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特表2024-534753セパレータ、その製造方法及びそれを使用する二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置
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  • 特表-セパレータ、その製造方法及びそれを使用する二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】セパレータ、その製造方法及びそれを使用する二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/457 20210101AFI20240918BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240918BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240918BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20240918BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20240918BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240918BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20240918BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20240918BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240918BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20240918BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20240918BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240918BHJP
【FI】
H01M50/457
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/417
H01M50/426
H01M50/423
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/429
H01M50/403 D
H01M50/403 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504484
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 CN2022112165
(87)【国際公開番号】W WO2024031652
(87)【国際公開日】2024-02-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲鐘▼▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】葛▲銷▼明
(72)【発明者】
【氏名】欧▲陽▼楚英
(72)【発明者】
【氏名】范玉磊
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲鋒▼
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB01
5H021BB02
5H021BB05
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE08
5H021EE10
5H021EE21
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
本出願は、セパレータを提供し、ベースフィルムと、前記ベースフィルムに位置するコーティングとを含み、前記コーティングは、前記ベースフィルムに部分的に埋め込まれたセラミックス層と、前記セラミックス層に位置する擬ベーマイト層とを含む。本出願に記載のセパレータは、リチウムデンドライトを効果的に消費し、セパレータを突き破ることを回避できるとともに、低い内部抵抗を備える。本出願は、前記セパレータの製造方法及び前記セパレータを使用する二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置をさらに提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータであって、ベースフィルムと、前記ベースフィルムに位置するコーティングとを含み、前記コーティングは、前記ベースフィルムに部分的に埋め込まれたセラミックス層と、前記セラミックス層に位置する擬ベーマイト層とを含む、セパレータ。
【請求項2】
前記セラミックス層のベースフィルムに埋め込まれた部分は、セラミックス層の全厚さの5~100%、任意選択的に10~100%、さらに任意選択的に50~100%を占める、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記コーティングは、前記擬ベーマイト層の前記ベースフィルムから離れた表面に位置する熱伝導層をさらに含む、請求項1又は2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記セパレータは、
(1)前記セラミックス層の厚さが0.5~10μmであり、任意選択的に2~7μmであることと、
(2)前記ベースフィルムの厚さが4~20μmであり、任意選択的に5~12μmであることと、
(3)前記擬ベーマイト層の厚さが0.5~10μmであり、任意選択的に2~7μmであることと、
(4)前記熱伝導層の厚さが0.5~2μmであり、任意選択的に0.5~1μmであることとのうちの少なくとも一つの条件を満たす、請求項1から3のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記セラミックスは、Al、Fe、Ti、Co、Zn、Cu、Ni、Mn又はSn元素の酸化物、窒化物、フッ化物又は酸素酸塩のうちの一つ又は複数から選択され、
任意選択的に、前記セラミックスは、Feの酸化物、Feの酸素酸塩、Tiの酸化物、Tiの酸素酸塩、Znの酸化物、NiO、CuO又はSnOのうちの一つ又は複数から選択され、
さらに任意選択的に、前記セラミックスは、Fe、FePO、TiO、ZnO、LiTi12、NiO、CuO又はSnOのうちの一つ又は複数から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記セラミックスは、セラミックス粒子であり、前記セラミックス粒子の体積平均粒径Dv50は、≧100nmであり、任意選択的に100nm~5μmであり、さらに任意選択的に200nm~2μmである、請求項1から5のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記擬ベーマイト層は、ベーマイト、アルミナ、ジルコニア又はマグネシアのうちの一つ又は複数から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記熱伝導層の熱伝導率は≧20W/(m. K)であり、
任意選択的に、前記熱伝導層は、窒化ホウ素、窒化タングステン、炭化ケイ素又は窒化アルミニウムのうちの一つ又は複数から選択される、請求項3から7のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記ベースフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、アラミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル又は天然繊維のうちの一つ又は複数から選択され、
任意選択的に、前記ベースフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン又はポリテトラフルオロエチレンのうちの一つ又は複数から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のセパレータを製造する方法であって、
セパレータのベースフィルム素材と造孔剤とを含む混合物を溶融処理し、そして押出を経てベースフィルムAを形成するステップ1)と、
セラミックス粒子をベースフィルムAの一つの表面に均一に分散させ、複合ベースフィルムを得るステップ2)と、
擬ベーマイト粒子と任意選択的な熱伝導性材料とをステップ2)で得られた複合ベースフィルムに順に均一に塗布するステップ3)とを含む、方法。
【請求項11】
ステップ1)における前記混合物におけるセパレータのベースフィルム素材と造孔剤との質量比は、0.1~0.7:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ1)は、押出後にキャスト冷却ロールを通過するステップをさらに含む、請求項10から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ2)は、請求項12に記載のキャスト冷却ロールを通過するステップと同期して行い、又は
ステップ1)を行った後、10s~1h以内に、任意選択的に1~30min以内に、さらに任意選択的に直ちにステップ2)を行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ2)は、熱複合ロールを通過するか又はオーブン内で乾燥するステップをさらに含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ2)は、
