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特表2024-534837鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法及び当該テーラードブランク材を使用して作製される熱間プレス部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法及び当該テーラードブランク材を使用して作製される熱間プレス部材
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20240918BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20240918BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240918BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20240918BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20240918BHJP
   C22C 38/08 20060101ALI20240918BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20240918BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20240918BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20240918BHJP
   B23K 26/348 20140101ALI20240918BHJP
   B23K 9/173 20060101ALI20240918BHJP
   B23K 9/16 20060101ALI20240918BHJP
   B23K 26/322 20140101ALI20240918BHJP
【FI】
B23K26/21 F
C22C21/02
C22C38/00 301T
C22C38/00 301Z
C22C38/38
C22C38/60
C22C38/08
C21D9/00 A
C21D1/18 C
B23K35/30 320A
B23K26/348
B23K9/173 A
B23K9/16 K
B23K26/322
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512188
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 CN2022114784
(87)【国際公開番号】W WO2023025242
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110980317.6
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】潘 華
(72)【発明者】
【氏名】劉 成 杰
(72)【発明者】
【氏名】呉 天 海
(72)【発明者】
【氏名】雷 鳴
(72)【発明者】
【氏名】孫 中 渠
(72)【発明者】
【氏名】蒋 浩 民
(72)【発明者】
【氏名】王 舒 揚
(72)【発明者】
【氏名】呉 岳
【テーマコード(参考)】
4E001
4E168
4K042
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB06
4E001CA02
4E001CC02
4E001DD04
4E001EA01
4E001EA05
4E001EA08
4E168BA12
4E168BA42
4E168BA64
4E168BA85
4E168BA88
4E168DA32
4E168DA37
4E168FB01
4K042AA24
4K042AA25
4K042BA11
4K042CA02
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA09
4K042CA10
4K042CA12
4K042CA13
4K042DA01
4K042DC02
4K042DC03
4K042DD01
(57)【要約】
鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法および当該テーラードブランク材で作製される熱間プレス部材。アルミニウムまたはアルミニウム合金メッキ層(12、12’、22、22’)を有する溶接対象鋼板(10、20)を使い、溶接過程におけるシールドガス(50)成分や溶接ワイヤー(30)成分を調整し、溶接速度および溶接ワイヤー送給速度を制御することで、溶接継ぎ目における遊離アルミニウム含有量を0.1~4.0wt.%にすることによって、テーラードブランク過程で溶接継ぎ目に鉄アルミニウム金属間化合物の生成が防がれ、同時に溶接継ぎ目に適量に分散分布するフェライトを生成させる。得られるテーラードブランク材の溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+1~15vol.%分散分布するフェライト+0~5vol.%残留オーストナイトであり、熱間プレス成形で得られる熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+0.1~10vol.%分散分布するフェライトである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法:
1)鋼板の溶接前準備
強度レベルが等しいまたは異なる二枚の溶接対象鋼板を取り、溶接前に、溶接対象鋼板に対し表面洗浄を行う。前記溶接対象鋼板は、基材およびその少なくとも一つ表面の上にあるアルミニウムまたはアルミニウム合金メッキ層を含み、前記メッキ層は、前記基材と接触する金属間化合物合金層およびその上の金属合金層を含み、前記溶接対象鋼板のメッキ層は、除去または薄肉化処理されない;
2)溶接開先の設置
溶接対象鋼板の開先を0.1~0.5mmに設置する;
3)溶接
レーザ肉盛溶接、MAG溶接またはレーザMAG複合溶接で溶接を行う;
ただし、レーザ肉盛溶接では、溶接速度は40~120mm/sであり、溶接ワイヤー送給速度は2~8m/minであり、MAG溶接では、溶接速度は300~800mm/minであり、レーザMAG複合溶接では、溶接速度は60~150mm/sであり、溶接ワイヤー送給速度は4~10m/minである;
シールドガスはAr+15~80vol.%CO+1~10vol.%Nであり、シールドガス流量は10~25L/minである;
溶接用溶接ワイヤーの成分におけるC、Mn、Niの含有量から、溶接対象鋼板Aにおける相応の各元素の含有量を差し引いた差△C、△Mn、△Niが、以下の条件を満たす:
溶接対象鋼板Aの引張強度<900MPa、△C:-0.05~0.09wt.%、△Mn:-0.5~1.4wt.%、△Ni:0~4.0wt.%;または
900MPa≦溶接対象鋼板Aの引張強度<1300MPa、△C:-0.1~0.09wt.%、△Mn:-2~1.4wt.%、△Ni:0~4.0wt%;または
1300MPa≦溶接対象鋼板Aの引張強度<1700MPa、△C:-0.21~-0.05wt.%、△Mn:-1.4~1.4wt.%、△Ni:1.76~4.0wt%;または
溶接対象鋼板Aの引張強度≧1700MPa、△C:-0.26~-0.15wt.%、△Mn:-1.4~0.7wt.%、△Ni:2.26~4.0wt%;
ただし、前記溶接対象鋼板Aは、強度レベルが等しい二枚の溶接対象鋼板における一つで、または強度レベルが異なる二枚の溶接対象鋼板のうち強度レベルが低い溶接対象鋼板である;
ただし、前記テーラードブランク材の溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+1~15vol.%分散分布するフェライト+0~5vol.%残留オーストナイトであり、溶接継ぎ目における遊離アルミニウム含有量は0.1~4.0wt.%である。
【請求項2】
工程3)では、前記シールドガスのCO含有量は15~50vol.%である、請求項1に記載の鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法。
【請求項3】
工程3)では、前記シールドガスのN含有量は2~4vol.%である、請求項1または2に記載の鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法。
【請求項4】
前記MAG溶接またはレーザMAG複合溶接の溶接電流は110~130Aであり、溶接電圧は18~25Vである、請求項1に記載の鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法。
【請求項5】
前記レーザ肉盛溶接またはレーザMAG複合溶接工程のデフォーカス量は-10~10mmであり、レーザ出力範囲は3~8kWであり、好ましくは、前記レーザ肉盛溶接またはレーザMAG複合溶接工程では、レーザ加工ヘッドから出力される最小スポット径は0.3~1.6mmである、請求項1に記載の鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法。
【請求項6】
前記メッキ層はアルミニウム合金メッキ層であり、前記アルミニウム合金メッキ層の成分は、重量パーセントで:Si:5~11%、Fe:0~4%、その残部はAlおよびその他の不可避的不純物である、請求項1に記載の鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法。
【請求項7】
前記溶接対象鋼板Aの引張強度<900MPa、その成分は、重量パーセントで:C:0.06~0.1%、0<Si≦0.1%、Mn:0.5~1.0%、P<0.03%、S<0.01%、Al<0.1%、0<Cr≦0.1%、0<Ti≦0.05%、残部はFeおよびその他の不可避的不純物である;または
前記溶接対象鋼板Aの引張強度は900MPa以上1300MPa未満であり、その成分は、重量パーセントで:C:0.06~0.15%、Si:0.3~1.0%、Mn:0.5~2.5%、P≦0.10%、S≦0.05%、Al:0.02~0.30%、Cr:0.05~0.5%、Nb:0.02~0.20%、V≦0.15%、Ti:0.01~0.10%、Mo≦0.5%、Ni≦0.5%、B:0.001~0.01%、残部はFeおよびその他の不可避的不純物である;または
