの放出及び血清型特異的相互作用における細胞表面上の糖質とのカプシドの相互作用によって媒介される。したがって、AAV血清型2、3及び6はヘパリン硫酸プロテオグリカンに結合し、一方、AAV血清型1、4、5及び6はシアル酸に結合し、AAV9はガラクトースに結合することが知られている(8)。次いで、AAV血清型は、細胞内在化に必要なAAV受容体(9)及び/又はトランスゴルジに局在する新規Gタンパク質共役受容体様タンパク質GPR108のいずれかと相互作用する(10)。一実施形態において、レポーター遺伝子は、酵素をコードする。好ましい実施形態において、レポーターは、ルシフェラーゼ、例えばホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、あるいは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる欧州特許出願第21170068.7号明細書に記載されているもの等の新規ルシフェラーゼ、あるいは異なる励起/発光スペクトルを示す緑色蛍光タンパク質(EGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)及びその変異体、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)もしくはその様々なコンジュゲート、分泌型ヒト胎盤アルカリホスファターゼ(SEAP)もしくはその様々なコンジュゲート、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、又は様々なリンカータンパク質等のルシフェラーゼ又は蛍光タンパク質を含む可溶性活性モノマーとして、もしくはルシフェラーゼを含む他のタンパク質との融合タンパク質として溶液中に存在する、又は粒子、ビーズ、アッセイプレートもしくはチューブ等の固体表面に付着した新規ルシフェラーゼである。
【0026】
別の実施形態において、レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質をコードする。有用な蛍光タンパク質には、緑色蛍光タンパク質(GFP)及び関連する蛍光タンパク質、例えば増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、ならびに異なる励起/発光スペクトルを示すその変異体が含まれる。
【0027】
さらなる実施形態において、レポーター細胞は、AAVゲノム内に存在するタグ配列又はAAV ITR内に含まれる組換えAAVコード導入遺伝子プロモーター構築物内に存在するタグ配列に特異的に応答する、キメラプロモーターの制御下のホタルルシフェラーゼ(FL)レポーター遺伝子等の第1のレポーター遺伝子、及びウミシイタケルシフェラーゼ(RL)活性の構成的発現レベルに関してタグ配列活性化FL活性を正規化することを可能にする構成的プロモーターの制御下の、RL等の第2のレポーター遺伝子で同時トランスフェクトされてもよく、これにより、アッセイ結果は細胞数と無関係になり、細胞の喪失又は播種された細胞の数の変動に起因する細胞密度の試料間変動を補償するための手段が提供される。RL活性の構成的発現に対してAAV活性化FL活性を正規化する能力はまた、血清マトリックス効果を補償する手段を提供する(15)。有用な構成的に活性なプロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/プロモーター、SV40プロモーター、UBCプロモーター、PGKプロモーター、ヒトβ-アクチン(hACTB)、ヒト伸長因子-1α(hEF-1α)及びサイトメガロウイルス初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で言及されるように、本発明はまた、試験試料中の抗AAV中和抗体の活性を検出及び操作的に定量する方法を提供し、前記方法は、以下のステップを含む:
(i)抗AAV抗体を含有すると考えられる試験試料を、抗AAV抗体を含まない対照試料及び抗AAV中和抗体を含有することが知られている陽性対照試料と共に提供するステップ、
(ii)前記試験試料を無細胞AAVチャレンジウイルス/組換えAAVベクター又は本発明によるウイルス産生パッケージング細胞のいずれかと接触させるステップであって、前記AAVチャレンジウイルス/組換えAAVベクターは、AAV血清型又は導入遺伝子プロモーター構築物、例えばGal4 DNA結合ドメインのゲノム内に配列タグを発現する、ステップ、
(iii)前記試験試料を無細胞AAVチャレンジウイルス/組換えAAVベクター又は本発明によるウイルス産生パッケージング細胞のいずれかと、レポーター細胞と共に接触させるステップであって、前記細胞は、前記パッケージング細胞によって産生されるAAV血清型又は導入遺伝子構築物のゲノム内のタグ配列に特異的に応答する、Gal4 UASの縦列反復配列の制御下のレポーター遺伝子プロモーター構築物、例えばホタルルシフェラーゼを発現する、ステップ。
(iv)任意選択で、好ましい実施形態において、アッセイの正規化を提供するために、本発明によるレポーター細胞株は、AAV応答性レポーター遺伝子構築物で使用されるものとは異なるレポーター遺伝子の構成的産生物のための構築物をさらに含む。例えば、構成的産生物は、第2のルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は例えば参照によりその全体が本明細書に組み込まれる欧州特許出願第21170068.7号に記載されているもの等の新規ルシフェラーゼの構成的産生物であり得る。好ましい実施形態において、本発明によるレポーター遺伝子細胞株は、96、384又は1536ウェルアッセイプレートに播種される。
(v)好適な基質、例えば、市販の基質Dual-Glo又は任意の市販のルシフェラーゼ基質等を使用して、前記細胞株における第1のレポータータンパク質の活性を測定するステップ、
(vi)タグ応答性レポーター遺伝子ルシフェラーゼが、例えばDual-Glo系からのStop&Glo試薬又は第1のレポータータンパク質の活性を効率的に阻害する任意の市販のルシフェラーゼ基質、例えばホタルルシフェラーゼ(参照によりその全体が本明細書に組み込まれるLallemand C.et al J Immunol Res.390:1-19,2017)を使用して同じ試料中で測定された後に、前記細胞株中の第2のレポータータンパク質の活性を測定するステップ。
(vii)第2のルシフェラーゼの活性に対して正規化された第1のルシフェラーゼの活性は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0189658号に記載されている。
(viii)第2のルシフェラーゼの活性に対して正規化された、又は正規化されていない第1の細胞試料のレポーター細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0189658号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
(ix)また、第2のルシフェラーゼの活性に対して正規化された、又は正規化されていない第2の対照細胞試料の細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0189658号に記載されている。
(x)第1の対照細胞試料と第2の対照細胞試料とのレポーター活性の比を提供するステップであって、1より低い比(第1/第2)は、前記試料中のAAV血清型又は組換えAAVベクターに対する抗体の存在を示す、ステップ。
【0029】
本発明のさらなる態様は、抗AAV抗体のハイスループットスクリーニングのための方法に関し、前記方法は、以下のステップを含む。
(i)抗AAV抗体を含有すると考えられる試験試料を、抗AAV抗体を含まない対照試料及び好ましい実施形態では抗AAV標準試料と共に提供するステップ、
(ii)前記試験試料及び対照試料を本発明によるチャレンジウイルス調製物又はウイルス産生パッケージング細胞と接触させるステップであって、前記細胞が、抗体応答が決定されるAAV血清型又は組換えAAVベクターの産生のためのものであり、前記チャレンジウイルス/組換えAAVベクターが、ウイルスゲノム又は導入遺伝子構築物内にタグ配列を含む、ステップ。
(iii)前記試験試料、対照試料及びチャレンジウイルス/ウイルス産生パッケージング細胞を、本発明によるレポーター遺伝子細胞株と接触させるステップであって、前記レポーター細胞株は、試験試料中に存在する抗体が検出又は検出及び定量される、AAV血清型のゲノム内に存在するタグ配列又は組換えAAVベクターの導入遺伝子プロモーター構築物による細胞株の処理に応答する、異種シス作用調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチドを含有する、ステップ。
(iv)ここで、レポーター細胞株の前記プロモーターは、例えば、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる欧州特許出願第21170068.7号に記載されているもの等の新規ルシフェラーゼを含む第1のレポータータンパク質をコードするオープンリーディングフレームに作動可能に連結されている。好ましい実施形態において、本発明による細胞株は、96、384又は1536ウェルアッセイプレートに播種される。
(v)好ましい実施形態において、アッセイの正規化を提供するために、本発明によるレポーター細胞株は、AAV応答性レポーター遺伝子構築物で使用されるものとは異なるルシフェラーゼの構成的産生物のための構築物をさらに有する。例えば、構成的産生物は、好適な基質、例えばDual-Glo系から市販されているDual-Gloルシフェラーゼ試薬、又は任意の商業的に好適なルシフェラーゼ基質を使用して、前記細胞株における第1のレポータータンパク質の活性を測定する第2のルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる欧州特許出願第21170068.7号に記載されているような新規ルシフェラーゼの構成的産生物であってもよい。
(vi)タグ応答性レポーター遺伝子ルシフェラーゼが、例えば、第1のレポータータンパク質の活性を効率的に阻害するDual-Glo系(Promega、ウィスコンシン州マディソン)からのStop&Glo試薬を使用して同じ試料中で測定された後に、前記細胞株における第2のレポータータンパク質の活性を測定するステップ。第2のルシフェラーゼの活性に対して正規化された第1のルシフェラーゼの活性は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0189658号に記載されている。
(vii)第2のルシフェラーゼの活性に対して正規化された、又は正規化されていない第1の細胞試料のレポーター細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0189658号に記載されている。
(viii)第2のルシフェラーゼの活性に対して正規化された、又は正規化されていない第2の対照細胞試料の細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0189658号に記載されている。
(ix)第1の対照細胞試料と第2の対照細胞試料とのレポーター活性の比を提供するステップであって、1より低い比(第1/第2)は、前記試料中のAAV血清型又は組換えAAVベクターに対する抗体の存在を示す、ステップ。
【0030】
したがって、本発明は、特定のAAV血清型のゲノム又は天然に存在するカプシド、ハイブリッドカプシド、キメラカプシドもしくは合理的に設計されたカプシドを発現し、特定のタグ配列で標識された特定の導入遺伝子/プロモーター構築物をコードする特定の組換えAAVベクターをコードする遺伝子でトランスフェクトされたパッケージング細胞株、及び特定のAAV血清型又は特定の組換えAAVベクターによってコードされるタグ配列に特異的に応答するレポーター細胞株を提供する。共通のタグ配列を使用して各特定のAAV血清型又は各特定の組換えAAVベクターを標識する場合、単一のレポーター細胞株を使用して、同じタグ配列で標識された全ての異なるAAV血清型又は組換えAAVベクターを検出することができる。しかしながら、個々のAAV血清型又は個々の組換えAAVベクターを標識するために異なるタグ配列が使用される場合、各個々の特異的タグ配列に特異的に応答する異なるレポーター細胞株又は各個々のタグを含むレポーター細胞株のいずれかが必要である。様々な状況での本発明のその使用は、本発明に従って決定された特定のAAV血清型又は組換えAAVベクターに対する中和抗体を含有する試料の用量応答曲線のEC50が従来技術の方法と比較して少なくとも減少するように、より高い感度で中和抗体の活性の検出を可能にする。減少は、約2倍、例えば約3倍、例えば約4倍、例えば約5倍、例えば6倍、例えば7倍、例えば約8倍、例えば9倍、例えば10倍、例えば50倍、例えば約100倍、又は例えば約1000倍の減少であり得る。
【0031】
一態様において、診断方法における成分1及び2の使用、又は本発明による成分1及び2の使用を含む任意の方法は、成分1の細胞と成分2の細胞との、中和抗体の存在について試験される対象から採取された生物学的試料との共インキュベーションを伴い得る。一態様において、中和抗体は、特定のAAV血清型又は組換えAAVベクターに対する抗体であり得る。
【0032】
一態様において、本発明は、より高い特異性を可能にする、それに関連する細胞又は細胞株及び方法に関する。特異性は、少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%、例えば少なくとも約97.5%、例えば少なくとも約98%、例えば少なくとも約99%、例えば少なくとも約99.5%であり得る。
【0033】
一態様において、本発明は、感度の増加を提供する。
【0034】
