(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】糖官能化核酸担体を含有するナノ粒子組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/26 20060101AFI20240918BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240918BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240918BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240918BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240918BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240918BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240918BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240918BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240918BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240918BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240918BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A61K47/26
A61K47/34
A61K47/24
A61K47/28
A61K48/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/08
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/713
A61K31/711
A61K9/51
A61K39/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508628
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 US2022040129
(87)【国際公開番号】W WO2023022926
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522392944
【氏名又は名称】ティバ バイオテック エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】タルクダー ポウラミ
(72)【発明者】
【氏名】チャハル ジャスデイヴ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC31
4C076DD63
4C076DD69A
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF67
4C076FF70
4C084AA13
4C084MA05
4C084MA37
4C084MA55
4C084NA13
4C084ZB07
4C084ZB13
4C084ZB26
4C084ZB32
4C085AA03
4C085BB23
4C085CC31
4C085DD90
4C085EE01
4C085EE05
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA37
4C086MA55
4C086NA13
4C086ZB07
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZB32
(57)【要約】
核酸を対象に送達するためのナノ粒子組成物であって、糖官能化核酸担体を含む担体と、その送達分子内に封入された治療的又は免疫原性核酸剤とを含むナノ粒子組成物が記載される。免疫応答及び相乗的な治療又は予防効果を提供する当該ナノ粒子組成物を投与することによる、対象における疾患又は病気を治療又は予防する方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ia、式Ib、式Ic、式Id、式Ie、式If、式Ig、式Ih、式Ii、式Ij、式IIa又は式IIbの構造を含む核酸担体であって、
【化1】
【化2】
式中、Aはアミンリンカーであり、Bは疎水性単位であり、nは0~20の値をとり、Yは糖部分であり、Zはデオキシ糖部分である
核酸担体。
【請求項2】
Aは、N1-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン、N1-(2-アミノエチル)プロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)プロパン-1,3-ジアミン、N1,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(エタン-1,2-ジアミン)、N1,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(N2-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン)、N1-(2-(4-(2-アミノエチル)ピペラジン-1-イル)エチル)エタン-1,2-ジアミン、N1-(2-アミノエチル)-N1-メチルエタン-1,2-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)-N1-メチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)-N1-エチルプロパン-1,3-ジアミン、3-((3-アミノプロピル)(メチル)アミノ)プロパン-1-オール、3,3’-(メチルアザンジイル)ビス(プロパン-1-オール)、N1-(3-アミノプロピル)-N1-メチルブタン-1,4-ジアミン、4-((3-アミノプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(4-アミノブチル)-N1-メチルブタン-1,4-ジアミン、4-((4-アミノブチル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4,4’-(メチルアザンジイル)ビス(ブタン-1-オール)、3-((3-アミノプロピル)(エチル)アミノ)プロパン-1-オール、3,3’-(エチルアザンジイル)ビス(プロパン-1-オール)、N1-(3-アミノプロピル)-N1-エチルブタン-1,4-ジアミン、4-((3-アミノプロピル)(エチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-(エチル(3-ヒドロキシプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(2-アミノエチル)-N1-メチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(4-アミノブチル)-N1-エチルブタン-1,4-ジアミン、4,4’-(エチルアザンジイル)ビス(ブタン-1-オール)、3-((3-アミノプロピル)アミノ)プロパン-1-オール、N1-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン、4-((3-ヒドロキシプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(4-アミノブチル)ブタン-1,4-ジアミン、3,3’-アザンジイルビス(プロパン-1-オール)、4-((3-アミノプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、4,4’-アザンジイルビス(ブタン-1-オール)、N1,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)からなる群に由来する請求項1に記載の核酸担体。
【請求項3】
BはC
1-C
28アルキル基又はC
2-C
28アルケニル基である請求項1に記載の核酸担体。
【請求項4】
前記C
1-C
28アルキル基又はC
2-C
28アルケニル基は、ハロゲン、-CN、-NO
2、-N
3、C
1-C
6アルキル、ハロ(C
1-C
6アルキル)、-OR、-NR
2、-CO
2R、-OC(O)R、-CON(R)
2、-OC(O)N(R)
2、-NHC(O)N(R)
2、-NHC(NH)N(R)
2、C
3-C
8シクロアルキル、C
3-C
8シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環からなる群から選択される1~4個の置換基で置換されており、Rは、水素、C
1-C
6アルキル、ハロ(C
1-C
6アルキル)、C
3-C
8シクロアルキル、C
3-C
8シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環からなる群から選択される請求項3に記載の核酸担体。
【請求項5】
各シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環は、さらに、R’で置換されており、R’は、独立して、ハロゲン、-CN、-NO
2、-N
3、C
1-C
6アルキル及びハロ(C
1-C
6アルキル)からなる群から選択される請求項4に記載の核酸担体。
【請求項6】
Bは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ブト-3-エン-1-イル基、オクト-7-エン-1-イル基、12-トリデセニル基、14-ペンタデセニル基、17-オクタデセニル基、オレイル基、リノレイル基、アラキドニル基及びリシノレイル基からなる群から選択される請求項3に記載の核酸担体。
【請求項7】
Bは脂肪酸又はその誘導体に由来する請求項3に記載の核酸担体。
【請求項8】
前記脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタン酸、2-ヒドロキシ-9-cis-オクタデセン酸、12-メチルテトラデカン酸、12-メチルトリデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、18-メチルノナデカン酸、19-メチルアラキジン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、フィタン酸、(±)-2-ヒドロキシオクタン酸、(±)-3-ヒドロキシデカン酸、(±)-3-ヒドロキシオクタン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシオクタデカン酸、15-ヒドロキシペンタデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、2-ヒドロキシヘキサデカン酸、2-ヒドロキシテトラデカン酸、2-ヒドロキシドデカン酸、DL-α-ヒドロキシステアリン酸、DL-β-ヒドロキシラウリン酸、DL-β-ヒドロキシミリスチン酸、DL-β-ヒドロキシパルミチン酸、共役脂肪酸、リノール酸の共役異性体、9,11-CLA、アセチレン脂肪酸、クレペニン酸、アレン脂肪酸、ラバレン酸、シクロプロペニル脂肪酸、及びステルクル酸からなる群から選択される請求項7に記載の核酸担体。
【請求項9】
前記脂肪酸は1つ以上の安定同位体を含む請求項7に記載の核酸担体。
【請求項10】
前記安定同位体は、炭素又は水素の安定同位体である請求項9に記載の核酸担体。
【請求項11】
炭素の安定同位体は
13Cである請求項10に記載の核酸担体。
【請求項12】
水素の安定同位体は
2Hである請求項10に記載の核酸担体。
【請求項13】
前記安定同位体を含む前記脂肪酸は、オクタン酸-1-
13C、オクタン酸-8-
13C、オクタン酸-8,8,8-d3、オクタン酸-
2H15、デカン酸-1-
13C、デカン酸-10-
13C、デカン酸-10,10,10-d3、デカン酸-d19、ウンデカン酸-1-
13C、ラウリン酸-12,12,12-
2H3、ラウリン酸-
2H23、ラウリン酸-1-
13C、ラウリン酸-1,12-
13C
2、トリデカン酸-2,2-
2H2、ミリスチン酸-14-
13C、ミリスチン酸-1-
13C、ミリスチン酸-14,14,14-
2H3、ミリスチン酸-
2H27、パルミチン酸-1-
13C、パルミチン酸-16-
13C、パルミチン酸-16-
13C,16,16,16-
2H3、パルミチン酸-
2H31、ステアリン酸-1-
13C、ステアリン酸-18-
13C、ステアリン酸-18,18,18-
2H3、ステアリン酸-
2H35、オレイン酸-1-
13C、オレイン酸-
2H34、リノレン酸-1-
13C、リノール酸-
2H32、アラキドン酸-5,6,8,9,11,12,14,15-
2H8及びエイコサン酸-
2H39からなる群から選択される請求項9に記載の核酸担体。
【請求項14】
式Ia、式Ib、式Ie、式If、式Ii、式Ij又は式IIaのYは糖である請求項1に記載の核酸担体。
【請求項15】
前記糖は、フラノース単糖(例えば、キシロフラノース、リボフラノース又はアラビノフラノース)、ピラノース単糖(例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース)、二糖(例えば、ラクトース、トレハロース)、又は多糖(例えば、シクロデキストリン)から選択される請求項14に記載の核酸担体。
【請求項16】
式Ic、式Id、式Ig若しくは式Ih又は式IIbのZはデオキシ糖である請求項1に記載の核酸担体。
【請求項17】
前記デオキシ糖中の糖は、フラノース単糖、ピラノース単糖、二糖、オリゴ糖、又は多糖である請求項16に記載の核酸担体。
【請求項18】
前記デオキシ糖は、2-デオキシ-D-リボース、6-デオキシ-L-タガトース、5-デオキシ-キシロフラノース、5-デオキシ-リボフラノース若しくは5-デオキシ-アラビノフラノース、1-デオキシグルコース、2-デオキシグルコース、6-デオキシグルコース、1-デオキシマンノース、2-デオキシガラクトース、6-デオキシガラクトース、1-デオキシラクトース、6-アジド-トレハロース、6-アジド-2,4-ジアセトアミド-2,4,6-トリデオキシ-D-マンノース又は6A-アジド-6A-デオキシ-β-シクロデキストリンである請求項16に記載の核酸担体。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の核酸担体と、その中に封入された薬剤とを含むナノ粒子組成物。
【請求項20】
前記薬剤は核酸である請求項19に記載のナノ粒子組成物。
【請求項21】
前記薬剤は治療用又は免疫原性であり、好ましくは、前記薬剤は治療的又は免疫原性核酸である請求項19又は請求項20に記載のナノ粒子組成物。
【請求項22】
前記治療的又は免疫原性核酸剤は、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、cDNA、RNA、repRNA、siRNA、miRNA、sgRNA及びmRNAからなる群から選択される請求項21に記載のナノ粒子組成物。
【請求項23】
前記治療的又は免疫原性核酸剤は、感染症、病原体、癌、自己免疫疾患及びアレルゲン性疾患からなる群から選択される1種以上の抗原をコードする請求項21に記載のナノ粒子組成物。
【請求項24】
前記治療的又は免疫原性核酸剤は、遺伝子の活性をサイレンシングするか、阻害するか又は改変することができるRNA又はDNAを含む請求項21に記載のナノ粒子組成物。
【請求項25】
PEG-脂質をさらに含む請求項19に記載のナノ粒子組成物。
【請求項26】
前記PEG-脂質は1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]又は1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000である請求項25に記載のナノ粒子組成物。
【請求項27】
ナノ粒子組成物あたり1モル%~10モル%の前記PEG-脂質の範囲で前記PEG-脂質を含む請求項25に記載のナノ粒子組成物。
【請求項28】
(1)リン脂質及び/又は(2)コレステロール若しくはその誘導体をさらに含む請求項25に記載のナノ粒子組成物。
【請求項29】
前記リン脂質は1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)又はジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である請求項28に記載のナノ粒子組成物。
【請求項30】
ナノ粒子組成物あたり10モル%~15モル%の前記リン脂質の範囲で前記リン脂質を含む請求項28に記載のナノ粒子組成物。
【請求項31】
ナノ粒子組成物あたり50モル%~75モル%の前記コレステロール又はその誘導体の範囲で前記コレステロール又はその誘導体を含む請求項28に記載のナノ粒子組成物。
【請求項32】
対象の疾患又は病気を治療又は予防する方法であって、治療有効量の請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の核酸担体又は請求項19から請求項31のいずれか1項に記載のナノ粒子組成物を、必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項33】
