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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】二重特異性抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240918BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240918BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240918BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 14/52 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/02
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K45/00
A61P43/00 121
C07K14/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509461
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2022113031
(87)【国際公開番号】W WO2023020537
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】202110947802.3
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521530738
【氏名又は名称】普米斯生物技術(珠海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】BIOTHEUS INC.
【住所又は居所原語表記】10B, BUILDING 4, NO 1 KEJI 7TH ROAD, TANGJIAWAN TOWN, XIANGZHOU DISTRICT, ZHUHAI, GUANGDONG 519080, PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羅 ▲イー▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 俊 穎
(72)【発明者】
【氏名】繆 小 牛
(72)【発明者】
【氏名】黄 威 峰
(72)【発明者】
【氏名】袁 志 軍
(72)【発明者】
【氏名】彭 紹 崗
(72)【発明者】
【氏名】ツン,アンディ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QR77
4B063QS40
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC01
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本出願は、二重特異性抗体ならびにその使用、さらに二重特異性抗体を含む免疫複合体および医薬組成物に関する。本出願は、二重特異性抗体ならびに二重特異性抗体を含む免疫複合体および医薬組成物の使用にさらに関する。本出願において調製される二重特異性抗体は、クラウディン18.2を発現する細胞を認識するかもしくはそれと結合することができ、および/または4-1BBを発現する細胞を認識するかもしくはそれと結合することができる。さらに、対象において腫瘍は、予防および/または処置されうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウディン18.2結合実体および4-1BB結合実体を含む二重特異性抗体であって、前記クラウディン18.2結合実体が、2対の同一の免疫グロブリン鎖を含み、免疫グロブリン鎖の各対が、軽鎖および重鎖を有し、前記重鎖が、重鎖可変領域および重鎖定常領域を含み;前記軽鎖が、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を含み;前記4-1BB結合実体が、重鎖可変領域を含み;前記4-1BB結合実体の前記重鎖可変領域が、前記クラウディン18.2結合実体の前記重鎖のC末端に接続されており;
前記クラウディン18.2結合実体が、配列番号1に記載の重鎖可変領域(VH)内に含有されるVH CDR1もしくはそのバリアント、VH CDR2もしくはそのバリアントおよびVH CDR3もしくはそのバリアント;ならびに/または配列番号2に記載の軽鎖可変領域(VL)内に含有されるVL CDR1もしくはそのバリアント、VL CDR2もしくはそのバリアントおよびVL CDR3もしくはそのバリアントを含み;
前記4-1BB結合実体が、配列番号3もしくは25に記載の重鎖可変領域(VH)内に含有されるVH CDR1もしくはそのバリアント、VH CDR2もしくはそのバリアントおよびVH CDR3もしくはそのバリアントを含み;
前記バリアントが、それが得られる配列と比較して、1つまたはいくつかのアミノ酸の置換、欠失または付加(例えば、1、2または3アミノ酸の置換、欠失または付加、例えば保存的置換)を有し、好ましくは、前記置換が保存的置換であり;
好ましくは、前記VH中に含有される前記3つのCDRおよび/または前記VL中に含有される前記3つのCDRが、Kabat、IMGTまたはChothia付番方式によって定義される、二重特異性抗体。
【請求項2】
(1)前記クラウディン18.2結合実体が、
以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号9に記載の配列を持つVH CDR1、配列番号10に記載の配列を持つVH CDR2、および配列番号11に記載の配列を持つVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに/または以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号12に記載の配列を持つVL CDR1、配列番号13に記載の配列を持つVL CDR2、および配列番号14に記載の配列を持つVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含み;前記CDRが、IMGT付番方式によって定義されること;または
(2)前記4-1BB結合実体が、
以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号15に記載の配列を持つVH CDR1、配列番号16に記載の配列を持つVH CDR2、および配列番号17に記載の配列を持つVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)を含み;前記CDRが、IMGT付番方式によって定義されること
から選択される1つまたは2つの特徴を有する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
クラウディン18.2結合実体および4-1BB結合実体を含む二重特異性抗体であって、前記クラウディン18.2結合実体が、2対の同一の免疫グロブリン鎖を含み、免疫グロブリン鎖の各対が、軽鎖および重鎖を有し、前記重鎖が、重鎖可変領域および重鎖定常領域を含み;前記軽鎖が、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を含み;前記4-1BB結合実体が、重鎖可変領域を含み;前記4-1BB結合実体の前記重鎖可変領域が、前記クラウディン18.2結合実体の前記重鎖のC末端に接続されており;
前記クラウディン18.2結合実体の前記重鎖可変領域(VH)が、以下の3つの相補性決定領域(CDR):
(i)配列番号9、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)配列番号10、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR2、および
(iii)配列番号11、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR3
を含み、
前記クラウディン18.2結合実体の前記軽鎖可変領域(VL)が、以下の3つの相補性決定領域(CDR):
(iv)配列番号12、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)配列番号13、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR2、および
(vi)配列番号14、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR3
を含み;
前記4-1BB結合実体の前記重鎖可変領域が、以下の3つの相補性決定領域(CDR):
(vii)配列番号15、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR1、
(viii)配列番号16、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR2、および
(ix)配列番号17、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR3
を含み、
好ましくは、前記クラウディン18.2結合実体が、以下の3つの重鎖CDR:配列番号9に記載の配列を持つVH CDR1、配列番号10に記載の配列を持つVH CDR2、配列番号11に記載の配列を持つVH CDR3;ならびに/または以下の3つの軽鎖CDR:配列番号12に記載の配列を持つVL CDR1、配列番号13に記載の配列を持つVL CDR2、および配列番号14に記載の配列を持つVL CDR3を含み;
好ましくは、前記4-1BB結合実体の前記重鎖可変領域(VH)が、以下の3つの重鎖CDR:配列番号15に記載の配列を持つVH CDR1、配列番号16に記載の配列を持つVH CDR2、および配列番号17に記載の配列を持つVH CDR3を含み;
好ましくは、前記重鎖可変領域が、ヒト(例えば、ヒト免疫グロブリン)から得られるフレームワーク領域配列をさらに含む、二重特異性抗体。
【請求項4】
前記クラウディン18.2結合実体が、
(a)以下から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH):
(i)配列番号1に記載の配列;
(ii)配列番号1に記載の配列と比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;または
(iii)配列番号1に記載の配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の配列同一性を有する配列;
および/あるいは
(b)以下から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL):
(iv)配列番号2に記載の配列;
(v)配列番号2に記載の配列と比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;または
(vi)配列番号2に記載の配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の配列同一性を有する配列
を含み;
好ましくは、(ii)または(v)に記述される前記置換が、保存的置換であり;
好ましくは、前記クラウディン18.2結合実体が、配列番号1に記載の配列を有するVHおよび配列番号2に記載の配列を有するVLを含む、請求項3に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
前記4-1BB結合実体が、
(a)以下から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH):
(i)配列番号3または25に記載の配列;
(ii)配列番号3もしくは25に記載の配列と比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;または
(iii)配列番号3もしくは25に記載の配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列
を含み、
好ましくは、(ii)に記述される前記置換が、保存的置換である、請求項3または4に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
前記クラウディン18.2結合実体が、
