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  • 特表-抗菌活性を有するペプチド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】抗菌活性を有するペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20240918BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240918BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240918BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20240918BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20240918BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
A61K38/10
A61P31/00
A61P31/10
A61P31/04
A61K47/60
A61K47/54
A61K47/62
A61K47/59
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513143
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 US2022042312
(87)【国際公開番号】W WO2023034481
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/260,836
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/268,158
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】523440019
【氏名又は名称】エイマックス セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ローレン
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ,デイビッド,イー.
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,デイル,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】キーディ,カラ,エス.
(72)【発明者】
【氏名】パコフスキー,グレゴリー,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヌネズ,デレク,ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076CC31
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA10
4C084BA18
4C084BA23
4C084BA31
4C084BA34
4C084BA36
4C084BA41
4C084CA59
4C084DA42
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA14
4C084ZB311
4C084ZB351
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA17
4H045EA29
4H045EA60
4H045FA33
4H045GA05
4H045GA15
4H045GA23
(57)【要約】
本開示は、式I:S1-[ブロック-1]-x-[ブロック-2]-y-[ブロック-3]-z-[ブロック-4]-S2のペプチドを含む。ペプチドを含有する医薬組成物、及びペプチドを用いる微生物感染症を治療する方法もまた、含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
S1-[ブロック-1]-x-[ブロック-2]-y-[ブロック-3]-z-[ブロック-4]-S2
式I
配列番号1
の構造を有するペプチド又はその医薬的に許容される塩であって、式中、
m、n、o及びpは、独立して、0又は1であり、ここで、0は不在を表し、1は存在を表し、m、n、o及びpのうちの少なくとも2つは1であり;
ブロック-1、ブロック-2、ブロック-3、及びブロック-4は、独立して、L-アルギニン(R)、D-アルギニン(r)及びホモアルギニン(Har)からそれぞれ独立して選択される2~7個のアミノ酸を含み;
S1及びS2は、それぞれ独立して、L-アルギニン(R)、D-アルギニン(r)又はホモアルギニン(Har)以外のアミノ酸又はアミン酸であり、独立して存在するか又は不在であり;
x、y、及びzは、それぞれリンカーであり、各リンカーは、独立して、存在するか又は不在であり、プロリン(P)、グリシン(G)、3-アミノプロピオン酸(β-アラニン、Apr)、4-アミノ酪酸(Aba)、5-アミノ吉草酸(Ava)、6-アミノヘキサン酸(Ahx)、7-アミノヘプタン酸(Ahp)、8-アミノオクタン酸(Aoa)、9-アミノノナン酸(Ana)、10-アミノデカン酸(Ada)、11-アミノウンデカン酸(Aun)、12-アミノドデカン酸(Ado)、13-アミノトリデカン酸(Atr)、14-アミノテトラデカン酸(Ata)、15-アミノペンタデカン酸(Apn)、16-アミノヘキサデカン酸(Ahd)、N-(3-アミノプロピル)グリシン(Apg)、(S)-インドリン-2-カルボン酸(Ica)、L-α-メチルロイシン(Leu(Me))、及びL-2-インダニルグリシン(Igl)、5-アミノ-3-オキサペンタン酸(Aea)、N-(2-アミノエチル)グリシン(Aeg又はAeg2)、イソニペコチン酸(Inp)、2-シクロヘキシルグリシン、N-ブチルグリシン(ButylGly)、N-(4-ピペリジニル)グリシン(PipGly)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸(Agp)、(4’-ピリジル)アラニン(4-PyrAla)、(S)-N-(1-フェニルエチル)グリシン(Feg)、N-ベンジルグリシン(Bng)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(Tic)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-1-カルボン酸(Tiq)、及び4-グアニジノ-フェニルアラニン(Phe(4-Ngu))から選択される単一のアミノ酸又はアミン酸で構成され;
ただしmが1でありかつnが0であるか又はmが0でありかつnが1である場合、xは不在であり;nが1でありかつoが0であるか又はnが0でありかつoが1である場合、yは不在であり;oが1でありかつpが0であるか又はoが0でありかつpが1である場合、zは不在であり;
任意に、前記ペプチドは、N末端-NHが-N(X)(X)で置き換えられた修飾N末端アミノ酸を有してもよく、ここで、(X)及び(X)は、独立して、H、R、RC(O)、RSO、及びRNC(O)から選択され、R、R、及びRは、独立して、アルキル基又はアルカリール基であり、R及びRは、独立して、H、アルキル基、又はアルカリール基であり、前記アルキル基及び前記アルカリール基は、独立して、ハロゲン、アルキル、アミノ、及び/又は酸素部分でさらに置換されていてもよく;
任意に、前記ペプチドは、C末端-COOHが-CONHで置き換えられた修飾C末端アミノ酸(カルボキサミド)を有してもよい、
ペプチド又はその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
S1及びS2が、不在である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
S1及びS2のいずれかが、不在である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号2~98から選択される配列を有する、請求項1~3のいずれかに記載のペプチド。
【請求項5】
m、n、o及びpのうちの少なくとも2つ又は3つが1であり、ブロック-1、ブロック-2、ブロック-3及びブロック-4の各々が、R、r及びHarから独立して選択される2~4個のアミノ酸を有する、請求項2又は3に記載のペプチド。
【請求項6】
m、n、o及びpのすべてが1である、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
m、n、o及びpがすべて1であり、ブロック-1及びブロック-2がそれぞれ、3つのアミノ酸を有し、ブロック-3及びブロック-4がそれぞれ、4つのアミノ酸を有し、x、y及びzがそれぞれ、Aoaであり、ブロック-1、ブロック-2、ブロック-3及びブロック-4中の各アミノ酸が、R、r及びHarから独立して選択され;任意に、前記ペプチドが、C末端-COOHが-CONHで置き換えられた修飾C末端アミノ酸を有してもよい、請求項2又は3に記載のペプチド。
【請求項8】
配列番号29の配列を有する、請求項7に記載のペプチド。
【請求項9】
m、n、o及びpがすべて1であり、ブロック-1及びブロック-2がそれぞれ、3つのアミノ酸を有し、ブロック-3及びブロック-4がそれぞれ、4つのアミノ酸を有し、x、y及びzがそれぞれ、Pであり、ブロック-1、ブロック-2、ブロック-3及びブロック-4中の各アミノ酸が、R、r及びHarから独立して選択され;任意に、前記ペプチドが、C末端-COOHが-CONHで置き換えられた修飾C末端アミノ酸を有する、請求項2又は3に記載のペプチド。
【請求項10】
配列番号53の配列を有する、請求項9に記載のペプチド。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のペプチドと、C末端又はN末端に連結された基と、を含むペプチドコンジュゲートであって、前記基がポリエチレングリコール(PEG)基、グリコシル基、脂質基、コレステロール基又はステロール基、ペプチド基又はタンパク質基、及びオリゴヌクレオチド基から選択される、ペプチドコンジュゲート。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載のペプチドと、医薬的に許容される担体、結合剤、希釈剤、又は賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項11に記載のペプチドコンジュゲートと、医薬的に許容される担体、結合剤、希釈剤、又は賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項14】