治療有効量の前記ナノ粒子組成物は、前記対象の体重1kgあたり前記治療的又は免疫原性核酸剤を0.001ng核酸~10mg核酸の範囲で含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記対象は哺乳動物である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ又はウシからなる群から選択される請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月16日出願の、発明の名称が「Nanoparticle Compositions Containing Sugar Functionalized Nucleic Acid Carriers(糖官能化核酸担体を含有するナノ粒子組成物)」である米国仮特許出願第63/233,505号の利益を主張し、この仮出願は、完全に記載されているように参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、疾患及び/又は障害を治療又は予防するための、核酸の対象への効率的な送達のための担体、並びにこの担体と核酸とを含むナノ粒子組成物に関する。本開示は、このナノ粒子組成物の製剤化方法、並びにそのようなナノ粒子組成物で対象の疾患及び/又は障害を治療する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
産業界は、最終的な治療効果のために遺伝物質を効率的にパッケージングし、患者の細胞に送達することができる多機能特性を有する新規かつ安全な核酸担体を探し続けている。適切な非ウイルス遺伝子送達系は、高い細胞取り込み、担持能力、低い毒性を伴う生体適合性及び高いトランスフェクション効率という繊細なバランスを必要とすることがある(Jonesら、2013、Mol.Pharmaceutics 10、4082-4098;Nishikawa及びHuang、2001 Hum.Gene Ther. 12、861-870;及びMintzer及びSimanek、2009、Chem.Rev. 109、259-302)。
炭水化物は、最も豊富な天然化合物でかつ多くの生物学的プロセスにおける重要な関与物質の1つであり、医療及び産業分野にわたって関連がある。合成ポリマーと比較して、炭水化物は生体適合性であり、固有の標的化特性を有し、これらによって、炭水化物は細胞表面受容体と相互作用することができ(Hongら、2018、Carbohydr Polym. 181:1180-1193;Hanら、2018、Polymers、10(9)、1034)、取り込み及び最終的な発現を増強する他の生物学的プロセスに関与することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Jonesら、2013、Mol.Pharmaceutics 10、4082-4098
【非特許文献2】Nishikawa及びHuang、2001 Hum.Gene Ther. 12、861-870
【非特許文献3】Mintzer及びSimanek、2009、Chem.Rev. 109、259-302
【非特許文献4】Hongら、2018、Carbohydr Polym. 181:1180-1193
【非特許文献5】Hanら、2018、Polymers、10(9)、1034
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明において、本発明者らは、糖が核酸の効率的かつ生体適合性の送達のためにデンドロン又はデンドリマー系に化学的にコンジュゲートされている、改善された遺伝子送達のための様々なクラスの糖官能化核酸担体を提示した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は、式Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、Ih、Ii、Ij、IIa又はIIbのうちの1つの構造を有する核酸担体を含むナノ粒子組成物であって、
【化1】
【化2】
式中、Aはアミンリンカーであり、Bは疎水性単位であり、nは0~20であり、Yは糖部分であり、Zはデオキシ糖部分である、ナノ粒子組成物に関する。
【0007】
一態様において、本発明は、本明細書に開示される核酸担体の少なくとも1種と、任意選択で、この核酸担体に封入された治療的又は免疫原性核酸剤の少なくとも1種と、本明細書に開示される複合脂質(例えば、PEG-脂質)とを含むナノ粒子組成物に関する。
【0008】
一態様において、本発明は、細胞内送達及び生体内でのナノ粒子安定性を向上させるための、本明細書に開示される核酸担体の少なくとも1種と、該核酸担体に封入された治療的又は免疫原性核酸剤の少なくとも1種と、本明細書に開示される1つの複合脂質(例えば、PEG-脂質)と、リン脂質及びコレステロール又はその誘導体の混合物とを含むナノ粒子組成物に関する。
【0009】
一態様において、本発明は、対象の疾患又は病気を治療又は予防する方法に関する。この方法は、治療有効量の本発明のナノ粒子組成物を対象に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付図面と合わせて読むとよりよく理解されるであろう。本発明を説明するために、具体的な実施形態が図面に示されている。しかしながら、本発明は、図示された正確な配置と手段に限定されないことを理解すべきである。
【0011】
【
図1】デンドロンの焦点が様々な種類のデオキシ糖で修飾されている、アミン及び疎水性単位としてのリシノール酸尾部を有する世代2の修飾ポリエステルデンドロンの概略図である。
【
図2】ナノ粒子のサイズ(d)に基づく強度として測定されたナノ粒子組成物の分布を示す。
【
図3】PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸とRNAとの結合を示すアガロースゲルの写真を示す。このゲルは臭化エチジウム(EB)で染色され、ゲル画像はSyngene G Boxイメージングシステム(Syngene、米国)で撮影された。
【
図4】デオキシ糖修飾デンドロンを含むナノ粒子製剤の投与後の生体外(インビトロ)及び生体内(インビボ)でのSEAP発現の定量を示す。PEデンドロン_G2-1デオキシグルコース-A1-リシノール酸、PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸及びPEデンドロン_G2-6デオキシグルコース-A1-リシノール酸を用いて製剤化されたSEAP mRNAは、SEAPタンパク質産生をもたらすナノ粒子を生成した。
【
図5】デオキシ糖修飾デンドロンに基づくナノ粒子製剤の投与後の生体外及び生体内でのSEAP発現の定量を示す。SEAPをコードするmRNAは、PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸、PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A5-リシノール酸、PEデンドロン_G2-1デオキシマンノース-A5-リシノール酸及びPEデンドロン_G2-2デオキシガラクトース-A5-リシノール酸とともに製剤化されてナノ粒子が生成され、このナノ粒子が生体外で細胞に又はマウスに投与された。
【
図6】PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸又はPEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A5-リシノール酸送達材料を用いて製剤化されたSARS-CoV-2スパイクレプリコンRNAによるワクチン接種後のSARS-CoV-2スパイクタンパク質に特異的なマウス血清IgGの終点希釈力価を示す。追加のマウス群は、アミノ脂質DLin-MC3-DMA(対照)を用いて製剤化された同じRNAによりワクチン接種を受けた。
【
図7】SEAP mRNAがPEデンドロン_G2-ヘキシルマンノース-A5-リシノール酸(PEG-脂質コンジュゲートとしてのDMG PEG2000)を用いて製剤化されたナノ粒子のサイズ(d)に基づく強度として測定されたナノ粒子組成物の分布を示す。
【
図8】糖修飾デンドロンを用いたナノ粒子製剤の投与後の生体内でのSEAP発現の定量を示す。PEデンドロン_G2-ヘキシルマンノースA5-リシノール酸を用いて製剤化されたSEAP mRNAは、SEAPタンパク質産生をもたらすナノ粒子を生成した。
【
図9】ナノ粒子のサイズ(d)に基づく強度として測定されたナノ粒子組成物の分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明において、特定の用語は、便宜上のためにのみ使用され、限定的ではない。
【0013】
「置換」という用語は、親構造上の全原子の原子価が維持されているという条件で、化合物の1つの官能基又は部分を、他の官能基又は部分に変更する能力を指す。置換した基は、本明細書において、「置換」又は「置換基」と互換的に呼ばれる。任意の所与の構造中の複数の位置が特定の基から選択された複数の置換基で置換される場合、置換基は、全ての位置で同じであっても異なってもよい。
【0014】
本明細書で使用される場合、「アミンリンカー」という用語は、疎水性単位(本明細書において、便宜上、成分「B」と記載されている)をデンドリマー又はデンドロン表面に存在する末端化学基にリンクするか又は連結する、アミン含有リンカーを指す。アミンリンカーに存在するアミンは、孤立電子対を持つ塩基性窒素原子を含有する官能基である。アミンは、形式的にアンモニアの誘導体であり、1つ以上の水素原子が置換基、例えばアルキル基、で置換されたものである。
【0015】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、特に指定されていない限り、1~28、好ましくは、1~20の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素を意味する。アルキル基は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、若しくは28個の炭素原子、又は上述の値のいずれか2つから選択される範囲の数の炭素原子を有してもよい。アルキル鎖の長さは、核酸担体の疎水性及び自己組織化特性を制御するために使用されてもよい。
【0016】
本明細書で使用される場合、「表面基」という用語は、核酸担体の表面にある末端基を意味する。本発明の核酸担体の表面は、自己組織化特性を支援するために、疎水性単位(本明細書において、成分「B」と記載されている)で修飾される。
【0017】
「約」が先行する数値又は範囲は、明示的に列挙された数、及び企図される指標の実験誤差内の数を指す。修飾語「約」を用いて記載される実施形態は、本明細書のさらなる実施形態を形成するために、「約」を除去するように変更されてもよい。同様に、修飾語「約」なしに記載される実施形態は、本明細書のさらなる実施形態を形成するために「約」を加えるように変更されてもよい。
【0018】
2つの数値(一方は低端点であり、他方は高端点である)の間であると表される範囲は、それらの数値の間の値、並びにその低端点及び高端点も含む。本発明の実施形態は、本明細書の範囲の部分範囲を含み、この部分範囲は、部分範囲の高端点がその部分範囲の低端点よりも高いという条件で、最小有効数字の各単一増分から選択される範囲内の任意の増分から選択されるその部分範囲の低端点及び高端点を含む。
【0019】
本明細書におけるさらなる実施形態は、一実施形態における1つ以上の「including(含む)」又は「comprising(含む)」を、「consisting essentially of(本質的に…からなる)」又は「consisting of(…からなる)」と置き換えることを含む。本明細書で使用する場合、「including」及び「comprising」は、非限定的であり、列挙された要素を含み、1つ以上の他の要素の追加を排除しない。「consisting essentially of」は、列挙されるものと比較して1つ以上の要素の追加は射程内であるが、その追加は、明示的に列挙される要素の組み合わせの基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないことを意味する。「consisting of」は、列挙された要素を指すが、特定されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外する。
【0020】
特許請求の範囲及び明細書の対応する部分で使用される「a」と「one」という単語は、特に明記されていない限り、1つ以上の参照される項目を含むものとして定義される。この用語には、上述した具体的に言及された単語、それらの派生語及び類義語が含まれる。「A、B又はC」又は「A、B及びC」等の2つ以上の項目のリストに伴う「少なくとも1つ」という語句は、A、B又はCのうちのいずれか1つ、及びこれらの任意の組み合わせを意味する。
【0021】
一実施形態は、式Ia、Ib、Ic、Id、Ile、If、Ig、Ih、Ii、Ij、IIa又はIIbのうちの1つの構造を有する核酸担体を含むナノ粒子組成物であって、
【化3】
【化4】
式中、Aはアミンリンカーであり、Bは疎水性単位であり、nは0~20であり、Yは糖部分であり、Zはデオキシ糖部分である、ナノ粒子組成物を含む。
【0022】
アミンリンカーAは、孤立電子対を持つ窒素原子を1つ以上含有することにより、核酸担体分子にプロトン受容機能性を付与する部分である。従って、アミンリンカーは、酸性条件下で遊離プロトン(H+)を受容することができる。好ましい実施形態において、窒素原子は、第2級又は第3級アミンの形で存在する。アミンリンカーは、N1-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン、N1-(2-アミノエチル)プロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)プロパン-1,3-ジアミン、N1,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(エタン-1,2-ジアミン)、N1,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(N2-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン)、N1-(2-(4-(2-アミノエチル)ピペラジン-1-イル)エチル)エタン-1,2-ジアミン、N1-(2-アミノエチル)-N1-メチルエタン-1,2-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)-N1-メチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)-N1-エチルプロパン-1,3-ジアミン、3-((3-アミノプロピル)(メチル)アミノ)プロパン-1-オール、3,3’-(メチルアザンジイル)ビス(プロパン-1-オール)、N1-(3-アミノプロピル)-N1-メチルブタン-1,4-ジアミン、4-((3-アミノプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(4-アミノブチル)-N1-メチルブタン-1,4-ジアミン、4-((4-アミノブチル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4,4’-(メチルアザンジイル)ビス(ブタン-1-オール)、3-((3-アミノプロピル)(エチル)アミノ)プロパン-1-オール、3,3’-(エチルアザンジイル)ビス(プロパン-1-オール)、N1-(3-アミノプロピル)-N1-エチルブタン-1,4-ジアミン、4-((3-アミノプロピル)(エチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-(エチル(3-ヒドロキシプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(2-アミノエチル)-N1-メチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(4-アミノブチル)-N1-エチルブタン-1,4-ジアミン、4,4’-(エチルアザンジイル)ビス(ブタン-1-オール)、3-((3-アミノプロピル)アミノ)プロパン-1-オール、N1-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン、4-((3-ヒドロキシプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(4-アミノブチル)ブタン-1,4-ジアミン、3,3’-アザンジイルビス(プロパン-1-オール)、4-((3-アミノプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、4,4’-アザンジイルビス(ブタン-1-オール)、N1,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)、2-(ビス(3-アミノプロピル)アミノ)エタン-1-オール、2-((4-アミノブチル)(3-アミノプロピル)アミノ)エタン-1-オール、又は2-(ビス(4-アミノブチル)アミノ)エタン-1-オールに由来してもよい。参照のために、上記のアミンから誘導されるアミンリンカーの構造は、次の構造として絵で提示される。上記リンカー中に存在するアミンのpKa値は、ACD/percepta pKa予測ツールを使用して計算された。
【化5】
【化6】
【0023】