(a)ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域(CH)またはそのバリアントであって、前記バリアントが、それが得られる野生型配列と比較して1つもしくは複数のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、最大20、最大15、最大10もしくは最大5アミノ酸の置換、欠失もしくは付加;例えば、1、2、3、4もしくは5アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有するバリアント;および
(b)ヒト免疫グロブリン軽鎖定常領域(CL)またはそのバリアントであって、前記バリアントが、それが得られる野生型配列と比較して、最大20アミノ酸の保存的置換(例えば、最大15、最大10または最大5アミノ酸の保存的置換;例えば、1、2、3、4または5アミノ酸の保存的置換)を有するバリアント
をさらに含み、
好ましくは、前記重鎖定常領域が、IgG重鎖定常領域であり、例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4重鎖定常領域であり;好ましくは、前記軽鎖定常領域が、κまたはλ軽鎖定常領域であり;
好ましくは、前記クラウディン18.2結合実体が、配列番号8に記載の軽鎖定常領域(CL)を含み;
好ましくは、前記二重特異性抗体が、Fc受容体(FcR)に結合しないFc断片をさらに含み;あるいはエフェクター機能を減少させたFc断片を含み、前記エフェクター機能が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞性貪食作用(ADCP)であり;
好ましくは、前記Fc断片が、以下の突然変異体:
(a)L235E突然変異を有するIgG1 Fc断片;
(b)L234Aおよび/またはL235A突然変異を有するIgG1 Fc断片;
(c)P329GまたはP329A突然変異を有するIgG1 Fc断片;
(d)F234Aおよび/またはL235AもしくはL235E突然変異を有するIgG4 Fc断片;
(e)H268Q、V309L、A330Sおよび/またはP331S突然変異を有するIgG2 Fc断片;あるいは
(f)V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330Sおよび/またはP331S突然変異を有するIgG2 Fc断片
のうちのいずれか1つから選択され;
好ましくは、前記Fc断片が、L234AおよびL235A突然変異を有するIgG1 Fc断片であり;
好ましくは、前記Fc断片が、配列番号4に記載の配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
前記二重特異性抗体が、ペプチドリンカーをさらに含み、前記クラウディン18.2結合実体および前記4-1BB結合実体が、ペプチドリンカーによって接続されており;
好ましくは、前記クラウディン18.2結合実体の前記重鎖定常領域の前記C末端と前記4-1BB結合実体の前記重鎖可変領域のN末端が、ペプチドリンカーによって接続されており;
好ましくは、前記ペプチドリンカーが、配列番号5または26に記載の配列を有し;
好ましくは、前記二重特異性抗体の前記重鎖が、配列番号6、27、28または29に記載のアミノ酸配列を有し;
好ましくは、前記二重特異性抗体の前記軽鎖が、配列番号7に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の二重特異性抗体もしくはその重鎖および/もしくは軽鎖、またはクラウディン18.2結合実体の前記重鎖可変領域および/もしくは前記軽鎖可変領域、または4-1BB結合実体の前記重鎖可変領域をコードする、単離された核酸分子。
【請求項9】
請求項8に記載の単離された核酸分子を含むベクターであって、好ましくは、クローニングベクターまたは発現ベクターである、ベクター。
【請求項10】
請求項8に記載の単離された核酸分子または請求項9に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の二重特異性抗体および前記二重特異性抗体に接続された治療的薬剤を含む免疫複合体であって、
好ましくは、前記治療的薬剤が、細胞傷害性薬剤から選択され;
好ましくは、前記治療的薬剤が、アルキル化薬、分裂抑制因子、抗腫瘍性抗生物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種薬剤およびその任意の組合せからなる群から選択され;
好ましくは、前記免疫複合体が、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である、免疫複合体。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか一項に記載の二重特異性抗体または請求項11に記載の免疫複合体、ならびに薬学的に許容可能な担体および/もしくは賦形剤を含む医薬組成物であって、
好ましくは、前記医薬組成物が、追加の薬学的に活性な薬剤をさらに含み;
好ましくは、前記追加の薬学的に活性な薬剤が、アルキル化薬、分裂抑制因子、抗腫瘍性抗生物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種、放射線感受性増強物質、抗血管新生剤、サイトカイン、分子標的化した薬物、免疫チェックポイント阻害剤または腫瘍溶解性ウイルスなどの抗腫瘍活性がある薬物であり;
好ましくは、前記二重特異性抗体または免疫複合体および前記追加の薬学的に活性な薬剤が、別々の成分としてまたは前記同じ組成物の成分として提供される、医薬組成物。
【請求項13】
クラウディン18.2を発現する腫瘍細胞の成長を阻害する、および/または前記腫瘍細胞を致死させるための方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、もしくは請求項11に記載の免疫複合体、または請求項12に記載の医薬組成物の有効な量と前記腫瘍細胞とを接触させることを含む、方法。
【請求項14】
対象(例えば、ヒト)において腫瘍を予防および/または処置するための医薬の製造における請求項1~7のいずれか一項に記載の二重特異性抗体もしくは請求項11に記載の免疫複合体の使用であって、
好ましくは、前記医薬が、追加の薬学的に活性な薬剤をさらに含み;
好ましくは、前記追加の薬学的に活性な薬剤が、アルキル化薬、分裂抑制因子、抗腫瘍性抗生物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種、放射線感受性増強物質、抗血管新生剤、サイトカイン、分子標的化した薬物、免疫チェックポイント阻害剤または腫瘍溶解性ウイルスなどの抗腫瘍活性がある薬物であり;
好ましくは、前記腫瘍が、クラウディン18.2を発現し;
好ましくは、前記腫瘍が、クラウディン18.2を発現する腫瘍細胞を含み;好ましくは、前記クラウディン18.2が、前記腫瘍細胞の表面に発現され;
好ましくは、前記腫瘍が、胃がん、肝臓がん、胆道がん、腎細胞がん、膵臓がん、非小細胞肺がん、中皮腫、卵巣がん、精巣がん、子宮内膜がん、肺がん、食道がん、膵臓がん、気管支がん、乳がん、耳鼻咽喉(ENT)がん、大腸がん、頭頸部がん、胆嚢がんからなる群から選択され;
好ましくは、前記対象が、ヒトなどの哺乳動物である、使用。
【請求項15】
キットの製造における請求項1~7のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、または請求項11に記載の免疫複合体、または請求項12に記載の医薬組成物の使用であって、前記キットが、
(1)クラウディン18.2を発現する細胞を認識するかまたはそれと結合すること;
(2)4-1BBを発現する細胞を認識するかまたはそれと結合すること;
(3)細胞のNF-κBシグナル伝達経路を活性化すること;
(4)細胞(例えば、免疫細胞)を誘導して、殺腫瘍活性を活性化すること;
(5)細胞(例えば、免疫細胞)を誘導して、サイトカイン(例えば、IFNγおよびIL-2)を分泌させること;
(6)(1)~(5)の任意の組合せ
のために使用される、使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本出願は、生医学技術の分野に属する。より具体的には、本出願は、二重特異性抗体ならびに二重特異性抗体を含有する免疫複合体および医薬組成物に関する。本出願は、二重特異性抗体および二重特異性抗体を含有する免疫複合体ならびに医薬組成物の使用にも関する。
【0002】
背景
胃がんは、世界で最も一般的ながんの1つであり、2018年には100万超の新たな症例が診断された。National Cancer Registration Centerの最近のデータによれば、中国は、胃がんの発生率が高く、悪性腫瘍の発症率で第2位にランク付けされる。胃がん全体の予後は悪く、5年生存率10%~30%の範囲を特徴とし、進行した胃がん患者の5年生存率は、10%未満である。正常組織では、クラウディン18アイソフォーム2(クラウディン18.2)が胃組織細胞において独占的に発現し、閉鎖帯の形成を助長する膜結合型タンパク質として働く。しかしながら、クラウディン18.2は、胃がんおよび膵臓がんを含めた様々な腫瘍細胞において上方調節される。クラウディン18.2を標的化するモノクローナル抗体であるゾルベツキシマブ(IMAB362)は、臨床試験において有効性および僅かな毒性を示した。
【0003】
リンパ球は、CD27、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)およびGITR(CD357)など、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリ内の様々な共刺激受容体を発現する。これら受容体は、活性化されると、免疫効果および記憶応答を増強させる。アゴニスト抗体でこれら受容体を標的化することは、リンパ球を効果的に活性化し、その抗腫瘍効果を増強する。T細胞およびNK細胞の重要な共刺激受容体である4-1BBは、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた場合、特に免疫原性がより低い腫瘍において有望な抗がん効果を示す。しかしながら、4-1BBモノクローナル抗体アゴニスト(例えば、ウレルマブ)の臨床開発の間に重篤な標的関連肝臓毒性が観察され、4-1BB受容体を介する免疫細胞の全身的活性化に関連する安全性リスクの証拠が提供された。
【0004】
したがって、腫瘍(例えば、クラウディン18.2を発現する腫瘍)に対する免疫細胞を効果的に活性化しながら、起こりうる肝臓関連毒性を排除することが可能な二重特異性抗体の必要性が生じている。
【0005】
本発明の内容
本出願の発明者らは、豊富な実験および反復した探究によって二重特異性抗体を調製した。腫瘍細胞によって発現されるクラウディン18.2によって媒介されると、その二重特異性抗体は、免疫細胞の4-1BB受容体シグナル伝達経路を特異的に活性化し、それにより免疫細胞の抗腫瘍効果を効果的に活性化し、起こりうる全身活性化毒性を排除する。
【0006】
したがって、第1の態様において、本出願は、クラウディン18.2結合実体および4-1BB結合実体を含む二重特異性抗体であって、クラウディン18.2結合実体は、2対の同一の免疫グロブリン鎖を含み、免疫グロブリン鎖の各対は、軽鎖および重鎖を有し、重鎖は、重鎖可変領域および重鎖定常領域を含み;軽鎖は、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を含み;4-1BB結合実体は、重鎖可変領域を含み;4-1BB結合実体の重鎖可変領域は、クラウディン18.2結合実体の重鎖のC末端に接続されており;
クラウディン18.2結合実体は、配列番号1に記載の重鎖可変領域(VH)内に含有されるVH CDR1もしくはそのバリアント、VH CDR2もしくはそのバリアントおよびVH CDR3もしくはそのバリアント;ならびに/または配列番号2に記載の軽鎖可変領域(VL)内に含有されるVL CDR1もしくはそのバリアント、VL CDR2もしくはそのバリアントおよびVL CDR3もしくはそのバリアントを含み;
4-1BB結合実体は、配列番号3もしくは25に記載の重鎖可変領域(VH)内に含有されるVH CDR1もしくはそのバリアント、VH CDR2もしくはそのバリアントおよびVH CDR3もしくはそのバリアントを含み;
バリアントは、それが得られる配列と比較して、1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加、例えば保存的置換)を有する、二重特異性抗体を提供する。