対象における微生物感染症を治療する方法であって、それを必要とする対象に、請求項12又は13に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項15】
前記微生物感染症が真菌感染症である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記真菌感染症が、アブシディア種、アクレモニウム種、アクチノマヅラ種、アポフィソマイセス種、アルスログラフィス種、アスペルギルス種、バシジオボラス(Basidiobolus)種、ビューベリア種、ブラストミセス種、ブラストシゾミセス種、カンジダ種、クリソスポリウム種、クラドフィアロフォラ種、コクシジオイデス種、コニディオボルス種、クリプトコッカス種、クスダマカビ種、エモンシア種、エピデルモフィトン種、エクソフィアラ種、フォンセカエア種、フサリウム種、ゲオトリクム種、グラフィウム種、ヒストプラズマ種、ラカジア種、レプトスフェリア種、ロメントスポラ(Lomentaspora)種、マラセチア種、ミクロスポルム種、ケカビ種、ネオテスツディナ種、ノカルジア種、ノカルジオプシス種、ペシロマイセス種、パラコクシジオイデス種、フィアロフォラ種、ファマ種、ピエドライア種、ニューモシスチス種、シュードアレシェリア種、ピレノカエタ種、リゾムコール種、リゾプス種、ロドトルラ種、サッカロマイセス種、スケドスポリウム種、スコプラリオプシス種、スポロボロマイセス種、スポロスリックス種、シンセファラストルム種、チネア種、トリコデルマ種、トリコフィトン種、トリコスポロン種、ウロクラディウム種、ウスチラゴ種、ベルチシリウム種、及びワンギエラ種から選択される真菌による感染症である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記真菌感染症が、カンジダ種、コクシジオイデス種、クリプトコッカス種、エピデルモフィトン種、フザリウム種、ロメントスポラ種、ミクロスポルム種、パエシロマイセス種、リゾプス種、スケドスポリウム種、及びトリコフィトン種のうちの1以上による感染症である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記微生物感染症が細菌感染症である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記細菌感染症が、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、又はマイコバクテリアによる感染症である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記細菌が、エンテロコッカス・フェシウム、黄色ブドウ球菌、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、サルモネラ・ゼンフテンベルク、シゲラ・ソンネイ、又はマイコバクテリウム種である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、真菌感染症の治療薬としての新規アルギニン含有ペプチド(ACP)に関する。新規ペプチドは、2~4個の「ブロック」を含み、各ブロックは、アルギニン及び/又はホモアルギニンの任意の2個の「ブロック」の間に単一のアミノ酸又はアミン酸を含むリンカーによって連結された2~7個のL-アルギニン及び/又はD-アルギニン及び/又はホモアルギニンアミノ酸を含む。これらのペプチドはまた、N末端及び/又はC末端に修飾を含み得る。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
侵襲性カンジダ症は、米国において罹患率及び死亡率の重大な原因であり、適切な抗真菌療法にもかかわらず高い死亡率と関連付けられている(Pfaller MAら,Clin Microbiol Rev 2007,20(1):p.133-63)。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が、最も一般的な原因であり、C.グラブラタ(C.glabrata)がそれに続き、これらの2つの病原体は合わせて、すべてのカンジダ血症の約70%を占める。C.パラプシローシス(C.parapsilosis)とC.トロピカリス(C.tropicalis)は、残りの症例の大部分に関与し、様々な他の種は、感染症の3%以下を占める(Lockhart SRら,J Clin Microbiol 2012,50(11):p.3435-42;Diagn Microbiol Infect Dis 2012,74(4):p.323-31;CDC,「米国における抗生物質耐性の脅威(Antibiotic Resistance Threats in the United States)」CDC:Atlanta,GA.2019,p.1-138)。侵襲性カンジダ症の治療に利用可能な3つのクラスの抗真菌薬:ポリエン類(例えば、アムホテリシンB)、アゾール類、及びエキノキャンディン類、がある。これらのクラスの各々は、いくつかのアムホテリシンB生成物での狭い治療窓、薬物間相互作用及びアゾール類での薬物動態(PK)の大きな変動、エキノキャンディンでの脳及び尿中の濃度不足、並びに様々なカンジダ種における抗真菌耐性の高い率及び/又は増加率を含む、制限を有する(Pappas PGら,Clin Infect Dis.2016,62(4):p.e1-50;Ashley ESDら 全身性抗真菌剤の薬理学(Pharmacology of Systemic Antifungal Agents),Clinical Infectious Diseases 43(補遺1)2006:p.S28-S39;Wiederhold NP,Infect Drug Resist10(doi)2017:p.249-259.PMC5587015;Bidaud ALら,J Mycol Med 2018,28(3):p.568-573)。
【0003】
カンジダ血症の約7%は、少なくとも1つのクラスの抗真菌薬に耐性を示す(CDC,「米国における抗生物質耐性の脅威(Antibiotic Resistance Threats in the United States)」CDC:Atlanta,GA.2019,p.1-138)。C.グラブラタは、疾患の重症度及び高いアゾール耐性のバックグラウンドでのエキノキャンディン耐性の上昇率のため特に懸念されるものである(Vallabhaneni Sら,Open Forum Infect Dis 2015,2(4):p.ofv163.PMC4677623)。全体的な有病率は低いが、C.クルセイ(C. krusei)もまた、この種が基本的にフルコナゾールに耐性であるので、これらの耐性カンジダ血症の大部分を占める(Lockhart SRら,J Clin Microbiol 2012,50(11):p.3435-42)。C.オーリス(C. auris)は、まれではあるが懸念される別の病原体であり、それが最初に2009年に出現して以来、高い耐性率(1クラスに90%耐性、2クラスに30%耐性、及びすべての利用可能な抗真菌薬に対していくぶんか耐性)で世界中に急速に広まった(Forsberg KKら,Med Mycol.2019,57(1):p.1-12)。
【0004】
カチオン性アミノ酸に富む抗菌ペプチド(AMP)は、急速な殺菌性(負に帯電した微生物膜との相互作用により高頻度で破壊をもたらす)、耐性を発現する傾向の低さ、及びオフターゲット効果又は薬物間相互作用の可能性の低さというポジティブな性質のため注目されている(Hancock REら,Nat Biotechnol.2006,24(12):p.1551-7.doi:10.1038/nbt1267;Gordon YJら,Curr Eye Res.2005,30(7):p.505-15;Lau JLら,Bioorg Med Chem 2018,26(10):p.2700-2707;Lewies Aら,Probiotics Antimicrob Proteins 2019,11(2):p.370-381)。構造上の違い及び特有の機構により、それらは、従来の抗菌薬との交差耐性に悩まされる可能性が低い。AMPの臨床開発の成功は、宿主細胞膜破壊による毒性(例えば、溶血及び細胞毒性)、生理的条件下での活性の低下もしくは喪失、及び/又はインビボでの急速な酵素分解によって大幅に制限されている(Koo HBら,Peptide Science 2019,111(5):p.e24122;Mahlapuu Mら,Frontiers in cellular and infection microbiology 2016,6:p.194-194)。
【0005】
安全で効果的であり、かつ真菌耐性を克服できる新規の新たな抗菌治療薬、特に、新たな抗真菌治療薬のニーズは、主な満たされていない医療ニーズのままである。本発明の化合物は、この満たされていない医療ニーズ、特に、真菌感染症を治療するための新たな治療薬のニーズを満たすことを目的としている。本発明の化合物は、強力な抗真菌活性、耐容性、選択性、及び安定性を有する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、微生物感染症、特に真菌感染症、の治療における使用のためのアルギニン含有ペプチド(ACP)に関する。
【0007】
一態様では、本発明は、式I:
S1-[ブロック-1]-x-[ブロック-2]-y-[ブロック-3]-z-[ブロック-4]-S2
式I
配列番号1
の構造を有するペプチド又はその医薬的に許容される塩であって、式中、
m、n、o及びpは、独立して0又は1であり、0は不在を表し、1は存在を表し、ここで、m、n、o及びpのうちの少なくとも2つは1であり;
ブロック-1、ブロック-2、ブロック-3、及びブロック-4は独立して、L-アルギニン(R)、D-アルギニン(r)及びホモアルギニン(Har)からそれぞれ独立して選択される2~7個のアミノ酸を含み;
S1及びS2は、それぞれ独立してR、r又はHar以外のアミノ酸又はアミン酸であり、独立して存在するか又は不在であり;