式Ia、Ib、Ic、Id、Ie及びIfの疎水性単位Bは、C1-C28アルキル基又はC2-C28アルケニル基であってもよい。C1-C28アルキル基又はC2-C28アルケニル基のそれぞれは、任意に、ハロゲン、-CN、-NO2、-N3、C1-C6アルキル、ハロ(C1-C6アルキル)、-OR、-NR2、-CO2R、-OC(O)R、-CON(R)2、-OC(O)N(R)2、-NHC(O)N(R)2、-NHC(NH)N(R)2、C3-C8シクロアルキル、C3-C8シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール又は複素環から選択された1~4個の置換基で置換されてもよい。各Rは、独立して、水素、C1-C6アルキル、ハロ(C1-C6アルキル)、C3-C8シクロアルキル、C3-C8シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール又は複素環から選択されてもよい。各シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環は、さらに、任意に、R’で置換されてもよく、R’は、独立して、ハロゲン、-CN、-NO2、-N3、C1-C6アルキル及びハロ(C1-C6アルキル)から選択されてもよい。本発明の実施形態は、アミンリンカーの1つ以上が脱プロトン化された核酸担体を含む。本発明の実施形態は、アミンリンカーの1つ以上がプロトン化された核酸担体を含む。本発明の実施形態は、アミンリンカーのすべてが脱プロトン化された核酸担体を含む。本発明の実施形態は、アミンリンカーのすべてがプロトン化された核酸担体を含む。
【0024】
式Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、Ih、Ii、Ij、IIa及びIIbの疎水性単位Bは、核酸担体と機能性試薬とを接触させることにより導入されてもよい。一実施形態において、機能性試薬は脂肪酸である。脂肪酸は、C4-C28鎖を有する飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸又はリノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタン酸、12-ヒドロキシ-9-cis-オクタデセン酸(リシノール酸)、12-メチルテトラデカン酸、12-メチルトリデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、18-メチルノナデカン酸、19-メチルアラキドン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、フィタン酸、(±)-2-ヒドロキシオクタン酸、(±)-3-ヒドロキシデカン酸、(±)-3-ヒドロキシオクタン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシオクタデカン酸、15-ヒドロキシペンタデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、2-ヒドロキシヘキサデカン酸、2-ヒドロキシテトラデカン酸、2-ヒドロキシドデカン酸、DL-α-ヒドロキシステアリン酸、DL-β-ヒドロキシラウリン酸、DL-β-ヒドロキシミリスチン酸又はDL-β-ヒドロキシパルミチン酸であってもよいが、これらに限定されない。脂肪酸は、共役脂肪酸(例えば、リノール酸の共役異性体);アセチレン脂肪酸(例えば、クレペニン酸);アレン脂肪酸(例えば、ラバレン酸)又はシクロプロペニル脂肪酸(例えば、ステルクル酸)から選択されてもよい。
【0025】
疎水性単位Bは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ブト-3-エン-1-イル基、オクト-7-エン-1-イル基、12-トリデセニル基、14-ペンタデセニル基、17-オクタデセニル基、オレイル基、リノレイル基、アラキドニル基又は16-ヒドロキシヘキサデシル基、又は12-ヒドロキシ-9-cis-オクタデセニル(リシノレイル)基であってもよい。
【0026】
一実施形態において、核酸担体は追跡部分を含んでもよい。この追跡部分は、生体外及び生体内で送達材料を追跡するのに適した1つ以上の官能基であってもよい。核酸担体は、炭素(C)及び/又は水素(H)の安定同位体を含有する脂肪酸を有してもよい。一実施形態において、炭素(C)及び/又は水素(H)の安定同位体は、13C又は2H(本明細書において、重水素、D又はdとも呼ばれる)である。このような核酸担体中の追跡部分は、炭素又は水素の安定同位体であろう。核酸とともに核酸担体をナノ粒子に製剤化する場合、ナノ粒子は、質量分析又は核磁気共鳴画像法等の技術により、投与後に生体外及び生体内で追跡されてもよい。一実施形態において、追跡されるナノ粒子中の核酸はレプリコンRNAである。これらの安定同位体が組織で豊富な12C及び1H同位体とは異なるため、安定性同位体を含有することは、送達分子の同定に有益である場合がある。追跡は、投与後のナノ粒子の生体分布、物質クリアランス及び分子安定性の同定と、関連する問題とに有用であってもよい。同位体標識された脂肪酸は、オクタン酸-1-13C、オクタン酸-8-13C、オクタン酸-8,8,8-2H3、オクタン酸-2H15、デカン酸-1-13C、デカン酸-10-13C、デカン酸-10,10,10-2H3、デカン酸-2H19、ウンデカン酸-1-13C、ラウリン酸-12,12,12-2H3、ラウリン酸-2H23、ラウリン酸-1-13C、ラウリン酸-1,12-13C2、トリデカン酸-2,2-2H2、ミリスチン酸-14-13C、ミリスチン酸-1-13C、ミリスチン酸-14,14,14-2H3、ミリスチン酸-d27、パルミチン酸-1-13C、パルミチン酸-16-13C、パルミチン酸-16-13C,16,16,16-2H3、パルミチン酸-2H31、ステアリン酸-1-13C、ステアリン酸-18-13C、ステアリン酸-18,18,18-2H3、ステアリン酸-2H35、オレイン酸-1-13C、オレイン酸-2H34、リノレン酸-1-13C、リノール酸-2H32、アラキドン酸-5,6,8,9,11,12,14,15-2H8又はエイコサン酸-2H39であってもよいが、これらに限定されない。
【0027】
式Ia、式Ib、式Ie、式If、式Ii、式Ij及び式IIaのYは糖である。糖の非限定的な例は、フラノース単糖(例えば、キシロフラノース、リボフラノース若しくはアラビノフラノース)、ピラノース単糖(例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース)、二糖(例えば、ラクトース、トレハロース)、多糖(例えば、シクロデキストリン)、又は糖誘導体である。一実施形態において、糖誘導体は、ヌクレオシド又はヌクレオチド等から選択される。式Ic、式Id、式Ig若しくは式Ih又は式IIbのZはデオキシ糖である。デオキシ糖は、ヒドロキシル基が水素原子で置換された糖類であり、この糖の非限定的な例は、フラノース単糖類、ピラノース単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、又は糖誘導体である。一実施形態において、糖誘導体は、ヌクレオシド又はヌクレオチドから選択される。デオキシ糖の非限定的な例は、DNAの構成要素である2-デオキシ-D-リボース、6-デオキシ-L-タガトース、5-デオキシ-キシロフラノース、5-デオキシ-リボフラノース及び5-デオキシ-アラビノフラノース、1-デオキシグルコース、2-デオキシグルコース、6-デオキシグルコース、1-デオキシマンノース、2-デオキシガラクトース、6-デオキシガラクトース、1-デオキシラクトース、6-デオキシ-トレハロース、6-デオキシ-2,4-ジアセトアミド-2,4,6-トリデオキシ-D-マンノース及び6A-デオキシ-β-シクロデキストリンである。
【0028】
式Ic若しくは式Id又は式IIbのZは、クリックケミストリーによって核酸担体を機能性試薬と接触させることによって導入されてもよい。一実施形態において、機能性試薬は、デオキシ糖(単糖、二糖、又は多糖)アジドから選択される。アジドは、限定されないが、D-キシロピラノシルアジド、2,3,4-トリ-O-アセチル-β-D-キシロピラノシルアジド、2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-マンノピラノシルアジド、3,4,6-トリ-O-アセチル-2-O-トリフルオロメタンスルホニル-β-D-マンノピラノシルアジド、1,3,4,6-テトラ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-D-ガラクトピラノース、1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-6-アジド-6-デオキシ-α-D-ガラクトピラノース、2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシルアジド、2,3,4-トリ-O-アセチル-6-アジド-6-デオキシ-β-D-グルコピラノシルアミン、2,3,4-トリ-O-アセチル-6-アジド-6-デオキシ-β-D-グルコピラノシルアジド、2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルアジド、6-O-トシル-β-D-グルコピラノシルアジド、1,3,4,6-テトラ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-D-グルコピラノース、1,3,4-トリ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-6-O-トリチル-6-D-グルコピラノース、2,3,4-トリ-O-アセチル-6-O-トシル-β-D-グルコピラノシルアジド、3,4,6-トリ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシル トリクロロアセトイミデート、3,4,6-トリ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-D-グルコピラノシル トリクロロアセトイミデート、1,2,4,6-テトラ-O-アセチル-3-アジド-3-デオキシ-D-グルコピラノース、1,3,4-トリ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-β-D-グルコピラヌロン酸メチルエステル、3,4,6-トリ-O-アセチル-2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-グルコピラノシルアジド、1,3,4-トリ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-α-L-フコピラノース、1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-6-アジド-L-フコピラノース、1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-6-アジド-6-デオキシ-D-ガラクトピラノース、エチル 3-アジド-3-デオキシ-N-メチル-β-D-グルコピラノシドウロンアミド、エチル 3-アジド-3-デオキシ-2,4-ジ-O-アセチル-β-D-グルコピラヌロン酸ベンジルエステル、エチル 3-アジド-3-デオキシ-β-D-グルコピラヌロン酸メチルエステル、β-L-フコピラノシルアジド、2-フルオロ-4-ニトロフェニル 2-アジド-2-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシド、β-D-ガラクトピラノシルアジド、β-D-マルトシルアジドヘプタアセテート、β-D-ラクトシルアジド、β-D-ラクトシルアジドヘプタアセテート、メチル 4-アジド-4-デオキシ-β-D-グルコピラノシド、メチル 4-アジド-2,3,6-トリ-O-ベンゾイル-4-デオキシ-β-D-グルコピラノシド、メチル 2,3,4-トリ-O-アセチル-6-アジド-6-デオキシ-α-D-グルコピラノシド、メチル 2,3,4-トリ-O-アセチル-β-D-グルコピラヌロノシルアジド、β-D-マルトシルアジド、α-D-マンノピラノシルアジド、フェニル 2-アジド-2,6-ジデオキシ-1-セレノ-α-D-ガラクトピラノシド、フェニル 3,4,6-トリ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-1-セレノ-α-D-ガラクトピラノシド、フェニル 2-アジド-2-デオキシ-1-セレノ-α-D-ガラクトピラノシド、フェニル 3,6-ジ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-1-セレノ-α-D-ガラクトピラノシド、2,3,4-トリ-O-アセチル-β-L-フコピラノシルアジド、2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシルアジド、2-アセトアミド-3,4,6-トリ-O-アセチル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシルアジド、β-D-グルコピラノシルアジド、6-アジド-6-デオキシ-β-D-グルコピラノシルアミン、1-O-アセチル-4-アジド-2,3,6-トリ-O-ベンゾイル-4-デオキシ-D-グルコピラノース、2-アジド-2-デオキシ-D-ガラクトース、3-アジド-3-デオキシ-D-ガラクトース、4-アジド-4-デオキシ-D-ガラクトース、3-アジド-3-デオキシ-4-ヒドロキシメチル-1,2-O-イソプロピリデン-α-D-リボフラノース、6-アジド-6-デオキシ-2,3-O-イソプロピリデン-α-L-ソルボフラノース、β-D-セロビオシルアジド、β-D-セロビオシルアジドヘプタアセテート、2-クロロ-4-ニトロフェニル 2-アジド-2-デオキシ-β-D-ガラクトピラノシド、3,4-ジ-O-アセチル-1,6-アンヒドロ-2-アジド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノース、6,6’-ジアジド-6,6’-ジデオキシ-α,α-D-トレハロース、3,6-ジ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-α-D-グルコピラノース、2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-グルコピラノシルアジド、1,6-ジ-O-アセチル-2-アジド-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-α-D-グルコピラノース、3,4-ジ-O-アセチル-2-アジド-2-デオキシ-D-グルコピラノース、6,6’-ジアジド-6,6’-ジデオキシ-α,α-D-トレハロースヘキサアセテート、3-アジド-3-デオキシ-1,2:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-α-D-アロフラノース、3-アジド-3-デオキシ-1,2-O-イソプロピリデン-α-D-アロフラノース、4-O-(6-アジド-6-デオキシ-β-D-グルコピラノシル)-D-グルコース、2-アジド-2-デオキシ-L-フコピラノース、6-アジド-L-フコース、6-アジド-6-デオキシ-D-ガラクトース、2-アジド-2-デオキシ-1-O-(tヘキシルジメチルシリル)-β-L-フコピラノース、2-アジド-2-デオキシ-D-グルコフラヌロノ-6,3-ラクトン、6-アジド-6-デオキシ-1,2-O-イソプロピリデン-α-D-グルコフラノース、4-アジド-4-デオキシ-D-グルコース、6-アジド-6-デオキシ-D-グルコピラノース、1,6-アンヒドロ-2-アジド-3-O-ベンジル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノース、1,6-アンヒドロ-2-アジド-4-O-ベンジル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノース、1,6-アンヒドロ-2-アジド-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-β-D-グルコピラノース、1,6-アンヒドロ-2-アジド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノース、2-アジド-2-デオキシ-D-グルコース、6-O-アセチル-2-アジド-3,4-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-D-グルコピラノース、3-アジド-3-デオキシ-1,2:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-α-D-グルコフラノース、3-アジド-3-デオキシ-D-グルコピラノースであってもよい。式Ii又は式IjのYは、チオールケミストリーによって核酸担体を機能性試薬と接触させることによって導入されてもよい。一実施形態において、機能性試薬は、糖(単糖、二糖、又は多糖)チオールから選択される。糖チオールは、限定されないが、β-D-GlcNAc-エチル-チオール、β-LacNAc-PEG3-チオール、β-Lac-PEG3-チオール、α-Man-PEG3-チオール、β-Glc-PEG3-チオール、β-GlcNAc-PEG3-チオール、β-Gal-PEG3-チオール、α-GalNAc-PEG3-チオール、β-GalNAc-PEG3-チオール、β-Gal-PEG3-チオール、β-GlcNAc-PEG3-チオール、α-Man-PEG3-チオール、β-Glc-PEG3-チオール、β-Lac-PEG3-チオール、β-LacNAc-PEG3-チオール及びNeuAcα(2-6)LacNAc-PEG3-チオールであってもよい。
【0029】
式Ig又は式IhのZは、ジスルフィドケミストリーによって核酸担体を機能性試薬と接触させることによって導入されてもよい。一実施形態において、機能性試薬は、デオキシ糖(単糖、二糖、又は多糖)チオールから選択される。糖チオールは、限定されないが、1-チオ-β-D-グルコピラノース、2-アセトアミド-2-デオキシ-1-チオ-β-D-グルコピラノース、1-チオ-β-D-ラクトピラノース、C-グルコシルプロピルチオール及びC-マンノシルチオールであってもよい。
【0030】