(1)熱複合ロールの温度が80~190°Cであり、任意選択的に100~180°Cであることと、
(2)熱複合ロールの圧力が5~100Mpaであり、任意選択的に10~50Mpaであることとのうちの一つ又は複数の条件を満たす、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ2)を行った後、及びステップ3)を行う前に、複合ベースフィルムを延伸するステップをさらに含む、請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
複合ベースフィルムを延伸した後に、複合ベースフィルムにおける造孔剤を抽出するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から9のいずれか一項に記載のセパレータ又は請求項10から17のいずれか一項に記載の方法により製造されるセパレータを含む、二次電池。
【請求項19】
請求項18に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項20】
請求項18に記載の二次電池又は請求項19に記載の電池モジュールのうちの少なくとも一つを含む、電池パック。
【請求項21】
請求項18に記載の二次電池、請求項19に記載の電池モジュール又は請求項20に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウム電池技術分野に関し、特にセパレータ、その製造方法及びそれを使用する二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の応用範囲が益々広くなることに伴い、リチウムイオン電池は、風力、火力、水力と太陽光発電所等のエネルギー貯蔵システム、及び電動ツール、電動自転車等の複数の分野に非常に広く応用されている。リチウムイオン電池は、一般的に正負極板と、電解液と、正負極板の間に設置されるセパレータとを含み、前記セパレータは、主に正負極の短絡を防止するとともに、イオンを自由に通過させるために用いられる。従来の技術に使用されるセパレータの多くは、ポリオレフィンフィルムである。しかしながら、電池の使用中に発生したリチウムデンドライトは、セパレータを突き破り、それによって電池が短絡し、安全リスクを引き起こす可能性がある。
【0003】
上記問題を解決するために、技術者は、リチウムデンドライトがセパレータを突き破るのを避けるように、一般的にセパレータ上に無機コーティングを施す。しかしながら、無機コーティングを施す場合、接着剤を大量に使用することが多く、セパレータの内部抵抗が増加してしまう。
【0004】
それによって分かるように、どのように良好な安全性能と低い内部抵抗を同時に備えるセパレータを開発するかは、依然として研究開発者が早急に解決すべき課題である。
【発明の概要】
【0005】
本出願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、リチウムデンドライトがベースフィルムを突き破ることを効果的に回避でき且つ低い内部抵抗を有するセパレータを提供することである。
【0006】
本出願の第1の態様は、セパレータを提供し、該セパレータは、ベースフィルムと、前記ベースフィルムに位置するコーティングとを含み、前記コーティングは、前記ベースフィルムに部分的に埋め込まれたセラミックス層と、前記セラミックス層に位置する擬ベーマイト層とを含む。
【0007】
本出願に記載のセパレータにセラミックス層と擬ベーマイト層とが含まれることにより、二次電池の使用中に発生したリチウムデンドライトを効果的に消費し、セパレータを突き破ることを回避し、対応する二次電池の安全性能を高めることができ、さらに重要なこととして、創造的にセラミックス層をベースフィルムに部分的に埋め込むことにより、接着剤の大量使用を回避することができ、それによってセパレータの内部抵抗を効果的に低減させた。
【0008】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、前記セラミックス層のベースフィルムに埋め込まれた部分は、セラミックス層の全厚さの5~100%、任意選択的に10~100%、さらに任意選択的に50~100%を占める。
【0009】
セラミックス層のベースフィルムに埋め込まれた部分のセラミックス層の全厚さに占める割合が上記範囲内にある場合、ベースフィルム自体の溶融界面を利用してセラミックス粒子を良好に接着し、接着剤の使用を減少させ、セパレータの内部抵抗を低減させるのに有利である。
【0010】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、前記コーティングは、前記擬ベーマイト層の前記ベースフィルムから離れた表面に位置する熱伝導層をさらに含む。
【0011】
熱伝導層の存在は、リチウムデンドライトの発生を元から減少させ、セパレータの安全性能をさらに改善するのに有利である。
【0012】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、前記セパレータは、
(1)前記セラミックス層の厚さが0.5~10μmであり、任意選択的に2~7μmであることと、
(2)前記ベースフィルムの厚さが4~20μmであり、任意選択的に5~12μmであることと、
(3)前記擬ベーマイト層の厚さが0.5~10μmであり、任意選択的に2~7μmであることと、
(4)前記熱伝導層の厚さが0.5~2μmであり、任意選択的に0.5~1μmであることとのうちの少なくとも一つの条件を満たす。
【0013】
セパレータが上記条件のうちの一つ又は複数を満たす場合、セパレータの安全性能をさらに高め、且つセパレータの内部抵抗を低減させるのに有利である。
【0014】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、前記セラミックスは、Al、Fe、Ti、Co、Zn、Cu、Ni、Mn又はSn元素の酸化物、窒化物、フッ化物又は酸素酸塩のうちの一つ又は複数から選択され、
任意選択的に、前記セラミックスは、Feの酸化物、Feの酸素酸塩、Tiの酸化物、Tiの酸素酸塩、Znの酸化物、NiO、CuO又はSnOのうちの一つ又は複数から選択され、
さらに任意選択的に、前記セラミックスは、Fe、FePO、TiO、ZnO、LiTi12、NiO、CuO又はSnOのうちの一つ又は複数から選択される。
【0015】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、前記セラミックスは、セラミックス粒子であり、前記セラミックス粒子の体積平均粒径Dv50は、≧100nmであり、任意選択的に100nm~5μmであり、さらに任意選択的に200nm~2μmである。
【0016】
セラミックス粒子の体積平均粒径が上記範囲内にある場合、セパレータの安全性能を高め、且つセパレータの内部抵抗を低減させるのに有利である。
【0017】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、前記擬ベーマイト層は、ベーマイト、アルミナ、ジルコニア又はマグネシアのうちの一つ又は複数から選択される。
【0018】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、前記熱伝導層の熱伝導率は≧20W/(m. K)であり、
任意選択的に、前記熱伝導層は、窒化ホウ素、窒化タングステン、炭化ケイ素又は窒化アルミニウムのうちの一つ又は複数から選択される。
【0019】
セパレータにおける熱伝導層が上記条件を満たす場合、セパレータの安全性能をさらに高め、且つセパレータの内部抵抗を低減させるのに有利である。
【0020】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、前記ベースフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、アラミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル又は天然繊維のうちの一つ又は複数から選択され、
任意選択的に、前記ベースフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン又はポリテトラフルオロエチレンのうちの一つ又は複数から選択される。
【0021】
本出願の第2の態様は、本出願の第1の態様に記載のセパレータを製造する方法を提供する。前記方法は、
セパレータのベースフィルム素材と造孔剤とを含む混合物を溶融処理し、そして押出を経てベースフィルムAを形成するステップ1)と、
セラミックス粒子をベースフィルムAの一つの表面に均一に分散させ、複合ベースフィルムを得るステップ2)と、
擬ベーマイト粒子と任意選択的な熱伝導性材料とをステップ2)で得られた複合ベースフィルムに順に均一に塗布するステップ3)とを含む。
【0022】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、ステップ1)における前記混合物におけるセパレータのベースフィルム素材と造孔剤との質量比は、0.1~0.7:1である。
【0023】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、ステップ1)は、押出後にキャスト冷却ロールを通過するステップをさらに含む。
【0024】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)は、前記の、キャスト冷却ロールを通過するステップと同期して行い、又は
ステップ1)を行った後、10s~1h以内に、任意選択的に1~30min以内に、さらに任意選択的に直ちにステップ2)を行う。
【0025】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)は、熱複合ロールを通過するか又はオーブン内で乾燥するステップをさらに含む。
【0026】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)は、
