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特表2024-534758CHAゼオライト材料の合成、それから得ることができるCHAゼオライト材料、及びそれを含むSCR触媒
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  • 特表-CHAゼオライト材料の合成、それから得ることができるCHAゼオライト材料、及びそれを含むSCR触媒 図1
  • 特表-CHAゼオライト材料の合成、それから得ることができるCHAゼオライト材料、及びそれを含むSCR触媒 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】CHAゼオライト材料の合成、それから得ることができるCHAゼオライト材料、及びそれを含むSCR触媒
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20240918BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20240918BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240918BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240918BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240918BHJP
   B01D 53/94 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C01B39/48 ZAB
B01J29/76 A
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/28 301C
B01D53/94 222
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506756
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 CN2022117802
(87)【国際公開番号】W WO2023036238
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/117349
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】シャイ、リフア
(72)【発明者】
【氏名】チー、シャオドゥオ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッティパリ、ヴィヴェーク
(72)【発明者】
【氏名】ダイ、ユー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、ミンミン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ハイタオ
(72)【発明者】
【氏名】リー、チン
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB05
3G091BA14
3G091CA17
3G091GB03W
3G091GB09W
3G091GB10W
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4G073BB05
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4G073BD21
4G073CZ05
4G073CZ17
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4G073FC19
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4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC66A
4G169CA03
4G169CA08
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4G169FA01
4G169FA02
4G169ZA14A
4G169ZA14B
4G169ZB01
4G169ZB08
(57)【要約】
及びYO(式中、Xは三価元素であり、Yは四価元素である)を含むCHA型骨格構造を有するゼオライトを調製するプロセスであって、(1)(A)Xの供給源、(B)YOの供給源、及び(C)式(I)(式中、R1aはC~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、R1bはC~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、R、R、R、R、及びRは、互いに独立して、H、ヒドロキシル、又はC~Cアルキルである)によって表されるピペリジニウムカチオンの供給源を含む合成混合物を調製することと、(2)合成混合物を結晶化条件に供してCHAゼオライトを形成することと、を含む、プロセス。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CHA型骨格構造を有するゼオライトを調製するプロセスであって、前記骨格構造がX及びYOを含み、式中、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、
(1)
(A)Xの供給源、
(B)YOの供給源、並びに
(C)有機構造指向剤(OSDA)としての式(I)によって表されるピペリジニウムカチオンの供給源であって、
【化1】

式中、
1aはC~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
1bはC~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
、R、R、R、及びRは、互いに独立して、H、ヒドロキシル、又はC~Cアルキルである、供給源を含む合成混合物を調製することと、
(2)前記合成混合物を結晶化条件に供して、CHAゼオライトを形成することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記ピペリジニウムカチオンが、以下の式(I)によって表され、式中、
1aはC~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
1bはC~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
、R、R、R、及びRは、互いに独立して、H、ヒドロキシル、又はC~Cアルキである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ピペリジニウムカチオンが、式(Ia)によって表され、
【化2】

式中、
1aはC~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
1bはC~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
、R、及びRは、互いに独立して、H、ヒドロキシル、又はC~Cアルキルである、請求項2に記載プロセス。
【請求項4】
前記ピペリジニウムカチオンが、式(Ia)によって表され、式中、R1aはC~Cアルキルであり、R1bはC~Cアルキルであり、R、R、及びRは、互いに独立して、H、ヒドロキシル、又はC~Cアルキルである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ピペリジニウムカチオンが、式(Ia)によって表され、式中、R1aはC~Cアルキルであり、R1bはC~Cアルキルであり、R及びRは、互いに独立して、H又はC~Cアルキルであり、RはHである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ピペリジニウムカチオンが、式(Ia)によって表され、式中、R1aはC~Cアルキルであり、R1bはC~Cアルキルであり、R、R、及びRはHである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ピペリジニウムカチオンが、1-メチル-1-エチルピペリジニウム、1-メチル-1-n-プロピルピペリジニウム、1-メチル-1-n-ブチルピペリジニウム、1,1-ジエチルピペリジニウム、1-エチル-1-n-プロピルピペリジニウム、1-エチル-1-n-ブチルピペリジニウム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、好ましくは1-メチル-1-n-プロピルピペリジニウム、1-メチル-1-n-ブチルピペリジニウム、1-エチル-1-n-プロピルピペリジニウム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記有機構造指向剤が、0.01~1.0、好ましくは0.03~0.5、より好ましくは0.03~0.2、より好ましくは0.05~0.15の範囲に含まれる、YOとして計算されるYOの供給源に対するピペリジニウム:YOモル比で前記合成混合物中に存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
Xが、Al、B、In、Ga、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、Yが、Si、Sn、Ti、Zr、Ge、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
XがAlであり、YがSiである、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
及びYOの前記供給源が、FAUゼオライト、特にゼオライトY、より好ましくは40以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更により好ましくは10以下のXO対Yのモル比を有するゼオライトYを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
YOの追加の供給源が使用され、前記YOの追加の供給源が、好ましくは、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカヒドロゾル、シリカゲル、及びコロイドシリカ(それらのうちの2つ以上の混合物を含む)からなる群から選択される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記合成混合物が、前記ピペリジニウムカチオン以外の有機構造指向剤カチオンを含まない、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセスによって得られた、かつ/又は得ることができる、CHA型骨格構造を有する、ゼオライト。
【請求項15】
CHA型骨格構造を有するゼオライトであって、好ましくは合成されたままの形態で、その細孔及び/又はチャネル内に請求項1~7のいずれか一項に記載のピペリジニウムカチオンを含む、ゼオライト。
【請求項16】
2以上のYO:Xモル比を有し、前記YO:Xモル比が、好ましくは、4~200、より好ましくは6~100、より好ましくは8~50、より好ましくは10~35、より好ましくは11~25、より好ましくは11.5~20、より好ましくは12~16、より好ましくは12.5~15の範囲に含まれる、請求項14又は15に記載のゼオライト。
【請求項17】
前記ゼオライトが、助触媒金属Mを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載のゼオライト
【請求項18】
前記助触媒金属が、遷移金属、アルカリ土類金属、Sb、Sn、及びBi、並びにそれらの任意の組み合わせから選択され、好ましくはCu並びに/又はFe、好ましくはCuを含む、請求項17に記載のゼオライト。
