(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ポリトリメチレンエーテルグリコールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/46 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
C08G65/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507992
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 KR2022011288
(87)【国際公開番号】W WO2023022392
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0108050
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン チェイル
(72)【発明者】
【氏名】チョ ハンギョル
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヒョンジュン
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA21
4J005BB01
4J005BC00
(57)【要約】
本発明は、ポリトリメチレンエーテルグリコール生成物からサイクリックオリゴマー、1,3-PDOおよび酸化副生成物を除去できる、ポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法、およびこれによって製造されたポリトリメチレンエーテルグリコールを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量分布(Mw/Mn)が2.0~2.5であり、
サイクリックオリゴマーの含有量が0.1wt%以下である、
ポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項2】
前記分子量分布が2.1~2.4である、
請求項1に記載のポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項3】
前記サイクリックオリゴマーの含有量が0.05wt%以下である、
請求項1に記載のポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項4】
前記サイクリックオリゴマーは、数平均分子量400以下のオリゴマーである、
請求項3に記載のポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項5】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコール中の1,3-プロパンジオールの含有量が0.1wt%以下である、
請求項1に記載のポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項6】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量が1,500~4,000である、
請求項1に記載のポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項7】
1,3-プロパンジオールを重合してポリトリメチレンエーテルグリコールを含む生成物を製造する段階(段階1);および
前記生成物を100~250℃の温度、および100.0~1.0torrの圧力の条件で蒸留して、サイクリックオリゴマーを除去する段階(段階2)を含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載のポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法。
【請求項8】
前記段階2の温度は、180℃~240℃である、
請求項7に記載のポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法。
【請求項9】
前記段階2の圧力は、100.0torr~5.0torrである、
請求項7に記載のポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法。
【請求項10】
前記段階2の圧力は、50.0torr~1.0torrである、
請求項7に記載のポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンエーテルグリコールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、イソシアネートとポリオールとの反応で製造される高分子樹脂であって、コーティング、接着剤から、繊維、プラスチックと弾性発泡体まで高分子が適用されるほぼすべての用途に適用可能である。しかし、これまで原油ベースのValue chainに頼ってきたポリウレタン産業は、全世界的な気候変化とプラスチックによる環境汚染問題で新たな挑戦に直面し、このため、温室ガスを減らすべく、再生可能なバイオマス(biomass)資源を使用しようとする努力が進められている。
【0003】
ポリウレタンの主原料であるポリオールは、大きく、エステル(ester)タイプとエーテル(ether)タイプとに区分され、バイオマスベースの原料を適用したポリオールの産業的適用は、今のところ、エステルタイプに限られている。しかし、ポリウレタン用ポリオール使用量の70%以上を占めるエーテルタイプの産業的適用は価格と物性の制約により極めて制限的な状態である。
【0004】