(1)熱複合ロールの温度が80~190°Cであり、任意選択的に100~180°Cであることと、
(2)熱複合ロールの圧力が5~100Mpaであり、任意選択的に10~50Mpaであることとのうちの一つ又は複数の条件を満たす。
【0027】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)を行った後、及びステップ3)を行う前に、複合ベースフィルムを延伸するステップをさらに含む。
【0028】
いずれかの実施形態では、任意選択的に、複合ベースフィルムを延伸した後に、複合ベースフィルムにおける造孔剤を抽出するステップをさらに含む。
【0029】
本出願の第3の態様は、二次電池を提供し、該二次電池は、本出願の第1の態様のセパレータ又は本出願の第2の態様の方法により製造されるセパレータを含む。
【0030】
本出願の第4の態様は、電池モジュールを提供し、該電池モジュールは、本出願の第3の態様の二次電池を含む。
【0031】
本出願の第5の態様は、電池パックを提供し、該電池パックは、本出願の第3の態様の二次電池又は本出願の第4の態様の電池モジュールのうちの少なくとも一つを含む。
【0032】
本出願の第6の態様は、電力消費装置を提供し、該電力消費装置は、本出願の第3の態様の二次電池、本出願の第4の態様の電池モジュール又は本出願の第5の態様の電池パックのうちの少なくとも一つを含む。
【0033】
[有益な効果]
【0034】
本出願に記載のセパレータは、ベースフィルムに部分的に埋め込まれたセラミックス層を含む。セラミックス層は、電池の使用中に発生したリチウムデンドライト、例えば負極表面のリチウム析出又はリチウム堆積によって発生したリチウムデンドライトを良好に消費し、リチウムデンドライトがセパレータを突き破ることを回避し、安全性能を高めることができる。同時に、創造的にセラミックス層をベースフィルムに部分的に埋め込み、セパレータのベースフィルム自体の溶融界面の接着を利用して、セラミックス粒子への束縛を実現することにより、接着剤の使用を大幅に減少させ、セパレータの内部抵抗が大幅に増加することを回避することができる。
【0035】
本出願に記載のセパレータは、前記セラミックス層に位置する擬ベーマイト層をさらに含む。擬ベーマイト層は、良好な熱安定性を有し、一方では、リチウムデンドライトの更なる成長を阻止することができ、他方では、リチウムデンドライトが発生する前に、セラミックスと電極表面の金属リチウムとの反応を防止し、電池におけるリチウムの過剰な損失を回避することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本出願のセパレータの概略図である。
図2】本出願の一実施形態の二次電池の概略図である。
図3図2に示す本出願の一実施形態の二次電池の分解図である。
図4】本出願の一実施形態の電池モジュールの概略図である。
図5】本出願の一実施形態の電池パックの概略図である。
図6図5に示す本出願の一実施形態の電池パックの分解図である。
図7】本出願の一実施形態の二次電池が電源として用いられる電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下は、本出願のセパレータ、その製造方法及びそれを使用する二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を具体的に開示した実施形態を、図面を適宜参照して詳細に説明する。しかし、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定するためのものではない。
【0038】
本出願に開示される「範囲」は、下限及び上限の形式で限定され、所定範囲は、特定の範囲の境界を限定する一つの下限と一つの上限を選定することによって限定される。このように限定される範囲は、端値を含んでもよく含まなくてもよく、任意に組み合わせてもよく、即ち、任意の下限と任意の上限とを組み合わせて一つの範囲を形成してもよい。例えば、特定のパラメータについて60~120と80~110の範囲が列挙されている場合、60~110と80~120の範囲も予想されると理解される。なお、最小範囲値1と2、最大範囲値3、4と5が列挙されている場合、以下の範囲1~3、1~4、1~5、2~3、2~4と2~5は全て予想される。本出願において、別段の記載がない限り、数値範囲「a~b」は、a~bの間のすべての実数の組み合わせを表す短縮表現であり、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書で「0~5」の間の全ての実数がリストアップされていることを意味し、「0~5」はこれら数値の組み合わせの省略表示にすぎない。また、あるパラメータが≧2の整数であると記述している場合、該パラメータは例えば、整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0039】
特に説明されていない限り、本出願の全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成してもよい。
【0040】
特に説明されていない限り、本出願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成してもよい。
【0041】
特に説明されていない限り、本出願のすべてのステップは、順次行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順次行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が順次行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順次行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上に言及された前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいことは、ステップ(c)がいずれかの順で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)と(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)と(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)と(b)などを含んでもよい。
【0042】
特に説明されていない限り、本出願で言及した「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含み又は包含してもよく、リストアップされた成分のみを含み又は包含してもよいことを表してもよい。
【0043】
説明すべきこととして、本出願では、ベースフィルムに埋め込まれたセラミックス粒子の全てが、セラミックス粒子同士が物理的に互いに連結して形成された連続した状態にあるわけではなく、セラミックス粒子は、離散した状態にある可能性もある。用語である「セラミックス層」は、統計的にセラミックス粒子から形成された層であり、ベーマイト層と熱伝導層に対して、ただ説明を容易にするためのものである。本出願では、セラミックス粒子同士が互いに連結して連続した状態を形成することが理想的であり、この際にリチウムデンドライトを消費する効果が高い。
【0044】
特に説明されていない限り、本出願において、用語「又は」は包括的である。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれか一つの条件は、いずれも「A又はB」という条件を満たす。Aが真であり(又は存在し)且つBが偽であり(又は存在せず)、Aが偽であり(又は存在せず)且つBが真であり(又は存在し)、又はAとBがいずれも真である(又は存在する)。
【0045】
発明者は、実際の作業において、従来の技術では、リチウムデンドライトがセパレータを突き破り、さらに安全リスクを引き起こすことを回避するために、一般的にポリオレフィンフィルムの表面に無機コーティングを施すことを発見した。しかしながら、無機粒子の「粉落ち」を回避するために、接着剤を大量に使用することが多く、セパレータの内部抵抗が著しく増加することにつながる。
【0046】
多くの研究を経た後、発明者は、創造的にセラミックス粒子をポリオレフィンベースフィルムに部分的に埋め込み、且つセラミックス粒子上に擬ベーマイト層を塗布することによって、リチウムデンドライトがセパレータを突き破ることを効果的に回避するとともに、セパレータの内部抵抗を小さくする。なお、セラミックス層と擬ベーマイト層の厚さをさらに制御し、及び熱伝導層によってセパレータをさらに修飾することにより、セパレータの性能をさらに改善することができる。
【0047】
[セパレータ]
【0048】
本出願の第1の態様は、セパレータを提供し、該セパレータは、ベースフィルムと、前記ベースフィルムに位置するコーティングとを含み、前記コーティングは、前記ベースフィルムに部分的に埋め込まれたセラミックス層と、前記ベースフィルムに位置する擬ベーマイト層とを含む。
【0049】
本出願に記載のセパレータは、ベースフィルムに部分的に埋め込まれたセラミックス層を含む。セラミックス層は、電池の使用中に発生したリチウムデンドライト、例えば負極表面のリチウム析出又はリチウム堆積によって発生したリチウムデンドライトを良好に消費し、リチウムデンドライトがセパレータを突き破ることを回避し、安全性能を高めることができる。同時に、創造的にセラミックス粒子をベースフィルムに部分的に埋め込み、セパレータのベースフィルム自体の溶融界面の接着を利用して、セラミックス粒子への束縛を実現することにより、接着剤の使用を大幅に減少させ、セパレータの内部抵抗が大幅に増加することを回避することができる。なお、前記セラミックス粒子は、電解液との互換性に優れた基を多く含み、電解液との接触角を減少させ、ベースフィルムの電解液に対する親和性を向上させ、さらに電解液のベースフィルムに対する浸潤性を向上させるのに有利である。また、セラミックスが優れた熱安定性を有し、セラミックスとベースフィルムとを複合することにより、セパレータの熱安定性を効果的に向上させることができる。
