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特表2024-534775連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインク
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  • 特表-連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインク 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/50 20140101AFI20240918BHJP
   C09D 11/326 20140101ALI20240918BHJP
   C09K 11/85 20060101ALI20240918BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20240918BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20240918BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20240918BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240918BHJP
   C01F 17/36 20200101ALI20240918BHJP
【FI】
C09D11/50 ZNM
C09D11/326
C09K11/85
C09K11/02 Z
C09K11/08 A
B82Y20/00
B82Y40/00
C01F17/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508716
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2022073044
(87)【国際公開番号】W WO2023021126
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】21192480.8
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ラポルテ, セシル
(72)【発明者】
【氏名】フィリッポン, ピエール‐シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】カルテシオ, サルヴァトーレ
(72)【発明者】
【氏名】バイユール, ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ルッジェロン, リカルド
【テーマコード(参考)】
4G076
4H001
4J039
【Fターム(参考)】
4G076AA05
4G076AB07
4G076BA13
4G076BE11
4G076CA02
4G076DA30
4H001CA02
4H001CF01
4H001XA09
4H001XA11
4H001XA39
4H001XA64
4H001YA67
4H001YA68
4H001YA69
4H001YA70
4J039AB02
4J039AD04
4J039BA07
4J039BE01
4J039BE22
4J039EA27
4J039EA28
4J039EA29
4J039EA42
4J039GA24
(57)【要約】
本発明は、連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクであって、25℃で約1.5mPas~約6mPasの粘度を有し、a)約4重量%~約6重量%のキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子;b)約1.5重量%~約10重量%の分散剤;c)約80重量%~約90重量%の有機溶媒;およびd)約0.1重量%~約1重量%の導電性塩を含むフォトルミネセンスセキュリティインク、ならびに前記インクの製造方法、および前記インクを用いて物品または価値文書上にフォトルミネセンスセキュリティ機構を製造するための方法を提供する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクであって、前記インクが、25℃で約1.5mPas~約6mPasの粘度を有し、
a)約1重量%~約6重量%のキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子であって、
式中、
Xが、Y3+およびGd3+からなる群から選択され;
Zが、Er3+、Tm3+およびHo3+からなる群から選択され;
0<y+z≦0.4;
かつ、0≦z≦0.1であり、
走査型電子顕微鏡法によって測定される場合に約30nm~約70nmの平均直径を有する、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子と、
b)ポリビニルアセタール樹脂、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含有する塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂、エステルセルロース樹脂、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、約1.5重量%~約10重量%の分散剤と、
c)ケトン、アルコール、エステルおよびこれらの混合物からなる群から選択される、約80重量%~約90重量%の有機溶媒と、
d)約0.1重量%~約1重量%の導電性塩と、を含み、
前記重量パーセントが前記フォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく、フォトルミネセンスセキュリティインク。
【請求項2】
0.1≦y≦0.35である、請求項1に記載のフォトルミネセンスセキュリティインク。
【請求項3】
ZがEr3+を表し、0.01≦z≦0.1であり、y≧zである、請求項2に記載のフォトルミネセンスセキュリティインク。
【請求項4】
ZがTm3+を表し、0.01≦z≦0.05であり、y≧zである、請求項2に記載のフォトルミネセンスセキュリティインク。
【請求項5】
XがY3+を表す、請求項1~4のいずれか一項に記載のフォトルミネセンスセキュリティインク。
【請求項6】
e)約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマー、セルロース樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される最大7重量%のレオロジー調整剤をさらに含み、前記重量パーセントが前記フォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく、
請求項1~5のいずれか一項に記載のフォトルミネセンスセキュリティインク。
【請求項7】
前記分散剤が、ポリビニルアセタール樹脂、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含む塩化ビニルコポリマー、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記フォトルミネセンスインクジェットセキュリティインク中に約4重量%~約10重量%の量で存在し、前記重量パーセントが前記フォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく、請求項1~6のいずれか一項に記載のフォトルミネセンスセキュリティインク。
【請求項8】
請求項1に記載の連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクを製造するための方法であって、
i)粉末またはスラリーとして、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を提供するステップであって、X、Z、yおよびzが請求項1に定義される意味を有し、走査型電子顕微鏡法によって測定される場合に約30nm~約70nmの平均直径を有する、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を提供するステップと、
ii)有機溶媒中の分散剤の溶液を準備するステップであって、前記分散剤が、ポリビニルアセタール樹脂、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含む塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂、エステルセルロース樹脂、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択され;前記有機溶媒が、ケトン、アルコール、エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、有機溶媒中の分散剤の溶液を準備するステップと、
iii)ステップii)で提供された前記溶液中に前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を分散させて、分散液を得るステップと、
iv)ステップiii)で得られた前記分散液に、
前記フォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づき約0.1重量%~約1重量%の導電性塩、
場合により、ケトン、アルコール、エステルおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒、
場合により、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマー、セルロース樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される、前記フォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づき最大7重量%のレオロジー調整剤、ならびに
場合により、着色剤、を添加して、前記連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクを提供するステップと、
を含む方法。
【請求項9】
ステップi)が、i-1)からi-3)の順序で行われる以下のステップ:
i-1)エチレングリコール中のフッ化アンモニウムの第1の溶液を、エチレングリコール中、塩化ナトリウム、X(NO、Yb(NO、および場合によりZ(NO[式中、XおよびZが請求項1に定義される意味を有する]を含有する第2の溶液と混合して、混合物を形成するステップと、
i-2)ステップi-1)で得られた前記混合物を約120℃~約170℃の温度で少なくとも2時間攪拌して、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を形成するステップと、
i-3)前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を、粉末として、またはスラリーとして単離するステップと、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップi-3)が、以下のステップ:
i-4)水を添加し、続いて遠心分離して上清を形成し、前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を沈降させ、その後、前記上清をデカントするステップと、
i-5)前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を乾燥させて、前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を粉末として得、場合により、前記粉末を250℃~約350℃の温度で約1~3時間加熱処理に供するステップ;
または
i-6)前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を、ケトン、アルコール、エステルおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒中に分散させ、続いて遠心分離して上清を形成し、前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を沈降させ、その後、前記上清をデカントして、前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子をスラリーとして得るステップと、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップi-4)が少なくとも2回、好ましくは少なくとも3回行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
物品または価値文書上にフォトルミネセンスセキュリティ機構を製造するための方法であって、
フォトルミネセンスセキュリティインク層を形成するように、連続インクジェット印刷することによって、請求項1~7のいずれか一項に記載のフォトルミネセンスセキュリティインクを前記物品の表面または前記価値文書の基材に適用するステップと、
前記フォトルミネセンスセキュリティインク層を乾燥させて前記フォトルミネセンスセキュリティ機構を提供するステップと、を含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法によって得られるフォトルミネセンスセキュリティ機構を有する、物品、好ましくは化粧品、栄養補助食品、医薬品、アルコール性および非アルコール性飲料、タバコ物品、食品、電気/電子物品、自動車スペア製品、高級品、および宝飾品から選択される物品。
【請求項14】
請求項12に記載の方法によって得られるフォトルミネセンスセキュリティ機構を有する、価値文書、好ましくは紙幣、証書、チケット、小切手、バウチャー、収入印紙、ラベル、契約書、身分証明書、アクセス文書、および、化粧品、栄養補助食品、医薬品、アルコール性および非アルコール性飲料、タバコ物品、食品、電気/電子物品、布地、自動車スペア部品、建材、農薬、高級品または宝飾品の包装材料から選択される価値文書。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクの分野およびそのようなフォトルミネセンスセキュリティインクの製造方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
偽造品は、本物の非偽造品の製造者と偽造品の消費者の両方に重大な経済的および他の損害を引き起こす可能性がある。偽造価値文書も同様に、経済的および/または他の損害を引き起こす可能性がある。物品および/または文書の偽造を防止するための1つの方法は、後で認証することができる特別なセキュリティインクを使用して、価値文書、物品の包装および/またはラベルに、または物品に直接セキュリティ機構を印刷することである。偽造品/価値文書は、この特別なセキュリティインクで作られたセキュリティ機構を持たないため、認証することはできない。
【0003】
セキュリティインクの分野におけるフォトルミネセンス材料(すなわち、外部電磁放射線による励起時に赤外(IR)、可視(VIS)および/または紫外(UV)スペクトルの検出可能な量の放射線を放出することができる材料)の使用は、当技術分野で周知である。セキュリティインクを含有するフォトルミネセンス材料は、半オバート/半コバートおよびコバートのセキュリティ機構の両方の製造を可能にする。半オバート/半コバートおよびコバートのセキュリティ機構は両方とも、肉眼では認証することができず、事前の訓練および知識なしに検出することは困難である。訓練および知識に加えて、そのようなセキュリティ機構の認証は、半オバート/半コバートセキュリティ機構のための照明装置およびコバートセキュリティ特徴のための読み取り/検出装置などの特殊な装置を必要とする。
