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特表2024-534771補体媒介性炎症反応を低減するための同種異系細胞療法のための遺伝子改変細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】補体媒介性炎症反応を低減するための同種異系細胞療法のための遺伝子改変細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240918BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20240918BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20240918BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20240918BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20240918BHJP
   C12N 5/079 20100101ALI20240918BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240918BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20240918BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C12N5/10
A61K35/28 ZNA
A61K35/545
A61P1/16
A61P5/00
A61P17/00
A61P27/02
A61P3/10
A61P35/00
A61P13/12
A61P35/02
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/22
A61P25/24
A61K45/00
A61P37/06
A61P43/00 121
C12N5/0735
C12N5/0775
C12N5/078
C12N5/079
C12N15/12
C12N15/867 Z
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508657
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 US2022074874
(87)【国際公開番号】W WO2023019227
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/232,164
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/353,538
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】522043688
【氏名又は名称】サナ バイオテクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シュレプファー ソニア
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084MA67
4C084NA05
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZC751
4C084ZC752
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087MA66
4C087MA67
4C087NA14
4C087ZA33
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZB13
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC06
4C087ZC35
4C087ZC61
(57)【要約】
同種異系細胞療法において使用するための、遺伝子改変等の1つまたは複数の改変を含有する操作された細胞が提供される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、低免疫原性細胞である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD46及びCD59の増加した発現を含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させる、(ii)CD46の発現を増加させる、(iii)CD59の発現を増加させる、ならびに(iv)1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する、改変
を含む、操作された細胞であって、(i)、(ii)、及び(iii)の前記増加した発現ならびに(iv)の前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、前記操作された細胞。
【請求項2】
(iv)における前記改変のうちの1つまたは複数が、
a.1つもしくは複数のMHCクラスI分子
b.1つもしくは複数のMHCクラスII分子、または
c.1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び1つもしくは複数のMHCクラスII分子
の発現を低減する、請求項1に記載の操作された細胞。
【請求項3】
前記1つまたは複数の改変が、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B、及び/またはNFY-C、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の分子の発現を低減する、請求項1または請求項2に記載の操作された細胞。
【請求項4】
B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B、及び/またはNFY-C、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の分子を発現しない、請求項1~3のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項5】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、及びSERPINB9、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の寛容原性因子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項6】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の操作された細胞。
【請求項7】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、A20/TNFAIP3、C1-インヒビター、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD47、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1、Serpinb9、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の寛容原性因子を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項8】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項9】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-Eを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項10】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項11】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、PDL1を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項12】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD55を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項13】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CR1を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項14】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、MANFを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項15】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、A20/TNFAIP3を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項16】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E及びCD47を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項17】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24、CD47、及びPDL1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24、CD47、及びPDL1を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項18】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、及びPDL1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、及びPDL1を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項19】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項20】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項21】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項22】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E及びPDL1を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項23】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びA20/TNFAIPからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びA20/TNFAIPを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項24】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びMANFからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びMANFを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項25】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP、及びMANFからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP、及びMANFを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項26】
(i)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200、及びMFGE8の発現を増加させる、(ii)CD46の発現を増加させる、ならびに(iii)CD59の発現を増加させる、改変
を含む、操作された細胞であって、前記増加した発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、前記操作された細胞。
【請求項27】
(i)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200、及びMFGE8の発現を増加させる、(ii)CD46の発現を増加させる、ならびに(iii)CD59の発現を増加させる、前記改変
のうちの1つまたは複数が、内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる1つまたは複数の改変を含む、請求項26に記載の操作された細胞。
【請求項28】
前記内在性遺伝子が、前記CCL21、前記PD-L1、前記FASL、前記SERPINB9、前記HLA-G、前記CD47、前記CD200、前記MFGE8、前記CD46、または前記CD59をコードする、請求項27に記載の操作された細胞。
【請求項29】
内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる前記1つまたは複数の改変が、前記遺伝子の内在性プロモーターの1つもしくは複数の改変または異種プロモーターの導入を含む、請求項27または28に記載の操作された細胞。
【請求項30】
前記異種プロモーターが、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びUBCプロモーターからなる群から選択される、請求項29に記載の操作された細胞。
【請求項31】
前記操作された細胞が、CD55の発現を増加させる改変をさらに含み、CD55の前記増加した発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、請求項1~30のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項32】
発現を増加させる前記改変(複数可)が、増加した表面発現を含み、及び/または発現を低減する前記改変が、低減された表面発現を含み、任意選択で、前記低減された表面発現が、検出可能な表面発現を何ら含まない、請求項1~31のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項33】
CD46の発現を増加させ、かつCD59の発現を増加させる前記1つまたは複数の改変が、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項34】
CD55の発現を増加させる前記改変が、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項31~33のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項35】
CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す、請求項33または請求項34に記載の操作された細胞。
【請求項36】
CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号3に記載の配列をコードする、請求項35に記載の操作された細胞。
【請求項37】
CD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す、請求項33~36のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項38】
CD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号5に記載の配列をコードする、請求項37に記載の操作された細胞。
【請求項39】
CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す、請求項34~38のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項40】
CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号8に記載の配列をコードする、請求項39に記載の操作された細胞。
【請求項41】
CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが各々、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項33~40のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項42】
CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項33~41のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項43】
CD47の発現を増加させる前記改変が、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項44】
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、前記操作された細胞の自然免疫による殺傷を低減する、請求項43に記載の操作された細胞。
【請求項45】
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号1に記載の配列をコードする、請求項44に記載の操作された細胞。
【請求項46】
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項43~45のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項47】
前記1つまたは複数の寛容原性因子をコードする1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチド、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドからなる群から選択される2つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクター
を含む、請求項1~46のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項48】
前記ポリヌクレオチドの各々が、IRESまたは自己切断型ペプチドによって隔てられている、請求項47に記載の操作された細胞。
【請求項49】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47である、請求項47~48のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項50】
前記マルチシストロン性ベクターの各ポリヌクレオチドが、同じプロモーターに作動可能に連結されている、請求項47~49のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項51】
前記マルチシストロン性ベクターが、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項47~50のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項52】
前記マルチシストロン性ベクターが、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項47~50のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項53】
前記マルチシストロン性ベクターが、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項51または請求項52に記載の操作された細胞。
【請求項54】
前記マルチシストロン性ベクターが、第1の導入遺伝子であり、前記操作された細胞が、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む別個の導入遺伝子を含む、請求項51または請求項52に記載の操作された細胞。
【請求項55】
前記操作された細胞が、第1の導入遺伝子及び第2の導入遺伝子を含み、
前記第1の導入遺伝子及び前記第2の導入遺伝子が各々、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドを含み、
前記第1の導入遺伝子及び前記第2の導入遺伝子が、モノシストロン性またはマルチシストロン性ベクターである、
請求項1~54のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項56】
前記プロモーターが、構成的プロモーターである、請求項41~55のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項57】
前記プロモーターが、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びUBCプロモーターからなる群から選択される、請求項50~56のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項58】
CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド及び/またはCD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、前記操作された細胞のゲノム内に組み込まれる、請求項33~57のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項59】
CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれる、請求項34~58のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項60】
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれる、請求項43~59のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項61】
前記組み込みが、前記操作された細胞の前記ゲノム内への非標的化挿入によるものであり、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入による、請求項58~60のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項62】
前記組み込みが、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によるものである、請求項59または請求項60に記載の操作された細胞。
【請求項63】
前記標的ゲノム遺伝子座が、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座、CD142遺伝子座、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子座、ROSA26遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される、請求項62に記載の操作された細胞。
【請求項64】
前記標的ゲノム遺伝子座が、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、TAP1遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、TRBC遺伝子座、またはセーフハーバー遺伝子座である、請求項62または請求項63に記載の操作された細胞。
【請求項65】
前記標的ゲノム遺伝子座が、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子座、及びROSA26遺伝子座からなる群から選択される、請求項62または請求項63に記載の操作された細胞。
【請求項66】
前記セーフハーバー遺伝子座が、AAVS1、ABO、CCR5、CLYBL、CXCR4、F3、FUT1、HMGB1、KDM5D、LRP1、MICA、MICB、RHD、ROSA26、及びSHS231遺伝子座からなる群から選択される、請求項64に記載の操作された細胞。
【請求項67】
CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、第4の標的ゲノム遺伝子座内に組み込まれる、請求項55~66のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項68】
第1の標的ゲノム遺伝子座、第2の標的ゲノム遺伝子座、及び第3の標的ゲノム遺伝子座のうちの少なくとも2つが、同じ遺伝子座である、請求項55~67に記載の操作された細胞。
【請求項69】
前記第1の標的ゲノム遺伝子座、前記第2の標的ゲノム遺伝子座、前記第3の標的ゲノム遺伝子座、及び前記第4の標的ゲノム遺伝子座のうちの少なくとも2つが、同じ遺伝子座である、請求項67に記載の操作された細胞。
【請求項70】
前記第1の標的ゲノム遺伝子座、前記第2の標的ゲノム遺伝子座、及び前記第3の標的ゲノム遺伝子座が、同じ遺伝子座である、請求項55~69のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項71】
前記第1の標的ゲノム遺伝子座、前記第2の標的ゲノム遺伝子座、前記第3の標的ゲノム遺伝子座、及び前記第4の標的ゲノム遺伝子座が、同じ遺伝子座である、請求項69に記載の操作された細胞。
【請求項72】
前記第1の標的ゲノム遺伝子座、前記第2の標的ゲノム遺伝子座、及び前記第3の標的ゲノム遺伝子座の各々が、異なる遺伝子座である、請求項55~67に記載の操作された細胞。
【請求項73】
前記第1の標的ゲノム遺伝子座、前記第2の標的ゲノム遺伝子座、前記第3の標的ゲノム遺伝子座、及び前記第4の標的ゲノム遺伝子座が、異なる遺伝子座である、請求項72に記載の操作された細胞。
【請求項74】
1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する前記改変が、1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する、請求項1~25及び27~73のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項75】
1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する前記改変が、B2Mの低減された発現を含む、請求項1~25及び27~73のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項76】
1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する前記改変が、B2Mの低減されたタンパク質発現を含む、請求項75に記載の操作された細胞。
【請求項77】
前記改変が、B2M遺伝子活性を排除する、請求項75または請求項76に記載の操作された細胞。
【請求項78】
前記改変が、前記B2M遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む、請求項75~77のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項79】
前記改変が、前記細胞における全てのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む、請求項75~78のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項80】
前記不活性化または前記破壊が、前記B2M遺伝子におけるインデルを含む、請求項78または請求項79に記載の操作された細胞。
【請求項81】
前記改変が、前記B2M遺伝子のフレームシフト変異または連続した一続きのゲノムDNAの欠失である、請求項75~80のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項82】
前記B2M遺伝子がノックアウトされている、請求項75~81のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項83】
前記改変が、ゲノム改変タンパク質によるものである、請求項75~82のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項84】
ゲノム改変タンパク質による前記改変が、CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、または部位特異的標的化要素によるプログラム可能な付加(PASTE)による改変である、請求項83のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項85】
前記ゲノム改変タンパク質による前記改変が、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集である、請求項83~84のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項86】
前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、前記B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、前記Casが、Cas9またはCas12から選択される、請求項85に記載の操作された細胞。
【請求項87】
前記ゲノム改変タンパク質による前記改変が、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、Mad7、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、及びCRISPR関連トランスポザーゼからなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質によって実施される、請求項83~85のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項88】
前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位に相補的である標的化ドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、請求項86に記載の操作された細胞。
【請求項89】
前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項88に記載の操作された細胞。
【請求項90】
1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する前記改変が、1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する、請求項1~25及び27~89のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項91】
1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する前記改変が、CIITAの低減された発現を含む、請求項1~25及び27~89のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項92】
1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する前記改変が、CIITAの低減されたタンパク質発現を含む、請求項91に記載の操作された細胞。
【請求項93】
前記改変が、CIITA遺伝子活性を排除する、請求項91または請求項92に記載の操作された細胞。
【請求項94】
前記改変が、前記CIITA遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む、請求項91~93のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項95】
前記改変が、前記細胞における全てのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む、請求項91~94のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項96】
前記不活性化または前記破壊が、前記CIITA遺伝子におけるインデルを含む、請求項94または請求項95に記載の操作された細胞。
【請求項97】
前記改変が、前記CIITA遺伝子のフレームシフト変異または連続した一続きのゲノムDNAの欠失である、請求項91~96のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項98】
CIITA遺伝子がノックアウトされている、請求項91~97のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項99】
前記操作された細胞が、ヒト細胞または動物細胞であり、任意選択で、前記動物細胞が、ブタ(ブタ類)細胞、ウシ(ウシ類)細胞、またはヒツジ(ヒツジ類)細胞である、請求項1~98のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項100】
前記改変が、NLRC5、TRAC、TRB、CD142、ABO、CD38、CD52、PCDH11Y、NLGN4Y、及びRHDのうちのいずれか1つまたは複数の発現を低減する、請求項1~99のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項101】
(i)1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させる、(ii)CD46の発現を増加させる、及び(iii)CD59の発現を増加させる、前記改変
のうちの1つまたは複数が、内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる1つまたは複数の改変を含む、請求項1~100のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項102】
前記内在性遺伝子が、前記1つもしくは複数の寛容原性因子、CD46、またはCD59をコードする、請求項101に記載の操作された細胞。
【請求項103】
内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる前記1つまたは複数の改変が、前記遺伝子の内在性プロモーターに対する1つもしくは複数の改変または異種プロモーターの導入を含む、請求項101または102に記載の操作された細胞。
【請求項104】
前記異種プロモーターが、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びUBCプロモーターからなる群から選択される、請求項103に記載の操作された細胞。
【請求項105】
ヒト細胞である、請求項99に記載の操作された細胞。
【請求項106】
幹細胞または前駆細胞に由来する分化細胞である、請求項1~105のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項107】
前記幹細胞または前駆細胞が、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、内皮幹細胞、上皮幹細胞、脂肪幹細胞、生殖細胞系幹細胞、肺幹細胞、臍帯血幹細胞、多能性幹細胞(PSC)、及び複能性幹細胞からなる群から選択される、請求項106に記載の操作された細胞。
【請求項108】
多能性幹細胞またはその子孫に由来する分化細胞である、請求項1~106のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項109】
前記多能性幹細胞が、人工多能性幹細胞である、請求項108に記載の操作された細胞。
【請求項110】
ドナー対象から単離された初代細胞である、請求項1~105のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項111】
前記ドナー対象が、健常であるか、または前記個々のドナーから前記ドナーの試料が入手される時点で疾患もしくは病態を有することが疑われない、請求項110に記載の操作された細胞。
【請求項112】
島細胞、ベータ島細胞、膵島細胞、免疫細胞、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ細胞、内皮細胞、筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、ドーパミン作動性ニューロン、網膜色素上皮細胞、視細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心臓細胞、幹細胞、造血幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、間葉系幹細胞(MSC)、胚性幹細胞(ESC)、多能性幹細胞(PSC)、及び血液細胞からなる群から選択される、請求項1~111のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項113】
内皮細胞である、請求項1~111のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項114】
上皮細胞である、請求項1~111のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項115】
T細胞である、請求項112に記載の操作された細胞。
【請求項116】
NK細胞である、請求項112に記載の操作された細胞。
【請求項117】
キメラ抗原受容体(CAR)を含む、請求項115または請求項116に記載の操作された細胞。
【請求項118】
幹細胞である、請求項1~105のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項119】
造血幹細胞(HSC)である、請求項1~105のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項120】
多能性幹細胞である、請求項1~105のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項121】
人工多能性幹細胞である、請求項1~105のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項122】
胚性幹細胞である、請求項1~105のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項123】
前記細胞が、ABO式血液型Oである、請求項1~122のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項124】
前記細胞が、機能的ABO Aアレル及び/または機能的ABO Bアレルを含む、請求項1~122のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項125】
前記細胞が、アカゲザル因子陰性(Rh-)である、請求項1~124のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項126】
前記細胞が、アカゲザル因子陽性(Rh+)である、請求項1~124のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項127】
操作された細胞を生成する方法であって、
a.前記細胞におけるMHCクラスI及び/またはMHCクラスIIの発現を低減または排除する工程と、
b.前記細胞における1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させる工程と、
c.前記細胞におけるCD46の発現を増加させる工程と、
d.前記細胞におけるCD59の発現を増加させる工程と
を含む、前記方法。
【請求項128】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、及びSERPINB9、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、A20/TNFAIP3、C1-インヒビター、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD47、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1、Serpinb9、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の寛容原性因子を含む、請求項127に記載の方法。
【請求項131】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47を含む、請求項127~130のいずれか一項に記載の方法。
【請求項132】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-Eを含む、請求項127~131のいずれか一項に記載の方法。
【請求項133】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24を含む、請求項127~132のいずれか一項に記載の方法。
【請求項134】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、PDL1を含む、請求項127~133のいずれか一項に記載の方法。
【請求項135】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD55を含む、請求項127~134のいずれか一項に記載の方法。
【請求項136】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CR1を含む、請求項127~135のいずれか一項に記載の方法。
【請求項137】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、MANFを含む、請求項127~136のいずれか一項に記載の方法。
【請求項138】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、A20/TNFAIP3を含む、請求項127~137のいずれか一項に記載の方法。
【請求項139】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E及びCD47を含む、請求項127~138のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24、CD47、及びPDL1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24、CD47、及びPDL1を含む、請求項127~139のいずれか一項に記載の方法。
【請求項141】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、及びPDL1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、及びPDL1を含む、請求項127~140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項142】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、請求項127~141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項143】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、請求項127~142のいずれか一項に記載の方法。
【請求項144】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、請求項127~143のいずれか一項に記載の方法。
【請求項145】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E及びPDL1を含む、請求項127~144のいずれか一項に記載の方法。
【請求項146】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びA20/TNFAIPからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びA20/TNFAIPを含む、請求項127~145のいずれか一項に記載の方法。
【請求項147】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びMANFからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びMANFを含む、請求項127~146のいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP、及びMANFからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP、及びMANFを含む、請求項127~147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項149】
1つまたは複数のMHCクラスI分子及び1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減または排除する工程
を含む、請求項127~148のいずれか一項に記載の方法。
【請求項150】
(i)1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させる工程、(ii)CD46の発現を増加させる工程、及び(iii)CD59の発現を増加させる工程のうちの1つまたは複数が、プロモーターを介して内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる段階を含む、請求項127~149のいずれか一項に記載の方法。
【請求項151】
前記内在性遺伝子が、前記1つもしくは複数の寛容原性因子、CD46、またはCD59をコードする、請求項150に記載の方法。
【請求項152】
プロモーターを介して前記内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる段階が、前記遺伝子の内在性プロモーターを改変することまたは異種プロモーターを導入することを含む、請求項150または151に記載の方法。
【請求項153】
前記異種プロモーターが、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びUBCプロモーターからなる群から選択される、請求項152に記載の方法。
【請求項154】
操作された細胞を生成する方法であって、
a.前記細胞におけるCCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200、及びMFGE8の発現を増加させる工程と、
b.前記細胞におけるCD46の発現を増加させる工程と、
c.前記細胞におけるCD59の発現を増加させる工程と
を含む、前記方法。
【請求項155】
前記細胞におけるCD55の発現を増加させる工程をさらに含む、請求項127~154のいずれか一項に記載の方法。
【請求項156】
前記低減された発現が、低減された表面発現を含み、及び/または前記増加した発現が、増加した表面発現を含み、任意選択で、前記低減された表面発現が、検出可能な表面発現を何ら含まない、請求項127~155のいずれか一項に記載の方法。
【請求項157】
CD46及びCD59の発現を増加させる工程が、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを前記細胞に導入する段階を含む、請求項127~156のいずれか一項に記載の方法。
【請求項158】
CD55の発現を増加させる工程が、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを前記細胞に導入する段階を含む、請求項155~157のいずれか一項に記載の方法。
【請求項159】
(i)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200、及びMFGE8の発現を増加させる工程、(ii)CD46の発現を増加させる工程、ならびに(iii)CD59の発現を増加させる工程のうちの1つまたは複数が、内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる段階を含む、請求項154~158のいずれか一項に記載の方法。
【請求項160】
前記内在性遺伝子が、前記CCL21、前記PD-L1、前記FASL、前記SERPINB9、前記HLA-G、前記CD47、前記CD200、前記MFGE8、前記CD46、または前記CD59をコードする、請求項159に記載の方法。
【請求項161】
プロモーターを介して前記内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる段階が、前記遺伝子の内在性プロモーターもしくはエンハンサーを改変することまたは異種プロモーターを導入することを含む、請求項159または160に記載の方法。
【請求項162】
前記異種プロモーターが、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びUBCプロモーターからなる群から選択される、請求項161に記載の方法。
【請求項163】
CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す、請求項157または請求項158に記載の方法。
【請求項164】
CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号3に記載の配列をコードする、請求項163に記載の方法。
【請求項165】
CD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す、請求項157~164のいずれか一項に記載の方法。
【請求項166】
CD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号5に記載の配列をコードする、請求項165に記載の方法。
【請求項167】
CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有する配列をコードし、補体阻害活性を示す、請求項158~166のいずれか一項に記載の方法。
【請求項168】
CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号8に記載の配列をコードする、請求項167に記載の方法。
【請求項169】
CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが各々、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項157~168のいずれか一項に記載の方法。
【請求項170】
CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項158~169のいずれか一項に記載の方法。
【請求項171】
CD47の発現を増加させる前記改変が、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項159~170のいずれか一項に記載の方法。
【請求項172】
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有する配列をコードし、前記操作された細胞の自然免疫による殺傷を低減する、請求項171に記載の方法。
【請求項173】
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号1に記載の配列をコードする、請求項172に記載の方法。
【請求項174】
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項171~173のいずれか一項に記載の方法。
【請求項175】
CD47をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドからなる群から選択される2つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクターを、導入する工程
を含む、請求項159~174のいずれか一項に記載の方法。
【請求項176】
前記ポリヌクレオチドの各々が、IRESまたは自己切断型ペプチドによって隔てられている、請求項175に記載の方法。
【請求項177】
前記マルチシストロン性ベクターの各ポリヌクレオチドが、同じプロモーターに作動可能に連結されている、請求項175または請求項176に記載の方法。
【請求項178】
前記マルチシストロン性ベクターが、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項175~177のいずれか一項に記載の方法。
【請求項179】
前記マルチシストロン性ベクターが、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項175~177のいずれか一項に記載の方法。
【請求項180】
前記マルチシストロン性ベクターが、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項178または請求項179に記載の方法。
【請求項181】
前記操作された細胞が、CD47をコードするポリヌクレオチドを含む別個の導入遺伝子を含む、請求項178または請求項179に記載の方法。
【請求項182】
CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド及び/またはCD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれる、請求項157~181のいずれか一項に記載の方法。
【請求項183】
CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれる、請求項157~182のいずれか一項に記載の方法。
【請求項184】
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれる、請求項171~183のいずれか一項に記載の方法。
【請求項185】
前記組み込みが、前記操作された細胞の前記ゲノム内への非標的化挿入によるものであり、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入による、請求項182~184のいずれか一項に記載の方法。
【請求項186】
前記組み込みが、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によるものであり、任意選択で、前記標的化挿入が、相同性指向修復を用いたヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、請求項182~184のいずれか一項に記載の方法。
【請求項187】
前記標的ゲノム遺伝子座が、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座、CD142遺伝子座、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子座、ROSA26遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される、請求項186に記載の方法。
【請求項188】
前記標的ゲノム遺伝子座が、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、TAP1遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、TRBC遺伝子座、またはセーフハーバー遺伝子座である、請求項186に記載の方法。
【請求項189】
前記標的ゲノム遺伝子座が、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子座、及びROSA26遺伝子座からなる群から選択される、請求項186に記載の方法。
【請求項190】
前記セーフハーバー遺伝子座が、AAVS1、ABO、CCR5、CLYBL、CXCR4、F3、FUT1、HMGB1、KDM5D、LRP1、MICA、MICB、RHD、ROSA26、及びSHS231遺伝子座からなる群から選択される、請求項188に記載の方法。
【請求項191】
前記改変が、CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、または部位特異的標的化要素によるプログラム可能な付加(PASTE)によるものである、請求項128~190のいずれか一項に記載の方法。
【請求項192】
前記改変が、ゲノム改変タンパク質によるものであり、任意選択で、前記改変が、CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、部位特異的標的化要素によるプログラム可能な付加(PASTE)、またはヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、請求項128~191のいずれか一項に記載の方法。
【請求項193】
前記ゲノム改変タンパク質が、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、Mad7、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、及びCRISPR関連トランスポザーゼからなる群から選択される、請求項191または192に記載の方法。
【請求項194】
前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、前記標的ゲノム遺伝子座を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、前記Casが、Cas9またはCas12から選択される、請求項186~193のいずれか一項に記載の方法。
【請求項195】
前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記標的ゲノム遺伝子座の標的配列に相補的である標的化ドメインを有するガイドRNA(gRNA)、ならびにCD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、及び/またはCD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドを含む相同性指向修復鋳型を含む、請求項194に記載の方法。
【請求項196】
前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項195に記載の方法。
【請求項197】
MHCクラスIの発現を低減する工程が、1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する改変を導入する段階を含む、請求項127~196のいずれか一項に記載の方法。
【請求項198】
1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、B2Mの低減された発現を含む、請求項197に記載の方法。
【請求項199】
1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、B2Mの低減されたタンパク質発現を含む、請求項198に記載の方法。
【請求項200】
1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、B2M遺伝子活性を低減する、請求項198または請求項199に記載の方法。
【請求項201】
1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する前記改変が、前記B2M遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む、請求項197~200のいずれか一項に記載の方法。
【請求項202】
1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、前記細胞における全てのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む、請求項197~201のいずれか一項に記載の方法。
【請求項203】
前記不活性化または前記破壊が、前記B2M遺伝子におけるインデル、または前記B2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む、請求項201または請求項202に記載の方法。
【請求項204】
前記インデルが、フレームシフト変異である、請求項203に記載の方法。
【請求項205】
前記B2M遺伝子がノックアウトされている、請求項197~204のいずれか一項に記載の方法。
【請求項206】
1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、ゲノム改変タンパク質によるものであり、任意選択で、1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、請求項197~205のいずれか一項に記載の方法。
【請求項207】
前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、前記B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、前記Casが、Cas9またはCas12から選択される、請求項206に記載の方法。
【請求項208】
前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位に相補的である標的化ドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、請求項207に記載の方法。
【請求項209】
前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項208に記載の方法。
【請求項210】
MHCクラスIIの発現を低減する工程が、1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する改変を導入する段階を含む、請求項127~209のいずれか一項に記載の方法。
【請求項211】
1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、CIITAの低減された発現を含む、請求項210に記載の方法。
【請求項212】
1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、CIITAの低減されたタンパク質発現を含む、請求項211に記載の方法。
【請求項213】
1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、CIITA遺伝子活性を低減する、請求項211または請求項212に記載の方法。
【請求項214】
1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、前記CIITA遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む、請求項211~213のいずれか一項に記載の方法。
【請求項215】
前記改変が、前記細胞における全てのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む、請求項211~214のいずれか一項に記載の方法。
【請求項216】
前記不活性化または前記破壊が、前記CIITA遺伝子におけるインデル、または前記CIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む、請求項214または請求項215に記載の方法。
【請求項217】
前記インデルが、フレームシフト変異である、請求項216に記載の方法。
【請求項218】
前記CIITA遺伝子がノックアウトされている、請求項211~217のいずれか一項に記載の方法。
【請求項219】
前記細胞が、ヒト細胞または動物細胞であり、任意選択で、前記動物細胞が、ブタ(ブタ類)細胞、ウシ(ウシ類)細胞、またはヒツジ(ヒツジ類)細胞である、請求項127~218のいずれか一項に記載の方法。
【請求項220】
前記操作された細胞が、ヒト細胞である、請求項127~219のいずれか一項に記載の方法。
【請求項221】
前記細胞が、ドナー対象から単離された初代細胞である、請求項127~220のいずれか一項に記載の方法。
【請求項222】
前記細胞が、多能性幹細胞であり、前記操作された細胞が、前記多能性幹細胞に由来する分化細胞であり、前記方法が、前記多能性幹細胞を分化させる工程をさらに含む、請求項127~220のいずれか一項に記載の方法。
【請求項223】
前記多能性幹細胞が、人工多能性幹細胞である、請求項222に記載の方法。
【請求項224】
前記操作された細胞が、島細胞、ベータ島細胞、膵島細胞、免疫細胞、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ細胞、内皮細胞、筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、ドーパミン作動性ニューロン、網膜色素上皮細胞、視細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心臓細胞、幹細胞、造血幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、間葉系幹細胞(MSC)、胚性幹細胞(ESC)、多能性幹細胞(PSC)、及び血液細胞からなる群から選択される、請求項127~223のいずれか一項に記載の方法。
【請求項225】
請求項127~224のいずれか一項に記載の方法に従って生産される、操作された細胞。
【請求項226】
前記操作された細胞、または前記操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞が、患者への投与時にNK細胞媒介性細胞傷害を回避することができる、請求項1~126及び225のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項227】
前記操作された細胞、または前記操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞が、患者への投与時に成熟NK細胞による細胞溶解から保護される、請求項1~126及び225~226のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項228】
前記操作された細胞、または前記操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞が、患者への投与時に前記細胞に対する免疫応答を誘導しない、請求項1~126及び225~226のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項229】
前記操作された細胞、または前記操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞が、患者への投与時に前記細胞に対する全身性炎症応答を誘導しない、請求項1~126及び225~228のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項230】
前記操作された細胞、または前記操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞が、患者への投与時に前記細胞に対する局所炎症応答を誘導しない、請求項1~126及び225~229のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項231】
前記操作された細胞、または前記操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞が、患者への投与時に補体経路活性化を誘導しない、請求項1~126及び225~230のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項232】
前記細胞が、患者への投与時に生着して機能する能力を保持する、請求項1~126及び225~231のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項233】
請求項1~126及び225~232のいずれか一項に記載の操作された細胞を複数含む、細胞の集団。
【請求項234】
前記集団中の細胞の少なくとも約30%が、請求項1~126のいずれか一項に記載の操作された細胞を含む、請求項233に記載の集団。
【請求項235】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、前記改変を含む、請求項233に記載の集団。
【請求項236】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項233または235に記載の集団。
【請求項237】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項233~236のいずれか一項に記載の集団。
【請求項238】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項233~237のいずれか一項に記載の集団。
【請求項239】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項233~238のいずれか一項に記載の集団。
【請求項240】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、前記改変を含まない細胞と比べて低減された1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を含む、請求項233~239のいずれか一項に記載の集団。
【請求項241】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、前記改変を含まない細胞と比べて低減されたB2M及び/またはCIITAの発現を含む、請求項233~240のいずれか一項に記載の集団。
【請求項242】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、前記改変を含まない細胞と比べて低減されたB2M及びCIITAの発現を含む、請求項233~240のいずれか一項に記載の集団。
【請求項243】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、B2M遺伝子の両方のアレルを不活性化する1つまたは複数の変化を含む、請求項233~242のいずれか一項に記載の集団。
【請求項244】
前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、CIITA遺伝子の両方のアレルを不活性化する1つまたは複数の変化を含む、請求項233~243のいずれか一項に記載の集団。
【請求項245】
請求項233~244のいずれか一項に記載の集団を含む、組成物。
【請求項246】
操作された細胞の集団を含む組成物であって、前記操作された細胞が、
(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチド、
(ii)CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、
(iii)CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及び
(iv)B2M遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊
を含む、前記組成物。
【請求項247】
前記操作された細胞が、CIITA遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊をさらに含む、請求項246に記載の組成物。
【請求項248】
前記操作された細胞が、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項246または247に記載の組成物。
【請求項249】
前記操作された細胞が、
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、及びCD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクター
を含む、請求項246~248のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項250】
前記操作された細胞が、
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドを含む第1の導入遺伝子、ならびにCD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクター
を含む、請求項246~248のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項251】
前記操作された細胞が、
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドを含む第1の導入遺伝子、ならびにCD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、及びCD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクター
を含む、請求項246~248のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項252】
前記マルチシストロン性ベクターの前記ポリヌクレオチドの各々が、IRESまたは自己切断型ペプチドによって隔てられている、請求項248~251のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項253】
前記導入遺伝子(複数可)が、相同性指向修復を用いたヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によって標的ゲノム遺伝子座部位にて導入される、請求項248~252のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項254】
前記不活性化または前記破壊が、ゲノム改変タンパク質によるものであり、任意選択で、前記不活性化または前記破壊が、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、請求項246~252のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項255】
前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、前記標的ゲノム遺伝子座を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、前記Casが、Cas9またはCas12から選択される、請求項245~254のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項256】
前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、Cas9またはCas12から選択されるCasヌクレアーゼによるものである、請求項255に記載の組成物。
【請求項257】
薬学的組成物である、請求項245~254のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項258】
薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項257に記載の組成物。
【請求項259】
凍結保護剤を含む無血清凍結保存培地中で製剤化されている、請求項245~254のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項260】
前記凍結保護剤が、DMSOであり、前記凍結保存培地が、5%~10%のDMSO(v/v)である、請求項259に記載の組成物。
【請求項261】
前記凍結保護剤が、10%のDMSO(v/v)であるか、または約10%のDMSO(v/v)である、請求項259または260に記載の組成物。
【請求項262】
滅菌されている、請求項245~261のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項263】
請求項245~261のいずれか一項に記載の組成物を含む、容器。
【請求項264】
滅菌バッグである、請求項263に記載の容器。
【請求項265】
前記バッグが、凍結保存対応バッグである、請求項264に記載の滅菌バッグ。
【請求項266】
その必要のある患者において疾患、病態、または細胞欠陥を処置する方法であって、前記患者に、有効量の請求項233~244のいずれか一項に記載の集団または請求項245~262のいずれか一項に記載の組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項267】
前記集団が、内皮細胞を含む、請求項266に記載の方法。
【請求項268】
前記病態または前記疾患が、糖尿病、がん、血管新生障害、眼疾患、甲状腺疾患、皮膚疾患、及び肝臓疾患からなる群から選択される、請求項266または請求項267に記載の方法。
【請求項269】
前記細胞欠陥が、糖尿病に関連するか、または前記疾患もしくは前記病態が、糖尿病であり、任意選択で前記糖尿病が、I型糖尿病である、請求項266に記載の方法。
【請求項270】
前記細胞の集団が、ベータ島細胞を含めた島細胞の集団である、請求項269に記載の方法。
【請求項271】
前記島細胞が、島前駆細胞、未成熟島細胞、及び成熟島細胞からなる群から選択される、請求項270に記載の方法。
【請求項272】
前記細胞欠陥が、血管病態もしくは疾患に関連するか、または前記疾患もしくは前記病態が、血管病態もしくは疾患である、請求項266に記載の方法。
【請求項273】
前記細胞の集団が、内皮細胞の集団である、請求項272に記載の方法。
【請求項274】
前記細胞欠陥が、自己免疫性甲状腺炎に関連するか、または前記疾患もしくは前記病態が、自己免疫性甲状腺炎である、請求項266に記載の方法。
【請求項275】
前記細胞の集団が、甲状腺前駆細胞の集団である、請求項274に記載の方法。
【請求項276】
前記細胞欠陥が、肝臓疾患に関連するか、または前記疾患が、肝臓疾患である、請求項266に記載の方法。
【請求項277】
前記肝臓疾患が、前記肝臓の肝硬変を含む、請求項276に記載の方法。
【請求項278】
前記細胞の集団が、肝細胞または肝前駆細胞の集団である、請求項276または277に記載の方法。
【請求項279】
前記細胞欠陥が、角膜疾患に関連するか、または前記疾患が、角膜疾患である、請求項266に記載の方法。
【請求項280】
前記角膜疾患が、フックスジストロフィーまたは先天性遺伝性内皮ジストロフィーである、請求項279に記載の方法。
【請求項281】
前記細胞の集団が、角膜内皮前駆細胞または角膜内皮細胞の集団である、請求項279または280に記載の方法。
【請求項282】
前記細胞欠陥が、腎臓疾患に関連するか、または前記疾患が、腎臓疾患である、請求項266に記載の方法。
【請求項283】
前記細胞の集団が、腎前駆体細胞または腎細胞の集団である、請求項282に記載の方法。
【請求項284】
前記細胞欠陥が、がんに関連するか、または前記疾患が、がんである、請求項266に記載の方法。
【請求項285】
前記がんが、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される、請求項284に記載の方法。
【請求項286】
前記細胞の集団が、T細胞、NK細胞、またはNKT細胞の集団である、請求項284または285に記載の方法。
【請求項287】
前記細胞欠陥が、造血疾患もしくは障害に関連するか、または前記疾患もしくは前記病態が、造血疾患もしくは障害である、請求項266に記載の方法。
【請求項288】
前記造血疾患または障害が、骨髄異形成、再生不良性貧血、ファンコニ貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、鎌状赤血球症、ダイアモンド・ブラックファン貧血、シャックマン・ダイアモンド障害、コストマン症候群、慢性肉芽腫性疾患、副腎白質ジストロフィー、白血球接着不全症、血友病、サラセミア、ベータサラセミア、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性(骨髄性)白血病(AML)、成人リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、若年性慢性骨髄性白血病(CML)、及び若年性骨髄単球性白血病(JMML)等の白血病、重症複合免疫不全症(SCID)、X連鎖重症複合免疫不全症、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、慢性肉芽腫性疾患、チェディアック・東症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、またはAIDSである、請求項287に記載の方法。
【請求項289】
前記細胞欠陥が、白血病もしくは骨髄腫に関連するか、または前記疾患もしくは前記病態が、白血病もしくは骨髄腫である、請求項266に記載の方法。
【請求項290】
前記細胞欠陥が、自己免疫疾患もしくは病態に関連するか、または前記疾患もしくは前記病態が、自己免疫疾患または病態である、請求項266に記載の方法。
【請求項291】
前記自己免疫疾患または病態が、急性散在性脳脊髄炎、急性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗合成酵素症候群、アトピー性アレルギー、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ球増殖性症候群、自己免疫性末梢性ニューロパチー、自己免疫性膵炎、多腺性自己免疫症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ブドウ膜炎、バロー病、バロー同心円硬化症、ベーチェット症候群、バージャー病、ビッカースタッフ型脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性再発性多巣性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体第2成分欠損症、頭蓋動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型真性糖尿病、びまん皮膚硬化型全身性強皮症、ドレスラー症候群、円板状エリテマトーデス、湿疹、付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維化性肺胞炎、胃炎、胃腸類天疱瘡、巨細胞性動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症性脱髄性疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、炎症性脱髄性多発ニューロパチー、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎、若年性関節リウマチ、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病(LAD)、ルー・ゲーリッグ病、ルポイド肝炎、エリテマトーデス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合性結合組織病、斑状強皮症、ムッカ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、視神経脊髄炎、ニューロミオトニア、眼型瘢痕性類天疱瘡、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、オルド甲状腺炎、回帰性リウマチ、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリーロンバーグ症候群、パーソネイジ・ターナー症候群、扁平部炎、天疱瘡、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発性動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症ニューロパチー、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発軟骨炎、ライター症候群、レストレスレッグス症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スティル病、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、分類不能結合組織病、分類不能脊椎関節症、血管炎、白斑、またはウェゲナー肉芽腫症である、請求項290に記載の方法。
【請求項292】
前記細胞の集団が、造血幹細胞(HSC)及び/またはその派生物を含む集団である、請求項287~291のいずれか一項に記載の方法。
【請求項293】
前記細胞欠陥が、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、神経変性疾患もしくは病態、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、うつ病、脳卒中後の神経精神障害、もしくは筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関連するか、または前記疾患もしくは前記病態が、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、神経変性疾患もしくは病態、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、うつ病、脳卒中後の神経精神障害、もしくは筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、請求項266に記載の方法。
【請求項294】
前記細胞の集団が、神経細胞及び/またはグリア細胞を含む集団である、請求項293に記載の方法。
【請求項295】
前記細胞が、投与前に増殖させられ、凍結保存される、請求項266~294のいずれか一項に記載の方法。
【請求項296】
前記集団を投与する工程が、前記集団の静脈内注射、筋肉内注射、血管内注射、または移植を含む、請求項266~295のいずれか一項に記載の方法。
【請求項297】
前記集団が、血管内注射または筋肉内注射を介して移植される、請求項296に記載の方法。
【請求項298】
前記集団がドナー対象に由来し、前記ドナーのHLA型が、前記患者のHLA型と一致しない、請求項226~297のいずれか一項に記載の方法。
【請求項299】
前記集団がドナーに由来し、前記ドナーの血液型が、前記患者の血液型と一致せず、前記ドナーの血液型がO型でない、請求項226~298のいずれか一項に記載の方法。
【請求項300】
前記集団がドナーに由来し、前記ドナーの血液型がアカゲザル因子(Rh)陽性であり、前記患者の血液型がRh陰性である、請求項226~299のいずれか一項に記載の方法。
【請求項301】
前記患者の血清が、Rhに対する抗体を含む、請求項226~300のいずれか一項に記載の方法。
【請求項302】
前記集団がヒト細胞集団であり、前記患者がヒト患者である、請求項226~301のいずれか一項に記載の方法。
【請求項303】
前記細胞の集団が、機能的ABO Aアレル及び/または機能的ABO Bアレルを含む、請求項226~302のいずれか一項に記載の方法。
【請求項304】
前記細胞の集団が、ABO A型抗原を提示し、前記患者の血清が、抗A抗体を含む、請求項303に記載の方法。
【請求項305】
前記細胞の集団が、ABO B型抗原を提示し、前記患者の血清が、抗B抗体を含む、請求項303に記載の方法。
【請求項306】
前記細胞の集団が、ABO A型抗原及びB型抗原を提示し、前記患者の血清が、抗A抗体及び/または抗B抗体を含む、請求項303に記載の方法。
【請求項307】
前記細胞の集団が、Rh因子を発現し、前記患者の血清が、抗Rh抗体を含む、請求項266~306のいずれか一項に記載の方法。
【請求項308】
疾患、病態、または細胞欠陥を処置するために患者に投与するための操作された細胞の集団を含む細胞療法を選択する方法であって、
前記方法が、
前記患者の血液が、1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及び/またはアカゲザル(Rh)因子型との、ABO式血液型不適合またはRh因子不適合を有するかどうかを決定する工程
を含み、
前記1セットの集団が、
(i)低免疫原性改変の基本セットを含むが、CD46及びCD59の発現を増加させる改変を含まない、第1の操作された細胞の集団、ならびに
(ii)前記低免疫原性改変の基本セットを含み、CD46及びCD59の発現を増加させる改変をさらに含む、第2の操作された細胞の集団
を含み、
前記増加した発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり;
前記患者の血液型が、前記1セットの集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO式血液型不適合もRh因子不適合も有しない場合、前記方法は、前記患者への投与のための前記第1の操作された細胞の集団を選択する工程を含み、
前記患者の血液型が、前記1セットの集団のABO式血液型及び/またはRh因子型との、ABO式血液型不適合またはRh因子不適合を有する場合、前記方法は、前記患者への投与のための前記第2の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、
前記方法。
【請求項309】
その必要のある患者において疾患、病態、または細胞欠陥を処置する方法であって、前記患者に、有効量の操作された細胞の集団を投与する工程を含み、
前記患者の血液が、1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及び/またはアカゲザル(Rh)因子型との、ABO式血液型不適合またはRh因子不適合を有するかどうかを決定する工程
を含む方法によって、前記患者が、処置に対する選択を受け、
前記1セットの操作された細胞の集団が、
(i)低免疫原性改変の基本セットを含むが、CD46及びCD59の発現を増加させる改変を含まない、第1の操作された細胞の集団、ならびに
(ii)前記低免疫原性改変の基本セットならびにCD46及びCD59の増加した発現を含む、第2の操作された細胞の集団
を含み、
前記増加した発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり;
前記患者の血液型が、前記1セットの集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO式血液型不適合もRh因子不適合も有しない場合、前記方法は、前記患者に前記第1の操作された細胞の集団を投与する工程を含み、
前記患者の血液型が、前記1セットの集団のABO式血液型及び/またはRh因子型との、ABO式血液型不適合またはRh因子不適合を有する場合、前記方法は、前記患者に前記第2の操作された細胞の集団を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項310】
前記低免疫原性改変の基本セットが、
(i)1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させる、ならびに(ii)1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する、改変
を含み、(i)の前記増加した発現及び(ii)の前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、請求項308または請求項309に記載の方法。
【請求項311】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、及びSERPINB9、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項310に記載の方法。
【請求項312】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項311に記載の方法。
【請求項313】
前記低免疫原性改変の基本セットが、CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200、及びMFGE8の発現を増加させる改変を含み、前記増加した発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、請求項308または請求項309に記載の方法。
【請求項314】
前記第2の操作された細胞の集団が、請求項1~126及び225~232のいずれか一項に記載の操作された細胞を含む集団であるか、または請求項233~244のいずれか一項に記載の操作された細胞の集団である、請求項308~313のいずれか一項に記載の方法。
【請求項315】
前記1セットの細胞の集団の、前記第1の操作された細胞の集団及び前記第2の操作された細胞の集団が、
同じドナーに由来するか、または
同じ複数のドナーである1よりも多くの前記ドナーからプールされた細胞に由来する、
請求項308~314のいずれか一項に記載の方法。
【請求項316】
前記1セットの細胞の集団の、前記第1の操作された細胞の集団及び前記第2の操作された細胞の集団が、同じABO式血液型及びRh因子型のものである、請求項308~315のいずれか一項に記載の方法。
【請求項317】
前記患者の血液型が、1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及び/またはアカゲザル(Rh)因子型との、ABO式血液型不適合またはRh因子不適合を有するかどうかを決定する前記工程が、
前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体を含むかどうかを決定する段階、
前記患者の血清がABO式血液型B抗原に対する抗体を含むかどうかを決定する段階、及び/または
前記患者の血液型がアカゲザル(Rh)因子陽性もしくは陰性のどちらであるかを決定する段階
を含む、請求項308~316のいずれか一項に記載の方法。
【請求項318】
前記患者の血液型が、前記1セットの操作された細胞の集団の前記ABO式血液型及び前記Rh因子型との血液型適合性を有すると決定され、
(a)(1)前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体を含み、かつABO式血液型B抗原に対する抗体を含まない場合、及び前記患者の血液型がアカゲザル(Rh)因子陰性である場合、ならびに(2)前記1セットの集団の前記細胞がABO式血液型OまたはABO式血液型Bであり、かつRh因子陰性である場合、前記方法は、前記患者への投与のための前記第1の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、あるいは
(b)(1)前記患者の血清がABO式血液型B抗原に対する抗体を含み、ABO式血液型A抗原に対する抗体を含まず、かつ前記患者の血液型がRh因子陰性である場合、及び(2)前記1セットの細胞の集団の前記細胞がABO式血液型OまたはABO式血液型Aであり、かつ前記細胞がRh因子陰性である場合、前記方法は、前記患者への投与のための前記第1の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、あるいは
(c)(1)前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体及びABO式血液型B抗原に対する抗体を含む場合、ならびに(2)前記1セットの細胞の集団の前記細胞がABO式血液型Oの細胞である場合、前記方法は、前記患者への投与のための前記第1の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、あるいは
(d)(1)前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体もABO式血液型B抗原に対する抗体も含まず、かつ前記患者の血液型がRh因子陽性である場合、及び(2)前記1セットの細胞の集団の前記細胞がABO式血液型A、ABO式血液型B、ABO式血液型AB、またはABO式血液型Oの細胞であり、かつRh因子陰性またはRh因子陽性である場合、前記方法は、前記患者への投与のための前記第1の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、あるいは
(e)(1)前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体もABO式血液型B抗原に対する抗体も含まず、かつ前記患者の血液型がRh因子陰性である場合、ならびに(2)前記1セットの細胞の集団の前記細胞が、ABO式血液型A、ABO式血液型B、ABO式血液型AB、またはABO式血液型O、及びRh因子陰性である場合、前記方法は、前記患者に投与するための前記第1の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、
請求項308~317のいずれか一項に記載の方法。
【請求項319】
前記患者の血液型が、前記1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO式血液型及び/またはRh因子不適合を有し、
(a)(1)前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体を含み、ABO式血液型B抗原に対する抗体を含まず、かつ前記患者の血液型がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、及び(2)前記1セットの集団の前記細胞がABO式血液型AまたはABO式血液型ABの細胞であり、かつ前記集団の前記細胞がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、前記方法は、前記患者に投与するための前記第2の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、あるいは
(b)(1)前記患者の血清がABO式血液型B抗原に対する抗体を含み、ABO式血液型A抗原に対する抗体を含まず、かつ前記患者の血液型がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、及び(2)前記1セットの細胞の集団の前記細胞がABO式血液型BまたはABO式血液型ABの細胞であり、かつ前記集団の前記細胞がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、前記方法は、前記患者に投与するための前記第2の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、あるいは
(c)(1)前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体及びABO式血液型B抗原に対する抗体を含み、かつ前記患者の血液型がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、ならびに(2)前記1セットの細胞の集団の前記細胞がABO式血液型A、ABO式血液型B、またはABO式血液型ABであり、かつ前記集団の前記細胞がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、前記方法は、前記患者に投与するための前記第2の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、あるいは
(d)(1)前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体もABO式血液型B抗原に対する抗体も含まず、かつ前記患者の血液型がRh因子陰性である場合、ならびに(2)前記1セットの細胞の集団の前記細胞が、ABO式血液型A、ABO式血液型B、ABO式血液型AB、またはABO式血液型O、及びRh因子陽性である場合、前記方法は、前記患者に投与するための前記第2の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、
請求項308~317のいずれか一項に記載の方法。
【請求項320】
1つまたは複数の免疫抑制剤を前記患者に投与する工程をさらに含む、請求項226~307及び309~319のいずれか一項に記載の方法。
【請求項321】
前記患者が、1つまたは複数の免疫抑制剤を投与されている、請求項226~307及び309~319のいずれか一項に記載の方法。
【請求項322】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、低分子または抗体である、請求項320または321に記載の方法。
【請求項323】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、コルチコステロイド、プレドニゾン、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア薬、ブレキナル、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスパガリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン(チモシン-α)、及び免疫抑制抗体からなる群から選択される、請求項320~322のいずれか一項に記載の方法。
【請求項324】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、シクロスポリンを含む、請求項320~323のいずれか一項に記載の方法。
【請求項325】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、ミコフェノール酸モフェチルを含む、請求項320~322のいずれか一項に記載の方法。
【請求項326】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、コルチコステロイドを含む、請求項320~323のいずれか一項に記載の方法。
【請求項327】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、シクロホスファミドを含む、請求項320~323のいずれか一項に記載の方法。
【請求項328】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、ラパマイシンを含む、請求項320~323のいずれか一項に記載の方法。
【請求項329】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、タクロリムス(FK-506)を含む、請求項320~323のいずれか一項に記載の方法。
【請求項330】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、抗胸腺細胞グロブリンを含む、請求項320~323のいずれか一項に記載の方法。
【請求項331】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、1つまたは複数の免疫調節剤である、請求項320~323のいずれか一項に記載の方法。
【請求項332】
前記1つまたは複数の免疫調節剤が、低分子または抗体である、請求項331に記載の方法。
【請求項333】
前記抗体が、IL-2受容体のp75、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFN-ガンマ、TNF-アルファ、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-6、IGF、IGFR1、IL-7、IL-8、IL-10、CD11a、CD58からなる群から選択される受容体またはリガンド、およびそれらのリガンドのうちのいずれかに結合する抗体、のうちの1つまたは複数に結合する、請求項322または請求項332に記載の方法。
【請求項334】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の投与前に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項320~333のいずれか一項に記載の方法。
【請求項335】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日前に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項320~334のいずれか一項に記載の方法。
【請求項336】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の投与の少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間前、またはそれよりも前に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項320~334のいずれか一項に記載の方法。
【請求項337】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の投与から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日後に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項320~334のいずれか一項に記載の方法。
【請求項338】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の投与から少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間後、またはそれよりも後に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項320~334のいずれか一項に記載の方法。
【請求項339】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の1回目の投与と同じ日に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項320~334のいずれか一項に記載の方法。
【請求項340】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の投与後に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項320~334のいずれか一項に記載の方法。
【請求項341】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行後に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項320~334のいずれか一項に記載の方法。
【請求項342】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行前に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項320~334のいずれか一項に記載の方法。
【請求項343】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日前に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項320~334のいずれか一項に記載の方法。
【請求項344】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行の少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間前、またはそれよりも前に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項320~334のいずれか一項に記載の方法。
【請求項345】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日後に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項320~334のいずれか一項に記載の方法。
【請求項346】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行から少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間後、またはそれよりも後に前記患者に投与されるか、または投与されている、請求項320~334のいずれか一項に記載の方法。
【請求項347】
前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の前記改変を含まない免疫原性細胞の免疫拒絶反応を低減するために投与される1つまたは複数の免疫抑制剤の投薬量と比較してより低い投薬量で投与される、請求項320~346のいずれか一項に記載の方法。
【請求項348】
前記操作された細胞が、前記操作された細胞の制御された殺傷が可能である、請求項226~307及び309~347のいずれか一項に記載の方法。
【請求項349】
前記操作された細胞が、自殺遺伝子または自殺スイッチを含む、請求項226~307及び309~348のいずれか一項に記載の方法。
【請求項350】
薬物もしくはプロドラッグの存在下で、または選択的な外因性化合物による作動時に、前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、制御された細胞死を誘導する、請求項349に記載の方法。
【請求項351】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、前記操作された細胞のアポトーシスを誘導することができる誘導性タンパク質である、請求項349または請求項350に記載の方法。
【請求項352】
前記操作された細胞のアポトーシスを誘導することができる前記誘導性タンパク質が、カスパーゼタンパク質である、請求項351に記載の方法。
【請求項353】
前記カスパーゼタンパク質が、カスパーゼ9である、請求項352に記載の方法。
【請求項354】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、請求項349~353のいずれか一項に記載の方法。
【請求項355】
前記患者への前記1つまたは複数の免疫抑制剤の前記投与後に、前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、制御された細胞死を誘導するために作動される、請求項349~354のいずれか一項に記載の方法。
【請求項356】
前記患者への前記1つまたは複数の免疫抑制剤の前記投与前に、前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、制御された細胞死を誘導するために作動される、請求項349~354のいずれか一項に記載の方法。
【請求項357】
前記患者への前記操作された細胞の前記投与後に、前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、制御された細胞死を誘導するために作動される、請求項349~356のいずれか一項に記載の方法。
【請求項358】
前記患者に細胞傷害事象または他のマイナスの結果が生じた場合に、前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、制御された細胞死を誘導するために作動される、請求項349~357のいずれか一項に記載の方法。
【請求項359】
前記操作された細胞の集団の操作された細胞の枯渇を可能にする剤を投与する工程を含む、請求項226~307及び309~349のいずれか一項に記載の方法。
【請求項360】
前記操作された細胞の枯渇を可能にする前記剤が、前記操作された細胞の前記表面上に発現したタンパク質を認識する抗体である、請求項359に記載の方法。
【請求項361】
前記抗体が、CCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMA、及びRQR8を認識する抗体からなる群から選択される、請求項360に記載の方法。
【請求項362】
前記抗体が、モガムリズマブ、AFM13、MOR208、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、リツキシマブ、リツキシマブ-RIIb、トムゾツキシマブ、RO5083945(GA201)、セツキシマブ、Hul4.18K322A、Hul4.18-IL2、Hu3F8、ジニツキシマブ(dinituximab)、c.60C3-RIIc、及びそれらのバイオ後続品からなる群から選択される、請求項360または請求項361に記載の方法。
【請求項363】
前記操作された細胞の前記表面上の前記1つまたは複数の寛容原性因子を認識する剤を投与する工程を含む、請求項226~307、309~349、及び359~362のいずれか一項に記載の方法。
【請求項364】
前記操作された細胞が、前記1つまたは複数の寛容原性因子を発現するように操作される、請求項363に記載の方法。
【請求項365】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、A20/TNFAIP3、C1-インヒビター、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD47、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1、Serpinb9、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の寛容原性因子を含む、請求項310~364のいずれか一項に記載の方法。
【請求項366】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47を含む、請求項365に記載の方法。
【請求項367】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-Eを含む、請求項310~366のいずれか一項に記載の方法。
【請求項368】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24を含む、請求項310~367のいずれか一項に記載の方法。
【請求項369】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、PDL1を含む、請求項310~368のいずれか一項に記載の方法。
【請求項370】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD55を含む、請求項310~369のいずれか一項に記載の方法。
【請求項371】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CR1を含む、請求項310~370のいずれか一項に記載の方法。
【請求項372】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、MANFを含む、請求項310~371のいずれか一項に記載の方法。
【請求項373】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、A20/TNFAIP3を含む、請求項310~372のいずれか一項に記載の方法。
【請求項374】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E及びCD47を含む、請求項310~373のいずれか一項に記載の方法。
【請求項375】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24、CD47、及びPDL1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24、CD47、及びPDL1を含む、請求項310~374のいずれか一項に記載の方法。
【請求項376】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、及びPDL1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、及びPDL1を含む、請求項310~375のいずれか一項に記載の方法。
【請求項377】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、請求項310~376のいずれか一項に記載の方法。
【請求項378】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、請求項310~377のいずれか一項に記載の方法。
【請求項379】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、請求項310~378のいずれか一項に記載の方法。
【請求項380】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E及びPDL1を含む、請求項310~379のいずれか一項に記載の方法。
【請求項381】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びA20/TNFAIPからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びA20/TNFAIPを含む、請求項310~380のいずれか一項に記載の方法。
【請求項382】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びMANFからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びMANFを含む、請求項310~381のいずれか一項に記載の方法。
【請求項383】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP、及びMANFからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP、及びMANFを含む、請求項310~382のいずれか一項に記載の方法。
【請求項384】
1つまたは複数の追加の治療剤を前記患者に投与する工程をさらに含む、請求項226~307及び309~383のいずれか一項に記載の方法。
【請求項385】
前記患者が、1つまたは複数の追加の治療剤を投与されている、請求項226~307及び309~384のいずれか一項に記載の方法。
【請求項386】
前記方法の治療有効性を監視する工程をさらに含む、請求項226~307及び309~385のいずれか一項に記載の方法。
【請求項387】
前記方法の予防有効性を監視する工程をさらに含む、請求項226~307及び309~385のいずれか一項に記載の方法。
【請求項388】
1つまたは複数の疾患症状の所望の抑制が起こるまで繰り返される、請求項386または請求項387に記載の方法。
【請求項389】
自殺遺伝子をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項1~126及び225~232のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項390】
自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項1~126及び225~232のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項391】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、請求項389または請求項390に記載の操作された細胞。
【請求項392】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記自殺遺伝子または前記安全スイッチに関連する遺伝子が、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、請求項389~391のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項393】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記1つまたは複数の寛容原性因子が、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、請求項389~392のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項394】
前記バイシストロン性カセットが、前記操作された細胞の前記ゲノム内への非標的化挿入によって組み込まれ、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入による、請求項392または請求項393に記載の操作された細胞。
【請求項395】
前記バイシストロン性カセットが、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によって組み込まれ、任意選択で、前記標的化挿入が、相同性指向修復を用いたヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、請求項394に記載の操作された細胞。
【請求項396】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47である、請求項389~395のいずれか一項に記載の操作された細胞。
【請求項397】
前記操作された細胞が、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項127~224及び266~388のいずれか一項に記載の方法。
【請求項398】
前記自殺遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、請求項397に記載の方法。
【請求項399】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記自殺遺伝子または前記安全スイッチに関連する遺伝子が、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、請求項397または請求項398に記載の方法。
【請求項400】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記1つまたは複数の寛容原性因子が、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、請求項397~399のいずれか一項に記載の方法。
【請求項401】
前記バイシストロン性カセットが、前記操作された細胞の前記ゲノム内への非標的化挿入によって組み込まれる、請求項399または請求項400に記載の方法。
【請求項402】
前記バイシストロン性カセットが、前記操作された細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によって組み込まれる、請求項399または請求項400に記載の方法。
【請求項403】
前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47である、請求項397~402のいずれか一項に記載の方法。
【請求項404】
前記操作された細胞の集団の操作された細胞が、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項245~262のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項405】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、請求項404に記載の組成物。
【請求項406】