【0007】
特定の実施形態において、置換は保存的置換である。
【0008】
特定の実施形態において、VH中に含有される3つのCDRおよび/またはVL中に含有される3つのCDRは、Kabat、IMGTまたはChothia付番方式によって定義される。
【0009】
特定の実施形態において、上述の抗体またはその抗原結合断片は、
(1)クラウディン18.2結合実体が、
以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号9に記載の配列を持つVH CDR1、配列番号10に記載の配列を持つVH CDR2、および配列番号11に記載の配列を持つVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに/または以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号12に記載の配列を持つVL CDR1、配列番号13に記載の配列を持つVL CDR2、および配列番号14に記載の配列を持つVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含み;CDRが、IMGT付番方式によって定義されること;または
(2)4-1BB結合実体が、
以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号15に記載の配列を持つVH CDR1、配列番号16に記載の配列を持つVH CDR2、および配列番号17に記載の配列を持つVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)を含み;CDRが、IMGT付番方式によって定義されること
から選択される1つまたは2つの特徴を有する。
【0010】
別の態様において、本出願は、クラウディン18.2結合実体および4-1BB結合実体を含む二重特異性抗体であって、クラウディン18.2結合実体は、2対の同一の免疫グロブリン鎖を含み、免疫グロブリン鎖の各対は、軽鎖および重鎖を有し、重鎖は、重鎖可変領域および重鎖定常領域を含み;軽鎖は、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を含み;4-1BB結合実体は、重鎖可変領域を含み;4-1BB結合実体の重鎖可変領域は、クラウディン18.2結合実体の重鎖のC末端に接続されており;
クラウディン18.2結合実体の重鎖可変領域(VH)は、以下の3つの相補性決定領域(CDR):
(i)配列番号9、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR1、
(ii)配列番号10、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR2、および
(iii)配列番号11、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR3
を含み、
クラウディン18.2結合実体の軽鎖可変領域(VL)は、以下の3つの相補性決定領域(CDR):
(iv)配列番号12、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR1、
(v)配列番号13、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR2、および
(vi)配列番号14、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVL CDR3
を含み、
4-1BB結合実体の重鎖可変領域は、以下の3つの相補性決定領域(CDR):
(vii)配列番号15、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR1、
(viii)配列番号16、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR2、および
(ix)配列番号17、またはそれと比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列からなるVH CDR3
を含む、二重特異性抗体を提供する。
【0011】
特定の実施形態において、(i)~(ix)のいずれかに記載のCDRは、Kabat、IMGTまたはChothia付番方式によって定義される。
【0012】
特定の実施形態において、クラウディン18.2結合実体は、以下の3つの重鎖CDR:配列番号9に記載の配列を持つVH CDR1、配列番号10に記載の配列を持つVH CDR2、配列番号11に記載の配列を持つVH CDR3;ならびに/または以下の3つの軽鎖CDR:配列番号12に記載の配列を持つVL CDR1、配列番号13に記載の配列を持つVL CDR2、および配列番号14に記載の配列を持つVL CDR3を含む。
【0013】
特定の実施形態において、4-1BB結合実体の重鎖可変領域(VH)は、以下の3つの重鎖CDR:配列番号15に記載の配列を持つVH CDR1、配列番号16に記載の配列を持つVH CDR2、および配列番号17に記載の配列を持つVH CDR3を含む。
【0014】
特定の実施形態において、重鎖可変領域は、ヒト(例えば、ヒト免疫グロブリン)から得られるフレームワーク領域配列をさらに含む。
【0015】
特定の実施形態において、クラウディン18.2結合実体は、
(a)以下から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH):
(i)配列番号1に記載の配列;
(ii)配列番号1に記載の配列と比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;または
(iii)配列番号1に記載の配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の配列同一性を有する配列;
および/あるいは
(b)以下から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL):
(iv)配列番号2に記載の配列;
(v)配列番号2に記載の配列と比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;または
(vi)配列番号2に記載の配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の配列同一性を有する配列
を含む。
【0016】
特定の実施形態において、(ii)または(v)に記述される置換は、保存的置換である。
【0017】
特定の実施形態において、クラウディン18.2結合実体は、配列番号1に記載の配列を有するVHおよび配列番号2に記載の配列を有するVLを含む。
【0018】
特定の実施形態において、4-1BB結合実体は、
(a)以下から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH):
(i)配列番号3または25に記載の配列;
(ii)配列番号3もしくは25に記載の配列と比較して1つもしくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、1、2、3、4もしくは5アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有する配列;または
(iii)配列番号3もしくは25に記載の配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列
を含む。
【0019】
特定の実施形態において、(ii)に記述される置換は、保存的置換である。
【0020】
本出願の単一ドメイン抗体は、特定の生物学的供給源または特定の調製方法に限定されない。例えば、本出願の単一ドメイン抗体は、(1)天然に存在するVHHドメインを「ヒト化する」またはそのようなヒト化VHHドメインをコードする核酸を発現させる;(2)合成または半合成技術を使用してタンパク質、ポリペプチドもしくは他のアミノ酸配列を調製する;(3)核酸合成技術を使用して、単一ドメイン抗体をコードする核酸を調製し、次いでそのように得られた核酸を発現させる;および/または(4)前述の任意の組合せによって得ることができる。
【0021】
特定の実施形態において、クラウディン18.2結合実体は、
(a)ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域(CH)またはそのバリアントであって、バリアントが、それが得られる野生型配列と比較して1つもしくは複数のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加(例えば、最大20、最大15、最大10または最大5アミノ酸の置換、欠失もしくは付加;例えば、1、2、3、4もしくは5アミノ酸の置換、欠失もしくは付加)を有するバリアント;および
(b)ヒト免疫グロブリン軽鎖定常領域(CL)またはそのバリアントであって、バリアントが、それが得られる野生型配列と比較して、最大20アミノ酸の保存的置換(例えば、最大15、最大10または最大5アミノ酸の保存的置換;例えば、1、2、3、4または5アミノ酸の保存的置換)を有するバリアント
をさらに含む。
【0022】
特定の実施形態において、重鎖定常領域は、IgG重鎖定常領域であり、例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4重鎖定常領域である。
【0023】
特定の実施形態において、軽鎖定常領域は、κまたはλ軽鎖定常領域である。
【0024】
特定の実施形態において、クラウディン18.2結合実体は、配列番号8に記載の軽鎖定常領域(CL)を含む。
【0025】
特定の実施形態において、二重特異性抗体は、Fc受容体(FcR)に結合しないFc断片をさらに含み;あるいはエフェクター機能を減少させたFc断片を含み、エフェクター機能は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞性貪食作用(ADCP)である。
【0026】
特定の実施形態において、Fc断片は、以下の突然変異体:
(a)L235E突然変異を有するIgG1 Fc断片;
(b)L234Aおよび/またはL235A突然変異を有するIgG1 Fc断片;
(c)P329GまたはP329A突然変異を有するIgG1 Fc断片;
(d)F234Aおよび/またはL235AもしくはL235E突然変異を有するIgG4 Fc断片;
(e)H268Q、V309L、A330Sおよび/またはP331S突然変異を有するIgG2 Fc断片;または
(f)V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330Sおよび/またはP331S突然変異を有するIgG2 Fc断片
のうちのいずれか1つから選択される。
【0027】
特定の実施形態において、Fc断片は、L234AおよびL235A突然変異を有するIgG1 Fc断片である。
【0028】
特定の実施形態において、Fc断片は、配列番号4に記載の配列を有する。
【0029】
特定の実施形態において、二重特異性抗体は、ペプチドリンカーをさらに含み、クラウディン18.2結合実体および4-1BB結合実体は、ペプチドリンカーによって接続される。
【0030】
特定の実施形態において、クラウディン18.2結合実体の重鎖定常領域のC末端は、ペプチドリンカーによって4-1BB結合実体の重鎖可変領域のN末端に接続される。
【0031】
ペプチドリンカーは、任意のアミノ酸を含むことができる。特定の実施形態において、ペプチドリンカーは、グリシン(G)およびセリン(S)を含む。特定の実施形態において、ペプチドリンカーは、長さ1~50アミノ酸を有する。ペプチドリンカーは、タンパク質が適切に折り畳まれることを可能にするのに十分な程度の柔軟性を提供するのに十分な長さである。ペプチドリンカーの長さおよびアミノ酸組成は、当業技術者によって容易に選択されうる。
【0032】
特定の実施形態において、ペプチドリンカーは、配列番号5または26に記載の配列を有する。
【0033】
二重特異性抗体を調製するための様々な方法は、先行技術に開示されている。例えば、米国特許第5,989,830号は、二重特異性抗体を調製するための方法を開示しており、二重特異性抗体断片は、2つのポリペプチド鎖をコードするバイシストロニックベクターを発現させることによって得られ、二重特異性抗体の1つのポリペプチド鎖は、ペプチドリンカーによって連続して接続されたVHを2つ有する(すなわち、VH1-ペプチドリンカー-VH2)。