別の態様において、本発明は、特異性の増加を提供する。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、感度の増加及び特異性の増加の両方を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】成分1:例1のパッケージング細胞株を樹立するために使用される分子構築物を示す図である。ヒト肺腺癌細胞株A549を以下の構築物で安定にトランスフェクトした:好適なプロモーター、示される例におけるCMV構成的プロモーター、及び示される例におけるSV40のポリアデニル化部位の制御下で、示されている例における所与のAAV血清型AAV2のITR内に含まれる2A自己切断ペプチド、示されている例におけるF2Aをコードする配列によって分離された、選択される導入遺伝子及びgal4-VP16タグ配列。 rep及びcap遺伝子は、構成的プロモーターの制御下で異なるプラスミド上に発現される。 E1遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下で発現され、このラパマイシン誘導性プロモーターは、示される例において、FL506結合タンパク質(KFBP)に融合したZFHD1 DNA結合ドメインの12倍の縦列反復配列からなる。 細胞はまた、構成的プロモーターの制御下でE2A、E4及びVA RNAをコードする遺伝子で安定にトランスフェクトされている。
【
図2】成分2:例1のレポーター細胞株を樹立するために使用される分子構築物を示す図である。ヒト胎児腎臓細胞株HEK293に、Gal4上流活性化配列(UAS)の5倍の縦列反復配列及び例に示されるSV40からのポリアデニル化部位と共にホタルルシフェラーゼ(FL)遺伝子の発現を調節する最小プロモーターからなるキメラプロモーターを、安定にトランスフェクトした。
【
図3】成分2:実施例のレポーター細胞株を樹立するために使用される分子構築物を示す図である。ヒト胎児腎臓細胞株HEK293を、第1のレポーター遺伝子として示される、Gal4上流活性化配列(UAS)の5倍の縦列反復配列及び例に示されるSV40からのポリアデニル化部位と共にホタルルシフェラーゼ(FL)遺伝子の発現を調節する最小プロモーターからなるキメラプロモーターで、安定に同時トランスフェクトした。また、第2のレポーター遺伝子として示されるSV40最小構成的プロモーターの制御下で、細胞をウミシイタケルシフェラーゼで安定に同時トランスフェクトした。
【
図4】成分1:例1のパッケージング細胞株による組換えAAVビリオンの産生、及び成分2:例1のレポーター細胞株へのそれらの取り込みを示す図である。
【
図5】組換えAAVベクターのゲノムの発現、ならびにGal4上流活性化配列(UAS)の5倍の縦列反復配列へのGal4 DNA結合ドメイン-VP6ハイブリッドタンパク質の結合、及びホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子の強力な活性化を、ウイルスの非特異的細胞毒性を反映する構成的プロモーターの制御下でのウミシイタケルシフェラーゼレポーター遺伝子の最小限の活性化と共に示す図である。
【
図6】パッケージング細胞株から入り込むときの試料中に存在する抗AAV抗体(成分1)によるAAVウイルス粒子の中和を示し、それにより、それらがレポーター細胞株(成分2)に入るのを防ぎ、Gal-4-UAS調節ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を活性化する。これは、中和抗AAV抗体の存在下でより低いホタルルシフェラーゼシグナルをもたらす。構成的プロモーターの制御下でのウミシイタケルシフェラーゼ受容体遺伝子の発現は、ウイルスの非特異的細胞毒性を反映して変化しないままである。
【
図7】レポーター細胞株(成分2)に最初期エンハンサータンパク質E4orf6をコードする遺伝子を一過性にトランスフェクトし、レポーター細胞をAAV2 capタンパク質をコードするcap遺伝子を含有するパッケージング細胞(成分1)とインキュベーションした後のGal4-UAS調節FL発現の増強を示す図である。
【
図8】レポーター細胞株(成分2)に最初期エンハンサータンパク質E4orf6をコードする遺伝子を一過性にトランスフェクトし、レポーター細胞をAAV5 capタンパク質をコードするcap遺伝子を含有するパッケージング細胞(成分1)とインキュベーションした後のGal4-UAS調節FL発現の増強を示す図である。
【
図9】マイクロタイタープレートの1ウェルあたりに播種されたレポーター細胞(成分2)の数と、AAV2 capタンパク質をコードするcap遺伝子を含むパッケージング細胞(成分1)の存在下でのGal4-UAS調節FL発現との関係を示す図である。7,500個のパッケージング細胞の存在下で合計15,000個のレポーター細胞/ウェルが最適なFL発現を与えることが分かった。
【
図10】組換えAAV2ベクターを発現するパッケージング細胞株を、試験される試料と20℃で30分間接触させた後、又は接触させずに、パッケージング細胞株及び試料を37℃で18時間、レポーター細胞と共にインキュベートし、その後市販の基質(Bright-Glo、Promega、ウィスコンシン州マディソン)を使用してFLレポーター遺伝子活性を定量し、ルミノメーター(Glo-Max、Promega、ウィスコンシン州マディソン)で発光を定量した後の、血清試料の中和活性の定量を示す図である。
【
図11】抗AAV2中和抗体の存在について試験される試料を、AAV2 Capタンパク質をコードする遺伝子を発現するパッケージング細胞(成分1)と共に室温で30分間プレインキュベートした後、又はプレインキュベートせずに、レポーター細胞(成分2)と共に37℃で18時間インキュベートした場合の効果を示す図である。
【
図12】本明細書に記載される本発明又は形質導入阻害参照方法のいずれかを使用して抗AAV2中和抗体の存在について試料を試験するために使用される手順の比較を示す図である。
【
図13】本明細書に記載の本発明又は形質導入阻害参照方法のいずれかを使用して抗AAV2中和抗体の存在について試験した試料の滴定の比較を示す図である。
【
図14】本明細書に記載の発明を使用して様々な動物AAVと交差反応する中和抗体の存在について試験したヒトIVIGの試料の滴定の結果を示す図である。
【
図15】100,000kDaのタンパク質のカットオフでの限外濾過の前後に本明細書に記載の発明を使用して抗AAV2中和抗体の存在について試験した個々の正常ヒトドナーからの血清試料の滴定の比較を示す図である。
【
図16】本明細書に記載の発明を使用して、様々なヒト野生型AAV血清型及びAAV発現キメラCJカプシドに対する中和抗体の存在について試験したヒトIVIGの試料の滴定の結果を示す図である。
【
図17】ウイルス産生パッケージング細胞をレポーター細胞と共に一晩インキュベートするか、又は同等の感染多重度(MOI)の遊離ウイルスをレポーター細胞と共に一晩インキュベートする、本明細書に記載の本発明のいずれかを使用して抗AAV2中和抗体の存在について試験した試料の滴定の比較を示す図である。
【
図18】AAV8パッケージング細胞(本発明の成分1)の存在下でのGal4 UASの5倍の縦列反復配列によって調節されるホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子及びチミジンキナーゼ構成的プロモーターによって調節されるウミシイタケルシフェラーゼ正規化遺伝子の両方を含有するレポーター細胞株(本発明の成分2)の活性化に対する、正常個体からの2つのヒト血清及びヒトIgG(IV-IgG)のプールの見かけの中和効果を示す図である。
【
図19】UASの5倍の縦列反復配列によって調節されるホタルルシフェラーゼ(FL)レポーター遺伝子及びチミジンキナーゼ構成的プロモーターによって調節されるウミシイタケルシフェラーゼ(RL)正規化遺伝子の両方を含むレポーター細胞株(本発明の成分2)におけるウミシイタケルシフェラーゼ(RL)の発現を示す図である。 ウミシイタケの発現は、IV-IgGを使用した場合に安定であるが、正常個体由来の2つのヒト血清(HS0及びHS4)を使用した場合には減少し、AAV8パッケージング細胞(本発明の成分1)の存在下での血清HS0及びHS4の見かけの中和効果が非特異的細胞毒性によるものであることを実証している。
【
図20】AAV8パッケージング細胞(本発明の成分1)の存在下でのGal4 UASの5倍の縦列反復配列によって調節されるFLレポーター遺伝子及びチミジンキナーゼ構成的プロモーターによって調節されるRL正規化遺伝子の両方を含むレポーター細胞株(本発明の成分2)の活性化に対する、正常個体からの2つのヒト血清HS0及びHS4、ならびにヒトIgG(IV-IgG)のプールのFL対RL活性の比を示す図であり、血清HS0及びHS4の見かけの中和効果が実際には非特異的細胞毒性によるものであったことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施形態を説明する際に、明確にするために特定の用語が使用される。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図するものではなく、各特定の用語は、同様の目的を達成するために同様の様式で動作する全ての技術的等価物を含むことが理解される。
【0038】
本発明は上述の先行技術に照らしてなされ、本発明の目的は、感度及び特異性が改善された、アデノ随伴ウイルス(AAV)又は組換えAAVベクターのいずれかに対する中和抗体の検出及び定量のための新規系を提供することである。この目的を達成するために、本発明は、とりわけ、ウイルスゲノム内のタグ配列又はAAV ITR内に含まれる導入遺伝子プロモーター構築物を含む、抗体応答が決定され得るAAV血清型又は組換えAAVベクターを産生するためのパッキング細胞株(成分1)を提供する。
【0039】
本発明はまた、成分1のタグ配列に特異的に応答するレポーター遺伝子プロモーター構築物を組み込んだレポーター遺伝子細胞株(成分2)、ならびに試験試料中の抗AAV中和抗体を検出及び最適に定量するためにそれを使用する方法に関する。
【0040】
本発明はさらに、最適な感度、信号強度、及び生物学的忠実度でAAVに対する免疫応答を検出し、最適に監視するためのハイスループットスクリーニングの方法に関する。
【0041】
さらに、本発明はまた、診断又は診断方法における成分1及び/又は成分2の使用、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)又は組換えAAVベクターのいずれかに対する中和抗体(NAb)の検出及び定量のための使用に関する。
【0042】
成分1:パッケージング細胞株
本明細書において言及されたように、本発明は、一過性トランスフェクションによって供給されるか、又は好ましくは選択された細胞株のゲノムに部分的もしくは完全に統合されている、AAV血清型又は組換えAAVベクターの発現に必要な構成成分を含み得るAAVパッキング細胞株に関する。選択された細胞株は、宿主細胞又は宿主細胞株と称され得る。
【0043】
したがって、本発明は、細胞又は細胞株(成分1)に関し、細胞は、
(i)AAV ITR内に含まれる1つ又は複数のタグ配列を含む、AAVゲノム又は導入遺伝子プロモーター構築物、
(ii)構成的プロモーター又は誘導性プロモーターに作動可能に連結された天然に存在するCap、ハイブリッドCap、キメラCap、合理的に設計されたCapのいずれかをコードする、AAV血清型又は組換えAAVベクターのcap遺伝子、
(iii)誘導性プロモーターに作動可能に連結されたAAV rep遺伝子、
(iv)それぞれ異なる個々の天然又は誘導性プロモーターに作動可能に連結されたAAV E2A、E4及びVA遺伝子、
(v)誘導性プロモーターに作動可能に連結されたAAV E1A遺伝子
のうちの少なくとも1つ又は複数を含む。
【0044】
一態様において、細胞は、(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)のいくつか又は全てを含む。
【0045】
特定の態様において、細胞は、(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)の全てを含む。
【0046】
一態様において、誘導性プロモーター(iii)、(iv)、及び(v)は互いに異なり、Tet-on/Tet-offシステム、累積誘導性リプレッサーCymRシステム、フラボノイドフロレチン調節TtgRリプレッサーシステム、及びバニリン酸調節VanRリプレッサー/KRAPシステムから選択され得る。
【0047】
さらなる態様において、AAV E1A遺伝子は、誘導性の1つ又は複数のプロモーターを使用することによって、rep遺伝子又はE2A、E4及びVA遺伝子のいずれかを制御する必要性を排除する誘導性プロモーターにより調節され得る。換言すれば、一態様において、E1A遺伝子が誘導性プロモーターによって調節されることのみが必要である。したがって、一態様において、(ii)の誘導性プロモーターは、rep遺伝子又はE2A、E4及びVA遺伝子のいずれかを制御する必要性を排除する誘導性プロモーターであり得る。
【0048】
一態様において、(ii)における誘導性プロモーターは、例えば八量体Van OオペレーターVanO8を使用したバニリン酸誘導性プロモーターから選択され得る。
【0049】
別の態様において、(ii)における誘導性プロモーターは、例えば、Tet-On、Tet-off、及びポナステロンA/エクジソン系から選択され得る。
【0050】
感度を高めるために、宿主細胞株は、細胞表面AAV受容体単独(9)もしくはエンドソームAAV受容体単独(10)のいずれか、又は細胞表面受容体及びエンドソームAAV受容体の両方で安定にトランスフェクトされ得ることが理解される。
【0051】
宿主細胞株の選択は、生物学的試料の分析ならびにrep遺伝子及びE4orf6の制御された発現後のAAV Repタンパク質の毒性に耐える細胞の能力についてのその安全性プロファイルによって決定される(11)。一態様において、宿主細胞は後生動物細胞である。別の態様において、宿主細胞株には、限定されないが、ヒト肺腺癌細胞株A549(ATCCカタログ番号CCL-185)又はヒト胎児腎細胞株HEK293T(ATCCカタログ番号ACS-4500)が含まれ得る。