【0050】
本出願に記載のセパレータは、前記セラミックス層に位置する擬ベーマイト層をさらに含む。擬ベーマイト層は、良好な熱安定性を有し、一方では、リチウムデンドライトの更なる成長を阻止することができ、他方では、リチウムデンドライトが発生する前に、セラミックスと電極表面の金属リチウムとの反応を防止し、電池におけるリチウムの過剰な損失を回避することもできる。
【0051】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記セラミックス層は、接着剤を部分的に含むか又は接着剤を含まない。
【0052】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記セラミックス層の総重量を基準として、接着剤の使用量は、0~10wt%である。例として、接着剤の使用量は、0%、3%、5%、7%又は10%及びこれらのうちのいずれか2つからなる範囲であってもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記セラミックス層のベースフィルムに埋め込まれた部分は、セラミックス層の全厚さの5~100%、任意選択的に10~100%、さらに任意選択的に50~100%を占める。例として、セラミックス層のベースフィルムに埋め込まれた部分の厚さは、セラミックス層の全厚さの5%、10%、50%、70%、80%又は100%及びこれらのうちのいずれか2つからなる範囲を占める。
【0054】
セラミックス層のベースフィルムに埋め込まれた部分が上記範囲内にある場合、ベースフィルム自体の溶融界面を利用してセラミックス粒子を良好に接着し、接着剤の使用を減少させ、セパレータの内部抵抗を低減させるのに有利である。
【0055】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記コーティングは、前記擬ベーマイト層の前記ベースフィルムから離れた表面に位置する熱伝導層をさらに含む。
【0056】
前記熱伝導層は、熱伝導性の高いフィルム、例えば六方晶窒化ホウ素(h-BN)であり、その主な効果は、均一な熱場環境を提供し、局所的なホットスポットの発生を回避し、リチウムイオンの堆積/溶解を均一化し、さらにリチウムデンドライトの発生を元から減少させることである。なお、前記熱伝導層は、無機SEI(固体電解質界面、Solid Electrolyte Interface)膜の形成を促進することによって、リチウムデンドライトの発生を減少させることもできる。同時に、熱伝導層は、絶縁体であり、活性リチウムを消費することもない。
【0057】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記セパレータは、
(1)前記セラミックス層の厚さが0.5~10μmであり、任意選択的に2~7μmであることと、
(2)前記ベースフィルムの厚さが4~20μmであり、任意選択的に5~12μmであることと、
(3)前記擬ベーマイト層の厚さが0.5~10μmであり、任意選択的に2~7μmであることと、
(4)前記熱伝導層の厚さが0.5~2μmであり、任意選択的に0.5~1μmであることとのうちの少なくとも一つの条件を満たす。
【0058】
セパレータが上記条件のうちの一つ又は複数を満たす場合、セパレータの安全性能をさらに高め、且つセパレータの内部抵抗を低減させるのに有利である。
【0059】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記セラミックス層と前記擬ベーマイト層との厚さの比は、0.05~20、任意選択的に0.28~3.5である。例として、前記比例は、5:1、4:1、3.5:1、1:1、1:3.5、1:4又は1:5及びこれらのうちのいずれか2つからなる範囲であってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記擬ベーマイト層と前記熱伝導層との厚さの比は、0.25~20、任意選択的に2~14である。例として、上記比例は、0.5:1、1:1、2:1、2:0.5、7:1又は10:1及びこれらのうちのいずれか2つからなる範囲であってもよい。
【0061】
セパレータにおけるセラミックス層と擬ベーマイト層又は擬ベーマイト層と熱伝導層の厚さが上記条件を満たす場合、セパレータの安全性能をさらに高め、且つセパレータの内部抵抗を低減させるのに有利である。
【0062】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記セラミックスは、Al、Fe、Ti、Co、Zn、Cu、Ni、Mn又はSnの元素の酸化物、窒化物、フッ化物又は酸素酸塩のうちの一つ又は複数から選択され、
任意選択的に、前記セラミックスは、Feの酸化物、Feの酸素酸塩、Tiの酸化物、Tiの酸素酸塩、Znの酸化物、NiO、CuO又はSnOのうちの一つ又は複数から選択され、
さらに任意選択的に、前記セラミックスは、Fe、FePO、TiO、ZnO、LiTi12、NiO、CuO又はSnOのうちの一つ又は複数から選択される。
【0063】
リチウム金属電池の数回の充放電の過程において、不可避的にリチウムデンドライトが発生する。コントロールしないと、リチウムデンドライトは、最終的にセパレータに接触してそれを突き破り、正負極が接触することによって、安全問題を引き起こす。本出願に記載のセラミックス粒子に含まれる成分、例えばシリカは、リチウム吸蔵反応を生じさせ、発生したリチウムデンドライトをタイムリーに消費することによって、該当する電池の安全性能を向上させることができる。
【0064】
本出願に記載のセラミックス粒子がリチウムデンドライトを消費する反応機構は、合金化反応メカニズム、インターカレーション反応メカニズムと酸化還元メカニズムに分けられてもよい。
【0065】
1)合金化反応メカニズム:金属酸化物は、リチウムデンドライトと反応し、金属単体の生成を伴い、そして生成した金属単体は、さらに合金化反応を起こしてリチウム合金を生成し、反応方程式は、次のとおりである。

【0066】
二酸化スズを例にすると、放電中にまずスズ単体とLiOを生成し、そしてスズ単体とLiは、反応してLi4.4Sn化合物を生成する。
【0067】
2)インターカレーション反応メカニズム:充放電の過程においてLiは、材料の層間構造の隙間に埋め込まれることしかできず、その充放電過程の化学反応式は、次の通りである。

【0068】
インターカレーション反応メカニズムの代表的なセラミックス材料は、主にSiO、TiO、チタン酸リチウムなどである。
【0069】
3)改質反応メカニズム:金属酸化物は、Liと酸化還元反応して金属単体とLiOを生成し、その化学反応式は、次の通りである。

【0070】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記セラミックスは、セラミックス粒子であり、前記セラミックス粒子の体積平均粒径Dv50は、≧100nmであり、任意選択的に100nm~5μmであり、さらに任意選択的に200nm~2μmである。
【0071】
セラミックス粒子の粒径が大きすぎると、セラミックス粒子がベースフィルムに埋め込まれにくくなり、「粉落ち」現象が発生する可能性がある。セラミックス粒子の粒径が小さすぎると、セラミックス粒子は、有機微孔質材料の表面の空隙を塞ぐ可能性があり、セパレータの通気度を低減させることによって、イオン伝送チャンネルを遮断し、セパレータの内部抵抗を低減させるのに不利である。
【0072】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記擬ベーマイト層は、ベーマイト、アルミナ、ジルコニア又はマグネシアのうちの一つ又は複数から選択される。
【0073】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記熱伝導層の熱伝導率は≧20W/(m. K)であり、
任意選択的に、前記熱伝導層は、窒化ホウ素、窒化タングステン、炭化ケイ素又は窒化アルミニウムのうちの一つ又は複数から選択される。
【0074】
セパレータにおける熱伝導層が上記条件を満たす場合、セパレータの安全性能をさらに高め、且つセパレータの内部抵抗を低減させるのに有利である。
【0075】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記ベースフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、アラミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル又は天然繊維のうちの一つ又は複数から選択され、
任意選択的に、前記ベースフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン又はポリテトラフルオロエチレンのうちの一つ又は複数から選択される。
【0076】
本出願に記載のセパレータは、当分野で一般的に使用される方法で製造することができる。例として、市販のベースフィルムを使用する場合、本出願に記載のセパレータは、以下の方法で製造することができる。
【0077】
1) セパレータのベースフィルムを溶融処理し、そして押出を経てベースフィルムAを得、
2) セラミックス粒子をステップ1)で得られたベースフィルムAの一つの表面に均一に分散させ、複合ベースフィルムを得、
3) 擬ベーマイト粒子と任意選択的な熱伝導性材料とをステップ2)で得られた複合ベースフィルムに順に均一に塗布する。
【0078】
説明すべきこととして、ステップ1)における溶融処理とは、セパレータのベースフィルムを120~250°Cに加熱し、押出処理を行うことができるように溶融状態にすることである。ステップ3)における「順に」とは、まず擬ベーマイト層を塗布し、そして任意選択的な熱伝導性材料を擬ベーマイトのセラミックスから離れた表面に塗布することである。
