IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ティコナ・エルエルシーの特許一覧

<>
  • 特表-EMI遮蔽用多層複合体 図1
  • 特表-EMI遮蔽用多層複合体 図2
  • 特表-EMI遮蔽用多層複合体 図3
  • 特表-EMI遮蔽用多層複合体 図4
  • 特表-EMI遮蔽用多層複合体 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】EMI遮蔽用多層複合体
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240918BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240918BHJP
   C08L 67/03 20060101ALI20240918BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20240918BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20240918BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240918BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240918BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20240918BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20240918BHJP
   B32B 27/06 20060101ALI20240918BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20240918BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240918BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240918BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20240918BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240918BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
H05K9/00 W
C08L101/00
C08L67/03
C08L81/02
C08L69/00
C08L67/00
C08L77/00
C08K7/06
C08L23/10
B32B27/06
B32B7/025
B32B7/027
B32B27/36
B32B27/36 102
B32B27/34
B32B27/32 Z
B32B27/20 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508671
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 US2022041167
(87)【国際公開番号】W WO2023034073
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/238,280
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】バンサル,プラブッダ
(72)【発明者】
【氏名】サブラモニアン,スレシュ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,スヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ヨン-チュル
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
5E321
【Fターム(参考)】
4F100AB13B
4F100AB17A
4F100AB17B
4F100AB25A
4F100AC03B
4F100AG00B
4F100AK07B
4F100AK42B
4F100AK45B
4F100AK48B
4F100AK57B
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA23B
4F100DE01A
4F100DG01B
4F100GB41
4F100HB31A
4F100JA04B
4F100JA05B
4F100JB16B
4F100JD08
4F100JG01A
4F100JG04B
4F100JJ01B
4F100YY00B
4J002AA011
4J002BB111
4J002BB121
4J002CB001
4J002CF041
4J002CF091
4J002CF161
4J002CF171
4J002CG011
4J002CG021
4J002CG041
4J002CL011
4J002CL021
4J002CL031
4J002CL051
4J002CL061
4J002CL071
4J002CN011
4J002CN021
4J002CN031
4J002DA016
4J002DA020
4J002DA030
4J002DA070
4J002DA090
4J002DE040
4J002DE070
4J002DE090
4J002DE100
4J002DF010
4J002DJ000
4J002DJ040
4J002DJ050
4J002DK000
4J002DL000
4J002FA040
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD206
4J002GQ00
4J002GQ01
5E321AA01
5E321AA23
5E321BB21
5E321BB53
5E321BB57
5E321GG05
5E321GG07
(57)【要約】
基材および伝導性フィルムを含む多層複合体が提供される。基材は、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて約40℃以上の荷重撓み温度を有する熱可塑性ポリマーを含有するポリマー組成物を含有する。伝導性フィルムは貴金属を含有する。複合体は、ASTM D4935-18に従って10GHzの周波数および3ミリメートルの厚さで求めて約25デシベル以上の電磁障害遮蔽有効度を示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層複合体であって、
第1の表面および逆側の第2の表面を画定する基材と、
前記第1の表面上に配置された、貴金属を含有する伝導性フィルムとを含み;
前記基材は、ポリマーマトリクスを含むポリマー組成物を含有し、前記ポリマーマトリクスは、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて約40℃以上の荷重撓み温度を有する熱可塑性ポリマーを含有し;
前記複合体は、ASTM D4935-18に従って10GHzの周波数および3ミリメートルの厚さで求めて約25デシベル以上の電磁障害遮蔽有効度を示す、
多層複合体。
【請求項2】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記複合体が約0.4GHz~約18GHzの周波数範囲にわたって3ミリメートルの厚さで約25デシベル以上の平均電磁障害遮蔽有効度を示す、多層複合体。
【請求項3】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記複合体が10GHzの周波数および3ミリメートルの厚さで約50デシベル以上の電磁障害遮蔽有効度を示す、多層複合体。
【請求項4】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記ポリマーマトリクスが前記組成物の約50重量%~100重量%を構成する、多層複合体。
【請求項5】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記熱可塑性ポリマーが約10℃以上のガラス転移温度を有する、多層複合体。
【請求項6】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記熱可塑性ポリマーが約140℃以上の溶融温度を有する、多層複合体。
【請求項7】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記熱可塑性ポリマーが芳香族ポリマーを含む、多層複合体。
【請求項8】
請求項7に記載の多層複合体であって、前記芳香族ポリマーが芳香族ポリエステルである、多層複合体。
【請求項9】
請求項8に記載の多層複合体であって、前記芳香族ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,3-プロピレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレン2,6-ナフタレート)、ポリ(エチレン2,6-ナフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキシレン ジメチレン テレフタレート)、またはそれらの組合せである、多層複合体。
【請求項10】
請求項7に記載の多層複合体であって、前記芳香族ポリマーがポリアリーレンスルフィドである、多層複合体。
【請求項11】
請求項7に記載の多層複合体であって、前記芳香族ポリマーが芳香族ポリカーボネートである、多層複合体。
【請求項12】
請求項7に記載の多層複合体であって、前記芳香族ポリマーがサーモトロピック液晶ポリマーである、多層複合体。
【請求項13】
請求項7に記載の多層複合体であって、前記芳香族ポリマーが芳香族ポリアミドである、多層複合体。
【請求項14】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記熱可塑性ポリマーが脂肪族ポリマーを含む、多層複合体。
【請求項15】
請求項14に記載の多層複合体であって、前記脂肪族ポリマーが脂肪族ポリアミドである、多層複合体。
【請求項16】
請求項14に記載の多層複合体であって、前記脂肪族ポリマーがプロピレンポリマーである、多層複合体。
【請求項17】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記ポリマー組成物が鉱物充填剤をさらに含む、多層複合体。
【請求項18】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記ポリマー組成物が補強用繊維をさらに含む、多層複合体。
【請求項19】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記ポリマー組成物が、ASTM E 1461-13に従って求めて約1W/m・K以上の面内熱伝導率を示す、多層複合体。
【請求項20】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記ポリマー組成物が、IEC 62631-3-1:2016に従って約20℃の温度で求めて、約1×1014Ω以上の表面抵抗率および/または約1×1012Ω・m以上の体積抵抗率を示す、多層複合体。
【請求項21】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記ポリマー組成物が電気伝導性充填剤を含まない、多層複合体。
【請求項22】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記ポリマー組成物が、約1,000百万分率以下の量の銅および約2,000百万分率以下の量のクロムを含有する、多層複合体。
【請求項23】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記ポリマー組成物が式、AB[式中、Aは2の原子価を有する金属陽イオンであり、Bは3の原子価を有する金属陽イオンである。]を有するスピネル結晶を含まない、多層複合体。
【請求項24】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記ポリマー組成物が亜クロム酸銅を含まない、多層複合体。
【請求項25】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記貴金属が、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、白金、金、銀、銅またはそれらの組合せを含む、多層複合体。
【請求項26】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記貴金属が銀を含む、多層複合体。
【請求項27】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記伝導性フィルムが、約1マイクロメートル以上の平均直径を有する金属粒子を含まない、多層複合体。
【請求項28】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記伝導性フィルムが、20℃の温度で約1×10S/cm以上の比伝導度を示す、多層複合体。
【請求項29】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記伝導性フィルムが約5ナノメートル~約5マイクロメートルの厚さを有する、多層複合体。
【請求項30】
請求項1に記載の多層複合体であって、前記第2の表面上に配置された第2の伝導性フィルムをさらに含み、前記第2の伝導性フィルムが貴金属を含有する、多層複合体。
【請求項31】
請求項1に記載の複合体を形成する方法であって、前記方法が、
貴金属または貴金属の前駆体を含むインクを前記第1の表面に適用して1つまたは複数の前駆体層を形成するステップ;および前記1つまたは複数の前駆体層を処理して前記伝導性フィルムを形成するステップを含む、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記インクが金属粒子を含む、方法。
【請求項33】