【0052】
選択された宿主細胞株は、CMVプロモーター等の構成的プロモーター、又は導入遺伝子の所望の組織特異的発現に応じて選択される導入遺伝子の発現を調節する適切な組織特異的プロモーター、及びAAV2のITR内に含まれる、例えばSV40由来のもの等の好適なポリアデニル化部位又は例えば代替的なポリアデニル化部位のいずれかの制御下で、選択された導入遺伝子でトランスフェクトされ得る(
図1)。別の態様において、構成的プロモーターは、例えばSV40、UBC、EF1A、PGK、及びCAGGプロモーターであり得る。さらなる態様において、組織特異的プロモーターは、例えば、赤色オプシン2.1及び1.7プロモーター、緑色オプシン2.1及び1.7プロモーター、ロドプシンキナーゼ2(hGPK1)プロモーター、錐体アレスチンhCARプロモーター、卵黄様黄斑ジストロフィー(VMD2)プロモーターを含むヒト網膜特異的プロモーターであり得る。一般的な筋肉特異的プロモーターには、クレアチンキナーゼ(CK)及びミオシン重鎖(MyHC)プロモーター、又はシナプシンプロモーター等のニューロン特異的プロモーターが含まれる。
【0053】
宿主細胞はさらに、例えばCMV最初期プロモーター等の構成的プロモーターの制御下でcap遺伝子で同時トランスフェクトされ得る(
図1)。別個のプラスミド上でのcap遺伝子及びrep遺伝子の発現がAAVベクター産生を増加させることが報告されているため(12)、細胞は、2つの独立した調節されたプラスミド上でcap遺伝子及びrep遺伝子で同時トランスフェクトされ得る。
【0054】
E1ならびにE1A及びE1B ORFをコードする遺伝子は、HEK293T細胞とは対照的にA549細胞では発現されないため、A549細胞をE1遺伝子で好適な誘導性プロモーターの制御下でトランスフェクトし、E1aタンパク質がRep、E2及びE4遺伝子を活性化するのを防止した。したがって、例1に示されるように、また本発明の一態様において、E1遺伝子は、FK506結合タンパク質(FKBP)に融合されたDNA結合ドメインZFHD1の12倍の縦列反復配列からなるラパマイシン誘導性プロモーターの制御下で発現される。FKBP-ラパマイシン関連タンパク質(FRAP)は、ラパマイシンの添加がFKBPとFRAPとの間のヘテロ二量体の形成を誘導して、E1初期タンパク質をコードする遺伝子の厳密に制御された発現をもたらすように、HSV-1由来のVP16トランス活性化因子に融合される。
【0055】
Rep78/68の制御された発現はまた、AAVベクター産生のレベルを増加させることが示されている(9)。E4 orf6単独によるHEK293細胞のトランスフェクションは、アデノウイルスを用いない組換えAAVベクターの産生に十分であることが報告されているが(14)、初期ヘルパータンパク質E2A、E4、及びVA RNAは、組換えAAVの効率的な産生に必要であることが報告されている(15)。したがって、パッケージング細胞株は、1つの事例において、E2A、E4及びVA RNAを発現する発現ベクターで同時トランスフェクトされ得る。
【0056】
成分2:レポーター細胞株。
一態様において、本発明は、レポーター細胞をAAVチャレンジウイルス/組換えAAVベクター、又は中和抗体が定量される必要なAAV血清型もしくは組換えAAVベクターを産生するパッケージング細胞と接触させると、レポーター細胞株によって発現されるレポーター遺伝子の活性化がもたらされるように、成分1のAAVゲノム又は導入遺伝子構築物内に含まれるタグ配列に特異的に応答し得る開発されたレポーター遺伝子細胞株(本明細書では成分2とも呼ばれる)に関する。例1では、パッケージング細胞株は、ホタルルシフェラーゼ(FL)遺伝子の発現を調節するGal4上流活性化配列(UAS)に特異的に結合するGal4 DNA結合ドメインをコードするタグ配列を含む導入遺伝子プロモーター構築物を発現する。具体的には、例1では、レポーター細胞は、HEK293細胞バックグラウンドにおけるFLレポーター遺伝子の発現を調節するGal4 UASの5倍の縦列反復配列を含む(
図1)。
【0057】
パッケージング細胞株とレポーター細胞との相互作用
様々な実施形態において、本発明は、以下のステップのうちの少なくとも1つを含む方法に関する:
(a)本発明によるパッケージング細胞(成分1)によって産生されたウイルスを、試験される試料と、様々な時間、及び約+4℃、約20℃又は約37℃を含む様々な温度で接触させた後、ウイルス調製物及び試料を、レポーター細胞(成分2)と共に、約37℃で様々な時間、好ましくは約15~約18時間以上インキュベートし、その後好適な基質、例えば市販の基質Bright-Glo(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を使用してFLレポーター遺伝子活性を定量するステップ。
(b)ウイルス産生パッケージング細胞(成分1)を、試験される試料と、約+4℃、約20℃、又は約37℃のいずれかを含む様々な温度で様々な時間接触させた後、ウイルス産生パッケージング細胞及び試料をレポーター細胞(成分2)と共に約37℃で様々な時間、好ましくは約15~約18時間以上インキュベートし、その後FLレポーター遺伝子活性を定量するステップ。
(c)好ましい実施形態において、ウイルス産生パッケージング細胞(成分1)を、試験される試料及びレポーター細胞(成分2)と接触させ、約37℃で様々な時間、好ましくは約6~約18時間以上直接インキュベートした後、好適な基質、例えば市販の基質Bright-Glo(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を使用してFLレポーター遺伝子活性を定量するステップ。
(c)ウイルス産生パッケージング細胞(成分1)をレポーター細胞(成分2)と一緒に適切な細胞濃度で好適な低温保護培地中で凍結させ、細胞を解凍し、パッケージング細胞/レポーター遺伝子細胞を試験される試料と接触させ、試料、パッケージング細胞-レポーター細胞を約37℃で様々な時間、好ましくは約18時間以上インキュベートした後、市販の基質Bright-Glo(Promega、ウィスコンシン州マディソン)等の好適な基質を使用してFLレポーター遺伝子活性を定量するステップ、
(d)好ましい実施形態において、ウイルス産生パッケージング細胞(成分1)及びレポーター細胞(成分2)を適切な細胞濃度で好適な低温保護培地中で別々に凍結させ、細胞を解凍し、パッケージング細胞株を試験する試料と様々な時間、及び約+4℃、約20℃、又は約37℃のいずれかを含む様々な温度で接触させた後、パッケージング細胞及び試料をレポーター細胞と共に約37℃で様々な時間、好ましくは約18時間以上インキュベートし、その後市販の基質Bright-Glo(Promega、ウィスコンシン州マディソン)等の好適な基質を使用してFLレポーター遺伝子活性を定量するステップ。
【0058】
したがって、本発明の一態様では、成分1、成分2及び生物学的試料の間のインキュベーション期間は、約1時間~約48時間、例えば約6時間~約36時間、例えば約9時間~約32時間、例えば約12時間~約24時間等の任意の時間幅、あるいは約1時間、約4時間、約6時間、約9時間、約12時間、約15時間、約18時間、約20時間、約24時間、約28時間、約30時間、約32時間であり得る。一態様において、インキュベーション期間は、例えば一晩であってもよく、これは約6時間~約10時間の間任意の期間、又は約6時間~約18時間の間の任意の期間であり得る。別の態様において、インキュベーション期間は、例えば、約15時間~約30時間であり得る。
【0059】
さらなる態様において、成分1、成分2及び生物学的試料の間のインキュベーション期間は、約15時間~約18時間の任意の期間であり得る。
【0060】
インキュベーション中の温度は、約4℃~約37℃の任意の温度の任意の範囲、あるいは約4℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、又は約37℃であり得る。あるいは、温度は、約30℃~約39℃の範囲であってもよい。したがって、温度は、成分1及び/又は成分2の細胞及び/又は分析される生物学的試料のインキュベーションに関連し得る。
【0061】
好ましい実施形態において、
図9に示されるように、レポーター細胞(成分2)との接触、及び37℃で約18時間のインキュベーションの前に試料とパッケージング細胞(成分1)とのプレインキュベーションなしで約7,500個のパッケージング細胞(成分1)が約15,000個のレポーター細胞(成分2)と混合される(
図10)。
【0062】
一態様において、AAV調製物又はウイルス産生パッケージング細胞は、レポーター遺伝子細胞と相互作用し、ウイルス取り込み、内在化、及びFLレポーター遺伝子のAAV血清型特異的活性化をもたらす。ウイルス調製物又はウイルス産生パッケージング細胞とレポーター細胞との最初の相互作用は、おそらく、ウイルスの放出及び血清型特異的相互作用における細胞表面上の糖質とのカプシドの相互作用によって媒介される。したがって、AAV血清型2、3及び6はヘパリン硫酸プロテオグリカンに結合し、一方、AAV1、4、5及び6はシアル酸に結合し、AAV9はガラクトースに結合することが知られている(8)。次いで、AAV血清型は、細胞内在化に必要なAAV受容体(9)及び/又はトランスゴルジに局在する新規Gタンパク質共役受容体様タンパク質GPR108のいずれかと相互作用する(10)。一実施形態において、レポーター遺伝子は、好適な方法での検出を可能にする酵素又は任意の他の手段をコードする。好ましい実施形態において、レポーターは、ルシフェラーゼ、例えばホタルルシフェラーゼ、又はウミシイタケルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる欧州特許出願第21170068.7号明細書に記載されているもの等の新規ルシフェラーゼ、あるいは異なる励起/発光スペクトルを示す緑色蛍光タンパク質(EGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)及びその変異体、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)もしくはその様々なコンジュゲート、分泌型ヒト胎盤アルカリホスファターゼ(SEAP)もしくはその様々なコンジュゲート、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、又は様々なリンカータンパク質等のルシフェラーゼ又は蛍光タンパク質を含む可溶性活性モノマーとして、もしくはルシフェラーゼを含む他のタンパク質との融合タンパク質として溶液中に存在する、又は粒子、ビーズ、アッセイプレートもしくはチューブ等の固体表面に付着した新規ルシフェラーゼである。
【0063】
別の実施形態において、レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質をコードする。有用な蛍光タンパク質には、緑色蛍光タンパク質(GFP)及び関連する蛍光タンパク質、例えば増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、ならびに異なる励起/発光スペクトルを示すその変異体が含まれる。
【0064】
さらなる実施形態において、レポーター細胞は、AAVゲノム内に存在するタグ配列又は組換えAAVコード導入遺伝子構築物(成分1から得られる)内に存在するタグ配列に特異的に応答する、キメラプロモーターの制御下のホタルルシフェラーゼ(FL)レポーター遺伝子等の第1のレポーター遺伝子、及びウミシイタケルシフェラーゼ(RL)活性の構成的発現レベルに関してタグ配列活性化FL活性を正規化することを可能にする構成的プロモーターの制御下の、RL等の第2のレポーター遺伝子で同時トランスフェクトされ、これにより、アッセイは細胞数と無関係になり、細胞の喪失又は播種された細胞の数の変動に起因する細胞密度の試料間変動を補償するための手段が提供される。RL活性の構成的発現に対してAAV活性化FL活性を正規化する能力はまた、血清マトリックス効果を補償する手段を提供する(16)。有用な構成的に活性なプロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/プロモーター、SV40プロモーター、UBCプロモーター、PGKプロモーター、ヒトβ-アクチン(hACTB)、ヒト伸長因子-1α(hEF-1α)、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター及びサイトメガロウイルス初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
本発明は、感度、精度及び特異性が改善された、野生型AAV血清型又は組換えAAVベクターに対する中和抗体の検出及び定量のための新規系を提供する。
【0066】
上で概説された技術的問題を解決するために、ウイルスゲノム又は導入遺伝子構築物内のタグ配列を含む、抗体応答が決定されるAAV血清型又は組換えAAVベクターを産生するためのパッキング細胞株(成分1)と、成分1のタグ配列に特異的に応答するレポーター遺伝子プロモーター構築物を組み込んだレポーター遺伝子細胞株(成分2)とを含む2成分系、及び試験試料中の抗AAV中和抗体を検出し、最適に定量するためにこれを使用する方法が説明される。本発明はさらに、最適な感度、信号強度、及び生物学的忠実度でAAV感染又は組換えAAVベクターでの治療に対する免疫応答を検出し、最適に監視するためのハイスループットスクリーニングの方法に関する。
【0067】
成分1:パッケージング細胞株。AAV血清型又は組換えAAVベクターの発現に必要な構成成分が一過性トランスフェクションによって供給されるか、又は本発明の好ましい実施形態において選択された細胞株のゲノムに統合されている、安定なAAVパッケージング細胞株が樹立され得る。
