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特表2024-534825条件付きリガンド交換により産生されたペプチドMHC複合体を使用する免疫細胞の選択
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】条件付きリガンド交換により産生されたペプチドMHC複合体を使用する免疫細胞の選択
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240918BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240918BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240918BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C12N15/09 Z ZNA
C12Q1/02
C12N5/0783
C12P21/02 C
C12N15/85 Z
A61K35/17
A61K48/00
A61P37/02
A61P35/00
A61P31/12
C12N5/10
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024511981
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2022073595
(87)【国際公開番号】W WO2023025851
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】21192884.1
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】63/236,558
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520184664
【氏名又は名称】イマティクス ユーエス,アイエヌシー.
(71)【出願人】
【識別番号】506258073
【氏名又は名称】イマティクス バイオテクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】シュパルト,シュテファニー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーグナー,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】マウラー,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】シュスター,ハイコ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター,シュテッフェン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ13
4B063QR48
4B063QR55
4B063QS33
4B063QX02
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA13
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA46
4C084AA13
4C084NA13
4C084ZB07
4C084ZB26
4C084ZB33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB26
4C087ZB33
(57)【要約】
本発明は、ペプチドA(PA)と主要組織適合性複合体(MHC)分子の複合体に特異的に結合する抗原結合タンパク質を表面に発現する免疫細胞を選択する方法であって、(i)異なる抗原結合タンパク質を発現する複数の免疫細胞を提供し;(ii)複数の免疫細胞とMHC分子1(M1)とペプチドA(PA)を含む複合体1AおよびM1とペプチドB(PB)を含む複合体1Xを含む第一組成物を接触させ;(iii)複数の免疫細胞とMHC分子2(M2)とPAを含む複合体2AおよびM2とペプチドC(PC)を含む複合体2Xを含む第二組成物を接触させ;(iv)複合体1Aに特異的に結合する抗原結合タンパク質を発現する細胞を複数の免疫細胞から選択する
工程を含み、ここで、複合体1Aおよび2Aではなく、複合体1Xおよび2Xが規定の化学的または物理的刺激での刺激により解離させ;そして、PBおよびPCのアミノ酸配列が少なくとも1個のアミノ酸が異なるものである、方法に関する。本発明は、さらに、本発明の何れかの方法により選択された免疫細胞、該免疫細胞を使用する処置方法、抗原結合タンパク質を表面に発現する細胞を選択するためのキットおよび本発明の方法における使用に適するペプチドに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドA(PA)と主要組織適合性複合体(MHC)分子の複合体に特異的に結合する抗原結合タンパク質を表面に発現する免疫細胞を選択する方法であって、次の:
(i)種々の抗原結合タンパク質を発現する複数の免疫細胞を提供し;
(ii)複数の免疫細胞と
(a)MHC分子1(M1)およびペプチドA(PA)を含む複合体1Aおよび
(b)M1とペプチドB(PB)を含む複合体1X
を含む第一組成物を接触させ;
(iii)複数の免疫細胞と
(a)MHC分子2(M2)およびPAを含む複合体2Aおよび
(b)M2とペプチドC(PC)を含む複合体2X
を含む第二組成物を接触させ;
(iv)複数の免疫細胞から複合体1A;特に複合体1Aおよび複合体2A両方に特異的に結合する抗原結合タンパク質を発現する免疫細胞を選択する
工程を含み;ここで、複合体1Aおよび2Aではなく、複合体1Xおよび2Xが規定の刺激、好ましくは規定の化学的および/または物理的刺激での刺激により解離し;そして
ここで、PBおよびPCのアミノ酸配列が少なくとも1個のアミノ酸、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも5個、6個、7個または8個のアミノ酸が異なるものである、方法。
【請求項2】
第一組成物が
(i)複合体1X(M1およびPBを含む)を提供し
(ii)PAを提供し、そして
(iii)既定の刺激を提供し、それにより
- PBのM1からの解離および
- PAのM1への結合
を生じさせ、複合体1Aの形成をもたらすことにより得て;好ましくはここで主に複合体1Aおよび残存量の複合体1Xを含む組成物を得る;および/または
第二組成物を
(i)複合体2X(M2およびPCを含む)を提供し
(ii)PAを提供し、そして
(iii)既定の刺激を提供し、それにより
- PCからのM2の解離および
- PAのM2への結合
を生じさせて、複合体2Aの形成をもたらすことにより得て;
好ましくはここで主に複合体2Aおよび残存量の複合体2Xを含む組成物を得る、
請求項1の方法。
【請求項3】
PBおよびPCが、既定の刺激により活性化されたとき、それぞれPBまたはPCのペプチド主鎖内の共有結合を切断させる条件付きで反応性の基を含み、
ここで、PBおよびPCに含まれる条件付きで反応性の基が同一でも異なってもよい、好ましくは同一である、かつ
好ましくは、条件付きで反応性の基が光活性化可能基、亜ジチオン酸活性化可能基または過ヨウ素酸活性化可能基、好ましくは光活性化可能基を含む、より好ましくは光活性化可能基が3-アミノ-3-(2-ニトロ)フェニル-プロピオン酸またはその光活性化可能構造的等価物を含む、
請求項1~2の何れかの方法。
【請求項4】
M1および/またはM2、好ましくはM1およびM2がMHC-I分子である、好ましくは同じアレルのMHC-I分子または同じアレルのMHC誘導体または抗原ペプチド結合フラグメントである、請求項1~3の何れかの方法。
【請求項5】
免疫細胞がT細胞、より好ましくはCD8T細胞であるおよび/または抗原結合タンパク質がT細胞受容体(TCR)である、請求項1~4の何れかの方法。
【請求項6】
工程ii)が
(i)さらに複数の細胞と共刺激分子、好ましくは抗CD28、抗CD3、抗CD137および/または抗CD134に対する抗体、より好ましくは抗CD28および/または抗CD3との接触を含む;
(ii)さらに複数の細胞とIL-2および/またはIL-12の接触を含む;および/または
(iii)少なくとも3日、好ましくは少なくとも7日、より好ましくは少なくとも10日実施される;および/または
工程iv)が、検出、特徴づけおよび単離の少なくとも1個および所望により単細胞または細胞集団の培養を含む、
請求項1~5の何れかの方法。
【請求項7】
PAが好ましくはウイルス抗原ペプチド、細菌抗原ペプチドおよび腫瘍関連抗原ペプチド(TAA)から選択される抗原ペプチドである、より好ましくはPAがTAAである、請求項1~6の何れかの方法。
【請求項8】
配列番号1~19、21~38および40~66からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、ここで、配列番号1~配列番号66において、Xが条件付きで反応性の基、好ましくは条件付きで反応性のアミノ酸アナログを表す、条件付きペプチド。
【請求項9】
条件付きペプチドが、該ペプチドが提示されるMHCアレルを発現する個体で高頻度で提示される親ペプチド由来である、好ましくは件付きペプチドが配列番号1~18、21~38、40~56および58~66からなる群から選択される、より好ましくは配列番号3~18、21~38、40~48、51~56および59~66からなる群から選択される、請求項8の条件付きペプチド。
【請求項10】
請求項1~7の何れかの方法により選択された免疫細胞。
【請求項11】
pMHC複合体1Aに特異的に結合する抗原結合タンパク質をコードする核酸の配列を決定する方法であって:
(i)請求項1~7の何れかの方法で選択した免疫細胞から抗原結合タンパク質をコードする核酸を単離し;そして
(ii)核酸配列を決定する
工程を含む、方法。
【請求項12】
抗原結合タンパク質を発現する宿主細胞を産生する方法であって:
(i)宿主細胞を準備し;
(ii) 請求項1~7の何れかの方法で選択した免疫細胞から抗原結合タンパク質をコードする核酸を単離し;
(iii)工程(ii)で単離した核酸または抗原結合タンパク質もしくはその抗原結合フラグメントをコードする該核酸の一部を含む遺伝子構築物を産生し;そして
(iv)該宿主細胞に該遺伝子構築物を導入する
工程を含む、方法。
【請求項13】
抗原結合タンパク質を産生する方法であって、請求項12の方法により産生した宿主細胞を提供し、該宿主細胞に導入した遺伝子構築物を発現させることを含む、方法。
【請求項14】
pMHC複合体の製造のための、請求項8または9のペプチドの使用。
【請求項15】
好ましくは表面にペプチドとMHC分子の複合体と特異的に結合する抗原結合タンパク質を発現する細胞を選択するための、キットであって:
a)ペプチドB(PB)とMHC分子1(M1)を含む複合体1X;およびペプチドC(PC)とMHC分子2(M2)を含む複合体2X;または
b) ペプチド(PB)およびペプチド(PC)および所望によりPBおよびPCが結合し、それにより複合体1Xおよび2Xを各々形成するMHC分子、特にM1および/またはM2;および
c)所望によりβ2-ミクログロブリン
を含み;ここで、複合体1Xおよび2Xが規定の化学的および/または物理的刺激での刺激により解離し;そして、PBおよびPCのアミノ酸配列が少なくとも1個のアミノ酸、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個のアミノ酸が異なる、ペプチドA(PA)およびM1またはM2を含む複合体1Aに特異的に結合する抗原結合タンパク質の選択のためである、キット。
【請求項16】
請求項1~7の何れかの方法により選択された免疫細胞、請求項12の方法により産生された宿主細胞および/または請求項14の抗原結合タンパク質、核酸および/またはベクターを含む、医薬組成物。
【請求項17】
医薬に使用するための、好ましくは新生物疾患の処置または予防の方法に使用するための、請求項1~7の何れかの方法により選択された免疫細胞、請求項12の方法により産生された宿主細胞および/または請求項14の抗原結合タンパク質、核酸および/またはベクター。
【請求項18】
請求項13の方法により産生された抗原結合タンパク質、該抗原結合タンパク質をコードする核酸または該核酸を含むベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドとMHC分子の複合体(pMHC複合体)に特異的に結合する抗原結合タンパク質を表面に発現する免疫細胞を選択する方法であって、免疫細胞と、異なる条件付きリガンドを含むpMHC複合体から条件付きリガンド交換により産生された第一および第二pMHC複合体の連続的な(subsequent)接触を含む、方法に関する。本発明は、さらに、本発明の方法により選択された免疫細胞、該免疫細胞を使用する処置方法、抗原結合タンパク質を表面に発現する細胞を選択するためのキットおよび本発明の方法において使用するのに適する条件付きペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞受容体(TCR)ベースの免疫療法は、癌、ウイルス感染症および他の免疫変調疾患の処置のための最も有望かつ画期的アプローチの一つとなってきている。TCRベースの治療の開発および実施化における多くの鍵となる工程は、ペプチド-MHC(pMHC)複合体の産生を必要とする。MHC分子はペプチドリガンド非存在下では不安定であり、これが、各個々のpMHC複合体の産生が、ハイスループット適用に不適合である時間のかかるインビトロ再折りたたみおよび精製を必要とする理由である。最近、規定の刺激への暴露により分解する、MHC分子のための条件付きペプチドリガンドが開発された。目的のペプチドの付加により、条件付きリガンドは置き換えられ得る。この条件付きリガンド交換は、T細胞同定および特徴づけの分野における種々の応用のための多数の異なるpMHC複合体の迅速かつ容易な産生を可能とする。
【0003】
本発明は、配列番号1~19、21~38および40~66からなる群から選択される配列を有する、弱い免疫原性の条件付きペプチドを提供する。これらの条件付きペプチドは、とりわけ次の利点の1以上を提供する:(i)低免疫原性により条件付きペプチド:MHC複合体に特異的な免疫細胞の刺激/増殖の非存在または低減、(ii)条件付きペプチドとMHC分子の間の強い結合、(iii)条件付きペプチド:MHC複合体の高再折りたたみ収率、(iv)既定の刺激の非存在下で安定な条件付きペプチド:MHC複合体、(v)条件付きペプチド:MHC複合体の低凝集率、(vi)条件付きペプチド:MHC複合体の低分解率および(vii)既定の刺激によるMHC分子からのペプチドの高解離率。
【0004】
さらに、本発明は、条件付きリガンド交換を使用する、抗原結合タンパク質を発現する免疫細胞の選択のための画期的アプローチを提供する。このアプローチの提供により、本発明者らは、先行技術のいくつかの課題を克服した。本発明の免疫細胞を選択する方法は、条件付きリガンド交換により産生されたpMHC複合体の使用を可能とし、ここで、偽陽性免疫細胞を選択するリスクは顕著に低減するかまたは排除される。故に、本方法は、とりわけ次の利点の1以上を提供する:本方法は(i)安価、(ii)速い、(iii)簡単、(iv)ハイスループット適用に適するおよび(v)より正確である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第一の態様は、ペプチドA(PA)と主要組織適合性複合体(MHC)分子の複合体に特異的に結合する抗原結合タンパク質を表面に発現する免疫細胞を選択する方法であって、次の:
(i)種々の抗原結合タンパク質を発現する複数の免疫細胞を提供し;
(ii)複数の免疫細胞と
(a)MHC分子1(M1)とペプチドA(PA)を含む複合体1Aおよび
(b)M1とペプチドB(PB)を含む複合体1X
を含む第一組成物を接触させ;
(iii)複数の免疫細胞と
(a)MHC分子2(M2)とPAを含む複合体2Aおよび
(b)M2とペプチドC(PC)を含む複合体2X
を含む第二組成物を接触させ;
(iv)複合体1Aに特異的に結合する抗原結合タンパク質を発現する細胞を複数の免疫細胞から選択する
工程を含み;ここで、複合体1Aおよび2Aではなく、複合体1Xおよび2Xが規定の刺激での刺激により解離し;そして、PBおよびPCのアミノ酸配列は少なくとも1個のアミノ酸が異なるものである、
方法に関する。
【0006】
本発明の第二態様は、配列番号1~19、21~38および40~66の何れかのアミノ酸配列を有する条件付きペプチドに関し、ここで、各配列において、Xは条件付きで反応性の基を表す。
【0007】
本発明の第三の態様は、本発明の第一の態様の方法により選択された免疫細胞に関する。
【0008】
本発明の第四の態様は、pMHC複合体1Aに特異的に結合する抗原結合タンパク質をコードする核酸の配列を決定する方法であって:
(i)本発明の第一の態様の方法で選択した免疫細胞から抗原結合タンパク質をコードする核酸を単離し;そして
(ii)核酸の配列を決定する
工程を含む、方法に関する。
【0009】
本発明の第五の態様は、抗原結合タンパク質を発現する宿主細胞を産生する方法であって:
(i)宿主細胞を準備し;
(ii)本発明の第一の態様の方法で選択した免疫細胞から抗原結合タンパク質をコードする核酸を単離し;
(iii)工程(ii)で単離した核酸または抗原結合タンパク質もしくはその抗原結合フラグメントをコードする該核酸の一部を含む遺伝子構築物を産生し;そして
(iv)該宿主細胞に該遺伝子構築物を導入する
工程を含む、方法に関する。
【0010】
本発明の第六の態様は、本発明の第五の態様の方法により産生された宿主細胞を提供し、該宿主細胞に導入された遺伝子構築物を発現することを含む、抗原結合タンパク質を産生する方法に関する。
【0011】
本発明の第七の態様は、本発明の第六の態様の方法により産生された抗原結合タンパク質に関する。
【0012】
本発明の第八の態様は、本発明の第七の態様の抗原結合タンパク質をコードする核酸または該核酸を含むベクターに関する。
【0013】
本発明の第九の態様は、下に定義するキットに関する。具体的態様において、キットは、表面にペプチドとMHC分子の複合体と特異的に結合する抗原結合タンパク質を発現する細胞を選択するためである。該キットは:
a)ペプチドB(PB)とMHC分子1(M1)を含む複合体1X;およびペプチドC(PC)とMHC分子2(M2)を含む複合体2X;または
b)ペプチド(PB)およびペプチド(PC)ならびに所望によりPBおよびPCが結合し、それにより複合体1Xおよび2Xを各々形成するMHC分子、特にM1および/またはM2;および
c)所望によりβ2-ミクログロブリン(β2M)
を含み;ここで、複合体1Xおよび2Xは、規定の刺激での刺激により解離し;そして、PBおよびPCのアミノ酸配列は少なくとも1個のアミノ酸が異なるものである。
【0014】
本発明の第十の態様は、本発明の第一の態様の方法により選択された免疫細胞、本発明の第五の態様の方法により産生された宿主細胞、本発明の第七の態様の抗原結合タンパク質および/または本発明の第八の態様の核酸またはベクターを含む、医薬組成物に関する。
【0015】
本発明の第十一の態様は、医薬において使用するための、本発明の第一の態様の方法により選択された免疫細胞、本発明の第五の態様の方法により産生された宿主細胞、本発明の第七の態様の抗原結合タンパク質および/または本発明の第八の態様の核酸またはベクターに関する。
【0016】
本発明の第十二の態様は、新生物疾患を診断、処置または予防する方法において使用するための、本発明の第一の態様の方法により選択された免疫細胞、本発明の第五の態様の方法により産生された宿主細胞、本発明の第七の態様の抗原結合タンパク質および/または本発明の第八の態様の核酸またはベクターに関する。
【0017】
本発明の第十三の態様は、pMHC複合体の産生のための、本発明の第二の態様のペプチドの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】例示的プロセス概要を示す。T細胞を血液製剤から単離する(1)。例えば、UV介在ペプチド交換(2)により産生された標的特異的pHLA分子と、例えば、抗CD28抗体を共に使用して、例えば、人工抗原提示細胞(aAPC)(3)を産生する。例えば、可溶性サイトカイン存在下のT細胞とaAPCのインキュベーションは、抗原ペプチド特異的刺激、故に増殖をもたらす(4)。色素結合多量体を産生するためのpHLA(5)は、例えば、異なる条件付きリガンドを使用する第二UV交換反応(6)により産生される。標的特異的T細胞はpHLA多量体染色(7)を介して検出および/または単離される。
【0019】
図2】UV介在ペプチド交換後に産生されるタンパク質を示す。レスキューペプチド存在下(灰色)またはレスキューペプチド非存在下(黒色)に条件付きpHLAのUV暴露後にβ2m ELISAにより測定したタンパク質収率の例示的結果を示す。条件付きpHLAは、A*03_HNRNPR-002、B*07_MUDENG-002およびA*02_DDX5-005であった。レスキューペプチドは、それぞれHADV-014(A*03)、HIV-007(B*07)およびMLA-001(A*02)であった。N=4実験の平均値を示す。タンパク質収率は、適用タンパク質濃度の%として示す。データから、EC単量体がUV交換を介して産生されたとき、UVペプチドは常にレスキューペプチドと完全に交換されるわけではなく、低濃縮UV単量体の残存量に至ることが示唆される。
【0020】
図3】条件付きリガンドに対する健常HLA-A*02+ドナーの特異的インビトロCD8+ T細胞応答の例示的結果を示す。CD8+ T細胞を、抗CD28 mAbおよびFLUM-003のMLA-001によるUV介在リガンド交換により産生したHLA-A*02_FLUM-003×MLA-001で被覆した人工APCを使用して、プライミングした。3サイクルの刺激後、ペプチド反応性細胞の検出を、交換pHLA分子(A)または標準再折り畳みpHLA分子(B)を使用する2D多量体染色または1D染色(CおよびD)により実施した。生存可能単細胞を、CD8+リンパ球についてゲーティングした。CD8+リンパ球中の特異的多量体+細胞の頻度を示す。これらのデータは、低量の残存UV単量体であっても、多量体染色により条件付きリガンドに特異的な細胞を検出するのに十分であることを示す。
【0021】
図4】条件付きペプチドリガンドおよびその親ペプチドを認識する高度に特異的なT細胞集団の存在を示す。HLA適合健常個体のCD8+T細胞を、抗CD28 mAbおよびpHLA分子で被覆した人工APCを使用してプライミングした。3サイクルの刺激後、ペプチド反応性細胞の検出を、標準再折り畳みpHLA分子を使用する多量体染色により実施した。条件あたり12ウェルを試験した。刺激および読み出しを、それぞれ同じペプチドまたは関連親ペプチドまたは条件付きペプチド(斜体)との組み合わせとして実施した。グラフAはHLA-A*03に結合する示されるペプチドを含む分子の結果を示し、グラフBはHLA-B*07に結合する示されるペプチドを含む分子の結果を示す。
【0022】
図5】UVペプチド反応性CD8+T細胞の多量体染色を示す。CD8+T細胞を、抗CD28mAbおよびHLA-B*07_MUDENG-002(A)またはHLA-A*03_HNRNPR-002×HADV-14で被覆した人工APCを使用してプライミングした。3サイクルの刺激後、ペプチド反応性細胞の検出を、標準再折り畳みpHLA分子を使用する多量体染色により実施した(AおよびB)。生存可能単細胞を、CD8+リンパ球についてゲーティングした。CD8+リンパ球中の特異的多量体+細胞の頻度を示す。いずれの場合も、それぞれCD8+細胞の2.4%または6.7%のUVペプチド特異的T細胞集団が多量体染色により検出でき、ヒト源タンパク質由来のUVペプチドも、低濃度でも、特異的T細胞集団を刺激および増殖できることを示す。
【0023】
図6】偽陽性T細胞集団の検出を示す。CD8+T細胞を、抗CD28 mAbおよびFLUM-003のCMV-001によるUV介在リガンド交換により産生したHLA-A*02_FLUM-003×CMV-001で被覆した人工APCを使用して、プライミングした。3サイクルの刺激後、細胞を、3つの並行読み出し条件により分析した。ペプチド反応性細胞の検出を、標準再折り畳みpHLA分子(プレートA)、FLUM-003のCMV-001またはMLA-001によるUV介在リガンド交換により産生したpHLA分子(プレートB)またはRPL19-005のCMV-001またはMLA-001によるUV介在リガンド交換により産生したpHLA分子(プレートC)を使用する2D多量体染色により実施した。生存可能単細胞を、CD8+リンパ球についてゲーティングした。CD8+リンパ球中の特異的多量体+細胞の頻度を示す。いくつかの例で(図6、刺激位置1および2参照)、FLUM-003特異的細胞が、多量体染色のためのEC単量体の産生と同じUV単量体を使用したとき刺激および検出され(プレートB)、一方多量体染色のためのEC単量体の産生とは他のUV単量体を使用して、FLUM-003特異的細胞の望まない検出は阻止された(プレートC)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な記載
T細胞受容体(TCR)ベースの免疫療法は、癌、ウイルス感染症および他の免疫変調疾患の処置のための最も有望かつ画期的アプローチの一つとなってきている。TCRベースの治療の開発および実施化おける多くの鍵となる工程は、ペプチド-MHC(pMHC)複合体の産生を必要とする。MHC分子はペプチドリガンド非存在下では不安定であり、これが、各個々のpMHC複合体の産生が、ハイスループット適用に不適合である時間のかかるインビトロ再折りたたみおよび精製を必要とする理由である。最近、規定の刺激への暴露により分解するMHC分子のための条件付きペプチドリガンドが開発された。この刺激中の目的のペプチド(またはレスキューペプチド)の添加により、条件付きリガンドはこのペプチドにより置き換えられ、MHC分子の分解を阻止することができる。この条件付きリガンド交換は、T細胞同定および特徴づけの分野における種々の応用のための多数の異なるpMHC複合体の迅速かつ容易な産生を可能とする。特に汎用されている条件付きリガンド交換は、条件付きリガンドがUV暴露により開裂される、いわゆるUV交換である。
【0025】
この分野でなされてきた全ての進歩をもってしても、標的と特異的に結合するTCRを同定することを目的とするTCR同定過程は、時間と費用のかかる過程のままである。最初に同定したTCRを、個々の実験におけるさらなる特徴づけの間に選択解除するならば、これはまた極めて時間と費用がかかる。従って、表面にペプチドとMHC分子の複合体と特異的に結合する抗原結合タンパク質を発現する免疫細胞を選択するさらに改善された方法が必要である。
【0026】
以前報告されてきたこととは対照的に、本発明者らは、例えば、UV暴露後、MHC分子に結合した条件付きリガンドが相当量残存することを発見した。本発明者らは、このような残存条件付きリガンドを含むpMHC複合体を、連続的工程、例えばT細胞の刺激、検出および/または分類に使用すれば、目的のペプチドではなく、代わりに条件付きリガンドを含むpMHC複合体についてT細胞特異的の刺激、検出または分類につながり得ると考えた。現在まで文献に開示されている条件付きリガンドは、主にウイルスペプチドまたは非ヒトペプチド由来である。これらのペプチドは高度に免疫原性であるため、観察される問題、すなわち同定されたTCRが条件付きリガンド自体を指向する可能性は、それゆえに、特にウイルスおよび非ヒトペプチドの関連において顕著である。
【0027】
この問題を解決するため、本発明者らは、ヒト起源のペプチド由来の新規条件付きペプチドリガンドを同定した。さらに、これらペプチドは健常組織で高度に発現され、故に免疫原性が低く、それにより上記問題を低減する。本発明は、配列番号1~19、21~38および40~66からなる群から選択される配列を有する弱い免疫原性の条件付きペプチドを提供する。これらの条件付きペプチドは、とりわけ次の利点の1以上を提供する:(i)低免疫原性による条件付きペプチドのMHC複合体に特異的な免疫細胞の刺激/増殖の非存在または低減、(ii)条件付きペプチドとMHC分子の間の強い結合、(iii)条件付きペプチドによるMHC複合体の再折りたたみの高収率、(iv)既定の刺激の非存在下での安定な条件付きペプチドMHC複合体、(v)条件付きペプチドMHC複合体の低凝集率、(vi)条件付きペプチドMHC複合体の低分解率および(vii)既定の刺激によるMHC分子からのペプチドの高解離率。
【0028】