前記自殺遺伝子、及び前記自殺遺伝子または前記安全スイッチに関連する遺伝子が、前記操作された細胞の集団の前記操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、請求項404または請求項405に記載の組成物。
【請求項407】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記外因性CD47が、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、請求項404~406のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項408】
前記バイシストロン性カセットが、前記ゲノム内への非標的化挿入によって組み込まれ、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記操作された細胞の集団の操作された細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入による、請求項406または請求項407に記載の組成物。
【請求項409】
前記バイシストロン性カセットが、前記操作された細胞の集団の操作された細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によって組み込まれ、任意選択で、前記標的化挿入が、相同性指向修復を用いたヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、請求項406または請求項407に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年8月11日に出願された米国仮特許出願第63/232,164号、及び2022年6月17日に出願された米国仮特許出願第63/353,538号に対する優先権を主張するものであり、同文献の各々の内容は参照によりそれらの全体があらゆる目的で本明細書に援用される。
【0002】
電子形式の配列表への参照
電子形式の配列表(186152005240SEQLIST.xml、サイズ:41,567バイト、及び作成日:2022年8月8日)の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0003】
分野
ある特定の態様では、本開示は、同種異系細胞療法において使用するための、遺伝子改変等の1つまたは複数の改変を含有する操作された細胞を対象とする。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、低免疫原性細胞である。
【発明の概要】
【0004】
概要
ドナー同種異系抗原に対するレシピエントの感作は、細胞療法を含めた臨床移植療法が直面している問題である。例えば、移植レシピエントの免疫系が同種異系材料を拒絶する傾向が、移植療法の潜在的な有効性を大幅に低減し、かかる治療に関連する考えられるプラスの効果を減弱させる。多数の障害及び病態の処置のための改善された同種異系細胞に対する必要性が残っている。したがって、レシピエントの免疫系による検出を避ける同種異系細胞ベースの治療法を生み出すための新規のアプローチ、組成物、及び方法に対する必要性が残っている。
【0005】
いくつかの態様では、
(i)1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させる、(ii)CD46の発現を増加させる、(iii)CD59の発現を増加させる、ならびに(iv)1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する、改変
を含む、操作された細胞が本明細書で提供され、ここで、(i)、(ii)、及び(iii)の増加した発現ならびに(iv)の低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。
【0006】
いくつかの実施形態では、(iv)における改変は、1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する。いくつかの実施形態では、(iv)における改変は、1つまたは複数のMHCクラスI分子及び1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する。
【0007】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子は、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、及びSERPINB9、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0008】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子のうちの少なくとも1つは、CD47である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子のうちの少なくとも1つは、PD-L1である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子のうちの少なくとも1つは、HLA-Eである。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子のうちの少なくとも1つは、HLA-Gである。
【0009】
いずれかの実施形態のうちのいくつかでは、1つまたは複数の寛容原性因子は、CD47;HLA-E;CD24;PD-L1;CD55;CR1;MANF;A20/TNFAIP3;HLA-E及びCD47;CD24、CD47、PD-L1、及びそれらの任意の組み合わせ;HLA-E、CD24、CD47、及びPD-L1、ならびにそれらの任意の組み合わせ;CD55、及びCR1、ならびにそれらの任意の組み合わせ;HLA-E、CD55、及びCR1、ならびにそれらの任意の組み合わせ;HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD55、及びCR1、ならびにそれらの任意の組み合わせ;HLA-E及びPDL1;HLA-E、PDL1、及びA20/TNFAIP、ならびにそれらの任意の組み合わせ;HLA-E、PDL1、及びMANF、ならびにそれらの任意の組み合わせ;HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP、及びMANF、ならびにそれらの任意の組み合わせ;ならびにCD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
いずれかの実施形態のうちのいくつかでは、改変は、MHC I及び/またはMHC IIの発現を低減する;CD47、ならびに任意選択でCD24及びPD-L1の発現を増加させる;ならびにCD46、CD55、CD59、及びCR1の発現を増加させる、改変、から選択される。
【0011】
いずれかの実施形態のうちのいくつかでは、改変は、MHCクラスI分子の発現を低減する;CD46及びCD59の発現を増加させる;PD-L1及びHLA-Eの発現を増加させる;ならびに任意選択でA20/TNFAIP3、TXNIP、及びMANFのうちの1つまたは複数の発現を増加させる、改変、から選択される。
【0012】
いずれかの実施形態のうちのいくつかでは、改変は、CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200、及びMFGE8の発現を増加させる;ならびにCD46及びCD59の発現を増加させる、改変、から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、改変は、MHC I及び/またはMHC IIの発現を低減する;ならびにCD47の発現を増加させる、改変、から選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記の改変のうちのいずれも、提供される操作された細胞において、該細胞における遺伝子の発現を増加または減少させる1つまたは複数の追加の編集とともに存在する。いくつかの実施形態では、さらなる改変のうちのいずれか1つまたは複数は、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B、NFY-C、CTLA-4、PD-1、IRF1、MIC-A、MIC-Bの発現を低減する、例えば、発現を破壊、不活性化、またはノックアウトする改変であり得る。いくつかの実施形態では、さらなる改変のうちのいずれか1つまたは複数は、酸化ストレスもしくはERストレスに関与するタンパク質、TRAC、TRB、CD142、ABO、CD38、PCDH11Y、NLGN4Y、及び/またはRHDの発現を低減する改変であり得る。いくつかの実施形態では、酸化ストレスまたはERストレスに関与するタンパク質には、チオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)、PKR様ERキナーゼ(PERK)、イノシトール要求性酵素1α(IRE1α)、及びDJ-1(PARK7)が含まれる。
【0015】
いくつかの態様では、
(i)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200、及びMFGE8の発現を増加させる、(ii)CD46の発現を増加させる、ならびに(iii)CD59の発現を増加させる、改変
を含む、操作された細胞が本明細書で提供され、ここで、増加した発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD55の発現を増加させる改変をさらに含み、ここで、CD55の増加した発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。
【0016】
いくつかの実施形態では、発現を増加させる改変(複数可)は、増加した表面発現を含み、及び/または発現を低減する改変は、低減された表面発現を含む。場合によっては、低減された表面発現は、検出可能な表面発現を何ら含まない。
【0017】
いくつかの実施形態では、CD46の発現を増加させ、かつCD59の発現を増加させる1つまたは複数の改変は、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、CD55の発現を増加させる改変は、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す。いくつかの実施形態では、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号3に記載の配列をコードする。
【0020】
いくつかの実施形態では、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す。いくつかの実施形態では、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号5に記載の配列をコードする。
【0021】
いくつかの実施形態では、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す。いくつかの実施形態では、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号8に記載の配列をコードする。
【0022】
いくつかの実施形態では、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドは各々、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0023】
いくつかの実施形態では、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、CD47の発現を増加させる改変は、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、かつ操作された細胞の自然免疫による殺傷を低減する。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号1に記載の配列をコードする。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0025】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、
1つまたは複数の寛容原性因子をコードする1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチド、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドからなる群から選択される2つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクター
を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの各々は、IRESまたは自己切断型ペプチドによって隔てられている。
【0027】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子は、CD47である。
【0028】
いくつかの実施形態では、マルチシストロン性ベクターの各ポリヌクレオチドは、同じプロモーターに作動可能に連結されている。
【0029】
いくつかの実施形態では、マルチシストロン性ベクターは、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、マルチシストロン性ベクターは、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、マルチシストロン性ベクターは、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、マルチシストロン性ベクターは、第1の導入遺伝子であり、操作された細胞は、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む別個の導入遺伝子を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、第1の導入遺伝子及び第2の導入遺伝子を含み、
ここで、第1の導入遺伝子及び第2の導入遺伝子は各々、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドを含み、ここで、第1の導入遺伝子及び第2の導入遺伝子は、モノシストロン性またはマルチシストロン性ベクターである。
【0032】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターである。
【0033】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターからなる群から選択される。
【0034】
いくつかの実施形態では、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及び/またはCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドは、操作された細胞のゲノム内に組み込まれる。
【0035】
いくつかの実施形態では、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドは、操作された細胞のゲノム内に組み込まれる。
【0036】
いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、操作された細胞のゲノム内に組み込まれる。
【0037】
いくつかの実施形態では、組み込みは、操作された細胞のゲノム内への非標的化挿入によるものであり、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した細胞内への外因性ポリヌクレオチドの導入による。いくつかの実施形態では、組み込みは、細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によるものである。
【0038】
いくつかの実施形態では、標的ゲノム遺伝子座は、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座である。
【0039】
いくつかの実施形態では、標的ゲノム遺伝子座は、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子座、及びROSA26遺伝子座からなる群から選択される。
【0040】
いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、第1の標的ゲノム遺伝子座内に組み込まれ、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチドは、第2の標的ゲノム遺伝子座内に組み込まれ、CD59をコードするポリヌクレオチドは、第3の標的ゲノム遺伝子座内に組み込まれる。
【0041】
いくつかの実施形態では、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドは、第4の標的ゲノム遺伝子座内に組み込まれる。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1の標的ゲノム遺伝子座、第2の標的ゲノム遺伝子座、及び第3の標的ゲノム遺伝子座のうちの少なくとも2つは、同じ遺伝子座である。いくつかの実施形態では、第1の標的ゲノム遺伝子座、第2の標的ゲノム遺伝子座、第3の標的ゲノム遺伝子座、及び第4の標的ゲノム遺伝子座のうちの少なくとも2つは、同じ遺伝子座である。いくつかの実施形態では、第1の標的ゲノム遺伝子座、第2の標的ゲノム遺伝子座、及び第3の標的ゲノム遺伝子座は、同じ遺伝子座である。いくつかの実施形態では、第1の標的ゲノム遺伝子座、第2の標的ゲノム遺伝子座、第3の標的ゲノム遺伝子座、及び第4の標的ゲノム遺伝子座は、同じ遺伝子座である。
【0043】
いくつかの実施形態では、第1の標的ゲノム遺伝子座、第2の標的ゲノム遺伝子座、及び第3の標的ゲノム遺伝子座の各々は、異なる遺伝子座である。いくつかの実施形態では、第1の標的ゲノム遺伝子座、第2の標的ゲノム遺伝子座、第3の標的ゲノム遺伝子座、及び第4の標的ゲノム遺伝子座は、異なる遺伝子座である。
【0044】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する改変は、1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する改変は、B2Mの低減された発現を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する改変は、B2Mの低減されたタンパク質発現を含む。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子活性を排除する。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、細胞における全てのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、不活性化または破壊は、B2M遺伝子におけるインデルを含む。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子のフレームシフト変異または連続した一続きのゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子は、ノックアウトされる。
【0045】
いくつかの実施形態では、改変は、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、該Casは、Cas9またはCas12から選択される。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、CRISPR-Casの組み合わせは、B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位に相補的である標的化ドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casの組み合わせは、gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。
【0046】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する改変は、1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する改変は、CIITAの低減された発現を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する改変は、CIITAの低減されたタンパク質発現を含む。いくつかの実施形態では、改変は、CIITA遺伝子活性を排除する。いくつかの実施形態では、改変は、CIITA遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、改変は、細胞における全てのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、不活性化または破壊は、CIITA遺伝子におけるインデルを含む。いくつかの実施形態では、改変は、CIITA遺伝子のフレームシフト変異または連続した一続きのゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子は、ノックアウトされる。
【0048】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、ヒト細胞または動物細胞である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、ブタ(ブタ類)細胞、ウシ(ウシ類)細胞、またはヒツジ(ヒツジ類)細胞である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、多能性幹細胞またはその子孫に由来する分化細胞である。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞である。
【0049】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、ドナー対象から単離された初代細胞である。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、健常であるか、または個々のドナーからドナー試料が入手される時点で疾患もしくは病態を有することが疑われない。
【0050】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、ベータ島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心臓細胞、及び血液細胞から選択される。
【0051】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、内皮細胞である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、上皮細胞である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、NK細胞である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、人工多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、胚性幹細胞である。
【0053】
いくつかの実施形態では、該細胞は、ABO式血液型Oである。いくつかの実施形態では、該細胞は、機能的ABO Aアレル及び/または機能的ABO Bアレルを含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、アカゲザル因子陰性(Rh-)である。いくつかの実施形態では、該細胞は、アカゲザル因子陽性(Rh+)である。
【0054】
いくつかの態様では、操作された細胞を生成する方法が本明細書で提供され、該方法は、a.細胞における1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することと、b.細胞における寛容原性因子の発現を増加させることと、c.細胞におけるCD46の発現を増加させることと、d.細胞におけるCD59の発現を増加させることとを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子は、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、及びSERPINB9、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0056】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子のうちの少なくとも1つは、CD47である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子のうちの少なくとも1つは、PD-L1である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子のうちの少なくとも1つは、HLA-Eである。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子のうちの少なくとも1つは、HLA-Gである。いくつかの実施形態では、該方法は、1つまたは複数のMHCクラスI分子及び1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することを含む。
【0057】
いくつかの態様では、操作された細胞を生成する方法が本明細書で提供され、該方法は、a.細胞におけるCCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200、及びMFGE8の発現を増加させることと、b.細胞におけるCD46の発現を増加させることと、c.細胞におけるCD59の発現を増加させることとを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、該方法は、細胞におけるCD55の発現を増加させることをさらに含む。
【0059】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、低減された発現は、低減された表面発現を含み、及び/または増加した発現は、増加した表面発現を含む。いくつかの実施形態では、低減された表面発現は、検出可能な表面発現を何ら含まない。
【0060】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、CD46及びCD59の発現を増加させることは、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを細胞に導入することを含む。
【0061】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、CD55の発現を増加させることは、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを細胞に導入することを含む。
【0062】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す。いくつかの実施形態では、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号3に記載の配列をコードする。
【0063】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す。いくつかの実施形態では、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号5に記載の配列をコードする。
【0064】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有する配列をコードし、補体阻害活性を示す。いくつかの実施形態では、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号8に記載の配列をコードする。
【0065】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドは各々、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0066】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0067】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、CD47の発現を増加させる改変は、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有する配列をコードし、かつ操作された細胞の自然免疫による殺傷を低減する。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、配列番号1に記載の配列をコードする。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0068】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、該方法は、
CD47をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドからなる群から選択される2つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクターを、導入すること
を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの各々は、IRESまたは自己切断型ペプチドによって隔てられている。
【0069】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、マルチシストロン性ベクターの各ポリヌクレオチドは、同じプロモーターに作動可能に連結されている。
【0070】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、マルチシストロン性ベクターは、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、マルチシストロン性ベクターは、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0071】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、マルチシストロン性ベクターは、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD47をコードするポリヌクレオチドを含む別個の導入遺伝子を含む。
【0072】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及び/またはCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドは、操作された細胞のゲノム内に組み込まれる。
【0073】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドは、操作された細胞のゲノム内に組み込まれる。
【0074】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、操作された細胞のゲノム内に組み込まれる。
【0075】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、組み込みは、操作された細胞のゲノム内への非標的化挿入によるものであり、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した細胞内への外因性ポリヌクレオチドの導入による。いくつかの実施形態では、組み込みは、細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によるものであり、任意選択で、該標的化挿入は、相同性指向修復を用いたヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。
【0076】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、標的ゲノム遺伝子座は、セーフハーバー遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座である。
【0077】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、標的ゲノム遺伝子座は、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子座、及びROSA26遺伝子座からなる群から選択される。
【0078】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、標的ゲノム遺伝子座を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、該Casは、Cas9またはCas12から選択される。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、CRISPR-Casの組み合わせは、標的ゲノム遺伝子座の標的配列に相補的である標的化ドメインを有するガイドRNA(gRNA)、ならびにCD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチド、及び/またはCD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む相同性指向修復鋳型を含む。
【0079】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、CRISPR-Casの組み合わせは、gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。
【0080】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減することは、1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する改変は、B2Mの低減された発現を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する改変は、B2Mの低減されたタンパク質発現を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する改変は、B2M遺伝子活性を低減する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する改変は、B2M遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する改変は、細胞における全てのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、不活性化または破壊は、B2M遺伝子におけるインデル、またはB2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む。いくつかの実施形態では、インデルは、フレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子は、ノックアウトされる。
【0081】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する改変は、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、該Casは、Cas9またはCas12から選択される。操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、CRISPR-Casの組み合わせは、B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位に相補的である標的化ドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casの組み合わせは、gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。
【0082】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減することは、1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する改変を導入することを含む。
【0083】
操作された細胞を生産する方法のいくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する改変は、CIITAの低減された発現を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する改変は、CIITAの低減されたタンパク質発現を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する改変は、CIITA遺伝子活性を低減する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する改変は、CIITA遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、細胞における全てのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、不活性化または破壊は、CIITA遺伝子におけるインデル、またはCIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む。いくつかの実施形態では、インデルは、フレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子は、ノックアウトされる。
【0084】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、該細胞は、ヒト細胞または動物細胞である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態では、該細胞は、ドナー対象から単離された初代細胞である。いくつかの実施形態では、該細胞は、多能性幹細胞であり、ここで、操作された細胞は、多能性幹細胞に由来する分化細胞であり、該方法は、多能性幹細胞を分化させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、ベータ島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心臓細胞、網膜色素上皮細胞、視細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞から選択される。
【0085】
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法のうちのいずれかに従って生成される、操作された細胞が本明細書で提供される。
【0086】
いくつかの実施形態では、操作された細胞、または操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞は、患者への投与時にNK細胞媒介性細胞傷害を回避することができる。いくつかの実施形態では、操作された細胞、または操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞は、患者への投与時に成熟NK細胞による細胞溶解から保護される。
【0087】
いくつかの実施形態では、操作された細胞、または操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞は、患者への投与時に該細胞に対する免疫応答を誘導しない。いくつかの実施形態では、操作された細胞、または操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞は、患者への投与時に該細胞に対する全身性炎症応答を誘導しない。いくつかの実施形態では、操作された細胞、または操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞は、患者への投与時に該細胞に対する局所炎症応答を誘導しない。
【0088】
いくつかの実施形態では、操作された細胞、または操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞は、患者への投与時に補体経路活性化を誘導しない。
【0089】
いくつかの実施形態では、該細胞は、患者への投与時に生着して機能する能力を保持する。
【0090】
いくつかの態様では、本明細書に記載の操作された細胞のうちのいずれかを複数含む、操作された細胞の集団が本明細書で提供される。
【0091】
いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、改変を含む。いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、改変を含まない細胞と比べて低減された1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、改変を含まない細胞と比べて低減されたB2M及び/またはCIITAの発現を含む。いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、改変を含まない細胞と比べて低減されたB2M及びCIITAの発現を含む。いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、B2M遺伝子の両方のアレルを不活性化する1つまたは複数の変化を含む。いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、CIITA遺伝子の両方のアレルを不活性化する1つまたは複数の変化を含む。
【0097】
いくつかの態様では、本明細書に記載の操作された細胞のうちのいずれかの集団を含む組成物が本明細書で提供される。
【0098】
操作された細胞の集団を含む組成物のいくつかの実施形態では、操作された細胞は、
(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチド、
(ii)CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、
(iii)CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及び
(iv)B2M遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊
を含む。
【0099】
該組成物のいくつかの実施形態では、操作された細胞は、CIITA遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊をさらに含む。
【0100】
該組成物のいくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。
【0101】
該組成物のいくつかの実施形態では、操作された細胞は、
CD47をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクター
を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、
CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む第1の導入遺伝子、ならびにCD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクター
を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、
CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む第1の導入遺伝子、ならびにCD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクター
を含む。
【0102】
該組成物のいくつかの実施形態では、マルチシストロン性ベクターのポリヌクレオチドの各々は、IRESまたは自己切断型ペプチドによって隔てられている。該組成物のいくつかの実施形態では、導入遺伝子(複数可)は、相同性指向修復を用いたヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によって標的ゲノム遺伝子座部位にて導入される。いくつかの実施形態では、不活性化または破壊は、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集は、標的ゲノム遺伝子座を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、該Casは、Cas9またはCas12から選択される。
【0103】
該組成物のいくつかの実施形態では、該組成物は、薬学的組成物である。いくつかの実施形態では、該組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、生理食塩水等の緩衝液である。
【0104】
該組成物のいくつかの実施形態では、該組成物は、凍結保護剤を含む無血清凍結保存培地中で製剤化される。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、DMSOであり、凍結保存培地は、5%~10%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、10%のDMSO(v/v)であるか、または約10%のDMSO(v/v)である。
【0105】
本明細書で提供される組成物のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、該組成物は、滅菌組成物である。
【0106】
本明細書で提供される組成物のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、該組成物は、容器に含まれる。
【0107】
いくつかの実施形態では、容器は、本明細書に記載の組成物のうちのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、容器は、滅菌バッグである。いくつかの実施形態では、バッグは、凍結保存対応バッグである。
【0108】
いくつかの態様では、その必要のある患者において疾患、病態、または細胞」を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、患者に、有効量の本明細書に記載の集団または組成物を投与することを含む。
【0109】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、該集団は、内皮細胞を含む。
【0110】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、病態または疾患は、糖尿病、がん、血管新生障害、眼疾患、甲状腺疾患、皮膚疾患、及び肝臓疾患からなる群から選択される。
【0111】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、細胞欠陥は、糖尿病に関連するか、または細胞療法は、糖尿病の処置のためのものであり、任意選択で糖尿病は、I型糖尿病である。
【0112】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、細胞の集団は、ベータ島細胞を含めた島細胞の集団である。いくつかの実施形態では、島細胞は、島前駆細胞、未成熟島細胞、及び成熟島細胞からなる群から選択される。
【0113】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、細胞欠陥は、血管病態もしくは疾患に関連するか、または細胞療法は、血管病態または疾患の処置のためのものである。いくつかの実施形態では、該細胞の集団は、内皮細胞の集団である。
【0114】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、細胞欠陥は、自己免疫性甲状腺炎に関連するか、または細胞療法は、自己免疫性甲状腺炎の処置のためのものである。いくつかの実施形態では、該細胞の集団は、甲状腺前駆細胞の集団である。
【0115】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、細胞欠陥は、肝臓疾患に関連するか、または細胞療法は、肝臓疾患の処置のためのものである。いくつかの実施形態では、肝臓疾患は、肝硬変を含む。いくつかの実施形態では、該細胞の集団は、肝細胞または肝前駆細胞の集団である。
【0116】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、細胞欠陥は、角膜疾患に関連するか、または細胞療法は、角膜疾患の処置のためのものである。いくつかの実施形態では、角膜疾患は、フックスジストロフィーもしくは先天性遺伝性内皮ジストロフィーである。いくつかの実施形態では、該細胞の集団は、角膜内皮前駆細胞もしくは角膜内皮細胞の集団である。
【0117】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、細胞欠陥は、腎臓疾患に関連するか、または細胞療法は、腎臓疾患の処置のためのものである。いくつかの実施形態では、該細胞の集団は、腎前駆体細胞もしくは腎細胞の集団である。
【0118】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、細胞療法は、がんの処置のためのものである。いくつかの実施形態では、がんは、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される。
【0119】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、細胞の集団は、T細胞またはNK細胞の集団である。
【0120】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、該細胞は、投与前に増殖させられ、凍結保存される。
【0121】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、該集団を投与することは、該集団の静脈内注射、筋肉内注射、血管内注射、または移植を含む。疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、該集団は、血管内注射または筋肉内注射を介して移植される。
【0122】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、該集団はドナー対象に由来し、ここで、ドナーのHLA型は、患者のHLA型と一致しない。
【0123】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、該集団はドナーに由来し、ここで、ドナーの血液型は、患者の血液型と一致せず、ドナーの血液型はO型でない。いくつかの実施形態では、該集団はドナーに由来し、ここで、ドナーの血液型はアカゲザル因子(Rh)陽性であり、患者の血液型はRh陰性である。いくつかの実施形態では、患者の血清は、Rhに対する抗体を含む。
【0124】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、該集団は、ヒト細胞集団であり、患者は、ヒト患者である。
【0125】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、細胞の集団は、機能的ABO Aアレル及び/または機能的ABO Bアレルを含む。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、ABO A型抗原を提示し、患者の血清は、抗A抗体を含む。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、ABO B型抗原を提示し、患者の血清は、抗B抗体を含む。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、ABO A型抗原及びB型抗原を提示し、患者の血清は、抗A抗体及び/または抗B抗体を含む。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、Rh因子を発現し、患者の血清は、抗Rh抗体を含む。
【0126】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、該方法は、1つまたは複数の免疫抑制剤を患者に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、患者は、1つまたは複数の免疫抑制剤を投与されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、低分子または抗体である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、コルチコステロイド、プレドニゾン、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア薬、ブレキナル、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスパガリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン(チモシン-α)、及び免疫抑制抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、シクロスポリンを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、ミコフェノール酸モフェチルを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、コルチコステロイドを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、シクロホスファミドを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、ラパマイシンを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、タクロリムス(FK-506)を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、抗胸腺細胞グロブリンを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、1つまたは複数の免疫調節剤である。
【0127】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫調節剤は、低分子または抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IL-2受容体のp75、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFN-ガンマ、TNF-アルファ、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-6、IGF、IGFR1、IL-7、IL-8、IL-10、CD11a、CD58からなる群から選択される受容体またはリガンド、およびそれらのリガンドのうちのいずれかに結合する抗体、のうちの1つまたは複数に結合する。
【0128】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、操作された細胞の投与前に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、操作された細胞の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日前に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、操作された細胞の投与の少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間前、またはそれよりも前に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、操作された細胞の投与から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日後に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、操作された細胞の投与から少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間後、またはそれよりも後に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、操作された細胞の1回目の投与と同じ日に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、操作された細胞の投与後に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行後に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行前に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日前に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行の少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間前、またはそれよりも前に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日後に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行から少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間後、またはそれよりも後に患者に投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の免疫抑制剤は、操作された細胞の改変を含まない免疫原性細胞の免疫拒絶反応を低減するために投与される1つまたは複数の免疫抑制剤の投薬量と比較してより低い投薬量で投与される。
【0129】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、操作された細胞は、操作された細胞の制御された殺傷が可能である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチを含む。いくつかの実施形態では、薬物もしくはプロドラッグの存在下で、または選択的な外因性化合物による作動時に、自殺遺伝子または自殺スイッチは、制御された細胞死を誘導する。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチは、操作された細胞のアポトーシスを誘導することができる誘導性タンパク質である。いくつかの実施形態では、操作された細胞のアポトーシスを誘導することができる誘導性タンパク質は、カスパーゼタンパク質である。いくつかの実施形態では、カスパーゼタンパク質は、カスパーゼ9である。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、患者への1つまたは複数の免疫抑制剤の投与後に、自殺遺伝子または自殺スイッチは、制御された細胞死を誘導するために作動される。いくつかの実施形態では、患者への1つまたは複数の免疫抑制剤の投与前に、自殺遺伝子または自殺スイッチは、制御された細胞死を誘導するために作動される。いくつかの実施形態では、患者への操作された細胞の投与後に、自殺遺伝子または自殺スイッチは、制御された細胞死を誘導するために作動される。いくつかの実施形態では、患者に細胞傷害事象または他のマイナスの結果が生じた場合に、自殺遺伝子または自殺スイッチは、制御された細胞死を誘導するために作動される。
【0130】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、該方法は、操作された細胞の集団の操作された細胞の枯渇を可能にする剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞の枯渇を可能にする剤は、操作された細胞の表面上に発現したタンパク質を認識する抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、CCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMA、及びRQR8を認識する抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗体は、モガムリズマブ、AFM13、MOR208、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、リツキシマブ、リツキシマブ-RIIb、トムゾツキシマブ、RO5083945(GA201)、セツキシマブ、Hul4.18K322A、Hul4.18-IL2、Hu3F8、ジニツキシマブ(dinituximab)、c.60C3-RIIc、及びそれらのバイオ後続品からなる群から選択される。
【0131】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、該方法は、操作された細胞の表面上の1つまたは複数の寛容原性因子を認識する剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つまたは複数の寛容原性因子を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子は、CD47である。
【0132】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、該方法は、1つまたは複数の追加の治療剤を患者に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、患者は、1つまたは複数の追加の治療剤を投与されている。
【0133】
疾患を処置する方法のいくつかの実施形態では、該方法は、該方法の治療有効性を監視することをさらに含む。いくつかの実施形態では、該方法は、該方法の予防有効性を監視することをさらに含む。いくつかの実施形態では、該方法は、1つまたは複数の疾患症状の所望の抑制が起こるまで繰り返される。
【0134】
操作された細胞のいくつかの実施形態では、操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び自殺遺伝子または安全スイッチに関連する遺伝子は、操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び1つもしくは複数の寛容原性因子は、操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される。いくつかの実施形態では、バイシストロン性カセットは、操作された細胞のゲノム内への非標的化挿入によって、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した細胞内への外因性ポリヌクレオチドの導入によって、組み込まれる。いくつかの実施形態では、バイシストロン性カセットは、操作された細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によって組み込まれ、任意選択で、該標的化挿入は、相同性指向修復を用いたヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子は、CD47である。
【0135】
操作された細胞を生成する方法のいくつかの実施形態では、操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子は、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び自殺遺伝子または安全スイッチに関連する遺伝子は、操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び1つもしくは複数の寛容原性因子は、操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される。いくつかの実施形態では、バイシストロン性カセットは、操作された細胞のゲノム内への非標的化挿入によって組み込まれる。いくつかの実施形態では、バイシストロン性カセットは、操作された細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によって組み込まれる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子は、CD47である。
【0136】
操作された細胞の組成物のいくつかの実施形態では、操作された細胞の集団の操作された細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子、及び自殺遺伝子または安全スイッチに関連する遺伝子は、操作された細胞の集団の操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び外因性CD47は、操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される。いくつかの実施形態では、バイシストロン性カセットは、ゲノム内への非標的化挿入によって、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した操作された細胞の集団の操作された細胞内への外因性ポリヌクレオチドの導入によって、組み込まれる。いくつかの実施形態では、バイシストロン性カセットは、操作された細胞の集団の操作された細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によって組み込まれ、任意選択で、該標的化挿入は、相同性指向修復を用いたヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである。
【図面の簡単な説明】
【0137】
図1A】細胞がHLA-I及びHLA-IIの発現を欠いており、CD47の増加した発現を有することを示す、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tgヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)についてのフローサイトメトリーによって測定したHLAクラスI(HLA-I)、HLAクラスII(HLA-II)、及びCD47の発現レベルを示す。
図1B】細胞がHLA-I及びHLA-IIの発現を欠いており、CD47の増加した発現を有することを示す、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiPSCから分化した内皮細胞(hiEC)についてのフローサイトメトリーによって測定したHLAクラスI(HLA-I)、HLAクラスII(HLA-II)、及びCD47の発現レベルを示す。
図2】A~Bは、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiPSCにおけるCD46、CD55、及びCD59の表面発現レベル(図2A)、ならびにB2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiECにおけるCD46、CD55、及びCD59の表面発現レベル(図2B)を示す。
図3】A~Bは、ABO不適合の補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiPSCの殺傷(図3A)及びB2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiECの殺傷(図3B)を示す。
図4】A~Dは、ABO不適合CDCアッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiPSCのCD46++プールにおけるCD46の表面発現レベル(図4A)、及びCD46+++プールの殺傷(図4B)またはCD46++発現を有する個々のhiPSCクローンの殺傷(図4C)もしくはCD46+++発現を有する個々のhiPSCクローンの殺傷(図4D)を示す。
図5】A~Dは、ABO不適合CDCアッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiECのCD46++プールにおけるCD46の表面発現レベル(図5A)、及びCD46++プールの殺傷(図5B)またはCD46+++発現を有する個々のhiECクローンの殺傷(図5C~5D)を示す。
図6】A~Eは、ABO不適合CDCアッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiPSCのCD55+プールにおけるCD55の表面発現レベル(図6A)、及びCD55+プールの殺傷(図6B)またはCD55++発現を有する個々のhiPSCクローンの殺傷(図6C~6E)を示す。
図7】A~Eは、ABO不適合CDCアッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiECのCD55++プールにおけるCD55の表面発現レベル(図7A)、及びCD55++プールの殺傷(図7B)またはCD55++発現を有する個々のhiECクローンの殺傷(図7C~7E)を示す。
図8】A~Eは、ABO不適合CDCアッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiPSCのCD59+プールにおけるCD59の表面発現レベル(図8A)、及びCD59+プールの殺傷(図8B)またはCD59++発現を有する個々のhiPSCクローンの殺傷(図8C~8D)もしくはCD59+++発現を有する個々のhiPSCクローンの殺傷(図8E)を示す。
図9】A~Cは、ABO不適合CDCアッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiECのCD59+++プールにおけるCD59の表面発現レベル(図9A)、及びCD59+++プールの殺傷(図9B)またはCD59++発現を有する個々のhiECクローンの殺傷(図9C)を示す。
図10】A~Eは、ABO不適合CDCアッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiPSCのCD46+++/CD55++プールにおけるCD46及びCD55の表面発現レベル(図10A)、ならびにCD46+++/CD55++プールの殺傷(図10B)またはCD46++/CD55++発現を有する個々のhiPSCクローンの殺傷(図10C~10E)を示す。
図11】A~Eは、ABO不適合CDCアッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiECのCD46++/CD55++プールにおけるCD46及びCD55の表面発現レベル(図11A)、ならびにCD46++/CD55++プールの殺傷(図11B)またはCD46++/CD55++発現を有する個々のhiECクローンの殺傷(図11C~11E)を示す。
図12】A~Eは、ABO不適合CDCアッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiPSCのCD55++/CD59++プールにおけるCD55及びCD59の表面発現レベル(図12A)、ならびにCD55++/CD59++プールの殺傷(図12B)またはCD55++/CD59++発現を有する個々のhiPSCクローンの殺傷(図12C~12D)もしくはCD55++/CD59+++発現を有する個々のhiPSCクローンの殺傷(図12E)を示す。
図13】A~Eは、ABO不適合CDCアッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiECのCD55++/CD59+++プールにおけるCD55及びCD59の表面発現レベル(図13A)、ならびにCD55++/CD59+++プールの殺傷(図13B)またはCD55++/CD59++発現を有する個々のhiECクローンの殺傷(図13C~13D)もしくはCD55++/CD59+++発現を有する個々のhiECクローンの殺傷(図13E)を示す。
図14】A~Eは、ABO不適合CDCアッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiPSCのCD46+++/CD59++プールにおけるCD46及びCD59の表面発現レベル(図14A)、ならびにCD46+++/CD59++プールの生存(図14B)またはCD46++/CD59++発現を有する個々のhiPSCクローンの生存(図14C~14D)もしくはCD46++/CD59+++クローンの生存(図14E)を示す。
図15】A~Eは、ABO不適合CDCアッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiECのCD46超++/CD59++プールにおけるCD46及びCD59の発現レベル(図15A)、ならびにCD46++/CD59++プールの生存(図15B)またはCD46++/CD59++発現を有する個々のhiECクローンの生存(図15C~15E)を示す。
図16】A~Eは、ABO不適合CDCアッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiPSCのCD46++/CD55++/CD59+プールにおけるCD46、CD55、及びCD59の表面発現レベル(図16A)、ならびにCD46++/CD55++/CD59+プールの生存(図16B)を示す。CDCアッセイにおけるCD46++/CD55++/CD59++発現を有する個々のhiPSCクローンの生存(図16C及び16D)またはCD46++/CD55+/CD59++発現を有する個々のhiPSCクローンの生存(図16E)もまた示される。
図17】A~Cは、ABO不適合CDCアッセイにおける、B2Mインデル/インデル;CIITAインデル/インデル;CD47tg hiECのCD46++/CD55++/CD59++プールにおけるCD46、CD55、及びCD59の表面発現レベル(図17A)、ならびにCD46++/CD55++/CD59++プールの生存(図17B)を示す。CDCアッセイにおけるCD46++/CD55++/CD59++発現を有する個々のhiECクローンの生存(図17C)もまた示される。
図18】ABO不適合血清の不在下でのヒトiPSCに由来する内皮細胞(生存対照)についてのCDCアッセイの結果を示す。
図19】A~Cは、CDCアッセイにおけるB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgマウス人工多能性幹細胞の殺傷(miPSC;図19A)、ならびにCD46及びCD59を形質導入したB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg miPSCの生存(CD46+/CD59+プール;図19B)またはCD46、CD55、及びCD59を形質導入したB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg miPSCの生存(CD46+/CD59+/CD55+プール;図19C)を示す。
図20】A~Dは、ヒトABO不適合血清によって発動されるCDCに対するヒトCD46及びCD59、またはヒトCD46、CD55、及びCD59の保護効果が、ABO不適合アカゲザル血清によって発動されるCDCからは保護しないことを示す結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0138】
詳細な説明
本明細書では、同種異系移植片に対する免疫系の反応の影響を緩和する及び/または回避するための方法及び組成物が提供される。細胞由来移植片及び/または組織移植片の免疫拒絶反応の問題を克服するために、任意の移植可能な細胞種のための実用可能な供給源を代表する操作された免疫回避性細胞(例えば、操作された初代低免疫原性細胞)、またはその集団もしくは薬学的組成物が本明細書に開示される。本明細書に開示される操作された細胞は、対象の遺伝子構成、あるいは1つまたは複数の以前の同種異系移植片、以前の自家キメラ抗原受容体(CAR)Tの拒絶反応、及び/または導入遺伝子が発現させられる他の自家もしくは同種異系療法に対する対象内のいずれの既存の応答を問わず、レシピエント対象の免疫系による認識の低減を可能にする。操作された細胞には、ベータ島細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞(例えば、形質細胞または血小板)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0139】
いくつかの態様では、さらに補体依存性細胞傷害(CDC)から保護される操作された細胞及びその集団が本明細書で提供される。補体系は、血清中に存在するいくつかの可溶性因子からなり、これらは異なる経路を介して活性化され得る。補体は、ABO不適合血清の抗A抗体及び/または抗B抗体等の、IgM/IgG抗体が細胞表面上に存在する抗原に結合することによって活性化される。ひとたび活性化されると、カスケードが膜侵襲複合体(MAC)の形成をもたらし、これが細胞膜に孔を導入して細胞殺傷をもたらす(Nesargikar PN.Eur J Microbiol Immunol(Bp).2012;2:103-11)。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された細胞は、HLA非依存性抗体に対する抗体の存在下(例えば、患者のABO不適合血清中に見出されるABO式血液型抗原A及び/またはABO式血液型抗原に対する抗体等の、IgGまたはIgM抗体の存在下)を含めて、低減された補体カスケードの活性化を示す。
【0140】
hiPSC及びhECを含めた細胞は、膜結合型補体インヒビターCD46、CD55、及びCD59を含めた、補体媒介性細胞傷害のインヒビターを内在性で発現する。しかしながら、本願の実施例は、寛容原性因子の増加した発現ならびに1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の低減された発現を有する細胞の関連であっても、CD46、CD55、及びCD59の内在性発現が細胞をCDCから保護しないことを実証する。いくつかの実施形態では、本願は、補体依存性細胞傷害の影響を回避または低減するために、ある特定の操作された細胞において過剰発現され得る補体インヒビター(CD46及びCD59)の組み合わせを提供する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された細胞は、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された細胞は、CD46、CD59、及びCD55の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された細胞は、いずれか1つもしくは複数の本明細書に記載の寛容原性因子の増加した発現、及び/または1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の低減された発現を有する。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターの増加した発現及び/または過剰発現をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の補体インヒビターは、CD46、CD59、及びCD55から選択される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、組み合わせた2つ以上の補体インヒビターの増加した発現、例えば、CD46及びCD59の増加した発現またはCD46、CD59、及びCD55の増加した発現を含む。
【0142】
本明細書で提供される操作された細胞は、寛容原性因子の発現を利用し、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現(例えば、表面発現)を調節する(例えば、低減または排除する)ことができる。いくつかの実施形態では、レアカット(rare-cutting)エンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、及びホーミングエンドヌクレアーゼシステム)を利用したゲノム編集技術もまた使用して、ヒト細胞において必要不可欠な免疫遺伝子の発現が(例えば、必要不可欠な免疫遺伝子のゲノムDNAを欠失させることによって)低減または排除される。ある特定の実施形態では、ゲノム編集技術または他の遺伝子調節技術を使用して、ヒト細胞において寛容性誘導(寛容原性)因子(例えば、CD47)が挿入され、こうしてレシピエント対象への移植時に免疫認識を回避し得る操作された細胞が生産される。したがって、本明細書で提供される操作された細胞は、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子に影響を及ぼす1つまたは複数の遺伝子及び因子の調節された発現(例えば、低減された発現またはその排除)、CD47等の寛容原性因子の調節された発現(例えば、低減または及び調節された発現(例えば、過剰発現)を示し、レシピエント対象の免疫系による認識の低減を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された細胞は、CD142の調節された発現(例えば、低減された発現)を示す。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された細胞は、CD46、CD59、及びCD55から選択される1つまたは複数の補体インヒビターの調節された発現(例えば、増加した発現)を示す。
【0143】
いくつかの態様では、本明細書で提供される操作された細胞は、低減された自然免疫細胞による拒絶反応及び/または適応免疫細胞による拒絶反応を示す(例えば、低免疫原性細胞)。例えば、いくつかの実施形態では、操作された細胞は、NK細胞媒介性溶解及び/またはマクロファージによる貪食に対して低減された感受性を示す。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、免疫抑制剤を、ほとんど~全く必要とすることなくレシピエント対象に移植される、普遍的に適合性の細胞または組織(例えば、普遍的ドナー細胞または組織)の供給源として有用である。かかる低免疫原性細胞は、移植時に細胞特異的特性及び特徴を保持する。
【0144】
また、本明細書では、MHC不適合の同種異系レシピエントにおける免疫拒絶反応を回避する操作された細胞(例えば、操作された初代細胞)を投与することを含む、障害を処置するための方法も提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つにより生産された操作された細胞は、MHC不適合の同種異系レシピエントに反復投与された(例えば、移植された(transplanted)または移植された(grafted))ときに免疫拒絶反応を回避する。
【0145】
特定の実施形態の実施は、特にそれとは反対の指示がない限り、当業者の技能の範囲内である化学、生化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技法、遺伝学、免疫学、及び細胞生物学の従来の方法を用いることになり、これらのうちの多くが例示説明の目的で下記に記載される。かかる技法は、文献において完全に説明される。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989)、Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,updated July 2008)、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience、Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(IRL Press,Oxford,1985)、Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992)、Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,Eds.,1984)、Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)、Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998)Current Protocols in Immunology Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991)、Annual Review of Immunology、ならびにAdvances in Immunology等の刊行物における研究論文を参照されたい。
【0146】
本願で参照される、特許文献、科学論文、及びデータベースを含む全ての刊行物は、あたかも個々の刊行物の各々が参照により個々に援用されたのと同じ範囲まで、それらの全体があらゆる目的で参照により援用される。本明細書に記載される定義が、参照により本明細書に援用される特許、出願、出願公開、及び他の刊行物に記載される定義と矛盾するかまたはその他の点で不一致である場合、本明細書に記載される定義が、参照により本明細書に援用される定義に優先する。
【0147】
本明細書で使用される節の見出しは、構成目的のためにすぎず、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。当業者であれば、本開示の範囲及び趣旨内でいくつかの実施形態が可能であることを認識しよう。以下の説明は本開示を例示するものであり、当然ながら、本明細書に記載の本発明の範囲をいかようにも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0148】
I.定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語、表記、ならびに他の技術用語及び科学用語または専門用語は、特許請求される発明の主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有することが意図される。場合によっては、一般的に理解される意味を有する用語が、明確にするために及び/または参照を容易にするために本明細書で定義され、かかる定義の本明細書への組み込みは、必ずしも、当該技術分野で一般に理解される意味に対する実質的な相違を表すように解釈されるべきではない。
【0149】
量または濃度等といった測定可能な値を指す場合に本明細書で使用される「約」という用語は、明記される量の20%、10%、5%、1%、0.5%、またはさらには0.1%の変動を包含することが意図される。添付の特許請求の範囲を含めて本明細書で使用されるとき、単数形の「1つの(a)」、「または」、及び「その(the)」は、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味する。本明細書に記載の態様及び変形形態は、かかる態様及び変形形態「からなる」及び/またはかかる態様及び変形形態「から本質的になる」実施形態を含むことが理解される。
【0150】
本明細書で使用されるとき、「及び/または」という用語は、列挙される関連項目のうちの1つまたは複数のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0151】
本明細書で使用されるとき、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関しての「外因性」という用語は、指示対象の分子が目的の細胞内に導入されることを意味することが意図される。外因性ポリヌクレオチド等の外因性分子は、例えば、外因性コーディング核酸を、染色体内への組み込みによって、またはプラスミドもしくは発現ベクター等の非染色体遺伝物質として等で、細胞の遺伝物質に導入することによって導入され得る。したがって、この用語は、コーディング核酸の発現に関して使用されるとき、発現可能な形態でのコーディング核酸の細胞内への導入を指す。場合によっては、「外因性」分子は、細胞内に通常は存在しないが、1つまたは複数の遺伝学的方法、生化学的方法、または他の方法によって細胞内に導入され得る分子、構築物、因子等である。
【0152】
「内在性」という用語は、天然または未改変の細胞に存在する指示対象の分子、例えば、ポリヌクレオチド(例えば、遺伝子)またはポリペプチドを指す。例えば、この用語は、内在性遺伝子の発現に関して使用される場合、細胞内に含まれる、外因的に導入されたのではない内在性核酸によってコードされる遺伝子の発現を指す。
【0153】
「遺伝子」は、遺伝子産物をコードするDNA領域、ならびに遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域(かかる調節配列がコード配列及び/または転写された配列に隣接するか否かにかかわらず)を含む。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えば、リボソーム結合部位及び内部リボソーム進入部位、エンハンサー、サイレンサー、インシュレーター、境界要素、複製起点、マトリックス付着部位、ならびに遺伝子座制御領域が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。遺伝子の配列は、典型的には、細胞内の固定の染色体上位置または染色体上の遺伝子座に存在する。
【0154】
「遺伝子座」という用語は、特定の遺伝子または遺伝子マーカーが位置する染色体上の固定位置を指す。「標的遺伝子座」への言及は、遺伝子編集または外因性ポリヌクレオチドの組み込み等の遺伝子改変の標的とすることが望まれる所望の遺伝子の特定の遺伝子座を指す。
【0155】
遺伝子に関しての「発現」または「遺伝子発現」という用語は、遺伝子に含まれる情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、または任意の他の種類のRNA)であり得るか、またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であり得る。遺伝子産物にはまた、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、及び編集等のプロセスによって改変されるRNA、ならびに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリストイル化、及びグリコシル化によって改変されるタンパク質も含まれる。よって、発現または遺伝子発現への言及は、タンパク質(またはポリペプチド)発現またはmRNA等の遺伝子の転写可能な産物の発現を含む。タンパク質発現には、タンパク質の細胞内発現または表面発現が含まれ得る。典型的には、mRNA等の遺伝子産物またはタンパク質の発現は、細胞において検出可能なレベルである。
【0156】
本明細書で使用されるとき、「検出可能な」発現レベルとは、当業者に既知の、例えば、ディファレンシャルディスプレイ、RT(逆転写酵素)連結ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ノーザンブロット、及び/またはRNase保護解析、ならびにフローサイトメトリー、ELISA、またはウェスタンブロット等のタンパク質検出のための免疫親和性ベースの方法を含む、標準的な技法によって検出可能であるレベルを意味する。発現レベルの程度は、標準的な特性評価技法を介して可視化または測定されるのに十分に大きければよい。
【0157】
本明細書で使用されるとき、「増加した発現」、「強化された発現」、または「過剰発現」という用語は、特定の遺伝子発現を調節するための改変を含有しない元の細胞または供給源細胞における発現、例えば、野生型の発現レベル(これは発現の不在または計測不能な発現でもあり得る)に追加的である、任意の形態の発現を意味する。本明細書における「増加した発現」、「強化された発現」、または「過剰発現」への言及は、未改変の細胞または野生型細胞等の、改変を導入するような操作の前の元の供給源細胞等の、改変を含有しない細胞におけるレベルと比べた、遺伝子発現の増加、及び/またはポリペプチドに言及する限りにおいては増加したポリペプチドレベル及び/または増加したポリペプチド活性を意味するように解釈される。発現、ポリペプチドレベルまたはポリペプチド活性の増加は、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、もしくは50%、60%、70%、80%、85%、90%、もしくは100%、またはさらにはそれを超える可能性がある。場合によっては、発現、ポリペプチドレベルまたはポリペプチド活性の増加は、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、またはそれを超える可能性がある。
【0158】
「低免疫原性」という用語は、かかる細胞を移植される対象による免疫拒絶反応を受けにくい細胞を指す。例えば、未変化または未改変の野生型細胞等の、同じ細胞種であるが改変を含有しない類似の細胞と比べて、かかる低免疫原性細胞は、約2.5%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97.5%、99%、またはそれを超えて、かかる細胞を移植される対象による免疫拒絶反応を受けにくい可能性がある。典型的には、低免疫原性細胞は、対象にとって同種異系であり、低免疫原性細胞は、MHC不適合の同種異系レシピエントにおいて免疫拒絶反応を回避する。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、T細胞媒介性の適応免疫による拒絶反応及び/または自然免疫細胞による拒絶反応から保護される。
【0159】
細胞の低免疫原性は、細胞が適応免疫応答及び自然免疫応答を誘発する能力等の細胞の免疫原性を評価することによって決定することができる。かかる免疫応答は、当業者に認識されるアッセイを使用して測定することができる。
【0160】
本明細書で使用される「寛容原性因子」という用語は、細胞が投与、移植(transplantation)、または移植(engraftment)時に宿主またはレシピエント対象の免疫系によって認識される能力を調節するかまたはそれに影響を及ぼす、免疫抑制因子または免疫調節因子を含む。典型的には、寛容原性因子は、操作された初代細胞がレシピエントの宿主免疫系によって標的化、例えば拒絶されないように、操作された初代細胞に対する免疫寛容を誘導する因子である。よって、寛容原性因子は、低免疫因子であり得る。寛容原性因子の例としては、免疫細胞の阻害性受容体(例えば、CD47)、免疫細胞の阻害性受容体に結合するタンパク質、チェックポイント阻害剤、及び自然免疫または適応免疫による認識を低減する他の分子が挙げられる。
【0161】
「減少する」、「低減された」、「低減」、及び「減少」という用語は全て、統計学的に有意な量の減少を一般に意味するように本明細書で使用される。しかしながら、疑義を避けるために、「減少する」、「低減された」、「低減」、「減少」とは、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の減少、または最大100%かつこれを含む減少(すなわち、参照試料と比較して不在のレベル)、または10~100%の任意の減少を意味する。
【0162】
「増加した」、「増加」、または「強化する」もしくは「活性化する」という用語は全て、本明細書で統計学的に有意な量の増加を一般に意味するように使用される。疑義を避けるために、「増加した」、「増加」、または「強化する」もしくは「活性化する」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%の増加、または最大100%かつこれを含む増加、または10~100%の任意の増加、または参照レベルと比較して少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、または2倍~10倍超の任意の増加を意味する。
【0163】
本明細書で使用されるとき、「改変」という用語は、細胞における遺伝子発現に影響を与える、細胞における任意の変化(change)または変化(alteration)を指す。いくつかの実施形態では、改変は、例えば、遺伝子編集、変異誘発によって、または外因性ポリヌクレオチドもしくは導入遺伝子の遺伝子操作によって、細胞においてタンパク質産物をコードする遺伝子またはその調節要素を直接変化させる遺伝子改変である。
【0164】
本明細書で使用されるとき、「インデル」とは、ゲノム内のヌクレオチド塩基の挿入、欠失、またはそれらの組み合わせに起因する変異を指す。故に、インデルは、典型的には、ヌクレオチドを挿入または配列から欠失させる。当業者には理解されようが、ゲノム配列のコード領域におけるインデルは、インデルの長さが3の倍数でない限り、フレームシフト変異をもたらすことになる。本開示のCRISPR/Casシステムを使用して、標的ポリヌクレオチド配列において任意の長さのインデルを誘導することができる。
【0165】
いくつかの実施形態では、変化は、点変異である。本明細書で使用されるとき、「点変異」とは、ヌクレオチドのうちの1つを置き換える置換を指す。本開示のCRISPR/Casシステムを使用して、標的ポリヌクレオチド配列において任意の長さのインデルまたは点変異を誘導することができる。
【0166】
本明細書で使用されるとき、「ノックアウト」は、標的ポリヌクレオチド配列の機能を妨げるように、標的ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部分を欠失させることを含む。例えば、ノックアウトは、標的ポリヌクレオチド配列の機能的ドメイン(例えば、DNA結合ドメイン)において標的ポリヌクレオチド配列におけるインデルを誘導することにより標的ポリヌクレオチド配列を変化させることによって、達成され得る。当業者であれば、本明細書に記載の詳細に基づいて、本開示のCRISPR/Casシステムをどのように使用して、標的ポリヌクレオチド配列またはその一部分をノックアウトするかについて容易に理解しよう。
【0167】
いくつかの実施形態では、変化は、標的ポリヌクレオチド配列またはその一部分のノックアウトをもたらす。本開示のCRISPR/Casシステムを使用した標的ポリヌクレオチド配列またはその一部分のノックアウトは、様々な用途に有用であり得る。例えば、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列のノックアウトを研究目的のためにインビトロで実施することができる。エクスビボ目的では、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列のノックアウトは、(例えば、細胞における変異アレルをエクスビボでノックアウトし、ノックアウトされた変異アレルを含むそれらの細胞を対象に導入することによって)標的ポリヌクレオチド配列の発現に関連する障害を処置または予防するのに有用であり得る。
【0168】
本明細書における「ノックイン」とは、遺伝子機能を宿主細胞に付加するプロセスを意味する。これは、ノックインされた遺伝子産物、例えば、RNAまたはコードされたタンパク質のレベルの増加を引き起こす。当業者には理解されようが、これは、遺伝子の1つもしくは複数の追加のコピーを宿主細胞に付加すること、または内在性遺伝子の調節構成要素を変化させることにより、作製されるタンパク質の発現を増加させることを含めた、いくつかの方式で遂行することができる。これは、プロモーターを改変すること、異なるプロモーターを付加すること、エンハンサーを付加すること、または他の遺伝子発現配列を改変することによって遂行されてもよい。
【0169】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の変化または改変は、標的または選択したポリヌクレオチド配列の低減された発現をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の変化または改変は、標的または選択ポリペプチド配列の低減された発現をもたらす。
【0170】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の変化または改変は、標的または選択ポリヌクレオチド配列の増加した発現をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の変化または改変は、標的または選択ポリペプチド配列の増加した発現をもたらす。
【0171】
遺伝子発現の「調節」とは、遺伝子の発現レベルの変化を指す。発現の調節には、遺伝子活性化及び遺伝子抑制が含まれ得るが、これらに限定されない。調節はまた、完全であってもよく(すなわち、遺伝子発現が完全に不活性化されるか、または野生型のレベル以上まで活性化される)、またはそれは部分的であってもよい(遺伝子発現が部分的に低減されるか、または野生型のレベルのある割合まで部分的に活性化される)。
【0172】
「作動的に連結された」または「作動可能に連結された」という用語は、2つ以上の構成要素(配列要素等)の並置に関して互換的に使用され、これらの構成要素は、両方の構成要素が正常に機能し、構成要素のうちの少なくとも1つが、その他の構成要素のうちの少なくとも1つに及ぼす機能を媒介し得るという可能性を許容するように配置される。例示説明として、プロモーター等の転写調節配列は、その転写調節配列が1つまたは複数の転写調節因子の存否に応答してコード配列の転写レベルを制御する場合、コード配列に作動的に連結されている。転写調節配列は、一般に、シスでコード配列と作動的に連結されるが、それに直接隣接している必要はない。例えば、エンハンサーは、コード配列に、それらが連続していない場合であっても、作動的に連結されている転写調節配列である。
【0173】
本明細書で使用される「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、ペプチド結合によってつながれた一続きのアミノ酸残基(すなわちアミノ酸残基のポリマー)を指して互換的に使用され得、最小長に限定されない。かかるポリマーは、天然もしくは非天然アミノ酸残基、またはそれらの組み合わせを含有し得、これにはアミノ酸残基のペプチド、ポリペプチド、オリゴペプチド、二量体、三量体、及び多量体が含まれるが、これらに限定されない。故に、タンパク質またはポリペプチドは、修飾されたアミノ酸(例えば、リン酸化、糖化、グリコシル化等)及びアミノ酸類似体を有するものを含む。完全長のポリペプチドまたはタンパク質、及びその断片がこの定義により包含される。この用語はまた、その修飾された種、例えば、1つまたは複数の残基の翻訳後修飾、例えば、メチル化、リン酸化、グリコシル化、シアル化、またはアセチル化も含む。
【0174】
本開示全体を通して、特許請求される発明の主題の種々の態様は、範囲形式で提示される。範囲形式の説明は、単に便宜及び簡潔さのためのものであり、特許請求される発明の主題の範囲に対する一定不動の限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、具体的に開示された全ての可能な部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数値を有すると見なされるべきである。例えば、値の範囲が提供される場合、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り下限値の単位の10分の1までの、その範囲の上限値から下限値の間の各介在値、ならびにその記載範囲の任意の他の記載値または介在値が、記載範囲内の任意の具体的に除外される限界値を条件として、本開示内に包含されることが理解される。記載範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値の片方または両方を除外する範囲もまた、本開示に含まれる。いくつかの実施形態では、特徴に関して2つの反対方向の開放式の範囲が提供され、かかる説明においては、それらの2つの範囲の組み合わせが本明細書で提供されることが想定される。例えば、いくつかの実施形態では、特徴が約10単位超であると記載され、かつ(別の文章等で)特徴が約20単位未満であると記載され、故に、約10単位から約20単位の範囲が本明細書に記載される。
【0175】
本明細書で使用されるとき、互換的に使用される用語である「対象」または「個体」は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、「哺乳動物」は、ヒト、非ヒト霊長類、飼育動物及び家畜動物、ならびに動物園の動物、競技用動物、または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコ、サル等を含む。いくつかの実施形態では、対象または個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または病態を有することが認められるか、またはそれを有することが疑われる患者である。
【0176】
本明細書で使用されるとき、「処置すること」及び「処置」という用語は、対象が疾患の少なくとも1つの症状の低減または疾患の改善、例えば、有益なまたは所望の臨床結果を有するように、有効量の本明細書に記載の細胞を対象に投与することを含む。本技術の目的において、有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であるか検出不能であるかにかかわらず、1つまたは複数の症状の緩和、疾患の程度の減弱、安定化した(すなわち、悪化していない)疾患状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または一時的緩和、及び寛解(部分的か完全かにかかわらず)が含まれるが、これらに限定されない。処置することは、処置を受けない場合に予想される生存期間と比較して生存期間を延長することを指し得る。故に、当業者は、処置が病状を改善し得るが、疾患に対する完全な治療ではない場合があることを認識している。いくつかの実施形態では、疾患または障害の1つまたは複数の症状は、疾患の処置により少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%緩和される。
【0177】
本技術の目的において、疾患処置の有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であるか検出不能であるかにかかわらず、1つまたは複数の症状の緩和、疾患の程度の減弱、安定化した(すなわち、悪化していない)疾患状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または一時的緩和、及び寛解(部分的か完全かにかかわらず)が含まれるが、これらに限定されない。
【0178】
「ベクター」または「構築物」は、遺伝子配列を標的細胞に移入することができる。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、及び「遺伝子移入ベクター」とは、目的の遺伝子の発現を導くことができ、遺伝子配列を標的細胞に移入し得る、任意の核酸構築物を意味する。故に、この用語は、クローニング、及び発現ビヒクル、ならびに組み込みベクターを含む。ベクターまたは構築物を細胞内に導入するための方法は、当業者に既知であり、これには脂質媒介性移入(すなわち、中性及びカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、粒子ボンバードメント、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性移入、及びウイルスベクター媒介性移入が含まれるが、これらに限定されない。
【0179】
II.操作された細胞及び細胞の操作方法
本明細書では、CD46及びCD59の発現を増加させる1つまたは複数の改変(複数可)を含む、操作された細胞が提供される。いくつかの実施形態では、改変(複数可)はまた、CD55の発現も増加させる。いくつかの実施形態では、CD46、CD59、及び/またはCD55の発現を増加させる改変(複数可)は、CD46、CD59、及び/またはCD55のタンパク質発現を増加させる。いくつかの実施形態では、発現を増加させる改変(複数可)は、増加した表面発現を含み、及び/または発現を低減する改変は、低減された表面発現を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の補体インヒビターの発現を増加させる改変(複数可)は、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及び/またはCD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の補体インヒビターは、CD46及びCD59であり、任意選択で、該改変は、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の補体インヒビターは、CD46、CD59、及びCD55であり、任意選択で、該改変は、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、
1つまたは複数の寛容原性因子をコードする1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチド、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドからなる群から選択される2つ以上の外因性ポリペプチドを含む、マルチシストロン性ベクター
を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの各々は、IRESまたは自己切断型ペプチドによって隔てられている。
【0181】
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞はまた、1つもしくは複数のMHCクラスI分子、1つもしくは複数のMHCクラスII分子、または1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を調節する、1つまたは複数の標的ポリヌクレオチド配列の改変も含有する。
【0182】
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞はまた、1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させるような改変も含む。いくつかの実施形態では、寛容原性因子は、DUX4、B2M-HLA-E、CD16、CD52、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF、及びH2-M3、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたは複数である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させるような改変は、CD47の増加した発現であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させるような改変は、PD-L1の増加した発現であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させるような改変は、HLA-Eの増加した発現であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させるような改変は、HLA-Gの増加した発現であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させるような改変は、CCL21、PD-L1、FasL、Serpinb9、H2-M3(HLA-G)、CD47、CD200、及びMfge8の増加した発現であるか、またはそれを含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、該細胞は、1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する1つまたは複数のゲノム改変、及びCD47の発現を増加させる改変を含む。換言すれば、操作された細胞は、外因性CD47タンパク質を含み、1つまたは複数のMHCクラスI分子の表面発現の低減またはサイレンシングを示す。いくつかの実施形態では、該細胞は、1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する1つまたは複数のゲノム改変、及びCD47の発現を増加させる改変を含む。いくつかの事例では、操作された細胞は、外因性CD47核酸及びタンパク質を含み、1つまたは複数のMHCクラスI分子の表面発現の低減またはサイレンシングを示す。いくつかの実施形態では、該細胞は、1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減または排除する1つまたは複数のゲノム改変、1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減または排除する1つまたは複数のゲノム改変、及びCD47の発現を増加させる改変を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、外因性CD47タンパク質を含み、1つまたは複数のMHCクラスI分子の表面発現の低減またはサイレンシングを示し、1つまたは複数のMHCクラスII分子の表面発現の低減または欠如を示す。多くの実施形態では、該細胞は、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg細胞である。
【0184】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術のうちのいずれかを使用して、記載したような1つまたは複数の標的ポリヌクレオチドまたは標的タンパク質の発現を低減することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、ヌクレアーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、リコンビナーゼを伴うシステムを含み得る。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、遺伝子のノックアウトまたはノックダウンに使用することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、ゲノムの領域へのDNAのノックインまたは組み込みに使用することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、一本鎖切断(SSB)を媒介する。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、非相同末端結合(NHEJ)または相同性指向修復(HDR)に関連する場合を含めて、二本鎖切断(DSB)を媒介する。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、DNAベースの編集またはプライム編集を含み得る。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、部位特異的標的化要素によるプログラム可能な付加(Programmable Addition via Site-specific Targeting Elements)(PASTE)を含み得る。
【0185】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、塩基編集に関連する。塩基エディター(BE)は、典型的には、Cas(「CRISPR関連」)ドメイン及び核酸塩基改変ドメイン(例えば、APOBEC1(「アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒ポリペプチド1」)、CDA(「シチジンデアミナーゼ」)、及びAID(「活性化誘導シチジンデアミナーゼ」)を含むシチジンデアミナーゼ等の、天然のまたは進化したデアミナーゼ)ドメインの融合体である。場合によっては、塩基エディターはまた、結果として生じる一塩基変化の効率及び/または安定性を増加させるために細胞のDNA修復プロセスを変化させるタンパク質またはドメインを含んでもよい。
【0186】
いくつかの態様では、現在利用可能な塩基エディターには、標的のC・GをT・Aに変換するシチジン塩基エディター(例えば、BE4)、及び標的のA・TをG・Cに変換するアデニン塩基エディター(例えば、ABE7.10)が含まれる。いくつかの態様では、Cas9標的化脱アミノ化が、二本鎖DNA切断を導入することなく塩基変化を誘導するように設計された塩基エディター(BE)システムに関連して最初に実証された。さらに、不活性型Cas9(dCas9)に融合されたラットのデアミナーゼAPOBEC1(rAPOBEC1)を使用して、sgRNAのPAMの上流でシチジンがチミジンに成功裏に変換された。いくつかの態様では、この最初のBEシステムは、dCas9を、脱アミノ化されたシチジンの反対側の鎖に切れ目を入れる「ニッカーゼ」Cas9 D10Aに変更することによって最適化された。理論に束縛されるものではないが、これによりロングパッチ塩基除去修復(BER)が開始することが予想され、ここで、脱アミノ化された鎖が修復の鋳型として優先的に使用されてU:A塩基対が生み出され、これが次いでDNA複製中にT:Aに変換される。
【0187】
いくつかの実施形態では、塩基エディターは、触媒的に不活性である第1のDNA結合タンパク質ドメイン、塩基編集活性を有するドメイン、及びニッカーゼ活性を有する第2のDNA結合タンパク質ドメインを含有する核酸塩基エディターであり、ここで、DNA結合タンパク質ドメインは、単一の融合タンパク質上に発現させられるか、または別個に(例えば、別個の発現ベクター上に)発現させられる。いくつかの実施形態では、塩基エディターは、塩基編集活性(例えば、シチジンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ)を有するドメイン、ならびに2つの核酸プログラム可能DNA結合タンパク質(nucleic acid programmable DNA binding protein)ドメイン(napDNAbp)であるニッカーゼ活性を含む第1のnapDNAbp及び触媒的に不活性である第2のnapDNAbpを含む、融合タンパク質であり、ここで、少なくとも2つのnapDNAbpは、リンカーによってつながれている。いくつかの実施形態では、塩基エディターは、ニッカーゼ活性を有するCRISPR-Cas(例えば、Cas9)のDNAドメイン(nCas;nCas9)、核酸プログラム可能DNA結合活性を有するCRISPR-Casタンパク質(例えば、Cas9)の触媒的に不活性なドメイン(dCas;例えば、dCas9)、及びデアミナーゼドメインを含む、融合タンパク質であり、ここで、dCasは、リンカーによってnCasにつながれており、dCasは、デアミナーゼドメインに直接隣接する。いくつかの実施形態では、塩基エディターは、アデニンからチミンへの、すなわち「ATBE」(またはチミンからアデニンへの、すなわち「TABE」)トランスバージョン塩基エディターである。例となる塩基エディター及び塩基エディターシステムには、特許公報第US20220127622号、同第US20210079366号、同第US20200248169号、同第US20210093667号、同第US20210071163号、同第WO2020181202号、同第WO2021158921号、同第WO2019126709号、同第WO2020181178号、同第WO2020181195号、同第WO2020214842号、同第WO2020181193号に記載されるいずれかが含まれ、同文献はそれらの全体が本明細書に援用される。
【0188】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、標的プライム逆転写(target-primed reverse transcription)(TPRT)または「プライム編集」である。いくつかの実施形態では、プライム編集は、DSBまたはドナーDNA鋳型を必要とすることなくヒト細胞において標的化挿入、欠失、12個全ての可能な塩基から塩基への変換、及びそれらの組み合わせを媒介する。
【0189】
プライム編集は、ポリメラーゼと連携して働く(すなわち、融合タンパク質の形態で、またはさもなければnapDNAbpにトランスに提供されて)核酸プログラム可能DNA結合タンパク質(「napDNAbp」)を使用して、指定のDNA部位へ新たな遺伝情報を直接書き込むゲノム編集法であり、ここで、プライム編集システムは、標的部位を指定するとともに、ガイドRNA上に(例えば、ガイドRNAの5’もしくは3’末端にて、またはその内部部分にて)導入操作された伸長部(DNAまたはRNAのいずれか)としての置換DNA鎖の形態で所望の編集の合成の鋳型となる、プライム編集(PE)ガイドRNA(「PEgRNA」)を用いてプログラムされる。所望の編集(例えば、単一核酸塩基置換)を含有する置換鎖は、編集対象の標的部位の内在性鎖と同じ(それが所望の編集を含むことを例外として)配列を共有する。DNA修復及び/または複製機構を介して、標的部位の内在性鎖は、所望の編集を含有する新たに合成された置換鎖により置き換えられる。場合によっては、プライム編集は、プライムエディターが編集対象の所望の標的部位を検索及び位置特定すると同時に、対応する標的部位の内在性DNA鎖の代わりに設置される所望の編集を含有する置換鎖をコードすることから、「検索・置換」ゲノム編集技術と見なされ得る。例えば、プライム編集は、二本鎖切断を迂回するために高精度なCRISPR/Casベースのゲノム編集を実施するために適応させることができる。いくつかの実施形態では、相同タンパク質は、ガイドRNAにより特定のDNA配列を標的化し、標的部位にて一本鎖の切れ目を生じさせ、切れ目の入ったDNAを、ガイドRNAと一体化された導入操作された逆転写酵素鋳型の逆転写のためのプライマーとして使用するための、Casタンパク質-逆転写酵素融合体または関連するシステムであるか、またはそれをコードする。いくつかの実施形態では、プライムエディタータンパク質は、ゲノムDNAの対向する鎖上の相補的DNAフラップの合成の鋳型となる2つのプライム編集ガイドRNA(pegRNA)と対合され、PEにより誘導される切れ目の部位間の内在性DNA配列とpegRNAにコードされる配列との置換をもたらす。
【0190】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、逆転写酵素、または当該技術分野で既知の任意のDNAポリメラーゼであるプライムエディターに関連する。故に、一態様では、プライムエディターは、標的DNAにおける相補的プロトスペーサーにアニーリングするスペーサー配列を含有する特化したガイドRNA(すなわち、PEgRNA)と関連付けることによってDNA配列を標的とするようにプログラムされる、Cas9(または同等のnapDNAbp)を含んでもよい。かかる方法には、Anzalone et al.,(doi.org/10.1038/s41586-019-1711-4)、またはPCT公報第WO2020191248号、同第WO2021226558号、または同第WO2022067130号に開示されるいずれも含まれ、同文献はそれらの全体が本明細書に援用される。
【0191】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、部位特異的標的化要素によるプログラム可能な付加(PASTE)である。いくつかの態様では、PASTEは、逆転写酵素及びセリンインテグラーゼの両方に融合されたCRISPR-Cas9ニッカーゼを介してゲノム挿入が指向されるプラットフォームである。Ioannidi et al.(doi.org/10.1101/2021.11.01.466786)に記載されるように、PASTEは、二本鎖切断を生じさせないが、約36kbもの大きさの配列の組み込みを可能にする。いくつかの実施形態では、セリンインテグラーゼは、当該技術分野で既知のいずれでもあり得る。いくつかの実施形態では、セリンインテグラーゼは、PASTEが、少なくとも2つの異なる遺伝子を少なくとも2つのゲノム遺伝子座にて同時に組み込む多重化された遺伝子組み込みに使用され得るように、十分な直交性を有する。いくつかの実施形態では、PASTEは、非分裂細胞において活性で、検出可能なオフターゲット事象がより少なく、相同性指向修復または非相同末端結合ベースの組み込みの編集効率と同等のまたはそれよりも良好な編集効率を有する。
【0192】
いくつかの実施形態では、記載される操作された細胞の集団は、レシピエント対象への投与時に、低減されたレベルの免疫活性化を誘発する、または免疫活性化を誘発しない。いくつかの実施形態では、該細胞は、レシピエント対象において、低減されたレベルの全身性TH1活性化を誘発する、または全身性TH1活性化を誘発しない。いくつかの実施形態では、該細胞は、レシピエント対象において、低減されたレベルの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化を誘発する、またはPBMCの免疫活性化を誘発しない。いくつかの実施形態では、該細胞は、レシピエント対象への投与時に、該細胞に対する低減されたレベルのドナー特異的IgG抗体を誘発する、またはドナー特異的IgG抗体を誘発しない。いくつかの実施形態では、該細胞は、レシピエント対象において、該細胞に対する低減されたレベルのIgM及びIgG抗体産生を誘発する、またはIgM及びIgG抗体産生を誘発しない。いくつかの実施形態では、該細胞は、レシピエント対象への投与時に該細胞の低減されたレベルの細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発する。
