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特表2024-534772同種異系細胞療法用の遺伝子改変細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】同種異系細胞療法用の遺伝子改変細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240918BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 35/39 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 35/407 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 35/55 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 35/34 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 35/44 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 35/16 20150101ALI20240918BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240918BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240918BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20240918BHJP
   C12N 15/90 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C12N5/10
A61K35/12
A61K35/545
A61K35/39
A61K35/17
A61K35/15
A61K35/36
A61K35/407
A61K35/55
A61K35/30
A61K35/34
A61K35/44
A61K35/28
A61K35/16
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/06
A61P1/00
A61P1/04
A61P3/10
A61P5/14
A61P29/00
A61P37/06
A61P7/06
A61P35/02
A61P37/08
A61P9/00
A61P11/00
A61P13/12
A61P1/16
A61P21/04
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/28
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/00
A61P27/02
C12N15/09 110
C12N15/12 ZNA
C12N15/867 Z
C12N15/90 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508658
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 US2022074873
(87)【国際公開番号】W WO2023019226
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/232,163
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/353,548
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】522043688
【氏名又は名称】サナ バイオテクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シュレプファー ソニア
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB34
4C087BB45
4C087BB47
4C087BB48
4C087BB51
4C087BB52
4C087BB56
4C087BB62
4C087BB63
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA12
4C087ZA18
4C087ZA22
4C087ZA51
4C087ZA55
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA68
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZB15
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC35
(57)【要約】
提供するのは、同種異系細胞療法で使用するために、遺伝子改変のような1つ以上の改変を含む操作細胞である。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、低免疫原性細胞である。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)及び/またはMHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)の発現を低下させる改変、
(b)1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させる改変、ならびに
(c)1つ以上の主要組織適合性複合体クラスI分子(MHCクラスI分子)及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる改変
を含む操作細胞であって、
発現の変化が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、
前記操作細胞。
【請求項2】
前記改変が、
(i)1つ以上のMHCクラスI分子、
(ii)1つ以上のMHCクラスII分子、または
(iii)前記1つ以上のMHCクラスI分子及び前記1つ以上のMHCクラスII分子
の発現の低下を含む、請求項1に記載の操作細胞。
【請求項3】
前記改変が、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-BまたはNFY-Cのうち1つ以上の発現の低下を含む、請求項1または2に記載の操作細胞。
【請求項4】
前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または前記1つ以上のMHCクラスII分子を発現しない、請求項1~3のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項5】
B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-BまたはNFY-Cのうち1つ以上を発現しない、請求項1~4のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項6】
前記改変が、前記1つ以上のMHCクラスI分子の細胞表面発現を低下させることによって、前記1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項7】
前記改変が、β-2ミクログロブリン(B2M)の発現を低下させることによって、前記1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる、請求項1~6のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項8】
前記改変が、B2M遺伝子の活性を低下させることによって、前記1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低下させる、請求項7に記載の操作細胞。
【請求項9】
前記改変が、前記B2M遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊によって、前記1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる、請求項7または8に記載の操作細胞。
【請求項10】
前記改変が、すべてのB2Mコード配列の不活性化または破壊によって、前記1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる、請求項7~9のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項11】
前記不活性化または破壊が、前記B2M遺伝子におけるインデル、または前記B2M遺伝子のゲノムDNAの連続領域の欠失を含む、請求項9または10に記載の操作細胞。
【請求項12】
前記インデルが、フレームシフト変異である、請求項11に記載の操作細胞。
【請求項13】
前記B2M遺伝子が、ノックアウトされている、請求項1~12のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項14】
前記改変が、CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、または部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)によるものである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記改変が、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集によって、前記1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低下させる、請求項1~14のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項16】
前記CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)、またはヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、Mad7、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、及びCRISPR関連トランスポザーゼからなる群から選択される1つ以上のタンパク質によって行われている、請求項14または15に記載の操作細胞。
【請求項17】
前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、前記B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものである、請求項15に記載の操作細胞。
【請求項18】
前記CRISPR-Casの組み合わせのCasが、Cas9またはCas12から選択される、請求項17に記載の操作細胞。
【請求項19】
前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、請求項18に記載の操作細胞。
【請求項20】
前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記gRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項19に記載の操作細胞。
【請求項21】
前記改変が、前記1つ以上のMHCクラスII分子の細胞表面発現を低下させることによって、前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる、請求項1~20のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項22】
前記改変が、CIITAの発現を低下させることによって、前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる、請求項1~21のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項23】
前記改変が、CIITA遺伝子の活性を低下させることによって、前記1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低下させる、請求項22に記載の操作細胞。
【請求項24】
前記改変が、前記CIITA遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊によって、前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる、請求項22または23に記載の操作細胞。
【請求項25】
前記改変が、すべてのCIITAコード配列の不活性化または破壊によって、前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる、請求項21~24のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項26】
前記不活性化または破壊が、前記CIITA遺伝子におけるインデル、または前記CIITA遺伝子のゲノムDNAの連続領域の欠失を含む、請求項24または25に記載の操作細胞。
【請求項27】
前記インデルが、フレームシフト変異である、請求項26に記載の操作細胞。
【請求項28】
前記CIITA遺伝子が、ノックアウトされている、請求項21~27のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項29】
前記改変が、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集によって、前記1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低下させる、請求項21~28のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項30】
前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、前記CIITA遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものである、請求項29に記載の操作細胞。
【請求項31】
前記CRISPR-Casの組み合わせのCasが、Cas9またはCas12から選択される、請求項30に記載の操作細胞。
【請求項32】
前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記CIITA遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、請求項29に記載の操作細胞。
【請求項33】
前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記gRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項32に記載の操作細胞。
【請求項34】
前記改変が、CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、または部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)によるものである、請求項28に記載の操作細胞。
【請求項35】
前記CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)、またはヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、Mad7、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ及びCRISPR関連トランスポザーゼからなる群から選択される1つ以上のタンパク質によって行われている、請求項34に記載の操作細胞。
【請求項36】
(a)MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)及び/またはMHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)の発現を低下させ、かつ
(b)1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させる、
1つ以上の改変を含む操作細胞であって、
発現の変化が、前記1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、
前記操作細胞。
【請求項37】
(a)MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)及び/またはMHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)の発現を低下させ、かつ
(b)1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させる(ここで前記1つ以上の寛容原性因子は、CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させる)、
1つ以上の改変を含む操作細胞であって、
発現の変化が、前記1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである、
前記操作細胞。
【請求項38】
前記1つ以上の改変が、
1つ以上の主要組織適合性複合体クラスI分子(MHCクラスI分子)及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させ、
CD47、ならびに任意にCD24及び/またはPD-L1の発現を増加させ、かつ/または
CD46、CD55、CD59及びCR1の発現を増加させる、
請求項36または37に記載の操作細胞。
【請求項39】
前記細胞が、1つ以上のMHCクラスI分子、MICA及び/またはMICB、ならびにTXNIPのいずれかのノックアウト、PD-L1及びHLAEのノックインを含む、請求項38に記載の操作細胞。
【請求項40】
A20/TNFAIP3及びMANFのノックインを含む、請求項39に記載の操作細胞。
【請求項41】
前記操作細胞が、前記MICAの発現を低下させるための1つ以上の改変を含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項42】
前記操作細胞上での前記MICAの表面発現の低下を含み、任意に、検出可能な表面発現が見られない、請求項1~41のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項43】
前記MICAの発現を低下させる改変が、前記MICAのタンパク質発現を低下させる、請求項1~42のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項44】
前記操作細胞上で、前記MICAの検出可能な細胞表面発現が見られない、請求項42または43に記載の操作細胞。
【請求項45】
前記MICAの発現を低下させる改変が、前記MICAをコードするmRNAの発現を低下させる、請求項1~44いずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項46】
MICA遺伝子の活性を消失させる1つ以上の改変を含む、請求項1~45のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項47】
前記改変が、前記MICA遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む、請求項46に記載の操作細胞。
【請求項48】
前記改変が、すべてのMICAコード配列の不活性化または破壊を含む、請求項46または47に記載の操作細胞。
【請求項49】
前記不活性化または破壊が、前記MICA遺伝子におけるインデルを含む、請求項47または48に記載の操作細胞。
【請求項50】
前記改変が、前記MICA遺伝子のゲノムDNAの連続領域のフレームシフト変異または欠失を含む、請求項47~49のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項51】
前記改変が、ノックアウトを含む、請求項47~50のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項52】
前記改変が、前記MICA遺伝子を標的とするヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集による改変である、請求項47~51のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項53】
前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集による改変が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)の媒介による改変、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の媒介による改変、またはCRISPR-Casの組み合わせの媒介によるものである、請求項48に記載の操作細胞。
【請求項54】
前記Casが、Cas9またはCas12から選択される、請求項49に記載の操作細胞。
【請求項55】
前記CRISPR-Casの組み合わせの媒介による改変が、前記MICA遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)の使用を含む、請求項49または50に記載の操作細胞。
【請求項56】
前記CRISPR-Casの組み合わせの媒介による改変が、前記gRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体の使用を含む、請求項51に記載の操作細胞。
【請求項57】
前記改変が、CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、または部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)によるものである、請求項51に記載の操作細胞。
【請求項58】
前記CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)、またはヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、Mad7、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ及びCRISPR関連トランスポザーゼからなる群から選択される1つ以上のタンパク質によって行われている、請求項57に記載の操作細胞。
【請求項59】
前記MICBの発現を低下させるための改変を含む、請求項1~58のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項60】
前記操作細胞上での前記MICBの表面発現の低下を含み、任意に、検出可能な表面発現が見られない、請求項1~59のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項61】
前記MICBの発現を低下させる改変が、前記MICBのタンパク質発現を低下させる、請求項1~60いずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項62】
前記操作細胞上で、前記MICBの検出可能な細胞表面発現が見られない、請求項60または61に記載の操作細胞。
【請求項63】
前記MICBの発現を低下させる改変が、前記MICBをコードするmRNAの発現を低下させる、請求項1~62のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項64】
MICB遺伝子の活性を消失させる改変を含む、請求項1~63のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項65】
前記改変が、前記MICB遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む、請求項64に記載の操作細胞。
【請求項66】
前記改変が、すべてのMICBコード配列の不活性化または破壊を含む、請求項64または65に記載の操作細胞。
【請求項67】
前記不活性化または破壊が、前記MICB遺伝子におけるインデルを含む、請求項65または66に記載の操作細胞。
【請求項68】
前記改変が、前記MICB遺伝子のゲノムDNAの連続領域のフレームシフト変異または欠失である、請求項65~67のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項69】
前記改変が、ノックアウトである、請求項65~68のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項70】
前記改変が、前記MICB遺伝子を標的とするヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集による改変である、請求項65~69のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項71】
前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集による改変が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)の媒介による改変、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の媒介による改変、またはCRISPR-Casの組み合わせの媒介によるものである、請求項70に記載の操作細胞。
【請求項72】
前記Casが、Cas9またはCas12から選択される、請求項71に記載の操作細胞。
【請求項73】
前記CRISPR-Casの組み合わせの媒介による改変が、前記MICB遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)の使用を含む、請求項71または72に記載の操作細胞。
【請求項74】
前記CRISPR-Casの組み合わせの媒介による改変が、前記gRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体の使用を含む、請求項73に記載の操作細胞。
【請求項75】
前記改変が、NLRC5、TRAC、TRB、CD142、ABO、CD38、CD52、PCDH11Y、NLGN4Y及びRHDのいずれか1つ以上の発現を低下させる、請求項1~74のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項76】
前記1つ以上の寛容原性因子のそれぞれが、A20/TNFAIP3、C1インヒビター、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD47、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1またはSerpinb9からなる群から選択される、請求項1~75のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項77】
前記1つ以上の寛容原性因子が、HLA-Eを含む、請求項1~76のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項78】
前記1つ以上の寛容原性因子が、CD24を含む、請求項1~77のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項79】
前記1つ以上の寛容原性因子が、PD-L1を含む、請求項1~78のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項80】
前記1つ以上の寛容原性因子が、CD46を含む、請求項1~79のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項81】
前記1つ以上の寛容原性因子が、CD55を含む、請求項1~80のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項82】
前記1つ以上の寛容原性因子が、CD59を含む、請求項1~81のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項83】
前記1つ以上の寛容原性因子が、CR1を含む、請求項1~82のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項84】
前記1つ以上の寛容原性因子が、MANFを含む、請求項1~83のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項85】
前記1つ以上の寛容原性因子が、A20/TNFAIP3を含む、請求項1~84のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項86】
前記1つ以上の寛容原性因子が、HLA-E及びCD47を含む、請求項1~76のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項87】
前記1つ以上の寛容原性因子が、CD24、CD47またはPD-L1の1つ以上(すべてを含む)を含む、請求項1~76のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項88】
前記1つ以上の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47またはPD-L1の1つ以上(すべてを含む)を含む、請求項1~76及び87のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項89】
前記1つ以上の寛容原性因子が、CD46、CD55、CD59またはCR1の1つ以上(すべてを含む)を含む、請求項1~76のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項90】
前記1つ以上の寛容原性因子が、HLA-E、CD46、CD55、CD59またはCR1の1つ以上(すべてを含む)を含む、請求項1~76及び89のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項91】
前記1つ以上の寛容原性因子が、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59またはCR1の1つ以上(すべてを含む)を含む、請求項1~76、89及び90のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項92】
前記1つ以上の寛容原性因子が、HLA-EまたはPD-L1の1つ以上(すべてを含む)を含む、請求項1~76のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項93】
前記1つ以上の寛容原性因子が、HLA-E、PD-L1またはA20/TNFAIPの1つ以上(すべてを含む)、及び任意にMANFを含む、請求項1~76及び92のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項94】
前記1つ以上の寛容原性因子が、HLA-E、PD-L1またはMANFの1つ以上(すべてを含む)、及び任意にA20/TNFAIPを含む、請求項1~76、92及び93のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項95】
前記1つ以上の寛容原性因子のそれぞれが、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200及びMFGE8からなる群から選択される、請求項1~76のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項96】
(i)
(a)1つ以上のMHC I分子及び/または1つ以上のMHC II分子の発現を低下させ、かつ
(b)CD47の発現を増加させること、
(ii)
(a)1つ以上のMHC I分子及び/または1つ以上のMHC II分子の発現を低下させ、
(b)MIC-A及び/またはMIC-Bの発現を低下させ、
(c)CD47、ならびに任意にCD24及びPD-L1の発現を増加させ、かつ
(d)CD46、CD55、CD59及びCR1の発現を増加させること、
(iii)
(a)1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させ、
(b)MIC-A及び/またはMIC-Bの発現を低下させ、
(c)TXNIPの発現を低下させ、
(d)PD-L1及びHLA-Eの発現を増加させ、かつ
(e)任意に、A20/TNFAIP3及びMANFの発現を増加させること、
(iv)
(a)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させ、かつ
(b)MICA及び/またはMICBの発現を低下させること、
(v)
(a)標的の発現を増加または減少させる追加の編集をさらに含む上記(i)~(iv)のいずれか
に従う改変を含む、請求項1~76に記載の操作細胞。
【請求項97】
前記1つ以上の寛容原性因子の少なくとも1つが、CD47である、請求項75に記載の操作細胞。
【請求項98】
前記1つ以上の寛容原性因子が、CD47である、請求項1~75のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項99】
配列番号1のアミノ酸配列の少なくとも一部との同一性が少なくとも約85%であるアミノ酸配列をCD47が有する、請求項97または98に記載の操作細胞。
【請求項100】
前記1つ以上の寛容原性因子の発現の増加が、前記1つ以上の寛容原性因子の細胞表面発現の増加を含む、請求項1~99のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項101】
前記1つ以上の寛容原性因子の1つが、外因性ポリペプチドである、請求項100に記載の操作細胞。
【請求項102】
前記改変が、前記1つ以上の寛容原性因子をコードする1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項100または101に記載の操作細胞。
【請求項103】
前記1つ以上の寛容原性因子のそれぞれが、プロモーターに機能可能に連結されている、請求項102に記載の操作細胞。
【請求項104】
前記プロモーターが、構成的プロモーターである、請求項103に記載の操作細胞。
【請求項105】
前記プロモーターが、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタインバーウイルス(EBV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター及びUBCプロモーターからなる群から選択される、請求項103または104に記載の操作細胞。
【請求項106】
前記1つ以上の外因性ポリヌクレオチドが、1つ以上のゲノム遺伝子座に組み込まれている、請求項103~105のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項107】
前記組み込みが、非標的挿入である、請求項106に記載の操作細胞。
【請求項108】
前記非標的挿入が、レンチウイルスベクターを用いて前記外因性ポリヌクレオチドを前記細胞に導入することによるものである、請求項107に記載の操作細胞。
【請求項109】
前記組み込みが、標的挿入である、請求項106に記載の操作細胞。
【請求項110】
前記1つ以上のゲノム遺伝子座のそれぞれが、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座、CD142遺伝子座、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231座位、CLYBL遺伝子座、ROSA26遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される、請求項106~109のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項111】
前記1つ以上のゲノム遺伝子座のそれぞれが、B2M座位、TAP1座位、CIITA座位、TRAC座位、TRBC座位、MIC-A座位、MIC-B座位及びセーフハーバー座位からなる群から選択される、請求項106~110のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項112】
前記セーフハーバー座位が、AAVS1、ABO、CCR5、CLYBL、CXCR4、F3、FUT1、HMGB1、KDM5D、LRP1、MICA、MICB、RHD、ROSA26及びSHS231の座位からなる群から選択される、請求項106に記載の操作細胞。
【請求項113】
前記1つ以上の寛容原性因子の発現の増加が、プロモーターを介して、内在性遺伝子の遺伝子活性を向上させる改変を含む、請求項1~107のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項114】
前記遺伝子活性を向上させる改変が、内在性プロモーターの改変、または異種プロモーターの導入を介したものである、請求項113に記載の操作細胞。
【請求項115】
ヒト細胞、または動物細胞、任意に、ブタ細胞、ウシ細胞もしくはヒツジ細胞であるか、または前記細胞に由来する、請求項1~114のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項116】
ヒト細胞であるか、またはヒト細胞に由来する、請求項115に記載の操作細胞。
【請求項117】
多能性幹細胞もしくはその子孫に由来する分化細胞であるか、または前記分化細胞に由来する、請求項1~116のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項118】
前記多能性幹細胞が、人工多能性幹細胞であるか、または人工多能性幹細胞に由来する、請求項117に記載の操作細胞。
【請求項119】
ドナー対象から単離した初代細胞であるか、または前記初代細胞に由来する、請求項1~118のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項120】
前記ドナー対象が、前記初代細胞を前記ドナー対象から得る時点に、健常であるか、または疾患もしくは病態を有する疑いがない、請求項119に記載の操作細胞。
【請求項121】
膵島β細胞、免疫細胞、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、内皮細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、筋肉細胞、心臓細胞、血液細胞、膵臓の膵島細胞、平滑筋細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心筋細胞、視細胞、幹細胞、造血幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、間葉幹細胞、胚性幹細胞及び多能性幹細胞(PSC)から選択される、請求項1~120のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項122】
内皮細胞であるか、または内皮細胞に由来する、請求項1~121のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項123】
上皮細胞であるか、または上皮細胞に由来する、請求項1~121のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項124】
多能性幹細胞であるか、または多能性幹細胞に由来する、請求項1~121のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項125】
胚性幹細胞であるか、または胚性幹細胞に由来する、請求項1~121のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項126】
間葉系列の細胞であるか、または前記細胞に由来する、請求項1~121のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項127】
ABO血液型O型、Rh因子陰性(Rh-)の1つ以上であり、機能型のABO Aアレル及び/または機能型のABO Bアレル、あるいはRh因子陽性(Rh+)を含む、請求項1~126のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項128】
キメラ抗原受容体(CAR)を含む、請求項1~127のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項129】
請求項1~128のいずれか1項に記載の操作細胞を含む、細胞集団。
【請求項130】
前記集団中の細胞の少なくとも約30%が、請求項91のいずれか1項に記載の操作細胞を含む、請求項129に記載の細胞集団。
【請求項131】
前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて前記改変を含む、請求項129または130に記載の細胞集団。
【請求項132】
前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかで、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記MICAポリペプチドの細胞表面発現が低下している、請求項129~131のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項133】
前記操作細胞上での前記MICAポリペプチドの表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られない、請求項129~132のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項134】
前記集団中の細胞の少なくとも約50%で、前記MICAポリペプチドの細胞表面発現が見られない、請求項129~133のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項135】
前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかで、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記MICBポリペプチドの細胞表面発現が低下している、請求項129~134のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項136】
前記操作細胞上での前記MICBポリペプチドの表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICBポリペプチドの細胞表面発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られない、請求項129~135のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項137】
前記集団中の細胞の少なくとも約50%で、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記MICBポリペプチドの細胞表面発現が見られない、請求項129~136のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項138】
前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記1つ以上の寛容原性因子をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項129~137のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項139】
前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項129~138のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項140】
前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含む、請求項129~139のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項141】
前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、B2M及び/またはCIITAの発現の低下を含む、請求項129~140のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項142】
前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、B2M及びCIITAの発現の低下を含む、請求項129~141のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項143】
前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、B2M遺伝子のアレルの両方を不活性化する1つ以上の変化を含む、請求項129~142のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項144】
前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CIITA遺伝子のアレルの両方を不活性化する1つ以上の変化を含む、請求項129~143のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項145】
請求項129~144のいずれか1項に記載の細胞集団を含む、組成物。
【請求項146】
請求項129~145のいずれか1項に記載の操作細胞集団を含む、組成物であって、
(a)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかで、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記MICAポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、前記操作細胞上での前記MICAポリペプチドの表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られず、
(b)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、
(c)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含み、前記操作細胞上での前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または前記1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られない、
前記組成物。
【請求項147】
請求項129~145のいずれか1項に記載の操作細胞集団を含む、組成物であって、
(a)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかで、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記MICBポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、前記操作細胞上での前記MICBポリペプチドの表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICBポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られず、
(b)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、
(c)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含み、前記操作細胞上での前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または前記1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られない、
前記組成物。
【請求項148】
請求項129~145のいずれか1項に記載の操作細胞集団を含む、組成物であって、
(a)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかで、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記MICAポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、前記操作細胞上での前記MICAポリペプチドの表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られず、
(b)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかで、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記MICBポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、前記操作細胞上での前記MICBポリペプチドの表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICBポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られず、
(c)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、
(d)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含み、前記操作細胞上での前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または前記1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られない、
前記組成物。
【請求項149】
操作した初代膵島β細胞の集団を含む組成物であって、
前記操作した初代膵島β細胞が、
(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊
を含む、前記組成物。
【請求項150】
操作した初代T細胞の集団を含む組成物であって、
前記操作した初代T細胞が、
(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、ならびに(ii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊
を含む、前記組成物。
【請求項151】
操作した初代甲状腺細胞の集団を含む組成物であって、
前記操作した初代甲状腺細胞が、
(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子(CD47tg)、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊
を含む、前記組成物。
【請求項152】
操作した初代皮膚細胞の集団を含む組成物であって、
前記操作した初代皮膚細胞が、
(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子(CD47tg)、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊
を含む、前記組成物。
【請求項153】
操作した初代内皮細胞の集団を含む組成物であって、
前記操作した初代内皮細胞が、
(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子(CD47tg)、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊
を含む、前記組成物。
【請求項154】
操作した初代網膜色素上皮細胞の集団を含む組成物であって、
前記操作した初代網膜色素上皮細胞が、
(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子(CD47tg)、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊
を含む、前記組成物。
【請求項155】
前記操作細胞集団の操作細胞が、前記B2M遺伝子のアレルのすべてにおけるインデルを含む、請求項149~154のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項156】
前記操作細胞集団の操作細胞が、CIITA遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊をさらに含む、請求項149~155のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項157】
前記操作細胞集団の操作細胞が、前記CIITA遺伝子のアレルのすべてにおけるインデルを含む、請求項149~156のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項158】
前記操作細胞集団の操作細胞が、MICAインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgという表現型を有する、請求項149~157のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項159】
前記操作細胞集団の操作細胞が、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgという表現型を有する、請求項149~157のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項160】
前記操作細胞集団の操作細胞が、MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgという表現型を有する、請求項149~157のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項161】
前記操作細胞が、ヌクレアーゼベースの遺伝子編集を用いて操作されている、請求項145~160のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項162】
医薬組成物である、請求項145~161のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項163】
薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む、請求項145~162のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項164】
凍結保護剤を含む、請求項145~163のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項165】
前記凍結保護剤が、約5%~約10%のDMSO(v/v)という濃度でDMSOを含む、請求項164に記載の組成物。
【請求項166】
請求項145~165のいずれか1項に記載の組成物を含む、容器。
【請求項167】
滅菌バッグである、請求項166に記載の容器。
【請求項168】
前記滅菌バッグが、凍結保存に適合している、請求項167に記載の容器。
【請求項169】
操作細胞を作製する方法であって、
(a)供給源細胞で、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下または消失させること、
(b)前記供給源細胞で、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させること、ならびに
(c)前記供給源細胞で、MICA及び/またはMICBの発現を低下または消失させること
を含む、前記方法。
【請求項170】
対象で使用するための操作細胞を作製する方法であって、前記対象が、自己免疫疾患を有すると疑われるか、または前記疾患を有し、前記方法が、
(a)供給源細胞で、MHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子の発現を低下または消失させること、
(b)前記供給源細胞で、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させること、ならびに
(c)前記供給源細胞で、MICA及び/またはMICBの発現を低下または消失させること
を含む、前記方法。
【請求項171】
対象で使用するための操作細胞を作製する方法であって、前記対象が、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体を有すると判断され、前記方法が、
(a)供給源細胞で、MHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子の発現を低下または消失させること、
(b)前記供給源細胞で、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させること、ならびに
(c)前記供給源細胞で、MICA及び/またはMICBの発現を低下または消失させること
を含む、前記方法。
【請求項172】
対象が抗MICA抗体を有する場合に、MICAの発現を低下または消失させること、
任意にさらに、MICBの発現を低下または消失させること
を含む、請求項169~171のいずれか1項に記載の方法。
【請求項173】
対象が抗MICB抗体を有する場合に、MICBを低下または消失させること、
任意にさらに、MICAの発現を低下または消失させること
を含む、請求項169~171のいずれか1項に記載の方法。
【請求項174】
対象が抗MICA抗体及び抗MICB抗体を有する場合に、MICA及びMICBの発現を低下または消失させることを含む、請求項169~171のいずれか1項に記載の方法。
【請求項175】
対象で使用するための操作細胞を作製する方法であって、
(a)供給源細胞で、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下または消失させること、
(b)前記供給源細胞で、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させること、ならびに
(c)個体が、あるポリペプチドを特異的に認識する抗体を有すると判断されたら、前記供給源細胞で、前記ポリペプチドの表面発現を低下または消失させること
含む、前記方法。
【請求項176】
前記1つ以上の寛容原性因子が、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDOl、CTLA4-Ig、C1インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8及びSERPINB9、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項169~175のいずれか1項に記載の方法。
【請求項177】
前記1つ以上の寛容原性因子が、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200及びMFGE8、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項169~176のいずれか1項に記載の方法。
【請求項178】
前記1つ以上の寛容原性因子の少なくとも1つが、CD47である、請求項169~177のいずれか1項に記載の方法。
【請求項179】
前記1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下または消失させることを含む、請求項169~178のいずれか1項に記載の方法。
【請求項180】
操作細胞を作製する方法であって、
(a)供給源細胞で、CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させること、ならびに
(b)前記供給源細胞で、MICA及び/またはMICBの発現を低下させること
を含む、前記方法。
【請求項181】
操作細胞を作製する方法であって、
(i)
(a)1つ以上のMHC I分子及び/または1つ以上のMHC II分子の発現を低下させること、
(b)MICA及び/またはMICBの発現を低下させること、
(c)CD47、任意にCD24及びPD-L1の発現を増加させること、ならびに
(d)CD46、CD55、CD59及びCR1の発現を増加させること、
(ii)
(a)1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させること、
(b)MIC-A及び/またはMIC-Bの発現を低下させること、
(c)TXNIPの発現を低下させること、
(d)PD-L1及びHLA-Eの発現を増加させること、ならびに
(e)任意に、A20/TNFAIP3及びMANFの発現を増加させること、
(iii)
(a)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させること、ならびに
(b)MICA及び/またはMICBの発現を低下させること、
(iv)
(a)1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させること、ならびに
(b)CD47の発現を増加させること、
(v)
ある遺伝子の発現を増加または減少させる追加の編集をさらに含む(i)~(iv)のいずれか、
という組み合わせのうちのいずれかの1つを含む、前記方法。
【請求項182】
操作細胞を作製する方法であって、
(a)1つ以上のMHC I分子をノックアウトすること、
(b)MICA及び/またはMICBをノックアウトすること、
(c)TXNIPをノックアウトすること、ならびに
(d)PD-L1及びHLAEをノックインすること
を含む、前記方法。
【請求項183】
A20/TNFAIP3及びMANFをノックインすることをさらに含む、請求項180~182のいずれか1項に記載の方法。
【請求項184】
前記方法が、前記MICAの発現を低下または消失させることを含み、前記発現を低下または消失させることが、MICAタンパク質の発現を低下または消失させることを含む、請求項169~183のいずれか1項に記載の方法。
【請求項185】
前記方法が、前記MICBの発現を低下または消失させることを含み、前記発現を低下または消失させることが、MICBタンパク質の発現を低下または消失させることを含む、請求項169~184のいずれか1項に記載の方法。
【請求項186】
前記方法が、前記MICA及びMICBの発現を低下または消失させることを含み、前記発現を低下または消失させることが、MICAタンパク質及びMICBタンパク質の発現を低下または消失させることを含む、請求項169~185のいずれか1項に記載の方法。
【請求項187】
前記発現を低下または消失させることが、細胞表面発現を低下または消失させることを含む、請求項169~186のいずれか1項に記載の方法。
【請求項188】
発現を低下または消失させることが、該当遺伝子の活性を低下または消失させる改変を導入することを含む、請求項169~187のいずれか1項に記載の方法。
【請求項189】
前記改変が、遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊である、請求項188に記載の方法。
【請求項190】
前記不活性化または破壊が、インデルを含む、請求項189に記載の方法。
【請求項191】
前記インデルが、前記遺伝子のゲノムDNAの連続領域のフレームシフト変異または欠失である、請求項190に記載の方法。
【請求項192】
該当遺伝子の活性をノックアウトすることを含む、請求項188~191のいずれか1項に記載の方法。
【請求項193】
前記1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下または消失させる改変が、B2Mの改変である、請求項188~192のいずれか1項に記載の方法。
【請求項194】
前記1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下または消失させる改変が、CIITAの改変である、請求項188~193のいずれか1項に記載の方法。
【請求項195】
ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集を介して、前記改変が行われる、請求項188~194のいずれか1項に記載の方法。
【請求項196】
前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものである、請求項195に記載の方法。
【請求項197】
前記CRISPR-Casの組み合わせが、Cas9またはCas12からなる群から選択されるCasを含む、請求項196に記載の方法。
【請求項198】
前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせが、ガイドRNA(gRNA)を含む、請求項196または197に記載の方法。
【請求項199】
前記CRISPR-Casの組み合わせが、gRNAと前記Casタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、請求項198に記載の方法。
【請求項200】
前記1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させる改変が、前記1つ以上の寛容原性因子をコードする少なくとも1つの外因性ポリヌクレオチドを導入することを含む、請求項188~199のいずれか1項に記載の方法。
【請求項201】
前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、前記寛容原性因子の2つ以上をコードするマルチシストロニックなベクターである、請求項200に記載の方法。
【請求項202】
前記1つ以上の寛容原性因子の少なくとも1つが、CD47である、請求項169~201のいずれか1項に記載の方法。
【請求項203】
前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、前記細胞のゲノムに組み込まれる、請求項189~202のいずれか1項に記載の方法。
【請求項204】
前記組み込みが、非標的挿入によるものである、請求項203に記載の方法。
【請求項205】
レンチウイルスベクターを介して、前記組み込みが行われる、請求項204に記載の方法。
【請求項206】
前記組み込みが、標的ゲノム遺伝子座への標的挿入によるものである、請求項203に記載の方法。
【請求項207】
ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集と相同配向型修復を介して、前記組み込みが行われる、請求項206に記載の方法。
【請求項208】
前記標的ゲノム遺伝子座が、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、TRAC遺伝子座、TRBC遺伝子座、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231座位、CLYBL遺伝子座、ROSA26遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択される、請求項206または207に記載の方法。
【請求項209】
前記操作細胞が所望の細胞種に分化するように、細胞分化技法を行うことをさらに含む、請求項169~208のいずれか1項に記載の方法。
【請求項210】
前記供給源細胞をドナー対象から単離する、請求項169~209のいずれか1項に記載の方法。
【請求項211】
前記ドナー対象が、単離時点に、健常であるか、または疾患もしくは病態を有する疑いがない、請求項210に記載の方法。
【請求項212】
請求項169~211に記載のいずれか1項の方法を用いて作製した、操作細胞。
【請求項213】
同種異系療法を用いて個体の病態を治療する方法であって、前記個体に、請求項1~128のいずれか1項に記載の操作細胞、請求項129~144のいずれか1項に記載の操作細胞集団、または請求項145~165のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項214】
前記病態が、疾患または細胞不全である、請求項213に記載の方法。
【請求項215】
前記疾患が、ループス、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、セリアック病、グレーブス病、乾癬、大腸炎、1型糖尿病、全身性ループスエリテマトーデス、炎症性腸疾患、アジソン病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、自己免疫性血管炎及び悪性貧血からなる群から選択される、請求項213または214に記載の方法。
【請求項216】
前記細胞不全が、造血系疾患もしくは造血系障害と関連するか、または前記疾患もしくは病態が、造血系疾患もしくは造血系障害である、請求項214に記載の方法。
【請求項217】
前記造血系疾患または造血系障害が、骨髄異形成、再生不良性貧血、ファンコニ貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、鎌状赤血球症、ダイアモンドブラックファン貧血、シュワッハマンダイアモンド障害、コストマン症候群、慢性肉芽腫性疾患、副腎白質ジストロフィー、白血球接着不全症、血友病、サラセミア、βサラセミア、白血病、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性(骨髄)白血病(AML)、成人リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、若年性慢性骨髄性白血病(CML)、及び若年性骨髄単球性白血病(JMML)、重症複合免疫不全症(SCID)、X連鎖重症複合免疫不全症、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、慢性肉芽腫性疾患、チェディアック・東症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)またはAIDSである、請求項216に記載の方法。
【請求項218】
前記細胞不全が、白血病もしくはミエローマと関連するか、または前記疾患もしくは病態が、白血病もしくはミエローマである、請求項213または214に記載の方法。
【請求項219】
前記細胞不全が、自己免疫疾患もしくは自己免疫病態と関連するか、または前記疾患もしくは病態が、自己免疫疾患または自己免疫病態である、請求項213または214に記載の方法。
【請求項220】
前記自己免疫疾患または自己免疫病態が、急性播種性脳脊髄炎、急性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗合成酵素症候群、アトピー性アレルギー、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ぶどう膜炎、バロー病、バロー同心円硬化症、ベーチェット症候群、ベルジェ病、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性再発性多発性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠損症、脳動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、びまん皮膚硬化型全身性強皮症、ドレスラー症候群、円板状ループスエリテマトーデス、湿疹、付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維性肺胞炎、胃炎、胃腸類天疱瘡、巨細胞性動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症性脱髄疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、炎症性脱髄性多発神経障害、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎、若年性関節リウマチ、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA疾患(LAD)、ルー・ゲーリック病、ルポイド肝炎、ループスエリテマトーデス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発性血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合性結合組織病、限局性強皮症、ムッカ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、視神経脊髄炎、ニューロミオトニア、眼瘢痕性類天疱瘡、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、回帰性リウマチ、傍腫瘍性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンベルク症候群、パーソネージ・ターナー症候群、周辺部ぶどう膜炎、天疱瘡、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性神経障害、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発性軟骨炎、ライター症候群、むずむず脚症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スチル病、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群、スウィート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患、未分化脊椎関節症、血管炎、白斑またはウェゲナー肉芽腫症である、請求項219に記載の方法。
【請求項221】
前記細胞集団が、造血幹細胞(HSC)及び/またはその誘導体を含む集団である、請求項216~220のいずれか1項に記載の方法。
【請求項222】
前記細胞不全が、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、神経変性疾患もしくは神経変性病態、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、うつ病、神経精神障害発作、もしくは筋萎縮性側索硬化症(ALS)と関連するか、または前記疾患もしくは病態が、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、神経変性疾患もしくは神経変性病態、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、うつ病、神経精神障害発作、もしくは筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、請求項214に記載の方法。
【請求項223】
前記細胞集団が、神経細胞及び/またはグリア細胞を含む集団である、請求項222に記載の方法。
【請求項224】
前記個体において、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体が循環血液中に存在する、請求項213~223のいずれか1項に記載の方法。
【請求項225】
前記個体において、前記抗MICA抗体及び/または前記抗MICB抗体が持続的に存在する、請求項224に記載の方法。
【請求項226】
前記個体が、前記抗MICA抗体及び/または前記抗MICB抗体の存在の原因となる自己免疫関連病態である、請求項224または225に記載の方法。
【請求項227】
前記自己免疫関連病態が、橋本病である、請求項226に記載の方法。
【請求項228】
前記自己免疫関連病態が、ループスである、請求項226に記載の方法。
【請求項229】
前記自己免疫関連病態が、多発性硬化症である、請求項226に記載の方法。
【請求項230】
前記個体が、前記抗MICA抗体及び/または前記抗MICB抗体の存在に基づき、前記治療のために選択された、請求項213~229のいずれか1項に記載の方法。
【請求項231】
前記抗MICA抗体及び/または前記抗MICB抗体の存在に基づき、前記個体を前記治療のために選択することをさらに含む、請求項213~230のいずれか1項に記載の方法。
【請求項232】
前記個体を選ぶことが、前記抗MICA抗体及び/または前記抗MICB抗体の存在を前記個体において測定することをさらに含む、請求項231に記載の方法。
【請求項233】
同種異系療法を用いて個体の病態を治療する方法であって、
(a)前記個体の抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態を判断することであって、
抗MICA抗体陽性の状態により、前記個体から得た血清試料に抗MICA抗体が存在することが示され、
抗MICB抗体陽性の状態により、前記個体から得た血清試料に抗MICB抗体が存在することが示される、
前記判断することと、
(b)前記抗MICA抗体及び/または前記抗MICB抗体の状態に基づき、前記個体に、129~144のいずれか1項に記載の操作細胞集団を含む組成物、または請求項145~165のいずれか1項に記載の組成物を投与することであって、
前記抗MICA抗体の状態が陽性である場合には、前記集団の操作細胞が、MICAの発現の低下を含み、
前記抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、前記集団の操作細胞が、MICBの発現の低下を含み、
前記抗MICA抗体の状態及び前記抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、前記集団の操作細胞が、MICA及びMICBの発現の低下を含む、
前記投与すること
を含む、前記方法。
【請求項234】
前記個体の抗MICA抗体の状態及び/または抗MICB抗体の状態に基づき、前記個体を前記治療のために選択することをさらに含む、請求項233に記載の方法。
【請求項235】
前記個体の抗MICA抗体の状態及び/または抗MICB抗体の状態を測定することをさらに含む、請求項233または234に記載の方法。
【請求項236】
その必要がある個体での使用に適する同種異系療法を特定する方法であって、
前記同種異系療法が、請求項129~144のいずれか1項に記載の操作細胞集団を含む組成物、または請求項145~165のいずれか1項に記載の組成物を含み、
前記方法が、前記個体の抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態を判断して、前記個体での使用に適する同種異系療法を特定することを含み、
前記抗MICA抗体の状態が陽性である場合には、前記適する同種異系療法が、MICAの発現の低下を含む前記集団の操作細胞を含み、
前記抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、前記適する同種異系療法が、MICBの発現の低下を含む前記集団の操作細胞を含み、
前記抗MICA抗体の状態及び前記抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、前記適する同種異系療法が、MICA及びMICBの発現の低下を含む前記集団の操作細胞を含む、
前記方法。
【請求項237】
1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に投与することをさらに含む、請求項213~235のいずれか1項に記載の方法。
【請求項238】
前記個体が、1つ以上の免疫抑制剤を投与されたことがある、請求項213~235のいずれか1項に記載の方法。
【請求項239】
前記1つ以上の免疫抑制剤が、小分子または抗体である、請求項237または238に記載の方法。
【請求項240】
前記1つ以上の免疫抑制剤が、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、副腎皮質ステロイド、プレドニゾン、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア剤、ブレキナル、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン(チモシン-α)及び免疫抑制抗体からなる群から選択される、請求項237~239のいずれか1項に記載の方法。
【請求項241】
前記1つ以上の免疫抑制剤が、シクロスポリンを含む、請求項237~240のいずれか1項に記載の方法。
【請求項242】
前記1つ以上の免疫抑制剤が、ミコフェノール酸モフェチルを含む、請求項237~240のいずれか1項に記載の方法。
【請求項243】
前記1つ以上の免疫抑制剤が、副腎皮質ステロイドを含む、請求項237~240のいずれか1項に記載の方法。
【請求項244】
前記1つ以上の免疫抑制剤が、シクロホスファミドを含む、請求項237~240のいずれか1項に記載の方法。
【請求項245】
前記1つ以上の免疫抑制剤が、ラパマイシンを含む、請求項237~240のいずれか1項に記載の方法。
【請求項246】
前記1つ以上の免疫抑制剤が、タクロリムス(FK-506)を含む、請求項237~240のいずれか1項に記載の方法。
【請求項247】
前記1つ以上の免疫抑制剤が、抗胸腺細胞グロブリンを含む、請求項237~240のいずれか1項に記載の方法。
【請求項248】
前記1つ以上の免疫抑制剤が、1つ以上の免疫調節剤である、請求項237~240のいずれか1項に記載の方法。
【請求項249】
前記1つ以上の免疫調節剤が、小分子または抗体である、請求項248に記載の方法。
【請求項250】
前記抗体が、IL-2受容体のp75、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFN-γ、TNF-α、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-6、IGF、IGFR1、IL-7、IL-8、IL-10、CD11a、CD58、及びそれらのリガンドのいずれかに結合する抗体からなる群から選択される受容体またはリガンドの1つ以上に結合する、請求項239または請求項249に記載の方法。
【請求項251】
前記1つ以上の免疫抑制剤を、前記個体に、前記操作細胞の投与前に投与するかまたは投与したことがある、請求項237~250のいずれか1項に記載の方法。
【請求項252】
前記1つ以上の免疫抑制剤を、前記個体に、前記操作細胞の投与の少なくとも1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、8日前、9日前、10日前、11日前、12日前、13日前または14日前に投与するかまたは投与したことがある、請求項237~251のいずれか1項に記載の方法。
【請求項253】
前記1つ以上の免疫抑制剤を、前記個体に、前記操作細胞の投与の少なくとも1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、7週間前、8週間前、9週間前、10週間、またはそれ以上前に投与するかまたは投与したことがある、請求項237~251のいずれか1項に記載の方法。
【請求項254】
前記1つ以上の免疫抑制剤を、前記個体に、前記操作細胞の投与の少なくとも1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後または14日後に投与するかまたは投与したことがある、請求項237~251のいずれか1項に記載の方法。
【請求項255】
前記1つ以上の免疫抑制剤を、前記個体に、前記操作細胞の投与の少なくとも1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、9週間後、10週間、またはそれ以上後に投与するかまたは投与したことがある、請求項237~251のいずれか1項に記載の方法。
【請求項256】
前記1つ以上の免疫抑制剤を、前記個体に、前記操作細胞の1回目の投与と同じ日に投与するかまたは投与したことがある、請求項237~251のいずれか1項に記載の方法。
【請求項257】
前記1つ以上の免疫抑制剤を、前記個体に、前記操作細胞の投与後に投与するかまたは投与したことがある、請求項237~251のいずれか1項に記載の方法。
【請求項258】
前記1つ以上の免疫抑制剤を、前記個体に、前記操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の後に投与するかまたは投与したことがある、請求項237~251のいずれか1項に記載の方法。
【請求項259】
前記1つ以上の免疫抑制剤を、前記個体に、前記操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の前に投与するかまたは投与したことがある、請求項237~251のいずれか1項に記載の方法。
【請求項260】
前記1つ以上の免疫抑制剤を、前記個体に、前記操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、8日前、9日前、10日前、11日前、12日前、13日前または14日前に投与するかまたは投与したことがある、請求項237~251のいずれか1項に記載の方法。
【請求項261】
前記1つ以上の免疫抑制剤を、前記個体に、前記操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、7週間前、8週間前、9週間前、10週間、またはそれ以上前に投与するかまたは投与したことがある、請求項237~251のいずれか1項に記載の方法。
【請求項262】
前記1つ以上の免疫抑制剤を、前記個体に、前記操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後または14日後に投与するかまたは投与したことがある、請求項237~251のいずれか1項に記載の方法。
【請求項263】
前記1つ以上の免疫抑制剤を、前記個体に、前記操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、9週間後、10週間、またはそれ以上後に投与するかまたは投与したことがある、請求項237~251のいずれか1項に記載の方法。
【請求項264】
前記操作細胞の改変を含まない免疫原性細胞の免疫拒絶を軽減するために投与される1つ以上の免疫抑制剤の投与量よりも低い投与量で、前記1つ以上の免疫抑制剤が投与される、請求項237~263のいずれか1項に記載の方法。
【請求項265】
前記操作細胞が、前記操作細胞の殺傷を制御できる、請求項237~264のいずれか1項に記載の方法。
【請求項266】
前記操作細胞が、自殺遺伝子または自殺スイッチを含む、請求項237~265のいずれか1項に記載の方法。
【請求項267】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、薬物もしくはプロドラッグの存在下で、または選択的な外因性化合物によって活性化されると、制御細胞死を誘導する、請求項266に記載の方法。
【請求項268】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、前記操作細胞のアポトーシスを誘導できる誘導タンパク質である、請求項266または請求項267に記載の方法。
【請求項269】
前記操作細胞のアポトーシスを誘導できる前記誘導タンパク質が、カスパーゼタンパク質である、請求項268に記載の方法。
【請求項270】
前記カスパーゼタンパク質が、カスパーゼ9である、請求項269に記載の方法。
【請求項271】
前記自殺遺伝子または自殺スイッチが、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシンによる活性化型のカスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、請求項266~270のいずれか1項に記載の方法。
【請求項272】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に投与した後に活性化して、制御細胞死を誘導する、請求項266~271のいずれか1項に記載の方法。
【請求項273】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に投与する前に活性化して、制御細胞死を誘導する、請求項266~271のいずれか1項に記載の方法。
【請求項274】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、前記操作細胞を前記個体に投与した後に活性化して、制御細胞死を誘導する、請求項266~273のいずれか1項に記載の方法。
【請求項275】
前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、細胞毒性または前記個体に対するその他の悪影響が生じた場合に活性化して、制御細胞死を誘導する、請求項266~274のいずれか1項に記載の方法。
【請求項276】
前記操作細胞集団の操作細胞を枯渇させることが可能な薬剤を投与することを含む、請求項180~275のいずれか1項に記載の方法。
【請求項277】
前記操作細胞を枯渇させることが可能な薬剤が、前記操作細胞の表面に発現したタンパク質を認識する抗体である、請求項276に記載の方法。
【請求項278】
前記抗体が、CCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMA及びRQR8を認識する抗体からなる群から選択される、請求項277に記載の方法。
【請求項278】
前記抗体が、モガムリズマブ、AFM13、MOR208、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、リツキシマブ、リツキシマブ-Rllb、トムゾツキシマブ、RO5083945(GA201)、セツキシマブ、Hul4.18K322A、Hul4.18-IL2、Hu3F8、ジヌツキシマブ、c.60C3-Rllc、及びこれらのバイオシミラーからなる群から選択される、請求項277に記載の方法。
【請求項279】
前記操作細胞の表面上の前記1つ以上の寛容原性因子を認識する薬剤を投与することを含む、請求項213~236及び276~278のいずれか1項に記載の方法。
【請求項280】
前記操作細胞が、前記1つ以上の寛容原性因子を発現するように操作されている、請求項279に記載の方法。
【請求項281】
前記1つ以上の寛容原性因子が、CD47である、請求項279または280に記載の方法。
【請求項282】
1つ以上の追加の治療剤を前記個体に投与することをさらに含む、請求項213~281のいずれか1項に記載の方法。
【請求項283】
前記個体が、1つ以上の追加の治療剤を投与されたことがある、請求項213~282のいずれか1項に記載の方法。
【請求項284】
前記方法の治療有効性をモニタリングすることをさらに含む、請求項213~283のいずれか1項に記載の方法。
【請求項285】
前記方法の予防有効性をモニタリングすることをさらに含む、請求項213~284のいずれか1項に記載の方法。
【請求項286】
1つ以上の疾患症状が所望どおりに抑制されるまで繰り返される、請求項213~285のいずれか1項に記載の方法。
【請求項287】
自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項1~128のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項288】
前記自殺遺伝子または自殺スイッチが、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシンによる活性化型のカスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、請求項287に記載の操作細胞。
【請求項289】
前記自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び前記自殺遺伝子またはセーフティスイッチと関連する遺伝子が、前記操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する、請求項287または請求項288に記載の操作細胞。
【請求項290】
前記自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び前記1つ以上の寛容原性因子が、前記操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する、請求項287または請求項288に記載の操作細胞。
【請求項291】
前記バイシストロニックなカセットが、前記操作細胞のゲノムに、任意にレンチウイルスベクターを用いて前記外因性ポリヌクレオチドを前記細胞に導入することによって、非標的挿入によって組み込まれている、請求項289または請求項290に記載の操作細胞。
【請求項292】
前記バイシストロニックなカセットが、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座に、標的挿入によって組み込まれており、任意に、前記標的挿入が、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集と相同配向型修復によるものである、請求項291に記載の操作細胞。
【請求項293】
前記1つ以上の寛容原性因子が、CD47である、請求項286~292のいずれか1項に記載の操作細胞。
【請求項294】
前記操作細胞が、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項169~211のいずれか1項に記載の方法。
【請求項295】
前記自殺遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシンによる活性化型のカスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、請求項294に記載の方法。
【請求項296】
前記自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び前記自殺遺伝子またはセーフティスイッチと関連する遺伝子が、前記操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する、請求項294または請求項295に記載の方法。
【請求項297】
前記自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び前記1つ以上の寛容原性因子が、前記操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する、請求項294または請求項295に記載の方法。
【請求項298】
前記バイシストロニックなカセットが、前記操作細胞のゲノムに、非標的挿入によって組み込まれている、請求項296または請求項297に記載の方法。
【請求項399】
前記バイシストロニックなカセットが、前記操作細胞の標的ゲノム遺伝子座に、標的挿入によって組み込まれている、請求項296または請求項297に記載の方法。
【請求項300】
前記1つ以上の寛容原性因子が、CD47である、請求項294~299のいずれか1項に記載の方法。
【請求項301】
前記操作細胞集団の操作細胞が、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項145~165のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項302】
前記自殺遺伝子または自殺スイッチが、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシンによる活性化型のカスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択される、請求項301に記載の組成物。
【請求項303】
前記自殺遺伝子、及び前記自殺遺伝子またはセーフティスイッチと関連する遺伝子が、前記操作細胞集団の操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する、請求項301または請求項302に記載の組成物。
【請求項304】
前記自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び前記外因性CD47が、前記操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する、請求項301または請求項303に記載の組成物。
【請求項305】
前記バイシストロニックなカセットが、任意に、レンチウイルスベクターを用いて前記外因性ポリヌクレオチドを前記操作細胞集団の操作細胞に導入することによって、前記ゲノムに、非標的挿入によって組み込まれている、請求項303または請求項304に記載の組成物。
【請求項306】
前記バイシストロニックなカセットが、前記操作細胞集団の操作細胞の標的ゲノム遺伝子座に、標的挿入によって組み込まれており、任意に、前記標的挿入が、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集と相同配向型修復によるものである、請求項303または請求項304に記載の組成物。
【請求項307】
前記操作細胞が、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させるための1つ以上の改変を含み、前記1つ以上の寛容原性因子のそれぞれが、A20/TNFAIP3、C1インヒビター、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD47、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1、またはSerpinb9からなる群から選択される、請求項1~128のいずれか1項に記載の操作細胞、請求項129~144のいずれか1項に記載の細胞集団、または請求項169~286のいずれか1項に記載の方法。
【請求項308】
前記操作細胞が、自家細胞である、請求項1~128のいずれか1項に記載の操作細胞、または請求項169~286のいずれか1項に記載の方法。
【請求項309】
前記操作細胞が、同種異系細胞である、請求項1~128のいずれか1項に記載の方法、または請求項169~286のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年8月11日に出願した米国特許仮出願第63/232,163号及び2022年6月17日に出願した米国特許仮出願第63/353,548号の優先権及び利益を主張するものであり、これらの各仮出願の内容は、参照により、その全体が、あらゆる目的で本明細書に援用される。
【0002】
電子形式の配列表の参照
電子形式の配列表(186152005540SEQLIST.xml、サイズ:34,158バイト、作成日:2022年8月11日)の内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0003】
分野
ある特定の態様では、本開示は、同種異系細胞療法で使用するために、遺伝子改変のような改変を1つ以上含む操作細胞に対するものである。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、免疫機能低下細胞である。
【発明の概要】
【0004】
概要
ドナー同種異系抗原に対する、レシピエントの感作は、細胞療法を含めた臨床移植療法が直面している問題である。例えば、移植レシピエントの免疫系が同種異系材を拒絶する傾向は、移植療法の潜在的効力を大幅に低下させ、このような治療に関連する考え得るプラス効果を低下させる。レシピエントの免疫系による検出を回避する同種異系細胞ベースの療法を生み出すための新規のアプローチ、組成物及び方法を含め、数多くの障害及び病態を治療するための同種異系細胞の改善に対する必要性が依然として存在する。
【0005】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、(a)MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)及び/またはMHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)の発現を低下させる改変、(b)1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させる改変、ならびに(c)1つ以上の主要組織適合性複合体クラスI分子(MHCクラスI分子)及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる改変を含む操作細胞であり、その発現の変化は、これらの改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。
【0006】
いくつかの実施形態では、その改変は、(i)1つ以上のMHCクラスI分子、(ii)1つ以上のMHCクラスII分子、または(iii)1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、その改変は、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-BまたはNFY-Cの1つ以上の発現の低下を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子を発現しない。
【0009】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-BまたはNFY-Cの1つ以上を発現しない。
【0010】
いくつかの実施形態では、その改変は、1つ以上のMHCクラスI分子の細胞表面発現を低下させることによって、その1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる。
【0011】
いくつかの実施形態では、その改変は、β-2ミクログロブリン(B2M)の発現を低下させることによって、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる。
【0012】
いくつかの実施形態では、その改変は、B2M遺伝子の活性を低下させることによって、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低下させる。
【0013】
いくつかの実施形態では、その改変は、B2M遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊によって、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる。
【0014】
いくつかの実施形態では、その改変は、すべてのB2Mコード配列の不活性化または破壊によって、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる。
【0015】
いくつかの実施形態では、その不活性化または破壊は、B2M遺伝子におけるインデル、またはB2M遺伝子のゲノムDNAの連続領域の欠失を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、そのインデルは、フレームシフト変異である。
【0017】
いくつかの実施形態では、そのB2M遺伝子は、ノックアウトされている。
【0018】
いくつかの実施形態では、その改変は、CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、または部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)によるものである。
【0019】
いくつかの実施形態では、その改変は、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集によって、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低下させる。
【0020】
いくつかの実施形態では、そのCRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)またはヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、Mad7、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ及びCRISPR関連トランスポザーゼからなる群から選択した1つ以上のタンパク質によって行う。
【0021】
いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものである。
【0022】
いくつかの実施形態では、そのCRISPR-Casの組み合わせのCasは、Cas9またはCas12から選択されている。
【0023】
いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、そのCRISPR-Casの組み合わせは、B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、そのCRISPR-Casの組み合わせは、そのgRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。
【0025】
いくつかの実施形態では、その改変は、1つ以上のMHCクラスII分子の細胞表面発現を低下させることによって、その1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる。
【0026】
いくつかの実施形態では、その改変は、CIITAの発現を低下させることによって、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる。
【0027】
いくつかの実施形態では、その改変は、CIITA遺伝子の活性を低下させることによって、1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低下させる。
【0028】
いくつかの実施形態では、その改変は、CIITA遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊によって、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる。
【0029】
いくつかの実施形態では、その改変は、すべてのCIITAコード配列の不活性化または破壊によって、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる。
【0030】
いくつかの実施形態では、その不活性化または破壊は、CIITA遺伝子におけるインデル、またはCIITA遺伝子のゲノムDNAの連続領域の欠失を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、そのインデルは、フレームシフト変異である。
【0032】
いくつかの実施形態では、そのCIITA遺伝子は、ノックアウトされている。
【0033】
いくつかの実施形態では、その改変は、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集によって、1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低下させる。
【0034】
いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、CIITA遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものである。
【0035】
いくつかの実施形態では、そのCRISPR-Casの組み合わせのCasは、Cas9またはCas12から選択されている。
【0036】
いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、そのCRISPR-Casの組み合わせは、CIITA遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、そのCRISPR-Casの組み合わせは、そのgRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。
【0038】
いくつかの実施形態では、その改変は、CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、または部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)によるものである。
【0039】
いくつかの実施形態では、そのCRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)またはヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、Mad7、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ及びCRISPR関連トランスポザーゼからなる群から選択した1つ以上のタンパク質によって行う。
【0040】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、(a)MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)及び/またはMHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)の発現を低下させる改変、ならびに(b)1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させる改変を1つ以上含む操作細胞であり、その発現の変化は、その1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。
【0041】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、(a)MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)及び/またはMHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)の発現を低下させる改変、ならびに(b)1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させる改変を1つ以上含む操作細胞であり、その1つ以上の寛容原性因子は、CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させ、その発現の変化は、その1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。
【0042】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の改変は、1つ以上の主要組織適合性複合体クラスI分子(MHCクラスI分子)及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させ、CD47及び任意にCD24、及び/またはPD-L1の発現を増加させ、及び/またはCD46、CD55、CD59及びCR1の発現を増加させる。
【0043】
いくつかの実施形態では、その細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子、MICA及び/またはMICB、ならびにTXNIPのいずれかのノックアウト、PD-L1及びHLAEのノックインを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、その細胞は、A20/TNFAIP3及びMANFのノックインを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICAの発現を低下させるための1つ以上の改変を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、その操作細胞上でのMICAの表面発現の低下を含み、任意に、検出可能な表面発現が見られない。
【0047】
いくつかの実施形態では、MICAの発現を低下させる改変は、MICAのタンパク質発現を低下させる。
【0048】
いくつかの実施形態では、その操作細胞上で、MICAの検出可能な細胞表面発現が見られない。
【0049】
いくつかの実施形態では、MICAの発現を低下させる改変は、MICAをコードするmRNAの発現を低下させる。
【0050】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICA遺伝子の活性を消失させる1つ以上の改変を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、その改変は、MICA遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、その改変は、すべてのMICAコード配列の不活性化または破壊を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、その不活性化または破壊は、MICA遺伝子におけるインデルを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、その改変は、MICA遺伝子のゲノムDNAの連続領域のフレームシフト変異または欠失を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、その改変は、ノックアウトを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、その改変は、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集による改変であって、MICA遺伝子を標的とする改変である。
【0057】
いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集による改変は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)の媒介による改変、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の媒介による改変、またはCRISPR-Casの組み合わせの媒介によるものである。
【0058】
いくつかの実施形態では、そのCasは、Cas9またはCas12から選択されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、そのCRISPR-Casの組み合わせの媒介による改変は、MICA遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)の使用を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、そのCRISPR-Casの組み合わせの媒介による改変は、そのgRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体の使用を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、その改変は、CRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、または部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)によるものである。
【0062】
いくつかの実施形態では、そのCRISPR関連トランスポザーゼ、プライム編集、部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)またはヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3、Mad7、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ及びCRISPR関連トランスポザーゼからなる群から選択した1つ以上のタンパク質によって行う。
【0063】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICBの発現を低下させるための改変を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、その操作細胞上でのMICBの表面発現の低下を含み、任意に、検出可能な表面発現が見られない。
【0065】
いくつかの実施形態では、MICBの発現を低下させる改変は、MICBのタンパク質発現を低下させる。
【0066】
いくつかの実施形態では、その操作細胞上で、MICBの検出可能な細胞表面発現が見られない。
【0067】
いくつかの実施形態では、MICBの発現を低下させる改変は、MICBをコードするmRNAの発現を低下させる。
【0068】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICB遺伝子の活性を消失させる改変を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、その改変は、MICB遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、その改変は、すべてのMICBコード配列の不活性化または破壊を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、その不活性化または破壊は、MICB遺伝子におけるインデルを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、その改変は、MICB遺伝子のゲノムDNAの連続領域のフレームシフト変異または欠失である。
【0073】
いくつかの実施形態では、その改変は、ノックアウトである。
【0074】
いくつかの実施形態では、その改変は、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集による改変であって、MICB遺伝子を標的とする改変である。
【0075】
いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集による改変は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)の媒介による改変、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の媒介による改変、またはCRISPR-Casの組み合わせの媒介によるものである。
【0076】
いくつかの実施形態では、そのCasは、Cas9またはCas12から選択されている。
【0077】
いくつかの実施形態では、そのCRISPR-Casの組み合わせの媒介による改変は、MICB遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)の使用を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、そのCRISPR-Casの組み合わせの媒介による改変は、そのgRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体の使用を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、その改変は、NLRC5、TRAC、TRB、CD142、ABO、CD38、CD52、PCDH11Y、NLGN4Y及びRHDのいずれか1つ以上の発現を低下させる。
【0080】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子のそれぞれは、A20/TNFAIP3、C1インヒビター、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD47、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1またはSerpinb9からなる群から選択されている。
【0081】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-Eを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD24を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、PD-L1を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD46を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD55を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD59を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CR1を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、MANFを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、A20/TNFAIP3を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-E及びCD47を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD24、CD47またはPD-L1の1つ以上(すべてを含む)を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-E、CD24、CD47またはPD-L1の1つ以上(すべてを含む)を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD46、CD55、CD59またはCR1の1つ以上(すべてを含む)を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-E、CD46、CD55、CD59またはCR1の1つ以上(すべてを含む)を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59またはCR1の1つ以上(すべてを含む)を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-EまたはPD-L1の1つ以上(すべてを含む)を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-E、PD-L1またはA20/TNFAIPの1つ以上(すべてを含む)、及び任意にMANFを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-E、PD-L1またはMANFの1つ以上(すべてを含む)、及び任意にA20/TNFAIPを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子のそれぞれは、CD47、PD-L1、HLA-E、HLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200及びMFGE8からなる群から選択されている。
【0100】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、(i)(a)1つ以上のMHC I分子及び/または1つ以上のMHC II分子の発現を低下させる改変、ならびに(b)CD47の発現を増加させる改変、(ii)(a)1つ以上のMHC I分子及び/または1つ以上のMHC II分子の発現を低下させる改変、(b)MIC-A及び/またはMIC-Bの発現を低下させる改変、(c)CD47、ならびに任意にCD24及びPD-L1の発現を増加させる改変、ならびに(d)CD46、CD55、CD59及びCR1の発現を増加させる改変、(iii)(a)1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる改変、(b)MIC-A及び/またはMIC-Bの発現を低下させる改変、(c)TXNIPの発現を低下させる改変、(d)PD-L1及びHLA-Eの発現を増加させる改変、ならびに(e)任意に、A20/TNFAIP3及びMANFの発現を増加させる改変、(iv)(a)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させる改変、ならびに(b)MICA及び/またはMICBの発現を低下させる改変、(v)(a)標的の発現を増減させる追加の編集をさらに含む上記(i)~(iv)のいずれかに従う改変を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子の少なくとも1つは、CD47である。
【0102】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD47である。
【0103】
いくつかの実施形態では、CD47は、配列番号1のアミノ酸配列の少なくとも一部との同一性が少なくとも約85%であるアミノ酸配列を有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子の発現の増加は、その1つ以上の寛容原性因子の細胞表面発現の増加を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子の1つは、外因性ポリペプチドである。
【0106】
いくつかの実施形態では、その改変は、その1つ以上の寛容原性因子をコードする1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子のそれぞれは、プロモーターに機能可能に連結されている。
【0108】
いくつかの実施形態では、そのプロモーターは、構成的プロモーターである。
【0109】
いくつかの実施形態では、そのプロモーターは、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタインバーウイルス(EBV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びUBCプロモーターからなる群から選択されている。
【0110】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の外因性ポリヌクレオチドは、1つ以上のゲノム遺伝子座に組み込まれている。
【0111】
いくつかの実施形態では、その組み込みは、非標的挿入である。
【0112】
いくつかの実施形態では、その非標的挿入は、レンチウイルスベクターを用いて、その外因性ポリヌクレオチドをその細胞に導入することによる挿入である。
【0113】
いくつかの実施形態では、その組み込みは、標的挿入である。
【0114】
いくつかの実施形態では、その1つ以上のゲノム遺伝子座のそれぞれは、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座、CD142遺伝子座、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231座位、CLYBL遺伝子座、ROSA26遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択されている。
【0115】