【請求項19】
前記助触媒金属が、Cu及び/又はFe、好ましくはCuからなる、請求項17又は18に記載のゼオライト。
【請求項20】
前記助触媒金属が、前記ゼオライト内及び/又は前記ゼオライトの表面上に含有される、請求項17~19のいずれか一項に記載のゼオライト。
【請求項21】
ゼオライト材料中の前記助触媒金属対前記三価元素XのM:Xモル比が、0.01~2、好ましくは0.03~1.8、より好ましくは0.05~1.5、より好ましくは0.08~1.2、より好ましくは0.1~1.0、より好ましくは0.13~0.8、より好ましくは0.15~0.5、より好ましくは0.18~0.4、より好ましくは0.2~0.38、より好ましくは0.23~35、より好ましくは0.25~32、より好ましくは0.28~0.3の範囲に含まれる、請求項17~20のいずれか一項に記載のゼオライト。
【請求項22】
500vppmのNO、500vppmのNH、5体積%のHO、10体積%のO、及び残部のNからなる試験ガス流中、120,000h-1のガス時空間速度(GHSV)で、820℃で10%のHOを用いて蒸気エージングした際に200℃で少なくとも11%及び575℃で少なくとも50%のNOx転化率を示す、請求項17~21のいずれか一項に記載の助触媒金属を含む、ゼオライト。
【請求項23】
SCR触媒組成物を含む押出物の形態又は基材上にSCR触媒組成物を含有するウォッシュコートを含むモノリスの形態の、触媒物品であって、前記SCR触媒組成物が、請求項17~22のいずれか一項に記載の助触媒金属を含むゼオライトを含む、触媒物品。
【請求項24】
内燃機関と、前記内燃機関と流体連通している排気ガス導管と、を備える排気ガス処理システムであって、請求項23に記載の触媒物品が前記排気ガス導管内に存在する、排気ガス処理システム。
【請求項25】
窒素酸化物の選択接触還元のための触媒における、請求項14~22のいずれかに記載のCHA型骨格構造を有するゼオライトの、使用。
【請求項26】
窒素酸化物の前記選択接触還元のための方法であって、
(A)窒素酸化物(NOx)を含むガス流を提供すること、
(B)前記ガス流を、請求項17~22のいずれか一項に記載の助触媒金属を含むゼオライト又は請求項23に記載の触媒物品と接触させること、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CHA骨格構造を有するゼオライト材料を合成するプロセス、それから得ることができるゼオライト材料、及びそれを含むSCR触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒物品は、現代の内燃機関にとって、そこからの排気を空気中に放出する前に処理するために不可欠である。内燃機関からの排気は、典型的には、粒子状物質(particulate matter、PM)、NO及び/又はNOなどの窒素酸化物(nitrogen oxides、NOx)、未燃炭化水素(unburned hydrocarbons、HC)、並びに一酸化炭素(CO)を含む。NOxは生態系、動物及び植物の生命に対して環境的に悪影響を及ぼすので、NOxの排出の制御は、自動車分野において常に最も重要な話題の1つである。
【0003】
内燃機関の排気からNOxを除去するための有効な技術の1つは、アンモニア又は第2のアンモニア供給源によるNOxの選択接触還元(selective catalytic reduction、SCR)である。最近、NOxの選択接触還元のために小細孔ゼオライトが提案され、その中でもCHA型ゼオライトが広く研究され、特にゼオライトがCu又はFeなどの金属助触媒と交換される場合に、最も有望なSCR触媒の1つであることが見出された。
【0004】
チャバザイトは、天然ゼオライトの一種であり、合成CHA形態も有する。周知の合成CHA型ゼオライトは、米国特許第4,544,538号に報告されているような、SSZ-13と呼ばれる結晶質CHA材料である。SSZ-13は、結晶化条件下で、N-アルキル-3-キヌクリジノールカチオン、N,N,N-トリアルキル-1-アダマントアンモニウムカチオン、N,N,N-トリアルキル-2-エキソアミノノルボルナンカチオン、又はこれらの混合物を含む構造指向剤を使用して調製された。例えば、以下の非特許文献及び特許文献に報告されているように、他の構造指向剤を用いたCHA型ゼオライトの合成も開発されている。
【0005】
Itakura Masaya et.al.in Chemistry Letters,2008,Vol.37,No.9,pages 908 to 909には、構造指向剤として水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムを用いてCHAゼオライトを合成するプロセスが記載されている。
【0006】
米国特許出願公開第2010/254895(A1)号には、カチオン性1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン系構造指向剤を少なくとも1つのカチオン性環状窒素含有構造指向剤とともに使用してCHA型ゼオライトを調製するプロセスが開示されている。
【0007】
国際公開第2020/039074(A1)号には、式[NR](式中、R、R、R、及びRは、独立して、任意選択で1つ以上のヒドロキシ基によって置換されたC~C-アルキル基である)を有するカチオンを含む構造指向剤を使用してCHA型ゼオライトを調製するプロセスが開示されている。
【0008】
Biaohua Chen et al.in Environmental Science&Technology,2014,48,pages 13909 to 13916には、構造指向剤として塩化コリンを用いてSSZ-13を合成するプロセスが記載されている。
【0009】
国際公開第2013/035054(A1)号は、CHA型骨格構造を有するゼオライト材料を調製するプロセスであって、N,N-ジメチルピペリジニウムを含むN,N-ジメチルアンモニウム有機テンプレートを使用する、プロセスに関する。
【0010】
CHA骨格構造を有するゼオライト材料を調製するための更なるプロセス、特に、NOxの選択接触還元について改善された触媒性能を有するCHA型ゼオライト材料を提供することができるプロセスが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、CHA骨格構造を有するゼオライト材料を調製するための新規プロセスを提供することである。本発明の別の目的は、CHA骨格構造を有するゼオライトをベースとするSCR触媒であって、NOxの選択接触還元について改善された触媒性能を有する、SCR触媒を提供することである。
【0012】
この目的は、ゼオライト合成においてピペリジニウム系有機構造指向剤を使用することによって達成された。驚くべきことに、ピペリジニウム系有機構造指向剤を用いて調製されたCHA骨格構造を有するゼオライトは、特に高温、例えば800℃以上でのエージングに対する優れた安定性と合わせて望ましい活性を有することが見出された。
【0013】
したがって、第1の態様において、本発明は、CHA型骨格構造を有するゼオライト材料を調製するプロセスであって、骨格構造がX及びYOを含み、式中、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、
(1)
(A)Xの供給源、
(B)YOの供給源、並びに
(C)有機構造指向剤(organic structure directing agent、OSDA)としての式(I)によって表されるピペリジニウムカチオンの供給源であって、
【0014】
【化1】

式中、
1aは、C~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
1bは、C~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
、R、R、R、及びRは、互いに独立して、H、ヒドロキシル、又はC~Cアルキルである、供給源を含む合成混合物を調製することと、
(2)合成混合物を結晶化条件に供して、CHAゼオライトを形成することと、を含む、プロセスに関する。
【0015】
第2の態様において、本発明は、本明細書に記載のプロセスによって得られた、かつ/又は得ることができる、CHA型骨格構造を有するゼオライトに関する。
【0016】
第3の態様において、本発明は、本明細書に記載のプロセスによって得られた、かつ/又は得ることができる、CHA型骨格構造を有するゼオライトであって、助触媒金属Mを含む、ゼオライトに関する。
【0017】
第4の態様において、本発明は、NOxの選択接触還元(SCR)のための触媒における、第2又は第3の態様によるCHA型骨格構造を有するゼオライトの使用に関する。
【0018】
第5の態様において、本発明は、SCR触媒組成物を含む押出物の形態又は基材上にSCR触媒組成物を含有するウォッシュコートを含むモノリスの形態の、触媒物品であって、SCR触媒組成物が、本明細書に記載の助触媒金属を含むCHA型骨格構造を有するゼオライトを含む、触媒物品に関する。
【0019】
第6の態様において、本発明は、内燃機関と、内燃機関と流体連通している排気ガス導管と、を備える排気ガス処理システムであって、本明細書に記載の触媒物品が排気ガス導管内に存在する、排気ガス処理システムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】それぞれ実施例1~6からのゼオライトのSEM画像を示す。
図2】それぞれ実施例1~7からのゼオライトのXRDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、多くの異なる方法で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるものではないことを理解されたい。
【0022】
本明細書において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに指示していない限り、複数の指示対象を含む。用語「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」などは、「含有する(contain)」、「含有している(containing)」などと互換的に使用され、非限定的でオープンに解釈されるべきである。すなわち、例えば、更なる構成要素又は要素が存在していてもよい。「からなる(consists of)」若しくは「から本質的になる(consists essentially of)」という表現又は同族語は、「含む(comprises)」又は同族語に包含され得る。
【0023】
本明細書で使用するとき、「CHA型骨格構造を有するゼオライト」、「CHA型ゼオライト」、「CHAゼオライト」などの用語は、CHA型骨格構造のXRDパターンを示す分子篩材料を指すことが意図され、以後互いに互換的に使用される。これらの用語はまた、任意の形態のゼオライト、例えば、合成されたままの形態、か焼された形態、NH交換された形態、H形態、及び金属置換された形態を含むことが意図される。
【0024】
本明細書で使用するとき、「合成されたままの」という用語は、有機構造指向剤を除去する前の、結晶化及び乾燥後の形態のゼオライトを指すことが意図される。
【0025】
本明細書で使用するとき、「か焼された形態」という用語は、か焼時の形態のゼオライトを指すことが意図される。
【0026】
第1の態様において、本発明は、CHA型骨格構造を有するゼオライトを調製するプロセスであって、骨格構造がX及びYOを含み、式中、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、
(1)
(A)Xの供給源、
(B)YOの供給源、並びに
(C)有機構造指向剤(OSDA)としての式(I)によって表されるピペリジニウムカチオンの供給源であって、
【0027】