【0193】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された細胞は、「自殺遺伝子」または「自殺スイッチ」を含む。自殺遺伝子または自殺スイッチは、操作された細胞が対象に投与された後、ならびにそれらの細胞が望まれない様態で増殖及び分裂するような場合等に、操作された細胞(例えば、操作された初代細胞または操作された多能性幹細胞から分化した細胞)の死を引き起こすことができる、「安全スイッチ」として機能するように組み込まれ得る。「自殺遺伝子」による除去アプローチは、特定の化合物によって活性化されたときにのみ細胞殺傷をもたらすタンパク質をコードする、遺伝子移入ベクター内の自殺遺伝子を含む。自殺遺伝子は、無毒の化合物を毒性の高い代謝産物へと選択的に転換する酵素をコードし得る。その結果、該酵素を発現している細胞が特異的に排除される。いくつかの実施形態では、自殺遺伝子は、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子であり、トリガーは、ガンシクロビルである。他の実施形態では、自殺遺伝子は、大腸菌(Escherichia coli)シトシンデアミナーゼ(EC-CD)遺伝子であり、トリガーは、5-フルオロシトシン(5-FC)である(Barese et al,Mol.Therap.20(10):1932-1943(2012)、Xu et al,Cell Res.8:73-8(1998)(いずれも参照によりそれらの全体が本明細書に援用される))。
【0194】
他の実施形態では、自殺遺伝子は、誘導性カスパーゼタンパク質である。誘導性カスパーゼタンパク質は、アポトーシスを誘導することができるカスパーゼタンパク質の少なくとも一部分を含む。いくつかの実施形態では、誘導性カスパーゼタンパク質は、iCasp9である。それは、一続きのアミノ酸を介してヒトカスパーゼ9をコードする遺伝子に接続された、F36V変異を伴う、ヒトFK506結合タンパク質FKBP12の配列を含む。FKBP12-F36Vは、低分子二量体化剤であるAPI903に高い親和性で結合する。故に、本発明のiCasp9の自殺機能は、二量体誘導化合物(CID)の投与によって発動される。いくつかの実施形態では、CIDは、低分子薬API903である。二量体化は、アポトーシスの迅速な誘導を引き起こす(例えば、WO2011146862、Stasi et al,N.Engl.J.Med 365;18(2011)、Tey et al,Biol.Blood Marrow Transplant.13:913-924(2007)を参照されたく、同文献の各々は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される)。
【0195】
安全スイッチまたは自殺遺伝子の組み込みは、レシピエントに細胞傷害事象または他のマイナスの結果が生じた場合に細胞の制御された殺傷を可能にし、こうして、寛容原性因子を使用するものを含めて細胞ベースの治療法の安全性を増加させる。
【0196】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは、例えば、細胞が望まれない様態で増殖及び分裂するか、宿主に過度の毒性を引き起こすような場合に、安全スイッチを含有する操作された細胞の死またはアポトーシスを誘導する能力を提供するために、本明細書で提供される操作された細胞に組み込む、例えば、それに導入することができる。故に、安全スイッチの使用は、インビボで異常な細胞を条件付きで排除できるようにし、これは臨床施設における細胞療法の応用に必要不可欠なステップであり得る。安全スイッチ及びそれらの使用は、例えば、Duzgune§,Origins of Suicide Gene Therapy(2019)、Duzgune§(eds),Suicide Gene Therapy.Methods in Molecular Biology,vol.1895(Humana Press,New York,NY)(HSV-tk、シトシンデアミナーゼ、ニトロレダクターゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、及び西洋ワサビペルオキシダーゼについて)、Zhou and Brenner,Exp Hematol 44(11):1013-1019(2016)(iCaspase9について)、Wang et al.,Blood 18(5):1255-1263(2001)(huEGFRについて)、米国特許出願公開第20180002397号(HER1について)、及びPhilip et al.,Blood124(8):1277-1287(2014)(RQR8について)に記載される。
【0197】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは、制御された様態で、例えば、薬物もしくはプロドラッグの存在下で、または選択的な外因性化合物による作動時に、細胞死を引き起こすことができる。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ニトロレダクターゼ(NTR)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ、誘導性カスパーゼ9(iCasp9)、ラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)、CCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMA、及びRQR8からなる群から選択される。
【0198】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは、例えば、細胞の内部で無毒のプロドラッグを有毒な代謝産物に変えることによって、薬物またはプロドラッグによって作動されたときに細胞を殺傷する能力を有する産物をコードする導入遺伝子であってもよい。これらの実施形態では、細胞殺傷は、操作された細胞を薬物またはプロドラッグと接触させることによって作動される。場合によっては、安全スイッチは、HSV-tkであり、これはガンシクロビル(GCV)をGCV三リン酸に変換し、それによってDNA合成を妨害し、分裂細胞を殺傷する。場合によっては、安全スイッチは、CyDまたはそのバリアントであり、これはシトシンからウラシルへの加水分解的脱アミノ化を触媒することによって、抗真菌薬5-フルオロシトシン(5-FC)を細胞傷害性の5-フルオロウラシル(5-FU)に変換する。5-FUは、細胞酵素によって強力な代謝拮抗物質(5-FdUMP、5-FdUTP、5-FUTP)にさらに変換される。これらの化合物は、チミジル酸合成酵素、ならびにRNA及びDNAの産生を阻害して、細胞死をもたらす。場合によっては、安全スイッチは、NTRまたはそのバリアントであり、これは増殖細胞及び非増殖細胞において有毒である反応性N-ヒドロキシルアミン中間体へのニトロ基の還元を介して、プロドラッグCB 1954に対して作用することができる。場合によっては、安全スイッチは、PNPまたはそのバリアントであり、これはプロドラッグ6-メチルプリンデオキシリボシドまたはフルダラビンを、増殖細胞及び非増殖細胞の両方に対して有毒な代謝産物に変えることができる。場合によっては、安全スイッチは、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはそのバリアントであり、これはインドール-3-酢酸(IAA)から強力な細胞毒素への触媒作用を引き起こし、こうして細胞殺傷を達成することができる。
【0199】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは、iCasp9であってもよい。カスパーゼ9は、生理的条件下で損傷したミトコンドリアからのシトクロムCの放出によって活性化される、ミトコンドリアの本来備わっているアポトーシス経路の構成要素である。次いで、活性化されたカスパーゼ9は、カスパーゼ3を活性化し、これによりターミナルエフェクター分子が発動されて、アポトーシスに至る。iCasp9は、短縮型カスパーゼ9(その生理的二量体化ドメインまたはカスパーゼ活性化ドメインを含まない)を、ペプチドリンカーを介してFK506結合タンパク質(FKBP)、FKBP12-F36Vに融合することによって生成され得る。iCasp9は、二量体非依存性の低い基礎活性を有し、宿主細胞(例えば、ヒトT細胞)においてそれらの表現型、機能、または抗原特異性を損なうことなく安定に発現させることができる。しかしながら、リミデュシド(rimiducid)(AP1903)、AP20187、及びラパマイシン等の二量体誘導化合物(CID)の存在下で、iCasp9は、誘導性二量体化を受け、下流のカスパーゼ分子を活性化して、iCasp9を発現する細胞のアポトーシスをもたらすことができる。例えば、PCT出願公開第WO2011/146862号、Stasi et al.,N.Engl.J.Med.365;18(2011)、Tey et al.,Biol.Blood Marrow Transplant 13:913-924(2007)を参照されたい。特に、ラパマイシン誘導性のカスパーゼ9バリアントは、rapaCasp9と呼ばれる。Stavrou et al.,Mal.Ther.26(5):1266-1276(2018)を参照されたい。故に、iCasp9は、宿主細胞の制御された殺傷を達成するための安全スイッチとして使用することができる。
【0200】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは、膜発現型タンパク質であってもよく、これはそのタンパク質に特異的な抗体の投与後に細胞枯渇を可能にする。この部類の安全スイッチは、例えば、その表面発現のためのCCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMA、またはRQR8をコードする1つまたは複数の導入遺伝子を含み得る。これらのタンパク質は、特異的抗体によって標的化され得る表面エピトープを有し得る。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、抗CCR4抗体によって認識され得るCCR4を含む。好適な抗CCR4抗体の非限定的な例としては、モガムリズマブ及びそのバイオ後続品が挙げられる。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、抗CD16抗体または抗CD30抗体によって認識され得るCD16またはCD30を含む。かかる抗CD16抗体または抗CD30抗体の非限定的な例としては、AFM13及びそのバイオ後続品が挙げられる。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、抗CD19抗体によって認識され得るCD19を含む。かかる抗CD19抗体の非限定的な例としては、MOR208及びそのバイオ後続品が挙げられる。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、抗CD20抗体によって認識され得るCD20を含む。かかる抗CD20抗体の非限定的な例としては、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、リツキシマブ、リツキシマブ-RIIb、及びそれらのバイオ後続品が挙げられる。故に、安全スイッチを発現する細胞は、CD20陽性であり、記載したような抗CD20抗体の投与により殺傷の標的とすることができる。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、抗EGFR抗体によって認識され得るEGFRを含む。かかる抗EGFR抗体の非限定的な例としては、トムゾツキシマブ、RO5083945(GA201)、セツキシマブ、及びそれらのバイオ後続品が挙げられる。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、抗GD2抗体によって認識され得るGD2を含む。かかる抗GD2抗体の非限定的な例としては、Hul4.18K322A、Hul4.18-IL2、Hu3F8、ジニツキシマブ、c.60C3-RIIc、及びそれらのバイオ後続品が挙げられる。
【0201】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは、操作された細胞の表面上の1つまたは複数の寛容原性因子を認識する外因的に投与される剤であってもよい。いくつかの実施形態では、外因的に投与される剤は、寛容原性物質に対して向けられるまたはそれに特異的な抗体、例えば、抗CD47抗体である。操作された細胞上の寛容原性因子を認識し、遮断することによって、外因的に投与される抗体は、寛容原性因子の免疫抑制機能を遮断し、それによって免疫系を操作された細胞に対して再感作し得る。例えば、CD47を過剰発現する操作された細胞の場合、外因的に投与される抗CD47抗体が対象に投与されて、操作された細胞上のCD47の遮蔽及び操作された細胞に対する免疫応答の発動をもたらし得る。
【0202】
いくつかの実施形態では、操作された細胞を生成する方法が本明細書で提供され、該方法は、(a)細胞における1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することと、(b)細胞におけるCD46及びCD59の発現を増加させることと、(c)細胞における寛容原性因子の発現を増加させることとを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子は、DUX4、B2M-HLA-E、CD16、CD52、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF、及びH2-M3から選択される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子は、CD47である。いくつかの実施形態では、該方法は、1つまたは複数のMHCクラスI分子及び1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減または排除することを含む。いくつかの実施形態では、発現を低減または増加させることは、誘導型ヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Casシステム)を使用して細胞に対する1つまたは複数の改変を実施することを含む。いくつかの実施形態では、該方法は、誘導性自殺スイッチを含む発現ベクターを細胞内に導入することをさらに含む。いくつかの実施形態では、該方法は、該細胞におけるCD55の発現を増加させることをさらに含む。
【0203】
いくつかの実施形態では、操作された細胞を生成する方法が本明細書で提供され、該方法は、(a)細胞におけるCCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200、及びMFGE8の発現を増加させることと、(b)細胞におけるCD46及びCD59の発現を増加させることとを含む。いくつかの実施形態では、発現を低減または増加させることは、誘導型ヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Casシステム)を使用して細胞に対する1つまたは複数の改変を実施することを含む。いくつかの実施形態では、該方法は、誘導性自殺スイッチを含む発現ベクターを細胞内に導入することをさらに含む。いくつかの実施形態では、該方法は、該細胞におけるCD55の発現を増加させることをさらに含む。
【0204】
いくつかの実施形態では、寛容原性因子は、CD47であり、該細胞は、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、外因性CD47ポリペプチドを発現する。
【0205】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、その必要のある対象にCD47-SIRPα遮断剤を投与することを含み、ここで、対象は、外因性CD47ポリペプチドを発現するように操作された細胞の集団を以前に投与された。いくつかの実施形態では、CD47-SIRPα遮断剤は、CD47結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD47結合ドメインは、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、CD47-SIRPα遮断剤は、免疫グロブリンG(IgG)Fcドメインを含む。いくつかの実施形態では、IgG Fcドメインは、IgG1 Fcドメインを含む。いくつかの実施形態では、IgG1 Fcドメインは、ヒト抗体の断片を含む。いくつかの実施形態では、CD47-SIRPα遮断剤は、TTI-621、TTI-622、及びALX148からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CD47-SIRPα遮断剤は、TTI-621、TTI-622、及びALX148である。いくつかの実施形態では、CD47-SIRPα遮断剤は、TTI-622である。いくつかの実施形態では、CD47-SIRPα遮断剤は、ALX148である。いくつかの実施形態では、IgG Fcドメインは、IgG4 Fcドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD47-SIRPα遮断剤は、抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、MIAP410、B6H12、及びマグロリマブからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗体は、MIAP410である。いくつかの実施形態では、抗体は、B6H12である。いくつかの実施形態では、抗体は、マグロリマブである。いくつかの実施形態では、抗体は、AO-176、IBI188(レタプリマブ(letaplimab))、STI-6643、及びZL-1201からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、抗体は、AO-176(Arch)である。いくつかの実施形態では、抗体は、IBI188(レタプリマブ)(Innovent)である。いくつかの実施形態では、抗体は、STI-6643(Sorrento)である。いくつかの実施形態では、抗体は、ZL-1201(Zai)である。
【0206】
いくつかの実施形態では、CD47に結合する有用な抗体またはその断片は、マグロリマブ((Hu5F9-G4))(Forty Seven,Inc.;Gilead Sciences,Inc.)、ウラブレリマブ(urabrelimab)、CC-90002(Celgene;Bristol-Myers Squibb)、IBI-188(Innovent Biologics)、IBI-322(Innovent Biologics)、TG-1801(TG Therapeutics;NI-1701としても公知、Novimmune SA)、ALX148(ALX Oncology)、TJ011133(TJC4としても公知、I-Mab Biopharma)、FA3M3,ZL-1201(Zai Lab Co.,Ltd)、AK117(Akesbio Australia Pty,Ltd.)、AO-176(Arch Oncology)、SRF231(Surface Oncology)、GenSci-059(GeneScience)、C47B157(Janssen Research and Development)、C47B161(Janssen Research and Development)、C47B167(Janssen Research and Development)、C47B222(Janssen Research and Development)、C47B227(Janssen Research and Development)、Vx-1004(Corvus Pharmaceuticals)、HMBD004(Hummingbird Bioscience Pte Ltd)、SHR-1603(Hengrui)、AMMS4-G4(Beijing Institute of Biotechnology)、RTX-CD47(University of Groningen)、及びIMC-002(Samsung Biologics;ImmuneOncia Therapeutics)を含む群から選択され得る。いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、CD47結合に関して、マグロリマブ、ウラブレリマブ、CC-90002、IBI-188、IBI-322、TG-1801(NI-1701)、ALX148、TJ011133、FA3M3、ZL1201、AK117、AO-176、SRF231、GenSci-059、C47B157、C47B161、C47B167、C47B222、C47B227、Vx-1004、HMBD004、SHR-1603、AMMS4-G4、RTX-CD47、及びIMC-002を含む群から選択される抗体と競合しない。いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、CD47結合に関して、マグロリマブ、ウラブレリマブ、CC-90002、IBI-188、IBI-322、TG-1801(NI-1701)、ALX148、TJ011133、FA3M3、ZL1201、AK117、AO-176、SRF231、GenSci-059、C47B157、C47B161、C47B167、C47B222、C47B227、Vx-1004、HMBD004、SHR-1603、AMMS4-G4、RTX-CD47、及びIMC-002から選択される抗体と競合する。いくつかの実施形態では、CD47に結合する抗体またはその断片は、CD47に対する一本鎖Fv断片(scFv)、CD47に対するFab、CD47に対するVHHナノボディ、CD47に対するDARPin、及びそれらのバリアントを含む群から選択される。いくつかの実施形態では、CD47に対するscFv、CD47に対するFab、及びそれらのバリアントは、マグロリマブ、ウラブレリマブ、CC-90002、IBI-188、IBI-322、TG-1801(NI-1701)、ALX148、TJ011133、FA3M3、ZL1201、AK117、AO-176、SRF231、GenSci-059、C47B157、C47B161、C47B167、C47B222、C47B227、Vx-1004、HMBD004、SHR-1603、AMMS4-G4、RTX-CD47、及びIMC-002を含む群から選択される抗体のうちのいずれかの抗原結合ドメインに基づく。
【0207】
いくつかの実施形態では、CD47アンタゴニストは、CD47遮断を提供する。CD47遮断のための方法及び剤は、PCT/US2021/054326に記載され、同文献は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0208】
ひとたび変化させられると、本明細書に記載の分子のうちのいずれかの発現の存在について、ウェスタンブロット、ELISAアッセイ、FACSアッセイ等といった既知の技法を使用してアッセイすることができる。
【0209】
A.標的遺伝子の低減された発現
1.標的遺伝子
A.MHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞は、1つもしくは複数のMHCクラスI分子、1つもしくは複数のMHCクラスII分子、または1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び1つもしくは複数のMHCクラスII分子のいずれかの発現を調節する(例えば、低減または排除する)、1つまたは複数の標的ポリヌクレオチドまたはタンパク質配列(互換的に標的遺伝子とも称される)の改変(例えば、遺伝子改変)を含む。いくつかの実施形態では、改変または操作対象の細胞は、1つまたは複数の改変を以前に導入されていない未改変の細胞または操作されていない細胞である。いくつかの実施形態では、遺伝子編集システムを使用して、1つもしくは複数のMHCクラスI分子、1つもしくは複数のMHCクラスII分子、または1つもしくは複数のMHCクラスI分子及びMHCクラスII分子のいずれかの発現を調節する(例えば、低減または排除する)、1つまたは複数の標的ポリヌクレオチド配列が改変される。ある特定の実施形態では、細胞のゲノムは、細胞の表面上の1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現等のHLA発現を容易にする際に必要とされるまたはそれに関与する構成要素を低減または欠失するように変化させられている。例えば、いくつかの実施形態では、MHCクラスI分子の構成要素であるベータ-2-ミクログロブリン(B2M)の発現が細胞において低減または排除され、それによって、操作された細胞による1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現(例えば、細胞表面発現)が低減または排除される。
【0210】
いくつかの実施形態では、操作された細胞における1つまたは複数の標的ポリヌクレオチドまたはタンパク質の発現を調節する(例えば、低減または排除する)、操作された細胞における記載される改変のうちのいずれも、第II.B節に記載されるポリヌクレオチド(例えば、CD47等の寛容原性因子)を過剰発現させるような1つまたは複数の改変と一緒に組み合わされてもよい。
【0211】
いくつかの実施形態では、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現の低減は、例えば、以下のうちの1つまたは複数によって遂行することができる:(1)多型HLAアレル(HLA-A、HLA-B、HLA-C)及びMHCクラスII遺伝子を直接標的化すること、(2)B2Mの除去により、全てのMHCクラスI分子の表面輸送を低減すること、及び/または(3)HLA発現に必要不可欠である、LRC5、RFX-5、RFXANK、RFXAP、IRFl、NF-Y(NFY-A、NFY-B、NFY-Cを含む)、及びCIITA等のMHCエンハンセオソームの1つもしくは複数の構成要素の欠失。
【0212】
ある特定の実施形態では、HLA発現が妨害される。いくつかの実施形態では、HLA発現は、個々のHLAを標的化すること(例えば、HLA-A、HLA-B、及び/またはHLA-Cの発現をノックアウトすること)、HLA発現の転写レギュレーターを標的化すること(例えば、NLRC5、CIITA、RFX5、RFXAP、RFXANK、NFY-A、NFY-B、NFY-C、及び/またはIRF-1の発現をノックアウトすること)、MHCクラスI分子の表面輸送を遮断すること(例えば、B2M及び/またはTAP1の発現をノックアウトすること)、及び/またはHLA-Razorで標的化すること(例えば、WO2016183041を参照されたい)によって妨害される。
【0213】
ヒト白血球抗原(HLA)複合体は、ヒトMHCと同義である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される操作された細胞は、ヒト細胞である。ある特定の態様では、本明細書に開示される操作された細胞は、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子に対応する1つまたは複数のヒト白血球抗原(例えば、HLA-A、HLA-B、及び/またはHLA-C)を発現せず、故に低免疫原性であるとして特徴付けられる。例えば、ある特定の態様では、本明細書に開示される操作された細胞は、任意の幹細胞またはそれから調製される分化した幹細胞を含めた細胞が以下のMHCクラスI分子、すなわちHLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの1つまたは複数を発現しないか、またはその発現の低減を示すように改変されている。いくつかの実施形態では、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの1つまたは複数が、細胞から「ノックアウト」され得る。HLA-A遺伝子、HLA-B遺伝子、及び/またはHLA-C遺伝子がノックアウトされた細胞は、ノックアウトされた各遺伝子の低減された発現またはその排除を示し得る。
【0214】
ある特定の実施形態では、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現は、連続した一続きのゲノムDNAを標的化して欠失させ、それによってB2M、CIITA、及びNLRC5からなる群から選択される標的遺伝子の発現が低減または排除されることによって調節される。
【0215】
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞は、1つまたは複数のMHCクラスI分子を調節する1つまたは複数の標的ポリヌクレオチド配列の改変を含む。1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減するための例となる方法が、下記の節に記載される。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、B2M及びNLRC5のうちの一方または両方である。いくつかの実施形態では、該細胞は、B2M遺伝子に対する遺伝子編集改変(例えば、インデル)を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NLRC5遺伝子に対する遺伝子編集改変(例えば、インデル)を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、B2M及びCIITA遺伝子に対する遺伝子編集改変(例えば、インデル)を含む。
【0216】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する改変は、B2Mの発現を低減する改変である。いくつかの実施形態では、B2M発現を低減する改変は、B2M mRNA発現を低減する。いくつかの実施形態では、B2Mの低減されたmRNA発現は、改変を含まない同じ細胞種の未改変または野生型の細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現は、約5%を超えて低減され、例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%のうちのいずれかを超えて、またはそれよりも多く低減される。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現は、最大約100%低減され、例えば、最大約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%のうちのいずれか、またはそれよりも少なく低減される。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%のうちのいずれかだけ低減される。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現は、排除される(例えば、0%のB2M mRNAの発現)。いくつかの実施形態では、B2M mRNA発現を低減する改変は、B2M遺伝子活性を排除する。
【0217】
いくつかの実施形態では、B2M発現を低減する改変は、B2Mタンパク質発現を低減する。いくつかの実施形態では、B2Mの低減されたタンパク質発現は、改変を含まない同じ細胞種の未改変または野生型の細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現は、約5%を超えて低減され、例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%のうちのいずれかを超えて、またはそれよりも多く低減される。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現は、最大約100%低減され、例えば、最大約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%のうちのいずれか、またはそれよりも少なく低減される。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%のうちのいずれかだけ低減される。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現は、排除される(例えば、0%のB2Mタンパク質の発現)。いくつかの実施形態では、B2Mタンパク質発現を低減する改変は、B2M遺伝子活性を排除する。
【0218】
いくつかの実施形態では、B2M発現を低減する改変は、B2M遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、B2M発現を低減する改変は、B2M遺伝子の一方のアレルの不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、B2M発現を低減する改変は、不活性化または破壊を含み、B2M遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む。
【0219】
いくつかの実施形態では、改変は、細胞における1つまたは複数のB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、細胞における全てのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、不活性化または破壊を含み、B2M遺伝子におけるインデルを含む。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子のゲノムDNAのフレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子のゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子は、ノックアウトされる。
【0220】
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞は、1つまたは複数のMHCクラスII分子を調節する1つまたは複数の標的ポリヌクレオチド配列の改変を含む。1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減するための例となる方法が、下記の節に記載される。いくつかの実施形態では、該細胞は、CIITA遺伝子に対する遺伝子編集改変を含む。
【0221】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する改変は、CIITAの発現を低減する改変である。いくつかの実施形態では、CIITA発現を低減する改変は、CIITA mRNA発現を低減する。いくつかの実施形態では、CIITAの低減されたmRNA発現は、改変を含まない同じ細胞種の未改変または野生型の細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現は、約5%を超えて低減され、例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%のうちのいずれかを超えて、またはそれよりも多く低減される。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現は、最大約100%低減され、例えば、最大約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%のうちのいずれか、またはそれよりも少なく低減される。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%のうちのいずれかだけ低減される。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現は、排除される(例えば、0%のCIITA mRNAの発現)。いくつかの実施形態では、CIITA mRNA発現を低減する改変は、CIITA遺伝子活性を排除する。
【0222】
いくつかの実施形態では、CIITA発現を低減する改変は、CIITAタンパク質発現を低減する。いくつかの実施形態では、CIITAの低減されたタンパク質発現は、改変を含まない同じ細胞種の未改変または野生型の細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現は、約5%を超えて低減され、例えば、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%のうちのいずれかを超えて、またはそれよりも多く低減される。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現は、最大約100%低減され、例えば、最大約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%のうちのいずれか、またはそれよりも少なく低減される。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%のうちのいずれかだけ低減される。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現は、排除される(例えば、0%のCIITAタンパク質の発現)。いくつかの実施形態では、CIITAタンパク質発現を低減する改変は、CIITA遺伝子活性を排除する。
【0223】
いくつかの実施形態では、CIITA発現を低減する改変は、CIITA遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、CIITA発現を低減する改変は、CIITA遺伝子の一方のアレルの不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、CIITA発現を低減する改変は、不活性化または破壊を含み、CIITA遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、改変は、細胞における1つまたは複数のB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、細胞における全てのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、改変は、不活性化または破壊を含み、B2M遺伝子におけるインデルを含む。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子のゲノムDNAのフレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子のゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、改変は、B2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子は、ノックアウトされる。
【0225】
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞は、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子を調節する1つまたは複数の標的ポリヌクレオチド配列の改変を含む。1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を低減するための例となる方法が、下記の節に記載される。いくつかの実施形態では、該細胞は、B2M及びNLRC5遺伝子に対する遺伝子編集改変を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、CIITA及びNLRC5遺伝子に対する遺伝子編集改変を含む。特定の実施形態では、該細胞は、B2M、CIITA、及びNLRC5遺伝子に対する遺伝子編集改変を含む。
【0226】
いくつかの実施形態では、該細胞は、低減する改変を含む。
【0227】
2.発現を低減する方法
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞は、記載したような1つまたは複数の標的ポリヌクレオチドまたはタンパク質の発現を低減するように改変される(例えば、遺伝子改変される)。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドまたはタンパク質の発現を低減する(例えば、排除する)ような1つまたは複数の改変により操作される細胞は、本明細書に記載される任意の供給源細胞である。いくつかの実施形態では、供給源細胞は、第II.C節に記載される任意の細胞である。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される細胞(例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、ベータ島細胞もしくは肝細胞等の分化細胞、または初代細胞)は、1つまたは複数の標的ポリヌクレオチドの発現を低減するような1つまたは複数の改変を含む。1つまたは複数の標的ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、CIITA、B2M、NLRC5、HLA-A、HLA-B、HLA-C、LRC5、RFX-ANK、RFX5、RFX-AP、NFY-A、NFY-B、NFY-C、IRF1、及びTAP1のうちの1つまたは複数等の、上述したいずれかが挙げられる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の標的ポリヌクレオチドの発現を低減するような改変は、第II.B節に記載されるいずれか等の所望の導入遺伝子の発現を増加させるような1つまたは複数の改変と組み合わされる。いくつかの実施形態では、改変は、免疫特権が備わったまたは低免疫原性細胞である、操作された細胞を作出する。1つまたは複数の標的ポリヌクレオチドの発現を調節すること(例えば、低減するまたは欠失させること)によって、かかる細胞は、レシピエント対象に移植されたときに減少した免疫活性化を示す。いくつかの実施形態では、該細胞は、例えば、投与時にレシピエント対象または患者において低免疫原性と見なされる。
【0228】
標的ポリヌクレオチドの発現を低減するための任意の方法が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、改変は、標的ポリヌクレオチドの発現の永久的な排除または低減をもたらす。例えば、いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドまたは遺伝子は、例えば、標的指向性エンドヌクレアーゼを使用することによって、標的ポリヌクレオチドにDNA切断を導入することによって破壊される。他の実施形態では、改変は、標的ポリヌクレオチドの発現の一過性の低減をもたらす。例えば、いくつかの実施形態では、遺伝子抑制は、例えば、アンチセンス技法を使用して、例えば、RNA干渉(RNAi)、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン(shRNA)、及び/またはリボザイムによって、標的ポリヌクレオチドに相補的である阻害性核酸を使用して遺伝子の発現を選択的に抑制(suppress)または抑制(repress)することで達成される。
【0229】
いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、ゲノム配列である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、ヒトゲノム配列である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、哺乳動物ゲノム配列である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、脊椎動物ゲノム配列である。
【0230】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊は、典型的には標的化された様態での、遺伝子における1つもしくは複数の二本鎖切断及び/または1つもしくは複数の一本鎖切断の誘導によって実施される。いくつかの実施形態では、二本鎖または一本鎖切断は、ヌクレアーゼ、例えば、エンドヌクレアーゼ、例えば、遺伝子標的化ヌクレアーゼによって作製される。いくつかの実施形態では、標的化ヌクレアーゼは、遺伝子の配列またはその一部分に標的化されるように特異的に設計された、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びCRISPR関連ヌクレアーゼ(Cas)等のRNA誘導型ヌクレアーゼから選択される。いくつかの実施形態では、標的化ヌクレアーゼは、二本鎖または一本鎖切断を生じさせ、これが次いで誤りがちな非相同末端結合(NHEJ)または場合によっては、鋳型が使用される正確な相同性指向修復(HDR)を介して修復を受ける。いくつかの実施形態では、標的化ヌクレアーゼは、DNA二本鎖切断(DSB)を生じさせる。いくつかの実施形態では、切断の生成及び修復プロセスは、典型的に誤りがちであり、NHEJ修復によるDNA塩基の挿入及び欠失(インデル)をもたらす。いくつかの実施形態では、改変は、標的遺伝子のヌクレオチド配列の欠失、挿入、または変異を誘導し得る。場合によっては、改変は、フレームシフト変異をもたらし得、これが未成熟終止コドンをもたらす可能性がある。ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集の例では、標的化編集は、遺伝子の両方のアレル上で起こり、遺伝子の両アレル破壊または編集をもたらす。いくつかの実施形態では、遺伝子の全てのアレルが遺伝子編集によって標的化される。いくつかの実施形態では、例えばCRISPR/Casシステムを使用した、標的化ヌクレアーゼを用いた改変は、遺伝子の完全なノックアウトにつながる。
【0231】
いくつかの実施形態では、レアカットエンドヌクレアーゼ等のヌクレアーゼは、標的ポリヌクレオチド配列を含有する細胞内に導入される。ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼをコードする核酸の形態で細胞内に導入され得る。核酸を細胞内に導入するプロセスは、任意の好適な技法によって達成され得る。好適な技法には、リン酸カルシウムまたは脂質媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、及びウイルスベクターを使用した形質導入または感染が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞内に導入される核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、タンパク質の形態で細胞内に導入される。例えば、CRISPR/Casシステムの場合、リボ核タンパク質(RNP)が細胞内に導入され得る。
【0232】
いくつかの実施形態では、改変は、CRISPR/Casシステムを使用して起こる。細胞内の標的ポリヌクレオチド配列を変化させることができる任意のCRISPR/Casシステムが使用され得る。かかるCRISPR-Casシステムは、様々なCasタンパク質を用いることができる(Haft et al.PLoS Comput Biol.2005;1(6)e60)。CRISPR/Casシステムが細胞内の標的ポリヌクレオチド配列を変化させることを可能にするかかるCasタンパク質の分子機構には、RNA結合タンパク質、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、ならびにポリメラーゼが含まれる。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムは、I型CRISPRシステムである。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムは、II型CRISPRシステムである。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムは、V型CRISPRシステムである。
【0233】
CRISPR/Casシステムには、細胞における任意の標的ポリヌクレオチド配列を変化させるために使用され得る標的化システムが含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCRISPR/Casシステムは、Casタンパク質、及びCasタンパク質を標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くとともにそれにハイブリダイズすることができる1つまたは複数の、例えば少なくとも1~2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA(gRNA))を含む。
【0234】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つまたは複数のアミノ酸置換または改変を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの事例では、置換及び/または改変は、細胞においてタンパク質分解を阻止もしくは低減する、及び/またはポリペプチドの半減期を延長することができる。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、ペプチド結合の置き換え(例えば、尿素、チオ尿素、カルバメート、スルホニル尿素等)を含み得る。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、天然に存在するアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、代替のアミノ酸(例えば、D-アミノ酸、ベータ-アミノ酸、ホモシステイン、ホスホセリン等)を含み得る。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、部分構造(例えば、PEG化、グリコシル化、脂質化、アセチル化、エンドキャッピング等)を含めるような改変を含み得る。
【0235】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、コアCasタンパク質を含む。例となるCasコアタンパク質には、Cas1、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、及びCas9が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、大腸菌サブタイプのCasタンパク質(CASS2としても公知)を含む。大腸菌サブタイプの例となるCasタンパク質には、Cse1、Cse2、Cse3、Cse4、及びCas5eが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、YpestサブタイプのCasタンパク質(CASS3としても公知)を含む。Ypestサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csy1、Csy2、Csy3、及びCsy4が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、NmeniサブタイプのCasタンパク質(CASS4としても公知)を含む。Nmeniサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csn1及びCsn2が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、DvulgサブタイプのCasタンパク質(CASS1としても公知)を含む。Dvulgサブタイプの例となるCasタンパク質は、Csd1、Csd2、及びCas5dが含まれる。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、TneapサブタイプのCasタンパク質(CASS7としても公知)を含む。Tneapサブタイプの例となるCasタンパク質には、Cst1、Cst2、Cas5tが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、HmariサブタイプのCasタンパク質を含む。Hmariサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csh1、Csh2、及びCas5hが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、ApernサブタイプのCasタンパク質(CASS5としても公知)を含む。Apernサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csa1、Csa2、Csa3、Csa4、Csa5、及びCas5aが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、MtubeサブタイプのCasタンパク質(CASS6としても公知)を含む。Mtubeサブタイプの例となるCasタンパク質には、Csm1、Csm2、Csm3、Csm4、及びCsm5が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、RAMPモジュールCasタンパク質を含む。例となるRAMPモジュールCasタンパク質には、Cmr1、Cmr2、Cmr3、Cmr4、Cmr5、及びCmr6が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Klompe et al.,Nature 571,219-225(2019)、Strecker et al.,Science 365,48-53(2019)を参照されたい。
【0236】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の遺伝子をノックアウト、ノックダウン、または他の方法で改変するように細胞を遺伝子改変するための方法は、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、トランスポザーゼ、及び規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)/Casシステムを含めた、部位特異的ヌクレアーゼを使用することを含む。
【0237】
ZFNは、細菌FokI制限酵素のエンドヌクレアーゼドメインに結合したジンクフィンガー含有転写因子から適応された数々の部位特異的DNA結合ドメインを含む融合タンパク質である。ZFNは、1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多く)のDNA結合ドメインまたはジンクフィンガードメインを有してもよい。例えば、Carroll et al.,Genetics Society of America(2011)188:773-782、Kim et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1996)93:1156-1160を参照されたい。各ジンクフィンガードメインは、1つまたは複数の亜鉛イオンによって安定化された小さなタンパク質の構造モチーフであり、通常、3~4bpのDNA配列を認識する。タンデムドメインは、故に、細胞のゲノム内で固有である長いヌクレオチド配列に結合する可能性があり得る。
【0238】
特異性が知られている種々のジンクフィンガーを組み合わせて、約6、9、12、15、または18bpの配列を認識するマルチフィンガーポリペプチドを生み出すことができる。ファジーディスプレイ、酵母ワンハイブリッドシステム、細菌ワンハイブリッド及びツーハイブリッドシステム、ならびに哺乳類細胞を含む、特定の配列を認識するジンクフィンガー(及びそれらの組み合わせ)を生成するための種々の選択及びモジュール式組立て技法が利用可能である。ジンクフィンガーは、既定の核酸配列に結合するように操作され得る。既定の核酸配列に結合するようにジンクフィンガーを操作するための基準は、当該技術分野で既知である。例えば、Sera et al.,Biochemistry(2002)41:7074-7081、Liu et al.,Bioinformatics(2008)24:1850-1857を参照されたい。
【0239】
FokIヌクレアーゼドメインまたは他の二量体ヌクレアーゼドメインを含有するZFNは、二量体として機能する。故に、非回文型DNA部位を標的化するためにZFNの対が必要とされる。2つの個々のZFNは、それらのヌクレアーゼが適切に離間した状態でDNAの相対する鎖に結合しなければならない。Bitinaite et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1998)95:10570-10575を参照されたい。ゲノム内の特定の部位を切断するために、ZFNの対は、一方が順方向鎖上、他方が逆方向鎖上で、当該部位の両側に位置する2つの配列を認識するように設計される。ZFNが当該部位のそれぞれの側で結合すると、ヌクレアーゼドメインは二量体化し、当該部位にてDNAを切断して、5’オーバーハングを伴うDSBを生じさせる。次いでHDRを使用して、相同性アームが両側に位置する所望の変異を含有する修復鋳型の一助により、特定の変異を誘導することができる。修復鋳型は通常、細胞に導入される外因性二本鎖DNAベクターである。Miller et al.,Nat.Biotechnol.(2011)29:143-148、Hockemeyer et al.,Nat.Biotechnol.(2011)29:731-734を参照されたい。
【0240】
TALENは、標的遺伝子を編集するために使用され得る人工ヌクレアーゼの別の例である。TALENは、長いDNA配列に結合し、それを認識する10~30個のリピートを有するタンデムアレイを通常含む、TALEリピートと呼ばれるDNA結合ドメインに由来する。各リピートは、33~35アミノ酸長であり、このうち2つの隣接するアミノ酸(反復可変性二残基またはRVDと呼ばれる)が4つのDNA塩基対のうちの1つに対する特異性を付与する。故に、標的DNA配列においてリピートと塩基対との間に1対1の対応関係が存在する。
【0241】
TALENは、1つまたは複数のTALE DNA結合ドメイン(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多く)をヌクレアーゼドメイン、例えば、FokIエンドヌクレアーゼドメインに融合することによって人工的に生産される。Zhang,Nature Biotech.(2011)29:149-153を参照されたい。TALENにおける使用に向けてFokIに対するいくつかの変異が作製されており、これらは、例えば、切断特異性または活性を改善する。Cermak et al.,Nucl.Acids Res.(2011)39:e82、Miller et al.,Nature Biotech.(2011)29:143-148、Hockemeyer et al.,Nature Biotech.(2011)29:731-734、Wood et al.,Science(2011)333:307、Doyon et al.,Nature Methods(2010)8:74-79、Szczepek et al.,Nature Biotech(2007)25:786-793、Guo et al.,J.Mol.Biol.(2010)200:96を参照されたい。FokIドメインは二量体として機能するため、適切な向き及び間隔での、標的ゲノム内の部位に対する固有のDNA結合ドメインを有する2つの構築物を必要とする。TALE DNA結合ドメインとFokIヌクレアーゼドメインとの間のアミノ酸残基の数、及び2つの個々のTALEN結合部位の間の塩基の数の両方が、高レベルの活性を達成するために重要なパラメータであるようである。Miller et al.,Nature Biotech.(2011)29:143-148。
【0242】
操作されたTALEリピートをヌクレアーゼドメインと組み合わせることによって、任意の所望のDNA配列に特異的な部位特異的ヌクレアーゼを生産することができる。ZFNに類似して、TALENを細胞内に導入して、ゲノム内の所望の標的部位にてDSBを生じさせることができるため、これを使用して、類似のHDR媒介性経路で遺伝子をノックアウトまたは変異をノックインすることができる。Boch,Nature Biotech.(2011)29:135-136、Boch et al.,Science(2009)326:1509-1512、Moscou et al.,Science(2009)326:3501を参照されたい。
【0243】
メガヌクレアーゼは、大きなDNA配列(14~40塩基対)を認識し、切断する能力を特徴とする、エンドヌクレアーゼファミリー内の酵素である。メガヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ活性及び/またはDNA認識に影響を及ぼすそれらの構造モチーフに基づいて複数のファミリーに群分けされる。最も普及し、最もよく知られたメガヌクレアーゼは、LAGLIDADGファミリー内のタンパク質であり、それらの名称は保存されたアミノ酸配列に帰する。Chevalier et al.,Nucleic Acids Res.(2001)29(18):3757-3774を参照されたい。一方で、GIY-YIGファミリーメンバーは、GIY-YIGモジュールを有し、これは70~100残基長であり、4つの不変残基を有し、このうち2つが活性に必要とされる、4つまたは5つの保存された配列モチーフを含む。Van Roey et al.,Nature Struct.Biol.(2002)9:806-811を参照されたい。His-Cysファミリーのメガヌクレアーゼは、数百個のアミノ酸残基を包含する領域にわたって高度に保存された一連のヒスチジン及びシステインを特徴とする。Chevalier et al.,Nucleic Acids Res.(2001)29(18):3757-3774を参照されたい。NHNファミリーのメンバーは、アスパラギン残基に囲まれた2対の保存されたヒスチジンを含有するモチーフによって定義される。Chevalier et al.,Nucleic Acids Res.(2001)29(18):3757-3774を参照されたい。
【0244】
特異性要件の高さに起因して特定の標的DNA配列に対する天然メガヌクレアーゼを特定する見込みが低いため、変異誘発法及び高スループットスクリーニング法を含めた種々の方法を使用して、固有の配列を認識するメガヌクレアーゼバリアントが作出されている。例えば、既定の核酸配列に結合するように、変化したDNA結合特異性を有するメガヌクレアーゼを操作するための戦略は、当該技術分野で既知である。例えば、Chevalier et al.,Mol.Cell.Cell.(2002)10:895-905、Epinat et al.,Nucleic Acids Res(2003)31:2952-2962、Silva et al.,J Mol.Biol.(2006)361:744-754、Seligman et al.,Nucleic Acids Res(2002)30:3870-3879、Sussman et al.,J Mol Biol(2004)342:31-41、Doyon et al.,J Am Chem Soc(2006)128:2477-2484、Chen et al.,Protein Eng Des Sel(2009)22:249-256、Arnould et al.,J Mol Biol.(2006)355:443-458、Smith et al.,Nucleic Acids Res.(2006)363(2):283-294を参照されたい。
【0245】
ZFN及びTALENと同様に、メガヌクレアーゼは、ゲノムDNAにDSBを作出することができ、これにより、例えばNHEJを介して、不適切に修復される場合にフレームシフト変異が作出され得、細胞における標的遺伝子の発現の減少につながる。代替として、メガヌクレアーゼとともに外来DNAを細胞内に導入することができる。外来DNAの配列及び染色体配列に応じて、このプロセスを使用して、標的遺伝子を改変することができる。Silva et al.,Current Gene Therapy(2011)11:11-27を参照されたい。
【0246】
トランスポザーゼは、トランスポゾンの末端に結合し、切り貼り機構または複製型転移機構によってゲノムの別の部分へのその移動を触媒する酵素である。トランスポザーゼをCRISPER/Casシステム等の他のシステムと連結することによって、ゲノムDNAの部位特異的挿入または操作を可能にする新たな遺伝子編集ツールを開発することができる。触媒的に不活性なCasエフェクタータンパク質及びTn7様トランスポゾンを使用する、トランスポゾンを使用した2つの既知のDNA組み込み方法が存在する。トランスポザーゼ依存性のDNA組み込みは、ゲノム内にDSBを誘発せず、これはより安全でより特異的なDNA組み込みを保証し得る。
【0247】
CRISPRシステムは元々、獲得免疫の一形態を提供する、侵入するファージ及びプラスミドに対する防御に関与するシステムとして原核生物(例えば、細菌及び古細菌)において発見された。今では、それは研究及び臨床応用で普及した遺伝子編集ツールとして適応され、使用されている。
【0248】
CRISPR/Casシステムは一般に、少なくとも2つの構成要素、すなわち1つまたは複数のガイドRNA(gRNA)及びCasタンパク質を含む。Casタンパク質は、標的部位にDSBを導入するヌクレアーゼである。CRISPR-Casシステムは、以下の2つの主要なクラスに該当する:クラス1システムは、核酸を分解するために複数のCasタンパク質の複合体を使用し、クラス2システムは、同じ目的のために単一の大きなCasタンパク質を使用する。クラス1は、I型、III型、及びIV型に分類され、クラス2は、II型、V型、及びVI型に分類される。遺伝子編集用途に適応された異なるCasタンパク質には、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、及びMad7が含まれるが、これらに限定されない。最も広く使用されるCas9は、II型Casタンパク質であり、例示説明として本明細書に記載される。これらのCasタンパク質は、異なる源の種を起源とし得る。例えば、Cas9は、S.ピオゲネス(S.pyogenes)またはS.アウレウス(S.aureus)に由来し得る。
【0249】
元の微生物ゲノム内で、II型CRISPRシステムは、宿主ゲノム内のアレイとしてコードされるCRISPRリピート配列の間に侵入DNAからの配列を組み込む。CRISPRリピートアレイからの転写物は、各々がCRISPRリピートの部分のみならず「プロトスペーサー」配列として知られる侵入DNAから転写された可変配列を内部にもつ、CRISPR RNA(crRNA)へとプロセスされる。各crRNAは、第2のトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)とハイブリダイズし、これらの2つのRNAが、Cas9ヌクレアーゼと複合体を形成する。crRNAのプロトスペーサーにコードされる部分は、相補的な標的DNA配列を、それらが「プロトスペーサー隣接モチーフ」(PAM)として知られる短い配列に隣接することを条件として、切断するようにCas9複合体を導く。
【0250】
その発見以来、CRISPRシステムは、細菌からヒト細胞を含めた真核細胞に及ぶ広範な細胞及び生物において配列特異的DSB及び標的化ゲノム編集を誘導するために適応されてきた。遺伝子編集用途でのその使用においては、人工的に設計された合成gRNAが元のcrRNA:tracrRNA複合体を置き換えている。例えば、gRNAは、crRNA、テトラループ、及びtracrRNAから構成される単一ガイドRNA(sgRNA)であり得る。crRNAは通常、目的の標的DNAを認識するようにユーザー設計される相補的領域(別称、スペーサー、通常は約20ヌクレオチド長)を含む。tracrRNA配列は、Casヌクレアーゼ結合のための足場領域を含む。crRNA配列及びtracrRNA配列は、テトラループによって連結され、各々が互いとハイブリダイズするための短いリピート配列を有し、故にキメラsgRNAを生成する。gRNAに存在するスペーサーまたは相補的領域の配列を単に変更することによって、Casヌクレアーゼのゲノム標的を変更することができる。相補的領域は、標準的なRNA-DNA相補的塩基対合規則によりCasヌクレアーゼを標的DNA部位に導く。
【0251】
Casヌクレアーゼが機能するためには、PAMがゲノムDNA内の標的配列の直ぐ下流に存在しなければならない。Casタンパク質によるPAMの認識は、隣接するゲノム配列を不安定化すると考えられ、gRNAによる配列の問合せを可能にして、一致する配列が存在する場合にgRNA-DNA対合をもたらす。PAMの特定の配列は、Cas遺伝子の種に応じて様々である。例えば、S.ピオゲネスに由来する、最も一般的に使用されるCas9ヌクレアーゼは、5’-NGG-3’のPAM配列を認識するか、またはそれよりも低い効率で5’-NAG-3’を認識する(ここで、「N」は任意のヌクレオチドであることができる)。代替のPAMを用いる他のCasヌクレアーゼバリアントもまた特性評価され、ゲノム編集に成功裏に使用されている。これらは下記の表1aに要約される。
【0252】
【表1a】
【0253】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、それらの活性、特異性、認識、及び/または他の特性を変化させるための1つまたは複数の変異を含んでもよい。例えば、Casヌクレアーゼは、オフターゲット効果を軽減するためにその忠実度を変化させる1つまたは複数の変異を有してもよい(例えば、eSpCas9、SpCas9-HF1、HypaSpCas9、HeFSpCas9、及びevoSpCas9は、SpCas9の高忠実度バリアントである)。別の例として、Casヌクレアーゼは、そのPAM特異性を変化させる1つまたは複数の変異を有してもよい。
【0254】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、本明細書に記載のCasタンパク質のうちのいずれか1つまたはその機能的部分を含む。本明細書で使用されるとき、「機能的部分」とは、少なくとも1つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA(gRNA))と複合体化して、標的ポリヌクレオチド配列を切断するその能力を保持するペプチドの一部分を指す。いくつかの実施形態では、機能的部分は、DNA結合ドメイン、少なくとも1つのRNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、及びエンドヌクレアーゼドメインからなる群から選択される、作動可能に連結されたCas9タンパク質の機能的ドメインの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、機能的部分は、DNA結合ドメイン、少なくとも1つのRNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、及びエンドヌクレアーゼドメインからなる群から選択される、作動可能に連結されたCas12a(Cpf1としても公知)タンパク質の機能的ドメインの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、機能的ドメインは、複合体を形成する。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質の機能的部分は、RuvC様ドメインの機能的部分を含む。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質の機能的部分は、HNHヌクレアーゼドメインの機能的部分を含む。いくつかの実施形態では、Cas12aタンパク質の機能的部分は、RuvC様ドメインの機能的部分を含む。
【0255】
いくつかの実施形態では、好適なCasタンパク質には、Cas0、Cas12a(すなわちCpf1)、Cas12b、Cas12i、CasX、及びMad7が含まれるが、これらに限定されない。
【0256】
いくつかの実施形態では、外因性Casタンパク質は、ポリペプチド形態で細胞内に導入され得る。ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、細胞透過ポリペプチドまたは細胞透過ペプチドにコンジュゲートまたは融合され得る。本明細書で使用されるとき、「細胞透過ポリペプチド」及び「細胞透過ペプチド」とは、細胞内への分子の取り込みを容易にするポリペプチドまたはペプチドをそれぞれ指す。細胞透過ポリペプチドは、検出可能な標識を含有し得る。
【0257】
ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、荷電タンパク質(例えば、正電荷、負電荷、または全体的に中性の電荷を保有する)にコンジュゲートまたは融合され得る。かかる連結は、共有結合性であり得る。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Casタンパク質が細胞を透過する能力を顕著に増加させるために、超陽性荷電したGFPに融合され得る(Cronican et al.ACS Chem Biol.2010;5(8):747-52)。ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、細胞内へのその進入を容易にするためにタンパク質形質導入ドメイン(PTD)に融合され得る。例となるPTDには、Tat、オリゴアルギニン、及びペネトラチンが含まれる。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、細胞透過ペプチドに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、PTDに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、tatドメインに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、オリゴアルギニンドメインに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、ペネトラチンドメインに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas9タンパク質は、超陽性荷電したGFPに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas12aタンパク質は、細胞透過ペプチドに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas12aタンパク質は、PTDに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas12aタンパク質は、tatドメインに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas12aタンパク質は、オリゴアルギニンドメインに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas12aタンパク質は、ペネトラチンドメインに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Cas12aタンパク質は、超陽性荷電したGFPに融合されたCas12aポリペプチドを含む。
【0258】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Casタンパク質をコードする核酸の形態で、標的ポリヌクレオチド配列を含有する細胞内に導入され得る。核酸を細胞内に導入するプロセスは、任意の好適な技法によって達成され得る。好適な技法には、リン酸カルシウムまたは脂質媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、及びウイルスベクターを使用した形質導入または感染が含まれる。いくつかの実施形態では、核酸は、DNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、本明細書に記載されるような改変DNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、mRNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、本明細書に記載されるような改変mRNA(例えば、合成の改変mRNA)を含む。
【0259】
提供され実施形態では、CRISPR/Casシステムは一般に、2つの構成要素、すなわち1つまたは複数のガイドRNA(gRNA)及びCasタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つまたは複数の、例えば1~2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA(gRNA))と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、2つのリボ核酸と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つのリボ核酸と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、本明細書に記載されるような改変核酸(例えば、合成の改変mRNA)によってコードされる。
【0260】
いくつかの実施形態では、gRNAは、Cas結合のための足場配列、及びcrRNAと呼称されるユーザー設計されるスペーサーまたは相補的部分から構成される短鎖合成RNAである。cRNAは、改変対象のゲノム標的を定めるcrRNA標的化配列(これ以降、gRNA標的化配列とも呼ばれる;通常は約20ヌクレオチド長)及びcrRNAリピートの領域(例えば、GUUUUAGAGCUA;配列番号19)から構成される。gRNAに存在する相補的部分の配列(例えば、gRNA標的化配列)を単に変更することによって、Casタンパク質のゲノム標的を変更することができる。いくつかの実施形態では、Cas結合のための足場配列は、そのアンチリピート配列を介してcrRNAにハイブリダイズするtracrRNA配列(例えば、UAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUU;配列番号20)から成り立つ。crRNA:tracrRNA間複合体は、Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9)を動員し、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の上流を切断する。Casタンパク質が機能するためには、PAMがゲノムDNA内の標的配列の直ぐ下流に存在しなければならない。Casタンパク質によるPAMの認識は、隣接するゲノム配列を不安定化すると考えられ、gRNAによる配列の問合せを可能にして、一致する配列が存在する場合にgRNA-DNA対合をもたらす。PAMの特定の配列は、Cas遺伝子の種に応じて様々である。例えば、S.ピオゲネス(に由来する、最も一般的に使用されるCas9ヌクレアーゼは、NGGのPAM配列を認識する。代替のPAMを用いる他のCas9バリアント及び他のヌクレアーゼもまた特性評価され、ゲノム編集に成功裏に使用されている。故に、CRISPR/Casシステムを使用して、標的遺伝子座に対して設計されたgRNAに相補的である指定のゲノム遺伝子座にて標的化DSBを作出することができる。crRNA及びtracrRNAは、キメラ単一ガイドRNA(sgRNA;Hsu et al.2013)であるgRNAの生成のためにループ配列(例えば、テトラループ;GAAA)により一緒に連結され得る。sgRNAは、DNAベースの発現のために、または化学合成によって生成され得る。
【0261】
いくつかの実施形態では、gRNAの相補的部分の配列(例えば、gRNA標的化配列)は、目的の標的部位に応じて様々であろう。いくつかの実施形態では、gRNAは、表1aに記載の遺伝子の配列に特異的な相補的部分を含む。いくつかの実施形態では、gRNAによって標的化されるゲノム遺伝子座は、記載したような遺伝子座のうちのいずれかの4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内に位置する。
【0262】
本明細書に開示される方法は、Casタンパク質を標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くとともにそれにハイブリダイズすることができる、任意のリボ核酸の使用を企図する。いくつかの実施形態では、リボ核酸のうちの少なくとも1つは、含む。
【0263】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1~2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA(gRNA))と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、2つのリボ核酸と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つのリボ核酸と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、本明細書に記載されるような改変核酸(例えば、合成の改変mRNA)によってコードされる。
【0264】
本明細書に開示される方法は、Casタンパク質を標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くとともにそれにハイブリダイズすることができる、任意のリボ核酸の使用を企図する。いくつかの実施形態では、リボ核酸のうちの少なくとも1つは、tracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、リボ核酸のうちの少なくとも1つは、CRISPR RNA(crRNA)を含む。いくつかの実施形態では、単一のリボ核酸は、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くとともにそれにハイブリダイズするガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、リボ核酸の少なくとも1つは、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くとともにそれにハイブリダイズするガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、1~2つのリボ核酸の両方が、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くとともにそれにハイブリダイズするガイドRNAを含む。当業者には理解されようが、本明細書で提供されるリボ核酸は、用いられる特定のCRISPR/Casシステムに応じて様々な異なる標的モチーフにハイブリダイズし、標的ポリヌクレオチドの配列にハイブリダイズするように選択され得る。1~2つのリボ核酸はまた、標的ポリヌクレオチド配列以外の核酸配列とのハイブリダイゼーションを最小限に抑えるようにも選択され得る。いくつかの実施形態では、1~2つのリボ核酸は、細胞における全ての他のゲノムヌクレオチド配列と比較したときに少なくとも2つのミスマッチを含有する標的モチーフにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1~2つのリボ核酸は、細胞における全ての他のゲノムヌクレオチド配列と比較したときに少なくとも1つのミスマッチを含有する標的モチーフにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1~2個のリボ核酸は、Casタンパク質によって認識されるデオキシリボ核酸モチーフに直接隣接する標的モチーフにハイブリダイズするように設計される。いくつかの実施形態では、1~2つのリボ核酸の各々は、標的モチーフ間に位置する変異対立遺伝子を挟む、Casタンパク質によって認識されるデオキシリボ核酸モチーフに直接隣接する標的モチーフにハイブリダイズするように設計される。
【0265】
いくつかの実施形態では、1~2つのリボ核酸の各々が、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに導くとともにそれにハイブリダイズするガイドRNAを含む。
【0266】
いくつかの実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の同じ鎖上の配列に相補的であり、及び/またはそれにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の反対の鎖上の配列に相補的であり、及び/またはそれにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の反対の鎖上の配列には相補的でなく、及び/またはそれにはハイブリダイズしない。いくつかの実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の重複する標的モチーフに相補的であり、及び/またはそれにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1つまたは2つのリボ核酸(例えば、ガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列のオフセット標的モチーフに相補的であり、及び/またはそれにハイブリダイズする。
【0267】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードする核酸及び少なくとも1~2つのリボ核酸をコードする核酸は、ウイルス形質導入(例えば、レンチウイルス形質導入)を介して細胞内に導入される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1~2つのリボ核酸と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、2つのリボ核酸と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つのリボ核酸と複合体化される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、本明細書に記載されるような改変核酸(例えば、合成の改変mRNA)によってコードされる。
【0268】
本明細書に記載の遺伝子のCRISPR/Casベースの標的化に有用な例となるgRNA標的化配列が、表1で提供される。これらの配列は、2016年5月9日に出願されたWO2016183041に見出すことができ、表、付録、及び配列表を含めた同文献の開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0269】
【表1】
【0270】
本明細書に記載の遺伝子のCRISPR/Casベースの標的化に有用な追加の例となるCas9ガイドRNA配列が、表2Aで提供される。
【0271】
【表2A】
【0272】
いくつかの実施形態では、記載したような遺伝子の発現を低減または排除するための遺伝子破壊方法において使用するための新たな遺伝子座及び/またはgRNA標的化配列を同定することは、当業者の技能水準内にある。例えば、CRISPR/Casシステムに関して、(例えば、表1に記載の、例えば、標的遺伝子内の)特定の遺伝子座に対する既存のgRNA標的化配列が知られている場合、「インチワーミング」アプローチを使用して、通常はゲノムにわたって約100塩基対(bp)毎に存在するPAM配列についてその遺伝子座のそれぞれの側のフランキング領域をスキャンすることによって、導入遺伝子の標的化挿入のための追加の遺伝子座を同定することができる。通常、異なるヌクレアーゼは、対応するPAM配列が異なるため、PAM配列は、使用される特定のCasヌクレアーゼに依存しよう。遺伝子座のそれぞれの側のフランキング領域は、約500~4000bp長、例えば、約500bp、約1000bp、約1500bp、約2000bp、約2500bp、約3000bp、約3500bp、または約4000bp長であり得る。PAM配列が検索範囲内で同定される場合、その遺伝子座の配列に従って、遺伝子破壊方法において使用するための新たなガイドが設計され得る。CRISPR/Casシステムが例示説明として記載されているが、ZFN、TALEN、メガヌクレアーゼ及びトランスポザーゼを使用するものを含めた、記載したような任意の遺伝子編集アプローチが、新たな遺伝子座を同定するこの方法において使用され得る。
【0273】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)手法を使用して作製される。「TALE-ヌクレアーゼ」(TALEN)とは、転写活性化因子様エフェクター(TALE)に典型的に由来する核酸結合ドメイン及び核酸標的配列を切断するための1つのヌクレアーゼ触媒ドメインからなる融合タンパク質を意図する。触媒ドメインは、好ましくはヌクレアーゼドメイン、より好ましくは、例えば、I-TevI、ColE7、NucA、及びFok-Iのような、エンドヌクレアーゼ活性を有するドメインである。特定の実施形態では、TALEドメインは、例えば、I-CreI及びI-Onulまたはそれらの機能的バリアントのような、メガヌクレアーゼに融合され得る。いくつかの実施形態では、該ヌクレアーゼは、モノマーTALE-ヌクレアーゼである。モノマーTALE-ヌクレアーゼは、WO2012138927に記載される操作されたTALリピートとI-TevIの触媒ドメインとの融合体等の、特異的認識及び切断のために二量体化を必要としないTALE-ヌクレアーゼである。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、細菌種キサントモナス(Xanthomonas)由来のタンパク質であり、複数の反復配列を含み、各反復配列が、12位及び13位において核酸標的配列の各ヌクレオチド塩基に特異的である二残基(RVD)を含む。類似のモジュール式塩基対塩基核酸結合特性(MBBBD)もまた、出願人によって最近発見された異なる細菌種における新たなモジュール式タンパク質に由来し得る。この新たなモジュール式タンパク質は、TALリピートよりも大きな配列可変性を示すという利点を有する。好ましくは、異なるヌクレオチドの認識に関連するRVDは、Cを認識するためのHD、Tを認識するためのNG、Aを認識するためのNI、GまたはAを認識するためのNN、A、C、G、またはTを認識するためのNS、Tを認識するためのHG、Tを認識するためのIG、Gを認識するためのNK、Cを認識するためのHA、Cを認識するためのND、Cを認識するためのHI、Gを認識するためのHN、Gを認識するためのNA、GまたはAを認識するためのSN及びTを認識するためのYG、Aを認識するためのTL、AまたはGを認識するためのVT、ならびにAを認識するためのSWである。別の実施形態では、必要不可欠なアミノ酸12及び13は、ヌクレオチドA、T、C、及びGに対するそれらの特異性を調節するため、ならびに特にこの特異性を強化するために、他のアミノ酸残基に向けて変異させることができる。TALENキットは、市販されている。
【0274】
いくつかの実施形態では、該細胞は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を使用して操作される。「ジンクフィンガー結合タンパク質」と、亜鉛イオンの配位によるタンパク質構造の安定化の結果として、好ましくは配列特異的様態で、DNA、RNA、及び/またはタンパク質に結合するタンパク質またはポリペプチドである。ジンクフィンガー結合タンパク質という用語は、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略称される場合が多い。個々のDNA結合ドメインは、典型的には、「フィンガー」と称される。ZFPは、少なくとも1つのフィンガー、典型的には2つのフィンガー、3つのフィンガー、または6つのフィンガーを有する。各フィンガーは、2~4塩基対のDNA、典型的には3または4塩基対のDNAに結合する。ZFPは、標的部位または標的セグメントと呼ばれる核酸配列に結合する。各フィンガーは、典型的には、およそ30アミノ酸の亜鉛キレート化DNA結合サブドメインを含む。このクラスの単一のジンクフィンガーは、単一のベータターンの2つのシステイン残基とともに亜鉛と配位結合した2つの不変のヒスチジン残基を含むアルファヘリックスからなることが、研究により実証されている(例えば、Berg & Shi,Science 271:1081-1085(1996)を参照されたい)。
【0275】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞は、ホーミングエンドヌクレアーゼを使用して作製される。かかるホーミングエンドヌクレアーゼは、当該技術分野で周知されている(Stoddard 2005)。ホーミングエンドヌクレアーゼは、DNA標的配列を認識し、一本鎖または二本鎖切断を生じさせる。ホーミングエンドヌクレアーゼは、高度に特異的であり、長さ12~45塩基対(bp)の範囲、通常は長さ14~40bpの範囲のDNA標的部位を認識する。ホーミングエンドヌクレアーゼは、例えば、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、HNHエンドヌクレアーゼ、またはGIY-YIGエンドヌクレアーゼに対応し得る。いくつかの実施形態では、ホーミングエンドヌクレアーゼは、I-CreIバリアントであり得る。
【0276】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞は、メガヌクレアーゼを使用して作製される。メガヌクレアーゼは、定義上、大きな配列を認識する配列特異的エンドヌクレアーゼである(Chevalier,B.S.and B.L.Stoddard,Nucleic Acids Res.,2001,29,3757-3774)。それらは、生細胞において固有の部位を切断し、それによって切断部位の近傍で遺伝子の標的化を1000倍以上強化することができる(Puchta et al.,Nucleic Acids Res.,1993,21,5034-5040、Rouet et al.,Mol.Cell.Biol.,1994,14,8096-8106、Choulika et al.,Mol.Cell.Biol.,1995,15,1968-1973、Puchta et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1996,93,5055-5060、Sargent et al.,Mol.Cell.Biol.,1997,17,267-77、Donoho et al.,Mol.Cell.Biol,1998,18,4070-4078、Elliott et al.,Mol.Cell.Biol.,1998,18,93-101、Cohen-Tannoudji et al.,Mol.Cell.Biol.,1998,18,1444-1448)。
【0277】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞は、ポリペプチドの発現をノックダウンする(例えば、減少させる、排除する、または阻害する)ためのRNAサイレンシングまたはRNA干渉(RNAi)を使用して作製される。有用なRNAi法は、合成RNAi分子、低分子干渉RNA(siRNA)、PIWI相互作用NRA(piRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、及び当業者に認識される他の一過性ノックダウン法を利用するものを含む。配列特異的shRNA、siRNA、miRNA等を含めたRNAiのための試薬は、市販されている。例えば、siRNA等の、標的ポリヌクレオチドの標的モチーフに相補的な阻害性核酸を細胞内に導入することによるRNA干渉によって、上述のいずれか、例えば、CIITA、B2M、またはNLRC5等の標的ポリヌクレオチドを細胞においてノックダウンすることができる。いくつかの実施形態では、shRNA発現ウイルスを細胞に形質導入することによって、上述のいずれか、例えば、CIITA、B2M、またはNLRC5等の標的ポリヌクレオチドを細胞においてノックダウンすることができる。いくつかの実施形態では、RNA干渉を用いて、CIITA、B2M、及びNLRC5からなる群から選択される少なくとも1つの発現が低減または阻害される。
【0278】
3.発現を低減するための例となる標的ポリヌクレオチド及び方法
A.MHCクラスI分子
ある特定の実施形態では、改変は、アクセサリー鎖B2Mを標的化することによって、1つまたは複数のMHCクラスI分子(例えば、1つまたは複数のMHCクラスI分子をコードする1つまたは複数のMHCクラスI遺伝子)の発現を低減または排除、例えばノックアウトする。いくつかの実施形態では、改変は、CRISPR/Casシステムを使用して起こる。B2Mの発現を低減または排除、例えばノックアウトすることによって、1つまたは複数のMHCクラスI分子の表面輸送が遮断され、かかる細胞は、レシピエント対象に移植されたときに免疫寛容を示す。いくつかの実施形態では、該細胞は、例えば、投与時にレシピエント対象または患者において低免疫原性と見なされる。
【0279】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される標的ポリヌクレオチド配列は、B2Mのバリアントである。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、B2Mのホモログである。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、B2Mのオルソログである。
【0280】
いくつかの実施形態では、B2Mの発現の減少または排除は、以下のMHCクラスI分子、すなわちHLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの1つまたは複数の発現を低減または排除する。
【0281】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、B2M遺伝子を標的とする改変を含む。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子を標的とする改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びB2M遺伝子を特異的に標的化するための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、標的化ヌクレアーゼシステムを使用することによるものである。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子を特異的に標的化するための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列(例えば、gRNA標的化配列)は、WO2016/183041の付録2または表15の配列番号81240~85644からなる群から選択され、同文献の開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0282】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示される別の寛容原性因子)をコードする外因性核酸または導入遺伝子は、B2M遺伝子にて挿入される。B2M遺伝子座での標的化挿入に向けた例となる導入遺伝子には、第II.B節に記載されるいずれかが含まれる。
【0283】
B2M遺伝子が不活性化されているかどうかを試験するためのアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載される。一実施形態では、結果として生じるB2M遺伝子の改変はPCRによって、HLA-I発現の低減はフローサイトメトリー、例えば、FACS解析によってアッセイすることができる。別の実施形態では、B2Mタンパク質発現は、B2Mタンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、不活性化する改変の存在が確認される。
【0284】
いくつかの実施形態では、操作された細胞における1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現または機能(細胞がヒト細胞に由来する場合はHLA I)の低減は、当該技術分野で既知の技法、例えば、HLA複合体に結合する標識抗体を使用した、例えば、ヒト主要組織適合性HLAクラスI抗原のアルファ鎖に結合する市販のHLA-A、B、C抗体を使用したFACS技法を使用して、測定することができる。加えて、HLA I複合体が細胞表面上に発現していないことを確認するために、細胞を試験することができる。これは、上記で考察したようなHLA細胞表面の1つまたは複数の構成要素に対する抗体を使用してFACS解析によってアッセイすることができる。HLA I(またはMHCクラスI)の低減に加えて、本明細書で提供される操作された細胞は、マクロファージの食作用及びNK細胞による殺傷に対して低減された感受性を有する。操作された細胞の低免疫原性表現型に関してアッセイするための方法が、下記にさらに記載される。
【0285】
B.MHCクラスII分子
ある特定の態様では、改変は、クラスIIトランス活性化因子(CIITA)の発現を標的化することによって、1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減または排除、例えばノックアウトする。いくつかの実施形態では、改変は、CRISPR/Casシステムを使用して起こる。CIITAは、LR、またはヌクレオチド結合ドメイン(NBD)ロイシンリッチリピート(LRR)ファミリーのタンパク質のメンバーであり、MHCエンハンセオソームと会合することによって1つまたは複数のMHCクラスII遺伝子の転写を調節する。CIITAの発現を低減または排除、例えばノックアウトすることによって、1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現が低減され、それによって表面発現もまた低減される。場合によっては、かかる細胞は、レシピエント対象に移植されたときに免疫寛容を示す。いくつかの実施形態では、該細胞は、例えば、投与時にレシピエント対象または患者において低免疫原性と見なされる。
【0286】
いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CIITAのバリアントである。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CIITAのホモログである。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、CIITAのオルソログである。
【0287】
いくつかの実施形態では、CIITAの低減された発現またはその排除は、以下のMHCクラスII分子、すなわちHLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、及びHLA-DRのうちの1つまたは複数の発現を低減または排除する。
【0288】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CIITA遺伝子を標的とする改変を含む。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子を標的とする改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びCIITA遺伝子を特異的に標的化するための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、標的化ヌクレアーゼシステムによるものである。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子を特異的に標的化するための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列(例えば、gRNA標的化配列)は、WO2016183041の付録1または表12の配列番号5184~36352からなる群から選択され、同文献の開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0289】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示される別の寛容原性因子)をコードする外因性核酸または導入遺伝子は、CIITA遺伝子にて挿入される。B2M遺伝子座での標的化挿入に向けた例となる導入遺伝子には、第II.B節に記載されるいずれかが含まれる。
【0290】
CIITA遺伝子が不活性化されているかどうかを試験するためのアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載される。一実施形態では、結果として生じるCIITA遺伝子の改変はPCRによって、HLA-II発現の低減はフローサイトメトリー、例えば、FACS解析によってアッセイすることができる。別の実施形態では、CIITAタンパク質発現は、CIITAタンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、不活性化する改変の存在が確認される。
【0291】
いくつかの実施形態では、操作された細胞における1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現または機能(細胞がヒト細胞に由来する場合はHLA II)の低減は、当該タンパク質に対する抗体を使用したウェスタンブロッティング、FACS技法、RT-PCR技法等といった、当該技術分野で既知の技法を使用して測定することができる。いくつかの実施形態では、HLA II複合体が細胞表面上に発現していないことを確認するために、操作された細胞を試験することができる。表面発現を評定するための方法には、当該技術分野で既知の方法が含まれ(例えば、WO2018132783の図21を参照されたい)、一般には、ヒトHLAクラスII HLA-DR、DP、及びほとんどのDQ抗原に結合する市販の抗体に基づくウェスタンブロットまたはFACS解析のいずれかを使用して行われる。HLA II(またはMHCクラスII)の低減に加えて、本明細書で提供される操作された細胞は、マクロファージの食作用及びNK細胞による殺傷に対して低減された感受性を有する。操作された細胞の低免疫原性表現型に関してアッセイするための方法が、下記にさらに記載される。
【0292】
B.ポリヌクレオチドの過剰発現
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された細胞は、例えば、細胞において所望のポリヌクレオチドを過剰発現させるような1つまたは複数の改変の細胞内への導入によって、遺伝子改変または操作される。いくつかの実施形態では、改変または操作対象の細胞は、1つまたは複数の改変を以前に導入されていない未改変の細胞または操作されていない細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された細胞は、外因性タンパク質をコードする1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチド(また「導入遺伝子」という用語と互換的に使用される)を含むように遺伝子改変される。記載したように、いくつかの実施形態では、該細胞は、レシピエントにおける免疫認識及び寛容に影響を及ぼす寛容原性(例えば、免疫)因子である、ある特定の遺伝子の発現を増加させるように改変される。いくつかの実施形態では、T細胞またはNK細胞等の提供される操作された細胞はまた、キメラ抗原受容体(CAR)も発現する。該1つまたは複数のポリヌクレオチド、例えば、外因性ポリヌクレオチドは、操作された細胞において、上記の第I.A節に記載される標的ポリヌクレオチド、例えば、MHCクラスI及び/またはMHCクラスII分子の発現を低減するような1つまたは複数の遺伝子改変と一緒に発現(例えば、過剰発現)させてもよい。いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞は、レシピエント対象への投与時に免疫応答を発動または活性化しない。
【0293】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多くの異なる過剰発現したポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多くの異なる過剰発現したポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、過剰発現したポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多くの異なる外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれよりも多くの異なる外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、過剰発現したポリヌクレオチドは、細胞においてエピソームとして発現する外因性ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、過剰発現したポリヌクレオチドは、操作された細胞の1つまたは複数のゲノム遺伝子座内に挿入または組み込まれる外因性ポリヌクレオチドである。
【0294】
いくつかの実施形態では、DNA標的化ドメイン及び転写活性化因子を含有する融合タンパク質を使用して、ポリヌクレオチドの発現が増加させられ、すなわちポリヌクレオチドが過剰発現させられる。トランス活性化因子ドメインを使用して発現を増加させる標的化方法は、当業者に既知である。
【0295】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドを含有し、ここで、1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドは、非標的化挿入方法によって、例えば、レンチウイルスベクターによる形質導入によって、細胞のゲノム遺伝子座内に挿入または組み込まれる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドは、標的化挿入方法によって、例えば、相同性指向修復(HDR)を使用することによって、細胞のゲノム内に挿入または組み込まれる。任意の好適な方法を使用して、本明細書に記載の遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)を含めたHDRによって、外因性ポリヌクレオチドを操作された細胞のゲノム遺伝子座内に挿入することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドは、本明細書(例えば、表2)に記載の任意のゲノム遺伝子座等の、1つまたは複数のゲノム遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、同じゲノム遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、異なるゲノム遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドのうちの2つ以上は、本明細書(例えば、表2)に記載の任意のゲノム遺伝子座等の、同じゲノム遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、2つ以上の外因性ポリヌクレオチドは、本明細書(例えば、表2)に記載される2つ以上のゲノム遺伝子座等の、異なるゲノム遺伝子座内に挿入される。
【0296】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術のうちのいずれかを使用して、記載したような1つまたは複数の標的ポリヌクレオチドまたは標的タンパク質の発現を増加させることができる。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、ヌクレアーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、リコンビナーゼを伴うシステムを含み得る。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、(例えば、遺伝子に作動可能に連結されたプロモーターまたはエンハンサーを改変または活性化することによって)内在性遺伝子の活性を増加させるような改変に使用することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、(例えば、操作された細胞における増加した発現に向けた、標的ポリヌクレオチドまたは標的タンパク質をコードする構築物、例えば、寛容原性因子、CD55、CD46、CD59のうちのいずれか、または本明細書に記載のその他の分子のうちのいずれかをコードする構築物を導入するための)ゲノムの領域へのDNAノックインまたは組み込みに使用することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、一本鎖切断(SSB)を媒介する。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、非相同末端結合(NHEJ)または相同性指向修復(HDR)に関連する場合を含めて、二本鎖切断(DSB)を媒介する。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、DNAベースの編集またはプライム編集を含み得る。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術は、部位特異的標的化要素によるプログラム可能な付加(PASTE)を含み得る。例となるポリヌクレオチドまたは過剰発現、及びそれを過剰発現させる方法が、以下の小節に記載される。
【0297】
1.補体インヒビター
いくつかの実施形態では、細胞において1つまたは複数の補体インヒビターの発現が増加させられる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の補体インヒビターは、1つまたは複数の膜結合型補体インヒビターである。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、補体インヒビターをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の補体インヒビターは、CD46、CD59、CD55、またはそれらの任意の組み合わせである。例えば、いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、CD46等の1つまたは複数の補体インヒビターをコードするポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の補体インヒビターは、CD46及びCD59、またはCD46、CD59、及びCD55である。いくつかの実施形態では、CD46及びCD59、またはCD46、CD59、及びCD55の発現は、該細胞によって発現される細胞表面抗原に対する抗体の存在下を含めて、細胞またはその集団を補体依存性細胞傷害から保護する。
【0298】
いくつかの実施形態では、本開示は、CD46、CD59、CD55、またはそれらの任意の組み合わせ等の1つまたは複数の補体インヒビターを発現するように改変された細胞またはその集団を提供する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の補体インヒビターは、CD46及びCD59である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の補体インヒビターは、CD46、CD59、及びCD55である。いくつかの実施形態では、本開示は、1つまたは複数の補体インヒビターを発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、外因性CD46及びCD59、またはCD46、CD59、及びCD55等の1つまたは複数の外因性補体インヒビターを発現する。いくつかの事例では、該細胞は、ヒトCD46ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを発現する。いくつかの事例では、該細胞は、ヒトCD59ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを発現する。いくつかの事例では、該細胞は、ヒトCD55ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを発現する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、任意の組み合わせでの2つ以上の補体インヒビターをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、CD46及びCD59をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、CD46、CD59、及びCD55をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0299】
C.CD46
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD46、例えばヒトCD46をコードする過剰発現したポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD46、例えばヒトCD46をコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、CD46は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、CD46の発現は、参照または未改変の細胞がCD46をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された細胞において増加させられる。CD46は、膜結合型補体インヒビターである。それは、C3b及びC4bを切断することによって補体媒介性損傷に対して自家細胞を保護するセリンプロテアーゼである補体I因子の補因子として作用する。ヒトCD46についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC01P207752、HGNC番号6953、NCBI遺伝子ID 4179、Uniprot番号P15529、ならびにNCBI Ref Seq番号NM_002389.4、NM_153826.3、NM_172350.2、NM_172351.2、NM_172352.2、NP_758860.1、NM_172353.2、NM_172359.2、NM_172361.2、NP_002380.3、NP_722548.1、NP_758860.1、NP_758861.1、NP_758862.1、NP_758863.1、NP_758869.1、及びNP_758871.1で提供される。
【0300】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_002380.3、NP_722548.1、NP_758860.1、NP_758861.1、NP_758862.1、NP_758863.1、NP_758869.1、及びNP_758871.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD46ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_002380.3、NP_722548.1、NP_758860.1、NP_758861.1、NP_758862.1、NP_758863.1、NP_758869.1、及びNP_758871.1に記載のアミノ酸配列を有するCD46ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照番号NM_002389.4、NM_153826.3、NM_172350.2、NM_172351.2、NM_172352.2、NP_758860.1、NM_172353.2、NM_172359.2、及びNM_172361.2に記載の配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD46に対する過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NM_001777.3及びNM_002389.4、NM_153826.3、NM_172350.2、NM_172351.2、NM_172352.2、NP_758860.1、NM_172353.2、NM_172359.2、及びNM_172361.2に記載のCD46に対する過剰発現したヌクレオチド配列を含む。
【0301】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_002380.3、NP_722548.1、NP_758860.1、NP_758861.1、NP_758862.1、NP_758863.1、NP_758869.1、及びNP_758871.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD46ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_002380.3、NP_722548.1、NP_758860.1、NP_758861.1、NP_758862.1、NP_758863.1、NP_758869.1、及びNP_758871.1に記載のアミノ酸配列を有するCD46ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照番号NM_002389.4、NM_153826.3、NM_172350.2、NM_172351.2、NM_172352.2、NP_758860.1、NM_172353.2、NM_172359.2、及びNM_172361.2に記載の配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD46に対する外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NM_001777.3及びNM_002389.4、NM_153826.3、NM_172350.2、NM_172351.2、NM_172352.2、NP_758860.1、NM_172353.2、NM_172359.2、及びNM_172361.2に記載のCD46に対する外因性ヌクレオチド配列を含む。
【0302】
いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NP_722548.1、NP_758860.1、NP_758861.1、NP_758862.1、NP_758863.1、NP_758869.1、及びNP_758871.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有する過剰発現したCD46ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NP_722548.1、NP_758860.1、NP_758861.1、NP_758862.1、NP_758863.1、NP_758869.1、及びNP_758871.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有する外因性CD46ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_722548.1、NP_758860.1、NP_758861.1、NP_758862.1、NP_758863.1、NP_758869.1、及びNP_758871.1に記載のアミノ酸配列を有する過剰発現したCD46ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_722548.1、NP_758860.1、NP_758861.1、NP_758862.1、NP_758863.1、NP_758869.1、及びNP_758871.1に記載のアミノ酸配列を有する外因性CD46ポリペプチドを含む。
【0303】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD46ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD46ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCD46ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCD46ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。