【0068】
非限定的な例として、特定のAAV血清型又は組換えAAVベクターの産生のための安定な細胞株は、ヒト肺腺癌細胞株A549(ATCCカタログ番号CCL-185)を、意図する用途に応じて選択される構成的プロモーター又は適切な組織特異的プロモーター、及びAAV2のITR内に含まれるポリアデニル化部位のいずれかの制御下で選択される導入遺伝子でトランスフェクトすることによって樹立され得る(
図1に示される通り)。
【0069】
可能な限り最高レベルの発現を付与する導入遺伝子プロモーター構築物のための発現ベクターを構築するためには、プロモーターの様々なタイプの変異体をin silicoで設計して、プロモーターのサイズを低減し、導入遺伝子の転写を増加させる。次いで、例えば例1のGal4 DNA結合ドメイン等のタグ配列を含むコドン最適化導入遺伝子プロモーター構築物をインビトロで合成し、一連のキメラ導入遺伝子プロモーター配列と、その有効性に応じて選択された、AAV2のITR内に含まれる合成ポリアデニル化部位、SV40ポリアデニル化部位又はヒト成長ホルモンポリアデニル化部位のいずれかとを構築するために使用する。
【0070】
一態様において、成分1における細胞は、ホタルルシフェラーゼ(FL)遺伝子の発現を調節するGal4上流活性化配列(UAS)に特異的に結合する、Gal4 DNA結合ドメインをコードするタグ配列を含む導入遺伝子プロモーター構築物を発現し得るか、あるいは、AAVゲノムもしくは導入遺伝子構築物内のVanR配列、又はAAVゲノムもしくはcGMP特異的受容体タンパク質(CRP)をコードする導入遺伝子プロモーター構築物を発現する。
【0071】
本発明のさらなる態様において、AAVゲノム又は導入遺伝子構築物内に含まれるタグ配列は、トランス活性化因子VP16に融合したトランスサイレンサーVanRをコードし得る。
【0072】
さらなる態様において、成分1中の細胞は、1つ又は複数のタグ配列を含み得る。
【0073】
さらなる態様において、2つ以上のタグ配列が存在する事例では、そのようなタグ配列は互いに異なっていてもよい。
【0074】
別の態様において、タグ配列は、同じ/同一であり得る。
【0075】
一態様において、成分1の細胞は、組換えAAVベクターを含み得る。
【0076】
導入遺伝子が第2鎖DNA合成を必要とせずに発現されるように、ITRを改変して自己相補的中間体を生成することによって、導入遺伝子発現を増加させることができる(13)。次いで、これらの構築物は、AAVベクターによってコードされる導入遺伝子を複製するのに必要な全ての初期ヘルパータンパク質を含むが、AAV2のITR内に含まれるタグ配列を有する導入遺伝子プロモーター構築物を欠く、例えばA549細胞で樹立されたパッケージング細胞株における一連の一過性トランスフェクション実験において導入遺伝子の転写を駆動する能力について試験される。発現レベルは、適切な検出抗体を使用するウエスタンブロットによって、及びキメラ導入遺伝子応答性プロモーターの制御下でのホタルルシフェラーゼ(FL)レポーター遺伝子の活性化のレベルによって監視される。結果は、構成的プロモーターの制御下での細胞のRLレポーター遺伝子との同時トランスフェクション後のウミシイタケルシフェラーゼ(RL)の発現に関して正規化される。
【0077】
ウエスタンブロットによって監視される導入遺伝子の発現の正規化されたレベルが、標準的なITRの発現に対して最適であると推定され、FL発現の正規化された増加が、AAVゲノム又は組換えAAVベクター内に含まれるGal4 DNA結合ドメインタグに特異的に応答するホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を調節するGal4 UASのタンデムリピートを発現する例1のもの等のレポーター細胞株を使用して十分であると推定される場合、構築物は、一過性トランスフェクションによって、又は好ましい実施形態においてA549細胞等の宿主細胞株のゲノムに必要な成分が安定に組み込まれている安定なパッケージング細胞株の樹立によって、パッケージング細胞株を樹立するために使用される。
【0078】
パッケージング細胞株は、構成的プロモーターの制御下でcap遺伝子の発現ベクターでトランスフェクトされ得る。したがって、例1において、cap遺伝子は、CMV最初期プロモーターの制御下で発現され、構成成分による一過性トランスフェクション後のパッケージング細胞株を樹立するために、又は好ましい実施形態において必要な成分が宿主細胞株、例えばA549細胞等のゲノムに安定に組み込まれた安定なパッケージング細胞株の樹立によって使用される。
【0079】
例1において導入遺伝子を発現するのに必要なrep遺伝子及び初期遺伝子の最適な調節された発現を確実にするために、E1をコードする遺伝子を、in silicoで設計されたFK506結合タンパク質(FKBP)に融合したDNA結合ドメインZFHD1の変異体の縦列反復配列からなるラパマイシン誘導性プロモーターの制御下で発現させた。FKBP-ラパマイシン関連タンパク質(FRAP)の変異体を、ラパマイシンの添加がFKBPとFRAPとの間のヘテロ二量体の形成を誘導して、E1初期ヘルパータンパク質をコードする遺伝子の厳密に制御された発現をもたらすように、同じくin silicoで設計されたHSV-1由来のVP16トランス活性化因子に融合させた。
【0080】
次いで、構築物をインビトロで合成し、A549パッケージング細胞株における一連の一過性トランスフェクション実験においてE1タンパク質の発現を調節するそれらの能力について試験した。E1A遺伝子によってコードされたタンパク質は、p5及びp19プロモーターを転写活性化することによってrep発現を増加させることによってAAV複製を開始する。AAVベクター産生レベルを増加させることが示されているRep78/68タンパク質(14)の制御された発現を確実にするために、rep遺伝子もZFHD1プロモーターの制御下に置いた。ラパマイシンの添加が、E1初期エンハンサータンパク質をコードする遺伝子の厳密に制御された発現をもたらすFKBPとFRAPとの間のヘテロ二量体の形成を誘導するように、FK506結合タンパク質(FKBP)に融合されたDNA結合ドメインZFHD1と、VP16転写活性化因子に融合されたFKBP-ラパマイシン関連タンパク質(FRAP)の変異体との縦列反復配列をin silicoで設計し、インビトロで合成し、A549細胞における一過性トランスフェクション実験で試験した。
【0081】
例1において、ZFHD1プロモーターの制御下でE1を発現するA549細胞において、E1aの制御下で3つの個々のタンパク質が必要なレベルで一定の化学量論量で発現されることを確実にするために、組換えAAVの効率的な産生に必要な初期エンハンサータンパク質E2A、E4、及びVA RNAを、自己切断性2Aペプチドを組み込んだ単一の多シストロン性配列として発現させた。構築物の機能性を、本発明のレポーター細胞を使用して決定されたカプセル化導入遺伝子の発現の正規化されたレベルの産生効率によって監視した。
【0082】
本発明の好ましい実施形態において、パッケージング細胞株の構成成分は、例1に記載されているように、選択された細胞株のゲノムに組み込まれている。ヒトA549細胞を、開発された最適な導入遺伝子プロモーター構築物で同時トランスフェクトした。細胞はまた、E1A発現によってその発現が調節されるラパマイシン調節ZFHD1プロモーターならびにE2A、E4及びVA遺伝子の制御下で、rep遺伝子及びE1A遺伝子の両方で同時トランスフェクトした。クロマチンの転写活性領域における導入遺伝子の組込みを保証するインテグラーゼ/トランスポゾン系を使用して、ヒトA549細胞を上記構築物でトランスフェクトした。個々の安定なクローンを単離し、ZFHD1プロモーターの12倍の縦列反復配列の制御下でホタルルシフェラーゼ(FL)遺伝子を発現するベクターによる一過性同時トランスフェクション後のラパマイシン誘導能について、ならびにE1A、Rep及びE2/E4の発現レベルについてウエスタンブロットにより特徴付けた。また、個々のクローンを、qPCRによって決定された全封入コンピテント組換えAAVベクターの発現レベルについても試験した。AAVベクターゲノムの定量は、実験室間の結果の直接的な比較を可能にするAAV2 ITR特異的標的配列の使用に基づいたが、線形又は環状ITA標準の使用及びAAV2 ITRの広範な二次ヘアピン構造に起因する拡張変性サイクルに依存する(15)。
【0083】
選択されたクローンの安定性を20継代にわたって一定の間隔で試験し、ヒトA549細胞における導入遺伝子の安定性を決定した。選択されたクローンは、導入遺伝子応答性レポーター細胞株の活性化レベルによって監視される全封入コンピテント組換えAAVベクターのレベルの喪失を示さなかった。クローンはまた、必要な選択剤を含有する培地中で標準化された増殖条件下で達成された倍加時間及び最大細胞密度の両方を含む安定した増殖特性を示した。
【0084】
定義
ベクター
「ベクター」という用語は、組換え遺伝物質を宿主細胞に移入するためのビヒクルとして使用されるDNA分子を指す。ベクターの4つの主要な種類は、プラスミド、バクテリオファージ及び他のウイルス、コスミド、及び人工染色体である。ベクター自体は、一般に、インサート(異種核酸配列、導入遺伝子)と、ベクターの「骨格」として機能するより大きな配列とからなるDNA配列である。遺伝情報を宿主に伝達するベクターの目的は、典型的には、標的細胞においてインサートを単離、増殖又は発現することである。発現ベクター(発現構築物)と呼ばれるベクターは、標的細胞における異種配列の発現に特異的に適合され、一般に、異種配列の発現を駆動するプロモーター配列を有する。本発明の実施形態において用いられるベクターの選択は、ポリペプチド又はポリヌクレオチドをコードするベクターの特定の用途に依存する。
【0085】
導入遺伝子
導入遺伝子は、オープンリーディングフレーム(ORF)、開始及び終止コドンをコードし、好適なベクターを使用してある生物から別の生物に頻繁に移されるDNAのセグメントである。
【0086】
作動可能に連結される
「作動可能に連結される」という用語は、遺伝子又はオープンリーディングフレーム等の機能単位の一部である要素の接続を指す。したがって、ポリペプチド(オープンリーディングフレーム、ORF)をコードする核酸配列にプロモーターを作動可能に連結することによって、2つの要素は機能単位、すなわち遺伝子の一部になる。核酸配列への発現制御配列(プロモーター)の連結は、プロモーターによって指示される核酸配列の転写を可能にする。ポリペプチドをコードする2つの異種核酸配列を作動可能に連結することによって、配列は機能単位、すなわち異種核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームの一部になる。2つのアミノ酸配列を作動可能に連結することにより、配列は同じ機能単位、すなわちポリペプチドの一部になる。2つの異種アミノ酸配列を作動可能に連結することにより、ハイブリッド(融合)ポリペプチドが生成される。
【0087】
最小構成的プロモーター
レポーター遺伝子の発現を指示するプロモーターは、典型的には、本発明のレポーター細胞株を樹立するために使用される哺乳動物宿主細胞において最小構成的に活性であり、単独では、薬理学的に活性な分子による細胞の処理に応答しない。有用な構成的に活性なプロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/プロモーター、SV40プロモーター、UBCプロモーター、PGKプロモーター、ヒトβ-アクチン(hACTB)、ヒト伸長因子-1α(hEF-1α)、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター及びサイトメガロウイルス初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
誘導性プロモーター
誘導性プロモーターは、活性化転写因子がRNAポリメラーゼIIを動員することを可能にする、細胞中の調節因子又はタンパク質の存在又は存在量又は立体構造の可逆的変化の後にmRNAの転写が生じるDNA配列である。本発明によれば、誘導性プロモーターは、化学薬剤、温度及び光に応答するか又は化学薬剤、温度及び光によって活性化(誘導)される任意のプロモーターであり得、これらは全て、プロモーターの誘導をもたらし得る因子の例である。
【0089】
化学的に調節されたプロモーターは、最も一般的な誘導性プロモーターの1つである。陽性誘導性テトラサイクリンON(Tet-On)系は、原核生物及び真核生物で使用するために開発された汎用ツールであり、直接活性化を介して作用する。この系では、活性化因子rtTA(逆テトラサイクリン制御転写活性化因子)は通常不活性であり、プロモーター中のテトラサイクリン応答因子(TRE)に結合することができない。テトラサイクリン及びその誘導体は、プロモーター活性化を可能にする誘導剤として働く。
【0090】
最も一般的に使用される原核生物プロモーターの1つは、負の誘導性pLacプロモーターである。このプロモーターは、転写が活性化されるためにlacリプレッサー(lacIタンパク質)の除去を必要とする。ラクトース又はラクトース類似体IPTGの存在下では、lacリプレッサーは、プロモーター内のlacO部位からそれを除去する立体構造変化を受け、標的遺伝子の抑制を停止する。単純化されたlac誘導性系は、多くの細菌発現ベクターに見られる。
【0091】
負の誘導性プロモーターpBadは、細菌タンパク質精製にしばしば使用される別の一般的な原核生物プロモーターである。アラビノースが存在しない場合、調節タンパク質AraCはpBadの上流のO及びI1部位に結合し、転写をブロックする。アラビノースの付加は、AraCにI1及びI2部位を結合させ、転写を開始させる。アラビノースに加えて、cAMP活性化タンパク質(CAP)と複合体化したcAMPもまた、I1及びI2部位へのAraC結合を刺激することができる。細胞増殖培地にグルコースを補足すると、cAMPが減少し、pBadが抑制され、プロモーターの漏出が減少する。