【0034】
特定の実施形態において、二重特異性抗体の重鎖は、配列番号6、27、28または29に記載のアミノ酸配列を有する。
【0035】
特定の実施形態において、二重特異性抗体の軽鎖は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を有する。
【0036】
第2の態様において、本出願は、上述の二重特異性抗体、またはその重鎖および/もしくは軽鎖、またはクラウディン18.2結合実体の重鎖可変領域および/もしくは軽鎖可変領域、または4-1BB結合実体の重鎖可変領域をコードする単離された核酸分子を提供する。そのような核酸分子は、その生産方法によって限定されるものではなく、遺伝子工学組換え技術または化学合成方法を使用して得ることができる。
【0037】
第3の態様において、本出願は、上述の単離された核酸分子を含むベクターを提供する。特定の実施形態において、ベクターは、クローニングベクターまたは発現ベクターである。特定の好ましい実施形態において、本発明のベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、等である。
【0038】
第4の態様において、本出願は、上述の単離された核酸分子または上述のベクターを含む宿主細胞を提供する。そのような宿主細胞には、大腸菌細胞などの原核生物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞および動物細胞(例えば、マウス細胞、ヒト細胞などの哺乳動物細胞、等)などの真核生物細胞があるが、これに限定されない。本発明の細胞は、HEK293細胞などの細胞株でもよい。
【0039】
別の態様において、本出願は、本発明の二重特異性抗体を調製するための方法であって、本発明の宿主細胞を適切な条件下で培養することと、細胞培養から本発明のクラウディン18.2結合実体および/または4-1BB結合実体を回収することとを含む、方法も提供する。
【0040】
任意選択で、クラウディン18.2結合実体と4-1BB結合実体は、ペプチドリンカーによって連結される。
【0041】
別の態様において、本発明は、本発明の二重特異性抗体を含むキットを提供する。特定の好ましい実施形態において、本発明の二重特異性抗体は、検出可能な標識をさらに含む。特定の好ましい実施形態において、キットは、本発明の二重特異性抗体を特異的に認識する二次抗体をさらに含む。特定の好ましい実施形態において、二次抗体は、検出可能な標識をさらに含む。そのような検出可能な標識は、当業技術者に周知であり、放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、着色物質および酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、等があるが、これに限定されない。
【0042】
第5の態様において、本出願は、上述の二重特異性抗体および二重特異性抗体に連結された治療的薬剤を含む免疫複合体を提供する。
【0043】
特定の実施形態において、治療的薬剤は、細胞傷害性薬剤から選択される。
【0044】
特定の実施形態において、治療的薬剤は、アルキル化薬、分裂抑制因子、抗腫瘍性抗生物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種薬剤およびその任意の組合せからなる群から選択される。
【0045】
特定の実施形態において、免疫複合体は、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。
【0046】
第6の態様において、本出願は、上述の二重特異性抗体または上述の免疫複合体、ならびに薬学的に許容可能な担体および/もしくは賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0047】
特定の実施形態において、医薬組成物は、追加の薬学的に活性な薬剤をさらに含む。
【0048】
特定の実施形態において、追加の薬学的に活性な薬剤は、アルキル化薬、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍性抗生物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種薬剤、放射線感受性増強物質、抗血管新生剤、サイトカイン、分子標的化した薬物、免疫チェックポイント阻害剤または腫瘍溶解性ウイルスなどの抗腫瘍活性がある薬物である。
【0049】
特定の実施形態において、二重特異性抗体または免疫複合体および追加の薬学的に活性な薬剤は、別々の成分としてまたは同じ組成物の成分として提供される。
【0050】
第7の態様において、本出願は、クラウディン18.2を発現する腫瘍細胞の成長を阻害する、および/または腫瘍細胞を致死させるための方法であって、上述の二重特異性抗体、もしくは上述の免疫複合体、または上述の医薬組成物の有効な量と腫瘍細胞とを接触させることを含む、方法を提供する。
【0051】
第8の態様において、本出願は対象(例えば、ヒト)において腫瘍を予防および/または処置するための医薬の製造における、上述の二重特異性抗体もしくは上述の免疫複合体の使用を提供する。
【0052】
特定の実施形態において、医薬は、追加の薬学的に活性な薬剤をさらに含む。
【0053】
特定の実施形態において、追加の薬学的に活性な薬剤は、アルキル化薬、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍性抗生物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種薬剤、放射線感受性増強物質、抗血管新生剤、サイトカイン、分子標的化した薬物、免疫チェックポイント阻害剤または腫瘍溶解性ウイルスなどの抗腫瘍活性がある薬物である。
【0054】
特定の実施形態において、腫瘍はクラウディン18.2を発現する。
【0055】
特定の実施形態において、腫瘍は、クラウディン18.2を発現する腫瘍細胞を含む。特定の実施形態において、クラウディン18.2は、腫瘍細胞の表面に発現される。
【0056】
特定の実施形態において、腫瘍は、胃がん、肝臓がん、胆道がん、腎細胞がん、膵臓がん、非小細胞肺がん、中皮腫、卵巣がん、精巣がん、子宮内膜がん、肺がん、食道がん、膵臓がん、気管支がん、乳がん、耳鼻咽喉(ENT)がん、大腸がん、頭頸部がんおよび胆嚢がんからなる群から選択される。
【0057】
特定の実施形態において、対象は、ヒトなどの哺乳動物である。
【0058】
第9の態様において、本出願は、キットの製造における、上述の二重特異性抗体、もしくは上述の免疫複合体、または上述の医薬組成物の使用であって、キットは、
(1)クラウディン18.2を発現する細胞を認識するかまたはそれと結合すること;
(2)4-1BBを発現する細胞を認識するかまたはそれと結合すること;
(3)細胞のNF-κBシグナル伝達経路を活性化すること;
(4)細胞(例えば、免疫細胞)を誘導して、殺腫瘍活性を活性化すること;
(5)細胞(例えば、免疫細胞)を誘導して、サイトカイン(例えば、IFNγおよびIL-2)を分泌させること;
(6)(1)~(5)の任意の組合せ
のために使用される、使用を提供する。
【0059】
特定の実施形態において、免疫細胞は、B細胞、T細胞およびNK細胞からなる群から選択される。
【0060】
用語の定義
本発明において、特に明記しない限り、本明細書に使用される科学および技術的用語は、当業技術者によって一般に理解される意味を有する。さらに、分子遺伝学、核酸化学、化学、分子生物学、生化学、細胞培養、細菌学、細胞生物学、ゲノミクスおよび組換えDNAなど、本明細書に使用される手順は、対応する分野において広く使用されている通常の手順である。同時に、本発明をよりよく理解するために、定義および関連用語の説明が以下に提供される。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「クラウディン18(CLDN18)」とは、細胞膜上に位置する膜貫通タンパク質のことを指す。ヒトCLDN18遺伝子の第1エクソンは、2つの対立遺伝子を含み、2つの固有のスプライスバリアント:クラウディン18.1およびクラウディン18.2を生じる。クラウディン18.1とクラウディン18.2の構造は密接に関連しているにもかかわらず、それらは、正常組織および腫瘍において差異的発現パターンを呈する。クラウディン18.2は、胃粘膜組織において独占的に発現され、その発現は、胃、食道および膵臓がんを含めた様々ながんにおいて高まる。クラウディン18.2のこの上方調節は、原発腫瘍に限定されるものではなく、腫瘍転移においても顕著に発現される。当業技術者は、公開データベース(例えば、NCBI)によってクラウディン18.2の配列、例えば、NCBIデータベースから得られる配列番号NP_001002026.1を得ることができる。本論文において、「クラウディン18.2」は、「CLND18.2」とも称されうる。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「4-1BB」は、CD137としても公知であり、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリ9(TNFRSF9)のメンバーである。それは、活性化したT細胞において主に発現され、4-1BBLを特異的リガンドとするT細胞同時刺激分子として機能する。4-1BBと4-1BBLの間の相互作用は、T細胞活性化および増殖を刺激することができる。当業技術者は、公開データベース(例えば、NCBI)によって4-1BBの配列を得ることができ、例えば、NCBIデータベースにおいて配列番号NP_001552.2のことを指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」とは、2対のポリペプチド鎖で一般に構成される免疫グロブリン分子のことを指し、各対は、軽鎖(LC)および重鎖(HC)を有する。抗体軽鎖は、κ(カッパ)およびλ(ラムダ)軽鎖に分類されうる。重鎖は、μ、δ、γ、αまたはεに分類されえ、抗体のアイソタイプを、それぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEと定義する。軽および重鎖内で、可変および定常領域は、およそ12個またはより多いアミノ酸の「J」領域によって接続され、重鎖は、およそ3個またはより多いアミノ酸の「D」領域も含有する。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)からなる。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接は関係しないが、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)の典型的な補体第1成分(C1q)への結合を含めて、免疫グロブリンと宿主組織または因子との相互作用を媒介するなど様々なエフェクター機能を呈する。また、VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域に挟まれた相補性決定領域(CDR)と呼ばれる高可変性の領域にさらに分割されうる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシル末端へ以下:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された3つのCDRおよび4つのFRからなる。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VHおよびVL)は、抗原結合部位をそれぞれ形成する。各領域またはドメインに対するアミノ酸の割当ては、Kabat、Sequences of Proteins of Immunological Interest[国立衛生研究所、Bethesda、Md.(1987年および1991年)]、またはChothiaおよびLesk(1987年)J.Mol.Biol.196号:901~917頁;Chothiaら(1989年)Nature 342号:878~883頁の定義に従うことができる。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「単一ドメイン抗体(sdAb)」、「ドメイン抗体」および「ナノボディ」は、互換的に使用され、抗体の単一可変ドメイン(例えば重鎖可変領域)で構成される抗体断片のことを指す。