【0079】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ1)における溶融処理を経た後、前記セパレータのベースフィルムは、熱溶融状態を呈する。
【0080】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ1)において、溶融処理を行った後、共押出システム、例えば二軸押出機によって溶融状態の前記セパレータのベースフィルムを連続的に押出する。
【0081】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ1)で得られたベースフィルムAは、熱溶融状態の流延ベースフィルムである。
【0082】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ1)は、押出後にキャスト冷却ロールを通過するステップをさらに含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ1)における前記キャスト冷却ロールの温度は、90~25°Cである。
【0084】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)は、前記キャスト冷却ロールを通過するステップと同期して行い、又は
ステップ1)を行った後、10s~1h以内に、任意選択的に1~30min以内に、さらに任意選択的に直ちにステップ2)を行う。
【0085】
説明すべきこととして、ステップ2)における用語「同期」とは、ステップ1)においてキャスト冷却ロールを通過すると同時に、ステップ2)を同期して行い、即ち成膜しながら粉を撒くか又は粉を吹き付けることである。
【0086】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)において、インライン散布またはスプレー塗布装置によりセラミックス粒子をステップ1)で得られたベースフィルムAの一つの表面に均一に分散させてもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)は、熱複合ロールを通過するか又はオーブン内で乾燥するステップをさらに含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)における前記熱複合ロール又はオーブンの温度は、80~190°C、任意選択的に100~180°Cである。
【0089】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)における前記熱複合ロールの圧力は、5~100Mpa、任意選択的に10~50Mpaである。
【0090】
そのため、いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)は、
(1)熱複合ロールの温度が80~190°Cであり、任意選択的に100~180°Cであることと、
(2)熱複合ロールの圧力が5~100Mpaであり、任意選択的に10~50Mpaであることとのうちの一つ又は複数の条件を満たす。
【0091】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)において、熱複合ロールを通過する前に、粉末ブレード塗布、散布、溶液塗覆又は高速粉末スプレー塗布のうちの一つ又は複数の方法でセラミックス粒子とステップ1)で得られた流延ベースフィルムAとを複合してもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ3)において、グラビアコート法又はワイヤーバーコート法によって擬ベーマイト粒子と熱伝導性材料を塗布してもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記セラミックス層は、少量の接着剤(一般的にはポリマーである)のみを含む。例として、前記接着剤の含量は、前記セラミックス層の総重量を基準として、0~10wt%であってもよい。前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元コポリマー、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元コポリマー、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリアクリレート、フッ素含有アクリレート、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルキトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウムのうちの一つ又は複数の材料から選択されてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記セラミックス層は、粘着剤を含まない。
【0095】
例として、ポリオレフィン素材を使用する場合、以下の方法で本出願に記載のセパレータを製造することができる。
【0096】
1) セパレータのベースフィルム素材と造孔剤とを含む混合物を溶融処理し、そして押出を経てベースフィルムAを形成し、
2) セラミックス粒子をベースフィルムAの一つの表面に均一に分散させ、複合ベースフィルムを得、
3) 擬ベーマイト粒子と任意選択的な熱伝導性材料とをステップ2)で得られた複合ベースフィルムに順に均一に塗布する。
【0097】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ1)における溶融処理とは、セパレータのベースフィルムを120~250°Cに加熱し、押出処理を行うことができるように溶融状態にすることである。ステップ3)における「順に」とは、まず擬ベーマイト層を塗布し、そして任意選択的な熱伝導性材料を擬ベーマイトのセラミックスから離れた表面に塗布することである。
【0098】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ1)における前記混合物におけるセパレータのベースフィルム素材と造孔剤との質量比は、0.1~0.7:1である。
【0099】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ1)で得られたベースフィルムAは、熱溶融状態の流延ベースフィルムである。
【0100】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ1)は、押出後にキャスト冷却ロールを通過するステップをさらに含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ1)における前記キャスト冷却ロールの温度は、90~25°Cである。
【0102】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ1)における造孔剤は、鉱物油、プロピレンカーボネート(即ち1,2-プロパンジオールカーボネート)、ジエチルカーボネート又はエチルメチルカーボネートのうちの一つ又は複数から選択されてもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)は、前記キャスト冷却ロールを通過するステップと同期して行い、又は
ステップ1)を行った後、10s~1h以内に、任意選択的に1~30min以内に、さらに任意選択的に直ちにステップ2)を行う。
【0104】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)における用語「同期」とは、ステップ1)においてキャスト冷却ロールを通過すると同時に、ステップ2)を同期して行い、即ち成膜しながら粉を撒くか又は粉を吹き付けることである。
【0105】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)において、インライン散布またはスプレー塗布装置によってセラミックス粒子をベースフィルムAの一つの表面に均一に分散させてもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)において、前記インライン散布またはスプレー塗布装置の熱複合速度は、0.5~5.0m/min、任意選択的に0.5~2.0m/minである。
【0107】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)は、熱複合ロールを通過するか又はオーブン内で乾燥するステップをさらに含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)における前記熱複合ロール又はオーブンの温度は、80~190°C、任意選択的に100~180°Cである。
【0109】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)における前記熱複合ロールの圧力は、5~100Mpa、任意選択的に10~50Mpaである。
【0110】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、ステップ2)を行った後、及びステップ3)を行う前に、複合ベースフィルムを延伸するステップをさらに含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記延伸は、二軸非同期延伸、二軸同期延伸の一つ又は複数であってもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、空隙率と強度の需求に応じて前記ベースフィルムを延伸してもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、複合ベースフィルムを延伸した後に、複合ベースフィルムにおける造孔剤を抽出するステップをさらに含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、使用される抽出剤は、塩化メチレン、リン酸トリメチル又はリン酸トリエチルのうちの一つ又は複数から選択される。