偽陽性TCRの同定をさらに低減するために、本発明者らは、免疫細胞を、2個の異なる条件付きリガンドを使用して、2個の条件付きリガンド交換により産生されたpMHC複合体と連続的に接触させる、規定の特異性を有する抗原結合タンパク質を発現する免疫細胞の選択のための画期的アプローチを開発した。換言すると、第一工程、特にプライミングまたは刺激工程におけるpMHC複合体の産生に使用する条件付きペプチドリガンドは、第二工程、特に同定または選択工程におけるpMHC複合体の産生に使用する条件付きペプチドリガンドと異なる。本発明者らは、このアプローチが偽陽性免疫細胞、すなわち目的のリガンドを含むpMHC複合体ではなく、条件付きリガンドを含むpMHC複合体に特異的な細胞の選択を顕著に低減することを示した。このアプローチの提供により、本発明者らは、上記の先行技術の課題を解決した。本発明の免疫細胞を選択する方法により、条件付きリガンド交換により産生されたpMHC複合体の使用を可能とし、ここで、偽陽性免疫細胞を選択するリスクは顕著に低減するかまたは排除される。故に、本方法は、とりわけ次の利点の1以上を提供する:本方法は、(i)安価、(ii)速い、(iii)簡単、(iv)ハイスループット適用に適するおよび(v)より正確である。
【0029】
本発明を下に詳述する前に、本発明はここに記載する特定の方法、プロトコールおよび反応剤に、これらが変わり得るため、限定されないことは理解されるべきである。また、ここで使用する用語は特定の実施態様を説明するのみの目的であり、添付する特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定する意図がないことも理解されるべきである。特に断らない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、当業者により共通して理解されるのと同じ意味を有する。
【0030】
本明細書をとおして、いくつかの文献が引用されている。ここに引用する各文献(全ての特許、特許出願、科学的刊行物、製造業者の説明書、指示書など)は、上記のものであれ下記のものであれ、引用によりその全体を本明細書に包含させる。本発明が、先行発明のために、このような開示に先行する権利を有しないことを認めるものとして解釈されるべきではない。ここで引用する文献のいくつかは、「引用により包含される」として特徴づけられる。このような包含される引用文献に示される定義または教示と、本明細書に示される定義または教示の間に矛盾がある場合、本明細書の記載が優先する。
【0031】
以下に、本発明の要素を記載する。これらの要素は具体的実施態様と共に列記されているが、さらなる実施態様を作成するために、あらゆる方法で、かつあらゆる数値を組み合わせ得ることは理解されるべきである。種々の記載される実施例および好ましい実施態様は、本発明を限定すると解釈してはならず、単に実施態様を明示的に記載するものである。この記載は、明示的に記載される実施態様と、あらゆる数の開示されたおよび/または好ましい要素を組み合わせる実施態様を指示および包含すると理解されるべきである。さらに、本明細書における全ての記載される要素のあらゆる並べ替えおよび組み合わせは、他の文脈に反しない限り、本明細書に記載にされていると解釈されるべきである。
【0032】
定義
本発明の実施に際し、特に断らない限り、当分野における文献に説明される、化学、生化学および組み換えDNA技術の慣用の方法が用いられる(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, J. Sambrook et al. eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989参照)。
【0033】
以下に、本発明を特徴づけるために本明細書で頻繁に使用される用語の定義を提供する。これらの用語は、使用される各場合、本明細書の他の部分において、それぞれ定義された意味および好ましい意味を有する。
【0034】
本明細書および特許請求の範囲をとおして、文脈から他の解釈が必要でない限り、用語「含む」および「含み」および「含んで」などのその変形は、記載する整数もしくは工程または整数もしくは工程群の包含を含意するが、あらゆる他の整数もしくは工程または整数もしくは工程群の除外を含意しない。ここで使用する用語「含む」の使用はまた具体的に記載される特性以外の特性が存在しない実施態様(すなわち「からなる」)も開示する。
【0035】
この明細書および添付する特許請求の範囲で使用される単数表現は、文脈に反しない限り、複数対象を含む。
【0036】
本明細書をとおして、用語「および/または」は、それが接続する1以上の場合が起こり得ると解釈すべき文法的接続詞である。例えば、表現「このような天然配列タンパク質は、標準組み換えおよび/または合成方法を使用して製造できる」は、天然配列タンパク質が標準組み換えおよび合成方法を使用して製造できるまたは天然配列タンパク質が標準組み換え方法を使用して製造できるまたは天然配列タンパク質が合成方法を使用して製造できることを示す。
【0037】
用語「細胞」は、本発明において、核および細胞小器官を含み、原生動物、真菌、植物および動物で見られ得る真核生物細胞をいう。動物は、哺乳動物細胞を含み得る。哺乳動物細胞は、とりわけヒト細胞、マウスもしくはラット細胞などの齧歯類細胞、サル細胞、ブタ細胞またはイヌ細胞を含む。真菌細胞は、とりわけ酵母細胞を含む。生命工学、例えば酵母表面ディスプレイで使用される典型的酵母細胞は、出芽酵母細胞である。
【0038】
用語「免疫細胞」は、本発明において、免疫系の細胞をいう。免疫系は、最終的にBおよびTリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞に分化するリンパ系幹細胞および最終的に顆粒球および単球に分化する骨髄芽細胞を含む前駆体細胞ならびに十分に分化した白血球などの種々の細胞型を含む。分化した白血球は胸腺、脾臓、骨髄またはリンパ節由来細胞であり、顆粒球、Bリンパ球、Tリンパ球および単球、マクロファージおよび肥満細胞および樹状細胞の主要な群に分類され得る。顆粒球はさらに好中球、好酸球および好塩基球顆粒球に分けられ、これは、血液循環中の細菌、ウイルスまたは真菌を貪食する。Bリンパ球は、形質細胞およびB記憶細胞の前駆体である。T細胞群は、制御T細胞、記憶T細胞、Tヘルパー細胞および細胞毒性T細胞を含む。Tヘルパー細胞は形質細胞およびナチュラルキラー細胞を活性化するが、制御T細胞はB細胞および他のT細胞の機能を阻害し、故に、免疫応答を減退させる。T記憶細胞は長寿命であり、特異的抗原の記憶を有し、細胞毒性T細胞が腫瘍抗原または攻撃対象細胞の抗原との相互作用により、腫瘍細胞またはウイルスにより攻撃された細胞を認識し、殺滅する。T細胞および各T細胞の特異的表面マーカーにより説明されるその表面表現型の例を、下の表1に示す(Dong and Martinez, Nature Reviews Immunology, 2010による):
【表1】

【0039】
用語「抗原提示細胞」は、抗原を処理し、T細胞表面に抗原ペプチドとMHC分子の複合体(pMHC複合体)を提示する細胞をいう。抗原提示細胞は専門および非専門の2個のカテゴリーに入る。専門抗原提示細胞は、MHC-II分子を共刺激分子およびパターン認識受容体と共に発現する。非専門抗原提示細胞は、MHC-I分子を発現する。
【0040】
用語「人工抗原提示細胞(aAPC)」は、ペプチド-MHC複合体および共刺激シグナル(例えば抗CD28抗体)が結合した合成担体、例えばミクロ粒子またはナノ粒子をいう。天然抗原提示細胞に類似するサイズを有する(すなわち約4~20μm、例えば5~10μmの直径を有する)ミクロ粒子が好ましい。合成担体は、例えばポリ(グリコール酸)、ポリ(乳-コ-グリコール酸)、酸化鉄、リポソーム、脂質二重層、セファロース、ポリスチレンおよびポリイソシアノペプチドから選択され得る。合成担体はストレプトアビジンで被覆され得る。好ましい実施態様において、aAPCは、ペプチド-MHC複合体および抗CD28抗体が結合したストレプトアビジン被覆ポリスチレンビーズである。
【0041】
用語「腫瘍浸潤リンパ球」(TIL)は、本発明において、腫瘍に向かって遊走し、腫瘍間質または腫瘍自体に高頻度で見られ得る、T細胞およびB細胞をいう。TILは、典型的にACTまたは自己細胞療法に使用され得る白血球の細胞集団を含む。このような治療は、種々の臨床治験において、例えば、転移黒色腫の患者での有望な結果がすでに示されている(Guo et al.; “Recent updates on cancer immunotherapy”; Precision Clinical Medicine, 1(2), 2018-65-74)。ACTにおいては、TILは外科的に切除した腫瘍または腫瘍断片から単離した単細胞懸濁液から、エクスビボで増殖される。TILは、高用量のサイトカイン、例えばIL-2を用いて増殖される。最良の腫瘍反応性を示す選択されたTIL系統が、次いで、典型的に2週間の期間抗CD3活性化を使用する「迅速増殖プロトコール」(REP)でさらに増殖される。最終REP後TILが患者に注入され、戻される。本過程はまた養子移入TILが腫瘍部位周囲に十分接近できるように、内因性リンパ球を枯渇する予備化学療法レジメンも含み得る。
【0042】
用語「免疫細胞濃縮画分」は、本発明において、免疫細胞の相対的豊富さが天然に存在する細胞混合物における豊富さと比較して増加されている、天然に存在する細胞集団、例えば血液由来の細胞集団をいう。健常ヒト対象の血液1mlは、例えば470万~610万(男性)、420万~540万(女性)の赤血球、4,000~11,000の白血球および200,000~500,000の血小板を含む。故に、血中で、免疫細胞は血液細胞の総数の0.06%~0.25%しか占めない。故に、血液の免疫細胞濃縮画分は、免疫細胞を0.25%超、1%超、5%超、10%超、20%超、30%超、40%超、好ましくは50%超、60%超、70%超、さらにより好ましくは80%超、85%超、最も好ましくは90%超含み得る。免疫細胞濃縮画分は、免疫細胞の1以上のサブタイプが濃縮されていてよい。例えば、免疫細胞濃縮画分は、リンパ系幹細胞、T細胞、B細胞、形質細胞または組み合わせが濃縮され得る。通常、免疫細胞濃縮画分における免疫細胞は、目的の免疫細胞の表面マーカーに特異的に結合する1以上の蛍光標識抗体を使用して、選択される。T細胞またはT細胞群内の細画分の選択に適当な表面マーカーは、上の表1に示される。細胞毒性T細胞は、例えばCD8に特異的に結合する抗体を使用してまたはCD8およびCD3に特異的に結合する抗体を使用して、選択され得る。
【0043】
用語「細胞集団」は、本発明において、均質または不均質、すなわち異なる特徴の細胞の混合物であり得る、複数の細胞をいう。血液は、異なる細胞の混合物である細胞集団の例である。均質細胞集団は、特定のサブタイプの選択またはクローン増殖により得られ得る。
【0044】
用語「免疫細胞特異的表面マーカー」は、本発明において、免疫細胞の同定および分類を助けるモノグラムとして働く、細胞表面抗原をいう。異なるT細胞サブタイプを特徴づけるこのようなマーカーの例は、上の表1に示される。免疫細胞特異的表面マーカーの大部分は、細胞の原形質膜内の分子または抗原である。これらの分子は、マーカーとして働くだけでなく、機能的役割も有する。
【0045】
用語「増殖因子」または「分化因子」は、本発明においては相互交換可能に使用され、細胞成長、細胞増殖および細胞分化を刺激し、複数細胞過程を制御できる、分子をいう。増殖因子は、通常タンパク質またはステロイドホルモンである。一般的な分子の例を次に挙げる(非網羅的羅列):コロニー刺激因子(CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの増殖因子;上皮細胞増殖因子(EGF);エリスロポエチン(EPO);線維芽細胞増殖因子(FGF);ウシ胎児ソマトトロピン(FBS);肝細胞増殖因子(HGF);インスリン;インスリン様増殖因子(IGF);インターロイキン;ニューレグリン;ニューロトロフィン;T細胞増殖因子(TCGF);トランスフォーミング増殖因子(TGF);腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)。
【0046】
用語「抗原結合タンパク質」は、MHCと複合体の抗原ペプチドに特異的に結合できる抗原結合部位を含む、ポリペプチドまたは2以上のポリペプチドの複合体をいう。抗原結合タンパク質の例は、抗体、B細胞受容体(BCR)、TCR、一本鎖抗体、一本鎖TCRおよびキメラ抗原受容体(CAR)である。本明細書で使用する、用語抗原結合タンパク質は、可溶性形式、膜結合形式、単価、二価および多価形式、一特異的、二特異的および多特異的形式、一本鎖形式および2以上の鎖を含む形式を含む、複数形式を含む。用語抗原結合タンパク質はまた抗原結合タンパク質の抗原結合フラグメント、例えばTCRの抗原結合フラグメントを含む(下記参照)。好ましい実施態様において、抗原結合タンパク質はTCRである。
【0047】
用語「T細胞受容体」(TCR)は、本発明において、シグナル伝達介在に関与するCD3複合体のバリアントタンパク質と結合した、免疫グロブリンスーパーファミリーのヘテロ二量体細胞表面タンパク質をいう。TCRは、構造的に類似するが、解剖学的部位およびおそらく機能が極めて異なる、αβおよびγδ形態で存在する。天然ヘテロ二量体αβTCRおよびγδTCRの細胞外部分は各々2個のポリペプチドを含み、その各々膜近位定常ドメインおよび膜遠位可変ドメインを含む。定常および可変ドメインの各々は、鎖内ジスルフィド結合を含む。可変ドメインは、抗体の相補性決定領域(CDR)に類似する高度に多形のループを含む。TCR遺伝子療法の使用は、現在のハードルのいくつかを克服する。例えば、対象の(患者の)自身のT細胞が所望の特異性を備えることおよび短期間で十分な数のT細胞を産生することを可能とし、疲弊を回避する。このような実施態様において、TCRは強力なT細胞(例えば中心記憶T細胞または幹細胞特徴を備えたT細胞)に伝達され、導入による良好な持続、保護および機能を確実にし得る。TCR操作されたT細胞を、化学療法または照射によりリンパ球減少された癌患者に注入し、効率的生着を可能とするが、免疫抑制を阻害する。天然アルファ-ベータヘテロ二量体TCRは、アルファ鎖およびベータ鎖を含む。各アルファ鎖は、可変、連結および定常領域を含み、ベータ鎖はまた通常可変両基と連結領域の間に短多様性領域を含むが、この多様性領域はしばしば連結領域の一部と考えられる。TCRアルファ鎖およびベータ鎖の定常またはC領域は、それぞれTRACおよびTRBCと称される(Lefranc, (2001), Curr Protoc Immunol Appendix 1: Appendix 10)。各可変領域は、フレームワーク配列に包埋された3個の「相補性決定領域」(CDR)を含み、一つはCDR3と称される超可変領域である。アルファ鎖CDRはCDRa1、CDRa2、CDRa3と称され、ベータ鎖CDRはCDRb1、CDRb2、CDRb3と称される。フレームワーク、CDR1およびCDR2配列および部分的に定義されるCDR3配列により区別される、数タイプのアルファ鎖可変(Vアルファ)領域および数タイプのベータ鎖可変(Vベータ)領域がある。Vアルファタイプは、IMGT命名法で固有のTRAV番号により称され、VベータタイプはIMGT命名法で固有のTRBV番号により称される(Folch and Lefranc, (2000), Exp Clin Immunogenet 17(1): 42-54; Scaviner and Lefranc, (2000), Exp Clin Immunogenet 17(2): 83-96; LeFranc and LeFranc, (2001), "T cell Receptor Factsbook", Academic Press)。免疫グロブリン抗体およびTCR遺伝子のさらなる情報について、国際ImMunoGeneTics information system(登録商標), Lefranc M-P et al (Nucleic Acids Res. 2015 Jan;43 (Database issue) : D413-22; およびhttp://www.imgt.org/参照)。慣用のTCR抗原結合部位は、通常、アルファ鎖およびベータ鎖可変領域の各々からのCDRセットを含む6個のCDRを含み、ここで、CDR1およびCDR3配列がMHCタンパク質と複合体の抗原ペプチドの認識および結合に関連し、CDR2配列はMHCタンパク質の認識および結合に関連する。抗体に類似して、TCRは、CDR間に介在するアミノ酸配列であるフレームワーク領域、すなわち種々のTCR間で比較的保存されているTCRアルファ鎖およびベータ鎖可変領域の部分を含む。TCRのアルファ鎖およびベータ鎖は各々4個のFRを含み、ここで、それぞれFR1-a、FR2-a、FR3-a、FR4-aおよびFR1-b、FR2-b、FR3-b、FR4-bと命名される。従って、アルファ鎖可変ドメインは故に(FR1-a)-(CDRa1)-(FR2-1)-(CDRa2)-(FR3-a)-(CDRa3)-(FR4-a)と指定でき、ベータ鎖可変ドメインは故に(FR1-b)-(CDRb1)-(FR2-b)-(CDRb2)-(FR3-b)-(CDRb3)-(FR4-b)と指定できる。
【0048】
用語「B細胞受容体」(BCR)は、B細胞表面の膜貫通タンパク質複合体をいう。構造的に、BCRは、ジスルフィド架橋により連結された、1アイソタイプの膜結合免疫グロブリン分子(IgD、IgM、IgA、IgGまたはIgE)およびシグナル伝達部分:Ig-α/Ig-β(CD79)ヘテロ二量体を含む。二量体の各メンバーは原形質膜を横断し、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を担持する細胞質テイルを有する。抗原を認識するBCRの部分は、V、DおよびJと称される3個の異種遺伝子領域からなり、これは免疫系に特有の組み合わせ過程において遺伝子レベルで接合および組み換えされる。B細胞が、その受容体と結合する抗原(その「同種抗原」)と初めて遭遇することにより活性化されたとき、該細胞は増殖し、分化して、抗体分泌型血漿B細胞および記憶B細胞の集団を産生する。BCRは、生化学的シグナル伝達によりおよび抗原提示細胞と共に免疫シナプスからの抗原の物理的獲得によりB細胞活性化を制御し、抗原との相互作用において2個の重大な機能を有する。一つの機能は、受容体オリゴマー化の変化に関与するシグナル伝達である。第二の機能は、後続の抗原のプロセシングおよびヘルパーT細胞へのペプチドの提示のための内在化への介在である。
【0049】
用語「抗体」は、本発明において、膜貫通領域を欠き、故に、血流および体腔に放出され得る、分泌免疫グロブリンをいう。ヒト抗体は、それが有する重鎖に基づき、種々のアイソタイプに分類される。ヒトIg重鎖には、ギリシャ文字でα、γ、δ、εおよびμと記される5タイプがある。存在する重鎖のタイプは抗体のクラスを定義し、すなわちこれらの鎖は、それぞれIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体に見られ、各々異なる役割を演じ、異なるタイプの抗原に対する適切な免疫応答を指示する。異なる重鎖は、サイズおよび組成が異なり;そして約450アミノ酸を含み得る(Janeway et al. (2001) Immunobiology, Garland Science)。IgAは、腸、呼吸器管および尿生殖器管などの粘膜領域ならびに唾液、涙および母乳に見られ、病原体によるコロニー形成を予防する(Underdown & Schiff (1986) Annu. Rev. Immunol. 4:389-417)。IgDは、主に抗原に曝されていないB細胞の抗原受容体として機能し、抗微生物因子を生じるための好塩基球および肥満細胞の活性化に関与する(Geisberger et al. (2006) Immunology 118:429-437; Chen et al. (2009) Nat. Immunol. 10:889-898)。IgEは、肥満細胞および好塩基球からのヒスタミン放出の引き金を引くアレルゲンへの結合を介して、アレルギー反応に関与する。IgEはまた寄生虫に対する保護にも関与する(Pier et al. (2004) Immunology, Infection, and Immunity, ASM Press)。IgGは、侵襲病原体に対する抗体ベースの免疫の大部分を提供し、胎盤を通過して胎児に受動免疫を与える唯一の抗体アイソタイプである(Pier et al. (2004) Immunology, Infection, and Immunity, ASM Press)。ヒトにおいて、4個の異なるIgGサブグラス(IgGl、2、3および4)があり、血清における豊富さの順で名付けられており、IgGlが最も豊富(約66%)で、IgG2(約23%)、IgG3(約7%)およびIgG(約4%)と続く。異なるIgGクラスの生物学的プロファイルは、各ヒンジ領域の構造により決定される。IgMは、B細胞表面に単量体形態および極めて高いアビディティーの分泌型五量体形態で発現される。IgMは、十分なIgGが産生される前のB細胞介在(液性)免疫の初期段階における病原体排除に関与する(Geisberger et al. (2006) Immunology 118:429-437)。抗体は単量体として見られるだけでなく、2個のIg単位の二量体(例えばIgA)、4個のIg単位の四量体(例えば硬骨魚のIgM)または5個のIg単位の五量体(例えば哺乳動物IgM)を形成することも知られる。抗体は、典型的にジスルフィド結合を介して接続された2個の同一重鎖および同一2個の軽鎖を含み、「Y字」型巨大分子を模倣する、4個のポリペプチド鎖からなる。鎖の各々は、幾つかの免疫グロブリンドメインを含み、その一部は定常ドメインであり、その他は可変ドメインである。免疫グロブリンドメインは、2個の~シートに配置された7~9個の逆平行~鎖の2層サンドイッチからなる。典型的に、抗体重鎖は、4個のIgドメインを含み、その3個が定常(CHドメイン:CH1、CH2、CH3)ドメインであり、1個が可変ドメイン(VH)である。軽鎖は、典型的に1個の定常Igドメイン(CL)および1個の可変Igドメイン(VL)を含む。VHおよびVL領域は、さらに、より保存された、フレームワーク領域(FR)と称される領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性領域にさらに細分される。各VHおよびVLは3個のCDRおよび4個のFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端方向で、次の順番で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合に介在し得る。ここで使用する用語抗体はまたキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体も包含する。
【0050】
用語「キメラ抗原受容体」(CAR;キメラ免疫受容体、キメラT細胞受容体、人工T細胞受容体としても知られる)は、本発明において、免疫エフェクター細胞、好ましくはT細胞に任意の特異性を移植する、操作された受容体である。細胞は、混成膜受容体分子であり、ターゲティング特異性およびT細胞活性化両方を提供するCARを遺伝的に備える。最も一般的な形態のCARは、CD3膜貫通およびエンドドメインに融合したモノクローナル抗体に由来する、一本鎖可変フラグメント(scFv)の誘導体である。CARは、T細胞を細胞外部分の抗体由来結合ドメインを介して所望の細胞標的に標的化し、標的に遭遇したとき、T細胞活性化が細胞内部分シグナル伝達ドメインを介して起こる。適当な細胞、特にT細胞へのこれら受容体のコード配列の導入は、一般にレトロまたはレンチウイルスベクターにより促進される。受容体は、異なる起源の部分からなるため、キメラと呼ばれる。
【0051】
ここで使用する抗体、TCRまたはBCRまたはCARの「抗原結合フラグメント」または「結合フラグメント」なる用語は、親タンパク質より長さは短いが、親タンパク質の結合特異性および/または選択性を担う1以上のアミノ酸配列を含むため、親タンパク質の抗原に特異的に結合する能力を実質的に保持する、抗体、TCR、BCRまたはCARのフラグメント、特にアミノ酸鎖をいう。TCRの、MHCとの複合体における特異的抗原ペプチドへの結合がCDR1およびCDR3配列により定義されるため、TCRの抗原結合フラグメントは、少なくとも親TCRのCDR1およびCDR3配列を含む。当業者は、CDRにフレームワーク領域(FR)が散在していなければならないが、その特異的アミノ酸配列は標的抗原特異性に重大ではないことを知っている。機能的TCRフラグメントのさらなる例は、TCRアルファ、ベータ、ガンマまたはデルタ可変ドメインなどの単一可変ドメインまたは「Vα-Cα」または「Vβ-Cβ」などのα、β、δ、γ鎖のフラグメントまたはその一部を含む。このようなフラグメントはまたさらに対応するヒンジ領域を含むべきである。具体的態様において、抗原結合フラグメントは特異的に複合体1A;特に複合体1Aおよび複合体2A両方に結合する。抗体、TCR、BCRまたはCARの抗原結合機能は、完全長抗体、TCR、BCRまたはCARのフラグメントにより実施され得ることが示されている。抗原結合フラグメントは、例えば、結合特異性が親タンパク質の結合特異性と同一であるまたは15%、10%、8%、5%、3%、2%もしくは1%を超えて増減しないならば、結合特異性を実質的に保持していると考えられる。
【0052】
ある例において、抗原結合フラグメントは、例えば、下記のとおり測定した親タンパク質の標的に対するそのKが、親タンパク質のKと同一であるまたは10倍、5倍、3倍もしくは2倍を超えて増減しないならば、結合特異性を実質的に保持していると考えられる。ここで使用する用語「フラグメント」は、天然に存在するフラグメント(例えばスプライスバリアントまたはペプチドフラグメント)ならびに人工的に構築したフラグメント、特に遺伝子工学的手段により得たものをいう。「抗体の抗原結合フラグメント」の例は、(i)VL、VH、CLおよびCHドメインからなる単価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結した2個のFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)フラグメント;(iii)VHおよびCHドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341: 544-546);(vi)単離相補性決定領域(CDR)および(vii)所望により合成リンカーにより連結され得る2以上の単離CDRの組み合わせを含む。さらに、Fvフラグメントの2個のドメイン、VLおよびVHは別の遺伝子によりコードされるが、VLおよびVH領域が対合して単価分子を形成する単一タンパク質鎖としての製造を可能とする、合成リンカーにより、組み換え方法を使用して連結されてよい(一本鎖Fv(scFv)として既知;例えば、Bird et al. (1988) Science 242: 423-426; およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883参照)。このような一本鎖抗体も、抗体、BCRまたはCARの「抗原結合フラグメント」なる用語に包含されることが意図される。用語「TCRの抗原結合部分」は、アルファ鎖およびベータ鎖またはガンマ鎖およびデルタ鎖、TCRの少なくともCDR1およびCDR3、好ましくはアルファ鎖およびベータ鎖またはガンマ鎖およびデルタ鎖のCDR1、CDR2およびCDR3を含む。これらCDRは、好ましくはその天然フレームワーク領域の状況に含まれるが、またアルファ、ベータ、ガンマまたはデルタ鎖における配置であったのと類似の方法で互いに配置させる、他のタンパク質 - いわゆるタンパク質足場 - にも含まれ得る。TCRの抗原結合部分は、好ましくはアルファ鎖およびベータ鎖またはガンマ鎖およびデルタ鎖の可変ドメインを含む。抗体、TCR、BCRまたはCARの抗原結合フラグメントは、単量体、二量体、三量体、四量体または多量体タンパク質複合体に含まれ、1以上の異なる抗原結合特異性を有するこのような複合体を提供し得る。抗体の抗原結合フラグメントを使用して、例えば二重特異性抗体、テトラボディまたはナノボディと称される、単価、二価または多価結合分子が作られるさらなる形式は当分野で知られる。scFVに類似して、一本鎖TCRは、リンカーにより連結された1タンパク質鎖にアルファ鎖およびベータ鎖の可変ドメインを含む。
【0053】
用語「抗原」は、当分野では、少なくとも1個のエピトープ、好ましくはB細胞またはT細胞応答またはB細胞およびT細胞応答を誘発するエピトープを含む、物質、好ましくは免疫原性ペプチドをいう。用語「タンパク質抗原」は、抗原結合タンパク質のパラトープに特異的に結合するエピトープを含む、タンパク質またはタンパク質もしくはタンパク質複合体の一部をいう。タンパク質抗原は、典型的に天然に存在するタンパク質であり、どんな長さでもよい。タンパク質抗原が少なくとも25アミノ酸を含むのが好ましい。抗原性タンパク質がTCRであるとき、抗原は、抗原ペプチドMHC分子の複合体である。
【0054】
