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特表2024-534788抗B7-H4抗体及びその調製方法と使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】抗B7-H4抗体及びその調製方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20240918BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240918BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240918BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240918BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240918BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240918BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C12P21/08
C12P21/02 C
A61K35/17
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K39/395 L
A61K45/00
A61K47/68
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A61K9/12
G01N33/574 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509326
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 CN2022112864
(87)【国際公開番号】W WO2023020507
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】202110951949.X
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520223321
【氏名又は名称】ハーバー・バイオメド・(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HARBOUR BIOMED (SHANGHAI) CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲暁▼▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】王 永▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】▲賈▼ ▲鴿▼子
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 楚楚
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】何 云
(72)【発明者】
【氏名】戎 一平
(72)【発明者】
【氏名】丁 翌
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲鶴▼
(72)【発明者】
【氏名】牛 磊
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA11
4C076AA12
4C076AA13
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA93
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB21
4C076BB25
4C076BB31
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA19
4C084MA12
4C084MA16
4C084MA34
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC752
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB01
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG08
4C085GG10
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087CA03
4C087CA12
4C087MA12
4C087MA16
4C087MA34
4C087MA52
4C087MA56
4C087MA59
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA21
4H045GA22
(57)【要約】
VHを含む抗B7-H4抗体を提供し、前記VHは、下記のCDR又はその突然変異:配列番号4又は5のアミノ酸配列に示されるCDR1、配列番号15のアミノ酸配列に示されるCDR2、及び、配列番号24又は25のアミノ酸配列に示されるCDR3を含み、ここで、前記突然変異は、前記CDRのアミノ酸配列における3、2又は1個のアミノ酸の挿入、欠失又は置換である。前記抗体は、ヒトB7-H4及びカニクイザルB7-H4に結合する活性を有する。前記抗体をB7-H4×CD3二重特異性抗体として調製した場合、ヒトB7-H4及びカニクイザルB7-H4に結合する活性を依然として保持し、腫瘍細胞に対して強い殺傷効果を有し、誘導されたIL-6やIFN-γなどの非特異的サイトカインの発現は非常に低く、in vivoで強い抗腫瘍活性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)を含み、ここで、
前記VHは、下記の相補性決定領域(CDR)又はその突然変異:配列番号4又は5のアミノ酸配列に示されるCDR1、配列番号15のアミノ酸配列に示されるCDR2、及び、配列番号24又は25のアミノ酸配列に示されるCDR3を含み、
ここで、前記突然変異は、前記CDRのアミノ酸配列における3、2又は1個のアミノ酸の挿入、欠失又は置換であることを特徴とする、抗B7-H4抗体。
【請求項2】
前記CDR2上の突然変異は、配列番号15に示されるアミノ酸配列にG2P、S4G、及びS5R/D/E/Tのうちの2又は1個のアミノ酸の置換を有するものであり、前記CDR2のアミノ酸配列は、好ましくは配列番号11~14、配列番号16~18のいずれか一つに示されることを特徴とする、請求項1に記載の抗B7-H4抗体。
【請求項3】
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、11及び24に示され、或いは
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号5、12、及び25に示され、或いは
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、17、及び24に示され、或いは
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号5、18及び25に示され、或いは
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、13、及び24に示され、或いは
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、14及び24に示され、或いは
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、15及び24に示され、或いは
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、16及び24に示されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体。
【請求項4】
前記VHのフレームワーク領域はヒトVHのフレームワーク領域であり、
好ましくは、前記ヒトVHのフレームワーク領域は、アミノ酸配列が配列番号2に示されるFWR1、アミノ酸配列が配列番号7~9のいずれか一つに示されるFWR2、アミノ酸配列が配列番号20~22のいずれか一つに示されるFWR3、及びアミノ酸配列が配列番号26又は27に示されるFWR4を含み、
より好ましくは、前記VHは、配列番号36~45のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗B7-H4抗体。
【請求項5】
前記抗B7-H4抗体は、完全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv好ましくはscFv、二重特異性抗体、多重特異性抗体、重鎖抗体又は単一ドメイン抗体であり、好ましくは、前記抗B7-H4抗体が重鎖抗体である場合、前記重鎖抗体は、配列番号48~57のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗B7-H4抗体。
【請求項6】
B7-H4を標的とするタンパク質機能領域B、及び非B7-H4を標的とするタンパク質機能領域Aを含み、
a)前記タンパク質機能領域Bは、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗B7-H4抗体から選択され、
好ましくは、構造が、式:N’-VL_A-CL-C’に示されるポリペプチド鎖1、式:N’-VH_A-CH1-ヒンジ領域-CH2-CH3-C’に示されるポリペプチド鎖2、式:N’-VH_B1-リンカー-VH_B2-ヒンジ領域-CH2-CH3-C’、又は式:N’-VH_B-ヒンジ領域-CH2-CH3-C’に示されるポリペプチド鎖3を含み、ここで、前記VL_A及びVH_Aは、それぞれ前記タンパク質機能領域AのVL及びVHであり、前記VH_B1及びVH_B2は、前記タンパク質機能領域BのVHであり、且つVH_B1及びVH_B2は、同じであっても異なってもよい、又は、
b)前記タンパク質機能領域Bは、配列番号72に示されるHCDR1、配列番号74に示されるHCDR2、配列番号76に示されるHCDR3、配列番号78に示されるLCDR1、配列番号80に示されるLCDR2、配列番号82に示されるLCDR3を含み、
好ましくは、構造が、式:N’-VL_A-CL-C’に示されるポリペプチド鎖1、式:N’-VH_A-CH1-ヒンジ領域-CH2-CH3-C’に示されるポリペプチド鎖2、式:N’-VL_B-リンカー-VH_B-ヒンジ領域-CH2-CH3-C’に示されるポリペプチド鎖3を含み、ここで、前記VL_A及びVH_Aは、それぞれ前記タンパク質機能領域AのVL及びVHであり、前記VL_B及びVH_Bは、前記タンパク質機能領域BのVL及びVHである、
から選択されることを特徴とする、二重特異性抗体。
【請求項7】
前記タンパク質機能領域Aは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗CD3抗体であり、前記VHは、アミノ酸配列が配列番号3に示されるVH CDR1、アミノ酸配列が配列番号10に示されるVH CDR2、及びアミノ酸配列が配列番号23に示されるVH CDR3を含み、前記VLは、アミノ酸配列が配列番号29に示されるVL CDR1、アミノ酸配列が配列番号31に示されるVL CDR2、及びアミノ酸配列が配列番号33に示されるVL CDR3を含み、
好ましくは、前記抗CD3抗体は、アミノ酸配列が配列番号35に示されるVH、及びアミノ酸配列が配列番号46に示されるVLを含み、
より好ましくは、前記抗CD3抗体は、アミノ酸配列が配列番号47に示される重鎖、及びアミノ酸配列が配列番号58に示される軽鎖を含むことを特徴とする、請求項6に記載の二重特異性抗体。
【請求項8】
前記二重特異性抗体は、
アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号60に示されるポリペプチド鎖3、
或いは、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号61に示されるポリペプチド鎖3、
或いは、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号62に示されるポリペプチド鎖3、
或いは、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号63に示されるポリペプチド鎖3、
或いは、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号64に示されるポリペプチド鎖3、
或いは、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号65に示されるポリペプチド鎖3、
或いは、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号69に示されるポリペプチド鎖3、
或いは、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号70に示されるポリペプチド鎖3を含み、
或いは、前記二重特異性抗体は、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号86に示されるポリペプチド鎖3を含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載の二重特異性抗体。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗B7-H4抗体、又は請求項6~8のいずれか一項に記載の二重特異性抗体をコードする単離された核酸。
【請求項10】
請求項9に記載の単離された核酸を含み、
好ましくは、真核細胞発現ベクター及び/又は原核細胞発現ベクターを含む、組換え発現ベクター。
【請求項11】
請求項10に記載の組換え発現ベクターを含み、
好ましくは、宿主細胞は、原核細胞及び/又は真核細胞であり、前記原核細胞は、好ましくはTG1、BL21細胞などの大腸菌細胞であり、前記真核細胞は、好ましくはHEK293細胞又はCHO細胞である、形質転換体。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗B7-H4抗体、又は請求項6~8のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項13】
請求項12に記載のキメラ抗原受容体を含み、
好ましくは、真核細胞であり、好ましくは単離されたヒト細胞であり、より好ましくは免疫細胞であるT細胞、又はNK細胞であることを特徴とする、遺伝子改変細胞。
【請求項14】
請求項11に記載の形質転換体を培養し、培養物から抗B7-H4抗体又は二重特異性抗体を得るステップを含む、抗B7-H4抗体又は二重特異性抗体の調製方法。
【請求項15】
抗体部分及び複合体部分を含み、前記抗体部分は、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗B7-H4抗体又は請求項6~8のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含み、前記複合体部分は、検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、又はそれらの組み合わせを含み、前記抗体部分と複合体部分とが、化学結合又はリンカーを介して結合する、抗体薬物複合体。
【請求項16】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗B7-H4抗体、請求項6~8のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項12に記載のキメラ抗原受容体、請求項13に記載の遺伝子改変細胞及び/又は請求項15に記載の抗体薬物複合体を含み、
好ましくは、液体剤形、気体剤形、固体剤形及び半固体剤形であり、及び/又は、経口、注射、経鼻、経皮又は粘膜投与することができ、
さらに好ましくは、化学治療剤、放射線治療剤、免疫阻害剤及び/又は細胞傷害性薬物を含む併用治療剤をさらに含む、医薬組成物。
【請求項17】
がんを治療及び/又は予防するための医薬、キット及び/又は薬物送達システムの調製における、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗B7-H4抗体、請求項6~8のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項12に記載のキメラ抗原受容体、請求項13に記載の遺伝子改変細胞、請求項15に記載の抗体薬物複合体及び/又は請求項16に記載の医薬組成物の使用であって、
好ましくは、前記がんは、肺がん、トリプルネガティブ乳がんなどの乳がん、卵巣がん、子宮内膜腫、胃がん、小腸がん、結腸がん、直腸がん、膵臓がん、腎臓がん、膀胱がん、前立腺がん、胆管がん、食道がん及び骨肉腫からなる群より選択される、使用。
【請求項18】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体、請求項6~8のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項12に記載のキメラ抗原受容体、請求項13に記載の遺伝子改変細胞、請求項15に記載の抗体薬物複合体及び/又は請求項16に記載の医薬組成物、並びに任意選択の説明書を含む、キット。
【請求項19】
(1)請求項16に記載の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与するための注入モジュール、及び(2)任意選択の薬効モニタリングモジュールを含むことを特徴とする、薬物送達システム。
【請求項20】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗B7-H4抗体及び/又は請求項6~8のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を使用して検出するステップを含み、好ましくは、非診断及び/又は治療目的であることを特徴とする、B7-H4を検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の分野に関し、特に抗B7-H4抗体及びその調製方法と使用に関し、さらに前記抗B7-H4抗体を含む二重特異性抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