【0304】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD46ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むCD46ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、CD46ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列は、異種シグナルペプチドをコードする配列に作動可能に連結されている。
【0305】
いくつかの実施形態では、CD46の全部または機能的部分を、シグナルペプチド、リーダー配列、分泌シグナル、標識(例えば、レポーター遺伝子)、またはそれらの任意の組み合わせ等の他の構成要素に連結することができる。いくつかの実施形態では、CD46のシグナルペプチドをコードする核酸配列は、異種タンパク質からのシグナルペプチドをコードする核酸配列と置き換えられる。異種タンパク質は、例えば、CD8α、CD28、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、成長ホルモン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、GM-CSF受容体(GM-CSFRa)、または免疫グロブリン(例えば、IgEまたはIgK)であり得る。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、免疫グロブリン(IgG重鎖またはIgG-カッパ軽鎖等)、サイトカイン(インターロイキン-2(IL-2)、またはCD33等)、血清アルブミンタンパク質(例えば、HSAまたはアルブミン)、ヒトアズロシジンプレタンパク質シグナル配列、ルシフェラーゼ、トリプシノーゲン(例えば、キモトリプシノーゲンまたはトリプシノーゲン)からのシグナルペプチド、または細胞によりもしくは細胞上にタンパク質を効率的に発現させることができる他のシグナルペプチドである。
【0306】
ある特定の実施形態では、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0307】
いくつかの実施形態では、CD46をコードするポリヌクレオチドは、表2に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。場合によっては、CD46をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231から選択される遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。特定の実施形態では、CD46をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、CD46をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、T細胞であり、CD46をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、CD46をコードするポリヌクレオチドの、細胞のゲノム遺伝子座内への挿入が容易にされる。
【0308】
いくつかの実施形態では、CD46タンパク質発現は、CD46タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性CD46 mRNAの存在が確認される。
【0309】
D.CD59
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD59、例えばヒトCD59をコードする過剰発現したポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD59、例えばヒトCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、CD59は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、CD59の発現は、参照または未改変の細胞がCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された細胞において増加させられる。CD59は、膜結合型補体インヒビターである。より具体的には、CD59は、補体の膜侵襲複合体(MAC)活性のインヒビターである。CD59は、集合しているMACのC8及び/またはC9補体に結合し、それによって浸透圧溶解孔の完全な形成に必要とされるC9の多数コピーの組み込みを阻止することによって作用する。ヒトCD59についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC11M033704、HGNC番号1689、NCBI遺伝子ID 966、Uniprot番号P13987、ならびにNCBI RefSeq番号NP_000602.1、NM_000611.5、NP_001120695.1、NM_001127223.1、NP_001120697.1、NM_001127225.1、NP_001120698.1、NM_001127226.1、NP_001120699.1、NM_001127227.1、NP_976074.1、NM_203329.2、NP_976075.1、NM_203330.2、NP_976076.1、及びNM_203331.2で提供される。
【0310】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_000602.1、NP_001120695.1、NP_001120697.1、NP_001120698.1、NP_001120699.1、NP_976074.1、NP_976075.1、及びNP_976076.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD59ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_000602.1、NP_001120695.1、NP_001120697.1、NP_001120698.1、NP_001120699.1、NP_976074.1、NP_976075.1、及びNP_976076.1に記載のアミノ酸配列を有するCD59ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照番号NM_000611.5、NM_001127223.1、NM_001127225.1、NM_001127226.1、NM_001127227.1、NM_203329.2、NM_203330.2、及びNM_203331.2に記載の配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD59に対する過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NM_000611.5、NM_001127223.1、NM_001127225.1、NM_001127226.1、NM_001127227.1、NM_203329.2、NM_203330.2、及びNM_203331.2に記載のCD59に対する過剰発現したヌクレオチド配列を含む。
【0311】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_000602.1、NP_001120695.1、NP_001120697.1、NP_001120698.1、NP_001120699.1、NP_976074.1、NP_976075.1、及びNP_976076.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD59ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_000602.1、NP_001120695.1、NP_001120697.1、NP_001120698.1、NP_001120699.1、NP_976074.1、NP_976075.1、及びNP_976076.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD59ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_000602.1、NP_001120695.1、NP_001120697.1、NP_001120698.1、NP_001120699.1、NP_976074.1、NP_976075.1、及びNP_976076.1に記載のアミノ酸配列を有するCD59ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_000602.1、NP_001120695.1、NP_001120697.1、NP_001120698.1、NP_001120699.1、NP_976074.1、NP_976075.1、及びNP_976076.1に記載のアミノ酸配列を有するCD59ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照番号NM_000611.5、NM_001127223.1、NM_001127225.1、NM_001127226.1、NM_001127227.1、NM_203329.2、NM_203330.2、及びNM_203331.2に記載の配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD59に対する過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照番号NM_000611.5、NM_001127223.1、NM_001127225.1、NM_001127226.1、NM_001127227.1、NM_203329.2、NM_203330.2、及びNM_203331.2に記載の配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD59に対する外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NM_000611.5、NM_001127223.1、NM_001127225.1、NM_001127226.1、NM_001127227.1、NM_203329.2、NM_203330.2、及びNM_203331.2に記載のCD59に対する過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NM_000611.5、NM_001127223.1、NM_001127225.1、NM_001127226.1、NM_001127227.1、NM_203329.2、NM_203330.2、及びNM_203331.2に記載のCD59に対する外因性ヌクレオチド配列を含む。
【0312】
いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NP_000602.1、NP_001120695.1、NP_001120697.1、NP_001120698.1、NP_001120699.1、NP_976074.1、NP_976075.1、及びNP_976076.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有する過剰発現したCD59ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NP_000602.1、NP_001120695.1、NP_001120697.1、NP_001120698.1、NP_001120699.1、NP_976074.1、NP_976075.1、及びNP_976076.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有する外因性CD59ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_000602.1、NP_001120695.1、NP_001120697.1、NP_001120698.1、NP_001120699.1、NP_976074.1、NP_976075.1、及びNP_976076.1に記載のアミノ酸配列を有する過剰発現したCD59ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_000602.1、NP_001120695.1、NP_001120697.1、NP_001120698.1、NP_001120699.1、NP_976074.1、NP_976075.1、及びNP_976076.1に記載のアミノ酸配列を有する外因性CD59ポリペプチドを含む。
【0313】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号6に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD59ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号6に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD59ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCD59ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCD59ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。
【0314】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD59ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD59ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むCD59ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むCD59ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、CD59ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列は、異種シグナルペプチドをコードする配列に作動可能に連結されている。
【0315】
いくつかの実施形態では、CD59の全部または機能的部分を、シグナルペプチド、リーダー配列、分泌シグナル、標識(例えば、レポーター遺伝子)、またはそれらの任意の組み合わせ等の他の構成要素に連結することができる。いくつかの実施形態では、CD59のシグナルペプチドをコードする核酸配列は、異種タンパク質からのシグナルペプチドをコードする核酸配列と置き換えられる。異種タンパク質は、例えば、CD8α、CD28、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、成長ホルモン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、GM-CSF受容体(GM-CSFRa)、または免疫グロブリン(例えば、IgEまたはIgK)であり得る。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、免疫グロブリン(IgG重鎖またはIgG-カッパ軽鎖等)、サイトカイン(インターロイキン-2(IL-2)、またはCD33等)、血清アルブミンタンパク質(例えば、HSAまたはアルブミン)、ヒトアズロシジンプレタンパク質シグナル配列、ルシフェラーゼ、トリプシノーゲン(例えば、キモトリプシノーゲンまたはトリプシノーゲン)からのシグナルペプチド、または細胞によりもしくは細胞上にタンパク質を効率的に発現させることができる他のシグナルペプチドである。
【0316】
ある特定の実施形態では、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0317】
いくつかの実施形態では、CD59をコードするポリヌクレオチドは、表2に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。場合によっては、CD59をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。特定の実施形態では、CD59をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、CD59をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、T細胞であり、CD59をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、CD59をコードするポリヌクレオチドの、細胞のゲノム遺伝子座内への挿入が容易にされる。
【0318】
いくつかの実施形態では、CD59タンパク質発現は、CD59タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性CD59 mRNAの存在が確認される。
【0319】
E.CD55
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD55、例えばヒトCD55をコードする過剰発現したポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD55、例えばヒトCD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、CD55は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、CD55の発現は、参照または未改変の細胞がCD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された細胞において増加させられる。CD55は、膜結合型補体インヒビターである。いくつかの実施形態では、CD55と細胞に結合したC4b及びC3bポリペプチドとの相互作用により、C2及びB因子から酵素活性をもつC2a及びBbへの転換を触媒するそれらの能力が妨害され、それによって補体カスケードの増幅転換酵素であるC4b2a及びC3bBbの形成が阻止される。いくつかの実施形態では、CD55は、C3及びC5転換酵素の形成を不安定化し、阻止することによって補体活性化を阻害する。ヒトCD55(補体崩壊促進因子としても公知)についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC01P207321、HGNC番号2665、NCBI遺伝子ID 1604、Uniprot番号P08174、ならびにNCBI RefSeq番号NM_000574.4、NM_001114752.2、NM_001300903.1、NM_001300904.1、NP_000565.1、NP_001108224.1、NP_001287832.1、及びNP_001287833.1で提供される。
【0320】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_000565.1、NP_001108224.1、NP_001287832.1、及びNP_001287833.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD55ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_000565.1、NP_001108224.1、NP_001287832.1、及びNP_001287833.1に記載のアミノ酸配列を有するCD55ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照番号NM_001777.3及びNM_198793.2に記載の配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD55に対する過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NM_000574.4、NM_001114752.2、NM_001300903.1、及びNM_001300904.1に記載のCD55に対する過剰発現したヌクレオチド配列を含む。
【0321】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_000565.1、NP_001108224.1、NP_001287832.1、及びNP_001287833.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD55ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_000565.1、NP_001108224.1、NP_001287832.1、及びNP_001287833.1に記載のアミノ酸配列を有するCD55ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照番号NM_001777.3及びNM_198793.2に記載の配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD55に対する外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NM_000574.4、NM_001114752.2、NM_001300903.1、及びNM_001300904.1に記載のCD55に対する外因性ヌクレオチド配列を含む。
【0322】
いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NP_000565.1、NP_001108224.1、NP_001287832.1、及びNP_001287833.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有する過剰発現したCD55ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NP_000565.1、NP_001108224.1、NP_001287832.1、及びNP_001287833.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有する外因性CD55ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_000565.1、NP_001108224.1、NP_001287832.1、及びNP_001287833.1に記載のアミノ酸配列を有する過剰発現したCD55ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_000565.1、NP_001108224.1、NP_001287832.1、及びNP_001287833.1に記載のアミノ酸配列を有する外因性CD55ポリペプチドを含む。
【0323】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号9に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD55ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号9に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD55ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むCD55ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むCD55ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。
【0324】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD55ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD55ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むCD55ポリペプチドをコードする過剰発現したヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むCD55ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、CD59ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列は、異種シグナルペプチドをコードする配列に作動可能に連結されている。
【0325】
いくつかの実施形態では、CD55の全部または機能的部分を、シグナルペプチド、リーダー配列、分泌シグナル、標識(例えば、レポーター遺伝子)、またはそれらの任意の組み合わせ等の他の構成要素に連結することができる。いくつかの実施形態では、CD55のシグナルペプチドをコードする核酸配列は、異種タンパク質からのシグナルペプチドをコードする核酸配列と置き換えられる。異種タンパク質は、例えば、CD8α、CD28、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、成長ホルモン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、GM-CSF受容体(GM-CSFRa)、または免疫グロブリン(例えば、IgEまたはIgK)であり得る。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、免疫グロブリン(IgG重鎖またはIgG-カッパ軽鎖等)、サイトカイン(インターロイキン-2(IL-2)、またはCD33等)、血清アルブミンタンパク質(例えば、HSAまたはアルブミン)、ヒトアズロシジンプレタンパク質シグナル配列、ルシフェラーゼ、トリプシノーゲン(例えば、キモトリプシノーゲンまたはトリプシノーゲン)からのシグナルペプチド、または細胞によりもしくは細胞上にタンパク質を効率的に発現させることができる他のシグナルペプチドである。
【0326】
ある特定の実施形態では、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0327】
いくつかの実施形態では、CD55をコードするポリヌクレオチドは、表2に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。場合によっては、CD55をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。特定の実施形態では、CD55をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、CD55をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、T細胞であり、CD55をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、CD55をコードするポリヌクレオチドの、細胞のゲノム遺伝子座内への挿入が容易にされる。
【0328】
いくつかの実施形態では、CD55タンパク質発現は、CD55タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性CD55 mRNAの存在が確認される。
【0329】
F.補体インヒビターの組み合わせ
いくつかの実施形態では、該細胞は、CD46、CD59、及びCD55からなる群から選択される任意の組み合わせでの2つ以上の補体インヒビターの増加した発現を含む。
【0330】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD46、例えば上述のいずれかをコードする過剰発現したポリヌクレオチド、及びCD59、例えば上述のいずれかをコードする過剰発現したポリヌクレオチドを含有する。
【0331】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD46、例えば上述のいずれかをコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD59、例えば上述のいずれかをコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。
【0332】
いくつかの実施形態では、操作された細胞(CD46及びCD59の発現を増加させる1つまたは複数の改変を含む)は、改変を含まない細胞と比べて(例えば、CD46及びCD59の内在性発現と比べて)増加したCD46及びCD59の発現を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、改変を有しない細胞と比較して(例えば、CD46及びCD59の内在性発現と比較して)1.5倍~2倍、2倍~3倍、3倍~4倍、4倍~5倍、5倍~10倍、10倍~15倍、15倍~20倍、20倍~40倍、40倍~60倍、60倍~80倍、80倍~100倍、または100倍~200倍増加したCD46及びCD59の発現を含む。いくつかの実施形態では、改変(複数可)を有しない細胞は、CD46及びCD59の内在性発現を有しないか、またはCD46及びCD59の検出可能な発現を有しない。いくつかの実施形態では、改変を欠いた細胞と比較した発現の増加倍率は、200倍超である。
【0333】
いくつかの実施形態では、操作された細胞(CD46及びCD59の発現を増加させる1つまたは複数の改変を含む)は、改変を有しない細胞と比較して(例えば、CD46及びCD59の内在性発現と比較して)2倍~200倍、2倍~100倍、2倍~50倍、または2倍~20倍増加したCD46及びCD59の発現を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞(CD46及びCD59の発現を増加させる1つまたは複数の改変を含む)は、改変を有しない細胞と比較して(例えば、CD46及びCD59の内在性発現と比較して)5倍~200倍、5倍~100倍、5倍~50倍、または5倍~20倍増加したCD46及びCD59の発現を含む。
【0334】
いくつかの実施形態では、操作された細胞(CD46及びCD59の発現を増加させる1つまたは複数の改変を含む)は、改変を含まない細胞と比べて(例えば、CD46及びCD59の内在性発現と比べて)増加したCD46及びCD59の発現を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、改変を有しない細胞と比較して(例えば、CD46及びCD59の内在性発現と比較して)少なくとも2倍もしくは約2倍、少なくとも4倍もしくは約4倍、少なくとも6倍もしくは約6倍、少なくとも10倍もしくは約10倍、少なくとも15倍もしくは約及び15倍、少なくとも20倍もしくは約20倍、少なくとも30倍もしくは約30倍、少なくとも50倍もしくは約50倍、少なくとも60倍もしくは約60倍、少なくとも70倍もしくは約70倍、少なくとも80倍もしくは約80倍、少なくとも100倍もしくは約100倍、または前述の値のうちのいずれかの間の任意の値だけ増加したCD46及びCD59の発現を含む。
【0335】
いくつかの実施形態では、操作された細胞(CD46及びCD59の発現を増加させる1つまたは複数の改変を含む)は、改変を含まない細胞と比べて(例えば、CD46及びCD59の内在性発現と比べて)増加したCD46及びCD59の発現を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、改変を有しない細胞と比較して(例えば、CD46及びCD59の内在性発現と比較して)2倍もしくは約2倍、4倍もしくは約4倍、6倍もしくは約6倍、10倍もしくは約10倍、15倍もしくは約及び15倍、20倍もしくは約20倍、30倍もしくは約30倍、50倍もしくは約50倍、60倍もしくは約60倍、70倍もしくは約70倍、80倍もしくは約80倍、100倍もしくは約100倍、または前述の値のうちのいずれかの間の任意の値だけ増加したCD46及びCD59の発現を含む。
【0336】
いくつかの実施形態では、該細胞は、CD46及びCD59をコードする1つまたは複数の導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、下記の第II.B.4節に記載されるようなモノシストロン性またはマルチシストロン性ベクターである。いくつかの実施形態では、CD46及びCD59は、任意選択でCD47等の1つまたは複数の寛容原性因子と組み合わせて、同じマルチシストロン性ベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、CD46及びCD59は、任意選択でCD47等の1つまたは複数の寛容原性因子と組み合わせて、異なる導入遺伝子に含まれる。
【0337】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD46、例えば上述のいずれかをコードする過剰発現したポリヌクレオチド、CD59、例えば上述のいずれかをコードする過剰発現したポリヌクレオチド、及びCD55、例えば上述のいずれかをコードする過剰発現したポリヌクレオチドを含有する。
【0338】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD46、例えば上述のいずれかをコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59、例えば上述のいずれかをコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55、例えば上述のいずれかをコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。
【0339】
いくつかの実施形態では、操作された細胞(CD46、CD59、及びCD55の発現を増加させる1つまたは複数の改変を含む)は、改変を含まない細胞と比べて(例えば、CD46、CD59、及びCD55の内在性発現と比べて)増加したCD46、CD59、及びCD55の発現を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、改変を有しない細胞と比較して(例えば、CD46、CD59、及びCD55の内在性発現と比較して)1.5倍~2倍、2倍~3倍、3倍~4倍、4倍~5倍、5倍~10倍、10倍~15倍、15倍~20倍、20倍~40倍、40倍~60倍、60倍~80倍、80倍~100倍、または100倍~200倍増加したCD46、CD59、及びCD55の発現を含む。いくつかの実施形態では、改変(複数可)を有しない細胞は、CD46、CD59、及びCD55の内在性発現を有しないか、またはCD46、CD59、及びCD55の検出可能な発現を有しない。いくつかの実施形態では、改変を欠いた細胞と比較した発現の増加倍率は、200倍超である。
【0340】
いくつかの実施形態では、操作された細胞(CD46、CD59、及びCD55の発現を増加させる1つまたは複数の改変を含む)は、改変を有しない細胞と比較して(例えば、CD46、CD59、及びCD55の内在性発現と比較して)2倍~200倍、2倍~100倍、2倍~50倍、または2倍~20倍増加したCD46、CD59、及びCD55の発現を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞(CD46、CD59、及びCD55の発現を増加させる1つまたは複数の改変を含む)は、改変を有しない細胞と比較して(例えば、CD46、CD59、及びCD55の内在性発現と比較して)5倍~200倍、5倍~100倍、5倍~50倍、または5倍~20倍増加したCD46、CD59、及びCD55の発現を含む。
【0341】
いくつかの実施形態では、操作された細胞(CD46、CD59、及びCD55の発現を増加させる1つまたは複数の改変を含む)は、改変を含まない細胞と比べて(例えば、CD46及びCD59の内在性発現と比べて)増加したCD46、CD59、及びCD55の発現を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、改変を有しない細胞と比較して(例えば、CD46、CD59、及びCD55の内在性発現と比較して)少なくとも2倍もしくは約2倍、少なくとも4倍もしくは約4倍、少なくとも6倍もしくは約6倍、少なくとも10倍もしくは約10倍、少なくとも15倍もしくは約及び15倍、少なくとも20倍もしくは約20倍、少なくとも30倍もしくは約30倍、少なくとも50倍もしくは約50倍、少なくとも60倍もしくは約60倍、少なくとも70倍もしくは約70倍、少なくとも80倍もしくは約80倍、少なくとも100倍もしくは約100倍、または前述の値のうちのいずれかの間の任意の値だけ増加したCD46、CD59、及びCD55の発現を含む。
【0342】
いくつかの実施形態では、操作された細胞(CD46、CD59、及びCD55の発現を増加させる1つまたは複数の改変を含む)は、改変を含まない細胞と比べて(例えば、CD46、CD59、及びCD55の内在性発現と比べて)増加したCD46、CD59、及びCD55の発現を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、改変を有しない細胞と比較して(例えば、CD46、CD59、及びCD55の内在性発現と比較して)2倍もしくは約2倍、4倍もしくは約4倍、6倍もしくは約6倍、10倍もしくは約10倍、15倍もしくは約及び15倍、20倍もしくは約20倍、30倍もしくは約30倍、50倍もしくは約50倍、60倍もしくは約60倍、70倍もしくは約70倍、80倍もしくは約80倍、100倍もしくは約100倍、または前述の値のうちのいずれかの間の任意の値だけ増加したCD46、CD59、及びCD55の発現を含む。
【0343】
いくつかの実施形態では、該細胞は、CD46、CD59、及びCD55をコードする1つまたは複数の導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、下記の第II.B.4節に記載されるようなモノシストロン性またはマルチシストロン性ベクターである。いくつかの実施形態では、CD46、CD59、及びCD55は、任意選択でCD47等の1つまたは複数の寛容原性因子と組み合わせて、同じマルチシストロン性ベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、CD46、CD59、及びCD55は、任意選択でCD47等の1つまたは複数の寛容原性因子と組み合わせて、異なる導入遺伝子に含まれる。
【0344】
2.寛容原性因子
いくつかの実施形態では、細胞において寛容原性因子の発現が過剰発現または増加させられる。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、少なくとも1つの寛容原性因子の増加した発現、すなわち過剰発現を含む。いくつかの実施形態では、寛容原性因子は、免疫系(例えば、自然免疫または適応免疫系)による操作された細胞の寛容を促進するか、またはその促進もしくは誘導に寄与する任意の因子である。いくつかの実施形態では、寛容原性因子は、DUX4、B2M-HLA-E、CD16、CD52、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF、及びH2-M3である。いくつかの実施形態では、寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EもしくはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200、もしくはMfge8、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、該細胞は、寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドを含む、少なくとも1つの外因性ポリヌクレオチドを含む。例えば、いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、CD47をコードするポリヌクレオチドである。本明細書では、レシピエント対象への投与時に免疫応答を発動も活性化もしない細胞が提供される。上述したように、いくつかの実施形態では、該細胞は、レシピエントにおける免疫認識及び寛容に影響を及ぼす遺伝子及び寛容原性(例えば、免疫)因子の発現を増加させるように改変される。
【0345】
いくつかの実施形態では、本開示は、CD47等の寛容原性因子(例えば、免疫調節ポリペプチド)を発現するように改変された細胞またはその集団を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、CD47等の寛容原性因子(例えば、免疫調節ポリペプチド)を発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、外因性CD47等の外因性寛容原性因子(例えば、免疫調節ポリペプチド)を発現する。いくつかの事例では、外因性ポリヌクレオチドの過剰発現または発現の増加は、ヒトCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを細胞内に導入する(例えば、細胞に形質導入する)ことによって達成される。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、レンチウイルスベクター等のウイルスベクター)であってもよいし、または非ウイルスベクターであってもよい。いくつかの実施形態では、該細胞は、1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドを含有するように操作され、ここで、外因性ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドを含む。いずれかの実施形態のうちのいくつかでは、寛容原性因子は、DUX4、B2M-HLA-E、CD16、CD52、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF、及びH2-M3である。いくつかの実施形態では、寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EもしくはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200、もしくはMfge8、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。例えば、いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、CD47をコードするポリヌクレオチドである。
【0346】
いくつかの実施形態では、寛容原性因子は、CD47である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD47、例えばヒトCD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、CD47は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、CD47の発現は、参照または未改変の細胞、例えば、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドにより操作されていない細胞等の、改変により操作されていない同じ細胞種の類似の細胞と比較して、操作された細胞において過剰発現または増加させられる。CD47は、白血球表面抗原であり、インテグリンの細胞接着及び調節において役割を有する。それは通常、細胞の表面上に発現し、循環マクロファージが当該細胞を食べないようにシグナル伝達する。ヒトCD47についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、NP_001768.1、NP_942088.1、NM_001777.3、及びNM_198793.2で提供される。
【0347】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、少なくとも1つの寛容原性因子の増加した発現、すなわち過剰発現を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドを含む、少なくとも1つの外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、寛容原性因子には、DUX4、B2M-HLA-E、CD16、CD52、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF、及びH2-M3、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、過剰発現した(例えば、外因性)ポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、CD47をコードするポリヌクレオチドである。
【0348】
いくつかの実施形態では、本開示は、CD47等の寛容原性因子(例えば、免疫調節ポリペプチド)を発現するように改変された細胞またはその集団を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、CD47等の寛容原性因子(例えば、免疫調節ポリペプチド)を発現するように細胞のゲノムを変化させるための方法を提供する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、外因性CD47等の外因性寛容原性因子(例えば、免疫調節ポリペプチド)を発現する。いくつかの事例では、該細胞は、ヒトCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを発現する。
【0349】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD47、例えばヒトCD47をコードする過剰発現したポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD47、例えばヒトCD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、CD47は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、CD47の発現は、参照または未改変の細胞がCD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された細胞において増加させられる。CD47は、白血球表面抗原であり、インテグリンの細胞接着及び調節において役割を有する。それは通常、細胞の表面上に発現し、循環マクロファージが当該細胞を食べないようにシグナル伝達する。ヒトCD47についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、NP_001768.1、NP_942088.1、NM_001777.3、及びNM_198793.2で提供される。
【0350】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_001768.1及びNP_942088.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_001768.1及びNP_942088.1に記載のアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照番号NM_001777.3及びNM_198793.2に記載の配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47に対する外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NM_001777.3及びNM_198793.2に記載のCD47に対する外因性ヌクレオチド配列を含む。
【0351】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_001768.1及びNP_942088.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_001768.1及びNP_942088.1に記載のアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照番号NM_001777.3及びNM_198793.2に記載の配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47に対する外因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NM_001777.3及びNM_198793.2に記載のCD47に対する外因性ヌクレオチド配列を含む。
【0352】
いくつかの実施形態では、該細胞は、NCBI参照配列番号NP_001768.1及びNP_942088.1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有する外因性CD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説される細胞は、NCBI参照配列番号NP_001768.1及びNP_942088.1に記載のアミノ酸配列を有する外因性CD47ポリペプチドを含む。
【0353】
いくつかの実施形態では、該細胞は、配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47ポリペプチドをコードする過剰発現したポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有するCD47ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドをコードする過剰発現したポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0354】
いくつかの実施形態では、該細胞は、配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有する過剰発現したCD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)を有する外因性CD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する過剰発現したCD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する外因性CD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、CD59ポリペプチドをコードする外因性ヌクレオチド配列は、異種シグナルペプチドをコードする配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、下記にさらに記載されるもの等の標的化または非標的化挿入方法によって細胞のゲノム内に組み込まれる。いくつかの実施形態では、標的化挿入は、標的遺伝子座内への相同性依存的挿入、例えば、表2に示される遺伝子座のうちのいずれか1つ、例えば、B2M遺伝子、CIITA遺伝子、TRAC遺伝子、TRBC遺伝子内への挿入によるものである。いくつかの実施形態では、標的化挿入は、相同性非依存的挿入、例えば、セーフハーバー遺伝子座内への挿入によるものである。場合によっては、CD47をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。特定の実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座内に挿入される。
【0355】
いくつかの実施形態では、CD47の全部または機能的部分を、シグナルペプチド、リーダー配列、分泌シグナル、標識(例えば、レポーター遺伝子)、またはそれらの任意の組み合わせ等の他の構成要素に連結することができる。いくつかの実施形態では、CD47のシグナルペプチドをコードする核酸配列は、異種タンパク質からのシグナルペプチドをコードする核酸配列と置き換えられる。異種タンパク質は、例えば、CD8α、CD28、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、成長ホルモン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、GM-CSF受容体(GM-CSFRa)、または免疫グロブリン(例えば、IgEまたはIgK)であり得る。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、免疫グロブリン(IgG重鎖またはIgG-カッパ軽鎖等)、サイトカイン(インターロイキン-2(IL-2)、またはCD33等)、血清アルブミンタンパク質(例えば、HSAまたはアルブミン)、ヒトアズロシジンプレタンパク質シグナル配列、ルシフェラーゼ、トリプシノーゲン(例えば、キモトリプシノーゲンまたはトリプシノーゲン)からのシグナルペプチド、または細胞によりもしくは細胞上にタンパク質を効率的に発現させることができる他のシグナルペプチドである。
【0356】
ある特定の実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0357】
いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、表2に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。場合によっては、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。特定の実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、T細胞であり、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、CD47をコードするポリヌクレオチドの、細胞のゲノム遺伝子座内への挿入が容易にされる。
【0358】
いくつかの実施形態では、CD47タンパク質発現は、CD47タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性CD47 mRNAの存在が確認される。
【0359】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD200、例えばヒトCD200をコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、CD200は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、CD200の発現は、参照または未改変の細胞がCD200をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された細胞において増加させられる。ヒトCD200についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC03P112332、HGNC番号7203、NCBI遺伝子ID 4345、Uniprot番号P41217、ならびにNCBI RefSeq番号NP_001004196.2、NM_001004196.3、NP_001305757.1、NM_001318828.1、NP_005935.4、NM_005944.6、XP_005247539.1、及びXM_005247482.2で提供される。ある特定の実施形態では、CD200をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0360】
いくつかの実施形態では、CD200をコードするポリヌクレオチドは、表2に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。場合によっては、CD200をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。特定の実施形態では、CD200をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、CD200をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、T細胞であり、CD200をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、CD200をコードするポリヌクレオチドの、細胞のゲノム遺伝子座内への挿入が容易にされる。
【0361】
いくつかの実施形態では、CD200タンパク質発現は、CD200タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性CD200 mRNAの存在が確認される。
【0362】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、HLA-E、例えばヒトHLA-Eをコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、HLA-Eは、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、HLA-Eの発現は、参照または未改変の細胞がHLA-Eをコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された細胞において増加させられる。ヒトHLA-Eについての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC06P047281、HGNC番号4962、NCBI遺伝子ID 3133、Uniprot番号P13747、ならびにNCBI RefSeq番号NP_005507.3及びNM_005516.5で提供される。ある特定の実施形態では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0363】
いくつかの実施形態では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、表2に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。場合によっては、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。特定の実施形態では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、T細胞であり、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドの、細胞のゲノム遺伝子座内への挿入が容易にされる。
【0364】
いくつかの実施形態では、HLA-Eタンパク質発現は、HLA-Eタンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性HLA-E mRNAの存在が確認される。
【0365】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、HLA-G、例えばヒトHLA-Gをコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、HLA-Gは、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、HLA-Gの発現は、参照または未改変の細胞がHLA-Gをコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された細胞において増加させられる。ヒトHLA-Gについての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC06P047256、HGNC番号4964、NCBI遺伝子ID 3135、Uniprot番号P17693、ならびにNCBI RefSeq番号NP_002118.1及びNM_002127.5で提供される。ある特定の実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0366】
いくつかの実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、表2に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。場合によっては、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。特定の実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、T細胞であり、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドの、細胞のゲノム遺伝子座内への挿入が容易にされる。
【0367】
いくつかの実施形態では、HLA-Gタンパク質発現は、HLA-Gタンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性HLA-G mRNAの存在が確認される。
【0368】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、PD-L1、例えばヒトPD-L1をコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、PD-L1は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、PD-L1の発現は、参照または未改変の細胞がPD-L1をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された細胞において増加させられる。ヒトPD-L1またはCD274についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC09P005450、HGNC番号17635、NCBI遺伝子ID 29126、Uniprot番号Q9NZQ7、ならびにNCBI RefSeq番号NP_001254635.1、NM_001267706.1、NP_054862.1、及びNM_014143.3で提供される。ある特定の実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0369】
いくつかの実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、表2に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。場合によっては、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。特定の実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、またはCIITA遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、T細胞であり、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、PD-L1をコードするポリヌクレオチドの、細胞のゲノム遺伝子座内への挿入が容易にされる。
【0370】
いくつかの実施形態では、PD-L1タンパク質発現は、PD-L1タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性PD-L1 mRNAの存在が確認される。
【0371】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、FasL、例えばヒトFasLをコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、FasLは、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、FasLの発現は、参照または未改変の細胞がFasLをコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された細胞において増加させられる。ヒトFasリガンド(FasL、FASLG、CD178、TNFSF6等として知られる)についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC01P172628、HGNC番号11936、NCBI遺伝子ID 356、Uniprot番号P48023、ならびにNCBI RefSeq番号NP_000630.1、NM_000639.2、NP_001289675.1、及びNM_001302746.1で提供される。ある特定の実施形態では、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0372】
いくつかの実施形態では、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、表2に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。場合によっては、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。特定の実施形態では、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、T細胞であり、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドの、細胞のゲノム遺伝子座内への挿入が容易にされる。
【0373】
いくつかの実施形態では、Fas-Lタンパク質発現は、Fas-Lタンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性Fas-L mRNAの存在が確認される。
【0374】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CCL21、例えばヒトCCL21をコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、CCL21は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、CCL21の発現は、参照または未改変の細胞がCCL21をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された細胞において増加させられる。ヒトCCL21についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC09M034709、HGNC番号10620、NCBI遺伝子ID 6366、Uniprot番号O00585、ならびにNCBI RefSeq番号NP_002980.1及びNM_002989.3で提供される。ある特定の実施形態では、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0375】
いくつかの実施形態では、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、表2に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。場合によっては、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。特定の実施形態では、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、T細胞であり、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、CCL21をコードするポリヌクレオチドの、細胞のゲノム遺伝子座内への挿入が容易にされる。
【0376】
いくつかの実施形態では、CCL21タンパク質発現は、CCL21タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性CCL21 mRNAの存在が確認される。
【0377】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CCL22、例えばヒトCCL22をコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、CCL22は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、CCL22の発現は、参照または未改変の細胞がCCL22をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された細胞において増加させられる。ヒトCCL22についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC16P057359、HGNC番号10621、NCBI遺伝子ID 6367、Uniprot番号O00626、ならびにNCBI RefSeq番号NP_002981.2、NM_002990.4、XP_016879020.1、及びXM_017023531.1で提供される。ある特定の実施形態では、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0378】
いくつかの実施形態では、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、表2に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。場合によっては、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、及びSHS231から選択される遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。特定の実施形態では、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、T細胞であり、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、CCL22をコードするポリヌクレオチドの、細胞のゲノム遺伝子座内への挿入が容易にされる。
【0379】
いくつかの実施形態では、CCL22タンパク質発現は、CCL22タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性CCL22 mRNAの存在が確認される。
【0380】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、Mfge8、例えばヒトMfge8をコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、Mfge8は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、Mfge8の発現は、参照または未改変の細胞がMfge8をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された細胞において増加させられる。ヒトMfge8についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC15M088898、HGNC番号7036、NCBI遺伝子ID 4240、Uniprot番号Q08431、ならびにNCBI RefSeq番号NP_001108086.1、NM_001114614.2、NP_001297248.1、NM_001310319.1、NP_001297249.1、NM_001310320.1、NP_001297250.1、NM_001310321.1、NP_005919.2、及びNM_005928.3で提供される。ある特定の実施形態では、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0381】
いくつかの実施形態では、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、表2に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。場合によっては、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231から選択される遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。特定の実施形態では、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、T細胞であり、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、Mfge8をコードするポリヌクレオチドの、細胞のゲノム遺伝子座内への挿入が容易にされる。
【0382】
いくつかの実施形態では、Mfge8タンパク質発現は、Mfge8タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性Mfge8 mRNAの存在が確認される。
【0383】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、SerpinB9、例えばヒトSerpinB9をコードする外因性ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、SerpinB9は、細胞において過剰発現される。いくつかの実施形態では、SerpinB9の発現は、参照または未改変の細胞がSerpinB9をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除いて類似した参照または未改変の細胞(任意の他の改変を有するものを含む)と比較して、操作された細胞において増加させられる。ヒトSerpinB9についての有用なゲノム、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの情報は、例えば、GeneCard識別記号GC06M002887、HGNC番号8955、NCBI遺伝子ID 5272、Uniprot番号P50453、ならびにNCBI RefSeq番号NP_004146.1、NM_004155.5、XP_005249241.1、及びXM_005249184.4で提供される。ある特定の実施形態では、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0384】
いくつかの実施形態では、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、表2に示される遺伝子座のうちのいずれか1つに挿入される。場合によっては、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231から選択される遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。特定の実施形態では、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、またはCLYBL遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座またはCIITA遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、T細胞であり、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座、またはTRBC遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、好適な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのうちのいずれか)を使用して、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドの、細胞のゲノム遺伝子座内への挿入が容易にされる。
【0385】
いくつかの実施形態では、SerpinB9タンパク質発現は、SerpinB9タンパク質に対する抗体によりプロービングされる細胞ライセートのウェスタンブロットを使用して検出される。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して、外因性SerpinB9 mRNAの存在が確認される。
【0386】
3.キメラ抗原受容体
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにさらに改変される。いくつかの実施形態では、提供される細胞は、1つもしくは複数のMHCクラスI分子、1つもしくは複数のMHCクラスII分子、または1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を調節する1つまたは複数の標的ポリヌクレオチド配列の遺伝子改変を含有し、補体経路活性化を低減し、本明細書に記載される寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CARを発現する。いくつかの実施形態では、該細胞は、B2Mが低減または排除され(例えば、ノックアウトされ)、CIITAが低減または排除され(例えば、ノックアウトされ)、CD46が過剰発現させられ、CD59が過剰発現させられ、CD47が過剰発現させられ、CARが発現されるものである。いくつかの実施形態では、該細胞は、B2M-/-、CIITA-/-、CD46tg、CD59tg、CD47tg、CAR+である。いくつかの実施形態では、該細胞(例えば、T細胞)はさらに、TRACが低減または排除される(例えば、ノックアウトされる)ものであってもよい。いくつかの実施形態では、該細胞は、B2-/-、CIITA-/-、CD46tg、CD59tg、CD47tg、TRAC-/-CAR+である。
【0387】
いくつかの実施形態では、CARをコードするポリヌクレオチドが細胞内に導入される。いくつかの実施形態では、該細胞は、T細胞、例えば、初代T細胞または多能性細胞(例えば、iPSC)から分化したT細胞である。いくつかの実施形態では、該細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、例えば、初代NK細胞または多能性細胞(例えば、iPSC)から分化したNK細胞である。
【0388】
いくつかの実施形態では、CARは、第1世代CAR、第2世代CAR、第3世代CAR、及び第4世代CARからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも1つのシグナル伝達ドメイン(例えば、1、2、または3つのシグナル伝達ドメイン)を含む第1世代CARであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2つのシグナル伝達ドメインを含む第2世代CARを含む。いくつかの実施形態では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む第3世代CARを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、3つまたは4つのシグナル伝達ドメイン、及びCARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含む第4世代CAR。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体、抗体断片、scFv、またはFabであるか、またはそれを含む。
【0389】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞のうちのいずれか1つは、CARまたは第1世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第1世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及びシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中の下流シグナル伝達を媒介する。
【0390】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞のうちのいずれか1つは、CARまたは第2世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第2世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び2つのシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中の下流シグナル伝達を媒介する。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR T細胞増殖、及び/またはCAR T細胞存続を増強する。
【0391】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞のうちのいずれか1つは、CARまたは第3世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第3世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中の下流シグナル伝達を媒介する。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR T細胞増殖、及びまたはCAR T細胞存続を増強する。いくつかの実施形態では、第3世代CARは、少なくとも2つの共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの共刺激ドメインは、同じでない。
【0392】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞のうちのいずれか1つは、CARまたは第4世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第4世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2、3、または4つのシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化中の下流シグナル伝達を媒介する。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化中のサイトカイン産生、CAR T細胞増殖、及びまたはCAR T細胞存続を増強する。
【0393】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された細胞(例えば、初代T細胞もしくはiPSC由来のT細胞または初代NK細胞もしくはiPSC由来のNK細胞)は、CARをコードするポリヌクレオチドを含み、ここで、ポリヌクレオチドは、ゲノム遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(CD142としても公知)、MICA、MICB、LRP1(CD91としても公知)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1、またはKDM5D遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRB、PD1、またはCTLA4遺伝子に挿入される。本明細書に記載の遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)を含めて、任意の好適な方法を使用して、CARを低免疫原性細胞のゲノム遺伝子座内に挿入することができる。
【0394】
いくつかの実施形態では、第1世代、第2世代、第3世代、または第4世代CARは、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、サイトカイン遺伝子は、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含むCARを含む標的細胞にとって内在性または外因性である。いくつかの実施形態では、サイトカイン遺伝子は、炎症促進性サイトカインをコードする。いくつかの実施形態では、サイトカイン遺伝子は、IL-1、IL-2、IL-9、IL-12、IL-18、TNF、もしくはIFN-ガンマ、またはそれらの機能的断片をコードする。いくつかの実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、CARのシグナル伝達の成功時にサイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、転写因子またはその機能的ドメインもしくは断片は、活性化T細胞の核内因子(NFAT)、NF-kB、またはその機能的ドメインもしくは断片であるか、またはそれを含む。例えば、Zhang.C.et al.,Engineering CAR-T cells.Biomarker Research.5:22(2017)、WO2016126608、Sha,H.et al.Chimaeric antigen receptor T-cell therapy for tumour immunotherapy.Bioscience Reports Jan 27,2017,37(1)を参照されたい。
【0395】
当業者は、CAR、ならびにCARの異なる構成要素及び構成に精通している。提供される実施形態に関連して、任意の既知のCARを用いることができる。本明細書に記載のCARに加えて、種々のCAR及びそれらをコードするヌクレオチド配列が当該技術分野で既知であり、本明細書に記載される細胞の操作に好適であろう。例えば、WO2013040557、WO2012079000、WO2016030414、Smith T,et al.,Nature Nanotechnology.2017.DOI:10.1038/NNANO.2017.57を参照されたく、同文献の開示は参照により本明細書に援用される。CARの例となる特徴及び構成要素が、以下の小節に記載される。
【0396】
G.抗原結合ドメイン
いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメイン(ABD)は、抗体またはその抗原結合部分であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、scFvまたはFabであるか、またはそれを含む。
【0397】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、細胞の細胞表面抗原に結合する。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、特定のまたは具体的な細胞種に特有である(例えば、それによって発現される)。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、1つよりも多くの種類の細胞に特有である。
【0398】
いくつかの実施形態では、抗原は、腫瘍細胞上に限ってもしくはその上に優先的に発現される抗原、または自己免疫もしくは炎症性疾患に特有の抗原であり得る。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメイン(ABD)は、新生細胞に特有の抗原を標的とする。例えば、抗原結合ドメインは、新生細胞またはがん細胞によって発現される抗原を標的とする。いくつかの実施形態では、ABDは、腫瘍関連抗原に結合する。いくつかの実施形態では、新生細胞に特有の抗原(例えば、新生細胞またはがん細胞に関連する抗原)または腫瘍関連抗原は、細胞表面受容体、イオンチャネル連結型受容体、酵素連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、受容体型チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ会合型受容体、受容体様チロシンホスファターゼ、受容体型セリン/トレオニンキナーゼ、受容体型グアニリルシクラーゼ、ヒスチジンキナーゼ会合型受容体から選択される。
【0399】
いくつかの実施形態では、標的抗原は、上皮成長因子受容体(EGFR)(ErbB1/EGFR、ErbB2/HER2、ErbB3/HER3、及びErbB4/HER4を含む)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)(FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF18、及びFGF21を含む)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)(VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、及びPIGFを含む)、RET受容体及びEph受容体ファミリー(EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA6、EphA7、EphA8、EphA9、EphA10、EphB1、EphB2 EphB3、EphB4、及びEphB6を含む)、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR6、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR8、CFTR、CIC-1、CIC-2、CIC-4、CIC-5、CIC-7、CIC-Ka、CIC-Kb、ベストロフィン、TMEM16A、GABA受容体、グリシン受容体、ABC輸送体、NAV1.1、NAV1.2、NAV1.3、NAV1.4、NAV1.5、NAV1.6、NAV1.7、NAV1.8、NAV1.9、スフィンゴシン-1-リン酸受容体(S1P1R)、NMDAチャネル、膜貫通型タンパク質、マルチスパン膜貫通型タンパク質、T細胞受容体モチーフ;T細胞アルファ鎖;T細胞β鎖;T細胞γ鎖;T細胞δ鎖、CCR7、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD11b、CD11c、CD16、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD28、CD34、CD35、CD40、CD45RA、CD45RO、CD52、CD56、CD62L、CD68、CD80、CD95、CD117、CD127、CD133、CD137(4-1 BB)、CD163、F4/80、IL-4Ra、Sca-1、CTLA-4、GITR、GARP、LAP、グランザイムB、LFA-1、トランスフェリン受容体、NKp46、パーフォリン、CD4+、Th1、Th2、Th17、Th40、Th22、Th9、Tfh、古典的Treg、FoxP3+、Tr1、Th3、Treg17、TREG、CDCP、NT5E、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、PSMA、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド(例えば、CD2、CD3、GM2)、ルイス-γ、VEGF、VEGFR1/2/3、αVβ3、α5β1、ErbB1/EGFR、ErbB1/HER2、ErB3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、PDL-1、BAFF、HDAC、ABL、FLT3、KIT、MET、RET、IL-1β、ALK、RANKL、mTOR、CTLA-4、IL-6、IL-6R、JAK3、BRAF、PTCH、スムーズンド、PIGF、ANPEP、TIMP1、PLAUR、PTPRJ、LTBR、もしくはANTXR1、葉酸受容体アルファ(FRa)、ERBB2(Her2/neu)、EphA2、IL-13Ra2、上皮成長因子受容体(EGFR)、メソテリン、TSHR、CD19、CD123、CD22、CD30、CD171、CS-1、CLL-1、CD33、EGFRvIII、GD2、GD3、BCMA、MUC16(CA125)、L1CAM、LeY、MSLN、IL13Rα1、L1-CAM、Tn Ag、前立腺特異膜抗原(PSMA)、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、インターロイキン-11受容体a(IL-11Ra)、PSCA、PRSS21、VEGFR2、ルイスY、CD24、血小板由来成長因子受容体-ベータ(PDGFR-ベータ)、SSEA-4、CD20、MUC1、NCAM、前立腺、PAP、ELF2M、エフリンB2、IGF-1受容体、CAIX、LMP2、gplOO、bcr-abl、チロシナーゼ、フコシルGM1、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体ベータ、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD179a、ALK、ポリシアル酸、PLACl、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-1a、MAGE-A1、レグマイン、HPV E6、E7、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、主要組織適合性複合体クラスI関連遺伝子タンパク質(MR1)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、プロステイン、サバイビン、テロメラーゼ、PCTA-1/ガレクチン8、MelanA/MART1、Ras変異体、hTERT、肉腫転座切断点、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、MYCN、RhoC、TRP-2、CYPIB I、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、IGLL1、新生抗原、CD133、CD15、CD184、CD24、CD56、CD26、CD29、CD44、HLA-A、HLA-B、HLA-C(HLA-A,B,C)、CD49f、CD151、CD340、CD200、tkrA、trkB、もしくはtrkC、またはそれらの抗原断片もしくは抗原部分を含むがこれらに限定されない抗原である。
【0400】
いくつかの実施形態では、例となる標的抗原には、CDS、CD19、CD20、CD22、CD23、CD30、CD70、カッパ、ラムダ、及びB細胞成熟因子(BCMA)(白血病に関連する);CS1/SLAMF7、CD38、CD138、GPRC5D、TACI、及びBCMA(骨髄腫に関連する);GD2、HER2、EGFR、EGFRvlll、B7H3、PSMA、PSCA、CAIX、CD171、CEA、CSPG4、EPHA2、FAP、FRa、IL-13Ra、メソテリン、MUC1、MUC16、及びROR1(固形腫瘍に関連する)が含まれるが、これらに限定されない。
【0401】
いくつかの実施形態では、CARは、CD19 CARである。いくつかの実施形態では、CD19 CARの細胞外結合ドメインは、CD19、例えばヒトCD19に特異的に結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、CD19 CARの細胞外結合ドメインは、FMC63モノクローナル抗体(FMC63)に由来するscFv抗体断片を含み、これはリンカーペプチドによって接続されたFMC63の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーペプチドは、「Whitlow」リンカーペプチドである。FMC63及び派生したscFvは、Nicholson et al.,Mal.lmmun.34(16-17):1157-1165(1997)及びPCT出願公開第WO2018/213337A1号に記載されており、同文献の各々の内容全体は参照により本明細書に援用される。
【0402】
いくつかの実施形態では、CD19 CARの細胞外結合ドメインは、例えば、(Bejcek et al.,Cancer Res.55:2346-2351(1995))、HD37(Pezutto et al.,J.Immunol.138(9):2793-2799(1987))、4G7(Meeker et al.,Hybridoma 3:305-320(1984))、B43(Bejcek(1995))、BLY3(Bejcek(1995))、B4(Freedman et al.,70:418-427(1987))、B4 HB12b(Kansas & Tedder,J.Immunol.147:4094-4102(1991)、Yazawa et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:15178-15183(2005)、Herbst et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.335:213-222(2010))、BU12(Gallard et al.,J.Immunology,148(10):2983-2987(1992))、及びCLB-CD19(De Rie Cell.Immunol.118:368-381(1989))を含めた、CD19特異的抗体のうちの1つに由来する抗体を含む。
【0403】
いくつかの実施形態では、CARは、CD22 CARである。B細胞受容体(BCR)シグナル伝達に対する阻害性受容体として機能する、成熟B細胞の表面上に主として見られる膜貫通型タンパク質である、CD22。CD22は、60~70%のB細胞リンパ腫及び白血病(例えば、B慢性リンパ性白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、及びバーキットリンパ腫)において発現し、B細胞発生の早期段階における細胞表面上または幹細胞上には存在しない。いくつかの実施形態では、CD22 CARは、CD22に特異的に結合する細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、及び/または細胞内共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD22 CARの細胞外結合ドメインは、m971モノクローナル抗体(m971)に由来するscFv抗体断片を含み、これはリンカーによって接続されたm971の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態では、CD22 CARの細胞外結合ドメインは、親抗体m971と比較して顕著に改善された(約2nMから50pM未満に改善された)CD22結合親和性を有する、m971の親和性成熟バリアントであるm971-L7に由来するscFv抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、m971-L7に由来するscFv抗体断片は、3×G4Sリンカーによって接続されたm971-L7のVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、CD22 CARの細胞外結合ドメインは、免疫毒素HA22またはBL22を含む。免疫毒素BL22及びHA22は、細菌毒素に融合されたCD22に特異的なscFvを含み、故にCD22を発現するがん細胞の表面に結合して、がん細胞を殺傷することができる治療剤である。BL22は、Pseudomonas外毒素Aの38kDaの短縮形態に融合された抗CD22抗体RFB4のdsFvを含む(Bang et al.,Clin.Cancer Res.,11:1545-50(2005))。HA22(CAT8015、モキセツモマブパスドトックス)は、BL22の変異したより高親和性のバージョンである(Ho et al.,J.Biol.Chem.,280(1):607-17(2005))。CD22に特異的なHA22及びBL22の抗原結合ドメインの好適な配列は、例えば、米国特許第7,541,034号、同第7,355,012号、及び同第7,982,011号に開示され、同文献は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0404】
いくつかの実施形態では、CARは、BCMA CARである。BCMAは、B細胞系列の細胞上に発現した腫瘍壊死ファミリー受容体(TNFR)のメンバーであり、最終分化したB細胞または成熟Bリンパ球上で最も高発現する。BCMAは、長期的な液性免疫を維持するための形質細胞の生存の媒介に関与する。BCMAの発現は、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫、種々の白血病、ならびに神経膠芽腫等のいくつかのがんに最近関連付けられている。いくつかの実施形態では、BCMA CARは、BCMAに特異的に結合する細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、及び/または細胞内共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、BCMA CARの細胞外結合ドメインは、BCMA、例えばヒトBCMAに特異的に結合する抗体を含む。BCMAに向けられたCARが、PCT出願公開第WO2016/014789号、同第WO2016/014565号、同第WO2013/154760号、及び同第WO2015/128653号に記載されている。BCMA結合抗体はまた、PCT出願公開第WO2015/166073号及び同第WO2014/068079号にも開示される。いくつかの実施形態では、BCMA CARの細胞外結合ドメインは、Carpenter et al.,Clin.Cancer Res.19(8):2048-2060(2013)に記載されるようなマウスモノクローナル抗体に由来するscFv抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、scFv抗体断片は、マウスモノクローナル抗体のヒト化バージョンである(Sommermeyer et al.,Leukemia 31:2191-2199(2017))。いくつかの実施形態では、BCMA CARの細胞外結合ドメインは、Zhao et al.,J.Hematol.Oneal.11(1):141(2018)に記載されるような、BCMAの2つのエピトープに結合することができる2本の重鎖(VHH)でできた単一可変断片を含む。いくつかの実施形態では、BCMA CARの細胞外結合ドメインは、Lam et al.,Nat.Commun.11(1):283(2020)に記載されるような完全ヒト重鎖可変ドメイン(FHVH)を含む。
【0405】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、自己免疫障害または炎症性障害に特有の抗原を標的とする。いくつかの実施形態では、ABDは、自己免疫障害または炎症性障害に関連する抗原に結合する。いくつかの事例では、抗原は、自己免疫障害または炎症性障害に関連する細胞によって発現される。いくつかの実施形態では、自己免疫障害または炎症性障害は、慢性移植片対宿主病(GVHD)、ループス、関節炎、免疫複合体糸球体腎炎、グッドパスチャー、ブドウ膜炎、肝炎、全身性硬化症または強皮症、I型糖尿病、多発性硬化症、寒冷凝集素症、尋常性天疱瘡、グレーブス病、自己免疫溶血性貧血、血友病A、原発性シェーグレン症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、視神経脊髄炎、エバンス症候群、IgM媒介性ニューロパチー、クリオグロブリン血症、皮膚筋炎、特発性血小板減少症、強直性脊椎炎、水疱性類天疱瘡、後天性血管性浮腫、慢性蕁麻疹、抗リン脂質脱髄性多発ニューロパチー、及び自己免疫血小板減少症または好中球減少症または赤芽球癆から選択され、一方で、同種異系免疫疾患の例となる非限定的例としては、造血または実質臓器移植、輸血による同種異系感作(例えば、Blazar et al.,2015,Am.J.Transplant,15(4):931-41を参照されたい)または異種感作、胎児同種異系感作を伴う妊娠、新生児の同種異系免疫性血小板減少症、新生児溶血性疾患、酵素またはタンパク質補充療法、血液製剤、及び遺伝子療法で処置される遺伝性または後天性欠損障害の補充に伴い起こり得るもの等の外来抗原への感作が挙げられる。同種異系感作とは、いくつかの事例では、レシピエント対象または妊娠している対象の免疫系が非自己抗原と見なすヒト白血球抗原に対する免疫応答(循環抗体等)の発達を指す。いくつかの実施形態では、自己免疫障害または炎症性障害に特有の抗原は、細胞表面受容体、イオンチャネル連結型受容体、酵素連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、受容体型チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ会合型受容体、受容体様チロシンホスファターゼ、受容体型セリン/トレオニンキナーゼ、受容体型グアニリルシクラーゼ、またはヒスチジンキナーゼ会合型受容体から選択される。
【0406】
いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、B細胞、形質細胞、または形質芽細胞上に発現したリガンドに結合する。いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD27、CD38、CD45R、CD138、CD319、BCMA、CD28、TNF、インターフェロン受容体、GM-CSF、ZAP-70、LFA-1、CD3ガンマ、CD5、またはCD2に結合する。US2003/0077249、WO2017/058753、WO2017/058850を参照されたく、同文献の内容は参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、CARは、抗CD19 CARである。いくつかの実施形態では、CARは、抗BCMA CARである。
【0407】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、老化細胞に特有の抗原、例えば、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)を標的とする。いくつかの実施形態では、ABDは、老化細胞に関連する抗原に結合する。いくつかの事例では、抗原は、老化細胞によって発現される。いくつかの実施形態では、CARは、老化細胞の異常な蓄積を特徴とする障害、例えば、肝臓及び肺線維症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、ならびに骨関節炎の処置または予防に使用されてもよい。
【0408】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、感染性疾患に特有の抗原を標的とする。いくつかの実施形態では、ABDは、感染性疾患に関連する抗原に結合する。いくつかの事例では、抗原は、感染性疾患に罹患した細胞によって発現される。いくつかの実施形態では、該感染性疾患は、HIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV))、ヒトTリンパ向性ウイルス-1(HTLV-1)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、シミアンウイルス40(SV40)、エプスタイン・バールウイルス、CMV、ヒトパピローマウイルスから選択される。いくつかの実施形態では、感染性疾患に特有の抗原は、細胞表面受容体、イオンチャネル連結型受容体、酵素連結型受容体、Gタンパク質共役型受容体、受容体型チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ会合型受容体、受容体様チロシンホスファターゼ、受容体型セリン/トレオニンキナーゼ、受容体型グアニリルシクラーゼ、ヒスチジンキナーゼ会合型受容体、HIV Env、HIV-1 Env上のgp120またはCD4誘導性エピトープから選択される。
【0409】
これらの実施形態のうちのいずれかでは、CARの細胞外結合ドメインは、宿主細胞における発現のために、または細胞外結合ドメインの機能を増加させるためのバリアント配列を有するようにコドン最適化され得る。
【0410】
いくつかの実施形態では、CARは、2つの標的抗原に二重特異的である。いくつかの実施形態では、標的抗原は、異なる標的抗原である。いずれのかかる実施形態のうちのいくつかでは、2つの異なる標的抗原は、上述した任意の2つの異なる抗原である。いくつかの実施形態では、これらの細胞外結合ドメインは異なり、(i)CD19及びCD20、(ii)CD20及びL1-CAM、(iii)L1-CAM及びGD2、(iv)EGFR及びL1-CAM、(v)CD19及びCD22、(vi)EGFR及びC-MET、(vii)EGFR及びHER2、(viii)C-MET及びHER2、または(ix)EGFR及びROR1からの2つの異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、2つの異なる抗原結合ドメインの各々が、scFvである。いくつかの実施形態では、第1のscFvの1つの可変ドメイン(VHまたはVL)のC末端は、ポリペプチドリンカーを介して第2のscFv(それぞれVLまたはVH)のN末端につなげられる。いくつかの実施形態では、リンカーは、VHのN末端をVLのC末端に、またはVHのC末端をVLのN末端に接続する。これらのscFvは、天然抗体の重鎖及び軽鎖に存在する定常領域(Fc)を欠いている。少なくとも2つの異なる抗原に特異的なこれらのscFvは、タンデムで配置され、膜貫通ドメインを介して共刺激ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインに連結される。ある実施形態では、抗原特異的結合領域と膜貫通ドメインとの間に細胞外スペーサードメインが連結されてもよい。
【0411】
さらなる実施形態では、CARの各抗原特異的標的化領域は、二価(divalent)(または二価(bivalent))一本鎖可変断片(di-scFv、bi-scFv)を含む。di-scFVを含むCARにおいて、各抗原に特異的な2つのscFvは、2つのVH領域及び2つのVL領域を有する単一のペプチド鎖を生成することによって一緒に連結されて、タンデムscFvを生み出す(Xiong,Cheng-Yi、Natarajan,A、Shi,X B、Denardo,G L、Denardo,S J(2006).“Development of tumor targeting anti-MUC-1 multimer:effects of di-scFv unpaired cysteine location on PEGylation and tumor binding”.Protein Engineering Design and Selection 19(8):359-367、Kufer,Peter、Lutterbuse,Ralf、Baeuerle,Patrick A.(2004).“A revival of bispecific antibodies”.Trends in Biotechnology 22(5):238-244)。少なくとも2つの抗原特異的標的化領域を含むCARは、2つの抗原の各々に特異的な2つのscFvを発現することになろう。結果として生じる、少なくとも2つの異なる抗原に特異的な抗原特異的標的化領域は、膜貫通ドメインを介して共刺激ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインにつながれている。ある実施形態では、抗原特異的結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に細胞外スペーサードメインが連結されてもよい。
【0412】
追加の実施形態では、CARの各抗原特異的標的化領域は、ダイアボディを含む。ダイアボディにおいて、scFvは、2つの可変領域を一緒に折り畳むには短すぎるリンカーペプチドを用いて作出され、これによりscFvの二量体化を強いる。さらにより短いリンカー(1つまたは2つのアミノ酸)は、三量体、いわゆるトリアボディまたはトリボディの形成につながる。テトラボディもまた使用されてもよい。
【0413】
いくつかの実施形態では、該細胞は、各CARが異なる標的抗原に向けられた抗原結合ドメインを有する、1つよりも多くのCAR、例えば2つの異なるCARを発現するように操作される。いずれのかかる実施形態のうちのいくつかでは、2つの異なる標的抗原は、上述した任意の2つの異なる抗原である。いくつかの実施形態では、これらの細胞外結合ドメインは異なり、(i)CD19及びCD20、(ii)CD20及びL1-CAM、(iii)L1-CAM及びGD2、(iv)EGFR及びL1-CAM、(v)CD19及びCD22、(vi)EGFR及びC-MET、(vii)EGFR及びHER2、(viii)C-MET及びHER2、または(ix)EGFR及びROR1からの2つの異なる抗原に結合する。
【0414】
いくつかの実施形態では、各々が異なるCARを導入操作された、提供される改変を含有する2つの異なる操作された細胞が調製される。いくつかの実施形態では、2つの異なるCARの各々は、異なる標的抗原に向けられた抗原結合ドメインを有する。いずれのかかる実施形態のうちのいくつかでは、2つの異なる標的抗原は、上述した任意の2つの異なる抗原である。いくつかの実施形態では、これらの細胞外結合ドメインは異なり、(i)CD19及びCD20、(ii)CD20及びL1-CAM、(iii)L1-CAM及びGD2、(iv)EGFR及びL1-CAM、(v)CD19及びCD22、(vi)EGFR及びC-MET、(vii)EGFR及びHER2、(viii)C-MET及びHER2、または(ix)EGFR及びROR1からの2つの異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、第1の標的抗原に対して向けられた第1のCARを発現する操作された細胞の集団(例えば、低免疫原性)及び第2の標的抗原に対して向けられた第2のCARを発現する操作された細胞の集団(例えば、低免疫原性)が、対象に別個に投与される。いくつかの実施形態では、第1の細胞の集団及び第2の細胞の集団は、任意の順序で順次に投与される。例えば、第2のCARを発現する細胞の集団は、第1のCARを発現する細胞の集団の投与後に投与される。
【0415】
H.スペーサー
いくつかの実施形態では、CARは、1つまたは複数のスペーサーをさらに含み、例えば、ここで、スペーサーは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間の第1のスペーサーである。いくつかの実施形態では、第1のスペーサーは、免疫グロブリン定常領域またはそのバリアントもしくは改変バージョンの少なくとも一部分を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、膜貫通ドメインとシグナル伝達ドメインとの間の第2のスペーサーである。いくつかの実施形態では、第2のスペーサーは、オリゴペプチドであり、例えば、ここで、オリゴペプチドは、限定されないがグリシン-セリンダブレット等のグリシン及びセリン残基を含む。いくつかの実施形態では、CARは、2つ以上のスペーサー、例えば、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間のスペーサー及び膜貫通ドメインとシグナル伝達ドメインとの間のスペーサーを含む。
【0416】
I.膜貫通ドメイン
いくつかの実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータ、もしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD28、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、またはそれらの機能的バリアントの少なくとも膜貫通領域を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8α、CD8β、4-1BB/CD137、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16、OX40/CD134、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD32、CD64、CD64、CD45、CD5、CD9、CD22、CD37、CD80、CD86、CD40、CD40L/CD154、VEGFR2、FAS、及びFGFR2B、またはそれらの機能的バリアントの少なくとも膜貫通領域(複数可)を含む。
【0417】
J.シグナル伝達ドメイン(複数可)
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARは、B7-1/CD80;B7-2/CD86;B7-H1/PD-L1;B7-H2;B7-H3;B7-H4;B7-H6;B7-H7;BTLA/CD272;CD28;CTLA-4;Gi24/VISTA/B7-H5;ICOS/CD278;PD-1;PD-L2/B7-DC;PDCD6);4-1BB/TNFSF9/CD137;4-1BBリガンド/TNFSF9;BAFF/BLyS/TNFSF13B;BAFF R/TNFRSF13C;CD27/TNFRSF7;CD27リガンド/TNFSF7;CD30/TNFRSF8;CD30リガンド/TNFSF8;CD40/TNFRSF5;CD40/TNFSF5;CD40リガンド/TNFSF5;DR3/TNFRSF25;GITR/TNFRSF18;GITRリガンド/TNFSF18;HVEM/TNFRSF14;LIGHT/TNFSF14;リンホトキシン-アルファ/TNF-ベータ;OX40/TNFRSF4;OX40リガンド/TNFSF4;RELT/TNFRSF19L;TACI/TNFRSF13B;TL1A/TNFSF15;TNF-アルファ;TNF RII/TNFRSF1B);2B4/CD244/SLAMF4;BLAME/SLAMF8;CD2;CD2F-10/SLAMF9;CD48/SLAMF2;CD58/LFA-3;CD84/SLAMF5;CD229/SLAMF3;CRACC/SLAMF7;NTB-A/SLAMF6;SLAM/CD150);CD2;CD7;CD53;CD82/Kai-1;CD90/Thy1;CD96;CD160;CD200;CD300a/LMIR1;HLAクラスI;HLA-DR;Ikaros;インテグリンアルファ4/CD49d;インテグリンアルファ4ベータ1;インテグリンアルファ4ベータ7/LPAM-1;LAG-3;TCL1A;TCL1B;CRTAM;DAP12;デクチン-1/CLEC7A;DPPIV/CD26;EphB6;TIM-1/KIM-1/HAVCR;TIM-4;TSLP;TSLP R;リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1);NKG2C、CD3ゼータドメイン、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、CD27、CD28、4-1BB、CD134/OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、リガンドであって、CD83と特異的に結合するもの、またはそれらの機能的断片のうちの1つまたは複数から選択される1つまたは少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを含む。
【0418】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。
【0419】
いくつかの実施形態では、CARは、共刺激ドメインであるシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、第2の共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、少なくとも2つの共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、少なくとも3つの共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、CD27、CD28、4-1BB、CD134/OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、リガンドであって、CD83と特異的に結合するもののうちの1つまたは複数から選択される共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARが2つ以上の共刺激ドメインを含む場合、2つの共刺激ドメインは、異なる。いくつかの実施形態では、CARが2つ以上の共刺激ドメインを含む場合、2つの共刺激ドメインは、同じである。
【0420】
他の実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。なおも他の実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0421】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つのシグナル伝達ドメインは、CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。他の実施形態では、少なくとも2つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。なおも他の実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0422】
いくつかの実施形態では、少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。他の実施形態では、少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。なおも他の実施形態では、少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0423】
いくつかの実施形態では、CARは、CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。いくつかの実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。
【0424】
いくつかの実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。
【0425】
いくつかの実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアント、及び/または(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。
【0426】
いくつかの実施形態では、CARは、(i)CD3ゼータドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカインまたは共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0427】
K.例となるCAR
いくつかの実施形態では、CARは、抗原(例えば、腫瘍抗原)に結合する細胞外抗原結合ドメイン(例えば、抗体、またはscFv等の抗体断片)、スペーサー(例えば、本明細書に記載されるいずれか等のヒンジドメインを含有する)、膜貫通ドメイン(例えば、本明細書に記載されるいずれか)、及び細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書に記載される一次シグナル伝達ドメインまたは共刺激シグナル伝達ドメイン等の任意の細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次細胞質シグナル伝達ドメインであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメイン)を追加的に含む。かかる構成要素のうちのいずれかは、上述したいずれかであり得る。
【0428】
CARの例となる構成要素の例が表3に記載される。提供される態様では、CARにおける各構成要素の配列は、表3に列挙される任意の組み合わせを含み得る。
【0429】
【表3】
【0430】
4.ポリヌクレオチドの発現を増加させる(例えば、過剰発現させる)方法
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの増加した発現は、様々な技法のうちのいずれによって実施されてもよい。例えば、遺伝子及び因子(タンパク質)の発現を調節するための方法には、ゲノム編集技術、及びRNAまたはタンパク質発現技術等が含まれる。これらの技術の全てについて、周知の組換え技法を使用して、本明細書に概説されるような組換え核酸が生成される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの過剰発現または発現の増加に向けた1つまたは複数の改変により操作される細胞は、本明細書に記載される任意の供給源細胞である。いくつかの実施形態では、供給源細胞は、第II.C節に記載される任意の細胞である。
【0431】
L.内在性遺伝子の発現の増加
いくつかの実施形態では、遺伝子の発現は、内在性遺伝子の活性を増加させる(例えば、外因性遺伝子の転写を増加させる)ことによって増加させられる。場合によっては、内在性遺伝子の活性は、内在性遺伝子に作動可能に連結されたプロモーターまたはエンハンサーの活性を増加させることによって増加させられる。いくつかの実施形態では、プロモーターまたはエンハンサーの活性を増加させることは、内在性プロモーターまたはエンハンサーに対して、内在性プロモーターまたはエンハンサーの活性を増加させる1つまたは複数の改変を行うことを含む。場合によっては、内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させることは、遺伝子の内在性プロモーターを改変することを含む。いくつかの実施形態では、内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させることは、異種プロモーターを導入することを含む。いくつかの実施形態では、異種プロモーターは、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(EBV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びUBCプロモーターからなる群から選択される。