用語「エピトープ」は、抗原性決定基としても知られ、免疫系により認識される抗原の一部である。用語エピトープは、本発明において、抗原の機能的エピトープをいう。機能的エピトープは、通常特異的三次元構造特徴および特異的荷電特徴を有し、抗原と抗原結合タンパク質のパラトープの非共有結合的相互作用に寄与する残基、典型的にアミノ酸または多糖である。非共有結合的相互作用は、静電気引力、ファン・デル・ワールス引力、水素結合および疎水性相互作用を含む。機能的エピトープは、抗原結合タンパク質の構造的エピトープを構成する残基のサブグループである。構造的エピトープは、抗原結合タンパク質に覆われた全残基、すなわち抗原結合タンパク質のフットプリントを含む。典型的に、抗体に結合した抗原の機能的エピトープは、4~10個のアミノ酸を含む。同様に、MHC提示であるペプチドの機能的エピトープは、典型的に4~8個のアミノ酸を含む。
【0055】
抗原ペプチド」は、本発明において、MHC分子のペプチドリガンド結合ポケットに結合できるタンパク質のフラグメントをいう。抗原ペプチドは、MHC分子により抗原提示細胞表面に提示され得る。異なる抗原ペプチドは、異なる強度のT細胞応答を誘導し得る。本発明において、強いT細胞応答を誘導する抗原ペプチドは、高度に免疫原性と記載し、弱いT細胞応答を誘導する抗原ペプチドは、弱い免疫原性と記載する。抗原ペプチドの例は、ウイルスペプチド、細菌ペプチドおよび腫瘍関連抗原ペプチドである。MHC-Iにより提示される抗原ペプチドは、典型的に8~12アミノ酸長を有する。MHC-IIにより提示される抗原ペプチドは、典型的に13~25アミノ酸長を有する。
【0056】
ウイルス抗原ペプチド」は、本発明において、典型的に罹患細胞である抗原提示細胞の表面に主要組織適合性複合体(MHC)分子により提示される、ウイルスタンパク質の短いフラグメントである。ウイルス抗原ペプチドはウイルス起源であり、すなわち該細胞は典型的に該ウイルスに感染している。ウイルス抗原ペプチドは、本発明において、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原ペプチド、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)抗原ペプチド、サイトメガロウイルス(CMV)抗原ペプチド、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原ペプチド、B型肝炎ウイルス(HBV)抗原ペプチド、C型肝炎ウイルス(HCV)抗原ペプチド、エプスタイン・バールウイルス(EBV)抗原ペプチド、インフルエンザ抗原ペプチド、ヒトアデノウイルス(HADV)抗原ペプチドからなる群から選択される抗原ペプチドであり得る。
【0057】
細菌抗原ペプチド」は、本発明において、典型的に罹患細胞である抗原提示細胞の表面にMHC分子により提示される、細菌タンパク質の短いフラグメントである。細菌抗原ペプチドは細菌起源であり、すなわち該細胞は典型的に細菌に感染している。このような細菌抗原ペプチドは、例えば、結核菌から、感染の状況で発見されている。従って、細菌抗原ペプチドは、本発明において、結核菌抗原ペプチドであり得る。
【0058】
用語「腫瘍関連抗原ペプチド」(TAA)は、本発明において、腫瘍細胞により優先的にまたは排他的に発現される、酵素、受容体、転写因子などの全タンパク質クラス由来の自己細胞抗原ペプチをいう。TAAは、発現異常自己抗原、変異自己抗原および腫瘍特異的抗原に広義に分類され得る。腫瘍細胞により優先的に発現されるTAAは、正常組織でも見られ得る。しかしながら、正常カウンターパートと比較してタンパク質構造の改変または腫瘍細胞内の異常細胞内局在化により、正常組織における発現と腫瘍における発現の程度が異なる。ここに記載する方法および実施態様で使用され得るTAAは、例えば、米国公報20160187351、米国公報20170165335、米国公報20170035807、米国公報20160280759、米国公報20160287687、米国公報20160346371、米国公報20160368965、米国公報20170022251、米国公報20170002055、米国公報20170029486、米国公報20170037089、米国公報20170136108、米国公報20170101473、米国公報20170096461、米国公報20170165337、米国公報20170189505、米国公報20170173132、米国公報20170296640、米国公報20170253633、米国公報20170260249、米国公報20180051080および米国公報20180164315(これら公報の各々の内容およびそこに記載の配列表は全体として引用により本明細書に包含させる)に記載のTAAを含む。さらに、TAAは、本発明において、MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子、好ましくはMHCクラスI分子の特異的リガンドである。
【0059】
用語「MHC」は、本発明において、「主要組織適合性複合体」をいう。MHCは、適応免疫系に必須の細胞表面タンパク質(MHC分子)をコードする、密接に連結した多型遺伝子のセットを含む、脊椎動物DNA上の大遺伝子座である。MHC分子は、脊椎動物における改変天然または外来タンパク質に対する獲得免疫の確立に必須の役割を有し、これは、次に組織内の組織適合性を決定する。MHC分子の主機能は、自己タンパク質または病原体由来のペプチドに結合し、それらを適切なT細胞による認識のために細胞表面に提示することである。MHC遺伝子ファミリーは3個のサブグループ:クラスI、クラスIIおよびクラスIIIに分割される。ペプチドとMHCクラスIの複合体は、適切なTCRを有するCD8陽性T細胞により認識され、一方ペプチドとMHCクラスII分子の複合体は、適切なTCRを有するCD4陽性ヘルパーT細胞により認識される。両タイプの応答、CD8およびCD4依存は、T細胞の抗腫瘍効果に共同でかつ相乗的に寄与するため、腫瘍関連抗原および対応するTCRの同定および特徴づけは、ワクチンおよび細胞治療などの癌免疫療法に重要である。
【0060】
本発明において、用語「MHC分子」は、天然に存在するMHC分子、その誘導体またはその抗原ペプチド結合フラグメントをいう。天然に存在するMHC-I分子は、MHC-I重鎖とも称するアルファ鎖およびβ2-ミクログロブリン分子を構成するベータ鎖からなる。アルファ鎖は、3個のアルファドメイン、すなわちα1ドメイン、α2ドメインおよびα3ドメインを含む。α1およびα2ドメインは、主にペプチドMHC(pMHC)複合体を産生するためのペプチドリガンドの結合のためのペプチド結合溝の形成に寄与する。MHC-I分子は、典型的に細胞質タンパク質に由来するペプチドに結合し、これは、ユビキチン化後プロテアソームにより分解され、その後抗原プロセシング(TAP)と関連する特異的トランスポーターを介して、サイトゾルから小胞体(ER)に輸送される。MHC-I分子は、典型的に8~12アミノ酸長のペプチドに結合する。天然に存在するMHC-II分子はアルファ鎖およびベータ鎖からなり、ここで、アルファ鎖は2個のアルファドメイン、α1ドメイン、α2ドメインを含み、ベータ鎖は2個のベータドメイン、β1ドメインおよびβ2ドメインを含む。MHC IIは、典型的に不変鎖と称されるタンパク質と複合体でERに折りたたまれ、次いで後期エンドソーム区画に輸送され、そこで不変鎖はカテプシンプロテアーゼにより開裂され、短フラグメントがMHC-II分子のペプチド結合溝と結合したままであり、クラスII関連不変鎖ペプチド(CLIP)と称される。このプレースホルダーペプチドは、次いで、通常、エンドサイトーシス区画で利用可能なタンパク質分解されたタンパク質由来の高親和性ペプチドに対して交換される。MHC-II分子は、10~30アミノ酸長のペプチド、典型的に13~25アミノ酸長のペプチドと結合する。
【0061】
用語「MHC分子誘導体」は、それが由来するMHC分子と同じペプチド結合親和性および特異性を有するが、他の特徴、例えば安定性または他の分子、例えばCD8への結合に関して異なり得る、MHC分子のバリアントをいう。ある実施態様において、MHC誘導体は安定化MHC分子である。好ましくは、安定化MHC分子は、ジスルフィド結合した安定化MHC分子である。WO2020053398。例えば、HLA-A*02:01は、84位と139位または22位と71位または22位と71位および51位と175位の間のジスルフィド架橋により安定化され得る(ここで、位置は、www.ebi.ac.uk/ipd/imgt/hla/nomenclature/alignments.htmlに示される参照配列Acc. No. HLA0001を使用したIGMT命名法に従い示される)。ある実施態様において、MHC誘導体は、CD8への結合が増加または減少したMHCバリアント、例えばDockree et. al., 2017に記載のバリアントA245V(結合減少)およびバリアントQ115E(結合増加)である。
【0062】
ここで使用する用語「MHC分子の抗原ペプチド結合フラグメント」は、親の、天然に存在するMHC分子より長さは短いが、親MHC分子の結合特異性および/または選択性を担うアミノ酸配列または配列を含むため、親タンパク質の抗原ペプチドに特異的に結合する能力を保持した、MHC分子のフラグメント、特にアミノ酸鎖をいう。抗原ペプチドがMHC分子のペプチド結合溝に結合するため、MHC分子の抗原ペプチド結合フラグメントは、少なくともペプチド結合溝を形成するアミノ酸を含む。MHC-I分子の抗原ペプチド結合フラグメントは、好ましくはα1およびα2ドメインを含む。MHC-II分子の抗原ペプチド結合フラグメントは、好ましくはα1およびβ1ドメインを含む。
【0063】
用語「ペプチドMHC複合体(pMHC複合体)」は、MHC分子、好ましくはヒトMHC分子と抗原ペプチドの複合体をいう。本発明において、用語(タンパク質)複合体は、2以上のタンパク質(またはタンパク質とペプチド)が非共有結合タンパク質-タンパク質相互作用により連結することを意味する。故に、pMHC複合体において、抗原ペプチドはMHC分子に非共有結合で結合する。特に、抗原ペプチドは、MHC分子により形成されるペプチド受容溝に位置する。
【0064】
用語「ヒト白血球抗原(HLA)複合体」はヒトMHCをいう。本発明の好ましい実施態様において、MHC分子はHLA分子である。HLA分子は、別のヒトとの間ではアミノ酸配列が異なる。しかしながら、HLAは、HLAの国際的に合意された命名法、IMGT命名法により同定され得る。HLA-A遺伝子は染色体6の短アームに位置し、HLA-Aの大型、α鎖構成要素をコードする。HLA-A α鎖の変動は、HLA機能の手がかりである。この変動は集団の遺伝子多様性を促進する。各HLAが特定の構造のペプチドに対して異なる親和性を有するため、HLAの多様性が大きくなるほど、細胞表面に‘提示される’抗原の多様性が大きくなることを意味する。各個体は、各々が各親からの、2個までのタイプのHLA-Aを発現できる。ある個体は、両親から同じHLA-Aを受け継ぎ、個体HLA多様性が低減する。しかしながら、個体の大部分は、HLA-Aの2個の異なるコピーを受ける。同じパターンが全HLA群で続く。換言すると、全ての一人の人間は、現在1740個の活性タンパク質をコードする2432個の既知HLA-Aアレルの1個または2個しか発現できない。HLA-A*02は特異的HLAアレルを意味し、ここで、文字AはどのアレルにHLA遺伝子が属するかを意味し、接頭辞*02はA2血清型を示す。
【0065】
用語「ペプチドHLA複合体(pHLA複合体)」は、HLA分子、好ましくはHLA-A、HLA-BまたはHLA-C分子と抗原ペプチドの複合体をいう。
【0066】
本発明において、PBおよびPCは条件付きペプチドであり、PAはレスキューペプチドである。用語「条件付きリガンド交換」は、条件付きpMHC複合体を介するpMHC複合体の産生のためのテクノロジーである。換言すると、用語条件付きリガンド交換は、MHC分子に結合した条件付きペプチド(PBまたはPC)のレスキューペプチド(PA)での交換をいう。
【0067】
用語「条件付きペプチド」、「条件付きリガンド」および「条件付きペプチドリガンド」は相互交換可能に使用される。本発明において、条件付きペプチドは、MHC分子に結合でき、規定の刺激によりこのMHC分子から開裂するペプチドをいう。既定の刺激は、化学的および/または物理的刺激であってよく、温度上昇、pH変化、過ヨウ素酸との接触、亜ジチオン酸との接触およびUV照射またはこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。温度上昇に応答した条件付きリガンド交換はLuimstra et al., 2018に記載される。pH変化に応答した条件付きリガンド交換はWO2006/080837に記載される。過ヨウ素酸との接触による条件付きリガンド交換はWO2006/080837に記載される。亜ジチオン酸との接触による条件付きリガンド交換はChoo et al., 2014に記載される。UV照射による条件付きリガンド交換は、例えばToebes et al., 2006に記載される。条件付きリガンド交換のための既定の刺激が過ヨウ素酸との接触、亜ジチオン酸との接触またはUV照射であるならば、条件付きペプチドは、通常、既定の刺激により活性化されたとき、条件付きペプチドのペプチド主鎖内の共有結合の切断を行う、条件付きで反応性の基を含む(開裂可能な条件付きで反応性の基)。用語条件付きペプチドは、このような条件付きペプチドの非開裂形態をいう。開裂したペプチドがMHC分子から解離することが予測される。
【0068】
適当な開裂可能な条件付きで反応性の基は、例えば光活性化可能基(すなわちUV光により活性化され得る基、例えば3-アミノ-3-(2-ニトロ)フェニル-プロピオン酸または光活性化可能なその構造的等価物)、亜ジチオン酸活性化可能基(例えばアゾベンゼン部分)または過ヨウ素酸活性化可能基(例えば1,2-ジヒドロキシ部分、1-アミノ-2-ヒドロキシ部分または4-アミノ-4-デオキシ-L-トレオン酸)である。
【0069】
用語「条件付きpMHC複合体」は、条件付きペプチドとMHC分子の複合体をいう。条件付きペプチドが開裂可能ペプチドであるとき、条件付きpMHC複合体は、条件付きペプチドをその非開裂形態で含む。これは、(1)条件付きpMHC複合体が既定の刺激に曝されていないまたは(2)条件付きpMHC複合体が既定の刺激に曝されているが、条件付きペプチドの切断が起こっていないためであり得る。本発明の好ましい実施態様において、MHC分子はHLA分子である。故に、好ましい実施態様において、pMHC複合体はpHLA複合体であり、条件付きpMHC複合体は条件付きpHLA複合体である。
【0070】
用語「レスキューペプチド」は、本発明において、pMHC複合体における条件付きペプチドの置き換えに使用するペプチドをいう。既定の刺激への暴露後条件付きペプチドがMHC分子から開裂されたとき、レスキューペプチドは、MHC分子の空ペプチドリガンド結合ポケットに結合する。レスキューペプチドの結合により、新規(非条件付き)pMHC複合体が形成される。レスキューペプチドは、好ましくは条件付きで反応性の基を含まない。
【0071】
UV交換」は、条件付きリガンド交換の好ましい実施態様であり、ここで、既定の刺激はUV照射である。「UV照射」刺激は、300~400nm、好ましくは350~380nm、より好ましくは約366nmの波長を有するUV光での、好ましくは0℃~25℃の温度で約15~90分間、好ましくは約30~60分間の照射をいう。UV照射刺激中、pMHC/pHLA複合体は好ましくは溶液、より好ましくは緩衝液、例えばPBSおよびTBSA(20nM Tris塩基pH8、150mM NaCl、0.02%Na-酸)から選択される緩衝液中にある。
【0072】
UVペプチド」は、条件付きペプチドの好ましい実施態様である。用語UVペプチドは、UV暴露により開裂可能(すなわち、ペプチド主鎖の切断)であるペプチドをいう。UVペプチドは、アミノ酸残基のUV感受性アミノ酸残基での交換により親ペプチドから産生される(アミノ酸配列における条件付きで反応性の基(X)により表される)。好ましくは、このUV感受性アミノ酸残基は3-アミノ-3-(2-ニトロ)フェニル-プロピオン酸残基または光活性化可能なその構造的等価物である。
【0073】
用語「親ペプチド」は、条件付きペプチド、特にUVペプチド産生のための鋳型として使用するペプチドをいう。好ましくは、親ペプチドは、排他的にタンパク質を構成するアミノ酸を含む。条件付きペプチドは、アミノ酸、好ましくは1個または2個のアミノ酸、より好ましくは1個のアミノ酸の条件付きで反応性の基、特に条件付きで反応性のアミノ酸アナログでの置き換えにより、親ペプチドから産生される。条件付きペプチドは、親ペプチドと比較して、さらなるアミノ酸置換を含み得る。親ペプチドは、例えばウイルスペプチドまたはヒトペプチドであり得る。本発明の本方法および実施態様において、親ペプチドが自己ヒトペプチドであるのが好ましい。親ペプチドはヒトで高度に発現および/または高頻度で提示され、故に、非免疫原性または弱い免疫原性のみであることが期待され得るのが特に好ましい。非免疫原性または弱い免疫原性親ペプチドから産生される条件付きペプチドもまた非免疫原性または弱い免疫原性のみ(高度に免疫原性親ペプチドから産生される条件付きペプチドと比較して)であることが期待され得る。好ましい実施態様において、親ペプチドは、親ペプチドの1個または2個のアミノ酸が条件付きで反応性のアミノ酸アナログで置き換えられていることにより由来する条件付きペプチドと異なる。
【0074】
「UV単量体」は、条件付きpHLA複合体の好ましい実施態様である。用語「UV単量体」は、UVペプチドを含むpHLA複合体をいう。UV単量体を使用して、UV単量体をUV光に曝し、レスキューペプチドを提供することにより、EC単量体を産生し得る。
【0075】
用語「EC単量体」は、UV誘導ペプチド交換(すなわちUVペプチドのレスキューペプチドでの交換)によりUV単量体から産生されるpHLA複合体をいう。用語EC単量体は、故に、PAを含むpHLA複合体をいう。多量体は数個のEC単量体から形成され得る。
【0076】
用語「Std単量体」は標準再折りたたみプロトコールを使用して産生されるpHLA複合体をいう。
【0077】
用語「 」(「mol/L」で測定、「M」と略すこともある)は、本発明において、結合部分(例えばTCRなどの抗原結合タンパク質)と標的分子(例えばMHCと複合体の抗原ペプチド)の間の特定の相互作用の解離平衡定数をいう。親和性は、表面プラズマ共鳴(SPR)ベースのアッセイ(例えばBIAcoreアッセイ);バイオレイヤー干渉(BLI)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA);および競合アッセイ(例えば放射免疫アッセイ(RIA))を含むが、これらに限定されない当分野で知られる一般的方法により測定できる。低親和性抗原結合タンパク質は、一般にゆっくり結合し、容易に解離する傾向にあり、一方高親和性抗原結合タンパク質は、一般に速く結合し、長く結合したままである傾向にある。結合親和性を測定する多種多様な方法が当分野で知られ、その何れも本発明の目的で使用できる。
【0078】
最大半量有効濃度」は、「EC50」ともいい、典型的に特定した暴露時間後のベースラインと最高の間の半分の応答を誘導する分子の濃度をいう。EC50および親和性は逆相関であり、分子のEC50値が低いほど、親和性が高い。一例において、「EC50」は、特定した暴露時間後のベースラインと最高の間の半分の応答を誘導する本発明の抗原結合タンパク質の濃度である。EC50値は、例えばELISAなどの結合アッセイまたはフローサイトメトリーまたは機能的アッセイを使用して、種々の既知の方法により実験的に評価できる。
【0079】
用語「特異的に結合する」は、本発明において、TCRなどの抗原結合タンパク質または抗体が好ましくは唯一の抗原ペプチド(標的抗原ペプチド)を特異的に認識または結合し、好ましくは他の抗原ペプチド(非標的抗原ペプチド)に結合(交差反応性)しないまたは実質的にしない、すなわち標的抗原ペプチドと非標的ペプチド、特に標的ペプチドと類似配列を有する非標的ペプチド(類似ペプチドとも称する)を区別する、特徴をいう。類似ペプチドの中で、本発明の抗原結合タンパク質に検出可能な程度で結合しないものがいくつかある、例えばバックグラウンドレベルを超える結合シグナルまたは機能的応答が検出不可能であるペプチドがあることを当業者は認識し、ここで、「バックグラウンドレベル」は、非相同、「非類似」ペプチドで観察されるまたはペプチド非存在下で観察される結合シグナルまたは機能的応答をいう。他の類似ペプチドについて、低い結合であるが、しかしながら顕著ではない結合が検出可能であり得る。これらのペプチドもまた「関連する可能性のある」類似ペプチドとも記載し得る。
【0080】
抗原結合タンパク質は
- MHCと複合体の類似ペプチドの結合のKがMHCと複合体の標的抗原ペプチドの結合のKと比較して、25倍以上、30倍以上、40倍以上、50倍以上、75倍以上または100倍以上増加するならば;
- 機能的アッセイにおいて、MHCと複合体の類似ペプチドに対する応答が、MHCと複合体の標的ペプチドに対する応答と比較して顕著に低減する、特に25倍以上、30倍以上、40倍以上、50倍以上、75倍以上または100倍以上低減するならば;または
- 機能的アッセイにおいて決定したEC50が、MHCと複合体の標的抗原ペプチドと比較して、MHCと複合体の類似ペプチドで25倍以上、30倍以上、40倍以上、50倍以上、75倍以上または100倍以上増加しているならば、
類似ペプチドと顕著に結合しないと考える。
【0081】
機能的応答」は、機能的アッセイにおいて測定した応答をいう。「機能的アッセイ」は、本発明において、抗原結合タンパク質が免疫細胞で発現され、該免疫細胞がMHCと複合体の抗原ペプチドを提示する抗原提示細胞と共培養される、アッセイをいう。抗原結合タンパク質がペプチド:MHC複合体に特異的に結合できるならば、これは免疫細胞の活性化をもたらす。好ましくは、抗原結合タンパク質はTCRであり、免疫細胞はT細胞である。T細胞の活性化は、当業者に知られる方法、例えばT細胞からのサイトカイン(例えばTNF-αおよび/またはIFN-γ)の放出の測定またはT細胞による抗原提示細胞の殺滅の測定、例えば抗原提示細胞からの細胞間タンパク質の放出の測定で決定できる。後者の種類の機能的アッセイは細胞毒性アッセイとも称される。適当な細胞内タンパク質は、例えば抗原提示細胞により発現される内因性LDHまたはトランスジェニックタンパク質、例えばルシフェラーゼである。T2細胞などの抗原提示細胞への負荷に使用する抗原ペプチドの濃度を変えることにより、最大半量有効濃度(EC50)を機能的アッセイにおいて決定し得る。
【0082】
用語「発現」は、本発明において、ヒト組織におけるタンパク質またはペプチドの存在をいう。タンパク質またはペプチドの発現なる用語は、それが、細胞のリボソーム機構におけるタンパク質生合成の過程中、その核酸配列からそのアミノ酸配列に翻訳されることを意味する。発現したタンパク質は、細胞内または細胞外、例えば細胞の表面に位置し得る。タンパク質が発現されるヒト組織は、健常または罹患組織であり得る。
【0083】
ハウスキーピング遺伝子」は、本発明において、典型的に、基本的細胞機能の維持に必要であり、正常および病態生理学的条件下に、生物の全細胞で発現される、構成的遺伝子である。一部ハウスキーピング遺伝子は、大部分の非病的状態で比較的一定割合で発現されるが、他のハウスキーピング遺伝子の発現は、実験条件により変わり得る。ハウスキーピング遺伝子は、ゲノムにおける活性遺伝子の大部分を占め、その発現は明らかに生存に重要である。ハウスキーピング遺伝子発現レベルは、種々の組織の代謝要求に合うよう微調整される。ハウスキーピング遺伝子の例を、次の通り挙げる(非網羅的):転写因子、翻訳因子、リプレッサー分子、RNAスプライシング分子、RNA結合タンパク質、リボソームタンパク質、ミトコンドリアリボソームタンパク質、RNAポリメラーゼ、タンパク質プロセシング遺伝子、ヒートショックタンパク質、ヒストン、細胞周期、アポトーシス、癌遺伝子、DNA修復、DNA複製、代謝関与遺伝子、例えば炭水化物代謝、クエン酸サイクル、脂質代謝、アミノ酸代謝に関与する遺伝子、NADHデヒドロゲナーゼ、シトクロムCオキシダーゼ、ATPase、リソソーム、プロテアソーム、リボヌクレアーゼ、チオレダクターゼ、受容体、チャネル、トランスポーター、HLA/免疫グロブリン/細胞認識、キナーゼ、細胞骨格、増殖因子、腫瘍壊死因子α。
【0084】
用語「アミノ酸配列同一性」は、本発明において、配列同一性のパーセンテージをいい、比較ウィンドウにわたり2個の最適に配列された配列の比較により決定され、ここで、比較ウィンドウにおける配列の部分は、2個の配列の差異的配列のために、対照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、付加または欠失(すなわちギャップ)を含み得る。パーセンテージは、両配列で同一核酸塩基またはアミノ酸残基がある位置の数を決定して、適合位置の数を得て、適合位置の数を比較ウィンドウにおける位置の総数で除し、結果を100倍して、配列同一性のパーセンテージをもたらすことにより計算される。
【0085】
用語「同一」は、本発明において、同じである、すなわちアミノ酸または核酸の同じ配列を含む、2以上のポリペプチドまたは核酸配列、2以上の配列または部分配列をいう。配列は、次の配列比較アルゴリズムの一つまたは手動整列および目視検査を使用して測定して、比較ウィンドウまたは指定領域にわたる最高対応について比較および整列したとき、同じであるアミノ酸残基が特定したパーセンテージ(例えば、特定した領域にわたり少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性)であるならば、互いに「実質的に同一」である。これらの定義はまた試験配列の相補体もいう。従って、用語「少なくとも80%配列同一性」は、ポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列比較に関連して、明細書をとおして使用する。この表現は、好ましくは各対照ポリペプチドまたは各対照ポリヌクレオチドに対する少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性をいう。
【0086】
用語「配列比較」は、本発明において、ある配列が対照配列として働き、それに対して試験配列を比較する過程をいう。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験および対照配列をコンピューターにインプットし、必要であれば部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを一般に使用するかまたは別のパラメータを指定できる。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づき対照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性または類似性を計算する。2個の配列を比較し、配列同一性パーセンテージの計算のために比較すべき対照配列が特定されていない場合、特に断らない限り、配列同一性は、比較する2個の配列の長い方を参照して計算される。対照配列が指定されるならば、配列同一性は、特に断らない限り、配列番号で示される対照配列の完全長に基づき決定される。
【0087】
比較のための配列の整列方法は当分野で周知である。比較のための配列の最適整列は、例えば、Smith and Waterman (Adv. Appl. Math. 2:482, 1970)の局所相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch (J. Mol. Biol. 48:443, 1970)の相同性整列アルゴリズム、Pearson and Lipman (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988)の類似性の検索の方法、これらアルゴリズムのコンピューター制御の実行(例えば、Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)または手動整列および目視検査(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1995 supplement)参照)により実施され得る。パーセント配列同一性および配列類似性決定に適するアルゴリズムは、それぞれAltschul et al. (Nuc. Acids Res. 25:3389-402, 1977)およびAltschul et al. (J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990)に記載されるBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、the National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を介して公的に入手可能である。このアルゴリズムは、まずデータベース配列の同じ長さのワードと整列したとき、マッチするまたはある正の値の閾値スコアTを満たす、クエリー配列における長さWの短ワードの同定により、高スコアリング配列対(HSP)を同定する。Tは、近隣ワードスコア閾値と称される(Altschul et al., supra)。これらの初期近隣ワードヒットはそれらを含む長いHSPを見つけるための検索開始の種として働く。ワードヒットは、累積整列スコアが増加され得る限り、各配列に沿って両方向で拡張される。累積スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメータM(マッチング残基対のリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチング残基のペナルティスコア;常に<0)を使用して、計算される。アミノ酸配列について、スコアリングマトリックスを使用して、累積スコアを計算する。各方向でのワードヒットの拡張は、累積整列スコアがその最高の達成された値から量X低下したとき;累積スコアが1以上の負のスコアの残基の整列の累積により0以下になったとき;またはいずれかの配列の端に達したとき、停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは整列の感受性および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3および期待値(E)10およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915, 1989参照)整列(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4および両鎖の比較を使用する。