乳がん、卵巣がん、及び子宮内膜腫は女性によく見られる悪性腫瘍であり、その中で、乳がんは女性のがんの中で発生率が第1位であり、2018年の国際がん研究機関IARCのデータにより、世界中の女性のがんにおける乳がんの発生率は24.2%であることが示されている。これらのがんの治療では、免疫療法と標的療法が現在のホットスポットである。例えば、Her2を標的とするハーセプチンは、Her2陽性乳がんに対して良好な治療効果を有する。トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対しては、対応する標的がないため、現在治療法はほとんどなく、主に化学療法が行われている。2019年3月、米国FDAは、転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の治療薬として、PD-L1阻害剤アテゾリズマブ(Atezolizumab)とアルブミン結合パクリタキセルの併用を承認したが、PD-L1はトリプルネガティブ乳がんではあまり発現されていない。卵巣がんや子宮内膜腫の治療は、主に手術と補助療法である放射線化学療法を中心とするが、再発性又は転移性腫瘍に対して、上記の手段に加えて、他の利用可能な標的は主にエストロゲン受容体、HER2、VEGF、及びPD1/PD-L1などを含むが、治療効果は限定的である。
【0003】
B7-H4はB7ファミリーの比較的新しいメンバーであり、そのタンパク質は正常組織での発現が非常に限られており、乳管や小葉、卵管上皮、子宮内膜腺などの組織など、生体の一部の乳管上皮細胞でのみ低レベルで発現される。対照的に、B7-H4は、乳がん細胞、特にトリプルネガティブ乳がん細胞、卵巣がん細胞、子宮内膜腫細胞など、様々な腫瘍組織で豊富に発現され、腫瘍の半数近くがB7-H4を高発現している。発現プロファイルの観点から、B7-H4は特異性の高い腫瘍関連抗原と見なすことができる。一方、B7-H4は新しい免疫チェックポイント分子であり、in vitro実験により、B7-H4が未知のT細胞表面受容体と相互作用することにより、T細胞の増殖、活性化、サイトカイン産生を阻害することが証明された。腫瘍細胞は、B7-H4分子を高発現し、腫瘍微小環境下でB7-H4分子を高発現する抑制性マクロファージにより、T細胞の活性化を阻害し、それによって免疫回避を実現する。腫瘍におけるB7-H4の発現プロファイルはPD-L1と重複しない。B7-H4を標的とする抗体による治療は、B7-H4発現陽性腫瘍を治療するための有望な手段である。
【0004】
現在、多くの製薬会社は、B7-H4に対するモノクローナル抗体、又は抗体薬物複合体、又は二重特異性抗体を開発している。Genentech、BMS、Jounce、Jiangsu Hansohなどは、前臨床開発段階にあり、現在最も急速に進んでいるのは、FivePrimeとNextcureの抗B7-H4モノクローナル抗体であり、現在臨床第I相段階にあり、その機序は主にADCCと免疫チェックポイントの阻害を介してT細胞を活性化することである。抗腫瘍関連抗原と抗CD3を含む二重特異性抗体の構築は、T細胞エンゲージャーと呼ばれ、強い腫瘍関連抗原依存性のT細胞活性化及び腫瘍殺傷効果を有し、通常のモノクローナル抗体よりもさらに強力な治療効果を有する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術における抗B7-H4抗体の欠点を克服するために、抗B7-H4抗体及びその調製方法と使用を提供し、さらに前記抗B7-H4抗体を含む二重特異性抗体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の第1の態様は、重鎖可変領域(VH)を含む抗B7-H4抗体を提供し、ここで、
前記VHは、下記の相補性決定領域(CDR)又はその突然変異:配列番号4又は5のアミノ酸配列に示されるCDR1、配列番号15のアミノ酸配列に示されるCDR2、及び、配列番号24又は25のアミノ酸配列に示されるCDR3を含み、
ここで、前記突然変異は、前記CDRのアミノ酸配列における3、2又は1個のアミノ酸の挿入、欠失又は置換である。
【0007】
本出願において、「3、2又は1個のアミノ酸の挿入、欠失又は置換」と類似の用語における「アミノ酸の突然変異」とは、元のアミノ酸配列に基づくアミノ酸の挿入、欠失又は置換を含む、元のアミノ酸配列と比較した、変異体におけるアミノ酸の突然変異を指す。例示的な説明は、CDRへの突然変異は、3、2又は1個のアミノ酸の突然変異を含んでもよく、これらのCDR間の突然変異は、同じ又は異なる数のアミノ酸残基を任意選択で選択することができ、例えば、CDR1に対して1個のアミノ酸の突然変異は行われるが、CDR2とCDR3へのアミノ酸の突然変異は行われないことである。
【0008】
本出願において、前記突然変異は、現在当業者に周知の突然変異を含んでもよく、例えば、抗体の産生又は適用中に抗体に対して行われ得る突然変異、例えば、存在し得る部位、特にCDR領域における翻訳後修飾(post-translational modifications、PTMs)を受ける部位に対する突然変異であり、抗体の凝集、アスパラギン脱アミド化(asparagine deamidation)感受性部位(NG、NS、NHなど)、アスパラギン酸異性化(DG、DP)感受性部位、N-グリコシル化(N-{P}S/T)感受性部位、及び酸化感受性部位などの関連突然変異、又は等電点の低下に関連する突然変異を含む。
【0009】
好ましくは、前記CDR2上の突然変異は、配列番号15に示されるアミノ酸配列にG2P、S4G、及びS5R/D/E/Tのうちの2又は1個のアミノ酸置換を有するものであり、そのアミノ酸配列は、好ましくは配列番号11~14、配列番号16~18のいずれか一つに示される。
【0010】
上記のG2Pは、一般に、配列番号15に示されるアミノ酸配列の2位のアミノ酸GがPに突然変異することを指し、S4G、S5R/D/E/Tなどの他のアミノ酸置換がこのように類推できることは当業者には理解されるべきである。
【0011】
好ましくは、前記抗B7-H4抗体は重鎖可変領域(VH)を含み、ここで、前記VHは、下記の相補性決定領域(CDR)又はその突然変異:配列番号4又は5のアミノ酸配列に示されるCDR1、配列番号11~18のアミノ酸配列に示されるCDR2、及び、配列番号24又は25のアミノ酸配列に示されるCDR3を含む。
【0012】
ある実施形態において、前記抗B7-H4抗体の前記VHに含まれるCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、11、及び24に示される。
【0013】
ある実施形態において、前記抗B7-H4抗体の前記VHに含まれるCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号5、12、及び25に示される。
【0014】
ある実施形態において、前記抗B7-H4抗体の前記VHに含まれるCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、17、及び24に示される。
【0015】
ある実施形態において、前記抗B7-H4抗体の前記VHに含まれるCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号5、18、及び25に示される。
【0016】
ある実施形態において、前記抗B7-H4抗体の前記VHに含まれるCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、13、及び24に示される。
【0017】
ある実施形態において、前記抗B7-H4抗体の前記VHに含まれるCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、14、及び24に示される。
【0018】
ある実施形態において、前記抗B7-H4抗体の前記VHに含まれるCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、15、及び24に示される。
【0019】
ある実施形態において、前記抗B7-H4抗体の前記VHに含まれるCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、16、及び24に示される。
【0020】
好ましくは、前記VHのフレームワーク領域はヒトVHのフレームワーク領域である。ある実施形態において、前記ヒトVHのフレームワーク領域は、アミノ酸配列が配列番号2に示されるFWR1、アミノ酸配列が配列番号7~9のいずれか一つに示されるFWR2、アミノ酸配列が配列番号20~22のいずれか一つに示されるFWR3、及びアミノ酸配列が配列番号26又は27に示されるFWR4を含む。ある実施形態において、前記VHは、配列番号36~45のいずれか一つに示されるアミノ酸配列又はその突然変異を含み、前記突然変異は、前記VHのアミノ酸配列における一つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、置換又は付加であり、且つ前記突然変異を有するアミノ酸配列は、前記VHのアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有し、前記抗体のB7-H4への結合を維持又は改善する。前記少なくとも85%の配列同一性は、好ましくは少なくとも90%の配列同一性であり、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性であり、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性である。
【0021】
ある好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域VHは、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域VHは、配列番号37に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域VHは、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域VHは、配列番号45に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域VHは、配列番号38に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域VHは、配列番号39に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域VHは、配列番号40に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域VHは、配列番号41に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域VHは、配列番号42に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域VHは、配列番号43に示されるアミノ酸配列を含む。
【0022】
本願では、上記のCDRのアミノ酸配列は全てChothia定義方式で示される(本発明の請求項に記載の配列もChothia定義方式で示される)。当業者が知っているように、本分野では、例えば、配列可変性に基づくKabat定義方式(Kabat,et.al,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Edition,National Institutes of Health,Bethesda,Md(1991)参照)、構造ループ領域の位置に基づくChothia定義方式(JMol Biol 273:927~48,1997参照)など、様々な方式で抗体のCDRを定義することができる。本願では、Kabat定義とChothia定義を組み合わせた(Combined)定義方式を採用して可変ドメイン配列のアミノ酸残基を決定することもできる。組み合わせた(Combined)定義方式はKabat定義とChothia定義の範囲を合わせたものであるため、範囲が拡大しており、その詳細は表1-1を参照する。当業者が理解しているように、他に規定がある場合を除いて、特定の抗体又はその領域(例えば、可変領域)の「相補性決定領域」又は「CDR」は本発明で説明した前記実施形態のいずれかにおいて限定された相補性決定領域を含むものと理解される。本発明の請求項で保護を求める範囲はChothia定義方式で配列を示しているが、他のCDR定義方式に基づく対応するアミノ酸配列も本発明の保護範囲に含まれる。
【0023】
従って、本発明で定義される具体的なCDR配列を有する抗体を定義する場合、前記抗体の範囲は、その可変領域配列が前記具体的なCDR配列を含むが、異なるスキームの適用(例えば、異なる割り当てシステム規則又は組み合わせ)により、その主張されるCDR境界が本発明で定義される具体的なCDR境界と異なる抗体をさらに包含する。
【0024】
好ましくは、前記抗B7-H4抗体は、完全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv好ましくはscFv、二重特異性抗体、多重特異性抗体、重鎖抗体若しくは単一ドメイン抗体、又は抗原と特異的に結合する抗体の能力(抗原と特異的に結合する抗体の能力の一部を保持してもよい)を保持する他の抗体、又は上記の抗体から調製されたモノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体である。
【0025】
好ましくは、前記抗B7-H4抗体は重鎖抗体である。ある実施形態において、前記重鎖抗体は、配列番号48~57のいずれか一つに示されるアミノ酸配列又はその突然変異を含む。前記突然変異は、前記アミノ酸配列における一つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、置換又は付加であり、且つ前記突然変異を有するアミノ酸配列は、前記アミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有し、前記抗体のB7-H4への結合を維持又は改善する。前記少なくとも85%の配列同一性は、好ましくは少なくとも90%の配列同一性であり、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性であり、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性である。ある好ましい実施形態において、前記重鎖抗体は、配列番号48に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖抗体は、配列番号49に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖抗体は、配列番号56に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖抗体は、配列番号57に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖抗体は、配列番号50に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖抗体は、配列番号51に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖抗体は、配列番号52に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖抗体は、配列番号53に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖抗体は、配列番号54に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記重鎖抗体は、配列番号55に示されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
本出願において、前記「Fabフラグメント」は、一つの軽鎖と一つの重鎖のCH1及び可変領域から構成される。Fabフラグメントの重鎖は、他の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。「Fc」領域は、抗体のCH2及びCH3ドメインを含む2つの重鎖フラグメントである。2つの重鎖フラグメントは、2つ以上のジスルフィド結合とCH3ドメインの疎水性相互作用によって一体的に保持されている。前記「Fab´フラグメント」は、一つの軽鎖と、VHドメイン、CH1ドメイン、及びCH1とCH2ドメインの間の領域を含み、それによって、2つのFab´フラグメントの2つの重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合が形成されてF(ab´)フラグメントを形成することができる。前記「F(ab´)フラグメント」は、2つの軽鎖と、CH1及びCH2ドメインの間の定常領域の一部を含む2つの重鎖とを含み、それによって、2つの重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合が形成される。従って、F(ab´)フラグメントは、2つの重鎖間のジスルフィド結合によって一体的に保持された2つのFab´フラグメントから構成される。前記「Fv」という用語は、抗体のシングルアームのVL及びVHドメインからなるが、定常領域を欠く抗体フラグメントを指すことを意図している。
【0027】
本出願において、前記scFv(single chain antibody fragment、一本鎖抗体)は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、及び15~20アミノ酸の短いペプチドリンカーを含む、当技術分野における通常の一本鎖抗体であってもよい。その中で、VL及びVHドメインは、それらが単一のポリペプチド鎖の生成を可能にするリンカーを介してペアリングされて一価の分子を形成する[例えば、Birdら,Science 242:423-426(1988)及びHustonら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883(1988)を参照]。このようなscFv分子は、一般構造:NH-VL-リンカー-VH-COOH、又はNH-VH-リンカー-VL-COOHを有することができる。適切な従来技術のリンカーは、反復されたGSアミノ酸配列又はその変異体から構成される。例えば、アミノ酸配列(GS)(即ち、配列番号88)又は(GS)を有するリンカーを使用することができるが、それらの変異体を使用することもできる。
【0028】
本出願において、「多重特異性抗体」という用語は、マルチエピトープ特異性を有する抗体を包含する最も広い意味で使用される。これらの多重特異性抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、当該VH-VLユニットがマルチエピトープ特異性を有する抗体、2つ以上のVL及びVH領域を有し、各VH-VLユニットが異なる標的又は同じ標的の異なるエピトープに結合する抗体、2つ以上の単一可変領域を有し、各単一可変領域が異なる標的又は同じ標的の異なるエピトープに結合する抗体、完全長抗体、抗体フラグメント、二重特異性抗体(diabodies)、トリアボディ(triabodies)、共有結合又は非共有結合で連結された抗体フラグメントなどを含むが、これらに限定されない。
【0029】
本出願において、前記モノクローナル抗体又はmAb又はAbは、単一のクローン細胞株から得られる単一の抗原エピトープを標的とする抗体を指し、前記細胞株は真核生物、原核生物又はファージのクローン化細胞株に限定されない。
【0030】
本出願において、前記単一ドメイン抗体は「ナノ抗体」とも呼ばれ、重鎖抗体からクローン化されたVHH構造を指し、標的抗原に結合できる既知の最小単位である。
【0031】
本出願において、前記「重鎖抗体」は、HCAbとも呼ばれ、1つの重鎖可変領域(VHH)と2つの通常のCH2及びCH3ドメインのみを含む抗体を指す。