前記溶接対象鋼板Aの引張強度は1300MPa以上1700MPa未満であり、その成分は、重量パーセントで:C:0.2~0.3%、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P<0.015%、S<0.05%、Al<0.1%、Ti<0.2%、B:0.0005~0.08%、Cr:0.01~1%、Ni≦0.24%、残部はFeおよびその他の不可避的不純物である;または
前記溶接対象鋼板Aの引張強度≧1700MPa、その成分は、重量パーセントで:C:0.30~0.39%、Si:0.05~0.6%、Mn:0.5~2.5%、P≦0.015%、S≦0.01%、Al:0.01~0.07%、Cr≦1.0%、Nb≦0.08%、V≦0.1%、Ti:0.01~0.12%、Mo:0.01~0.5%、Ni<0.25%、B:0.0001~0.005%、N≦0.006%、残部はFeおよびその他の不可避的不純物である、請求項1に記載の鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法。
【請求項8】
前記溶接ワイヤーの成分は、重量パーセントで:C:0.05~0.15%、Mn:0.5~1.9%、Ni:0~4%、好ましくは0.5~4%であり、残部はFeおよびその他の不可避的不純物である、請求項1に記載の鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法。
【請求項9】
鋼製薄肉テーラードブランク材であって、強度レベルが等しいまたは異なる二枚の溶接対象鋼板を溶接することで作られ、前記溶接対象鋼板は、基材およびその少なくとも一つ表面の上にあるアルミニウムまたはアルミニウム合金メッキ層を含み、前記メッキ層は、前記基材と接触する金属間化合物合金層およびその上の金属合金層を含み、前記鋼製薄肉テーラードブランク材の溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+1~15vol.%分散分布するフェライト+0~5vol.%残留オーストナイトであり、溶接継ぎ目における遊離アルミニウム含有量は0.1~4.0wt.%であり、好ましくは、前記鋼製薄肉テーラードブランク材は、請求項1~8のいずれ一項に記載の方法で作製される、鋼製薄肉テーラードブランク材。
【請求項10】
熱間プレス部材であって、前記熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+0.1~10vol.%分散分布するフェライトであり、溶接スポットの準静的過程での引張破断位置は母材にあり、スポット伸び率が4%以上であり、溶接スポットは、歪み速度が40~800/sである時、溶接スポットの引張破断歪みが0.08を超える、熱間プレス部材。
【請求項11】
前記熱間プレス部材は、請求項1~8のいずれ一項に記載の製造方法で得られる鋼製薄肉テーラードブランク材から作製され、または請求項9に記載の鋼製薄肉テーラードブランク材から作製される、請求項10に記載の熱間プレス部材。
【請求項12】
前記熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織のフェライト含有量は0.5~5vol.%である;および/または
前記熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織のフェライトは針状である、請求項10に記載の熱間プレス部材。
【請求項13】
前記熱間プレス部材の溶接スポットは、歪み速度が40~800/sである時、溶接スポットの引張破断歪みが0.09を超える、請求項10に記載の熱間プレス部材。
【請求項14】
熱間プレス部材の製造方法であって、当該方法は、請求項1~8のいずれ一項に記載の鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法で鋼製薄肉テーラードブランク材を製造する工程、及び製造される鋼製薄肉テーラードブランク材に対し熱間プレス焼入れを行う工程を含む、熱間プレス部材の製造方法。
【請求項15】
前記熱間プレスの焼入れでは、加熱温度は920~950℃であり、加熱時間は3~6分間であり、通水金型で8~20秒間保圧する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶接部材の製造方法に関し、具体的には鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法及び当該テーラードブランク材を使用して作製される熱間プレス部材に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量化、高強度自動車鋼板は、省エネと排出削減の国策と相まって、近年の自動車産業の目標となっていて、自動車産業では、自動車鋼板の高強度薄肉化の需要がますます増える。熱間プレス技術は、冷間プレス技術に比べ、大幅な軽量化、良好な成形性、高い寸法精度などの利点により、自動車鋼板の高強度化を実現する上で重要な役割を果たしている。自動車の安全性、信頼性、快適性に対する人々の要求が高まるにつれ、多くの自動車企業は、自動車の構造設計の改善や新しい製造プロセスの採用といった観点から、製品の品質向上を図っている。テーラードブランク材とは、等しい/異なる材質、等しい/異なる厚さ、等しい/異なるコーティング層の鋼板を、部品の材料特性に対する異なる需要を満たすように溶接したものである。レーザテーラードブランク材の熱間プレスは、車体重量を減らし、組立精度を向上させ、組立工程の簡素化を実現し、同時に熱間プレス成形の長所を取り入れ、鋼板の成形性をさらに向上させることができる。
【0003】
レーザテーラードブランク材で形成される熱間プレス製品は強度が高く、形状が複雑であり、成形性が良く、サイズ精度が高く、反発が小さい。表面の状態に応じて熱間プレス用鋼は、裸の鋼およびメッキ層を有する鋼板に分けられる。実際の熱間プレス過程では、裸の鋼の表面は、高温で酸化され、酸化スケールが形成しやすく、スタンピング過程では、酸化スケールは、鋼に押し出され、表面欠陥が形成されるため、その使用性能が大幅に影響される。メッキ層を有する熱間プレス鋼板は、裸の板に比べれば鋼板が酸化から保護されると共に、熱間プレス後のショットピーニング処理も省くため、メッキ層を有する熱間プレス鋼板はますます注目される。現在、一般的なのはアルミニウムもしくはアルミニウム合金メッキ層熱間プレス鋼であるが、この鋼は、溶接時にメッキ層が溶融池に溶け込み、脆くて硬い金属間化合物(FeAl、FeAl、FeAl)及びフェライトが形成されるため、溶接スポットの強度、延性が下がり、使用できない。
【0004】
中国特許CN101426612Aは「圧延塗装板から良好な機械的特性を有する溶接部品を製造する方法」が開示されるが、当該方法はアルミニウムケイ素メッキ層含有鋼板を原料とし、金属間化合物のみをプレコートとして含む溶接ブランクを製造する。当該方法は、溶融池にアルミニウムが溶け込むことによる溶接継ぎ目強度と伸び率が規格外である問題を解決するが、鋼板を溶接する前にメッキ層をアブレーションする必要があり、設備投資が増加し生産効率が低下する。
【0005】
中国特許CN102985216Aは「窒素および/または酸素を含むガスを使用したアルミメッキ鋼部品のアーク/レーザーハイブリッド溶接方法」が開示されるが、当該特許では、アルミメッキ部材の溶接時にアーク+レーザハイブリッド溶接が使用され、シールドガスには追加ガスの窒素または酸素が追加され、追加ガスの体積含有量は1~20%であり、追加ガスの機能はアルミニウムを捕捉してAlもしくはAlN系化合物を形成することであり、フェライトまたはその他の有害金属間化合物の形成を避けることである。形成された酸化アルミニウムもしくは窒化アルミニウムは溶融池の表面に浮遊し、アルミニウムが溶接池に溶け込むのを防ぐ(段落0015段)。溶接継ぎ目組織は全マルテンサイト組織である。当該特許から、アルミニウムもしくはアルミニウム合金メッキ層を有する鋼板を直接テーラードブランクすると、溶接時にメッキ層が溶融池に侵入し、熱間プレス後の溶接スポットの強度が低下し、スポットの延伸率が1%前後であり、テーラードブランク熱成形部材が車両衝突時に破損する可能性があり、適切な安全保護が提供されなくなることがわかる。
【0006】
中国特許CN108025400Aは「アルミニウムベースまたはアルミニウムケイ素ベースのメッキ層を有する焼入れ性鋼から半製品プレートを製造するためのレーザー溶接方法」が開示されるが、それが強度差熱間プレス鋼板に対しテーラードブランクを行い、最后で得られる溶接継ぎ目組織は全マルテンサイト組織である。
【0007】
中国特許CN201380027064.4は「溶接ノッチ付き板金部品及びその成形方法」が開示されるが、当該方法はアルミニウムケイ素メッキ層鋼板を原材料とし、アルミニウムケイ素メッキ層を全部除去した後に再溶接する。当該方法もまたアルミニウムが溶融池に溶け込み、溶接継ぎ目強度及び伸び率が規格外である問題を解決するが、メッキ層除去の深さ制御が難しく、メッキ層除去が不完全であれば、中国特許CN101426612Aに開示される方法に類似し、メッキ層除去の深さが深すぎると、鋼基材にダメージを与え、材料が薄肉化されると同然で、溶接後のスポット性質が必然的に下がる。なお、メッキ層除去幅の制御も問題になる。除去幅が溶接継ぎ目より狭いと、溶接時にメッキ層元素が溶融池に溶け込み、溶接継ぎ目の性質が下がるが、除去幅が溶接継ぎ目より広いと、溶接熱影響領域がメッキ層によって保護されず、スポットの耐食性に影響する。
【0008】
中国特許CN104023899Aは「テーラードブランク材およびその製造方法、及びテーラードブランク材を使用する熱間プレス部材」が開示されるが、当該特許は、母材より炭素、マンガン含有量の高い溶接ワイヤーを使ってアルミニウムもしくはアルミニウム合金メッキ層板に対し溶接を行う。溶接継ぎ目性質問題が解決されるが、その溶接継ぎ目は、熱間プレス時に、溶接継ぎ目組織が全部マルテンサイトに転移し、溶接ワイヤーにおける炭素、マンガン含有量が母材よりそれぞれ0.1~0.8wt.%、1.5~7.0wt.%高い。周知のように、熱間プレス鋼の炭素、マンガン等の元素の含有量はもともと高く、特許に開示される溶接ワイヤーは高炭素高マンガン溶接ワイヤーであるため、溶接ワイヤーの製造が難しい。
【0009】