いくつかの実施形態では、その1つ以上のゲノム遺伝子座のそれぞれは、B2M座位、TAP1座位、CIITA座位、TRAC座位、TRBC座位、MIC-A座位、MIC-B座位及びセーフハーバー座位からなる群から選択されている。
【0116】
いくつかの実施形態では、そのセーフハーバー座位は、AAVS1、ABO、CCR5、CLYBL、CXCR4、F3、FUT1、HMGB1、KDM5D、LRP1、MICA、MICB、RHD、ROSA26及びSHS231の座位からなる群から選択されている。
【0117】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子の発現の増加は、プロモーターを介して、内在性遺伝子の遺伝子活性を向上させる改変を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、遺伝子活性を向上させる改変は、内在性プロモーターの改変、または異種プロモーターの導入を介したものである。
【0119】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、ヒト細胞、もしくは動物細胞、任意に、ブタ細胞、ウシ細胞もしくはヒツジ細胞であるか、またはその細胞に由来する。
【0120】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、ヒト細胞であるか、またはヒト細胞に由来する。
【0121】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、多能性幹細胞もしくはその子孫に由来する分化細胞であるか、またはその分化細胞に由来する。
【0122】
いくつかの実施形態では、その多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞であるか、または人工多能性幹細胞に由来する。
【0123】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、ドナー対象から単離した初代細胞であるか、またはその初代細胞に由来する。
【0124】
いくつかの実施形態では、そのドナー対象は、その初代細胞をそのドナー対象から得る時点に、健常であるか、または疾患もしくは病態である疑いがない。
【0125】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、膵島β細胞、免疫細胞、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、内皮細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、筋肉細胞、心臓細胞、血液細胞、膵臓の膵島細胞、平滑筋細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心筋細胞、視細胞、幹細胞、造血幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、間葉幹細胞、胚性幹細胞及び多能性幹細胞(PSC)から選択されている。
【0126】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、内皮細胞であるか、または内皮細胞に由来する。
【0127】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、上皮細胞であるか、または上皮細胞に由来する。
【0128】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、多能性幹細胞であるか、または多能性幹細胞に由来する。
【0129】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、胚性幹細胞であるか、または胚性幹細胞に由来する。
【0130】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、間葉系列の細胞であるか、またはその細胞に由来する。
【0131】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、O型ABO血液型、Rh因子陰性(Rh-)の1つ以上であり、機能型のABO Aアレル及び/または機能型のABO Bアレル、あるいはRh因子陽性(Rh+)を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む。
【0133】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、本明細書に記載の細胞の集団のいずれかを含む細胞集団である。
【0134】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約30%は、本明細書に記載の操作細胞を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて改変を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICAポリペプチドの細胞表面発現が低下している。
【0137】
いくつかの実施形態では、その操作細胞上でのMICAポリペプチドの表面発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られない。
【0138】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%は、MICAポリペプチドの細胞表面発現が見られない。
【0139】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICBポリペプチドの細胞表面発現が低下している。
【0140】
いくつかの実施形態では、その操作細胞上でのMICBポリペプチドの表面発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICBポリペプチドの細胞表面発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られない。
【0141】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICBポリペプチドの細胞表面発現が見られない。
【0142】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、1つ以上の寛容原性因子をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、B2M及び/またはCIITAの発現の低下を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、B2M及びCIITAの発現の低下を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、B2M遺伝子のアレルの両方を不活性化する1つ以上の変化を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CIITA遺伝子のアレルの両方を不活性化する1つ以上の変化を含む。
【0149】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、本明細書に記載の細胞の集団のいずれかを含む組成物である。
【0150】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、本明細書に記載の細胞の集団のいずれかを含む組成物であり、(a)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICAポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、その操作細胞上でのMICAポリペプチドの表面発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られず、(b)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、(c)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含み、その操作細胞上での1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られない。
【0151】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、本明細書に記載の細胞の集団のいずれかを含む組成物であり、(a)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICBポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、その操作細胞上でのMICBポリペプチドの表面発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICBポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られず、(b)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、(c)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含み、その操作細胞上での1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られない。
【0152】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、本明細書に記載の細胞の集団のいずれかを含む組成物であり、(a)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICAポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、その操作細胞上でのMICAポリペプチドの表面発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られず、(b)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICBポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、その操作細胞上でのMICBポリペプチドの表面発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICBポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られず、(c)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、(d)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含み、その操作細胞上での1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、任意に、検出可能な表面発現が見られない。
【0153】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、操作した初代膵島β細胞の集団を含む組成物であり、その操作した初代膵島β細胞は、(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊を含む。
【0154】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、操作した初代T細胞の集団を含む組成物であり、その操作した初代T細胞は、(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊を含む。
【0155】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、操作した初代甲状腺細胞の集団を含む組成物であり、その操作した初代甲状腺細胞は、(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子(CD47tg)、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊を含む。
【0156】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、操作した初代皮膚細胞の集団を含む組成物であり、その操作した初代皮膚細胞は、(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子(CD47tg)、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊を含む。
【0157】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、操作した初代内皮細胞の集団を含む組成物であり、その操作した初代内皮細胞は、(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子(CD47tg)、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊を含む。
【0158】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、操作した初代網膜色素上皮細胞の集団を含む組成物であり、その操作した初代網膜色素上皮細胞は、(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子(CD47tg)、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、その操作細胞集団の操作細胞は、B2M遺伝子のアレルのすべてにおけるインデルを含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、その操作細胞集団の操作細胞は、CIITA遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊をさらに含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、その操作細胞集団の操作細胞は、CIITA遺伝子のアレルのすべてにおけるインデルを含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、その操作細胞集団の操作細胞は、MICAインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgという表現型を有する。
【0163】
いくつかの実施形態では、その操作細胞集団の操作細胞は、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgという表現型を有する。
【0164】
いくつかの実施形態では、その操作細胞集団の操作細胞は、MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgという表現型を有する。
【0165】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、ヌクレアーゼベースの遺伝子編集を用いて操作されている。
【0166】
いくつかの実施形態では、その組成物は、医薬組成物である。
【0167】
いくつかの実施形態では、その組成物は、薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、その組成物は、凍結保護剤を含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、その凍結保護剤は、DMSOを約5%~約10%のDMSO(v/v)という濃度で含む。
【0170】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、本明細書に記載の組成物のいずれかの組成物を含む容器である。
【0171】
いくつかの実施形態では、その容器は、滅菌バッグである。
【0172】
いくつかの実施形態では、その滅菌バッグは、凍結保存に適合している。
【0173】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、操作細胞を作製する方法であって、(a)供給源細胞で、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下または消失させること、(b)その供給源細胞で、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させること、ならびに(c)その供給源細胞で、MICA及び/またはMICBの発現を低下または消失させることを含む方法である。
【0174】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、対象で使用するための操作細胞を作製する方法であって、その対象が、自己免疫疾患であると疑われるか、または自己免疫疾患であり、その方法が、(a)供給源細胞で、MHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子の発現を低下または消失させること、(b)その供給源細胞で、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させること、ならびに(c)その供給源細胞で、MICA及び/またはMICBの発現を低下または消失させることを含む方法である。
【0175】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、対象で使用するための操作細胞を作製する方法であって、その対象が、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体を有すると判断され、その方法が、(a)供給源細胞で、MHCクラスI分子及び/またはMHCクラスII分子の発現を低下または消失させること、(b)その供給源細胞で、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させること、ならびに(c)その供給源細胞で、MICA及び/またはMICBの発現を低下または消失させることを含む方法である。
【0176】
いくつかの実施形態では、その方法は、対象が抗MICA抗体を有する場合に、MICAの発現を低下または消失させること、任意にさらに、MICBの発現を低下または消失させることを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、その方法は、対象が抗MICB抗体を有する場合に、MICBを低下または消失させること、任意にさらに、MICAの発現を低下または消失させることを含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、その方法は、対象が抗MICA抗体及び抗MICB抗体を有する場合に、MICA及びMICBの発現を低下または消失させることを含む。
【0179】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、対象で使用するための操作細胞を作製する方法であって、(a)供給源細胞で、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下または消失させること、(b)その供給源細胞で、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させること、ならびに(c)個体が、あるポリペプチドを特異的に認識する抗体を有すると判断されたら、その供給源細胞で、そのポリペプチドの表面発現を低下または消失させることを含む方法である。
【0180】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDOl、CTLA4-Ig、C1インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8及びSERPINB9、ならびにこれらの組み合わせのいずれかからなる群から選択する。
【0181】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200及びMFGE8、ならびにこれらの組み合わせのいずれかからなる群から選択する。
【0182】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子の少なくとも1つは、CD47である。
【0183】
いくつかの実施形態では、その方法は、1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下または消失させることを含む。
【0184】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、操作細胞を作製する方法であって、(a)供給源細胞で、CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させること、ならびに(b)その供給源細胞で、MICA及び/またはMICBの発現を低下させることを含む方法である。
【0185】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、操作細胞を作製する方法であって、(i)(a)1つ以上のMHC I分子及び/または1つ以上のMHC II分子の発現を低下させること、(b)MICA及び/またはMICBの発現を低下させること、(c)CD47、任意にCD24及びPD-L1の発現を増加させること、ならびに(d)CD46、CD55、CD59及びCR1の発現を増加させること、(ii)(a)1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させること、(b)MIC-A及び/またはMIC-Bの発現を低下させること、(c)TXNIPの発現を低下させること、(d)PD-L1及びHLA-Eの発現を増加させること、ならびに(e)任意に、A20/TNFAIP3及びMANFの発現を増加させること、(iii)(a)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させること、ならびに(b)MICA及び/またはMICBの発現を低下させること、(iv)(a)1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させること、ならびに(b)CD47の発現を増加させること、(v)ある遺伝子の発現を増減させる追加の編集をさらに含む(i)~(iv)のいずれかという組み合わせのいずれかの1つを含む方法である。
【0186】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、操作細胞を作製する方法であって、(a)1つ以上のMHC I分子をノックアウトすること、(b)MICA及び/またはMICBをノックアウトすること、(c)TXNIPをノックアウトすること、ならびに(d)PD-L1及びHLAEをノックインすることを含む方法である。
【0187】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているようないずれかの方法は、A20/TNFAIP3及びMANFをノックインすることをさらに含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているようないずれかの方法は、MICAの発現を低下または消失させることをさらに含み、その発現を低下または消失させることは、MICAタンパク質の発現を低下または消失させることを含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているようないずれかの方法は、MICBの発現を低下または消失させることをさらに含み、その発現を低下または消失させることは、MICBタンパク質の発現を低下または消失させることを含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、MICA及びMICBの発現を低下または消失させることであり、その発現を低下または消失させることは、MICAタンパク質及びMICBタンパク質の発現を低下または消失させることを含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、発現を低下または消失させることは、細胞表面発現を低下または消失させることを含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、発現を低下または消失させることは、該当遺伝子の活性を低下または消失させる改変を導入することを含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、その改変は、遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊である。
【0194】
いくつかの実施形態では、その不活性化または破壊は、インデルを含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、そのインデルは、その遺伝子のゲノムDNAの連続領域のフレームシフト変異または欠失である。
【0196】
いくつかの実施形態では、その方法は、該当遺伝子の活性をノックアウトすることを含む。
【0197】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下または消失させる改変は、B2Mの改変である。
【0198】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下または消失させる改変は、CIITAの改変である。
【0199】
いくつかの実施形態では、その改変は、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集を介して行う。
【0200】
いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものである。
【0201】
いくつかの実施形態では、そのCRISPR-Casの組み合わせは、Cas9またはCas12からなる群から選択したCasを含む。
【0202】
いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、そのCRISPR-Casの組み合わせは、ガイドRNA(gRNA)を含む。
【0203】
いくつかの実施形態では、そのCRISPR-Casの組み合わせは、gRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。
【0204】
いくつかの実施形態では、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させる改変は、その1つ以上の寛容原性因子をコードする少なくとも1つの外因性ポリヌクレオチドを導入することを含む。
【0205】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのポリヌクレオチドは、その寛容原性因子の2つ以上をコードするマルチシストロニックなベクターである。
【0206】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子の少なくとも1つは、CD47である。
【0207】
いくつかの実施形態では、その少なくとも1つのポリヌクレオチドは、その細胞のゲノムに組み込まれている。
【0208】
いくつかの実施形態では、その組み込みは、非標的挿入によるものである。
【0209】
いくつかの実施形態では、その組み込みは、レンチウイルスベクターを介して行う。
【0210】
いくつかの実施形態では、その組み込みは、標的ゲノム遺伝子座への標的挿入によるものである。
【0211】
いくつかの実施形態では、その組み込みは、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集と相同配向型修復を介して行う。
【0212】
いくつかの実施形態では、標的ゲノム遺伝子座は、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、TRAC遺伝子座、TRBC遺伝子座、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231座位、CLYBL遺伝子座、ROSA26遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座及びKDM5D遺伝子座からなる群から選択する。
【0213】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているようないずれかの方法は、その操作細胞が所望の細胞種に分化するように、細胞分化技法を行うことをさらに含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、その供給源細胞は、ドナー対象から単離する。
【0215】
いくつかの実施形態では、そのドナー対象は、単離時点に、健常であるか、または疾患もしくは病態である疑いがない。
【0216】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、本明細書に記載の方法を用いて作製した操作細胞である。
【0217】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、同種異系療法を用いて個体の病態を治療する方法であって、その個体に、本明細書に記載の操作細胞、本明細書に記載の操作細胞の集団、または本明細書に記載の組成物を投与することを含む方法である。
【0218】
いくつかの実施形態では、その病態は、疾患または細胞不全である。
【0219】
いくつかの実施形態では、その疾患は、ループス、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、セリアック病、グレーブス病、乾癬、大腸炎、1型糖尿病、全身性ループスエリテマトーデス、炎症性腸疾患、アジソン病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、自己免疫性血管炎及び悪性貧血からなる群から選択する。
【0220】
いくつかの実施形態では、その細胞不全は、造血系疾患もしくは造血系障害と関連するか、またはその疾患もしくは病態は、造血系の疾患もしくは障害である。
【0221】
いくつかの実施形態では、その造血系疾患または造血系障害は、骨髄異形成、再生不良性貧血、ファンコニ貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、鎌状赤血球症、ダイアモンドブラックファン貧血、シュワッハマンダイアモンド障害、コストマン症候群、慢性肉芽腫性疾患、副腎白質ジストロフィー、白血球接着不全症、血友病、サラセミア、βサラセミア、白血病、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性(骨髄)白血病(AML)、成人リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、若年性慢性骨髄性白血病(CML)及び若年性骨髄単球性白血病(JMML)、重症複合免疫不全症(SCID)、X連鎖重症複合免疫不全症、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、慢性肉芽腫性疾患、チェディアック・東症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)またはAIDSである。
【0222】
いくつかの実施形態では、その細胞不全は、白血病もしくはミエローマと関連するか、またはその疾患もしくは病態は、白血病もしくはミエローマである。
【0223】
いくつかの実施形態では、その細胞不全は、自己免疫疾患もしくは自己免疫病態と関連するか、またはその疾患もしくは病態は、自己免疫疾患もしくは自己免疫病態である。
【0224】
いくつかの実施形態では、その自己免疫疾患または自己免疫病態は、急性播種性脳脊髄炎、急性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗合成酵素症候群、アトピー性アレルギー、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ぶどう膜炎、バロー病、バロー同心円硬化症、ベーチェット症候群、ベルジェ病、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性再発性多発性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠損症、脳動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、びまん皮膚硬化型全身性強皮症、ドレスラー症候群、円板状ループスエリテマトーデス、湿疹、付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維性肺胞炎、胃炎、胃腸類天疱瘡、巨細胞性動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症性脱髄疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、炎症性脱髄性多発神経障害、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎、若年性関節リウマチ、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA疾患(LAD)、ルー・ゲーリック病、ルポイド肝炎、ループスエリテマトーデス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発性血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合性結合組織病、限局性強皮症、ムッカ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、視神経脊髄炎、ニューロミオトニア、眼瘢痕性類天疱瘡、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、回帰性リウマチ、傍腫瘍性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンベルク症候群、パーソネージ・ターナー症候群、周辺部ぶどう膜炎、天疱瘡、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性神経障害、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発性軟骨炎、ライター症候群、むずむず脚症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スチル病、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群、スウィート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患、未分化脊椎関節症、血管炎、白斑またはウェゲナー肉芽腫症である。
【0225】
いくつかの実施形態では、その細胞集団は、造血幹細胞(HSC)及び/またはその誘導体を含む集団である。
【0226】
いくつかの実施形態では、その細胞不全は、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、神経変性疾患、神経変性病態、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、うつ病、神経精神障害発作もしくは筋萎縮性側索硬化症(ALS)と関連するか、またはその疾患または病態は、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、神経変性疾患、神経変性病態、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、うつ病、神経精神障害発作もしくは筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。
【0227】
いくつかの実施形態では、その細胞集団は、神経細胞及び/またはグリア細胞を含む集団である。
【0228】
いくつかの実施形態では、その個体は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体が循環血液中に存在する。
【0229】
いくつかの実施形態では、その個体は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体が持続的に存在する。
【0230】
いくつかの実施形態では、その個体は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在の原因となる自己免疫関連病態である。
【0231】
いくつかの実施形態では、その自己免疫関連病態は、橋本病である。
【0232】
いくつかの実施形態では、その自己免疫関連病態は、ループスである。
【0233】
いくつかの実施形態では、その自己免疫関連病態は、多発性硬化症である。
【0234】
いくつかの実施形態では、その個体は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在に基づき、その治療の対象に選ばれた。
【0235】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいずれかの方法は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在に基づき、その個体をその治療の対象に選ぶことをさらに含む。
【0236】
いくつかの実施形態では、その個体を選ぶことは、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在をその個体において測定することをさらに含む。
【0237】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、同種異系療法を用いて個体の病態を治療する方法であって、(a)その個体の抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態を判断すること(抗MICA抗体陽性の状態により、その個体から得た血清試料に抗MICA抗体が存在することが示され、抗MICB抗体陽性の状態により、その個体から得た血清試料に抗MICB抗体が存在することが示される)と、(b)抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態に基づき、その個体に、本明細書に記載の操作細胞集団を含む組成物または本明細書に記載の組成物を投与することを含む方法であり、その抗MICA抗体の状態が陽性である場合には、その操作細胞集団は、MICAの発現の低下を含み、その抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その操作細胞集団は、MICBの発現の低下を含み、その抗MICA抗体の状態及びその抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その操作細胞集団は、MICA及びMICBの発現の低下を含む。
【0238】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいずれかの方法は、その個体の抗MICA抗体の状態及び/または抗MICB抗体の状態に基づき、その個体をその治療の対象に選ぶことをさらに含む。
【0239】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいずれかの方法は、その個体の抗MICA抗体の状態及び/または抗MICB抗体の状態を測定することをさらに含む。
【0240】
ある特定の態様では、本発明で提供するのは、同種異系療法を必要とする個体での使用に適する同種異系療法を特定する方法であって、その同種異系療法が、本明細書に記載の操作細胞集団を含む組成物または本明細書に記載の組成物を含み、その方法が、その個体の抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態を判断して、その個体での使用に適する同種異系療法を特定することを含み、その抗MICA抗体の状態が陽性である場合には、その適する同種異系療法が、MICAの発現の低下を含む操作細胞集団を含み、その抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その適する同種異系療法が、MICBの発現の低下を含む操作細胞集団を含み、その抗MICA抗体の状態及びその抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その適する同種異系療法が、MICA及びMICBの発現の低下を含む操作細胞集団を含む方法である。
【0241】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のいずれかの方法は、1つ以上の免疫抑制剤をその個体に投与することをさらに含む。
【0242】
いくつかの実施形態では、その個体は、1つ以上の免疫抑制剤を投与されている。いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、小分子または抗体である。いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、副腎皮質ステロイド、プレドニゾン、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア剤、ブレキナル、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン(チモシン-α)及び免疫抑制抗体からなる群から選択する。
【0243】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、シクロスポリンを含む。
【0244】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、ミコフェノール酸モフェチルを含む。
【0245】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、副腎皮質ステロイドを含む。
【0246】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、シクロホスファミドを含む。
【0247】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、ラパマイシンを含む。
【0248】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、タクロリムス(FK-506)を含む。
【0249】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、抗胸腺細胞グロブリンを含む。
【0250】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、1つ以上の免疫調節剤である。
【0251】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫調節剤は、小分子または抗体である。
【0252】
いくつかの実施形態では、その抗体は、IL-2受容体のp75、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFN-γ、TNF-α、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-6、IGF、IGFR1、IL-7、IL-8、IL-10、CD11a、CD58、及びそれらのリガンドのいずれかに結合する抗体からなる群から選択した受容体またはリガンドの1つ以上に結合する。
【0253】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、その個体に、その操作細胞の投与前に投与するかまたは投与したことがある。
【0254】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、その個体に、その操作細胞の投与の少なくとも1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、8日前、9日前、10日前、11日前、12日前、13日前または14日前に投与するかまたは投与したことがある。
【0255】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、その個体に、その操作細胞の投与の少なくとも1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、7週間前、8週間前、9週間前または10週間以上前に投与するかまたは投与したことがある。
【0256】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、その個体に、その操作細胞の投与の少なくとも1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後または14日後に投与するかまたは投与したことがある。
【0257】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、その個体に、その操作細胞の投与の少なくとも1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、9週間後または10週間以上後に投与するかまたは投与したことがある。
【0258】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、その個体に、その操作細胞の1回目の投与と同じ日に投与するかまたは投与したことがある。
【0259】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、その個体に、その操作細胞の投与後に投与するかまたは投与したことがある。
【0260】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、その個体に、その操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の後に投与するかまたは投与したことがある。
【0261】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、その個体に、その操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の前に投与するかまたは投与したことがある。
【0262】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、その個体に、その操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、8日前、9日前、10日前、11日前、12日前、13日前または14日前に投与するかまたは投与したことがある。
【0263】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、その個体に、その操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、7週間前、8週間前、9週間前または10週間以上前に投与するかまたは投与したことがある。
【0264】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、その個体に、その操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後または14日後に投与するかまたは投与したことがある。
【0265】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、その個体に、その操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、9週間後または10週間以上後に投与するかまたは投与したことがある。
【0266】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の免疫抑制剤は、その操作細胞の改変を含まない免疫原性細胞の免疫拒絶を軽減する目的で投与される1つ以上の免疫抑制剤の投与量よりも低い投与量で投与する。
【0267】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、その操作細胞の殺傷を制御できる。
【0268】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチを含む。
【0269】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子または自殺スイッチは、薬物もしくはプロドラッグの存在下で、または選択的な外因性化合物によって活性化されると、制御細胞死を誘導する。
【0270】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子または自殺スイッチは、その操作細胞のアポトーシスを誘導できる誘導タンパク質である。
【0271】
いくつかの実施形態では、その操作細胞のアポトーシスを誘導できるその誘導タンパク質は、カスパーゼタンパク質である。
【0272】
いくつかの実施形態では、そのカスパーゼタンパク質は、カスパーゼ9である。
【0273】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子または自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシンによる活性化型のカスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択されている。
【0274】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子またはその自殺スイッチは、その1つ以上の免疫抑制剤をその個体に投与した後に活性化して、制御細胞死を誘導する。
【0275】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子またはその自殺スイッチは、その1つ以上の免疫抑制剤をその個体に投与する前に活性化して、制御細胞死を誘導する。
【0276】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子またはその自殺スイッチは、その操作細胞をその個体に投与した後に活性化して、制御細胞死を誘導する。
【0277】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子またはその自殺スイッチは、細胞毒性またはその個体に対するその他の悪影響が生じた場合に活性化して、制御細胞死を誘導する。
【0278】
いくつかの実施形態では、その方法は、その操作細胞集団の操作細胞を枯渇させる薬剤を投与することをさらに含む。
【0279】
いくつかの実施形態では、その操作細胞を枯渇させる薬剤は、その操作細胞の表面に発現したタンパク質を認識する抗体である。
【0280】
いくつかの実施形態では、その抗体は、CCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMA及びRQR8を認識する抗体からなる群から選択する。
【0281】
いくつかの実施形態では、その抗体は、モガムリズマブ、AFM13、MOR208、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、リツキシマブ、リツキシマブ-Rllb、トムゾツキシマブ、RO5083945(GA201)、セツキシマブ、Hul4.18K322A、Hul4.18-IL2、Hu3F8、ジヌツキシマブ、c.60C3-Rllc及びこれらのバイオシミラーからなる群から選択する。
【0282】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法のいずれかは、その操作細胞の表面上の1つ以上の寛容原性因子を認識する薬剤を投与することを含む。
【0283】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、その1つ以上の寛容原性因子を発現するように操作されている。
【0284】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD47である。
【0285】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法のいずれかは、1つ以上の追加の治療剤をその個体に投与することをさらに含む。
【0286】
いくつかの実施形態では、その個体は、1つ以上の追加の治療剤を投与されたことがある。
【0287】
いくつかの実施形態では、その方法の治療有効性をモニタリングすることを含む。
【0288】
いくつかの実施形態では、その方法の予防有効性をモニタリングすることを含む。
【0289】
いくつかの実施形態では、その方法は、1つ以上の疾患症状が所望どおりに抑制されるまで繰り返す。
【0290】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているようないずれかの操作細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0291】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子または自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシンによる活性化型のカスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択されている。
【0292】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子または自殺スイッチ、及びその自殺遺伝子またはセーフティスイッチと関連する遺伝子は、その操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する。
【0293】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子または自殺スイッチ、及びその1つ以上の寛容原性因子は、その操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する。
【0294】
いくつかの実施形態では、そのバイシストロニックなカセットは、任意に、レンチウイルスベクターを用いてその外因性ポリヌクレオチドをその細胞に導入することによって、その操作細胞のゲノムに、非標的挿入によって組み込まれている。
【0295】
いくつかの実施形態では、そのバイシストロニックなカセットは、その細胞の標的ゲノム遺伝子座に、標的挿入によって組み込まれており、任意に、その標的挿入は、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集と相同配向型修復によるものである。
【0296】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD47である。
【0297】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているような方法のいずれかは、本明細書に記載されているようないずれかの操作細胞を含み、その操作細胞は、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0298】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子は、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシンによる活性化型のカスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択されている。
【0299】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子または自殺スイッチ、及びその自殺遺伝子またはそのセーフティスイッチと関連する遺伝子は、その操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する。
【0300】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子または自殺スイッチ、及びその1つ以上の寛容原性因子は、その操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する。
【0301】
いくつかの実施形態では、そのバイシストロニックなカセットは、その操作細胞のゲノムに、非標的挿入によって組み込まれている。
【0302】
いくつかの実施形態では、そのバイシストロニックなカセットは、その操作細胞の標的ゲノム遺伝子座に、標的挿入によって組み込まれている。
【0303】
いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD47である。
【0304】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているようないずれかの組成物は、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、操作細胞集団の操作細胞を含む。
【0305】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子または自殺スイッチは、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシンによる活性化型のカスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択されている。
【0306】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子、及びその自殺遺伝子またはそのセーフティスイッチと関連する遺伝子は、その操作細胞集団の操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する。
【0307】
いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子または自殺スイッチ、及びその外因性CD47は、その操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する。
【0308】
いくつかの実施形態では、そのバイシストロニックなカセットは、任意に、レンチウイルスベクターを用いてその外因性ポリヌクレオチドをその操作細胞集団の操作細胞に導入することによって、そのゲノムに、非標的挿入によって組み込まれている。
【0309】
いくつかの実施形態では、そのバイシストロニックなカセットは、その操作細胞集団の操作細胞の標的ゲノム遺伝子座に、標的挿入によって組み込まれており、任意に、その標的挿入は、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集と相同配向型修復によるものである。
【0310】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているようないずれかの操作細胞、本明細書に記載されているような細胞の集団のいずれか、または本明細書に記載されているようないずれかの方法であって、その操作細胞が、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させるための1つ以上の改変を含み、その1つ以上の寛容原性因子のそれぞれが、A20/TNFAIP3、C1インヒビター、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD47、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1、PD-L1またはSerpinb9からなる群から選択されているものである。
【0311】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、自家細胞である。
【0312】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、同種異系細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0313】
図1A】本明細書に記載の操作細胞の投与後に見られる可能性があるシナリオを示す。シナリオI、すなわち、1つ以上の細胞表面抗原(例えばMICA及び/またはMICB)を発現するB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgの細胞であって、その1つ以上の細胞表面抗原に対する、宿主(レシピエント)内の既存の抗体(例えば、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体)の非存在下にある細胞を示している。
図1B】本明細書に記載の操作細胞の投与後に見られる可能性があるシナリオを示す。シナリオII、すなわち、1つ以上の細胞表面抗原(例えばMICA及び/またはMICB)を発現するB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgの細胞であって、その1つ以上の細胞表面抗原に対する、宿主(レシピエント)内の既存の抗体(例えば、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体)の存在下にある細胞を示している。
図1C】本明細書に記載の操作細胞の投与後に見られる可能性があるシナリオを示す。シナリオIII、すなわち、MICA及び/またはMICBの発現が低下しているB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgの細胞であって、MICA及び/またはMICBに対する、宿主(レシピエント)内の既存の抗体(例えば、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体)の存在下にある細胞を示している。
図2】未刺激状態及び刺激状態での未操作ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)及びB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのヒトiPSCのMICA及びMICBの発現を示すフローサイトメトリープロットを示している。
図3A】ヒト初代CD3+ T細胞上のMICA及びMICBの発現を示すフローサイトメトリープロットを示している。
図3B】初代膵島β細胞上のMICA及びMICBの発現を示すフローサイトメトリープロットを示している。
図3C】iPSC由来膵島β細胞上のMICA及びMICBの発現を示すフローサイトメトリープロットを示している。
図4A図4Aは、未操作のiPSC由来間葉幹細胞(MSC)及びB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのiPSC由来MSC上のMICA及びMICBの発現を示すフローサイトメトリープロットを示している。
図4B図4Bは、MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSC上のMICA及びMICBの発現を示すフローサイトメトリープロットを示している。
図5】橋本病である個々のボランティア及び健常ボランティアから得た血清試料中の抗MICA抗体の存在(A)及び抗MICB抗体の存在(B)を評価したウエスタンブロットを示している。(M)は、分子量マーカーを示している。
図6A】橋本病である個々のボランティアから得た血清について、操作MSCを用いたドナー特異的抗体(DSA)結合アッセイから得られた平均蛍光強度(MFI)のプロットを示している。B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSC、及び橋本病である個々のボランティアから得た血清におけるDSAの結果を示している。
図6B】橋本病である個々のボランティアから得た血清において、操作MSCを用いたドナー特異的抗体(DSA)結合アッセイから得られた平均蛍光強度(MFI)のプロットを示している。MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSC及び橋本病である個々のボランティアから得た血清におけるDSAの結果を示している。
図6C】橋本病である個々のボランティアから得た血清において、操作iPSC細胞を用いたドナー特異的抗体(DSA)結合アッセイから得られた平均蛍光強度(MFI)のプロットを示している。iPSC(MICAまたはMICBの発現なし)及び橋本病である個々のボランティアから得た血清におけるDSAの結果を示している。
図6D】健常ボランティアから得た血清において、操作MSCを用いたドナー特異的抗体(DSA)結合アッセイから得られた平均蛍光強度(MFI)のプロットを示している。B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSC及び健常ボランティアから得た血清におけるDSAの結果を示している。
図6E】健常ボランティアから得た血清において、操作MSCを用いたドナー特異的抗体(DSA)結合アッセイから得られた平均蛍光強度(MFI)のプロットを示している。MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSC及び健常ボランティアから得た血清におけるDSAの結果を示している。
図7A】橋本病である個々のボランティアから得た血清における経時的な細胞溶解(正規化細胞指数によって記録したもの)のプロットを示している。
図7B】健常ボランティアから得た血清における経時的な細胞溶解(正規化細胞指数によって記録したもの)のプロットを示している。
図8】多発性硬化症である個々のボランティアから得た血清試料中の抗MICA抗体の存在(A)及び抗MICB抗体の存在(B)を評価したウエスタンブロットを示している。(M)は、分子量マーカーを示している。
図9A】多発性硬化症である個々のボランティアから得た血清について、操作MSCを用いたドナー特異的抗体(DSA)結合アッセイから得た平均蛍光強度(MFI)のプロットを示している。B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSC及び多発性硬化症である個々のボランティアから得た血清におけるDSAの結果を示している。
図9B】多発性硬化症である個々のボランティアから得た血清について、操作MSC用いたドナー特異的抗体(DSA)結合アッセイから得た平均蛍光強度(MFI)のプロットを示している。MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSC及び多発性硬化症である個々のボランティアから得た血清におけるDSAの結果を示している。
図9C】多発性硬化症である個々のボランティアから得た血清について、操作iPSC細胞を用いたドナー特異的抗体(DSA)結合アッセイから得た平均蛍光強度(MFI)のプロットを示している。iPSC(MICAまたはMICBの発現なし)及び橋本病である個々のボランティアから得た血清におけるDSAの結果を示している。
図10A】多発性硬化症である個々のボランティアから得た血清における経時的な細胞溶解(正規化細胞指数によって記録したもの)のプロットを示している。
図10B】多発性硬化症である個々のボランティアから得た血清における経時的な細胞溶解(正規化細胞指数によって記録したもの)のプロットを示している。
図10C】多発性硬化症である個々のボランティアから得た血清及び健常ボランティアから得た血清における経時的な細胞溶解(正規化細胞指数によって記録したもの)のプロットを示している。
図11】全身性ループスエリテマトーデスである個体から得た血清試料中の抗MICA抗体の存在(A)及び/または抗MICB抗体の存在(B)を評価したウエスタンブロットを示している。(M)は、分子量マーカーを示している。
【発明を実施するための形態】
【0314】
詳細な説明
本発明で提供するのは、いくつかの態様では、同種異系細胞療法のような同種異系移植に応答する免疫系反応の作用を緩和及び/または回避するための方法及び組成物である。本発明で開示するのは、細胞療法の免疫拒絶の問題を克服するために、免疫系を回避する能力を有する操作細胞(本明細書では、操作免疫回避細胞もしくは操作低免疫原性細胞ともいう)、その集団、またはその医薬組成物であって、いずれかの移植可能な細胞種の生存性供給源に当たるものである。本発明で提供する操作細胞の態様では、対象の遺伝子構成、あるいは1回以上の過去の同種異系移植、過去の自家キメラ抗原受容体(CAR)Tの拒絶、及び/または導入遺伝子を発現させる他の自家療法もしくは同種異系の療法に対する、その対象におけるいずれの既存の応答にもかかわらず、その操作細胞の投与後に、レシピエント対象の免疫系によるその細胞の拒絶を軽減するとともに、その操作細胞が、宿主において生着及び機能することができる。本明細書に記載の操作細胞は、いずれかの細胞に由来してよく、その細胞としては、膵島β細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、及び血液細胞(例えば、形質細胞または血小板)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、提供する操作初代細胞は、操作細胞(例えば、患者の生検標本など、生きた組織から直接採取した細胞)である。
【0315】
本明細書に教示されているように、ある特定の態様では、同種異系細胞療法は、MICA及び/またはMICBに対する改変を含め、低免疫原性多能性(HIP)改変(複数可)の恩恵を受けることができる。本明細書に記載の細胞操作に有用な細胞の特徴付けに基づき、MICA及び/またはMICBの発現が特定されており、このような細胞は、MICA及び/またはMICBの発現を低下させるような、MICA及び/またはMICBの改変(複数可)の恩恵を受けることになる。例えば、自己免疫障害である個体(または自己免疫障害と疑われる個体)は、本明細書に教示されている細胞療法から恩恵を受けることになる。本発明で提供する操作細胞は、MICA及び/またはMICBの発現を変化(例えば低下または消失)させる改変(例えば遺伝子改変)、1つ以上の寛容原性因子(例えばCD47)の発現を変化(例えば過剰発現または増加)させる改変(例えば遺伝子改変)、ならびに1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を変化(例えば低下または消失)させる改変(例えば遺伝子改変)を含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞に存在する改変は、MICA及び/またはMICBの細胞表面発現を変化(例えば低下または消失)させ、1つ以上の寛容原性因子の細胞表面発現を変化(例えば増加または過剰発現)させ、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の細胞表面発現を変化(例えば低下または消失)させ、例えば、その細胞表面上でのMICA及び/またはMICBの発現を低下、またはいくつかの事例では消失させ、その細胞表面上でのその1つ以上の寛容原性因子を増加または過剰発現させ、その細胞表面上での1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下、またはいくつかの事例では消失させる。提供する態様では、その発現の変化は、これらの改変を含まない同様の細胞、例えば、同じ細胞種の野生型もしくは未改変の細胞、または他の点では同じであるが、1つ以上の寛容原性因子、ならびに1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を変化させるための本発明の改変が欠損している細胞と比べたものである。改変を細胞に導入して、発現を変化させる例示的な方法は、本明細書に記載されている。例えば、タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチド(すなわち導入遺伝子)の導入もしくは送達、または遺伝子を標的とするDNAターゲティングドメインと転写活性化因子との融合タンパク質の導入もしくは送達などによって、遺伝子またはタンパク質を過剰発現させるか、またはその発現を増加させる様々な方法のいずれかを使用してよい。阻害性核酸(例えばRNAi)の導入もしくは送達によるなど、遺伝子編集ではない方法、または標的化ヌクレアーゼシステム(例えばCRISPR/Cas)の導入もしくは送達を伴う遺伝子編集方法を含め、遺伝子またはタンパク質の発現を低下または消失させる様々な方法のいずれかも使用してよい。いくつかの実施形態では、発現を低下または消失させる方法は、ヌクレアーゼベースの遺伝子編集技法を介したものである。
【0316】
いくつかの実施形態では、レアカッターエンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ及びホーミングエンドヌクレアーゼのシステム)を用いるゲノム編集技法を用いて、ヒト細胞内で、(例えば、重要な免疫遺伝子のゲノムDNAを欠失させることによって)免疫遺伝子の発現を低下または消失させる。いくつかの実施形態では、そのゲノム編集技術は、ニッカーゼ、塩基編集、プライム編集及び遺伝子書き込みの使用を含む。ある特定の実施形態では、ゲノム編集技法または他の遺伝子調節技術を用いて、ヒト細胞内の寛容誘導(寛容原性)因子(例えばCD47)を挿入し、そのようにして、レシピエント対象に生着すると免疫認識を回避できる操作細胞を作製する。したがって、本発明で提供する操作細胞は、MICA及び/またはMICBに影響を及ぼす1つ以上の遺伝子及び因子の発現が調節され(例えば、発現が低下または消失し)、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子に影響を及ぼす1つ以上の遺伝子及び因子の発現が調節され(例えば、発現が低下または消失し)、CD47のような寛容原性因子の発現が調節される(例えば、発現が増加または過剰発現する)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、レシピエント対象の免疫系を回避する。
【0317】
いくつかの態様では、本発明で提供する操作細胞は、自然免疫細胞による拒絶または適応免疫細胞による拒絶の対象ではない(例えば低免疫原性細胞)。例えば、いくつかの実施形態では、その操作細胞は、NK細胞の媒介による溶解、及びマクロファージによる貪食の作用を受けない。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、免疫抑制剤をあまりまたは全く必要とせずにレシピエント対象に移植されるユニバーサルに適合する細胞または組織(例えば、ユニバーサルドナー細胞またはユニバーサルドナー組織)の供給源として有用である。このような低免疫原性細胞は、移植時に、細胞特有の特性及び特徴を保持する。
【0318】
本開示は、少なくとも部分的に、その操作細胞上での1つ以上の細胞表面抗原に対する既存抗体(及び/または操作細胞の循環寿命中に、その操作細胞を投与されている個体で出現する抗体)を有する個体に投与するのに有用な細胞の操作に関する、本発明者の知見及び特有の見方に基づいている。具体的には、本発明で開示するのは、MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)及び/またはMHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)の発現、例えば細胞表面発現が低下(消失を含む)している操作細胞である。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICAの発現の低下、例えば消失を含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICBの発現の低下、例えば消失を含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICA及びMICBの発現の低下、例えば消失を含む。このような操作は、その個体において、その操作細胞に対して免疫応答が誘発されるのを回避するのを助ける。さらに、これらの知見は、本発明で提供する追加の開示内容、例えば、患者及び/または治療の選択の土台となる。
【0319】
本発明で提供する操作細胞はさらに、寛容原性因子の過剰発現を利用するとともに、1つ以上の主要組織適合性複合体(MHC)クラスI(MHCクラスI)分子もしくはその構成要素、及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(MHCクラスII)分子の発現(例えば表面発現)を調節する(例えば、低下または消失させる)ことができる。いくつかの実施形態では、レアカッターエンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ及びホーミングエンドヌクレアーゼのシステム)を用いるゲノム編集技法を用いて、ヒト細胞内で、(例えば、重要な免疫遺伝子のゲノムDNAを欠失させることによって)免疫遺伝子の発現を低下または消失させる。ある特定の実施形態では、ゲノム編集技法または他の遺伝子調節技術を用いて、ヒト細胞内の寛容誘導(寛容原性)因子(例えばCD47)を挿入し、そのようにして、レシピエント対象に生着すると免疫認識を回避できる操作細胞を作製する。したがって、本発明で提供する操作細胞は、上記のMICA及び/またはMICBの調節に加えて、1つ以上のMHCクラスI分子、1つ以上のMHCクラスII分子に影響を及ぼす1つ以上の遺伝子及び因子の発現が調節されて、レシピエント対象の免疫系を回避する。いくつかの事例では、その細胞は、T細胞であり、その細胞は、内在性TCRの発現を調節する(例えば、低下または消失させる)ようにも操作されている。
【0320】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、その細胞が免疫認識を回避可能になる機構を呈する。いくつかの実施形態では、提供する操作細胞は、低免疫原性である。いくつかの態様では、本発明で提供する操作細胞は、自然免疫細胞による拒絶の対象ではない。例えば、いくつかの実施形態では、その操作細胞は、NK細胞の媒介による溶解、及びマクロファージによる貪食の作用を受けない。いくつかの実施形態では、本発明の操作初代細胞は、免疫抑制剤をあまりまたは全く必要とせずにレシピエント対象に移植されるユニバーサルに適合する細胞または組織(例えば、ユニバーサルドナー細胞またはユニバーサルドナー組織)の供給源として有用である。このような低免疫原性細胞は、移植時に、細胞特有の特性及び特徴を保持する。
【0321】
すなわち、いくつかの態様では、本発明で提供するのは、(a)MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)ポリペプチドの細胞表面発現の低下、及び(b)MHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)ポリペプチドの細胞表面発現の低下のいずれか1つまたは両方を含む操作細胞であり、その操作細胞は、(c)1つ以上の寛容原性因子(CD47など)の発現(該当する場合には、細胞表面発現を含む)の増加をさらに含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上の主要組織適合性複合体(MHC)クラスI(MHCクラスI)分子もしくはその構成要素(B2Mなど)の細胞表面発現の低下、及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の細胞表面発現の低下をさらに含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、寛容原性因子、例えば、CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の1つ以上の発現の増加をさらに含む。いくつかの実施形態では、発現の低下は、発現を低下させるように操作する前の発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、発現の低下は、参照細胞または参照細胞集団(免疫原性応答が低下または消失している同じ細胞種または細胞の細胞または集団)の発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、発現の低下は、測定した発現レベル(免疫原性応答が低下または消失していると分かっているレベルなど)の約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、発現の増加は、発現を増加させるように操作する前の発現レベルの約40%以上であるレベルまで上昇する。いくつかの実施形態では、発現の増加は、参照細胞または参照細胞集団(免疫原性応答が低下または消失している同じ細胞種または細胞の細胞または集団など)の発現レベルの約40%以上であるレベルまで上昇する。いくつかの実施形態では、発現の増加は、測定した発現レベル(免疫原性応答が低下または消失していると分かっているレベルなど)の約40%以下であるレベルまで上昇する。
【0322】
別の態様では、本発明で提供するのは、(a)MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)及び/またはMHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)の発現を低下させる改変、(b)1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させる改変、ならびに(c)1つ以上の主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子もしくはその構成要素、及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる改変の1つ以上を含む操作細胞であり、その発現の変化は、その1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。
【0323】
別の態様では、本発明で提供するのは、(a)MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)及び/またはMHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)の発現を低下させる改変、ならびに(b)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させる改変の1つ以上を含む操作細胞であり、その発現の変化は、その1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。
【0324】
別の態様では、本発明で提供するのは、本明細書に記載のいずれかの操作細胞の集団である。いくつかの実施形態では、その集団は、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれが、その改変を有することを特徴とする。
【0325】
別の態様では、本発明で提供するのは、本明細書に記載のいずれかの操作細胞集団を含む組成物である。いくつかの実施形態では、その組成物は、医薬組成物である。いくつかの実施形態では、その組成物は、凍結保護剤を含む。
【0326】
別の態様では、本発明で提供するのは、操作細胞を作製する方法であって、供給源細胞に、(a)1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下または消失させる改変、(b)1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させる改変、ならびに(c)MICAの発現を低下もしくは消失させる改変、及び/またはMICBの発現を低下もしくは消失させる改変を導入することを含む方法である。
【0327】
別の態様では、本発明で提供するのは、同種異系療法を用いて、個体(本明細書では同義的に対象ともいう)の病態を治療する方法であって、その個体に、本明細書に記載のいずれかの操作細胞集団、または本明細書に記載のいずれかの組成物を投与することを含む方法である。いくつかの実施形態では、その個体は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体が循環血液中に存在する。いくつかの実施形態では、その個体は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在に基づき、その治療の対象に選ばれた。いくつかの実施形態では、その方法は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在に基づき、その個体をその治療の対象に選ぶことをさらに含む。
【0328】
別の態様では、本発明で提供するのは、同種異系療法を用いて個体の病態を治療する方法であって、(a)その個体の抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態を判断すること(抗MICA抗体陽性の状態により、その個体から得た血清試料に抗MICA抗体が存在することが示され、抗MICB抗体陽性の状態により、その個体から得た血清試料に抗MICB抗体が存在することが示される)と、(b)抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態に基づき、その個体に、本明細書に記載のいずれかの操作細胞集団を含む組成物、または本明細書に記載のいずれかの組成物を投与することを含む方法であり、その抗MICA抗体の状態が陽性である場合には、その操作細胞集団は、MICAの発現の低下を含み、その抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その操作細胞集団は、MICBの発現の低下を含み、その抗MICA抗体の状態及びその抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その操作細胞集団は、MICA及びMICBの発現の低下を含む。
【0329】
別の態様では、本発明で提供するのは、同種異系療法を必要とする個体での使用に適する同種異系療法を特定する方法であって、その同種異系療法が、本明細書に記載のいずれかの操作細胞集団を含む組成物、または本明細書に記載のいずれかの組成物を含み、その方法が、その個体の抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態を判断して、その個体での使用に適する同種異系療法を特定することを含み、その抗MICA抗体の状態が陽性である場合には、その適する同種異系療法が、MICAの発現の低下を含む操作細胞集団を含み、その抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その適する同種異系療法が、MICBの発現の低下を含む操作細胞集団を含み、その抗MICA抗体の状態及びその抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その適する同種異系療法が、MICA及びMICBの発現の低下を含む操作細胞集団を含む方法である。
【0330】
本発明で提供するのは、障害を治療する方法であって、MHCが一致しない同種異系レシピエントで免疫拒絶を回避する操作細胞(例えば操作初代細胞)を投与することを含む方法でもある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法のいずれか1つから作製した操作細胞は、MHCが一致しない同種異系レシピエントに繰り返し投与した(例えば、移植(transplanted)または移植(grafted)した)ときに、免疫拒絶を回避する。
【0331】
特定の実施形態の実施では、特に反対の指示がない限り、当該技術分野の技術の範囲内である化学、生化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技法、遺伝学、免疫学及び細胞生物学の従来の方法が用いられることになり、これらのうちの多くが、例示目的で下記に記載されている。このような技法は、文献で十分説明されている。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989)、Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,updated July 2008)、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience、Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(IRL Press,Oxford,1985)、Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992)、Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,Eds.,1984)、Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)、Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998)、Current Protocols in Immunology Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991)、Annual Review of Immunology、及びAdvances in Immunologyなどの刊行物におけるモノグラフを参照されたい。
【0332】
本願で言及されている特許文献、科学記事及びデータベースを含むすべての刊行物は、それぞれの刊行物が参照により個別に援用される場合と同程度に、参照により、その全体があらゆる目的のために本明細書に援用される。本明細書に記載の定義が、参照により本明細書に援用される特許、出願、公開出願及び他の刊行物に記載の定義に反するか、またはその定義と別段に矛盾する場合、本明細書に記載の定義が、参照により本明細書に援用される定義よりも優先される。
【0333】
本明細書で使用されているセクション見出しは、単に構成目的のものであり、記載されている主題を限定するものと解釈すべきではない。当業者は、いくつかの実施形態が、本開示の範囲及び趣旨の中で可能であると認識するであろう。以下の説明は、本開示を例示するものであり、当然のことながら、いかなる形でも、本明細書に記載の本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0334】
I.定義
別段の定義のない限り、本明細書で使用されている、当該技術分野の用語、表記、ならびに他の技術的及び科学的用語または専門用語はいずれも、請求する主題に関係する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有するように意図されている。いくつかの事例では、一般的に理解される意味を有する用語は、明瞭化及び/または参照のしやすさのために本明細書で定義されており、このような定義が本明細書に含まれているのは、当技術分野において一般に理解されている意味と実質的に異なる意味を示すとは必ずしも解釈すべきではない。
【0335】
量または濃度などの測定可能な値に言及しているときに本明細書で使用されているような「約」という用語には、示されている量の20%、10%、5%、1%、0.5%またはさらには0.1%の変動が含まれるように意図されている。添付の請求項を含め、本明細書で使用する場合、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、「a」「or」及び「the」という単数形には、複数形の指示対象が含まれる。例えば、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。本明細書に記載の態様及び変形形態には、そのような態様及び変形形態「からなる」か、及び/またはそのような態様及び変形形態「から本質的になる」実施形態が含まれることが理解される。
【0336】
本明細書で使用する場合、「及び/または」という用語には、列挙されている関連項目の1つ以上からなるいずれかの組み合わせ及びあらゆる組み合わせが含まれる。
【0337】
本明細書で使用する場合、「外因性」という用語は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関しては、指示対象の分子が、目的の細胞に導入されることを意味するように意図されている。外因性ポリヌクレオチドのような外因性分子は、例えば、外因性のコード核酸をその細胞の遺伝物質に導入することによって、例えば、染色体に組み込むことによって、またはプラスミドもしくは発現ベクターのような非染色体の遺伝物質として導入できる。したがって、コード核酸の発現に関して用いられているようなその用語は、そのコード核酸を発現可能な形態で細胞に導入することを指す。いくつかの事例では、「外因性」分子は、通常は細胞に存在しないが、1つ以上の遺伝学的方法、生化学的方法または他の方法によって細胞に導入できる分子、コンストラクト、因子などである。
【0338】
「内在性」という用語は、指示対象の分子、例えば、ポリヌクレオチド(例えば遺伝子)またはポリペプチドのうち、天然型または未改変の細胞に存在する分子を指す。例えば、内在性遺伝子の発現に関して用いられているときのその用語は、細胞内に含まれるとともに、外因性に導入されていない内在性核酸によってコードされる遺伝子の発現を指す。
【0339】
「遺伝子」には、遺伝子産物をコードするDNA領域、及び遺伝子産物の産生を調節するすべてのDNA領域が含まれ、このような調節配列は、コード配列及び/または転写配列に隣接するか否かは問わない。したがって、必ずしも以下に限定されないが、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えば、リボソーム結合部位及び内部リボソーム進入部位、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位及び座位制御領域が含まれる。遺伝子配列は典型的には、細胞内で、一定の染色体位置または染色体座位に存在する。
【0340】
「座位」という用語は、特定の遺伝子または遺伝子マーカーが位置している、染色体上の一定の位置を指す。「標的座位」という場合、所望の遺伝子の座位のうち、遺伝子改変、例えば、遺伝子編集または外因性ポリヌクレオチドの組み込みの標的とするのが望ましい特定の座位を指す。
【0341】
遺伝子に関する「発現」、または「遺伝子発現」という用語は、遺伝子に含まれる情報が遺伝子産物に変換されることを指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的な転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNAもしくはいずれかの他の種類のRNA)であることもできるし、またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であることもできる。遺伝子産物には、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化及び編集などのプロセスによって修飾されているRNA、ならびに例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリストイル化及び糖鎖付加によって修飾されたタンパク質も含まれる。すなわち、発現または遺伝子発現という場合には、タンパク質(もしくはポリペプチド)の発現、または遺伝子の転写可能な産物、例えばmRNAの発現が含まれる。タンパク質の発現には、タンパク質の細胞内発現または表面発現を含めてよい。典型的には、遺伝子産物、例えばmRNAまたはタンパク質の発現は、細胞内で検出可能であるレベルでの発現である。
【0342】
本明細書で使用する場合、「検出可能な」発現レベルは、当業者に知られている標準的な技法によって検出可能であるレベルを意味し、その技法としては、例えば、ディファレンシャルディスプレイ、RT(逆転写酵素)-ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ノーザンブロット及び/またはRNaseプロテクションによる解析、ならびにタンパク質の検出では、免疫親和性ベースの方法、例えば、フローサイトメトリー、ELISAまたはウエスタンブロットが挙げられる。発現レベルの程度は、標準的な特性評価技法を介して可視化または測定するのに十分な大きさでありさえすればよい。
【0343】
本明細書で使用する場合、「発現の増加」、「発現の増強」または「過剰発現」という用語は、特定の遺伝子発現を調節するための改変を含まない元の細胞または供給源細胞での発現、例えば、野生型の発現レベル(発現が見られないか、または発現が測定不能であることもできる)に追加されたいずれかの形態の発現を意味する。本明細書で、「発現の増加」、「発現の増強」または「過剰発現」という場合には、改変を含まない細胞、例えば、改変を導入するために操作する前の元の供給源細胞、例えば、未改変細胞または野生型細胞のレベルと比べた場合の遺伝子発現の増加、及び/または、ポリペプチドについて言う場合に限っては、ポリペプチドレベルの上昇及び/またはポリペプチド活性の向上を意味するとみなす。発現の増加、ポリペプチドレベルの上昇、またはポリペプチド活性の向上は、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは100%、またはさらには100%超であることができる。いくつかの事例では、発現の増加、ポリペプチドレベルの上昇、またはポリペプチド活性の向上は、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍または200倍以上であることができる。
【0344】
「低免疫原性」という用語は、その細胞を移植される対象に免疫拒絶される傾向が低めである細胞を指す。このような低免疫原性細胞は、例えば、同じ細胞種であるが、改変を含まない同様の細胞、例えば、未変化または未改変の野生型細胞と比べて、その細胞を移植される対象に免疫拒絶される傾向が、約2.5%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97.5%または99%以上低くてもよい。典型的には、その低免疫原性細胞は、その対象に対して同種異系であり、低免疫原性細胞は、MHCが一致しない同種異系レシピエントにおいて、免疫拒絶を回避する。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、T細胞の媒介による適応免疫からの拒絶及び/または自然免疫細胞からの拒絶から保護される。
【0345】
細胞の低免疫原性は、その細胞の免疫原性、例えば、細胞が、適応免疫応答及び自然免疫応答を誘発する能力を評価することによって求めることができる。このような免疫応答は、当業者に認識されているアッセイを用いて測定できる。
【0346】
本明細書で使用されているような「寛容原性因子」という用語には、細胞が、投与、移植または生着の際に、宿主またはレシピエント対象の免疫系によって認識される能力を調節するか、またはその能力に影響を及ぼす免疫抑制因子または免疫調節因子が含まれる。典型的には、寛容原性因子は、操作初代細胞に対して免疫寛容を誘導して、その操作初代細胞が、レシピエントの宿主免疫系の標的とならないように、例えば、その免疫系によって拒絶されないようにする因子である。すなわち、寛容原性因子は、低免疫因子であってよい。寛容原性因子の例としては、免疫細胞抑制受容体(例えばCD47)、免疫細胞抑制受容体に関与するタンパク質、チェックポイント阻害剤、及び自然免疫または適応免疫による認識を低減するその他の分子が挙げられる。
【0347】
「減少する」、「低下した」、「低下」及び「減少」という用語はいずれも、本明細書では概して、統計的に有意な量で減少することを意味する。しかしながら、疑問を避けるために、「減少する」、「低下した」、「低下」、「減少」は、参照レベルと比べて少なくとも10%減少すること、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%もしくは少なくとも約90%減少すること、または100%以下減少すること(すなわち、参照試料と比べた場合の消失レベル)、あるいは、参照レベルと比べて、10~100%のいずれか減少することを意味する。
【0348】
「増加した」、「増加する」、「増強する」または「活性化する」という用語はいずれも、本明細書では概して、統計的に有意な量で増加することを意味し、いずれかの疑問を避けるために、「増加した」、「増加する」、「増強する」または「活性化する」という用語は、参照レベルと比べて少なくとも10%増加すること、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%もしくは少なくとも約90%増加すること、または100%以下増加すること、あるいは参照レベルと比べて10~100%のいずれか増加すること、あるいは参照レベルと比べて、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍もしくは少なくとも約10倍増加すること、または2倍~10倍以上のいずれか増加することを意味する。
【0349】
本明細書で使用する場合、「改変」という用語は、細胞内での変更または変化のうち、その細胞内での遺伝子発現に影響を及ぼすいずれかの変更または変化を指す。いくつかの実施形態では、その改変は、遺伝子編集、変異誘発、または外因性ポリヌクレオチドもしくは導入遺伝子の遺伝子操作によるなどして、細胞内でタンパク質産物をコードする遺伝子またはその調節エレメントを直接変更する遺伝子改変である。
【0350】
本明細書で使用する場合、「インデル」とは、ゲノムでの、ヌクレオチド塩基の挿入、欠失またはそれらの組み合わせに起因する変異を指す。すなわち、インデルは典型的には、ヌクレオチドを配列に挿入するか、または配列から欠失させる。当業者には理解されるように、ゲノム配列のコード領域におけるインデルは、インデルの長さが3の倍数でない限り、フレームシフト変異をもたらすことになる。本開示のCRISPR/Casシステムを用いて、標的ポリヌクレオチド配列に、いずれかの長さのインデルを誘導できる。
【0351】
いくつかの実施形態では、その変化は、点変異である。本明細書で使用する場合、「点変異」とは、ヌクレオチドの1つを置き換える置換を指す。本開示のCRISPR/Casシステムを用いて、標的ポリヌクレオチド配列に、いずれかの長さのインデル、または点変異を誘導できる。
【0352】
本明細書で使用する場合、「ノックアウト」には、標的ポリヌクレオチド配列の機能を妨げる形で、その標的ポリヌクレオチド配列の全部または一部を欠失させることが含まれる。例えば、ノックアウトは、標的ポリヌクレオチド配列の機能ドメイン(例えばDNA結合ドメイン)内の標的ポリヌクレオチド配列にインデルを誘導することにより、標的ポリヌクレオチド配列を変化させることによって行うことができる。本明細書に記載の詳細に基づき、本開示のCRISPR/Casシステムを用いて、標的ポリヌクレオチド配列またはその一部をノックアウトする方法を当業者は容易に理解するであろう。
【0353】
いくつかの実施形態では、その変化により、標的ポリヌクレオチド配列またはその一部がノックアウトされる。本開示のCRISPR/Casシステムを用いて、標的ポリヌクレオチド配列またはその一部をノックアウトすることは、様々な用途に有用であることがある。例えば、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列のノックアウトは、研究目的のために、in vitroで行うことができる。ex vivoの目的では、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列のノックアウトは、(例えば、細胞内の変異アレルをex vivoでノックアウトし、ノックアウトした変異アレルを含むそれらの細胞を対象に導入することによって、)その標的ポリヌクレオチド配列の発現と関連する障害を治療または予防するのに有用であることがある。
【0354】
本明細書における「ノックイン」とは、遺伝子機能を宿主細胞に追加するプロセスを意味する。これにより、ノックインされた遺伝子産物、例えば、RNAまたはコードされるタンパク質のレベルが上昇する。当業者には理解されるように、これは、追加の遺伝子コピーを宿主細胞に1つ以上追加すること、または内在性遺伝子の調節構成要素を変化させることにより、産生されるタンパク質の発現を増加させることを含め、いくつかの方法で行うことができる。これは、プロモーターを改変すること、異なるプロモーターを付加すること、エンハンサーを付加すること、または他の遺伝子発現配列を改変することによって行ってもよい。
【0355】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の変化または改変により、標的ポリヌクレオチド配列または選択したポリヌクレオチド配列の発現が低下する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の変化または改変により、標的ポリペプチド配列または選択したポリペプチド配列の発現が低下する。
【0356】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の変化または改変により、標的ポリヌクレオチド配列または選択したポリヌクレオチド配列の発現が増加する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の変化または改変により、標的ポリペプチド配列または選択したポリペプチド配列の発現が増加する。
【0357】
遺伝子発現の「調節」は、遺伝子の発現レベルの変更を指す。発現の調節としては、遺伝子の活性化及び遺伝子の抑制を挙げることができるが、これらに限定されない。調節は、完全な調節であってもよく、例えば、その場合、遺伝子発現は、完全に不活性化するか、もしくは野生型レベル以上に活性化し、または調節は、部分的な調節であってもよく、その場合、遺伝子発現は、部分的に低下するか、もしくは野生型レベルの数分の1だけ部分的に活性化する。
【0358】
「機能可能に(operatively)連結された」または「機能可能に(operably)連結された」という用語は、2つ以上の構成要素(配列エレメントなど)の並置のうち、その両方の構成要素が正常に機能するとともに、それらの構成要素の少なくとも1つが、他方の構成要素の少なくとも1つに対して発揮される機能を媒介できるように、それらの構成要素が配列されている並置に関して同義的に用いられている。一例として、プロモーターなどの転写調節配列が、コード配列の転写レベルを、1つ以上の転写調節因子の有無に応じて制御する場合には、その転写調節配列は、そのコード配列に機能可能に連結されている。転写調節配列は概して、転写調節配列とシスで、機能可能に連結されているが、その配列と直接隣接する必要はない。例えば、エンハンサーは、コード配列に機能可能に連結されている転写調節配列であるが、それらの配列は連続していない。
【0359】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書で使用する場合、ペプチド結合によって結合した一連のアミノ酸残基(すなわち、アミノ酸残基からなるポリマー)を指す目的で同義的に用いてよく、最小長に限定されない。このようなポリマーは、天然もしくは非天然のアミノ酸残基、またはそれらの組み合わせを含んでよく、このポリマーとしては、アミノ酸残基からなるペプチド、ポリペプチド、オリゴペプチド、二量体、三量体及び多量体が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、タンパク質またはポリペプチドとしては、修飾アミノ酸(例えば、リン酸化アミノ酸、糖化アミノ酸、糖鎖付加アミノ酸など)及びアミノ酸類似体を有するものが挙げられる。この定義には、完全長のポリペプチドまたはタンパク質、及びその断片が含まれる。これらの用語には、それらが修飾された種、例えば、1つ以上の残基の翻訳後修飾、例えば、メチル化、リン酸化、糖鎖付加、シアル化またはアセチル化も含まれる。
【0360】
本開示の全体を通じて、特許請求する主題の様々な態様が、様々な形式で示されている。様々な形式の説明は、便宜上及び簡略化のためのものに過ぎず、特許請求する主題の範囲に対して、柔軟性なく制限を加えるものとして解釈すべきではないことを理解すべきである。したがって、範囲の記載は、具体的に開示されているすべての考え得るサブ範囲、及びその範囲内の個々の数値を有するとみなすべきである。例えば、値の範囲が示されている場合には、その範囲の上限と下限との間にあるそれぞれの中間の値(文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、その下限の単位の10分の1まで)、及びいずれかの他に示されている値またはその示されている範囲における中間の値が、本開示内に含まれ、ただし、示されている範囲内の限界値が具体的に除外される場合もあることが理解される。示されている範囲に、限界値の一方または両方が含まれる場合には、それらの含まれる限界値のいずれかまたは両方を除く範囲も、本開示に含まれる。いくつかの実施形態では、2つの対立するオープンエンドの範囲が、ある特徴に対して示されており、そのような説明においては、これらの2つの範囲の組み合わせが、本発明で提供されていると想定する。例えば、いくつかの実施形態では、ある特徴が、約10単位超であると記載されており、その特徴が、約20単位未満であると(別の文などで)記載されており、したがって、本明細書では、約10単位~約20単位の範囲が記載されている。
【0361】
本明細書で使用する場合、「対象」または「個体」は、同義的に用いられている用語であり、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、「哺乳動物」には、ヒト、非ヒト霊長類動物、飼育動物及び家畜、ならびに動物園、スポーツまたはペットの動物、例えば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコ、サルなどが含まれる。いくつかの実施形態では、その対象または個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、その対象は、疾患、障害または病態であると知られているか、それと疑われる患者である。
【0362】
本明細書で使用する場合、「治療すること」及び「治療」という用語には、対象に、本明細書に記載の細胞を有効量投与して、その対象で、その疾患の症状の少なくとも1つの軽減、またはその疾患の改善、例えば、有益な臨床結果または所望の臨床結果が見られるようにすることが含まれる。本技術の目的において、有益な臨床結果または所望の臨床結果としては、検出可能か検出不能かにかかわらず、1つ以上の症状の緩和、疾患の程度の低減、安定した(例えば、悪化していない)病状、疾患進行の遅延または減速、病状の改善または一時的緩和、及び寛解(部分寛解か完全寛解かにかかわらない)が挙げられるが、これらに限定されない。治療することは、治療を受けない場合に予想される生存期間と比べて、生存期間が延びることを指すことができる。したがって、治療は、病状を改善し得るが、その疾患の完全治癒ではないことがあることを当業者は認識している。いくつかの実施形態では、疾患または障害の症状の1つ以上は、その疾患の治療により、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%緩和される。
【0363】
本技術の目的において、疾患の治療の有益な臨床結果または所望の臨床結果としては、検出可能か検出不能かにかかわらず、1つ以上の症状の緩和、疾患の程度の低減、安定した(例えば、悪化していない)疾患状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または一時的緩和、及び寛解(部分寛解か完全寛解かにかかわらない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0364】
「ベクター」または「コンストラクト」は、遺伝子配列を標的細胞に移入することができる。典型的には、「ベクターコンストラクト」、「発現ベクター」及び「遺伝子移入ベクター」とは、目的の遺伝子の発現を誘導できるとともに、遺伝子配列を標的細胞に移入できるいずれかの核酸コンストラクトを意味する。したがって、この用語には、クローニング及び発現ビヒクル、ならびに組み込みベクターが含まれる。ベクターまたはコンストラクトを細胞に導入するための方法は、当業者に知られており、脂質の媒介による移入(例えば、中性脂質及びカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、粒子ボンバードメント、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストランの媒介による移入、ならびにウイルスベクターの媒介による移入が挙げられるが、これらに限定されない。
【0365】
II.操作細胞及び細胞の操作方法
本発明で提供するのは、MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)及び/またはMHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)の発現を調節する1つ以上の改変(遺伝子改変など)を含む操作細胞である。いくつかの実施形態では、その改変は、MICAポリペプチドの細胞表面発現を低下させる(例えば消失させる)。いくつかの実施形態では、その改変は、MICBポリペプチドの細胞表面発現を低下させる(例えば消失させる)。いくつかの実施形態では、その1つ以上の改変は、MICAポリペプチド及びMICBポリペプチドの細胞表面発現を低下させる(例えば消失させる)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、本明細書に記載されているような追加の改変を1つ以上含む。
【0366】
例示目的であり、本明細書に記載の範囲を限定するものと解釈すべきではないが、図1A~1Cには、本明細書に記載の操作細胞を用いたときに見られると思われるシナリオが示されている。図1Aには、シナリオI、すなわち、宿主(レシピエント)内の既存の抗体のうち、1つ以上の細胞表面抗原(例えば、MICA及び/またはMICB)に対する抗体(例えば、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体)の非存在下における、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgの細胞であって、その1つ以上の細胞表面抗原を発現している細胞が例示されている。B2Mインデル/インデル及びCIITAインデル/インデルは、その細胞表面上で、1つ以上の機能的なMHCクラスI分子を低下させて(ブロックするなど)、MHCクラスI分子の媒介による免疫応答を阻止し、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させて(ブロックするなど)、MHCクラスII分子の媒介による免疫応答を阻止する。CD47の発現の増加(過剰発現など)は、NK及びマクロファージの媒介による免疫応答を低下させる。いくつかの実施形態では、シナリオ1に示されているように、MICA及び/またはMICBを発現するとともに、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgの改変を含む操作細胞の移植は、MICA及び/またはMICBに対する既存の抗体が欠損している患者に適する。図1Bには、シナリオII、すなわち、宿主(レシピエント)内の既存の抗体であって、1つ以上の細胞表面抗原(例えば、MICA及び/またはMICB)に対する抗体(例えば、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体)の存在下における、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgの細胞であって、その1つ以上の細胞表面抗原を発現する細胞が示されている。いくつかの実施形態では、MICA及び/またはMICBに対する既存の抗体は、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgの細胞によって発現されたMICA抗原及び/またはMICB抗原に対して免疫応答を誘発し得る。このような状況では、同種異系療法の有用性が制限される。図1Cには、シナリオIII、すなわち、宿主(レシピエント)内の既存の抗体であって、MICA及び/またはMICBに対する抗体(例えば、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体)の存在下における、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgの細胞であって、MICA及び/またはMICBの発現が低下した細胞が例示されている。いくつかの実施形態では、患者が、MICA及び/またはMICBに対する抗体を有するかまたはその抗体を有すると疑われる場合には、移植用細胞は、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgに加えて、MICA及び/またはMICBの発現を低下または消失させるように改変して、その細胞が、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体を介した免疫応答の誘発を回避するようにする。いくつかの実施形態では、移植用細胞は、その細胞がMICA及び/またはMICBを発現するかに基づき、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgに加えて、MICA及び/またはMICBの発現を低下または消失させるように改変し、例えば、MICAを発現しない細胞は、MICAの発現を低下させる改変を必要としない。
【0367】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、(a)MICAポリペプチドの細胞表面発現の低下、及び(b)MICBポリペプチドの細胞表面発現の低下のいずれか1つまたは両方を含み、その操作細胞は、(c)1つ以上の寛容原性因子(CD47など)の発現(該当する場合には、細胞表面発現を含む)の増加をさらに含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子もしくはその構成要素(B2Mなど)の細胞表面発現の低下、及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の細胞表面発現の低下をさらに含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、(a)MICAポリペプチドの細胞表面発現の低下、及び(b)MICBポリペプチドの細胞表面発現の低下のいずれか1つまたは両方を含み、その操作細胞は、(c)1つ以上の寛容原性因子(CD47など)の発現(該当する場合には、細胞表面発現を含む)の増加、(d)1つ以上のMHCクラスI分子の細胞表面発現の低下、及び(e)1つ以上のMHCクラスII分子の細胞表面発現の低下をさらに含む。
【0368】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、(a)MICAポリペプチドの細胞表面発現の低下、及び(b)MICBポリペプチドの細胞表面発現の低下のいずれか1つまたは両方を含み、その操作細胞は、(c)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の1つ以上の発現の増加をさらに含む。
【0369】
いくつかの実施形態では、提供する操作細胞は、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させるための改変を含む。いくつかの実施形態では、その寛容原性因子は、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF及びH2-M3(これらの組み合わせのいずれかを含む)の1つ以上である。いくつかの実施形態では、その寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8(これらの組み合わせのいずれかを含む)の1つ以上である。いくつかの実施形態では、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させるための改変は、CD47の発現の増加であるか、またはその増加を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させるための改変は、PD-L1の発現の増加であるか、またはその増加を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させるための改変は、HLA-Eの発現の増加であるか、またはその増加を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させるための改変は、HLA-Gの発現の増加であるか、またはその増加を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させるための改変は、CCL21、PD-L1、FasL、Serpinb9、H2-M3(HLA-G)、CD47、CD200及びMfge8の発現の増加であるか、またはその増加を含む。
【0370】
いくつかの実施形態では、その細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる1つ以上の改変、例えばゲノム改変、及びCD47の発現を増加させる改変を含む。換言すると、その操作細胞は、外因性CD47タンパク質を含み、1つ以上のMHCクラスI分子の表面発現が低下またはサイレンシングされている。いくつかの実施形態では、その細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる1つ以上のゲノム改変、及びCD47の発現を増加させる改変を含む。いくつかの事例では、その操作細胞は、外因性CD47の核酸及びタンパク質を含み、1つ以上のMHCクラスI分子の表面発現が低下またはサイレンシングされている。いくつかの実施形態では、その細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下または消失させる1つ以上のゲノム改変、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下または消失させる1つ以上のゲノム改変、及びCD47の発現を増加させる改変を含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、外因性CD47タンパク質を含み、1つ以上のMHCクラスI分子の表面発現が低下またはサイレンシングされており、1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現が低下または欠失している。多くの実施形態では、その細胞は、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgの細胞である。
【0371】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術のいずれかを用いて、本明細書に記載されているような1つ以上の標的ポリヌクレオチドまたは標的タンパク質の発現を低下させることができる。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術としては、ヌクレアーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、リコンビナーゼを伴うシステムを挙げることができる。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、遺伝子のノックアウトまたはノックダウンに利用できる。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、DNAをゲノム領域にノックインするかまたは組み込むのに利用できる。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、一本鎖切断(SSB)を媒介する。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、二本鎖切断(DSB)を媒介し、非相同末端結合(NHEJ)または相同配向型修復(HDR)と併せることを含む。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、DNAベースの編集またはプライム編集を含むことができる。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)を含むことができる。
【0372】
いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、塩基編集と関連する。塩基エディター(BE)は典型的には、Cas(「CRISPR関連」)ドメインと核酸塩基改変ドメイン(例えば、天然または進化型のデアミナーゼ、例えば、APOBEC1(「アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒ポリペプチド1」)、CDA(「シチジンデアミナーゼ」)及びAID(「活性化誘導シチジンデアミナーゼ」)を含むシチジンデアミナーゼ)ドメインとの融合体である。いくつかの事例では、塩基エディターは、細胞のDNA修復プロセスを変化させて、結果として生じる一塩基変化の効率及び/または安定性を高めるタンパク質またはドメインも含んでよい。
【0373】
いくつかの態様では、現在利用可能な塩基エディターとしては、標的C・GをT・Aへ変換するシチジン塩基エディター(例えばBE4)、及び標的A・TをG・Cへ変換するアデニン塩基エディター(例えばABE7.10)が挙げられる。いくつかの態様では、Cas9による標的化を伴う脱アミノ化は、二本鎖DNA切断を導入することなく、塩基変化を誘導するように設計された塩基エディター(BE)システムと併せるものと初めて示された。さらに、不活性型Cas9(dCas9)に融合したラットデアミナーゼAPOBEC1(rAPOBEC1)を用いて、sgRNAのPAMの上流でシチジンをチミジンに変換するのに成功した。いくつかの態様では、dCas9を、脱アミノ化されたシチジンの反対側の鎖にニックを入れる「ニッカーゼ」Cas9 D10Aに変化させることによって、この最初のBEシステムを最適化した。理論に束縛されるものではないが、これにより、ロングパッチ塩基除去修復(BER)が開始されると予想される。この場合、脱アミノ化された鎖が修復のテンプレートとして優先的に使用されて、U:A塩基対が生成され、次いで、この塩基対が、DNA複製中にT:Aに変換される。
【0374】