【0432】
いくつかの実施形態では、標的遺伝子(例えば、CD47、または別の寛容原性因子)の発現は、(1)内在性CD47または他の遺伝子に特異的な部位特異的結合ドメイン、及び(2)転写活性化因子を含有する、融合タンパク質またはタンパク質複合体の発現によって増加させられる。
【0433】
いくつかの実施形態では、調節因子は、ガイドRNA(gRNA)等の部位特異的DNA結合核酸分子から構成される。いくつかの実施形態では、該方法は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)としても知られるジンクフィンガータンパク質(ZFP)またはZFPを含有する融合タンパク質等の、部位特異的DNA結合標的化タンパク質によって達成される。
【0434】
いくつかの実施形態では、調節因子は、標的領域にて遺伝子に特異的に結合またはハイブリダイズする、例えばDNA結合タンパク質またはDNA結合核酸を使用した、部位特異的結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、提供されるポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、改変ヌクレアーゼ等の部位特異的ヌクレアーゼに連結されるかまたはそれと複合体化される。例えば、いくつかの実施形態では、投与は、改変ヌクレアーゼ、例えば、メガヌクレアーゼまたはRNA誘導型ヌクレアーゼ、例えば、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖回文配列核酸(CRISPR)-Casシステム、例えば、CRISPR-Cas9システムのDNA標的化タンパク質を含む融合体を使用して成し遂げられる。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ活性を欠くように改変される。いくつかの実施形態では、改変ヌクレアーゼは、触媒的に死んだdCas9である。
【0435】
いくつかの実施形態では、部位特異的結合ドメインは、ヌクレアーゼに由来し得る。例えば、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevII、及びI-TevIII等のホーミングエンドヌクレアーゼ及びメガヌクレアーゼの認識配列。また、米国特許第5,420,032号、米国特許第6,833,252号、Belfort et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3379-3388、Dujon et al.,(1989)Gene 82:115-118、Perler et al,(1994)Nucleic Acids Res.22,1125-1127、Jasin(1996)Trends Genet.12:224-228、Gimble et al.,(1996)J.Mol.Biol.263:163-180、Argast et al,(1998)J.Mol.Biol.280:345-353、及びNew England Biolabsカタログも参照されたい。加えて、ホーミングエンドヌクレアーゼ及びメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然標的部位に結合するように操作され得る。例えば、Chevalier et al,(2002)Molec.Cell 10:895-905、Epinat et al,(2003)Nucleic Acids Res.31:2952-2962、Ashworth et al,(2006)Nature 441:656-659、Paques et al,(2007)Current Gene Therapy 7:49-66、米国特許公開第2007/0117128号を参照されたい。
【0436】
ジンクフィンガー、TALE、及びCRISPRシステムの結合ドメインは、例えば、天然型ジンクフィンガーまたはTALEタンパク質の認識ヘリックス領域を操作すること(1つまたは複数のアミノ酸を変化させること)によって、既定のヌクレオチド配列に結合するように「操作」され得る。操作されたDNA結合タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、天然に存在しないタンパク質である。設計のための合理的基準は、置換規則の適用、ならびに既存のZFP及び/またはTALE設計及び結合データの情報を格納するデータベース内の情報を処理するためのコンピュータ化アルゴリズムを含む。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号、及び同第6,534,261号を参照されたく、また、WO98/53058、WO98/53059、WO98/53060、WO02/016536、及びWO03/016496、ならびに米国公開第20110301073号も参照されたい。
【0437】
いくつかの実施形態では、部位特異的結合ドメインは、配列特異的様態でDNAに結合する1つもしくは複数のジンクフィンガータンパク質(ZFP)またはそのドメインを含む。ZFPまたはそのドメインは、亜鉛イオンの配位により構造が安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である、1つまたは複数のジンクフィンガーを介して配列特異的様態でDNAに結合するタンパク質、またはより大きなタンパク質内のドメインである。
【0438】
ZFPの中には、個々のフィンガーの集合によって生成される、典型的には9~18ヌクレオチド長の特異的DNA配列を標的とする人工ZFPドメインがある。ZFPには、単一のフィンガードメインの長さがおよそ30アミノ酸であり、単一のベータターンの2つのシステインとともに亜鉛へと配位結合した2つの不変のヒスチジン残基を含有するアルファヘリックスを含有し、2、3、4、5、または6つのフィンガーを有するものが含まれる。一般に、ZFPの配列特異性は、ジンクフィンガーの認識ヘリックス上の4つのヘリックス位置(-1、2、3、及び6)にてアミノ酸置換を行うことによって変化させてもよい。故に、いくつかの実施形態では、ZFPまたはZFP含有分子は、非天然型であり、例えば、選択する標的部位に結合するように操作される。例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135-141、Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313-340、Isalan et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656-660、Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632-637、Choo et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411-416、米国特許第6,453,242号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,503,717号、同第6,689,558号、同第7,030,215号、同第6,794,136号、同第7,067,317号、同第7,262,054号、同第7,070,934号、同第7,361,635号、同第7,253,273号、及び米国特許公開第2005/0064474号、同第2007/0218528号、同第2005/0267061号を参照されたく、全て参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0439】
多くの遺伝子特異的な操作されたジンクフィンガーが市販されている。例えば、Sangamo Biosciences(Richmond,CA,USA)は、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO,USA)と提携して、研究者がジンクフィンガーの構築及び検証を完全に省略することを可能にするジンクフィンガー構築のためのプラットフォーム(CompoZr)を開発し、何千ものタンパク質に対して特異的に標的化されたジンクフィンガーを提供する(Gaj et al.,Trends in Biotechnology,2013,31(7),397-405)。いくつかの実施形態では、市販のジンクフィンガーが使用されるか、またはカスタム設計される。
【0440】
いくつかの実施形態では、部位特異的結合ドメインは、転写活性化因子様タンパク質エフェクター(TALE)タンパク質にあるような、天然型または操作された(非天然型)転写活性化因子様タンパク質(TAL)のDNA結合ドメインを含む。例えば、米国特許公開第20110301073号(参照によりその全体が本明細書に援用される)を参照されたい。
【0441】
いくつかの実施形態では、部位特異的結合ドメインは、CRISPR/Casシステムに由来する。一般に、「CRISPRシステム」とは、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNAまたは活性な部分的tracrRNA)、tracrメイト配列(内在性CRISPRシステムの文脈において「ダイレクトリピート」及びtracrRNAによりプロセシングされた部分的ダイレクトリピートを包含する)、ガイド配列(内在性CRISPRシステムの文脈において「スペーサー」、または「標的化配列」とも称される)、及び/またはCRISPR遺伝子座からの他の配列及び転写物を含めた、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与するかまたはその活性を導く転写物及び他の要素を総称的に指す。
【0442】
一般に、ガイド配列は、標的配列とハイブリダイズして、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的結合を導くのに十分な標的ポリヌクレオチド配列との相補性を有するポリヌクレオチド配列を含む、標的化ドメインを含む。いくつかの実施形態では、ガイド配列とその対応する標的配列との間の相補性の程度は、好適なアライメントアルゴリズムを使用して最適にアライメントされたときに、約50%以上、約60%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約97.5%以上、約99%以上、またはそれを超える。いくつかの例では、gRNAの標的化ドメイン(例えば、標的化配列)は、標的核酸上の標的配列に相補的、例えば、少なくとも80、85、90、95、98、または99%相補的、例えば、完全に相補的である。
【0443】
いくつかの実施形態では、gRNAは、本明細書に記載されるいずれであってもよい。特定の実施形態では、gRNAは、CD47の標的部位に相補的である標的化配列、例えば、配列番号200784~231885(WO2016183041の表29、付録22)のうちのいずれか1つに記載のもの;HLA-Eの標的部位に相補的である標的化配列、例えば、配列番号189859~193183(WO2016183041の表19、付録12)のうちのいずれか1つに記載のもの;HLA-Fの標的部位に相補的である標的化配列、例えば、配列番号688808~699754(WO2016183041の表45、付録38)のうちのいずれか1つに記載のもの;HLA-Gの標的部位に相補的である標的化配列、例えば、配列番号188372~189858(WO2016183041の表18、付録11)のうちのいずれか1つに記載のもの;またはPD-L1の標的部位に相補的である標的化配列、例えば、配列番号193184~200783(WO2016183041の表21、付録14)のうちのいずれか1つに記載のものを有する。
【0444】
いくつかの実施形態では、標的部位は、標的遺伝子の転写開始部位の上流にある。いくつかの実施形態では、標的部位は、遺伝子の転写開始部位に隣接している。いくつかの実施形態では、標的部位は、遺伝子の転写開始部位の下流のRNAポリメラーゼ休止部位に隣接している。
【0445】
いくつかの実施形態では、標的化ドメインは、転写開始、1つもしくは複数の転写エンハンサーもしくは活性化因子、及び/またはRNAポリメラーゼの結合を促進するための標的遺伝子のプロモーター領域を標的とするように構成される。1つまたは複数のgRNAを使用して、遺伝子のプロモーター領域を標的化することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子の1つまたは複数の領域を標的化することができる。ある特定の態様では、標的部位は、遺伝子の転写開始部位(TSS)のいずれかの側の600塩基対以内にある。
【0446】
エクソン配列ならびにプロモーター及び活性化因子を含む調節領域の配列を含めた、遺伝子を標的とする配列であるかまたはその配列を含むgRNA配列(すなわちgRNA標的化配列)を設計または同定することは、当業者の技能水準の範囲内にある。CRISPRゲノム編集のためのゲノム全域にわたるgRNAデータベースが一般公開されており、これは、ヒトゲノムまたはマウスゲノムにおける遺伝子の構成的エクソン内の例となる単一ガイドRNA(sgRNA)標的配列を含む(例えば、genescript.com/gRNA-database.htmlを参照されたく、また、Sanjana et al.(2014)Nat.Methods,11:783-4、www.e-crisp.org/E-CRISP/、crispr.mit.edu/も参照されたい)。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、非標的遺伝子へのオフターゲット結合が最小である標的化配列であるか、またはそれを含む。
【0447】
いくつかの実施形態では、調節因子は、機能的ドメイン、例えば、転写活性化因子をさらに含む。
【0448】
いくつかの実施形態では、転写活性化因子は、標的遺伝子の1つまたは複数の転写調節要素等の1つまたは複数の調節要素であるか、またはそれを含有し、それによって、上記で提供されるような部位特異的ドメインが認識されて、かかる遺伝子の発現を駆動する。いくつかの実施形態では、転写活性化因子は、標的遺伝子の発現を駆動する。場合によっては、転写活性化因子は、異種トランス活性化ドメインの全部または一部分であり得るか、またはそれを含有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、転写活性化因子は、単純ヘルペス由来トランス活性化ドメイン、Dnmt3aメチルトランスフェラーゼドメイン、p65、VP16、及びVP64から選択される。
【0449】
いくつかの実施形態では、調節因子は、ジンクフィンガー転写因子(ZF-TF)である。いくつかの実施形態では、調節因子は、VP64-p65-Rta(VPR)である。
【0450】
ある特定の実施形態では、調節因子は、転写調節ドメインをさらに含む。一般的なドメインには、例えば、転写因子ドメイン(活性化因子、抑制因子、共活性化因子、共抑制因子)、サイレンサー、発がん遺伝子(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバー等);DNA修復酵素ならびにそれらの関連因子及び改変因子;DNA再構成酵素ならびにそれらの関連因子及び改変因子;クロマチン関連タンパク質及びそれらの改変因子(例えば、キナーゼ、アセチラーゼ、及びデアセチラーゼ);ならびにDNA改変酵素(例えば、DNMTファミリーのメンバー等のメチルトランスフェラーゼ(例えば、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B、DNMT3L等、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)ならびにそれらの関連因子及び改変因子が含まれる。例えば、米国公開第2013/0253040号(参照によりその全体が本明細書に援用される)を参照されたい。
【0451】
活性化を達成するのに好適なドメインには、HSV VP16活性化ドメイン(例えば、Hagmann et al,J.Virol.71,5952-5962(197)を参照されたい)、核内ホルモン受容体(例えば、Torchia et al.,Curr.Opin.Cell.Biol.10:373-383(1998)を参照されたい)、核内因子カッパBのp65サブユニット(Bitko & Bank,J.Virol.72:5610-5618(1998)及びDoyle & Hunt,Neuroreport 8:2937-2942(1997))、Liu et al.,Cancer Gene Ther.5:3-28(1998))、またはVP64等の人工キメラ機能的ドメイン(Beerli et al.,(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:14623-33)、及びデグロン(Molinari et al.,(1999)EMBO J.18,6439-6447)が含まれる。追加の例となる活性化ドメインには、Oct1、Oct-2A、Spl、AP-2、及びCTF1(Seipel et al,EMBOJ.11,4961-4968(1992)、ならびにp300、CBP、PCAF、SRC1 PvALF、AtHD2A、及びERF-2が含まれる。例えば、Robyr et al,(2000)Mol.Endocrinol.14:329-347、Collingwood et al,(1999)J.Mol.Endocrinol 23:255-275、Leo et al,(2000)Gene 245:1-11、Manteuffel-Cymborowska(1999)Acta Biochim.Pol.46:77-89、McKenna et al,(1999)J.Steroid Biochem.Mol.Biol.69:3-12、Malik et al,(2000)Trends Biochem.Sci.25:277-283、及びLemon et al,(1999)Curr.Opin.Genet.Dev.9:499-504を参照されたい。追加の例となる活性化ドメインには、OsGAI、HALF-1、Cl、AP1、ARF-5、-6、-1、及び-8、CPRF1、CPRF4、MYC-RP/GP、ならびにTRAB1が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Ogawa et al,(2000)Gene 245:21-29、Okanami et al,(1996)Genes Cells 1:87-99、Goff et al,(1991)Genes Dev.5:298-309、Cho et al,(1999)Plant Mol Biol 40:419-429、Ulmason et al,(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:5844-5849、Sprenger-Haussels et al,(2000)Plant J.22:1-8、Gong et al,(1999)Plant Mol.Biol.41:33-44、及びHobo et al.,(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:15,348-15,353を参照されたい。
【0452】
遺伝子抑制因子を作製するために使用され得る、例となる抑制ドメインには、KRAB A/B、KOX、TGF-ベータ誘導性初期遺伝子(TIEG)、v-erbA、SID、MBD2、MBD3、DNMTファミリーのメンバー(例えば、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B、DNMT3L等)、Rb、及びMeCP2が含まれるが、これらに限定されない。例えば、Bird et al,(1999)Cell 99:451-454、Tyler et al,(1999)Cell 99:443-446、Knoepfler et al,(1999)Cell 99:447-450、及びRobertson et al,(2000)Nature Genet.25:338-342を参照されたい。追加の例となる抑制ドメインには、ROM2及びAtHD2Aが含まれるが、これらに限定されない。例えば、Chem et al,(1996)Plant Cell 8:305-321、及びWu et al,(2000)Plant J.22:19-27を参照されたい。
【0453】
いくつかの事例では、ドメインは、染色体の後成的調節に関与する。いくつかの実施形態では、ドメインは、核局在性のヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)(例えば、A型)、例えば、MYSTファミリーメンバーMOZ、Ybf2/Sas3、MOF、及びTip60、GNATファミリーメンバーGcn5またはpCAF、p300ファミリーメンバーCBP、p300、またはRtt109(Bemdsen and Denu(2008)Curr Opin Struct Biol 18(6):682-689)である。他の事例では、ドメインは、ヒストンデアセチラーゼ(HD AC)、例えば、クラスI(HDAC-1、2、3、及び8)、クラスII(HDAC IIA(HDAC-4、5、7及び9)、HD AC IIB(HDAC 6及び10))、クラスIV(HDAC-l 1)、クラスIII(サーチュイン(SIRT)としても公知;SIRT1~7)である(Mottamal et al.,(2015)Molecules 20(3):3898-3941を参照されたい)。いくつかの実施形態で使用される別のドメインは、ヒストンホスホリラーゼまたはキナーゼであり、例としては、MSK1、MSK2、ATR、ATM、DNA-PK、Bubl、VprBP、IKK-a、PKCpi、Dik/Zip、JAK2、PKC5、WSTF、及びCK2が挙げられる。いくつかの実施形態では、メチル化ドメインが使用され、これはEzh2、PRMT1/6、PRMT5/7、PRMT 2/6、CARM1、set7/9、MLL、ALL-1、Suv 39h、G9a、SETDB1、Ezh2、Set2、Dotl、PRMT1/6、PRMT5/7、PR-Set7、及びSuv4-20h等の群から選定され得る。SUMO化及びビオチン化に関与するドメイン(Lys9、13、4、18、及び12)もまたいくつかの実施形態で使用され得る(概説については、Kousarides(2007)Cell 128:693-705を参照されたい)。
【0454】
融合分子は、当業者に周知されているクローニング方法及び生化学的コンジュゲーション方法によって構築される。融合分子は、DNA結合ドメイン及び機能的ドメイン(例えば、転写活性化または抑制ドメイン)を含む。融合分子はまた、任意選択で、核局在化シグナル(例えば、SV40中型T抗原からのシグナル等)及びエピトープタグ(例えば、FLAG及びヘマグルチニン等)を含む。融合タンパク質(及びそれらをコードする核酸)は、融合体の構成要素の間で翻訳リーディングフレームが保存されるように設計される。
【0455】
一方で機能的ドメイン(またはその機能的断片)のポリペプチド構成要素と、他方で非タンパク質DNA結合ドメイン(例えば、抗生物質、インターカレーター、副溝結合剤、核酸)との間の融合体は、当業者に既知の生化学的コンジュゲーション方法によって構築される。例えば、Pierce Chemical Company(Rockford,IL)Catalogueを参照されたい。副溝結合剤とポリペプチドとの間の融合体を作製するための方法及び組成物が記載されている。Mapp et al,(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:3930-3935。同様に、ポリペプチド構成要素である機能ドメインと関連付けてsgRNA核酸である構成要素を含むCRISPR/Cas TF及びヌクレアーゼもまた、当業者に既知であるとともに、本明細書に詳述される。
【0456】
M.外因性ポリペプチド
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの増加した発現(すなわち過剰発現)は、過剰発現させるポリヌクレオチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを細胞内に導入することによって媒介される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、組換え核酸である。周知の組換え技法を使用して、本明細書に概説されるような組換え核酸を生成することができる。いくつかの実施形態では、本明細書の外因性ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドは、コドン最適化された核酸配列を含む。
【0457】
ある特定の実施形態では、寛容原性因子またはキメラ抗原受容体等の外因性ポリペプチドをコードする組換え核酸は、発現構築物において1つまたは複数の制御ヌクレオチド配列に作動可能に連結されてもよい。調節ヌクレオチド配列は、一般に、宿主細胞及び処置されるレシピエント対象に適切であろう。様々な宿主細胞に対して、数多くの種類の適切な発現ベクター及び好適な調節配列が当該技術分野で既知である。典型的には、1つまたは複数の調節ヌクレオチド配列には、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始及び終結配列、翻訳開始及び終結配列、ならびにエンハンサーまたは活性化因子配列が含まれ得るが、これらに限定されない。当該技術分野で既知であるような構成的または誘導性プロモーターもまた企図される。プロモーターは、天然型プロモーター、または1つよりも多くのプロモーターの要素を組み合わせたハイブリッドプロモーターのいずれであってもよい。発現構築物は、細胞においてプラスミド等のエピソーム上に存在してもよいし、または発現構築物は、染色体内に挿入されてもよい。具体的な実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするための選択可能マーカー遺伝子を含む。ある特定の実施形態は、少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結されたバリアントポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、発現ベクターを含む。本明細書で使用するための調節配列には、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御要素が含まれる。ある特定の実施形態では、発現ベクターは、形質転換される宿主細胞、発現させることが望まれる特定のバリアントポリペプチド、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、及び/またはベクターによってコードされる任意の他のタンパク質、例えば、抗生物質マーカーの発現の選定に対して設計される。
【0458】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、操作された細胞における外因性ポリヌクレオチドの発現用のプロモーターに作動可能に連結されている。好適な哺乳類プロモーターの例としては、例えば、以下の遺伝子からのプロモーター、すなわち、伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーター、ハムスターのユビキチン/S27aプロモーター(WO97/15664)、サル空胞ウイルス40(SV40)初期プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、マウスメタロチオネイン-Iプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の長鎖末端反復配列領域、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター(MMTV)、モロニーマウス白血病ウイルス長鎖末端反復配列領域、及びヒトサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモーターが挙げられる。他の異種哺乳類プロモーターの例は、アクチン、免疫グロブリン、または熱ショックプロモーター(複数可)である。追加の実施形態では、哺乳類宿主細胞において使用するためのプロモーターは、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(1989年7月5日に公開されたUK2,211,504)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、及びサルウイルス40(SV40)等のウイルスのゲノムから得ることができる。さらなる実施形態では、異種哺乳類プロモーターが使用される。例としては、アクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、及び熱ショックプロモーターが挙げられる。SV40の初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として好都合に得られる(Fiers et al,Nature 273:113-120(1978))。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII制限酵素断片として好都合に得られる(Greenaway et al,Gene 18:355-360(1982))。前述の参考文献は、参照によりそれらの全体が援用される。
【0459】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは、バイシストロン性またはマルチシストロン性発現ベクターである。バイシストロン性またはマルチシストロン性発現ベクターは、(1)オープンリーディングフレームの各々に融合された複数のプロモーター、(2)遺伝子の間のスプライシングシグナルの挿入、(3)発現が単一のプロモーターによって駆動される遺伝子の融合、及び/または(4)遺伝子の間のタンパク質分解切断部位の挿入(自己切断ペプチド)もしくは遺伝子の間の内部リボソーム進入部位(IRES)の挿入を含んでもよい。
【0460】
いくつかの実施形態では、本明細書の発現ベクターまたは構築物は、マルチシストロン性構築物である。「マルチシストロン性構築物」及び「マルチシストロン性ベクター」という用語は、本明細書で互換的に使用され、単一のmRNA分子へと転写されることになり、この単一のmRNA分子が2つ以上の遺伝子(例えば、2つ以上の導入遺伝子)をコードする、組換えDNA構築物を指す。マルチシストロン性構築物は、それが2つの遺伝子をコードする場合はバイシストロン性構築物、それが3つの遺伝子をコードする場合はトリシストロン性構築物、それが4つの遺伝子をコードする場合はクワドロシストロン性構築物と称され、以下同様である。
【0461】
いくつかの実施形態では、ベクターまたは構築物(例えば、導入遺伝子)に含まれる2つ以上の外因性ポリヌクレオチドは各々、マルチシストロン性分離要素によって隔てられている。いくつかの実施形態では、マルチシストロン性分離要素は、IRESまたは切断可能ペプチドもしくはリボソームスキップ要素をコードする配列である。いくつかの実施形態では、マルチシストロン性分離要素は、脳心筋炎(EMCV)ウイルスのIRES等のIRESである。いくつかの実施形態では、マルチシストロン性分離要素は、2Aペプチド等の切断可能ペプチドである。例となる2Aペプチドには、P2Aペプチド、T2Aペプチド、E2Aペプチド、及びF2Aペプチドが含まれる。いくつかの実施形態では、切断可能ペプチドは、T2Aである。いくつかの実施形態では、2つ以上の外因性ポリヌクレオチド(例えば、第1の外因性ポリヌクレオチド及び第2の外因性ポリヌクレオチド)は、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチド及び第2の外因性ポリヌクレオチドは各々、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモーターは、同じプロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、EF1プロモーターである。
【0462】
場合によっては、外因性ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載の寛容原性因子または補体インヒビターをコードする外因性ポリヌクレオチド)は、マルチシストロン性ベクターによってコードされる外因性ポリペプチドのN末端またはC末端にて、T2A等の切断可能ペプチドまたはリボソームスキップ要素をコードする。いくつかの実施形態では、切断可能ペプチドまたはリボソームスキップ要素の組み込みは、単一の翻訳開始部位からの2つ以上のポリペプチドの発現を可能にする。いくつかの実施形態では、切断可能ペプチドは、T2Aである。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号11によって記載のアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号12によって記載のアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号17によって記載のアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号18によって記載のアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。
【0463】
いくつかの実施形態では、ベクターまたは構築物は、外因性ポリヌクレオチドの1つまたは複数の転写単位の発現を駆動する単一のプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、かかるベクターまたは構築物は、マルチシストロン性(バイシストロン性またはトリシストロン性、例えば、米国特許第6,060,273号を参照されたい)であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、転写単位は、単一のプロモーターから転写されるRNAからの遺伝子産物(例えば、CD47等の1つもしくは複数の寛容原性因子及び/またはCD46、CD59、及びCD55等の1つもしくは複数の補体インヒビター)の共発現を可能にする、IRES(内部リボソーム進入部位)を含有するバイシストロン性単位として設計され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるベクターまたは構築物は、バイシストロン性であり、ベクターまたは構築物が2つの別個のポリペプチドを発現することを可能にする。場合によっては、ベクターまたは構築物によってコードされる2つの別個のポリペプチドは、寛容原性因子(例えば、CD47、DUX4、CD24、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、IL-39、FasL、CCL21、CCL22、Mfge8、及びSerpinb9から選択される2つの因子)である。場合によっては、ベクターまたは構築物によってコードされる2つの別個のポリペプチドは、CD46及びCD59である。いくつかの実施形態では、ベクターまたは構築物によってコードされる2つの別個のポリペプチドは、寛容原性因子(例えば、CD47)ならびにCD46、CD59、及びCD55から選択される補体インヒビターである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるベクターまたは構築物は、トリシストロン性であり、ベクターまたは構築物が3つの別個のポリペプチドを発現することを可能にする。場合によっては、トリシストロン性ベクターまたは構築物の3つの核酸配列は、CD47、CD46、及びCD59等の寛容原性因子である。場合によっては、トリシストロン性ベクターまたは構築物の3つの核酸配列は、CD46、CD59、及びCD55である。場合によっては、トリシストロン性ベクターまたは構築物の3つの核酸配列は、CD47、DUX4、CD24、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、IL-39、FasL、CCL21、CCL22、Mfge8、及びSerpinb9から選択される3つの寛容原性因子である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるベクターまたは構築物は、クワドロシストロン性であり、ベクターまたは構築物が4つの別個のポリペプチドを発現することを可能にする。場合によっては、クワドロシストロン性ベクターまたは構築物の4つの別個のポリペプチドは、CD47、CD46、CD59、及びCD55である。場合によっては、クワドロシストロン性ベクターまたは構築物の4つの別個のポリペプチドは、CD47、DUX4、CD24、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、IL-39、FasL、CCL21、CCL22、Mfge8、及びSerpinb9から選択される4つの寛容原性因子である。
【0464】
いくつかの実施形態では、該細胞は、1つまたは複数のベクターまたは構築物を含み、ここで、各ベクターまたは構築物は、上述したようなモノシストロン性またはマルチシストロン性構築物であり、モノシストロン性またはマルチシストロン性構築物は、1つまたは複数の寛容原性因子、補体インヒビター、及び/またはCAR等の他のポリペプチドを任意の組み合わせまたは順序でコードする。
【0465】
いくつかの実施形態では、単一のプロモーターが、自己切断ペプチド(例えば、2A配列)またはプロテアーゼ認識部位(例えば、フーリン)をコードする配列によって互いに隔てられた2つ、3つ、または4つの遺伝子(例えば、寛容原性因子(例えば、CD47)及び/またはCD46、CD59、及びCD55から選択される1つもしくは複数の補体インヒビターをコードする)を単一のオープンリーディングフレーム(ORF)に含有するRNAの発現を導く。故に、ORFは、単一のポリペプチドをコードし、これが翻訳中(2Aの場合)または翻訳後のいずれかに、個々のタンパク質へとプロセスされる。場合によっては、T2A等のペプチドは、リボソームに2A要素のC末端におけるペプチド結合の合成をスキップさせて(リボソームスキッピング)、2A配列の末端と下流にある次のペプチドとの間の分離をもたらすことができる(例えば、de Felipe.Genetic Vaccines and Ther.2:13(2004)及びdeFelipe et al.Traffic 5:616-626(2004)を参照されたい)。多くの2A要素が当該技術分野で既知である。本明細書に開示される方法及び核酸において使用され得る2A配列の例としては、限定されないが、米国特許公開第20070116690号に記載されるような口蹄疫ウイルスからの2A配列(F2A、例えば、配列番号16)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A、例えば、配列番号15)、ゾセア・アシグナ(thosea asigna)ウイルス(T2A、例えば、配列番号11、12、17、または18)、及びブタテシオウイルス-1(P2A、例えば、配列番号13または14)が含まれる。
【0466】
ベクターまたは構築物(例えば、導入遺伝子)が、タンパク質をコードする1つよりも多くの核酸配列、例えば、CD46をコードする第1の外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする第2の外因性ポリヌクレオチド、またはCD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチド、CD56をコードする第2の外因性ポリヌクレオチド、及びCD59をコードする第3の外因性ポリヌクレオチドを含有する場合には、ベクターまたは構築物(例えば、導入遺伝子)は、第1の外因性ポリヌクレオチド配列と第2の外因性ポリヌクレオチド配列の間のペプチドをコードする核酸配列をさらに含んでもよい。場合によっては、第1の外因性ポリヌクレオチドと第2の外因性ポリヌクレオチドとの間に位置付けられる核酸配列は、翻訳中または翻訳後に第1の外因性ポリヌクレオチド及び第2の外因性ポリヌクレオチドの翻訳産物を隔てるペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、ペプチドは、T2Aペプチド等の、自己切断型ペプチドまたはリボソームスキッピングを引き起こすペプチド(リボソームスキップ要素)を含有する。いくつかの実施形態では、切断可能ペプチドまたはリボソームスキップ要素の組み込みは、単一の翻訳開始部位からの2つ以上のポリペプチドの発現を可能にする。いくつかの実施形態では、ペプチドは、T2Aペプチドである自己切断型ペプチドである。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号11によって記載のアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号12によって記載のアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号17によって記載のアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、T2Aは、配列番号18によって記載のアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。
【0467】
本明細書に記載のポリヌクレオチドを細胞内に導入するプロセスは、任意の好適な技法によって達成することができる。好適な技法には、リン酸カルシウムまたは脂質媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、フソゲン、及びウイルスベクターを使用した形質導入または感染が含まれる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ウイルス形質導入を介して細胞内に導入されるか(例えば、レンチウイルス形質導入)、またはウイルスベクター上で別様に送達される(例えば、フソゲン媒介性送達)。好適な技法には、リン酸カルシウムまたは脂質媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスポザーゼ媒介性送達、及びウイルスベクターを使用した形質導入または感染が含まれる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ウイルス形質導入を介して細胞内に導入されるか(例えば、レンチウイルス形質導入)、またはウイルスベクター上で別様に送達される(例えば、フソゲン媒介性送達)。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドをパッケージするベクターを使用して、パッケージされたポリヌクレオチドを細胞または細胞の集団に送達してもよい。これらのベクターは、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、ウイルスベクター、及び粒子を含めた任意の種類のものであってよい。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子を使用して、外因性ポリヌクレオチドを細胞に送達することができる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターを使用して、外因性ポリヌクレオチドを細胞に送達することができる。ウイルスベクター技術は周知されており、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)に記載される。ベクターとして有用であるウイルスには、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、腫瘍溶解性ウイルス等が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細胞内への外因性ポリヌクレオチドの導入は、特異的(標的化)または非特異的(例えば、非標的化)であり得る。いくつかの実施形態では、細胞内への外因性ポリヌクレオチドの導入は、細胞内のゲノムへの組み込みまたは挿入をもたらし得る。他の実施形態では、導入された外因性ポリヌクレオチドは、細胞において非組み込み型またはエピソーム型であり得る。当業者は、本明細書に記載の例となる方法のうちのいずれも含めて、核酸導入遺伝子を細胞内に導入する方法に精通しており、好適な方法を選定することができる。
【0468】
1)非標的化送達
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、様々な非標的化方法のうちのいずれかによって細胞(例えば、供給源細胞)内に導入される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、宿主細胞のランダムなゲノム遺伝子座内に挿入される。当業者に知られているように、例えば、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターを含めたウイルスベクターは、遺伝物質を宿主細胞内に送達するとともに、遺伝子の安定な発現及び複製を容易にするための外来または外因性遺伝子を宿主細胞のゲノム内にランダムに挿入するために一般的に使用される。いくつかの実施形態では、細胞内への外因性ポリヌクレオチドの非標的化導入は、細胞における外因性ポリヌクレオチドの安定な発現に向けた条件下にある。いくつかの実施形態では、細胞における安定な発現に向けて核酸を導入するための方法は、核酸が組み込まれた細胞が分裂する場合にそれが伝播され得るように、細胞のゲノム内への核酸の安定な組み込みをもたらす任意の方法を伴う。
【0469】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。レンチウイルスベクターは、送達された核酸転写物内に含まれる遺伝子の安定な発現を可能にすることから、ウイルス形質導入を成功させるために特に有用な手段である。レンチウイルスベクターは、送達された核酸転写物内に含まれる遺伝子の安定な発現に必要とされる2つの酵素である逆転写酵素及びインテグラーゼを発現する。逆転写酵素は、RNA転写物をDNAへと転換する一方で、インテグラーゼは、DNAを標的細胞のゲノム内に挿入し、組み込む。ひとたびDNAがゲノム内に安定に組み込まれると、それは宿主とともに分裂する。組み込まれたDNA内に含まれる目的の遺伝子は、構成的に発現してもよいし、またはそれは誘導性であってもよい。宿主細胞のゲノムの一部として、それは標的細胞における多くの因子に応じて、活性化または抑制を含めた細胞調節の対象となり得る。
【0470】
レンチウイルスは、宿主ゲノム内への組み込み前にウイルスRNAゲノムのDNAへの逆転写が必要とされることから命名されたレトロウイルス科のウイルスの亜群である。かくして、レンチウイルスビヒクル/粒子の最も重要な特徴は、それらの遺伝物質の標的/宿主細胞のゲノム内への組み込みである。レンチウイルスのいくつかの例としては、ヒト免疫不全ウイルス:HIV-1及びHIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ジェンブラナ病ウイルス(JDV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ウマ伝染性貧血、ウイルス、マエディ・ビスナ、ならびにヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)が挙げられる。
【0471】
典型的には、遺伝子送達ビヒクルを構成するレンチウイルス粒子は、それ自体では複製欠損性である(「自己不活性型」とも称される)。レンチウイルスは、無傷の宿主の核膜を通した侵入機構のため、分裂細胞及び非分裂細胞の両方に感染することができる(Naldini L et al.,Curr.Opin.Bioiecknol,1998,9:457-463)。組換えレンチウイルスビヒクル/粒子は、HIV病原性遺伝子を複数回弱毒化することによって生成されており、例えば、遺伝子Env、Vif、Vpr、Vpu、Nef、及びTatを欠失させることにより、ベクターは生物学的に安全なものにされる。相応して、例えばHIV-1/HIV-2に由来する、レンチウイルスビヒクルは、非分裂細胞内への導入遺伝子の効率的な送達、組み込み、及び長期発現を媒介し得る。
【0472】
レンチウイルス粒子は、ヒトHEK293T細胞等のプロデューサー細胞においてウイルスパッケージング要素及びベクターゲノム自体を共発現させることによって生成されてもよい。これらの要素は、通常は、3つ(第2世代レンチウイルスシステムにおける)または4つの別個のプラスミド(第3世代レンチウイルスシステムにおける)において提供される。プロデューサー細胞は、ウイルスのコア(すなわち構造タンパク質)及び酵素成分、ならびにエンベロープタンパク質(複数可)(パッケージングシステムと称される)を含むレンチウイルス構成要素をコードするプラスミドと、標的細胞に移入されることになる外来導入遺伝子を含むゲノム、ビヒクル自体(移入ベクターとも称される)をコードするプラスミドとでコトランスフェクトされる。一般に、プラスミドまたはベクターは、プロデューサー細胞株に含められる。プラスミド/ベクターは、トランスフェクション、形質導入、または感染を介してプロデューサー細胞株内に導入される。トランスフェクション、形質導入、または感染のための方法は、当業者に周知されている。非限定的な例として、パッケージング及び移入構築物は、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションによって、通常はネオマイシン(neo)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、グルタミンシンテターゼまたはアデノシンデアミナーゼ(ADA)等の優性選択可能マーカーと一緒にプロデューサー細胞株内に導入され得、続いて適切な薬物の存在下での選択、及びクローンの単離が行われる。
【0473】
プロデューサー細胞は、外来遺伝子、例えば、外因性ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドを含有する、組換えウイルス粒子を産生する。組換えウイルス粒子は、培養培地から回収され、当業者によって使用される標準的な方法によって力価測定される。組換えレンチウイルスビヒクルを使用して、標的細胞を感染させることができ、かかる供給源細胞には第II.C節に記載されるいずれかが含まれる。
【0474】
高力価のレンチウイルス粒子を産生させるために使用され得る細胞には、HEK293T細胞、293G細胞、STAR細胞(Relander et al.,Mol Ther.2005,11:452-459)、FreeStyle(商標)293発現システム(ThermoFisher,Waltham,MA)、及び他のHEK293Tベースのプロデューサー細胞株が含まれ得るが、これらに限定されない(例えば、Stewart et al.,Hum Gene Ther._2011,2,2.(3):357~369、Lee et al,Biotechnol Bioeng,2012,10996):1551-1560、Throm et al..Blood.2009,113(21):5104-5110)。
【0475】
レンチウイルス粒子中で提供される追加の要素は、5’末端または3’末端のいずれかにおけるレトロウイルスLTR(長い末端反復)、レトロウイルス輸送要素、任意選択でレンチウイルス逆応答要素(RRE)、プロモーターまたはその活性部分、及び遺伝子座制御領域(LCR)またはその活性部分を含み得る。他の要素には、非分裂細胞における形質導入効率を改善するための中央ポリプリントラクト(cPPT)配列、導入遺伝子の発現を強化し、力価を増加させるウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節要素(WPRE)が含まれる。
【0476】
組換えレンチウイルス粒子を生成するための方法は、当業者に既知である(例えば、米国特許第8,846,385号、同第7,745,179号、同第7,629,153号、同第7,575,924号、同第7,179,903号、及び同第6,808,905号)。使用されるレンチウイルスベクターは、pLVX、pLenti、pLenti6、pLJMl、FUGW、pWPXL、pWPI、pLenti CMV puro DEST、pLJMl-EGFP、pULTRA、pInducer2Q、pHIV-EGFP、pCW57.1、pTRPE、pELPS、pRRL、及びpLionIIから選択され得るが、これらに限定されない。任意の既知のレンチウイルスビヒクルもまた使用されてもよい(米国特許第9,260,725号、同第9,068,199号、同第9,023,646号、同第8,900,858号、同第8,748,169号、同第8,709,799号、同第8,420,104号、同第8,329,462号、同第8,076,106号、同第6,013,516号、及び同第5,994,136号、国際特許公開第WO2012079000号を参照されたい)。
【0477】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、細胞の一過性発現に向けた条件下で、例えば、外因性ポリヌクレオチドのエピソーム送達をもたらす方法によって細胞内に導入される。
【0478】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター中にパッケージされてもよい。かかるベクターまたはウイルス粒子は、既知の血清型カプシドまたは血清型カプシドの組み合わせのうちのいずれかを利用するように設計され得る。血清型カプシドには、いずれの同定されたAAV血清型及びそのバリアント、例えば、AAV1、AAV2、AAV2G9、AAV3、AAV4、AAV4-4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、及びAAVrh10からのカプシドが含まれ得る。いくつかの実施形態では、AAV血清型は、米国公開第US20030138772号、Pulicherla et al.Molecular Therapy,2011,19(6):1070-1078、米国特許第6,156,303号、同第7,198,951号、米国特許公開第US2015/0159173号及び同第US2014/0359799号、ならびに国際特許公開第WO1998/011244号、WO2005/033321号、及び同第WO2014/14422号に記載されるような配列であり得るか、またはそれを有し得る。
【0479】
AAVベクターには、一本鎖ベクターのみならず、自己相補的AAVベクター(scAAV)も含まれる。scAAVベクターはDNAを含有し、これが一緒にアニーリングして二本鎖ベクターゲノムを形成する。第2の鎖の合成をスキップすることによって、scAAVは、細胞における迅速な発現を可能にする。rAAVベクターは、sf9昆虫細胞において、またはHEK293細胞等のヒト細胞の浮遊細胞培養物中で、当該技術分野における標準的な方法、例えば、三重トランスフェクションによって製造されてもよい。
【0480】
いくつかの実施形態では、非ウイルスベースの方法が使用されてもよい。例えば、いくつかの態様では、ポリヌクレオチドを含むベクターは、針、エレクトロポレーション、ソノポレーション、ハイドロポレーション等の物理的方法、無機粒子(例えば、リン酸カルシウム、シリカ、金)等の化学担体及び/または化学的方法による、非ウイルス法によって細胞に移入されてもよい。他の態様では、カチオン性脂質、脂質ナノエマルション、ナノ粒子、ペプチドベースのベクター、またはポリマーベースのベクター等の、合成または天然の生分解性物質が送達に使用されてもよい。
【0481】
2)標的化送達
外因性ポリヌクレオチドは、細胞の任意の好適な標的ゲノム遺伝子座内に挿入され得る。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、標的遺伝子座内への標的化組み込みによって細胞内に導入される。いくつかの実施形態では、標的化組み込みは、相同性依存的組換えまたは相同性非依存的組換えを伴うプロセスで1つまたは複数のヌクレアーゼ及び/またはニッカーゼならびにドナー鋳型を使用した遺伝子編集によって達成され得る。
【0482】
例えば、相同性指向修復(HOR)、相同性媒介性末端結合(HMEJ)、相同性非依存的標的化組み込み(HITI)、偏性ライゲーションゲート型組換え(ObliGaRe)、または標的染色体内への正確な組み込み(PITCh)を含めた、いくつかの遺伝子編集法を使用して、外因性ポリヌクレオチドを選択の特異的ゲノム遺伝子座内に挿入することができる。
【0483】
いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、ゲノム内の所望の位置(例えば、標的部位)にて特異的二本鎖切断(DSB)を作出し、細胞の内在性機構を利用して、誘導された切断を修復する。ニッカーゼは、ゲノム内の所望の位置にて特異的一本鎖切断を作出する。非限定的な一例では、2つのニッカーゼを使用して、標的DNAの相対する鎖上に2つの一本鎖切断を作出し、それによって平滑または粘着末端を生じさせることができる。CRISPR関連タンパク質(Cas)ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、他のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼ、それらのバリアント、それらの断片、及びそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、任意の好適なヌクレアーゼが、標的DNA配列のゲノム編集を誘導するために細胞内に導入され得る。いくつかの実施形態では、内在性ゲノム標的遺伝子座、例えば、セーフハーバー遺伝子座におけるまたはその近くの配列に相同である相同性配列(例えば、相同性アーム)が両側に位置する外因性ポリヌクレオチド配列(別称、導入遺伝子)を含有するドナー鋳型とともに、ヌクレアーゼまたはニッカーゼが導入される場合、DNA損傷の修復経路は、細胞における標的部位での導入遺伝子配列の組み込みをもたらし得る。これは相同性依存的プロセスによって起こり得る。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、環状二本鎖プラスミドDNA、一本鎖ドナーオリゴヌクレオチド(ssODN)、線状二本鎖ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)断片、または無傷の姉妹染色分体の相同配列である。ドナー鋳型の形態に応じて、相同性媒介性遺伝子挿入及び置換は、特異的DNA修復経路等の相同性指向修復(HDR)、合成依存的鎖アニーリング(SDSA)、マイクロホモロジー媒介性末端結合(MMEJ)、及び相同性媒介性末端結合(HMEJ)経路を介して実施され得る。
【0484】
例えば、DNA修復機構は、(i)各鎖上に1つのSSBが存在する、2つのSSBによって、一本鎖オーバーハングが誘導された後、または(ii)DSBが両方の鎖上の同じ切断部位で起こることによって、平滑末端切断が誘導された後に、ヌクレアーゼによって誘導され得る。これらの作用物質のうちの1つによって切断されると、SSBまたはDSBを有する標的遺伝子座は、(1)誤りがちな非相同末端結合(NHEJ)、または(2)高忠実度の相同性指向修復(HDR)経路という、DNA損傷修復のための2つの主要な経路のうちの1つを経る。いくつかの実施形態では、SSB(複数)またはDSB(単数)が存在する細胞内に導入されるドナー鋳型(例えば、ssODN等の環状プラスミドDNAまたは線状DNA断片)は、HDR及び標的遺伝子座内へのドナー鋳型の組み込みをもたらし得る。一般に、ドナー鋳型の不在下では、NHEJプロセスは、切断されたDNA鎖の末端を再度ライゲーションし、これが高頻度で切断部位におけるヌクレオチドの欠失及び挿入をもたらす。
【0485】
いくつかの実施形態では、細胞内への外因性ポリヌクレオチドの部位特異的挿入は、HDRベースのアプローチを介して達成されてもよい。HDRは、細胞がDNAの二本鎖切断(DSB)を修復するための機構であり、これを利用して、多くの生物において、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)/Casシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、及びトランスポザーゼを含めた種々の遺伝子編集システムを使用してゲノムを改変することができる。
【0486】
いくつかの実施形態では、標的化組み込みは、標的遺伝子の少なくとも1つの標的部位(複数可)の配列に標的化されるように特異的に設計された、DNA結合標的化ヌクレアーゼ、ならびにジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)等の遺伝子編集ヌクレアーゼ、ならびにCRISPR関連ヌクレアーゼ(Cas)システム等のRNA誘導型ヌクレアーゼを含めた、1つまたは複数の配列特異的または標的化ヌクレアーゼを導入することによって実施される。例となるZFN、TALE、及びTALENは、例えば、Lloyd et al.,Frontiers in Immunology,4(221):1-7(2013)に記載される。特定の実施形態では、標的部位におけるまたはその近くでの標的化された遺伝子破壊は、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(CRISPR)及びCRISPR関連(Cas)タンパク質を使用して実施される。Sander and Joung,(2014)Nature Biotechnology,32(4):347-355を参照されたい。
【0487】
第II.A.1節に記載される遺伝子破壊のためのシステムのうちのいずれかを使用することができ、これはまた、外因性ポリヌクレオチド、例えば、導入遺伝子配列を有する適切なドナー鋳型とともに導入される場合、遺伝子破壊の標的部位におけるまたはその近くでの外因性ポリヌクレオチドの標的化組み込みをもたらし得る。特定の実施形態では、遺伝子破壊は、1つまたは複数のガイドRNA(gRNA)及びCasタンパク質を含有するCRISPR/Casシステムを使用して媒介される。例となるCasタンパク質及びgRNAは、上記の第II.A節に記載され、これらのうちのいずれもCrispr/Casシステムが特異性をもつ標的遺伝子座内への外因性ポリヌクレオチドのHDR媒介性組み込みに使用することができる。例えば、切断及びHDRによる外因性ポリヌクレオチドの組み込みに向けた特定の標的遺伝子座及び標的部位に応じて、適切なCasヌクレアーゼ及びgRNAを選定することは、当業者の技能水準内にある。さらに、標的遺伝子座に応じて、当業者は、下記にさらに記載されるもの等の適切なドナー鋳型を容易に調製することができる。
【0488】
いくつかの実施形態では、DNA編集システムは、RNA誘導型CRISPR/Casシステム(RNAベースのCRISPR/Casシステム等)であり、ここで、CRISPR/Casシステムは、標的遺伝子座内への導入遺伝子の挿入を誘導するために標的遺伝子座(例えば、セーフハーバー遺伝子座)において二本鎖切断を作出することができる。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼシステムは、CRISPR/Cas9システムである。いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、プラスミドベースのCas9を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、RNAベースのCas9を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、Cas9 mRNA及びgRNAを含む。いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9システムは、タンパク質/RNA複合体、またはプラスミド/RNA複合体、またはタンパク質/プラスミド複合体を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞を生成するための方法が提供され、該方法は、供給源細胞(例えば、初代細胞または多能性幹細胞、例えば、iPSC)内に、導入遺伝子または外因性ポリヌクレオチド配列を含有するドナー鋳型、ならびにDNAヌクレアーゼシステム(例えば、Cas9)及び遺伝子座特異的gRNAを含むDNAヌクレアーゼシステムを導入することを含む。いくつかの実施形態では、Cas9は、mRNAとして導入される。いくつかの実施形態では、Cas9は、gRNAを含むリボ核タンパク質複合体として導入される。
【0489】
一般に、挿入対象のドナー鋳型は、目的の外因性ポリヌクレオチド(例えば、寛容原性因子またはCAR)を含有する導入遺伝子カセットを少なくとも含み、任意選択でプロモーターもまた含むことになろう。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、挿入対象の外因性ポリヌクレオチド及び/またはプロモーターを含有する導入遺伝子カセットは、ドナー鋳型において、標的切断部位の直ぐ上流及び下流の配列に相同な配列を有する相同性アーム、すなわち、左側相同性アーム(LHA)及び右側相同性アーム(RHA)が両側に位置することになろう。典型的には、ドナー鋳型の相同性アームは、HDRの鋳型としての役目を果たすように標的ゲノム遺伝子座に対して特異的に設計される。各相同性アームの長さは一般に、導入されている挿入物のサイズに依存し、挿入物が大きいほど、より長い相同性アームが必要とされる。
【0490】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型(例えば、組換えドナー修復鋳型)は、(i)外因性ポリヌクレオチド配列(例えば、プロモーター、例えば異種プロモーターに作動可能に連結された、導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセットと、(ii)導入遺伝子カセットの両側に位置し、DNAヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはCas12等のCasヌクレアーゼ)切断部位のそれぞれの側で標的遺伝子座(例えば、セーフハーバー遺伝子座)の一部分に相同である、2つの相同性アームとを含む。ドナー鋳型は、選択可能マーカー、検出可能マーカー、及び/または精製マーカーをさらに含み得る。
【0491】
いくつかの実施形態では、相同性アームは、同じ長さである。他の実施形態では、相同性アームは、異なる長さである。相同性アームは、少なくとも約10塩基対(bp)、例えば、少なくとも約10bp、15bp、20bp、25bp、30bp、35bp、45bp、55bp、65bp、75bp、85bp、95bp、100bp、150bp、200bp、250bp、300bp、350bp、400bp、450bp、500bp、550bp、600bp、650bp、700bp、750bp、800bp、850bp、900bp、950bp、1000bp、1.1キロ塩基(kb)、1.2kb、1.3kb、1.4kb、1.5kb、1.6kb、1.7kb、1.8kb、1.9kb、2.0kb、2、1kb、2,2kb、2,3kb、2,4kb、2,5kb、2,6kb、2.7kb、2.8kb、2.9kb、3.0kb、3.1kb、3.2kb、3.3kb、3.4kb、3.5kb、3.6kb、3.7kb、3.8kb、3.9kb、4.0kb、またはそれよりも長くあり得る。相同性アームは、約10bp~約4kb、例えば、約10bp~約20bp、約10bp~約50bp、約10bp~約100bp、約10bp~約200bp、約10bp~約500bp、約10bp~約Ikb、約10bp~約2kb、約10bp~約4kb、約100bp~約200bp、約100bp~約500bp、約100bp~約1kb、約100bp~約2kb、約100bp~約4kb、約500bp~約Ikb、約500bp~約2kb、約500bp~約4kb、約1kb~約2kb、約1kb~約2kb、約1kb~約4kb、または約2kb~約4kbであり得る。
【0492】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、発現ベクター内にクローニングされ得る。当業者に既知の従来のウイルス及び非ウイルスベースの発現ベクターを使用することができる。
【0493】
いくつかの実施形態では、組み込みの標的とされる標的遺伝子座は、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子の組み込みの標的とすることが許容または所望されよう任意の遺伝子座であってもよい。標的遺伝子座の非限定的な例としては、CXCR4遺伝子、アルブミン遺伝子、SHS231遺伝子座、F3遺伝子(CD142としても公知)、MICA遺伝子、MICB遺伝子、LRP1遺伝子(CD91としても公知)、HMGB1遺伝子、ABO遺伝子、RHD遺伝子、FUT1遺伝子、KDM5D遺伝子(HYとしても公知)、B2M遺伝子、CIITA遺伝子、TRAC遺伝子、TRBC遺伝子、CCR5遺伝子、F3(すなわち、CD142)遺伝子、MICA遺伝子、MICB遺伝子、LRP1遺伝子、HMGB1遺伝子、ABO遺伝子、RHD遺伝子、FUT1遺伝子、KDM5D(すなわち、HY)遺伝子、PDGFRa遺伝子、OLIG2遺伝子、及び/またはGFAP遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、例えば、イントロン、エクソン、及び/または遺伝子コード領域(コード配列または「CDS」としても公知)を含めた、標的遺伝子座(例えば、セーフハーバー遺伝子座)の好適な領域に挿入され得る。いくつかの実施形態では、挿入は、標的ゲノム遺伝子座の一方のアレルで起こる。いくつかの実施形態では、挿入は、標的ゲノム遺伝子座の両方のアレルで起こる。これらの実施形態のいずれにおいても、標的ゲノム遺伝子座内に挿入される導入遺伝子の向きは、その遺伝子座における遺伝子の方向と同じまたは逆のいずれでもあり得る。
【0494】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、セーフハーバー遺伝子座のイントロン、エクソン、またはコード配列領域内に挿入される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、内在性遺伝子内に挿入され、この挿入が、内在性遺伝子のサイレンシングまたは低減された発現を引き起こす。外因性ポリヌクレオチドの挿入に向けた例となるゲノム遺伝子座が表2Aに示される。
【0495】
【表2A】
【0496】
いくつかの実施形態では、標的遺伝子座は、セーフハーバー遺伝子座である。いくつかの実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、近くのまたは隣接する内在性遺伝子、調節要素等に対する影響を最小限に抑えながら、組み込まれたDNAの安定な発現を可能にするゲノム位置である。場合によっては、セーフハーバー遺伝子は、持続可能な遺伝子発現を可能にし、初代細胞及び多能性幹細胞(その派生物及びその分化細胞を含む)を含めた種々の細胞種における遺伝子改変に向けて導入操作されたヌクレアーゼによって標的化され得る。セーフハーバー遺伝子座の非限定的な例としては、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、CLYBL遺伝子座、及び/またはRosa遺伝子座(例えば、ROSA26遺伝子座)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、AAVS1遺伝子座、CCR5遺伝子座、及びCLYBL遺伝子座からなる群から選択される。場合によっては、SHS231が、多くの細胞種におけるセーフハーバー遺伝子座として標的化され得る。場合によっては、ある特定の遺伝子座が、ある特定の細胞種におけるセーフハーバー遺伝子座として機能する。例えば、PDGFRaは、グリア前駆細胞(GPC)に対するセーフハーバーであり、OLIG2は、乏突起膠細胞に対するセーフハーバー遺伝子座であり、GFAPは、星状細胞に対するセーフハーバー遺伝子座である。特定の操作された細胞種に応じて適切なセーフハーバー遺伝子座を選定することは、当業者の技能水準内にある。場合によっては、1つよりも多くのセーフハーバー遺伝子を標的化して、それによって1つよりも多くの導入遺伝子を遺伝子改変細胞内に導入することができる。
【0497】
いくつかの実施形態では、操作された細胞を生成するための方法が提供され、該方法は、供給源細胞(例えば、初代細胞または多能性幹細胞、例えば、iPSC)内に、導入遺伝子または外因性ポリヌクレオチド配列を含有するドナー鋳型、ならびにDNAヌクレアーゼシステム(例えば、Cas9)及びCCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、CLYBL遺伝子座、及び/またはRosa遺伝子座(例えば、ROSA26遺伝子座)に特異的な相補的部分を含む遺伝子座特異的gRNA(例えば、gRNA標的化配列)を含むDNAヌクレアーゼシステムを導入することを含む。いくつかの実施形態では、gRNAによって標的化されるゲノム遺伝子座は、記載したような遺伝子座のうちのいずれかの4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内に位置する。
【0498】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子のHDR媒介性挿入のために本明細書で使用されるgRNAは、AAVS1における標的配列を認識する相補的部分(例えば、gRNA標的化配列)を含む。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、標的配列は、AAVS1のイントロン1に位置する。AAVS1は、19番染色体:55,090,918~55,117,637逆方向鎖に位置し、AAVS1イントロン1(転写物ENSG00000125503に基づく)は、19番染色体:55,117,222~55,112,796逆方向鎖に位置する。ある特定の実施形態では、gRNAは、19番染色体:55,117,222~55,112,796の4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内にあるゲノム遺伝子座を標的とする。ある特定の実施形態では、gRNAは、19番染色体:55,115,674の4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内にあるゲノム遺伝子座を標的とする。ある特定の実施形態では、gRNAは、19番染色体:55,115,674にて、または19番染色体:55,115,674の5、10、15、20、30、40、もしくは50ヌクレオチド以内の位置にて切断部位を生成するように構成される。ある特定の実施形態では、gRNAは、Li et al.,Nat.Methods 16:866-869(2019)に記載されるGET000046であり、「sgAAVS1-1」としても公知である。このgRNAは、配列番号36(表4に示される)に記載の核酸配列を有する相補的部分(例えば、gRNA標的化配列)を含み、AAVS1(PPP1R12Cとしても公知)のイントロン1を標的とする。
【0499】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子のHDR媒介性挿入のために本明細書で使用されるgRNAは、CLYBLにおける標的配列を認識する相補的部分(例えば、gRNA標的化配列)を含む。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、標的配列は、CLYBLのイントロン2に位置する。CLYBLは、13番染色体:99,606,669~99,897,134順方向鎖に位置し、CLYBLイントロン2(転写物ENST00000376355.7に基づく)は、13番染色体:99,773,011~99,858,860順方向鎖に位置する。ある特定の実施形態では、gRNAは、13番染色体:99,773,011~99,858,860の4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内にあるゲノム遺伝子座を標的とする。ある特定の実施形態では、gRNAは、13番染色体:99,822,980の4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内にあるゲノム遺伝子座を標的とする。ある特定の実施形態では、gRNAは、13番染色体:99,822,980にて、または13番染色体:99,822,980の5、0、15、20、30、40、もしくは50ヌクレオチド以内の位置にて切断部位を生成するように構成される。ある特定の実施形態では、gRNAは、GET000047であり、これは配列番号36(表4に示される)に記載の核酸配列を有する相補的部分(例えば、gRNA標的化配列)を含み、CLYBLのイントロン2を標的とする。この標的部位は、Cerbini et al.,PLoS One,10(1):e0116032(2015)に記載されるようなTALENの標的部位に類似する。
【0500】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子のHDR媒介性挿入のために本明細書で使用されるgRNAは、CCR5における標的配列を認識する相補的部分(例えば、gRNA標的化配列)を含む。これらの実施形態のうちのある特定のものにおいて、標的配列は、CCR5のエクソン3に位置する。CCR5は、3番染色体:46,370,854~46,376,206順方向鎖に位置し、CCR5エクソン3(転写物ENST00000292303.4に基づく)は、3番染色体:46,372,892~46,376,206順方向鎖に位置する。ある特定の実施形態では、gRNAは、3番染色体:46,372,892~46,376,206の4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内にあるゲノム遺伝子座を標的とする。ある特定の実施形態では、gRNAは、3番染色体:46,373,180の4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内にあるゲノム遺伝子座を標的とする。ある特定の実施形態では、gRNAは、3番染色体:46,373,180にて、または3番染色体:46,373,180の5、10、15、20、30、40、もしくは50ヌクレオチド以内の位置にて切断部位を生成するように構成される。ある特定の実施形態では、gRNAは、Mandal et al.,Cell Stem Cell 15:643-652(2014)に記載されるGET000048であり、「crCCR5_D」としても公知である。このgRNAは、配列番号37(表4に示される)に記載の核酸配列を有する相補的部分を含み、CCR5のエクソン3(代替的にEnsemblゲノムデータベースにおいてエクソン2と注釈付けされる)を標的とする。Gomez-Ospina et al.,Nat.Comm.10(1):4045(2019)を参照されたい。
【0501】
表4は、例となるgRNA標的化配列を記載する。いくつかの実施形態では、gRNA標的化配列は、表4に記載の相補的部分の配列において、ウラシルで置換される1つまたは複数のチミンを含有し得る。ウラシルの「u」及びチミンの「t」の代わりに、ウラシル及びチミンは両方とも「t」によって表され得ることが当業者によって理解され、リボ核酸の関連においては、別途指示されない限り、ウラシルを表すために「t」が使用されることが理解されよう。
【0502】
【表4】
【0503】
いくつかの実施形態では、標的遺伝子座は、細胞においてノックアウトされることが所望される遺伝子座である。かかる実施形態では、かかる標的遺伝子座は、細胞の表現型または機能を調節するため等で、細胞において破壊または排除が所望される任意の標的遺伝子座である。例えば、標的遺伝子の発現を低減するための第II.A節に記載される遺伝子改変のうちのいずれも、外因性ポリヌクレオチドの標的化組み込みが所望される標的遺伝子座であり得、ここで、標的遺伝子の遺伝子破壊またはノックアウト及び外因性ポリヌクレオチドの標的化挿入による過剰発現は、細胞における同じ標的部位または遺伝子座にて達成され得る。例えば、HDRプロセスを使用して、表1に記載の任意の標的遺伝子の発現を排除または低減する(例えば、ノックアウトする)ための遺伝子破壊をもたらすと同時に、また遺伝子破壊の標的部位におけるまたはその近くの核酸配列に相同である相同性アームを両側に有するドナー鋳型を使用することによって標的遺伝子内に外因性ポリヌクレオチドを組み込んで(例えば、ノックインして)もよい。
【0504】
いくつかの実施形態では、操作された細胞を生成するための方法が提供され、該方法は、供給源細胞(例えば、初代細胞または多能性幹細胞、例えば、iPSC)内に、導入遺伝子または外因性ポリヌクレオチド配列を含有するドナー鋳型、ならびにDNAヌクレアーゼシステム(例えば、Cas9)及びB2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、TRBC遺伝子座に特異的な相補的部分を含む遺伝子座特異的gRNAを含むDNAヌクレアーゼシステムを導入することを含む。いくつかの実施形態では、gRNAによって標的化されるゲノム遺伝子座は、記載したような遺伝子座のうちのいずれかの4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内、または500bp以内に位置する。
【0505】
特定の実施形態では、標的遺伝子座は、B2Mである。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、B2M遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びB2M遺伝子を特異的に標的化するための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、標的化ヌクレアーゼシステムを使用することによるものである。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子を特異的に標的化するための少なくとも1つのガイドリボ核酸(gRNA)配列は、WO2016/183041の付録2または表15の配列番号81240~85644からなる群から選択され、同文献の開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、gRNAによって標的化される標的部位に隣接する配列に相同な相同性アームを両側に有する、外因性ポリヌクレオチド配列を含有するドナー鋳型を導入することによって、HDRによって破壊されたB2M遺伝子座内に組み込まれる。
【0506】
特定の実施形態では、標的遺伝子座は、CIITAである。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CIITA遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びCIITA遺伝子を特異的に標的化するための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、標的化ヌクレアーゼシステムによるものである。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子を特異的に標的化するための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列は、WO2016183041の付録1または表12の配列番号5184~36352からなる群から選択され、同文献の開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、gRNAによって標的化される標的部位に隣接する配列に相同な相同性アームを両側に有する、外因性ポリヌクレオチド配列を含有するドナー鋳型を導入することによって、HDRによって破壊されたCIITA遺伝子座内に組み込まれる。
【0507】
いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞であり、内在性TRACまたはTRBC遺伝子座の発現が、遺伝子編集法によって細胞において低減または排除される。例えば、HDRプロセスを使用して、TRACまたはTRBC遺伝子の発現を排除または低減する(例えば、ノックアウトする)ための遺伝子破壊をもたらすと同時に、また遺伝子破壊の標的部位におけるまたはその近くの核酸配列に相同である相同性アームを両側に有するドナー鋳型を使用することによって同じ遺伝子座内に外因性ポリヌクレオチドを組み込んで(例えば、ノックインして)もよい。本明細書に記載の遺伝子のCRISPR/Casベースの標的化に有用な例となるgRNA配列が、表2Bで提供される。これらの配列は、US20160348073に見出すことができ、配列表を含めたこの開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0508】
【表2A】
【0509】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、TRAC遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びTRAC遺伝子を特異的に標的化するための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、標的化ヌクレアーゼシステムによるものである。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子を特異的に標的化するための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列(例えば、gRNA標的化配列)は、US20160348073の配列番号532~609及び9102~9797からなる群から選択され、同文献の開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、gRNAによって標的化される標的部位に隣接する配列に相同な相同性アームを両側に有する、外因性ポリヌクレオチド配列を含有するドナー鋳型を導入することによって、HDRによって破壊されたTRAC遺伝子座内に組み込まれる。
【0510】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、TRBC遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、TRBC遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及びTRBC遺伝子を特異的に標的化するための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列を含む、標的化ヌクレアーゼシステムによるものである。いくつかの実施形態では、TRBC遺伝子を特異的に標的化するための少なくとも1つのガイドリボ核酸配列(例えば、gRNA標的化配列)は、US20160348073の配列番号610~765及び9798~10532からなる群から選択され、同文献の開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、gRNAによって標的化される標的部位に隣接する配列に相同な相同性アームを両側に有する、外因性ポリヌクレオチド配列を含有するドナー鋳型を導入することによって、HDRによって破壊されたTRBC遺伝子座内に組み込まれる。
【0511】
いくつかの実施形態では、記載したようなHDR媒介性組み込みアプローチにおいて使用するための新たな遺伝子座及び/またはgRNA配列を同定することは、当業者の技能水準内にある。例えば、CRISPR/Casシステムに関して、(例えば、表1に記載の、例えば、標的遺伝子内の)特定の遺伝子座に対する既存のgRNAが知られている場合、「インチワーミング」アプローチを使用して、通常はゲノムにわたって約100塩基対(bp)毎に存在するPAM配列についてその遺伝子座のそれぞれの側のフランキング領域をスキャンすることによって、導入遺伝子の標的化挿入のための追加の遺伝子座を同定することができる。通常、異なるヌクレアーゼは、対応するPAM配列が異なるため、PAM配列は、使用される特定のCasヌクレアーゼに依存しよう。遺伝子座のそれぞれの側のフランキング領域は、約500~4000bp長、例えば、約500bp、約1000bp、約1500bp、約2000bp、約2500bp、約3000bp、約3500bp、または約4000bp長であり得る。PAM配列が検索範囲内で同定される場合、その遺伝子座の配列に従って、遺伝子破壊方法において使用するための新たなガイドが設計され得る。CRISPR/Casシステムが例示説明として記載されているが、ZFN、TALENS、メガヌクレアーゼ及びトランスポザーゼを使用するものを含めた、記載したような任意のHDR媒介性アプローチが、新たな遺伝子座を同定するこの方法において使用され得る。
【0512】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、外因性CD47ポリペプチド(例えば、ヒトCD47ポリペプチド)をコードし、外因性ポリペプチドは、本明細書に開示されるようなセーフハーバー遺伝子座またはセーフハーバー部位、または内在性遺伝子のサイレンシングもしくは低減された発現を引き起こすゲノム遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、CLYBL遺伝子座、及び/またはRosa遺伝子座(例えば、ROSA26遺伝子座)に挿入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRBC、PD1、またはCTLA4遺伝子座に挿入される。
【0513】
C.細胞
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される1つもしくは複数の遺伝子の発現が低減または欠失するように細胞のゲノムが改変されている(例えば、1つもしくは複数のMHCクラスI分子または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を調節する遺伝子)、または遺伝子もしくはポリヌクレオチドが過剰発現もしくは発現を増加させられる(例えば、CD47等の寛容原性因子をコードするポリヌクレオチド)、操作(または改変)された細胞(例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、かかる幹細胞に由来するもしくはそれから生産された分化細胞、造血幹細胞、または初代細胞)、またはその集団を提供する。いくつかの実施形態では、本願は、CD46及びCD59の過剰発現または増加した発現をさらに含む、操作された細胞を提供する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD55の過剰発現または増加した発現をさらに含む。
【0514】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドを含む操作された細胞は、ベータ島細胞であり、CD47ポリペプチドをコードする第1の外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、操作されたベータ島細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターまたは本明細書に記載の他の寛容原性ポリペプチドをコードする1つまたは複数の追加の外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、ベータ島細胞は、CD46及びCD59の過剰発現または増加した発現、ならびに第II.A節に記載されるような1つもしくは複数のMHCクラスI分子の低減された発現及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の低減された発現を含む。いくつかの実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチド及び1つまたは複数の追加の外因性ポリヌクレオチドは、同じゲノム遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチド及び1つまたは複数の追加の外因性ポリヌクレオチドは、異なるゲノム遺伝子座内に挿入される。例となる実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)細胞は、初代ベータ島細胞、または操作された(例えば、低免疫原性)多能性細胞(例えば、iPSC)に由来するベータ島細胞である。
【0515】
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドを含む操作された細胞は、肝細胞であり、CD47ポリペプチドをコードする第1の外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、操作された肝細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターまたは本明細書に記載の他の寛容原性ポリペプチドをコードする1つまたは複数の追加の外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、ベータ島細胞は、CD46及びCD59の増加した発現、ならびに第II.A節に記載されるような1つもしくは複数のMHCクラスI分子の低減された発現及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の低減された発現を含む。いくつかの実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチド及び1つまたは複数の追加の外因性ポリヌクレオチドは、同じゲノム遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、第1の外因性ポリヌクレオチド及び1つまたは複数の追加の外因性ポリヌクレオチドは、異なるゲノム遺伝子座内に挿入される。例となる実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)細胞は、初代肝細胞、または操作された(例えば、低免疫原性)多能性細胞(例えば、iPSC)に由来する肝細胞である。
【0516】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変される細胞は、多能性幹細胞であるか、または多能性幹細胞から分化した細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変される細胞は、初代細胞である。
【0517】
細胞は、脊椎動物細胞、例えば、ヒト細胞またはマウス細胞等の哺乳類細胞であってもよい。細胞はまた、脊椎動物幹細胞、例えば、ヒト幹細胞またはマウス幹細胞等の哺乳類幹細胞であってもよい。好ましくは、細胞または幹細胞は、改変に適している。好ましくは、細胞もしくは幹細胞、またはかかる幹細胞に由来する細胞は、細胞もしくは幹細胞、またはかかる幹細胞に由来するもしくはそれから分化した細胞を使用して、疾患、障害、欠損、または損傷の処置を必要とする対象においてそれを処置し得るように、治療的価値を有するか、またはそれを有すると考えられる。
【0518】
いくつかの実施形態では、細胞は、幹細胞または前駆細胞(例えば、iPSC、胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、内皮幹細胞、上皮幹細胞、脂肪幹細胞もしくは前駆細胞、生殖細胞系幹細胞、肺幹細胞もしくは前駆細胞、乳腺幹細胞、嗅覚成体幹細胞、毛包幹細胞、複能性(multipotent)幹細胞、羊水幹細胞、臍帯血幹細胞、または神経幹細胞もしくは前駆細胞)である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、成体幹細胞(例えば、体性幹細胞または組織特異的幹細胞)である。いくつかの実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、分化させることができる(例えば、幹細胞は、全能性、多能性、または複能性である)。いくつかの実施形態では、細胞は、胚性または新生児組織から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、線維芽細胞、単球前駆体、B細胞、外分泌細胞、膵前駆細胞、内分泌前駆細胞、肝芽細胞、筋芽細胞、前脂肪細胞、前駆細胞、肝細胞、軟骨細胞、平滑筋細胞、K562ヒト赤白血病細胞株、骨細胞、滑膜細胞、腱細胞、靭帯細胞、半月板細胞、脂肪細胞、樹状細胞、またはナチュラルキラー細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、筋細胞、赤血球・巨核球細胞、好酸球、iPS細胞、マクロファージ、T細胞、島ベータ細胞、ニューロン、心筋細胞、血液細胞、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、導管細胞、腺房細胞、アルファ細胞、ベータ細胞、デルタ細胞、PP細胞、肝細胞、胆管細胞、または褐色脂肪細胞へと操作される(例えば、変換または分化させられる)。いくつかの実施形態では、細胞は、筋細胞(例えば、骨格、平滑、または心筋細胞)、赤血球・巨核球細胞、好酸球、iPS細胞、マクロファージ、T細胞、島ベータ細胞、ニューロン、心筋細胞、血液細胞(例えば、赤血球細胞、白血球細胞、または血小板)、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、導管細胞、腺房細胞、アルファ細胞、ベータ細胞、デルタ細胞、PP細胞、肝細胞、胆管細胞、または白色もしくは褐色脂肪細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、ホルモン分泌細胞(例えば、インスリン、オキシトシン、エンドルフィン、バソプレシン、セロトニン、ソマトスタチン、ガストリン、セクレチン、グルカゴン、甲状腺ホルモン、ボンベシン、コレシストキニン、テストステロン、エストロゲン、またはプロゲステロン、レニン、グレリン、アミリン、または膵ポリペプチドを分泌する細胞)、表皮ケラチノサイト、上皮細胞(例えば、外分泌の分泌上皮細胞、甲状腺上皮細胞、角化上皮細胞、胆嚢上皮細胞、または角膜、舌、口腔、食道、肛門管、遠位尿道、もしくは膣の表面上皮細胞)、腎臓細胞、生殖細胞、骨格関節滑膜細胞、骨膜細胞、骨細胞(例えば、破骨細胞または骨芽細胞)、軟骨膜細胞(例えば、軟骨芽細胞または軟骨細胞)、軟骨系細胞(例えば、軟骨細胞(chondrocyte))、線維芽細胞、内皮細胞、心膜細胞、髄膜細胞、ケラチノサイト前駆体細胞、ケラチノサイト幹細胞、周皮細胞、グリア細胞、上衣細胞、羊膜もしくは胎盤膜から単離された細胞、または漿膜細胞(例えば、体腔の内膜を形成する漿膜細胞)である。
【0519】
いくつかの実施形態では、細胞は、体細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、皮膚または他の臓器、例えば、心臓、脳もしくは脊髄、肝臓、肺、腎臓、膵臓、膀胱、骨髄、脾臓、腸、または胃に由来する。細胞は、ヒトまたは他の哺乳動物(例えば、齧歯類、非ヒト霊長類、ウシ、またはブタ細胞)からのものであり得る。
【0520】
いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞、NK細胞、ベータ島細胞、内皮細胞、RPE、甲状腺、皮膚等の上皮細胞、または肝細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、操作されたiPSCから分化したiPSC由来の細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、初代細胞から改変された、操作された細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、1つまたは複数の寛容原性因子の増加した発現を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子は、CD47である。
【0521】
いくつかの実施形態では、細胞は、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、CD46及びCD59の増加した発現または過剰発現を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、第II.B.1節に記載されるいずれか等の、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、2つ以上の外因性ポリヌクレオチドが、第II.B.4節に記載されるマルチシストロン性ベクター、構築物、またはベクターのうちのいずれか等の、マルチシストロン性構築物に含まれる。いくつかの実施形態では、細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターの過剰発現または増加した発現を含む。
【0522】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作されるiPSC由来のT細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作される初代T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、改変を含まない同じ種類の細胞と比べて増加したCD46及びCD59の発現を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターの過剰発現または増加した発現を含む。いくつかの実施形態では、T細胞は、本明細書に記載されるいずれかを含めた、キメラ抗原受容体(CAR)を導入操作され得る。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)T細胞を使用して、本明細書、例えば第IV節に記載されるいずれかを含めた、同種異系細胞療法により様々な適応症を処置することができる。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)T細胞を使用して、がんを処置することができる。
【0523】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作されるiPSC由来のNK細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作される初代NK細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、CD46及びCD59の増加した発現を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターの過剰発現または増加した発現を含む。いくつかの実施形態では、NK細胞は、本明細書に記載されるいずれかを含めた、キメラ抗原受容体(CAR)を導入操作され得る。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)NK細胞を使用して、本明細書、例えば第IV節に記載されるいずれかを含めた、同種異系細胞療法により様々な適応症を処置することができる。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)NK細胞を使用して、がんを処置することができる。
【0524】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作されるiPSC由来の島内皮細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作される初代島ベータ細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、CD46及びCD59の増加した発現を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターの過剰発現または増加した発現を含む。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)島ベータ細胞を使用して、本明細書、例えば第IV節に記載されるいずれかを含めた、同種異系細胞療法により様々な適応症を処置することができる。
【0525】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作されるiPSC由来の島ベータ細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作される初代島ベータ細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、CD46及びCD59の増加した発現を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターの過剰発現または増加した発現を含む。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)島ベータ細胞を使用して、本明細書、例えば第IV節に記載されるいずれかを含めた、同種異系細胞療法により様々な適応症を処置することができる。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)島ベータ細胞を使用して、I型糖尿病等の糖尿病を処置することができる。
【0526】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作されるiPSC由来の内皮細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作される初代内皮細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、改変を含まない同じ種類の細胞と比べて増加したCD46及びCD59の発現を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、1つまたは複数のCD46、CD59、及びCD55の過剰発現または増加した発現を含む。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)内皮細胞を使用して、本明細書、例えば第IV節に記載されるいずれかを含めた、同種異系細胞療法により様々な適応症を処置することができる。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)内皮細胞を使用して、血管新生または眼疾患を処置することができる。
【0527】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作されるiPSC由来の上皮細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作される初代上皮細胞である。いくつかの実施形態では、上皮細胞は、RPEである。いくつかの実施形態では、上皮細胞は、甲状腺細胞である。いくつかの実施形態では、上皮細胞は、皮膚細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、改変を含まない同じ種類の細胞と比べて増加したCD46及びCD59の発現を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、CD55の増加した発現をさらに含む。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)上皮細胞を使用して、本明細書、例えば第IV節に記載されるいずれかを含めた、同種異系細胞療法により様々な適応症を処置することができる。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)上皮細胞を使用して、甲状腺疾患または皮膚疾患を処置することができる。
【0528】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作されるiPSC由来の肝細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作される初代肝細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、改変を含まない同じ種類の細胞と比べて増加したCD46及びCD59の発現を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、CD46、CD59、及びCD55の過剰発現または増加した発現を含む。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)上皮細胞を使用して、本明細書、例えば第IV節に記載されるいずれかを含めた、同種異系細胞療法により様々な適応症を処置することができる。いくつかの実施形態では、操作された(例えば、低免疫原性)肝細胞を使用して、肝臓疾患を処置することができる。
【0529】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変される細胞は、処置されるべき特定の疾患または病態を有することが認められていないか、または疑われない対象等の、健常な対象からの細胞である。例えば、糖尿病を処置するため等で、細胞ベータ島細胞がドナー対象から単離または入手される場合、ドナー対象は、当該対象が糖尿病または別の疾患もしくは病態を患うことが認められていないか、または疑われない場合、健常な対象である。
【0530】
5.初代細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作される細胞は、1以上の個々の対象またはドナーから入手または単離された初代細胞に由来する細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、1以上の(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、50以上、または100以上の)異なるドナー対象から入手された単離された初代細胞のプールに由来する。いくつかの実施形態では、複数の異なるドナー対象(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、50以上、または100以上)から単離または入手された初代細胞は、バッチで一緒にプールされ、提供される方法に従って操作される。
【0531】
いくつかの実施形態では、初代細胞は、レシピエント対象(例えば、該細胞を投与される患者)とは異なる1以上のドナー対象からの初代細胞のプールからのものである。初代細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、またはそれよりも多くのドナー対象から入手し、一緒にプールすることができる。初代細胞は、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、20以上、50以上、または100以上のドナー対象から入手し、一緒にプールすることができる。いくつかの実施形態では、初代細胞は、1以上の個体から採取され、いくつかの事例では、初代細胞または初代T細胞のプールは、インビトロで培養される。いくつかの実施形態では、初代細胞または初代T細胞のプールは、本明細書で提供される方法に従って操作または改変される。
【0532】
いくつかの実施形態では、該方法は、個々のドナー対象から所望の種類の初代細胞(例えば、T細胞、NK細胞、NKT細胞、内皮細胞、島細胞、ベータ島細胞、肝細胞、または本明細書に記載される他の初代細胞)を入手または単離し、細胞をプールして初代細胞種のバッチを得、本明細書で提供される方法によって細胞を操作することを含む。いくつかの実施形態では、該方法は、所望の種類の初代細胞(例えば、T細胞、NK細胞、内皮細胞、ベータ島細胞、肝細胞、または本明細書に記載される他の初代細胞)を入手または単離し、本明細書で提供される方法によって個々のドナーの各々の細胞を操作し、少なくとも2つの個々の試料の操作された(改変された)細胞をプールして、初代細胞種の操作された細胞のバッチを得ることを含む。
【0533】
いくつかの実施形態では、初代細胞は、個体から、または複数の個々のドナーから単離もしくは入手された初代細胞のプールから単離または入手される。初代細胞は、第II.C.3節に記載されるいずれかを含めた、本明細書に記載の任意の種類の初代細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、初代細胞は、T細胞、NK細胞、ベータ島細胞、内皮細胞、RPE、甲状腺、皮膚等の上皮細胞、または肝細胞から選択される。いくつかの実施形態では、個々のドナーまたは個々のドナーのプールからの初代細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作される。
【0534】
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、筋細胞(例えば、骨格、平滑、または心筋細胞)、赤血球・巨核球細胞、好酸球、iPS細胞、マクロファージ、T細胞、島細胞クラスター、島細胞、ベータ細胞、ニューロン、心筋細胞、血液細胞(例えば、赤血球細胞、白血球細胞、または血小板)、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、導管細胞、腺房細胞、アルファ細胞、ベータ島細胞、デルタ細胞、PP細胞、肝細胞、胆管細胞、または白色もしくは褐色脂肪細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、ホルモン分泌細胞(例えば、インスリン、オキシトシン、エンドルフィン、バソプレシン、セロトニン、ソマトスタチン、ガストリン、セクレチン、グルカゴン、甲状腺ホルモン、ボンベシン、コレシストキニン、テストステロン、エストロゲン、またはプロゲステロン、レニン、グレリン、アミリン、または膵ポリペプチドを分泌する細胞)、表皮ケラチノサイト、上皮細胞(例えば、外分泌の分泌上皮細胞、甲状腺上皮細胞、角化上皮細胞、胆嚢上皮細胞、または角膜、舌、口腔、食道、肛門管、遠位尿道、もしくは膣の表面上皮細胞)、腎臓細胞、生殖細胞、骨格関節滑膜細胞、骨膜細胞、骨細胞(例えば、破骨細胞または骨芽細胞)、軟骨膜細胞(例えば、軟骨芽細胞または軟骨細胞)、軟骨系細胞(例えば、軟骨細胞)、線維芽細胞、内皮細胞、心膜細胞、髄膜細胞、ケラチノサイト前駆体細胞、ケラチノサイト幹細胞、周皮細胞、グリア細胞、上衣細胞、羊膜もしくは胎盤膜から単離された細胞、または漿膜細胞(例えば、体腔の内膜を形成する漿膜細胞)である。
【0535】
6.人工多能性幹細胞の生成
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作される細胞は、人工多能性幹細胞であるか、または人工多能性幹細胞に由来するもしくはそれから分化した操作された細胞である。マウス及びヒト多能性幹細胞(iPSCと総称される;マウス細胞の場合はmiPSC、またはヒト細胞の場合はhiPSC)の生成は、一般に当該技術分野で既知である。当業者には理解されようが、iPSCの生成のための様々な異なる方法が存在する。元々の誘導は、Oct3/4、Sox2、c-Myc、及びKlf4の4つの転写因子のウイルスによる導入を使用してマウス胚性または成体線維芽細胞から行われた。Takahashi and Yamanaka Cell 126:663-676(2006)を参照されたい(参照によりその全体が、特にその中で概説される技法に関して本明細書に援用される)。それ以来、いくつかの方法が開発されてきた。概観についてはSeki et al,World J.Stem Cells 7(1):116-125(2015)、及びLakshmipathy and Vermuri,editors,Methods in Molecular Biology:Pluripotent Stem Cells,Methods and Protocols,Springer 2013を参照されたく、同文献はいずれも、参照によりそれらの全体が、とりわけhiPSCを生成するための方法(例えば、後者の参考文献の第3章を参照されたい)に関して本明細書に明示的に援用される。
【0536】
一般に、iPSCは、通常はエピソームベクターを使用して導入される、宿主細胞における1つまたは複数の再プログラミング因子の一過性発現によって生成される。これらの条件下では、少量の細胞が誘導されて、iPSCとなる(一般に、このステップの効率は低いため、選択マーカーは使用されない)。ひとたび細胞が「再プログラミング」され、多能性となると、それらはエピソームベクター(複数可)を喪失し、内在性遺伝子を使用して当該因子を産生する。
【0537】
同じく当業者には理解されようが、使用され得るまたは使用される再プログラミング因子の数は、様々であり得る。一般的に、より少数の再プログラミング因子が使用される場合、多能性状態への細胞の形質転換の効率、ならびに「多能性」は下がり、例えば、より少数の再プログラミング因子は、完全に多能性でないが、より少数の細胞種に分化することのみ可能であり得る細胞をもたらし得る。
【0538】
いくつかの実施形態では、単一の再プログラミング因子OCT4が使用される。他の実施形態では、2つの再プログラミング因子OCT4及びKLF4が使用される。他の実施形態では、3つの再プログラミング因子OCT4、KLF4、及びSOX2が使用される。他の実施形態では、4つの再プログラミング因子OCT4、KLF4、SOX2、及びc-Mycが使用される。他の実施形態では、SOKMNLT、すなわちSOX2、OCT4(POU5F1)、KLF4、MYC、NANOG、LIN28、及びSV40L T抗原から選択される5、6、または7つの再プログラミング因子が使用され得る。一般に、これらの再プログラミング因子遺伝子は、当該技術分野で既知であり、市販されているようなエピソームベクター上で提供される。
【0539】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の再プログラミング因子をトランスフェクトするために使用される宿主細胞は、非多能性幹細胞である。一般に、当該技術分野で既知であるように、iPSCは、本明細書に記載されるような再プログラミング因子を一過性で発現させることによって、限定されないが血液細胞、線維芽細胞等といった非多能性細胞から作製される。いくつかの実施形態では、線維芽細胞等の非多能性細胞は、細胞を再プログラミングする前に1以上の個々の対象またはドナーから入手または単離される。いくつかの実施形態では、iPSCは、1以上の(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、50以上、または100以上の)異なるドナー対象から入手された、単離された非多能性幹細胞、例えば、線維芽細胞のプールから作製される。いくつかの実施形態では、線維芽細胞等の非多能性細胞は、複数の異なるドナー対象(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、50以上、または100以上)から単離または入手され、バッチで一緒にプールされ、iPSCとして再プログラミングされ、提供される方法に従って操作される。
【0540】
いくつかの実施形態では、iPSCは、例えば、1つまたは複数の再プログラミング因子を、レシピエント対象(例えば、該細胞を投与される患者)とは異なる1以上のドナー対象からの非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)のプールからの細胞内に一過性でトランスフェクトすることによって、そのようなプールから派生させられる。iPSCに誘導されることになる非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、またはそれよりも多くのドナー対象から入手し、一緒にプールすることができる。非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)は、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、20以上、50以上、または100以上のドナー対象から入手し、一緒にプールすることができる。いくつかの実施形態では、非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)は、1以上の個体から採取され、いくつかの事例では、非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)または非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)のプールは、インビトロで培養され、iPSCの生成を誘導するために1つまたは複数の再プログラミング因子をトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)または非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)のプールは、本明細書で提供される方法に従って操作または改変される。いくつかの実施形態では、操作されたiPSCまたは操作されたiPSCのプールは、次いで、生物及び組織の任意の細胞への分化ための分化プロセスに供される。
【0541】
ひとたび操作されたiPSC細胞が生成されると、それらは、WO2016183041及びWO2018132783に記載されるように、それらの低免疫原性及び/または多能性の保持に関してアッセイされ得る。いくつかの実施形態では、低免疫原性は、WO2018132783の図13及び図15に例として挙げられるようないくつかの技法を使用してアッセイされる。これらの技法は、同種異系宿主への移植、及び宿主免疫系を回避する低免疫原性多能性細胞の増殖(例えば、奇形腫)に対する監視を含む。いくつかの事例では、低免疫原性多能性細胞の派生物が、ルシフェラーゼを発現するように形質導入され、次いで生物発光イメージングを使用して追跡され得る。同様に、かかる細胞に対する宿主動物のT細胞及び/またはB細胞応答が、細胞が宿主動物において免疫反応を引き起こさないことを確認するために試験される。T細胞応答は、Elispot、ELISA、FACS、PCR、またはマスサイトメトリー(CYTOF)によって評定され得る。B細胞応答または抗体応答は、FACSまたはルミネックスを使用して評定される。追加としてまたは代替として、細胞は、WO2018132783の図14及び15に一般に示されるように、それらが自然免疫応答、例えば、NK細胞による殺傷を回避する能力に関してアッセイされ得る。
【0542】
いくつかの実施形態では、細胞の免疫原性は、当業者に認識されるT細胞増殖アッセイ、T細胞活性化アッセイ、及びT細胞殺傷アッセイ等のT細胞イムノアッセイを使用して評価される。場合によっては、T細胞増殖アッセイは、細胞をインターフェロン-ガンマで前処理することと、細胞を標識したT細胞と共培養し、あらかじめ選択された一定時間後にT細胞集団(または増殖しているT細胞集団)の存在をアッセイすることとを含む。場合によっては、T細胞活性化アッセイは、T細胞を本明細書に概説される細胞と共培養することと、T細胞におけるT細胞活性化マーカーの発現レベルを決定することとを含む。
【0543】
本明細書に概説される細胞の免疫原性を評定するために、インビボアッセイを実施することができる。いくつかの実施形態では、操作または改変されたiPSCの生存及び免疫原性は、同種異系ヒト化免疫不全マウスモデルを使用して決定される。一部の事例では、操作または改変されたiPSCは、同種異系ヒト化NSG-SGM3マウスに移植され、細胞拒絶反応、細胞生存、及び奇形腫形成に関してアッセイされる。一部の事例では、移植された操作されたiPSCまたはその分化細胞は、マウスモデルにおいて長期生存を示す。
【0544】
細胞の低免疫原性を含めた免疫原性を決定するための追加の技法は、例えば、Deuse et al.,Nature Biotechnology,2019,37,252-258及びHan et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2019,116(21),10441-10446に記載され、図、図の凡例、及び方法の説明を含めたこれらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0545】
同様に、多能性の保持は、いくつかの方式で試験される。一実施形態では、多能性は、本明細書に一般に記載されるとともに、WO2018132783の図29に示されるように、ある特定の多能性特異的因子の発現によってアッセイされる。追加としてまたは代替として、多能性細胞は、多能性の指標として1つまたは複数の細胞種に分化させられる。
【0546】
ひとたび操作された多能性幹細胞(操作されたiPSC)が生成されると、それらは、iPSCの維持に関して既知であるように、未分化状態で維持され得る。例えば、細胞は、分化を防止するとともに多能性を維持する培養培地を使用してマトリゲル上で培養され得る。加えて、それらは、多能性を維持するような条件下で培養培地中にあることができる。
【0547】