バイオマスに由来する1,3-プロパンジオール(1,3-propanediol;1,3-PDO)を原料とするポリトリメチレンエーテルグリコール(poly trimethylene ether glycol;PO3G)は、エーテルタイプのポリオールの温室ガス低減において最も現実的な代案であって、これまでPO3Gを産業的に適用しようとする研究が進められてきた。
【0005】
さらに、PO3Gを適用したポリウレタン重合体は、既存のエーテルタイプのポリオールを適用したポリウレタンに比べて弾性復元力、耐摩耗度特性などにおいて優れた特性があることを確認し、PO3Gを適用したバイオポリウレタンは、石油化学系ポリマーと同一の物性を発現するDrop in typeのバイオポリマーを超えて、その適用領域の拡張が期待されている。
【0006】
一方、PO3Gの重合方法は、米国特許登録番号第6,977,291号および米国特許登録番号第7,745,668号に記載されているように、強酸触媒下で行われるAlcohol condensation反応として、高分子成長はstep growth mechanismで理解できる。これに対し、既存の石油化学系PPGとPTMGは、陽イオンあるいは陰イオン開環重合反応としてChain growth mechanismで高分子成長が行われ、このような差により、PO3Gの分子量分布は、他のエーテル系ポリオールに比べてBroadな分布を有し、これに対する改善方策が要求されている。
【0007】
また、前記縮合重合反応は、1,3-プロパンジオールを酸触媒下で長時間反応させるものであるが、これによって各種酸化副生成物と低分子量のオリゴマーが共に製造される。
【0008】
まず、酸化副生成物の場合、Acrolein、Propanal、1-propanol、Allyl alcoholなどが挙げられ、このような物質が存在する場合には、保管時のカラー変色誘発、製品の酸化安定性低下、加工時のVOC誘発、後加工反応における反応選択度と速度に影響を与えることがある。
【0009】
また、反応時に形成されるOligomerのうちCyclic typeのoligomerは、PO3Gの産業的適用において多くの副作用をもたらすことがある。一例として、Polyethylene terephthalate(PET)、Polytrimethylelene terephthalate(PTT)、Poly lactic acid(PLA)などのPolyesterが挙げられる。前記Polyesterの場合、残存するサイクリックオリゴマー(cyclic oligomer)は紡糸またはフィルム成形時に揮発して、成形機器の所望しない汚染と腐食を誘発し、成形された製品の品質問題を招くことが知られている。具体的には、紡糸工程の場合、紡糸工程性の問題とともに原糸の染色性にも影響を与え、押出成形の場合、成形されたシートの厚さ偏差を招く。また、射出成形品の場合、残存するサイクリックオリゴマーは、機械的物性の低下とともにサイクリックオリゴマーが製品表面に移動(migration)する現象を招く。エーテル系ポリオールであるPolytetramethylene ether glycol(PTMG)の場合も、製造時に形成されるサイクリックオリゴマーが円滑に除去できなかった場合、成形されたポリウレタン製品においてサイクリックオリゴマーに起因する同様の問題を招くことが知られている。また、ポリトリメチレンエーテルグリコールの場合、上述のように、Alcohol condensation反応で重合が行われることから、極性が大きいPDO、Linear Dimerなどが製品内に存在し、ポリトリメチレンエーテルグリコールと極性差が大きく発生して、製品内に偏在化した分布を示し、一歩進んでポリトリメチレンエーテルグリコールの物性差を誘発する。これに対し、PPGとPTMGなどの石油化学系エーテルポリオールの場合は、極性の高い線状単量体、あるいは二量体が形成および残留する可能性が非常に低い。
【0010】
したがって、PO3Gの産業的適用のためには、サイクリックオリゴマー、1,3-PDOおよび酸化副生成物の効率的な除去、安定した品質管理が持続的に要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ポリトリメチレンエーテルグリコール生成物からサイクリックオリゴマー、1,3-PDOおよび酸化副生成物を除去できる、ポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法、およびこれによって製造されたポリトリメチレンエーテルグリコールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、分子量分布(Mw/Mn)が2.0~2.5であり、サイクリックオリゴマーの含有量が0.1wt%以下である、ポリトリメチレンエーテルグリコールを提供する。
【0013】
1,3-プロパンジオール(1,3-PDO)から縮合重合反応によりポリトリメチレンエーテルグリコールを製造すれば、分子量分布が広いポリトリメチレンエーテルグリコールが製造され、また、サイクリックオリゴマー、1,3-PDOおよび酸化副生成物が共に製造される。
【0014】
前記広い分子量分布は、主に製造されたサイクリックオリゴマーに起因し、これはポリトリメチレンエーテルグリコールを用いた物品の物性偏差を招いて、ポリトリメチレンエーテルグリコールの応用分野を制限する。また、未反応物に相当する1,3-PDOおよび各種酸化副生成物は、ポリトリメチレンエーテルグリコールの物性に悪影響を与えるだけでなく、それ自体でも不快な臭い、ポリトリメチレンエーテルグリコールを用いた後加工反応における反応速度と選択度に悪影響を与え、ポリトリメチレンエーテルグリコールの色にも良くない影響を与える。
【0015】