【0032】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の第2の態様は、タンパク質機能領域A及びタンパク質機能領域Bを含む二重特異性抗体を提供し、前記タンパク質機能領域A及び前記タンパク質機能領域Bは異なる抗原を標的とし、ここで、前記タンパク質機能領域BはB7-H4を標的とし、前記タンパク質機能領域Aは非B7-H4を標的とし、前記二重特異性抗体は、下記のa)又はb)から選択される。
【0033】
a)前記タンパク質機能領域Bは、本発明の第1の態様に記載の抗B7-H4抗体から選択されるか、又は前記タンパク質機能領域Bは、配列番号72に示されるHCDR1、配列番号74に示されるHCDR2、配列番号76に示されるHCDR3、配列番号78に示されるLCDR1、配列番号80に示されるLCDR2、配列番号82に示されるLCDR3を含む。
【0034】
好ましくは、前記二重特異性抗体の構造は、式:N’-VL_A-CL-C’に示されるポリペプチド鎖1、式:N’-VH_A-CH1-ヒンジ領域-CH2-CH3-C’に示されるポリペプチド鎖2、式:N’-VH_B1-リンカー-VH_B2-ヒンジ領域(リンカーペプチドであってもよい)-CH2-CH3-C’、又は式:N’-VH_B-ヒンジ領域(リンカーペプチドであってもよい)-CH2-CH3-C’に示されるポリペプチド鎖3を含み、ここで、前記VL_A及びVH_Aは、それぞれ前記タンパク質機能領域AのVL及びVHであり、前記VH_B1及びVH_B2は、前記タンパク質機能領域BのVHであり、且つVH_B1及びVH_B2の配列は、同じであっても異なってもよく、VH_B1及びVH_B2の間は、リンカーペプチドによって連結されてもよい。ここで、VH_A及びVL_Aは、それぞれタンパク質機能領域Aの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域であり、VH_B及びVL_Bは、タンパク質機能領域Bの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域であり、CLは軽鎖定常領域のドメインであり、CH1、CH2及びCH3は、それぞれ重鎖定常領域の第1、第2及び第3ドメインである。
【0035】
b)前記タンパク質機能領域Bは、配列番号72に示されるHCDR1、配列番号74に示されるHCDR2、配列番号76に示されるHCDR3、配列番号78に示されるLCDR1、配列番号80に示されるLCDR2、配列番号82に示されるLCDR3を含む。
好ましくは、前記二重特異性抗体の構造は、式:N’-VL_A-CL-C’に示されるポリペプチド鎖1、式:N’-VH_A-CH1-ヒンジ領域-CH2-CH3-C’に示されるポリペプチド鎖2、式:N’-VL_B-リンカー-VH_B-ヒンジ領域-CH2-CH3-C’に示されるポリペプチド鎖3を含み、ここで、前記VL_A及びVH_Aは、それぞれ前記タンパク質機能領域AのVL及びVHであり、前記VL_B及びVH_Bは、前記タンパク質機能領域BのVL及びVHである。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態において、前記タンパク質機能領域Aは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗CD3抗体であり、前記VHは、アミノ酸配列が配列番号3に示されるVH CDR1、アミノ酸配列が配列番号10に示されるVH CDR2、及びアミノ酸配列が配列番号23に示されるVH CDR3を含み、前記VLは、アミノ酸配列が配列番号29に示されるVL CDR1、アミノ酸配列が配列番号31に示されるVL CDR2、及びアミノ酸配列が配列番号33に示されるVL CDR3を含む。ある実施形態において、前記抗CD3抗体は、アミノ酸配列が配列番号35に示されるVH、及びアミノ酸配列が配列番号46に示されるVLを含む。ある実施形態において、前記抗CD3抗体は、アミノ酸配列が配列番号47に示される重鎖、及びアミノ酸配列が配列番号58に示される軽鎖を含む。
【0037】
ある好ましい実施形態において、前記タンパク質機能領域Aは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、その軽鎖可変領域VLは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号29、31及び33に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、その重鎖可変領域VHは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号3、10及び23に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む。前記タンパク質機能領域Bは、重鎖可変領域を含み、その重鎖可変領域VHは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号4、17及び24に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む。列挙されたCDRのアミノ酸配列はChothia定義に従って示されている。ある好ましい実施形態において、前記タンパク質機能領域Aは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、その軽鎖可変領域VLは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号29、31及び33に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、その重鎖可変領域VHは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号3、10及び23に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む。前記タンパク質機能領域Bは、重鎖可変領域を含み、その重鎖可変領域VHは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号5、18及び25に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む。列挙されたCDRのアミノ酸配列はChothia定義に従って示されている。ある好ましい実施形態において、前記タンパク質機能領域Aは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、その軽鎖可変領域VLは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号29、31及び33に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、その重鎖可変領域VHは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号3、10及び23に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む。前記タンパク質機能領域Bは、第1の重鎖可変領域及び第2の重鎖可変領域を含み、前記第1の重鎖可変領域VHは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号4、17及び24に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記第2の重鎖可変領域VHは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号5、18及び25に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む。列挙されたCDRのアミノ酸配列はChothia定義に従って示されている。ある好ましい実施形態において、前記タンパク質機能領域Aは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、その軽鎖可変領域VLは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号29、31及び33に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、その重鎖可変領域VHは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号3、10及び23に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む。前記タンパク質機能領域Bは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域VHは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号72、74及び76に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域VLは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号78、80及び82に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。列挙されたCDRのアミノ酸配列はChothia定義に従って示されている。
【0038】
ある好ましい実施形態において、前記タンパク質機能領域Aは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、その軽鎖可変領域VLは、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含み、その重鎖可変領域VHは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含む。前記タンパク質機能領域Bは、重鎖可変領域を含み、その重鎖可変領域VHは、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記タンパク質機能領域Aは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、その軽鎖可変領域VLは、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含み、その重鎖可変領域VHは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含む。前記タンパク質機能領域Bは、重鎖可変領域を含み、その重鎖可変領域VHは、配列番号45に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記タンパク質機能領域Aは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、その軽鎖可変領域VLは、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含み、その重鎖可変領域VHは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含む。前記タンパク質機能領域Bは、第1の重鎖可変領域及び第2の重鎖可変領域を含み、前記第1の重鎖可変領域VHは、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の重鎖可変領域VHは、配列番号45に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記タンパク質機能領域Aは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、その軽鎖可変領域VLは、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含み、その重鎖可変領域VHは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含む。前記タンパク質機能領域Bは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域VHは、配列番号84に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の重鎖可変領域VHは、配列番号85に示されるアミノ酸配列を含む。
【0039】
ある好ましい実施形態において、前記二重特異性抗体は、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号60に示されるポリペプチド鎖3を含む。
【0040】
ある好ましい実施形態において、前記二重特異性抗体は、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号61に示されるポリペプチド鎖3を含む。
【0041】
ある好ましい実施形態において、前記二重特異性抗体は、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号62に示されるポリペプチド鎖3を含む。
【0042】
ある好ましい実施形態において、前記二重特異性抗体は、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号63に示されるポリペプチド鎖3を含む。
【0043】
ある好ましい実施形態において、前記二重特異性抗体は、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号64に示されるポリペプチド鎖3を含む。
【0044】
ある好ましい実施形態において、前記二重特異性抗体は、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号65に示されるポリペプチド鎖3を含む。
【0045】
ある好ましい実施形態において、前記二重特異性抗体は、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号69に示されるポリペプチド鎖3を含む。
【0046】
ある好ましい実施形態において、前記二重特異性抗体は、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号70に示されるポリペプチド鎖3を含む。
【0047】
ある好ましい実施形態において、前記二重特異性抗体は、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号86に示されるポリペプチド鎖3を含む。
【0048】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様に記載の抗B7-H4抗体、又は本発明の第2の態様に記載の二重特異性抗体をコードする単離された核酸を提供する。
【0049】
前記核酸の調製方法は、当技術分野における通常の調製方法であり、好ましくは、遺伝子クローニング技術により上記の抗体をコードする核酸分子を得るステップ、又は人工完全配列合成により上記の抗体をコードする核酸分子を得るステップを含む。
【0050】
ポリヌクレオチドの相同体を提供するために、上記の抗体のアミノ酸配列をコードする塩基配列に置換、欠失、改変、挿入、又は付加を適切に導入し得ることが当業者に知られている。本発明のポリヌクレオチドの相同体は、抗体の活性を維持する範囲で、抗体配列をコードする遺伝子の一つ又は複数の塩基を置換、欠失、又は付加することにより調製することができる。
【0051】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様に記載の単離された核酸を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0052】
前記組換え発現ベクターは、当技術分野における通常の方法によって得ることができ、即ち、本出願に記載の核酸分子を様々な発現ベクターに連結することによって構築される。前記発現ベクターは、上記の核酸分子を収容できる限り、当技術分野における通常の様々なベクターである。
【0053】
好ましくは、前記発現ベクターは、真核細胞発現ベクター及び/又は原核細胞発現ベクターを含む。
【0054】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の第5の態様は、本発明の第4の態様に記載の組換え発現ベクターを含む形質転換体を提供する。
【0055】
前記形質転換体の調製方法は、例えば、上記の組換え発現ベクターを宿主細胞に形質転換することにより調製される、当技術分野における通常の調製方法であってもよい。前記形質転換体の宿主細胞は、上記の組換え発現ベクターがそれ自体で安定に複製でき、且つ担持された前記核酸が効果的に発現され得る要件を満たすことができる限り、当技術分野における通常の様々な宿主細胞である。好ましくは、前記宿主細胞は、原核細胞及び/又は真核細胞であり、前記原核細胞は、好ましくはTG1、BL21(一本鎖抗体又はFab抗体を発現する)などの大腸菌(E.coli)細胞であり、前記真核細胞は、好ましくはHEK293細胞又はCHO細胞(完全長IgG抗体を発現する)である。本発明の好ましい組換え発現形質転換体は、上記の組換え発現プラスミドを宿主細胞に形質転換することにより得ることができる。ここで、前記形質転換方法は、当技術分野における通常の形質転換方法であり、好ましくは、化学形質転換法、熱ショック法、又はエレクトロポレーション法である。
【0056】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の第6の態様は、本発明の第1の態様に記載の抗B7-H4抗体、又は本発明の第2の態様に記載の二重特異性抗体を含むキメラ抗原受容体を提供する。
【0057】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の第7の態様は、本発明の第6の態様に記載のキメラ抗原受容体を含むことを特徴とする遺伝子改変細胞を提供する。
【0058】
好ましくは、前記遺伝子改変細胞は真核細胞であり、好ましくは単離されたヒト細胞であり、より好ましくは免疫細胞であるT細胞、又はNK細胞である。
【0059】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の第8の態様は、本発明の第5の態様に記載の形質転換体を培養し、培養物から抗B7-H4抗体又は二重特異性抗体を得るステップを含む、抗B7-H4抗体又は二重特異性抗体の調製方法を提供する。
【0060】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の第9の態様は、抗体部分及び複合体部分を含む抗体薬物複合体を提供し、前記抗体部分は、本発明の第1の態様に記載の抗B7-H4抗体又は本発明の第2の態様に記載の二重特異性抗体を含み、前記複合体部分は、検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、又はそれらの組み合わせを含んでもよく、前記抗体部分及び複合体部分は、化学結合又はリンカーを介して結合する。