本明細書に記載の多能性幹細胞のうちのいずれも、生物及び組織の任意の細胞に分化させることができる。ある態様では、レシピエント対象へのその後の移植用にiPSCから異なる細胞種に分化させられる、操作された細胞が本明細書で提供される。分化は、一般に細胞特異的マーカーの存在を評価することによって、当該技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。当業者には理解されようが、分化した操作された(例えば、低免疫原性)多能性細胞派生物は、細胞種及びこれらの細胞の最終的用途の両方に依存する当該技術分野で既知の技法を使用して移植することができる。例となる分化細胞の種類及びそれを生産するための方法が下記に記載される。いくつかの実施形態では、iPSCは、第II.C.3節に記載されるいずれかを含めた、本明細書に記載の任意の種類の細胞に分化させてもよい。いくつかの実施形態では、iPSCは、T細胞、NK細胞、ベータ島細胞、内皮細胞、RPE、甲状腺、皮膚等の上皮細胞、または肝細胞から選択される細胞種に分化させられる。いくつかの実施形態では、個々のドナーまたは個々のドナーのプールからの非多能性細胞(例えば、線維芽細胞)等の宿主細胞が単離または入手され、iPSCへと生成され、ここで、iPSCは次いで本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有するように操作され、次いで所望の細胞種に分化させられる。
【0548】
7.細胞種
N.ベータ島細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変される細胞は、初代ベータ島細胞(膵島細胞または膵ベータ細胞とも称される)である。いくつかの実施形態では、初代ベータ島細胞は、1以上の個々のドナー対象、例えば、1以上の個々の健常なドナー(例えば、疾患または感染が認められていないか、または疑われない、例えば、その臨床徴候を示していない対象)から単離または入手される。当業者には理解されようが、個体からベータ島細胞を単離または入手する方法は、既知の技法を使用して達成することができる。本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)用に本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有する、操作された初代ベータ島細胞が提供される。
【0549】
いくつかの実施形態では、ベータ島細胞は、対象または個体から入手される(例えば、採取、抽出、取り出し、または取得される)。いくつかの実施形態では、初代ベータ島細胞は、ベータ島細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健常なヒトを含む1以上のヒト)からのものであるように、ベータ島細胞のプールから生産される。いくつかの実施形態では、初代ベータ島細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、治療用細胞を投与されるレシピエント)とは異なる。いくつかの実施形態では、ベータ島細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。いくつかの実施形態では、ベータ島細胞のプールが入手されるドナー対象のうちの1以上は、患者とは異なる。
【0550】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有し、ベータ島細胞に分化させられる操作されたiPSCに由来するベータ島細胞である。当業者には理解されようが、分化のための方法は、既知の技法を使用して所望の細胞種に依存する。いくつかの実施形態では、種々のベータ島細胞に分化させられた細胞は、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)に使用されてもよい。いくつかの実施形態では、膵島細胞は、本明細書に記載の操作された多能性細胞に由来する。多能性幹細胞をベータ島細胞に分化させるための有用な方法は、例えば、米国特許第9,683,215号、米国特許第9,157,062号、米国特許第8,927,280号、米国特許公開第2021/0207099号、Hogrebe et al.,“Targeting the cytoskeleton to direct pancreatic differentiation of human pluripotent stem cells,”Nat.Biotechnol.,2020,38:460-470、及びHogrebe et al.,“Generation of insulin-producing pancreatic beta cells from multiple human stem cell lines,”Nat.Protoc.,2021に記載され、同文献の内容は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0551】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された多能性細胞は、I型真性糖尿病(T1DM)に対処するための移植用にベータ様細胞または島オルガノイドに分化させられる。細胞システムは、T1DMに対処するための有望な方法である。例えば、Ellis et al.,Nat Rev Gastroenterol Hepatol.2017 Oct;14(10):612-628を参照されたい(参照により本明細書に援用される)。さらに、Pagliucaら(Cell,2014,159(2):428-39)は、hiPSCからのβ細胞の成功裏の分化に関して報告している(この内容は、参照によりその全体が、特にヒト多能性幹細胞からの機能的ヒトβ細胞の大規模生産について同文献で概説される方法及び試薬に関して本明細書に援用される)。さらに、Vegasらは、ヒト多能性幹細胞からのヒトβ細胞の生産、続いて宿主による免疫による拒絶反応を回避するための封入について示している(Vegas et al.,Nat Med,2016,22(3):306-11(参照によりその全体が、特にヒト多能性幹細胞からの機能的ヒトβ細胞の大規模生産について同文献で概説される方法及び試薬に関して本明細書に援用される)。
【0552】
いくつかの実施形態では、インビトロでの分化によって操作された多能性細胞の集団から操作された膵島細胞の集団を生産する方法は、(a)インスリン様成長因子、形質転換成長因子、FGF、EGF、HGF、SHH、VEGF、形質転換成長因子-bスーパーファミリー、BMP2、BMP7、GSK阻害剤、ALK阻害剤、BMP1型受容体阻害剤、ならびにレチノイン酸からなる群から選択される1つまたは複数の因子を含む第1の培養培地中で操作されたiPSCの集団を培養して、未成熟膵島細胞の集団を生産することと、(b)第1の培養培地とは異なる第2の培養培地中で未成熟膵島細胞の集団を培養して、操作された膵島細胞の集団を生産することとを含む。いくつかの実施形態では、GSK阻害剤は、CHIR-99021、その誘導体、またはそのバリアントである。いくつかの事例では、GSK阻害剤は、約2mM~約10mMの範囲の濃度である。いくつかの実施形態では、ALK阻害剤は、SB-431542、その誘導体、またはそのバリアントである。いくつかの事例では、ALK阻害剤は、約1pM~約10pMの範囲の濃度である。いくつかの実施形態では、第1の培養培地及び/または第2の培養培地は、動物血清を含まない。
【0553】
分化は、一般にインスリンを含むがこれらに限定されないβ細胞関連または特異的マーカーの存在を評価することによって、当該技術分野で既知であるようにアッセイされる。分化はまた、グルコース代謝の測定等、機能的に測定することもできる。全般的には、Muraro et al.,Cell Syst.2016 Oct 26;3(4):385-394.e3を参照されたい(参照によりその全体が、特に同文献で概説されるバイオマーカーに関して本明細書に援用される)。ひとたびベータ細胞が生成されると、それらは、門脈/肝臓、大網、胃腸粘膜、骨髄、筋肉、または皮下嚢に移植され得る(細胞懸濁液としてまたは本明細書で考察されるゲルマトリックス内でのいずれかで)。
【0554】
本技術における使用に向けたものを含めた膵島細胞の追加の説明は、WO2020/018615に見出され、同文献の開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0555】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代ベータ島細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した内皮細胞等の、操作されたベータ島細胞の集団は、投与前に培養物中で維持され、場合によっては増殖させられる。ある特定の実施形態では、操作されたベータ島細胞の集団は、投与前に凍結保存される。
【0556】
例となる膵島細胞種には、膵島前駆細胞、未成熟膵島細胞、成熟膵島細胞等が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の膵臓細胞は、糖尿病を処置するために対象に投与される。
【0557】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代ベータ島細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化したベータ島細胞等の、本明細書に開示されるように操作された膵島細胞は、インスリンを分泌する。いくつかの実施形態では、膵島細胞は、内在性膵島細胞の少なくとも2つの特性、例えば、限定されないが、グルコースに応答したインスリンの分泌、及びベータ細胞マーカーの発現を示す。
【0558】
例となるベータ細胞マーカーまたはベータ細胞前駆細胞マーカーには、c-ペプチド、Pdx1、グルコース輸送体2(Glut2)、HNF6、VEGF、グルコキナーゼ(GCK)、プロホルモン転換酵素(PC1/3)、Cdcpl、NeuroD、Ngn3、Nkx2.2、Nkx6.1、Nkx6.2、Pax4、Pax6、Ptf1a、Isl1、Sox9、Sox17、及びFoxA2が含まれるが、これらに限定されない。
【0559】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代ベータ島細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化したベータ島細胞等の膵島細胞は、グルコースの増加に応答してインスリンを産生する。種々の実施形態では、該膵島細胞は、グルコースの増加に応答してインスリンを分泌する。いくつかの実施形態では、この細胞は、敷石の細胞形態及び/または約17pm~約25pmの直径等の特有の形態を有する。
【0560】
いくつかの実施形態では、本技術は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子(例えば、1つもしくは複数のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つもしくは複数のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の低減された発現を有するかまたはその発現を欠いており、CD46及びCD59の増加した発現及び/または過剰発現を有する、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代ベータ島細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化したベータ島細胞等の、操作されたベータ島細胞を対象とする。いくつかの実施形態では、ベータ島細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターをさらに発現する。ある特定の実施形態では、操作されたベータ島細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を保有し、改変を含まない同じ種類の細胞と比べて増加したCD46及びCD59の発現を有する。いくつかの実施形態では、ベータ島細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターをさらに発現する。いくつかの実施形態では、操作されたベータ島細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を保有し、改変を含まない同じ種類の細胞と比べて増加したCD46及びCD59の発現を有する(例えば、CD46及びCD59の過剰発現)。いくつかの実施形態では、ベータ島細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M及びCIITA及び遺伝子のうちの1つまたは複数を破壊するゲノム改変を保有する。
【0561】
いくつかの実施形態では、提供される操作されたベータ島細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代ベータ島細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化したベータ島細胞等の、本明細書に記載の操作されたベータ島細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要のある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作されたベータ島細胞の集団を投与することによって疾患を処置する方法が提供される。
【0562】
いくつかの実施形態では、投与される細胞の数は、免疫原性細胞(例えば、同じまたは類似の細胞種または表現型であるが、操作された細胞の改変、例えば遺伝子改変を含有しない、例えば、内在性レベルの1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を有し、CD47、CD46、及びCD59の増加した(例えば、外因性)発現を有しない、細胞の集団)に必要とされよう投薬量よりも低い投薬量である。
【0563】
O.肝細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変される細胞は、初代肝細胞である。いくつかの実施形態では、初代肝細胞は、1以上の個々のドナー対象、例えば、1以上の個々の健常なドナー(例えば、疾患または感染が認められていないか、または疑われない、例えば、その臨床徴候を示していない対象)から単離または入手される。当業者には理解されようが、個体から肝細胞を単離または入手する方法は、既知の技法を使用して達成することができる。本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)用に本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有する、操作された初代肝細胞が提供される。いくつかの実施形態では、操作された初代肝細胞は、肝細胞機能の喪失または肝硬変に対処するための細胞療法として投与され得る。
【0564】
いくつかの実施形態では、初代肝細胞は、対象または個体から入手される(例えば、採取、抽出、取り出し、または取得される)。いくつかの実施形態では、初代肝細胞は、肝細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健常なヒトを含む1以上のヒト)からのものであるように、肝細胞のプールから生産される。いくつかの実施形態では、初代肝細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、治療用細胞を投与されるレシピエント)とは異なる。いくつかの実施形態では、肝細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。いくつかの実施形態では、肝細胞のプールが入手されるドナー対象のうちの1以上は、患者とは異なる。
【0565】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有し、肝細胞に分化させられる操作されたiPSCから分化した、肝細胞である。当業者には理解されようが、分化のための方法は、既知の技法を使用して所望の細胞種に依存する。いくつかの実施形態では、肝細胞に分化させられた細胞は、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)に使用されてもよい。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞から分化した操作された肝細胞は、肝細胞機能の喪失または肝硬変に対処するための細胞療法として投与され得る。
【0566】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の改変を含有する操作された多能性細胞は、肝細胞に分化させられる。操作された多能性細胞を肝細胞に分化させるために使用され得るいくつかの技法が存在する。例えば、Pettinato et al ,doi:10.1038/spre32888、Snykers et al.,Methods Mol Biol,2011 698:305-314、Si-Tayeb et al.,Hepatology,2010,51:297-305、及びAsgari et al.,Stem Cell Rev,2013,9(4):493-504を参照されたく、同文献の全ては参照によりそれらの全体が、特に分化のための手法及び試薬に関して本明細書に援用される。分化は、一般にアルブミン、アルファフェトプロテイン、及びフィブリノゲンを含むが、これらに限定されない肝細胞関連及び/または特異的マーカーの存在を評価することによって、当技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。分化はまた、アンモニアの代謝、LDL貯蔵及び取り込み、ICG取り込み及び放出、ならびにグリコーゲン貯蔵等、機能的に測定することもできる。
【0567】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代肝細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した肝細胞等の操作された肝細胞の集団は、投与前に培養物中で維持され、場合によっては増殖させられる。ある特定の実施形態では、肝細胞の集団は、投与前に凍結保存される。
【0568】
いくつかの実施形態では、本技術は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子(例えば、1つもしくは複数のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つもしくは複数のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の低減された発現を有するかまたはその発現を欠いており、CD46及びCD59の増加した発現及び/または過剰発現を有する、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代肝細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した肝細胞等の操作された肝細胞を対象とする。ある特定の実施形態では、操作された肝細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)、CD46、及びCD59を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、肝細胞は、CD55の増加した発現及び/または過剰発現をさらに含む。いくつかの実施形態では、操作された肝細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)、CD46、及びCD59を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作された肝細胞は、CD46及びCD59の増加した発現及び/または過剰発現。いくつかの実施形態では、操作された肝細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、以下の遺伝子、すなわちB2M及びCIITA遺伝子のうちの1つまたは複数を破壊するゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現及び/または過剰発現を有する。いくつかの実施形態では、肝細胞は、CD55の増加した発現及び/または過剰発現をさらに含む。
【0569】
いくつかの実施形態では、提供される操作された肝細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代肝細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した肝細胞等の、本明細書に記載の操作された肝細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要のある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作された肝細胞の集団を投与することによって疾患を処置する方法が提供される。
【0570】
P.T細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変される細胞は、初代Tリンパ球(別称、T細胞)である。いくつかの実施形態では、初代Tリンパ球は、1以上の個々のドナー対象、例えば、1以上の個々の健常なドナー(例えば、疾患または感染が認められていないか、または疑われない、例えば、その臨床徴候を示していない対象)から単離または入手される。いくつかの事例では、T細胞は、1以上の個体からの初代T細胞の集団または亜集団である。当業者には理解されようが、個体からTリンパ球を単離または入手する方法は、既知の技法を使用して達成することができる。本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)用に本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有する、操作された初代Tリンパ球が提供される。
【0571】
いくつかの実施形態では、初代T細胞は、対象または個体から入手される(例えば、採取、抽出、取り出し、または取得される)。いくつかの実施形態では、初代T細胞は、T細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健常なヒトを含む1以上のヒト)からのものであるように、T細胞のプールから生産される。いくつかの実施形態では、初代T細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、治療用細胞を投与されるレシピエント)とは異なる。いくつかの実施形態では、T細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。いくつかの実施形態では、T細胞のプールが入手されるドナー対象のうちの1以上は、患者とは異なる。
【0572】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有し、Tリンパ球に分化させられる操作された多能性細胞から分化した、Tリンパ球である。当業者には理解されようが、分化のための方法は、既知の技法を使用して所望の細胞種に依存する。いくつかの実施形態では、Tリンパ球に分化させられた細胞は、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)に使用されてもよい。
【0573】
多能性幹細胞(例えば、iPSC)からT細胞を生成するための方法は、例えば、Iriguchi et al.,Nature Communications 12,430(2021)、Themeli et al.16(4):357-366(2015)、Themeli et al.,Nature Biotechnology 31:928-933(2013)に記載される。
【0574】
初代T細胞の非限定的な例としては、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、ナイーブT細胞、制御性T(Treg)細胞、非制御性T細胞、Th1細胞、Th2細胞、Th9細胞、Th17細胞、濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、エフェクターT(Teff)細胞、セントラルメモリーT(Tcm)細胞、エフェクターメモリーT(Tem)細胞、CD45RAを発現するエフェクターメモリーT細胞(TEMRA細胞)、組織常在メモリー(Trm)細胞、仮想メモリーT細胞、自然メモリーT細胞、メモリー幹細胞(Tsc)、γδT細胞、及びT細胞の任意の他のサブタイプが挙げられる。いくつかの実施形態では、初代T細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、腫瘍浸潤リンパ球、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0575】
本開示の例となるT細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、エフェクターメモリーRA T細胞、制御性T細胞、組織浸潤リンパ球、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。多くの実施形態では、T細胞は、CCR7、CD27、CD28、及びCD45RAを発現する。いくつかの実施形態では、セントラルT細胞は、CCR7、CD27、CD28、及びCD45ROを発現する。他の実施形態では、エフェクターメモリーT細胞は、PD-1、CD27、CD28、及びCD45ROを発現する。他の実施形態では、エフェクターメモリーRA T細胞は、PD-1、CD57、及びCD45RAを発現する。
【0576】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代T細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化したT細胞等の、本明細書に記載の操作されたT細胞は、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を含むがこれらに限定されないキメラ抗原受容体を発現するように操作された(例えば、改変される)T細胞を含む。本明細書に記載のCARを含めて、任意の好適なCARが、T細胞に含まれ得る。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、損傷細胞、異形成細胞、感染細胞、免疫原性細胞、炎症細胞、悪性細胞、化生細胞、変異細胞、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つの表面上に発現した目的の抗原またはエピトープに特異的に結合する、少なくとも1つのキメラ抗原受容体を発現する。他の実例では、操作されたT細胞は、該細胞が隣接する細胞、組織、または臓器に近接する場合に、該細胞に、隣接する細胞、組織、または臓器における目的の生物学的効果を調節する少なくとも1つのタンパク質を発現させる改変を含む。初代T細胞を含めたT細胞に対する有用な改変は、US2016/0348073及びWO2020/018620に詳述され、同文献の開示は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0577】
いくつかの実施形態では、T細胞は、CARをコードするポリヌクレオチドを含み、ここで、ポリヌクレオチドは、ゲノム遺伝子座に挿入される。本明細書に記載のレンチウイルスベースの形質導入法または遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)を含めて、任意の好適な方法を使用して、CARをT細胞のゲノム遺伝子座内に挿入することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(CD142としても公知)、MICA、MICB、LRP1(CD91としても公知)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1、またはKDM5D遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRBC、PD1、またはCTLA4遺伝子に挿入される。
【0578】
いくつかの実施形態では、操作または改変されたT細胞等の本明細書に記載のT細胞は、内在性T細胞受容体の低減された発現を含む。いくつかの実施形態では、TRACまたはTRBC遺伝子座は、例えば、本明細書に記載の遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)によって、細胞において破壊または排除される。いくつかの実施形態では、CARをコードするポリヌクレオチドまたは記載したような他のポリヌクレオチド等の外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子は、破壊されたTRACまたはTRBC遺伝子座内に挿入される。
【0579】
いくつかの実施形態では、操作または改変されたT細胞等の本明細書に記載のT細胞は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)の低減された発現を含む。いくつかの実施形態では、CTLA-4遺伝子座は、例えば、本明細書に記載の遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)によって、細胞において破壊または排除される。いくつかの実施形態では、CARをコードするポリヌクレオチドまたは記載したような他の外因性ポリヌクレオチド等の、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子は、破壊されたCTLA-4遺伝子座内に挿入される。
【0580】
他の実施形態では、操作または改変されたT細胞等の本明細書に記載のT細胞は、プログラム細胞死(PD1)の低減された発現を含む。いくつかの実施形態では、PD1遺伝子座は、例えば、本明細書に記載の遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)によって、細胞において破壊または排除される。いくつかの実施形態では、CARをコードするポリヌクレオチドまたは記載したような他の外因性ポリヌクレオチド等の、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子は、破壊されたPD1遺伝子座内に挿入される。ある特定の実施形態では、操作または改変されたT細胞等の本明細書に記載のT細胞は、CTLA4及びPD1の低減された発現を含む。
【0581】
ある特定の実施形態では、操作または改変されたT細胞等の本明細書に記載のT細胞は、PD-L1の強化された発現を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1遺伝子座は、例えば、本明細書に記載の遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)によって、細胞において破壊または排除される。いくつかの実施形態では、CARをコードするポリヌクレオチドまたは記載したような他の外因性ポリヌクレオチド等の、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子は、破壊されたPD-L1遺伝子座内に挿入される。
【0582】
いくつかの実施形態では、本技術は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子(例えば、1つもしくは複数のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つもしくは複数のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の低減された発現を有するかまたはその発現を欠いており、CD46及びCD59の増加した発現を有する、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代T細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化したT細胞等の、操作されたT細胞を対象とする。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、CD55の増加した発現(例えば、過剰発現)をさらに含む。ある特定の実施形態では、操作されたT細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、CD55の増加した発現をさらに含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターをさらに発現する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞はまた、CARを発現するように操作される。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、例えば、TRAC遺伝子またはTRBC遺伝子におけるゲノム改変(例えば、遺伝子破壊)によって、TCR複合体分子の低減された発現を有するかまたはその発現を欠いている。いくつかの実施形態では、T細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)及びCARを過剰発現し、以下の遺伝子、すなわちB2M、CIITA、TRAC、及びTRBC遺伝子のうちの1つまたは複数を破壊するゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。
【0583】
いくつかの実施形態では、提供される操作されたT細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代T細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化したT細胞等の、本明細書に記載の操作されたT細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要のある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作されたT細胞の集団を投与することによって疾患を処置する方法が提供される。
【0584】
本明細書で提供されるT細胞は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌を含むがこれらに限定されない、好適ながんの処置に有用である。
【0585】
Q.ナチュラルキラー細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変される細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの実施形態では、NK細胞は、1以上の個々のドナー対象、例えば、1以上の個々の健常なドナー(例えば、疾患または感染が認められていないか、または疑われない、例えば、その臨床徴候を示していない対象)から単離または入手される。いくつかの事例では、NK細胞は、1以上の個体からのNK細胞の集団または亜集団である。当業者には理解されようが、個体からNK細胞を単離または入手する方法は、既知の技法を使用して達成することができる。本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)用に本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有する、操作された初代NK細胞が提供される。例えば、操作されたT細胞は、操作されたNK細胞の対象への注入によって、対象(例えば、患者等のレシピエント)に投与される。
【0586】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有し、NK細胞に分化させられる操作された多能性細胞から分化した、NK細胞である。当業者には理解されようが、分化のための方法は、既知の技法を使用して所望の細胞種に依存する。いくつかの実施形態では、NK細胞に分化させられた細胞は、例えば、分化したNK細胞の対象への注入による、対象(例えば、患者等のレシピエント)へのその後の投与に使用されてもよい。
【0587】
多能性幹細胞(例えば、iPSC)からNK細胞を生成するための方法は、例えば、米国特許第10626373号、Shankar et al.Stem Cell Res Ther.2020;11:234、Euchner et al.Frontiers in Immunology,2021;12,Article 640672.doi=10.3389/fimmu.2021.640672に記載される。
【0588】
いくつかの実施形態では、NK細胞は、対象または個体から入手される(例えば、採取、抽出、取り出し、または取得される)。いくつかの実施形態では、NK細胞は、NK細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健常なヒトを含む1以上のヒト)からのものであるように、NK細胞のプールから生産される。いくつかの実施形態では、初代NK細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、操作されたNK細胞を投与されるレシピエント)とは異なる。いくつかの実施形態では、NK細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。いくつかの実施形態では、NK細胞のプールが入手されるドナー対象のうちの1以上は、患者とは異なる。
【0589】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代NK細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化したNK細胞を含めた、NK細胞は、CD56を発現し(例えば、CD56ディムまたはCD56ブライト)、CD3を欠いている(例えば、CD3陰性)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるNK細胞はまた、ADCCを媒介する低親和性Fcγ受容体であるCD16も発現し得る。いくつかの実施形態では、NK細胞はまた、1つもしくは複数のナチュラルキラー細胞受容体NKG2A及びNKG2Dまたは1つもしくは複数の天然細胞傷害性受容体NKp46、NKp44、NKp30も発現する。例えば、初代NK細胞の場合、特定の実例では、初代細胞は、CD3、CD14、及び/またはCD19に対して陽性である細胞の枯渇によって、末梢血単核細胞(PBMC)を含有する試料等のNK細胞の出発供給源から単離され得る。例えば、細胞は、それぞれCD3、CD14、及び/またはCD19に対する抗体を結合させた免疫磁気ビーズを使用して枯渇に供され、それによってNK細胞の濃縮された集団が生産され得る。他の実例では、初代NK細胞は、CD56、CD16、NKp46、及び/またはNKG2D等のNK細胞上の1つまたは複数のマーカーの存在に関して細胞を選択することによって、混合集団(例えば、PBMC)である出発供給源から単離され得る。
【0590】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作の前に、単離された初代NK細胞等のNK細胞は、1つまたは複数の増殖または活性化ステップに供され得る。いくつかの実施形態では、増殖は、放射線照射される場合もされない場合もある抗原提示細胞等のフィーダー細胞とのNK細胞の培養によって達成され得る。増殖ステップにおけるNK細胞対抗原提示細胞(APC)の比は、例えば、1:1、1:1.5、1:2、または1:3等のある特定の数の比であり得る。ある特定の態様では、APCは、膜結合型IL-21(mblL-21)を発現するように操作される。特定の態様では、APCは、代替としてまたは追加として、IL-21、IL-15、及び/またはIL-2を発現するように操作される。特定の実施形態では、増殖ステップ(複数可)が起こる培地は、1つまたは複数の組換えサイトカイン等の、増殖を容易にするための1つまたは複数の剤を含む。具体的な実施形態では、培地は、IL-2、IL-15、IL-18、及び/またはIL-21からの1つまたは複数の組換えサイトカインを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変を導入することによってNK細胞を操作するためのステップは、増殖の開始から2~12日後、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12日目または約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12日目に実施される。
【0591】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代NK細胞等の、本明細書に記載の操作されたNK細胞は、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を含むがこれらに限定されないキメラ抗原受容体を発現するように操作された(例えば、改変される)NK細胞を含む。本明細書に記載のCARを含めて、任意の好適なCARが、NK細胞に含まれ得る。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、損傷細胞、異形成細胞、感染細胞、免疫原性細胞、炎症細胞、悪性細胞、化生細胞、変異細胞、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つの表面上に発現した目的の抗原またはエピトープに特異的に結合する、少なくとも1つのキメラ抗原受容体を発現する。他の実例では、操作されたNK細胞は、該細胞が隣接する細胞、組織、または臓器に近接する場合に、該細胞に、隣接する細胞、組織、または臓器における目的の生物学的効果を調節する少なくとも1つのタンパク質を発現させる改変を含む。
【0592】
いくつかの実施形態では、NK細胞は、CARをコードするポリヌクレオチドを含み、ここで、ポリヌクレオチドは、ゲノム遺伝子座に挿入される。本明細書に記載のレンチウイルスベースの形質導入法または遺伝子編集法(例えば、CRISPR/Casシステム)を含めて、任意の好適な方法を使用して、CARをNK細胞のゲノム遺伝子座内に挿入することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(CD142としても公知)、MICA、MICB、LRP1(CD91としても公知)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1、またはKDM5D遺伝子座等のセーフハーバー遺伝子座内に挿入される。
【0593】
いくつかの実施形態では、本技術は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子(例えば、1つもしくは複数のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つもしくは複数のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の低減された発現を有するかまたはその発現を欠いており、CD46及びCD59の増加した発現を有する、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代NK細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化したNK細胞等の、操作されたNK細胞を対象とする。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、CD55の増加した発現をさらに含む。ある特定の実施形態では、操作されたNK細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞はまた、CARを発現するように操作される。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞はまた、CD55の増加した発現及び/または過剰発現も有する。
【0594】
いくつかの実施形態では、提供される操作されたNK細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代NK細胞等の、本明細書に記載の操作されたNK細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要のある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作されたNK細胞の集団を投与することによって疾患を処置する方法が提供される。
【0595】
本明細書で提供されるNK細胞は、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌を含むがこれらに限定されない、好適ながんの処置に有用である。
【0596】
R.内皮細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変される細胞は、初代内皮細胞である。いくつかの実施形態では、初代内皮細胞は、1以上の個々のドナー対象、例えば、1以上の個々の健常なドナー(例えば、疾患または感染が認められていないか、または疑われない、例えば、その臨床徴候を示していない対象)から単離または入手される。当業者には理解されようが、個体から内皮細胞を単離または入手する方法は、既知の技法を使用して達成することができる。本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)用に本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有する、操作された初代内皮細胞種が提供される。
【0597】
いくつかの実施形態では、初代内皮細胞は、対象または個体から入手される(例えば、採取、抽出、取り出し、または取得される)。いくつかの実施形態では、初代内皮細胞は、内皮細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健常なヒトを含む1以上のヒト)からのものであるように、内皮細胞のプールから生産される。いくつかの実施形態では、初代内皮細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、治療用細胞を投与されるレシピエント)とは異なる。いくつかの実施形態では、内皮細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。いくつかの実施形態では、内皮細胞のプールが入手されるドナー対象のうちの1以上は、患者とは異なる。
【0598】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有し、内皮細胞種に分化させられる操作されたiPSCから分化した、内皮細胞である。当業者には理解されようが、分化のための方法は、既知の技法を使用して所望の細胞種に依存する。いくつかの実施形態では、種々の内皮細胞種に分化させられた細胞は、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)に使用されてもよい。
【0599】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された多能性細胞は、末梢動脈疾患に対処するために新たな血管を形成させるための内皮コロニー形成細胞(ECFC)に分化させられる。内皮細胞への分化のための技法は、既知である。例えば、Prasain et al.,doi:10.1038/nbt.3048を参照されたい(参照によりその全体が、特にヒト多能性幹細胞からの内皮細胞の生成のための方法及び試薬に関して、また移植技法に関して本明細書に援用される)。分化は、一般に内皮細胞関連もしくは特異的マーカーの存在を評価することによって、または機能的に測定することによって、当技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。
【0600】
いくつかの実施形態では、インビトロでの分化によって操作された多能性細胞の集団から操作された内皮細胞の集団を生産する方法は、(a)GSK阻害剤を含む第1の培養培地中で操作されたiPSC細胞の集団を培養することと、(b)VEGF及びbFGFを含む第2の培養培地中で操作されたiPSC細胞の集団を培養して、内皮前駆細胞の集団を生産することと、(c)ROCK阻害剤及びALK阻害剤を含む第3の培養培地中で内皮前駆細胞の集団を培養して、本明細書に記載の改変を含有するように操作される分化した内皮細胞の集団を生産することとを含む。
【0601】
いくつかの実施形態では、GSK阻害剤は、CHIR-99021、その誘導体、またはそのバリアントである。いくつかの事例では、GSK阻害剤は、約1mM~約10mMの範囲の濃度である。いくつかの実施形態では、ROCK阻害剤は、Y-27632、その誘導体、またはそのバリアントである。いくつかの事例では、ROCK阻害剤は、約1pM~約20pMの範囲の濃度である。いくつかの実施形態では、ALK阻害剤は、SB-431542、その誘導体、またはそのバリアントである。いくつかの事例では、ALK阻害剤は、約0.5pM~約10pMの範囲の濃度である。
【0602】
いくつかの実施形態では、第1の培養培地は、2pM~約10pMのCHIR-99021を含む。いくつかの実施形態では、第2の培養培地は、50ng/mlのVEGF及び10ng/mlのbFGFを含む。他の実施形態では、第2の培養培地は、Y-27632及びSB-431542をさらに含む。種々の実施形態では、第3の培養培地は、10pMのY-27632及び1pMのSB-431542を含む。ある特定の実施形態では、第3の培養培地は、VEGF及びbFGFをさらに含む。特定の事例では、第1の培養培地及び/または第2の培地は、インスリンを含まない。
【0603】
本明細書で提供される細胞は、多能性細胞の内皮細胞への分化を補助及び/または促進するための合成表面等の表面上で培養することができる。いくつかの実施形態では、表面は、選択される1つまたは複数のアクリレートモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを含むがこれらに限定されない、ポリマー材料を含む。アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーの非限定的な例としては、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールプロポキシレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレート(1 EO/QH)メチル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート、及びトリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。アクリレートは、当該技術分野で既知のように合成されるか、またはPolysciences,Inc.、Sigma Aldrich,Inc.、及びSartomer,Inc.等の商業的供給業者から得られる。
【0604】
いくつかの実施形態では、内皮細胞は、ポリマーマトリックス上に播種されてもよい。場合によっては、ポリマーマトリックスは、生分解性である。好適な生分解性マトリックスは、当技術分野で周知であり、これにはコラーゲン-GAG、コラーゲン、フィブリン、PLA、PGA、及びPLA/PGAコポリマーが含まれる。追加の生分解性材料には、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(プロピルフマレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリアセタール、生分解性ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン、及び多糖類が含まれる。
【0605】
非生分解性ポリマーも同様に使用されてもよい。他の非生分解性であるが、それでも生体適合性であるポリマーには、ポリピロール、ポリアニブン(polyanibne)、ポリチオフェン、ポリスチレン、ポリエステル、非生分解性ポリウレタン、ポリ尿素、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、及びポリ(エチレンオキシド)が含まれる。ポリマーマトリックスは、任意の形状で、例えば、粒子、スポンジ、管、球、ストランド、コイル状ストランド、毛細管網目構造、フィルム、繊維、メッシュ、またはシートとして、形成され得る。ポリマーマトリックスは、天然または合成の細胞外マトリックス材料及び因子を含むように改変され得る。
【0606】
ポリマー材料は、支持材料の表面上に分散させることができる。細胞を培養するのに好適である有用な支持材料には、セラミック物質、ガラス、プラスチック、ポリマーもしくはコポリマー、それらの任意の組み合わせ、または1つの材料の別の材料上へのコーティングが含まれる。いくつかの事例では、ガラスには、ソーダ石灰ガラス、パイレックスガラス、バイコールガラス、石英ガラス、ケイ素、またはこれらの誘導体もしくは同等物が含まれる。
【0607】
いくつかの事例では、プラスチック、または樹枝状ポリマーを含めたポリマーには、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル-無水マレイン酸)、ポリ(ジメチルシロキサン)モノメタクリレート、環状オレフィンポリマー、フルオロカーボンポリマー、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンイミン、またはこれらの誘導体もしくは同等物が含まれる。いくつかの事例では、コポリマーには、ポリ(酢酸ビニル-co-無水マレイン酸)、ポリ(スチレン-co-無水マレイン酸)、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)、またはこれらの誘導体もしくは同等物が含まれる。
【0608】
本明細書で提供される方法における使用に向けた内皮細胞及びそれらの分化の追加の説明は、WO2020/018615に見出され、同文献の開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0609】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代内皮細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した内皮細胞等の、操作された内皮細胞の集団は、投与前に培養物中で維持され、場合によっては増殖させられる。ある特定の実施形態では、内皮細胞の集団は、投与前に凍結保存される。
【0610】
いくつかの実施形態では、本技術は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子(例えば、1つもしくは複数のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つもしくは複数のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の低減された発現を有するかまたはその発現を欠いており、CD46及びCD59の増加した発現を有する、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代内皮細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した内皮細胞等の、操作された内皮細胞を対象とする。いくつかの実施形態では、内皮細胞は、CD55の増加した発現をさらに含む。ある特定の実施形態では、操作された内皮細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、内皮細胞は、CD55の増加した発現をさらに含む。いくつかの実施形態では、操作された内皮細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、操作された内皮細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、以下の遺伝子、すなわちB2M、CIITA遺伝子のうちの1つまたは複数を破壊するゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、操作された内皮細胞は、CD55の増加した発現をさらに含む。
【0611】
いくつかの実施形態では、提供される操作された内皮細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代内皮細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した内皮細胞等の、本明細書に記載の操作された内皮細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要のある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作された内皮細胞の集団を投与することによって疾患を処置する方法が提供される。
【0612】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代内皮細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した内皮細胞等の、操作された内皮細胞は、患者、例えば、それを必要とするヒト患者に投与される。操作された内皮細胞は、限定されないが、心血管疾患、血管疾患、末梢血管疾患、虚血性疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、末梢血管閉塞性疾患、脳卒中、再灌流傷害、肢虚血、ニューロパチー(例えば、末梢ニューロパチーまたは糖尿病性ニューロパチー)、臓器不全(例えば、肝臓不全、腎臓不全等)、糖尿病、関節リウマチ、骨粗鬆症、血管損傷、組織損傷、高血圧症、冠動脈疾患に起因する狭心症及び心筋梗塞、腎血管性高血圧症、腎動脈狭窄に起因する腎不全、下肢の跛行等のような疾患または病態を患う患者に投与することができる。ある特定の実施形態では、患者は、一過性の虚血性発作または脳卒中を患ったことがあるか、またはそれを患っており、これは場合によっては、脳血管疾患に起因し得る。いくつかの実施形態では、操作された内皮細胞は、例えば、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、及び肢虚血において起こるような組織虚血を処置するため、ならびに損傷した血管を修復するために投与される。いくつかの事例では、該細胞は、移植片の生体工学で使用される。
【0613】
例えば、操作された内皮細胞は、虚血組織の修復、血管及び心臓弁の形成、人工血管の工学、損傷を受けた血管の修復、ならびに操作された組織における血管の形成の誘導(例えば、移植前)のために細胞療法で使用され得る。追加として、内皮細胞は、作用物質を標的に送達し、腫瘍を処置するようにさらに改変され得る。
【0614】
多くの実施形態では、血管細胞または血管新生を必要とする組織の修復または置換方法が本明細書で提供される。該方法は、かかる処置を必要とするヒト患者に、かかる組織における血管新生を促進するために、単離された初代内皮細胞または分化した内皮細胞等の操作された内皮細胞を含有する組成物を投与することを伴う。血管細胞または血管新生を必要とする組織は、とりわけ、心臓組織、肝臓組織、膵臓組織、腎組織、筋組織、神経組織、骨組織であり得、これは損傷を受けた、過剰な細胞死を特徴とする組織、損傷の危険性がある組織、または人工的に操作された組織であり得る。
【0615】
いくつかの実施形態では、心臓疾患または障害に関連し得る血管疾患は、限定されないが、本明細書に記載されるように派生させた最終的な血管内皮細胞及び心内膜内皮細胞等の内皮細胞を投与することによって処置することができる。かかる血管疾患には、冠動脈疾患、脳血管疾患、大動脈狭窄、大動脈瘤、末梢動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、静脈瘤、血管障害、冠灌流を欠いた心臓の梗塞領域、非治癒性創傷、糖尿病性もしくは非糖尿病性潰瘍、または血管の形成の誘導が望ましい任意の他の疾患もしくは障害が含まれるが、これらに限定されない。
【0616】
ある特定の実施形態では、内皮細胞は、血管再建手術で使用される補綴インプラント(例えば、Dacron及びGortex等の合成材料で作製された血管)を改善するために使用される。例えば、重要な臓器または肢を灌流する病変動脈を置換するために、補綴動脈移植片が使用される場合が多い。他の実施形態では、操作された内皮細胞は、弁表面での血栓形成性を下げることによって塞栓形成の危険性を低下させるように補綴心臓弁の表面を覆うために使用される。
【0617】
概説される内皮細胞は、組織及び/または単離された細胞を血管に移植するための周知の外科的技法を使用して、患者に移植することができる。いくつかの実施形態では、該細胞は、注射(例えば、心筋内注射、冠動脈内注射、経心内膜注射、経心外膜注射、経皮注射)、注入、移植、及び埋め込みによって患者の心臓組織に導入される。
【0618】
内皮細胞の投与(送達)には、静脈内、動脈内(例えば、冠動脈内)、筋肉内、腹腔内、心筋内、経心内膜、経心外膜、鼻腔内投与ならびに髄腔内、及び注入技法を含む、皮下または非経口が含まれるが、これらに限定されない。
【0619】
当業者には理解されようが、該細胞は、細胞種及びこれらの細胞の最終的用途の両方に依存する当該技術分野で既知の技法を使用して移植される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞は、患者において静脈内にまたは特定の部位での注射によってのいずれかで移植される。特定の箇所で移植する場合、細胞は、それらが定着する間の分散を防止するためにゲルマトリックス中に縣濁させてもよい。
【0620】
例となる内皮細胞種には、毛細血管内皮細胞、血管内皮細胞、大動脈内皮細胞、動脈内皮細胞、静脈内皮細胞、腎内皮細胞、脳内皮細胞、肝臓内皮細胞等が含まれるが、これらに限定されない。
【0621】
単離された初代内皮細胞または分化した内皮細胞等の、本明細書に概説される内皮細胞は、1つまたは複数の内皮細胞マーカーを発現し得る。かかるマーカーの非限定的な例としては、VE-カドヘリン(CD144)、ACE(アンジオテンシン転換酵素)(CD143)、BNH9/BNF13、CD31、CD34、CD54(ICAM-l)、CD62E(E-セレクチン)、CD105(エンドグリン)、CD146、エンドカン(ESM-l)、エンドグリクス-l、エンドムチン、エオタキシン-3、EPAS1(内皮PASドメインタンパク質1)、第VIII因子関連抗原、FLI-l、Flk-l(KDR、VEGFR-2)、FLT-l(VEGFR-l)、GATA2、GBP-l(グアニル酸結合タンパク質-l)、GRO-アルファ、HEX、ICAM-2(細胞間接着分子2)、LM02、LYVE-l、MRB(マジックラウンドアバウト)、ヌクレオリン、PAL-E(病理解剖学的ライデン内皮)、RTK、sVCAM-l、TALI、TEM1(腫瘍内皮マーカー1)、TEM5(腫瘍内皮マーカー5)、TEM7(腫瘍内皮マーカー7)、トロンボモジュリン(TM、CD141)、VCAM-l(血管細胞接着分子-1)(CD106)、VEGF、vWF(フォン・ヴィレブランド因子)、ZO-l、内皮細胞選択的接着分子(ESAM)、CD102、CD93、CD184、CD304、及びDLL4が挙げられる。
【0622】
いくつかの実施形態では、内皮細胞は、障害/病態を処置するかまたは障害/病態の症状を改善させるのに有用である、限定されないが酵素、ホルモン、受容体、リガンド、または薬物等の目的のタンパク質をコードする外因性遺伝子を発現するようにさらに遺伝子改変される。内皮細胞を遺伝子改変するための標準的方法は、例えば、US5,674,722に記載される。
【0623】
かかる内皮細胞を使用して、疾患の予防または治療において有用であるポリペプチドまたはタンパク質の構成的合成及び送達を提供することができる。このようにして、ポリペプチドは、個体の血流または身体の他の領域(例えば、中枢神経系)中に直接分泌される。いくつかの実施形態では、内皮細胞は、インスリン、血液凝固因子(例えば、第VIII因子またはフォン・ヴィレブランド因子)、アルファ-1抗トリプシン、アデノシンデアミナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3)等を分泌するように改変され得る。
【0624】
ある特定の実施形態では、内皮細胞は、埋め込まれた移植片の文脈においてそれらの性能を改善するように改変され得る。非限定的で例示的な例としては、管腔内血塊形成を予防するための血栓溶解物質の分泌もしくは発現、平滑筋肥大に起因する管腔狭窄を予防するための平滑筋増殖の阻害物質の分泌、ならびに内皮細胞増殖を刺激し、移植片管腔の内皮細胞による内層形成の範囲もしくは持続期間を改善するための内皮細胞分裂促進因子もしくは自己分泌因子の発現及び/または分泌が挙げられる。
【0625】
いくつかの実施形態では、操作された内皮細胞は、治療的レベルの分泌産物を特定の臓器または肢に送達するのに利用される。例えば、インビトロで操作された(形質導入された)内皮細胞で内層形成された血管インプラントが、特定の臓器または肢に移植され得る。形質導入された内皮細胞の分泌産物は、灌流組織に高濃度で送達され、それによって標的とする解剖学的位置への所望の効果を達成するであろう。
【0626】
他の実施形態では、内皮細胞は、血管新生化している腫瘍において、内皮細胞によって発現されるときに血管新生を妨害または阻害する遺伝子を含有するようにさらに遺伝子改変される。場合によっては、内皮細胞はまた、腫瘍処置の完了時に移植された内皮細胞の負の選択を可能にする、本明細書に記載の選択可能自殺遺伝子のうちのいずれか1つを発現するように遺伝子改変され得る。
【0627】
いくつかの実施形態では、単離された初代内皮細胞または分化した内皮細胞等の、本明細書に記載の内皮細胞は、血管損傷、心血管疾患、血管疾患、末梢血管疾患、虚血性疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、末梢血管閉塞性疾患、高血圧症、虚血性組織損傷、再灌流傷害、肢虚血、脳卒中、ニューロパチー(例えば、末梢ニューロパチーまたは糖尿病性ニューロパチー)、臓器不全(例えば、肝不全、腎不全等)、糖尿病、関節リウマチ、骨粗鬆症、脳血管疾患、高血圧症、冠動脈疾患に起因する狭心症及び心筋梗塞、腎血管高血圧症、腎動脈狭窄に起因する腎不全、下肢の跛行、他の血管病態または疾患からなる群から選択される血管障害を処置するためにレシピエント対象に投与される。
【0628】
S.上皮細胞
3)網膜色素上皮(RPE)細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変される細胞は、初代網膜色素上皮(RPE)細胞である。いくつかの実施形態では、初代RPE細胞は、1以上の個々のドナー対象、例えば、1以上の個々の健常なドナー(例えば、疾患または感染が認められていないか、または疑われない、例えば、その臨床徴候を示していない対象)から単離または入手される。当業者には理解されようが、個体からRPE細胞を単離または入手する方法は、既知の技法を使用して達成することができる。本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)用に本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有する、操作されたRPE細胞が提供される。
【0629】
いくつかの実施形態では、初代RPE細胞は、対象または個体から入手される(例えば、採取、抽出、取り出し、または取得される)。いくつかの実施形態では、初代RPE細胞は、RPE細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健常なヒトを含む1以上のヒト)からのものであるように、RPE細胞のプールから生産される。いくつかの実施形態では、初代RPE細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、治療用細胞を投与されるレシピエント)とは異なる。いくつかの実施形態では、RPE細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。いくつかの実施形態では、RPE細胞のプールが入手されるドナー対象のうちの1以上は、患者とは異なる。
【0630】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有し、RPE細胞に分化させられる操作されたiPSCから分化した、RPE細胞である。当業者には理解されようが、分化のための方法は、既知の技法を使用して所望の細胞種に依存する。いくつかの実施形態では、RPE細胞に分化させられた細胞は、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)に使用されてもよい。
【0631】
多能性幹細胞をRPE細胞に分化させるための有用な方法は、例えば、US9,458,428及びUS9,850,463に記載され、これらの開示は、明細書を含めてそれらの全体が参照により本明細書に援用される。ヒト人工多能性幹細胞からRPE細胞を生産するための追加の方法は、例えば、Lamba et al.,PNAS,2006,103(34):12769-12774、Mellough et al.,Stem Cells,2012,30(4):673-686、Idelson et al.,Cell Stem Cell,2009,5(4):396-408、Rowland et al.,Journal of Cellular Physiology,2012,227(2):457-466、Buchholz et al.,Stem Cells Trans Med,2013,2(5):384-393、及びda Cruz et al.,Nat Biotech,2018,36:328-337に見出すことができる。
【0632】
ヒト多能性幹細胞は、Kamao et al.,Stem Cell Reports 2014:2:205-18に概説される技法を使用して、RPE細胞に分化させられた(参照によりその全体が、特に分化技法及び試薬について同文献で概説される方法及び試薬に関して本明細書に援用される)。また、Mandai et al.,N Engl J Med,2017,376:1038-1046も参照されたい(この内容は参照によりその全体が、RPE細胞のシートの生成及び患者への移植のための技法に関して本明細書に援用される)。分化は、一般にRPE関連及び/または特異的マーカーの存在を評価することによって、または機能的に測定することによって、当技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。例えば、Kamao et al.,Stem Cell Reports,2014,2(2):205-18を参照されたい(この内容は参照によりその全体が、特に結果の節の第1段落に概説されるマーカーに関して本明細書に援用される)。
【0633】
いくつかの実施形態では、インビトロでの分化によって操作された多能性細胞の集団から操作された網膜色素上皮(RPE)細胞の集団を生産する方法は、(a)アクチビンA、bFGF、BMP4/7、DKK1、IGF1、ノギン、BMP阻害剤、ALK阻害剤、ROCK阻害剤、及びVEGFR阻害剤からなる群から選択される因子のうちのいずれか1つを含む第1の培養培地中で操作された多能性細胞の集団を培養して、RPE前駆細胞の集団を生産することと、(b)第1の培養培地とは異なる第2の培養培地中でRPE前駆細胞の集団を培養して、操作されたRPE細胞の集団を生産することとを含む。いくつかの実施形態では、ALK阻害剤は、SB-431542、その誘導体、またはそのバリアントである。いくつかの事例では、ALK阻害剤は、約2mM~約10pMの範囲の濃度である。いくつかの実施形態では、ROCK阻害剤は、Y-27632、その誘導体、またはそのバリアントである。いくつかの事例では、ROCK阻害剤は、約1pM~約10pMの範囲の濃度である。いくつかの実施形態では、第1の培養培地及び/または第2の培養培地は、動物血清を含まない。
【0634】
分化は、一般にRPE関連及び/または特異的マーカーの存在を評価することによって、または機能的に測定することによって、当技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。例えば、Kamao et al.,Stem Cell Reports,2014,2(2):205-18を参照されたい(この内容は参照によりその全体が、特に結果の節に関して本明細書に援用される)。
【0635】
RPE細胞の分化のため及び本技術において使用するための方法を含めたRPE細胞の追加の説明は、WO2020/018615に見出され、同文献の開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0636】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代RPE細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化したRPE細胞等の、操作されたRPE細胞の集団は、投与前に培養物中で維持され、場合によっては増殖させられる。ある特定の実施形態では、RPE細胞の集団は、投与前に凍結保存される。
【0637】
例となるRPE細胞種には、網膜色素上皮(RPE)細胞、RPE前駆細胞、未成熟RPE細胞、成熟RPE細胞、機能的RPE細胞等が含まれるが、これらに限定されない。
【0638】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代RPE細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化したRPE細胞等のRPE細胞は、天然RPE細胞のそれに類似または実質的に類似した遺伝子発現プロファイルを有する。かかるRPE細胞は、平面基板上でコンフルエントの状態まで増殖させたときに天然RPE細胞の多角形で平面状のシートの形態をもつことが可能である。
【0639】
いくつかの実施形態では、本技術は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子(例えば、1つもしくは複数のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つもしくは複数のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の低減された発現を有するかまたはその発現を欠いており、CD46及びCD59の増加した発現を有する、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代RPE細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化したRPE細胞等の、操作されたRPE細胞を対象とする。いくつかの実施形態では、RPE細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターをさらに発現する。ある特定の実施形態では、操作されたRPE細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、RPE細胞は、CD55の増加した発現をさらに含む。いくつかの実施形態では、操作されたRPE細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、RPE細胞は、CD55の増加した発現をさらに含む。いくつかの実施形態では、操作されたRPE細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、以下の遺伝子、すなわちB2M、CIITAのうちの1つまたは複数を破壊するゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。
【0640】
いくつかの実施形態では、提供される操作されたRPE細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代RPE細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化したRPE細胞等の、本明細書に記載の操作されたRPE細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要のある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作されたRPE細胞の集団を投与することによって疾患を処置する方法が提供される。
【0641】
RPE細胞は、黄斑変性を患う患者または損傷を受けたRPE細胞を有する患者に移植することができる。いくつかの実施形態では、患者は、加齢黄斑変性(AMD)、初代AMD、中期AMD、後期AMD、新生血管を伴わない加齢黄斑変性、ドライ型黄斑変性(ドライ型加齢黄斑変性)、ウェット型黄斑変性(ウェット型加齢黄斑変性)、若年性黄斑変性(JMD)(例えば、スターガルト病、ベスト病、及び若年性網膜分離症)、レーバー先天性黒内障、または網膜色素変性症を有する。他の実施形態では、患者は、網膜剥離を患う。
【0642】
治療用途では、開示される方法に従って調製された細胞は、典型的には、等張性賦形剤を含む薬学的組成物の形態で供給することができ、ヒト投与のために十分に滅菌された条件下で調製される。細胞組成物の医薬製剤における一般原則については、“Cell Therapy:Stem Cell Transplantation,Gene Therapy,and Cellular Immunotherapy,”by Morstyn & Sheridan eds,Cambridge University Press,1996、及び“Hematopoietic Stem Cell Therapy,”E.D.Ball,J.Lister & P.Law,Churchill Livingstone,2000を参照されたい。細胞は、流通または臨床使用に好適なデバイスまたは容器に包装され得る。
【0643】
4)甲状腺細胞
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるように操作または改変される細胞は、初代甲状腺細胞である。いくつかの実施形態では、初代甲状腺細胞は、1以上の個々のドナー対象、例えば、1以上の個々の健常なドナー(例えば、疾患または感染が認められていないか、または疑われない、例えば、その臨床徴候を示していない対象)から単離または入手される。当業者には理解されようが、個体から甲状腺細胞を単離または入手する方法は、既知の技法を使用して達成することができる。本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)用に本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有する、操作された初代甲状腺細胞が提供される。
【0644】
いくつかの実施形態では、初代甲状腺細胞は、対象または個体から入手される(例えば、採取、抽出、取り出し、または取得される)。いくつかの実施形態では、初代甲状腺細胞は、甲状腺細胞が1以上の対象(例えば、1以上の健常なヒトを含む1以上のヒト)からのものであるように、甲状腺細胞のプールから生産される。いくつかの実施形態では、初代甲状腺細胞のプールは、1~100、1~50、1~20、1~10、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、または100以上の対象からのものである。いくつかの実施形態では、ドナー対象は、患者(例えば、治療用細胞を投与されるレシピエント)とは異なる。いくつかの実施形態では、甲状腺細胞のプールは、患者からの細胞を含まない。いくつかの実施形態では、甲状腺細胞のプールが入手されるドナー対象のうちの1以上は、患者とは異なる。
【0645】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞は、本明細書に記載の改変(例えば、遺伝子改変)を含有し、甲状腺細胞に分化させられる操作されたiPSCから分化した、甲状腺細胞である。当業者には理解されようが、分化のための方法は、既知の技法を使用して所望の細胞種に依存する。いくつかの実施形態では、甲状腺細胞に分化させられた細胞は、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)に使用されてもよい。
【0646】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の改変を含有する操作された多能性細胞は、自己免疫性甲状腺炎に対処するために甲状腺ホルモンを分泌することができる甲状腺前駆細胞及び甲状腺濾胞オルガノイドに分化させられる。甲状腺細胞への分化のための技法は、当該技術分野で既知である。例えば、Kurmann et al.,Cell Stem Cell,2015 Nov 5;17(5):527-42を参照されたい(参照によりその全体が、特にヒト多能性幹細胞からの甲状腺細胞の生成のための方法及び試薬に関して、また移植技法に関して本明細書に援用される)。分化は、一般に甲状腺細胞関連もしくは特異的マーカーの存在を評価することによって、または機能的に測定することによって、当技術分野で既知であるようにアッセイすることができる。
【0647】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代甲状腺細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した甲状腺細胞等の、操作された甲状腺細胞の集団は、投与前に培養物中で維持され、場合によっては増殖させられる。ある特定の実施形態では、甲状腺細胞の集団は、投与前に凍結保存される。
【0648】
いくつかの実施形態では、本技術は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子(例えば、1つもしくは複数のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つもしくは複数のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の低減された発現を有するかまたはその発現を欠いており、CD46及びCD59の増加した発現を有する、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代甲状腺細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した甲状腺細胞等の、操作された甲状腺細胞を対象とする。いくつかの実施形態では、甲状腺細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターをさらに発現する。ある特定の実施形態では、操作された甲状腺細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、甲状腺細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターをさらに発現する。いくつかの実施形態では、操作された甲状腺細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)、CD46、及びCD59を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作された甲状腺細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)、CD46、及びCD59を過剰発現し、B2M及びCIITA遺伝子のうちの1つまたは複数を破壊するゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、甲状腺細胞は、CD55の発現を増加させるようにさらに改変される。
【0649】
いくつかの実施形態では、提供される操作された甲状腺細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)から単離された初代甲状腺細胞または1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化したベータ島細胞等の、本明細書に記載の操作された甲状腺細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要のある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作された内皮細胞の集団を投与することによって疾患を処置する方法が提供される。
【0650】
T.心臓細胞
本明細書では、対象(例えば、レシピエント)へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)用にHIP細胞から分化させた心臓細胞種が提供される。当業者には理解されようが、分化のための方法は、既知の技法を使用して所望の細胞種に依存する。例となる心臓細胞種には、心筋細胞、結節心筋細胞、伝導系心筋細胞、ワーキング心筋細胞、心筋細胞の前駆体細胞、心筋細胞の前駆細胞、心臓幹細胞、心筋細胞、心房心臓幹細胞、心室心臓幹細胞、心外膜細胞、造血細胞、血管内皮細胞、心内膜内皮細胞、心臓弁間質細胞、心臓ペースメーカー細胞等が含まれるが、これらに限定されない。
【0651】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の心臓細胞は、小児期心筋症、加齢性心筋症、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、慢性虚血性心筋症、周産期心筋症、炎症性心筋症、特発性心筋症、他の心筋症、心筋虚血再灌流傷害、心室機能不全、心不全、うっ血性心不全、冠動脈疾患、末期心臓疾患、アテローム性動脈硬化症、虚血、高血圧症、再狭窄、狭心症、リウマチ性心臓、動脈炎症、心血管疾患、心筋梗塞、心筋虚血、うっ血性心不全、心筋梗塞、心虚血、心外傷、心筋虚血、血管疾患、後天性心臓疾患、先天性心臓疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、機能不全の伝導系、機能不全の冠動脈、肺高血圧症、心不整脈、筋ジストロフィー、筋肉量異常、筋肉変性、心筋炎、感染性心筋炎、薬物または毒素誘発性筋肉異常、過敏性心筋炎、及び自己免疫心内膜炎からなる群から選択される心臓障害を処置するために、レシピエント対象に投与される。
【0652】
したがって、本明細書では、その必要のある対象における、心外傷または心臓疾患もしくは障害の処置及び予防のための方法が提供される。本明細書に記載の方法を使用して、いくつかの心臓疾患またはそれらの症状、例えば、心臓の構造及び/または機能への病理学的損傷をもたらすものを処置するか、改善させるか、予防するか、またはその進行を緩徐化することができる。「心臓疾患」、「心臓障害」、及び「心外傷」という用語は、本明細書で互換的に使用され、弁、内皮、梗塞領域、または心臓の他の構成要素もしくは構造を含めた心臓に関係する病態及び/または障害を指す。かかる心臓疾患または心臓関連疾患には、とりわけ、心筋梗塞、心不全、心筋症、先天性心臓欠陥、心臓弁疾患または機能不全、心内膜炎、リウマチ熱、僧帽弁逸脱症、感染性心内膜炎、肥大型心筋症、拡張型心筋症、心筋炎、心肥大、及び/または僧帽弁閉鎖不全症が含まれるが、これらに限定されない。
【0653】
いくつかの実施形態では、心筋細胞前駆体には、成熟(最終段階)心筋細胞を含む子孫を生じさせることができる細胞が含まれる。心筋細胞の前駆体細胞は、多くの場合、GATA-4、Nkx2.5、及びMEF-2ファミリーの転写因子から選択される1つまたは複数のマーカーを使用して特定することができる。いくつかの事例では、心筋細胞は、以下のリストからの1つまたは複数のマーカー(ときには少なくとも2、3、4、または5つのマーカー)を発現する未成熟心筋細胞または成熟心筋細胞を指す:心臓トロポニンI(cTnl)、心臓トロポニンT(cTnT)、サルコメリックミオシン重鎖(MHC)、GATA-4、Nkx2.5、N-カドヘリン、β2-アドレナリン受容体、ANF、MEF-2ファミリーの転写因子、クレアチンキナーゼMB(CK-MB)、ミオグロビン、及び心房性ナトリウム利尿因子(ANF)。いくつかの実施形態では、心臓細胞は、自発的な周期的収縮活動を示す。場合によっては、その心臓細胞が、適切なCa2+濃度及び電解質の均衡を有する好適な組織培養環境で培養される場合、細胞は、培養培地にいずれの追加の構成成分も添加する必要なしに、細胞の一軸方向に周期的様態で収縮し、次いで収縮を解除することが観察され得る。いくつかの実施形態では、心臓細胞は、低免疫原性心臓細胞である。
【0654】
いくつかの実施形態では、インビトロでの分化によって低免疫原性多能性(HIP)細胞の集団から低免疫原性心臓細胞の集団を生産する方法は、(a)GSK阻害剤を含む培養培地中でHIP細胞の集団を培養することと、(b)WNTアンタゴニストを含む培養培地中でHIP細胞の集団を培養して、心臓前駆細胞の集団を生産することと、(c)インスリンを含む培養培地中で心臓前駆細胞の集団を培養して、低免疫心臓細胞の集団を生産することとを含む。いくつかの実施形態では、GSK阻害剤は、CHIR-99021、その誘導体、またはそのバリアントである。いくつかの事例では、GSK阻害剤は、約2mM~約10mMの範囲の濃度である。いくつかの実施形態では、WNTアンタゴニストは、IWR1、その誘導体、またはそのバリアントである。いくつかの事例では、WNTアンタゴニストは、約2mM~約10mMの範囲の濃度である。
【0655】
いくつかの実施形態では、低免疫原性心臓細胞の集団は、非心臓細胞から単離される。いくつかの実施形態では、低免疫原性心臓細胞の単離された集団は、投与前に増殖させられる。ある特定の実施形態では、低免疫原性心臓細胞の単離された集団は、投与前に増殖させられ、凍結保存される。
【0656】
人工多能性幹細胞または多能性幹細胞を心臓細胞に分化させるための他の有用な方法は、例えば、US2017/0152485、US2017/0058263、US2017/0002325、US2016/0362661、US2016/0068814、US9,062,289、US7,897,389、及びUS7,452,718に記載される。人工多能性幹細胞または多能性幹細胞から心臓細胞を生産するための追加の方法は、例えば、Xu et al.,Stem Cells and Development,2006,15(5):631-9、Burridge et al.,Cell Stem Cell,2012,10:16-28、及びChen et al.,Stem Cell Res,2015,15(2):365-375に記載される。
【0657】
種々の実施形態では、低免疫原性心臓細胞は、BMP経路阻害剤、WNTシグナル伝達活性化剤、WNTシグナル伝達阻害剤、WNTアゴニスト、WNTアンタゴニスト、Src阻害剤、EGFR阻害剤、PCK活性化剤、サイトカイン、成長因子、心臓作用性剤(cardiotropic agent)、化合物等を含む培養培地中で培養され得る。
【0658】
WNTシグナル伝達活性化剤には、CHIR99021が含まれるが、これらに限定されない。PCK活性化剤には、PMAが含まれるが、これらに限定されない。WNTシグナル伝達阻害剤には、KY02111、SO3031(KY01-I)、SO2031(KY02-I)、及びSO3042(KY03-I)、及びXAV939から選択される化合物が含まれるが、これらに限定されない。Src阻害剤には、A419259が含まれるが、これらに限定されない。EGFR阻害剤には、AG1478が含まれるが、これらに限定されない。
【0659】
iPSCから心臓細胞を生成するための剤の非限定的な例としては、アクチビンA、BMP4、Wnt3a、VEGF、可溶性フリズルドタンパク質、シクロスポリンA、アンジオテンシンII、フェニルエフリン、アスコルビン酸、ジメチルスルホキシド、5-アザ-2’-デオキシシチジン等が挙げられる。
【0660】
本明細書で提供される細胞は、低免疫原性多能性細胞の心臓細胞への分化を補助及び/または促進するための合成表面等の表面上で培養することができる。いくつかの実施形態では、表面は、選択される1つまたは複数のアクリレートモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを含むがこれらに限定されない、ポリマー材料を含む。アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーの非限定的な例としては、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールプロポキシレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレート(1 EO/QH)メチル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート、及びトリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。アクリレートは、当該技術分野で既知のように合成されるか、またはPolysciences,Inc.、Sigma Aldrich,Inc.、及びSartomer,Inc.等の商業的供給業者から得られる。
【0661】
ポリマー材料は、支持材料の表面上に分散させることができる。細胞を培養するのに好適である有用な支持材料には、セラミック物質、ガラス、プラスチック、ポリマーもしくはコポリマー、それらの任意の組み合わせ、または1つの材料の別の材料上へのコーティングが含まれる。いくつかの事例では、ガラスには、ソーダ石灰ガラス、パイレックスガラス、バイコールガラス、石英ガラス、ケイ素、またはこれらの誘導体もしくは同等物が含まれる。
【0662】
いくつかの事例では、プラスチック、または樹枝状ポリマーを含めたポリマーには、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル-無水マレイン酸)、ポリ(ジメチルシロキサン)モノメタクリレート、環状オレフィンポリマー、フルオロカーボンポリマー、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンイミン、またはこれらの誘導体もしくは同等物が含まれる。いくつかの事例では、コポリマーには、ポリ(酢酸ビニル-co-無水マレイン酸)、ポリ(スチレン-co-無水マレイン酸)、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)、またはこれらの誘導体もしくは同等物が含まれる。
【0663】
本明細書に記載されるように調製された心臓細胞の有効性は、処置なしでは左室壁組織の55%が瘢痕組織となることにつながる心臓凍結損傷の動物モデルにおいて評定することができる(Li et al.,Ann.Thorac.Surg.62:654,1996、Sakai et al.,Ann.Thorac.Surg.8:2074,1999、Sakai et al.,Thorac.Cardiovasc.Surg.118:715,1999)。処置の成功は、瘢痕の面積を低減し、瘢痕の拡大を制限し、収縮期圧、拡張期圧、及び最大圧によって決定されるような心臓機能を改善し得る。心外傷はまた、左前下行枝の遠位部において塞栓コイルを使用してモデル化することもでき(Watanabe et al.,Cell Transplant.7:239,1998)、処置の有効性を組織学的検査及び心機能によって評価することができる。
【0664】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した心臓細胞等の操作された心臓細胞の集団は、投与前に培養物中で維持され、場合によっては増殖させられる。ある特定の実施形態では、心臓細胞の集団は、投与前に凍結保存される。
【0665】
いくつかの実施形態では、本技術は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子(例えば、1つもしくは複数のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つもしくは複数のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の低減された発現を有するかまたはその発現を欠いており、CD46及びCD59の増加した発現を有する、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した心臓細胞等の、操作された心臓細胞を対象とする。いくつかの実施形態では、心臓細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターをさらに発現する。ある特定の実施形態では、操作された心臓細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、心臓細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターをさらに発現する。いくつかの実施形態では、操作された心臓細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、心臓細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターをさらに発現する。いくつかの実施形態では、操作された心臓細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)、CD46、及びCD59を過剰発現し、B2M及びCIITA遺伝子のうちの1つまたは複数を破壊するゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、心臓細胞は、CD55の発現を増加させるようにさらに改変される。
【0666】
いくつかの実施形態では、提供される操作された心臓細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した心臓細胞等の、本明細書に記載の操作された心臓細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要のある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作された心臓細胞の集団を投与することによって疾患を処置する方法が提供される。
【0667】
いくつかの実施形態では、投与は、対象の心臓組織内への埋め込み、静脈内注射、動脈内注射、冠動脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、心筋内注射、経心内膜注射、経心外膜注射、または輸注を含む。
【0668】
いくつかの実施形態では、操作された心臓細胞を投与される患者はまた、心臓薬も投与される。併用療法において使用するのに好適である心臓薬の例示的な例としては、成長因子、成長因子をコードするポリヌクレオチド、血管新生剤、カルシウムチャネル遮断薬、血圧降下剤、有糸分裂阻害剤、変力作用剤、アテローム生成抑制剤、抗凝血薬、ベータ遮断薬、抗不整脈剤、抗炎症剤、血管拡張剤、血栓溶解剤、強心配糖体、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、原虫を阻害する剤、硝酸塩、アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、抗悪性腫瘍剤、ステロイド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0669】
本明細書で提供される方法による療法の効果は、様々な方式で監視され得る。例えば、心電図(ECG)またはホルターモニターを利用して、処置の有効性を決定することができる。ECGは、心臓のリズム及び電気インパルスの尺度であり、療法が対象の心臓における電気伝導を改善もしくは維持、予防、またはその性能低下を緩徐化したかどうかを決定するために非常に有効で非侵襲的な方法である。心臓異常、不整脈障害等を監視するために長時間にわたって装着され得る携帯型ECGであるホルターモニターの使用もまた、療法の有効性を評定するための信頼のおける方法である。ECGまたは核研究を使用して、心室機能の改善を決定することができる。
【0670】
U.神経細胞
本明細書では、レシピエント対象へのその後の移植(transplantation)または移植(engraftment)に有用である、記載したような操作された多能性細胞(例えば、iPSC)から分化させた異なる神経細胞種が提供される。当業者には理解されようが、分化のための方法は、既知の技法を使用して所望の細胞種に依存する。例となる神経細胞種には、脳内皮細胞、ニューロン(例えば、ドーパミン作動性ニューロン)、グリア細胞等が含まれるが、これらに限定されない。
【0671】
いくつかの実施形態では、人工多能性幹細胞の分化は、目的とする特定の所望の系列及び/または細胞種にそれらの分化を標的指向化するように、特定の細胞系列(複数可)を生み出すことが知られている特定の因子に細胞を曝露または接触させることによって実施される。いくつかの実施形態では、最終分化した細胞は、特化した表現型の特性または特徴を示す。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の幹細胞は、神経外胚葉性、ニューロン、神経内分泌、ドーパミン作動性、コリン作動性、セロトニン作動性(5-HT)、グルタミン酸作動性、GABA作動性、アドレナリン作動性、ノルアドレナリン作動性、交感神経ニューロン、副交感神経ニューロン、交感神経末梢ニューロン、またはグリア細胞集団に分化させられる。いくつかの事例では、グリア細胞集団には、ミクログリア(例えば、アメボイド型、ラミファイド型、活性化した食作用性、及び活性化した非食作用性)細胞集団、もしくはマクログリア(中枢神経系細胞:星状細胞、乏突起膠細胞、上衣細胞、及び放射状グリア;ならびに末梢神経系細胞:シュワン細胞及び衛星細胞)細胞集団、または前述の細胞のうちのいずれかの前駆体及び前駆細胞が含まれる。
【0672】
異なる種類の神経細胞を生成するためのプロトコルは、PCT出願第WO2010144696号、米国特許第9,057,053号、同第9,376,664号、及び同第10,233,422号に記載される。低免疫原性多能性細胞を分化させるための方法の追加の説明は、例えば、Deuse et al.,Nature Biotechnology,2019,37,252-258及びHan et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2019,116(21),10441-10446に見出すことができる。神経学的障害または神経学的病態の動物モデルにおける神経細胞移植の効果を決定するための方法は、以下の参考文献に記載される:脊髄損傷については、Curtis et al.,Cell Stem Cell,2018,22,941-950、パーキンソン病については、Kikuchi et al.,Nature,2017,548:592-596、ALSについては、Izrael et al.,Stem Cell Research,2018,9(1):152及びIzrael et al.,IntechOpen,DOI:10.5772/intechopen.72862、癲癇については、Upadhya et al.,PNAS,2019,116(1):287-296。
【0673】
いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した神経細胞等の、操作された神経細胞の集団は、投与前に培養物中で維持され、場合によっては増殖させられる。ある特定の実施形態では、神経細胞の集団は、投与前に凍結保存される。
【0674】
いくつかの実施形態では、本技術は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子(例えば、1つもしくは複数のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つもしくは複数のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の低減された発現を有するかまたはその発現を欠いており、CD46及びCD59の増加した発現を有する、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した神経細胞等の、操作された神経細胞を対象とする。いくつかの実施形態では、神経細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターをさらに発現する。ある特定の実施形態では、操作された神経細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、神経細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターをさらに発現する。いくつかの実施形態では、操作された神経細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を保有し、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、神経細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターをさらに発現する。いくつかの実施形態では、操作された神経細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、B2M及びCIITA遺伝子のうちの1つまたは複数を破壊するゲノム改変を保有する。いくつかの実施形態では、操作された神経細胞は、CD46及びCD59の増加した発現をさらに有する。いくつかの実施形態では、操作された神経細胞は、CD55の増加した発現をさらに有する。
【0675】
いくつかの実施形態では、提供される操作された神経細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、1以上の個々のドナー(例えば、健常なドナー)に由来するiPSCから分化した神経細胞等の、本明細書に記載の操作された神経細胞は、患者(例えば、投与時にレシピエント)において免疫応答を活性化しない。その必要のある対象(例えば、レシピエント)または患者に本明細書に記載の操作された神経細胞の集団を投与することによって疾患を処置する方法が提供される。
【0676】
いくつかの実施形態では、神経細胞は、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、他の神経変性疾患または病態、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、うつ病、他の神経精神性障害を処置するために対象に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の神経細胞は、脳卒中を処置または改善するために対象に投与される。いくつかの実施形態では、ニューロン及びグリア細胞が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を有する対象に投与される。
【0677】
1)脳内皮細胞
いくつかの実施形態では、脳内皮細胞(EC)、その前駆体、及び前駆細胞は、脳ECまたは神経細胞の生成を促進する1つまたは複数の因子を含む培地中で細胞を培養することによって、表面上で多能性幹細胞(例えば、人工多能性幹細胞)から分化させられる。いくつかの事例では、培地は、以下のうちの1つまたは複数を含む:CHIR-99021、VEGF、塩基性FGF(bFGF)、及びY-27632。いくつかの実施形態では、培地は、神経細胞の生存及び機能性を促進するように設計されたサプリメントを含む。
【0678】
いくつかの実施形態では、脳内皮細胞(EC)、その前駆体、及び前駆細胞は、非馴化または馴化培地中で細胞を培養することによって、表面上で多能性幹細胞から分化させられる。いくつかの事例では、培地は、分化を促進または容易にする因子または低分子を含む。いくつかの実施形態では、培地は、VEGR、FGF、SDF-1、CHIR-99021、Y-27632、SB431542、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の因子または低分子を含む。いくつかの実施形態では、分化用の表面は、1つまたは複数の細胞外マトリックスタンパク質を含む。表面を1つまたは複数の細胞外マトリックスタンパク質でコーティングすることができる。細胞は、懸濁液中で分化させ、次いで細胞生存を容易にするためにマトリゲル、ゼラチン、またはフィブリン/トロンビン形態等のゲルマトリックス形態に入れることができる。場合によっては、分化が、一般に細胞特異的マーカーの存在を評価することによって、当該技術分野で既知であるようにアッセイされる。
【0679】
いくつかの実施形態では、脳内皮細胞は、CD31、VEカドヘリン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される因子を発現または分泌する。ある特定の実施形態では、脳内皮細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117(c-kit)、CD146、CXCR4、VEGF、SDF-1、PDGF、GLUT-1、PECAM-1、eNOS、クローディン-5、オクルディン、ZO-1、p-糖タンパク質、フォン・ヴィレブランド因子、VE-カドヘリン、低密度リポタンパク質受容体LDLR、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1 LRP1、インスリン受容体INSR、レプチン受容体LEPR、基底細胞接着分子BCAM、トランスフェリン受容体TFRC、終末糖化産物特異的受容体AGER、レチノール取り込み受容体STRA6、大型中性アミノ酸輸送体小サブユニット1 SLC7A5、興奮性アミノ酸輸送体3 SLC1A1、ナトリウム共役中性アミノ酸輸送体5 SLC38A5、溶質キャリアファミリー16メンバー1 SLC16A1、ATP依存性トランスロカーゼABCB1、ATP-ABCC2結合カセット輸送体ABCG2、多剤耐性関連タンパク質1 ABCC1、小管多重特異性有機アニオン輸送体1 ABCC2、多剤耐性関連タンパク質4 ABCC4、及び多剤耐性関連タンパク質5 ABCC5からなる群から選択される因子のうちの1つまたは複数を発現または分泌する。
【0680】
いくつかの実施形態では、脳ECは、タイトジャンクションの高発現、高い電気抵抗、低窓性、小さな血管周囲腔、インスリン及びトランスフェリン受容体の高い分布率、ならびに多数のミトコンドリアからなる群から選択される特徴のうちの1つまたは複数を特徴とする。
【0681】
いくつかの実施形態では、脳ECは、正の選択戦略を使用して選択または精製される。いくつかの事例では、脳ECは、限定されないがCD31等の内皮細胞マーカーに照らし合わせて選別される。換言すれば、CD31陽性脳ECが単離される。いくつかの実施形態では、脳ECは、負の選択戦略を使用して選択または精製される。いくつかの実施形態では、TRA-1-60及びSSEA-1を含むがこれらに限定されない多能性マーカーを発現する細胞について選択することによって、未分化または多能性幹細胞が除去される。
【0682】
いくつかの実施形態では、脳内皮細胞が、脳出血の症状または影響を緩和するために投与される。いくつかの実施形態では、ドーパミン作動性ニューロンが、パーキンソン病を有する患者に投与される。いくつかの実施形態では、ノルアドレナリン作動性ニューロン、GABA作動性介在ニューロンが、癲癇発作を経験した患者に投与される。いくつかの実施形態では、運動ニューロン、介在ニューロン、シュワン細胞、乏突起膠細胞、及びミクログリアが、脊髄損傷を経験した患者に投与される。
【0683】
2)ドーパミン作動性ニューロン
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のHIP細胞は、ニューロン幹細胞、ニューロン前駆細胞、未成熟ドーパミン作動性ニューロン、及び成熟ドーパミン作動性ニューロンを含めたドーパミン作動性ニューロンに分化させられる。
【0684】
場合によっては、「ドーパミン作動性ニューロン」という用語は、ドーパミン合成のための律速酵素であるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)を発現するニューロン細胞を含む。いくつかの実施形態では、ドーパミン作動性ニューロンは、神経伝達物質ドーパミンを分泌し、ドーパミンヒドロキシラーゼをほとんどまたはまったく発現しない。ドーパミン作動性(DA)ニューロンは、以下のマーカーのうちの1つまたは複数を発現することができる:ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、1-芳香族アミノ酸脱炭酸酵素、小胞モノアミン輸送体2、ドーパミン輸送体、Nurr-l、及びドーパミン-2受容体(D2受容体)。ある特定の実例では、「神経幹細胞」という用語は、神経細胞経路に沿って部分的に分化させられており、例えば、ネスチンを含めた1つまたは複数の神経マーカーを発現する、多能性細胞の集団を含む。神経幹細胞は、ニューロンまたはグリア細胞(例えば、星状細胞及び乏突起膠細胞)に分化させられてもよい。「神経前駆細胞」という用語は、FOXA2及び低レベルのb-チューブリンを発現するが、チロシンヒドロキシラーゼは発現しない培養細胞を含む。かかる神経前駆細胞は、本明細書に記載の因子等の適切な因子の培養時に、様々なニューロンサブタイプ、特に様々なドーパミン作動性ニューロンサブタイプに分化する能力を有する。
【0685】
いくつかの実施形態では、HIP細胞に由来するDAニューロンは、神経変性疾患または病態を処置するために患者、例えば、ヒト患者に投与される。場合によっては、神経変性疾患または病態は、パーキンソン病、ハンチントン病、及び多発性硬化症からなる群から選択される。他の実施形態では、DAニューロンは、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、及びうつ病等の神経精神性障害の1つまたは複数の症状を処置または改善するために使用される。なおも他の実施形態では、DAニューロンは、障害のあるDAニューロンを有する患者を処置するために使用される。
【0686】
いくつかの実施形態では、DAニューロン、その前駆体、及び前駆細胞は、1つまたは複数の因子または添加剤を含む培地中で幹細胞を培養することによって多能性幹細胞から分化させられる。DAニューロンの分化、成長、増殖、維持、及び/または成熟を促進する有用な因子及び添加剤には、Wntl、FGF2、FGF8、FGF8a、ソニックヘッジホッグ(SHH)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF-a)、TGF-b、インターロイキン1ベータ、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、GSK-3阻害剤(例えば、CHIR-99021)、TGF-b阻害剤(例えば、SB-431542)、B-27サプリメント、ドルソモルフィン、プルモルファミン、ノギン、レチノイン酸、cAMP、アスコルビン酸、ニュールツリン、ノックアウト血清置換、N-アセチルシステイン、c-kitリガンド、それらの改変形態、それらの模倣体、それらの類似体、及びそれらのバリアントが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、DAニューロンは、WNT経路、NOTCH経路、SHH経路、BMP経路、FGF経路等を活性化または阻害する1つまたは複数の因子の存在下で分化させられる。分化プロトコル及びその詳細な説明は、例えば、US9,968,637、US7,674,620、Kim et al.,Nature,2002,418,50-56、Bjorklund et al.,PNAS,2002,99(4),2344-2349、Grow et al.,Stem Cells Transl Med.2016,5(9):1133-44、ならびにCho et al,PNAS,2008,105:3392-3397で提供され、実施例、方法、図、及び結果の詳細な説明を含めたそれらの全体的な開示は、参照により本明細書に援用される。
【0687】
いくつかの実施形態では、低免疫原性ドーパミン作動性ニューロンの集団は、非ニューロン細胞から単離される。いくつかの実施形態では、低免疫原性ドーパミン作動性ニューロンの単離された集団は、投与前に増殖させられる。ある特定の実施形態では、低免疫原性ドーパミン作動性ニューロンの単離された集団は、投与前に増殖させられ、凍結保存される。
【0688】
DAの分化を特性評価及び監視するとともに、DAの表現型を評定するために、任意の数の分子マーカー及び遺伝子マーカーの発現を評価することができる。例えば、遺伝子マーカーの存在は、当業者に既知の種々の方法によって決定することができる。分子マーカーの発現は、限定されないが、qPCRベースのアッセイ、イムノアッセイ、免疫細胞化学アッセイ、免疫ブロットアッセイ等といった定量法によって決定することができる。DAニューロンに対する例となるマーカーには、TH、b-チューブリン、ペアードボックスタンパク質(Pax6)、インスリン遺伝子エンハンサータンパク質(Isl1)、ネスチン、ジアミノベンジジン(DAB)、Gタンパク質活性化内向き整流カリウムチャネル2(GIRK2)、微小管関連タンパク質2(MAP-2)、NURR1、ドーパミン輸送体(DAT)、フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)、FOX3、ダブルコルチン、及びLIMホメオボックス転写因子1-ベータ(LMX1B)等が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、DAニューロンは、コリン、FOXA2、TuJ1、NURR1、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるマーカーのうちの1つまたは複数を発現する。
【0689】
いくつかの実施形態では、DAニューロンは、細胞の電気生理学的活性に従って評定される。細胞の電気生理学は、当業者に既知のアッセイを使用することによって評価することができる。例えば、全細胞及び穿孔パッチクランプ法、細胞の電気生理学的活性を検出するためのアッセイ、細胞の活動電位の規模及び持続期間を測定するためのアッセイ、ならびにDA細胞のドーパミン産生を検出するための機能アッセイ。
【0690】
いくつかの実施形態では、DAニューロンの分化は、自発性律動的活動電位、及び脱分極電流の注入時のスパイク周波数適応を伴う高周波活動電位を特徴とする。他の実施形態では、DAの分化は、ドーパミンの産生を特徴とする。産生されるドーパミンのレベルは、それが最大振幅の半分に達した時点での活動電位の幅(スパイク半値幅)を測定することによって算出される。
【0691】
いくつかの実施形態では、分化したDAニューロンは、患者において静脈内にまたは特定の部位での注射によってのいずれかで移植される。いくつかの実施形態では、分化したDA細胞は、パーキンソン病をもたらした変性を有するDAニューロンを置換するために、脳の黒質(特に緻密部内にまたはそれに隣接して)、腹側被蓋野(VTA)、尾状核、被殻、側坐核、視床下核、またはそれらの任意の組み合わせに移植される。分化したDA細胞は、細胞懸濁液として標的領域に注射することができる。代替として、分化したDA細胞は、支持マトリックスまたは足場に(かかる送達デバイス内に収容された場合)埋め込むことができる。いくつかの実施形態では、足場は、生分解性である。他の実施形態では、足場は、生分解性ではない。足場は、天然または合成(人工)材料を含み得る。
【0692】
DAニューロンの送達は、限定されないがリポソーム、微粒子、またはマイクロカプセル等の好適なビヒクルを使用することによって達成することができる。他の実施形態では、分化したDAニューロンは、等張性賦形剤を含む薬学的組成物中で投与される。薬学的組成物は、ヒト投与のために十分に滅菌された条件下で調製される。いくつかの実施形態では、HIP細胞から分化させたDAニューロンは、薬学的組成物の形態で供給される。細胞組成物の治療用製剤の一般原則は、Cell Therapy:Stem Cell Transplantation,Gene Therapy,and Cellular Immunotherapy,G.Morstyn & W.Sheridan eds,Cambridge University Press,1996、及びHematopoietic Stem Cell Therapy,E.Ball,J.Lister & P.Law,Churchill Livingstone,2000に見出され、これらの開示は参照により本明細書に援用される。
【0693】
幹細胞に由来するニューロン有用な説明及びその作製方法は、例えば、Kirkeby et al.,Cell Rep,2012,1:703-714、Kriks et al.,Nature,2011,480:547-551、Wang et al.,Stem Cell Reports,2018,11(1):171-182、Lorenz Studer,“Chapter 8-Strategies for Bringing Stem Cell-Derived Dopamine Neurons to the clinic-The NYSTEM Trial”in Progress in Brain Research,2017,volume 230,pg.191-212、Liu et al.,Nat Protoc,2013,8:1670-1679、Upadhya et al.,Curr Protoc Stem Cell Biol,38,2D.7.1-2D.7.47、米国公開出願第20160115448号、ならびにUS8,252,586、US8,273,570、US9,487,752、及びUS10,093,897に見出すことができ、これらの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0694】
DAニューロンに加えて、他のニューロン細胞、その前駆体、及び前駆細胞が、1つまたは複数の因子または添加剤を含む培地中で細胞を培養することによって、本明細書に概説されるHIP細胞から分化させられ得る。因子及び添加剤の非限定的な例としては、GDNF、BDNF、GM-CSF、B27、塩基性FGF、塩基性EGF、NGF、CNTF、SMAD阻害剤、Wntアンタゴニスト、SHHシグナル伝達活性化剤、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、SMAD阻害剤は、SB431542、LDN-193189、ノギンPD169316、SB203580、LY364947、A77-01、A-83-01、BMP4、GW788388、GW6604、SB-505124、レルデリムマブ、メテリムマブ、GC-I008、AP-12009、AP-110I4、LY550410、LY580276、LY364947、LY2109761、SB-505124、E-616452(RepSox ALK阻害剤)、SD-208、SMI6、NPC-30345、K26894、SB-203580、SD-093、アクチビン-M108A、P144、可溶性TBR2-Fc、DMH-1、ドルソモルフィン二塩酸塩、及びそれらの誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Wntアンタゴニストは、XAV939、DKK1、DKK-2、DKK-3、DKK-4、SFRP-1、SFRP-2、SFRP-3、SFRP-4、SFRP-5、WIF-1、Soggy、IWP-2、IWR1、ICG-001、KY0211、Wnt-059、LGK974、IWP-L6、及びその誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、SHHシグナル伝達活性化因子は、平滑化アゴニスト(SAG)、SAG類似体、SHH、C25-SHH、C24-SHH、プルモルファミン、Hg-Ag、及び/またはそれらの誘導体からなる群から選択される。
【0695】
いくつかの実施形態では、ニューロンは、グルタミン酸イオンチャネル型受容体NMDA型サブユニット1 GRIN1、グルタミン酸脱炭酸酵素1 GAD1、ガンマ-アミノ酪酸GABA、チロシンヒドロキシラーゼTH、LIMホメオボックス転写因子1-アルファLMX1A、フォークヘッドボックスタンパク質O1 FOXO1、フォークヘッドボックスタンパク質A2 FOXA2、フォークヘッドボックスタンパク質O4 FOXO4、FOXG1、2’,3’-環状-ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼCNP、ミエリン塩基性タンパク質MBP、チューブリンベータ鎖3 TUB3、チューブリンベータ鎖3 NEUN、溶質キャリアファミリー1メンバー6 SLC1A6、SST、PV、カルビンジン、RAX、LHX6、LHX8、DLX1、DLX2、DLX5、DLX6、SOX6、MAFB、NPAS1、ASCL1、SIX6、OLIG2、NKX2.1、NKX2.2、NKX6.2、VGLUT1、MAP2、CTIP2、SATB2、TBR1、DLX2、ASCL1、ChAT、NGFI-B、c-fos、CRF、RAX、POMC、ヒポクレチン、NADPH、NGF、Ach、VAChT、PAX6、EMX2p75、CORIN、TUJ1、NURR1、及び/またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるマーカーのうちの1つまたは複数を発現する。
【0696】
3)グリア細胞
いくつかの実施形態では、記載される神経細胞には、限定されないが、多能性幹細胞を治療上有効なグリア細胞等に分化させることによって生産されるミクログリア、星状細胞、乏突起膠細胞、上衣細胞、及びシュワン細胞、そのグリア前駆体、及びグリア前駆細胞等のグリア細胞が含まれる。低免疫原性多能性幹細胞の分化は、低免疫原性グリア細胞等の低免疫原性神経細胞を生産する。