請求項31に記載の方法であって、前記インクが金属前駆体を含む、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、前記金属前駆体が約50℃~約500℃の分解温度を有する、方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法であって、前記金属前駆体が、貴金属陽イオンおよび有機陰イオンを含有する有機塩である、方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、前記金属前駆体が、ブタン酸銀、ペンタン酸銀、ヘキサン酸銀、ヘプタン酸銀、オクタン酸銀、ノナン酸銀、デカン酸銀、ウンデカン酸銀、ドデカン酸銀、テトラデカン酸銀、ヘキサデカン酸銀、オクタデセン酸銀、ネオペンタン酸銀、ネオヘキサン酸銀、ネオヘプタン酸銀、ネオオクタン酸銀、ネオノナン酸銀、ネオデカン酸銀、ネオドデカン酸銀、ならびにそれらの組合せを含む、方法。
【請求項37】
請求項31に記載の方法であって、前記処理が前記1つまたは複数の前駆体層を加熱するステップを含む、方法。
【請求項38】
請求項31に記載の方法であって、前記処理が前記1つまたは複数の前駆体層を電磁波放射線にかけるステップを含む、方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、前記電磁波放射線が約100ナノメートル~約1ミリメートルのピーク波長を有する、方法。
【請求項40】
請求項31に記載の方法であって、前記インクが前記基材の第1の表面上に印刷される、方法。
【請求項41】
請求項31に記載の方法であって、前記第2の表面に前記インクを適用して1つまたは複数の第2の前駆体層を形成するステップ、および前記1つまたは複数の第2の前駆体層を処理して前記第2の伝導性フィルムを形成するステップをさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2021年8月30日に出願された米国特許仮出願第63/238,280号に基づき、その優先権を主張し、これは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]電子モジュールは通常、電子部品(例えばプリント回路基材、アンテナ素子、無線周波装置、センサー、光検知および/または送信素子(例えば光学ファイバー)、カメラ、全地球測位装置など)はしばしば、日光、風および湿気などの天候からそれらを保護するためにハウジング構造体内に収容される。通常、そのようなハウジングは、電磁気信号(例えば高周波信号または光)を通過させる材料から形成される。これらの材料は幾つかの用途には適しているが、それにもかかわらずより高い周波数範囲、例えば、LTEまたは5Gシステムに付随するもので、問題が生じることがある。例えば、レーダーモジュールは、通常は、無線周波(RF)レーダー信号、デジタル信号処理作業等を取り扱うための専用の電気部品を有する1つまたは複数のプリント回路基材を含む。これらのコンポーネントが高周波数で効果的に動作することを確実にするために、それらは一般にハウジング構造体内に収容され、そして電波を透過するレドームでカバーされる。他の周囲の電気装置は、レーダーモジュールの正確な動作に影響を及ぼす可能性のある電磁障害(「EMI」)を発生し得るため、アルミニウム板がしばしば、ハウジングとプリント回路基材との間に別個のコンポーネントとして配置される。さらに、コンポーネントから熱を引き離すのを助けるために、一般に回路基材にヒートシンク(例えば熱パッド)を用いることも必要である。残念ながら、そのようなコンポーネントの追加は、相当量のコストおよび重量を追加する恐れがあり、自動車産業はより小型で軽量のコンポーネントを要求し続けているので、これは特に不利である。したがって、アルミニウム板またはヒートシンクなどの別個のコンポーネントを必要としない電子構造(例えば、モジュール)に対する必要性が現在存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0003]本発明の一実施形態によると、第1の表面および逆側の第2の表面を画定する基材、ならびに貴金属を含有する第1の表面上に配置された伝導性フィルム(a conductive film)を含む多層複合体が開示される。基材は、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて約40℃以上の荷重撓み温度を有する熱可塑性ポリマーを含有するポリマーマトリクスを含むポリマー組成物を含有する。さらに、複合体は、さらに、複合体は、ASTM D4935-18に従って10GHzの周波数および3ミリメートルの厚さで求めて約25デシベル以上の電磁障害遮蔽有効度(an electromagnetic interference shielding effectiveness)を示す。
【0004】
[0004]本発明の他の特徴および態様は以下により詳しく述べられる。
[0005]本発明の完全で実施可能な開示が、当業者にとってそれらの最良の様式を含め、添付の図への参照を含む本明細書の残り部分により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】[0006]図1は、本発明の複合体を用いることができる電子モジュールの一実施形態の分解斜視図である。
図2】[0007]図2は、本発明の複合体を用いることができる5Gシステムの一実施形態を描く。
図3】[0008]図3は、本発明に従って形成された2層複合体の一実施形態を描く。
図4】[0009]図4は、本発明に従って形成された3層複合体の一実施形態を描く。
図5】[0010]図5は、本発明に従って形成された5層複合体の一実施形態を描く。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0011]本議論は例示の実施形態のみの説明であって、本発明のより広範な態様を限定するようには意図されないことは、当業者に理解されるはずである。
[0012]概して言えば、本発明は、EMI遮蔽を必要とする用途で使用される多層複合体を対象とする。複合体は、基材、およびその表面上に配置された伝導性フィルムを含有する。これらの層の特定の性質、ならびにそれらが形成される方式の注意深い選択によって、結果として得られる複合体は、高周波数範囲で高度のEMI遮蔽有効度を示すことができる。とりわけ、EMI遮蔽有効度(「SE」)は、ASTM D4935-18に従って10GHzなどの高周波数で求めて約25デシベル(dB)以上、幾つかの実施形態において約30dB以上、幾つかの実施形態において約35dB以上、幾つかの実施形態において約40dB~約100dBであってもよい。殊に、EMI遮蔽有効度は、5G周波数、例えば約0.4GHz以上、幾つかの実施形態において約1GHz以上、幾つかの実施形態において約1.5GHz以上、幾つかの実施形態において約1.5GHz~約20GHz、幾つかの実施形態において約1.5GHz~約18GHz、幾つかの実施形態において約2GHz~約16GHzを含む高周波数範囲にわたって安定性を持続し得ることが発見された。EMI遮蔽有効度は、また、約0.5~約10ミリメートル、幾つかの実施形態において約0.8~約5ミリメートル、幾つかの実施形態において約1~約4ミリメートル(例えば1ミリメートル、1.6ミリメートルまたは3ミリメートル)などの様々な異なるコンポーネント厚さについて所望される範囲内にあってもよい。これらの高周波数および/または厚さ範囲内では、例えば、平均のEMI遮蔽有効度は、約25dB以上、幾つかの実施形態において約30dB以上、幾つかの実施形態において約35dB以上、幾つかの実施形態において約40dB~約100dBであってもよい。同様に、最小のEMI遮蔽有効度は、約25dB以上、幾つかの実施形態において約30dB以上、幾つかの実施形態において約35dB以上、幾つかの実施形態において約40dB~約100dBであってもよい。
【0007】
[0013]本発明の様々な実施形態がここでより詳細に記載される。
I.複合体
A.基材
[0014]基材は一般に、様々な異なる技法を使用して、ポリマー組成物から形成される。一実施形態において、例えば、基材は、成形技法、例えば射出成形、低圧射出成形、押出圧縮成形、ガス射出成形、泡射出成形、低圧ガス射出成形、低圧泡射出成形、ガス押出圧縮成形、泡押出圧縮成形、押出成形、泡押出成形、圧縮成形、泡圧縮成形、ガス圧縮成形などを使用して形成されてもよい。例えば、ポリマー組成物を注入することができる型を含む射出成形システムが用いられてもよい。射出機内の時間は、ポリマーマトリクスが先に凝固しないように制御し最適化することができる。サイクル時間に到達しバレルが排出するのに満ちたとき、ピストンが働いて型穴に組成物を注入することができる。圧縮成形システムもまた用いられてもよい。射出成形と同様に、所望の物品へのポリマー組成物の成形もまた型内で行われる。組成物は、任意の公知の技法を使用して、例えば自動ロボットアームによって拾い上げられることにより圧縮型に入れられてもよい。型の温度は、凝固を可能にするために所望の期間、ポリマーマトリクスの凝固温度以上に維持されてもよい。次に、成形物は、それを融解温度より低い温度にすることにより凝固されてもよい。結果として得られた生成物は脱型することができる。各成型プロセスについてのサイクル時間は、ポリマーマトリクスに適合し、十分な結合を達成し、プロセス全体の生産性を増強するように調節されてもよい。
【0008】
[0015]基材を形成するために使用されるポリマー組成物は一般に、ポリマーマトリクスおよび任意選択的に1つまたは複数のさらなる成分を含む。ポリマーマトリクスの性質および濃度ならびに任意選択の成分は、結果として得られる基材としてのある所望の性質を達成するために選択的に制御されてもよい。例えば、ポリマー組成物は、熱伝導性であってもよく、ASTM E 1461-13に従って求めて例えば約1W/m・K以上、幾つかの実施形態において約3W/m・K以上、幾つかの実施形態において約5W/m・K以上、幾つかの実施形態において約7~約50W/m・K、幾つかの実施形態において約10~約35W/m・Kの面内熱伝導率を示す。組成物は、また、ASTM E 1461-13に従って求めて約0.3W/m・K以上、幾つかの実施形態において約0.5W/m・K以上、幾つかの実施形態において約0.40W/m・K以上、幾つかの実施形態において約1~約15W/m・K、幾つかの実施形態において約1~約10W/m・Kの厚さ方向熱伝導率を示してもよい。ポリマー組成物は、熱伝導性であるが、それにもかかわらず本質的に絶縁性であり得、したがって比較的高度の電気抵抗を示す。表面抵抗率は、例えば、IEC 62631-3-1:2016に従って約20℃の温度で求めて例えば約1×1014Ω以上、幾つかの実施形態において約1×1015Ω以上、幾つかの実施形態において約1×1016Ω以上、幾つかの実施形態において約1×1017Ω以上であってもよい。体積抵抗率は同様に、例えば、IEC 62631-3-1:2016に従って約20℃の温度で求めて約1×1012Ω・m以上、幾つかの実施形態において約1×1013Ω・m以上、幾つかの実施形態において約1×1014Ω・m以上、幾つかの実施形態において約1×015Ω・m以上であってもよい。
【0009】
[0016]ポリマー組成物はまた一般に優れた機械的性質を有する。例えば、ポリマー組成物は、ISO試験No.179-1:2010(ASTM D256-10e1と技術的に同等物)に従って様々な温度、例えば、約-50℃~約85℃の温度範囲内(例えば23℃)で測定して約20kJ/m以上、幾つかの実施形態において約30~約80kJ/m、幾つかの実施形態において約40~約60kJ/mのシャルピーノッチ無し衝撃強度を示してもよい。引張および曲げ機械的性質もまた良好であり得る。例えば、ポリマー組成物は、約50MPa以上、300MPa、幾つかの実施形態において約50~約300MPa、幾つかの実施形態において約80~約500MPa、幾つかの実施形態において約85~約250MPaの引張強度;約0.1%以上、幾つかの実施形態において約0.2%~約5%、幾つかの実施形態において約0.3%~約2.5%の引張破壊歪み;および/または約3,500MPa~約30,000MPa、幾つかの実施形態において約6,000MPa~約28,000MPa、幾つかの実施形態において約15,000MPa~約25,000MPaの引張弾性率を示してもよい。引張特性は、ISO試験No.527-1:2019(ASTM D638-14と技術的に同等物)に従って様々な温度で、例えば、約-50℃~約85℃の温度範囲内(例えば23℃)で求められてもよい。ポリマー組成物はまた、約100~約500MPa、幾つかの実施形態において約130~約400MPa、幾つかの実施形態において約140~約250MPaの曲げ強度;約0.5%以上、幾つかの実施形態において約0.6%~約5%、幾つかの実施形態において約0.7%~約2.5%の曲げ破壊歪み;および/または、約5,000MPa~約60,000MPa、幾つかの実施形態において約20,000MPa~約55,000MPa、幾つかの実施形態において約30,000MPa~約50,000MPaの曲げ弾性率を示してもよい。曲げ特性は、ISO試験No.178:2019(ASTM D790-17と技術的に同等物)に従って様々な温度で、例えば、約-50℃~約85℃(例えば23℃)の温度範囲内で求められてもよい。
【0010】
i.ポリマーマトリクス
[0017]注目されるように、基材は一般に、ポリマーマトリクスを含むポリマー組成物を含有する。ポリマーマトリクスは、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて約40℃以上、幾つかの実施形態において約50℃以上、幾つかの実施形態において約60℃以上、幾つかの実施形態において約80℃~約250℃、幾つかの実施形態において約100℃~約200℃の荷重撓み温度(「DTUL」)によって反映されるような高度の耐熱性を有する1種または複数の高性能熱可塑性ポリマーを含有する。高度の耐熱性を示すことに加えて、また通常、熱可塑性ポリマーは、約10℃以上、幾つかの実施形態において約20℃以上、幾つかの実施形態において約30℃以上、幾つかの実施形態において約40℃以上、幾つかの実施形態において約50℃以上、幾つかの実施形態において約60℃~約320℃などの高いガラス転移温度を有する。半結晶性または結晶性ポリマーが用いられる場合、高性能ポリマーはまた、約140℃以上、幾つかの実施形態において約150℃~約400℃、幾つかの実施形態において約200℃~約380℃などの高溶融温度を有していてもよい。当業界でよく知られているように、示差走査熱量測定法(「DSC」)を使用して、ISO 11357-2:2020(ガラス転移)および11357-3:2018(溶融)によって求めて、ガラス転移および溶融温度が求められてもよい。
【0011】