いくつかの実施形態では、その塩基エディターは、触媒活性を持たない第1のDNA結合タンパク質ドメイン、塩基編集活性を持つドメイン、及びニッカーゼ活性を持つ第2のDNA結合タンパク質ドメインを含む核酸塩基エディターであり、これらのDNA結合タンパク質ドメインは、1つの融合タンパク質上に発現するか、または別々に(例えば、別々の発現ベクター上で)発現する。いくつかの実施形態では、その塩基エディターは、塩基編集活性を持つドメイン(例えば、シチジンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ)、及び核酸をプログラム可能な2つのDNA結合タンパク質ドメイン(napDNAbp)を含む融合タンパク質であり、その第1のnapDNAbpは、ニッカーゼ活性を含み、第2のnapDNAbpは、触媒活性を持たず、少なくとも、それらの2つのnapDNAbpは、リンカーによって結合されている。いくつかの実施形態では、その塩基エディターは、ニッカーゼ活性を持つ、CRISPR-Cas(例えばCas9)のDNAドメイン(nCas、nCas9)、CRISPR-Casタンパク質(例えばCas9)の、触媒活性を持たないドメインであって、核酸をプログラム可能なDNA結合活性を持つドメイン(dCas、例えばdCas9)、及びデアミナーゼドメインを含む融合タンパク質であり、そのdCasは、そのnCasにリンカーによって結合されているとともに、そのdCasは、そのデアミナーゼドメインに直接隣接している。いくつかの実施形態では、その塩基エディターは、アデニンからチミンへのトランスバージョン、すなわち「ATBE」トランスバージョン(またはチミンからアデニンへのトランスバージョン、すなわち「TABE」トランスバージョン)塩基エディターである。例示的な塩基エディター及び塩基エディターシステムとしては、特許出願番号US20220127622、US20210079366、US20200248169、US20210093667、US20210071163、WO2020181202、WO2021158921、WO2019126709、WO2020181178、WO2020181195、WO2020214842、WO2020181193に記載されているようないずれかが挙げられ、これらの特許は、その全体が本明細書に援用される。
【0375】
いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、標的プライム逆転写(TPRT)、すなわち「プライム編集」である。いくつかの実施形態では、プライム編集は、DSBまたはドナーDNAテンプレートを必要とせずに、ヒト細胞内で、標的挿入、欠失、12個の考え得るすべての塩基間変換、及びそれらの組み合わせを媒介する。
【0376】
プライム編集は、核酸をプログラム可能なDNA結合タンパク質(「napDNAbp」)であって、ポリメラーゼ(すなわち、融合タンパク質の形態のポリメラーゼ、またはnapDNAbpとトランスで別段に供給されたポリメラーゼ)と連携して機能するタンパク質を用いて、新たな遺伝子情報を所定のDNA部位に直接書き込むゲノム編集法であり、そのプライム編集システムでは、標的部位を指定するとともに、ガイドRNA(例えば、ガイドRNAの5’末端もしくは3’末端、または内部部分)上に操作された伸長部(DNAまたはRNAのいずれか)により、置換用DNA鎖の形態での所望の編集部の合成のテンプレートとなるプライム編集(PE)ガイドRNA(「PEgRNA」)を用いてプログラムが行われる。所望の編集部(例えば一核酸塩基置換)を含む置換用鎖は、編集対象である標的部位の内在性の鎖と同じ配列を有する(ただし、所望の編集部を含むことを除く)。標的部位の内在性の鎖は、DNA修復及び/または複製機構を通じて、所望の編集部を含む新たに合成された置換用鎖に置き換えられる。いくつかの事例では、プライム編集は、「検索及び置換」ゲノム編集技術と考えられる場合がある。プライムエディターは、編集対象である所望の標的部位を検索して、その位置を特定するとともに、標的部位の対応する内在性DNA鎖の代わりに同時に導入される所望の編集部を含む置換用鎖をコードするからである。例えば、プライム編集は、二本鎖切断を回避するために、CRISPR/Casベースの高精度なゲノム編集を行えるように適合させることができる。いくつかの実施形態では、その相同タンパク質は、所定のDNA配列をガイドRNAで標的とし、その標的部位に一本鎖ニックを入れ、ニックの入ったDNAを、ガイドRNAとともに組み込まれた操作済みの逆転写酵素用テンプレートの逆転写時のプライマーとして使用するCasタンパク質-逆転写酵素融合体もしくは関連システムであるか、またはその融合体もしくはシステムをコードする。いくつかの実施形態では、そのプライムエディタータンパク質は、ゲノムDNAの対合鎖上で相補的なDNAフラップ合成のテンプレートとなる2本のプライム編集ガイドRNA(pegRNA)と対になっており、その結果、PEの誘導によるニック部位の間の内在性DNA配列が、pegRNAによってコードされる配列に置き換えられる。
【0377】
いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、逆転写酵素または当該技術分野で知られているいずれかのDNAポリメラーゼであるプライムエディターと関連する。したがって、一態様では、そのプライムエディターは、標的DNA内の相補的なプロトスペーサーにアニーリングするスペーサー配列を含む特有のガイドRNA(すなわちPEgRNA)と連携することによって、DNA配列を標的とするようにプログラムされているCas9(または同等のnapDNAbp)を含むことがある。このような方法としては、Anzalone et al.(doi.org/10.1038/s41586-019-1711-4)、または国際公開番号WO2020191248号、WO2021226558号もしくはWO2022067130号に開示されているいずれかが挙げられ、これらの文献は、その全体が本明細書に援用される。
【0378】
いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)である。いくつかの態様では、PASTEは、逆転写酵素及びセリンインテグラーゼの両方に融合されたCRISPR-Cas9ニッカーゼを介して、ゲノム挿入を誘導するプラットフォームである。Ioannidi et al.(doi.org/10.1101/2021.11.01.466786)に記載されているように、PASTEは、二本鎖切断を生じさせないが、約36kbほどの大きさの配列を組み込み可能にする。いくつかの実施形態では、そのセリンインテグラーゼは、当該技術分野で知られているいずれかであることができる。いくつかの実施形態では、PASTEをマルチプレックス型の遺伝子組み込みに利用して、少なくとも2つの異なる遺伝子を少なくとも2つのゲノム遺伝子座に同時に組み込むことができるように、そのセリンインテグラーゼは、十分なオルソゴナル性を有する。いくつかの実施形態では、PASTEは、編集効率が、相同組み換え修復または非相同末端結合ベースの組み込みの編集効率と同等であるか、またはそれよりも優れており、非分裂細胞でも活性があり、検出可能なオフターゲットイベントが少ない。
【0379】
いくつかの実施形態では、その1つ以上のゲノム遺伝子座のそれぞれは、B2M座位、TAP1座位、CIITA座位、TRAC座位、TRBC座位、MIC-A座位、MIC-B座位及びセーフハーバー座位からなる群から選択されている。いくつかの実施形態では、そのセーフハーバー座位は、AAVS1、ABO、CCR5、CLYBL、CXCR4、F3、FUT1、HMGB1、KDM5D、LRP1、MICA、MICB、RHD、ROSA26及びSHS231の座位からなる群から選択されている。
【0380】
いくつかの実施形態では、記載の操作細胞集団は、レシピエント対象への投与時に、免疫活性化レベルの低下を誘発するか、または免疫活性化を誘発しない。いくつかの実施形態では、その細胞は、レシピエント対象において、全身性TH1の活性化レベルの低下を誘発するか、または全身性TH1の活性化を誘発しない。いくつかの実施形態では、その細胞は、レシピエント対象において、末梢血単核球(PBMC)の免疫活性化レベルの低下を誘発するか、またはPBMCの免疫活性化を誘発しない。いくつかの実施形態では、その細胞は、レシピエント対象への投与時に、その細胞に対するドナー特異的なIgG抗体のレベルの低下を誘発するか、またはドナー特異的なIgG抗体を誘発しない。いくつかの実施形態では、その細胞は、レシピエント対象において、その細胞に対するIgM抗体及びIgG抗体の産生レベルの低下を誘発するか、またはIgM抗体及びIgG抗体の産生を誘発しない。いくつかの実施形態では、その細胞は、レシピエント対象への投与時に、その細胞の細胞傷害性T細胞による殺傷レベルの低下を誘発する。
【0381】
いくつかの実施形態では、本発明で提供する操作細胞は、「自殺遺伝子」または「自殺スイッチ」を含む。自殺遺伝子または自殺スイッチを組み込んで、その操作細胞を対象に投与した後、ならびにその細胞が、望ましくない形で成長及び分裂したはずである場合などに、その操作細胞(例えば、初代操作細胞または操作多能性幹細胞から分化させた細胞)を死滅させることができる「セーフティスイッチ」として機能させることができる。「自殺遺伝子」という除去アプローチは、所定の化合物によって活性化された場合のみに細胞を殺傷させるタンパク質をコードする遺伝子移入ベクター内に自殺遺伝子を含む。自殺遺伝子は、無毒性化合物を毒性の高い代謝産物に選択的に変換する酵素をコードし得る。その結果、その酵素を発現する細胞が特異的に排除される。いくつかの実施形態では、その自殺遺伝子は、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子であり、その誘発因子は、ガンシクロビルである。別の実施形態では、その自殺遺伝子は、大腸菌(Escherichia coli)シトシンデアミナーゼ(EC-CD)遺伝子であり、その誘発因子は、5-フルオロシトシン(5-FC)である(Barese et al,Mol.Therap.20(10):1932-1943(2012)、Xu et al,Cell Res.8:73-8(1998)(いずれの開示も、参照により、その全体が本明細書に援用される))。
【0382】
別の実施形態では、その自殺遺伝子は、誘導性カスパーゼタンパク質である。誘導性カスパーゼタンパク質は、アポトーシスを誘導できるカスパーゼタンパク質の少なくとも一部を含む。好ましい実施形態では、その誘導性カスパーゼタンパク質は、iCasp9である。そのタンパク質は、ヒトFK506結合タンパク質FKBP12の配列であって、F36V変異を有し、一連のアミノ酸を介して、ヒトカスパーゼ9をコードする遺伝子に連結された配列を含む。FKBP12-F36Vは、小分子二量体化剤API903に高い親和性で結合する。すなわち、本発明におけるiCasp9の自殺機能は、二量体化誘導化学物質(CID)の投与によって誘発される。いくつかの実施形態では、そのCIDは、小分子薬API903である。二量体化により、アポトーシスが速やかに誘導される。(WO2011146862、Stasi et al,N.Engl.J.Med 365;18(2011)、Tey et al,Biol.Blood Marrow Transplant.13:913-924(2007)を参照されたい。それぞれ、参照により、その全体が本明細書に援用される。)
【0383】
セーフティスイッチまたは自殺遺伝子を含めることで、細胞毒性またはレシピエントに対するその他の悪影響が見られた場合に、細胞の殺傷の制御が可能になるので、寛容原性因子を用いる療法を含む、細胞ベースの療法の安全性が高まる。
【0384】
いくつかの実施形態では、セーフティスイッチは、例えば、本発明で提供する操作細胞が、望ましくない形で成長及び分裂するか、または宿主に対して過度の毒性を示す場合に、そのセーフティスイッチを含む操作細胞の死滅またはアポトーシスを誘導する能力をもたらすために、その細胞に組み込むこと、例えば導入することができる。したがって、セーフティスイッチの使用により、異常な細胞を条件付きで、in vivoで消失させることが可能となり、その使用は、臨床で細胞療法を適用する際の重要な工程となることがある。セーフティスイッチ及びその使用は、例えば、Duzgune§,Origins of Suicide Gene Therapy(2019)、Duzgune§(eds),Suicide Gene Therapy.Methods in Molecular Biology,vol.1895(Humana Press,New York,NY)(HSV-tk、シトシンデアミナーゼ、ニトロレダクターゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ及び西洋ワサビペルオキシダーゼについて)、Zhou and Brenner,Exp Hematol 44(11):1013-1019(2016)(iカスパーゼ9について)、Wang et al.,Blood 18(5):1255-1263(2001)(huEGFRについて)、米国特許出願公開第20180002397号(HER1について)、ならびにPhilip et al.,Blood124(8):1277-1287(2014)(RQR8について)に記載されている。
【0385】
いくつかの実施形態では、そのセーフティスイッチは、制御した形で、例えば、薬物もしくはプロドラッグの存在下で、または選択的な外因性化合物によって活性化されると、細胞死させることができる。いくつかの実施形態では、そのセーフティスイッチは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ニトロレダクターゼ(NTR)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ、誘導性カスパーゼ9(iCasp9)、ラパマイシンによる活性化型のカスパーゼ9(rapaCasp9)、CCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMA及びRQR8からなる群から選択されている。
【0386】
いくつかの実施形態では、そのセーフティスイッチは、薬物またはプロドラッグによって活性化されると、例えば、細胞内で、無毒性のプロドラッグを毒性の代謝産物に変換することによって、細胞殺傷能を持つ産物をコードする導入遺伝子であってよい。これらの実施形態では、細胞殺傷は、操作細胞をその薬物またはプロドラッグと接触させることによって活性化する。いくつかの事例では、そのセーフティスイッチは、HSV-tkであり、そのHSV-tkは、ガンシクロビル(GCV)をGCV三リン酸に変換することによって、DNA合成を妨げ、分裂細胞を殺傷する。いくつかの事例では、そのセーフティスイッチは、CyDまたはそのバリアントであり、これらは、加水分解によりシトシンをウラシルに脱アミノ化するのを触媒することによって、抗真菌薬5-フルオロシトシン(5-FC)を細胞傷害性のある5-フルオロウラシル(5-FU)に変換する。5-FUは、細胞酵素によって、強力な代謝拮抗剤(5-FdUMP、5-FdUTP、5-FUTP)にさらに変換される。これらの化合物は、チミジル酸合成酵素、ならびにRNA及びDNAの産生を阻害して、細胞死をもたらす。いくつかの事例では、そのセーフティスイッチは、NTRまたはそのバリアントであり、これらは、ニトロ基を還元して、増殖性細胞及び非増殖性細胞で毒性を持つ反応性N-ヒドロキシルアミン中間体にすることを介して、プロドラッグCB1954に作用できる。いくつかの事例では、そのセーフティスイッチは、PNPまたはそのバリアントであり、それらは、プロドラッグである6-メチルプリンデオキシリボシドまたはフルダラビンを、増殖性細胞及び非増殖性細胞の両方に対して毒性のある代謝産物に変換できる。いくつかの事例では、そのセーフティスイッチは、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはそのバリアントであり、これらは、インドール-3-酢酸(IAA)を強力な細胞毒素に触媒できるので、細胞殺傷を行うことができる。
【0387】
いくつかの実施形態では、そのセーフティスイッチは、iCasp9であってもよい。カスパーゼ9は、内在性のミトコンドリアアポトーシス経路の構成要素であり、生理的条件下で、障害ミトコンドリアからシトクロムCが放出されることによって活性化される。その後、活性化カスパーゼ9はカスパーゼ3を活性化し、カスパーゼ3はターミナルエフェクター分子を始動させて、アポトーシスに導く。そのiCasp9は、ペプチドリンカーを介して、トランケート型カスパーゼ9(その生理的な二量体化ドメインまたはカスパーゼ活性化ドメインを有さない)をFK506結合タンパク質(FKBP)FKBP12-F36Vに融合することによって生成してよい。そのiCasp9は、二量体非依存性の基礎活性が低く、宿主細胞(例えばヒトT細胞)内で、その表現型、機能または抗原特異性を損なうことなく、安定して発現できる。しかしながら、iCasp9は、リミドゥシド(AP1903)、AP20187及びラパマイシンのような二量体化誘導化学物質(CID)の存在下では、誘導性の二量体化を起こし、下流のカスパーゼ分子を活性化することができ、その結果、そのiCasp9を発現している細胞のアポトーシスが起こる。例えば、国際公開第WO2011/146862号、Stasi et al.,N.Engl.J.Med.365;18(2011)、Tey et al.,Biol.Blood Marrow Transplant 13:913-924(2007)を参照されたい。特に、ラパマイシン誘導性カスパーゼ9バリアントは、rapaCasp9という。Stavrou et al.,Mal.Ther.26(5):1266-1276(2018)を参照されたい。したがって、iCasp9をセーフティスイッチとして用いて、宿主細胞の制御殺傷を行うことができる。
【0388】
いくつかの実施形態では、そのセーフティスイッチは、そのタンパク質に対する特異的な抗体の投与後に、細胞を枯渇させる膜発現タンパク質であってよい。このカテゴリーのセーフティスイッチとしては、例えば、CCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMAまたはRQR8の表面発現のために、それらをコードする1つ以上の導入遺伝子を挙げてよい。これらのタンパク質は、特異的な抗体の標的とできる表面エピトープを有してよい。いくつかの実施形態では、そのセーフティスイッチは、CCR4を含み、CCR4は、抗CCR4抗体によって認識できる。適切な抗CCR4抗体の非限定的な例としては、モガムリズマブ及びそのバイオシミラーが挙げられる。いくつかの実施形態では、そのセーフティスイッチは、CD16またはCD30を含み、これらは、抗CD16抗体または抗CD30抗体によって認識できる。このような抗CD16抗体または抗CD30抗体の非限定的な例としては、AFM13及びこれらのバイオシミラーが挙げられる。いくつかの実施形態では、そのセーフティスイッチは、CD19を含み、CD19は、抗CD19抗体によって認識できる。このような抗CD19抗体の非限定的な例としては、MOR208及びそのバイオシミラーが挙げられる。いくつかの実施形態では、そのセーフティスイッチは、CD20を含み、CD20は、抗CD20抗体によって認識できる。このような抗CD20抗体の非限定的な例としては、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、リツキシマブ、リツキシマブ-Rllb、及びこれらのバイオシミラーが挙げられる。すなわち、そのセーフティスイッチを発現する細胞は、CD20陽性であり、記載されているような抗CD20抗体の投与を通じて、殺傷の標的にできる。いくつかの実施形態では、そのセーフティスイッチは、EGFRを含み、EGFRは、抗EGFR抗体によって認識できる。このような抗EGFR抗体の非限定的な例としては、トムゾツキシマブ、RO5083945(GA201)、セツキシマブ、及びこれらのバイオシミラーが挙げられる。いくつかの実施形態では、そのセーフティスイッチは、GD2を含み、GD2は、抗GD2抗体によって認識できる。このような抗GD2抗体の非限定的な例としては、Hul4.18K322A、Hul4.18-IL2、Hu3F8、ジヌツキシマブ、c.60C3-Rllc、及びこれらのバイオシミラーが挙げられる。
【0389】
いくつかの実施形態では、そのセーフティスイッチは、体外から投与する薬剤であって、その操作細胞の表面上の1つ以上の寛容原性因子を認識する薬剤であってよい。いくつかの実施形態では、体外から投与するその薬剤は、寛容原性の作用物質に対して誘導されるか、またはその作用物質に特異的である抗体、例えば抗CD47抗体である。体外から投与する抗体は、その操作細胞上の寛容原性因子を認識して、その因子をブロックすることによって、その寛容原性因子の免疫抑制機能をブロックすることによって、その免疫系をその操作細胞に対して再感作し得る。例えば、CD47を過剰発現する操作細胞では、体外から投与する抗CD47抗体をその対象に投与し、その結果、その操作細胞上のCD47をマスキングして、その操作細胞に対する免疫応答を誘発してよい。
【0390】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、誘導性自殺スイッチを含む発現ベクターをその細胞に導入することをさらに含む。
【0391】
いくつかの実施形態では、その寛容原性因子は、CD47であり、その細胞は、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、その細胞は、外因性のCD47ポリペプチドを発現する。
【0392】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている方法は、必要とする対象に、CD47-SIRPαブロック剤を投与することを含み、その対象は以前に、外因性のCD47ポリペプチドを発現するように操作された細胞集団を投与された者である。いくつかの実施形態では、そのCD47-SIRPαブロック剤は、CD47結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、そのCD47結合ドメインは、シグナル調節タンパク質α(SIRPα)またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、そのCD47-SIRPαブロック剤は、免疫グロブリンG(IgG)のFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、そのIgGのFcドメインは、IgG1のFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、そのIgG1のFcドメインは、ヒト抗体の断片を含む。いくつかの実施形態では、そのCD47-SIRPαブロック剤は、TTI-621、TTI-622及びALX148からなる群から選択する。いくつかの実施形態では、そのCD47-SIRPαブロック剤は、TTI-621、TTI-622及びALX148である。いくつかの実施形態では、そのCD47-SIRPαブロック剤は、TTI-622である。いくつかの実施形態では、そのCD47-SIRPαブロック剤は、ALX148である。いくつかの実施形態では、そのIgGのFcドメインは、IgG4のFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、そのCD47-SIRPαブロック剤は、抗体である。いくつかの実施形態では、その抗体は、MIAP410、B6H12及びマグロリマブからなる群から選択する。いくつかの実施形態では、その抗体は、MIAP410である。いくつかの実施形態では、その抗体は、B6H12である。いくつかの実施形態では、その抗体は、マグロリマブである。いくつかの実施形態では、その抗体は、AO-176、IBI188(レタプリマブ)、STI-6643及びZL-1201からなる群から選択する。いくつかの実施形態では、その抗体は、AO-176(Arch)である。いくつかの実施形態では、その抗体は、IBI188(レタプリマブ)(Innovent)である。いくつかの実施形態では、その抗体は、STI-6643(Sorrento)である。いくつかの実施形態では、その抗体は、ZL-1201(Zai)である。
【0393】
いくつかの実施形態では、CD47に結合する有用な抗体またはその断片は、マグロリマブ((Hu5F9-G4))(Forty Seven,Inc.、Gilead Sciences,Inc.)、ウラブレリマブ、CC-90002(Celgene、Bristol-Myers Squibb)、IBI-188(Innovent Biologics)、IBI-322(Innovent Biologics)、TG-1801(TG Therapeutics、NI-1701としても知られる、Novimmune SA)、ALX148(ALX Oncology)、TJ011133(TJC4としても知られる、I-Mab Biopharma)、FA3M3、ZL-1201(Zai Lab Co.,Ltd)、AK117(Akesbio Australia Pty,Ltd.)、AO-176(Arch Oncology)、SRF231(Surface Oncology)、GenSci-059(GeneScience)、C47B157(Janssen Research and Development)、C47B161(Janssen Research and Development)、C47B167(Janssen Research and Development)、C47B222(Janssen Research and Development)、C47B227(Janssen Research and Development)、Vx-1004(Corvus Pharmaceuticals)、HMBD004(Hummingbird Bioscience Pte Ltd)、SHR-1603(Hengrui)、AMMS4-G4(Beijing Institute of Biotechnology)、RTX-CD47(University of Groningen)及びIMC-002(Samsung Biologics、ImmuneOncia Therapeutics)を含む群から選択できる。いくつかの実施形態では、その抗体またはその断片は、マグロリマブ、ウラブレリマブ、CC-90002、IBI-188、IBI-322、TG-1801(NI-1701)、ALX148、TJ011133、FA3M3、ZL1201、AK117、AO-176、SRF231、GenSci-059、C47B157、C47B161、C47B167、C47B222、C47B227、Vx-1004、HMBD004、SHR-1603、AMMS4-G4、RTX-CD47及びIMC-002を含む群から選択した抗体と、CD47との結合に関して競合しない。いくつかの実施形態では、その抗体またはその断片は、マグロリマブ、ウラブレリマブ、CC-90002、IBI-188、IBI-322、TG-1801(NI-1701)、ALX148、TJ011133、FA3M3、ZL1201、AK117、AO-176、SRF231、GenSci-059、C47B157、C47B161、C47B167、C47B222、C47B227、Vx-1004、HMBD004、SHR-1603、AMMS4-G4、RTX-CD47及びIMC-002から選択した抗体と、CD47との結合に関して競合する。いくつかの実施形態では、CD47に結合する抗体またはその断片は、CD47に対する一本鎖Fv断片(scFv)、CD47に対するFab、CD47に対するVHHナノボディ、CD47に対するDARPin、及びこれらのバリアントを含む群から選択する。いくつかの実施形態では、CD47に対するscFv、CD47に対するFab、及びこれらのバリアントは、マグロリマブ、ウラブレリマブ、CC-90002、IBI-188、IBI-322、TG-1801(NI-1701)、ALX148、TJ011133、FA3M3、ZL1201、AK117、AO-176、SRF231、GenSci-059、C47B157、C47B161、C47B167、C47B222、C47B227、Vx-1004、HMBD004、SHR-1603、AMMS4-G4、RTX-CD47及びIMC-002を含む群から選択した抗体のうちのいずれかの抗原結合ドメインをベースとする。
【0394】
いくつかの実施形態では、そのCD47アンタゴニストは、CD47を遮断ささせる。CD47を遮断させる方法及び薬剤は、PCT/US2021/054326に記載されており、その開示は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0395】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、所望の改変の1つ以上をすでに含む供給源細胞に由来する。いくつかの実施形態では、本明細書に示されている教示に鑑みれば、所望の最終形態の操作細胞に至るために必要な改変をいかにして評価するか、及び積極的な操作を介して、標的成分レベルの増減が必ずしも実現するとは限らないことを当業者は容易に分かるであろう。いくつかの実施形態では、その操作細胞の改変は、いずれの順序であってもよく、必ずしも、本明細書に示されている記述言語で列挙されている順序でなくてもよい。
【0396】
本明細書に記載の分子のうちのいずれかの発現の存在は、変化させたら、ウエスタンブロット、ELISAアッセイ、FACSアッセイ、フローサイトメトリーなどのような既知の技法を用いてアッセイできる。
【0397】
A.発現が低下している標的
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下を含む。本明細書に記載されているように、その操作細胞は、最終的なタンパク質の発現及び標的の局在に生物学的に関わる発現が、いずれかの数のレベル(2つ以上のレベルを含む)で低下していてよい。例えば、いくつかの実施形態では、MICA及び/またはMICBは、ゲノム物質(ゲノムDNAなど)において内因的にコードされ、RNA(mRNAなど)に転写され、ポリペプチドに翻訳され、細胞膜内に組み込まれて、その一部が細胞外環境に露出するとともに、細胞内で、ある特定の寿命を持つようになる。すなわち、いくつかの実施形態では、発現は、遺伝子及び/またはその機能、RNAの発現及び機能、タンパク質の発現及び機能、局在(細胞表面発現など)、ならびに寿命を介して低下させることができる。
【0398】
いくつかの実施形態では、標的の発現の低下は、操作細胞内の発現が、標的の発現を低下させるように操作する前の供給源細胞内の標的の対応する発現のレベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)のレベルまで低下するような低下である(例えば、タンパク質発現とタンパク質発現とを比べる)。いくつかの実施形態では、標的の発現の低下は、操作細胞内の発現が、参照細胞または参照細胞集団(免疫原性応答が低下または消失している同じ細胞種または細胞の細胞または集団など)内の標的の対応する発現のレベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)のレベルまで低下するような低下である(例えば、タンパク質発現とタンパク質発現とを比べる)。いくつかの実施形態では、標的の発現の低下は、操作細胞内の発現が、測定した発現レベル(標的の存在により、免疫原性応答が低下または消失していると分かっているレベルなど)以下のレベルまで低下するような低下である。いくつかの実施形態では、標的のレベルは、刺激状態または未刺激状態の操作細胞、参照細胞または参照細胞集団で評価する。いくつかの実施形態では、標的のレベルは、その標的が発現しているように(または、細胞が刺激に応答する能力がそのレベルである場合には、その標的が発現するように)刺激した状態の操作細胞、参照細胞または参照細胞集団で評価する。いくつかの実施形態では、その刺激は、in vivo刺激に当たる。
【0399】
いくつかの実施形態では、提供する操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子、1つ以上のMHCクラスII分子、または1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子のうちのいずれかの発現を調節する(例えば、低下または消失させる)1つ以上の標的ポリヌクレオチド配列(同義的に、標的遺伝子ともいう)の改変、例えば遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、ヒトのMHCは、ヒト白血球抗原(HLA)ともいう。例えば、ヒトMHCクラスI分子は、HLAクラスIとしても知られ、ヒトMHCクラスII分子は、HLAクラスII分子としても知られる。いくつかの実施形態では、改変または操作の対象である細胞は、その1つ以上の改変が以前に導入されたことがない未改変または未操作の細胞である。いくつかの実施形態では、遺伝子編集システムを用いて、1つ以上のMHCクラスI分子、1つ以上のMHCクラスII分子、または1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子のうちのいずれかの発現を調節する1つ以上の標的ポリヌクレオチド配列を改変する。ある特定の実施形態では、その細胞のゲノムは、HLAの発現、例えば、その細胞の表面上での1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の促進に必要となるかまたは関与する構成要素を低減または欠失させるように変化している。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の構成要素であるβ-2-ミクログロブリン(B2M)の発現を、その細胞内で低下または消失させることによって、その操作細胞による、1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現(例えば細胞表面発現)を低下または消失させる。
【0400】
いくつかの実施形態では、その操作細胞における記載の改変のうち、その操作細胞内で、1つ以上の標的ポリヌクレオチドまたは標的タンパク質の発現を調節する(例えば、低下または消失させる)改変のいずれかは、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、CD47のような寛容原性因子)を過剰発現する1つ以上の改変と組み合わせてもよい。
【0401】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下は、例えば、(1)多型のHLAアレル(HLA-A、HLA-B、HLA-C)及び1つ以上のMHCクラスII分子遺伝子を直接標的とすること、(2)B2Mの除去(これにより、すべてのMHCクラスI分子の表面輸送が減少することになる)、及び/または(3)MHCエンハンセオソームの構成要素の1つ以上、例えば、HLAの発現に不可欠であるLRC5、RFX-5、RFXANK、RFXAP、IRFl、NF-Y(NFY-A、NFY-B、NFY-Cを含む)及びCIITAの欠失のうちの1つ以上によって実現できる。
【0402】
ある特定の実施形態では、HLAの発現が妨げられている。いくつかの実施形態では、HLAの発現は、個々のHLAを標的とすること(例えば、HLA-A、HLA-B及び/またはHLA-Cの発現をノックアウトすること)、HLA発現の転写調節因子を標的とすること(例えば、NLRC5、CIITA、RFX5、RFXAP、RFXANK、NFY-A、NFY-B、NFY-C及び/またはIRF-1の発現をノックアウトすること)、1つ以上のMHCクラスI分子の表面輸送をブロックすること(例えば、B2M及び/またはTAP1の発現をノックアウトすること)、及び/またはHLA-Razorを標的とすることによって妨げられている(例えば、WO2016183041を参照されたい)。
【0403】
ヒト白血球抗原(HLA)複合体は、ヒトMHCと同義である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている操作細胞は、ヒト細胞である。ある特定の態様では、本明細書に開示されている操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子に当たる1つ以上のヒト白血球抗原(例えば、HLA-A、HLA-B及び/またはHLA-C)を発現しないので、低免疫原性であることを特徴とする。例えば、ある特定の態様では、本明細書に開示されている操作細胞は、改変されており、いずれかの幹細胞またはその幹細胞から調製した分化幹細胞を含め、その細胞は、MHCクラスI分子、すなわちHLA-A、HLA-B及びHLA-Cの1つ以上を発現しないか、またはその1つ以上の発現が低下するようになっている。いくつかの実施形態では、HLA-A、HLA-B及びHLA-Cの1つ以上は、細胞から「ノックアウト」されていてもよい。HLA-A遺伝子、HLA-B遺伝子及び/またはHLA-C遺伝子がノックアウトされている細胞は、それぞれのノックアウト遺伝子の発現が低下または消失し得る。
【0404】
ある特定の実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現は、ゲノムDNAの連続領域を標的として、これを欠失させることによって、B2M、CIITA及びNLRC5からなる群から選択した標的遺伝子の発現を低下または消失させることによって調節する。
【0405】
いくつかの実施形態では、提供する操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子を調節する1つ以上の標的ポリヌクレオチド配列の改変、例えば遺伝子改変を含む。1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる例示的な方法は、下記のセクションに記載されている。いくつかの実施形態では、標的とするポリヌクレオチド配列は、B2M及びNLRC5の1つまたは両方である。いくつかの実施形態では、その細胞は、B2M遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。いくつかの実施形態では、その細胞は、NLRC5遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。いくつかの実施形態では、その細胞は、B2M遺伝子及びCIITA遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。
【0406】
いくつかの実施形態では、提供する操作細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子を調節する1つ以上の標的ポリヌクレオチド配列の改変、例えば遺伝子改変を含む。1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる例示的な方法は、下記のセクションに記載されている。いくつかの実施形態では、その細胞は、CIITA遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。
【0407】
いくつかの実施形態では、提供する操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子を調節する1つ以上の標的ポリヌクレオチド配列の改変、例えば遺伝子改変を含む。1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる例示的な方法は、下記のセクションに記載されている。いくつかの実施形態では、その細胞は、B2M遺伝子及びNLRC5遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。いくつかの実施形態では、その細胞は、CIITA遺伝子及びNLRC5遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。特定の実施形態では、その細胞は、B2M遺伝子、CIITA遺伝子及びNLRC5遺伝子に対する遺伝子編集による改変を含む。
【0408】
いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5の発現を低下させる改変は、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のmRNA発現を低下させる。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のmRNA発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現は、約5%超低下し、例えば、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超または約90%超以上のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のmRNA発現は、最大約100%低下し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%または最大約5%未満のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のmRNA発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のmRNA発現は消失する(例えば、B2M、CIITA及び/またはNLRC5 mRNAの発現が0%である)。いくつかの実施形態では、B2M、CIITA及び/またはNLRC5のmRNA発現を低下させる改変は、B2M、CIITA及び/またはNLRC5の遺伝子活性を消失させる。
【0409】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICAの発現の低下を含み、その低下は、本明細書に記載されているようなものであり、例えば、MICAの発現を低下させるように操作する前、参照細胞もしくは参照細胞集団(免疫原性応答が所望どおりに欠失している細胞など)、または測定値と比べたものである。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICAポリペプチドの細胞表面発現を低下させるように操作されている。いくつかの実施形態では、その操作細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現は、MICAポリペプチドの細胞表面提示を減少させるように操作する前のMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現は、参照細胞または参照細胞集団上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベル(MICAポリペプチドの細胞表面発現の平均量など)の約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面提示が見られない(既知の技法、例えばフローサイトメトリーを用いて測定した場合を含め、検出可能な細胞表面発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICAポリペプチドのタンパク質発現が低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞のMICAポリペプチドのタンパク質発現は、MICAポリペプチドのタンパク質発現を低下させるように操作する前のMICAポリペプチドのタンパク質発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞のMICAポリペプチドのタンパク質発現は、MICAポリペプチドのタンパク質発現を低下させるように操作する前のMICAポリペプチドのレベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICAポリペプチドのタンパク質発現が見られない(既知の技法、例えば、ウエスタンブロットまたは質量分析を用いて測定した場合を含め、検出可能なタンパク質発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICAポリペプチドを含まない(既知の技法、例えば、ウエスタンブロットまたは質量分析を用いて測定した場合を含め、検出可能なタンパク質が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICAポリペプチドをコードするmRNAの発現が低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞のMICAポリペプチドをコードするmRNAの発現は、MICAポリペプチドのmRNA発現を低下させるように操作する前のMICAポリペプチドをコードするmRNAの発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞のMICAポリペプチドをコードするmRNAの発現は、参照細胞または参照細胞集団のmRNA発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICAポリペプチドをコードするmRNAを発現しない(既知の技法、例えば、シーケンシング技法またはPCRを用いて測定した場合を含め、検出可能なmRNA発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICAポリペプチドをコードするmRNAを含まない(既知の技法、例えば、シーケンシング技法またはPCRを用いて測定した場合を含め、検出可能なmRNAが見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICA遺伝子の遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICA遺伝子の遺伝子不活性化または遺伝子破壊を両方のアレルで含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICA遺伝子の遺伝子不活性化または遺伝子破壊をすべてのアレルで含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICAノックアウトである。
【0410】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICBの発現の低下を含み、その低下は、本明細書に記載されているようなものであり、例えば、MICBの発現を低下させるように操作する前、参照細胞もしくは参照細胞集団(免疫原性応答が所望どおりに欠失している細胞など)、または測定値と比べたものである。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICBポリペプチドの細胞表面発現を低下させるように操作されている。いくつかの実施形態では、その操作細胞上でのMICBポリペプチドの細胞表面発現は、MICBポリペプチドの細胞表面提示を減少させるように操作する前のMICBポリペプチドの細胞表面発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞上でのMICBポリペプチドの細胞表面発現は、参照細胞または参照細胞集団上でのMICBポリペプチドの細胞表面発現レベル(MICBポリペプチドの細胞表面発現の平均量など)の約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞上でのMICBポリペプチドの細胞表面提示が見られない(既知の技法、例えばフローサイトメトリーを用いて測定した場合を含め、検出可能な細胞表面発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICBポリペプチドのタンパク質発現が低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞のMICBポリペプチドのタンパク質発現は、MICBポリペプチドのタンパク質発現を低下させるように操作する前のMICBポリペプチドのタンパク質発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞のMICBポリペプチドのタンパク質発現は、MICBポリペプチドのタンパク質発現を低下させるように操作する前のMICBポリペプチドのレベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICBポリペプチドのタンパク質発現が見られない(既知の技法、例えば、ウエスタンブロットまたは質量分析を用いて測定した場合を含め、検出可能なタンパク質発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICBポリペプチドを含まない(既知の技法、例えば、ウエスタンブロットまたは質量分析を用いて測定した場合を含め、検出可能なタンパク質が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICBポリペプチドをコードするmRNAの発現が低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞のMICBポリペプチドをコードするmRNAの発現は、MICBポリペプチドのmRNA発現を低下させるように操作する前のMICBポリペプチドをコードするmRNAの発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞のMICBポリペプチドをコードするmRNAの発現は、参照細胞または参照細胞集団のmRNA発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICBポリペプチドをコードするmRNAを発現しない(既知の技法、例えば、シーケンシング技法またはPCRを用いて測定した場合を含め、検出可能なmRNA発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICBポリペプチドをコードするmRNAを含まない(既知の技法、例えば、シーケンシング技法またはPCRを用いて測定した場合を含め、検出可能なmRNAが見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICB遺伝子の遺伝子不活性化または遺伝子破壊を含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICB遺伝子の遺伝子不活性化または遺伝子破壊を両方のアレルで含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICB遺伝子の遺伝子不活性化または遺伝子破壊をすべてのアレルで含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICBノックアウトである。
【0411】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子またはその構成要素の発現の低下を含み、その低下は、本明細書に記載されているようなものであり、例えば、1つ以上のMHCクラスI分子またはその構成要素の発現を低下させるように操作する前、参照細胞もしくは参照細胞集団(免疫原性応答が所望どおりに欠失している細胞など)、または測定値と比べたものである。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)の細胞表面発現を低下させるように操作されている。いくつかの実施形態では、その操作細胞上での1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)の細胞表面発現は、その1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)の細胞表面提示を減少させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)の細胞表面発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞上での1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)の細胞表面発現は、参照細胞または参照細胞集団上でのその1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)の細胞表面発現レベル(1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)の細胞表面発現の平均量など)の約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞上での1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)の細胞表面提示が見られない(既知の技法、例えばフローサイトメトリーを用いて測定した場合を含め、検出可能な細胞表面発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)のタンパク質発現が低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞の1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)のタンパク質発現は、その1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)のタンパク質発現を低下させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)のタンパク質発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞の1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)のタンパク質発現は、1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)のタンパク質発現を低下させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)のレベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)のタンパク質発現が見られない(既知の技法、例えば、ウエスタンブロットまたは質量分析を用いて測定した場合を含め、検出可能なタンパク質発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)を含まない(既知の技法、例えば、ウエスタンブロットまたは質量分析を用いて測定した場合を含め、検出可能なタンパク質が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)をコードするmRNAの発現が低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞の1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)をコードするmRNAの発現は、1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)のmRNA発現を低下させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)をコードするmRNAの発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞の1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素(B2Mなど)をコードするmRNAの発現は、参照細胞または参照細胞集団のmRNA発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素をコードするmRNAを発現しない(既知の技法、例えば、シーケンシング技法またはPCRを用いて測定した場合を含め、検出可能なmRNA発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子のポリペプチドまたはその構成要素をコードするmRNAを含まない(既知の技法、例えば、シーケンシング技法またはPCRを用いて測定した場合を含め、検出可能なmRNAが見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MHCクラスI分子遺伝子の遺伝子不活性化または遺伝子破壊を含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MHCクラスI分子遺伝子の遺伝子不活性化または遺伝子破壊を両方のアレルで含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MHCクラスI分子の遺伝子の遺伝子不活性化または遺伝子破壊をすべてのアレルで含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MHCクラスI分子ノックアウトまたはMHCクラスI分子構成要素(B2Mなど)ノックアウトである。
【0412】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含み、その低下は、本明細書に記載されているようなものであり、例えば、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させるように操作する前、参照細胞もしくは参照細胞集団(免疫原性応答が所望どおりに欠失している細胞など)、または測定値と比べたものである。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドの細胞表面発現を低下させるように操作されている。いくつかの実施形態では、その操作細胞上での1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドの細胞表面発現は、1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドの細胞表面提示を減少させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドの細胞表面発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞上での1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドの細胞表面発現は、参照細胞または参照細胞集団上での1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドの細胞表面発現レベル(1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドの細胞表面発現の平均量など)の約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞上での1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドの細胞表面提示が見られない(既知の技法、例えばフローサイトメトリーを用いて測定した場合を含め、検出可能な細胞表面発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドのタンパク質発現が低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞の1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドのタンパク質発現は、1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドのタンパク質発現を低下させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドのタンパク質発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞の1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドのタンパク質発現は、1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドのタンパク質発現を低下させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドのレベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドのタンパク質発現が見られない(既知の技法、例えば、ウエスタンブロットまたは質量分析を用いて測定した場合を含め、検出可能なタンパク質発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドを含まない(既知の技法、例えば、ウエスタンブロットまたは質量分析を用いて測定した場合を含め、検出可能なタンパク質が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドをコードするmRNAの発現が低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞の1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドをコードするmRNAの発現は、1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドのmRNA発現を低下させるように操作する前の1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドをコードするmRNAの発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞の1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドをコードするmRNAの発現は、参照細胞または参照細胞集団のmRNA発現レベルの約60%以下(約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下のいずれかなど)であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドをコードするmRNAを発現しない(既知の技法、例えば、シーケンシング技法またはPCRを用いて測定した場合を含め、検出可能なmRNA発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスII分子のポリペプチドをコードするmRNAを含まない(既知の技法、例えば、シーケンシング技法またはPCRを用いて測定した場合を含め、検出可能なmRNAが見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MHCクラスII分子遺伝子の遺伝子不活性化または遺伝子破壊を含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MHCクラスII分子遺伝子の遺伝子不活性化または遺伝子破壊を両方のアレルで含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MHCクラスII分子遺伝子の遺伝子不活性化または遺伝子破壊をすべてのアレルで含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MHCクラスII分子ノックアウトである。
【0413】
1.発現を低下させる方法
いくつかの実施形態では、本発明で提供する細胞は、本明細書に記載されているような1つ以上の標的ポリヌクレオチドの発現を低下させるように改変、例えば遺伝子改変されている。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドまたはタンパク質の発現を低下させる(例えば消失させる)1つ以上の改変を有するように操作する細胞は、本明細書に記載されているようないずれかの供給源細胞である。いくつかの実施形態では、その供給源細胞は、本明細書に記載のいずれかの細胞である。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されている細胞(例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、分化細胞、造血幹細胞、間葉細胞または初代細胞)は、1つ以上の標的ポリヌクレオチドの発現を低下させる1つ以上の改変、例えば遺伝子改変を含む。その1つ以上の標的ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、上記のようないずれか、例えば、MICA及び/またはMICB、ならびにMHCクラスI分子またはその構成要素、1つ以上のMHCクラスII分子、CIITA、B2M、NLRC5、HLA-A、HLA-B、HLA-C、LRC5、RFX-ANK、RFX5、RFX-AP、NFY-A、NFY-B、NFY-C、IRF1及びTAP1が挙げられる。いくつかの実施形態では、1つ以上の標的ポリヌクレオチドの発現を低下させる1つ以上の改変、例えば遺伝子改変は、所望の導入遺伝子の発現を増加させる1つ以上の改変、例えば、本明細書に記載のいずれかと組み合わされている。いくつかの実施形態では、その1つ以上の改変、例えば遺伝子改変により、免疫特権細胞または低免疫原性細胞である操作細胞が作られる。標的ポリヌクレオチドのうちの1つまたは複数の発現を調節すること(例えば、低下または欠失させること)によって、このような細胞は、レシピエント対象に生着したときに、免疫活性化が低下している。いくつかの実施形態では、その細胞は、投与すると、例えば、レシピエント対象または患者において低免疫原性とみなされる。
【0414】
標的ポリヌクレオチドの発現を低下させるいずれの方法も使用してよい。いくつかの実施形態では、その改変は、遺伝子改変である。いくつかの実施形態では、その改変、例えば遺伝子改変により、標的ポリヌクレオチドの発現が永続的に消失または低下する。例えば、いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドまたは標的遺伝子は、ターゲティングエンドヌクレアーゼ用いるなどによって、標的ポリヌクレオチド内でDNA切断を導入することによって破壊されている。別の実施形態では、その改変、例えば遺伝子改変により、標的ポリヌクレオチドの発現が一過性に低下する。例えば、いくつかの実施形態では、遺伝子抑制は、例えばアンチセンス技法を用いて、例えば、RNA干渉(RNAi)、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピン(shRNA)及び/またはリボザイムによって、遺伝子の発現を選択的に抑制(suppress)または抑制する(repress)ために、標的ポリヌクレオチドと相補的である阻害性核酸を用いて行う。
【0415】
いくつかの実施形態では、その標的ポリヌクレオチド配列は、ゲノム配列である。いくつかの実施形態では、その標的ポリヌクレオチド配列は、ヒトゲノム配列である。いくつかの実施形態では、その標的ポリヌクレオチド配列は、哺乳動物ゲノム配列である。いくつかの実施形態では、その標的ポリヌクレオチド配列は、脊椎動物ゲノム配列である。
【0416】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊は、その遺伝子で、典型的には標的を定めた形で、1つ以上の二本鎖切断及び/または1つ以上の一本鎖切断を誘導することによって行う。いくつかの実施形態では、二本鎖切断または一本鎖切断は、ヌクレアーゼ、例えば、遺伝子標的化ヌクレアーゼのようなエンドヌクレアーゼによって作り出す。いくつかの実施形態では、その標的化ヌクレアーゼは、遺伝子の配列またはその一部に標的化されるように特異的に設計されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びCRISPR関連ヌクレアーゼ(Cas)のようなRNA誘導型ヌクレアーゼから選択されている。いくつかの実施形態では、その標的化ヌクレアーゼは、二本鎖切断または一本鎖切断を生じさせ、その後、その切断は、エラープローンな非相同末端結合(NHEJ)、またはいくつかの事例では、テンプレートを使用する高精度な相同組み換え修復(HDR)を通じて修復される。いくつかの実施形態では、その標的化ヌクレアーゼは、DNA二本鎖切断(DSB)を生じさせる。いくつかの実施形態では、切断を発生させ、修復するプロセスは典型的には、エラープローンであり、その結果、NHEJによる修復から、DNA塩基の挿入及び欠失(インデル)が生じる。いくつかの実施形態では、その遺伝子改変は、標的遺伝子のヌクレオチド配列の欠失、挿入または変異を誘導し得る。いくつかの事例では、その遺伝子改変により、フレームシフト変異を発生させてよく、その結果、未成熟終止コドンを出現させることができる。ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集の例では、その標的化編集は、遺伝子のアレルの両方で行われ、その結果、その遺伝子の両アレルの破壊または編集が行われる。いくつかの実施形態では、その遺伝子のアレルのすべてが、その遺伝子編集の標的となる。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムを用いるなど、標的化ヌクレアーゼによる遺伝子改変により、遺伝子の完全なノックアウトが行われる。
【0417】
いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼ、例えばレアカッターエンドヌクレアーゼは、標的ポリヌクレオチド配列を含む細胞に導入する。そのヌクレアーゼは、細胞に、そのヌクレアーゼをコードする核酸の形態で導入してもよい。その核酸を細胞に導入するプロセスは、いずれかの適切な技法によって行うことができる。適切な技法としては、リン酸カルシウムもしくは脂質の媒介によるトランスフェクション、エレクトロポレーション及びトランスダクション、またはウイルスベクターを用いた感染が挙げられる。いくつかの実施形態では、その細胞に導入する核酸は、DNAである。いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼは、その細胞に、タンパク質の形態で導入する。例えば、CRISPR/Casシステムの場合には、リボ核タンパク質(RNP)をその細胞に導入してもよい。
【0418】
いくつかの実施形態では、その遺伝子改変は、CRISPR/Casシステムを用いて行う。細胞内の標的ポリヌクレオチド配列を変化させることができるいずれかのCRISPR/Casシステムを使用できる。このようなCRISPR-Casシステムは、様々なCasタンパク質を利用できる(Haft et al.PLoS Comput Biol.2005;1(6)e60)。CRISPR/Casシステムが細胞内の標的ポリヌクレオチド配列を変化させることを可能にするこのようなCasタンパク質の分子機構には、RNA結合タンパク質、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、ならびにポリメラーゼが含まれる。いくつかの実施形態では、そのCRISPR/Casシステムは、I型のCRISPRシステムである。いくつかの実施形態では、そのCRISPR/Casシステムは、II型のCRISPRシステムである。いくつかの実施形態では、そのCRISPR/Casシステムは、V型のCRISPRシステムである。
【0419】
そのCRISPR/Casシステムとしては、細胞内のいずれかの標的ポリヌクレオチド配列を変化させるために使用できる標的化システムが挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明で提供するCRISPR/Casシステムは、Casタンパク質と、そのCasタンパク質を標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに誘導するとともに、そのモチーフにハイブリダイズすることができる1つ以上、例えば少なくとも1~2個のリボ核酸(例えばガイドRNA(gRNA))とを含む。
【0420】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つ以上のアミノ酸の置換または改変を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上のアミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの事例では、置換及び/または改変は、細胞内で、そのポリペプチドのタンパク質分解を阻止もしくは低減したり、及び/または半減期を延長したりできる。いくつかの実施形態では、そのCasタンパク質は、ペプチド結合の置換(例えば、尿素、チオ尿素、カルバメート及びスルホニル尿素)を含むことができる。いくつかの実施形態では、そのCasタンパク質は、天然アミノ酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、そのCasタンパク質は、代替のアミノ酸(例えば、D-アミノ酸、β-アミノ酸、ホモシステイン及びホスホセリン)を含むことができる。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、ある部分を含めるための改変(例えば、PEG化、糖鎖付加、脂質化、アセチル化及びエンドキャッピング)を含むことができる。
【0421】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Casコアタンパク質を含む。例示的なCasコアタンパク質としては、Cas1、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas12a及びCas13が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、大腸菌(E.coli)サブタイプのCasタンパク質(CASS2としても知られる)を含む。大腸菌サブタイプの例示的なCasタンパク質としては、Cse1、Cse2、Cse3、Cse4及びCas5eが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、YpestサブタイプのCasタンパク質(CASS3としても知られる)を含む。Ypestサブタイプの例示的なCasタンパク質としては、Csy1、Csy2、Csy3及びCsy4が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、NmeniサブタイプのCasタンパク質(CASS4としても知られる)を含む。Nmeniサブタイプの例示的なCasタンパク質としては、Csn1及びCsn2が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、DvulgサブタイプのCasタンパク質(CASS1としても知られる)を含む。Dvulgサブタイプの例示的なCasタンパク質としては、Csd1、Csd2及びCas5dが挙げられる。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、TneapサブタイプのCasタンパク質(CASS7としても知られる)を含む。Tneapサブタイプの例示的なCasタンパク質としては、Cst1、Cst2、Cas5tが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、HmariサブタイプのCasタンパク質を含む。Hmariサブタイプの例示的なCasタンパク質としては、Csh1、Csh2及びCas5hが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、ApernサブタイプのCasタンパク質(CASS5としても知られる)を含む。Apernサブタイプの例示的なCasタンパク質としては、Csa1、Csa2、Csa3、Csa4、Csa5及びCas5aが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、MtubeサブタイプのCasタンパク質(CASS6としても知られる)を含む。Mtubeサブタイプの例示的なCasタンパク質としては、Csm1、Csm2、Csm3、Csm4及びCsm5が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、RAMPモジュールCasタンパク質を含む。例示的なRAMPモジュールCasタンパク質としては、Cmr1、Cmr2、Cmr3、Cmr4、Cmr5及びCmr6が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Klompe et al.,Nature 571,219-225(2019)、Strecker et al.,Science 365,48-53(2019)を参照されたい。
【0422】
いくつかの実施形態では、細胞を遺伝子改変して、1つ以上の遺伝子をノックアウト、ノックダウン、または別段に改変する方法は、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、トランスポザーゼ、及びクラスター化した規則的な配置の短い回文反復配列(CRISPR)/Casシステムを含む部位特異的ヌクレアーゼを使用することを含む。
【0423】
ZFNは、ジンクフィンガーを含む転写因子から改変した一連の部位特異的なDNA結合ドメインが、細菌制限酵素FokIのエンドヌクレアーゼドメインに結合したものを含む融合タンパク質である。ZFNは、DNA結合ドメイン、すなわちジンクフィンガードメインを1つ以上(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個以上)有してよい。例えば、Carroll et al.,Genetics Society of America(2011)188:773-782、Kim et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1996)93:1156-1160を参照されたい。各ジンクフィンガードメインは、1つ以上の亜鉛イオンによって安定化された小さなタンパク質構造モチーフであり、通常、3~4bpのDNA配列を認識する。したがって、タンデムドメインが、細胞のゲノム内に固有の長いヌクレオチド配列に結合できる可能性がある。
【0424】
既知の特異性を持つ様々なジンクフィンガーを組み合わせて、約6bp、約9bp、約12bp、約15bpまたは約18bpの配列を認識するマルチフィンガーポリペプチドを作製できる。所定の配列を認識するジンクフィンガー(及びそれらの組み合わせ)を生成するには、ファージディスプレイ、酵母ワンハイブリッドシステム、細菌ワンハイブリッドシステム、細菌ツーハイブリッドシステム及び哺乳動物細胞を含め、様々な選択技法及びモジュラーアセンブル技法が利用可能である。ジンクフィンガーは、所定の核酸配列に結合するように操作できる。所定の核酸配列に結合するジンクフィンガーを操作する基準は、当該技術分野で知られている。例えば、Sera et al.,Biochemistry(2002)41:7074-7081、Liu et al.,Bioinformatics(2008)24:1850-1857を参照されたい。
【0425】
FokIヌクレアーゼドメインまたはその他の二量体ヌクレアーゼドメインを含むZFNは、二量体として機能する。すなわち、回文性ではないDNA部位を標的とするには、一対のZFNが必要となる。2つの個々のZFNは、適切な間隔を置いて配置されたヌクレアーゼとともに、対向するDNA鎖に結合しなければならない。Bitinaite et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1998)95:10570-10575を参照されたい。ゲノム内の所定の部位を切断するために、一対のZFNを設計して、その部位を挟み込む2つの配列、一方はフォワード鎖上の配列、もう一方はリバース鎖上の配列を認識するようにする。ZFNが、いずれの側の部位にも結合したら、そのヌクレアーゼドメインは二量化して、その部位でDNAを切断し、5′オーバーハングとともに、DSBを生じさせる。続いて、ホモロジーアームに挟まれた所望の変異を含む修復テンプレートの助けを借りて、HDRを用いて所定の変異を導入できる。その修復テンプレートは通常、その細胞に導入された外因性の二本鎖DNAベクターである。Miller et al.,Nat.Biotechnol.(2011)29:143-148、Hockemeyer et al.,Nat.Biotechnol.(2011)29:731-734を参照されたい。
【0426】
TALENは、標的遺伝子を編集するのに使用できる人工ヌクレアーゼの別の例である。TALENは、TALEリピートというDNA結合ドメインに由来し、このドメインは通常、長いDNA配列に結合して、その配列を認識する10~30リピートのタンデムアレイを含む。各リピートは、33~35アミノ酸長であり、2つの隣接するアミノ酸(反復可変二残基またはRVDという)により、4つのDNA塩基対のうちの1つに対する特異性が得られる。したがって、標的DNA配列において、そのリピートと塩基対との間に1対1の対応関係が見られる。
【0427】
TALENは、1つ以上(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個以上)のTALE DNA結合ドメインをヌクレアーゼドメイン、例えばFokIエンドヌクレアーゼドメインに融合することによって、人工的に作製する。Zhang,Nature Biotech.(2011)29:149-153を参照されたい。FokIをTALENで使用するために、FokIに対していくつかの変異が加えられており、これらの変異が、例えば、切断特異性または活性を改善する。Cermak et al.,Nucl.Acids Res.(2011)39:e82、Miller et al.,Nature Biotech.(2011)29:143-148、Hockemeyer et al.,Nature Biotech.(2011)29:731-734、Wood et al.,Science(2011)333:307、Doyon et al.,Nature Methods(2010)8:74-79、Szczepek et al.,Nature Biotech(2007)25:786-793、Guo et al.,J.Mol.Biol.(2010)200:96を参照されたい。FokIドメインは、二量体として機能し、標的ゲノム内の部位に特有のDNA結合ドメインを適切な向き及び間隔で有するコンストラクトが2つ必要となる。TALE DNA結合ドメインとFokIヌクレアーゼドメインとの間のアミノ酸残基数、及び2つの個々のTALEN結合部位間の塩基数の両方とも、高い活性レベルを得るために重要なパラメーターであると見られる。Miller et al.,Nature Biotech.(2011)29:143-148。
【0428】
操作したTALEリピートをヌクレアーゼドメインと組み合わせることによって、いずれかの所望のDNA配列に特異的な部位特異的なヌクレアーゼを作製することができる。ZFNと同様に、TALENは、細胞に導入して、ゲノム内の所望の標的部位にDSBを生じさせることができるため、TALENを使用して、HDRの媒介による同様の経路で、遺伝子をノックアウトしたり、または変異をノックインしたりできる。Boch,Nature Biotech.(2011)29:135-136、Boch et al.,Science(2009)326:1509-1512、Moscou et al.,Science(2009)326:3501を参照されたい。
【0429】
メガヌクレアーゼは、大きなDNA配列(14~40塩基対)を認識して、その配列を切断する能力を特徴とする、エンドヌクレアーゼファミリーの酵素である。メガヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ活性及び/またはDNA認識に影響を及ぼすその構造モチーフに基づいて、ファミリーにグループ分けする。最も普及し、最もよく知られたメガヌクレアーゼは、LAGLIDADGファミリーのタンパク質であり、その名称は、保存的アミノ酸配列から取られている。Chevalier et al.,Nucleic Acids Res.(2001)29(18):3757-3774を参照されたい。一方で、GIY-YIGファミリーメンバーは、GIY-YIGモジュールを有し、このモジュールは、70~100残基長であり、4つの不変残基を有する保存配列モチーフを4つまたは5つ含み、そのうちの2つは、活性に必須である。Van Roey et al.,Nature Struct.Biol.(2002)9:806-811を参照されたい。His-Cysファミリーのメガヌクレアーゼは、数百個のアミノ酸残基を含む領域にわたって、高度に保存された一連のヒスチジン及びシステインを特徴とする。Chevalier et al.,Nucleic Acids Res.(2001)29(18):3757-3774を参照されたい。NHNファミリーのメンバーは、アスパラギン残基に囲まれた2対の保存されたヒスチジンを含むモチーフによって定義される。Chevalier et al.,Nucleic Acids Res.(2001)29(18):3757-3774を参照されたい。
【0430】
高い特異性が必要となるため、特定の標的DNA配列に対する天然のメガヌクレアーゼを特定する可能性は低いので、特有の配列を認識するメガヌクレアーゼバリアントを作製するために、変異誘発及びハイスループットスクリーニング法を含む様々な方法が用いられている。例えば、所定の核酸配列に結合するように、DNA結合特異性が変化したメガヌクレアーゼを操作する方策は、当該技術分野で知られている。例えば、Chevalier et al.,Mol.Cell.(2002)10:895-905、Epinat et al.,Nucleic Acids Res(2003)31:2952-2962、Silva et al.,J Mol.Biol.(2006)361:744-754、Seligman et al.,Nucleic Acids Res(2002)30:3870-3879、Sussman et al.,J Mol Biol(2004)342:31-41、Doyon et al.,J Am Chem Soc(2006)128:2477-2484、Chen et al.,Protein Eng Des Sel(2009)22:249-256、Arnould et al.,J Mol Biol.(2006)355:443-458、Smith et al.,Nucleic Acids Res.(2006)363(2):283-294を参照されたい。
【0431】
ZFN及びTALENのように、メガヌクレアーゼは、ゲノムDNAにDSBを生じさせることができ、この切断により、例えばNHEJを介して不適切に修復されると、フレームシフト変異が起こることがあり、細胞内での標的遺伝子の発現が低下する。その代わりに、メガヌクレアーゼとともに、外来DNAを細胞に導入できる。外来DNAの配列及び染色体の配列に応じて、このプロセスを用いて、標的遺伝子を改変することができる。Silva et al.,Current Gene Therapy(2011)11:11-27を参照されたい。
【0432】
トランスポザーゼは、トランスポゾンの末端に結合して、トランスポゾンが、カットアンドペースト機構または複製型転移機構によって別のゲノム部分に移動するのを触媒する酵素である。トランスポザーゼをCRISPER/Casシステムのような他のシステムに連結することによって、新たな遺伝子編集ツールを開発して、ゲノムDNAの部位特異的な挿入または操作を可能にすることができる。トランスポゾンを用いた既知のDNA組み込み方法が2つ存在し、この方法では、触媒活性を持たないCasエフェクタータンパク質及びTn7様トランスポゾンを使用する。トランスポザーゼ依存性のDNA組み込みは、ゲノム内にDSBを誘発せず、これにより、より安全で、より特異的なDNA組み込みを確保し得る。
【0433】
CRISPRシステムは元々、侵入するファージ及びプラスミドに対する防御に関与するシステムであって、獲得免疫の形態をもたらすシステムとして、原核生物(例えば、細菌及び古細菌)で発見された。今では、CRISPRシステムは、研究及び臨床応用で、一般的な遺伝子編集ツールとして適応及び使用されている。
【0434】
CRISPR/Casシステムは概して、1つ以上のガイドRNA(gRNA)及びCasタンパク質という少なくとも2つの構成要素を含む。そのCasタンパク質は、DSBを標的部位に導入するヌクレアーゼである。CRISPR-Casシステムは、2つの主なクラスに分類され、クラス1システムでは、核酸を分解するのに複数のCasタンパク質の複合体を使用し、クラス2システムでは、同じ目的で、1つの大きなCasタンパク質を使用する。クラス1は、I型、III型及びIV型に分けられ、クラス2は、II型、V型及びVI型に分けられる。遺伝子編集用途に適応される様々なCasタンパク質としては、Cas3、Cas4、Cas5、Cas8a、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas12、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1)、Cas12c(C2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f(C2c10)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(C2c5)、Cas13、Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c4、C2c8、C2c9、Cmr5、Cse1、Cse2、Csf1、Csm2、Csn2、Csx10、Csx11、Csy1、Csy2、Csy3及びMad7が挙げられるが、これらに限定されない。最も広く使用されるCas9は、II型Casタンパク質であり、例示として本明細書に記載されている。これらのCasタンパク質は、様々な供給源種に由来してよい。例えば、Cas9は、S.ピオゲネス(S.pyogenes)またはS.アウレウス(S.aureus)から得ることができる。
【0435】
元の微生物のゲノムにおいて、II型CRISPRシステムでは、侵入してきたDNAの配列が、宿主ゲノム内のアレイとしてコードされるCRISPRリピート配列の間に組み込まれている。CRISPRリピートアレイからの転写産物は、侵入してきたDNAから転写された可変配列(「プロトスペーサー」配列として知られている)と、CRISPRリピートの一部とをそれぞれ有するCRISPR RNA(crRNA)にプロセシングされる。それぞれのcrRNAは、第2のトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)とハイブリダイズし、これらの2つのRNAは、Cas9ヌクレアーゼと複合体を形成する。crRNAのうち、プロトスペーサーによってコードされた部分は、標的DNA配列が「プロトスペーサー隣接モチーフ」(PAM)として知られる短い配列に隣接していることを条件として、相補的な標的DNA配列を切断するようにCas9複合体を誘導する。
【0436】
その発見以来、CRISPRシステムは、細菌から、ヒト細胞を含む真核細胞までに及ぶ広範な細胞及び生物において、配列特異的なDSB及び標的ゲノム編集を誘導するのに適応されてきた。遺伝子編集用途でCRISPRシステムを使用する際には、元のcrRNA:tracrRNA複合体が、人工的に設計された合成gRNAに置き換えられている。例えば、gRNAは、crRNA、テトラループ及びtracrRNAから構成されるシングルガイドRNA(sgRNA)であることができる。crRNAは通常、目的の標的DNAを認識するようにユーザーが設計した相補的な領域(スペーサーともいう、通常は約20ヌクレオチド長)を含む。tracrRNA配列は、Casヌクレアーゼ結合のためのスキャフォールド領域を含む。crRNA配列とtracrRNA配列は、テトラループによって連結されており、それぞれ、相互にハイブリダイズするための短いリピート配列を有し、それにより、キメラsgRNAが得られる。gRNAに存在するスペーサーまたは相補的領域の配列を変更するだけで、Casヌクレアーゼのゲノム標的を変更できる。その相補的領域は、標準的なRNA-DNAの相補的な塩基対合則を通じて、Casヌクレアーゼを標的DNA部位に誘導することになる。
【0437】
Casヌクレアーゼが機能するためには、ゲノムDNA内の標的配列のすぐ下流にPAMが存在しなければならない。PAMがCasタンパク質により認識されると、隣接するゲノム配列が不安定化して、その配列がgRNAによってインタロゲーションされ、一致する配列が存在すると、gRNAとDNAの対合が行われると考えられている。PAM特有の配列は、Cas遺伝子の種に応じて様々である。例えば、S.ピオゲネスに由来する、最も一般的に使用されるCas9ヌクレアーゼは、5’-NGG-3’というPAM配列を認識するか、または、それよりも低い効率で5’-NAG-3’(「N」は、いずれのヌクレオチドであることもできる)を認識する。代替的なPAMを用いる他のCasヌクレアーゼバリアントも特徴付けられており、ゲノム編集での使用で成果を収めており、これらのバリアントは、以下の表1aにまとめられている。
【0438】
【表1a】
【0439】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、その活性、特異性、認識性及び/またはその他の特性を変化させるための1つ以上の変異を含んでよい。例えば、そのCasヌクレアーゼは、オフターゲット効果を軽減するために、その忠実度を変化させる1つ以上の変異を有してよい(例えば、eSpCas9、SpCas9-HF1、HypaSpCas9、HeFSpCas9及びevoSpCas9は、忠実度の高いSpCas9バリアントである)。別の例として、そのCasヌクレアーゼは、そのPAM特異性を変化させる1つ以上の変異を有してもよい。
【0440】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、本明細書に記載のCasタンパク質またはその機能的部分のいずれか1つを含む。本明細書で使用する場合、「機能的部分」とは、少なくとも1つのリボ核酸(例えばガイドRNA(gRNA))と複合体を形成して、標的ポリヌクレオチド配列を切断する能力を保持しているペプチド部分を指す。いくつかの実施形態では、その機能的部分は、機能可能に連結されたCas9タンパク質機能的ドメインの組み合わせであって、DNA結合ドメイン、少なくとも1つのRNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン及びエンドヌクレアーゼドメインからなる群から選択した組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、その機能的部分は、機能可能に連結されたCas12a(Cpf1としても知られる)タンパク質機能的ドメインの組み合わせであって、DNA結合ドメイン、少なくとも1つのRNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン及びエンドヌクレアーゼドメインからなる群から選択した組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、その機能的ドメインは、複合体を形成する。いくつかの実施形態では、そのCas9タンパク質の機能的部分は、RuvC様ドメインの機能的部分を含む。いくつかの実施形態では、そのCas9タンパク質の機能的部分は、HNHヌクレアーゼドメインの機能的部分を含む。いくつかの実施形態では、そのCas12aタンパク質の機能的部分は、RuvC様ドメインの機能的部分を含む。
【0441】
いくつかの実施形態では、適切なCasタンパク質としては、Cas0、Cas12a(すなわちCpf1)、Cas12b、Cas12i、CasX及びMad7が挙げられるが、これらに限定されない。
【0442】
いくつかの実施形態では、外因性Casタンパク質を細胞内に、ポリペプチドの形態で導入できる。ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、細胞透過ポリペプチドまたは細胞透過ペプチドにコンジュゲートまたは融合できる。本明細書で使用する場合、「細胞透過ポリペプチド」は、分子の細胞内への取り込みを促すポリペプチドを指し、「細胞透過ペプチド」は、分子の細胞内への取り込みを促すペプチドを指す。その細胞透過ポリペプチドは、検出可能な標識を含むことができる。
【0443】
ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、荷電タンパク質(例えば、正電荷、負電荷または全体的に中性の電荷を有するタンパク質)にコンジュゲートまたは融合できる。このような連結は、共有結合であってよい。いくつかの実施形態では、そのCasタンパク質は、正電荷の高いGFPに融合して、そのCasタンパク質が細胞を透過する能力を大幅に上昇させることができる(Cronican et al.ACS Chem Biol.2010;5(8):747-52)。ある特定の実施形態では、そのCasタンパク質は、タンパク質トランスダクションドメイン(PTD)に融合して、そのタンパク質の細胞内への侵入を促すことができる。例示的なPTDとしては、Tat、オリゴアルギニン及びペネトラチンが挙げられる。いくつかの実施形態では、そのCas9タンパク質は、細胞透過ペプチドに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、そのCas9タンパク質は、PTDに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、そのCas9タンパク質は、tatドメインに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、そのCas9タンパク質は、オリゴアルギニンドメインに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、そのCas9タンパク質は、ペネトラチンドメインに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、そのCas9タンパク質は、正電荷の高いGFPに融合されたCas9ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、そのCas12aタンパク質は、細胞透過ペプチドに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、そのCas12aタンパク質は、PTDに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、そのCas12aタンパク質は、tatドメインに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、そのCas12aタンパク質は、オリゴアルギニンドメインに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、そのCas12aタンパク質は、ペネトラチンドメインに融合されたCas12aポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、そのCas12aタンパク質は、正電荷の高いGFPに融合されたCas12aポリペプチドを含む。
【0444】
いくつかの実施形態では、そのCasタンパク質は、そのCasタンパク質をコードする核酸の形態で、標的ポリヌクレオチド配列を含む細胞内に導入できる。その核酸を細胞内に導入するプロセスは、いずれかの適切な技法によって行うことができる。適切な技法としては、リン酸カルシウムまたは脂質の媒介によるトランスフェクション、エレクトロポレーション及びトランスダクション、またはウイルスベクターを用いた感染が挙げられる。いくつかの実施形態では、その核酸は、DNAを含む。いくつかの実施形態では、その核酸は、本明細書に記載されているような改変DNAを含む。いくつかの実施形態では、その核酸は、mRNAを含む。いくつかの実施形態では、その核酸は、本明細書に記載されているような改変mRNA(例えば、合成の改変mRNA)を含む。
【0445】
いくつかの実施形態では、そのCasタンパク質は、1~2個のリボ核酸(例えばガイドRNA(gRNA))と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、そのCasタンパク質は、2つのリボ核酸と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、そのCasタンパク質は、1つのリボ核酸と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、そのCasタンパク質は、本明細書に記載されているような改変核酸(例えば、合成の改変mRNA)によってコードされる。
【0446】
提供する実施形態では、CRISPR/Casシステムは概して、1つ以上のガイドRNA(gRNA)及びCasタンパク質という2つの構成要素を含む。いくつかの実施形態では、そのCasタンパク質は、その1つ以上、例えば1~2個のリボ核酸(例えばガイドRNA(gRNA))と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、そのCasタンパク質は、2つのリボ核酸と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、そのCasタンパク質は、1つのリボ核酸と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、そのCasタンパク質は、本明細書に記載されているような改変核酸(例えば、合成の改変mRNA)によってコードされる。
【0447】
いくつかの実施形態では、gRNAは、Casが結合するためのスキャフォールド配列と、ユーザーが設計したスペーサー、すなわち相補的部分(crRNAと称される)から構成される短い合成RNAである。そのcRNAは、crRNAターゲティング配列(本明細書では、以下、gRNAターゲティング配列ともいう。通常、約20ヌクレオチド長)であって、改変対象であるゲノム標的を定める配列と、crRNAリピートからなる領域(例えば、GUUUUAGAGCUA(配列番号26))から構成される。gRNAに存在する相補的部分の配列(例えばgRNAターゲティング配列)を変更するだけで、Casタンパク質のゲノム標的を変更できる。いくつかの実施形態では、Cas結合のためのスキャフォールド配列は、そのアンチリピート配列を通じてcrRNAにハイブリダイズするtracrRNAの配列(例えば、UAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUU(配列番号27))で構成されている。crRNAとtracrRNAとの複合体は、Casヌクレアーゼ(例えばCas9)をリクルートし、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の上流を切断する。Casタンパク質が機能するためには、ゲノムDNA内の標的配列のすぐ下流にPAMがなければならない。PAMがCasタンパク質により認識されると、隣接するゲノム配列が不安定化して、その配列がgRNAによってインタロゲーションされ、一致する配列が存在すると、gRNAとDNAの対合が行われると考えられている。PAM特有の配列は、Cas遺伝子の種に応じて様々である。例えば、S.ピオゲネスに由来する、最も一般的に使用されるCas9ヌクレアーゼは、NGGというPAM配列を認識する。代替的なPAMを用いる他のCas9バリアント及び他のヌクレアーゼも特徴付けられており、ゲノム編集での使用で成果を収めている。したがって、CRISPR/Casシステムを用いて、標的座位に合わせて設計されたgRNAと相補的である所定のゲノム遺伝子座に、狙ったDSBを生じさせることができる。crRNAとtracrRNAは、キメラシングルガイドRNA(sgRNA、Hsu et al.2013)であるgRNAを作製するために、ループ配列(例えばGAAAテトラループ)を用いて連結することができる。sgRNAは、DNAベースでの発現用に、または化学合成によって生成できる。
【0448】
いくつかの実施形態では、そのgRNAの相補的部分の配列(例えばgRNAターゲティング配列)は、目的の標的部位に応じて変動することになる。いくつかの実施形態では、そのgRNAは、遺伝子に特異的な相補的部分の配列であって、表1bに示されている配列を含む。いくつかの実施形態では、そのgRNAが標的とするゲノム遺伝子座は、記載されているような座位のいずれかから4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内または500bp以内に位置する。
【0449】
本明細書に開示されている方法では、Casタンパク質を標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに誘導するとともに、そのモチーフにハイブリダイズすることができるいずれかのリボ核酸の使用が想定されている。いくつかの実施形態では、そのリボ核酸の少なくとも1つは、tracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、そのリボ核酸の少なくとも1つは、CRISPR RNA(crRNA)を含む。いくつかの実施形態では、1本のリボ核酸が、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに誘導するとともに、そのモチーフにハイブリダイズするガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、リボ核酸の少なくとも1つが、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに誘導するとともに、そのモチーフにハイブリダイズするガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、その1~2本のリボ核酸の両方が、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに誘導するとともに、そのモチーフにハイブリダイズするガイドRNAを含む。本発明で提供するリボ核酸は、当業者には理解されるように、使用する具体的なCRISPR/Casシステム、及び標的ポリヌクレオチドの配列に応じて、多種多様な標的モチーフにハイブリダイズするように選択できる。1~2本のリボ核酸は、標的ポリヌクレオチド配列以外の核酸配列とのハイブリダイゼーションが最小限となるように選択することもできる。いくつかの実施形態では、1~2本のリボ核酸は、その細胞内のすべての他のゲノムヌクレオチド配列と比べたときに、ミスマッチを少なくとも2つ含む標的モチーフにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1~2本のリボ核酸は、その細胞内のすべての他のゲノムヌクレオチド配列と比べたときにミスマッチを少なくとも1つ含む標的モチーフにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1~2本のリボ核酸は、Casタンパク質に認識されるデオキシリボ核酸モチーフに直接隣接した標的モチーフにハイブリダイズするように設計されている。いくつかの実施形態では、1~2本のリボ核酸のそれぞれは、Casタンパク質に認識されるデオキシリボ核酸モチーフに直接隣接した標的モチーフにハイブリダイズするように設計されており、そのデオキシリボ核酸モチーフは、それらの標的モチーフ間にある変異アレルを挟み込んでいる。
【0450】
いくつかの実施形態では、1~2本のリボ核酸のそれぞれが、Casタンパク質を細胞内の標的ポリヌクレオチド配列の標的モチーフに誘導するとともに、そのモチーフにハイブリダイズするガイドRNAを含む。
【0451】
いくつかの実施形態では、1本または2本のリボ核酸(例えばガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の同じ鎖上の配列と相補的であり、及び/またはその配列にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1本または2本のリボ核酸(例えばガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の逆鎖上の配列と相補的であり、及び/またはその配列にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1本または2本のリボ核酸(例えばガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の逆鎖上の配列と相補的ではなく、及び/またはその配列にハイブリダイズしない。いくつかの実施形態では、1本または2本のリボ核酸(例えばガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列の重複する標的モチーフと相補的であり、及び/またはそのモチーフにハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、1本または2本のリボ核酸(例えばガイドRNA)は、標的ポリヌクレオチド配列のオフセット標的モチーフと相補的であり、及び/またはそのモチーフにハイブリダイズする。
【0452】
いくつかの実施形態では、ウイルストランスダクション(例えばレンチウイルストランスダクション)を介して、Casタンパク質をコードする核酸、及び少なくとも1~2本のリボ核酸をコードする核酸を細胞内に導入する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1~2本のリボ核酸と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、2本のリボ核酸と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1本のリボ核酸と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、本明細書に記載されているような改変核酸(例えば、合成の改変mRNA)によってコードされる。
【0453】
本明細書に記載の遺伝子をCRISPR/Casベースで標的とするのに有用な例示的なgRNA配列は、表1bに示されている。その配列は、2016年5月9日に出願されたWO2016183041に見ることができ、その開示は、表、付表及び配列表を含め、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0454】
【表1b】
【0455】
本明細書に記載の遺伝子をCRISPR/Casベースで標的とするのに有用な追加の例示的なCas9ガイドRNA配列は、表1cに示されている。
【0456】
【表2A】
【0457】
いくつかの実施形態では、記載されているような遺伝子の発現を低下または消失させるための遺伝子破壊法で使用するための新たな座位及び/またはgRNAターゲティング配列を特定することは、当業者の技能レベルの範囲内である。例えば、CRISPR/Casシステムでは、特定の座位(例えば、例えば表1bに示されている標的遺伝子内の座位)に対して既存のgRNAターゲティング配列が知られているときには、「インチワーミング」アプローチを用いて、PAM配列の座位の両側のフランキング領域をスキャニングすること(これは通常、ゲノム全体にわたり、約100塩基対(bp)ごとに行う)によって、導入遺伝子の標的挿入用の追加の座位を特定できる。PAM配列は、使用する具体的なCasヌクレアーゼによって決まる。通常、ヌクレアーゼによって、対応するPAM配列が異なるからである。その座位の両側のフランキング領域は、約500~4000bp長、例えば、約500bp長、約1000bp長、約1500bp長、約2000bp長、約2500bp長、約3000bp長、約3500bp長または約4000bp長であることができる。その検索範囲内にPAM配列が特定されたら、遺伝子破壊法で用いるために、その座位の配列に従って新たなガイドを設計できる。CRISPR/Casシステムが、例示として記載されているが、新たな座位を特定するためのこの方法では、ZFN、TALEN、メガヌクレアーゼ及びトランスポザーゼを用いるアプローチを含め、記載されているようないずれかの遺伝子編集アプローチを使用できる。
【0458】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞は、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の手法を用いて作製する。「TALEヌクレアーゼ」(TALEN)は、典型的には転写活性化因子様エフェクター(TALE)に由来する核酸結合ドメインと、核酸標的配列を切断するための1つのヌクレアーゼ触媒ドメインからなる融合タンパク質と意図されている。その触媒ドメインは、好ましくはヌクレアーゼドメイン、より好ましくは、例えば、I-TevI、ColE7、NucA及びFok-Iのような、エンドヌクレアーゼ活性を有するドメインである。特定の実施形態では、そのTALEドメインは、例えば、I-CreI及びI-OnuI、またはそれらの機能的バリアントのようなメガヌクレアーゼに融合されていることができる。いくつかの実施形態では、前記ヌクレアーゼは、単量体のTALE-ヌクレアーゼである。単量体のTALE-ヌクレアーゼは、WO2012138927に記載の、操作TALリピートとI-TevIの触媒ドメインとの融合体のように、特異的な認識及び切断に二量体化を必要としないTALE-ヌクレアーゼである。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、Xanthomonasの細菌種に由来するタンパク質であり、複数の反復配列を含み、それぞれのリピートは、核酸標的配列の各ヌクレオチド塩基に特異的である二残基(RVD)を12位及び13位に含む。同様のモジュラー式の1塩基ごとの核酸結合特性(MBBBD)を持つ結合ドメインは、異なる細菌種において、本出願人によって最近発見された新たなモジュラータンパク質からも得ることができる。この新たなモジュラータンパク質には、配列多様性がTALリピートよりも高いという利点がある。好ましくは、異なるヌクレオチドの認識に関連するRVDは、Cを認識するためのHD、Tを認識するためのNG、Aを認識するためのNI、GまたはAを認識するためのNN、A、C、GまたはTを認識するためのNS、Tを認識するためのHG、Tを認識するためのIG、Gを認識するためのNK、Cを認識するためのHA、Cを認識するためのND、Cを認識するためのHI、Gを認識するためのHN、Gを認識するためのNA、GまたはAを認識するためのSN、Tを認識するためのYG、Aを認識するためのTL、AまたはGを認識するためのVT、及びAを認識するためのSWである。別の実施形態では、12及び13番目の必要不可欠なアミノ酸は、ヌクレオチドA、T、C及びGに対するそれらの特異性を調節するため、ならびに特にこの特異性を強化するために、他のアミノ酸残基に変異させることができる。TALENキットは、市販されている。
【0459】
いくつかの実施形態では、本発明の細胞は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を用いて操作する。「ジンクフィンガー結合タンパク質」は、亜鉛イオンの配位を通じてタンパク質構造が安定化した結果、DNA、RNA及び/またはタンパク質に、好ましくは配列特異的な形で結合するタンパク質またはポリペプチドである。ジンクフィンガー結合タンパク質という用語は、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略称される場合が多い。個々のDNA結合ドメインは、典型的には、「フィンガー」と称される。ZFPは、少なくとも1つのフィンガー、典型的には2つのフィンガー、3つのフィンガーまたは6つのフィンガーを有する。各フィンガーは、2~4塩基対のDNA、典型的には3塩基対または4塩基対のDNAに結合する。ZFPは、標的部位または標的セグメントと呼ばれる核酸配列に結合する。各フィンガーは、典型的には、およそ30アミノ酸の亜鉛キレート化DNA結合サブドメインを含む。このクラスの単一のジンクフィンガーは、1つのβターンの2つのシステイン残基とともに亜鉛と配位結合した2つの不変ヒスチジン残基を含むαヘリックスからなることが研究により実証されている(例えば、Berg & Shi,Science 271:1081-1085(1996)を参照されたい)。
【0460】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞は、ホーミングエンドヌクレアーゼを用いて作製する。このようなホーミングエンドヌクレアーゼは、当該技術分野で周知である(Stoddard 2005)。ホーミングエンドヌクレアーゼは、DNA標的配列を認識し、一本鎖切断または二本鎖切断を生じさせる。ホーミングエンドヌクレアーゼは、高度に特異的であり、長さ12~45塩基対(bp)の範囲、通常は長さ14~40bpの範囲のDNA標的部位を認識する。ホーミングエンドヌクレアーゼは、例えば、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、HNHエンドヌクレアーゼまたはGIY-YIGエンドヌクレアーゼに対応し得る。いくつかの実施形態では、ホーミングエンドヌクレアーゼは、I-CreIバリアントであることができる。
【0461】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞は、メガヌクレアーゼを用いて作製する。メガヌクレアーゼは、定義によれば、大きな配列を認識する配列特異的エンドヌクレアーゼである(Chevalier,B.S.and B.L.Stoddard,Nucleic Acids Res.,2001,29,3757-3774)。メガヌクレアーゼは、生細胞内の特有の部位を切断することによって、その切断部位の近傍で、遺伝子ターゲティングを1000倍以上増強できる(Puchta et al.,Nucleic Acids Res.,1993,21,5034-5040、Rouet et al.,Mol.Cell.Biol.,1994,14,8096-8106、Choulika et al.,Mol.Cell.Biol.,1995,15,1968-1973、Puchta et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1996,93,5055-5060、Sargent et al.,Mol.Cell.Biol.,1997,17,267-77、Donoho et al.,Mol.Cell.Biol,1998,18,4070-4078、Elliott et al.,Mol.Cell.Biol.,1998,18,93-101、Cohen-Tannoudji et al.,Mol.Cell.Biol.,1998,18,1444-1448)。
【0462】
いくつかの実施形態では、本発明で提供する細胞は、ポリペプチドの発現をノックダウンする(例えば、低下、消失または阻害させる)ためのRNAサイレンシングまたはRNA干渉(RNAi)を用いて作製する。有用なRNAi法としては、合成RNAi分子、低分子干渉RNA(siRNA)、PIWI相互作用NRA(piRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)及び当業者に認識されている他の一過性ノックダウン法を用いる方法が挙げられる。配列特異的なshRNA、siRNA、miRNAなどを含むRNAi用の試薬は、市販されている。例えば、上記のいずれか、例えば、CIITA、B2MまたはNLRC5のような標的ポリヌクレオチドは、その標的ポリヌクレオチドの標的モチーフと相補的な阻害性核酸、例えばsiRNAを細胞内に導入することによるRNA干渉によって、その細胞内でノックダウンできる。いくつかの実施形態では、上記のいずれか、例えば、CIITA、B2MまたはNLRC5のような標的ポリヌクレオチドは、shRNAを発現するウイルスを細胞内にトランスダクションすることによって、その細胞内でノックダウンできる。いくつかの実施形態では、RNA干渉を用いて、CIITA、B2M及びNLRC5からなる群から選択した少なくとも1つの発現を低下または阻害させる。
【0463】
いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、非相同末端結合(NHEJ)または相同配向型修復(HDR)と併せることを含め、二本鎖切断(DSB)を媒介する。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、DNAベースの編集またはプライム編集を含むことができる。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)を含むことができる。
【0464】
いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、塩基編集と関連するものである。塩基エディター(BE)は典型的には、Cas(「CRISPR関連」)ドメインと核酸塩基改変ドメイン(例えば、天然または進化型のデアミナーゼ、例えば、APOBEC1(「アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒ポリペプチド1」)、CDA(「シチジンデアミナーゼ」)及びAID(「活性化誘導シチジンデアミナーゼ」)を含むシチジンデアミナーゼ)ドメインとの融合体である。いくつかの事例では、塩基エディターは、細胞のDNA修復プロセスを変化させて、結果として生じる一塩基変化の効率及び/または安定性を高めるタンパク質またはドメインも含んでよい。
【0465】
いくつかの態様では、現在利用可能な塩基エディターとしては、標的C・GをT・Aへ変換するシチジン塩基エディター(例えばBE4)、及び標的A・TをG・Cへ変換するアデニン塩基エディター(例えばABE7.10)が挙げられる。いくつかの態様では、Cas9による標的化を伴う脱アミノ化は、二本鎖DNA切断を導入することなく、塩基変化を誘導するように設計された塩基エディター(BE)システムと併せるものと初めて示された。さらに、不活性型Cas9(dCas9)に融合したラットデアミナーゼAPOBEC1(rAPOBEC1)を用いて、sgRNAのPAMの上流でシチジンをチミジンに変換するのに成功した。いくつかの態様では、dCas9を、脱アミノ化されたシチジンの反対側の鎖にニックを入れる「ニッカーゼ」Cas9 D10Aに変化させることによって、この最初のBEシステムを最適化した。理論に束縛されるものではないが、これにより、ロングパッチ塩基除去修復(BER)が開始されると予想される。この場合、脱アミノ化された鎖が修復のテンプレートとして優先的に使用されて、U:A塩基対が生成され、次いで、この塩基対が、DNA複製中にT:Aに変換される。
【0466】
いくつかの実施形態では、その塩基エディターは、触媒活性を持たない第1のDNA結合タンパク質ドメイン、塩基編集活性を持つドメイン、及びニッカーゼ活性を持つ第2のDNA結合タンパク質ドメインを含む核酸塩基エディターであり、これらのDNA結合タンパク質ドメインは、1つの融合タンパク質上に発現するか、または別々に(例えば、別々の発現ベクター上に)発現する。いくつかの実施形態では、その塩基エディターは、塩基編集活性を持つドメイン(例えば、シチジンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼ)、及び核酸をプログラム可能な2つのDNA結合タンパク質ドメイン(napDNAbp)を含む融合タンパク質であり、その第1のnapDNAbpは、ニッカーゼ活性を含み、第2のnapDNAbpは、触媒活性を持たず、少なくとも、それらの2つのnapDNAbpは、リンカーによって結合されている。いくつかの実施形態では、その塩基エディターは、ニッカーゼ活性を持つ、CRISPR-Cas(例えばCas9)のDNAドメイン(nCas、nCas9)、CRISPR-Casタンパク質(例えばCas9)の、触媒活性を持たないドメインであって、核酸をプログラム可能なDNA結合活性を持つドメイン(dCas、例えばdCas9)、及びデアミナーゼドメインを含む融合タンパク質であり、そのdCasは、そのnCasにリンカーによって結合されているとともに、そのdCasは、そのデアミナーゼドメインに直接隣接している。いくつかの実施形態では、その塩基エディターは、アデニンからチミンへのトランスバージョン、すなわち「ATBE」トランスバージョン(またはチミンからアデニンへのトランスバージョン、すなわち「TABE」トランスバージョン)塩基エディターである。例示的な塩基エディター及び塩基エディターシステムとしては、特許出願番号US20220127622、US20210079366、US20200248169、US20210093667、US20210071163、WO2020181202、WO2021158921、WO2019126709、WO2020181178、WO2020181195、WO2020214842、WO2020181193に記載されているようないずれかが挙げられ、これらの特許は、その全体が本明細書に援用される。
【0467】
いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、標的プライム逆転写(TPRT)、すなわち「プライム編集」である。いくつかの実施形態では、プライム編集は、DSBまたはドナーDNAテンプレートを必要とせずに、ヒト細胞内で、標的挿入、欠失、12個の考え得るすべての塩基間変換、及びそれらの組み合わせを媒介する。
【0468】
プライム編集は、核酸をプログラム可能なDNA結合タンパク質(「napDNAbp」)であって、ポリメラーゼ(すなわち、融合タンパク質の形態のポリメラーゼ、またはnapDNAbpとトランスで別段に供給されたポリメラーゼ)と連携して機能するタンパク質を用いて、新たな遺伝子情報を所定のDNA部位に直接書き込むゲノム編集法であり、そのプライム編集システムでは、標的部位を指定するとともに、ガイドRNA(例えば、ガイドRNAの5’末端もしくは3’末端、または内部部分)上に操作された伸長部(DNAまたはRNAのいずれか)により、置換用DNA鎖の形態での所望の編集部の合成のテンプレートとなるプライム編集(PE)ガイドRNA(「PEgRNA」)を用いてプログラムが行われる。所望の編集部(例えば一核酸塩基置換)を含む置換用鎖は、編集対象である標的部位の内在性の鎖と同じ配列を有する(ただし、所望の編集部を含むことを除く)。DNA修復及び/または複製機構を通じて、標的部位の内在性の鎖は、所望の編集部を含む新たに合成された置換用鎖に置き換えられる。いくつかの事例では、プライム編集は、「検索及び置換」ゲノム編集技術と考えられる場合がある。プライムエディターは、編集対象である所望の標的部位を検索して、その位置を特定するとともに、対応する、標的部位の内在性DNA鎖の代わりに同時に導入される所望の編集部を含む置換用鎖をコードするからである。例えば、プライム編集は、二本鎖切断を回避するために、CRISPR/Casベースの高精度なゲノム編集を行えるように適合させることができる。いくつかの実施形態では、その相同タンパク質は、所定のDNA配列をガイドRNAで標的とし、その標的部位に一本鎖ニックを入れ、ニックの入ったDNAを、ガイドRNAとともに組み込まれた操作済みの逆転写酵素用テンプレートの逆転写時のプライマーとして使用するCasタンパク質-逆転写酵素融合体もしくは関連システムであるか、またはその融合体もしくはシステムをコードする。いくつかの実施形態では、そのプライムエディタータンパク質は、ゲノムDNAの対合鎖上で相補的なDNAフラップ合成のテンプレートとなる2本のプライム編集ガイドRNA(pegRNA)と対になっており、その結果、PEの誘導によるニック部位の間の内在性DNA配列が、pegRNAによってコードされる配列に置き換えられる。
【0469】
いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、逆転写酵素または当該技術分野で知られているいずれかのDNAポリメラーゼであるプライムエディターと関連する。したがって、一態様では、そのプライムエディターは、標的DNA内の相補的なプロトスペーサーにアニーリングするスペーサー配列を含む特有のガイドRNA(すなわちPEgRNA)と連携することによって、DNA配列を標的とするようにプログラムされているCas9(または同等のnapDNAbp)を含むことがある。このような方法としては、Anzalone et al.(doi.org/10.1038/s41586-019-1711-4)、または国際公開番号WO2020191248号、WO2021226558号もしくはWO2022067130号に開示されているいずれかが挙げられ、これらの文献は、その全体が本明細書に援用される。
【0470】
いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)である。いくつかの態様では、PASTEは、逆転写酵素及びセリンインテグラーゼの両方に融合されたCRISPR-Cas9ニッカーゼを介して、ゲノム挿入を誘導するプラットフォームである。Ioannidi et al.(doi.org/10.1101/2021.11.01.466786)に記載されているように、PASTEは、二本鎖切断を生じさせないが、約36kbほどの大きさの配列を組み込み可能にする。いくつかの実施形態では、そのセリンインテグラーゼは、当該技術分野で知られているいずれかであることができる。いくつかの実施形態では、PASTEをマルチプレックス型の遺伝子組み込みに利用して、少なくとも2つの異なる遺伝子を少なくとも2つのゲノム遺伝子座に同時に組み込むことができるように、そのセリンインテグラーゼは、十分なオルソゴナル性を有する。いくつかの実施形態では、PASTEは、編集効率が、相同組み換え修復または非相同末端結合ベースの組み込みの編集効率と同等であるか、またはそれよりも優れており、非分裂細胞でも活性があり、検出可能なオフターゲットイベントが少ない。
【0471】
2.例示的な標的ポリヌクレオチド、及び発現を低下させる方法
A.MICA
ある特定の実施形態では、その改変、例えば遺伝子改変により、MICAの発現を低下または消失、例えばノックアウトさせる。MICAは、既知のアイソフォーム及びバリアントを有するタンパク質であり(例えば、UniProt Q29983(2021年8月9日にアクセスした)を参照されたい)、このようなあらゆる形態のMICAは、本明細書に示されている開示内容に含まれる。いくつかの実施形態では、その遺伝子改変は、CRISPR/Casシステムを用いて行う。例えば、いくつかの実施形態では、GATGACCCTGGCTCATATCAというターゲティング配列を有するgRNAを使用できる。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステム、及びMICAを標的とするgRNA、例えば、GATGACCCTGGCTCATATCAというターゲティング配列を有するgRNAを用いた遺伝子編集法により、細胞内で、MICAのアレルのすべてをノックアウトする。いくつかの実施形態では、その細胞は、投与すると、例えば、レシピエント対象または患者において低免疫原性とみなされ、その対象は、既存の抗MICA抗体を有するか、または後に、その細胞が、その個体の体内でまだ循環している間に、抗MICA抗体を発現する。MICAとMICBとの配列類似性により、いくつかの実施形態では、1つの抗体が、MICA及びMICBの両方に結合し得る。本明細書の目的では、両方の抗体に結合する抗体(すなわち、抗MICAかつ抗MICBの抗体)は、抗MICA抗体として分類できる。抗MICA抗体という用語の使用によっても、その抗体が、MICBにも特異的に結合する可能性は消失しない。
【0472】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICA遺伝子を標的とする改変、例えば遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、MICA遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質、またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、MICA遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列とを含む標的化ヌクレアーゼシステムを用いることによるものである。
【0473】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示されている別の寛容原性因子)をコードする外因性の核酸または導入遺伝子をMICA遺伝子において挿入する。
【0474】
MICA遺伝子が不活性化したか試験するアッセイは既知であり、例示的な説明は、本明細書に示されている。一実施形態では、その結果生じた、MICA遺伝子の遺伝子改変は、PCRによって評価する。いくつかの実施形態では、その結果生じた、MICAの発現の低下は、フローサイトメトリーによって、例えばFACS解析によってアッセイできる。別の実施形態では、MICAのタンパク質発現は、B2Mタンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、不活性化する改変、例えば遺伝子改変の存在を確認する。いくつかの実施形態では、MICAの発現の低下は、免疫親和性法、例えば、免疫組織化学法または免疫細胞化学法を用いて評価する。
【0475】
いくつかの実施形態では、その操作細胞内のMICAの発現または機能の低下は、当該技術分野で知られている技法、例えば、MICAに結合する標識抗体、例えば市販の抗MICA抗体を用いるFACS法を用いて測定できる。加えて、その細胞を試験して、MICA複合体が細胞表面上に発現していないことを確認できる。これは、FACS解析、または他の既知の方法、例えば、上述のように、1つ以上のMICA細胞表面成分に対する抗体を用いる免疫化学的技法(例えば、IHCもしくはICC)によってアッセイしてよい。本発明で提供する操作細胞は、MICAの低減に加えて、マクロファージの食作用及びNK細胞による殺傷に対する感受性が低下している。その操作細胞の低免疫原性の表現型についてアッセイする方法は、下にさらに記載されている。
【0476】
B.MICB
ある特定の実施形態では、その改変、例えば遺伝子改変により、MICBの発現を低下または消失、例えばノックアウトさせる。MICBは、既知のアイソフォーム及びバリアントを有するタンパク質であり(例えば、UniProt Q29980(2021年8月9日にアクセスした)を参照されたい)、このようなあらゆる形態のMICBは、本明細書に示されている開示内容に含まれる。いくつかの実施形態では、その遺伝子改変は、CRISPR/Casシステムを用いて行う。例えば、いくつかの実施形態では、GTTTCTGCCTGTCATAGCGCというターゲティング配列を有するgRNAを使用できる。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステム、及びMICAを標的とするgRNA、例えば、GTTTCTGCCTGTCATAGCGCというターゲティング配列を有するgRNAを用いた遺伝子編集法により、細胞内で、MICBのアレルのすべてをノックアウトする。いくつかの実施形態では、その細胞は、投与すると、例えば、レシピエント対象または患者において低免疫原性とみなされ、その対象は、既存の抗MICB抗体を有するか、または後に、その細胞が、その個体の体内でまだ循環している間に、抗MICB抗体を発現する。MICAとMICBとの配列類似性により、いくつかの実施形態では、1つの抗体が、MICA及びMICBの両方に結合し得る。本明細書の目的では、両方の抗体に結合する抗体(すなわち、抗MICAかつ抗MICBの抗体)は、抗MICB抗体として分類できる。抗MICB抗体という用語の使用によっても、その抗体が、MICAにも特異的に結合する可能性は消失しない。
【0477】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MICB遺伝子を標的とする改変、例えば遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、MICB遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質、またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、MICB遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列とを含む標的化ヌクレアーゼシステムを用いることによるものである。
【0478】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示されている別の寛容原性因子)をコードする外因性の核酸または導入遺伝子をMICB遺伝子において挿入する。
【0479】
MICB遺伝子が不活性化されているかを試験するアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載されている。一実施形態では、その結果生じた、MICB遺伝子の遺伝子改変は、PCRによって評価する。いくつかの実施形態では、その結果生じた、MICBの発現の低下は、フローサイトメトリーによって、例えばFACS解析によってアッセイできる。別の実施形態では、MICBのタンパク質発現は、B2Mタンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、不活性化する改変、例えば遺伝子改変の存在を確認する。いくつかの実施形態では、MICBの発現の低下は、免疫親和性法、例えば、免疫組織化学法または免疫細胞化学法を用いて評価する。
【0480】
いくつかの実施形態では、その操作細胞内のMICBの発現または機能の低下は、当該技術分野で知られている技法、例えば、MICBに結合する標識抗体、例えば市販の抗MICB抗体を用いるFACS法を用いて測定できる。加えて、その細胞を試験して、MICB複合体が細胞表面上に発現していないことを確認できる。これは、FACS解析、または他の既知の方法、例えば、上述のように、1つ以上のMICB細胞表面成分に対する抗体を用いる免疫化学的技法(例えば、IHCもしくはICC)によってアッセイしてよい。本発明で提供する操作細胞は、MICBの低減に加えて、マクロファージの食作用及びNK細胞による殺傷に対する感受性が低下している。その操作細胞の低免疫原性の表現型についてアッセイする方法は、下にさらに記載されている。
【0481】
C.MHCクラスI分子
ある特定の実施形態では、その改変、例えば遺伝子改変により、アクセサリー鎖B2Mを標的とすることによって、1つ以上のMHCクラスI分子遺伝子の発現を低下または消失、例えばノックアウトさせる。いくつかの実施形態では、その遺伝子改変は、CRISPR/Casシステムを用いて行う。B2Mの発現を低下または消失、例えばノックアウトさせることによって、1つ以上のMHCクラスI分子の表面輸送がブロックされ、当該細胞が、レシピエント対象に生着したときに免疫寛容を示す。いくつかの実施形態では、その細胞は、投与すると、例えば、レシピエント対象または患者において低免疫原性とみなされる。
【0482】
いくつかの実施形態では、本発明で提供する標的ポリヌクレオチド配列は、B2Mのバリアントである。いくつかの実施形態では、その標的ポリヌクレオチド配列は、B2Mのホモログである。いくつかの実施形態では、その標的ポリヌクレオチド配列は、B2Mのオルソログである。
【0483】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現の低下または消失は、HLA-A、HLA-B及びHLA-CというMHCクラスI分子のうちの1つ以上の発現を低下させる改変を介したものである。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の低下または消失により、HLA-A、HLA-B及びHLA-CというMHCクラスI分子のうちの1つ以上の発現が低下または消失する。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の低下または消失により、HLA-Aタンパク質の発現が低下または消失する。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の低下または消失により、HLA-Bタンパク質の発現が低下または消失する。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の低下または消失により、HLA-Cタンパク質の発現が低下または消失する。いくつかの実施形態では、B2Mの発現の低下または消失により、HLA-A、HLA-B及びHLA-CというMHCクラスI分子のうちの1つ以上をコードする遺伝子をノックアウトすることによって、前記分子の発現が低下または消失する。いくつかの実施形態では、HLA-Aタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトして、前記HLA-Aタンパク質の発現を低下または消失させる。いくつかの実施形態では、HLA-Bタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトして、前記HLA-Bタンパク質の発現を低下または消失させる。いくつかの実施形態では、HLA-Cタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトして、前記HLA-Cタンパク質の発現を低下または消失させる。
【0484】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、B2M遺伝子を標的とする改変、例えば遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質、またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、B2M遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列とを含む標的化ヌクレアーゼシステムを用いることによるものである。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列(例えばgRNAターゲティング配列)は、WO2016/183041(その開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される)の付録2または表15の配列番号81240~85644からなる群から選択されている。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子を特異的に標的とするgRNAターゲティング配列は、CGUGAGUAAACCUGAAUCUU(配列番号33)である。
【0485】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示されている別の寛容原性因子)をコードする外因性の核酸または導入遺伝子をB2M遺伝子において挿入する。B2M座位で標的挿入するための例示的な導入遺伝子としては、本明細書に記載されているようないずれかが挙げられる。
【0486】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、MHCクラスII分子を発現しない細胞に由来し、このような実施形態では、その操作細胞は、B2Mのノックアウトを含む。例えば、いくつかの実施形態では、その操作細胞は、野生型ヒト初代膵島細胞に由来し、HLAクラスII細胞を発現せず、その操作細胞は、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させるために、B2Mのノックアウトを含む(そのノックアウトから本質的になることを含む)。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子に所望の調整を加えるには、別の改変は必要ない。
【0487】
B2M遺伝子が不活性化されているかを試験するアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載されている。一実施形態では、その結果生じた、B2M遺伝子の遺伝子改変は、PCRによって評価する。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子、例えばHLA-Iの発現の低下は、フローサイトメトリーによって、例えばFACS解析によってアッセイできる。別の実施形態では、B2Mのタンパク質発現は、B2Mタンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、不活性化する改変、例えば遺伝子改変の存在を確認する。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子の発現の低下は、免疫親和性法、例えば、免疫組織化学法または免疫細胞化学法を用いて評価する。
【0488】
いくつかの実施形態では、その操作細胞内の1つ以上のMHCクラスI分子(その細胞がヒト細胞に由来するときにはHLA I)の発現または機能の低下は、当該技術分野で知られている技法、例えば、HLA複合体に結合する標識抗体を用いるFACS法、例えば、ヒト主要組織適合性HLAクラスI抗原のα鎖に結合する市販のHLA-A抗体、HLA-B抗体、HLA-C抗体を用いるFACS法を用いて測定できる。加えて、その細胞を試験して、HLA I複合体が細胞表面上に発現していないことを確認できる。これは、上述のように、1つ以上のHLA細胞表面の構成要素に対する抗体を用いるFACS解析によってアッセイしてよい。本発明で提供する操作細胞は、HLA I(または1つ以上のMHCクラスI分子)の低減に加えて、マクロファージの食作用及びNK細胞による殺傷に対する感受性が低下している。その操作細胞の低免疫原性の表現型についてアッセイする方法は、下にさらに記載されている。
【0489】
いくつかの実施形態では、B2Mの発現を低下させる改変は、B2MのmRNA発現を低下させる。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現は、約5%超低下し、例えば、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超または約90%超以上のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現は、最大約100%低下し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%または最大約5%未満のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現は消失する(例えば、B2M mRNAの発現が0%である)。いくつかの実施形態では、B2MのmRNA発現を低下させる改変は、B2M遺伝子の活性を消失させる。
【0490】
いくつかの実施形態では、B2Mの発現を低下させる改変は、B2Mタンパク質の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現は、約5%超低下し、例えば、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超または約90%超以上のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現は、最大約100%低下し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%または最大約5%未満のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現は消失する(例えば、B2Mタンパク質の発現が0%である)。いくつかの実施形態では、B2Mのタンパク質発現を低下させる改変は、B2M遺伝子の活性を消失させる。
【0491】
いくつかの実施形態では、B2Mの発現を低下させる改変は、B2M遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、B2Mの発現を低下させる改変は、B2M遺伝子のアレルの1つの不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、B2Mの発現を低下させる改変は、B2M遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む。
【0492】
いくつかの実施形態では、その改変は、その細胞内の1つ以上のB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、その改変は、その細胞内のすべてのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、その改変は、不活性化または破壊を含み、B2M遺伝子におけるインデルを含む。いくつかの実施形態では、その改変は、B2M遺伝子のゲノムDNAのフレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、その改変は、B2M遺伝子のゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、その改変は、B2M遺伝子のゲノムDNAの連続領域の欠失である。いくつかの実施形態では、そのB2M遺伝子は、ノックアウトされている。
【0493】
D.MHCクラスII分子
ある特定の態様では、その改変、例えば遺伝子改変により、クラスII分子トランス活性化因子(CIITA)の発現を標的とすることによって、1つ以上のMHCクラスII分子遺伝子の発現を低下または消失、例えばノックアウトさせる。いくつかの実施形態では、その遺伝子改変は、CRISPR/Casシステムを用いて行う。CIITAは、LRファミリーまたはヌクレオチド結合ドメイン(NBD)ロイシンリッチリピート(LRR)ファミリーのタンパク質のメンバーであり、MHCエンハンセオソームと関係することによって、1つ以上のMHCクラスII分子の転写を調節する。CIITAの発現を低下または消失、例えばノックアウトさせることによって、1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させることによって、表面発現も低下する。いくつかの事例では、このような細胞は、レシピエント対象に生着したときに、免疫寛容を示す。いくつかの実施形態では、その細胞は、投与すると、例えば、レシピエント対象または患者において低免疫原性とみなされる。
【0494】
いくつかの実施形態では、その標的ポリヌクレオチド配列は、CIITAのバリアントである。いくつかの実施形態では、その標的ポリヌクレオチド配列は、CIITAのホモログである。いくつかの実施形態では、その標的ポリヌクレオチド配列は、CIITAのオルソログである。
【0495】
いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下または消失は、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ及びHLA-DRというMHCクラスII分子のうちの1つ以上の発現を低下させる改変である。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の低下または消失により、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ及びHLA-DRというMHCクラスII分子のうちの1つ以上の発現が低下または消失する。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の低下または消失により、HLA-DPタンパク質の発現が低下または消失する。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の低下または消失により、HLA-DMタンパク質の発現が低下または消失する。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の低下または消失により、HLA-DOAタンパク質の発現が低下または消失する。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の低下または消失により、HLA-DOBタンパク質の発現が低下または消失する。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の低下または消失により、HLA-DQタンパク質の発現が低下または消失する。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の低下または消失により、HLA-DRタンパク質の発現が低下または消失する。いくつかの実施形態では、CIITAの発現の低下または消失により、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ及びHLA-DRというMHCクラスII分子のうちの1つ以上をコードする遺伝子ノックアウトすることによって、前記分子の発現が低下または消失する。いくつかの実施形態では、HLA-DPタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトして、前記HLA-DPタンパク質の発現を低下または消失させる。いくつかの実施形態では、HLA-DMタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトして、前記HLA-DMタンパク質の発現を低下または消失させる。いくつかの実施形態では、HLA-DOAタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトして、前記HLA-DOAタンパク質の発現を低下または消失させる。いくつかの実施形態では、HLA-DOBタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトして、前記HLA-DOBタンパク質の発現を低下または消失させる。いくつかの実施形態では、HLA-DQタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトして、前記HLA-DQタンパク質の発現を低下または消失させる。いくつかの実施形態では、HLA-DRタンパク質をコードする遺伝子をノックアウトして、前記HLA-DRタンパク質の発現を低下または消失させる。
【0496】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、CIITA遺伝子を標的とする改変、例えば遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質、またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、CIITA遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列とを含む標的化ヌクレアーゼシステムによるものである。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列(例えばgRNAターゲティング配列)は、WO2016183041(その開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される)の付録1または表12の配列番号5184~36352からなる群から選択されている。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子を特異的に標的とするgRNAターゲティング配列は、GAUAUUGGCAUAAGCCUCCC(配列番号34)である。
【0497】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示されている別の寛容原性因子)をコードする外因性の核酸または導入遺伝子をCIITA遺伝子において挿入する。B2M座位で標的挿入するための例示的な導入遺伝子としては、本明細書に記載されているようないずれかが挙げられる。
【0498】
CIITA遺伝子が不活性化されているかを試験するアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載されている。一実施形態では、その結果生じた、CIITA遺伝子の遺伝子改変は、PCRによって評価する。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子、例えばHLA-IIの発現の低下は、フローサイトメトリーによって、例えばFACS解析によってアッセイできる。別の実施形態では、CIITAのタンパク質発現は、CIITAタンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、不活性化する改変、例えば遺伝子改変の存在を確認する。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下は、免疫親和性法、例えば、免疫組織化学法または免疫細胞化学法を用いて評価する。
【0499】
いくつかの実施形態では、その操作細胞内の1つ以上のMHCクラスII分子(その細胞がヒト細胞に由来するときにはHLA II)の機能の発現の低下は、当該技術分野で知られている技法、例えば、そのタンパク質に対する抗体を用いるウエスタンブロッティング、FACS法及びRT-PCR法を用いて測定できる。いくつかの実施形態では、その細胞を試験して、HLA II複合体が細胞表面上に発現していないことを確認できる。表面発現を評価する方法としては、当該技術分野で知られている方法が挙げられ(例えば、WO2018132783の図21を参照されたい)、概して、ヒトHLAクラスII分子HLA-DR抗原、HLA-DP抗原及び大半のHLA-DQ抗原に結合する市販の抗体をベースとして、ウエスタンブロットまたはFACS解析のいずれかを用いて行う。本発明で提供する操作細胞は、HLA II(または1つ以上のMHCクラスII分子)の低減に加えて、マクロファージの食作用及びNK細胞による殺傷に対する感受性が低下している。その操作細胞の低免疫原性の表現型についてアッセイする方法は、下にさらに記載されている。
【0500】
いくつかの実施形態では、CIITAの発現を低下させる改変は、CIITAのmRNA発現を低下させる。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現は、約5%超低下し、例えば、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超または約90%超以上のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現は、最大約100%低下し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%または最大約5%未満のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現は消失する(例えば、CIITA mRNAの発現が0%である)。いくつかの実施形態では、CIITAのmRNA発現を低下させる改変は、CIITA遺伝子の活性を消失させる。
【0501】
いくつかの実施形態では、CIITAの発現を低下させる改変は、CIITAタンパク質の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現は、約5%超低下し、例えば、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超または約90%超以上のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現は、最大約100%低下し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%または最大約5%未満のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現は消失する(例えば、CIITAタンパク質の発現が0%である)。いくつかの実施形態では、CIITAのタンパク質発現を低下させる改変は、CIITA遺伝子の活性を消失させる。
【0502】
いくつかの実施形態では、CIITAの発現を低下させる改変は、CIITA遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、CIITAの発現を低下させる改変は、CIITA遺伝子のアレルの1つの不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、CIITAの発現を低下させる改変は、CIITA遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む。
【0503】
いくつかの実施形態では、その改変は、その細胞内の1つ以上のCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、その改変は、その細胞内のすべてのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、その改変は、不活性化または破壊を含み、CIITA遺伝子におけるインデルを含む。いくつかの実施形態では、その改変は、CIITA遺伝子のゲノムDNAのフレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、その改変は、CIITA遺伝子のゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、その改変は、CIITA遺伝子のゲノムDNAの連続領域の欠失である。いくつかの実施形態では、そのCIITA遺伝子は、ノックアウトされている。
【0504】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、T細胞受容体α定常(TRAC)遺伝子を標的とする改変を含む。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子を標的とする改変は、Casタンパク質、またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、TRAC遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列とを含む標的化ヌクレアーゼシステムによるものである。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸ターゲティング配列は、US20160348073(その開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される)の配列番号532~609及び9102~9797からなる群から選択されている。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子を特異的に標的とするgRNAターゲティング配列は、AGAGUCUCUCAGCUGGUACA(配列番号35)である。
【0505】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示されている別の寛容原性因子)をコードする外因性の核酸または導入遺伝子をTRAC遺伝子において挿入する。TRAC座位で標的挿入するための例示的な導入遺伝子としては、本明細書に記載されているようないずれかが挙げられる。
【0506】
TRAC遺伝子が不活性化されているかを試験するアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載されている。一実施形態では、その結果生じた、PCRによるTRAC遺伝子の改変、及びHLA-IIの発現の低下は、フローサイトメトリーによって、例えばFACS解析によってアッセイできる。別の実施形態では、TRACのタンパク質発現は、TRACタンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、不活性化する改変の存在を確認する。
【0507】
いくつかの実施形態では、TRACの発現を低下させる改変は、TRACのmRNA発現を低下させる。いくつかの実施形態では、TRACのmRNA発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、TRACのmRNA発現は、約5%超低下し、例えば、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超または約90%超以上のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、TRACのmRNA発現は、最大約100%低下し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%または最大約5%未満のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、TRACのmRNA発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、TRACのmRNA発現は消失する(例えば、TRAC mRNAの発現が0%である)。いくつかの実施形態では、TRACのmRNA発現を低下させる改変は、TRAC遺伝子の活性を消失させる。
【0508】
いくつかの実施形態では、TRACの発現を低下させる改変は、TRACタンパク質の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、TRACのタンパク質発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、TRACのタンパク質発現は、約5%超低下し、例えば、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超または約90%超以上のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、TRACのタンパク質発現は、最大約100%低下し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%または最大約5%未満のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、TRACのタンパク質発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、TRACのタンパク質発現は消失する(例えば、TRACタンパク質の発現が0%である)。いくつかの実施形態では、TRACのタンパク質発現を低下させる改変は、TRAC遺伝子の活性を消失させる。
【0509】
いくつかの実施形態では、TRACの発現を低下させる改変は、TRAC遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、TRACの発現を低下させる改変は、TRAC遺伝子のアレルの1つの不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、TRACの発現を低下させる改変は、TRAC遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む。
【0510】
いくつかの実施形態では、その改変は、その細胞内の1つ以上のTRACコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、その改変は、その細胞内のすべてのTRACコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、その改変は、不活性化または破壊を含み、TRAC遺伝子におけるインデルを含む。いくつかの実施形態では、その改変は、TRAC遺伝子のゲノムDNAのフレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、その改変は、TRAC遺伝子のゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、その改変は、TRAC遺伝子のゲノムDNAの連続領域の欠失である。いくつかの実施形態では、そのTRAC遺伝子は、ノックアウトされている。
【0511】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、T細胞受容体β定常(TRBC)遺伝子を標的とする改変を含む。いくつかの実施形態では、TRBC遺伝子を標的とする改変は、Casタンパク質、またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、TRBC遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列とを含む標的化ヌクレアーゼシステムによるものである。
【0512】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているようなポリペプチド(例えば、キメラ抗原受容体、CD47、または本明細書に開示されている別の寛容原性因子)をコードする外因性の核酸または導入遺伝子をTRBC遺伝子において挿入する。TRBC座位で標的挿入するための例示的な導入遺伝子としては、本明細書に記載されているようないずれかが挙げられる。いくつかの実施形態では、TRBC遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸ターゲティング配列は、US20160348073(その開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される)の配列番号610~765及び9798~10532からなる群から選択されている。
【0513】
TRBC遺伝子が不活性化されているかを試験するアッセイは、既知であるとともに、本明細書に記載されている。一実施形態では、その結果生じた、PCRによるTRBC遺伝子の改変、及びHLA-IIの発現の低下は、フローサイトメトリーによって、例えばFACS解析によってアッセイできる。別の実施形態では、TRBCのタンパク質発現は、TRBCタンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、不活性化する改変の存在を確認する。
【0514】
いくつかの実施形態では、TRBCの発現を低下させる改変は、TRBCのmRNA発現を低下させる。いくつかの実施形態では、TRACのmRNA発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、TRBCのmRNA発現は、約5%超低下し、例えば、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超または約90%超以上のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、TRBCのmRNA発現は、最大約100%低下し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%または最大約5%未満のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、TRBCのmRNA発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、TRBCのmRNA発現は消失する(例えば、TRBC mRNAの発現が0%である)。いくつかの実施形態では、TRBCのmRNA発現を低下させる改変は、TRBC遺伝子の活性を消失させる。
【0515】
いくつかの実施形態では、TRBCの発現を低下させる改変は、TRBCタンパク質の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、TRACのタンパク質発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の未改変細胞または野生型細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、TRBCのタンパク質発現現は、約5%超低下し、例えば、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超または約90%超以上のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、TRBCのタンパク質発現は、最大約100%低下し、例えば、最大約90%、最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%または最大約5%未満のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、TRBCのタンパク質発現は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%のいずれか低下する。いくつかの実施形態では、TRBCのタンパク質発現は消失する(例えば、TRBCタンパク質の発現が0%である)。いくつかの実施形態では、TRBCのタンパク質発現を低下させる改変は、TRBC遺伝子の活性を消失させる。
【0516】
いくつかの実施形態では、TRBCの発現を低下させる改変は、TRBC遺伝子の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、TRBCの発現を低下させる改変は、TRBC遺伝子のアレルの1つの不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、TRBCの発現を低下させる改変は、TRBC遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む。
【0517】
いくつかの実施形態では、その改変は、その細胞内の1つ以上のTRBCコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、その改変は、その細胞内のすべてのTRBCコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、その改変は、不活性化または破壊を含み、TRBC遺伝子におけるインデルを含む。いくつかの実施形態では、その改変は、TRBC遺伝子のゲノムDNAのフレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、その改変は、TRBC遺伝子のゲノムDNAの欠失である。いくつかの実施形態では、その改変は、TRBC遺伝子のゲノムDNAの連続領域の欠失である。いくつかの実施形態では、そのTRBC遺伝子は、ノックアウトされている。
【0518】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1つ以上の主要組織適合性複合体クラスI分子(MHCクラスI分子)及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる1つ以上の改変を含み、その改変は、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-BまたはNFY-Cの1つ以上の発現の低下を含む。
【0519】
ある特定の態様では、本明細書で教示されている操作細胞は、B2M、TAP I、NLRC5、CIITA、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、RFX5、RFXANK、RFXAP、NFY-A、NFY-B、NFY-C、CTLA-4、PD-1、IRF1、MIC-A、MIC-B、酸化ストレスもしくはERストレスに関与するタンパク質、TRAC、TRB、CD142、ABO、CD38、PCDH11Y、NLGN4Y及び/またはRHDの発現を低下させる1つ以上のさらなる改変を含む。酸化ストレスもしくはERストレスに関与する例示的なタンパク質としては、チオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)、PKR様ERキナーゼ(PERK)、イノシトール要求性酵素1α(IRE1α)及びDJ-1(PARK7)が挙げられる。
【0520】
B.ポリヌクレオチドの過剰発現
いくつかの実施形態では、本発明で提供する操作細胞は、1つ以上の改変を細胞内に導入して、所望のポリヌクレオチドをその細胞内で過剰発現させることによるなどして、改変、例えば遺伝子改変または操作されている。いくつかの実施形態では、改変または操作する細胞は、その1つ以上の改変が以前に導入されたことのない未改変細胞または未操作細胞である。いくつかの実施形態では、操作前の細胞が、その寛容原性因子を検出可能な量で発現しない場合、その寛容原性因子をいずれかの検出可能な量で発現させるようにする改変は、その改変を含まない同様の細胞と比べて、発現が増加することであると理解される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作細胞は、外因性タンパク質をコードする1つ以上の外因性ポリヌクレオチド(「導入遺伝子」という用語とも同義的に使用する)を含むように遺伝子改変されている。記載されているように、いくつかの実施形態では、その細胞は、レシピエントにおいて免疫の認識及び寛容性に影響を及ぼす寛容原性因子(例えば免疫因子)である特定の遺伝子の発現を増加させるように改変されている。いくつかの実施形態では、提供する操作細胞、例えば、T細胞またはNK細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)も発現する。その1つ以上のポリヌクレオチド、例えば、外因性ポリヌクレオチドは、その操作細胞内で、本明細書に記載されているような標的ポリヌクレオチド、例えば、1つ以上のMHCクラスI分子、1つ以上のMHCクラスII分子、MICAまたはMICBのいずれか1つ以上の発現を低下させる1つ以上の改変、例えば遺伝子改変とともに発現(例えば過剰発現)してよい。いくつかの実施形態では、提供する操作細胞は、レシピエント対象に投与すると、免疫応答を誘発または活性化しない。
【0521】
いくつかの実施形態では、標的の発現の増加は、操作細胞内での発現が、その標的の発現を増加させるように操作する前の供給源細胞内でのその標的の対応する発現レベルよりも約40%以上(約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上または約500%以上のいずれかなど)であるレベルまで上昇するような増加である(例えば、タンパク質発現とタンパク質発現とを比べる)。いくつかの実施形態では、標的の発現の増加は、操作細胞内での発現が、参照細胞または参照細胞集団(免疫原性応答が低下または消失している同じ細胞種または細胞の細胞または集団など)内でのその標的の対応する発現レベルよりも約40%以上(約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上または約500%以上のいずれかなど)であるレベルまで上昇するような増加である(例えば、タンパク質発現とタンパク質発現とを比べる)。いくつかの実施形態では、標的の発現の増加は、操作細胞での発現が、測定した発現レベル(その標的の存在により、免疫原性応答が低下または消失していると分かっているレベルなど)以上であるレベルまで上昇するような増加である。いくつかの実施形態では、標的のレベルは、刺激状態または未刺激状態の操作細胞、参照細胞または参照細胞集団で評価する。いくつかの実施形態では、標的のレベルは、その標的が発現しているように(または、細胞が刺激に応答する能力がそのレベルである場合には、その標的が発現するように)刺激した状態の操作細胞、参照細胞または参照細胞集団で評価する。いくつかの実施形態では、その刺激は、in vivo刺激に当たる。
【0522】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個以上の異なる過剰発現ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個以上の異なる過剰発現ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、その過剰発現ポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個以上の異なる外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個以上の異なる外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、その過剰発現ポリヌクレオチドは、その細胞内でエピソーマルに発現する外因性ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、その過剰発現ポリヌクレオチドは、その操作細胞のゲノム遺伝子座の1つ以上に挿入されているかまたは組み込まれている外因性ポリヌクレオチドである。
【0523】
いくつかの実施形態では、DNAターゲティングドメイン及び転写活性化因子を含む融合タンパク質を用いて、ポリヌクレオチドの発現を増加させ、すなわち、そのポリヌクレオチドを過剰発現させる。転写活性化ドメインを用いて発現を増加させる標的化方法は、当業者に知られている。
【0524】
いくつかの実施形態では、操作細胞は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含み、その1つ以上の外因性ポリヌクレオチドは、非標的挿入方法によって、例えば、レンチウイルスベクターを用いたトランスダクションによって、その細胞のゲノム遺伝子座に挿入されているかまたは組み込まれている。いくつかの実施形態では、その1つ以上の外因性ポリヌクレオチドは、標的挿入法によって、例えば、相同組み換え修復(HDR)を用いることによって、その細胞のゲノムに挿入されているかまたは組み込まれている。いずれか適切な方法を用いて、本明細書に記載の遺伝子編集法(例えばCRISPR/Casシステム)を含むHDRによって、その外因性ポリヌクレオチドをその操作細胞のゲノム遺伝子座に挿入できる。いくつかの実施形態では、その1つ以上の外因性ポリヌクレオチドは、1つ以上のゲノム遺伝子座、例えば、本明細書(例えば、表1bまたは2)に記載のいずれかのゲノム遺伝子座に挿入されている。いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドは、同じゲノム遺伝子座に挿入されている。いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドは、異なるゲノム遺伝子座に挿入されている。いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドの2つ以上が、同じゲノム遺伝子座、例えば、本明細書(例えば、表1bまたは2)に記載のいずれかのゲノム遺伝子座に挿入されている。いくつかの実施形態では、2つ以上の外因性ポリヌクレオチドが、異なるゲノム遺伝子座、例えば、本明細書(例えば、表1bまたは2)に記載されているようなゲノム遺伝子座の2つ以上に挿入されている。
【0525】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術のいずれかを用いて、記載されているような1つ以上の標的ポリヌクレオチドまたは標的タンパク質の発現を増加させることができる。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、ヌクレアーゼ、インテグラーゼ、トランスポザーゼ、リコンビナーゼを伴うシステムを含むことができる。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、(例えば、遺伝子に機能可能に連結されたプロモーターまたはエンハンサーを改変または活性化することによって、)内在性遺伝子の活性を向上させる改変に用いることができる。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、ゲノムの領域にDNAをノックインするかまたは組み込む(例えば、操作細胞内での発現の増加のために、標的ポリヌクレオチドまたは標的タンパク質をコードするコンストラクト、例えば、寛容原性因子、CD55、CD46、CD59のいずれか、または本明細書に記載の他の分子のいずれかをコードするコンストラクトを導入する)のに用いることができる。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、一本鎖切断(SSB)を媒介する。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、二本鎖切断(DSB)を媒介し、非相同末端結合(NHEJ)または相同配向型修復(HDR)と併せることを含む。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、DNAベースの編集またはプライム編集を含むことができる。いくつかの実施形態では、その遺伝子編集技術は、部位特異的ターゲティングエレメントによるプログラム可能な付加(PASTE)を含むことができる。例示的なポリヌクレオチドまたは過剰発現、及びそのポリヌクレオチドを過剰発現させる方法は、下記のサブセクションに記載されている。
【0526】
1.寛容原性因子
いくつかの実施形態では、その細胞内で、寛容原性因子の発現が過剰発現または増加している。操作前の細胞が、その寛容原性因子を検出可能な量で発現しない場合には、その寛容原性因子をいずれかの検出可能な量で発現させるようにする改変は、その改変を含まない細胞と比べて発現を増加させることであると理解される。
【0527】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、少なくとも1つの寛容原性因子の発現の増加、例えば過剰発現を含む。いくつかの実施形態では、その寛容原性因子は、その操作細胞に対する免疫系(例えば、自然免疫または適応免疫系)による寛容性を促進するか、またはその寛容性の促進もしくは誘導に寄与するいずれかの因子である。
【0528】
いくつかの実施形態では、操作細胞上の1つ以上の寛容原性因子のうちの各寛容原性因子は、A20/TNFAIP3、C1インヒビター、CCL21、CCL22、CD16、CD16 Fc受容体、CD24、CD27、CD35、CD39、CD46、CD47、CD52、CD55、CD59、CD200、CR1、CTLA4-Ig、DUX4、FasL、H2-M3、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、IL-10、IL15-RF、IL-35、MANF、Mfge8、PD-1またはSerpinb9からなる群から選択されている。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子の少なくとも1つは、CD47である。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD47である。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-Eを含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD24を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、PD-L1を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD46を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD55を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD59を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CR1を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、MANFを含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、A20/TNFAIP3を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-E及びCD47を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD24、CD47またはPD-L1の1つ以上(すべてを含む)を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-E、CD24、CD47またはPD-L1の1つ以上(すべてを含む)を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、CD46、CD55、CD59またはCR1の1つ以上(すべてを含む)を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-E、CD46、CD55、CD59またはCR1の1つ以上(すべてを含む)を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-E、CD24、CD47、PDL1、CD46、CD55、CD59またはCR1の1つ以上(すべてを含む)を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-EまたはPD-L1の1つ以上(すべてを含む)を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-E、PD-L1またはA20/TNFAIPの1つ以上(すべてを含む)を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-E、PD-L1またはMANFの1つ以上(すべてを含む)を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子は、HLA-E、PD-L1、A20/TNFAIPまたはMANFの1つ以上(すべてを含む)を含む。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子のそれぞれは、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200及びMFGE8からなる群から選択されている。
【0529】
いくつかの実施形態では、その寛容原性因子は、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF及びH2-M3である。いくつかの実施形態では、その寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EもしくはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200もしくはMfge8、またはこれらの組み合わせのいずれかである。いくつかの実施形態では、その細胞は、寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドを含む少なくとも1つの外因性ポリヌクレオチドを含む。例えば、いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドの少なくとも1つは、CD47をコードするポリヌクレオチドである。本発明で提供するのは、レシピエント対象への投与時に、免疫応答を誘発または活性化しない細胞である。上記のように、いくつかの実施形態では、その細胞は、レシピエントにおいて免疫の認識及び寛容性に影響を及ぼす遺伝子及び寛容原性因子(例えば免疫因子)の発現を増加させるように改変されている。
【0530】
いくつかの実施形態では、寛容原性因子の発現(例えば表面発現)は、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約10%以上増加し、例えば、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約15%超、約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、約100%超、約150%超または約200%超のいずれか増加する。いくつかの実施形態では、寛容原性因子の発現(例えば表面発現)は、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約2倍以上増加し、例えば、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約4倍以上、約6倍以上、約8倍以上、約10倍以上、約15倍以上、約20倍以上、約30倍以上、約40倍以上、約50倍以上、約60倍以上、約70倍以上、約80倍以上、約90倍以上、約100倍以上、約150倍以上または約200倍以上のいずれか増加する。いくつかの実施形態では、寛容原性因子の発現は、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約200倍以下増加し、例えば、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約150倍以下、約100倍以下、約90倍以下、約80倍以下、約70倍以下、約60倍以下、約50倍以下、約40倍以下、約30倍以下、約15倍以下、約10倍以下、約8倍以下、約6倍以下、約4倍以下または約2倍以下のいずれか増加する。いくつかの実施形態では、寛容原性因子の発現は、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約2倍~約200倍増加し、例えば、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約2倍~約20倍、約10倍~約50倍、約30倍~約70倍、約50倍~約100倍、約80倍~約150倍、及び約120倍~約200倍のいずれか増加する。
【0531】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、少なくとも1つの寛容原性因子の発現の増加、例えば過剰発現を含む。いくつかの実施形態では、その細胞は、寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドを含む少なくとも1つの外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF及びH2-M3(これらの組み合わせのいずれかを含む)である。いくつかの実施形態では、その寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8(これらの組み合わせのいずれかを含む)の1つ以上である。例えば、いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドの少なくとも1つは、CD47をコードするポリヌクレオチドである。
【0532】
いくつかの実施形態では、本開示は、寛容原性因子(例えば免疫調節ポリペプチド)、例えばCD47を発現するように改変されている細胞またはその集団を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、細胞ゲノムを変化させて、寛容原性因子(例えば免疫調節ポリペプチド)、例えばCD47を発現させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、外因性の寛容原性因子(例えば免疫調節ポリペプチド)、例えば外因性のCD47を発現する。いくつかの事例では、その外因性ポリヌクレオチドを過剰発現させるか、またはその発現を増加させることは、ヒトCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを、その細胞に導入すること(例えば、その細胞にトランスダクションすること)によって行う。いくつかの実施形態では、その発現ベクターは、ウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターであってもよいし、または非ウイルスベクターであってもよい。いくつかの実施形態では、その細胞は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むように操作されており、その外因性ポリヌクレオチドの少なくとも1つは、寛容原性因子をコードするポリヌクレオチドを含む。いずれかの実施形態のいくつかでは、その寛容原性因子は、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF及びH2-M3である。いくつかの実施形態では、その寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EもしくはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200もしくはMfge8、またはこれらの組み合わせのいずれかから選択されている。例えば、いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドの少なくとも1つは、CD47をコードするポリヌクレオチドである。
【0533】
いくつかの実施形態では、その寛容原性因子は、CD47である。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、CD47、例えばヒトCD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CD47は、その細胞内で過剰発現する。いくつかの実施形態では、CD47の発現は、その改変によって操作されていない同じ細胞種の同様の細胞、例えば、参照細胞または未改変細胞、例えば、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドで操作されていない細胞と比べて、その操作細胞内で過剰発現するか、または増加する。CD47は、白血球表面抗原であり、インテグリンの細胞接着及び調節において役割を有する。CD47は通常、細胞の表面上で発現し、循環マクロファージに、その細胞を食べないようにシグナルを伝達する。ヒトCD47に関するゲノム、ポリヌクレオチド及びポリペプチドの有用な情報は、例えば、NP_001768.1、NP_942088.1、NM_001777.3及びNM_198793.2に示されている。
【0534】
いくつかの実施形態では、CD47の発現(例えば表面発現)は、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約10%以上増加し、例えば、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約15%超、約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、約100%超、約150%超または約200%超のいずれか増加する。いくつかの実施形態では、CD47の発現(例えば表面発現)は、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約2倍以上増加し、例えば、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約4倍以上、約6倍以上、約8倍以上、約10倍以上、約15倍以上、約20倍以上、約30倍以上、約40倍以上、約50倍以上、約60倍以上、約70倍以上、約80倍以上、約90倍以上、約100倍以上、約150倍以上または約200倍以上のいずれか増加する。いくつかの実施形態では、CD47の発現は、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約200倍以下増加し、例えば、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約150倍以下、約100倍以下、約90倍以下、約80倍以下、約70倍以下、約60倍以下、約50倍以下、約40倍以下、約30倍以下、約15倍以下、約10倍以下、約8倍以下、約6倍以下、約4倍以下または約2倍以下のいずれか増加する。いくつかの実施形態では、CD47の発現は、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約2倍~約200倍増加し、例えば、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べて、約2倍~約20倍、約10倍~約50倍、約30倍~約70倍、約50倍~約100倍、約80倍~約150倍、及び約120倍~約200倍のいずれか増加する。
【0535】
いくつかの実施形態では、本明細書に概説されている細胞は、NCBI Ref.Sequence番号NP_001768.1及びNP_942088.1に示されているようなアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%または99%以上)であるCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説されている細胞は、NCBI Ref.Sequence番号NP_001768.1及びNP_942088.1に示されているようなアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、その細胞は、NCBI Ref.番号NM_001777.3及びNM_198793.2に示されている配列との配列同一性が少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%以上)である、CD47のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、その細胞は、NCBI Ref.Sequence番号NM_001777.3及びNM_198793.2に示されているような、CD47のヌクレオチド配列を含む。
【0536】
いくつかの実施形態では、その細胞は、NCBI Ref.Sequence番号NP_001768.1及びNP_942088.1に示されているようなアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%または99%以上)であるCD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に概説されている細胞は、NCBI Ref.Sequence番号NP_001768.1及びNP_942088.1に示されているようなアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドを含む。
【0537】
いくつかの実施形態では、その細胞は、配列番号1に示されているようなアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%または99%以上)であるCD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、その細胞は、配列番号1に示されているようなアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、その細胞は、配列番号2に示されているようなアミノ酸配列との配列同一性が少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%または99%以上)であるCD47ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、その細胞は、配列番号2に示されているようなアミノ酸配列を有するCD47ポリペプチドを含む。
【0538】
ある特定の実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに機能可能に連結されている。
【0539】
いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、下にさらに説明されているような標的挿入法または非標的挿入法によって、その細胞のゲノムに組み込まれている。いくつかの実施形態では、標的挿入は、標的座位への相同性依存型の挿入、例えば、表1bまたは2に示されている遺伝子座、例えば、B2M遺伝子、CIITA遺伝子、TRAC遺伝子、TRBC遺伝子のうちのいずれか1つへの挿入などによるものである。いくつかの実施形態では、標的挿入は、相同性非依存型の挿入、例えばセーフハーバー座位への挿入によるものである。いくつかの事例では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、以下に限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231から選択した遺伝子座のようなセーフハーバー座位に挿入する。特定の実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座またはCLYBL遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、CD47をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座またはMICB遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、T細胞であり、CD47をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、適切な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのいずれか)を用いて、CD47をコードするポリヌクレオチドの、その細胞のゲノム遺伝子座への挿入を促す。
【0540】
いくつかの実施形態では、CD47のタンパク質発現は、CD47タンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、外因性CD47のmRNAの存在を確認する。
【0541】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、CD200、例えばヒトCD200をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CD200は、その細胞内で過剰発現する。いくつかの実施形態では、CD200の発現は、その参照細胞または未改変細胞が、CD200をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除き同様の参照細胞または未改変細胞(いずれかの他の改変、例えば遺伝子改変を有する細胞を含む)と比べて、その操作細胞内で増加する。ヒトCD200に関するゲノム、ポリヌクレオチド及びポリペプチドの有用な情報は、例えば、GeneCard Identifier GC03P112332、HGNC番号7203、NCBI Gene ID4345、Uniprot番号P41217、ならびにNCBI RefSeq番号NP_001004196.2、NM_001004196.3、NP_001305757.1、NM_001318828.1、NP_005935.4、NM_005944.6、XP_005247539.1及びXM_005247482.2に示されている。ある特定の実施形態では、CD200をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに機能可能に連結されている。
【0542】
いくつかの実施形態では、CD200をコードするポリヌクレオチドは、表1bまたは2に示されている遺伝子座のいずれか1つに挿入する。いくつかの事例では、CD200をコードするポリヌクレオチドは、以下に限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231から選択した遺伝子座のようなセーフハーバー座位に挿入する。特定の実施形態では、CD200をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座またはCLYBL遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、CD200をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座またはMICB遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、T細胞であり、CD200をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、適切な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのいずれか)を用いて、CD200をコードするポリヌクレオチドの、その細胞のゲノム遺伝子座への挿入を促す。
【0543】
いくつかの実施形態では、CD200のタンパク質発現は、CD200タンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、外因性CD200のmRNAの存在を確認する。
【0544】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、HLA-E、例えばヒトHLA-Eをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、HLA-Eは、その細胞内で過剰発現する。いくつかの実施形態では、HLA-Eの発現は、その参照細胞または未改変細胞が、HLA-Eをコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除き同様の参照細胞または未改変細胞(いずれかの他の改変、例えば遺伝子改変を有する細胞を含む)と比べて、その操作細胞内で増加する。ヒトHLA-Eに関するゲノム、ポリヌクレオチド及びポリペプチドの有用な情報は、例えば、GeneCard Identifier GC06P047281、HGNC番号4962、NCBI Gene ID3133、Uniprot番号P13747、ならびにNCBIRefSeq番号NP_005507.3及びNM_005516.5に示されている。ある特定の実施形態では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに機能可能に連結されている。
【0545】
いくつかの実施形態では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、表1bまたは2に示されている遺伝子座のいずれか1つに挿入する。いくつかの事例では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、以下に限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231から選択した遺伝子座のようなセーフハーバー座位に挿入する。特定の実施形態では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座またはCLYBL遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座またはMICB遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、T細胞であり、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、適切な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのいずれか)を用いて、HLA-Eをコードするポリヌクレオチドの、その細胞のゲノム遺伝子座への挿入を促す。
【0546】
いくつかの実施形態では、HLA-Eのタンパク質発現は、HLA-Eタンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、外因性HLA-EのmRNAの存在を確認する。
【0547】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、HLA-G、例えばヒトHLA-Gをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、HLA-Gは、その細胞内で過剰発現する。いくつかの実施形態では、HLA-Gの発現は、その参照細胞または未改変細胞が、HLA-Gをコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除き同様の参照細胞または未改変細胞(いずれかの他の改変、例えば遺伝子改変を有する細胞を含む)と比べて、その操作細胞内で増加する。ヒトHLA-Gに関するゲノム、ポリヌクレオチド及びポリペプチドの有用な情報は、例えば、GeneCard Identifier GC06P047256、HGNC番号4964、NCBI Gene ID3135、Uniprot番号P17693、ならびにNCBIRefSeq番号NP_002118.1及びNM_002127.5に示されている。ある特定の実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに機能可能に連結されている。
【0548】
いくつかの実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、表1bまたは2に示されている遺伝子座のいずれか1つに挿入する。いくつかの事例では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、以下に限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231から選択した遺伝子座のようなセーフハーバー座位に挿入する。特定の実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座またはCLYBL遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座またはMICB遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、T細胞であり、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、適切な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのいずれか)を用いて、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドの、その細胞のゲノム遺伝子座への挿入を促す。
【0549】
いくつかの実施形態では、HLA-Gのタンパク質発現は、HLA-Gタンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、外因性HLA-GのmRNAの存在を確認する。
【0550】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、PD-L1、例えばヒトPD-L1をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、PD-L1は、その細胞内で過剰発現する。いくつかの実施形態では、PD-L1の発現は、その参照細胞または未改変細胞が、PD-L1をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除き同様の参照細胞または未改変細胞(いずれかの他の改変、例えば遺伝子改変を有する細胞を含む)と比べて、その操作細胞内で増加する。ヒトPD-L1すなわちCD274に関するゲノム、ポリヌクレオチド及びポリペプチドの有用な情報は、例えば、GeneCard Identifier GC09P005450、HGNC番号17635、NCBI Gene ID29126、Uniprot番号Q9NZQ7、ならびにNCBIRefSeq番号NP_001254635.1、NM_001267706.1、NP_054862.1及びNM_014143.3に示されている。ある特定の実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに機能可能に連結されている。
【0551】
いくつかの実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、表1bまたは2に示されている遺伝子座のいずれか1つに挿入する。いくつかの事例では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、以下に限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231から選択した遺伝子座のようなセーフハーバー座位に挿入する。特定の実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座またはCLYBL遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座またはMICB遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、T細胞であり、PD-L1をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、適切な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのいずれか)を用いて、PD-L1をコードするポリヌクレオチドの、その細胞のゲノム遺伝子座への挿入を促す。
【0552】
いくつかの実施形態では、PD-L1のタンパク質発現は、PD-L1タンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、外因性PD-L1のmRNAの存在を確認する。
【0553】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、FasL、例えばヒトFasLをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、FasLは、その細胞内で過剰発現する。いくつかの実施形態では、FasLの発現は、その参照細胞または未改変細胞が、FasLをコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除き同様の参照細胞または未改変細胞(いずれかの他の改変、例えば遺伝子改変を有する細胞を含む)と比べて、その操作細胞内で増加する。ヒトFasリガンド(FasL、FASLG、CD178、TNFSF6などとして知られている)に関するゲノム、ポリヌクレオチド及びポリペプチドの有用な情報は、例えば、GeneCard Identifier GC01P172628、HGNC番号11936、NCBI Gene ID356、Uniprot番号P48023、ならびにNCBIRefSeq番号NP_000630.1、NM_000639.2、NP_001289675.1及びNM_001302746.1に示されている。ある特定の実施形態では、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに機能可能に連結されている。
【0554】
いくつかの実施形態では、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、表1bまたは2に示されている遺伝子座のいずれか1つに挿入する。いくつかの事例では、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、以下に限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231から選択した遺伝子座のようなセーフハーバー座位に挿入する。特定の実施形態では、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座またはCLYBL遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座またはMICB遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、T細胞であり、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、適切な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのいずれか)を用いて、Fas-Lをコードするポリヌクレオチドの、その細胞のゲノム遺伝子座への挿入を促す。
【0555】
いくつかの実施形態では、Fas-Lのタンパク質発現は、Fas-Lタンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、外因性Fas-LのmRNAの存在を確認する。
【0556】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、CCL21、例えばヒトCCL21をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CCL21は、その細胞内で過剰発現する。いくつかの実施形態では、CCL21の発現は、その参照細胞または未改変細胞が、CCL21をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除き同様の参照細胞または未改変細胞(いずれかの他の改変、例えば遺伝子改変を有する細胞を含む)と比べて、その操作細胞内で増加する。ヒトCCL21に関するゲノム、ポリヌクレオチド及びポリペプチドの有用な情報は、例えば、GeneCard Identifier GC09M034709、HGNC番号10620、NCBI Gene ID6366、Uniprot番号O00585、ならびにNCBIRefSeq番号NP_002980.1及びNM_002989.3に示されている。ある特定の実施形態では、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに機能可能に連結されている。
【0557】
いくつかの実施形態では、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、表1bまたは2に示されている遺伝子座のいずれか1つに挿入する。いくつかの事例では、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、以下に限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231から選択した遺伝子座のようなセーフハーバー座位に挿入する。特定の実施形態では、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座またはCLYBL遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座またはMICB遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、T細胞であり、CCL21をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、適切な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのいずれか)を用いて、CCL21をコードするポリヌクレオチドの、その細胞のゲノム遺伝子座への挿入を促す。
【0558】
いくつかの実施形態では、CCL21のタンパク質発現は、CCL21タンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、外因性CCL21のmRNAの存在を確認する。
【0559】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、CCL22、例えばヒトCCL22をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CCL22は、その細胞内で過剰発現する。いくつかの実施形態では、CCL22の発現は、その参照細胞または未改変細胞が、CCL22をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除き同様の参照細胞または未改変細胞(いずれかの他の改変、例えば遺伝子改変を有する細胞を含む)と比べて、その操作細胞内で増加する。ヒトCCL22に関するゲノム、ポリヌクレオチド及びポリペプチドの有用な情報は、例えば、GeneCard Identifier GC16P057359、HGNC番号10621、NCBI Gene ID6367、Uniprot番号O00626、ならびにNCBIRefSeq番号NP_002981.2、NM_002990.4、XP_016879020.1及びXM_017023531.1に示されている。ある特定の実施形態では、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに機能可能に連結されている。
【0560】
いくつかの実施形態では、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、表1bまたは2に示されている遺伝子座のいずれか1つに挿入する。いくつかの事例では、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、以下に限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231から選択した遺伝子座のようなセーフハーバー座位に挿入する。特定の実施形態では、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座またはCLYBL遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座またはMICB遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、T細胞であり、CCL22をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、適切な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのいずれか)を用いて、CCL22をコードするポリヌクレオチドの、その細胞のゲノム遺伝子座への挿入を促す。
【0561】
いくつかの実施形態では、CCL22のタンパク質発現は、CCL22タンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、外因性CCL22のmRNAの存在を確認する。
【0562】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、Mfge8、例えばヒトMfge8をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、Mfge8は、その細胞内で過剰発現する。いくつかの実施形態では、Mfge8の発現は、その参照細胞または未改変細胞が、Mfge8をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除き同様の参照細胞または未改変細胞(いずれかの他の改変、例えば遺伝子改変を有する細胞を含む)と比べて、その操作細胞内で増加する。ヒトMfge8に関するゲノム、ポリヌクレオチド及びポリペプチドの有用な情報は、例えば、GeneCard Identifier GC15M088898、HGNC番号7036、NCBI Gene ID4240、Uniprot番号Q08431、ならびにNCBIRefSeq番号NP_001108086.1、NM_001114614.2、NP_001297248.1、NM_001310319.1、NP_001297249.1、NM_001310320.1、NP_001297250.1、NM_001310321.1、NP_005919.2及びNM_005928.3に示されている。ある特定の実施形態では、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに機能可能に連結されている。
【0563】
いくつかの実施形態では、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、表1bまたは2に示されている遺伝子座のいずれか1つに挿入する。いくつかの事例では、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、以下に限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231から選択した遺伝子座のようなセーフハーバー座位に挿入する。特定の実施形態では、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座またはCLYBL遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座またはMICB遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、T細胞であり、Mfge8をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、適切な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのいずれか)を用いて、Mfge8をコードするポリヌクレオチドの、その細胞のゲノム遺伝子座への挿入を促す。
【0564】
いくつかの実施形態では、Mfge8のタンパク質発現は、Mfge8タンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、外因性Mfge8のmRNAの存在を確認する。
【0565】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、SerpinB9、例えばヒトSerpinB9をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、SerpinB9は、その細胞内で過剰発現する。いくつかの実施形態では、SerpinB9の発現は、その参照細胞または未改変細胞が、SerpinB9をコードする外因性ポリヌクレオチドを含まないことを除き同様の参照細胞または未改変細胞(いずれかの他の改変、例えば遺伝子改変を有する細胞を含む)と比べて、その操作細胞内で増加する。ヒトSerpinB9に関するゲノム、ポリヌクレオチド及びポリペプチドの有用な情報は、例えば、GeneCard Identifier GC06M002887、HGNC番号8955、NCBI Gene ID5272、Uniprot番号P50453、ならびにNCBIRefSeq番号NP_004146.1、NM_004155.5、XP_005249241.1及びXM_005249184.4に示されている。ある特定の実施形態では、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターに機能可能に連結されている。
【0566】
いくつかの実施形態では、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、表1bまたは2に示されている遺伝子座のいずれか1つに挿入する。いくつかの事例では、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、以下に限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231から選択した遺伝子座のようなセーフハーバー座位に挿入する。特定の実施形態では、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座またはCLYBL遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、MICA遺伝子座またはMICB遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、T細胞であり、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドは、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、適切な遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム、または本明細書に記載の遺伝子編集システムのいずれか)を用いて、SerpinB9をコードするポリヌクレオチドの、その細胞のゲノム遺伝子座への挿入を促す。
【0567】
いくつかの実施形態では、SerpinB9のタンパク質発現は、SerpinB9タンパク質に対する抗体でプローブして細胞溶解液のウエスタンブロットを行うことを用いて検出する。別の実施形態では、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いて、外因性SerpinB9のmRNAの存在を確認する。
【0568】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、寛容原性因子、例えばCD47の発現の増加を含み、その増加は、本明細書に記載されているようなものであり、例えば、その寛容原性因子の発現を増加させるように操作する前の状態、参照細胞もしくは参照細胞集団(免疫原性応答が所望どおりに欠失している細胞など)、または測定値と比べたものである。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、寛容原性因子、例えばCD47の細胞表面発現を増加させるように操作されている。いくつかの実施形態では、その操作細胞上での寛容原性因子、例えばCD47の細胞表面発現は、寛容原性因子、例えばCD47の細胞表面提示を増加させるように操作する前の寛容原性因子、例えばCD47の細胞表面発現レベルの約40%以上(例えば、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上または約500%以上のいずれか)であるレベルまで上昇する。いくつかの実施形態では、その操作細胞上での寛容原性因子、例えばCD47の細胞表面発現は、参照細胞または参照細胞集団上での寛容原性因子、例えばCD47の細胞表面発現レベル(寛容原性因子、例えばCD47の細胞表面発現の平均量など)の約40%以上(例えば、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上または約500%以上のいずれか)であるレベルまで上昇する。いくつかの実施形態では、その操作細胞上で、寛容原性因子、例えばCD47の細胞表面提示の存在が見られる(既知の技法、例えばフローサイトメトリーを用いて測定した場合を含め、多少の検出可能な細胞表面発現を含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、寛容原性因子、例えばCD47のタンパク質発現が増加している。いくつかの実施形態では、その操作細胞の寛容原性因子、例えばCD47のタンパク質発現は、寛容原性因子、例えばCD47のタンパク質発現を増加させるように操作する前の寛容原性因子、例えばCD47のタンパク質発現レベルの約40%以上(例えば、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上または約500%以上のいずれか)であるレベルまで上昇する。いくつかの実施形態では、その操作細胞の寛容原性因子、例えばCD47のタンパク質発現は、寛容原性因子、例えばCD47のタンパク質発現を増加させるように操作する前の寛容原性因子、例えばCD47のレベルの約40%以上(例えば、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上または約500%以上のいずれか)であるレベルまで上昇する。いくつかの実施形態では、その操作細胞では、寛容原性因子、例えばCD47のタンパク質発現が見られる(既知の技法、例えば、ウエスタンブロットまたは質量分析を用いて測定した場合を含め、検出可能なタンパク質の発現を含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、寛容原性因子、例えばCD47のタンパク質発現を含む(既知の技法、例えば、ウエスタンブロットまたは質量分析を用いて測定した場合を含め、検出可能なタンパク質を含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、寛容原性因子、例えばCD47をコードするmRNAの発現が増加している。いくつかの実施形態では、その操作細胞の寛容原性因子、例えばCD47をコードするmRNAの発現は、寛容原性因子、例えばCD47のmRNAの発現を増加させるように操作する前の寛容原性因子、例えばCD47をコードするmRNAの発現のレベルの40%以上(例えば、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上または約500%以上のいずれか)であるレベルまで上昇する。いくつかの実施形態では、その操作細胞の寛容原性因子、例えばCD47をコードするmRNAの発現は、参照細胞または参照細胞集団のmRNAの発現レベルの約40%以上(例えば、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約100%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上または約500%以上のいずれか)であるレベルまで上昇する。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、寛容原性因子、例えばCD47をコードするmRNAを発現する(既知の技法、例えば、シーケンシング技法またはPCRを用いて測定した場合を含め、mRNAの検出可能な発現を含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、寛容原性因子、例えばCD47をコードするmRNAを含む(既知の技法、例えば、シーケンシング技法またはPCRを用いて測定した場合を含め、検出可能なmRNAを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、寛容原性因子、例えばCD47をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、寛容原性因子、例えばCD47をコードするポリヌクレオチドは、その操作細胞のゲノムDNAに組み込まれている。
【0569】
2.キメラ抗原受容体
いくつかの実施形態では、提供する操作細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように、さらに改変されている。
【0570】
いくつかの実施形態では、提供する細胞は、MICA及び/またはMICB、MHC I分子、MHC II分子、またはMHC I分子及びMHC II分子の発現を調節し、本明細書に記載されているような寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、CARを発現する、1つ以上の標的ポリヌクレオチド配列の遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、その細胞は、MICA及び/またはMICBが低減または除去(例えばノックアウト)されており、B2Mが低減または除去(例えばノックアウト)されており、CIITAが低減または除去(例えばノックアウト)されており、CD47が過剰発現し、CARが発現する細胞である。いくつかの実施形態では、その細胞は、MICA-/-及び/またはMICB-/-、B2M-/-、CIITA-/-、CD47tg、CAR+である。いくつかの実施形態では、その細胞(例えばT細胞)はさらに、TRACが低減または除去(例えばノックアウト)されている細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、その細胞は、MICA-/-及び/またはMICB-/-、B2M-/-、CIITA-/-、CD47tg、TRAC-/-、CAR+である。
【0571】
いくつかの実施形態では、CARをコードするポリヌクレオチドが、その細胞に導入されている。いくつかの実施形態では、その細胞は、T細胞、例えば、初代T細胞、または多能性細胞(例えばiPSC)から分化させたT細胞である。いくつかの実施形態では、その細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、例えば、初代NK細胞、または多能性細胞(例えばiPSC)から分化させたNK細胞である。
【0572】
いくつかの実施形態では、そのCARは、第1世代CAR、第2世代CAR、第3世代CAR及び第4世代CARからなる群から選択されている。いくつかの実施形態では、そのCARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び少なくとも1つのシグナル伝達ドメイン(例えば、1つ、2つまたは3つのシグナル伝達ドメイン)を含む第1世代CARであるか、またはそのCARを含む。いくつかの実施形態では、そのCARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び少なくとも2つのシグナル伝達ドメインを含む第2世代CARを含む。いくつかの実施形態では、そのCARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む第3世代CARを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、3つまたは4つのシグナル伝達ドメイン、及びCARのシグナル伝達が成功したら、サイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含む第4世代CAR。いくつかの実施形態では、その抗原結合ドメインは、抗体、抗体断片、scFvまたはFabであるか、またはそれを含む。
【0573】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞のいずれか1つは、CARすなわち第1世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第1世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及びシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化の際に、下流のシグナル伝達を媒介する。
【0574】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞のいずれか1つは、CARすなわち第2世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第2世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び2つのシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化の際に、下流のシグナル伝達を媒介する。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化の際に、サイトカインの産生、CAR T細胞の増殖、及び/またはCAR T細胞の存続性を増強する。
【0575】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞のいずれか1つは、CARすなわち第3世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第3世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び少なくとも3つのシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化の際に、下流のシグナル伝達を媒介する。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化の際に、サイトカインの産生、CAR T細胞の増殖、及びまたはCAR T細胞の存続性を増強する。いくつかの実施形態では、第3世代CARは、少なくとも2つの共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、その少なくとも2つの共刺激ドメインは、同じではない。
【0576】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞のいずれか1つは、CARすなわち第4世代CARをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、第4世代CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも2つ、3つまたは4つのシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化の際に、下流のシグナル伝達を媒介する。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、T細胞活性化の際に、サイトカインの産生、CAR T細胞の増殖、及びまたはCAR T細胞の存続性を増強する。
【0577】
いくつかの実施形態では、本発明で提供する操作細胞(例えば、初代T細胞もしくはiPSC由来のT細胞、または初代NK細胞もしくはiPSC由来のNK細胞)は、CARをコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドは、ゲノム遺伝子座に挿入されている。いくつかの実施形態では、そのポリヌクレオチドは、セーフハーバー座位に挿入されており、その座位は、以下に限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(CD142としても知られる)、MICA、MICB、LRP1(CD91としても知られる)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1またはKDM5Dの遺伝子座などである。いくつかの実施形態では、そのポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRB、PD1またはCTLA4の遺伝子に挿入されている。本明細書に記載の遺伝子編集法(例えばCRISPR/Casシステム)を含め、いずれか適切な方法を用いて、そのCARをその低免疫原性細胞のゲノム遺伝子座に挿入できる。
【0578】
いくつかの実施形態では、第1世代CAR、第2世代CAR、第3世代CARまたは第4世代CARは、CARのシグナル伝達が成功すると、サイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、サイトカイン遺伝子は、CARのシグナル伝達が成功すると、サイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインを含むCARを含む標的細胞にとって、内在性または外因性である。いくつかの実施形態では、サイトカイン遺伝子は、炎症誘発性サイトカインをコードする。いくつかの実施形態では、サイトカイン遺伝子は、IL-1、IL-2、IL-9、IL-12、IL-18、TNFもしくはIFN-γ、またはその機能的断片をコードする。いくつかの実施形態では、CARのシグナル伝達が成功すると、サイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子、またはその機能ドメインもしくは断片であるか、あるいは転写因子、またはその機能ドメインもしくは断片を含む。いくつかの実施形態では、CARのシグナル伝達が成功すると、サイトカイン遺伝子の発現を誘導するドメインは、転写因子、またはその機能ドメインもしくは断片であるか、あるいは転写因子、またはその機能ドメインもしくは断片を含む。いくつかの実施形態では、転写因子、またはその機能ドメインもしくは断片は、活性化T細胞核因子(NFAT)、NF-kB、またはその機能ドメインもしくは断片であるか、あるいは活性化T細胞核因子(NFAT)、NF-kB、またはその機能ドメインもしくは断片を含む。例えば、Zhang.C.et al.,Engineering CAR-T cells.Biomarker Research.5:22(2017)、WO2016126608、Sha,H.et al.Chimaeric antigen receptor T-cell therap for tumour immunotherapy.Bioscience Reports Jan 27,2017,37(1)を参照されたい。
【0579】
当業者は、CAR及び様々な構成要素、ならびにCARの構成に精通している。いずれか既知のCARを、提供されている実施形態と併せて用いることができる。本明細書に記載のCARに加えて、様々なCAR、及び様々なCARをコードするヌクレオチド配列が当該技術分野で知られており、本明細書に記載されているように細胞を操作するのに適するであろう。例えば、WO2013040557、WO2012079000、WO2016030414、Smith T,et al.,Nature Nanotechnology.2017.DOI:10.1038/NNANO.2017.57(これらの開示内容は、参照により本明細書に援用される)を参照されたい。CARの例示的な機構及び構成要素は、以下のサブセクションに説明されている。
【0580】
A.抗原結合ドメイン
いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメイン(ABD)は、抗体もしくはその抗原結合部分であるか、または抗体もしくはその抗原結合部分を含む。いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメイン(ABD)は、scFvもしくはFabであるか、またはscFvもしくはFabを含む。
【0581】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、細胞の細胞表面抗原に結合する。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、特定の細胞種または特異的な細胞種に特有である(例えば、その細胞種によって発現される)。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原は、2つ以上の細胞種に特有である。
【0582】
いくつかの実施形態では、その抗原は、腫瘍細胞のみで、もしくは腫瘍細胞で優先的に発現する抗原、または自己免疫疾患もしくは炎症性疾患に特有である抗原であってよい。いくつかの実施形態では、その抗原結合ドメイン(ABD)は、腫瘍性細胞に特有な抗原を標的とする。例えば、その抗原結合ドメインは、腫瘍性細胞またはがん細胞によって発現される抗原を標的とする。いくつかの実施形態では、そのABDは、腫瘍関連抗原に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍性細胞に特有である抗原(例えば、腫瘍性細胞もしくはがん細胞と関連する抗原)、または腫瘍関連抗原は、細胞表面受容体、イオンチャネル連結型受容体、酵素連結型受容体、Gタンパク質連結型受容体、受容体型チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ関連受容体、受容体様チロシンホスファターゼ、受容体型セリン/トレオニンキナーゼ、受容体型グアニル酸シクラーゼ、ヒスチジンキナーゼ関連受容体から選択されている。
【0583】
いくつかの実施形態では、その標的抗原は、以下に限定されないが、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)(ErbB1/EGFR、ErbB2/HER2、ErbB3/HER3及びErbB4/HER4を含む)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)(FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF18及びFGF21を含む)、血管内皮細胞成長因子受容体(VEGFR)(VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D及びPIGFを含む)、RET受容体及びEph受容体のファミリー(EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA6、EphA7、EphA8、EphA9、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB4及びEphB6を含む)、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR6、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR8、CFTR、CIC-1、CIC-2、CIC-4、CIC-5、CIC-7、CIC-Ka、CIC-Kb、ベストロフィン、TMEM16A、GABA受容体、グリシン受容体、ABCトランスポーター、NAV1.1、NAV1.2、NAV1.3、NAV1.4、NAV1.5、NAV1.6、NAV1.7、NAV1.8、NAV1.9、スフィンゴシン-1-リン酸受容体(S1P1R)、NMDAチャネル、膜貫通タンパク質、複数回膜貫通型タンパク質、T細胞受容体モチーフ、T細胞α鎖、T細胞β鎖、T細胞γ鎖、T細胞δ鎖、CCR7、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD11b、CD11c、CD16、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD28、CD34、CD35、CD40、CD45RA、CD45RO、CD52、CD56、CD62L、CD68、CD80、CD95、CD117、CD127、CD133、CD137(4-1BB)、CD163、F4/80、IL-4Ra、Sca-1、CTLA-4、GITR、GARP、LAP、グランザイムB、LFA-1、トランスフェリン受容体、NKp46、パーフォリン、CD4+、Th1、Th2、Th17、Th40、Th22、Th9、Tfh、カノニカルなTreg、FoxP3+、Tr1、Th3、Treg17、TREG、CDCP、NT5E、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、PSMA、葉酸結合タンパク質、ガングリオシド(例えば、CD2、CD3、GM2)、ルイス-γ、VEGF、VEGFR 1/2/3、αVβ3、α5β1、ErbB1/EGFR、ErbB1/HER2、ErB3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、PDL-1、BAFF、HDAC、ABL、FLT3、KIT、MET、RET、IL-1β、ALK、RANKL、mTOR、CTLA-4、IL-6、IL-6R、JAK3、BRAF、PTCH、スムーズンド、PIGF、ANPEP、TIMP1、PLAUR、PTPRJ、LTBR、または ANTXR1、葉酸受容体α(FRa)、ERBB2(Her2/neu)、EphA2、IL-13Ra2、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)、メソセリン、TSHR、CD19、CD123、CD22、CD30、CD171、CS-1、CLL-1、CD33、EGFRvIII、GD2、GD3、BCMA、MUC16(CA125)、L1CAM、LeY、MSLN、IL13Rα1、L1-CAM、Tn Ag、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、インターロイキン11受容体a(IL-11Ra)、PSCA、PRSS21、VEGFR2、ルイスY、CD24、血小板由来成長因子受容体-β(PDGFR-β)、SSEA-4、CD20、MUC1、NCAM、プロスターゼ、PAP、ELF2M、エフリンB2、IGF-1受容体、CAIX、LMP2、gplOO、bcr-abl、チロシナーゼ、フコシルGM1、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体β、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD179a、ALK、ポリシアル酸、PLACl、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-A1、レグマイン、HPV E6、E7、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、主要組織適合性複合体クラスI関連遺伝子タンパク質(MR1)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、プロステイン、サバイビン、テロメラーゼ、PCTA-1/ガレクチン8、MelanA/MART1、Ras変異体、hTERT、肉腫転座ブレークポイント、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、MYCN、RhoC、TRP-2、CYPIB I、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、IGLL1、ネオアンチゲン、CD133、CD15、CD184、CD24、CD56、CD26、CD29、CD44、HLA-A、HLA-B、HLA-C、(HLA-A、HLA-B、HLA-C)、H2-M3、CD49f、CD151、CD340、CD200、tkrA、trkBもしくはtrkC、またはその抗原断片もしくは抗原部分を含む抗原である。
【0584】
