(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】マイクロバイオーム復元力指数を決定及び使用する方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/00 20160101AFI20240918BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240918BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20240918BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240918BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20240918BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240918BHJP
G01N 33/02 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
A23L33/00
A23L33/135
A61P1/10
A61P1/00
A61P7/00
A61P3/02
A61K45/00
G01N33/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513021
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022074427
(87)【国際公開番号】W WO2023031385
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】マイナルディ, ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア‐ガルセラ, マーク
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ, アンドレア
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD47
4B018MD86
4B018MD87
4B018ME11
4B018ME14
4B018MF14
4C084AA17
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA51
4C084ZA66
4C084ZA72
4C084ZA73
4C084ZC21
(57)【要約】
方法は、個体の微生物叢復元力の程度を指標で数量化して、それを必要とする者に対して個別化された栄養溶液を提案し、それによって、特に負荷又はストレッサー下で、微生物叢復元力を改善することができる。好ましくは、復元力指数は、高脂肪食による負荷の前、最中、及び後の微生物叢の分析に基づき、負荷の最中及び後のマイクロバイオームの組成物、代謝産物、及び他の生理学的パラメータの分析に基づいて、個体の腸内マイクロバイオームの復元力状態を数量化する方法を提供する。マイクロバイオーム復元力指数は、復元力がある又は復元力がないとして消費者をクラスタリングするために使用することができ、その結果、復元力のない個体に食事介入を提案及び/又は投与することができる。本開示はまた、マイクロバイオーム抵抗指数、マイクロバイオーム回復指数、及び/又はマイクロバイオーム復元力指数を提供し、また、低復元力を有する患者をスクリーニングする方法を提供し、更に、低復元力指数を有する個体をスクリーニングし、その個体に栄養介入などの推奨を提供する方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるマイクロバイオームの復元力を増強する方法であって、
前記対象のマイクロバイオーム復元力指数を決定することと、
少なくとも部分的に前記マイクロバイオーム復元力指数に基づいて、前記対象について提案される栄養介入を特定することと、を含む、方法。
【請求項2】
(i)微生物叢の撹乱の予防又は減弱;(ii)前記微生物叢の撹乱後の回復;及び(iii)排便回数、腸内通過、便秘、腸管透過性、エンドトキシン血症、又は腸管バリア機能のうちの1つ以上の正常化、からなる群から選択される少なくとも1つの結果を達成する方法であって、
対象のマイクロバイオーム復元力指数を決定することと、
少なくとも部分的に前記マイクロバイオーム復元力指数に基づいて、前記対象について提案される栄養介入を特定することと、を含む、方法。
【請求項3】
前記対象の前記マイクロバイオーム復元力指数を決定することが、マイクロバイオーム負荷の前、最中、及び後に前記マイクロバイオームの1つ以上のパラメータを数量化することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロバイオームの前記1つ以上のパラメータが、前記マイクロバイオームの組成物、代謝産物、又は他の生理学的パラメータのうちの1つ以上を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロバイオーム負荷が、高脂肪食である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記提案された栄養介入が、栄養製品、好ましくは少なくとも1種類の繊維及び少なくとも1種類のプロバイオティクスを含む栄養製品を特定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が、ヒト乳児、ヒト小児、ヒト青年、ヒト成人、及びヒト高齢者、並びにコンパニオンアニマルなどの動物からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも部分的にマイクロビオーム復元力指数に基づいて、前記対象を復元力のある個体又は復元力のない個体として分類することを含み、好ましくは、前記復元力のない個体への前記栄養介入は、前記復元力のない個体における前記マイクロビオームの復元力を増強するように処方された第1の栄養製品を特定し、任意選択で、前記復元力のある個体への前記栄養介入は、前記第1の栄養製品とは異なる少なくとも1つの成分又はその量を含む第2の栄養製品を特定する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロバイオーム復元力指数が、以下の式
【数1】
によって計算される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロバイオーム復元力指数が、以下の式
【数2】
を使用する二変量モデルからfPCA1及びfPCA2によって計算される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
低微生物叢復元力を有する対象をスクリーニングする方法であって、前記対象についてのマイクロバイオーム復元力指数を決定することを含む、方法。
【請求項12】
前記対象の前記マイクロバイオーム復元力指数を決定することが、マイクロバイオーム負荷の前、最中、及び後に前記マイクロバイオームの1つ以上のパラメータを数量化することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マイクロバイオームの前記1つ以上のパラメータが、前記マイクロバイオームの組成物、代謝産物、又は他の生理学的パラメータのうちの1つ以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マイクロバイオーム負荷が、高脂肪食である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、ヒト乳児、ヒト小児、ヒト青年、ヒト成人、及びヒト高齢者、並びにコンパニオンアニマルなどの動物からなる群から選択される、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも部分的に前記マイクロバイオーム復元力指数に基づいて、前記対象を復元力のある個体又は復元力のない個体として分類することを含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロバイオーム復元力指数が、以下の式
【数3】
によって計算される、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記マイクロバイオーム復元力指数が、以下の式