【0115】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、グラビアコート法又はワイヤーバーコート法によって擬ベーマイト粒子と熱伝導性材料を塗布してもよい。
【0116】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、巻き取りシステムによってステップ3)で得られたセパレータを巻き取る。
【0117】
説明すべきこととして、本出願では、様々な要因、例えば熱複合ロールとオーブンの温度、複合ロールを通過する速度、流延ベースフィルムを形成した後にセラミックス粒子を塗覆する時間、塗覆量又はセラミックス粒子の粒径などは、いずれもセラミックス粒子の埋め込み度合いに影響を与え、そのうちの熱複合ロールとオーブンの温度、塗覆量は、埋め込み度合いに与える影響が大きく、他の要因の影響が相対的に小さい。
【0118】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、熱複合ロールとオーブンの温度及び塗覆量を調節することによってセラミックス層のベースフィルムにおける埋め込み度合いを調節してもよい。
【0119】
[二次電池]
【0120】
本出願の第2の態様は、二次電池を提供し、該二次電池は、本出願の第1の態様に記載のセパレータを含む。一般的には、セパレータに加えて、二次電池は、正極板と、負極板と、セパレータと、電解液とをさらに含む。
【0121】
特に、本出願は、従来のセパレータの代わりとして、リチウム金属電池に用いられてもよい。その負極は、リチウム金属又はリチウム合金であってもよく、又は負極がなくてもよい。該当する正極材料は、前記のとおりである。負極のないリチウム金属電池の場合、正極材料は、リチウム源を提供する必要がある。
【0122】
二次電池の製造は、当分野で一般的に使用される方法で行ってもよく、例えば、正極板、負極板とセパレータを捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリとして製造し、そして電極アセンブリに電解液を注入してシールして二次電池を製造してもよい。
【0123】
説明すべきこととして、本出願に記載の二次電池は、ボタン電池を含む。前記二次電池がボタン電池である場合、正極板と負極板の材料は、同じであっても又は異なってもよい。なお、当業者が一般的に使用する方法でボタン電池を製造してもよい。例として、正極板、セパレータと負極板を電極アセンブリとして組み立て、そして電極アセンブリに電解液を注入してシールしてボタン電池を製造してもよい。
【0124】
以下、二次電池の上記部材についてそれぞれ説明する。
【0125】
[正極板]
【0126】
正極板は、正極集電体及び正極集電体の少なくとも一つの表面に設けられた正極膜層を含む。例として、正極集電体は、それ自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のいずれか一方又は両方上に設置される。
【0127】
いくつかの実施形態では、前記正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基材と、高分子材料基材の少なくとも一つの表面に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することによって形成されてもよい。
【0128】
本出願では、正極材料は、Liを可逆的に吸蔵と放出できる化合物である。
【0129】
いくつかの実施形態では、正極活物質は、当分野でよく知られている電池用の正極活物質を採用してもよい。例として、LiMO又はLi(ここで、Mは、遷移金属であり、0≦x≦1、0≦y≦2)で表されるリチウム含有複合酸化物、スピネル状の酸化物、層状構造の金属カルコゲナイド、オリビン構造などが挙げられる。例えば、LiCoOなどのリチウムコバルト酸化物、LiMnなどのリチウムマンガン酸化物、LiNiOなどのリチウムニッケル酸化物、Li4/3Ti5/3などのリチウムチタン酸化物、リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムマンガンニッケルコバルト複合酸化物、LiMPO(M = Fe、Mn、Ni)などのオリビン型結晶構造を有する材料などが挙げられる。
【0130】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、正極活物質は、層状構造又はスピネル状構造のリチウム含有複合酸化物、例えばLiCoO、LiMn、LiNiO、LiNi1/2Mn1/2などを代表とするリチウムマンガンニッケル複合酸化物、LiNi1/3Mn1/3Co1/3、LiNi0.6Mn0.2Co0.2などを代表とするリチウムマンガンニッケルコバルト複合酸化物、又はLiNi1-x-y-zCoAlMg(式において、0≦x≦1、0≦y≦0.1、0≦z≦0.1、0≦1-x-y-z≦1)などのリチウム含有複合酸化物である。なお、上記リチウム含有複合酸化物における構成元素の一部が、Ge、Ti、Zr、Mg、Al、Mo、Snなどの添加元素で置換されたリチウム含有複合酸化物なども本出願の範囲内に含まれる。
【0131】
上記正極活物質に加えて、さらに電池の正極活物質として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの正極活物質は、一つのみを単独に使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、層状構造のリチウム含有複合酸化物とスピネル構造のリチウム含有複合酸化物とを併用することで、大容量化と安全性の向上の両立を図ることができる。
【0132】
いくつかの実施形態では、正極膜層は、任意選択的に導電剤をさらに含む。一例として、前記導電剤は、超伝導性カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0133】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記導電剤は、正極膜層の総重量の0.05~5%を占め、任意選択的に0.5~3%である。
【0134】
いくつかの実施形態では、正極膜層は、任意選択的に接着剤、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元コポリマー、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元コポリマー、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリエチレンオキシドなどの電池分野で一般的に使用される接着剤をさらに含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記接着剤は、正極膜層の総重量の0.1~3.5%を占め、任意選択的に0.5~2.5%である。
【0136】
いくつかの実施形態では、以下の方式によって正極板を製造することができる。正極板を製造するための上記成分、例えば正極活物質、導電剤、接着剤と任意の他の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)に分散させて、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間加圧などの工程を経て、正極板が得られる。
【0137】
[負極板]
【0138】
負極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面に設けられる負極膜層とを含む。例として、負極集電体は、それ自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のいずれか一方又は両方上に設置される。
【0139】
いくつかの実施形態では、前記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基材と、高分子材料基材の少なくとも一つの表面に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することによって形成されてもよい。
【0140】
本出願では、負極材料は、リチウム金属、リチウムを吸蔵-放出可能な化合物である。
【0141】
いくつかの実施形態では、負極活物質は、当分野でよく知られている電池用の負極活物質を採用してもよい。例として、アルミニウム、シリコン、スズなどの合金又は酸化物、炭素材料などの様々な材料を負極活物質として使用してもよい。任意選択的に、酸化物は、二酸化チタンなどが挙げられ、炭素材料は、黒鉛、熱分解炭素系、コークス系、ガラス状炭素系、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズなどが挙げられる。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物及びスズ合金のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。しかし、本出願は、これらの材料に限定されず、さらに電池の負極活物質として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、一つのみを単独に使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0142】
いくつかの実施形態では、負極膜層は、任意選択的に導電剤をさらに含む。導電剤は、超伝導性カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記導電剤は、負極膜層の総重量の0.05~5%を占め、任意選択的に0.5~3%である。
【0144】