x、y、及びzは、それぞれリンカーであり、各リンカーは、独立して、存在するか又は不在であり、プロリン(P)、グリシン(G)、3-アミノプロピオン酸(β-アラニン、Apr)、4-アミノ酪酸(Aba)、5-アミノ吉草酸(Ava)、6-アミノヘキサン酸(Ahx)、7-アミノヘプタン酸(Ahp)、8-アミノオクタン酸(Aoa)、9-アミノノナン酸(Ana)、10-アミノデカン酸(Ada)、11-アミノウンデカン酸(Aun)、12-アミノドデカン酸(Ado)、13-アミノトリデカン酸(Atr)、14-アミノテトラデカン酸(Ata)、15-アミノペンタデカン酸(Apn)、16-アミノヘキサデカン酸(Ahd)、N-(3-アミノプロピル)グリシン(Apg)、(S)-インドリン-2-カルボン酸(Ica)、L-α-メチルロイシン(Leu(Me))、及びL-2-インダニルグリシン(Igl)、5-アミノ-3-オキサペンタン酸(Aea)、N-(2-アミノエチル)グリシン(Aeg又はAeg2)、イソニペコチン酸(Inp)、2-シクロヘキシルグリシン、N-ブチルグリシン(ButylGly)、N-(4-ピペリジニル)グリシン(PipGly)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸(Agp)、(4’-ピリジル)アラニン(4-PyrAla)、(S)-N-(1-フェニルエチル)グリシン(Feg)、N-ベンジルグリシン(Bng)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(Tic)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-1-カルボン酸(Tiq)、及び4-グアニジノフェニルアラニン(Phe(4-Ngu))から選択される単一のアミノ酸又はアミン酸で構成され;
ただし、mが1でありかつnが0であるか、又はmが0でありかつnが1である場合は、xは不在であり;nが1でありかつoが0であるか、又はnが0でありかつoが1である場合は、yは不在であり;oが1でありかつpが0であるか、又はoが0でありかつpが1である場合は、zは不在であり;
任意に、該ペプチドは、N末端-NHが-N(X)(X)で置き換えられた修飾N末端アミノ酸を有してもよく、ここで、(X)及び(X)は独立して、H、R、RC(O)、RSO、及びRNC(O)から選択され、ここで、R、R、及びRは独立して、アルキル基又はアルカリール基であり、R及びRは独立して、H、アルキル基、又はアルカリール基であり、アルキル基及びアルカリール基は、独立して、ハロゲン、アルキル、アミノ、及び/又は酸素部分でさらに置換されていてもよく;
任意に、該ペプチドは、C末端-COOHが-CONHで置き換えられた修飾C末端アミノ酸(カルボキサミド)を有してもよい、
ペプチド又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、式Iのペプチドは、表1のペプチド(配列番号2~98)から選択される。
【0009】
【表1】
【0010】
【表2】
【0011】
別の態様では、本発明は、式I又は表1のペプチドと、C末端又はN末端又はペプチドに連結された基と、を含むペプチドコンジュゲートを提供し、該基は、ポリエチレングリコール(PEG)基、グリコシル基、脂質基、コレステロール又はステロール基、ペプチド又はタンパク質基、及びオリゴヌクレオチド基から選択される。
【0012】
別の態様では、本発明は、式Iもしくは表1のペプチド、又は式Iもしくは表1のペプチドを含むペプチドコンジュゲートと、1以上の医薬的に許容される担体、結合剤、希釈剤、及び/又は賦形剤と、を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、式Iもしくは表1のペプチド、又は式Iもしくは表1のペプチドを含むペプチドコンジュゲートを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における微生物感染症を治療する方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、微生物感染症は、真菌感染症である。いくつかの実施形態では、感染症は、アブシディア種、アクレモニウム種、アクチノマヅラ種、アポフィソマイセス種、アルスログラフィス種、アスペルギルス種、バシジオボラス(Basidiobolus)種、ビューベリア種、ブラストミセス種、ブラストシゾミセス種、カンジダ種、クリソスポリウム種、クラドフィアロフォラ種、コクシジオイデス種、コニディオボルス種、クリプトコッカス種、クスダマカビ種、エモンシア種、エピデルモフィトン種、エクソフィアラ種、フォンセカエア種、フサリウム種、ゲオトリクム種、グラフィウム種、ヒストプラズマ種、ラカジア種、レプトスフェリア種、ロメントスポラ(Lomentaspora)種、マラセチア種、ミクロスポルム種、ケカビ種、ネオテスツディナ種、ノカルジア種、ノカルジオプシス種、ペシロマイセス種、パラコクシジオイデス種、フィアロフォラ種、ファマ種、ピエドライア(Piedraia)種、ニューモシスチス種、シュードアレシェリア種、ピレノカエタ種、リゾムコール種、リゾプス種、ロドトルラ種、サッカロマイセス種、スケドスポリウム種、スコプラリオプシス種、スポロボロマイセス種、スポロスリックス種、シンセファラストルム種、チネア種、トリコデルマ種、トリコフィトン種、トリコスポロン種、ウロクラディウム種、ウスチラゴ種、ベルチシリウム種、及びワンギエラ種(Absidia spp., Acremonium spp., Actinomadura spp., Apophysomyces spp., Arthrographis spp., Aspergillus spp., Basidiobolus spp., Beauveria spp., Blastomyces spp., Blastoschizomyces spp., Candida spp., Chrysosporium spp., Cladophialophora spp., Coccidioides spp., Conidiobolus spp., Cryptococcus spp., Cunninghamella spp., Emmonsia spp., Epidermophyton spp., Exophiala spp., Fonsecaea spp., Fusarium spp., Geotrichum spp., Graphium spp., Histoplasma spp., Lacazia spp., Leptosphaeria spp., Lomentaspora spp., Malassezia spp., Microsporum spp., Mucor spp., Neotestudina spp., Nocardia spp., Nocardiopsis spp., Paecilomyces spp., Paracoccidiomyces spp., Phialophora spp., Phoma spp., Piedraia spp., Pneumocystis spp., Pseudallescheria spp., Pyrenochaeta spp., Rhizomucor spp., Rhizopus spp., Rhodotorula spp., Saccharomyces spp., Scedosporium spp., Scopulariopsis spp., Sporobolomyces spp., Sporotrix spp., Syncephalastrum spp., Tinea spp., Trichoderma spp., Trichophyton spp., Trichosporon spp., Ulocladium spp., Ustilago spp., Verticillium spp.,及びWangiella spp.)から選択される真菌によるものである。いくつかの実施形態では、本方法は、対象に別の抗真菌剤を投与することをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、微生物感染症は、細菌感染症である。いくつかの実施形態では、感染症は、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、又はマイコバクテリアによる。例えば、細菌は、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、サルモネラ・ゼンフテンベルク(Salmonella senftenberg)、シゲラ・ソンネイ(Shigella sonnei)、マイコバクテリウム種(Mycobacterium spp.)であり得る。
【0016】
1以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の明細書に記載される。実施形態の他の特徴、目的、及び利点は、明細書及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書で引用されるすべての刊行物は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、カンジダ・アルビカンスATCC 90028(A)及びクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)ATCC MYA-4564(B)における配列番号7及び配列番号8の時間-殺菌の動態を示すグラフのセットである。CFUはコロニー形成単位であり、MICは最小阻害濃度である。
図2図2は、配列番号7の単回の静脈内(IV)投与及び腹腔内(IP)投与の後の平均血漿濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
略語及び定義
本明細書で使用される、用語「アミノ酸」は、塩基性アミノ基と酸性カルボキシル基の両方を含む有機化合物を意味すると理解される。この用語には、従来のαアミノ酸(例えば、L-アミノ酸)、αアミノ酸の異性体(例えば、D-アミノ酸)及び既知のアミノ酸が含まれる。αアミノ酸は、アラニン[Ala(3文字の略称);A(1文字の略称)]、アルギニン(Arg;R)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、システイン(Cys;C)、グルタミン酸(Glu;E)、グルタミン(Gln;Q)、グリシン(Gly;G)、ヒスチジン(His;H)、イソロイシン(Ile;I)、ロイシン(Leu;L)、リジン(Lys;K)、メチオニン(Met;M)、フェニルアラニン(Phe;F)、プロリン(Pro;P)、セリン(Ser;S)、トレオニン(Thr;T)、トリプトファン(Trp;W)、チロシン(Tyr;Y)、及びバリン(Val;V);ホモアルギニン(Har)、ホモロイシン(hLeu)、S-インドリン-2-カルボン酸(Ica)、L-α-メチルロイシン(Leu(Me))、及びL-2-インダニルグリシン(Igl)、及びL-2-シクロヘキシルグリシンを含むが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書で使用される、用語「アミン酸」は、3-アミノプロピオン酸(β-アラニン、Apr)、4-アミノ酪酸(Aba)、5-アミノ吉草酸(Ava)、6-アミノヘキサン酸(Ahx)、7-アミノヘプタン酸(Ahp)、8-アミノオクタン酸(Aoa)、9-アミノノナン酸(Ana)、10-アミノデカン酸(Ada)、11-アミノウンデカン酸(Aun)、12-アミノドデカン酸(Ado)、13-アミノトリデカン酸(Atr)、14-アミノテトラデカン酸(Ata)、15-アミノペンタデカン酸(Apn)、16-アミノヘキサデカン酸(Ahd)、N-(3-アミノプロピル)グリシン(Apg)、(S)-インドリン-2-カルボン酸(Ica)、L-α-メチルロイシン(Leu(Me))、及びL-2-インダニルグリシン(Igl)、5-アミノ-3-オキサペンタン酸(Aea)、N-(2-アミノエチル)グリシン(Aeg又はAeg2)、イソニペコチン酸(Inp)、2-シクロヘキシルグリシン、N-ブチルグリシン(ButylGly)、N-(4-ピペリジニル)グリシン(PipGly)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸(Agp)、(4’-ピリジル)アラニン(4-PyrAla)、(S)-N-(1-フェニルエチル)グリシン(Feg)、N-ベンジルグリシン(Bng)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(Tic)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-1-カルボン酸(Tiq)、及び4-グアニジノフェニルアラニン(Phe(4-Ngu))を含む。