一般に、単一ドメイン抗体、構造的ドメイン抗体またはナノボディは、4つのフレームワーク領域と3つの相補性決定領域で構成され、4つのフレームワーク領域は、それぞれFR1~FR4、3つの相補性決定領域は、それぞれCDR1~CDR3である。特定の実施形態において、本出願の単一ドメイン抗体は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の構造を有してもよい。これら抗体は、高い親和性および特異性で抗原を結合するために軽鎖可変領域を必要としない。重鎖および軽鎖で構成される抗体と比較して、ナノボディは、高い可溶性ならびに熱、pH、プロテアーゼおよび他の変形薬剤に対する高い安定性を有し、一本鎖の発現だけで大規模に生産されうる。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「二重特異性抗体」とは、カップリングアームを介して第1の抗体(またはその断片)と第2の抗体(またはその断片)または抗体類似体とによって形成されるコンジュゲートのことを指し、コンジュゲーション方法には、化学反応、遺伝子融合および酵素的方法があるが、これに限定されない。二重特異性抗体は、様々な方法によって連結または生成されえ、例えば、Songsivilaiらの方法[Clin. Exp.Immunol.79号:315~321頁(1990年)]、およびKostelnyらの方法[J.Immunol.148号:1547~1553頁(1992年)]を参照のこと。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト化抗体」とは、遺伝子操作されたヒト以外の抗体のことを指し、そのアミノ酸配列は、ヒト抗体に対する配列相同性を増大させるように修飾されている。一般的に言って、ヒト化抗体のCDR領域の全部または一部は、ヒト以外の抗体(ドナー抗体)に由来し、非CDR領域(例えば、FR)の全部または一部は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)に由来する。ヒト化抗体は、抗原特異性、親和性、反応性、免疫細胞活性を増大させる能力、免疫応答を増強させる能力などがあるが、これに限定されないドナー抗体の予想される特性を通常保持する。ドナー抗体は、所望の特性(例えば、抗原特異性、親和性、反応性、免疫細胞活性を増大させる能力および/または免疫応答を増強させる能力)を持つラクダ由来抗体でもよい。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「結合実体」とは、標的抗原に特異的に結合する任意の単量体または多量体タンパク質もしくはタンパク質断片のことを指す。用語「結合実体」には、抗体または免疫学的に機能的な断片などその結合部分があるが、これに限定されない。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチドリンカー」とは、抗体結合実体に連結するように適合させたペプチドのことを指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「免疫グロブリン」とは、免疫グロブリン遺伝子にコードされる1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質のことを指す。免疫グロブリンは、抗体の基本的な構成ブロックを形成する。抗体は、通常四量体であり、2対の同一の免疫グロブリン鎖で構成され、各対は、軽鎖および重鎖を有する。免疫グロブリン鎖の各対において、軽および重鎖可変領域は、一緒に抗原結合に関与し、定常領域は、抗体エフェクター機能に関与する。
【0070】
本明細書で使用される場合、免疫グロブリンの「軽鎖」は、κ(カッパ)およびλ(ラムダ)軽鎖に分類されうる。重鎖は、μ、δ、γ、αまたはεに分類されえ、抗体のアイソタイプを、それぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEと定義する。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「相補性決定領域」または「CDR」とは、抗原結合に関与する抗体の可変領域中のアミノ酸残基のことを指す。重鎖および軽鎖の可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3と命名される3つのCDRを各々含有する。これらCDRの正確な境界は、Kabat付番方式(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、公衆衛生局、国立衛生研究所、Bethesda、Md.、1991年)、Chothia付番方式(ChothiaおよびLesk(1987年)J.Mol.Biol.196号:901~917頁;Chothiaら(1989年)Nature 342号:878~883頁)またはIMGT付番方式(Lefrancら、Dev.Comparat.Immunol.27号:55~77頁、2003年)など、当業者に公知の様々な付番方式に従って定義されうる。所与の抗体について、熟練した当業者は、各付番方式によって定義されたCDRを容易に同定することになる。さらに、異なる付番方式間の対応は、当業技術者に周知である(例えば、Lefrancら、Dev.Comparat.Immunol.27号:55~77頁、2003年を参照のこと)。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「フレームワーク領域」または「FR」残基とは、上で定義したCDR残基以外の抗体可変領域中のアミノ酸残基のことを指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」、および「mAb」は、同じ意味を有し、互換的に使用され、高度に相同な抗体分子の一群、すなわち、自発的に起こりうる天然の突然変異を除く同一の抗体分子の一群の抗体の抗体断片のことを指す。モノクローナル抗体は、抗原上の単一エピトープに対して非常に特異的である。ポリクローナル抗体は、モノクローナル抗体と関連して、少なくとも2つ以上の異なる種類の抗体を通常含有し、これら異なる抗体は、抗原上の異なるエピトープを通常認識する。さらに、修飾語「モノクローナル」は、抗体が高度に相同な抗体集団から得られると特徴付けられることを単に示すものであり、抗体を調製するために何らかの特定の方法を必要とするとは解釈されない。
【0074】
本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術(例えばKohlerら、Nature、256号:495頁、1975年を参照のこと)、組換えDNA技術(例えば米国特許出願第4,816,567号を参照のこと)またはファージ抗体ライブラリ技術(例えばClacksonら、Nature 352号:624~628頁、1991年またはMarksら、J.Mol.Biol.222号:581~597頁、1991年を参照のこと)などの様々な技術によって調製されうる。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「対象」とは、哺乳動物、例えば霊長類哺乳動物、例えばヒトのことを指す。特定の実施形態において、対象(例えば、ヒト)は腫瘍(例えば、CLDN6および/またはCLDN9を発現する腫瘍)を有する、または上に記載の疾患を患うリスクがある。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」とは、少なくとも一部において、所望の効果を得るのに十分な量のことを指す。例えば、予防的有効量とは、疾患(例えば、腫瘍)の発症を防止、抑制または遅延させるのに十分な量のことを指し;治療上有効な量とは、患者において既存の疾患およびその合併症を治癒させるまたは少なくとも部分的に防止するのに十分な量のことを指す。そのような有効量の決定は、よく当業技術者の能力の範囲内にある。例えば、治療的使用に有効な量は、処置すべき疾患の重症度、患者自身の免疫系の全身状態、年齢、体重および性別などの患者の一般的な条件、薬物が投与される様式、ならびに並行して投与される他の処置、等によって決まることになる。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語「同一性」とは、2つのポリペプチド間または2つの核酸間の配列の一致のことを指すために使用される。比較される両方の配列中の位置が、同じ塩基またはアミノ酸単量体サブユニットによって占有されている場合(例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおいて特定の位置が、アデニンによって占有される、または2つのポリペプチドのそれぞれにおいて特定の位置が、リジンによって占有される)、そのとき分子はその位置で同一である。2つの配列間の「パーセント同一性」は、2つの配列によって共有される一致した位置の数を、比較した位置の数で割って×100した関数である。例えば、2つの配列の10個の位置のうち6個が一致する場合、そのとき2つの配列は60%の同一性を有する。例えば、DNA配列CTGACTとCAGGTTは、50%の同一性を有する(合計6個の位置のうち3個一致)。一般に、比較は、2つの配列を整列させて、最大同一性を得る場合に行われる。そのような整列化は、例えば、Needlemanら(1970年)J.Mol.Biol.48号:443~453頁の方法を使用して完了されえ、その方法は、Alignプログラム(DNAstar社)などのコンピュータプログラムによって都合よく実行されうる。加えて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.MeyersおよびW.Miller[Comput.Appl Biosci.4号:11~17頁(1988年)]のアルゴリズムを使用して、PAM120加重残基表ならびにギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用することによって2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を決定することもできる。さらに、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanおよびWunsch[J MoIBiol.48号:444~453頁(1970年)]のアルゴリズムが、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスならびにギャップ加重16、14、12、10、8、6もしくは4および長さ加重1、2、3、4、5もしくは6を使用することによって、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性に使用されうる。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「保存的置換」とは、アミノ酸配列を含むタンパク質/ポリペプチドの予想される特性に悪影響を及ぼさないまたは改変しないアミノ酸置換のことを指す。例えば、保存的置換は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介性突然変異誘発など、当業者に公知の標準的な技術によって導入されうる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置きかえられる置換を含み、例えば、対応するアミノ酸残基に物理的または機能的に類似している残基(例えば、類似のサイズ、形状、電荷、共有結合または水素結合を形成する能力を含めた化学的特性、等を有する)が置換に使用される。類似の側鎖を持つアミノ酸残基のファミリーが、当業者において定義されている。これらファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニンおよびヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、無極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンアミノ酸、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝状側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を持つアミノ酸を含む。したがって、対応するアミノ酸残基を同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置きかえることが好ましい。アミノ酸の保存的置換を同定するための方法は、当業者に周知である[例えば、参照により本明細書に組み込む、Brummellら、Biochem.32号:1180~1187頁(1993年);Kobayashiら、Protein Eng.12巻(10号):879~884頁(1999年);およびBurksら、Proc.NatlAcad.Set USA、94号:412~417頁(1997年)を参照のこと]。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「L234A突然変異」とは、天然のFc断片の234位のアミノ酸の、LからAへの突然変異のことを指す。同様に、「L235A突然変異」とは、天然のFc断片の235位のアミノ酸の、LからAへの突然変異のことを指す。