【0092】
温度感受性発現系は、典型的には、化学的に誘導されたプロモーターよりも漏出が少なく、それらは、通常の温度でほぼゼロの発現を示すが、熱又は低温への曝露によって誘発され得る。例としては、これらに限定されないが、熱ショック誘導性Hsp70又はHsp90由来プロモーターが挙げられ、選択される遺伝子は、短時間の熱ショックへの曝露後にのみ発現される。Hsp70の場合、熱ショックは熱ショック因子1(HSF-1)を放出し、これはその後、プロモーター内の熱ショックエレメントに結合し、それによって転写を活性化する。他の非限定的な例は、例えば線虫(C.elegans)及びショウジョウバエ(Drosophila)等の種におけるゲノム工学のための熱衝撃誘導性Cre及びCas9である。
【0093】
光は遺伝子発現を活性化する別の手法であり、合成生物学で使用される2成分系は光を使用して転写を調節する。赤色フレームプラスミド(red flame plasmid)pDawnは青色光感知タンパク質YFIを含有する。光が存在しない場合、YFIはFixJをリン酸化し、これがFixK2プロモーターに結合してファージリプレッサーcIの転写を誘導する。リプレッサーcIは、ファージプロモーターpRからの転写を阻害し、レポーター遺伝子の発現を妨げる。光が存在する場合、YFIは不活性であり、リプレッサーcI合成を妨げ、レポーター遺伝子転写を生じさせる。
【0094】
本発明の実施形態を説明する際、全ての可能な実施形態の組み合わせ及び順列は明示的に説明されていない。それにもかかわらず、特定の手段が相互に異なる従属項目に列挙されているか、又は異なる実施形態に記載されているという事実だけでは、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。本発明は、記載された実施形態の全ての可能な組み合わせ及び置換を想定している。
【0095】
本明細書における「含む(comprising)」、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」という用語は、あらゆる事例において、それぞれ「からなる(consisting of)」、「からなる(consist of)」及び「からなる(consist of)」という用語と任意選択で置換可能であることを意図している。本発明は、本発明の詳細な説明を参照することによってより完全に理解されるであろう。しかしながら、これは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。全ての文献の引用は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0096】
本発明は、以下の非限定的な例においてさらに説明される。
【0097】
例1
HEK293細胞中で樹立され、ITR間にGal-4タグ配列を有し、AAV2のカプシドをコードするcap遺伝子を発現する、
図1に示されるパッケージング細胞株(成分1)を、一晩、又は約15時間~約30時間の任意の期間、約37℃で、AAV2に対する中和抗体の存在について試験されるヒト血清の試料の存在下、
図2に示されるGAL4 UAS(成分2)の5倍の縦列反復配列の制御下でホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有するレポーター細胞株と共インキュベートした。次いで、Bright-Glo基質を使用してルミノメーターでホタルルシフェラーゼ発現を定量した(
図10)。
【0098】
例2
HEK293細胞中で樹立され、ITR間にGal-4タグ配列を有し、AAV2のカプシドをコードするcap遺伝子を発現する、
図1に示されるパッケージング細胞株(成分1)を、AAV2に対する中和抗体の存在について試験される正常ヒトドナー由来血清の試料の存在下、
図2に示されるGAL4 UAS(成分2)の5倍の縦列反復配列の制御下で、本明細書に記載される発明を使用して、前処理なしで、又は100,000kDaのタンパク質に対するカットオフでの限外濾過後のいずれかで、ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有するレポーター細胞株と一晩共インキュベートした。次いで、Bright-Glo基質を使用してルミノメーターでホタルルシフェラーゼ発現を定量した。
図15に示されるように、未処理血清及びフィルターによって保持された材料の両方が、AAV2に対する中和抗体の存在を反映して同様に低下したRLUレベル(RLU値)を示した。対照的に、濾液は、AAV2に対する中和抗体が存在しないことを示す低下していないRLUレベルを示した。試料58は、AAV2に対する中和抗体を示さないことが知られている正常ヒトドナー由来の対照血清の試料である。試料58は、限外濾過の前後の両方で同様のRLU値を示すことが分かった。
【0099】
例3
HEK293細胞中で樹立され、ITR間にGal-4タグ配列を有し、AAV2のカプシドをコードするcap遺伝子を発現する、
図1に示される増加する数のパッケージング細胞株(成分1)を、
図2に示されるGAL4 UAS(成分2)の5倍の縦列反復配列の制御下で、ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有する一定数のレポーター細胞株と一晩共インキュベートした。並行して、同じ実験において、増加する感染多重度(MOI)の精製された無細胞AAV2ビリオンを、
図2に示されるGAL4 UAS(成分2)の5倍の縦列反復配列の制御下でホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有する一定数のレポーター細胞株と一晩共インキュベートした。予想外にも、
図2に示されるGAL4 UAS(成分2)の5倍の縦列反復配列の制御下での、AAV2産生パッケージング細胞株(成分1)とホタルルシフェラーゼ受容体遺伝子を含有するレポーター細胞株との直接接触は、同等のMOIの精製無細胞AAV2ビリオンの添加及びGAL4 UAS(成分2)の5倍の縦列反復配列の制御下でのホタルルシフェラーゼ受容体遺伝子を含有するレポーター細胞株との一晩のインキュベーションよりも大きなFL受容体遺伝子活性の活性化をもたらした。これは、
図2に示されるGAL4 UAS(成分2)の5倍の縦列反復配列の制御下でホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有するレポーター細胞株と一晩インキュベートされた所与の量のAAV2産生パッケージング細胞株(成分1)が、レポーター細胞株(成分2)と一晩インキュベートされた遊離AAV2ビリオンの等価なMOIの添加よりも大きなFLレポーター遺伝子活性の活性化をもたらしたことを示す
図17に示されており、本発明の2成分系のある期間にわたる共インキュベート、ひいてはウイルス産生パッケージング細胞(成分1)とレポーター細胞(成分2)との間の直接的な接触が、とりわけ、等価なMOIの精製無細胞ウイルスビリオンとレポーター細胞との間の直接的な接触よりも、レポーター遺伝子の活性化において本質的により効率的であることを示唆している。したがって、本発明の野生型AAV血清型又は組換えAAVベクターに対する中和抗体を含有すると考えられる試料を用いた、所与の期間にわたるウイルス産生パッケージング細胞(成分1)とレポーター細胞(成分2)との接触によって提供される有効な抗原負荷は、無細胞ウイルスビリオンを野生型AAV血清型又は組換えAAVベクターに対する中和抗体を含有すると考えられる試料と37℃で多くの場合1時間以下の期間接触させる従来の中和アッセイよりも効果的に低く、本発明の感受性の増加をもたらす。
【0100】
特定の実施形態において、本発明は以下の項目に関する。
1.抗体応答が決定される、AAV血清型又は組換えAAVベクターの産生のための第1の後生動物細胞(成分1)であって、
(i)AAV ITR内に含まれるタグ配列を含む、AAVゲノム又は導入遺伝子プロモーター構築物、
(ii)構成的プロモーターに作動可能に連結された天然に存在するCap、ハイブリッドCap又はキメラCapのいずれかをコードする、AAV血清型又は組換えAAVベクターのcap遺伝子、
(iii)誘導性プロモーターに作動可能に連結されたAAV rep遺伝子、
(iv)それぞれ個々の天然又は誘導性プロモーターに作動可能に連結されたAAV E2A、E4及びVA遺伝子、
(v)誘導性プロモーターに作動可能に連結されたAAV E1A遺伝子
を含む、第1の後生動物細胞(成分1)。
成分1のAAVゲノム又は導入遺伝子プロモーター構築物内のタグ配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を組み込んだ第2の後生動物細胞(成分2)
ならびに試験試料中の抗AAV中和抗体を検出及び最適に定量するためにそれを使用する方法。
2.バキュロウイルス感染性昆虫細胞、例えばSF9細胞、鳥類細胞、例えばDT-40、MSB1又はLMH、マウス細胞、例えばL929細胞又はLS変異体、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えばCHO-K1、CHO-DXB11、CHO-DG44、CHOK1SV(全ての変異体を含む)、CHOK1SV-GSKO(グルタミン合成酵素ノックアウト)(全ての変異体を含む)、ヒト細胞、例えばHEK293細胞(全ての変異体及び全ての懸濁又は接着変異体を含む)、HeLa細胞、HT1080細胞、ARPE-19、U937、Jurkat、HuH-7、HepG2、K562、A431又はA549細胞である、項目1に記載の細胞。
3.AAVゲノム又は導入遺伝子プロモーター構築物内に含まれるタグ配列が、Gal4 DNA結合ドメインである、成分1の細胞。
4.AAVゲノム又は導入遺伝子プロモーター構築物内に含まれるタグ配列が、cGMP特異的受容体タンパク質(CRP)をコードする、成分1の細胞。
5.AAVゲノム又は導入遺伝子構築物内に含まれるタグ配列が、トランス活性化因子VP16に融合したトランスサイレンサーVanRをコードする、成分1の細胞。
6.Gal4上流活性化配列(UAS)と、転写開始点TATAAもしくはその変異体を含む最小プロモーターとを含むキメラプロモーターであって、又はGal4 UASの縦列反復配列、好ましい実施形態ではその5倍の縦列反復配列を含むキメラプロモーターに、作動可能に連結された、成分1のAAVゲノム内のgal4タグ配列又は成分1の導入遺伝子構築物内のgal4タグ配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を組み込んだ成分2の細胞。
7.GTAオペレーター配列及び最小プロモーターを含むキメラプロモーターであって、又はその縦列反復配列、好ましい実施形態ではその4倍の縦列反復配列を含むキメラプロモーターに、作動可能に連結された、成分1のAAVゲノム内のCRP配列又は成分1の導入遺伝子プロモーター構築物内のCRP配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を組み込んだ成分2の細胞。
8.VanOオペレーターモジュール、好ましい実施形態では八量体VanOオペレーターモジュール(Van08)、及びCMV最初期プロモーター等の最小プロモーターを含むキメラプロモーターに作動可能に連結された、成分1のAAVゲノム内のVanR配列又は成分1の導入遺伝子構築物内のVanR配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を組み込んだ成分2の細胞。
9.少なくとも5つの組換え標的部位を含む、上記項目のいずれか1つに記載の成分1の細胞。
10.レポーターが、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、もしくは欧州特許出願第21170068.7号に記載されている新規ルシフェラーゼ等のルシフェラーゼ、又は新規ルシフェラーゼもしくは例えば緑色蛍光タンパク質、増強緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質及び異なる励起/発光スペクトルを示す変異体等の蛍光タンパク質を含む他のタンパク質である、項目1から3のいずれか一項に記載の成分2の細胞。
(i)好ましい実施形態において、アッセイの正規化を提供するために、本発明による成分2の細胞は、AAVゲノム又は導入遺伝子プロモーター構築物内に含まれるタグ配列に応答するレポーター遺伝子構築物で使用されるものとは異なるルシフェラーゼの構成的発現のための構築物をさらに有する。例えば、構成的産生物は、第2のルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているもの等の新規ルシフェラーゼの構成的産生物であり得る。
11.試験試料中の抗AAV中和抗体の活性を検出し、任意選択で定量する方法であって、
(i)抗AAV抗体を含まない対照試料と一緒に抗AAV抗体を含有すると考えられる試験試料、及び好ましい実施形態では抗AAV中和抗体を含有することが知られている陽性対照試料を提供するステップを含む方法。
(ii)前記試験試料を、上記項目のいずれか1つに記載の成分1の細胞によって産生されるウイルス、又は成分1のウイルス産生細胞のいずれかと接触させるステップ、
(iii)前記細胞株におけるAAVタグ応答性第1レポータータンパク質の活性を測定する前に、前記試験試料を、上記項目のいずれか1つに記載の成分1の細胞によって産生されるウイルス、又は成分1のウイルス産生細胞のいずれか、及び成分2の細胞と、様々な温度、好ましくは37℃で、好ましくは6~18時間以上の様々な時間インキュベートするステップ。
前記レポーター細胞株が、第2のレポータータンパク質を発現し、前記方法が以下をさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(iv)前記細胞株における前記第1のレポータータンパク質の活性を測定するステップ、
(v)前記第1のレポータータンパク質の活性と前記第2のレポータータンパク質の活性との比を提供するステップ。