【化2】

式中、
1aは、C~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
1bは、C~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
、R、R、R、及びRは、互いに独立して、H、ヒドロキシル、又はC~Cアルキルである、供給源を含む合成混合物を調製することと、
(2)合成混合物を結晶化条件に供して、CHAゼオライトを形成することと、を含む、プロセスを提供する。
【0028】
工程(1)で提供される合成混合物は、X(式中、Xは三価骨格元素である)の供給源と、YO(式中、Yは四価骨格元素である)の供給源とを含む。Xは、任意の三価元素であってよい。好ましくは、Xは、Al、B、In、Ga、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、Alがより好ましい。また、Yは、任意の四価元素であってもよい。好ましくは、Yは、Si、Sn、Ti、Zr、Ge、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、Siがより好ましい。特に、XはAlであり、YはSiである。
【0029】
の好適な供給源は、ゼオライト合成中に三価骨格元素を提供するのに有用な任意の既知の材料であってよい。XがAlであるいくつかの実施形態において、Alの供給源の好適な例としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミネート、アルミニウムアルコキシド、アルミニウム塩、FAUゼオライト、LTAゼオライト、LTLゼオライト、BEAゼオライト、MFIゼオライト、及びそれらの任意の組み合わせ、より好ましくはアルミナ、アルミニウムアルコキシド、アルミニウム塩、FAUゼオライト、及びそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。特に、Alの供給源は、アルミナ、AlO(OH)、Al(OH)、アルミニウムトリ(C~C)アルコキシド、ハロゲン化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、フルオロケイ酸アルミニウム、FAUゼオライト、及びそれらの任意の組み合わせから選択され得る。例えば、FAUゼオライトは、フォージャサイト、[Al-Ge-O]-FAU、[Al-Ge-O]-FAU、[Ga-Al-Si-O]-FAU、[Ga-Ge-O]-FAU、[Ga-Si-O]-FAU、CSZ-1、Na-X、US-Y、ECR-30、LZ-210、Li-LSX、SAPO-37、Na-Y、ZSM-20、ZSM-3、ゼオライトX、及びゼオライトYからなる群から選択してよく、より好ましくはフォージャサイト、Na-X、ゼオライトX、ゼオライトY、US-Y、及びLZ-210からなる群から選択してよい。ゼオライトYは、Xの供給源として特に言及され得る。
【0030】
YOの好適な供給源は、ゼオライト合成中に四価骨格元素を提供するのに有用な任意の既知の材料であってよい。YがSiであるいくつかの実施形態において、YOの好適な供給源としては、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカヒドロゾル、シリカゲル、コロイド状シリカ、ケイ酸、ケイ素アルコキシド、アルカリ金属シリケート、メタケイ酸ナトリウム水和物、セスキシリケート、ジシリケート、ケイ酸エステル、FAUゼオライト、LTAゼオライト、LTLゼオライト、BEAゼオライト、MFIゼオライト、及びそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。特に、YOの供給源は、ヒュームドシリカ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、FAUゼオライト、及びそれらの任意の組み合わせ、より好ましくはヒュームドシリカ、FAUゼオライト、及びそれらの任意の組み合わせから選択してよい。例えば、FAUゼオライトは、フォージャサイト、[Al-Ge-O]-FAU、[Al-Ge-O]-FAU、[Ga-Al-Si-O]-FAU、[Ga-Ge-O]-FAU、[Ga-Si-O]-FAU、CSZ-1、Na-X、US-Y、ECR-30、LZ-210、Li-LSX、SAPO-37、Na-Y、ZSM-20、ZSM-3、ゼオライトX、及びゼオライトYからなる群から選択してよく、より好ましくはフォージャサイト、Na-X、ゼオライトX、ゼオライトY、US-Y、及びLZ-210からなる群から選択してよい。特に、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカヒドロゾル、シリカゲル、コロイダルシリカ、及びゼオライトYからなる群から選択される1つ以上の材料が、YOの供給源として言及され得る。
【0031】
及びYOの供給源は、別々に(すなわち、別個の供給源)及び/又は一緒に(すなわち、複合供給源)提供され得ることが理解される。後者の場合、供給源は、例えば、骨格元素X及びYを含有するゼオライトによって提供されてもよい。工程(1)において提供される合成混合物は、X及びYOの複合供給源と、X及びYOの別個の供給源の一方又は両方とを含んでいてもよいことが企図され得る。
【0032】
いくつかの特定の実施形態において、工程(1)で提供される合成混合物は、Alの供給源及びSiOの供給源を含む。したがって、本発明によるプロセスから、CHA骨格構造を有するアルミノシリケートゼオライトが得られる。
【0033】
「アルミノシリケート」という用語は、ゼオライトの文脈内で使用するとき、主にアルミナ及びシリカで構成される骨格を意味することが意図され、これは、酸素、アルミニウム、及びケイ素以外の骨格元素を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0034】
特定の例示的な実施形態において、工程(1)において提供される合成混合物は、Al及びSiOの複合供給源としてのFAUゼオライトと、SiOの追加の供給源とを含む。特に、FAUゼオライトは、ゼオライトY、好ましくは40以下、30以下、20以下、又は更に10以下のSiO対Alのモル比を有するゼオライトYである。SiOの追加の供給源は、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカヒドロゾル、シリカゲル、及びコロイドシリカ(それらのうちの2つ以上の混合物を含む)からなる群から選択される。
【0035】
工程(1)で提供される合成混合物は、5~100、例えば15~80、35~60、又は40~60の範囲の、YOとして計算されるYOの供給源対Xとして計算されるXの供給源のYO:Xモル比を有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、有機構造指向剤は、以下の式(I)によって表されるピペリジニウムカチオンを含有する化合物であり、
【0037】
【化3】

式中、
1aは、C~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
1bは、C~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
、R、R、R、及びRは、互いに独立して、H、ヒドロキシル、又はC~Cアルキ(alky)である。
【0038】
いくつかの更なる実施形態において、有機構造指向剤は、以下の式(Ia)によって表されるピペリジニウムカチオンを含有する化合物であり、
【0039】
【化4】

式中、
1aは、C~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
1bは、C~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
、R、及びRは、互いに独立して、H、ヒドロキシル、又はC~Cアルキルである。
【0040】
具体的には、有機構造指向剤は、R1aがC~Cアルキルであり、R1bがC~Cアルキルであり、R、R、及びRが互いに独立してH、ヒドロキシル、又はC~Cアルキルである式(Ia)によって表されるピペリジニウムカチオンを含有する化合物である。
【0041】
より具体的には、有機構造指向剤は、R1aがC~Cアルキルであり、R1bがC~Cアルキルであり、R及びRが互いに独立して、H又はC~Cアルキルであり、RがHである式(Ia)によって表されるピペリジニウムカチオンを含有する化合物である。
【0042】
特定の例示的な実施形態において、有機構造指向剤は、R1aがC~Cアルキルであり、R1bがC~Cアルキルであり、R、R、及びRがHである式(Ia)によって表されるピペリジニウムカチオンを含有する化合物である。
【0043】
例えば、有機構造指向剤は、1-メチル-1-エチルピペリジニウム、1-メチル-1-n-プロピルピペリジニウム、1-メチル-1-n-ブチルピペリジニウム、1,1-ジエチルピペリジニウム、1-エチル-1-n-プロピルピペリジニウム、又は1-エチル-1-n-ブチルピペリジニウムを含有する化合物から選択されるか、又は化合物の任意の組み合わせであってもよく、その中でも、1-メチル-1-n-プロピルピペリジニウム、1-メチル-1-n-ブチルピペリジニウム、又は1-エチル-1-n-プロピルピペリジニウムを含有する化合物及びそれらの任意の組み合わせに特に言及し得る。
【0044】
いくつかの特定の実施形態において、工程(1)で提供される合成混合物は、ピペリジニウムカチオン以外の有機構造指向剤カチオンを含まない。
【0045】
好適には、有機構造指向剤は、ピペリジニウムカチオンの塩の形態であってよい。有機構造指向剤に含有される対イオンは特に限定されず、フッ化物、塩化物、及び臭化物などのハロゲン化物;水酸化物、硫酸、硝酸;並びに酢酸などのカルボン酸からなる群から選択してよく、好ましくは塩化物、臭化物、水酸化物、及び硫酸からなる群から選択してよい。
【0046】
好ましくは、有機構造指向剤は、水酸化物、塩化物、又は臭化物であり、特に、本明細書で上述した式(I)及び(Ia)のピペリジニウムカチオンの水酸化物である。
【0047】
有機構造指向剤は、工程(1)で提供される合成混合物中に、YOとして計算されるYOの供給源に対するピペリジニウム:YOモル比が0.01~1.0、例えば0.03~0.5、0.03~0.2、又は0.05~0.15の範囲で存在し得る。
【0048】
工程(1)で提供される合成混合物は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属カチオン(alkaline earth metal cations、AM)、好ましくはアルカリ金属カチオンの供給源を更に含んでいてもよい。アルカリ金属は、好ましくはLi、Na、K、Cs、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはNa及び/又はKであり、最も好ましくはNaである。アルカリ土類金属は、好ましくは、Mg、Ca、Sr、及びBa、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属カチオン(AM)の好適な供給源は、典型的には、アルカリ金属及び/若しくはアルカリ土類金属のフッ化物、塩化物、及び臭化物などのハロゲン化物;水酸化物、硫酸塩、硝酸塩;並びに酢酸塩などのカルボン酸塩、又はそれらの任意の組み合わせである。好ましくは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属カチオン(AM)の供給源としては、アルカリ金属及び/若しくはアルカリ土類金属の塩化物、臭化物、水酸化物、若しくは硫酸塩、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。より好ましくは、合成混合物ではアルカリ金属の水酸化物が使用される。
【0049】