中国特許CN111230301Aは「アルミニウムまたはアルミニウム合金メッキ層を有する鋼製薄肉溶接等強度部材の製造方法」が開示されるが、当該特許は、母材より炭素、マンガン含有量の低い溶接ワイヤーを使って1500MPaレベルアルミニウムもしくはアルミニウム合金メッキ層板を溶接し、当該方法を使って得られる溶接スポットは1500MPaレベルしかなく、当該方法でより高い強度レベルの熱間プレス部材を得ると、熱間プレス部材の溶接スポットが準静的過程で引張される時、溶接継ぎ目の強度が母材より低いため、溶接継ぎ目が破断し、車企業が使用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法及び当該テーラードブランク材から作製される熱間プレス部材の提供である。テーラードブランク過程で、メッキ層が溶融池に溶け込み、熱間プレス後のテーラードブランク材の溶接継ぎ目性質が悪化するという問題が解決される。当該テーラードブランク材で得られる熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張破断位置は母材にあり、スポット伸び率が4%を超え、溶接継ぎ目の強度が低強度母材の引張強度より大きく、歪み速度が40~800/sである時、溶接スポットの引張破断歪みが0.08を超え、自動車生産分野の需要が満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明の技術案は:
以下の工程を含む、鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法:
1)鋼板の溶接前準備
強度レベルが等しいまたは異なる二枚の溶接対象鋼板を取り、溶接前に、溶接対象鋼板に対し表面洗浄を行う。前記溶接対象鋼板は、基材およびその少なくとも一つ表面の上にあるアルミニウムまたはアルミニウム合金メッキ層を含み、前記メッキ層は、前記基材と接触する金属間化合物合金層およびその上の金属合金層を含み、前記溶接対象鋼板のメッキ層は、除去または薄肉化処理されない;
2)溶接開先の設置
溶接対象鋼板の開先を0.1~0.5mmに設置する;
3)溶接工程
レーザ肉盛溶接、溶極式活性ガスシールドアーク溶接(Metal Active Gas Arc Welding、MAG溶接)またはレーザMAG複合溶接で溶接を行う;
ただし、レーザ肉盛溶接では、溶接速度は40~120mm/sであり、溶接ワイヤー送給速度は2~8m/minである;
MAG溶接では、溶接速度は300~800mm/minである;
レーザMAG複合溶接では、溶接速度は40~150mm/sであり、溶接ワイヤー送給速度は2~10m/minである;
シールドガスはAr+15~80vol.%CO+1~10vol.%Nであり、シールドガス流量は10~25L/minである;
前記溶接用溶接ワイヤーの成分はC、Mn、Niオーストナイト安定化元素を含み、溶接ワイヤーの成分における三つ元素の含有量から溶接対象鋼板Aにおける相応の各元素の含有量を差し引いた差が△C、△Mn、△Niで表示され、前記溶接対象鋼板Aは強度レベルが等しい二枚の溶接対象鋼板における一つ、または強度レベルが異なる二枚の溶接対象鋼板のうち強度レベルが低い溶接対象鋼板である;
溶接対象鋼板Aの引張強度<900MPa、△C:-0.05~0.09wt.%、△Mn:-0.5~1.4wt.%、△Ni:0~4.0wt.%;または
900MPa≦溶接対象鋼板Aの引張強度<1300MPa、△C:-0.1~0.09wt.%、△Mn:-2~1.4wt.%、△Ni:0~4.0wt%;または
1300MPa≦溶接対象鋼板Aの引張強度<1700MPa、△C:-0.21~-0.05wt.%、△Mn:-1.4~1.4wt.%、△Ni:1.76~4.0wt%;または
溶接対象鋼板Aの引張強度≧1700MPa、△C:-0.26~-0.15wt.%、△Mn:-1.4~0.7wt.%、△Ni:2.26~4.0wt%;
前記テーラードブランク材の溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+1~15vol.%分散分布するフェライト+0~5vol.%残留オーストナイトであり、溶接継ぎ目における遊離アルミニウム含有量は0.1~4.0wt.%である。
【0012】
好ましくは、工程3)では、前記シールドガスのCO含有量は15~50vol.%である。
【0013】
好ましくは、工程3)では、前記シールドガスのN含有量は2~4vol.%である。
【0014】
好ましくは、工程3)では、前記MAG溶接またはレーザMAG複合溶接の溶接電流は110~130A、溶接電圧は18~25Vである。好ましくは、工程3)では、前記MAG溶接またはレーザMAG複合溶接の溶接電流は110~125A、溶接電圧は18~25Vである。
【0015】
好ましくは、工程3)では、レーザMAG複合溶接の溶接速度は60~150mm/sであり、溶接ワイヤー送給速度は4~10m/minである。
【0016】
好ましくは、工程3)では、前記レーザ肉盛溶接またはレーザMAG複合溶接工程のデフォーカス量は-10~10mmであり、レーザ出力範囲は3~8kWである。好ましくは、デフォーカス量は-8~8mmであり、レーザ出力範囲は4~8kWである。
【0017】
好ましくは、工程3)によるレーザ肉盛溶接またはレーザMAG複合溶接工程では、レーザ加工ヘッドから出力される最小スポット径は0.3~1.6mmである。本文では、当業者は実際の状況を考え、レーザ加工ヘッド出力の最小スポット径が0.3~1.6mmになるようにパラメータを選ぶことができる。例えば、集光レンズの焦点距離とコリメートレンズの焦点距離の比は0.75~4.0、レイリー長(Rayleigh Length)は1.249~44.955、レーザー伝送光ファイバーの直径は0.2~0.8mm、焦点角(Focusing Angle)は2.3~18.4Gradとすることができる。
【0018】
好ましくは、工程3)では、前記溶接はレーザ肉盛溶接であり、溶接速度は40~120mm/sであり、溶接ワイヤー送給速度は2~8m/minであり、デフォーカス量は-8~8mmであり、レーザ出力範囲は4~8kWである。
【0019】
好ましくは、工程3)では、前記溶接はMAG溶接であり、溶接速度は400~800mm/minであり、溶接電流は110~125Aであり、溶接電圧は18~25Vである。
【0020】
好ましくは、工程3)では、前記溶接はレーザMAG複合溶接であり、溶接速度は60~150mm/sであり、溶接ワイヤー送給速度は4~10m/minであり、デフォーカス量は-10~10mmであり、レーザ出力範囲は3~8kWであり、溶接電流は110~130Aであり、溶接電圧は18~25Vである。
【0021】
好ましくは、前記溶接用溶接ワイヤーの直径は1.0~1.6mmである。
好ましくは、前記基材の厚さは0.5~3mmである。
【0022】
好ましくは、前記メッキ層はアルミニウム合金メッキ層であり、前記アルミニウム合金メッキ層の成分は、重量パーセントで:Si:5~11%、Fe:0~4%、その残部はAlおよびその他の不可避的不純物である。一実施形態では、前記アルミニウム合金メッキ層の成分は、重量パーセントで:Si:8.5~10.5%、Fe:1.5~2.5%、その残部はAlおよびその他の不可避的不純物である。
【0023】
好ましくは、前記溶接対象鋼板Aの引張強度<900MPa、その成分は、重量パーセントで:C:0.06~0.1%、0<Si≦0.1%、Mn:0.5~1.0%、P<0.03%、S<0.01%、Al<0.1%、0<Cr≦0.1%、0<Ti≦0.05%、残部はFeおよびその他の不可避的不純物である。
【0024】
好ましくは、前記溶接対象鋼板Aの引張強度は900MPa以上1300MPa未満であり、その成分は、重量パーセントで:C:0.06~0.15%、Si:0.3~1.0%、Mn:0.5~2.5%、P≦0.10%、S≦0.05%、Al:0.02~0.30%、Cr:0.05~0.5%、Nb:0.02~0.20%、V≦0.15%、Ti:0.01~0.10%、Mo≦0.5%、Ni≦0.5%、B:0.001~0.01%、残部はFeおよびその他の不可避的不純物である。
【0025】
好ましくは、前記溶接対象鋼板Aの引張強度は1300MPa以上1700MPa未満であり、その成分は、重量パーセントで:C:0.2~0.3%、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P<0.015%、S<0.05%、Al<0.1%、Ti<0.2%、B:0.0005~0.08%、Cr:0.01~1%、Ni≦0.24%、残部はFeおよびその他の不可避的不純物である。
【0026】
好ましくは、前記溶接対象鋼板Aの引張強度≧1700MPa、その成分は、重量パーセントで:C:0.30~0.39%、Si:0.05~0.6%、Mn:0.5~2.5%、P≦0.015%、S≦0.01%、Al:0.01~0.07%、Cr≦1.0%、Nb≦0.08%、V≦0.1%、Ti:0.01~0.12%、Mo:0.01~0.5%、Ni<0.25%、B:0.0001~0.005%、N≦0.006%、残部はFeおよびその他の不可避的不純物である。
【0027】
好ましくは、前記溶接ワイヤーの成分は、重量パーセントで:C:0.05~0.15%、Mn:0.5~1.9%、Ni:0~4%、残部はFeおよびその他の不可避的不純物である。一実施形態では、溶接ワイヤーのNiの含有量は0.5~4%である。溶接ワイヤーのC、MnおよびNi含有量の選択は、前に記載される条件を満たす必要があるのが、理解されるべきである。
【0028】
本発明は、上記の製造方法で得られる鋼製薄肉テーラードブランク材を含む。
一実施形態では、本発明は、強度レベルが等しいまたは異なる二枚の溶接対象鋼板を溶接することで作られ、前記溶接対象鋼板は、基材およびその少なくとも一つ表面の上にあるアルミニウムまたはアルミニウム合金メッキ層を含み、前記メッキ層は、前記基材と接触する金属間化合物合金層およびその上の金属合金層を含み、前記鋼製薄肉テーラードブランク材の溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+1~15vol.%分散分布するフェライト+0~5vol.%残留オーストナイトであり、溶接継ぎ目における遊離アルミニウム含有量は0.1~4.0wt.%である、鋼製薄肉テーラードブランク材を提供する。
【0029】
好ましくは、前記基材の厚さは0.5~3mmである。
好ましくは、前記メッキ層はアルミニウム合金メッキ層であり、前記アルミニウム合金メッキ層の成分は、重量パーセントで:Si:5~11%、Fe:0~4%、その残部はAlおよびその他の不可避的不純物である。一実施形態では、前記アルミニウム合金メッキ層の成分は、重量パーセントで:Si:8.5~10.5%、Fe:1.5~2.5%、その残部はAlおよびその他の不可避的不純物である。
【0030】
好ましくは、前記二枚の溶接対象鋼板はそれぞれ以下の鋼板から独立的に選ばれる:
引張強度<900MPaの鋼板であり、その成分は、重量パーセントで:C:0.06~0.1%、0<Si≦0.1%、Mn:0.5~1.0%、P<0.03%、S<0.01%、Al<0.1%、0<Cr≦0.1%、0<Ti≦0.05%、残部はFeおよびその他の不可避的不純物である;