【数4】
を使用する二変量モデルからfPCA1及びfPCA2によって計算される、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象についての前記マイクロバイオーム復元力指数を、標的値又は標的範囲と比較することを更に含む、請求項11~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
対象についてのマイクロバイオーム復元力指数を決定するように構成されたシステムであって、
選択されたマイクロバイオーム種の存在量を計算し、前記選択されたマイクロバイオーム種の前記存在量を使用して前記対象の前記マイクロバイオーム復元力指数を決定し、前記マイクロバイオーム復元力指数を使用して前記対象の栄養推奨を決定するように構成された計算モジュールと、
前記対象についての前記栄養推奨を表示し、好ましくは、前記対象についての前記マイクロバイオーム復元力指数も表示するように構成されたユーザインターフェースディスプレイと、
任意選択で、DNA抽出装置及び/又はDNAシークエンサーと、を備える、システム。
【請求項21】
入力として糞便試料を受け取るように構成され、任意選択で、前記入力が、前記対象の年齢、前記対象の性別、前記対象の体重、前記対象の食嗜好、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の他のパラメータを更に含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記計算モジュールが、前記対象の前記マイクロバイオーム復元力指数を標的値に対して高い又は低いとして特徴付けるように更に構成され、好ましくは、前記ユーザインターフェースディスプレイが、前記対象の前記マイクロバイオーム復元力指数の前記特徴付けを高い又は低いとして表示するように更に構成されている、請求項20又は請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
請求項20~22のいずれか一項に記載のシステムを含み、高脂肪負荷のための1つ以上のレシピ及び/又は高脂肪負荷のための1つ以上の食品を更に含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]ヒト腸内マイクロバイオームは、何兆個もの細菌による生態系である。生涯を通して、腸内マイクロバイオームは、不健康な食事、抗生物質、他の薬剤、感染症、激しい運動、又はアルコールのうちの1つ以上の負荷を受ける。マイクロバイオームがこれらの負荷に抵抗する能力、又は撹乱(perturbation)から迅速かつ完全に回復する能力が「マイクロバイオームの回復力(microbiomeresilience)」であり、健康の維持に寄与する可能性が高い。マイクロバイオームの回復力の低下は、健康に悪影響を及ぼす細菌叢バランスの破綻(dysbiosis)をもたらし得る。
【発明の概要】
【0002】
[0002]本発明者らの知る限りでは、本出願の時点より前の刊行物は、個々の対象の微生物叢弾力性を評価する尺度を記載していない。
【0003】
[0003]本明細書に開示される方法は、個体の微生物叢復元力(microbiota resilience)の程度を指標で数量化することができ、それにより、それを必要とする者に対して個別化された栄養溶液を提案し、それによって、特に負荷又はストレッサー下で、それらの微生物叢復元力を改善することができる。好ましい実施形態では、復元力指数は、高脂肪食による負荷の前、最中、及び後の微生物叢の分析に基づく。この実施形態及び他の実施形態は、負荷の最中及び後に、マイクロバイオームの組成物、代謝産物及び他の生理学的パラメータの分析に基づいて、個体の腸内マイクロバイオームの回復状態を数量化する方法を提供する。マイクロバイオーム復元力指数は、復元力がある又は復元力がないとして消費者をクラスタリングするために使用することができ、その結果、非復元力の個体に食事介入を提案及び/又は投与することができる。
【0004】
[0004]いくつかの実施形態では、本開示は、マイクロバイオーム抵抗指数、マイクロバイオーム回復指数、及び/又はマイクロバイオーム復元力指数を提供し、また、低復元力の患者をスクリーニングするための方法を提供し、更に、低復元力指数を有する個体をスクリーニングし、その個体への栄養介入などの推奨、例えば、レシピ又は栄養補助食品などの特定の食品を提供するための方法を提供する。
【0005】
[0005]更なる特徴及び利点が本明細書において記述されており、以下の図面、及び発明を実施するための形態から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】[0006]
図1は、本明細書で定義される微生物叢復元力の概要を示す概略図である。
【0007】
【
図2A】[0007]
図2Aは、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態において特定及び/又は投与され得る好適な繊維製品の非限定的な例の処方を示す表である。
【0008】
【
図2B】[0008]
図2Bは、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態において特定及び/又は投与され得る好適なプロバイオティクス製品の非限定的な例の処方を示す表である。
【0009】
【
図3】[0009]
図3は、本明細書に開示される実験例からのシミュレーションデータについての結果を示すグラフである。
【
図4】[0009]
図4は、本明細書に開示される実験例からのシミュレーションデータについての結果を示すグラフである。
【
図5】[0009]
図5は、本明細書に開示される実験例からのシミュレーションデータについての結果を示すグラフである。
【
図6】[0009]
図6は、本明細書に開示される実験例からのシミュレーションデータについての結果を示すグラフである。
【0010】
【
図7】[0010]
図7は、本明細書に開示される実験例の臨床試験デザインを示す概略図である。
【0011】
【
図8A】[0011]
図8Aは、本明細書に開示される復元力指数の二変量モデルの一実施形態による、例示的な軌跡と、これらの軌跡がfPCAスコア1及び2に対する変化によってどのように影響を受けるかとを示すグラフである。
【
図8B】[0011]
図8Bは、本明細書に開示される復元力指数の二変量モデルの一実施形態による、例示的な軌跡と、これらの軌跡がfPCAスコア1及び2に対する変化によってどのように影響を受けるかとを示すグラフである。
【
図8C】[0011]
図8Cは、本明細書に開示される復元力指数の二変量モデルの一実施形態による、例示的な軌跡と、これらの軌跡がfPCAスコア1及び2に対する変化によってどのように影響を受けるかとを示すグラフである。
【
図8D】[0011]
図8Dは、本明細書に開示される復元力指数の二変量モデルの一実施形態による、例示的な軌跡と、これらの軌跡がfPCAスコア1及び2に対する変化によってどのように影響を受けるかとを示すグラフである。
【
図8E】[0011]
図8Eは、本明細書に開示される復元力指数の二変量モデルの一実施形態による、例示的な軌跡と、これらの軌跡がfPCAスコア1及び2に対する変化によってどのように影響を受けるかとを示すグラフである。
【
図8F】[0011]
図8Fは、本明細書に開示される復元力指数の二変量モデルの一実施形態による、例示的な軌跡と、これらの軌跡がfPCAスコア1及び2に対する変化によってどのように影響を受けるかとを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0012][定義]
【0013】
[0013]以下、いくつかの定義を示す。しかしながら定義が以下の「実施形態」の項にある場合もあり、上記の見出し「定義」は、「実施形態」の項におけるそのような開示が定義ではないことを意味するものではない。
【0014】
[0014]本明細書に記載する全ての百分率は、別途記載のない限り、組成物の総重量によるものである。本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値のある範囲内、例えば、参照数字の-10%から+10%の範囲内、好ましくは参照数字の-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数又は分数を含むと理解されるべきである。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲に対応するものと解釈されたい。