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属カチオン(AM)は、合成混合物中に、AM対YOとして計算してYOの供給源に対するモル比が0.01~1.0、例えば0.1~1.0、0.3~0.8、又は0.5~0.7の範囲で存在し得る。
【0050】
工程(1)で提供される合成混合物は、アニオンOHの供給源も含み得る。有用なOHの供給源は、例えば、アルカリ金属水酸化物又は水酸化アンモニウムなどの金属水酸化物であってよい。好ましくは、アニオンOHは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属カチオンの供給源(AM)並びに有機構造指向剤のうちの1つ以上に由来し得る。
【0051】
OHアニオンは、合成混合物中に、OH対YOとして計算してYOの供給源に対するモル比が0.1~2.0、例えば0.2~1.0、又は0.5~1.0の範囲で存在し得る。
【0052】
工程(1)で提供される合成混合物は、少なくとも1つの溶媒、好ましくは水、より好ましくは脱イオン水も含み得る。溶媒は、X、YO、及び有機構造指向剤の供給源などの合成混合物の出発物質のうちの1つ以上に含まれ、それによって合成混合物中に持ち込まれてもよい、並びに/又は合成混合物中に別々に組み込まれてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、合成混合物は、3~100、例えば10~80、20~70、又は30~60の範囲の、HO対YOとして計算される水対YOの供給源のモル比を有する。
【0054】
いくつかの例示的な実施形態において、工程(1)で提供される合成混合物は、以下の表1に示されるモル組成を有する。
【0055】
【表1】

1)X及びYOの供給源の量は、それぞれの酸化物として計算される。
【0056】
いくつかの実施形態において、工程(1)で提供される合成混合物は、ある量のCHAゼオライトの種結晶を更に含んでいてもよい。CHAゼオライトの種結晶は、種結晶を使用することなく本明細書に記載されるプロセスから、又は任意の他の既知のプロセスから得ることができる。
【0057】
工程(2)において、合成混合物を結晶化条件に供してCHAゼオライトを形成してもよく、特に限定されない。結晶化は、80~250℃、より好ましくは100~200℃の範囲の高温で、結晶化に十分な期間、例えば0.5~12日間又は1~6日間実施してよい。典型的には、結晶化は自己圧力下で、例えばオートクレーブなどの耐圧容器内で行われる。更に、結晶化は、撹拌しながら又は撹拌せずに実施し得る。
【0058】
結晶化によって形成されるCHAゼオライトは、合成されたままのCHAゼオライトを得るために、例えば濾過による単離、任意選択で洗浄、及び乾燥を含む後処理手順に供されてもよい。したがって、本発明によるプロセスにおける工程(2)は、任意選択で、後処理手順を更に含む。
【0059】
合成されたままのCHAゼオライトは、典型的には、その構造細孔及び/又はチャネル内に上述したピペリジニウムカチオンを含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、工程(2)からの合成されたままのCHAゼオライトは、か焼手順に供されてもよい。したがって、本発明によるプロセスは、合成されたままのCHAゼオライトをか焼する工程(3)を更に含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、合成されたままの又はか焼されたCHAゼオライトは、ゼオライトに含有されているイオン性非骨格元素のうちの1つ以上がH及び/又はNH に交換されるように、イオン交換手順に供されてもよい。したがって、本発明によるプロセスは、
(4)工程(2)又は(3)で得られたゼオライトに含有されているイオン性非骨格元素のうちの1つ以上を、H及び/又はNH 、好ましくはNH に交換することを更に含む。
【0062】
一般に、工程(4)においてH及び/又はNH に交換されたゼオライトは、例えば濾過による単離、任意選択で洗浄、及び乾燥を含む後処理手順に供されてもよい、並びに/又はか焼手順に供されてもよい。したがって、本発明によるプロセスにおける工程(4)は、任意選択で、後処理手順及び/又はか焼手順を更に含む。
【0063】
工程(3)及び/又は工程(4)におけるか焼は、300~900℃、例えば350~700℃又は400~650℃の範囲の温度で実施してよい。特に、か焼は、空気、酸素、窒素、又はそれらのうちの2つ以上の混合物であってよい上記範囲の温度を有するガス雰囲気下で実施してよい。好ましくは、か焼は、0.5~10時間、例えば3~7時間又は4~6時間の範囲の期間にわたって実施される。
【0064】
X線粉末回折(X-ray powder diffraction、XRD)分析によって決定したとき、第1の態様に記載のプロセスからCHA骨格構造を有するゼオライトを得ることに成功することができた。
【0065】
したがって、第2の態様において、本発明はまた、第1の態様に記載のプロセスから得ることができる及び/又は得られるCHA型骨格構造を有するゼオライトを提供する。
【0066】
CHA型骨格構造を有するゼオライトは、2以上の、YO(例えば、シリカ)対X(例えば、アルミナ)のYO:Xモル比(SAR)を有し、モル比は、好ましくは、4~200、より好ましくは6~100、より好ましくは8~50、より好ましくは10~35、より好ましくは11~25、より好ましくは11.5~20、より好ましくは12~16、より好ましくは12.5~15、より好ましくは13~14の範囲に含まれる。本発明によれば、YO:Xモル比は、好ましくはそのか焼形態、より好ましくはそのか焼H形態のCHA型骨格構造を有するゼオライトを指す。
【0067】
本発明によるCHA骨格構造を有するゼオライトは、典型的には、最大2μm、又は最大1.5μm、例えば200nm~1.5μmの範囲の平均結晶サイズを有する。平均結晶サイズは、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy、SEM)によって求めることができる。特に、試料の異なる領域を網羅する複数の画像から無作為に選択された少なくとも30個の異なる結晶について結晶サイズを測定することによって、SEMを介して平均結晶サイズを求めた。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明によるCHA型骨格構造を有するゼオライトは、60m/g以下、好ましくは50m/g以下、より好ましくは45m/g以下、例えば1~50m/g又は3~40m/gのメソ細孔表面積(mesopore surface area、MSA)を有し得る。あるいは又は更に、CHA型骨格構造を有するゼオライトは、少なくとも400m/g、又は少なくとも450m/g、例えば450~650m/g又は450~600m/gの範囲のゼオライト表面積(zeolitic surface area、ZSA)を有する。MSA及びZSAは、N吸着ポロシメトリーを介して求めることができる。
【0069】
本発明によるCHA型骨格構造を有するゼオライトは、好ましくは、X線粉末回折(XRD)分析によって求めたとき、少なくとも90%の相純度である、すなわち、ゼオライト骨格の少なくとも90%がCHA型である。より好ましくは、CHA型骨格構造を有するゼオライトは、少なくとも95%の相純度、又は更により好ましくは少なくとも98%若しくは少なくとも約99%の相純度である。それに対応して、CHA型骨格構造を有するゼオライトは、少量、例えば10%未満、好ましくは5%未満、更により好ましくは2%未満、又は1%未満の連晶として、いくつかの他の骨格を含有していてもよい。
【0070】
驚くべきことに、第1の態様に記載のプロセスから得られるCHA型骨格構造を有するゼオライトは、同じ骨格型を有するが他の方法で調製されたゼオライトを含む触媒と比較して、NOxの選択接触還元(SCR)の用途において、800℃以上の温度でのエージングに対して著しく高い安定性を示すことが見出された。
【0071】
したがって、第3の態様において、本発明は、本発明によるプロセスによって得られた、かつ/又は得ることができる、CHA型骨格構造を有するゼオライトであって、助触媒金属Mを含む、ゼオライトを更に提供する。
【0072】
本明細書で使用するとき、「助触媒金属」という用語は、好ましくは、ゼオライトの触媒活性を改善することができる非骨格金属を指す。「非骨格金属」は、金属がゼオライト骨格構造の構成に関与しないことを意味することが意図される。助触媒金属は、ゼオライト内及び/又はゼオライト表面の少なくとも一部に、好ましくはイオン種の形態で存在し得る。
【0073】
特に、助触媒金属は、CHA型骨格構造を有するゼオライト内及び/又はゼオライト上に存在する。
【0074】
CHA型骨格構造を有するゼオライトは、第1の態様に記載の及び/又は第2の態様に記載のプロセスによって得られた、かつ/又は得ることができるものである。第1の態様におけるプロセス又は第2の態様におけるCHA型骨格構造を有するゼオライトに関する任意の一般的及び具体的な記載は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
助触媒金属は、NOxの選択接触還元(SCR)の用途においてゼオライトの触媒性能を改善するのに有用であることが既知である任意の金属であってよい。一般に、助触媒金属は、遷移金属、例えばAu及びAg、並びに白金族金属などの貴金属、Cr、Zr、Nb、Mo、Fe、Mn、W、V、Ti、Co、Ni、Cu、及びZnなどの卑金属、Ca及びMgなどのアルカリ土類金属、並びにSb、Sn、及びBi、並びにそれらの任意の組み合わせから選択してよい。
【0076】
好ましい実施形態において、CHA型骨格構造を有するゼオライトは、助触媒金属として少なくともCu及び/又はFeを含む。いくつかの特定の実施形態において、ゼオライトは、助触媒金属としてCuを含む。特に、ゼオライト中の助触媒金属はCuからなる。
【0077】
助触媒金属は、助触媒金属及びCHA型骨格構造を有するゼオライトの総重量に基づいて、酸化物基準で0.1~10重量%、好ましくは0.5~10重量%の量でCHA型骨格構造を有するゼオライト中に存在し得る。銅、鉄、又はそれらの組み合わせが助触媒金属として使用されるいくつかの特定の実施形態において、助触媒金属は、好ましくは、助触媒金属及びCHA型骨格構造を有するゼオライトの総重量に基づいて、酸化物基準で1~8重量%、より好ましくは2~7重量%の量でCHA型骨格構造を有するゼオライト中に存在する。
【0078】
あるいは、助触媒金属は、CHA型骨格構造を有するゼオライト中に、CHA型骨格構造を有するゼオライトの三価骨格元素(例えば、Al)1モル当たり、0.01~2モル、好ましくは0.03~1.8モル、より好ましくは0.05~1.5モル、より好ましくは0.08~1.2モル、より好ましくは0.1~1.0モル、より好ましくは0.13~0.8モル、より好ましくは0.15~0.5モル、より好ましくは0.18~0.4モル、より好ましくは0.2~0.38モル、より好ましくは0.23~35モル、より好ましくは0.25~32モル、より好ましくは0.28~0.3モルの量で存在し得る。銅、鉄、又はそれらの組み合わせが助触媒金属として使用されるいくつかの特定の実施形態において、助触媒金属の量は、CHA型骨格構造を有するゼオライトの三価骨格元素(例えば、Al)1モル当たり0.1~1.0モル、より好ましくは0.13~0.8モル、より好ましくは0.15~0.5モル、より好ましくは0.18~0.4モル、より好ましくは0.2~0.38モル、より好ましくは0.23~35モル、より好ましくは0.25~32モル、より好ましくは0.28~0.3モルである。
【0079】
いくつかの好ましい実施形態において、CHA型骨格構造を有するゼオライトであって、助触媒金属Mを含むゼオライトは、
-10~25、好ましくは12~20のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する、CHA型骨格構造を有するアルミノシリケートゼオライトと、