したがって、1,3-プロパンジオールから縮合重合反応により製造されたポリトリメチレンエーテルグリコールを精製する過程が必要である。このために、通常、蒸留工程によってこれを精製しているが、精製工程にはポリトリメチレンエーテルグリコールが高温で長期滞留して熱的酸化(thermal oxidation)が発生する問題がある。
【0016】
そこで、本発明では、後述のように特定条件の薄膜蒸留を行って、ポリトリメチレンエーテルグリコールからサイクリックオリゴマー、1,3-PDOおよび酸化副生成物を除去し、また、精製されたポリトリメチレンエーテルグリコールは、分子量分布が狭くて分子量偏差を低減できるという特徴がある。
【0017】
好ましくは、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールの分子量分布は、2.1以上、または2.2以上であり;2.4以下、または2.3以下である。後述のように、このような分子量分布は、1,3-PDOから製造されたポリトリメチレンエーテルグリコールの分子量分布において著しく減少しないもので、言い換えれば、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコール中には、ポリトリメチレンエーテルグリコールの物性に影響を与える成分のみ有効に除去されたことを意味する。
【0018】
好ましくは、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコール中のサイクリックオリゴマーの含有量は、0.09wt%以下、0.08wt%以下、0.07wt%以下、0.06wt%以下、または0.05wt%以下である。一方、前記「サイクリックオリゴマー」とは、1,3-PDOが縮合重合中の分子内反応によって官能基を失った環状の化学構造を有する物質を意味し、特に、本発明では、製品使用上の問題を招く揮発性の高い二量体から五量体(単量体2個~5個が重合される)を意味する。また、ポリトリメチレンエーテルグリコール中のサイクリックオリゴマーの含有量の理論的下限は0wt%であるが、一例として、0.001wt%以上、0.002wt%以上、0.003wt%以上、0.004wt%以上、または0.005wt%以上であってもよい。
【0019】
好ましくは、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコール中の1,3-プロパンジオールの含有量が0.1wt%以下である。より好ましくは、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコール中の1,3-プロパンジオールの含有量が0.09wt%以下、0.08wt%以下、0.07wt%以下、0.06wt%以下、または0.05wt%以下である。また、ポリトリメチレンエーテルグリコール中の1,3-プロパンジオールの含有量の理論的下限は0wt%であるが、一例として、0.001wt%以上、0.002wt%以上、0.003wt%以上、0.004wt%以上、または0.005wt%以上であってもよい。
【0020】
好ましくは、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量が1,500~4,000である。より好ましくは、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量が1,600以上、1,700以上、1,800以上、または1,900以上であり;3,800以下、3,600以下、3,400以下、3,200以下、3,000以下、または2,800以下である。
【0021】
また、本発明は、下記の段階を含む上述したポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法を提供する:
1,3-プロパンジオールを重合してポリトリメチレンエーテルグリコールを含む生成物を製造する段階(段階1);および
前記生成物を100~250℃の温度、および100.0~1.0torrの圧力の条件で蒸留して、サイクリックオリゴマーを除去する段階(段階2)。
【0022】
このため、各段階別に本発明を詳細に説明する。
【0023】
ポリトリメチレンエーテルグリコールの製造段階(段階1)
本発明の段階1は、1,3-プロパンジオールを重合してポリトリメチレンエーテルグリコールを含む生成物を製造する段階である。
【0024】
前記段階1は、1,3-プロパンジオールからポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する反応であればその反応条件は特に制限されず、好ましくは、重縮合触媒を用いて1,3-プロパンジオールを重縮合してポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する。
【0025】
具体的には、前記重縮合触媒としては、触媒は、ルイス(Lewis)酸、ブレンステッド(Bronsted)酸、スーパー酸(super acid)、およびこれらの混合物からなる群より選択される。より好ましくは、触媒は、無機酸、有機スルホン酸、ヘテロ多価酸および金属塩からなる群より選択される。最も好ましくは、触媒は、硫酸、フルオロスルホン酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ホスホタングステン酸、ホスホモリブデン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホン酸、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンスルホン酸、ビスマストリフラート、イットリウムトリフラート、イッテルビウムトリフラート、ネオジムトリフラート、ランタントリフラート、スカンジウムトリフラートおよびジルコニウムトリフラートからなる群より選択される。触媒はまた、ゼオライト、フッ素化アルミナ、酸処理シリカ、酸処理シリカ-アルミナ、ヘテロ多価酸、およびジルコニア、チタニア、アルミナおよび/またはシリカ上に支持されたヘテロ多価酸からなる群より選択される。より好ましくは、重縮合触媒として硫酸を使用する。