【0080】
本発明の有益な効果
先行技術と比較して、本出願において調製される二重特異性抗体は、クラウディン18.2を発現する細胞を認識するかもしくはそれと結合することができ、および/または4-1BBを発現する細胞を認識するかもしくはそれと結合することができる。さらに、それは、細胞のNF-κBシグナル伝達経路を活性化し、殺腫瘍活性を活性化するように細胞を誘導することができ、サイトカイン(例えば、IFNγおよびIL-2)を分泌するように細胞を誘導することもでき、対象において腫瘍を予防および/または処置することができる。さらに、二重特異性抗体は、市販のモノクローナル抗体もしくは組み合わせて使用されるモノクローナル抗体と比較して、腫瘍を予防および/または処置することにおいてより顕著な効果を有する。
【0081】
加えて、4-1BBを標的化しているモノクローナル抗体と比較した場合、本出願における二重特異性抗体は、肝臓関連標的化効果を減少させる。腫瘍関連抗原(TAA)であるクラウディン18.2を使用してFc受容体(FcR)結合特性を欠く4-1BB受容体を架橋することにより、4-1BB関連の毒性なく標的化した抗腫瘍有効性が達成された。同時に、本出願は、FcR結合を効果的に除去または減少させるか、またはFc媒介性生物学的活性を限定することが可能なFcドメインを組み込んだ。
【0082】
本発明の実施形態は、付属する図面および例を参照して以下に詳細に記述されることになるが、以下の図面および例は、本発明を例示するために単に使用されるものであり、本発明の範囲を限定しないことを当業技術者は理解することになる。本発明の様々な目的および有利な態様は、付属する図面および好ましい実施形態の以下の詳細な説明から当業技術者に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】本出願におけるクラウディン18.2および4-1BBを標的化する二重特異性抗体の概略図である。
図2】クラウディン18.2に結合する本出願の二重特異性抗体の結果を示す図である。その中で、図2のAは、クラウディン18.2を内因的に発現するNUGC4細胞に結合する本出願の二重特異性抗体の結果を示し;図2のBは、MC38細胞によって過剰発現されるヒトクラウディン18.2に結合する本出願の二重特異性抗体の結果を示し;クラウディン18.2×4-1BB biAbは、本出願の二重特異性抗体であり、4-1BB sdAbは、4-1BB単一ドメイン抗体であり、クラウディン18.2 mAbは、クラウディン18.2モノクローナル抗体であった。
図3】CHO細胞によって過剰発現されるヒト4-1BBに結合する本出願の二重特異性抗体の結果を示す図であり;クラウディン18.2×4-1BB biAbは、本出願の二重特異性抗体であり、4-1BB sdAbは、4-1BB単一ドメイン抗体であり、クラウディン18.2 mAbは、クラウディン18.2モノクローナル抗体であり、ウレルマブは、4-1BBモノクローナル抗体であった。
図4】Jurkat細胞においてNF-κBシグナル伝達経路を活性化する本出願の二重特異性抗体の結果を示す図であり;クラウディン18.2×4-1BB biAbは、本出願の二重特異性抗体であり、4-1BB sdAbは、4-1BB単一ドメイン抗体であり、クラウディン18.2 mAbは、クラウディン18.2モノクローナル抗体であり、ウレルマブは、4-1BBモノクローナル抗体であった。
図5】本出願の二重特異性抗体によって誘導される末梢血単核細胞(PBMC)によるクラウディン18.2陽性腫瘍細胞NUGC4の致死の結果を示す図であり;クラウディン18.2×4-1BB biAbは、本出願の二重特異性抗体であり、4-1BB sdAbは、4-1BB単一ドメイン抗体であり、ウレルマブは、4-1BBモノクローナル抗体であった。
図6】本出願の二重特異性抗体によってPBMCからのサイトカインの放出を誘導した結果を示す図であり、図6のAは、サイトカインIFNγ放出の結果を示し、図6のBは、サイトカインIL-2放出の結果を示し;クラウディン18.2×4-1BB biAbは、本出願の二重特異性抗体であり、4-1BB sdAbは、4-1BB単一ドメイン抗体であり、ウレルマブは、4-1BBモノクローナル抗体であり、Neg Ctrlは、陰性対照であった。
図7】本出願の二重特異性抗体の腫瘍阻害活性の検出結果を示す図である。その中で、PBSは、陰性対照であり、クラウディン18.2×4-1BB biAbは、本出願の二重特異性抗体であり、IMAB362は、クラウディン18.2モノクローナル抗体であり、クラウディン18.2 mAb+4-1BB sdAbは、本出願の二重特異性抗体を構築するために使用した2つの抗体の組合せであった。
図8】本出願の二重特異性抗体の腫瘍阻害性記憶効果の検出結果を示す図である。その中で、PBSは、陰性対照であり、クラウディン18.2×4-1BB biAbは、異なる濃度での本出願の二重特異性抗体であり、腫瘍接種が再び実行された場合、新たな4-1BB KIマウスにおけるPBSは、陰性対照であった。
【0084】
配列情報
本発明に含まれる部分配列の情報が、下の表1に提供される。
【0085】
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】

【表1-5】

【表1-6】

【表1-7】

【表1-8】

【表1-9】

【表1-10】

【表1-11】
【0086】
本発明を実施するための特定のモデル
本発明は、本発明を例示するが、限定することを意図しない以下の実施例を参照して次に記述されることになる。
【0087】
他に指示されない限り、実施例に記述される実験および方法は、当技術分野において周知であり、様々な参照に記述されている従来通りの方法に従って基本的に実行された。例えば、本発明に使用される免疫学、生化学、化学、分子生物学、細菌学、細胞生物学、ゲノミクスおよび組換えDNAなどの従来通りの技術については、Sambrook、FritschおよびManiatis、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版(1989年);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、F.M.Ausubelら編、(1987年);「METHODS IN ENZYMOLOGY」シリーズ(Academic Publishing Company):「PCR 2:A PRACTICAL APPROACH」、M.J.MacPherson、B.D.HamesおよびG.R.Taylor編(1995年);およびANIMAL CELL CULTURE、R.I.Freshney編(1987年)を参照のこと。
【0088】
加えて、特定の条件が、実施例において指定されない場合、従来通りの条件または製造業者によって推奨される条件に従うことになる。使用された試薬または機器の製造業者が示されない場合、それらは全て、商業的に購入可能な従来通りの製品であった。当業技術者は、実施例は、例として本発明について記載するものであり、特許請求される本発明の範囲を限定することを意図するものではないと認識することになる。本明細書に言及される刊行物および他の参照の全ては、その全体を参照により組み込む。
【実施例
【0089】
実施例1
抗クラウディン18.2×4-1BB二重特異性抗体のクローニングおよび発現
この例において、抗クラウディン18.2×4-1BB二重特異性抗体(biAb)を構築した。クラウディン18.2×4-1BB biAbは、2本のポリペプチド鎖からなり、その構造的線図を図1に図示する。二重特異性抗体の重鎖は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を有し、その配列は、クラウディン18アイソフォーム2(クラウディン18.2)に対するモノクローナル抗体である抗クラウディン18.2 mAbの重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1)、ヒトIgG1 Fcアミノ酸配列(LALA突然変異を導入してFc機能を減少させた、配列番号4)、フレキシブルペプチドアミノ酸配列(配列番号5)、および4-1BBに対する単一ドメイン抗体の4-1BB結合領域のアミノ酸配列(配列番号3)を含有した。その中で、4-1BBに対する単一ドメイン抗体の4-1BB重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号3)のN末端は、フレキシブルペプチド(配列番号5)を介してFcのC末端に接続されている。
【0090】
二重特異性抗体の軽鎖は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を有し、その配列は、クラウディン18アイソフォーム2に対するモノクローナル抗体である抗クラウディン18.2 mAbの軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号2)、およびVLアミノ酸配列のC末端にヒトκ軽鎖定常領域(CL)のアミノ酸配列(配列番号8)を含有した。
【0091】
ExpiCHO(商標)Expression System Kit(Thermoから購入した)を使用して、抗体重鎖および軽鎖のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(二重特異性抗体クラウディン18.2×4-1BB biAb重鎖アミノ酸配列は、配列番号6に記載され、二重特異性抗体クラウディン18.2×4-1BB biAb軽鎖アミノ酸配列は、配列番号7に記載される)を含む抗体発現プラスミドをExpi-CHO細胞へそれぞれ導入した。トランスフェクション方法は、製品の説明書に従った。細胞を5日間培養した後、上清を採集し、標的タンパク質を、プロテインA磁気ビーズ(GenScriptから購入した)を使用する選別方法によって精製した。磁気ビーズを、適当な容積の結合緩衝液(PBS+0.1% Tween 20、pH7.4)(磁気ビーズの容積の1~4倍)中に再懸濁し、精製しようとする試料に添加し、その間穏やかに振盪しながら室温で1時間インキュベートした。試料を磁気スタンド(Beaverから購入した)上に置き、上清を廃棄し、磁気ビーズを結合緩衝液で3回洗浄した。磁気ビーズの容積の3~5倍容積の溶出緩衝液(0.1Mクエン酸ナトリウム、pH3.2)を添加し、室温で5~10分間振盪し、磁気スタンドに戻して置き、次いで、溶出緩衝液を採集し、中和緩衝液(1Mトリス、pH8.54)を添加した採集チューブに移し、よく混合した。本出願の二重特異性抗体をこのように得た。
【0092】
ExpiCHO(商標)Expression System Kit(Thermoから購入した)を使用して、抗体の重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列(ウレルマブモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号20および配列番号21に記載され;4-1BB単一ドメイン抗体重鎖をコードするヌクレオチド配列は、配列番号22に記載され;クラウディン18.2重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号23および配列番号24に記載される)を含有する発現プラスミドを、Expi-CHO細胞へ導入した。トランスフェクション方法は、製品の説明書に従った。細胞を5日間培養した後、上清を採集し、標的化したタンパク質を、プロテインA磁気ビーズ(GenScriptから購入した)を使用する選別方法を使用して精製した。磁気ビーズを、適当な容積の結合緩衝液(PBS+0.1% Tween 20、pH7.4)(磁気ビーズの容積の1~4倍)中に再懸濁し、次いで、精製しようとする試料に添加し、穏やかに振盪しながら室温で1時間インキュベートした。試料を磁気スタンド(Beaverから購入した)上に置き、上清を廃棄し、磁気ビーズを結合緩衝液で3回洗浄した。磁気ビーズの容積の3~5倍容積の溶出緩衝液(0.1Mクエン酸ナトリウム、pH3.2)を添加し、室温で5~10分間振盪し、磁気スタンドに戻して置き、次いで、溶出緩衝液を採集し、中和緩衝液(1Mトリス、pH8.54)を添加した採集チューブに移し、よく混合した。ウレルマブモノクローナル抗体、4-1BB単一ドメイン抗体およびクラウディン18.2モノクローナル抗体を、それぞれこのように得た。