-Cu及び/又はFe、特にCuである、ゼオライト内及び/又はゼオライト上に存在する助触媒金属と、
を含み、
助触媒金属は、ゼオライトの骨格アルミニウム1モル当たり0.2~0.7モル、好ましくは0.3~0.5モルの量で存在する、ゼオライト。
【0080】
いくつかのより好ましい実施形態において、CHA型骨格構造を有するゼオライトであって、本発明による助触媒金属Mを含むゼオライトは、
-12~20、より好ましくは12~16のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する、CHA型骨格構造を有するアルミノシリケートゼオライトと、
-ゼオライト内及び/又はゼオライト上に存在する助触媒金属Cuと、
を含み、
Cuは、ゼオライトの骨格アルミニウム1モル当たり0.3~0.5モルの量で存在する、ゼオライト。
【0081】
例示的な実施形態において、本発明によるCHA型骨格構造を有するゼオライトであって、助触媒金属Mを含むゼオライトは、
-12~16のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する、CHA型骨格構造を有するアルミノシリケートゼオライトと、
-ゼオライト内及び/又はゼオライト上に存在する助触媒金属Cuと、
を含み、
Cuは、ゼオライトの骨格アルミニウム1モル当たり0.3~0.5モルの量で存在する、ゼオライト。
【0082】
好ましくは、本発明によるCHA型骨格構造を有するゼオライトであって、助触媒金属Mを含むゼオライトは、500vppmのNO、500vppmのNH、5体積%のHO、10体積%のO、及び残部のNからなる試験ガス流中、120,000h-1のガス時空間速度(gas hourly space velocity、GHSV)で、820℃でエージングした際に0.36のモル比Cu/X(例えば、Al)を有するCu促進ゼオライトを使用することによって求めたとき、200℃で少なくとも11%及び575℃で少なくとも50%のNOx転化率を示すことができる、ゼオライト。好ましくは、本発明によるCHA型骨格構造を有するゼオライトであって、助触媒金属Mを含むゼオライトは、好ましくは820℃でエージングした際に0.36のモル比Cu/X(例えば、Al)を有するCu促進ゼオライトを使用することによって求めたとき、200℃で少なくとも30%又は少なくとも50%及び575℃で少なくとも70%又は少なくとも80%のNOx転化率を示す、ゼオライト。
【0083】
助触媒金属は、任意の既知のプロセス、例えばイオン交換及び含浸によって、CHA型骨格構造を有するゼオライトに組み込むことができる。例えば、ゼオライトを助触媒金属の可溶性前駆体の溶液中に混合することによって、助触媒金属をCHA型骨格構造を有するゼオライトに組み込むことができる。典型的にはカチオンの形態の助触媒金属でイオン交換されたゼオライトは、従来通り洗浄し、乾燥させ、か焼してよい。助触媒金属の有用な可溶性前駆体は、例えば、助触媒金属の塩、助触媒金属の錯体、及びそれらの組み合わせであってよい。あるいは、助触媒金属は、押出物又はコーティングされたモノリスなどの触媒物品の調製中にその場でCHA型骨格構造を有するゼオライトに組み込まれてもよい。
【0084】
第4の態様において、本発明は、本明細書に記載のプロセスによって得られた、かつ/又は得ることができる、CHA型骨格構造を有するゼオライトであって、好ましくは本明細書に記載の助触媒金属Mを含む、ゼオライトの、NOxの選択接触還元(SCR)のための触媒における、すなわち、SCR用途における使用を提供する。
【0085】
SCR用途では、CHA型骨格構造を有し、好ましくは上述したように助触媒金属が担持されたゼオライトは、押出物の形態で又はモノシリック基材上のウォッシュコートの形態で適用され得る。
【0086】
したがって、第5の態様において、本発明は、SCR触媒組成物を含む押出物の形態又は基材上にSCR触媒組成物を含有するウォッシュコートを含むモノリスの形態の、触媒物品であって、SCR触媒組成物が、CHA型骨格構造を有するゼオライトを含み、ゼオライトが、第3の態様に記載の助触媒金属Mを含む、触媒物品を提供する。
【0087】
用語「押出物」は、一般に、押出によって形成された成形体を指す。本発明によれば、CHA型骨格構造を有するゼオライト及び助触媒金属を含む押出物は、典型的にはハニカム構造を有する。
【0088】
用語「ウォッシュコート」は、当技術分野におけるその通常の意味を有し、基材に塗布された触媒材料又は他の材料の薄い接着性コーティングである。
【0089】
用語「基材」は、一般に、その上に触媒コーティングが配置されるモノシリック材料、例えばモノシリックハニカム基材、特にフロースルーモノシリック基材及びウォールフローモノシリック基材を指す。
【0090】
CHA型骨格構造を有するゼオライト及び助触媒金属は、特に限定されることなく、任意の既知のプロセスによって適用形態に加工することができる。
【0091】
更なる態様において、本発明は、内燃機関と、内燃機関と流体連通している排気ガス導管と、を備える排気ガス処理システムであって、本明細書に記載の触媒物品が排気ガス導管内に存在する、排気ガス処理システムに関する。
【0092】
それに加えて、本発明は、窒素酸化物の選択接触還元のための方法であって、
(A)窒素酸化物(NOx)を含むガス流を提供すること、
(B)ガス流を、本出願に記載の特定の好ましい実施形態のいずれかによる助触媒金属を含むゼオライトと、又は本出願に記載の特定の好ましい実施形態のいずれかによる触媒物品と接触させること、を含む、方法に関する。
【0093】
最後に、本発明は、窒素酸化物の選択接触還元のための触媒における、本出願に記載の特定の好ましい実施形態によるCHA型骨格構造を有するゼオライトの使用に関する。
【0094】
実施形態
本発明は更に、以下の一連の実施形態、並びに指定される従属関係及び戻り引用から得られる実施形態の組み合わせによって説明される。特に、実施形態の範囲に言及する各例において、例えば、「実施形態1~4のいずれか1つに記載の...」などの用語の文脈では、この範囲の全ての実施形態が当業者に明示的に開示されることを意味し、すなわち、この用語の表現は、当業者によって「実施形態1、2、3、及び4のいずれか1つに記載の...」と同義であると理解されることに留意されたい。更に、以下の一連の実施形態は、保護の及ぶ範囲を確定する一連の特許請求の範囲ではなく、本発明の一般的な態様及び好ましい態様を対象とする説明の適切に構造化された部分を表すことに明確に留意されたい。
【0095】
1.CHA型骨格構造を有するゼオライトを調製するプロセスであって、骨格構造がX及びYOを含み、式中、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、
(1)
(A)Xの供給源、
(B)YOの供給源、並びに
(C)有機構造指向剤(OSDA)としての式(I)によって表されるピペリジニウムカチオンの供給源であって、
【0096】
【化5】

式中、
1aは、C~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
1bは、C~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
、R、R、R、及びRは、互いに独立して、H、ヒドロキシル、又はC~Cアルキルである、供給源を含む合成混合物を調製することと、
(2)合成混合物を結晶化条件に供して、CHAゼオライトを形成することと、を含む、プロセス。
2.ピペリジニウムカチオンが、以下の式(I)によって表され式中、
1aは、C~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
1bは、C~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
、R、R、R、及びRは、互いに独立して、H、ヒドロキシル、又はC~Cアルキである、実施形態1に記載のプロセス。
3.ピペリジニウムカチオンが、式(Ia)によって表され
【0097】
【化6】

式中、
1aは、C~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
1bは、C~Cアルキル及びC~C10シクロアルキルから選択され、
、R、及びRは、互いに独立して、H、ヒドロキシル、又はC~Cアルキルである、実施形態1又は2に記載プロセス。
4.ピペリジニウムカチオンが、R1aがC~Cアルキルであり、R1bがC~Cアルキルであり、R、R、及びRが互いに独立してH、ヒドロキシル、又はC~Cアルキルである式(Ia)によって表される、実施形態3に記載のプロセス。
5.ピペリジニウムカチオンが、R1aがC~Cアルキルであり、R1bがC~Cアルキルであり、R及びRが互いに独立して、H又はC~Cアルキルであり、RがHである式(Ia)によって表される、実施形態3又は4に記載のプロセス。
6.ピペリジニウムカチオンが、R1aがC~Cアルキルであり、R1bがC~Cアルキルであり、R、R、及びRがHである式(Ia)によって表される、実施形態3~5のいずれかに記載のプロセス。
7.ピペリジニウムカチオンが、1-メチル-1-エチルピペリジニウム、1-メチル-1-n-プロピルピペリジニウム、1-メチル-1-n-ブチルピペリジニウム、1,1-ジエチルピペリジニウム、1-エチル-1-n-プロピルピペリジニウム、1-エチル-1-n-ブチルピペリジニウム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、好ましくは1-メチル-1-n-プロピルピペリジニウム、1-メチル-1-n-ブチルピペリジニウム、1-エチル-1-n-プロピルピペリジニウム、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態1~6のいずれかに記載のプロセス。
8.有機構造指向剤が、ピペリジニウムカチオンの塩の形態であり、好ましくは、有機構造指向剤に含有されている対イオンが、ハロゲン化物、水酸化物、硫酸、硝酸、及びカルボン酸からなる群から、より好ましくはフッ化物、塩化物、臭化物、水酸化物、硫酸、硝酸、及び酢酸からなる群から、より好ましくは塩化物、臭化物、水酸化物、及び硫酸からなる群から、より好ましくは水酸化物、塩化物、又は臭化物からなる群から選択され、より好ましくは、ピペリジニウムカチオンの水酸化物が用いられる、実施形態1~7のいずれかに記載のプロセス。
9.有機構造指向剤が、合成混合物中に、YOとして計算されるYOの供給源に対するピペリジニウム:YOモル比が0.01~1.0、好ましくは0.03~0.5、より好ましくは0.03~0.2、より好ましくは0.05~0.15の範囲で存在する、実施形態1~8のいずれかに記載のプロセス。
10.Xが、Al、B、In、Ga、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、Yが、Si、Sn、Ti、Zr、Ge、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態1~9のいずれかに記載のプロセス。
11.XがAlであり、YがSiである、実施形態10に記載のプロセス。