(vi)第2のルシフェラーゼの活性に対して正規化された、又は正規化されていない第1の細胞試料のレポーター細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップは、米国特許出願公開第2011/0189658号に記載されている。
(vii)第2のルシフェラーゼの活性に対して正規化された、又は正規化されていない第2の対照細胞試料の細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップは、米国特許出願公開第2011/0189658号に記載されている。
(viii)第1の対照細胞試料と第2の対照細胞試料とのレポーター活性の比を提供するステップであって、1より低い比(第1/第2)は、前記試料中のAAV血清型又は組換えAAVベクターに対する抗体の存在を示す、ステップ。
12.AAVカプシド、AAVゲノム、導入遺伝子又は導入遺伝子産物のいずれかに対する免疫応答を検出し、最適に監視するための患者試料のハイスループットスクリーニングのための方法であって、
(i)スクリーニングされる患者試料からなる試験試料を提供するステップ、
(ii)前記試験試料を、本発明による、及び上記項目のいずれか一項に記載の成分1のチャレンジウイルス又はウイルス産生パッケージング細胞と接触させるステップ、
(iii)前記細胞株中のAAVタグ応答性第1レポータータンパク質の活性を測定する前に、様々な温度、好ましくは約37℃で、様々な時間、好ましくは約6~約18時間以上、上記項目のいずれか一項に記載の成分1のチャレンジウイルス又はウイルス産生細胞、及び成分2の細胞と共に前記試験試料をインキュベートするステップ
を含む方法。
前記細胞株が、第2のレポータータンパク質を発現し、前記方法が以下をさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(iv)前記細胞株における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップ、
(v)前記細胞株成分2の活性の間の比を提供するステップであって、前記成分2は下流プロモーター配列に作動可能に連結されたAAV血清型又は組換えAAVベクター構築物のゲノム中に存在するタグ配列による細胞株の処理に応答する、異種シス作用性調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチドを含有し、前記プロモーターは、ルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ又はメトリジアルシフェラーゼ等の第1のレポータータンパク質をコードするオープンリーディングフレームに作動可能に連結されている、ステップ。
好ましい実施形態において、アッセイの正規化を提供するために、本発明による成分2の細胞は、AAVゲノム又は導入遺伝子構築物内に含まれるタグ配列に応答するレポーター遺伝子構築物で使用されるものとは異なるルシフェラーゼの構成的発現のための構築物をさらに有する。例えば、構成的産生物は、第2のルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているもの等の新規ルシフェラーゼの構成的産生物であり得る。
(vi)好ましい実施形態において、本発明による細胞は、96、384又は1536ウェルプレートアッセイプレートに播種される。
13.抗体応答が決定されるAAV血清型又は組換えAAVベクターの産生のための第1の後生動物細胞(成分1)であって、
(i)AAVゲノム又はAAV ITR内に含まれるタグ配列を含む導入遺伝子プロモーター構築物、
(ii)構成的プロモーターに作動可能に連結された天然に存在するCap、ハイブリッドCap又はキメラCapのいずれかをコードする、AAV血清型又は組換えAAVベクターのcap遺伝子、
(iii)誘導性プロモーターに作動可能に連結されたAAV rep遺伝子、
(iv)それぞれ個々の天然又は誘導性プロモーターに作動可能に連結された、AAV E2A、E4及びVA遺伝子、
(v)誘導性プロモーターに作動可能に連結されたAAV E1A遺伝子を含む、第1の後生動物細胞(成分1)。
成分1のAAVゲノム又は導入遺伝子プロモーター構築物内のタグ配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を組み込んだ第2の後生動物細胞(成分2)ならびに試験試料中の抗AAV中和抗体を検出及び最適に定量するためにそれを使用する方法。
14.バキュロウイルス感染性昆虫細胞、例えばSF9細胞、鳥類細胞、例えばDT-40、MSB1又はLMH、マウス細胞、例えばL929細胞又はLS変異体、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えばCHO-K1、CHO-DXB11、CHO-DG44、CHOK1SV(全ての変異体を含む)、CHOK1SV-GSKO(グルタミン合成酵素ノックアウト)(全ての変異体を含む)、ヒト細胞、例えばHEK293細胞(全ての変異体及び全ての懸濁又は接着変異体を含む)、HeLa細胞、HT1080細胞、ARPE-19、U937、Jurkat、HuH-7、HepG2、K562、A431又はA549細胞である、項目1に記載の細胞。
15.AAVゲノム又は導入遺伝子プロモーター構築物内に含まれるタグ配列が、Gal4 DNA結合ドメインである、成分1の細胞。
16.AAVゲノム又は導入遺伝子プロモーター構築物内に含まれるタグ配列が、cGMP特異的受容体タンパク質(CRP)をコードする、成分1の細胞。
17.AAVゲノム又は導入遺伝子構築物内に含まれるタグ配列が、トランス活性化因子VP16に融合したトランスサイレンサーVanRをコードする、成分1の細胞。
18.Gal4上流活性化配列(UAS)と、転写開始点TATAAもしくはその変異体を含む最小プロモーターとを含むキメラプロモーターであって、又はGal4 UASの縦列反復配列、好ましい実施形態ではその5倍の縦列反復配列を含むキメラプロモーターに、作動可能に連結された、成分1のAAVゲノム内のgal4タグ配列又は成分1の導入遺伝子構築物内のgal4タグ配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を組み込んだ成分2の細胞。
19.GTAオペレーター配列及び最小プロモーターを含むキメラプロモーターであって、又はその縦列反復配列、好ましい実施形態ではその4倍縦列反復配列を含むキメラプロモーターに、作動可能に連結された、成分1のAAVゲノム内のCRP配列又は導入遺伝子プロモーター構築物内のCRP配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を組み込んだ成分2の細胞。
20.VanOオペレーターモジュール、好ましい実施形態では八量体VanOオペレーターモジュール(Van08)、及びCMV最初期プロモーター等の最小プロモーターを含むキメラプロモーターに作動可能に連結された、成分1のAAVゲノム内のVanR配列又は成分1の導入遺伝子構築物内のVanR配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を組み込んだ成分2の細胞。
21.少なくとも5つの組換え標的部位を含む、上記項目のいずれか1つに記載の成分1の細胞。
22.レポーターが、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、もしくは欧州特許出願第21170068.7号に記載されている新規ルシフェラーゼ等のルシフェラーゼ、又は新規ルシフェラーゼもしくは例えば緑色蛍光タンパク質、増強緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質及び異なる励起/発光スペクトルを示す変異体等の蛍光タンパク質を含む他のタンパク質である、項目1から3のいずれか一項に記載の成分2の細胞。
(i)好ましい実施形態において、アッセイの正規化を提供するために、本発明による成分2の細胞は、AAVゲノム又は導入遺伝子プロモーター構築物内に含まれるタグ配列に応答するレポーター遺伝子構築物で使用されるものとは異なるルシフェラーゼの構成的発現のための構築物をさらに有する。例えば、構成的産生物は、第2のルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているもの等の新規ルシフェラーゼの構成的産生物であり得る。
23.試験試料中の抗AAV中和抗体の活性を検出し、任意選択で定量する方法であって、
(i)抗AAV抗体を含有すると考えられる試験試料を、抗AAV抗体を含まない対照試料、及び好ましい実施形態では抗AAV中和抗体を含有することが知られている陽性対照試料と共に提供するステップを含む方法。
(ii)前記試験試料を、上記項目のいずれか1つに記載の成分1の細胞によって産生されるウイルス、又は成分1のウイルス産生細胞のいずれかと接触させるステップ、
(iii)前記細胞株におけるAAVタグ応答性第1レポータータンパク質の活性を測定する前に、前記試験試料を、上記項目のいずれか1つに記載の成分1の細胞によって産生されるウイルス、又は成分1のウイルス産生細胞のいずれか、及び成分2の細胞と、様々な温度、好ましくは37℃で、好ましくは6~18時間以上の様々な時間インキュベートするステップ。
前記レポーター細胞株が、第2のレポータータンパク質を発現し、前記方法が以下をさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(iv)前記細胞株における前記第1のレポータータンパク質の活性を測定するステップ、
(v)前記第1のレポータータンパク質の活性と前記第2のレポータータンパク質の活性との比を提供するステップ。
(vi)第2のルシフェラーゼの活性に対して正規化された、又は正規化されていない第1の細胞試料のレポーター細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップは、米国特許出願公開第2011/0189658号に記載されている。
(vii)第2のルシフェラーゼの活性に対して正規化された、又は正規化されていない第2の対照細胞試料の細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップは、米国特許出願公開第2011/0189658号に記載されている。
(viii)第1の対照細胞試料と第2の対照細胞試料とのレポーター活性の比を提供するステップであって、1より低い比(第1/第2)は、前記試料中のAAV血清型又は組換えAAVベクターに対する抗体の存在を示す、ステップ。
24.AAVカプシド、AAVゲノム、導入遺伝子、又は導入遺伝子産物のいずれかに対する免疫応答を検出し、最適に監視するための患者試料のハイスループットスクリーニングのための方法であって、
(iv)スクリーニングされる患者試料からなる試験試料を提供するステップ、
(v)前記試験試料を、本発明による、及び上記項目のいずれか一項に記載の成分1のチャレンジウイルス又はウイルス産生パッケージング細胞と接触させるステップ、
(vi)前記細胞株中のAAVタグ応答性第1レポータータンパク質の活性を測定する前に、前記試験試料を、様々な温度、好ましくは37℃で、様々な時間、好ましくは6~18時間以上、上記項目のいずれか一項に記載の成分1のチャレンジウイルス又はウイルス産生パッケージング細胞及び成分2の細胞と共にインキュベートするステップを含む、方法。
前記細胞株が、第2のレポータータンパク質を発現し、前記方法が以下をさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(iv)前記細胞株における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップ、
前記細胞株成分2の活性の間の比を提供するステップであって、該成分2は下流プロモーター配列に作動可能に連結されたAAV血清型又は組換えAAVベクター構築物のゲノム中に存在するタグ配列による細胞株の処理に応答する、異種シス作用性調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチドを含有し、前記プロモーターは、ルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているもの等の新規ルシフェラーゼ等の第1のレポータータンパク質をコードするオープンリーディングフレームに作動可能に連結されている、ステップ。
(vii)好ましい実施形態において、アッセイの正規化を提供するために、本発明による成分2の細胞は、AAVゲノム又は導入遺伝子構築物内に含まれるタグ配列に応答するレポーター遺伝子構築物で使用されるものとは異なるルシフェラーゼの構成的発現のための構築物をさらに有する。例えば、構成的産生物は、第2のルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているもの等の新規ルシフェラーゼの構成的産生物であり得る。
(viii)好ましい実施形態において、本発明による細胞は、96、384又は1536ウェルプレートアッセイプレートに播種される。
25.抗体応答が決定されるAAV血清型又は組換えAAVベクターの産生のための第1の後生動物細胞(成分1)であって、
(i)AAVゲノム又はAAV ITR内に含まれるタグ配列を含む導入遺伝子プロモーター構築物、
(ii)構成的プロモーターに作動可能に連結された天然に存在するCap、ハイブリッドCap又はキメラCapのいずれかをコードする、AAV血清型又は組換えAAVベクターのcap遺伝子、
(iii)誘導性プロモーターに作動可能に連結されたAAV rep遺伝子、
(iv)それぞれ個々の天然又は誘導性プロモーターに作動可能に連結された、AAV E2A、E4及びVA遺伝子、
(v)誘導性プロモーターに作動可能に連結されたAAV E1A遺伝子を含む、第1の後生動物細胞(成分1)。