【0020】
用語「リンカー」又は「連結」は、上(式1の下)で定義されるような、任意の2つのアルギニン及び/又はホモアルギニンブロックの間の単一のアミノ酸又はアミン酸を指す。
【0021】
本明細書で使用される、用語「ペプチド」は、一般的な観点で、ペプチド結合により一緒に結合された複数のアミノ酸残基、及び/又はアミン酸を意味する。それは、互換的に使用され、ポリペプチド及びタンパク質と同じであることを意味する。この用語は、修飾されたC末端又はN末端を含むペプチドを含む。
【0022】
用語「アルギニン含有ペプチド」(ACP)は、「ブロック」で主にアルギニン及び/又はホモアルギニンの6~30個のアミノ酸残基を含み、ブロックを連結するための「リンカー」をさらに含むペプチドを指す。ACPはまた、C末端又はN末端でポリエチレングリコール(PEG)、グリコシル基、脂質基、コレステロール又はステロール基、ペプチド又はタンパク質基、及び/又はオリゴヌクレオチド基にコンジュゲートされてよい。一般に、本発明のACPは、直鎖ペプチドであるとみなされる。
【0023】
本発明のACPは、例えば、細菌、真菌、酵母、寄生虫、原虫及びウイルスに対する抗菌ペプチドとしてとりわけ有用である。用語「抗菌ペプチド」は本明細書で、殺菌活性及び/又は静微生物(microbistatic)活性を有し、抗菌性、抗真菌性(anti-fungal)、抗真菌性(anti-mycotic)、抗寄生性、抗原虫性、抗ウイルス性、抗感染性(anti-infectious)、抗感染性(anti-infective)及び/又は殺菌性(germicidal)、殺藻性、殺アメーバ性、殺菌性(microbicidal)、殺菌性(bactericidal)、殺真菌性、殺寄生虫性、及び殺原虫性の性質を有するとして説明される任意のペプチドを非排他的に包含する、任意のペプチドを定義するために使用できる。
【0024】
用語「真菌症」は、ヒト及び動物における病原性真菌に起因する感染性疾患を指す。真菌症は、一般的であり、様々な環境及び生理学的条件が、真菌疾患の発症に寄与し得る。
【0025】
用語「カンジダ症」は、カンジダ科の酵母(真菌の一種)によりひきおこされる真菌感染症を指す。カンジダのいくつかの種類は、人々に感染を引き起こすことができ、最も一般的なのは、カンジダ・アルビカンスである。カンジダは通常、問題を生じることなく、口、喉、腸、膣、及び爪などの場所で、皮膚上で及び体内で生きている。しかし、それは日和見病原体であり、それが過剰増殖するか、あるいはそれが血流に、又は脳、肺、腎臓もしくは心臓などの特定の臓器に侵入した場合に、感染症を引き起こし得る。
【0026】
用語「最小阻害濃度」(MIC)は、微生物、特に式IのACPの場合真菌又は細菌、の眼に見える増殖を防止する治療剤の最も低い濃度を指す。
【0027】
用語「治療すること」又は「治療」は、疾患、その症状、もしくはそれに向かう傾向を治癒する、緩和する、軽減する、改善する、寛解する、又は予防する目的で、それを必要とする対象に治療剤の有効量を投与することを指す。このような対象は、任意の適切な診断方法の結果に基づき、医療専門家により識別され得る。
【0028】
本明細書で使用される、用語「投与する」、「投与すること」、「投与」などは、生物学的作用の所望の部位への薬剤又は組成物の送達を可能にするために使用され得る方法を指す。
【0029】
用語「対象」は、治療、予防、観察又は実験の対象である、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを指す。例示的な哺乳動物は、マウス、ラット、げっ歯類、ハムスター、スナネズミ、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、キリン、カモノハシ、霊長類、例えば、サル、チンパンジー、類人猿、及びヒトを含む。加えて、対象は、ニワトリ及び七面鳥を含む鳥であり得る。
【0030】
語句「医薬的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題もしくは合併症を伴わずに、合理的な利益/リスク比に応じて、人間、又は場合によっては、動物の組織と接触して使用するのに適するそれらの薬剤、材料、組成物、及び/又は投薬形態を指すために本明細書で採用される。
【0031】
用語「アルキル」は、1つの水素を欠くアルカン基を指す。付着される非環式アルキル基の一般式は、C2n+1である。アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、及びヘキサデシル基を含む。
【0032】
用語「アルカリール」は、任意に置換されたアリール又はヘテロアリール基で終端するアルキル基を指し、任意に置換されたは、ハロゲン、アルキル、アミノ、及び/又は酸素部分で置換されることを含む。
【0033】
本発明のペプチド
一態様では、本発明は、式I:
S1-[ブロック-1]-x-[ブロック-2]-y-[ブロック-3]-z-[ブロック-4]-S2
式I
配列番号1
(式中、
m、n、o及びpは、独立して0又は1であり、0は不在を表し、1は存在を表し、ここで、m、n、o及びpの少なくとも2つは1であり;
ブロック-1、ブロック-2、ブロック-3、及びブロック-4は独立して、L-アルギニン(R)、D-アルギニン(r)及びホモアルギニン(Har)からそれぞれ独立して選択される2~7(すなわち、1、2、3、4、5、6、又は7)個のアミノ酸を含み;
S1及びS2は、それぞれ独立して、R、r又はHar以外のアミノ酸又はアミン酸であり、独立して存在するか又は不在であり;
x、y、及びzは、それぞれリンカーであり、各リンカーは、独立して存在するか又は不在であり、プロリン(P)、グリシン(G)、3-アミノプロピオン酸(β-アラニン、Apr)、4-アミノ酪酸(Aba)、5-アミノ吉草酸(Ava)、6-アミノヘキサン酸(Ahx)、7-アミノヘプタン酸(Ahp)、8-アミノオクタン酸(Aoa)、9-アミノノナン酸(Ana)、10-アミノデカン酸(Ada)、11-アミノウンデカン酸(Aun)、12-アミノドデカン酸(Ado)、13-アミノトリデカン酸(Atr)、14-アミノテトラデカン酸(Ata)、15-アミノペンタデカン酸(Apn)、16-アミノヘキサデカン酸(Ahd)、N-(3-アミノプロピル)グリシン(Apg)、(S)-インドリン-2-カルボン酸(Ica)、L-α-メチルロイシン(Leu(Me))、及びL-2-インダニルグリシン(Igl)、5-アミノ-3-オキサペンタン酸(Aea)、N-(2-アミノエチル)グリシン(Aeg又はAeg2)、イソニペコチン酸(Inp)、2-シクロヘキシルグリシン、N-ブチルグリシン(ButylGly)、N-(4-ピペリジニル)グリシン(PipGly)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸(Agp)、(4’-ピリジル)アラニン(4-PyrAla)、(S)-N-(1-フェニルエチル)グリシン(Feg)、N-ベンジルグリシン(Bng)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(Tic)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-1-カルボン酸(Tiq)、及び4-グアニジノフェニルアラニン(Phe(4-Ngu))から選択される単一のアミノ酸又はアミン酸で構成され;
ただし、mが1でありかつnが0であるか、又はmが0でありかつnが1である場合は、xは不在であり;nが1でありかつoが0であるか、又はnが0でありかつoが1である場合は、yは不在であり;oが1でありかつpが0であるか、又はoが0でありかつpが1である場合は、zは不在であり;
任意に、ペプチドは、N末端-NHが-N(X)(X)により置換された修飾されたN末端アミノ酸を有し、ここで、(X)及び(X)は独立して、H、R、RC(O)、RSO、及びRNC(O)から選択され、ここで、R、R、及びRは独立して、アルキル基又はアルカリール基であり、R及びRは独立して、H、アルキル基、又はアルカリール基であり、アルキル基及びアルカリール基は、独立して、ハロゲン、アルキル、アミノ、及び/又は酸素部分でさらに任意に置換され;かつ
任意に、ペプチドは、C末端-COOHが-CONHにより置換された修飾されたC末端アミノ酸(カルボキサミド)を有する)
の構造を有するペプチド又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるペプチドは、その医薬的に許容される塩として提供され得る。用語「医薬的に許容される塩」は、投与される生物に顕著な刺激又は毒性を引き起こさず、生物学的活性及びペプチドの性質を阻害しない、化合物の塩を指す。いくつかの実施形態では、塩は、ペプチドへの酸付加である。医薬塩は、ペプチドと、鉱物又は有機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、酢酸、メタンスルホン酸、リン酸、メシル酸、シュウ酸などとを反応させることによって得ることができる。
【0035】
表2は、本発明の代表的なアミン酸リンカーの化学構造を示す。
【0036】
【表3】
【0037】
別の態様では、式Iのペプチドは、表1のACPから選択される。
【0038】
生物学