一実施形態は、本明細書に記載される核酸担体のうちのいずれか1種以上を含むナノ粒子組成物を含む。当該ナノ粒子組成物は、薬剤、例えば、核酸をさらに含んでもよい。本発明のナノ粒子組成物は、薬剤を細胞に導入するのに有用であってもよい。この薬剤は核酸であってもよい。本発明のナノ粒子組成物は、トランスフェクション剤として有用であってもよい。本発明のナノ粒子組成物は、疾患を治療又は予防する方法において有用であってもよい。
【0031】
一実施形態において、ナノ粒子組成物は、それぞれが異なるアミン及び/又は側鎖及び/又は糖を含む核酸担体の混合物を含んでもよい。これらの核酸担体は、一定の比率で混合されてもよい。また、3つの核酸担体との混合物の例としては、第1核酸担体と第2核酸担体と第3核酸担体との比率は、i:j:kであってもよく、i、j、kは、独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20、又はこれらのうちのいずれか2つの間の値から選択される。
【0032】
一実施形態において、ナノ粒子組成物は、1種以上の核酸剤を含んでもよい。核酸剤は、治療用又は免疫原性であってもよい。本明細書で使用される場合、用語「核酸」は、任意の天然又は合成のDNA又はRNA分子を指す。本発明の組成物の薬剤、例えば、治療的又は免疫原性核酸剤は、ナノ粒子組成物の核酸担体と複合体化され又はナノ粒子組成物の核酸担体にカプセル化されてもよい。
【0033】
一実施形態において、核酸剤は、RNA分子又はDNA分子であってもよい。核酸剤は、1種以上の異なるRNA分子、DNA分子、又はこれら2つの組み合わせの混合物であってもよい。用語「DNA」又は「DNA分子」又は「デオキシリボ核酸分子」は、デオキシリボヌクレオチドのポリマーを指す。DNA分子は、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、又はcDNAであってもよい。DNA分子は、野生型又は遺伝子組換えのタンパク質、ペプチド又はポリペプチドをコードしてもよい。コードされるタンパク質、ペプチド、又はポリペプチドは、抗原であってもよい。用語「RNA」又は「RNA分子」又は「リボ核酸分子」は、リボヌクレオチドのポリマーを指す。このポリマーは、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、17000、18000、19000、20000、21000、22000、23000、24000、25000、26000、27000、28000、29000、30000、31000、32000、33000、34000、35000、36000、37000、38000、39000、40000、41000、42000、43000、44000、45000、46000、47000、48000、49000、50000又はこれより多いリボヌクレオチドを有してもよい。このポリマーは、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、17000、18000、19000、20000、21000、22000、23000、24000、25000、26000、27000、28000、29000、30000、31000、32000、33000、34000、35000、36000、37000、38000、39000、40000、41000、42000、43000、44000、45000、46000、47000、48000、49000、若しくは50000個のリボヌクレオチド、又は上述の数のうちのいずれか2つの間の範囲内の数のリボヌクレオチドを有してもよい。RNA分子は、レプリコンRNA(repRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、miRNA、一本鎖ガイドRNA(sgRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)又は転移RNA(tRNA)であってもよい。レプリコンRNA(repRNA)は、感染性子孫ビリオンを産生できない、ゲノム複製可能であるが子孫欠陥のあるRNAウイルスゲノムを指す。通常、repRNAとして使用するために修飾されたウイルスゲノムには、「陽性鎖」RNAウイルスが含まれる。修飾されたウイルスゲノムは、mRNAと複製のテンプレートとの両方として機能する。低分子干渉RNA(siRNA)は、RNA干渉を指示又は媒介できる約10~50ヌクレオチド(又はヌクレオチド類似体)を含むRNA(又はRNA類似体)を指す。マイクロRNA(miRNA)は、コードmRNAの安定性と翻訳のいずれか又は両方に影響を与えることにより真核生物の遺伝子発現の転写後調節に関与する小さな(20~24nt)調節的な非コードRNAを指す。メッセンジャーRNA(mRNA)は、通常、一本鎖RNAであり、1つ以上のポリペプチド鎖のアミノ酸配列を定義する。この情報は、リボソームがmRNAと結合した場合、タンパク質合成の際に翻訳される。DNA又はRNA分子は、核酸骨格、リボース糖部分及び核酸塩基自体において化学的に修飾されてもよい。
【0034】
RNA分子は、モノシストロン性又はポリシストロン性mRNAであってもよい。モノシストロン性mRNAは、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする1つの配列のみを含むmRNAを指す。ポリシストロン性mRNAは、通常、2つ以上のタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする2つ以上の配列を指す。mRNAは、抗原として作用するタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードしてもよい。
【0035】
一実施形態において、DNA分子は、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA又はcDNAであってもよい。RNA分子は、レプリコンRNA(repRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、miRNA、一本鎖ガイドRNA(sgRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)又は転移RNA(tRNA)であってもよい。治療的又は免疫原性核酸剤は、核酸担体に非共有結合又は共有結合されてもよい。治療的又は免疫原性核酸剤は、静電相互作用を介して荷電した核酸担体に静電的に結合された核酸剤であってもよい。この核酸剤は、静電相互作用及び水素結合を介して荷電した核酸担体に結合されてもよい。
【0036】
一実施形態において、本明細書に記載されるナノ粒子組成物は、抗原をコードする免疫原性又は治療的核酸剤を含んでもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「カプセル化」は、完全なカプセル化、部分的なカプセル化又はその両方を伴う、活性剤又は治療剤を提供するナノ粒子を指すことができる。一実施形態においては、治療剤は、核酸(非限定的な例として、メッセンジャーRNA)である。好ましい実施形態において、核酸は、ナノ粒子に完全にカプセル化される。核酸治療剤の場合、完全なカプセル化は、Ribogreen(登録商標)アッセイによって決定されてもよい。Ribogreen(登録商標)は、溶液中のオリゴヌクレオチドと一本鎖DNA又はRNAを定量化するための超高感度の蛍光核酸染色剤である(Thermo Fisher Scientific(サーモフィッシャーサイエンティフィック)-米国から入手可能)。
【0038】
本明細書で使用される場合、「抗原」は、免疫応答を引き起こす分子として定義される。免疫応答は、抗体産生、又は特定の免疫学的活性細胞の活性化、又はその両方に関してもよい。抗原は、高分子を含む、免疫応答を刺激できる任意の分子を指してもよい。一実施形態において、この高分子は、タンパク質、ペプチド又はポリペプチドである。抗原は、病原体又は癌細胞若しくはその派生物の構造成分であってもよい。抗原は、合成され、宿主で組み換え的に産生されてもよいし、又は組織試料、細胞若しくは体液が挙げられるがこれらに限定されない生体試料に由来してもよい。
【0039】
抗原は、ワクチン抗原、寄生虫抗原、細菌抗原、腫瘍抗原、環境抗原、治療抗原又はアレルゲンであってもよいが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、ヌクレオチドワクチンは、抗原を送達することにより、対象の体の適応免疫応答を刺激することができるDNA又はRNAベースの予防又は治療組成物である。ワクチン接種によって誘導される免疫応答は、通常、免疫学的記憶の発達をもたらし、その後に生物が抗原又は感染剤に遭遇したときに迅速に反応する能力をもたらす。
【0040】
本明細書において、核酸の担体として「核酸担体」を用いることが好ましく、そのため、「核酸担体」という名称を付している。しかしながら、非核酸剤が、本発明の実施形態であってもよい。
【0041】
一実施形態において、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、脂質複合体を含んでもよい。一実施形態において、脂質複合体は、粒子の凝集を防止できる点で有用である場合がある。本明細書における組成物中に存在してもよい脂質複合体としては、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質複合体が挙げられるが、これに限定されない。PEG-脂質の非制限例としては、脂質に結合したPEG(例えば、DMG-PEG 2000)、リン脂質に結合したPEG(例えば、ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE))、コレステロール又はその誘導体にコンジュゲートされたPEG及びこれらの混合物が挙げられる。ある場合において、PEGは、必要に応じて、アルキル基、アルコキシ基、アシル基又はアリール基で置換されてもよい。
【0042】
PEGは、分子量で分類され、例えば、PEG2000は、約2000ダルトンの平均分子量を有し、PEG5000は、約5000ダルトンの平均分子量を有する。PEGは、Avanti Polar Lipids(アバンティ・ポーラ・リピッド)から市販されている。本明細書に記載のPEG-脂質複合体のPEG部分は、550ダルトン~10,000ダルトンの範囲の平均分子量を含んでもよい。
【0043】
鎖の長さと飽和度の異なる様々なアシル鎖基を有するホスファチジルエタノールアミンが、脂質複合体を形成するためにPEGにコンジュゲートされてもよい。ホスファチジルエタノールアミンは、市販されているか、又は従来の技術を用いて単離されるか若しくは合成されてもよい。ホスファチジルエタノールアミンは、炭素鎖長がC10-C20の範囲にある飽和又は不飽和の脂肪酸を含んでもよい。ホスファチジルエタノールアミンは、1価又は多価の不飽和脂肪酸と、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の混合物とを含んでもよい。想到されるホスファチジルエタノールアミンとしては、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
PEG-脂質は、コレステロール又はコレステロールの誘導体にコンジュゲートされたPEGを含んでもよい。コレステロールの誘導体の例としては、コレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
ナノ粒子組成物に含まれるPEG-脂質のサイズ、相対量及び分布は、ナノ粒子組成物の物理的特性に影響を与えてもよく、粒子特性を制御するために使用することができる。制御可能な物理的特性は、ナノ粒子の直径、ナノ粒子の凝集する傾向、各ナノ粒子内の核酸分子の数、ナノ粒子組成物中のナノ粒子の濃度、治療的及び免疫原性核酸剤の細胞内送達の有効性及び/又は細胞によるナノ粒子の取り込みの有効性であってもよいが、これらに限定されない。国際出願第PCT/US19/67402号(Poulami Talukder、Jasdave S. Chahal、Justine S. McPartlan、Omar Khan、Karl Ruping. Nanoparticle Compositions for Efficient Nucleic Acid Delivery and Methods of Making and Using the Same)並びにReichmuth,A.M.ら、「mRNA vaccine delivery using lipid nanoparticles」、Therapeutic Delivery 7,5(2016):319~34を参照。両方の文献は、完全に記載されているように参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
ナノ粒子組成物は、ナノ粒子組成物あたりPEG-脂質を10モル(mol)%以下で含有してもよい。ナノ粒子組成物は、ナノ粒子組成物あたり、PEG-脂質を、約10モル%、約9モル%、約8モル%、約7モル%、約6モル%、約5モル%、約4モル%、約3モル%、約2モル%又は約1モル%で含んでもよく、上記のいずれか2つの整数の間の任意の量で含んでもよい。PEG-脂質を含むナノ粒子組成物は、PEG-脂質を欠く組成物のナノ粒子よりも直径が小さいナノ粒子を含んでもよい。
【0047】
ナノ粒子組成物は、「両親媒性脂質」を含有してもよい。本明細書で使用される場合、「両親媒性脂質」は、非極性疎水性単位又は「尾部」と極性「頭部」を有する任意の材料を指す。極性基としては、リン酸基、カルボキシル基、スルファト基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトロ基、及びヒドロキシル基を挙げてもよいが、これらに限定されない。非極性基としては、長鎖の飽和及び不飽和の脂肪族炭化水素基と、1つ以上のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、複素環基で置換されたそのような基とを挙げてもよいが、これらに限定されない。両親媒性脂質の例としては、リン脂質、アミノ脂質及びスフィンゴ脂質が挙げられるが、これらに限定されない。リン脂質の代表的な例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレイルホスファチジルコリン、リソホスファチジルコリン、リソホスファチジルエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。ホスファチジルコリンの代表的な例としては、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン及びジリノレオイルホスファチジルコリンが挙げられるが、これらに限定されない。ホスファチジルエタノールアミンの代表的な例としては、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン又はDOPEが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
当該ナノ粒子組成物は、両親媒性脂質を、ナノ粒子組成物あたり10モル%~15モル%の範囲の量で含有してもよい。両親媒性のモル%は、10モル%、11モル%、12モル%、13モル%、14モル%、若しくは15モル%、又は上述の数のうちのいずれか2つの間の範囲内の値であってもよい。
【0049】
一実施形態において、ナノ粒子組成物は、コレステロール又はコレステロールの誘導体を含んでもよい。コレステロールの誘導体の例としては、コレスタノール、5,6-エポキシコレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、24-エチルコレステロール、24-メチルコレステロール、コレン酸、3-ヒドロキシ-5-コレステン酸、パルミチン酸コレステリル、アラキドン酸コレステリル、アラキジン酸コレステリル、ミリスチン酸コレステリル、パルミトレイン酸コレステリル、リグノセリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、エルカ酸コレステリル、α-リノレン酸コレステロール、リノール酸コレステリル、ホモ-γ-リノレン酸コレステリル、4-ヒドロキシコレステロール、6-ヒドロキシコレステロール、7-ヒドロキシコレステロール、19-ヒドロキシコレステロール、20-ヒドロキシコレステロール、22-ヒドロキシコレステロール、24-ヒドロキシコレステロール、25-ヒドロキシコレステロール、27-ヒドロキシコレステロール、27-アルキンコレステロール、7-ケトコレステロール、7-デヒドロコレステロール、8-デヒドロコレステロール、24-デヒドロコレステロール、5α-ヒドロキシ-6-ケトコレステロール、20,22-ジヒドロキシコレステロール、7,25-ジヒドロキシコレステロール、7,27-ジヒドロキシコレステロール、7-ケト-25-ヒドロキシコレステロール、フコステロール、フィトステロール、11,14-エイコサジエン酸コレステリル、ジメチルヒドロキシエチルアミノプロパンカルバモイルコレステロールヨウ化物及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。コレステロールの誘導体は、糖部分及び/又はアミノ酸を含んでもよい。一実施形態において、アミノ酸は、セリン、スレオニン、リジン、ヒスチジン、アルギニン又はそれらの誘導体から選択される。ナノ粒子組成物は、ナノ粒子組成物あたりコレステロール又はコレステロールの誘導体を50モル%~75モル%の範囲の量で含んでもよい。コレステロール又はコレステロール誘導体のモル%は、50モル%、51モル%、52モル%、53モル%、54モル%、55モル%、56モル%、57モル%、58モル%、59モル%、60モル%、61モル%、62モル%、63モル%、64モル%、65モル%、66モル%、67モル%、68モル%、69モル%、70モル%、71モル%、72モル%、73モル%、74モル%、若しくは75モル%、又は上述の数のうちのいずれか2つの間の範囲内の値であってもよい。
【0050】