いくつかの実施形態では、例示的な標的抗原としては、CDS、CD19、CD20、CD22、CD23、CD30、CD70、κ、λ、及びB細胞成熟因子(BCMA)(白血病と関連する抗原)、CS1/SLAMF7、CD38、CD138、GPRC5D、TACI及びBCMA(骨髄腫と関連する抗原)、GD2、HER2、EGFR、EGFRvlll、B7H3、PSMA、PSCA、CAIX、CD171、CEA、CSPG4、EPHA2、FAP、FRa、IL-13Ra、メソセリン、MUC1、MUC16及びROR1(固形腫瘍と関連する抗原)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0585】
いくつかの実施形態では、そのCARは、CD19 CARである。いくつかの実施形態では、そのCD19 CARの細胞外結合ドメインは、CD19、例えばヒトCD19に特異的に結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、そのCD19 CARの細胞外結合ドメインは、FMC63モノクローナル抗体(FMC63)に由来するscFv抗体断片を含み、この断片は、FMC63の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)がリンカーペプチドによって連結されたものを含む。いくつかの実施形態では、そのリンカーペプチドは、「Whitlow」リンカーペプチドである。FMC63及びこれに由来するscFvは、Nicholson et al.,Mal.lmmun.34(16-17):1157-1165(1997)及び国際公開第WO2018/213337A1号(その内容はそれぞれ、参照により、その全体が本明細書に援用される)に記載されている。
【0586】
いくつかの実施形態では、そのCD19 CARの細胞外結合ドメインは、例えば、SJ25C1(Bejcek et al.,Cancer Res.55:2346-2351(1995))、HD37(Pezutto et al.,J.lmmunol.138(9):2793-2799(1987))、4G7(Meeker et al.,Hybridoma 3:305-320(1984))、B43(Bejcek(1995))、BLY3(Bejcek(1995))、B4(Freedman et al.,70:418-427(1987))、B4 HB12b(Kansas & Tedder,J.lmmunol.147:4094-4102(1991)、Yazawa et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:15178-15183(2005)、Herbst et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.335:213-222(2010))、BU12(Gallard et al.,J.Immunology,148(10):2983-2987(1992))及びCLB-CD19(De Rie Cell.lmmunol.118:368-381(1989))を含むCD19特異的抗体の1つに由来する抗体を含む。
【0587】
いくつかの実施形態では、そのCARは、CD22 CARである。CD22は、成熟B細胞の表面で主に見られる膜貫通タンパク質であり、B細胞受容体(BCR)のシグナル伝達に対する阻害受容体として機能する。CD22は、B細胞リンパ腫及びB細胞白血病(例えば、B細胞慢性リンパ性白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ性白血病(ALL)及びバーキットリンパ腫)の60~70%で発現し、B細胞発生の早期の細胞表面または幹細胞上には存在しない。いくつかの実施形態では、そのCD22 CARは、CD22に特異的に結合する細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン及び/または細胞内共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、そのCD22 CARの細胞外結合ドメインは、m971モノクローナル抗体(m971)に由来するscFv抗体断片を含み、この断片は、m971の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)がリンカーによって連結されたものを含む。いくつかの実施形態では、そのCD22 CARの細胞外結合ドメインは、m971-L7に由来するscFv抗体断片を含み、このm971-L7は、m971の親和性成熟バリアントであって、親抗体m971と比べて、CD22への結合親和性が有意に改善された(約2nMから50pM未満に改善された)バリアントである。いくつかの実施形態では、m971-L7に由来するそのscFv抗体断片は、m971-L7のVHとVLが3xG4Sリンカーによって連結されたものを含む。いくつかの実施形態では、そのCD22 CARの細胞外結合ドメインは、イムノトキシンHA22またはBL22を含む。イムノトキシンBL22及びHA22は、CD22に特異的なscFvが細菌毒素に融合されたものを含む治療剤であるので、CD22を発現するがん細胞の表面に結合して、そのがん細胞を殺傷することができる。BL22は、抗CD22抗体のdsFvであるRFB4が、38kDaのトランケート型のPseudomonasエクソトキシンAに融合されたものを含む(Bang et al.,Clin.Cancer Res.,11:1545-50(2005))。HA22(CAT8015、モキセツモマブパスドトクス)は、変異型かつ高親和性型のBL22である(Ho et al.,J.Biol.Chem.,280(1):607-17(2005))。CD22に特異的なHA22及びBL22の抗原結合ドメインの適切な配列は、例えば、米国特許第7,541,034号、同第7,355,012号及び同第7,982,011号に開示されており、これらの内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0588】
いくつかの実施形態では、そのCARは、BCMA CARである。BCMAは、B細胞系列の細胞上に発現する腫瘍壊死ファミリー受容体(TNFR)メンバーであり、最終分化したB細胞または成熟Bリンパ球上に最も高度に発現する。BCMAは、長期の液性免疫を維持するための、形質細胞の生存の媒介に関与する。BCMAの発現は最近、多くのがん、例えば、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、様々な白血病及びグリオブラストーマに関連付けられている。いくつかの実施形態では、そのBCMA CARは、BCMAに特異的に結合する細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン及び/または細胞内共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、そのBCMA CARの細胞外結合ドメインは、BCMA、例えばヒトBCMAに特異的に結合する抗体を含む。BCMAに誘導されるCARは、国際出願公開第WO2016/014789号、同第WO2016/014565号、同第WO2013/154760号及び同第WO2015/128653号に記載されている。BCMA結合抗体は、国際出願公開第WO2015/166073号及び同第WO2014/068079号にも開示されている。いくつかの実施形態では、そのBCMA CARの細胞外結合ドメインは、Carpenter et al.,Clin.Cancer Res.19(8):2048-2060(2013)に記載されているようなマウスモノクローナル抗体に由来するscFv抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、そのscFv抗体断片は、ヒト化型のマウスモノクローナル抗体である(Sommermeyer et al.,Leukemia 31:2191-2199(2017))。いくつかの実施形態では、そのBCMA CARの細胞外結合ドメインは、Zhao et al.,J.Hematol.Oneal.11(1):141(2018)に記載されているように、BCMAのエピトープの2つに結合できる2本の重鎖(VHH)からなる単一可変断片を含む。いくつかの実施形態では、そのBCMA CARの細胞外結合ドメインは、Lam et al.,Nat.Commun.11(1):283(2020)に記載されているように、完全ヒト重鎖可変ドメイン(FHVH)を含む。
【0589】
いくつかの実施形態では、その抗原結合ドメインは、自己免疫障害または炎症性障害に特有な抗原を標的とする。いくつかの実施形態では、そのABDは、自己免疫障害または炎症性障害と関連する抗原に結合する。いくつかの事例では、その抗原は、自己免疫障害または炎症性障害と関連する細胞によって発現される。いくつかの実施形態では、その自己免疫障害または炎症性障害は、慢性移植片対宿主疾患(GVHD)、ループス、関節炎、免疫複合体糸球体腎炎、グッドパスチャー、ブドウ膜炎、肝炎、全身性硬化症、すなわち強皮症、I型糖尿病、多発性硬化症、寒冷凝集素症、尋常性天疱瘡、グレーブス病、自己免疫性溶血性貧血、血友病A、原発性シェーグレン症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、視神経脊髄炎、エバンス症候群、IgM媒介性ニューロパチー、クリオグロブリン血症、皮膚筋炎、特発性血小板減少症、強直性脊椎炎、水疱性類天疱瘡、後天性血管性浮腫、慢性蕁麻疹、抗リン脂質脱髄性多発ニューロパチー、及び自己免疫性血小板減少症または自己免疫性好中球減少症または赤芽球癆から選択されている一方で、同種免疫疾患の例示的な非限定的例としては、造血細胞移植または固形臓器移植、輸血による同種感作(例えば、Blazar et al.,2015,Am.J.Transplant,15(4):931-41を参照されたい)または異種感作、胎児同種感作を伴う妊娠、新生児同種免疫性血小板減少症、新生児溶血性疾患、酵素補充療法またはタンパク質補充療法、血液製剤、及び遺伝子療法で治療する遺伝性欠損障害または後天性欠損障害への補充の際に起こることがある、外来抗原への感作が挙げられる。同種感作は、いくつかの事例では、レシピエント対象または妊娠している対象の免疫系が非自己抗原とみなすヒト白血球抗原に対する免疫応答(循環抗体など)の発生を指す。いくつかの実施形態では、自己免疫障害または炎症性障害に特有の抗原は、細胞表面受容体、イオンチャネル連結型受容体、酵素連結型受容体、Gタンパク質連結型受容体、受容体型チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ関連受容体、受容体様チロシンホスファターゼ、受容体型セリン/トレオニンキナーゼ、受容体型グアニル酸シクラーゼまたはヒスチジンキナーゼ関連受容体から選択されている。
【0590】
いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、B細胞上、形質細胞上または形質芽球上に発現するリガンドに結合する。いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD27、CD38、CD45R、CD138、CD319、BCMA、CD28、TNF、インターフェロン受容体、GM-CSF、ZAP-70、LFA-1、CD3γ、CD5またはCD2に結合する。US2003/0077249、WO2017/058753、WO2017/058850(これらの内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される)を参照されたい。いくつかの実施形態では、そのCARは、抗CD19 CARである。いくつかの実施形態では、そのCARは、抗BCMA CARである。
【0591】
いくつかの実施形態では、その抗原結合ドメインは、老化細胞、例えばウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)に特有の抗原を標的とする。いくつかの実施形態では、そのABDは、老化細胞と関連する抗原に結合する。いくつかの事例では、その抗原は、老化細胞によって発現される。いくつかの実施形態では、そのCARは、老化細胞の異常な蓄積を特徴とする障害、例えば、肝線維症、肺線維症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病及び変形性関節症の治療または予防に用いてよい。
【0592】
いくつかの実施形態では、その抗原結合ドメインは、感染症に特有の抗原を標的とする。いくつかの実施形態では、そのABDは、感染症と関連する抗原に結合する。いくつかの事例では、その抗原は、感染症に罹患した細胞によって発現される。いくつかの実施形態では、その感染症は、HIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV))、ヒトTリンパ球向性ウイルス-1(HTLV-1)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、シミアンウイルス40(SV40)、エプスタイン-バーウイルス、CMV、ヒトパピローマウイルスから選択されている。いくつかの実施形態では、感染症に特有の抗原は、細胞表面受容体、イオンチャネル連結型受容体、酵素連結型受容体、Gタンパク質連結型受容体、受容体型チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼ関連受容体、受容体様チロシンホスファターゼ、受容体型セリン/トレオニンキナーゼ、受容体型グアニル酸シクラーゼ、ヒスチジンキナーゼ関連受容体、HIV Env、HIV-1 Env上のgp120またはCD4誘導性エピトープから選択されている。
【0593】
これらの実施形態のいずれかでは、そのCARの細胞外結合ドメインは、宿主細胞内での発現に合わせてコドン最適化されているか、またはその細胞外結合ドメインの機能を増大させるバリアント配列を有することができる。
【0594】
いくつかの実施形態では、そのCARは、2つの標的抗原に二重特異性を有する。いくつかの実施形態では、その標的抗原は、異なる標的抗原である。いずれかのこのような実施形態のいくつかでは、その2つの異なる標的抗原は、上記のいずれかの2つの異なる抗原である。いくつかの実施形態では、その細胞外結合ドメインは、異なるものであり、(i)CD19及びCD20、(ii)CD20及びL1-CAM、(iii)L1-CAM及びGD2、(iv)EGFR及びL1-CAM、(v)CD19及びCD22、(vi)EGFR及びC-MET、(vii)EGFR及びHER2、(viii)C-MET及びHER2、または(ix)EGFR及びROR1のうちの2つの異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、その2つの異なる抗原結合ドメインのそれぞれは、scFvである。いくつかの実施形態では、第1のscFvの一方の可変ドメイン(VHまたはVL)のC末端は、第2のscFv(それぞれ、VLまたはVH)のN末端に、ポリペプチドリンカーを介して係留されている。いくつかの実施形態では、そのリンカーは、VHのN末端をVLのC末端と、またはVHのC末端をVLのN末端と連結している。これらのscFvは、天然型抗体の重鎖及び軽鎖に存在する定常領域(Fc)を欠損している。少なくとも2つの異なる抗原に特異的なscFvは、タンデムに並んでおり、共刺激ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインに、膜貫通ドメインを介して連結している。一実施形態では、抗原特異的な結合領域と膜貫通ドメインとの間に、細胞外スペーサードメインが連結していてもよい。
【0595】
さらなる実施形態では、そのCARの抗原特異的なターゲティング領域のそれぞれは、二価(divalent)(または二価(bivalent))の一本鎖可変断片(ジscFv、バイscFv)を含む。ジscFVを含むCARでは、2つのVH領域及び2つのVL領域で1本のペプチド鎖を作製して、タンデムscFvをもたらすことによって、各抗原に特異的な2つのscFvが連結されている(Xiong,Cheng-Yi;Natarajan,A;Shi,X B;Denardo,G L;Denardo,S J(2006).“Development of tumor targeting anti-MUC-1 multimer:effects of di-scFv unpaired cysteine location on PEGylation and tumor binding”.Protein Engineering Design and Selection 19(8):359-367、Kufer,Peter;Lutterbuse,Ralf;Baeuerle,Patrick A.(2004).“A revival of bispecific antibodies”.Trends in Biotechnology 22(5):238-244)。抗原特異的なターゲティング領域を少なくとも2つ含むCARは、2つの抗原のそれぞれに特異的な2つのscFvを発現することになる。少なくとも2つの異なる抗原に特異的な、得られる抗原特異的なターゲティング領域は、共刺激ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインに、膜貫通ドメインを介して連結されている。一実施形態では、抗原特異的な結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に、細胞外スペーサードメインが連結されていてよい。
【0596】
追加の実施形態では、そのCARの抗原特異的なターゲティング領域のそれぞれは、ダイアボディを含む。ダイアボディでは、2つの可変領域を併せて折り畳むには非常に短いリンカーペプチドを用いてscFvを作製して、scFvを二量化させている。さらに短いリンカー(1アミノ酸または2アミノ酸)によって、三量体、いわゆるトリアボディまたはトリボディが形成される。テトラボディも用いてよい。
【0597】
いくつかの実施形態では、本発明の細胞は、2つ以上のCAR、例えば、2つの異なるCARを発現するように操作されており、この場合、それぞれのCARは、異なる標的抗原に誘導される抗原結合ドメインを有する。いずれかのこのような実施形態のいくつかでは、その2つの異なる標的抗原は、上記のいずれかの2つの異なる抗原である。いくつかの実施形態では、その細胞外結合ドメインは、異なるものであり、(i)CD19及びCD20、(ii)CD20及びL1-CAM、(iii)L1-CAM及びGD2、(iv)EGFR及びL1-CAM、(v)CD19及びCD22、(vi)EGFR及びC-MET、(vii)EGFR及びHER2、(viii)C-MET及びHER2、または(ix)EGFR及びROR1のうちの2つの異なる抗原に結合する。
【0598】
いくつかの実施形態では、示されている改変を含む2つの異なる操作細胞であって、異なるCARを有するようにそれぞれ操作された細胞を調製する。いくつかの実施形態では、その2つの異なるCARのそれぞれは、異なる標的抗原に誘導される抗原結合ドメインを有する。いずれかのこのような実施形態のいくつかでは、その2つの異なる標的抗原は、上記のいずれかの2つの異なる抗原である。いくつかの実施形態では、その細胞外結合ドメインは、異なるものであり、(i)CD19及びCD20、(ii)CD20及びL1-CAM、(iii)L1-CAM及びGD2、(iv)EGFR及びL1-CAM、(v)CD19及びCD22、(vi)EGFR及びC-MET、(vii)EGFR及びHER2、(viii)C-MET及びHER2、または(ix)EGFR及びROR1のうちの2つの異なる抗原に結合する。いくつかの実施形態では、第1の標的抗原に対して誘導される第1のCARを発現する操作細胞(例えば、低免疫原性細胞)の集団、及び第2の標的抗原に対して誘導される第2のCARを発現する操作細胞(例えば、低免疫原性細胞)の集団を別々に、その対象に投与する。いくつかの実施形態では、その第1の細胞集団及び第2の細胞集団をいずれかの順序で順次投与する。例えば、第1のCARを発現する細胞集団を投与した後に、第2のCARを発現する細胞集団を投与する。
【0599】
B.スペーサー
いくつかの実施形態では、そのCARは、1つ以上のスペーサーをさらに含み、例えば、そのスペーサーは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間の第1のスペーサーである。いくつかの実施形態では、その第1のスペーサーは、免疫グロブリン定常領域、またはそのバリアントもしくは改変型の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、そのスペーサーは、膜貫通ドメインとシグナル伝達ドメインとの間の第2のスペーサーである。いくつかの実施形態では、その第2のスペーサーは、オリゴペプチドであり、例えば、そのオリゴペプチドは、グリシン残基及びセリン残基、例えば、以下に限定されないが、グリシン-セリンダブレットを含む。いくつかの実施形態では、そのCARは、2つ以上のスペーサー、例えば、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間のスペーサー、及び膜貫通ドメインとシグナル伝達ドメインとの間のスペーサーを含む。
【0600】
C.膜貫通ドメイン
いくつかの実施形態では、そのCARの膜貫通ドメインは、T細胞受容体のα鎖、β鎖もしくはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD28、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、またはこれらの機能的バリアントの少なくとも膜貫通領域を含む。いくつかの実施形態では、その膜貫通ドメインは、CD8α、CD8β、4-1BB/CD137、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16、OX40/CD134、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD32、CD64、CD64、CD45、CD5、CD9、CD22、CD37、CD80、CD86、CD40、CD40L/CD154、VEGFR2、FAS及びFGFR2B、またはこれらの機能的バリアントの少なくとも膜貫通領域(複数可)を含む。
【0601】
D.シグナル伝達ドメイン(複数可)
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARは、B7-1/CD80、B7-2/CD86、B7-H1/PD-L1、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、B7-H7、BTLA/CD272、CD28、CTLA-4、Gi24/VISTA/B7-H5、ICOS/CD278、PD-1、PD-L2/B7-DC、PDCD6、4-1BB/TNFSF9/CD137、4-1BBリガンド/TNFSF9、BAFF/BLyS/TNFSF13B、BAFF R/TNFRSF13C、CD27/TNFRSF7、CD27リガンド/TNFSF7、CD30/TNFRSF8、CD30リガンド/TNFSF8、CD40/TNFRSF5、CD40/TNFSF5、CD40リガンド/TNFSF5、DR3/TNFRSF25、GITR/TNFRSF18、GITRリガンド/TNFSF18、HVEM/TNFRSF14、LIGHT/TNFSF14、リンホトキシン-α/TNF-β、OX40/TNFRSF4、OX40リガンド/TNFSF4、RELT/TNFRSF19L、TACI/TNFRSF13B、TL1A/TNFSF15、TNF-α、TNF RII/TNFRSF1B、2B4/CD244/SLAMF4、BLAME/SLAMF8、CD2、CD2F-10/SLAMF9、CD48/SLAMF2、CD58/LFA-3、CD84/SLAMF5、CD229/SLAMF3、CRACC/SLAMF7、NTB-A/SLAMF6、SLAM/CD150、CD2、CD7、CD53、CD82/Kai-1、CD90/Thy1、CD96、CD160、CD200、CD300a/LMIR1、HLAクラスI、HLA-DR、イカロス、インテグリンα4/CD49d、インテグリンα4β1、インテグリンα4 β7/LPAM-1、LAG-3、TCL1A、TCL1B、CRTAM、DAP12、デクチン-1/CLEC7A、DPPIV/CD26、EphB6、TIM-1/KIM-1/HAVCR、TIM-4、TSLP、TSLP R、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、NKG2C、CD3ζドメイン、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、CD27、CD28、4-1BB、CD134/OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、またはこれらの機能的断片の1つ以上から選択したシグナル伝達ドメインを1つまたは少なくとも1つを含む。
【0602】
いくつかの実施形態では、その少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはこれらの機能的バリアントを含む。
【0603】
いくつかの実施形態では、CARは、共刺激ドメインであるシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、第2の共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、少なくとも2つの共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、少なくとも3つの共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、CD27、CD28、4-1BB、CD134/OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンドの1つ以上から選択した共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARが、2つ以上の共刺激ドメインを含む場合、2つの共刺激ドメインは、異なるものである。いくつかの実施形態では、CARが、2つ以上の共刺激ドメインを含む場合、2つの共刺激ドメインは、同じである。
【0604】
別の実施形態では、その少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。さらに別の実施形態では、その少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。いくつかの実施形態では、その少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカイン導入遺伝子または共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0605】
いくつかの実施形態では、その少なくとも2つのシグナル伝達ドメインは、CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。別の実施形態では、その少なくとも2つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。さらに別の実施形態では、その少なくとも1つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。いくつかの実施形態では、その少なくとも2つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカイン導入遺伝子または共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0606】
いくつかの実施形態では、その少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。別の実施形態では、その少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。さらに別の実施形態では、その少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。いくつかの実施形態では、その少なくとも3つのシグナル伝達ドメインは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカイン導入遺伝子または共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0607】
いくつかの実施形態では、そのCARは、CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアントを含む。いくつかの実施形態では、そのCARは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、及び(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアントを含む。
【0608】
いくつかの実施形態では、そのCARは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、及び(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。
【0609】
いくつかの実施形態では、そのCARは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインもしくは4-1BBドメイン、またはその機能的バリアント、及び/または(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアントを含む。
【0610】
いくつかの実施形態では、そのCARは、(i)CD3ζドメインもしくは免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、またはその機能的バリアント、(ii)CD28ドメインまたはその機能的バリアント、(iii)4-1BBドメインもしくはCD134ドメイン、またはその機能的バリアント、及び(iv)サイトカイン導入遺伝子または共刺激リガンド導入遺伝子を含む。
【0611】
E.例示的なCAR
いくつかの実施形態では、そのCARは、抗原(例えば腫瘍抗原)に結合する細胞外抗原結合ドメイン(例えば、抗体またはscFvのような抗体断片)、スペーサー(例えば、本明細書に記載されているようないずれかのようなヒンジドメインを含む)、膜貫通ドメイン(例えば、本明細書に記載されているようないずれか)、及び細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書に記載されているような一次シグナル伝達ドメインまたは共刺激シグナル伝達ドメインのようないずれかの細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、その細胞内シグナル伝達ドメインは、一次細胞質シグナル伝達ドメインであるか、または一次細胞質シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、その細胞内シグナル伝達ドメインは、加えて、共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば共刺激ドメイン)を含む。このような構成要素のいずれかは、上記のようないずれかであることができる。
【0612】
CARの例示的な構成要素の例は、表3に示されている。提供する態様では、CARの各構成要素の配列は、表3に列挙されているいずれかの組み合わせを含むことができる。
【0613】
【表3】
【0614】
3.ポリヌクレオチドの発現を増加させる(例えば過剰発現させる)方法
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの発現の増加は、様々な技法のいずれかによって行ってよい。例えば、遺伝子及び因子(タンパク質)の発現を調節する方法としては、ゲノム編集技法、及びRNAまたはタンパク質の発現技術などが挙げられる。これらの技術のいずれにおいても、周知の組み換え技法を用いて、本明細書に概説されているような組み換え核酸を生成する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドを過剰発現させるかまたはその発現を増加させるための改変を1つ以上有するように操作する細胞は、本明細書に記載されているようないずれかの供給源細胞である。いくつかの実施形態では、その供給源細胞は、本明細書に記載のいずれかの細胞である。
【0615】
いくつかの実施形態では、遺伝子の発現は、内在性遺伝子の活性を向上させること(例えば、外因性遺伝子の転写を増大させること)によって増加させる。いくつかの事例では、内在性遺伝子の活性は、その内在性遺伝子に機能可能に連結されたプロモーターまたはエンハンサーの活性を向上させることによって向上させる。いくつかの実施形態では、そのプロモーターまたはエンハンサーの活性の向上は、内在性のプロモーターまたはエンハンサーの活性を向上させる1つ以上の改変を内在性のプロモーターまたはエンハンサーに加えることを含む。いくつかの事例では、内在性遺伝子の遺伝子活性の向上は、その遺伝子の内在性プロモーターを改変することである。いくつかの実施形態では、内在性遺伝子の遺伝子活性の向上は、異種プロモーターを導入することを含む。いくつかの実施形態では、その異種プロモーターは、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタインバーウイルス(EBV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター及びUBCプロモーターからなる群から選択する。
【0616】
A.DNA結合融合タンパク質
いくつかの実施形態では、標的遺伝子(例えば、CD47または別の寛容原性因子)の発現は、(1)内在性のCD47または他の遺伝子に特異的な部位特異的結合ドメインと、(2)転写活性化因子とを含む融合タンパク質またはタンパク質複合体の発現によって増加させる。
【0617】
いくつかの実施形態では、その調節因子は、部位特異的なDNA結合核酸分子、例えばガイドRNA(gRNA)から構成されている。いくつかの実施形態では、その方法は、DNAに結合する部位特異的な標的化タンパク質、例えば、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)、またはZFPを含む融合タンパク質(ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)としても知られる)によって行う。
【0618】
いくつかの実施形態では、その調節因子は、DNA結合タンパク質またはDNA結合核酸を用いるような部位特異的な結合ドメインを含み、このドメインは、標的領域において、遺伝子に特異的に結合するかまたはハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、提供するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、部位特異的なヌクレアーゼ、例えば改変ヌクレアーゼに連結されているか、またはそのヌクレアーゼと複合体化されている。例えば、いくつかの実施形態では、その投与は、改変ヌクレアーゼ、例えばメガヌクレアーゼまたはRNA誘導型ヌクレアーゼ(クラスター化した規則的な配置の短い回文核酸(CRISPR)-Casシステム、例えばCRISPR-Cas9システムなど)のDNAターゲティングタンパク質を含む融合体を用いて行う。いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ活性を欠損するように改変されている。いくつかの実施形態では、その改変ヌクレアーゼは、触媒性が消失したdCas9である。
【0619】
いくつかの実施形態では、その部位特異的結合ドメインは、ヌクレアーゼに由来してもよい。例えば、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevII及びI-TevIIIなどのホーミングエンドヌクレアーゼ及びホーミングメガヌクレアーゼの認識配列。米国特許第5,420,032号、米国特許第6,833,252、Belfort et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3379-3388、Dujon et al.,(1989)Gene 82:115-118、Perler et al,(1994)Nucleic Acids Res.22,1125-1127、Jasin(1996)Trends Genet.12:224-228、Gimble et al.,(1996)J.Mol.Biol.263:163-180、Argast et al,(1998)J.Mol.Biol.280:345-353及びthe New England Biolabs catalogueも参照されたい。加えて、ホーミングエンドヌクレアーゼ及びホーミングメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然の標的部位に結合するように操作できる。例えば、Chevalier et al,(2002)Molec.Cell 10:895-905、Epinat et al,(2003)Nucleic Acids Res.31:2952-2962、Ashworth et al,(2006)Nature 441:656-659、Paques et al,(2007)Current Gene Therapy 7:49-66、米国特許出願公開第2007/0117128号を参照されたい。
【0620】
ジンクフィンガー、TALE及びCRISPRシステムの結合ドメインは、例えば、天然のジンクフィンガーまたはTALEタンパク質の認識ヘリックス領域を操作すること(1つ以上のアミノ酸を変化させること)を介して、所定のヌクレオチド配列に結合するように「操作」できる。操作したDNA結合タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、天然に存在しないタンパク質である。合理的な設計基準には、置換規則の適用、ならびに既存のZFP及び/またはTALEの設計及び結合データの情報を格納しているデータベース内の情報を処理するためのコンピュータアルゴリズムが含まれる。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号及び同第6,534,261を参照されたい。WO98/53058、WO98/53059、WO98/53060、WO02/016536及びWO03/016496、ならびに米国特許出願公開第20110301073号も参照されたい。
【0621】
いくつかの実施形態では、その部位特異的な結合ドメインは、DNAに配列特異的に結合する1つ以上のジンクフィンガータンパク質(ZFP)またはそのドメインを含む。ZFPまたはそのドメインは、その構造が亜鉛イオンの配位により安定化している結合ドメイン内のアミノ酸配列領域である1つ以上のジンクフィンガーを通じて、DNAに配列特異的に結合するタンパク質またはさらに大きいタンパク質内のドメインである。
【0622】
ZFPの中には、典型的には9~18ヌクレオチド長の特異的DNA配列を標的とする人工ZFPドメインがあり、このドメインは、個々のフィンガーをアセンブルすることによって生成する。ZFPには、1つのフィンガードメインが、およそ30アミノ酸長であるとともに、その1つのフィンガードメインに、不変のヒスチジン残基を2つ含むαヘリックスが、亜鉛を通じて、1つのβターンの2つのシステインと配位結合したものが含まれるZFPであって、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのフィンガーを有するZFPが含まれる。概して、ZFPの配列特異性は、ジンクフィンガーの認識ヘリックス上の4つのヘリックス位置(-1、2、3及び6)でアミノ酸置換を行うことによって変化させてよい。すなわち、いくつかの実施形態では、ZFPまたはZFPを含む分子は、天然には存在せず、例えば、所定の標的部位に結合するように操作されている。例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135-141、Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313-340、Isalan et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656-660、Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632-637、Choo et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411-416、米国特許第6,453,242号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,503,717号、同第6,689,558号、同第7,030,215号、同第6,794,136号、同第7,067,317号、同第7,262,054号、同第7,070,934号、同第7,361,635号、同第7,253,273号、及び米国特許出願公開第2005/0064474号、同第2007/0218528号、同第2005/0267061号(これらのいずれの内容も、参照により、その全体が本明細書に援用される)を参照されたい。
【0623】
遺伝子特異的な操作ジンクフィンガーの多くは、市販されている。例えば、Sangamo Biosciences(Richmond,CA,USA)は、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO,USA)と協力して、ジンクフィンガー構築用のプラットフォーム(CompoZr)を開発して、研究者が、ジンクフィンガーの構築及び検証を完全に省略できるようにしたとともに、何千ものタンパク質に対して特異的にターゲティングするジンクフィンガーを提供している(Gaj et al.,Trends in Biotechnology,2013,31(7),397-405)。いくつかの実施形態では、市販のジンクフィンガーを使用するか、またはカスタム設計する。
【0624】
いくつかの実施形態では、その部位特異的な結合ドメインは、天然または操作済み(非天然)の転写活性化因子様タンパク質(TAL)DNA結合ドメイン、例えば、転写活性化因子様タンパク質エフェクター(TALE)タンパク質内のドメイン含む。例えば、米国特許出願公開第20110301073号(その内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される)を参照されたい。
【0625】
いくつかの実施形態では、その部位特異的な結合ドメインは、CRISPR/Casシステムに由来する。概して、「CRISPRシステム」は、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNAもしくは活性部分tracrRNA)、tracrメイト配列(「ダイレクトリピート」及び内在性CRISPRシステムの関連では、tracrRNAによりプロセシングされた部分的ダイレクトリピートを含む)、ガイド配列(内在性CRISPRシステムの関連での「スペーサー」もしくは「ターゲティング配列」ともいう)、及び/またはCRISPR座位の他の配列及び転写産物を含め、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与するか、またはCRISPR関連(「Cas」)遺伝子の活性を導く転写産物及び他のエレメントを合わせて指す。
【0626】
概して、ガイド配列には、標的配列とハイブリダイズして、CRISPR複合体の標的配列への配列特異的な結合を導くために、標的ポリヌクレオチド配列との十分な相補性を有するポリヌクレオチド配列を含むターゲティングドメインが含まれる。いくつかの実施形態では、ガイド配列と、その対応する標的配列との相補性の程度は、適切なアライメントアルゴリズムを用いて最適にアライメントしたときに、約50%以上、約60%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約97.5%以上、約99%以上またはこれを超える値である。いくつかの例では、gRNAのターゲティングドメインは、標的核酸上の標的配列と相補的であり、例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%相補的であり、例えば、完全に相補的である。
【0627】
いくつかの実施形態では、そのgRNAは、本明細書に記載されているようないずれかであってよい。特定の実施形態では、そのgRNAは、CD47の標的部位と相補的であるターゲティング配列、例えば、配列番号200784~231885(WO2016183041の表29、付録22)のいずれか1つに示されている配列、HLA-Eの標的部位と相補的であるターゲティング配列、例えば、配列番号189859~193183(WO2016183041の表19、付録12)のいずれか1つに示されている配列、HLA-Fの標的部位と相補的であるターゲティング配列、例えば、配列番号688808~699754(WO2016183041の表45、付録38)のいずれか1つに示されている配列、HLA-Gの標的部位と相補的であるターゲティング配列、例えば、配列番号188372~189858(WO2016183041の表18、付録11)のいずれか1つに示されている配列、またはPD-L1の標的部位と相補的であるターゲティング配列、例えば、配列番号193184~200783(WO2016183041の表21、付録14)のいずれか1つに示されている配列を有する。
【0628】
いくつかの実施形態では、その標的部位は、標的遺伝子の転写開始部位の上流にある。いくつかの実施形態では、その標的部位は、その遺伝子の転写開始部位に隣接している。いくつかの実施形態では、その標的部位は、その遺伝子の転写開始部位の下流のRNAポリメラーゼ休止部位に隣接している。
【0629】
いくつかの実施形態では、そのターゲティングドメインは、転写開始、1つ以上の転写エンハンサーもしくは転写活性化因子、及び/またはRNAポリメラーゼの結合を促進するための、標的遺伝子のプロモーター領域を標的とするように構成されている。1つ以上のgRNAを用いて、その遺伝子のプロモーター領域を標的とすることができる。いくつかの実施形態では、その遺伝子の領域の1つ以上を標的とすることができる。ある特定の態様では、その標的部位は、その遺伝子の転写開始部位(TSS)のいずれかの側から600塩基対以内にある。
【0630】
エクソン配列、ならびにプロモーター及び活性化因子を含む調節領域の配列を含め、遺伝子を標的とする配列であるか、またはその配列を含むgRNA配列を設計または特定することは、当業者の技能レベルの範囲内である。CRISPRゲノム編集のためのゲノムワイドのgRNAデータベースは、公的に入手可能であり、このデータベースは、ヒトゲノムまたはマウスゲノム内の遺伝子の構成的エクソンにおける例示的なシングルガイドRNA(sgRNA)標的配列を含む(例えば、genescript.com/gRNA-database.htmlを参照されたい。Sanjana et al.(2014)Nat.Methods,11:783-4、www.e-crisp.org/E-CRISP/、crispr.mit.edu/も参照されたい)。いくつかの実施形態では、そのgRNA配列は、非標的遺伝子へのオフターゲット結合が最小限である配列であるか、またはその配列を含む。
【0631】
いくつかの実施形態では、その調節因子は、機能ドメイン、例えば転写活性化因子をさらに含む。
【0632】
いくつかの実施形態では、その転写活性化因子は、1つ以上の調節エレメント、例えば、標的遺伝子の1つ以上の転写制御エレメントであるか、またはそのエレメントを含み、それによって、上に示されているような部位特異的ドメインが認識されて、当該遺伝子の発現を駆動させる。いくつかの実施形態では、その転写活性化因子は、標的遺伝子の発現を駆動する。いくつかの事例では、その転写活性化因子は、異種のトランス活性化ドメインの全部または一部であるか、またはその全部または一部を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、その転写活性化因子は、単純ヘルペス由来トランス活性化ドメイン、Dnmt3aメチルトランスフェラーゼドメイン、p65、VP16及びVP64から選択されている。
【0633】
いくつかの実施形態では、その調節因子は、ジンクフィンガー転写因子(ZF-TF)である。いくつかの実施形態では、その調節因子は、VP64-p65-Rta(VPR)である。
【0634】
ある特定の実施形態では、その調節因子は、転写調節ドメインをさらに含む。一般的なドメインとしては、例えば、転写因子ドメイン(活性化因子、抑制因子、共活性化因子、共抑制因子)、サイレンサー、がん遺伝子(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb及びmosのファミリーメンバー)、DNA修復酵素ならびにそれらの関連因子及び修飾因子、DNA再構成酵素ならびにそれらの関連因子及び修飾因子、クロマチン関連タンパク質ならびにそれらの修飾因子(例えば、キナーゼ、アセチラーゼ及びデアセチラーゼ)、ならびにDNA修飾酵素(例えば、DNMTファミリーのメンバーなどのメチルトランスフェラーゼ(例えば、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B及びDNMT3L、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)ならびにそれらの関連因子及び修飾因子が挙げられる。例えば、米国特許出願公開第2013/0253040号(その内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される)を参照されたい。
【0635】
活性化させるための適切なドメインとしては、HSV VP16活性化ドメイン(例えば、Hagmann et al,J.Virol.71,5952-5962(1 97)を参照されたい)、核ホルモン受容体(例えば、Torchia et al.,Curr.Opin.Cell.Biol.10:373-383(1998)を参照されたい)、核因子κBのp65サブユニット(Bitko & Bank,J.Virol.72:5610-5618(1998)及びDoyle & Hunt,Neuroreport 8:2937-2942(1997))、Liu et al.,Cancer Gene Ther.5:3-28(1998))、またはVP64などの人工キメラの機能的ドメイン(Beerli et al.,(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:14623-33)、及びデグロン(Molinari et al.,(1999)EMBO J.18,6439-6447)が挙げられる。追加の例示的な活性化ドメインとしては、Oct1、Oct-2A、Spl、AP-2及びCTF1(Seipel et al,EMBOJ.11,4961-4968(1992))、ならびにp300、CBP、PCAF、SRC1 PvALF、AtHD2A及びERF-2が挙げられる。例えば、Robyr et al,(2000)Mol.Endocrinol.14:329-347、Collingwood et al,(1999)J.Mol.Endocrinol 23:255-275、Leo et al,(2000)Gene 245:1-11、Manteuffel-Cymborowska(1999)Acta Biochim.Pol.46:77-89、McKenna et al,(1999)J.Steroid Biochem.Mol.Biol.69:3-12、Malik et al,(2000)Trends Biochem.Sci.25:277-283及びLemon et al,(1999)Curr.Opin.Genet.Dev.9:499-504を参照されたい。追加の例示的な活性化ドメインとしては、OsGAI、HALF-1、Cl、AP1、ARF-5、ARF-6、ARF-1、ARF-8、CPRF1、CPRF4、MYC-RP/GP及びTRAB1が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Ogawa et al,(2000)Gene 245:21-29、Okanami et al,(1996)Gene Cells 1:87-99、Goff et al,(1991)Genes Dev.5:298-309、Cho et al,(1999)Plant Mol Biol 40:419-429、Ulmason et al,(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:5844-5849、Sprenger-Haussels et al,(2000)Plant J.22:1-8、Gong et al,(1999)Plant Mol.Biol.41:33-44及びHobo et al.,(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:15,348-15,353を参照されたい。
【0636】
遺伝子抑制因子を作製するのに使用できる例示的な抑制ドメインとしては、KRAB A/B、KOX、TGF-β誘導性初期遺伝子(TIEG)、v-erbA、SID、MBD2、MBD3、DNMTファミリーのメンバー(例えば、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B及びDNMT3L)、Rb、ならびにMeCP2が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Bird et al,(1999)Cell 99:451-454、Tyler et al,(1999)Cell 99:443-446、Knoepfler et al,(1999)Cell 99:447-450及びRobertson et al,(2000)Nature Genet.25:338-342を参照されたい。追加の例示的な抑制ドメインとしては、ROM2及びAtHD2Aが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Chem et al,(1996)Plant Cell 8:305-321及びWu et al,(2000)Plant J.22:19-27を参照されたい。
【0637】
いくつかの事例では、そのドメインは、染色体のエピジェネティックな調節に関与する。いくつかの実施形態では、そのドメインは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)、例えば核局在性のA型、例えば、MYSTファミリーメンバーのMOZ、Ybf2/Sas3、MOF及びTip60、GNATファミリーメンバーのGcn5またはpCAF、p300ファミリーメンバーのCBP、p300またはRttl09である(Bemdsen and Denu(2008)Curr Opin Struct Biol 18(6):682-689)。他の事例では、そのドメインは、ヒストンデアセチラーゼ(HD AC)、例えば、クラスI(HDAC-l、HDAC-2、HDAC-3及びHDAC-8)、クラスII分子(HDAC IIA(HDAC-4、HDAC-5、HDAC-7及びHDAC-9)、HD AC IIB(HDAC6及びHDAC10))、クラスIV(HDAC-l1)、クラスIII(サーチュイン(SIRT)としても知られる。SIRT1~7)である(Mottamal et al.,(2015)Molecules 20(3):3898-394lを参照されたい)。いくつかの実施形態で用いられている別のドメインは、ヒストンホスホリラーゼまたはヒストンキナーゼであり、その例としては、MSK1、MSK2、ATR、ATM、DNA-PK、Bubl、VprBP、IKK-a、PKCpi、Dik/Zip、JAK2、PKC5、WSTF及びCK2が挙げられる。いくつかの実施形態では、メチル化ドメインが用いられており、そのドメインは、Ezh2、PRMT1/6、PRMT5/7、PRMT 2/6、CARM1、set7/9、MLL、ALL-1、Suv 39h、G9a、SETDB1、Ezh2、Set2、Dotl、PRMT 1/6、PRMT 5/7、PR-Set7及びSuv4-20hなどの群から選択されていてよい。いくつかの実施形態では、SUMO化及びビオチン化に関与するドメイン(Lys9、Lys13、Lys4、Lys18及びLys12)も用いられていてもよい(Kousarides(2007)Cell 128:693-705を参照されたい)。
【0638】
融合分子は、当業者に周知であるクローニング法及び生化学的コンジュゲーション法によって構築する。融合分子は、DNA結合ドメイン及び機能ドメイン(例えば、転写活性化ドメインまたは転写抑制ドメイン)を含む。融合分子は、核局在化シグナル(例えば、SV40中型T抗原に由来するシグナルなど)、ならびにエピトープタグ(例えば、FLAG及びヘマグルチニンなど)も任意に含む。融合タンパク質(及びそのタンパク質をコードする核酸)は、翻訳リーディングフレームが、その融合体の構成要素の間で保存されるように設計する。
【0639】
一方では、機能ドメイン(またはその機能的断片)のポリペプチド構成要素と、他方では、非タンパク質のDNA結合ドメイン(例えば、抗生物質、インターカレーター、マイナーグルーブバインダー、核酸)との融合体は、当業者に知られている生化学的コンジュゲーション法によって構築する。例えば、Pierce Chemical Company(Rockford,IL)Catalogueを参照されたい。マイナーグルーブバインダーとポリペプチドとの融合体を作製する方法及び組成物は、Mapp et al,(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:3930-3935に記載されている。同様に、ポリペプチド構成要素である機能ドメインと連携するsgRNA核酸構成要素を含むCRISPR/Cas TF及びCRISPR/Casヌクレアーゼも、当業者に知られているとともに、本明細書に詳述されている。
【0640】
B.外因性ポリペプチド
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの発現増加(例えば過剰発現)は、過剰発現させるポリヌクレオチドをコードする外因性ポリヌクレオチドをその細胞内に導入することによって媒介する。いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドは、組み換え核酸である。周知の組み換え技法を用いて、本明細書に概説されているような組み換え核酸を生成できる。
【0641】
ある特定の実施形態では、外因性ポリヌクレオチド、例えば、寛容原性因子またはキメラ抗原受容体をコードする組み換え核酸は、発現コンストラクト内で、1つ以上の調節ヌクレオチド配列に機能可能に連結してよい。調節ヌクレオチド配列は概して、治療する宿主細胞及びレシピエント対象に適するものとなる。適切な発現ベクター及び適切な調節配列は、数多くの種類が、様々な宿主細胞用として当該技術分野で知られている。典型的には、その1つ以上の調節ヌクレオチド配列としては、プロモーター配列、リーダー配列、シグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始配列、転写終結配列、翻訳開始配列、翻訳終結配列、及びエンハンサー配列または活性化因子配列を挙げてよいが、これらに限定されない。当該技術分野で知られているような構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターも想定されている。そのプロモーターは、天然のプロモーター、または2つ以上のプロモーターのエレメントが組み合わされているハイブリッドプロモーターのいずれかであってよい。発現コンストラクトは、細胞内で、プラスミドのようなエピソーム上に存在してもよいし、またはその発現コンストラクトは、染色体内に挿入されていてもよい。具体的な実施形態では、その発現ベクターは、トランスフォーメーションされた宿主細胞の選択を可能にするために、選択可能なマーカー遺伝子を含む。ある特定の実施形態は、少なくとも1つの調節配列に機能可能に連結されたバリアントポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを含む。本発明で使用するための調節配列としては、プロモーター、エンハンサー、及びその他の発現制御エレメントが挙げられる。ある特定の実施形態では、発現ベクターは、トランスフォーメーションする宿主細胞、発現するのが望ましい特定のバリアントポリペプチド、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、及び/またはそのベクターによってコードされるいずれかの他のタンパク質、例えば抗生物質マーカーの発現の選定に合わせて設計されている。
【0642】
いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドは、その外因性ポリヌクレオチドがその操作細胞内で発現するように、プロモーターに機能可能に連結されている。適切な哺乳動物プロモーターの例としては、例えば、伸長因子1α(EF1α)プロモーター、ハムスターのユビキチン/S27aプロモーター(WO97/15664)、サル空胞形成ウイルス40(SV40)初期プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、マウスメタロチオネイン-Iプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)の長鎖末端反復配列領域、マウス乳癌ウイルスプロモーター(MMTV)、モロニーマウス白血病ウイルス長鎖末端反復配列領域、及びヒトサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモーターという遺伝子に由来するプロモーターが挙げられる。他の異種の哺乳動物プロモーターの例は、アクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーターまたはヒートショックプロモーター(複数可)である。追加の実施形態では、哺乳動物宿主細胞で用いるためのプロモーターは、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(1989年7月5日に公開されたUK2,211,504)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得ることができる。さらなる実施形態では、異種の哺乳動物プロモーターを使用する。例としては、アクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター及びヒートショックプロモーターが挙げられる。SV40の初期プロモーター及び後期プロモーターは利便的にも、SV40ウイルスの複製起点も含むSV40制限断片として得られる(Fiers et al,Nature 273:113-120(1978))。ヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモーターは利便的にも、HindIII制限酵素断片として得られる(Greenaway et al,Gene 18:355-360(1982))。上記の参照文献は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0643】
いくつかの実施形態では、その発現ベクターは、バイシストロニックまたはマルチシストロニックな発現ベクターである。バイシストロニックまたはマルチシストロニックな発現ベクターは、(1)オープンリーディングフレームのそれぞれに融合された複数のプロモーター、(2)遺伝子間へのスプライシングシグナルの挿入、(3)その発現が1つのプロモーターによって駆動される遺伝子の融合、及び(4)遺伝子間へのタンパク質切断部位の挿入(自己切断ペプチド)、または遺伝子間への内部リボソーム進入部位(IRES)の挿入を含んでよい。いくつかの事例では、外因性ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載の寛容原性因子または補体抑制因子をコードする外因性ポリヌクレオチド)は、マルチシストロニックな導入遺伝子によってコードされる外因性ポリペプチドのN末端またはC末端で、切断可能なペプチドまたはリボソームスキップエレメント、例えばT2Aをコードする。
【0644】
いくつかの実施形態では、本発明の発現ベクターまたは発現コンストラクトは、マルチシストロニックなコンストラクトである。「マルチシストロニックなコンストラクト」及び「マルチシストロニックなベクター」という用語は、本明細書では同義的に用いられており、1つのmRNA分子に転写される組み換えDNAコンストラクトであって、その1つのmRNA分子が、2つ以上の遺伝子(例えば、2つ以上の導入遺伝子)をコードする組み換えDNAコンストラクトを指す。マルチシストロニックなコンストラクトは、2つの遺伝子をコードする場合には、バイシストロニックなコンストラクトといい、3つの遺伝子をコードする場合には、トリシストロニックなコンストラクトといい、4つの遺伝子をコードする場合には、クアドロシストロニックなコンストラクトというなどである。
【0645】
いくつかの実施形態では、ベクターまたはコンストラクトに含まれる2つ以上の外因性ポリヌクレオチド(例えば導入遺伝子)はそれぞれ、マルチシストロニックな分離エレメントによって隔てられている。いくつかの実施形態では、そのマルチシストロニックな分離エレメントは、IRES、または切断可能なペプチドもしくはリボソームスキップエレメントをコードする配列である。いくつかの実施形態では、そのマルチシストロニックな分離エレメントは、IRES、例えば脳心筋炎(EMCV)ウイルスIRESである。いくつかの実施形態では、そのマルチシストロニックな分離エレメントは、切断可能なペプチド、例えば2Aペプチドである。例示的な2Aペプチドとしては、P2Aペプチド、T2Aペプチド、E2Aペプチド及びF2Aペプチドが挙げられる。いくつかの実施形態では、その切断可能なペプチドは、T2Aである。いくつかの実施形態では、その2つ以上の外因性ポリヌクレオチド(例えば、第1の外因性ポリヌクレオチド及び第2の外因性ポリヌクレオチド)は、プロモーターに機能可能に連結されている。いくつかの実施形態では、その第1の外因性ポリヌクレオチド及び第2の外因性ポリヌクレオチドはそれぞれ、プロモーターに機能可能に連結されている。いくつかの実施形態では、そのプロモーターは、同じプロモーターである。いくつかの実施形態では、そのプロモーターは、EF1プロモーターである。
【0646】
いくつかの事例では、外因性ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載の寛容原性因子または補体抑制因子をコードする外因性ポリヌクレオチド)は、マルチシストロニックなベクターによってコードされる外因性ポリペプチドのN末端またはC末端で、切断可能なペプチドまたはリボソームスキップエレメント、例えばT2Aをコードする。いくつかの実施形態では、その切断可能なペプチドまたはリボソームスキップエレメントを含めることにより、1つの翻訳開始部位から、2つ以上のポリペプチドが発現可能になる。いくつかの実施形態では、その切断可能なペプチドは、T2Aである。いくつかの実施形態では、そのT2Aは、配列番号15によって示されているアミノ酸配列であるか、またはそのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、そのT2Aは、配列番号16によって示されているアミノ酸配列であるか、またはそのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、そのT2Aは、配列番号21によって示されているアミノ酸配列であるか、またはそのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、そのT2Aは、配列番号22によって示されているアミノ酸配列であるか、またはそのアミノ酸配列を含む。
【0647】
いくつかの実施形態では、そのベクターまたはコンストラクトは、外因性ポリヌクレオチドの1つ以上の転写ユニットの発現を駆動する1つのプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、このようなベクターまたはコンストラクトは、マルチシストロニックであることができる(バイシストロニックまたはトリシストロニックであることができる。例えば、米国特許第6,060,273号を参照されたい)。例えば、いくつかの実施形態では、転写ユニットは、IRES(内部リボソーム進入部位)を含むバイシストロニックなユニットとして操作でき、これにより、1つのプロモーターから転写されたRNAから、遺伝子産物(例えば、CD47などの1つ以上の寛容原性因子)の共発現が可能になる。いくつかの実施形態では、本発明で提供するベクターまたはコンストラクトは、バイシストロニックであり、そのベクターまたはコンストラクトが、2つの別個のポリペプチドを発現できるようになっている。いくつかの事例では、そのベクターまたはコンストラクトによってコードされる2つの別個のポリペプチドは、寛容原性因子(例えば、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF及びH2-M3から選択した2つの因子(これらの組み合わせのいずれかを含む))である。いくつかの実施形態では、その寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8(これらの組み合わせのいずれかを含む)の2つ以上である。いくつかの実施形態では、そのベクターまたはコンストラクトによってコードされる2つの別個のポリペプチドは、寛容原性因子(例えばCD47)である。いくつかの実施形態では、本発明で提供するベクターまたはコンストラクトは、トリシストロニックであり、そのベクターまたはコンストラクトが、3つの別個のポリペプチドを発現できるようになっている。いくつかの事例では、そのトリシストロニックなベクターまたはコンストラクトの3つの核酸配列は、CD47などの寛容原性因子である。いくつかの事例では、そのトリシストロニックなベクターまたはコンストラクトの3つの核酸配列は、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF及びH2-M3(これらの組み合わせのいずれかを含む)から選択した3つの寛容原性因子である。いくつかの実施形態では、その3つの寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8(これらの組み合わせのいずれかを含む)から選択されている。いくつかの実施形態では、本発明で提供するベクターまたはコンストラクトは、クアドロシストロニックであり、そのベクターまたはコンストラクトが、4つの別個のポリペプチドを発現できるようになっている。いくつかの事例では、そのクアドロシストロニックなベクターまたはコンストラクトの4つの別個のポリペプチドは、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF及びH2-M3(これらの組み合わせのいずれかを含む)から選択した4つの寛容原性因子である。いくつかの実施形態では、その4つの寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8(これらの組み合わせのいずれかを含む)から選択されている。いくつかの実施形態では、その細胞は、1つ以上のベクターまたはコンストラクトを含み、そのそれぞれのベクターまたはコンストラクトは、上記のようなモノシストロニックまたはマルチシストロニックなコンストラクトであり、そのモノシストロニックまたはマルチシストロニックなコンストラクトは、1つ以上の寛容原性因子をいずれかの組み合わせまたは順序でコードする。
【0648】
いくつかの実施形態では、自己切断ペプチド(例えば2A配列)またはプロテアーゼ認識部位(例えばフューリン)をコードする配列によって互いに隔てられた2つ、3つまたは4つの遺伝子を1つのオープンリーディングフレーム(ORF)に含む(例えば、寛容原性因子(例えばCD47)をコードする)RNAの発現を、1つのプロモーターが誘導する。すなわち、ORFは、1つのポリペプチドをコードし、翻訳中(2Aの場合)または翻訳後のいずれかに、個別のタンパク質にプロセシングされる。いくつかの事例では、そのペプチド、例えばT2Aは、リボソームに、2AエレメントのC末端でのペプチド結合の合成をスキップさせ(リボソームスキッピング)、その2A配列の末端と次の下流のペプチドとを分離させることができる(例えば、de Felipe.Genetic Vaccines and Ther.2:13(2004)及びdeFelipe et al.Traffic 5:616-626(2004)を参照されたい)。数多くの2Aエレメントが当該技術分野で知られている。本明細書に開示されている方法及び核酸で使用できる2A配列の例としては、米国特許出願公開第20070116690号に記載されているように、口蹄疫ウイルス由来の2A配列(F2A、例えば配列番号20)、ウマ鼻炎Aウイルス由来の2A配列(E2A、例えば配列番号19)、thosea asignaウイルス由来の2A配列(T2A、例えば、配列番号15、16、21または22)、及びブタテシオウイルス-1由来の2A配列(P2A、例えば、配列番号63または64)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0649】
そのベクターまたはコンストラクト(例えば導入遺伝子)が、タンパク質をコードする2つ以上の核酸配列、例えば、CD47をコードする第1の外因性ポリヌクレオチド、及び第2の導入遺伝子をコードする第2の外因性ポリヌクレオチドを含む場合には、そのベクターまたはコンストラクト(例えば導入遺伝子)は、あるペプチドをコードする核酸配列を、第1の外因性ポリヌクレオチド配列と第2の外因性ポリヌクレオチド配列の間にさらに含んでもよい。いくつかの事例では、第1の外因性ポリヌクレオチドと第2の外因性ポリヌクレオチドの間に位置する核酸配列は、翻訳中または翻訳後に、第1の外因性ポリヌクレオチド及び第2の外因性ポリヌクレオチドの翻訳産物を分離するペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、そのペプチドは、自己切断ペプチド、またはリボソームスキッピングを引き起こすペプチド(リボソームスキップエレメント)、例えばT2Aペプチドを含む。いくつかの実施形態では、その切断可能なペプチドまたはリボソームスキップエレメントを含めることにより、1つの翻訳開始部位から、2つ以上のポリペプチドが発現可能になる。いくつかの実施形態では、そのペプチドは、T2Aペプチドである自己切断ペプチドである。いくつかの実施形態では、そのT2Aは、配列番号15によって示されているアミノ酸配列であるか、またはそのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、そのT2Aは、配列番号16によって示されているアミノ酸配列であるか、またはそのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、そのT2Aは、配列番号21によって示されているアミノ酸配列であるか、またはそのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、そのT2Aは、配列番号22によって示されているアミノ酸配列であるか、またはそのアミノ酸配列を含む。
【0650】
本明細書に記載のポリヌクレオチドを細胞内に導入するプロセスは、いずれかの適切な技法によって行うことができる。適切な技法としては、リン酸カルシウムまたは脂質の媒介によるトランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスポザーゼの媒介による送達、及びトランスダクション、またはウイルスベクターを用いた感染が挙げられる。いくつかの実施形態では、そのポリヌクレオチドは、ウイルストランスダクション(例えばレンチウイルストランスダクション)を介して細胞内に導入するか、またはウイルスベクターで別段に送達する(例えば、フソゲンの媒介による送達)。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドをパッケージングするベクターを用いて、そのパッケージングされたポリヌクレオチドを細胞または細胞集団に送達してよい。これらのベクターは、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、ウイルスベクター及び粒子を含むいずれかの種類のものであってよい。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子を用いて、外因性ポリヌクレオチドを細胞に送達できる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターを用いて、外因性ポリヌクレオチドを細胞に送達できる。ウイルスベクター技術は、周知であり、Sambrookらの文献(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)に記載されている。ベクターとして有用であるウイルスとしては、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、腫瘍溶解性ウイルスなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドのその細胞内への導入は、特異的導入(標的導入)であることもできるし、または非特異的導入(例えば非標的導入)であることもできる。いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドをその細胞内に導入することにより、その細胞のゲノムに組み込むか、または挿入することができる。別の実施形態では、導入したその外因性ポリヌクレオチドは、その細胞に組み込まれず、すなわち、その細胞でエピソーマルな状態であってよい。当業者は、本明細書に記載の例示的な方法のいずれかを含め、核酸導入遺伝子を細胞に導入する方法に精通しており、適切な方法を選択できる。
【0651】
1)非標的送達
いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、様々な非標的法のいずれかによって、細胞(例えば供給源細胞)内に導入する。いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドは、宿主細胞のランダムなゲノム遺伝子座に挿入する。当業者には知られているように、一般的に、例えば、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターを含むウイルスベクターを用いて、遺伝物質を宿主細胞に送達するとともに、その外来遺伝子または外因性遺伝子を宿主細胞ゲノムにランダムに挿入して、その遺伝子の安定な発現及び複製を促す。いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドのその細胞への非標的導入は、その外因性ポリヌクレオチドをその細胞内で安定に発現させるための条件下にある。いくつかの実施形態では、細胞内で安定に発現するように核酸を導入する方法は、その核酸をその細胞のゲノム内に安定的に組み込ませて、その核酸が組み込まれた細胞が分裂すると、その核酸が増殖できるようにするいずれかの方法を伴う。
【0652】
いくつかの実施形態では、そのウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。レンチウイルスベクターは、ウイルストランスダクションを成功させるために特に有用な手段である。レンチウイルスベクターは、送達された核酸の転写産物に含まれる遺伝子の安定な発現を可能にするからである。レンチウイルスベクターは、送達された核酸の転写産物に含まれる遺伝子の安定な発現に必要な2つの酵素である逆転写酵素及びインテグラーゼを発現する。逆転写酵素は、RNA転写産物をDNAに変換する一方で、インテグラーゼは、そのDNAを標的細胞のゲノムに挿入し、組み込む。そのDNAがそのゲノムに安定的に組み込まれると、そのDNAは、宿主とともに分裂する。組み込まれたDNAに含まれる目的の遺伝子は、構成的に発現してもよいし、または誘導性であってもよい。その宿主細胞ゲノムの一部として、その遺伝子は、標的細胞内の因子の宿主に応じて、活性化または抑制を含め、細胞の調節を受けることがある。
【0653】
レンチウイルスは、レトロウイルス科ファミリーのウイルスのサブクループであり、ウイルスRNAゲノムがDNAに逆転写されてから、宿主ゲノムに組み込まれる必要があることから名付けられた。したがって、レンチウイルスビヒクル/レンチウイルス粒子の最も重要な特徴は、その遺伝物質が標的細胞/宿主細胞のゲノムに組み込まれることである。レンチウイルスのいくつかの例としては、ヒト免疫不全ウイルス、すなわちHIV-1及びHIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ジェンブラナ病ウイルス(JDV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ウマ伝染性貧血ウイルス、マエディ・ビスナ及びヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)が挙げられる。
【0654】
典型的には、その遺伝子送達ビヒクルを構成するレンチウイルス粒子は、それ自体、複製能欠損性である(「自己不活性化性」ともいう)。レンチウイルスは、インタクトな宿主核膜を通る進入機構のおかげで、分裂細胞及び非分裂細胞の両方に感染することができる(Naldini L et al.,Curr.Opin.Bioiecknol,1998,9:457-463)。組み換えレンチウイルスのビヒクル/粒子は、HIVの病原性遺伝子を複数減弱することによって生成されており、例えば、Env、Vif、Vpr、Vpu、Nef及びTatの遺伝子を欠失させて、そのベクターを生物学的に安全なものとする。それに応じて、レンチウイルスビヒクル、例えば、HIV-1/HIV-2に由来するビヒクルは、導入遺伝子の非分裂細胞への効率的な送達、組み込み及び長期発現を媒介できる。
【0655】
レンチウイルス粒子は、ヒトHEK293T細胞のようなプロデューサー細胞内で、ウイルスパッケージングエレメント及びベクターゲノム自体を共発現させることによって生成してよい。これらのエレメントは通常、3つの別々のプラスミド(第2世代レンチウイルスシステムの場合)または4つの別々のプラスミド(第3世代レンチウイルスシステムの場合)に供給する。そのプロデューサー細胞には、ウイルスのコア(すなわち構造タンパク質)及び酵素成分、ならびにエンベロープタンパク質(複数可)(パッケージングシステムという)を含むレンチウイルス成分をコードするプラスミド、ならびに標的細胞に移入する外来導入遺伝子、すなわちビヒクル自体を含むゲノムをコードするプラスミド(トランスファーベクターともいう)をコトランスフェクションする。概して、そのプラスミドまたはベクターは、プロデューサー細胞株に含める。そのプラスミド/ベクターは、トランスフェクション、トランスダクションまたは感染を介して、プロデューサー細胞株に導入する。トランスフェクション方法、トランスダクション方法または感染方法は、当業者には周知である。非限定的な例として、パッケージングコンストラクト及びトランスファーコンストラクトは、概して優性選択マーカー、例えば、ネオマイシン(neo)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、グルタミンシンテターゼまたはアデノシンデアミナーゼ(ADA)と併せたリン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションの後に、適切な薬物の存在下で選択して、クローンを単離することによって、プロデューサー細胞株に導入できる。
【0656】
そのプロデューサー細胞は、外来遺伝子、例えば、外因性ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドを含む組み換えウイルス粒子を産生する。その組み換えウイルス粒子を培養培地から回収し、当業者によって用いられている標準的な方法によって滴定する。その組み換えレンチウイルスビヒクルを用いて、標的細胞、例えば、セクションII.Cに記載のいずれかを含む供給源細胞を感染させることができる。
【0657】
高力価のレンチウイルス粒子を産生させるのに用いることができる細胞としては、HEK293T細胞、293G細胞、STAR細胞(Relander et al.,Mol Ther.2005,11:452-459)、FreeStyle(商標)293発現システム(ThermoFisher,Waltham,MA)、及びHEK293Tベースの他のプロデューサー細胞株(例えば、Stewart et al.,Hum Gene Ther._2011,2,2.(3):357~369、Lee et al,Biotechnol Bioeng,2012,10996):1551-1560、Throm et al..Blood.2009,113(21):5104-5110)を挙げてよいが、これらに限定されない。
【0658】
レンチウイルス粒子内に供給される追加のエレメントは、5’末端または3’末端のいずれかのレトロウイルスLTR(長鎖末端反復配列)、レトロウイルス輸送エレメント、任意に、レンチウイルス逆転写応答エレメント(RRE)、そのプロモーターまたは活性部分、及び座位制御領域(LCR)またはその活性部分を含んでよい。他のエレメントとしては、非分裂細胞でのトランスダクション効率を改善させるためのセントラルポリプリントラクト(cPPT)配列、導入遺伝子の発現を増強するとともに、力価を向上させるウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE)が挙げられる。
【0659】
組み換えレンチウイルス粒子を生成する方法は、当業者に知られており、例えば、米国特許第8,846,385号、同第7,745,179号、同第7,629,153号、同第7,575,924号、同第7,179,903号及び同第6,808,905号である。使用するレンチウイルスベクターは、pLVX、pLenti、pLenti6、pLJMl、FUGW、pWPXL、pWPI、pLenti CMV puro DEST、pLJMl-EGFP、pULTRA、pInducer2Q、pHIV-EGFP、pCW57.1、pTRPE、pELPS、pRRL、及びpLionIIから選択してよいが、これらに限定されず、いずれかの既知のレンチウイルスビヒクルも用いてよい(米国特許第9,260,725号、同第9,068,199号、同第9,023,646号、同第8,900,858号、同第8,748,169号、同第8,709,799号、同第8,420,104号、同第8,329,462号、同第8,076,106号、同第6,013,516号、及び同第5,994,136号、国際公開第WO2012079000号を参照されたい)。
【0660】
いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチドをエピソーマルに送達させる方法によるなどして、その細胞内に、その細胞を一過性に発現させるための条件下で導入する。
【0661】
いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドは、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターにパッケージングしてよい。このようなベクターまたはウイルス粒子は、既知のセロタイプのカプシドまたはセロタイプのカプシドの組み合わせのいずれかを用いるように設計してよい。そのセロタイプのカプシドとしては、いずれかの特定されているAAVセロタイプ及びそのバリアント、例えば、AAV1、AAV2、AAV2G9、AAV3、AAV4、AAV4-4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12及びAAVrh10に由来するカプシドを挙げてよい。いくつかの実施形態では、そのAAVセロタイプは、米国特許出願公開第20030138772号、Pulicherla et al.Molecular Therapy,2011,19(6):1070-1078、米国特許第6,156,303号、同第7,198,951号、米国特許出願公開第2015/0159173号及び同第2014/0359799号、ならびに国際公開第WO1998/011244号、WO2005/033321号及びWO2014/14422号に記載されているような配列であるか、またはそれらの配列を有してよい。
【0662】
AAVベクターには、一本鎖ベクターのみではなく、自己相補的なAAVベクター(scAAV)も含まれる。scAAVベクターは、アニーリングし合って、二本鎖のベクターゲノムを形成するDNAを含む。scAAVは、第2の鎖の合成をスキップすることによって、細胞内での迅速な発現が可能になる。そのrAAVベクターは、昆虫細胞sf9内またはHEK293細胞などのヒト細胞の懸濁細胞培養液中でのトリプルトランスフェクションによるなど、当該技術分野における標準的な方法によって製造してよい。
【0663】
いくつかの実施形態では、非ウイルスベースの方法を用いてもよい。例えば、いくつかの態様では、そのポリヌクレオチドを含むベクターは、物理的な方法、例えば、ニードル、エレクトロポレーション、ソノポレーション、ハイドロポレーション、化学担体、例えば無機粒子(例えば、リン酸カルシウム、シリカ、金)、及び/または化学的方法による非ウイルス法によって、細胞に移入してもよい。別の態様では、カチオン性脂質、脂質ナノエマルジョン、ナノ粒子、ペプチドベースのベクターまたはポリマーベースのベクターなど、合成または天然の生分解性作用物質を送達に用いてよい。
【0664】
2)標的送達
本発明の外因性ポリヌクレオチドは、本発明の細胞の適切な標的ゲノム遺伝子座のいずれかに挿入できる。いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドは、標的座位への標的組み込みによって、その細胞内に導入する。いくつかの実施形態では、標的組み込みは、相同性依存型または相同性非依存型の組み換えを伴うプロセスで、1つ以上のヌクレアーゼ及び/またはニッカーゼ、ならびにドナーテンプレートを用いて、遺伝子編集によって行うことができる。
【0665】
例えば、相同配向型修復(HOR)、相同性媒介末端結合(HMEJ)、相同性非依存型の標的組み込み(HITI)、オブリゲートライゲーション依存性組み換え(ObliGaRe)、または標的染色体への高精度組み込み(PITCh)を含め、数多くの遺伝子編集方法を用いて、外因性ポリヌクレオチドを所定の特異的ゲノム遺伝子座に挿入できる。
【0666】
いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、ゲノム内の所望の位置(例えば標的部位)に、所定の二本鎖切断(DSB)を作り、その細胞の内在性の機構を利用して、誘導された切断を修復する。ニッカーゼは、ゲノム内の所望の位置に、所定の一本鎖切断を入れる。非限定的な一例では、2つのニッカーゼを用いて、標的DNAの対向鎖上に、2つの一本鎖切断を入れることができ、それによって、平滑末端または粘着末端を形成させる。いずれか適切なヌクレアーゼを細胞内に導入して、標的DNA配列のゲノム編集を誘導でき、そのヌクレアーゼとしては、CRISPR関連タンパク質(Cas)ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、その他のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼ、これらのバリアント、これらの断片、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、内在性のゲノム標的座位、例えばセーフハーバー座位の配列またはその近くの配列と相同的である相同配列(例えばホモロジーアーム)に挟まれた外因性ポリヌクレオチド配列(導入遺伝子ともいう)を含むドナーテンプレートとともに、ヌクレアーゼまたはニッカーゼを導入すると、DNA損傷修復経路により、その導入遺伝子配列をその細胞内の標的部位に組み込むことができる。これは、相同性依存型のプロセスによって行うことができる。いくつかの実施形態では、そのドナーテンプレートは、環状二本鎖プラスミドDNA、一本鎖ドナーオリゴヌクレオチド(ssODN)、直鎖二本鎖ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)断片またはインタクトな姉妹染色分体の相同配列である。そのドナーテンプレートの形態に応じて、所定のDNA修復経路、例えば、相同配向型修復(HDR)、合成依存的一本鎖アニーリング(SDSA)、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)及び相同性媒介末端結合(HMEJ)の経路を介して、相同性の媒介による遺伝子挿入及び遺伝子置換を行うことができる。
【0667】
例えば、DNA修復機構は、ヌクレアーゼによって、(i)2つのSSB(SSBは、それぞれの鎖上に存在する)によって、一本鎖オーバーハングを誘導するか、または(ii)両方の鎖で、同じ切断部位で生じたDSBによって、平滑末端切断を誘導するかした後に誘導できる。これらの作用物質の1つによって切断されたら、SSBまたはDSBを有する標的座位では、DNA損傷修復のための2つの主要経路、すなわち、(1)エラープローンな非相同末端結合(NHEJ)経路、または(2)忠実度の高い相同配向型修復(HDR)経路のうちの1つが行われる。いくつかの実施形態では、SSBまたはDSBが存在する細胞に導入したドナーテンプレート(例えば、環状プラスミドDNAまたは直鎖状DNA断片、例えばssODN)により、標的座位内にHDR及びドナーテンプレートの組み込みが行われることができる。概して、ドナーテンプレートの非存在下では、NHEJプロセスにより、切断されたDNA鎖の末端をが再度ライゲーションされ、その結果、その切断部位で、ヌクレオチドの欠失及び挿入が高頻度で行われる。
【0668】
いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドの細胞内への部位特異的挿入は、HDRベースのアプローチを通じて行ってよい。HDRは、細胞がDNA内の二本鎖切断(DSB)を修復する機構であり、クラスター化した規則的な配置の短い回文反復配列(CRISPR)/Casシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ及びトランスポザーゼを含む様々な遺伝子編集システムを利用する多くの生物において、HDRを用いて、ゲノムを改変できる。
【0669】
いくつかの実施形態では、その標的組み込みは、標的遺伝子の少なくとも1つの標的部位(複数可)配列にターゲティングされるように特異的に設計した1つ以上の配列特異的なヌクレアーゼ、すなわち標的化ヌクレアーゼ(DNAに結合する標的化ヌクレアーゼ及び遺伝子編集ヌクレアーゼ、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ならびにRNA誘導型ヌクレアーゼ、例えばCRISPR関連ヌクレアーゼ(Cas)システムを含む)を導入することによって行う。例示的なZFN、TALE及びTALENは、例えば、Lloyd et al.,Frontiers in Immunology,4(221):1-7(2013)に記載されている。特定の実施形態では、標的部位におけるか、または標的部位近くでの標的遺伝子破壊は、クラスター化した規則的な配置の短い回文反復配列(CRISPR)及びCRISPR関連(Cas)タンパク質を用いて行う。Sander and Joung,(2014)Nature Biotechnology,32(4):347-355を参照されたい。
【0670】
セクションII.A.1に記載されている遺伝子破壊用システムのいずれかを用いることができ、外因性ポリヌクレオチド、例えば導入遺伝子配列を有する適切なドナーテンプレートも導入するときには、そのシステムにより、遺伝子破壊の標的部位またはその標的部位の近くに、その外因性ポリヌクレオチドの標的組み込みを行うことができる。特定の実施形態では、遺伝子破壊は、1つ以上のガイドRNA(gRNA)及びCasタンパク質を含むCRISPR/Casシステムを用いて媒介する。例示的なCasタンパク質及びgRNAは、上記のセクションII.Aに記載されており、そのいずれかを用いて、そのCRISPR/Casシステムが特異的である標的座位に、HDRの媒介により、外因性ポリヌクレオチドを組み込むことができる。HDRによって、その外因性ポリヌクレオチドの切断及び組み込みを行うための特定の標的座位及び標的部位に応じるなどして、適切なCasヌクレアーゼ及びgRNAを選択することは、当業者の技能レベルの範囲内である。さらに、当業者は、下にさらに記載されているようにするなどして、標的座位に応じて、適切なドナーテンプレートを容易に調製できる。
【0671】
いくつかの実施形態では、そのDNA編集システムは、RNA誘導型のCRISPR/Casシステム(RNAベースのCRISPR/Casシステムなど)であり、そのCRISPR/Casシステムは、標的座位(例えばセーフハーバー座位)に二本鎖切断を入れて、その標的座位内に導入遺伝子の挿入を誘導することができる。いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼシステムは、CRISPR/Cas9システムである。いくつかの実施形態では、そのCRISPR/Cas9システムは、プラスミドベースのCas9を含む。いくつかの実施形態では、そのCRISPR/Cas9システムは、RNAベースのCas9を含む。いくつかの実施形態では、そのCRISPR/Cas9システムは、Cas9 mRNA及びgRNAを含む。いくつかの実施形態では、そのCRISPR/Cas9システムは、タンパク質/RNA複合体、プラスミド/RNA複合体またはタンパク質/プラスミド複合体を含む。いくつかの実施形態では、操作細胞を生成する方法であって、供給源細胞(例えば、初代細胞または多能性幹細胞、例えばiPSC)に、導入遺伝子または外因性ポリヌクレオチド配列を含むドナーテンプレート、ならびにDNAヌクレアーゼシステム(例えばCas9)及び座位特異的なgRNAを含むDNAヌクレアーゼシステムを導入することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、そのCas9は、mRNAとして導入する。いくつかの実施形態では、そのCas9は、gRNAとのリボ核タンパク質複合体として導入する。
【0672】
概して、挿入するドナーテンプレートは、目的の外因性ポリヌクレオチド(例えば、寛容原性因子またはCAR)を含む導入遺伝子カセットを少なくとも含むことになるとともに、任意に、プロモーターも含むことになる。これらの実施形態のうちのある特定のものでは、挿入する外因性ポリヌクレオチド及び/またはプロモーターを含む導入遺伝子カセットは、ドナーテンプレートにおいて、標的切断部位のすぐ上流及びすぐ下流の配列と相同的な配列を有するホモロジーアーム、すなわち、左ホモロジーアーム(LHA)及び右ホモロジーアーム(RHA)に挟まれることになる。典型的には、そのドナーテンプレートのホモロジーアームは、HDRの際のテンプレートとして働くように、標的ゲノム遺伝子座に特異的に設計されている。各ホモロジーアームの長さは概して、導入するインサートのサイズによって決まり、インサートが大きいほど、長いホモロジーアームが必要となる。
【0673】
いくつかの実施形態では、ドナーテンプレート(例えば組み換えドナー修復テンプレート)は、(i)外因性ポリヌクレオチド配列(例えば、プロモーター、例えば異種プロモーターに機能可能に連結された導入遺伝子)を含む導入遺伝子カセットと、(ii)その導入遺伝子カセットを挟み込むとともに、DNAヌクレアーゼ(例えば、Casヌクレアーゼ、例えばCas9またはCas12)の切断部位の両側で、標的座位(例えばセーフハーバー座位)の一部と相同である2本のホモロジーアームを含む。そのドナーテンプレートは、選択可能なマーカー、検出可能なマーカー及び/または精製マーカーをさらに含むことができる。
【0674】
いくつかの実施形態では、それらのホモロジーアームは、同じ長さである。別の実施形態では、それらのホモロジーアームは、異なる長さである。それらのホモロジーアームは、少なくとも約10塩基対(bp)、例えば、少なくとも約10bp、約15bp、約20bp、約25bp、約30bp、約35bp、約45bp、約55bp、約65bp、約75bp、約85bp、約95bp、約100bp、約150bp、約200bp、約250bp、約300bp、約350bp、約400bp、約450bp、約500bp、約550bp、約600bp、約650bp、約700bp、約750bp、約800bp、約850bp、約900bp、約950bp、約1000bp、約1.1キロベース(kb)、約1.2kb、約1.3kb、約1.4kb、約1.5kb、約1.6kb、約1.7kb、約1.8kb、約1.9kb、約2.0kb、約2,1kb、約2,2kb、約2,3kb、約2,4kb、約2,5kb、約2,6kb、約2.7kb、約2.8kb、約2.9kb、約3.0kb、約3.1kb、約3.2kb、約3.3kb、約3.4kb、約3.5kb、約3.6kb、約3.7kb、約3.8kb、約3.9kbまたは約4.0kb以上である。そのホモロジーアームは、約10bp~約4kb、例えば、約10bp~約20bp、約10bp~約50bp、約10bp~約100bp、約10bp~約200bp、約10bp~約500bp、約10bp~約1kb、約10bp~約2kb、約10bp~約4kb、約100bp~約200bp、約100bp~約500bp、約100bp~約1kb、約100bp~約2kb、約100bp~約4kb、約500bp~約1kb、約500bp~約2kb、約500bp~約4kb、約1kb~約2kb、約1kb~約2kb、約1kb~約4kbまたは約2kb~約4kbであることができる。
【0675】
いくつかの実施形態では、そのドナーテンプレートは、発現ベクターにクローニングできる。当業者に知られている従来のウイルスベース及び非ウイルスベースの発現ベクターを使用することができる。いくつかの実施形態では、組み込みの標的となる標的座位は、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子の組み込みの標的とするのが許容されるかまたは望まれるいずれかの座位であってよい。標的座位の非限定的な例としては、CXCR4遺伝子、アルブミン遺伝子、SHS231座位、F3遺伝子(CD142としても知られる)、MICA遺伝子、MICB遺伝子、LRP1遺伝子(CD91としても知られる)、HMGB1遺伝子、ABO遺伝子、RHD遺伝子、FUT1遺伝子、KDM5D遺伝子(HYとしても知られる)、B2M遺伝子、CIITA遺伝子、TRAC遺伝子、TRBC遺伝子、CCR5遺伝子、F3(すなわちCD142)遺伝子、MICA遺伝子、MICB遺伝子、LRP1遺伝子、HMGB1遺伝子、ABO遺伝子、RHD遺伝子、FUT1遺伝子、KDM5D(すなわちHY)遺伝子、PDGFRa遺伝子、OLIG2遺伝子及び/またはGFAP遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドは、例えば、イントロン、エクソン及び/または遺伝子コード領域(コード配列または「CDS」としても知られる)を含め、標的座位(例えばセーフハーバー座位)の適切な領域に挿入できる。いくつかの実施形態では、その挿入は、標的ゲノム遺伝子座のアレルの1つで行う。いくつかの実施形態では、その挿入は、標的ゲノム遺伝子座のアレルの両方で行う。これらの実施形態のいずれかでは、その標的ゲノム遺伝子座に挿入する導入遺伝子の向きは、その座位の遺伝子の方向と同じまたは逆のいずれかであることができる。いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドは、セーフハーバー遺伝子座のイントロン、エクソンまたはコード配列領域に挿入する。いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドは、内在性遺伝子に挿入し、その挿入により、その内在性遺伝子がサイレンシングされるか、またはその発現が低下する。外因性ポリヌクレオチドの挿入のための例示的なゲノム遺伝子座は、表4に示されている。
【0676】
【表4】
【0677】
いくつかの実施形態では、その標的座位は、セーフハーバー座位である。いくつかの実施形態では、セーフハーバー座位は、近隣または隣接の内在性遺伝子、調節エレメントなどへの影響を最小限に抑えながら、組み込まれたDNAの安定な発現が可能になるゲノム位置である。いくつかの事例では、セーフハーバー遺伝子は、初代細胞及び多能性幹細胞(その誘導体及びその分化細胞を含む)を含め、様々な細胞種において、遺伝子の持続的な発現を可能にするとともに、遺伝子改変の際に、操作ヌクレアーゼの標的とすることができる。セーフハーバー座位の非限定的な例としては、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、CLYBL遺伝子座及び/またはRosa遺伝子座(例えばROSA26遺伝子座)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、そのセーフハーバー座位は、AAVS1座位、CCR5座位及びCLYBL座位からなる群から選択する。いくつかの事例では、多くの細胞種では、SHS231をセーフハーバー座位として標的とできる。いくつかの事例では、ある特定の座位は、ある特定の細胞種では、セーフハーバー座位として機能できる。例えば、PDGFRaは、グリア前駆細胞(GPC)でのセーフハーバーであり、OLIG2は、オリゴデンドロサイトでのセーフハーバー座位であり、GFAPは、アストロサイトでのセーフハーバー座位である。特定の操作細胞種に応じて、適切なセーフハーバー座位を選択することは、当業者の技能レベルの範囲内である。いくつかの事例では、2つ以上のセーフハーバー遺伝子を標的として、それによって、2つ以上の導入遺伝子をその遺伝子改変細胞に導入できる。
【0678】
いくつかの実施形態では、操作細胞を生成する方法であって、導入遺伝子または外因性ポリヌクレオチド配列を含むドナーテンプレートと、DNAヌクレアーゼシステム(例えばCas9)と、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、CLYBL遺伝子座及び/またはRosa遺伝子座(例えばROSA26遺伝子座)に特異的な相補的部分(例えばgRNAターゲティング配列)を含む座位特異的なgRNAとを含むDNAヌクレアーゼシステムとを、供給源細胞(例えば、初代細胞または多能性幹細胞、例えばiPSC)に導入することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、そのgRNAが標的とするゲノム遺伝子座は、記載されているような座位のいずれかから4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内または500bp以内に位置する。
【0679】
いくつかの実施形態では、HDRの媒介によって導入遺伝子を挿入するために本発明で使用するgRNAは、AAVS1内の標的配列を認識する相補的部分(例えばgRNAターゲティング配列)を含む。これらの実施形態のうちのある特定ものでは、その標的配列は、AAVS1のイントロン1に位置する。AAVS1は、19番染色体の55,090,918~55,117,637番目のリバース鎖に位置し、AAVS1イントロン1(転写産物ENSG00000125503に基づく)は、19番染色体の55,117,222~55,112,796番目のリバース鎖に位置する。ある特定の実施形態では、そのgRNAは、19番染色体の55,117,222~55,112,796番目から4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内または500bp以内のゲノム遺伝子座を標的とする。ある特定の実施形態では、そのgRNAは、19番染色体の55,115,674番目から4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内または500bp以内のゲノム遺伝子座を標的とする。ある特定の実施形態では、そのgRNAは、19番染色体の55,115,674番目、または19番染色体の55,115,674番目から5ヌクレオチド以内、10ヌクレオチド以内、15ヌクレオチド以内、20ヌクレオチド以内、30ヌクレオチド以内、40ヌクレオチド以内もしくは50ヌクレオチド以内の位置に、切断部位を入れるように構成されている。ある特定の実施形態では、そのgRNAは、Li et al.,Nat.Methods 16:866-869(2019)に記載されているGET000046(「sgAAVS1-1」としても知られる)である。このgRNAは、例えば表5に示されている核酸配列を有する相補的部分(例えばgRNAターゲティング配列)を含み、AAVS1(PPP1R12Cとしても知られる)のイントロン1を標的とする。
【0680】
いくつかの実施形態では、HDRの媒介によって導入遺伝子を挿入するために本発明で使用するgRNAは、CLYBL内の標的配列を認識する相補的部分(例えばgRNAターゲティング配列)を含む。これらの実施形態のうちのある特定ものでは、その標的配列は、CLYBLのイントロン2に位置する。CLYBLは、13番染色体の99,606,669~99,897,134番目のフォワード鎖に位置し、CLYBLイントロン2(転写産物ENST00000376355.7に基づく)は、13番染色体の99,773,011~99,858,860番目のフォワード鎖に位置する。ある特定の実施形態では、そのgRNAは、13番染色体の99,773,011~99,858,860番目から4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内または500bp以内のゲノム遺伝子座を標的とする。ある特定の実施形態では、そのgRNAは、13番染色体の99,822,980番目から4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内または500bp以内のゲノム遺伝子座を標的とする。ある特定の実施形態では、そのgRNAは、13番染色体の99,822,980番目、または13番染色体の99,822,980番目から5ヌクレオチド以内、0ヌクレオチド以内、15ヌクレオチド以内、20ヌクレオチド以内、30ヌクレオチド以内、40ヌクレオチド以内もしくは50ヌクレオチド以内の位置に切断部位を入れるように構成されている。ある特定の実施形態では、そのgRNAは、GET000047であり、例えば表5に示されている核酸配列を有する相補的部分(例えばgRNAターゲティング配列)を含み、CLYBLのイントロン2を標的とする。その標的部位は、Cerbini et al.,PLoS 1,10(1):e0116032(2015)に記載されているようなTALENの標的部位と同様の部位である。
【0681】
いくつかの実施形態では、HDRの媒介によって導入遺伝子を挿入するために本発明で使用するgRNAは、CCR5内の標的配列を認識する相補的部分(例えばgRNAターゲティング配列)を含む。これらの実施形態のうちのある特定ものでは、その標的配列は、CCR5のエクソン3に位置する。CCR5は、3番染色体の46,370,854~46,376,206番目のフォワード鎖に位置し、CCR5エクソン3(転写産物ENST00000292303.4に基づく)は、3番染色体の46,372,892~46,376,206のフォワード鎖に位置する。ある特定の実施形態では、そのgRNAは、3番染色体の46,372,892~46,376,206番目から4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内または500bp以内のゲノム遺伝子座を標的とする。ある特定の実施形態では、そのgRNAは、3番染色体の46,373,180番目から4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内または500bp以内のゲノム遺伝子座を標的とする。ある特定の実施形態では、そのgRNAは、3番染色体の46,373,180番目、または3番染色体の46,373,180番目から5ヌクレオチド以内、10ヌクレオチド以内、15ヌクレオチド以内、20ヌクレオチド以内、30ヌクレオチド以内、40ヌクレオチド以内もしくは50ヌクレオチド以内の位置に切断部位を入れるように構成されている。ある特定の実施形態では、そのgRNAは、Mandal et al.,Cell Stem Cell 15:643-652(2014)に記載されているGET000048(「crCCR5_D」としても知られる)である。このgRNAは、例えば表5に示されている核酸配列を有する相補的部分を含み、CCR5のエクソン3(あるいは、Ensemblのゲノムデータベースでは、エクソン2としてアノテーションされている)を標的とする。Gomez-Ospina et al.,Nat.Comm.10(1):4045(2019)を参照されたい。
【0682】
表5には、例示的なgRNAターゲティング配列が示されている。いくつかの実施形態では、そのgRNAターゲティング配列は、表5に示されている相補的部分配列内の1つ以上のチミンがウラシルに置換されたものを含んでよい。リボ核酸における場合には、ウラシルについては「u」、チミンについては「t」とする代わりに、ウラシル及びチミンの両方とも「t」とできることを当業者は分かるであろうし、別段に示されていない限り、「t」を用いて、ウラシルを表すことができることは分かるであろう。
【0683】
【表5】
【0684】
いくつかの実施形態では、その標的座位は、その細胞内でノックアウトするのが望ましい座位である。このような実施形態では、この標的座位は、その細胞の表現型または機能を調節するためなどで、その細胞内で破壊または消失されるのが望ましいいずれかの標的座位である。例えば、セクションII.Aに記載の遺伝子改変であって、標的遺伝子の発現を低下させる遺伝子改変のいずれも、外因性ポリヌクレオチドの標的組み込みに望ましい標的座位であることがあり、その際、標的遺伝子の遺伝子破壊または遺伝子ノックアウト、及び外因性ポリヌクレオチドの標的挿入による過剰発現を、その細胞内の同じ標的部位または同じ標的座位で行ってよい。例えば、HDRプロセスを用いて遺伝子破壊を行って、表1に示されているいずれかの標的遺伝子を消失させるか、またはその発現を低下(例えばノックアウト)させる一方で、その遺伝子破壊の標的部位またはその部位の近くの核酸配列と相同であるホモロジーアームに挟まれたドナーテンプレートを用いることによって、外因性ポリヌクレオチドをその標的遺伝子に組み込んでもよい(例えばノックインしてもよい)。
【0685】
いくつかの実施形態では、操作細胞を生成する方法であって、供給源細胞(例えば、初代細胞または多能性幹細胞、例えばiPSC)に、導入遺伝子または外因性ポリヌクレオチド配列を含むドナーテンプレートと、DNAヌクレアーゼシステム(例えばCas9)と、B2M座位、CIITA座位、TRAC座位、TRBC座位に特異的な相補的部分を含む座位特異的なgRNAとを含むDNAヌクレアーゼシステムとを導入することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、そのgRNAが標的とするゲノム遺伝子座は、記載されているような座位のいずれかから4000bp以内、3500bp以内、3000bp以内、2500bp以内、2000bp以内、1500bp以内、1000bp以内または500bp以内に位置する。
【0686】
特定の実施形態では、その標的座位は、B2Mである。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、B2M遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質、またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、B2M遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列とを含む標的化ヌクレアーゼシステムを用いることによるものである。いくつかの実施形態では、B2M遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸(gRNA)配列は、WO2016/183041(その開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される)の付録2または表15の配列番号81240~85644からなる群から選択する。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、そのgRNAが標的とする標的部位に隣接する配列と相同なホモロジーアームに挟まれた外因性ポリヌクレオチド配列を含むドナーテンプレートを導入することによって、破壊されたB2M座位に、HDRによって組み込まれる。
【0687】
特定の実施形態では、その標的座位は、CIITAである。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、CIITA遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質、またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、CIITA遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列とを含む標的化ヌクレアーゼシステムによるものである。いくつかの実施形態では、CIITA遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列は、WO2016183041(その開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される)の付録1または表12の配列番号5184~36352からなる群から選択する。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、そのgRNAが標的とする標的部位に隣接する配列と相同なホモロジーアームに挟まれた外因性ポリヌクレオチド配列を含むドナーテンプレートを導入することによって、破壊されたCIITA座位に、HDRによって組み込まれる。
【0688】
いくつかの実施形態では、その細胞はT細胞であり、内在性のTRAC座位またはTRBC座位の発現をその細胞内で、遺伝子編集法によって低下または消失させる。例えば、HDRプロセスを用いて遺伝子破壊を行って、TRAC遺伝子またはTRBC遺伝子を消失させるか、またはその発現を低下(例えばノックアウト)させる一方で、その遺伝子破壊の標的部位またはその部位の近くの核酸配列と相同であるホモロジーアームに挟まれたドナーテンプレートを用いることによって、外因性ポリヌクレオチドを同じ座位に組み込んでもよい(例えばノックインしてもよい)。本明細書に記載の遺伝子をCRISPR/Casベースで標的とするのに有用な例示的なgRNA配列は、表6に示されている。その配列は、US20160348073に見ることができ、その配列表を含む開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0689】
【表6】
【0690】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、TRAC遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質、またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、TRAC遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列とを含む標的化ヌクレアーゼシステムによるものである。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列(例えばgRNAターゲティング配列)は、US20160348073(その開示内容は、参照により、その全体が援用される)の配列番号532~609及び9102~9797からなる群から選択する。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、そのgRNAが標的とする標的部位に隣接する配列と相同なホモロジーアームに挟まれた外因性ポリヌクレオチド配列を含むドナーテンプレートを導入することによって、破壊されたTRAC座位に、HDRによって組み込まれる。
【0691】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、TRBC遺伝子を標的とする遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、TRBC遺伝子を標的とする遺伝子改変は、Casタンパク質、またはCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、TRBC遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列とを含む標的化ヌクレアーゼシステムによるものである。いくつかの実施形態では、TRBC遺伝子を特異的に標的とする少なくとも1つのガイドリボ核酸配列(例えばgRNAターゲティング配列)は、US20160348073(その開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される)の配列番号610~765及び9798~10532からなる群から選択する。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、そのgRNAが標的とする標的部位に隣接する配列と相同なホモロジーアームに挟まれた外因性ポリヌクレオチド配列を含むドナーテンプレートを導入することによって、破壊されたTRBC座位に、HDRによって組み込まれる。
【0692】
いくつかの実施形態では、記載されているような、HDRの媒介による組み込みアプローチで用いるための新たな座位及び/またはgRNA配列を特定することは、当業者の技能レベルの範囲内である。例えば、CRISPR/Casシステムでは、特定の座位(例えば、例えば表1に示されている標的遺伝子内の座位)に対して既存のgRNAが知られているときには、「インチワーミング」アプローチを用いて、PAM配列の座位の両側のフランキング領域をスキャニングすること(これは通常、ゲノム全体にわたり、約100塩基対(bp)ごとに行う)によって、導入遺伝子の標的挿入用の追加の座位を特定できる。PAM配列は、使用する具体的なCasヌクレアーゼによって決まる。通常、ヌクレアーゼによって、対応するPAM配列が異なるからである。その座位の両側のフランキング領域は、長さが約500~4000bp、例えば、長さが約500bp、約1000bp、約1500bp、約2000bp、約2500bp、約3000bp、約3500bpまたは約4000bpであることができる。その検索範囲内にPAM配列が特定されたら、遺伝子破壊法で用いるために、その座位の配列に従って新たなガイドを設計できる。例示として、CRISPR/Casシステムについて記載されているが、新たな座位を特定するこの方法では、ZFN、TALEN、メガヌクレアーゼ及びトランスポザーゼを用いるアプローチを含め、記載されているような、HDRの媒介によるいずれかのアプローチを使用できる。
【0693】
いくつかの実施形態では、その外因性ポリヌクレオチドは、外因性のCD47ポリペプチド(例えば、ヒトCD47ポリペプチド)をコードし、その外因性ポリペプチドは、本明細書に開示されているようなセーフハーバー遺伝子座もしくはセーフハーバー部位、またはその内在性遺伝子をサイレンシングさせるか、もしくはその発現を低下させるゲノム遺伝子座に挿入する。いくつかの実施形態では、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、CCR5遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、CLYBL遺伝子座及び/またはRosa遺伝子座(例えばROSA26遺伝子座)に挿入する。いくつかの実施形態では、そのポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRB、PD1またはCTLA4の遺伝子座に挿入する。
【0694】
C.細胞
いくつかの実施形態では、本開示は、細胞(例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、このような幹細胞、造血幹細胞、間葉細胞もしくは初代細胞に由来するか、またはその細胞から作られる分化細胞)、あるいはその集団であって、MICA及び/またはMICBの発現の低下、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えばCD47の発現の増加が見られる細胞またはその集団を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、細胞(例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、このような幹細胞、造血幹細胞、間葉細胞もしくは初代細胞に由来するか、またはその細胞から作られる分化細胞)、あるいはその集団であって、MICA及び/またはMICBの発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えば、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8のいずれかの発現の増加が見られる細胞またはその集団を提供する。いくつかの実施形態では、提供するのは、細胞(例えば、幹細胞、人工多能性細胞、このような幹細胞、造血幹細胞、間葉細胞もしくは初代細胞に由来するか、またはその細胞から作られる分化細胞)、あるいはその集団であって、MICA及び/またはMICBを低減または欠失させ、1つ以上のMHCクラスI分子もしくはその構成要素、及び/または1つ以上のMHCクラスII分子を低減または欠失させ、寛容原性因子、例えばCD47を増加させる(過剰発現させるなど)ように操作(または改変)されている細胞またはその集団である。いくつかの実施形態では、提供するのは、細胞(例えば、幹細胞、人工多能性幹細胞、このような幹細胞、造血幹細胞、間葉細胞もしくは初代細胞に由来するか、またはその細胞から作られる分化細胞)、あるいはその集団であって、MICA及び/またはMICBを低減または欠失させ、寛容原性因子、例えば、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8のいずれかを増加させる(過剰発現させるなど)ように操作(または改変)されている細胞またはその集団である。
【0695】
いくつかの実施形態では、本明細書に示されているようにして操作または改変する細胞は、多能性幹細胞であるか、または多能性幹細胞から分化させた細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書に示されているようにして操作または改変する細胞は、初代細胞である。
【0696】
その細胞は、脊椎動物細胞、例えば、ヒト細胞またはマウス細胞のような哺乳動物細胞であってよい。その細胞は、脊椎動物幹細胞、例えば、ヒト幹細胞またはマウス幹細胞のような哺乳動物幹細胞であってもよい。好ましくは、その細胞または幹細胞は、改変、例えば遺伝子改変がしやすいものである。好ましくは、その細胞もしくは幹細胞、またはそのような幹細胞に由来する細胞は、治療的意義を有するか、または治療的意義を有すると考えられ、その結果、その細胞もしくは幹細胞、またはそのような幹細胞に由来するか、もしくはそのような幹細胞から分化させた細胞を用いて、疾患、障害、欠損または損傷の治療が必要な対象の疾患、障害、欠損または損傷を治療してよい。
【0697】