本発明の好ましい態様では、微生物感染症は、真菌感染症であり得る。真菌感染症は、カンジダ種(例えば、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラタ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・パラプシローシス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・オーリス、カンジダ・ダブリニエンシス、カンジダ・ルシタニアエ、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida albicans, Candida glabrata, Candida tropicalis, Candida parapsilosis, Candida krusei, Candida auris, Candida dubliniensis, Candida lusitaniae, Candida guilliermondii))、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、クリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gatti)、フザリウム種(Fusarium spp.)、ロメントスポラ・プロリフィカンス(Lomentospora prolificans)を含むスケドスポリウム種(Scedosporium spp.)、コクシジオイデス種、トリコフィトン種、ミクロスポルム種、エピデルモフィトン種、アスペルギルス種(Coccidioides spp., Trichophyton spp., Microsporum spp., Epidermophyton spp., Aspergillus spp.)、リゾプス・アルヒズス(Rhizopus arrhizus)を含むムコロマイセテス(mucoromycetes)、及び/又は別の真菌種による感染症であり得る。しかし、ACPは、エクソフィアラ種、チネア種、ブラストミセス種、ブラストシゾミセス種、クリプトコッカス種、ヒストプラズマ種、パラコクシジオイデス種、スポロスリックス種、アブシディア種、クラドフィアロフォラ種、フォンセカエア種、フィアロフォラ種、ラカジア種、アルスログラフィス種、アクレモニウム種、アクチノマヅラ種、アポフィソマイセス種、エモンシア種、バシジオボラス種、ビューベリア種、クリソスポリウム種、コニディオボルス種、クスダマカビ種、ゲオトリクム種、グラフィウム種、レプトスフェリア種、マラセチア種(例えば、マラセチア・フルフル)、ケカビ種、ネオテスツディナ種、ノカルジア種、ノカルジオプシス種、ペシロマイセス種、ファマ種、ピエドライア(Piedraia)種、ニューモシスチス種、シュードアレシェリア種、ピレノカエタ種、リゾムコール種、リゾプス種、ロドトルラ種、サッカロマイセス種、スコプラリオプシス種、スポロボロマイセス種、シンセファラストルム種、トリコデルマ種、トリコスポロン種、ウロクラディウム種、ウスチラゴ種、ベルチシリウム種、又はワンギエラ種(Exophiala spp., Tinea spp., Blastomyces spp., Blastoschizomyces spp., Cryptococcus spp., Histoplasma spp., Paracoccidiomyces spp., Sporotrix spp., Absidia spp., Cladophialophora spp., Fonsecaea spp., Phialophora spp., Lacazia spp., Arthrographis spp., Acremonium spp., Actinomadura spp., Apophysomyces spp., Emmonsia spp., Basidiobolus spp., Beauveria spp., Chrysosporium spp., Conidiobolus spp., Cunninghamella spp., Geotrichum spp., Graphium spp., Leptosphaeria spp., Malassezia spp. (e.g Malassezia furfur), Mucor spp., Neotestudina spp., Nocardia spp., Nocardiopsis spp., Paecilomyces spp., Phoma spp., Piedraia spp., Pneumocystis spp., Pseudallescheria spp., Pyrenochaeta spp., Rhizomucor spp., Rhizopus spp., Rhodotorula spp., Saccharomyces spp., Scopulariopsis spp., Sporobolomyces spp., Syncephalastrum spp., Trichoderma spp., Trichosporon spp., Ulocladium spp., Ustilago spp., Verticillium spp.,又はWangiella spp.)などの、他の真菌に対する治療を提供できる。
【0039】
侵襲性カンジダ症は、カンジダと呼ばれる酵母(真菌の一種)によって引き起こされる感染症である。口及び喉におけるカンジダ感染症(「鵞口瘡」とも呼ばれる中咽頭カンジダ症)又は膣におけるカンジダ感染症(外陰膣カンジダ症又は「イースト菌感染症」)とは異なり、侵襲性カンジダ症は、血液、心臓、脳、腎臓、眼、骨、及び身体の他の部分に影響を及ぼし得る深刻な感染症である。カンジダによる血流感染症であるカンジダ血症は、入院患者における一般的な感染症である。
【0040】
クリプトコッカスは、健常な個体ではまれであるが、免疫抑制された個体と一般的に関連付けられる感染症であるクリプトコッカス症を引き起こす、侵襲性真菌である。ヒトにおける感染症と一般的に関連付けられる2種類のクリプトコッカスは、クリプトコッカス・ネオフォルマンス及びクリプトコッカス・ガッティである。クリプトコッカスは、髄膜に感染して、クリプトコッカス性髄膜炎をもたらし得る。
【0041】
いかなる理論にも縛られることなく、微生物の細胞壁及び細胞膜の正味の負電荷が、ACPの正味の正電荷との相互作用を促進し、抗菌ペプチドの作用に似た、細胞壁及び/又は細胞膜の溶解及び死滅を引き起こし得ると仮定される。
【0042】
本発明のACPは、広範な病原性酵母、カビ、細菌及び他の微生物により引き起こされる感染症又は疾患を治療するのに有用な、正に荷電したカチオン性ペプチドである。本発明のペプチドはまた、粘膜感染症に関連付けられる状態、例えば、嚢胞性線維症、胃腸、泌尿生殖器、泌尿器(例えば、腎臓感染症もしくは膀胱炎)、膣又は呼吸器の感染症を含むが、これらに限定されない他の状態の治療においても有用であり得る。
【0043】
抗真菌活性
表3は、様々なカンジダ種及びクリプトコッカス種に対し試験した、表1に列挙した選択されたペプチドについての最小阻害濃度(MIC)を示す(実施例2参照)。これらのペプチドは、陽性の参照化合物フルコナゾール、カスポファンギンとアムホテリシンBと比較して、現在の抗真菌療法に耐性のある株を含むカンジダ種及びクリプトコッカス種において強力な抗真菌活性を有することが見出された。
【0044】
【表4】
【0045】
表4は、コクシジオイデス種に対し試験した表1の選択されたペプチドのMIC値を示す(実施例2参照)。これらのペプチドは、陽性参照化合物フルコナゾールと比較して、コクシジオイデス属において強力な抗真菌活性を有することが見出された。
【0046】
【表5】
【0047】
表5は、糸状菌に対し試験した表1の選択されたペプチドのMIC値を示す(実施例2参照)。これらのペプチドは、陽性参照化合物フルコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール、カスポファンギン、及びアムホテリシンBと比較して、これらの種において強力な抗真菌活性を有することが見出された。
【0048】
【表6】
【0049】
表6は、3種の皮膚糸状菌種に対し試験した配列番号5、配列番号2、配列番号34、及び配列番号32についてのMIC値を示す(実施例2参照)。これらのペプチドは、陽性参照化合物フルコナゾール、カスポファンギン及びアムホテリシンBと比較して、これらの種において強力な抗真菌活性を有することが見出された。
【0050】
【表7】
【0051】
ACPは、C.アルビカンス(図1A)及びC.ネオフォルマンス(図1B)中で配列番号7、配列番号8及び配列番号32により示されるように、迅速な殺真菌活性(時間-殺菌の動態アッセイにおける時間ゼロからのCFU/mLの3log低下として定義される)を示す。
【0052】
抗菌活性
表7は、グラム陽性菌種及びグラム陰性菌種並びにマイコバクテリア種に対し試験した表1の選択されたペプチドのMIC値を示す(実施例4参照)。
【0053】
【表8】
【0054】
構造活性関係
アルギニン含有ペプチド(ACP)の抗真菌活性及び抗菌活性におけるC末端システインの役割を調べ、必要とされないことを見出した(表3及び7~8)。C末端システインを含む配列番号2は、C末端システインを欠失していること以外は同一の配列を有する配列番号3と同様のカンジダ種に対する活性を有する。表7において、配列番号5のみがC末端システインを含み、細菌に対するそのMIC値は、システインを欠くACP構造と同様である。C末端システインの付加は、細胞毒性を増加させる(表9)。
【0055】
【表9】
【0056】
【表10】
【0057】
ACP中の抗真菌活性のアルギニンの立体化学の役割を調べた。結果は、ACP中のすべてのアルギニンアミノ酸がL立体化学、すなわち、L-アルギニンを有する場合、ACPは、抗真菌活性を欠くか、又は顕著に低下された抗真菌活性を有することを示した(表10)。最良の抗真菌活性は、すべてのアルギンがD-立体化学、すなわち、D-アルギンを有するACP、又は、L-アルギニンとD-アルギニンの混合物を有するACP、又はホモアルギニン(Har)を有するACPで見出される(表10)。
【0058】
【表11】
【0059】
抗真菌活性又は抗菌活性に対するACP中のアルギニンの総数の影響を調べた。結果は、最適な活性が、L-アルギニンとD-アルギニンの混合物を含む合計10~16個のアルギニンアミノ酸を有するACPで見出されることを示した。14個のアルギニンアミノ酸を含むACPは、最も低いMIC50又はMIC90値を示した(表11)。低下された活性が、カンジダ種(表11)及びクリプトコッカス種及び糸状菌(表12)で12個未満のアルギニンアミノ酸を有するACPにおいて観察される。14個のアルギニンを含むACPは、抗菌活性を有する(表7)が、抗菌活性は、10個のアルギニンのみを含有するACPでは消失される(配列番号17、表7)。
【0060】
【表12】
【0061】
【表13】
【0062】