引張強度は900MPa以上1300MPa未満の鋼板であり、その成分は、重量パーセントで:C:0.06~0.15%、Si:0.3~1.0%、Mn:0.5~2.5%、P≦0.10%、S≦0.05%、Al:0.02~0.30%、Cr:0.05~0.5%、Nb:0.02~0.20%、V≦0.15%、Ti:0.01~0.10%、Mo≦0.5%、Ni≦0.5%、B:0.001~0.01%、残部はFeおよびその他の不可避的不純物である;
引張強度は1300MPa以上1700MPa未満の鋼板であり、その成分は、重量パーセントで:C:0.2~0.3%、Si:0.1~0.5%、Mn:0.5~2.5%、P<0.015%、S<0.05%、Al<0.1%、Ti<0.2%、B:0.0005~0.08%、Cr:0.01~1%、Ni≦0.24%、残部はFeおよびその他の不可避的不純物である;および
引張強度≧1700MPaの鋼板であり、その成分は、重量パーセントで:C:0.30~0.39%、Si:0.05~0.6%、Mn:0.5~2.5%、P≦0.015%、S≦0.01%、Al:0.01~0.07%、Cr≦1.0%、Nb≦0.08%、V≦0.1%、Ti:0.01~0.12%、Mo:0.01~0.5%、Ni<0.25%、B:0.0001~0.005%、N≦0.006%、残部はFeおよびその他の不可避的不純物である。
【0031】
好ましくは、前記鋼製薄肉テーラードブランク材の溶接継ぎ目組織には鉄アルミニウム金属間化合物及び塊状フェライトがない。
【0032】
本発明はさらに、上記の製造方法で得られる鋼製薄肉テーラードブランク材から作製される熱間プレス部材を提供し、当該熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+0.1~10vol.%分散分布するフェライトであり、熱間プレス部材の準静的過程での引張破断位置は母材にあり、スポット伸び率は4%以上であり、溶接スポットの歪み速度が40~800/sである時、溶接スポットの引張破断歪みが0.08を超える。
【0033】
好ましくは、本発明による熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織のフェライト含有量は0.5~5vol.%である。
【0034】
好ましくは、本発明による熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織のフェライトは針状である。
【0035】
好ましくは、本発明による熱間プレス部材の溶接スポットの歪み速度が40~800/sである時、溶接スポットの引張破断歪みは0.09を超える。
【0036】
好ましくは、本発明による熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織には鉄アルミニウム金属間化合物及び塊状フェライトがない。
【0037】
本発明はさらに、熱間プレス部材を提供し、当該熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+0.1~10vol.%分散分布するフェライトであり、熱間プレス部材の準静的過程での引張破断位置は母材にあり、スポット伸び率が4%以上であり、溶接スポットの歪み速度が40~800/sである時、溶接スポットの引張破断歪みが0.08を超える。
【0038】
好ましくは、前記熱間プレス部材は本発明の鋼製薄肉テーラードブランク材から作製され、または本発明による製造方法で得られる鋼製薄肉テーラードブランク材から作製される。
【0039】
好ましくは、本発明による熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織のフェライト含有量は0.5~5vol.%である。
【0040】
好ましくは、本発明による熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織のフェライトは針状である。
【0041】
好ましくは、本発明による熱間プレス部材の溶接スポットの歪み速度が40~800/sである時、溶接スポットの引張破断歪みは0.09を超える。
【0042】
好ましくは、本発明による熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織には鉄アルミニウム金属間化合物及び塊状フェライトがない。
【0043】
本発明はさらに、熱間プレス部材の作製方法を提供し、前記方法は、本発明の鋼製薄肉テーラードブランク材に対し熱間プレス焼入れを行う工程を含む。
【0044】
一実施形態では、溶接後、テーラードブランク板に対し、加熱温度920~950℃、加熱時間3~6分間、通水金型中に8~20秒間保圧することで、熱間プレス焼入れをする。
【0045】
好ましくは、前記方法は、本文のいずれかの実施形態による鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法で鋼製薄肉テーラードブランク材を製造する工程、及び製造される鋼製薄肉テーラードブランク材に対し熱間プレス焼入れを行う工程を含む。
【0046】
好ましくは、前記熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+0.1~10vol.%分散分布するフェライトであり、熱間プレス部材の準静的過程での引張破断位置は母材にあり、スポット伸び率が4%以上であり、溶接スポットは、歪み速度が40~800/sである時、溶接スポットの引張破断歪みが0.08を超える。
【0047】
好ましくは、前記熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織のフェライト含有量は0.5~5vol.%である。
【0048】
好ましくは、前記熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織のフェライトは針状である。
好ましくは、前記前記熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織には鉄アルミニウム金属間化合物及び塊状フェライトがない。
【0049】
好ましくは、前記熱間プレス部材の溶接スポットの歪み速度が40~800/sである時、溶接スポットの引張破断歪みは0.09を超える。
【0050】
本発明の溶接対象鋼板に選ばれる基材表面の少なくとも一つ面の上にメッキ層があり、溶接前、溶接過程の間、溶接対象鋼板の溶接対象領域のメッキ層には除去または薄肉化処理を行わない。アルミニウム含有メッキ層の存在により、メッキ層が溶融池に溶け込み、脆くて硬い金属間化合物(FeAl、FeAl、FeAl)及び過剰量のフェライトが生成するため、熱間プレス後の溶接スポットの強度や延性が下がり、使用できない。熱間プレス後のテーラードブランク材の溶接継ぎ目性質を上げるため、溶接過程の間、溶接継ぎ目の遊離アルミニウムの量を制御することで、溶接継ぎ目に鉄アルミニウム金属間化合物を形成させないと同時に、フェライトを適量に生成させる。
【0051】
溶接過程では、アルゴン、二酸化炭素および窒素を混合した三元系シールドガスが使用される。Nの体積含有量は1~10%である。Nは窒素を溶接継ぎ目に移動させることができる。一方で、溶融池の中に、AlとNが反応する。形成されるAlNは、溶融池の激しい撹拌により溶融池に分散分布し、熱間プレス後に二次相粒子として溶接継ぎ目の強度を向上させる。一方で、溶融池における遊離AlはNと結合しAlNが生成され、これで溶融池の遊離Al濃度が制御され、過剰なフェライトの析出が防がれ、同時に室温時に溶接継ぎ目にフェライトがないことが防がれる。しかし、シールドガスにはNの比例が高すぎると、溶接スポットの延性が下がり、同時に窒素ガス穴が発生する。COの体積含有量は15~80%であり、COは溶接領域のシールドガスの活性を高め、板材の溶込速度および液体金属の流動性を高め、溶融池金属の成分均一性を向上させ、アルミニウム元素の偏在を回避し、溶接継ぎ目の成分均一性を確保し、成分不均一によるストライプ組織を回避し、特にアルミニウムの凝集による大きなフェライトの形成を回避し、フェライトが溶接継ぎ目に分散分布するようにさせ、溶接継ぎ目の性質をより安定化させる。
【0052】
なお、溶接過程で使用される溶接ワイヤーには、オーステナイト相領域を拡大する炭素、マンガン、ニッケルなどの元素が含有されている。溶接継ぎ目と溶接対象鋼板における炭素、マンガン、ニッケルの元素含有量の差を制御する。一方では、これら3つの元素はオーステナイト相領域を拡大する元素であるため、高温フェライト相領域が圧縮され、熱間プレス金型の型締め前に溶接継ぎ目に過剰なフェライトの析出が防がれ、溶接継ぎ目の強度が向上する。他方では、溶接継ぎ目のマルテンサイト変態開始温度を低下させ、マルテンサイト転移率を確保できる。
【0053】
炭素は溶接ワイヤーの重要な構成元素であり、ワイヤーの加工性と溶接継ぎ目の炭素当量に影響する。炭素含有量が少なすぎる時、溶接継ぎ目のオーステナイト安定性が低下し、溶接継ぎ目の強度を確保することが困難となり、炭素含有量が多すぎる時、溶接ワイヤーの製造性が低下し、溶接継ぎ目の可塑性および靱性が低下する。好ましくは、溶接ワイヤーのCの含有量は0.05~0.15%であってもいい。
【0054】
マンガンは溶接ワイヤーの重要な構成元素であり、溶接継ぎ目のオーステナイト安定性を向上させ、Cカーブを右にシフトさせ、それによってマルテンサイトの臨界冷却速度を低下させる。マンガン含有量が高すぎると、溶接ワイヤーの製造性に影響し、溶接継ぎ目の可塑性および靭性を低下させる。Mn含有量が低すぎると、溶接継ぎ目の焼入れ性が低下し、強化効果が弱まる。好ましくは、溶接ワイヤーのMnの含有量は0.5~1.9%であってもいい。
【0055】
溶接ワイヤーのもう1つ重要な構成元素であるニッケルは、溶接継ぎ目のオーステナイトの安定性を高め、臨界Ms点温度を低下させ、溶接継ぎ目の焼入れ性、強度及び靭性を向上させることができる。ニッケル含有量が高すぎると、溶接ワイヤーの生産コストが増加し、溶接継ぎ目の熱間プレス後の残留オーステナイトが増加し、溶接継ぎ目の強度に影響を及ぼす。溶接継ぎ目の強度を確保するため、溶接ワイヤーのニッケル含有量は溶接対象板の強度レベルに応じて調整できる。好ましくは、溶接ワイヤーのNiの含有量は0~4%、例えば0.5~4%であってもいい。
【0056】
本発明の溶接用溶接ワイヤーの成分は、低強度鋼である溶接対象鋼板の成分に基づいて変更しており、溶接対象鋼板の異なる強度レベルに対して、溶接ワイヤーの成分を適宜変更することができ、各溶接継ぎ目の成分は必ず相応に変化し、溶接後または熱間プレス後の溶接継ぎ目の組織が同じであっても、溶接継ぎ目が示す力学的特性は異なり、異なる強度のテーラードブランク板に対する自動車産業の性能需要を満たせる。
【0057】