[0018]この目的にとって適切な高性能熱可塑性ポリマーは、例えば、ポリオレフィン(例えばエチレンポリマー、プロピレンポリマーなど)、ポリアミド(例えば脂肪族、半芳香族または芳香族ポリアミド)、ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、液晶ポリマー(例えば全芳香族ポリエステル、ポリエステルアミドなど)、ポリカーボネートなど、ならびにそれらのブレンドを含んでいてもよい。ポリマー系の正確な選択は、様々な因子、例えば、組成物内に含まれる他の充填剤の性質、組成物が形成および/または加工される方式、ならびに意図した適用の特定の要件に依存する。
【0012】
[0019]芳香族ポリマーは、例えば、ポリマーマトリクスにおいて使用するために特に適している。芳香族ポリマーは、本質的に実質上非晶質、半結晶性または結晶性であってもよい。適切な半結晶性芳香族ポリマーの一例は、例えば芳香族ポリエステルであり、それは、4~20炭素原子、幾つかの実施形態において8~14炭素原子を有するものなどの少なくとも1種のジオール(例えば、脂肪族および/または脂環式)と少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸との縮合生成物であってもよい。適切なジオールは、例えば、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールおよび式HO(CHOH[式中、nは2~10の整数である。]の脂肪族グリコールを含んでいてもよい。適切な芳香族ジカルボン酸は例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルなど、ならびにそれらの組合せを含んでいてもよい。縮合環もまた、例えば、1,4-または1,5または2,6-ナフタレン-ジカルボン酸中に存在することができる。そのような芳香族ポリエステルの特定の例は例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(1,3-プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4-ブチレン2,6-ナフタレート)(PBN)、ポリ(エチレン2,6-ナフタレート)(PEN)、ポリ(1,4-シクロヘキシレン ジメチレン テレフタレート)(PCT)、ならびに前述のものの混合物を含んでいてもよい。
【0013】
[0020]芳香族ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)の誘導体および/またはコポリマーも用いられてもよい。一実施形態において、例えば、改質する酸および/または改質するジオールはそのようなポリマーの誘導体を形成するために使用されてもよい。本明細書において使用される場合、「改質する酸」および「改質するジオール」という用語は、それぞれポリエステルの酸およびジオールの繰り返し単位の一部を形成することができ、その結晶性を低減するかまたはポリエステルを非晶質にするためにポリエステルを改質することができる化合物を定義するよう意図される。改質する酸成分の例は、イソフタル酸、フタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタレン(naphthaline)ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、1,12-ドデカン二酸など含むが、これらに限定されない。実際上、それらの官能性酸誘導体、例えば、ジカルボン酸のジメチル、ジエチルまたはジプロピルエステルを使用することがしばしば好ましい。これらの酸の無水物または酸ハライドも、実用的な場合には用いられてもよい。改質するジオール成分の例は、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル1,3-シクロブタンジオール、Z,8-ビス(ヒドロキシメチルトリシクロ-[5.2.1.0]-デカン[式中、Zは3、4または5を表す];1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシジフェニルエーテル[ビス-ヒドロキシ-エチルビスフェノールA]、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルフィド[ビス-ヒドロキシ-エチルビスフェノールS]および鎖中に1個または複数の酸素原子を含むジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどを含んでもよいが、しかしこれらに限定されない。一般に、これらのジオールは、2~18炭素原子、幾つかの実施形態において、2~8炭素原子を含む。脂環式ジオールは、それらのシスまたはトランス配置において、または両形態の混合物として用いることができる。
【0014】
[0021]例えば上記の芳香族ポリエステルは、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて、通常、約40℃~約80℃、幾つかの実施形態において約45℃~約75℃、幾つかの実施形態において約50℃~約70℃のDTUL値を有する。芳香族ポリエステルは同様に通常、例えば、ISO 11357-2:2020によって求めて、約30℃~約120℃、幾つかの実施形態において約40℃~約110℃、幾つかの実施形態において約50℃~約100℃のガラス転移温度、ならびに例えばISO 11357-2:2018に従って求めて、約170℃~約300℃、幾つかの実施形態において約190℃~約280℃、幾つかの実施形態において約210℃~約260℃の溶融温度を有する。芳香族ポリエステルはまた、例えばISO 1628-5:1998に従って求めて、約0.1dl/g~約6dl/g、幾つかの実施形態において約0.2~約5dl/g、幾つかの実施形態において約0.3~約1dl/gの固有粘度を有していてもよい。
【0015】
[0022]ポリアリーレンスルフィドもまた適切な半結晶性芳香族ポリマーである。ポリアリーレンスルフィドはホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。例えば、ジハロ芳香族化合物の選択的な組合せは、少なくとも2つの異なる単位を含むポリアリーレンスルフィドコポリマーをもたらすことができる。例えば、p-ジクロロベンゼンがm-ジクロロベンゼンまたは4,4’-ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて使用される場合、下式の構造を有するセグメントを含むポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる:
【0016】
【化1】
【0017】
および下式の構造を有するセグメント:
【0018】
【化2】
【0019】
または下式の構造を有するセグメント:
【0020】
【化3】
【0021】
[0023]ポリアリーレンスルフィドは、直鎖、半直鎖、分岐または架橋していてもよい。直鎖ポリアリーレンスルフィドは通常、80モル%以上の反復単位-(Ar-S)-を含む。そのような直鎖ポリマーはまた、少量の分岐単位または架橋単位を含んでもよいが、しかし、分岐単位または架橋単位の量は通常、ポリアリーレンスルフィドの合計モノマー単位の約1モル%未満である。直鎖ポリアリーレンスルフィドポリマーは、前述の反復単位を含むランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってもよい。半直鎖ポリアリーレンスルフィドは、同様に、3以上の反応性官能基を有する少量の1種または複数のモノマーがポリマーへ導入された架橋構造または分岐構造を有していてもよい。例として、半直鎖ポリアリーレンスルフィドを形成するのに使用されるモノマー成分は、分岐ポリマーを調製する際に利用することができる1分子当たり2以上のハロゲン置換基を有するある量のポリハロ芳香族化合物を含むことができる。そのようなモノマーは、式R’X[式中、各Xは塩素、臭素およびヨウ素から選択され、nは整数3~6であり、R’は、最大約4個のメチル置換基を有することができる原子価nの多価芳香族ラジカルであり、R’中の炭素原子の総数は6~約16の範囲内である。]によって表すことができる。半直鎖ポリアリーレンスルフィドを形成するのに用いることができる1分子当たり2を超える置換されたハロゲンを有する幾つかのポリハロ芳香族化合物の例としては、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,3-ジクロロ-5-ブロモベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、1,2,3,5-テトラブロモベンゼン,ヘキサクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロ-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,2’,4,4’-テトラクロロビフェニル、2,2’,5,5’-テトラ-ヨードビフェニル、2,2’,6,6’-テトラブロモ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル、1,2,3,4-テトラクロロナフタレン、1,2,4-トリブロモ-6-メチルナフタレンなど、およびそれらの混合物を含む。
【0022】
[0024]例えば、上記のポリアリーレンスルフィドは通常、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて、約70℃~約220℃、幾つかの実施形態において約90℃~約200℃、幾つかの実施形態において約120℃~約180℃のDTUL値を有する。同様に通常、ポリアリーレンスルフィドは、例えば、ISO 11357-2:2020によって求めて、約50℃~約120℃、幾つかの実施形態において約60℃~約115℃、幾つかの実施形態において約70℃~約110℃のガラス転移温度、ならびに、例えばISO 11357-3:2018に従って求めて約220℃~約340℃、幾つかの実施形態において約240℃~約320℃、幾つかの実施形態において約260℃~約300℃の溶融温度を有する。
【0023】
[0025]上記に示されるように、実質上明瞭な融点温度がない非晶性ポリマーもまた用いられてもよい。適切な非晶性ポリマーは例えば、通常、式-R-O-C(O)-O-の反復構造のカーボネート単位を含む芳香族ポリカーボネートを含んでいてもよい。R基の総数の少なくとも一部(例えば60%以上)は芳香族部分を含み、その残部は脂肪族、脂環式または芳香族であるので、ポリカーボネートはその点で芳香族である。一実施形態において、例えば、Rは、C6~30芳香族基であってもよく、すなわち、少なくとも1個の芳香族部分を含む。通常、Rは一般式HO-R-OHのジヒドロキシ芳香族化合物、例えば、下記参照の特定の式を有するものに由来する:
HO-A-Y-A-OH
[式中、
およびAは独立して単環二価芳香族基であり;
は、単結合、またはAからAを分離する1個もしくは複数の原子を有する架橋基である。]。特定の一実施形態において、ジヒドロキシ芳香族化合物は、以下の式(I)に由来し得る:
【0024】
【化4】
【0025】
[式中、
およびRはそれぞれ独立して、ハロゲンまたはC1~12アルキル基、例えば、各アリーレン基のヒドロキシ基に対してメタに配置されたC1~3アルキル基(例えばメチル)であり;
pおよびqはそれぞれ独立して0~4(例えば1)であり;
は、2個のヒドロキシ置換芳香族基を接続する架橋基を表し、ここで、各Cアリーレン基の架橋基およびヒドロキシ置換基は、Cアリーレン基の互いに対して、オルト、メタまたはパラ(とりわけパラ)に配置されている。]。
【0026】
[0026]一実施形態において、Xは、式-C(R)(R)-[式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、C1~12アルキル、C1~12シクロアルキル、C7~12アリールアルキル(arylalcyl)、C7~12ヘテロアルキルまたは環状C7~12ヘテロアリールアルキル、または式-C(=R)-{式中、Rは二価C1~12炭化水素基である。}の基である。]の置換または非置換のC3~18シクロアルキリデン、C1~25アルキリデンであってもよい。このタイプの例示の基は、メチレン、シクロヘキシルメチレン、エチリデン、ネオペンチリデンおよびイソプロピリデン、ならびに2-[2.2.1]-ビシクロヘプチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンチリデン、シクロドデシリデンおよびアダマンチリデンを含む。Xが置換シクロアルキリデンである特定の例は、以下の式(II)のシクロヘキシリデン架橋アルキル置換ビスフェノールである:
【0027】
【化5】
【0028】
[式中、
a’およびRb’はそれぞれ独立して、C1~12アルキル(例えば、メチルなどのC1~4アルキル)であり、場合によって、シクロヘキシリデン架橋基に対してメタ配置されていてもよく;
はC1~12アルキル(例えばC1~4アルキル)またはハロゲンであり;
rおよびsはそれぞれ独立して1~4(例えば1)であり;
tは0~10、例えば0~5である。]。
【0029】
[0027]シクロヘキシリデン架橋ビスフェノールは、1モルのシクロヘキサノンとの2モルのo-クレゾールの反応生成物であってもよい。別の実施形態において、シクロヘキシリデン架橋ビスフェノールは、1モルの水素化イソホロン(例えば1,1,3-トリメチル-3-シクロヘキサン-5-オン)との2モルのクレゾールの反応生成物であってもよい。そのようなシクロヘキサン含有ビスフェノール、例えば1モルの水素化イソホロンとの2モルのフェノールの反応生成物は、高いガラス転移温度および高い熱変形温度を有するポリカーボネートポリマーを製造するのに役立つ。
【0030】
[0028]別の実施形態において、Xは、C1~18アルキレン基、C3~18シクロアルキレン基、縮合C6~18シクロアルキレン基または式-B-W-B-[式中、BおよびBは独立してC1~6アルキレン基であり、WはC3~12シクロアルキリデン基またはC6~16アリーレン基である。]の基であってもよい。
【0031】
[0029]Xはまた以下の式(III)の置換C3~18シクロアルキリデンであってもよい:
【0032】
【化6】
【0033】
[式中、
、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、酸素またはC1~12有機基であり;