一実施形態において、ナノ粒子組成物、例えば、本明細書における医薬組成物は、従来の周知の滅菌技術により滅菌されてもよい。水溶液は、使用のためにパッケージ化されてもよいし又は凍結乾燥されてもよい。凍結乾燥製剤は、投与前に滅菌水溶液と組み合わせられてもよい。一実施形態において、ナノ粒子組成物は、薬学的に許容される担体を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、対象化合物を一方の器官若しくは身体の一部から他方の器官若しくは身体の一部へ運搬若しくは輸送する際に関与する、医薬的に許容される材料、組成物又はビヒクル、例えば、液体若しくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、滑剤、タルク(滑石)、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム若しくはステアリン酸亜鉛若しくはステアリン酸)、又は溶媒カプセル化材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分に適合的であり、かつ、それが対象に対して傷害性でないという意味において「薬学的に許容可能」である。薬学的に許容される担体となる材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコース、マンノース及び/若しくはスクロース等の糖類、(2)コーンスターチ及び/若しくはポテトスターチ等の澱粉、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース及び/若しくは酢酸セルロース等のセルロース、並びにその誘導体、(4)トラガント粉、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及び/若しくはタルク等の潤滑剤、(S)ココアバター及び/若しくは坐剤用ワックス等の賦形剤、(9)ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び/若しくは大豆油等の油、(10)プロピレングリコール等のグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、及び/若しくはマンニトール等のポリオール、(12)グリセリド、オレイン酸エチル、及び/若しくはラウリン酸エチル等のエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び/若しくは水酸化アルミニウム等の緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)パイロゲンフリー水、(17)等張食塩水及び/若しくはPEG400等の希釈剤、(18)リンゲル液、(19)エタノール等のC2-C12アルコール、(20)脂肪酸、(21)pH緩衝液、(22)ポリペプチド及び/若しくはアミノ酸等の増量剤、(23)血清アルブミン、HDL、LDL等の血清成分、(24)ポリソルベート(Tween 80)及び/若しくはポロキサマー等の界面活性剤、並びに/又は、(25)充填剤、バインダー、湿潤剤、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、保存剤及び/又は酸化防止剤等の医薬製剤に使用される他の非毒性の適合性物質が挙げられる。本明細書において、用語「賦形剤」、「薬学的に許容される担体」等は交換可能に使用される。
【0051】
一実施形態は、対象の疾患又は病気を治療又は予防する方法を含む。この方法は、本明細書に記載のナノ粒子組成物又は医薬組成物のいずれかを提供することを含んでもよい。この方法は、治療有効量の当該ナノ粒子組成物を対象に投与することを含んでもよい。
【0052】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、所望の治療効果を達成するのに効果的なナノ粒子組成物の量を指す。治療効果は、治療に適用可能な合理的な利益/リスク比で達成されてもよい。「治療有効量」は、血清中に抗原特異的抗体が出現するのに十分な量を指してもよい。「治療有効量」は、疾患の症状を軽減するのに十分な量を指してもよい。「治療有効量」は、疾患の症状を消失させるのに十分な量を指してもよい。ウイルス感染症を治療する場合、糞便、体液又は分泌物中のウイルスの減少により疾患の症状の軽減を評価してもよい。ナノ粒子組成物は、免疫応答を生じさせるのに有効な投与量及び投与経路で投与されてもよい。
【0053】
治療有効性は、所望の結果を達成するために必要な活性剤の有効量及び投与時間に依存してもよい。ナノ粒子組成物の投与は、予防措置であってもよい。ナノ粒子組成物の投与は、感染剤に対する免疫を促進して、特に免疫系が弱い患者、高齢者又は乳幼児における免疫のゆっくりした発達に関連する合併症を最小限に抑える治療措置であってもよい。
【0054】
正確な投与量は、様々な要因に基づいて、個々の患者を考慮して医師によって選択されてもよい。投与量と投与は、十分なレベルの活性剤若しくは薬剤を提供するか、又は所望の効果を維持するために調整されてもよい。例えば、考慮される可能性のある要因としては、疾患の種類及び重症度、患者の年齢及び性別、薬物の組み合わせ、並びに療法に対する個別の反応が挙げられてもよい。
【0055】
ナノ粒子組成物における活性医薬剤の治療有効性及び毒性は、標準的な製薬手順により、例えば、生体外で培養した細胞又は実験動物において集団の50%に対する治療有効量(ED50)と集団の50%に対する致死投与量(LD50)とを決定することにより、決定されてもよい。ナノ粒子組成物は、治療指標と呼ばれる毒性と治療効果との用量比(LD50/ED50)に基づいて評価されてもよく、治療指標の大きな値が評価に使用されてもよい。細胞及び動物の研究から得られたデータは、ヒト用の投与量の定式化に使用されてもよい。
【0056】
治療有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推定されてもよい。細胞培養で決定された、IC50(すなわち、症状の半値阻害を達成する治療薬の濃度)を含有する循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルで治療有効用量が定式化されてもよい。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定されてもよい。任意の特定の投与量の効果は、適切なバイオアッセイにより監視されてもよい。
【0057】
投与される粒子の量は、使用される特定の治療剤(例えば、核酸)、治療される疾患又は障害、患者の年齢、体重、及び状態、並びに臨床医の判断に依存する。治療有効用量は、対象の体重1キログラムあたり0.001ng~50mgの治療的又は免疫原性核酸であってもよい。治療有効用量は、対象の体重1キログラムあたり、0.001ng、0.002ng、0.003ng、0.004ng、0.005ng、0.006ng、0.007ng、0.008ng、0.009ng、0.01ng、0.02ng、0.03ng、0.04ng、0.05ng、0.06ng、0.07ng、0.08ng、0.09ng、0.1ng、0.2ng、0.3ng、0.4ng、0.5ng、0.6ng、0.7ng、0.8ng、0.9ng、0.001μg、0.002μg、0.003μg、0.004μg、0.005μg、0.006μg、0.007μg、0.008μg、0.009μg、0.01μg、0.02μg、0.03μg、0.04μg、0.05μg、0.06μg、0.07μg、0.08μg、0.09μg、0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.6μg、0.7μg、0.8μg、0.9μg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、21mg、22mg、23mg、24mg、25mg、26mg、27mg、28mg、29mg、30mg、31mg、32mg、33mg、34mg、35mg、36mg、37mg、38mg、39mg、40mg、41mg、42mg、43mg、44mg、45mg、46mg、47mg、48mg、49mg、若しくは50mg、又は上述の数のうちのいずれか2つの間の範囲内の値の治療的核酸又は免疫原性核酸であってもよい。治療的及び免疫原性核酸は、治療投与量ごとに使用された異なる核酸の組み合わせであってもよい。「対象」という用語はヒト又は動物を意味する。好ましくは、動物は脊椎動物である。一実施形態において、脊椎動物は、霊長類動物、齧歯動物、家畜又は狩猟動物から選択される。霊長類動物としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びアカゲザルなどのマカクが挙げられる。齧歯動物は、マウス、ラット、モルモット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、及びハムスターから選択されてもよい。家畜又は狩猟動物は、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、飼いネコなどのネコ種、イヌなどのイヌ種、キツネ、オオカミ、ニワトリ、エミュー、ダチョウなどのトリ種、及びトラウト、ナマズ、サーモンなどの魚類から選択されてもよい。患者又は対象は、上記のもの又は上記のもののサブセットから選択されてもよい。患者又は対象は、上記の全てから選択されてもよいが、ヒト、霊長類動物、齧歯動物などの1つ以上の群又は種を除外してもよい。一実施形態において、患者又は対象は、霊長類動物、ヒトなどの哺乳動物であってもよい。本明細書では「患者」及び「対象」という用語は交換可能に使用される。好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類動物、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ又はブタであってもよいが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、疾患又は障害を有する動物モデルを表す対象であってもよい。加えて、本明細書に記載の方法は、家畜及び/又はペットの治療を目的とするものであってもよい。対象は、雄(男性)であっても雌(女性)であってもよい。
【0058】
本明細書で使用される場合、「投与する」、「投与すること」、「投与」などの用語は、対象への組成物の配置を意味する。投与は、組成物を所望の部位に少なくとも部分的に局在させる方法又は経路で実行されてもよい。所望の部位に配置することが、所望の効果の達成につながってもよい。本明細書に記載のナノ粒子組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、肺、鼻、直腸、又は局所(口腔内及び舌下を含む)投与を含む経口又は非経口経路を含むが、これらに限定されない本分野において公知の任意の適切な経路により投与されてもよい。
【0059】
例示的な投与形態としては、注射、輸液、点滴、吸入又は摂取が挙げられるが、これらに限定されない。「注射」としては、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、心室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、脳内及び胸骨内の注射及び輸液が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、当該組成物は、静脈輸液又は静脈内注射により投与されてもよい。
【0060】
当該ナノ粒子組成物は、標的遺伝子組換え(ジーンターゲッティング)、遺伝子サイレンシング、又は遺伝子発現を調節する他の方法のための治療的又は免疫原性核酸の送達に使用されてもよい。治療的又は免疫原性核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)又は二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)であってもよい。通常、siRNAは、21~23ヌクレオチドの長さである。siRNAは、宿主細胞内で発現されたときに、標的遺伝子のmRNA転写産物に含まれる配列と相補的な配列を含んでもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、モルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的遺伝子のmRNA転写産物に含まれる配列と相補的な配列を含んでもよい。治療的又は免疫原性核酸は、特定の標的生物内の特定の標的遺伝子に対する干渉RNA(iRNA)であってもよい。iRNAは、標的ポリヌクレオチドの発現又は翻訳の配列特異的なサイレンシングを誘導することにより、遺伝子の発現をダウンレギュレートするか又は防止してもよい。iRNAは、標的遺伝子の発現を完全に阻害してもよい。iRNAは、未処置の対照の発現レベルと比較して、標的遺伝子の発現レベルを低下させてもよい。治療的又は免疫原性核酸は、マイクロRNA(miRNA)であってもよい。miRNAは、ヘアピンRNA(hpRNA)などの短いRNAであってもよい。miRNAは、内因性細胞酵素の活性により、標的細胞内の生物学的活性dsRNAに切断されてもよい。RNAは、二本鎖RNA(dsRNA)であってもよい。dsRNAは、少なくとも25ヌクレオチドの長さであってもよいし、又はより長くてもよい。dsRNAは、標的遺伝子(複数種可)の配列と相補的な配列を含んでもよい。一実施形態は、対象における標的遺伝子組換えのためのナノ粒子組成物の使用を含む。一実施形態は、本発明のナノ粒子組成物を対象に投与することを含む標的遺伝子組換えの方法を含む。
【0061】
一実施形態において、治療的又は免疫原性核酸は、標的タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の活性又は合成を完全に又は部分的に減少させ、阻害し、妨害するか、又は調節する薬剤であってもよいし、又は該薬剤をコードしてもよい。標的遺伝子は、宿主生物のゲノムに含まれるいずれの遺伝子であってもよい。治療的又は免疫原性核酸の配列は、標的遺伝子の核酸配列に対して100%相補的でなくてもよい。
【0062】
一実施形態において、当該ナノ粒子組成物は、対象における遺伝情報の標的化された特異的変化に使用されてもよい。一実施形態は、本明細書におけるナノ粒子組成物の投与を含む、対象における遺伝情報の標的化された特異的変化を含む。本明細書で使用される場合、「変化」という用語は、対象の細胞におけるゲノムの変更を指す。変化は、標的遺伝子の配列におけるヌクレオチドの挿入又は欠失であってもよい。「挿入」は、標的遺伝子の配列に1つ以上のヌクレオチドを添加することを指す。「欠失」という用語は、標的遺伝子の配列における1つ以上のヌクレオチドの喪失又は除去を指す。変化は、標的遺伝子の配列の修正であってもよい。「修正」は、宿主生物の遺伝子型及び/又は表現型の改善によって顕在化された遺伝子のより好ましい発現をもたらし得る、例えば、挿入、欠失又は置換による標的遺伝子の配列における1つ以上のヌクレオチドの変化を指す。一実施形態は、対象における遺伝情報の標的化された特異的変化のための本発明のナノ粒子組成物の使用を含む。一実施形態は、本発明のナノ粒子組成物を対象に投与することを含む、対象における遺伝情報の標的化された特異的変化の方法を含む。一実施形態は、対象の細胞が培養又は懸濁される溶液に当該ナノ粒子組成物を直接投与することによって、対象の細胞において遺伝情報をエキソビボ(生体外)で変化させるための本発明のナノ粒子組成物の使用を含む。
【0063】
遺伝情報の変化は、ゲノム編集技術を介して達成されてもよい。本明細書で使用される場合、「ゲノム編集」は、ゲノムのヌクレオチド配列を正確又は制御された方法で改変するプロセスを指す。
【0064】
例示的なゲノム編集システムは、例えば、2018年8月30日に公開され、完全に記載されているように参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2018/154387号パンフレットで記載されているように、クラスター化された規則的な配置の短い回文配列リピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats、CRISPR)システムである。一般的に、「CRISPRシステム」は、CRISPR関連(Cas)タンパク質をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列、tracrメイト配列、ガイド配列、又はCRISPR関連方法による遺伝子編集若しくは遺伝子調節に関連する他の配列及び転写産物を含む、Cas遺伝子の発現及び活性に関与する転写産物及び他のエレメントを指す。1つ以上のtracrメイト配列は、プロセシング前のガイド配列、又はプロセシング後のcrRNAにヌクレアーゼにより操作可能に連結されていてもよい。完全に記載されているように参照によって本明細書に組み込まれるCongら、Science、15:339(6121):819-823(2013)及びJinekら、Science、337(6096):816-21(2012)で記載されているように、tracrRNAとcrRNAは、連結されてもよく、成熟したcrRNAが部分的なtracrRNAに合成ステムループを介して融合され天然のcrRNA:tracrRNA二重鎖を模倣したキメラ型crRNA-tracrRNAハイブリッドを形成してもよい。本明細書において、単一の融合crRNA-tracrRNAコンストラクトは、ガイドRNA、gRNA又はシングルガイドRNA(sgRNA)とも呼ばれる。sgRNA内で、crRNA部分は、「標的配列」と特定され、tracrRNAは、多くの場合、「足場」と呼ばれる。一実施形態において、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、sgRNAの送達に使用されてもよい。
【0065】