【0004】
希土類ドープされたフッ化イットリウムナトリウム(NaYF)およびフッ化ガドリニウムナトリウム(NaGdF)材料は、NIRから可視へのアップコンバージョンルミネセンスおよび/またはNIRからNIRへのダウンコンバージョンルミネセンスを示すことが知られており、半オバート/半コバートおよびコバートのセキュリティ機構の製造を目的としたセキュリティインクを製造するための興味深い候補である。
【0005】
例えば、国際公開第2015137995号は、少なくとも2つのランタニドをホストし、有機配位子、ポリマーおよびポリマーを溶解することができる溶媒でキャップされたナノ結晶を含有するアップコンバージョンセキュリティインクを記載する。合成されたままのナノ結晶は、その表面に、キャッピング剤として作用するオレイン酸などの有機配位子を有し、これは非極性溶媒からわずかに極性の有機溶媒への分散を確実にする。合成されたままのナノ結晶の溶解度を調整するためには、ナノ結晶の表面上のキャッピング剤を交換するための面倒であるが必須のステップを行う必要がある。国際公開第2015137995号によって例示されるインクは、90:10 v/vトルエン/安息香酸メチル溶媒混合物中に1重量%または2重量%のβ-NaYF:3%のEr、オレイン酸でキャップされた17%のYbナノ結晶、および1重量%のポリ(メチルメタクリレート)を含有し、直接印刷によって印刷可能である。製造プロセスを工業レベルでアップスケーリングすることを困難にする過酷で高価で長期的な製造条件を必要とすることに加えて、国際公開第2015137995号に記載されているインクは、工業環境で回避されるべきであり、高速工業印刷には適していない健康および環境に有害な溶媒を含有する。
【0006】
インクジェット印刷は、不規則で壊れやすいものを含む実質的に任意の表面に高速の(毎秒100メートルを超える)固定された可変の情報を印刷することを可能にする周知の非接触印刷技術である。インクジェット印刷は、産業およびオフィス部門における印刷用途によく適した技術である。液滴を生成するために使用されるメカニズムに応じて、2つの異なるインクジェット印刷技術、すなわち、連続インクジェット印刷(CIJ)およびドロップオンデマンド印刷(DOD)を区別することができる。
【0007】
国際公開第2016186706号は、エルビウム、イッテルビウムまたはツリウムのうちの少なくとも1つでドープされたβ-NaYF結晶;分散剤;保湿剤;および水を含むアップコンバージョン顔料を含むウォーターベースのアップコンバージョンDODインクジェットインクを記載する。分散剤は、アクリルポリマー、スルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物のアルカリ塩、リグニンまたはリグニン誘導体、例えばリグノスルホネート、アルカリ亜硫酸塩およびホルムアルデヒドとの反応生成物、または顔料親和性基を有する他のブロックコポリマーの1つまたは複数を含む。アップコンバージョンDODインクジェットインクは、アップコンバージョン顔料、分散剤および水を予備混合するステップ;アップコンバージョン顔料の粒径が所望の粒径に達するまで混合物を粉砕することによってアップコンバージョン顔料分散液を形成するステップ;アップコンバージョン顔料分散液に保湿剤を混合するステップによって得られる。国際公開第2016186706号に例示される製造プロセスは、約150nm以下の平均粒径を有するアップコンバージョン顔料を製造するために約8時間の湿式媒体粉砕ステップを含む。時間およびエネルギーを消費することに加えて、粉砕プロセスは通常、粒子表面欠陥をもたらし、これは粒子のルミネセンス特性にとって非常に有害であり、ルミネセンス収率の低下および/または一貫性のないルミネセンススペクトル特性をもたらす。
【0008】
スロー距離およびインク性能(例えば、速乾性)の増加などの理由から、CIJ印刷は、DOD印刷よりも物品および価値文書の直接マーキングにより適している。印刷される多孔質および非多孔質基材(例えば、紙、プラスチック、ガラス、セラミック、金属、合金)に関するその汎用性、高速で可変情報を印刷する能力、および使いやすい処理ステップのために、CIJインクジェット印刷は、産業環境における物品および価値文書の偽造防止印刷に理想的である。
【0009】
価値文書および物品のための半コバート/半オバートおよびコバートのセキュリティ機構を製造するための希土類ドープされたフッ化イットリウムナトリウム(NaYF)または希土類ドープされたフッ化ガドリニウムナトリウム(NaGdF)材料を含有する連続インクジェットセキュリティインク、ならびにそのような連続インクジェットセキュリティインクを製造するための工業的にアップスケール可能な費用および時間的に好都合なプロセスに対する必要性が当技術分野に残っている。
【0010】
[発明の概要]
したがって、本発明の目的は、連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクを提供することであり、前記インクは、25℃で約1.5mPas~約6mPas、好ましくは25℃で約1.5mPas~約4.5mPasの粘度を有し、
a)約1重量%~約6重量%、好ましくは約4重量%~約5重量%のキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子であって、
式中、
Xは、Y3+(三価のイットリウムカチオン)およびGd3+(三価のガドリニウムカチオン)からなる群から選択され;
Zは、Er3+(三価エルビウムカチオン)、Tm3+(三価ツリウムカチオン)およびHo3+(三価ホルミウムカチオン)からなる群から選択され;
0<y+z≦0.4であり、かつ
0≦z≦0.1であり、
走査型電子顕微鏡法によって測定される場合に約30nm~約70nmの平均直径を有する、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子と、
b)ポリビニルアセタール樹脂、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含む塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂、エステルセルロース樹脂、アルキルメタ(アクリレート)ポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、約1.5重量%~約10重量%の分散剤と、
c)ケトン、アルコール、エステルおよびこれらの混合物からなる群から選択される、約80重量%~約90重量%の有機溶媒と、
d)約0.1重量%~約1重量%、好ましくは約0.3重量%~約1重量%、より好ましくは約0.5重量%~約1重量%、最も好ましくは約0.5重量%の導電性塩と、を含み、重量パーセントはフォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく。
【0011】
本明細書において特許請求されるフォトルミネセンスインクジェットセキュリティインクは、e)約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマー、セルロース樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される最大7重量%のレオロジー調整剤をさらに含んでもよく、重量パーセントはフォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく。
【0012】
さらに特許請求され、本明細書に記載されるのは、本明細書において特許請求される連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクを製造するための方法であって、
i)粉末またはスラリーとして、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を提供するステップであって、X、Z、yおよびzが本明細書において定義される意味を有し、走査型電子顕微鏡法によって測定される場合に約30nm~約70nmの平均直径を有する、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を提供するステップと、
ii)有機溶媒中の分散剤の溶液を準備するステップであって、分散剤が、ポリビニルアセタール樹脂、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含む塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂、エステルセルロース樹脂、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択され;有機溶媒が、ケトン、アルコール、エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、有機溶媒中の分散剤の溶液を準備するステップと、
iii)ステップii)で提供された溶液中にキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を分散させて、分散液を得るステップと、
iv)ステップiii)で得られた分散液に、
フォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づき約0.1重量%~約1重量%の導電性塩、
場合により、ケトン、アルコール、エステルおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒、
場合により、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマー、セルロース樹脂、およびそれらの混合物から選択される、フォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づき最大7重量%のレオロジー調整剤、ならびに
場合により、着色剤、を添加して、連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクを提供するステップと、
を含む、方法である。
【0013】
本発明の別の態様は、物品または価値文書上にフォトルミネセンスセキュリティ機構を製造するための方法に関し、前記方法は、
フォトルミネセンスセキュリティインク層を形成するように、連続インクジェット印刷することによって、特許請求され、本明細書に記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクを物品の表面または価値文書の基材に適用するステップと、
フォトルミネセンスセキュリティインク層を乾燥させてフォトルミネセンスセキュリティ機構を提供するステップと、を含む。
【0014】
本発明によるさらなる態様は、特許請求され、本明細書に記載されるプロセスによって得られるフォトルミネセンスセキュリティ機構を支持する物品または価値文書に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1a】100kXの倍率で撮影した、本発明によるキャップされていないNaYF:Yb0.18、Er0.02ナノ粒子(NP1)のSEM画像を示す。
図1b】200kXの倍率で撮影した、本発明によるキャップされていないNaYF:Yb0.18、Er0.02ナノ粒子(NP1)のSEM画像を示す。
図2】連続インクジェットセキュリティインクの調製直後(t0でのスペクトル)および前記インクの調製の1ヶ月後(t1でのスペクトル)の本発明による連続インクジェットセキュリティインクで得られたセキュリティ機構(インクE-I4で得られたセキュリティ機構)の重ね合わせたフォトルミネセンス発光スペクトルをそれぞれ示す:x軸-発光波長、y軸-フォトルミネセンスシグナル強度。
【0016】
[詳細な説明]
定義
以下の定義は、明細書で論じられ、特許請求の範囲に列挙された用語の意味を解釈するために使用されるべきである。
【0017】
本明細書で使用される場合、冠詞「a/an」は、1つ、および2つ以上を示し、必ずしもその指示名詞を単数形に限定しない。
【0018】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、問題の量または値が指定された特定の値またはその近傍の他の何らかの値であってもよいことを意味する。一般に、ある値を示す「約」という用語は、その値の±5%以内の範囲を示すことを意図する。一例として、「約100」という語句は、100±5の範囲、すなわち95から105の範囲を示す。好ましくは、用語「約」によって示される範囲は、値の±3%以内の範囲を示し、より好ましくは±1%の範囲を示す。一般に、「約」という用語が使用される場合、本発明による同様の結果または効果が、示された値の±5%の範囲内で得られ得ることが期待され得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、前記群の要素の全てまたは1つのみが存在してもよいことを意味する。例えば、「Aおよび/またはB」は、「Aのみ、またはBのみ、またはAとBの両方」を意味する。「Aのみ」の場合、この用語は、Bが存在しない可能性、すなわち「BではなくAのみ」も包含する。
【0020】
本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語は、非排他的でオープンエンドであることを意図する。したがって、例えば、化合物Aを含む溶液は、A以外の他の化合物を含んでもよい。しかしながら、「含む(comprising)」という用語はまた、その特定の実施形態として、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」のより限定的な意味も包含し、その結果、例えば「A、B、および場合によりCを含む溶液」はまた(本質的に)AおよびBからなるか、または(本質的に)A、B、およびCからなってもよい。
【0021】
本明細書が「好ましい」実施形態/特徴に言及する場合、「好ましい」実施形態/特徴の特定の組み合わせが技術的に意味がある限り、これらの「好ましい」実施形態/特徴の組み合わせも開示されると見なされる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「1つまたは複数」という用語は、1、2、3、4などを意味する。
【0023】
驚くべきことに、25℃で約1.5mPas~約6mPas、好ましくは25℃で約1.5mPas~約4.5mPasの粘度を有し、
a)約1重量%~約6重量%、好ましくは約4重量%~約5重量%のキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子であって、
式中、
Xは、Y3+(三価のイットリウムカチオン)およびGd3+(三価のガドリニウムカチオン)からなる群から選択され;
Zは、Er3+(三価エルビウムカチオン)、Tm3+(三価ツリウムカチオン)およびHo3+(三価ホルミウムカチオン)からなる群から選択され;
0<y+z≦0.4であり、かつ
0≦z≦0.1であり、
走査型電子顕微鏡法によって測定される場合に約30nm~約70nmの平均直径を有する、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子と、