本発明は、シールドガス及び溶接ワイヤーの成分の制御を基礎として、さらに溶接速度および溶接ワイヤー送給速度を制御し、溶接継ぎ目の溶融金属(溶接ワイヤーの溶融後に形成される溶接継ぎ目金属)の割合を変化させるので、溶接対象鋼板にアルミニウムまたはアルミニウム合金メッキ層が含有されているにもかかわらず、テーラードブランク材の溶接継ぎ目に溶け込むアルミニウム元素の濃度を制御できる。テーラードブランク材の溶接継ぎ目の遊離アルミニウム濃度は、シールドガス、溶接ワイヤーの成分及び溶接工程の共同作用によって、0.1~4.0wt.%に制御される。
【0058】
周知のように、Alはフェライト形成の促進元素であり、溶接継ぎ目における遊離Alを減少させれば、フェライトの形成能力は弱まるため、溶接継ぎ目の遊離Al含有量を0.1~4.0wt.%に制御することで、溶接継ぎ目に過剰なフェライトの発生を回避し、溶接継ぎ目の強度を確保することができる。一方、溶接継ぎ目に鉄アルミニウム金属間化合物の発生を回避し、適量のフェライトを溶接継ぎ目に保持させ、室温下のテーラードブランク材の溶接継ぎ目組織をマルテンサイト+1~15vol.%分散分布するフェライト+0~5vol.%残留オーストナイトとすることができる。
【0059】
本発明は、テーラードブランク材の生産過程におけるテーラードブランク材の溶接継ぎ目組織構成の調整に着目し、主としてフェライトの量および形態を調整し、溶接過程では鉄アルミニウム金属間化合物及び塊状フェライトの生成を回避することにより、最終的に得られるテーラードブランク材の溶接継ぎ目組織がマルテンサイト+1~15vol.%分散分布するフェライト+0~5vol.%残留オーストナイトであり、テーラードブランク材は、熱間プレス成形工程によって熱間プレス部材になり、熱間プレス部材の溶接継ぎ目には、適量に分散分布するフェライトが下方に保持され、最終的に得られる熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織は、マルテンサイト+0.1~10vol.%分散分布するフェライトである。
【0060】
本発明の熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+0.1~10vol.%分散分布するフェライトであり、溶接スポットの高速引張性が高まり、歪み速度が40~800/sである時、溶接スポットの断裂歪みが0.08を越える。一方、従来の熱間プレス部材溶接継ぎ目組織は単一のマルテンサイトであり、歪み速度が40/sである時、溶接スポットの断裂歪みは0.07前後であり、歪み速度が800/sである時、溶接スポットの断裂歪みは0.058前後であるため、本発明の熱間プレス部材の高速引張破断歪みが顕著に高めていることがわかる。これは、マルテンサイトの力学的性質は高強度高硬度で、変形性が悪く、フェライトの力学的性質は可塑性と靭性が良く、変形性が強いからである。溶接継ぎ目組織が単一マルテンサイトである溶接スポットに比べ、溶接継ぎ目組織がマルテンサイト+分散分布する針状フェライトである溶接スポットは、外力を受けた時にマルテンサイトの調和変形のためのより多くの機会を提供できる。なお、マルテンサイトの下部構造は主に転位であり、フェライトの存在は、溶接継ぎ目組織が単一マルテンサイトであるものと比較して、溶接継ぎ目組織のマルテンサイトの内部転位密度を大幅に減少させる。転位が蓄積すると、微小亀裂が形成されるので、溶接継ぎ目組織が単一マルテンサイトである溶接スポットに比べ、溶接継ぎ目組織がマルテンサイト+分散分布する針状フェライトである溶接スポットは、微小亀裂の形成リスクが大幅に下がる。たとえ微小亀裂が形成されたとしても、分散分布するフェライトは微小亀裂のさらなる成長と拡大を妨げる効果があるため、溶接継ぎ目組織が単一マルテンサイトである溶接スポットに比べ、溶接継ぎ目組織がマルテンサイト+分散分布する針状フェライトである溶接スポットは、特に高速引張過程において、より優れた変形性を示す。
【0061】
このことは、本発明の技術案により得られたテーラードブランク材から熱間プレスにより作製された熱間プレス部材は、衝突時、溶接継ぎ目の変形性が強く、より多くのエネルギーを吸収でき、部材の衝突安全性がより高いことを示している。しかし、熱間プレス部材の溶接継ぎ目におけるフェライト含有量は高すぎてはならず、そうでなければ溶接継ぎ目の強度と靭性が低下する。
【0062】
熱成形鋼板に対しテーラードブランクを行い、溶接ワイヤーの成分、溶接工程とシールドガスの相互協力と相互支援で、熱間プレス後の溶接継ぎ目の強度を高め、テーラードブランク材から熱間プレス成形で得られる熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張破断位置が母材にあり、溶接継ぎ目の強度がスポット中の低強度鋼である母材の強度より大きく、良好な高速引張性があるため、自動車生産分野の需要を満たす。
【0063】
本発明による有益な効果は以下の通りである:
本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス鋼板でテーラードブランクを行い、溶接ワイヤーの成分を調整し、溶接速度および溶接ワイヤー送給速度を制御し、シールドガスは三元系シールドガスであるため、テーラードブランク材の溶接継ぎ目の遊離アルミニウムの量を低減し、溶接継ぎ目の遊離アルミニウム含有量を0.1~4.0wt.%の範囲に制御することで、一方では、溶接継ぎ目に過剰なフェライトの発生を回避し、溶接継ぎ目の強度と靭性を確保し、他方では、溶接継ぎ目に鉄アルミニウム金属間化合物の生成を回避することができ、溶接部に適量のフェライトを保持させることができ、シールドガスのCOは、アルミニウム元素の偏在を回避して溶接継ぎ目の成分を均一にし、アルミニウムの凝集による塊状のフェライトの生成を回避し、溶接継ぎ目の性質をより安定化させることができる。得られたテーラードブランク材から熱間プレス成形により作製された熱間プレス部材は、溶接継ぎ目にAlNが存在するため、溶接継ぎ目強度はさらに向上し、溶接スポットの準静的過程での引張破断位置は母材にあることから、その溶接継ぎ目強度は母材強度を超え、自動車生産分野の需要を満たしていることがわかる。
【0064】
本発明は、溶接ワイヤーの成分、溶接工程、シールドガスの成分及び含有量の相互協力と相互支援で、テーラードブランク材の溶接継ぎ目組織がマルテンサイト+1~15vol.%分散分布するフェライト+0~5vol.%残留オーストナイトであることを確保し、テーラードブランク材から熱間プレス成形で得られる熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織にマルテンサイト+0.1~10vol.%分散分布するフェライトを形成させ、溶接継ぎ目組織が全マルテンサイトである熱間プレス部材に比べ、本発明の熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が顕著に高まり、歪み速度が40~800/sである時、溶接スポット断裂歪みは0.08を超える。一方、従来の熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織は単一マルテンサイトであり、歪み速度が40/sである時、溶接スポットの断裂歪みは0.07前後であり、歪み速度が800/sである時、溶接スポットの断裂歪みが0.058前後である。すなわち、本発明の技術案で得られるテーラードブランク材で作製された熱成形部材は、準静的過程での力学的性質が保障される上、より優れた高速変形性を有し、衝突時にはより多くのエネルギーを吸収でき、衝突安全性はより高い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1図1は本発明の実施例1のレーザ肉盛テーラードブランクの模式図である。
図2図2は本発明の実施例1で得られる熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性曲線図である。
図3図3は本発明の実施例1で得られる熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張断裂位置図である。
図4図4は本発明の実施例1で得られる熱間プレス部材の溶接スポットの金相図である。
図5図5は本発明の実施例1で得られる熱間プレス部材の溶接スポットの硬度分布である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下では、実施例および図面を参考しながら、さらに本発明に対し説明を行う。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想に基づいて、誰でも他の様々な形態の製品を製作することができるが、その形状や構造の変更を問わず、本発明と同一又は類似の特徴を有する技術案であれば、すべて本発明の保護範囲に属する。
【0067】
図1によれば、本発明によるレーザ肉盛テーラードブランクは、シールドガス50の保護下で、レーザビーム40で溶接ワイヤー30、溶接対象鋼板10および溶接対象鋼板20を溶融させ、テーラードブランクを行う;溶接対象鋼板10は、鋼基材11および基材上のメッキ層12、12’を含み、溶接対象鋼板20は、鋼基材21および基材上のメッキ層22、22’を含み、前記メッキ層はアルミニウムもしくはアルミニウム合金メッキ層である。
【0068】
表1には溶接対象鋼板10の成分が示され、表2には溶接対象鋼板20の成分が示され、表3には本発明による溶接ワイヤーの成分が示され、表4には熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が示され、表5には熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が示される。
【0069】
本発明に記載の鋼製薄肉テーラードブランク材の製造方法は、以下の工程を含む:
1)鋼板の溶接前準備
強度レベルが等しいまたは異なる二枚の溶接対象鋼板を取り、溶接前に溶接対象鋼板に対し表面洗浄を行う;
2)溶接開先の設置
溶接対象鋼板の開先を0.1~0.5mmに設置する;
3)溶接工程
レーザ肉盛溶接、MAG溶接またはレーザMAG複合溶接で二枚の溶接対象鋼板に対し溶接を行う。
【0070】
実施例1~21および比較例1~2における溶接対象鋼板のアルミニウム合金メッキ層のSiとFe成分の重量パーセントは表1及び表2に示され、残部はAlおよびその他の不可避的不純物である;
実施例1~21および比較例1~2における強度レベル500MPa、1000MPa、1500MPaおよび1800MPaは、溶接対象鋼板の熱間プレス後の引張強度レベルである。これら4つの強度レベルに対応する引張強度(ISO 6892規格に基づいて計測されたもの)範囲はそれぞれ:500MPaレベルは400~750MPaであり、1000MPaレベルは1000~1300MPaであり、1500MPaレベルは1300~1700MPaであり、1800MPaレベルは1700~2150MPaである。