【0061】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の第10の態様は、本発明の第1の態様に記載の抗B7-H4抗体、本発明の第2の態様に記載の二重特異性抗体、本発明の第6の態様に記載のキメラ抗原受容体、本発明の第7の態様に記載の遺伝子改変細胞及び/又は本発明の第9の態様に記載の抗体薬物複合体を含む医薬組成物を提供する。
【0062】
好ましくは、前記医薬組成物は薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0063】
より好ましくは、前記医薬組成物は、0.01~99.99%の上記のタンパク質及び/又は上記の抗体薬物複合体と、0.01~99.99%の担体とを含み、前記百分比は、前記医薬組成物に占める質量百分比である。
【0064】
本発明に記載の医薬組成物の投与経路は、好ましくは非経口投与、注射投与又は経口投与である。前記注射投与は、好ましくは静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮内注射又は皮下注射などの経路を含む。前記医薬組成物は、当技術分野における通常の様々な剤形であり、好ましくは、液体剤形、気体剤形、固体剤形又は半固体剤形の形態であり、即ち、水溶液、非水溶液又は懸濁液であってもよく、より好ましくは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、注射剤又は点滴剤などである。より好ましくは、血管内、皮下、腹腔内又は筋肉内を介して投与される。好ましくは、前記医薬組成物は、エアロゾル又はスプレーとして、即ち、経鼻投与されることもでき、或いはくも膜下腔内、髄内又は心室内に投与されることもできる。より好ましくは、前記医薬組成物は、経口、注射、経鼻、経皮又は粘膜投与であってもよい。本発明の医薬組成物は、必要に応じて様々な剤形とすることができ、患者の種類、年齢、体重及びおおよその疾病の状態、投与方法などの因子に基づいて、医師により患者にとって有益な投与量を決定して投与することができる。投与方法は、例えば、注射又は他の治療方法を使用することができる。
【0065】
本発明に記載の医薬組成物の投与量レベルは、所望の診断又は治療結果を達成する組成物の量に応じて調節することができる。投与レジメンは、単回注射又は複数回注射であってもよく、或いは調節されてもよい。選択される投与量レベル及びレジメンは、前記医薬組成物の活性及び安定性(即ち、半減期)、製剤、投与経路、他の薬物又は治療法との組み合わせ、検出及び/又は治療される疾患又は症状、並びに治療される対象の健康状態及び既往歴を含む様々な要因に依存して、合理的に調節される。
【0066】
好ましくは、前記医薬組成物は、化学治療剤、放射線治療剤、免疫阻害剤及び/又は細胞傷害性薬物を含む、併用療法のための併用治療剤をさらに含んでもよい。併用療法の場合、上記抗体、上記の抗体薬物複合体、及び/又は追加の治療薬若しくは診断剤は、それぞれ単一の薬剤として、意図する治療又は診断を実施するのに適した任意の時間範囲内で投与することができる。従って、これらの単一の薬剤は、実質的に同時に(即ち、単一の製剤として、又は数分若しくは数時間以内に)、又は順番に連続的に投与することができる。
【0067】
製剤、投与量、投与レジメン、及び測定可能な治療結果に関する追加のガイダンスについては、Berkowら(2000)The Merck Manual of Medical Information(Merck医学情報ハンドブック)及びMerck&Co.Inc., Whitehouse Station, New Jersey; Ebadi (1998) CRC Desk Reference of Clinical Pharmacology(臨床薬理学ハンドブック)などの著作を参照されたい。
【0068】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の第11の態様は、がんを治療及び/又は予防するための医薬、キット及び/又は薬物送達システムの調製における、本発明の第1の態様に記載の抗B7-H4抗体、本発明の第2の態様に記載の二重特異性抗体、本発明の第6の態様に記載のキメラ抗原受容体、本発明の第7の態様に記載の遺伝子改変細胞、本発明の第9の態様に記載の抗体薬物複合体及び/又は本発明の第10の態様に記載の医薬組成物の使用を提供し、或いはがんの治療及び/又は予防における、本発明の第1の態様に記載の抗B7-H4抗体、本発明の第2の態様に記載の二重特異性抗体、本発明の第6の態様に記載のキメラ抗原受容体、本発明の第7の態様に記載の遺伝子改変細胞、本発明の第9の態様に記載の抗体薬物複合体及び/又は本発明の第10の態様に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0069】
好ましくは、前記がんは、肺がん、トリプルネガティブ乳がんなどの乳がん、卵巣がん、子宮内膜腫、胃がん、小腸がん、結腸がん、直腸がん、膵臓がん、腎臓がん、膀胱がん、前立腺がん、胆管がん、食道がん及び骨肉腫などからなる群より選択される。
【0070】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の第12の態様は、本発明の第1の態様に記載の抗体、本発明の第2の態様に記載の二重特異性抗体、本発明の第6の態様に記載のキメラ抗原受容体、本発明の第7の態様に記載の遺伝子改変細胞、本発明の第9の態様に記載の抗体薬物複合体及び/又は本発明の第10の態様に記載の医薬組成物、並びに任意選択の説明書を含むキットを提供する。
【0071】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の第13の態様は、(1)本発明の第10の態様に記載の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与するための注入モジュール、及び(2)任意選択の薬効モニタリングモジュールを含む薬物送達システムを提供する。
【0072】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の第14の態様は、本発明の第1の態様に記載の抗B7-H4抗体及び/又は本発明の第2の態様に記載の二重特異性抗体を使用して検出するステップを含む、B7-H4を検出する方法を提供する。
【0073】
好ましくは、前記方法は、非診断及び/又は治療目的である。非診断、治療目的は、例えば、実験室で試料に含まれるB7-H4を検出すること、又は研究開発でB7-H4を使用して薬物をスクリーニングする前に当該B7-H4を確認することを含む。
【0074】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、本発明の第1の態様に記載の抗B7-H4抗体、本発明の第2の態様に記載の二重特異性抗体、本発明の第6の態様に記載のキメラ抗原受容体、本発明の第7の態様に記載の遺伝子改変細胞、本発明の第9の態様に記載の抗体薬物複合体及び/又は本発明の第10の態様に記載の医薬組成物の治療有効量をそれを必要とする対象に投与するステップを含む、腫瘍を治療及び/又は予防する方法をさらに提供する。
【0075】
本発明に記載の医薬組成物の治療有効量は、細胞培養実験、或いはげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ及び/又は霊長類などの動物モデルにおいて最初に推定することができる。動物モデルは、適切な濃度範囲と投与経路を決定するためにも使用することができる。そして、ヒトにおける有用な投与量と投与経路を決定するために使用することができる。一般に、投与の有効量又は投与量の決定及び調節、ならびにそのような調節をいつどのように行うかの評価は、当業者に知られている。
【0076】
上記の課題を解決するために、本発明は、治療有効量の医薬組成物及び併用療法剤をそれを必要とする患者に投与するステップを含む、がんを治療するための併用療法をさらに提供し、前記医薬組成物は、本発明の第10の態様に記載された通りである。
【0077】
好ましくは、前記併用療法剤は、本発明の第10の態様に記載された通りである。
【0078】
本出願において、特に明記しない限り、本出願で使用される科学用語及び技術用語は、当業者に一般的に理解される意味を有する。さらに、本出願で使用される細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、免疫学の実験手順はすべて、対応する分野で広く使用されている通常の手順である。また、本発明をよりよく理解するために、以下では関連用語の定義と説明を提供する。
【0079】
本出願において、「可変」という用語は一般に、抗体の可変ドメインの配列の特定の部分が大きく変化し、特定の抗原に対する様々な特定の抗体の結合及び特異性を形成するという事実を指す。しかし、可変性は抗体の可変領域全体に均一に分布しているわけではない。それは、相補性決定領域(CDR)又は超可変領域(HVR)と呼ばれる、軽鎖及び重鎖の可変領域の3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク(FWR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ4つのFWR領域を含み、そのほとんどはβシート構成であり、3つのCDRによって接続されてループ接続を形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成する。各鎖のCDRはFWR領域を介して密接に結合され、もう一方の鎖のCDRとともに抗体の抗原結合部位を形成し、定常領域は、抗体と抗原の結合に直接関与しないが、抗体の抗体依存性細胞傷害性に関与するなど、異なるエフェクター機能を示す。
【0080】
本出願で使用されるアミノ酸の3文字コード及び1文字コードは当業者に公知であるか、又はJ. Biol. Chem, 243, p3558(1968)に記載された通りである。
【0081】
本明細書で使用される場合、「含む」又は「包含する」という用語は、組成物及び方法が前記要素を含むが、他の要素を排除しないことを意味することを意図しているが、文脈から理解されるように、「...からなる」という場合も含む。
【0082】
本出願において、前記HCAbは、ヒト免疫グロブリンの免疫レパートリーを有するトランスジェニックマウスであるHarbourHCAbマウス(Harbour Antibodies BV、WO2002/085945A3)から産生された、「重鎖」のみを含む完全ヒト抗体(Heavy Chain Only Antibody)であり得、当該抗体は従来のIgG抗体の半分のサイズであり、一般にヒト抗体の「重鎖」可変ドメイン及びマウスFc定常ドメインのみを有する。
【0083】
本出願で使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリンを含んでもよく、鎖間ジスルフィド結合によって連結された2つの同じ重鎖と2つの同じ軽鎖からなるテトラペプチド鎖構造である。免疫グロブリン重鎖定常領域のアミノ酸構成と配列が異なるため、抗原性も異なる。従って、免疫グロブリンは、免疫グロブリンの5つのカテゴリー又はアイソタイプ、即ちIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEに分類することができ、それらに対応する重鎖はそれぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖及びε鎖である。同じ種類のIgは、そのヒンジ領域のアミノ酸構成、重鎖ジスルフィド結合の数と位置の違いに基づいて、異なるサブクラスに分類することもでき、例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4に分類することができる。軽鎖は定常領域の違いによってκ鎖又はλ鎖に分類される。5種類のIgはそれぞれ、κ鎖又はλ鎖を持つことができる。
【0084】
本出願において、本出願に記載の抗体軽鎖可変領域は、軽鎖定常領域をさらに含んでもよく、前記軽鎖定常領域は、ヒト由来κ鎖、λ鎖、又はそれらの変異体を含む。本出願において、本出願に記載の抗体重鎖可変領域は、重鎖定常領域をさらに含んでもよく、前記重鎖定常領域は、ヒト由来IgG1、2、3、4又はそれらの変異体を含む。
【0085】
軽鎖及び重鎖内で、可変領域と定常領域は約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖は約3個以上のアミノ酸の「D」領域をさらに含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)から構成される。重鎖定常領域は3つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)から構成される。軽鎖定常領域は1つのドメインCLから構成される。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)の古典的補体系の第1成分(C1q)への結合を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。抗体の重鎖と軽鎖のN末端付近の約110個のアミノ酸の配列は大きく変化し、可変領域(V領域)であり、C末端付近の残りのアミノ酸の配列は比較的安定であり、定常領域(C領域)である。可変領域は、3つの超可変領域(HVR)及び比較的保存された配列を持つ4つのフレームワーク領域(FWR)を含む。3つの超可変領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれ、抗体の特異性を決定する。各軽鎖可変領域(VL)と重鎖可変領域(VH)は3つのCDR領域と4つのFWR領域から構成され、アミノ末端からカルボキシル末端までFWR1、CDR1、FWR2、CDR2、FWR3、CDR3、FWR4の順で配置される。軽鎖の3つのCDR領域はVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を指し、重鎖の3つのCDR領域はVHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を指す。
【0086】
「ヒト由来抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列の可変領域及び定常領域を有する抗体を含む。本出願のヒト由来抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含んでもよい(例えば、in vitroでのランダム又は部位特異的突然変異誘発、又はin vivoでの体細胞突然変異により導入された突然変異)。しかし、「ヒト由来抗体」という用語には、別の哺乳動物種(マウスなど)の生殖系列に由来するCDR配列をヒトの骨格配列に移植した抗体(即ち、「ヒト化抗体」)は含まれない。
【0087】
本出願で使用される場合、抗体に関する「特異性」という用語は、特異的抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識又は結合しない抗体を意味する。例えば、1つの種からの抗原に特異的に結合する抗体は、一つ又は複数の種からのその抗原にも結合することができる。しかし、この種間の交差反応性自体は、特異性に応じた抗体の分類を変更するものではない。別の実例では、抗原に特異的に結合する抗体は、その抗原の異なる対立遺伝子型にも結合することができる。しかし、この交差反応性自体は、特異性に応じた抗体の分類を変更するものではない。場合によっては、「特異性」又は「特異的結合」という用語は、抗体、タンパク質、又はペプチドと第2の化学物質との相互作用を指すために使用されることがあり、これは、当該相互作用が化学物質の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存することを意味し、例えば、抗体は一般に、タンパク質ではなく、特定のタンパク質構造を認識して結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識「A」と抗体を含む反応では、エピトープA(又は遊離の標識されていないA)を含む分子の存在により、抗体に結合する標識Aの量を減少させる。
【0088】
本出願において、「抗原結合フラグメント」という用語は、抗体の抗原結合フラグメント及び抗体類似体を指し、通常、親抗体(parental antibody)の抗原結合領域又は可変領域(例えば、1つ又は複数のCDR)の少なくとも一部を含む。抗原結合フラグメントは、親抗体の結合特異性の少なくとも一部を保持している。通常、抗原結合フラグメントは、活性がモルベースで表される場合、親抗体結合活性の少なくとも10%を保持する。好ましくは、抗原結合フラグメントは、親抗体の標的に対する結合親和性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は100%以上を保持する。抗原結合フラグメントの実例には、Fab、Fab´、F(ab´)、Fvフラグメント、線状抗体(linear antibody)、一本鎖抗体、ナノ抗体、単一ドメイン抗体及び多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。抗原結合フラグメントは、操作された抗体変異体であってもよい。操作された抗体変異体は、Holliger及びHudson(2005)Nat. Biotechnol. 23: 1126-1136で概説されている。
【0089】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗原受容体」又は「CAR」(Chimeric antigen receptor)という用語は、抗原に結合できる細胞外ドメイン(細胞外結合ドメイン)、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン(膜貫通領域)及び細胞質シグナルをドメインに伝達するポリペプチド(即ち、細胞内シグナル伝達ドメイン)を含むことを指す。ヒンジドメインは、細胞外抗原結合領域に柔軟性を与える部分と考えることができる。細胞内シグナル伝達ドメインは、定義されたシグナル伝達経路を通じてセカンドメッセンジャーを産生することによって細胞内に情報を伝達して細胞活性を調節するタンパク質、又はそのようなメッセンジャーに対応してエフェクターとして機能するタンパク質を介して、CARの細胞(例えば、CART細胞)の免疫エフェクター機能を促進できるシグナルを生成することを指す。細胞内シグナル伝達ドメインはシグナル伝達構造ドメインを含み、共刺激分子に由来する共刺激細胞内ドメインをさらに含んでもよい。
【0090】
「同一性」、「突然変異」は、2つのポリヌクレオチド配列間又は2つのポリペプチド間の配列類似性を指す。2つの比較配列内の位置がすべて同じ塩基又はアミノ酸モノマーサブユニットによって占められている場合、例えば、2つのDNA分子内の各位置がアデニンによって占められている場合、前記分子はその位置において相同である。2つの配列間の同一性のパーセンテージは、2つの配列が共有する一致又は相同な位置の数を、比較される位置の数×100で割った関数である。例えば、配列が最適にアライメントされている場合、2つの配列の10個の位置のうち6個が一致又は相同であれば、2つの配列は60%相同である。一般に、比較は2つの配列を比較することで最大の同一性パーセンテージが得られる場合に行われる。