b)ポリビニルアセタール樹脂、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含有する塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂、エステルセルロース樹脂、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、約1.5重量%~約10重量%の分散剤と、
c)ケトン、アルコール、エステルおよびこれらの混合物からなる群から選択される、約80重量%~約90重量%の有機溶媒と、
d)約0.1重量%~約1重量%、好ましくは約0.3重量%~約1重量%、より好ましくは約0.5重量%~約1重量%、最も好ましくは約0.5重量%の導電性塩と、を含む組成物(重量パーセントは組成物の総重量に基づく)は、連続インクジェットによって印刷可能であり、保存寿命安定性および印刷品質の両方の観点からセキュリティ機構の工業印刷の要件を満たし、NIRから可視へのアップコンバージョンフォトルミネセンスおよび/またはNIRからNIRへのダウンコンバージョンフォトルミネセンスを示すセキュリティ機構の製造を可能にすることが見いだされた。そのようなセキュリティ機構は、偽造および不正な複製から物品および価値文書を保護するのに特に有用である。
【0024】
当業者に周知のように、フォトルミネセンスインクは、フォトルミネセンス材料、すなわち、外部電磁放射線による励起時に赤外(IR)、可視(VIS)および/または紫外(UV)スペクトルの検出可能な量の放射線を放出することができる材料を含有するインクを指す。本明細書に記載のキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子は、NIRから可視へのアップコンバージョンフォトルミネセンスおよび/またはNIRからNIRへのダウンコンバージョンフォトルミネセンスを示す。当業者に周知のように、アップコンバージョンフォトルミネセンスという用語は、励起波長よりも短い波長(例えば、近赤外980nm励起に応答した可視540nm発光)を有する光の発光を指し、ダウンコンバージョンフォトルミネセンスという用語は、励起波長よりも長い波長(例えば、UV350nm励起に応答した可視540nm発光)を有する光の発光を指す。
【0025】
当業者に周知であり、本明細書で使用される「連続インクジェット印刷」または「CIJ印刷」という用語は、インクジェット印刷プロセスを指し、ポンプは、液体インクをリザーバからノズルに導いてインク液滴の連続流を生成し、インク液滴は、制御された可変静電界を受け、それにより、変化する静電界に従って液滴が形成するときに帯電される。帯電した液滴は、別の静電場を通過して基材上に所望のパターンを印刷することによって適切な位置に偏向されるか、または将来の使用のためにリザーバに再利用される。
【0026】
特許請求され、本明細書に記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクは、60rpmで、スピンドル00を備えたブルックフィールド粘度計(モデルLV(低粘度))を使用して測定される場合、25℃で約1.5mPas~約6mPas、好ましくは25℃で約1.5mPas~約4.5mPasの粘度により特徴付けられている。
【0027】
特許請求され、本明細書に記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクは、
a)約1重量%~約6重量%、好ましくは約4重量%~約5重量%のキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子であって、
式中、
Xは、Y3+(三価のイットリウムカチオン)およびGd3+(三価のガドリニウムカチオン)からなる群から選択され;
Zは、Er3+(三価エルビウムカチオン)、Tm3+(三価ツリウムカチオン)およびHo3+(三価ホルミウムカチオン)からなる群から選択され;
0<y+z≦0.4であり、かつ
0≦z≦0.1であり、
走査型電子顕微鏡法によって測定される場合に約30nm~約70nmの平均直径を有する、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、「キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子」という用語は、溶媒中のNaX1-y-zYbナノ粒子の分散を確実にするために、表面に共有結合したキャッピング剤を有さないNaX1-y-zYbナノ粒子を指す。当業者に周知のように、キャッピング剤は、極性頭部基を有する両親媒性分子であり、これは、ナノ粒子の表面への配位共有結合を介したキャッピング剤の結合を確実にし、非極性炭化水素尾部は、包囲する溶媒媒体と相互作用し、それによって前記溶媒中のナノ粒子の分散を確実にする。キャッピング剤としては、例えば、国際公開第2015137995号に記載の有機酸が挙げられる。本明細書に記載のキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子は、NaX1-y-zYb材料(X、Z、y、およびzは本明細書に記載の意味を有する)から作製された、またはそれからなる無機ナノ粒子であり、それらの表面に有機配位子などの共有結合したキャッピング剤を有さない。したがって、特許請求され、本明細書に記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクは、キャッピング剤を含まない。
【0029】
本明細書で使用される場合、「キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子の直径」という用語は、走査型電子顕微鏡(SEM)画像で検出可能な前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子の最大寸法に対応する。本明細書で使用される「平均直径」という用語は、少なくとも100個のランダムに選択されたキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子について測定された直径に基づいて走査型電子顕微鏡法(SEM)によって決定される平均直径を指し、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子の直径は、走査型電子顕微鏡法(SEM)画像で検出可能な前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子の最大寸法に対応する。表面分析およびトポグラフィのために、ZEISS製の二次電子検出器Evehart-Thornleyを使用して、走査型電子顕微鏡(SEM)分析を行った。
【0030】
本明細書に記載のキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子は、好ましくは立方晶(α-)相を有する。
【0031】
一般式NaX1-y-zYbにおいて、yとzの和は0.001より大きい、すなわち0.001≦y+z≦0.4であることが好ましい。
【0032】
一般式NaX1-y-zYbにおいて、0.1≦y+z≦0.4および0≦z≦0.1であることがより好ましい。
【0033】
一般式NaX1-y-zYbにおいて、0.1≦y≦0.35であることがさらに好ましい(X、Zおよびzは本明細書に記載の意味を有する)。
【0034】
本発明による好ましい実施形態では、ZはEr3+(三価エルビウムカチオン)を表し、0.01≦z≦0.1であり、y≧zである。したがって、本発明による好ましい実施形態は、特許請求され、本明細書に記載される連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクに関し、
a)約1重量%~約6重量%、好ましくは約4重量%~約5重量%のキャップされていないNaX1-y-zYbErナノ粒子を含む(式中、0.01≦z≦0.1、y≧z、および場合により0.1≦y≦0.35、好ましくは0.1≦y≦0.3である)。一般式NaX1-y-zYbEr(式中、0.01≦z≦0.1、y≧z、および場合により0.1≦y≦0.35、好ましくは0.1≦y≦0.3である)のナノ粒子は、アップコンバージョンとダウンコンバージョンの両方で強いフォトルミネセンス強度を示し、CIJがコバートおよび半オバート/半コバートのセキュリティ機構を製造するためのフォトルミネセンスセキュリティインクの製造に特に有用である。
【0035】
本発明による代替の好ましい実施形態では、ZはTm3+(三価ツリウムカチオン)を表し、0.01≦z≦0.05であり、およびy≧zである。したがって、本発明による好ましい実施形態は、特許請求され、本明細書に記載される連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクに関し、
a)約1重量%~約6重量%、好ましくは約4重量%~約5重量%のキャップされていないNaX1-y-zYbTmナノ粒子を含む(式中、0.01≦z≦0.05、y≧z、および場合により0.1≦y≦0.35である)。一般式NaX1-y-zYbTm(式中、0.01≦z≦0.05、y≧z、および場合により0.1≦y≦0.35である)のナノ粒子は、アップコンバージョンとダウンコンバージョンの両方で強いフォトルミネセンス強度を示し、CIJがコバートおよび半オバート/半コバートのセキュリティ機構を製造するためのフォトルミネセンスセキュリティインクの製造に特に有用である。
【0036】
好ましくは、一般式NaX1-y-zYbにおいて、XはY3+(三価のイットリウムカチオン)を表す。したがって、
a)約1重量%~約6重量%、好ましくは約4重量%~約5重量%のキャップされていないNaY1-y-zYbナノ粒子であって、
0<y+z≦0.4、
かつ、0≦z≦0.1であり、
走査型電子顕微鏡によって測定して約30nm~約70nmの平均直径を有する、キャップされていないNaY1-y-zYbナノ粒子を含む、特許請求され、本明細書に記載される連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクが好ましい。以下のいずれか:
a)約1重量%~約6重量%、好ましくは約4重量%~約5重量%のキャップされていないNaY1-y-zYbErナノ粒子(式中、0.01≦z≦0.1、y≧z、および場合により0.1≦y≦0.35、好ましくは0.1≦y≦0.3である)、または
a)約1重量%~約6重量%、好ましくは約4重量%~約5重量%のキャップされていないNaY1-y-zYbTmナノ粒子(式中、0.01≦z≦0.05、y≧z、および場合により0.1≦y≦0.35である)を含む、特許請求され、本明細書に記載される連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクもまた好ましい。
【0037】
特許請求され、本明細書に記載される連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクは、
b)ポリビニルアセタール樹脂、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含有する塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂、エステルセルロース樹脂、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される、約1.5重量%~約10重量%の分散剤を含む。
【0038】
本明細書に記載の分散剤は、キャップされていないNaX1-y-zYb(X、Z、yおよびzは本明細書で定義される意味を有する)がフォトルミネセンスセキュリティインク全体に均一に分散され、フォトルミネセンスセキュリティインク中で沈降および/または凝集せず、前記インクが貯蔵寿命にわたって安定であることを確実にする。
【0039】
本発明による好ましい実施形態は、分散剤が、ポリビニルアセタール樹脂、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含む塩化ビニルコポリマー、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択され、フォトルミネセンスインクジェットセキュリティインク中に約4重量%~約10重量%の量で存在し、重量パーセントがフォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく、特許請求され、本明細書に記載される、連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクに関する。
【0040】
分散剤は、ポリビニルアセタール樹脂、好ましくは約100’000g/mol未満の分子量を有するポリビニルアセタール樹脂、より好ましくは約80’000g/mol未満の分子量を有するポリビニルアセタール樹脂、最も好ましくは約50’000g/mol未満、例えば約40’000g/mol未満、または30’000g/mol未満の分子量を有するポリビニルアセタール樹脂であってもよい。当業者に周知のように、ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)をアルデヒド、例えば2~4個の炭素原子を含有するアルデヒドと反応させることによって得られる。通常、ポリビニルアセタール樹脂の製造のための出発材料として使用されるポリビニルアルコール(PVA)は、酢酸エステルの不完全な鹸化のために残留アセチル基を呈する。したがって、一般に、ポリビニルアセタール樹脂は、ある特定の量のアセチル基を含有する。ポリビニルアセタール樹脂は、好ましくは、中程度のアセタール含有量を含む(すなわち、ポリビニルアルコールに由来するヒドロキシル基の約40%~約75%がアセタールとして保護されている)。好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂およびポリビニルアセタール樹脂から選択される。より好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂はポリビニルブチラール樹脂であり、最も好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂は、約11重量%~約27重量%のポリビニルアルコール含有量および約8重量%未満のポリ酢酸ビニル含有量を有するポリビニルブチラール樹脂である。本発明によるフォトルミネセンスセキュリティインク中の分散剤として使用するのに適した市販のポリビニルブチラール樹脂としては、Kuraray製のMOWITAL(商標)B 14 S、MOWITAL(商標)B 16 H、MOWITAL(商標)B 20 H、MOWITAL(商標)B 30 H、MOWITAL(商標)B 30 T、MOWITAL(商標)B 30 HH、PIOLOFORM(登録商標)BL 16;Sekisui Chemical Co.Ltd製のS-LEC(登録商標)BL-10、S-LEC(登録商標)BL-5、S-LEC(登録商標)BL-1、およびS-LEC(登録商標)BL-1Hが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