【0026】
前記触媒は、反応混合物の重量の0.1~20wt%の濃度で使用することが好ましく、より好ましくは、1~5wt%使用する。
【0027】
また、好ましくは、前記重縮合は、150℃~250℃で行い、より好ましくは、160℃~220℃で行う。また、前記反応は、不活性気体の存在下で行うことが好ましく、窒素下で行うことが好ましい。
【0028】
また、前記縮重合後には、ポリトリメチレンエーテルグリコールに結合した酸を除去するために加水分解反応を追加的に進行させることができる。また、前記加水分解反応に続いて、中和反応を追加的に進行させることができる。
【0029】
蒸留段階(段階2)
本発明の段階2は、前記段階1の生成物を蒸留して、サイクリックオリゴマー、1,3-PDOおよび酸化副生成物を除去する段階である。このために、前記段階2の薄膜蒸留条件は、100~250℃の温度、および100.0~1.0torrの圧力の条件で行う。
【0030】
一方、本発明で使用する用語「薄膜蒸留」とは、分離しようとする混合物を薄い薄膜にして熱源と接触する表面積を高めることを利用する蒸留方法を意味する。例えば、薄膜蒸留器の内部に流入した混合物が物理的な力(例えば、wiper)によって薄膜蒸留器の内部壁面に薄い薄膜を形成し、これに熱源(例えば、heating media)により適正温度を適用して蒸留する方式で、薄膜蒸留が可能である。また、薄膜蒸留器の内部の圧力を低下させると、物質の蒸気圧が低くなって、本来の沸点より低い温度で蒸発が起こるという利点がある。また、薄膜蒸留器の内部には、蒸発した物質、つまり、除去しようとする物質を回収するための凝縮器(condenser)を備えることができる。
【0031】
さらに、前記薄膜蒸留は、分離しようとする混合物を連続的に適用できるという利点がある。例えば、分離しようとする混合物を前記蒸留器の上部に連続的に投入し、前記蒸留器の下部に精製された混合物を回収する方式で連続的に薄膜蒸留が可能である。
【0032】
前記段階2の薄膜蒸留は、100~250℃の温度で行い、好ましくは、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上、170℃以上、または180℃以上かつ;240℃以下、または230℃以下で行う。前記温度が150℃未満の場合には、蒸留の効果がわずかで除去しようとする物質の除去が難しく、前記温度が250℃を超えると、ポリトリメチレンエーテルグリコールの熱的酸化が発生する恐れがある。
【0033】
前記段階2の薄膜蒸留は、100.0~1.0torrの圧力で行い、好ましくは、90.0torr以下、80.0torr以下、70.0torr以下、60.0torr以下、または50.0torr以下かつ、5.0torr以上、10.0torr以上、15.0torr以上、または20.0torr以上で行う。前記圧力が100.0torr超過の場合には、分離効率が低くなるという問題があり、前記圧力が1.0torr未満の場合には、分離効率が過度に高くなって、製品内に残るべき成分まで分離されて最終製品の収率が低下するという問題がある。
【0034】
一方、前記薄膜蒸留器内で揮発した成分、つまり、除去しようとする物質は、凝縮器を通して薄膜蒸留器の下部に排出可能であり、これにより、残りの精製された混合物、つまり、蒸留残留物を別に回収することができる。
【発明の効果】
【0035】
上述のように、本発明は、ポリトリメチレンエーテルグリコール生成物からサイクリックオリゴマー、1,3-PDOおよび酸化副生成物を除去できる、ポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法、およびこれによって製造されたポリトリメチレンエーテルグリコールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明の実施形態を例示するに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
【0037】
以下の製造例、実施例および比較例において、下記のように各物性を測定した。
【0038】
1)分子量分布(Mw/Mn)、およびオリゴマーの総含有量(wt%)
以下、各実施例で製造したポリトリメチレンエーテルグリコールを1wt%の濃度でTHF(tetrahydrofuran)に溶解し、Gel permeation chromatography(製造元:WATERS、モデル:Alliance、Detecter:2414 RI Detector、Column:Strygel HR 0.5/1/4)を用い、Polyethylene glycolを標準物質として、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)をそれぞれ算出した。このように測定されたMwおよびMnから分子量分布値とMn400以下の低分子量Oligomerの含有量を計算した。
【0039】
2)1,3-PDOの含有量(wt%)、およびサイクリックオリゴマーの含有量(wt%)
以下、各実施例で製造したポリトリメチレンエーテルグリコール0.5gをメタノール10mLに溶解した後、ガスクロマトグラフィー(model:agilent7890、column:DBWAX)を用いて測定し、それぞれのReference物質1gをメタノール10mLに溶解した後、濃度に応じて追加希釈してstandard referenceとして測定して、ポリトリメチレンエーテルグリコールに含まれている1,3-PDOの含有量(wt%)、およびサイクリックオリゴマーの含有量(wt%)を計算した。