【0071】
実施例1
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0072】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1800MPa、厚さt=1.8mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1800MPa、厚さt=1.4mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.3mmとし、溶接出力4kW、溶接速度80mm/s、デフォーカス量10mm、溶接ワイヤー送給速度4m/min、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス48vol.%Ar+50vol.%CO+2vol.%N、ガス流量15L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0073】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0074】
溶接後、テーラードブランク板に対し、加熱温度945℃、加熱時間4分間、通水金型中に10秒間保圧することで、熱間プレス焼入れをした。
【0075】
上記の熱間サイクルで、テーラードブランク板がまずオーストナイト化され、この加熱の間にメッキ層と鋼における原子が相互に拡散し、元のメッキ層が全部金属間化合物層に変化し、かつ当該層の厚さは元のメッキ層の厚さよりも厚くなった。なお、当該層は高融点、高硬度であり、基板の加熱段階、保圧段階での酸化および脱炭素が防がれた。金型中で保圧する間、テーラードブランク板にマルテンサイト転移が発生した。
【0076】
溶接スポットの準静的過程での引張曲線は図2に示される。図2から、熱間プレス部材の伸び率がいずれも4%を超え、スポット強度が車産業の需要を満たせるのがわかる。
【0077】
スポット断裂位置は図3に示される。図3から、熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程引張時における断裂位置が母材上にあるのがわかる。
【0078】
スポット金相写真は図4に示される。溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+4.9vol.%分散分布する針状フェライトであり、鉄アルミニウム金属間化合物や塊状フェライトが見られない。
【0079】
スポット硬度は図5に示される。図5から、熱間プレス部材の溶接継ぎ目と母材の硬度がよく一致するのがわかる。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0080】
実施例2
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0081】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1800MPa、厚さt=1.4mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1800MPa、厚さt=1.2mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.1mmとし、溶接出力3kW、溶接速度40mm/s、デフォーカス量0mm、溶接ワイヤー送給速度2m/min、溶接ワイヤー直径1.0mm、シールドガス81vol.%Ar+15vol.%CO+4vol.%N、ガス流量10L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0082】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0083】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0084】
実施例3
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0085】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1500MPa、厚さt=1.8mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1500MPa、厚さt=1.6mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.5mmとし、溶接出力7kW、溶接速度50mm/s、デフォーカス量-10mm、溶接ワイヤー送給速度8m/min、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス10vol.%Ar+80vol.%CO+10vol.%N、ガス流量25L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0086】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0087】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0088】
実施例4
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0089】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1500MPa、厚さt=1.2mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1500MPa、厚さt=1.2mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.4mmとし、溶接出力4.5kW、溶接速度60mm/s、デフォーカス量5mm、溶接ワイヤー送給速度5m/min、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス19vol.%Ar+80vol.%CO+1vol.%N、ガス流量20L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0090】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0091】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0092】
実施例5
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0093】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1000MPa、厚さt=1.8mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1000MPa、厚さt=1.5mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.2mmとし、溶接出力5kW、溶接速度70mm/s、デフォーカス量7mm、溶接ワイヤー送給速度4m/min、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス49vol.%Ar+50vol.%CO+1vol.%N、ガス流量17L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0094】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0095】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0096】
実施例6
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0097】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1000MPa、厚さt=2.0mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1000MPa、厚さt=1.5mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.1mmとし、溶接出力5kW、溶接速度120mm/s、デフォーカス量-5mm、溶接ワイヤー送給速度7m/min、溶接ワイヤー直径1.0mm、シールドガス40vol.%Ar+50vol.%CO+10vol.%N、ガス流量22L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0098】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0099】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0100】
実施例7
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0101】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル500MPa、厚さt=1.6mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル500MPa、厚さt=1.4mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.3mmとし、溶接出力8kW、溶接速度100mm/s、デフォーカス量-8mm、溶接ワイヤー送給速度6m/min、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス46vol.%Ar+50vol.%CO+4vol.%N、ガス流量19L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0102】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0103】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0104】
実施例8