分散剤は、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含有する塩化ビニルコポリマーであってもよく、好ましくは約100’000g/mol未満、より好ましくは約80’000g/mol未満、最も好ましくは約70’000g/mol未満、例えば約60’000g/mol未満、または50’000g/mol未満の平均分子量を有し、平均分子量は、標準としてポリスチレンおよび溶媒としてテトラヒドロフランを使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって決定された。好ましくは、ポリ塩化ビニルコポリマーは、塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコールコポリマー、塩化ビニル-ヒドロキシアルキルアクリレートコポリマー、例えば塩化ビニル-2-ヒドロキシプロピルアクリレートコポリマーおよび塩化ビニル-ヒドロキシアルキルアクリレート-Z-アルキレン二酸、ジアルキルエステルコポリマー、例えば塩化ビニル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート-2-ブテン二酸(Z)-、ジブチルエステルコポリマーから選択される。塩化ビニルコポリマーは、好ましくは少なくとも70重量%の塩化ビニル、より好ましくは少なくとも80重量%の塩化ビニルを含有する。本発明によるフォトルミネセンスセキュリティインク中の分散剤として使用するのに適した約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含有する市販の塩化ビニルコポリマーとしては、Wacker Chemie製のVINNOL(登録商標)E18/38、VINNOL(登録商標)E15/45、VINNOL(登録商標)H14/36、VINNOL(登録商標)E15/45M、VINNOL(登録商標)E15/40 A;Nissin Chemical Industry Co.,Ltd.製のSOLBIN(登録商標)TA3、SOLBIN(登録商標)TAO、SOLBIN(登録商標)CL、and SOLBIN(登録商標)CNLが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
分散剤は、ポリウレタン樹脂、好ましくは約100’000g/mol未満、より好ましくは約80’000g/mol未満、最も好ましくは約50’000g/mol未満の分子量を有するポリウレタン樹脂であってもよい。当業者に周知のように、ポリウレタン樹脂は、ポリオールを2つ以上のイソシアネート基を有する化合物と反応させることによって得られる。本明細書で使用される場合、ポリウレタン樹脂という用語は、ポリエーテルポリウレタンおよびポリエステルポリエーテルポリウレタンを含む。本発明によるフォトルミネセンスセキュリティインク中の分散剤として使用するのに適した市販のポリウレタン樹脂としては、BIP(Oldbury)Limited製のSurkofilm(登録商標)72SおよびSurkopak(登録商標)5244が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
分散剤は、ニトロセルロース樹脂(硝酸セルロース)、好ましくは低~中程度の窒素含有量、すなわち約10重量%~約11.8重量%の窒素含有量を有するニトロセルロース樹脂であってもよい。当業者に周知のように、ニトロセルロース樹脂は、セルロースと硝化酸(すなわち、硝酸と硫酸の混合物)との反応によって得られる。好ましくは、ニトロセルロース樹脂は、1:2:3:4のブタノール:エチルグリコール:トルエン:エタノールの比のブタノール、エチルグリコール、トルエンおよびエタノールの混合物中のニトロセルロース樹脂の12重量%溶液を使用するCochius法によって測定して約20~40sの粘度を有する。特許請求され、本明細書に記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクに使用するのに適した市販のニトロセルロース樹脂としては、DuPont製のWALSRODER(商標)NC CHIPS AM 330、WALSRODER(商標)NC CHIPS A 400、WALSRODER(商標)NC CHIPS AM 500、WALSRODER(商標)FF A300、WALSRODER(商標)FF A400、WALSRODER(商標)FF A500、WALSRODER(商標)FF A600;Nitrex Chemicals India Ltd.製のNitrexニトロセルロースLX3/5、LX5/8、LX8/13、MX8/13、MX3/5;およびNobel NC製のDLX 3-5が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
分散剤は、エステルセルロース樹脂であってもよく、ポリスチレンを標準として用いるゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、好ましくは約70’000g/mol未満、より好ましくは約50’000g/mol未満、最も好ましくは約30’000g/mol未満、例えば約20’000g/mol未満の数平均分子量を有するエステルセルロース樹脂であってもよい。当業者に周知のように、エステルセルロース樹脂は、セルロースエステル化によって得られる樹脂である。エステルセルロース樹脂は、好ましくは、セルロースアセテート樹脂(CAC)、セルロースアセテート-ブチレート樹脂(CAB)およびセルロースアセテート-プロピオネート樹脂(CAP)から選択され、より好ましくは、セルロースアセテート-ブチレート樹脂(CAB)およびセルロースアセテート-プロピオネート樹脂(CAP)から選択され、最も好ましくは、アセチル基の含有量が約0.5重量%~約13.5重量%、ヒドロキシル基の含有量が約1.3重量%~約5重量%、ブチリル基の含有量が約38重量%~約52重量%であるセルロースアセテート-ブチレート樹脂(CAB)、およびアセチル基の含有量が約0.5重量%~約13.5重量%、ヒドロキシル基の含有量が約1.3重量%~約5重量%、プロピオニル基の含有量が約42重量%~約45重量%であるセルロースアセテート-プロピオネート樹脂(CAP)から選択される。特許請求され、本明細書に記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクに使用するのに適した市販のエステルセルロース樹脂には、Eastmanから入手可能なCAB 551-0.01、CAB 551-0.2、CAB553-0.4、およびCAP 482-0.5が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
分散剤は、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、好ましくは約150’000g/mol未満の重量平均分子量を有するアルキル(メタ)アクリレートポリマー、より好ましくは約140’000g/mol未満の分子量を有するアルキル(メタ)アクリレートポリマー、最も好ましくは約130’000g/mol未満の分子量を有するアルキル(メタ)アクリレートポリマーであってもよい。本明細書で使用される場合、「アルキル(メタ)アクリレートポリマー」という用語は、アルキル(メタ)アクリレートホモポリマー、およびアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの両方、例えばアルキルアクリレート-アルキルメタクリレートコポリマー、アルキル/アルキルアクリレートコポリマー、およびアルキル/アルキルメタクリレートコポリマーを含む。「アルキル(メタ)アクリレート」という用語は、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート、典型的にはC-Cアルキル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソ-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレートなどを指す。アルキルメタ(アクリレート)ポリマーの例には、メチルメタクリレートポリマー、メチル/n-ブチルメタクリレートコポリマー、およびメチルメタクリレート-エチルアクリレートコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、アルキルメタ(アクリレート)ポリマーは、アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートコポリマーである。本発明によるフォトルミネセンスセキュリティインク中の分散剤として使用するのに適した市販のアルキル(メタ)アクリレートポリマーには、以下が含まれるが、これらに限定されない:Lucite International製のElvacite(登録商標)4349、Elvacite(登録商標)2008C、Elvacite(登録商標)2010、Elvacite(登録商標)2013;Mitsubishi Chemical America製のDIANAL BR50、DIANAL BR87、DIANAL PB 204;DSM製のPARALOID(商標)B-82、PARALOID(商標)B-48N;DSM製のNeoCryl(登録商標)B728、NeoCryl(登録商標)B814、およびNeoCryl(登録商標)B817。
【0046】
約11重量%~約27重量%のビニルアルコール含有量および約8重量%未満の酢酸基含有量を有する本明細書に記載のポリビニルブチラール樹脂、約80重量%~約90重量%の塩化ビニルを含有する本明細書に記載の塩化ビニルコポリマー、および本明細書に記載のアルキルアクリレート-アルキルメタクリレートコポリマーからなる群から選択される約4重量%~約10重量%の分散剤を含有する、特許請求され、本明細書に記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクが特に好ましい。このようなフォトルミネセンスセキュリティインクは、安定性および印刷品質の点で良好な特性を示す。
【0047】
特許請求され、本明細書に記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクは、
c)ケトン、アルコール、エステルおよびこれらの混合物からなる群から選択される、約80重量%~約90重量%の有機溶媒を含有する。有機溶媒は、日本、欧州および/または米国の健康安全規制により禁止される有機溶媒を含まないことが好ましい。
【0048】
好ましくは、アルコールは、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールおよびそれらの混合物から選択され、より好ましくはアルコールはエタノールである。
【0049】
好ましくは、エステルは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸t-ブチルおよびそれらの混合物から選択される。
【0050】
好ましい実施形態では、有機溶媒はケトンである。ケトンは、好ましくはアセトン、メチル-エチル-ケトン(MEK)、メチル-プロピル-ケトン(MPK)、メチル-イソプロピル-ケトン(MIPK)、ジエチル-ケトン(DK)およびそれらの混合物から選択され、より好ましくはメチル-エチル-ケトン(MEK)、メチル-プロピル-ケトン(MPK)、メチル-イソプロピル-ケトン(MIPK)およびジエチル-ケトン(MEK)から選択され、最も好ましくはメチル-エチル-ケトン(MEK)である。
【0051】
特許請求され、本明細書に記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクは、
d)約0.1重量%~約1重量%、好ましくは約0.3重量%~約1重量%、より好ましくは約0.5重量%~約1重量%、最も好ましくは約0.5重量%の、インクに導電性を付与する導電性塩を含有し、重量パーセントはフォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく。導電性塩は、リチウムカチオン(Li)、ナトリウムカチオン(Na)およびカリウムカチオン(K)などのアルカリ金属カチオン;マグネシウムカチオン(Mg2+)およびカルシウムカチオン(Ca2+)などのアルカリ土類金属カチオン;および四級アンモニウムカチオンから選択されるカチオン、例えばテトラブチルアンモニウム;ならびにハロゲン化物(塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物)、ペルクロレート、ニトレート、チオシアネート、ホルメート、アセテート、スルフェート、スルホネート、プロピオネート、トリフルオロアセテート、トリフレート(トリフルオロメタンスルホネート)、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラフルオロボレート、ピクレートおよびカルボキシレートから選択されるアニオンを含有する。好ましくは、導電性塩は、過塩素酸リチウム、硝酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、およびそれらの混合物から選択される。
【0052】
特許請求され、本明細書に記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクは、
e)本明細書に記載の約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマー、セルロース樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される最大7重量%、好ましくは約0.2重量%~約6.5重量%のレオロジー調整剤をさらに含有してもよく、重量パーセントはフォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく。本明細書に記載されるレオロジー調整剤の使用は、特許請求され、本明細書に記載される連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクの粘度を、前記インクの液滴吐出性に影響を与えることなく調整/変更することを可能にする。
【0053】
レオロジー調整剤は、セルロース樹脂であってもよい。セルロース樹脂は、好ましくは、本明細書に記載のエステルセルロース樹脂、本明細書に記載のニトロセルロース樹脂、およびエーテルセルロース樹脂から選択され、より好ましくはエーテルセルロース樹脂である。
【0054】
当業者に周知のように、エーテルセルロース樹脂は、セルロースエーテル化によって得られる樹脂である。エーテルセルロース樹脂は、好ましくは25℃で約3~約110mPas、より好ましくは25℃で約3~約11mPasの粘度を有し、粘度は、トルエンおよびエタノール(トルエン:エタノール比=80:20)の混合物中の5重量%エーテルセルロース樹脂およびウベローデ粘度計を使用して測定した。エーテルセルロース樹脂は、好ましくはエチルセルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂およびヒドロキシプロピルセルロース樹脂から選択され、より好ましくはエチルセルロース樹脂およびメチルセルロース樹脂から選択され、最も好ましくは約44重量%~約50重量%のエトキシ基含有量を有するエチルセルロース樹脂である。特許請求され、本明細書に記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクに使用するのに適した市販のエーテルセルロース樹脂には、DuPont製のETHOCEL(商標)Standard 4、ETHOCEL(商標)Standard 7、ETHOCEL(商標)Standard 10、ETHOCEL(商標)Standard 20、およびETHOCEL(商標)Standard 100が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