【0088】
BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の他の指標は、アミノ酸配列間のマッチが偶然起こる確率の指標を提供する、最小合計確率(P(N))である。例えば、アミノ酸は、試験アミノ酸と対照アミノ酸の比較における最小合計確率が約0.2未満、典型的に約0.01未満、より典型的に約0.001未満であるならば、対照配列に類似すると考えられる。アミノ酸が化学的に関連するアミノ酸で置換される半保存的および特に保存的アミノ酸置換が好ましい。典型的置換は、脂肪族アミノ酸間、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸間、酸性残基を有するアミノ酸間、26アミド誘導体間、塩基性残基を有するアミノ酸間または芳香族残基を有するアミノ酸間である。典型的半保存的および保存的置換を下表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
A、F、H、I、L、M、P、V、WまたはYからCへの変更は、新規システインが遊離チオールのままであるならば、半保存的である。さらに、立体的に嵩高い位置でのグリシンは置換すべきではなく、Pはアルファ螺旋またはベータシート構造を有するタンパク質の部分に導入すべきではないことを当業者は認識する。
【0091】
用語「検出可能標識」は、本発明において、異なる分子または細胞を、この異なる分子が、標識が発揮する性質または特異的特徴により選択されることを可能とるために、標識する分子をいう。例えば、その後の分子は、標識されたタンパク質、DNAまたはRNAまたはビーズもしくは他の適当な物質などの合成物質であり得る。タンパク質に関して、標識戦略は、ビオチン、レポーター酵素、フルオロフォア、磁気標識および放射性同位体を含む異なる分子の標的タンパク質またはペプチドまたはヌクレオチド配列への共有結合をもたらす。単一細胞を、シーケンシング実験において、短DNAまたはRNAバーコード‘タグ’を使用して標識して、同じ細胞由来のリードを同定できる。標識は蛍光標識、例えばキサンテン、アクリジン、オキサジン、シアニン、スチリル色素、クマリン、ポルフィリン、金属-リガンド-複合体、蛍光タンパク質、ナノ結晶、ペリレンおよびフタロシアニン、ストレプトアビジン-フィコエリスリン(SA-PE)、ストレプトアビジン-アロフィコシアニン(SA-APC)またはストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット421(SA-BV421);RNAバーコードまたはDNAバーコードまたは放射性標識であり得る。放射性標識は、典型的に1以上の原子が放射性カウンターパート、すなわち放射性同位体で置き換えられている分子である。タンパク質、ペプチド、DNAまたはRNAを放射性標識し得る。磁気標識は、例えば特定の表面抗原に対する抗体で被覆され得る、磁気ビーズまたは磁気ナノ粒子である。磁気標識を磁気活性化細胞分類(MACS)で使用し得る。
【0092】
用語「検出可能に異なる」は、本発明において、2個の標識が存在するが、発するシグナルによってのみ異なり得るシナリオをいう。例えば、2個の細胞を蛍光標識で標識し得て、ここで、一方の細胞に結合した蛍光標識は、赤色シグナルであり得て、第二細胞に結合した蛍光シグナルは緑色シグナルであり得る。例示した細胞の2個の標識は、故に、検出可能に異なる。
【0093】
用語「フローサイトメトリー分析」は、本発明において、サンプルの特異的細胞集団または細胞亜集団の化学的および物理的性質の測定を含む技術をいう。サンプルは、通常懸濁液であり、検出単位、典型的にフルオロフォアを発するレーザービームおよび光検出器をとおるとき、1細胞の流れをもたらすよう調節される。検出シグナル、例えば細胞の貫通により散乱される光は、細胞、すなわちその成分の特徴である。複数細胞を、この技術により短時間で分析できる。フローサイトメトリーの日常的適用は、細胞計数、細胞分類、細胞特徴および機能の決定、疾患、例えば癌の診断、バイオマーカー検出または微生物検出である。人気のフローサイトメトリー技術は、蛍光活性化細胞分類(FACS)である。FACS技術は、特定の細胞集団の個々の標識プロファイルに基づき細胞分類することを可能とする、1以上の標的細胞を蛍光色素タグまたは標識で標識できる能力を利用する。
【0094】
用語「磁気活性化細胞分類」(MACS)は、特定の細胞表面抗原に対応する抗体がコンジュゲートした機能的ミクロまたはナノ粒子を利用する分類技術をいう。磁場勾配の適用下、磁気により標的とされた細胞を、用いる抗原に関して正のまたは負の形式で分類できる。当業者は、様々な種類の分類分析を十分知っている。
【0095】
用語「疾患」は、組織、臓器または個体がその機能をもはや効率的に充足しない、異常な状態、特に疾病または傷害などの異常な医学的状態をいう。対照的に、異常な状態が存在しないかつ組織、臓器または個体に病理所見がないならば、ここでは健常組織、臓器または個体という。健常組織において、細胞の無作為な遊走はなく、細胞は組織を特徴づける構造で互いに接着し、機能を助ける。健常組織に転移は存在しない。典型的に、しかし必ずしもそうではないが、疾患はその疾患の存在を示す特異的症状または徴候が付随する。このような症状または徴候の存在は、故に、組織、臓器または個体が疾患を有する指標である。これらの症状または徴候の変更はこのような疾患の進行の指標であり得る。疾患の進行は、典型的に疾患の悪化または改善を示すこのような症状または徴候の増減により特徴づけられる。疾患の「悪化」は、組織、臓器または生物が効率的にその機能を充足させる能力の減少により特徴づけられ、一方疾患の「改善」は、典型的に組織、臓器または生物が効率的にその機能を充足させる能力の増加により特徴づけられる。疾患を「発症するリスク」にある組織、臓器または個体は、健常状態であるが、疾患発現の可能性を示す。典型的に、疾患を発症するリスクは、そのような疾患の早期のまたは弱い徴候または症状が付随する。そのような場合、疾患はなお処置により予防され得る。疾患の例は、感染症、外傷性疾患、炎症性疾患、皮膚状態、内分泌疾患、腸疾患、神経障害、関節疾患、遺伝子障害、自己免疫性疾患および種々のタイプの癌を含むが、これらに限定されない。ここで定義する健常組織は、通常健常細胞を含むまたはそれからなる。
【0096】
用語「免疫疾患」は、本発明において、免疫系により誘発される疾患をいう。
【0097】
用語「新生物疾患」は、本発明において、細胞の異常増殖により特徴づけられる疾患をいい、腫瘍としても知られる。新生物疾患は、腫瘍増殖を引き起こす状態である。悪性腫瘍は癌であり、ゆっくりまたは急速に成長し、複数組織および臓器に転移または拡散するリスクがあり得る。「腫瘍」は、急速な、未制御細胞増殖により増殖し、新規増殖を開始させる刺激がなくなった後も増殖し続ける異常細胞または組織群を意味する。腫瘍は、正常組織との構造的秩序および機能的協調を一部または完全に欠き、通常良性または悪性であり得る明らかな組織塊を形成する。新生物疾患は癌に至り得て、ここで、癌タイプ疾患の例は、基底細胞癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、バーキットリンパ腫、頸部癌、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、食道癌、網膜芽細胞腫、胃(胃体)癌、消化器間質腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、白血病、リンパ腫、黒色腫、中咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、胸膜肺芽腫、前立腺癌、咽頭癌、甲状腺癌および尿道癌を含むが、これらに限定されない。
【0098】
ウイルスまたは細菌により引き起こされる疾患」はまたウイルスまたは細菌感染症とも称され得る。本発明において、疾患を引き起こすウイルスは、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス感染(HPV)、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、インフルエンザウイルスを構成する群から選択され得る。本発明において、疾患を引き起こす細菌は結核菌であり得る。この細菌により引き起こされる疾患は、故に、結核である。抗原結合タンパク質がウイルス抗原ペプチド、例えば、HIVペプチドを標的とするとき、抗原結合タンパク質をHIV処置に使用し得ることは、当業者には理解される。従って、ウイルスまたは細菌抗原ペプチドをターゲティングする抗原結合タンパク質は、故に、該抗原性ウイルスまたは細菌抗原ペプチドが由来するウイルスまたは細菌の処置に適する。
【0099】
用語「処置する」または「処置」は、治療的処置(すなわちある疾患を有する対象)および/または予防的または防止的処置(すなわちある疾患を発症しやすい対象)両方を含む。治療的処置は、障害または状態の1以上の症状の回復、軽減および/または進行の阻止を意味する。予防的処置は、障害または状態の1以上の症状の発生の予防を意味する。それ故に、処置は疾患の完全な治癒をもたらす処置だけでなく、疾患進行を減速させる、疾患発生を阻止または遅延させるおよび/または対象の生存を延長する処置もいう。
【0100】
本明細書において、用語「対象」、「個体」および「患者」は相互交換可能に使用され、本発明により利益を受け得るあらゆる哺乳動物をいう。特に、「個体」はヒトである。処置が予防である場合、個体は健常であり得る。
【0101】
用語「処置を必要とする対象」は、本発明において、疾患、例えば免疫疾患、新生物疾患またはウイルスにより引き起こされる疾患または細菌により引き起こされる疾患に罹患しているまたは罹患するリスクのある対象をいう。新生物疾患、例えば癌は、細胞の未制御のおよび/または不適切な増殖を含む。新生物障害または疾患は、例えば、腫瘍関連抗原(TAA)の発現により特徴づけられる腫瘍疾患であり得る。
【0102】
用語「アミノ酸」は、本発明において、20の天然または遺伝子によりコードされるアルファ-アミノ酸:アラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン(GlnまたはQ)、グルタミン酸(GluまたはE)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リシン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)およびバリン(ValまたはV)をいう。これら20の天然アミノ酸の構造は、例えば、Stryer et al., Biochemistry, 5th ed., Freeman and Company (2002)に示される。さらなるアミノ酸、例えばセレノシステインおよびピロリシンも遺伝子によりコードされ得る(Stadtman (1996) “Selenocysteine,” Annu Rev Biochem. 65:83-100 and Ibba et al. (2002) “Genetic code: introducing pyrrolysine,” Curr Biol. 12(13):R464-R466)。アミノ酸は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を形成し得る。本明細書で使用する用語「ペプチド」は、ペプチド結合により形成されたアミノ酸の短ポリマーをいう。タンパク質と同じ化学(ペプチド)結合を有するが、一般に長さが短い。本明細書において使用する、ペプチドは、典型的に8~25アミノ酸長を有する。
【0103】
用語「核酸」は、本発明において、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基または両者の一本または二本鎖オリゴマーまたはポリマーをいう。ヌクレオチド単量体は、核酸塩基、5炭素糖(例えばリボースまたは2’-デオキシリボースであるが、これらに限定されない)および1~3個のリン酸基からなる。典型的に、核酸は、個々のヌクレオチド単量体間のホスホジエステル結合を介して形成される。本発明において、用語核酸は、リボ核酸(RNA)およびデオキシリボ核酸(DNA)分子を含むが、これらに限定されず、また他の結合を含む核酸の合成形態も含む(例えば、Nielsen et al. (Science 254:1497-1500, 1991)に記載のペプチド核酸)。典型的に、核酸は、一本または二本鎖分子であり、天然に存在するヌクレオチドからなる。核酸の一本鎖の記載はまた(少なくとも部分的に)相補鎖の配列を規定する。核酸は一本鎖または二本鎖でよく、または二本および一本鎖配列両方の部分を含み得る。例として、二本鎖核酸分子は3’または5’オーバーハングを有し得て、そのようなものとして、全長にわたり完全に二本鎖である必要はないまたはそう想定されない。核酸は生物学的、生化学的または化学的合成方法またはRNAの増幅および逆転写の方法を含むが、これに限定されない当分野で知られる方法の何れかにより得ることができる。用語核酸は、染色体または染色体部分、ベクター(例えば、発現ベクター)、発現カセット、ネイキッドDNAまたはRNAポリマー、プライマー、プローブ、cDNA、ゲノムDNA、組み換えDNA、cRNA、mRNA、tRNA、ミクロRNA(miRNA)または低分子干渉RNA(siRNA)を含む。核酸は、例えば、一本鎖、二本鎖または三本鎖であり得て、ある特定の長さに限定されない。特に断らない限り、特定の核酸配列は、明示的に示す任意の配列に加えて、相補的配列を含むまたはコードする。
【0104】
用語「ベクター」は、本発明において、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドおよび目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む混合物をいい、細胞に導入できるまたはその中に含まれているタンパク質および/または核酸を導入できる。ベクターの例は、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたは人工染色体を含むが、これらに限定されない。ベクターを使用して、例えば外来または異種DNAなどの目的の遺伝子産物を宿主細胞に導入できる。ベクターは、宿主細胞におけるベクターの自律複製を促進する「レプリコン」ポリヌクレオチド配列を含み得る。外来DNAは、宿主細胞で天然に見られず、例えば、ベクター分子を複製する、選択可能またはスクリーニング可能マーカーをコードするまたは導入遺伝子をコードするDNAである、異種DNAをいう。宿主細胞に入ると、ベクターは宿主染色体DNAと無関係にまたは同時に複製でき、数コピーのベクターおよびその挿入DNAが産生され得る。さらに、ベクターはまた挿入DNAのmRNA分子への転写を可能にする必要な要素も含み得るかまたは他の方法で挿入DNAの複数コピーのRNAへの複製を引き起こす。ベクターはさらに目的の遺伝子の発現を制御する「発現制御配列」を包含し得る。典型的に、発現制御配列は、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、インスレーターまたはリプレッサーなどのポリペプチドまたはポリヌクレオチドである。1以上の目的の遺伝子産物をコードする1を超えるポリヌクレオチドを含むベクターにおいて、発現は、1以上の発現制御配列により一緒にまたは別々に制御され得る。より具体的に、ベクターに含まれる各ポリヌクレオチドは別々の発現制御配列により制御され得るかまたはベクターに含まれる全ポリヌクレオチドは単一発現制御配列により制御され得る。単一発現制御配列により制御される単一ベクターに含まれるポリヌクレオチドは、オープンリーディングフレームを形成し得る。ある発現ベクターは、さらに発現mRNAの半減期を延長するおよび/またはmRNAのタンパク質分子への翻訳をさせる挿入DNAに隣接した配列要素を含む。故に、挿入DNAによりコードされるmRNAおよびポリペプチドの分子の多くは、迅速に合成され得る。このようなベクターは、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどの制御要素を含み、対象への投与により該ポリペプチドの発現を引き起こすかまたは指示し得る。動物細胞のための発現ベクターで使用されるプロモーターおよびエンハンサーの例は、SV40の早期プロモーターおよびエンハンサー(Mizukami T. et al. 1987)、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターおよびエンハンサー(Kuwana Y et al. 1987)、免疫グロブリンH鎖のプロモーター(Mason JO et al. 1985)およびエンハンサー(Gillies SD et al. 1983)などを含む。動物細胞のためのあらゆる発現ベクターを、ヒト抗体C領域をコードする遺伝子が挿入および発現され得る限り、使用できる。適当なベクターの例は、pAGE107(Miyaji H et al. 1990)、pAGE103(Mizukami T et al. 1987)、pHSG274(Brady G et al. 1984)、pKCR(O’Hare K et al. 1981)、pSG1ベータd2-4-(Miyaji H et al. 1990)などを含む。プラスミドの他の例は、複製起点を含む複製プラスミドまたは統合的プラスミド、例えばpUC、pcDNA、pBRを含む。
【0105】
用語「T細胞受容体ライブラリー」は、本発明において、多数の異なるT細胞受容体(TCR)タンパク質またはそのフラグメントを含み、ここで、各TCRタンパク質またはそのフラグメントが異なる、ライブラリーをいう。
【0106】
本明細書特許請求の範囲および明細書をとおして頻繁に使用される用語の略語:
【表3】

【0107】
実施態様
次に、本発明の種々の態様をより詳細に定義する。このように定義される各態様は、明らかに反する指示がない限り、任意の他の1以上の態様と組み合わせ得る。特に、好ましいまたは有利であるとして定義されるあらゆる特性は、好ましいまたは有利あるとして示される任意の1以上の他の特性と組み合わせ得る。
【0108】
本発明の第一の態様は、ペプチドA(PA)と主要組織適合性複合体(MHC)分子の複合体に特異的に結合する抗原結合タンパク質を表面に発現する免疫細胞を選択する方法であって、次の:
(i)種々の抗原結合タンパク質を発現する複数の免疫細胞を提供し;
(ii)複数の免疫細胞と
(a)MHC分子1(M1)とペプチドA(PA)を含む複合体1Aおよび
(b)M1とペプチドB(PB)を含む複合体1X
を含む第一組成物を接触させ;
(iii)複数の免疫細胞と
(a)MHC分子2(M2)とPAを含む複合体2Aおよび
(b)M2とペプチドC(PC)を含む複合体2X
を含む第二組成物を接触させ;
(iv)複数の免疫細胞から複合体1A;特に複合体1Aおよび複合体2A両方に特異的に結合する抗原結合タンパク質を発現する細胞を選択する
工程を含み、ここで、複合体1Aおよび2Aではなく、複合体1Xおよび2Xが規定の刺激、好ましくは規定の化学的および/または物理的刺激により解離し;そして、PBおよびPCのアミノ酸配列は少なくとも1個のアミノ酸、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも5個、6個、7個または8個のアミノ酸が異なるものである、方法に関する。PBおよびPCのアミノ酸配列が大きく異なることが、小さく異なるよりも好ましい。発現「PBおよびPCは少なくとも1個のアミノ酸が異なる」は、PBおよびPCが少なくとも1個のタンパク質を構成するアミノ酸が異なることを意味することを意図する。下記のとおり、ある実施態様において、PBおよびPCは、条件付きで反応性のアミノ酸アナログであり得る条件付きで反応性の基を含む。条件付きで反応性のアミノ酸アナログでのみ異なり、タンパク質を構成するアミノ酸で異ならないPBおよびPCのペアは、本発明で必要な「PBおよびPCは少なくとも1個のアミノ酸異なる」との基準を満たさない。
【0109】
第一組成物は、(i)複合体1X(M1およびPBを含む)を提供し、(ii)PAを提供し、そして(iii)既定の刺激を提供して、それによりPBのM1からの解離およびPAのM1への結合を生じさせ、複合体1Aの形成をもたらすことにより得られ、好ましくはここで主に複合体1Aおよび残存量の複合体1Xを含む組成物が得られる。好ましい実施態様において、既定の刺激はPBにおける共有結合を切断させ、それによりPBからM1を解離させる。
【0110】
第二組成物は(i)複合体2X(M2およびPCを含む)を提供し、(ii)PAを提供し、そして(iii)既定の刺激を提供して、それによりPCのM2からの遊離およびPAのM2への結合を生じさせ、複合体2Aの形成をもたらすことにより得られ、好ましくはここで主に複合体2Aおよび残存量の複合体2Xを含む組成物が得られる。好ましい実施態様において、既定の刺激はPCにおける共有結合を切断させ、それによりPCをM2から遊離させる。
【0111】
好ましくは、本発明の第一の態様の方法は、複合体1Xを規定の刺激に付して複合体1Aを産生し、PAを提供する;および複合体2Xを規定の刺激に付して複合体2Aを産生し、PAを提供する工程を含む。
【0112】
「残存量の複合体1Xまたは2X」は、少なくとも0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%および/または20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%または5%未満の複合体1Xまたは2Xが、それぞれ第一または第二組成物に含まれることを意味する。
【0113】
「主に複合体1Aまたは2A」は、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%および/または99.9%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%または85%未満の複合体1Aまたは2Aが、それぞれ第一または第二組成物に含まれることを意味する。
【0114】
ある実施態様において、免疫細胞はT細胞またはB細胞である。免疫細胞がT細胞であるのが好ましい。より好ましくは、T細胞はCD8 T細胞である。ある実施態様において、抗原結合タンパク質はTCR、BCRまたはその抗原結合フラグメントである。抗原結合タンパク質がTCRであるのが最も好ましい。
【0115】
既定の化学的および/または物理的刺激は、温度上昇、pH変化、過ヨウ素酸との接触、亜ジチオン酸との接触および光、特にUV照射またはこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。既定の刺激が温度上昇を含む/であるならば、温度変化が10℃未満から20℃超、より好ましくは10℃未満、特に1~10℃から25~45℃であるのが好ましい。既定の刺激がpH変化を含む/であるならば、変化は天然pHから酸性またはアルカリ性pH、好ましくは約7~8から約5~6であるのが好ましい。既定の刺激が亜ジチオン酸との接触であるならば、PBおよび/またはPCは亜ジチオン酸活性化可能基を含む。既定の刺激が過ヨウ素酸との接触であるならば、PBおよび/またはPCは過ヨウ素酸活性化可能基を含む。既定の刺激がUV照射であるならば、PBおよび/またはPCは光活性化可能基を含む。
【0116】
好ましい実施態様において、既定の化学的および/または物理的刺激は過ヨウ素酸との接触、亜ジチオン酸との接触およびUV照射からなる群から選択される。ある実施態様において、既定の刺激を、度上昇および/またはpH変化と組み合わせて、刺激を増強する。最も好ましい実施態様において、既定の刺激はUV照射である。当業者は、例えばRodenko et al., 2006、Toebes et al. 2006、Bakker et al., 2008、Chang et al, 2013およびFrosig et al., 2015に記載の、ペプチドリガンド交換のための適当なUV刺激を十分知っている。
【0117】
M1および/またはM2、特にM1およびM2がMHC-I分子であるのが好ましい。M1およびM2が同じアレルのMHC-I分子であるまたは同じアレルのMHC誘導体または抗原ペプチド結合フラグメントであるのがさらに好ましい。MHC-I分子が天然に存在するMHC分子またはその抗原ペプチド結合フラグメントであるのが好ましい。ある例において、CD8への結合が増加または減少したMHCバリアントがMHC誘導体として使用され得る。
【0118】
M1およびM2はペプチド特異性は異ならない。換言すると、M1およびM2は同じペプチドリガンドに結合する。特に、M1およびM2は本質的に同じ親和性でPAに結合する。しかしながら、M1およびM2は、M1およびM2がMHC-I分子であるならば、アルファ3ドメインなどの、ペプチド結合に重大ではない領域/ドメインが異なり得る。好ましい実施態様において、M1およびM2は同一である。重要なことに、これは、さらに下記のとおり、通常M1およびM2が異なる担体および/または検出可能標識に結合することを排除しない。
【0119】
M1および/またはM2が担体に直接的または間接的に結合するのが好ましい。担体は細胞または合成担体であり得る。細胞は抗原提示細胞(APC)、好ましくはヒトAPCであり得る。合成担体は粒子、タンパク質、特にストレプトアビジン、フィラメント、マイクロアレイチップおよびELISAプレートから選択され得る。粒子はミクロ粒子、ナノ粒子、マイクロビーズまたはナノビーズであり得る。このような粒子は、通常ポリマー製である。マイクロビーズは、磁気または常磁性ビーズであり得る。合成担体は、カップリング残基のペアの第一メンバーを含むまたはそれからなり得る。ある実施態様において、合成担体は、カップリング残基のペアの第一メンバーで共有結合または非共有結合によって被覆され得る。カップリング残基のペアの第二メンバーは、M1またはM2に共有結合でまたは非共有結合でカップリングされる。好ましい第一および第二カップリング残基のペアは、ストレプトアビジンおよびビオチンを含む。当業者は、カップリング残基の他のペアを知っている。好ましい実施態様において、合成担体はストレプトアビジンで被覆され、これはビオチン部分を含むM1またはM2の固定化を可能とする。逆に、ビオチンで被覆された合成担体は、ストレプトアビジン部分を含むM1またはM2の固定化を可能とする。他の好ましい実施態様において、合成担体は、第二メンバーの少なくとも2個の結合部位、好ましくは3個、4個、5個、6個、7個または8個の結合部位、特に好ましくは4個の結合部位を有するカップリング残基のペアの第一メンバーからなり、2以上のM1(またはM2)の複合体の形成を可能とし、ここで、各M1(またはM2)は、カップリング残基のペアの第二メンバーに共有結合でまたは非共有結合で、好ましくは共有結合でカップリングされる。好ましい態様において、ストレプトアビジンはカップリング残基のペアの第一メンバーであり、ビオチンはカップリング残基のペアの第二メンバーである。ストレプトアビジンはビオチンに対する4個の結合部位を有する。故に、ビオチンを含むペプチドおよびM1(またはM2)の複合体がストレプトアビジンと接触したら、4個のペプチドが充填されているM1(またはM2)分子がストレプトアビジンに非共有結合で結合する可溶性四量体が形成される。このような可溶性多量体化pMHC複合体は、本発明の方法の工程(iii)に特に有用である。
【0120】
マイクロビーズの好ましい実施態様は、ストレプトアビジンで被覆されたポリスチレンビーズである。ペプチド-MHC複合体が結合したミクロ粒子、例えばストレプトアビジン被覆ポリスチレンビーズは、人工抗原提示細胞(aAPC)とも称され得る。故に、特にM1および/またはM2は、人工抗原提示細胞(aAPC)に含まれる。
【0121】