一実施形態において、ナノ粒子組成物は、メガヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、TALENベースのシステム又はジンクフィンガーヌクレアーゼを含む他の例示的なゲノム編集システムを適用するために使用されてもよい。当該ナノ粒子組成物は、これらの遺伝子編集ツールの配列をコードする核酸(RNA及び/若しくはDNA)、並びにそれらの機能に関連する任意の遺伝子産物、タンパク質、又は他の分子の送達に使用されてもよい。
【0066】
一実施形態は、対象におけるゲノム編集のための本発明のナノ粒子組成物の使用を含む。一実施形態は、本発明のナノ粒子組成物を対象に投与することを含む、対象におけるゲノム編集の方法を含む。これらの実施形態における核酸は、sgRNA及びCasタンパク質コードRNAであってもよい。これらの実施形態における核酸は、メガヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、TALENベースのシステム、又はジンクフィンガーヌクレアーゼを介したゲノム編集のためのものであってもよい。
【0067】
一実施形態において、当該ナノ粒子組成物は、例えば、対象から細胞を単離し、遺伝子を編集し、編集された細胞を対象に移植して戻すことにより、生体内又は生体外で対象における標的遺伝子組換え又は遺伝子編集に使用されてもよい。一実施形態は、本明細書におけるナノ粒子組成物を対象から単離した細胞に投与することを含む方法を含む。この方法は、標的遺伝子組換えを含んでもよい。この方法は、編集された細胞をその対象に移植して戻す(又は別の対象に移植する)ことを含んでもよい。
【0068】
一実施形態は、薬剤を細胞に導入する方法を含む。この方法は、細胞を本明細書におけるナノ粒子組成物に曝露することを含んでもよい。この方法は、薬剤が核酸である場合、トランスフェクションを行う方法であってもよい。薬剤は、本明細書に記載されているように構成されたナノ粒子の溶液を、細胞が培養される液体培地と混合することにより、細胞に導入されてもよい。
【0069】
実施形態リスト
以下の実施形態リストは、非限定的な実施形態を含む。本発明の実施形態は、実施形態リストのものを含むが、それらに限定されない。
【0070】
1. 式Ia、式Ib、式Ic、式Id、式Ie、式If、式Ig、式Ih、式Ii、式Ij、式IIa又は式IIbの構造を有するか、その構造を含むか、その構造から本質的になるか、又はその構造からなる核酸担体であって、
【化7】
【化8】
式中、Aはアミンリンカーであり、Bは疎水性単位であり、nは0~20の値をとり、Yは糖部分であり、Zはデオキシ糖部分である、核酸担体。
【0071】
2. Aは、N1-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン、N1-(2-アミノエチル)プロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)プロパン-1,3-ジアミン、N1,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(エタン-1,2-ジアミン)、N1,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(N2-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン)、N1-(2-(4-(2-アミノエチル)ピペラジン-1-イル)エチル)エタン-1,2-ジアミン、N1-(2-アミノエチル)-N1-メチルエタン-1,2-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)-N1-メチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)-N1-エチルプロパン-1,3-ジアミン、3-((3-アミノプロピル)(メチル)アミノ)プロパン-1-オール、3,3’-(メチルアザンジイル)ビス(プロパン-1-オール)、N1-(3-アミノプロピル)-N1-メチルブタン-1,4-ジアミン、4-((3-アミノプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(4-アミノブチル)-N1-メチルブタン-1,4-ジアミン、4-((4-アミノブチル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4,4’-(メチルアザンジイル)ビス(ブタン-1-オール)、3-((3-アミノプロピル)(エチル)アミノ)プロパン-1-オール、3,3’-(エチルアザンジイル)ビス(プロパン-1-オール)、N1-(3-アミノプロピル)-N1-エチルブタン-1,4-ジアミン、4-((3-アミノプロピル)(エチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-(エチル(3-ヒドロキシプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(2-アミノエチル)-N1-メチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(4-アミノブチル)-N1-エチルブタン-1,4-ジアミン、4,4’-(エチルアザンジイル)ビス(ブタン-1-オール)、3-((3-アミノプロピル)アミノ)プロパン-1-オール、N1-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン、4-((3-ヒドロキシプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(4-アミノブチル)ブタン-1,4-ジアミン、3,3’-アザンジイルビス(プロパン-1-オール)、4-((3-アミノプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、4,4’-アザンジイルビス(ブタン-1-オール)、N1,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)、2-(ビス(3-アミノプロピル)アミノ)エタン-1-オール、2-((4-アミノブチル)(3-アミノプロピル)アミノ)エタン-1-オール、又は2-(ビス(4-アミノブチル)アミノ)エタン-1-オールからなる群に由来する、実施形態1に記載の核酸担体。
【0072】
3. BはC1-C28アルキル基又はC2-C28アルケニル基である、実施形態1又は実施形態2に記載の核酸担体。
【0073】
4. 上記C1-C28アルキル基又はC2-C28アルケニル基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-N3、C1-C6アルキル、ハロ(C1-C6アルキル)、-OR、-NR2、-CO2R、-OC(O)R、-CON(R)2、-OC(O)N(R)2、-NHC(O)N(R)2、-NHC(NH)N(R)2、C3-C8シクロアルキル、C3-C8シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環からなる群から選択される1~4個の置換基で置換されており、Rは、水素、C1-C6アルキル、ハロ(C1-C6アルキル)、C3-C8シクロアルキル、C3-C8シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環からなる群から選択される、実施形態3に記載の核酸担体。
【0074】
5. 各シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環は、さらに、R’で置換されており、R’は、独立して、ハロゲン、-CN、-NO2、-N3、C1-C6アルキル及びハロ(C1-C6アルキル)からなる群から選択される、実施形態4に記載の核酸担体。
【0075】
6. Bは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ブト-3-エン-1-イル基、オクト-7-エン-1-イル基、12-トリデセニル基、14-ペンタデセニル基、17-オクタデセニル基、オレイル基、リノレイル基、アラキドニル基及びリシノレイル基からなる群から選択される、実施形態1から実施形態3のいずれか1つ以上に記載の核酸担体。
【0076】
7. Bは脂肪酸に由来する、実施形態1から実施形態3のいずれか1つに記載の核酸担体。
【0077】
8. 上記脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタン酸、12-ヒドロキシ-9-cis-オクタデセン酸、12-メチルテトラデカン酸、12-メチルトリデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、18-メチルノナデカン酸、19-メチルアラキジン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、フィタン酸、(±)-2-ヒドロキシオクタン酸、(±)-3-ヒドロキシデカン酸、(±)-3-ヒドロキシオクタン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシオクタデカン酸、15-ヒドロキシペンタデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、2-ヒドロキシヘキサデカン酸、2-ヒドロキシテトラデカン酸、2-ヒドロキシドデカン酸、DL-α-ヒドロキシステアリン酸、DL-β-ヒドロキシラウリン酸、DL-β-ヒドロキシミリスチン酸、及びDL-β-ヒドロキシパルミチン酸、共役脂肪酸(例えば、リノール酸の共役異性体(例えば、9,11-CLA));アセチレン脂肪酸(例えば、クレペニン酸);アレン脂肪酸(例えば、ラバレン酸)又はシクロプロペニル脂肪酸(例えば、ステルクル酸)からなる群から選択される、実施形態7に記載の核酸担体。
【0078】
9. 上記脂肪酸は1つ以上の安定同位体を含む、実施形態7及び実施形態8のいずれか1つ以上に記載の核酸担体。
【0079】
10. 上記安定同位体は、炭素又は水素の安定同位体である、実施形態9に記載の核酸担体。
【0080】
11. 炭素の安定同位体は13Cである、実施形態10に記載の核酸担体。
【0081】
12. 水素の安定同位体は2Hである、実施形態10に記載の核酸担体。
【0082】
13. 上記安定同位体を含む上記脂肪酸は、オクタン酸-1-13C、オクタン酸-8-13C、オクタン酸-8,8,8-d3、オクタン酸-2H15、デカン酸-1-13C、デカン酸-10-13C、デカン酸-10,10,10-d3、デカン酸-d19、ウンデカン酸-1-13C、ラウリン酸-12,12,12-2H3、ラウリン酸-2H23、ラウリン酸-1-13C、ラウリン酸-1,12-13C2、トリデカン酸-2,2-2H2、ミリスチン酸-14-13C、ミリスチン酸-1-13C、ミリスチン酸-14,14,14-2H3、ミリスチン酸-2H27、パルミチン酸-1-13C、パルミチン酸-16-13C、パルミチン酸-16-13C,16,16,16-2H3、パルミチン酸-2H31、ステアリン酸-1-13C、ステアリン酸-18-13C、ステアリン酸-18,18,18-2H3、ステアリン酸-2H35、オレイン酸-1-13C、オレイン酸-2H34、リノレン酸-1-13C、リノール酸-2H32、アラキドン酸-5,6,8,9,11,12,14,15-2H8及びエイコサン酸-2H39からなる群から選択される、実施形態10に記載の核酸担体。
【0083】
14. 式Ia、式Ib、式Ie、式If、式Ii、式Ij又は式IIaのYは糖である、実施形態1から実施形態13のいずれか1つ以上に記載の核酸担体。
【0084】
15. 上記糖は、フラノース単糖(例えば、キシロフラノース、リボフラノース又はアラビノフラノース)、ピラノース単糖(例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース)、二糖(例えば、ラクトース、トレハロース)、多糖(例えば、シクロデキストリン)、又は糖誘導体から選択される、実施形態14に記載の核酸担体。一実施形態において、上記糖誘導体はヌクレオシド又はヌクレオチドである。
【0085】
16. 式Ic、式Id、式Ig若しくは式Ih又は式IIbのZはデオキシ糖である、実施形態1に記載の核酸担体。
【0086】
17. 上記デオキシ糖中の糖は、フラノース単糖、ピラノース単糖、二糖、オリゴ糖、多糖又は糖誘導体である、実施形態16に記載の核酸担体。一実施形態において、糖誘導体はヌクレオシド又はヌクレオチドである。
【0087】
18. 上記デオキシ糖は、2-デオキシ-D-リボース、6-デオキシ-L-タガトース、5-デオキシ-キシロフラノース、5-デオキシ-リボフラノース若しくは5-デオキシ-アラビノフラノース、1-デオキシグルコース、2-デオキシグルコース、6-デオキシグルコース、1-デオキシマンノース、2-デオキシガラクトース、6-デオキシガラクトース、1-デオキシラクトース、6-アジド-トレハロース、6-アジド-2,4-ジアセトアミド-2,4,6-トリデオキシ-D-マンノース又は6A-アジド-6A-デオキシ-β-シクロデキストリンである、実施形態16又は実施形態17に記載の核酸担体。
【0088】
19. 実施形態1から実施形態18のいずれか1つ以上に記載の核酸担体と、その中に封入された薬剤とを含むナノ粒子組成物。
【0089】
20. 上記薬剤は核酸である、実施形態19のナノ粒子組成物。
【0090】
21. 上記薬剤は治療用又は免疫原性であり、好ましくは、上記薬剤は治療的又は免疫原性核酸である、実施形態19又は実施形態20に記載のナノ粒子組成物。
【0091】
22. 上記治療的又は免疫原性核酸剤は、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、cDNA、RNA、repRNA、siRNA、miRNA、sgRNA及びmRNAからなる群から選択される、実施形態21に記載のナノ粒子組成物。
【0092】
23. 上記治療的又は免疫原性核酸剤は、感染症、病原体、癌、自己免疫疾患及びアレルゲン性疾患からなる群から選択される1種以上の抗原をコードする、実施形態21又は実施形態22に記載のナノ粒子組成物。
【0093】
24. 上記治療的又は免疫原性核酸剤は、遺伝子の活性をサイレンシングするか、阻害するか又は改変することができるRNA又はDNAを含む、実施形態21から実施形態23のいずれか1つ以上に記載のナノ粒子組成物。
【0094】
25. PEG-脂質をさらに含む、実施形態19から実施形態24のいずれか1つ以上に記載のナノ粒子組成物。
【0095】
26. 上記PEG-脂質は1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]又は1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000である、実施形態25に記載のナノ粒子組成物。
【0096】
27. ナノ粒子組成物あたり1モル%~10モル%の上記PEG-脂質の範囲で上記PEG-脂質を含む、実施形態25又は実施形態26に記載のナノ粒子組成物。
【0097】
28. (1)リン脂質及び/又は(2)コレステロール若しくはその誘導体をさらに含む、実施形態19から実施形態25のいずれか1つに記載のナノ粒子組成物。
【0098】
29. 上記ナノ粒子組成物は上記リン脂質を含み、上記リン脂質は1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)又はジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である、実施形態28に記載のナノ粒子組成物。
【0099】
30. ナノ粒子組成物あたり10モル%~15モル%の上記リン脂質の範囲で上記リン脂質を含む、実施形態28又は実施形態29に記載のナノ粒子組成物。
【0100】
31. ナノ粒子組成物あたり50モル%~75モル%の上記コレステロール又はその誘導体の範囲で上記コレステロール又はその誘導体を含む、実施形態28から実施形態30のいずれか1つ以上に記載のナノ粒子組成物。
【0101】
32. 対象の疾患又は病気を治療又は予防する方法であって、治療有効量の実施形態1から実施形態18のいずれか1つに記載の核酸担体又は実施形態19から実施形態31のいずれか1つに記載のナノ粒子組成物を、必要とする対象に投与する工程を含む、方法。
【0102】
33. 治療有効量の上記ナノ粒子組成物は、上記対象の体重1kgあたり上記治療的又は免疫原性核酸剤を0.01mg核酸~10mg核酸の範囲で含む、実施形態32に記載の方法。
【0103】
34. 上記対象は哺乳動物である、実施形態33に記載の方法。
【0104】
35. 上記哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ又はウシからなる群から選択されるが、必ずしもこれらの例に限定されない、実施形態34に記載の方法。
【実施例】
【0105】
以下の非限定的な実施例は、特定の実施形態を例示するために提供される。
【0106】
実施例1. 糖又はデオキシ糖にコンジュゲートしたデンドロンを含有するナノ粒子組成物
アルキン及びアジド糖は、アミノ糖、ヌクレオシド及び多くの他のグリコシル化複素環を含む、いくつかの生物学的に活性な化合物を合成する際の多用途の出発物質として公知である。さらに、アセチレン化合物とアジドとの間の環化付加反応(「クリックケミストリー」)の開発は、グリココンジュゲート(複合糖質)の分野において新たな可能性を開いた。上記の事実を考慮して、本発明者らは、糖アルキン又はデオキシ糖アジド及び焦点にアジド若しくはアセチレンを有するポリエステルアミンデンドロンから開始して、トリアゾール部分を有する新規核酸担体(式Ia又はIb又はIc又はId)を合成し、それらを、生体外及び生体内でのそれらの遺伝子送達能について評価した。
【0107】