レオロジー調整剤は、好ましくは、約80重量%~約90重量%の本明細書に記載の塩化ビニル、本明細書に記載のエチルセルロース樹脂、およびそれらの混合物を含有するポリ塩化ビニルコポリマーからなる群から選択される。
【0056】
特許請求され、本明細書に記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクで作られたセキュリティ機構に色を付与するために、前記インクは、染料または顔料などの着色剤を含有してもよい。
【0057】
特許請求され、本明細書に記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクに使用される染料は、好ましくは、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、溶媒染料、分散染料、媒染染料、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好都合には、染料は、NaX1-y-zYbナノ粒子によって示されるフォトルミネセンスを妨害せず(すなわち、NaX1-y-zYbナノ粒子によって示されるVIS-および/もしくはNIRスペクトル範囲ならびに/またはVIS-および/もしくはNIR積分フォトルミネセンスにおける1つ以上の所定の波長でのフォトルミネセンス強度を低下させない)、約850nm~約1100nmの範囲で吸収しない。
【0058】
染料は、約0.1重量%~約3重量%、好ましくは約0.1重量%~約1重量%、より好ましくは約0.1重量%~約0.5重量%の量で存在してもよく、重量パーセントはフォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく。
【0059】
好ましくは、染料は、NaX1-y-zYbナノ粒子によって示されるフォトルミネセンスを妨害せず(すなわち、NaX1-y-zYbナノ粒子によって示されるVIS-および/もしくはNIRスペクトル範囲ならびに/またはVIS-および/もしくはNIR積分フォトルミネセンスにおける1つ以上の所定の波長でのフォトルミネセンス強度を低下させない)、約850nm~約1100nmの範囲で吸収しない溶媒染料である。溶媒染料の例には、ナフトール染料、アゾ染料、金属錯体染料、アントラキノン染料、キノイミン染料、インジゴイド染料、ベンゾキノン染料、カルボニウム染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、フタロシアニン染料、およびペリレン染料が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明のインクは、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、接着促進剤、およびそれらの混合物などの1または複数の添加剤をさらに含んでもよい。添加剤は、好ましくはインクと混和性であり、貯蔵寿命の間にインク組成物の残りの部分から相分離しない。
【0061】
本発明の実施形態での使用に適した可塑剤の例には、RIT-CHEM(登録商標)Co.,Inc.から入手可能なPLASTICIZER#8(登録商標)が含まれるが、これらに限定されない。可塑剤添加剤は、約0.1重量%~約5重量%、または好ましくは約0.3重量%~約3重量%の量で存在することができ、重量パーセントはフォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく。
【0062】
使用され得る界面活性剤の例としては、限定されないが、フルオロ界面活性剤、シロキサン、シリコーン、シラノール、ポリオキシアルキレンアミン、プロポキシ化(ポリ(オキシプロピレン))ジアミン、アルキルエーテルアミン、ノニルフェノールエトキシレート、エトキシル化脂肪族アミン、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチルメタクリレートとの四級化コポリマー、フッ素化有機酸ジエタノールアミン塩、アルコキシル化エチレンジアミン、ポリエチレンオキシド、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリイミン、アルキルホスフェートエトキシレート混合物、プロピレングリコールのポリオキシアルキレン誘導体、およびポリオキシエチル化脂肪族アルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。適切なポリマー界面活性剤の好ましい具体例は、シリコーン界面活性剤である、GENERAL ELECTRIC(登録商標)から入手可能なSILWET(登録商標)L7622である。界面活性剤添加剤は、約0.01重量%~約1.0重量%、または好ましくは約0.1重量%~約1.0重量%の量で存在することができ、重量パーセントはフォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく。
【0063】
インクはまた、接着促進剤を含んでもよい。適切な接着促進剤は、シラン、例えば、グリシドキシプロピルジエトキシメチルシランであるSILQUEST(登録商標)WETLINK 78、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランであるSILQUEST(登録商標)A-186 SILANE、およびガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランであるSILQUEST(登録商標)A-187 SILANEであり、全てGENERAL ELECTRIC(登録商標)から入手可能である。接着促進剤は、約0.1重量%~約2重量%、好ましくは約0.2重量%~約1.0重量%、より好ましくは約0.5重量%の量で存在することができ、重量パーセントはフォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく。
【0064】
本発明により別の態様は、本明細書において特許請求される連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクを製造するための方法であって、
i)粉末またはスラリーとして、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を提供するステップであって、X、Z、yおよびzが本明細書において定義される意味を有し、走査型電子顕微鏡法によって測定される場合に約30nm~約70nmの平均直径を有する、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を提供するステップと、
ii)有機溶媒中の分散剤の溶液を準備するステップであって、分散剤が、ポリビニルアセタール樹脂、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含む塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂、エステルセルロース樹脂、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択され;有機溶媒が、ケトン、アルコール、エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、有機溶媒中の分散剤の溶液を準備するステップと、
iii)ステップii)で提供された溶液中にキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を分散させて、分散液を得るステップと、
iv)ステップiii)で得られた分散液に、
フォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づき約0.1重量%~約1重量%の導電性塩、
場合により、ケトン、アルコール、エステルおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒、
場合により、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマー、セルロース樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される、フォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づき最大7重量%のレオロジー調整剤、ならびに
場合により、着色剤、好ましくは酸性染料、塩基性染料、反応性染料、溶媒染料、分散染料、媒染染料およびそれらの混合物からなる群から選択される染料、を添加して、本発明による連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクを提供するステップと、
を含む、好ましくはそれらのステップからなる、方法に関する。
【0065】
本明細書において特許請求される製造プロセスは、工業的にスケーラブルであり、様々なフォトルミネセンスセキュリティインクのコスト効率的かつ時間効率的な方法での製造を可能にする。
【0066】
本明細書で使用される場合、「粉末」、「粉末としてのキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子」、および「キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子の粉末」という用語は、乾燥形態の本明細書に記載のキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を指す。本明細書で使用される場合、「スラリー」、「スラリーとしてのキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子」、および「キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子のスラリー」という用語は、本明細書に記載の有機溶媒中の本明細書に記載のキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子の懸濁液を指す。好都合には、本明細書に記載のキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子の粉末および本明細書に記載のキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子のスラリーの両方を、本発明によるフォトルミネセンスセキュリティインクを製造するために使用することができる。
【0067】
好ましくは、本明細書において特許請求される製造プロセスのステップi)は、i-1)からi-3)の順序で行われる以下のステップ:
i-1)エチレングリコール中のフッ化アンモニウムの第1の溶液を、エチレングリコール中の塩化ナトリウム、X(NO、Yb(NO、および場合によりZ(NO[式中、XおよびZは本明細書で定義される意味を有する]を含有する第2の溶液と混合して、混合物を形成するステップと、
i-2)ステップi-1)で得られた混合物を約120℃~約170℃の温度で少なくとも2時間攪拌して、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を形成するステップと、
i-3)キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を粉末として、またはスラリーとして単離するステップと、を含む。
【0068】
本明細書において特許請求される製造プロセスのステップi-1)およびi-2)は、走査型電子顕微鏡法によって測定して約30nm~約70nmの平均直径を有するキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を提供する。これは、合成されたままのNaX1-y-zYbナノ粒子がその表面に共有結合したキャッピング剤を有さず、本明細書に記載の様々な分散剤に直接分散させて安定なフォトルミネセンスセキュリティインクを提供することができ、さらに、前記ナノ粒子が連続インクジェット印刷によく適した粒径を有するため、特に有利である。好都合には、本明細書において特許請求される製造プロセスは、時間およびエネルギーを消費し、通常はフォトルミネセンス特性に悪影響を及ぼす粉砕ステップも、一般に過酷で高価で長期的であるナノ粒子の表面上のキャッピング剤を除去/交換する表面改質ステップも含まない。
【0069】
特許請求され、本明細書に記載される製造プロセスにおいて、好ましくはステップi-3)は、以下のステップ:
i-4)水、好ましくは脱イオン水を添加し、続いて遠心分離して上清を形成し、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を沈降させ、その後、上清をデカントするステップと、
i-5)キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を乾燥させて、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を粉末として得、場合により、粉末を250℃~約350℃の温度で約1~3時間加熱処理に供するステップ;
または
i-6)キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を、ケトン、アルコール、エステルおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒中に分散させ、続いて遠心分離して上清を形成し、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を沈降させ、その後、上清をデカントして、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子をスラリーとして得るステップと、を含む。
【0070】
キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子の粉末を250℃~約350℃の温度で約1~3時間加熱処理すると、好適には、前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子によって示されるフォトルミネセンスシグナルの強度が増加する。
【0071】
本明細書において特許請求される製造プロセスでは、ステップi-4)は、好ましくは少なくとも2回、より好ましくは少なくとも3回行われ、および/またはステップi-6)は、好ましくは少なくとも2回、より好ましくは少なくとも3回行われる。
【0072】
本発明による好ましい実施形態では、本明細書で特許請求される製造プロセスのステップi)は、以下のステップ:
i-1)エチレングリコール中のフッ化アンモニウムの第1の溶液を、エチレングリコール中に塩化ナトリウム、X(NO、Yb(NO、および場合によりZ(NOを含有する第2の溶液(XおよびZは本明細書で定義される意味を有する)と混合して、混合物を形成するステップと、
i-2)ステップi-1)で得られた混合物を約120℃~約170℃の温度で少なくとも2時間攪拌して、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を形成するステップと、
i-4)水、好ましくは脱イオン水を添加し、続いて遠心分離して上清を形成し、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を沈降させ、その後、上清をデカントするステップと、