【0015】
[0015]本開示及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」には、別段の指示がない限り、複数の指示対象も含まれる。したがって、例えば、「繊維(a fiber又はthe fiber)」への言及は、単一の繊維を有する実施形態と、2種以上の繊維を有する実施形態との両方を包含する。
【0016】
[0016]用語「含む/備える(comprise)」、「含む/備える(comprises)」、及び「含んでいる/備えている(comprising)」は、排他的なものではなく、他を包含し得るものとして解釈されるべきである。同様にして、用語「含む(include)」、「含む(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を包含し得るものであると解釈されるべきである。しかしながら、本明細書に開示されている組成物は、本明細書において具体的に開示されていない要素を含まない場合がある。したがって、「含む/備える(comprising)」という用語を用いた実施形態の開示は、特定されている構成要素「を本質的に含む/から本質的に構成される(consisting essentially of)」実施形態、及び特定されている構成要素「からなる(consisting of)」実施形態の開示を含む。
【0017】
[0017]「X又はYのうちの少なくとも1つ」及び「X及び/又はY」のそれぞれの文脈において使用される「のうちの少なくとも1つ」及び「及び/又は」という用語は、「X」、若しくは「Y」、又は「X及びY」として解釈されるべきである。例えば、「抵抗又は回復のうちの少なくとも1つ」及び「抵抗及び/又は回復」は、「抵抗」、若しくは「回復」、又は「抵抗及び回復の両方」として解釈されるべきである。
【0018】
[0018]本明細書において使用する場合、用語「例」及び「例えば~など(such as)」は、その後に用語の列挙が続くときは特に、単に例示的かつ説明的なものにすぎず、排他的又は包括的なものとみなされるべきではない。本明細書で使用するとき、別の状態「に関連する/伴う(associated with)」又は「と関連付けられる(linked with)」状態は、これらの状態が同時に起こることを意味し、好ましくは、これらの状態が同じ基礎症状によって引き起こされることを意味し、最も好ましくは、特定されている状態のうちの一方が他方の特定されている状態によって引き起こされることを意味する。
【0019】
[0019]「予防」は、状態又は障害のリスク、発生率及び/又は重症度の低減を含む。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」には、予防的治療又は抑止的治療(対象とする病的状態又は障害を予防する及び/又は発症を遅らせる治療)と、治癒的治療、治療的治療、又は疾患修飾的治療との両方が含まれ、例えば、診断された病的状態又は障害の治癒、遅延、症状の軽減、及び/又は進行の停止のための治療的手段、並びに、疾患に罹患する危険性がある患者、又は疾患に罹患した疑いのある患者、及び体調不良の患者、又は疾患若しくは医学的状態に罹患していると診断された患者の治療が含まれる。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」は、対象が全快するまで治療することを必ずしも意味するものではない。「処置/治療」及び「処置/治療する」という用語はまた、疾患に罹患してはいないが不健康な状態を招きやすい可能性のある個体の健康を維持及び/又は促進することも指す。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」はまた、1つ以上の主たる予防手段又は治療手段の相乗作用、又はそうでない場合強化を含むことも目的としている。非限定的な例として、処置/治療は、患者、介護者、医師、看護師、又は別の医療専門家によって行うことができる。
【0020】
[0020]本明細書で使用するとき、予防又は治療上の「有効量」は、個体において、欠乏を防ぐ量、疾患若しくは医学的状態を治療する量、又は、より全般的には、個体に対して、症状を低減する量、疾患の進行を管理する量、若しくは栄養学上の利益、生理学上の利益若しくは医療上の利益を提供する量である。相対的な用語「促進する」、「改善する」、「増加させる」、及び「増強する」などの用語は、繊維及び/又はプロバイオティクスは存在しないが他の点では同一に配合された組成物の投与によって得られた対象のマイクロバイオームの復元力(すなわち、負荷に対する抵抗及び/又は負荷からの回復)と比較した、本明細書に開示される組成物(繊維とプロバイオティクスとを含む)の投与後の対象のマイクロバイオームの復元力を指す。
【0021】
[0021]本明細書で使用するとき、用語「食品」、「食品製品」、及び「食品組成物」とは、ヒト又は他の哺乳動物による経口摂取を意図し、かつヒト又は他の哺乳動物のための少なくとも1つの栄養素を含む、製品又は組成物を意味する。
【0022】
[0022]本明細書で使用するとき、「栄養組成物」及び「栄養製品」は、製品における機能上の必要性に基づき、かつ適用され得る全ての規制を完全に遵守して、任意の数の食品原材料及び場合により任意選択的な追加の原材料を含む。任意選択的な原材料は、例えば、1種以上の酸味料、追加の増粘剤、pH調節用緩衝液若しくはpH調節剤、キレート剤、着色剤、乳化剤、賦形剤、香料、ミネラル、浸透剤、製薬上許容可能な担体、防腐剤、安定剤、糖、甘味料、調質剤及び/又はビタミン類などの従来の食品添加物を含み得るが、これらに限定されない。任意選択の原材料は、任意の好適な量で添加することができる。
【0023】
[0023]「プロバイオティクス」は、宿主の健康又は幸福(well-being)に有益に働く微生物細胞調製物又は微生物細胞成分を意味する。(Salminen S、Ouwehand A.Benno Y.et al.、「Probiotics:how should they be defined」、Trends Food Sci.Technol.、1999:10 107-10)。
【0024】
[0024]本明細書で使用するとき、「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び動物対象のための投与量単位として好適な物理的に小分けされた単位を指し、各単位は、製薬上許容可能な希釈剤、担体、又はビヒクルとともに、所望の効果をもたらすのに十分な量の、予め定められた量の、本明細書に開示される組成物を含有する。単位剤形の仕様は、使用される具体的な化合物、達成しようとする効果、及び宿主体内の各化合物に関連する薬力学によって決まる。
【0025】
[0025]添付の特許請求の範囲を含めて本願で使用するとき、「キット」は、特定される構成要素が、1つ以上の容器内に又は1つ以上の容器と物理的に関連付けられ、作製、配送、販売、又は使用のための1つの単位としてみなされるものを意味する。入れ物としては、袋、箱、カートン、ボトル、任意の種類若しくは設計若しくは材料のパッケージ、上包装、シュリンク包装、添付された構成要素(例えば、ステープルで留められたもの、又は接着されたものなど)、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。単一の包装は、特定される構成要素が含まれている1つ以上の容器でもよく、及び物理的に関連付けられている1つ以上の容器でもよく、そのことにより、製造、流通、販売、又は使用のための1つの単位と考えられる。
【0026】
[0026]「対象」又は「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒト又はコンパニオンアニマルである。用語「コンパニオンアニマル」とは、イヌ又はネコを意味する。
【0027】
[0027]「腸内微生物叢」は、消化管に生息する微生物(細菌、古細菌、及び真菌を含む)組成である。
【0028】