成分1のAAVゲノム又は導入遺伝子プロモーター構築物内のタグ配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を組み込んだ第2の後生動物細胞(成分2)
ならびに試験試料中の抗AAV中和抗体を検出及び最適に定量するためにそれを使用する方法。
26.AAVゲノム又は導入遺伝子プロモーター構築物内に含まれるタグ配列が、cGMP特異的受容体タンパク質(CRP)をコードする、成分1の細胞。
27.Gal4上流活性化配列(UAS)と、転写開始点TATAAもしくはその変異体を含む最小プロモーターとを含むキメラプロモーターであって、又はGal4 UASの縦列反復配列、好ましい実施形態ではその5倍の縦列反復配列を含むキメラプロモーターに作動可能に連結された、成分1のAAVゲノム内のgal4タグ配列又は成分1の導入遺伝子構築物内のgal4タグ配列に特異的に応答するFLルシフェラーゼレポーター遺伝子を組み込んだ成分2の細胞。
28.試験試料中の抗AAV中和抗体の活性を検出し、任意選択で定量する方法であって、
(i)抗AAV抗体を含まない対照試料と一緒に抗AAV抗体を含有すると考えられる正常ヒトドナーからの試験試料、及び好ましい実施形態では抗AAV中和抗体を含有することが知られている陽性対照試料を提供するステップを含む方法。
(ii)前記試験試料を、上記項目のいずれか1つに記載の成分1のウイルス産生細胞と接触させるステップ、
(iii)前記細胞株におけるAAVタグ応答性第1レポータータンパク質の活性を測定する前に、前記試験試料を、上記項目のいずれか1つに記載の成分1のウイルス産生細胞、及び成分2の細胞と、様々な温度、好ましくは37℃で、好ましくは6~18時間以上の様々な時間インキュベートするステップ。
前記レポーター細胞株が、第2のレポータータンパク質を発現し、前記方法が以下をさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(iv)前記細胞株における前記第1のレポータータンパク質の活性を測定するステップ、
(v)前記第1のレポータータンパク質の活性と前記第2のレポータータンパク質の活性との比を提供するステップ。
(vi)第2のルシフェラーゼの活性に対して正規化された、又は正規化されていない第1の細胞試料のレポーター細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップは、米国特許出願公開第2011/0189658号に記載されている。
(vii)第2のルシフェラーゼの活性に対して正規化された、又は正規化されていない第2の対照細胞試料の細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップは、米国特許出願公開第2011/0189658号に記載されている。
(viii)第1の対照細胞試料と第2の対照細胞試料とのレポーター活性の比を提供するステップであって、1より低い比(第1/第2)は、前記試料中のAAV血清型又は組換えAAVベクターに対する抗体の存在を示す、ステップ。
29.AAVカプシド、AAVゲノム、導入遺伝子又は導入遺伝子産物のいずれかに対する免疫応答を検出し、最適に監視するための患者試料のハイスループットスクリーニングのための方法であって、
(vii)スクリーニングされる患者試料からなる試験試料を提供するステップ、
(viii)前記試験試料を、本発明による、及び上記項目のいずれか1項に記載の成分1のチャレンジウイルス又はウイルス産生パッケージング細胞と接触させるステップ、
(ix)前記細胞株中のAAVタグ応答性第1レポータータンパク質の活性を測定する前に、様々な温度、好ましくは約37℃で、様々な時間、好ましくは約6~約18時間以上、上記項目のいずれか一項に記載の成分1のチャレンジウイルス又はウイルス産生細胞、及び成分2の細胞と共に前記試験試料をインキュベートするステップ
を含む方法。
前記細胞株が、第2のレポータータンパク質を発現し、前記方法が以下をさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(iv)前記細胞株における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップ、
前記細胞株成分2の活性の間の比を提供するステップであって、前記成分2は下流プロモーター配列に作動可能に連結されたAAV血清型又は組換えAAVベクター構築物のゲノム中に存在するタグ配列による細胞株の処理に応答する、異種シス作用性調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチドを含有し、前記プロモーターは、ルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているもの等の新規ルシフェラーゼ等の第1のレポータータンパク質をコードするオープンリーディングフレームに作動可能に連結されている、ステップ。
(ix)好ましい実施形態において、アッセイの正規化を提供するために、本発明による成分2の細胞は、AAVゲノム又は導入遺伝子構築物内に含まれるタグ配列に応答するレポーター遺伝子構築物で使用されるものとは異なるルシフェラーゼの構成的発現のための構築物をさらに有する。例えば、構成的産生物は、第2のルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているもの等の新規ルシフェラーゼの構成的産生物であり得る。
(x)好ましい実施形態において、本発明による細胞は、96、384又は1536ウェルプレートアッセイプレートに播種される。
【0101】
【手続補正書】
【提出日】2023-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断方法における2つの細胞株の使用であって、1つの細胞株は、
i)AAV ITR内に含まれる1つ又は複数のタグ配列を含み、タグ配列が互いに異な
る、導入遺伝子プロモーター構築物
であって、
細胞が、
成分2のホタルルシフェラーゼ(FL)遺伝子の発現を調節するGal4上流活性化配列(UAS)に特異的に結合する、Gal4-VP16タンパク質をコードするタグ配列を含む導入遺伝子プロモーター構築物を発現し、或いは、
成分2のFLレポーター遺伝子の発現を調節するVanOオペレーター配列のオクタマーに結合する、VanR-VP16タンパク質をコードするAAV ITR内のタグ配列、又は成分2のFLレポーター遺伝子の発現を調節するGTAオペレーター配列に結合する、cGMP特異的受容体タンパク質(CRP)をコードするタグ配列を発現するAAV ITR内の導入遺伝子プロモーター構築物を発現する、
導入遺伝子プロモーター構築物、
(ii)構成的プロモーター又は誘導性プロモーターに作動可能に連結された天然に存在するCap、ハイブリッドCap、又はキメラCapのいずれかをコードする、
特定のAAV血清型又は組換えAAVベクターのcap遺伝子、
(iii)天然プロモーター又は誘導性プロモーターに作動可能に連結されたAAV rep遺伝子、
(iv)それぞれ個々の天然プロモーターに作動可能に連結されたAAV E2A、E4及びVA遺伝子、
(v)誘導性プロモーターに作動可能に連結されているか、又はHEK293細胞の場合のように細胞内に内因的に存在するAAV E1A遺伝子、
を含む成分1と呼ばれ、
さらなる細胞株は、
成分1における細胞
の導入遺伝子プロモーター構築物内の(i)に記載の1つ又は複数のタグ配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を含む成分2と呼ばれる、
上記使用。
【請求項2】
構成的プロモーターが、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/プロモーター、SV40プロモーター、UBCプロモーター、PGKプロモーター、ヒトβ-アクチン(hACTB)、ヒト伸長因子-1α(hEF-1α)、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター及びサイトメガロウイルス初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーターから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
誘導性プロモーターが、Tet-on/Tet-offシステム、累積誘導性リプレッサーCymRシステム、フラボノイドフロレチン調節TtgRリプレッサーシステム、及びバニリン酸調節VanRリプレッサー/KRAPシステムから選択され、かつ(iii)、(iv)、(v)における誘導性プロモーターが互いに異なる、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
AAVゲノム又は導入遺伝子構築物内に含まれるタグ配列が、トランス活性化因子VP16に融合したトランスサイレンサーVanRをコードする、請求項1から
3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
成分2が、
キメラプロモーターであって、Gal4上流活性化配列(UAS)と、転写開始点TATAAもしくはその変異体を含む最小プロモーターとを含み、又はGal4 UASのタンデムリピート(縦列反復配列)、もしくは任意選択でその5倍のタンデムリピート(縦列反復配列)を含むキメラプロモーターに
作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含み、
成分1のAAVゲノム内のgal4タグ配列又は成分1の導入遺伝子構築物内のgal4タグ配列に特異的に応答する、請求項1から
4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
成分2が、
キメラプロモーターであって、OTGオペレーター配列と最小プロモーターとを含み、又はそのタンデムリピート(縦列反復配列)、もしくはその4倍のタンデムリピート(縦列反復配列)を含むキメラプロモーターに
作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含み、
成分1のAAVゲノム内のCRP配列又は成分1の導入遺伝子プロモーター構築物内のCRP配列に特異的に応答し、
第1のレポータータンパク質として示されるレポーターレポーター(reporter reporter)が、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼもしくは欧州特許出願第21170068.7号に記載されている新規ルシフェラーゼ等のルシフェラーゼ、又は新規ルシフェラーゼもしくは例えば緑色蛍光タンパク質、増強緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、及び異なる励起/発光スペクトルを示すその変異体等の蛍光タンパク質を含む他のタンパク質である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
成分2が、
VanOオペレーターモジュール、又はそのタンデムリピート(縦列反復配列)、又は八量体VanOオペレーターモジュール(Van08)、及びCMV最初期プロモーター等の最小プロモーターを含むキメラプロモーターに
作動可能に連結されたたレポーター遺伝子を含み、
成分1のAAVゲノム内のVanR配列又は成分1の導入遺伝子構築物内のVanR配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
成分2が、成分1内のAAVゲノム内に含まれる1つもしくは複数のタグ配列又は成分1内の導入遺伝子構築物に含まれる1つもしくは複数のタグ配列に応答するレポーター遺伝子構築物で使用されるものとは異なるルシフェラーゼの構成的発現のための構築物をさらに含み、例えば、第2のルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているような新規ルシフェラーゼの構成的産生物である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
成分1が、少なくとも5つの組換え標的部位を含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
診断方法が、アデノ随伴ウイルス(AAV)もしくは組換えAAVベクターに対する中和抗体の検出及び定量、又は成分1及び成分2の両方を用いてAAVカプシド、AAVゲノム、導入遺伝子もしくは導入遺伝子産物のいずれかに対する免疫応答を検出し、かつ最適に監視するための患者試料のハイスループットスクリーニングにおける検出及び定量を含む、請求項1から
9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
成分1及び成分2の細胞が、野生型AAV血清型又は組換えAAVベクターに対する中和抗体を含有すると考えられる生物学的試料と共インキュベートされる、請求項1から
10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
試験試料中の抗AAV中和抗体の活性を検出し、及び任意選択で定量する方法であって、
該方法が、
(i)抗AAV抗体を含有すると考えられる試験試料を、抗AAV抗体を含まない対照試料と一緒に提供し、及び任意選択で抗AAV中和抗体を含有することが知られている陽性対照試料も提供するステップと、
(ii)成分2の細胞におけるAAVタグ応答性第1レポータータンパク質の活性を測定する前に、(i)の試験試料を、請求項1から
11のいずれか一項に記載の成分1のウイルス産生細胞と、請求項1から
11のいずれか一項に記載の成分1におけるウイルス産生細胞と、成分2の細胞と、様々な温度、好ましくは約37℃で、好ましくは約6~約18時間以上の様々な時間接触させるステップと
を含む方法。
【請求項13】
成分2の細胞が、第1のタグレポータータンパク質とは異なる第2のレポータータンパク質を発現し、
該方法が、