Iは、直接結合、炭素または二価の酸素、硫黄または-N(Z)-{式中、Zは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1~12アルキル、C1~12アルコキシまたはC1~12アシルである。}であり;
hは0~2であり;
jは1または2であり;
iは0または1であり;
kは0~3であり、ただし、R、R、RおよびRの一緒になった少なくとも2つは、縮合した脂環式、芳香族またはヘテロ芳香環である。]。
【0034】
[0030]他の有用な芳香族ジヒドロキシ芳香族化合物は以下の式(IV)を有するものを含む:
【0035】
【化7】
【0036】
[式中、
は、独立してハロゲン原子(例えば臭素)、C1~10ヒドロカルビル(例えばC1~10アルキル基)、ハロゲン置換C1~10アルキル基、C6~10アリール基またはハロゲン置換C6~10アリール基であり;
nは0~4である。]。
【0037】
[0031]式(I)のビスフェノール化合物の特定の例は、例えば、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下「ビスフェノールA」または「BPA」)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリミジン、2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリミジン(PPPBP)、および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)を含む。特定の一実施形態において、ポリカーボネートは、式(I)においてAおよびAのそれぞれがp-フェニレンであり、YがイソプロピリデンであるビスフェノールAに由来する直鎖ホモポリマーであってもよい。
【0038】
[0032]適切な芳香族ジヒドロキシ化合物の他の例としては以下を含んでもよいが、しかしこれらに限定されない:4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、trans-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブテン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-n-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-sec-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(5-フェノキシ-4-ヒドロキシフェニル)エチレン4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(9,9-bis(4-hydroxyphenyl)fluorine)、2,7-ジヒドロキシピレン、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2,6-ジヒドロキシジベンゾ-p-ジオキシン、2,6-ジヒドロキシチアントレン、2,7-ジヒドロキシフェノキサチン、2,7-ジヒドロキシ-9,10-ジメチルフェナジン、3,6-ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6-ジヒドロキシジベンソチオフェン、および2,7-ジヒドロキシカルバゾール、レゾルシノール、置換レゾルシン化合物、例えば、5-メチルレゾルシノール、5-エチルレゾルシノール、5-プロピルレゾルシノール、5-ブチルレゾルシノール、5-t-ブチルレゾルシノール、5-フェニルレゾルシノール、5-クミルレゾルシノール、2,4,5,6-テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6-テトラブロモレゾルシノールなど;カテコール;ヒドロキノン;置換ヒドロキノン、例えば、2-メチルヒドロキノン、2-エチルヒドロキノン、2-プロピルヒドロキノン、2-ブチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2-フェニルヒドロキノン、2-クミルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラ-t-ブチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6-テトラブロモヒドロキノンなど、ならびにそれらの組合せ。
【0039】
[0033]例えば、上記の芳香族ポリカーボネートは、通常、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて、約80℃~約300℃、幾つかの実施形態において約100℃~約250℃、幾つかの実施形態において約140℃~約220℃のDTUL値を有する。ガラス転移温度はまた、例えばISO 11357-2:2020によって求めて約50℃~約250℃、幾つかの実施形態において約90℃~約220℃、幾つかの実施形態において約100℃~約200℃であってもよい。そのようなポリカーボネートはまた、例えばISO 1628-4:1998に従って求めて、約0.1dl/g~約6dl/g、幾つかの実施形態において約0.2~約5dl/g、幾つかの実施形態において約0.3~約1dl/gの固有粘度を有していてもよい。
【0040】
[0034]上記参照のポリマーに加えて、高結晶性芳香族ポリマーもまたポリマー組成物において用いられてもよい。そのようなポリマーの特に適切な例は液晶ポリマーであり、これは、型の小さな空間を効果的に充填することを可能にする高い結晶化度を有する。液晶ポリマーは、一般に、それらが棒状の構造を持ち、溶融状態(例えばサーモトロピックネマチック状態)において結晶性挙動を示すことができる限りにおいて「サーモトロピック」として分類される。そのようなポリマーは、通常、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて、約120℃~約340℃、幾つかの実施形態において約140℃~約320℃、幾つかの実施形態において約150℃~約300℃のDTUL値を有する。ポリマーはまた、約250℃~約400℃、幾つかの実施形態において約280℃~約390℃、幾つかの実施形態において約300℃~約380℃などの比較的高い溶融温度を有する。当業界で公知のように、そのようなポリマーは1種または複数のタイプの反復単位から形成されてもよい。
【0041】
[0035]液晶ポリマーは例えば、通常、ポリマーの約60モル%~約99.9モル%、幾つかの実施形態において約70モル%~約99.5モル%、幾つかの実施形態において約80モル%~約99モル%の量の1種または複数の芳香族エステル反復単位を含んでいてもよい。芳香族エステル反復単位は、一般に以下の式(V)によって表されてもよい:
【0042】
【化8】
【0043】
[式中、
環Bは、置換または非置換の六員アリール基(例えば1,4-フェニレンまたは1,3-フェニレン)、置換もしくは非置換の五もしくは六員アリール基に縮合した置換もしくは非置換の六員アリール基(例えば2,6-ナフタレン)、または置換もしくは非置換の五もしくは六員アリール基に連結した置換もしくは非置換の六員アリール基(例えば4,4-ビフェニレン)であり;
およびYは、独立してO、C(O)、NH、C(O)HNまたはNHC(O)である。]。
【0044】
[0036]通常、YおよびYの少なくとも1つはC(O)である。そのような芳香族エステル反復単位の例は、例えば、芳香族ジカルボン酸反復単位(式Vにおいて、YおよびYはC(O)である)、芳香族ヒドロキシカルボン酸反復単位(式VにおいてYはOであり、YはC(O)である。)、ならびにそれらの様々な組合せを含んでいてもよい。
【0045】
[0037]例えば、芳香族ジカルボン酸、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタンなど、ならびにアルキル、アルコキシ、アリールおよびそれらのハロゲン置換体、およびそれらの組合せに由来する芳香族ジカルボン酸反復単位が用いられてもよい。特に適切な芳香族ジカルボン酸は、例えば、テレフタル酸(「TA」)、イソフタル酸(「IA」)、および2,6-ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)を含んでいてもよい。用いられる場合、芳香族ジカルボン酸(例えばIA、TAおよび/またはNDA)に由来する反復単位は通常、ポリマーの約5モル%~約60モル%、幾つかの実施形態において約10モル%~約55モル%、幾つかの実施形態において約15モル%~約50モル%を構成する。
【0046】
[0038]芳香族ヒドロキシカルボン酸、例えば4-ヒドロキシ安息香酸;4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸;2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸;3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸;4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸など、ならびにアルキル、アルコキシ、アリールおよびそれのハロゲン置換体、およびそれらの組合せに由来する芳香族ヒドロキシカルボキシル反復単位もまた用いられてもよい。特に適切な芳香族ヒドロキシカルボン酸は4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)である。用いられる場合、ヒドロキシカルボン酸(例えば、HBAおよび/またはHNA)に由来する反復単位は通常、ポリマーの約10モル%~約85モル%、幾つかの実施形態において約20モル%~約80モル%、幾つかの実施形態において約25モル%~約75%を構成する。
【0047】
[0039]他の反復単位もポリマーにおいて用いられてもよい。ある実施形態において、例えば、芳香族ジオール、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(または4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど、ならびにアルキル、アルコキシ、アリールおよびそれらのハロゲン置換体、およびそれらの組合せに由来する反復単位が用いられてもよい。特に適切な芳香族ジオールは例えば、ヒドロキノン(「HQ」)および4,4’-ビフェノール(「BP」)を含んでいてもよい。用いられる場合、芳香族ジオール(例えば、HQおよび/またはBP)に由来する反復単位は通常、ポリマーの約1モル%~約30モル%、幾つかの実施形態において約2モル%~約25モル%、幾つかの実施形態において約5モル%~約20%を構成する。反復単位、例えば、芳香族アミド(例えばアセトアミノフェン(「APAP」))および/または芳香族アミン(例えば4-アミノフェノール(「AP」))、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミンなどに由来するものも用いられてもよい。用いられる場合、芳香族アミド(例えばAPAP)および/または芳香族アミン(例えばAP)に由来する反復単位は、通常、ポリマーの約0.1モル%~約20モル%、幾つかの実施形態において約0.5モル%~約15モル%、幾つかの実施形態において約1モル%~約10%を構成する。また、様々な他のモノマーの反復単位がポリマーに組み込まれてもよいことは理解されるはずである。例えばある実施形態において、ポリマーは非芳香族モノマー、例えば、脂肪族または脂環式ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、アミド、アミンなどに由来する1種または複数の反復単位を含んでいてもよい。当然のことながら、他の実施形態において、ポリマーは、非芳香族(例えば、脂肪族または脂環式)モノマーに由来する反復単位がないという点で「全芳香族」であってもよい。
【0048】
[0040]特定の一実施形態において、液晶ポリマーは、4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)およびテレフタル酸(「TA」)および/またはイソフタル酸(「IA」)、ならびに様々な他の任意選択の成分に由来する反復単位から形成されてもよい。4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)に由来する反復単位は、ポリマーの約10モル%~約80モル%、幾つかの実施形態において約30モル%~約75モル%、幾つかの実施形態において約45モル%~約70%を構成してもよい。テレフタル酸(「TA」)および/またはイソフタル酸(「IA」)に由来する反復単位は同様に、ポリマーの約5モル%~約40モル%、幾つかの実施形態において約10モル%~約35モル%、幾つかの実施形態において約15モル%~約35%を構成してもよい。4,4’-ビフェノール(「BP」)および/またはヒドロキノン(「HQ」)に由来する反復単位も、ポリマーの約1モル%~約30モル%、幾つかの実施形態において約2モル%~約25モル%、幾つかの実施形態において約5モル%~約20%の量で用いられてもよい。他の可能な反復単位は、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)、2,6-ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)および/またはアセトアミノフェン(「APAP」)に由来するものを含んでいてもよい。ある実施形態において、例えば、HNA、NDAおよび/またはAPAPに由来する反復単位は、用いられる場合、それぞれ、約1モル%~約35モル%、幾つかの実施形態において約2モル%~約30モル%、幾つかの実施形態において約3モル%~約25モル%を構成してもよい。
【0049】