[0028]用語「腸内マイクロバイオーム」は、それらの構造要素(核酸、タンパク質、脂質、多糖類)と、代謝産物(シグナル伝達分子、毒素、有機分子及び無機分子)と、共存する宿主によって産生され且つ周囲の環境条件によって構造化された分子と、を含み得る、「腸内微生物叢」及びそれらの「活性の場(theatre of activity)」の両方を包含し得る(例えば、Berg,G.,et al.,2020.Microbiome,8(1),pp.1-22)。
【0029】
[0029]したがって、本開示では、用語「腸内マイクロバイオーム」は、「腸内微生物叢」という用語と互換的に使用され得る。
【0030】
[0030][実施形態]
【0031】
[0031]
図1に示すように、微生物叢復元力は、負荷若しくは撹乱に抵抗する能力、又は負荷若しくは撹乱から完全かつ迅速に回復する能力として定義される。本開示は、高脂肪食による負荷の前、最中、及び後の微生物叢の分析に基づくマイクロバイオーム復元力指数を提供する。したがって、マイクロバイオーム復元力指数は、負荷の最中及び後に、その組成物、代謝産物及び他の生理学的パラメータの分析に基づいて、個体の腸内マイクロバイオームの復元力状態を数量化する方法を提供する。
【0032】
[0032]したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、マイクロバイオーム抵抗指数、マイクロバイオーム回復指数、及び/又はマイクロバイオーム復元力指数、並びにマイクロバイオーム抵抗指数、マイクロバイオーム回復指数、及び/又はマイクロバイオーム復元力指数のうちの1つ以上を決定及び/又は提供するための方法を提供する。また、低復元力の患者をスクリーニングするための方法を提供し、更に、低マイクロバイオーム復元力指数を有する個体をスクリーニングし、その個体への栄養介入などの推奨、例えば、レシピ又は栄養補助食品などの特定の食品を提供するための方法を提供する。
【0033】
[0033]マイクロバイオーム抵抗指数、マイクロバイオーム回復指数、及び/又はマイクロバイオーム復元力指数は、マイクロバイオーム負荷、例えば、高脂肪食などのマイクロバイオームストレッサーの前、最中、及び後に、マイクロバイオームの1つ以上のパラメータ(例えば、組成物、代謝産物、又は他の生理学的パラメータのうちの1つ以上)を数量化することによって決定することができる。
【0034】
[0034]本明細書で使用される場合、高脂肪食による負荷は、1日当たり60~90%の脂肪、10~30%のタンパク質、0~15%の炭水化物、及び0~15gの繊維を含む、少なくとも1日間、好ましくは少なくとも2日間、より好ましくは少なくとも1日3日間、更により好ましくは少なくとも4日間、最も好ましくは少なくとも5日間の規定食である。特定の非限定的な実施形態において、高脂肪食は、1日当たり約60%の脂肪、約25%のタンパク質、約15%の炭水化物、及び約10gの繊維である。
【0035】
[0035]マイクロバイオーム抵抗指数は、以下の式によって決定することができる。
【0036】
[0036]マイクロバイオーム抵抗指数ρ=1/distmax、ここで、個体は、負荷中の時間tmaxにその最大距離distmaxに達する。
【0037】
[0037]マイクロバイオーム抵抗指数の式は、ベースライン、距離、及び分類レベル、好ましくは、それぞれ、0日目のベースライン、Aitchison距離、及びファミリーレベルを使用する。マイクロバイオーム抵抗指数は、区間(0、∞)の値をとることができる。マイクロバイオーム抵抗指数が高いほど、マイクロバイオームはより抵抗性が高い。
【0038】
[0038]マイクロバイオーム回復指数(microbiome recovery index)は、以下の式によって決定することができる。
【0039】
【0040】
[0040]式中、
【0041】
[0041]mR=回復期間中の平均距離、
【0042】
[0042]sR=回復期間中の距離の標準偏差。
【0043】
[0043]平均距離が0に近いほど、回復率は高くなる。一方、曲線が安定しない場合、項mr/srはより大きくなる傾向があり、したがって、式中の対数項は、回復段階中の安定性の欠如に対するペナルティを表す。
【0044】
[0044]いくつかの実施形態では、マイクロバイオーム復元力指数(microbiome resilience index)は、以下の式によって決定することができる。
【0045】
【0046】
[0046]式中、
【0047】
[0047]sR:回復期間中の距離の標準偏差
【0048】
[0048]AUC:負荷及び回復の両方を含む曲線下面積
【0049】
[0049]mC及びmRは、それぞれ負荷及び回復の最中の平均距離である。
【0050】
[0050]sRの値が高いほど、指数の値が減少する(曲線は安定しない)。AUCの高い値はまた、低い値にもつながる。
【0051】
[0051]加えて、又は、その代わりに、マイクロバイオーム復元力指数は、二変量モデルによって決定することができ、この二変量モデルは、Aitchison距離(b多様性)を供給し、機能的主成分分析(fPCA)の統計的方法論を使用して、所定の近似誤差に従って、限られた数のスコアで各軌跡を近似し、それによってデータの次元数を低減する。好ましくは、二変量モデルによってマイクロバイオーム復元力指数を決定する実施形態では、2つの第1のスコア(fPCA1、fPCA2)を使用してマイクロバイオーム復元力指数を決定し、fPCA1及びfPCA2の値が低いほどより大きい復元力を示し、fPCA1及びfPCA2の値が高いほどより小さい復元力を示す。
【0052】
[0052]例えば、いくつかの実施形態では、マイクロバイオーム復元力指数は、以下の式を使用する二変量モデルからfPCA1及びfPCA2によって計算される。
【0053】
【0054】
[0054]本開示の一態様は、対象(例えば、それを必要とする対象)におけるマイクロバイオームの復元力を増強する方法である。本方法は、対象のマイクロバイオーム復元力指数を決定することと、少なくとも部分的にマイクロバイオーム復元力指数に基づいて、栄養介入を提案することと、を含む。
【0055】
[0055]対象についてのマイクロバイオーム復元力指数を決定することは、マイクロバイオーム負荷、例えば、高脂肪食などのマイクロバイオームストレッサーの前、最中、及び後に、マイクロバイオームの1つ以上のパラメータ(例えば、組成、代謝産物、及び他の生理学的パラメータのうちの1つ以上)を数量化することを含む。
【0056】
[0056]対象は、ヒト乳児、ヒト小児、ヒト青年、ヒト成人、及びヒト高齢者、並びにコンパニオンアニマルからなる群から選択することができる。
【0057】
[0057]別の態様は、(i)微生物叢の撹乱の予防又は減弱;(ii)撹乱後の回復;及び(iii)排便回数、腸内通過、便秘、腸管透過性、エンドトキシン血症、又は腸管バリア機能のうちの1つ以上の正常化、からなる群から選択される少なくとも1つの結果を達成する方法であって、対象(例えば、それを必要とする対象)における復元力を増強することを含む、方法である。本方法は、対象のマイクロバイオーム復元力指数を決定することと、少なくともマイクロバイオーム復元力指数に部分的に基づいて、栄養介入を提案することと、を含む。
【0058】
[0058]更に別の態様は、胃腸の健康を改善する方法であって、対象(例えば、それを必要とする対象)についてのマイクロバイオーム復元力指数を決定することによって、対象におけるマイクロバイオームの復元力を増強することと、少なくとも部分的にマイクロバイオーム復元力指数に基づいて、栄養介入を提案することと、を含む方法である。
【0059】
[0059]関連する実施形態は、マイクロバイオームストレッサーを経験している対象、マイクロバイオームストレッサーを最近(例えば、直近1カ月以内又は直近1週間以内に)経験したことがある対象、及び/又は近い将来(例えば、直後1カ月又は直後1週間以内に)マイクロバイオームストレッサーを経験することになる対象において、マイクロバイオームストレッサーに関連する状態を処置する、予防する、その発生率を低減する、及び/又はその重症度を低減する方法である。本方法は、対象のマイクロバイオーム復元力指数を決定することと、少なくともマイクロバイオーム復元力指数に部分的に基づいて、栄養介入を提案することと、を含む。
【0060】