特に好ましい実施態様において、M1はAPCに結合するまたはミクロ粒子に結合するおよび/またはM2ビオチン部分を含むおよびストレプトアビジンに結合する、特に各々ビオチン部分を含む4個のM2はストレプトアビジンタンパク質のストレプトアビジンタンパク質に結合し、故にMHC四量体を形成する。
【0122】
好ましい実施態様において、M1および/またはM2、好ましくはM2またはM1および/またはM2、好ましくはM2が結合する担体は検出可能標識を含む。当業者はMHC分子または担体を標識する方法を熟知している。検出可能標識は同一でも異なってもよい。検出可能標識は蛍光標識からなる群から選択され得て、好ましくは蛍光標識はキサンテン、アクリジン、オキサジン、シアニン、スチリル色素、クマリン、ポルフィリン、金属-リガンド-複合体、蛍光タンパク質、ナノ結晶、ペリレンおよびフタロシアニン、より好ましくはストレプトアビジン-フィコエリスリン(SA-PE)、ストレプトアビジン-フィコエリスリン-シアニン5(SA-PE-Cy5)、ストレプトアビジン-アロフィコシアニン(SA-APC)、ストレプトアビジン-アロフィコシアニン-シアニン7(SA-APC-Cy7)、ストレプトアビジン-ペリジニンクロロフィル-Aタンパク質(SA-PerCP)、ストレプトアビジン-ペリジニンクロロフィル-Aタンパク質-シアニン5.5(SA-PerCP/Cy5.5)、ストレプトアビジン-フィコエリスリン-シアニン7(SA-PE-Cy7)、ストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット421(SA-BV421)、ストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット510(SA-BV510)、ストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット570(SA-BV570)、ストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット605(SA-BV605)、ストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット650(SA-BV650)、ストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット711、ストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット785(SA-BV785)、ストレプトアビジンVioBlue(SAVioBlue)、ストレプトアビジンアロフィコシアニンVio770(SA APC Vio770)、ストレプトアビジンペリジニンクロロフィル-Aタンパク質Vio700(SA PerCPVio700)、ストレプトアビジンフィコエリスリンVio 770(SA PE Vio770)またはストレプトアビジン-フィコエリスリン-Dazzle594;磁気標識;RNAバーコード;DNAバーコード;および放射性標識からなる群から選択され得る。磁気標識は、特定の表面抗原に対する抗体で被覆できる磁気ビーズまたは磁気ナノ粒子を含む。好ましい実施態様において、標識は、フローサイトメトリー分析、好ましくは蛍光活性化細胞分類(FACS)または微小流体分析または磁気活性化細胞分類(MACS)などの分取分類分析により検出可能である。
【0123】
好ましい実施態様において、工程(i)で提供される複数の免疫細胞は健常対象または疾患に罹患している対象の末梢血から得るまたは末梢血の画分から得る。疾患は免疫疾患、新生物疾患、好ましくは癌および/または腫瘍、ウイルスにより引き起こされる疾患または細菌により引き起こされる疾患からなる群から選択されるのが好ましい。好ましくは、ウイルスにより引き起こされる疾患はウイルス感染症であり;そして細菌により引き起こされる疾患は細菌感染症である。好ましくは、ウイルス感染症はHIV、HCMV、CMV、HPV、HBV、HCV、HPV、EBV、インフルエンザウイルスからなる群から選択されるウイルスにより引き起こされる。より好ましくは、ウイルス感染症はHIVにより引き起こされる。好ましくは、細菌感染症は結核菌により引き起こされる。このような疾患は結核である。より好ましい実施態様において、疾患は癌および/または腫瘍である。最も好ましい実施態様において、疾患はTAA提示癌などの癌である。
【0124】
好ましくは、画分は、免疫細胞、好ましくはT細胞、より好ましくはCD8 T細胞またはCD4 T細胞に富む。免疫細胞濃縮画分は、好ましくは、CD3、CD8、CD4およびCD19からなる群から選択される、1以上の免疫細胞特異的表面マーカーの検出可能な標識により選択されることが想定され得る。好ましい実施態様において、工程(i)で提供される複数の細胞は、表現型決定されているT細胞である。T細胞の表現型決定は、好ましくは1以上のT細胞マーカー、好ましくはCD3、CD4、CD8、CD11a、CD14、CD19、CD25、CD27、CD28、CD44、CD45RA、CD45RO、CD57、CD62L、CD69、CD122、CD127、CD197(CCR7)、IFNγ、IL-2、TNFα、IL7Rおよびテロメア長からなる群から選択されるものの存在の定量的または定性的決定を含む。
【0125】
好ましい実施態様において、工程ii)はさらに複数の細胞と共刺激分子、好ましくは抗CD28、抗CD3、抗CD137および/または抗CD134、より好ましくは抗CD28および/または抗CD3に対する抗体の接触を含む;および/または工程ii)はさらに複数の細胞とIL-2および/またはIL-12の接触を含む;および/または工程ii)を少なくとも3日間、好ましくは少なくとも7日間、より好ましくは少なくとも10日間実施する。工程(ii)の好ましい実施態様は免疫細胞の刺激、好ましくはT細胞の刺激である。工程(ii)の特に好ましい実施態様は、aAPCを使用するT細胞の刺激である。
【0126】
好ましい実施態様において、工程iii)は、さらに、複数の細胞と生存能色素および/または標識表面マーカー;好ましくはCD3、CD4、CD8および/またはCD69;より好ましくはCD3および/またはCD8の接触を含む。
【0127】
工程iv)で選択される細胞は、単細胞でも細胞集団でもよい。好ましい実施態様において、工程iv)は、検出、特徴づけおよび単離の少なくとも1個および所望により単細胞または細胞集団の培養を含む。
【0128】
工程(iii)および(iv)の好ましい実施態様は、それぞれ多量体染色およびフローサイトメトリーによる検出である。本発明において、多量体染色は、四量体またはデキストラマーなどの標識ペプチド:MHC多量体で細胞表面に発現された抗原結合タンパク質を染色することをいう。ペプチド:MHC多量体は、複合体2X(すなわちPC:MHC複合体)から産生された複合体2A(すなわちPA:MHC複合体)を単量体として含む。染色細胞は、フローサイトメトリーにより検出できる。好ましくは、ペプチド:MHC多量体は蛍光標識されている。多量体染色アッセイの例は、材料および方法セクションに記載する。多量体染色の分析は、少なくとも一次元(複合体2Aについて)であるが、さらなる次元、例えば2個の異なるフルオロフォアでの同じペプチド:MHC多量体標識を用いる二次元または1以上の次元を使用する類似ペプチドのための染色をも含み得る。
【0129】
工程(iii)および(iv)の他の可能性のある実施態様は、機能的アッセイ、例えば、IFNγ放出アッセイなどのTCR活性化アッセイである。
【0130】
本発明の第一の態様による方法のある好ましい適用は、抗原ペプチド、特にTAAの免疫原性に関する情報を得ることである。このような実施態様において、工程(ii)は刺激工程であり、工程(iii)および(iv)は一体となって読み出し工程(多量体染色およびフローサイトメトリーによる読み出しを含む)である。本発明者らは、pHLA複合体および抗CD28抗体を搭載したaAPCでのCD8+ T細胞の反復刺激を含む、インビトロ免疫学的標的バリデーションプラットフォームを設定した。続いて、pHLA複合体に反応性のCD8+ T細胞数を定量する。
【0131】
本発明の第一の態様の方法の他の好ましい適用は、ある抗原ペプチド、特にTAAに特異的なT細胞の単離である。このような実施態様において、工程(ii)は刺激工程であり、工程(iii)は、好ましくはFACSによる、単離工程である。
【0132】
本発明の第一の態様の方法において、表面にPAとMHC分子の複合体に特異的に結合する抗原結合タンパク質を発現する免疫細胞が選択される。本発明において、故に、PAは「標的ペプチド(リガンド)」または「目的のペプチド(リガンド)」または「レスキューペプチド」と記載され得る。対照的に、PBおよびPCの両者は「条件付きペプチド(リガンド)」である。M1またはM2と一緒になって、PBおよびPCは条件付きpMHC複合体(それぞれ複合体1Xおよび複合体2X)を形成する。これらの複合体は、既定の化学的および/または物理的刺激への暴露により解離するよう設計される。解離すると、PAはM1およびM2のペプチド結合ポケットと結合し、それぞれ複合体1Aおよび2Aの形成に至る。
【0133】
PA、PBおよび/またはPC、好ましくはPA、PBおよびPCは、MHC-I結合ペプチドであるのが好ましい。MHC-I結合ペプチドは、8~12アミノ酸、好ましくは8~11アミノ酸の長さを有する。
【0134】
PA、PBおよびPCは、同じHLAアロタイプにより提示される。PA、PBおよびPCを提示するHLAアロタイプは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-H、HLA-J、HLA-K、HLA-Lからなる群から選択され得る。好ましくは、HLA-Aタンパク質はHLA-A1、HLA-A2、HLA-A3およびHLA-A11からなる群から選択される。好ましいHLA-Aアレルは、HLA-A*02:01;HLA-A*01:01、HLA-A*03:01またはHLA-A*24:02である。好ましいHLA-Bアレルは、HLA-B*07:02;HLA-B*08:01、HLA-B*15:01、HLA-B*35:01またはHLA-B*44:05である。
【0135】
本発明において、抗原ペプチドが結合するHLAアレルは、抗原ペプチドの名称に続いて示される(カッコ内)。例えば(A*03)は、抗原ペプチドがHLA-A*03に結合することを示す。
【0136】
PAは、ウイルス抗原ペプチド、細菌抗原ペプチドおよび腫瘍関連抗原ペプチド(TAA)などの抗原ペプチドから選択される。最も好ましい実施態様において、PAはTAAである。本発明の方法でレスキューペプチド/目的のペプチドとして使用し得るペプチドの例は、HADV-014(A*03)、HIV-007(B*07)(ウイルスペプチド)およびMLA-001(A*02)(TAA)である。
【0137】
本発明のある実施態様において、PBおよびPCは、温度上昇および/またはpH変化によりpMHC複合体から解離するが、好ましくはPAはしない。本発明の好ましい実施態様において、PBおよびPCは、該既定の化学的および/または物理的刺激で活性化されたとき、それぞれPBまたはPCのペプチド主鎖内の共有結合を切断させる、条件付きで反応性の基を含むが、PAは含まない。切断は、pMHC複合体からのPBおよびPCのフラグメントの解離をもたらす。このような条件付きで反応性の基はまた開裂可能な条件付きで反応性の基とも称され得る。ある実施態様において、開裂可能な条件付きで反応性の基は、光活性化可能基、過ヨウ素酸活性化可能基および亜ジチオン酸活性化可能基からなる群から選択される。好ましい実施態様において、亜ジチオン酸活性化可能基はアゾベンゼン部分を含む。好ましい実施態様において、過ヨウ素酸活性化可能基は1,2-ジヒドロキシ部分またはその機能的等価物を含む。過ヨウ素酸および1,2-ジヒドロキシ系と等価の別の系がある。このような系は、過ヨウ素酸開裂可能な部位を含む1-アミノ-2-ヒドロキシ系およびポリオール、炭水化物、糖アミノ酸ハイブリッドである。ジヒドロキシエチレンペプチドアイソステアは、Thaisrivongs et al., 1991, Thaisrivongs et al., 1993およびOjima et al., 1998に記載される。他の過ヨウ素酸感受性化合物である4-アミノ-4-デオキシ-L-トレオン酸(ジオール含有アミノ酸構成要素)の合成は、Musich and Rapoport, 1978に記載される。開裂可能な条件付きで反応性の基は、光活性化可能基、特にUV感受性基、好ましくは3-アミノ-3-(2-ニトロ)フェニル-プロピオン酸またはその光活性化可能構造的等価物であるのが好ましい。
【0138】
PBおよびPCは、1個または2個、好ましくは1個の開裂可能な条件付きで反応性の基を含み得る。PBおよびPCが1個の開裂可能な条件付きで反応性の基を含むとき、PBおよびPCは、開裂可能な条件付きで反応性の基の各側で少なくとも1個、2個、3個または4個のアミノ酸が異なるのが好ましい。PBおよびPCに含まれる開裂可能な条件付きで反応性の基は同一でも異なってもよい。本発明の最も好ましい実施態様において、PBおよびPCはUV感受性基を含むが、PAは含まない。
【0139】
UV交換テクノロジーに使用するための、親ペプチドからUV感受性ペプチドの産生は、Toebes et al. 2006、Bakker et al., 2008、Chang et al, 2013およびFrosig et al., 2015に記載される。
【0140】
本発明の第一の態様の方法での使用に適する条件付きペプチドおよび特にUV感受性ペプチドを次の段落に記載する。
【0141】
MHC分子と条件付きペプチドの間の結合は、標準再折りたたみ技術(好ましくはβ2ミクログロブリン存在下)による条件付きpMHC複合体の形成の成功を確実にし、かつ既定の刺激の非存在下で安定なpMHC複合体を提供するのに十分強いのが好ましい。MHC分子と条件付きペプチドの間の結合は、好ましくは既定の刺激への暴露後/時、条件付きペプチド(またはそれらのフラグメント)がMHC分子から解離するようなものでなければならない。ペプチドとMHC分子の結合強度は、絶対的または相対的Syfpeithiスコアまたは、NetMHCpanランクを使用して、記載され得る。条件付きペプチドが開裂可能な条件付きで反応性の基を含むとき、SyfpeithiスコアおよびNetMHCpanランクは親ペプチドについてのみ決定され得るが、条件付きペプチドにはしない。しかしながら、条件付きペプチドがMHC分子に対して親ペプチドと類似の結合強度を有することが期待され得る。
【0142】
「Syfpeithi」は、T細胞エピトープの予測を可能とするための、あるペプチド内の全アミノ酸を評価するスコアリング系である。「Syfpeithiスコア」は、次の規則により計算され得る:あるペプチドのアミノ酸は、アンカー、補助的アンカーまたは好ましい残基により、特定の値が与えられる。理想的アンカーは10点、異常なアンカーは6~8点、補助的アンカーは4~6および好ましい残基は1~4点を与える。結合能に負に影響すると考えられるアミノ酸は、-1~-3の値を与える(Rammensee et al., 1999)。「相対的Syfpeithiスコア」は、特異的アレルに対する最高スコアのパーセンテージとして計算する。
【0143】
「NetMHCpan」は、人工神経ネットワークを使用するペプチド-MHC-I相互作用の親和性の定量的予測をもたらす他のスコアリング系である(Nielsen et al., 2007)。
【0144】
条件付きペプチドが条件付きで反応性の基を含むのが好ましい。好ましい実施態様において、条件付きで反応性の基は、親ペプチドのアミノ酸残基を置き換える条件付きで反応性のアミノ酸アナログである。このような実施態様において、アミノ酸アナログは、MHC結合のためにあるアミノ酸を必要としない位置(この位置でのアミノ酸選択性を欠く)であるのが好ましい。好ましくは、アミノ酸アナログは、最初または最後の位置を除くPBおよび/またはPCのアミノ酸配列の任意の位置に存在する。既定の刺激により、条件付きで反応性のアミノ酸アナログが、刺激への接近性を確実とするために、溶媒暴露位置に位置する必要があることもある。
【0145】
複合体1Xおよび/または2X(MHC分子とPBおよび/またはPCにより形成)が、UV暴露非存在下で高再折りたたみ収率、高安定性を有し、低凝集率;および/または低分解率であるならば、さらに好ましい。再折りたたみ収率は、例えばNanodropまたはBradfordアッセイにより決定され得る。用語「安定性」は、本発明において、pMHC複合体におけるペプチドとMHC分子の結合の安定性をいう。pMHC複合体の安定性、例えば、室温(約20℃)で例えば1時間、PBSなどの緩衝液中の安定性を、ELISAにより評価できる。凝集率および分解率は、文献に記載され、例えばJones et al., 1993にレビューされている、種々の分析技術を使用して、定性的および/または定量的に評価され得る。凝集および分解を測定するために、pMHC複合体を含むサンプルを、選択した時間、負荷条件に曝し、続いて適切な分析技術を使用して定量的および所望により定性的分析することができる。本発明において、これらの方法は、特に、濁度(例えば動的光散乱法(DLS)または光遮蔽法(LO)により)の測定によりおよび/または目視検査(例えば色および透明度の決定により)の測定による、分解の評価または凝集物形成(例えばサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して)の評価をいう。
【0146】
他の重要な特性は、既定の刺激への暴露に続くペプチド主鎖の切断後の高解離率である。解離率は、UV交換で使用したUV刺激後の、しかし、レスキューペプチド非存在下の、pMHC複合体の量の測定により決定され得る(実施例1参照)。
【0147】
条件付きペプチド候補が、条件付きリガンド交換における使用、特に本発明の方法における使用に適するか否かの決定は、ペプチドとMHC分子の結合強度、再折りたたみ収率、UV暴露非存在下の安定性、凝集率、分解率および切断後の解離率の上記基準の組み合わせに依存することを当業者は認識する。故に、再折りたたみ収率が低いが、凝集および分解率も低い条件付きペプチドも、本発明の方法における使用に適する可能性があることは理解される。
【0148】
本発明の第一の態様の方法に使用するためのペプチドのさらなる詳述は、下に見られ得る(本発明の第二の態様で提供されるペプチドの記載参照)。
【0149】
本発明者らは、驚くべきことに、UV暴露後、相当量の条件付きpMHC複合体が残存し続けることを示した(実施例1)。この残存量の条件付きpMHC複合体は、条件付きpMHC複合体に存在する条件付きペプチドが弱い免疫原性であっても(実施例3)、特異的免疫細胞(T細胞)増殖を刺激するのに十分である(実施例2)。工程(ii)における条件付きpMHC複合体に特異的な免疫細胞(T細胞)の選択を防止するために、本発明者らは、工程(i)および(ii)において異なる条件付きペプチド(すなわち異なる条件付きpMHC複合体)の使用を定義する、本発明の第一態様による発明的方法を提供する(実施例4)。
【0150】
PBおよびPCのアミノ酸配列が異なるのが、結果的に本発明の鍵となる特性である。幾つかの場合、1個だけのアミノ酸の差異が十分であり得る。本発明者らは、1個だけのアミノ酸差異が、第一ペプチドを含むpMHC複合体で刺激したT細胞が、第二ペプチドを含むpMHC複合体で検出されることを阻止するのに十分であることを示している(図4)。しかしながら、PBおよびPCは、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個のアミノ酸が異なるのが好ましく、PBおよびPCが少なくとも5個、6個、7個または8個のアミノ酸異なるのがより好ましい(数が多いほど好ましい)。換言すると、PBおよびPCは、好ましくは8~12アミノ酸長を有するため、PBおよびPCは90%未満のアミノ酸同一性、好ましくは85%、80%、75%、70%、60%、50%、40%、30%または20%未満のアミノ酸同一性を有するのが好ましい。PBおよびPCが90%未満のアミノ酸類似性、好ましくは85%、80%、75%、70%、60%、50%、40%、30%または20%未満のアミノ酸類似性を有するのも好ましい。
【0151】
好ましい実施態様において、PBおよびPCは、配列番号1~66、より好ましくは配列番号1~18、21~38、40~56および58~66、より好ましくは配列番号3~18、21~38、40~48、51~56および59~66、さらにより好ましくは配列番号3~14、16~18、21、22、24~26、29~38、40~42、44、46~48、51~56および59~66のアミノ酸配列を有するペプチドからなる群から選択される。これらのペプチドの利点は、本発明の第二の態様に関して下に記載される。
【0152】
好ましい実施態様において、
i) M1およびM2はHLA-A*01:01またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列はMUC16-010、MUC16-011、RNF213-010、RNF213-011、AXIN1-003、AXIN1-004、CLTC-002、CLTC-003、CLTC-004、好ましくはCLTC-002およびMUC16-010からなる群から選択され、より好ましくはPBはCLTC-002であり、かつPCはMUC16-010であり、ここで、MUC16-010は配列番号1を含むかまたはそれからなり、MUC16-011は配列番号2を含むかまたはそれからなり、RNF213-010は配列番号3を含むかまたはそれからなり、RNF213-011は配列番号4を含むかまたはそれからなり、AXIN1-003は配列番号5を含むかまたはそれからなり、AXIN1-004は配列番号6を含むかまたはそれからなり、CLTC-002は配列番号7を含むかまたはそれからなり、CLTC-003は配列番号8を含むかまたはそれからなり、そしてCLTC-004は配列番号9を含むかまたはそれからなる;または
ii) M1およびM2はHLA-A*02:01またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列はDDX5-002、DDX5-003、DDX5-004、DDX5-005、DDX5-006、RPL19-003、RPL19-004、RPL19-005およびFLUM-003、好ましくはDDX5-002、DDX5-003、DDX5-004、DDX5-005、DDX5-006、RPL19-003、RPL19-004、RPL19-005、より好ましくはDDX5-005およびRPL19-005からなる群から選択され、さらにより好ましくはPBはDDX5-005であり、かつPCはRPL19-005であり、ここで、DDX5-002は配列番号10を含むかまたはそれからなり、DDX5-003は配列番号11を含むかまたはそれからなり、DDX5-004は配列番号12を含むかまたはそれからなり、DDX5-005は配列番号13を含むかまたはそれからなり、DDX5-006は配列番号14を含むかまたはそれからなり;RPL19-002は配列番号16を含むかまたはそれからなり、RPL19-003は配列番号17を含むかまたはそれからなり、RPL19-002は配列番号18を含むかまたはそれからなり;FLUM-003は配列番号19を含むかまたはそれからなる;または
iii) M1およびM2はHLA-A*03:01またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列はUVLA3-001、GIBB-002、GIBB-003、HNRNPR-002、HNRNPR-003およびHNRNPR-004、好ましくはGIBB-002およびHNRNPR-002からなる群から選択され、より好ましくはPBはGIBB-002であり、かつPCはHNRNPR-002であり、ここで、UVLA3-001は配列番号20を含むかまたはそれからなり、GIBB-002は配列番号21を含むかまたはそれからなり、GIBB-003は配列番号22を含むかまたはそれからなり、HNRNPR-002は配列番号24を含むかまたはそれからなり、HNRNPR-003は配列番号25を含むかまたはそれからなり、HNRNPR-004は配列番号26を含むかまたはそれからなる;または
iv) M1およびM2はHLA-A*24:02またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列はTEG-002、TEG-003、TEG-004、TEG-005、TEG-006、TEG-007、PPP1CA-002、PPP1CA-003、PPP1CA-005、好ましくはTEG-007およびPPP1CA-005からなる群から選択され、より好ましくはPBはTEG-007であり、かつPCはPPP1CA-005であり、ここで、TEG-002は配列番号29を含むかまたはそれからなり、TEG-003は配列番号30を含むかまたはそれからなり、TEG-004は配列番号31を含むかまたはそれからなり、TEG-005は配列番号32を含むかまたはそれからなり、TEG-006は配列番号33を含むかまたはそれからなり、TEG-007は配列番号34を含むかまたはそれからなり、PPP1CA-002は配列番号35を含むかまたはそれからなり、PPP1CA-003は配列番号36を含むかまたはそれからなり、PPP1CA-005は配列番号38を含むかまたはそれからなる;または
v) M1およびM2はHLA-B*07:02またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列は異なり、UVLB7-001、HLA-DPB1-002、HLA-DPB1-003、HLA-DPB1-004、CHCHD2-003およびMUDENG-002、好ましくはMUDENG-002およびDPB1-004からなる群から選択され、より好ましくはPBはMUDENG-002であり、かつPCはDPB1-004であり、ここで、UVLB7-001は配列番号39を含むかまたはそれからなり、HLA-DPB1-002は配列番号40を含むかまたはそれからなり、HLA-DPB1-003は配列番号41を含むかまたはそれからなり、HLA-DPB1-004は配列番号42を含むかまたはそれからなり、CHCHD2-003は配列番号44を含むかまたはそれからなり、そしてMUDENG-002は配列番号46を含むかまたはそれからなる;または
vi) M1およびM2はHLA-B*08:01またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列はMKI-003、MKI-004、VIM-004、VIM-005、COPA-008、PDCD10-002、PDCD10-003、MIR286-002、EBV-020、SPTAN-002およびLOC646214-003、好ましくはMKI-003、COPA-008、PDCD10-003、MIR286-002、EBV-020、SPTAN-002およびLOC646214-003、より好ましくはSPTAN-002およびLOC646214-003からなる群から選択され、さらにより好ましくはPBはSPTAN-002であり、かつPCはLOC646214-003であり、ここで、MKI-003は配列番号49を含むかまたはそれからなり、MKI-004は配列番号50を含むかまたはそれからなり、VIM-004は配列番号51を含むかまたはそれからなり、VIM-005は配列番号52を含むかまたはそれからなり、COPA-008は配列番号53を含むかまたはそれからなり、PDCD10-002は配列番号54を含むかまたはそれからなり、PDCD10-003は配列番号55を含むかまたはそれからなり、MIR286-002は配列番号56を含むかまたはそれからなり、EBV-020は配列番号57を含むかまたはそれからなり、SPTAN-002は配列番号58を含むかまたはそれからなり、LOC646214-003は配列番号59を含むかまたはそれからなり;
vii) M1およびM2はHLA-B*44:02またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列はSPTBN1-002、SPTBN1-003、SPTBN1-004、CLTC-006、CLTC-007、CSE1-005およびCSE1-006、好ましくはSPTBN1-004およびCSE1-005からなる群から選択され、より好ましくはPBはSPTBN1-004であり、かつPCはCSE1-005であり、ここで、SPTBN1-002は配列番号60のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-003は配列番号61を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-004は配列番号62を含むかまたはそれからなり、CLTC-006は配列番号63を含むかまたはそれからなり、CLTC-007は配列番号64を含むかまたはそれからなり、CSE1-005は配列番号65を含むかまたはそれからなり、そしてCSE1-006は配列番号66を含むかまたはそれからなる;または