いくつかの実施形態では、その細胞は、幹細胞または前駆細胞(例えば、iPSC、胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉幹細胞、内皮幹細胞、上皮幹細胞、脂肪幹細胞、脂肪前駆細胞、生殖系列幹細胞、肺幹細胞、肺前駆細胞、乳腺幹細胞、成体嗅細胞、毛包幹細胞、多分化能性幹細胞、羊膜幹細胞、臍帯血幹細胞、神経幹細胞または神経前駆細胞)である。いくつかの実施形態では、その幹細胞は、成体幹細胞(例えば、体性幹細胞または組織特異的幹細胞)である。いくつかの実施形態では、その幹細胞または前駆細胞は、分化できる(例えば、その幹細胞は、全能性、多能性または多分化能性である)。いくつかの実施形態では、その細胞は、胚組織または新生児組織から単離する。いくつかの実施形態では、その細胞は、線維芽細胞、単球前駆体、B細胞、外分泌細胞、膵臓前駆細胞、内分泌前駆細胞、肝芽細胞、筋芽細胞、前駆脂肪細胞、前駆細胞、肝細胞、軟骨細胞、平滑筋細胞、K562ヒト赤白血病細胞株、骨細胞、滑膜細胞、腱細胞、靭帯細胞、半月板細胞、脂肪細胞、樹状細胞またはナチュラルキラー細胞である。いくつかの実施形態では、その細胞は、筋肉細胞、赤血球-巨核球細胞、好酸球、iPS細胞、マクロファージ、T細胞、膵島β細胞、ニューロン、心筋細胞、血液細胞、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、導管細胞、腺房細胞、α細胞、β細胞、δ細胞、PP細胞、肝細胞、胆管細胞、または褐色脂肪細胞に操作する(例えば、変換するかまたは分化させる)。いくつかの実施形態では、その細胞は、筋肉細胞(例えば、骨格筋細胞、平滑筋細胞もしくは心筋細胞)、赤血球-巨核球細胞、好酸球、iPS細胞、マクロファージ、T細胞、膵島β細胞、ニューロン、心筋細胞、血液細胞(例えば、赤血球細胞、白血球細胞もしくは血小板)、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、導管細胞、腺房細胞、α細胞、β細胞、δ細胞、PP細胞、肝細胞、胆管細胞、白色脂肪細胞または褐色脂肪細胞である。いくつかの実施形態では、その細胞は、ホルモン分泌細胞(例えば、インスリン、オキシトシン、エンドルフィン、バソプレッシン、セロトニン、ソマトスタチン、ガストリン、セクレチン、グルカゴン、甲状腺ホルモン、ボンベシン、コレシストキニン、テストステロン、エストロゲンもしくはプロゲステロン、レニン、グレリン、アミリン、または膵臓ポリペプチドを分泌する細胞)、表皮角化細胞、上皮細胞(例えば、外分泌上皮細胞、甲状腺上皮細胞、角化上皮細胞、胆嚢上皮細胞、または角膜、舌、口腔、食道、肛門管、遠位尿道もしくは膣の表面上皮細胞)、腎臓細胞、胚細胞、骨格関節滑膜細胞、骨膜細胞、骨細胞(例えば、破骨細胞または骨芽細胞)、軟骨膜細胞(例えば、軟骨芽細胞または軟骨細胞(chondrocyte))、軟骨(cartilage)細胞(例えば軟骨細胞(chondrocyte))、線維芽細胞、内皮細胞、心膜細胞、髄膜細胞、ケラチノサイト前駆細胞、ケラチノサイト幹細胞、周皮細胞、グリア細胞、上衣細胞、羊膜または胎盤膜から単離した細胞、あるいは漿膜細胞(例えば、体腔の内側を覆う漿膜細胞)である。
【0698】
いくつかの実施形態では、その細胞は、体細胞である。いくつかの実施形態では、その細胞は、皮膚またはその他の器官、例えば、心臓、脳もしくは脊髄、肝臓、肺、腎臓、膵臓、膀胱、骨髄、脾臓、腸または胃に由来する。その細胞は、ヒトまたはその他の哺乳動物に由来のもの(例えば、齧歯動物、ヒト以外の霊長類動物、ウシまたはブタの細胞)であることができる。
【0699】
いくつかの実施形態では、その細胞は、T細胞、NK細胞、膵島β細胞、内皮細胞、上皮細胞、例えば、RPE、甲状腺、皮膚または肝細胞である。いくつかの実施形態では、その細胞は、操作iPSCから分化させたiPSC由来細胞である。いくつかの実施形態では、その細胞は、本明細書に示されている説明に従って、初代細胞から改変した操作細胞である。例えば、いくつかの実施形態では、その初代細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えばCD47の発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、その初代細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えば、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8のいずれかの発現の増加が見られる。
【0700】
いくつかの実施形態では、その細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むiPSC由来T細胞、例えば、その改変を含むように操作されているiPSC由来T細胞である。例えば、いくつかの実施形態では、そのiPSC由来T細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えばCD47の発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、そのiPSC由来T細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えば、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8のいずれかの発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含む初代T細胞、例えば、その改変を含むように操作されている初代T細胞である。例えば、いくつかの実施形態では、その初代T細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えばCD47の発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、その初代T細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えば、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8のいずれかの発現の増加が見られる。
【0701】
いくつかの実施形態では、そのT細胞は、本明細書に記載されているようないずれかを含むキメラ抗原受容体(CAR)によって操作できる。いくつかの実施形態では、その操作T細胞(例えば低免疫原性T細胞)を用いて、同種異系細胞療法によって、本明細書、例えばセクションIVに記載されているようないずれかを含む様々な適応症を治療できる。いくつかの実施形態では、その操作T細胞(例えば低免疫原性T細胞)を用いて、がんを治療できる。
【0702】
いくつかの実施形態では、その細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むように操作されているiPSC由来NK細胞である。いくつかの実施形態では、その細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むように操作されている初代NK細胞である。例えば、いくつかの実施形態では、そのiPSC由来NK細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えばCD47の発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、そのiPSC由来NK細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えば、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8のいずれかの発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、そのNK細胞は、本明細書に記載されているようないずれかを含むキメラ抗原受容体(CAR)によって操作できる。いくつかの実施形態では、その操作NK細胞(例えば低免疫原性NK細胞)を用いて、同種異系細胞療法によって、本明細書、例えばセクションIVに記載されているようないずれかを含む様々な適応症を治療できる。いくつかの実施形態では、その操作NK細胞(例えば低免疫原性NK細胞)を用いて、がんを治療できる。
【0703】
いくつかの実施形態では、その細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むように操作されているiPSC由来膵島β細胞である。いくつかの実施形態では、その細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むように操作されている初代膵島β細胞である。例えば、いくつかの実施形態では、そのiPSC由来膵島β細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えばCD47の発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、そのiPSC由来膵島β細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えば、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8のいずれかの発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、その操作膵島β細胞(例えば低免疫原性膵島β細胞)を用いて、同種異系細胞療法によって、本明細書、例えばセクションIVに記載されているようないずれかを含む様々な適応症を治療できる。いくつかの実施形態では、その操作膵島β細胞(例えば低免疫原性膵島β細胞)を用いて、糖尿病、例えばI型糖尿病を治療できる。
【0704】
いくつかの実施形態では、その細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むように操作されているiPSC由来内皮細胞である。いくつかの実施形態では、その細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むように操作されている初代内皮細胞である。例えば、いくつかの実施形態では、そのiPSC由来内皮細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えばCD47の発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、そのiPSC由来内皮細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えば、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8のいずれかの発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、その操作内皮細胞(例えば低免疫原性内皮細胞)を用いて、同種異系細胞療法によって、本明細書、例えばセクションIVに記載されているようないずれかを含む様々な適応症を治療できる。いくつかの実施形態では、その操作内皮細胞(例えば低免疫原性内皮細胞)を用いて、血管新生疾患または眼疾患を治療できる。
【0705】
いくつかの実施形態では、その細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むように操作されているiPSC由来上皮細胞である。いくつかの実施形態では、その細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むように操作されている初代上皮細胞である。いくつかの実施形態では、その上皮細胞は、RPEである。いくつかの実施形態では、その上皮細胞は、甲状腺細胞である。いくつかの実施形態では、その上皮細胞は、皮膚細胞である。例えば、いくつかの実施形態では、そのiPSC由来上皮細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えばCD47の発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、そのiPSC由来上皮細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えば、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8のいずれかの発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、その操作上皮細胞(例えば低免疫原性上皮細胞)を用いて、同種異系細胞療法によって、本明細書、例えばセクションIVに記載されているようないずれかを含む様々な適応症を治療できる。いくつかの実施形態では、その操作上皮細胞(例えば低免疫原性上皮細胞)を用いて、甲状腺疾患または皮膚疾患を治療できる。
【0706】
いくつかの実施形態では、その細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むように操作されているiPSC由来肝細胞である。いくつかの実施形態では、その細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むように操作されている初代肝細胞である。例えば、いくつかの実施形態では、そのiPSC由来肝細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えばCD47の発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、そのiPSC由来肝細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えば、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8のいずれかの発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、その操作上皮細胞(例えば低免疫原性上皮細胞)を用いて、同種異系細胞療法によって、本明細書、例えばセクションIVに記載されているようないずれかを含む様々な適応症を治療できる。いくつかの実施形態では、その操作肝細胞(例えば低免疫原性肝細胞)を用いて、肝疾患を治療できる。
【0707】
いくつかの実施形態では、本明細書に示されているようにして操作または改変する細胞は、健常な対象、例えば、治療すべき特定の疾患もしくは病態であると分かっていないか、またはその疾患もしくは病態である疑いのない対象に由来する細胞である。例えば、糖尿病を治療するためなどで、膵島β細胞をドナー対象から単離または取得する場合には、そのドナー対象が、糖尿病または別の疾患もしくは病態であることが分かっていないか、糖尿病または別の疾患もしくは病態に罹患している疑いのない場合には、その対象は、健常な対象である。
【0708】
いくつかの実施形態では、その操作細胞、またはその操作細胞に由来する子孫細胞もしくは分化細胞は、レシピエント患者に投与すると、NK細胞の媒介による細胞傷害を回避できる。いくつかの実施形態では、その操作細胞、またはその操作細胞に由来する子孫細胞もしくは分化細胞は、レシピエント患者に投与すると、成熟NK細胞による細胞溶解から保護される。いくつかの実施形態では、その操作細胞、またはその操作細胞に由来する子孫細胞もしくは分化細胞は、レシピエント患者に投与しても、その細胞に対する免疫応答を誘導しない。いくつかの実施形態では、その操作細胞、またはその操作細胞に由来する子孫細胞もしくは分化細胞は、レシピエント患者に投与しても、その細胞に対する全身性の炎症応答を誘導しない。いくつかの実施形態では、その操作細胞、またはその操作細胞に由来する子孫細胞もしくは分化細胞は、レシピエント患者に投与しても、その細胞に対する局所性の炎症応答を誘導しない。いくつかの実施形態では、その操作細胞、またはその操作細胞に由来する子孫細胞もしくは分化細胞は、レシピエント患者に投与しても、補体経路の活性化を誘導しない。いくつかの実施形態では、そのレシピエント患者には、細胞の表面に、ヒト白血球抗原(HLA)依存性抗原に対する抗体が以前から存在している。
【0709】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、多能性幹細胞、例えば人工多能性幹細胞である。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、操作多能性細胞であり、本発明の方法は、その操作細胞を所望の細胞種に分化させること(分化前に、所望の改変、例えば遺伝子改変を完了することなど)をさらに含む。いくつかの実施形態では、その所望の細胞種は、膵島β細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心臓細胞及び血液細胞から選択する。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、ドナー対象から単離した初代細胞である。
【0710】
治療用途では、開示されている方法に従って調製した細胞は典型的には、等張賦形剤を含む医薬組成物の形態で供給でき、ヒトへの投与用に十分に滅菌される条件下で調製する。その細胞は、流通または臨床使用に適する器具または容器にパッケージできる。
【0711】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、膵島β細胞、免疫細胞、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、内皮細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、筋肉細胞、心臓細胞、血液細胞、膵臓の膵島細胞、平滑筋細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心筋細胞、視細胞、幹細胞、造血幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、間葉幹細胞、胚性幹細胞及び多能性幹細胞(PSC)から選択する。いくつかの実施形態では、その細胞は、膵臓の膵島細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、内皮細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、肝細胞、グリア前駆細胞、ドーパミン作動性ニューロン、網膜色素上皮細胞及び甲状腺細胞からなる群から選択する。
【0712】
いくつかの実施形態では、その標的細胞(操作に使用する細胞など)は、造血幹細胞(HSC)である。HSCは、すべての種類の血液細胞を補充するとともに、自己複製する幹細胞である。造血幹細胞は、具体的には、造血系が枯渇されているレシピエントマウスの循環血液に注射したときに、16週間、骨髄細胞、T細胞及びB細胞のレベルを確実に検出可能なレベル(典型的には、末梢血細胞の1%超)に維持する細胞として定義し得る(Schroeder(2010)Cell Stem Cell 6:203-207)。
【0713】
いくつかの実施形態では、その標的細胞(操作に使用する細胞など)は、造血系疾患または造血系障害である対象に由来する。いくつかの実施形態では、その造血障害は、血液疾患、特に、造血細胞が関与する疾患によるものであってよい。いくつかの実施形態では、その造血障害は、単一遺伝子の変異を原因とするような単一遺伝子性造血疾患である。いくつかの実施形態では、その造血障害は、骨髄異形成、再生不良性貧血、ファンコニ貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、鎌状赤血球症、ダイアモンドブラックファン貧血、シュワッハマンダイアモンド障害、コストマン症候群、慢性肉芽腫性疾患、副腎白質ジストロフィー、白血球接着不全症、血友病、サラセミア、βサラセミア、白血病、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性(骨髄)白血病(AML)、成人リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、若年性慢性骨髄性白血病(CML)及び若年性骨髄単球性白血病(JMML)、重症複合免疫不全症(SCID)、X連鎖重症複合免疫不全症、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、慢性肉芽腫性疾患、チェディアック・東症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)またはAIDSである。
【0714】
いくつかの実施形態では、その標的細胞(操作に使用する細胞など)は、自己免疫疾患である対象に由来する。いくつかの実施形態では、その自己免疫疾患は、急性播種性脳脊髄炎、急性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗合成酵素症候群、アトピー性アレルギー、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ぶどう膜炎、バロー病、バロー同心円硬化症、ベーチェット症候群、ベルジェ病、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性再発性多発性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠損症、脳動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、びまん皮膚硬化型全身性強皮症、ドレスラー症候群、円板状ループスエリテマトーデス、湿疹、付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維性肺胞炎、胃炎、胃腸類天疱瘡、巨細胞性動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症性脱髄疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、炎症性脱髄性多発神経障害、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎、若年性関節リウマチ、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA疾患(LAD)、ルー・ゲーリック病、ルポイド肝炎、ループスエリテマトーデス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発性血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合性結合組織病、限局性強皮症、ムッカ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、視神経脊髄炎、ニューロミオトニア、眼瘢痕性類天疱瘡、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、回帰性リウマチ、傍腫瘍性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンベルク症候群、パーソネージ・ターナー症候群、周辺部ぶどう膜炎、天疱瘡、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性神経障害、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発性軟骨炎、ライター症候群、むずむず脚症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スチル病、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群、スウィート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患、未分化脊椎関節症、血管炎、白斑またはウェゲナー肉芽腫症である。
【0715】
いくつかの実施形態では、その標的細胞(操作に使用する細胞など)は、がんである対象に由来する。いくつかの実施形態では、そのがんは、白血病である。いくつかの実施形態では、その白血病は、B-CLL、CML、またはT細胞ベースの白血病、例えばALTである。いくつかの実施形態では、そのがんは、メラノーマである。
【0716】
1.初代細胞
いくつかの実施形態では、本明細書に示されているように操作されている細胞は、1人以上の個々の対象またはドナーから取得または単離した初代細胞に由来する細胞を含む。いくつかの実施形態では、その細胞は、1人以上(例えば、2人以上、3人以上、4人以上、5人以上、10人以上、20人以上、50人以上または100人以上)の異なるドナー対象から取得した単離初代細胞のプールに由来する。いくつかの実施形態では、複数の異なるドナー対象(例えば、2人以上、3人以上、4人以上、5人以上、10人以上、20人以上、50人以上または100人以上)から単離または取得した初代細胞を一緒にバッチでプールし、提供する方法に従って操作する。
【0717】
いくつかの実施形態では、その初代細胞は、レシピエント対象(例えば、その細胞を投与される患者)とは異なる1人以上のドナー対象に由来する初代細胞のプールに由来する。その初代細胞は、1人、2人、3人、4人、5人、6人、7人、8人、9人、10人、20人、50人または100人以上のドナー対象から取得して、一緒にプールすることができる。その初代細胞は、1人以上、2人以上、3人以上、4人以上、5人以上、6人以上、7人以上、8人以上、9人以上、10人以上、20人以上、50人以上または100人以上のドナー対象から取得して、一緒にプールすることができる。いくつかの実施形態では、その初代細胞は、1人または複数の個体から採取し、いくつかの事例では、その初代細胞または初代T細胞プールをin vitroで培養する。いくつかの実施形態では、その初代細胞または初代T細胞プールは、本発明で提供する方法に従って操作または改変する。
【0718】
いくつかの実施形態では、その方法は、所望の種類の初代細胞(例えば、T細胞、NK細胞、内皮細胞、膵島β細胞、肝細胞、または本明細書に記載されているような他の初代細胞)を個々のドナー対象から取得または単離することと、その細胞をプールして、その初代細胞種のバッチを得ることと、その細胞を、本発明で提供する方法によって操作することを含む。いくつかの実施形態では、その方法は、所望の種類の初代細胞(例えば、T細胞、NK細胞、内皮細胞、膵島β細胞、肝細胞、または本明細書に記載されているような他の初代細胞)を取得または単離することと、それぞれの個々のドナーの細胞を、本発明で提供する方法によって操作することと、少なくとも2つの個別試料の操作(改変)細胞をプールして、その初代細胞種の操作細胞のバッチを得ることを含む。
【0719】
いくつかの実施形態では、その初代細胞は、1人の個体から単離もしくは取得するか、または2人以上の個々のドナーから単離もしくは取得した初代細胞のプールに由来する。その初代細胞は、セクションII.C.3に記載のいずれかを含め、本明細書に記載のいずれかの種類の初代細胞であってよい。いくつかの実施形態では、その初代細胞は、T細胞、NK細胞、膵島β細胞、内皮細胞、上皮細胞、例えばRPE、甲状腺、皮膚、または肝細胞から選択する。いくつかの実施形態では、1人の個別のドナーまたは個々のドナーのプールに由来する初代細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むように操作する。
【0720】
例えば、いくつかの実施形態では、その初代細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えばCD47の発現の増加が見られる。いくつかの実施形態では、その初代細胞は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子、例えば、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8のいずれかの発現の増加が見られる。
【0721】
いくつかの実施形態では、その操作細胞は、筋肉細胞(例えば、骨格筋細胞、平滑筋細胞もしくは心筋細胞)、赤血球-巨核球細胞、好酸球、iPS細胞、マクロファージ、T細胞、膵島細胞塊、膵島細胞、β細胞、ニューロン、心筋細胞、血液細胞(例えば、赤血球細胞、白血球細胞もしくは血小板)、内分泌前駆細胞、外分泌前駆細胞、導管細胞、腺房細胞、α細胞、膵島β細胞、δ細胞、PP細胞、肝細胞、胆管細胞、または白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞である。いくつかの実施形態では、その細胞は、ホルモン分泌細胞(例えば、インスリン、オキシトシン、エンドルフィン、バソプレッシン、セロトニン、ソマトスタチン、ガストリン、セクレチン、グルカゴン、甲状腺ホルモン、ボンベシン、コレシストキニン、テストステロン、エストロゲンもしくはプロゲステロン、レニン、グレリン、アミリン、または膵臓ポリペプチドを分泌する細胞)、表皮角化細胞、上皮細胞(例えば、外分泌上皮細胞、甲状腺上皮細胞、角化上皮細胞、胆嚢上皮細胞、または角膜、舌、口腔、食道、肛門管、遠位尿道もしくは膣の表面上皮細胞)、腎臓細胞、胚細胞、骨格関節滑膜細胞、骨膜細胞、骨細胞(例えば、破骨細胞または骨芽細胞)、軟骨膜細胞(例えば、軟骨芽細胞または軟骨細胞(chondrocyte))、軟骨(cartilage)細胞(例えば、軟骨細胞(chondrocyte))、線維芽細胞、内皮細胞、心膜細胞、髄膜細胞、ケラチノサイト前駆細胞、ケラチノサイト幹細胞、周皮細胞、グリア細胞、上衣細胞、羊膜もしくは胎盤膜から単離した細胞、あるいは漿膜細胞(例えば、体腔の内側を覆う漿膜細胞)である。
【0722】
2.人工多能性幹細胞の生成
いくつかの実施形態では、本明細書で示されているにように操作されている細胞は、人工多能性幹細胞であるか、または人工多能性幹細胞に由来するかもしくは人工多能性幹細胞から分化されている操作細胞である。マウス多能性幹細胞及びヒト多能性幹細胞(概して、iPSC、マウス細胞ではmiPSC、またはヒト細胞ではhiPCSという)の生成は概して、当該技術分野で知られている。当業者には理解されるように、多種多様なiPCS生成法がある。起源からの誘導は、Oct3/4、Sox2、c-Myc及びKlf4という4つの転写因子のウイルス導入を用いて、マウス胎児線維芽細胞または成体線維芽細胞から行われた。Takahashi and Yamanaka Cell 126:663-676(2006)を参照されたい。その開示内容は、参照により、その全体が、具体的には、その文献に概説されている技法について、本明細書に援用される。それ以降、多くの方法が開発された。論評についてのSeki et al,World J.Stem Cells 7(1):116-125(2015)及びLakshmipathy and Vermuri,editors,Methods in Molecular Biology:Pluripotent Stem Cells,Methods and Protocols,Springer 2013を参照されたい。その両方の開示内容とも、参照により、その全体が、具体的には、hiPSCの生成法(例えば、後者の参照文献のChapter3を参照されたい)について、本明細書に援用される。
【0723】
概して、iPSCは、1つ以上のリプログラミング因子を宿主細胞内で一過性発現させることによって生成し、通常、エピソーマルなベクターを用いて導入する。これらの条件下では、iPSCになるように誘導するのは、少量の細胞である(概して、この工程の効率は低い。選択マーカーを使用しないからである)。その細胞は、「リプログラムされて」多能性になると、エピソーマルなベクター(複数可)を消失し、内在性遺伝子を用いて、これらの因子を産生する。
【0724】
また、当業者には明らかなように、使用できるか、または使用されているリプログラミング因子の数は、変動し得る。一般に、使用するリプログラミング因子が少ないほど、「多能性」と同様に、その細胞を多能性状態に変化させる効率は低下し、例えば、リプログラミング因子が少ないほど、完全には多能性ではないうえに、少ない細胞種にしか分化できない場合がある細胞が生じることがある。
【0725】
いくつかの実施形態では、1つのリプログラミング因子、すなわちOCT4を使用する。別の実施形態では、2つのリプログラミング因子、すなわちOCT4及びKLF4を使用する。別の実施形態では、3つのリプログラミング因子、すなわちOCT4、KLF4及びSOX2を使用する。別の実施形態では、4つのリプログラミング因子、すなわちOCT4、KLF4、SOX2及びc-Mycを使用する。別の実施形態では、SOKMNLT、すなわち、SOX2、OCT4(POU5F1)、KLF4、MYC、NANOG、LIN28及びSV40L T抗原から選択した5つ、6つまたは7つのリプログラミング因子を使用できる。概して、これらのリプログラミング因子遺伝子は、当該技術分野で知られているとともに、市販されているようなエピソーマルなベクター上に供給する。
【0726】
いくつかの実施形態では、その1つ以上のリプログラミング因子をトランスフェクションするのに用いる宿主細胞は、非多能性幹細胞である。概して、当該技術分野で知られているように、iPSCは、本明細書に記載されているようなリプログラミング因子を一過性に発現させることによって、非多能性細胞、例えば、以下に限定されないが、血液細胞及び線維芽細胞から作製する。いくつかの実施形態では、その非多能性細胞、例えば線維芽細胞は、その細胞のリプログラミング前に、1人以上の個別の対象またはドナーから取得または単離する。いくつかの実施形態では、iPSCは、1人以上(例えば、2人以上、3人以上、4人以上、5人以上、10人以上、20人以上、50人以上または100人以上)の異なるドナー対象から取得した単離非多能性幹細胞、例えば単離線維芽細胞のプールから作製する。いくつかの実施形態では、その非多能性細胞、例えば線維芽細胞は、複数の異なるドナー対象(例えば、2人以上、3人以上、4人以上、5人以上、10人以上、20人以上、50人以上または100人以上)から単離または取得し、一緒にバッチでプールし、iPSCとしてリプログラムし、提供する方法に従って操作する。
【0727】
いくつかの実施形態では、そのiPSCは、レシピエント対象(例えば、その細胞を投与される患者)とは異なる1人以上のドナー対象から得た非多能性細胞(例えば線維芽細胞)のプールに由来する細胞に、1つ以上のリプログラミング因子を一過性にトランスフェクションすることによるなどして得る。iPSCに誘導する非多能性細胞(例えば線維芽細胞)は、1人、2人、3人、4人、5人、6人、7人、8人、9人、10人、20人、50人または100人以上のドナー対象から取得し、一緒にプールすることができる。その非多能性細胞(例えば線維芽細胞)は、1人以上、2人以上、3人以上、4人以上、5人以上、6人以上、7人以上、8人以上、9人以上、10人以上、20人以上、50人以上、または100人以上のドナー対象から取得し、一緒にプールすることができる。いくつかの実施形態では、その非多能性細胞(例えば線維芽細胞)は、1人または複数の個体から採取し、いくつかの事例では、その非多能性細胞(例えば線維芽細胞)または非多能性細胞(例えば線維芽細胞)のプールをin vitroで培養し、1つ以上のリプログラミング因子をトランスフェクションして、iPSCの生成を誘導する。いくつかの実施形態では、その非多能性細胞(例えば線維芽細胞)または非多能性細胞(例えば線維芽細胞)のプールは、本発明で提供する方法に従って操作または改変する。いくつかの実施形態では、続いて、その操作iPSCまたは操作iPSCのプールに対して、生物及び組織の細胞のいずれかに分化させるための分化プロセスを行う。
【0728】
操作iPSC細胞が生成されたら、WO2016183041及びWO2018132783に記載されているように、それらの細胞の低免疫原性及び/または多能性保持についてアッセイしてよい。いくつかの実施形態では、低免疫原性は、WO2018132783の図13及び図15に例示されているような多くの技法を用いてアッセイする。これらの技法としては、同種異系宿主に移植し、宿主免疫系から逃避する低免疫原性多能性細胞の成長(例えばテラトーマ)についてモニタリングすることが挙げられる。いくつかの事例では、低免疫原性多能性細胞誘導体をトランスダクションして、ルシフェラーゼを発現させてから、生物発光イメージングを用いて追跡できる。同様に、このような細胞に対する宿主動物のT細胞応答及び/またはB細胞応答を試験して、その細胞が、その宿主動物において免疫反応を引き起こさないことを確認する。T細胞応答は、Elispot、ELISA、FACS、PCRまたはマスサイトメトリー(CYTOF)によって評価できる。B細胞応答または抗体応答は、FACSまたはLuminexを用いて評価する。これに加えて、またはこの代わりに、その細胞は、WO2018132783の図14及び15に概ね示されているように、自然免疫応答、例えば、NK細胞による殺傷をそれらが回避する能力についてアッセイしてもよい。
【0729】
いくつかの実施形態では、その細胞の免疫原性は、当業者に認識されている、T細胞のイムノアッセイ、例えば、T細胞増殖のアッセイ、T細胞活性化のアッセイ、及びT細胞による殺傷のアッセイを用いて評価する。いくつかの事例では、T細胞増殖のアッセイは、その細胞をインターフェロン-γで前処理し、その細胞を、標識したT細胞と共培養し、予め選択した期間の後に、そのT細胞集団(または増殖しているT細胞集団)の存在をアッセイすることを含む。いくつかの事例では、そのT細胞活性化のアッセイは、T細胞を、本明細書に概説されている細胞と共培養し、そのT細胞内のT細胞活性化マーカーの発現レベルを求めることを含む。
【0730】
in vivoアッセイを行って、本明細書に概説されている細胞の免疫原性を評価することができる。いくつかの実施形態では、操作iPSCまたは改変iPSCの生存及び免疫原性は、同種異系のヒト化免疫不全マウスモデルを用いて求める。いくつかの事例では、その操作iPSCまたは改変iPSCは、同種異系のヒト化NSG-SGM3マウスに移植し、細胞の拒絶、細胞の生存及びテラトーマの形成についてアッセイする。いくつかの事例では、移植した操作iPSCまたはその分化細胞では、そのマウスモデルにおいて長期生存が見られる。
【0731】
その細胞の低免疫原性を含む免疫原性を求める追加の技法は、例えば、Deuse et al.,Nature Biotechnology,2019,37,252-258及びHan et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2019,116(21),10441-10446に記載されており、その開示内容は、図、図の凡例、及びこのような方法の説明を含め、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0732】
同様に、多能性の保持は、多くの方法で試験する。一実施形態では、多能性は、本明細書に概ね記載されているとともに、WO2018132783の図29に示されているように、多能性に特異的なある特定の因子の発現によってアッセイする。これに加えて、またはこの代わりに、その多能性細胞を、多能性の指標としての1つ以上の細胞種に分化させる。
【0733】
その操作多能性幹細胞(操作iPSC)が生成されたら、それらの細胞は、iPSCを維持することで知られているようにして、未分化状態に維持できる。例えば、その細胞は、分化を防ぐとともに、多能性を維持する培養培地を用いて、マトリゲル上で培養できる。加えて、その細胞は、多能性を維持する条件下の培養培地中に置くことができる。
【0734】
本明細書に記載の多能性幹細胞のいずれも、生物及び組織の細胞のいずれかに分化させることができる。ある態様では、本発明で提供するのは、レシピエント対象に後で移植するために、iPSCから様々な細胞種に分化されている操作細胞である。分化は、概して、細胞特異的なマーカーの存在を評価することによって、当該技術分野で知られているようにアッセイできる。当業者には理解されるように、分化させた操作(例えば低免疫原性)多能性細胞誘導体は、当該技術分野で知られている技法であって、細胞種及びこれらの細胞の最終的用途の両方によって決まる技法を用いて移植できる。分化細胞の例示的な種類、及びその細胞種を作製するための例示的な方法は、下に記載されている。いくつかの実施形態では、そのiPSCは、セクションII.C.3に記載のいずれかを含め、本明細書に記載の細胞の種類のいずれかに分化させてよい。いくつかの実施形態では、そのiPSCは、T細胞、NK細胞、膵島β細胞、内皮細胞、上皮細胞、例えば、RPE、甲状腺、皮膚または肝細胞から選択した細胞種に分化させる。いくつかの実施形態では、その宿主細胞、例えば、個別のドナーから得た非多能性細胞(例えば線維芽細胞)または個別のドナーのプールを単離または取得し、iPSCに生成し、続いて、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むように、そのiPSCを操作してから、所望の細胞種に分化させる。
【0735】
3.細胞種
A.T細胞
いくつかの実施形態では、本明細書に示されているようにして操作または改変する細胞は、Tリンパ球(T細胞ともいう)、例えば初代T細胞である。いくつかの実施形態では、そのTリンパ球は、1人以上の個別のドナー対象、例えば、1人以上の個別の健常ドナー(疾患もしくは感染があることが分かっていないか、またはその疑いがない対象、例えば、疾患または感染の臨床徴候が見られない対象など)から単離または取得する。いくつかの事例では、そのT細胞は、1人以上の個体から得たT細胞の集団またはサブ集団である。当業者には理解されるように、Tリンパ球を個体から単離または取得する方法は、既知の技法を用いて行うことができる。本発明で提供するのは、後で対象(例えばレシピエント)に移植するか、または生着させるために、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含む操作Tリンパ球である。
【0736】
いくつかの実施形態では、T細胞は、対象または個体から取得する(例えば、採取するか、摘出するか、除去するか、または取り出す)。いくつかの実施形態では、T細胞は、T細胞プールから作製して、そのT細胞が、1人以上の対象(例えば、1人以上の健常なヒトを含む1人以上のヒト)に由来するようにする。いくつかの実施形態では、そのT細胞プールは、1~100人、1~50人、1~20人、1~10人、1人以上、2人以上、3人以上、4人以上、5人以上、10人以上、20人以上、30人以上、40人以上、50人以上または100人以上の対象に由来する。いくつかの実施形態では、そのドナー対象は、患者(例えば、その治療用細胞を投与されるレシピエント)とは異なる者である。いくつかの実施形態では、そのT細胞プールは、その患者由来の細胞を含まない。いくつかの実施形態では、そのT細胞プールの取得元であるドナー対象の1人以上は、その患者とは異なる者である。
【0737】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するような細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むとともに、Tリンパ球に分化している操作多能性細胞から分化させたTリンパ球である。当業者には理解されるように、その分化方法は、既知の技法を用いて、所望の細胞種によって決まる。いくつかの実施形態では、Tリンパ球に分化させる細胞は、後で対象(例えばレシピエント)に移植するか、または生着させるのに使用してよい。
【0738】
T細胞を多能性幹細胞(例えばiPSC)から生成する方法は、例えば、Iriguchi et al.,Nature Communications 12,430(2021)、Themeli et al.16(4):357-366(2015)、Themeli et al.,Nature Biotechnology 31:928-933(2013)に記載されている。
【0739】
初代T細胞の非限定的な例としては、CD3+ T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、ナイーブT細胞、制御性T(Treg)細胞、非制御性T細胞、Th1細胞、Th2細胞、Th9細胞、Th17細胞、濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、エフェクターT(Teff)細胞、セントラルメモリーT(Tcm)細胞、エフェクターメモリーT(Tem)細胞、CD45RAを発現するエフェクターメモリーT細胞(TEMRA細胞)、組織常在性メモリー(Trm)細胞、バーチャルメモリーT細胞、自然免疫メモリーT細胞、メモリー幹細胞(Tsc)、γδT細胞及びいずれかの他のサブタイプのT細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、その初代T細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、腫瘍浸潤リンパ球及びこれらの組み合わせを含む群から選択されている。
【0740】
本開示の例示的なT細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、エフェクターメモリーRA T細胞、制御性T細胞、組織浸潤リンパ球及びこれらの組み合わせからなる群から選択されている。多くの実施形態では、そのT細胞は、CCR7、CD27、CD28及びCD45RAを発現する。いくつかの実施形態では、そのセントラルT細胞は、CCR7、CD27、CD28及びCD45ROを発現する。別の実施形態では、そのエフェクターメモリーT細胞は、PD-1、CD27、CD28及びCD45ROを発現する。別の実施形態では、そのエフェクターメモリーRA T細胞は、PD-1、CD57及びCD45RAを発現する。
【0741】
いくつかの実施形態では、そのT細胞、例えば、単離初代T細胞または分化T細胞には、本明細書に記載されているような操作の前に、1つ以上の増加行程または活性化工程を行ってもよい。いくつかの実施形態では、操作するT細胞集団は、抗CD3抗体試薬及び抗CD28抗体試薬とのインキュベーションによって刺激または活性化する。抗CD3及び抗CD28は、これらの試薬の混合物をコートしたビーズの形態で適切に供給してよい。抗CD3及び抗CD28のビーズは、1:1の比率で、操作するT細胞集団に適切に供給してよい。いくつかの実施形態では、インキュベーション中の培地は、1つ以上の組み換えサイトカイン、例えば、組み換えIL-2または組み換えIL-15も含んでよい。
【0742】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作T細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代T細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させたT細胞は、キメラ抗原受容体(本明細書に記載のキメラ抗原受容体が挙げられるが、これに限定されない)を発現するように操作(例えば改変)したT細胞を含む。本明細書に記載のCARを含め、いずれかの適切なCARをそのT細胞に含めることができる。いくつかの実施形態では、その操作T細胞は、損傷細胞、異形成細胞、感染細胞、免疫原性細胞、炎症細胞、悪性細胞、化生細胞、変異細胞及びこれらの組み合わせの少なくとも1つの表面上に発現した該当の抗原またはエピトープに特異的に結合する少なくとも1つのキメラ抗原受容体を発現する。別の事例では、その操作T細胞は、その細胞が、隣接する細胞、組織または器官に近接しているときに、その隣接する細胞、組織または器官での該当の生体作用を調節する少なくとも1つのタンパク質をその細胞が発現するようになる改変を含む。初代T細胞を含むT細胞に対する有用な改変は、US2016/0348073及びWO2020/018620に詳細に記載されており、これらの開示内容は、その全体が本明細書に援用される。
【0743】
いくつかの実施形態では、そのT細胞は、CARをコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドは、ゲノム遺伝子座に挿入されている。本明細書に記載の、レンチウイルスベースのトランスダクション方法または遺伝子編集方法(例えばCRISPR/Casシステム)を含め、いずれかの適切な方法を用いて、そのCARをそのT細胞のゲノム遺伝子座に挿入できる。いくつかの実施形態では、そのポリヌクレオチドは、セーフハーバー座位に挿入されており、その座位は、以下に限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(CD142としても知られる)、MICA、MICB、LRP1(CD91としても知られる)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1またはKDM5Dの遺伝子座などである。いくつかの実施形態では、そのポリヌクレオチドは、B2M、CIITA、TRAC、TRBC、PD1またはCTLA4の遺伝子に挿入されている。
【0744】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のT細胞、例えば操作T細胞または改変T細胞は、内在性のT細胞受容体の発現の低下を含む。いくつかの実施形態では、そのTRAC座位またはTRBC座位が、本明細書に記載の遺伝子編集方法(例えばCRISPR/Casシステム)によるなどして、その細胞内で破壊または消失されている。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子、例えば、記載されているような、CARをコードするポリヌクレオチドまたはその他のポリヌクレオチドが、破壊されたTRAC座位またはTRBC座位に挿入されている。
【0745】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のT細胞、例えば、操作T細胞または改変T細胞は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)の発現の低下を含む。いくつかの実施形態では、そのCTLA-4座位は、本明細書に記載の遺伝子編集方法(例えばCRISPR/Casシステム)によるなどして、その細胞内で破壊または消失されている。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子、例えば、記載されているような、CARをコードするポリヌクレオチドまたはその他のポリヌクレオチドは、破壊されたCTLA-4座位に挿入されている。
【0746】
別の実施形態では、本明細書に記載のT細胞、例えば、操作T細胞または改変T細胞は、プログラム細胞死(PD1)の発現の低下を含む。いくつかの実施形態では、そのPD1座位は、本明細書に記載の遺伝子編集方法(例えばCRISPR/Casシステム)によるなどして、その細胞内で破壊または消失されている。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子、例えば、記載されているような、CARをコードするポリヌクレオチドまたはその他のポリヌクレオチドは、破壊されたPD1座位に挿入されている。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のT細胞、例えば、操作T細胞または改変T細胞は、CTLA4及びPD1の発現の低下を含む。
【0747】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のT細胞、例えば、操作T細胞または改変T細胞は、PD-L1の発現の増強を含む。いくつかの実施形態では、そのPD-L1座位は、本明細書に記載の遺伝子編集方法(例えばCRISPR/Casシステム)によるなどして、その細胞内で破壊または消失されている。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドまたは導入遺伝子、例えば、記載されているような、CARをコードするポリヌクレオチドまたはその他のポリヌクレオチドは、破壊されたPD-L1座位に挿入されている。
【0748】
いくつかの実施形態では、本発明の技術は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現するとともに、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の発現の低下または発現の欠失が見られ、MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる操作T細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代T細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させたT細胞を操作したものに対するものである。ある特定の実施形態では、その操作T細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その操作T細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その操作T細胞はまた、CARを発現するようにも操作されている。いくつかの実施形態では、その操作T細胞は、TRAC遺伝子またはTRBC遺伝子内のゲノム改変(例えば遺伝子破壊)によるなどして、TCR複合体分子の発現の低下または発現の欠失が見られる。いくつかの実施形態では、T細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)及びCARを過剰発現し、B2M、CIITA、TRAC及びTRBCの遺伝子という遺伝子のうちの1つ以上を破壊するゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。
【0749】
いくつかの実施形態では、提供する操作T細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作T細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代T細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させたT細胞を操作したものは、患者(例えば、投与されたレシピエント)において免疫応答を活性化しない。提供するのは、本明細書に記載の操作T細胞の集団を、その治療が必要な対象(例えばレシピエント)または患者に投与することによって、疾患を治療する方法である。
【0750】
本発明で提供するT細胞は、適合するがんの治療に有用であり、そのがんとしては、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、グリオブラストーマ、神経芽腫、肺扁平上皮細胞癌、肝細胞癌及び膀胱癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0751】
B.ナチュラルキラー細胞
いくつかの実施形態では、本明細書に示されているようにして操作または改変する細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、例えば初代NK細胞である。いくつかの実施形態では、その初代NK細胞は、1人以上の個別のドナー対象、例えば1人以上の個別の健常ドナー(例えば、疾患もしくは感染があることが分かっていないか、またはその疑いがない対象、例えば、疾患または感染の臨床徴候が見られない対象など)から単離または取得する。いくつかの事例では、そのNK細胞は、1人以上の個体に由来する初代NK細胞の集団またはサブ集団である。当業者には理解されるように、NK細胞を個体から単離または取得する方法は、既知の技法を用いて行うことができる。本発明で提供するのは、対象(例えばレシピエント)に後で移植するか、または生着させるために、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含む操作初代NK細胞である。例えば、その操作T細胞は、その操作NK細胞を対象(例えば、患者などのレシピエント)に注入することによって、その対象に投与する。
【0752】
いくつかの実施形態では、NK細胞は、対象または個体から取得する(例えば、採取するか、摘出するか、除去するか、または取り出す)。いくつかの実施形態では、NK細胞は、NK細胞プールから作製して、そのNK細胞が、1人以上の対象(例えば、1人以上の健常なヒトを含む1人以上のヒト)に由来するようにする。いくつかの実施形態では、そのNK細胞プールは、1~100人、1~50人、1~20人、1~10人、1人以上、2人以上、3人以上、4人以上、5人以上、10人以上、20人以上、30人以上、40人以上、50人以上または100人以上の対象に由来する。いくつかの実施形態では、そのドナー対象は、患者(例えば、その操作NK細胞を投与されるレシピエント)とは異なる者である。いくつかの実施形態では、そのNK細胞プールは、患者由来の細胞を含まない。いくつかの実施形態では、そのNK細胞プールの取得元であるドナー対象の1人以上は、その患者とは異なる者である。
【0753】
いくつかの実施形態では、NK細胞は、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代NK細胞を含め、CD56を発現し(例えば、CD56dimまたはCD56bright)、CD3を欠失する(例えばCD3neg)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているようなNK細胞は、低親和性Fcγ受容体であるCD16を発現してもよく、この受容体は、ADCCを媒介する。いくつかの実施形態では、そのNK細胞は、1つ以上のナチュラルキラー細胞受容体NKG2A及びNKG2D、または1つ以上の天然の細胞傷害性受容体NKp46、NKp44、NKp30も発現する。例えば、初代NK細胞の場合、その初代細胞は、具体的な事例では、NK細胞の出発原料、例えば、末梢血単核球(PBMC)を含む試料から、CD3、CD14及び/またはCD19が陽性である細胞を枯渇させることによって単離してよい。例えば、その細胞に対しては、それぞれCD3、CD14及び/またはCD19に対する抗体を結合させた免疫磁気ビーズを用いて枯渇を行い、それによって、濃縮NK細胞集団を作製する。別の事例では、初代NK細胞は、混合集団である出発原料(例えばPBMC)から、NK細胞上の1つ以上のマーカー、例えばCD56、CD16、NKp46及び/またはNKG2Dの存在について細胞を選択することによって単離してもよい。
【0754】
いくつかの実施形態では、そのNK細胞、例えば単離初代NK細胞には、本明細書に記載されているような操作の前に、1つ以上の増加行程または活性化工程を行ってもよい。いくつかの実施形態では、増加は、NK細胞をフィーダー細胞、例えば、放射線照射されていてもされていなくてもよい抗原提示細胞とともに培養することによって行ってよい。増加工程におけるNK細胞と抗原提示細胞(APC)との比率は、ある特定の数値、例えば、1:1、1:1.5、1:2または1:3などの比率であってよい。ある特定の態様では、そのAPCは、膜結合型IL-21(mblL-21)を発現するように操作する。特定の態様では、そのAPCは、この代わりに、またはこれに加えて、IL-21、IL-15及び/またはIL-2を発現するように操作する。特定の実施形態では、その増加工程(複数可)を行う培地は、増加を促すための1つ以上の作用物質、例えば1つ以上の組み換えサイトカインを含む。具体的な実施形態では、その培地は、IL-2、IL-15、IL-18及び/またはIL-21からの1つ以上の組み換えサイトカインを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているような改変を導入することによって、そのNK細胞を操作する行程は、その増加の開始から2~12日後、例えば、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目もしくは12日目、または約2日目、約3日目、約4日目、約5日目、約6日目、約7日目、約8日目、約9日目、約10日目、約11日目もしくは約12日目に行う。
【0755】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作NK細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代NK細胞は、キメラ抗原受容体(本明細書に記載のキメラ抗原受容体が挙げられるが、これに限定されない)を発現するように操作(例えば改変)したNK細胞を含む。本明細書に記載のCARを含め、いずれかの適切なCARをそのNK細胞に含めることができる。いくつかの実施形態では、その操作NK細胞は、損傷細胞、異形成細胞、感染細胞、免疫原性細胞、炎症細胞、悪性細胞、化生細胞、変異細胞及びこれらの組み合わせの少なくとも1つの表面上に発現した該当の抗原またはエピトープに特異的に結合する少なくとも1つのキメラ抗原受容体を発現する。別の事例では、その操作NK細胞は、その細胞が、隣接する細胞、組織または器官に近接しているときに、その隣接する細胞、組織または器官での該当の生体作用を調節する少なくとも1つのタンパク質をその細胞が発現するようになる改変を含む。
【0756】
いくつかの実施形態では、そのNK細胞は、CARをコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドは、ゲノム遺伝子座に挿入されている。本明細書に記載の、レンチウイルスベースのトランスダクション方法または遺伝子編集方法(例えばCRISPR/Casシステム)を含め、いずれかの適切な方法を用いて、そのCARをそのNK細胞のゲノム遺伝子座に挿入できる。いくつかの実施形態では、そのポリヌクレオチドは、セーフハーバー座位に挿入されており、その座位は、以下に限定されないが、AAVS1、CCR5、CLYBL、ROSA26、SHS231、F3(CD142としても知られる)、MICA、MICB、LRP1(CD91としても知られる)、HMGB1、ABO、RHD、FUT1またはKDM5Dの遺伝子座などである。
【0757】
いくつかの実施形態では、本発明の技術は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現するとともに、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の発現の低下または発現の欠失が見られる操作NK細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代NK細胞を操作したものに対するものである。ある特定の実施形態では、その操作NK細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を有する。いくつかの実施形態では、その操作NK細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を有する。いくつかの実施形態では、その操作NK細胞はまた、CARを発現するようにも操作されている。
【0758】
いくつかの実施形態では、提供する操作NK細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作NK細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代NK細胞を操作したものは、患者(例えば、投与されたレシピエント)において免疫応答を活性化しない。提供するのは、本明細書に記載の操作NK細胞の集団を、その治療が必要な対象(例えばレシピエント)または患者に投与することによって、疾患を治療する方法である。
【0759】
本発明で提供するNK細胞は、適合するがんの治療に有用であり、そのがんとしては、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、グリオブラストーマ、神経芽腫、肺扁平上皮細胞癌、肝細胞癌及び膀胱癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0760】
C.膵島β細胞
いくつかの実施形態では、本明細書に示されているようにして操作または改変する細胞は、初代膵島β細胞(膵臓の膵島細胞または膵臓のβ細胞ともいう)である。いくつかの実施形態では、その初代膵島β細胞は、1人以上の個別のドナー対象、例えば1人以上の個別の健常ドナー(例えば、疾患もしくは感染があることが分かっていないか、またはその疑いがない対象、例えば、疾患または感染の臨床徴候が見られない対象など)から単離または取得する。当業者には理解されるように、膵島β細胞を個体から単離または取得する方法は、既知の技法を用いて行うことができる。本発明で提供するのは、対象(例えばレシピエント)に後で移植するか、または生着させるために、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含む操作初代膵島β細胞である。
【0761】
いくつかの実施形態では、膵島β細胞は、対象または個体から取得する(例えば、採取するか、摘出するか、除去するか、または取り出す)。いくつかの実施形態では、初代膵島β細胞は、膵島β細胞プールから作製して、その膵島β細胞が、1人以上の対象(例えば、1人以上の健常なヒトを含む1人以上のヒト)に由来するようにする。いくつかの実施形態では、その初代膵島β細胞プールは、1~100人、1~50人、1~20人、1~10人、1人以上、2人以上、3人以上、4人以上、5人以上、10人以上、20人以上、30人以上、40人以上、50人以上または100人以上の対象に由来する。いくつかの実施形態では、そのドナー対象は、患者(例えば、その治療用細胞を投与されるレシピエント)とは異なる者である。いくつかの実施形態では、その膵島β細胞プールは、その患者由来の細胞を含まない。いくつかの実施形態では、その膵島β細胞プールの取得元であるドナー対象の1人以上は、その患者とは異なる者である。
【0762】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するような細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むとともに、膵島β細胞に分化している操作iPSCに由来する膵島β細胞である。当業者には理解されるように、その分化方法は、既知の技法を用いて、所望の細胞種によって決まる。いくつかの実施形態では、様々な膵島β細胞に分化させた細胞は、後で対象(例えばレシピエント)に移植または生着させるのに用いてよい。いくつかの実施形態では、膵臓の膵島細胞は、本明細書に記載の操作多能性細胞に由来する。多能性幹細胞を膵臓の膵島細胞に分化させる有用な方法は、例えば、US9,683,215、US9,157,062及びUS8,927,280に記載されている。
【0763】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作多能性細胞は、I型糖尿病(T1DM)に対処するための移植用に、β様細胞または膵島オルガノイドに分化させる。細胞システムは、T1DMに対処するための有望な方法である。例えば、Ellis et al,Nat Rev Gastroenterol Hepatol.2017 Oct;14(10):612-628(その開示内容は、参照により本明細書に援用される)を参照されたい。加えて、Pagliucaらの文献(Cell,2014,159(2):428-39)には、hiPSCからのβ細胞への分化の成功について報告されており、その内容は、その全体が、特に、ヒト多能性幹細胞から機能的なヒトβ細胞を大規模に作製することについて概説されている方法及び試薬について、本明細書に援用される。さらに、Vegasらの文献には、ヒト多能性幹細胞からヒトβ細胞を作製してからカプセル化して、宿主による免疫拒絶を回避することが示されており(Vegas et al.,Nat Med,2016,22(3):306-11)、その内容は、参照により、その全体が、特に、ヒト多能性幹細胞から機能的なヒトβ細胞を大規模に作製することについて概説されている方法及び試薬について本明細書に援用される。
【0764】
いくつかの実施形態では、in vitroでの分化によって、膵臓の操作膵島細胞集団を操作多能性細胞集団から作製する方法は、(a)インスリン様成長因子、トランスフォーミング成長因子、FGF、EGF、HGF、SHH、VEGF、トランスフォーミング成長因子-bスーパーファミリー、BMP2、BMP7、GSK阻害剤、ALK阻害剤、BMP1型受容体阻害剤及びレチノイン酸からなる群から選択した1つ以上の因子を含む第1の培養培地中で、操作iPSC集団を培養して、膵臓の未成熟膵島細胞集団を作製することと、(b)第1の培養培地とは異なる第2の培養培地中で、膵臓の未成熟膵島細胞集団を培養して、膵臓の操作膵島細胞集団を作製することを含む。いくつかの実施形態では、そのGSK阻害剤は、CHIR-99021、その誘導体またはそのバリアントである。いくつかの事例では、そのGSK阻害剤は、約2mM~約10mMの範囲の濃度である。いくつかの実施形態では、そのALK阻害剤は、SB-431542、その誘導体またはそのバリアントである。いくつかの事例では、そのALK阻害剤は、約1pM~約10pMの範囲の濃度である。いくつかの実施形態では、その第1の培養培地及び/または第2の培養培地は、動物血清を含まない。
【0765】
分化は、当該技術分野で知られているように、概して、β細胞関連マーカーまたはβ細胞特異的マーカー(インスリンが挙げられるが、これに限定されない)の存在を評価することによってアッセイする。分化は、機能によって測定すること、例えばグルコース代謝を測定することもできる。概して、Muraro et al.,Cell Syst.2016 Oct 26;3(4):385-394.e3(その内容は、参照により、その全体が、具体的にはその文献に概説されているバイオマーカーについて、本明細書に援用される)を参照されたい。β細胞が生成されたら、それらの細胞を(本明細書に論じられているように、細胞懸濁液として、またはゲルマトリックス内のいずれかで)門脈/肝臓、大網、胃腸粘膜、骨髄、筋肉または皮下嚢に移植できる。
【0766】
本発明の技術での用途を含め、膵臓の膵島細胞の追加の説明は、WO2020/018615に見ることができ、その開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0767】
いくつかの実施形態では、操作膵島β細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代膵島β細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた内皮細胞を操作したものの集団は、培養下で維持し、いくつかの事例では、投与の前に増加させる。ある特定の実施形態では、操作膵島β細胞集団は、投与前に凍結保存する。
【0768】
例示的な種類の膵臓の膵島細胞としては、膵臓の膵島前駆細胞、膵臓の未成熟膵島細胞、膵臓の成熟膵島細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の膵臓の膵臓細胞は、糖尿病を治療するために対象に投与する。
【0769】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているように操作した膵島細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代膵島β細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた膵島β細胞を操作したものは、インスリンを分泌する。いくつかの実施形態では、膵臓の膵島細胞では、膵臓の内在性の膵島細胞の少なくとも2つの特性が見られ、その特性は、例えば、グルコースに応じたインスリン分泌、β細胞マーカーの発現であるが、これらに限定されない。
【0770】
例示的なβ細胞マーカーまたは前駆β細胞マーカーとしては、c-ペプチド、Pdxl、グルコーストランスポーター2(Glut2)、HNF6、VEGF、グルコキナーゼ(GCK)、プロホルモンコンバターゼ(PC 1/3)、Cdcpl、NeuroD、Ngn3、Nkx2.2、Nkx6.l、Nkx6.2、Pax4、Pax6、Ptfla、Isll、Sox9、Soxl7及びFoxA2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0771】
いくつかの実施形態では、その膵臓の膵島細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代膵島β細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた膵島β細胞は、グルコースの増加に応じてインスリンを産生する。様々な実施形態では、その膵臓の膵島細胞は、グルコースの増加に応じてインスリンを分泌する。いくつかの実施形態では、その細胞は、独特の形態、例えば敷石状細胞形態を有し、及び/または直径が約17pm~約25pmである。
【0772】
いくつかの実施形態では、本発明の技術は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現するとともに、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の発現の低下または発現の欠失が見られ、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる操作膵島β細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代膵島β細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた膵島β細胞を操作したものに対するものである。ある特定の実施形態では、その操作膵島β細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その操作膵島β細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、膵島β細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子及びCIITA遺伝子という遺伝子のうちの1つ以上を破壊するゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。
【0773】
いくつかの実施形態では、提供する操作膵島β細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作膵島β細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代膵島β細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた膵島β細胞を操作したものは、患者(例えば、投与されたレシピエント)において免疫応答を活性化しない。提供するのは、本明細書に記載の操作膵島β細胞の集団を、その治療が必要な対象(例えばレシピエント)または患者に投与することによって、疾患を治療する方法である。
【0774】
D.内皮細胞
いくつかの実施形態では、本明細書に示されているようにして操作または改変する細胞は、初代内皮細胞である。いくつかの実施形態では、その初代内皮細胞は、1人以上の個別のドナー対象、例えば1人以上の個別の健常ドナー(例えば、疾患もしくは感染があることが分かっていないか、またはその疑いがない対象、例えば、疾患または感染の臨床徴候が見られない対象など)から単離または取得する。当業者には理解されるように、内皮細胞を個体から単離または取得する方法は、既知の技法を用いて行うことができる。本発明で提供するのは、対象(例えばレシピエント)に後で移植するか、または生着させるために、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含む操作初代内皮細胞種である。
【0775】
いくつかの実施形態では、初代内皮細胞は、対象または個体から取得する(例えば、採取するか、摘出するか、除去するか、または取り出す)。いくつかの実施形態では、初代内皮細胞は、内皮細胞プールから作製して、その内皮細胞が、1人以上の対象(例えば、1人以上の健常なヒトを含む1人以上のヒト)に由来するようにする。いくつかの実施形態では、その初代内皮細胞プールは、1~100人、1~50人、1~20人、1~10人、1人以上、2人以上、3人以上、4人以上、5人以上、10人以上、20人以上、30人以上、40人以上、50人以上または100人以上の対象に由来する。いくつかの実施形態では、そのドナー対象は、患者(例えば、その治療用細胞を投与されるレシピエント)とは異なる者である。いくつかの実施形態では、その内皮細胞プールは、患者由来の細胞を含まない。いくつかの実施形態では、その内皮細胞プールの取得元であるドナー対象の1人以上は、その患者とは異なる者である。
【0776】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するような細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むとともに、内皮細胞種に分化している操作iPSCから分化させた内皮細胞である。当業者には理解されるように、その分化方法は、既知の技法を用いて、所望の細胞種によって決まる。いくつかの実施形態では、様々な内皮細胞種に分化させた細胞は、後で対象(例えばレシピエント)に移植または生着させるのに用いてよい。
【0777】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作多能性細胞は、末梢動脈疾患に対処するために、内皮コロニー形成細胞(ECFC)に分化させて、新たな血管を形成させる。内皮細胞に分化させる技法は、既知である。例えば、Prasain et al.,doi:10.1038/nbt.3048を参照されたい。その開示内容は、参照により、その全体が、具体的には、内皮細胞をヒト多能性幹細胞から生成する方法及び試薬、ならびに移植技法について、本明細書に援用される。分化は、当該技術分野で知られているように、概して、内皮細胞関連マーカーもしくは内皮細胞特異的マーカーの存在を評価することによって、または機能によって測定することによってアッセイできる。
【0778】
いくつかの実施形態では、in vitroでの分化によって、操作内皮細胞集団を操作多能性細胞集団から作製する方法は、(a)GSK阻害剤を含む第1の培養培地中で、操作iPSC細胞集団を培養することと、(b)VEGF及びbFGFを含む第2の培養培地中で、操作iPSC細胞集団を培養して、前駆内皮細胞集団を作製することと、(c)ROCK阻害剤及びALK阻害剤を含む第3の培養培地中で、前駆内皮細胞集団を培養して、本明細書に記載の改変を含むように操作されている分化内皮細胞集団を作製することを含む。
【0779】
いくつかの実施形態では、そのGSK阻害剤は、CHIR-99021、その誘導体またはそのバリアントである。いくつかの事例では、そのGSK阻害剤は、約1mM~約10mMの範囲の濃度である。いくつかの実施形態では、そのROCK阻害剤は、Y-27632、その誘導体またはそのバリアントである。いくつかの事例では、そのROCK阻害剤は、約1pM~約20pMの範囲の濃度である。いくつかの実施形態では、そのALK阻害剤は、SB-431542、その誘導体またはそのバリアントである。いくつかの事例では、そのALK阻害剤は、約0.5pM~約10pMの範囲の濃度である。
【0780】
いくつかの実施形態では、その第1の培養培地は、2pM~約10pMのCHIR-99021を含む。いくつかの実施形態では、その第2の培養培地は、50ng/mlのVEGF及び10ng/mlのbFGFを含む。別の実施形態では、その第2の培養培地は、Y-27632及びSB-431542をさらに含む。様々な実施形態では、その第3の培養培地は、10pMのY-27632及び1pMのSB-431542を含む。ある特定の実施形態では、その第3の培養培地は、VEGF及びbFGFをさらに含む。特定の事例では、その第1の培養培地及び/または第2の培地は、インスリンを含まない。
【0781】
本発明で提供する細胞は、多能性細胞の内皮細胞への分化を支持及び/または促進するために、表面上、例えば合成表面上で培養できる。いくつかの実施形態では、その表面は、ポリマー材を含み、そのポリマー材としては、所定の1つ以上のアクリレートモノマーからなるホモポリマーまたはコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーの非限定的な例としては、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールプロポキシレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレート(1EO/QH)メチル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。アクリレートは、当該技術分野で知られているように合成するか、またはPolysciences,Inc.、Sigma Aldrich,Inc.及びSartomer,Inc.などの供給業者から取得する。
【0782】
いくつかの実施形態では、その内皮細胞は、ポリマーマトリックス上に播種してもよい。いくつかの事例では、そのポリマーマトリックスは、生分解性である。適切な生分解性マトリックスは、当該技術分野で周知であり、コラーゲン-GAG、コラーゲン、フィブリン、PLA、PGA、及びPLA/PGAコポリマーが挙げられる。追加の生分解性の材料としては、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(プロピルフマレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリアセタール、生分解性ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン及び多糖類が挙げられる。
【0783】
非生分解性ポリマーも、同様に使用してもよい。非生分解性ではあるが、生体適合性である他のポリマーとしては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリスチレン、ポリエステル、非生分解性ポリウレタン、ポリ尿素、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリカーボネート及びポリ(エチレンオキシド)が挙げられる。そのポリマーマトリックスは、いずれかの形状、例えば、粒子、スポンジ、チューブ、球、ストランド、コイル状ストランド、毛状の網目構造、フィルム、繊維、メッシュまたはシートとして形成されていてよい。そのポリマーマトリックスは、天然または合成の細胞外マトリックスの材料及び因子を含むように改変できる。
【0784】
そのポリマー材は、支持材の表面に分散させることができる。細胞を培養するのに適する有用な支持材としては、セラミック物質、ガラス、プラスチック、ポリマーもしくはコポリマー、これらの組み合わせのいずれか、または一方の材料を別の材料にコーティングしたものが挙げられる。いくつかの事例では、ガラスとしては、ソーダ石灰ガラス、パイレックスガラス、バイコールガラス、石英ガラス、シリコンまたはこれらの誘導体などが挙げられる。
【0785】
いくつかの事例では、プラスチック、または樹枝状ポリマーを含むポリマーとしては、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル-無水マレイン酸)、ポリ(ジメチルシロキサン)モノメタクリレート、環状オレフィンポリマー、フルオロカーボンポリマー、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンイミン、またはこれらの誘導体などが挙げられる。いくつかの事例では、コポリマーとしては、ポリ(酢酸ビニル-co-無水マレイン酸)、ポリ(スチレン-co-無水マレイン酸)、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)、またはこれらの誘導体などが挙げられる。
【0786】
本明細書に示されている方法で使用する内皮細胞及びその分化の追加の説明は、WO2020/018615で見ることができ、その開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0787】
いくつかの実施形態では、操作内皮細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代内皮細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた内皮細胞を操作したものの集団は、培養下で維持し、いくつかの事例では、投与の前に増加させる。ある特定の実施形態では、その内皮細胞集団は、投与の前に凍結保存する。
【0788】
いくつかの実施形態では、本発明の技術は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下または発現の欠失が見られ、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる操作内皮細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代内皮細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた内皮細胞を操作したものに対するものであるある特定の実施形態では、その操作内皮細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その操作内皮細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、操作内皮細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子及びCIITA遺伝子という遺伝子のうちの1つ以上を破壊するゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。
【0789】
いくつかの実施形態では、提供する操作内皮細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作内皮細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代内皮細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた内皮細胞を操作したものは、患者(例えば、投与されたレシピエント)において免疫応答を活性化しない。提供するのは、本明細書に記載の操作内皮細胞の集団を、その治療が必要な対象(例えばレシピエント)または患者に投与することによって、疾患を治療する方法である。
【0790】
いくつかの実施形態では、その操作内皮細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代内皮細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた内皮細胞を操作したものは、その細胞を必要とする患者、例えばヒト患者に投与する。その操作内皮細胞は、以下に限定されないが、心血管疾患、血管疾患、末梢血管疾患、虚血性疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、末梢血管閉塞性疾患、脳卒中、再灌流障害、肢虚血、神経障害(例えば、末梢神経障害または糖尿病性神経障害)、臓器不全(例えば、肝不全、腎不全など)、糖尿病、関節リウマチ、骨粗鬆症、血管損傷、組織損傷、高血圧、冠動脈疾患に起因する狭心症及び心筋梗塞、腎血管性高血圧症、腎動脈狭窄に起因する腎不全、下肢跛行などのような疾患または病態を罹患している患者に投与できる。ある特定の実施形態では、その患者は、一過性の虚血性発作または脳卒中に罹患したことがあるか、またはその疾患に罹患しており、いくつかの事例では、その疾患は、脳血管疾患に起因し得る。いくつかの実施形態では、その操作内皮細胞は、例えば、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞及び肢虚血で見られるような組織虚血を治療するため、ならびに損傷血管を修復するために投与する。いくつかの事例では、その細胞は、移植片のバイオエンジニアリングで使用する。
【0791】
例えば、その操作内皮細胞は、虚血組織の修復、血管及び心臓弁の形成、人工血管の工学設計、損傷血管の修復、及び(例えば移植前の)操作組織内での血管形成の誘導のための細胞療法で使用できる。加えて、その内皮細胞は、腫瘍を標的として治療する薬剤を送達するようにさらに改変することができる。
【0792】
多くの実施形態では、本発明で提供するのは、血管細胞または血管新生が必要な組織を修復または補充する方法である。その方法は、このような治療を必要とするヒト患者に、その操作内皮細胞、例えば、単離初代内皮細胞または分化内皮細胞を含む組成物を投与して、当該組織内で血管新生を促すことを伴う。血管細胞または血管新生が必要な組織は、心臓組織、肝臓組織、膵臓組織、腎組織、筋肉組織、神経組織、骨組織などであることができ、その組織は、損傷しているとともに、過剰細胞死、損傷リスクのある組織、または人為的に操作した組織を特徴とする組織であることができる。
【0793】
いくつかの実施形態では、心疾患または心臓障害と関連し得る血管疾患は、内皮細胞、例えば、以下に限定されないが、本明細書に記載されているようにして得た最終的な血管内皮細胞及び心内膜内皮細胞を投与することによって治療することができる。このような血管疾患としては、冠動脈疾患、脳血管疾患、大動脈狭窄、大動脈瘤、末梢動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、静脈瘤、血管障害、冠動脈灌流欠損をきたした心臓の梗塞領域、非治癒性創傷、糖尿病性潰瘍、非糖尿病性潰瘍、または血管の形成を誘導するのが望ましいいずれかの他の疾患もしくは障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0794】
ある特定の実施形態では、その内皮細胞は、血管再建手術で使用する補綴用インプラント(例えば、Dacron及びGortexなどの合成材料で作られた血管)を改善するのに使用する。例えば、補綴用動脈移植片は、重要器官または手足に灌流させる動脈の患部を補充するのに用いる場合が多い。別の実施形態では、その操作内皮細胞を用いて、人工心臓弁の表面を覆って、その弁表面での血栓形成性を低くすることによって、塞栓形成のリスクを低下させる。
【0795】
概説されている内皮細胞は、組織及び/または単離細胞を血管に移植するための周知の手術技法を用いて、患者に移植することができる。いくつかの実施形態では、その細胞は、注射(例えば、心筋内注射、冠動脈内注射、経心内膜注射、経心外膜注射、経皮注射)、注入、移植及び埋入によって、患者の心臓組織に導入する。
【0796】
その内皮細胞の投与(送達)としては、静脈内投与、動脈内(例えば冠動脈内)投与、筋肉内投与、腹腔内投与、心筋内投与、経心内膜投与、経心外膜投与、鼻腔内投与及び髄腔内投与を含む皮下投与または非経口投与、ならびに注入技法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0797】
当業者には理解されるように、その細胞は、当該技術分野で知られている技法のうち、細胞種及びこれらの細胞の最終用途の両方によって決まる技法を用いて移植する。いくつかの実施形態では、本発明で提供する細胞は、患者に、静脈内移植または特定の部位での注射のいずれかによって移植する。特定の部位に移植するときには、その細胞は、ゲルマトリックスに懸濁して、その細胞が定着する間の分散を防止してよい。
【0798】
例示的な内皮細胞種としては、毛細血管内皮細胞、血管内皮細胞、大動脈内皮細胞、動脈内皮細胞、静脈内皮細胞、腎臓内皮細胞、脳内皮細胞、肝臓内皮細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0799】
本明細書に概説されている内皮細胞、例えば、単離初代内皮細胞または分化内皮細胞は、1つ以上の内皮細胞マーカーを発現することができる。このようなマーカーの非限定的な例としては、VE-カドヘリン(CD144)、ACE(アンジオテンシン変換酵素)(CD143)、BNH9/BNF13、CD31、CD34、CD54(ICAM-l)、CD62E(E-セレクチン)、CD105(エンドグリン)、CD146、エンドカン(ESM-l)、エンドグリックス-l、エンドムチン、エオタキシン-3、EPAS1(内皮PASドメインタンパク質1)、第VIII因子関連抗原、FLI-l、Flk-l(KDR、VEGFR-2)、FLT-l(VEGFR-l)、GATA2、GBP-l(グアニル酸結合タンパク質-l)、GRO-α、HEX、ICAM-2(細胞間接着分子2)、LM02、LYVE-l、MRB(マジックラウンドアバウト)、ヌクレオリン、PAL-E(pathologische anatomie Leiden-endothelium)、RTK、sVCAM-l、TALI、TEM1(腫瘍内皮マーカー1)、TEM5(腫瘍内皮マーカー5)、TEM7(腫瘍内皮マーカー7)、トロンボモジュリン(TM、CD141)、VCAM-l(血管細胞接着分子-1)(CD106)、VEGF、vWF(フォン・ヴィレブランド因子)、ZO-l、内皮細胞選択的接着分子(ESAM)、CD102、CD93、CD184、CD304及びDLL4が挙げられる。
【0800】
いくつかの実施形態では、その内皮細胞は、目的のタンパク質、例えば、障害/病態を治療するか、または障害/病態の症状を改善するのに有用である酵素、ホルモン、受容体、リガンドまたは薬物(ただし、これらに限定されない)をコードする外因性遺伝子を発現するようにさらに遺伝子改変されている。内皮細胞を遺伝子改変する標準的な方法は、例えばUS5,674,722に記載されている。
【0801】
このような内皮細胞を用いて、疾患の予防または治療に有用であるポリペプチドまたはタンパク質を構成的に合成及び送達させることができる。この方式では、そのポリペプチドは、その個体の血流または身体のその他の領域(例えば中枢神経系)に直接分泌される。いくつかの実施形態では、その内皮細胞は、インスリン、血液凝固因子(例えば、第VIII因子またはフォン・ヴィレブランド因子)、α-lアンチトリプシン、アデノシンデアミナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、インターロイキン(例えば、IL-l、IL-2、IL-3)などを分泌するように改変できる。
【0802】
ある特定の実施形態では、その内皮細胞は、埋め込む移植細胞との関連では、その細胞の性能を改善させる形で改変できる。非限定的な例示としては、血栓溶解剤を分泌または発現させて、管内血栓の形成を予防すること、平滑筋増殖阻害剤を分泌させて、平滑筋肥大による管腔狭窄を予防すること、ならびに内皮細胞の分裂促進因子または自己分泌因子を発現及び/または分泌させて、内皮細胞の増殖を刺激するとともに、移植細胞管腔の内皮細胞内膜の程度または期間を改善することが挙げられる。
【0803】
いくつかの実施形態では、その操作内皮細胞は、治療的レベルの分泌産物を所定の器官または手足に送達するのに使用する。例えば、in vitroで操作(トランスダクション)した内皮細胞で裏打ちされた血管インプラントを所定の器官または手足に移植できる。トランスダクションした内皮細胞の分泌産物は、高濃度で灌流組織に送達され、それによって、標的とする解剖学的部位に対して所望の作用が発揮されることになる。
【0804】
別の実施形態では、その内皮細胞は、血管新生を起こしている腫瘍において内皮細胞によって発現されると、血管新生を阻止または阻害する遺伝子を含むように、さらに遺伝子改変する。いくつかの事例では、その内皮細胞は、本明細書に記載の選択可能な自殺遺伝子のうちのいずれか1つを発現するように遺伝子改変することもでき、その遺伝子は、腫瘍の治療が完了したら、移植内皮細胞のネガティブ選択が可能である。
【0805】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の内皮細胞、例えば、単離初代内皮細胞または分化内皮細胞は、血管損傷、心血管疾患、血管疾患、末梢血管疾患、虚血性疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、末梢血管閉塞性疾患、高血圧、虚血性組織損傷、再灌流障害、肢虚血、脳卒中、神経障害(例えば、末梢神経障害または糖尿病性神経障害)、臓器不全(例えば、肝不全、腎不全など)、糖尿病、関節リウマチ、骨粗鬆症、脳血管疾患、高血圧、冠動脈疾患に起因する狭心症及び心筋梗塞、腎血管性高血圧症、腎動脈狭窄に起因する腎不全、下肢跛行、その他の血管の病態または血管疾患からなる群から選択した血管障害を治療するために、レシピエント対象に投与する。
【0806】
E.上皮細胞
3)網膜色素上皮(RPE)細胞
いくつかの実施形態では、本明細書に示されているようにして操作または改変する細胞は、初代網膜色素上皮(RPE)細胞である。いくつかの実施形態では、その初代RPE細胞は、1人以上の個別のドナー対象、例えば1人以上の個別の健常ドナー(例えば、疾患もしくは感染があることが分かっていないか、またはその疑いがない対象、例えば、疾患または感染の臨床徴候が見られない対象など)から単離または取得する。当業者には理解されるように、RPE細胞を個体から単離または取得する方法は、既知の技法を用いて行うことができる。本発明で提供するのは、対象(例えばレシピエント)に後で移植するか、または生着させるために、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含む操作初代RPE細胞である。
【0807】
いくつかの実施形態では、初代RPE細胞は、対象または個体から取得する(例えば、採取するか、摘出するか、除去するか、または取り出す)。いくつかの実施形態では、初代RPE細胞は、RPE細胞プールから作製して、そのRPE細胞が、1人以上の対象(例えば、1人以上の健常なヒトを含む1人以上のヒト)に由来するようにする。いくつかの実施形態では、その初代RPE細胞プールは、1~100人、1~50人、1~20人、1~10人、1人以上、2人以上、3人以上、4人以上、5人以上、10人以上、20人以上、30人以上、40人以上、50人以上または100人以上の対象に由来する。いくつかの実施形態では、そのドナー対象は、患者(例えば、その治療用細胞を投与されるレシピエント)とは異なる者である。いくつかの実施形態では、そのRPE細胞プールは、その患者由来の細胞を含まない。いくつかの実施形態では、そのRPE細胞プールの取得元であるドナー対象の1人以上は、その患者とは異なる者である。
【0808】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するような細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むとともに、RPE細胞に分化している操作iPSCから分化させたRPE細胞である。当業者には理解されるように、その分化方法は、既知の技法を用いて、所望の細胞種によって決まる。いくつかの実施形態では、RPE細胞に分化させた細胞は、後で対象(例えばレシピエント)に移植または生着させるのに用いてよい。
【0809】
多能性幹細胞をRPE細胞に分化させるのに有用な方法は、例えば、US9,458,428及びUS9,850,463に記載されており、その開示内容は、参照により、明細書を含め、その全体が本明細書に援用される。RPE細胞をヒト人工多能性幹細胞から作製する追加の方法は、例えば、Lamba et al.,PNAS,2006,103(34):12769-12774、Mellough et al,Stem Cells,2012,30(4):673-686、Idelson et al,Cell Stem Cell,2009,5(4):396-408、Rowland et al,Journal of Cellular Physiology,2012,227(2):457-466,Buchholz et al,Stem Cells Trans Med,2013,2(5):384-393及びda Cruz et al,Nat Biotech,2018,36:328-337に見ることができる。
【0810】
ヒト多能性幹細胞は、Kamao et al,Stem Cell Reports 2014:2:205-18(その開示内容は、参照により、その全体が、特に、分化技法及び試薬についてその文献で概説されている方法及び試薬について本明細書に援用される)に概説されている技法を用いて、RPE細胞に分化されている。また、Mandai et al.,N Engl J Med,2017,376:1038-1046(その内容は、参照により、その全体が、RPE細胞のシートを生成して、患者に移植する技法について、本明細書に援用される)も参照されたい。分化は、当該技術分野で知られているように、概して、RPE関連マーカー及び/またはRPE特異的マーカーの存在を評価することによって、あるいは機能によって測定することによってアッセイできる。例えば、Kamao et al.,Stem Cell Reports,2014,2(2):205-18を参照されたい。その内容は、参照により、その全体が、具体的には、結果のセクションの第1段落に概説されているマーカーについて、本明細書に援用される。
【0811】
いくつかの実施形態では、in vitroでの分化によって、操作網膜色素上皮(RPE)細胞集団を操作多能性細胞集団から作製する方法は、(a)アクチビンA、bFGF、BMP4/7、DKK1、IGF1、ノギン、BMP阻害剤、ALK阻害剤、ROCK阻害剤及びVEGFR阻害剤からなる群から選択した因子のいずれか1つを含む第1の培養培地中で、操作多能性細胞集団を培養して、前駆RPE細胞集団を作製することと、(b)第1の培養培地とは異なる第2の培養培地中で、前駆RPE細胞の集団を培養して、操作RPE細胞集団を作製することを含む。いくつかの実施形態では、そのALK阻害剤は、SB-431542、その誘導体またはそのバリアントである。いくつかの事例では、そのALK阻害剤は、約2mM~約10pMの範囲の濃度である。いくつかの実施形態では、そのROCK阻害剤は、Y-27632、その誘導体またはそのバリアントである。いくつかの事例では、そのROCK阻害剤は、約1pM~約10pMの範囲の濃度である。いくつかの実施形態では、その第1の培養培地及び/または第2の培養培地は、動物血清を含まない。
【0812】
分化は、当該技術分野で知られているように、概して、RPE関連マーカー及び/またはRPE特異的マーカーの存在を評価することによって、あるいは機能によって測定することによってアッセイできる。例えば、Kamao et al.,Stem Cell Reports,2014,2(2):205-18を参照されたい。その内容は、参照により、その全体が、具体的には結果のセクションについて、本明細書に援用される。
【0813】
RPE細胞の追加の説明は、その分化方法及び本発明の技術での用途を含め、WO2020/018615に見られ、その開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0814】
いくつかの実施形態では、操作RPE細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代RPE細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させたRPE細胞を操作したものの集団は、培養下で維持し、いくつかの事例では、投与の前に増加させる。ある特定の実施形態では、そのRPE細胞集団は、投与の前に凍結保存する。
【0815】
例示的なRPE細胞種としては、網膜色素上皮(RPE)細胞、RPE前駆細胞、未成熟RPE細胞、成熟RPE細胞、機能的RPE細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0816】
いくつかの実施形態では、RPE細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代RPE細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させたRPE細胞は、遺伝子発現プロファイルが、天然型RPE細胞の遺伝子発現プロファイルと同様であるか、または実質的に同様である。このようなRPE細胞は、平面状基材上でコンフルエントになるまで成長させたときに、天然型RPE細胞の多角形平面状シート形態を有することができる。
【0817】
いくつかの実施形態では、本発明の技術は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の発現の低下または発現の欠失が見られ、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる操作RPE細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代RPE細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させたRPE細胞を操作したものに対するものである。ある特定の実施形態では、その操作RPE細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その操作RPE細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、操作RPE細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子及びCIITA遺伝子という遺伝子のうちの1つ以上を破壊するゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。
【0818】
いくつかの実施形態では、提供する操作RPE細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作RPE細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代RPE細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させたRPE細胞を操作したものは、患者(例えば、投与されたレシピエント)において免疫応答を活性化しない。提供するのは、本明細書に記載の操作RPE細胞の集団を、その治療が必要な対象(例えばレシピエント)または患者に投与することによって、疾患を治療する方法である。
【0819】
そのRPE細胞は、黄斑変性に罹患している患者、またはRPE細胞が損傷している患者に埋入できる。いくつかの実施形態では、その患者は、加齢黄斑変性(AMD)、初期AMD、中期AMD、後期AMD、非新生血管型加齢黄斑変性、ドライ型黄斑変性(ドライ型加齢黄斑変性)、滲出型黄斑変性(滲出型加齢黄斑変性)、若年性黄斑変性(JMD)(例えば、シュタルガルト病、ベスト病及び若年性網膜分離症)、レーバー先天性黒内障または網膜色素変性症である。別の実施形態では、その患者は、網膜剥離を罹患する。
【0820】
治療用途では、開示されている方法に従って調製した細胞は、典型的には、等張賦形剤を含む医薬組成物の形態で供給でき、ヒトへの投与用に十分に滅菌される条件下で調製する。細胞組成物の医薬製剤における一般的原理については、“Cell Therapy:Stem Cell Transplantation,Gene Therapy,and Cellular Immunotherapy,”by Morstyn & Sheridan eds,Cambridge University Press,1996及び“Hematopoietic Stem Cell Therapy,”E.D.Ball,J.Lister & P.Law,Churchill Livingstone,2000を参照されたい。その細胞は、流通または臨床使用に適する器具または容器にパッケージできる。
【0821】
4)甲状腺細胞
いくつかの実施形態では、本明細書に示されているようにして操作または改変する細胞は、初代甲状腺細胞である。いくつかの実施形態では、その初代甲状腺細胞は、1人以上の個別のドナー対象、例えば1人以上の個別の健常ドナー(例えば、疾患もしくは感染があることが分かっていないか、またはその疑いがない対象、例えば、疾患または感染の臨床徴候が見られない対象など)から単離または取得する。当業者には理解されるように、甲状腺細胞を個体から単離または取得する方法は、既知の技法を用いて行うことができる。本発明で提供するのは、対象(例えばレシピエント)に後で移植するか、または生着させるために、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含む操作初代甲状腺細胞である。
【0822】
いくつかの実施形態では、初代甲状腺細胞は、対象または個体から取得する(例えば、採取するか、摘出するか、除去するか、または取り出す)。いくつかの実施形態では、初代甲状腺細胞は、甲状腺細胞プールから作製して、その甲状腺細胞が、1人以上の対象(例えば、1人以上の健常なヒトを含む1人以上のヒト)に由来するようにする。いくつかの実施形態では、その初代甲状腺細胞プールは、1~100人、1~50人、1~20人、1~10人、1人以上、2人以上、3人以上、4人以上、5人以上、10人以上、20人以上、30人以上、40人以上、50人以上または100人以上の対象に由来する。いくつかの実施形態では、そのドナー対象は、患者(例えば、その治療用細胞を投与されるレシピエント)とは異なる者である。いくつかの実施形態では、その甲状腺細胞プールは、その患者由来の細胞を含まない。いくつかの実施形態では、その甲状腺細胞プールの取得元であるドナー対象の1人以上は、その患者とは異なる者である。
【0823】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するような細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むとともに、甲状腺細胞に分化している操作iPSCから分化させた甲状腺細胞である。当業者には理解されるように、その分化方法は、既知の技法を用いて、所望の細胞種によって決まる。いくつかの実施形態では、甲状腺細胞に分化させた細胞は、後で対象(例えばレシピエント)に移植または生着させるのに用いてよい。
【0824】
いくつかの実施形態では、甲状腺ホルモンを分泌できる甲状腺前駆細胞及び甲状腺濾胞オルガノイドに、本明細書に記載の改変を含む操作多能性細胞を分化させて、自己免疫性甲状腺炎に対処する。甲状腺細胞に分化させる技法は、当該技術分野において知られている。例えば、Kurmann et al.,Cell Stem Cell,2015 Nov 5;17(5):527-42を参照されたい。その開示内容は、参照により、その全体が、具体的には、甲状腺細胞をヒト多能性幹細胞から作製する方法及び試薬について、ならびに移植技法についても、本明細書に援用される。分化は、当該技術分野で知られているように、概して、甲状腺細胞関連もしくは特異的マーカーの存在を評価することによって、または機能によって測定することによってアッセイできる。
【0825】
いくつかの実施形態では、操作甲状腺細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代甲状腺細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた甲状腺細胞を操作したものの集団は、培養下で維持し、いくつかの事例では、投与の前に増加させる。ある特定の実施形態では、その甲状腺細胞集団は、投与の前に凍結保存する。
【0826】
いくつかの実施形態では、本発明の技術は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の発現の低下または発現の欠失が見られ、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる操作甲状腺細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代甲状腺細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた甲状腺細胞を操作したものに対するものである。ある特定の実施形態では、その操作甲状腺細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その操作甲状腺細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、操作甲状腺細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子及びCIITA遺伝子という遺伝子のうちの1つ以上を破壊するゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。
【0827】
いくつかの実施形態では、提供する操作甲状腺細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作甲状腺細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代甲状腺細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた甲状腺細胞を操作したものは、患者(例えば、投与されたレシピエント)において免疫応答を活性化しない。提供するのは、本明細書に記載の操作内皮細胞の集団を、その治療が必要な対象(例えばレシピエント)または患者に投与することによって、疾患を治療する方法である。
【0828】
F.肝細胞
いくつかの実施形態では、本明細書に示されているようにして操作または改変する細胞は、初代肝細胞である。いくつかの実施形態では、その初代肝細胞は、1人以上の個別のドナー対象、例えば1人以上の個別の健常ドナー(例えば、疾患もしくは感染があることが分かっていないか、またはその疑いがない対象、例えば、疾患または感染の臨床徴候が見られない対象など)から単離または取得する。当業者には理解されるように、肝細胞を個体から単離または取得する方法は、既知の技法を用いて行うことができる。本発明で提供するのは、対象(例えばレシピエント)に後で移植するか、または生着させるために、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含む操作初代肝細胞である。いくつかの実施形態では、操作初代肝細胞を細胞療法として投与して、肝細胞機能の喪失または肝硬変に対処できる。
【0829】
いくつかの実施形態では、初代肝細胞は、対象または個体から取得する(例えば、採取するか、摘出するか、除去するか、または取り出す)。いくつかの実施形態では、初代肝細胞は、肝細胞プールから作製して、その肝細胞が、1人以上の対象(例えば、1人以上の健常なヒトを含む1人以上のヒト)に由来するようにする。いくつかの実施形態では、その初代肝細胞プールは、1~100人、1~50人、1~20人、1~10人、1人以上、2人以上、3人以上、4人以上、5人以上、10人以上、20人以上、30人以上、40人以上、50人以上または100人以上の対象に由来する。いくつかの実施形態では、そのドナー対象は、患者(例えば、その治療用細胞を投与されるレシピエント)とは異なる者である。いくつかの実施形態では、その肝細胞プールは、患者由来の細胞を含まない。いくつかの実施形態では、その肝細胞プールの取得元であるドナー対象の1人以上は、その患者とは異なる者である。
【0830】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するような細胞は、本明細書に記載の改変(例えば遺伝子改変)を含むとともに、肝細胞に分化している操作iPSCから分化させた肝細胞である。当業者には理解されるように、その分化方法は、既知の技法を用いて、所望の細胞種によって決まる。いくつかの実施形態では、肝細胞に分化させた細胞は、後で対象(例えばレシピエント)に移植または生着させるのに用いてよい。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞から分化させた操作肝細胞を細胞療法として投与して、肝細胞機能の喪失または肝硬変に対処できる。
【0831】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の改変を含む操作多能性細胞を肝細胞に分化させる。操作多能性細胞を肝細胞に分化させるのに使用できる技法は、数多く存在する。例えば、Pettinato et al,doi:10.1038/spre32888、Snykers et al.,Methods Mol Biol,2011 698:305-314、Si-Tayeb et al.,Hepatology,2010,51:297-305及びAsgari et al,Stem Cell Rev,2013,9(4):493-504(いずれの文献も、参照により、その全体が、具体的には、分化のための手法及び試薬について、本明細書に援用される)を参照されたい。分化は、当該技術分野で知られているように、概して、肝細胞関連マーカー及び/または幹細胞特異的マーカー(アルブミン、αフェトプロテイン及びフィブリノゲンが挙げられるが、これらに限定されない)の存在を評価することによってアッセイできる。分化は、アンモニアの代謝、LDLの貯蔵及び取り込み、ICGの取り込み及び放出、ならびにグリコーゲンの貯蔵などの機能によって測定することもできる。
【0832】
いくつかの実施形態では、操作肝細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代肝細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた肝細胞を操作したものの集団は、培養下で維持し、いくつかの事例では、投与の前に増加させる。ある特定の実施形態では、その肝細胞集団は、投与の前に凍結保存する。
【0833】
いくつかの実施形態では、本発明の技術は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の発現の低下または発現の欠失が見られ、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる操作肝細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代肝細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた肝細胞を操作したものに対するものである。ある特定の実施形態では、その操作肝細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その操作肝細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、操作肝細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M及びCIITAという遺伝子のうちの1つ以上を破壊するゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。
【0834】
いくつかの実施形態では、提供する操作肝細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作肝細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)から単離した初代肝細胞、または1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた肝細胞を操作したものは、患者(例えば、投与されたレシピエント)において免疫応答を活性化しない。提供するのは、本明細書に記載の操作肝細胞の集団を、その治療が必要な対象(例えばレシピエント)または患者に投与することによって、疾患を治療する方法である。
【0835】
G.心臓細胞
本発明で提供するのは、後で対象(例えばレシピエント)に移植または生着させるために、HIP細胞から分化させた心臓細胞種である。当業者には理解されるように、その分化方法は、既知の技法を用いて、所望の細胞種によって決まる。例示的な心臓細胞種としては、心筋細胞、結節心筋細胞、刺激伝導心筋細胞、作業心筋細胞、心筋細胞前駆体、心筋細胞前駆細胞、心臓幹細胞、心筋細胞、心房幹細胞、心室幹細胞、心外膜細胞、造血細胞、血管内皮細胞、心内膜内皮細胞、心臓弁間質細胞、心臓ペースメーカー細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0836】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の心臓細胞は、小児期心筋症、加齢性心筋症、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、慢性虚血性心筋症、周産期心筋症、炎症性心筋症、特発性心筋症、他の心筋症、心筋虚血再灌流傷害、心室機能不全、心不全、うっ血性心不全、冠動脈疾患、末期心疾患、アテローム性動脈硬化症、虚血、高血圧、再狭窄、狭心症、リウマチ性心臓、動脈炎、心血管疾患、心筋梗塞、心筋虚血、うっ血性心不全、心筋梗塞、心虚血、心外傷、心筋虚血、血管疾患、後天性心疾患、先天性心疾患、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、刺激伝導系機能障害、冠状動脈機能障害、肺高血圧症、心不整脈、筋ジストロフィー、筋肉量異常、筋肉変性、心筋炎、感染性心筋炎、薬物誘発性または毒物誘発性の筋肉異常、過敏性心筋炎及び自己免疫性心内膜炎からなる群から選択した心障害を治療するために、レシピエント対象に投与する。
【0837】
したがって、本発明で提供するのは、その治療及び予防の必要な対象において、心外傷または心疾患もしくは心障害を治療及び予防する方法である。本明細書に記載の方法を用いて、数多くの心疾患またはその症状、例えば、心臓の構造及び/または機能に病理学的損傷をもたらすものを治療、改善、予防するか、またはその進行を遅らせることができる。「心疾患」、「心障害」及び「心外傷」という用語は、本明細書で同義的に用いられており、弁、内皮、梗塞領域、または心臓の他の構成要素もしくは構造を含め、心臓に関連する病態及び/または障害を指す。このような心疾患または心臓関連疾患としては、心筋梗塞、心不全、心筋症、先天性心臓欠陥、心臓弁の疾患または機能障害、心内膜炎、リウマチ熱、僧帽弁逸脱、感染性心内膜炎、肥大型心筋症、拡張型心筋症、心筋炎、心肥大及び/または僧帽弁閉鎖不全症などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0838】
いくつかの実施形態では、その心筋細胞前駆体には、成熟した(最終段階の)心筋細胞を含む子孫を生み出すことができる細胞が含まれる。心筋細胞前駆細胞は、GATA-4、Nkx2.5及びMEF-2ファミリーの転写因子から選択した1つ以上のマーカーを用いて特定できる。いくつかの事例では、心筋細胞は、心臓トロポニンI(cTnl)、心臓トロポニンT(cTnT)、サルコメアミオシン重鎖(MHC)、GATA-4、Nkx2.5、N-カドヘリン、β2-アドレナリン受容体、ANF、MEF-2ファミリーの転写因子、クレアチンキナーゼMB(CK-MB)、ミオグロビン及び心房性ナトリウム利尿因子(ANF)というリストのうちの1つ以上のマーカー(場合によっては、少なくとも2つ、3つ、4つまたは5つのマーカー)を発現する未成熟心筋細胞または成熟心筋細胞を指す。いくつかの実施形態では、その心臓細胞は、自発的な周期的収縮活性を示す。いくつかの事例では、その心臓細胞を、Ca2+濃度及び電解質バランスが適切である適合した組織培養環境で培養するときには、その細胞は、その培養培地にいずれの追加の成分も添加されていなくても、その細胞の一軸方向で周期的に収縮してから、収縮から解放されるのを観察できる。いくつかの実施形態では、その心臓細胞は、低免疫原性心臓細胞である。
【0839】
いくつかの実施形態では、in vitroでの分化によって、低免疫原性心臓細胞集団を低免疫原性多能性(HIP)細胞集団から作製する方法は、(a)GSK阻害剤を含む培養培地中で、HIP細胞集団を培養することと、(b)WNTアンタゴニストを含む培養培地中で、HIP細胞集団を培養して、前駆心臓細胞集団を作製することと、(c)インスリンを含む培養培地中で、その前駆心臓細胞集団を培養して、免疫機能低下心臓細胞集団を作製することを含む。いくつかの実施形態では、そのGSK阻害剤は、CHIR-99021、その誘導体またはそのバリアントである。いくつかの事例では、そのGSK阻害剤は、約2mM~約10mMの範囲の濃度である。いくつかの実施形態では、そのWNTアンタゴニストは、IWR1、その誘導体またはそのバリアントである。いくつかの事例では、そのWNTアンタゴニストは、約2mM~約10mMの範囲の濃度である。
【0840】
いくつかの実施形態では、その低免疫原性心臓細胞集団は、非心臓細胞から単離したものでる。いくつかの実施形態では、その単離した低免疫原性心臓細胞集団は、投与の前に増加させる。ある特定の実施形態では、その単離した低免疫原性心臓細胞集団は、投与の前に増加させて、凍結保存する。
【0841】
人工多能性幹細胞または多能性幹細胞を心臓細胞に分化させる他の有用な方法は、例えば、US2017/0152485、US2017/0058263、US2017/0002325、US2016/0362661、US2016/0068814、US9,062,289、US7,897,389及びUS7,452,718に記載されている。心臓細胞を人工多能性幹細胞または多能性幹細胞から作製する追加の方法は、例えば、Xu et al,Stem Cells and Development,2006,15(5):631-9、Burridge et al,Cell Stem Cell,2012,10:16-28及びChen et al,Stem Cell Res,2015,l5(2):365-375に記載されている。
【0842】
様々な実施形態では、低免疫原性心臓細胞は、BMP経路阻害剤、WNTシグナル伝達活性化剤、WNTシグナル伝達阻害剤、WNTアゴニスト、WNTアンタゴニスト、Src阻害剤、EGFR阻害剤、PCK活性化剤、サイトカイン、成長因子、心臓作用性薬剤、化合物などを含む培養培地中で培養できる。
【0843】
そのWNTシグナル伝達活性化剤としては、CHIR99021が挙げられるが、これに限定されない。そのPCK活性化剤としては、PMAが挙げられるが、これに限定されない。そのWNTシグナル伝達阻害剤としては、KY02111、SO3031(KY01-I)、SO2031(KY02-I)及びSO3042(KY03-I)、ならびにXAV939から選択した化合物が挙げられるが、これらに限定されない。そのSrc阻害剤としては、A419259が挙げられるが、これに限定されない。そのEGFR阻害剤としては、AG1478が挙げられるが、これに限定されない。
【0844】
心臓細胞をiPSCから生成する作用物質の非限定的な例としては、アクチビンA、BMP4、Wnt3a、VEGF、可溶性フリズルドタンパク質、シクロスポリンA、アンジオテンシンII、フェニレフリン、アスコルビン酸、ジメチルスルホキシド、5-アザ-2’-デオキシシチジンなどが挙げられる。
【0845】
本発明で提供する細胞は、低免疫原性多能性細胞の心臓細胞への分化を支持及び/または促進するために、表面上、例えば合成表面上で培養できる。いくつかの実施形態では、その表面は、ポリマー材を含み、そのポリマー材としては、所定の1つ以上のアクリレートモノマーからなるホモポリマーまたはコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーの非限定的な例としては、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールプロポキシレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエートジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレート(1EO/QH)メチル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。アクリレートは、当該技術分野で知られているように合成するか、またはPolysciences,Inc.、Sigma Aldrich,Inc.及びSartomer,Inc.などの供給業者から取得する。
【0846】
そのポリマー材は、支持材の表面に分散させることができる。細胞を培養するのに適する有用な支持材としては、セラミック物質、ガラス、プラスチック、ポリマーもしくはコポリマー、これらの組み合わせのいずれか、または一方の材料を別の材料にコーティングしたものが挙げられる。いくつかの事例では、ガラスとしては、ソーダ石灰ガラス、パイレックスガラス、バイコールガラス、石英ガラス、シリコンまたはこれらの誘導体などが挙げられる。
【0847】