[0060]いくつかの実施形態では、微生物叢ストレッサーは、高脂肪食、例えば、西洋食若しくはケトン食、又は低炭水化物食などの食事ストレッサーである。本明細書で使用される場合、高脂肪食は、1日カロリー摂取量の35%超が食事性脂肪由来、例えば、1日カロリー摂取量の少なくとも約40%が食事性脂肪由来、1日カロリー摂取量の少なくとも約45%が食事性脂肪由来、1日カロリー摂取量の少なくとも約50%が食事性脂肪由来、1日カロリー摂取量の少なくとも約55%が食事性脂肪由来、又は1日カロリー摂取量の少なくとも約60%が食事性脂肪由来である、1日カロリー摂取量である。
【0061】
[0061]西洋食は、高度に加工及び精製された食品;高含量の糖、塩及び脂肪;レッドミート由来のタンパク質;及び低含量の繊維を特徴とする。「低繊維」は、1日当たり2000カロリー当たり15g未満の繊維を有する食事とみなされる。
【0062】
[0062]本明細書で使用される場合、低炭水化物食は、1日カロリー摂取量の約15%以下が炭水化物由来、例えば、1日カロリー摂取量の約10%以下が炭水化物由来、又は1日カロリー摂取量の約5%以下が炭水化物由来である。
【0063】
[0063]いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1種類の繊維と少なくとも1種類のプロバイオティクスとの組み合わせの最初の投与の前に、少なくとも1日間(例えば、少なくとも1週間又は少なくとも1カ月間)、高脂肪食(例えば、西洋食、又はケトン食)又は低炭水化物食を摂取しており、任意でその後、少なくとも1種類の繊維と少なくとも1種類のプロバイオティクスとの組み合わせの投与(例えば、少なくとも1週間又は少なくとも1カ月間の期間にわたる毎日の投与)がある。
【0064】
[0064]追加的に又は代替的に、ストレッサーは、抗生物質;他の薬剤;感染症;激しい運動;ストレス;アルコール;旅行;非経口栄養;経腸栄養;短腸症候群;腸炎症;化学療法;結腸癌;下痢;プロトンポンプ阻害剤;グルテンフリー食;発酵性オリゴ糖、二糖、単糖及びポリオール(FODMAP)を含まない食事;又はこれらの組み合わせを使用してもよい。
【0065】
[0065]いくつかの実施形態では、提案される栄養介入は、栄養製品、例えば、少なくとも1種類の繊維と少なくとも1種類のプロバイオティクスとの組み合わせを(例えば、治療有効量又は予防有効量で)含む組成物を特定する。任意選択で、本方法は、提案された栄養介入によって特定された栄養製品を投与することを含む。
図2Aは、好適な繊維製品の非限定的な例の処方を示し、
図2Bは、好適なプロバイオティクス製品の処方を示す。
【0066】
[0066]いくつかの実施形態では、本方法は、マイクロバイオーム復元力指数を使用して、復元力がある又は復元力がないとして対象を分類することを含むことができ、食事介入は、1つ以上の所定の組成物から復元力のない対象のために選択された組成物を特定する。好ましくは、選択された組成物は、復元力のない対象においてマイクロバイオーム抵抗を増強するように処方される。
【0067】
[0067]いくつかの実施形態では、対象は、本明細書で提案される栄養介入を毎日、例えば、微生物叢ストレッサー前の少なくとも1週間又は更には微生物叢ストレッサー前の少なくとも1カ月間、毎日摂取する。
【0068】
[0068]好ましい実施形態では、少なくとも1種類の繊維のそれぞれは食用であり、すなわち、繊維の全ての成分がヒト及び/又は動物による摂取に安全かつ好適である。少なくとも1種類の繊維は、不溶性繊維及び/又は可溶性繊維、好ましくは不溶性繊維と可溶性繊維とのブレンドを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1種類の繊維は、キシロオリゴ糖、アマニ、部分加水分解グアーガム(PHGG)、グルコマンナン、セルロース、プルーン粉末、リンゴ皮ペクチンなどのペクチン、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1種類の繊維は、少なくとも2種類の繊維、例えば2種類、3種類、4種類、5種類、6種類又は7種類の繊維、及び任意選択でより多くの種類の繊維である。任意選択で、ラカンカ果実粉末、キシリトール又はマグネシウム(例えば、クエン酸マグネシウム)のうちの1つ以上が、少なくとも1種類の繊維と共に含まれ得る。
【0069】
[0069]いくつかの実施形態において、少なくとも1種類のプロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacteriumlactis)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillusplantarum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。いくつかの特定の実施形態では、少なくとも1種類のプロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスLa-14、ビフィドバクテリウム・ラクティスBl-04、ラクトバチルス・ラムノーサスGG、ビフィドバクテリウム・ロンガムBL-05、ラクトバチルス・プランタラムLp-115、ビフィドバクテリウム・ビフィダムBb-06、ラクトバチルス・ガセリLg-36、及びこれらの混合物からなる群から選択される株であり得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1種類のプロバイオティクスは、少なくとも2種のプロバイオティクス株、例えば、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類又は7種類のプロバイオティクス株、及び任意選択でより多くの種類のプロバイオティクス株である。
【0070】
[0070]少なくとも1種類の繊維は、約5g~40g、好ましくは約15g~25gの総1日用量として個体に投与され得る。少なくとも1種類の繊維は、乾燥組成物1g当たり約300mg~1000mgの総繊維を含む組成物で投与されてもよい。
【0071】
[0071]少なくとも1種類のプロバイオティクスは、1×103cfu~1×1012cfu(cfu=コロニー形成単位)、好ましくは1×107cfu~1×1011cfuの1日用量として個体に投与され得る。少なくとも1種類のプロバイオティクスは、1×103cfu/g~1×1012cfu/gの乾燥組成物を含む組成物で投与され得る。少なくとも1種類のプロバイオティクスは、生存している、断片化されている、又は発酵産物(例えば、上清)若しくは代謝産物の形態である、又はこれらの状態のいずれか若しくは全ての混合物であり得る。
【0072】
[0072]少なくとも1種類の繊維と少なくとも1種類のプロバイオティクスとの組み合わせは、好ましくは食品組成物などの組成物で経口投与される。
【0073】
[0073]少なくとも1種類の繊維と少なくとも1種類のプロバイオティクスとの組み合わせは、経口、局所、経腸、及び非経口からなる群から選択される少なくとも1つの経路によって個体に投与され得る。例えば、少なくとも1種類の繊維と少なくとも1種類のプロバイオティクスとの組み合わせは、完全栄養製品、飲料、ダイエタリー・サプリメント、置き換え食、食品添加物、食品製品への補給剤、溶解用粉末、経腸栄養製品、乳児用フォーミュラ、カプセル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される組成物で投与され得る。
【0074】
[0074]任意選択で、少なくとも1種類の繊維と少なくとも1種類のプロバイオティクスとの組み合わせは、アミノ酸、タンパク質、ヌクレオチド、魚油、非海洋性のオメガ-3脂肪酸源、植物栄養素、抗酸化剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分を更に含む組成物で投与される。
【0075】
[0075]組成物は、食品製品、動物食品製品、又は医薬組成物であり得る。例えば、製品は、栄養組成物、ニュートラシューティカル、飲料、食品添加物、又は医薬品であり得る。食品添加物又は医薬品は、例えば、錠剤、カプセル、トローチ、液体、又はサシェ中粉末の形態であってもよい。
【0076】
[0076]いくつかの実施形態では、少なくとも1種類のプロバイオティクスは、少なくとも1種類の繊維とは別個の組成物で、例えば、互いに1時間以内、好ましくは互いに30分以内、より好ましくは互いに10分以内、最も好ましくは互いに1分以内に同じ個体に投与される別個の組成物で同時に投与される。
【0077】