いくつかの実施形態では、負極膜層は、任意選択的に接着剤、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元コポリマー、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元コポリマー、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリエチレンオキシドなどの電池分野で一般的に使用される接着剤をさらに含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、任意選択的に、前記接着剤は、負極膜層の総重量の0.1~3.5%を占め、任意選択的に0.5~2.5%である。
【0146】
いくつかの実施形態では、負極膜層は、任意選択的に他の助剤、例えば増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などをさらに含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、以下の方式によって負極板を製造することができる。負極板を製造するための上記成分、例えば負極活物質、導電剤、接着剤と任意の他の成分を溶媒(例えば脱イオン水)に分散させて、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間加圧などの工程を経て、負極板が得られる。
【0148】
[電解質]
【0149】
電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。本出願は、電解質の種類を具体的に制限せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体であってもよい。
【0150】
いくつかの実施形態では、前記電解質は、電解液を採用する。前記電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、非水溶媒(有機溶媒)を非水電解液として使用する。非水溶媒は、カーボネート類、エーテル類などを含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、カーボネート類は、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを含む。環状カーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、硫黄系エステル(エチレングリコールスルフィド)などが挙げられる。鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどを代表とする低粘度の極性鎖状カーボネート、脂肪族分岐型カーボネート系化合物が挙げられる。環状カーボネート(特にエチレンカーボネート)と鎖状カーボネートとの混合溶媒は、特に好ましい。
【0153】
エーテル類は、ジメチルエーテルテトラエチレングリコール(TEGDME)、エチレングリコールジメチルエーテル(DME)、1,3-ジオキソラン(DOL)などが挙げられる。
【0154】
また、上記非水溶媒に加えて、プロピオン酸メチルなどの鎖状アルキルエステル類、リン酸トリメチルなどの鎖状リン酸トリエステル、3-メトキシプロピオニトリルなどのニトリル系溶媒、樹枝状化合物を代表とする、エーテル結合を有する分岐型化合物などの非水溶媒(有機溶媒)をさらに用いてもよい。
【0155】
また、フッ素系溶媒を用いてもよい。
【0156】
フッ素系溶媒として、例えば、H(CFOCH、COCH、H(CFOCHCH、H(CFOCHCF、H(CFCHO(CFHなど、又はCFCHFCFOCH、CFCHFCFOCHCHなどの直鎖構造の(パーフルオロアルキル)アルキルエーテル、例えば2-トリフルオロメチルヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、2-トリフルオロメチルヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、2-トリフルオロメチルヘキサフルオロプロピルプロピルエーテル、3-トリフルオロメチルオクタフルオロブチルメチルエーテル、3-トリフルオロメチルオクタフルオロブチルエチルエーテル、3-トリフルオロメチルオクタフルオロブチルプロピルエーテル、4-トリフルオロメチルデカフルオロペンチルメチルエーテル、4-トリフルオロメチルデカフルオロペンチルエチルエーテル、4-トリフルオロメチルデカフルオロペンチルプロピルエーテル、5-トリフルオロメチルドデカフルオロヘキシルメチルエーテル、5-トリフルオロメチルドデカフルオロヘキシルエチルエーテル、5-トリフルオロメチルドデカフルオロヘキシルプロピルエーテル、6-トリフルオロメチルテトラデカフルオロヘプチルメチルエーテル、6-トリフルオロメチルテトラデカフルオロヘプチルエチルエーテル、6-トリフルオロメチルテトラデカフルオロヘプチルプロピルエーテル、7-トリフルオロメチルヘキサデカフルオロオクチルメチルエーテル、7-トリフルオロメチルヘキサデカフルオロオクチルエチルエーテル、7-トリフルオロメチルヘキサデカフルオロオクチルプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0157】
また、上記イソ(パーフルオロアルキル)アルキルエーテルは、上記直鎖構造の(パーフルオロアルキル)アルキルエーテルと併用してもよい。
【0158】
非水電解液に使用される電解質塩として、リチウムの過塩素酸塩、有機ホウ素リチウム塩、フッ素含有化合物のリチウム塩、リチウムイミド塩などのリチウム塩が好ましい。
【0159】
このような電解質塩の例として、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCFCO、LiC(SO、LiN(CSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(ROSO(式において、Rは、フルオロアルキル基である)などが挙げられる。これらのリチウム塩のうち、フッ素含有有機リチウム塩は、特に好ましい。フッ素含有有機リチウム塩は、アニオン性が大きく且つイオンに分離しやすいため、非水電解液に溶解しやすい。
【0160】
電解質リチウム塩の非水電解液における濃度は、例えば0.3mol/L(モル/リットル)以上、さらに任意選択的に0.7mol/L以上、任意選択的に1.7mol/L以下、さらに任意選択的に1.2mol/L以下である。電解質リチウム塩の濃度が低すぎると、イオン伝導度が小さすぎ、高すぎると、溶解しきれなかった電解質塩の析出が懸念される。
【0161】
いくつかの実施形態では、前記電解液は、任意選択的に、添加剤をさらに含み、本出願は、特に限定しない。例えば、添加剤は、負極被膜形成添加剤と、正極被膜形成添加剤とを含んでいてもよいし、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温又は低温性能を改善する添加剤などをさらに含んでいてもよい。
【0162】
[電池モジュール、電池パックと電力消費装置]
【0163】
本出願の第3の態様は、電池モジュールを提供し、該電池モジュールは、本出願の第2の態様の二次電池を含む。電池モジュールの製造は、当分野で一般的に使用される方法を用いてもよい。
【0164】
本出願の第4の態様は、電池パックを提供し、該電池パックは、本出願の第3の態様の電池モジュールを含む。電池パックの製造は、当分野で一般的に使用される方法を用いてもよい。
【0165】
本出願の第5の態様は、電力消費装置を提供し、該電力消費装置は、本出願の第2の態様の二次電池、本出願の第3の態様の電池モジュール又は本出願の第4の態様の電池パックのうちの少なくとも一つを含む。
【0166】
また、以下は、本出願の二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置について、図面を適宜参照して説明する。
【0167】
いくつかの実施形態では、二次電池は、外装を含んでもよい。該外装は、上記電極アセンブリと電解質のパッケージングに用いられてもよい。
【0168】
いくつかの実施形態では、二次電池の外装は、硬質プラスチックシェル、アルミニウムシェル、スチールシェルなどの硬質シェルであってもよい。二次電池の外装は、軟包装でもよく、例えば、袋型軟包装である。軟包装の材質はプラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0169】
本出願では、二次電池の形状に対して特に制限することはなく、それは、円柱状、四角形又は他のいずれかの形状であってもよい。例えば、図2は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0170】
いくつかの実施形態では、図3を参照すると、外装は、筐体51とカバープレート53とを含んでもよい。ここで、筐体51は、底板と、底板上に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とで取り囲んで収容キャビティを形成する。筐体51は収容キャビティに連通する開口を有し、カバープレート53は、前記開口をカバーして設けられることによって前記収容キャビティを閉鎖することができる。正極板と負極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者は、実際の具体的な需要に応じて選択してもよい。
【0171】
いくつかの実施形態では、二次電池を電池モジュールに組み立てもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの応用と容量に基づいて選択してもよい。
【0172】
図4は、一例としての電池モジュール3である。図4を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の縦方向に沿って順に並べて設けられてもよい。無論、任意の他の方式に従って配置されてもよい。さらに、該複数の二次電池5を締め具で固定してもよい。