増強された抗真菌活性が、アルギニン及び/又はホモアルギニンの2つのブロックのそれぞれの間に配置されるリンカーを用いて2~4個のブロックでアルギニン類が構成され及び配置された場合に観察される(表13)。アルギニン又はホモアルギニンの任意の2つのブロックの間のリンカーによるこれらのアルギニン及び/又はホモアルギニンを含有するブロックの分離は、増強された抗真菌活性に必須であり、3つのリンカーと4個のアルギニン及び/又はホモアルギニンブロックを含有するACPが、最良の活性、すなわち、最も低いMIC90値を示す(表13)。
【0063】
【表14】
【0064】
医薬組成物
用語「医薬組成物」は、医薬的に許容される希釈剤、担体、結合剤及び/又は賦形剤などの他の化学成分との、本明細書に開示される治療剤(すなわち、ACP)の混合物を指す。医薬組成物は、対象への化合物の投与を容易にする。
【0065】
本開示は、医薬分野でよく知られ、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるレミントンの調合科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第18版、Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1990)に記載されている治療用の生理学的に許容される担体、結合剤、賦形剤及び/又は希釈剤を含む医薬組成物に関する。
【0066】
本発明の医薬組成物は、様々な投与経路を可能にする様式で製造できる。非経口投与による、例えば、ボーラス注入又は連続注入による、送達は、治療剤の水溶液又は懸濁液を含み、懸濁液の粘性を増加させる物質を含んでよく、場合によっては、懸濁液はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために化合物の溶解性を増加させる適切な安定剤又は薬剤を含んでもよい。治療用アルギニン及び/又はホモアルギニン含有ペプチドは、標的領域への直接局所適用のために、当技術分野で知られているように製剤化されてよい。経口投与のために、化合物は、治療される患者が経口摂取するための錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、小袋、液体、ゲル、シロップ、ロゼンジ、スラリー、懸濁液などを生成するために、当技術分野で周知の医薬的に許容される担体と活性化合物を組み合わせることによって容易に製剤化できる。さらに、これらのペプチドは、噴霧される液体又は乾燥粉末として気道に投与するために、又は点眼剤もしくは点鼻薬などの、液滴として、又は口腔洗浄剤として製剤化されてよい。
【0067】
投与法
適切な投与経路は、経口、舌下、経粘膜、吸入、経皮、局所、膣又は直腸投与;筋肉内、皮下、静脈内、髄内、又は髄腔内注射、並びに鼻腔内注射、又は眼内注射を含む非経口送達を含み得るが、これらに限定されない。これらの化合物はまた、持続放出又は制御放出剤形、デポー製剤、及び所定の速度でのポンプ又はパルス投与による連続注入で投与できる。
【0068】
投与に適する医薬組成物は、治療される対象の疾患を防止するか、その症状を緩和又は改善するか、又は生存を延長するために、治療有効量で有効成分が含まれる組成物を含む。所望の治療結果を達成するために必要な投薬量レベルである有効投薬量レベルの決定は、通常の薬理学的方法を使用して当業者により行うことができる。本発明による治療剤の投与は、連続的な又は断続的な様式で、単回用量で、複数可用量であってよく、全身投与と局所投与の両方が企図される。
【0069】
治療の方法
本開示は、対象に本発明の化合物を投与することによる、真菌又は他の微生物による感染症を患っている対象を治療する治療法を提供する。治療的処置は、真菌又は他の微生物による感染症の診断又は症状の発症後に開始される。本発明の表1に列挙した1以上のペプチド又は式Iのペプチド、又はそれらの組み合わせを用いて、真菌又は微生物の感染症を治療又は予防できる。典型的な真菌感染症は、例えば、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラタ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・パラプシローシス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・オーリス、カンジダ・ダブリニエンシスを含むカンジダ種、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、クリプトコッカス・ガッティ、フザリウム種、ロメントスポラ・プロリフィカンスを含むスケドスポリウム種、コクシジオイデス種、トリコフィトン種、ミクロスポルム種、エピデルモフィトン種、アスペルギルス種、リゾプス・アルヒズスを含むムコロマイセテス、及び/又は別の真菌種による感染を含むが、これらに限定されない。
【0070】
予防(Preventive)又は予防(prophylactic)的抗真菌療法は、癌患者及び高リスクの肝臓移植レシピエントの治療の間に定期的に実施される(Rex JHら,Healthcare Epidemiology CID 2001:32,ページ1191-1200)。これらの患者又は他の移植の又は免疫低下した患者において関心のある主な真菌は、カンジダ種及び様々な糸状菌、特に、アスペルギルス種である。加えて、医療提供者は、集中治療室の重症患者、臓器移植患者、低白血球数の幹細胞又は骨髄移植患者(好中球減少症)などの侵襲的カンジダ症を発症するリスクが高い患者、及び侵襲的カンジダ症の発症率が高い保育室にいる非常に低体重(2.2ポンド未満)の乳幼児に予防(Preventive)又は予防(prophylactic)的抗真菌療法剤を処方することがある。
【0071】
本発明のペプチドはまた、真菌による感染症の発症を防止する又は遅延させるために、例えば、対象が真菌による感染の症状を発症する前に、予防的に投与されてよい。治療は、感染症の診断又は症状の発症の前、その間、又はその後に行われてよい。症状の発症後に開始される治療は、1つの病態の症状の重症度を減少させるか、又は完全にその症状を除去し得る。
【0072】
現在利用できる抗真菌に対する表1に列挙したペプチド又は式Iのペプチドによる予防(Preventive)又は予防(prophylactic)的治療法の利点は、治療の失敗又は薬物関連の毒性につながり得る既存の抗真菌耐性又は抗真菌耐性の発達のより低い可能性を含む。
【0073】
本発明のACPは、真菌感染症の任意の段階で哺乳動物又は鳥類に導入できる。
【0074】
本発明のペプチドはまた、細菌感染症を患っている対象を治療するための治療剤として投与されてもよい。治療的処置は、細菌による感染症の診断又はそれと一致する症状の発症後に開始される。例示的な細菌感染症は、黄色ブドウ球菌、大腸菌、肺炎球菌、緑膿菌、肺炎桿菌、サルモネラ・センフテンベルク(Salmonella senftenberg)、シゲラ・ソネイ、及び結核菌を含むマイコバクテリウム種並びにM.アブセッサス(M.abscesses)、M.ケロナエ(M.chelonae)、M.アビウム(M.avium)、及びM.カンサシ(M.kansasii)などの非結核性マイコバクテリアを含むが、これらに限定されない。
【0075】
本発明のACPは、ヒトだけでなく動物における真菌もしくは細菌の感染症及び疾患の治療、制御、又は予防において有用である。化合物は、コンパニオン動物、家畜などの飼育動物、研究に使用される動物、野生の動物、又は鳥類に投与されてよい。コンパニオン動物は、イヌ、ネコ、ハムスター、ウサギ、スナネズミ、鳥類(ニワトリ、七面鳥を含む)、及びモルモットを含むが、これらに限定されない。家畜動物は、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、及びラマを含むが、これらに限定されない。研究動物は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ブタ、類人猿、及びサルを含むが、これらに限定されない。
【0076】
併用療法
本発明はしたがって、さらなる態様において、1つの非限定的な実施形態では、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、又は他の抗感染症薬であり得る1以上の治療的に活性な薬剤とともに、表1に列挙した1以上のペプチド、式Iのペプチド、又はそれらの組み合わせを含む組み合わせを提供する。そのようなものとして、医薬組成物は、必ずしも抗菌薬又は抗感染症薬ではない、少なくとも1つの他の医薬的に活性な薬剤をさらに含んでもよいことが理解されよう。適切に、医薬的に活性な薬剤は、抗生物質、抗菌薬、抗真菌薬、及び抗ウイルス剤、又は他の抗感染症薬から選択され得る。治療用抗真菌剤の非限定的な例は、ポリエン、アゾール アリルアミン、エキノキャンディンなどを含む。抗真菌剤の好ましい例は、アムホテリシンB、フルシトシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、カスポファンギン、イブレクサファンゲルプ、ミカファンギン及びアニデュラファンギンを含む。
【0077】
併用療法が本発明の1以上の組成物と共に採用される場合、追加の治療法は、本発明の組成物の前に、それと同時に及び/又はそれに続いて与えられてよい。
【0078】
キット
本明細書に記載の組成物のいずれかは、キットで提供され得る。非限定的な例では、表1に列挙した1以上のペプチド又は式Iのペプチド、又はそれらの組み合わせなどの、本発明の抗真菌組成物は、キット中で組み合わされてよい。キットは、水性媒体中にもしくは凍結乾燥形態で又はブリスタパックでの固体剤形としてのいずれかで包装された、適切に一定分量に分けられた本発明の組成物と、場合によっては、1以上の追加の薬剤を含んでよい。キットの容器手段は一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ又は他の容器手段を含み、その中に成分が置かれるか、好ましくは、適切に一定分量に分けられてよい。キットはまた、使用説明書も含んでよい。
【0079】
実施例
実施例1
ペプチドを、樹脂上のFMOCで保護されたアミノ酸による標準固相ペプチド化学を使用して合成する。アミノ酸の活性化及びカップリングを、例えば、HBTU/HOBt及びDIEAを用いて行う。FMOC基を、DMF中の20%ピペリジンを使用して除去する。個々のペプチド合成の完了後に、樹脂結合配列を次いで、樹脂から切断し、水、チオアニソール、エチルメチルスルフィド、及びエタンジチオール、及び/又はトリイソプロピルシランを含み得る様々な捕捉剤を含有する80~90%のトリフルオロ酢酸(TFA)で脱保護した。ペプチドを、エーテル中に沈殿させ、次いで遠心分離により単離する。乾燥したペプチドのペレットを、水とアセトニトリルの混合物中で再構成し、凍結乾燥してから、0.1%TFAを含有するアセトニトリル-水緩衝液で溶出する、C18カラムでの逆相HPLCにより精製する。ペプチドを分析し、純粋な画分を、プールし、凍結乾燥する。分析HPLCデータを、5ミクロンのC18分析カラムおよび0.1%TFAを含有するアセトニトリル-水緩衝液での溶出で得る。分子量を、MALDI-TOF分析により確認する。塩変換のために、陰イオン交換樹脂を、酢酸形態又は塩化物形態のいずれかで使用した。精製したペプチドを、水中20~50%のアセトニトリルに溶解し、強陰イオン交換樹脂(所望の塩形態)上にロードし、酢酸塩形態については水中30~50%のアセトニトリル中10%の酢酸で、又は塩化物形態については単に30~50%のアセトニトリルで溶出する。ACPの結果を表14に示す。