【0091】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」(一本鎖の場合)という用語は、本出願では互換的に使用される。「核酸」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」又は「ポリヌクレオチド配列」及び「ポリヌクレオチド」という用語は互換的に使用される。
【0092】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用できる組成物である。線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物と結合したポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むが、これらに限定されない多くのベクターが当技術分野で知られている。従って、「ベクター」という用語には、自律的に複製するプラスミド又はウイルスが含まれる。この用語はまた、ポリリジン化合物、リポソームなど、細胞への核酸の導入を促進する非プラスミド及び非ウイルス化合物を含むものと解釈されるべきである。ウイルスベクターの実例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
本出願で使用される場合、「細胞」及び「細胞株」という表現は互換的に使用され、そのような名称にはすべて子孫が含まれる。「宿主細胞」という用語は、ベクターを導入するために使用できる細胞を指し、大腸菌などの原核細胞、酵母細胞などの真菌細胞、又は線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK 293細胞又はヒト細胞などの動物細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
「トランスフェクション」という用語は、真核細胞に外因性核酸を導入することを指す。トランスフェクションは、リン酸カルシウム-DNA共沈殿、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染及びバイオリスティック(biolistics)を含む、当技術分野で知られている様々な手段によって達成することができる。
【0095】
「免疫細胞」という用語は、免疫応答を引き起こすことができる細胞を指し、「免疫細胞」及びその他の文法形式は、あらゆる起源の免疫細胞を指すことができる。「免疫細胞」には、例えば、骨髄で産生される造血幹細胞(HSC)に由来する白血球、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)、骨髄由来細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)が含まれる。「免疫細胞」という用語は、ヒト又はヒト以外の免疫細胞を指すことができる。例えば、免疫細胞は、自己T細胞、同種T細胞、自己NK細胞、同種NK細胞などの血液由来であってもよく、EBVウイルス感染を使用して調製したNK細胞株、胚性幹細胞とiPSCから分化誘導したNK細胞、及びNK92細胞株などの細胞株由来であってもよい。
【0096】
本明細書で使用される場合、「T細胞」という用語は、胸腺で成熟する一種のリンパ球を指す。T細胞は細胞媒介性免疫において重要な役割を果たし、細胞表面にT細胞受容体が存在する点で他のリンパ球(例えば、B細胞)と異なっている。「T細胞」には、ヘルパーT細胞(CD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(CD8+細胞)、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞(Treg)、及びγ-δT細胞を含む、CD3を発現するあらゆる種類の免疫細胞が含まれる。「細胞傷害性細胞」には、細胞傷害性応答を媒介することができるCD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及び好中球が含まれる。本明細書で使用される場合、「NK細胞」という用語は、骨髄に由来し、自然免疫系において重要な役割を果たす一種のリンパ球を指す。NK細胞は、細胞表面に抗体や主要組織適合性複合体が存在しない場合でも、ウイルス感染細胞、腫瘍細胞、又はその他のストレスを受けた細胞に対して迅速な免疫応答を提供する。
【0097】
「任意選択」、「いずれか一つ」、「任意」又は「いずれか一項」は、その後に記載される事象又は状況が発生してもよいが、必ずしも発生する必要はないことを意味し、その説明には、当該事象又は状況が発生する状況又は発生しない状況が含まれることを意味する。例えば、「任意選択で一つの抗体重鎖可変領域を含む」は、特定の配列の抗体重鎖可変領域が存在してもよいが、必ずしも存在する必要はないことを意味する。本発明で使用される「一つ」及び「一種」は、本発明において1つ又は複数の文法的対象を指すために使用される。内容に明確に別段の指示がない限り、本発明では、「又は」という用語は、「及び/又は」という用語を意味し、それと互換的に使用される。「約」及び「およそ」は、通常、測定の性質又は精度を考慮して、測定される量の許容可能な程度の誤差を意味するものとする。例示的な誤差の程度は一般的にその10%以内であり、より一般的にその5%以内である。本発明に開示される方法及び組成物は、特定の配列、変異配列、又はそれと実質的に同一若しくは類似の配列、例えば、特定された配列と少なくとも85%、90%、95%、99%又は以上同一である配列を有するポリペプチド及び核酸を包含する。アミノ酸配列の場合、「実質的に同一」という用語は、本発明では最初のアミノ酸配列を指すために使用される。
【0098】
本発明で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、対象及び有効成分と薬理学的及び/又は生理学的に適合する担体、例えば、当技術分野で周知の任意の適切な生理学的又は薬学的に許容される薬学的賦形剤を指し(例えば、Remington´s Pharmaceutical Sciences. Edited by Gennaro AR, 19th ed. Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1995を参照)、且つpH調節剤、賦形剤、充填剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤、希釈剤、浸透圧維持剤、吸収遅延剤、防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。例えば、pH調節剤にはリン酸緩衝液が含まれるが、これに限定されない。界面活性剤には、Tween-80などのカチオン性、アニオン性、又は非イオン性界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。イオン強度増強剤には、塩化ナトリウムが含まれるが、これに限定されない。防腐剤には、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗菌剤及び抗真菌剤が含まれるが、これらに限定されない。浸透圧維持剤には、糖、NaCl及びその類似物質が含まれるが、これらに限定されない。吸収遅延剤には、モノステアリン酸塩及びゼラチンが含まれるが、これらに限定されない。希釈剤には、水、水性緩衝液(緩衝生理食塩水など)、アルコール及びポリオール(グリセロールなど)などが含まれるが、これらに限定されない。防腐剤には、チメロサール、2-フェノキシエタノール、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗菌剤及び抗真菌剤が含まれるが、これらに限定されない。安定剤は、医薬品中の有効成分の所望の活性を安定化させることができる当業者に一般的に理解される意味を有し、グルタミン酸ナトリウム、ゼラチン、SPGA、糖類(例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、ラクトース、デキストラン、又はグルコース)、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、グリシン)、タンパク質(例えば、乾燥ホエー、アルブミン、又はカゼイン)、又はそれらの分解産物(例えば、ラクトアルブミン加水分解物)などが含まれるが、これらに限定されない。本発明の薬学的に許容される担体は、当技術分野の通常の担体であってもよく、前記医薬賦形剤は、当技術分野の通常の医薬賦形剤である。
【0099】
本明細書で使用される場合、EC50という用語は、最大効果の50%の濃度(concentration for 50% of maximal effect)、即ち、最大効果の50%をもたらす濃度を指す。
【0100】
本発明で使用される場合、「がん」、「腫瘍」という用語は、組織病理学的タイプ又は浸潤段階に関係なく、全てのタイプのがん性増殖又は腫瘍形成プロセス、転移組織又は悪性形質転換細胞、組織又は器官を含むことを意図している。例としては、固形腫瘍、血液がん、軟部組織腫瘍、及び転移性病変が含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
当該分野における常識に基づいて、上記の各好ましい条件を任意に組み合わせて、本発明の各好ましい実例を得ることができる。
【0102】
本発明で使用される試薬及び原料はいずれも市販品として入手できる。
【0103】
本発明の積極的かつ進歩的効果は下記の通りである。
【0104】
1.本発明の抗体は、ヒトB7-H4及びカニクイザルB7-H4に結合する活性を有する。ある好ましい実施形態において、前記抗体は、従来のIgG抗体の半分のサイズである、「重鎖」のみを含む新規な完全ヒト抗体であってもよく、軽鎖を含まない特徴により、当該抗体は二重特異性抗体に使用することができ、軽鎖のミスマッチやヘテロ二量体化の問題を解決する。
【0105】
2.本発明の抗体をB7-H4×CD3二重特異性抗体として調製した場合、ヒトB7-H4及びカニクイザルB7-H4に結合する活性を依然として保持し、腫瘍細胞に対して強い殺傷効果を有し、誘導されたIL-6やIFN-γなどの非特異的サイトカインの発現は非常に低く、in vivoで強い抗腫瘍活性を示す。ある好ましい実施形態において、前記二重特異性抗体は、ヒトFcフラグメントを有する二重特異性抗体構造を有し、FcのFcRnへの結合効果を保持し、それによってより長い半減期を有する。同時に、突然変異(AAA)Fcは、FcgRへの結合を低減するために好ましく、それによってFcgRの架橋によって引き起こされる非特異的T細胞活性化を低減する。B7-H4末端にタンデムVHHの形を使用できるため、軽鎖と重鎖のミスマッチを簡素化し、同時に良好な安定性と親水性を保持する。二価のタンデムVHHは、一方ではB7-H4の親和性を高め、他方ではB7-H4を高度に発現する腫瘍細胞に対する選択性を高める。二重特異性抗体におけるCD3末端の活性を最適化し、中強度の抗CD3抗体を使用することで、薬物の有効性の確保を前提に毒性を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1】A~Eは、FACSにより検出した抗ヒトB7-H4 HCAbモノクローナル抗体の細胞レベルにおける結合を示す。
図2】BLI法による親和性の測定を示す。
図3】A~Cは、B7-H4×CD3二重特異性抗体の構造を示す。
図4】A~Eは、FACSにより検出したヒト、カニクイザル、及びマウスのB7-H4を過剰発現するCHO-K1細胞株における、B7-H4×CD3二重特異性抗体のin vitro結合を示す。
図5】A~Fは、FACSにより検出したB7-H4を内因的に発現する腫瘍細胞及びT細胞における、B7-H4×CD3二重特異性抗体のin vitro結合を示す。
図6】A~Eは、T細胞によるMDA-MB-468細胞の殺滅の結果を示す。
図7】A~Dは、T細胞によるOVCAR-3細胞の殺滅の結果を示す。
図8】A~Cは、T細胞によるDLD-1、MDA-MB-231の細胞殺滅の結果を示す。
図9】A及びBは、非特異的サイトカインIL-6の誘導の結果を示す。
図10】A及びBは、非特異的サイトカインTNF-αの誘導の結果を示す。
図11】A及びBは、非特異的サイトカインIFN-γの誘導の結果を示す。
図12】A~Cは、マウス腫瘍モデルにおけるin vivo薬効実験である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、それによって本発明は前記実施例の範囲に限定されるものではない。以下の実施例において、具体的な条件が示されていない実験方法は、通常の方法及び条件、或いは商品の説明書に従って選択される。
【0108】
実施例1.抗B7-H4 HCAB抗体分子の取得
B7-H4抗原を使用して、B7-H4に特異的に結合する抗体分子を得るために、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ラクダなどの実験動物を免疫することができる。通常、得られる抗体分子は非ヒト由来抗体である。非ヒト由来抗体を得た後、免疫原性を低下させ、創薬可能性を向上させるために、抗体工学技術を使用してこれらの分子をヒト化する必要がある。しかし、抗体のヒト化プロセスには技術的に複雑さがあり、ヒト化分子は抗原に対する親和性が低下することがよくある。一方、トランスジェニック技術の進歩により、ヒト免疫グロブリン免疫レパートリーを持ち、内因性のマウス免疫レパートリーを欠失させた遺伝子操作マウスの作製が可能になる。このトランスジェニックマウスによって産生される抗体は完全ヒト配列を持っているため、さらなるヒト化の必要がなく、治療用抗体の開発効率を大幅に向上させる。HarbourHCAbマウス(HarbourAntibodies BV、WO2002/085945A3)は、ヒト免疫グロブリン免疫レパートリーを持つトランスジェニックマウスであり、従来のIgG抗体の半分のサイズである新規な「重鎖」のみの抗体を産生することができる。それにより産生された抗体は、ヒト抗体の「重鎖」可変ドメインとマウスFc定常ドメインのみを持つ。軽鎖を含まない特徴により、当該抗体は軽鎖のミスマッチやヘテロ二量化の問題をほぼ解決し、この技術プラットフォームは従来の抗体プラットフォームでは実現が困難な製品の開発を可能にする。
【0109】
1.1 マウスの免疫
HCABマウスを、ヒトB7-H4を過剰発現するHEK293T細胞(HEK293T/hu B7-H4、KYinno Biotechnology Co., Ltd)で免疫し、各マウスに1回あたり5×10細胞を腹腔内注射により免疫した。免疫化の各ラウンドにおいて、各マウスが受けた総注射量は100μlであった。追加免疫の各ラウンドの間隔は少なくとも2週間であり、通常、追加免疫のラウンドは6~7回であった。免疫化時間は0、14、28、42、56、70、84、96日目であり、49日目と77日目にマウスの血清抗体力価を検出した。最後の追加免疫は、HCABマウスの脾臓B細胞単離の5日前に実行した。
【0110】
1.2 血清力価の検出
特定の時点でマウスの血清を採取し、血清におけるB7-H4タンパク質に結合する抗体の力価をELISA方法を使用して検出し、血清におけるB7-H4を過剰発現する細胞に結合する抗体の力価をFACS方法を使用して検出した。
【0111】
ELISA方法において、1μg/mLのhB7-H4-ECD-hisタンパク質(Sino Biological、#10738-H08H)を使用して100μL/ウェルでELISAプレート(corning、9018)をコーティングし、4℃で一晩培養した。2回すすいだ後、プレートを1%のBSAを含むPBSTで37℃で2時間ブロッキングした。段階希釈した血清を100μL/ウェルで加え、37℃で1時間培養した。3回すすいだ後、1:5000に希釈したanti-mouse-HRP(Bethyl、カタログ番号:A90-231P)を100μL/ウェルで加え、37℃で30分間培養した。3回すすいだ後、TMB基質を100μL/ウェルで加え、約10分間培養し、1NのHClを50μL/ウェルで加えて発色を止め、450nmでの吸光度を読み取った(Molecular Devices、Plus 384)。
【0112】
FACS方法において、段階希釈したマウスの血清をHEK293T/hu B7-H4細胞と4℃で1時間培養した。細胞を2回洗浄した後、二次抗体Goat Anti-Mouse IgG(H+L)(Jackson、カタログ番号:115-605-062)を加え、4℃で1時間培養し、2回洗浄した後、細胞を再懸濁させ、フローサイトメトリー(ACEA Novocyte3000)で検出した。HEK293T細胞をバックグラウンドコントロールとして使用た。
【0113】
1.3 ファージディスプレイ技術によるHCAbモノクローナル及び抗体配列の取得
a.ファージライブラリーの構築
実施例1.1で免疫したマウスから脾臓細胞を採取し、そこから脾臓B細胞を単離し、製品説明書(Thermofisher、カタログ番号:15596018)を参照してTRIZOlでRNAを抽出した後、製品説明書(Thermofisher、カタログ番号:11756500)を参照してRT-PCRを実行した。cDNAを鋳型として、PCRによりVHHフラグメントを増幅した。
【0114】
PCR増幅系は下記の表に示された通りである。
【0115】
【0116】
PCR増幅手順は下記の表に示された通りである。
【0117】
【0118】
得られたライゲーション産物をSS320(Lucigen、カタログ番号:60512-1)に形質転換し、次にファージライブラリーを調製した。3ラウンドのバイオパンニング(手順は下記の通り)を実行し、ビオチン化B7-H4を使用してFACSでスクリーニングし、スクリーニングされたすべての候補(hit)をシーケンシング(手順は下記の通り)に送り、特定のクローンを生成した。
【0119】
b.バイオパニング(Bio-Panning)
ファージライブラリー(1E13ファージ粒子)をストレプトアビジン(SA)コーティングビーズ(Thermofisher、カタログ番号:11206)で非特異的に結合した分子を除去し、次にSA-Bio-B7-H4ビーズ(製品説明書を参照)と室温で1時間培養した。次に1×PBSTで10回洗浄した。洗浄した後、磁性ビーズファージ混合物にpH3.0のクエン酸緩衝液を加え、室温で10分間培養し、次にpH9.0のTris-HCl中和緩衝液を加え、SS320細胞を37℃で45分間感染させた。次に、50μlの2E12/mlのM13K07ヘルパーファージ(NEB、カタログ番号:N0315S)を上記の感染細胞に加え、最後に新鮮な2×YT(100μg/mlのAmp、50μg/mlのKan、1mMのIPTGを含む)を加え、30℃で一晩培養した。一晩培養したものを遠心分離し、上清を回収し、20%のPEG6000/2.5MのNaClを上清液に加え(1:5、体積比)、次に4℃、8000rpmで20分間遠心分離した。遠心分離したファージペレットを1mlの1×PBSに再懸濁させた。得られた上清液(ファージ粒子)を新しいチューブに移し、パンニングのラウンド2に備えた。パンニングのラウンド2とラウンド3のプロセスは上記のステップと同じであった。
【0120】
c.初期スクリーニング
コロニーを選択してYT/Amp培地(Sangon Biotech、カタログ番号:A507016-0250)を含む96ウェルプレートに入れ、37℃で3時間増殖させた。IPTGを最終濃度1mMまで加え、30℃で一晩誘導した。次に、上清液を遠心分離して沈殿させ、上清液を採取してFACS試験を実行した。ヒト及びサルのB7-H4によく結合するクローンを選択して配列決定を実行した。