12.Xの供給源が、アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミネート、アルミニウムアルコキシド、アルミニウム塩、FAUゼオライト、LTAゼオライト、LTLゼオライト、BEAゼオライト、MFIゼオライト、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から、好ましくはアルミナ、アルミニウムアルコキシド、アルミニウム塩、FAUゼオライト、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から、より好ましくはアルミナ、AlO(OH)、Al(OH)、アルミニウムトリ(C~C)アルコキシド、ハロゲン化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、フルオロケイ酸アルミニウム、FAUゼオライト、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から、より好ましくはフォージャサイト、[Al-Ge-O]-FAU、[Al-Ge-O]-FAU、[Ga-Al-Si-O]-FAU、[Ga-Ge-O]-FAU、[Ga-Si-O]-FAU、CSZ-1、Na-X、US-Y、ECR-30、LZ-210、Li-LSX、SAPO-37、Na-Y、ZSM-20、ZSM-3、ゼオライトX、及びゼオライトYからなる群から、より好ましくは、フォージャサイト、Na-X、ゼオライトX、ゼオライトY、US-Y、及びLZ-210からなる群から選択され、より好ましくは、ゼオライトYがXの供給源である、実施形態1~11のいずれかに記載のプロセス。
13.X及びYOの供給源が、FAUゼオライト、特にゼオライトY、より好ましくは40以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更により好ましくは10以下のXO対Yのモル比を有するゼオライトYを含む、実施形態1~12のいずれかに記載のプロセス。
14.YOの追加の供給源が使用され、YOの追加の供給源が、好ましくは、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカヒドロゾル、シリカゲル、及びコロイドシリカ(それらのうちの2つ以上の混合物を含む)からなる群から選択される、実施形態13に記載のプロセス。
15.YOの供給源が、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカヒドロゾル、シリカゲル、コロイドシリカ、ケイ酸、ケイ素アルコキシド、アルカリ金属シリケート、メタケイ酸ナトリウム水和物、セスキシリケート、ジシリケート、ケイ酸エステル、FAUゼオライト、LTAゼオライト、LTLゼオライト、BEAゼオライト、MFIゼオライト、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から、好ましくはヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカヒドロゾル、シリカゲル、コロイダルシリカフォージャサイト、[Al-Ge-O]-FAU、[Al-Ge-O]-FAU、[Ga-Al-Si-O]-FAU、[Ga-Ge-O]-FAU、[Ga-Si-O]-FAU、CSZ-1、Na-X、US-Y、ECR-30、LZ-210、Li-LSX、SAPO-37、Na-Y、ZSM-20、ZSM-3、ゼオライトX、及びゼオライトYからなる群から、より好ましくはフォージャサイト、Na-X、ゼオライトX、ゼオライトY、US-Y、及びLZ-210からなる群から、より好ましくはヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカヒドロゾル、シリカゲル、コロイドシリカ、及びゼオライトYからなる群から選択される、実施形態1~14のいずれかに記載のプロセス。
16.工程(1)で調製される混合物が、5~100、好ましくは15~80、より好ましくは15~60、より好ましくは15~40、より好ましくは15~35、より好ましくは15~30の範囲に含まれる、YOとして計算されるYOの供給源対Xとして計算されるXのYO:Xモル比を有する、実施形態1~15のいずれかに記載のプロセス。
17.合成混合物が、ピペリジニウムカチオン以外の有機構造指向剤カチオンを含まない、実施形態1~16のいずれかに記載のプロセス。
18.工程(1)で調製される混合物が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属カチオン(AM)の供給源、好ましくはアルカリ金属カチオンの供給源を更に含み、アルカリ金属が、好ましくはLi、Na、K、Cs、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、アルカリ金属がNa及び/又はK、好ましくはNaである、実施形態1~17のいずれかに記載のプロセス。
19.アルカリ土類金属が、好ましくは、Mg、Ca、Sr、及びBa、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態18に記載のプロセス。
20.アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属カチオン(AM)の供給源が、ハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、及びカルボン酸塩からなる群から、より好ましくはフッ化物、塩化物、臭化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、及び酢酸塩からなる群から、より好ましくは塩化物、臭化物、水酸化物、及び硫酸塩からなる群から、より好ましくは水酸化物、塩化物、又は臭化物からなる群から選択され、より好ましくは、ピペリジニウムカチオンの水酸化物が用いられる、実施形態18又は19に記載のプロセス。
21.アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属カチオン(AM)が、合成混合物中に、YOとして計算される合成混合物中のYOの供給源に対するAM:YOモル比が0.01~1.0、好ましくは0.1~1.0、より好ましくは0.3~0.8、より好ましくは0.5~0.7の範囲で含有される、実施形態18~20のいずれかに記載のプロセス。
22.工程(1)で調製される合成混合物が、アニオンOHの供給源を更に含み、供給源が、好ましくは金属水酸化物又は水酸化アンモニウムであり、より好ましくは、供給源が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、及び水酸化アンモニウムからなる群から選択される、実施形態1~21のいずれかに記載のプロセス。
23.アニオンOHの供給源が有機構造指向剤である、実施形態22に記載のプロセス。
24.OHアニオンが、合成混合物中に、0.1~2.0、好ましくは0.2~1.0、より好ましくは0.5~1.0の範囲に含まれる、YOとして計算されるYOの供給源に対するOH:YOモル比で存在する、実施形態22又は23に記載のプロセス。
25.工程(1)で調製される混合物が、少なくとも1つの溶媒、好ましくは水、より好ましくは脱イオン水を更に含む、実施形態1~24のいずれかに記載のプロセス。
26.溶媒が、合成混合物の出発物質のうちの1つ以上に含まれる、及び/又は合成混合物に別々に添加され得る、実施形態25に記載のプロセス。
27.合成混合物が、3~100、より好ましくは10~80、より好ましくは20~70、より好ましくは30~60の範囲に含まれる、水対YOとして計算されるYOの供給源のHO:YOモル比を有する、実施形態1~26のいずれかに記載のプロセス。
28.工程(1)で調製される合成混合物が、CHAゼオライトの種結晶を更に含み、好ましくは、CHAゼオライトの種結晶が、種結晶を使用せずに実施形態1~27及び29~40のいずれかに記載のプロセスに従って得ることができるか又は得られる、実施形態1~27のいずれかに記載のプロセス。
29.工程(2)における結晶化が、80~250℃、好ましくは100~200℃の範囲の温度で実施される、実施形態1~28のいずれかに記載のプロセス。
30.工程(2)における結晶化が、0.5~12日間、好ましくは1~6日間の範囲の期間にわたって実施される、実施形態1~29のいずれかに記載のプロセス。
31.工程(2)における結晶化が、自己圧力下で実施される、実施形態1~30のいずれかに記載のプロセス。
32.工程(2)における結晶化が、耐圧容器内で、好ましくはオートクレーブ内で実施される、実施形態1~31のいずれかに記載のプロセス。
33.工程(2)における結晶化が、合成混合物を撹拌しながら又は撹拌せずに実施される、実施形態1~32のいずれかに記載のプロセス。
34.工程(2)が、CHAゼオライトを、CHAゼオライトの単離、任意選択で洗浄、及び乾燥を含む後処理手順に供することを更に含み、単離が、好ましくは濾過によって達成される、実施形態1~33のいずれかに記載のプロセス。
35.(3)合成されたままのCHAゼオライトのか焼を更に含む、実施形態1~34のいずれかに記載のプロセス。
36.(4)工程(2)又は(3)で得られたCHAゼオライトに含有される1つ以上のイオン性非骨格元素をH及び/又はNH に対して、好ましくはNH に対して交換することを更に含む、実施形態1~35のいずれかに記載のプロセス。
37.工程(4)が、イオン交換されたCHAゼオライトを、イオン交換されたCHAゼオライトの単離、任意選択で洗浄、及び乾燥、及び/又はか焼を含む後処理手順に供することを更に含み、単離が、好ましくは濾過によって達成される、実施形態36に記載のプロセス。
38.工程(3)及び/又は工程(4)におけるか焼が、300~900℃、好ましくは350~700℃、より好ましくは400~650℃の範囲に含まれる温度で実施される、実施形態35~37のいずれかに記載のプロセス。
39.工程(3)及び/又は工程(4)におけるか焼が、ガス雰囲気中で実施され、ガス雰囲気が、好ましくは空気、酸素、窒素、又はそれらのうちの2つ以上の混合物を含み、より好ましくはからなる、実施形態35~38のいずれかに記載のプロセス。
40.工程(3)及び/又は工程(4)におけるか焼が、0.5~10時間、好ましくは3~7時間、より好ましくは4~6時間の範囲の期間実施される、実施形態35~39のいずれかに記載のプロセス。
41.実施形態1~40のいずれかに記載のプロセスによって得られた、かつ/又は得ることができる、CHA型骨格構造を有する、ゼオライト。
42.CHA型骨格構造を有するゼオライトであって、好ましくは合成されたままの形態で、その細孔及び/又はチャネル内に前述の実施形態1~7のいずれかに定義されたピペリジニウムカチオンを含む、ゼオライト。
43.2以上のYO:Xモル比を有し、YO:Xモル比が、好ましくは、4~200、より好ましくは6~100、より好ましくは8~50、より好ましくは10~35、より好ましくは11~25、より好ましくは11.5~20、より好ましくは12~16、より好ましくは12.5~15、より好ましくは13~14の範囲に含まれる、実施形態41又は42に記載のゼオライト。
44.最大2μm、好ましくは最大1.5μmの平均結晶サイズを有し、より好ましくは、平均結晶サイズが200nm~1.5μmの範囲である、実施形態41~43のいずれかに記載のゼオライト。
45.60m/g以下、好ましくは50m/g以下、より好ましくは45m/g以下のメソ細孔表面積(MSA)を有し、より好ましくはゼオライトのメソ細孔表面積が、1~50m/g、より好ましくは3~40m/gの範囲に含まれる、実施形態41~44のいずれかに記載のゼオライト。
46.少なくとも400m/g、好ましくは少なくとも450m/gのゼオライト表面積(ZSA)を有し、より好ましくはゼオライトのゼオライト表面積が、450~650m/gの範囲、より好ましくは450~600m/gの範囲に含まれ、ゼオライト表面積が、好ましくはISO 9277:2010に従って測定したときのゼオライトのBET表面積である、実施形態41~45のいずれかに記載のゼオライト。
47.X線粉末回折(XRD)分析によって求めたときに少なくとも90%の相純度、好ましくは少なくとも95%の相純度、より好ましくは少なくとも98%の相純度、より好ましくは少なくとも99%の相純度である、実施形態41~46のいずれかに記載のゼオライト。
48.X線粉末回折(XRD)分析によって求めたときに10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満の、分離相及び/又は連晶としてのCHA以外の骨格構造型を含有する、実施形態41~47のいずれかに記載のゼオライト。