【0080】
【表15】
【0081】
実施例2
アルギニン含有ペプチド(ACP)を、臨床検査標準協会(CLSI)により記載されるアッセイ条件下で、インビトロでブロス微量希釈アッセイを使用して、真菌株のパネルにおける抗真菌活性について試験した。酵母及び真菌を、0.165Mの3-N-モルホリノプロパンスルホン酸(3-N-morpholinepropane sulfonic acid)(MOPS)でpH7.0に緩衝化した培地RPMI-1640中で試験した。最小阻害濃度(MIC)は、眼に見える微生物の増殖を阻害する薬剤の最低濃度として定義される。試験品を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、合計11の試験濃度のためにPBSで2倍段階希釈により希釈した。ディープウェルポリプロピレン96ウェルプレートを使用して、10×の段階希釈試験品濃度溶液を最初に作り、続いて、125%培地(MOPSを含むRPMI-1640)中に1.5倍希釈して、2×試験濃度溶液を作製した。次いで、100μLの各2×試験濃度溶液を、別の96ウェルプレートの各ウェルに添加し、続いて、培地中で調製した100μLの適切な接種菌液(innocula)を添加し、約0.4~5×10コロニー形成単位(CFU)/mL(カンジダ種、クリプトコッカス種、コクシジオイデス種、及びリゾプス種)、0.4~5×10CFU/mL(フザリウム種、スケドスポリウム種、及びパエシロマイセス・バリオッティ)並びに1.5×10CFU/mL(皮膚糸状菌)の最終濃度を得た。プレートを、攪拌せずに35℃で好気的に、24時間(カンジダ種及びリゾプス種)、48時間(フザリウム種及びP.バリオッティ)、72時間(クリプトコッカス種及びスケドスポリウム種)、48~72時間(コクシジオイデス種)及び皮膚糸状菌については4~6日間インキュベートし、MIC値を、糸状菌、コクシジオイデス種及び皮膚糸状菌では50%超の阻害、酵母では完全(100%)阻害で報告した。参照化合物の場合、MICを、CLSIガイドラインに従い、アゾール類及びエキノキャンディン類では50%超の阻害及びアムホテリシンBでは100%阻害で読み取った。増殖対照ウェルは、100μLの真菌懸濁液、及び100μLの試験品又は陽性対照薬剤(アムホテリシンB(amphoterin B)、フルコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール及び/又はカスポファンギン)を含まない増殖培地を含んだ。ACPを、C.アルビカンスの2~7菌株(フルコナゾール及び/又はカスポファンギンに耐性である菌株を含む)、カンジダ・グラブラタの2~8菌株(フルコナゾール及び/又はカスポファンギンに耐性である菌株を含む)、カンジダ・トロピカリスの2~3菌株(フルコナゾールに耐性である菌株を含む)、カンジダ・パラプシローシスの3~6菌株(フルコナゾールに耐性である菌株を含む)、カンジダ・クルセイの2~3の単離物(フルコナゾールに耐性である菌株を含む)、カンジダ・オーリスの4~8菌株(フルコナゾールに耐性である菌株を含む)、カンジダ・ダブリニエンシスの1菌株、クリプトコッカス・ネオフォルマンスの2~5菌株(フルコナゾール及び/又はカスポファンギンに耐性である菌株を含む)、クリプトコッカス・ガッティの1菌株(カスポファンギンに耐性)、フザリウム種の3~6菌株(F.ファルシフォルメ(F.falciforme)、F.オキシスポラム、及びF.ソラニ並びにボリコナゾール、フルコナゾール及び/又はカスポファンギンに耐性である菌株を含む)、スケドスポリウム種の2~4菌株(S.ボイディ及びS.アピオスペルムの菌株並びにフルコナゾールに耐性である菌株を含む)、ロメントスポラ・プロリフィカンスの1菌株(ボリコナゾールに耐性である菌株を含む)、コクシジオイデス種の3~10菌株(C.イミティス及びC.ポサダシ並びにフルコナゾールに耐性である菌株)、パエシロマイセス・バリオッティの1菌株、リゾプス・アリズスの3菌株、並びにトリコフィトン・ルブラム、表皮糸状菌、及びマイクロスポルム・ジプセウム(Microsporum gypseum)のそれぞれ1菌株、をそれぞれ用いて、異なる時期にバッチごとに試験した。
【0082】
表3~6のMICデータは、ACPが、現在の治療薬に耐性である菌株を含む広範囲の重要な真菌種において陽性参照化合物と比較して強力な抗真菌活性を有することを示す。
【0083】
実施例3
時間-殺菌の動態研究を、Cantonら(Canton Eら Antimicrob Agents Chemother 2007,53(7):p.3108-11)により記載されるように実施して、ACPの殺真菌活性を評価した。配列番号7、配列番号8及び配列番号32を、ブロス微量希釈により決定した2倍及び8倍のMIC値で試験した。
【0084】
各試験では、ディープウェル96ウェルアッセイプレート(Costar 3960)のウェルは、900μLのRPMI-1640、100μLの真菌接種菌液(1~5×10CFU/mL)、及び2μLの試験剤を含んだ。RPMI-1640、接種菌液及び2μLのPBSを含む薬物のない対照ウェルは、各単離物の増殖対照として役立った。接種後に、ディープウェルプレートを、200rpmで振盪しながら35℃でインキュベートした。生存酵母を、カンジダ・アルビカンスATCC株90028については接種後1、2、4、6、及び24時間の時点で、クリプトコッカス・ネオフォルマンスATCC株MYA-4564については接種後1、2、6、24、及び72時間の時点で定量化した。時間=0時間で、0.1mLのアリコートを、各接種菌液の懸濁液から除去し、冷却した滅菌PBS中で10倍段階希釈し、トラック希釈をプレーティングして、0時間でのCFU/mLを決定した。トラック希釈プレーティングの間、各希釈液の10μLのアリコートを、正方形のSabouraudデキストロース寒天プレートの上部全体にスポットした。プレートを次いで、45~90°の角度で傾斜させて、10μLのアリコートを寒天表面全体に行きわたらせた。プレートを、平坦に置き、室温で乾燥させ、その後反転させ、C.アルビカンスについては約24時間、又はC.ネオフォルマンスについては48時間、35℃でインキュベートした。CFU/mLを次いで、50CFU/mLの検出限界で、複製の平均コロニー数から決定した。開始接種菌液からの少なくとも3ログのCFUの低下を、殺真菌性とみなす。
【0085】
結果を、C.アルビカンスについては図1Aに、C.ネオフォルマンスについては図1Bに示す。両方の場合において、3つのACPは、時間0と比較してCFU/mLに3ログ以上の低下を有する迅速かつ顕著に殺真菌活性を示し、この活性は、これらの種について承認された抗真菌剤による時間-殺菌活性と同等であるか、又はそれを上回る。
【0086】
実施例4
アルギニン含有ペプチド(ACP)を、CLSIにより記載されるアッセイ条件下で、インビトロでブロス微量希釈アッセイを使用して、細菌種のパネルにおける抗菌活性について試験した。カチオン調整ミュラーヒントンブロス(Cation Adjusted Mueller Hinton broth(CAMHB))を、MIC試験に使用した。最小阻害濃度(MIC)は、眼に見える微生物の増殖を阻害する薬剤の最低濃度として定義される。試験品を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、合計11の試験濃度のために同じビヒクル中で2倍段階希釈により希釈した。4μLの各希釈液のアリコートを、96ウェルプレートのウェル(最終細菌数:1ウェルあたり2~8×10コロニー形成単位/mL)で生物懸濁液を播種したブロス培地196μLに添加した。プレートを、約16~24時間又は48時間35又は36℃でインキュベートした(マイコバクテリア種)。インキュベーション後に、試験プレートを、目視で調べ、ウェルを、増殖阻害又は完全な増殖阻害についてスコア化して、最小阻害濃度を定義した。ビヒクル対照及び適切な活性のある参照薬剤を、それぞれ、ブランク及び陽性対照として使用した。
【0087】
表7中のMIC値は、ACPが抗菌活性を有することを示す。
【0088】
実施例5
ACPは、それらの抗真菌MIC又は抗菌MICよりも実質的に高い、最大で300μg/mLの濃度で試験した場合、ヒト赤血球細胞の溶血を引き起こさない。溶血は、多くの他のカチオン性ペプチドでは起こりやすく、これは全身感染症を治療するためのそれらの実用性を妨げた。ペプチドの溶血の可能性を、新鮮なヒト血液から採取した赤血球を用いて試験し、室温での遠心分離の後にリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)で3回洗浄し、次いで、3~300μg/mLの濃度でのペプチドと1時間37℃でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中でインキュベートした。Triton-X100を、陽性対照として使用し、ビヒクル(PBS)を、陰性対照として使用した。溶血性であると知られているアムホテリシンB及びメリチンを、参照化合物として使用した。インキュベーション後に、混合物を、室温で遠心分離し、上清を、分離し410nmの単波長で吸光度について分析した。陰性対照からのバックグラウンド吸光度読み取り情報を、すべての試料から減算した。Triton-X100試料を、100%の溶解を示すために使用した。すべての試験化合物及び陽性対照試料を、この値に正規化して、各濃度における試験化合物及び陽性対照によって引き起こされる溶解率を決定した。EC50値(50%溶解をもたらす試験品の濃度)を、各試験化合物について可能ならば決定した。
【0089】
【表16】
【0090】
結果は、ACP(表15)が検出可能な溶血活性を有しないことを示した。比較して、2つの陽性対照は、溶血において明らかな濃度に関連した増加を生じ、それぞれ、メリチンとアムホテリシンBについて2.63μg/mLと6.95μg/mLのEC50を有した。
【0091】
実施例6