【0121】
1.4 抗B7-H4 H2L2抗体分子の取得
B7-H4組換えタンパク質又はB7-H4を過剰発現する細胞を使用して、B7-H4に特異的に結合する抗体分子を得るために、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ラクダなどの実験動物を免疫する。通常、得られる抗体分子は非ヒト由来抗体である。非ヒト由来抗体を得た後、免疫原性を低下させ、創薬可能性を向上させるために、抗体工学技術を使用してこれらの分子をヒト化する必要がある。しかし、抗体のヒト化プロセスには技術的に複雑さがあり、ヒト化分子は抗原に対する親和性が低下することがよくある。一方、トランスジェニック技術の進歩により、ヒト免疫グロブリン免疫レパートリーを持ち、内因性のマウス免疫レパートリーを欠失させた遺伝子操作マウスの作製が可能になる。Harbor H2L2マウス(Harbour Antibodies BV)は、ヒト免疫グロブリン免疫レパートリーを持つトランスジェニックマウスであり、このトランスジェニックマウスによって産生される抗体は完全ヒト配列を持っているため、さらなるヒト化の必要がなく、治療用抗体の開発効率を大幅に向上させる。
【0122】
次に、下記のように、B細胞in vitroクローニング技術によって抗B7-H4抗体をスクリーニングした。
【0123】
マウスの脾臓を取り出し、粉砕し、200メッシュのフィルターでろ過し、単一細胞懸濁液をマウスメモリーB細胞選別キット(Miltenyi、#130-095-838)に従って選別した。選別して得られた細胞を免疫蛍光染色した。
【0124】
B200陽性細胞(BioLegend、#103227)、IgM陰性細胞(BioLegend、#406506)、B7-H4特異的陽性細胞(BioLegend、#405207)をフローサイトメトリーソーターS3eで選別した。選別して得られた細胞を96ウェル細胞培養プレートで1ウェル当たり5細胞の密度で培養し、照射したEL4細胞をフィーダー細胞として細胞培養プレートに予め敷いた。
【0125】
14日間の培養後、培養上清を回収してELISA検出を実行し、B7-H4タンパク質に対する結合活性を有するウェルについては、細胞を取り出し、RT-PCRを実行した(SMART-Seq v4 Ultra Low Input RNA Kit for Sequencing(#634892)、I-5TM 2×High-Fidelity Master Mix(#I5HM-5000)。増幅により得られた軽鎖と重鎖をオーバーラップPCRによってscFvにスプライシングし、大腸菌で発現させ、発現上清をELISA検出に供し、陽性クローンを配列決定した。
【0126】
1.5 抗B7-H4抗体の配列解析と配列最適化
スクリーニングにより得られた陽性クローンを使用して、実施例1.6に記載の方法に従って組換え抗体PR006004及びPR006008を調製した。本実施例では、免疫化されたHarbourHCAbマウスから得られた抗B7-H4モノクローナル抗体分子の可変ドメインの配列は、ヒト由来抗体配列であった。表1-1にその生殖系列遺伝子解析と翻訳後修飾部位(PTM)解析を示す。
【0127】
PR006004とPR006008は、CDR2にアスパラギン酸異性化(DG)の可能性のある部位を含み、この潜在的な翻訳後修飾部位(PTM)のリスクを低減するために、そのDGをDSに変異させ、それぞれ新しい分子PR007440とPR007441を得た(表1-2)。
【0128】
さらに、PR006004の等電点を下げるために、抗体配列解析に基づいてCDR領域の塩基性アミノ酸を選択してランダムに変異させた。次に、FACS結合実験を使用してスクリーニングを実行し、スクリーニングされた候補分子を発現・精製・同定した。表1-2は、抗体PR006004の配列に対してアミノ酸変異を実行することによって得られた新しい抗体分子の配列を示す。
【0129】
【表1-1】
【0130】
【表1-2】
【0131】
1.6 抗B7-H4完全ヒト組換え抗体の調製
抗体重鎖をコードするプラスミドを哺乳動物宿主細胞(例えば、ヒト胚性腎臓細胞HEK293)にトランスフェクションし、従来の組換えタンパク質発現及び精製技術を使用して、精製された抗B7-H4組換え重鎖抗体を得る。具体的には、HEK293細胞をFreeStyleTM F17 Expression Medium培地(Thermo、A1383504)で増殖させた。一過性トランスフェクションを開始する前に、細胞濃度を6×10E+05細胞/mLに調節し、37℃、8%のCOのシェーカーで24時間培養して、細胞濃度を1.2×10E+06細胞/mLの濃度にした。30mLの培養細胞を調製し、重鎖をコードする上記のプラスミド30μgを1.5mLのOpti-MEM低血清培地(Thermo、31985088)に溶解させ、次に、1.5mLのOpti-MEMを1mg/mLのPEI(Polysciences, Inc、カタログ番号:23966-2)120μLに溶解させ、5分間静置した。プラスミドにPEIをゆっくりと加え、室温で10分間培養し、プラスミド-PEI混合溶液を培養フラスコを振とうしながらゆっくりと滴下し、37℃、8%のCOのシェーカーで5日間培養した。細胞生存率を5日後に観察した。培養物を回収し、3300Gで10分間遠心分離して上清を採取し、次に上清を高速遠心分離して不純物を除去した。MabSelectTM(GE Healthcare Life Science、カタログ番号:71-5020-91 AE)を含む重力カラム(Bio-Rad、#7311550)をPBS(pH7.4)で平衡化し、2~5カラム容量ですすいだ。上清試料をカラムにロードした。カラムを5~10カラム容量のPBSですすいだ。0.1Mのグリシン(pH3.5)を使用して標的タンパク質を溶出し、次にTris-HCl(pH8.0)を使用して中性に調節し、最後に限外ろ過チューブ(Millipore、UFC901024)で濃縮してPBS緩衝液に交換し、精製された抗B7-H4重鎖抗体溶液を得た。
【0132】
1.7 SEC-HPLCによるタンパク質の純度及び凝集体の分析
本実施例では、分析用分子サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して、タンパク質試料の純度及び凝集体の形態を分析する。分析用クロマトグラフィーカラムTSKgel G3000SWxl(Tosoh Bioscience、#08541、5μm、7.8 mm×30cm)を高圧液体クロマトグラフHPLC(Agilent Technologies、Agilent 1260 Infinity II)に接続し、PBS緩衝液で室温で少なくとも1時間平衡化した。適量のタンパク質試料(少なくとも10μg)を0.22μmフィルターでろ過してシステムに注入し、HPLCプログラムを設定し、PBS緩衝液を使用して試料を1.0ml/分の流速でカラムに最大25分間流した。HPLCは、試料中の異なる分子サイズの成分の保持時間を報告する分析レポートを生成した。
【0133】
1.8 HPLC-HICによるタンパク質の純度及び疎水性の分析
分析用疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を使用して、タンパク質試料の純度及び疎水性を分析する。分析用クロマトグラフィーカラムTSKge1 Buty1-NPR(Tosoh Bioscience、14947、4.6mm×3.5cm)を高圧液体クロマトグラフ(HPLC)(モデル:Agilent Technologies、Agilent 1260 Infinity II)に接続し、PBS緩衝液で室温で少なくとも1時間平衡化した。設定方法は、100%移動相A(20mMのヒスチジン、1.8Mの硫酸アンモニウム、pH6.0)から100%移動相B(20mMのヒスチジン、pH6.0)への直線勾配を16分以内に設定し、流速を0.7mL/min、タンパク質試料の濃度を1mg/mL、注入量を20μL、検出波長を280nmに設定した。収集した後、ChemStationソフトウェアを使用してクロマトグラムを統合し、関連データを計算し、試料中の異なる分子サイズの成分の保持時間を報告する分析レポートを生成した。
【0134】
1.9 DSF又はUNcleによるタンパク質分子の熱安定性の測定
示差走査蛍光分析(Differential Scanning Fluorimetry、DSF)は、タンパク質の熱安定性を測定するために一般的に使用されるハイスループットな方法である。リアルタイム蛍光定量PCR装置を使用して、折り畳まれていないタンパク質分子に結合した色素の蛍光強度の変化をモニタリングすることにより、タンパク質の変性プロセスを反映し、タンパク質分子の熱安定性を反映する。本実施例では、DSF法を使用してタンパク質分子の熱変性温度(Tm)を測定した。10μgのタンパク質を96ウェルPCRプレート(Thermo、#AB-0700/W)に加え、次に2μLの100×希釈した色素SYPROTM(Invitrogen、#2008138)を加え、その後、緩衝液を加えて1ウェルあたりの最終容量を40μlにした。PCRプレートを密封し、リアルタイム蛍光定量PCR装置(Bio-Rad CFX96 PCRシステム)に入れ、最初に25℃で5分間培養し、次に0.2℃/0.2分の勾配で温度を25℃から95℃まで徐々に上昇させ、試験終了時に温度を25℃まで下げた。FRET走査モードを使用し、Bio-Rad CFX Maestroソフトウェアを使用してデータ分析を実行して、試料のTmを計算した。
【0135】
Uncle(Unchained Labs)は、全蛍光、静的光散乱(SLS)、及び動的光散乱(DLS)検出方法によってタンパク質の安定性を特徴付ける多機能ワンストップタンパク質安定性分析プラットフォームである。同じセットの試料について、融解温度(Tm)、凝集温度(Tagg)、粒子径(diameter)などのパラメーターを同時に得ることができる。本実施例では、Uncleの「Tm&Tagg with optional DLS」アプリケーションを選択して操作し、9μLの試料をUniチューブに加え、温度を25℃から95℃まで0.3℃/分の勾配で徐々に上昇するように設定した。最初のDLS測定と最後のDLS測定をそれぞれ5秒間、4回実行した。実験の実行終了後、Uncle分析ソフトウェアは重心平均(BCM)式を使用して各試料のTm値を計算した。
【0136】
得られた抗体の発現情報及び物理化学的性質は表1-3に示された通りである。
【0137】
【表1-3】
【0138】
1.10 抗B7-H4抗体の配列と番号
本発明において、列挙されたCDRのアミノ酸配列はすべてChothia定義に従って示されている。しかし、抗体のCDRは、配列可変性に基づくKabatの定義(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, National Institutes of Health (U.S.), Bethesda, Maryland (1991)を参照)、及び構造ループ領域の位置に基づくChothia定義(JMol Biol 273:927-48,1997を参照)などの当技術分野の様々な方法によって定義できることは当業者には周知である。本発明の技術的解決策において、Kabat定義及びChothia定義を含むCombined定義を使用して、可変ドメイン配列中のアミノ酸残基を決定することもできる。Combined定義は、Kabat定義及びChothia定義の範囲を結合し、これに基づいてより大きな範囲を取るものであり、詳細は表4を参照されたい。特に明記しない限り、所与の抗体又はその領域(例えば、可変領域)の「CDR」及び「相補性決定領域」という用語は、本発明に記載の上記の公知実施形態のいずれかによって定義される相補性決定領域を包含すると理解されるべきであることが、当業者には理解されるべきである。本発明により請求される範囲はChothia定義に基づいて示される配列であるが、他のCDR定義による対応するアミノ酸配列も本発明の保護範囲に入るべきである。
【0139】
【表1-4】
【0140】
ここで、Haa-Hbbは、抗体の重鎖のN末端から始まるaa位(Chothia番号付けスキーム)からbb位(Chothia番号付けスキーム)までのアミノ酸配列を指すことができる。例えば、H26~H35は、Chothia番号付けスキームに従って、抗体の重鎖のN末端から始まる26位から35位までのアミノ酸配列を指すことができる。当業者は、Chothiaを使用してCDRをコードする場合、いくつかの位置に挿入部位が存在することを知っているべきである(http://bioinf.org.uk/abs/を参照することができる)。
【0141】
表1-5、表1-6、表1-7及び表1-8は、本発明の抗B7-H4抗体の配列に対応する配列番号を示す。
【0142】
【表1-5】
【0143】
【表1-6】
【0144】
【表1-7】
【0145】
【表1-8】
【0146】
実施例2.FACSにより抗ヒトB7-H4 HCAbモノクローナル抗体の細胞レベルにおける結合能力の検出
本実施例では、ヒトB7-H4に対する抗ヒトB7-H4 HCAbモノクローナル抗体のin vitro結合活性を研究するために、ヒトB7-H4を過剰発現するCHO-K1細胞株(CHO-K1/huB7-H4、Harbour BioMed)、HEK293細胞株(HEK293/huB7-H4、Harbour BioMed)、カニクイザルB7-H4を過剰発現するCHO-K1細胞株(CHO-K1/cynoB7-H4、Harbour BioMed)、マウスB7-H4を過剰発現するCHO-K1細胞株(CHO-K1/mB7-H4、Harbour BioMed)、及びB7-H4を内因性に過剰発現するMDA-MB-468乳がん細胞を使用して、細胞レベルでの抗体結合実験を実行した。簡単に説明すると、細胞を消化し、2%のFBSを含むPBSに再懸濁させ、細胞密度をそれぞれ1×10細胞/mLに調節した。96ウェルVボトムプレート(Corning、カタログ番号:3894)に100μL細胞/ウェルで細胞を接種し、次に最終濃度の2倍で3倍濃度勾配希釈した試験抗体を100μL/ウェルで加えた。細胞を4℃に置き、光を避けて2時間培養した。次に、予め冷却させたPBSを100μL/ウェルで加えて細胞を2回洗浄し、500g、4℃で5分間遠心分離し、上清を捨てた。さらに100μL/ウェルで蛍光二次抗体(Alexa Fluor 488-conjugated AffiniPure Goat Anti-Human IgG、Fcγ Fragment Specific、Jackson、カタログ番号:109-545-06、1:500希釈)を加え、4℃で、光を避けて60分間培養した。予め冷却させたPBSで100μL/ウェルで細胞を2回洗浄し、500g、4℃で5分間遠心分離し、上清を捨てた。最後に、予め冷却させたPBSで200μL/ウェルで細胞を再懸濁させ、ACEA Novocyte3000を使用して蛍光シグナル値を読み取った。
【0147】
細胞表面のヒトB7-H4に対する抗体結合の結果は、表2-1、2-2、2-3、図1のA~Eに示された通りである。その結果、PR006004及びPR006008はヒト、カニクイザルB7-H4及び腫瘍細胞MDA-MB-468に対してより優れた結合を示し、その中で、PR006008はより強い細胞結合を有し、マウスB7-H4と交差反応性を有することが示されている。PR006004の等電点低下突然変異型抗体のヒトB7-H4に対する結合は、PR006004そのものと比較してわずかに低下し、その中でPR007196の結合能は最も弱かった。PR006004及びPR006008の翻訳後修飾部位(PTM)突然変異体であるPR007440及びPR007441の結合活性は、親抗体と比較して有意な変化は見られなかった。
【0148】
【表2-1】
【0149】
【表2-2】
【0150】
【表2-3】
【0151】
実施例3.BLI法による親和性の測定
アフィニティーテスト及び抗原、抗体の希釈のために、10×キネティック緩衝液(ForteBio、#18-1105)を1×に希釈した。バイオフィルム干渉(BLI)技術により、Octet Red 96e(Fortebio)分子間相互作用分析装置を使用して、抗原と抗体の間の結合動態を分析した。
【0152】
抗原と抗体の親和性を測定する場合、センサーの回転速度は1000rpmであった。まず、一列に並べたAHCセンサー(Fortebio、#18-5060)を試験緩衝液中で10分間平衡化し、次にAHCセンサーを使用して捕捉高さ0.7nmでB7-H4抗体を捕捉し、AHCセンサーを緩衝液中で120秒間平衡化した後、2倍勾配希釈したヒト又はサルB7-H4(濃度は100~3.75nM及び0nMである)に180秒間結合し、300秒間解離させた。最後に、AHCセンサーを10mMのグリシン-塩酸pH1.5溶液に浸して再生し、センサーに結合したタンパク質を溶出した。
【0153】
Octet Data Analysisソフトウェア(Fortebio、バージョン11.0)を使用してデータ分析を実行した場合、0nMを参照ウェルとし、参照シグナルを差し引き(reference subtraction)、「1:1 Global fitting」方法を選択してデータをフィッティングし、抗原と抗原結合タンパク質の結合の動態パラメーターを計算し、kon(1/Ms)値、kdis(1/s)値、及びK(M)値を得た(表3、図2を参照)。その結果、PR006004及びPR006008はともにタンパク質レベルでの親和性が高く、その中でPR006004はタンパク質レベルでの親和性がPR006008よりもわずかに高いことが示されている。アミノ酸の突然変異により抗体のTM値が増加した後、PR007077、PR007078は、それらの対応する親抗体であるPR006391、PR006407と比較して、B7-H4に対する親和性に有意な変化を示さなかった。
【0154】
【表3】
【0155】
実施例4. B7-H4×CD3二重特異性抗体の構造と設計
B7-H4×CD3二重特異性抗体は2つの標的に同時に結合することができ、その一端は腫瘍細胞の表面に特異的に発現するB7-H4を認識することができ、もう一端はT細胞上のCD3分子に結合することができる。B7-H4×CD3二重抗体分子が腫瘍細胞の表面に結合すると、腫瘍細胞付近のT細胞を動員して活性化し、それによって腫瘍細胞を死滅させることができる。
【0156】
本実施例では、実施例1で得られた抗B7-H4抗体と抗CD3抗体PR003886(特許出願WO2021/063330に由来する、配列は表4-1に示される)を使用して、B7-H4×CD3二重特異性抗体を調製した。前記二重特異性抗体は、図3のA~Cに示される構造を有する。前記構造は、3つのポリペプチド鎖:アミノ末端からカルボキシル末端まで、VL_A-CLを含むポリペプチド鎖1又は第1のポリペプチド鎖、アミノ末端からカルボキシル末端まで、VH_A-CH1-h-CH2-CH3を含むポリペプチド鎖2又は第2のポリペプチド鎖、アミノ末端からカルボキシル末端まで、VH_B-L-VH_B-h-CH2-CH3又はVH_B-h-CH2-CH3を含む、ポリペプチド鎖3又は第3のポリペプチド鎖を含む。ここで、VH_A及びVL_Aはそれぞれ抗体Aの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域であり、VH_Bは重鎖抗体Bの重鎖可変領域であり、CLは軽鎖定常領域ドメインであり、CH1、CH2及びCH3はそれぞれ重鎖定常領域の第1、第2及び第3ドメインであり、Lはリンカーペプチドであり、hはIgG抗体のヒンジ領域又は誘導体配列である。