viii) M1およびM2はHLA-B*44:05またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列はSPTBN1-002、SPTBN1-003、SPTBN1-004、CLTC-006、CLTC-007、CSE1-005およびCSE1-006、好ましくはSPTBN1-004およびCLTC-006からなる群から選択され、より好ましくはPBはSPTBN1-004であり、かつPCはCLTC-006であり、ここで、SPTBN1-002は配列番号60のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-003は配列番号61を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-004は配列番号62を含むかまたはそれからなり、CLTC-006は配列番号63を含むかまたはそれからなり、CLTC-007は配列番号64を含むかまたはそれからなり、CSE1-005は配列番号65を含むかまたはそれからなり、そしてCSE1-006は配列番号66を含むかまたはそれからなる。
【0153】
配列番号1~配列番号66において、Xは条件付きで反応性の基、特に光活性化可能、亜ジチオン酸活性化可能または過ヨウ素酸活性化可能、好ましくは光活性化可能基を含む条件付きで反応性のアミノ酸アナログ、より好ましくは3-アミノ-3-(2-ニトロ)フェニル-プロピオン酸を表す。
【0154】
本発明の第一の態様について記載した全ての好ましい実施態様は、適用可能であれば、本発明の次の態様にも適用される。
【0155】
本発明の第二の態様は、配列番号1~19、21~38および40~66、好ましくは配列番号1~14、16~19、21~26、29~36、38、40~42、44および46~66からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する条件付きペプチドに関する。各配列において、Xは条件付きで反応性の基を表す。
【0156】
本願ペプチドは、条件付きで反応性の基、特に光活性化可能、亜ジチオン酸活性化可能または過ヨウ素酸活性化可能基を含む条件付きで反応性のアミノ酸アナログを含む、条件付きペプチドである。ペプチドは、1個のアミノ酸残基が条件付きで反応性の基、特に条件付きで反応性のアミノ酸アナログで置換されている親ペプチドに由来する。好ましい実施態様において、条件付きで反応性のアミノ酸アナログは、光活性化可能、亜ジチオン酸活性化可能または過ヨウ素酸活性化可能基、好ましくは光活性化可能基を含む。好ましい過ヨウ素酸活性化可能基はジヒドロキシ部分を含む。好ましい亜ジチオン酸活性化可能基はアゾベンゼン部分を含む。好ましい光活性化可能基は、3-アミノ-3-(2-ニトロ)フェニル-プロピオン酸またはその光活性化可能構造的等価物、例えば3-アミノ-3-(4-ニトロ)フェニル-プロピオン酸を含む。好ましい実施態様において、ペプチドは光活性化可能基を含むUVペプチドである。
【0157】
本発明の第一の態様の方法における使用に適する条件付きペプチド(PBおよび/またはPC)および本発明の第二の態様の条件付きペプチドは、全て条件付きリガンド交換における使用、特にUV交換における使用に適する。全ペプチドをUV交換反応で試験した。特に良好に働くペプチドは、表5で(++)または(+++)として特定される。
【0158】
次の特性は、両PBおよび/またはPC(すなわち本発明の第一の態様の方法の条件付きペプチド)および本発明の第二の態様で提供される条件付きペプチドを特徴づける:
- MHC分子と条件付きペプチドの結合強度は強力である。換言すると、MHC分子と条件付きペプチドの親和性は高い。好ましい実施態様において、条件付きペプチドの親ペプチドは少なくとも0.4、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.6、さらにより好ましくは少なくとも0.7の相対的Syfpeithiスコアを有する(相対的Syfpeithiスコアが高いほど、結合が強いことを示す);および/または2以下、1.5以下、1以下、0.5以下、好ましくは0.2以下、0.1以下、より好ましくは0.05以下、0.02以下、さらにより好ましくは0.01以下または0.005以下のNetMHCpanランクを有する(NetMHCpanランクが低いほど、結合が強いことを示す)(表4)。好ましい実施態様において、NetMHCpanランクは、NetMHCpan version 4.0を使用して決定したNetMHCpanランクをいう。
【0159】
- 再折りたたみ収率(標準再折りたたみ技術による条件付きpMHC複合体の形成の成功)は高い。好ましい実施態様において、再折りたたみ収率は、再折りたたみ反応においてHLA鎖あたり1molあたり、少なくとも0.5、少なくとも0.2、少なくとも0.1、少なくとも0.05、好ましくは少なくとも0.025mol pHLAである。
【0160】
- 条件付きpMHC複合体は、既定の刺激の非存在下、特にUV暴露非存在下、高安定性を有する。好ましい実施態様において、条件付きpMHC複合体は、室温(約20℃)で、緩衝液、例えばPBS中、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間または少なくとも24時間安定である。既定の刺激の非存在下のpMHC複合体の安定性は、SECで測定して、例えばpMHC単量体含量として決定され得る。
【0161】
- 条件付きペプチドは、既定の刺激への暴露に続くペプチド主鎖の切断後、高解離率を有する。好ましくは、条件付きペプチドの少なくとも約15%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%または約100%が既定の刺激への暴露後MHC分子から解離する。
【0162】
上記のとおり、本発明者らは、驚くべきことにUV暴露後、相当量の残存条件付きpMHC複合体が残ることを示した(実施例1)。この方法で産生したpMHC複合体をT細胞の刺激に使用したとき、条件付きpMHCに特異的なT細胞が産生されるリスクが伴う。このリスクを低減するために、本発明者らは、適当な条件付きペプチドの選択について、さらなる基準を適用した:条件付きペプチドは非免疫原性または弱い免疫原性のみであるよう選択される。
【0163】
文献に記載される条件付きペプチドは、しばしばウイルスまたは非ヒト親ペプチド由来である(Toebes et al., 2006, Frosig et al. 2015, Chang et al., 2013)。このようなペプチドは、高度に免疫原性であることが示されている。対照的に、本発明の第二の態様のペプチドは、好ましくは自己ヒトペプチド由来である。親ペプチドは、非免疫原性または弱い免疫原性のみであるように選択されている。故に、それ由来の条件付きペプチドも、非免疫原性または弱い免疫原性のみであるであることが期待され得る。
【0164】
ペプチドの免疫原性は、例えば、ペプチド-MHC複合体およびヒトT細胞の増殖を刺激するための共刺激分子で被覆された人工抗原提示細胞の使用により、免疫原性アッセイにおいて決定され得る。刺激を繰り返した後、ペプチドが免疫原性であるとき、ペプチド-MHCに特異的なT細胞が増殖され、フローサイトメトリーにより検出できる。「弱い免疫原性ペプチド」は、本発明において、その特定のペプチドに特異的なT細胞の前駆体頻度が、T細胞、特にCD8+ T細胞の0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満、0.001%未満、0.0001%未満であることを意味する。好ましくは、刺激は、15~25日間、より好ましくは3週間、好ましくはその後の3刺激サイクルである。好ましくは、検出は多量体染色による。刺激および検出の条件例は材料および方法セクションに記載される。好ましい実施態様において、第二の態様における、本発明の条件付きペプチドでのT細胞、特にCD8+ T細胞の刺激は、刺激ウェルの10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、3%未満または1%未満が、条件付きペプチドについて検出可能な特異的T細胞を有し、ここで、各刺激ウェルは刺激前約1000細胞を含む。好ましい実施態様において、同じ条件下、既知対照ペプチド、特に高または中間免疫原性を有することが知られるウイルスペプチドまたはメラニン細胞/黒色腫(Melan-A/MART)タンパク質(前駆体頻度1000中1)などの免疫優勢抗原からのペプチドでの刺激は、刺激ウェルの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%または、あるドナーにおいて、100%が検出可能特異的T細胞を有するようになる。好ましくは、免疫原性アッセイを少なくとも2個の異なるドナーの細胞を使用して実施し、条件付きペプチドに特異的なCD8+細胞の検出される数は少なくとも2個のドナーからの平均を表す。
【0165】
さらに、ペプチドの免疫原性は、ペプチドが、関連するHLAアロタイプを発現するヒト個体において高度に発現および/または高頻度で提示、特に高頻度で提示されるならば、弱いことが予測される。条件付き本発明の第二の態様のペプチドおよびそれが由来する親ペプチドの「関連するHLAアロタイプ」は、表4および5に見られ得る。「高頻度で提示」は、本発明において、そのペプチドが、正常組織で検出頻度が少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%または少なくとも98%であることを意味する。この文脈における「正常組織」は、(組織)病理学的変化の可視微視的/巨視的または分子徴候(例えば腫瘍または感染症のため)を示さず、関連するHLAアロタイプを発現するヒトの任意の臓器由来であり得る組織をいう。好ましくは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%または少なくとも98%の検出の頻度が、数個の異なる臓器および/または関連するHLAアロタイプを発現する異なる数人由来の複数正常組織サンプルで決定される。検出頻度は、関連するHLAアロタイプの全試験サンプル中の、サンプルのパーセンテージとして決定され、ここで、各ペプチドは、正常組織からのHLA提示ペプチドの単離および後続の最先端液体クロマトグラフィー結合マススペクトロメトリーによる配列分析後に検出された。
【0166】
好ましい実施態様において、親ペプチドは、正常組織で少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の検出頻度を有する。このような親ペプチドおよびそれ由来の条件付きペプチドは、弱い免疫原性のみであるであることが期待され得る。
【0167】
組織と無関係に関連するHLAアロタイプを発現する個体の実質的に全細胞で高頻度で提示されるペプチドは、「ハウスキーピングペプチド」と記載され得る。故に、46の好ましい実施態様において、本発明の第二の態様の条件付きペプチドはハウスキーピングペプチド由来である。
【0168】
好ましくは、本発明の第二の態様の条件付きペプチドは、配列番号1~18、21~38、40~56または58~66、好ましくは配列番号1~14、16~18、21~26、29~36、38、40~42、44、46~56または58~66のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドの群から選択される。
【0169】
好ましい実施態様において、本発明の第二の態様の条件付きペプチドは、配列番号1~18、21~38、40~56および58~66、好ましくは配列番号1~14、16~18、21~26、29~36、38、40~42、44、46~56および58~66からなる群から選択される。
【0170】
より好ましくは、本発明の第二の態様の条件付きペプチドは、配列番号3~18、21~38、40~48、51~56および59~66、好ましくは配列番号3~14、16~18、21、22、24~26、29~38、40~42、44、46~48、51~56および59~66のアミノ酸配列を含むまたはそれからなるペプチドの群から選択される。
【0171】
さらにより好ましい実施態様において、本発明の第二の態様の条件付きペプチドは、配列番号3~18、21~38、40~48、51~56および59~66、好ましくは配列番号3~14、16~18、21、22、24~26、29~38、40~42、44、46~48、51~56および59~66を含むまたはそれからなる群から選択される。
【0172】
ある実施態様において、本発明の第二の態様の条件付きペプチドは、HLA-A*01:01、HLA-A*02:01、HLA-A*03:01、HLA-A*24:02、HLA-B*07:02、HLA-B*07:02、HLA-B*08:01またはHLA-B*44:05に特異的である。
【0173】
ある実施態様において、本発明の第二の態様の条件付きペプチドはMUC16-010、MUC16-011、RNF213-010、RNF213-011、AXIN1-003、AXIN1-004、CLTC-002、CLTC-003、CLTC-004、好ましくはRNF213-010、RNF213-011、AXIN1-003、AXIN1-004、CLTC-002、CLTC-003、CLTC-004、より好ましくはCLTC-002からなる群から選択され、ここで、MUC16-010は配列番号1を含むかまたはそれからなり、MUC16-011は配列番号2を含むかまたはそれからなり、RNF213-010は配列番号3を含むかまたはそれからなり、RNF213-011は配列番号4を含むかまたはそれからなり、AXIN1-003は配列番号5を含むかまたはそれからなり、AXIN1-004は配列番号6を含むかまたはそれからなり、CLTC-002は配列番号7を含むかまたはそれからなり、CLTC-003は配列番号8を含むかまたはそれからなり、そしてCLTC-004は配列番号9を含むかまたはそれからなる。これらの条件付きペプチドは、HLA-A*01:01に特異的である。
【0174】
ある実施態様において、本発明の第二の態様の条件付きペプチドはDDX5-002、DDX5-003、DDX5-004、DDX5-005、DDX5-006、RPL19-003、RPL19-004、RPL19-005およびFLUM-003、好ましくはDDX5-002、DDX5-003、DDX5-004、DDX5-005、DDX5-006、RPL19-003、RPL19-004およびRPL19-005、より好ましくはDDX5-002、DDX5-003、DDX5-004、DDX5-005、DDX5-006、RPL19-003、RPL19-004およびRPL19-005、より好ましくはDDX5-005およびRPL19-005からなる群から選択され、ここで、DDX5-002は配列番号10を含むかまたはそれからなり、DDX5-003は配列番号11を含むかまたはそれからなり、DDX5-004は配列番号12を含むかまたはそれからなり、DDX5-005は配列番号13を含むかまたはそれからなり、DDX5-006は配列番号14を含むかまたはそれからなり;RPL19-002は配列番号16を含むかまたはそれからなり、RPL19-003は配列番号17を含むかまたはそれからなり、RPL19-002は配列番号18を含むかまたはそれからなり;FLUM-003は配列番号19を含むかまたはそれからなる。これらの条件付きペプチドは、HLA-A*02:01に特異的である。
【0175】
ある実施態様において、本発明の第二の態様の条件付きペプチドはGIBB-002、GIBB-003、HNRNPR-002、HNRNPR-003およびHNRNPR-004、好ましくはGIBB-002およびHNRNPR-002からなる群から選択され、ここで、GIBB-002は配列番号21を含むかまたはそれからなり、GIBB-003は配列番号22を含むかまたはそれからなり、HNRNPR-002は配列番号24を含むかまたはそれからなり、HNRNPR-003は配列番号25を含むかまたはそれからなり、HNRNPR-004は配列番号26を含むかまたはそれからなる。これらの条件付きペプチドは、HLA-A*03:01に特異的である。
【0176】
ある実施態様において、本発明の第二の態様の条件付きペプチドはTEG-002、TEG-003、TEG-004、TEG-005、TEG-006、TEG-007、PPP1CA-002、PPP1CA-003、PPP1CA-005、好ましくはTEG-007およびPPP1CA-005からなる群から選択され、ここで、TEG-002は配列番号29を含むかまたはそれからなり、TEG-003は配列番号30を含むかまたはそれからなり、TEG-004は配列番号31を含むかまたはそれからなり、TEG-005は配列番号32を含むかまたはそれからなり、TEG-006は配列番号33を含むかまたはそれからなり、TEG-007は配列番号34を含むかまたはそれからなり、PPP1CA-002は配列番号35を含むかまたはそれからなり、PPP1CA-003は配列番号36を含むかまたはそれからなり、PPP1CA-005は配列番号38を含むかまたはそれからなる。これらの条件付きペプチドは、HLA-A*24:02に特異的である。
【0177】
ある実施態様において、本発明の第二の態様の条件付きペプチドはHLA-DPB1-002、HLA-DPB1-003、HLA-DPB1-004、CHCHD2-003およびMUDENG-002、好ましくはMUDENG-002およびDPB1-004からなる群から選択され、ここで、HLA-DPB1-002は配列番号40を含むかまたはそれからなり、HLA-DPB1-003は配列番号41を含むかまたはそれからなり、HLA-DPB1-004は配列番号42を含むかまたはそれからなり、CHCHD2-003は配列番号44を含むかまたはそれからなり、そしてMUDENG-002は配列番号46を含むかまたはそれからなる。これらの条件付きペプチドは、HLA-B*07:02に特異的である。
【0178】
ある実施態様において、本発明の第二の態様の条件付きペプチドはMKI-003、MKI-004、VIM-004、VIM-005、COPA-008、PDCD10-002、PDCD10-003、MIR286-002、EBV-020、SPTAN-002およびLOC646214-003、好ましくはMKI-003、MKI-004、VIM-004、VIM-005、COPA-008、PDCD10-002、PDCD10-003、MIR286-002、SPTAN-002およびLOC646214-003、より好ましくはMKI-003、MKI-004、VIM-004、VIM-005、COPA-008、PDCD10-002、PDCD10-003、MIR286-002およびLOC646214-003、さらにより好ましくはMKI-003、COPA-008、PDCD10-003、MIR286-002、EBV-020、SPTAN-002およびLOC646214-003、さらにより好ましくはSPTAN-002およびLOC646214-003からなる群から選択され、ここで、MKI-003は配列番号49を含むかまたはそれからなり、MKI-004は配列番号50を含むかまたはそれからなり、VIM-004は配列番号51を含むかまたはそれからなり、VIM-005は配列番号52を含むかまたはそれからなり、COPA-008は配列番号53を含むかまたはそれからなり、PDCD10-002は配列番号54を含むかまたはそれからなり、PDCD10-003は配列番号55を含むかまたはそれからなり、MIR286-002は配列番号56を含むかまたはそれからなり、EBV-020は配列番号57を含むかまたはそれからなり、SPTAN-002は配列番号58を含むかまたはそれからなり、LOC646214-003は配列番号59を含むかまたはそれからなる。これらの条件付きペプチドは、HLA-B*08:01に特異的である。
【0179】
ある実施態様において、本発明の第二の態様の条件付きペプチドはSPTBN1-002、SPTBN1-003、SPTBN1-004、CLTC-006、CLTC-007、CSE1-005およびCSE1-006、好ましくはSPTBN1-004およびCSE1-005からなる群から選択され、ここで、SPTBN1-002は配列番号60のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-003は配列番号61を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-004は配列番号62を含むかまたはそれからなり、CLTC-006は配列番号63を含むかまたはそれからなり、CLTC-007は配列番号64を含むかまたはそれからなり、CSE1-005は配列番号65を含むかまたはそれからなり、そしてCSE1-006は配列番号66を含むかまたはそれからなる。これらの条件付きペプチドは、HLA-B*44:02に特異的である。
【0180】
ある実施態様において、本発明の第二の態様の条件付きペプチドはSPTBN1-002、SPTBN1-003、SPTBN1-004、CLTC-006、CLTC-007、CSE1-005およびCSE1-006、好ましくはSPTBN1-004およびCSE1-005からなる群から選択され、ここで、SPTBN1-002は配列番号60のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-003は配列番号61を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-004は配列番号62を含むかまたはそれからなり、CLTC-006は配列番号63を含むかまたはそれからなり、CLTC-007は配列番号64を含むかまたはそれからなり、CSE1-005は配列番号65を含むかまたはそれからなり、そしてCSE1-006は配列番号66を含むかまたはそれからなる。これらの条件付きペプチドは、HLA-B*44:05に特異的である。
【0181】
本発明の第三の態様は、本発明の第一の態様の方法により選択された免疫細胞に関する。
【0182】
本発明の第四の態様は、pMHC複合体1Aに特異的に結合する抗原結合タンパク質をコードする核酸の配列を決定する方法であって:
(i)本発明の第一の態様の方法で選択した免疫細胞から抗原結合タンパク質をコードする核酸を単離し;そして
(ii)核酸の配列を決定する
工程を含む、方法に関する。好ましい実施態様において、第四の態様の方法は、選択免疫細胞から抗原結合タンパク質をコードする核酸を単離する前、本発明の第一の態様の方法による表面に抗原結合タンパク質を発現する免疫細胞の選択を含む。
【0183】
本発明の第一の方法で選択される細胞表面に発現される抗原結合タンパク質は好ましくはTCRである。結果として、本発明の第四の態様の方法により決定される核酸配列によりコードされる抗原結合タンパク質も好ましくはTCRである。
【0184】
本発明の次の態様は、本発明の第一および第三の態様の方法で同定された抗原結合タンパク質、特にTCRのためのさらなる方法および使用に関する。これらの態様に関して、用語「抗原結合タンパク質」はまた本発明の第一および第三の態様の方法で同定された抗原結合タンパク質、特にTCRの誘導体または抗原結合フラグメントも含む。故に、ある実施態様において、抗原結合タンパク質はTCRまたはその抗原結合フラグメント;BCRまたはその抗原結合フラグメントまたは抗体またはその抗原結合フラグメントである。他の実施態様において、抗原結合タンパク質は、TCRまたは少なくともアルファ鎖およびベータ鎖の可変ドメインを含むその一部である。他の実施態様において、抗原結合タンパク質は、本発明の第一および第四の態様の方法で同定された抗原結合タンパク質、特にTCRのCDR1およびCDR3および所望によりCDR2配列を含み、好ましくはフレームワークまたは他のTCRまたは抗体に挿入されている。
【0185】
本発明の第五の態様は、抗原結合タンパク質を発現する宿主細胞を産生する方法であって:
(i)宿主細胞を提供し;
(ii)本発明の第一の態様の方法で選択した免疫細胞から抗原結合タンパク質をコードする核酸を単離し;
(iii)工程(ii)で単離した核酸または抗原結合タンパク質もしくはその抗原結合フラグメントをコードする該核酸の一部を含む遺伝子構築物を産生し;そして
(iv)該宿主細胞に該遺伝子構築物を導入する
工程を含む、方法に関する。
【0186】
好ましい実施態様において、第五の態様の方法は、選択免疫細胞から抗原結合タンパク質をコードする核酸を単離する前、本発明の第一の態様の方法による表面に抗原結合タンパク質を発現する免疫細胞の選択を含む。
【0187】
ある実施態様において、遺伝子構築物は発現ベクターである。好ましくは、抗原結合タンパク質またはその抗原結合フラグメントをコードする配列は適当なベクターに挿入される。
【0188】
好ましい実施態様において、宿主細胞はリンパ球、好ましくはTリンパ球またはTリンパ球前駆細胞、例えばCD4またはCD8陽性T細胞;またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または酵母細胞などの組み換え発現用細胞である。ある実施態様において、このような組み換え宿主細胞を、少なくとも1個の本発明の抗原結合タンパク質またはその一部の産生に使用できる。好ましくは、宿主細胞は、抗原結合タンパク質またはその抗原結合部分をコードする核酸および/またはベクターで形質転換、形質導入またはトランスフェクトされる。抗原結合タンパク質または抗原結合タンパク質の一部をコードする核酸での宿主細胞の形質導入またはトランスフェクションは、当分野で周知の方法、例えばUS20190216852に記載の方法を使用して、実施される。他の実施態様において、抗原結合タンパク質またはその抗原結合部分を含む宿主細胞は、真核生物細胞、例えば、植物、動物、真菌もしくは藻類であり得てまたは原核生物細胞、例えば、細菌もしくは原生動物であり得る。宿主細胞は、培養細胞または初代、すなわち、生物、例えば、ヒトから直接単離された、細胞であり得る。宿主細胞は、接着T細胞または懸濁細胞、すなわち、懸濁液で増殖する細胞であり得る。組み換えTCRまたはそのフラグメントなどの抗原結合タンパク質または抗原結合タンパク質の一部を産生する目的で、宿主細胞は好ましくは哺乳動物細胞である。最も好ましくは、宿主細胞はヒト細胞である。宿主細胞はどんな細胞型でもよく、どんなタイプの組織に由来してもよく、どんな発達段階にあってもよいが、宿主細胞は、好ましくは末梢血白血球(PBL)または末梢血単核細胞(PBMC)、T細胞またはB細胞である。より好ましくは、宿主細胞はT細胞である。T細胞は、培養T細胞、例えば、初代T細胞または培養T細胞株、例えば、Jurkat、SupT1などからのT細胞または哺乳動物から得たT細胞、好ましくはヒト患者からのT細胞またはT細胞前駆体などの任意のT細胞であり得る。哺乳動物から得るならば、T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺または他の組織または流体を含むが、これらに限定されない多数の源から得られ得る。好ましくは、T細胞はヒトT細胞である。より好ましくは、T細胞はヒトから単離されたT細胞である。T細胞は、CD4陽性および/またはCD8陽性、CD4陽性ヘルパーT細胞、例えば、Th1およびTh2細胞、CD8陽性T細胞(例えば、細胞毒性T細胞)、腫瘍浸潤細胞(TIL)、記憶T細胞、ナイーブT細胞を含むが、これらに限定されないどんなタイプのT細胞でもよく、どんな発達段階にあってよい。好ましくは、T細胞はCD8陽性T細胞またはCD4陽性T細胞である。他の実施態様において、宿主細胞は、組み換え発現のための任意の細胞であり得る。好ましくは、宿主細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0189】
本発明の第六の態様は、本発明の第五の態様の方法により産生された宿主細胞を提供し、該宿主細胞に導入された遺伝子構築物を発現することを含む、抗原結合タンパク質を産生する方法に関する。
【0190】
本発明の第七の態様は、本発明の第六の態様の方法により産生された抗原結合タンパク質に関する。
【0191】
本発明の第八の態様は、本発明の第七の態様の抗原結合タンパク質をコードする核酸または該核酸を含むベクターに関する。
【0192】
本発明の第九の態様は、下に定義するキットに関する。具体的態様において、キットは、表面にペプチドとMHC分子の複合体と特異的に結合する抗原結合タンパク質を発現する細胞を選択するためである。該キットは:
a)ペプチドB(PB)とMHC分子1(M1)を含む複合体1X;およびペプチドC(PC)とMHC分子2(M2)を含む複合体2X;または
b)ペプチド(PB)およびペプチド(PC)ならびに所望によりPBおよびPCが結合し、それにより複合体1Xおよび2Xを各々形成するMHC分子、特にM1および/またはM2;および
c)所望によりβ2-ミクログロブリン(β2M)
を含み;ここで、複合体1Xおよび2Xは、規定の刺激での刺激により解離し;そして、PBおよびPCのアミノ酸配列は少なくとも1個のアミノ酸、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個のアミノ酸が異なる。好ましくは、キットは、ペプチドA(PA)およびM1またはM2を含む複合体1Aに特異的に結合する抗原結合タンパク質の選択のために提供される。
【0193】
キットの好ましい実施態様において、