[0041]当然のことながら、芳香族ポリマーの他に、脂肪族ポリマーもまた、ポリマーマトリクス中の高性能熱可塑性ポリマーとしての使用に適切であり得る。一実施形態において、例えば、一般に主鎖中にCO-NH連結を有し、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合によって、ラクタムの開環重合、またはアミノカルボン酸の自己縮合によって得られるポリアミドが用いられてもよい。例えば、ポリアミドは、通常4~14炭素原子を有する脂肪族ジアミンに由来する脂肪族反復単位を含んでいてもよい。そのようなジアミンの例としては、直鎖脂肪族アルキレンジアミン、例えば、1,4-テトラメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンなど;分岐脂肪族アルキレンジアミン、例えば2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5ペンタンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミンなど;ならびにそれらの組合せを含む。脂肪族ジカルボン酸は例えば、アジピン酸、セバシン酸などを含んでいてもよい。そのような脂肪族ポリアミドの特定の例は、例えば、ナイロン-4(ポリ-α-ピロリドン)、ナイロン-6(ポリカプロアミド)、ナイロン-11(ポリウンデカンアミド)、ナイロン-12(ポリドデカンアミド)、ナイロン-46(ポリテトラメチレンアジポアミド)、ナイロン-66(ポリヘキサメチレンアジポアミド)、ナイロン-610、およびナイロン-612を含む。ナイロン-6およびナイロン-66は特に適切である。
【0050】
[0042]また、芳香族(芳香族モノマー単位だけを含有する、は脂肪族および芳香族モノマー単位の両方である)であると考えられるようにポリアミド中に芳香族モノマー単位を含ませることは可能であると理解されるべきである。芳香族ジカルボン酸の例は例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,4-フェニレンジオキシ二酢酸、1,3-フェニレンジオキシ二酢酸、ジフェン酸、4,4’-オキシ二安息香酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸などを含んでいてもよい。特に適切な芳香族ポリアミドは、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(PA9T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンデカンジアミド)(PA9T/910)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンドデカンジアミド)(PA9T/912)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/11-アミノウンデカンアミド)(PA9T/11)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/12-アミノドデカンアミド)(PA9T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/11-アミノウンデカンアミド)(PA10T/11)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/12-アミノドデカンアミド(PA10T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンデカンジアミド)(PA10T/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカンジアミド)(PA10T/1012)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/テトラメチレンヘキサンジアミド)(poly(decamethyleneterephlhalamide/tetramethylenehexanediamide))(PA10T/46)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/カプロラクタム)(PA10T/6)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA10T/66)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンドデカンジアミド)(poly(dodecamethylene Ierephthalamide/dodecamelhylenedodecanediarnide))(PA12T/1212)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/カプロラクタム)(PA12T/6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA12T/66)などを含んでいてもよい。
【0051】
[0043]ポリアミド組成物において用いられるポリアミドは通常、本質的に結晶性また半結晶性であり、したがって測定可能な溶融温度を有する。組成物が、結果として得られる部品にかなりの程度の耐熱性を与えることができるように、溶融温度は比較的高くてもよい。例えば、ポリアミドは、約220℃以上、幾つかの実施形態において約240℃~約325℃、幾つかの実施形態において約250℃~約335℃の溶融温度を有していてもよい。ポリアミドはまた、約30℃以上、幾つかの実施形態において約40℃以上、幾つかの実施形態において約45℃~約140℃などの比較的高いガラス転移温度を有していてもよい。ガラス転移および溶融温度は、示差走査熱量測定法(「DSC」)を使用して、ISO試験No.11357-2:2020(ガラス転移)および11357-3:2018(溶融)によって求められように、当業界でよく知られているように求められてもよい。
【0052】
[0044]プロピレンポリマーはまたポリマーマトリクスで使用される適切な脂肪族高性能ポリマーであってもよい。ポリマーマトリクスにおいて一般に、例えば、プロピレンホモポリマー(例えば、シンジオタクチック、アタクチック、アイソタクチックなど)、プロピレンコポリマーなどの、様々なプロピレンポリマーまたはプロピレンポリマーの組合せのうちのいずれが用いられてもよい。一実施形態において、例えば、アイソタクチックまたはシンジオタクチックホモポリマーであるプロピレンポリマーが用いられてもよい。一般に「シンジオタクチック」という用語は、メチル基のかなりの部分(すべてではないにしても)がポリマー鎖に沿って反対側に交互にあるタクティシティーを指す。他方では、一般に「アイソタクチック」という用語は、メチル基のかなりの部分(すべてではないにしても)がポリマー鎖に沿って同じ側にあるタクティシティーを指す。なお他の実施形態において、α-オレフィンモノマーとのプロピレンのコポリマーが用いられてもよい。適切なα-オレフィンモノマーの特定の例としては、エチレン、1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;1個または複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-ペンテン;1個または複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-ヘキセン;1個または複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-ヘプテン;1個または複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-オクテン;1個または複数のメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1-ノネン;エチル、メチルまたはジメチル置換の1-デセン;1-ドデセン;およびスチレンを含んでいてもよい。そのようなコポリマーのプロピレン含有率は、約60モル%~約99モル%、幾つかの実施形態において約80モル%~約98.5モル%、幾つかの実施形態において約87モル%~約97.5モル%であってもよい。α-オレフィン含有率は、同様に約1モル%~約40モル%、幾つかの実施形態において約1.5モル%~約15モル%、幾つかの実施形態において約2.5モル%~約13モル%の範囲であってもよい。
【0053】
[0045]適切なプロピレンポリマーは通常、ISO 75-2:2013に従って1.8MPaの荷重で求めて約80℃~約250℃、幾つかの実施形態において約100℃~約220℃、幾つかの実施形態において約110℃~約200℃のDTUL値を有するものである。そのようなポリマーのガラス転移温度は同様に、例えばISO 11357-2:2020によって求めて約10℃~約80℃、幾つかの実施形態において約15℃~約70℃、幾つかの実施形態において約20℃~約60℃であってもよい。さらに、そのようなポリマーの溶融温度は、例えばISO 11357-3:2018によって求めて約50℃~約250℃、幾つかの実施形態において約90℃~約220℃、幾つかの実施形態において約100℃~約200℃であってもよい。
【0054】
ii.任意選択の成分
[0046]所望の場合、ポリマーマトリクスは基材全体を構成してもよい。しかし、他の実施形態において、1種または複数の任意選択の成分、例えば鉱物充填剤、電気伝導性充填剤、めっき添加剤、補強用繊維(例えば、ガラス繊維)、衝撃改質剤、滑剤、顔料(例えば、カーボンブラック)、抗酸化剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、抗滴下添加剤、成核剤(例えば、窒化ホウ素)、および性質および加工性を増強するために添加される他の材料もまた、ある性質を達成するためにポリマー組成物に組み込むことができる。
【0055】
[0047]一実施形態において、例えば、ポリマー組成物は鉱物充填剤を含有していてもよい。鉱物粒子、鉱物繊維(または「ウィスカー」)など、ならびにそれらのブレンドなどの鉱物充填剤の性質は変動し得る。適切な鉱物繊維は、例えば、ケイ酸塩、例えばネオケイ酸塩、ソロケイ酸塩、イノケイ酸塩(例えば、イノケイ酸カルシウム、例えばウォラストナイト;イノケイ酸カルシウムマグネシウム、例えばトレモライト;イノケイ酸カルシウムマグネシウム鉄、例えばアクチノライト;イノケイ酸マグネシウム鉄、例えばアンソフィライト;など)、フィロケイ酸塩(例えば、フィロケイ酸アルミニウム、例えばパリゴルスカイト)、テクトケイ酸塩、など;硫酸塩、例えば硫酸カルシウム(例えば脱水または無水セッコウ);ミネラルウール(例えば、ロックまたはスラグウール);などに由来するものを含んでもよい。イノケイ酸塩(例えば、イノケイ酸カルシウムまたはCaSiO)、例えば商業名称NYGLOS(登録商標)(例えば、NYGLOS(登録商標)4WまたはNYGLOS(登録商標)8)の下でNyco Mineralsから入手可能なウォラストナイト繊維が特に適切である。そのようなウォラストナイト繊維は、例えば、およそ50%のCaO、およそ50%のSiO、および様々な他の微量構成部分、例えばFe、Al、MnO、MgO、TiO、およびKOを含有していてもよい。注目されるように、鉱物繊維は一般に、例えばレーザー回折分析計(例えば、Microtrac S3500)によって求めて例えば約25マイクロメートル以下、幾つかの実施形態において約0.1~約15マイクロメートル、幾つかの実施形態において約0.5~約14マイクロメートル、幾つかの実施形態において約1~約13マイクロメートルのメジアン径などの小サイズを有する。鉱物繊維はまた狭い粒度分布を有していてもよい。すなわち、繊維の少なくとも約60体積%、幾つかの実施形態において繊維の少なくとも約70体積%、幾つかの実施形態において、繊維の少なくとも約80体積%は、上記に注目した範囲内のサイズを有していてもよい。上記の注目されるような小さなメジアン径を持つことに加えて、鉱物繊維はまた、結果として得られるポリマー組成物の性質をさらに改善するのを助けるために比較的高いアスペクト比(メジアン径によって除されたメジアン長さ)を有していてもよい。例えば、鉱物繊維は、約1.1~約100、幾つかの実施形態において約2~約50、幾つかの実施形態において約4~約30、幾つかの実施形態において約8~約20のアスペクト比を有していてもよい。そのような鉱物繊維のメジアン長さは、例えばレーザー回折分析計(例えば、Microtrac S3500)によって求めて例えば約1~約300マイクロメートル、幾つかの実施形態において約5~約250マイクロメートル、幾つかの実施形態において約40~約220マイクロメートル、幾つかの実施形態において約60~約200マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0056】
[0048]他の適切な鉱物充填剤は鉱物粒子である。鉱物の粒子は、例えばレーザー回折分析計(例えば、Microtrac S3500)によって求めて約25マイクロメートル以下、幾つかの実施形態において約0.1~約15マイクロメートル、幾つかの実施形態において約0.5~約14マイクロメートル、幾つかの実施形態において約1~約13マイクロメートルのメジアン直径を有していてもよい。粒子の形状は、例えば粒状、薄片形状など、所望に応じて変動してもよい。例えば、約4以上、幾つかの実施形態において約8以上、幾つかの実施形態において約10~約500などの比較的高いアスペクト比(例えば平均厚さによって除された平均直径)を有する薄片形状の粒子が用いられてもよい。そのような薄片形状の粒子の平均厚さは、同様に約2マイクロメートル以下、幾つかの実施形態において約5ナノメートル~約1マイクロメートル、幾つかの実施形態において約20ナノメートル~約500ナノメートルであってもよい。これらの形状およびサイズには無関係に、粒子は通常、天然および/または合成のシリカまたはケイ酸塩鉱物、例えばタルク、雲母、ハロイサイト、カオリナイト、イライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、パリゴルスカイト、パイロフィライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ウォラストナイト、シリカなどから形成される。タルク、雲母およびシリカは特に適切である。一般に、任意の形態の雲母が用いられてもよく、例えば、白雲母(KAl(AlSi)O10(OH))、黒雲母(K(Mg,Fe)(AlSi)O10(OH))、金雲母(KMg(AlSi)O10(OH))、レピドライト(K(Li,Al)2-3(AlSi)O10(OH))、海緑石(K,Na)(Al,Mg,Fe)(Si,Al)10(OH))などを含む。白雲母系雲母はポリマー組成物における使用に特に適切である。
【0057】