49.助触媒金属Mを含む、実施形態41~48のいずれかに記載のゼオライト。
50.助触媒金属が、遷移金属、アルカリ土類金属、Sb、Sn、及びBi、並びにそれらの任意の組み合わせから選択され、好ましくはCu並びに/又はFe、好ましくはCuを含む、実施形態49に記載のゼオライト。
51.助触媒金属が、Cu及び/又はFe、好ましくはCuからなる、実施形態49又は50に記載のゼオライト。
52.助触媒金属が、ゼオライト内及び/又はゼオライトの表面上に含有される、実施形態49~51のいずれかに記載のゼオライト。
53.助触媒金属が、ゼオライトのイオン交換部位に含有される、実施形態49~52のいずれかに記載のゼオライト。
54.助触媒金属の酸化物として計算し、ゼオライトの総重量に基づいて0.1~10重量%、好ましくは0.5~10重量%の範囲に含まれる量の助触媒金属を含む、実施形態49~53のいずれかに記載のゼオライト。
55.銅及び/又は鉄が助触媒金属として使用され、助触媒金属が、CuO及び/又はFeとして計算して、ゼオライトの総重量に基づいて1~8重量%、好ましくは2~7重量%の範囲に含まれる量でゼオライト中に含まれる、実施形態49~54のいずれかに記載のゼオライト。
56.ゼオライト材料中の助触媒金属対三価元素XのM:Xモル比が、0.01~2、好ましくは0.03~1.8、より好ましくは0.05~1.5、より好ましくは0.08~1.2、より好ましくは0.1~1.0、より好ましくは0.13~0.8、より好ましくは0.15~0.5、より好ましくは0.18~0.4、より好ましくは0.2~0.38、より好ましくは0.23~35、より好ましくは0.25~32、より好ましくは0.28~0.3の範囲に含まれる、実施形態49~55のいずれかに記載のゼオライト。
57.500vppmのNO、500vppmのNH、5体積%のHO、10体積%のO、及び残部のNからなる試験ガス流中、120,000h-1のガス時空間速度(GHSV)で、820℃で10%のHOを用いて蒸気エージングした際に200℃で少なくとも11%及び575℃で少なくとも50%のNOx転化率を示す、実施形態49~56のいずれかに記載の助触媒金属を含む、ゼオライト。
58.SCR触媒組成物を含む押出物の形態又は基材上にSCR触媒組成物を含有するウォッシュコートを含むモノリスの形態の、触媒物品であって、SCR触媒組成物が、実施形態49~57のいずれかに記載の助触媒金属を含むゼオライトを含む、触媒物品。
59.内燃機関と、内燃機関と流体連通している排気ガス導管と、を備える排気ガス処理システムであって、実施形態58に記載の触媒物品が排気ガス導管内に存在する、排気ガス処理システム。
60.窒素酸化物の選択接触還元のための触媒における、実施形態41~57のいずれかに記載のCHA型骨格構造を有するゼオライトの使用。
61.窒素酸化物の選択接触還元のための方法であって、
(A)窒素酸化物(NOx)を含むガス流を提供すること、
(B)ガス流を、実施形態49~57のいずれかに記載の助触媒金属を含むゼオライト又は実施形態58に記載の触媒物品と接触させること、を含む、方法。
【0098】
本発明は、特に有利な実施形態について説明する以下の実施例によって更に例証される。実施例は、本発明を例証するために提供されるが、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0099】
走査型電子顕微鏡(SEM)測定は、走査型電子顕微鏡(Hitachi SU1510)によって実施した。
【0100】
X線粉末回折(XRD)パターンは、PANalytical X’pert Powder Diffractometer(40kV、40mA)を用い、CuKα(λ=1.5406Å)放射線を使用して測定して、Bragg-Brentano配置でデータを収集した。
【0101】
実施例1 OSDAとして1-メチル-1-n-プロピルピペリジニウムヒドロキシドを有するゼオライトの調製(ゼオライトA、か焼されたH型)
814.6gの1-メチル-1-n-プロピルピペリジニウムヒドロキシド水溶液(12.6重量%)を2814.3gの脱イオン水と混合し、続いて、110.8gの水酸化ナトリウム(99%、固体)を添加した。水酸化ナトリウムが溶解した後、44.9gのZeolite HY(SAR=7.2、Shandong Duoyou製)及び567.6gのLudox(登録商標)AS-40コロイド状シリカを添加した。室温で30分間撹拌した後、合成混合物を、結晶化のためにテフロンライナーを備えたオートクレーブに移した。150℃で5日間静的条件下で結晶化を行った。室温に冷却した後、ゼオライト生成物を濾過によって回収し、120℃で一晩乾燥させた。合成されたままのゼオライトの元素分析は、11.51%のC及び1.46%のN(C/Nモル比=9.17)を示す。
【0102】
合成されたままのゼオライトを550℃で6時間か焼して、有機構造指向剤を除去した。か焼したゼオライトを粉砕し、1:10の固体/液体比で10重量%のNHCl水溶液中においてイオン交換した。イオン交換プロセスを80℃で2時間行い、濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、110℃で一晩乾燥させた。イオン交換手順を1回繰り返し、乾燥した生成物を450℃で6時間か焼して、か焼されたH型ゼオライトを得た。
【0103】
ゼオライトは、XRFによってか焼されたH型について測定したときに14.2の(SAR)のSiO/Alモル比、か焼されたH型について測定したときに20m/gのメソ細孔表面積(MSA)及び508m/gのゼオライト表面積(ZSA)を有する。
【0104】
ゼオライトのSEM画像及びXRDパターンから観察されたゼオライトの結晶形態を、それぞれ図1及び図2に示す。XRDパターンにより、ゼオライトが典型的なCHA骨格を有することが確認された。
【0105】
実施例2 OSDAとして1-メチル-1-n-プロピルピペリジニウムヒドロキシドを有するゼオライトの調製(ゼオライトB、か焼されたH型)
500.1gの1-メチル-1-n-プロピルピペリジニウムヒドロキシド水溶液(12.6重量%)を2628.2gの脱イオン水と混合し、続いて、169.8gの水酸化ナトリウム(99%、固体)を添加した。水酸化ナトリウムが溶解した後、103.3gのZeolite HY(SAR=7.2、Shandong Duoyou製)及び811.8gのLudox(登録商標)AS-40コロイド状シリカを添加した。室温で30分間撹拌した後、合成混合物を、結晶化のためにテフロンライナーを備えたオートクレーブに移した。150℃で3日間静的条件下で結晶化を行った。室温に冷却した後、ゼオライト生成物を濾過によって回収し、120℃で一晩乾燥させた。合成されたままのゼオライトの元素分析は、9.88%のC及び1.32%のN(C/Nモル比=8.73)を示す。
【0106】
合成されたままのゼオライトを550℃で6時間か焼して、有機構造指向剤を除去した。か焼したゼオライトを粉砕し、1:10の固体/液体比で10重量%のNHCl水溶液中においてイオン交換した。イオン交換プロセスを80℃で2時間行い、濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、110℃で一晩乾燥させた。イオン交換手順を1回繰り返し、乾燥した生成物を450℃で6時間か焼して、か焼されたH型ゼオライトを得た。
【0107】
ゼオライトは、XRFによってか焼されたH型について測定したときに12.5の(SAR)のSiO/Alモル比、か焼されたH型について測定したときに12m/gのメソ細孔表面積(MSA)及び531m/gのゼオライト表面積(ZSA)を有する。
【0108】
ゼオライトのSEM画像及びXRDパターンから観察されたゼオライトの結晶形態を、それぞれ図1及び図2に示す。XRDパターンにより、ゼオライトが典型的なCHA骨格を有することが確認された。
【0109】
実施例3 OSDAとして1-メチル-1-n-プロピルピペリジニウムヒドロキシドを有するゼオライトの調製(ゼオライトC、か焼されたH型)
500.1gの1-メチル-1-n-プロピルピペリジニウムヒドロキシド水溶液(12.6重量%)を2472.2gの脱イオン水と混合し、続いて、169.8gの水酸化ナトリウム(99%、固体)を添加した。水酸化ナトリウムが溶解した後、103.3gのZeolite HY(SAR=7.2、Sinopec製)及び811.8gのケイ酸ナトリウムを添加した。室温で30分間撹拌した後、合成混合物を、結晶化のためにテフロンライナーを備えたオートクレーブに移した。150℃で3日間静的条件下で結晶化を行った。室温に冷却した後、ゼオライト生成物を濾過によって回収し、120℃で一晩乾燥させた。
【0110】
合成されたままのゼオライトを550℃で6時間か焼して、有機構造指向剤を除去した。か焼したゼオライトを粉砕し、1:10の固体/液体比で10重量%のNHCl水溶液中においてイオン交換した。イオン交換プロセスを80℃で2時間行い、濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、110℃で一晩乾燥させた。イオン交換手順を1回繰り返し、乾燥した生成物を450℃で6時間か焼して、か焼されたH型ゼオライトを得た。
【0111】
ゼオライトは、XRFによってか焼されたH型について測定したときに11.5の(SAR)のSiO/Alモル比、か焼されたH型について測定したときに10m/gのメソ細孔表面積(MSA)及び545m/gのゼオライト表面積(ZSA)を有する。
【0112】
ゼオライトのSEM画像及びXRDパターンから観察されたゼオライトの結晶形態を、それぞれ図1及び図2に示す。XRDパターンにより、ゼオライトが典型的なCHA骨格を有することが確認された。
【0113】
実施例4 OSDAとして1-メチル-1-n-ブチル-ピペリジニウムヒドロキシドを有するゼオライトの調製(ゼオライトD、か焼されたH型)
718.4gの1-メチル-1-n-ブチル-ピペリジニウムヒドロキシド水溶液(9.7重量%)を2431.6gの脱イオン水と混合し、続いて、172.7gの水酸化ナトリウム(99%、固体)を添加した。水酸化ナトリウムが溶解した後、69.9gのZeolite HY(SAR=7.2、Shandong Duoyou製)及び884.4gのLudox(登録商標)AS-40コロイド状シリカを添加した。室温で30分間撹拌した後、合成混合物を、結晶化のためにテフロンライナーを備えたオートクレーブに移した。150℃で3日間静的条件下で結晶化を行った。室温に冷却した後、ゼオライト生成物を濾過によって回収し、120℃で一晩乾燥させた。
【0114】
合成されたままのゼオライトを550℃で6時間か焼して、有機構造指向剤を除去した。か焼したゼオライトを粉砕し、1:10の固体/液体比で10重量%のNHCl水溶液中においてイオン交換した。イオン交換プロセスを80℃で2時間行い、濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、110℃で一晩乾燥させた。イオン交換手順を1回繰り返し、乾燥した生成物を450℃で6時間か焼して、か焼されたH型ゼオライトを得た。
【0115】
ゼオライトは、XRFによってか焼されたH型について測定したときに13.9の(SAR)のSiO/Alモル比、か焼されたH型について測定したときに37m/gのメソ細孔表面積(MSA)及び515m/gのゼオライト表面積(ZSA)を有する。
【0116】
ゼオライトのSEM画像及びXRDパターンから観察されたゼオライトの結晶形態を、それぞれ図1及び図2に示す。XRDパターンにより、ゼオライトが典型的なCHA骨格を有することが確認された。
【0117】
実施例5 OSDAとして1-エチル-1-n-プロピルピペリジニウムヒドロキシドを有するゼオライトの調製(ゼオライトE、か焼されたH型)