i) M1およびM2はHLA-A*01:01またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列はMUC16-010、MUC16-011、RNF213-010、RNF213-011、AXIN1-003、AXIN1-004、CLTC-002、CLTC-003、CLTC-004、好ましくはCLTC-002およびMUC16-010からなる群から選択され、より好ましくはPBはCLTC-002であり、かつPCはMUC16-010であり、ここで、MUC16-010は配列番号1を含むかまたはそれからなり、MUC16-011は配列番号2を含むかまたはそれからなり、RNF213-010は配列番号3を含むかまたはそれからなり、RNF213-011は配列番号4を含むかまたはそれからなり、AXIN1-003は配列番号5を含むかまたはそれからなり、AXIN1-004は配列番号6を含むかまたはそれからなり、CLTC-002は配列番号7を含むかまたはそれからなり、CLTC-003は配列番号8を含むかまたはそれからなり、そしてCLTC-004は配列番号9を含むかまたはそれからなる;または
ii) M1およびM2はHLA-A*02:01またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列はDDX5-002、DDX5-003、DDX5-004、DDX5-005、DDX5-006、RPL19-003、RPL19-004、RPL19-005およびFLUM-003、好ましくはDDX5-002、DDX5-003、DDX5-004、DDX5-005、DDX5-006、RPL19-003、RPL19-004、RPL19-005、より好ましくはDDX5-005およびRPL19-005からなる群から選択され、さらにより好ましくはPBはDDX5-005であり、かつPCはRPL19-005であり、ここで、DDX5-002は配列番号10を含むかまたはそれからなり、DDX5-003は配列番号11を含むかまたはそれからなり、DDX5-004は配列番号12を含むかまたはそれからなり、DDX5-005は配列番号13を含むかまたはそれからなり、DDX5-006は配列番号14を含むかまたはそれからなり;RPL19-002は配列番号16を含むかまたはそれからなり、RPL19-003は配列番号17を含むかまたはそれからなり、RPL19-002は配列番号18を含むかまたはそれからなり;FLUM-003は配列番号19を含むかまたはそれからなる;または
iii) M1およびM2はHLA-A*03:01またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列はUVLA3-001、GIBB-002、GIBB-003、HNRNPR-002、HNRNPR-003およびHNRNPR-004、好ましくはGIBB-002およびHNRNPR-002からなる群から選択され、より好ましくはPBはGIBB-002であり、かつPCはHNRNPR-002であり、ここで、UVLA3-001は配列番号20を含むかまたはそれからなり、GIBB-002は配列番号21を含むかまたはそれからなり、GIBB-003は配列番号22を含むかまたはそれからなり、HNRNPR-002は配列番号24を含むかまたはそれからなり、HNRNPR-003は配列番号25を含むかまたはそれからなり、HNRNPR-004は配列番号26を含むかまたはそれからなる;または
iv) M1およびM2はHLA-A*24:02またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列はTEG-002、TEG-003、TEG-004、TEG-005、TEG-006、TEG-007、PPP1CA-002、PPP1CA-003、PPP1CA-005、好ましくはTEG-007およびPPP1CA-005からなる群から選択され、より好ましくはPBはTEG-007であり、かつPCはPPP1CA-005であり、ここで、TEG-002は配列番号29を含むかまたはそれからなり、TEG-003は配列番号30を含むかまたはそれからなり、TEG-004は配列番号31を含むかまたはそれからなり、TEG-005は配列番号32を含むかまたはそれからなり、TEG-006は配列番号33を含むかまたはそれからなり、TEG-007は配列番号34を含むかまたはそれからなり、PPP1CA-002は配列番号35を含むかまたはそれからなり、PPP1CA-003は配列番号36を含むかまたはそれからなり、PPP1CA-005は配列番号38を含むかまたはそれからなる;または
v) M1およびM2はHLA-B*07:02またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列は異なり、UVLB7-001、HLA-DPB1-002、HLA-DPB1-003、HLA-DPB1-004、CHCHD2-003およびMUDENG-002、好ましくはMUDENG-002およびDPB1-004からなる群から選択され、より好ましくはPBはMUDENG-002であり、かつPCはDPB1-004であり、ここで、UVLB7-001は配列番号39を含むかまたはそれからなり、HLA-DPB1-002は配列番号40を含むかまたはそれからなり、HLA-DPB1-003は配列番号41を含むかまたはそれからなり、HLA-DPB1-004は配列番号42を含むかまたはそれからなり、CHCHD2-003は配列番号44を含むかまたはそれからなり、そしてMUDENG-002は配列番号46を含むかまたはそれからなる;または
vi) M1およびM2はHLA-B*08:01またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列はMKI-003、MKI-004、VIM-004、VIM-005、COPA-008、PDCD10-002、PDCD10-003、MIR286-002、EBV-020、SPTAN-002およびLOC646214-003、好ましくはMKI-003、COPA-008、PDCD10-003、MIR286-002、EBV-020、SPTAN-002およびLOC646214-003、より好ましくはSPTAN-002およびLOC646214-003からなる群から選択され、さらにより好ましくはPBはSPTAN-002であり、かつPCはLOC646214-003であり、ここで、MKI-003は配列番号49を含むかまたはそれからなり、MKI-004は配列番号50を含むかまたはそれからなり、VIM-004は配列番号51を含むかまたはそれからなり、VIM-005は配列番号52を含むかまたはそれからなり、COPA-008は配列番号53を含むかまたはそれからなり、PDCD10-002は配列番号54を含むかまたはそれからなり、PDCD10-003は配列番号55を含むかまたはそれからなり、MIR286-002は配列番号56を含むかまたはそれからなり、EBV-020は配列番号57を含むかまたはそれからなり、SPTAN-002は配列番号58を含むかまたはそれからなり、LOC646214-003は配列番号59を含むかまたはそれからなり;
vii) M1およびM2はHLA-B*44:02またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列はSPTBN1-002、SPTBN1-003、SPTBN1-004、CLTC-006、CLTC-007、CSE1-005およびCSE1-006、好ましくはSPTBN1-004およびCSE1-005からなる群から選択され、より好ましくはPBはSPTBN1-004であり、かつPCはCSE1-005であり、ここで、SPTBN1-002は配列番号60のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-003は配列番号61を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-004は配列番号62を含むかまたはそれからなり、CLTC-006は配列番号63を含むかまたはそれからなり、CLTC-007は配列番号64を含むかまたはそれからなり、CSE1-005は配列番号65を含むかまたはそれからなり、そしてCSE1-006は配列番号66を含むかまたはそれからなる;または
viii) M1およびM2はHLA-B*44:05またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列はSPTBN1-002、SPTBN1-003、SPTBN1-004、CLTC-006、CLTC-007、CSE1-005およびCSE1-006、好ましくはSPTBN1-004およびCLTC-006からなる群から選択され、より好ましくはPBはSPTBN1-004であり、かつPCはCLTC-006であり、ここで、SPTBN1-002は配列番号60のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-003は配列番号61を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-004は配列番号62を含むかまたはそれからなり、CLTC-006は配列番号63を含むかまたはそれからなり、CLTC-007は配列番号64を含むかまたはそれからなり、CSE1-005は配列番号65を含むかまたはそれからなり、そしてCSE1-006は配列番号66を含むかまたはそれからなる。
【0194】
本発明の第十の態様は、本発明の第一の態様の方法により選択された免疫細胞、本発明の第五の態様の方法により産生された宿主細胞、本発明の第七の態様の抗原結合タンパク質および/または本発明の第八の態様の核酸またはベクターを含む、医薬組成物に関する。
【0195】
本発明の第十一の態様は、医薬に使用するための、本発明の第一の態様の方法により選択された免疫細胞、本発明の第五の態様の方法により産生された宿主細胞、本発明の第七の態様の抗原結合タンパク質および/または本発明の第八の態様の核酸またはベクターに関する。
【0196】
本発明の第十二の態様は、新生物疾患を診断、処置または予防する方法に使用するための、本発明の第一の態様の方法により選択された免疫細胞、本発明の第五の態様の方法により産生された宿主細胞、本発明の第七の態様の抗原結合タンパク質および/または本発明の第八の態様の核酸またはベクターに関する。
【0197】
本発明の他の態様は、処置を必要とする対象に、治療有効量の本発明の第一の態様の方法により選択されたおよび/または本発明の第五の態様の方法により産生された免疫細胞および/または本発明の第七の態様の抗原結合タンパク質または本発明の第八の態様の核酸を投与することを含む、新生物疾患を処置する方法に関する。好ましい実施態様において、本方法は、養子細胞導入を含む。
【0198】
新生物疾患がTAA提示癌などの癌であり、本発明における抗原結合タンパク質が該TAAに特異的に結合するのが好ましい。
【0199】
本発明のさらに他の態様は、処置を必要とする対象における新生物疾患を処置する方法であって:
(i)T細胞を含む対象の免疫細胞集団を提供し;
(ii)工程(i)の免疫細胞集団と
(a)MHC分子1(M1)とペプチドA(PA)を含む複合体1Aおよび
(b)M1とペプチドB(PB)を含む複合体1X
を含む第一組成物を接触させ;
(iii)免疫細胞集団と
(a)MHC分子2(M2)とPAを含む複合体2Aおよび
(b)M2とペプチドC(PC)を含む複合体2X
を含む第二組成物を接触させ;
(iv)免疫細胞集団から複合体1A;特に複合体1Aおよび複合体2A両方に特異的に結合するTCRを発現する少なくとも1個のT細胞を選択し;そして
(v)培養により少なくとも1個の選択T細胞の数を増加させ;そして
(vi)培養T細胞を対象に再導入する
工程を含み;
ここで、複合体1Aおよび2Aではなく、複合体1Xおよび2Xが規定の刺激での刺激により解離し;そして、PBおよびPCのアミノ酸配列は少なくとも1個のアミノ酸が異なるものである、方法に関する。
【0200】
このアプローチは、処置を必要とする対象起源の細胞を選択し、増殖させ、対象に導入して戻す、養子細胞導入アプローチである。
【0201】
本発明の第十三の態様は、pMHC複合体調製のための、本発明の第二の態様のペプチドの使用に関する。
【0202】
好ましい実施態様において、pMHC複合体は、条件付きリガンド交換に使用するための条件付きpMHC複合体である。
【0203】
次に、本発明を次の図および実施例を参照して、さらに詳細に記載する。本発明を、先の記載において詳細に説明し、記載しているが、実施例は、限定的ではなく、説明的または例示的であることが意図される。
【実施例
【0204】
実施例セクション
材料および方法
ペプチド合成およびpHLA分子の再折りたたみ
合成ペプチドを、ペプチドシンセサイザーPrelude(Gyros)を使用して、標準固相9-フルオレニルメチルオキシカルボニル戦略を使用して、産生した。純度を、UV検出を用いる逆相HPLC(Thermo)により評価した。UV切断を可能とするために、UV感受性3-アミノ-3-(2-ニトロ)フェニル-プロピオン酸残基(アミノ酸配列で(X)と略す)を親ペプチドのアミノ酸(aa)配列内の1個のaaの置換のために使用して、条件付きHLAリガンドを産生した(Toebes et al., 2006)。ビオチニル化pHLA複合体を、先に記載されたとおり(Altman et al., 1996; Garboczi et al., 1992)、合成ペプチドおよび組み換えHLA分子から産生した。pHLA複合体における正しい合成ペプチドの存在(合成ペプチドの配列同一性)を、ダイレクトインフュージョン高解像度MS2(Orbitrap Velos, Thermo Fisher Scientific)により確認した。
【0205】
UV介在リガンド交換によるpHLA産生
UV介在ペプチド交換およびELISAアッセイによるpHLA濃度測定は、Rodenko et al. (Rodenko et al., 2006)の記載に基づいた。簡潔には、UV単量体(UV感受性pHLA複合体)(最終濃度(f.c.):それぞれ刺激について0.5μMおよび読み出しについて2μM)およびレスキューペプチドを、1:100モル比で混合し、30~60分間、UV光(366nm)を照射した。遠心分離後、上清を取り、交換反応の成功を、β2-ミクログロブリン(β2m)ELISAにより試験した。
【0206】
β2m ELISA
96ウェルMAXISorpプレート(NUNC)を、一夜、2μg/mlストレプトアビジンのPBS溶液で、室温で被覆し、4回洗浄し、1時間、37℃で遮断緩衝液(2%BSA含有PBS)で遮断した。再折り畳みHLA-A*02:01/MLA-001単量体は標準として利用した。UV交換サンプルを1時間、37℃でインキュベートし、4回洗浄し、2μg/ml HRPコンジュゲート抗β2m(Origene, Rockville, MD, USA)と1時間、37℃でインキュベートし、再び洗浄し、NHSOで停止するTMB溶液(Sigma Aldrich, Taufkirchen, Germany)で検出した。吸収を450nmで測定した。
【0207】
T細胞単離および培養
ペプチド-HLA複合体(pHLA)および抗CD28抗体を搭載した人工抗原提示細胞(aAPC)によるインビトロ刺激を実施するために、本発明者らは、まず、インフォームドコンセント後、University clinics Mannheim, Germanyから得た健常ドナーの新鮮HLA適合白血球アフェレーシス製品から、CD8マイクロビーズ(Miltenyi Biotec, Bergisch-Gladbach, Germany)を使用して、陽性選択によりCD8+ T細胞を単離した。
PBMCおよび単離CD8+リンパ球を、10%熱不活性化ヒトAB血清(CC Pro, Oberdorla, Germany)、100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン(Biozym, Hessisch Oldendorf, Germany)、1mM ピルビン酸ナトリウム(CC Pro, Oberdorla, Germany)および20μg/ml ゲンタマイシン(Biozym, Hessisch Oldendorf, Germany)添加RPMI-Glutamax(Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)からなるT細胞培地(TCM)で、使用までインキュベートした。2.5ng/ml IL-7(PromoCell, Heidelberg, Germany)および10U/ml IL-2(Novartis Pharma, Nuernberg, Germany)も、この工程でTCMに添加した。
【0208】
aAPC(pHLA/抗CD28被覆ビーズ)の産生
精製共刺激マウスIgG2a抗ヒトCD28 Ab 9.3(Jung et al., 1987)を、製造業者(Perbio, Bonn, Germany)の推奨どおり、スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドビオチンを使用して、化学的にビオチニル化した。使用したビーズは、5.6μm直径ストレプトアビジン被覆ポリスチレン粒子(Bangs Laboratories, Illinois, USA)であった。
800.000ビーズ/200μlを、96ウェルプレート中、4個までの異なるビオチニル化pHLA複合体(総量50ng/ウェル)の存在下で被覆し、洗浄し、その後600ng ビオチニル化抗CD28を200μl/ウェルの体積で添加した。
【0209】
T細胞刺激
96ウェルプレート中、1×10 CD8+ T細胞と2×10 洗浄aAPCを、5ng/ml IL-12(PromoCell)添加200μl TCM中、3日間、37℃で共インキュベートすることにより刺激を開始した。次いで、培地の半分を80U/ml IL-2添加新鮮TCMに交換し、インキュベートを4日間、37℃で続けた。この刺激サイクルを計3回続けた。
各アッセイ内で、高度に免疫原性ペプチドを含むpHLA複合体および弱い免疫原性自己ペプチドを含むpHLA複合体は、それぞれ陽性または陰性対照刺激として利用した。
【0210】
蛍光pHLA多量体の産生
蛍光標識pHLA多量体を、先に記載(Rodenko et al., 2006)のとおり、産生した。
【0211】
読み出し
条件あたり8個までの異なるpHLA分子を使用するpHLA多量体読み出しについて、二次元組み合わせコーディングアプローチを、先に記載のとおり(Andersen et al., 2012a; Andersen et al., 2012b)、5個の異なる蛍光色素へのカップリングを含むわずかな改変をして、使用した。最後に、多量体分析を、細胞を生存/死近IR色素(Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)、CD8-FITC抗体クローンSK1(BD, Heidelberg, Germany)および蛍光pHLA多量体で染色することにより実施した。分析について、適切なレーザーおよびフィルターを備えたBD LSRII SORPまたはMACSQuant(登録商標)X FLOWサイトメーターを使用した。ペプチド特異的細胞を、総CD8+細胞のパーセンテージとして計算した。多量体分析の評価を、FlowJoTMソフトウェア(FlowJo, BD, Ashland, USA)を使用して、実施した。特異的多量体+CD8+リンパ球のインビトロプライミングを、陰性対照刺激との比較により検出した。
【0212】
分類
ペプチド特異的細胞の分類について、適切なレーザーおよびフィルターを備えたBD FACSAriaTM III SORP Cell Sorterを使用する。細胞をTCM中に分類し、さらに使用するまで培養する。
【0213】
組織サンプルからのHLAペプチドの単離
急速冷凍組織サンプルからのHLAペプチドプールを、HLA-A*02特異的抗体BB7.2、HLA-A、-B、-C特異的抗体w6/32、CNBr活性化セファロース、酸処理および限外濾過を使用する、わずかに改変したプロトコール(Falk et al., 1991; Seeger et al., 1999)により、固形組織からの免疫沈殿により得た。脂肪組織;副腎;胆管;膀胱;血液細胞;血管;骨髄;脳;乳房;食道;眼;胆嚢;頭頸部;心臓;大腸;小腸;腎臓;肝臓;肺;リンパ節;中枢神経;末梢神経;卵巣;膵臓;副甲状腺;腹膜;下垂体;胎盤;胸膜;前立腺;骨格筋;皮膚;脊髄;脾臓;胃;精巣;胸腺;甲状腺;気管;輸尿管および子宮を含む種々組織検体由来の1000を超えるサンプルを試験した。
【0214】
マススペクトロメトリー分析
得られたHLAペプチドプールを、逆相クロマトグラフィー(nanoAcquityUPLC系、Waters)により疎水性に従って分類し、溶出ペプチドをESI源を備えたLTQ velosおよびフュージョンハイブリッド型質量分析計(ThermoElectron)で分析した。ペプチドプールを、直接、1.7μm C18逆相材(Waters)を充填した分析的溶融シリカマイクロキャピラリーカラム(75μm内径×250mm)に載せ、400nL/分の流速を適用した。続いて、ペプチドを、300nL/分の流速で10%~33%Bの2工程180分間バイナリー勾配を使用して、分離した。勾配は、溶媒A(0.1%ギ酸水溶液)および溶媒B(0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液)からなった。金被覆ガラスキャピラリー(PicoTip, New Objective)を、nanoESI源への導入に使用した。LTQ-Orbitrap質量分析計を、TOP5戦略を使用するデータ依存モードで操作した。すなわち、走査サイクルを、オービトラップ(R=30000)で高質量精度の完全走査により開始し、続いて、またオービトラップ(R=7500)であるMS/MS走査を、先に選択したイオンの動的除外と共に5個の最も豊富な前駆体イオンで行う。タンデムマススペクトルを、固定誤検出率(q≦0.05)および付加的マニュアルコントロールのSEQUESTで解釈した。同定ペプチド配列が不確実である場合、さらに、産生された天然ペプチド断片化パターンと合成配列同一対照ペプチドの断片化パターンの比較により、検証した。
【0215】
実施例1:UV交換後のEC単量体収率および残存UV単量体の定量
UV単量体UV暴露後のpHLA複合体の存在を、β2m ELISAにより分析した。UV暴露を、レスキューペプチド存在下(灰色棒)または非存在下(黒色棒)実施した。結合ペプチドの非存在下、HLA分子は不安定であり、折り畳まれていない。驚くべきことに、本発明者らは、pHLA開始濃度と比較して、レスキューペプチド非存在下でUV暴露後8~15%のpHLAが検出できることを発見し、UV暴露中相当数のUV単量体がインタクトのままであることが示された(図2)。これらの予想外の結果は、EC単量体をUV交換を介して産生したとき、UVペプチドは常にレスキューペプチドと完全に交換されるわけではなく、低濃縮UV単量体の残存量に至ることを示唆する。
【0216】
実施例2:CD8+T細胞応答は残存UV単量体に向かう
本発明者らは、これらの条件付きpHLA複合体のバックグラウンド値は、T細胞の刺激または検出に使用したならば、誤った結果となるリスクを有し得るとの仮説を立てた。本発明者らは、残存UV単量体がUVペプチドを認識するT細胞の活性化および検出に十分であることを示すことができた。CD8+ T細胞を、A*02:01_FLUM-003×MLA-001分子(ここで、FLUM-003はMLA-001により交換されている条件付きリガンドである)被覆人工抗原提示細胞(aAPC)で刺激した。細胞を、pHLA単量体が条件付きリガンドとしてFLUM-003を使用するUV交換に由来する2個の異なる多量体(APC:A*02:01_FLUM-003×MLA-001およびPE:A*02:01_FLUM-003×ADF-001)の組み合わせで染色したとき、強いAPC単一陽性集団に加えて、第二のPE+APC+二重陽性集団が検出され得る(図3、A)。この集団は、同じ刺激ウェルからの細胞を、pHLA単量体が標準pHLA再折りたたみにより産生された多量体で染色したとき、観察されなかった(図3、B)。標準pHLA再折りたたみ由来のA*02:01_FLUM-003またはA*02:01_ADF-001特異的多量体での多量体染色は、ADF-001特異的細胞ではなく、FLUM-003特異的細胞の存在を確認した(図3、C+D)。これらの結果は、低量の残存条件付きpHLA分子でも、多量体染色による条件付きリガンドに特異的な細胞の検出に十分であることを明らかに示す。
【0217】
実施例3:ヒトタンパク質由来の親ペプチドおよびUVペプチドの免疫原性
UVペプチドFLUM-003(KILGFVF(X)V)が高度に免疫原性のInfluenca A MatrixペプチドGILGFVFTL(FLUM-001)由来であるため、本発明者らは、弱い免疫原性ヒトタンパク質由来のUVペプチドもまた、健常ヒト血中に多数の自己反応性CD8+細胞が存在するため、望まないT細胞集団を刺激するリスクを有するか否かを分析した。本発明者らは、弱い免疫原性ヒトタンパク質由来のUVペプチドまたはその各親ペプチドを含むpHLA分子を搭載したaAPCでのインビトロプライミング後、ペプチド特異的T細胞集団の刺激および増殖があることを示した(図4)。さらなる実験において、CD8+細胞を、ヒトUVペプチドを担持する標準再折り畳みpHLA分子(図5、AのB*07:02_MUDENG-002)またはヒトUVペプチドを含むUV単量体を使用するUV交換後に得たpHLA分子(A*03:01_HNRNPR-002×HADV-014;図5、B)を使用して、刺激した。いずれの場合も、それぞれ2.4%または6.7%のCD8+細胞のUVペプチド特異的T細胞集団が多量体染色により検出できた。これは、ヒト源タンパク質由来のUVペプチドも、UV交換後存在する残存UV単量体の場合のような低濃度であっても、特異的T細胞集団を刺激および増殖できることを示す(図5、B)。
【0218】
実施例4:刺激および検出のための種々の異なるUVペプチドのUV単量体の使用は偽陽性シグナル検出を阻止する
結果に基づき、本発明者らは、ペプチド特異的T細胞の刺激および検出両方のためのpHLA分子のUV介在産生について同一UVペプチドを有する単一UV単量体の使用が、検出細胞がレスキューペプチドまたはUVペプチドについて特異的であるならば、区別できないため、偽陽性結果になるか否かの試験を設定した。
【0219】
本発明者らは、抗CD28 mAbおよびHLA-A*02_FLUM-003×CMV-001被覆aAPCでプライミング後、CD8+ T細胞を分析した。読み出しのために、細胞を分割し、標準再折り畳みpHLA分子由来pHLA多量体(図6、プレートA)、FLUM-003のUV介在リガンド交換により産生されたpHLA分子(これはまた刺激にも使用した)(図6、プレートB)または他のUV単量体、RPL19-005のUV介在リガンド交換により産生したpHLA分子(図6、プレートC)で染色した。本発明者らは、いくつかの例で(図6、刺激位置1および2参照)、FLUM-003特異的細胞は、同じUV単量体を使用したならば、刺激および検出され、一方多量体染色のためのpHLAの産生のための他のUV単量体の使用は、このFLUM-003特異的細胞の望まない検出を阻止したことを示した。FLUM-003特異的細胞不含ウェルの染色(図6、位置3)は、二重陽性集団の検出が、FLUM-003のUV介在リガンド交換により産生されたpHLAの非特異的染色によるものではなく、多量体溶液中の低量の残存A*02_FLUM-003による特異的検出によることを確認した。
各々異なるHLAアロタイプについて確立された、異なるUVペプチドを含む2個のUV単量体を使用する本発明によるアプローチで、偽陽性シグナル検出は阻止できる。
【0220】
【表4】

【0221】
【表5】

【表5】
【0222】
参考文献:
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【0223】
実施態様
1. ペプチドA(PA)と主要組織適合性複合体(MHC)分子の複合体に特異的に結合する抗原結合タンパク質を表面に発現する免疫細胞を選択する方法であって、次の:
(i)異なる抗原結合タンパク質を発現する複数の免疫細胞を提供し;
(ii)複数の免疫細胞と
(a)MHC分子1(M1)およびペプチドA(PA)を含む複合体1Aおよび
(b)M1とペプチドB(PB)を含む複合体1X
を含む第一組成物を接触させ;
(iii)複数の免疫細胞と
(a)MHC分子2(M2)およびPAを含む複合体2Aおよび
(b)M2とペプチドC(PC)を含む複合体2X
を含む第二組成物を接触させ;
(iv)複数の免疫細胞から複合体1A;特に複合体1Aおよび複合体2A両方に特異的に結合する原結合タンパク質を発現する免疫細胞を選択する
工程を含み;ここで、複合体1Aおよび2Aではなく、複合体1Xおよび2Xが規定の刺激、好ましくは規定の化学的および/または物理的刺激での刺激により解離し;そして、PBおよびPCのアミノ酸配列は少なくとも1個のアミノ酸、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも5個、6個、7個または8個のアミノ酸が異なるものである、方法。
【0224】
2.