実施例1a. デオキシグルコースデンドロンを含有するナノ粒子組成物
PE-G2-2-デオキシグルコース-A1リシノール酸の合成の例は、以下の通りである。
【化9】
【化10】
【0108】
化合物2:2-アジド-2-デオキシ-D-グルコース(MW:205.17、17mg、0.079μmol)を50mlのRBFに取り(0.6mL)、次いでTHF(1.2mL)に溶解した化合物1、PE-G2-アセチレン-Bocアミン1(MW:1489、118mg、74μmol;公開された手順Barnardら、2011に従って合成した。この文献は、完全に記載されているように参照により本明細書に組み込まれる)をCuSO4.5H2O(2mg、0.079μmol、10モル%、MW 249.69)及びアスコルビン酸ナトリウム(3.1mg、15.8μmol、20モル%、MW 198.11)、及び脱気したTHF:H2O(2mL、1:1)とともに加えた。この反応混合物を23℃で16時間撹拌した。翌日、TLCにより反応が完了したことを確認した。この反応混合物を、100%CH2Cl2(移動相a)から75:22:3 CH2Cl2/MeOH/NH4OHaq(体積による。移動相b)への勾配溶出を用いる24gシリカカラムでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。所望の生成物は71%移動相bで溶出し(75:22:3 CH2Cl2/MeOH/NH4OHaqにおいてRf=0.35)、所望の生成物を黄色油状物として得た(70mg、52%)。MS(ESI) C76H139N15O27に対する計算値 [M+H]+ m/z 1695.0、実測値1695.8;[M+2H]2+ m/z 848.1、実測値848.0;[M+3H]3+ m/z 565.6、実測値565.8。
1H NMR(301MHz、クロロホルム-d) δ ppm 1.11-1.21(m,7H) 1.26-1.29(m,3H) 1.37-1.44(m,1H) 1.42(s,40H) 1.54-1.72(m,18H) 2.12-2.20(m,12H) 2.28-2.43(m,17H) 3.03-3.21(m,19H) 3.41-3.49(m,10H) 3.92-4.38(m,15H) 5.11-5.46(m,4H) 5.98-6.36(m,2H)。
【0109】
化合物3:70mgの化合物3(0.041mmol)を、その化合物を3mlのMeOHに溶解した後、20当量のAcCl(0.06ml)で処理し、この反応物を0℃から23℃で4時間撹拌し、蒸発乾固させ、2mlのDMFに溶解し、0.11mlのEt3N(0.73mmol、20当量)を加え、続いて2mlのDMFに溶解した97.0mgのリシノール酸-NHS(公開された手順Talukderら、公開番号国際公開第2020/132196号(この文献は、完全に記載されているように参照により本明細書に組み込まれる)に従って合成した)を加えた。この反応混合物を23℃で24時間撹拌し、Genevac中で減圧下で濃縮し、反応混合物を、100%CH2Cl2(移動相a)から75:22:3 CH2Cl2/MeOH/NH4OHaq(体積による。移動相b)への勾配溶出を用いるシリカカラム(12g)でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。所望の生成物は55%移動相bで溶出し(75:22:3 CH2Cl2/MeOH/NH4OHaqにおいてRf=0.3)、所望の生成物を黄色油状物(30mg、30%)として得た。MS(ESI) C76H139N15O27に対する計算値 [M+2H]2+ m/z 1209.0、実測値1208.9;[M+3H]3+ m/z 805.9、実測値806.2。1H NMR(301MHz、クロロホルム-d) δ ppm 0.83-0.89(m,13H) 1.11-1.32(m,81H) 1.39-1.47(m,11H) 1.54-1.74(m,23H) 1.92-2.23(m,38H) 2.35-2.55(m,15H) 3.04-3.31(m,17H) 3.52-3.65(m,5H) 3.93-4.37(m,13H) 5.30-5.60(m,8H) 6.18-6.44(m,2H) 6.82-7.01(m,2H)。
【0110】
ナノ粒子製剤
デオキシ糖修飾ポリエステルアミンデンドロン(例えば、PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸):DOPE:コレステロール:DMG-PEG2kを1:0.6:2.88:0.1のモル比で含有するナノ粒子を、NanoAssemblr Benchtop(Precision NanoSystems Inc(プレシジョン・ナノシステムズ)、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア州、カナダ)を用いて製剤化した。DNase/RNaseフリー及びエンドトキシンフリー蒸留水と滅菌したクエン酸緩衝液とでRNAを最終的な所望のpHに希釈した。Benchtopでの製剤化のために、総流量を、水相と有機相の3:1の比率で1分当たり8mLに維持した。250℃で24時間加熱することにより脱発熱原化したガラス製品を使用して、20,000分子量のカットオフ透析を使用して、滅菌したエンドトキシンフリーPBSに対してナノ粒子を透析した。透析したナノ粒子を、0.2ミクロン(0.2μm)ポリ(エーテルスルホン)フィルターで滅菌濾過し、Zetasizer NanoZSマシン(Malvern(マルバーン))で特性解析した。サイズ分布は、多分散性指数が低い単一のピークを特徴としていた。Ribogreen(登録商標)アッセイ(完全に記載されているように参照によって本明細書に組み込まれるGeallら、10.1073/pnas.1209367109)を使用して、カプセル化効率を、PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸及びSEAP mRNAを含有するナノ粒子組成物(pH5で製剤化した)については95%と測定した。
【0111】
流体力学的サイズの測定
図2は、ナノ粒子のサイズ(d.nm、nm単位の直径)に基づいて強度として測定したナノ粒子組成物の分布(Z平均)を示す。
図2に示すように、サイズの関数としてのPEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸及びSEAP mRNAを含有するナノ粒子組成物の「Z平均」を、動的光散乱(DLS)によって決定した。最も強い強度は、サイズが113.3d.nmのナノ粒子について観察された。サイズ分布は、多分散性指数が低い単一のピークを特徴とし、これは比較的単分散のサイズを示す。
【0112】
ゲル遅延アッセイ
アガロースゲル電気泳動を実行して、糖修飾デンドロンとRNAとの結合を公知の方法(Geallら、10.1073/pnas.1209367109、完全に記載されているように参照によって本明細書に組み込まれる)に従って評価した。
図3は、糖修飾デンドロンとRNAとの結合を示すアガロースゲルの写真である。ゲルを臭化エチジウム(EB)で染色し、ゲル画像をSyngene G Boxイメージングシステム(Syngene(シンジーン)、米国)で撮影した。
図3に示すように、レーン1は、非製剤化SEAP mRNAを含有し、レーン2は、PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸及びSEAP mRNAの製剤物を含有した。ローディングする前に、試料をホルムアルデヒドローディング染料とインキュベートし、65℃で10分間変性させ、室温まで冷却した。ゲルを90Vで実行し、ゲル画像をSyngene G Boxイメージングシステム(Syngene、米国)で撮影した。
図4に示すように、下側バンドは、小さなサイズのフリーRNA(レーン1)に対応し、上側バンドは、該RNAをPEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸担体に結合して形成された大きなサイズのナノ粒子を示す。
【0113】
生体外SEAP産生の結果
異なるデオキシ糖系デンドロンを用いて製剤化したナノ粒子が生体外でSEAPを発現する能力を試験するために、BHK細胞をナノ粒子で処理した。BHKの12ウェルディッシュの各ウェルを、1:1 Optimem:PBS混合物を用いて500μLの最終体積に希釈した20μL(約1μg)の各製剤物で処理した。非処理ウェルは、500μLの50/50 PBS/OptiMEMを有した。処理又はトランスフェクションの24時間後、各培養物から馴化培地を回収した。SEAPの検出のためのInvitrogen(インビトロジェン) NovaBright(商標)Phospha-Light(商標)EXP Assayキットを製造者のプロトコルに従って使用して、SEAPの量を定量した。培地試料中のSEAPの量は、BioTek(バイオテック) Synergy HTXマイクロプレートリーダーで測定して、任意単位(A.U.)で報告する。エラーバーは±S.E.M.である。
図4aに示すように、SEAP量は、PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸を用いた場合に、他の位置異性体であるPEデンドロン_G2-1デオキシグルコース-A1-リシノール酸及びPEデンドロン_G2-6デオキシグルコース-A1-リシノール酸よりも高いことが認められた。
図5aに示すように、SEAP量は、PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A5-リシノール酸を用いた場合に、PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸を用いた場合よりも高く、そして、PEデンドロン_G2-2デオキシガラクトース-A5-リシノール酸ナノ粒子は、BHK細胞において、PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A5-リシノール酸及びPEデンドロン_G2-1デオキシマンノース-A5-リシノール酸等の他のデオキシ糖系デンドロンよりも多量のSEAPを発現することが認められた。処理なし陰性対照については、ナノ粒子で処理されていないウェルからの5μLの培地を使用した。
【0114】
生体内SEAP産生の結果
異なる単糖系デンドロンの製剤を試験するために、分泌型胎盤アルカリホスファターゼSEAPレポーター系を使用した。生体内試験のために、マウスに5μgのSEAP mRNAの用量でナノ粒子を注射し、16時間後にマウスから血清を採取した。SEAP検出のためのInvitrogen NovaBright(商標)Phospha-Light(商標)EXP Assayキットを製造者のプロトコルに従って使用して量を定量した。マウス血清試料中のSEAPの量を、BioTek Synergy HTXマイクロプレートリーダーで測定して、任意単位(A.U.)で報告する。エラーバーは±S.E.M.である。
図4bに示すように、SEAP量は、PEデンドロン_G2-1デオキシグルコース-A1-リシノール酸を用いた場合に、他の位置異性体であるPEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸及びPEデンドロン_G2-6デオキシグルコース-A1-リシノール酸よりも高いことが認められた。
図5bに示すように、SEAP量は、PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A5-リシノール酸を用いた場合に、PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸を用いた場合よりも高いことも認められ、これは、イオン化可能な送達分子のpKaが、ナノ粒子の機能的に活性なRNAを送達する能力に影響を及ぼすことを示す。
【0115】
COVID-19スパイク三量体直接血清ELISA
PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸及びPEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A5-リシノール酸で製剤化した(総体積100μLのPBS)2.5μgのスパイクレプリコンRNAで、脚の筋肉の両側IM注射により、マウス(BALB/c)にワクチン接種した。注射後21日及び28日でマウスを出血させ、凝固した試料を10000RCFで1.5分間遠心分離することにより、血清を全血から単離した。該血清を、直接ELISA法により抗スパイク抗体力価についてアッセイした。Nunc MaxiSorp ELISAプレートを、4℃で、組換えスパイク三量体タンパク質を含有するpH9.5の炭酸水素塩コーティング緩衝液で一晩コーティングした。PBS+1%BSAでウェルをブロックした。3週目の試料については、PBS+1%BSA中の1:50希釈から開始し、1:6400までの連続1:2溶液を用いて血清をウェルに添加し、4週目の試料については、PBS+1%BSA中の1:100希釈から開始し、1:12800までの連続1:2溶液を用いて血清をウェルに添加した。試料をRTで1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄した後、PBS+1%BSA中の1:3000の希釈度でヤギ抗マウスIgG HRPを加え、1時間インキュベートした。プレートを再びPBSTで5回洗浄し、発色性HRP基質3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を使用して現像した。H
2SO
4の添加により反応を停止し、450nmと570nmで吸光度を測定した。終点力価は、450での吸光度-570での吸光度の値≧0.08となる最も高い希釈度として指定した。3週目及び4週目に、PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A1-リシノール酸を使用して製剤化した2.5μgのナノ粒子ワクチンで免疫した群における終点希釈力価は、PEデンドロン_G2-2デオキシグルコース-A5-リシノール酸よりも高かった(
図6)。
図6に示すように、本発明者らの新規な糖系デンドロンの両方が、IM投与時の免疫原性に関してDlin-MC3-DMAよりも優れていることも認められた。MC3としても知られるDlin-MC3-DMAは、脂質ナノ粒子(LNP)を作製するために使用される最も利用されているカチオン性脂質の1つであり、従って、このアッセイにおいて対照として使用している。
【0116】
実施例1b. 二糖を含有するナノ粒子組成物
受容体と炭水化物との間の相互作用を生物学的に関連づけるためには、これらの相互作用の複数のコピーを連続的に又は同時に作製しなければならない(Mortellら、Journal of American Chemical Society 1996、118、2297-2298)。細胞取り込み及び核酸送達に対する複数の単糖の効果を研究するために、本発明では、デンドロンの焦点を二糖で修飾した。
【0117】
PE-G2-1-デオキシラクトース-A1リシノール酸の合成の例は、以下の通りである。
【化11】
化合物4:1-アジド-1-デオキシ-β-D-ラクトピラノシド(MW:367.31、65mg、0.18mmol)を50mlのRBFに取り、1mlのTHFに溶解し、次いで、THF(2mL)に溶解したアルキン、PE-G2-アセチレン-Bocアミン1(MW:1489、200mg、0.13mmol)を、CuSO
4・5H
2O(3.3mg、0.013mmol、10モル%、MW 249.69)及びアスコルビン酸ナトリウム(5.1mg、0.026mmol、20モル%、MW 198.11)、及び脱気したTHF:H
2O(2mL、1:1)とともに加えた。この反応混合物を23℃で16時間撹拌した。翌日、TLCにより反応が完了したことを確認した。この反応混合物を、100%CH
2Cl
2(移動相a)から75:24:6 CH
2Cl
2/MeOH/NH
4OHaq(体積による。移動相b)への勾配溶出を用いる24gシリカカラムでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。所望の生成物は100%移動相bで溶出し(75:24:6 CH
2Cl
2/MeOH/NH
4OHaqにおいてR
f=0.6)、化合物4を黄色油状物として得た(150mg、60%)。MS(ESI) C
82H
149N
15O
32に対する計算値 [M+2H]
2+ m/z 929.1、実測値929.2。
1H NMR(301MHz、クロロホルム-d) δ ppm 1.08-1.28(m,8H) 1.30-1.45(m,41H) 1.54-1.77(m,15H) 2.22-2.38(m,12H) 2.40-2.61(m,15H) 2.96-3.23(m,16H) 3.41-3.47(m,8H) 3.60-4.55(m,37H) 4.60-4.79(m,2H) 5.11-5.38(m,1H) 5.55-5.85(m,4H) 6.19-6.41(m,3H) 8.10-8.30(m,1H)。
【0118】