【0093】
実施例2
クラウディン18.2に対する二重特異性抗体の結合
レンチウイルスでヒトクラウディン18.2 cDNA(GENECHEM製、GCPLO162852)をコーティングすることによりMC38をトランスフェクトして、ヒトクラウディン18.2を発現するMC38細胞を生成し、MC38-hClaudin 18.2細胞と命名した。展開したMC38-hClaudin 18.2およびNUGC4(hClaudin 18.2を内因的に発現する)細胞を、0.5mM EDTAで消化し、培養培地で1回洗浄し、次いで細胞2×10個/mlの細胞密度に調整し、96ウェルフローサイトメータープレートに添加し、100μl/ウェル、後の使用のために遠心分離した。二重特異性抗体をPBSで希釈し、希釈した試料100μl/ウェルを細胞と共に96ウェルフローサイトメータープレートに添加し、4℃で60分間インキュベートし、PBSで2回洗浄した。PBSで1000倍希釈したヤギ抗ヒトIgG-Fc(PE)(Abcamから購入した)を添加し(100μl/ウェル)、4℃で30分間インキュベートし、PBSで2回洗浄した。PBS中に再懸濁した細胞を添加し、100μl/ウェル、CytoFlex(Beckman)フローサイトメーターで検出し、対応する平均蛍光強度(MFI)を算出した。
【0094】
上の方法の測定実験において、実験結果を、図2のAに示した。本発明の二重特異性抗体は、クラウディン18.2を内因的に発現するヒト腫瘍細胞に結合した。図2のBは、二重特異性抗体が、マウス腫瘍細胞MC38において過剰発現されるヒトクラウディン18.2に結合できることをさらに示し、結合有効性は、クラウディン18.2モノクローナル抗体と同程度であった。
【0095】
実施例3
4-1BBに対する二重特異性抗体の結合
トランスフェクションによってマルチクローニングサイト(MCS)にクローニングしたヒト4-1BB cDNAのPLVXベクター(Qingkeによって合成した)を使用することにより、ヒト4-1BBを過剰発現するCHO細胞を生成し、CHO-h4-1BB細胞と命名した。展開培養したCHO-h4-1BB細胞を、細胞2×10個/mlの細胞密度を有するように調整し、96ウェルフローサイトメータープレートに添加し、100μl/ウェル、後の使用のために遠心分離した。二重特異性抗体を、PBSで希釈し、希釈した試料100μl/ウェルを細胞と共に96ウェルフローサイトメータープレートに添加し、4℃で60分間インキュベートし、PBSで2回洗浄した。PBSで100倍希釈したヤギ抗ヒトIgG-Fc(PE)(Abcam、ab98596)を添加し、100μl/ウェル、4℃で30分間インキュベートし、PBSで2回洗浄した。PBSで再懸濁した細胞を添加し、100μl/ウェル、CytoFlex(Beckman)フローサイトメーターで検出し、対応するMFIを算出した。上の方法の測定実験において、実験結果を、図3に示した。本発明の二重特異性抗体は、CHO-h4-1BB細胞に対する結合活性を有した。
【0096】
実施例4
二重特異性抗体によるJurkat細胞におけるNF-κBシグナル伝達経路の活性化
細胞2×10個/ウェルの標的細胞NUGC4および細胞1.2×10個/ウェルのエフェクター細胞を、4-1BB NF-κB Luciferase/Jurkatと混合し[細胞は、ヒト4-1BBベクター(Jinweizhiによって合成された)とluc2P/NF-kB-REベクター(Promega、E8491)を発現させるためにJurkat(ATCC、TIB-152(商標))細胞に同時トランスフェクションすることによって得られた]、96ウェル細胞培養白色底プレートに接種し、段階希釈した二重特異性抗体および終濃度1μg/mLの抗CD3を添加し、合計16時間インキュベートした。Bio-gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega G7940)キットを使用して発色させ、マイクロプレートリーダを使用して化学発光シグナルを採集した。結果を図4に示し、本発明の二重特異性抗体だけが、Jurkat細胞のNF-κBシグナル伝達経路を活性化することを示した。
【0097】
実施例5
二重特異性抗体による、腫瘍細胞を致死させるPBMCの誘導
標的細胞NUGC4を、CellTrace(商標)Violetキットを使用して染色し、細胞1×10個/ウェルで96ウェルの透明底黒色縁の細胞培養プレートに接種し、4時間培養した。あらかじめ1日間解凍したPBMCを採集し、細胞1×10個/ウェルで標的細胞ウェルに添加した。二重特異性抗体を段階希釈し、終濃度0.5μg/mLの抗CD3を混合し、細胞ウェルへ添加してインキュベートした。48時間後、Cytation5を使用して、DAPI蛍光シグナルを採集し、対応する致死強度を算出した。図5に示す結果は、二重特異性抗体分子だけが、クラウディン18.2陽性腫瘍細胞NUGC4を致死させるようにPBMCを誘導することを示した(図5において縦軸上の値は、バックグラウンド値を減算した後の結果である)。
【0098】
実施例6
二重特異性抗体によるサイトカインを放出するPBMCの誘導
標的細胞NUGC4を、細胞1×10個/ウェルで96ウェル透明底黒色縁細胞培養プレートに播種し、4時間培養した。あらかじめ1日間解凍したPBMCを採集し、標的細胞ウェルに細胞1×10個/ウェルで添加した。二重特異性抗体を段階希釈し、終濃度0.5μg/mLの抗CD3を混合し、ウェルに添加し;インキュベーション48時間後に上清を採集した。上清中のIFNγおよびIL-2のレベルを、ヒトIL-2 ELISAキット(Invitrogen、88-7025-77)およびヒトIFNγ(Invitrogen、88-7316-77)ELISAキットを使用して検出し、供給元によって推奨される手順に従った。
【0099】
結果を図6のAおよび図6のBに示し、二重特異性抗体分子だけが、IFNγおよびIL-2の放出を誘導したことを示す。
【0100】
実施例7
二重特異性抗体の腫瘍阻害活性に対する研究
本実験において、ヒトMC38-hClaudin 18.2細胞およびh-4-1BBトランスジェニックC57BL/6マウスモデルを使用して、二重特異性抗体の抗腫瘍効果を決定した。十分なMC38-hClaudin 18.2細胞(MC38細胞を基にhClaudin 18.2を過剰発現させた)をin vitro展開によって得、トリプシン消化後に細胞を採集し、PBSで3回洗浄し、計数し、8週齢の雌h-4-1BBトランスジェニックC57BL/6マウス(Shanghai Southern Model Biotechnology Co.,Ltd.から購入した)に細胞1×10個/マウスで右側腹部に皮下接種した。マウス皮膚下の腫瘍形成を毎日観察し、ノギスを使用して各動物の右腹部にある皮下腫瘍の最大幅軸Wおよび最大長軸Lを測定し、電子秤を使用して各マウスを秤量した。各マウスの右腹部における皮下腫瘍容積を、式:腫瘍容積T=1/2×W×W×Lを使用して算出した。極端に大きなおよび小さな腫瘍のマウスを除外した後、マウスを、平均腫瘍容積に従って各群6匹のマウスで4群に公平に分けた。マウスを、表2の投薬スケジュールに従って次いで分類し、対応する用量の抗体を注射した。
【0101】
マウス腫瘍容積およびマウス体重を、1週間に2~3回測定した。最後の測定を腫瘍細胞接種後29日目に測り、その後マウスを安楽死させた。結果を図7に示した。PBS群と比較して、クラウディン18.2モノクローナル抗体IMAB362の腫瘍成長に対する阻害効果は最小限であり、抗クラウディン18.2モノクローナル抗体と抗4-1BB単一ドメイン抗体の組合せ投与も、腫瘍阻害効果がなかった。同モル用量のクラウディン18.2×4-1BB biAbは、腫瘍成長を有意に阻害し、この群内のマウス6匹全てが腫瘍退縮を受け、他の3群とは著しく異なった。
【0102】
【表2】
【0103】
実施例8
二重特異性抗体の腫瘍阻害活性に対する研究(再接種試験)
本実験において、ヒトMC38-hClaudin 18.2細胞およびh-4-1BBトランスジェニックC57BL/6マウスモデルを使用して、二重特異性抗体の用量依存的抗腫瘍効果を決定した。十分なMC38-hClaudin 18.2細胞(MC38細胞に基づいてhClaudin 18.2を過剰発現する)をin vitro展開によって得、トリプシン消化後に細胞を採集し、PBSで3回洗浄し、計数し、8週齢の雌h-4-1BBトランスジェニックC57BL/6マウス(Shanghai Southern Model Biotechnology Co.,Ltd.から購入した)に細胞1×10個/マウスで右側腹部に皮下接種した。マウス皮膚下の腫瘍形成を毎日観察し、ノギスを使用して各動物の右腹部にある皮下腫瘍の最大幅軸Wおよび最大長軸Lを測定し、電子秤を使用して各マウスを秤量した。各マウスの右腹部における皮下腫瘍容積を、式:腫瘍容積T=1/2×W×W×Lを使用して算出した。極端に大きなおよび小さな腫瘍のマウスを除外した後、マウスを、平均腫瘍容積に従って各群6匹のマウスで5群に公平に分けた。マウスを、表3の投薬スケジュールに従って分類し、対応する用量の抗体を注射した。
【0104】
マウス腫瘍容積およびマウス体重を、1週間に2~3回測定した。最後の測定を腫瘍細胞接種後29日目に測り、その後マウスを安楽死させた。図8に示すように、PBS群と比較して、クラウディン18.2×4-1BB biAbは、0.06mg/kg、0.25mg/kg、1mg/kgおよび4mg/kgの用量範囲で、用量依存的様式で腫瘍成長を有意に阻害することができ、0.25mg/kg群中のマウス4匹が、腫瘍退縮を有し、1mg/kg群中のマウス5匹が、腫瘍退縮を有し、4mg/kg群中のマウス全6匹が、腫瘍退縮を有した。腫瘍退縮があったマウス15匹に、十分なMC38-hClaudin 18.2腫瘍細胞を再び接種し、同数のMC38-hClaudin 18.2細胞を、対照群として新しく購入したヒト4-1BBトランスジェニックC57BL/6マウス6匹に皮下接種した。対照群のマウス全6匹の腫瘍が急速に成長したのに対し、二重特異性抗体を与えた後に腫瘍退縮があったマウスの腫瘍は全て成長することができなかったことは、二重特異性抗体群内のマウスが、再接種腫瘍の成長を防止できる免疫記憶を得たことを示した。
【0105】
【表3】
【0106】
本発明の特定の実施形態について詳細に記述してきたが、当業技術者であれば、開示されている全ての教示に基づいて様々な変形および変更をその詳細に対して行うことができ、これら変更が本発明の保護範囲内にあることを理解しよう。本発明の完全な範囲は、添付の特許請求の範囲およびそのあらゆる等価物によって与えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2024534795000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウディン18.2結合実体および4-1BB結合実体を含む二重特異性抗体であって、前記クラウディン18.2結合実体が、2対の同一の免疫グロブリン鎖を含み、免疫グロブリン鎖の各対が、軽鎖および重鎖を有し、前記重鎖が、重鎖可変領域および重鎖定常領域を含み;前記軽鎖が、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を含み;前記4-1BB結合実体が、重鎖可変領域を含み;前記4-1BB結合実体の前記重鎖可変領域が、前記クラウディン18.2結合実体の前記重鎖のC末端に接続されており;
前記クラウディン18.2結合実体が、配列番号1に記載の重鎖可変領域(VH)内に含有されるVH CDR1もしくはそのバリアント、VH CDR2もしくはそのバリアントおよびVH CDR3もしくはそのバリアント;ならびに/または配列番号2に記載の軽鎖可変領域(VL)内に含有されるVL CDR1もしくはそのバリアント、VL CDR2もしくはそのバリアントおよびVL CDR3もしくはそのバリアントを含み;
前記4-1BB結合実体が、配列番号3もしくは25に記載の重鎖可変領域(VH)内に含有されるVH CDR1もしくはそのバリアント、VH CDR2もしくはそのバリアントおよびVH CDR3もしくはそのバリアントを含み;