【0157】
表4-2のB7-H4×CD3二重抗体分子RP007354、PR007355は同じ分子構造を有し、ポリペプチド鎖1とポリペプチド鎖-2の組成はCD3のFab部分を標的とし、ポリペプチド鎖-3はB7-H4を標的とする1つのVH部分(VH_B)を含む。
【0158】
表4-2の他のB7-H4×CD3二重抗体分子(PR006391、PR006407、PR006840、PR007077、PR007078、PR007168)はすべて同じ分子構造を有し、ポリペプチド鎖1とポリペプチド鎖-2の組成はCD3のFab部分を標的とし、ポリペプチド鎖-3はB7-H4を標的とする2つのVH部分(VH_B)を含む。ここで、2つのVH_Bの配列は同じであっても異なっていてもよく、2つのVH_BはリンカーペプチドGS_15(配列番号66)を介して連結される。さらに、PR005885は「1+1」Fab-Fc-scFv非対称構造分子であり、その構造は、対応する抗B7-H4抗体のscFvポリペプチド鎖、及び上記の抗CD3抗体の重鎖と軽鎖をそれぞれ含む3つのタンパク質鎖を含む。
【0159】
Fcγ受容体の結合によって引き起こされる架橋とエフェクター機能の低下を防ぐために、「AA」二重突然変異体(L234AとL235A)又は「AAA」三重突然変異体(L234A、L235AとG237A)をポリペプチド鎖-2及びポリペプチド鎖-3の重鎖定常領域に導入した。さらに、相同な重鎖二量体の生成を減らすために、2つの重鎖の定常領域にそれぞれ異なるアミノ酸突然変異を導入し、それらに「knob-hole」突然変異と修飾ジスルフィド結合を持たせた。CD3を標的とするポリペプチド鎖-2に突然変異T366W及びS354Cを導入した。同時に、B7-H4を標的とするポリペプチド鎖-3に突然変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを導入した。ポリペプチド鎖-2のFc定常領域配列は配列番号68に示される配列であり、ポリペプチド鎖-3のFc定常領域配列は配列番号67に示される配列である。さらに、抗体分子の熱安定性を向上させるために、特許WO2012100343A1に従って、抗B7-H4のVHドメインに追加のジスルフィド結合を導入し、具体的には、抗B7-H4のVHドメインのKabat番号の49位と69位の2つのアミノ酸をCysに変更して、ジスルフィド結合を形成させ、即ち、S49CとI70Cの突然変異をそれぞれに導入した。表4-2は、本発明のB7-H4×CD3二重特異性抗体分子と、そのCD3末端の親モノクローナル抗体及びB7-H4末端の親モノクローナル抗体を示し、表4-3は、本発明のB7-H4×CD3二重特異性抗体のポリペプチド鎖の配列に対応する配列番号を示す。
【0160】
実施例1.5に記載の方法を使用して、3つのポリペプチド鎖をコードする発現ベクターを、組換え発現のために哺乳動物宿主細胞に同時トランスフェクションし、精製された抗体タンパク質分子を得た。
【0161】
その安定性Tm、溶解度HIC、一段階精製後の副生成物の分析などのデータは表1-3に示された通りである。
【0162】
表4-1は、本発明で使用される抗CD3抗体PR003886の配列に対応する配列番号を示す。
【0163】
【表4-1】
【0164】
表4-2は、本発明のB7-H4×CD3二重抗体分子及びその親モノクローナル抗体を示す。
【0165】
【表4-2】
【0166】
表4-3は、本発明のB7-H4×CD3二重特異性抗体のポリペプチド鎖配列に対応する配列番号を示す。
【0167】
【表4-3】
【0168】
実施例5.FACSによるヒト、カニクイザル、及びマウスのB7-H4を過剰発現するCHO-K1細胞株におけるB7-H4×CD3二重特異性抗体のin vitro結合の検出
本実施例は、ヒト、カニクイザル、及びマウスのB7-H4に対するB7-H4のCD3二重特異性抗体のin vitro結合活性を研究するためである。ヒトB7-H4を過剰発現するCHO-K1細胞株(CHO-K1/huB7-H4、Harbour BioMed)、カニクイザルB7-H4を過剰発現するCHO-K1細胞株(CHO-K1/cynoB7-H4、Harbour BioMed)、マウスB7-H4を過剰発現するCHO-K1細胞株(CHO-K1/mB7-H4、Harbour BioMed)を使用して、細胞レベルでの抗体結合実験を実行した。簡単に説明すると、細胞を消化し、2%のFBSを含むPBSに再懸濁させ、細胞密度をそれぞれ1×10細胞/mLに調節した。96ウェルVボトムプレート(Corning、カタログ番号:3894)に100μL細胞/ウェルで細胞を接種し、次に最終濃度の2倍で3倍濃度勾配希釈した試験抗体を100μL/ウェルで加えた。細胞を4℃に置き、光を避けて2時間培養した。次に、予め冷却させたPBSを100μL/ウェルで加えて細胞を2回洗浄し、500g、4℃で5分間遠心分離し、上清を捨てた。さらに100μL/ウェルで蛍光二次抗体(Alexa Fluor 488-conjugated AffiniPure Goat Anti-Human IgG、Fcγ Fragment Specific、Jackson、カタログ番号:109-545-06、1:500で希釈)を加え、4℃で、光を避けて60分間培養した。予め冷却させたPBSで100μL/ウェルで細胞を2回洗浄し、500g、4℃で5分間遠心分離し、上清を捨てた。最後に、予め冷却させたPBSで200μL/ウェルで細胞を再懸濁させ、ACEA Novocyte3000を使用して蛍光シグナル値を読み取った。
【0169】
細胞表面のヒトB7-H4、カニクイザルB7-H4、及びマウスB7-H4に結合する抗体のまとめは表5、図4のA~Eに示された通りである。その結果、二重抗体分子PR006391、PR006407、及びPR005885はいずれもヒト、カニクイザルB7-H4に対してより優れた結合を有し、その中で、二重抗体分子PR006407はPR006391よりもヒト、カニクイザルB7-H4に対してより強い結合を有することが示されている。この結合傾向は、その親B7-H4分子PR006008、PR006004の結合能力と一致しているが、PR005885はより高い最大MFI値を有していた。PR006407はマウスB7-H4と交差反応を有し、PR006391はマウスB7-H4に結合せず、PR005885はマウスB7-H4と弱い交差反応を有していた。他の抗体PR007354、PR007355、PR007077、PR007078、PR007168の結合傾向も、それらの親B7-H4分子PR006008、PR006004の結合能力と一致していた。その中で、PR007355及びPR007078はマウスB7-H4と交差反応性を有していた。
【0170】
【表5】
【0171】
実施例6.FACSによるB7-H4を内因的に発現する腫瘍細胞及びT細胞における、B7-H4×CD3二重特異性抗体のin vitro結合の検出
B7-H4を内因的に発現する腫瘍細胞又はCD3を発現する初代T細胞を使用して、細胞レベルでの抗体結合実験を実行した。2%のBSAを含むPBSでMDA-MB-468細胞又はヒトT細胞を再懸濁させた。細胞密度をそれぞれ1×10細胞/mLに調節した。96ウェルVボトムプレート(Corning、#3894)に100μL細胞/ウェルで細胞を接種し、次に最終濃度の2倍で3倍濃度勾配希釈した試験抗体を100μL/ウェルで加えた。細胞を4℃に置き、光を避けて2時間培養した。次に、2%のBSAを含む予め冷却させたPBSを100μL/ウェルで加えて細胞を2回洗浄し、500g、4℃で5分間遠心分離し、上清を捨てた。さらに100μL/ウェルで蛍光二次抗体(Alexa Fluor 488-conjugated AffiniPure Goat Anti-Human IgG、Fcγ Fragment Specific、Jackson、#109-545-098、1:500に希釈)を加え、4℃で、光を避けて60分間培養した。2%のBSAを含む予め冷却させたPBSで100μL/ウェルで細胞を2回洗浄し、500g、4℃で5分間遠心分離し、上清を捨てた。最後に、2%のBSAを含む予め冷却させたPBSで200μL/ウェルで細胞を再懸濁させ、ACEA Novocyte3000フローサイトメーターを使用して蛍光発光シグナル値を読み取った。
【0172】
結果は表6-1、表6-2、表6-3、図5のA~Fに示された通りである。その結果、これらの二重抗体分子はいずれもMDA-MB-468に対して優れた結合能を示し、その中で、二重抗体分子PR006407はPR006391よりもMDA-MB-468に強く結合し、その結果はCHO-K1/hu B7-H4の結合傾向と一致している。一方、PR006840はより高い最大MFIを有していた。アミノ酸の突然変異により抗体のTm値が増加した後、PR007077、PR007078、PR007168は、それらの親で抗体あるPR006391、PR006407、PR006840と比較して、MDA-MB-468に対する結合能力は一致していた。一価B7-H4の二重抗体分子RP007354及びPR007355と、二価B7-H4の二重抗体分子PR007077及びPR007078との間の結合に有意差はなかった。PR005885のMDA-MB-468に対する結合曲線はPR006391の結合曲線と類似していた。抗CD3末端に親和性の弱い抗CD3を使用しているため、これらの抗体はいずれもT細胞への結合が弱く、PR007354は他の抗体に比べてT細胞への結合が増強されていた。
【0173】
【表6-1】
【0174】
【表6-2】
【0175】
【表6-3】
【0176】
実施例7.T細胞殺傷実験
本実験では、ヒト初代T細胞をエフェクター細胞として使用し、B7-H4を高発現する細胞MDA-MB-468、B7-H4を低発現する細胞OVCAR-3、B7-H4を極めて低発現する細胞DLD-1、又は完全陰性細胞であるMDA-MB-231を標的細胞として使用した。ACEA社のRTCA機器を使用して標的細胞の導電率を検出し、殺傷効率を反映した。96ウェルプレートe-plateをまず50μlの完全培地で平衡化した。標的細胞を消化し、10%のウシ胎児血清を含むRPM1640完全培地に再懸濁させ、4×10/mLに希釈し、e-plate 96プレートに50μl/ウェル、即ち2×10/ウェルで広げ、37℃で一晩培養した。翌日、Miltenyi T細胞分離キット(Miltenyi、#130-096-535)を使用して、説明書の方法に従って初代T細胞を分離した。2×10T細胞を含む新鮮な培地50μlを各ウェルに加え、次に4×濃度に勾配希釈した抗体50μlを加え、抗体の最高最終濃度は10nMであり、各抗体に合計8つの濃度であり、2つの重複を設定した。標的細胞の導電率をリアルタイムで検出し、一般に、24時間時点のデータを使用して、標的細胞の殺傷効率=(1-試料/空白対照)×100%を計算した。24時間後に上清を回収し、IFN-γの濃度をELISA方法により検出した。ELISA検出方法は、IFN gamma Human Uncoated ELISA Kit(Thermo、#88-7316-77)のキット操作説明書を参照した。
【0177】
結果は図6のA~E、図7のA~D、図8のA~Cに示された通りである。その結果、すべての二重抗体分子はB7-H4を発現する腫瘍細胞に対して有意な殺傷効果を有することが示された。その中で、同じB7-H4二価二重抗体分子PR007077及びPR007078は、一価二重抗体分子PR007354及びPR007355よりも有意に増強された殺傷効果を有していた。PR006391と比較して、二重抗体分子PR006407は、B7-H4を高発現するMDA-MB-468細胞又はB7-H4を中発現するOVCAR-3細胞において、より高い殺傷効果とより低いサイトカインIFN-gammaの発現を有していた。B7-H4を発現しないMDA-MB-231細胞において殺傷効果がなかった。同様に、アミノ酸の突然変異によりTM値が増加した後の二重抗体分子PR007078はPR007077と比較して、MDA-MB-468及びOVCAR-3細胞においてより高い殺傷効果とより低いサイトカインIFN-gammaの発現を有していた。B7-H4を極めて低発現するDLD-1細胞において殺傷効果がなかった。PR006840二重抗体は、強い殺傷効果とサイトカイン分泌を同時に有していた。
【0178】
実施例8.非特異的サイトカインの誘導実験
本実験では、標的細胞の非存在下でPBMCによる非特異的サイトカインの産生を誘導する二重抗体分子の状態を検出するため、薬物の安全性を最初に判断することができる。10%のウシ胎児血清を含むRPM1640完全培地にヒトPBMCを再懸濁させ、2×10/mLに希釈し、96ウェルプレート(Corning、3599)に100μl/ウェル、即ち2×10/ウェルで広げ、2×抗体を100ul加え、37℃で一晩培養した。24時間後に上清を回収し、IL-6、TNF-α、IFN-γの濃度をELISA方法により検出した。ELISA検出方法は、TNF-α human Uncoated ELISA Kit(Thermo、#88-7346-88)キット、IL-6 human Uncoated ELISA Kit(Thermo、#88-7066-88)キット、IFN gamma Human Uncoated ELISA Kit(Thermo、#88-7316-77)キットの取扱説明書を参照した。
【0179】
結果は図9のAとB、図10のAとB、図11のAとBに示された通りである。その結果、二重抗体分子PR007077、PR007078、PR007168によって誘導されたIL-6及びIFN-γの発現は非常に低いが、TNF-αは所定の発現があることが示された。異なるドナーの反応性は大きく異なっている。PR005885は他の分子と比較してサイトカイン発現が最も低く、サイトカインストームのリスクが低い可能性が示唆された。
【0180】
実施例9.ヒトPBMC免疫系を再構築したNCGマウス腫瘍モデルにおけるin vivo薬効実験
OVCAR-3モデルでは、細胞接種当日に、各NCGマウスに5×10個のOVCAR3腫瘍細胞を皮下接種し、細胞をPBSとマトリゲル(Matrigel)(1:1)の混合溶液に再懸濁させ(0.1mL/マウス)、皮下接種した。マウスの平均腫瘍体積が110mmに達した時点で群に分け、18匹のマウスを3群に分け、各マウスに5×10個のヒトPBMCを静脈内接種し、細胞を200μLのPBSに再懸濁させた。翌日から投与を開始し、投与サイクルは週1回であり、合計3回静脈内投与した。投与を開始した後、体重及び腫瘍体積を週2回測定し、腫瘍体積の計算式は、腫瘍体積(mm)=0.5×腫瘍長径×腫瘍短径である。実験観察は投与後23日目に終了し、その後すべてのマウスを安楽死させた。
【0181】
結果は図12Aに示された通りである。溶媒対照群のマウスの平均腫瘍体積は、投与後23日目で1612mmであった。試験薬PR006391(0.2mg/kg)治療群の平均腫瘍体積は、投与後23日目で1054mmであり、溶媒対照群と比較して有意差があり(p値は0.04である)、腫瘍阻害率TGI(%)は34.6%であった。試験薬PR006407(0.2mg/kg)治療群の平均腫瘍体積は、投与後23日目で770mmであり、溶媒対照群と比較して有意差があり(p値は0.001である)、腫瘍阻害率TGI(%)は52.2%であった。試験薬PR005885(0.2mg/kg)治療群の平均腫瘍体積は、投与後23日目で681mmであり、溶媒対照群と比較して有意差があり(p値は0.001である)、腫瘍阻害率TGI(%)は57.77%であった。
【0182】
MDA-MB-468モデルでは、細胞接種当日に、各NCGマウスに5×10個のMDA-MB-468腫瘍細胞を皮下接種し、細胞をPBSとマトリゲル(Matrigel)(1:1)の混合溶液に再懸濁させ(0.1mL/マウス)、皮下接種した。マウスの平均腫瘍体積が150mmに達した時点で群に分け、42匹のマウスを7群に分け、各マウスに5×10個のヒトPBMCを静脈内接種し、細胞を200μLのPBSに再懸濁させた。翌日から投与を開始し、投与サイクルは週1回であり、合計4回静脈内投与した。投与を開始した後、体重及び腫瘍体積を週2回測定し、腫瘍体積の計算式は、腫瘍体積(mm)=0.5×腫瘍長径×腫瘍短径である。実験観察は投与後23日目に終了し、その後すべてのマウスを安楽死させた。
【0183】
結果は図12Bに示された通りである。溶媒対照群のマウスの平均腫瘍体積は、投与後23日目で893mmであった。試験薬PR007077(0.1mg/kg)治療群の平均腫瘍体積は、投与後23日目で507mmであり、溶媒対照群と比較して有意差があり(p値は0.01である)、腫瘍阻害率TGI(%)は43.16%であった。試験薬PR007077(0.5mg/kg)投与群の平均腫瘍体積は、投与後23日目で343mmであり、溶媒対照群と比較して有意差があり(p値は0.0009である)、腫瘍阻害率TGI(%)は61.6%であった。試験薬PR007078(0.1mg/kg)治療群の平均腫瘍体積は、投与後23日目で464mmであり、溶媒対照群と比較して有意差があり(p値は0.0067である)、腫瘍阻害率TGI(%)は47.9%であった。試験薬PR007078(0.5mg/kg)治療群の平均腫瘍体積は、投与後23日目で390mmであり、溶媒対照群と比較して有意差があり(p値は0.0022である)、腫瘍阻害率TGI(%)は56.2%であった。試験薬PR007168(0.1mg/kg)治療群の平均腫瘍体積は、投与後23日目で446mmであり、溶媒対照群と比較して有意差があり(p値は0.0092である)、腫瘍阻害率TGI(%)は50.1%であった。試験薬PR007168(0.5mg/kg)治療群の平均腫瘍体積は、投与後23日目で275mmであり、溶媒対照群と比較して有意差があり(p値は0.0009である)、腫瘍阻害率TGI(%)は69.2%であった。
【0184】
CT26-B7-H4モデルでは、細胞接種当日に、各BALB/c-hCD3EDGノックインマウスに5×10個のCT26-B7-H4腫瘍細胞を皮下接種し、細胞をPBSに再懸濁させ(0.1mL/マウス)、皮下接種した。マウスの平均腫瘍体積が84mmに達した時点で群に分け、24匹のマウスを4群に分け、群分け当日から投与を開始し、投与サイクルは週1回であり、合計3回静脈内投与した。投与を開始した後、体重及び腫瘍体積を週2回測定し、腫瘍体積の計算式は、腫瘍体積(mm)=0.5×腫瘍長径×腫瘍短径である。実験観察は投与後20日目に終了し、その後すべてのマウスを安楽死させた。
【0185】
結果は12Cに示された通りであり、溶媒対照群のマウスの平均腫瘍体積は、投与後20日目で2043mmであった。試験薬PR007077(0.5mg/kg)治療群の平均腫瘍体積は、投与後20日目で1007mmであり、溶媒対照群と比較して有意差があり(p値は0.024である)、腫瘍阻害率TGI(%)は50.4%であった。試験薬PR007078(0.5mg/kg)治療群の平均腫瘍体積は、投与後20日目で1069mmであり、溶媒対照群と比較して有意差があり(p値は0.031である)、腫瘍阻害率TGI(%)は45.5%であった。試験薬PR007168(0.5mg/kg)治療群の平均腫瘍体積は、投与後20日目で1155mmであり、溶媒対照群と比較して有意差があり(p値は0.05である)、腫瘍阻害率TGI(%)は39.9%であった。
【0186】
実施例10.BALB/cヌードマウスにおける薬物動態