[0049]用いられる場合、鉱物の充填剤はポリマー組成物に様々な利益を提供することができる。一実施形態において、例えば組成物が結果として得られる電子デバイスから熱移動用の熱の通り道を作る能力があり、「ホットスポット」を迅速に除去することができ、全体の温度が使用中に低下することができるように、鉱物の充填剤が、熱伝導率を増加させるのに十分な量用いられてもよい。例えば、鉱物の充填剤は、100重量部のポリマーマトリクス当たり約10~約80部、幾つかの実施形態において約20~約70部、幾つかの実施形態において約30~約60部の量が用いられてもよい。鉱物の充填剤は、ポリマー組成物の、例えば、約5重量%~約70重量%、幾つかの実施形態において約10重量%~約60重量%、幾つかの実施形態において約10重量%~約55重量%、幾つかの実施形態において約25重量%~約40重量%を構成してもよい。そのような実施形態において、高度の熱伝導率が、高価であり、他の性質に不利な影響を与え得る、高度の固有熱伝導率を有する従来材料の使用をしないで達成することができる。例えば、ポリマー組成物は一般に、50のW/m・K以上、幾つかの実施形態において100W/m・K以上、幾つかの実施形態において150W/m・K以上の固有熱伝導率を有する熱伝導性充填剤を含まなくてもよい。そのような高い固有熱伝導性の材料の例は、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、マグネシウム窒化ケイ素、黒鉛(例えば、膨張黒鉛)、炭化ケイ素、カーボンナノチューブ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、アルミニウム粉、および銅粉末を含んでもよい。そのような高度な固有の熱伝導性材料の存在を最小限にすることが通常所望されるが、それにもかかわらず、所望の場合、ポリマー組成物の、例えば約5重量%以下、幾つかの実施形態において約2重量%以下、幾つかの実施形態において約1重量%以下、幾つかの実施形態において約0.5重量%以下の量、幾つかの実施形態において約0.001重量%~約0.2重量%、それらは存在してもよい。
【0058】
[0050]電気伝導性の充填剤もまた、例えば約20℃の温度で求めて約1Ω・cm未満、幾つかの実施形態においておよそ約0.1Ω・cm未満、幾つかの実施形態において約1×10-8~約1×10-2Ω・cmの固有の体積抵抗率を有するものなどのポリマー組成物において用いられてもよい。そのような電気伝導性の充填剤の例は、例えば電気伝導性の炭素材料、例えば、黒鉛、電気伝導性のカーボンブラック、炭素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブ、など;金属(例えば、金属粒子、金属薄片、金属繊維、など);イオン性液体;などを含んでもよい。ある実施形態において、上記で注目されるように、ポリマー組成物は本質的に絶縁であり、したがって高度の電気抵抗を有する。そのような実施形態において、組成物は一般に、上述の電気伝導性の充填剤を含まず、例えば、約5重量%以下、幾つかの実施形態において約2重量%以下、幾つかの実施形態において約1重量%以下、幾つかの実施形態において約0.5重量%以下、幾つかの実施形態において0重量%~約0.2重量%のそのような電気伝導性の充填剤を含有することが所望され得る。
【0059】
[0051]ある実施形態において、補強用繊維は、ポリマー組成物の機械的性質を改善するのを助けるために用いられてもよい。そのような補強用繊維の例は、本質的に絶縁性である材料から形成されたもの、例えばガラス、セラミックス(例えば、アルミナまたはシリカ)、アラミド(例えば、Kevlar(登録商標))、ポリオレフィン、ポリエステルなど、ならびにそれらの混合物を含む。ガラス繊維は、例えば、Eガラス、Aガラス、Cガラス、Dガラス、ARガラス、Rガラス、S1ガラス、S2ガラスなど、およびそれらの混合物が特に適切である。補強用繊維は、例えば、そのような繊維が、ポリマーマトリクスの形成中に高性能ポリマー(複数可)と溶融ブレンドされる場合、ランダムに分布した繊維の形態をしていてもよい。代替として、補強用繊維は長尺繊維の形態であってよく、上記の方式でポリマーマトリクスに含浸されてもよい。それとは関係なく、補強用繊維の体積平均長は、約1~約400マイクロメートル、幾つかの実施形態において約50~約400マイクロメートル、幾つかの実施形態において約80~約250マイクロメートル、幾つかの実施形態において約100~約200マイクロメートル、幾つかの実施形態において約110~約180マイクロメートルであってもよい。繊維はまた、約10~約35マイクロメートル、幾つかの実施形態において約15~約30マイクロメートルの平均直径を有していてもよい。補強用繊維が用いられてもよいが、ポリマー組成物はまた、そのような繊維を必要とせずに高度の機械的強度を達成する能力があり得る。この点に関して、ポリマー組成物は一般に、補強用繊維を含まなくてもよいが、例えば約20重量%以下、幾つかの実施形態において約10重量%以下、幾つかの実施形態において約0重量%~約5重量%の補強用繊維を含んでもよい。
【0060】
[0052]伝導性フィルムが基材に施される方式に基づいて、ポリマー組成物は一般に、めっき添加剤、例えばレーザー直接構造化添加剤(例えば、亜クロム酸銅(CuCr))を含む必要がない。したがって、結果として得られるポリマー組成物は一般にクロムおよび/または銅を含まなくてもよい。例えば、クロムは、約2,000百万分率(「ppm」)以下、幾つかの実施形態において約1,500ppm以下、幾つかの実施形態において約1,000ppm以下、幾つかの実施形態において約0.001~約500ppmの量組成物中に存在してもよく、一方で銅は一般に、約1,000ppm以下、幾つかの実施形態において約750ppm以下、幾つかの実施形態において約500ppm以下、幾つかの実施形態において約0.001~約100ppmの量、組成物中に存在する。銅およびクロムの含有率は、X線蛍光透視法(例えばSi-PiNダイオード検波器を有するInnov-X Systems Model a-2000蛍光X線分析分光計)による公知の技法を使用して求められてもよい。当然のことながら、亜クロム酸銅は別にして、ポリマー組成物はまた一般に、他のタイプの従来のレーザー活性化可能な添加剤、例えば式、AB[式中、Aは2の原子価を有する金属陽イオン(例えば、カドミウム、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、銅、コバルト、鉄、マグネシウム、スズまたはチタン)であり、Bは3の原子価を有する金属陽イオン(例えば、クロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガンまたはスズ)である。]を有するスピネル結晶(例えば、MgAl、ZnAl、FeAl、CuFe、MnFe、NiFe、TiFe、FeCrまたはMgCr)を含まなくてもよい。ポリマー組成物はそのようなスピネル結晶を含まなくてもよく(すなわち、0重量%)、または、そのような結晶は少ない濃度、例えば約1重量%以下、幾つかの実施形態において約0.5重量%以下、幾つかの実施形態において約0.001重量%~約0.2重量%の量で存在してもよい。
【0061】
[0053]用いられる特定のタイプの成分には無関係に、それらは一般に、様々な方法でポリマーマトリクスと一緒に溶融加工されるかまたはブレンドされてもよい。例えば、成分は、別々にまたは組み合わせて、バレル(例えば円筒状バレル)内に回転自在に搭載され収容された少なくとも1つのスクリューを含み、供給部、およびスクリューの長手に沿って供給部から下流に位置する溶融部を画定してもよい押出機に供給されてもよい。押出機は、単軸スクリューまたは二軸スクリュー押出機であってもよい。スクリューの速度は、所望の滞留時間、剪断速度、溶融加工温度などを達成するように選択されてもよい。例えば、スクリュー速度は、毎分約50~約800回転数(「rpm」)、幾つかの実施形態において約70~約150rpm、幾つかの実施形態において約80~約120rpmの範囲であってもよい。溶融ブレンド中の見かけの剪断速度は、また約100秒-1~約10,000秒-1、幾つかの実施形態において約500秒秒-1~約5000秒-1、幾つかの実施形態において約800秒-1~約1200秒-1の範囲であってもよい。見かけの剪断速度は、4Q/πRと等しい。式中、Qはポリマー溶融物の体積流量(「m/s」)であり、Rは、溶融ポリマーが流れる毛細管(例えば、押出ダイ)の半径(「m」)である。結果として得られるポリマー組成物は優れた熱的性質を持つことができる。例えば、ポリマー組成物の溶融粘度は、小さな寸法を有する型の空洞へ容易に流すことができるように十分に低くてもよい。特定の一実施形態において、ポリマー組成物は、1,000秒-1の剪断速度で求めて、約10~約250Pa・s、幾つかの実施形態において約15~約200Pa・s、幾つかの実施形態において約20~約150Pa・s、幾つかの実施形態において約30~約100Pa・sの溶融粘度を有していてもよい。溶融粘度は、組成物の溶融温度より15℃高い(例えば約325℃の溶融温度に対して、約340℃)温度でISO試験No.11443:2014に従って求められてもよい。
【0062】
B.伝導性フィルム
[0054]多層複合体はまた、基材の少なくとも1つの表面上に配置された伝導性フィルムを含有する。伝導性フィルムは、貴金属、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、白金、金、銀、銅、またはそれらの組合せを含有する。銀は特に適切である。伝導性フィルムは比較的高い比伝導度(specific conductance)および伝導性効率(conductive efficiency)を有していてもよい。例えば、比伝導度は、20℃の温度で約1×10S/m以上、幾つかの実施形態において約1×10S/m以上、幾つかの実施形態において約1×10~約8×10S/mであってもよい。伝導性効率は同様に、約30%以上、幾つかの実施形態において約40%以上、幾つかの実施形態において約50%以上であってもよい。
【0063】
[0055]伝導性フィルムは、貴金属または貴金属の前駆体を含むインクを基材の表面に適用して1つまたは複数の前駆体層を形成することを含むプロセスによって形成されてもよい。前駆体層は、その後、伝導性フィルムを形成する方式で処理されてもよい。インクが金属粒子を含有する場合、一般に、金属粒子の平均サイズが、比較的小さく、例えば約10ナノメートル~約2マイクロメートル、幾つかの実施形態において約20ナノメートル~約1マイクロメートル、実施形態において約50ナノメートル~約250マイクロメートルであることが望ましい。一部は粒子が比較的小サイズであることにより、インクは比較的低粘度を有していてもよく、容易に取り扱うこと、基材に適用することを可能にする。粘度は、5または0.5rpmの速度、25℃の温度で操作するBrookfield DV-1粘度計(コーン-プレート)を用いて測定して例えば約5~約250パスカル-秒(Pa・s)、幾つかの実施形態において約20Pa・s~約200Pa・s、幾つかの実施形態において約30Pa・s~約150Pa・sの範囲であってもよい。所望の場合、結合剤、増粘剤、または他の粘性調整剤が、粘度を増加または低下させ、基材に対するフィルムの接着を補助するためにペースト中に用いられてもよい。
【0064】
[0056]金属粒子を用いることの他に、基材に適用された前駆体層の処理によって金属に転換する能力のあるインクに金属前駆体を用いることもまた可能である。そのようなプロセスによって、結果として得られる伝導性フィルムは一般に大きい金属粒子を含まなくてもよく、そうでなければ、インクが基材を被覆する能力およびより低い比伝導度を妨害し得る。例えば、そのような実施形態において、伝導性フィルムは一般に、約2マイクロメートル以上、幾つかの実施形態において約1マイクロメートル以上、幾つかの実施形態において約250ナノメートル以上、幾つかの実施形態において約50ナノメートル以上、幾つかの実施形態において約10ナノメートル以上の平均直径を有する金属粒子を含まなくてもよい。すなわち、そのような粒子は、伝導性フィルムの約1重量%以下、幾つかの実施形態において約0.5重量%以下、幾つかの実施形態において0重量%~約0.2重量%を構成してもよい。金属前駆体は、熱の影響下で分解して薄い伝導性金属フィルムを形成する能力がある。この点に関して、金属前駆体は通常、約50℃~約500℃、幾つかの実施形態において約80℃~約400℃、幾つかの実施形態において約150℃~約300℃の範囲の分解温度を有する。一実施形態において、例えば、金属前駆体は、上記のような貴金属陽イオン、および有機陰イオン、例えば、カルボキシレート、カルバメート、フォルメート、ナイトレートなど、ならびにそれらの組合せを含有する有機塩であってもよい。特に適切なカルボキシレートは、直鎖カルボキシレート、例えばアセテート、プロピオネート、ブタノエート、ペンタノエート、ヘキサノエート、ヘプタノエート、オクタノエート、ノナノエート、デカノエート、ウンデカノエート、ドデカノエート、テトラデカノエート、ヘキサデカノエート、オクタデカノエート、ネオペンタノエート、ネオヘキサノエート、ネオヘプタノエート、ネオオクタノエート、ネオノナノエート、ネオデカノエートおよびネオドデカノエートを含む。そのような有機塩の具体的な例は、例えば、酢酸銀、プロピオン酸銀、ブタン酸銀、ペンタン酸銀、ヘキサン酸銀、ヘプタン酸銀、オクタン酸銀、ノナン酸銀、デカン酸銀、ウンデカン酸銀、ドデカン酸銀、テトラデカン酸銀、ヘキサデカン酸銀、オクタデセン酸銀、ネオペンタ酸銀、ネオヘキサン酸銀、ネオヘプタン酸銀、ネオオクタン酸銀、ネオノナン酸銀、ネオデカン酸銀、ネオドデカン酸銀など、ならびにそれらの組合せを含んでもよい。
【0065】
[0057]インクはまた、金属粒子および/または金属前駆体の他に、様々な他の成分を含有していてもよい。例えば、インクは、有機溶媒、例えば炭化水素(例えば、テルペン、例えばリモネン、ピネンなど)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテルなど);アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールおよびブタノール);トリグリセリド;ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン);エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールエーテルアセテート、メトキシプロピルアセテート、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなど);アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルカプリル/カプリン脂肪酸アミドおよびN-アルキルピロリドン);ラクトン(例えば、γ-ブチロラクトン);ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリルおよびベンゾニトリル);スルホキシドまたはスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびスルフォラン)などを含有していてもよい。用いられる場合、そのような溶媒(複数可)は通常、インクの約10重量%~約98重量%、幾つかの実施形態において約20重量%~約96重量%、幾つかの実施形態において約50重量%~約95重量%を構成する。金属前駆体(複数可)の量は、同様に、インクの約1重量%~約60重量%、幾つかの実施形態において約5重量%~約50重量%、実施形態において約10重量%~約45重量%の範囲であってもよい。当然のことながら、インクはまた、様々な他の任意選択の成分、例えば接着促進剤(例えば、ロジウムアルキル化合物、例えばノナン酸ロジウム)、粘性助剤、シリコーン、防腐剤(例えばカルボン酸)、および添加剤を含有していてもよい。