[0077]少なくとも1種類の繊維と少なくとも1種類のプロバイオティクスとの組み合わせを含む組成物は、好ましくは、乳粉末ベースの製品;インスタント飲料;レディ・トゥ・ドリンク処方;栄養粉末;栄養液体;乳ベースの製品、特にヨーグルト又はアイスクリーム;シリアル製品;飲料;水;コーヒー;カプチーノ;麦芽飲料;チョコレート風味飲料;調理製品;スープ;錠剤;及び/又はシロップからなる群から選択される。
【0078】
[0078]組成物は、任意選択で、例えばウシの乳、ヒトの乳、ヒツジの乳、ヤギの乳、ウマの乳、ラクダの乳、ライスミルク、又は豆乳のうちの1つ以上などの、動物性供給源又は植物性供給源から得られる任意の乳を含んでもよい。追加的又は代替的に、乳由来タンパク質画分又は初乳を使用してもよい。
【0079】
[0079]少なくとも1種類の繊維と少なくとも1種類のプロバイオティクスとの組み合わせを含む組成物は、保護親水コロイド(ガム、タンパク質、加工デンプンなど)、バインダー、皮膜形成剤、封入剤/封入材、壁/シェル材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着剤、担体、充填剤、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動化剤、矯味剤、増量剤、ゼリー化剤、ゲル形成剤、抗酸化剤、及び抗菌剤を更に含有してもよい。
【0080】
[0080]少なくとも1種類の繊維と少なくとも1種類のプロバイオティクスとの組み合わせを含む組成物はまた、従来の医薬品添加物及び補助剤、賦形剤及び希釈剤を含有してもよく、その例としては、水、任意の原材料に由来するゼラチン、植物ガム、リグニンスルホネート、タルク、糖、デンプン、アラビアガム、植物油、ポリアルキレングリコール、着香料、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填剤などが挙げられるが、これらに限定されない。更に、組成物には、経口投与又は経腸投与に好適な有機担体材料又は無機担体材料に加え、USRDAなどの政府機関の推奨に従い、ビタミン類、ミネラル類、微量元素及びその他の微量栄養素を含有させることもできる。
【0081】
[0081]少なくとも1種類の繊維と少なくとも1種類のプロバイオティクスとの組み合わせを含む組成物は、任意選択で、特に食品製品である組成物の実施形態において、1つ以上のアミノ酸、タンパク質源、炭水化物源、及び/又は脂質源を含有し得る。
【0082】
[0082]任意の好適な食品由来のタンパク質、例えば、動物性タンパク質(乳タンパク質、肉タンパク質、及び卵タンパク質など);植物性タンパク質(大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、及びエンドウ豆タンパク質など);遊離アミノ酸の混合物;又はこれらの組み合わせを使用してもよい。カゼイン及びホエイなどの乳タンパク質、並びに大豆タンパク質が特に好ましい。
【0083】
[0083]少なくとも1種類の繊維と少なくとも1種類のプロバイオティクスとの組み合わせを含む組成物は、ヒト又は動物、特にコンパニオンアニマル、ペット、又は家畜に投与され得る。この組成物はいずれの年齢層にも有益な効果を有する。好ましくは、組成物は、乳児、若年者、成人、又は高齢者に投与するために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、乳児を治療するために妊娠中及び授乳中の母親へ投与できる。
【0084】
[0084]少なくとも1種類の繊維と少なくとも1種類のプロバイオティクスとの組み合わせを含む組成物は、1週間に少なくとも1日、好ましくは1週間に少なくとも2日、より好ましくは1週間に少なくとも3日又は4日(例えば、1日おき)、最も好ましくは1週間に少なくとも5日、1週間に6日、又は1週間に7日、投与することができる。投与期間は、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも1カ月間、より好ましくは少なくとも2カ月間、最も好ましくは少なくとも3カ月間、例えば、少なくとも4カ月間であってもよい。一実施形態では、投与は少なくとも毎日であり、例えば、対象は1日に1回以上投与を受けてもよい。いくつかの実施形態では、投与は、個体の残りの寿命にわたって継続される。他の実施形態では、投与は、医学的状態について検出可能な症状がなくなるまで行われる。具体的な実施形態では、投与は、少なくとも1つの症状について検出可能な改善が生じるまで行われ、更なる場合においては、寛解を維持するために継続される。
【0085】
[0085]本明細書の開示を考慮して、一実施形態は、対象におけるマイクロバイオームの復元力を増強する方法である。本方法は、対象についてのマイクロバイオーム復元力指数を決定することと、少なくとも部分的にマイクロバイオーム復元力指数に基づいて、対象について提案される栄養介入を特定することとを含む。
【0086】
[0086]別の実施形態は、(i)微生物叢の撹乱の予防又は減弱;(ii)微生物叢の撹乱後の回復;及び(iii)排便回数、腸内通過、便秘、腸管透過性、エンドトキシン血症、又は腸管バリア機能のうちの1つ以上の正常化からなる群から選択される、少なくとも1つの結果を達成する方法である。本方法は、対象についてのマイクロバイオーム復元力指数を決定することと、少なくとも部分的にマイクロバイオーム復元力指数に基づいて、対象について提案される栄養介入を特定することと、を含む。
【0087】
[0087]これらの方法のいくつかの実施形態では、対象のマイクロバイオーム復元力指数を決定することは、マイクロバイオーム負荷の前、最中、及び後にマイクロバイオームの1つ以上のパラメータを数量化することを含む。マイクロバイオームの1つ以上のパラメータは、好ましくは、マイクロバイオームの組成物、代謝産物、又は他の生理学的パラメータのうちの1つ以上を含む。
【0088】
[0088]これらの方法のいくつかの実施形態では、マイクロバイオーム負荷は、高脂肪食である。
【0089】
[0089]これらの方法のいくつかの実施形態では、提案された栄養介入は、栄養製品、好ましくは少なくとも1種類の繊維及び少なくとも1種類のプロバイオティクスを含む栄養製品を特定する。
【0090】
[0090]これらの方法のいくつかの実施形態では、対象が、ヒト乳児、ヒト小児、ヒト青年、ヒト成人、及びヒト高齢者、並びにコンパニオンアニマルなどの動物からなる群から選択される。
【0091】
[0091]これらの方法のいくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも部分的にマイクロビオーム復元力指数に基づいて、対象を復元力のある個体又は復元力のない個体として分類することを含み、好ましくは、復元力のない個体への栄養介入は、復元力のない個体におけるマイクロビオームの復元力を増強するように処方された第1の栄養製品を特定し、任意選択で、復元力のある個体への栄養介入は、第1の栄養製品とは異なる少なくとも1つの成分又はその量を含む第2の栄養製品を特定する。
【0092】
[0092]これらの方法のいくつかの実施形態では、マイクロバイオーム復元力指数は、以下の式によって計算される。
【数4】
【0093】
[0093]加えて、又は、その代わりに、マイクロバイオーム復元力指数は、二変量モデルによって決定することができ、この二変量モデルは、Aitchison距離(b多様性)を供給し、機能的主成分分析(fPCA)の統計的方法論を使用して、所定の近似誤差に従って、限られた数のスコアで各軌跡を近似し、それによってデータの次元数を低減する。好ましくは、二変量モデルによってマイクロバイオーム復元力指数を決定する実施形態では、2つの第1のスコア(fPCA1、fPCA2)を使用してマイクロバイオーム復元力指数を決定し、fPCA1及びfPCA2の値が低いほどより大きい復元力を示し、fPCA1及びfPCA2の値が高いほどより小さい復元力を示す。
【0094】
[0094]更に、この点に関して、fPCAは、長期データのための特定のアルゴリズムである。本明細書で使用され得るfPCAの好ましい実施形態では、Xi(t)は、以下の式において時間tにおける個体iの軌跡の値を表す。
【0095】
【0096】
[0096]式中、
【0097】
[0097]μ(t)は、時間tにおける母集団平均である。
【0098】
[0098]φkは、共分散演算子の固有関数である。
【0099】
[0099]fPCAスコアは、以下のように定義され得る。