(i)第2のレポータータンパク質の活性に対して正規化された又は正規化されていない第1の細胞試料の細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップ、
(ii)第2のレポータータンパク質の活性に対して正規化された又は正規化されていない第2の対照細胞試料の細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップ、
(iii)第1の対照細胞試料と第2の対照細胞試料とのレポーター活性の比を提供するステップであって、1より低い比(第1/第2)は、試料中のAAV血清型又は組換えAAVベクターに対する抗体の存在を示す、ステップと
をさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
AAVカプシド、AAVゲノム、導入遺伝子又は導入遺伝子産物のいずれかに対する免疫応答を検出し、及び最適に監視するための患者試料のハイスループットスクリーニングのための方法であって、
(i)スクリーニングされる患者試料からなる試験試料を提供するステップ、
(ii)該試験試料を、請求項1から
11のいずれか一項に記載の成分1のチャレンジウイルス又はウイルス産生細胞と接触させるステップ、
(iii)細胞株中のAAVタグ応答性第1レポータータンパク質の活性を測定する前に、様々な温度、好ましくは約37℃で、様々な時間、好ましくは約6~約18時間以上、請求項1から
11のいずれか一項に記載の成分1のチャレンジウイルス又はウイルス産生細胞、請求項1から
11のいずれか一項に記載の成分2の細胞と共に、該試験試料をインキュベートするステップ
を含む方法。
【請求項15】
請求項1から
11のいずれか一項に記載の成分2の細胞が、第1のタグレポータータンパク質とは異なる第2のレポータータンパク質をさらに含み、
該方法が、
(i)請求項1から
11のいずれか一項に記載の成分2の細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップ、
(ii)請求項1から
11のいずれか一項に記載の成分2の細胞の活性の間の比を提供するステップであって、該成分2は下流プロモーター配列に作動可能に連結された、成分1におけるAAV血清型又は組換えAAVベクター構築物のゲノム中に存在するタグ配列による細胞株の処理に応答する、異種シス作用性調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチドを含み、該プロモーターが、ルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているような新規ルシフェラーゼ等の第1のレポータータンパク質をコードするオープンリーディングフレームに作動可能に連結されている、上記ステップをさらに含み、
(iii)任意選択で、アッセイの正規化を提供するために、請求項1から
11のいずれか一項に記載の成分2の細胞は、成分1内のAAVゲノム内に含まれるタグ配列又は成分1内の導入遺伝子構築物に含まれるタグ配列に応答するレポーター遺伝子構築物で使用されるものとは異なるルシフェラーゼの構成的発現のための構築物をさらに含み、例えば構成的産生物は、第2のルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているもの等の新規ルシフェラーゼである、請求項
14に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断方法における2つの細胞株の使用であって、1つの細胞株は、
i)AAV ITR内に含まれる1つ又は複数のタグ配列を含み、タグ配列が互いに異なる、導入遺伝子プロモーター構築物であって、
細胞が、
成分2のホタルルシフェラーゼ(FL)遺伝子の発現を調節するGal4上流活性化配列(UAS)に特異的に結合する、Gal4-VP16タンパク質をコードするタグ配列を含む導入遺伝子プロモーター構築物を発現し、或いは、
成分2のFLレポーター遺伝子の発現を調節するVanOオペレーター配列のオクタマーに結合する、VanR-VP16タンパク質をコードするAAV ITR内のタグ配列、又は成分2のFLレポーター遺伝子の発現を調節するGTAオペレーター配列に結合する、cGMP特異的受容体タンパク質(CRP)をコードするタグ配列を発現するAAV ITR内の導入遺伝子プロモーター構築物を発現する、
導入遺伝子プロモーター構築物、
(ii)構成的プロモーター又は誘導性プロモーターに作動可能に連結された天然に存在するCap、ハイブリッドCap、又はキメラCapのいずれかをコードする、特定のAAV血清型又は組換えAAVベクターのcap遺伝子、
(iii)天然プロモーター又は誘導性プロモーターに作動可能に連結されたAAV rep遺伝子、
(iv)それぞれ個々の天然プロモーターに作動可能に連結されたAAV E2A、E4及びVA遺伝子、
(v)誘導性プロモーターに作動可能に連結されているか、又はHEK293細胞の場合のように細胞内に内因的に存在するAAV E1A遺伝子、
を含む成分1と呼ばれ、
さらなる細胞株は、
成分1における細胞の導入遺伝子プロモーター構築物内の(i)に記載の1つ又は複数のタグ配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を含む成分2と呼ばれる、
上記使用。
【請求項2】
構成的プロモーターが、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/プロモーター、SV40プロモーター、UBCプロモーター、PGKプロモーター、ヒトβ-アクチン(hACTB)、ヒト伸長因子-1α(hEF-1α)、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター及びサイトメガロウイルス初期エンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーターから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
誘導性プロモーターが、Tet-on/Tet-offシステム、累積誘導性リプレッサーCymRシステム、フラボノイドフロレチン調節TtgRリプレッサーシステム、及びバニリン酸調節VanRリプレッサー/KRAPシステムから選択され、かつ(iii)、(iv)、(v)における誘導性プロモーターが互いに異なる、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
導入遺伝子構築物内に含まれるタグ配列が、トランス活性化因子VP16に融合したトランスサイレンサーVanRをコードする、請求項1
又は2に記載の使用。
【請求項5】
成分2が、
キメラプロモーターであって、Gal4上流活性化配列(UAS)と、転写開始点TATAAもしくはその変異体を含む最小プロモーターとを含み、又はGal4 UASのタンデムリピート(縦列反復配列)、もしくは任意選択でその5倍のタンデムリピート(縦列反復配列)を含むキメラプロモーターに
作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含み、
成分1の導入遺伝子構築物内のgal4タグ配列に特異的に応答する、請求項1
又は2に記載の使用。
【請求項6】
成分2が、
キメラプロモーターであって、OTGオペレーター配列と最小プロモーターとを含み、又はそのタンデムリピート(縦列反復配列)、もしくはその4倍のタンデムリピート(縦列反復配列)を含むキメラプロモーターに
作動可能に連結されたレポーター遺伝子を含み、
成分1の導入遺伝子プロモーター構築物内のCRP配列に特異的に応答し、
第1のレポータータンパク質として示されるレポーターレポーター(reporter reporter)が、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼもしくは欧州特許出願第21170068.7号に記載されている新規ルシフェラーゼ等のルシフェラーゼ、又は新規ルシフェラーゼもしくは例えば緑色蛍光タンパク質、増強緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、及び異なる励起/発光スペクトルを示すその変異体等の蛍光タンパク質を含む他のタンパク質である、請求項1
又は2に記載の使用。
【請求項7】
成分2が、
VanOオペレーターモジュール、又はそのタンデムリピート(縦列反復配列)、又は八量体VanOオペレーターモジュール(Van08)、及びCMV最初期プロモーター等の最小プロモーターを含むキメラプロモーターに
作動可能に連結されたたレポーター遺伝子を含み、
成分1の導入遺伝子構築物内のVanR配列に特異的に応答するレポーター遺伝子を含む、請求項1
又は2に記載の使用。
【請求項8】
成分2
が、成分1内の導入遺伝子構築物に含まれる1つもしくは複数のタグ配列に応答するレポーター遺伝子構築物で使用されるものとは異なるルシフェラーゼの構成的発現のための構築物をさらに含み、例えば、第2のルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているような新規ルシフェラーゼの構成的産生物である、請求項1
又は2に記載の使用。
【請求項9】
成分1が、少なくとも5つの組換え標的部位を含む、請求項1
又は2に記載の使用。
【請求項10】
診断方法が、アデノ随伴ウイルス(AAV)もしくは組換えAAVベクターに対する中和抗体の検出及び定量、又は成分1及び成分2の両方を用いてAAVカプシド、AAVゲノム、導入遺伝子もしくは導入遺伝子産物のいずれかに対する免疫応答を検出し、かつ最適に監視するための患者試料のハイスループットスクリーニングにおける検出及び定量を含む、請求項1
又は2に記載の使用。
【請求項11】
成分1及び成分2の細胞が、野生型AAV血清型又は組換えAAVベクターに対する中和抗体を含有すると考えられる生物学的試料と共インキュベートされる、請求項1
又は2に記載の使用。
【請求項12】
試験試料中の抗AAV中和抗体の活性を検出し、及び任意選択で定量する方法であって、
該方法が、
(i)抗AAV抗体を含有すると考えられる試験試料を、抗AAV抗体を含まない対照試料と一緒に提供し、及び任意選択で抗AAV中和抗体を含有することが知られている陽性対照試料も提供するステップと、
(ii)成分2の細胞におけるAAVタグ応答性第1レポータータンパク質の活性を測定する前に、(i)の試験試料を、請求項1
又は2に記載の成分1のウイルス産生細胞
と、成分2の細胞と、様々な温度、好ましくは約37℃で、好ましくは約6~約18時間以上の様々な時間接触させるステップと
を含む方法。
【請求項13】
成分2の細胞が、第1のタグレポータータンパク質とは異なる第2のレポータータンパク質を発現し、
該方法が、
(i)第2のレポータータンパク質の活性に対して正規化された又は正規化されていない第1の細胞試料の細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップ、
(ii)第2のレポータータンパク質の活性に対して正規化された又は正規化されていない第2の対照細胞試料の細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップ、
(iii)第1の対照細胞試料と第2の対照細胞試料とのレポーター活性の比を提供するステップであって、1より低い比(第1/第2)は、試料中のAAV血清型又は組換えAAVベクターに対する抗体の存在を示す、ステップと
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
AAVカプシド、AAVゲノム、導入遺伝子又は導入遺伝子産物のいずれかに対する免疫応答を検出し、及び最適に監視するための患者試料のハイスループットスクリーニングのための方法であって、
(i)スクリーニングされる患者試料からなる試験試料を提供するステップ、
(ii)該試験試料を、請求項1
又は2に記載の成分1
のウイルス産生細胞と接触させるステップ、
(iii)細胞株中のAAVタグ応答性第1レポータータンパク質の活性を測定する前に、様々な温度、好ましくは約37℃で、様々な時間、好ましくは約6~約18時間以上、請求項1
又は2に記載の成分1
のウイルス産生細胞
と、請求項1
又は2に記載の成分2の細胞と共に、該試験試料をインキュベートするステップ
を含む方法。
【請求項15】
請求項1
又は2に記載の成分2の細胞が、第1のタグレポータータンパク質とは異なる第2のレポータータンパク質をさらに含み、
前記方法が、
(i)請求項1
又は2に記載の成分2の細胞における第1のタグ応答性レポータータンパク質の活性を測定するステップ、
(ii)請求項1
又は2に記載の成分2の細胞の活性の間の比を提供するステップであって、該成分2は下流プロモーター配列に作動可能に連結された、成分1におけるAAV血清型又は組換えAAVベクター構築物のゲノム中に存在するタグ配列による細胞株の処理に応答する、異種シス作用性調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチドを含み、該プロモーターが、ルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているような新規ルシフェラーゼ等の第1のレポータータンパク質をコードするオープンリーディングフレームに作動可能に連結されている、上記ステップをさらに含み、
(iii)任意選択で、アッセイの正規化を提供するために、請求項1
又は2に記載の成分2の細胞
は、成分1内の導入遺伝子構築物に含まれるタグ配列に応答するレポーター遺伝子構築物で使用されるものとは異なるルシフェラーゼの構成的発現のための構築物をさらに含み、例えば構成的産生物は、第2のルシフェラーゼ、例えばウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、メトリジアルシフェラーゼ、又は欧州特許出願第21170068.7号に記載されているもの等の新規ルシフェラーゼである、
請求項14に記載の方法。
【国際調査報告】