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0105】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル500MPa、厚さt=1.4mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル500MPa、厚さt=1.2mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.3mmとし、溶接出力5kW、溶接速度90mm/s、デフォーカス量-6mm、溶接ワイヤー送給速度5m/min、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス83vol.%Ar+15vol.%CO+2vol.%N、ガス流量21L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0106】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0107】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0108】
実施例9
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0109】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1800MPa、厚さt=1.5mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1500MPa、厚さt=1.8mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.4mmとし、溶接出力8kW、溶接速度100mm/s、デフォーカス量3mm、溶接ワイヤー送給速度3m/min、溶接ワイヤー直径1.6mm、シールドガス81vol.%Ar+18vol.%CO+1vol.%N、ガス流量23L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0110】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0111】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0112】
実施例10
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0113】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1800MPa、厚さt=1.2mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1500MPa、厚さt=1.75mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.3mmとし、溶接出力8kW、溶接速度88mm/s、デフォーカス量-3mm、溶接ワイヤー送給速度5m/min、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス74vol.%Ar+16vol.%CO+10vol.%N、ガス流量18L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0114】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0115】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0116】
実施例11
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0117】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1800MPa、厚さt=1.2mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1000MPa、厚さt=1.4mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.4mmとし、溶接出力5.5kW、溶接速度80mm/s、デフォーカス量-6mm、溶接ワイヤー送給速度5.5m/min、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス58vol.%Ar+40vol.%CO+2vol.%N、ガス流量17L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0118】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0119】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0120】
実施例12
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0121】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1800MPa、厚さt=1.2mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1000MPa、厚さt=1.6mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.35mmとし、溶接出力7.5kW、溶接速度110mm/s、デフォーカス量-7.5mm、溶接ワイヤー送給速度7.5m/min、溶接ワイヤー直径1.4mm、シールドガス51vol.%Ar+45vol.%CO+4vol.%N、ガス流量19L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0122】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0123】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0124】
実施例13
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0125】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1800MPa、厚さt=1.5mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル500MPa、厚さt=1.7mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.25mmとし、溶接出力6.5kW、溶接速度85mm/s、デフォーカス量-5.5mm、溶接ワイヤー送給速度5.5m/min、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス65vol.%Ar+30vol.%CO+5vol.%N、ガス流量12L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0126】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0127】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0128】
実施例14
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0129】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1800MPa、厚さt=1.4mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル500MPa、厚さt=1.8mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.3mmとし、溶接出力7.5kW、溶接速度105mm/s、デフォーカス量-4.5mm、溶接ワイヤー送給速度8m/min、溶接ワイヤー直径1.0mm、シールドガス59vol.%Ar+35vol.%CO+6vol.%N、ガス流量14L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0130】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0131】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0132】
実施例15
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0133】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1500MPa、厚さt=1.5mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1000MPa、厚さt=1.5mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.35mmとし、溶接出力4.5kW、溶接速度65mm/s、デフォーカス量-7mm、溶接ワイヤー送給速度4.5m/min、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス67vol.%Ar+25vol.%CO+8vol.%N、ガス流量11L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0134】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0135】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0136】
実施例16
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0137】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1500MPa、厚さt=1.5mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1000MPa、厚さt=1.8mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.2mmとし、溶接出力5.5kW、溶接速度70mm/s、デフォーカス量-6.5mm、溶接ワイヤー送給速度5m/min、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス73vol.%Ar+20vol.%CO+7vol.%N、ガス流量16L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0138】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0139】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0140】