【0040】
3)酸化副生成物の含有量(wt%)
以下、各実施例で製造したポリトリメチレンエーテルグリコール1gをHead space vialに取った後に、Head space GCF(Head space:Thermo Triplus 500m GC:Agilent7890、column:DBWAX)を用いて測定し、それぞれのReference物質(1-propanol、Allyl alcohol)0.1gをDMSO10mLに溶解した後、濃度に応じて追加希釈してstandard referenceとして測定して、ポリトリメチレンエーテルグリコールに含まれている酸化副生成物の含有量を計算した。
【0041】
4)OHV
以下、各実施例で製造したポリトリメチレンエーテルグリコール6gとアセチル化試薬(acetic anhydride/pyridine=10/40vol%)15mLを、100mLフラスコに注入し、100℃で30分間還流雰囲気下で反応させた。反応後、常温に冷却し、蒸留水50mLを注入した。前記製造された反応物を自動滴定器(製造会社:metrohm、Titrino716)を用いて0.5ノルマル濃度のKOHで滴定反応を実施し、OHVは、下記の数式1により計算した。
【0042】
[数式1]
OHV=56.11×0.5×(A-B)/サンプル投入量
前記数式1中、
56.11は、KOHの分子量を意味し、
0.5は、KOHのノルマル濃度を意味し、
Aは、blank testに使用されたKOH溶液の分注量であり、
Bは、sampleの滴定に使用されたKOH溶液の分注量である。
【0043】
前記測定されたOHVは、下記の数式2により末端基平均分子量(Mn)に換算した。
【0044】
[数式2]
Mn=(56.11×2/OHV)×1000
製造例:ポリオールの製造
1)ポリオールAの製造
段階a)
テフロン材質の撹拌機とspargerが装着された20L GLASS材質の二重ジャケット反応器に1,3-プロパンジオール(15kg)および硫酸(150g)を充填した後、26時間、窒素sparging下、166℃で重合物を製造し、反応副生成物は上部コンデンサにより除去した。
【0045】
段階b)
以後、脱イオン水(5kg)を添加し、生成された混合物を、窒素Blowing下で4時間95℃に維持して、重合時に形成された酸エステルを加水分解させた。加水分解後、1000mLの脱イオン水中の170gのsoda ashを添加し、窒素ストリーム下で撹拌しながら混合物を80℃に加熱した。中和を1時間継続し、次に、生成物を減圧下で120℃で乾燥させ、Nutche filterを用いて濾過してポリトリメチレンエーテルグリコール生成物を得た。
【0046】
2)ポリオールBの製造
前記ポリオールAの製造方法と同様の方法で製造し、前記段階a)で反応時間を26時間から38時間に変更して、ポリトリメチレンエーテルグリコール生成物を得た。
【0047】
前記それぞれ製造されたポリオールAとポリオールBに対する物性は、下記表1に示した。
【0048】
【0049】
実施例および比較例
Lab scale薄膜蒸留設備を用いて、前記製造例で各製造したポリオールに精製を行った。
【0050】
具体的には、前記薄膜蒸留設備は、VTA社のVKL-70-4modelでcondenserがdistillation columnの内部に設けられているShort path distillation typeであって、evaporation diameterおよびsurface areaがそれぞれ70mmおよび0.04m2であった。Hot oil systemによってdistillation column jacketが適正温度にsettingされ、vacuum pumpによってcolumnの内部が目標真空度に到達すれば、先に製造した各サンプルをdistillation上部に適正feed rateで投入した。この時、wiperが装着されているmechanical stirrerによってポリトリメチレンエーテルグリコールはcolumnの内部で均一な厚さを有する薄膜に形成され、揮発した低分子量物質は内部のcondenserで凝縮してdistillate側に排出され、精製されたポリトリメチレンエーテルグリコールをresidueとして排出された。
【0051】
各比較例と実施例については1kg/hrのFeed rateで1時間テストを実施し、テスト後にサンプリングして物性を測定して、その結果を下記表2および3に示した。
【0052】
【0053】
【0054】
前記表2および3に示されているように、本発明による温度および圧力の条件で薄膜蒸留に適用することによって、サイクリックオリゴマー、1,3-PDO、およびLinear dimerの含有量が低下することを確認することができる。
【0055】
また、比較例1および2のような高真空度下での薄膜蒸留条件と比較すれば、Total Oligomerの含有量は著しく低下しなくなって収率を高めることができ、酸化副生成物も有効に除去されることを確認することができる。
【0056】
これは、本発明による条件下で蒸気圧が低い酸化副生成物、サイクリックオリゴマー、1,3-PDO、およびLinear dimerなどのみ優先的に分離および除去され、これに対し、ウレタン反応に参加できるLinear OligomerはResidue内に大部分残留し、これによって分子量分布の大きな変化なしに、薄膜蒸留収率を高め、ポリトリメチレンエーテルグリコールの物性に影響を与える成分のみ有効に分離できることを意味する。
【国際調査報告】