いくつかの事例では、プラスチック、または樹枝状ポリマーを含むポリマーとしては、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(酢酸ビニル-無水マレイン酸)、ポリ(ジメチルシロキサン)モノメタクリレート、環状オレフィンポリマー、フルオロカーボンポリマー、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンイミン、またはこれらの誘導体などが挙げられる。いくつかの事例では、コポリマーとしては、ポリ(酢酸ビニル-co-無水マレイン酸)、ポリ(スチレン-co-無水マレイン酸)、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)、またはこれらの誘導体などが挙げられる。
【0848】
本明細書に記載されているようにして調製した心臓細胞の有効性は、動物モデルにおいて心臓凍結障害について評価でき、この凍結障害により、治療しなければ、左心室壁組織の55%が瘢痕組織となる(Li et al,Ann.Thorac.Surg.62:654,1996、Sakai et al,Ann.Thorac.Surg.8:2074,1999、Sakai et al.,Thorac.Cardiovasc.Surg.118:715,1999)。治療の成功により、瘢痕の面積が低減し、瘢痕の拡大が限定され、収縮期圧、拡張期圧及び最大圧によって求めた場合の心臓機能が改善することができる。心外傷は、左前下行枝の遠位部において塞栓コイルを用いてモデル化することもでき(Watanabe et al.,Cell Transplant.7:239,1998)、治療の有効性は、組織学的検査及び心臓機能によって評価することができる。
【0849】
いくつかの実施形態では、操作心臓細胞集団、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた心臓細胞を操作したものを培養下で維持し、いくつかの事例では、投与の前に増加させる。ある特定の実施形態では、その心臓細胞集団は、投与の前に凍結保存する。
【0850】
いくつかの実施形態では、本発明の技術は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の発現の低下または発現の欠失が見られ、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる操作心臓細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた心臓細胞を操作したものに対するものである。ある特定の実施形態では、その操作心臓細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その操作心臓細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、操作心臓細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子及びCIITA遺伝子という遺伝子のうちの1つ以上を破壊するゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。
【0851】
いくつかの実施形態では、提供する操作心臓細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作心臓細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた心臓細胞を操作したものは、患者(例えば、投与されたレシピエント)において免疫応答を活性化しない。提供するのは、本明細書に記載の操作心臓細胞の集団を、その治療が必要な対象(例えばレシピエント)または患者に投与することによって、疾患を治療する方法である。
【0852】
いくつかの実施形態では、その投与は、その対象の心臓組織への埋入、静脈内注射、動脈内注射、冠動脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、心筋内注射、経心内膜注射、経心外膜注射または注入を含む。
【0853】
いくつかの実施形態では、その操作心臓細胞を投与される患者に、心臓薬も投与する。併用療法で用いるのに適する心臓薬の例示的な例としては、成長因子、成長因子をコードするポリヌクレオチド、血管新生剤、カルシウムチャネル遮断薬、血圧降下剤、有糸分裂阻害剤、強心剤、抗動脈硬化剤、抗凝固剤、β遮断薬、抗不整脈剤、抗炎症剤、血管拡張剤、血栓溶解剤、強心配糖体、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、原虫を阻害する薬剤、硝酸塩、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、抗新生物剤、ステロイドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0854】
本発明で提供する方法による療法の効果は、様々な方法でモニタリングできる。例えば、心電図(ECG)またはホルターモニターを利用して、治療の有効性を求めることができる。ECGは、心臓のリズム及び電気インパルスの尺度であり、療法により、対象の心臓における電気伝導が改善もしくは維持されるか、抑えられるか、またはその電気伝導の低下が遅くなるかを求めるのに非常に有効かつ非侵襲的な方法である。心臓の異常、不整脈障害などをモニタリングするために、長時間にわたって装着できる携帯型ECGであるホルターモニターの使用も、療法の有効性を評価するための確実な方法である。ECGまたは核医学検査を用いて、心室機能の改善を判断することができる。
【0855】
H.神経細胞
本発明で提供するのは、記載されているように、操作多能性細胞(例えばiPSC)から分化させた様々な神経細胞種であって、後でレシピエント対象に移植または生着させるのに有用である神経細胞種である。当業者には理解されるように、その分化方法は、既知の技法を用いて、所望の細胞種によって決まる。例示的な神経細胞種としては、脳内皮細胞、ニューロン(例えばドーパミン作動性ニューロン)、グリア細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0856】
いくつかの実施形態では、人工多能性幹細胞の分化は、所定の細胞系列(複数可)を生み出すことが知られている所定の因子に細胞を暴露または接触させることによって行って、その分化により、目的とする所定の望ましい系列及び/または細胞種が得られるようにする。いくつかの実施形態では、最終分化細胞では、特有の表現型の特性または特徴が見られる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の幹細胞は、神経外胚葉細胞、ニューロン、神経内分泌細胞、ドーパミン作動性細胞、コリン作動性細胞、セロトニン作動性(5-HT)細胞、グルタミン酸作動性細胞、GABA作動性細胞、アドレナリン作動性細胞、ノルアドレナリン作動性細胞、交感神経細胞、副交感神経細胞、末梢交感神経細胞またはグリア細胞の集団に分化させる。いくつかの事例では、そのグリア細胞集団としては、ミクログリア(例えば、アメーバ状細胞、分岐状細胞、活性化食細胞及び活性化非食細胞)の集団、またはマクログリア(中枢神経系細胞、すなわち、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、上衣細胞及び放射状グリア、ならびに末梢神経系細胞、すなわち、シュワン細胞及び衛星細胞)の集団、あるいは上記細胞のうちのいずれかの前駆体及び前駆細胞が挙げられる。
【0857】
様々な種類の神経細胞を生成するためのプロトコルは、国際公開第WO2010144696号、米国特許第9,057,053号、同第9,376,664号及び同第10,233,422号に記載されている。低免疫原性多能性細胞を分化させる方法の追加の説明は、例えば、Deuse et al.,Nature Biotechnology,2019,37,252-258及びHan et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2019,116(21),10441-10446に見ることができる。神経障害または神経病態の動物モデルで神経細胞移植の効果を求める方法は、脊髄損傷についてはCurtis et al.,Cell Stem Cell,2018,22,941-950、パーキンソン病についてはKikuchi et al.,Nature,2017,548:592-596、ALSについてはIzrael et al.,Stem Cell Research,2018,9(1):152及びIzrael et al.,IntechOpen,DOI:10.5772/intechopen.72862、てんかんについてはUpadhya et al.,PNAS,2019,116(1):287-296という参照文献に記載されている。
【0858】
いくつかの実施形態では、操作神経細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた神経細胞を操作したものの集団は、培養下で維持し、いくつかの事例では、投与の前に増加させる。ある特定の実施形態では、その神経細胞集団は、投与の前に凍結保存する。
【0859】
いくつかの実施形態では、本発明の技術は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の発現の低下または発現の欠失が見られ、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる操作神経細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた神経細胞を操作したものに対するものである。ある特定の実施形態では、その操作神経細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その操作神経細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、CIITA遺伝子にゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、操作神経細胞は、寛容原性因子(例えばCD47)を過剰発現し、B2M遺伝子及びCIITA遺伝子という遺伝子のうちの1つ以上を破壊するゲノム改変を有し、(MICA及び/またはMICBにゲノム改変を有することを介するなどして)MICA及び/またはMICBの発現の低下が見られる。
【0860】
いくつかの実施形態では、提供する操作神経細胞は、免疫認識を回避する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作神経細胞、例えば、1人以上の個別のドナー(例えば健常ドナー)に由来するiPSCから分化させた神経細胞を操作したものは、患者(例えば、投与されたレシピエント)において免疫応答を活性化しない。提供するのは、本明細書に記載の操作神経細胞の集団を、その治療が必要な対象(例えばレシピエント)または患者に投与することによって、疾患を治療する方法である。
【0861】
いくつかの実施形態では、神経細胞は、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、他の神経変性疾患または神経変性病態、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、うつ病、他の神経精神障害を治療するために、対象に投与する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の神経細胞は、脳卒中を治療または改善するために、対象に投与する。いくつかの実施形態では、そのニューロン及びグリア細胞は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である対象に投与する。
【0862】
1)脳内皮細胞
いくつかの実施形態では、脳内皮細胞(EC)、その前駆体及び前駆細胞は、脳ECまたは神経細胞の生成を促す1つ以上の因子を含む培地中で、多能性幹細胞(例えば人工多能性幹細胞)を培養することによって、その多能性幹細胞から表面上で分化させる。いくつかの事例では、その培地は、CHIR-99021、VEGF、塩基性FGF(bFGF)及びY-27632のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、その培地は、神経細胞の生存及び機能を促すように設計された補助剤を含む。
【0863】
いくつかの実施形態では、脳内皮細胞(EC)、その前駆体及び前駆細胞は、多能性幹細胞を非馴化培地または馴化培地中で培養することによって、その多能性幹細胞から表面上で分化させる。いくつかの事例では、その培地は、分化を促進または助長する因子または小分子を含む。いくつかの実施形態では、その培地は、VEGR、FGF、SDF-1、CHIR-99021、Y-27632、SB431542及びこれらの組み合わせのいずれかからなる群から選択した1つ以上の因子または小分子を含む。いくつかの実施形態では、分化用の表面は、1つ以上の細胞外マトリックスタンパク質を含む。その表面は、その1つ以上の細胞外マトリックスタンパク質でコーティングできる。その細胞は、懸濁液中で分化させてから、ゲルマトリックス形態、例えば、マトリゲル、ゼラチンまたはフィブリン/トロンビンの形態に投入して、細胞の生存を促すことができる。いくつかの事例では、分化は、当該技術分野で知られているように、概して、細胞特異的マーカーの存在を評価することによってアッセイする。
【0864】
いくつかの実施形態では、その脳内皮細胞は、CD31、VEカドヘリン及びそれらの組み合わせからなる群から選択した因子を発現または分泌する。ある特定の実施形態では、その脳内皮細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117(c-kit)、CD146、CXCR4、VEGF、SDF-1、PDGF、GLUT-1、PECAM-1、eNOS、クローディン-5、オクルディン、ZO-1、p-糖タンパク質、フォン・ヴィレブランド因子、VE-カドヘリン、低密度リポタンパク質受容体LDLR、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1、LRP1、インスリン受容体INSR、レプチン受容体LEPR、基底細胞接着分子BCAM、トランスフェリン受容体TFRC、最終糖化産物特異的受容体AGER、レチノール取り込み受容体STRA6、大型中性アミノ酸トランスポーター小サブユニット1 SLC7A5、興奮性アミノ酸トランスポーター3 SLC1A1、ナトリウム共役型中性アミノ酸トランスポーター5 SLC38A5、溶質キャリアファミリー16メンバー1 SLC16A1、ATP依存性トランスロカーゼABCB1、ATP-ABCC2結合カセットトランスポーターABCG2、多剤耐性関連タンパク質1 ABCC1、小管多特異性有機アニオントランスポーター1 ABCC2、多剤耐性関連タンパク質4 ABCC4及び多剤耐性関連タンパク質5 ABCC5からなる群から選択した因子の1つ以上を発現または分泌する。
【0865】
いくつかの実施形態では、その脳ECは、タイトジャンクションの高発現、高電気抵抗、窓形成の低さ、小さな血管周囲腔、インスリン受容体及びトランスフェリン受容体の高分布率、ならびに多数のミトコンドリアからなる群から選択した特徴のうちの1つ以上を特徴とする。
【0866】
いくつかの実施形態では、脳ECは、ポジティブ選択の方策を用いて選択または精製する。いくつかの事例では、その脳ECは、内皮細胞マーカー(CD31などであるが、これに限定されない)によって選別する。換言すると、CD31陽性の脳ECを単離する。いくつかの実施形態では、脳ECは、ネガティブ選択の方策を用いて選択または精製する。いくつかの実施形態では、多能性マーカー(TRA-1-60及びSSEA-1が挙げられるが、これらに限定されない)を発現する細胞について選択することによって、未分化細胞または多能性幹細胞を除去する。
【0867】
いくつかの実施形態では、脳内皮細胞を投与して、脳出血の症状または影響を緩和する。いくつかの実施形態では、ドーパミン作動性ニューロンをパーキンソン病患者に投与する。いくつかの実施形態では、ノルアドレナリン作動性ニューロン、GABA作動性介在ニューロンを、てんかん発作歴のある患者に投与する。いくつかの実施形態では、運動ニューロン、介在ニューロン、シュワン細胞、オリゴデンドロサイト及びミクログリアを、脊髄損傷歴のある患者に投与する。
【0868】
2)ドーパミン作動性ニューロン
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のHIP細胞は、ニューロン幹細胞、ニューロン前駆細胞、未成熟ドーパミン作動性ニューロン及び成熟ドーパミン作動性ニューロンを含むドーパミン作動性ニューロンに分化させる。
【0869】
いくつかの事例では、「ドーパミン作動性ニューロン」という用語には、ドーパミン合成のための律速酵素であるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)を発現する神経細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、ドーパミン作動性ニューロンは、神経伝達物質ドーパミンを分泌し、ドーパミンヒドロキシラーゼをほとんどまたは全く発現しない。ドーパミン作動性(DA)ニューロンは、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、1-芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ、小胞モノアミントランスポーター2、ドーパミントランスポーター、Nurr-l及びドーパミン-2受容体(D2受容体)というマーカーのうちの1つ以上を発現することができる。ある特定の事例では、「神経幹細胞」という用語には、神経細胞経路に沿って部分的に分化しているとともに、例えばネスチンを含む1つ以上の神経マーカーを発現する多能性細胞の集団が含まれる。神経幹細胞は、ニューロンまたはグリア細胞(例えば、アストロサイト及びオリゴデンドロサイト)に分化させてよい。「神経前駆細胞」という用語には、FOXA2及び低レベルのb-チューブリンは発現するが、チロシンヒドロキシラーゼは発現しない培養細胞が含まれる。このような神経前駆細胞には、適切な因子、例えば、本明細書に記載の因子を培養すると、様々なニューロンサブタイプ、特に、様々なドーパミン作動性のニューロンサブタイプに分化する能力がある。
【0870】
いくつかの実施形態では、HIP細胞に由来するDAニューロンを、患者、例えば、ヒト患者に投与して、神経変性疾患または神経変性病態を治療する。いくつかの事例では、その神経変性疾患または神経変性病態は、パーキンソン病、ハンチントン病及び多発性硬化症からなる群から選択する。別の実施形態では、そのDAニューロンを用いて、神経精神障害、例えば、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病及びうつ病の症状の1つ以上を治療または改善する。さらに別の実施形態では、そのDAニューロンを用いて、DAニューロン障害患者を治療する。
【0871】
いくつかの実施形態では、DAニューロン、その前駆体及び前駆細胞は、1つ以上の因子または添加剤を含む培地中で、多能性幹細胞を培養することによって、その幹細胞から分化させる。DAニューロンの分化、成長、増加、維持及び/または成熟を促す有用な因子及び添加剤としては、Wntl、FGF2、FGF8、FGF8a、ソニックヘッジホッグ(SHH)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、トランスフォーミング成長因子a(TGF-a)、TGF-b、インターロイキン1β、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、GSK-3阻害剤(例えばCHIR-99021)、TGF-b阻害剤(例えばSB-431542)、B-27サプリメント、ドルソモルフィン、プルモルファミン、ノギン、レチノイン酸、cAMP、アスコルビン酸、ニュールツリン、Knockout Serum Replacement、N-アセチルシステイン、c-kitリガンド、これらの改変形態、これらの模倣体、これらの類似体及びこれらのバリアントが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、そのDAニューロンは、WNT経路、NOTCH経路、SHH経路、BMP経路、FGF経路などを活性化または阻害する1つ以上の因子の存在下で分化させる。分化プロトコル及びその詳細な説明は、例えば、US9,968,637、US7,674,620、Kim et al,Nature,2002,418,50-56、Bjorklund et al,PNAS,2002,99(4),2344-2349、Grow et al.,Stem Cells Transl Med.2016,5(9):1133-44及びCho et al,PNAS,2008,105:3392-3397に示されており、これらの開示内容は、その全体が、実施例、方法、図及び結果の詳細な説明を含め、参照により本明細書に援用される。
【0872】
いくつかの実施形態では、低免疫原性ドーパミン作動性ニューロン集団は、非神経細胞から単離する。いくつかの実施形態では、単離した低免疫原性ドーパミン作動性ニューロン集団は、投与の前に増加させる。ある特定の実施形態では、単離した低免疫原性ドーパミン作動性ニューロン集団は、投与の前に増加させて、凍結保存する。
【0873】
DAの分化の特徴付け及びモニタリングを行い、そのDAの表現型を評価するために、いずれかの数の分子マーカー及び遺伝子マーカーの発現を評価できる。例えば、遺伝子マーカーの存在は、当業者に知られている様々な方法によって求めることができる。分子マーカーの発現は、以下に限定されないが、qPCRベースのアッセイ、イムノアッセイ、免疫細胞化学アッセイ、イムノブロッティングアッセイなどの定量法によって求めることができる。DAニューロンに対する例示的なマーカーとしては、TH、b-チューブリン、ペアードボックスタンパク質(Pax6)、インスリン遺伝子エンハンサータンパク質(Isl1)、ネスチン、ジアミノベンジジン(DAB)、Gタンパク質活性化型内向き整流カリウムチャネル2(GIRK2)、微小管関連タンパク質2(MAP-2)、NURR1、ドーパミントランスポーター(DAT)、フォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)、FOX3、ダブルコルチン及びLIMホメオボックス転写因子l-β(LMX1B)などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、そのDAニューロンは、コリン、FOXA2、TuJ1、NURR1及びこれらの組み合わせのいずれかから選択したマーカーの1つ以上を発現する。
【0874】
いくつかの実施形態では、DAニューロンは、細胞の電気生理学的活性に従って評価する。その細胞の電気生理学的性質は、当業者に知られているアッセイを用いることによって評価できる。例えば、全細胞及び穿孔パッチクランプ法、細胞の電気生理学的活性を検出するためのアッセイ、細胞の活動電位の大きさ及び持続期間を測定するためのアッセイ、ならびにDA細胞のドーパミン産生を検出するための機能アッセイである。
【0875】
いくつかの実施形態では、DAニューロンの分化は、自発的かつ律動的な活動電位、及び脱分極性電流を加えると、スパイク頻度順応を伴う高頻度の活動電位を特徴とする。別の実施形態では、DAの分化は、ドーパミンの産生を特徴とする。ドーパミンの産生レベルは、活動電位が最大振幅の半分に達した時点での活動電位の幅(スパイク半値幅)を測定することによって算出する。
【0876】
いくつかの実施形態では、その分化させたDAニューロンは、患者において、静脈内移植または特定の部位での注射によるかのいずれかで移植する。いくつかの実施形態では、その分化させたDA細胞は、脳の黒質(特に、その緻密部内もしくはその緻密部の隣接部)、腹側被蓋野(VTA)、尾状核、被殻、側坐核、視床下核またはこれらの組み合わせのいずれかに移植して、パーキンソン病をもたらした変性が見られるDAニューロンを補充する。その分化させたDA細胞は、細胞懸濁液として標的領域に注射できる。あるいは、その分化させたDA細胞は、支持マトリックスまたは足場に含めるときには、そのような送達デバイスに埋め込むことができる。いくつかの実施形態では、その足場は、生分解性である。別の実施形態では、その足場は、生分解性ではない。その足場は、天然または合成(人工)の材料を含むことができる。
【0877】
そのDAニューロンの送達は、適切なビヒクル(リポソーム、微粒子またはマイクロカプセルなどであるが、これらに限定されない)を用いることによって行うことができる。別の実施形態では、その分化させたDAニューロンは、等張賦形剤を含む医薬組成物で投与する。その医薬組成物は、ヒトへ投与するのに十分に滅菌される条件下で調製する。いくつかの実施形態では、HIP細胞から分化させたDAニューロンは、医薬組成物の形態で供給する。細胞組成物の治療用製剤の一般的原理は、Cell Therapy:Stem Cell Transplantation,Gene Therapy,and Cellular Immunotherapy,G.Morstyn & W.Sheridan eds,Cambridge University Press,1996及びHematopoietic Stem Cell Therapy,E.Ball,J.Lister & P.Law,Churchill Livingstone,2000に見られ、これらの開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0878】
幹細胞に由来するニューロンの有用な説明及びその作製方法は、例えば、Kirkeby et al.,Cell Rep,2012,1:703-714、Kriks et al.,Nature,2011,480:547-551、Wang et al.,Stem Cell Reports,2018,11(1):171-182、Lorenz Studer,“Chapter 8-Strategies for Bringing Stem Cell-Derived Dopamine Neurons to the clinic-The NYSTEM Trial”in Progress in Brain Research,2017,volume 230,pg.191-212、Liu et al.,Nat Protoc,2013,8:1670-1679、Upadhya et al.,Curr Protoc Stem Cell Biol,38,2D.7.1-2D.7.47、米国特許出願公開第20160115448号、ならびにUS8,252,586、US8,273,570、US9,487,752及びUS10,093,897に見ることができ、これらの内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0879】
DAニューロンに加えて、他の神経細胞、その前駆体及び前駆細胞は、1つ以上の因子または添加剤を含む培地中で、本明細書に概説されているHIP細胞を培養することによって、その細胞から分化させることができる。因子及び添加剤の非限定的な例としては、GDNF、BDNF、GM-CSF、B27、塩基性FGF、塩基性EGF、NGF、CNTF、SMAD阻害剤、Wntアンタゴニスト、SHHシグナル伝達活性化剤及びこれらの組み合わせのいずれかが挙げられる。いくつかの実施形態では、そのSMAD阻害剤は、SB431542、LDN-193189、ノギンPD169316、SB203580、LY364947、A77-01、A-83-01、BMP4、GW788388、GW6604、SB-505124、レルデリムマブ、メテリムマブ、GC-I008、AP-12009、AP-110I4、LY550410、LY580276、LY364947、LY2109761、SB-505124、E-616452(RepSox ALK阻害剤)、SD-208、SMI6、NPC-30345、K26894、SB-203580、SD-093、アクチビン-M108A、P144、可溶性TBR2-Fc、DMH-1、ドルソモルフィン二塩酸塩及びこれらの誘導体からなる群から選択する。いくつかの実施形態では、そのWntアンタゴニストは、XAV939、DKK1、DKK-2、DKK-3、DKK-4、SFRP-1、SFRP-2、SFRP-3、SFRP-4、SFRP-5、WIF-1、Soggy、IWP-2、IWR1、ICG-001、KY0211、Wnt-059、LGK974、IWP-L6及びこれらの誘導体からなる群から選択する。いくつかの実施形態では、そのSHHシグナル伝達活性化剤は、スムーズンドアゴニスト(SAG)、SAG類似体、SHH、C25-SHH、C24-SHH、プルモルファミン、Hg-Ag及び/またはこれらの誘導体からなる群から選択する。
【0880】
いくつかの実施形態では、そのニューロンは、グルタミン酸イオンチャネル型受容体NMDA型サブユニット1 GRIN1、グルタミン酸デカルボキシラーゼ1 GAD1、γ-アミノ酪酸GABA、チロシンヒドロキシラーゼTH、LIMホメオボックス転写因子1-α LMX1A、フォークヘッドボックスタンパク質O1 FOXO1、フォークヘッドボックスタンパク質A2 FOXA2、フォークヘッドボックスタンパク質O4 FOXO4、FOXG1、2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼCNP、ミエリン塩基性タンパク質MBP、チューブリンβ鎖3 TUB3、チューブリンβ鎖3 NEUN、溶質キャリアファミリー1メンバー6 SLC1A6、SST、PV、カルビンジン、RAX、LHX6、LHX8、DLX1、DLX2、DLX5、DLX6、SOX6、MAFB、NPAS1、ASCL1、SIX6、OLIG2、NKX2.1、NKX2.2、NKX6.2、VGLUT1、MAP2、CTIP2、SATB2、TBR1、DLX2、ASCL1、ChAT、NGFI-B、c-fos、CRF、RAX、POMC、ヒポクレチン、NADPH、NGF、Ach、VAChT、PAX6、EMX2p75、CORIN、TUJ1、NURR1及び/またはこれらの組み合わせのいずれかからなる群から選択したマーカーの1つ以上を発現する。
【0881】
3)グリア細胞
いくつかの実施形態では、記載されている神経細胞としては、以下に限定されないが、ミクログリア、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、上衣細胞及びシュワン細胞、そのグリア前駆体及びグリア前駆細胞などのグリア細胞が挙げられ、その神経細胞は、多能性幹細胞を治療上有効なグリア細胞などに分化させることによって作製する。低免疫原性多能性幹細胞の分化により、低免疫原性グリア細胞などの低免疫原性神経細胞を作製する。
【0882】
いくつかの実施形態では、グリア細胞、その前駆体及び前駆細胞は、レチノイン酸、IL-34、M-CSF、FLT3リガンド、GM-CSF、CCL2、TGFβ阻害剤、BMPシグナル伝達阻害剤、SHHシグナル伝達活性化剤、FGF、血小板由来成長因子PDGF、PDGFR-α、HGF、IGF1、ノギン、SHH、ドルソモルフィン、ノギン及びこれらの組み合わせのいずれかからなる群から選択した1つ以上の作用物質を含む培地中で、多能性幹細胞を培養することによって生成する。ある特定の事例では、そのBMPシグナル伝達阻害剤は、LDN193189、SB431542またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、そのグリア細胞は、NKX2.2、PAX6、SOX10、脳由来神経栄養因子BDNF、ニューロトロフィン-3 NT-3、NT-4、EGF、毛様体神経栄養因子CNTF、神経成長因子NGF、FGF8、EGFR、OLIG1、OLIG2、ミエリン塩基性タンパク質MBP、GAP-43、LNGFR、ネスチン、GFAP、CD11b、CD11c、CX3CR1、P2RY12、IBA-1、TMEM119、CD45及びこれらの組み合わせのいずれかを発現する。例示的な分化培地は、当業者によって認識されているように、グリア細胞種の生成を容易または可能にし得るいずれかの所定の因子及び/または小分子を含むことができる。
【0883】
in vitro分化プロトコルに従って生成した細胞が、グリア細胞の特性及び特徴を示すかを判断するために、その細胞を動物モデルに移植できる。いくつかの実施形態では、そのグリア細胞は、免疫不全マウス、例えば免疫不全シバラーマウスに注射する。そのグリア細胞は、そのマウスの脳に投与し、あらかじめ選択した期間の後に、その生着細胞を評価する。いくつかの事例では、その脳内の生着細胞は、免疫染色法及びイメージング法を用いることによって可視化する。いくつかの実施形態では、そのグリア細胞が、既知のグリア細胞バイオマーカーを発現することを判断する。
【0884】
グリア細胞、その前駆体及び前駆細胞を幹細胞から生成する有用な方法は、例えば、US7,579,188、US7,595,194、US8,263,402、US8,206,699、US8,252,586、US9,193,951、US9,862,925、US8,227,247、US9,709,553、US2018/0187148、US2017/0198255、US2017/0183627、US2017/0182097、US2017/253856、US2018/0236004、WO2017/172976及びWO2018/093681に見られる。多能性幹細胞を分化させる方法は、例えば、Kikuchi et al.,Nature,2017,548,592-596、Kriks et al.,Nature,2011,547-551、Doi et al.,Stem Cell Reports,2014,2,337-50、Perrier et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2004,101,12543-12548、Chambers et al.,Nat Biotechnol,2009,27,275-280及びKirkeby et al.,Cell Reports,2012,1,703-714に記載されている。
【0885】
脊髄損傷に対する神経細胞移植の有効性は、McDonald,et al.,Nat.Med.,1999,5:1410及びKim,et al.,Nature,2002,418:50によって記載されているように、例えば、急性脊髄損傷のラットモデルで評価できる。例えば、移植が成功すると、2~5週間後、病変に存在する移植由来細胞が見られ、その細胞は、アストロサイト、オリゴデンドロサイト及び/またはニューロンに分化し、病変端部から脊髄に沿って移動し、歩行、協調性及び体重負荷が改善することがある。具体的な動物モデルは、治療対象の神経細胞種及び神経疾患または神経病態に基づいて選択する。
【0886】
その神経細胞は、意図した組織部位にそれらの細胞を生着させるとともに、機能不全の領域を再構成または再生させる方式で投与できる。例えば、神経細胞は、治療している疾患に従って、中枢神経系の実質部位または髄腔内部位に直接移植できる。いくつかの実施形態では、脳内皮細胞、ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、上衣細胞、アストロサイト、ミクログリア細胞、オリゴデンドロサイト及びシュワン細胞を含め、本明細書に記載の神経細胞のいずれかを、患者に、静脈内注射、脊髄内注射、脳室内注射、髄腔内注射、動脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹部内注射、眼内注射、眼球後注射及びこれらの組み合わせによって注射する。いくつかの実施形態では、その細胞は、ボーラス注射または持続注入の形態で注射するか、または堆積させる。ある特定の実施形態では、その神経細胞は、注射によって、脳、脳に適する部分及びそれらの組み合わせに投与する。その注射は、例えば、その対象の頭蓋に形成した穿頭孔を通じて行うことができる。神経細胞を脳に投与するのに適する部位としては、脳の脳室、側脳室、大槽、被殻、基底核、海馬皮質、線条体、尾状核部及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0887】
ドーパミン作動性ニューロンを含め、本発明の技術で用いるための神経細胞の追加の説明は、WO2020/018615に見られ、その開示内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0888】
4.ABO血液型及びRH抗原発現
血液製剤は、ヒトの体内のすべての赤血球細胞の表面上の抗原の有無に従って、異なる型に分類できる(ABO血液型)。A抗原、B抗原、AB抗原及びAl抗原は、赤血球の糖タンパク質上の糖鎖の配列によって判断する。血液型抗原群の遺伝子により、抗原タンパク質産生のための指示が与えられる。血液型抗原タンパク質は、赤血球細胞の細胞膜内で様々な機能を果たす。これらのタンパク質の機能としては、他のタンパク質及び分子を細胞の内外に輸送すること、細胞の構造を維持すること、他の細胞及び分子に結合すること、ならびに化学反応に関与することが挙げられる。
【0889】
Rh因子(Rh)血液型は、ABO血液型システムに続き、2番目に重要な血液型システムである。Rh血液型システムは、確定した49個の血液型抗原からなり、その中でも、D、C、c、E及びeという5つの抗原が特に重要である。通常、個体のRh(D)の状態は、ABO型の後にプラスまたはマイナスという添え字で記載する。「Rh因子」、「Rhプラス」及び「Rhマイナス」という用語は、Rh(D)抗原のみを指す。Rh抗原に対する抗体は、溶血性輸血反応に関与し得るとともに、Rh(D)抗原及びRh(c)抗原に対する抗体により、胎児・新生児溶血性疾患のリスクが大きくなる。ABO抗体は、いずれのヒトにおいても幼少期に発生する。しかしながら、Rh-のヒトにおけるrh抗体は典型的には、そのヒトが感作を受けるた場合のみに発生する。rh抗体は、例えば、Rh+の新生児を出産するか、またはRh+の血液の輸血を受けることによって発生し得る。
【0890】
A抗原、B抗原、H抗原及びRh抗原は、血液移植、組織移植及び細胞移植の際の、ドナーとレシピエントとの組織適合性の主要な決定因子である。ABO遺伝子によってコードされる糖転移酵素の活性は、A型、B型、AB型、O型の組織血液型抗原の産生に関与しており、この酵素は、細胞表面に提示される。A型の個体は、a(1,3)N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ活性をもたらすABO遺伝子産物を特異的にコードし、B型の個体は、a(l,3)ガラクトサミニルトランスフェラーゼ活性をもたらすABO遺伝子産物を特異的にコードする。O型の個体は、機能的なガラクトサミニルトランスフェラーゼをまったく産生しないので、いずれの修飾も行われない。AB型の個体は、それぞれを1コピー有し、両方の種類の修飾が行われる。ABO遺伝子の酵素産物は、基質としてのH抗原に対して作用するので、ABO活性を欠失しているO型の個体は、未修飾のH抗原を呈し、したがって、O(H)型と称される場合が多い。
【0891】
H抗原自体は、a(l,2)フコシルトランスフェラーゼという酵素の産物であり、この酵素は、FUTI遺伝子によってコードされる。非常に稀な個体では、FUTI遺伝子が破壊されている結果、H抗原をまったく有さず、ABO式においては、A型またはB型の組織血液型をもたらす基質が存在しなくなる。これらの個体は、ボンベイ型の組織血液型と言われる。Rh抗原は、RHD遺伝子によってコードされ、Rhマイナスである個体は、RHD遺伝子が欠失または破壊されている。
【0892】
いくつかの実施形態では、本発明で提供する細胞または細胞集団は、O型ABO型かつRh因子陰性である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、O型ABO型かつRh因子陰性の細胞は、O型ABO型かつRh因子陰性のドナーに由来する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている、O型ABO型かつRh因子陰性の細胞は、A型ABO型、B型ABO型またはRh因子の抗原の提示が行われないように操作されている。いくつかの実施形態では、O型ABO型及び/またはRhマイナスの細胞は、(例えば、ABO遺伝子の有害な変異によって、もしくはABO遺伝子のエクソン6に258delGという変異を挿入することによって)ABO遺伝子の部分的不活性化もしくは完全不活性化を含み、及び/またはRHD遺伝子の発現が、RHD遺伝子の有害変異によって部分的または完全に不活性化されている。いくつかの実施形態では、O型ABO型かつRhマイナスの細胞は、FUT1遺伝子の部分的不活性化もしくは完全不活性化を含み、及び/またはRHD遺伝子の発現が、RHD遺伝子の有害変異によって部分的または完全に不活性化されている。いくつかの実施形態では、O型ABO型及び/またはRh因子陰性の操作細胞は、例えば、A型細胞をO型細胞に、B型細胞をO型細胞に、AB型細胞をO型細胞に、A+型細胞をO-型細胞に、A-型細胞をO-型細胞に、AB+型細胞をO-型細胞に、AB-型細胞をO-型細胞に、B+細胞をO-型細胞に、及びB-型細胞をO-型細胞に改変する遺伝子編集を用いて生成する。例示的なO型ABO型かつRh因子陰性の操作細胞及びその細胞の生成方法は、WO2021/146222に記載されており、その内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0893】
5.性染色体
ある特定の態様では、性染色体を有する細胞は、ある特定の抗原(例えばY抗原)を発現でき、レシピエントは、このような抗原に対して既存の感受性を有する。例えば、いくつかの実施形態では、男児を妊娠している女性は、男性ドナー由来の細胞を拒絶し得る。したがって、いくつかの実施形態では、そのドナーは男性であり、そのレシピエントは男性である。いくつかの実施形態では、そのドナーは女性であり、そのレシピエントは女性である。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、プロトカドヘリンY及び/またはニューロリギンYなどの抗原の発現を低下させる改変を含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞において、プロトカドヘリンYをコードする遺伝子(PCDH11Y、Ensembl ID ENSG00000099715)が、減少または除去、例えばノックアウトされている。いくつかの実施形態では、その操作細胞において、ニューロリギンYをコードする遺伝子(NLGN4Y、Ensembl ID ENSG00000165246)が、減少または除去、例えばノックアウトされている。遺伝子の発現を低下または消失させるいずれかの方法、例えば、本明細書に記載のいずれかを用いることができる。いくつかの実施形態では、PCDH11Y及び/またはNLGN4Yは、その操作細胞において、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集方法によって、例えばCRISPR/Casシステムを用いて、減少または除去されている。
【0894】
D.操作細胞の例示的な実施形態
いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47の発現の増加、ならびに1つ以上のMHCクラスI分子の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47の発現の増加、ならびに1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47の発現の増加、ならびに1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及びMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その操作初代細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である。
【0895】
いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47の発現の増加、ならびにB2Mの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47の発現の増加、ならびにCIITAの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47の発現の増加、ならびにNLRC5の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47の発現の増加、ならびにB2M及びCIITAのうちの1つ以上の分子の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47の発現の増加、ならびにB2M及びNLRC5のうちの1つ以上の分子の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47の発現の増加、ならびにCIITA及びNLRC5のうちの1つ以上の分子の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47の発現の増加、ならびにB2M、CIITA及びNLRC5のうちの1つ以上の分子の発現の低下が見られる。本明細書に記載の細胞のいずれかは、以下に限定されないが、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF及びH2-M3(これらの組み合わせのいずれかを含む)を含む群から選択した1つ以上の因子の発現も増加していることができる。いくつかの実施形態では、その因子は、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8(これらの組み合わせのいずれかを含む)のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及びMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その操作初代細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である。
【0896】
いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の発現の増加、ならびに1つ以上のMHCクラスI分子の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の発現の増加、ならびに1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の発現の増加、ならびに1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の発現の増加、ならびにB2Mの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の発現の増加、ならびにCIITAの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の発現の増加、ならびにNLRC5の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の発現の増加、ならびにB2M及びCIITAのうちの1つ以上の分子の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の発現の増加、ならびにB2M及びNLRC5のうちの1つ以上の分子の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の発現の増加、ならびにCIITA及びNLRC5のうちの1つ以上の分子の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及び/またはMICBの発現の低下、CD47及び少なくとも1つの他の寛容原性因子の発現の増加、ならびにB2M、CIITA及びNLRC5のうちの1つ以上の分子の発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、寛容原性因子としては、以下に限定されないが、DUX4、B2M-HLA-E、CD35、CD52、CD16、CD52、CD47、CD46、CD55、CD59、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDO1、CTLA4-Ig、C1インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8、SERPINB9、CD35、IL-39、CD16 Fc受容体、IL15-RF及びH2-M3(これらの組み合わせのいずれかを含む)を含む群からのいずれかが挙げられる。いくつかの実施形態では、その寛容原性因子は、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FasL、Serpinb9、CD200及びMfge8(これらの組み合わせのいずれかを含む)の1つ以上である。いくつかの実施形態では、その細胞及びその集団は、MICA及びMICBの発現の低下が見られる。いくつかの実施形態では、その操作初代細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である。
【0897】
当業者であれば、発現レベル、例えば、遺伝子、タンパク質または分子の発現の増加または低下は、同等の細胞を基準とするか、または同等の細胞と比較することができることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、CD47の発現の増加が見られる操作幹細胞は、CD47タンパク質レベルが、未改変の幹細胞と比べて高い改変幹細胞を指す。
【0898】
一実施形態では、本発明で提供するのは、外因性のCD47ポリペプチドを発現するとともに、いずれか1つ以上のMHCクラスI分子、1つ以上のMHCクラスII分子、または1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子のいずれかの組み合わせの発現の低下が見られる操作細胞(例えば初代細胞)である。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の構成要素、例えば、1つ以上のMHCクラスI分子のB2Mを減少させる。別の実施形態では、その細胞は、外因性のCD47ポリペプチドを発現するとともに、B2Mポリペプチド及びCIITAポリペプチドの発現レベルが低下している。いくつかの実施形態では、その細胞は、外因性のCD47ポリペプチドを発現するとともに、B2M遺伝子及びCIITA遺伝子の改変、例えば遺伝子改変を有する。いくつかの事例では、その改変、例えば遺伝子改変により、B2M遺伝子及びCIITA遺伝子が不活性化する。いくつかの実施形態では、その操作初代細胞は、O型ABO血液型である。いくつかの実施形態では、その操作初代細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である。
【0899】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、操作細胞を生成する方法であって、その細胞内で、MICA及び/またはMICBの発現を低下または消失させることと、B2Mの発現を低下または消失させることと、CD47の発現を増加させること(例えば過剰発現させること)を含む方法である。いくつかの実施形態では、その方法は、MICAの発現を低下または消失させる改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、MICAの発現を低下または消失させる改変は、MICA遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、MICAを低下または消失させる改変は、その細胞内のすべてのMICAコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、その不活性化または破壊は、MICA遺伝子におけるインデル、またはMICA遺伝子のゲノムDNAの連続領域の欠失を含む。いくつかの実施形態では、そのインデルは、フレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、そのMICA遺伝子は、ノックアウトされている。いくつかの実施形態では、MICAの発現を低下または消失させる改変は、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集によって、MICAタンパク質の発現を低下または消失させることを含む。いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、MICA遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意に、そのCasはCas9である。いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、そのCRISPR-Casの組み合わせは、MICA遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む。いくつかの実施形態では、そのCRISPR-Casの組み合わせは、そのgRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。いくつかの実施形態では、その方法は、MICBの発現を低下または消失させる改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、MICBの発現を低下または消失させる改変は、MICB遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、MICBを低下または消失させる改変は、その細胞内のすべてのMICBコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、その不活性化または破壊は、MICB遺伝子におけるインデル、またはMICB遺伝子のゲノムDNAの連続領域の欠失を含む。いくつかの実施形態では、そのインデルは、フレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、そのMICB遺伝子は、ノックアウトされている。いくつかの実施形態では、MICBの発現を低下または消失させる改変は、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集によって、MICBタンパク質の発現を低下または消失させることを含む。いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、MICB遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意に、そのCasはCas9である。いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、そのCRISPR-Casの組み合わせは、MICB遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む。いくつかの実施形態では、そのCRISPR-Casの組み合わせは、そのgRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。いくつかの実施形態では、その方法は、B2Mの発現を低下または消失させる改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、B2Mの発現を低下または消失させる改変は、B2M遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、B2Mを低下または消失させる改変は、その細胞内のすべてのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、その不活性化または破壊は、B2M遺伝子におけるインデル、またはB2M遺伝子のゲノムDNAの連続領域の欠失を含む。いくつかの実施形態では、そのインデルは、フレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、そのB2M遺伝子は、ノックアウトされている。いくつかの実施形態では、B2Mの発現を低下または消失させる改変は、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集によって、B2Mタンパク質の発現を低下または消失させることを含む。いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意に、そのCasはCas9である。いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、そのCRISPR-Casの組み合わせは、B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む。いくつかの実施形態では、そのCRISPR-Casの組み合わせは、そのgRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。いくつかの実施形態では、その方法は、その細胞内のCIITAの発現を低下または消失させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、その方法は、CIITAの発現を低下または消失させる改変を導入することを含む。いくつかの実施形態では、CIITAの発現を低下または消失させる改変は、CIITA遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、CIITAを低下または消失させる改変は、その細胞内のすべてのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む。いくつかの実施形態では、その不活性化または破壊は、CIITA遺伝子におけるインデル、またはCIITA遺伝子のゲノムDNAの連続領域の欠失を含む。いくつかの実施形態では、そのインデルは、フレームシフト変異である。いくつかの実施形態では、そのCIITA遺伝子は、ノックアウトされている。いくつかの実施形態では、CD47の発現を増加させる改変は、CD47タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドであって、プロモーターに連結されている外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、そのCD47をコードする外因性ポリヌクレオチドは、その操作細胞のゲノムに組み込まれている。いくつかの実施形態では、その組み込みは、その細胞の標的ゲノム遺伝子座への標的挿入によるものであり、任意に、その標的挿入は、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集と相同配向型修復によるものである。いくつかの実施形態では、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低下させる改変は、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集によるものである。いくつかの実施形態では、そのヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集は、標的ゲノム遺伝子座を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものであり、任意に、そのCasはCas9である。いくつかの実施形態では、発現を増加させる改変(複数可)は、表面発現の増加を含み、及び/または発現を低下させる改変は、表面発現の低下を含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、低免疫原性細胞である。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、膵島β細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、網膜色素上皮細胞、グリア前駆細胞、内皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞及び血液細胞(例えば、形質細胞または血小板)から選択されている。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、T細胞及びNK細胞から選択されており、キメラ抗原受容体(CAR)をさらに含む。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、O型ABO血液型である。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、Rh因子陰性(Rh-)である。
【0900】
E.低免疫原性表現型のアッセイ
いくつかの実施形態では、提供する操作細胞は、患者(例えばレシピエント対象)に投与すると、免疫認識及び免疫応答を回避できるように改変されている。その細胞は、in vitro及びin vivoで、免疫細胞による殺傷を回避できる。いくつかの実施形態では、その細胞は、マクロファージ及びNK細胞による殺傷を回避する。いくつかの実施形態では、その細胞は、免疫細胞または対象の免疫系に無視される。換言すると、本明細書に記載の方法に従って投与された細胞は、免疫系の免疫細胞によって検出不可能である。いくつかの実施形態では、その細胞は、覆い隠されるので、免疫拒絶を回避する。
【0901】
本発明で提供する操作細胞が免疫認識を回避するのかを判断する方法としては、IFN-γ Elispotアッセイ、ミクログリア殺傷アッセイ、細胞生着動物モデル、サイトカイン放出アッセイ、ELISA、生物発光イメージング、クロム放出アッセイまたはXcelligence解析を用いた殺傷アッセイ、混合リンパ球反応、及び免疫蛍光解析が挙げられるが、これらに限定されない。
【0902】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているように、操作細胞を改変または生成したら、それらの細胞の低免疫原性についてアッセイしてよい。様々なアッセイのいずれかを用いて、その細胞が、低免疫原性であるか、または免疫系を回避できるかを評価できる。例示的なアッセイとしては、WO2016183041及びWO2018132783に記載されているようないずれかが挙げられる。
【0903】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の操作細胞は、宿主の免疫応答を刺激することなく、宿主内で、1週間以上(例えば、1週間、2週間、1カ月、2カ月、3カ月、6カ月、1年、2年、3年、4年、5年以上、例えば、細胞及び/またはその子孫の寿命にわたって)生存する。その細胞は、宿主内で生存する限り、その導入遺伝子の発現を維持し、及び/または標的遺伝子の発現が欠失もしくは低下する。いくつかの態様では、その導入遺伝子が発現しなくなった場合、及び/または標的遺伝子が発現する場合には、その操作細胞を宿主の免疫系によって除去し得る。いくつかの実施形態では、その操作細胞をレシピエントに投与後、その細胞をin vivoで検出可能にするタンパク質(例えば、GFPなどの蛍光タンパク質、トランケート型受容体、またはその他のサロゲートマーカーもしくは他の検出可能なマーカー)をコードする導入遺伝子をさらに発現させることによって、その細胞の持続性または生存をモニタリングしてよい。
【0904】
その低免疫原性細胞が生成されたら、WO2016183041及びWO2018132783に記載されているように、それらの細胞の低免疫原性、生着及び機能についてアッセイしてよい。
【0905】
その低免疫原性細胞は、それらの細胞を、意図した組織部位に生着させるとともに、機能不全の領域を再構成または再生させる方式で投与する。いくつかの実施形態では、その低免疫原性細胞は、生着(例えば生着の成功)についてアッセイする。いくつかの実施形態では、その低免疫原性細胞の生着は、あらかじめ選択した期間の後に評価する。いくつかの実施形態では、その生着細胞は、細胞の生存についてモニタリングする。例えば、その細胞の生存は、生物発光イメージング(BLI)によってモニタリングしてよく、この場合、その細胞の生存をモニタリングするために、その細胞にルシフェラーゼ発現コンストラクトをトランスダクションする。いくつかの実施形態では、その生着細胞は、当該技術分野において知られている免疫染色法及びイメージング法によって可視化する。いくつかの実施形態では、その生着細胞は、生着の成功を判断するために検出し得る既知のバイオマーカーを発現する。例えば、フローサイトメトリーを用いて、特定のバイオマーカーの表面発現を判断し得る。いくつかの実施形態では、その低免疫原性細胞は、予想どおりに、意図した組織部位に生着する(例えば、その低免疫原性細胞の生着の成功)。いくつかの実施形態では、その低免疫原性細胞は、必要に応じて、意図した組織部位、例えば、細胞不全部位に生着する。いくつかの実施形態では、その低免疫原性細胞は、非操作細胞(例えば、改変(複数可)を含まない細胞)が、意図した組織部位に生着するのと同じように、意図した組織部位に生着する。いくつかの実施形態では、その低免疫原性細胞の機能についてアッセイする。いくつかの実施形態では、その低免疫原性細胞は、意図した組織部位に生着する前の機能についてアッセイする。いくつかの実施形態では、その低免疫原性細胞は、意図した組織部位に生着した後の機能についてアッセイする。いくつかの実施形態では、あらかじめ選択した量の後に、その低免疫原性細胞の機能を評価する。いくつかの実施形態では、その生着細胞の機能は、その細胞が検出可能な表現型を示す能力によって評価する。例えば、生着膵島β細胞の機能は、糖尿病による、グルコース調節の消失の回復に基づき評価してよい。いくつかの実施形態では、その低免疫原性細胞の機能は、予想どおりである(例えば、その低免疫原性細胞の機能が有効である一方で、抗体の媒介による拒絶は回避される)。いくつかの実施形態では、その低免疫原性細胞の機能は、必要に応じたものであり、例えば、細胞不全部位において十分な機能を持つ一方で、抗体の媒介による拒絶は回避される。いくつかの実施形態では、その低免疫原性細胞は、非操作細胞(例えば、改変(複数可)を含まない細胞)が機能するのと同じように機能する一方で、抗体の媒介による拒絶は回避される。
【0906】
いくつかの実施形態では、低免疫原性は、WO2018132783の図13及び図15に例示されているような多くの技法を用いてアッセイする。これらの技法には、同種異系宿主へ移植して、その宿主の免疫系から逃避する低免疫原性多能性細胞の成長(例えばテラトーマ)についてモニタリングすることが含まれる。いくつかの事例では、低免疫原性多能性細胞誘導体をトランスダクションして、ルシフェラーゼを発現させ、その後に、生物発光イメージングを使用することができる。同様に、このような細胞に対する宿主動物のT細胞応答及び/またはB細胞応答を試験して、その細胞が、その宿主動物において免疫反応を起こさないことを確認する。T細胞応答は、Elispot、ELISA、FACS、PCRまたはマスサイトメトリー(CYTOF)によって評価できる。B細胞応答または抗体応答は、FACSまたはLuminexを用いて評価する。これに加えて、またはこの代わりに、その細胞は、WO2018132783の図14及び15に概ね示されているように、自然免疫応答、例えば、NK細胞による殺傷をそれらが回避する能力についてアッセイしてもよい。
【0907】
いくつかの実施形態では、その細胞の免疫原性は、当業者に認識されている、T細胞のイムノアッセイ、例えば、T細胞増殖のアッセイ、T細胞活性化のアッセイ、及びT細胞による殺傷のアッセイを用いて評価する。いくつかの事例では、T細胞増殖のアッセイは、その細胞をインターフェロン-γで前処理し、その細胞を、標識したT細胞と共培養し、予め選択した期間の後に、そのT細胞集団(または増殖しているT細胞集団)の存在をアッセイすることを含む。いくつかの事例では、そのT細胞活性化のアッセイは、T細胞を、本明細書に概説されている細胞と共培養し、そのT細胞内のT細胞活性化マーカーの発現レベルを求めることを含む。
【0908】
in vivoアッセイを行って、本明細書に概説されている細胞の免疫原性を評価することができる。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞の生存及び免疫原性は、同種異系ヒト化免疫不全マウスモデルを用いて求める。いくつかの事例では、その低免疫原性細胞は、同種異系ヒト化NSG-SGM3マウスに移植して、細胞の拒絶、細胞の生存、及びテラトーマの形成についてアッセイする。いくつかの事例では、移植した低免疫原性細胞は、そのマウスモデルにおいて長期生存する。
【0909】
その細胞の低免疫原性を含む免疫原性を求める追加の技法は、例えば、Deuse et al.,Nature Biotechnology,2019,37,252-258及びHan et al.,Proc Natl Acad Sci USA,2019,116(21),10441-10446に記載されており、その開示内容は、図、図の凡例、及び方法の説明を含め、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0910】
当業者には理解されるように、その多能性細胞内で、1つ以上のMHCクラスI分子(その細胞がヒト細胞に由来するときにはHLA I)の機能がうまく低下しているかは、当該技術分野で知られている技法を用いて、及び下に記載されているように、例えば、HLA複合体に結合する標識抗体を用いたFACS法、例えば、ヒト主要組織適合性HLAクラスI抗原のα鎖に結合する市販のHLA-A抗体、HLA-B抗体、HLA-C抗体を用いたFACS法を用いて測定できる。
【0911】
加えて、その細胞を試験して、HLA I複合体が細胞表面上に発現していないことを確認できる。これは、上述のように、1つ以上のHLA細胞表面の構成要素に対する抗体を用いるFACS解析によってアッセイしてよい。
【0912】
その多能性細胞またはその誘導体内で、1つ以上のMHCクラスII分子(その細胞がヒト細胞に由来するときにはHLA II)の機能がうまく低下しているかは、当該技術分野で知られている技法、例えば、そのタンパク質に対する抗体を用いるウエスタンブロッティング、FACS法、RT-PCR技法などを用いて測定できる。
【0913】
加えて、その細胞を試験して、HLA II複合体がその細胞表面上で発現しないことを確認できる。また、このアッセイは、当該技術分野で知られているように行い(例えば、WO2018132783の図21を参照されたい)、概して、ヒトHLAクラスII分子HLA-DR抗原、HLA-DP抗原及び大半のHLA-DQ抗原に結合する市販の抗体に基づき、ウエスタンブロットまたはFACS解析のいずれかを用いて行う。
【0914】
本発明で提供する低免疫原性細胞は、HLA I及びHLA II(または1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子)の低減に加えて、マクロファージの食作用及びNK細胞による殺傷に対する感受性が低下している。得られる低免疫原性細胞は、1つ以上のCD24導入遺伝子の発現により、免疫マクロファージ及び自然免疫経路から「逃避する」。
【0915】
D.操作細胞集団、及び医薬組成物などの組成物
本発明で提供するのは、本明細書に記載の操作細胞のいずれかを複数を含む操作細胞集団である。いくつかの事例では、その細胞集団は、細胞の混合物を含む。いくつかの事例では、その集団中の細胞の少なくとも約30%は、本明細書に記載の一連の改変を含む。いくつかの事例では、その細胞集団は、1つ以上の様々な細胞種を含む。
【0916】
いくつかの実施形態では、その集団は、膵島細胞の混合物を含む。いくつかの実施形態では、その集団は、膵臓のβ細胞、膵臓のα細胞及び膵臓のγ細胞からなる群から選択した2つ以上の様々な細胞種を含め、膵臓の膵島細胞の混合物を含む。いくつかの事例では、その集団は、膵臓のα、β及びγ細胞を含む。いくつかの事例では、その集団は、初代細胞を含む。いくつかの実施形態では、その集団は、幹細胞または前駆細胞から分化させた細胞(例えば、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、造血幹細胞、間葉幹細胞、内皮幹細胞、上皮幹細胞、脂肪幹細胞、生殖系列幹細胞、肺幹細胞、臍帯血幹細胞、多能性幹細胞(PSC)及び多分化能性幹細胞から分化させた細胞)を含む。
【0917】
いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて1つ以上の改変を含む。いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICAポリペプチドの細胞表面発現が低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞上でのMICAポリペプチドの表面発現の低下は、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上のMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%は、MICAポリペプチドの細胞表面発現が見られない。
【0918】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICBポリペプチドの細胞表面発現が低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞上でのMICBポリペプチドの表面発現の低下は、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICBポリペプチドの細胞表面発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%は、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICBポリペプチドの細胞表面発現が見られない。
【0919】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、1つ以上の寛容原性因子をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0920】
いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含む。いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、B2M及び/またはCIITAの発現の低下を含む。いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、B2M及びCIITAの発現の低下を含む。いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、B2M遺伝子のアレルの両方を不活性化する1つ以上の変化を含む。いくつかの実施形態では、その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CIITA遺伝子のアレルの両方を不活性化する1つ以上の変化を含む。
【0921】
いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICAの細胞表面発現が低下しており、その操作細胞上のMICAの細胞表面発現が、MICAの細胞表面発現を低下させるように操作する前のMICAの細胞表面発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下するようになっている。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICAの細胞表面発現が低下しており、その操作細胞上のMICAの細胞表面発現が、参照細胞上または参照細胞集団上のMICAの細胞表面発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下するようになっている。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICAの細胞表面発現が見られない(検出可能な細胞表面発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICAタンパク質の発現が、MICAタンパク質の発現を低下させるように操作する前のMICAタンパク質の発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICAタンパク質の発現が、参照細胞または参照細胞集団のMICAタンパク質の発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICAタンパク質の発現が見られない(検出可能なタンパク質発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICAタンパク質を含まない(検出可能なMICAタンパク質が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICAのmRNA発現が、MICAのmRNA発現を低下させるように操作する前のMICAのmRNA発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICAのmRNA発現が、参照細胞または参照細胞集団のMICAのmRNA発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICAのmRNA発現が見られない(検出可能なmRNA発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICAのmRNAを含まない(検出可能なMICAのmRNAが見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞集団は、本明細書に記載されているように、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子の発現の増加を含む。
【0922】
いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICBの細胞表面発現が低下しており、その操作細胞上のMICBの細胞表面発現が、MICBの細胞表面発現を低下させるように操作する前のMICBの細胞表面発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下するようになっている。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICBの細胞表面発現が低下しており、その操作細胞上のMICBの細胞表面発現が、参照細胞上または参照細胞集団上のMICBの細胞表面発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下するようになっている。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICBの細胞表面発現が見られない(検出可能な細胞表面発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICBタンパク質の発現が、MICBタンパク質の発現を低下させるように操作する前のMICBタンパク質の発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICBタンパク質の発現が、参照細胞または参照細胞集団のMICBタンパク質の発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICBタンパク質の発現が見られない(検出可能なタンパク質発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICBタンパク質を含まない(検出可能なMICBタンパク質が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICBのmRNA発現が、MICBのmRNA発現を低下させるように操作する前のMICBのmRNA発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICBのmRNA発現が、参照細胞または参照細胞集団のMICBのmRNA発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICBのmRNA発現が見られない(検出可能なmRNA発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICBのmRNAを含まない(検出可能なMICBのmRNAが見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞集団は、本明細書に記載されているように、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子の発現の増加を含む。
【0923】
いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICA及びMICBの細胞表面発現が低下しており、その操作細胞上のMICA及びMICBの細胞表面発現が、MICA及びMICBの細胞表面発現を低下させるように操作する前のMICA及びMICBの細胞表面発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下するようになっている。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICA及びMICBの細胞表面発現が低下しており、その操作細胞上のMICA及びMICBの細胞表面発現が、参照細胞上または参照細胞集団上のMICA及びMICBの細胞表面発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下するようになっている。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICA及びMICBの細胞表面発現が見られない(検出可能な細胞表面発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICA及びMICBのタンパク質発現が、MICA及びMICBのタンパク質発現を低下させるように操作する前のMICA及びMICBのタンパク質発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICA及びMICBのタンパク質発現が、参照細胞または参照細胞集団のMICA及びMICBのタンパク質発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICA及びMICBのタンパク質発現が見られない(検出可能なタンパク質発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICAタンパク質及びMICBタンパク質を含まない(検出可能なMICAタンパク質及びMICBタンパク質が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICA及びMICBのmRNA発現が、MICA及びMICBのmRNA発現を低下させるように操作する前のMICA及びMICBのmRNA発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICA及びMICBのmRNA発現が、参照細胞または参照細胞集団のMICA及びMICBのmRNA発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICA及びMICBのmRNA発現が見られない(検出可能なmRNA発現が見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その集団中の操作細胞の少なくとも約50%は、MICA及びMICBのmRNAを含まない(検出可能なMICA及びMICBのmRNAが見られないことを含む)。いくつかの実施形態では、その操作細胞集団は、本明細書に記載されているように、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下、ならびに1つ以上の寛容原性因子の発現の増加を含む。
【0924】
本発明で提供するのは、その操作細胞または操作細胞集団を含む組成物でもある。いくつかの実施形態では、その組成物は、医薬組成物である。
【0925】
いくつかの実施形態では、本発明で提供する医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む。許容可能な担体、賦形剤または安定剤は、レシピエントにとって、用いる投与量及び濃度において無毒であり、これらとしては、緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチルパラベンもしくはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールなど)、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン、親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジン、グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む単糖、二糖及び他の炭水化物、キレート剤、例えばEDTA、糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール、塩形成対イオン、例えばナトリウム、金属複合体(例えばZn-タンパク質複合体)、及び/または非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート(TWEEN(商標))、ポロキサマー(PLURONICS(商標))もしくはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、薬学的に許容される緩衝剤(例えば、中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)を含む。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、例えば、その組成物のpH、浸透圧、粘度、透明性、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解速度、放出速度、吸着性または透過性を改変、維持または保存するための1つ以上の賦形剤を含むことができる。いくつかの態様では、細胞を含む医薬組成物は、タンパク質を含む医薬組成物とは異なる場合があることを当業者は理解する。
【0926】
「医薬製剤」という用語は、その製剤に含まれる活性成分の生物学的活性を有効なものとするとともに、その製剤を投与されることになる対象にとって許容できない毒性がある追加の成分を含まないような形態である調製物を指す。
【0927】
「薬学的に許容される担体」とは、医薬製剤中の成分のうち、活性成分以外の成分であって、対象にとって無毒である成分を指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝剤、賦形剤、安定剤または保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、その薬学的に許容される担体は、通常の生理食塩水、例えば、ヒトへの投与に適する通常の生理食塩水などの緩衝液である。
【0928】
いくつかの実施形態での医薬組成物は、疾患または病態を治療または予防するのに有効な量、例えば、治療有効量または予防有効量で、本明細書に記載されているような操作細胞を含む。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、疾患または病態を治療または予防するのに有効な量、例えば、治療有効量または予防有効量で、本明細書に記載されているような操作細胞を含む。いくつかの実施形態での治療有効性または予防有効性は、治療を受けている対象の定期的な評価によってモニタリングする。その病態に応じて、数日以上、反復投与する際には、疾患の症状が所望どおりに抑制されるまで治療を繰り返す。しかしながら、他の投与レジメンが有用な場合もあり、他の投与レジメンを定めることもできる。所望の投与量は、その組成物の1回のボーラス投与、その組成物の複数回のボーラス投与、またはその組成物の持続注入による投与によって送達できる。
【0929】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているような操作細胞は、標準的な投与技法、製剤及び/または器具を用いて投与する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているような操作細胞は、標準的な投与技法、製剤及び/または器具を用いて投与する。提供するのは、その組成物を保存及び投与するための製剤及び器具、例えば、シリンジ及びバイアルである。操作細胞は、カテーテルによる投与、全身注射、局所注射、静脈内注射または非経口投与を含む局所注射によって投与できる。治療用組成物(例えば、操作細胞を含む医薬組成物)を投与するときには、概して、注射可能な単位投与形態(溶液、懸濁液、乳濁液)で調合することになる。
【0930】
製剤としては、静脈内投与、腹腔内投与または皮下投与用の製剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、その細胞集団は、非経口投与する。本明細書で使用する場合、「非経口」という用語には、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、膣投与及び腹腔内投与が含まれる。いくつかの実施形態では、その細胞集団は、静脈内注射、腹腔内注射または皮下注射による全身末梢送達を用いて、対象に投与する。
【0931】
いくつかの実施形態での組成物は、滅菌液体調製液、例えば、等張水溶液、等張懸濁液、等張乳濁液または等張分散液として供給し、この調製液は、いくつかの態様では、所定のpHまで緩衝する。液体組成物を、特に注射によって投与する方が多少利便的である。液体組成物は、担体を含むことができ、その担体は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)及びこれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であることができる。注射可能な滅菌溶液は、溶媒に、例えば、適切な担体、希釈剤または賦形剤、例えば、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどとの混合物に、その細胞を組み込むことによって調製できる。
【0932】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体には、医薬の投与と適合するすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤などを含めることができる(Gennaro,2000,Remington:The science and practice of pharmacy,Lippincott,Williams & Wilkins,Philadelphia,PA)。このような担体または希釈剤の例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。リポソーム及び非水性ビヒクル、例えば固定油も使用してよい。その組成物には、補助的な活性化合物も組み込むことができる。その医薬用担体は、その操作細胞に適する担体、例えば、生理食塩水、デキストロース溶液、またはヒト血清アルブミンを含む溶液でなければならない。いくつかの実施形態では、このような組成物用の薬学的に許容される担体またはビヒクルは、生きた細胞を投与可能にするのに十分な時間、その操作細胞を維持したり、またはその生存を維持したりできるいずれかの無毒の水溶液である。例えば、その薬学的に許容される担体またはビヒクルは、生理食塩水または緩衝生理食塩水であることができる。
【0933】
いくつかの実施形態では、その組成物は、医薬組成物を含め、滅菌組成物である。いくつかの実施形態では、その細胞の単離、濃縮または培養は、例えば、閉鎖環境または滅菌環境、例えば滅菌培養バッグで行って、エラー、ユーザーによる操作及び/またはコンタミを最小限に抑える。いくつかの実施形態では、無菌性は、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって容易に実現し得る。いくつかの実施形態では、培養は、気体透過性の培養容器を用いて行う。いくつかの実施形態では、培養は、バイオリアクターを用いて行う。
【0934】
本発明で提供するのは、提供する操作細胞の凍結保存に適する組成物でもある。いくつかの実施形態では、提供する操作細胞は、凍結保存用培地で凍結保存する。いくつかの実施形態では、その凍結保存用培地は、無血清の凍結保存用培地である。いくつかの実施形態では、その組成物は、凍結保護剤を含む。いくつかの実施形態では、その凍結保護剤は、DMSO及び/またはグリセロールであるか、またはDMSO及び/またはグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、その凍結保存用培地は、5%(v/v)もしくは約5%(v/v)のDMSOであるか、または10%(v/v)もしくは約10%(v/v)のDMSOである。いくつかの実施形態では、その凍結保存用培地は、5%(v/v)または約5%(v/v)のDMSOである。いくつかの実施形態では、その凍結保存用培地は、6%(v/v)または約6%(v/v)のDMSOである。いくつかの実施形態では、その凍結保存用培地は、7%(v/v)または約7%(v/v)のDMSOである。いくつかの実施形態では、その凍結保存用培地は、7.5%(v/v)または約7.5%(v/v)のDMSOである。いくつかの実施形態では、その凍結保存用培地は、8%(v/v)または約8%(v/v)のDMSOである。いくつかの実施形態では、その凍結保存用培地は、9%(v/v)または約9%(v/v)のDMSOである。いくつかの実施形態では、その凍結保存用培地は、10%(v/v)または約10%(v/v)のDMSOである。いくつかの実施形態では、その凍結保存用培地は、市販の凍結保存溶液(CryoStor(商標)CS10)を含む。CryoStor(商標)CS10は、10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む凍結保存用培地である。いくつかの実施形態では、凍結保存用に調合した組成物は、低温、例えば超低温で保存でき、例えば、-40℃~-150℃、例えば、80℃または約80℃±6.0℃の範囲の温度で保存できる。
【0935】
いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、本明細書に記載の操作細胞と、Plasma-Lyte Aを31.25%(v/v)、5%デキストロース/0.45%塩化ナトリウムを31.25%(v/v)、10%デキストラン40(LMD)/5%デキストロース、25%ヒト血清アルブミン(HSA)を20%(v/v)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)を7.5%(v/v)含む薬学的に許容される担体とを含む。
【0936】
いくつかの実施形態では、その凍結保存操作細胞は、投与の際、解凍によって調製する。いくつかの事例では、その操作細胞は、解凍直後に、対象に投与できる。このような実施形態では、その組成物は、いずれものさらなる処理も行わないReady-to-Use型である。別の事例では、その操作細胞は、解凍後に、薬学的に許容される担体での再懸濁、活性化剤または刺激剤とのインキュベーションなどによって、さらに処理を行うか、または対象への投与前に、薬学的に許容される緩衝液中での活性化、洗浄及び再懸濁を行う。
【0937】
いくつかの実施形態では、その組成物は、本明細書に記載の操作細胞の集団のいずれかを含み、(a)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICAポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、その操作細胞上でのMICAポリペプチドの表面発現の低下は、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上のMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、(b)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、(c)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含み、その操作細胞上の1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現の低下は、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上のMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、ヌクレアーゼベースの遺伝子編集によって操作されている。
【0938】
いくつかの実施形態では、その組成物は、本明細書に記載の操作細胞の集団のいずれかを含み、(a)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICBポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、その操作細胞上でのMICBポリペプチドの表面発現の低下は、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上のMICBポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、(b)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、(c)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含み、その操作細胞上の1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現の低下は、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上のMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、ヌクレアーゼベースの遺伝子編集によって操作されている。
【0939】
いくつかの実施形態では、その組成物は、本明細書に記載の操作細胞の集団のいずれかを含み、(a)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICAポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、その操作細胞上でのMICAポリペプチドの表面発現の低下は、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上のMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、(b)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICBポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、その操作細胞上でのMICBポリペプチドの表面発現の低下は、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上のMICBポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、(c)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、(d)その集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかは、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含み、その操作細胞上の1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現の低下は、1つ以上の改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上のMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下している。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、ヌクレアーゼベースの遺伝子編集によって操作されている。
【0940】
いくつかの実施形態では、その細胞集団またはその組成物は、2人以上のドナー対象に由来する細胞、または2つ以上の採取試料(同じドナー対象における採取試料など)に由来する細胞を含む。いくつかの実施形態では、得られた操作細胞は、2つ以上の供給源からプールして、その細胞集団またはその組成物を作製する。いくつかの実施形態では、2人以上のドナー対象のそれぞれは、そのドナー試料をそのドナー対象から得る時点に、健常な対象であるか、または疾患または病態である疑いがない。
【0941】
E.キット、成分及び製品
いくつかの態様では、本発明で提供するのは、本明細書に記載の方法、器具及びシステムのキット、構成要素及び組成物(消耗品など)である。いくつかの実施形態では、そのキットは、本発明の開示に従って使用するための説明書を含む。
【0942】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、本明細書に記載の操作細胞の集団を含むキットまたは組成物である。いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、複数の操作細胞を含む細胞の集団を含むキットまたは組み合わせであり、その操作細胞は、(i)MICA及び/またはMICBの発現を低下させる改変、(ii)CD47の発現を増加させる改変、ならびに(iii)1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子(例えば、1つ以上のMHCクラスIヒト白血球抗原及び/または1つ以上のMHCクラスIIヒト白血球抗原)の発現を低下させる改変を含み、その発現の増加及び発現の低下は、その改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである。いくつかの実施形態では、そのキットの成分は、同時に投与してよい。いくつかの実施形態では、そのキットの成分は、順次投与してよい。
【0943】
本発明のいくつかの実施形態では、細胞療法を含め、臨床移植療法に有用な物質を含む製品を提供する。いくつかの実施形態では、その製品は、細胞不全の治療に有用な物質を含み、その不全は、糖尿病(例えばI型糖尿病)、血管の病態または血管疾患、自己免疫性甲状腺炎、肝疾患(例えば肝硬変)、角膜疾患(例えば、フックスジストロフィーまたは先天性遺伝性内皮ジストロフィー)、腎疾患、ならびにがん(例えば、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、グリオブラストーマ、神経芽腫、肺扁平上皮細胞癌、肝細胞癌及び膀胱癌)などであるが、これらに限定されない。その製品は、容器、及びその容器上にあるかまたはその容器に付随するラベルもしくは添付文書を含むことができる。適切な容器としては、例えば、ビン、バイアル、シリンジなど(例えば、ガラス製またはプラスチック製の容器)が挙げられる。概して、その容器には、同種異系細胞療法に有効である組成物が収容され、滅菌アクセスポートがある場合がある(例えば、その容器は、皮下用注射針で穿刺可能なストッパーを備える静脈内輸液バッグまたはバイアルであってよい)。少なくとも、その医薬組成物中の成分は、操作細胞、例えば、本発明で提供する操作細胞のいずれかの集団である。そのラベルまたは添付文書には、その組成物が、特定の病態の治療のために用いるものであることが示されている。そのラベルまたは添付文書は、その医薬組成物を患者に投与するための説明をさらに含むことになる。いくつかの実施形態では、その製品は、併用治療を含む。
【0944】
その製品及び/またはキットは、添付文書をさらに含んでもよい。その添付文書は、治療用製品の商用パッケージに通常含まれる説明書であって、適応症、用法、投与量、投与法、禁忌及び/またはそのような治療用製品の使用に関する警告に関する情報を含む説明書を指す。
【0945】
F.治療方法
本発明で提供するのは、提供する細胞組成物であって、本明細書に記載の操作細胞の集団を含み、対象の疾患または病態の治療で使用するたの細胞組成物に関する組成物及び方法である。本発明で提供するのは、本明細書に記載の操作細胞の集団を投与することによって、患者を治療する方法である。いくつかの実施形態では、その細胞集団は、医薬組成物で、例えば、本明細書に記載のいずれかで投与するように調合されている。上記のような方法及び用途としては、例えば、疾患、病態または障害である対象に、操作細胞集団、またはその集団を含む組成物を投与することを伴う治療方法及び用途が挙げられる。特定の適応疾患用に、本発明で提供するような適切な操作細胞を選択することは、当業者の技能レベルの範囲内である。いくつかの実施形態では、その細胞またはその医薬組成物は、その疾患または障害の治療を果たすために有効な量で投与する。用途としては、このような方法及び治療、ならびにこのような治療方法を行うための医薬の調製で、その操作細胞またはその医薬組成物を使用することが挙げられる。いくつかの実施形態では、その方法によって、その対象の疾患もしくは病態、または障害を治療する。
【0946】
本発明で提供する操作細胞は、例えば、疾患または障害を治療するための細胞療法の候補者を含め、いずれかの適する患者に投与できる。細胞療法の候補者としては、本発明で提供する該当の操作細胞の治療効果の恩恵を受ける可能性があると見られる疾患または病態を持ついずれかの患者が挙げられる。いくつかの実施形態では、その患者は、投与を受ける細胞の同種異系のレシピエントである。いくつかの実施形態では、提供する操作細胞は、同種異系細胞療法での使用に有効である。本発明で提供する該当の操作細胞の治療効果の恩恵を受ける候補者は、疾患または病態の消失、軽減または改善が見られる。
【0947】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するような操作細胞は、本発明で提供する方法のいずれかによって作製される細胞を含め、細胞療法で使用できる。本明細書に概説されている治療用細胞は、以下に限定されないが、がん、遺伝子障害、慢性感染症、自己免疫障害、神経障害などのような障害を治療するのに有用である。
【0948】
いくつかの実施形態では、その患者は、細胞不全である。本明細書で使用する場合、「細胞不全」とは、その患者において機能障害または細胞集団の消失を引き起こすいずれかの疾患または病態を指し、その患者は、その細胞集団を自然に補充または再生できない。例示的な細胞不全としては、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症、重症筋無力症、関節リウマチ、糖尿病及び全身性ループスエリテマトーデス)、神経変性疾患(例えば、ハンチントン病及びパーキンソン病)、心血管病態及び心血管疾患、血管病態及び血管疾患、角膜病態及び角膜疾患、肝病態及び肝疾患、甲状腺病態及び甲状腺疾患、ならびに腎病態及び腎疾患が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、その操作細胞を投与される患者は、がんである。本発明で提供する操作細胞によって治療できる例示的ながんとしては、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、グリオブラストーマ、神経芽腫、肺扁平上皮細胞癌、肝細胞癌及び膀胱癌が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、そのがん患者は、本発明で提供する操作CAR T細胞の投与によって治療する。
【0949】
いくつかの実施形態では、その疾患または病態は、全身性ループスエリテマトーデス、1型糖尿病、脱毛症、セリアック病、関節リウマチ、シェーグレン病、合併症を伴うかまたは伴わない多胎妊娠を含む多胎妊娠を含む妊娠からなる群から選択する。
【0950】
いくつかの実施形態では、本発明で提供する操作細胞またはその細胞を含む組成物は、過去の移植、例えば、細胞移植、輸血、組織移植または器官移植の際に存在した1つ以上の抗原の感作を受けた患者の治療に有用である。ある特定の実施形態では、その過去の移植は、同種異系移植であり、その患者は、同種異系移植に由来する1つ以上の同種抗原の感作を受けている。同種異系移植としては、同種異系細胞移植、同種異系輸血、同種異系組織移植または同種異系器官移植が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、その患者は、妊婦であるか、または妊娠したことがある感作患者(例えば、多胎妊娠、及び一般に妊娠と関連するいずれかの病態(子癇前症が挙げられる)を含め、妊娠で同種免疫を受けているか、または同種免疫を受けていた患者)である。ある特定の実施形態では、その患者は、過去の移植の際に含まれた1つ以上の抗原の感作を受けており、その過去の移植物は、改変ヒト細胞、改変ヒト組織または改変ヒト器官である。いくつかの実施形態では、その改変ヒト細胞、改変ヒト組織または改変ヒト器官は、改変自家ヒト細胞、改変自家ヒト組織または改変自家ヒト器官である。いくつかの実施形態では、その過去の移植物は、非ヒト細胞、非ヒト組織または非ヒト器官である。例示的な実施形態では、その過去の移植物は、改変非ヒト細胞、改変非ヒト組織または改変非ヒト器官である。ある特定の実施形態では、その過去の移植物は、ヒト成分を含むキメラである。ある特定の実施形態では、その過去の移植物は、CAR T細胞である。ある特定の実施形態では、その過去の移植物は、自家移植物であり、その患者は、その自家移植物に由来する1つ以上の自家抗原の感作を受けている。ある特定の実施形態では、その過去の移植物は、自家細胞、自家組織または自家器官である。ある特定の実施形態では、その感作を受けた患者は、アレルギーがあり、1つ以上のアレルゲンに感作されている。例示的な実施形態では、その患者は、花粉症、食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬物アレルギーまたはアトピー性皮膚炎である。
【0951】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実施形態は、自家の設定において有用であり、例えば、その操作細胞(及びその使用方法)は、自家細胞である。いくつかの実施形態では、その細胞は、同種異系細胞である。
【0952】
いくつかの実施形態では、提供する操作細胞、またはその細胞を含む組成物を用いた治療を受ける患者は、以前に治療を受けている。いくつかの実施形態では、その操作細胞、またはその細胞を含む組成物を用いて、その以前の治療の際と同じ病態を治療する。ある特定の実施形態では、その操作細胞、またはその細胞を含む組成物を用いて、その以前の治療の際とは異なる病態を治療する。いくつかの実施形態では、その患者に投与する操作細胞、またはその細胞を含む組成物は、その以前の治療によって治療したものと同じ病態または疾患の治療のための治療効果の増強が見られる。ある特定の実施形態では、投与したその操作細胞、またはその細胞を含む組成物は、その以前の治療と比べて、その患者の病態または疾患の治療のための治療効果が長い。例示的な実施形態では、投与したその細胞は、その以前の治療と比べて、がん細胞に対する効力、有効性及び/または特異性の増強が見られる。特定の実施形態では、その操作細胞は、がんの治療のためのCAR T細胞である。
【0953】
本発明で提供する方法は、特定の病態または疾患に対して、一次治療の失敗後に、二次治療として使用できる。いくつかの実施形態では、その以前の治療は、治療効果のない治療である。本明細書で使用する場合、「治療効果のない」治療とは、患者において望ましい臨床転帰を下回る治療を指す。例えば、細胞不全に対する治療に関しては、治療効果のない治療とは、患者において不全細胞を補うために所望される機能的細胞レベル及び/または細胞活性レベルをもたらさない治療、及び/または治療の持続性を欠いた治療を指す場合がある。がんの治療に関しては、治療効果のない治療とは、所望の効力レベル、有効性レベル及び/または特異性レベルをもたらさない治療を指す。治療有効性は、当該技術分野で知られているいずれかの適切な技法を用いて測定できる。いくつかの実施形態では、その患者は、その以前の治療に対して免疫応答を示す。いくつかの実施形態では、その以前の治療は、その患者に拒絶される細胞移植片、組織移植片または器官移植片である。いくつかの実施形態では、その以前の治療には、機械的な補助による治療が含まれていた。いくつかの実施形態では、その機械的な補助による治療には、血液透析または補助人工心臓が含まれていた。いくつかの実施形態では、その患者は、その機械的な補助による治療に対して免疫応答を示した。いくつかの実施形態では、その以前の治療には、その治療用細胞が、望ましくない形で成長及び分裂するようなことがあれば、その治療用細胞を死滅させることができるセーフティスイッチを含む治療用細胞の集団が含まれていた。ある特定の実施形態では、その患者は、そのセーフティスイッチの誘導により、治療用細胞が死滅すると、免疫応答を示す。ある特定の実施形態では、その患者は、その以前の治療の感作を受けている。例示的な実施形態では、その患者は、本発明で提供するような操作細胞の投与によっては、感作を受けない。
【0954】
いくつかの実施形態では、提供する操作細胞、またはその細胞を含む組成物は、組織、器官または器官の一部の移植が必要な患者に、その移植を行う前に投与する。特定の実施形態では、その患者は、その操作細胞に対して免疫応答を示さない。ある特定の実施形態では、その操作細胞は、特定の組織または器官の細胞不全の治療のために、患者に投与し、その後、その患者は、同じ特定の組織または器官について組織または器官の移植を受ける。このような実施形態では、その操作細胞による治療は、やがて行われる組織置換または器官置換までのブリッジ療法として機能する。例えば、いくつかの実施形態では、その患者は、肝障害であり、肝移植を受ける前に、本発明で提供するような操作肝細胞による治療を受ける。ある特定の実施形態では、その操作細胞は、特定の組織または器官の細胞不全の治療のために、患者に投与し、その後で、その患者は、異なる組織または器官について組織移植または器官移植を受ける。例えば、いくつかの実施形態では、その患者は、腎移植を受ける前に、本発明で提供する膵臓の操作β細胞で治療されている糖尿病患者である。いくつかの実施形態では、その方法は、細胞不全の治療のためのものである。例示的な実施形態では、その組織移植または器官移植は、心臓移植、肺移植、腎移植、肝移植、膵臓移植、腸移植、胃移植、角膜移植、骨髄移植、血管移植、心臓弁移植または骨移植である。
【0955】
患者を治療する方法は概して、本発明で提供するような操作細胞、またはその細胞を含む組成物の投与によるものである。明らかであろうが、細胞及び/または治療タイミングに関して本明細書に記載の複数の実施形態のいずれも、その細胞の投与は、所望の部位の導入細胞を少なくとも部分的に局在させる方法または経路によって行う。その細胞は、所望の部位に直接移植することもできるし、またはその代わりに、その対象の所望の位置に送達させるいずれかの適切な経路によって投与することもでき、その際、その移植細胞またはその細胞の成分の少なくとも一部が、生存し続ける。いくつかの実施形態では、その細胞は、疾患または障害、例えば、細胞療法によって緩和できるいずれかの疾患、障害、病態またはその症状を治療するために投与する。
【0956】
いくつかの実施形態では、その操作細胞集団、またはその集団を含む組成物は、その患者が感作を受けてから少なくとも1日後、少なくとも2日後、少なくとも3日後、少なくとも4日後、少なくとも5日後、少なくとも6日後、少なくとも1週間後または少なくとも1カ月以上後に投与する。いくつかの実施形態では、その操作細胞集団、またはその集団を含む組成物は、その患者が感作を受けたか、またはその患者で、感作の特性または特徴が見られてから少なくとも1週間以上後に(例えば、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、9週間後、10週間後、11週間後、12週間後、13週間後、14週間後、15週間後、16週間後、17週間後、18週間後、19週間後または20週間以上後に)投与する。いくつかの実施形態では、その操作細胞集団、またはその集団を含む組成物は、その患者が移植(例えば同種異系移植)を受けたか、妊娠したか(例えば、妊娠で同種免疫を示しているか、もしくは同種免疫を示したことがあるか)、感作を受けたか、またはその患者で、感作の特性もしくは特徴が見られてから少なくとも1カ月以上後に(例えば、1カ月後、2カ月後、3カ月後、4カ月後、5カ月後、6カ月後、7カ月後、8カ月後、9カ月後、10カ月後、11カ月後、12カ月後、13カ月後、14カ月後、15カ月後、16カ月後、17カ月後、18カ月後、19カ月後または20カ月以上後に)投与する。
【0957】
いくつかの実施形態では、移植を受けたことがあるか、妊娠したことがあるか(例えば、妊娠で同種免疫を示しているか、もしくは同種免疫を示したことがあるか)、及び/または抗原(例えば同種抗原)の感作を受けた患者には、本明細書に記載の操作細胞集団の1回目の用量の投与、1回目の用量の後の回復期間、及び記載されている操作細胞集団の2回目の用量の投与を含む投与レジメンを行う。いくつかの実施形態では、第1の細胞集団及び第2の細胞集団中に存在する細胞種の混成は異なる。ある特定の実施形態では、第1の操作細胞集団及び第2の操作細胞集団に存在する細胞種の混成は、同じであるか、または実質的に同等である。多くの実施形態では、第1の操作細胞集団及び第2の操作細胞集団は、同じ細胞種を含む。いくつかの実施形態では、第1の操作細胞集団及び第2の操作細胞集団は、異なる細胞種を含む。いくつかの実施形態では、第1の操作細胞集団及び第2の操作細胞集団は、同じパーセンテージの細胞種を含む。別の実施形態では、第1の操作細胞集団及び第2の細胞集団は、異なるパーセンテージの細胞種を含む。
【0958】
いくつかの実施形態では、その回復期間は、操作細胞集団またはその集団を含む組成物の1回目の投与後に開始し、そのような細胞が、患者に存在しなくなるか、または検出不能になったら終了する。いくつかの実施形態では、その回復期間の持続期間は、その細胞の最初の投与から少なくとも1週間以上(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間または20週間以上)である。いくつかの実施形態では、その回復期間の持続期間は、その細胞の最初の投与から少なくとも1カ月以上(例えば、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月または20カ月以上)である。
【0959】
いくつかの実施形態では、投与する操作細胞集団、またはその集団を含む組成物は、その対象に投与するとき、低免疫原性である。いくつかの実施形態では、その操作細胞は、免疫機能低下細胞である。いくつかの実施形態では、その操作細胞に対する免疫応答は、免疫原性細胞(例えば、同じまたは同様の細胞種または表現型の細胞であるが、その操作細胞の改変、例えば遺伝子改変を含まない細胞の集団)の投与によって見られる免疫応答レベルと比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%低下するか、または少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%低い。いくつかの実施形態では、投与したその操作細胞集団、またはその集団を含む組成物は、その患者において、その操作細胞に対する免疫応答を誘発しない。
【0960】
いくつかの実施形態では、投与したその操作細胞集団、またはその集団を含む組成物は、その患者において、全身性TH1活性化レベルの低下、またはさらに低いレベルの全身性TH1活性化を誘発する。いくつかの事例では、その細胞によって誘発される全身性TH1活性化レベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは同様の細胞種または表現型の細胞であるが、その操作細胞の改変、例えば遺伝子改変を含まない細胞の集団)の投与によって見られる全身性TH1活性化レベルと比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%低い。いくつかの実施形態では、投与したその操作細胞集団、またはその集団を含む組成物は、その患者において、全身性TH1の活性化を誘発しない。
【0961】
いくつかの実施形態では、投与したその操作細胞集団、またはその集団を含む組成物は、その患者において、末梢血単核球(PBMC)の低下、またはさらに低いレベルの末梢血単核球(PBMC)を誘発する。いくつかの事例では、その細胞によって誘発されるPBMCの免疫活性化レベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは同様の細胞種または表現型の細胞であるが、その操作細胞の改変、例えば遺伝子改変を含まない細胞の集団)の投与によって見られるPBMCの免疫活性化レベルと比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%低い。いくつかの実施形態では、投与したその操作細胞集団、またはその集団を含む組成物は、その患者において、PBMCの免疫活性化を誘発しない。
【0962】
いくつかの実施形態では、投与したその操作細胞集団、またはその集団を含む組成物は、その患者において、ドナー特異的なIgG抗体のレベルの低下、またはさらに低いレベルのドナー特異的なIgG抗体を誘発する。いくつかの事例では、その細胞によって誘発されるドナー特異的なIgG抗体のレベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは同様の細胞種または表現型の細胞であるが、その操作細胞の改変、例えば遺伝子改変を含まない細胞の集団)の投与によって見られるドナー特異的なIgG抗体のレベルと比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%低い。いくつかの実施形態では、投与したその操作細胞集団は、その患者において、ドナー特異的なIgG抗体を誘発しない。
【0963】
いくつかの実施形態では、投与したその操作細胞集団、またはその集団を含む組成物は、その患者において、IgM抗体及びIgG抗体の産生レベルの低下、またはさらに低いレベルのIgM抗体及びIgG抗体の産生を誘発する。いくつかの事例では、その細胞によって誘発されるIgM抗体及びIgG抗体の産生レベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは同様の細胞種または表現型の細胞であるが、その操作細胞の改変、例えば遺伝子改変を含まない細胞の集団)の投与によって見られるIgM抗体及びIgG抗体の産生レベルと比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%低い。いくつかの実施形態では、投与したその操作細胞集団、またはその集団を含む組成物は、その患者において、IgM抗体及びIgG抗体の産生を誘発しない。
【0964】
いくつかの実施形態では、投与したその操作細胞集団、またはその集団を含む組成物は、その患者において、細胞傷害性T細胞による殺傷レベルの低下、または細胞傷害性T細胞によるさらに低い殺傷レベルを誘発する。いくつかの事例では、その細胞によって誘発される、細胞傷害性T細胞による殺傷レベルは、免疫原性細胞(例えば、同じまたは同様の細胞種または表現型の細胞であるが、その操作細胞の改変、例えば遺伝子改変を含まない細胞の集団)の投与によって見られる、細胞傷害性T細胞による殺傷レベルと比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%低い。いくつかの実施形態では、投与したその操作細胞集団、またはその集団を含む組成物は、その患者において、細胞傷害性T細胞による殺傷を誘発しない。
【0965】
上述のように、本発明で提供するのは、ある特定の実施形態では、同種抗原、例えばヒト白血球抗原の感作を受けた患者に投与できる細胞である。いくつかの実施形態では、その患者は、妊娠しているか、または妊娠したことがあり、例えば、妊娠中の同種免疫を伴う(例えば、胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)または胎児・新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT))。換言すると、その患者は、以下に限定されないが、胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)、新生児同種免疫性好中球減少症(NAN)及び胎児・新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)など、妊娠中の同種免疫と関連する障害もしくは病態であるか、またはその障害もしくは病態であったことがある。いくつかの実施形態では、その患者は、以下に限定されないが、同種異系細胞移植、同種異系輸血、同種異系組織移植または同種異系器官移植などの同種異系移植を受けたことがある。いくつかの実施形態では、その患者は、同種抗原に対するメモリーB細胞が見られる。いくつかの実施形態では、その患者は、同種抗原に対するメモリーT細胞が見られる。このような患者は、同種抗原に対するメモリーB細胞及びメモリーT細胞の両方が見られることもある。
【0966】
その患者は、記載されている細胞の投与を受けると、全身性免疫応答が見られないか、または低免疫原性ではない細胞に対する応答と比べて、全身性免疫応答レベルが低下する。いくつかの実施形態では、その患者は、適応免疫応答が見られないか、または低免疫原性ではない細胞に対する応答と比べて、適応免疫応答レベルが低下する。いくつかの実施形態では、その患者は、自然免疫応答が見られないか、または低免疫原性ではない細胞に対する応答と比べて、自然免疫応答レベルが低下する。いくつかの実施形態では、その患者は、T細胞応答が見られないか、または低免疫原性ではない細胞に対する応答と比べて、T細胞応答レベルが低下する。いくつかの実施形態では、その患者は、B細胞応答が見られないか、または低免疫原性ではない細胞に対する応答と比べて、B細胞応答レベルが低下する。
【0967】
いくつかの実施形態では、提供するのは、同種異系療法を用いて個体の病態を治療する方法であって、その個体に、本明細書に記載の操作細胞の集団または本明細書に記載の組成物を投与することを含む方法である。いくつかの実施形態では、その病態は、疾患または細胞不全である。いくつかの実施形態では、その疾患は、ループス、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、セリアック病、グレーブス病、乾癬及び大腸炎からなる群から選択する。いくつかの実施形態では、その疾患は、ループス(全身性ループスエリテマトーデスなど)である。いくつかの実施形態では、その疾患は、多発性硬化症である。いくつかの実施形態では、その疾患は、橋本病である。いくつかの実施形態では、その個体は、疾患または病態に対する治療を受けており、その個体は、ループス(全身性ループスエリテマトーデスなど)でもある。いくつかの実施形態では、その個体は、疾患または病態に対する治療を受けており、その個体は、多発性硬化症でもある。いくつかの実施形態では、その個体は、疾患または病態に対する治療を受けており、その個体は、橋本病でもある。いくつかの実施形態では、その個体は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体が循環血液中に存在する。いくつかの実施形態では、その個体は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体が持続的に存在する。いくつかの実施形態では、その個体は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在の原因となる自己免疫関連病態である。いくつかの実施形態では、その自己免疫関連病態は、橋本病である。