i-5)キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を乾燥させて、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を粉末として提供し、場合により、粉末を250℃~約350℃の温度で約1~3時間、加熱処理に供するステップと、を含み、好ましくはこれらのステップからなり;ステップi-4)は、好ましくは少なくとも2回、より好ましくは少なくとも3回行われる。
【0073】
本発明による代替の実施形態では、本明細書で特許請求される製造プロセスのステップi)は、以下のステップ:
i-1)エチレングリコール中のフッ化アンモニウムの第1の溶液を、エチレングリコール中に塩化ナトリウム、X(NO、Yb(NO、および場合によりZ(NOを含有する第2の溶液(XおよびZは本明細書で定義される意味を有する)と混合して、混合物を形成するステップと、
i-2)ステップi-1)で得られた混合物を約120℃~約170℃の温度で少なくとも2時間攪拌して、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を形成するステップと、
i-4)水、好ましくは脱イオン水を添加し、続いて遠心分離して上清を形成し、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を沈降させ、その後、上清をデカントするステップと、
i-6)キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子をケトン、アルコール、エステルおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒中に分散させ、続いて遠心分離して上清を形成し、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を沈降させ、その後、上清をデカントして、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子をスラリー(すなわち、本明細書に記載の有機溶媒中の本明細書に記載のキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子の懸濁液)として得るステップと、を含み、好ましくはこれらのステップからなり;ステップi-4)および/またはステップi-6)は、好ましくは少なくとも2回行われる。
【0074】
さらに好ましい実施形態では、製造プロセスのステップi-2)は、ステップi-1)で得られた混合物を約120℃の温度で約2時間攪拌して、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を形成するステップを含む。
【0075】
好ましい実施形態では、ステップi-5)は、
キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を約80℃~約100℃の温度で12~24時間加熱するステップ;
キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子の解凝集;
および場合により、粉末を250℃~約350℃の温度で約1~3時間加熱処理に供するステップを含む。
【0076】
好ましくは、ステップi-6)で使用される有機溶媒は、本明細書に記載のケトン、本明細書に記載のアルコール、およびそれらの混合物から選択され、より好ましくは、メチルエチルケトン(MEK)、エタノール、およびそれらの混合物から選択される。
【0077】
本発明による別の態様は、物品または価値文書上にフォトルミネセンスセキュリティ機構を製造するための方法に関し、前記方法は、
フォトルミネセンスセキュリティインク層を形成するように、連続インクジェット印刷することによって、特許請求され、記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクを物品の表面または価値文書の基材に適用するステップと、
フォトルミネセンスセキュリティインク層を乾燥させてフォトルミネセンスセキュリティ機構を提供するステップと、を含む。
【0078】
好都合には、本明細書において特許請求されるフォトルミネセンスセキュリティインクは、滑らかな表面および粗い表面の両方に付着する。したがって、連続インクジェット印刷によってフォトルミネセンスセキュリティインクが塗布される表面は、滑らかさ/粗さに関して制限を示さない。
【0079】
乾燥ステップは、物品/基材に付着する実質的に固体の材料が形成されるように、インクの粘度を増加させる任意のステップであってもよい。乾燥ステップは、溶媒などの揮発性成分の蒸発に基づく物理的プロセス(すなわち、物理的乾燥)を含んでもよい。ここで、熱風、赤外線、または熱風と赤外線の組み合わせを使用してもよい。
【0080】
本発明によるさらなる態様は、特許請求され、本明細書に記載されるプロセスによって得られるフォトルミネセンスセキュリティ機構を支持する物品または価値文書に関する。
【0081】
「セキュリティ機構」という用語は、その真正性を判断し、偽造および違法複製から保護する目的のための、物品または価値文書上の要素または機構を指す。「セキュリティ機構」という用語は、認証目的に使用することができる証印を示すために使用される。本明細書で使用される場合、「インジウム」という用語は、特許請求され、本明細書に記載されるフォトルミネセンスセキュリティインクから得られる連続層または不連続層を意味するものとし、前記層は、識別マーキング、サイン、またはパターンからなる。好ましくは、本明細書に記載のインジウムは、コード、記号、英数字記号、モチーフ、幾何学的パターン(例えば、円、三角形、正多角形または不規則な多角形)、文字、単語、数字、ロゴ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。コードの例には、符号化された英数字データ、1次元バーコード、2次元バーコード、QRコード(登録商標)、およびデータマトリクスなどの符号化されたマークが含まれる。
【0082】
本明細書に記載のフォトルミネセンスセキュリティ機構は、NIRから可視へのアップコンバージョンのフォトルミネセンスおよび/またはNIRからNIRへのダウンコンバージョンのフォトルミネセンスを示し、前記フォトルミネセンスセキュリティ機構を有する物品および価値文書の真正性を検証するための優れた手段を構成する。
【0083】
本明細書で使用される「物品」という用語は、その内容を保証するために偽造および/または違法複製から保護されるべき全ての物品を包含し、化粧品、栄養補助食品、医薬品、アルコール性および非アルコール性飲料、タバコ物品、食品、電気/電子物品、布地、自動車スペア製品、建材、農薬、高級品、および宝飾品を含むが、これらに限定されない。
【0084】
物品は、セキュリティ機構を物品に直接(直接マーキング)、または物品の包装および/またはラベルに適用することによって、偽造および/または違法複製から保護することができる。セキュリティ機構は、物品の表面(例えば、宝飾品、自動車スペア製品、電気/電子物品)に直接印刷されてもよく、または保護されるべき物品(例えば、医薬品、食品、農薬、アルコール性および非アルコール性飲料)の容器/レシピエントの表面上に印刷されてもよい。物品または前記物品を封入する容器/レシピエントは、多孔質、半多孔質、または非多孔質材料で作製されてもよい。材料は、好ましくは、ガラス、金属、セラミック、プラスチックおよびポリマー、複合材料、木材、皮革、布地、およびそれらの組み合わせから選択される。金属の典型的な例には、アルミニウム、クロム、銅、金、銀、それらの合金、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。プラスチックおよびポリマーの典型的な例としては、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)を含むポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、およびポリ(エチレン2,6-2,4ナフトエート)(PEN)、ならびにポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられる。
【0085】
「価値文書」という用語は、偽造または不正な複製の試みに対して潜在的に責任を負わせるような価値を有し、通常、少なくとも1つのセキュリティ機構によって偽造または不正から保護される文書を指す。好ましくは、価値文書は、紙幣、証書、チケット、小切手、バウチャー、収入印紙、ラベル、契約書、身分証明書、アクセス文書、および、化粧品、栄養補助食品、医薬品、アルコール性および非アルコール性飲料、タバコ物品、食品、電気/電子物品、布地、自動車スペア部品、建材、農薬、高級品または宝飾品の包装材料から選択される。
【0086】
本明細書に記載の価値文書の基材は、多孔質、半多孔質、または非多孔質であってもよく、好ましくは紙またはセルロースなどの他の繊維状材料(織布および不織布繊維状材料を含む)、紙含有材料、プラスチックおよびポリマー、複合材料、およびそれらの組み合わせから選択される。典型的な紙、紙様または他の繊維状材料は、限定はしないが、アバカ、綿、リネン、木材パルプおよびそれらのブレンドを含む様々な繊維から作製される。当業者によく知られているように、綿および綿/リネンブレンドが紙幣に好ましいが、木材パルプは一般に非紙幣セキュリティ文書に使用される。プラスチックおよびポリマーの典型的な例としては、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)を含むポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、およびポリ(エチレン2,6-2,4ナフトエート)(PEN)、ならびにポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられる。Tyvek(登録商標)の商標で販売されているようなスパンボンドされたオレフィン繊維を基材として使用してもよい。複合材料の典型的な例としては、限定されないが、紙および少なくとも1つのプラスチックまたはポリマー材料(例えば上記のもの)の多層構造または積層体、ならびに紙様または繊維状材料に組み込まれたプラスチックおよび/またはポリマー繊維(例えば上記のもの)が挙げられる。当然ながら、基材は、充填剤、サイジング剤、ホワイトナー、加工助剤、強化剤または湿潤強化剤などの当業者に知られているさらなる添加剤を含むことができる。
【実施例
【0087】
ここで、非限定的な例を参照して、本発明をより詳細に説明する。
全般
硝酸イットリウム[Y(NO nHO]、硝酸イッテルビウム[Yb(NO nHO]、硝酸エルビウム[Er(NO nHO]および硝酸テルビウム[Tb(NO nHO]は、Treibacher Industrieから購入した。硝酸ガドリニウム[Gd(NO nHO]は、PIDCから購入した。硝酸ツリウム[Tm(NO nHO]は、Strem Chemicalsから購入した。塩化ナトリウムは、Acros Organicsから購入した。フッ化アンモニウム(NHF)は、Merckから購入した。エチレングリコール(99.5%)は、Brenntagから購入した。
【0088】
ナノ粒子分散液を調製するために使用される分散樹脂を、入手可能な場合はそれぞれの供給元およびCAS番号と共に表1に列挙する。
【0089】
全ての化学物質を受け取ったまま使用した。
【0090】
I.キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子の合成
I.1.1 粉末としてのキャップされていないNaYF:Yb0.18,Er0.02ナノ粒子(NP1)の合成
三口フラスコ内で、30.64gの硝酸イットリウム(80mmol)、8.41gの硝酸イッテルビウム(18mmol)、0.89gの硝酸エルビウム(2mmol)、5.84gのNaCl(100mmol)および500mlのエチレングリコール(EG)を室温で混合した。全ての塩が完全に溶解するまで、混合物をアルゴン下、磁気攪拌子を用いて80℃で10分間攪拌した(溶液A)。
【0091】
14.81gのNHF(400mmol)をビーカー中の500mlのエチレングリコールに添加し、NHFが完全に溶解するまで、混合物を磁気攪拌子を用いて80℃で15分間攪拌した(溶液B)。
【0092】
溶液Bを溶液Aに添加した。アルゴン下、80℃で10分間攪拌した後、混合物の温度を160℃に上げ、攪拌を2時間続けた。
【0093】
混合物を室温に冷却した後、得られたキャップされていないNaYF:Yb0.18,Er0.02ナノ粒子を1000mlの脱イオン水の添加によって不安定化した。混合物を4750rpmで10分間遠心分離した(BECKMAN COULTER製Allegra(登録商標)X-15R遠心分離機)。遠心分離後、上清を除去し、沈降したナノ粒子を脱イオン水200mlで洗浄し、4750rpmで10分間遠心分離して単離した後、上清を除去した。洗浄/遠心分離サイクルを2回繰り返した。最終生成物をオーブン中80℃で24時間乾燥させた。得られたケークを乳鉢で解凝集した後、NaYF:Yb0.18,Er0.02粉末をオーブン中で3時間350℃に加熱する。
【0094】
I.1.2 粉末としてのキャップされていないNaYF:Yb0.10,Er0.10ナノ粒子(NP2)の合成
30.64gの硝酸イットリウム(80mmol)、4.67gの硝酸イッテルビウム(10mmol)、4.43gの硝酸エルビウム(10mmol)、ならびにキャップされていないナノ粒子NP1の粉末の合成に使用したのと同じ量のNaCl、NHFおよびエチレングリコールを使用して、項目I.1.1のNP1に使用したのと同じ方法および同じ条件に従って、NaYF:Yb0.10,Er0.10のナノ粒子(NP2)を得た。
【0095】
I.1.3 粉末としてのキャップされていないNaYF:Yb0.35,Tm0.01ナノ粒子(NP3)の合成
24.51gの硝酸イットリウム(64mmol)、16.35gの硝酸イッテルビウム(35mmol)、0.46gの硝酸ツリウム(1mmol)、ならびにキャップされていないナノ粒子NP1の粉末の合成に使用したのと同じ量のNaCl、NHFおよびエチレングリコールを使用して、項目I.1.1のNP1に使用したのと同じ方法および同じ条件に従って、NaYF:Yb0.35,Tm0.01のナノ粒子(NP3)を得た。
【0096】
I.1.4 粉末としてのキャップされていないNaYF:Yb0.18,Er0.02ナノ粒子(NP1)の代替合成
三口フラスコ内で、30.64gの硝酸イットリウム(80mmol)、8.41gの硝酸イッテルビウム(18mmol)、0.89gの硝酸エルビウム(2mmol)、5.84gのNaCl(100mmol)および500mlのエチレングリコール(EG)を室温で混合した。全ての塩が完全に溶解するまで、混合物をアルゴン下、磁気攪拌子を用いて80℃で10分間攪拌した(溶液A)。
【0097】
14.81gのNHF(400mmol)をビーカー中の500mlのエチレングリコールに添加し、NHFが完全に溶解するまで、混合物を磁気攪拌子を用いて80℃で15分間攪拌した(溶液B)。
【0098】
溶液Bを溶液Aに添加した。アルゴン下、80℃で10分間攪拌した後、混合物の温度を120℃に上げ、攪拌を4時間続けた。
【0099】
混合物を室温に冷却した後、得られたNaYF:Yb0.18,Er0.02ナノ粒子を1000mlの脱イオン水の添加によって不安定化した。混合物を4750rpmで10分間遠心分離した(BECKMAN COULTER製Allegra(登録商標)X-15R遠心分離機)。遠心分離後、上清を除去し、沈降したナノ粒子を脱イオン水200mlで洗浄し、4750rpmで10分間遠心分離して単離した後、上清を除去した。洗浄/遠心分離サイクルを2回繰り返した。最終生成物をオーブン中80℃で24時間乾燥させた。得られたケークを乳鉢で解凝集した後、NaYF:Yb0.18,Er0.02粉末をオーブン中で3時間350℃に加熱する。