【0100】
【0101】
[0101]上記の無限和は、最初のN項に切り詰められてもよく、Nが高いほど、和によって説明される変動性の割合がより高いことを表す。
【0102】
[0102]したがって、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、最初の2つのfPCAスコアに基づいて微生物叢の復元力を評価するために二変量フレームワークを使用する。特に、スコアは、固定された標準化スケール上の値をとらない。理論的には、任意の負又は正の値が可能であるが、特に好ましい実施形態は、範囲[-10、10]内の値を使用する。
【0103】
[0103]更に別の実施形態は、低い微生物叢復元力を有する対象をスクリーニングする方法である。本方法は、対象のマイクロバイオーム復元力指数を決定することを含む。
【0104】
[0104]対象をスクリーニングするための方法のいくつかの実施形態では、対象のマイクロバイオーム復元力指数を決定することは、マイクロバイオーム負荷の前、最中、及び後にマイクロバイオームの1つ以上のパラメータを数量化することを含む。マイクロバイオームの1つ以上のパラメータは、好ましくは、マイクロバイオームの組成物、代謝産物、又は他の生理学的パラメータのうちの1つ以上を含む。
【0105】
[0105]対象をスクリーニングする方法のいくつかの実施形態では、マイクロバイオーム負荷は、高脂肪食である。いくつかの実施形態では、対象が、ヒト乳児、ヒト小児、ヒト青年、ヒト成人、及びヒト高齢者、並びにコンパニオンアニマルなどの動物からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも部分的にマイクロバイオーム復元力指数に基づいて、対象を復元力のある個体又は復元力のない個体として分類することを含む。
【0106】
[0106]対象をスクリーニングする方法のいくつかの実施形態では、マイクロバイオーム復元力指数は、以下の式によって計算される。
【数7】
【0107】
[0107]加えて、又は代わりに、マイクロバイオーム復元力指数は、本明細書に開示される二変量モデルの実施形態のうちの1つによって決定することができ、モデルからの2つの第1のスコア(fPCA1、fPCA2)を使用して、以下のようにマイクロバイオーム復元力指数を決定し得る。
【0108】
【0109】
[0109]式中、
【0110】
[0110]μ(t)は、時間tにおける母集団平均である
【0111】
[0111]φkは、共分散演算子の固有関数である
【0112】
[0112]fPCAスコアは、以下のように定義され得る。
【0113】
【0114】
[0114]対象をスクリーニングするための方法のいくつかの実施形態では、本方法は、対象についてのマイクロバイオーム復元力指数を標的値又は標的範囲と比較することを更に含む。例えば、コンパイルされたデータの四分位数範囲(25%~75%)は、コンパイルされたデータの四分位数範囲未満の対象についてのマイクロバイオーム復元力指数が「低復元力」であり、コンパイルされたデータの四分位数範囲を超える対象についてのマイクロバイオーム復元力指数が「高復元力」であるように、「正常範囲」を定義することができる。特定の非限定的な例では、抵抗の正常範囲は[0.6、0.09]であり、回復の正常範囲は[0.14、0.20]であり、復元力の正常範囲は[0.0023、0.0038]である(任意選択で、[2.3、3.8]に再スケーリングされる)。
【0115】
[0115]更に別の実施形態は、対象のマイクロバイオーム復元力指数を決定するように構成されたシステムである。本システムは、選択されたマイクロバイオーム種の存在量を計算し、選択されたマイクロバイオーム種の存在量を使用して対象のマイクロバイオーム復元力指数を決定し、マイクロバイオーム復元力指数を使用して対象の栄養推奨を決定するように構成された計算モジュール(プロセッサなど)を含むハードウェアを含む。ハードウェアは、対象の栄養推奨を表示し、好ましくは、対象のマイクロバイオーム復元力指数も表示するように構成されたユーザインターフェースディスプレイを更に含む。任意選択で、システムは、DNA抽出デバイス及び/又はDNAシーケンサを更に備える。
【0116】
[0116]システムのいくつかの実施形態では、システムは、入力として糞便試料を受け取るように構成され、任意選択で、入力は、対象の年齢、対象の性別、対象の体重、対象の食嗜好、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の他のパラメータを更に含む。糞便の配列決定のために、システムは、好ましくは、負荷(例えば、5日間の高脂肪食)前に採取された少なくとも1つの糞便試料及び負荷後の少なくとも1つの試料の配列決定の結果を受信する。
【0117】
[0117]システムのいくつかの実施形態では、計算モジュールは、対象のマイクロバイオーム復元力指数を標的値に対して高い又は低いとして特徴付けるように更に構成され、好ましくは、ユーザインターフェースディスプレイは、対象のマイクロバイオーム復元力指数の特徴付けを高い又は低いとして表示するように更に構成される。
【0118】
[0118]システムは、存在する場合、DNA抽出デバイス及び/又はDNAシーケンサを使用して配列決定を行うように構成することができる、及び/又は配列決定の結果を入力として受け取ることができる。配列決定デバイスは、任意選択で、栄養推奨後の微生物叢復元力の進展を監視するために使用することができる。
【0119】
[0119]いくつかの実施形態では、システムは、高脂肪食のための1つ以上のレシピ及び/又は高脂肪負荷のための1つ以上の食品と共にキットで提供される。
【0120】
[0120][実施例]
【0121】
[0121]以下の非限定的な実施例は、概して、本明細書に開示される実施形態の基礎となる概念を示す。
【0122】
[0122]目的は、経時的なマイクロバイオームの変化を記述する軌跡に基づいて、抵抗、回復、及び復元力を数量化するための式を提案することであった。
図7は、全体的なマイクロバイオーム多様性を改善するための多様な繊維のブレンドを含有する繊維製品と、減少した(down-regulated)細菌を補充し、炎症を減少させ、腸管バリアを改善するためのプロバイオティクス製品と、を使用した臨床試験デザインを示す。
図2Aは繊維製品の処方を示し、
図2Bは使用されるプロバイオティクス製品の処方を示す。
【0123】
[0123]具体的には、
図3は、異なる程度の抵抗、回復、及び復元力をシミュレートする、生成されたいくつかの曲線を示す。
【0124】
[0124]これらの曲線は以下のように作成された:0~10日目は負荷期間をシミュレートし、11~30日目は負荷後期間をシミュレートする。各曲線について、負荷中の微生物叢進化をシミュレートするために関数distanceCをシミュレートし、回復期間については関数distanceRをシミュレートした。これらの関数を以下の表1に詳細に示す。
【表1】
表1
【0125】
[0125]表において、項rnorm(N、sd)は、平均0及び標準偏差sdを有する正規分布ランダム変数のN(=30)個の試料を生成する。これは、「ノイズ」成分をシミュレートする。各関数distanceCは、様々な増加率で、時間の関数として増加する距離をシミュレートする。しかしながら、曲線A~Cは、負荷中に同じ距離関数を共有する。これにより、同じ抵抗を共有する曲線の回復率を比較することが可能になった。回復及び復元力の式は変動性の項を含むため、標準偏差を変化させて回復関数distanceRをシミュレートした。
【0126】
[0126][結果の概要]:
【0127】
[0127]ITT(治療意図)データセット、ベースライン時に欠損データを有する対象を除く:
【0128】
[0128]抵抗、回復、及び復元力に関する式は、シミュレートされたデータに対して試験されたときに一貫している
【0129】
[0129]抵抗は介入群においてより高いが、差異は有意ではない
【0130】
[0130]回復は介入群についてより低いが、差は有意ではない
【0131】
[0131]フェーズ1のみが考慮される場合、回復は介入群についてより低い(p=0.05)
【0132】
[0132]復元力は介入群においてより低いが、差異は有意ではない
【0133】
[0133]ITTデータセット、欠損時にベースラインを-1日目に置き換える。
【0134】