【0968】
いくつかの実施形態では、その個体は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在に基づき、その治療の対象に選ばれた。いくつかの実施形態では、その方法は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在に基づき、その個体をその治療の対象に選ぶことをさらに含む。いくつかの実施形態では、その個体を選ぶことは、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在をその個体において測定することをさらに含む。
【0969】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、同種異系療法を用いて個体の病態を治療する方法であって、(a)その個体の抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態を判断すること(抗MICA抗体陽性の状態により、その個体から得た血清試料に抗MICA抗体が存在することが示され、抗MICB抗体陽性の状態により、その個体から得た血清試料に抗MICB抗体が存在することが示される)と、(b)抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態に基づき、その個体に、本明細書に記載の操作細胞の集団を含む組成物、または本明細書に記載の組成物を投与することを含む方法であり、その抗MICA抗体の状態が陽性である場合には、その操作細胞集団は、MICAの発現の低下を含み、その抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その操作細胞集団は、MICBの発現の低下を含み、その抗MICA抗体の状態及びその抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その操作細胞集団は、MICA及びMICBの発現の低下を含む。いくつかの実施形態では、その方法は、その個体の抗MICA抗体の状態及び/または抗MICB抗体の状態に基づき、その個体をその治療の対象に選ぶことをさらに含む。いくつかの実施形態では、その方法は、その個体の抗MICA抗体の状態及び/または抗MICB抗体の状態を測定することをさらに含む。
【0970】
いくつかの実施形態では、提供するのは、同種異系療法を必要とする個体での使用に適する同種異系療法を特定する方法であり、その同種異系療法は、本明細書に記載の操作細胞集団を含む組成物または本明細書に記載の組成物を含み、その方法は、その個体の抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態を判断して、その個体での使用に適する同種異系療法を特定することを含み、その抗MICA抗体の状態が陽性である場合には、その適する同種異系療法は、MICAの発現の低下を含む操作細胞集団を含み、その抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その適する同種異系療法は、MICBの発現の低下を含む操作細胞集団を含み、その抗MICA抗体の状態及びその抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その適する同種異系療法は、MICA及びMICBの発現の低下を含む操作細胞集団を含む。
【0971】
いくつかの実施形態では、その細胞不全は、造血系疾患もしくは造血系障害と関連するか、またはその疾患もしくは病態は、造血系疾患もしくは造血系障害である。
【0972】
いくつかの実施形態では、その造血系疾患または造血系障害は、骨髄異形成、再生不良性貧血、ファンコニ貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、鎌状赤血球症、ダイアモンドブラックファン貧血、シュワッハマンダイアモンド障害、コストマン症候群、慢性肉芽腫性疾患、副腎白質ジストロフィー、白血球接着不全症、血友病、サラセミア、βサラセミア、白血病、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性(骨髄)白血病(AML)、成人リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、若年性慢性骨髄性白血病(CML)及び若年性骨髄単球性白血病(JMML)、重症複合免疫不全症(SCID)、X連鎖重症複合免疫不全症、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、慢性肉芽腫性疾患、チェディアック・東症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)またはAIDSである。
【0973】
いくつかの実施形態では、その細胞不全は、白血病もしくはミエローマと関連するか、またはその疾患もしくは病態は、白血病もしくはミエローマである。
【0974】
いくつかの実施形態では、その細胞不全は、自己免疫疾患もしくは自己免疫病態と関連するか、またはその疾患もしくは病態は、自己免疫疾患もしくは自己免疫病態である。
【0975】
いくつかの実施形態では、その自己免疫疾患または自己免疫病態は、急性播種性脳脊髄炎、急性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、抗合成酵素症候群、アトピー性アレルギー、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ぶどう膜炎、バロー病、バロー同心円硬化症、ベーチェット症候群、ベルジェ病、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、がん、キャッスルマン病、セリアック病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性再発性多発性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠損症、脳動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、びまん皮膚硬化型全身性強皮症、ドレスラー症候群、円板状ループスエリテマトーデス、湿疹、付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、本態性混合型クリオグロブリン血症、エバンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維性肺胞炎、胃炎、胃腸類天疱瘡、巨細胞性動脈炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性炎症性脱髄疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、炎症性脱髄性多発神経障害、間質性膀胱炎、若年性特発性関節炎、若年性関節リウマチ、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA疾患(LAD)、ルー・ゲーリック病、ルポイド肝炎、ループスエリテマトーデス、マジード症候群、メニエール病、顕微鏡的多発性血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合性結合組織病、限局性強皮症、ムッカ・ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、視神経脊髄炎、ニューロミオトニア、眼瘢痕性類天疱瘡、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、オード甲状腺炎、回帰性リウマチ、傍腫瘍性小脳変性症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリー・ロンベルク症候群、パーソネージ・ターナー症候群、周辺部ぶどう膜炎、天疱瘡、尋常性天疱瘡、悪性貧血、静脈周囲性脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性神経障害、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発性軟骨炎、ライター症候群、むずむず脚症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スチル病、スティッフパーソン症候群、亜急性細菌性心内膜炎、スザック症候群、スウィート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織疾患、未分化脊椎関節症、血管炎白斑またはウェゲナー肉芽腫症である。
【0976】
いくつかの実施形態では、その細胞集団は、造血幹細胞(HSC)及び/またはその誘導体を含む集団である。
【0977】
いくつかの実施形態では、その細胞不全は、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、神経変性疾患、神経変性病態、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、うつ病、神経精神障害発作、もしくは筋萎縮性側索硬化症(ALS)と関連するか、またはその疾患もしくは病態は、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、神経変性疾患、神経変性病態、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群(TS)、統合失調症、精神病、うつ病、神経精神障害発作、もしくは筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。
【0978】
いくつかの実施形態では、その細胞集団は、神経細胞及び/またはグリア細胞を含む集団である。
【0979】
いくつかの実施形態では、その細胞不全は、糖尿病と関連するか、またはその細胞療法は、糖尿病(I型糖尿病など)の治療のためのものであり、その細胞集団は、膵島β細胞を含む膵島細胞の集団である。いくつかの実施形態では、その膵島細胞は、膵島前駆細胞、未成熟膵島細胞及び成熟膵島細胞からなる群から選択されている。
【0980】
いくつかの実施形態では、その細胞不全は、血管の病態もしくは血管疾患と関連するか、またはその細胞療法は、血管の病態もしくは血管疾患の治療のためのものであり、その細胞集団は、内皮細胞集団である。
【0981】
いくつかの実施形態では、その細胞不全は、自己免疫性甲状腺炎と関連するか、またはその細胞療法は、自己免疫性甲状腺炎の治療のためのものであり、その細胞集団は、甲状腺前駆細胞集団である。
【0982】
いくつかの実施形態では、その細胞不全は、肝疾患と関連するか、またはその細胞療法は、肝疾患の治療のためのものであり、その肝疾患は、肝硬変を含む。いくつかの実施形態では、その細胞集団は、肝細胞または肝前駆細胞の集団である。
【0983】
いくつかの実施形態では、その細胞不全は、角膜疾患と関連するか、またはその細胞療法は、角膜疾患(フックスジストロフィーもしくは先天性遺伝性内皮ジストロフィーなど)の治療のためのもであり、その細胞集団は、角膜内皮前駆細胞または角膜内皮細胞の集団である。
【0984】
いくつかの実施形態では、その細胞不全は、腎疾患と関連するか、またはその細胞療法は、腎疾患の治療のためのもであり、その細胞集団は、腎前駆細胞または腎細胞の集団である。
【0985】
いくつかの実施形態では、その細胞療法は、がん(B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、急性骨髄性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、胃癌、胃腺癌、膵臓腺癌、グリオブラストーマ、神経芽腫、肺扁平上皮細胞癌、肝細胞癌または膀胱癌のいずれかなど)の治療のためのものであり、その細胞集団は、T細胞またはNK細胞の集団である。
【0986】
1.用量及び投与レジメン
その医薬組成物には、治療する適応症に応じて、本明細書に記載の細胞をいずれかの治療有効量で含めることができる。その細胞の非限定的な例としては、初代細胞(例えば初代T細胞)、及び記載されているように、操作した人工多能性幹細胞から分化させた細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、少なくとも約1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×1010個または5×1010個の細胞を含む。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、最大で約1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×10個、5×10個、1×1010個または5×1010個の細胞を含む。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、最大で約6.0×10個の細胞を含む。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、最大で約8.0×10個の細胞を含む。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、少なくとも約1×10~5×10個、5×10~1×10個、1×10~5×10個、5×10~1×10個、1×10~5×10個、5×10~1×10個、1×10~5×10個、5×10~1×10個、1×10~5×10個、5×10~1×10個、1×10~5×10個、5×10~1×10個、1×10~5×10個、5×10~1×10個、1×10~5×10個、5×10~1×1010個または1×1010~5×1010個の細胞を含む。例示的な実施形態では、その医薬組成物は、約1.0×10~約2.5×10個の細胞を含む。
【0987】
いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、体積が少なくとも5ml、10ml、15ml、20ml、25ml、30ml、35ml、40ml、45ml、50ml、55ml、60ml、65ml、70ml、75ml、80ml、85ml、90ml、95ml、100ml、110ml、120ml、130ml、140ml、150ml、160ml、170ml、180ml、190ml、200ml、250ml、300ml、350ml、400mlまたは500mlである。例示的な実施形態では、その医薬組成物は、体積が最大で約5ml、10ml、15ml、20ml、25ml、30ml、35ml、40ml、45ml、50ml、55ml、60ml、65ml、70ml、75ml、80ml、85ml、90ml、95ml、100ml、110ml、120ml、130ml、140ml、150ml、160ml、170ml、180ml、190ml、200ml、250ml、300ml、350ml、400mlまたは500mlである。例示的な実施形態では、その医薬組成物は、体積が約5ml、10ml、15ml、20ml、25ml、30ml、35ml、40ml、45ml、50ml、55ml、60ml、65ml、70ml、75ml、80ml、85ml、90ml、95ml、100ml、110ml、120ml、130ml、140ml、150ml、160ml、170ml、180ml、190ml、200ml、250ml、300ml、350ml、400mlまたは500mlである。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、体積が約1~50ml、50~100ml、100~150ml、150~200ml、200~250ml、250~300ml、300~350ml、350~400ml、400~450mlまたは450~500mlである。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、体積が約1~50ml、50~100ml、100~150ml、150~200ml、200~250ml、250~300ml、300~350ml、350~400ml、400~450mlまたは450~500mlである。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、体積が約1~10ml、10~20ml、20~30ml、30~40ml、40~50ml、50~60ml、60~70ml、70~80ml、70~80ml、80~90mlまたは90~100mlである。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、体積が約5ml~約80mlの範囲である。例示的な実施形態では、その医薬組成物は、体積が約10ml~約70mlの範囲である。多くの実施形態では、その医薬組成物は、体積が約10ml~約50mlの範囲である。
【0988】
具体的な量/投与レジメンは、その個体の体重、性別、年齢及び健康状態、その細胞の配合、生化学的性質、生物活性、バイオアベイラビリティ及び副作用、ならびに完全な治療レジメンにおける細胞の数及び本質に応じて変動することになる。
【0989】
いくつかの実施形態では、その医薬組成物の用量は、約10mL~50mLの体積で、細胞を約1.0×10~約2.5×10個含み、その医薬組成物は、1回用量として投与する。
【0990】
多くの実施形態では、その細胞は、T細胞であり、その医薬組成物は、約2.0×10~約2.0×10個の細胞を含み、例えば、初代T細胞、操作人工多能性幹細胞から分化させたT細胞であるが、これらに限定されない。いくつかの事例では、その用量は、約10ml~50mlの体積で、本明細書に記載の初代T細胞を約1.0×10~約2.5×10個含む。いくつかの事例では、その用量は、約10ml~50mlの体積で、上述した初代T細胞を約1.0×10~約2.5×10個含む。様々な事例では、その用量は、約10ml~50mlの体積で、本明細書に記載の操作人工多能性幹細胞から分化させたT細胞を約1.0×10~約2.5×10個含む。別の事例では、その用量は、約1.0×10~約2.5×10個のT細胞(初代T細胞、または操作人工多能性幹細胞から分化させたT細胞を含む)よりも少ない範囲である。さらに別の事例では、その用量は、約1.0×10~約2.5×10個のT細胞(初代T細胞、及び操作人工多能性幹細胞から分化させたT細胞を含む)よりも多い範囲である。
【0991】
いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、50kg以下の対象の体重1kg当たりに約1.0×10~約1.0×10個の操作細胞(初代細胞、または操作人工多能性幹細胞から分化させた細胞など)という1回用量として投与する。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、50kg以下の対象の体重1kg当たりに約0.5×10~約1.0×10個、約1.0×10~約1.0×10個、約1.0×10~約1.0×10個、約5.0×10~約1×10個、約1.0×10~約1×10個、約5.0×10~約1.0×10個、約1.0×10~約5.0×10個、約1.0×10~約1.0×10個、約1.0×10~約5.0×10個、約1.0×10~約5.0×10個、約2.0×10~約5.0×10個、約3.0×10~約5.0×10個、約4.0×10~約5.0×10個、約5.0×10~約5.0×10個、約6.0×10~約5.0×10個、約7.0×10~約5.0×10個、約8.0×10~約5.0×10個または約9.0×10~約5.0×10個の細胞という1回用量として投与する。いくつかの実施形態では、その用量は、50kg以下の対象の体重1kg当たりに約0.2×10~約5.0×10個の細胞である。多くの実施形態では、その用量は、50kg以下の対象の体重1kg当たりに約0.2×10~約5.0×10個の細胞よりも少ない範囲である。多くの実施形態では、その用量は、50kg以下の対象の体重1kg当たりに約0.2×10~約5.0×10個の細胞よりも多い範囲である。例示的な実施形態では、その1回用量は、約10ml~50mlの体積である。いくつかの実施形態では、その用量は、静脈内投与する。
【0992】
例示的な実施形態では、その細胞は、50kg超の対象の場合には、約1.0×10~約5.0×10個の細胞(初代細胞、及び操作人工多能性幹細胞から分化させた細胞)という1回用量で投与する。いくつかの実施形態では、その医薬組成物は、50kg以下の対象の体重1kg当たりに約0.5×10~約1.0×10個、約1.0×10~約1.0×10個、約1.0×10~約1.0×10個、約5.0×10~約1.0×10個、約1.0×10~約1.0×10個、約5.0×10~約1.0×10個、約1.0×10~約5.0×10個、約1.0×10~約1.0×10個、約1.0×10~約5.0×10個、約1.0×10~約5.0×10個、約2.0×10~約5.0×10個、約3.0×10~約5.0×10個、約4.0×10~約5.0×10個、約5.0×10~約5.0×10個、約6.0×10~約5.0×10個、約7.0×10~約5.0×10個、約8.0×10~約5.0×10個または約9.0×10~約5.0×10個の細胞という1回用量として投与する。多くの実施形態では、その細胞は、50kg超の対象の場合には、約1.0×10~約2.5×10個の細胞という1回用量で投与する。いくつかの実施形態では、その細胞は、50kg超の対象の場合には、約1.0×10~約2.5×10個の細胞よりも少ない範囲の1回用量で投与する。いくつかの実施形態では、その細胞は、50kg超の対象の場合には、約1.0×10~約2.5×10個の細胞よりも多い範囲の1回用量で投与する。いくつかの実施形態では、その用量を静脈内投与する。例示的な実施形態では、その1回用量は、約10ml~50mlの体積である。いくつかの実施形態では、その用量を静脈内投与する。
【0993】
例示的な実施形態では、その用量は、毎分約1~50ml、毎分1~40ml、毎分1~30ml、毎分1~20ml、毎分10~20ml、毎分10~30ml、毎分10~40ml、毎分10~50ml、毎分20~50ml、毎分30~50ml、毎分40~50mlの速度で静脈内投与する。多くの実施形態では、その医薬組成物は、静脈内投与用の1つ以上の輸液バッグで保管する。いくつかの実施形態では、その用量は、10分以内、15分以内、20分以内、25分以内、30分以内、35分以内、40分以内、45分以内、50分以内、55分以内、60分以内、70分以内、80分以内、90分以内、120分以内、150分以内、180分以内、240分以内または300分以内で完全に投与する。
【0994】
いくつかの実施形態では、その医薬組成物の1回用量は、1つの輸液バッグ中に入っている。別の実施形態では、その医薬組成物の1回用量は、2個、3個、4個または5個の別々の輸液バッグに分けられている。
【0995】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞は、複数回、例えば、2回、3回、4回、5回、6回以上で投与する。いくつかの実施形態では、複数回投与量の各用量は、その対象に、1~24時間の範囲の間隔を空けて投与する。いくつかの事例では、2回目以降の用量は、1回目または前回の投与から約1時間~約24時間後(例えば、約1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、9時間後、10時間後、11時間後、12時間後、13時間後、14時間後、15時間後、16時間後、17時間後、18時間後、19時間後、20時間後、21時間後、22時間後、23時間後または約24時間後)に投与する。いくつかの実施形態では、複数回投与量の各用量は、その対象に、約1日~28日の範囲の間隔を空けて投与する。いくつかの事例では、2回目以降の用量は、1回目または前回の投与から約1日~約28日後(例えば、約1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後、15日後、16日後、17日後、18日後、19日後、20日後、21日後、22日後、23日後、24日後、25日後、26日後、27日後または約28日後)に投与する。多くの実施形態では、複数回投与量の各用量は、その対象に、1週間~約6週間の範囲の間隔を空けて投与する。ある特定の事例では、2回目以降の用量は、1回目または前回の投与から約1週間~約6週間後(例えば、約1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後または6週間後)に投与する。いくつかの実施形態では、複数回投与量の各用量は、その対象に、約1カ月~約12カ月の範囲の間隔を空けて投与する。いくつかの事例では、2回目以降の用量は、1回目または前回の投与から約1カ月~約12カ月後(例えば、約1カ月後、2カ月後、3カ月後、4カ月後、5カ月後、6カ月後、7カ月後、8カ月後、9カ月後、10カ月後、11カ月後または12カ月後)に投与する。
【0996】
いくつかの実施形態では、対象には、第1の投与レジメンを第1の時点に投与してから、その後、第2の投与レジメンを第2の時点に投与する。いくつかの実施形態では、第1の投与レジメンは、第2の投与レジメンと同じである。別の実施形態では、第1の投与レジメンは、第2の投与レジメンとは異なる。いくつかの事例では、第1の投与レジメンと第2の投与レジメンの細胞数は同じである。いくつかの事例では、第1の投与レジメンと第2の投与レジメンの細胞数は異なる。いくつかの事例では、第1の投与レジメンと第2の投与レジメンの投与回数は同じである。いくつかの事例では、第1の投与レジメンと第2の投与レジメンの投与回数は異なる。
【0997】
いくつかの実施形態では、その細胞は、操作T細胞(例えば、初代T細胞、または操作人工多能性幹細胞から分化させたT細胞)であり、第1の投与レジメンは、第1のCARを発現する操作T細胞を含み、第2の投与レジメンは、第2のCARを発現する操作T細胞を含み、その第1のCARと第2のCARは異なるようになっている。例えば、第1のCARと第2のCARは、異なる標的抗原に結合する。いくつかの事例では、第1のCARは、ある抗原に結合するscFvを含み、第2のCARは、異なる抗原に結合するscFvを含む。いくつかの実施形態では、第1の投与レジメンは、第1のCARを発現する操作T細胞を含み、第2の投与レジメンは、第2のCARを発現する操作T細胞または初代T細胞を含み、その第1のCARと第2のCARは同じであるようになっている。第1の投与レジメンは、その対象に、第2の投与レジメンから少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、1~3カ月、1~6カ月、4~6カ月、3~9カ月、3~12カ月またはこれよりも長い月数を空けて投与できる。いくつかの実施形態では、対象に、疾患(例えば、がん)の経過中に複数の投与レジメンを実施し、その投与レジメンの少なくとも2つは、本明細書に記載の操作T細胞のうちの同じ種類を含む。別の実施形態では、その複数の投与レジメンの少なくとも2つは、本明細書に記載の操作T細胞のうちの異なる種類を含む。
【0998】
2.免疫抑制剤
いくつかの実施形態では、その操作細胞集団、またはその集団を含む組成物の1回目の投与前には、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤を患者に投与しない。
【0999】
いくつかの実施形態では、操作細胞の投与を受ける患者に、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤を投与してもよい。いくつかの実施形態では、その免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、その操作細胞の投与前に投与する。いくつかの実施形態では、その免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、操作細胞の1回目及び/または2回目の投与前に投与する。
【1000】
免疫抑制剤及び/または免疫調節剤の非限定的な例としては、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、副腎皮質ステロイド、例えば、プレドニゾン、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア剤、ブレキナル、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン、チモシン-α、及び同様の薬剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、その免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、IL-2受容体のp75に結合する抗体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFN-γ、TNF-α、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-6、IGF、IGFR1、IL-7、IL-8、IL-10、CD11aまたはCD58に結合する抗体、及びこれらのリガンドのいずれかに結合する抗体からなる免疫抑制抗体の群から選択する。いくつかの実施形態では、その細胞の1回目の投与前または投与後に、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤を患者に投与する場合、その投与は、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現が見られるとともに、CD47の外因性発現が見られない細胞で必要となる投与量よりも少ない投与量での投与である。
【1001】
一実施形態では、このような免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、可溶性IL-15R、IL-10、B7分子(例えば、B7-1、B7-2、そのバリアント及びその断片)、ICOS、OX40、負のT細胞調節因子阻害剤(CTLA-4に対する抗体など)、ならびに同様の薬剤から選択してよい。
【1002】
いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、その操作細胞集団の1回目の投与前に患者に投与できる。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、その細胞の1回目の投与の少なくとも1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、8日前、9日前、10日前、11日前、12日前、13日前または14日以上前に投与する。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、その細胞の1回目の投与の少なくとも1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、7週間前、8週間前、9週間前、10週間以上前に投与する。
【1003】
特定の実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、その細胞の1回目の投与後に、その患者に投与しないか、またはその細胞の1回目の投与の少なくとも1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日以上後に投与する。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、その細胞の1回目の投与の少なくとも1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、9週間後または10週間以上後に投与する。
【1004】
いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、その操作細胞集団の投与前には患者に投与しない。多くの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、その操作細胞集団の1回目及び/または2回目の投与前に患者に投与する。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、その細胞の投与の少なくとも1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、8日前、9日前、10日前、11日前、12日前、13日前または14日以上前に投与する。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、その細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、7週間前、8週間前、9週間前または10週間以上前に投与する。特定の実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、その細胞の投与の少なくとも1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後または14日以上後に投与する。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤は、その細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、9週間後または10週間以上後に投与する。
【1005】
いくつかの実施形態では、その細胞の投与前または投与後に、免疫抑制剤及び/または免疫調節剤を患者に投与する場合、その投与は、免疫原性細胞(例えば、同じまたは同様の細胞種または表現型の細胞であるが、その操作細胞の改変、例えば遺伝子改変を含まない細胞の集団、例えば、MICA及び/またはMICBの発現が見られ、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現が見られ、CD47の外因性発現が見られない細胞集団)で必要となる投与量よりも少ない投与量での投与である。
【1006】
3.治療対象の患者の選択
本明細書に記載されているように、いくつかの実施形態では、MICA及び/またはMICBの発現が低下及び/または消失している操作細胞には、MICA及び/またはMICBに対する既存の抗体を有する個体において特定の用途がある。したがって、いくつかの態様では、患者と具体的な治療とを適合させるための選択ベースのアプローチが本発明に含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、その個体は、MICAに対して既存の抗体を有し、このような患者への投与に適する操作細胞は、MICAの発現が低下している。いくつかの実施形態では、その個体は、MICBに対して既存の抗体を有し、このような患者への投与に適する操作細胞は、MICBの発現が低下している。いくつかの実施形態では、その個体は、MICA及びMICBに対して既存の抗体を有し、このような患者への投与に適する操作細胞は、MICA及びMICBの発現が低下している。いくつかの実施形態では、抗体、例えば、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の有無は、ドナー特異的抗体(DSA)結合法を用いて判断する。いくつかの実施形態では、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の有無は、本明細書に記載の操作細胞の移植前に判断する。いくつかの実施形態では、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の有無は、本明細書に記載の操作細胞を少なくとも1回移植後(例えば、1回目の投与(またはいずれかの過去の投与)後、かつその次の投与前)に判断する。いくつかの実施形態では、操作細胞の1回目の投与(またはいずれかの過去の投与)は、異なる細胞による投与であり、次の投与は、MICA及び/またはMICBの低下を含む操作細胞による投与である。
【1007】
いくつかの実施形態では、その個体は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在に基づき、その治療の対象に選ばれた。いくつかの実施形態では、その方法は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在に基づき、その個体をその治療の対象に選ぶことをさらに含む。いくつかの実施形態では、その個体を選ぶことは、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在をその個体において測定することをさらに含む。
【1008】
いくつかの実施形態では、本発明で提供するのは、同種異系療法を用いて個体の病態を治療する方法であって、(a)その個体の抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態を判断すること(抗MICA抗体陽性の状態により、その個体から得た血清試料に抗MICA抗体が存在することが示され、抗MICB抗体陽性の状態により、その個体から得た血清試料に抗MICB抗体が存在することが示される)と、(b)抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態に基づき、その個体に、本明細書に記載の操作細胞の集団を含む組成物、または本明細書に記載の組成物を投与することを含む方法であり、その抗MICA抗体の状態が陽性である場合には、その操作細胞集団は、MICAの発現の低下を含み、その抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その操作細胞集団は、MICBの発現の低下を含み、その抗MICA抗体の状態及びその抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その操作細胞集団は、MICA及びMICBの発現の低下を含む。いくつかの実施形態では、その方法は、その個体の抗MICA抗体の状態及び/または抗MICB抗体の状態に基づき、その個体をその治療の対象に選ぶことをさらに含む。いくつかの実施形態では、その方法は、その個体の抗MICA抗体の状態及び/または抗MICB抗体の状態を測定することをさらに含む。
【1009】
いくつかの実施形態では、提供するのは、同種異系療法を必要とする個体での使用に適する同種異系療法を特定する方法であり、その同種異系療法は、本明細書に記載の操作細胞集団を含む組成物または本明細書に記載の組成物を含み、その方法は、その個体の抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態を判断して、その個体での使用に適する同種異系療法を特定することを含み、その抗MICA抗体の状態が陽性である場合には、その適する同種異系療法は、MICAの発現の低下を含む操作細胞集団を含み、その抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その適する同種異系療法は、MICBの発現の低下を含む操作細胞集団を含み、その抗MICA抗体の状態及びその抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、その適する同種異系療法は、MICA及びMICBの発現の低下を含む操作細胞集団を含む。
【1010】
個体の抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態(有無の測定)を評価する方法は知られている。いくつかの実施形態では、その方法は、試料を個体から得ることを含む。いくつかの実施形態では、その試料は、血清試料などの血液試料である。いくつかの実施形態では、その方法は、血清試料を、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の有無について評価することを含む。いくつかの実施形態では、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の有無は、ウエスタンブロット技法を用いて評価する。いくつかの実施形態では、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の有無は、所定の細胞、例えば、MICA及び/またはMICBを発現する細胞への抗体の結合を測定することによって評価する。いくつかの実施形態では、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の有無は、所定の細胞、例えば、MICA及び/またはMICBを発現する細胞が、抗体の媒介(補体依存性細胞傷害など)により細胞死したことを測定することによって評価する。いくつかの実施形態では、その個体の血清中の抗体は、MICAに特異的に結合し、MICBには結合しない。いくつかの実施形態では、その個体の血清中の抗体は、MICBに特異的に結合し、MICAには結合しない。いくつかの実施形態では、その個体の血清中の抗体は、MICA及びMICBに特異的に結合する。
【1011】
III.例示的な実施形態
実施形態1.(a)MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)及び/またはMHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)の発現を低下させる改変、(b)1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させる改変、ならびに(c)1つ以上の主要組織適合性複合体クラスI(MHCクラスI)分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる改変を含む操作細胞であって、その発現の変化が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである前記操作細胞。
【1012】
実施形態2.前記改変が、前記1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる、実施形態1に記載の操作細胞。
【1013】
実施形態3.前記1つ以上の寛容原性因子が、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDOl、CTLA4-Ig、C1インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8及びSERPINB9、ならびにこれらの組み合わせのいずれかからなる群から選択されている、実施形態1または2に記載の操作細胞。
【1014】
実施形態4.前記1つ以上の寛容原性因子が、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200及びMFGE8、ならびにこれらの組み合わせのいずれかからなる群から選択されている、実施形態3に記載の操作細胞。
【1015】
実施形態5.前記1つ以上の寛容原性因子の少なくとも1つが、CD47である、実施形態3に記載の操作細胞。
【1016】
実施形態6.(a)MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)及び/またはMHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)の発現を低下させる改変、ならびに(b)CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させる改変を含む操作細胞であって、その発現の変化が、前記改変を含まない同じ細胞種の細胞と比べたものである前記操作細胞。
【1017】
実施形態7.MICAの発現を低下させるための改変を含む、実施形態1~6のいずれか1項に記載の操作細胞。
【1018】
実施形態8.前記操作細胞上でのMICAの表面発現の低下を含む、実施形態1~7のいずれか1項に記載の操作細胞。
【1019】
実施形態9.MICAの発現を低下させる改変が、MICAのタンパク質発現を低下させる、実施形態1~8のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1020】
実施形態10.前記操作細胞上で、MICAの検出可能な細胞表面発現が見られない、実施形態8または9に記載の操作細胞。
【1021】
実施形態11.MICAの発現を低下させる改変が、MICAをコードするmRNAの発現を低下させる、実施形態1~10のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1022】
実施形態12.MICA遺伝子の活性を消失させる改変を含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1023】
実施形態13.前記改変が、MICA遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む、実施形態12に記載の操作細胞。
【1024】
実施形態14.前記改変が、すべてのMICAコード配列の不活性化または破壊を含む、実施形態12または13に記載の操作細胞。
【1025】
実施形態15.前記不活性化または破壊が、MICA遺伝子におけるインデルを含む、実施形態13または14に記載の操作細胞。
【1026】
実施形態16.前記改変が、MICA遺伝子のゲノムDNAの連続領域のフレームシフト変異または欠失である、実施形態13~15のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1027】
実施形態17.前記改変が、ノックアウトである、実施形態13~16のいずれかに記載の操作細胞。
【1028】
実施形態18.前記改変が、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集による改変であって、MICA遺伝子を標的とする前記改変である、実施形態13~17のいずれかに記載の操作細胞。
【1029】
実施形態19.前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集による改変が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)の媒介による改変、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の媒介による改変、またはCRISPR-Casの組み合わせの媒介によるものである、実施形態18に記載の操作細胞。
【1030】
実施形態20.前記Casが、Cas9またはCas12から選択されている、実施形態19に記載の操作細胞。
【1031】
実施形態21.前記CRISPR-Casの組み合わせの媒介による改変が、MICA遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)の使用を含む、実施形態19または20に記載の操作細胞。
【1032】
実施形態22.前記CRISPR-Casの組み合わせの媒介による改変が、前記gRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体の使用を含む、実施形態24に記載の操作細胞。
【1033】
実施形態23.MICBの発現を低下させるための改変を含む、実施形態1~22のいずれかに記載の操作細胞。
【1034】
実施形態24.前記操作細胞上でのMICBの表面発現の低下を含む、実施形態1~23のいずれかに記載の操作細胞。
【1035】
実施形態25.MICBの発現を低下させる改変が、MICBのタンパク質発現を低下させる、実施形態1~24のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1036】
実施形態26.前記操作細胞上で、MICBの検出可能な細胞表面発現が見られない、実施形態24または25に記載の操作細胞。
【1037】
実施形態27.MICBの発現を低下させる改変が、MICBをコードするmRNAの発現を低下させる、実施形態1~26のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1038】
実施形態28.MICB遺伝子の活性を消失させる改変を含む、実施形態1~27のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1039】
実施形態29.前記改変が、MICB遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む、実施形態28に記載の操作細胞。
【1040】
実施形態30.前記改変が、すべてのMICBコード配列の不活性化または破壊を含む、実施形態28または29に記載の操作細胞。
【1041】
実施形態31.前記不活性化または破壊が、MICB遺伝子におけるインデルを含む、実施形態29または30に記載の操作細胞。
【1042】
実施形態32.前記改変が、MICB遺伝子のゲノムDNAの連続領域のフレームシフト変異または欠失である、実施形態29~31のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1043】
実施形態33.前記改変が、ノックアウトである、実施形態29~32のいずれかに記載の操作細胞。
【1044】
実施形態34.前記改変が、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集による改変であって、MICB遺伝子を標的とする前記改変である、実施形態29~33のいずれかに記載の操作細胞。
【1045】
実施形態35.前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集による改変が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)の媒介による改変、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の媒介による改変、またはCRISPR-Casの組み合わせの媒介によるものである、実施形態34に記載の操作細胞。
【1046】
実施形態36.前記Casが、Cas9またはCas12から選択されている、実施形態35に記載の操作細胞。
【1047】
実施形態37.前記CRISPR-Casの組み合わせの媒介による改変が、MICB遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)の使用を含む、実施形態35または36に記載の操作細胞。
【1048】
実施形態38.前記CRISPR-Casの組み合わせの媒介による改変が、前記gRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体の使用を含む、実施形態37に記載の操作細胞。
【1049】
実施形態39.前記1つ以上の寛容原性因子の発現の増加が、前記1つ以上の寛容原性因子の細胞表面発現の増加を含む、実施形態1~38のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1050】
実施形態40.前記1つ以上の寛容原性因子の1つが、外因性ポリペプチドである、実施形態39に記載の操作細胞。
【1051】
実施形態41.前記改変が、前記1つ以上の寛容原性因子をコードする1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態39または40に記載の操作細胞。
【1052】
実施形態42.前記1つ以上の寛容原性因子のそれぞれが、プロモーターに機能可能に連結されている、実施形態41に記載の操作細胞。
【1053】
実施形態43.前記プロモーターが、構成的プロモーターである、実施形態42に記載の操作細胞。
【1054】
実施形態44.前記プロモーターが、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1aプロモーター、PGKプロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタインバーウイルス(EBV)プロモーター及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターからなる群から選択されている、実施形態46または47に記載の操作細胞。
【1055】
実施形態45.前記1つ以上の外因性ポリヌクレオチドが、1つ以上のゲノム遺伝子座に組み込まれている、実施形態42~44のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1056】
実施形態46.前記組み込みが、非標的挿入である、実施形態45に記載の操作細胞。
【1057】
実施形態47.前記非標的挿入が、レンチウイルスベクターを用いて、前記外因性ポリヌクレオチドを前記細胞に導入することによるものである、実施形態46に記載の操作細胞。
【1058】
実施形態48.前記組み込みが、標的挿入である、実施形態45に記載の操作細胞。
【1059】
実施形態49.前記1つ以上のゲノム遺伝子座のそれぞれが、MICA遺伝子座、MICB遺伝子座、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、TRAC遺伝子座またはTRBC遺伝子座、CD142遺伝子座、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子座、アルブミン遺伝子座、SHS231座位、CLYBL遺伝子座、ROSA26遺伝子座、LRP1遺伝子座、HMGB1遺伝子座、ABO遺伝子座、RHD遺伝子座、FUT1遺伝子座、KDM5D遺伝子座からなる群から選択されている、実施形態50~52のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1060】
実施形態50.前記1つ以上の寛容原性因子が、CD47を含む、実施形態38~49のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1061】
実施形態51.配列番号1のアミノ酸配列の少なくとも一部との同一性が少なくとも約85%であるアミノ酸配列をCD47が有する、実施形態50に記載の操作細胞。
【1062】
実施形態52.前記1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる改変が、前記1つ以上のMHCクラスI分子の細胞表面発現を低下させる、実施形態1~51のいずれかに記載の操作細胞。
【1063】
実施形態53.前記1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる改変が、β-2ミクログロブリン(B2M)の発現を低下させる、実施形態1~52のいずれかに記載の操作細胞。
【1064】
実施形態54.前記1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低下させる改変が、B2M遺伝子の活性を低下させる、実施形態53に記載の操作細胞。
【1065】
実施形態55.前記1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる改変が、B2M遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む、実施形態53または54に記載の操作細胞。
【1066】
実施形態56.前記1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下させる改変が、すべてのB2Mコード配列の不活性化または破壊を含む、実施形態53~55のいずれかに記載の操作細胞。
【1067】
実施形態57.前記不活性化または破壊が、B2M遺伝子におけるインデル、またはB2M遺伝子のゲノムDNAの連続領域の欠失を含む、実施形態55または56に記載の操作細胞。
【1068】
実施形態58.前記インデルが、フレームシフト変異である、実施形態57に記載の操作細胞。
【1069】
実施形態59.前記B2M遺伝子が、ノックアウトされている、実施形態52~58のいずれかに記載の操作細胞。
【1070】
実施形態60.前記1つ以上のMHCクラスI分子のタンパク質発現を低下させる改変が、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集によるものである、実施形態52~59のいずれかに記載の操作細胞。
【1071】
実施形態61.前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、B2M遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものである、実施形態64に記載の操作細胞。
【1072】
実施形態62.前記CRISPR-Casの組み合わせのCasが、Cas9またはCas12から選択されている、実施形態61に記載の操作細胞。
【1073】
実施形態63.前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせが、B2M遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、実施形態62に記載の操作細胞。
【1074】
実施形態64.前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記gRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、実施形態63に記載の操作細胞。
【1075】
実施形態65.前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる改変が、前記1つ以上のMHCクラスII分子の細胞表面発現を低下させる、実施形態1~64のいずれかに記載の操作細胞。
【1076】
実施形態66.前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる改変が、CIITAの発現を低下させる、実施形態1~65のいずれかに記載の操作細胞。
【1077】
実施形態67.前記1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低下させる改変が、CIITA遺伝子の活性を低下させる、実施形態66に記載の操作細胞。
【1078】
実施形態68.前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる改変が、CIITA遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊を含む、実施形態66または67に記載の操作細胞。
【1079】
実施形態69.前記1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下させる改変が、すべてのCIITAコード配列の不活性化または破壊を含む、実施形態65~68のいずれかに記載の操作細胞。
【1080】
実施形態70.前記不活性化または破壊が、CIITA遺伝子におけるインデル、またはCIITA遺伝子のゲノムDNAの連続領域の欠失を含む、実施形態68または69に記載の操作細胞。
【1081】
実施形態71.前記インデルが、フレームシフト変異である、実施形態70に記載の操作細胞。
【1082】
実施形態72.前記CIITA遺伝子が、ノックアウトされている、実施形態65~71のいずれかに記載の操作細胞。
【1083】
実施形態73.前記1つ以上のMHCクラスII分子のタンパク質発現を低下させる改変が、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集によるものである、実施形態65~72のいずれかに記載の操作細胞。
【1084】
実施形態74.前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、CIITA遺伝子を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものである、実施形態73に記載の操作細胞。
【1085】
実施形態75.前記CRISPR-Casの組み合わせのCasが、Cas9またはCas12から選択されている、実施形態74に記載の操作細胞。
【1086】
実施形態76.前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせが、CIITA遺伝子内の少なくとも1つの標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、実施形態75に記載の操作細胞。
【1087】
実施形態77.前記CRISPR-Casの組み合わせが、前記gRNAとCasタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、実施形態76に記載の操作細胞。
【1088】
78.ヒト細胞または動物細胞であるか、または前記細胞に由来する、実施形態1~77のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1089】
実施形態79.ヒト細胞であるか、またはヒト細胞に由来する、実施形態78に記載の操作細胞。
【1090】
実施形態80.多能性幹細胞もしくはその子孫に由来する分化細胞であるか、または前記分化細胞に由来する、実施形態1~79のいずれかに記載の操作細胞。
【1091】
実施形態81.前記多能性幹細胞が、人工多能性幹細胞であるか、または人工多能性幹細胞に由来する、実施形態80に記載の操作細胞。
【1092】
実施形態82.ドナー対象から単離した初代細胞であるか、または前記初代細胞に由来する、実施形態1~81のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1093】
実施形態83.前記ドナー対象が、前記初代細胞を前記ドナー対象から得る時点に、健常であるか、または疾患もしくは病態である疑いがない、実施形態82に記載の操作細胞。
【1094】
実施形態84.膵島β細胞、B細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心臓細胞及び血液細胞から選択されている、実施形態1~83のいずれかに記載の操作細胞。
【1095】
実施形態85.内皮細胞であるか、または内皮細胞に由来する、実施形態1~84のいずれかに記載の操作細胞。
【1096】
実施形態86.上皮細胞であるか、または上皮細胞に由来する、実施形態1~84のいずれかに記載の操作細胞。
【1097】
実施形態87.多能性幹細胞であるか、または多能性幹細胞に由来する、実施形態1~84のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1098】
実施形態88.胚性幹細胞であるか、または胚性幹細胞に由来する、実施形態1~84のいずれかに記載の操作細胞。
【1099】
実施形態89.間葉系列の細胞であるか、または前記細胞に由来する、実施形態1~84のいずれかに記載の操作細胞。
【1100】
実施形態90.O型ABO血液型、Rh因子陰性(Rh-)の1つ以上であり、機能型のABO Aアレル及び/または機能型のABO Bアレル、あるいはRh因子陽性(Rh+)を含む、実施形態1~89のいずれかに記載の操作細胞。
【1101】
実施形態91.キメラ抗原受容体(CAR)を含む、実施形態1~207のいずれか1つに記載の操作細胞。
【1102】
実施形態92.実施形態1~91のいずれか1つに記載の操作細胞の集団。
【1103】
実施形態93.前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて改変を含む、実施形態92に記載の操作細胞集団。
【1104】
実施形態94.前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかで、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICAポリペプチドの細胞表面発現が低下している、実施形態92または93に記載の集団。
【1105】
実施形態95.前記操作細胞上でのMICAポリペプチドの表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下している、実施形態92~94のいずれか1つに記載の集団。
【1106】
実施形態96.前記集団中の細胞の少なくとも約50%で、MICAポリペプチドの細胞表面発現が見られない、実施形態92~95のいずれか1つに記載の集団。
【1107】
実施形態97.前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかで、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICBポリペプチドの細胞表面発現が低下している、実施形態92~96のいずれか1つに記載の集団。
【1108】
実施形態98.前記操作細胞上でのMICBポリペプチドの表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICBポリペプチドの細胞表面発現レベルの約60%以下であるレベルまで低下している、実施形態92~97のいずれか1つに記載の集団。
【1109】
実施形態99.前記集団中の細胞の少なくとも約50%で、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICBポリペプチドの細胞表面発現が見られない、実施形態92~98のいずれか1つに記載の集団。
【1110】
実施形態100.前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記1つ以上の寛容原性因子をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態92~99のいずれか1つに記載の集団。
【1111】
実施形態101.前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態92~100のいずれかに記載の集団。
【1112】
実施形態102.前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含む、実施形態92~101のいずれかに記載の集団。
【1113】
実施形態103.前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、B2M及び/またはCIITAの発現の低下を含む、実施形態92~102のいずれかに記載の集団。
【1114】
実施形態104.前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、B2M及びCIITAの発現の低下を含む、実施形態92~103のいずれかに記載の集団。
【1115】
実施形態105.前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、B2M遺伝子のアレルの両方を不活性化する1つ以上の変化を含む、実施形態92~104のいずれかに記載の集団。
【1116】
実施形態106.前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CIITA遺伝子のアレルの両方を不活性化する1つ以上の変化を含む、実施形態92~105のいずれかに記載の集団。
【1117】
実施形態107.実施形態92~106のいずれかに記載の集団を含む組成物。
【1118】
実施形態108.(a)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかで、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICAポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、前記操作細胞上でのMICAポリペプチドの表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、(b)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、ならびに(c)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含み、前記操作細胞上での1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下している、実施形態92~107のいずれか1つに記載の操作細胞の集団を含む組成物。
【1119】
実施形態109.(a)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかで、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICBポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、前記操作細胞上でのMICBポリペプチドの表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICBポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、(b)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、(c)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含み、前記操作細胞上での1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下している、実施形態92~107のいずれか1つに記載の操作細胞の集団を含む組成物。
【1120】
実施形態110.(a)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかで、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICAポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、前記操作細胞上でのMICAポリペプチドの表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、(b)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかで、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、MICBポリペプチドの細胞表面発現が低下しており、前記操作細胞上でのMICBポリペプチドの表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICBポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下しており、(c)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、ならびに(d)前記集団中の細胞の少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9%または約99.99%のいずれかが、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞と比べて、前記1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現の低下を含み、前記操作細胞上での1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の表面発現の低下が、前記改変を含まない同じ細胞種の未改変または未変化の細胞上でのMICAポリペプチドの細胞表面発現レベルの60%以下であるレベルまで低下している、実施形態92~107のいずれか1つに記載の操作細胞の集団を含む組成物。
【1121】
実施形態111.操作した初代膵島β細胞の集団を含む組成物であって、前記操作した初代膵島β細胞が、(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊を含む前記組成物。
【1122】
実施形態112.操作した初代T細胞の集団を含む組成物であって、前記操作した初代T細胞が、(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊を含む前記組成物。
【1123】
実施形態113.操作した初代甲状腺細胞の集団を含む組成物であって、前記操作した初代甲状腺細胞が、(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子(CD47tg)、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊を含む前記組成物。
【1124】
実施形態114.操作した初代皮膚細胞の集団を含む組成物であって、前記操作した初代皮膚細胞が、(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子(CD47tg)、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊を含む前記組成物。
【1125】
実施形態115.操作した初代内皮細胞の集団を含む組成物であって、前記操作した初代内皮細胞が、(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子(CD47tg)、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊を含む前記組成物。
【1126】
実施形態116.操作した初代網膜色素上皮細胞の集団を含む組成物であって、前記操作した初代網膜色素上皮細胞が、(i)MICA遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、及び/またはMICB遺伝子のアレルのすべての不活性化もしくは破壊、(ii)CD47をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む導入遺伝子(CD47tg)、ならびに(iii)B2M遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊を含む前記組成物。
【1127】
実施形態117.前記操作細胞集団の操作細胞が、B2M遺伝子のアレルのすべてにおけるインデルを含む、実施形態111~116のいずれかに記載の組成物。
【1128】
実施形態118.前記操作細胞集団の操作細胞が、CIITA遺伝子のアレルのすべての不活性化または破壊をさらに含む、実施形態111~117のいずれかに記載の組成物。
【1129】
実施形態119.前記操作細胞集団の操作細胞が、CIITA遺伝子のアレルのすべてにおけるインデルを含む、実施形態111~118のいずれかに記載の組成物。
【1130】
実施形態120.前記操作細胞集団の操作細胞が、MICAインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgという表現型を有する、実施形態111~119のいずれかに記載の組成物。
【1131】
実施形態121.前記操作細胞集団の操作細胞が、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgという表現型を有する、実施形態111~119のいずれかに記載の組成物。
【1132】
実施形態122.前記操作細胞集団の操作細胞が、MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgという表現型を有する、実施形態111~119のいずれかに記載の組成物。
【1133】
実施形態123.前記操作細胞が、ヌクレアーゼベースの遺伝子編集を用いて操作されている、実施形態107~122のいずれか1つに記載の組成物。
【1134】
実施形態124.前記組成物が、医薬組成物である、実施形態107~123のいずれか1つに記載の組成物。
【1135】
実施形態125.薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む、実施形態107~124のいずれかに記載の組成物。
【1136】
実施形態126.凍結保護剤を含む、実施形態107~125のいずれかに記載の組成物。
【1137】
実施形態127.前記凍結保護剤が、DMSOを約5%~約10%のDMSO(v/v)という濃度で含む、実施形態126に記載の組成物。
【1138】
実施形態128.実施形態107~127のいずれかに記載の組成物を含む容器。
【1139】
実施形態129.滅菌バッグである、実施形態128に記載の容器。
【1140】
実施形態130.前記滅菌バッグが、凍結保存に適合している、実施形態129に記載の容器。
【1141】
実施形態131.操作細胞を作製する方法であって、(a)供給源細胞で、1つ以上のMHCクラスI分子及び/または1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下または消失させること、(b)前記供給源細胞で、1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させること、ならびに(c)前記供給源細胞で、MICA及び/またはMICBの発現を低下または消失させることを含む前記方法。
【1142】
実施形態132.前記1つ以上の寛容原性因子を、CD47、CD27、CD200、HLA-C、HLA-E、HLA-E重鎖、HLA-G、PD-L1、IDOl、CTLA4-Ig、C1インヒビター、IL-10、IL-35、FASL、CCL21、MFGE8及びSERPINB9、ならびにこれらの組み合わせのいずれかからなる群から選択する、実施形態131に記載の方法。
【1143】
実施形態133.前記1つ以上の寛容原性因子を、CD47、PD-L1、HLA-EまたはHLA-G、CCL21、FASL、SERPINB9、CD200及びMFGE8、ならびにこれらの組み合わせのいずれかからなる群から選択する、実施形態131または132に記載の方法。
【1144】
実施形態134.前記1つ以上の寛容原性因子の少なくとも1つが、CD47である、実施形態131~133のいずれかに記載の方法。
【1145】
実施形態135.前記1つ以上のMHCクラスI分子及び1つ以上のMHCクラスII分子の発現を低下または消失させることを含む、実施形態131~134のいずれかに記載の方法。
【1146】
実施形態136.操作細胞を作製する方法であって、(a)供給源細胞で、CCL21、PD-L1、FASL、SERPINB9、HLA-G、CD47、CD200及びMFGE8の発現を増加させること、ならびに(b)前記供給源細胞で、MICA及び/またはMICBの発現を低下させることを含む前記方法。
【1147】
実施形態137.前記方法が、MICAの発現を低下または消失させることを含み、前記発現を低下または消失させることが、MICAタンパク質の発現を低下または消失させることを含む、実施形態131~136のいずれか1つに記載の方法。
【1148】
実施形態138.前記方法が、MICBの発現を低下または消失させることを含み、前記発現を低下または消失させることが、MICBタンパク質の発現を低下または消失させることを含む、実施形態131~137のいずれか1つに記載の方法。
【1149】
実施形態139.前記方法が、MICA及びMICBの発現を低下または消失させることを含み、前記発現を低下または消失させることが、MICAタンパク質及びMICBタンパク質の発現を低下または消失させることを含む、実施形態131~138のいずれか1つに記載の方法。
【1150】
実施形態140.前記発現を低下または消失させることが、細胞表面発現を低下または消失させることを含む、実施形態131~139のいずれか1つに記載の方法。
【1151】
実施形態141.発現を低下または消失させることが、該当遺伝子の活性を低下または消失させる改変を導入することを含む、実施形態131~140のいずれか1つに記載の方法。
【1152】
実施形態142.前記改変が、遺伝子のアレルの両方の不活性化または破壊である、実施形態141に記載の方法。
【1153】
実施形態143.前記不活性化または破壊が、インデルを含む、実施形態142に記載の方法。
【1154】
実施形態144.前記インデルが、前記遺伝子のゲノムDNAの連続領域のフレームシフト変異または欠失である、実施形態143に記載の方法。
【1155】
実施形態145.該当遺伝子の活性をノックアウトすることを含む、実施形態141~144のいずれか1つに記載の方法。
【1156】
実施形態146.前記1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下または消失させる改変が、B2Mの改変である、実施形態141~145のいずれか1つに記載の方法。
【1157】
実施形態147.前記1つ以上のMHCクラスI分子の発現を低下または消失させる改変が、CIITAの改変である、実施形態141~146のいずれか1つに記載の方法。
【1158】
実施形態148.ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集を介して、前記改変を行う、実施形態141~147のいずれか1つに記載の方法。
【1159】
実施形態149.前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casの組み合わせによるものである、実施形態148に記載の方法。
【1160】
実施形態150.前記CRISPR-Casの組み合わせが、Cas9またはCas12からなる群から選択したCasを含む、実施形態149に記載の方法。
【1161】
実施形態151.前記ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集が、CRISPR-Casの組み合わせによるものであり、前記CRISPR-Casの組み合わせが、ガイドRNA(gRNA)を含む、実施形態149または150に記載の方法。
【1162】
実施形態152.前記CRISPR-Casの組み合わせが、gRNAと前記Casタンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である、実施形態151に記載の方法。
【1163】
実施形態153.前記1つ以上の寛容原性因子の発現を増加させる改変が、前記1つ以上の寛容原性因子をコードする少なくとも1つの外因性ポリヌクレオチドを導入することを含む、実施形態141~152のいずれか1つに記載の方法。
【1164】
実施形態154.前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、前記寛容原性因子の2つ以上をコードするマルチシストロニックなベクターである、実施形態153に記載の方法。
【1165】
実施形態155.前記1つ以上の寛容原性因子の少なくとも1つが、CD47である、実施形態131~154のいずれか1つに記載の方法。
【1166】
実施形態156.前記少なくとも1つのポリヌクレオチドを、前記細胞のゲノムに組み込む、実施形態142~155のいずれか1つに記載の方法。
【1167】
実施形態157.前記組み込みが、非標的挿入によるものである、実施形態156に記載の方法。
【1168】
実施形態158.前記組み込みをレンチウイルスベクターによって行う、実施形態157に記載の方法。
【1169】
実施形態159.前記組み込みが、標的ゲノム遺伝子座への標的挿入によるものである、実施形態156に記載の方法。
【1170】
実施形態160.前記組み込みを、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集と相同配向型修復によって行う、実施形態159に記載の方法。
【1171】
実施形態161.前記標的ゲノム遺伝子座を、B2M遺伝子座、CIITA遺伝子座、CD142遺伝子座、TRAC遺伝子座、TRBC遺伝子座、CCR5遺伝子座、CXCR4遺伝子座、PPP1R12C(AAVS1としても知られる)遺伝子、アルブミン遺伝子座、SHS231座位、CLYBL遺伝子座及びROSA26遺伝子座からなる群から選択する、実施形態159または160に記載の方法。
【1172】
実施形態162.前記操作細胞が所望の細胞種に分化するように、細胞分化技法を行うことをさらに含む、実施形態131~161のいずれか1つに記載の方法。
【1173】
実施形態163.前記供給源細胞をドナー対象から単離する、実施形態131~162のいずれか1つに記載の方法。
【1174】
実施形態164.前記ドナー対象が、単離時点に、健常であるか、または疾患もしくは病態である疑いがない実施形態163に記載の方法。
【1175】
実施形態165.実施形態131~164のいずれか1つに記載の方法を用いて作製した操作細胞。
【1176】
実施形態166.同種異系療法を用いて個体の病態を治療する方法であって、前記個体に、実施形態92~106のいずれか1つに記載の操作細胞集団、または実施形態107~115のいずれか1つに記載の組成物を投与することを含む前記方法。
【1177】
実施形態167.前記病態が、疾患または細胞不全である、実施形態166に記載の方法。
【1178】
実施形態168.前記疾患を、ループス、関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、セリアック病、グレーブス病、乾癬及び大腸炎からなる群から選択する、実施形態166または167に記載の方法。
【1179】
実施形態169.前記個体において、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体が循環血液中に存在する、実施形態166~168のいずれか1つに記載の方法。
【1180】
実施形態170.前記個体において、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体が持続的に存在する、実施形態169に記載の方法。
【1181】
実施形態171.前記個体が、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在の原因となる自己免疫関連病態である、実施形態169または170に記載の方法。
【1182】
実施形態172.前記自己免疫関連病態が、橋本病である、実施形態171に記載の方法。
【1183】
実施形態173.前記個体が、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在に基づき、前記治療の対象に選ばれた、実施形態166~172のいずれか1つに記載の方法。
【1184】
実施形態174.抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在に基づき、前記個体を前記治療の対象に選ぶことをさらに含む、実施形態166~173のいずれか1つに記載の方法。
【1185】
実施形態175.前記個体を選ぶことが、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の存在を前記個体において測定することをさらに含む、実施形態174に記載の方法。
【1186】
実施形態176.同種異系療法を用いて個体の病態を治療する方法であって、(a)前記個体の抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態を判断することであって、抗MICA抗体陽性の状態により、前記個体から得た血清試料に抗MICA抗体が存在することが示され、抗MICB抗体陽性の状態により、前記個体から得た血清試料に抗MICB抗体が存在することが示される、前記判断することと、(b)抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態に基づき、前記個体に、92~106のいずれか1つに記載の操作細胞集団を含む組成物、または実施形態107~115のいずれか1つに記載の組成物を投与することであって、前記抗MICA抗体の状態が陽性である場合には、前記操作細胞集団は、MICAの発現の低下を含み、前記抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、前記操作細胞集団は、MICBの発現の低下を含み、前記抗MICA抗体の状態及び前記抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、前記操作細胞集団は、MICA及びMICBの発現の低下を含む、前記投与することを含む前記方法。
【1187】
実施形態177.前記個体の抗MICA抗体の状態及び/または抗MICB抗体の状態に基づき、前記個体を前記治療の対象に選ぶことをさらに含む、実施形態176に記載の方法。
【1188】
実施形態178.前記個体の抗MICA抗体の状態及び/または抗MICB抗体の状態を測定することをさらに含む、実施形態176または177に記載の方法。
【1189】
実施形態179.同種異系療法を必要とする個体での使用に適する同種異系療法を特定する方法であって、前記同種異系療法が、実施形態92~106のいずれか1つに記載の操作細胞集団を含む組成物、または実施形態107~115のいずれか1つに記載の組成物を含み、前記方法が、前記個体の抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体の状態を判断して、前記個体での使用に適する同種異系療法を特定することを含み、前記抗MICA抗体の状態が陽性である場合には、前記適する同種異系療法が、MICAの発現の低下を含む操作細胞集団を含み、前記抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、前記適する同種異系療法が、MICBの発現の低下を含む操作細胞集団を含み、前記抗MICA抗体の状態及び前記抗MICB抗体の状態が陽性である場合には、前記適する同種異系療法が、MICA及びMICBの発現の低下を含む操作細胞集団を含む前記方法。
【1190】
実施形態180.1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に投与することをさらに含む、実施形態166~178のいずれかに記載の方法。
【1191】
実施形態181.前記個体が、1つ以上の免疫抑制剤を投与されている、実施形態166~178のいずれかに記載の方法。
【1192】
実施形態182.前記1つ以上の免疫抑制剤が、小分子または抗体である、実施形態180または181に記載の方法。
【1193】
実施形態183.前記1つ以上の免疫抑制剤を、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、副腎皮質ステロイド、プレドニゾン、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア剤、ブレキナル、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン(チモシン-α)及び免疫抑制抗体からなる群から選択する、実施形態180~183のいずれかに記載の方法。
【1194】
実施形態184.前記1つ以上の免疫抑制剤が、シクロスポリンを含む、実施形態180~183のいずれかに記載の方法。
【1195】
実施形態185.前記1つ以上の免疫抑制剤が、ミコフェノール酸モフェチルを含む、実施形態180~183のいずれかに記載の方法。
【1196】
実施形態186.前記1つ以上の免疫抑制剤が、副腎皮質ステロイドを含む、実施形態180~183のいずれかに記載の方法。
【1197】
実施形態187.前記1つ以上の免疫抑制剤が、シクロホスファミドを含む、実施形態180~183のいずれかに記載の方法。
【1198】
実施形態188.前記1つ以上の免疫抑制剤が、ラパマイシンを含む、実施形態180~183のいずれかに記載の方法。
【1199】
実施形態189.前記1つ以上の免疫抑制剤が、タクロリムス(FK-506)を含む、実施形態180~183のいずれかに記載の方法。
【1200】
実施形態190.前記1つ以上の免疫抑制剤が、抗胸腺細胞グロブリンを含む、実施形態180~183のいずれかに記載の方法。
【1201】
実施形態191.前記1つ以上の免疫抑制剤が、1つ以上の免疫調節剤である、実施形態180~183のいずれかに記載の方法。
【1202】
実施形態192.前記1つ以上の免疫調節剤が、小分子または抗体である、実施形態191に記載の方法。
【1203】
実施形態193.前記抗体が、IL-2受容体のp75、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFN-γ、TNF-α、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-6、IGF、IGFR1、IL-7、IL-8、IL-10、CD11a、CD58、及びそれらのリガンドのいずれかに結合する抗体からなる群から選択した受容体またはリガンドの1つ以上に結合する、実施形態182または実施形態192に記載の方法。
【1204】
実施形態194.前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に、前記操作細胞の投与前に投与するかまたは投与したことがある、実施形態180~193のいずれかに記載の方法。
【1205】
実施形態195.前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に、前記操作細胞の投与の少なくとも1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、8日前、9日前、10日前、11日前、12日前、13日前または14日前に投与するかまたは投与したことがある、実施形態180~194のいずれかに記載の方法。
【1206】
実施形態196.前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に、前記操作細胞の投与の少なくとも1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、7週間前、8週間前、9週間前または10週間以上前に投与するかまたは投与したことがある、実施形態180~194のいずれかに記載の方法。
【1207】
実施形態197.前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に、前記操作細胞の投与の少なくとも1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後または14日後に投与するかまたは投与したことがある、実施形態180~194のいずれかに記載の方法。
【1208】
実施形態198.前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に、前記操作細胞の投与の少なくとも1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、9週間後または10週間以上後に投与するかまたは投与したことがある、実施形態180~194のいずれかに記載の方法。
【1209】
実施形態199.前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に、前記操作細胞の1回目の投与と同じ日に投与するかまたは投与したことがある、実施形態180~194のいずれかに記載の方法。
【1210】
実施形態200.前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に、前記操作細胞の投与後に投与するかまたは投与したことがある、実施形態180~194のいずれかに記載の方法。
【1211】
実施形態201.前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に、前記操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の後に投与するかまたは投与したことがある、実施形態180~194のいずれかに記載の方法。
【1212】
実施形態202.前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に、前記操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の前に投与するかまたは投与したことがある、実施形態180~194のいずれかに記載の方法。
【1213】
実施形態203.前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に、前記操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、7日前、8日前、9日前、10日前、11日前、12日前、13日前または14日前に投与するかまたは投与したことがある、実施形態180~194のいずれかに記載の方法。
【1214】
実施形態204.前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に、前記操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、7週間前、8週間前、9週間前または10週間以上前に投与するかまたは投与したことがある、実施形態180~194のいずれかに記載の方法。
【1215】
実施形態205.前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に、前記操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後または14日後に投与するかまたは投与したことがある、実施形態180~194のいずれかに記載の方法。
【1216】
実施形態206.前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に、前記操作細胞の1回目及び/または2回目の投与の少なくとも1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、9週間後または10週間以上後に投与するかまたは投与したことがある、実施形態180~194のいずれかに記載の方法。
【1217】
実施形態207.前記操作細胞の改変を含まない免疫原性細胞の免疫拒絶を軽減する目的で投与される1つ以上の免疫抑制剤の投与量よりも低い投与量で、前記1つ以上の免疫抑制剤を投与する、実施形態180~206のいずれかに記載の方法。
【1218】
実施形態208.前記操作細胞が、前記操作細胞の殺傷を制御できる、実施形態180~207のいずれかに記載の方法。
【1219】
実施形態209.前記操作細胞が、自殺遺伝子または自殺スイッチを含む、実施形態180~208のいずれかに記載の方法。
【1220】
実施形態210.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、薬物もしくはプロドラッグの存在下で、または選択的な外因性化合物によって活性化されると、制御細胞死を誘導する、実施形態209に記載の方法。
【1221】
実施形態211.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、前記操作細胞のアポトーシスを誘導できる誘導タンパク質である、実施形態209または実施形態210に記載の方法。
【1222】
実施形態212.前記操作細胞のアポトーシスを誘導できる前記誘導タンパク質が、カスパーゼタンパク質である、実施形態211に記載の方法。
【1223】
実施形態213.前記カスパーゼタンパク質が、カスパーゼ9である、実施形態212に記載の方法。
【1224】
実施形態214.前記自殺遺伝子または自殺スイッチが、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシンによる活性化型のカスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択されている、実施形態209~213のいずれかに記載の方法。
【1225】
実施形態215.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に投与した後に活性化して、制御細胞死を誘導する、実施形態209~214のいずれかに記載の方法。
【1226】
実施形態216.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、前記1つ以上の免疫抑制剤を前記個体に投与する前に活性化して、制御細胞死を誘導する、実施形態209~214のいずれかに記載の方法。
【1227】
実施形態217.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、前記操作細胞を前記個体に投与した後に活性化して、制御細胞死を誘導する、実施形態209~216のいずれかに記載の方法。
【1228】
実施形態218.前記自殺遺伝子または前記自殺スイッチが、細胞毒性または前記個体に対するその他の悪影響が生じた場合に活性化して、制御細胞死を誘導する、実施形態209~217のいずれかに記載の方法。
【1229】
実施形態219.前記操作細胞集団の操作細胞を枯渇させる薬剤を投与することを含む、実施形態180~218のいずれかに記載の方法。
【1230】
実施形態220.前記操作細胞を枯渇させる薬剤が、前記操作細胞の表面に発現したタンパク質を認識する抗体である、実施形態219に記載の方法。
【1231】
実施形態221.前記抗体を、CCR4、CD16、CD19、CD20、CD30、EGFR、GD2、HER1、HER2、MUC1、PSMA及びRQR8を認識する抗体からなる群から選択する、実施形態220に記載の方法。
【1232】
実施形態222.前記抗体が、モガムリズマブ、AFM13、MOR208、オビヌツズマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、リツキシマブ、リツキシマブ-Rllb、トムゾツキシマブ、RO5083945(GA201)、セツキシマブ、Hul4.18K322A、Hul4.18-IL2、Hu3F8、ジヌツキシマブ、c.60C3-Rllc、及びこれらのバイオシミラーからなる群から選択されている、実施形態220または実施形態221に記載の方法。
【1233】
実施形態223.前記操作細胞の表面上の1つ以上の寛容原性因子を認識する薬剤を投与することを含む、実施形態166~178及び219~222のいずれかに記載の方法。
【1234】
実施形態224.前記操作細胞が、前記1つ以上の寛容原性因子を発現するように操作されている、実施形態223に記載の方法。
【1235】
実施形態225.前記1つ以上の寛容原性因子が、CD47である、実施形態223または224に記載の方法。
【1236】
実施形態226.1つ以上の追加の治療剤を前記個体に投与することをさらに含む、実施形態166~225のいずれかに記載の方法。
【1237】
実施形態227.前記個体が、1つ以上の追加の治療剤を投与されたことがある、実施形態166~226のいずれかに記載の方法。
【1238】
実施形態228.前記方法の治療有効性をモニタリングすることをさらに含む、実施形態166~227のいずれかに記載の方法。
【1239】
実施形態229.前記方法の予防有効性をモニタリングすることをさらに含む、実施形態166~228のいずれかに記載の方法。
【1240】
実施形態230.1つ以上の疾患症状が所望どおりに抑制されるまで繰り返す、実施形態166~229のいずれかに記載の方法。
【1241】
実施形態231.自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態1~91のいずれかに記載の操作細胞。
【1242】
実施形態232.前記自殺遺伝子または自殺スイッチが、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシンによる活性化型のカスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択されている、実施形態231に記載の操作細胞。
【1243】
実施形態233.前記自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び前記自殺遺伝子またはそのセーフティスイッチと関連する遺伝子が、前記操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する、実施形態231または実施形態232に記載の操作細胞。
【1244】
実施形態234.前記自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び前記1つ以上の寛容原性因子が、前記操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する、実施形態231または実施形態232に記載の操作細胞。
【1245】
実施形態235.前記バイシストロニックなカセットが、任意に、レンチウイルスベクターを用いて前記外因性ポリヌクレオチドを前記細胞に導入することによって、前記操作細胞のゲノムに、非標的挿入によって組み込まれている、実施形態233または実施形態234に記載の操作細胞。
【1246】
実施形態236.前記バイシストロニックなカセットが、前記細胞の標的ゲノム遺伝子座に、標的挿入によって組み込まれており、任意に、前記標的挿入が、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集と相同配向型修復によるものである、実施形態235に記載の操作細胞。
【1247】
実施形態237.前記1つ以上の寛容原性因子が、CD47である、実施形態230~236のいずれかに記載の操作細胞。
【1248】
実施形態238.前記操作細胞が、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態131~164のいずれかに記載の方法。
【1249】
実施形態239.前記自殺遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシンによる活性化型のカスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択されている、実施形態238に記載の方法。
【1250】
実施形態240.前記自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び前記自殺遺伝子またはそのセーフティスイッチと関連する遺伝子が、前記操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する、実施形態238または実施形態239に記載の方法。
【1251】
実施形態241.前記自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び前記1つ以上の寛容原性因子が、前記操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する、実施形態238または実施形態239に記載の方法。
【1252】
実施形態242.前記バイシストロニックなカセットが、前記操作細胞のゲノムに、非標的挿入によって組み込まれている、実施形態240または実施形態241に記載の方法。
【1253】
実施形態243.前記バイシストロニックなカセットが、前記操作細胞の標的ゲノム遺伝子座に、標的挿入によって組み込まれている、実施形態240または実施形態241に記載の方法。
【1254】
実施形態244.前記1つ以上の寛容原性因子が、CD47である、実施形態238~243のいずれかに記載の方法。
【1255】
実施形態245.前記操作細胞集団の操作細胞が、自殺遺伝子または自殺スイッチをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、実施形態107~127のいずれかに記載の組成物。
【1256】
実施形態246.前記自殺遺伝子または自殺スイッチが、シトシンデアミナーゼ(CyD)、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-Tk)、誘導性カスパーゼ9(iCaspase9)、及びラパマイシンによる活性化型のカスパーゼ9(rapaCasp9)からなる群から選択されている、実施形態245に記載の組成物。
【1257】
実施形態247.前記自殺遺伝子、及び前記自殺遺伝子またはそのセーフティスイッチと関連する遺伝子が、前記操作細胞集団の操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する、実施形態245または実施形態246に記載の組成物。
【1258】
実施形態248.前記自殺遺伝子または自殺スイッチ、及び前記外因性CD47が、前記操作細胞のゲノムに組み込まれたバイシストロニックなカセットから発現する、実施形態245または実施形態247に記載の組成物。
【1259】
実施形態249.前記バイシストロニックなカセットが、任意に、レンチウイルスベクターを用いて前記外因性ポリヌクレオチドを前記操作細胞集団の操作細胞に導入することによって、前記ゲノムに、非標的挿入によって組み込まれている、実施形態247または実施形態248に記載の組成物。
【1260】
実施形態250.前記バイシストロニックなカセットが、前記操作細胞集団の操作細胞の標的ゲノム遺伝子座に、標的挿入によって組み込まれており、任意に、前記標的挿入が、ヌクレアーゼの媒介による遺伝子編集と相同配向型修復によるものである、実施形態247または実施形態248に記載の組成物。
【1261】
本発明は、その範囲が、開示されている特定の実施形態に限定されるようには意図されておらず、それらの実施形態は、例えば、本発明の様々な態様を例示する目的で示されている。記載されている組成物及び方法に対する様々な修正は、本明細書の説明及び教示から明らかになるであろう。このような変形形態は、本開示の真の範囲及び趣旨から逸脱することなく実施することができ、本開示の範囲内に含まれるように意図されている。
【実施例
【1262】
以下の実施例は、例示の目的のために含まれているに過ぎず、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。
【1263】
実施例1
この実施例は、マイナー組織適合性抗原MHCクラスI分子ポリペプチド関連配列A(MICA)及び/またはMHCクラスI分子ポリペプチド関連配列B(MICB)の発現が低下している細胞の調製を説明するものである。操作細胞(例えば、細胞療法用の細胞)は、低免疫原性かつ多能性(HIP)の改変を行うため、及び/またはその改変をさらに改善させるために、MICA及び/またはMICBの低下の恩恵を受けることになる。
【1264】
細胞は、MICA及び/またはMICBの発現を低下させるように操作する。具体的には、CRISPR/Cas9遺伝子編集法を用いて、膵島β細胞、免疫細胞、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、甲状腺細胞、内皮細胞、皮膚細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、筋肉細胞、心臓細胞、血液細胞、膵臓の膵島細胞、平滑筋細胞、グリア前駆細胞、神経細胞、心筋細胞、幹細胞、造血幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、間葉幹細胞、胚性幹細胞及び多能性幹細胞(PSC)内のMICA及び/またはMICBをノックアウトする。gRNA配列を用いて、MICA及びMICBのアレルのすべてをノックアウトでき、その配列は、MICAの場合にはGATGACCCTGGCTCATATCA(配列番号36)、MICBの場合にはGTTTCTGCCTGTCATAGCGC(配列番号37)である。リボ核酸における場合には、ウラシルについては「u」、チミンについては「t」とする代わりに、ウラシル及びチミンの両方とも「t」とできることを当業者は分かるであろうし、別段に示されていない限り、「t」を用いて、ウラシルを表すことができることは分かるであろう。得られた細胞は、MICAインデル/インデル及び/またはMICBインデル/インデルと称することができる。
【1265】
B2Mのノックアウト(例えばB2Mインデル/インデルという)及び/またはCIITAのノックアウト(例えばCIITAインデル/インデルという)及び/または1つ以上の寛容原性因子、例えばCD47の発現の増加(例えばCD47tgという)を含め、追加の改変が想定されている。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子の少なくとも1つは、異種のポリペプチドである。いくつかの実施形態では、その1つ以上の寛容原性因子の少なくとも1つは、内在性ポリペプチドであり、その内在性ポリペプチドの発現は、プロモーターの改変または導入によって増加させる。
【1266】
実施例2.様々なヒト細胞種におけるMICA及びMICBの発現、ならびにMICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47TGの細胞の生成
この実施例は、ヒトiPSC及びその誘導体、例えばMSC、ならびに初代T細胞及び初代膵島β細胞でのマイナー組織適合性抗原MHCクラスI分子ポリペプチド関連配列A(MICA)及びMHCクラスI分子ポリペプチド関連配列B(MICB)の発現を解析した試験を説明するものである。
【1267】
A.方法
細胞の操作及びiPSCの刺激:標準的なCRISPR/Cas9遺伝子編集技法を用いて、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデルの誘導ヒト多能性幹細胞(hiPSC)を操作し、外因性のCD47タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターのトランスダクションによって、外因性CD47をコードする導入遺伝子(tg)をその細胞に導入した(いくつかの実施形態では、得られる細胞は、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのhiPSCという)。該当する場合には、標準的なCRISPR/Cas9遺伝子編集技法を用いて、MICA及びMICBをノックアウトした(いくつかの実施形態では、得られる操作細胞は、MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのhiPSCという)。MICA及びMICBのアレルのすべてをノックアウトするのに用いるgRNA配列は、MICAの場合にはGATGACCCTGGCTCATATCA(配列番号36)、MICBの場合にはGTTTCTGCCTGTCATAGCGC(配列番号37)である。リボ核酸における場合には、ウラシルについては「u」、チミンについては「t」とする代わりに、ウラシル及びチミンの両方とも「t」とできることを当業者は分かるであろうし、別段に示されていない限り、「t」を用いて、ウラシルを表すことができることは分かるであろう。
【1268】
示されている場合には、万が一、MICA抗原及び/またはMICB抗原が、その細胞に存在するか、及び/またはその細胞によって産生されるのに備えて、ある濃度のIFN-γ及び/またはTNF-αとともにインキュベーションして、MICA及び/またはMICBの細胞表面発現を刺激することによって、iPSCを刺激した。
【1269】
初代T細胞及び初代膵島β細胞の単離:初代ヒトT細胞は、健常ドナーの末梢血単核球(PBMC)試料から取得した。具体的には、その試料を解凍し、CD3による選別によって濃縮した。初代ヒト膵島β細胞は、標準的な技法を用いて、健常ドナーから単離した。このような技法は、J.Kerr-Conte et al.,Transplantation,89,2010に記載されているような技法を含め、当該技術分野で知られている。
【1270】
間葉細胞の分化及び操作:hiPSC細胞を間葉細胞誘導培地中で培養してから、MesenCult-ACF Plus培地で(4日目に)培養した。その後、MesenCult-SF Attachment Substrateをコートした新たなシャーレ上に、細胞を継代する。MesenCult-ACF Plus培地中で、MSC様になるまで細胞を21日間培養してから、さらに7日間培養して、MSCにした。上述のように、MICA、MICB、B2M、CIITA及びCD47の改変を行った。
【1271】
フローサイトメトリー: MICA及びMICBの両方を認識する抗MICA/MICB抗体を用いたフローサイトメトリーによって、MICA及びMICBの表面発現レベルを評価した。アイソタイプ抗体をコントロールとして使用した。
【1272】
B.結果
未操作hiPSC、またはB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのhiPSC上のMICA及びMICBの表面発現の解析により、これらの細胞種が、IFN-γ及びTNF-αによる刺激に応じても、その細胞表面上でMICAまたはMICBを発現しないことが実証された(図2)。図3A及び3Bに示されているように、初代ヒトT細胞(図3A)、膵島β細胞(図3B)、またはiPSC由来の膵島細胞(図3C)上で、MICAもMICBも発現しなかった。
【1273】
これに対して、ヒトiPSCから分化させたMSC上では、MICA及び/またはMICBが発現した(図4A)。未操作のiPSC由来MSCは、MICA及び/またはMICBの発現が、アイソタイプ(I)コントロールと比べて16.7倍増加した。B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgは、MICA及び/またはMICBの発現が、アイソタイプ(I)コントロールと比べて19.6倍増加した。これにより、B2M及びCIITAの発現を低下させる改変、ならびにCD47の発現を増加させる改変によっても、MICA及び/またはMICBの発現が低下しないことが示されている。MSC由来のB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのhiPSCにおいて、MICA及びMICBの表面発現を消失しさせて、MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのhiPSCを生成した(図4B)。特に、ある特定の自己免疫疾患である対象では、MICA及びMICBの発現により、細胞性及び/または液性の応答が誘導されることがあるので、この結果により、MICA及び/またはMICBの発現を低下させることで、例えば自己免疫疾患である患者に、MICA及び/またはMICBを発現するある特定の細胞種、例えばMSCまたはiPSC由来のMSCを同種異系移植する際に、恩恵をもたらす可能性があることが示されている。
【1274】
実施例3.橋本病の自己免疫障害である患者の血清は、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体を含む
MICA及び/またはMICBに対する抗体が、甲状腺の自己免疫疾患である橋本病の患者に存在するかを評価するために、橋本病患者の血清において、MICAまたはMICBに対する既存抗体が存在するかを試験した。
【1275】
橋本病である5人のボランティア及び1人の健常ボランティアから、血清を採取した。1.5mLの血清を1.5mLのミルク及び7μgの組み換えタンパク質(MICAまたはMICB)と一晩インキュベートした。次に、各試料をヒトIgG抗体と1時間インキュベートして、ウエスタンブロットを用いて、MICAまたはMICBに結合した抗体を検出した。
【1276】
図5に示されているように、橋本病患者の血清中では、MICA及び/またはMICBに対する抗体が検出されたが、健常ボランティアの血清中では検出されなかった。
【1277】
さらなる解析を行って、橋本病であるボランティア及び健常ボランティアから得た血清を用いて、操作細胞(B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSC、MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSC、またはB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのiPSC)に結合しているドナー特異的抗体(DSA)を測定した。B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSCへの結合によって立証されたように、橋本病のボランティアから得た血清には、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体が含まれており(図6A)、この血清では、MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSCへの結合は観察されなかった(図6B)。橋本病のボランティアから得た血清でも、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのiPSCに結合している検出可能なDSAは見られなかった(図6C)。
【1278】
予想どおり、健常ボランティアから得た血清には、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSC(図6D)、またはMICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSC(図6E)に結合している検出可能なDSAが見られなかったことよって示されたように、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体は含まれなかった。
【1279】
細胞の増殖及び細胞の生存能を無標識でモニタリングして、補体依存性細胞傷害(CDC)を測定するxCELLigence(商標)MPプラットフォームを用いて、さらなる解析を行った。B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル(dKO)のMSC、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSC、またはMICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSCを、橋本病ボランティアから得た血清と、抗MICA/Bブロッキング抗体の存在下(右の列)または非存在下(左の列)でインキュベートした。インキュベーション経過時間に伴って、細胞溶解(正規化細胞指数として記録したインピーダンスの変化によって求めた)を測定することによってCDCを解析した(正規化細胞指数の低下は、細胞の溶解または殺傷の増加を示す)。橋本病である1人のボランティアの代表的な結果は、図7Aに示されており、dKO及びB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSCがCDCにより殺傷されたことが実証され、この殺傷は、抗MICA/B抗体の存在下でブロックし得る((a)及び(b)の列を参照されたい)。これに対して、MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSCでは、抗MICA/Bブロッキング抗体の有無にかかわらず、CDCによる細胞死は観察されなかった((c)の列を参照されたい)。橋本病である他のボランティアから得た血清でも、同様の結果が観察された。その操作細胞のいずれでも、健常ボランティアから得た血清とインキュベーション後、CDCの媒介による細胞殺傷は観察されなかった(図7B)。
【1280】
この試験結果から、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体が、ある特定の自己免疫疾患、例えば橋本病の患者の血清中に存在することがある一方で、これらの抗体が典型的には、健常ドナーから得た血清中に存在しないことが示されている。これらの結果から、いくつかの態様では、血清抗体検査を用いて、細胞の移植を必要とする患者が、その細胞の表面上のMICAまたはMICBを認識し得る抗MICA抗体または抗MICB抗体の存在により、その細胞に対して免疫応答を引き起こして、その結果、非操作細胞の殺傷が発生しやすい可能性があるか判断できることが裏付けられている。さらに、これらの結果により、同種異系細胞療法、特に、MICAもしくはMICBを発現もしくはアップレギュレートするか、またはMICAもしくはMICBに対する抗体が血清に存在する対象に投与するためのものであるある特定の細胞種を伴う細胞療法で、MICA及び/またはMICBの追加のノックアウトも含む操作細胞、例えば、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgの改変を含む細胞を使用することにも裏付けが与えられている。
【1281】
実施例4.多発性硬化症患者の血清は、抗MICB抗体を含む
この実施例には、抗MICA抗体及び/または抗MICB抗体が、多発性硬化症である個々のボランティアから得た血清に存在することを示す解析結果が説明されている。加えて、その血清試料のCDCの機能を評価した。
【1282】
図8に示されているように、多発性硬化症の患者の血清中で、MICBに対する抗体が検出された。すでに述べたように、抗MICA抗体及び抗MICB抗体は、健常ボランティアの血清中では見られなかった。
【1283】
さらなる解析を行って、多発性硬化症であるボランティアから得た血清を用いて、操作細胞(MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSC、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSC、もしくはCD47tgのMSC、またはB2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのiPSC)に結合しているDSAを測定した。図9Aに示されているように、多発性硬化症であるボランティアから得た血清は、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSCに結合している抗MICB抗体を含む。図9Bに示されているように、多発性硬化症ボランティアから得た血清は、MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSCに結合していない抗MICB抗体を含む。図9Cに示されているように、多発性硬化症であるボランティアから得た血清は、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのiPSCに結合する抗体を含まず、このiPSCは、MICA及び/またはMICBの細胞表面発現が見られない。
【1284】
図10A~10Cに示されているように、多発性硬化症ボランティアの血清中の既存のMICB抗体は、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSCのCDCを誘導する。これに対して、MICAインデル/インデル、MICBインデル/インデル、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgのMSCでは、CDCによる細胞死は観察されなかった。健常ボランティアから得た血清の解析結果は、コントロールとして示されている(図10Cの一部)。
【1285】
この試験結果から、抗MICB抗体が、多発性硬化症の患者の血清中に存在することがある一方で、このような抗体は典型的には、健常ドナーから得た血清中には存在しないことが示されている。これらの結果から、いくつかの態様では、血清抗体検査を用いて、細胞移植を必要とする患者が、その細胞の表面上のMICBを認識し得る抗MICB抗体の存在により、その細胞に対して免疫応答を引き起こしやすい可能性があるかを判断できることが裏付けられている。さらに、これらの結果により、同種異系細胞療法、特に、MICBを発現もしくはアップレギュレートするか、またはMICBに対する抗体が血清中に存在する対象に投与するためのものであるある特定の細胞種を伴う細胞療法で、MICBの追加のノックアウトも含む操作細胞、例えば、B2Mインデル/インデル、CIITAインデル/インデル、CD47tgの改変を含む細胞を使用することにも裏付けが与えられている。
【1286】
実施例5.抗MICA抗体及び抗MICB抗体の状態及び種の解析
この実施例には、様々な血清供給源における抗MICA抗体及び抗MICB抗体の存在についての解析結果が説明されている。
【1287】
図11に示されているように、全身性ループスエリテマトーデスである2人のボランティアから得た血清中で、抗MICB抗体が検出された。
【1288】
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
【配列表】
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【国際調査報告】