【0100】
I.1.5 粉末としてのキャップされていないNaGdF:Yb0.18,Er0.02ナノ粒子(NP4)の合成
三口フラスコ内で、36.12gの硝酸ガドリニウム(80mmol)、8.41gの硝酸イッテルビウム(18mmol)、0.89gの硝酸エルビウム(2mmol)、5.84gのNaCl(100mmol)および500mlのエチレングリコール(EG)を室温で混合した。全ての塩が完全に溶解するまで、混合物をアルゴン下、磁気攪拌子を用いて80℃で10分間攪拌した(溶液A)。
【0101】
14.81gのNHF(400mmol)をビーカー中の500mlのエチレングリコールに添加し、NHFが完全に溶解するまで、混合物を磁気攪拌子を用いて80℃で15分間攪拌した(溶液B)。
【0102】
溶液Bを溶液Aに添加した。アルゴン下、80℃で10分間攪拌した後、混合物の温度を160℃に上げ、攪拌を2時間続けた。
【0103】
混合物を室温に冷却した後、得られたNaGdF:Yb0.18,Er0.02ナノ粒子を1000mlの脱イオン水の添加によって不安定化した。混合物を4750rpmで10分間遠心分離した(BECKMAN COULTER製Allegra(登録商標)X-15R遠心分離機)。遠心分離後、上清を除去し、沈降したナノ粒子を脱イオン水200mlで洗浄し、4750rpmで10分間遠心分離して単離した後、上清を除去した。洗浄/遠心分離サイクルを2回繰り返した。最終生成物をオーブン中80℃で24時間乾燥させた。得られたケークを乳鉢で解凝集した後、NaGdF:Yb0.18,Er0.02粉末をオーブン中で3時間350℃に加熱する。
【0104】
I.2.1 エタノール中のスラリーとしてのキャップされていないNaYF:Yb0.18,Er0.02ナノ粒子(NP1)の合成
三口フラスコ内で、30.64gの硝酸イットリウム(80mmol)、8.41gの硝酸イッテルビウム(18mmol)、0.89gの硝酸エルビウム(2mmol)、5.84gのNaCl(100mmol)および500mlのエチレングリコール(EG)を室温で混合した。全ての塩が完全に溶解するまで、混合物をアルゴン下、磁気攪拌子を用いて80℃で10分間攪拌した(溶液A)。
【0105】
14.81gのNHF(400mmol)をビーカー中の500mlのエチレングリコールに添加し、NHFが完全に溶解するまで、混合物を磁気攪拌子を用いて80℃で15分間攪拌した(溶液B)。
【0106】
溶液Bを溶液Aに添加した。Ar下、80℃で10分間攪拌した後、混合物の温度を160℃に上げ、攪拌を2時間続けた。
【0107】
混合物を室温に冷却した後、得られたNaYF:Yb0.18,Er0.02ナノ粒子を1000mlの脱イオン水の添加によって不安定化した。混合物を4750rpmで10分間遠心分離した(BECKMAN COULTER製Allegra(登録商標)X-15R遠心分離機)。遠心分離後、上清を除去し、沈降したナノ粒子を脱イオン水200mlで洗浄し、4750rpmで10分間遠心分離して単離した後、上清を除去した。洗浄/遠心分離サイクルを2回繰り返した。合成した湿潤ナノ粒子をEtOHに再分散させ、4750rpmで10分間遠心分離した(BECKMAN COULTER製Allegra(登録商標)X-15 R遠心分離機)。遠心分離後、上清を除去し、湿潤ナノ粒子をEtOHでさらに2回洗浄/遠心分離サイクルに供した。上清をデカントした後、キャップされていないNaYF:Yb0.18,Er0.02ナノ粒子をエタノール中のスラリーとして得た。スラリーは、本明細書に記載の分散液およびインクを製造するための粉末の代替として使用することができる。
【0108】
I.2.2 メチルエチルケトン中のスラリーとしてのキャップされていないNaYF:Yb0.18,Er0.02ナノ粒子(NP1)の合成
三口フラスコ内で、30.64gの硝酸イットリウム(80mmol)、8.41gの硝酸イッテルビウム(18mmol)、0.89gの硝酸エルビウム(2mmol)、5.84gのNaCl(100mmol)および500mlのエチレングリコール(EG)を室温で混合した。全ての塩が完全に溶解するまで、混合物をアルゴン下、磁気攪拌子を用いて80℃で10分間攪拌した(溶液A)。
【0109】
14.81gのNHF(400mmol)をビーカー中の500mlのエチレングリコールに添加し、NHFが完全に溶解するまで、混合物を磁気攪拌子を用いて80℃で15分間攪拌した(溶液B)。
【0110】
溶液Bを溶液Aに添加した。Ar下、80℃で10分間攪拌した後、混合物の温度を160℃に上げ、攪拌を2時間続けた。
【0111】
混合物を室温に冷却した後、得られたNaYF:Yb0.18,Er0.02ナノ粒子を1000mlの脱イオン水の添加によって不安定化した。混合物を4750rpmで10分間遠心分離した(BECKMAN COULTER製Allegra(登録商標)X-15R遠心分離機)。遠心分離後、上清を除去し、沈降したナノ粒子を脱イオン水200mlで洗浄し、4750rpmで10分間遠心分離して単離した後、上清を除去した。洗浄/遠心分離サイクルを2回繰り返した。合成した湿潤ナノ粒子をメチル-エチル-ケトン(MEK)に再分散させ、4750rpmで10分間遠心分離した(BECKMAN COULTER製Allegra(登録商標)X-15 R遠心分離機)。遠心分離後、上清を除去し、湿潤ナノ粒子をMEKでさらに2回洗浄/遠心分離サイクルに供した。上清をデカントした後、キャップされていないNaYF:Yb0.18,Er0.02ナノ粒子をMEK中のスラリーとして得た。スラリーは、本明細書に記載の分散液およびインクを製造するための粉末の代替として使用することができる。
【0112】
II.ナノ粒子の特性評価
ナノ粒子NP1~NP4のサイズ、形状および化学組成は、2つの検出器、すなわちa)表面分析およびトポグラフィについてはSE検出器(ZEISS製の二次電子検出器Everhart-Thornley)を備えた走査型電子顕微鏡(ZEISS製のEVO HD15);およびb)マイクロ分析および化学元素分析についてはEDS検出器(Energy Dispersive Spectroscopy;Oxford Instruments製のX-Max(登録商標)50 SDD X線)を使用して特性評価した。
【0113】
ナノ粒子の直径をSEM画像(ZeissのプログラムSMART SEM)で測定した。図1a-b)は、項目I.1.1に記載のようにして得られたキャップされていないナノ粒子NP1をそれぞれ倍率100kX(図1a)および200kX(図1b)で撮影したSEM画像を示す。キャップされていないナノ粒子NP1は、約48nmの平均直径を有する。平均直径は、100個のランダムに選択されたキャップされていないナノ粒子NP1について測定された直径に基づいて、倍率200kXで撮影されたSEM画像を使用して決定され、キャップされていないナノ粒子NP1の直径は、走査型電子顕微鏡(SEM)画像で検出可能な前記キャップされていないナノ粒子の最大寸法に対応する。
【0114】
キャップされていないナノ粒子NP2~NP4は、30nm~70nmの平均直径を有し、平均直径は、少なくとも100個のランダムに選択されたキャップされていないナノ粒子について測定された直径に基づき、キャップされていないナノ粒子の直径は、走査型電子顕微鏡(SEM)画像で検出可能な前記キャップされていないナノ粒子の最大寸法に対応する。
【0115】
XRF分析および参照スペクトル(Ding et al.Nature(2015),5,12745)との比較は、ナノ粒子が立方相α-NaYFを採用することを示した。
【0116】
III.キャップされていないナノ粒子を含有するインクの調製
本明細書において特許請求されるフォトルミネセンスセキュリティインクの調製の前に、様々な分散樹脂とキャップされていないナノ粒子NP1との間の適合性を研究した。そこで、下記の手順で分散液D0、D1~D14を調製した。前記分散液の遠心分離後の品質および安定性を視覚的に評価した。前記分散液の経時的な安定性を動的光散乱によって評価した。以下に記載される試験において良好な品質および良好から中程度の安定性を示した分散液のみが、セキュリティ機構の工業印刷において課される貯蔵寿命要件に適合するフォトルミネセンスセキュリティインクを製造するために使用するのに適している。
【0117】
III.1.1キャップされていないナノ粒子NP1および分散剤を含有する分散液D1~D14、ならびに分散剤を含まない分散液D0の調製
表2に示す組成を有する分散液D1~D14の各々10gを、超音波ホーン(UP400S、400W、24kHz、0.5秒のサイクル、振幅100%、ソノトロードH3(3mm)(Hielscher Ultrasonics Gmb)を備える)を用いて10分間、項目I.1.1に記載のようにして得られたキャップされていないナノ粒子NP1の粉末を、メチルエチルケトン(MEK)中に分散樹脂R1~R14(表1)を含む溶液中に分散させることによって調製した。
【0118】
表1は、分散液D1~D14の調製に使用した分散樹脂を列挙する。
【0119】
表2に示す組成を有する10gの分散液D0を、超音波ホーン(UP400S、400W、24kHz、0.5秒のサイクル、振幅100%、ソノトロードH3(3mm)(Hielscher Ultrasonics Gmb)を備える)を用いて10分間、項目I.1.1に記載のようにして得られたキャップされていないナノ粒子NP1の粉末を、メチルエチルケトン(MEK)中に分散させることによって調製した。
【0120】
【表1】
【0121】
III.1.2分散液D0、D1~D14の品質および安定性の評価
III.1.2.1 目視検査による分散液D0およびD1~D14の品質の評価
超音波処理ステップが完了したら(t=t0)、分散液の外観を目視で検査することによって、分散液D0、D1~D14の品質を評価した。表2にまとめた目視検査の結果を以下のように分類した。
【0122】
G=良質:分散液は分散樹脂溶液全体にわたって一定の強度の半透明な外観を有し、これは、キャップされていないナノ粒子が分散樹脂溶液全体にわたって均一に分散されており、分散液がt0で良質であることを示す。
M=中品質:分散液は、分散液を含む管の上部から底部にかけて強度勾配を有する半透明の外観を有し、これは、キャップされていないナノ粒子が分散樹脂溶液全体にわたって完全に均一に分散されておらず、分散液がt0で中品質であることを示す。
P=低品質:分散液は、分散液を含む管の上部で透明な外観を有し、キャップされていないナノ粒子の沈降が認められ、これは、分散樹脂溶液中のキャップされていないナノ粒子の分散が不十分であるか、または分散されておらず、t0で低品質の分散液を示す。
【0123】
III.1.2.2 目視検査による分散液D0およびD1~D14の安定性の評価
その後、試料を4750rpmで10分間遠心分離した(BECKMAN COULTER製のAllegra(登録商標)X-15R遠心分離機)。遠心分離ステップが完了したら(t1)、上清の外観を目視で検査することによって、分散液の安定性を評価した。表2にまとめた目視検査の結果を以下のように分類した。
【0124】
G=良好な安定性:上清は分散樹脂溶液全体にわたって一定の強度の半透明な外観を有し、これは、キャップされていないナノ粒子が分散樹脂溶液全体にわたって均一に分散されており、分散液が良好な安定性を有することを示す。
M=中程度の安定性:上清は、分散液を含む管の上部から底部にかけて強度勾配を有する半透明の外観を有し、これは、キャップされていないナノ粒子が分散樹脂溶液全体にわたって完全に均一に分散されておらず、分散液が中程度の安定性を有することを示す。
P=低い安定性:上清は透明な外観を有し、キャップされていないナノ粒子の沈降が認められ、これは、キャップされていないナノ粒子が存在しないこと、およびt1での不安定な分散液を示す。
【0125】
表2は、t0およびt1での分散液の目視評価によって得られた結果をまとめたものである。表2に示すように、樹脂を含まない分散液D0だけでなく、樹脂含有分散液D11およびD12は、t0では品質が悪く、これは遠心分離後にさらに悪化する。さらに、樹脂含有分散液D8~D10は、t0で良好な品質を示すが、遠心分離後の目視検査によって得られた結果によって示されるように動力学的に不安定である。品質が低い、または上述の試験で動力学的に不安定であると評価されている分散液は、セキュリティ機構の工業印刷に課される貯蔵寿命要件に適合するCIJインクを調製するのに適していない。驚くべきことに、分散液D1~D7およびD13~D14は、t0において良好な品質を示し、上記の試験において中程度から良好な速度論的安定性を示した。
【0126】
キャップされていないナノ粒子NP1の粉末の代わりに、それぞれ項目1.2.1および1.2.2に記載されるように製造されたEtOHまたはMEK中のキャップされていないナノ粒子NP1のスラリーから出発して調製された分散液を用いて、同等の結果が得られた。
【0127】
III.1.2.3 分散液D1~D7およびD13~D14の経時的安定性の評価
分散液D1~D7およびD13~D14の経時的な安定性を、以下に記載される手順を用いて評価した。
【0128】
遠心分離後(t1)および遠心分離の1ヶ月後(t2)、分散液D1~D7およびD13~D14の各々の上清50mgを、希釈試料を得るためにMEK(450mg)で個々に希釈して、これをZetasizer Nano ZS(Malvern製)を用いて動的光散乱(DLS)によって直ちに分析して、分散ナノ粒子の平均粒径(Zav)および多分散指数(PDI)を決定した。t1とt2との間、分散液を暗所で室温にて保存した。各測定を3回繰り返した。
【0129】
t2での平均粒径(Zav)について決定された平均値とt1での平均粒径(Zav)について決定された平均値との間の平均粒径変動(ΔZav)を計算し、以下のように分類した。
【0130】
I:t2とt1との間の平均粒子径(Zav)の変動がない、または軽微である(t2における平均粒子径(Zav)について決定された平均値とt1における平均粒子径(Zav)について決定された平均値との間の絶対値の差が10nm未満であることに対応する);
M:t2とt1との間の平均粒子径(Zav)の変動が中程度である(t2における平均粒子径(Zav)について決定された平均値とt1における平均粒子径(Zav)について決定された平均値との間の絶対値の差が10nm以上20nm未満であることに対応する);
H:t2とt1との間の平均粒子径(Zav)の変動が高い(t2における平均粒子径(Zav)について決定された平均値とt1における平均粒子径(Zav)について決定された平均値との間の絶対値の差が20nm以上であることに対応する)。結果を表2にまとめた。
【0131】
t2での多分散性指数(PDI)について決定された平均値とt1での多分散性指数(PDI)について決定された平均値との間の多分散性指数変動(ΔPDI)を計算し、以下のように分類した。
【0132】
I:t2とt1との間に多分散性指数(PDI)の変動がない、または軽微である(t2における平均多分散性指数(PDI)について決定された平均値とt1における平均多分散性指数(PDI)について決定された平均値との間の絶対値の差が0.05単位未満であることに対応する);
M:t2とt1との間に多分散性指数(PDI)の変動が中程度である(t2における平均多分散性指数(PDI)について決定された平均値とt1における平均多分散性指数(PDI)について決定された平均値との間の絶対値の差が0.05単位以上0.1単位未満であることに対応する);