ACPは、それらの抗真菌MIC又は抗菌MICよりも実質的に高い、最大で300μg/mLの濃度で試験した場合、ヒト肝細胞腫(HepG2)細胞における細胞毒性はないか又は低い。細胞生存率の指標としてHepG2細胞におけるATPレベルの変化を使用して、ペプチドの細胞毒性について試験した。ATPの細胞内レベルの変化は、細胞毒性を示す。ATPは、哺乳動物の細胞及び組織の一次エネルギー源である。細胞のATPを低下させる化合物は、細胞毒性であることが示されている。アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection(ATCC,カタログ番号HB 8065))からのヒト肝細胞腫の細胞株(HepG2)を、細胞毒性を評価するために使用した。この細胞株は、十分に特徴付けられており、長年にわたり化学毒性の指標として使用されている。健康な細胞は、高いレベルのATPを有する。細胞が薬物曝露によりストレスを受けると、ATPレベルは急速に減少し、細胞毒性効果を示し得る。ATPを、細胞内のATPを検出するためのCellTiter Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Luminescent Cell Viability Assay)(promega、カタログ番号G7572)を用いてモニターした。HepG2細胞を、100μLあたり20、000個の細胞の密度で96ウェル培養プレートに播種した。細胞を、37℃、5%COで、10%ウシ胎児血清(FBS)を有するイーグル最小必須培地(Eagles Minimum Essential Medium(EMEM)中で培養した。18~22時間の平衡期間後に、培地(FBSを含む)を除去し、細胞を、FBSを含まない培地で2回洗浄した。その後、FBSを含まずにペプチドを含む(1~300μg/mLで)、又はFBSを含まずに陽性対照メリチン(0.01~10μg/mL)及びアムホテリシンB(1~100μg/mL)を含む200μLの培地を添加した。内部対照を、ロテノンを(0.1~100μMで)使用して、ATPアッセイが過去の値の範囲内で実施されていることを検証するために行った。陰性対照は、ペプチド及びメリチンについては、ビヒクル、PBSと、FBSを含まないEMEM培地であるか、又はアムホテリシンB及びロテノンについては、DMSO(0.1%)と、FBSを含まないEMEM培地であった。完全EMEM(FBSを含む)中のビヒクルに曝露した細胞の増殖対照も、行った。試験化合物及び参照化合物への曝露は、37℃にて5%COで、18~22時間であった。曝露期間後に、培地を除去し、50μLの新鮮な培地と50μLの溶解試薬(ルシフェラーゼを含む)を、細胞に添加し、プレートを10分間振盪した。アッセイの発光を読み取った。
【0092】
相対発光単位の生データを取得し、細胞生存率を、以下の式を用いて算出した。平均データを、FBSを含まないビヒクル対照に対する細胞生存率に変換した。50%生存率(EC50)をもたらした曝露濃度を、ヒルスロープ決定を用いるGraphPad Prism9のシグモイド曲線外挿を使用して推定した。細胞生存率を50%未満に低下させた試料を、試験した濃度範囲において細胞毒性であるとみなす。
【0093】
生存率(%)=試料の発光/ビヒクル対照の平均発光×1
【0094】
【表17】
【0095】
結果は、試験したACPの4つを除くすべてが、検出可能な細胞毒性を有しなかったことを示し(表16)、EC50はすべて300μg/mLを十分に上回った。比較して、陽性対照は、細胞毒性において明らかな濃度と関連した増加を生じ、それぞれ、試験にわたりメリチン及びアムホテリシンBについてEC50値は、2.01~3.07μg/mLと5.79~14.13μg/mLであった。ロテノンについてのEC50値は、0.129~0.594μMであった。
【0096】
実施例7
ACPの急性毒性及び亜急性毒性を、CD-1マウスで試験した。急性毒性研究では、CD-1の雄又は雌のマウスのグループに、注射用の通常の生理食塩水に又はリン酸緩衝生理食塩水に溶解したペプチドの単回静脈内又は腹腔内漸増用量(用量あたりn=2~3)を投与した。静脈内用量を、15~20秒にわたる遅いプッシュで尾静脈を介して投与した。用量を、許容性に基づき漸増させた。動物を、不耐性の急性兆候(例えば、死亡、痙攣、震え、運動失調、鎮静など)及び自律神経作用(例えば、下痢、唾液分泌、流涙、血管拡張、立毛(pilorection)など)について、注射後15分間観察した。その後、マウスを、体重、しわのある/つやのない毛皮、猫背、浮腫、注意力低下、低体温、唾液分泌、注射部位での刺激/創傷、食べたり飲んだりできないこと、傾眠を含む、臨床徴候及び全体的な健康について、注射後24時間、または場合によっては最長48~96時間、少なくとも1日2回観察した。ペプチド(配列番号32、配列番号7、配列番号8、配列番号16、配列番号14、配列番号53、配列番号33)は、最大5~7.5mg/kgの単回静脈内投与後、又は最大10~15mg/kgの単回腹腔内投与後マウスにより許容された。
【0097】
亜急性毒性研究では、CD-1の雄又は雌のマウスのグループに、注射用の通常の生理食塩水に溶解したペプチド(配列番号7、配列番号29、配列番号53)の腹腔内用量(用量あたりn=3)を7日連続して毎日投与した。各ペプチドを、2.5~7.5mg/kg/日の範囲の2~3投与量レベルで評価した。マウスを、少なくとも1日1回秤量し、異常な所見及び全体的な健康の判定について少なくとも1日2回観察した。最後の投与後24時間の時点で、マウスを人道的に安楽死させ、血液を、KEDTAマイクロテナー中に心臓穿刺を通じて採取して、血液学的パラメータを評価した。全ての3つのペプチドは、7日間評価した最高用量で許容された(7.5mg/kg/日)。顕著な臨床的副作用又は血液学的副作用は、溶血の証拠がないことを含み、観察されなかった。
【0098】
実施例8
酵素消化研究は、配列番号7のACPがトリプシン消化に耐性であること、および約50%がArg標的エンドプロテイナーゼとのインキュベーションの6時間後に無傷のままであることを示した。ペプチド(267μg/mL)を、37℃でブタ膵臓由来のトリプシン(9μg/mL)(Sigma Aldrich カタログ番号T6567)とインキュベートするか、又はペプチド(427μg/mL)を、37℃で3μg/mLのエンドプロテイナーゼArg-C(Sigma Aldrich カタログ番号11370529001)とインキュベートした。試料を、インキュベーションの0.5、1及び6時間後に採取して、LC-MS/MS法を用いてペプチド濃度を決定した。トリプシンとのインキュベーション後6時間までの各時点で残存するペプチドの割合は、インキュベーションしない場合(時間0)のペプチドの約100%であり、分解がないことを示す。エンドプロテイナーゼArg-Cとのインキュベーション後6時間の時点で残存するペプチドの割合は、50.5%であり、約6時間の分解半減期を表す。ペプチド配列番号7、配列番号8、配列番号13、配列番号15、配列番号29、配列番号53(5μM)を、完全強度のヒト血清と37℃で2時間インキュベートすると、約40%しか残っていなかった配列番号13を除くすべてのペプチドで、ペプチドのほとんど100%が無傷のままであり、血清安定性を向上させるためにD-アルギニン置換が重要であることを示した。
【0099】
ペプチドのインビトロでの酵素的安定性と血清安定性は、インビボ血漿薬物動態(PK)プロファイルにより示される。配列番号7の5mg/kgの単回静脈注射(尾静脈を介する)及び7.5mg/kgの単回腹腔内用量を、CD-1マウスの2グループ(グループあたりn=3)に投与した。ペプチド用量は十分に許容された。一連の血液試料を、静脈内投与又は腹腔内投与後4時間又は8時間までの時点で、抗凝固剤としてのEDTA-K中に伏在静脈から採取した。血漿を、分離し、以下のようにLC-MS/MS法により分析した。各マウスから採取される血液は量が少ないため、血漿を、分析前に3匹のマウスからプールした。50μLの血漿を、5%トリクロロ酢酸中の内部標準物質としての300ng/mLのTATペプチド(GRKKRRQRRRPQ;配列番号99)の100μL溶液でタンパク質沈殿させた。遠心分離後に、上清のアリコートを、HPLCカラム(Waters ACQUITY UPLC HSS T3,2.150mm,1.8μm)に注入し、水中0.1%のペルフルオロペンタン酸(PFPA)及びアセトニトリル中0.1%のPFPAを含む移動相の勾配で溶出した。ペプチド及び内部標準物質を、陽イオンSRMモードで、エレクトロスプレーイオン化で動作するTriple Quad 6500+質量分析計を使用して検出した。検量線範囲は、10~4000ng/mLであった。単回の静脈内投与及び腹腔内投与後の配列番号7の平均血漿濃度を、図2に示す。
【0100】
これらの結果は、ペプチドが、マウスにおいて5mg/kg静脈内投与後にかなり高い血漿濃度に達しかつ1.43時間のかなり長い半減期を有することを示した。腹腔内注射後の血漿プロファイルは、ペプチドが体循環中へとに実質的に吸収され、かつ初回通過代謝及び前全身性分解を免れ、約75%のバイオアベイラビリティーを有することを示した(表17)。
【0101】
【表18】
【0102】
別のPK研究では、配列番号29及び配列番号53のペプチドを、7日間、1日1回7.5mg/kgでCD-1マウスに腹腔内で投与した。血漿試料を、1日目に投与後6時間までの各時点で3匹のマウスから、次いで7日目に投与後6時間の時点で3匹のマウスから採取した。試料を、上記のようにHPLC-MS/MSを用いて、ペプチドの濃度について分析した。上で示したものと同様の良好なインビボ血漿曝露がまた、これらの2つのペプチドにより観察され、それと共に、マウスでの7日間の毎日7.5mg/kgの腹腔内(ip)投与の後に腎臓中への実質的なペプチド浸透が観察された。1日目の血漿に対する腎臓のAUC比は、それぞれ、配列番号29及び配列番号53について158及び58.3であった。
【0103】
【表19】
【0104】
他の実施形態
本明細書に開示されるすべての特徴は、任意の組み合わせで組み合わされてよい。本明細書に開示される各特徴は、同じ、同等、又は同様の目的である代替的な特徴によって置き換えられてもよい。したがって、特に明示的に記載されていない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の等価又は類似の特徴の単なる例である。
【0105】
以上の説明から、当業者であれば、記載される実施形態の本質的な特徴を容易に把握でき、その趣旨及び範囲を逸脱することなく、実施形態の様々な変更及び修正を行って、様々な用途及び条件に適合させることができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内にある。
図1
図2
【配列表】
2024534845000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024534845000001.xml
【国際調査報告】