体重18~22gのメスBALB/cヌードマウス6匹を選択し、薬物を2.5mg/kgの投与量で尾静脈注射により投与した。1群の3匹のマウスは投与前と投与後の5分、24時間(1日)、4日目、10日目に全血を採取し、もう1群の3匹のマウスは投与前と投与後の5時間、2日目、7日目、14日目に全血を採取した。全血を30分間静置して凝固させ、次に4℃、2000rpmで5分間遠心分離し、分離した血清試料を分析まで-80℃で冷凍保存した。本実施例では、ELISA方法を使用してマウス血清中の薬物濃度を定量的に測定した。ELISA Fc末端全体検出方法は、96ウェルプレートにコーティングされたヤギ抗ヒトFcポリクローナル抗体を使用して、マウス血清中のヒトFc含有融合タンパク質を捕捉し、次にHRP標識ヤギ抗ヒトFc二次抗体を加えて実行された。ELISA B7-H4末端結合検出方法は、96ウェルプレートにコーティングされた組換えヒトB7-H4タンパク質(Sino Biological、10738-H08H)を使用して、マウス血清中のB7-H4×CD3二重抗体を捕捉し、次にHRP標識ヤギ抗ヒトFc二次抗体を加えて実行された。
【0187】
Phoenix WinNonlinソフトウェアバージョン8.2を使用し、ノンコンパートメントモデル(NCA)を使用して血中薬物濃度データを分析し、薬物動態を評価し、結果は下記の表7に示された通りである。
【0188】
その結果、Fc末端全体検出方法で得られた最初の14日間のデータから計算すると、マウスにおけるPR006407の半減期は約6日であり、マウスにおけるPR007078の半減期は約8日であることが示された。B7-H4末端結合検出方法で得られた最初の14日間のデータから計算すると、マウスにおけるPR006407の半減期はわずか約1日であり、マウスにおけるPR007078の半減期は約12日であった。これは、熱安定性修飾し、ジスルフィド結合を導入した抗体により、マウスにおける抗体の安定性を向上させることができることを示している。
【0189】
【表7】
図1-1】
図1-2】
図2
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2024-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)を含み、ここで、
前記VHは、下記の相補性決定領域(CDR)又はその突然変異:配列番号又はのアミノ酸配列に示されるCDR1、配列番号15のアミノ酸配列に示されるCDR2、及び、配列番号25又は24のアミノ酸配列に示されるCDR3を含み、
ここで、前記突然変異は、前記CDRのアミノ酸配列における3、2又は1個のアミノ酸の挿入、欠失又は置換であることを特徴とする、抗B7-H4抗体。
【請求項2】
前記CDR2上の突然変異は、配列番号15に示されるアミノ酸配列にG2P、S4G、及びS5R/D/E/Tのうちの2又は1個のアミノ酸の置換を有するものであり、前記CDR2のアミノ酸配列は、好ましくは配列番号11~14、配列番号16~18のいずれか一つに示されることを特徴とし、
好ましくは、
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号5、18及び25に示され、或いは
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号5、12、及び25に示され、或いは
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、11及び24に示され、或いは
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、17、及び24に示され、或いは
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、13、及び24に示され、或いは
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、14及び24に示され、或いは
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、15及び24に示され、或いは
前記VHに含まれるCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、16及び24に示されることを特徴とし、
より好ましくは、
前記VHのフレームワーク領域はヒトVHのフレームワーク領域であり、
例えば、前記ヒトVHのフレームワーク領域は、アミノ酸配列が配列番号2に示されるFWR1、アミノ酸配列が配列番号7~9のいずれか一つに示されるFWR2、アミノ酸配列が配列番号20~22のいずれか一つに示されるFWR3、及びアミノ酸配列が配列番号26又は27に示されるFWR4を含み、
例えば、前記VHは、配列番号36~45のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とし、
さらに好ましくは、
前記抗B7-H4抗体は、完全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、例えばscFv、二重特異性抗体、多重特異性抗体、重鎖抗体又は単一ドメイン抗体であり、例えば、前記抗B7-H4抗体が重鎖抗体である場合、前記重鎖抗体は、配列番号48~57のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の抗B7-H4抗体。
【請求項3】
B7-H4を標的とするタンパク質機能領域B、及び非B7-H4を標的とするタンパク質機能領域Aを含み、
a)前記タンパク質機能領域Bは、請求項1に記載の抗B7-H4抗体から選択され、
好ましくは、構造が、式:N’-VL_A-CL-C’に示されるポリペプチド鎖1、式:N’-VH_A-CH1-ヒンジ領域-CH2-CH3-C’に示されるポリペプチド鎖2、式:N’-VH_B1-リンカー-VH_B2-ヒンジ領域-CH2-CH3-C’、又は式:N’-VH_B-ヒンジ領域-CH2-CH3-C’に示されるポリペプチド鎖3を含み、ここで、前記VL_A及びVH_Aは、それぞれ前記タンパク質機能領域AのVL及びVHであり、前記VH_B1及びVH_B2は、前記タンパク質機能領域BのVHであり、且つVH_B1及びVH_B2は、同じであっても異なってもよい、又は、
b)前記タンパク質機能領域Bは、配列番号72に示されるHCDR1、配列番号74に示されるHCDR2、配列番号76に示されるHCDR3、配列番号78に示されるLCDR1、配列番号80に示されるLCDR2、配列番号82に示されるLCDR3を含み、
好ましくは、構造が、式:N’-VL_A-CL-C’に示されるポリペプチド鎖1、式:N’-VH_A-CH1-ヒンジ領域-CH2-CH3-C’に示されるポリペプチド鎖2、式:N’-VL_B-リンカー-VH_B-ヒンジ領域-CH2-CH3-C’に示されるポリペプチド鎖3を含み、ここで、前記VL_A及びVH_Aは、それぞれ前記タンパク質機能領域AのVL及びVHであり、前記VL_B及びVH_Bは、前記タンパク質機能領域BのVL及びVHである、
から選択されることを特徴とし、
より好ましくは、
前記タンパク質機能領域Aは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗CD3抗体であり、前記VHは、アミノ酸配列が配列番号3に示されるVH CDR1、アミノ酸配列が配列番号10に示されるVH CDR2、及びアミノ酸配列が配列番号23に示されるVH CDR3を含み、前記VLは、アミノ酸配列が配列番号29に示されるVL CDR1、アミノ酸配列が配列番号31に示されるVL CDR2、及びアミノ酸配列が配列番号33に示されるVL CDR3を含み、
例えば、前記抗CD3抗体は、アミノ酸配列が配列番号35に示されるVH、及びアミノ酸配列が配列番号46に示されるVLを含み、
例えば、前記抗CD3抗体は、アミノ酸配列が配列番号47に示される重鎖、及びアミノ酸配列が配列番号58に示される軽鎖を含むことを特徴とし、
さらに好ましくは、
前記二重特異性抗体は、
アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号64に示されるポリペプチド鎖3、
或いは、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号60に示されるポリペプチド鎖3、
或いは、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号61に示されるポリペプチド鎖3、
或いは、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号62に示されるポリペプチド鎖3、
或いは、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号63に示されるポリペプチド鎖3、
或いは、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号65に示されるポリペプチド鎖3、
或いは、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号69に示されるポリペプチド鎖3、
或いは、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号70に示されるポリペプチド鎖3を含み、
或いは、前記二重特異性抗体は、アミノ酸配列が配列番号58に示されるポリペプチド鎖1、アミノ酸配列が配列番号59に示されるポリペプチド鎖2、アミノ酸配列が配列番号86に示されるポリペプチド鎖3を含むことを特徴とする、二重特異性抗体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体、又は請求項3に記載の二重特異性抗体をコードする単離された核酸。
【請求項5】
請求項に記載の単離された核酸を含み、
好ましくは、真核細胞発現ベクター及び/又は原核細胞発現ベクターを含む、組換え発現ベクター。
【請求項6】
請求項に記載の組換え発現ベクターを含む形質転換体であって
好ましくは、前記形質転換体の宿主細胞は、原核細胞及び/又は真核細胞であり、前記原核細胞は、好ましくはTG1、BL21細胞などの大腸菌細胞であり、前記真核細胞は、好ましくはHEK293細胞又はCHO細胞である、形質転換体。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体、又は請求項3に記載の二重特異性抗体を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項8】
請求項に記載のキメラ抗原受容体を含み、
好ましくは、真核細胞であり、好ましくは単離されたヒト細胞であり、より好ましくはT細胞、又はNK細胞などの免疫細胞であることを特徴とする、遺伝子改変細胞。
【請求項9】
請求項に記載の形質転換体を培養し、培養物から抗B7-H4抗体又は二重特異性抗体を得るステップを含む、抗B7-H4抗体又は二重特異性抗体の調製方法。
【請求項10】
抗体部分及び複合体部分を含み、前記抗体部分は、請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体又は請求項に記載の二重特異性抗体を含み、前記複合体部分は、検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、又はそれらの組み合わせを含み、前記抗体部分と前記複合体部分とが、化学結合又はリンカーを介して結合する、抗体薬物複合体。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体、請求項3に記載の二重特異性抗体、キメラ抗原受容体、遺伝子改変細胞及び/又は抗体薬物複合体を含み、
ここで、前記キメラ抗原受容体は、請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体、請求項3に記載の二重特異性抗体を含み、
前記遺伝子改変細胞は、前記キメラ抗原受容体を含み、
前記抗体薬物複合体は、抗体部分及び複合体部分を含み、前記抗体部分は、請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体又は請求項3に記載の二重特異性抗体を含み、前記複合体部分は、検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、又はそれらの組み合わせを含み、前記抗体部分と前記複合体部分とが、化学結合又はリンカーを介して結合する、
好ましくは、液体剤形、気体剤形、固体剤形及び半固体剤形であり、及び/又は、経口、注射、経鼻、経皮又は粘膜投与することができ、
さらに好ましくは、化学治療剤、放射線治療剤、免疫阻害剤及び/又は細胞傷害性薬物を含む併用治療剤をさらに含む、医薬組成物。
【請求項12】
がんを治療及び/又は予防おける使用のための、請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体、請求項に記載の二重特異性抗体、キメラ抗原受容体、遺伝子改変細胞、抗体薬物複合体及び/又は医薬組成物であって、
ここで、前記キメラ抗原受容体は、請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体、請求項3に記載の二重特異性抗体を含み、
前記遺伝子改変細胞は、前記キメラ抗原受容体を含み、
前記抗体薬物複合体は、抗体部分及び複合体部分を含み、前記抗体部分は、請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体又は請求項3に記載の二重特異性抗体を含み、前記複合体部分は、検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、又はそれらの組み合わせを含み、前記抗体部分と前記複合体部分とが、化学結合又はリンカーを介して結合する、
前記医薬組成物は、請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体、請求項3に記載の二重特異性抗体、キメラ抗原受容体、遺伝子改変細胞及び/又は抗体薬物複合体を含み
好ましくは、前記がんは、肺がん、トリプルネガティブ乳がんなどの乳がん、卵巣がん、子宮内膜腫、胃がん、小腸がん、結腸がん、直腸がん、膵臓がん、腎臓がん、膀胱がん、前立腺がん、胆管がん、食道がん及び骨肉腫からなる群より選択される。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の抗体、請求項3に記載の二重特異性抗体、キメラ抗原受容体、遺伝子改変細胞、抗体薬物複合体及び/又は医薬組成物、並びに任意選択の説明書を含む、キットであって、
ここで、前記キメラ抗原受容体は、請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体、請求項3に記載の二重特異性抗体を含み、
前記遺伝子改変細胞は、前記キメラ抗原受容体を含み、
前記抗体薬物複合体は、抗体部分及び複合体部分を含み、前記抗体部分は、請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体又は請求項3に記載の二重特異性抗体を含み、前記複合体部分は、検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、又はそれらの組み合わせを含み、前記抗体部分と前記複合体部分とが、化学結合又はリンカーを介して結合する、
前記医薬組成物は、請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体、請求項3に記載の二重特異性抗体、キメラ抗原受容体、遺伝子改変細胞及び/又は抗体薬物複合体を含む、キット。
【請求項14】
(1)請求項11に記載の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与するための注入モジュール、及び(2)任意選択の薬効モニタリングモジュールを含むことを特徴とする、薬物送達システム。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の抗B7-H4抗体及び/又は請求項に記載の二重特異性抗体を使用して検出するステップを含み、非診断及び/又は治療目的であることを特徴とする、B7-H4を検出する方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
ある好ましい実施形態において、前記タンパク質機能領域Aは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、その軽鎖可変領域VLは、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含み、その重鎖可変領域VHは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含む。前記タンパク質機能領域Bは、重鎖可変領域を含み、その重鎖可変領域VHは、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記タンパク質機能領域Aは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、その軽鎖可変領域VLは、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含み、その重鎖可変領域VHは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含む。前記タンパク質機能領域Bは、重鎖可変領域を含み、その重鎖可変領域VHは、配列番号45に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記タンパク質機能領域Aは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、その軽鎖可変領域VLは、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含み、その重鎖可変領域VHは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含む。前記タンパク質機能領域Bは、第1の重鎖可変領域及び第2の重鎖可変領域を含み、前記第1の重鎖可変領域VHは、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2の重鎖可変領域VHは、配列番号45に示されるアミノ酸配列を含む。ある好ましい実施形態において、前記タンパク質機能領域Aは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、その軽鎖可変領域VLは、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含み、その重鎖可変領域VHは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含む。前記タンパク質機能領域Bは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域VHは、配列番号84に示されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域VLは、配列番号85に示されるアミノ酸配列を含む。
【国際調査報告】