前記バリアントが、それが得られる配列と比較して、1、2もしくは3アミノ酸の置換、欠失または付加をし;
記VH中に含有される前記3つのCDRおよび/または前記VL中に含有される前記3つのCDRが、Kabat、IMGTまたはChothia付番方式によって定義される、二重特異性抗体。
【請求項2】
(1)前記クラウディン18.2結合実体が、
以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号9に記載の配列を持つVH CDR1、配列番号10に記載の配列を持つVH CDR2、および配列番号11に記載の配列を持つVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに/または以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号12に記載の配列を持つVL CDR1、配列番号13に記載の配列を持つVL CDR2、および配列番号14に記載の配列を持つVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むこと
(2)前記4-1BB結合実体が、
以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号15に記載の配列を持つVH CDR1、配列番号16に記載の配列を持つVH CDR2、および配列番号17に記載の配列を持つVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)を含むこと;
(3)前記重鎖可変領域が、ヒトから得られるフレームワーク領域配列をさらに含むこと;
(4)前記重鎖可変領域が、ヒト免疫グロブリンから得られるフレームワーク領域配列をさらに含むこと;および
(5)前記置換が保存的置換であること
から選択される1つまたは2つの特徴を有する、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
前記クラウディン18.2結合実体が、
(a)以下から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH):
(i)配列番号1に記載の配列;
(ii)配列番号1に記載の配列と比較して1、2、3、4もしくは5アミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有する配列;または
(iii)配列番号1に記載の配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の配列同一性を有する配列;
および/あるいは
(b)以下から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL):
(iv)配列番号2に記載の配列;
(v)配列番号2に記載の配列と比較して1、2、3、4もしくは5アミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有する配列;または
(vi)配列番号2に記載の配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の配列同一性を有する配列
を含む、請求項に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
前記二重特異性抗体が、
(1)(ii)または(v)に記述される前記置換が、保存的置換であること
(2)前記クラウディン18.2結合実体が、配列番号1に記載の配列を有するVHおよび配列番号2に記載の配列を有するVLを含むこと
から選択される特徴を1つまたは2つ有する、請求項3に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
前記4-1BB結合実体が、
下から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH):
(i)配列番号3または25に記載の配列;
(ii)配列番号3もしくは25に記載の配列と比較して1、2、3、4もしくは5アミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有する配列;または
(iii)配列番号3もしくは25に記載の配列と比較して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する配列
を含む、請求項に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
前記クラウディン18.2結合実体が、
(a)ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域(CH)またはそのバリアントであって、前記バリアントが、それが得られる野生型配列と比較して1つもしくは複数のアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するバリアント;および
(b)ヒト免疫グロブリン軽鎖定常領域(CL)またはそのバリアントであって、前記バリアントが、それが得られる野生型配列と比較して、1、2、3、4または5アミノ酸の保存的置換を有するバリアント
をさらに含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
前記二重特異性抗体が、
(1)前記重鎖定常領域が、IgG重鎖定常領域であること、
(2)前記重鎖定常領域が、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4重鎖定常領域であること;
(3)前記軽鎖定常領域が、κまたはλ軽鎖定常領域であること;
(4)前記クラウディン18.2結合実体が、配列番号8に記載の軽鎖定常領域(CL)を含むこと;
(5)前記二重特異性抗体が、Fc受容体(FcR)に結合しないFc断片をさらに含み;あるいはエフェクター機能を減少させたFc断片を含み、前記エフェクター機能が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞性貪食作用(ADCP)であること;
(6)前記二重特異性抗体が、Fc断片をさらに含み、前記Fc断片が、以下:
(a)L235E突然変異を有するIgG1 Fc断片;
(b)L234Aおよび/またはL235A突然変異を有するIgG1 Fc断片;
(c)P329GまたはP329A突然変異を有するIgG1 Fc断片;
(d)F234Aおよび/またはL235AもしくはL235E突然変異を有するIgG4 Fc断片;
(e)H268Q、V309L、A330Sおよび/またはP331S突然変異を有するIgG2 Fc断片;または
(f)V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330Sおよび/またはP331S突然変異を有するIgG2 Fc断片
のうちのいずれか1つから選択されること;
(7)前記二重特異性抗体が、Fc断片をさらに含み、前記Fc断片が、L234AおよびL235A突然変異を有するIgGl Fc断片であること;および
(8)前記二重特異性抗体が、Fc断片をさらに含み、前記Fc断片が、配列番号4に記載の配列を有すること
から選択される特徴を1つまたは複数有する、請求項6に記載の二重特異性抗体。
【請求項8】
前記二重特異性抗体が、ペプチドリンカーをさらに含み、前記クラウディン18.2結合実体および前記4-1BB結合実体が、ペプチドリンカーによって接続されている、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項9】
前記二重特異性抗体が
(1)前記クラウディン18.2結合実体の前記重鎖定常領域の前記C末端と前記4-1BB結合実体の前記重鎖可変領域のN末端が、ペプチドリンカーによって接続されていること;
(2)前記ペプチドリンカーが、配列番号5または26に記載の配列を有すること;
(3)前記二重特異性抗体の前記重鎖が、配列番号6、27、28または29に記載のアミノ酸配列を有すること;および
(4)前記二重特異性抗体の前記軽鎖が、配列番号7に記載のアミノ酸配列を有すること
から選択される特徴を1つまたは複数有する、請求項8に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の二重特異性抗体もしくはその重鎖および/もしくは軽鎖、またはクラウディン18.2結合実体の前記重鎖可変領域および/もしくは前記軽鎖可変領域、または4-1BB結合実体の前記重鎖可変領域をコードする、単離された核酸分子。
【請求項11】
請求項10に記載の単離された核酸分子を含む、ベクター。
【請求項12】
請求項10に記載の単離された核酸分子または単離された前記核酸分子を含むベクターを含む、宿主細胞。
【請求項13】
請求項1~のいずれか一項に記載の二重特異性抗体および前記二重特異性抗体に接続された治療的薬剤を含む免疫複合体。
【請求項14】
前記免疫複合体が、
(1)前記治療的薬剤が、細胞傷害性薬剤から選択されること;
(2)前記治療的薬剤が、アルキル化薬、分裂抑制因子、抗腫瘍性抗生物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種薬剤およびその任意の組合せからなる群から選択されること;および
(3)前記免疫複合体が、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であること
から選択される特徴を1つまたは複数有する、請求項13に記載の免疫複合体。
【請求項15】
請求項1~のいずれか一項に記載の二重特異性抗体または前記二重特異性抗体を含む免疫複合体、ならびに薬学的に許容可能な担体および/もしくは賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項16】
(1)前記医薬組成物が、追加の薬学的に活性な薬剤をさらに含むこと;
(2)前記医薬組成物が、抗腫瘍活性を持つ薬物をさらに含むこと;
(3)前記医薬組成物が、アルキル化薬、分裂抑制因子、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、放射性核種、放射線感受性増強物質、抗血管新生剤、サイトカイン、分子標的化した薬物、免疫チェックポイント阻害剤または腫瘍溶解性ウイルスをさらに含むこと
のうち1つまたは複数によって特徴付けられる、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
クラウディン18.2を発現する腫瘍細胞の成長を阻害する、および/または前記腫瘍細胞を致死させるための方法であって、
(1)請求項1~のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、または
(2)前記二重特異性抗体を含む免疫複合体、または
(3)前記二重特異性抗体を含む医薬組成物
の有効な量と前記腫瘍細胞とを接触させることを含む、方法。
【請求項18】
象において腫瘍を予防および/または処置するための医薬の製造における、請求項1~のいずれか一項に記載の二重特異性抗体もしくは前記二重特異性抗体を含む免疫複合体の使用。
【請求項19】
(1)前記腫瘍がクラウディン18.2を発現すること;
(2)前記腫瘍が、クラウディン18.2を発現する腫瘍細胞を含むこと;
(3)前記腫瘍が、胃がん、肝臓がん、胆道がん、腎細胞がん、膵臓がん、非小細胞肺がん、中皮腫、卵巣がん、精巣がん、子宮内膜がん、肺がん、食道がん、膵臓がん、気管支がん、乳がん、耳-鼻-喉(ENT)がん、大腸がん、頭頸部がん、胆嚢がんからなる群から選択されること;
(4)前記対象が、哺乳動物であること;および
(5)前記対象が、ヒトであること
のうちの1つまたは複数によって特徴付けられる、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
キットの製造における請求項1~のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、または前記二重特異性抗体を含む免疫複合体、または前記二重特異性抗体を含む医薬組成物の使用であって、前記キットが、
(1)クラウディン18.2を発現する細胞を認識するかまたはそれと結合すること;
(2)4-1BBを発現する細胞を認識するかまたはそれと結合すること;
(3)細胞のNF-κBシグナル伝達経路を活性化すること;
(4)細胞を誘導して、殺腫瘍活性を活性化すること;
(5)細胞を誘導して、サイトカインを分泌させること;
(6)(1)~(5)の任意の組合せ
のために使用される、使用。
【国際調査報告】