【0697】
いくつかの実施形態では、グリア細胞、その前駆体、及び前駆細胞は、レチノイン酸、IL-34、M-CSF、FLT3リガンド、GM-CSF、CCL2、TGFベータ阻害剤、BMPシグナル伝達阻害剤、SHHシグナル伝達活性化因子、FGF、血小板由来増殖因子PDGF、PDGFR-アルファ、HGF、IGF1、ノギン、SHH、ドルソモルフィン、ノギン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の作用物質を含む培地中で多能性幹細胞を培養することによって生成される。ある特定の事例では、BMPシグナル伝達阻害剤は、LDN193189、SB431542、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、グリア細胞は、NKX2.2、PAX6、SOX10、脳由来神経栄養因子BDNF、ニューロトロフィン-3 NT-3、NT-4、EGF、毛様体神経栄養因子CNTF、神経増殖因子NGF、FGF8、EGFR、OLIG1、OLIG2、ミエリン塩基性タンパク質MBP、GAP-43、LNGFR、ネスチン、GFAP、CD11b、CD11c、CX3CR1、P2RY12、IBA-1、TMEM119、CD45、及びそれらの任意の組み合わせを発現する。例となる分化培地は、当業者によって認識されるような、グリア細胞種の生成を容易または可能にし得る任意の特定の因子及び/または低分子を含むことができる。
【0698】
インビトロ分化プロトコルに従って生成された細胞がグリア細胞の性質及び特徴を示すかどうかを決定するために、細胞を動物モデルに移植することができる。いくつかの実施形態では、グリア細胞は、免疫無防備状態のマウス、例えば、免疫無防備状態のシバラーマウスに注射される。グリア細胞は、マウスの脳に投与され、予め選択された一定時間後に、生着した細胞が評価される。いくつかの事例では、脳内の生着した細胞は、免疫染色及びイメージング法を使用することによって可視化される。いくつかの実施形態では、グリア細胞が既知のグリア細胞バイオマーカーを発現することが決定される。
【0699】
幹細胞からグリア細胞、その前駆体、及び前駆細胞を生成するための有用な方法は、例えば、US7,579,188、US7,595,194、US8,263,402、US8,206,699、US8,252,586、US9,193,951、US9,862,925、US8,227,247、US9,709,553、US2018/0187148、US2017/0198255、US2017/0183627、US2017/0182097、US2017/253856、US2018/0236004、WO2017/172976、及びWO2018/093681に見出される。多能性幹細胞を分化させるための方法は、例えば、Kikuchi et al.,Nature,2017,548,592-596、Kriks et al.,Nature,2011,547-551、Doi et al.,Stem Cell Reports,2014,2,337-50、Perrier et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2004,101,12543-12548、Chambers et al.,Nat Biotechnol,2009,27,275-280、及びKirkeby et al.,Cell Reports,2012,1,703-714に記載される。
【0700】
脊髄損傷に対する神経細胞移植の有効性は、例えば、McDonald et al.,Nat.Med.,1999,5:1410及びKim et al.,Nature,2002,418:50によって記載されるような、急性脊髄損傷のラットモデルにおいて評定することができる。例えば、移植の成功は、2~5週間後の病変における移植由来の細胞の存在、星状細胞、乏突起膠細胞、及び/またはニューロンへの分化、病変端部から脊髄に沿った移動、ならびに歩行、協調、及び体重負荷の改善を示し得る。具体的な動物モデルは、神経細胞種及び処置される神経学的疾患または神経学的病態に基づいて選択される。
【0701】
神経細胞は、それらが意図される組織部位に生着し、機能的に欠陥がある領域を再構成または再生することを可能にする様態で投与することができる。例えば、神経細胞は、処置されている疾患に応じて、中枢神経系の実質部位または髄腔内部位に直接移植することができる。いくつかの実施形態では、脳内皮細胞、ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、上衣細胞、星状細胞、ミクログリア細胞、乏突起膠細胞、及びシュワン細胞を含めた、本明細書に記載の神経細胞のうちのいずれも、静脈内、脊髄内、脳室内、髄腔内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、筋肉内、腹部内、眼内、眼球後、及びそれらの組み合わせを介して患者に注射される。いくつかの実施形態では、該細胞は、ボーラス注射または持続注入の形態で注射または移植(deposited)される。ある特定の実施形態では、神経細胞は、脳内に、脳に適切(apposite)に、及びそれらの組み合わせへの注射によって投与される。注射は、例えば、対象の頭蓋に作製された穿頭孔を通して行うことができる。脳への神経細胞の投与に好適な部位には、脳室、側脳室、大槽、被殻、基底核、海馬皮質、線条体、脳の尾状領域、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0702】
本技術における使用に向けたドーパミン作動性ニューロンを含めた神経細胞の追加の説明は、WO2020/018615に見出され、同文献の開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0703】
V.造血幹細胞(HSC)
いくつかの実施形態では、操作された細胞は、造血幹細胞である。場合によっては、造血幹細胞は、白血球細胞、赤血球細胞、及び血小板を含めた全ての種類の血液細胞に発達することができる未成熟細胞である。造血幹細胞(HSC)は、末梢血及び骨髄に見出される。場合によっては、造血幹細胞は、末梢血または骨髄から単離される。
【0704】
いくつかの実施形態では、操作されたHSCまたは操作されたHSCを含む集団は、造血疾患または障害を処置するために投与される。いくつかの実施形態では、造血疾患または障害は、骨髄異形成、再生不良性貧血、ファンコニ貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、鎌状赤血球症、ダイアモンド・ブラックファン貧血、シャックマン・ダイアモンド障害、コストマン症候群、慢性肉芽腫性疾患、副腎白質ジストロフィー、白血球接着不全症、血友病、サラセミア、ベータサラセミア、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性(骨髄性)白血病(AML)、成人リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、若年性慢性骨髄性白血病(CML)、及び若年性骨髄単球性白血病(JMML)等の白血病、重症複合免疫不全症(SCID)、X連鎖重症複合免疫不全症、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、慢性肉芽腫性疾患、チェディアック・東症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、またはAIDSである。
【0705】
いくつかの実施形態では、操作されたHSCまたは操作されたHSCを含む集団は、白血病もしくは骨髄腫に関連する細胞欠陥を処置するため、または白血病もしくは骨髄腫を処置するために投与される。
【0706】
いくつかの実施形態では、操作されたHSCまたは操作されたHSCを含む集団は、自己免疫疾患もしくは病態に関連する細胞欠陥を処置するため、または自己免疫疾患もしくは病態を処置するために投与される。いくつかの実施形態では、自己免疫疾患または病態は、急性散在性脳脊髄炎、急性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗合成酵素症候群、アトピー性アレルギー、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ球増殖性症候群、自己免疫性末梢性ニューロパチー、自己免疫性膵炎、多腺性自己免疫症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ブドウ膜炎、バロー病、バロー同心円硬化症、ベーチェット症候群、バージャー病、ビッカースタッフ型脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性再発性多巣性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体第2成分欠損症、頭蓋動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型真性糖尿病、びまん皮膚硬化型全身性強皮症、ドレスラー症候群、円板状エリテマトーデス、湿疹、付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維化性肺胞炎、胃炎、胃腸類天疱瘡、巨細胞性動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症性脱髄性疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、炎症性脱髄性多発ニューロパチー、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎、若年性関節リウマチ、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病(LAD)、ルー・ゲーリッグ病、ルポイド肝炎、エリテマトーデス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合性結合組織病、斑状強皮症、ムッカ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、視神経脊髄炎、ニューロミオトニア、眼型瘢痕性類天疱瘡、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、オルド甲状腺炎、回帰性リウマチ、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリーロンバーグ症候群、パーソネイジ・ターナー症候群、扁平部炎、天疱瘡、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発性動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症ニューロパチー、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発軟骨炎、ライター症候群、レストレスレッグス症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スティル病、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、分類不能結合組織病、分類不能脊椎関節症、血管炎、白斑、またはウェゲナー肉芽腫症である。
【0707】
8.ABO型及びRh抗原の発現
血液産物は、人の身体におけるあらゆる赤血球細胞の表面上の抗原の存在または不在に従って異なる群に分類され得る(ABO式血液型)。A、B、AB、及びA1抗原は、赤血球の糖タンパク質上のオリゴ糖の配列によって決定される。血液型抗原群における遺伝子は、抗原タンパク質を作製するための指示を提供する。血液型抗原タンパク質は、赤血球細胞の細胞膜内で様々な機能を果たす。これらのタンパク質の機能には、他のタンパク質及び分子を細胞内に及び細胞から輸送すること、細胞構造を維持すること、他の細胞及び分子に結合すること、ならびに化学反応に関与することが含まれる。
【0708】
アカゲザル因子(Rh)血液型は、ABO式血液型システムに次いで2番目に重要な血液型システムである。Rh血液型システムは、49個の定義された血液型抗原からなり、この中でもD、C、c、E、及びeの5個の抗原が最も重要である。個体のRh(D)ステータスは通常、ABO型の後にプラスまたはマイナスの接尾辞を付けて記載される。「Rh因子」、「Rh陽性」、及び「Rh陰性」という用語は、Rh(D)抗原にのみ言及する。Rh抗原に対する抗体は、溶血性輸血反応に関与し得、Rh(D)及びRh(c)抗原に対する抗体は、胎児及び新生児の溶血性疾患の顕著なリスクを付与する。ABO抗体は、全てのヒトにおいて若齢期に発達する。しかしながら、Rh-のヒトにおけるアカゲザル抗体は、典型的には、その人が感作されるときにのみ発達する。これは、例えば、Rh+の乳児を出産することによって、またはRh+血液の輸血を受けることによって起こり得る。
【0709】
A、B、H、及びRh抗原は、血液、組織、及び細胞移植に向けたドナーとレシピエントとの間の組織適合性の主要な決定因子である。ABO遺伝子によってコードされるグリコシルトランスフェラーゼ活性は、細胞の表面上に提示されるA、B、AB、O組織・血液型抗原の生成を担う。A型の個体は、a(1,3)N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ活性の生成に対して特異性をもつABO遺伝子産物をコードし、B型の個体は、a(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ活性の生成に対して特異性をもつABO遺伝子産物をコードする。O型の個体は、機能的なガラクトシルトランスフェラーゼを全く生成せず、故にいずれの修飾も生成しない。AB型の個体は、各々のコピーを1つずつ保有し、両方の種類の修飾を生成する。ABO遺伝子の酵素産物は、基質としてのH抗原に作用するため、ABO活性を欠いているO型の個体は、未修飾のH抗原を提示し、故にO(H)型と称される場合が多い。
【0710】
H抗原自体は、FUT1遺伝子によってコードされるa(1,2)フコシルトランフエェラーゼ酵素の産物である。非常にまれな個体においては、FUT1遺伝子の破壊の結果としてH抗原の完全な喪失が存在し、ABOがAまたはB組織・血液型を生成するための基質が何ら存在しなくなる。これらの個体は、ボンベイ組織・血液型と言われる。Rh抗原は、RHD遺伝子によってコードされ、Rh陰性である個体は、RHD遺伝子の欠失または破壊をもつ。
【0711】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される細胞または細胞の集団は、ABO O型Rh因子陰性である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のABO O型Rh因子陰性細胞は、ABO O型Rh因子陰性ドナーに由来する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のABO O型Rh因子陰性細胞は、ABO A型、ABO B型、またはRh因子抗原の提示を欠くように操作される。いくつかの実施形態では、ABO O型及び/またはRh陰性細胞は、ABO遺伝子の部分的もしくは完全な不活性化を含み(例えば、ABO遺伝子の有害な変異によって、またはABO遺伝子のエクソン6の258delG変異の挿入によって)、及び/またはRHD遺伝子の発現が、RHD遺伝子の有害な変異によって部分的にもしくは完全に不活性化される。いくつかの実施形態では、ABO O型Rh陰性細胞は、FUT1遺伝子の部分的もしくは完全な不活性化を含み、及び/またはRHD遺伝子の発現が、RHD遺伝子の有害な変異によって部分的にもしくは完全に不活性化される。いくつかの実施形態では、操作されたABO O型及び/またはRh因子陰性細胞は、例えば、A型細胞からO型細胞に、B型細胞からO型細胞に、AB型細胞からO型細胞に、A型+細胞からO型-細胞に、A型-細胞からO型-細胞に、AB型+細胞からO型-細胞に、AB型-細胞からO型-細胞に、B型+細胞からO型-細胞に、及びB型-細胞からO型-細胞に改変するための遺伝子編集を使用して生成される。例となる操作されたABO O型Rh因子陰性細胞及びその生成方法は、WO2021/146222に記載され、同文献の内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0712】
いくつかの実施形態では、CD46及びCD59の増加した発現を含む本明細書で提供される細胞または細胞の集団は、ABO A型、ABO B型、もしくはABO AB型であり、及び/またはCD46及びCD59の増加した発現を含む本明細書で提供される細胞または細胞の集団は、Rh因子陽性である。いくつかの実施形態では、CD46及びCD59の増加した発現を含む細胞は、CDC反応を発動することなくABO及び/またはRh因子不適合のレシピエント患者に投与することができる。
【0713】
9.性染色体
ある特定の態様では、性染色体を有する細胞は、ある特定の抗原(例えば、Y抗原)を発現し得、レシピエントは、かかる抗原に対して既存の感受性を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、男児胎児を妊娠したことがある女性は、男性ドナーからの細胞を拒絶する場合がある。故に、いくつかの実施形態では、ドナーは、男性であり、レシピエントは、男性である。いくつかの実施形態では、ドナーは、女性であり、レシピエントは、女性である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、プロトカドヘリンY及び/またはニューロリギンY等の抗原の発現を低減する改変を含む。いくつかの実施形態では、プロトカドヘリンYをコードする遺伝子(PCDH11Y;Ensembl ID ENSG00000099715)は、操作された細胞において低減または排除、例えば、ノックアウトされる。いくつかの実施形態では、ニューロリギンYをコードする遺伝子(NLGN4Y;Ensembl ID ENSG00000165246)は、操作された細胞において低減または排除、例えば、ノックアウトされる。本明細書に記載されるいずれか等の、遺伝子の発現を低減または排除するための任意の方法を使用することができる。いくつかの実施形態では、PCDH11Y及び/またはNLGN4Yは、例えばCRISPR/Casシステムを使用した、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集法によって、操作された細胞において低減または排除される。
【0714】
D.操作された細胞の例となる実施形態
いくつかの実施形態では、該細胞(例えば、移植中に血液と接触する操作されたベータ島細胞、肝細胞、または他の細胞種)及びその集団は、CD47の増加した発現を示し、CD46及びCD59の増加した発現、ならびにMHCクラスI複合体の1つまたは複数の分子の低減された発現を有する。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現、CD46及びCD59の増加した発現、ならびにMHCクラスI及び/またはMHCクラスII複合体の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD46、CD59、CD55、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つまたは複数の外因性補体インヒビターポリペプチドを発現する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、外因性CD46及び外因性CD59を発現する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、外因性CD55の発現をさらに含む。
【0715】
いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現、CD46及びCD59の増加した発現、ならびにB2Mの低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現、CD46及びCD59の増加した発現、ならびにCIITAの低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現、CD46及びCD59の増加した発現、ならびにNLRC5の低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現、CD46及びCD59の増加した発現、ならびにB2M及びCIITAの1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現、CD46及びCD59の増加した発現、ならびにB2M及びNLRC5の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現、CD46及びCD59の増加した発現、ならびにB2M、CIITA、及びNLRC5の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。本明細書に記載の細胞のうちのいずれも、DUX4、CD24、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、IL-39、FasL、CCL21、CCL22、Mfge8、及びSerpinb9を含むがこれらに限定されない群から選択される1つまたは複数の因子の増加した発現もまた示す可能性がある。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD46、CD59、CD55、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つまたは複数の外因性補体インヒビターポリペプチドを発現する。
【0716】
いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現ならびにCD46及びCD59の増加した発現、ならびにMHCクラスI複合体の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現ならびにCD46及びCD59の増加した発現、ならびにMHCクラスI及びMHCクラスII複合体の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現ならびにCD46及びCD59の増加した発現、ならびにB2Mの低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現ならびにCD46及びCD59の増加した発現、ならびにCIITAの低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現ならびにCD46及びCD59の増加した発現、ならびにNLRC5の低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現ならびにCD46及びCD59の増加した発現、ならびにB2M及びCIITAの1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現ならびにCD46及びCD59の増加した発現、ならびにB2M及びNLRC5の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現ならびにCD46及びCD59の増加した発現、ならびにCIITA及びNLRC5の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD47の増加した発現ならびにCD46及びCD59の増加した発現、ならびにB2M、CIITA、及びNLRC5の1つまたは複数の分子の低減された発現を示す。いくつかの実施形態では、該細胞及びその集団は、CD55の増加した発現をさらに示す。
【0717】
当業者であれば、遺伝子、タンパク質、または分子の増加した発現または低減された発現等の発現レベルは、同等の細胞を基準とし得るかまたはそれと比較され得ることを理解しよう。いくつかの実施形態では、タンパク質(例えば、CD46、CD59、CD55、CD47、または任意の他の寛容原性因子)の増加した発現を有する操作された細胞とは、未改変の細胞と比較してより高いレベルのタンパク質を有する改変された細胞を指す。いくつかの実施形態では、タンパク質(例えば、CD46、CD59、CD55、CD47、または任意の他の寛容原性因子)の増加した発現を有する操作された細胞とは、改変を含む細胞(例えば、操作された多能性幹細胞または内皮細胞)であり、ここで、改変を含む細胞は、該改変を有しない細胞(例えば、改変を有しない幹細胞は、他の改変を含んでもよい)と比較してより高いレベルのタンパク質を有する。いくつかの実施形態では、タンパク質(例えば、B2MまたはCIITA)の低減された発現を有する操作された細胞は、改変を含む細胞であり、ここで、改変を含む細胞は、該改変を有しない細胞(例えば、改変を有しない幹細胞は、他の改変を含んでもよい)と比較してより低いレベルのタンパク質またはRNAを有する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD46、CD59、CD55、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つまたは複数の外因性補体インヒビターポリペプチドを発現する。
【0718】
一実施形態では、外因性CD47ポリペプチドを発現するとともに、1つまたは複数の補体インヒビターの増加した発現、ならびに1つもしくは複数のMHCクラスI複合体タンパク質、1つもしくは複数のMHCクラスII複合体タンパク質のいずれか、またはMHCクラスI及びクラスII複合体タンパク質の任意の組み合わせの低減された発現を有する、操作された細胞が本明細書で提供される。別の実施形態では、該細胞は、外因性CD47ポリペプチドを発現するとともに、低減されたレベルのB2M及びCIITAポリペプチドを発現する。いくつかの実施形態では、該細胞は、外因性CD47ポリペプチドを発現するとともに、B2M及び/またはCIITA遺伝子の改変をもつ。いくつかの事例では、該改変は、B2M及びCIITA遺伝子を不活性化する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD46、CD59、CD55、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つまたは複数の外因性補体インヒビターポリペプチドを発現する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、外因性CD46及び外因性CD59を発現する。
【0719】
本明細書に記載の細胞のうちのいずれも、DUX4、CD24、CD27、CD46、CD55、CD59、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、IL-39、FasL、CCL21、CCL22、Mfge8、及びSerpinb9を含むがこれらに限定されない群から選択される1つまたは複数の因子の増加した発現もまた示す可能性がある。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、CD46、CD59、CD55、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つまたは複数の外因性補体インヒビターポリペプチドを発現する。
【0720】
E.低免疫原性表現型に関するアッセイ
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞は、それらが患者(例えば、レシピエント対象)に投与されたときに免疫認識及び応答を回避することができるように改変される。該細胞は、インビトロ及びインビボで免疫細胞による殺傷を回避することができる。いくつかの実施形態では、該細胞は、マクロファージ及びNK細胞による殺傷を回避する。いくつかの実施形態では、該細胞は、免疫細胞または対象の免疫系によって無視される。換言すれば、本明細書に記載の方法に従って投与される細胞は、免疫系の免疫細胞によって検出可能でない。いくつかの実施形態では、該細胞は、覆い隠され、したがって免疫拒絶反応を避ける。
【0721】
本明細書で提供される操作された細胞が免疫認識を回避するかどうかを決定する方法には、IFN-γ Elispotアッセイ、ミクログリア殺傷アッセイ、細胞移植動物モデル、サイトカイン放出アッセイ、ELISA、生物発光イメージングまたはクロム放出アッセイまたはXcelligence解析を使用した殺傷アッセイ、混合リンパ球反応、免疫蛍光解析等が含まれるが、これらに限定されない。
【0722】
いくつかの実施形態では、該細胞の免疫原性は、補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイにおいて評価される。CDCは、補体を含有する血清の存在下で、細胞表面上に発現したHLA非依存性抗原を標的とするIgGまたはIgM抗体とともに細胞をインキュベートし、細胞殺傷を分析することによって、インビトロでアッセイすることができる。いくつかの実施形態では、CDCは、細胞をABO式血液型不適合血清とともにインキュベートすることによってアッセイすることができ、ここで、細胞は、A抗原またはB抗原を含み、血清は、細胞のA抗原及び/またはB抗原に対する抗体を含む。
【0723】
いくつかの実施形態では、ひとたび操作された細胞が本明細書に記載されるように改変または生成されると、それらは低免疫原性に関してアッセイされてもよい。様々なアッセイのうちのいずれかを使用して、細胞が低免疫原性であるか、または免疫系を回避し得るかどうかを評定することができる。例となるアッセイには、WO2016183041及びWO2018132783に記載されるようないずれかが含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された細胞は、宿主の免疫応答を刺激することなく宿主において1週間以上(例えば、1週間、2週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、またはそれよりも長く、例えば、該細胞及び/またはその子孫の生涯にわたって)生存する。該細胞は、それらが宿主において生存する限り、導入遺伝子の発現を維持し、及び/または標的遺伝子の発現が欠失もしくは低減される。いくつかの態様では、導入遺伝子がもはや発現しない場合、及び/または標的遺伝子が発現する場合、操作された細胞は、宿主の免疫系によって除去され得る。いくつかの実施形態では、操作された細胞の存続または生存は、インビボで該細胞が検出されることを可能にするタンパク質(例えば、GFP等の蛍光タンパク質、短縮型受容体、または他の代理マーカーもしくは他の検出可能なマーカー)をコードする導入遺伝子をさらに発現させることによって、それらのレシピエントへの投与後に監視されてもよい。
【0724】
低免疫原性細胞は、それらが意図される組織部位に生着し、機能的に欠陥がある領域を再構成または再生することを可能にする様態で投与される。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、生着(例えば、成功裏の生着)に関してアッセイされる。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞の生着は、予め選択された一定時間後に評価される。いくつかの実施形態では、生着した細胞は、細胞生存に関して監視される。例えば、細胞生存は、生物発光イメージング(BLI)を介して監視されてもよく、ここで、細胞は、細胞生存を監視するためにルシフェラーゼ発現構築物を形質導入される。いくつかの実施形態では、生着した細胞は、当該技術分野で既知の免疫染色及びイメージング法によって可視化される。いくつかの実施形態では、生着した細胞は、成功裏の生着を決定するために検出され得る既知のバイオマーカーを発現する。例えば、フローサイトメトリーを使用して、特定のバイオマーカーの表面発現を決定してもよい。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、意図される組織部位に予想通りに生着する(例えば、低免疫原性細胞の成功裏の生着)。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、細胞欠陥のある部位等、意図される組織部位に必要に応じて生着する。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、改変を含まない同じ種類の細胞と同じ様態で、意図される組織部位に生着する。
【0725】
いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、機能に関してアッセイされる。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、意図される組織部位へのそれらの生着の前に機能に関してアッセイされる。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、意図される組織部位への生着の後に機能に関してアッセイされる。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞の機能は、予め選択された量の後に評価される。いくつかの実施形態では、生着した細胞の機能は、細胞が検出可能な表現型を生成する能力によって評価される。例えば、生着したベータ島細胞の機能は、糖尿病に起因して失われたグルコース制御の回復に基づいて評価されてもよい。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞の機能は、予想通りである(例えば、抗体媒介性拒絶反応を避けながらの低免疫原性細胞の成功裏の機能)。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞の機能は、抗体媒介性拒絶反応を避けながらの細胞欠陥の部位での十分な機能等、必要に応じる。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、同じ種類の操作されていない細胞と同じ様態で機能する。
【0726】
10.補体依存性細胞傷害
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された細胞は、補体依存性細胞傷害(CDC)を回避する。
【0727】
いくつかの実施形態では、CDCに対する細胞の感受性は、当業者に理解される標準的なプロトコルに従ってインビトロで分析することができる。いくつかの実施形態では、CDCは、補体系の成分を含む血清(例えば、ヒト血清)を、抗体(例えば、IgGまたはIgM抗体)が結合した標的細胞と混合し、次いで細胞死を決定することによって、インビトロで分析することができる。いくつかの実施形態では、CDCに対する細胞の感受性は、補体系の成分ならびに細胞のABO A型、ABO B型、及び/またはRh因子抗原に対する抗体を含むABO不適合またはRh因子不適合血清の存在下で細胞をインキュベートすることによって、インビトロで分析することができる。
【0728】
一般的なCDCアッセイは、標的細胞に放射性化合物を予め負荷することを介して細胞死を決定する。細胞が死滅するとき、放射性化合物がそれらから放出される。よって、細胞死を媒介する抗体の有効性は、放射能レベルによって決定される。放射性CDCアッセイとは異なり、非放射性CDCアッセイは、蛍光または発光測定を用いて、GAPDH等の豊富に存在する細胞構成要素の放出を決定する場合が多い。いくつかの実施形態では、CDCによる細胞殺傷は、xCELLigence(商標)(Agilent)等の無標識プラットフォームを使用して分析することができる。
【0729】
III.操作された細胞の集団及び薬学的組成物
本明細書では、提供される操作された細胞を複数含有する、細胞の集団が提供される。場合によっては、細胞の集団は、細胞の混合物を含む。場合によっては、該集団中の細胞の少なくとも約30%は、本明細書に記載の改変のセットを含む。場合によっては、細胞の集団は、1つまたは複数の異なる細胞種を含む。
【0730】
いくつかの実施形態では、該集団は、島細胞の混合物を含む。いくつかの実施形態では、該集団は、膵ベータ細胞、膵アルファ細胞、及び膵ガンマ細胞からなる群から選択される2つ以上の異なる細胞種を含む、膵島細胞の混合物を含む。場合によっては、該集団は、膵アルファ、ベータ、及びガンマ細胞を含む。場合によっては、該集団は、初代細胞を含む。いくつかの実施形態では、該集団は、幹細胞または前駆細胞から分化した細胞(例えば、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、内皮幹細胞、上皮幹細胞、脂肪幹細胞、生殖細胞系幹細胞、肺幹細胞、臍帯血幹細胞、多能性幹細胞(PSC)、及び複能性幹細胞から分化した細胞)を含む。
【0731】
いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、本明細書に記載の改変のセットを含む。いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する、1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させる、ならびに1つまたは複数の補体インヒビターの発現を増加させる、改変、のセットを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子は、DUX4、B2M-HLA-E、CD16、CD52、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF、及びH2-M3、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたは複数である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の寛容原性因子は、CD47である。いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0732】
いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、B2M遺伝子の両方のアレルを不活性化する1つまたは複数の変化を含む。いくつかの実施形態では、該集団中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%は、CIITA遺伝子の両方のアレルを不活性化する1つまたは複数の変化を含む。
【0733】
また、本明細書では、操作された細胞または操作された細胞の集団を含む組成物も提供される。いくつかの実施形態では、該組成物は、薬学的組成物である。
【0734】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに無毒であり、これには、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含めた酸化防止剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含めた単糖、二糖、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/またはポリソルベート(TWEEN(商標))、ポロキサマー(PLURONICS(商標))、もしくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が含まれる。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、薬学的に許容される緩衝剤(例えば、中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、例えば、組成物のpH、オスモル濃度、粘度、明澄度、色、等張性、臭気、滅菌性、安定性、溶解もしくは放出速度、吸着性、または浸透性を改変する、維持する、または保存するための、1つまたは複数の賦形剤を含有し得る。いくつかの態様では、当業者は、細胞を含有する薬学的組成物が、タンパク質を含有する薬学的組成物とは異なり得ることを理解する。
【0735】
「薬学的製剤」という用語は、その中に含まれる活性成分の生物活性が有効であることを可能にするような形態にあり、かつ製剤が投与されよう対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成要素を何ら含有しない調製物を指す。
【0736】
「薬学的に許容される担体」は、対象にとって無毒である、薬学的製剤中の活性成分以外の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0737】
いくつかの実施形態における薬学的組成物は、治療上有効量または予防上有効量等の疾患または病態を処置または予防するのに有効な量で、本明細書に記載される操作された細胞を含有する。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、治療上有効量または予防上有効量等の疾患または病態を処置または予防するのに有効な量で、本明細書に記載される操作された細胞を含有する。いくつかの実施形態における治療または予防有効性は、処置された対象の定期的な評定によって監視される。数日間以上にわたる反復投与については、病態に応じて、処置は、疾患症状の所望の抑制が起こるまで繰り返される。しかしながら、他の投薬レジメンが有用な場合があり、決定され得る。所望の投薬量は、組成物の単回ボーラス投与によって、組成物の複数回ボーラス投与によって、または組成物の持続注入投与によって送達され得る。
【0738】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作された細胞は、標準的な投与技法、製剤、及び/またはデバイスを使用して投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作された細胞は、標準的な投与技法、製剤、及び/またはデバイスを使用して投与される。製剤、ならびに組成物の保管及び投与のためのシリンジ及びバイアル等のデバイスが提供される。操作された細胞は、局所注射、カテーテル投与、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を介して投与され得る。治療用組成物(例えば、操作された細胞を含有する薬学的組成物)を投与するとき、それは一般に、注射用単位剤形(溶液、懸濁液、エマルション)中で製剤化されよう。
【0739】
製剤には、静脈内、腹腔内、または皮下投与用の製剤が含まれる。いくつかの実施形態では、該細胞集団は、非経口で投与される。本明細書で使用される「非経口」という用語は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣、及び腹腔内投与を含む。いくつかの実施形態では、該細胞集団は、静脈内、腹腔内、または皮下注射による末梢全身送達を使用して対象に投与される。
【0740】
いくつかの実施形態における組成物は、いくつかの態様では選択のpHに緩衝され得る、滅菌液体調製物、例えば、等張水溶液、懸濁液、エマルション、または分散剤として提供される。液体組成物は、とりわけ注射によって投与するために、いくらかより好都合である。液体組成物は、担体を含み得、これは、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。滅菌注射液は、細胞を、例えば、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロース等といった好適な担体、希釈剤、または賦形剤と混和して、溶媒に組み込むことによって調製され得る。
【0741】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、薬学的投与と適合性の全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等を含み得る(Gennaro,2000,Remington:The science and practice of pharmacy,Lippincott,Williams & Wilkins,Philadelphia,PA)。かかる担体または希釈剤の例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。リポソーム及び不揮発性油等の非水性ビヒクルもまた使用されてもよい。補助的な活性化合物もまた、組成物に組み込むことができる。薬学的担体は、生理食塩液、デキストロース溶液、またはヒト血清アルブミンを含む溶液等の、操作された細胞に好適であるものであるべきである。いくつかの実施形態では、かかる組成物のための薬学的に許容される担体またはビヒクルは、操作された細胞が、生細胞の投与を可能にするのに十分な時間にわたって維持され得る、または生存したままであることができる、任意の無毒の水溶液である。例えば、薬学的に許容される担体またはビヒクルは、生理食塩液または緩衝生理食塩液であり得る。
【0742】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物を含めた組成物は、滅菌されている。いくつかの実施形態では、細胞の単離、濃縮、または培養は、過誤、ユーザーによる取り扱い、及び/または汚染を最小限に抑えるために、例えば、閉鎖環境または滅菌環境で、例えば滅菌培養バッグ中で実施される。いくつかの実施形態では、滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜に通した濾過によって容易に達成され得る。いくつかの実施形態では、培養は、ガス透過性培養容器を使用して実施される。いくつかの実施形態では、培養は、バイオリアクタを使用して実施される。
【0743】
また、本明細書では、提供される操作された細胞の凍結保存に好適である組成物も提供される。いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞は、凍結保存培地中で凍結保存される。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、無血清凍結保存培地である。いくつかの実施形態では、該組成物は、凍結保護剤を含む。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、DMSO及び/またはグリセロールであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、5%または約5%~10%または約10%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、5%または約5%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、6%または約6%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、7%または約7%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、7.5%または約7.5%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、8%または約8%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、9%または約9%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、10%または約10%のDMSO(v/v)である。いくつかの実施形態では、凍結保存培地は、市販の凍結保存溶液(CryoStor(商標)CS10)を含有する。CryoStor(商標)CS10は、10%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する凍結保存培地である。いくつかの実施形態では、凍結保存用に製剤化された組成物は、超低温、例えば、80℃±6.0℃または約80℃±6.0℃等の-40℃~-150℃の温度範囲での保管等、低温で保管することができる。
【0744】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、本明細書に記載の操作された細胞と、31.25%(v/v)のPlasma-Lyte A、31.25%(v/v)の5%デキストロース/0.45%塩化ナトリウム、10%デキストラン40(LMD)/5%デキストロース、20%(v/v)の25%ヒト血清アルブミン(HSA)、及び7.5%(v/v)のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む薬学的に許容される担体とを含む。
【0745】
いくつかの実施形態では、凍結保存された操作された細胞は、解凍によって投与に向けて調製される。場合によっては、操作された細胞は、解凍直後に対象に投与され得る。かかる実施形態では、該組成物は、いずれのさらなる処理も伴わずに即時使用可能である。他の実例では、操作された細胞は、解凍後に、例えば、薬学的に許容される担体との再懸濁、活性化剤もしくは刺激剤とのインキュベーションによってさらに処理されるか、または対象への投与前に活性化され、洗浄され、薬学的に許容される緩衝剤に再懸濁される。
【0746】
IV.キット、構成要素、及び製造品
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法、デバイス、及びシステムのキット、構成要素、及び組成物(消耗品等)が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書の本開示による使用説明書を含む。
【0747】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作された細胞の集団を含むキットが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、(a)操作された細胞を複数含む細胞の集団を含む、キットが本明細書で提供され、ここで、操作された細胞は、
(i)CD47、CD46、及びCD59の発現を増加させる、ならびに(ii)1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子(例えば、1つもしくは複数のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つもしくは複数のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の発現を低減する、改変
を含み、ここで、(i)の増加した発現及び(ii)の低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、操作された細胞を複数含む細胞の集団を含む、キットまたは組み合わせが本明細書で提供され、ここで、操作された細胞は、
(i)CD46、CD59、及びCD55の発現を増加させる、(ii)CD47の発現を増加させる、ならびに(iii)1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子(例えば、1つもしくは複数のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つもしくは複数のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の発現を低減する、改変
を含み、ここで、(i)及び(ii)の増加した発現ならびに(iii)の低減された発現は、改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。
【0748】
いくつかの実施形態では、1セットの操作された細胞の集団を含む、キットが本明細書で提供され、ここで、第1の操作された細胞の集団は、本明細書に記載の低免疫原性改変の基本セットを含み、CD46及びCD47の増加した発現を含まず、第2の操作された細胞の集団は、低免疫原性改変の基本セットならびにCD46及びCD59の発現を増加させる改変を含み、ここで、キットは、ABO式血液型不適合またはRh因子不適合に基づいて患者への投与のために細胞の第1の集団または第2の集団を選択するための説明書をさらに含む。いくつかの実施形態では、説明書は、第V.C節にある説明に従って提供される。
【0749】
本発明のいくつかの実施形態では、細胞療法を含めた臨床移植療法に有用な材料を含有する製造品が提供される。いくつかの実施形態では、製造品は、限定されないが、糖尿病(例えば、I型糖尿病)、血管病態または疾患、自己免疫性甲状腺炎、肝臓疾患(例えば、肝硬変)、角膜疾患(例えば、フックスジストロフィーまたは先天性遺伝性内皮ジストロフィー)、腎臓疾患、及びがん(例えば、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌)等の細胞欠陥の処置に有用な材料を含有する。製造品は、容器、及び容器上のまたは容器に付随するラベルまたは添付文書を含み得る。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ等(例えば、ガラスまたはプラスチック容器)が含まれる。一般に、容器は、同種異系細胞療法に有効である組成物を保有し、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静注液バッグ、または皮下注射針によって穿通可能な栓を有するバイアルであってもよい)。
【0750】
いくつかの態様では、本明細書で提供されるキットまたは製造品は、本明細書で提供される操作された細胞(例えば、多能性細胞、分化細胞、または初代細胞)のうちのいずれか等の、操作された細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、キットまたは製造品は、操作された細胞の集団を含む組成物を含み、ここで、操作された細胞は、
(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、
(ii)a、及び
(iii)B2M遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊
を含む。いくつかの実施形態では、操作されたベータ細胞は、CIITA遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊をさらに含む。
【0751】
ラベルまたは添付文書は、組成物が特定の病態を処置するために使用されることを指示する。ラベルまたは添付文書は、薬学的組成物を患者に投与するための説明書をさらに含むことになる。いくつかの実施形態では、製造品は、組み合わせ治療薬を含む。
【0752】
製造品及び/またはキットは、添付文書をさらに含んでもよい。添付文書とは、かかる治療用製品の適応症、用法、投薬量、投与、禁忌、及び/またはその使用に関する警告についての情報を含む、治療用製品の商用包装物に慣習的に含まれる説明書を指す。
【0753】
V.処置方法
本明細書では、対象において疾患または病態を処置する際に使用するための、本明細書に記載の操作された細胞の集団を含む提供される細胞組成物に関係する組成物及び方法が提供される。本明細書では、本明細書に記載の操作された細胞の集団を投与することによって患者を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、本明細書に記載されるいずれか等の薬学的組成物中での投与用に製剤化される。かかる方法及び使用は、例えば、操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物の、疾患、病態、または障害を有する対象への投与を伴う、治療方法及び使用を含む。特定の疾患適応症に適切な、本明細書で提供されるような操作された細胞を選定することは、当業者の技能水準内にある。いくつかの実施形態では、該細胞またはその薬学的組成物は、疾患または障害の処置を達成するのに有効な量で投与される。使用は、かかる方法及び処置における、ならびにかかる治療方法を実行するための医薬の調製における、操作された細胞またはその薬学的組成物の使用を含む。いくつかの実施形態では、該方法は、それによって、対象における疾患または病態または障害を処置する。
【0754】
本明細書で提供される操作された細胞は、例えば、疾患または障害の処置のための細胞療法の候補を含めた、任意の好適な患者に投与され得る。細胞療法の候補には、本明細書で提供される対象となる操作された細胞の治療効果が有益な可能性があり得る、疾患または病態を有する任意の患者が含まれる。いくつかの実施形態では、患者は、投与された細胞の同種異系レシピエントである。いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞は、同種異系細胞療法において使用するのに有効である。本明細書で提供される対象となる操作された細胞の治療効果が有益である候補は、疾患または病態の排除、低減、または改善を示す。
【0755】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法のうちのいずれかによって生産されるものを含めた、本明細書で提供されるような操作された細胞は、細胞療法において使用することができる。本明細書に概説される治療用細胞は、限定されないが、がん、遺伝子障害、慢性感染性疾患、自己免疫障害、神経学的障害等といった障害を処置するのに有用である。
【0756】
いくつかの実施形態では、患者は、細胞欠陥を有する。本明細書で使用されるとき、「細胞欠陥」とは、患者において細胞の集団の機能不全または喪失を引き起こし、患者が細胞の集団を自然に置換または再生することができない、任意の疾患または病態を指す。例となる細胞欠陥には、自己免疫性疾患(例えば、多発性硬化症、重症筋無力症、関節リウマチ、糖尿病、全身性ループス及びエリテマトーデス)、神経変性疾患(例えば、ハンチントン病及びパーキンソン病)、心血管病態及び疾患、血管病態及び疾患、角膜病態及び疾患、肝臓病態及び疾患、甲状腺病態及び疾患、または腎臓病態及び疾患が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、操作された細胞を投与される患者は、がんを有する。本明細書で提供される操作された細胞によって処置され得る、例となるがんには、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、がん患者は、本明細書で提供される操作されたCAR T細胞の投与によって処置される。
【0757】
いくつかの実施形態では、操作された細胞の集団を、その必要のある患者に投与する方法が本明細書で提供され、ここで、操作された細胞は、投与中または投与後に血液と接触し、操作された細胞は、操作された細胞が血液と接触するときにIBMIRを阻止または減弱する改変を含む。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、静脈内にまたは筋肉内注射を介して投与される。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、寛容原性因子(例えば、CD47)を過剰発現し、1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の低減された発現を有するかまたはその発現を欠いており、CD46及びCD59の増加した発現を有する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、ベータ島細胞または肝細胞である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、1つまたは複数の補体インヒビターの過剰発現をさらに含む。
【0758】
いくつかの実施形態では、細胞欠陥は、糖尿病に関連するか、または細胞療法は、糖尿病の処置のためのものであり、任意選択で糖尿病は、I型糖尿病である。いくつかの実施形態では、操作された細胞の集団は、ベータ島細胞を含めた島細胞の集団である。いくつかの実施形態では、島細胞は、島前駆細胞、未成熟島細胞、及び成熟島細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、該方法は、患者に、操作されたベータ島細胞の集団を含む組成物を投与することを含み、ここで、操作された細胞は、
(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクター、ならびに
(ii)B2M遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊
を含む。いくつかの実施形態では、該方法は、患者に、操作されたベータ島細胞の集団を含む組成物を投与することを含み、ここで、操作されたベータ島細胞は、(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、操作されたベータ細胞は、CIITA遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドを含む導入遺伝子は、導入遺伝子は、マルチシストロン性ベクターであり、導入遺伝子は、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。他の実施形態では、ベータ島細胞は、別個のマルチシストロン性ベクターをさらに含み、該マルチシストロン性ベクターは、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0759】
いくつかの実施形態では、細胞欠陥は、肝臓疾患に関連するか、または細胞療法は、肝臓疾患の処置のためのものである。いくつかの実施形態では、肝臓疾患は、肝硬変を含む。いくつかの実施形態では、該細胞の集団は、肝細胞または肝前駆細胞の集団である。いくつかの実施形態では、該方法は、患者に、操作された肝細胞の集団を含む組成物を投与することを含み、ここで、操作された肝細胞は、
(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、
(ii)CD46及びCD59の増加した発現、ならびに
(iii)B2M遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊
を含む。いくつかの実施形態では、該方法は、患者に、操作された肝細胞の集団を含む組成物を投与することを含み、ここで、操作された肝細胞は、
(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、及び
(ii)B2M遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊
を含む。いくつかの実施形態では、操作された肝細胞は、CIITA遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドを含む導入遺伝子は、導入遺伝子は、マルチシストロン性ベクターであり、導入遺伝子は、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。他の実施形態では、肝細胞は、別個のマルチシストロン性ベクターをさらに含み、該マルチシストロン性ベクターは、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0760】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される操作された細胞、またはそれを含有する組成物は、例えば、細胞移植、輸血、組織移植、または臓器移植等の、以前の移植に存在する1つまたは複数の抗原から感作された患者の処置に有用である。ある特定の実施形態では、以前の移植は、同種異系移植であり、患者は、同種異系移植からの1つもしくは複数の同種異系抗原に対して感作されている。同種異系移植には、同種異系細胞移植、同種異系輸血、同種異系組織移植、または同種異系臓器移植が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、患者は、妊娠しているか、または妊娠したことがある(例えば、妊娠中の同種免疫化を有するか、または有したことがある)感作患者である。ある特定の実施形態では、患者は、以前の移植に含まれる1つまたは複数の抗原から感作されており、ここで、以前の移植は、改変されたヒト細胞、組織、または臓器である。いくつかの実施形態では、改変されたヒト細胞、組織、または臓器は、改変された自家ヒト細胞、組織、または臓器である。いくつかの実施形態では、以前の移植は、非ヒト細胞、組織、または臓器である。例となる実施形態では、以前の移植は、改変された非ヒト細胞、組織、または臓器である。ある特定の実施形態では、以前の移植は、ヒト成分を含むキメラである。ある特定の実施形態では、以前の移植は、CAR T細胞である。ある特定の実施形態では、以前の移植は、自家移植であり、患者は、自家移植からの1つまたは複数の自己抗原に対して感作されている。ある特定の実施形態では、以前の移植は、自家細胞、組織、または臓器である。ある特定の実施形態では、感作患者は、アレルギーを有するか、1つまたは複数のアレルゲンに感作されている。例となる実施形態では、患者は、花粉症、食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬物アレルギー、またはアトピー性皮膚炎を有する。
【0761】
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞、またはそれを含有する組成物を使用した処置を受けている患者は、以前の処置を受けた。いくつかの実施形態では、操作された細胞、またはそれを含有する組成物は、以前の処置と同じ病態を処置するために使用される。ある特定の実施形態では、操作された細胞、またはそれを含有する組成物は、以前の処置とは異なる病態を処置するために使用される。いくつかの実施形態では、患者に投与された操作された細胞、またはそれを含有する組成物は、以前の処置によって処置された同じ病態もしくは疾患の処置に対して強化された治療効果を示す。ある特定の実施形態では、投与された操作された細胞、またはそれを含有する組成物は、以前の処置と比較して患者における病態もしくは疾患の処置に対してより長期の治療効果を示す。例となる実施形態では、投与された細胞は、以前の処置と比較してがん細胞に対して強化された効力、有効性、及び/または特異性を示す。特定の実施形態では、操作された細胞は、がんの処置のためのCAR T細胞である。
【0762】
本明細書で提供される方法は、第1選択処置の不成功の後の、特定の病態または疾患に対する第2選択処置として使用され得る。いくつかの実施形態では、以前の処置は、治療上有効でない処置である。本明細書で使用されるとき、「治療上有効でない」処置は、患者において所望に満たない臨床成果をもたらす処置を指す。例えば、細胞欠陥に対する処置に関して、治療上有効でない処置とは、患者において欠陥のある細胞を置換するために所望されるレベルの機能的細胞及び/または細胞活性を達成しない、及び/または治療持続性を欠いた処置を指す場合がある。がん処置に関しては、治療上有効でない処置とは、所望されるレベルの効力、有効性、及び/または特異性を達成しない処置を指す。治療有効性は、当該技術分野で既知の任意の好適な技法を使用して測定することができる。いくつかの実施形態では、患者は、以前の処置に対して免疫応答を生じる。一部の実施形態では、以前の処置は、患者によって拒絶される細胞、組織、または臓器移植片である。いくつかの実施形態では、以前の処置は、機械補助による処置を含んでいた。いくつかの実施形態では、機械補助による処置は、血液透析または補助人工心臓を含んでいた。いくつかの実施形態では、患者は、機械補助による処置に対して免疫応答を生じた。一部の実施形態では、以前の処置は、治療用細胞が望まれない様態で増殖及び分裂するようなことがあれば治療用細胞の死を引き起こすことができる、安全スイッチを含む治療用細胞の集団を含んでいた。ある特定の実施形態では、患者は、安全スイッチにより誘導される治療用細胞の死の結果として、免疫応答を生じる。ある特定の実施形態では、患者は、以前の処置から感作されている。例となる実施形態では、患者は、投与された本明細書で提供されるような操作された細胞によっては感作されない。
【0763】
いくつかの実施形態では、提供される操作された細胞、またはそれを含有する組成物は、組織、臓器、または部分的臓器移植を、その必要のある患者に提供する前に投与される。特定の実施形態では、患者は、操作された細胞に対して免疫応答を示さない。ある特定の実施形態では、操作された細胞は、特定の組織または臓器における細胞欠陥の処置のために患者に投与され、患者はその後、同じ特定の組織または臓器に対する組織移植または臓器移植を受ける。かかる実施形態では、操作された細胞処置は、やがて行われる組織または臓器置換へのブリッジ療法として機能する。例えば、いくつかの実施形態では、患者は、肝臓障害を有し、肝臓移植を受ける前に、本明細書で提供されるような操作された肝細胞による処置を受ける。ある特定の実施形態では、操作された細胞は、特定の組織または臓器における細胞欠陥の処置のために患者に投与され、患者はその後、異なる組織または臓器に対する組織移植または臓器移植を受ける。例えば、いくつかの実施形態では、患者は、腎臓移植を受ける前に、本明細書で提供されるような操作された膵ベータ細胞で処置される糖尿病患者である。いくつかの実施形態では、該方法は、細胞欠陥の処置のためのものである。例となる実施形態では、組織移植または臓器移植は、心臓移植、肺移植、腎臓移植、肝臓移植、膵臓移植、腸移植、胃移植、角膜移植、骨髄移植、血管移植、心臓弁移植、または骨移植である。
【0764】
患者を処置する方法は、一般に、本明細書で提供されるような操作された細胞、またはそれを含有する組成物の投与を介する。理解されようが、該細胞及び/または療法のタイミングに関連する本明細書に記載の全ての複数の実施形態に関して、該細胞の投与は、所望の部位での導入細胞の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路によって遂行される。細胞は、対象内の所望の部位に直接埋め込まれ得るか、または代替として、所望の箇所への送達をもたらす任意の適切な経路によって投与され得、ここで、埋め込まれた細胞または細胞の構成要素の少なくとも一部分は、生存したままである。一部の実施形態では、該細胞は、細胞療法によって緩和され得る任意の疾患、障害、病態等の疾患または障害、またはその症状を処置するために投与される。
【0765】
いくつかの実施形態では、操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物は、患者が感作されてから少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、または少なくとも1ヶ月以上後に投与される。いくつかの実施形態では、操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物は、患者が感作されてから、または感作の特性もしくは特徴を示してから少なくとも1週間(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、またはそれよりも長い期間)以上後に投与される。いくつかの実施形態では、操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物は、患者が移植(例えば、同種異系移植)を受けてから、妊娠してから(例えば、妊娠中の同種免疫化を有するか、または有したことがある)、または感作されてから、または感作の特性もしくは特徴を示してから少なくとも1ヶ月(例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、またはそれよりも長い期間)以上後に投与される。
【0766】
いくつかの実施形態では、移植を受けたことがある、妊娠したことがある(例えば、妊娠中の同種免疫化を有するか、または有したことがある)、及び/または抗原(例えば、同種異系抗原)に対して感作されている患者は、本明細書に記載の操作された細胞の集団の1回目の用量の投与、1回目の用量の後の回復期間、及び記載される操作された細胞の集団の2回目の用量の投与を含む、投与レジメンを施行される。いくつかの実施形態では、第1の細胞集団及び第2の細胞集団中に存在する細胞種の混成は異なる。ある特定の実施形態では、第1の操作された細胞の集団及び第2の操作された細胞の集団中に存在する細胞種の混成は、同じであるか、または実質的に同等である。多くの実施形態では、第1の操作された細胞の集団及び第2の操作された細胞の集団は、同じ細胞種を含む。いくつかの実施形態では、第1の操作された細胞の集団及び第2の操作された細胞の集団は、異なる細胞種を含む。いくつかの実施形態では、第1の操作された細胞の集団及び第2の操作された細胞の集団は、同じパーセンテージの細胞種を含む。他の実施形態では、第1の操作された細胞の集団及び第2の細胞の集団は、異なるパーセンテージの細胞種を含む。
【0767】
いくつかの実施形態では、回復期間は、操作された細胞の集団またはそれを含有する組成物の1回目の投与に次いで開始し、かかる細胞が、患者においてもはや存在しないかまたは検出可能でないときに終了する。いくつかの実施形態では、回復期間の継続期間は、該細胞の初回投与から少なくとも1週間(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、またはそれよりも長い期間)以上後である。いくつかの実施形態では、回復期間の継続期間は、該細胞の初回投与から少なくとも1ヶ月(例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、またはそれよりも長い期間)以上後である。
【0768】
いくつかの実施形態では、投与された操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物は、対象に投与されたときに低免疫原性である。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、低免疫である。いくつかの実施形態では、操作された細胞に対する免疫応答は、免疫原性細胞(例えば、同じまたは類似の細胞種または表現型であるが、操作された細胞の改変、例えば遺伝子改変を含有しない細胞の集団)の投与によってもたらされる免疫応答のレベルと比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低く低減されるか、またはより低い。いくつかの実施形態では、投与された操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物は、患者において操作された細胞に対する免疫応答を誘発するに至らない。
【0769】
いくつかの実施形態では、投与された操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物は、患者において減少したまたはより低いレベルの全身性TH1活性化を誘発する。いくつかの事例では、該細胞によって誘発される全身性TH1活性化のレベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは類似の細胞種または表現型であるが、操作された細胞の改変、例えば遺伝子改変を含有しない細胞の集団)の投与によってもたらされる全身性TH1活性化のレベルと比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。いくつかの実施形態では、投与された操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物は、患者において全身性TH1活性化を誘発するに至らない。
【0770】
いくつかの実施形態では、投与された操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物は、患者において減少したまたはより低いレベルの末梢血単核細胞(PBMC)の免疫活性化を誘発する。いくつかの事例では、該細胞によって誘発されるPBMCの免疫活性化のレベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは類似の細胞種または表現型であるが、操作された細胞の改変、例えば遺伝子改変を含有しない細胞の集団)の投与によってもたらされるPBMCの免疫活性化のレベルと比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。いくつかの実施形態では、投与された操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物は、患者においてPBMCの免疫活性化を誘発するに至らない。
【0771】
いくつかの実施形態では、投与された操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物は、患者において減少したまたはより低いレベルのドナー特異的IgG抗体を誘発する。いくつかの事例では、該細胞によって誘発されるドナー特異的IgG抗体のレベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは類似の細胞種または表現型であるが、操作された細胞の改変、例えば遺伝子改変を含有しない細胞の集団)の投与によってもたらされるドナー特異的IgG抗体のレベルと比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。いくつかの実施形態では、投与された操作された細胞の集団は、患者においてドナー特異的IgG抗体を誘発するに至らない。
【0772】
いくつかの実施形態では、投与された操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物は、患者において減少したまたはより低いレベルのIgM及びIgG抗体産生を誘発する。いくつかの事例では、該細胞によって誘発されるIgM及びIgG抗体産生のレベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは類似の細胞種または表現型であるが、操作された細胞の改変、例えば遺伝子改変を含有しない細胞の集団)の投与によってもたらされるIgM及びIgG抗体産生のレベルと比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。いくつかの実施形態では、投与された操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物は、患者においてIgM及びIgG抗体産生を誘発するに至らない。
【0773】
いくつかの実施形態では、投与された操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物は、患者において減少したまたはより低いレベルの細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発する。いくつかの事例では、該細胞によって誘発される細胞傷害性T細胞による殺傷のレベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは類似の細胞種または表現型であるが、操作された細胞の改変、例えば遺伝子改変を含有しない細胞の集団)の投与によってもたらされる細胞傷害性T細胞による殺傷のレベルと比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%低い。いくつかの実施形態では、投与された操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物は、患者において細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発するに至らない。
【0774】
上記で考察したように、本明細書では、ある特定の実施形態においてヒト白血球抗原等の同種異系抗原に対して感作された患者に投与され得る、細胞が提供される。いくつかの実施形態では、患者は、妊娠しているか、または妊娠したことがあり、例えば、妊娠中の同種免疫化(例えば、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、または胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT))を有する。換言すれば、患者は、限定されないが、胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)、ならびに胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)等の、妊娠中の同種免疫化に関連する障害または病態を有するか、または有したことがある。いくつかの実施形態では、患者は、限定されないが、同種異系細胞移植、同種異系輸血、同種異系組織移植、または同種異系臓器移植等の、同種異系移植を受けたことがある。いくつかの実施形態では、患者は、同種異系抗原に対するメモリーB細胞を示す。いくつかの実施形態では、患者は、同種異系抗原に対するメモリーT細胞を示す。かかる患者は、同種異系抗原に対するメモリーB細胞及びメモリーT細胞の両方を示す可能性がある。
【0775】
記載される細胞の投与時に、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、全身性の免疫応答の不在または低減されたレベルの全身性の免疫応答を示す。いくつかの実施形態では、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、適応免疫応答の不在または低減されたレベルの適応免疫応答を示す。いくつかの実施形態では、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、自然免疫応答の不在または低減されたレベルの自然免疫応答を示す。いくつかの実施形態では、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、T細胞応答の不在または低減されたレベルのT細胞応答を示す。いくつかの実施形態では、患者は、低免疫原性ではない細胞に対する応答と比較して、B細胞応答の不在または低減されたレベルのB細胞応答を示す。
【0776】
A.用量及び投薬レジメン
任意の治療上有効量の本明細書に記載の細胞が、処置されている適応症に応じて薬学的組成物に含まれ得る。該細胞の非限定的な例としては、初代細胞(例えば、初代ベータ島細胞)及び記載したような操作された人工多能性幹細胞から分化した細胞(例えば、iPSCから分化したベータ島細胞または肝細胞)が挙げられる。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、少なくとも約1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×1010、または5×1010個の細胞を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、最大約1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×1010、または5×1010個の細胞を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、最大約6.0×10個の細胞を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、最大約8.0×10個の細胞を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、少なくとも約1×10~5×10、5×10~1×10、1×10~5×10、5×10~1×10、1×10~5×10、5×10~1×10、1×10~5×10、5×10~1×10、1×10~5×10、5×10~1×10、1×10~5×10、5×10~1×10、1×10~5×10、5×10~1×10、1×10~5×10、5×10~1×1010、または1×1010~5×1010個の細胞を含む。例となる実施形態では、薬学的組成物は、約1.0×10~約2.5×10個の細胞を含む。
【0777】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、または500mlの体積を有する。例となる実施形態では、薬学的組成物は、最大約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、または500mlの体積を有する。例となる実施形態では、薬学的組成物は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、または500mlの体積を有する。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、約1~50ml、50~100ml、100~150ml、150~200ml、200~250ml、250~300ml、300~350ml、350~400ml、400~450ml、または450~500mlの体積を有する。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、約1~50ml、50~100ml、100~150ml、150~200ml、200~250ml、250~300ml、300~350ml、350~400ml、400~450ml、または450~500mlの体積を有する。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、約1~10ml、10~20ml、20~30ml、30~40ml、40~50ml、50~60ml、60~70ml、70~80ml、70~80ml、80~90ml、または90~100mlの体積を有する。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、約5ml~約80mlの範囲の体積を有する。例となる実施形態では、薬学的組成物は、約10ml~約70mlの範囲の体積を有する。多くの実施形態では、薬学的組成物は、約10ml~約50mlの範囲の体積を有する。
【0778】
具体的な量/投薬レジメンは、個体の体重、性別、年齢、及び健康;細胞の製剤形態、生化学的特質、生物活性、生物学的利用能、及び副作用、ならびに完全な治療レジメンにおける細胞の数及び固有性に応じて様々である。
【0779】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物の用量は、約10mL~50mLの体積で約1.0×10~約2.5×10個の細胞を含み、薬学的組成物は、単回用量として投与される。
【0780】
多くの実施形態では、細胞は、T細胞であり、薬学的組成物は、約2.0×10~約2.0×10個の細胞、例えば、限定されないが、初代T細胞、操作された人工多能性幹細胞から分化したT細胞を含む。場合によっては、用量は、約10ml~50mlの体積で約1.0×10~約2.5×10個の本明細書に記載の初代T細胞を含む。いくつかの実例では、用量は、約10ml~50mlの体積で約1.0×10~約2.5×10個の上述した初代T細胞を含む。種々の実例では、用量は、約10ml~50mlの体積で約1.0×10~約2.5×10個の本明細書に記載の操作された人工多能性幹細胞から分化したT細胞を含む。他の実例では、用量は、約1.0×10~約2.5×10個未満である範囲の、初代T細胞または操作された人工多能性幹細胞から分化したT細胞を含めたT細胞である。なおも他の実例では、用量は、約1.0×10~約2.5×10個超である範囲の、初代T細胞及び操作された人工多能性幹細胞から分化したT細胞を含めたT細胞である。
【0781】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、50kg以下の対象に関して体重1kg当たり約1.0×10~約1.0×10個の操作された細胞(初代細胞または操作された人工多能性幹細胞から分化した細胞等)の単回用量として投与される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、50kg以下の対象に関して体重1kg当たり約0.5×10~約1.0×10、約1.0×10~約1.0×10、約1.0×10~約1.0×10、約5.0×10~約1×10、約1.0×10~約1×10、約5.0×10~約1.0×10、約1.0×10~約5.0×10、約1.0×10~約1.0×10、約1.0×10~約5.0×10、約1.0×10~約5.0×10、約2.0×10~約5.0×10、約3.0×10~約5.0×10、約4.0×10~約5.0×10、約5.0×10~約5.0×10、約6.0×10~約5.0×10、約7.0×10~約5.0×10、約8.0×10~約5.0×10、または約9.0×10~約5.0×10個の細胞の単回用量として投与される。いくつかの実施形態では、用量は、50kg以下の対象に関して体重1kg当たり約0.2×10~約5.0×10個の細胞である。多くの実施形態では、用量は、50kg以下の対象に関して体重1kg当たり約0.2×10~約5.0×10個未満である範囲の細胞である。多くの実施形態では、用量は、50kg以下の対象に関して体重1kg当たり約0.2×10~約5.0×10個超である範囲の細胞である。例となる実施形態では、単回用量は、約10ml~50mlの体積である。いくつかの実施形態では、用量は、静脈内に投与される。
【0782】
例となる実施形態では、該細胞は、50kg超の対象に関して約1.0×10~約5.0×10個の細胞(初代細胞及び操作された人工多能性幹細胞から分化した細胞等)の単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、50kg以下の対象に関して体重1kg当たり約0.5×10~約1.0×10、約1.0×10~約1.0×10、約1.0×10~約1.0×10、約5.0×10~約1.0×10、約1.0×10~約1.0×10、約5.0×10~約1.0×10、約1.0×10~約5.0×10、約1.0×10~約1.0×10、約1.0×10~約5.0×10、約1.0×10~約5.0×10、約2.0×10~約5.0×10、約3.0×10~約5.0×10、約4.0×10~約5.0×10、約5.0×10~約5.0×10、約6.0×10~約5.0×10、約7.0×10~約5.0×10、約8.0×10~約5.0×10、または約9.0×10~約5.0×10個の細胞の単回用量として投与される。多くの実施形態では、該細胞は、50kg超の対象に関して約1.0×10~約2.5×10個の細胞の単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、該細胞は、50kg超の対象に関して約1.0×10~約2.5×10個未満である範囲の細胞の単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、該細胞は、50kg超の対象に関して約1.0×10~約2.5×10個超である範囲の細胞の単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、用量は、静脈内に投与される。例となる実施形態では、単回用量は、約10ml~50mlの体積である。いくつかの実施形態では、用量は、静脈内に投与される。
【0783】
例となる実施形態では、用量は、1分当たり約1~50ml、1分当たり1~40ml、1分当たり1~30ml、1分当たり1~20ml、1分当たり10~20ml、1分当たり10~30ml、1分当たり10~40ml、1分当たり10~50ml、1分当たり20~50ml、1分当たり30~50ml、1分当たり40~50mlの速度で静脈内に投与される。多数の実施形態では、薬学的組成物は、静脈内投与用の1つまたは複数の輸液バッグ中で保管される。いくつかの実施形態では、用量は、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、70分、80分、90分、120分、150分、180分、240分、または300分以下で完全に投与される。
【0784】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物の単回用量は、単一の輸液バッグに存在する。他の実施形態では、薬学的組成物の単回用量は、2、3、4、または5個の別個の輸液バッグに分割される。
【0785】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞は、複数の用量、例えば、2、3、4、5、6回またはそれを超える用量で投与される。いくつかの実施形態では、複数の用量の各用量は、1~24時間の範囲を空けて対象に投与される。いくつかの事例では、後続の用量は、最初のまたは先行する用量から約1時間~約24時間(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または約24時間)後に投与される。いくつかの実施形態では、複数の用量の各用量は、約1日~28日の範囲を空けて対象に投与される。いくつかの事例では、後続の用量は、最初のまたは先行する用量から約1日~約28日(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または約28日)後に投与される。多くの実施形態では、複数の用量の各用量は、1週間~約6週間の範囲を空けて対象に投与される。ある特定の事例では、後続の用量は、最初のまたは先行する用量から約1週間~約6週間(例えば、約1、2、3、4、5、または6週間)後に投与される。いくつかの実施形態では、複数の用量の各用量は、約1ヶ月間~約12ヶ月間の範囲を空けて対象に投与される。いくつかの事例では、後続の用量は、最初のまたは先行する用量から約1ヶ月~約12ヶ月(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月)後に投与される。
【0786】
いくつかの実施形態では、対象は、第1の時点で第1の投薬レジメンを投与され、次いでその後、第2の時点で第2の投薬レジメンを投与される。いくつかの実施形態では、第1の投薬レジメンは、第2の投薬レジメンと同じである。他の実施形態では、第1の投薬レジメンは、第2の投薬レジメンとは異なる。いくつかの事例では、第1の投薬レジメン及び第2の投薬レジメンにおける細胞の数は、同じである。いくつかの事例では、第1の投薬レジメン及び第2の投薬レジメンにおける細胞の数は、異なる。場合によっては、第1の投薬レジメン及び第2の投薬レジメンにおける用量の数は、同じである。場合によっては、第1の投薬レジメン及び第2の投薬レジメンにおける用量の数は、異なる。
【0787】
いくつかの実施形態では、該細胞は、操作されたT細胞(例えば、初代T細胞または操作された人工多能性幹細胞から分化したT細胞)であり、第1の投薬レジメンは、第1のCARを発現する操作されたT細胞を含み、第2の投薬レジメンは、第2のCARを発現する操作されたT細胞を含み、第1のCAR及び第2のCARは異なるものとなっている。例えば、第1のCAR及び第2のCARは、異なる標的抗原に結合する。場合によっては、第1のCARは、ある抗原に結合するscFvを含み、第2のCARは、異なる抗原に結合するscFvを含む。いくつかの実施形態では、第1の投薬レジメンは、第1のCARを発現する操作されたT細胞を含み、第2の投薬レジメンは、第2のCARを発現する操作されたT細胞または初代T細胞を含み、第1のCAR及び第2のCARは同じものとなっている。第1の投薬レジメンは、第2の投薬レジメンから少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、1~3ヶ月、1~6ヶ月、4~6ヶ月、3~9ヶ月、3~12ヶ月、またはそれを超える月数を空けて対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、対象は、疾患(例えば、がん)の経過において複数の投薬レジメンを投与され、投薬レジメンのうちの少なくとも2つは、同じ種類の本明細書に記載の操作されたT細胞を含む。他の実施形態では、複数の投薬レジメンのうちの少なくとも2つは、異なる種類の本明細書に記載の操作されたT細胞を含む。
【0788】
B.免疫抑制剤
いくつかの実施形態では、免疫抑制及び/または免疫調節剤は、操作された細胞の集団、またはそれを含有する組成物の1回目の投与前に患者に投与されない。
【0789】
いくつかの実施形態では、免疫抑制及び/または免疫調節剤は、操作された細胞の投与を受けた患者に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、免疫抑制及び/または免疫調節剤は、操作された細胞の投与前に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制及び/または免疫調節剤は、操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行前に投与される。
【0790】
免疫抑制剤及び/または免疫調節剤の非限定的な例としては、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、プレドニゾン等のコルチコステロイド、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア薬、ブレキナル、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスパガリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン、チモシン-α、及び類似の剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、IL-2受容体のp75に結合する抗体;例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFN-ガンマ、TNF-.アルファ.、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-6、IGF、IGFR1、IL-7、IL-8、IL-10、CD11a、またはCD58に結合する抗体;及び、それらのリガンドのうちのいずれかに結合する抗体、からなる免疫抑制抗体の群から選択される。免疫抑制及び/または免疫調節剤が該細胞の1回目の投与前または後に患者に投与される、いくつかの実施形態では、投与は、MHCクラスI及び/またはMHCクラスIIの発現を有し、かつCD47の外因性発現を有しない細胞に必要とされよう投薬量よりも低い投薬量である。
【0791】
一実施形態では、かかる免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、可溶性IL-15R、IL-10、B7分子(例えば、B7-1、B7-2、それらのバリアント、及びそれらの断片)、負のT細胞制御因子の阻害剤であるICOS及びOX40(CTLA-4に対する抗体等)、ならびに類似の剤から選択され得る。
【0792】
いくつかの実施形態では、免疫抑制及び/または免疫調節剤は、操作された細胞の集団の1回目の投与前に患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、該細胞の1回目の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日前、またはそれよりも前に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、該細胞の1回目の投与の少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間前、またはそれよりも前に投与される。
【0793】
特定の実施形態では、免疫抑制及び/または免疫調節剤は、該細胞の1回目の投与後に患者に投与されないか、または該細胞の1回目の投与から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日後、もしくはそれよりも後に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、該細胞の1回目の投与から少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間後、またはそれよりも後に投与される。
【0794】
いくつかの実施形態では、免疫抑制及び/または免疫調節剤は、操作された細胞の集団の投与前に患者に投与されない。多くの実施形態では、免疫抑制及び/または免疫調節剤は、操作された細胞の集団の1回目及び/または2回目の投与前に患者に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、該細胞の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日前、またはそれよりも前に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、該細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間前、またはそれよりも前に投与される。特定の実施形態では、免疫抑制及び/または免疫調節剤は、該細胞の投与から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日後、またはそれよりも後に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、該細胞の1回目及び/または2回目の投与から少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間後、またはそれよりも後に投与される。
【0795】
免疫抑制及び/または免疫調節剤が該細胞の投与前または後に患者に投与される、いくつかの実施形態では、投与は、免疫原性細胞(例えば、同じまたは類似の細胞種または表現型であるが、操作された細胞の改変、例えば遺伝子改変を含有しない、例えば、内在性レベルのCD46、CD59、及びCD55、MHCクラスI、及び/またはMHCクラスIIの発現を有し、かつCD47の増加した(例えば、外因性)発現を有しない、細胞の集団)に必要とされよう投薬量よりも低い投薬量である。
【0796】
C.処置に対する患者の選択
いくつかの実施形態では、第1または第2の改変のセットを含む細胞の集団(例えば、CD46及びCD59の増加した発現を含まない細胞、またはCD46及びCD59の増加した発現を含む細胞)を、血液型に基づいて(例えば、ABO型及び/またはアカゲザル因子(Rh因子)陽性または陰性に基づいて)患者に一致させる方法が本明細書で提供される。
【0797】
細胞(例えば、操作された細胞、または操作された細胞の由来となったドナー対象、もしくは血液細胞のレシピエント患者の細胞)または血清(例えば、ドナーまたはレシピエント患者の血清)の血液型判定は、Mujahid,et al.“Blood Group Typing:From Classical Strategies to the Application of Synthetic Antibodies Generated by Molecular Imprinting.”Sensors(Basel,Switzerland)vol.16,1 51.31 Dec.2015に記載される方法等の標準的な方法に従って実施することができ、同文献の内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、血液型判定は、順方向判定(抗原の存在を試験する)及び/または逆方向判定(血清中の抗体の存在を試験する)を使用して実施することができる。順方向血液型判定は、細胞上のA抗原及びB抗原の存在または不在を示唆し、一方で、逆方向分類は、血清中の抗A及び抗Bの存在または不在を示す。順方向分類の一例では、血液細胞を希釈媒体としての生理食塩水とともに2つの試験管に入れ、次いで抗A及び抗Bを各々1滴、これらの試料に別個に加える。これらの管を数分間遠心分離に供し、次いで、凝集を観察するために得られたマトリックスを穏やかに振とうする。
【0798】
正確な血液型分類のために、血液凝集反応の程度に従って2つの管を類別することができる。遠心分離の目的は、特に、より弱い抗体が反応して、それにより凝集をもたらすように、強化された化学相互作用を確実にすることである。凝集を促進するために何らかの増強剤を添加することも可能である。さらに、管の長時間のインキュベーションもまた、試験試料を乾燥させることなく、これらの反応に有利である。同様の様式で、逆方向分類を実施することができ、ここにあるように、血清をRBC試薬A1群及びB群に対して処理し、その後の凝集パターンを監視する。順方向分類及び逆方向分類の両方における凝集物の格付けは、溶血反応の強度の差異を比較する際に使用することができる。
【0799】
いくつかの実施形態では、順方向血液型判定を同様に使用して、細胞上のRh抗原の存在または不在を決定することができ、逆方向分類を使用して、血清中の抗Rh因子抗体の存在または不在を決定することができる。
【0800】
いくつかの実施形態では、患者の血液型は、前記1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO式血液型適合性を有すると決定され、ここで、(a)(1)患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体を含み、かつABO式血液型B抗原に対する抗体を含まない場合、及び患者の血液型がアカゲザル(Rh)因子陰性である場合、ならびに(2)前記1セットの集団の細胞がABO式血液型OまたはABO式血液型Bであり、かつRh因子陰性である場合、該方法は、患者への投与のための第1の操作された細胞の集団(低免疫原性改変の基本セットを含むが、CD46及びCD59の発現を増加させる改変を含まない)を選択することを含む。
【0801】
いくつかの実施形態では、患者の血液型は、前記1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO式血液型適合性を有すると決定され、ここで、(b)(1)患者の血清がABO式血液型B抗原に対する抗体を含み、ABO式血液型A抗原に対する抗体を含まず、かつ患者の血液型がRh因子陰性である場合、及び(2)前記1セットの細胞の集団の細胞がABO式血液型OまたはABO式血液型Aであり、かつ該細胞がRh因子陰性である場合、該方法は、患者への投与のための第1の操作された細胞の集団(低免疫原性改変の基本セットを含むが、CD46及びCD59の発現を増加させる改変を含まない)を選択することを含む。
【0802】
いくつかの実施形態では、患者の血液型は、前記1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO式血液型適合性を有すると決定され、ここで、(c)(1)患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体及びABO式血液型B抗原に対する抗体を含む場合、ならびに(2)前記1セットの細胞の集団の細胞がABO式血液型Oの細胞である場合、該方法は、患者への投与のための第1の操作された細胞の集団(低免疫原性改変の基本セットを含むが、CD46及びCD59の発現を増加させる改変を含まない)を選択することを含む。
【0803】
いくつかの実施形態では、患者の血液型は、前記1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO式血液型適合性を有すると決定され、ここで、(d)(1)患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体もABO式血液型B抗原に対する抗体も含まず、かつ患者の血液型がRh因子陽性である場合、及び(2)前記1セットの細胞の集団の細胞がABO式血液型A、ABO式血液型B、ABO式血液型AB、またはABO式血液型Oの細胞であり、かつRh因子陰性またはRh因子陽性である場合、該方法は、患者への投与のための第1の操作された細胞の集団(低免疫原性改変の基本セットを含むが、CD46及びCD59の発現を増加させる改変を含まない)を選択することを含む。
【0804】
いくつかの実施形態では、患者の血液型は、前記1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO式血液型適合性を有すると決定され、ここで、(e)(1)患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体もABO式血液型B抗原に対する抗体も含まず、かつ患者の血液型がRh因子陰性である場合、及び(2)前記1セットの細胞の集団の細胞がABO式血液型A、ABO式血液型B、ABO式血液型AB、またはABO式血液型Oであり、かつRh因子陰性である場合、該方法は、患者への投与のための第1の操作された細胞の集団(低免疫原性改変の基本セットを含むが、CD46及びCD59の発現を増加させる改変を含まない)を選択することを含む。
【0805】
いくつかの実施形態では、患者の血液型は、前記1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO不適合を有し、ここで、(a)(1)患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体を含み、ABO式血液型B抗原に対する抗体を含まず、かつ患者の血液型がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、及び(2)前記1セットの集団の細胞がABO式血液型AまたはABO式血液型ABの細胞であり、かつ該集団の細胞がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、該方法は、患者への投与のための第2の操作された細胞の集団(低免疫原性改変の基本セットを含み、かつCD46及びCD59の発現を増加させる改変を含む)を選択することを含む。
【0806】
いくつかの実施形態では、患者の血液型は、前記1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO不適合を有し、ここで、(b)(1)患者の血清がABO式血液型B抗原に対する抗体を含み、ABO式血液型A抗原に対する抗体を含まず、かつ患者の血液型がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、及び(2)前記1セットの細胞の集団の細胞がABO式血液型BまたはABO式血液型ABの細胞であり、該集団の細胞がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、該方法は、患者への投与のための第2の操作された細胞の集団(低免疫原性改変の基本セットを含み、かつCD46及びCD59の発現を増加させる改変を含む)を選択することを含む。
【0807】
いくつかの実施形態では、患者の血液型は、前記1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO不適合を有し、ここで、c)(1)患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体及びABO式血液型B抗原に対する抗体を含み、かつ患者の血液型がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、及び(2)前記1セットの細胞の集団の細胞がABO式血液型A、ABO式血液型B、またはABO式血液型ABであり、かつ該集団の細胞がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、該方法は、患者への投与のための第2の操作された細胞の集団(低免疫原性改変の基本セットを含み、かつCD46及びCD59の発現を増加させる改変を含む)を選択することを含む。
【0808】
いくつかの実施形態では、患者の血液型は、前記1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO不適合を有し、ここで、(d)(1)患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体もABO式血液型B抗原に対する抗体も含まず、かつ患者の血液型がRh因子陰性である場合、ならびに(2)前記1セットの細胞の集団の細胞がABO式血液型A、ABO式血液型B、ABO式血液型AB、またはABO式血液型Oであり、かつRh因子陽性である場合、該方法は、患者への投与のための第2の操作された細胞の集団(低免疫原性改変の基本セットを含み、かつCD46及びCD59の発現を増加させる改変を含む)を選択することを含む。
【0809】
VI.例となる実施形態
1.(i)1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させる、(ii)CD46の発現を増加させる、(iii)CD59の発現を増加させる、ならびに(iv)1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する、改変
を含む、操作された細胞であって、(i)、(ii)、及び(iii)の前記増加した発現ならびに(iv)の前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、前記操作された細胞。
【0810】
2.(iv)における前記改変のうちの1つまたは複数が、
a.1つもしくは複数のMHCクラスI分子
b.1つもしくは複数のMHCクラスII分子、または
c.1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び1つもしくは複数のMHCクラスII分子
の発現を低減する、実施形態1に記載の操作された細胞。
【0811】
3.前記1つまたは複数の改変が、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B、及び/またはNFY-C、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の分子の発現を低減する、実施形態1または実施形態2に記載の操作された細胞。
【0812】
4.B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B、及び/またはNFY-C、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の分子を発現しない、実施形態1~3のいずれかに記載の操作された細胞。
【0813】
5.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、及びSERPINB9、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の寛容原性因子を含む、実施形態1~4のいずれかに記載の操作された細胞。
【0814】
6.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態5に記載の操作された細胞。
【0815】
7.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、A20/TNFAIP3、C1-インヒビター、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD47、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1、Serpinb9、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の寛容原性因子を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の操作された細胞。
【0816】
8.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47を含む、実施形態1~7のいずれかに記載の操作された細胞。
【0817】
9.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-Eを含む、実施形態1~8のいずれかに記載の操作された細胞。
【0818】
10.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24を含む、実施形態1~9のいずれかに記載の操作された細胞。
【0819】
11.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、PDL1を含む、実施形態1~10のいずれかに記載の操作された細胞。
【0820】
12.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD55を含む、実施形態1~11のいずれかに記載の操作された細胞。
【0821】
13.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CR1を含む、実施形態1~12のいずれかに記載の操作された細胞。
【0822】
14.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、MANFを含む、実施形態1~13のいずれかに記載の操作された細胞。
【0823】
15.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、A20/TNFAIP3を含む、実施形態1~14のいずれかに記載の操作された細胞。
【0824】
16.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E及びCD47を含む、実施形態1~15のいずれかに記載の操作された細胞。
【0825】
17.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24、CD47、及びPDL1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24、CD47、及びPDL1を含む、実施形態1~16のいずれかに記載の操作された細胞。
【0826】
18.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、及びPDL1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、及びPDL1を含む、実施形態1~17のいずれかに記載の操作された細胞。
【0827】
19.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、実施形態1~18のいずれかに記載の操作された細胞。
【0828】
20.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、実施形態1~19のいずれかに記載の操作された細胞。
【0829】
21.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、実施形態1~20のいずれかに記載の操作された細胞。
【0830】
22.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E及びPDL1を含む、実施形態1~21のいずれかに記載の操作された細胞。
【0831】
23.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びA20/TNFAIPからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びA20/TNFAIPを含む、実施形態1~22のいずれかに記載の操作された細胞。
【0832】
24.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びMANFからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びMANFを含む、実施形態1~23のいずれかに記載の操作された細胞。
【0833】
25.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP、及びMANFからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP、及びMANFを含む、実施形態1~24のいずれかに記載の操作された細胞。
【0834】
26.(i)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200、及びMFGE8の発現を増加させる、(ii)CD46の発現を増加させる、ならびに(iii)CD59の発現を増加させる、改変
を含む、操作された細胞であって、前記増加した発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、前記操作された細胞。
【0835】
27.(i)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200、及びMFGE8の発現を増加させる、(ii)CD46の発現を増加させる、ならびに(iii)CD59の発現を増加させる、前記改変
のうちの1つまたは複数が、内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる1つまたは複数の改変を含む、実施形態26に記載の操作された細胞。
【0836】
28.前記内在性遺伝子が、前記CCL21、前記PD-L1、前記FASL、前記SERPINB9、前記HLA-G、前記CD47、前記CD200、前記MFGE8、前記CD46、または前記CD59をコードする、実施形態27に記載の操作された細胞。
【0837】
29.内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる前記1つまたは複数の改変が、前記遺伝子の内在性プロモーターの1つもしくは複数の改変または異種プロモーターの導入を含む、実施形態27または28に記載の操作された細胞。
【0838】
30.前記異種プロモーターが、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びUBCプロモーターからなる群から選択される、実施形態29に記載の操作された細胞。
【0839】
31.前記操作された細胞が、CD55の発現を増加させる改変をさらに含み、CD55の前記増加した発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、実施形態1~30のいずれかに記載の操作された細胞。
【0840】
32.発現を増加させる前記改変(複数可)が、増加した表面発現を含み、及び/または発現を低減する前記改変が、低減された表面発現を含み、任意選択で、前記低減された表面発現が、検出可能な表面発現を何ら含まない、実施形態1~31のいずれかに記載の操作された細胞。
【0841】
33.CD46の発現を増加させ、かつCD59の発現を増加させる前記1つまたは複数の改変が、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態1~32のいずれかに記載の操作された細胞。
【0842】
34.CD55の発現を増加させる前記改変が、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態31~33のいずれかに記載の操作された細胞。
【0843】
35.CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す、実施形態33または実施形態34に記載の操作された細胞。
【0844】
36.CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号3に記載の配列をコードする、実施形態35に記載の操作された細胞。
【0845】
37.CD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す、実施形態33~36のいずれかに記載の操作された細胞。
【0846】
38.CD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号5に記載の配列をコードする、実施形態37に記載の操作された細胞。
【0847】
39.CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す、実施形態34~38のいずれかに記載の操作された細胞。
【0848】
40.CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号8に記載の配列をコードする、実施形態39に記載の操作された細胞。
【0849】
41.CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが各々、プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態33~40のいずれかに記載の操作された細胞。
【0850】
42.CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態33~41のいずれかに記載の操作された細胞。
【0851】
43.CD47の発現を増加させる前記改変が、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態1~42のいずれかに記載の操作された細胞。
【0852】
44.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、前記操作された細胞の自然免疫による殺傷を低減する、実施形態43に記載の操作された細胞。
【0853】
45.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号1に記載の配列をコードする、実施形態44に記載の操作された細胞。
【0854】
46.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態43~45のいずれかに記載の操作された細胞。
【0855】