[0134]抵抗は介入群においてより高いが、差は有意ではない(p=0.076)
【0135】
[0135]回復は2群間で有意に異ならない
【0136】
[0136]復元力は2群間で有意に異ならない
【0137】
[0137][抵抗]
【0138】
[0138]物理学では、力を受けたときのその最大変位を測定することによって、ばねの弾性定数を定義する。弾性定数は、力と変位との間の比例定数である。
【0139】
[0139]類推により、抵抗を剛性の尺度と考え、ベースラインからの最大偏差を見ることができる(ベースラインが平衡状態に対応すると仮定する)。
【0140】
[0140]各個体は、負荷中の時間tmaxにその最大距離distmaxに達する。
【0141】
[0141]抵抗指数を次のように定義する。
【0142】
【0143】
[0143]この定義は以下を必要とする。
【0144】
[0144]ベースラインの選択
【0145】
[0145]距離の選択
【0146】
[0146]分類レベルの選択
【0147】
[0147]以下の実施例において、行われた選択は、0日目のベースライン、Aitchison距離、及びファミリーレベルであった。この指数は、区間(0、∞)内の値をとることができる。指数が高いほど、マイクロバイオームはより抵抗性が高い。
【0148】
[0148][シミュレートされたデータへの応用]
【0149】
[0149]本発明者らは、以前に導入されたシミュレートされたデータに対する抵抗の本発明者らの定義を試験する(以下の表2及び
図4)。
【表2】
表2:シミュレートされたデータについての抵抗
【0150】
[0150][回復(Recovery)]
【0151】
[0151]回復指数を次のように定義する。
【0152】
【0153】
[0153]式中、
【0154】
[0154]mR=回復期間中の平均距離、
【0155】
[0155]sR=回復期間中の距離の標準偏差。
【0156】
[0156]したがって、平均距離が0に近いとき、回復率はより高くなる。一方、曲線が安定しない場合、項mr/srはより大きくなる傾向があり、したがって、式中の対数項は、回復段階中の安定性の欠如に対するペナルティを表す。
【0157】
[0157][シミュレートされたデータへの応用]
【0158】
[0158]本発明者らは、以前に導入されたシミュレートされたデータに対して本発明者らの回復の定義を試験する(以下の表3及び
図5)。
【表3】
表3:シミュレートされたデータについての回復
【0159】
[0159][復元力(Resilience)]
【0160】
[0160]Dogra,SKらによると、「復元力のある微生物叢は、撹乱を受けた後、元の平衡状態に戻る」。
【0161】
[0161]また、Lozuponeらによると、「復元力は、システムの軌跡が異なる平衡状態に向かって変化する前に許容することができる応力又は撹乱の量である」。
【0162】
[0162]強度を増加させる一連の課題に対応するマイクロバイオームの変化を測定する必要があるため、以下の定義「復元力は、システムの軌跡が異なる平衡状態に向かって変化する前に許容することができる応力又は撹乱の量である」は実際には数量化可能ではないことに留意されたい。
【0163】
[0163]実際には、人は固定された負荷を有し、復元力は、所与の負荷に関して、マイクロバイオームの時間的変動を記述する特定の関数の特性でなければならない。
【0164】
[0164]我々は以下の定義を提案する。
【0165】
[0165]sR:回復期間中の距離の標準偏差
【0166】
[0166]AUC:負荷及び回復の両方を含む曲線下面積
【0167】
[0167]mC及びmRは、それぞれ負荷及び回復の最中の平均距離である
【0168】
[0168]次に、以下を定義する。
【0169】
【0170】
[0170]sRの値が高いほど、指数の値が減少する(曲線は安定しない)。AUCの高い値はまた、低い値にもつながる。
【0171】
[0171][シミュレートされたデータへの応用]
【0172】
[0172]本発明者らの指標によれば、曲線Cは復元力が比較的低く、Dは復元力が最も高い(以下の表4及び
図6)。
【表4】
表4
【0173】
[0173]モデル及び復元力の第2の反復において、本発明者らは、微生物叢の復元力を特徴付けるために二変量モデルを構築することを決定した。このモデルは、Aitchison距離(b多様性)を供給し、関数主成分分析(fPCA)を使用して、所定の近似誤差に従って、限定された数のスコアを用いて各軌跡を近似し、それによってデータの次元数を低減する。
【0174】
[0174]本発明者らは、2つの最初のスコア(fPCA1、fPCA2)が、Aitchison軌跡における分散の84%を説明することを見出した。二変量モデルの挙動を評価するために、本発明者らは最初に、本発明者らの生物学的データに基づいて、スコアfPCA1、fPCA2を2310値のグリッドにわたって変化させ、fPCA1は[-7、20]で変化し、fPCA2は[-5、5]で変化する(これらの値は、データにおいて観察された最小及び最大である)Aitchison軌跡のシミュレーションを実施した。両方の変数はある程度の連鎖を示したが、fPCA1挙動が、モデルが耐えるであろう妨害の量(抵抗)をより反映する一方、fPCA2は、ベースラインと同様の値を回復するのにどれだけの時間がかかるか(回復)により影響を受けた。両方の場合において、変数の値が低いほど、システムの復元力が大きいことが観察された。
【0175】
[0175]抵抗と回復の概念を完全に切り離すことはできないように思われる。実際、回復は妨害中の変更後に起こり得るので、それらは時間的に相関しており、したがって、その大きさは、システムの抵抗の程度に依存する。
図8A~
図8Fは、例示的な軌跡、並びにこれらの軌跡がfPCAスコア1及び2に対する変化によってどのように影響を受けるかを示す。
【0176】
[0176]更に、本発明者らは、スコアのうちの1つが最小値又は最大値のいずれかの1つの極値に固定されたときに生じる4つの軌跡ファミリーを比較した。したがって、fPCA2=-5で56個の曲線が得られ、fPCA2=5で56個の曲線が得られ、fPCA1=-7で22個の曲線が得られ、fPCA1=20で22個の曲線が得られた。機能的ANOVA(J-T Zhang、Analysis of Variance for Functional Data、2013年)を適用して、これら4ファミリーの軌跡の平均曲線が互いに統計的に異なる(p<0.01)ことを確認した。式1/max(dist)をシミュレートされた軌跡の同じセットに適用し、次いで軌跡の4つのファミリーにわたって結果を比較した。ペアワイズ比較は全て有意であった。
【0177】
[0177]モデルを実際のデータに対して使用した場合、本発明者らは、組成物レベルで観察された高い個人間変動と一致して、両方のスコアについて大きな変動係数を観察した(abs(cv1)=14.11、abs(cv2)=9.06)。本発明者らは、復元力のレベルが分類組成物によって影響を受け、したがって、特定の分類群が、変化に耐えるより高い能力とより関連し得ると仮定した。この仮説を試験するために、本発明者らは、参加者の復元力スコアをランク付けし、上位5人(低復元力)及び下位5人(高復元力)の参加者を選択し、それらの微生物叢組成物を比較して、各fPCAについて両方の群をより良好に区別するクレードを抽出した。fPCA1について、本発明者らは、クロストリジウム目のメンバーが、上位参加者と下位参加者との間の最も特徴的な分類群に含まれることを見出した(ウィルコクソン順位検定Pfdr<0.01)。興味深いことに、抵抗のレベルで識別するこれらの分類群のいくつか(すなわち、高抵抗については、Eubacterium)はまた、高い媒介中心性を示し、栄養負荷によって示差的に影響を受けた。スペクトルの反対側では、Prevotella及びButrycimonasは低レベルの抵抗と関連していた(Pfdr<0.001)。
【0178】
[0178]本明細書で述べる現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。そのような変更及び修正は、本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なわずに、なされ得る。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
【国際調査報告】