【0066】
[0058]インクは、基材の表面に適用されて表面全体を、または表面の一部のみを覆うパターンに覆う1つまたは複数の前駆体層(複数可)を形成することができる。例えば、前駆体層(複数可)は、表面の約25%~約95%、幾つかの実施形態において表面の約30%~約90%、幾つかの実施形態において表面の約30%~約85%を保護してもよい。基材にインクを適用するために様々な技法を使用することができる。例えば、インクは、例えばロトグラビア印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、レーザー印刷、感熱リボン印刷、ピストン印刷、噴霧印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などによって基材の表面上に印刷されてもよい。インクジェット印刷は、それが、インクをごく小さいノズル(または一連のノズル)に通して基材に向けて方向付けされる小滴を形成することを伴う非接触印刷技法であるので、特に適切であり得る。特に適切なインクジェット印刷技法は、例えば、Neumannらに対する国際公開第2020/094583号に記載され、これは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。当然のことながら、印刷技法に加えて、なお他の適切な適用技法は、バー、ロール、ナイフ、カーテン、噴霧、スロットダイ、ディップコーティング、滴下コーティング、押出、ステンシル塗りなどを含んでもよい。単層または多層が、所望の膜厚を達成するために基材の表面上に印刷されてもよい。
【0067】
[0059]上記に示すように、前駆体層(複数可)は、伝導性フィルムを形成する適用の後に、ある方式で処理されてもよい。処理は、例えば前駆体層(複数可)を電磁波放射線(electromagnetic radiation)にかけることによって、例えば、直接加熱(例えば、オーブン)および/または間接加熱を含んでもよい。例えば、前駆体層(複数可)は、約50℃~約500℃、幾つかの実施形態において約100℃~約350℃、幾つかの実施形態において約150℃~約300℃の温度に加熱されてもよい。加熱の合計時間は用いる温度に応じて変動し得るが、しかし、通常、約30秒~約120分、幾つかの実施形態において約1分~約60分、幾つかの実施形態において約5分~約30分の範囲である。電磁波放射線が用いられる場合、幾つかの適切な例は、例えば、紫外線、電子線放射線、天然および人工放射性同位体(例えば、α、βおよびγ-線)、X線、中性子線、正に帯電したビーム、レーザービーム、赤外光などを含んでもよい。電磁波放射線を供給する場合、結果として得られるフィルムの品質を改善する放射線の様々なパラメーターを選択的に制御することが一般に所望される。例えば、制御されてもよい1つのパラメーターは電磁波放射線の波長である。電磁波放射線のピーク波長は、約100ナノメートル~約1ミリメートル、幾つかの実施形態において約200ナノメートル~約100マイクロメートル、幾つかの実施形態において約500ナノメートル~約50マイクロメートル、幾つかの実施形態において約800ナノメートル~約10マイクロメートル、幾つかの実施形態において約1マイクロメートル~約5マイクロメートルであってもよい。処理は、約1秒~約10分、幾つかの実施形態において約2秒~約2分、幾つかの実施形態において約5秒~約60秒の期間行うことができる。照射の合計放射線束密度は、また、平方メートル当たり約0.1~約1000キロワット(kW/m)、幾つかの実施形態において約1~約500kW/m、幾つかの実施形態において約10~約100kW/mの範囲であってもよい。しかしながら、必要とされる実際の線量および/または線束密度は、インクおよび電磁波放射線に用いられる材料のタイプに依存すると理解されるべきである。
【0068】
[0060]結果として得られる伝導性フィルムの厚さは変動し得るが、しかし通常、約5ナノメートル~約5マイクロメートル、幾つかの実施形態において約10ナノメートル~約2マイクロメートル、幾つかの実施形態において約50ナノメートル~約1.8マイクロメートル、幾つかの実施形態において約200ナノメートル~約1.5マイクロメートルである。基材厚さは、同様に約0.4~約10ミリメートル、幾つかの実施形態において約0.5~約5ミリメートル、幾つかの実施形態において約0.6~約4ミリメートルの範囲であってもよい。
【0069】
[0061]上記に示すように、伝導性フィルムは、基材の少なくとも1つの表面上に配置される。図3を参照すると、例えば、第2の表面14と逆側の第1の表面12を画定する基材20を含有する複合体10の一実施形態が示される。この特定の実施形態において、伝導性フィルム30は基材20の第1の表面12上に配置される。当然のことながら、伝導性フィルムもまた基材フィルムの複数の表面上に配置されてもよい。図4を参照すると、例えば、複合体10は、第1の表面12上に伝導性フィルム30a、および第2の表面14上に第2の伝導性フィルム30bを含有する。また、本発明の複合体が、上記参照の2層および3層の実施形態に決して限定されないことは理解されなければならない。ある事例において、例えば、複合体は複数の基材および/または伝導性フィルムを含有していてもよい。例えば、図5に示すように、複合体は、第1の表面412aおよび逆側の第2の表面412bを画定する第1の基材420a、ならびに第1の表面414aおよび逆側の第2の表面414bを画定する第2の基材420bを含む5層構成を有していてもよい。この特定の実施形態において、第1の伝導性フィルム500aは、第1の基材420aの第1の表面412a上に配置されてもよく、第2の伝導性フィルム500bは第1の基材420aの第2の表面412b上に、第2の基材420bの第1の表面414a上に配置されてもよく、第3の伝導性フィルム500cは第2の基材420bの第2の表面414b上に配置されてもよい。
II.電子部品
[0062]本発明の複合体は、EMI遮蔽を与えるのを助けるために種々様々の電子部品に用いられてもよい。一実施形態において、例えば、複合体は電子モジュールに用いられてもよい。そのようなモジュールは、一般に1つまたは複数の電子部品(例えば、プリント回路基材、アンテナ素子、無線周波検知素子、センサー、光検知および/または送信素子(例えば光ファイバー)、カメラ、全地球測位装置など)を収容するハウジングを含む。ハウジングは、例えば、基体から延在する側壁を含む基体を含んでいてもよい。電子部品(複数可)が収容され外部の環境から保護される内部を画定するために、基体の側壁にカバーが支持されていてもよい。モジュールの特定の構成には無関係に、複合体は、ハウジングおよび/またはカバーのすべてまたは一部を形成するのに使用されてもよい。一実施形態において、例えば、複合体が、ハウジングの基体および側壁を形成するために使用されてもよい。カバーは、本発明の複合体または異なる材料から形成されてもよい。殊に、本発明の1つの恩恵は、従来のEMI金属シールド(例えばアルミニウム板)および/またはヒートシンクをモジュール設計から排除することができ、それによって、モジュールの重量および全コストを低減することである。それにもかかわらず、ある他の実施形態において、そのような追加の遮蔽および/またはヒートシンクが用いられてもよい。例えば、カバーは、幾つかの事例において追加の金属コンポーネント(例えば、アルミニウム板)を含有していてもよい。
【0070】
[0063]例えば、図1を参照すると、本発明の複合体を組み込んでもよい電子モジュール100の特定の一実施形態が示されている。電子モジュール100は、基体114から延在する側壁132を含むハウジング102を含む。所望の場合、ハウジング102は、電気コネクター(図示せず)を格納することができるシュラウド116も含んでいてもよい。それとは関係なく、プリント回路基材(「PCB」)がモジュール100の内部に収容され、ハウジング102に取り付けられる。とりわけ、回路基材104は、ハウジング102に位置する柱110と並べてそれを受ける穴122を含む。回路基材104は、モジュール100の無線周波動作を可能にする電気回路121が与えられた第1の表面118を有する。例えば、RF回路121は、1つまたは複数のアンテナ素子120aおよび120bを含むことができる。回路基材104はまた、第1の表面118の逆側に第2の表面119を有し、場合によってモジュール100のデジタル電子動作を可能にするコンポーネント(例えば、デジタル信号プロセッサー、半導体メモリー、入力/出力インターフェースデバイスなど)などの他の電気部品を含んでいてもよい。代替として、そのようなコンポーネントが追加のプリント回路基材に与えられてもよい。回路基材104上に配置され、溶接、接着剤などの公知の技法によってハウジング102(例えば、側壁)に取り付けられるカバー108を使用して、電気部品を内部に封止してもよい。上記に示されるように、本発明の複合体は、カバー108および/またはハウジング102のすべてまたは一部を形成するために使用されてもよい。上記に示すように、これはEMI遮蔽有効度と熱伝導性の独特な組合せを有するので、従来のEMIシールド(例えばアルミニウム板)および/またはヒートシンクは排除されてもよい。
【0071】
[0064]電子モジュールは種々様々の用途において使用されてもよい。例えば、電子モジュールは自動車(例えば電気自動車)において用いられてもよい。自動車の用途に使用される場合、例えば、電子モジュールは1つまたは複数の三次元物体に対して車両の位置決めを検知するために使用されてもよい。この点に関して、モジュールは、無線周波検知コンポーネント、光検出または光学コンポーネント、カメラ、アンテナ素子など、ならびにそれらの組合せを含んでいてもよい。例えば、モジュールは、無線検出および測距(レーダー)モジュール、光検出および測距(ライダー)モジュール、カメラモジュール、全地球測位モジュールなどであってよく、またはこれらのコンポーネントの2以上を組み合わせた統合モジュールであってよい。そのようなモジュールは、したがって1つまたは複数の型の電子部品(例えばプリント回路基材、アンテナ素子、無線周波検知装置、センサー、光検知および/または送信素子(例えば光学ファイバー)、カメラ、全地球測位装置など)を収容するハウジングを用いてもよい。一実施形態において、例えば、上記で議論した実施形態と同様の方法で、ハウジング/カバーアセンブリの内部に収容される、光パルスを受信および送信するための光ファイバーアセンブリを含むライダーモジュールが形成されてもよい。同様に、レーダーモジュールは、通常、無線周波(RF)レーダー信号、デジタル信号処理作業等を取り扱うための専用の電気部品を有する1つまたは複数のプリント回路基材を含む。
【0072】
[0065]電子モジュールもまた5Gシステムで用いられてもよい。例えば、電子モジュールは、アンテナモジュール、例えば、マクロセル(基地局)、小形セル、マイクロセルまたはリピーター(フェムトセル)などであってもよい。本明細書において使用される場合、「5G」は一般に、無線周波信号を介した高速データ通信を指す。5Gネットワークおよびシステムは、前世代のデータ通信規格(例えば、「4G」、「LTE」)よりもはるかに速い速度でデータを通信する能力がある。5G通信の要件を定量化する種々の規格および仕様が発表されている。一例として、International Telecommunications Union(ITU)は、2015年にInternational Mobile Telecommunications-2020(「IMT-2020」)規格を発表した。IMT-2020規格は、5Gのための種々のデータ送信基準(例えば、ダウンリンクおよびアップリンクのデータ速度、待ち時間など)を規定している。IMT-2020規格は、アップリンクおよびダウンリンクのピークデータ速度を、5Gシステムがサポートしなければならないデータのアップロードおよびダウンロードの最小データ速度として定義している。IMT-2020規格は、ダウンリンクのピークデータ速度要件を20Gbit/s、アップリンクのピークデータ速度を10Gbit/sと設定している。別の例として、3rd Generation Partnership Project(3GPP)は、「5GNR」と呼ばれる5Gの新しい規格を近年発表している。3GPPは、2018年に5GNRの標準化のための「フェーズ1」を定義する「Release 15」を公開した。3GPPは、5G周波数帯を、一般に6GHz未満の周波数を含む「Frequency Range1」(FR1)、および20~60GHzの範囲の周波数帯としての「Frequency Range2」(FR2)と定義している。しかし、本明細書において使用される場合、「5G周波数」は、60GHzを超える、例えば最高80GHz、最高150GHzおよび最高300GHzの範囲の周波数を利用するシステムを指すことができる。本明細書において使用される場合、「5G周波数」は、約1.8GHz以上、幾つかの実施形態において約2.0GHz以上、幾つかの実施形態において約3.0GHz以上、幾つかの実施形態において約3GHz~約300GHz以上、幾つかの実施形態において約4GHz~約80GHz、幾つかの実施形態において約5GHz~約80GHz、幾つかの実施形態において約20GHz~約80GHz、幾つかの実施形態において約28GHz~約60GHzである周波数を指すことができる。
【0073】