893.5gの1-エチル-1-n-プロピルピペリジニウムヒドロキシド水溶液(7.9重量%)を2335.3gの脱イオン水と混合し、続いて、169.5gの水酸化ナトリウム(99%、固体)を添加した。水酸化ナトリウムが溶解した後、106.5gのZeolite HY(SAR=7.2、Shandong Duoyou製)及び836.4gのLudox(登録商標)AS-40コロイド状シリカを添加した。室温で30分間撹拌した後、合成混合物を、結晶化のためにテフロンライナーを備えたオートクレーブに移した。150℃で3日間静的条件下で結晶化を行った。室温に冷却した後、ゼオライト生成物を濾過によって回収し、120℃で一晩乾燥させた。
【0118】
合成されたままのゼオライトを550℃で6時間か焼して、有機構造指向剤を除去した。か焼したゼオライトを粉砕し、1:10の固体/液体比で10重量%のNHCl水溶液中においてイオン交換した。イオン交換プロセスを80℃で2時間行い、濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、110℃で一晩乾燥させた。イオン交換手順を1回繰り返し、乾燥した生成物を450℃で6時間か焼して、か焼されたH型ゼオライトを得た。
【0119】
ゼオライトは、XRFによってか焼されたH型について測定したときに12.3の(SAR)のSiO/Alモル比、か焼されたH型について測定したときに20m/gのメソ細孔表面積(MSA)及び530m/gのゼオライト表面積(ZSA)を有する。
【0120】
ゼオライトのSEM画像及びXRDパターンから観察されたゼオライトの結晶形態を、それぞれ図1及び図2に示す。XRDパターンにより、ゼオライトが典型的なCHA骨格を有することが確認された。
【0121】
実施例6 OSDAとしてN,N,N-トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムヒドロキシドを有するゼオライトの調製(ゼオライトF、か焼されたH型)
35gのD.I.水中0.5gの水酸化ナトリウム(99%、固体)の溶液に、95gのケイ酸ナトリウム、3gの硫酸ナトリウム(99%、固体)、次いで、9gのゼオライトNa-Y(SAR=5.1、Zeolyst製のCBV 100)を添加した。次いで、16gのN,N,N-トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(20重量%)を添加し、室温で30分間撹拌した。次いで、合成混合物を、結晶化のためにテフロンライナーを備えたオートクレーブに移した。140℃で3日間静的条件下で結晶化を行った。室温に冷却した後、ゼオライト生成物を濾過によって回収し、120℃で一晩乾燥させた。
【0122】
合成されたままのゼオライトを550℃で6時間か焼して、有機構造指向剤を除去した。か焼したゼオライトを粉砕し、1:10の固体/液体比で10重量%のNHCl水溶液中においてイオン交換した。イオン交換プロセスを80℃で2時間行い、濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、110℃で一晩乾燥させた。イオン交換手順を1回繰り返し、乾燥した生成物を450℃で6時間か焼して、か焼されたH型ゼオライトを得た。
【0123】
ゼオライトは、XRFによってか焼されたH型について測定したときに11.4の(SAR)のSiO/Alモル比、か焼されたH型について測定したときに11m/gのメソ細孔表面積(MSA)及び512m/gのゼオライト表面積(ZSA)を有する。
【0124】
ゼオライトのSEM画像及びXRDパターンから観察されたゼオライトの結晶形態を、それぞれ図1及び図2に示す。XRDパターンにより、ゼオライトが典型的なCHA骨格を有することが確認された。
【0125】
実施例7 OSDAとして1,1-ジメチルピペリジニウムヒドロキシドを有するゼオライトの調製(ゼオライトG、か焼されたH型)
16.4gの1,1-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド水溶液(20重量%)を9.7gの脱イオン水と混合し、続いて、3.0gの水酸化ナトリウム(99%、固体)を添加した。水酸化ナトリウムが溶解した後、2.0gのZeolite HY(SAR=7.2、Shandong Duoyou製)及び16.8gのLudox(登録商標)AS-40コロイド状シリカを添加した。室温で30分間撹拌した後、合成混合物を、結晶化のためにテフロンライナーを備えたオートクレーブに移した。170℃で2日間静的条件下で結晶化を行った。室温に冷却した後、ゼオライト生成物を濾過によって回収し、120℃で一晩乾燥させた。
【0126】
合成されたままのゼオライトを550℃で6時間か焼して、有機構造指向剤を除去した。か焼したゼオライトを粉砕し、1:10の固体/液体比で10重量%のNHCl水溶液中においてイオン交換した。イオン交換プロセスを80℃で2時間行い、濾過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、110℃で一晩乾燥させた。イオン交換手順を1回繰り返し、乾燥した生成物を450℃で6時間か焼して、か焼されたH型ゼオライトを得た。
【0127】
XRDによって確認したところ、LEV骨格を有するゼオライトが得られた。本合成方法に従ってOSDAとして1,1-ジメチルピペリジニウムヒドロキシドを用いると、CHA型骨格を有するゼオライトを得ることができないことが判明した。
【0128】
実施例8 Cu担持CHA型ゼオライト材料(SCR触媒)の調製
得られたままのH型ゼオライト粉末に、インシピエントウェットネス含浸により硝酸銅(II)水溶液を含浸させ、密閉容器内において50℃で20時間維持した。得られた固形物を乾燥させ、450℃の炉内で5時間空気中でか焼して、Cu担持CHAゼオライトを得た。
【0129】
上記の一般的手順に従って調製されたCu担持CHAゼオライトを以下の表2にまとめる。
【0130】
【表2】
【0131】
実施例9 触媒性能試験
SCR性能を試験するために、Cu担持ゼオライト材料を酢酸Zr水溶液でスラリー化し、次いで、撹拌下において空気中周囲温度で乾燥させ、550℃で1時間か焼して、生成物の量に基づいて結合剤として5重量%のZrOを含有する生成物を得た。生成物を粉砕し、250~500ミクロンの粉末画分を試験に使用した。得られた粉末を、10体積%の蒸気/空気流中、650℃で50時間又は820℃で16時間エージングして、エージングされた試料を得た。
【0132】
選択接触還元(SCR)試験は、以下の条件に従って、80mgの試験試料を希釈剤としての同じ篩分級物のコランダムとともに約1mLの床体積に充填した固定床反応器中で行った。
【0133】
【表3】
【0134】
200℃及び575℃でラン2から測定したときのNOx転化率を試験結果として報告する。
【0135】
650℃でエージングした試験試料及び820℃でエージングした試験試料の結果を以下の表3にまとめる。
【0136】
【表4】
【0137】
本発明によるCu担持CHAゼオライトを含む触媒は、高温でのエージング後の窒素酸化物の選択接触還元(SCR)に有効であることが分かる。
【0138】
650℃でエージングすると、ピペリジニウムカチオン系OSDAを用いて調製されたCHAゼオライトA~Eをベースとする本発明の触媒(実施例1~5)は、同じCu/Al比であるが異なるOSDAを用いて調製された比較触媒F(実施例6)と比較して、少なくとも同等のNOx転化率を示す。
【0139】
驚くべきことに、820℃でエージングすると、本発明の触媒は、比較触媒Fと比較して大幅に改善されたNOx転化率を示す。820℃でエージングした本発明の触媒は、200℃で少なくとも11%、更には最大75%のNOx転化率をもたらし、575℃で少なくとも56%、更には最大89%のNOx転化率をもたらしたが、対応する比較触媒の場合のNOx転化率は「0」である。820℃でエージングした後の本発明の触媒の比較的高いSCR活性は、極めて高い温度でのCHAゼオライトの高い安定性を反映している。
【0140】
更に、驚くべきことに、SCRにおける触媒試験から、使用される特定のテンプレートに応じて、本発明の試料の水熱安定性は、SiO:Alモル比及びCu:Alモル比の両方に依存している可能性があることが判明した。したがって、触媒試料A~Cについて表3に示される結果から分かるように、水熱安定性は、SiO:Alモル比の減少とともに徐々に低下し、ここで、試料AからCでは、SiO:Alモル比は14.2から11.5に減少する。それに加えて、ゼオライトCの結果から分かるように、Cu:Alモル比が試料番号C.1の0.32から試料番号C.3の0.4に増加すると、820℃でエージングした後のNOx転化率によって観察できるように、水熱安定性が劇的に低下する。
【0141】
また、本発明によるCu担持CHA型ゼオライトを含む触媒について、以下の手順に従って耐硫化性試験を行った。
【0142】
硫化
3インチ(直径)×2インチ(長さ)のサイズを有するPt含有ディーゼル酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst、DOC、アルミノシリケートに担持された0.6重量%のPt)の一片を、カラム反応器内の200mgのCu担持CHA触媒粉末の上流に配置した。8体積%のHO、10体積%のO、7体積%のCO、及び残部のNを含有するガス流を、10K/分で加熱しながら反応器を通して供給し、400℃の温度で1時間維持した。続いて、供給物を、SCR触媒の体積に基づいて10,000hr-1の空間速度の35ppmvのSO、10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO2、及び残部のNを含有するガス流に、試料100mg当たり22.7mgのSを生成する時間にわたって切り替えた。8体積%のHO、10体積%のO、7体積%のCO、及び残部のNを含有するガス流に供給物を切り替えることによって反応器を150℃に冷却し、次いで、10体積%のO及び残部のNを含有するガス流に供給物を切り替えることによって冷却した。
【0143】
脱硫(再生)
10体積%のO、8体積%のHO、7体積%のCO、及び残部のNを含有するガス流を、空間速度60,000h-1、550℃で30分間、硫化SCR触媒に通して、脱硫SCR触媒を得た。反応器を硫化について記載したのと同じ方法で冷却した。
【0144】
SCR試験は、120mgの試験試料を希釈剤としての同じ篩分級物のコランダムとともに約1mLの床体積に充填した固定床反応器内で、500vppmのNO、525vppmのNH、8体積%のHO、10体積%のO、7体積%のCO、及び残部のNのガス供給物を用いて、60,000h-1のガス時空間速度(GHSV)で行った。結果を以下の表4にまとめる。
【0145】
【表5】
【0146】
本発明によるCu担持CHAゼオライトを含む触媒は、許容可能な耐硫化性を示す。820℃でエージングした後の試料番号C.2について得られた結果に関しては、表4に示された結果に関連して前述の章に記載された効果、並びにSiO:Alモル比及びCu:Alモル比の両方に対する本発明の試料の水熱安定性の依存性が参照される。
【0147】
実施例10 Fe担持CHA型ゼオライトの調製及び触媒性能試験
インシピエントウェットネス含浸に硝酸鉄(III)水溶液を使用してFe担持ゼオライトを得たことを除いて、実施例8に記載したのと同じプロセスに従って、2種のFe担持CHAゼオライトを調製した。調製されたFe担持CHAゼオライトを以下の表5にまとめる。
【0148】
【表6】
【0149】
粉末を650℃で50時間エージングしたことを除いて、実施例9に記載したのと同じプロセスに従って、Fe担持CHAゼオライトを含む触媒の試験試料を調製した。
【0150】
SCR試験は、以下の条件に従って、120mgの試験試料を希釈剤としての同じ篩分級物のコランダムとともに約1mLの床体積に充填した固定床反応器中で行った。
【0151】
【表7】
【0152】
結果を以下の表6にまとめる。
【0153】
【表8】
【0154】
Fe担持CHAゼオライトを含む触媒も、高温でのエージング後のNOxの選択接触還元に有効であり、許容可能な耐硫化性を示すことが分かる。
図1
図2
【国際調査報告】