H:t2とt1との間に多分散性指数(PDI)の変動が高い(t2における平均多分散性指数(PDI)について決定された平均値とt1における平均多分散性指数(PDI)について決定された平均値との間の絶対値の差が0.1単位以上であることに対応する)。結果を表2にまとめた。
【0133】
t2とt1との間の平均粒径(Zav)およびt2とt1との間の多分散性指数(PDI)の軽微な変動は、分散液の経時的な良好な安定性を示す。
【0134】
表2に示すように、分散液D1~D4、D6~D7およびD13~D14は、t2とt1との間の平均粒径および多分散性指数の軽微な変動によって示されるように、経時的に良好な安定性を示した。対照的に、分散液D5は、t2とt1との間の平均粒径および多分散性指数の高い変動によって示されるように、経時的に安定ではなく、その結果、セキュリティ機構の工業印刷の貯蔵寿命要件に適合するCIJ印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクを調製するために使用するのに適していないことが分かった。
【0135】
【表2】
【0136】
III.2.1 CIJセキュリティインクE-I1~E-I11の調製
表2に示す組成を有する分散液D1~D4、D6~D7およびD13~D14の各々400gを、項目III.1.1に記載のように調製した。表3に示す組成を有する連続インクジェットセキュリティインクE-I1~E-I11を、磁気攪拌子を備えたビーカー中、室温で約1時間、表3に列挙した成分を有する分散液D1~D4、D6~D7およびD13~D14の各々を個別に攪拌することによって調製した。連続インクジェットインクE-I1~E-I11をNylonメンブレンフィルタ5μm(Thermo Fisher Scientific製のTitan3)で濾過した。
【0137】
III.2.2 印刷品質およびCIJセキュリティインク安定性の評価
表3のCIJセキュリティインクを、調製直後(t0)および1ヶ月後(t1)に連続インクジェットプリンター(英国Domino Printing Sciences,UK製A200)を使用して、6mm×12mmの長方形として紙基材(Leneta製の白色紙N2C-2)上に印刷して、溶媒蒸発後に対応するフォトルミネセンスセキュリティ機構を提供するフォトルミネセンスインク層を得た。インクは、2回の印刷試行の間、暗所で室温で保存した。
【0138】
t0でのインクの粘度は、60rpmで、スピンドル00を装備したブルックフィールド粘度計(モデルLV(低粘度))を使用して25℃で測定した。結果を表3にまとめた。
【0139】
印刷品質は、上述のように製造されたフォトルミネセンスセキュリティ機構を肉眼で検査することによって評価した。目視評価の結果を表3に要約し、以下のように分類した。
【0140】
G=良好な印刷品質(完全なドット配置および最適な印刷に対応する);
M=中程度の印刷品質(わずかなドットの位置ずれおよび無視できる印刷歪みに対応する);
P=低い印刷品質(強いドットの位置ずれおよび大きな印刷歪みに対応する)。
【0141】
970nmで励起後、光電子増倍管R928P(HAMMATSU製)を備えたFluorolog(登録商標)-3分光光度計(900nmフィルタ;バンドパス8nm)(HORIBA SCIENTIFC製)を使用して、表3のCIJセキュリティインクで上記のようにt0およびt1で得られたセキュリティ機構のフォトルミネセンスシグナルを測定して、1ヶ月にわたるインク安定性を評価した。図2は、それぞれt0およびt1でインクE-I4を用いて得られたセキュリティ機構について記録された重ね合わせたフォトルミネセンス発光スペクトルを示す。630nm~690nmのセキュリティ機構によって示されるフォトルミネセンスシグナルの平均強度を計算した。t0とt1との間のフォトルミネセンスシグナルの平均強度の変動は、貯蔵寿命インク安定性の指標を与える。フォトルミネセンス測定の結果を表3に要約し、以下のように分類した。
【0142】
G=良好なインク安定性(t0とt1との間のフォトルミネセンスシグナルの平均強度の変動が10%以下であることに対応する);
M=中程度のインク安定性(t0とt1との間のフォトルミネセンスシグナルの平均強度の変動が10%より高く30%以下であることに対応する);
P=低いインク安定性(t0とt1との間のフォトルミネセンスシグナルの平均強度の変動が30%より高いことに対応する)。
【0143】
表3に示すように、インクE-I1、E-I2、E-I5、E-I7、E-I9、およびEI11は、t0およびt1の両方で良好な印刷品質を示し、貯蔵寿命にわたって良好な安定性を有する。そのようなインクは、セキュリティ機構中に存在するキャップされていないナノ粒子の存在の検出および定量化によって認証される物品および価値文書のセキュリティ機構を製造するのに特に有用である。そのような物品としては、電気/電子物品、自動車スペア製品、高級品、および宝飾品が挙げられる。そのような価値文書としては、紙幣、証書、チケット、小切手、バウチャー、収入印紙、ラベル、契約書、身分証明書、アクセス文書、および、電気/電子物品、布地、自動車スペア部品、建材、農薬、高級品または宝飾品の包装材料が挙げられる。インクの印刷品質および安定性は、インク中の着色剤の存在によって影響されない。インクE-I3、E-I4、E-I6、E-I8およびE-I10は、貯蔵寿命にわたって中程度の印刷品質および中程度から良好なインク安定性を示す。そのようなインクは、化粧品、栄養補助食品、医薬品、アルコール性および非アルコール性飲料、タバコ物品、および食品などの物品のセキュリティ機構を製造するのに特に有用であり、セキュリティ機構におけるキャップされていないナノ粒子の存在の単純な検出は、認証目的に十分である。
【0144】
【表3】
図1a
図1b
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクであって、前記インクが、25℃で約1.5mPas~約6mPasの粘度を有し、
a)約1重量%~約6重量%のキャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子であって、
式中、
Xが、Y3+およびGd3+からなる群から選択され;
Zが、Er3+、Tm3+およびHo3+からなる群から選択され;
0<y+z≦0.4;
かつ、0≦z≦0.1であり、
走査型電子顕微鏡法によって測定される場合に約30nm~約70nmの平均直径を有する、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子と、
b)ポリビニルアセタール樹脂、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含有する塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂、エステルセルロース樹脂、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、約1.5重量%~約10重量%の分散剤と、
c)ケトン、アルコール、エステルおよびこれらの混合物からなる群から選択される、約80重量%~約90重量%の有機溶媒と、
d)約0.1重量%~約1重量%の導電性塩と、を含み、
前記重量パーセントが前記フォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく、フォトルミネセンスセキュリティインク。
【請求項2】
0.1≦y≦0.35である、請求項1に記載のフォトルミネセンスセキュリティインク。
【請求項3】
ZがEr3+を表し、0.01≦z≦0.1であり、y≧zである、請求項2に記載のフォトルミネセンスセキュリティインク。
【請求項4】
ZがTm3+を表し、0.01≦z≦0.05であり、y≧zである、請求項2に記載のフォトルミネセンスセキュリティインク。
【請求項5】
XがY3+を表す、請求項1~4のいずれか一項に記載のフォトルミネセンスセキュリティインク。
【請求項6】
e)約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマー、セルロース樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される最大7重量%のレオロジー調整剤をさらに含み、前記重量パーセントが前記フォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく、
請求項1~のいずれか一項に記載のフォトルミネセンスセキュリティインク。
【請求項7】
前記分散剤が、ポリビニルアセタール樹脂、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含む塩化ビニルコポリマー、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記フォトルミネセンスインクジェットセキュリティインク中に約4重量%~約10重量%の量で存在し、前記重量パーセントが前記フォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づく、請求項1~のいずれか一項に記載のフォトルミネセンスセキュリティインク。
【請求項8】
請求項1に記載の連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクを製造するための方法であって、
i)粉末またはスラリーとして、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を提供するステップであって、X、Z、yおよびzが請求項1に定義される意味を有し、走査型電子顕微鏡法によって測定される場合に約30nm~約70nmの平均直径を有する、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を提供するステップと、
ii)有機溶媒中の分散剤の溶液を準備するステップであって、前記分散剤が、ポリビニルアセタール樹脂、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含む塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂、エステルセルロース樹脂、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択され;前記有機溶媒が、ケトン、アルコール、エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、有機溶媒中の分散剤の溶液を準備するステップと、
iii)ステップii)で提供された前記溶液中に前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を分散させて、分散液を得るステップと、
iv)ステップiii)で得られた前記分散液に、
前記フォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づき約0.1重量%~約1重量%の導電性塩、
場合により、ケトン、アルコール、エステルおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒、
場合により、約60重量%~約95重量%の塩化ビニルを含有するポリ塩化ビニルコポリマー、セルロース樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される、前記フォトルミネセンスセキュリティインクの総重量に基づき最大7重量%のレオロジー調整剤、ならびに
場合により、着色剤、を添加して、前記連続インクジェット印刷用のフォトルミネセンスセキュリティインクを提供するステップと、
を含む方法。
【請求項9】
ステップi)が、i-1)からi-3)の順序で行われる以下のステップ:
i-1)エチレングリコール中のフッ化アンモニウムの第1の溶液を、エチレングリコール中、塩化ナトリウム、X(NO、Yb(NO、および場合によりZ(NO[式中、XおよびZが請求項1に定義される意味を有する]を含有する第2の溶液と混合して、混合物を形成するステップと、
i-2)ステップi-1)で得られた前記混合物を約120℃~約170℃の温度で少なくとも2時間攪拌して、キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を形成するステップと、
i-3)前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を、粉末として、またはスラリーとして単離するステップと、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップi-3)が、以下のステップ:
i-4)水を添加し、続いて遠心分離して上清を形成し、前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を沈降させ、その後、前記上清をデカントするステップと、
i-5)前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を乾燥させて、前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を粉末として得、場合により、前記粉末を250℃~約350℃の温度で約1~3時間加熱処理に供するステップ;
または
i-6)前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を、ケトン、アルコール、エステルおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒中に分散させ、続いて遠心分離して上清を形成し、前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子を沈降させ、その後、前記上清をデカントして、前記キャップされていないNaX1-y-zYbナノ粒子をスラリーとして得るステップと、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップi-4)が少なくとも2回、好ましくは少なくとも3回行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
物品または価値文書上にフォトルミネセンスセキュリティ機構を製造するための方法であって、
フォトルミネセンスセキュリティインク層を形成するように、連続インクジェット印刷することによって、請求項1~のいずれか一項に記載のフォトルミネセンスセキュリティインクを前記物品の表面または前記価値文書の基材に適用するステップと、
前記フォトルミネセンスセキュリティインク層を乾燥させて前記フォトルミネセンスセキュリティ機構を提供するステップと、を含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法によって得られるフォトルミネセンスセキュリティ機構を有する、物品、好ましくは化粧品、栄養補助食品、医薬品、アルコール性および非アルコール性飲料、タバコ物品、食品、電気/電子物品、自動車スペア製品、高級品、および宝飾品から選択される物品。
【請求項14】
請求項12に記載の方法によって得られるフォトルミネセンスセキュリティ機構を有する、価値文書、好ましくは紙幣、証書、チケット、小切手、バウチャー、収入印紙、ラベル、契約書、身分証明書、アクセス文書、および、化粧品、栄養補助食品、医薬品、アルコール性および非アルコール性飲料、タバコ物品、食品、電気/電子物品、布地、自動車スペア部品、建材、農薬、高級品または宝飾品の包装材料から選択される価値文書。
【国際調査報告】