47.前記1つまたは複数の寛容原性因子をコードする1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチド、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドからなる群から選択される2つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクター
を含む、実施形態1~46のいずれかに記載の操作された細胞。
【0856】
48.前記ポリヌクレオチドの各々が、IRESまたは自己切断型ペプチドによって隔てられている、実施形態47に記載の操作された細胞。
【0857】
49.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47である、実施形態47~48のいずれかに記載の操作された細胞。
【0858】
50.前記マルチシストロン性ベクターの各ポリヌクレオチドが、同じプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態47~49のいずれかに記載の操作された細胞。
【0859】
51.前記マルチシストロン性ベクターが、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態47~50のいずれかに記載の操作された細胞。
【0860】
52.前記マルチシストロン性ベクターが、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態47~50のいずれかに記載の操作された細胞。
【0861】
53.前記マルチシストロン性ベクターが、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含む、実施形態51または実施形態52に記載の操作された細胞。
【0862】
54.前記マルチシストロン性ベクターが、第1の導入遺伝子であり、前記操作された細胞が、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む別個の導入遺伝子を含む、実施形態51または実施形態52に記載の操作された細胞。
【0863】
55.前記操作された細胞が、第1の導入遺伝子及び第2の導入遺伝子を含み、
前記第1の導入遺伝子及び前記第2の導入遺伝子が各々、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドからなる群から選択される1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドを含み、
前記第1の導入遺伝子及び前記第2の導入遺伝子が、モノシストロン性またはマルチシストロン性ベクターである、実施形態1~54のいずれかに記載の操作された細胞。
【0864】
56.前記プロモーターが、構成的プロモーターである、実施形態41~55のいずれかに記載の操作された細胞。
【0865】
57.前記プロモーターが、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びUBCプロモーターからなる群から選択される、実施形態50~56のいずれかに記載の操作された細胞。
【0866】
58.CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド及び/またはCD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、前記操作された細胞のゲノム内に組み込まれる、実施形態33~57のいずれかに記載の操作された細胞。
【0867】
59.CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれる、実施形態34~58のいずれかに記載の操作された細胞。
【0868】
60.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれる、実施形態43~59のいずれかに記載の操作された細胞。
【0869】
61.前記組み込みが、前記操作された細胞の前記ゲノム内への非標的化挿入によるものであり、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入による、実施形態58~60のいずれかに記載の操作された細胞。
【0870】
62.前記組み込みが、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によるものである、実施形態59または実施形態60に記載の操作された細胞。
【0871】
63.前記標的ゲノム遺伝子座が、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座、CD142遺伝子座、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子座、ROSA26遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される、実施形態62に記載の操作された細胞。
【0872】
64.前記標的ゲノム遺伝子座が、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、TAP1遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、TRBC遺伝子座、またはセーフハーバー遺伝子座である、実施形態62または実施形態63に記載の操作された細胞。
【0873】
65.前記標的ゲノム遺伝子座が、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子座、及びROSA26遺伝子座からなる群から選択される、実施形態62または実施形態63に記載の操作された細胞。
【0874】
66.前記セーフハーバー遺伝子座が、AAVS1、ABO、CCR5、CLYBL、CXCR4、F3、FUT1、HMGB1、KDM5D、LRP1、MICA、MICB、RHD、ROSA26、及びSHS231遺伝子座からなる群から選択される、実施形態64に記載の操作された細胞。
【0875】
67.CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、第4の標的ゲノム遺伝子座内に組み込まれる、実施形態55~66のいずれかに記載の操作された細胞。
【0876】
68.第1の標的ゲノム遺伝子座、第2の標的ゲノム遺伝子座、及び第3の標的ゲノム遺伝子座のうちの少なくとも2つが、同じ遺伝子座である、実施形態55~67に記載の操作された細胞。
【0877】
69.前記第1の標的ゲノム遺伝子座、前記第2の標的ゲノム遺伝子座、前記第3の標的ゲノム遺伝子座、及び前記第4の標的ゲノム遺伝子座のうちの少なくとも2つが、同じ遺伝子座である、実施形態67に記載の操作された細胞。
【0878】
70.前記第1の標的ゲノム遺伝子座、前記第2の標的ゲノム遺伝子座、及び前記第3の標的ゲノム遺伝子座が、同じ遺伝子座である、実施形態55~69のいずれかに記載の操作された細胞。
【0879】
71.前記第1の標的ゲノム遺伝子座、前記第2の標的ゲノム遺伝子座、前記第3の標的ゲノム遺伝子座、及び前記第4の標的ゲノム遺伝子座が、同じ遺伝子座である、実施形態69に記載の操作された細胞。
【0880】
72.前記第1の標的ゲノム遺伝子座、前記第2の標的ゲノム遺伝子座、及び前記第3の標的ゲノム遺伝子座の各々が、異なる遺伝子座である、実施形態55~67に記載の操作された細胞。
【0881】
73.前記第1の標的ゲノム遺伝子座、前記第2の標的ゲノム遺伝子座、前記第3の標的ゲノム遺伝子座、及び前記第4の標的ゲノム遺伝子座が、異なる遺伝子座である、実施形態72に記載の操作された細胞。
【0882】
74.1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する前記改変が、1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する、実施形態1~25及び27~73のいずれかに記載の操作された細胞。
【0883】
75.1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する前記改変が、B2Mの低減された発現を含む、実施形態1~25及び27~73のいずれかに記載の操作された細胞。
【0884】
76.1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する前記改変が、B2Mの低減されたタンパク質発現を含む、実施形態75に記載の操作された細胞。
【0885】
77.前記改変が、B2M遺伝子活性を排除する、実施形態75または実施形態76に記載の操作された細胞。
【0886】
78.前記改変が、前記B2M遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む、実施形態75~77のいずれかに記載の操作された細胞。
【0887】
79.前記改変が、前記細胞における全てのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む、実施形態75~78のいずれかに記載の操作された細胞。
【0888】
80.前記不活性化または前記破壊が、前記B2M遺伝子におけるインデルを含む、実施形態78または実施形態79に記載の操作された細胞。
【0889】
81.前記改変が、前記B2M遺伝子のフレームシフト変異または連続した一続きのゲノムDNAの欠失である、実施形態75~80のいずれかに記載の操作された細胞。
【0890】
82.前記B2M遺伝子がノックアウトされている、実施形態75~81のいずれかに記載の操作された細胞。
【0891】
83.前記改変が、ゲノム改変タンパク質によるものである、実施形態75~82のいずれかに記載の操作された細胞。
【0892】
84.ゲノム改変タンパク質による前記改変が、CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、または部位特異的標的化要素によるプログラム可能な付加(PASTE)による改変である、実施形態83のいずれかに記載の操作された細胞。
【0893】
85.前記ゲノム改変タンパク質による前記改変が、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集である、実施形態83~84のいずれかに記載の操作された細胞。
【0894】
86.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、前記B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、前記Casが、Cas9またはCas12から選択される、実施形態85に記載の操作された細胞。
【0895】
87.前記ゲノム改変タンパク質による前記改変が、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、Mad7、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、及びCRISPR関連トランスポザーゼからなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質によって実施される、実施形態83~85のいずれかに記載の操作された細胞。
【0896】
88.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位に相補的である標的化ドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、実施形態86に記載の操作された細胞。
【0897】
89.前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、実施形態88に記載の操作された細胞。
【0898】
90.1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する前記改変が、1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する、実施形態1~25及び27~89のいずれかに記載の操作された細胞。
【0899】
91.1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する前記改変が、CIITAの低減された発現を含む、実施形態1~25及び27~89のいずれかに記載の操作された細胞。
【0900】
92.1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する前記改変が、CIITAの低減されたタンパク質発現を含む、実施形態91に記載の操作された細胞。
【0901】
93.前記改変が、CIITA遺伝子活性を排除する、実施形態91または実施形態92に記載の操作された細胞。
【0902】
94.前記改変が、前記CIITA遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む、実施形態91~93のいずれかに記載の操作された細胞。
【0903】
95.前記改変が、前記細胞における全てのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む、実施形態91~94のいずれかに記載の操作された細胞。
【0904】
96.前記不活性化または前記破壊が、前記CIITA遺伝子におけるインデルを含む、実施形態94または実施形態95に記載の操作された細胞。
【0905】
97.前記改変が、前記CIITA遺伝子のフレームシフト変異または連続した一続きのゲノムDNAの欠失である、実施形態91~96のいずれかに記載の操作された細胞。
【0906】
98.CIITA遺伝子がノックアウトされている、実施形態91~97のいずれかに記載の操作された細胞。
【0907】
99.前記操作された細胞が、ヒト細胞または動物細胞であり、任意選択で、前記動物細胞が、ブタ(ブタ類)細胞、ウシ(ウシ類)細胞、またはヒツジ(ヒツジ類)細胞である、実施形態1~98のいずれかに記載の操作された細胞。
【0908】
100.前記改変が、NLRC5、TRAC、TRB、CD142、ABO、CD38、CD52、PCDH11Y、NLGN4Y、及びRHDのうちのいずれか1つまたは複数の発現を低減する、実施形態1~99のいずれかに記載の操作された細胞。
【0909】
101.(i)1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させる、(ii)CD46の発現を増加させる、及び(iii)CD59の発現を増加させる、前記改変
のうちの1つまたは複数が、内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる1つまたは複数の改変を含む、実施形態1~100のいずれかに記載の操作された細胞。
【0910】
102.前記内在性遺伝子が、前記1つもしくは複数の寛容原性因子、CD46、またはCD59をコードする、実施形態101に記載の操作された細胞。
【0911】
103.内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる前記1つまたは複数の改変が、前記遺伝子の内在性プロモーターに対する1つもしくは複数の改変または異種プロモーターの導入を含む、実施形態101または102に記載の操作された細胞。
【0912】
104.前記異種プロモーターが、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びUBCプロモーターからなる群から選択される、実施形態103に記載の操作された細胞。
【0913】
105.ヒト細胞である、実施形態99に記載の操作された細胞。
【0914】
106.幹細胞または前駆細胞に由来する分化細胞である、実施形態1~105のいずれかに記載の操作された細胞。
【0915】
107.前記幹細胞または前駆細胞が、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、内皮幹細胞、上皮幹細胞、脂肪幹細胞、生殖細胞系幹細胞、肺幹細胞、臍帯血幹細胞、多能性幹細胞(PSC)、及び複能性幹細胞からなる群から選択される、実施形態106に記載の操作された細胞。
【0916】
108.多能性幹細胞またはその子孫に由来する分化細胞である、実施形態1~106のいずれかに記載の操作された細胞。
【0917】
109.前記多能性幹細胞が、人工多能性幹細胞である、実施形態108に記載の操作された細胞。
【0918】
110.ドナー対象から単離された初代細胞である、実施形態1~105のいずれかに記載の操作された細胞。
【0919】
111.前記ドナー対象が、健常であるか、または前記個々のドナーから前記ドナーの試料が入手される時点で疾患もしくは病態を有することが疑われない、実施形態110に記載の操作された細胞。
【0920】
112.島細胞、ベータ島細胞、膵島細胞、免疫細胞、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ細胞、内皮細胞、筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、ドーパミン作動性ニューロン、網膜色素上皮細胞、視細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心臓細胞、幹細胞、造血幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、間葉系幹細胞(MSC)、胚性幹細胞(ESC)、多能性幹細胞(PSC)、及び血液細胞からなる群から選択される、実施形態1~111のいずれかに記載の操作された細胞。
【0921】
113.内皮細胞である、実施形態1~111のいずれかに記載の操作された細胞。
【0922】
114.上皮細胞である、実施形態1~111のいずれかに記載の操作された細胞。
【0923】
115.T細胞である、実施形態112に記載の操作された細胞。
【0924】
116.NK細胞である、実施形態112に記載の操作された細胞。
【0925】
117.キメラ抗原受容体(CAR)を含む、実施形態115または実施形態116に記載の操作された細胞。
【0926】
118.幹細胞である、実施形態1~105のいずれかに記載の操作された細胞。
【0927】
119.造血幹細胞(HSC)である、実施形態1~105のいずれかに記載の操作された細胞。
【0928】
120.多能性幹細胞である、実施形態1~105のいずれかに記載の操作された細胞。
【0929】
121.人工多能性幹細胞である、実施形態1~105のいずれかに記載の操作された細胞。
【0930】
122.胚性幹細胞である、実施形態1~105のいずれかに記載の操作された細胞。
【0931】
123.前記細胞が、ABO式血液型Oである、実施形態1~122のいずれかに記載の操作された細胞。
【0932】
124.前記細胞が、機能的ABO Aアレル及び/または機能的ABO Bアレルを含む、実施形態1~122のいずれかに記載の操作された細胞。
【0933】
125.前記細胞が、アカゲザル因子陰性(Rh-)である、実施形態1~124のいずれかに記載の操作された細胞。
【0934】
126.前記細胞が、アカゲザル因子陽性(Rh+)である、実施形態1~124のいずれかに記載の操作された細胞。
【0935】
127.操作された細胞を生成する方法であって、
a.前記細胞におけるMHCクラスI及び/またはMHCクラスIIの発現を低減または排除する工程と、
b.前記細胞における1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させる工程と、
c.前記細胞におけるCD46の発現を増加させる工程と、
d.前記細胞におけるCD59の発現を増加させる工程と
を含む、前記方法。
【0936】
128.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、及びSERPINB9、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態127に記載の方法。
【0937】
129.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態128に記載の方法。
【0938】
130.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、A20/TNFAIP3、C1-インヒビター、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD47、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1、Serpinb9、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の寛容原性因子を含む、実施形態127に記載の方法。
【0939】
131.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47を含む、実施形態127~130のいずれかに記載の方法。
【0940】
132.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-Eを含む、実施形態127~131のいずれかに記載の方法。
【0941】
133.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24を含む、実施形態127~132のいずれかに記載の方法。
【0942】
134.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、PDL1を含む、実施形態127~133のいずれかに記載の方法。
【0943】
135.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD55を含む、実施形態127~134のいずれかに記載の方法。
【0944】
136.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CR1を含む、実施形態127~135のいずれかに記載の方法。
【0945】
137.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、MANFを含む、実施形態127~136のいずれかに記載の方法。
【0946】
138.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、A20/TNFAIP3を含む、実施形態127~137のいずれかに記載の方法。
【0947】
139.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E及びCD47を含む、実施形態127~138のいずれかに記載の方法。
【0948】
140.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24、CD47、及びPDL1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24、CD47、及びPDL1を含む、実施形態127~139のいずれかに記載の方法。
【0949】
141.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、及びPDL1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、及びPDL1を含む、実施形態127~140のいずれかに記載の方法。
【0950】
142.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、実施形態127~141のいずれかに記載の方法。
【0951】
143.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、実施形態127~142のいずれかに記載の方法。
【0952】
144.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、実施形態127~143のいずれかに記載の方法。
【0953】
145.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E及びPDL1を含む、実施形態127~144のいずれかに記載の方法。
【0954】
146.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びA20/TNFAIPからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びA20/TNFAIPを含む、実施形態127~145のいずれかに記載の方法。
【0955】
147.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びMANFからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びMANFを含む、実施形態127~146のいずれかに記載の方法。
【0956】
148.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP、及びMANFからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP、及びMANFを含む、実施形態127~147のいずれかに記載の方法。
【0957】
149.1つまたは複数のMHCクラスI分子及び1つまたは複数のMHCクラスII分子の発現を低減または排除する工程
を含む、実施形態127~148のいずれかに記載の方法。
【0958】
150.(i)1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させる工程、(ii)CD46の発現を増加させる工程、及び(iii)CD59の発現を増加させる工程のうちの1つまたは複数が、プロモーターを介して内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる段階を含む、実施形態127~149のいずれかに記載の方法。
【0959】
151.前記内在性遺伝子が、前記1つもしくは複数の寛容原性因子、CD46、またはCD59をコードする、実施形態150に記載の方法。
【0960】
152.プロモーターを介して前記内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる段階が、前記遺伝子の内在性プロモーターを改変することまたは異種プロモーターを導入することを含む、実施形態150または151に記載の方法。
【0961】
153.前記異種プロモーターが、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びUBCプロモーターからなる群から選択される、実施形態152に記載の方法。
【0962】
154.操作された細胞を生成する方法であって、
a.前記細胞におけるCCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200、及びMFGE8の発現を増加させる工程と、
b.前記細胞におけるCD46の発現を増加させる工程と、
c.前記細胞におけるCD59の発現を増加させる工程と
を含む、前記方法。
【0963】
155.前記細胞におけるCD55の発現を増加させる工程をさらに含む、実施形態127~154のいずれかに記載の方法。
【0964】
156.前記低減された発現が、低減された表面発現を含み、及び/または前記増加した発現が、増加した表面発現を含み、任意選択で、前記低減された表面発現が、検出可能な表面発現を何ら含まない、実施形態127~155のいずれかに記載の方法。
【0965】
157.CD46及びCD59の発現を増加させる工程が、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを前記細胞に導入する段階を含む、実施形態127~156のいずれかに記載の方法。
【0966】
158.CD55の発現を増加させる工程が、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを前記細胞に導入する段階を含む、実施形態155~157のいずれかに記載の方法。
【0967】
159.(i)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200、及びMFGE8の発現を増加させる工程、(ii)CD46の発現を増加させる工程、ならびに(iii)CD59の発現を増加させる工程のうちの1つまたは複数が、内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる段階を含む、実施形態154~158のいずれかに記載の方法。
【0968】
160.前記内在性遺伝子が、前記CCL21、前記PD-L1、前記FASL、前記SERPINB9、前記HLA-G、前記CD47、前記CD200、前記MFGE8、前記CD46、または前記CD59をコードする、実施形態159に記載の方法。
【0969】
161.プロモーターを介して前記内在性遺伝子の遺伝子活性を増加させる段階が、前記遺伝子の内在性プロモーターもしくはエンハンサーを改変することまたは異種プロモーターを導入することを含む、実施形態159または160に記載の方法。
【0970】
162.前記異種プロモーターが、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びUBCプロモーターからなる群から選択される、実施形態161に記載の方法。
【0971】
163.CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す、実施形態157または実施形態158に記載の方法。
【0972】
164.CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号3に記載の配列をコードする、実施形態163に記載の方法。
【0973】
165.CD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸の配列をコードし、補体阻害活性を示す、実施形態157~164のいずれかに記載の方法。
【0974】
166.CD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号5に記載の配列をコードする、実施形態165に記載の方法。
【0975】
167.CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有する配列をコードし、補体阻害活性を示す、実施形態158~166のいずれかに記載の方法。
【0976】
168.CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号8に記載の配列をコードする、実施形態167に記載の方法。
【0977】
169.CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが各々、プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態157~168のいずれかに記載の方法。
【0978】
170.CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態158~169のいずれかに記載の方法。
【0979】
171.CD47の発現を増加させる前記改変が、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態159~170のいずれかに記載の方法。
【0980】
172.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性を有する配列をコードし、前記操作された細胞の自然免疫による殺傷を低減する、実施形態171に記載の方法。
【0981】
173.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、配列番号1に記載の配列をコードする、実施形態172に記載の方法。
【0982】
174.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態171~173のいずれかに記載の方法。
【0983】
175.CD47をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドからなる群から選択される2つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクターを、導入する工程
を含む、実施形態159~174のいずれかに記載の方法。
【0984】
176.前記ポリヌクレオチドの各々が、IRESまたは自己切断型ペプチドによって隔てられている、実施形態175に記載の方法。
【0985】
177.前記マルチシストロン性ベクターの各ポリヌクレオチドが、同じプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態175または実施形態176に記載の方法。
【0986】
178.前記マルチシストロン性ベクターが、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態175~177のいずれかに記載の方法。
【0987】
179.前記マルチシストロン性ベクターが、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及びCD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態175~177のいずれかに記載の方法。
【0988】
180.前記マルチシストロン性ベクターが、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含む、実施形態178または実施形態179に記載の方法。
【0989】
181.前記操作された細胞が、CD47をコードするポリヌクレオチドを含む別個の導入遺伝子を含む、実施形態178または実施形態179に記載の方法。
【0990】
182.CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド及び/またはCD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれる、実施形態157~181のいずれかに記載の方法。
【0991】
183.CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれる、実施形態157~182のいずれかに記載の方法。
【0992】
184.CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドが、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれる、実施形態171~183のいずれかに記載の方法。
【0993】
185.前記組み込みが、前記操作された細胞の前記ゲノム内への非標的化挿入によるものであり、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入による、実施形態182~184のいずれかに記載の方法。
【0994】
186.前記組み込みが、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によるものであり、任意選択で、前記標的化挿入が、相同性指向修復を用いたヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、実施形態182~184のいずれかに記載の方法。
【0995】
187.前記標的ゲノム遺伝子座が、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座、CD142遺伝子座、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子座、ROSA26遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される、実施形態186に記載の方法。
【0996】
188.前記標的ゲノム遺伝子座が、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、TAP1遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座、TRBC遺伝子座、またはセーフハーバー遺伝子座である、実施形態186に記載の方法。
【0997】
189.前記標的ゲノム遺伝子座が、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても公知の)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231遺伝子座、CLYBL遺伝子座、及びROSA26遺伝子座からなる群から選択される、実施形態186に記載の方法。
【0998】
190.前記セーフハーバー遺伝子座が、AAVS1、ABO、CCR5、CLYBL、CXCR4、F3、FUT1、HMGB1、KDM5D、LRP1、MICA、MICB、RHD、ROSA26、及びSHS231遺伝子座からなる群から選択される、実施形態188に記載の方法。
【0999】
191.前記改変が、CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、または部位特異的標的化要素によるプログラム可能な付加(PASTE)によるものである、実施形態128~190のいずれかに記載の方法。
【1000】
192.前記改変が、ゲノム改変タンパク質によるものであり、任意選択で、前記改変が、CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、部位特異的標的化要素によるプログラム可能な付加(PASTE)、またはヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、実施形態128~191のいずれかに記載の方法。
【1001】
193.前記ゲノム改変タンパク質が、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、Mad7、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、及びCRISPR関連トランスポザーゼからなる群から選択される、実施形態191または192に記載の方法。
【1002】
194.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、前記標的ゲノム遺伝子座を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、前記Casが、Cas9またはCas12から選択される、実施形態186~193のいずれかに記載の方法。
【1003】
195.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記標的ゲノム遺伝子座の標的配列に相補的である標的化ドメインを有するガイドRNA(gRNA)、ならびにCD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、CD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、及び/またはCD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドを含む相同性指向修復鋳型を含む、実施形態194に記載の方法。
【1004】
196.前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、実施形態195に記載の方法。
【1005】
197.MHCクラスIの発現を低減する工程が、1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する改変を導入する段階を含む、実施形態127~196のいずれかに記載の方法。
【1006】
198.1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、B2Mの低減された発現を含む、実施形態197に記載の方法。
【1007】
199.1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、B2Mの低減されたタンパク質発現を含む、実施形態198に記載の方法。
【1008】
200.1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、B2M遺伝子活性を低減する、実施形態198または実施形態199に記載の方法。
【1009】
201.1つまたは複数のMHCクラスI分子の発現を低減する前記改変が、前記B2M遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む、実施形態197~200のいずれかに記載の方法。
【1010】
202.1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、前記細胞における全てのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む、実施形態197~201のいずれかに記載の方法。
【1011】
203.前記不活性化または前記破壊が、前記B2M遺伝子におけるインデル、または前記B2M遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む、実施形態201または実施形態202に記載の方法。
【1012】
204.前記インデルが、フレームシフト変異である、実施形態203に記載の方法。
【1013】
205.前記B2M遺伝子がノックアウトされている、実施形態197~204のいずれかに記載の方法。
【1014】
206.1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、ゲノム改変タンパク質によるものであり、任意選択で、1つまたは複数のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、実施形態197~205のいずれかに記載の方法。
【1015】
207.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、前記B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、前記Casが、Cas9またはCas12から選択される、実施形態206に記載の方法。
【1016】
208.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位に相補的である標的化ドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、実施形態207に記載の方法。
【1017】
209.前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記gRNA及びCasタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、実施形態208に記載の方法。
【1018】
210.MHCクラスIIの発現を低減する工程が、1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する改変を導入する段階を含む、実施形態127~209のいずれかに記載の方法。
【1019】
211.1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、CIITAの低減された発現を含む、実施形態210に記載の方法。
【1020】
212.1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、CIITAの低減されたタンパク質発現を含む、実施形態211に記載の方法。
【1021】
213.1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、CIITA遺伝子活性を低減する、実施形態211または実施形態212に記載の方法。
【1022】
214.1つまたは複数のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低減する前記改変が、前記CIITA遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊を含む、実施形態211~213のいずれかに記載の方法。
【1023】
215.前記改変が、前記細胞における全てのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む、実施形態211~214のいずれかに記載の方法。
【1024】
216.前記不活性化または前記破壊が、前記CIITA遺伝子におけるインデル、または前記CIITA遺伝子の連続した一続きのゲノムDNAの欠失を含む、実施形態214または実施形態215に記載の方法。
【1025】
217.前記インデルが、フレームシフト変異である、実施形態216に記載の方法。
【1026】
218.前記CIITA遺伝子がノックアウトされている、実施形態211~217のいずれかに記載の方法。
【1027】
219.前記細胞が、ヒト細胞または動物細胞であり、任意選択で、前記動物細胞が、ブタ(ブタ類)細胞、ウシ(ウシ類)細胞、またはヒツジ(ヒツジ類)細胞である、実施形態127~218のいずれかに記載の方法。
【1028】
220.前記操作された細胞が、ヒト細胞である、実施形態127~219のいずれかに記載の方法。
【1029】
221.前記細胞が、ドナー対象から単離された初代細胞である、実施形態127~220のいずれかに記載の方法。
【1030】
222.前記細胞が、多能性幹細胞であり、前記操作された細胞が、前記多能性幹細胞に由来する分化細胞であり、前記方法が、前記多能性幹細胞を分化させる工程をさらに含む、実施形態127~220のいずれかに記載の方法。
【1031】
223.前記多能性幹細胞が、人工多能性幹細胞である、実施形態222に記載の方法。
【1032】
224.前記操作された細胞が、島細胞、ベータ島細胞、膵島細胞、免疫細胞、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ細胞、内皮細胞、筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、ドーパミン作動性ニューロン、網膜色素上皮細胞、視細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心臓細胞、幹細胞、造血幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、間葉系幹細胞(MSC)、胚性幹細胞(ESC)、多能性幹細胞(PSC)、及び血液細胞からなる群から選択される、実施形態127~223のいずれかに記載の方法。
【1033】
225.実施形態127~224のいずれかに記載の方法に従って生産される、操作された細胞。
【1034】
226.前記操作された細胞、または前記操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞が、患者への投与時にNK細胞媒介性細胞傷害を回避することができる、実施形態1~126及び225のいずれかに記載の操作された細胞。
【1035】
227.前記操作された細胞、または前記操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞が、患者への投与時に成熟NK細胞による細胞溶解から保護される、実施形態1~126及び225~226のいずれかに記載の操作された細胞。
【1036】
228.前記操作された細胞、または前記操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞が、患者への投与時に前記細胞に対する免疫応答を誘導しない、実施形態1~126及び225~226のいずれかに記載の操作された細胞。
【1037】
229.前記操作された細胞、または前記操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞が、患者への投与時に前記細胞に対する全身性炎症応答を誘導しない、実施形態1~126及び225~228のいずれかに記載の操作された細胞。
【1038】
230.前記操作された細胞、または前記操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞が、患者への投与時に前記細胞に対する局所炎症応答を誘導しない、実施形態1~126及び225~229のいずれかに記載の操作された細胞。
【1039】
231.前記操作された細胞、または前記操作された細胞に由来する子孫もしくは分化細胞が、患者への投与時に補体経路活性化を誘導しない、実施形態1~126及び225~230のいずれかに記載の操作された細胞。
【1040】
232.前記細胞が、患者への投与時に生着して機能する能力を保持する、実施形態1~126及び225~231のいずれかに記載の操作された細胞。
【1041】
233.実施形態1~126及び225~232のいずれかに記載の操作された細胞を複数含む、細胞の集団。
【1042】
234.前記集団中の細胞の少なくとも約30%が、実施形態1~126のいずれかに記載の操作された細胞を含む、実施形態233に記載の集団。
【1043】
235.前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、前記改変を含む、実施形態233に記載の集団。
【1044】
236.前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態233または235に記載の集団。
【1045】
237.前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、CD46をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態233~236のいずれかに記載の集団。
【1046】
238.前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、CD59をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態233~237のいずれかに記載の集団。
【1047】
239.前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態233~238のいずれかに記載の集団。
【1048】
240.前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、前記改変を含まない細胞と比べて低減された1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を含む、実施形態233~239のいずれかに記載の集団。
【1049】
241.前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、前記改変を含まない細胞と比べて低減されたB2M及び/またはCIITAの発現を含む、実施形態233~240のいずれかに記載の集団。
【1050】
242.前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、前記改変を含まない細胞と比べて低減されたB2M及びCIITAの発現を含む、実施形態233~240のいずれかに記載の集団。
【1051】
243.前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、B2M遺伝子の両方のアレルを不活性化する1つまたは複数の変化を含む、実施形態233~242のいずれかに記載の集団。
【1052】
244.前記集団中の細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または99.99%が、CIITA遺伝子の両方のアレルを不活性化する1つまたは複数の変化を含む、実施形態233~243のいずれかに記載の集団。
【1053】
245.実施形態233~244のいずれかに記載の集団を含む、組成物。
【1054】
246.操作された細胞の集団を含む組成物であって、前記操作された細胞が、
(i)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチド、
(ii)CD46をコードする外因性ポリヌクレオチド、
(iii)CD59をコードする外因性ポリヌクレオチド、及び
(iv)B2M遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊
を含む、前記組成物。
【1055】
247.前記操作された細胞が、CIITA遺伝子の両方のアレルの不活性化または破壊をさらに含む、実施形態246に記載の組成物。
【1056】
248.前記操作された細胞が、CD55をコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含む、実施形態246または247に記載の組成物。
【1057】
249.前記操作された細胞が、
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、CD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、及びCD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクター
を含む、実施形態246~248のいずれかに記載の組成物。
【1058】
250.前記操作された細胞が、
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドを含む第1の導入遺伝子、ならびにCD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド及びCD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクター
を含む、実施形態246~248のいずれかに記載の組成物。
【1059】
251.前記操作された細胞が、
CD47をコードする前記外因性ポリヌクレオチドを含む第1の導入遺伝子、ならびにCD46をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、CD59をコードする前記外因性ポリヌクレオチド、及びCD55をコードする前記外因性ポリヌクレオチドを含む、マルチシストロン性ベクター
を含む、実施形態246~248のいずれかに記載の組成物。
【1060】
252.前記マルチシストロン性ベクターの前記ポリヌクレオチドの各々が、IRESまたは自己切断型ペプチドによって隔てられている、実施形態248~251のいずれかに記載の組成物。
【1061】
253.前記導入遺伝子(複数可)が、相同性指向修復を用いたヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によって標的ゲノム遺伝子座部位にて導入される、実施形態248~252のいずれかに記載の組成物。
【1062】
254.前記不活性化または前記破壊が、ゲノム改変タンパク質によるものであり、任意選択で、前記不活性化または前記破壊が、ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、実施形態246~252のいずれかに記載の組成物。
【1063】
255.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、前記標的ゲノム遺伝子座を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意選択で、前記Casが、Cas9またはCas12から選択される、実施形態245~254のいずれかに記載の組成物。
【1064】
256.前記ヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集が、Cas9またはCas12から選択されるCasヌクレアーゼによるものである、実施形態255に記載の組成物。
【1065】
257.薬学的組成物である、実施形態245~254のいずれかに記載の組成物。
【1066】
258.薬学的に許容される賦形剤を含む、実施形態257に記載の組成物。
【1067】
259.凍結保護剤を含む無血清凍結保存培地中で製剤化されている、実施形態245~254のいずれかに記載の組成物。
【1068】
260.前記凍結保護剤が、DMSOであり、前記凍結保存培地が、5%~10%のDMSO(v/v)である、実施形態259に記載の組成物。
【1069】
261.前記凍結保護剤が、10%のDMSO(v/v)であるか、または約10%のDMSO(v/v)である、実施形態259または260に記載の組成物。
【1070】
262.滅菌されている、実施形態245~261のいずれかに記載の組成物。
【1071】
263.実施形態245~261のいずれかに記載の組成物を含む、容器。
【1072】
264.滅菌バッグである、実施形態263に記載の容器。
【1073】
265.前記バッグが、凍結保存対応バッグである、実施形態264に記載の滅菌バッグ。
【1074】
266.その必要のある患者において疾患、病態、または細胞欠陥を処置する方法であって、前記患者に、有効量の実施形態233~244のいずれかに記載の集団または実施形態245~262のいずれかに記載の組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【1075】
267.前記集団が、内皮細胞を含む、実施形態266に記載の方法。
【1076】
268.前記病態または前記疾患が、糖尿病、がん、血管新生障害、眼疾患、甲状腺疾患、皮膚疾患、及び肝臓疾患からなる群から選択される、実施形態266または実施形態267に記載の方法。
【1077】
269.前記細胞欠陥が、糖尿病に関連するか、または前記疾患もしくは前記病態が、糖尿病であり、任意選択で前記糖尿病が、I型糖尿病である、実施形態266に記載の方法。
【1078】
270.前記細胞の集団が、ベータ島細胞を含めた島細胞の集団である、実施形態269に記載の方法。
【1079】
271.前記島細胞が、島前駆細胞、未成熟島細胞、及び成熟島細胞からなる群から選択される、実施形態270に記載の方法。
【1080】
272.前記細胞欠陥が、血管病態もしくは疾患に関連するか、または前記疾患もしくは前記病態が、血管病態もしくは疾患である、実施形態266に記載の方法。
【1081】
273.前記細胞の集団が、内皮細胞の集団である、実施形態272に記載の方法。
【1082】
274.前記細胞欠陥が、自己免疫性甲状腺炎に関連するか、または前記疾患もしくは前記病態が、自己免疫性甲状腺炎である、実施形態266に記載の方法。
【1083】
275.前記細胞の集団が、甲状腺前駆細胞の集団である、実施形態274に記載の方法。
【1084】
276.前記細胞欠陥が、肝臓疾患に関連するか、または前記疾患が、肝臓疾患である、実施形態266に記載の方法。
【1085】
277.前記肝臓疾患が、前記肝臓の肝硬変を含む、実施形態276に記載の方法。
【1086】
278.前記細胞の集団が、肝細胞または肝前駆細胞の集団である、実施形態276または277に記載の方法。
【1087】
279.前記細胞欠陥が、角膜疾患に関連するか、または前記疾患が、角膜疾患である、実施形態266に記載の方法。
【1088】
280.前記角膜疾患が、フックスジストロフィーまたは先天性遺伝性内皮ジストロフィーである、実施形態279に記載の方法。
【1089】
281.前記細胞の集団が、角膜内皮前駆細胞または角膜内皮細胞の集団である、実施形態279または280に記載の方法。
【1090】
282.前記細胞欠陥が、腎臓疾患に関連するか、または前記疾患が、腎臓疾患である、実施形態266に記載の方法。
【1091】
283.前記細胞の集団が、腎前駆体細胞または腎細胞の集団である、実施形態282に記載の方法。
【1092】
284.前記細胞欠陥が、がんに関連するか、または前記疾患が、がんである、実施形態266に記載の方法。
【1093】
285.前記がんが、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、及び膀胱癌からなる群から選択される、実施形態284に記載の方法。
【1094】
286.前記細胞の集団が、T細胞、NK細胞、またはNKT細胞の集団である、実施形態284または285に記載の方法。
【1095】
287.前記細胞欠陥が、造血疾患もしくは障害に関連するか、または前記疾患もしくは前記病態が、造血疾患もしくは障害である、実施形態266に記載の方法。
【1096】
288.前記造血疾患または障害が、骨髄異形成、再生不良性貧血、ファンコニ貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、鎌状赤血球症、ダイアモンド・ブラックファン貧血、シャックマン・ダイアモンド障害、コストマン症候群、慢性肉芽腫性疾患、副腎白質ジストロフィー、白血球接着不全症、血友病、サラセミア、ベータサラセミア、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性(骨髄性)白血病(AML)、成人リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、若年性慢性骨髄性白血病(CML)、及び若年性骨髄単球性白血病(JMML)等の白血病、重症複合免疫不全症(SCID)、X連鎖重症複合免疫不全症、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、慢性肉芽腫性疾患、チェディアック・東症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、またはAIDSである、実施形態287に記載の方法。
【1097】
289.前記細胞欠陥が、白血病もしくは骨髄腫に関連するか、または前記疾患もしくは前記病態が、白血病もしくは骨髄腫である、実施形態266に記載の方法。
【1098】
290.前記細胞欠陥が、自己免疫疾患もしくは病態に関連するか、または前記疾患もしくは前記病態が、自己免疫疾患または病態である、実施形態266に記載の方法。
【1099】
291.前記自己免疫疾患または病態が、急性散在性脳脊髄炎、急性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗合成酵素症候群、アトピー性アレルギー、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ球増殖性症候群、自己免疫性末梢性ニューロパチー、自己免疫性膵炎、多腺性自己免疫症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ブドウ膜炎、バロー病、バロー同心円硬化症、ベーチェット症候群、バージャー病、ビッカースタッフ型脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性再発性多巣性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体第2成分欠損症、頭蓋動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型真性糖尿病、びまん皮膚硬化型全身性強皮症、ドレスラー症候群、円板状エリテマトーデス、湿疹、付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維化性肺胞炎、胃炎、胃腸類天疱瘡、巨細胞性動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症性脱髄性疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、炎症性脱髄性多発ニューロパチー、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎、若年性関節リウマチ、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病(LAD)、ルー・ゲーリッグ病、ルポイド肝炎、エリテマトーデス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合性結合組織病、斑状強皮症、ムッカ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、視神経脊髄炎、ニューロミオトニア、眼型瘢痕性類天疱瘡、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、オルド甲状腺炎、回帰性リウマチ、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリーロンバーグ症候群、パーソネイジ・ターナー症候群、扁平部炎、天疱瘡、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発性動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症ニューロパチー、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発軟骨炎、ライター症候群、レストレスレッグス症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スティル病、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、分類不能結合組織病、分類不能脊椎関節症、血管炎、白斑、またはウェゲナー肉芽腫症である、実施形態290に記載の方法。
【1100】
292.前記細胞の集団が、造血幹細胞(HSC)及び/またはその派生物を含む集団である、実施形態287~291のいずれかに記載の方法。
【1101】
293.前記細胞欠陥が、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、神経変性疾患もしくは病態、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、うつ病、脳卒中後の神経精神障害(neuropsychiatric disorder stroke)、もしくは筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関連するか、または前記疾患もしくは前記病態が、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、神経変性疾患もしくは病態、注意欠陥多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、うつ病、脳卒中後の神経精神障害、もしくは筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、実施形態266に記載の方法。
【1102】
294.前記細胞の集団が、神経細胞及び/またはグリア細胞を含む集団である、実施形態293に記載の方法。
【1103】
295.前記細胞が、投与前に増殖させられ、凍結保存される、実施形態266~294のいずれかに記載の方法。
【1104】
296.前記集団を投与する工程が、前記集団の静脈内注射、筋肉内注射、血管内注射、または移植を含む、実施形態266~295のいずれかに記載の方法。
【1105】
297.前記集団が、血管内注射または筋肉内注射を介して移植される、実施形態296に記載の方法。
【1106】
298.前記集団がドナー対象に由来し、前記ドナーのHLA型が、前記患者のHLA型と一致しない、実施形態226~297のいずれかに記載の方法。
【1107】
299.前記集団がドナーに由来し、前記ドナーの血液型が、前記患者の血液型と一致せず、前記ドナーの血液型がO型でない、実施形態226~298のいずれかに記載の方法。
【1108】
300.前記集団がドナーに由来し、前記ドナーの血液型がアカゲザル因子(Rh)陽性であり、前記患者の血液型がRh陰性である、実施形態226~299のいずれかに記載の方法。
【1109】
301.前記患者の血清が、Rhに対する抗体を含む、実施形態226~300のいずれかに記載の方法。
【1110】
302.前記集団がヒト細胞集団であり、前記患者がヒト患者である、実施形態226~301のいずれかに記載の方法。
【1111】
303.前記細胞の集団が、機能的ABO Aアレル及び/または機能的ABO Bアレルを含む、実施形態226~302のいずれかに記載の方法。
【1112】
304.前記細胞の集団が、ABO A型抗原を提示し、前記患者の血清が、抗A抗体を含む、実施形態303に記載の方法。
【1113】
305.前記細胞の集団が、ABO B型抗原を提示し、前記患者の血清が、抗B抗体を含む、実施形態303に記載の方法。
【1114】
306.前記細胞の集団が、ABO A型抗原及びB型抗原を提示し、前記患者の血清が、抗A抗体及び/または抗B抗体を含む、実施形態303に記載の方法。
【1115】
307.前記細胞の集団が、Rh因子を発現し、前記患者の血清が、抗Rh抗体を含む、実施形態266~306のいずれかに記載の方法。
【1116】
308.疾患、病態、または細胞欠陥を処置するために患者に投与するための操作された細胞の集団を含む細胞療法を選択する方法であって、
前記方法が、
前記患者の血液が、1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及び/またはアカゲザル(Rh)因子型との、ABO式血液型不適合またはRh因子不適合を有するかどうかを決定する工程
を含み、
前記1セットの集団が、
(i)低免疫原性改変の基本セットを含むが、CD46及びCD59の発現を増加させる改変を含まない、第1の操作された細胞の集団、ならびに
(ii)前記低免疫原性改変の基本セットを含み、CD46及びCD59の発現を増加させる改変をさらに含む、第2の操作された細胞の集団
を含み、
前記増加した発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり;
前記患者の血液型が、前記1セットの集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO式血液型不適合もRh因子不適合も有しない場合、前記方法は、前記患者への投与のための前記第1の操作された細胞の集団を選択する工程を含み、
前記患者の血液型が、前記1セットの集団のABO式血液型及び/またはRh因子型との、ABO式血液型不適合またはRh因子不適合を有する場合、前記方法は、前記患者への投与のための前記第2の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、
前記方法。
【1117】
309.その必要のある患者において疾患、病態、または細胞欠陥を処置する方法であって、前記患者に、有効量の操作された細胞の集団を投与する工程を含み、
前記患者の血液が、1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及び/またはアカゲザル(Rh)因子型との、ABO式血液型不適合またはRh因子不適合を有するかどうかを決定する工程
を含む方法によって、前記患者が、処置に対する選択を受け、
前記1セットの操作された細胞の集団が、
(i)低免疫原性改変の基本セットを含むが、CD46及びCD59の発現を増加させる改変を含まない、第1の操作された細胞の集団、ならびに
(ii)前記低免疫原性改変の基本セットならびにCD46及びCD59の増加した発現を含む、第2の操作された細胞の集団
を含み、
前記増加した発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものであり;
前記患者の血液型が、前記1セットの集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO式血液型不適合もRh因子不適合も有しない場合、前記方法は、前記患者に前記第1の操作された細胞の集団を投与する工程を含み、
前記患者の血液型が、前記1セットの集団のABO式血液型及び/またはRh因子型との、ABO式血液型不適合またはRh因子不適合を有する場合、前記方法は、前記患者に前記第2の操作された細胞の集団を投与する工程を含む、
前記方法。
【1118】
310.前記低免疫原性改変の基本セットが、
(i)1つまたは複数の寛容原性因子の発現を増加させる、ならびに(ii)1つもしくは複数のMHCクラスI分子及び/または1つもしくは複数のMHCクラスII分子の発現を低減する、改変
を含み、(i)の前記増加した発現及び(ii)の前記低減された発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、実施形態308または実施形態309に記載の方法。
【1119】
311.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1-インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、及びSERPINB9、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態310に記載の方法。
【1120】
312.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200、MFGE8、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態311に記載の方法。
【1121】
313.前記低免疫原性改変の基本セットが、CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200、及びMFGE8の発現を増加させる改変を含み、前記増加した発現が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、実施形態308または実施形態309に記載の方法。
【1122】
314.前記第2の操作された細胞の集団が、実施形態1~126及び225~232のいずれかに記載の操作された細胞を含む集団であるか、または実施形態233~244のいずれかに記載の操作された細胞の集団である、実施形態308~313のいずれかに記載の方法。
【1123】
315.前記1セットの細胞の集団の、前記第1の操作された細胞の集団及び前記第2の操作された細胞の集団が、
同じドナーに由来するか、または
同じ複数のドナーである1よりも多くの前記ドナーからプールされた細胞に由来する、
実施形態308~314のいずれかに記載の方法。
【1124】
316.前記1セットの細胞の集団の、前記第1の操作された細胞の集団及び前記第2の操作された細胞の集団が、同じABO式血液型及びRh因子型のものである、実施形態308~315のいずれかに記載の方法。
【1125】
317.前記患者の血液型が、1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及び/またはアカゲザル(Rh)因子型との、ABO式血液型不適合またはRh因子不適合を有するかどうかを決定する前記工程が、
前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体を含むかどうかを決定する段階、
前記患者の血清がABO式血液型B抗原に対する抗体を含むかどうかを決定する段階、及び/または
前記患者の血液型がアカゲザル(Rh)因子陽性もしくは陰性のどちらであるかを決定する段階
を含む、実施形態308~316のいずれかに記載の方法。
【1126】
318.前記患者の血液型が、前記1セットの操作された細胞の集団の前記ABO式血液型及び前記Rh因子型との血液型適合性を有すると決定され、
(a)(1)前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体を含み、かつABO式血液型B抗原に対する抗体を含まない場合、及び前記患者の血液型がアカゲザル(Rh)因子陰性である場合、ならびに(2)前記1セットの集団の前記細胞がABO式血液型OまたはABO式血液型Bであり、かつRh因子陰性である場合、前記方法は、前記患者への投与のための前記第1の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、あるいは
(b)(1)前記患者の血清がABO式血液型B抗原に対する抗体を含み、ABO式血液型A抗原に対する抗体を含まず、かつ前記患者の血液型がRh因子陰性である場合、及び(2)前記1セットの細胞の集団の前記細胞がABO式血液型OまたはABO式血液型Aであり、かつ前記細胞がRh因子陰性である場合、前記方法は、前記患者への投与のための前記第1の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、あるいは
(c)(1)前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体及びABO式血液型B抗原に対する抗体を含む場合、ならびに(2)前記1セットの細胞の集団の前記細胞がABO式血液型Oの細胞である場合、前記方法は、前記患者への投与のための前記第1の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、あるいは
(d)(1)前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体もABO式血液型B抗原に対する抗体も含まず、かつ前記患者の血液型がRh因子陽性である場合、及び(2)前記1セットの細胞の集団の前記細胞がABO式血液型A、ABO式血液型B、ABO式血液型AB、またはABO式血液型Oの細胞であり、かつRh因子陰性またはRh因子陽性である場合、前記方法は、前記患者への投与のための前記第1の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、あるいは
(e)(1)前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体もABO式血液型B抗原に対する抗体も含まず、かつ前記患者の血液型がRh因子陰性である場合、ならびに(2)前記1セットの細胞の集団の前記細胞が、ABO式血液型A、ABO式血液型B、ABO式血液型AB、またはABO式血液型O、及びRh因子陰性である場合、前記方法は、前記患者に投与するための前記第1の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、
実施形態308~317のいずれかに記載の方法。
【1127】
319.前記患者の血液型が、前記1セットの操作された細胞の集団のABO式血液型及びRh因子型との、ABO式血液型及び/またはRh因子不適合を有し、
(a)(1)前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体を含み、ABO式血液型B抗原に対する抗体を含まず、かつ前記患者の血液型がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、及び(2)前記1セットの集団の前記細胞がABO式血液型AまたはABO式血液型ABの細胞であり、かつ前記集団の前記細胞がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、前記方法は、前記患者に投与するための前記第2の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、あるいは
(b)(1)前記患者の血清がABO式血液型B抗原に対する抗体を含み、ABO式血液型A抗原に対する抗体を含まず、かつ前記患者の血液型がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、及び(2)前記1セットの細胞の集団の前記細胞がABO式血液型BまたはABO式血液型ABの細胞であり、かつ前記集団の前記細胞がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、前記方法は、前記患者に投与するための前記第2の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、あるいは
(c)(1)前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体及びABO式血液型B抗原に対する抗体を含み、かつ前記患者の血液型がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、ならびに(2)前記1セットの細胞の集団の前記細胞がABO式血液型A、ABO式血液型B、またはABO式血液型ABであり、かつ前記集団の前記細胞がRh因子陽性またはRh因子陰性である場合、前記方法は、前記患者に投与するための前記第2の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、あるいは
(d)(1)前記患者の血清がABO式血液型A抗原に対する抗体もABO式血液型B抗原に対する抗体も含まず、かつ前記患者の血液型がRh因子陰性である場合、ならびに(2)前記1セットの細胞の集団の前記細胞が、ABO式血液型A、ABO式血液型B、ABO式血液型AB、またはABO式血液型O、及びRh因子陽性である場合、前記方法は、前記患者に投与するための前記第2の操作された細胞の集団を選択する工程を含む、
実施形態308~317のいずれかに記載の方法。
【1128】
320.1つまたは複数の免疫抑制剤を前記患者に投与する工程をさらに含む、実施形態226~307及び309~319のいずれかに記載の方法。
【1129】
321.前記患者が、1つまたは複数の免疫抑制剤を投与されている、実施形態226~307及び309~319のいずれかに記載の方法。
【1130】
322.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、低分子または抗体である、実施形態320または321に記載の方法。
【1131】
323.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、コルチコステロイド、プレドニゾン、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア薬、ブレキナル、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスパガリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン(チモシン-α)、及び免疫抑制抗体からなる群から選択される、実施形態320~322のいずれかに記載の方法。
【1132】
324.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、シクロスポリンを含む、実施形態320~323のいずれかに記載の方法。
【1133】
325.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、ミコフェノール酸モフェチルを含む、実施形態320~322のいずれかに記載の方法。
【1134】
326.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、コルチコステロイドを含む、実施形態320~323のいずれかに記載の方法。
【1135】
327.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、シクロホスファミドを含む、実施形態320~323のいずれかに記載の方法。
【1136】
328.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、ラパマイシンを含む、実施形態320~323のいずれかに記載の方法。
【1137】
329.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、タクロリムス(FK-506)を含む、実施形態320~323のいずれかに記載の方法。
【1138】
330.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、抗胸腺細胞グロブリンを含む、実施形態320~323のいずれかに記載の方法。
【1139】
331.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、1つまたは複数の免疫調節剤である、実施形態320~323のいずれかに記載の方法。
【1140】
332.前記1つまたは複数の免疫調節剤が、低分子または抗体である、実施形態331に記載の方法。
【1141】
333.前記抗体が、IL-2受容体のp75、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFN-ガンマ、TNF-アルファ、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-6、IGF、IGFR1、IL-7、IL-8、IL-10、CD11a、CD58からなる群から選択される受容体またはリガンド、およびそれらのリガンドのうちのいずれかに結合する抗体、のうちの1つまたは複数に結合する、実施形態322または実施形態332に記載の方法。
【1142】
334.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の投与前に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態320~333のいずれかに記載の方法。
【1143】
335.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日前に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態320~334のいずれかに記載の方法。
【1144】
336.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の投与の少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間前、またはそれよりも前に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態320~334のいずれかに記載の方法。
【1145】
337.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の投与から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日後に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態320~334のいずれかに記載の方法。
【1146】
338.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の投与から少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間後、またはそれよりも後に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態320~334のいずれかに記載の方法。
【1147】
339.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の1回目の投与と同じ日に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態320~334のいずれかに記載の方法。
【1148】
340.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の投与後に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態320~334のいずれかに記載の方法。
【1149】
341.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行後に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態320~334のいずれかに記載の方法。
【1150】
342.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行前に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態320~334のいずれかに記載の方法。
【1151】
343.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日前に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態320~334のいずれかに記載の方法。
【1152】
344.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行の少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間前、またはそれよりも前に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態320~334のいずれかに記載の方法。
【1153】
345.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日後に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態320~334のいずれかに記載の方法。
【1154】
346.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の1回目及び/または2回目の投与の施行から少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間後、またはそれよりも後に前記患者に投与されるか、または投与されている、実施形態320~334のいずれかに記載の方法。
【1155】
347.前記1つまたは複数の免疫抑制剤が、前記操作された細胞の前記改変を含まない免疫原性細胞の免疫拒絶反応を低減するために投与される1つまたは複数の免疫抑制剤の投薬量と比較してより低い投薬量で投与される、実施形態320~346のいずれかに記載の方法。
【1156】
348.前記操作された細胞が、前記操作された細胞の制御された殺傷が可能である、実施形態226~307及び309~347のいずれかに記載の方法。
【1157】
349.前記操作された細胞が、自殺遺伝子または自殺スイッチを含む、実施形態226~307及び309~348のいずれかに記載の方法。
【1158】
350.薬物もしくはプロドラッグの存在下で、または選択的な外因性化合物による作動時に、前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、制御された細胞死を誘導する、実施形態349に記載の方法。
【1159】
351.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、前記操作された細胞のアポトーシスを誘導することができる誘導性タンパク質である、実施形態349または実施形態350に記載の方法。
【1160】
352.前記操作された細胞のアポトーシスを誘導することができる前記誘導性タンパク質が、カスパーゼタンパク質である、実施形態351に記載の方法。
【1161】
353.前記カスパーゼタンパク質が、カスパーゼ9である、実施形態352に記載の方法。
【1162】
354.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、実施形態349~353のいずれかに記載の方法。
【1163】
355.前記患者への前記1つまたは複数の免疫抑制剤の前記投与後に、前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、制御された細胞死を誘導するために作動される、実施形態349~354のいずれかに記載の方法。
【1164】
356.前記患者への前記1つまたは複数の免疫抑制剤の前記投与前に、前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、制御された細胞死を誘導するために作動される、実施形態349~354のいずれかに記載の方法。
【1165】
357.前記患者への前記操作された細胞の前記投与後に、前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、制御された細胞死を誘導するために作動される、実施形態349~356のいずれかに記載の方法。
【1166】
358.前記患者に細胞傷害事象または他のマイナスの結果が生じた場合に、前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、制御された細胞死を誘導するために作動される、実施形態349~357のいずれかに記載の方法。
【1167】
359.前記操作された細胞の集団の操作された細胞の枯渇を可能にする剤を投与する工程を含む、実施形態226~307及び309~349のいずれかに記載の方法。
【1168】
360.前記操作された細胞の枯渇を可能にする前記剤が、前記操作された細胞の前記表面上に発現したタンパク質を認識する抗体である、実施形態359に記載の方法。
【1169】
361.前記抗体が、CCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMA、及びRQR8を認識する抗体からなる群から選択される、実施形態360に記載の方法。
【1170】
362.前記抗体が、モガムリズマブ、AFM13、MOR208、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、リツキシマブ、リツキシマブ-RIIb、トムゾツキシマブ、RO5083945(GA201)、セツキシマブ、Hul4.18K322A、Hul4.18-IL2、Hu3F8、ジニツキシマブ、c.60C3-RIIc、及びそれらのバイオ後続品からなる群から選択される、実施形態360または実施形態361に記載の方法。
【1171】
363.前記操作された細胞の前記表面上の前記1つまたは複数の寛容原性因子を認識する剤を投与する工程を含む、実施形態226~307、309~349、及び359~362のいずれかに記載の方法。
【1172】
364.前記操作された細胞が、前記1つまたは複数の寛容原性因子を発現するように操作される、実施形態363に記載の方法。
【1173】
365.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、A20/TNFAIP3、C1-インヒビター、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD47、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1、Serpinb9、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の寛容原性因子を含む、実施形態310~364のいずれかに記載の方法。
【1174】
366.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47を含む、実施形態365に記載の方法。
【1175】
367.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-Eを含む、実施形態310~366のいずれかに記載の方法。
【1176】
368.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24を含む、実施形態310~367のいずれかに記載の方法。
【1177】
369.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、PDL1を含む、実施形態310~368のいずれかに記載の方法。
【1178】
370.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD55を含む、実施形態310~369のいずれかに記載の方法。
【1179】
371.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CR1を含む、実施形態310~370のいずれかに記載の方法。
【1180】
372.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、MANFを含む、実施形態310~371のいずれかに記載の方法。
【1181】
373.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、A20/TNFAIP3を含む、実施形態310~372のいずれかに記載の方法。
【1182】
374.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E及びCD47を含む、実施形態310~373のいずれかに記載の方法。
【1183】
375.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24、CD47、及びPDL1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD24、CD47、及びPDL1を含む、実施形態310~374のいずれかに記載の方法。
【1184】
376.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、及びPDL1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、及びPDL1を含む、実施形態310~375のいずれかに記載の方法。
【1185】
377.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、実施形態310~376のいずれかに記載の方法。
【1186】
378.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、実施形態310~377のいずれかに記載の方法。
【1187】
379.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59、及びCR1からなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59、及びCR1を含む、実施形態310~378のいずれかに記載の方法。
【1188】
380.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E及びPDL1を含む、実施形態310~379のいずれかに記載の方法。
【1189】
381.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びA20/TNFAIPからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びA20/TNFAIPを含む、実施形態310~380のいずれかに記載の方法。
【1190】
382.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びMANFからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、及びMANFを含む、実施形態310~381のいずれかに記載の方法。
【1191】
383.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP、及びMANFからなる群から選択される2つ以上の寛容原性因子を含み、任意選択で、前記1つまたは複数の寛容原性因子が、HLA-E、PDL1、A20/TNFAIP、及びMANFを含む、実施形態310~382のいずれかに記載の方法。
【1192】
384.1つまたは複数の追加の治療剤を前記患者に投与する工程をさらに含む、実施形態226~307及び309~383のいずれかに記載の方法。
【1193】
385.前記患者が、1つまたは複数の追加の治療剤を投与されている、実施形態226~307及び309~384のいずれかに記載の方法。
【1194】
386.前記方法の治療有効性を監視する工程をさらに含む、実施形態226~307及び309~385のいずれかに記載の方法。
【1195】
387.前記方法の予防有効性を監視する工程をさらに含む、実施形態226~307及び309~385のいずれかに記載の方法。
【1196】
388.1つまたは複数の疾患症状の所望の抑制が起こるまで繰り返される、実施形態386または実施形態387に記載の方法。
【1197】
389.自殺遺伝子をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態1~126及び225~232のいずれかに記載の操作された細胞。
【1198】
390.自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態1~126及び225~232のいずれかに記載の操作された細胞。
【1199】
391.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、実施形態389または実施形態390に記載の操作された細胞。
【1200】
392.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記自殺遺伝子または前記安全スイッチに関連する遺伝子が、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、実施形態389~390のいずれかに記載の操作された細胞。
【1201】
393.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記1つまたは複数の寛容原性因子が、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、実施形態389~392のいずれかに記載の操作された細胞。
【1202】
394.前記バイシストロン性カセットが、前記操作された細胞の前記ゲノム内への非標的化挿入によって組み込まれ、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入による、実施形態392または実施形態393に記載の操作された細胞。
【1203】
395.前記バイシストロン性カセットが、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によって組み込まれ、任意選択で、前記標的化挿入が、相同性指向修復を用いたヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、実施形態394に記載の操作された細胞。
【1204】
396.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47である、実施形態389~395のいずれかに記載の操作された細胞。
【1205】
397.前記操作された細胞が、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態127~224及び266~388のいずれかに記載の方法。
【1206】
398.前記自殺遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、実施形態397に記載の方法。
【1207】
399.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記自殺遺伝子または前記安全スイッチに関連する遺伝子が、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、実施形態397または実施形態398に記載の方法。
【1208】
400.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記1つまたは複数の寛容原性因子が、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、実施形態397~399のいずれかに記載の方法。
【1209】
401.前記バイシストロン性カセットが、前記操作された細胞の前記ゲノム内への非標的化挿入によって組み込まれる、実施形態399または実施形態400に記載の方法。
【1210】
402.前記バイシストロン性カセットが、前記操作された細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によって組み込まれる、実施形態399または実施形態400に記載の方法。
【1211】
403.前記1つまたは複数の寛容原性因子が、CD47である、実施形態397~402のいずれかに記載の方法。
【1212】
404.前記操作された細胞の集団の操作された細胞が、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態245~262のいずれかに記載の組成物。
【1213】
405.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシン活性化カスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、実施形態404に記載の組成物。
【1214】
406.前記自殺遺伝子、及び前記自殺遺伝子または前記安全スイッチに関連する遺伝子が、前記操作された細胞の集団の前記操作された細胞のゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、実施形態404または実施形態405に記載の組成物。
【1215】
407.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチ、及び前記外因性CD47が、前記操作された細胞の前記ゲノム内に組み込まれたバイシストロン性カセットから発現される、実施形態404~406のいずれかに記載の組成物。
【1216】
408.前記バイシストロン性カセットが、前記ゲノム内への非標的化挿入によって組み込まれ、任意選択で、レンチウイルスベクターを使用した前記操作された細胞の集団の操作された細胞内への前記外因性ポリヌクレオチドの導入による、実施形態406または実施形態407に記載の組成物。
【1217】
409.前記バイシストロン性カセットが、前記操作された細胞の集団の操作された細胞の標的ゲノム遺伝子座内への標的化挿入によって組み込まれ、任意選択で、前記標的化挿入が、相同性指向修復を用いたヌクレアーゼ媒介性遺伝子編集によるものである、実施形態406または実施形態407に記載の組成物。
【実施例
【1218】
以下の実施例は、例示の目的のためにのみ含まれ、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【1219】
実施例1 ヒトABO不適合媒介性CDCに対するヒトB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg細胞におけるCD46、CD55、及び/またはCD59の過剰発現の効果
この実施例は、CDCに対する膜結合型補体インヒビターの過剰発現の効果を試験するための研究について記載する。CD46、CD55、及びCD59を、ヒトB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)またはB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiPSCから分化した内皮細胞において単独でまたは様々に組み合わせて発現させた。
【1220】
A.方法
B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg低免疫細胞におけるCD46、CD55、及びCD59の単独またはそれらの組み合わせでの導入遺伝子発現。B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデルhiPSCを、標準的なCRISPR/Cas9遺伝子編集技法を使用して生成した。外因性CD47ならびに1つまたは複数の外因性膜結合型補体インヒビターCD46、CD55、及びCD59をコードする導入遺伝子(tg)を、外因性タンパク質をコードするレンチウイルスベクターを用いた標準的なレンチウイルスベクター形質導入技法を使用して細胞内に導入した。
【1221】
改変hiPSCからの内皮細胞の分化。内皮細胞を、CD47の単独での発現またはCD46、CD55、及びCD59から選択される1つまたは複数の外因性膜結合型補体インヒビターと組み合わせた発現のための標準的なレンチウイルスベクター形質導入技法を使用して導入された導入遺伝子を含む、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデルhiPSCから分化させた。内皮細胞の分化は、Deuse,et al.“Hypoimmunogenic derivatives of induced pluripotent stem cells evade immune rejection in fully immunocompetent allogeneic recipients.”Nature biotechnology vol.37,3(2019):252-258に記載されるように実施した(同文献の内容は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される)。
【1222】
フローサイトメトリー。操作された細胞上のHLA-I、HLA-II、CD47、CD46、CD55、及び/またはCD59の表面発現レベルを、抗体特異的試薬を使用したフローサイトメトリーによる細胞の染色によって評定した。アイソタイプ抗体を対照として使用した。操作された細胞を解析のためにプールしたか、または導入遺伝子の陽性(+)表面発現(アイソタイプに対して30~60倍の発現)、導入遺伝子の高(++)表面発現(アイソタイプに対して61~400倍の発現)、もしくは導入遺伝子の超高(+++)発現(アイソタイプに対して400倍超)に関して選別した。
【1223】
ABO不適合血清を用いたヒト細胞におけるCDCアッセイ。CD46;CD55;CD59;CD46及びCD59;CD46及びCD55;CD55及びCD59;またはCD46、CD55、及びCD59を過剰発現するようにも操作された、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiPSCまたはhiECをABO不適合ヒト血清とともにインキュベートし、細胞増殖及び細胞の生存率の無標識の監視を可能にするためのxCELLigence(商標)MPプラットフォーム(ACEA Biosciences)において、インキュベーションの経過にわたる細胞溶解を測定することによってCDCを分析した。インピーダンスの変化を細胞指数(CI)として報告した(細胞指数の減少は、細胞の溶解または殺傷の増加を示す)
【1224】
B.結果
B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg細胞は、CDCから保護されない。図1A及び図1Bに示されるように、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiPSC及びhiECはそれぞれ、HLA-IまたはHLA-IIを発現せず、CD47を過剰発現する。図2A及び図2Bに示されるように、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiPSC及びhiECはそれぞれ、CD46、CD55、及びCD59補体阻害性受容体の内在性表面発現もまた示す。補体阻害性受容体の発現にもかかわらず、結果は、細胞がCDCから保護されないことを示した。具体的に述べると、ABO不適合血清とのインキュベーションは、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiPSC(図3A)及びB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiEC(図3B)の両方の迅速な殺傷をもたらした。
【1225】
CD46及びCD59、またはCD46、CD55、及びCD59の過剰発現は、細胞をABO不適合媒介性CDCから保護する。1つまたは複数の膜結合型補体インヒビターの過剰発現が細胞をCDCから保護するかどうかを決定するために、CD46、CD55、及びCD59のうちの1つまたは複数を過剰発現するように操作されたB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiPSCまたはhiECを、CDCに対する耐性に関して評定した。
【1226】
形質導入されていない細胞におけるCD46、CD55、及び/またはCD59の発現レベル(内在性発現)、または形質導入された細胞のプールもしくは個々のクローンにおけるCD46、CD55、及び/またはCD59の発現レベルが、下記の表E1(hiPSC)及び表E2(hiEC)で提供される。形質導入された細胞のプール及びクローンにおける過剰発現は、以下のように分類した:+=アイソタイプ対照に対して30~60倍、++=アイソタイプ対照に対して61~400倍、及び+++=アイソタイプ対照に対して400倍超。
【1227】
個々の補体インヒビター受容体をコードする導入遺伝子を含有するレンチウイルスベクターにより形質導入されたB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiPSCまたはhiECの代表的なフローヒストグラムは、CD46(図4A、hiPSC;及び図5A、hiEC)、CD55(図6A、hiPSC;及び図7A、hiEC)、及びCD59(図8A、hiPSC;及び図9A、hiEC)の増加した表面発現を示す。B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiPSCまたはhiECにおけるCD46、CD55、またはCD59の個々の過剰発現は、個々の補体インヒビター:CD46(図4B~4E、hiPSC;図5B~5D、hiEC)、CD55(図6B~6E、hiPSC;図7B~7E、hiEC)、またはCD59(図8B~8E、hiPSC;図9B~9C、hiEC)の超高(+++)発現の場合であっても、細胞をCDCから保護しなかった。B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiPSC(図10A)またはB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiEC(図11A)におけるCD46及びCD55の組み合わせの過剰発現(高(++)発現の場合であっても)は、hiPSCについて図10B~10E及びhiECについて図11B~11Eに示されるように、CDCに対していくらかの保護を提供したが、細胞殺傷を阻止する上では有効でなかった。データは図示されないが、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiPSCにおけるCD46+ CD55+プール(表E1)について類似の結果が得られた。B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiPSC(図12A)またはB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiEC(図13A)におけるCD55及びCD59の組み合わせの過剰発現(高(++)発現の場合であっても)もまた、hiPSCについて図12B~12E及びhiECについて図13B~13Eに示されるように、CDCに対していかなる保護も提供しなかった。
【1228】
対照的に、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiPSC(図14A)またはB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiEC(図15A)におけるCD46及びCD59の組み合わせの過剰発現は、hiPSCについて図14B~14E及びhiECについて図15B~15Eに示されるように、CDCによる細胞殺傷を実質的に低減または回避した。さらに、CD49及びCD59の高(++)発現(例えば、表E1及びE2に示されるように、アイソタイプ対照に対して100倍未満)は、hiPSCクローンA1(図14C)及びクローンA3(図14D)ならびにhiECクローンA1、A2、及びA3(図15C~15E)について示されるように、CDCを阻止するのに十分であった。
【1229】
B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiPSC(図16A)またはB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiEC(図17A)におけるCD46、CD55、及びCD59の組み合わせの過剰発現もまた、hiPSCについて図16B~16E及びhiECについて図17B~17Cに示されるように、CDCによる細胞殺傷を実質的に低減または回避して、hiPSCまたはhiECの生存をもたらした。
【1230】
hiPSC単独(すなわち、ABO不適合血清の添加なし)から分化した内皮細胞(hiEC)についてのCDCアッセイの結果が図18で提供される。hiEC単独(対照)の生存と、ABO不適合血清の存在下でのCD46及びCD59(図14B~14E及び図15B~15E)またはCD46、CD55、及びCD59(図16B~16E及び図17B~17E)を過剰発現するhiPSCまたはhiECの生存との間に有意差は何ら観察されず、このことは、CD46及びCD59、またはCD46、CD55、及びCD59の過剰発現がCDCを遮断することを示す。
【1231】
まとめると、これらの結果は、膜結合型補体インヒビターCD46、CD55、及びCD59を含めたCDCのインヒビターを内在性で発現する、hiPSC及び分化細胞(hiEC等)を含めた細胞が、自然免疫または適応免疫応答を発動しないB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg細胞においてさえ、細胞をCDCから十分に保護しない場合があることを実証する。このデータは、CD59と一緒にしたCD46の過剰発現またはCD59及びCD55と一緒にしたCD46の過剰発現が、細胞表面上の抗原に結合するIgM/IgG抗体(例えば、ABO不適合血清中の抗Aまたは抗B抗体)の存在下であっても、これらの細胞をCDCから保護することを実証する。
【1232】
【表E1】
【1233】
【表E2】
【1234】
実施例2 IgG抗体媒介性CDCに対するB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg細胞におけるCD46、CD55、及び/またはCD59の過剰発現の効果
この実施例は、CD46及びCD59の過剰発現またはCD46、CD55、及びCD59の過剰発現が、細胞表面上の抗原に結合した抗体(例えば、モノクローナル抗体)の存在下で細胞をCDCから保護することを実証する。
【1235】
A.方法
低免疫miPSC及び導入遺伝子発現。B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデルマウス人工多能性幹細胞(miPSC)を、標準的なCRISPR/Cas9遺伝子編集技法を使用して生成した。外因性CD47ならびに1つまたは複数の外因性膜結合型補体インヒビターCD46、CD55、及びCD59をコードする導入遺伝子(tg)を、外因性タンパク質をコードするレンチウイルスベクターを用いた標準的なレンチウイルスベクター形質導入技法を使用して細胞内に導入した。短縮型EGFR導入遺伝子(EGFRtg)もまた細胞内に導入した。このEGFRtgは、細胞表面上に発現させ、補体依存性細胞傷害アッセイにおける抗EGFR抗体を使用した標的化のためのエピトープを保持していた。
【1236】
フローサイトメトリー。操作されたmiPSC細胞上のHLA-I、HLA-II、CD47、CD46、CD55、及び/またはCD59の表面発現レベルを、上記の実施例1に記載されるように抗体特異的試薬を使用したフローサイトメトリーによる細胞の染色によって評定した。
【1237】
ABO不適合血清を用いたヒト細胞におけるCDCアッセイ。CD46;CD55;CD59;CD46及びCD59;CD46及びCD55;CD55及びCD59;またはCD46、CD55、及びCD59を過剰発現するようにも操作された、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg;EGFRtg miPSCをセツキシマブ(IgG抗EGFR抗体)及びヒト血清(ヒト補体を含有する)とともにインキュベートし、CDCによる細胞殺傷を上記の実施例1に記載されるように分析した。
【1238】
CD46及びCD59、またはCD46、CD55、及びCD59の過剰発現は、抗体媒介性CDCから細胞を保護する。1つまたは複数の膜結合型補体インヒビターの過剰発現が細胞をCDCから保護するかどうかを決定するために、CD46及びCD59、またはCD46、CD55、及びCD59のうちの1つまたは複数を過剰発現するように操作された、EGFRtを発現するB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg miPSCを、CDCに対する耐性に関して評定した。
【1239】
CD46及びCD59、またはCD46、CD59、及びCD55を形質導入した、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル;CD47tg;EGFRtg miPSCにおける、またはB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル;CD47tg;EGFRtg miPSC細胞プールにおけるCD46、CD55、及びCD59の発現レベルが下記の表E3で提供される。予想通り、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル;CD47tg;EGFRtg miPSCにおいて、ヒトCD46、CD55、またはCD59の発現は何ら観察されなかった。CD46及びCD59、またはCD46、CD59、及びCD55形質導入細胞プールにおける過剰発現は、以下のように分類した:+=アイソタイプ対照に対して30~60倍、++=アイソタイプ対照に対して61~400倍、及び+++=アイソタイプ対照に対して400倍超。
【1240】
図19Aに示されるように、セツキシマブとのインキュベーションは、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg;EGFRtg miPSCにおいて迅速な殺傷を発動した。対照的に、該miPSCにおけるCD46及びCD59、またはCD46、CD55、及びCD59の過剰発現は、図19B及び図19Cに示されるように、CDCによる細胞殺傷を実質的に低減または回避した。
【1241】
まとめると、これらの結果は、細胞表面抗原を標的とする抗体の存在下でのCD46及びCD59、またはCD46、CD55、及びCD59の過剰発現の保護効果を裏付ける。
【1242】
【表E3】
【1243】
実施例3 種特異的補体阻害
この実施例は、ヒト補体インヒビターによる補体阻害が種特異的であり、細胞を非ヒト補体から効果的に保護しないことを実証する。
【1244】
異種間CDCアッセイ。CD46及びCD59、またはCD46、CD55、及びCD59を過剰発現するhiPSCから分化したB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル;CD47tg内皮細胞(hiEC)を上記の実施例1に記載されるように生成した。CD46及びCD59、またはCD46、CD55、及びCD59を過剰発現するB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tg hiECをABO不適合アカゲザル血清(血清B)とともにインキュベートし、CDCによる細胞殺傷を上記の実施例1に記載されるように分析した。
【1245】
ヒト補体インヒビターの過剰発現は、非ヒトABO不適合媒介性CDCから保護しない。図20A~20Bに示されるように、ヒトCD46及びヒトCD59補体阻害性受容体を過剰発現するB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル;CD47tg hiECは、ABO不適合アカゲザル血清(血清B)によって発動される異種間CDCから保護されなかった。同様に、図20C~20Dに示されるように、ヒトCD46、ヒトCD55、及びヒトCD59補体阻害性受容体を過剰発現するB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル;CD47tg hiECは、ABO不適合アカゲザル血清(血清B)によって発動される異種間CDC殺傷から保護されなかった。
【1246】
これらのデータは、ヒト補体阻害性受容体CD46及びCD59、またはCD46、CD55、及びCD59の保護効果がヒト補体の阻害に特異的であることを実証する。
【1247】
本発明は、例えば、本発明の種々の態様を例示するために提供される、特定の開示された実施形態に範囲が限定されることは意図されない。記載される組成物及び方法に対する種々の修正が、本明細書の説明及び教示から明らかとなろう。かかる変形形態は、本開示の真の範囲及び趣旨から逸脱することなく実施され得、本開示の範囲内に該当することが意図される。
【1248】
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
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【国際調査報告】