- 第一組成物を、
(i)複合体1X(M1およびPBを含む)を提供し
(ii)PAを提供し、そして
(iii)既定の刺激を提供し、それにより
- PBのM1からの解離および
- PAのM1への結合
を生じさせ、複合体1Aの形成をもたらすことにより得て;
好ましくはここで主に複合体1Aおよび残存量の複合体1Xを含む組成物を得る;および/または
- 第二組成物を
- (i)複合体2X(M2およびPCを含む)を提供し
- (ii)PAを提供し、そして
- (iii)既定の刺激を提供し、それにより
- PCからのM2の解離および
-PAのM2への結合
を生じさせて、複合体2Aの形成をもたらすことにより得て;
- 好ましくはここで主に複合体2Aおよび残存量の複合体2Xを含む組成物を得る、態様1の方法。
【0225】
3. 既定の刺激が物理的および/または化学的刺激である、態様1または2の方法。
【0226】
4. 既定の化学的または物理的刺激が温度上昇、特に10℃未満から25~45℃、pH変化、特に中性から酸性またはアルカリ性pH、過ヨウ素酸との接触、亜ジチオン酸との接触およびUV照射またはこれらの組み合わせからなる群、好ましくは温度上昇、特に10℃未満から25~45℃、過ヨウ素酸との接触、亜ジチオン酸との接触およびUV照射またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1~3の何れかの方法。
【0227】
5. PBおよびPCが、既定の刺激により活性化されたとき、それぞれPBまたはPCのペプチド主鎖内の共有結合を切断させる条件付きで反応性の基を含み、ここで、PBおよびPCに含まれる条件付きで反応性の基は同一でも異なってもよい、好ましくは同一である、態様1~4の何れかの方法。
【0228】
6. M1および/またはM2、好ましくはM1およびM2がMHC-I分子である、態様1~5の何れかの方法。
【0229】
7. M1およびM2が同じアレルのMHC-I分子または同じアレルのMHC誘導体または抗原ペプチド結合フラグメントである、態様1~6の何れかの方法。
【0230】
8. M1および/またはM2、好ましくはM2がビオチン部分またはストレプトアビジン部分、好ましくはビオチン部分に結合している、態様1~7の何れかの方法。
【0231】
9. M1および/またはM2は担体に直接的または間接的に結合し、ここで、好ましくは、担体は、細胞、特に抗原提示細胞または、特に粒子、フィラメント、マイクロアレイチップおよびELISAプレートからなる群から選択される、より特にストレプトアビジン、ストレプトアビジン-デキストランコンジュゲート、ナノビーズおよびマイクロビーズからなる群から選択される合成担体である、態様1~8の何れかの方法。
【0232】
10. 条件付きで反応性の基が最初または最後の位置を除くPBおよび/またはPCのアミノ酸配列の任意の位置に存在するアミノ酸アナログである、態様2~9の何れかの方法。
【0233】
11. 条件付きで反応性の基が光活性化可能基、亜ジチオン酸活性化可能基または過ヨウ素酸活性化可能基、好ましくは光活性化可能基を含む、態様2~10の何れかの方法。
【0234】
12. 光活性化可能基が3-アミノ-3-(2-ニトロ)フェニル-プロピオン酸またはその光活性化可能構造的等価物を含むおよび/またはジヒドロキシ部分を含む過ヨウ素酸感受性基である、態様11の方法。
【0235】
13. 免疫細胞がT細胞、より好ましくはCD8T細胞である、態様1~12の何れかの方法。
【0236】
14. 抗原結合タンパク質がT細胞受容体(TCR)である、態様1~13の何れかの方法。
【0237】
15. 工程(i)で提供される複数の細胞が健常対象または疾患に罹患している対象の末梢血または末梢血画分から得られる、態様1~14の何れかの方法。
【0238】
16. 疾患が免疫疾患および新生物疾患、好ましくは新生物疾患、より好ましくは癌かなる群から選択される、態様15の方法。
【0239】
17. 画分が免疫細胞、好ましくはT細胞、より好ましくはCD8T細胞またはCD4 T細胞が富化されている、態様15または16の方法。
【0240】
18. 免疫細胞富化画分が、好ましくはCD3、CD8、CD4およびCD19からなる群から選択される1以上の免疫細胞特異的表面マーカーの検出可能な標識により選択される、態様17の方法。
【0241】
19. 工程(i)で提供される複数の細胞が表現型決定されているT細胞である、態様1~18の何れかの方法。
【0242】
20. T細胞の表現型決定が、好ましくはCD3、CD4、CD8、CD11a、CD14、CD19、CD25、CD27、CD28、CD44、CD45RA、CD45RO、CD57、CD62L、CD69、CD122、CD127、CD197(CCR7)、IFNγ、IL-2、TNFα、IL7Rおよびテロメア長からなる群から選択される1以上のT細胞マーカーの存在の定量的または定性的決定を含む、態様19の方法。
【0243】
21. 工程ii)およびiii)が続いて実施され、好ましくは工程iii)が工程ii)に続いて実施される、態様1~20の何れかの方法。
【0244】
22. M1および/またはM2、好ましくはM2が検出可能標識または検出可能標識を含む担体に結合しており、ここで、検出可能標識は同一でも異なってもよい、態様1~21の何れかの方法。
【0245】
23. 検出可能標識が蛍光標識、磁気標識、RNAバーコード、DNAバーコードおよび放射性標識からなる群から選択される、態様21または22の方法。
【0246】
24. 蛍光標識がキサンテン、アクリジン、オキサジン、シアニン、スチリル色素、クマリン、ポルフィリン、金属-リガンド-複合体、蛍光タンパク質、ナノ結晶、ペリレンおよびフタロシアニン、より好ましくはストレプトアビジン-フィコエリスリン(SA-PE)、ストレプトアビジン-フィコエリスリン-シアニン5(SA-PE-Cy5)、ストレプトアビジン-アロフィコシアニン(SA-APC)、ストレプトアビジン-アロフィコシアニン-シアニン7(SA-APC-Cy7)、ストレプトアビジン-ペリジニンクロロフィル-Aタンパク質(SA-PerCP)、ストレプトアビジン-ペリジニンクロロフィル-Aタンパク質-シアニン5.5(SA-PerCP/Cy5.5)、ストレプトアビジン-フィコエリスリン-シアニン7(SA-PE-Cy7)、ストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット421(SA-BV421)、ストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット510(SA-BV510)、ストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット570(SA-BV570)、ストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット605(SA-BV605)、ストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット650(SA-BV650)、ストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット711、ストレプトアビジン-ブリリアントバイオレット785(SA-BV785)、ストレプトアビジンVioBlue(SAVioBlue)、ストレプトアビジンアロフィコシアニンVio770(SA APC Vio770)、ストレプトアビジンペリジニンクロロフィル-Aタンパク質Vio700(SA PerCPVio700)、ストレプトアビジンフィコエリスリンVio 770(SA PE Vio770)およびストレプトアビジン-フィコエリスリン-Dazzle594からなる群から選択される、態様23の方法。
【0247】
25. 標識がフローサイトメトリー分析、好ましくは蛍光活性化細胞分類(FACS)または微小流体分析または分取分類分析様磁気活性化細胞分類(MACS)により検出可能である、態様23~24の何れかの方法。
【0248】
26. 工程iv)で選択される細胞が単細胞または細胞集団である、態様1~25の何れかの方法。
【0249】
27. 工程ii)が
(i)さらに複数の細胞と共刺激分子、好ましくは抗CD28、抗CD3、抗CD137および/または抗CD134に対する抗体、より好ましくは抗CD28および/または抗CD3の接触を含む;
(ii)さらに複数の細胞とIL-2および/またはIL-12の接触を含む;および/または
(iii)少なくとも3日間、好ましくは少なくとも7日間、より好ましくは少なくとも10日間実施する
、態様1~26の何れかの方法。
【0250】
28. 工程iii)がさらに複数の細胞と生存能色素および/または標識表面マーカー;好ましくはCD3、CD4、CD8および/またはCD69;より好ましくはCD3および/またはCD8との接触を含む、態様1~27の何れかの方法。
【0251】
29. 工程iv)が検出、特徴づけおよび単離の少なくとも1個および所望により単細胞または細胞集団の培養を含む、態様1~28の何れかの方法。
【0252】
30. PAが、好ましくはウイルス抗原ペプチド、細菌抗原ペプチドおよび腫瘍関連抗原ペプチド(TAA)から選択される抗原ペプチドである、より好ましくはPAがTAAである、態様1~29の何れかの方法。
【0253】
31. PA、PBおよび/またはPCが
- MHC-I結合ペプチドである;および/または
- 8~12アミノ酸長、好ましくは8~11アミノ酸長を有する、
態様1~30の何れかの方法。
【0254】
32. PBおよび/またはPCが
- MHC結合についてあるアミノ酸を必要としない位置に条件付きで反応性の基を含む;
- 条件付きで反応性の基を溶媒暴露位置に含む;
- 少なくとも0.4、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.6、さらにより好ましくは少なくとも0.7の相対的Syfpeithiスコアを有する;および/または
- 0.2以下、0.1以下、0.05以下、0.02以下、0.01以下、好ましくは0.005以下のNetMHCpanランクを有する、
態様1~31の何れかの方法。
【0255】
33. PBおよび/またはPCがMHC分子と一体となってそれぞれ複合体1Xおよび/または2Xを形成し、ここで、1Xおよび/または2Xが
- HLA1molあたり少なくとも0.5、少なくとも0.2、少なくとも0.1、少なくとも0.05、好ましくは少なくとも0.025molのpHLA再折りたたみ収率を有する;
- UV暴露非存在下、室温で、PBSなどの緩衝液中、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間または少なくとも24時間安定である;
- 低凝集を有する;
- 低分解率を有する;および/または
- 約>50%、好ましくは約>70%、より好ましくは約>90%の切断後の解離率を有する、
態様2~32の何れかの方法。
【0256】
34. PBおよび/またはPCがPBおよびPCが提示されるMHCアレルを発現する個体で高頻度で提示されるペプチド由来である、態様1~33の何れかの方法。
【0257】
35. PBおよびPCのアミノ酸配列が少なくとも1個のアミノ酸が異なり、
i) M1およびM2はHLA-A*01:01またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列がMUC16-010、MUC16-011、RNF213-010、RNF213-011、AXIN1-003、AXIN1-004、CLTC-002、CLTC-003、CLTC-004、好ましくはCLTC-002およびMUC16-010からなる群から選択され、より好ましくはPBがCLTC-002であり、かつPCがMUC16-010であり、ここで、MUC16-010が配列番号1を含むかまたはそれからなり、MUC16-011が配列番号2を含むかまたはそれからなり、RNF213-010が配列番号3を含むかまたはそれからなり、RNF213-011が配列番号4を含むかまたはそれからなり、AXIN1-003が配列番号5を含むかまたはそれからなり、AXIN1-004が配列番号6を含むかまたはそれからなり、CLTC-002が配列番号7を含むかまたはそれからなり、CLTC-003が配列番号8を含むかまたはそれからなり、そしてCLTC-004が配列番号9を含むかまたはそれからなる;または
ii) M1およびM2がHLA-A*02:01またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列がDDX5-002、DDX5-003、DDX5-004、DDX5-005、DDX5-006、RPL19-003、RPL19-004、RPL19-005およびFLUM-003、好ましくはDDX5-002、DDX5-003、DDX5-004、DDX5-005、DDX5-006、RPL19-003、RPL19-004、RPL19-005、より好ましくはDDX5-005およびRPL19-005からなる群から選択され、さらにより好ましくはPBがDDX5-005であり、かつPCがRPL19-005であり、ここで、DDX5-002が配列番号10を含むかまたはそれからなり、DDX5-003が配列番号11を含むかまたはそれからなり、DDX5-004が配列番号12を含むかまたはそれからなり、DDX5-005が配列番号13を含むかまたはそれからなり、DDX5-006が配列番号14を含むかまたはそれからなり;RPL19-002が配列番号16を含むかまたはそれからなり、RPL19-003が配列番号17を含むかまたはそれからなり、RPL19-002が配列番号18を含むかまたはそれからなり;FLUM-003が配列番号19を含むかまたはそれからなる;または
iii) M1およびM2がHLA-A*03:01またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列がUVLA3-001、GIBB-002、GIBB-003、HNRNPR-002、HNRNPR-003およびHNRNPR-004、好ましくはGIBB-002およびHNRNPR-002からなる群から選択され、より好ましくはPBがGIBB-002であり、かつPCがHNRNPR-002であり、ここで、UVLA3-001が配列番号20を含むかまたはそれからなり、GIBB-002が配列番号21を含むかまたはそれからなり、GIBB-003が配列番号22を含むかまたはそれからなり、HNRNPR-002が配列番号24を含むかまたはそれからなり、HNRNPR-003が配列番号25を含むかまたはそれからなり、HNRNPR-004が配列番号26を含むかまたはそれからなる;または
iv) M1およびM2がHLA-A*24:02またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列がTEG-002、TEG-003、TEG-004、TEG-005、TEG-006、TEG-007、PPP1CA-002、PPP1CA-003、PPP1CA-005、好ましくはTEG-007およびPPP1CA-005からなる群から選択され、より好ましくはPBがTEG-007であり、かつPCがPPP1CA-005であり、ここで、TEG-002が配列番号29を含むかまたはそれからなり、TEG-003が配列番号30を含むかまたはそれからなり、TEG-004が配列番号31を含むかまたはそれからなり、TEG-005が配列番号32を含むかまたはそれからなり、TEG-006が配列番号33を含むかまたはそれからなり、TEG-007が配列番号34を含むかまたはそれからなり、PPP1CA-002が配列番号35を含むかまたはそれからなり、PPP1CA-003が配列番号36を含むかまたはそれからなり、PPP1CA-005が配列番号38を含むかまたはそれからなる;または
v) M1およびM2がHLA-B*07:02またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列が異なり、UVLB7-001、HLA-DPB1-002、HLA-DPB1-003、HLA-DPB1-004、CHCHD2-003およびMUDENG-002、好ましくはMUDENG-002およびDPB1-004からなる群から選択され、より好ましくはPBがMUDENG-002であり、かつPCがDPB1-004であり、ここで、UVLB7-001が配列番号39を含むかまたはそれからなり、HLA-DPB1-002が配列番号40を含むかまたはそれからなり、HLA-DPB1-003が配列番号41を含むかまたはそれからなり、HLA-DPB1-004が配列番号42を含むかまたはそれからなり、CHCHD2-003が配列番号44を含むかまたはそれからなり、そしてMUDENG-002が配列番号46を含むかまたはそれからなる;または
vi) M1およびM2がHLA-B*08:01またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列がMKI-003、MKI-004、VIM-004、VIM-005、COPA-008、PDCD10-002、PDCD10-003、MIR286-002、EBV-020、SPTAN-002およびLOC646214-003、好ましくはMKI-003、COPA-008、PDCD10-003、MIR286-002、EBV-020、SPTAN-002およびLOC646214-003、より好ましくはSPTAN-002およびLOC646214-003からなる群から選択され、さらにより好ましくはPBがSPTAN-002であり、かつPCがLOC646214-003であり、ここで、MKI-003が配列番号49を含むかまたはそれからなり、MKI-004が配列番号50を含むかまたはそれからなり、VIM-004が配列番号51を含むかまたはそれからなり、VIM-005が配列番号52を含むかまたはそれからなり、COPA-008が配列番号53を含むかまたはそれからなり、PDCD10-002が配列番号54を含むかまたはそれからなり、PDCD10-003が配列番号55を含むかまたはそれからなり、MIR286-002が配列番号56を含むかまたはそれからなり、EBV-020が配列番号57を含むかまたはそれからなり、SPTAN-002が配列番号58を含むかまたはそれからなり、LOC646214-003が配列番号59を含むかまたはそれからなり;
vii) M1およびM2がHLA-B*44:02またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列がSPTBN1-002、SPTBN1-003、SPTBN1-004、CLTC-006、CLTC-007、CSE1-005およびCSE1-006、好ましくはSPTBN1-004およびCSE1-005からなる群から選択され、より好ましくはPBがSPTBN1-004であり、かつPCがCSE1-005であり、ここで、SPTBN1-002が配列番号60のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-003が配列番号61を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-004が配列番号62を含むかまたはそれからなり、CLTC-006が配列番号63を含むかまたはそれからなり、CLTC-007が配列番号64を含むかまたはそれからなり、CSE1-005が配列番号65を含むかまたはそれからなり、そしてCSE1-006が配列番号66を含むかまたはそれからなる;または
viii) M1およびM2がHLA-B*44:05またはそのMHC誘導体もしくはその抗原ペプチド結合フラグメントであり、PBおよびPCのアミノ酸配列がSPTBN1-002、SPTBN1-003、SPTBN1-004、CLTC-006、CLTC-007、CSE1-005およびCSE1-006、好ましくはSPTBN1-004およびCLTC-006からなる群から選択され、より好ましくはPBがSPTBN1-004であり、かつPCがCLTC-006であり、ここで、SPTBN1-002が配列番号60のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-003が配列番号61を含むかまたはそれからなり、SPTBN1-004が配列番号62を含むかまたはそれからなり、CLTC-006が配列番号63を含むかまたはそれからなり、CLTC-007が配列番号64を含むかまたはそれからなり、CSE1-005が配列番号65を含むかまたはそれからなり、そしてCSE1-006が配列番号66を含むかまたはそれからなり、
ここで、配列番号1~配列番号66において、Xが条件付きで反応性の基を表す、態様1~34の何れかの方法。
【0258】
36. 配列番号1~19、21~38および40~66からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、ここで、各配列において、Xが条件付きで反応性の基を表す、好ましくは条件付きで反応性のアミノ酸アナログである、条件付きペプチド。
【0259】
37. 条件付きペプチドが、該ペプチドが提示されるMHCアレルを発現する個体で高頻度で提示される親ペプチド由来である、態様36の条件付きペプチド。
【0260】
38. 該条件付きペプチドを含む条件付きペプチドMHC複合体が
- HLA鎖
1molあたり少なくとも0.5、少なくとも0.2、少なくとも0.1、少なくとも0.05、好ましくは少なくとも0.025mol pHLAの再折りたたみ収率を有する;
- UV暴露非存在下、室温で、PBSなどの緩衝液中、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間または少なくとも24時間安定である;
- 低凝集を有する;
- 低分解率を有する;および/または
- 約>50%、好ましくは約>70%、より好ましくは約>90%の切断後の解離率を有する、
態様36または37の条件付きペプチド。
【0261】
39. 条件付きペプチドが配列番号1~18、21~38、40~56および58~66からなる群から選択される、好ましくは配列番号3~18、21~38、40~48、51~56および59~66からなる群から選択される、態様36~38の何れかの条件付きペプチド。
【0262】
40. 条件付きペプチドがHLA-A*01:01、HLA-A*02:01、HLA-A*03:01、HLA-A*24:02、HLA-B*07:02、HLA-B*07:02、HLA-B*08:01またはHLA-B*44:05に特異的である、態様36~39の何れかの条件付きペプチド。
【0263】
41. 態様1~35の何れかの方法により選択された免疫細胞。
【0264】
42. pMHC複合体1Aに特異的に結合する抗原結合タンパク質をコードする核酸の配列を決定する方法であって:
(i)態様1~35の何れかの方法で選択した免疫細胞から抗原結合タンパク質をコードする核酸を単離し;そして
(ii)核酸配列を決定する
工程を含む、方法。
【0265】
43. 抗原結合タンパク質を発現する宿主細胞を産生する方法であって:
(i)宿主細胞を準備し;
(ii)態様1~35の何れかの方法で選択した免疫細胞から抗原結合タンパク質をコードする核酸を単離し;
(iii)工程(ii)で単離した核酸または抗原結合タンパク質もしくはその抗原結合フラグメントをコードする該核酸の一部を含む遺伝子構築物を産生し;そして
(iv)該宿主細胞に該遺伝子構築物を導入する
工程を含む、方法。
【0266】
44. 抗原結合タンパク質を産生する方法であって、態様43の方法により産生した宿主細胞を提供し、該宿主細胞に導入した遺伝子構築物を発現させることを含む、方法。
【0267】
45. 抗原結合タンパク質がTCRまたはその抗原結合フラグメントであり、ここで、好ましくは、TCRまたはその抗原結合フラグメントが6個のCDR配列を含む、態様43または44の方法。
【0268】
46. 態様44の方法により産生された抗原結合タンパク質。
【0269】
47. 態様46の抗原結合タンパク質をコードする核酸または該核酸を含むベクター。
【0270】
48. 好ましくは表面にペプチドとMHC分子の複合体と特異的に結合する抗原結合タンパク質を発現する細胞を選択するための、キットであって:
a)ペプチドB(PB)およびMHC分子1(M1)を含む複合体1X;およびペプチドC(PC)とMHC分子2(M2)を含む複合体2X;または
b)ペプチド(PB)およびペプチド(PC)ならびに所望によりPBおよびPCが結合し、それにより複合体1Xおよび2Xを各々形成するMHC分子、特にM1および/またはM2;および
c)所望によりβ2-ミクログロブリン
を含み;ここで、複合体1Xおよび2Xが規定の化学的および/または物理的刺激での刺激により解離し;そして、PBおよびPCのアミノ酸配列が少なくとも1個のアミノ酸、好ましくは少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個のアミノ酸が異なる、ペプチドA(PA)およびM1またはM2を含む複合体1Aに特異的に結合する抗原結合タンパク質の選択のためである、キット。
【0271】
49. 態様1~35の何れかの方法により選択された免疫細胞、態様43の方法により産生された宿主細胞、態様46の抗原結合タンパク質および/または態様47の核酸またはベクターを含む、医薬組成物。
【0272】
50. 医薬として使用するための、態様1~35の何れかの方法により選択された免疫細胞、態様40の方法により産生された宿主細胞、態様44の抗原結合タンパク質および/または態様45の核酸またはベクター。
【0273】
51. 新生物疾患の処置または予防の方法において使用するための、態様1~35の何れかの方法により選択された免疫細胞、態様43の方法により産生された宿主細胞、態様46の抗原結合タンパク質および/または態様47の核酸またはベクター。
【0274】
52. 処置を必要とする対象に治療有効量の態様1~35の何れかの方法により選択された免疫細胞、態様43の方法により産生された宿主細胞、態様46の抗原結合タンパク質および/または態様47の核酸またはベクターを投与することを含む、新生物疾患を処置する方法。
【0275】
53. 処置を必要とする対象における新生物疾患を処置する方法であって:
(i)T細胞を含む対象の免疫細胞集団を提供し;
(ii)工程(i)の免疫細胞集団と
(a)MHC分子1(M1)とペプチドA(PA)を含む複合体1Aおよび
(b)M1とペプチドB(PB)を含む複合体1X
を含む第一組成物を接触させ;
(iii)免疫細胞集団と
(a)MHC分子2(M2)とPAを含む複合体2Aおよび
(b)M2およびペプチドC(PC)を含む複合体2X
を含む第二組成物を接触させ;
(iv)免疫細胞集団から複合体1A;特に複合体1Aおよび複合体2A両方に特異的に結合するTCRを発現する少なくとも1個のT細胞を選択し;そして
(v)培養により少なくとも1個の選択T細胞の数を増加させ;そして
(vi)培養T細胞を対象に再導入する
工程を含み;ここで、複合体1Aおよび2Aではなく、複合体1Xおよび2Xが規定の刺激での刺激により解離し;そして、PBおよびPCのアミノ酸配列が少なくとも1個のアミノ酸が異なるものである、方法。
【0276】
54. pMHC複合体の製造のための、態様36~39の何れかのペプチドの使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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【国際調査報告】