【0173】
任意選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、該収容空間に収容される。
【0174】
いくつかの実施形態では、上記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池パックの応用と容量に基づいて選択してもよい。
【0175】
図5図6は、一例としての電池パック1である。図5図6を参照すると、電池パック1には、電池ケースと電池ケースの中に設置された複数の電池モジュール4が含まれてもよい。電池ケースは、上ケース2と下ケース3とを含み、上ケース2は、下ケース3をカバーして設けられ、且つ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式に従って電池ケースの中に配置されてもよい。
【0176】
また、本出願は、電力消費装置をさらに提供し、該電力消費装置は、本出願による二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも一つを含む。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよいし、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、移動体設備(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶と衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、それらに限らない。
【0177】
前記電力消費装置として、その使用上の需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択してもよい。
【0178】
図7は、一例としての電力消費装置である。該電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。該電力消費装置の、二次電池の高出力と高エネルギー密度への要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0179】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコンなどであってもよい。該装置は、一般に軽量化が求められており、二次電池を電源として採用することができる。
【0180】
実施例
【0181】
以下では、本出願の実施例を説明する。以下に記述されている実施例は、例示的なもので、本出願を解釈することにのみ用いられ、本出願を制限するものとして理解すべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が明記されていないものは、当技術分野の文献に記述されている技術又は条件、又は製品説明書に従って実行する。使用する試薬又は機器について、製造メーカーが明記されていないものは、いずれも市販で購入できる一般的な製品である。非特に説明しない限り、実施例部分に使用される物質の質量は、いずれも結晶水を含まない質量とする。
【0182】
一、セパレータ
【0183】
実施例1
1) ポリエチレン(Sigma-Aldrichから購入、CAS番号9002-88-4)、鉱物油(造孔剤)を重量比1:10で均一に混合し、そして150°Cに加熱し、溶融状態を形成した。ダイ共押出を経た後、80°Cのキャスト冷却ロールにより、流延ベースフィルムAを形成し、厚さは、7μmであり、
2) ステップ1)でキャスト冷却ロールによって流延ベースフィルムAを形成する過程において、同期してインラインスプレー塗布装置により、体積平均粒径Dv50が100nmであるZnO粒子を流延ベースフィルムAの一つの表面に均一に分散させ、そして熱複合ロールによって流延ベースフィルムAとセラミックスを熱複合し、熱複合温度は、170°Cであり、圧力は、10MPaであり、速度は、1.5m/minであり、
3) 延伸システムによって複合ベースフィルムを二軸同期延伸し、
4) 塩化メチレンを抽出剤としてベースフィルムにおける造孔剤を抽出し、半製品の複合セパレータを得、
5) ワイヤーバーコート法でアルミナ(アルミナと接着剤(ポリアクリレート、数平均分子量9000)との重量比が0.91: 0.04の混合物は、脱イオン水において固形分含有量35%のスラリーを形成する)をセラミックス層に均一に分散させ、乾燥後の塗布厚さは、2μmであり、
6) ワイヤーバーコート法で窒化ホウ素(窒化ホウ素と接着剤(ポリフッ化ビニリデン、PVDF、数平均分子量~50万)との重量比が0.91: 0.04の混合物は、脱イオン水において固形分含有量35%のスラリーを形成する)をアルミナ層に均一に分散させ、乾燥後の塗布厚さは、1μmであり、
7) 巻き取りシステムによって巻き取った。
【0184】
以下の条件を除き、実施例2-22及び比較例1-3の製造条件は、実施例1と類似し、具体的には表1を参照されたい。
【0185】
ここで、実施例7-9における熱複合ロールの温度/圧力は、それぞれ110°C/0.8MPa、110°C/5MPaと140°C/7MPaである。
【0186】
二、ボタン電池
【0187】
正負極は、いずれも直径(Φ)18mmのリチウムシートを使用し、リチウムシートの厚さは、250μmであり、中間介在層は、実施例と比較例で製造されたセパレータである。そして適量(極板とセパレータが完全に浸潤するようにすればよい)の電解液を滴下し、2430型番のボタン電池を組み立てた。前記電解液は、以下の方法により製造される。エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を体積比1:1で混合し、そしてLiPFを加え、均一に攪拌し、LiPFの濃度を1mol/Lにした。
【0188】
関連パラメータの試験方法
【0189】
1. セラミックス粒子の粒径試験
【0190】
粒度分析Dv50:総体積の50%を占める粒径は、この値よりも大きく、また、総体積の50%を占める粒径は、この値よりも小さく、Dv50は、粉体の粒度中央値を表し、
粒子は、レーザービームの照射で、その散乱光の角度は、粒子の直径と反比例関係になり、散射光の強さは、角度の増加に伴って対数規則的に減衰し、散乱光のエネルギー分布は、粒径の分布と直接関連し、散乱光のエネルギー分布を受け入れて測定することによって粒子の粒度分布特徴を得ることができる。参考規格は、GB/T19077.1-2009粒度分布レーザー回折法である。
【0191】
2. ボタン電池の定電圧試験
【0192】
試験フロー:1mA/cmでボタン電池を100mVまで定電流放電し、10 min静置(rest)し、さらに100mVで5日間定電圧保持した。200~600mAのピーク大電流が安定して出現している時間を、該電池システムが安全に正常に運行している時間として記録し、即ち表1の短絡発生時間である。
【0193】
3. セラミックス層のベースフィルムに埋め込まれた部分の厚さがセラミックス層の全厚さを占める百分率の測定
【0194】
液体窒素を用いてセパレータをクエンチし、平らなセパレータ断面を得、ZEISS sigma 300走査型電子顕微鏡で規格JY/T010-1996を参照してセラミックス層の厚さを測定した。セラミックス層のベースフィルムに埋め込まれた厚さをセラミックス層の全厚さで割った値に100%を乗じると、前記百分率が得られた。
【0195】
本出願における他の厚さは、上記の方法を参照して測定することができる。
【0196】
4. セパレータのイオン伝導率試験
【0197】
試験フロー:セパレータを含む積層対称電池を製作し、陽極板は、従来の黒鉛極板を用い、Cuシートを集電体とし、電解液は、ボタン電池電解液と同じである。交流インピーダンススペクトル試験の周波数範囲は、1MHz~1kHzであり、振幅は、5mVである。セパレータ抵抗R=ρL/S*n(L、S、nは、それぞれ試験におけるセパレータ厚さ、面積と層数である)に基づいて、セパレータのイオン伝導率(mS/cm)が得られる。
【0198】
【表1】
【0199】
表1の結果から分かるように、本出願に記載のセパレータを用いた二次電池は、優れた安全性能と高いイオン伝導率を備えている。いかなる理論にもとらわれることなく、考えられる原因は、本出願に記載のセパレータがリチウムデンドライトを効果的に消費し、デンドライトがセパレータを突き破って短絡を引き起こすことを回避することができ、それによってセパレータの安全性能を改善したことであり、同時に、高いイオン伝導率は、セパレータの内部抵抗が小さいことを示し、本出願の技術案が低いセパレータの内部抵抗を同時に実現できることを説明する。なお、表1から分かるように、セラミックス粒子の種類及び各層の厚さを調整することにより、セパレータの安全性能をさらに向上させ、セパレータの内部抵抗を低減させることができる。
【0200】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例に過ぎず、本出願の技術案の範囲内で、技術思想と実質的に同一の構成を有し、同様な作用と効果を奏する実施形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれるものとする。なお、本出願の主旨から逸脱しない範囲内で、実施形態に対して当業者が想到し得る様々な変形を実施し、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も、本出願の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0201】
1電池パック、2上ケース、3下ケース、4電池モジュール、5二次電池、51筐体、52電極アセンブリ、53トップカバーアセンブリ、11ベースフィルム、12セラミックス層、13擬ベーマイト層、14熱伝導層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】