実施例17
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0141】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1500MPa、厚さt=1.2mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル500MPa、厚さt=1.4mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.4mmとし、溶接電流110A、溶接電圧22V、溶接速度500mm/s、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス76vol.%Ar+20vol.%CO+4vol.%N、ガス流量13L/minで、活性ガス保護マグアークテーラードブランクを行った。
【0142】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0143】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0144】
実施例18
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0145】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1500MPa、厚さt=1.2mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル500MPa、厚さt=1.7mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.3mmとし、溶接出力4kW、溶接速度60mm/s、デフォーカス量-6.5mm、溶接ワイヤー送給速度4m/min、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス56vol.%Ar+35vol.%CO+9vol.%N、ガス流量20L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0146】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0147】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0148】
実施例19
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0149】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1000MPa、厚さt=1.2mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル500MPa、厚さt=1.3mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.3mmとし、溶接出力3kW、溶接速度80mm/s、デフォーカス量2mm、MAG熱源の電流120A、電圧20V、溶接ワイヤー送給速度6m/min、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス78vol.%Ar+20vol.%CO+2vol.%N、ガス流量24L/minで、レーザMAG複合テーラードブランクを行った。
【0150】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0151】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0152】
実施例20
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0153】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1000MPa、厚さt=1.2mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル500MPa、厚さt=1.5mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.1mmとし、溶接出力5kW、溶接速度85mm/s、デフォーカス量-8.5mm、溶接ワイヤー送給速度6m/min、溶接ワイヤー直径1.0mm、シールドガス40vol.%Ar+50vol.%CO+10vol.%N、ガス流量25L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0154】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0155】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0156】
実施例21
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0157】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1500MPa、厚さt=1.2mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1500MPa、厚さt=1.5mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、本発明による溶接ワイヤー(溶接ワイヤー成分は表3に示される)を使い、テーラードブランク板の開先は0.3mmとし、溶接出力5kW、溶接速度83mm/s、デフォーカス量-6mm、溶接ワイヤー送給速度7m/min、溶接ワイヤー直径1.2mm、シールドガス40vol.%Ar+50vol.%CO+10vol.%N、ガス流量19L/minで、レーザ肉盛テーラードブランクを行った。
【0158】
溶接後、溶接継ぎ目に対し、断面金相観察を行ったところ、溶接継ぎ目は全体的に形状が良く、明らかな飛び散りがなかった。
【0159】
溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張性が表4に示される。熱間プレス部材の溶接スポットの高速引張性が表5に示される。
【0160】
比較例1
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0161】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1500MPa、厚さt=1.5mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1500MPa、厚さt=1.5mm、鋼板成分は表2に示される)に対し、半田溶接でテーラードブランクを行った。溶接後、実施例1と等しい熱間プレス工程で、熱間プレスを行った。半田溶接で得られる熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織は全マルテンサイトである。作製されたテーラードブランク熱間プレス材の高速引張試験の結果は表5に示され、試験は規格ISO/DIS 26203-2に参照して行う。
【0162】
比較例2
溶接対象の熱間成形鋼板に対し表面洗浄を行い、表面にある油汚れ、水垢等の汚れを取り除き、表面を清潔にした。
【0163】
アルミニウム合金メッキ層を有する熱間プレス溶接対象鋼板10(強度レベル1500MPa、厚さt=1.5mm、鋼板成分は表1に示される)、溶接対象鋼板20(強度レベル1500MPa、厚さt=1.5mm、鋼板成分は表2に示される)、肉盛溶接で溶接を行た(溶接ワイヤー成分は表3に示される)。得られた熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+塊状フェライトである。溶接スポットのの高速引張試験の結果は表5に示され、試験は規格ISO/DIS 26203-2に参照して行う。
【0164】
表4および表5からわかるように、本発明で得られる熱間プレス部材の溶接スポットの準静的過程での引張破断位置は母材にあるため、その溶接継ぎ目の強度が低強度母材の強度より大きく、自動車生産分野の需要を満たす。溶接スポットの高速引張性が明らかに高まり、歪み速度が40~800/s時であり、溶接スポットの断裂歪みが0.09を越える。
【0165】
比較例1では従来の半田溶接で溶接を行い、得られる溶接スポットの溶接継ぎ目組織は単一マルテンサイトであり、歪み速度が40/sである時の溶接スポットの断裂歪みは0.07前後であり、歪み速度が800/sである時の溶接スポットの断裂歪みは0.058前後である。
【0166】
比較例2では肉盛溶接で溶接を行ったものの、溶接ワイヤーの成分が本発明の条件を満たさないため、溶接スポットの断裂歪み最大値は0.029である。すなわち、本発明の技術案で得られるテーラードブランク材で作製された熱成形部材は、準静的過程での力学的性質が保障される上、より優れた高速変形性を有し、衝突時にはより多くのエネルギーを吸収でき、衝突安全性はより高い。
【0167】
【表1】
【0168】
【表2】
【0169】
【表3】
【0170】
【表4】
【0171】
【表5】
【0172】
実施例1~21で得られるテーラードブランク材の溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+1~15vol.%分散分布する針状フェライト+0~5vol.%残留オーストナイトであり、溶接継ぎ目の遊離アルミニウム濃度は0.1~4.0wt.%であり、テーラードブランク材は熱間プレス成形工程を経て熱間プレス部材になり、熱間プレス部材の溶接継ぎ目には適量に分散分布するフェライトが下方に保留され、最終的に得られる熱間プレス部材の溶接継ぎ目組織はマルテンサイト+0.1~10vol.%分散分布する針状フェライトであり、鉄アルミニウム金属間化合物や塊状フェライトがない。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】