化合物5:100mgの化合物4(0.054mmol)を、その化合物を3mlのMeOHに溶解した後、20当量のAcCl(0.08ml、1.08mmol)で処理し、この反応物を0℃から23℃で4時間撹拌し、蒸発乾固させ、2mlのDMFに溶解し、0.15mlのEt3N(1.08mmol、20当量)を加え、続いて2mlのDMFに溶解した128mgのリシノール酸-NHS(公開された手順Talukderら、公開番号国際公開第2020/132196号(この文献は、完全に記載されているように参照により本明細書に組み込まれる)に従って合成した)を加えた。この反応混合物を23℃で24時間撹拌し、Genevac中で減圧下で濃縮し、反応混合物を、98%CH2Cl2(移動相a)から75:24:6 CH2Cl2/MeOH/NH4OHaq(体積による。移動相b)への勾配溶出を用いるシリカカラム(12g)でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。所望の生成物は100%移動相bで溶出し(75:24:6 CH2Cl2/MeOH/NH4OHaqにおいてRf=0.6)、所望の生成物を黄色油状物として得た(28mg、2工程で17%)。MS(ESI) C134H245N15O32に対する計算値 [M+2H]2+ m/z 1289.5、実測値1290.0。1H NMR(301MHz、クロロホルム-d) δ ppm 0.85-0.90(m,12H) 1.21-1.33(m,76H) 1.40-1.48(m,10H) 1.51-1.72(m,25H) 1.95-2.07(m,10H) 2.07-2.25(m,32H) 2.31-2.49(m,17H) 3.05-3.29(m,17H) 3.52-3.66(m,6H) 3.73-4.34(m,21H) 5.29-5.55(m,8H) 6.24-6.37(m,2H) 6.89-7.09(m,2H) 8.05-8.24(m,1H)。
【0119】
実施例1c. シクロデキストリンのような多糖を含有するナノ粒子組成物
多糖は、免疫刺激効率、抗ヒト免疫不全ウイルス(抗HIV)、及び抗腫瘍活性等の様々な固有の生物学的機能を有する(Hongら、2017)。様々な多糖類の中で、シクロデキストリンは水溶性であり、疎水性空洞及び親水性外面を有するので、特別な注目を集めている(Chem.Soc.Rev.、2011、40、1586-1608)。細胞取り込み及び核酸送達に対するシクロデキストリンの独特の構造的特徴の効果を研究するために、本発明では、デンドロンの焦点をβ-シクロデキストリンで修飾した。送達分子中に存在するアミンは、低いpHで負に荷電した核酸との静電相互作用を可能にするが、シクロデキストリンの親水性外表面の存在は、核酸薬物の複合体形成及び細胞内取り込みを促進するはずである。
【0120】
PE-G2-6-デオキシシクロデキストリン-A1リシノール酸の合成の例は以下の通りである。
【化12】
化合物6:6A-アジド-6A-デオキシシクロデキストリン(MW:1160、75mg、0.065mmol)を50mlのRBFに取り、1mlのTHFに溶解し、次いで、THF(1ml)に溶解したアルキン、PE-G2-アセチレン-Bocアミン1(MW:1489、100mg、0.065mmol)を、CuSO
4・5H
2O(1.7mg、0.0065mmol、10モル%、MW 249.69)及びアスコルビン酸ナトリウム(2.6mg、0.013mmol、20モル%、MW 198.11)、及び脱気したTHF:H
2O(2mL、1:1)とともに加えた。この反応混合物を23℃で16時間撹拌した。翌日、TLCにより反応が完了したことを確認した。この反応混合物を、100%CH
2Cl
2(移動相a)から75:24:6 CH
2Cl
2/MeOH/NH
4OHaq(体積による。移動相b)への勾配溶出を用いる24gシリカカラムでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。所望の生成物は100%移動相bで溶出し(75:22:3 CH
2Cl
2/MeOH/NH
4OHaqにおいてR
f=0.35)、所望の生成物を黄色油状物として得た(58mg、52%)。MS(ESI) C
112H
197N
15O
56に対する計算値 [M+2H]
2+ m/z 1325.2、実測値1325.2。1H NMR(301MHz、溶媒) δ ppm 1.15-1.30(m,9H) 1.44-1.49(m,36H) 1.61-1.83(m,16H) 2.29-2.42(m,12H) 2.47-2.65(m,16H) 3.01-3.19(m,17H) 3.28-3.33(m,5H) 3.37-3.63(m,15H) 3.69-3.97(m,22H) 4.05-4.33(m,11H) 4.92-5.00(m,11H) 5.03-5.17(m,3H) 5.22-5.32(m,2H) 8.06-8.12(m,1H)。
【0121】
化合物7:56mgの化合物3(0.021mmol)を、その化合物を3mlのMeOHに溶解した後、20当量のAcCl(0.03ml、0.42mmol)で処理し、この反応物を0℃から23℃で4時間撹拌し、蒸発乾固させ、2mlのDMFに溶解し、0.06mlのEt3N(0.42mmol、20当量)を加え、続いて2mlのDMFに溶解した50.2mgのリシノール酸-NHS、6当量(公開された手順Talukderら、公開番号国際公開第2020/132196号(この文献は、完全に記載されているように参照により本明細書に組み込まれる)に従って合成した)を加えた。この反応混合物を23℃で24時間撹拌し、Genevac中で減圧下で濃縮し、反応混合物を、100%CH2Cl2(移動相a)から75:24:6 CH2Cl2/MeOH/NH4OHaq(体積による。移動相b)への勾配溶出を用いるシリカカラム(12g)でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。所望の生成物は100%移動相bで溶出し(75:24:6 CH2Cl2/MeOH/NH4OHaqにおいてRf=0.3)、所望の生成物を黄色油状物として得た(20mg、30%)。MS(ESI) C164H293N15O56に対する計算値 [M+3H]3+ m/z 1124.0、実測値1124.5。
【0122】
実施例1d. 式Ibを有するデンドロンを含有するナノ粒子組成物
【化13】
【化14】
化合物9:マンノースアルキン(MW:218.21、67mg,0.31mmol;公開された手順Percecら、2011 J.Am.Chem.Soc. 2013、135、9055-9077(この文献は、完全に記載されているように参照により本明細書に組み込まれる)に従って合成した)を50mlのRBFに取り(0.6mL)、次いでTHF(1mL)に溶解した化合物8、PE-G2-アジド-Bocアミン5(MW:1489、118mg、74μmol;公開された手順Barnardら、2011(この文献は、完全に記載されているように参照により本明細書に組み込まれる)に従ってPE-G2-アジド-OHから合成した)を、CuSO
4・5H
2O(7.6mg、10モル%、MW 249.69)及びアスコルビン酸ナトリウム(12mg、20モル%、MW 198.11)、及び脱気したTHF:H
2O(2mL、1:1)とともに加えた。この反応混合物を23℃で16時間撹拌した。翌日、TLCにより反応が完了したことを確認した。この反応混合物を、100%CH
2Cl
2(移動相a)から75:22:3 CH
2Cl
2/MeOH/NH
4OHaq(体積による。移動相b)への勾配溶出を用いる24gシリカカラムでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。所望の生成物は70%の移動相bで溶出し(2:1の移動相b/移動相aにおいてR
f=0.2)、所望の生成物を黄色油状物として得た(136mg、92%)。MS(ESI) C
86H
159N
15O
28に対する計算値 [M+2H]2+ m/z 926.0、実測値925.9。
【0123】
化合物10:136mgの化合物9(0.073mmol)を、その化合物を3mlのMeOHに溶解した後、20当量のAcCl(0.105ml)で処理し、この反応物を0℃から23℃で5時間撹拌し、蒸発乾固させ、2mlのDMFに溶解し、0.11mlのEt3N(1.46mmol、20当量)を加え、続いて2mlのDMFに溶解した174mgのリシノール酸-NHS(公開された手順Talukderら、公開番号国際公開第2020/132196号(この文献は、完全に記載されているように参照により本明細書に組み込まれる)に従って合成した)を加えた。この反応混合物を23℃で24時間撹拌し、Genevac中で減圧下で濃縮し、反応混合物を、100%CH2Cl2(移動相a)から75:22:3 CH2Cl2/MeOH/NH4OHaq(体積による。移動相b)への勾配溶出を用いるシリカカラム(24g)でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。所望の生成物は80%移動相bで溶出し(75:22:3 CH2Cl2/MeOH/NH4OHaqにおいてRf=0.65)、所望の生成物を黄色油状物として得た(56mg、30%)。MS(ESI) C139H256N14O28に対する計算値 [M+2H]2+ m/z 1285.9、実測値1285.0。
【0124】
ナノ粒子製剤
糖修飾ポリエステルアミンデンドロン(例えば、PEデンドロン_G2-ヘキシルマンノース-A5-リシノール酸):DOPE:コレステロール:PEGを1:0.6:2.88:0.1のモル比で含有するナノ粒子を、NanoAssemblr Benchtop(Precision NanoSystems Inc、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア州、カナダ)を用いて製剤化した。DNase/RNaseフリー及びエンドトキシンフリー蒸留水と滅菌したクエン酸緩衝液とでRNAを最終的な所望のpHに希釈した。Benchtopでの製剤化のために、総流量を、水相と有機相の3:1の比率で1分当たり8mLに維持した。250℃で24時間加熱することにより脱発熱原化したガラス製品を使用して、20,000分子量のカットオフ透析を使用して、滅菌したエンドトキシンフリーPBSに対してナノ粒子を透析した。透析したナノ粒子を、0.2ミクロン(0.2μm)ポリ(エーテルスルホン)フィルターで滅菌濾過し、Zetasizer NanoZSマシン(Malvern)で特性解析した。サイズ分布は、多分散性指数が低い単一のピークを特徴としていた。Ribogreen(登録商標)アッセイ(完全に記載されているように参照によって本明細書に組み込まれるGeallら、10.1073/pnas.1209367109)を使用して、カプセル化効率を、PEデンドロン_G2-ヘキシルマンノース-A5-リシノール酸及びSEAP mRNAを含有するナノ粒子組成物については90%と測定した。
【0125】
流体力学的サイズの測定
図7は、ナノ粒子のサイズ(d.nm、nm単位の直径)に基づいて強度として測定したナノ粒子組成物の分布(Z平均)を示す。
図7に示すように、サイズの関数としてのPEデンドロン_G2-ヘキシルマンノース-A5-リシノール酸及びSEAP mRNAを含有するナノ粒子組成物の「Z平均」を、動的光散乱(DLS)によって決定した。最も強い強度は、サイズが108.8d.nmのナノ粒子について観察された。サイズ分布は、多分散性指数が低い単一のピークを特徴とし、これは比較的単分散のサイズを示す。
【0126】
生体内SEAP産生の結果
異なるクラスのPEGを使用するPEデンドロン_G2-ヘキシルマンノース-A5-リシノール酸を有する製剤を生体内で試験するために、マウスに2μgのSEAP mRNAの用量でナノ粒子を注射し、投与の3日後にマウスから血清を採取した。SEAP検出のためのInvitrogen NovaBright(商標)Phospha-Light(商標)EXP Assayキットを製造者のプロトコルに従って使用して量を定量した。マウス血清試料中のSEAPの量を、BioTek Synergy HTXマイクロプレートリーダーで測定して、任意単位(A.U.)で報告する。エラーバーは±S.E.M.である。
図8に示すように、SEAP量は、PEG-脂質コンジュゲートALC 0159及びDMG PEG 2000を用いた場合に、14:0 PEG 2000及び184:0 PEG 2000を有する製剤と比較して高いことが認められた。
【0127】
実施例1e. 式Ifを有するデンドロンを含有するナノ粒子組成物
【化15】
【化16】
化合物12:0.6mLに溶解したアジド-PEG4-β-D-グルコース(MW:381、50mg、0.18mmol)を25mLのRBFに取り、次いで、THF(1mL)に溶解したアルキン、PE-G2-アセチレン-Bocアミン5(MW:1546、101mg、66μmol:公開された手順Barnardら、2011(この文献は、完全に記載されているように参照により本明細書に組み込まれる)に従ってPE-G2-アセチレン-OHから合成した)を、CuSO
4・5H
2O(3.3mg、20モル%、MW 249.69)及びアスコルビン酸ナトリウム(5.2mg、40モル%、MW 198.11)とともに加え、脱気したTHF:H
2O(2mL、1:1)をそれに加えた。この反応混合物を23℃で2日間撹拌した。この反応混合物を、100%CH
2Cl
2(移動相a)から75:22:3 CH
2Cl
2/MeOH/NH
4OHaq(体積による。移動相b)への勾配溶出を用いる12gシリカカラムでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。所望の生成物は100%移動相bで溶出し(75:22:3 CH
2Cl
2/MeOH/NH
4OHaqにおいてR
f=0.25)、所望の生成物を黄色油状物として得た(49mg、39%)。MS(ESI) C
76H
139N
15O
27に対する計算値 [M+2H]2+ m/z 964.7、実測値964.4;[M+3H]3+ m/z 643.4、実測値643.5。
【0128】
化合物13:49mgの化合物12(0.025mmol)を、その化合物を3mlのMeOHに溶解した後、20当量のAcCl(0.04ml、0.51mmol)で処理し、この反応物を0℃から23℃で5時間撹拌し、蒸発乾固させ、2mlのDMFに溶解し、0.07mlのEt3N(0.51mmol、20当量)を加え、続いて2mlのDMFに溶解した60.0mgのリシノール酸-NHS(0.153mmol:公開された手順Talukderら、公開番号国際公開第2020/132196号(この文献は、完全に記載されているように参照により本明細書に組み込まれる)に従って合成した)を加えた。この反応混合物を23℃で24時間撹拌し、Genevac中で減圧下で濃縮し、反応混合物を、100%CH2Cl2(移動相a)から75:22:3 CH2Cl2/MeOH/NH4OHaq(体積による。移動相b)への勾配溶出を用いるシリカカラム(24g)でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。所望の生成物は100%移動相bで溶出し(75:22:3 CH2Cl2/MeOH/NH4OHaqにおいてRf=0.3)、所望の生成物を黄色油状物として得た(35mg、52%)。MS(ESI) C140H259N15O31に対する計算値 [M+3H]3+ m/z 883.7、実測値883.3。
【0129】
ナノ粒子製剤
糖修飾ポリエステルアミンデンドロン(例えば、PEデンドロン_G2-PEG4-グルコース-A5-リシノール酸):DOPE:コレステロール:PEG-脂質コンジュゲートを1:0.6:2.88:0.1のモル比で含有するナノ粒子を、NanoAssemblr Benchtop(Precision NanoSystems Inc、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア州、カナダ)を用いて製剤化した。DNase/RNaseフリー及びエンドトキシンフリー蒸留水と滅菌したクエン酸緩衝液とでRNAを最終的な所望のpHに希釈した。Benchtopでの製剤化のために、総流量を、水相と有機相の3:1の比率で1分当たり8mLに維持した。250℃で24時間加熱することにより脱発熱原化したガラス製品を使用して、20,000分子量のカットオフ透析を使用して、滅菌したエンドトキシンフリーPBSに対してナノ粒子を透析した。透析したナノ粒子を、0.2ミクロン(0.2μm)ポリ(エーテルスルホン)フィルターで滅菌濾過し、Zetasizer NanoZSマシン(Malvern)で特性解析した。サイズ分布は、多分散性指数が低い単一のピークを特徴としていた。
【0130】
流体力学的サイズの測定
図9は、ナノ粒子のサイズ(d.nm、nm単位の直径)に基づいて強度として測定したナノ粒子組成物の分布(Z平均)を示す。
図9に示すように、サイズの関数としてのPEデンドロン_G2-PEG4-グルコース-A5-リシノール酸及びPR8 HA mRNAを含有するナノ粒子組成物の「Z平均」を、動的光散乱(DLS)によって決定した。最も強い強度は、サイズが121.3d.nmのナノ粒子について観察された。サイズ分布は、多分散性指数が低い単一のピークを特徴とし、これは比較的単分散のサイズを示す。
【0131】
実施例2. 核酸担体として両親媒性デンドリマーを含有するナノ粒子組成物
本発明において、本発明者らは、糖修飾両親媒性デンドリマーハイブリッド及びデオキシ糖修飾両親媒性デンドリマーハイブリッドを合成した。これらの両親媒性分子は、疎水性単位を有し、従って、溶液中で自己組織化することができるはずであるが、親水性糖部分は、この核酸担体の生体適合性及び担持能力を改善するはずである。
【化17】
式中、Aはアミンリンカーであり、Bは疎水性単位であり、Yは糖部分であり、Zはデオキシ糖部分である。
【0132】
参考文献
本出願を通して引用される参考文献は、各参考文献が完全に記載されているように、本明細書及び参考文献自体において明らかなすべての目的のために組み込まれる。提示のために、これらの参考文献のうちの特定の参考文献が本明細書の特定の位置で引用される。特定の位置における参考文献の引用は、参考文献の教示が組み込まれる様式を示す。しかしながら、特定の場所における参考文献の引用は、引用された参考文献の教示のすべてがすべての目的のために組み込まれる様式を限定するものではない。
【0133】
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【0134】
それゆえ、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲、上記の説明、及び/又は示されている添付の図面によって定められる本発明の趣旨及び範囲に入るすべての改変を包含することが意図されているということが理解される。
【国際調査報告】