[0066]5Gアンテナシステムは一般に、5Gコンポーネント、例えば、マクロセル(基地局)、小形セル、マイクロセル、またはリピーター(フェムトセル)など、および/または、5Gシステムの他の適切なコンポーネントに使用する高周波数アンテナおよびアンテナアレイを用いる。アンテナ素子/アレイおよびシステムは、Release 15(2018)などの3GPPによって発表された規格、および/またはIMT-2020規格に基づき「5G」を満たし、または適格とすることができる。高周波数での高速データ通信を達成するために、アンテナ素子およびアレイは、一般に、アンテナ性能を向上させることができる小さな特徴的サイズ/間隔(例えば、ファインピッチ技術)を利用する。例えば、特徴的サイズ(アンテナ素子間の間隔、アンテナ素子の幅)などは、一般に、アンテナ素子が形成される基材を通って伝搬する所望の送信および/または受信無線周波の波長(「λ」)に依存する(例えば、nλ/4(ここでnは整数である))。さらに、ビームフォーミングおよび/またはビームステアリングは、複数の周波数範囲またはチャネルにわたる受信および送信を容易にするために利用されてもよい(例えば、多入力多出力(MIMO)、大規模MIMO)。高周波数5Gアンテナ素子は、種々の構成を有することができる。例えば、5Gアンテナ素子は、共平面導波路素子、パッチアレイ(例えば、メッシュグリッドパッチアレイ)、他の適切な5Gアンテナ構成であってもよく、またはそれらを含んでいてもよい。アンテナ素子は、MIMO、大規模MIMO機能、ビームステアリングなどをもたらすように構成されてもよい。本明細書で使用される場合、「大規模」MIMO機能は、一般にアンテナアレイで多数の送信および受信チャネル、例えば8個の送信(Tx)および8個の受信(Rx)チャネル(8×8と略称される)を提供することを指す。大規模MIMO機能は、8×8、12×12、16×16、32×32、64×64以上で提供されてもよい。
【0074】
[0067]アンテナ素子は、様々な製作技法を使用して作製されてもよい。一例として、アンテナ素子および/または関連素子(例えば、接地素子、給電ラインなど)は、ファインピッチ技術を利用することができる。ファインピッチ技術は、一般に、それらのコンポーネントまたはリード間の小さいまたは細かい間隔を指す。例えば、アンテナ素子間(またはアンテナ素子と接地面との間)の特徴的寸法および/または間隔は、約1,500マイクロメートル以下、幾つかの実施形態において1,250マイクロメートル以下、幾つかの実施形態において750マイクロメートル以下(例えば1.5mm以下の中心間間隔)、650マイクロメートル以下、幾つかの実施形態において550マイクロメートル以下、幾つかの実施形態において450マイクロメートル以下、幾つかの実施形態において350マイクロメートル以下、幾つかの実施形態において250マイクロメートル以下、幾つかの実施形態において150マイクロメートル以下、幾つかの実施形態において100マイクロメートル以下、幾つかの実施形態において50マイクロメートル以下であってもよい。しかし、より小さいおよび/またはより大きい特徴的サイズおよび/または間隔もまた利用され得ることは理解されるべきである。このような小さい特徴的寸法の結果として、アンテナ構成および/またはアレイは、小さなフットプリントで多数のアンテナ素子を用いて達成することができる。例えば、アンテナアレイは、1平方センチメートル当たり1,000個を超えるアンテナ素子、幾つかの実施形態において1平方センチメートル当たり2,000個を超えるアンテナ素子、幾つかの実施形態において1平方センチメートル当たり3,000個を超えるアンテナ素子、幾つかの実施形態において1平方センチメートル当たり4,000個を超えるアンテナ素子、幾つかの実施形態において1平方センチメートル当たり6,000個を超えるアンテナ素子、幾つかの実施形態において1平方センチメートル当たり約8,000個を超えるアンテナ素子の平均アンテナ素子濃度を有していてもよい。アンテナ素子のそのような緻密な配列は、アンテナ面積の単位面積あたりのMIMO機能のチャネル数を増加させることができる。例えば、チャネル数は、アンテナ素子の数に対応することができる(例えば、等しいまたは比例する)。
【0075】
[0068]図2を参照すると、例えば、5Gアンテナシステム100は、基地局102、1つもしくは複数の中継局104、1つもしくは複数のユーザコンピューティングデバイス106、1つもしくは複数のWi-Fiリピーター108(例えば、「フェムトセル」)、および/または5Gアンテナシステム100用の他の適切なアンテナコンポーネントを含むことができる。中継局104は、基地局102とユーザコンピューティングデバイス106および/または中継局104との間で信号を中継するまたは「繰り返す」ことにより、ユーザコンピューティングデバイス106および/または他の中継局104による基地局102との通信を容易にするよう構成されてもよい。基地局102は、中継局(複数可)104、Wi-Fiリピーター108、および/またはユーザコンピューティングデバイス(複数可)106と直接、無線周波信号112を受信および/または送信するように構成されたMIMOアンテナアレイ110を含むことができる。ユーザコンピューティングデバイス306は、必ずしも本発明によって限定されず、5Gスマートフォンなどのデバイスを含む。MIMOアンテナアレイ110は、中継局104に対して無線周波信号112を集中させるまたは導くために、ビームステアリングを利用することができる。例えば、MIMOアンテナアレイ110は、X-Y面に対する仰角114、および/またはZ-Y面で規定され、Z方向に対するヘディング角116を調節するよう構成することができる。同様に、中継局104、ユーザコンピューティングデバイス106、Wi-Fiリピーター108のうちの1つまたは複数は、基地局102のMIMOアンテナアレイ110に対するデバイス104、106、108の感度および/または電力送信を方向チューニングすることによって(例えば、それぞれのデバイスの相対仰角および/または相対方位角の一方または両方を調節することによって)MIMOアンテナアレイ110に対する受信および/または送信能力を改善するためにビームステアリングを利用することができる。
【実施例
【0076】
[0069]本発明は、以下の実施例を参照することによってより良好に理解することができる。
試験方法
[0070]熱伝導率:面内方向および厚さ方向の熱伝導率の値は、ASTM-E1461-13に従って求められる。
【0077】
[0071]電磁障害(「EMI」)遮蔽:EMI遮蔽有効度は、ASTM-D4935-18に従って、1.5GHz~10GHzの範囲の周波数範囲(例えば5GHz)で求められてもよい。試験される部品の厚さは、例えば、1ミリメートル、1.6ミリメートルまたは3ミリメートルと変動してもよい。試験は、同軸伝送線の拡大部分であり、Electro-Metricsのような種々の製造業者から入手できるEM-2108標準試験装置を用いて実施されてもよい。測定データは、平面波(遠方界EM波)による遮蔽有効度に関係し、それから磁場および電場に関する近傍界値が推測されてもよい。
【0078】
[0072]表面/体積抵抗率:表面および体積抵抗率の値は、一般にIEC 62631-3-1:2016またはASTM D257-14に従って求められる。この手順に従って、標準試験片(例えば、1メートルの立方体)を2つの電極間に入れる。電圧は60秒間印加され、抵抗が測定される。表面抵抗率は、電位勾配(V/m)の単位電極長さ当たりの電流(A/m)との商であり、概して絶縁材料の表面に沿った漏れ電流に対する抵抗を表す。電極の4つの端部が正方形を画定するので、商における長さは、約分されて表面抵抗率はオームで報告されるが、オーム/スクエアというより説明的な単位も普通に見られる。体積抵抗率はまた、材料中の電流に平行な電位勾配と電流密度との比として求められる。SI単位においては、体積抵抗率は1メートル立方の材料の対向面間の直流抵抗(Ω・m)に数値的に等しい。
【0079】
[0073]溶融粘度:溶融粘度(Pa・s)は、ISO試験No.11443:2021に従ってDynisco LCR7001毛細管レオメーターを使用して1,000s-1の剪断速度および溶融温度より15℃高い温度で求められてもよい。レオメーターオリフィス(ダイ)は、1mmの直径20mmの長さ、20.1のL/D比および180°の入口角を有していた。バレルの直径は9.55mm+0.005mmであり、棒の長さは233.4mmであった。
【0080】
[0074]溶融温度:当業界で公知のように、溶融温度(「Tm」)は、示差走査熱量測定法(「DSC」)によって求められてもよい。溶融温度は、ISO試験No.11357-2:2020によって求められる示差走査熱量測定法(DSC)ピーク溶融温度である。DSC手順の下で、ISO規格10350で明示されているように試料は、TA Q2000 Instrumentで行ったDSC測定を使用して、毎分20℃で加熱、冷却した。
【0081】
[0075]荷重撓み温度(「DTUL」):荷重撓み温度は、ISO試験No.75-2:2013(技術的にASTM D648と等価)に従って求められてもよい。とりわけ、長さ80mm、厚さ10mmおよび幅4mmを有する試験片試料が、規定荷重(最大外繊維応力)が1.8メガパスカルである沿層方向(edgewise)3点曲げ試験にかけられてもよい。試験片は、0.25mm(ISO試験No.75-2:2013としては0.32mm)歪むまで温度を2℃/分で上昇させるシリコーン油浴中に降下させてもよい。
【0082】
[0076]引張弾性率、引張応力、および引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527:2019(ASTM-D638と技術的に同等)に従って試験されてもよい。弾性率および強度の測定は、長さ80mm、厚さ10mmおよび幅4mmを有する同じ試験片試料で行われてもよい。試験温度は23℃であってもよく、試験速度は1または5mm/分であってもよい。
【0083】
[0077]曲げ弾性率、曲げ応力および曲げ伸び:曲げ特性は、ISO試験No.178:2019(技術的にASTM D790と等価)に従って試験されてもよい。この試験は64mmの支持材スパンで行われてもよい。試験は、未切断のISO-3167多目的棒材の中央部分で行われてもよい。試験温度は23℃であってよく、試験速度は2mm/分であってよい。
【0084】
[0078]ノッチ無しおよびノッチ付きシャルピー衝撃強度:シャルピー特性は、ISO試験No.ISO 179-1:2010(技術的にASTM D256-10、方法Bと等価)に従って試験されてもよい。この試験は、タイプ1試験片サイズ(長さ80mm、幅10mmおよび厚さ4mm)を使用して実行されてもよい。ノッチ付き衝撃強度を試験する場合、ノッチはタイプAノッチ(0.25mmの底部半径)であってもよい。試験片は、一枚歯フライス盤を用いて多目的棒材の中央部分から切り出されてもよい。試験温度は23℃であってもよい。
【0085】
[0079]金属含有量:誘導結合プラズマ(ICP)が評価用に発光分析(OES)と連結されている。ここで使用される方法による典型的な定量限界は「ppm」(秤量された試料量に対して)である。計測器を用いる元素濃度の測定が、機器製造業者(ICP-OES:VARIAN Vista MPX)の仕様に従い、認定された参照液体を校正のために使用して実行される。次に、機器によって求められた溶液(100ml)中の元素濃度は、最初の試料の重量(0.1g)に換算される。
【0086】
[0080]比伝導度および伝導性効率:層の比伝導度(S/m)は20℃の温度でOssilaの四探針を使用して測定されてもよい(表面形状測定装置Dektak DXT-Eを用いて求めたメジアン膜厚に基づく)。伝導性効率は同様に、層を形成するために使用される主要金属のバルク値で層の比伝導度を除し、次に、結果として得られる商に100を掛けることによって計算することができる。例えば、銀は、20℃の温度で6.3×10S/mのバルク値を有する。
【0087】
実施例1
[0081]液晶性ポリマーおよそ55重量%、タルク29重量%、ガラス繊維15重量%、および様々な添加剤1重量%を含有する市販のポリマー組成物を含む基材から複合体を形成する。基材は、15×15cmのサイズを有する。基材は大気中プラズマを用いて前処理し、次いで、銀を含有するインクの5層を基材の1つの表面上にインクジェット印刷し、オーブン内210℃で15分間加熱した。結果として得られたフィルムは、約1マイクロメートルの厚さを有していた。
【0088】
実施例2
[0082]ポリフェニレンスルフィド(PPS)およそ35-50重量%、黒鉛40-55重量%、およびガラス繊維10重量%を含有する市販のポリマー組成物を含む基材から複合体を形成する。基材は15×15cmのサイズを有する。基材は大気中プラズマを用いて前処理し、次いで、銀を含有するインクの5層を基材の1つの表面上にインクジェット印刷し、オーブン内215℃で15分間加熱した。結果として得られたフィルムは、約1マイクロメートルの厚さを有していた。
【0089】
実施例3
[0083]およそポリブチレンテレフタレート55重量%、薄片黒鉛25重量%、ガラス繊維10重量%および様々な添加剤10重量%を含有する市販のポリマー組成物から複合体を形成する。基材は、15×15cmのサイズを有する。基材は大気中プラズマを用いて前処理し、次いで、銀を含有するインクの5層を基材の1つの表面上にインクジェット印刷し、オーブン内215℃で10分間加熱した。結果として得られたフィルムは、約1マイクロメートルの厚さを有していた。
【0090】
実施例4
[0084]ナイロン6,6およそ76重量%、炭素繊維20重量%、および添加剤4重量%を含有する市販のポリマー組成物を含む基材から複合体を形成する。基材は、15×15cmのサイズを有する。基材は粉末を用いて前処理し、次いで、銀を含有するインクの5層を基材の1つの表面上にインクジェット印刷し、オーブン内210℃で15分間加熱した。結果として得られたフィルムは、約1マイクロメートルの厚さを有していた。
【0091】
[0085]実施例1-4の複合体の10の試料を、伝導性フィルムを用いて被覆する前後の平均のEMI遮蔽有効度(SE)について試験した。結果を下表1に述べる。
【0092】
【表1】
【0093】
[0086]本発明のこれらおよび他の修正および変形は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって実施することができる。さらに、種々の実施形態の複数の態様は、全体的にまたは部分的に交換することができることが理解されるべきである。さらに、当業者であれば、上記の記載が単に例示の目的であり、添付の特許請求の範囲にさらに記載される本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】